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ふたつの『せい』を貪るケモノ

#ダークセイヴァー #人類砦 #闇の救済者

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 常闇に覆われた世界に於ける夜ほど怖いものはないと誰かが言った。
 猟兵らが介入しても、未来が薄暗いダークセイヴァーで起こった……そんな事件の話。

 ……その発端、事件のきっかけを作ったのは。
 貪欲に『獲物』を喰らう人狼の姿をした吸血鬼であった。
「くははッ 良い!とても良いぞッ!!」
 鋭い眼光で『獲物』を射抜きながら、下卑た笑いを浮かべ『食事』を楽しむケモノ。
 2つの『せい』を満たす『食事』……それは、一般的には非日常だが彼にとっての当たり前で。
 噎せ返る程に部屋に籠もる匂いは、鉄の匂いと花の匂い。それは、紛れもない『生』であり『性』の匂い。
 そう…生きる為に食べる食事と、彼が言う食事は。
 一般人が『餌食』にされていいものではなかった。
「オレの腹はまだ満たされておらんぞ?次の『獲物』を寄越すが良い」
 何度も何度も肉体的に嬲り、最終的に力尽き果てた少年から生気を吸い取って。
 その吸血鬼はニヤリと笑った。
「御意」
 それだけ言って、手下であろう人狼族の者たちは消えてしまった。


 所変わってグリモアベース。
「なんか…嫌な予感しかしないんだけど」
 目を細めながら頬を掻いているのは、毎度おなじみガルムゼノン・フェンリル(月をも砕く蒼狼拳士・f01970)である。
 彼は夏服らしく半袖パーカーを着込んだ身軽な衣装でグリモアを浮かべていた。
 まぁ、それはともかく。
「今回、私の同族が事件を起こす予感がしてね。皆に事件の解決をお願いしたいんだ」
 ガルムゼノンは君たち猟兵が集まってきたのを見計らって。
 グリモアを起動させると映し出された先にある光景は……活気のない砦が広がっていた。
「君たちの活動のお陰で、ダークセイヴァーの世界にヴァンパイアの襲撃を受けていない地域があるのをご存知かな?」
 僅かではあるものの、ダークセイヴァーにヴァンパイアの支配が及ばない人類の活動圏、通称『人類砦』が現れ始めているのだという。
 小さな寒村から山岳地帯の砦まで…『人類砦』はどれもまだ小さいものだが。
「その拠点『人類砦』において、非力な少年少女が『餌食』になってしまうかもしれないんだ」
 表情を曇らせながら『餌食』というワードを強めに吐いた人狼。
「そこで、今回の事件の説明になるんだけど」
 グリモアに写した先には人狼族の集団が映し出されていた。
「武装した人狼の集団が人類砦に進撃してくる。その狼軍団を退けた上で、事件の元凶である『人狼型吸血鬼』の撃破をして欲しい」
 人狼型吸血鬼。
 待ち構える親玉の説明をしている最中のガルムゼノンは、思うところがあったのか表情が暗かったが、彼は何もなかったように説明を続けた。
「彼の名前は『ベリル・アルカード』というそうだ」
 ガルムゼノン曰く、自分が気持ちよくなれれば何でも構わない俺様系好色人狼吸血鬼で、『犯罪組織アルカード』のボスという噂…だとか。
「なんか、彼の攻撃にはデジャヴを感じせずにはいられないんだが……。気の所為であってほしいけど…」
 頬を掻きながらガルムゼノンが言う。
 好色である彼の放つユーベルコードには、攻撃を受けた者の本能を刺激する効果がある。戦闘時の立ち回りには充分注意する必要があるだろう。
「その後で…無事に彼の撃破が済んだら、砦にいる子どもたちを励ましてくれないだろうか?人類砦で暮らす彼らが、明るい未来を信じられるような日常を過ごせるように…さ」
 いつものようにふにゃりと柔らかい表情で笑うと、ガルムゼノンはグリモアを転送モードへ切り替える。
「いつもどおりにやってもらえれば解決できると思う。迷惑掛けるけどよろしく頼むよ」
 ガルムゼノンはふわりと尻尾を揺らして、君たちをダークセイヴァーへ転送するのだった───。


不知火有希哉
 おはこんばんにちわーうるふ!

 お久しぶりになっちゃいました、モフモフ担当MS(自称)の不知火有希哉です!
 今回のお話はモフモフ尽くしでシリアス風味です。
 モフみが欲しくてどこかで脱線しちゃったらごめんなさい……!

●今回の章構成について
 第一章 『人類砦』に襲撃してくるオブリビオン集団の撃退。
 こちらの章に関しては補足情報はございません。純戦になります。

 第二章 出現するボスのユーベルコードには一部卑猥な要素が含まれています。
 その為、意図的に被弾しようとするプレイングは採用したとしても判定が厳しくなる可能性が高いです。予めご了承ください。

 第三章 疲れ切った…怯えきった…お腹を空かせた……。
 そんな子供達の笑顔が見たい猟兵達による心がぽかぽか暖かくなる行動をプレイングとしてお送りくださいませ。

 みなさまの熱の入ったプレイングを楽しみにしております。
 それでは、今回もよろしくおねがいしまーす♪
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第1章 集団戦 『アルカードの猟犬たち』

POW   :    レグルスインパクト
単純で重い【渾身の力を込めた大剣】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    コープジェミニ
【二人がかりで息のあった連撃】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【癖と取り得る回避行動】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    ジフプロキオン
【純真無垢な子供のような表情で油断させる】事で【対象の油断を誘い、暗殺執行モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ウルリック・イーゴン
(成る程、此れが『本物』か…こんなものに焦がれて俺を造った連中は何を考えていたのか)

過去に想いを馳せても仕方ありませんね
今は目の前の脅威を排さなければなりません

俺の相手は大剣使いですか
…で、あれば【ブラッド・ガイスト】を起動
単純で重い渾身の一撃を放つ為には、踏み込みや体幹が重要です
振る腕だけでなく、足腰や視覚等の五官…その何れが欠けても十全な能力は発揮出来ません
殊に大剣を扱うならば致命的なほどに…

【捨て身の一撃】に依る【部位破壊】…
腕や脚の腱を狙い動きを止めます

本来であれば反撃のリスクを負いますが、先程も述べた様に、破壊が為された時点で相手は精彩を欠きます
決して分の悪い賭けとも言えないでしょう


中條・竜矢
【POW判定】
吸血鬼で人狼か、ダークセイヴァーではあり得る存在だろうが、実際に対峙するのは初めてだ。もっとも、その前にこいつらを倒さなければならないがな。

人類砦の正面で迎え撃つ。
ここは純粋にパワー勝負といこうか!【武器受け】で相手の大剣を受け止めてダメージを抑えたあとユーベルコードで攻撃する。
もちろん【2回攻撃】で追撃も怠らない。

ここにいる人を傷つけさせる訳にはいかないからな。一人を言わず何人でも来るといい。そちらに何か理由があったとしても、ここから先は通さない。

【アドリブ、絡みOK】



(成る程、此れが『本物』か…こんなものに焦がれて俺を造った連中は何を考えていたのか)
 口元をマスクで隠したフラスコチャイルドの青年、ウルリック・イーゴン(Volker・f27829)。
 禁忌の技術で生み出された『人造吸血鬼』は、聞こえない言葉で小さくつぶやいた。
「吸血鬼で人狼か……」
 グリモア猟兵の予知にあったワードが引っかかるのか、ドラゴニアンの青年である中條・竜矢(変化する竜騎士・f03331)は顎に手を当て考えていた。
「ダークセイヴァーではあり得る存在だろうが、実際に対峙するのは初めてだ……」
 ここダークセイヴァーで繁栄した種族が敵ということもあり、可能性がないわけではなかった。もっとも、対峙するのはオブリビオンに墜ちた者たちではあるが。
「過去に想いを馳せても仕方ありませんね……」
 殺戮刃物である刀をすらりと引き抜いて、すぅ…と深呼吸。
「……今は目の前の脅威を排さなければなりません」
 落ち着かせるために吐いた一言に、竜矢も同調する面持ちで。
「この先に行かせるわけにはいかないのでな、私も協力させてもらおう」
 目の前に迫ってくる人狼族の集団に対して、不思議と恐怖感はなかった。
 人類砦の正面で迎え撃つべく、二人は準備を整えるのだった。


「障害は排除するのみだ」
 大剣を携えた一人の人狼が、抜刀するなり飛び込んでくる。
 動きが大振りなのが幸いしたのか、あっさりと避けることが出来たのだが……。
 どがぁん!!と地面に刃先が当たると、被弾箇所に小さなクレーターが出来上がる。
「この攻撃をまともに食らったら大ダメージは必至…ですか」
 ───ここは純粋にパワー勝負だ!
 更に振るわれた一撃を、飛び込む形で防いだのは竜矢だ。
 手にしたドラゴンランスで弾き返し、大剣士へ2回攻撃を打ち込む。
「はァッ!!」
 腕の関節目掛けて刺突攻撃を二度。肩に一撃打ち込むものの大したダメージにはならない。
「ならば…!『ドラゴニック・エンド』!!」
 再度間合いへ飛び込んで、ユーベルコード『ドラゴニック・エンド』を発動させる竜矢。
 蒼いドラゴンが召喚され、大剣士目掛け襲い掛かって……着弾した。
 土煙が晴れても立っているその姿を見て、見た目通りタフなのが分かってしまう。
「一撃で倒せるほど軟でもないか……!」
 わかってはいた事だが思わず毒づく竜矢。
 それならば、と。ウルリックはユーベルコード『ブラッド・ガイスト』を発動させて装備の封印を解除させると殺戮刃物が禍々しいオーラを纏う。
 解除するまで寿命を削るリスキーな代物だが、この数のオブリビオンを排除するなら必要なモノだろう。
 単純で重い渾身の一撃を放つ為には、踏み込みや体幹が重要である。
 腕の筋肉だけではない。身体の体幹、己の五感……どれが欠けても充分な能力は発揮できない。
 大剣を用いる個体であれば、尚更致命的だろう…ならば。
「だらァ!!」
 人狼の戦闘員から勢いよく大剣が横薙ぎに振るわれた。その一撃をなんとか躱して、被弾覚悟で接近。
「ここならば…こちらの間合いです」
 ウルリックも負けじと応戦。すかさず剣を握る腕目掛け一閃を見舞う。
「ッ…!!」
 相手もとっさに地面を蹴ったのだろう。傷は深くなかったのか、仕留められる一撃にはなり得なかった。
「やるな。…だが、まだ闘える」
 狼はぎらりと目を光らせて再度接近してくる。大振りの一撃、見切るのは容易い。
「…遅いですよ」
 一度その技を見ているのだ。二度はない。
「ここで討ち取るッ!!」
 更に竜矢による2回攻撃の追撃でダメージを与えていく。
 ウルリックのよる再度抜かれた刃は的確に急所を切り裂いて。
「な…ッ!?」
 肩から袈裟斬りにして鮮やかな紅が吹き出す。
「クソ…がッ……!」
 ケモノが地に伏せるのを確認すると黒い霧を上げ消えていった。
「ここにいる人を傷つけさせる訳にはいかないからな。一人を言わず何人でも来るといい」
 被弾してもこちらには激痛耐性がある。多少の無茶は承知の上。だからこそ、彼らは立ち向かうのだ。
「そちらに何か理由があったとしても、ここから先は通さない……!!」
 猟犬らへ牽制する形で、まずは猟兵側が一本取ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ブリッツ・エレクトロダンス
え、…え?
待て、ちょっと色々と待て。
なんか妙にこの手の奴、デジャヴなんだがなんでだ?

…まあいい、最終的に全部ボコボコにすりゃいいんだ!

だがしかし、子供?
―――違う、少年兵って奴だ!
しかし相当素早いな、これじゃ狙いが定まらねえよ。
点での攻撃が有効じゃねえってんなら、面での攻撃だ!
電力チャージ、行くぜ!360本のミニ落雷を受けな!

ヒットして感電した声が聞こえたなら!そこに容赦なくピューマ8045Fでの《クイックドロウ》《2回攻撃》だ!


推葉・リア
ガルムさんのデジャブってなんだろう…まぁいいか、それよりも砦を守らないと!

あら?その二人の息のあった連撃…いいわね!信頼と互をよく知らないとできないことよ!なんて言いながら【おびき寄せ】【誘惑】【戦闘知識】などを使って彼らを惹きつけるわ【第六感】を駆使して回避したり炎の【オーラ防御】したりね、すごいわね貴方たちの攻撃…、けど…彼らも負けてないわ!『指定UC』で特にコンビネーションが高くて連携できる推しキャラを呼んで【だまし討ち】して一気に勝負を決めるわよ!

……それにしても「俺様系好色人狼吸血鬼」って属性盛り過ぎじゃない?そこまで属性持ったのって…どんな感じか気になるなぁ…

【アドリブ共闘歓迎】


秋月・充嘉
ガルムさんもあの吸血鬼を予知したんすね。なら俺はこっちを手伝いますか。

複数人が相手になるならこっちも手数を増やすっすよ。己の影は良き相棒ってね。シャドウウェポンで武器の形を切り替えながら応戦するっす。
にしても、こいつらベリルの部下って感じだけど男性の振れ幅多くないっすかね?子供からいい感じの大人までそろい踏みじゃあないっすか。
……一匹くらい『個人的に楽しみたい』し捕縛しようかな。ちょっとくらい……ね?体格のいいお兄さん相手にね?ベリルの対策ってことで一つ。あー、楽しんだ後はもちろんそいつも倒すっすよ、それが仕事だし。




 違和感を感じていたのは何もグリモア猟兵だけではなかった。
「え、…え?待て、ちょっと色々と待て。なんか妙にこの手の奴、デジャヴなんだがなんでだ?」
 控える黒幕の情報を聞いたとき、頭の中を掠めて行った一つの情報。
 うぁぁぁぁぁ…と小さく声を漏らして頭を抱えているキマイラの青年はブリッツ・エレクトロダンス(★3:クロヒョウDJ・f01017)である。
「ガルムさんもあの吸血鬼を予知したんすねー。俺もなんかデジャヴを感じてたっす」
 うんうんと頷きながら独りごちるのは獅子、狼、龍の混血キマイラ男性…秋月・充嘉(キマイラメカニカ・f01160)である。
 このキマイラ男性の2人には、『色々と情報が似ている男性オブリビオンに文字通り絡まれた』過去がある。
「ガルムさんのデジャブってなんだろう…?」
 顎に手を当てながら考え込む妖狐の女性は、推葉・リア(推しに囲まれた色鮮やかな日々・f09767)だ。
 そう、彼女はここのメンバーで唯一、2人が話してる事を知らないのだ。
「…まぁいいか、それよりも砦を守らないと!」
 リアは気合いを込め、ユーベルコードをいつでも発動できるようにしながら。
「…まあいい、最終的に全部ボコボコにすりゃいいんだ!」
 半ば勢い任せにも見えなくはない黒豹お兄さんである。
「それじゃ、俺はこっちを手伝うっす。よろしくっすよ~」
 各位が準備を済ませたところで。第二陣も戦闘態勢に移るのであった。


「豹の兄ちゃん、すっごく強そう!ねぇ、オレたちと遊んでよ!」
「遊ぼ、兄ちゃん!」
 戦場には不釣り合いな程に無邪気な表情を浮かべた人狼の少年らがブリッツへ迫ってくる。
「なんで子供がこんなところに……」
 近づかれた途端にヒュッと空を切る音の先。本能頼りに飛び退くと、彼らの手には獲物であろうナイフが握られていた。
「───違う!こいつら…少年兵かよ!?」
「「ばーれちゃった ばれちゃった」」
 くるくるとブリッツの周りを回る二人の狼少年。
「せっかく美味しく食べられてくれると思ったのになぁ」
 くすくすと楽しそうに笑う狼の少年は、浮かべた表情の奥に狩猟本能と殺意を滲ませて。
「楽しい楽しい殺し合いのお遊びだよ!どっちが先に死んじゃうかなぁ?」
 マズルのラインに深い傷が刻まれた少年は、殺意を隠そうともせず鋭い目つきで黒豹を射抜いた。
「……ッ!!」
 反射的にハンドガンの『ピューマ8045F』を引き抜いて少年らを牽制するも、ひらりひらりと躱してしまう。
「残念でしたぁ そんな豆鉄砲喰らわないよー」
 純粋に楽しんでいるのだろう。しかし相手はオブリビオンなのだ──。

 ──複数人が相手になるならこっちも手数を増やすまで。
「……己の影は良き相棒、ってね」
 充嘉はユーベルコード『己の影は良き相棒(シャドウパートナー・トゥ・ミー)』を発動させて、足元から実体化させた影と共に人狼族を蹴散らしていく。
 一つだと限度を感じたのか、更に4体程相棒である影を増やして対策する。
「にしても、こいつらベリルの部下って感じだけど男性の振れ幅多くないっすか…?」
 控える黒幕の吸血鬼、ベリル・アルカードの部下という話なのだが…如何せん年齢層というか色々揃いすぎていると言うか。
 子供を殴るのは気が退けるものの、相手はオブリビオンなのだから仕方ない。
 そう己に言い聞かせながらも、暗殺者集団を討伐する手は止めないでしっかりお仕事に励む。
「ショタショタしい子供から体格がしっかりしてていい感じの大人までとか!そろい踏みじゃあないっすか!!」
 シャドウウェポンで形を切り替えつつ、襲い掛かってくる連中を一掃しながらも……彼は雑念に捕らわれていた。

「女と言えど容赦はしない…!」
「ボスの命とあればこの手で殺すまで」
 リアに迫ってくるのは、鎖で繋がれたハンマーを手にした男性と長いククリナイフを手にしたペアだ。
「む、来たわね……!私の好きな皆…お願いね!」
 ユーベルコード『バトルキャラクターズ』で召喚したのは、手の甲に1が刻まれた体格に恵まれている甲冑装備の聖騎士と、同じ数字が刻まれたスピードアタッカーだろう正統派な格闘家風の少年。
 2人は幼馴染で、コンビネーションを生かした戦い方をする…という設定である。
『任せて!』
『任せろ、お嬢!!』
 勢いよく飛び出していく推しキャラの2人。鎖で繋がれたハンマーの一撃を聖騎士が受け止めて、格闘家はククリナイフを持った1体の肉薄。

「クソ、相当素早いな……これじゃ狙いが定まらねぇよ」
 再度制圧射撃を試みるものの、人狼族ということもあり素早い対象に射撃を当てるのは厳しいのか。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべつつ、なんとかならんもんかと思案する。
「……点での攻撃が有効じゃねえってんなら、面での攻撃するまでだ!」
 ブリッツの身体に青白い雷がバチリと走って……それは落ちた。
「電力チャージ、行くぜ!……行くぜ!『神雷(ブリッツ)』ッ!!」
 雷の『埒外』によって生成された360本もの小さな落雷が…周囲を一掃するかのように音を鳴らして落ちていく。
「わぁぁぁぁ!!」
「こんなのズルいよぉ!」
 音にびっくりしたのか、近くで発された二人の声をブリッツは聞き逃さなかった。
「これも仕事なんでね…じゃあな!!」
 クイックドロウの技能で放たれた2発の銃弾が、少年2人の眉間を撃ち抜いて……襲ってきた2人は黒い霧となり消えていく。

「くッ」
「やってくれる…」
 鉄と鉄がぶつかり重い音が響く。反対ではナイフと手足がが空を切る音。
「その二人の息のあった連撃…いいわね!」
 リアが一人でテンションが上がっていると、別の個体から攻撃が飛んでくる。
「…隙だらけだ」
「あら、本当かしら?」
 リアもただ戦闘を見ているだけではない。彼女も立派な猟兵だ。
 第六感で感じたとおりに一歩退き、炎で纏ったオーラを放って不意討ちを見事防ぎきる。
「!?」
「女だからって、甘く見ないでね!」
「がぁぁぁぁッ!!?」
 纏ったオーラを横薙ぎにする形で振り払うと、襲ってきた個体は丸焦げになって虚空へ消えていった。
 そして同時刻。
『これで…』
『『トドメだッ!!』』
 推しキャラの2人の動きが重なった瞬間、既に人狼ペアは黒い霧となっていた。
「流石ね♪お互いの信頼と互をよく知らないとできないことよ!」
 思わず推しキャラ2人に抱きついてしまうリアであった。


「ま、あとの連中は仲間に任せて……っと」
 もう一つ、充嘉の頭の中で邪念が浮かんだ。
 名目はボス対策だが、本能というか、好色の気というか。仕方ないというか。
「一人くらい…『個人的に楽しみたい』っすよねー…。つまみ食いくらい許されるっすよ、うん」
 …というわけで。猟兵たちとの交戦で傷を負ったであろう、大剣を背負った体格の良い人狼お兄さんを影で捕縛すると。
「───!?!?」
 混乱するのもわかる。ただこの狼さんには拒否権はない。ずりずりと音を立てながら大きな岩陰に充嘉に連れ去られていく狼さん。
「へへへへ、今からお兄さんに『喰われる良さ』を教えてあげるっすよー…♪」
 上機嫌な充嘉に『美味しく頂かれてしまった』大剣士の狼さんでしたとさ。
 …もちろんお楽しみのあとはしっかりやっつけました。
 いったい、充嘉くんがナニをしてたのか…それは読み手の皆さんに解釈をお任せ致します。

「……それにしても「俺様系好色人狼吸血鬼」って属性盛り過ぎじゃない?」
 ぽつりとつぶやくリアの一言。
 やっぱ気になるよね。でもそれは…第二章に行くまでのお楽しみってことで。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ディアナ・ロドクルーン
共闘・アドリブ可

人狼型の吸血鬼なんているのね
それに、そいつに付き従う人狼共もいるとは…
人類砦の子たちを下卑たる奴らから守らないと。

ここから先は行かせるわけにはいかない。貴方たちの様な薄汚い輩は立ち入り厳禁。
どうしても、というのなら相手になってあげる
さあ、かかって来なさい!己の命を懸けてね

Wolf Fang Resonanceで黒狼を召喚する
【第六感】で敵の攻撃を回避し
【マヒ攻撃】で敵の動きを阻害し連撃を阻止し、【部位破壊】で足を狙い確実に動けなくさせる


豹藤・空牙
吸血鬼にして人狼…とんでもねぇ混血でござるな。
猟兵にもいそうでござるが。
だが、本能のまま、人々を襲う連中は、害獣扱いされるのは人間立場から見れば、よくあることでござるよ。
拙者、今回の仕事ゆえ、忍者に徹するでござるよ。

連中に気付かれないよう、風向きに注意しつつ、【忍び足】【闇に紛れる】で、連中の死角になりそうな場所で隠れ、そして、忍者手裏剣で【暗殺】にかかる。
そして、手裏剣に気付かれたところで遅いでござる。
竜巻の術(クライシスゾーン)を放つでござる。

何もなければ、群れなす狼に理があるでござるが、木々が2つ以上ある限り、拙者の勝ちでござる。

アドリブ・連携歓迎




 一方その頃。
 交戦が始まっている入り口とは逆方向に見える影が2つ。
「人狼型の吸血鬼なんているのね…それに、そいつに付き従う人狼共もいるとは……」
 溜息を漏らしながら、状況に憂いを見せるのはディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)だ。
 彼女は人狼でありながら、研究施設の実験体だった過去がある。
 記憶はなくとも、未来ある者を護るために彼女はこの地に降りたのだ。
「吸血鬼にして人狼…とんでもねぇ混血でござるな?」
 仲間である人狼の女性が立っている横に並ぶ樹の上に、黒い影が一つ。
 名を豹藤・空牙(忍豹・f26848)、黒豹の忍びである。
 彼もまた猟兵である……見た目はまんま大きい黒豹だが。
「人類砦の子たちを下卑たる奴らから守らないと、ね」
 懐からルーンソード『Halos Lila』を抜き取って、彼女の準備は万全に。
「だが…本能のまま、人々を襲う連中が『害獣扱い』される事なんて、人間の立場から見ればよくあることでござる」
 ディアナの隣に降り立ち、うむうむと頷きながら。
 2人は進軍してくる人狼の群れを見据えるのだった。


「拙者…今回の仕事故、忍者に徹するでござる」
 忍びは本来人前に出ずに暗躍する職業だ。ならばセオリー通りに行動するのが筋というもの。
「ディアナ殿、拙者の攻撃がしやすいよう、樹々が近いところへ誘導をお願い出来ぬだろうか?」
「誘導…ね。砦を護る者がいなくなってしまいそうだけれど?」
 向こうも暗殺者集団だ。一筋縄では行かないだろうが、それをこなすのが猟兵というものである。
「ご心配にはござらん。拙者に策があるゆえ」
 ふふんと自信満々に応える空牙の表情をみて、ディアナは頷く。
「なら、その『策』とやらを信じてみましょう」
 連中は挟撃するつもりなのか、『人類砦』の別口からもぞろぞろと人狼族…否、『アルカードの猟犬』たちが進軍してくるのが見て取れた。
 だからこそ、砦の門を潜らせる訳にはいかない。
「ここから先は行かせるわけにはいかない。貴方たちの様な薄汚い輩は立ち入り厳禁」
 門から少し離れ、樹々が密集しているところまで出てきた。ここならば、空牙にも地の利があるだろう。
 ぐるるる…と向こうから唸り声が聞き取れた。どうやら強行突破するつもりのようだ。
「あくまで向かってくる、か。…さあ、かかって来なさい!己の命を懸けてね!!」
 大剣持ちの人狼が、威嚇の吼え声を上げながら突進してくる。
「グルァァァァッ!!」
「この間合なら!」
 接近してディアナの先制攻撃。ルーンソードを薙ぐものの大剣に弾かれてしまう。
「…ッ!!」
 ビュオッ!!と大きな風切り音の直後、轟音を立ててディアナの足元に大きなクレーターが出来上がる。
 ひらりと見切り回避が成功したものの、自身の第六感がびりりと肌を刺す違和感の通り…避けられなかったとしたら大ダメージは免れなかっただろう。
「なるほど、大振りの攻撃ね」
 一度見たなら対処は容易い。
「『生を蹂躙する者 闇より出でし獣よ 滅びの声をあげ 血の嵐と共に葬り去れ』……!!」
 ユーベルコード『Wolf Fang Resonance(ウルフファングレゾナンス)』の詠唱。己の血を代償に、影より招いた黒狼を召喚するものだ。
「ウォォォォォン!!」
 空気を振動させるかのような遠吠えが、猟犬らにも威嚇の意思として伝わったようで。一部には吼え声で腰を抜かした者もいるようだ。
「くそ…なんでッ」
 ぶるりと震えながら動けなくなる仲間の人狼を、別の個体が無理やり立たせる。
「たかが同族のメス一人だ!やっちまえ!!」
 しかしその直後。
「ガァウッ!!」
「ぎゃわんッ!?」
 感情的になりすぎた猟犬は悲鳴に似た声を上げ、黒狼の爪による一撃で沈むことになった。


「此処なら、拙者の力を思う存分発揮できるでござる。ディアナ殿には感謝せねばならぬな…!」
 樹々が密集しており薄暗いのも相まって、絶好の戦闘ポイントに連中を誘い出すことに成功。
「風向きよし…!ふんッ!!」
 咥えた忍者手裏剣を上手い具合に投擲、無警戒だった個体の眉間へ見事に直撃させる。
「なッ…!?どこにいる!?」
 1体が屠られたことで錯乱しだす狼たち。
「ここでござる」
 忍び寄った背後から忍者刀でまた一人暗殺する。
「こんのッ…!!」
 小さな少年がナイフで切りつけに掛かるが、闇に紛れることで回避。
「どこいったー!?」
 きょろきょろ探しているのだろうが…少年兵といえど未熟なのか。
 再度手裏剣を投擲するが、今度は弾かれてしまった。
「当たんないよー!」
 …しかし、もう遅い。
「忍法…竜巻の術!!でござる!!」
 発動したユーベルコードは『クライシスゾーン』だが、不思議と雰囲気はぴったり。
 投擲した手裏剣が、大規模の竜巻に変換されて。周囲の人狼の少年兵らを巻き込んでいった。
「わぁぁぁぁぁ……」
 狼少年らを風で巻き込んで吹き飛ばしたあと、目の前に投げた手裏剣は目の前に5枚ほど戻ってきた。
「ふぅ、これでかなりの戦力を削ったはずでござる」
 戻ってきた手裏剣を回収しつつ、一息つく空牙であった。


 勢いよく攻めてくる連中は、ルーンソードで撃破して数を減らしていく。ユーベルコードの代償は大きいだけ効果があがる。
「はぁッ…はぁッ……!」
 彼女の顔に疲労の色がにじみ始めた頃。
「…隙ありッ!!」
 樹から勢いよく飛び出した空牙の忍者刀が、ディアナに気を取られていた1体を討ち取る。
「流石ね、忍びさん。でも…もう少し早く来てほしかったものね?」
 疲れの色を見せながらも笑みを浮かべるディアナと。
「それは失敬。群れなす狼に理があるでござろうが…木々が2つ以上ある限り、拙者の勝ちでござる」
 キリリとした表情を浮かべた空牙。
 影狼と黒豹が並んでいる図は、なんとも言い難い威圧感があった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ウェルシェ・セイボリー
ルーク(f06946)と参加。

【心情】
あの犯罪組織の名前を又聞く事になるとは……旅先で依頼されて集団で組織を壊滅したり、ルークと出会ったりしたのですよね。
ある意味、ルークの過去との決別です。保護者としてしっかりサポートしましょう。

【戦法】
ユベコで砦に向かうのを阻みます。
私ですらどんな罠がどこで発動するか解らないので敵も読みにくいはずです。
後は、生前相手した方々ですから色々覚えていそうでやっかいです。
ルークと連携してディスパッチツールと聖痕での目くらましでどうにか。
敵が癖認識して油断し始めたら、奥の手のサブマシンガンでの【制圧射撃】と【乱れ撃ち】です。

※ルークが危ない時は【ダッシュ】で守ります。


ルーク・アルカード
ウェルシェ(f06945)と参加。

【心情】
ちょっと不安。
マフラーに顔を埋めて、ウェルシェの尻尾握っちゃう。

みんな、ひさしぶり?
死んじゃってオブリビオンになってたんだね。
まだあのヒトのお仕事してるの?
僕もお仕事で来たんだ。だから、ごめんね?

……まだちょっと怖いけど、頑張るよ。

※マフラーで口元を隠して「勇気」を出します。
※虐げられていたので仲が良い人達じゃありませんでした。

【戦闘】
武器に自分の血を「吸血」させて「武器改造」。
周囲の「地形の利用」をして攪乱しつつ「ダッシュ」で急接近。
危ない予感(第六感)がしたら回避行動。
無理なら「武器受け」で防御。

敵の体勢が崩れたり隙があればユーベルコードを発動。


シトリー・コーウェン
なんか、怖い所に来ちゃったんだぜー
独りは寂しいんだぜー……

あ、あんな所に人がいるんだぜ!
と思ったらオブリビオンだったんだぜ(しょんぼり
悪い奴にはこの羽根の嵐で纏めて退散してもらうんだぜ!
【万里鷲翼-グリュプス・ニンブス-】!

ボスに会う前に他の猟兵さんと合流しないとなんだぜー

※絡み・アドリブ歓迎




 ──あの犯罪組織の名前を、又聞きすることになるとは……。
 白銀の毛並みが美しい人狼の青年、ウェルシェ・セイボリー(白銀の処刑人・f06945)は、過去にあった出来事を振り返りながら思案を広げる。
 依頼された先で組織を壊滅させたり、隣にいる純白の毛皮に身を包む人狼の少年ルーク・アルカード(小さな狩人・f06946)と出会うきっかけになった出来事とか。思えばたくさんあった。けれど…。
「ルーク」
 名前を呼ばれた白狼の少年は、不安そうな表情を浮かべていた。
 宝物のマフラーに顔を埋めながら、ウェルシェの尻尾をきゅ、と握り込んでしまう。
「ちょっと不安……」
 ふるり、と小さく身を震わせたルーク。
 これから相手にすることになるのは過去に自分が関わってきた組織の者らと対峙することになるのだから。
 ある意味…ルーク自身の過去との決別の意味もあるだろう。
「それでも、向き合わなきゃいけないのでしょう?私がついていますから…ね?」
「ありがと…ウェルシェ」
 ウェルシェに頭を撫でられて、ふわりと尻尾を揺らしたルーク。
 だからこそ、ウェルシェは『保護者』としてしっかり彼をサポートしなければ気持ちを新たにするのであった。
「行きましょうか」
「…うん」
 ……まだちょっと怖いけど、お仕事だから頑張らないと。
 2人の人狼は顔を上げて、戦闘が始まっている門外へ駆け出した。


 先に仲間の猟兵たちが善戦していたお陰で、戦力らしい戦力はあらかた削げていたようだが。
 それでも向かってくる戦意のある者は猟兵らに飛び込んでいく。
(怖いけど…僕も頑張らなくちゃ)
 ルークはお気に入りのマフラーに顔を埋めながら自分を奮い立たせた。
「みんな、ひさしぶり?死んじゃってオブリビオンになってたんだね」
 骸の海に墜ちて染み出した過去の異物、オブリビオン。
 未来を奪う敵…だから倒さねばならない。
「まだあのヒトのお仕事してるの?僕もお仕事で来たんだ」
 ルークの口から出た『あのヒト』は、犯罪組織『アルカード』のボスのことだろう。
 自身の名字でもあるその名が刻まれた者も、オブリビオンになっている。
 ならば──この手で斃すまで。
 手にした妖刀『血晶刀・金盞華』に血を垂らして武器改造…刀身が宿る。
「だから…ごめんね?」
 一閃。また1人と骸の海へ還して。
「……ッ!!」
 別個体による不意討ちは己の第六感で回避、カウンターで攻め立てていく。
「…これ、避けられる?」
 バランスを崩した相手ごと巻き込む形でユーベルコード『告死・飛刃血晶(モータル・ファランクス)』を発動させて、周囲の猟犬を屠っていく。

「皆さん頑張ってくれていますが…」
 ふと、足元から声がする。
「?」
「お兄さんも一緒に遊んでくれる?」
 無邪気な表情を浮かべる1人の少年がウェルシェに近づいて。
「残念ですが、その手には乗りませんよ」
「わっ」
 装備した聖痕から光を放ち目くらまし。
 ルークから離れすぎない程度に距離を空けてから、ウェルシェの手の中に光が溢れた。
 その光を地面に当てると、青白い光お帯びた大きな壁になっていく。
 ユーベルコード『断罪の迷宮(コンビクトラビリンス)』を発動させた。
 すぅ…と青白い光がきえる。これは敵にしか見えない迷宮を作り出す技なのだ。
 迷宮の内側からわーわーわんわん聞こえるのはほぼ少年兵らしい者たちばかりが残っていたからだろうか。
「どんな罠がどこで発動するか解らないのですよね……」
 地面が爆破したり、落とし穴に落ちていったり。これですべて無力化できるなら苦労しなくて済むのだが。
 迷宮に閉じ込められて脱力する者、油断する者も出てきた辺りで。
「この辺でお暇していただきましょうか」
 奥の手として隠し持っていたサブマシンガンで制圧目的の乱れ撃ちで撃破していく。
 敵にしか迷路が見えてないからこそ、こういう撃破の仕方もあるのだ。


 一方その頃。
「なんか、怖い所に来ちゃったんだぜー?独りは寂しいんだぜー……」
 豹型の獣人の少年が、ぽつりと立っていた。
 翼を生やした豹型キマイラの少年シトリー・コーウェン(縁を繋ぐ翼・f02448)である。
 転移に巻き込まれた?いや、好奇心に負けたから?
 それはともかく、彼は行動を開始するのだった。

「あ、あんな所に人がいるんだぜー!」
 おーい!と元気よく声をかけようとしたところ、相手がオブリビオンで。
 人狼の知り合いはたくさんいるけど、殺意に塗れてなくても違和感で気づくだろう。
 ギラリ、と。鋭い視線がシトリーを射抜いて。
「!」
 その瞬間に相手が敵ということを認識する。それならば。
「邪魔するなら」
「消すまでだ」
 息の合った2人による攻撃がシトリーを襲う…が。
野生の勘が働いたのか、飛んできた攻撃を難なく回避してみせるシトリー。
「わわっ!いきなり攻撃するなんて危ないんだぜー!」
 少年らしくぷんすか怒りながら、シトリーはユーベルコードを発動させる。
「世界を壊そうとする悪い奴には、この羽根の嵐で纏めて退散してもらうんだぜー!」
 ユーベルコード『万里鷲翼-グリュプス・ニンブス-』。高速回転で無数の羽根を放って48m半径内の全員を羽の嵐で一掃してしまった。
「さて、と!」
 お掃除も済んだし…砦の方へ向かうとしよう。
「ボスに会う前に他の猟兵さんと合流しないとなんだぜー♪」
 上機嫌で砦へ移動していると、見覚えのある姿を視認する。
「あ!ウェルシェー!ルークー!!」
 先に来ていた人狼の2人は同じ旅団で過ごしている仲間だ。
 2人の元へ嬉々として駆け寄っていくシトリー。
「おや、シトリーもいらしたのですか」
「…こんにちは?」
「なんか予感?がするから来ちゃったんだぜ!途中狼さんの群れがいたから追い払っていたんだぜー」
 えっへんと胸を張るシトリー。
 シトリーの予感はあながち間違っていないのだろう。グリモア猟兵の予知によると、親玉の攻撃はかつて別世界で戦った自分の父親と似ているかもしれないと、少なからず重なった気がしたから。
「…そろそろ戦闘が終わる頃合いでしょう。私達も向かいますか」
「おー!」
「……うん」
 ルークは胸の中にモヤモヤした何かが燻っていくのを感じつつ。
 ウェルシェに先導される形で、猟兵たちは人類砦へ向かっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ベリル・アルカード』

POW   :    ラストクレスト
【魔眼で見つめた相手に淫紋を転写し、そこ】から【超強力な魅了と発情効果】を放ち、【経験したことがない快楽】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ダーティーランペイジ
自身の【体液】を代償に、【作成した蝙蝠や蛇などの使い魔】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【超強力な催淫効果のある毒液など】で戦う。
WIZ   :    幸災楽禍の狂宴
【他人の不幸に愉悦を感じる性格】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【襲いかかる不運な出来事】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ルーク・アルカードです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 第二章のプレイングは7/2以降に受付いたします。
 それまでのプレイングは送って頂かれても流してしまうのでお待ちくださいませ。


 禍々しい覇気のような気を纏いながら、人狼が森の木々の間からのそりと現れた。
「なんだこの有様はァ?」
 両手には手下である筈の猟犬が項垂れる形で引きづられていた。ひとつ違うのは、引きづられていた2人は既に生気がないということ。
 1人は全身傷だらけで首元には深い傷跡。もう1人は軽い傷だが所々白く汚されているようにも見えて。
 このことから、この人狼吸血鬼は加虐癖がある事は想像に固くないだろう。
「飯を寄越せと言ってどれだけ待たせれば……と、なんだ、猟兵共がいたのか」
 じゅるり、といやらしく舌なめずりをする人狼は、君たち猟兵へ狙いを定めると。
「少しは楽しませてくれるんだよなァ!?」
 吼えるように叫んで、人狼は飛び掛ってきた!!

●第二章について
 今回のボス戦では、POWとSPDのユーベルコードに卑猥な要素が含まれています。
 その為、今回はギミックとして以下の要素を付与したいと思ってます。
・意図的に被弾しようとする場合、判定が厳しくなります。
・ボスに対する部位破壊(一部強調している部位の破壊など)は基本的に通りません。あくまでスタンなど足止め程度とお考え下さい。
 しかし、ボスの使い魔に対しては部位破壊ができます。上手く使い魔を撃破出来ればプレイングボーナスを付与したいと考えております。
・🔵が8個以上で通常攻撃が可能になります。

 以上になります。
 皆様のプレイングお待ちしております♪
秋月・充嘉
あー、もったいない、おいしそうなのに……(引きずられていた部下二人を見て)

それにしてもベリル想像以上じゃないっすか!
顔!身体!!そんでもって!!!(局部をガン見!)あぁー、めっちゃいい……!

……先に謝るっす、皆ごめんな。
オレは、本能に、従う!!(完全敗北フラグです本当にry)
というわけで!『己の影は良き悪友』で使い魔を相手取って、オレ自身はベリルに向かう!
作戦?ただ突っ込む!ボス対策?あれはただ単にオレが喰いたかっただけ!
ぬおおおおぉ!オレは、ベリルに、喰われるぞぉー!(もはや隠す気のない欲望)
喰われる側なのに、気持ちいい……。

アドリブその他大歓迎


ブランカ・ニール
「ふむ、あの男 俺の主と似た匂いがするな…
距離が開いてるというのに、疼いて…(かぶりを振り
俺の力量では正面切って適う相手ではないだろうが…それならば」

WIZからのPOW判定
背後から不意打ち狙い。
でも不運な出来事(着地先の足場がえぐれ、そこに脚を取られて着地ミス。足が滑ってベリルの股間に顔面大分)がおきるかも。

慌てて離れようとするも魔眼で淫紋をつけられて、自分が元からつけてたものと影響しあって他より強い発情状態になって、隙だらけなところに力尽くで股間に顔を押しつけられベリルの体臭を無理矢理嗅がせられそう。
せめてベリルを夢中にさせることで隙を作り、後の猟兵の手助けを。
(初挑戦ーアドリブ歓迎です)




 遡る事数分前。
「あー、もったいない、こんなに美味そうなのに……」
 現れた黒幕『ベリル・アルカード』に引きずられていた部下二人を見て、思わずつぶやいてしまった。
 キマイラの男性、秋月・充嘉が漏らした一言だった。

 一方、別口から眺めていた人影が一つ。
「ふむ。あの男……俺の主と似た匂いがするな……」
 1人の蒼い鱗が特徴的な細めの体躯をした竜人が、崖の上から仲間が行う戦闘の様子を眺めていた。
 ブランカ・ニール(ドラゴンの愛玩奴隷(現在進行形)・f22035)である。
 彼は、自分を可愛がってくれている主に雰囲気が似ていると理由で依頼へやってきたのだった。

 人狼吸血鬼ベリル・アルカードが放っている色欲というか、非常に似たようなものを感じ取ったのか。
 ブランカはぶるりと身震いさせた。
「……っ、俺の力量では正面切って適う相手ではないだろうが…それならば」
 重い腰を上げて依頼に来たのだ。ここはかっこよく登場して仲間たちの救援に向かうとしよう。
 そのつもりだったのだが──。


 そして今。
 襲いかかってきたベリルの攻撃を、シャドウウェポンの武器受けで弾き飛ばす。
「ふむ…少しばかり骨があるようだ。退屈しないで済みそうだな?」
 ニヤリと悪い顔を浮かべる吸血鬼を前に、充嘉の頭は煩悩に塗れていた。
 色欲魔人だの人狼吸血鬼だの言われている、ベリル・アルカードの体躯を値踏みする様な視線を投げていた。
「顔!身体!!そんでもって!!!あぁー、めっちゃいい……!」
 本能を開放していないのにも関わらず視線を引く下半身を眺めていた。
 感想がダダ漏れである。思わず敵さんも困惑した表情で充嘉を見ていて。
「……はァ?」
 まぁそーなるよね。

「……先に謝るっす、皆ごめんな」
 ボソリ、と。仲間たちに届いたかわからないけれど申し訳なさはあるみたいで。
「それでもオレは!本能に!!従う!!!」
 なぜだか強い意志(?)で再度ベリルへ突っかかる。
「おーおー、威勢が良い兄ちゃんだな?可愛がり甲斐がありそうだ」
 こいこいというような挑発のジェスチャー。
「据え膳喰わぬはなんとやらって言うっすからね!!」
 興奮状態の充嘉に対して何言っても無駄な気がしてきた。
「さーてと!使い魔ちゃんたちはこいつと遊んでもらうっすよ!」
 ユーベルコード『己の影は良き悪友(シャドウパートナー・トゥ・バッドカンパニー)』を発動させると、自身と同じ触り心地の影が現れて、それに使い魔の対処を任せる。
 作戦なんてない。ボス対策と言いながらアレは自己満足でやっただけ。それなら残される道は一つしかないよね?
 己が壁になることで周りの皆が使い魔討伐の時間稼ぎくらいにはなるだろう。
 ベリルが使役する使い魔たちが自身の体液が代償で召喚されているのなら、こちらがその精力を奪ってしまえば向こうの戦力を削れるのではないか。
「さぁ!煮るなり焼くなりしてくれっす!!」
 目を輝かせてベリルへ突貫していく充嘉。

 そんな中…彼に悲劇(?)が訪れた──。
 せめて他の仲間達の時間稼ぎができればと。仲間との意識がすれ違ったというか、ちぐはぐだったというか。
 ブランカは背後から不意打ちするべく身軽さを生かして急速にベリルへ接近を試みる。
「…獲った!!」
 壁を蹴り上げ、ベリルの首元目掛けて垂直に飛んでいくブランカ。手にした殺戮刃物で一撃になればよかったのだが。 
 『そうは問屋が卸さない』という諺をご存知だろうか? 物事は思い通りにいかないことだってある。
 そう、これはベリルのユーベルコードで起こされた『不運の出来事』だった。
 勢いよく飛び出したのはいいもの…攻撃が命中したのは仲間の猟兵、充嘉だったのだ。
「ぐぇ……っ」
 充嘉は苦しそうにしてはいるけれど『良い肉体』をしている仲間に乗っかられている構図に、思わず別の道を開拓してしまうのではないかと一瞬思考が過ぎった。
「ほぅ、これがお前さんの『不運の出来事』か」
 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、ベリルは2人に近づいて。
 更に『不運』だったのが、ベリルが自身の使い魔である白蛇を…目の前で踏み潰してみせた。
 瞬間、魅了効果が付随した色香に充嘉とブランカは思考を奪われてしまう。
「───!?」
「っ……!」
 また、ブランカの下腹部に刻まれた『呪い』が、連鎖反応を起こす形で彼の行動を制限してしまっていて。
 身動きが取れなくなった上、ユーベルコードによって全身の感覚神経を冒されていく。
「ぅあ、っ…!?」
「ぅ、がッ……」
 内蔵を下から突き上げられるような感覚が2人を襲って、じわりじわりと蝕んでいく。
「兄さんら、こういうのがお好みなんだろ?同族の匂いがするもんな?」
 視界が白く霞んで意識が遠のくような。既にベリルの声は2人に届いていなかった。
「んじゃ、他のお客さんのおもてなしは任せたぞ」
 ベリルはそう吐き捨てながらマントを翻し使い魔の数を更に増やすと、2人を両脇に抱えて樹々の茂みへ消えていった───。

失敗 🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

シトリー・コーウェン
むむ、強そうなボスなんだぜ
でも、おいらの翼でやっつけてやるんだぜ!
(ダーツ状に変化させて投擲)
……効かないんだぜー
しかも反撃が痛いんだぜー
誰か助けてほしいんだぜー(えぐえぐ
(無意識のうちにユーベルコード発動)
……この匂い(媚薬
……あの姿(ほぼ全裸
とーちゃん!?
とーちゃんとまた会えたんだぜー

とーちゃん、あいつ、やっつけてほしいんだぜ!

※絡み・アドリブ歓迎


中條・竜矢
【POW判定】
親玉か、手下にまで手を出す辺り碌な相手じゃないな。
お前を楽しませたりはしない、手間をかけずに倒させて貰おう。

恐らく周囲に連れているのが使い魔だろう。しかしそればかり狙ってはな。
「2回攻撃」で使い魔も本体も続けざまに攻撃を行う。攻撃に合わせて生命力吸収で回復も行う。

相手のユーベルコードは魔眼らしいから視線に気をつけて……ッ!?
(いつの間にか攻撃を受けており、その効果で体が強ばる)
くっ……しまっ……あっ、うう
(必死に耐えようとするが相手に捕まってしまう)
触るな、やめ……ぐうう、はぁ、ああ
(抵抗を少しずつ削られ好き放題されてしまう)
【アドリブ、絡みOK】


ブリッツ・エレクトロダンス
出やがった…いつぞやの奴を思い起こさせる野郎が…
見てるだけであの悪夢思い出しちまう…ああああっ!お前に恨みはねえが!似た奴を思い出したんで八つ当たりだ!ぶっ殺す!
(ブリッツはブチギレた!)

バタバタバタバタウザってえんだよこのクソッタレ蝙蝠ども!
乱流でまともに飛べなくしてやる!
(精密操作を投げ捨てた疾風による起点・ベクトル・出力の指定が滅茶苦茶な突風攻撃で風の流れをかき乱して蝙蝠の無力化を仕掛ける!)

何噛もうとしてんだこのクソヘビ!飼い主に似て嫌らしい奴だな!
(蛇への発砲を仕掛ける!)

(なお、ブチギレしてるので淫毒が効いてない…のではなく我を忘れてるだけなので我に返るとそこには淫毒漬けの自分が)




 遡ること、先の2人が戦闘に入る少し前。

「親玉か…手下にまで手を出す辺り碌な相手じゃないな」
 紫色のオーラが見える。コレはおそらく覇気の一種か何かだろう。
 吐き捨てるようにつぶやいたのは竜人の青年、中條・竜矢だ。
「似た奴を思い出したんで八つ当たりだ!畜生め!!」
 派手にキレ散らかしている黒豹はブリッツ・エレクトロダンス。
「むむ、強そうなボスなんだぜー……でも、おいらの翼でやっつけてやるんだぜ!」
 キリリと表情を変えている小さな少年はシトリー・コーウェンだ。
 彼もまた、幼いながら猟兵である。
 引きずられていた部下の2人は既に生命力を抜かれていた。二重の意味で。
 生と性、2つを喰らう事を愉悦とする傍若無人の吸血鬼。
 そんな輩を野放しにするわけには行かないと、竜矢は槍を握りしめる力を強めた。


 そして今。
 仲間が連れ去られ、翻ったマントから使い魔がぶわりと増えた。
 足元には白蛇、空中には蝙蝠がうじゃうじゃと湧いている。正直気持ち悪いの一言しか出なかった。
「使い魔を減らすしかないか…!」
 仲間の猟兵2人を連れ去った人狼を追おうにも、この量の使い魔を相手取りながら救出するのは厳しいだろう。
 竜矢は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら使い魔の討伐を進める。
「まとめて撃ち落とす……!!」
 飛んでいる蝙蝠型をミニ落雷で撃破していくブリッツに。
「おいらも加勢するんだぜー!」
 シトリーは自身の羽をダーツのように変化させてから投擲、退治に成功する。
 使い魔の撃破ができるならとついでにベリルへ攻撃を加えたのだが、ダメージになっている実感がなかった。
「あ、これはいっかい引き返すんだぜー…」
 じわりと、シトリーの目元に浮かんでくるのは悔し涙だった。
 ベリル本人から攻撃されないように距離を一気に開けてから、仲間の猟兵の元へとんぼ返りしてきたのだ。
「うぅぅ…誰か助けてほしいんだぜー……」
 えぐえぐと泣きじゃくるシトリーの足元が突然光に包まれて。
 瞬間、微かにだが周囲に拡がる匂いに覚えがあった。
 そして、極めつけは現れた姿。際どい下着姿の獅子型キマイラの男性。
 …もっとも、それはシトリーの記憶に鮮明に残っていた父親像であって本人ではないけれど。
「とーちゃん!?とーちゃんとまた会えたんだぜー!!」
 シトリーによって召喚された姿は、彼の父親『テュポーン・コーウェン』の姿だった。
 嬉しさのあまり、むぎゅりと抱きつくシトリー。
「げ!?テュポーン!?」
 かつて討伐したオブリビオン。
 ブリッツの脳裏に焼け付いた悪夢が鮮明に蘇ってくる。
「てめぇ!!」
 それが再度目の間に現れたものだから、ブリッツが反射的にハンドガンの『ピューマ8045F』を引き抜きそうになるの竜矢が止めた。
「ブリッツ、気持ちはわかるが…彼はシトリーのユーベルコードで具現化してるだけだ」
 過去にオブリビオンに墜ちたテュポーンとひと悶着あっただけに、ブリッツの心境は複雑である。
 能力を考えれば、召喚された彼が強いことくらい理解できた。
「ぐぅ……ッ」
 ぶるぶる震える手を握り込んで自制するブリッツ。
「とーちゃん、なんか雰囲気が似てるあいつをやっつけてほしいんだぜ!」
『やっつけるか…難しいと思うぞ?』
 対峙したときとは異なる、優しい父親然とした声で獅子は言う。
『でも、息子の願いってんなら…聞くしかねェよな』
 ニッと笑みを浮かべて、父の幻影は似た匂いを纏う狼の元へ向かっていった。
「…気が乗らねぇが、俺たちも行くか」
 ブリッツはハンドガンの弾倉に弾丸が補充されているのを確認してから、再び竜矢と共に使い魔の一掃に入る──。


 倒しても倒しても減らない。
 疲労感が先にくるか、それとも全滅させるのが先か。
「だぁぁぁぁっ!!バタバタバタバタウザってえんだよこのクソッタレ蝙蝠ども!」
 使い魔たちが耳障りな音を立てながら飛び回っている様子に苛立ちを隠せていないのはブリッツだ。
 ハンドガンで精密射撃するのも面倒になったのか、精密操作を投げ捨てたユーベルコード『疾風』による起点・ベクトル・出力の指定が滅茶苦茶な突風攻撃を行うことで風の流れをかき乱す。
 蝙蝠どもを無力化するためだ。
「何噛もうとしてんだこのクソヘビ!飼い主に似て嫌らしい奴だな!」
 ぐじゅり、と嫌な感覚が足裏に拡がる。
「てめぇもだオラァ!!」
 パァンパァン!!と乾いた銃声を響かせながら使い魔を減らしていく。
 同時刻。
 使い魔を討伐しながら、一気に迫ってきた気配に飛び退く竜矢。
「ッ!!」
「ほぅ?オレの気配を読むとは」
 ニヤリと口角を上げてほくそ笑むベリルがそこにいた。
「お前さんはどう愉しませてくれるんだァ!?」
「これ以上お前を楽しませたりはしない。手間をかけずに倒させて貰う」
 竜槍を構え攻撃に出る竜矢。使い魔共から体力を吸収出来たこともあって幸い身体が軽いが。
「はッ!!」
 的確に手数の多さを活かして攻撃していくものの、ダメージになっているようには思えない。
「硬い…!?」
 自身の力が使い魔へ分散しているなら攻撃が通ると思ったのだが。
 戦場に、鼻を突くなんとも言い難い匂いで満ちていた。それに気づくのは、些か遅かったようで──。
「ぬるい、な」
 ギラリ、と。背筋が凍るとはこのことを言うのだろうか。
「くっ……しまっ……あっ、うぅ」
 目を合わせてしまったのが悪かったのか。視線を拾われ、体が強張った。
「触るな、やめ……ぐうう、はぁ、ぅあぁ……」
 ベリルが身動き取れない竜矢の肉体へ指を這わせると、じわりじわりと這い上がってくる熱として全身を嬲っていく。
「こういう刺激も、たまにはイイだろ?」
 ぐじゅ、と音を立てて溢れ湿っていくような違和感と、はやく熱を開放してしまいたい衝動が竜矢を襲う。
「う、っぐ…ぅあ」
 竜矢から漏れる声に機嫌を良くした人狼の尾が揺れる。果ててしまうのは時間の問題だった。
 その時。
『おらァ!!』
 聞き覚えのある声と一緒に、横から伸びてくる獅子の拳が人狼を殴り飛ばした。
「ぐッ…!?やるじゃねェか」
 シトリーたちによる不意打ちで拘束を解かれた竜矢を、ブリッツが救助。
「すまん、手間取っちまった」
「ブリッツ…ありがとう……」
 敵の技によるものの魅了されていたのもあって、色を含む声にゴクリと喉を鳴らしてしまうブリッツだった……が。
「今はそんな事してる場合じゃねぇ!距離開けるぜ!」
 人狼と亡き獅子が殴り合いしている間に戦場を離脱。
 ブリッツの起点により使い魔の数を減らしながら戦闘を続けたことで、ベリルも疲労の色を滲ませていたのだった。
「それに、悔しいがこいつを殺るのは俺たちじゃないからな」
 決着をつけなければならないのは、あくまで仲間たちであって自分ではないから。

 なお、ベリルの加虐癖によりボロボロ&ドロドロにされた獅子狼と竜の猟兵2人は、使い魔の攻撃をかすってしまったが故に父親が消滅したことでギャン泣き状態になっていたシトリー少年に発見されて無事に救助されましたとさ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

推葉・リア
(【情報収集】と【目立たない】を使って死角からこっそり除く)なるほど、ああいう感じなのね…けどあれね、これ私は彼に需要なさそうね!良かった!……え?フラグ?いやいやないない…
そして意地でも推しキャラの皆は呼ばないわよ!…何されるかわかったもんじゃないわ…!(【覚悟】を持った硬い決意)

このまま【闇に紛れる】て【地形の利用】して『指定UC』を使うわ…狙うは足と頭!とにかく相手が動けなくなるように攻撃するわよ!

蝙蝠や蛇が来たらもう【第六感】や【ダッシュ】等で全力で避けるわ!近づくものなら炎の【オーラ防御】で燃やしちゃうわ!…というか私じゃ需要皆無よ!誰得よ!!

【アドリブ共闘歓迎】


ウルリック・イーゴン
(駄犬、か…)

…とは言え絶対的実力に裏打ちされた傲岸さは侮れませんね
あなた程の実力者であれば、視覚に依らずとも俺を見つける事等造作もない事でしょう
しかし、それ故に付け入る隙もまたあると言うわけです

WP発煙弾で周囲に煙幕を展開し敵の視覚を【部位破壊】
自分の視界は【環境耐性】と白リンを透過する赤外線センサーで確保しつつ行動します
「視認」出来なければユーベルコードも形無しですよ

攻撃射程に入る直前に【アルジャーノンエフェクト】を起動
最後の一瞬に速力が変わる…
此れもまた簡単に俺を捉えられるが故の意識の隙です
所詮我が身は露払いに過ぎませんが…
故にこそ、この【捨て身の一撃】も冴えます

…さて、後は任せましたよ


豹藤・空牙
ぬ…如何わしい輩でござるな。
男色の気ありってところも。
だが、拙者は忍者、こういう事態にも対処させてもらうでござるよ。

それにしても、いかに。
まず、周囲の使い魔共から掃討した方がいいでござるな。
まず、うざったい蝙蝠には、手裏剣を的確に投げて【投擲】【暗殺】【一斉発射】【呪詛】【クイックドロー】で一気に片付ける。
そして、次の大蛇が来たら、今度はここからUC使用して、強化と共に忍者刀で蛇の頭を跳ねる。「一気に行くでござるよ!!」

そして、親玉にはUC使用状態で忍者刀で突き刺したあと、炎の【属性攻撃】で意識をそらして、最後に後ろから心臓目掛けて突き刺す。
「これで、終わりでござる」
アドリブ連携歓迎




(自身の欲求に忠実で、周りのことは考えない……まるで駄犬だな…)
 罵倒を小さくボソリと吐き出した人造吸血鬼の青年は、ウルリック・イーゴン。
 使い魔任せに自身は仲間の猟兵を誘拐した挙げ句、慰み者にするなんて許しておけるハズがない。
 ぎゅ、と得物を握りしめる力も籠もるというものだ。

 仲間の猟兵たちが戦闘している中で、こそこそと目立たないように樹々に隠れながら親玉の様子を伺い、情報収集に徹する妖狐の女性がいた。
 推しキャラを愛でる優しい女性(?)の推葉・リアである。
「なるほど、ああいう感じなのね……?」
 なるほど、一部の同性受けするだろう引き締まった体格に、Sっ気を全面に出すことで釣られる連中を食ってしまおう!みたいな気概?を感じ取る。
「けどあれね、これ私は彼に需要なさそうね!良かった!」
 うんうんとごまかすように自分に言い聞かせるリア。

「ぬ…如何わしい輩でござるな?」
 むむむと唸るように表情を変えて、小さくつぶやく黒豹は豹藤・空牙だ。
「だが、拙者は忍者、こういう事態にも対処させてもらうでござる」
 見てくれは四足のケモノそのものであるが、猟兵としての能力は折り紙付きの彼。

 今回もしっかり仕事をこなすべく、彼らは戦場へ飛び込んでいった!


「周囲の使い魔共から掃討した方がいいでござるな」
 仲間が数を減らしてくれているといえど、うざったいことには変わりない。
「仕留めるでござる!」
 空牙は手裏剣を的確に投げて投擲、空中にいる蝙蝠型の使い魔を一気に片付ける。
 耳障りな断末魔を上げながら、虚空へ消えていく使い魔たち。
「一気に行くでござるよ!!」
 ユーベルコード『降魔化身法』を発動させて、妖怪、悪鬼、幽鬼を身に宿して能力を底上げする。
「にゃぁぁぁぁッ!!!」
 気合いの籠もった雄叫びを上げながら、咥えた忍者刀で蛇の頭を刎ねあげた。

 見た感じ同性にしか興味示してない感じ?いや、ただ単に女性に対して明確に攻撃を振ってないだけかも……。
 え?フラグ?いやいやないない…と浮かんだ嫌な予感を振り払って。
「いつも勇敢に戦ってくれる推しキャラの皆は意地でも呼ばないわ!…何されるかわかったもんじゃないもの…!」
 推しキャラたちと共闘しているリアは普段嬉しそうに表情を崩していることが多いのだが、今回ばかりはキリリと表情を引き締めた。
「少しだけでも、皆の役に立ちたいから……!」
 額に汗を浮かべながら、リアはゆっくりとベリルへ近づいていく。闇に紛れて、抜き足差し足忍び足。忍びではないけれど、技能を獲得しておいて本当に良かったと感じる。
 地の利はこちらにある。ならば……。
「…気がつかれないように、よーく狙っ……てぇ!!」
 狙いは脚部と頭。ユーベルコード『イプフォックスファイア(ソゲキスルキツネノヒ)』を発動させ、高速に飛んでいくのは狐火だ。
 バレなければ狙った箇所にほぼ必ず命中させられるユーベルコードである。着弾して弾けた狐火は、不意打ちによって確実にダメージを与えた。
「あっち……!?どこからだ!?」
 多少毛皮が焦げたのだろうか、少しばかり容姿を気にする仕草を見せるベリル。幸い、こちらに気づいてはいないようだ。

 ベリルの絶対的実力に裏打ちされた傲岸さは侮れない。
 彼程の実力者であれば、視覚に頼らずともこちらをを見つける事なんで造作もないのだろう。
 だからこそ、付け入る隙もまたあるのだと。
「目くらまし程度にはなりましょう」
 ウルリックはアイテム『WP発煙弾』を取り出すと、ピンを引き抜いてベリル目掛けて投擲する。
 それは弾けると同時に白い煙を上げて、ベリルの視界を奪っていく。
「小賢しい真似しやがって……!!」
 ピリリと逆立つ毛皮が、彼の感情が逆立っているのを知らせるようで。
「こうした戦法の為に、こちらは策を練ってありますのでね」
 しっかりと敵影を確認出来なければ、使える能力すら意味がなくなってしまう。
「クソ、どこ行きやがった……!!」
 己のダメージが溜まって来ているのか、疲労の色を見せるベリル。
 好機と言わんばかりに、ウルリックは攻撃範囲に入る直前、ユーベルコード『アルジャーノンエフェクト』を発動させる!
 己の脳の演算速度を一時的に増強し、全ての能力を引き上げる。その上での捨て身の一撃だ。
「…ハッ!」
「……がッ!?」
 ずどむ、と重い一撃がベリルの脇腹を捉えた。ぐじゅり、と肉を抉るような感覚。
 最後の一瞬に速力を変える…。此れもまた簡単にこちらを捉えられるが故の意識の隙ということだ。
 更に迫るは黒い影。使い魔たちを屠りながら、ベリルへ急接近する空牙。
「ッ!?」
 疲労が溜まっているベリルは、空牙の気配に気づけなかったようで。その一撃をもろに食らった。
「クソ……!?」
「これで倒れるござる……!」
 大きな一撃を見舞うものの、致命傷には至らなかったが。
 直後、空牙の身体にずきりと大きな痛みが走る。
「ぐぅ……!」
 身を蝕む代償は毒だろうか。ベリルの攻撃を喰らわなかったにしろ、この代償は些か不利である。
「……っ」
 さらに、一撃を見舞った直後にウルリックの意識が落ちた。
「ウルリック殿!?こ、ここは後退するでござるよ!」
 意識が途絶えたウルリックを背中に乗せ、退却していく空牙。
「畜生め……!」
 毒づきながら、深手を負ったベリルは猟兵らを追撃することはしなかった。

 同時刻。
 本体とは別に使い魔にも気を配らなければならないわけで。
「使い魔の数が減ってるって言っても…!」
 闇に隠れていた分にはバレなかったが、リアの気配は攻撃した時点で使い魔に感じ取られてしまった。
「あーもう!こっち来ないで!!」
 自身の第六感で敵の位置を把握したあとは、ベリルから攻撃を受けない距離までダッシュで後退する。
「こっちに来ないでったら!」
 炎のオーラ防御で毒液を防いで、その焔を薙ぐ形で襲ってきた使い魔を仕留める。
「…というか私じゃ需要皆無!誰得よ!?」
 半ばキレ気味なリアだったが、今回の敵が男色というレアケースだっただけで、本来は女性がターゲットになることが多いことは忘れちゃいけない気がする。


「大丈夫でござるか?しっかりするでござるよ」
 ユーベルコードの代償で昏睡状態になったウルリックは、仲間の猟兵である一匹の黒豹に救助されていた。
「すみません…手間を取らせましたね。ありがとうございます」
 一か八かで発動させた力を使い果たし、敵の眼前で昏睡状態になった彼を助けてくれた黒豹、空牙へ感謝を述べるのだった。
「いやはや。仲間を助けるのは当然のことでござる」
 むふーと鼻息をならして自慢げの空牙に思わず微笑みを投げて。
「所詮我が身は露払いに過ぎませんが……さて、後は任せましたよ」
 この宿命の糸を断ち切れるまで、そう時間は掛からないだろう。
 あとは、彼ら次第なのだから───。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ウェルシェ・セイボリー
ルーク(f06946)と参加。

【心情】
さぁ、あの強大な吸血鬼との決戦、引き続きルークの過去の決別を保護者として見守って……ちょっと待ってください。
冷静に考えたらとても大事な節目ですよね!宿敵と戦う表情とかとてつもなくレアなのでは!?
保護者としてはスマホに収めないといけないけど…今は戦闘中いったい私はどうしたら……。

うっ……体の奥から力が湧いてくるこれは新しいユーベルコード?

これさえあれば!!

【戦闘】
親バカっぷりを発揮しながらひたすらルークの節目の瞬間を記録しようと撮影という非戦闘行為を【ダッシュ】で行い、今覚醒したユーベルコードを操りルークを守護します。

【アドリブ】
親バカ方向で遠慮なくどうぞ。


ルーク・アルカード
ウェルシェ(f06945)と参加。
アドリブ歓迎。

【心情】
怖い声と匂い。
ウェルシェのマントに包まって尻尾に顔埋めちゃう。

……ウェルシェどうしたの?
カメラでいつもみたいにいっぱい撮るの?
せんとーちゅうだよ?
……でも、いつものウェルシェだから、ちょっと安心できたかも。

【戦闘】
視られるのも、いっぱいの蛇や蝙蝠も厄介。
それに教えて貰った暗殺でやっても……だめだと思う。
だから新しい技でいくね?

ウェルシェなら危ない事から守ってくれるよね。
だから守るとか考えないで『ダッシュ』で一気に距離を詰めて刀で攻撃。
回避されても攻撃し続けて油断を誘ったら、おもちゃの銃の『誘導弾』。
かすり傷でも付けられたら僕の勝ちだもん。




「はぁッ…はぁ……ッ」
 肩で息をするほどに、猟兵らからの攻撃で体力を削られていたベリル。
 この因縁の糸を断ち切れるまで、そう時間は掛からないだろう───。

「うー……」
 怖い声と噎せ返るほど拡がる匂い。
 人狼の青年ウェルシェ・セイボリーのマントに包まって、彼の尻尾に顔を埋めてしまった白狼の少年、ルーク・アルカード。
 あの強大な人狼吸血鬼との決戦は、共にいる白狼の少年ルークの過去の決別の時。
「うーん……」
 そんな中、ウェルシェは悩んでいた。
 ルークの過去との決別を、保護者として見守って…。
(冷静に考えたらとても大事な節目じゃないか?宿敵と戦う表情とかとてつもなくレアなのでは!?)
 保護者としては是非ともスマホに収めないといけない使命感に駆られる。
 保護者を通り過ぎて若干過保護な気もしなくはないけれど、それだけルーク少年が大切なのである。良きかな家族愛。(?

「…!?」
 ぴしゃーん!!と、ふと頭の中に雷が落ちてくる錯覚と同時に、ふつふつと想いが形になっていく感覚。
「……体の奥から力が湧いてくるこれは…新しいユーベルコード?」
 閃いた。ルークを守護しながら目的を果たせるユーベルコードが。
「……これさえあればッ!?」
「ウェルシェ…?」
 いきなり叫んでびっくりしたのか、不安そうな表情でウェルシェを見つめるルーク。一方ウェルシェはとても輝いた笑顔を浮かべていた。
 彼らが立っている場所が花畑とかファンシーな雰囲気でならどれほど様になっていただろう……というのは置いといて。
「ふふふ、大丈夫ですよルーク。私が何があっても絶対に護りますからね」
 あ、この狼お兄さん…眼が本気だ。


「さぁルーク!思う存分暴れちゃいなさい!貴方は私が護ります!」
 スマホを持ちながらびしぃ!!と指を指すウェルシェに、思わずルークも苦笑い。
「うぇ…ウェルシェ?どうしたの…?」
 ぶんぶん振られる尻尾に、ウェルシェの機嫌も有頂天である。
 でも、いつものウェルシェだから…と、ルーク少年はちょっと安心出来た様子。
「全部終わったら、甘ーいケーキを買いに行きますか」
「…うん。僕、お仕事頑張るね」
 ルークの表情が明るくなったが、直後に処刑モードの表情に変わる。
「行きましょうか、ルーク」
「…頑張らなくちゃ」
 小さくつぶやいて、妖刀を引き抜く。いつものように血を垂らして武器改造。ぬらりと紅い刀身を振り回して使い魔共を蹴散らしていく。
「……?この蛇たち、なんか話に聞いてたより弱いような…?」
 大本が疲労しているのもあるのか、先程の仲間たちが苦戦していたような勢いで襲ってこないことを良いことに、ルークは手数を生かして撃破数を重ねていく。
 教えてもらった技…アルカード流の暗殺術ではバレてしまうだろう。なぜならルークの動きは先の猟犬らと全く戦法が変わらないのだから。
 そんな中。
「そこです!その表情!!」
「良いですよ!とっても素敵に映ってます!!」
 すごい勢いでスマホのシャッターを切るウェルシェ。そのスピードはいつもの彼とは違っていた。なんというか、いつもよりキレがいいというか。
「はぁぁぁぁ……やはりルークは可愛い……!!」
 心の声をだだ漏れにさせながら、スマホのカメラでルークの姿を次々に写しあげていく。
 その間、ウェルシェの装備した聖痕が輝きを放つ。その輝きはルークを護る盾となって、ルークを使い魔たちからの攻撃を防ぐ。
「……すごいね、ウェルシェ」
 素直な感想なのだろう、ルークの尻尾も微かに揺れた気がした。
「さっきも言いましたが、思う存分暴れていいのですよ?」
「うん。じゃあ、お掃除しちゃうね」
 使い魔の掃除も終わり、見据える先。
 年相応の表情から一転、その瞳に映るのは───。


「ウェルシェは思う存分暴れていいって言ってた。…なら」
 ウェルシェが僕を見守っていてくれる。危ない攻撃はウェルシェが護ってくれている。だから──怖いけど…戦える。
「ルークゥゥゥゥ!!!」
 ベリルが吼えた。
 その声は足がすくんでしまう位に怖い。怖いけど、これ以上大事な人や仲間たちが傷つくのをみたくないから。
「負けない…皆がいてくれるもん。ウェルシェが一緒にいてくれるもん」
 それは胸の中にある確かな想い。小さくても秘める闘志は、ルークの中で大きな力になる。
 ダッシュでベリルとの距離を詰め、刀の攻撃で牽制を加えながら。ベリルも負けじと爪を使った攻撃で応戦してくる。
「ぐるぁぁぁぁッ!!」
 かなりダメージを負っているベリルの攻撃は流石黒幕というだけ厚く、なかなか隙が見えない。
「甘いなァ!?」
 ルークの足元がぼこり、とくぼんで崩壊する。それは『不運の出来事』だった。だったのだが。
 その『不運の出来事』はウェルシェによる光の盾で無効化されてしまう。
「ッ!?」
 用意していた『不運の出来事』が逆手に取られ、一瞬思考が止まるベリルへ最後の一撃を叩き込む。
「これで終わり……!!」 
 新しく考案したユーベルコード『告死・暗中緋厄(モータル・クレスト)』を発動させて、おもちゃの銃で射撃する。
「んなッ……!?」
 腕に掠った玩具の弾丸が弾けると、ベリルの背後から血晶の暗器がドカドカと音を立てて突き立てられた。
「ぐァ…ぅ……ッ」
 力なく、ずしゃりと音を立てて轟沈するベリル。
「る…ぅく、大き、く…なった、なァ……」
 それだけつぶやいて、ベリルの身体が黒い霧となり虚空へ溶けていった。
「……さよなら、おじさん」
 大きな体躯を成していた塵が完全に空に溶け込むまで、ルークは静かに見上げていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『弱った子供達にできること』

POW   :    面白いことで楽しくさせる

SPD   :    食べ物で飢えを取り除く

WIZ   :    優しさで安心させる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 こうして、『人類砦』を死守することが出来た猟兵たち。
 その中にいたのは、君たちの介入がなければ『餌食』にされていた少年少女らである。
 大人はおらず、全員若年層と呼べる者らの集まりだった。
 ヴァンパイアたちの襲撃を阻止した君たちは、砦の少年たちに何ができるか考えるのだった。


 この第三章では、子供達の笑顔が見たい猟兵達による『心がぽかぽか暖かくなる行動』をプレイングとしてお送りください。
 よろしくおねがいします♪
琥珀川・れに
ああ、ここは…
どこかで見たような場所だ。
いや、ダークセイヴァーでは珍しくない。でも、他の世界を見た後だとここの空気は余計に重く感じるし、間違ってると思うよ。

下を向いてばかりではきっと前に進めない。
まずは上を向いてもらおうか

このUCは相手に求愛したいと思わないと出ないんだけど…僕が思えばいいだけだから。自分自身を「言いくるめ」よう

花びらと小鳥を舞わせて思わず上を見させる。
きっと綺麗だろう

次に
小鳥は子供達の肩に止まって軽くキッスをしてくれるはずさ
優しさに触れて、癒されてくれるといいな

※アドリブ大好き&楽しみ。追加省略アレンジもご自由に。




 ふらり、と。
 顔立ちが整った少年が、猟兵らの活躍で脅威に脅かされることがなくなった『人類砦』に立ち寄った。
「嗚呼、ここは…どこかで見たような場所だ」
 この砦に見覚えがあったわけではない。ただの既視感なのだろう。
 琥珀川・れに(男装の麗少女 レニー・f00693)はいた。彼…否、彼女は幼少期は男として育てられたダンピール貴族であった。


「ダークセイヴァーでは珍しくない。でも、他の世界を見た後だとここの空気は余計に重く感じるし、間違ってると思う」
 猟兵として活動していると、自分が生まれたこの世界はいつも暗いな…と感じてしまう。
 陽が入らず普段から昏くて人々の不安は拭えなず、ただひたすらに滅びを待つだけの世界なんて。
「お兄さん…どーしたの?」
 表情が思いの外暗かったように見えたのだろう。すこし薄汚れた毛皮に、ボロボロのシャツを着た人狼の少年が1人。
 傷だらけの姿でとてとて足音を立てながら、れにの元へ歩いてくる。
「やぁ、こんにちは」
 人狼の少年に微笑みかけて、れには会釈をする。
 周囲には、大人の姿が見当たらない。普通はなにかしらやってるはずなのに。
「ここの『人類砦』には大人はいないんだー。みーんな吸血鬼にやられちゃったから……」
 少年の声を聞いて、少し後ろめたい気持ちが胸に残ったが、その邪念をすぐにかき消すことになる。
「下を向いてばかりではきっと前に進めない。だからまずは上を向いてもらえれば…嬉しいな」
 少しでも子どもたちの笑顔になればいいなと。俯いてばかりはいられないだろう?」なんて少年へ言って。
「じゃあ、有り触れたものだけど古い詩を読もうか」
 ふわり、と。
 れにが小さくつぶやくと、花びらと共に小鳥が現れた。
「…わぁ!!」
 少年はすっかりれにのユーベルコードに夢中になっていた。
「お兄さんすっげー!!ねぇねぇ、もっとやってー!!」
 わふわふと上機嫌に尻尾を振りまくる狼の少年は、見た目通りにテンションが上がってきていると見えた。
 少年のアンコールに応える形で呼び出した小鳥は、れにの周囲をくるくると回ったあと、肩の停まって頬を突く。
「ふふふ。…これで少しは、心が軽くなったかい?」
  にこにこと表情を浮かべて嬉しそうな狼少年を眺めて、れにもつられて嬉しそうな表情を浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブリッツ・エレクトロダンス
ふぅ、仕事終わった終わった。
後はちょっとしたアフターサービスの時間だな…っと。

さて、何をするか…だが、俺は炊き出しの準備なんざちょっと向いてねえからな。
炊き出しは誰かに任せるとして…調理終わるまで、即興演奏で場を繋ぐか!

デジ・スピーカーを物理世界上に展開。
音量は…EDMをかける訳じゃねえし、控えめに設定。
デジ・キーボード(電子楽器)も物理世界上に展開して、デジ・スピーカーに繋げて…っと。

よし、アイリッシュ音楽から始めるか。
落ち着いた曲調がうまく刺さればいいけど…


秋月・充嘉
(さすがにいろいろアウトなので身を清めてきた)
へっぷしっ!さむ……。うぅ、ベリルの相手はとても良かったけどどうせだったらさらわれたかった……。(一応反省はしているが後悔はしていない)

さてと、今俺がここにいる子供たちにできること……。
……炊き出しとか?あ、そうだ。お料理教室を開こう。
大人がいないなら、この子達だけで生きるための知恵を身につけないといけないからね。
さしあたり、スープとパンが作れるようになれればいいかな?
野菜の切り方、煮る順番とパンの作り方、あとは若干のアレンジの仕方かな?
女の子だけじゃなくて男の子も料理は覚えたほうがいいっすよー。なによりモテるしね。

(アドリブ、アレンジ歓迎っす)




 ヴァンパイアと人狼の襲撃から人類砦を護った猟兵一行は、少年少女のケアに当たっていた。
「ふぅ、仕事終わった終わった。後はちょっとしたアフターサービスの時間だな…っと」
 黒豹獣人の青年、ブリッツ・エレクトロダンスは思案していた。
 なんせ、彼は飯の準備など不得手であったからだ。
「んー…。炊き出しの準備なんざちょっと向いてねえからなぁ……」
 炊き出しなんかは他の仲間たちがやってくれるだろう。そう思うことにして、ブリッツは自分ができる最大限のことに取り組む。

 手元に用意していた電子端末を取り出して、液晶画面を指でたしたし叩いて設定を変更していく。
 デジ・スピーカーを展開させると、目の前に簡易的なライブステージが出来上がる。
 …まぁライブするわけじゃないんだけど。
「音量は…EDMをかける訳じゃねえし、控えめに設定してっと……」
 更に呼び出したキーボードをスピーカーに接続して。
「よし、アイリッシュ音楽から始めるか」
 そうつぶやいて、ブリッツはUDCアースのアイランドと呼ばれる国で生まれた(らしい)曲調で即興の音楽を奏でる。
 落ち着いた曲調が功を奏したのか、全身モフモフした人狼の少年少女らがブリッツの奏でる音楽に興味を示したらしくて。
 無言で尻尾を揺らしながら、奏でる楽曲を静かに聴いている子どもたち。
「お、こういう曲が好きか?なら、もう少し弾いていようか」
 閑散としている砦に、少しだけ優しい時間が流れた。


 汚されたりボロボロにされたりで見ていられる姿ではなかった秋月・充嘉は、砦近くの川で水浴びしてきたようで。
「へっぷしっ!さむ……」
 くしゃみを一つ。
「うぅ、ベリルの相手はとても良かったけど、どうせだったら攫われたかったなぁ……」
 このお兄さん、もしかして懲りてない?
 
「さてと、今俺がここにいる子供たちにできること……?」
 少し悩んで。
 近くから友人のブリッツが奏でる音楽が聞こえてきて、思わず耳を傾ける。
「うん、ブリッツならやりそうだ。それなら俺は…っと」
 大人がいないなら、料理できるようになったほうが良いと充嘉は考えた。
「うっし、そうと決まれば!」
 砦の外で薪拾いとかは済ませてきた。ちゃちゃっとやれたのは砦にある程度の蓄えがあったからだ。少しばかり拝借しても何も言われまい?
 準備を終わらせて、これから調理開始というタイミングで。
「わぅー……」
 5歳位の小さなワンコ風の狼少年が、指を咥えながら充嘉の調理の様子を眺めている。
「んー、もう少し大きな子はいないのかな……」
 流石の充嘉も困惑している様子。そんな矢先、年頃の少年少女が充嘉の周りに寄ってきた。
「お兄さんは炊き出ししてくれるの!?」
「わーい!久々のご飯だ!!」
「わわ、ちょ、ちょっと!?」
 確かに大きめな子はいないかと思ったけども。
 尻尾をぶんぶん振っている幼い人狼たちをなんとか宥めて、彼は料理の仕方のレクチャーを進める。
 野菜の切り方、煮る順番とパンのこね方、焼き方……とりあえず、スープとパンを作れるように慣れてくれれば安泰だろう。
 充嘉は楽しそうに調理を行う子どもたちを眺めながら、思わず表情を柔らかくするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーク・アルカード
ウェルシェ(f06945)と参加。

【心情】
ウェルシェちゃんと守ってくれたね。
カメラの音凄かったけど、いつもと変わらないそんなウェルシェ大好きだよ。

狩り、得意だよ。頑張るね。
お肉いっぱい、お腹いっぱいなら、しあわせいっぱい?

【行動】
ん、大物狙い。お肉はいっぱいあるほうが嬉しいから。

足跡や縄張りのマーキングを元に『世界知識』で補足しながら追跡。
風上に陣取り、『目立たない』ように『忍び足』で移動。
周囲の『地形を利用』して『罠を使い』獲物を捕獲。

刀を突き刺して吸血させ血抜き、だいじ。
仕留めたらすぐに血をださないとお肉くさくなっちゃうもん。


ウェルシェ・セイボリー
ルーク(f06946)と参加。

【心情】
ハァ……ルークのレア写真……永久保存ですね。帰ったらもろもろの手法で保存です。
……さて気持ちを切り替えて子供達に美味しいごちそうを。
久々の狩りですが手伝ってくださいねルーク。

【行動・SPD】
砦周辺で野生動物を狩猟。
【世界知識】を参考にしながら獲物を【追跡】して見つけたら【ダッシュ】で仕留めます。食べ応えのある動物狩れるといいのですが。

拠点に戻ったら子供達に捌き方を教えながらお肉を焼いて楽しみましょう。
旅をしていた時に身に着けた狩りの経験を伝授して子供達が大好きな両親のお手伝いができる様になればと。


※子供には【優しさ】技能。また、世界間壊れる様な物は不使用。


推葉・リア
【SPD】
無事に守る事ができて良かったわ…さぁ後は少しのお手伝いね!彼らが遠くない未来にこの世界で希望ある未来を生きられるように!

『指定UC』で推しキャラのみんなを呼んで、それぞれ得意な事をやってもらうわ
料理が得意なら料理を覚えたい子と一緒に料理して、特訓が得意なら強くなりたい子に特訓して、笑顔にさせたいならそれぞれの分野で子供達と過ごす、私も推しキャラに混じって…そうね烏の夜色とオウムの星色と一緒に【パフォーマンス】しようかな!【動物使い】は伊達じゃないわ!
そして【手をつなぐ】などして子供達と触れ合いたいわ
彼らの未来は彼らしか作れないけど、希望ある未来を【祈る】わ

【アドリブ共闘歓迎】


ウルリック・イーゴン
(少しでもこの子達の胸に希望が灯れば…そう思わずにはいられないな)

俺自身も他者の鮮血が無ければ生きられない身です
そう考えれば、一番重要なのは食料だと思います
一時だけとはいえ、食料の心配を考えなくても良い…それは少しだけ不安を和らげてくれると思います

些少ですがこれをどうぞ
キャラメルに飴玉、それとチョコレートです
甘い物は疲れや不安を癒してくれますよ

…さて、現在の不安が緩和されたところで少し将来の不安も解消しましょう
ここに種芋がいくつかあります
栽培方法や保存法を図に残しますので育ててみて下さい

空腹を憂う心配が無い
その気持ちが心に余裕を生み、苦難に立ち向かう活力を齎します
それこそが笑顔の素だと思うから


豹藤・空牙
なんてこった。
ここには、大人がいなかったでござるか。
よく今まで守れたものでござるな。
まぁ、ここは、しがない黒子軍団(UCでござる)を呼んでバックアップに勤しむでござるよ。

黒子軍団が食事や衣類などを少年たちに渡す感じになるのでござるが。
衣料がA&W由来のものしかないでござるよ。
気に入ってくれればいいのでござるがな。

では、拙者も、軽く遊んでくるでござる。

アドリブ歓迎




「はぁ……ルークのレア写真……永久保存ですね。帰ったらもろもろの手法で保存しなければ」
 これがギャグ漫画だったら鼻血出してるレベルで動転している様子の人狼さんはウェルシェ・セイボリー。
「ウェルシェ、ちゃんと守ってくれたね。ありがとう」
 ユーベルコードで護るためとは言え、カメラの撮影音が凄かったけど……。
 いつもと何一つ変わらない兄代わりのウェルシェが大好きなルーク・アルカード少年である。
 宿縁を断ち切ったこともあり、少年の表情はどことなく晴れやかな気がした。

「無事に守る事ができて良かったわ……」
 はぁ…と小さく胸をなでおろしていたのは妖狐の女性、推葉・リア。
「さぁ後は少しのお手伝いね!私も頑張るわ!」
 彼らが遠くない未来…この世界で希望ある未来を生きらていけるように願いを込めながら。

「……なんてこった。ここには大人がいなかったでござるか」
 困惑した表情を浮かべていたのは黒豹の忍びである豹藤・空牙。

(少しでもこの子達の胸に希望が灯れば…そう思わずにはいられないな)
 ボロボロな姿でも元気に振る舞おうとする少年の姿に、胸を痛めている青年はウルリック・イーゴンだ。

 彼らもまた、砦に遺された少年らの安寧を祈るばかりである。


「よく今まで襲われることがなかったものでござるな?」
 空牙の考えも最もなのだが『人類砦』自体、猟兵たちの活動によって生まれた人類の新たな活動拠点である為に、襲撃例がまだ少ないのだ。
「ま、此処はしがない黒子軍団でも呼びだしてバックアップに勤しむでござるか」
 陽気な小人(衣装は全員黒子仕様)を呼び出すと、彼らは少年少女らに食料を、衣類がボロボロになっている子には衣類もプレゼントしていく。
「異世界の物しかない故、口にあうかわからんでござるが…」
 異世界の一つ、アックス&ウィザーズで用意した代物しか手元になかったために、それらを配っていく。
「おー!この衣装かっけぇ!オレでも戦える気がする!猫さんありがとなー!」
 尻尾をブンブン振って嬉しそうな人狼少年に。
「…黒豹でござる」
 あ、気にするところそこなんだ?
 一通り配給?が済んだあと。空牙はウズウズして堪らなかった。
「もし、坊や」
「わぅ?」
 先程の少年に声を掛けて、空牙は一つ零した。
「その…拙者もモフモフしてはもらえぬだろうか?」
 黒豹だから短毛ではあるのだけれど、抱きついてもらえたりするのは嬉しいものがある。
「わ!それなら皆にも声掛けるぜ!皆でもっふもふにしちゃうんだぜー♪」
 嬉しそうにとててーっと駆けていく少年を追いかけて、空牙もついていく。

 このあと、空牙はワンコたちとお腹いっぱいになるまで戯れるのでありました。


「そうだ……子供達に美味しいごちそうを作ってあげましょう」
 さっきまで緩みまくっていた表情から一転、ウェルシェはキリリと表情を引き締めて。
「そうと決まれば久々の狩りですね。ルークも手伝ってください」
「狩り、得意だよ。頑張るね」
 先程の戦闘とは違い、嬉しそうに尻尾をゆらゆら揺らしているルーク少年。
 なんとも年頃の少年感が多分に出ていて非常に愛らしい(此処だけ見れば)。
「お肉いっぱい、お腹いっぱいなら、しあわせいっぱい?」
「えぇ。お肉をたくさん用意して、砦の皆をしあわせにしてあげましょう」
 ウェルシェは優しい微笑みを投げかけて、ルークの頭を撫でる。

 人類砦周辺で野生動物を狩りに出かけた2人。
「このへんにマーキングがある?匂いがする」
「くんくん…ふむ、確かに臭いますね…」
 ウェルシェが頭を撫でると、ルークは再び嬉しそうに尻尾を振って。
 周囲を見渡して、捕捉したのは一匹の獣だ。
「…みつけた。獲物はあの大きい鹿にするね」
 ルークが捉えたのは、体格が良い雄の鹿。
 周囲の地形を匠に活かして急接近。オブリビオン相手でなければ相当なことがない限り気づかれまい。
「コレも生きるためなんだ……ごめんね」
 するり、と刀を引き抜いて。
 暗殺術を駆使して心臓目掛け突き刺し、己の刀に血を吸わせて血抜きをする。
「仕留めたらすぐに血をださないとお肉くさくなっちゃうもん。ね、ウェルシェ?」
「えぇ。流れるように仕留めましたね、流石ルークです」
 えへへと嬉しそうな少年。
 2人は自然のありがたみに感謝しつつ慣れた手付きで鹿を半分に解体していく。
「流石にコレを1人で持つのは大変ですからね、半分にしてから運びましょう」
 …どれだけ大きい個体だったんだろうか?


「わ!でっかい鹿さん!!おにいちゃんたちすごいなー!」
 尻尾を振りながら、人狼の少年たちは猟兵らへ群がる。
「これからお肉のさばき方の勉強をしましょうか。食べたい人は参加してくださいね」
「はーい!」
 ウェルシェが優しく指導している横で、ルークは火起こしを。
「お母さんたち、帰ってきたらお手伝いできるかな?」
「えぇ。もちろんです」
 目を輝かせた少女の頭を撫でながら、ウェルシェは微笑むのだった。

 一方リアと言えば。
「みんな!頼りにしてるわ!」
 ユーベルコード『推しキャラ達の支援行動』で推しキャラのみんなを呼びだす。武装していない私服姿の彼らの個性も相まって、リアのテンションも上がっていく。
『それじゃ、一緒に遊ぼうか!』
『料理が好きな子たちはあっちのオオカミさんたちのところへ行こうね~』
『強くなりたいやつは修行するぞ!力こそパワーだぜ!!』
 …すこしおバカな発言が聞こえたのは気の所為だろう。
「私も推しキャラに混じってなにかしたいな…そうねぇ」
 ペットの烏、夜色とオウムの星色と一緒にパフォーマンスを行う。
「ふっふっふ。これでもお姉さんは『動物遣い』なのよん♪」
 自分の意思のままに行動してくれる2羽のペットにご褒美のおやつをあげながら。
「そーれ!この鳥さんたちはこんなことだってできるんだから!」
 2羽の完璧なコンビネーションで演じられるパフォーマンスで、少年たちを喜ばせていくリア。
 そんな中。
「お姉さんは尻尾がモフモフしてるんだね~」
 幼い人狼の少女が、リアに声を掛けてきた。
「あら、気になる?…お姉さんの尻尾もモフモフする?」
「いいの!?わーい♪」
 少女はリアの尻尾をモフモフしながら嬉しそうな表情を浮かべて。
「じゃ、私は君のおててをむにむにさせてもらおうかなー?」
 桃色の肉球がなんとも愛らしい狼少年の肉球をぷにぷにしたり手を握ったり。
 彼らの未来は彼らしか作れない。だからこそ、リアは彼らが幸せに暮らせる希望ある未来を祈るのだった。


 自分自身も他者の鮮血が無ければ生きられない身。そう考えれば、一番重要なのは食料だろうか。
 自分らが働くことで一時凌ぎになるとはいえ、食料の心配を考えなくても良くなれば。
 それは少しだけ不安を和らげてくれるだろうと考えたのだ。
「些少ですがこれをどうぞ」
「わ、お菓子だ!!」
「久々に見たー!お兄さん、ありがとー♪」
 モフモフな人狼キッズたちは無邪気に喜んでいる。
「キャラメルに飴玉、それとチョコレートです。甘い物は疲れや不安を癒してくれますよ」
「えへへ、ボク甘いもの大好きなんだ!ありがとー!これ、お礼ね!」
 少女がニコニコしながら花かんむりを渡してくれたので、ありがたく頂戴する。

 現在の不安が緩和されたところで、少し将来の不安も解消するとしようか。
 砦の中を少年たちに案内してもらうと、小さな畑らしきものに目が留まる。
「此処は…以前食物を栽培していたのですか?」
「あまり実らなかったけど、この前にんじんを収穫したばっかりだよー」
 ここダークセイヴァーの世界では、食物を育てるのが厳しい環境だと聞く。 
「ここに種芋がいくつかあります。栽培方法や保存法を図に残しますので育ててみて下さい」
 大きめの袋を取り出して、種芋としたためた図を少年たちへ差し出すと。
「ふむ、少しばかり手を加える必要がありそうですね。俺も手伝いましょう」
 多少なりとも力添えができるならと、ウルリックは田畑の整備に力を貸すのであった。

 空腹を憂う心配が無い。その気持ちが心に余裕を生み、苦難に立ち向かう活力をもたらしてくれる。
 ……それこそが、笑顔の素だと思うから。

 こうして、吸血鬼の起こした誘拐事件は未遂に終わり、黒幕の撃破と白狼少年は宿縁を断ち切れることができた。
 せめて、遺された者に安らかな日常を。
 そう想わずにはいられなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月11日
宿敵 『ベリル・アルカード』 を撃破!


挿絵イラスト