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貴様をシャンプーしてやろうか! ロードトゥリーダー!

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●白いマットのサバンナに。
 四角マットを若い雄が駆け抜ける。まだあどけない顔つきに反して侮れぬ筋肉質な体は、体に刻まれた無数の傷痕と共に威圧感を醸し出す。
 だが、それでも若さは残る。
 彼を圧倒する一撃に汗を飛沫、血が流れ、遂にはマットへ倒れ込む。
 立ち上がろうと足掻くも力及ばず、その体に限界を迎えた男を見下ろすのは、何を隠そう猟兵である君自信だったのだ。

●警戒せよ雷神群像。
 自分専用にこさえた握り飯。具もなく塩だけで味付けされているのは物足りないが、大門・有人(ヒーロー・ガンバレイにして怪人・トゲトゲドクロ男・f27748)は大口を開けてかぶりつく。
 視線の先にやって来た猟兵の姿を認めて、慌ててペットボトルに手を伸ばすと液体を啜る。
 もう少し落ち着いてもええんよ?
 胸をどんどか叩いて一呼吸。リーゼントが乱れていないかチェックまで済ませやがって咳払い。
 誰がそこまで許可したのか。
「大門・有人だ。急な話で悪いが、アポカリプスヘルの若き指導者を誕生させるため、力になってもらいたいんだ」
 アポカリプスヘル。オブリビオンにより文明の崩壊した世界。
 今現在、猟兵らの活躍によって各地で文明復興の芽があるものの、その道程はまだ先だ。
「そんな世界で、地下に閉じ込められてしまった拠点があるんだ。
 長い間を閉鎖空間で過ごし、文明崩壊により助けもなければそいつらも、文明的に退化した生活を送っている」
 原始的な生活だ。しかし地下は広く、地上に通じる排気孔が幾つもあることから生き残る備えはあったようだ。
 しかし。
「所詮は閉鎖空間、そこに未来はない。将来を考えて脱出口を探す人間がいてな、そいつを助けて欲しいんだ」
 その者こそ指導者の素質を持つ新たなリーダー。
 だが所詮は若く経験も未熟。故に新たな指導者としての信頼を得ていないのが現状だ。
「この拠点では新たな指導者を選出するとき、なんとプロレスで決めるそうだぜ?」
 つまり、権力は力で勝ち取るものだと、そう言うのだ。
「指導者に導いて欲しいのは開拓派、若獅子と呼ばれるネッコ・ゴロニャンコ。
 対立候補は今ある資材を平等に分配して終わりにすべきとする平等派、人望篤きおネエ、テーナガ・カマキリャーだ」
 難しい事はない。どちらかを対戦候補として選び勝つか負けるかし、ネッコが強いと周りに思わせれば良いのだ。
「といっても演技下手な奴もいるだろうし、うっかり殺っ──ヤっちゃう奴もいるだろう。
 ま、そんな時は勝者の特権、指導者となることを辞退してネッコを指名すればいい」
 とは言え何度もネッコを倒してしまえば立ち上がれず、テーナガと闘う事になってしまうだろう。
 実力さえ示せばいいので、猟兵同士で闘い、勝者が指名するのもありだ。
 内容は分かったとする一方で、疑問を呈する猟兵たち。
 平等派は、なぜ死ぬと分かって先へ進む事を拒むのか。
 当然の問いに有人は腕を組む。
 彼らも二大派閥に別れる前に、地道な探索や部屋、崩れた場所の確認を行い、おそらく外へ繋がっているのではという部屋を見つけている。
 その矢先の事だ。
「新たな食物庫、豊富な保存食、先への扉。しかしそこに居たのはオブリビオンってこった」
 その威光を目の当たりにした人々は自らの命を救うため、神とも目されたオブリビオンを殺してでも進むことを、そして神を殺すことはあり得ないとその神域を侵さず、命尽きるまで平等に生きようとする平等派に別れてしまったのだ。
 これもまた、文明の後退による犠牲であろうか。
「このアポカリプスヘルには、生きる意志を持った人間が多く必要だ。平等派の意見なんて論外だ、開拓派の若獅子ネッコ・ゴロニャンコの手助けをしてくれ」
 有人の言葉に当然と頷く猟兵たち。地上では農業も盛んに行われるようになり、人手も重要なのだ。月並みな台詞だが、希望の灯火を消させる訳にはいかない。
 問題は神とされるオブリビオンだ。どれほどの力を持った存在なのだろうか。
 情報を求める彼らに有人も神妙な顔で、足下から取り出した包みを開く。
 『ノミをノックアウト! あなたのニャンコに薬用シャンプー!』と記されたボトルがそこに、は? ノミ?
「そう、敵はノミ型オブリビオンだ」
 有人の言葉にどっちらけた猟兵たち。しゃーないね。
 その様子に机をバンバカ叩く有人。落ち着け改造人間。
「おまーら油断してんじゃねえ! こいつはとこぞの科学者に改造されて生体ヴォルテックエンジンとかいうのが内蔵されてんだ。
 一分の虫にも百億ボルト、単体で落雷を発生させるそこらのオブリビオンより危険な奴なんだぜ!」
 わーお絶望的ー。
 大量に跳ね回るノミが落雷を発生させればどうなるか。ユーベルコードを持たない人間がどうにかできる事態ではない。
 下手に刺激すれば拠点の二桁でも一日で壊滅させられるだろう。
 が、運はこちらの味方だ有人はにやりと笑ってシャンプーを示す。
「多少知恵はあるがそれ以外はただのノミだ。寄生先の猫を捕まえてシャンプー漬けにしちまえば、後は勝手にの垂れ死ぬさ」
 さすがにオブリビオンも寄生先は攻撃しないようだ。
 この猫は現地出身でオブリビオンではない。おそらく地上から迷い混んだのではないかと有人は見当つける。
「ま、簡単、と油断しちゃマズい相手だが弱点はあるってこった。
 気をつけてやってくれ」
 集められた資料には足で痒そうに耳の後ろを掻く三毛猫の姿。
 その首輪にされたプレートには『第803略式部隊所属』の文字。
 あれれ? もしかしてこいつ普通の猫じゃなくね?
 猟兵たちは一抹の不安を胸に、希望の芽吹きが始まった大地へと向かう。


頭ちきん
 頭ちきんです。
 アポカリプスヘルでプロレスしてニャンコをシャンプーして下さい。
 シャンプーの使用可能期間は一章、二章のみ。二章参加の方も使用可能です。
 それぞれ断章追加予定ですので、投稿後にプレイング受付となります。
 それでは本シナリオの説明に入ります。

 一章ではネッコ・ゴロニャンコ、あるいはテーナガ・カマキリャーのどちらか選んでプロレス可能です。
 猟兵と組むことも可能ですが、その際は互いに示しあって下さい。単独でのプレイングはネッコ・テーナガ用に書き替える可能性があります。
 とにかく勝てば指名権があるので、ネッコをフルボッコにしても構いません。テーナガを新たな指導者とする事も可能です。
 二章では特殊な訓練を受けた猫に寄生するノミ型オブリビオンとの戦いになります。
 猫を捕まえてしまえば勝利は確定しますが、目で捉えたものは百%回避するアクロバティック・ニャンコなので、上手く注意を逸らして死角から捕まえて下さい。
 上手く新たな指導者が活躍すれば、集団の支持を大きく受けることが出来るでしょう。
 三章は食物庫を抜けた先、地上での生き方を模索するため、食料の確保となります。
 指導者によっては地上進出に否定的かも知れませんので、説得する必要が出るかもしれません。

 注意事項。
 アドリブアレンジを多用、ストーリーを統合しようとするため共闘扱いとなる場合があります。
 その場合、プレイング期間の差により、別の方のプレイングにて活躍する場合があったりと変則的になってしまいます。
 ネタ的なシナリオの場合はキャラクターのアレンジが顕著になる場合があります。
 これらが嫌な場合は明記をお願いします。
 グリモア猟兵や参加猟兵の間で絡みが発生した場合、シナリオに反映させていきたいと思います。
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第1章 冒険 『こんな世界だからこそっ!』

POW   :    相手の攻撃を受け止め、豪快な技を決める!どうりゃあああっ!

SPD   :    軽やかに相手の攻撃をかわし、華麗な技を決める!ひえぇえーい!

WIZ   :    レフェリーの目を盗んで悪どいことをするぞ!あきゃきゃきゃきゃ!

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●睨み合うは両雄。
 若さと勢いに溢れた男、ネッコ・ゴロニャンコ。
 老獪な笑みを見せるおネエ、テーナガ・カマキリャー。
 腰布だけで立つのは白く四角のマット、睨み合う二人は思いの丈をぶつけていた。
「このまま死ぬのを待つなんてゴメンだ。神様がなんだ、俺たちは未来に進むんだ!」
「あんらー、ネッコちゃんたら気張っちゃって。でも自然の摂理に逆らうのは良くないワ。その結果、皆滅ぼされちゃうかも知れないのよ!」
 一歩も譲らない両者。ネッコは奥歯を食い縛って高身長の実力者テーナガへ吐き捨てる。
「たかが猫を神様とかそれで霊長類のつもりかよ」
「雷出すのがただの猫なワケないでしょ!?」
 ばちこーん☆
 振り抜いた右のビンタがネッコにヒット!
 続け様の往復ビンタはしかし、空を切るのみ。視界から消えたネッコの早業にテナーガの背筋を冷たい汗が伝う。
(アテクシのお目々でも捉えられないなんて──、やるようになったわネ、ネッコちゃん!)
 だが甘い、甘いのだ。
 視界から消えるのは魔法ではないあくまで技術。ならば考えるは下。超低空タックル。
(アテクシは塩漬けオハギと呼ばれたゴリゴリのレスラーを下した新指導者候補ナンバーワンなのよっ!
 ネッコちゃんのタックルひとつ、華麗に潰して見せるワッ!)
 二列のモヒカンを熱気に揺らし、足を引き視線を下げ、タックルに備えたその刹那。
 視線の先にぐったりと倒れたネッコの姿。
『ダ、ダダダダ~ウン! テナーガの張り手一発! 弱すぎるぞネッコ開拓派代表ーっ!』
(エーッ!?)
 心の解説はデス・ノボリ、そんなジンクスをも吹き飛ばす圧倒的なネッコの弱さに口をパクパクさせるおネエ。
 あの、これ本当にネッコをリーダーにしたほうがいいんですかね?
「ンもうっ、なにやってるのヨ! 早く担架をお出しッ!」
 テーナガコールが巻き上がる中、貧弱チャレンジャーをリングから追い出すテーナガ・カマキリャー。
 新リーダーこの人で良くね?
 しかしその思想は後退的なもの、新たな希望を求めるアポカリプスヘルには障害となる思考なのだ。
「さ、挑戦者はもういないのかしラ? アテクシはいつでも受けて立つわヨ。
 …………、ネッコちゃんは少し休ませてあげて欲しいわネ」

・代表者データ

テーナガ・カマキリャー:支持ポイント1
長い手足と二列のモヒカンが威圧的な実力者だ!

ネッコ・ゴロニャンコ:支持ポイント0
たぶん蚊のほうが強いぞ!
ララ・トゥルリ
【WIZ】
※アドリブ◎

…プロレス、とはなんだ?
ふん、ふんふん…ええと…じゃあ、気絶させて押し倒せばいいんだな…
頑張るぞ…ン、相手か…じゃあネッコ…

む、厄介だな…あちら側から近付かれる前に【魔性の女】→【破壊の聲】→【戦唄】で、バッドステータスを与えられたらいいのだが…逆に、更に早くなられたりする可能性もある…な…(でもする)

……は!近づかれたらタールで捕まえて恥ずかしいポーズで縛ればいいのでは…そしたら、我輩の勝ち…
(実行したら)いや…これはプロレスだ…(断言
なんだ…体で踏まなければ無効なのか……わかった…むぎゅー…

…あ、そういう事を決めるプロレスだったか…忘れていた…
じゃあネッコ…がんばれ…


アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎

白いマットのジャングルに今日も嵐が吹き荒れるのかしらー?
うーん、ネッコさんを指導者にできた方がいーよねー
それにこの巣の今後を考えるとネッコさんが自分で勝ち取った方がいーと思うのー
ということで、ネッコさんにはもー少しがんばって貰いましょー!
幼い妹達(幼虫)を呼んでネッコさんを操って戦うのよー
本当なら寄生するところだけど、今回は【迷彩】でごまかしながらネッコさんの手足に張り付いて直接動かすのー
さー、テーナガさんにリベンジよー
攻撃を喰らっても既に気絶しているからへーきへーき
この不死身ともいえる耐久力とアリス達の【怪力】で操った常人を超えたパワーとスピードでテーナガさんを圧倒するのー



●白いマットのジャ、もといサバンナに其ノ二。
 リングの上から周囲を見回すテーナガ。ネッコとの直接対決では彼に軍配が上がったと誰もが認め、廃材で作られた簡素な担架に運ばれていく姿が見送られる。
 続く者がいなければ、そのままテーナガが新たな代表者として決定される。しかしここで異を唱えたのは以外にも。
「ギイィィイ!」
(俺の挑戦はまだ終わってないぜ~!)
 突然と立ち上がるネッコ。会場中の人々へ響く声に死に体からの復活を、誰もが驚愕の目で見つめる。
「ギッ、ギッ、ギチギチギチ!」
(ふっふっふっ、さっきのようにはいかないぜ!)
 なんかネッコさんの声にノイズがあるんですけど?
 ともすれば頭に直接響くような声はネッコから発せられているようにも思えず、困惑する者も見える。
 だがそんなこと、おネエの前には関係なかった。
「まさかあの状態で立ち上がれるなんて……いいワ……来なさい!
 アテクシのお目々に敵うか、見せるのよその力を!」
 やってやらあ、とばかりに不安定な担架から飛び降りたネッコ。ぎくしゃくとした動きで右に行ったり左に行ったりとふらふらする姿に、観客も我慢できずに思わず駆け寄る。
「ギチギチギチ、ギィィィ!」
(ほらー、こっちでしょー)
 駆け寄った観客ことアリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)は前肢でひょいと持ち上げるとネッコをその背に乗せてリングへ突撃する。
 その姿、例えるべきはモンスターパニック映画か。思わず仰け反るテーナガであるが、彼の目に映るのはまるで美少女に肩車されて突撃するネッコの図である。
 猟兵はその存在が世界に馴染むから変な所で違和感でちゃうね。
「ちょちょちょ、何よあなた!?」
「ギッ、ギィィ!」
(セコンドでーす!)
 ぽいとリングに投げ捨てられれば、尺取り虫のような動きで立ち上がる開拓派代表。白目剥いてるね。
 何を隠そう隠れてもいないがビンタ一発で気絶したネッコ君、彼の手足に迷彩を施したアリスの妹たち、その幼虫が取りついているのだ。
 これがゾンビでもあれば直接寄生する所だが、今回は助っ人。寄生を解除して悪影響が出るような真似をせず、取りついて幼虫たちが懸命に体を振って手足を動かしているのである。
「ま、まあいいワ。再戦なら遠慮しないわヨッ!」
(へいへーい)
(ばっちこーい!)
(負けないぞ~)
(まっすぐ行ってぶっとばすー!)
 好き勝手に喋る、というよりも放たれる念話を直接受け取って目を白黒させるテーナガ。アリスは妹たちに注意しつつも、かけんと首を揺らし意識のないネッコをぬばたまの瞳で見つめる。
(グリモア猟兵さんの話だと、ネッコさんを指導者にできた方がいーよねー。
 それにこの巣の今後を考えるとネッコさんが自分で勝ち取った方がいーと思うのー)
 巣と書いておうちと読むよ!
「ギイィィイッ! ギヂギヂギヂ!」
(ということで、ネッコさんにはもー少しがんばって貰いましょー!)
(おーっ!)
 アリスのエールを受けてガッツポーズを見せる妹たち。
 テーナガは思わず鼻をすすり、好きな娘の為に頑張っているのかと感動している節すらある。人情派だなネエさん。
「とは言え、勝負をゆずるのはおネエがすたるワ。いくわよネッコちゃん!」
 ぎらりと光るは野性の瞳。
 豹の如く疾駆する痩身はリングという檻に放たれた野獣。
(白いマットのジャ──、サバンナに今日も嵐が吹き荒れるのかしらー?)
 良く我慢したぞ。
 身軽に舞うおネエに体の向きを合わせるのがやっとの幼虫たち。それを隙と見てテーナガは笑う。
「やっぱり立ち上がるたけでやっとのようネ。食らいなさい!」
 接近の勢いをそのままに、繰り出すのは振り上げた右腕を水平に変えたラリアット。
 即座に反応して防御の姿勢を見せるネッコウィズ幼虫。
 しかし、ここで華麗なターンを見せたテーナガ。ネッコの肩に措いた右腕を主軸にくるりと回転するなり、背後からその後頭部を掴むと全体重を乗せる。
「ひえぇえーいっ!」
(きゃーっ)
 地面が迫り、思わず避けた幼虫たち。結果として腕のガードは解かれネッコの顔面がまともにリングへ突き刺さる。
『で、出たぁあ、大技フェイス・クラッシャーッ! 不倫されたというテーナガの娘が旦那に食らわせた伝説の一撃!
 容赦がないぞテーナガ、それが最弱男にやることか! てめえの血は何色だーっ!?』
(…………、なんでガード解いたのかしらこのコ)
 まさかのクリティカルヒットにここまでやる気はなかったと罪悪感に蝕まれるテーナガ。
 しかし、勝負とは非情なのだ。担架を呼んでやろうと会場を見回した彼はしかし、ざわめきに変化を感じて振り返る。
 そこには、立ち上がるネッコの姿。
(……ネ、ネッコちゃん……あなた……!)
 生まれたての小鹿のように足を震わせ、顔面チマミレニ立ち上がった姿にテーナガははわわと口許を押さえる。
「ギィィ、ギイイイ!」
(立てー、立つのよネッコー!)
 リングをどんどか叩くセコンドに応えるように立ち上がったネッコ。彼を操る幼虫たちは、だいぶやり方が分かってきたとやる気を見せる。
「どうやらアテクシがアマアマボーイだったようネ。
 本気になるわよ!」
 言うが早いか正面から迫るのはダメージの抜けぬネッコを狙ってこそ。
(まあ、攻撃を喰らっても既に気絶しているからへーきへーき)
 鬼畜の所業。
 そんなアリスの思惑など知るはずもないテーナガの首へ、ネッコの両腕がするりと絡む。
(こ、これは愛しのダイゴロウがドヒョーギワと呼ばれる聖地で放ったと噂されるギロチンチョーク!?)
 さっきから出てくる人物名とシチュエーションはなんなの。
 余りにも精確かつ素早い動きに先手を打たれたおネエ。しかしさすがは次期指導者候補ナンバーワン、即座に親指を腕の内側に潜り込ませ、一瞬の隙に腕を剥がす。
「ネッコちゃん、あなたがどこでそれを覚えたのかは知らないけど、その程度!
 あなたは下、アテクシは上なのヨッ!」
 ネッコの脇を潜り抜け、ロープに背を預けた反動で加速する。
「受けなさい! これこそかけ算博士、クサッテンノより授かりし秘奥義!」
 顔の前に腕を交差する。そう、それはまるでかけ算のように。
 放たれた一本の矢の如く、空を駆ける痩身の渾身の力を込めたフライングクロスアタック。
 だが、ここで目を光らせたのはネッコでも、ましてやアリスでもなく幼虫たち。
(ガッチャ!)
「ぬぁ、ぬぁあにぃいぃい!?」
 大きく身を剃らずことで直撃を回避し、更にその怪力でもって締め上げるようにがっちりとテーナガを捕獲する。
「こ、このパワーとスピードは……はっ……?」
 セコンドでぬばたま色に瞳を輝かせる少女にテーナガは顔を向ける。
 そう、男とは単純な生き物。守るべき相手のためなら途端に強くなってしまうのだ。
 したり顔のテーナガだが全部勘違いですよ。
「そういうことだったのね。泣かせてくれるじゃ──うごおぉ!?」
(よいしょ~)
 変形水車落としともバックドロップともとれる投げ技で沈められたテーナガ。
 顔面からマットに突き刺さった姿は先刻のネッコのようだ。だが、彼が立ち上がる様子はない。
『な、なんと逆転! ここでまさかのネッコ、逆転勝利です!』
「はっ? な、なんだ?」
 最後に気付けとばかり、体を噛みつく程よい痛みに現実へ引き戻されたネッコ。
 気付かぬ内の一勝が、開拓派の実権へ一歩、近づくのだった。


●プロレスとは、プレイとは?
 開拓派の支持ポイントを上げ、そろそろリングから離れるかとしていたアリスの背を、ちょいちょいとつつく者が一人。
 ララ・トゥルリ(夢の残骸・f02036)。ブラックタールの黒い体に青の瞳を従えて、振り向くアリスに問う。
「……プロレス……、とはなんだ?」
「ギチギチギチ」
(えっとねー。相手を倒して背中をマットにつけるのよー)
 アリスの発する念話を素直に受け止めて、ふむふむと頷く。
(じゃあ、気絶させて押し倒せばいいんだな)
 頑張るぞと小さくガッツポーズを見せたララはリングを見る。
 片やマットに沈み、片や血塗れながらも戸惑いつつ勝利を受け入れている。
「……ン、相手……か。じゃあ、ネッコ」
「なんだ、俺? !?」
 ゆったりとリングに上がるララ、その姿に赤面するネッコ。
 リングに上がったとなれば挑戦者だ。ネッコはそれを頭で理解しつつも、上手く顔を合わせられないようだ。対してララは特にそのような感情はないが、先のネッコウィズ幼虫をベースとしているため彼の戦闘能力の高さを警戒しているようだ。
 ビンタ一発で沈む人ですよ?
 相手を近づけまいとしてもその狭いリングの中、慣れぬ場も合間って否が応にもララの警戒心を引き上げる。
(む、厄介だな)
 もじもじと怪しげな動きをするネッコに、近付かれる前にと自身の構成するユーベルコードを解放する。
「──ふふ……♪」
 蠱惑的な笑み。妖しい【魔性の女(メスガオ)】に誘惑されたネッコは試合中であるにも関わらず、ララから目が離せなくなってしまう。
 既にネッコに戦意は見えないが、ララは油断せずに畳み掛ける。ある意味では一流の器量と言えよう。
「さあ、堕ちて」
 響く声はその音すらも艶かしい【破壊の聲(ヴォイス・モンスター)】。リングを壊さないよう調整された音は粘性を持つようにネッコの耳から内部を犯し、その理性を破壊する。
 【戦唄(タカブルタマシイノウタ)】との合わせ技だ。
 接近するであろうネッコに対し、その足を遅める為の連携である。しかし健康な若き雄の理性を破壊すればどうなるか。
 猪突猛進するだけであろう。いかがわしい絵面になるかも知れない。
 しかし開拓派と呼ばれる新天地を目指す代表にしては以外と保守派なネッコは、全年齢対応である代表選出の義を汚すような真似はしなかった。
「…………」
『おおっとどうしたネッコ代表! 急に前屈みになって歩き辛そうになったぞ~?』
 止めて差し上げろ。
 とんでもないバッドステータスを受けて機動力がminus方向に限界突破したネッコ。
「くっ、……くうぅ……!」
 それでもちょこちょこと接近するネッコ君のガッツ。恐らくは羞恥が彼を正気に戻したのだろう。司会に煽られても代表として開拓派に恥はかかせまいかとしているようだ。
 多分もう遅いと思う。
 じりじりと近づくネッコにじりじりと間合いを離すララ。
 互いに睨み合う二人の間、リング上には痺れるような緊張感が漂うものの、端から見れば前屈みの変態に狙われる美女の図である。
「…………? はっ!」
 膠着状態に陥ったかに見えた両者。そこで妖艶なブラックタールに悪魔の閃き。
 近づかれたらタールで捕まえて、恥ずかしいポーズで縛れば良いのではないか。
(……さすれば……我輩の勝ち……?)
 止めてよ、ネッコが何をしたって言うんだよ!
 健康なる雄の反応を周囲に晒すだけでなく、更なる恥辱を与えようとするララ。さすがはブラックタールだ、イカスミより真っ黒な腹をしてやがるぜ。
 さりげなくコーナーポストに向かう彼女の誘導に気づかず、しめしめとばかりに釣られたネッコはララを追い詰めているつもりでコーナーポストへ向かう。
「どうした、もう後がねえぜ?」
「……むう……我輩、失敗した……」
 ララの言葉ににやりと笑う。お前のその顔を数秒後のお前に見せてやりたいよ。
 遂には捕まえたとばかり、喜び勇みつつも内股前屈みに踏み込む足。その爪先がララの影に触れると同時に影は膨らみ、その足を掴まえて引きずり込む。
「うおおおっ、なんだぁ!?」
 影に擬態したララさんの一部です。
 そのまま球体になった下半身、中でネッコをあはんうふんなメに合わせつつ外へと吐き出す。
 とは言えその体には、紐状になったララの体の一部が絡み付きそれはもう惨たらしく恥ずかしい格好を取らせついた。
 どんな格好をしているかって? そんなの全年齢対応のここじゃ口が裂けても言えないよ!
「ち、畜生ッ、なんだぁこりゃぁ? 見るな、俺を見るなーっ!
 こんなのプロレスじゃねえ!」
「……いや……これはプロレスだ……」
『拳銃使っても刀を使っても勝つのがプロレスと言ってる過多もいらっしゃいますし』
「お前ら俺の格好を見てそんな台詞出てくるのかよ!」
 声を大にしての抗議であるが、もはやそれは何の意味もない。彼はすでにまな板の上の鯉、リングの上のヨコヅナなのだ。
『さあ、挑戦者、ここでフォールを決めれば勝利です!』
「……フォール……? なんだ……体で踏まなければ無効なのか……わかった……」
「むぐぅ」
 むぎゅーっ。
 ネッコの顔を踏みつけてフォールを奪うララ。なんて変態的な体勢なんだネッコ。
『ワン、ツー、……スリー……! 試合終了です、おめでとうございますチャレンジャー!』
 これで新たな代表者候補だ。客席から投げ込まれる言葉に、そういうことを決める為の行事であったと、すっかり忘れていたララ。
 彼女は屈辱に泣くネッコの肩に、ぽんと手を置く。
「じゃあネッコ……がんばれ……」
「…………、は? え?」
 まさかのエールを残しリングを去るララ。
 呆然とその後ろ姿を見つめる彼へ、勝者による指名だと会場が沸いたのは言うまでもない。

・代表者データ

テーナガ・カマキリャー:支持ポイント1
顔面をぶち抜かれた実力者だ!

ネッコ・ゴロニャンコ:支持ポイント2
精神的にも肉体的にも猟兵のせいでボロクソだぞ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳳鳴・ブレナンディハーフ
☆…主人格
★…第二人格
(第二人格主導)
★偉い奴はプロレスで決める?
つまり皆一番強い奴の言いなりになるってことか

(主人格:内心)
☆こやつ珍しく良い所に気づいたな、そう、制度そのものが間違っているのだ

★ってことはテナーガをやっつければ僕が好き放題できる!

☆結論がダメであった

★よし、リングネーム『HENTAIマスク』が相手だ!
(何かを揉むような仕草でリングイン)
全裸になるのは勘弁してやろう
黒いボンテージとマスカレイド姿で【グラップル】を駆使して戦う
堅実に戦いつつ『恥ずかし固め』や『股間を相手の顔に密着させたパイルドライバー』などの技を仕掛けるぞ!
デカいオネエぐらい余裕で守備範囲内
(勝敗はお任せ)



●HENTAI!
 これまでの激闘を観客席で観察していた男、鳳鳴・ブレナンディハーフ(破戒僧とフリーダム・f17841)は物憂げに渋い顔で小さく唸る。
(偉い奴はプロレスで決める? つまり皆一番強い奴の言いなりになるってことか)
 所詮この世は弱肉強食なんだよ、うん。
 特にこの拠点のように地下に埋まった閉鎖空間で人々をまとめるには、実力行使に出ざるを得ない場面も多かったろう。
 しかしてこの疑問、実は鳳鳴本人と言うよりも第二人格、ブレナンディハーフのものである。
(こやつ珍しく良い所に気づいたな、そう、制度そのものが間違っているのだ)
 絵にすれば弟子の出した答えに満足げに頷く師匠といった所か。これが主人格となる鳳鳴である。
 ブレナンディハーフは彼の若い頃の人格が基となっており、即物的、若さに溢れるといっても良いそれは現在の厳格になった鳳鳴としては抑圧すべき点である。
 それが完全に抑え込まれた結果、幸か不幸か第二人格として表出することになったのだ。
 不幸にしか見えない人は修行が足りないぞ。愛を学び徳を積むのだ。
 鳳鳴もまた愛をもって彼を見守り、その成長を喜んでいる。
「…………、ってことは、テーナガをやっつければ僕が好き放題できる!」
(結論がダメであった)
 やっぱ不幸かもわからんね。
 緑の瞳がぎらりと光り、ついでに髪の毛の一本までも憎悪したかのように綺麗に剃りあげられた頭もきらりと光り、全身をバネに観客席から飛び立った体が空中で高速回転。
 すぽぽんと脱げた衣はふわりと舞い落ちて、休憩にと人の去った無人のリングに白き肌が舞い降りる。
「……全裸になるのは……勘弁してやろう……」
 ありがとうございますッ!
 意外と分別のある台詞と共にマットの中央、照明に照らされたその体。
 我が肉体美をその目に刻めとばかりのアブドミナル・アンド・サイ。体に巻き付くのはてかてかと光る黒のボンテージ。言葉にするのも憚れるようなマスク姿。
 間違いない、彼はHENTAIだ!
「さあ、リングネーム『HENTAIマスク』が相手だ!」
 自己申告に再びありがとうございますッ!
 ポーズを崩すと下から掴み上げるように何かを揉み揉みする仕草。そのHENTAI的な雰囲気を察したのか天国から戻ってきたおネエはリングに立つHENTAIを血塗れの顔で睨む。怖いよ。
「……この世には許してはならない人間が二種類いるワ……。
 人を人とも思わない唾棄すべきゲス野郎と! 己が自由だと勘違いしている悪いコちゃん──つまりHENTAIヨッ!」
(うむ、同意せざるを得ない)
 現在進行形で肉体の自由を奪われている男の同意は重い。
「テ、テーナガ、どうするつもりだ!」
「決まってるでしょネッコちゃん……貴方は試合後、休んでなさい……こいつの相手はアテクシがしちゃうワ!」
 強大な悪に対して対立する者たちが手を組む、素晴らしいシチュエーションだ。
「それは好都合、僕も狙いはテーナガさ。デカいおネエぐらい余裕の守備範囲!」
「おだまりっ!」
 HENTAIは悪ではないが、ブレナンディハーフ君は悪だと思う。
 会場の空気がひとつとなり、男気を見せてリングインするテーナガに集中する。単にHENTAIにお帰り頂きたいだけかも知れない。
「! ……アナタ……」
 実際に正面に向かい合っておネエの雰囲気が変わる。その安定した重心と体重移動、隙のない動きにブレナンディハーフを猛者と認めたようだ。
 無言のまま近づく両者。組み合うように向かい合った手と手が触れると同時に、ブレナンディハーフのはテーナガの長い腕を潜るようにステップイン。
 繰り出される素早いローキックがおネエの足に炸裂する。
「ぬっ!?」
 彼の意識が下に行けば、止めとばかりのオーバーハンドフック。だが、そんなものに易々と当たるはずがなく、テーナガは見え透いた手を使うとばかりの防御を見せた。
 これこそが餌なのだ。
「ひゃっほうっ!」
 下への意識を消し去ったブレナンディハーフはその足へ絡み付き、両足を自らの体で割り開くようにして倒れ込む。
 股間をぎりぎりと開いた恥ずかし固めだ。
「あ~だだだだだだだ! 痛い痛い!」
「どうだ~い? 股間の辺りが熱くなってきたろう!」
(正確には股関節であろう)
 そのままギブアップを狙うが長い手足故か開きが十分ではなく、技の入りが浅い。確かに痛いだろうがこれでは勝利を掴むのは困難だ。
「……ならば……ふんっ!」
「むぐぅ!?」
 倒れたテーナガの上で素早く体を回転、足によるヘッドロックを敢行する。股間に顔を埋める形で踠くテーナガは暴れるが、ブレナンディハーフは頭の後ろに手を組み余裕の表情だ。
 長い手足が有効な打撃を行う為の距離を作れずにいるのだ。容赦なく締め上げられるにも関わらず暴れてしまえば、体の中の酸素は不足していく。
 その抵抗が弱々しくなったことを認めると、ブレナンディハーフは拘束を解いてグロッキー状態のテーナガを引き立たせた。
「さあ行くぞ、皆さんおまちかねのパイルドライバーッ!」
 天を指差し高らかと宣言、そのまま舌を出して喉を掻き切る仕草でテーナガを肩に担ぎ、一呼吸置いてその体を逆さに、彼の頭を股間に挟む。
「そ~れそれそれ~っ!」
 激しい腰の前後運動で更におネエの頭部へダメージを与え。
(本当にやる気か)
「ふっ。当たり前だのクラッカー! テーナガ・カマキリャー、君の余生は僕が貰うよ!」
 どう聞いても死刑執行宣言です。
 後ろに倒れ込むような、座る姿勢で繰り出されたパイルドライバーはテーナガの頭部を再びマットへ突き立てた。
 このまま負けてしまうのか。HENTAIに屈してしまうのか。
「ま、負けないでー! テーナガ~!」
「そ、そうだ、あんたが負けたら、誰がそのHENTAIを止めるんだよ!?」
「ストップHENTAI! ノーモアHENTAI!」
『テーナガ! テーナガ! テーナガ! テーナガ!』
 巻き起こるテーナガ・コールに下衆い笑みを浮かべて、最早無駄なのだとばかりのブレナンディハーフ。
 止めを刺したであろうテーナガに近づき、フォールを見舞おうとした次の瞬間。
「──うおおおおおおおおおっ!!」
「!?」
 目を開いたテーナガの手足がブレナンディハーフの腕に絡み付き、そのままマットへ引き摺り倒す。
 逆襲の腕十字だ。
「アテクシを応援する皆の為にもッ、この拠点の平和を守る為にもッアテクシは負けないッ!」
「ぐ、ぐぅう!」
 交差する視線に思考の時間は僅か。
 ブレナンディハーフは降参を意味するタップを行ったが、なぜかそのジェスチャーだけ抜け落ちた彼らのプロレス文化のせいで五分ほど苦しめられることとなった。
 全てが終わり、敗者としてリングを去るブレナンディハーフ。振り返れば勝者として誇らしげに立つテーナガ。
(見直したぞ、勝ちを譲ることで住民たちの結束力を固めたのだな)
 全てを悟った鳳鳴の言葉。観客席から投げられるゴミに頭を揺らしながらもブレナンディハーフは小さく笑う。
(これぞ恥かいて股固まるというやつさ)
(ん? うん。…………?)
 深く考えちゃいけない。
 こうして会場から抜けたブレナンディハーフは、確かにHENTAIだった。だがそれは悪とは違う。彼こそダークヒーローだと知るのは、ごく僅か。
 鳳鳴はブレナンディハーフの活躍に満足して、しっかり衣を羽織ると再び会場に戻る。悪いのは全部HENTAIだ、服を着ればHENTAIとして認識されないのだ。
 会場は新指導者選出の終盤に向けて、熱く燃えていた。

・代表者データ

テーナガ・カマキリャー:支持ポイント2
正義のヒーロー面した実力者だ!

ネッコ・ゴロニャンコ:支持ポイント2
今回は特になにもしてないぞ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「…亜米利加に渡った力士が参加した、西洋角力でしたか?あれ…見たことがないのですけれど…」

殴って蹴って寝技を掛ける想像をした
相手の首から上が吹き飛んで腹に向こう側まで見える穴が開いて上半身と下半身が真っ二つになった…
「駄目です…これ一般人相手にやったら絶対駄目なやつです…」
暫く失意体前屈してから着物の裾を叩いて起き上がり
「生兵法は大怪我の元と言いますもの。ネッコさん達をSATSUGAIしないためにも他の方法にいたしましょう」

「フォールと言うのは…3でしたか10でしたか?」
試合相手も指名もネッコ
UC「桜の癒やし」使用
ネッコとテーナガの傷癒す
寝たネッコの肩をそのままリングに押し付けカウント勝ち狙う


佐藤・和鏡子
テーナガ・カマキリャーと戦います。
彼には申し訳ありませんが、捨て身の一撃と吹き飛ばしに怪力を乗せたフルパワーの一撃を叩き込んでワンパンKOするつもりです。
(医術や戦闘知識を使ってできるだけ怪我させずにダウンさせるようにします)
12歳の女の子にワンパンでやられるようなリーダーで大丈夫か?と思わせるためにわざと挑発するようにします。
『大人なのに、こんな小さな女の子に良いようにやられるなんて情けないですね』
プロレスなのと、挑発効果を高めるために小悪魔的なイメージの露出度の高い衣装で戦いを挑みます。(実はちょっと恥ずかしいです)
アドリブ・連携大歓迎です。NPC感覚で使い倒していただいて大丈夫です。


レイ・オブライト
はあ

ネッコ指名
プロレスは初だが
向かう姿勢を評価させる為にも奴に技を掛けさせ、切り返し主体でいく
関節技は貰っても残念ながら【Undead】抜けるもんでな。そっから打撃技でも繰り出してやれば、いかにも此方がバケモノ、ヒールっぽくて奴を応援したい層が増えるだろ
打撃は単調な頭狙いに絞り見切りやすくする。衝撃波で無理やり直撃逸らしてやるもいい。素早さはあるんだ、あとは根性で避けろ
そのへんが演技の限界だ
こういう奴は嫌いじゃない。夢ばっかで死んだどっかの誰か(昔の自分)を見てるようでもあるが
マットに沈みカウント内に起きそうにないなら、それとなく電流流して電気ショックで気合を入れてやる
まだまだここからだな?



●スタンド・アップ!
 はあ。
 前試合の流れの後、零れるのは溜め息。別にHENTAIに対する嘆息といったものではなく、彼、レイ・オブライト(steel・f25854)初となるプロレスに対してであろうか。
「挑戦させてもらうぜ。相手はネッコだ」
 トップロープを乗り越えてリングに立つ。初めてとは思えない身のこなしを見せたレイに、いいワとばかり声援を受けたテーナガはリングを降りる。
 続いておネエと入れ替わりリングへ上がるのは若き獅子、というかもう全てにおいて子猫未満のネッコ・ゴロニャンコ。
 既に緊張した空気を纏い、レイを睨む眼には闘志が溢れている。対立候補があのような試合を行えば、気合も入るというものだ。
 特に観客を奪われてしまうのは、支持者の喪失を意味する。
 絶対に勝つ。気負い過ぎるほどの想い。相対する敵の実力を計りかねながらも、その重圧に負けない勢いはその若さから来る無謀でもある。
 その姿に、ふと遠い目を見せたレイは帽子を脱いで背後のコーナーポストへ投げた。
 回転してそれが止まるのを見送ることもなく、彼はネッコを指すと、指を上向けに曲げ、かかってこいとジェスチャーを見せた。
 自らを見下す挑戦者の姿に、ネッコは顔を険しくするも一瞬。
 肩の力を抜いてにやりと笑い。
「──ふっ……!」
 姿勢をフェイントに虚を突こうと、ネッコは身を低くマットを駆ける。
 向けられた腕を潜るネッコにわざと足を掴ませつつも、レイはタイミング良く足を引いてネッコの拘束から逃れる。
 捕らえたはずの足がその手にないことに驚くネッコへ、引いた動きを予備動作に、蹴りを放つ。
「!」
 鼻先を掠めて蹴りを避けたネッコ。否、蹴りを避けさせたレイは不適な笑みを浮かべた。
「くっ!」
 鋭く痛む鼻を押さえ、後転して起き上がるネッコに対しても追撃を行わず、レイは再び彼を指で示すと再び先と同じジェスチャーを行う。
 かかって来い、と。
「てめえ!」
 舐めるなとばかりの突進。レイの伸ばした腕に自らの体を絡め付けて、その重みで引き倒そうとするも。
「…………!?」
 どっしりと根を地に降ろした巨木の如く、微動だにしないレイに目を剥くネッコ。
「行くぞ」
 ネッコを乗せたまま腕を振るえば、ロープに向かって飛ばされるその体。
 マットを軋ませリングを揺らす衝撃の後、初めて動くレイ・オブライト。
(…………、来やがったな!)
 歩く動作を見逃さず、片足を上げたと同時にネッコは地面を這うような蟹挟み。
 さすがに片足だけの接地に堪えられずマットに倒れたレイ。ネッコはその足を捻り、うつ伏せになった男の背に腰を下ろして蠍固めへ移行する。
「とったぞチャレンジャー! 今こそ受けろ、第六十八代目指導者の伝え損なった最終秘伝の指導者神拳を!」
 伝えたのか伝えてないのかどっちなんよ。そもそもこんな短期間で指導者そこまで代替えしてるとかヤバいと思いますよ?
 そんな疑問がネッコの頭にあるはずもなく、思い切り足を引き上げると膝の辺りからすっぽり抜ける。
「どわっ、はっ? んん!?」
 勢い余ってマットに転がるネッコ。ズボンのお陰で外に転がらずにすんだ足をはめ直しつつ、何が起こったのかまるで理解していない様子の彼の前に立つ。
 まあ、普通はわからんよね。
「どうした、終わりか?」
「…………!」
『ど、どういう事だ? 今まさに決着したかに思われた瞬間、それでも立っているのはチャレンジャーだ!
 一体、リングの上で何が起こっているのでしょうか!?』
 【Undead(デイ・アフター・デイ)】。デッドマンの特性を活かしたユーベルコードで、体を解体することが可能だ。こんなことをされては関節技でギブアップを取ることなど不可能だ。
 詳細は分からぬまでも状況を理解したネッコはベアナックルを固める。
「足を止めて打ち合うつもりか? おすすめとは言えないな」
「黙れ! どこの出身か知らんが、ぽっと出のお前なんかにせっかくのチャンスを──、この拠点を救うチャンスを潰させる訳にはいかないんだよ!」
 感情任せの水平チョップ。首筋を狙うそれに応じるはその顔面へ最短距離で放たれる右の掌底。
(……うっ……!?)
 ゆらりと揺らめく拳の動きはその射角を見せるため。
 ネッコに頭部狙いを意識させつつ、自らの衝撃波を弱く放つことで直撃コースを逸らしたレイ。チョップの直撃を首に受けつつも微動だにせず、すんでの所で掌底をかわした、かわさせたネッコはたたらを踏んで半歩退く。
「どうした代表、拠点を救うんじゃなかったのか?」
「……だ、黙れっ……!」
 拳を固めるネッコ。しかし、彼には分かっただろう。渾身の一撃でも倒れる所か揺れすらしないレイとの戦力差。
 実際、動かない相手に対して顎を狙えない、あるいはその知識がない彼がレイに勝つ見込みなど皆無だ。
 それでもレイの前に拳を構えて見せるのは、彼に挑発されて安っぽいプライドを刺激されたのではない。
 拠点の人々を守るという、気高きプライドの為に。
「俺は負ける訳にはいかないんだァーッ!」
 ぺちん。
 鼻っ面への右ストレート。悲しいかな、この弱さ。
 しかし想いは本物だ。
「ごっ!?」
 お返しとばかりに攻撃の終わりに繰り出されたレイの右フックは、かわしきれずにその体を傾ぐ。
(素早さはあると思ったが……連戦で根性を絞って避けるにも、もう構えるだけで限界か……)
 その素早さはアリスさんのお陰なんです。彼本体は蚊にも勝てないんです。
 しかし、それでも。
 自らの血で白いマットを汚しつつも、加減された一撃であるにしても、これほどの戦力差を示されてもネッコは倒れる事を良しとしない。
「……ぐ、……へへ……そんな程度かよチャレンジャー」
 心を繋ぐ為の軽口。 
 見る者が見ればそのはったりを見苦しいとするだろう。しかし、こういう輩は嫌いじゃないとするのはレイ自身。
 夢ばかりを追っての垂れ死んだ誰かを思い出すのだ。
(と言っても、見てるのはやっぱり違う奴だな)
「がんばれネッコ、拳は当たってるんだ!」
「絶対に勝てるよ、アンタなら!」
「諦めるなネッコーッ!」
 声援を受けて甦る気迫。若さと勢いに溢れたその姿はまるで、そう思うレイは拳を固めた。
「……俺に、負けは、ないっ……!」
「来な」
 左手でちょいちょいと、手招きするレイ。それを受けて限界まで固めた拳をレイの顔面へ打ち下ろす。
 同時に放たれたレイの拳。互いに顔面へ受けて、それでも倒れたのはやはり、ネッコだけだった。
 マットに沈み、爪を立て、立とうとする動きすらも僅かとなった彼を見つめる。
『これはノックダウンか? ぽっと出のチャレンジャーにまた負けてしまうのか開拓派代表ーッ!』
 どうでもいいけど実況の人ネッコに厳しくない?
 レイは小さく息を吐くと、KO判定を出される前に、ネッコを引き立たせつつ電気ショックによる意識の覚醒を行う。
「はべべっ! はへ? お、俺は……何を……?」
「気合は入ったか?」
「へ?」
「まだまだここから、そうだな?」
 ひえっ。
 にやりと笑うレイに、ネッコは背筋に冷たいものが駆けるのを感じていた。


●たまには癒されてもいいじゃない!
 真っ白に燃え尽きてコーナーポストに寄りかかるネッコの姿。十数分の試合で一気に老化して見える彼には同情するしかない。
「……亜米利加に渡った力士が参加した、西洋角力、でしたか?
 あれ……見たことがないのですけれど……」
『お、ん? 何でしょう。……女性が独り言をしながらリングに……?
 おおっとチャレンジャーのようです! 指名先はネッコ開拓派代表だーッ』
 真っ白に燃え尽き灰となったかのようなネッコ。しかし実況の言葉にゆっくりと振り返る。彼に安息の時間は無いのか。
 そんなネッコの様子を見ながらチャレンジャーこと御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はイメージトレーニングだ。
 若き雄から老いた雄となってしまったネッコを、殴って蹴って、寝技を掛ける、その結果を想像
(……ネッコさんの首から上が吹き飛んで、腹に向こう側まで見える穴が開いて、上半身と下半身が真っ二つになった……)
 ハイパーグラップルじゃないんだから止めて下さいよ!
「……駄目です……これ一般人相手にやったら絶対駄目なやつです……」
 自らの内面に宿る凶暴性か、あるいは規格外のネッコの弱さの為か、その両方か。スポーツをやるつもりが一方的な殺戮の画となって脳裏に浮かんだことで失意の下、がっくりと膝を着いてしまう桜花。
 もしかして、アリスの操り人形状態を除いてネッコさん初の勝利かな?
 などと、そんなことで決着となるはずはもちろん無く、前屈してから着物の裾を叩いて立ち上がる。
 自らの頬をぴしゃりと張り、気合を入れる桜花。
「生兵法は大怪我の元と言いますもの。ネッコさん達をSATSUGAIしないためにも他の方法にいたしましょう」
「!?」
 やっぱり物騒だぞこの人。メタルモンスターな言葉を耳にしてぎょっ、とした表情を見せるネッコ。
 打撃は駄目、関節技も駄目となれば残るは投げ技だ。マットに叩きつけてフォールを取るイメージを固定させる桜花。
 ちなみに投げ技は自分の筋力、相手の体重、地形の利用と三点を利用した素手での一撃必殺を狙える技とも言われている。
 やったなネッコ!
「……フォールと言うのは……三でしたか十でしたか?」
「くそっ、こんな素人に負けて堪るか!」
 自分の戦力を考えて発言しろネッコ。
 睨み合う両者に必要な沈黙は僅かな間だ。にじり寄る二人が互いの間合いに入った時、先に動いたのは桜花だった。
 滑るような足捌きでネッコの片足に組み付く桜花。
「よいしょお!」
「うおっ!」
 簡単にひっくり返されたネッコだがそのまま後転、起き上がる。元々、彼女もダメージを狙った行動ではない。
 起き上がったネッコの無防備な腕を取り、そのまま足を払って身を返す。
「せいっ!」
 引っこ抜くような見事な背負い投げ。このままマットに叩きつければ頭を破裂させかねないネッコの耐久性の低さを考慮し、ロープへ叩きつける。
 先の試合を見て思い付いたものだ。最初の投げも位置取りを良くするため。
「あぐぅ!」
 みしりと音をたてて軋む骨に漏れる苦鳴。マットに叩きつけられるよりマシとな言え、この固いロープを素肌に受ける痛みは相当なものだ。
 畜生。
 背中を痛打した事で肺にもダメージを受け、苦しそうに喘ぐネッコをマットの真ん中にずるずると引っ張っていく。
「ネッコさん、大丈夫ですよ。もうしばらくの辛抱ですから」
「!? と、止めを刺すつもりか? お、俺にはまだ、やるべき……ことが……!」
「?」
 大丈夫だと言っているだろうが。
 抵抗の激しくなった男に疑問符を浮かべつつ、桜花の放つ桜の花弁がその体を包む。
「なにこ……れ……?」
 ついでに観客席のテーナガにも花弁は向かい、二人を緩やかな眠りへと誘う。
 【桜の癒やし】。桜の花弁に触れた人々を眠らせると同時に、その体の傷を回復させていく。
 重なる戦いで傷ついたネッコとテーナガは体は見る見る内に治癒していき、桜花は満足そうに頷いてネッコに身を乗せる。
「フォール!」
『ワン、ツー、…………。スリーッ!
 試合終了です! 見所もなくやられてしまったネッコ代表、連戦の疲労が効いているのか?』
 不自然に寝てしまった姿には実況も思わず言及する。
 寝たままのネッコを背中にリングを降りる桜花。その姿は子を想う母のようでもあり、ネッコからすれば恥辱にまみれること間違いなしであるが、端から見ればスポーツマンシップ溢れる姿だ。
 どこからともなく拍手が上がれば、会場中で始まるスタンディングオベーション。
「何か、少し恥ずかしいですね」
 勝者への祝福を受けて、桜花は照れた笑みを見せた。


●決着の一手!
『さあ新指導者選出戦もいよいよ最後っ!
 トリを飾るのはこの少女!』
 ばしん、とスポットライトに写されたのは黒く露出度の高いコスチュームを着た佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)。普段は介護を中心とする活動に加えそれらしい帽子と、動き易そうな多少なりともマニアックな服装をしている。
 とは言えおへそ丸出しの格好などはしたことがなく、恥ずかしさを堪えているのが表情に現れている。
 そんな和鏡子の相手となるのはテーナガ・カマキリャー。トップロープに足を掛けてリングに入る痩身は、片手を上げて声援を受ける。
 掲げた手を和鏡子へ向けて、テーナガは険しい顔を見せた。
「この戦い、負けられないの。アナタが何の為にリングへ上がったのかは知らないけど、勝たせて貰うワ!」
 二列のモヒカンを揺らしてコーナーポストへ向かう。
(……体が軽い……いい感じネ。寝てしまったのはビックリだけど、お陰か体力も全快ヨッ!)
 傷も無くなってるのは疑問を持っていただきたい。
 にやりと笑う顔は悪役にしか見えないが、その背を見つめる和鏡子には覚悟の表情が見える。
(テーナガさんには申し訳ありませんが、この世界の未来の為に、勝たせていただきます)
 始まりのゴング。
 開幕から和鏡子へ走るテーナガは最速で仕留めるつもりなのだろう、その長い両腕を顎の如く開き左右の逃げ場を封じる。
 寸前まで引き付けて食いつく手前、跳躍によりかわしつつテーナガの頭に手を置いてくるりと回転、背後に回り込む。
「ちぃっ!」
 しかしテーナガ、ここで減速するどころか加速、そのままコーナーポストへ突撃しロープを足場にくるりと回転する。
 片膝をついて、威嚇するように手を広げた姿は小さい子にいけないことをする見せ見せオジさんのようだ。
「……やるわね子猫ちゃん……けれどね、アテクシも負けてられないのヨッ!」
「むぅ」
 思いの外に素早いテーナガに和鏡子は唸りながらも姿勢を正し、開幕前のお返しとばかりに指を突きつける。
「さっきから大きな口を叩いてますけど、そんなのろまな攻撃じゃ私は捕まえられません」
「言ってくれるじゃない」
 両手を顔の前に構えて、円を描くようにゆっくりと迫るテーナガ。普通の人間であるにも関わらず放たれる重圧に和鏡子は思わず喉を鳴らす。
 人の手助けをする者として、決してキモいと考えた訳ではないとしつつ。
「…………、ふう。よしっ」
 一呼吸を入れて気合を入れ直し、テーナガと向き合う。
 真っ直ぐで力強い瞳に、曇らせるには惜しいとテーナガ。猟兵相手に強者ぶってると恥かきますよ?
「挫折を知るにはまだ早いワ。ギブアップがおすすめヨッ」
「あら、勝てないと分かると降参するようにお願いするなんて。指導者としての器じゃないんじゃないですか?」
 かっちーん☆
 ひきつった笑みを見せるテーナガ。子供の言うことだぞ、冷静になれ。
 こほんと咳払いしつつ、平静を装いながらも口元の痙攣は収まらず。
「よ、よよっ、よっよっ、よく回るお口じゃないの。可愛いわヨッ!」
 和鏡子の左側面へステップイン。
 少女のリーチの外から、その長い腕を活かした大振りの右フック。
(視界の外を狙った? 文明が衰退していても、力でのしあがる世界ではこういう技術は維持されているんですね!)
 大きく背を反らしてその一撃をかわす。しかしそれはテーナガも予測済みだ。
 続くは斬撃を思わせる鋭いローキック。
「残念ですけど!」
「!?」
 身軽な体躯を活かしてその蹴撃に飛び乗る和鏡子。
 敵の連続攻撃を誘うことで防御を捨てさせたこの瞬間を、和鏡子は逃さない。
「でぇりゃーっ!」
「──はがッ!」
 脇腹に強烈な一撃。
 直接のダメージを考慮しての掌打は押し出すように、怪我をしないよう注意を払う。
 だがそれは怪力を乗せたフルパワー。テーナガの体は吹き飛び、和鏡子の狙い通りコーナーポストに激突してバウンドする。
「……か……は……!」
 天井に下げられた照明を目に焼き付けて、滞空したその体はマットに沈んだ。
(何とか、上手くいきましたね)
 衝撃を多用することで骨にダメージを与えず、怪我をさせずにダウンを奪った和鏡子。後は仕上げである。
 ててて、と倒れたテーナガの元へ小走りに、その頭の横に座り込む。
「大人なのに、こんな小さな、十二歳の女の子に良いようにやられるなんて情けないですね」
『け、決着ぅう! 衝撃のKO! あんな小さな女の子に負けてしまうなんて、これではネッコと同じレベルではないかテーナガ平等派代表ーっ!』
 言い方。
 しかしこれで、テーナガへの支持者は減るだろう。
(やり過ぎたかも……でも、仕方ないんです……!)
 世界の未来を紡ぐため。後退的思考は捨てなければならないのだ。
 小悪魔のコスチュームであっても聖者たる和鏡子の【生まれながらの光】が曇ることはない。
 放たれた聖なる光は苦しそうに唸るテーナガ顔を安らかなものへと変えていった。
「これで、この拠点の皆さんも地上へ近づきますね!」

・代表者データ

テーナガ・カマキリャー:支持ポイント2
実力者なのに相手が悪かったせいで立場も悪くなったぞ!

ネッコ・ゴロニャンコ:支持ポイント5
負けっ放しなのに支持率があがったぞ!
君が新たな指導者だ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ネコとノミ』

POW   :    てやんでぃ、死なばもろともでぃっ!
自身の【命】を代償に、【落雷に江戸っ子魂】を籠めた一撃を放つ。自分にとって命を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    ばーろぃ、やらせるかってんだ!
全身を【発電、皆でネコを守るバリア】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    おいらたちには、まだ帰れる場所があるのさ!
演説や説得を行い、同意した全ての対象(非戦闘員も含む)に、対象の戦闘力を増加する【ネコの生き血(ネコの同意は不要)】を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●食物庫に潜む魔物。
 激闘を制し、制し?
 激闘に揉まれただけであったにも関わらず新たな指導者となった開拓派代表、ネッコ・ゴロニャンコ。それでも誰もが彼に従う。
 そう、それがこの拠点を維持する規律なのだ。
「今こそ、あの悪魔の獣から食物庫を解放する時。だが、敵は強大だ。まずは飯を食べて力をつけるぞ。
 この戦いに全てかかっている。この拠点の未来だ! 出し惜しみなく食べて、そして、戦士として!
 俺と戦ってくれ!」
『オオオオォォォォ!!』
 ネッコの言葉に呼応する住民たち。そこにはもう、開拓派も平等派もない。一丸となった人々の姿があった。
 だが、このまま彼らがぶつかることは多大なる犠牲を意味する。彼らがその力を使うべきはここではなく、地上へ出てからなのだ。
 猟兵たちは、彼らが食事をする間にオブリビオンとの決着を急がねばならない。
 食物庫では、ところかしこにに保存食が転がっている。山積みされた箱にも食べ物が格納されているだろう。
 戦いにおいて、これらを守ることもこの拠点の人々の力となるはずだ。
 そんな食物庫で、くあと欠伸する猫が一匹。
 首輪に銀のプレートのついたその猫は、気持ち良さそうに伸びをしたり、転がったり、気ままに爪研ぎをしている。
 外に繋がっていると見える排気孔から伝う雫を舐め、そこらに転がる削り出されたチーズを噛り、悠々自適な生活を送っているようだ。
 時折痒そうに後ろ足で体を掻けば、その身より散る火花の如き電気の粒。
 それらはぴょんぴょこ跳ねて猫の身へ戻って行った。

・オブリビオン、ライジンノミと普通? の猫ナナシとの集団戦闘になります。
・参加プレイヤーは皆さん薬用シャンプーを使用可能です。大量にばらまくことでライジンノミに対する毒の足場として使用でき、また、ナナシの足場を悪くすることが可能です。
・ナナシをシャンプー漬けにすると居場所を奪われたライジンノミの敗北となりますが、ナナシは視界内の攻撃や拘束などの行動を全て回避するアクロバティック・ニャンコです。
・ナナシは警戒心は高いもののライジンノミに困らされているので、彼らを駆除すれば心を開くでしょう。役立つニャンコなので殺さないで下さいお願いします。
・食事中のネッコは騒ぎを聞きつけて現地にやってきます。が、その際に彼を活躍させることに成功すれば、集団から更なる支持を得るでしょう。
ララ・トゥルリ
【WIZ】
※アドリブ◎
うわ、ノミも猫も…速いな…

*ネコチャンに【魔性の女】を使ってノミにも効くか
猫じゃらし…膝抱っこ…ブラッシング、丁度いいサイズの箱…どれか好きなものは…無いだろうか
まずは友達になる所から…あ、ネッコだ…へるぷみー……
…ネッコは(名前が)ネコっぽいし(?)、ノミを彼に移せられれば…シャンプーしやすいのでは…
無事移れば…一緒に風呂に入って、隅々まで洗ってやるから安心しろ…体を張るとより頼られるぞ…(説得)
…移せたら…それを、繰り返しやってみようと思う…

*それでも減らない時は
…そうか、【喰魔賛歌】なら…早いもの…ぴょんぴょんするノミだけ、追えるのでは…皆、止まってて…(最終手段)


アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎

えーと、次はあのニャンコさんを捕まえたらいーのねー?
有人さんが薬用シャンプーを支給してくれるよーだからしっかり洗ってあげちゃおー
あ、ネッコさんいーところにー、ニャンコさん洗うの手伝って欲しーなー
まあ、また気絶するだろーから、再びネッコwith幼虫で頑張ってもらいましょー
さー、全身シャンプーでぬるぬるになってニャンコさんを【ダッシュ】で捕まえるのよー
かわされてもアリスに秘策あり!全身に塗ったシャンプーが床に飛び散って足場はどんどん悪くなっていくのよー
戦闘力が増加しても(アリスは)へーきへーき、【地形を利用】しアリスの【継戦能力】による無尽蔵のスタミナで追い詰めましょー



●ファーストコンタクト。
「……ブラシと水の入った瓶に……食料ですって?」
「一口分だけでもいいんです」
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)の申し出に訝しがったのはテーナガ・カマキリャーだ。よう負け犬。
 彼らは他の住民と同じく、命を賭した総力戦へ向けて豪華な晩飯をいただいている所である。そんな負け犬もまた、代表者であり指導者候補であったのだ、桜花のやろうとしていることを察して鋭くなるその瞳。
「アナタ、まさかあの猫神様に勝手に挑むつもりじゃないでしょうね?」
「まさか」
「目を見てお話しなさい!」
 すい、と目どころか顔を背ける桜花に溜め息をひとつ。どちらにせよ、戦力を減らす愚を認めはしないとテーナガは否定的だ。
「そこをどうにかできまいか」
 言い争う二人の間へ姿を見せたのは鳳鳴・ブレナンディハーフ(破戒僧とフリーダム・f17841)。衣を揺らして現れた彼は数珠を持つ手を合わせ、テーナガへ丁寧に腰を折り深々と頭を下げる。
 これは間違いなく常識人。
「拙僧らは直接、あの猫神様に挑む訳ではありもうさぬ。ただ戦の前に微力ながら有利になるよう準備をするだけのこと」
「あらイケメン! でもダメよ、アナタたちはあの雷の威力を知らないからそんな事が言えるのヨッ!」
 雷の音が聞こえる範囲は全て落雷対象と聞くし、怖いのは勿論だ。
 だがそれを押しても戦わなければならない時があるのは、代表者争いをした彼らだけではない。
 おネエも思わずたじろぐ鳳鳴の力強い瞳。
「おのれテーナガァ! 全住民HENTAI化の野望をおぉ!」
「きえっ!?」
 開いた口から飛び出したのは罵倒である。やっぱりHENTAIじゃないか!
(見直して損した。もう引っ込んでおれ!)
 良いことを発言しようとした所を横からかっさらわれて、怒り心頭の鳳鳴は魂の片割れたるブレナンディハーフを抑え込み、平静を装って咳払い。
 しかし、いざと目を向ければ桜花の影に隠れるテーナガの姿。情けないぞおネエ。
「あのHENTAIをアテクシに近付けないで頂戴ッ!」
「それって、お礼とか貰える感じなのでしょうか?」
「なんでもあげるわヨッ!」
「……拙僧もビニールシートとか欲しいのだが……」
「消えてくれるならなんだってあげるわヨッ!」
 ひでえ。
 厳めしく結んだ唇に哀愁を漂わせる鳳鳴に同情の視線を送りつつ、背中のテーナガを上手いこと誘導する桜花。
 これで必要な物資は揃うだろう。
 各々が準備を進める中、最初に食物庫へとやって来たのはララ・トゥルリ(夢の残骸・f02036)とアリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)の両名だ。
 プロレス前にも会話した縁あってか、アリスはララを背に乗せて通路も狭しと大爆走だ。
 そんな足音に謎の家猫、ナナシが気づかないはずもなく、耳をぴんと立てて扉へ目を向ける。
「ギィイィイィイ!」
「ふぎゃっ!?」
 扉を粉砕しオッスオッスするアリス。猫が驚きにぶっ飛ぶのも当然である。
 即座に保存食の山に紛れてしまったナナシの行方を青とぬばたまの瞳が追う。
「ギィ、ギチギチ、ギギィ」
(えーと、次はあのニャンコさんを捕まえたらいーのねー?)
「……ああ……猫じゃらし……ブラシ……ネコチャンの好きなものも……揃えてある……」
 両手に構えたそれらとは別に、見渡せば猫がはまりそうな保存食の空き箱もある。どれか好きな物はあるだろうかと掲げて見せるが、食べ物の山から返ってくるのは沈黙のみ。
 ララが目を下へ向けると、目を上げたアリスが任せてとばかりにララを下ろす。
 続いて響くのは掘削機の如き破砕音。激しい揺れも伴って鋼の床を引き裂き掘り進む乙女の背中はシールドマシンの様を見せる。
 余りの騒音に何事かと隙間から覗くナナシ。
「ギチギチ、ギイイイイッ!」
(どっかーん!)
「うにゃああああっ!?」
 足下を高速で堀り抜けたアリスの強襲、もとい挨拶に瓦礫と共に空を泳ぐニャンコ。注意せよすかし掘り。
「ふふ、……いい位置……♪」
 フライング・キャッツノイドに見せた蠱惑的な笑みは先程、ネッコを骨抜きにしたものと同じもの。
 しかしナナシはその笑顔を向けられる前にヒゲを跳ねさせると、危険を察知したか身を捻り、空で翻る。
 ララの魔性の女っぷりをアクロバティックに回避したナナシは着地と同時に疾走し、食物の山を駆け登る。
「……ふ~っ……!」
 身を縮めて毛を逆立てるナナシの威嚇。
「うわ……ネコ、速いな……、ん?」
 まさかあれをかわされるとは。ララも驚いた顔を見せるが、足下でぴょんぴょこ跳ねる粒に気づく。
 それらは黄色の電光を発しており、求愛の念を発するノミである。
 ライジンノミ。それがナナシに寄生するオブリビオンだ。
 その様子を見れば放電による攻撃もなかろうと、巨大なハエ叩き状になったララの一部とアリスの足が容赦なく叩き潰す。
(……避けられなければ……ネコチャンにも効くはず……)
 最終手段を夢想しつつ、ララとアリスは頷き合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐藤・和鏡子
ガジェットショータイムで高圧洗浄機を作ってシャンプーをばら撒きます。
辺り一面泡シャンプーの泡だらけにして泡や和鏡子の動きに注意を引きつけさせておいてネッコさんにナナシを捕まえさせます。
(あらかじめネッコさんには私がナナシの注意を引きつけるからその隙に捕まえて、と頼んでおきます)
『これがリーダーの初仕事ですから、頑張ってくださいね』


鳳鳴・ブレナンディハーフ
☆…主人格
★…第二人格

★全住民変態化の野望があぁ!おのれテーナガ!

☆見直して損した
もう引っ込んでおれ!
(ここから主人格主導)

同胞達よ、拠点の人々を救うために、拙僧に力を貸してくれ!
UCで僧兵を呼び出し、またあらかじめビニールシートを拠点内で調達し、地面に広げ、そこにシャンプーをぶちまけておく
ネコをそこに追い込んでシャンプーまみれにさせるのだ
警戒心が強いのなら近づけば逃げ出すはず
食物庫の奥に逃げ込まれたら倉庫の中身を外に運び出すぞ
僧兵達は壁となって逃げ道を塞ぎ、誘導させるぞ
ネッコが現れたら、最後にネコを捕まえて洗う役を譲ろう!
「この獣は尊公が捕らえるがよい!
案ずるな、もはや戦う力は残っておらぬ」


御園・桜花
「抵抗されたら役立たずになりますけれど、お猫さまに無体を働くのも…それに皆さんたくさん引っ掛かれそうです」

拠点でブラシと水入れたガラス瓶借り、ついでに猫を大人しくさせるため一口分だけでも食料をもらえないか聞いてみる
交渉後蚤退治へ
UC「桜の癒やし」使用
ナナシのみ眠らせようと試みる
ナナシが寝たら上から蚤取り粉ドバドバ
ナナシが起きそうになる度にUC使用
それからブラシ使い蚤及びその卵をナナシの毛を解かして取り、水入りガラス瓶に沈めていく
この頃には戦闘も一区切りついたと思うので、他にも怪我人が居たらUCでお昼寝治癒

ブラッシング終了後ナナシにおやつ渡す
「これからは此処の鼠取り頑張って下さいね、ナナシさん」



●セカンド・コンタクト。
 佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)は食物庫の惨状に目を丸くした。内容で言えばそう派手な戦いになると思っていなかったからだ。
 蓋を開ければ破壊された床にひっくり返されてばら蒔かれた食料と、驚くのも無理はない。
 高い位置を陣取ってアリスとララへ威嚇するナナシに、こんな時こそと発動するユーベルコードは【ガジェットショータイム】だ。
 現れた鉄の箱を抱えて伸びる紐を肩に通し、箱に備えられたノズルを手に取る。
 噴霧器? 否、高圧洗浄機だ。
「発射ーっ!」
「みゃみゃっ!」
 勢い良く放たれるのはグリモア猟兵から渡された薬用シャンプーだ。薄めなければすぐにでも詰まりそうなものだが、圧によって噴射されるそれは出力に問題なく、ともすればコンクリートの壁も貫通しそうな勢いだ。
 逃げるナナシに鉄箱上部の加圧ハンドルをぺこぺこやりながら追いかける和鏡子。
 しかしナナシもさることながら、ジグザグに部屋を駆けて直撃を避け、再び食物の山を目指す。
 そこへ急ににょっきりと土筆の如く床から生え揃うのは、法衣に身を包んだ僧侶たち。怖い。
「同胞達よ、拠点の人々を救うために、拙僧に力を貸してくれ!」
 食物庫に現れた鳳鳴により【無限の僧侶(アンリミテッド・ボーズ)】によって召喚された六十を超えて立ち並ぶ僧兵たちは、その合掌を解いて数珠を握る手をナナシへ向けた。
『渇ッ!』
 トラウマ級の破壊力。
 壁と並ぶハゲに怒鳴られたナナシは泣きそうな顔をして進路を変える。
「……お猫様に無体を働くのも……」
 待ち構えていた桜花のかざした手より現れるのは桜の花弁。非致死性のユーベルコードにより先の試合と同じく寝かせようと試みる。
 が、お猫神様の身から満を持して現れたのはライジンノミ。互いにその身を電流で固定してフォーメーションを組んだ彼らは全身で発電、雷光の障壁と貸して花弁の進行を阻む。
 目前の強烈な光に慌て停止、またも方向を変えて突っ走るナナシ猫。抵抗止めた方が楽になるよ?
「この先にビニールシートを引いたシャンプープールを用意してある。そこに猫殿を誘導するのだ!」
 ナナシが進路を変えている間に僧兵を使い、食物を外へと運ぶ鳳鳴。余計な所に行かないよう、要所要所に残る僧兵に渇させてナナシを近付けない布陣だ。怖いぞハゲ。
「オレは先日猫を学んできたばかりだ、なんてこたぁない」
 走る猫のその先へ、帽子を片手に特大級のフラグを打ち立て姿を見せたのはレイ・オブライト(steel・f25854)。
 帽子を背中に回してズボンに挟み、駆け回る猫を正面に鋭い視線を向けた。それを受けたナナシはまた新手かと疲れた顔を見せるようだ。
 次に自信満々のレイが背後から取り出したのは、必殺兵器猫じゃらし。
「そーら、こっちだぞ~」
「うみゃん!」
 興奮状態のお猫様には効果が今一つのようだ!
 ぴょこんとレイへ飛び込み、その顔に炸裂するのは肉球による見事な飛び蹴り。その顔を足場に華麗にターンを決めたナナシの跡にはライジンノミが残る。
 置き土産の如きノミ爆弾はその命を糧に生み出す落雷を発生させた。
 閃光と共に炸裂した音が目と耳を塞ぎ、ナナシを追い詰めていた和鏡子も悲鳴を上げて後退る。
「レイさん! 大丈夫です……か……?」
「大丈夫だ、問題ない」
 肉球キックの際に取り落とした猫じゃらしを伝い、床へと落ちた雷は直撃せず。
 心配し駆け寄る桜花にレイはそう答えると、アフロヘアーになった頭へ帽子を乗せる。雷様が増えたぞ!
 ほっぺについた可愛らしい肉球足跡もあってか、顔を背けて肩を揺らす桜花。素直になるのだ、笑え。
「お前ら、一体全体何をしてやがる!」
 そこへ更に、最後にして最期となるのではないかと思わせる姿を見せたのはこの拠点の新たなる指導者、ネッコ・ゴロニャンコ。
 被害を受けぬよう食物を運び出すハゲの波をかき分けて、否、かき分けようとして僧兵に邪魔者扱いされて渇されながら、その道を譲り脇を潜り抜けて部屋へと入る。情けないぞ。
「……あ、ネッコだ……へるぷみー……」 
「むむっ?」
 テーナガから報せを受けてやって来たのだろうが、住民の救いを求める声を無視などできるはずがない。指導者となったネッコの視線に両手を振るうララが映る。
「ギッ、ギイイェエエーッ! ギチギチ!」
(あ、ネッコさんいーところにー、ニャンコさん洗うの手伝って欲しーなー)
 だから勝手に何をやっているのだ。
 のんきに手伝いを求めるアリスへ肩を怒らせたネッコ。悪いけどお前の意見なんて聞く奴いないんだわ。
「ギエェェェ! ギイィィィ! カチカチカチカチ!」
(みんな~もう少しだけがんばって~)
(はーい)
 部屋の隅でその色を纏い、迷彩として潜んでいたアリスの幼い妹たちが姿を見せる。
 本来ならば抵抗する体を上手く操れない為に、対象者の意識がないことが前提の寄生によるユーベルコード。しかし今回、余りにも弱いネッコとならば。
(またお願いしまーす)
(私が一番ネッコを上手く使えるんだからー!)
(がっしーん!)
(よーし、ネッコ・ロボ、発進よーっ)
「んお? うおおっ!?」
 ぎくしゃくと勝手に動き始めた手足に驚くネッコ。弱いと体まで奪われるのか。悲しいね。
「ネッコさん、ご協力感謝します。あの猫さんは私がひきつけますから、その隙に捕まえてください」
 歩むネッコに小走りに近づいて、洗浄機を構えた和鏡子の言葉。
(なるほどー)
(わかったの~)
「ちょちょちょ、ちょっと、待ってくれ! 体が勝手に動いてるんだこれ! なんか変な声も頭に響くし!」
(変じゃないよー、失礼しちゃう!)
(ねー?)
「やかましいわ!」
 ネッコさん。
 叫ぶ情けない奴に微笑みを向ける和鏡子。
 これがリーダーの初仕事ですから、頑張ってくださいね。
 有無を言わさぬその言葉に、ネッコはただ頷くしかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
まあ強さは見かけによらねえ
オレは先日猫を学んできたばかりだ、なんてこたぁない
対猫知識?を動員し猫に接近
猫がオレを警戒してる間に『覇気』(念動力)にて頭上高く鎖で猫を囲う円を描き、視覚外から一気に落とす。鎖には属性攻撃伝わせ、出ようと触れれば微弱な電流が流れる仕掛けだ
一度ピリッとくりゃ学習し円の隅で縮こまるだろう
つまみ食いの犯人にゃ丁度良い灸だ、次からはちゃんと分けてもらえ
円を狭め猫にシャンプー

…猫にシャンプー?

この工程で殺しちまいそうだが
おいネッコ。へろいパンチの打てるあんたの出番かもしれねえぞ
液を降りかけノミ弱らせた上で肝心な部分を奴に引き継ぐ。力が強いばかりでも駄目って図だな

UCはノミ潰し



●サード・コンタクト。
 新指導者であるネッコの登場に、彼を利用、もといその求心力向上の為に一肌脱ごうと息巻く猟兵たち。
 さしてはその使い捨て方法を考える。
(……ネッコは『名前が』ネコっぽいし、ノミを彼に移せられれば……シャンプーし易いのでは……)
 ちらと見るはアリスの幼虫によってぎくしゃくとナナシへ歩いて行くネッコの姿。
 アリス自身はネッコにどばどばと薬用シャンプーをかけている。どこから見てもイジメであろうか。
「く、くそっ、なんだってこんな……訳のわからんメに……!」
 その顔には近づくナナシへの恐怖が見える。稲妻を発生させる、神にも喩えられた存在を相手にしているから当然であろうか。
「それでも助けを呼んだりはしない、か。まあ、強さは見かけによらねえ」
「! あんたはさっきの、いやなにその頭?」
 唸るナナシを前にするネッコの隣へ、レイが立ち並ぶ。彼は何やらレイに対して気になる点があったようだが、敵を前にして無駄なことに気を散らす男ではない。見習えネッコ。
「鳳鳴さんが罠を仕掛けてくれています。そこへ上手く誘導しましょう!」
 ゆっくりと、二人と反対側からナナシへ迫る和鏡子。前後を挟まれて狼狽える様は哀れと見えるが、対処すべきはその身に巣くうオブリビオン。
 早々と逃す訳にはいかないのだ。
「行きます!」
 和鏡子は声を張り上げて高圧洗浄機から薬用シャンプーを噴射する。
 ヒゲをぴくりと動かして小さなステップを刻み、和鏡子の射線から逃れるナナシ。フェイント混じりの動作に驚きつつも、さりげに佇む僧兵ウォールによって逃げ道を誘導されるニャンコ・ナナシ。
(いったれ~!)
「おわあ!」
「……ノミが移れば……一緒に風呂に入って、隅々まで洗ってやるから安心しろ……。
 それに、体を張るとより……頼られるぞ……!」
「お、おお……くそ……、やってやるぜ!」
 ララに発破をかけられやる気を出しつつ、結局はアリス幼虫に操られて頭から突っ込むネッコは闘牛士の如く華麗にかわされる。ついでにネコパンチで反撃しつつ、その間に背後へ迫るレイへ向き直った。
 高い反応速度に身のこなし、全周囲への警戒とただの猫でないことは確かだ。蚊にも勝てないネッコの勝てる相手ではなかったんだ!
「ギィイ、ガチッ、ガチッ」 
(かわされてもアリスに秘策あり!)
 レイから後退るナナシは、後ろ足を滑らせてはっとする。
「ギギギ、ギィイイィ!」
(全身に塗ったシャンプーが床に飛び散って足場はどんどん悪くなっていくのよー)
 鋏角を軋ませるアリス。そう、ネッコへシャンプーをぶっかけていたのはただイジメていた訳ではなかったのだ。
「前と後ろだけを気にしてていいのかな?」
 追い詰められた様子のナナシに意地の悪い笑みを見せる。
 不思議そうに首を傾げるその頭上には、レイの【覇気】が電流を放ちながら円と渦を巻く。
「みゃあっ!?」
 一気に地上へ叩き落とされた気で練り上げられた鎖の輪、端々から放たれる電気を受けて、ナナシはその中央で身をすくませた。
「つまみ食いの犯人にゃ丁度良い灸だ、次からはちゃんと分けてもらうんだな」
 笑みのまま、右手をゆっくりと握り込むとそれに合わせて輪が狭まっていく。
「……うみゃあぁあ……」
 絶体絶命のピンチ。目を円くしてか細く鳴くナナシ。不安を声にするニャンコに現れる救いの手とは。
 もちろんオブリビオンだ。
 彼の背からぴょぴょんと跳ね出たライジンノミが再びフォーメーションを組み、迫る覇気の壁を自らの体に電気を通して阻む。
 閃く雷光に舌打ちすれば、自らの命を代償に発生させた雷で覇気を打ち砕くライジンノミ。
 後は任せたぜ。
 そう言いたげな死に様であったが、お猫様は一切気にせず屍を踏み越えてその場から逃げ出す。
「さすがに、寄生先であるお猫様の危機は理解しているようですね」
 自らの命を厭わずナナシを助けるノミ型オブリビオンに、桜花は思わず唸る。
 しかしそれも、もう終いだとしたのは鳳鳴だ。レイの覇気から逃げ出したナナシ、しかし土筆の如く立ち並ぶ僧兵の壁に沿って逃げればその先は、件のビニールシートだった。
「みゃみゃみゃみゃっ!」
 滑りに足を捕られ、まるで踏ん張りの効かないシート上。氷上をおたつく初心者スケーターのように滑走するナナシ、その抵抗も虚しくべったりと腹這いに倒れ込む。
 そのシャンプーの海が自分たちには毒だと悟ったのか、ナナシから脱出を計るライジンノミたち。だが、シャンプーの海を越えることは出来ずに沈んでいく。
 残るライジンノミたちはナナシの背中へと逃げるとその背が静電気によりぶわりと逆立つ。
 自らの身を筏にするライジンノミらの期待に応えるかのように、ナナシは腹這いのまま、しゃかしゃかとシートを行く。
「ギィイイ!」
(もー、往生際が悪いぞー!)
「ぬわ~っ!」
 アリスの言葉に反応した幼虫たちが、滑る体を利用して人間砲弾の様相でネッコを発射する。
「にゃーっ!」
 右の前後の足を軸に華麗なターンで回避を見せる。この四足歩行の獣はすでにコツを掴んでいるというのに。
 人間砲弾をかわされたネッコはそのまま壁に激突、ぐきりとよくわからない方向に首をねじ曲げて沈黙した。
「……む……」
 どうせ気絶した所でー、と意識なきネッコを操作するアリス。しかしララはすれ違う際にライジンノミがネッコへ飛び乗ったのを見逃さなかった。
 さすがに多くが移動する訳はないようだが、離島としてネッコを認めた少数がいたようだ。
「……アリス、ちょっとネッコを貸して欲しい……」
「ギチギチギチ!」
(いいよー)
 ネッコは生き物でナマモノです。
 借り受けたネッコに膝枕し、薬用シャンプーで丁寧にライジンノミを剥がしていく。
 元々シャンプーに身を浸していたのだ、ライジンノミも弱りろくな反撃も出来ていない。惜しむらくは気絶したままのネッコであろうか。まあ、どうでもいいね。
 桜花もまた、ララの隣でネッコの傷を癒す。
「うう、ナナシが速いですっ」
 高圧洗浄機の加圧ハンドルをペコペコしながら腹這いでしゃかしゃかと逃げ回るナナシを追いかけ回す和鏡子。
「おのれ、ただのイエネコとは思えん!」
 食料の運び出しも終わり、他の僧兵を引き連れた鳳鳴もナナシ捕獲に参戦するが、ラジコンカーのように悪路を走破するナナシの俊敏さは健在、難航する。
「ギッ、ギッ、ギイィ!」
(待て待てー!)
 その中でも一際の勢いを見せるのはアリスだ。無尽蔵のスタミナで他の猟兵にも影響の出始めたシャンプーの足場をものともせず、床を砕いてがっちり掴みながらナナシを追いかける。
 そりゃナナシも必死こいて逃げるよね。
「みゃっ? にゃにゃにゃにゃーっ!」
 と、突如ナナシが苦しみだす。正確には痒がっている、か。
 辛抱堪らんとばかり、遂には背中をシャンプーまみれの床に擦り付けた。だがその直前に、ナナシから離脱したノミ型オブリビオンたち。
「ギギッ! ギィギーッ!」
(むむっ、ネッコー!)
(ほいさー!)
 アリスの呼び掛けを受けて彼女の前に立ちはだかされるネッコ。
 そこへ飛び込んだのはナナシの生き血を吸い、パワーアップしたライジンノミ軍団。
「ほげぇえぇえぇえぇえぇ!」
(きゃあああああああっ!?)
 瞬く閃光とネッコの悲鳴。
「大丈夫か!?」
「ギーッ、ギチギチ!」
(なんか、パワーアップしてるみたいだけどへーきへーき!)
「いや、お前じゃなくてネッコをだな」
 躊躇なくネッコを盾にしたアリスに頬を掻く。自身とお揃いの髪型になったネッコからは、その身に電流を受けたアリスの幼虫も目を回していた。
 ライジンノミたちも個体数が減ったせいか、その命を犠牲にする一撃ではなかったようで皆なんとか無事である。
「汚物は消毒ですーっ!」
 しかし悲しいかな、ナナシという乗り物を失った彼らは縦に跳ねることはできても横方向の移動が短く。和鏡子の高圧洗浄機の餌食となっていく。
「兎角、これで一段落つきそうだ」
 溜め息を吐く鳳鳴の後ろで、逃げようと悪足掻きするライジンノミをその拳で砕くレイ。空中で殴り潰す離れ業をさらりとやってのけて、己の拳を見下ろす。
 ララは懸命に背中を床で掻こうと踠くナナシを掴みあげて、正面からその顔を見据えた。
 今度こそ、魔性のユーベルコードがナナシを捕らえたのだ。
「にゃあん」
 猫なで声を上げ、ララに甘えるように身を寄せるのも束の間、すぐにまた床に飛び込んで背中を掻き始める。
「これは、まだいるかも知れませんね」
 桜花は抵抗のなくなったナナシへ桜の花弁を放って眠りへ誘うと、その上から薬用シャンプーをこれでもかとこぼしつけた。
「んにゃっ!?」
「はい、おねんねしましょうね~」
「……んみゃ……」
 即座に再度の眠りへ誘うと、彼を膝に乗せてさきほど手に入れたブラシでその毛を梳いていく。これで植え付けられた卵や残るライジンノミを除去できるだろう。
 水を入れたガラス瓶にライジンノミを沈め、ブラッシング。これをナナシが寝ている間に何度も繰り返す。
「さて」
 床で目を回しているネッコやアリスの妹らも癒してやれば、残るはネッコの仕事だ。
 すやすやと、気持ち良さそうに鼻提灯を膨らませるネッコを起こすのは鳳鳴だ。
 強目に肩を揺すれば飛び起きるネッコ。眠気に顔を抑えながらも、例の猫はどうなったかと厳しい声だ。
「この獣は尊公が捕らえるがよい! 案ずるな、もはや戦う力は残っておらぬ」
「なに?」
 目を開き、きょとんとした様子のナナシに驚きの目を向ける。
「し、しかし……俺はほとんど、何も……」
「おいネッコ。捕まえるには俺たちじゃ力が強すぎるんだ。へろいパンチの打てるあんたの出番かもしれねえぞ」
 軽口を挟むようにレイ。ネッコは拳を交えた彼をしばし見つめていたが、わかったと頷いてナナシの下へ向かう。
 先程までの大運動会はどこへやら、すっかり落ち着きを取り戻してしおらしくなったナナシにネッコは笑みを見せた。
「新しい『力の象徴』になったお前には、一緒に来てもらうぞ。なに、悪いようにはしないさ」
 差し伸べられた手に、ナナシはその匂いを嗅ぐと首を擦り付けた。
 その行為に了承されたと理解したネッコは彼を持ち上げて、その腕に収める。丸くなって受け入れたナナシに桜花は微笑んでおやつを渡した。
「これからは此処の鼠取り頑張って下さいね、ナナシさん」
「ネズミだけじゃあないさ。何しろ雷様だからな、なあ猫神様」
 わしわしと頭を撫でてやると、ナナシは「にゃあん」と嬉しそうな声を上げた。
「お掃除完了です!」
「心洗われる綺麗さだ」
 残るライジンノミを退治し、大量のハゲと共に床掃除を終えた和鏡子、鳳鳴。その隣では床に開けた穴をララの持ってきた破片に幼虫と共にアリスの放つ糸で穴埋めしている。
 ララは一先ずの事態の終息に一息つき。
「後は……地上の問題、だ……」
 地上繋がっているであろう、閉ざされた扉へ目を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『探せ食の神秘、イン・アポカリプスヘル!』

POW   :    道具など不要也!食材など我が身ひとつで揃えてくれる!

SPD   :    虫取網に釣竿、弓矢に撒き餌。ふふっ、狩猟準備はパーペキねっ!

WIZ   :    周辺の動植物全ての行動パターン把握。各個に見合う罠の設置完了。ふっ、戦わずして全ては決しているのさ!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●いざ行かん既開の大地!
 ライジンノミを退治し終えて、拠点住民たちが食物庫へ雪崩れ込んでからはてんやわんやであった。何しろ決死の覚悟を固めていざ向かえば戦いは終わっているし、予想を超える食物の山に外へ出る道があるとなれば、指導者の髪型も変わっていると各人の混乱も頷ける。
 その混乱を抑えつけたのは我らが指導者ネッコ・ゴロニャンコ──ではなく、テーナガ・カマキリャーによるものだ。
 流石に経験で勝るテーナガはこのような事態の回避も上手く、声の通る高所から一喝、更にナナシを抱き込んだネッコの姿を強調することで、問題を解決し新たな希望へ繋いだ新指導者という立場を明らかにした。
 ネッコとしてはほぼほぼ自分の手柄ではなかったが、そこに口を挟むほど子供ではない。自らの地位を確固たるものにすべくその状況を利用する。
 そうして、食物庫から外に運び出された食料の分け前を他の補佐官に案を練らせる間、ネッコとテーナガは動かぬ扉を見上げていた。
 電気によって開閉する仕組み。しかし故障しており動く気配はない。二人は破壊を考えたが地上からの外敵を守る壁ともなる場所、なんとか残しておきたいと考えていた。
「みゃっ!」
「ん、なんだ猫神様」
「そういえば猫神様、アナタどこから入ってきたの?」
 ナナシは割りと居心地の良かったネッコの腕から飛び降りると、排気孔のひとつへ二人を案内する。
 警戒しつつも近より匂いを嗅げば、流れているのは新鮮な空気だ。
「おおい、人手を寄越してくれ!」
 ネッコの言葉にツルハシを持った男が数人集まり壁を崩せば、人が通れる通路が姿を表した。
 緊急避難用に造られたものだろうか、壁も薄く咄嗟の出来事に対処しやすくなっている。
 更に数人、武器を持たせた人員を募り通路を進んだネッコたち。ナナシが出入りしたであろう光の漏れる瓦礫の山を打ち崩し、彼らがその目にしたのは広大な、そして荒れ果てた大地だった。
「……これが……地上……」
 白い砂のように乾いた土塊は夕暮れに赤く染まる。拾い、握れば粉と崩れ行くそれに生命の雄々しさは感じられない。
 そこは、彼らの目指した生きる為の地ではなく、死地と呼ぶべき場所だった。
 生き物の気配すらない絶望の大地に言葉を失う面々。
 ただ一人を除いて。
「戻るぞ。体を休めて、明日に備えるんだ」
「……明日って……」
 不安を見せた彼らがそれを爆発させる前に、ネッコは朗らかな笑みを浮かべた。
「見ろよ、地平線まで見えるぜ。こんなに広い地上なんだ、幾らでも探さなきゃならない場所、作り替えなきゃならない場所がある。
 泣き言なんて暇もない、これから忙しくなるからな!」
 ポジティブぅ!
 ネッコの言葉を受けて、住民にも笑顔が戻る。
 そう、悲嘆することなど何もないのだ。生きている以上、人々は歩かなければならない。そして、その足跡こそ新たな文明となり、生活となり、命となるのだから。
「よーし、命懸けの戦いも終わったし、明日に備えて寝るべ!」
「今日は全く腹が減らねえや!」
「ま、戦ってないもんね」
 拠点へと戻る彼らの後ろ姿を見送り、そして希望の大地へ振り返るネッコの背を伝う汗。
(狩りとかやり方知らないんだけどどーしよう)
 ですよねー。

・狩りや農耕、野生の食物への基礎知識の抜け落ちた地下拠点住民の、明日の生活の為の手助けを行って下さい。
・基本的には狩りの仕方、道具の使い方、野草や野生生物の習性を学習するなど、このアポカリプスヘルへ適応するための手伝いとなります。
・希望を紡ぐため、知恵を合わせて生きる術を編み出すことを彼らに学習させましょう。
・狩猟方法などは詳細を省いても構いません。
鳳鳴・ブレナンディハーフ
☆…主人格
★…第二人格

☆拙僧は資源を探しに行く……
一番大切なのは水場だ
農業を始めるにしても水は必須
それに水場には獣が集まるからな

(そして自分の食糧を預かり拠点を旅立つ)

地図を書きながら進もう
資源になりそうな物(樹木や食用の果実、石が切り出せる場所、獣の多い森)を見つけ次第地図に書き込む
最初は拠点が見える範囲で探索し、探索し尽くしたら徐々に広めていく

獣を見つけたら狩りを行う
狩りの道具は……

★僕のHENTAICostumeは槍にも罠にもなり得る!
或いは僕自身を投げて攻撃することもね
あと、このプレイングには華が足りないから
広大な無人の荒野を全裸で駆ける描写をだね

☆こやつ荒野に捨てたいのだが


御園・桜花
「畑を作るなら水場が必要、なのですけれど…何処にあるのでしょう?」

UC「ノームの召喚」使用
近隣に農業用にできそうな水源があるか探索に行かせる
拠点の水資源を農業転用できるほど確保できるかも確認
水源の位置により畑や仮説小屋の位置決め、ノームと一緒に荒野を開墾する

「他の拠点では拠点間を繋ぐように道路を作ったり、芋の栽培を始めようとしていましたけれど…此処での食料はどのような形で供給されていたのでしょう?ブロックやゼリータイプでしょうか、蕎麦や芋など、救荒植物として使えるものの備蓄を調理したのでしょうか」
救荒植物があったらその生育サイクルを説明しノームに手伝って貰いながら拠点の人達と開墾した畑に植える



●また来たぜ新天地。
 昇る朝日は新鮮で、眩くも熱の広がる大地の希望へ夢を膨らませた男たちは気合の雄叫びを上げる。
 それを引き連れるネッコは傍らに補佐官としてテーナガを立て、彼らへ声を張り上げた。
「ここから先は俺たちの分からない事だらけだ。見ての通り辛い環境になるし、女子供は猫神様がお許しをくれた、地下の未探索場所の確認を担当してもらう」
 ナナシさんいいポジションに着いたのね。
 ライジンノミがいなくなったとは言え、その威光、そして地上への道を示した彼を神と扱うことが取り決められたようだ。そんなナナシのお膝元、食物庫や非常通路から連なる各部屋の探索が行われている。
 そして、地上では。
「今回、我らに各家で語り継いできたという地上の知恵を伝えてくれるのは、彼らだ」
 紹介される猟兵たち。その特性から見知った顔ではないが拠点の住人と認識されている為、言葉を合わせたようだ。
 これならば自然と地上の知識を渡す事ができるだろう。
「おう、よろしく頼むぜ、えっと……お隣の……?」
「いや確かお向かいの?」
「そんな便利な知識があるなら早く教えてくれてもいいのによぅ! …………、どこに住んでたんだっけ?」
「おい、要らんことに気を取られるな!」
 うむ、実に自然。
 にわかに混乱を見せた拠点住民たちをネッコがぴしゃり。いい仕事をした。もう帰っていいぞ。
「各自、助言を受けて行動すること。無理をするんじゃないぞ」
「ギチギチギチ、ギイイイイッ!」
(きゃー、巣のリーダーとしてみんなを引っ張るネッコさんかっこいー)
 そこで鉄を力任せに引き裂くような黄色い声を上げたのはアリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)だ。巣はもちろんおウチと読むよ。
 アリスの声援に、よせやいとばかり鼻をこするネッコ、傍らから見つめるテーナガはほっこりした笑み。
 誤解って解けないもんだね。
 と、個人の感情はさておき、テーナガは顔を引き締めて一歩前に出る。
「偉大なる若き雄、ネッコは蚊より弱いワ! 我らの指導者を守る為に探索隊の指揮はアテクシが執りますっ!」
 至極妥当。
「だからと言って、俺が探索隊につかない訳じゃあない。皆と共に行進し、状況判断はテーナガと行うつもりだ。
 ただ、経験についてはこのテーナガが俺より上なのは確実。だから補佐官として、そして実働隊となる探索隊はテーナガの指揮の下に行う」
 つまりは実践訓練だ。指導者としてもまた、ネッコは成長するつもりなのだ。
 そこでと手を挙げたのは佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)。
「地上では野生生物だけでなく、同じ人間からの略奪にも警戒する必要があります。対策するための人手を貸して頂きたいです」
「略奪だと?」
 目を丸くするネッコ。
 権力を得るために争うのは拠点でも同じであったが、生き延びる方法を協力ではなく敵対で手に入れるという発想は、彼らにはなかったのだ。
 改めて過酷な地であることを理解したネッコは、重い溜め息を吐く。
「分かった。和鏡子の下に人をつけよう。それとは別に警備班を作るぞ。進行先に二人ずつ見張りを残していく。
 何か異常があればすぐに拠点側と探索隊に報せてくれ」
 すぐに報告できるよう、伝言をつなげて走れる体制を取るのはやはり、文明的な退化を如実に語る。
 だが、それでも即座に対応を見せた若き雄の地力は、誰もが認める所だろう。
「ギチギチ、ギイイ、ギチギチ、ギイイイイッ!」
(それなら、アリスもここでお手伝いしちゃう。
 安定した供給となると農業よー)
 ふんす、という鼻息の代わりに鋏角を軋ませて身を持ち上げるアリス。少女で表すと得意気に胸を張っている所だろうが相手は体高二メートルを越す大型生物。
「お、おう」
 自然に対応しているとはいえ謎の威圧感を受けて後退るネッコ。
 このやり取りに御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は小首を傾げ、ふむとひとつ。
「畑を作るなら水場が必要、……なのですけれど……何処にあるのでしょう?」
「……そりゃあ……」
『…………』
 押し黙る一同。
 地下拠点を水源とすることを提案した者もいるが、これから外へ広がる彼らとして、ここに留まる形があってはならない。
 ならば。
 白く乾いた地をすくい、握れば風に解けるそれらの中から小さな丸い石を集める。
「おいでおいで、土小人。
 私の手助けをしておくれ。
 代わりに石をあげましょう。
 ざらざら渡す石ビーズ、その分手助けをしておくれ」
 風に乗る透き通った声を媒介に、桜花のユーベルコードが発現する。【ノームの召喚】。その喚び声を受けて色鮮やかな衣服に身を包んだとんがり帽子が地面から現れた。
 小さな人影に男らは感嘆の声をあげ、桜花を呪い師かなにかかと見つめている。
「この小人さんたちはノーム。水源の位置を探してくれます。ついでに何人かで拠点の水資源についても調べておきましょう」
「……しかし……」
「いや、ここは桜花殿の言う通り。選択肢は多い方がいいだろう」
 鳳鳴・ブレナンディハーフ(破戒僧とフリーダム・f17841)は渋るネッコへ助言する。テーナガの視線が痛いがここはあえて無視を貫く。
 行いで自らのHENTAI性を否定するのだ。鳳鳴にはその意志が感じ取れる。
「一番大切なのは水場の探索。
 農業を始めるにしても水は必須。それに水場には、獣が集まるからな」
 つまり狩り場にもなるはずだ。
 鳳鳴の言葉にララ・トゥルリ(夢の残骸・f02036)も頷く。
「……獣……狩り……狩りと言えば肉だ……力もつく……」
 水場に集まる獣たちから食用に適したものを調査しなければならない。
 その為にはもちろん、捕獲も必要だ。狩猟のやり方ならば任せろとする鳳鳴、ララに加わりレイ・オブライト(steel・f25854)も帽子の調整しながら口を開いた。
 髪型は戻ったようだが違和感が残っているのかも知れない。
「狩り、か。獲物に逃げられでもしたら事だ。まずは実演形式といこう。俺たちで手本を見せてやる」
「ああ、そうしてくれるとありがたい」
 三人の言葉に頷くネッコ。どうやら話はまとまったようだと桜花も笑みを浮かべて、お話の間も真面目に待機していたとんがり帽子に目を向ける。
「地上の文明は拠点間を繋ぐように道路を作ったと言いますし、道路の整備も彼らにお手伝いをお願いしましょうか」
「拙僧が地図を作ろう。探索隊はノームらと共に水場の確保を優先してもらい、その間に拙僧は周囲を探索して、人の足で水場に向かうに適した道や他の狩り場も確認するとしよう」
 HENTAIが単独行動をしようとしているぞ!
 しかし地図の作成は急ぐべき重要な工程だ。何より、鳳鳴ならばきっと内なるダークサイドを御してくれるはず。
 ネッコは単独で荒野を行く鳳鳴の為に食料と水を持たせるよう、他の住民へ伝えた。
「農業についてなんですけれど。此処での食料はどのような形で供給されていたのでしょう?
 ブロックやゼリータイプでしょうか。蕎麦や芋など、救荒植物として使えるものの備蓄を調理したのでしょうか」
「アテクシたちが食べていたのはその、ブロックとゼリータイプというのかしら? 固形物や半固形物の食料ばかりヨ」
 テーナガの答えに質問した桜花は一声唸る。
 救荒植物があればその生育サイクルを説明し、ノームに手伝って貰いながら開墾した畑に植えるつもりであったのだが。
「それでしたら、食物庫の中にサバイバル知識の本や、農耕についての本など役に立ちそうな物が無いか探してみます」
 握り拳を胸元に添えて和鏡子。
 この拠点に住んでいた当初の人々も、未来永劫地下に潜っているつもりは無かったはずと踏んだ彼女は、いつか地上に出られた日の為の備えがあるのではないか、そう考えていたのだ。
 同時に地上で農耕を始めるべく種などを保存している可能性も有り、それをネッコたちが知らないだけとも考えられる。
「ギギギ、ガチッ、ガチッ!」
(拠点の探索ならノームさんだけじゃなくて、妹たちにも手伝ってもらうわねー)
 互いを念話で繋ぐアリス群体。確かにそれらがいれば探索にも大いに役立つだろう。
 もぞもぞと忍び寄る幼虫たちに気づかぬノームさんの運命や如何に。
「……ネッコたちは……筋肉質な人もいるけど……全体的に、細い、な……」
 保存食を主とする故か、彼らの身体的特徴に言及するララ。その体躯では荒野の陽射しは辛いだろうと、日除けになる装備も揃えるよう進言する。
「あとは塩気のある保存食だな。食物庫なら缶詰めもあるはずだ、そういったものも集めて置いてくれ」
 続けてレイ。熱中症を避ける為の知恵であるが、詳しい説明は後に回した方がいいだろう。
 ネッコ、テーナガの指示を受けて準備を整えた地下拠点の住人たち。
 彼らは遂に、地上の探索へと向かうのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
狩り、か
実演形式といこう。見てな
先ず本日の晩飯を寄せ付ける(そこらへんに死んだように転がり釣り餌となるデッドマン)
寄って来た鳥獣を捕まえる(覇気制御の鎖でガシッ)
仕留めついでに焼く(片腕代償【Vortex】)
ここまではいいな。……よくない?

こんな日々を送ってると、只の人間の融通の利かなさをたまに忘れちまう
実際、便利なもんだぞ ※一度死ぬと
腹なんか空かねえし守れるもんも増える
それでもあんたはあんたのまま、こんな世界でリーダーやってくか?
(愚問と知ってなお聞きたかっただけだ)
こいつには仲間が多い
古くはどんなデカブツだって囲い込んで力合わせて狩ってきた種族なわけだ、人間は人間らしく強みを活かせと言う


アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎

きゃー、巣のリーダーとしてみんなを引っ張るネッコさんかっこいー
そんな頑張るネッコさんの為にアリスもお手伝いしちゃう
安定した供給となると農業よー
という事で、幼い妹(幼虫)達にその辺りの空き地を【トンネル堀り】の要領で耕して貰いましょー!
ミミズが棲む畑は土が肥えるから、妹達が棲む畑も土が肥えると思うのー
とりあえずここに棲んで耕しながら適当に増えてねー
後は木の実や種を植えて、肥料とお水をあげて草と虫を取っておけば大体育つわよー
肥料?そこは幼虫を逆さにして振ったら【パワーフード(粒状)】が口から出てくるからそれを撒いたらだいじょーぶ!
一粒300kmのエネルギー源よー
材料はヒ・ミ・ツ



●復活のベース。
 拠点周囲に見張りを立て、探索隊を見送った和鏡子は地下へと降りる。中では緊急用通路の先を調べていた女性と子供がいた。
「どうです、何かありましたか?」
「それが、良く分からなくて。来てもらえますか?」
 もちろん、と頷く和鏡子を女性が案内した部屋は薄暗く、子供の手にした松明でようやくその全容を知る。
「……これは……」
 並ぶモニター、椅子とマイクを思わせる集音機器。
 指令室、コントロールルームだと和鏡子は判断した。子供から松明を借りて辺りを探れば、赤く点灯するスイッチが目に映る。
「これですね」
 ばちりと押し込めば低い駆動音と同時に指令室と非常通路に灯りが点る。
(元々、皆さんが暮らしていけるよう最低の電力は生かされていた訳ですし……と、なると……)
 端末を叩き、次々とモニターに現れる情報を読み流していく。目を白黒させている女性を尻目に、和鏡子はこれだと引き出した情報に手を叩く。
 地上へ続く食物庫の扉だ。故障していたのではなく、意図的に電気が止められている。
 地上からの侵入者に備えて先人たちが封鎖したのだろう。更に言えば、長い年月かそれともこれも備えなのか、通路のそのものも瓦礫により埋まっている。
 地下に潜る前に和鏡子は謎の道を確認していたのだが、これで直通路だと確定した訳だ。
「アリスさん、ノームさん、聞こえますか。例の瓦礫を退かしてください。その先に扉や通路があるので、壊さないように気をつけてくださいね」
(りょーかーい!)
 電力を復旧させた事で拠点全体に広がる和鏡子の声。それに応じたアリスの念話が耳、もとい脳内に届く。
 便利だなあ。
 科学技術とはまた別の知的好奇心をくすぐられながら、ガジェッティアとしての知識を総動員して各操作系と拠点機能、そして故障した箇所や問題点を洗い出していく。
「い、一体、今の声は!? 魔術か何かですか?」
「スピーカーという、人の声を別の場所に届ける技術です。誰でも使えるように整備し直しますから、待っていてくださいね」
 慌てた様子の女性に笑みを見せる。
 そう、これは技術であり、失わされし文明の力なのだ。アポカリプスヘルの住民には、人はそれぞれそれを作り、扱う事が出来るのだと知らせねばならない。
 地上では、アリスが拠点近くに倒木や柱状の石柱をどかどか立てて区画の目印を作っている最中だった。
 見張りのおっさんどもは目を逸らしている。理解不能なものを無理に理解する必要はないのさ。
「ギチギチギチ! ガチガチガチ!」
(みんな~ごはんだよ~)
 和鏡子の放送にその手、もとい肢を止めて、鋏角を打ち鳴らす。
 アリスのユーベルコードを介した喚び声は次元を超えて、彼女の妹たちをこの世界へと召喚する。
「ギイイイイッ!」
 元気良く土を蹴散らして土中から現れる妹たち。成虫となったそれはアリスと遜色ないが、司令塔である彼女の言葉に従い、通路を塞がれる瓦礫へと向かう。
「ノームさんたちも、お願いしますね」
『!』
 桜花の言葉に敬礼で返した小人は、その背丈にあったつるはしを担いで瓦礫へ向かう。先行するアリス成虫が瓦礫を砕き、貪り、掘り進める間に通路の細かな部分へ堆積した土砂などを掘り起こすノーム。
 彼らの頭の上にはそれぞれアリス幼虫が昇っており、周囲の危険を見張りながらアリス、そして桜花の指示を彼らに伝達している。
「ガチガチガチ!」
(他のみんなはこっちよー)
(はーい)
 アリスの号令に芋虫の行進、たどり着いたのは彼女の製作していた幾つかの区画だ。
「ギイイ、ギチギチ!」
(とりあえずここに棲んで耕しながら適当に増えてねー)
(わーい!)
 なんかさらりととんでもない事を言ってますね。
 それぞれが思い思いの区画に飛び込んで、もこもこと耕し始める。
「妹さんたちが畑を作るんですか?」
「ギギギッ、ギッチギッチ。ギギィイイ!」
(そうよー。ミミズが棲む畑は土が肥えるから、妹たちが棲む畑も土が肥えると思うのー。
 後は木の実や種を植えて、肥料とお水をあげて草と虫を取っておけば大体育つわよー)
 問題はその水か。
 桜花は拠点から水が転用できればと考えているが、後は和鏡子の報告待ちだ。
 と、その裾をちょいちょいと引く者。彼女の召喚したノームだ。掲げた掌には向日葵の種の詰まる袋があった。
「種が見つかったんですね!」
(和鏡子さんが種子の保存してる部屋を見つけてくれたのー)
「和鏡子さんに、ありがとうと伝えてください」
 ノームの頭と、頭の上の幼虫を撫でてやればくすぐったそうに身動ぎする。受け取った小袋を手に振り向けば、順調に耕せている畑。
 下までしっかり解すには時間もかかるはずだが、それでも予想より良い速度だ。
「和歌子さんが種を見つけてくれましたよ。肥料が育ったら撒きましょうか」
「ギチギチ」
(肥料?)
 桜花の言葉にきょとんとしてこちらを見下ろすアリス。しかしでけえな。
 桜花の予想では成虫と同じく乾いた土を食べた幼虫のちょめちょめが肥料になると考えていたのだ。
 実際、その考えは間違っていないかも知れない。分泌液やら何やらで土を作り替えることも可能だろう。地球外生命体が基となっているから必ずしもそうだとは言えないが。
 しかしアリスか一声かければ、土から顔を出す幼虫たち。あらやだ夢に出そう。
「ギギギ、ギッ、ギッ!」
(肥料はこうすれば出てくるわよー)
 と言って、なんと幼き妹を前肢に器用にかけて逆さに振り始めたではないか。
(きゅっ! きゅっ!)
 悲鳴? を上げるその口から昼日中にも関わらず青白い輝きを確認できる粒状の物体を吐き出し、姉の肢から逃れて畑に戻る幼虫。
 ええと?
「ギイイェエエッ!」
(これは【パワーフード(粒状)】、一粒三百メガカロリーの超栄養物質なのー。これを畑に撒けば大丈夫よ~)
 なるほど?
 材料は乙女の秘密なのだと前肢をしゃかしゃか振るアリス。よし、引き取ってもらおうぜ!
「それじゃあ、探索隊が水場を見つけましたら、そこにも妹さんたちを連れて行っても大丈夫でしょうか?」
「ギチギチ!」
(もちろんよー)
 そんな発光する物体なんて植えちゃ駄目だよ!
 とは言え枯れ細った大地を甦らせる為、このような劇薬も必要かも知れない。
 もこもこと耕かされていく地面をほっこりした笑顔で見つめる桜花。しばらくしたらそこから成虫が顔を出すようになるのか。
 皆様の目には浮かぶだろうか。植物と一緒に育ち、アポカリプスヘルの大地を埋め尽くす畑産のアリスの群れを。
 まあ、猟兵なら別にいいよね?
『桜花さん、聞こえますか。今、ノームさんを向かわせました。彼に地図を持たせているので、ポイントされた所を掘り起こしてください』
「! ……もしかして……?」
 拠点周辺整備用のスプリンクラーの場所です。
 和鏡子の言葉に桜花は拳を握った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ララ・トゥルリ
【WIZ】
アドリブ◎

狩り…狩りといえば肉だ…力もつく…
食用に適したものを調査して…肉であれば【魔女の束縛】をして【魔性の女】でどうだろうか…
…あぁでも…我輩が捕まえられても仕方ないんだったな…、ネッコやテーナガ達が憶えないと…

……そうか、こんな時こそ【戦唄】じゃないか…?ちょっと弱らせる程度に【破壊の聲】で攻撃して…この場に狩りをしてる皆が強化されたら…コツを掴むのも、少し早まるかもしれない…
もしBSが付いたら…後で膝枕してよしよしするから…許してほしい…

生きていく為…捌き方も、教えなきゃ、な…

・狩り中はぽよぽよと応援している
・彼女は食肉可能なものは全て「肉」と呼び、生物名では呼びません


佐藤・和鏡子
ガジェッティアのスキルがあり、機械の知識はあるので、故障した扉を修理したり、拠点への外敵の侵入を防ぐバリケードを設置するなど、外の世界を開拓するための拠点として地下の拠点が使えるように手を貸そうと思います。(メカニックの技能とユーベルコードを併用します)
食料庫の中にサバイバル知識の本や農耕についての本など役に立ちそうな本が無いか探してみます。(情報収集や学習力を使って探します)
あの拠点を作った人たちも未来永劫地下に潜っているつもりは無かったでしょうし、いつか地上に出られた日のための準備はあると思いますから。
本が見つかったらそれをネッコさんたち拠点の住民に教えます。



●ひと狩り行こうぜ!
 朝日に伸びる影はひとつ。朽ちた大地を独り行く。
 拠点から受け取った水を一口飲んで、鳳鳴は強い陽射しに目を細めた。
 拠点から離れてしばし、円を描くように周囲を探索していた彼の進みは遅いものだが、その手には仔細の詰められた地図が出来上がっている。
「やはり、探索隊の向かう先を考えれば、道路を作るのはこのルートで決定だろう」
 歩くに適し、造るに易し。道を切り出す為に容易で材料を置き換えする必要もないルートを選抜し、印を付け加える。
 狩りや建築に適するであろう岩山や、文明の名残である朽ちた残骸の集積所も見つけている。
 ふむ。
 片手で遠眼鏡のように丸を作って覗く。ちらほらと見え始める緑の色に、一先ずはあの周囲の探索だと頷いた。
 なんか口笛の音楽とか流れそうな渋さね。
 日除けに拠点住人が即席で作った笠を被り直し、乾燥木材を杖に歩を進める。
 一方で荒野を行く探索隊は、道の途中に見張りを立てつつ、ノームに従い行進する。
「この緑が増え始めたら、水場も近くなるって話だったかしら?」
「らしいな」
 足元に見え始めた、悪環境にも健気に咲く草花を見てテーナガ、答えるネッコ。
 一行も笠と杖を装備し、辛い陽射しに耐えている。
「!」
「……どうした……?」
 突然、辺りを見回し始めたノームにララが疑問を見せれば、不意に道を変える。
 不思議に思えば向かう岩影、その下に出来た水溜まりと、それで喉を潤す四足の獣の姿。
「捕まえるのヨーッ!」
『ヒャッハーッ!』
 テーナガの号令に従い突撃するネッコ以下探索隊の面々。狩りの仕方も知らんくせに何しとんのんじゃ。
 無論、そんな掛け声を聞いて大人しく待つ獣などいるはずもなく、身をすくませてこちらを確認した獣は一目散に荒野へと消える。
「…………、惜しかったわねー」
「おい、次は黙ってこっちに任せろ。いいな?」
 舌打ちするテーナガに詰め寄るレイ。
 あらやだイケメンとばかりに頬を染めて頷くテーナガはさておき、水場を確認したノームは地下で繋がる別の場所を見当つけたようで歩を進める。
「ノームさんに続けー!」
『オオオオォォォ!』
「よし、分かったお前たち。まず気配を殺す所からだ」
 彼らの雄叫びのお陰か野生動物をしばらく見ることのなかった探索隊。しかし、ノームの案内に続けば緑も着実に増え、生きた土を見ることが出来る。
 となれば、いよいよ見つかるのが本格的な水場だ。
「……おお……!」
 感嘆の声を上げた男の一人は、思わず自分の口を手で塞ぐ。だが誰しもがそれを咎める事はしない。
 透き通った水を中心に、緑と繁る草葉、木すらも見える中、そこに潜む生き物たち。地中から突き出たパイプより放出される水が資源となる場所は噴水の如く、飛沫は陽の光を弾いて虹を作る。
 誰もがそれに気を取られ、遂にその目にした命溢れる地に感動していた。
「……ネッコ、肉だ……」
 満ち足りた環境に腹が膨れているのか、鋭い牙を持つ肉食獣は鳥を頭に乗せても気にせずのんびりしている。
 ララの言葉を受けてネッコげテーナガを振り返れば、彼は頷き頭上で手を回す。その合図を見て伏せる面々。
 レイの訓練はきちんと作用しているようだ。
 準備は上々。先生、お願いします!
 首を回し肩を回し手を回し、骨を鳴らしてレイは一行より離れて肉食獣へ向かう。
 来訪者に気づき、獣のは目を大きく開くと警戒的に喉を鳴らす。ところでこの方、狩猟道具なしでどうするのだろうか。
 首を傾げたノームとララに、肩越しに笑って見せると湿り気を帯びた土の上にばたりと倒れる。
 さすがに小鳥とはサイズも違う。目の前で倒れた食料候補に興味津々の獣は腰をあげ、ゆっくりと近づきその臭いを嗅ぐ。
 デッドマンだから死臭しかしないぜ。
 良く分からないが餌が手に入ったと喜んだのか、棲みかに引きずろうと彼の右腕に牙を立てる。危うしデッドマン。暢気にメモを用意していたネッコらが立ち上がる中、焦りを見せないのはやはり猟兵と言うべきか、ララが彼らを落ち着かせる。
 直後。
 覇気により制御された鎖が獣の身へと巻き付いた。蛇の如きそれに驚くそれが腕を離せば、逆にレイの右手がその顎を捕らえる。
「食い残しは良くねえな。最期まで付き合え」
 にやりと笑うレイが放つのは【Vortex(デッドマンズ・スパーク)】の雷。
 獣を掴む右腕を代償に発言した電流は眩い閃光を放ち、獣を食欲そそる香ばしい匂いの焼き肉へと変えた。
 さて。
 捕獲に使った腕も無くなった所でネッコらへ振り返る。
「ここまでは良いな?」
「良くねえな!」
 出来るものかとメモ用紙を地面に叩きつけてネッコ。期待していた分、ショックも大きいのか凄い残念な顔をする住人たち。与えられることしか考えてないからこんな目に合うんだぞ。
 ララもレイの言葉に頷いていたが、悲しいかなここに奪還者はいない。ただの一般ピーポーな拠点住人にとって鎖を蛇のように動かすことは出来ないし、雷を出すことも腕を吹っ飛ばすことも出来ない。
 なんなら生き餌になるのも無理なんですわ。
 割りと最初の一歩でアウトを踏んでいたレイはネッコの割りと真っ当な怒りやオーディエンスの割りと真っ当な反応に頬を掻く。
「こんな日々を送ってると、只の人間の融通の利かなさをたまに忘れちまう。
 実際、便利なもんだぞ」
 肘から先を無くした右腕を見せれば顔を逸らす人々。しゃーないね。
 ララは、鎖も使えなければ電気も出せずに腕も吹っ飛ばせない軟弱者たちにふむむと唸る。
(野草は食用に適したものを調査して……肉であれば魔女の束縛をして魔性の女で……あぁでも……我輩が捕まえても仕方ないのか……ネッコやテーナガたちが狩りをできないと……)
 先人の失敗を前に、頭を悩ませるララ。
 先程のレイの活躍により野生動物は散り散りとなったが、好奇心は猫をも殺す。やはり気になるのか警戒しつつも水場に戻ってくる獣や鳥の姿が見える。
「あら? ……あれは……」
 やって来たのはお肉さんだけではなかった。
「ア~ラララララララ!」
 奇声を上げて槍を片手に原住民よろしく走るのは鳳鳴、否、全裸のHENTAIだ。
 皆さんお待たせブレナンディハーフの登場にテーナガがエンガチョする中、彼は時代が時代ならば褒章ものの見事な姿勢で槍を放つ。
「ッンホォイ!」
 掛け声もうちょい何とかならんのんか。
 綺麗な放物線を描いたそれはHENTAIから逃げ惑う獣の背に突き刺さり、絶命させる。
 こいつただのHENTAIじゃないぞ。
「やっぱりあいつHENTAIヨッ。HENTAIだったのヨッ!」
「し、しかし……今のは残念ながら参考になる……!」
 どこに残念がってるのだ。レイの時とは違いメモを記す筆が止まらない。
 放った槍をその手に戻し、リングでも見せたアブドミナル・アンド・サイで、美しき裸体を衆目に晒しドヤつくブレナンディハーフ。
「一人荒野を歩くなんて華が足りないからね。広大な無人の荒野を全裸で駆ける大胆な姿をね」
 ラフレシアの事を風流とか言っちゃいそうなセンス。
(こやつ荒野に捨てたいのだが)
 母なる大地に酷いことをしないでください鳳鳴様。
 一先ず見目麗しいブレナンディハーフは観衆の反感を買う為にレイが無言で撤去、だがその勇姿を見たララはふと思いつく。
 彼の奇声を。
「……そうか、こんな時こそ戦唄じゃないか……?
 ちょっと弱らせる程度に破壊の聲で……攻撃して……この場に狩りをしてる皆が強化されたら……コツを掴むのも、少し早まるかもしれない……」
 もし悪影響が出れば、後で膝枕してよしよししよう。
 木材の杖を削り即席の槍としながら、ノームのチェックを受けて投擲の仕方を練習するネッコたちへ視線を向ける。
「……ネッコ、テーナガ、皆、がんばれ……皆なら、さっきのHENTAIより上手くやれる……たぶん」
『よっしゃあぁあぁあ!!』
 効果は抜群だ!
 ララの言葉はユーベルコードを介し、彼らの肉体へも作用する。士気と共に身体能力も強化された彼らは、さすがにHENTAIを超える戦果を挙げる者はいないが、それでも集団。
 放たれる槍は点ではなく面の攻撃となり、獲物を確実に捕らえていく。
 狩猟の方法と言えば原始的だが効果的な方法を習得できたろう。
 ブラックタールらしくのびのびぽよぽよと弾むララの応援は彼らの闘争本能に火を着けて、次々と獲物を無惨に槍の餌食としていく。
 持ち帰れる数を明らかに逸しているけど、練習の意味もあるししょうがないね。傍目から見るとバーサーカーを操る魔女の様相だけどあながち間違ってないからしょうがないね。
(……生きていく為……捌き方も、調理や保存の仕方も、教えなきゃ、な……)
 狩りと言うに十分な動きを見せるようになった拠点の住人たち。
 後方からそれを見つめるネッコの隣に並び、レイは言葉をかけた。
「調子はどうだ?」
「上々さ。……にしても、あんた……人間じゃなかったんだな」
 ゾンビなだけで人間だぞ。
 レイは無言で小さく肩を竦めた。
「腹なんか空かねえし、守れるもんも増える。そういう体で、そういう力を持てる技術がある。
 それでもあんたはあんたのまま、こんな世界でリーダーやってくのか?」
「それに返事が必要か?」
 軽口を叩くネッコに、レイは小さく笑って帽子を目深に被り直す。勿論、彼とてその質問の愚かさを自覚している。だからこそ、あえて質問したのだ。
「人間てのは、古くはどんなデカブツだって囲い込んで力合わせて狩ってきた種族なワケだ。人間は人間らしく、強みを活かせ」
「ああ。俺一人じゃ何も出来なかった。ここまで来れた事、あんたたちと力を合わせた結果だって事、忘れちゃいないぜ」
 拳を向けるネッコ。レイはそれに応えて、自らの拳を合わせた。
 彼には仲間が多い。指導者として、立派にこの拠点の住人を導いて行けるだろう。


●希望へ向かって。
 ララのユーベルコードによってその身を強化した人々は、普通なら運べそうにもない獣の死体を大量に、意気揚々と拠点へと運び込んでいた。
 目が血走ってるね。怖いね。レイダーと間違えられるんじゃないぞ。
「ギイイイイッ!」
(おかえりなのー)
(おかえりー)
 帰って来た探索隊にぶんぶか前肢を振るアリス。畑からひょっこり顔を出した幼虫たちも人々の帰宅を喜んでいるようだ。
 駆け寄るノームたちが獲物を回収し、食物庫へと運んで行く。彼らとアリスが整備した出入口からだ。
「す、すげえ」
 先程の水場と同じく、拠点の周囲にはスプリンクラーを利用した噴水場が設けられ、溜められた水がアリス幼虫の耕す畑に運ばれるよう整備されている。
 それらは入口周囲に製作されたバリケードと同じく、お間抜けな顔立ちの動物を模した形をしていた。
 和鏡子のユーベルコード、【ガジェットショータイム】による産物だ。見てくれにさえ目を瞑れば、十分過ぎる活躍が期待できるだろう。
「まさかここまでだなんて。あんたの力は偉大ヨ」
「人間の力です、テーナガさん。この拠点については他の方にも説明してありますから、皆さんで使えるようにしてください」
「ありがとう、和鏡子」
 リング上のやり取りとは違い、固い握手を交わす。
 その後ろでは拠点周囲と探索隊の発見した水場への地図を記した鳳鳴が、桜花へ各箇所の説明をしていた。
「なるほど。でしたら、このルートの開墾をノームさんに、このポイントに畑と作業小屋、ここに見張り台を作るのはどうでしょうか」
「そうだな。可能なら飼育小屋も設けたい所だが」
「わかりました。ネッコさん!」
 大体の場所と案をまとめてネッコに報告する桜花。ネッコはそれを受けて反対する要素は零だと両手を上げて歓迎する。
「桜花、あんたは料理ってのは出来るのか?」
「ええ」
「なら、悪いがそのやり方を教えてくれないか。向こうでララに教えて貰っているんだが」
 ネッコの指の先には、動物を高速で解体するララの姿。しかしその調理法は料理を知らない者からすれば、知っている者からすれば更に戸惑う内容であった。
 桜花は苦笑し、喜んでとその場に向かう。
 こうして、拠点の騒がしい一日は夕暮れと共に終わった。新たな指導者と、そしてこの地上を先導し生き抜く力を与えてくれた猟兵たちを讃えて。
 地下に閉じ込められて一生を終えるはずの彼らは、崩壊した地上を再生する一翼を担う事となるだろう。何故ならば、彼らもまた明日へ向かって歩く人間だからだ。
 後にネッコたちの拠点は大きく勢力を広げる事となり、高い武力にレイダーからも一目を置かれるようになる。
 謎の生体歩行戦車を操る彼らは、年月を重ねる毎により強固な防衛力と制圧力を備え、各地と交流を深め、レイダーの脅威から人々を救う者として頼られるようにすらなっていく。
 そして今日も、朝日に向かって畑から歩行戦車の産声が響き渡るのだ。
「ギィィイイイイイッ!」
(おはよーっ!)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月08日


挿絵イラスト