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夜霧に捧ぐ鎮魂歌

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「皆様、お集まりくださりありがとうございます。」
 ソフィーヤ・ユリエヴァ(黒百合の聖女・f10512)が、集まった猟兵達を前にぺこりとお辞儀をする。
「今回予知したのは、ダークセイヴァーで起こる殺人事件ですの」
 圧政を何とか免れ、比較的穏やかな町に、夜霧に紛れて人々を殺す殺人鬼が現れた。
 犯人は当然、オブリビオンだ。
 年若い女性ばかりが狙われ、無残に切り裂かれて殺されている。
 殆どの事件は未然に防ぐ事もできるが――既に少なからず犠牲者も出てしまっている。
 町の自警団が動いているが、ただの人間である彼らに犯行を防ぐことは不可能。
 それどころか無駄な犠牲者を増やすだけだ。

「対応をお願いするのは大きく分けて3つです。『死者』と『生者』、更に『敵対者』」
 ソフィーヤが三本指を立てた後、一つ一つ指を改めて立てながら詳しく示す。

「1つ。初めに、犠牲者達の魂を弔ってくださいまし」
 無残に殺され、『現在』を生きる者が『過去』に変えられた人々の無念の想いは、いずれオブリビオンと化すだろう。
 祈りを捧げるなら、行き先は二つだ。『殺人現場』か、『遺体が安置された教会』。
 殺人現場に行けば、遺体は既に片付けられているが、乾いてはいても生々しい血残る。
 もしかしたら、その人にとって思い入れ深い遺品が残されているかもしれない。
 遺体を目にするなら、殺人鬼により痛めつけられた損傷は激しく、覚悟が必要だ。

「もし、霊が現れたら……鎮めてください。彼女らが罪の無い誰かを呪い、傷つける前に」
 惨殺された強い未練は、形無い霊として現れる者もいるかもしれない。
 その場合は、その力で打ち倒すしかないだろう。
 手段は武によってでも、あるいは心によってでもいい。
 まだ明確な存在を確立していない霊は、猟兵の生命の力の前に存在を維持できない。
 純粋な一撃か、強い思いをぶつけるだけでもいい。

「2つ。霊が鎮められると、新たな犠牲者を生むべく行動してくることでしょう」
 凄惨な事件に、町の人々も怯えていることだろう。
 事件解決の為動いてることを示しながら情報収集し、抑止して欲しい。
 犠牲者の家族もいる。彼らには慰みも必要だ。

 更に、心を操られた人々がいる。殺人事件の実行犯にするつもりなのだろう。
 怪しい人物を探し出し、取り押さえて欲しい。
 捕縛して自警団に預ければ、様子を見てくれるだろう。
 オブリビオンさえ倒せば、その催眠は解けるはずだ。

「3つ。やがて夜霧と共に現れるオブリビオン――切り裂き魔を撃破してください」
 夜霧と共に現れる、奇術師のような殺人鬼。
 鳥の嘴のような仮面ペストマスクを被り、体型を隠したコートは性別すら分からない。
 分かるのは無数のナイフやカードを用い、範囲攻撃、一対多の戦闘を得意とすること。

「どうか、ダークセイヴァーに静かに生きる……そして安らかに眠るべき人々の平穏を、皆様の手で取り戻してくださいまし」
 ソフィーヤは挨拶の時よりも一層深く、猟兵達へ頭を下げた。


アマガエル
 6つ目のオープニングとなります、アマガエルと申します。
 心情重視の、シリアスなシナリオとなります。
 1章は死者たる犠牲者を悼み、祓う『冒険』。
 2章は生者たる町人を安心させ、事件を調べる『冒険』。
 3章は元凶たるオブリビオン、【切り裂き魔・ナイトフォグ】と戦う『ボス戦』。
 それでは、皆様の心暖かなプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『彷徨う魂』

POW   :    持ち前のタフネスや生命力で呪詛に耐え、命の力を見せつける。

SPD   :    魂を縛り付けている何かを見つけ出し、それを示したり破壊することで魂を解き放つ。

WIZ   :    魂の精神に寄り添い、祈りや聖句などで浄化する。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

雛菊・璃奈
殺人現場へ向かい、殺されて縛られた霊へ真摯に祈りを捧げるよ…。

現場到着次第、魔剣・妖刀を一本引き抜き、殺人現場に突き立て、その前で膝をついて死した人達の為に祈りを捧げる…。

わたしは呪われた魔剣の巫女だけど…だからこそできる事がある…。
殺された人達の無念、怨念、呪い…全てわたしとこの子(魔剣・妖刀)達が引き受けるから…。
辛かったでしょう…苦しかったでしょう…。呪いや怨念はわたし達が引き受ける…だから、もう休んで良いんだよ…。ゆっくりお休み…。
貴方達の無念は、必ず晴らすから…。

死した人達の怨念、呪いを魔剣へ吸収し、魂を浄化…。
安らかな眠りを与えると共に、殺された人達の無念を晴らす事を誓うよ…。



●魔剣に想いを宿し
 殺人現場の一つである路地裏に向かったのは、三人の猟兵。
 遺体は片付けられているものの、石畳や壁に飛び散った大量の赤黒い染みが、その凄惨さを物語る。
 ここで殺されたのは恐らく、一人二人ではない。大量の血痕……いや、濃い怨嗟はその程度のものではない。
 時期こそ違っても、何人もの女性がここで殺されたのだろう。

 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が、一本の魔剣を引き抜き、最も血溜まりが多い――犠牲者が息絶えた場所へと突き刺す。
 それは、十字架のように……あるいは墓標のように。
 璃奈はその前に膝を突き、真摯に祈りを捧げる。
「わたしは呪われた魔剣の巫女だけど……だからこそできる事がある……」
 殺された人の無念、怨念、呪い。
 そういった物を、璃奈は人一番敏感に感じ取ることができる。できてしまう。
 まだ形の無い、見えない憎悪が渦巻く。

 ――痛い、苦しい、辛い、怖い、嫌、どうして? 何故? どうして?
 声なき怨嗟が、璃奈の耳に届く。それは己が身に振りかかる、理不尽への疑問。
 しかし、納得できる理由などないからこその、理不尽。

 聞いた璃奈の心の内に抱いているのは、悲哀か、憐憫か、怒りか、あるいはその全てか。
 表情の変化の少ない面持ちからは、その機微は伺い知る事はできない。
「辛かったでしょう……苦しかったでしょう……呪いや怨念はわたし達が引き受ける……
 だから、もう休んで良いんだよ……ゆっくりお休み……」
 けれど呪いと縁深い璃奈だからこそ死者を悼み、救わんとする想いは人一倍強い。
 怨念の力が救いを求めるように、璃奈の魔剣へと吸い込まれていく。

「貴女達の無念は、必ず晴らすから……」
 死した人達の怨念と呪いだけを吸った……否、想いを託された魔剣を引き抜く。
 彼女らは誰かを呪い蘇ることなく、骸の海で安らかに眠り続けるだろう。
 璃奈は魔剣を優しく撫でて静かに誓った。

成功 🔵​🔵​🔴​

プロメテ・アールステット
【】:ユベコ

※POW

『殺人現場』
戦いしか知らぬ私には大したことは出来ないが…
遺品が壊れたり汚れているようならば綺麗になるよう努力してみよう

霊が現れたら自己紹介
突然押しかけてすまない、私はプロメテ
意思を持たぬ人形として命じられるまま人々を傷付けてきた
故に貴方を救う清らかな手など持ち合わせていない

私ができるのは罪を背負い生きる事だけ
貴方の痛みを、無念を私に教えてくれ
願うは復讐か?安息の眠りか?
復讐を願うのなら私が貴方の剣となろう
安息の眠りを願うのなら…この炎でその魂を浄化できるだろうか

【ブレイズフレイム】を発動
我が名はプロメテ、神より与えられし炎の一片
この炎を以て、悲劇も敵も焼き尽くすとを誓おう



●浄化の炎
「戦いしか知らぬ私には大したことは出来ないが……」
 プロメテ・アールステット(彷徨う天火・f12927)が、殺人現場の物陰に落ちていたブローチを拾い上げる。
 蝶を象った真鍮のブローチ。その翅はひしゃげて曲がり、乾いて赤錆びた血の色で染まっていた。
 人形の指で拭うも、乾いた血は擦ってもなかなか取れない。

『かえ……して……』
 音もなく現れたのは、赤く半透明な霊。
 身体に刻まれた、無残な傷痕。それは生前……殺された時に刻まれた物だろう。
 血に塗れた恐ろしくおぞましささえ感じるその姿は、恐怖を掻き立てる。
「これは、貴女のものか?」
 プロメテはその姿を見ても怯えることなどしない。
「突然押しかけてすまない、私はプロメテ。意思を持たぬ人形として命じられるまま人々を傷付けてきた」
 プロメテは、ただ戦う為に作られた。
 人形師たる主と、その血縁者によって命じられるままに戦い続け、感情を持たぬ人形として生きてきた。
「故に、貴方を救う清らかな手など持ち合わせていない。……私ができるのは罪を背負い生きる事だけ」
 恐れなど感じることはない。プロメテは無表情のまま歩み寄る。
 女の霊にその蝶のブローチを握らせると女はその胸に大切そうに抱える。

「貴女の痛みを、無念を私に教えてくれ。願うは復讐か?」
 その問いに、女は何も答えない。
「あるいは、安息の眠りか? この炎で、その魂を浄化できるだろうか」
 重ねた問いに、小さく女は頷いた……少なくとも、プロメテの目にはそう見えた。

「承知した。我が名はプロメテ。神より与えられし炎の一片。この炎を以て、悲劇も敵も焼き尽くすとを誓おう」
 プロメテは自らの身体から炎を噴出し、放たれる。
 清めの炎と、再生の篝火となる事を願って。

『返して……妹に……お願い……』
 女の霊を包んだ紅蓮の炎が消え、その場にからんとブローチが落ちる。
「……それが、貴女の無念か? わかった、ならばそうしよう」
 ブローチを再び拾い上げたプロメテの耳に、消え入るような声で『ありがとう』と届いた気がした。

成功 🔵​🔵​🔴​

泉亭・霧千代
切り裂き殺人…こりゃ鋏(あたし)としちゃなかなか、複雑な心境ってなもんでしょうかね、まったく…
さて置き、未練を残すなら…だからこそ断ち切ってやるのもせめてあたしの仕事ってやつでしょう。

●SPD
『殺人現場』へ向かいましょうか…
魂を縛り付けている何か、そんなものがあるのなら見つけ出して、【破魔】を籠めた鋏で断ち切ってあげましょう。
【第六感】が上手く働けばいいんですが…さぁてどうなる事やら。

もし見つけ出して、その上で『断ち切る』必要があるのなら……ひと思いに行きます。
切り裂かれて失われた魂ですが…切り裂く事でまた救う事もできるならあたしとしちゃ…なんて、感傷ですかね、いやはやこいつはしたり。



●鋏とナイフ
「切り裂き殺人……こりゃ鋏(あたし)としちゃなかなか、複雑な心境ってなもんでしょうかね、まったく……」
 泉亭・霧千代(芸と鋏は使いよう・f11834)は同じ『斬る物』として身につまされるものがあった。
 鋏のヤドリガミであり、今こうして人の身を持って存在する霧千代は、自らの意志で斬るものを選べる。
 だが切り裂き魔の得物となっているナイフは、そうはいかない。

「さて置き、未練を残すなら……だからこそ断ち切ってやるのもせめてあたしの仕事ってやつでしょう」
 そんな事を考えていたからか――。
 霧千代が見つけたのは、一本の血に濡れたナイフ。
 他の猟兵が浄化した霊を、骸の海へ還さぬよう繋ぎ止める楔のように突き刺さっている。
 女の霊にはもはや、誰かを恨み呪うような負の感情は感じられない。
 だがそれは、ドレスの裾を踏まれて身動き取れない令嬢のように、その場に留まっていた。
 ナイフもまた持ち主に捨てられながらも帰りを待つ、忠犬のように静かに佇む。

 霧千代は自らの本体である鋏を手に、歩み寄る。
 何もない虚空を斬るように、ちょきり、と鋏を鳴らす。
 それは破魔の力を宿した鋏による、一つの見立ての儀式。
 『被害者』と『凶器』、『殺された者』と『殺した道具』。
 その一人と一つを繋ぐ『縁の糸』を断てば、木の枝に絡んだ糸が切れた風船のようにふわふわと飛び……女の霊は光の塵となって消えていく。

「切り裂かれて失われた魂ですが……切り裂く事でまた救う事もできるならあたしとしちゃ――」
 消えていく前、霧千代に微笑みかけた霊を想う。
「……なんて、感傷ですかね、いやはやこいつはしたり」
 想いを馳せて、照れくさくなった霧千代は拾い上げる。
 刃物を人を殺す凶器とするか、人を魅せる小道具とするかは、使い手次第。
 この血濡れたナイフも凶器ではなく、もはやただの刃物だ。
「あんたもそんな顔してちゃ、綺麗なお顔が台無しですよ。……ほぅら、綺麗になりました」
 霧千代はナイフの刃にこびり付いた血を、そっと拭ってあげた。

成功 🔵​🔵​🔴​

イザベラ・バスカヴィル
殺人現場に赴き、凄惨な場を目にしながら祈りを捧げる
「死は、何処にでもある……とはいえ、このような理不尽な死は、苦手だ」
せめて、これ以上のオブリビオンを増やさないためにも、なにより犠牲者に安らかなる眠りを与えてあげなくてはな……

霊が現れることがあったら、その前に立ち、一度、その無念を受けることで感じ取る
「そうか……これが君たちの無念か」
痛みを感じながらも決して膝折れることなくしっかりと立ち、霊を見据え
「その無念、私が引き受ける。私の魂に誓おう。だから……君たちは安らかに眠ってくれ」
この痛みを忘れない限り、この誓いが消えることはない。

霊が浄化してくれたら
「おやすみ。次は……よき生を」



●導く死神
「死は、何処にでもある……とはいえ、このような理不尽な死は、苦手だ」
 イザベラ・バスカヴィル(彷徨う死神・f00251)は凄惨な血痕の残る殺人現場を目にし、祈りを捧げる。
 だがイザベラは決して目を逸らさない。
 彼女達が無差別に生者を呪う者として蘇らぬよう、そして何よりも――。
「犠牲者に安らかなる眠りを与えてあげなくてはな……」
 静かに祈りを捧げるイザベラへと、救いを求めるかのように霊が現れる。

『来ないで、いや、嫌、イヤ、いやぁあああッッ!!』
 絶叫めいた悲鳴、断末魔の声が響き、イザベラの身を苛む。
 イザベラを拒絶……いや、違う。

「そうか……これが君たちの無念か」
 それは死への拒絶。
 本来自らを殺した犯人へ向けられたものだったはずだが、今こうしてイザベラに向けられた。
 誰かを呪い始める予兆であり、その一歩。
 押し付けられた理不尽を、別の誰かに押し付ける、呪いの連鎖。
 イザベラは痛みを感じながらも決して膝折れることなくしっかりと立ち、霊を見据える。
 この呪いを、誰かに向けさせるわけにはいかない。

「その無念、私が引き受ける。私の魂に誓おう。だから……君たちは安らかに眠ってくれ」
 この憐れな被害者を、忌むべき加害者に変えないため、イザベラは手を伸ばす。
 イザベラに刻まれた痛みは、即ち彼女が死の間際に味わった恐怖と痛みだ。
 この痛みを忘れない限り、この誓いが消えることはない。
 優しい死神が、女の霊を導くように手を伸ばす。
 恐怖に歪んだ女の表情が和らぎ、そっとイザベラの手を握り返すように伸ばす。
 イザベラの手に触れた瞬間、女の霊は光に融けるように消えていく。

「おやすみ。次は……よき生を」
 助けが来たのだと安堵するように微笑んだ彼女の顔を胸に刻みながら、その魂が安らかに眠るよう一度祈った。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。私は迷える魂を導き救えるような聖人じゃない
できるのは、彼女達をこんな姿にした輩に報いを与えてやる事だけ
それでも、何かしてあげたいと思う気持ちは…嘘じゃない

…私は教会に向かい、礼儀作法に則って祈りを捧げる
その後【限定解放・血の聖杯】を発動
犠牲者達の傷を救助活動で得た知識を元に見切り
抉られた傷口を効率的に癒せるよう第六感で判断
吸血鬼化した生命力を吸収して力を溜めた血を一滴、
目星をつけた部位に垂らし遺体を修復して綺麗にする

…これぐらいしか、貴女達の魂を慰める方法が思いつかなかった
聖なる奇跡では無く、呪われた血の力で申し訳ないけど…
…どうか安らかに眠って。もう二度と迷い出ることが無いように…


春霞・遙
【WIZ】
痛みの記憶は、きっと死んだあとも残るでしょうね。
恐怖かも知れない、怒りかも知れない、生への渇望かも知れない。
せめてその痛みが癒されるように「祈り」ます。
少しでもその苦痛を癒して、安らかに眠るお手伝いをしたい。

死者の声に耳を傾けて、手を差し伸べる。「聞き耳」「優しさ」「手をつなぐ」
怨嗟の声も含めて、全て聞き届けて、抱きしめる。その「覚悟」は、医者になるときにしているつもりです。
激痛耐性も呪詛耐性もあるけど、そのまま受け取ります。
死者の傷を【生まれながらの光】で癒すことができるかはわからないけれど、せめて死出の道を照らすことができるといいな。

大丈夫だよ、もう痛くないから。おやすみなさい。


神元・眞白
【WIZ】
過去形にされた人がいる。……無駄なのに。望んでないはずだったのに。
せめて安らかに。残された人達に伝言があるなら聞いてあげよう。

教会に向かって想いを探してみる。…大丈夫。あの時と違う。大丈夫。
今回は飛威にサポートしてもらえれば充分そう。符雨はごめんね、待機。
霊がいるのは想いがあるはず。伝えたいことが…ある?
まずは聞いてみることが大事。人形の私には癒す事は難しい。けど向き合うことから始めてみる。

手がかりを探すのも大事だけど、まずは未熟な私で鎮める様にできないと。


仁上・獅郎
かの殺人鬼に似た、あるいはその者のオブリビオンと。
鮮やかな手口から只者ではないと聞きますが……。

僕は教会へ。医師ですので、遺体には慣れております。
それでも、痛ましく思う気持ちには慣れませんが……。

遺体を前にして、犠牲者の方々に[祈り]を捧げましょう。
彼女らが現れれば、悲しみも悔しさも、痛いほど伝わることかと。
しかし、いくら嘆こうと、既に貴女方の時間は終わってしまったのです。
……ですから、僕達に後は任せてください。必ず、凄惨な事件を終わらせてみせます。
貴女方は、安らかにお眠りください。
天国か、次の世かはわかりませんが……きっとその先に好い事が待っていますから。



●夜には眠りを
 教会の死体安置所に、4人の猟兵が祈りを捧げるべく集っていた。
 そこに本来あるべき死者の静謐はない。
 今は姿も見えない。声も聞こえない。
 だがそこに彷徨う冷たい存在は、肌で感じられた。

「過去形にされた人がいる。……無駄なのに。望んでないはずだったのに」
 神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)は死者を悼む。
 『現在』を生きている人々が、『過去』より蘇った者の手で、『未来』への道を閉ざされた。
 あまりにも無残。あまりにも憐れ。
「……大丈夫。あの時と違う。大丈夫。今回は飛威にサポートしてもらえれば充分そう。符雨はごめんね、待機」
 眞白の傍に仕える世話役、戦術器、戦闘用人形。
 『飛威』と『符雨』へと声を掛け、『符雨』をそっと下がらせ、眞白は向き直る。

「かの殺人鬼に似た、あるいはその者のオブリビオンと。鮮やかな手口から只者ではないと聞きますが……」
 医師として軽く遺体を検分した仁上・獅郎(片青眼の小夜啼鳥・f03866)は想いを馳せる。
 獅郎が連想する切り裂き魔と同じかはわからない。
 しかしその切り口は、あまりにも綺麗すぎて――相当に手馴れている。
 斬った順番にもよるが……動脈や臓器を巧みに避けた切り口。これでは即死には至らなかっただろう。
 それはつまり、生きたまま解剖されていくのと同じようなものだ。

「痛みの記憶は、きっと死んだ後も残るでしょうね」
 同じ医師としてそれを診て取った春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は、その想像するのも憚られる痛ましさを想う。
 それは恐怖かも知れない、怒りかも知れない、生への渇望かも知れない。
 彼女達はオブリビオンと出会うほんの数分前まで、自分に死が訪れるなど想像すらしなかっただろう。
 生きたまま切り刻まれる、その痛み、恐怖、絶望。
「少しでもその苦痛を癒して、安らかに眠るお手伝いをしたい」
 気安く「分かる」などと言うことは遥にはできない。
 けれどせめて、痛みが和らぐようにと、遥は祈りを捧げる。

 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が、ダークセイヴァーの作法に則り静かに祈りを捧げる。
「……ん。私は迷える魂を導き救えるような聖人じゃない。できるのは、彼女達をこんな姿にした輩に報いを与えてやる事だけ」
 死した彼女達に対して、出来る事は多くない。
 それでもリーヴァルディは自らの力の及ばなさに、唇を噛む。
「それでも、何かしてあげたいと思う気持ちは……嘘じゃない。……――『限定解放・血の聖杯』」
 リーヴァルディは自らの血を一滴、痛ましい傷が数多残る遺体に垂らす。
 それは、瞬間的に吸血鬼化し生命力を凝縮させた、ダンピール……否、ヴァンパイアとしての血の祝福。
 死した身体の細胞を活性化し、切り裂かれた身体を修復していく。
 見た目を整える、死に化粧。
 余りにも多い傷に、一滴では足りない。だから、リーヴァルディは自らの血を流すことを惜しまない。
 彼女達が味わった痛みと苦しみに比べればなんてことないと、リーヴァルディは更に血を流す。

「……これぐらいしか、貴女達の魂を慰める方法が思いつかなかった。聖なる奇跡では無く、呪われた血の力で申し訳ないけど……」
 リーヴァルディの流した血を受け、無残に切り刻まれた女性は、生前の美しさを取り戻していた。
 まるで眠っているだけのように、穏やかな表情で横たわる。
「……どうか安らかに眠って。もう二度と迷い出ることが無いように……」
 リーヴァルディは静かに祈りを捧げると、女性の遺体が纏っていた酷く冷たい、怨念めいた重圧がふっと軽くなる。
 傷付いた身体を治され、満足したのだろうか。いや、単純なそんな事ではない。
 自ら血を流すことを惜しまない。それは決して呪われたものなどではない。
 聖者にも等しい誰かのための献身――リーヴァルディの想いに救われたのだろう。

 引き寄せられるように、霊達がざわめき始める。
「伝えたいことが……あるの?」
 眞白達の前に、朧げな姿の女性達が現れる。
 表情は見えない。けれど、とてもつらく、悲しげだということはすぐにわかった。
 きっと今自分が浮かべている表情と同じだから。
「人形の私には癒す事は難しい。けど向き合うことは、できるはず」
 眞白は怨嗟の声を聴き届け、その嘆きを真っ直ぐと受け止める。
「うん……うん……痛かったね……苦しかったね……辛かったね……どうしようもなく……悲しいよね……」
 眞白は人形だ。だが人形であっても、誰かの心に寄り添うことはできる。
 彼女達は、恨みを晴らしたいのではない。誰かを呪いたいのではない。
 ただただ苦しくて、どうしようもなくて……誰かに聞いてほしかった。
 それが痛いほど、眞白の胸に伝わってくる。

「貴女達の怨嗟も、嘆きも、全て聞き届けて、抱きしめましょう。……大丈夫だよ、もう痛くないから」
 遥は霊達へと、優しく手を差し伸べる。
 彼女達は死者だが……死を宣告された生者だって同じだ。遥は医者になった時、その覚悟はしているつもりだ。
 どうしようもない事は、ただ受け入れるしかない。
 それは誰だってわかっていることで、だけれどそれは難しくて、苦しさに吐き出しそうで。
 だから、そんな苦しさを遥は受け止めたかった。

「……僕達に後は任せてください。必ず、凄惨な事件を終わらせてみせます」
 獅郎の胸にも、彼女達の悲しみも悔しさも、痛いほど伝わっている。
 穏やかに、言葉をを投げかける。
「既に貴女方の時間は終わってしまいました。だから、貴女方は、安らかにお眠りください」
 それは止まった時間を、ただ過去として捨てることではない。
 もう苦しむことなく眠っていいのだと、獅郎は告げる。
「天国か、次の世かはわかりませんが……きっとその先に好い事が待っていますから」
 前に進むために、今を終わらせる為に。
 それは一日を終えて眠りにつく前に、ランプの灯をそっと吹き消すように。
 なかなか寝付けずにぐずつく幼子をあやすように、獅郎は優しく囁く。

「おやすみなさい。貴女達の死出の道に、光がありますように」
 遥の身から溢れる暖かな光が一際大きく広がり、死者たちが眠る一室全てを照らし出す。
 やがて、教会には聖域の如く穏やかな静謐が訪れた。
 もはや誰もその眠りを誰に侵し、妨げる事はできない。
 その静寂を名残惜しむかのように。
 猟兵達はもう一度彼女達の魂に安らぎとあれと、祈りを捧げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シエラ・アルバスティ
【SPD】

「相変わらず辛気臭いよね、この世界はどこも」

一人だと明るさを放り投げて冷めてる私
この世界はこう言う事は本当に多いけれど……諦めたら全てが終わるからね

殺人現場へ行き【風の声】を使いその場の魂の声を聴くよ
声に真摯に耳を傾け、理解しようとする
未練があったなら出来る事ならばそれを代わりに叶えてあげよう

遺体も見てそこから敵の殺人の手口を淡々と調べ上げて冷静に分析する
──勝つ。私たちは勝利に貪欲じゃなきゃいけない。
魂が私を呪うのならばいっその事、私にとり憑けばいい
大丈夫、知らない声が聴こえるのは慣れてるから

「見つけた仇にくれてあげるよ、あなたたちの恨みを込めた滅びの一撃を──」



●声を聞く者
「相変わらず辛気臭いよね、この世界はどこも」
 シエラ・アルバスティ(自由に生きる疾風の白き人狼・f10505)は、親しい仲間達と共にいる時の明るさを放り投げて冷めた態度を取る。
 だがそれは無感動でも、ましてや冷淡なわけでもない。
 この世界はこういうことが本当に多い。
 吸血鬼やそれに組する貴族の圧政を逃れ、平穏に慎ましやか暮らしていた……
 そう思っていたはずが、不意にその日常が奪われる。
 あまりにも、人の命が軽い世界だ。
「けれど……諦めたら全てが終わるから」
 それを、当たり前などと思いたくはない。

 風の声に導かれ、シエラが訪れたのは事件が起きて間もない場所。
 まだ誰にも見つかっていない――遺体のある殺人現場。
 無残な遺体を前にしても、シエラは表情を変えない。
 今すべきことは、痛ましいその姿を憐れむことでも、犯人に怒りを向ける事でも――顔を背ける事ではないから。
 シエラは女性の遺体を検分する。

「脚の腱が切られている……逃げられなくするためかな」
 周囲を見ても、血の痕はこの周辺に集まっている。恐らく初撃で狙ったのだろう
 次に細やかな傷が、手足に無数に刻まれている。
 これは致命傷ではない。これは恐らく、ただ痛めつける――愉しむためにつけた傷だ。
 次に腹部。医者の猟兵も調べたと聞いたが、やはり鮮やかな切り口だ。
 脚の腱を斬られて動けない事を差し引いても、固定されてない人間を切り刻む正確さ……純粋な技巧だろう。
 シエラは淡々と調べ、オブリビオンの手口を想定していく。

「――勝つ。私たちは勝利に貪欲じゃなきゃいけない」
 シエラは独り言を……否、死者に語り掛けるように、言葉を紡ぐ。
「魂が私を呪うのならばいっその事、私に取り憑けばいい。大丈夫、知らない声が聴こえるのは慣れてるから」
 シエラは拳を握りしめる。
 自分の身を借りて、恨みを晴らしたって構わない。
 オブリビオン……こんな目に遭わせたヤツを滅ぼす為に、全力を尽くしてやる。そう誓って。

『にげ……て……あぶ……ない……』
 けれど、シエラの耳に聞こえて来たのはそんな言葉。

「――ああ、もう……そう言う事言われると、困るなぁ」
 その女性は自分が殺されたというのに、誰かに助けを求めるのでもなく、犯人を恨むのではなく、復讐を望むでもなく。
 復讐を肩代わりし、犯人と立ち向かおうとする少女の――シエラの身を案じていた。

「大丈夫、私はとっても強いから」
 シエラは女性の髪を優しくそっと撫で、その亡骸に誓う。
「見つけた仇にくれてあげるよ、あなたたちの恨みを込めた滅びの一撃を──」
 この惨劇を生み出した元凶たるオブリビオンに向け、冷たく怒りを燃やした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『闇夜を切り裂く断末魔』

POW   :    不審な人影を取り押さえる

SPD   :    町人に聞き込みを行う

WIZ   :    囮となって切り裂き魔をおびき寄せる

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●絶望の暗い霧
 凄惨な連続殺人事件が起こった町に、出歩く者は少ない。
 自警団らしき武装した青年が辺りを警戒し練り歩くが、効果はないだろう。

『夜霧が出れば、殺人事件が起こる』

 それを知っていても、人々は窓や戸口を固く締めて、「どうか自分が巻きこまれませんように」と祈るしかできない。
 既に出ている『町を夜霧が包んでいる時』、『殺人現場は路地裏が多い』以上の情報は望めないかもしれない。

 この世界ダークセイヴァーの人々は猟兵の存在を……希望を知らない。
 情報を集める以上に、人々に『希望』を示すことが必要だろう。
 それこそが、夜の霧を照らし払う光だ。
シエラ・アルバスティ
【SPD】

まず自分の足の腱の部分には『猟兵バッグ』の中のプロテクターを装着

「さぁさぁ、皆さん寄ってらっしゃい見てらっしゃいー!」

『ユピテルマント』で発光しつつ町を歩く
『雷糸』で空に光の模様を描いて気を引く

「私がこの糸で、こそこそするしか『能の無い』殺人鬼および『関係者』を捕まえます! なので何か知ってる人は情報下さーい!」

あからさまに見えて正攻法じゃない探し方
【第六感】で何か知ってる人を探り必要なら【追跡】もする

「あなた、何か知ってるよね?」

嘘かどうかは【風の声】で判断し、黒なら力づくで吐かせる
情報を得たのならお礼を言ってから殺人鬼に対処しに行こう
機会があれば殺人気に【穿孔滅牙】を喰らわせるよ


泉亭・霧千代
※WIZ

さぁて、いつもなら芸の一つも披露して和ませつつ聞き込みでも、なんて洒落込む所ですが、今回流石に鋏(あたし)の十八番じゃ火に油、藪蛇って所だ、こりゃいけない。
…まったくもって切り裂き魔ってのもいけずですねぇ、まったく

となればここは仕方ない、幸いあたしァこれでも女性、
奴さん【誘惑】出来る程の魅力があるかはさて置きともあれ条件は満たしちゃ居るでしょう、ベタかもしれませんが囮作戦と一つ洒落込みましょうか。

夜霧の町、路地裏、それから女(一応あたしですね)
後は【第六感】頼りと相成りますが無防備にうろつき、上手く釣れれば【だまし討ち】、こちらを狙ってきた所を逆にとっ捕まえられればいいんですが



「さぁて、いつもなら芸の一つも披露して和ませつつ聞き込みでも、なんて洒落込む所ですが……」
 霧千代は懐に仕舞った自らの唐鋏をそっと服越しに撫でる。
「今回流石に鋏(あたし)の十八番じゃ火に油、藪蛇って所だ、こりゃいけない」
 自警団や町の人に疑われでもしたら面倒だ。
 否、疑われるならまだしも、怯えられでもしたら立つ瀬がない。
「……まったくもって切り裂き魔ってのもいけずですねぇ、まったく」
 芸妓が芸を披露できないというのは、皮肉なものだ。

「さぁさぁ、皆さん寄ってらっしゃい見てらっしゃいー!」
 そんな中、シエラが場違いなくらいに、明るく声を張り上げる。
 纏ったマントがばちばちと雷光が奔り光輝く。
 それはその身から光を放つ者、この世界における唯一の『聖なる存在』の如く。
 家や店の窓は依然閉じられたままだが、此方を伺うような気配を感じる。

「君、何をしてるんだ。この町では今、女性が狙われて――」
 自警団の男達が、慌てて駆け寄ってくる。
 人狼であるシエラの身を案じるような声に、シエラは敢えて答えない。
 代わりに、雷の糸で空に光の模様を描き出す。
 仄かな、けれど夜闇を祓うような眩い雷光を迸らせる。

「私がこの糸で、こそこそするしか『能の無い』殺人鬼および『関係者』を捕まえます! なので何か知ってる人は情報下さーい!」
 聞いているかもしれない切り裂き魔への挑発を込めて叫ぶ。
 シエラの目は、少女の無謀な蛮勇などではないと如実に物語る。
 自警団達は互いに顔を見合わせ、頷く。

「……犯人については正直俺達にもさっぱり検討もつかない。だが、俺達は最初の事件からずっと見回っているが……」
 夜霧が出ると外出を避けるようになったとはいえ、自警団の眼がこうしてある。
 外出を避けたくても、仕事や所用で出歩かねばならぬ者もいる。
 だというのに誰も犯行を目撃した者はいない。
 それどころか被害者が追われている所や助けを求める声すら聞いた者がいない。
 これだけ立て続けに、派手にやらかしているのに、だ。
「目撃情報が、なすぎる?」
 女性の悲鳴を聞きつけて駆け付けても、死体を見つけた目撃者のもの。
 犯人の姿はなく、夜霧の中に倒れる死体が残っているだけだったという。

「それと、役に立つかは分からないが、俺達の巡回ルートを教えておこう」
「ありがとう!」
 自警団の男は町の簡単な見取り図の写しをシエラに渡して、丁寧に教えてくれた。
 定期巡回と不定期なルート。警備の基本は押さえている。
 文字通り、神出鬼没だ。

「情報収集お疲れ様です。それじゃああたしは……この辺りに行かせて貰いますかねぇ」
「うん、囮役する人多いみたいだし、私はひとっ走り伝えてくるよ」
 情報を共有する為にダッシュで駆けて行ったシエラに手を振り、霧千代は細目で笑む。

「さぁて、夜霧の町、路地裏、それから女。あたしに奴さんを誘惑できる程の魅力があるかはさておき……条件は満たしちゃいるでしょう」
 自警団の巡回ルートから外れ、より目につかない所に当たりを付ける。
 無防備な体を装い、静まり返った路地裏をうろつく。
 夜霧を纏った風が冷たく肌を撫でる。
「……ん?」
 一瞬、霧千代にどこからか視線が向けられた気がした。
 気のせいかとも思ったが……直感が告げる。
「いやはや。あたしァこれでも『女』なんですけどねぇ。はてさて」
 女(ひと)としてではなく、刃物(はさみ)として見られた。
 そんな予感がするが、さりとて路地裏を練り歩き続ける。
 人目の届かない場所に人の目を届けることで、犠牲者を抑えられるだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

仁上・獅郎
生者とはいえ、心が死んでは意味がない。
彼らの心を生き返らせるには、さて、どうしたものか。

一先ず、囮として路地裏を歩き回り不審な人を[おびき寄せ]ましょう。
線が細く童顔なので、女性物のコートとストールを身に着けてフードを目深に被れば一目で見破られることはないかと。

後は寄ってきた人の対処、と。
正面から来る分には普通に鋼糸で縛り上げます。
奇襲ならば、そうですね。
最初に狙うは足の腱でしたか――くれてやりましょう。
[激痛耐性]で痛みを無視し、倒れながらも鋼糸で拘束を。
腱を差し出して捕縛しにくるとは露にも思わないでしょう。

切られた腱は[医術]と【生まれながらの光】で繋ぐ、と。
後でリハビリは必須ですねえ。


春霞・遙
被害者の特徴に当てはまるかは分かりませんが…「変装」して囮をやろうと思います。
【シャドウチェイサー】を自分に憑けて視野を広く持って、不意打ちに備えます。
何かあれば一般の方を殺さないよう木の杖で「武器受け」「武器落とし」。
電波がつながるなら他の人に連絡できるようスマートフォンを持っておいて、ダメそうなら【生まれながらの光】を狼煙のように使えないかな。
囮役が多ければその人たちに【シャドウチェイサー】を憑けて自分は「目立たない」ようにフォローしよう。

無為に歩いていても不自然だし、何かが起こるまでは街の路地をめぐりながら人々の心の安寧と町の平和を祈っているよ。



 窓が閉じられ、町ごと死んでしまったゴーストタウンのように静まり返っている。
「あなた達の心の安寧と、この町に平和が戻りますよう」
 一般人を装って町の人々へ祈りを捧げる遥に、路地裏の傍に立っていた女性が首を振る。
「平和……? そんなもの……この世界にあるわけないでしょう」
 それは否定や拒絶ではなく、『諦観』だった。
「いつ来るともしれない暴力や死に怯え、恐怖に震えながら生きる……それがこの世界に生きる者の常識だわ」
「自分で自分を追いつめてはいけませんよ。大丈夫、今は気が滅入ってるだけ。……――病魔は、すぐに退治します」
 遥は女性の手を優しく取り、そっと祈る。
 そうやって絶望を口にする女性自身が、その言葉で傷ついているように見えた。
 だから、まだ諦めきったわけじゃない。
「貴女に……」
 『何ができるの?』と、問いかけようとした女性の口が閉ざされる。
 遥に優しく包まれた手が、こんなにも暖かいから。

「生者とはいえ、心が死んでは意味がない。彼らの心を生き返らせるには、さて、どうしたものか」
 女性物のコートとストールを身に着けた獅郎が、目深に被る。
 線の細い獅郎は、夜道では一見すれば少し背の高い女性にも見える。
 ランプを片手に歩くも、夜霧がその光を遮り数メートル先も見えない。
 路地裏を歩いていると、目の前に少し俯きながら女性が歩いてきた。
 ただの一般人かと思い、獅郎は無警戒に――否。
 すれ違いざま、無防備な獅郎の脚へ目掛けてナイフが放たれる。
 鮮血が飛び散らせながら獅郎は倒れ込み、続けざまに二本目のナイフを放つべく――。
 構えられた女性の身体が、固まったように止まる。

「そう来ると思っていました。片脚の腱くらい――くれてやりましょう」
 獅郎の鋼糸が、女性を絡め取って拘束していた。
 ナイフを持つ方の腕を強く縛り上げて捻り、ナイフを手放させる。
 更にすぐ隣の路地を歩いていた遥が、駆け付ける。
 獅郎が襲われたのは『影の追跡者』の目で見えていた。
 鋼糸で拘束された女性に、木の杖で一撃を加えて昏倒させる。
「大丈夫ですか?」
「ええ、オブリビオンではないようですが、操られているようですね。
 ……ああ、脚のほうも心配なく。完全に断たれた訳ではないので」
 獅郎は医術で自己診断しつつ、自らの『生まれながらの光』で、傷を癒す。
 やや違和感が残るものの、行動にも大きく支障はないだろう。

「現場に駆け付けてもいるのは『目撃者と犠牲者だけ』……と聞きましたが、これが手品のタネでしょうか」
 遥の推測通り『目撃者が実行犯』のパターンだろう。
 記憶の無いまま殺人を犯せば、嘘を言うまでもなく真犯人も見つからない。
 ミステリーでは定番すぎるぐらいに有り触れた展開だ。
「それだけではない気もしますが……まずは、この女性を保護してもらいましょう」
 獅郎は襲って来た女性を抱えて、自警団へと引き渡した。
 夜霧が深まっていく。
 彼女が目覚める前に、片は付けられそうだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神元・眞白
【WIZ/アドリブOK/絡みOK】
話は聞けた。次は元を断つ番。
ちょっと危ないけど私が…ううん、私達がもっと頑張る時。
囮になるから人数はいらないし、符雨は今回もお休み。ごめんね。
飛威はサポート。というより囮の際に私と役柄交換。
私は変装して人形として目立たない様に。飛威は危ないけどお願い。

実際の犯人にされてるだけの人ならあんまりやり過ぎない様にしないと。
動きを見切りながらフェイントかければ2人で抑えられそう。
実行役も何人かいる?上手くいって油断してると危ないかも


リーヴァルディ・カーライル
…ん。私はあまり矢面に立つのは得意じゃ無い
だから率先して囮を買って出て、怪しい人物を捕えて回ろう
…もうこれ以上、犠牲者を出す前に終わらせよう

事前に装備類に【常夜の鍵】を刻み、一般人に変装し、防具を改造
生命力を微弱に吸収して魔力を溜め、
無力な獲物だと第六感に訴える誘惑の呪詛を付与
路地裏を恐る恐る歩き存在感を放ち、殺人犯の目を引き付ける
…元々一般人に扮する時によく使う手。今は効果を強くしているけど…

殺人犯と遭遇したら暗視を頼りに攻撃を見切って回避
足をなぎ払って転ばせ怪力任せに武器を取り上げる
その後、【常夜の鍵】から縄を取り出し拘束する

…自警団に捕まらないように近くにいる時は【常夜の鍵】の中に隠れる



「今日の見回りは休んでていいんだぞ。……今日殺されたの、恋人だったんだろ?」
「だからこそだ。彼女をあんな目に遭わせたヤツを、絶対に許さない……必ず同じ目に遭わせてやる……!」
 自警団の男達が、歩きながら話している。
 怒りで悲しみを紛らわせる、一種の逃避だ。そんな事、できっこない。
 だがそれを止められる者はいない。怒りさえ失くしては、死んでいるのも同じだ。

 自警団が立ち去った後、紅い魔法陣が仄かに輝く。
「……ん。……もうこれ以上、犠牲者を出す前に終わらせよう」
 見回りの目を避けたリーヴァルディが、魔法陣から姿を現す。
「話は聞けた。次は元を断つ番。飛威、危ないけどお願い」
 眞白は『飛威』を影武者に立て、眞白は人形として振る舞い付き従う。
 眞白の整った美しい容貌であればこそ、『ただの人形』として目立たなくなる。

 リーヴァルティは恐る恐ると、一人では出歩けないか弱い少女のように振る舞う。
 無力な獲物に見えるよう、誘惑の呪詛を防具に施し改造する。
 数m先も見えない闇にあって、『美味しい獲物』としての存在感を遺憾なく放つ。

 『3人』で歩いていると夜霧に紛れて二人の女性が並んで歩き、ゆっくりと歩いてくる。
 暗視でも、霧による視界不良はどうにもならない。
 かつ、かつと、靴音だけがいやに響き、やがて女性とすれ違う。
 その瞬間――。

「……タネの割れた手品ほど、つまらないものない」
「飛威、あんまりやり過ぎないようにね」
 既にグリモア猟兵の予知と、他の猟兵達の遭遇した情報は共有されている。同じやり口は通じない。
 リーヴァルディはすれ違い様の奇襲を見切って足払いで転倒させる。
 飛威もまた近接戦闘は得意とするところだ。
 少し後ろに控えていた眞白が不意打ちを見切って、反撃を命ずる。

「……この女性達も、一般人みたい」
 リーヴァルディは倒れた女性に跨り、怪力任せに抑えつけてナイフを手放させながら、縄を取り出し縛り上げる。
 飛威も手刀で昏倒させた女性を縛り上げるのを見て、上手く行ってほっとする眞白だが、悪寒めいたものを感じる。
「今、視線が……?」
 眞白が周囲を見渡し警戒するが、この夜霧に潜まれれば見つけ出すのは困難だ。
 更にもし此方を伺っている気配が狙っているのが、『自分達ではない』とすれば――余計に危険だ。

「実行役は二人確保できた。自警団に引き渡さないと」
「……ん。この人達も、危ないかもしれない。すぐにここから離れよう」
「お願い、飛威。丁重に運んであげてね」
 殺人鬼に失敗した彼女達を始末する必要があれば、それを厭うことはないだろう。
 眞白は飛威に二人の女性を背負わせ、リーヴァルディが『常夜の鍵』で眞白達を常夜の世界に招く。
 霧の中に消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雛菊・璃奈
自身を囮に誘き寄せを慣行…。

また、自警団や商店、路地裏に住む人々等、外で情報を持ち得そうな人達から目撃情報や発生現場、年若い女性以外の犠牲者の傾向等、入手してない情報を収集…。
怯える人達には少し力を発現して必ず解決する事を誓うよ…。

得た情報から、比較的狙われ易そうな場所、格好で夜霧が出るのを待つ…。
不意打ちの対策に【オーラ防御】を使用し、【見切り】で周囲の空気の流れを観察…。空気を全く動かさずに不意打ちなんて不可能だしね…不意打ちの空気の流れに反応して即座に【妖剣解放】発動。【武器受け】【カウンター】【呪詛】魔剣アンサラーで反射し応戦するよ…。

「待ってたよ、切り裂き魔…。貴方はここで止める…」


イザベラ・バスカヴィル
【WIZ】

夜霧が出る頃合いを計り、人気のない裏道を歩く
被害者は若い女性とのことだが……さて、私で務まるかどうか。

路地近くに人がいるようなら事件の調査をしていることを伝え、表通りや家に向かうように伝える
特に若い女性には

囮として路地裏を歩く
抵抗できない風を装いつつ歩くか
「……なかなか、難しいが」
慣れない雰囲気を出すことにそう呟きつつも囮として動く

気配が現れ、不意打ちを受けそうな時にはリザレクト・オブリビオンで死霊を呼び出し攻撃を防ぐ
「貴様が切り裂き魔か……会えて嬉しいよ」
冷笑を浮かべ
「殺した者たちへの懺悔を済ませろ。私が、貴様にとっての死神だ」



 幸か不幸か、路地裏に住む人がいるような町ではなかった。
 あるいは、真っ先に犠牲になっていたか――と過った考えを振り切る。

「私達はこの事件を調査している。良ければ情報を貰えないか?」
 巡回していた自警団に声を掛けられたイザベラが、逆に問いかける。
 狙われる可能性の高い女性二人に渋る自警団だったが、その力を見せた璃奈がより詳しく情報を聞き出す。
「……犠牲者の共通点、目撃情報に、発生現場、何でも良い……教えて欲しい……」
「犠牲者は、10代から20代の女性が主だな。一番若くて15、歳を重ねた者だと34歳の者もいた」
「それならば、私にも囮役が務まりそうだな」
 それを聞いていたイザベラが頷く。
 襲われるのは10代だけ、などであれば釣られないという懸念は拭えた。

「職種は酒場の給仕や、娼婦が多いが、仕事柄夜に出歩くからな。あとは現場だが……」
 自警団は町の見取り図を見せながら、遺体が発見された場所に印を付けてくれる。
 名前、順番、場所、出身地……そう言った『殺人ルール』のようなものは見出せない。
 強いていえばこの町に住む者で、この町の中で起きている、ということぐらいか。

「……殺せる者を殺してる、だけ……?」
「後はやはり、夜霧が出た時ってぐらいか。しかし最近じゃ町のどこでも夜霧が立ち込めるからな……」
 無差別であれば絞り込むのは難しいが、その言葉で一つ気付く。
「待って……元々、霧が出ない場所もあった……?」
 本来、霧は自然現象であり流動的な物だ。
 町中であれば、出にくい場所がある。
「ああ、教会の傍とかな。俺達は子供の頃から住んでるが、あの辺には滅多に霧なんて出なかった」
 男が指差した場所には、事件が起こった印がいくつもつけられている。
 自然の霧が出にくい場所に出るのであれば、『人為的な霧』である可能性は高い。
 霧の中全てを探し回るよりは確率は高いだろう。
 暗中模索の中に、光明が見えた。

 イザベラと璃奈は、路地裏を歩きながら共に向かう。
 霧が出にくい場所……そう言われたはずの場所に近づくほどに、夜霧が濃くなっていく。
 二人は自分達を囮とするべく、殺人鬼を誘うように振る舞う。
「……なかなか、難しいが」
 戦場を渡り歩いたイザベラであればこそ、抵抗できないか弱い女性のように……というのは少し難しかった。
 周囲を警戒しつつ、無警戒に振る舞う……慣れない上に難しい振る舞いにぼやく。

 教会に近づき、一層濃い霧の中ひんやりと肌寒い冷たさが襲う。
 殺気とも、敵意とも、獲物を狩ろうとするものとも違う。
 だが、確実に『何か』がいる。
 霧が揺らぐ。その空気の流れは、ただの風だった。
 ただの風だったが――。

「っ……!」
「おや? 気付いたのですか」
 咄嗟に振り返った璃奈とイザベラの背後に、それはいた。
 まるで『最初からそこにいた』かのように。
 鳥面のような仮面、ペストマスクを付けた殺人鬼が夜霧の中にひっそりと佇む。

「貴様が切り裂き魔か……会えて嬉しいよ」
 イザベラは冷笑を浮かべ、死霊の騎士と蛇竜を召喚する。
「殺した者たちへの懺悔を済ませろ。私が、貴様にとっての死神だ」
「待ってたよ、切り裂き魔……貴方はここで止める」
 璃奈は妖刀の、そして切り裂き魔によって殺された者より預かった怨念を纏い、魔剣を突きつける。

「なるほど、なるほど。嗚呼、ようやくお話ができるのですね」
 常識の埒外の存在、オブリビオン。
 ただただ興味深げにガラスで覆われた冷たい仮面の眼で、二人をじっと観察する。
 不意打ちするでもなく――だからこそあまりにも不気味だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『切り裂き魔・ナイトフォグ』

POW   :    ジェノサイド
【コートに仕込んだ隠しナイフ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ミスリーディング
【無数のトランプ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ミスディレクション
自身が装備する【ナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鈴・月華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 教会の前にオブリビオンが現れた。
 その知らせは迅速に猟兵達に伝えられ、一戦交える前に駆け付けることができた。
 集まった猟兵を歓迎するように、コートのオブリビオンは慇懃にお辞儀をする。

「『こんばんは』と、言っておきましょう。こんなにも美しい夜なのですから」
 『殺人鬼』、『切り裂き魔』、『夜霧』……ナイトフォグは両手をあげて天を仰ぐ。
 暗雲の隙間から覗く半月が、夜霧に透けて見える。
 だが暗闇を……いや、この霧を照らすには至らない。

「『初めまして』と、名乗るべきでしょうか。あるいは、私を知っておいでで?」
 鳥面のようなペストマスクを付けた殺人鬼。
 男とも女ともつかない中性的な声色。

「『お逢いできて嬉しいです』と、伝えたかったのです。美しい方々。死者の為に祈る方々。心清らかな方々。あなた達はこの夜にあって、とても眩い」
 殺人鬼は祈りを捧げるように両手を組む。
 理解不能――理性的にも聞こえる言葉の節々から滲み出る狂気に、本能的に感じ取れる。

「『さようなら』と、告げねばなりません。何れにせよ出逢いは別れ。別れは死です。とても悲しい事に」
 糸の切れた人形のように腕と首の力を弛緩させ、だらりと手を下す。

「ですが安心してください。この夜霧の中、私は『常にあなたの傍』にいます」
 目の前に『それ』はいたはずなのに、一人の猟兵の耳元で声が聞こえた気がした。
 奇襲を警戒して慌てて避けるも、殺人鬼は同じ場所で変わらず佇む。

「では『語らい』ましょう。私があなた達と別れるのか。あなた達が私と別れるのか。それが決まるまで存分に」
 これからゲームでも始めるかのように、トランプをくるくると手の中で躍らせる。
 それが彼、あるいは彼女にとっての戦闘態勢ということは明白。
 この町を包む夜霧を晴らすべく、猟兵は武器を構えた。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。語らう必要なんてない
道化芝居に付き合うつもりも毛頭ない
今夜の狩りの獲物はお前よ、ナイトフォッグ

改造した防具を反転
相手の第六感に訴えて存在感を消す呪詛を起動
さらに自身の生命力を吸収して魔力を溜めておき、
【影絵の兵団】を常に召喚できるように待機状態に

敵の攻撃を見切り回避優先で行動
防げない攻撃は瞬間召喚した影兵を盾にする
さらに怪力を瞬発力に変えて敵の懐に潜り大鎌をなぎ払い、
瞬間召喚した影兵達で追撃して傷口を抉る2回攻撃を行う

…少しずつ切り刻まれる気分はどう?
お前の流儀で屠ってあげる。…逃げられると、思うな

最後に教会へ向かい遺体に挨拶を
…もう次の犠牲者が出る事は無い
街を覆う霧は晴れたのだから…


雛菊・璃奈
…あのナイフを操る二つの技…わたしの能力(unlimited)に似てるのが凄く不愉快…

敵の技に対応し黒桜を使用…。気づかれない様に体内で【呪詛】を練り込む…。
敵の攻撃は黒桜の呪力放出し【なぎ払い】【衝撃波】【2回攻撃】で迎撃…。
何回か黒桜で撃ち合い、敵の動きと攻撃タイミングを観察…。敵の攻撃タイミングを【見切り】、自分から攻撃の中に突進。寸前で【武器受け】【オーラ防御】【カウンター】アンサラーに持ち替えて反射し、隙を作ると同時に【unlimited】を瞬間展開。練り込んだ【呪詛】を付与して全ての【unlimited】を一斉掃射で叩き込むよ…!

殺して来た人達の報いを受けろ…!

※アドリブ歓迎


プロメテ・アールステット
【】:ユベコ
『』:技能
他の方と協力する

――貴方が元凶ですか
初にお目にかかりますね、夜霧に潜む狂気よ
我が名はプロメテ
美しさも清らかさも、語る言葉すら持ち合わせておらぬ人形の身
別れに喜びを見出す貴方の言葉を理解はできないし
私の言葉を、貴方はきっと理解できない

なれど…ただの人形にも、これくらいはできるでしょうか
『戦闘知識』『武器受け』を駆使して敵の攻撃に対応
【ミレナリオ・リフレクション】を発動
敵の攻撃を相殺して、他の方が攻撃できる隙を作ろう

さあ、どいて貰おうか
私にはまだやることがあるんだ
こんな場所で眠るつもりはない

貴方を倒し、彼女の妹を探す
そしてこのブローチを渡すのだ
霧に囚われた悲劇の幕を下ろす為に


神元・眞白
【WIZ/アドリブOK/絡みOK】
ようやく目的。元は断って別れを済まさないと。さようなら。
目の前に在るものだけが真実でないの……かも。霧…?
仮説は信じすぎるのも怖いし、仮定は仮定。杞憂ならいい。

飛威に前を任せて少し観察。話しながら時間を少し稼ごう。
もしかしたら、だけどアレは私や飛威と一緒?見えない糸、本体は霧のどこか。
核を探して点を突く。感づかれると駄目だし、フェイント混ぜるぐらいに・


泉亭・霧千代
はは、トランプと来ましたか、成程なるほど。
あたしの前で紙とはこれまた、余程刃物(あたし)をお望みの御様子らしい、いいでしょういいでしょう、そこまで望まれちゃ芸妓の名折れ…

―【練成力カミヤドリ】

練成した唐鋏がひの、ふの、17本周囲に同時展開、自前の鋏も合わせ全部の鋏を駆使した[早業]で切り裂かれるよりも早く飛交うトランプ滅多切り…鋏の[アート]、魅せてやりましょ。

普通の芸ならそれで拍手喝采ですが…『刃物』と『切裂魔』の語らい、そんな訳にもいきませんか。
奴さんの攻め手を凌げば、そのまま切刻んだ紙片や飛交う十七本の鋏を【目潰し】に敵に忍び寄り、そのまま[暗殺]…切裂き、[傷口をえぐ]ってお粗末様…と


シエラ・アルバスティ
足の腱には猟兵バッグからプロテクター着用

「やぁやぁやぁー! 初めまして殺人鬼さん! 良い夜だね!」

笑顔で拍手しながら元気よく挨拶して現れるも一転して【悲哀のカレンデュラ】発動

「語る? 必要、ない。あなたは、消える」

冷徹に徹し効率と確実性のみを求める
『雷糸』も床や壁に張り巡らして敵を逃さない、触れれば堕ちる死の鳥籠を作る
ゆっくり近づきながら【風の声】で敵の気配を察知しつつ攻撃を受けつつ構わず敵の体を触れるか掴む

「くれてあげる、滅びの一撃を」

そして捨て身の一撃の【風ノ爪痕】で殺人鬼を崩壊させる

犠牲者たちは絶望に沈む訳でも無く、あなたを怨む訳でもなく、私を心配してくれた
この相手は効率的に消そう


仁上・獅郎
随分、言葉遊びがお好きなようで。
しかし舞台に留まる奇術師は三流ですよ。
夜霧にメスを入れ、病巣を切り出しましょうか。

しかし成程、事前情報通り、複数人を相手取る豊富な攻撃手段。
更にはこの霧で同士討ちしかねないと。ならば、事は慎重に。
[聞き耳]を立て、霧中での動きを[見切り]、[第六感]を働かせ、
多少の傷は[激痛耐性]で無視し、確実に殺人鬼の姿を捕らえます。
そしてスリーブガンの[クイックドロウ]……を、[フェイント]に。

[高速詠唱]、顕現するは炎の邪神の欠片、全て等しく焼き焦がす火。
霧もナイフもトランプも[なぎ払い]、ソレに[捨て身の一撃]を。
歩き回る過去の影法師には、少々眩すぎますかね。


春霞・遙
私も逢えて嬉しいですよ。病魔のごとく無差別に人を殺すあなたを直接止める手伝いができるんですから。

お味方を信じて真の姿にはならない。
霧を晴らすほどの明かりになるかはわかりませんが、【生まれながらの光】で周囲を照らし傷ついた味方を癒す。
「聞き耳」「情報収集」「追跡」で敵の攻撃の気配を察知して「援護射撃」「クイックドロウ」で撃ち落とす。
切り裂き魔が近くに現れるようならかつてペスト医師が用いたという木の杖で「なぎ払い」、霧を「吹き飛ばす」。


イザベラ・バスカヴィル
【WIZ】
リザレクト・オブリビオンを使い
相手の攻撃は蛇竜の群れで相殺 その間に生まれた隙を逃さず、死霊兵による攻撃を行う

「貴様が殺した人たちは、痛みと死の恐怖に支配されていた」
殺人現場で受けた痛みを思い出す
「貴様も過去のものにされて、その姿となったのだろうが、理不尽な死を与える理由にはならないよ」

傷を受けたら、なるべく前に出すぎないように動き、仲間との連携も心がける

相手を追い詰め始めたら両手に持つ大鎌での攻撃も行う
「言ったはずだ。私が、貴様にとっての死神だ、と」

決着がついたら、最後は死者を弔う
「この街の夜霧が晴れればいいものだ」



●夜霧の殺人鬼
「――貴方が元凶ですか。初にお目にかかりますね、夜霧に潜む狂気よ。
 我が名はプロメテ」
 相手は言葉を交わすに値しない狂った殺人鬼。
 だがプロメテはその名を名乗る。
「さあ、どいて貰おうか。私にはまだやることがあるんだ。こんな場所で眠るつもりはない」
 亡き彼女の霊に誓った通り、眼前の焼き尽くす為に。
 感情のない人形と自称するプロメテはその身と、無表情な瞳に炎を滾らせる。

「やぁやぁやぁー! 初めまして殺人鬼さん! 良い夜だね!」
 シエラは明るく朗らかに、ぱちぱちと拍手をしながら近づく。
「語る? 必要、ない。あなたは、消える」
 一転、見せ掛けの明るさを仕舞い込み、冷たさを取り戻し構える。 
 迂闊に近づくことはしない。
 下手に動けばナイフが放たれる――風の声がそう囁く。

「随分、言葉遊びがお好きなようで。しかし舞台に留まる奇術師は三流ですよ」
 獅郎は目を光らせながら、夜霧を見極める。
 隣り合う仲間がようやく見える程度の濃い霧。同士討ちの危険は高そうだと判断する。
「……ん。語らう必要なんてない。道化芝居に付き合うつもりも毛頭ない」
「ええ、私が『話し』かけても皆応えてはくれませんでした。ああ、勿論『歓声』はございましたけれど」
 リーヴァルディの拒絶の言葉に、殺人鬼は意味ありげな仕草で、言葉を繰る。
 挑発……否、言葉の一つ一つ、仕草の一つ一つが、注意を逸らす奇術師の技巧。
「存分に『言葉』を交わしましょう、皆さんもその用意は十分なようですし」
「私も逢えて嬉しいですよ。病魔のごとく無差別に人を殺すあなたを直接止める手伝いができるんですから」
 遥は真の姿にはならない。優しい町のお医者さんとしての姿まま。
 恐怖と絶望を伝染させる切り裂き魔は、得た病魔そのもの。
 それが医師の用いた仮面を被るとは、何より『医師』として許し難い。
 その聖なる光はより眩く輝き、闇に黒く染まった夜霧を明るく照らす。

「貴様が殺した人たちは、痛みと死の恐怖に支配されていた」
 イザベラは殺人現場で受けた痛みを思い出す。
 死を拒絶しながらも殺され、過去とされたもの。
 ――あるいは、この殺人鬼もそうだったのだろうか。硝子玉に隠れた無機質な瞳を見る。
「貴様も過去のものにされて、その姿となったのだろうが、理不尽な死を与える理由にはならないよ」
「嗚呼、やはりお優しい人だ。ですが生憎、私はそう……恐らく生前から『こう』なのですよ」
 切り裂き魔は胸に手を当て、祈るように俯き、顔を上げる。表情が見えない分、オーバーな動作だ。
 そんな意味のないような動作の直後、無防備なイザベラに十数本のナイフが迫る。
 が、それは蛇竜が弾かれる。
「『別れ』はいつだって悲しく、理不尽なもの。だから『本を閉じる』なら自分の手でしたい。そう望むことはおかしいでしょうか?」
「……狂人の戯言か。ならば、言葉は不要。貴様には祈りも要るまい。もう一度過去に還してやろう」
 イザベラの死霊兵が斬りかかるが、夜霧に溶け入るように消える。
 そして瞬時に無防備なイザベラへの現れる奇襲。だが蛇竜の守りは固く阻み、反撃を試みる。
 だが、霧の中の再び消える。なんとも不気味だ。

「……目の前に在るものだけが真実でないの……かも。霧……?」
 その様子を見た眞白は思案する。
 眞白が操る飛威のように、今姿を見せているのはただの人形であり、この霧の中に本体を隠しているのだろうか。
 言葉と態度と仕草を偽り、読み違えさせるのが奇術師。ならばあり得なくはない。
「……仮説を信じすぎるのも怖いし、仮定は仮定。杞憂ならいい」
 眞白は殺人鬼の言葉を思い出す。
 狂人めいた意味のない言葉の中に、真実を隠すのは定石。語った言葉は性格に記憶している。
 殺人鬼の『言葉遊び』が『謎掛け』ならば、その解答はクリティカルな物のはず。
「飛威、お願い」
 考える時間を稼いで欲しい、と告げる『令嬢』の言葉に、『世話役』は頷く。
 縦横無尽に迫り来るナイフから守られながら、殺人鬼の様子を観察する。

「今夜の狩りの獲物はお前よ、ナイトフォッグ」
 リーヴァルディがその存在感を消して夜霧の中に潜む。
 殺人鬼はリーヴァルディのほうを見ずに、天を仰いで両手を広げる。
「私は言いました。『常に貴女の傍に』と。この夜霧は私の腕。如何に気配を殺そうと、『見えています』」
 コートの裾から無数にばら撒かれたナイフが、無差別に迫り来る。
「(……言葉はフェイク。見えてない)」
 ロクに狙いも付けてない、索敵の為のクリアリングだろう、と回避しながら判断する。
 ならば『存在感』を消す呪いは、ただ気配を消すだけに留まらない。
 存在すら忘れてしまえば、決定的な一撃を放つのは容易い。気取られぬよう、絶好の機会を伺う。

「……あのナイフを操る二つの技……わたしの能力に似てるのが凄く不愉快……」
「はは、トランプと来ましたか、成程なるほど。あたしの前で紙とはこれまた、余程刃物(あたし)をお望みの御様子らしい」
 璃奈と霧千代が、殺人鬼が振るう技に眉を顰める。
 無数の刃と、紙片を操る能力。自らの象徴とも言える技が似ているのは二人とも気分が良くない。

「いいでしょういいでしょう、そこまで望まれちゃ芸妓の名折れ……」
 放たれた無数のトランプが、霧千代に迫る。
 それを悉く切り落とすのは自身の化身たる鋏。その数十と七つ。
 霧千代の鋏に対し、乱雑にばら撒かれただけのトランプ。
 切り払うのはあまりにも容易。
 無数に細かく切られたトランプが、紙吹雪となって夜霧の中を舞う。

「普通の芸ならそれで拍手喝采、ですが……」
「おお! 『刃物』だと思っていましたが……。ええ、ええ、貴女の一芸、私も見たいと思っていました」
「……観客が切裂魔だけというのはいやはや何とも」
「『アンコール』をお願いしましょう、是非貴女の『芸』を魅せてください。ええ、『チップ』も弾みましょう」
 まるで知っていたかのような口調は、騙りだろうか。再度舞う無数のトランプ。
 再び切り落とし、紙吹雪が舞い散るが、その中に鋼のナイフが混ざる。
 霧千代の操るものよりも倍以上の数が迫る。
 そのナイフが舞う中に飛び込んだのは、璃奈。
 トランプの影に隠れるように混ざったナイフを見切っていた。

「……――『ミスディレクション』。と行きたかったのですが、やはり素晴らしい」
「そのナイフ……随分呪いを溜めこんでるね……なら、私の十八番……アンサラー……」
 オーラを展開して迫るナイフを弾き飛ばしながら、逆に犠牲者の無念が詰まったナイフを利用し、反撃する。
 殺人鬼は更にその倍。まだ隠していたナイフで迎撃する。
 しかしそんな力量差は璃奈とて織り込み済み。
 体内で限界まで練り込んだ呪詛、そして託され受け取った想いを乗せた魔剣を呼び出す。
 その数は、百をゆうに超える。
「『unlimited curse blades』――……殺してきた人達の報いを受けろ……!」
 魔剣の一斉掃射に、殺人鬼はナイフを振るい撃ち落とすも、『夜霧』を吹き飛ばしながらその全てを阻むのは不可能。
 殺人鬼のナイフとは違い、一つ一つは緻密な制御はできない。だがその物量による面の制圧力は圧倒的だ。
「なんとも……確かに、これでは『手数』が足りません」
 その身にいくつも貫かれ呪詛を流し込まれた殺人鬼は、撃ち合いを嫌うように夜霧の中に駆けて紛れる。
 僅かに晴れた霧の外にその身を晒すのを厭うかのように見えた。

「飛威、足止めをお願い」
 確かめるように飛威に命じるが、殺人鬼はすり抜けるように動きを捕えられない。
 散々言葉を弄す殺人鬼。ならば此方の言葉にも乗ってくるかもしれない。
「切り裂き魔。『答え合わせ』をしましょう」
「ふむ」
 直後、興味深げにじっと眞白を注視する。
「あなたが言っていた『常に私達の傍にいる』。これは嘘。本当は、『霧の中にいる限り、何処にでも瞬時に移動できる』」
 眞白が『本体が別にいる』という仮説を元に、推理した解答。
 偽者や複製体にしては、強すぎる。武器を操る細やかな技巧も、操らせるレベルを超えている。
 あの殺人鬼は間違いなく本体。
 夜霧の中にあって神出鬼没、霧の無い空間に留まる事を厭うとあれば……最も考えられるのはそれだった。

「ふむふむ、ええ、ええ。素晴らしい。私の『正体』をここまで考えてくださるとは!」
「答えはいらない。この霧を払わせて確かめさせて貰う。『百器大波乱』」
 正解かどうかは確かめてみればわかる。
 眞白はこの夜霧そのものに意識を向ける。
 その求めに応じて現れた呼び出されたカラクリ人形の軍勢が、霧そのものを払う。
「はて。さて。これは困りました。手品のタネが割れた奇術師は、如何したものか」
 思案に耽る振りをする殺人鬼が霧の中に逃げ込む前に、霧千代の鋏が迫る。
 ナイフで弾かれながらも、その仮面の片眼に突き刺さる。
「あとは抉って、お粗末様……っと」
 仮面から嫌な音を立てながら、突き刺さった鋏が開かれる。
 片目を抑えてよろめく。如何にオブリビオンと言えど、片目の損傷はかなりの深手だろう。

「この『夜霧』が病魔そのものですね。では……かつてペスト医師が用いたという木の棒を振るいましょうか」
 聖なる光を放つ遥が、木の棒を薙ぎ払う。狙うのはナイトフォグではなく、『夜霧』そのもの。
 祓われた霧によって、阻まれる事なくなった癒しの光が周囲を照らし出す。
 霧の中でこそ神出鬼没であった殺人鬼だが、その身のこなし自体は際立って素早いものではない。
 遥の聖なる光を避けて、夜霧の中に逃げ込もうとするが――。

 明かりにより深まったその闇から迫るのは、平面にして実体化した総勢125もの小さな影絵の兵士。
「……少しずつ切り刻まれる気分はどう?」
 存在を消し、リーヴァルディの瞬間召喚した『影絵の兵団』。
「お前の流儀で屠ってあげる。……逃げられると、思うな」
「ふふっ、これはこれは。ご丁寧に『お返事』とは嬉しいものです。ああ、皮肉ではありませんよ。本当に嬉しいのです」
 殺人鬼が犠牲者達にしたように、その身に群がり影兵が切り刻む。
 ナイフを舞い踊らせ、撃墜していくもそれ以上に切り刻んで傷を抉る連続攻撃のほうが早い。
 そしてリーヴァルディ自らも、動きを止めた間に怪力で大地を踏み砕きながら懐に飛び込み、大鎌を振るう。

「ああ、案の定。これは『些か』拙いですね」
 強烈な一撃で吹き飛ばされた殺人鬼はたたらを踏みながらも、更に飛び退き距離を取って夜霧に紛れる。
「ええ、あなたにとっては『非常に』拙いでしょう。一旦集団から距離を取り身を潜める……そんな読みやすい定石を取ってしまうくらいに」
 そこに待ち構えていたのは、味方を巻き込まないために敢えて孤立していた獅郎。
「では早速夜霧にメスを入れ、病巣を切り出しましょうか」
 早撃ちで構えたのは袖口の仕込み銃。傷を負ったペストマスク目掛けて撃つ。
 だがそれは殺人鬼の気を散らすためのフェイント。
 今なら夜霧の中であっても、同士討ちの可能性が高いこのユーベルコード――。

「顕現するは炎の邪神の欠片、全て等しく焼き焦がす火……――『神格招来・Cthugha』」
 諸人を巻き込む、古き支配者の力を遠慮なく振るえる。
 如何に夜霧の中に溶けるように避けても、その周囲一帯を焼き尽くしてしまえば関係ない。
 彼の神の前では、焼き尽くせない物などないと知らしめる。
「歩き回る過去の影法師には、少々眩すぎますかね」
 獅郎が捨て身で放ったそれは、40m超の範囲を夜霧を悉く焼き尽くした。
 殺人鬼はその身を苛む炎を振り払いながら、帽子を直す仕草と共に、周囲に目を光らせる。
 性懲りもなく、夜霧の中に逃げ込もうとしているのだろう。

「やっぱり、霧の中でこそこそするだけしか能の無い殺人鬼ね」
 シエラは最初に出逢った女性を思い出す。
 彼女は死してなお、その身の不幸を嘆き、絶望に沈む訳でも無く。
 理不尽な死を与えた殺人鬼を怨む訳でもなく。
 彼女は『逃げて』と言った。シエラを心配していた。――自分よりも『誰かの死』を嫌った。
 辛気臭いこの世界で、それがどんなに尊い想いか。
 だから――。
 シエラは悲しまない。怒りもしない。憐れみもしない。
 シエラは冷たく感情を消し、ただ目の前にいるこの殺人鬼を、効率的に――消す。

「ああ、その無機質な目……ええ、素晴らしい。冷徹な殺意。そう、それこそ正に『狂気の一歩』なれば!」
 ぴたりと殺人鬼の動きが止まり、逃げ込む場所を探すのをやめて喜びに声を震わせる。
 ――求めていたのはそういうものだと、言わんばかりに。
 逃げるのをやめた代わりに、一本のナイフを取り出しシエラへと投げつける。
 幾重にも分身したそれは、十、二十、五十を超えるが、百には届かない程度。
 けれどその一本一本が正確に操られ、全てがシエラの身を貫かんと迫り来る。

「私はあなたの言う美しさも清らかさも、語る言葉すら持ち合わせておらぬ人形の身」
 放たれたナイフの前に、プロメテが立ち塞がる。
 別れを悲しいと言う言葉は『偽り』だ。別れに喜びを見出す殺人鬼の言葉の裏を読み取りつつも、理解はできない。するつもりもない。
 プロメテがいくら言葉を紡ごうと、殺人鬼はきっと理解できない。

「なれど……ただの人形にも、これくらいはできるでしょうか。……『ミレナリオ・リフレクション』」
 プロメテは飛び交うナイフを、夜霧の中で何度も見た。
 夜霧に阻まれた視界で、全力を見たのは初めてだが――。
 ポケットに大事にしまったブローチが、ころりと揺れる。
「貴方を倒し、彼女の妹を探す。そしてこのブローチを渡す……。再現対象:ナイトフォグ――『ミスディレクション』」
 プロメテが放つのは、百には届かないが、五十を超えるナイフ。その一本一本を、精密制御する。
 本来猟兵には扱いきれない、オブリビオンの力の全てを、限界を超えても正確に再現してみせる。
 全く同数、同質のナイフがぶつかり合い、悉く撃ち落とされていく。

「ふふ、ふふっ……自らを盾となり、身に余る力を振るう献身……それも私を倒すのではなく、死者の願いを叶える為にですか……ああ、やはり美しい――」
 殺人鬼はナイフの軍勢を相殺し切って膝をつくプロメテに、驚愕でも追撃ではなく、感嘆の声をあげる。
「私を忘れてくれるなよ。言ったはずだ。私が、貴様にとっての死神だ、と」
 追い詰めたその隙に、イザベラが自らその鎌を振るう。
 ナイフで防御し……動きを止める。
 足の止まったその一瞬。シエラと殺人鬼には、十数mもの距離がある。
 だがシエラにとっては、その一瞬で十分。
 最速、最短、最効率で、一直線に、全力で駆ける。

「くれてあげる、滅びの一撃を。……――Erase」
 シエラを拒むようにナイフが、駆け出した脚の腱を斬ろうと舞う。
 だがそんなものは、とっくに対策している。
 彼女が『教えてくれた』のだから。
 懐に入り込んで掌を添えて、『夜霧』を事象崩壊させる。

「元は断って別れを済まさないと。『さようなら』」
「――ああ。やはり。『別れる』のは私だったようですね。
 今宵は良き『語らい』でした。ええ、一方的に『話しかける』のは、寂しいものです。では『また逢いましょう』」
 眞白の別れの言葉に、応えるようにかくりと小首を傾げる。
 殺人鬼はぼろぼろと崩れ落ちながら、黒い塵となって消滅していった。

●夜霧は晴れて
 イザベラが、確かに骸の海へと還り消滅した事を見届けながら、町を振り返る。
「これで、この街の夜霧が晴れればいいものだ」
「ええ、大丈夫。……もう次の犠牲者が出る事は無い。町を覆う霧は晴れたのだから……」
 リーヴァルディが頷く。少し高台に位置するこの教会からは町がよく見えた。
 聖なる光で祓われ、そして炎で焼き払われた夜霧だけではない。
 町全体を包んでいた夜霧が、徐々に消えていくのが見渡せた。
「ん……これで、願いを叶えてあげられた……」
 璃奈の魔剣から、受け取った想いが消えていくのを感じる。
 死者の未練が遂げられた。きっとそれは――次の犠牲者を出さないで欲しいという想い。

 半月が雲間から顔を出し、仄かな月明かりが照らす。
 道の様々な場所に小さな明かりが照らしている。
 力無いただの人間であり、無力さを知りながら、この町を守ろうとする自警団のものだろう。
「彼らの心は、死んでいないようですね。自ら治ろうとする意志を持つ者であれば……心を生き返すよりは簡単でしょう」
「ええ、病魔が取り除けば、あとはゆっくり療養するだけ。じきに元気になります」
 獅郎と遥は小さく微笑む。
 この暗い世界にも、絶望に何度挫けそうになっても、負けない人々がいる。
 この町に絶望と死ををまき散らす病魔は、治療された。

「はてさて。切り裂き魔事件、無事解決したとあれば……鋏(あたし)の芸を披露するのも、一興でしょうか。
 明るく宴会とはいきませんが、披露する相手が切り裂き魔だけというのも味気ないもんです。縁切り鋏、ってな具合で一つ」
 霧千代の芸は、きっと慰めとなることだろう。
 死者を悼み悲しんでも、また立ち上がる為に。

「……私も、このブローチ、返さないと」
 プロメテはブローチをポケットから取り出す。
 真鍮が月明かりに照らされ光る。
 プロメテの手により、元通りに……とはいかないが、綺麗に拭われ、治された。
 力をくれたように感じるのは、感傷だろうか。
 否、感情の無い自分にそんなものはないはず、と首を振る。
 あるべき場所に返す為、そっと手で包んで大事にしまい込んだ。


 教会に弔いの祈りを捧げる者がいた。
 遺族に、遺品を届ける者がいた。
 町の人を安心させるべく殺人鬼を倒したと伝えに行く者がいた。
 目的を果たした今、猟兵は帰還までの思い思い過ごす。

 霧に囚われた悲劇の幕は、希望を灯す猟兵達の手によって下ろされた。
 夜霧の晴れた町を、半分の月が優しく照らし続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月27日
宿敵 『切り裂き魔・ナイトフォグ』 を撃破!


挿絵イラスト