湯船にタオルともふもふは入れちゃいけません
#アルダワ魔法学園
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●予知の内容は音声でお楽しみください
もふっ。もふっ。
もふーんもふーん。
ずしーんずしーん。
もっ! もっもっ!
ばしゃーん。
もっふ! もっふ! もっふ!
もふぅ。
●以上になります
「というわけで今回はこの事件をお前たちに解決してきてもらいたい」
何一つとしてわかりませんでしたけど?
物言わぬ猟兵たちの視線を前に、ユア・アラマート(セルフケージ・f00261)は不思議そうに首を傾げた。
「もう少し詳しい説明が必要か?」
欠片も詳しくなかったですよね今の。
更に物言わぬ猟兵たちが送る視線の圧を受け止め、わかったと頷いたユアが状況説明を始める。
「アルダワ地下迷宮内に、温泉になった川がある。なんでも、蒸気施設の近くを通る川の水温が上がったもので、それが地下にまで流れ込んでいるらしい」
普段はその水温を利用して温室栽培などの施設が運用されているのだが、現在そのエリアには立ち入りができなくなっている。
「通行を塞いでいるのはモフィンクスというオブリビオンだ。温厚で人を襲わないが、とにかくもふもふしている」
もふもふ。
「しかもそいつらは川に入浴をしては交代し、もう一度入浴をしようとひしめき合いながら通路を列で埋めている。ほかほかでもふもふだ」
ほかほかでもふもふ。
一部の猟兵がその光景を想像してついにやけるが、すぐにはっと気を取り直す。
温厚とは言えオブリビオン。しかも唐突に現れたというのであれば、その原因が必ずあるはずだ。
「こうなってしまった理由なんだが。もふもふ好きなストーンゴーレムが、寒さに震えるモフィンクスを温めてやろうと川に運んできたのが原因だ」
なんて?
顔面に大きなクエスチョンマークを浮かばせる猟兵たちに、ユアはこれ以上適切な説明はないと首を振った。
自身の体では感じ取れないもふもふさに憧れているのか、そのストーンゴーレムは下層からせっせとモフィンクスを掌に乗せて運び。
温泉の川にモフィンクスを大量に浮かべてはそれを見て悦に浸っているらしい。
「このまま放置しておけば地下迷宮の通行に支障が出るし川も詰まる。それに、溢れたモフィンクスが地上にでてくるのはさすがにまずい」
幸い、ストーンゴーレムも番人という性質上こちらから手を出さない限りは大人しく。
また、その存在が抑止力となって周囲に生息する他のオブリビオンも比較的暴れることが少ない。
いずれは討伐する必要があるが、今回に限っては倒さなくても構わないと説明するユア。
では、どうすればいいのかと問われれば。
「知能はそう高くないが、人語は理解できる。なので、ちょっと説教してきてくれ」
ストーンゴーレムに説教。
ええ……と言わんばかりの戸惑いを滲ませている空気を気にせず。ユアは指を三本ぴっと立てた。
「やることは三つ」
ひとつ、通路を埋め尽くすモフィンクスを退けながら奥に進む。
ただしモフィンクス側も順番を横取りされたと思い全力で纏わりついてきたり不満げな顔をすることが予想されるので、遊んでやるなり餌で釣るなり適宜対処を。
ふたつ、温泉川エリアにいるストーンゴーレムを見つけ、下層に戻るように説得&説教。
メンタルは体より柔らかいことが予想されるので、言い過ぎると泣くかもしれない。
みっつ、最後に川に詰まったモフィンクスを運び出し、本来の生息域に戻す。
下層の入り口まで運べば、あとは反省したストーンゴーレムがもふもふを率いて帰っていく。
こちらも抵抗が予想される上に、びしょびしょに濡れたモフィンクスが飛びついてくる可能性が高い。
「どんなに平和そうでも、学園の生徒に任せるには危険だからな。お前たちが頼りなんだよ」
胸元の刺青と同じ、赤い月下美人を掌の上に浮かばせたユアが道を開く。
いってらっしゃい。にこやかに送り出す声を背に、猟兵たちはアルダワへと発つのだった。
藍月
初めまして、もしくはこんにちは。藍月です。
今回は全体的にゆるっとした依頼となっております。
概要はOPにある通りですが、以下にまとめを。
一章:地下迷宮の通路を塞ぐモフィンクスをどけつつ奥に進んでもらいます。
モフィンクス達は温泉の順番を乱されたと思い、よじ登ったり目の前で腹を出して寝転んだりと彼らなりに必死の抵抗をします。
二章:温泉川の流れるエリアにいるストーンゴーレムにお説教、もしくは説得をして元の場所に戻るよう説き伏せてください。
皆さんの言葉でボコボコにされた暁には、大人しく戻ってくれるでしょう。
三章:最後に温泉川に残っているモフィンクスを運び出してください。
もちろん彼らも濡れた体で逃げたり嫌がるなどの抵抗をするので、何か気を引く手段があると有効かもしれません。
それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『モフィンクス』
|
POW : モフ~ン
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【気の抜けた鳴き声 】から排出する。失敗すると被害は2倍。
SPD : モフ~zzz
【眠気を誘うアクビ 】を聞いて共感した対象全てを治療する。
WIZ : モフッ、モフッ(実は今欲しい物)
質問と共に【質問の解答が具現化する靄 】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●モフパラ
グリモア猟兵の予知通り、アルダワ地下迷宮の一角は見事なまでのモフィンクス畑となっていた。
みっしりとくっつきあいながら、少しずつ少しずつ奥へと進んでいこうとしているようなのだが。とにかくその歩みは遅い。
一体何匹いるのか、数えるのも億劫なほど。先を見ようとしても一面小さな耳がぴょこぴょこと生えているばかり。
よくよく観察すれば何匹かは群れの上に乗っかって、居眠りをしつつも悠々自適に運ばれる横着っぷりを見せている始末。かなりのフリーダムだ。
まさに足の踏み場もないうようなこの状況を、猟兵たちはなんとか突破しようと意を決して足を踏み出す。
もふもふとした生き物に決してくじけてはならない。ならないのだ。
「もふ?」
そんな強き想いを察したのか。最後方にいた一匹のモフィンクスがこちらに気がついた。
さあ戦えイェーガー! ここが最初で最大の難関だ!
アーサー・ツヴァイク
※アドリブ協力大歓迎
もふーん…Zzz…
…
…ハッ!? いかん、ついこのゆるふわ空間に呑まれて寝てしまった。この俺を眠りの世界に引きずり込むとは…恐るべし、モフィンクス!
さて、真面目にやるか。
普通に攻撃しても無効化して来るよな。邪魔にならない所に寄せて、その隙に通り抜けよう。
ウェポン・アーカイブで…そうだな、旗か何かを呼び出してモフィンクスが釣れないか試してみよう。
後は…餌? いや何食うんだモフィンクス。…この前の依頼で手に入れた蜜ぷにシロップあるけど、甘いもん好きかな?
上手く釣れたら通路の端に寄せて道を作ろう。
寧宮・澪
温泉にー……もふもふー……極楽、ですかー……?
はいー……モフィンクスをー、もっふもっふしながらー……川を上って……ふかふかぁ……もふもふぅー……。
しっとりもー……悪くは、ないですよー……うんー。
遊んで、いいんですよねー……もふもふのー……歌をー【歌唱】。
踊りませんかー……モフィンクスー……。
もっふもふー……ふっかふかー……。
れっつだんすー……、と、遊びに……【誘惑】ーしまーすー……。
ささ、上に向かいましょー……帰りに、もっふりするため、にもー……。
アドリブ、連携、歓迎ですよー……。
「もふーん……Zzz……」
早速ではあるが、ここに戦う前から負けそうになっている……いや寝ている猟兵が一人。
アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)はもふもふでほかほかな生き物が密集している癒やし空間のオーラに襲われ、ついつい一眠りをしてしまっていた。
至福と言わんばかりの表情で寝息を立てるアーサーだったが、迷宮を吹き抜ける冷たい風が一気にその眠気を吹き飛ばす。
「寒っ!」
寒さに跳ね起き、腕を擦りながら自分がここに来た理由を思い出し慌てて立ち上がる。視界に広がるは理想郷の如きもふもふ生命体で満たされた世界。
「いかん、ついこのゆるふわ空間に呑まれて寝てしまった。この俺を眠りの世界に引きずり込むとは……恐るべし、モフィンクス!」
「まったくですー……ねー……」
「うおあ!?」
訂正。寝ている猟兵は二人いた。
アーサーの隣で欠伸を零しながら腕を伸ばしているのは、着いた早々同じくゆるふわ空間に呑まれた寧宮・澪(澪標・f04690)。彼女の場合は常に眠そうという注釈がつくが、それを加味しても居心地が良かったのだろう。
なにせモフィンクス達は温泉の温もりを残しているため、この周辺は気温が高く過ごしやすいのも事実。
どうせならここでもふもふの余波に当たりながら眠っていたいが、そうもいかない。
「モフィンクスをー、もっふもっふ……極楽ですがー、先に進めるようにここはがんばりましょー……」
「そうだな。さて、普通に攻撃しても無効化して来られるだろうし。とりあえず邪魔にならない所に寄せるか」
ひとまず、モフィンクス達の気を引ける何かが必要そうだと。アーサーは右手を上げる。
彼の使うユーベルコード『ウェポン・アーカイブ』は、本来であればその場や相手取る敵に対して最適な武器を選出、召喚ができるものだが。今この場に関しては、モフィンクス達を誘導するのに適した物が求められる。
そこでアーサーが喚び出したのは、金属製の棒の先端に四角く切り取られた布が固定された道具。
いわゆる旗である。分類上は長物武器だろうか。しかも旗の部分にはなんとも愛らしいモフィンクスの絵姿が
「よし、これでどうだ? ほーら、お前達の絵が描いてあるぞー」
「モッフ! モッフ!」
ばっさばさと左右に振られる旗に興味を示したモフィンクス達がアーサーに近寄ってきた。
興味深そうに見上げてきたり、靴の上に乗ったり、よじよじと足を昇ってもっと近くで見ようとしたり。
「ちょ、ちょっと待ったこれは俺が動けなくなるパターン……!」
「これはいけませんー……モフィンクスー、私と踊りませんかー」
れっつだんすー……。と、相変わらずぽやっとした口ぶりの澪から一転、和やかな雰囲気の歌が滑り落ちていく。
もっふもふでふっかふかなモフィンクス達を現した、その名もズバリ「もふもふの歌」はまるで春の陽だまりのような安らぎと、つい動き出したくなるようなリズミカルさを兼ね備えたもの。
歌につられて小さな体を跳ねさせたり揺すったりしながらモフィンクスが澪に近づいている間に、足元が自由になったアーサーも踊るモフィンクス達を先導するように旗を掲げて道の端へさり気なく移動する。
その甲斐あって一歩先を歩くにも支障があった通路に、少しではあるが先に進める道が開けた。
「よし、あとはできるだけ長く端にいてもらいたいな。そうだ、こいつら甘いもん好きかな?」
餌があればそれに気を取られてその場に居座ってくれるのではないか。そう考えたアーサーが取り出したのは、別の依頼で手に入れた蜜ぷにシロップだ。ちょうど通路の端に地面の窪みがあったので、そこにシロップを設置する。
その瞬間。
「モフるぁふしゃあ!!」
「思った以上に食いついた!」
「おおー……ワイルドですねー……」
餌をもらった時に謎の鳴き声を発する猫のように群がっていくモフィンクスの姿に、思わぬ野生を垣間見る二人。
モフィンクス達はすっかり蜜ぷにシロップの虜になったようで、更に少し離れた所にいた個体も甘い匂いにつられて続々と群がってきた。
「これなら先に進めますねー……」
「ああ、シロップが無くなる前に先へ急ごう」
旗と歌。そして餌で首尾よくモフィンクスの誘導に成功した二人は迷宮を奥へと進む。
まだまだ、押し退け無くてはならないもふもふ達はたくさんいるのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天宮院・雪斗
『モフィンクスと遊びに行く』
モフィンクスとあそぶ~(ゴーレムのことは、わすれてる)。
モフィンクスを、いっぱいなでなでして、もふもふをむぎゅーとする。
(モフィンクスと遊びながら、先に進む。)
「わあ~」
モフィンクスへと駆け寄った天宮院・雪斗(妖狐の陰陽師・f00482)が座り込むと、小さな体は一気にモフィンクス達の中に埋もれていく。
右も左も前も後ろも、温泉で程よく温まったもふもふの毛並みに包まれたモフィンクスに囲まれ。さながら動き回る毛布にでも包み込まれているかのような暖かさが押し寄せる。
殆ど隙間なく詰まった間に雪斗が入り込むと案の定順番を邪魔されたのかと思い込んだモフィンクスが数匹、雪斗に群がってぐいぐいと体を押し出そうとしてくるのだが、そんな事は気にもせず雪斗はモフィンクスを抱き上げて膝に乗せた。
「もふもふ~」
嬉しそうな顔でモフィンクスを持ち上げて頬ずり。
ふっかふかの毛皮が頬を擦れて心地よく、お互いに体温を分け与えあっているせいかモフィンクス側も少し眠たそうだ。
そうでなくても温泉の暖かさでリラックスしたのを引きずっているのだろう。
ちょっとしたマイナスイオンでも発生してそうな勢いで、雪斗はモフィンクスをひたすら撫でては抱きしめてその感触を思うまま楽しんでいるようだ。
妖狐である雪斗の耳と尻尾もそれに負けないくらいのもふ度をしているせいで、ふらふらと揺れる尻尾につられたモフィンクスがじゃれついてくるようにもなってきた。
「かわいいなあ。えへへ」
こうした動物型のオブリビオンを相手にするのは、ビーストマスターの雪斗には比較的慣れたことなのかもしれない。
現に持ち上げ方も安定しているし、モフィンクスもどんどん寛いでいる。
そう、寛いでいるのだ。
そのせいで力の抜けたモフィンクスはそれなりに重く、ずっしりと雪斗の膝の上に居座る。それ自体はいい感触なのだが、逆に小柄な雪斗にはちょっとした重しになる。
「あ、ここで寝ちゃだめだよ?」
膝上から下ろし、少し先に進もうとすればまた別のモフィンクスが乗っかってくる。
モフィンクスと遊んでコミュニケーションを取りながら進もうとする雪斗だが、いかんせん数が多く、そして圧も強い。
割り込もうとすれば押され、リラックスさせられてはまた別のモフィンクスに割り込みを阻止される。
立ち上がれば膝は開放されるものの、やはり足元が押し返されて思うようには進めない。
その様を言い表すなら、モフィンクス海の波打ち際で遊んでいるようなものか。
とりあえず、じりじりとは進んでいる。
「モフーン。モフーン」
「ふふふ、次になでなでしてほしいのは誰かな~」
問題は、楽しみすぎてストーンゴーレムのことを完全に忘れていることだろうか。
苦戦
🔵🔴🔴
リュシカ・シュテーイン
なんともまたぁ、不可思議珍妙なことになっていますねぇ
これだけいるのですからぁ、一匹くらいお店に持って帰ってぇ、マスコットには出来ませんかねぇ
うぅんぅ、流石にコレほどまでにひしめきあっていますとぉ、進むのは難儀ですねぇ
爆破してというのはぁ、流石に可愛そうですしやめましょうかぁ
仕方ありませんねぇ、お給料はきっちり頂くとしてぇ……取り出しますはぁ、拳ほどのぉ、銅鉱石ぃ
スペースのある場所でぇ……そぉれぇ、生まれませぇ、カッパーゴーレムちゃんたちぃ
それじゃあ私は進みますのでぇ、あの子達と遊んできてくだぁ……あぁ、あらぁ?なんだか目が霞んでぇ……ごぉ、ごぉれむちゃぁんぅ、私に何かあったらぁ、私を運んぅ……
パーム・アンテルシオ
【連携・アドリブ歓迎】
ふふ、なんとも平和そうな依頼が出てきたものだね。
うん、まぁ…困ることになるのはわかるから、私なりに手は尽くすけど。
もふもふにはもふもふを。ふふ、任せておいてよ。
さて、モフィンクスを退けて先に進めっていう話だけど…うん。私は正攻法で進むよ。
要するに、押しのけては進み、相手をしてあげて、進み、相手して…この繰り返しで。
効率的では無いと思うけど、確実な方法だと思うんだ。
それに…ふふふ。やっぱり気になるからね。
もふもふを自称する身として…あなた達のもふもふも、学ばせて貰うよ。
ふむふむ。なるほど、たしかに。もふもふ。
あっ、この被り物も、もふもふの帽子になってるんだ。へー…もふもふ。
「ふふ、なんとも平和そうな依頼が出てきたものだね」
パーム・アンテルシオ(桃色無双・f06758)にとって、もふもふというのは切っても切れない間柄の言葉である。
なにせ彼女の持つ尾は無類のもふ度を誇り、それを使って商売を行えるほど。
日本円にしてワンコイン程度の値段で、制限時間いっぱいまでその尻尾を味わうことができ。更に自動もふもふモードなど各種メニューも完備。
もふらせてよし、自分で抱きまくらにしてよしと、かなりの有能性を持つ尻尾なのだ。
そんな彼女の突破法は、真正面からの正攻法。押し退けては進み、妨害される度に相手をして、そして更に前へと進む。
「効率的ではないけど、確実に前進できるし。なんとかいけるんじゃないかな」
それに、あえてモフィンクスと積極的に戯れる選択をしたのには他にも理由がある。
「やっぱり気になるからね。もふもふを自称する身として……あなた達のもふもふも、学ばせて貰うよ」
パームが手近にいたモフィンクスを一匹横に退けると、早速不満げに眉間をきゅっと寄せて纏わりついてくる。
温厚な性格をしているため、噛み付くなどといった攻撃的な行動は危害を加えない限り滅多にしてこないが。温泉に続く順番を乱されたことへの不満は確りと現して、数匹が彼女の尻尾の中に飛び込んでいく。
いや、どちらかと言うと目の前に現れた尻尾の迷宮に迷い込んだという方が正しいか。
「あはは、ちょっとくすぐったいよ」
からからと笑うパームの声に反応して、にゅ、にゅ、にゅ、と尻尾の中からもふい三連星が顔を出す。
普段人に触らせることを意識している彼女の尻尾は丁寧に手入れがされており、モフィンクスですら誘惑するほどの感触を秘めている。
パームもパームで、モフィンクスの手触りに興味津々。どこを触っても柔らかくほわりと温かい体は、確かに癒やしの権化のような感触で、駄々をこねるように蠢く姿もまた可愛らしい。
「あっ、この被り物も、もふもふの帽子になってるんだ。へー……ん?」
帽子を触って隙のない仕事っぷりに感心するパームの横を、何かが通り過ぎた。
それは銅色の体を持った小型のゴーレムで、いやがるモフィンクスを抱えて四苦八苦しながらも通路の端へと歩いていく。
「なんともまたぁ、不可思議珍妙なことになっていますねぇ」
振り返ればそこに、メガネ装備のエルフが立っている。
リュシカ・シュテーイン(StoneWitch・f00717)の周囲には先程のゴーレムと同じものがわらわらと数をひとりでに増やしており、各々がモフィンクスへと近づいてはリュシカが先に進めるようにスペースを作ろうとおしくらまんじゅうを始めたり。またモフィ
ンクスと遊んだり、遊ばれたりして注意を引きつけている。
「爆破して進むと言うのはさすがに可哀想ですしぃ。ここは平和的にいきましょお」
石を用いることで効果を発揮する彼女の術式で生み出されたゴーレムは、元々拳程度の大きさをした銅鉱石を元にしてある。そこに刻まれた増殖のルーンが発動し、小さな石兵を次々に生み出しているのだ。
耐久値はそう高くないため、勢い余ったモフィンクスに押し倒された数体が頭をぶつけて消滅するものの、こちらも数には数で対抗。
力自慢のゴーレムに移動させられ、ちょっと悲しげな顔をするモフィンクスから目をそらして、リュシカは確保された空間を歩いていく。
「ちょぉっと罪悪感がありますけどぉ。ごめんなさいねぇ」
一匹くらい自分の経営する店に持ち帰ってマスコットにしたい所なのを堪え、この先にいるはずであるストーンゴーレムの元に急ごうとする彼女の道を阻むものは減ってきている。
だが、彼女は一つ見落としていた。ともすれば命にすら関わりかねない、重要な見落としを。
「あぁ、あらぁ?なんだか目が霞んでぇ……あららぁ……?」
突如、視界が白くボヤけていることに気がついたリュシカの足取りがおぼつかなくなる。
あっちへふらふら、こっちへふらふらとする危なっかしさで、配下であるゴーレム達もその周りをオロオロと取り囲み。ついには踏まれかけたモフィンクスが、まだ湯気の見える体で毛を膨らませ避難する。
そう、湯気だ。ここにいるモフィンクス達は全員風呂上がりであり、その温もりをまだ残している個体が多い。
オブリビオンとはいえ生き物。体が暖かければ外気温との差で湯気が出るし、これだけ密集していれば尚更。
そうなるとどうなるか。メガネが曇る。視力の確保にメガネが必要不可欠なリュシカにとって、これは死活問題だ。
「おやおや、大丈夫かな? ほら、ボクの手を貸すよ」
「あわわ……すみませぇん……」
転びそうになっていたリュシカの手を握り、パームがゆっくりと引いていく。
この後、メガネを拭くタイミングが中々なかったり、外したメガネをモフィンクスに奪われるなどのトラブルはあったものの。
リュシカのゴーレム戦術と、そこから漏れたモフィンクスをパームが宥めるという役割分担はうまく噛み合い。もふもふした生き物とカチコチしたゴーレム隊を引き連れた二人は先を急ぐのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
赫・絲
うーんすごい、一面のもふもふモフィンクス。
面倒なコトしてくれるゴーレムもいたものだけど、確かに可愛いし、こう……わからなくは……ないかな……。
とりあえず、まずはこのもふもふの壁を突破しないとね!
まずは素知らぬ顔で間をすり抜けて行けるトコまで
通り抜けれそうな隙間を【見切り】、ガンガン進むよー!
進めなくなってきたらモフィンクスの気を引いてみる
とは言え何が好きかわかんないし、
餌になりそうなお肉と果物、あとはお菓子も甘いのとしょっぱいの持ってきたけど
この中に好物があればいいなー
もし気を引けるモノがあれば、自分が通りたい方とは逆に投げて道を開けてもらう
どうしてもだめなら纏めて鋼糸で縛って通っちゃおっと
もふもふは続くよどこまでも。
おしあい、へしあい、永遠と続く入浴ループへと向かおうとするモフィンクス達を壮観とばかりに見つめる少女……赫・絲(赤い糸・f00433)は、先程から忙しなく視線を動かし探している。何をと問われれば、このモフィンクス達の中を進んでいくために少しでも空いている隙間がないかを探しているのだ。
「面倒なコトしてくれるゴーレムもいたものだけど、確かに可愛いし……」
その可愛さを堪能したいという気持ちも分からないでもないけれどと、絲の思いは複雑だ。このまま放っておけば近い内に迷宮の外に出てきてしまうだろうし、その際何かしら危害を加えられれば大変なことになるのが容易に想像できる。
温厚で人を襲うことのない彼らが不本意に傷つくのも、学園の生徒達が危険に晒されるのも、どちらも好ましくない。だからこそこれ以上事態が悪化する前に、このもふもふ達には下層へと戻ってもらわないと困るのだ。
「それにしても……うーん、すごい。一面のもふもふモフィンクスだあ……」
まずはこの果てしなく柔らかいもふもふウォールを突破せねばならない。一呼吸の後、深い紫の視線を光らせ、歩み始める。人一人分ならなんとか通れそうな隙間を探し、そこから脳内で描いたルートをなぞるように絲の足は淀み無くモフィンクス達の間を通り抜けていく。
人混みの中を誰にも気付かれないように歩き去るような、気配を薄くしながらの歩行。
それはまるで風のように静かで一瞬。自分達のすぐ隣を絲が通っていったことにも、モフィンクス達はすぐには気が付かない。
「ふふーん。これなら案外らく……しょう……」
意気揚揚と前進する絲だったが、暫くするとその余裕も崩れていく。先に進めば進むほど、どうやら密集度は高まっているようだ。だんだんと、取れるルートの選択肢が少なくなっている。
しかも、さっきから歩く度に足元の素肌にモフィンクスのもふもふな毛並みがさわ、さわさわっと擦れて心地良いやら擽ったいやら。
そしてダメ押しで視界に入ったものを見て、絲はとうとう足を止めた。
彼女が今まさに踏み出そうとした一歩の着地点に、寝っ転がってお腹をさらしながらじぃ……と絲を見つめる一匹のモフィンクスがいたのだ。
「……」
「……モフ」
見つめるモフィンクス・アイ。
これ以上この方法で歩くのは無理だと判断した絲は、次の作戦へと取り掛かった。予め持ち込んでいた食料を使い、今正に自分の背中によじ登ろうとしているこのもふもふ生物たちの気を逸らす魂胆だ。
「お肉に果物、それにお菓子もあるんだよっ。そーれ!」
自分がいる方向とは逆に向けて投げられた食材に、絲をもふもふで飾られたツリーにせんとばかりにへばりついていたモフィンクス達が目の色を変えて駆けていく。どうやら今この辺りにいるモフィンクスに関しては、雑食性で好きなものが違うらしい。それぞれ興味を示す食材は色々だ。
モフィンクスは元来、居心地のいい場所を探してそこに居座るという性質がある。温泉も居心地がいい場所になるが、今は美味しい食べ物がある所をより優先したのだろう。
だが、それでもまだ絲の前には障害が立ちふさがる。さっきの腹部全見せわがままボディが一匹、食べ物にも目もくれず彼女の前から離れない。
絲が右に移動すれば右に、左に移動すれば左に動いて進路を邪魔する。どうやら遊んでもらってると思い込んでいるようだ。
「う、うーん、仕方ない。ちょーっとじっとしててねー? 大丈夫痛くはしないから」
最後の手段。絲の指先から、鈍く金属質な光を放つ糸がいくつも伸びて眼の前にいるモフィンクスを含めた群れを一塊に縛り上げていく。息苦しくならないように、暫くすれば解ける程度の柔らかい拘束に捕まってしまった結果。出来上がったのは絲の身長と同じくらいの大きな蠢くもふ玉。
先程しつこく食い下がっていた一匹も見事に絡め取られ、じたばたじたばた短い手足を振り乱して暴れている。このまま見ていたら自力で鋼糸の隙間からぬるんっと抜け出てきそうなくらい元気だ。
これはどうやら早めにこの場を離れたほうが良さそうだと、絲は颯爽と開けた道を走り出す。
後ろからひゅーんひゅーんと物悲しい鳴き声が聞こえるが気のせいだ。気のせいだと思わないと足が止まりかねない。
「ごめんねー! あとでちゃんとおうちに返してあげるからー!」
申し訳無さをかき消すような絲の声が、広い迷宮内に木霊した。
成功
🔵🔵🔴
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
猟兵は世界を滅びから救う大切なお仕事のはず、よね? これも大事なこと、なのよね……?
なら、マリアも頑張らなきゃ。毛むくじゃら、もぞもぞして苦手だけど……鱗ですべすべしてたら可愛いのに。
あ、サイコキネシスなら一度にたくさん持ち上げて運べるかしら?
抵抗するなら、完全な脱力も出来ないでしょうし、いけそうね。
欲しいものが出てくる靄? マリアが今欲しいのは、鋏かバリカン、かしら。刈り取っちゃえば、もっと可愛いかもしれないし(ボソリ)……いけない、いけないわマリア。あの毛むくじゃらは寒さに弱いそうだし、聖者が風邪を引かせちゃうなんてダメよ。
地下迷宮なら、可愛い虫さんとかいるかと思ったのになぁ……
現状、モフィンクスのもふもふパワーによって多かれ少なかれ猟兵たちは苦労をしているが、アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(救世の極光・f13378)は少し違う事情を抱えていた。
前進を阻む、みっちりとした毛玉の群れを前にして浮かぶ憂いの表情は。なにも進めないからというだけの理由でもないようで。
「猟兵は世界を滅びから救う大切なお仕事のはず、よね? これも大事なこと、なのよね……?」
戦うという行動は一切せず。もふもふをどうにかしてストーンゴーレムに説教をして最後にまたもふもふをどうにかしてこなくてはいけない今回の依頼。ドラゴンや圧政を強いるヴァンパイアが相手ということもない、どちらかというとゆるふわに全力で舵を切っているこの状況に、戸惑いを隠せないようだ。
けれど彼女が言う通り、これを学園の生徒や関係者が行うには荷が重い。有事の際に対抗できる手段を持つ猟兵こそが、この事件を担当するには相応しいのだ。
緊迫感が驚くほど足りていない、という点では彼女の心配も正しいのだが。
動けばきらきらと煌めきを零しているようなアヴァロマリアの体は、クリスタリアン特有の美しさを秘めている。ピンク色の瞳でモフィンクスを見つめる顔は、やはり浮かない。
というのも。
「大事なことなら、マリアも頑張らなきゃ。……毛むくじゃら、もぞもぞして苦手だけど」
鱗ですべすべしてたら可愛いのに。と漏らすアヴァロマリア。もふもふとした生き物が苦手な彼女にとっては、モフィンクスよりもトカゲといった爬虫類や虫の方が可愛らしく映るらしい。つまるところ、彼女にとって目の前にいる生き物はちょっとばかり趣味の範囲外にあるらしい。
毛むくじゃらのもぞもぞが大量にいるという光景にふうっと溜息をつくも、これも聖者である自分の役目と気持ちを切り替える。困った人を助け導く、これもその一環だと思うことにしたらしい。
「けど、こんなにたくさん……。あ、これなら一度にたくさん持ち上げて運べるかしら?」
思いついたと手を打つアヴァロマリアが前方に手を翳すと、そこから目には見えないサイキックエナジーがモフィンクス達へと向かい。その体をまるで下から大きなザルで掬い上げるようにざっくりと持ち上げる。当然、急な出来事に持ち上げられた方は暴れるのだが。そこは物理的な力と異なる方法で捕らえたということもあり、逃れられる様子はない。
その持ち上げたモフィンクスを目の前からどけて道の端へと詰めば、アヴァロマリアが歩くには十分すぎるほどの空間が開ける。
「よかった、こうしていけば先にいけそう。……あら?」
「モフーン」
早速進もうとしたアヴァロマリアの前に、今度は一匹のモフィンクスが何やら靄を纏って現れる。このもふもふした生物は、戦闘時に質問と共に靄を対象にぶつけてくることがあり。その質問が真実でなかった場合にダメージを与えるという攻撃手段を使ってくることがある。もっとも、今の場合は単に興味を惹かれたモフィンクスが彼女に絡んでいるといった意味合いが強そうではあるが。何にせよ、素直に答えれば何の害もない。
「モフモフ! モフモフ!」
「今欲しいもの……?」
質問者側がモフとしか言っていないように聞こえるが、質問をされた側には内容がちゃんと伝わっている。欲しい物は何かと聞かれたアヴァロマリアに靄が触れると、それは彼女の答えを待つように空中へと浮かんでいき。それを見上げながら思案に耽っていたアヴァロマリアは、ゆっくりとモフィンクスを見下ろして口を開く。
「マリアが今欲しいのは、鋏かバリカン、かしら。……刈り取っちゃえば、もっと可愛いかもしれないし」
「モフ!?」
ぼそりと告げられた言葉を受けて、靄が切れ味の良さそうな鋏と毛をきれいに刈り取れそうなバリカンを作り出し、ビビるモフィンクス。それは暫くすると靄へと戻り四散して、彼女の言葉が心からの真実だったことを裏付けた。モフィンクス、更にビビる。
「いけない、いけないわマリア。この毛むくじゃらは寒さに弱いそうだし、聖者が風邪を引かせちゃうなんてダメよ」
毛を刈ればさぞすべすべの表皮を味わえただろうに、そう考えると尚更惜しいけれど。アヴァロマリアの使命感がそれを良しとはしない。趣味の範囲外とは言え大人しい生き物。それを弱らせるような行為はもっての外だ。
ふと気がつけば、質問をしたモフィンクスがじりじりと後ずさっている。よくよく見れば、今のやり取りを見ていたらしいモフィンクス達も絶妙にアヴァロマリアから距離をとっている。
おかげで大変、彼女の周りは歩きやすい。
「? よくわからないけど、通りやすくなってよかったわ。……地下迷宮なら、可愛い虫さんとかいるかと思ったのになぁ」
モフィンクス達のリアクションの理由が分からず、ただ動きやすくなったのはよかったとアヴァロマリアは先へと歩いていく。最後の未練で周りを見てみるも、彼女が好みそうな虫や爬虫類はモフィンクスの存在に驚いて逃げてしまったらしく姿は見えない。
ここから毛むくじゃらが退去したら、自分の好きな生き物も戻ってくるはず。そんな思いでやる気に火を着け。アヴァロマリアは迷宮の奥へと歩いていく。
大成功
🔵🔵🔵
赤星・緋色
なるほどね
もふっで、もふーんで、ずしーんで、もっばしょーんなんだね
よく分かった!
うんうん、何やかんや川が詰まったり通行の妨げになるのは阻止してあげなきゃ
とりあえずモフィンクスの群れを通り抜ければいいんだよね
無理やりどけるのもかわいそうだし、私は避けていくよ
ダッシュ技能で助走をつけてジャンプ技能で大ジャンプ
からの、スカイステッパーとジャンプを組み合わせて空中を通過する感じ
きっとあの短い脚だと私に届くくらいのジャンプとかできないと思うし
途中でジャンプ回数切れそうになったら天井とか壁とか蒸気の配管を蹴って回復
しゅばばっと
通過してもモフィンクスは後で戻してあげないといけないんだよね
どうしようかな
「なるほど。もふっで、もふーんで、ずしーんで、もっばしょーんなんだね」
よく分かった! と胸を張って宣言する赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)に本当か? と突っ込める猟兵は周りにいない。もっばしょーんとはなんだろうか。分かったのか分かってないのか分からないが、気合いは十二分に入っているらしい。屈伸運動で足を解し、モフィンクス達の最後部から更に後ろへ助走距離を取る。
「とりあえずモフィンクスの群れを通り抜ければいいんだったら、避けていくのが一番だよ」
この数をわざわざ退けていては時間が掛かるし、相手は進行の妨害までしてくるとなれば地上を行くのは合理的ではないと考えた緋色は足取りも軽く駆け出し、どんどんモフィンクスの群れへと迫る。そのまま蹴っ飛ばすか突撃でもしようかという勢いだが、寸前でブーツの靴底が地面の上で跳ねると。小柄な体は風切り音を奏でつつ悠々と空を舞った。
まったりとモフィンクスが見上げる顔に影を差し、次の一歩は何もない筈の空中へと降り立ち。すぐさま次の跳躍へと移る。
「んー、快適快適!」
スカイステッパーで空中ジャンプを繰り返す緋色は、かなりの速度でモフィンクス達の上を通過していく。体の小さいモフィンクスが下でなにやら鳴いているが、緋色の制空権に手出しをできるほどの身長を持っていないため、ただ見上げることしかできない。その上、空中ジャンプの回数が減ってきたところで天井やその付近に突き出している蒸気の配管を蹴ってリセットをしているため、地上に降りなければいけないタイミングすら存在しないのだ。
纏う外套をはためかせ、自分のフィールドを自由に駆け回る緋色の姿を誰も捕らえることはできない。――かに思えたのだが。
「ん?」
それは、二回目の休息をしようと手頃な配管を探している時のことだった。背後に妙な気配を感じた緋色が跳躍しながら後ろを振り返ると、そこには塔が立っている。
塔。正確には、モフィンクス達が決死の思いで一匹一匹積み重なっていくことで形成させた超高層モフタワー。それがぐらんぐらん覚束ないにも程がある勢いで揺れながら、緋色の後を時にのっそり時に大胆に追いかけてきていたのだ。効果音をつけるとすれば、ずももももと聞こえてきそうである。
「えええ! どんだけ割り込みに厳しいのこいつら!」
温泉への執念がここまでさせるのか。むしろこれのせいで盛大に順番が狂っているのではないだろうか。そういった細かい突っ込みができる人員も、残念ながらここにはいない。前のめり、後ろのめりと大きく揺れながら迫るモフタワー。ちなみに栄えある頂点を極めしモフィンクスだが、顔が青いし震えている。どう見ても高さか不安定さか、もしくはその両方に怯えきっているにも関わらず必死に緋色を追跡しているのだ。涙ぐましい。
「……わかったよ。それほどまでに温泉が好きなんだね。その想い、確かに響いたよ」
目尻に光る何かを指で拭い、緋色はじっとモフィンクス達を見つめる。頂点にいるモフィンクスも、緋色の言葉が通じたのか見つめ返す。この間約二秒。
「だがダメ」
「モフウゥゥゥゥ!!」
次の配管に足を着け、ジャンプと同時に空中ダッシュで一気に速度を上げた緋色はあっさりと距離を開ける。緩急についていけなくなったモフィンクス達はそのままバランスを崩し、モフタワーはあえなく崩壊。ちなみに落下した先にもモフィンクスがいるため、クッションとなって怪我はしなかった模様。
「やれやれ、この数を戻すのは、時間がかかりそうだね」
やることはまだ沢山あるが、ひとまずはこのモフィンクス地帯を抜けた先まで行かなくてはならない。
それじゃあまた後で。空中で優雅に帽子を取って一礼を地上に向けた少年は、更に跳躍の距離を広げあっと言う間にその場から消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
POW(一応)
ユアさん……なんという任務を押し付けてくれたんですか……。
これは……これは……!
すさまじい強敵じゃないですかぁぁぁぁぁぁっ!!!
(もっふぅぅぅぅぅぅぅぅ)
あぁっ!来ないでくださいって割り込んですいませんって!
そんなにすり寄ってこられるともふもふが!もふもふがっ!!
ああもう可愛いじゃないですか!!(なでなでもふもふ)
こうなったら仕方ありません!
この子たちの相手は私がするので皆さんは先へ進んでください!
はい!これは援護射撃です!時間稼ぎです!あと優しさ!(?)
皆さんが先へ進む為なんです!!
なので!ここは私に任せて皆さんは先へ!!
(もふもふもふもふもふもふ)
白斑・物九郎
こんな輩を勇んでブチ殺しまくった日にゃ、さすがに超常の猟師・ワイルドハントの名折れ甚だしいですわな
ま、イイですわ
血の流れない手口で対策してやろうじゃニャーですか
●POW
【獣撃身・黒】使用
俺めもでっかい猫に化けて、モフィンクス列最後尾へぼちぼち接近しまさ
「当方もモフィンクスですでよー」みたいなツラして並ぶ
そしてジワジワ匍匐前進
乗っかりたいヤツは乗りたまい
「当方は列に沿ってキリキリ進むモフィンクスですでよー」みたいなツラして進む
乗っかって来るヤツらを得たならしめたもの
(居眠り勢を起こさぬよう)ジワジワ匍匐前進のペースを守りながら、猟兵の進路を開けられるようにさりげなく進行方法転換&積載物をリリース
さて、場面を地上に戻す。
飛行や跳躍などで空を移動できる猟兵にとっては移動はそう難しくなく、動く絨毯で埋め尽くされた眼下をのんびり眺めることもできただろうが、そういった手段がない場合は色々と知恵を巡らせる必要がある。なにせ、相手は魅惑の温もりと滑らかさともふもふを兼ね備えた強敵。ノーガードで突っ込めば底なし沼に足を踏み入れるがごとくで、呑み込まれて動けなくことは必至。
「なんという任務を押し付けてくれたんですか……」
しかし中には、あえて苦難の道を歩もうとする勇敢な猟兵もいた。シャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)もその一人だ。
彼女の目に映るのは大量のもふもふ。モフモフ。MOFUMOFU。むしろそれ以外のものを無意識的にシャットアウトしてる可能性すらあるというくらい、モフィンクス達を凝視している。わなわなと震える彼女の呼吸は浅く、早く、それに呼応して心拍数も上がる一方。そんな様子と背後からの熱気に気がついたモフィンクスが一匹、振り返ってシャルロットの姿を発見。
不思議そうに首をくにっと横に曲げて、口元のポンポンめいたふにゅふにゅを動かして鳴き声を上げた。
「モフゥ~?」
そしてシャルロットに電光が走る。
「すさまじい強敵じゃないですかぁぁぁぁぁぁっ!!!」
もっふぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
たまらずもふもふの海へと躊躇いなく身を投げ、そしてあっという間にもみくちゃになる金髪の少女。ボルテージの上がったコンサート等で観客同士が体をぶつけ合う現象をモッシュと呼ぶが、さながらやわらかモッシュに巻き込まれているかのようだ。あっちからもこっちからもモフィンクスが体を押し付け、温かさと柔らかさと可愛さを遺憾なく発揮してシャルロットを包囲していく。
「あぁっ! 割り込んですいませんって! でも私は先に進まなくてはああっ! そんなにすり寄ってこられるともふもふが! もふもふがっ!!」
順番を守ってほしいモフィンクスVSなんとしてでも先に進まなくてはいけないシャルロット・クリスティアのガチンコ勝負は。開始早々シャルロッテが土俵際まで追い詰められている。むしろ本人にあまり抵抗の意志がない辺り、確信犯の可能性が高いようにも見える。
とにかくモフィンクスが可愛い。もふもふしてると楽しい、そしてもふもふ可愛い。楽しい。
思考能力すら低下し始めている節があるが、彼女とて立派な猟兵の一人。戦場に出れば仲間への援護射撃で背中を守り、また後押しもする優秀なスナイパーだ。そんな射手が導き出した、この場での自分の役割。それは。
「こうなったら仕方ありません! ここで私が囮となり時間を稼ぐことで他の方々を通りやすくしましょう! これも一つの援護射撃です!」
ものすごく聞こえのいい言葉で彩った白旗コークスクリューだ。完全なる無抵抗主義である。そうしている間にもシャルロットの周辺にはモフィンクスが集い、彼女によじ登ろうと二本足で立ってはこてんと後ろに転んで見ていたシャルロットに新しいダメージを加える。
このまま先に進めず、あわやもふもふの餌食となってしまうのか。(自発的に)覚悟を決めたシャルロットだったが、そんな彼女の横に突如、真っ黒い何かがぬっと顔を覗かせてきた。
「あー? 大丈夫っスかそこの人」
「うわっ! 喋る猫!?」
モフィンクス達の中にいて明らかなる異質なのはシャルロッテと変わらないというのに、自然な動作でその場に現れたのは『獣撃身・黒』により巨大なブチ猫にその身を変じさせた白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)だ。彼の上には数体のモフィンクスが完全脱力状態で寝転がっており、すぴすぴと寝息を立てている。化け猫モードな物九郎の体も負けず劣らずもふもふで、広い背中はいいベッドのような使われ方をしている。
「シーッ、寝てるモフィンクス共が起きちまう」
「す、すみません。で、でもどうやってここまで」
「なぁに。こんな輩を勇んでブチ殺しまくった日にゃ、さすがに超常の猟師・ワイルドハントの名折れ甚だしいですわな。平和的に進むために、頭を使ったって寸法でさ」
喧嘩を趣味の一つに数えるほど好戦的な性格をした物九郎だが、大人しくかよわい生き物を嬲って血を啜るような趣味はない。無血でその場を突破できるのであれば、それに越したことがないと編み出した突破法が、モフィンクス達の中に混ざるというやり方である。まあ見てなせえと前方に並んでいるモフィンクスの後ろに匍匐前進で物九郎が近づくと、それに気がついたモフィンクスがその姿を観察しはじめる。
匂いを嗅いだり、周りをチョロチョロしている間も微動だにしない物九郎がさも自分もモフィンクスですよといった顔で澄んだ瞳をしていると、やがてモフィンクス達もなるほどちょっとでかい仲間か、くらいのリアクションになり列に戻っていく。
「これこの通り」
「思ってたよりも仲間の定義が雑ですね……」
こうして最後尾からじりじりと上がってきた物九郎の姿を見たモフィンクス達は、楽して先に進もうと背中によじ登り。やがてその居心地の良さに無防備全開で眠りについてしまうが。それこそが彼のもう一つの作戦。ゆっくりゆっくり移動をして列を乱していないように見せかけながら、後から続く猟兵が通りやすくなるように空間を作るため、後続の進行方向を転換させて列の動きを操作。仕上げに背中に乗っていたモフィンクス達を端に下ろすことで、まるで羊飼いが放つ猟犬のように流れを変えていくのだ。猫だけど。
「な、なるほど。これなら確かに進みやすい」
「というわけで俺めはこのまま行きやすが、ここで会ったのも何かの縁。乗っていくっスか?」
「えっ」
思わぬ提案に素っ頓狂な声を上げるシャルロット。確かに、このまま一人でいてもまたモフモフ塗れになるのが目に見えている。それはそれで悪くないが、先を急ぐなら誘いに乗ったほうがいいだろうと判断した彼女は遠慮がちに物九郎の背中に横座りで乗り込む。伏せた体でも十分に高さがあるので、足を少し縮めておけば引きずられることはなさそうだ。ちなみにここもモフモフしている。すぐに周りのモフィンクスが新たなスペースを求めて物九郎の背によじ登り、ついでにシャルロットの膝にも乗ってくる。
「当方もモフィンクスですでよーみたいな顔でいるのがコツっスよ」
「私もそれでいけますかね……?」
不安げな声を引き連れて、巨大猫の匍匐前進は続く。
――ちなみに、案外それでなんとかなったとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
チェイザレッザ・ラローシャ
あー、あたしもついに現場かぁ……
でも温泉だからねぇ、いいわねぇ温泉。癒しとビジネスの香りがするわ……っふふふふふふ
で、えーと、なによいきなり力仕事じゃない!
あーーー、いいわやったるわよ!
【WIZ:Desperado】
ほらぁ!デスペラードOne!Two!呑み込まず甘噛みで運ぶのよ!
あたしもちゃんと運んで……(もふ)運んで……(ふか)
……ええ、敵の無力化は必須だからね。やーこいつら手強いわー。
ん?なにあんた。(おなかをもふもふする)
今ほしいもの?もーそんなの決まってるわよー(なでなで)
有給1000日。
……いや、1000日は控えめだったわね。もう少し多めに……
あっ、ちょっとお!逃げるなこらぁ!!!
「あー、あたしもついに現場かぁ……でも温泉だからねぇ、いいわねぇ温泉。癒しとビジネスの香りがするわ……っふふふふふふ」
若干不気味な笑いを漏らすチェイザレッザ・ラローシャ(落霞紅・f14029)にとって、書類の整理や雑務処理ではない実戦任務は新鮮なもののようだ。毎日毎日データと紙束を前に胃を痛めているが今日は違う。現場仕事は初ということもあってか、他者からの視線を曖昧にぼやけさせる分厚い眼鏡の端が期待にキラリと光る。しかし少しばかり思惑違いもあったようで、モフィンクスの群れを前にして些か不満げに唇を尖らせてもいた。
「どんな任務かと思えば力仕事じゃない! あーーー、いいわやったるわよ!」
ひたすらモフィンクスを持ち上げてはどけ、押し返されては避けの繰り返しはどう贔屓目に見ても体力を削られることは確実。一人でそれをやっていくのは到底無理だと、チェイザレッザは早速慣れ親しんでいる親しい同僚を喚ぶことにした。
彼女の意思に沿って現れたのは二体一対の小さなクジラ型UDCの霊だ。『デスペラードOne』と『デスペラードTwo』と呼称された空泳ぐ海の王者は、主であるチェイザレッザの周りをぐるりと一周してからモフィンクス達へと近づいていく。
「呑み込まず甘噛みで運ぶのよ! 傷つけたらダメだからね!」
命令に従って口を開いた鯨達は、モフィンクスを優しく挟んで持ち上げる。空中に浮かされ、驚いて暴れるモフィンクスの動きを受けてがっくんがっくん上下に揺れているが、なんとか道を開けさせるために端へと移動させてはまた別の一匹をはもりと噛み、上下に揺れながら運んでいく。デスペラード達は小型なため、一度に多くを運ぶことができない。しかも甘噛みされた方も無抵抗とはいかないので中々苦戦しているようだ。
「ほら頑張って、あたしもちゃんと運んで。はこ……運んで……」
近くにいたモフィンクスを持ち上げたチェイザレッザの動きと声が止まる。思った以上のモフリティだ。触った傍からゆるふわ成分を直接注入されているのではと錯覚するほどに、その暖かく柔らかく程よい重量を持った生き物の癒やしポテンシャルは高い。普段の激務で疲れ果てている彼女には、見た目の愛くるしさもさることながら腕の中でもぞついてはモフゥモフゥ鳴き声を上げる生き物の存在全てがある意味では薬であり毒となる。似たような感触の商品を開発すればUDC組織内の女性にバカ売れするのでは、という商売魂も湧いてきたが。それ以上の思考は頭を振って霧散させた。
「……ええ、敵の無力化は必須だからね。やーこいつら手強いわー」
とりあえず撫でることでモフィンクスをリラックスさせ、その後に移動させる戦略が最適解だということに彼女の中ではなったようだ。デスペラード達も気がつけば、一匹を口で挟む間にもう一匹を尾っぽを振って背中に誘い込み、同時に二匹を運ぶスキルを習得していた。相変わらず暴れるモフィンクスのせいで激しめに揺れているが。
「いやー、癒やされるわー。……ん? なにあんた」
チェイザレッザにお腹をもふもふされているモフィンクスが、ぼふっと靄を吐き出した。どうやら、彼女に興味を抱いたのかちょっかいをかけてきたようである。
今欲しいものは何か。そんな問いかけにチェイザレッザは一瞬、たった一瞬だけ表情を歪ませる。それは憎しみを感じさせたし、同時に物悲しさも感じさせる。彼女の心の中で一体どんな映像がフラッシュバックされ、苦虫を百匹くらい噛み潰したような顔をさせたのかは、自然と滑り落ちてきた台詞が何よりも物語っていた。
「有給1000日」
明らかに今までとは声のトーンが違う。目元にも影が差したように見えるし、モフィンクスを撫でる手からゆるふわオーラを押し返す負のオーラが逆流している。
デスクワークが主だからといって、現場に向かう職員よりも楽かと言えば全くそんなことはなく。むしろ実働で動いた分そちらのほうが休暇を取りやすいという悲しい現実もあるせいで、彼女の有給休暇は増えていくが一向に減らせる機会が巡ってこない。
「それだけあったら毎日昼まで寝ていられるしこの間テレビで見たあの店にも行けるし旅行だって……いや、1000日は控えめだったわね。もう少し多めに……」
儚い夢に浸るチェイザレッザ。ちなみにぶつかった靄は真実を言っているためすぐに消えたが、直前までベッドやらケーキやらと忙しなく形を変えていて更に悲哀を誘っていた。
そして質問を向けたモフィンクスはといえば、チェイザレッザの気迫に怯えていつの間にか姿を消している。動物が持つ野生の勘的に、今の彼女は飢えた獣に見えたのだろう。飢えているのは休みになのだが。
「あっ、ちょっとお!逃げるなこらぁ! ってアンタ達もなんで引いてるのよぉ!!!」
気がつけばデスペラード達も若干距離を置いている。
追いかけるチェイザレッザと逃げるモフィンクスwithクジラの追いかけっこは、彼女がモフィンクスの群れを突破していることに気がつくまで続いた。
成功
🔵🔵🔴
ルフトゥ・カメリア
…………うわ、
密かな動物好きは、光景に何とも言えない感情を抱いた。手がうずうずする。
……とりあえず、これ掻き分けてきゃ良いのか。
飛べば?とか言ってはいけない。掻き分けて進むしかないったらない。
よじ登ったり飛び付いて来たりするモフィンクスを【怪力】で受け止め、掌でモフ度を感じてからぽーんっと群れに投げ返す。時々ちょっと揉む。オブリビオンだし良いかなって……。
腹とか出されると思わず立ち止まりたくなる。
緊急性も危険度も低い依頼だからか、どうにも気が緩む。もふもふのせいだとか言わない。もふりたい欲求のせいだとか言わない。
基本体温が高いせいか、飛び付いて来たのがどうにも離れないがそれはそれ。進もう。
ルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)は考えていた。どうしてこうなったのかと。
確かモフィンクス達がひしめく光景を前に疼く手を堪え、この夢のような光景を突破しようと意気込んでいたような気がするのだが、今この状態になるまでの記憶がない。
いや、記憶が無いというのは正しくない。正確に言えば、今ちょうど我に返った所なのだ。狂乱から不意に覚めて、スンッ……とした状態になっているのだ。
「俺は、一体何を……」
すごくシリアスめいた事を呟いているが、あいにくとその声は不明瞭に曇って響かない。儚げな藤色の髪も、それとは対象的な強い赤色を宿す目も、背中を覆う漆黒の翼も今は殆どが隠れてしまい、この世界から少年の姿をかき消そうとしている。
モフィンクスによってだ。
話を少し戻すと、ルフトゥはまず正攻法で先に進もうとしていた。羽があるのだから飛んでいくのが一番早いのだが、今この瞬間に限って彼の風切羽は営業を終了している。そういうことになっているのだ。なので二本の足を使って進もうと、モフィンクス達の間に割って入っていく。
当然モフィンクスの抵抗を受けるのだが、そこを見た目に反して秘められている腕力で引き剥がし、安全に戻してからまた先へ進むといった具合で進行し、この場を抜けようという考えだ。
「こういうオブリビオンもいるんだな」
足にへばりつき、腰までよじ登ってきたモフィンクスを持ち上げ。掌に触れるもさもさ毛並みとぬくぬく体温を十分に味わってから群れに戻す。進めば進むほど密集度は高くなり、割り込みしてくるルフトゥに抗議の意を込めて纏わりついてくる匹数もかなり増えてきた。歩き難さも比例して増していくが、その表情に焦りはない。むしろどちらかというと緩まないように気をつけてるくらいだ。投げられては仲間の上でぽよんと跳ね、不満そうに鼻を鳴らす様子はいっそあざとさすら感じるほどに可愛い。
「うわ、お前めちゃくちゃ柔らかいな……」
投げる前に軽く揉んでみればもにゅんもにゅんした感触で掌が一杯になり、至福が広がる。揉まれた方はいやいやしながらも徐々に揉まれ慣れて大人しくなっていく。一応、オブリビオンが関わる事件ではあるが、危険性はそう高くないということもあってついつい気が緩む。緩むついでに油断しかしていないモフィンクスのボディも楽しんでしまう。
しかし、そんな調子で歩いていたルフトゥにもついに最大の難関が訪れる。
「モフゥイ」
「うっ……!」
ちょっと艶めかしい鳴き声で立ちはだかったのは、堂々人生とばかりに空へ腹を向け大の字に広がっているモフィンクスだ。立ってはいない。しかしさもモフれとばかりの態度と、風になびくふわふわの毛並みにルフトゥは引き寄せられてしまい、その場で足を止める。
少しくらい撫でていってもいいだろうか。そう思ってしまったのだ。だがその瞬間を逃すほどモフィンクス達も甘くはない。動きが止まったルフトゥが再び歩き出す前にと、一斉に足元からよじ登りその体を覆い尽くさんとしてきたのだ。
おかげで今や彼の外見特徴は殆ど見られず、羽が生えた人っぽいオブジェにモフィンクスが張り付いている何か、みたいな有様になってしまい、今に至る。
「くそっ、油断した!」
「ハナウマモフゥ」
「ちょっと待て人の頭から花を食うな!?」
ネモフィラもっしゃりもっしゃり。
後頭部に張り付いたモフィンクスが彼の頭に生えている花を食んでいる。青く小さな慎ましい花も、今は格好の餌になってしまっているようだ。ちなみに、後頭部はおろか顔にも一匹張り付いているため完全に前が見えない。その上体温が高めであるルフトゥの体にへばりついていると気持ちがいいと気づいたモフィンクス達は、短い手足を回してがっちり彼の体にホールドをキメている。しかも剥がそうとすると悲しげな声を出す。ひゅーんって鳴く。
「……いいか、このままで」
歩けないわけでもないし。とここでルフトゥは考えることをやめた。
歩行の邪魔になるモフィンクスは退けて、あとはへばりつきたいならそのままにさせてゆっくりと前進は再開する。
もはや群れとルフトゥの境目は曖昧で、モフィンクスを鈴なりにさせたまま、彼は先を急ぐ。
その全身に余すところなく、もふもふを感じながら。
「……前だけは見えるようにしてくれねぇ?」
「モフ」
「そうか、嫌か……」
成功
🔵🔵🔴
ノア・コーウェン
これは…なんというか…すごいことになってますね…。
なにか悪いことが起こる前にどうにかしないといけませんよね…これ…。
す…すいませーん!通して…通してくださーい!
…す…すみません…そんな…そんな不満な顔されるとは…いや順番抜かしたとかじゃなくてですね…。
うわぁ!の…登ってこないでくださいー!ごめんなさいー!
えっ…そのお腹は…?これ…これは撫でても…いいやつですか…?
少し…少しだけ…。ふわぁ…!柔らかい…もふもふです…!
ですが僕のもふもふだって負けてないはずです…!
それはそれとしてもう少し良いですか…?もふ…もふ…ふわぁ…!
どこまでも続くモフィンクスの海。
のそのそ、ぽてぽて、緩やかなスピードで少しずつ先に進んでいく姿は基本的に緩やかで、温泉川までの道のりが遠くともいつかは辿り着けるという確信があるせいか無理に仲間を押しのけようともしない。我慢強い性格なのかもしれないが、それ以上にのんびりとした部分が先立っているのだろう。
既に何人もの猟兵達を魅惑し、そしてもふもふへと呑み込んでいった魔の巣窟に、また一人挑戦しようとするもふ、もとい猟兵がやってくる。
「これは……なんというか、すごいことになってますね……」
その場の光景に圧倒されながらごくりと息を呑んだノア・コーウェン(がんばるもふもふ尻尾・f02485)は、フェレットの外見を持つ獣人だ。小さな耳と大きな尻尾に、身軽に動けそうな靭やかで小柄な体を毛皮に包んでいる。その外見から観測されるもふもふ度合いは、モフィンクス達にも劣らぬ高い戦闘力だ。その身長の低さも相まって、彼の前に広がるモフィンクスの大移動はかなり圧倒的に映っている。このまま放置して悪いことが起きてしまう前に事態を収束させなくてはいけないと、暫くその場に棒立ちしていたノアは行動を開始する。
とはいえ、圧倒的な物量を前に自分は何をできるのか、そう考えた時に出てきた答えは非常にシンプルで。
「す……すいませーん! 通して……通してくださーい!」
つまりはそう、今までも多くの猟兵がやむを得ず、もしくはやむを得ずっぽい風を装いながら行ってきた唯一無二の戦法。正面突破である。
人混みをかき分けるか、満員電車になんとか乗り込む時のような声のかけ方でモフィンクスの間を縫って中に入っていくノアに、早速もふもふの洗礼が襲いかかる。
「す、すみません。そんな……そんな不満な顔されるとは……いや順番抜かしたとかじゃなくてですね」
まずは急に割り込んでこられたことによる不満の表明。眉を寄せてそういうのはよくないと言っていそうな顔をするモフィンクスもいれば、なんでこんなことをするの……? とさも悲しげな顔で震えるモフィンクスまで。各々が思い思いの抗議の仕方をしてくる。共通点としては、どれもこれも普通に可愛い。そこでまずノアのこの場を切り抜けようという決意に大ダメージ。
そしてそこから、モフィンクス達は次なる手を打ってくる。ノアが迷っている間にすかさず足元からしがみつき、体をよじ登ってもふ毛を惜しみなく押し付けてくるのだ。
「うわぁ! の、登ってこないでくださいー! ごめんなさいー!」
肩まで這い上がってきたモフィンクスがむふーむふー言っていて息が熱い、あと煩い。
一匹よじ登れば三十匹はよじ登れるとばかり、次から次へと群がるモフィンクス達をなんとか押し退けてノアは進む。体も足取りも、物理と精神にかかる負荷のせいで鉛のように重く。もう既にこんな状態だというのに、まだまだ試練は過ぎ去ってくれない。今度はノアの前でごろんと腹を見せて寝転がるモフィンクスが現れ、誘いかけるように見つめてくる。
「えっ。このお腹は撫でてもいいやつですか……? ちょ、ちょっとだけ……」
どうも、既に通り過ぎている猟兵達の存在から、何者かが自分達の列を乱して先に行こうとしているという事実に今頃気づいたらしい。ただし腹を見せると高確率で足が止まるという弱点も同時に伝わってしまったようで、一匹が寝転がると周りも真似っこをして寝転がり、何匹ものモフィンクスがお腹を出して必死にアピールをするという。ノアにとっては天国のような修羅場が展開され始めてしまった。
「ふわぁ……もふもふ……やわらかいです……!」
あちらのお腹をもふもふ、こちらのお腹をもふもふと撫で回し。感触に浸っている間にもまた一匹、新しいモフィンクスがノア登りを楽しんでいる。このままでは先に進めず、もふもふの世界に囚われてしまう。一瞬諦めかけたノアだったが、最後に残った小さな感情が彼を突き動かした。
「ですが僕のもふもふだって負けてないはずです……!」
その感情の名前は、対抗心。
もふもふ好きなら無条件降伏してしまいそうなかわいさと手触りを持つモフィンクスだが、自分のもふもふだって十分に勝負ができるはずだという、獣人だからこその感情。
現にノアの周りにいるモフィンクスの何匹かは、彼の尻尾に顔を押し付けたりすり寄ったりして感触を楽しんでいる。尻尾が持ち上がり届かなくなるとぴょんぴょん跳ね、尻尾が動けば後を追ってわらわらと大移動。
すっかりノアが持つもふもふ感に魅せられているのだ。
「いける、これならいけますよ……!」
自分の動きを止めようとしていたモフィンクス達を逆に操ることに成功したノアが手応えを感じ取る。このまま尻尾を餌にして誘導していけば、奥へ向かうために必要な通路を確保することも難しくないだろう。彼は同じもふもふ属性という土俵の上で見事、モフィンクスに勝利した。
「……それはそれとして、もう少し良いですか……?」
だからこそ、ちょっと寄り道する余裕も出たのだが。
ノアにもモフィンクスにも損のないWIN-WINな関係は、もう少し続くようだ。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『ストーンゴーレム』
|
POW : ゴーレムガード
全身を【硬質化して超防御モード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : ゴーレムパンチ
単純で重い【拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ : ゴーレム巨大化
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【岩石】と合体した時に最大の効果を発揮する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アルル・アークライト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ゴムゴロウとゆかいなモフィンクスたち
モフィンクスの海を抜けた先は、モフィンクスの川だった。
確かに一見ただの川のように見えるが、水面からは湯気が立ち上り水温が高いことを裏付けている。そして流れをほぼせき止めるように、みっちりと詰まったモフィンクス達がのんびりと入浴を楽しんでいた。
このまま放っておけば川が溢れてこの辺り一帯が水浸しになってしまいそうである。そうなる前にモフィンクスを出さなければいけないが、その前にやらなければいけないことがあった。
「あれが、ストーンゴーレム……」
猟兵の誰かが呟いた。
その言葉通り、川辺にはこのモフィンクス達を運んできて川に詰まらせた張本人こと、ストーンゴーレムがいた。
硬い石で構成された屈強な体と、人一人なら余裕で掴み上げ、そのまま握り潰してしまえそうな大きな掌を持つオブリビオンは、静かにそこに佇んでいる。
「……体育座りだ……」
また、別の猟兵が呻く。ストーンゴーレムは、その巨体を丸めるように膝を抱えて座り込み、幸せそうに川に浸かるモフィンクスを見つめていた。それはもう、我が世の春が来たと言わんばかりの桃色オーラだ。正直、このまま放っておいてあげたいくらい、癒やされている。
しかし本当に放っておくわけにはいかない。猟兵達は次なるミッション――ストーンゴーレムへのお説教を開始するために歩を進めた。
**************追加情報************
・ストーンゴーレムへの説得、及び説教をお願いします。
・論理的に攻めても感情的に言い募っても構いません。メンタルは柔いです。
・周囲には入浴順番待ちのモフィンクスがいるので、これを利用するのも手です。
・ただし、反撃にご注意ください。
ストーンゴーレム側も自分が可愛いと思うモフィンクスの仕草等を見せて己の行動を正当化しようとする場合があります。
******************************
ルフトゥ・カメリア
あー……これか、これが元凶か……。
ていうかテメェらそろそろ降りろ。……嫌かよ……どんだけくっ付いてんだ。剥がすぞ。鳴くな。あんまりくっついてると持って帰んぞ(とりあえず顔面は退けた)
おいゴーレム。あのなぁ、俺らがわざわざ来たのだってテメェが余計なことするからじゃねぇか。それで此奴らを俺らが討伐してたらどうする気だったんだよ。
全部管理も出来ねぇ癖に、連れて来るだけ山のように連れて来て放置してんじゃねぇよ。
このままにしてたら川が氾濫して周辺に迷惑すぎんだよ、どう考えてもそしたら害獣扱いにするしかねぇじゃねぇか。
だーかーらー、殺さねぇように随分ぬるくやってやってんだろこうやって!(鈴鳴り)
アーサー・ツヴァイク
※引き続きアドリブ協力大歓迎
オブリビオンにも色々いるんだな…勉強になるわ
…てか、温泉川って本当にここだけなのか? 意外と奥にあったりするんじゃないの?
ここじゃ学園の生徒や猟兵も出張ってきてかち合うことになるわけだし、もっと奥深くにある(かもしれない)幻の温泉郷とか…探してみるのもいいんじゃない?
とまあ、こんな感じで「ここじゃなくて他を当たれ」みたいな方向で説得してみよう。こっちに害を為さないのであれば、どっか別の場所でやる分には文句を言うつもりはないし。
あと説得中は手持無沙汰になるから、さっき使った旗でモフィンクスをおびき寄せてもふっとこ。ゴーレムちゃんの分もあるよ。
はー…癒されるわー
「あー……これか、これが元凶か……」
普通にしていれば威圧感バッチリだろう体躯をちんまりさせて川を見ていたストーンゴーレムは、背後から聞こえた人の声に振り返る。ここに居座るようになってからは久しく聞くことのなかったそれ。しかし、周りを見回してみてもその声の主が見当たらず、不思議そうに首を傾げた。眼の前にはただ、羽が生えた人っぽいオブジェにモフィンクスが張り付いている何かがそこに立っているだけだ。
「ここだここ」
あ、喋った。
ストーンゴーレムに声をかけたルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)の手が顔面にへばりついていたモフィンクスを剥がす。道中ひっついてきた群れを引きずってここまで歩いてきた彼の表情には、さすがに疲れの色が見える。顔に執着していたモフィンクスが悲しげに鳴くのを心を鬼にして耐え。しかし遠くに遠ざけるでもなく小脇に抱え直す。
「あんまりくっついてると持って帰んぞ。ったく」
「ハナモフゥ……」
「お前には後でたっっっっっっぷり話がある」
後頭部ではルフトゥの頭部に咲いていたネモフィラを完食したモフィンクスが満足そうだ。そちらへの説教は一旦置いておいて、咳払いで気を取り直したルフトゥはきっとストーンゴーレムを睨みつける。
「おいゴーレム。あのなぁ、俺らがわざわざ来たのだってテメェが余計なことするからじゃねぇか。それで此奴らを俺らが討伐してたらどうする気だったんだよ」
「デモ、モフサムソウダッタ……」
まっとうな正論を突きつけられ、ストーンゴーレムがしゅんとする。図体はでかいが、雰囲気は家に捨て猫を持ってきてしまった子供のようだ。事前の情報通り、知能はそこまで高くないものの会話をするには十分な機構を兼ね備えているらしい。丸めた背中をさらに傾け、ルフトゥと視線を合わせようとするストーンゴーレム。でかい。そのままごろんと転がってきたら一瞬で潰されてしまいそうに見える。
「モフィンクスを大事に思っているのは分かる。けどな、全部管理も出来ねぇ癖に、連れて来るだけ山のように連れて来て放置してんじゃねぇよ」
「その通りだ!」
「うおあ!?」
いつの間にか横にいて力強い同意を示すアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)にルフトゥが驚く。腕組み仁王立ちをしている彼の周辺にもまたモフィンクスがたむろしており、彼が持つモフィンクス印の旗を狙ってそわそわと動き回っている。いわば静(動かぬモフ)のルフトゥと動(騒ぐモフ)のアーサーという、両脚端でいて結果的にはもっふもふという変わらぬ価値観を共有した二人がここに揃ったのだ。そんなアーサーの方も、ストーンゴーレムに言いたいことはルフトゥと同じ。
「ここじゃ学園の生徒や猟兵も出張ってきてかち合うことになるわけだしな。お前にもモフィンクスにも危険だ」
「ムウ……」
「それにな、温泉川って本当にここだけなのか? 意外と奥にあったりするんじゃないの?」
元々モフィンクス達が塞いでいるこの温泉川は地上を出発し、迷宮の上層へと流れ込んだ後そのまま下層まで続いている。おそらくこの川では下層に流れてくる頃には水温が下がってしまうが、何も同じようなことになっている場所が他にないとも限らない。もしかすれば下層にも、モフィンクス達が安心して入浴できる場所があるかもしれない。というのが、彼の意見。
「幻の温泉郷とか……ほら、あるかもしれないしな。探してみるのもいいんじゃない? と俺は思うぞ」
絶対にあるとは言わないので、もし見つからなくても俺は恨まないでほしい。そんな気持ちがこめられている。とにかく、ここでモフィンクス達が入浴するのをやめさせて下層に戻すことが今回の任務。人があまり立ち入らない下層で好き勝手にする分には、自分達の管轄外だしはるかに安全だ。その方がストーンゴーレムにもモフィンクスにも優しい世界であるに違いない。しかしストーンゴレームはまだ煮え切らない様子。
「図体でけぇクセに女々しいなコイツ」
「まーまー。ほらゴーレムちゃん、一モフいこうぜ」
新人社員に酒を呑ませる上司のような口ぶりで、アーサーがモフィンクスを一匹ストーンゴーレムの手に乗せる。ちなみに、説得をしている間彼は常にモフィンクスを腕に抱いており。呼吸と同じくらい自然な動作で撫で、もふり、ここに来るまでにも堪能した手触りを楽しんでいる。掌でごろごろしているモフィンクスをそおっと潰さないよう指で撫でるストーンゴーレムにも、また幸せそうなオーラが戻ってきた。
「可愛いだろ? この可愛さを守るためにもここにいちゃダメだ。次は本当に狩らなくちゃいけなくなっちまう」
「モフ、コロス?」
「今回は殺さねぇよ。殺さねぇように随分ぬるくやってやってんだろこうやって!」
そう叫ぶルフトゥの姿から出される圧倒的説得力。
頭にもふ、体にもふ、羽にもふ、小脇にもふゥ!
このまま川が氾濫すれば、害獣として処理する必要が出るかもしれない。そんな事はルフトゥもやりたくはないのだ。その優しい意思がなければここまでモフィンクスもへばりつかないだろうし、次の花が生えてくるのを虎視眈々と狙われたりはしないだろう。そして説得力という点では、モフィンクスを常にキープし続けているアーサーも同じようなもの。
「俺達が来たのがある意味最後通告だ。モフィンクスが傷つくのが嫌なら、そろそろ住処に帰るべきだぜ?」
数匹ならともかく、ここまで大量にともなると見過ごす訳にはいかない。決断を迫るアーサーの声に、ストーンゴーレムは明らかに迷い始めていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
※アドリブ歓迎
ゴーレムさん、でいいのかしら……えっと、ゴーレムさん?
あなたがあの毛むくじゃら達を連れてきちゃったから、川が詰まって溢れてしまいそうなの。
そしたらこの先に水が流れなくて、向こうの草木が枯れてしまうわ?
毛むくじゃらも多分、草食だと思うし……ご飯がなくなるのは困ると思うの。
それに、マリアはもじゃもじゃしたのは好きじゃないから、住処に返してあげて欲しいわ……でも茹だって毛が全部抜けるならそれもいいかも(ぼそり)
あ、じ、冗談よ? だからそんなに身構えないで……ね?
……ごほん、とにかくね? ゴーレムさんは良かれと思ってしたことだろうけど、色々困ってしまうのよ。わかってくれるかしら?
天宮院・雪斗
モフィンクスなでなでしてたけど、ゴーレムのこと思い出したので説教に来た。
「え~と、よくわからないけど、迷惑してる人がいっぱいいるから、元のとこに戻らないとだめだよ~、めっ!だよ~」
と、モフィンクス抱っこしながら言う。(しっぽふりふり)
「ごーれむさん!」
天宮院・雪斗(妖狐の陰陽師・f00482)はもふもふを一匹抱えている。もうここに来た猟兵の殆どが標準装備しているのではと思うくらいの搭載率だ。一時はモフィンクスと戯れることに集中しすぎていたが、その後なんとか移動の波に乗ってここまでやってきた雪斗の認識は相変わらずふわふわとしている。細かい事情は大体モフィンクスのせいで吹き飛んでいるが、ストーンゴーレムがいけないことをしているのだけはちゃんと覚えているようだ。
「迷惑してる人がいっぱいいるから、元のとこに戻らないとだめだよ~」
「モトノトコサムイカラ、モフィンクスコゴエル……」
めっ! と小さな指を突きつける雪斗に、ストーンゴーレムは泣き落としにかかったようだ。迷宮は広大なため、同じ階層でも場所によって環境がガラリと変わることがある。どうも、ストーンゴーレムとモフィンクス達が本来生息しているのは、常に平均気温が低い地帯のようだ。石の体を持つストーンゴーレムには苦にもならないが、モフィンクス達は常に身を寄せ合って体を温めているのだろう。かわいい。
「む~、でもだめだから、だめ!」
が、しかし相手が悪かった。ストーンゴーレムの知能指数は子供も大差がないが、雪斗は正真正銘の子供なのだ。わがままを言ったり、駄々をこねたり、理屈が通らない自分本位の理論を展開することがまだ許される年頃。そのため、たとえどんなに筋の通った説明をされても、自分の感情一つでそれを突っぱねる。ましてや、今回の場合どう言い繕ったとしてもストーンゴーレム側に非があるので分が悪ことこの上ない。
「デモモフヨロコンデル!」
「ダメなものはダメ!」
「グヌヌ……」
このままでは勢いで圧倒されると思ったらしい。ストーンゴーレムは近くで入浴待ちをしていたモフィンクスを大きな掌で掬い上げると、それを雪斗の上にもふもふと降らせる。地面に着地したモフィンクスは雪斗に興味を示し、やがて体を覆い隠して押しつぶさんばかりによじ登ってきた。
「ふああ~、もふもふ~」
結果、またもモフィンクスにもみくちゃにされていく雪斗。両手に抱えて頬ずりし、暖かさに浸ってしまいそうになる。そんな様子に勝機を見たストーンゴーレム。更に追加のもふレインを仕掛けようと後ろに手を伸ばすが、何故かそこにはついさっきまで感じられた柔毛の感触はない。
「???」
「えっと、ゴーレムさん……?」
モフィンクス達のいなくなった場所に、アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(救世の極光・f13378)は静かに立っていた。彼女の周りには不思議とモフィンクスがおらず、皆一様に距離を開けて様子を伺っている。なぜか、雪斗の周りにいたモフィンクスもアヴァロマリアを見た途端波が引くようにすうっと数を減らしていき。これにはモフィンクスも雪斗もワケがわからないと言った顔だ。
「あのね、ゴーレムさん。あなたがあの毛むくじゃら達を連れてきちゃったから、川が詰まって溢れてしまいそうなの」
ほら、と指差す先には絶賛入浴中のモフィンクス達。川の横幅をはるかに超える物量でお湯をせき止め、岸に上がる度に流れを止めていた川が流れていくが。その循環は徐々に悪くなり、お湯が溜まっている時間が伸びることで岸のギリギリにまで水位が上がってきてしまっている。暫くすれば彼女の危惧通り、お湯が溢れてしまうだろう。
「そしたらこの先に水が流れなくて、向こうの草木が枯れてしまうわ? 毛むくじゃらも多分、草食だと思うし……ご飯がなくなるのは困ると思うの」
迷宮に住み、争いを好まないモフィンクスの主食は狩猟の必要性がない草類である事が多いだろう。もちろん、このままでは草木を食べる他の生き物にも影響が出かねない。もっと凶悪なオブリビオンが、餌を求めて上層に上がってくるようになっては被害が増える恐れもある。温泉川を中心とした生態系に悪影響を及ぼすことはいけないと、アヴァロマリアは愛らしい表情を憂いに染め、ほうっと息を漏らしてモフィンクスを見つめた。だが、視線の先にいるモフィンクスは、アヴァロマリアに近付こうかやめようかを決めかねている様子。その姿に、彼女自身はまったく身に覚えがないと不思議そうだ。
実際、アヴァロマリアは別段モフィンクスを嫌ってはいないし、モフィンクスもアヴァロマリアからひどい目にあっているわけではない。
「それに、マリアはもじゃもじゃしたのは好きじゃないから、住処に返してあげて欲しいわ……でも茹だって毛が全部抜けるならそれもいいかも」
「ひぇっ」
「ヒェッ」
ただ、本能的な勘から下手すると毛を毟られるのではという予感があるようだ。若干九歳もうすぐ十歳の少女が出すには少々、ガチ度の高いつぶやきにストーンゴーレムもビビるし雪斗もビビる。二人の驚いた顔に気がついたアヴァロマリアは、慌てて首をブンブンと振った。
「あ、じ、冗談よ? だからそんなに身構えないで。……ごほん、とにかくね? ゴーレムさんは良かれと思ってしたことだろうけど、色々困ってしまうのよ」
そのことを理解して、大人しく下層に戻って欲しい。アヴァロマリアの願いはとても真剣で、諸々の事情も含めてストーンゴーレムにはとても刺さった。それもこれも、彼女が好きな爬虫類や虫の存在が見当たらないせいでもある。憂いさを増した小さな聖女は、また切なげにため息をついてモフィンクス達を見やる。
(だって、はやく毛むくじゃら達が帰ってくれないと、虫さんやトカゲさんに会えないんだもの……)
「……やっぱり少しだけ毟ろうかしら」
「だ、だめー!」
「ゴムー!」
本気なのか冗談なのか、またも溢れたアヴァロマリア呟きに大慌ての一人と一体。
もふもふの魔力に屈しがちな猟兵達の中で、好みの違いにより強力な耐性を兼ね備えたアヴァロマリアの説得兼脅しは、かなり有効な手段になったようだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
寧宮・澪
おー……いい、光景ー……いいお湯ー……。
(足湯したい)
ゴーレムさんやー……ご覧、なさいー……。
みっちみちのモフィンクス、をー……。
狭そう、じゃない、ですかー……?
順番待ちの、子たちもいるんですよー……?
もっと、悠々、とさせたくない、ですかー……?
ええ、もちろんー……ミチっとしたモフィンクス、もいいですがー……より、ふかふか、弛緩したゆるゆるをー……堪能、できるのは、下層の空間、ですよー……。
何なら、下層に銭湯、作ったらいいじゃ、ないですかー……運ばなく、ても、楽しめます、よー……。
作るの、【属性魔法】で、お手伝い、しますよー……。
(順番待ちの子捕まえて、もっふるもっふる)
リュシカ・シュテーイン
えぇっとぉ、ストーンゴーレムぅ、さんでよろしいでしょうかぁ?
ふふぅ、警戒しないでくださぁいぃ、危害を加えるつもりはぁ、ありませんのでぇ。
……ストーンゴーレムぅ、ですかぁ……私も昔はぁ、そういったあだ名で呼ばれていた時期があったんですよぉ。
周りよりも背が大きくてぇ、石を使う魔女ぉ……。(それにのろまの意味も付け加えられていたんでしょうねぇ)
貴方のような優しい方とぉ、一緒の呼び名ならこのあだ名も悪くありませんねぇ
……そこで本題ですがぁ
このまま彼らを川に置いていてはぁ、川が溢れかえるだけではなくぅ、あの子達を力尽くでどけようとする方も出てきてしまいますぅ
そうならないためにもぉ、ご協力ぅ、くださいぃ
圧の次にはゆるふわが待っている。
次にストーンゴーレムの説得に取り掛かったのは寧宮・澪(澪標・f04690)とリュシカ・シュテーイン(StoneWitch・f00717)の二人。ほんわりとした雰囲気を纏いつつ、澪は足湯をするのに最適そうな温泉川をまったり見つめ。リュシカは座っていても見上げる大きさのストーンゴーレムをふぇーと見上げている。なお、ストーンゴーレムの周りには既にモフィンクスが配備済み。ストーンゴーレム、完全防御の構えだ。
「めちゃくちゃ身構えてますねー……」
「ふふぅ、警戒しないでくださぁいぃ、でもぉ、お話は聞いてもらいますよぉ」
尻尾を振って近づいてきたり、前足を靴に乗せて見上げてくるモフィンクス達に取り囲まれつつ。そのうちの一匹を抱き上げてもふもふを楽しむ澪が気にするのは、やはりこの温泉川のなんとも言えない惨状である。先程よりも更に水位が上がったようにすら見えるが、気のせいじゃないだろう。
「ゴーレムさんやー……ご覧、なさいー。みっちみちのモフィンクス、狭そう、じゃない、ですかー……?」
「ウ……モフィンクス、ミンナオンセンスキ。ジュンバンデハイッテモ、ミチミチ」
「ええ、もちろんー……ミチっとしたモフィンクス、もいいですがー……」
入っているモフィンクスよりも順番待ちのモフィンクスのほうが多いからこそ、ここに到着するまでの道が渋滞を起こしていた。これには当然学園の人達が困っているが、すし詰め入浴と長い待ち時間を強いられるもフィンクスにもストレスがかかるのではないかという澪の指摘にドキッとするストーンゴーレム。やはり、ここまでつれてきたはいいものの想像以上にごった返してしまったという自覚はあるらしい。
「このまま彼らを川に置いていてはぁ、川が溢れかえるだけではなくぅ、あの子達を力尽くでどけようとする方も出てきてしまいますぅ」
「より、ふかふか、弛緩したゆるゆるをー……堪能、できるのは、下層の空間、ですよー……」
「デモ、ゴーレムトモフィンクスノイルトコロ、サムイ」
「ではー……銭湯を、作りましょうかー……」
「あらぁ、いいですねぇそれぇ」
ナイスアイデア、とリュシカも手を叩く。
下層にある他の温まれる場所を探してみてはどうかという猟兵はいたが、まさかの建設提案である。元々川の水も、蒸気で温まったお湯の流れ。水を沸かす設備や仕組みがあれば、そこまで難しくなるものではないかもしれない。モフィンクスとストーンゴーレムがいる場所にそれを作れば、確かに今回のような上層へ上がってきて騒ぎを起こす必要も無くなるだろう。属性魔法を使用した人工温泉くらいならば、割合手軽に作れそうだ。
「下層に冒険に行く人も使えますしねぇ、湯上がりの飲み物とか売ったら儲かりそうですぅ」
ちゃっかり商魂を覗かせるリュシカは、改めてストーンゴーレムを見つめる。先程からどうにも親しげな視線を感じているのでストーンゴーレム側もきょとりとしており、それに気づいた彼女は唇をクスクスと綻ばせた。
「ストーンゴーレムぅ、ですかぁ……私も昔はぁ、そういったあだ名で呼ばれていた時期があったんですよぉ」
今は遠い故郷を思い出すのか、彼方を見るような視線が眼鏡越しに瞬く。自分が生活していた世界から事故で飛ばされ元の場所に戻る方法を模索中の彼女にとっては、目の前の石でできた屈強なゴーレムが今より幼かった頃の記憶が想起されるきっかけになったようだ。なかなか、女性に着けられるあだ名としてはゴツさを感じざるを得ないが。
「周りよりも背が大きくてぇ、石を使う魔女ぉ……それにのろまの意味も付け加えられていたんでしょうねぇ」
「それはー……いい思い出として扱ってもいいやつですかー……?」
最終的にははっきり聞いたものの、澪も少し気まずそうだ。前二つの理由はまだなんとかよしとしても、最後の理由は明らかに誂われてる類の理由。おっとりとした物腰の口調のリュシカが、昔も今と対して変わらないという証左でもあるのだが、本人的にはどうなのか。しかし、リュシカは穏やかな笑みのままゆっくりと首を振る。
「昔の話ですしぃ、貴方のような優しい方とぉ、一緒の呼び名ならこのあだ名も悪くありませんねぇ」
「ゴーレム、ヤサシイ?」
「そうですー……ねー……モフィンクスのために起こした騒ぎですしー」
寒さに震えるモフィンクスに温まってもらおうという思いだけでここまで大事になっているのだから、その純粋な思いは疑いようもない。暗く冷たい下層において、モフィンクス達がストーンゴーレムのいい友人であったからこそ、ここまでもふもふに傾倒したのだろう。悪気はない。悪気はないが、だからといってやっていいことと悪いことがあり、今のこれは悪いことなる。リュシカも澪も、モフィンクスは元よりこのままではストーンゴーレムも討伐されてしまうだろう未来を心配しているのだ。
「モフィンクスもー……あなたもー……ここにいては危険ですよー……」
「排除で対処しなくてはいけなくならないようにぃ、ご協力ぅ、くださいぃ」
二人の視線に見つめられて、ストーンゴーレムも少し神妙そうである。周りにいたモフィンクス達に手を伸ばし、ゆっくり撫でて喜ぶ姿を見下ろしながら、何事か考え込んでいるようだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エル・クーゴー
『躯体番号L-95』
『アルダワ深層、指定座標に現着しました』
『説教(マジレス)を開始します』
(狩猟の魔眼がヴン…って光る)
●POW
データベース更新
>同期完了
照合を開始します
>該当件数1
災魔、カテゴリ『ストーンゴーレム』と識別しました(電脳世界をめっちゃ展開する)
拠点防衛型と判定
全長・推定重量・脚部構造より走破能力を試算しました
付近の迷宮構造及び地形情報と照合します(ワイヤーフレーム画像とかグラフとかをすごいたくさん出す)
貴機が常駐中の現座標付近はフロア侵入者捕捉時の迎撃行動に支障をきたすものとして結論付けられます
またモフィンクス各機の巡回経路にも破綻が生じています
速やかな現状復帰が推奨されます
「躯体番号L-95。アルダワ深層、指定座標に現着しました」
物陰の闇から溶け出るように現れたのは、メカニカルなゴーグルで目元を隠した一人の少女。身の丈ほどもあるシールドといい、全身を包むスーツといいどこからどう見てもスペースシップワールドからやってきたかのようだが。正真正銘アルダワ出身、迷宮深部を揺り籠としていたミレナリィドールである。
エルキューゴー――エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)はその気配をストーンゴーレムに感じさせぬまま、いつの間にかそこにいる。一応ではあるもののオブリビオンであるモフィンクスが持つ野生の勘にも引っかからずにだ。
ゴーグルに走る緑のラインが光を放ち、それがゴーレムの体をなぞったかと思えばスキャン画面が彼女の右手側に。左手側にはアクセス中のアーカイブ画面が展開される。
「データベース更新」
>同期完了
「照合を開始します」
>該当件数1
「災魔、カテゴリ『ストーンゴーレム』と識別しました」
古めかしい石の壁と地面。そして蒸気を通す管が張り巡らされていた迷宮の光景は、いつの間にか一変。
ザミエルシステムにより展開された莫大な情報はエルの視界と意識を入力装置として取り込まれ、その場を電脳世界に塗り替えて次から次へと新しいデータを引き出している。こうして正確な情報を前提に、速やかな現状把握と直近で予測される事態の把握を可能にする。それが、L-95と自称する存在のやり方。全ての事象はデータが司り、そこは限りなく不確定を排除した世界。
そこまで、そこまでの高速処理を用いて彼女が何をしようとしているのか。
「説教(マジレス)を開始します」
「ナニコレコワイ!」
ストーンゴーレムが怯えるのも仕方ない。登場からこっち、その場の空気は完全にエルが掌握しているのだ。比喩表現抜きで、その場の空気を完全に変えてしまっている。驚かないはずがない。
「該当地域を拠点防衛型と判定しました。走破能力を試算し、付近の迷宮構造及び地形情報と照合します」
しかも先程から視覚情報としていくつものウィンドウが開き、そこにはとてもストーンゴーレムでは理解ができないような文字列や数字が並ぶ。かろうじて、自分と同じ姿をした立体映像はわかるが。そこから伸びてるデータや注釈などの意味はさっぱり。戸惑っている間にも何かしらを現すグラフやら、ワイヤーフレームで作られた周辺の地形などなど。止めどなく溢れかえるほぼ意味不明の光景に、そろそろストーンゴーレムの処理能力がパンクしそうだ。
「……ふむ」
やがて、全体の情報をざっと見終えたエルがストーンゴーレムに近づいてきた。完全に萎縮している巨体を前に、どこを見ているのかわからないながらも顔を上に向けた彼女の視界には、おそらくその姿が見えているはずだ。追尾してきたウィンドウには、何かしらの計算が終わったことを表示する文字の点滅が見える。
「貴機が常駐中の現座標付近はフロア侵入者捕捉時の迎撃行動に支障をきたすものとして結論付けられます」
「??」
「またモフィンクス各機の巡回経路にも破綻が生じています。速やかな現状復帰が推奨されます」
「???」
頭から大量にはてなを出しているストーンゴレームと、今の発言で意味が通じていると疑っていなさそうなエルの間にちょっとした沈黙が流れる。
悲しいかな、ストーンゴーレムの頭では彼女の言葉を全て正確に理解するのは少し難しいらしい。だがそこはそれ、エルも気がついたようで瞬時に脳内が翻訳作業を始める。翻訳、と表現したがこの場合最も適当な表現は「噛み砕く」に近いだろう。そのままの言葉では、どうも伝わらないと気づいたようで警告内容の対象年齢を想定よりも引き下げる。
「……この周辺にあなた及びモフィンクスがいると。迷宮内の通行が妨げられ、また別の驚異が来た際の対処にも支障が出ます」
「……」
「つまり、この場にあなた方が残留した場合、迎撃行為において本来必要な人的――」
「モウヤメテエェェェェ!!!」
難しい話を容赦なく詰め込まれそうになり、割とガチ目なストーンゴーレムの悲鳴が響く。
大成功
🔵🔵🔵
チェイザレッザ・ラローシャ
あんた、この子ら好きなの?
そうよねー、さっきあたしもね、ちょーっと触らせてもらったけどいい毛並みだったわー。
こんなかわいかったら仕方ないわよね~♪
……何て言うと思った!?このダメっ子ゴーレム!!
いくらなんでも限度があるでしょうが!
もりもりに溢れるほかもふが見たいならこれあげるから我慢しなさい!!
……え?これ?ビニールプール。あと洗面器。
これにお湯入れてもふもふども詰めなさい。
そしてゴーレム。あんたにはこれよ。じょうろ。
これでお湯かけたげなさい。多分喜ぶから。
……いい?癒しの時間は仕事をこなしてこそ最高のものになるの。
だからまず仕事しなさい。
それからこうして遊びなさいな。
……わかった?
高度な情報戦(ストーンゴーレム視点で)に頭から煙を噴きそうになったストーンゴーレムは、急激に癒やしを欲しがっていた。手探りで近くにいるはずのモフィンクスを探すも、石の指先に当たったのは誰かの靴の先。
「んー、やっぱりたまんないわねこのもふもふ」
見れば、その辺にいたモフィンクスをほぼ独占して、チェイザレッザ・ラローシャ(落霞紅・f14029)がご満悦にもふもふハーレムを楽しんでいた。むふーむふー鼻を鳴らしてだるんとしてるモフィンクスの腹を撫でくりたおし、極上の手触りを目いっぱいに味わっていたが、ストーンゴーレムが此方を見ていることに気がつくと眼鏡の奥で瞳がすぃっと細くなる。
「モ、モフ……ゴーレムモモフホシイ……」
「あんた、この子ら好きなの? まあそうよねー、こんなにいい毛並みなんだもの、好きに決まってるわよね」
うんうんと納得して首を縦に振るが、ストーンゴーレムがモフィンクスに触るのを微妙に邪魔している。手が伸びてくれば後ずさり、手が戻れば前進し、また伸びれば巧みにぎりぎり届かない距離を見極めて離れていく。その様子はさながら、砂漠で乾いた旅人と水を持った富豪のよう。見せびらかすようにもふもふをしているチェイザレッザに、ストーンゴーレムが震えながら腕をあらん限りまで真っ直ぐにして届かせようとしている。が、それすらも無情にかわすチェイザレッザ。
「そうよね、こんなかわいかったら仕方ないわよね~♪ …………何て言うと思った!? このダメっ子ゴーレム!!」
「アアッ!」
普段は青いはずの瞳を真紅に染め、ぱしーんという効果音が聞こえてきそうな勢いで雷を落とすチェイザレッザに、別段何もされていないのにストーンゴーレムがよろけて崩れる。頬を抑えながらぷるぷるしているが、気分的な演出であり彼女は今もなおノータッチを決め込んでいる。モフィンクスは可愛い。それは認めよう。しかし、ここまでやってしまうとなればそれはもう十分迷惑行為の域に入る。
「いくらなんでも限度があるでしょうが! もりもりに溢れるほかもふが見たいならこれあげるから我慢しなさい!!」
そう言い放つチェイザレッザが指を鳴らすと、道中働きっぱなしだった二体の子鯨型UDCが何かを口に咥えて飛んできた。片方は一抱えほどのダンボールを、もう片方はUDCアースにある某ホームセンターのロゴが輝くビニール袋。ダンボールを受け取り、封を開けていくチェイザレッザの手元を覗き込んだストーンゴーレムの目に写ったのは、幼い子供たちが楽しく水遊びをする写真の印刷物。下の方に『楽しいプール』と書かれたものだ。あと空気入れ。
「さあ、膨らませなさい。そしてその中にお湯とモフィンクスを入れなさい」
「アッハイ」
有無を言わせぬ気迫に負けて、広げられたビニールプールにしゅこしゅこと空気を送るポンプ音が暫く響く。むくむくと大きくなっていけば、それなりの大きさのビニールプールが出来上がる。更にそこへお湯を運ぶために、わざわざ洗面器まで用意していたチェイザレッザ。抜かりはない。ただ普通に荷物になったのではというツッコミは、人員不足で未実装に終わった。
「モッフゥゥゥゥウイ!!」
「思った以上に喜んでるわね……まあいいわ。じゃあゴーレム、次はこれよ」
お湯で満たされたビニールプールに入れられたモフィンクス達は、川ではなく池状の温泉にこれもまた良き也といわんばかりに揺蕩っている。そんな様子を見てつい撫でようとしたモフィンクスの指先を、今度は横から突き出さされたぞうさんジョウロが小突いた。これにお湯を入れて、モフィンクス達の上からかけろと、ホームセンターのビニール袋を綺麗に畳んでくるっと丸めてキュッと結びつつチェイザレッザは言う。もはや反論をする勇気も無くなったストーンゴーレムが言われた通りにすると、モフィンクスのテンションはさらにうなぎ登りに。
「モフオオオオオオオ!!!」
「楽しそうで何よりだわー。……さて、ダメっ子ゴーレム?」
彼女の目は、既に青色に戻っている。しかしそこに潜んだ凄みと言うか圧というか闇は、先程の気迫とは打って変わって静かな。しかし確実に重苦しい何かをストーンゴーレムに感じさせる。ジョウロを握る掌に、ゴーレムのそれと比べれば小さな掌をぽんと置き、彼女は語る。
「いい?癒しの時間は仕事をこなしてこそ最高のものになるの。だからまず仕事しなさい……仕事を」
まるで働かざるもの呼吸するべからずと言い出しそうな、働く猟兵チェイザレッザの格言。この場合の仕事とは、おそらくジョウロ作業ではなくモフィンクスの撤去作業も含むのだろう。ただ怠惰に自分の好きなことだけをして過ごしているようなニートゴーレムに、タダもふ喰らいをいつまでもさせておくわけにはいかない。ということか。
「……わかった?」
これに、否と言える存在がいるのなら、是非とも教えてほしい。そんな空気にストーンゴーレムは凍りついた。
大成功
🔵🔵🔵
パーム・アンテルシオ
うぅん…正直、邪魔したくないなぁ…
いや、必要な事だっていうのはわかるんだけど、ね。
あのゴーレム、私の尻尾に入り込んだ小動物みたいな雰囲気してるんだよ…
まぁ…どうせやらなきゃいけないなら、一思いにやっちゃおうか…
さて、ゴーレム…で、いいのかな、名前。
あなたのしてる事が、どういう問題を引き起こすか。あなたは、理解してる?
それは、たしかに自然の中では、悪い行いじゃない。
でも、人の生活から見れば…悪い行いになってしまう。
うん、これは人の都合。だけど、それと対立したなら…どうなると思う?
あなたはともかく。ここにいる、モフィンクス達は。
…私は、ヒトだから。人の立場の意見を言わなきゃいけないんだ。
ごめんね。
赤星・緋色
ゴーレムさん、てーへんだぁてーへんだぁ!
(ばーんという擬音をエフェクトパーツで表示)
このまま温泉にモフィンクスたちを入れておくと大変なことになるよ
私たちに依頼した人が言ってたんだ
「いずれは討伐する必要がある」って
だから可哀そうだけど戻さなきゃ
(依頼主がサバイバルで荒ぶる様子をスマホの映像で見せる)
きっと噛み殺されたり
もっふもふの毛を全部剃られて(寒そう)更に皮を剥がれて売りに出されたり(可哀そう)
精気吸われてミイラにされたりしちゃうよ。守護者を模したような生き物なのにミイラに(2度)
あのもっふもふのモフィンクスたちが
だからそうなる前にモフィンクスとゴーレムさんを下層に移動させなきゃ
技能コミュ力
正直な所、やりにくい。
お叱りウェーブにだいぶやられたストーンゴーレムがすんすんしているのを見て、パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)の顔はかなり複雑そうだ。難しい顔で頬を掻き、少し遠巻きに様子を伺っている。最初は困ったことをするストーンゴーレムに確り言えるつもりでいたのだが、ひたすらにもふもふを可愛がり結果的に説教を食らっている姿がどうにも、同情を誘う。
「あのゴーレム、私の尻尾に入り込んだ小動物みたいな雰囲気してるんだよ……いや、必要な事だっていうのはわかるんだけど」
体がでかいだけで内面は脆い、下手をするとモフィンクスよりも弱々しい可能性すらあるストーンゴーレムは。漸くの癒やしを得たとばかり体育座りから正座にシフトした膝の上にモフィンクスを並べて気力を充填していた。その肉体に傷は一つもついていないものの、内面はかなりヘヴィに打ち据えられているようで少し視線があらぬ空を見上げている。その最中にも、お腹を出したモフィンクスやお昼寝モフィンクス。自分の尻尾を求めてぐるぐるモフィンクスなど、自分が思う可愛いモフィンクスを周りに展開して更なる防壁を築きつつある。
「まぁ……どうせやらなきゃいけないなら、一思いにやっちゃおうか……」
溜息を吐いて、パームは足取りも緩やかに近づいていく。モフィンクスの合間を縫うように歩いているつもりだが、通過する度に彼女の尻尾のもふもふに釣られた数匹ががっちりしがみつき、ずるずると引きずられていく。ストーンゴーレムも、まずパームの存在に気がついては顔ではなく先に尻尾の方に視線を注いでいるようだ。それくらい、もふもふ好きには魅惑的に映るのだろう。
「さて、ゴーレムでいいのかな? 名前。あなたのしてる事が、どういう問題を引き起こすか。あなたは、理解してる?」
自分の尻尾でモフィンクスを自由に遊ばせてあげながら、パームは静かに語りかける。
モフィンクスは本来、居心地のいい場所を見つけてはそこに居着く性質がある。とはいえ下層から上層までその活動範囲は広くない。つまるところ、ストーンゴーレムがここまで運んでこなければこうした事態はほぼ起きなかったと予想される。より良い環境を求めて移動するそれは渡り鳥にも似ているが、それが人々の生活圏内に近くなれば当然問題になってしまう。
「それは、たしかに自然の中では、悪い行いじゃない。でも、人の生活から見れば……悪い行いになってしまう」
地下迷宮内部ということであれば、それはひょっとすればオブリビオンの領域かもしれない。けれど地上には学園があり、上層では様々な実習や研究が行われている以上。ここは人間の生活範囲。重なってしまえば、必ず何かしらの軋轢が発生する。だからこそ、パームもこの場にいる。
「これは人の都合。だけど、それと対立したならどうなると思う? あなたはともかく。ここにいる、モフィンクス達は……」
「そうだよそうだよ! てーへんなんだよ!」
シリアス空気をぶち破り、エフェクトパーツから投影される『ばーん』の擬音を引っさげて入ってきたのは赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)。何故かその手にはスマホが握りしめられており、画面には動画のライブラリが開かれている。それをゴーレムにも見えるように上に掲げ、更にぴょんぴょん跳ねながら緋色はストーンゴーレムに警告を向ける。
「このまま温泉にモフィンクスたちを入れておくと大変なことになるよ! 私たちに依頼した人がいずれは討伐する必要があるって言ってたんだ」
何度めかのジャンプで止まり、ぽちっと再生ボタンをタップする。何かを撮影したものらしく、スピーカーからは金属がぶつかりあったり爆破されているような激しい音が聞こえてくる。どうやら、猟兵達が日毎鍛錬として参加しているサバイバルの様子を撮った映像のようだ。ストーンゴーレムと一緒にそれを覗き込んだパームが、目を丸くする。
「ねぇ、ここに映ってるのって」
「うん、今回の仕事を依頼してきた人」
いつの間にそんなものを用意していたのか、緋色が再生しているのは彼らを送り出したグリモア猟兵が戦闘をしている姿だった。率直にしつつもオブラートをかぶせて言うのなら、激しめである。ちなみにこのグリモア猟兵、パームと同じく妖狐である。判断や見方は各世界によっても変化するだろうが、一般的に狐は小動物を狩る肉食獣だ。そして、ここには兎よりも狩るのが容易そうな小動物がたくさんいる。
「このままじゃこんな感じで噛み殺されたり、毛を全部剃られて皮を剥がれて売りに出されたりしちゃうんだよ! そうなる前にモフィンクスとゴーレムさんを下層に移動させなきゃいけないんだ!」
「ヒ、ヒエッ……コワイ……」
ゴーレム、更にきゅっと体を小さくさせてモフィンクス達を抱え込む。その上精気を吸われてしなしなのミイラになってしまうかもとまで脅され更にぶるぶる震えだした。仮定の話をするよりも、実際こうなるという例を見せるという点では優秀な説得方法である。映像のチョイスについては、さておくとして。
ともあれ萎縮したストーンゴーレムに苦笑をしたパームは、ぽんぽんと肩の辺りを叩いて自分の方を向かせる。
「今のはちょっと衝撃的すぎたけど、間違いじゃない。早くここから去るべきだよ。……私は、ヒトだから。人の立場の意見を言わなきゃいけないんだ」
「……ゴーレムトモフィンクス、カエッタホウガイイ……」
ごめんね? そう申し訳なさそうに笑うパームに、ゴーレムもゆっくりと首を縦に振る。モフィンクスも、そして自分自身も命の危機だという自覚は、じんわりとこの場からの退避に選択肢を移動させ始めているようだ。
「ふー、なんとかなりそうでよかった!」
「それにしても、今のが本人にバレたら大変じゃないのかな?」
「バレなきゃおっけー!」
テヘペロ顔で親指を立てる緋色。ちなみにこの後、帰還した彼は謎の密告者からの情報提供で事の次第を把握したグリモア猟兵により、顔面にかなりいい拳を食らったとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
赫・絲
こらー!そこの岩の!
そう!そこでモフィンクスうっとり眺めてるお!ま!え!
まずは鞭変わりに束ねた鋼糸で床をばしーんと叩いて
ゴーレムの意識をこっちに向けるね
可愛いから見てたいって気持ちはわかるんだけどさー
ダメでしょ、モフィンクスこーんなに連れてきちゃって
迷子になったモフィンクスが迷宮の外に出たりしたらうっかり倒されちゃうかもしれないし
あんまり可愛いからこーやって悪ーい人に攫われちゃうかもー
精一杯の怖い顔をしつつ上着で入浴待ちのモフィンクスを一匹捕獲!
あっちょっと暴れないでーっ、あーモフモフ……
とにかく!入浴させるにしても川いっぱいになるまで連れてこなーい!
ほら、早く連れて帰ってあげなさーい!
「こらー! そこの岩の!」
バシーン!
地面を強かに打ち付ける音が響いて、ストーンゴーレムはびっりした様子で振り返る。普段は細さと弾幕展開が売りの鋼糸を束ねて太くし、鞭のようにして床を叩いた赫・絲(赤い糸・f00433)のスカートにはモフィンクスの抜け毛がもっちゃりくっついていた。細い柔毛なので粘着テープが必須なやつだ。ここに来るまでの間、やむを得ずだったり誘惑に耐えきれずだったりでモフィンクスと戯れた結果であるそれを翻し、ツカツカとストーンゴーレムに近寄ってはべしべし石でできた腕を痛くない程度に叩く。
「可愛いから見てたいって気持ちはわかるんだけどさー。ダメでしょ、モフィンクスこーんなに連れてきちゃって」
某白猫グッズを集めるのが好きな友人に収集癖がひどいのではと諌めている時の気分で、絲はぷうっと頬を膨らませる。グッズなら揃えておいておけばまだ部屋を圧迫するだけで済むが、相手はオブリビオンとは言え生き物。あっちこっちに動き回るし時には動くことをやめてその場に箱座りするしで収拾がつかない。絲とて花も恥じらう女子高生。可愛いものには目がないし、『ゆうれいおうじ』というキャラクターの大ファンでもある。しかしものには限度があってしかるべき。もしこの、既に十分可愛いモフィンクスが全てゆうれいおうじだったとしても……。
「――っは! そうじゃなくて!」
ついつい楽しい想像に頭が引きずられていってしまったのを、慌てて引き戻す。気を取り直して、絲はびしっとストーンゴーレムを指さした。
「こんなに沢山つれてきちゃったら、川とか通路が詰まっちゃうって気づかなかったの?」
「ウウ……ゴーレムトモフィンクスイタトコロ、ズットヒロカッタ」
同じ感覚でつれてきてしまった所、こんな有様になったということのようだが。つまり元々の生息域はここよりもっと広く、そしてその広いスペースにあの数のモフィンクスが集まっているということなのではないか。つまりもふもふ畑。もふもふの花園。猫カフェならぬもふカフェ。
「――っは! だからそうじゃなくて!」
女子高生。なんだかんだと可愛さの誘惑にしんどそうである。
「こほん。だからね? このままだと迷子になったモフィンクスが迷宮の外に出たりしたらうっかり倒されちゃうかもしれないの」
川が溢れそうというのも勿論だが、まずモフィンクスそのものがフロアから溢れそうになっている。ここは上層。学園のある地上までそう遠くはない。順番待ちの間にはぐれたモフィンクスが右往左往するあまり地上に出てしまい、見つかって討伐されてしまうということも十分にありえるのだ。モフィンクス側に敵意がなかったとしても、地下迷宮に生息するオブリビオンというだけで人々にとっては脅威として見られる可能性は高い。
「ソ、ソレハヤダ……」
「そうでしょ? それにあんまり可愛いからこーやって悪ーい人に攫われちゃうかもー」
本人的には精一杯の怖い顔を浮かべて上着を脱いだ絲が、ちょうど近くにいた入浴待ちのモフィンクスを包んで持ち上げる。急に視界が暗くなって驚いたのか、上着包みの中でじたばたと暴れている。
「あっちょっと暴れないでーっ……あれ」
上も下もわからず物悲しげに鳴くモフィンクスをしっかりと抱え直す絲だったが、そのひゅーんひゅーんという鳴き声に聞き覚えがあった。忘れるはずもない。忘れるほど前の事でもない。ここに来る途中、絲に遊んでもらっていると勘違いしていた妙にアグレッシブなあのモフィンクスだ。
「ええっ!」
しかもどこで手に入れたのかシャンプーハット装着でドヤ顔だ。帽子の上からシャンプーハット。
「モフドヤァ」
「その得意げな顔はなに!? ああでもこのだらしない腹肉ともふもふが……あー……」
たっぷんたぷんの腹を揉み、人をダメにする触感に悪い人フェイスも崩れきっている。もう抜け毛くらいどこにでもつけばいい。そんな気分で天を仰ぐ。が、それをじーっと見つめているストーンゴーレムの存在に気が付き今日三度目の我に返る絲。モフィンクスを片手で抱えたまま、もう一方の手で鋼糸の束を再び床に叩きつける。こうしている場合ではない。一刻も早くモフィンクス達を元の場所に戻さなければ。決して誤魔化しとかそういうやつではない。
バシーン!!
「ヒエエッ」
「とにかく! 入浴させるにしても川いっぱいになるまで連れてこない!」
「ゴーレムシッテル……コウイウノ、ジョウオウサマッテイウ」
「誰が女王様だってー! いいから早く連れて帰ってあげなさーい!」
迷宮に響く女子高生王様の声によたよたと立ち上がるストーンゴーレム。どうやら、その文字通り重い腰は漸く持ち上がったようだ。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『あったかもふもふ蒸気温泉』
|
POW : 沢山のもふもふをかかえたり、荷車等でたくさんのもふもふを移送させることができます
SPD : 巧みなもふもふ術でもふもふを魅了したりして、もふもふの興味をひくことができるかもしれません
WIZ : もふもふに語りかけたり習性を理解し、もふもふと仲良くなり移送させることができるかもしれません
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●モフの湯
ストーンゴーレムの説得を終えた猟兵達。こってり絞られた騒ぎの元凶は、入浴待ちだったモフィンクスをせっせと元の下層へ運び始めている。迷宮入口の方では、学園の生徒達が効率強化を図ってリヤカーにこれまたせっせとモフィンクスを積んではストーンゴーレムに括り付ける場面も見られた。荷台の下の方にいるモフィンクスは潰れてそうだったが、意外と元気そうに上に重なる仲間たちの合間から顔を出している。
上層から全てのモフィンクスを撤退させた後、再発防止も兼ねて下層に人工の温泉を作るそうだ。
さて、乾いているモフィンクスの対処はそちらに任せるとして、猟兵達には濡れているモフィンクスの対処が求められる。いまだに温泉川には多数のモフィンクスが詰まっており、これらを外に出した後、川辺に設置されたリヤカーに乗せるなり自分の手で運ぶなりで下層に降りる階段の手前まで連れて行かなければならない。
濡れているのが気になれば拭いたり乾かしてあげるのもいいだろう。
ただし、入浴を邪魔されたモフィンクスの抵抗と、それによる転倒には注意が必要だ。
**************追加情報************
・濡れモフィンクスを川から出しましょう。
・学園側から運搬用リヤカー、大量のタオル、蒸気機械のドライヤー等。必要そうなものが提供されます。
・入浴がてら作業をするのも可能ですが、混浴になるので水着必須。
・川底は比較的平らですが、ぬるつきがあり滑りやすくなっています。
******************************
リュシカ・シュテーイン
ふふぅ、お話が出来るぅ、ゴーレムさんで助かりましたぁ
はぁいぃ、それじゃあ仕上げにぃ、モフィンクスさんたちを送るぅ、お手伝いをしましょうかぁ
私はぁ、初めと同じく石兵ちゃんとともにぃ、作業いたしますよぉ
モフィンクスさんたちのぉ引き上げなどは石兵ちゃんたちにぃ、タオルなどを使ったりして丁寧に運んでいただきぃ、私は濡れている子をドライヤーかけなどを致しましょうかぁ
ゆっくりぃ、無理をさせないようにぃ、こちらへ連れて着ちゃってくださぁいぃ
ふふふぅ、メガネの曇り対策はぁ、メガネを取ればいいんですよぉ
これは集中用のメガネですのでぇ、ドライヤーかけ程度ならぁ、外してもぉ……わあひゃあぁ!?
(ハプニング大歓迎)
アーサー・ツヴァイク
※最後までアドリブ協力大歓迎
…もふーん…Zzz
…
…んぁ? …何、まだ終わりじゃないの?
折角ホカホカモフィンクスでぬくぬくしようと思ってたのに…しゃーないもう一働きだな。
とりあえずサンライト・ヒーリングで近場のモフィンクスに光を当てよう。太陽の光だし、乾きやすそうじゃん?
乾いた奴は順々にリヤカーにポイポイして、溜まったら持ってく。疲れたらもふって回復だな。
…休む回数が多い? いやいやこれ光出すの割と大変だからね。それにこれまでの激戦で皆疲れ切ってるし別にもふりたいからとかそういうのじゃあないよ。ほら、旗降って誘導もしてるよ。こりゃ重労働だぜー
ホントホント、ヒーローウソツカナイ
…はー…癒されるわー
わっせ。わっせ。
温泉川を埋め尽くしていたモフィンクスを引っこ抜き、川辺に運んでいるのはストーンゴーレム。とはいえ、あの巨体の主は現在上層と下層を必死に行き来している。ここにいるのは、リュシカ・シュテーイン(StoneWitch・f00717)が創った小さなストーンゴーレム達だ。水分を含んで通常よりも重たくなったモフィンクスをえっちらおっちら、暴れないようにゆっくりとリュシカの所までつれてくると、また次へと川へ戻っていく。
「はぁいはぁい、モフィンクスさんたち、ふきふきしましょうねぇ」
濡れた体にタオルを被せ、大まかな水分を拭き取ってからドライヤーで一匹ずつ丁寧に乾かす。毛の乾いたモフィンクスは、もこもこかつふあふあの体になって嬉しそうだ。せっかく綺麗になった所でまた濡れられては困るので、迎えが来るまではゴーレム達が遊び相手となって気を引いている。
「それにしてもぉ……」
改めて、数が多い。この数のモフィンクスが生息していた下層というのはどういう場所なのか、興味を引かれるリュシカだったが、そんなぼんやりした思考をしている間にも濡れフィンクスは続々とやってくる。彼女の仕事はとても細やかで、それに見合った結果が返ってくるのだが。いかんせん、速度が足りていないせいで乾かし待ちのモフィンクスが増え始めてきてしまった。しかもリュシカの様子を見たモフィンクスの一部は、川から出たら乾かしてもらえるものと思い率先的に列を作り始めてしまう。
「戻ったぜー、っと。おいおい大丈夫か?」
その光景に、リヤカーを引きながら戻ってきたアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)は目を丸くした。乾いたモフィンクスを積んで下層の入り口まで運びに出る前は発生していなかった渋滞ができているのを見て、リュシカの傍まで近づいてくる。今日一日出ずっぱりで働き、はてはリヤカーにくくりつけて目印代わりとなっていた旗を取ってばさばさと振ると、たむろしていたモフィンクス達がアーサーの方へも寄ってきた。
「乾かすの手伝うぜ。ほーら、まとめて日干しだ」
ぺかー、と近くにいたモフィンクスがスポットライトのごとく光に照らされる。アーサーの手から生み出された太陽の光に当てられ湿った毛並みを乾かしていく姿は、じりじりとした直射日光とは違う陽だまりの優しい光ということもあってとても心地よさそうだ。乾燥と同時にうとうとし始めてしまうモフィンクスをすかさず抱え、リヤカーに乗せていく。荷台の上で眠るモフィンクスは、鼻ちょうちんを膨らませてすっかり夢の中だ。
「わぁぁ、ありがとうございますぅ、助かりましたぁ」
「こういう時は協力していかないとな。……しかし、俺のサンライト・ヒーリングには一つ欠点がある」
本来他者を癒やすために使用している太陽光は、効果の反動として使用者であるアーサーに疲労感を齎す。その疲労の度合により、複数のモフィンクスを乾かすことも可能になるのだが、当然より疲れる。なので彼は一匹を乾かしてはもふってリヤカーに乗せ、一匹乾かしてはもふってリヤカーに乗せ。もう一回もふってからまた一匹乾かしてもふもふもふしてリヤカーに乗せ、と適宜体力を回復するための休息タイミングを取っている。
休憩多すぎと思うなかれ、これは彼にとって重要なことなのだ。任務を完遂するために必要な補給であって、決してもふもふに癒やされるのが目的ではない。
「いやーこりゃ重労働だぜー。けど頑張らないとなーそのためにも休憩は必要だからなー」
若干発言に信憑性とか緊迫感とか説得力がないのは大目に見てほしい。
「私もがんばりますよぉ。……うぅ~ん、でもやっぱりぃ、メガネが曇りますねぇ」
ホカホカと湯気を蓄えて近づいてくるモフィンクスの前に、やはりメガネのレンズは相性が悪い。そうでなくても動き回るモフィンクスが水しぶきを飛ばすので、その度に拭くのも面倒になってきたリュシカは一旦眼鏡をはずすことにした。
「これは集中用のメガネですのでぇ、ドライヤーかけ程度ならぁ、外しても問題は……」
得意げに眼鏡を外すリュシカだったが、それがいけなかった。
無防備に顔を晒してしまった途端、彼女の近くにいた一匹のモフィンクスが体をよじ登っていきなり顔面にへばりついてきたのだ。乾く前の体はびっしょりと濡れてる上に暖かく、細い毛並みとたわわな腹部が呼吸機能に若干の支障を与えるレベルで密着してくる。眼鏡を外す瞬間を狙っていたのかどうかは分からないが、もしそうならかなり頭のいいモフィンクスだ。
「わあひゃあぁ!? ちょ、っふわわあぁぁぁ」
「「「モフーン!!」」」
おぶおぶしながらモフィンクスを剥がそうとするリュシカに、第二波、第三波のモフィンクスがまとわりく。完全に遊んでもらってると勘違いしているようだ。しかもまだ体を乾かしていないため、必然的にリュシカの服にも水分が染み込んでいく。前面からのしかかってくる重量に負けて仰向けに倒れ込んだ所へ、次々と乗っかってくるモフィンクス。遊んでアピールをするのに夢中なようで、そのアピールの向け先がエルフの形をした敷物になりつつあることに気が付かない。しかも、タイミング悪くアーサーも目を離していたため。戻って来た時には彼女のいた所にモフィンクスの群れがいるだけで、その姿を見失っていた。
「休憩にでも行ったか……? まあいいや、お前達も乾かすぞー」
広範囲に広がる太陽の光。照らされてもこもこになっていくモフィンクス。そしておねむになるモフィンクス。その場でごろごろと転がって、何のためにここでたむろしていたのかも忘れた顔で爆睡モードに移行する。そしてその光はしっかりと、群れの下敷きになっていた敷物にも届いており。
「よしよし、こいつらを積んだらもう一度運びに――」
ボッッッ!!
「し、しぬかと思いましたぁぁ~……」
「ギャーーーッ!!?」
いきなりモフィンクスの間から勢いよく伸ばされたリュシカに手を掴まれて悲鳴をあげるアーサー。ぼろぼろと溢れた勢いで寝ぼけ気味に目を覚ましたモフィンクス達と同様に、彼女もホッカホカに乾かされていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天宮院・雪斗
『WIZ』モフィンクスといっしょに、入浴してなでなでもふもふ温泉をたのしむ。
【動物と話す】で、モフィンクスのおうち?に、温泉作ってくれるみたいだよ~と、モフィンクスに言う。
河の温泉を出たモフィンクスと【獣奏器(横笛)】を吹きながら、一緒に下層にむかう。お別れ前にいっぱい、もふもふなでなでしまくる。
海パン姿で温泉を楽しむ天宮院・雪斗(妖狐の陰陽師・f00482)の周りには、同じくまったりと湯に浸かるモフィンクスが集まってきている。川の深さはそこまで無いものの、大人でも座れば二の腕の半ばまでの水位はある。そのため小柄な雪斗が入ると肩どころか首近くまで浸かってしまい、水面に浮かぶモフィンクスと殆ど同じ視線を楽しむことができるというのが、彼の至福の時間を更に増大させていた。水面を揺蕩ってはこつんとぶつかり、方向転換をして流れていくモフィンクス。近くにいた一匹を手で擦って洗ってあげつつ、雪斗は語りかける。
「モフィンクスさんたちがいた所に、新しい温泉を作ってくれるみたいなんだよ~」
だからここではなく、住み慣れた場所の温泉に移動したほうがいいと言って聞かせる雪斗の言葉に、モフィンクス達が嬉しそうに短い尻尾を振る。温泉川の居心地の良さも捨てがたいけれど、やはり元々の住処のほうがいいのだろう。そこに温泉ができるとなれば、それこそ文句のつけようがない。実際の所、建築予定の温泉はモフィンクスだけではなく下層に冒険で訪れた学園の生徒や、今後別の依頼で迷宮に潜るだろう猟兵用にも開放されるらしい。つまり、その温泉に行けばいつでもモフィンクス達と一緒の入浴が楽しめるということだ。
「温泉ができたら、ぼくも遊びにいくからね」
やくそく、と指切りの代わりに小指でモフィンクスの口元をつついて雪斗は笑う。暫くの間そうやって温泉を楽しんだ後で、ちょっとした群れを引き連れて上がってきた彼は自分とモフィンクス達の体を拭いてしっかりと乾かした。基本的に地下迷宮はひんやりとしているので、風邪を引かないようにとの配慮は人間には勿論モフィンクスにも言えたこと。ひとしきり乾燥を終えたのを確認すると、雪斗は持っている横笛を取り出した。
「それじゃあ、おうちに帰ろうね」
歌口に唇を当て、流れ出すのは高い音の柔らかなメロディ。獣奏器から奏でられる音楽はモフィンクス達を引き寄せ、まるで行進のように先頭を歩く雪斗の後ろをぞろぞろとついていく。自然と楽しくなってきそうな、軽快なリズムと音の出処に興味津々といった様子のモフィンクスがジャンプをしては雪斗の背中にしがみつき、ぽろっと落ちてはまた別の一匹が張り付いてくる。押し合いへし合い、けれどモフィンクスも雪斗も楽しそうに笑っていた。
「ふふ、あぶないからだめだよ~」
笛吹少年とその仲間達といった様相の一行は、下層へと繋がる階段の前に到着するまで綺麗な行列を成していた。この先はストーンゴーレムが運んでいくため、雪斗の誘導もここまでだ。温泉から出て楽しい音楽を聞いて、すっかり上機嫌のモフィンクス達を今のうちにと雪斗は抱き上げたり撫で回し、柔らかくて温かい感触をできるだけギリギリまで味わっていく。階段の先から重たい足音が聞こえてきて、ストーンゴーレムが近づいてきたことに気づいた雪斗は地面に下ろしたモフィンクスの頭を最後によしよしと撫でた。
「じゃあ。またね~。もう人を困らせちゃだめだよ~」
ストーンゴーレムに運ばれていくモフィンクス達が見えなくなるまで、雪斗は小さな手を大きく振って見送る。やがて完全に姿が見えなくなると、よしっと意気込みまた温泉川へと戻っていく。まだまだ、ここまで連れて行かないといけないモフィンクスはたくさんいるのだ。
大成功
🔵🔵🔵
赫・絲
あとはこの子達を運んだらおわ、り……
……うん!いっぱいいるね!
とりあえずびしょ濡れになっても嫌だし水着に着替えるよ!
風邪引かないように、ビキニの上に濡れてもだいじょーぶなパーカーを羽織って準備万端
ほらほら、仕方ないちょっと遊んであげよーう
水に浮かぶアヒルを幾つか糸で繋いで川に浮かべ、ゆらゆら揺らしてモフィンクスの興味を引く
そのまま陸地の方へとモフィンクスを誘導して、川辺まで来たら一気に飛びかかって捕獲!
すぐにタオルでふきふき!ドライヤーでぶおーっと乾かす!
毛並み整えてるんだから暴れちゃだめー!ほら、ふわつやになったでしょ?
乾いたらリヤカーに投げ込んで一匹完了
よーし、次に遊びたいのは誰ー!
「うん! いっぱいいるね!」
後はモフィンクスを地下に戻すだけ。そう思って川と周辺を見渡した赫・絲(赤い糸・f00433)の第一声が気持ちよく響く。そう言いたくなるのも無理はない。何せ、一体一体はそう大きくないくせに川を堰き止めるまでに至ったのだから、そろそろ目がモフィンクス色でチカチカしてきそうな数が今もひしめいている。
時々テレビのドキュメント番組でやっている、アフリカに生息する水牛の大移動にちょっと似ているが。あいにく目の前にいるのは野生の環境なら五秒でジビエにされていそうなくらい警戒心が薄い生き物。だからこそ、誘き寄せるのもそこまで難しくないという側面がある。
「仕方ない、ちょっと遊んであげよーう」
水着姿にパーカーで装備を整えた絲が川に入ると、早速スイーとモフィンクスが何匹か近づいてきた。遊んでくれる? ねえ遊んでくれる? と言わんばかりのキラキラ視線にやられて少し横を向いた彼女の視界を。迷宮に入ってからこっち、やたらと彼女に絡んでくるアグレッシブモフィンクス(便宜上、以降はアグレッシブさんと呼ぶ)が流れてくる。
今度はシャンプーハットの代わりに畳んだ手ぬぐいを乗せてだ。帽子の上から手ぬぐい。フリーダムさに拍車がかかっている。
「ビバノン」
「その小道具は一体どこから仕入れてるのとかお前他の子たちと比べてちょっとでぶいとかあるけどともかく!」
気にしたら負けだとばかり、絲はこの時のために用意しておいたとっておきの秘密兵器を披露する。行きの最中にモフィンクスを縛るのにも使い、ストーンゴーレムをしばくのにも大活躍だった糸でアヒルさんのおもちゃをいくつか結び、連ねたものを川に放流してゆらゆらと揺らす。面白そうなものを見つけたモフィンクスの食いつきは大変良く、ぱちゃぱちゃと必死に手足でお湯をかいてアヒルさんの後を追いかけてきた。前足でアヒルさんを掴み、つるんと滑って取り逃がし。また追いかける様子はとても楽しそうである。もちろん、アグレッシブさんも他のモフィンクスより沈みがちになりつつもついてきている。
「名残惜しいけどここらへんで決着を着けないとね。……とりゃっ!!」
アンニュイな目をした絲が一転、川辺に辿り着いたアグレッシブさんに飛びかかり抱き上げる。思えばストーンゴーレムの説得時に人質として持ち上げたのもこの個体だったが、その理由がここで漸く判明した。他のモフィンクスに比べて、明らかに動きが遅い。他の個体はピンピンしているというのに、川辺に着いた時アグレッシブさんだけが舌を出してぜーひーいっていたのだ。
「ちょっと油断しすぎ! もっとスリムにならないと食べられちゃうんだからね!」
「モフゥゥウン!」
「暴れないのー!」
じたばたともがくアグレッシブさんを押さえつけ、用意してあったタオルに包んでわしわしと拭いていく。しばらくもみくちゃにした後開放すると、すぐさまドライヤーの温風をかけて毛並みを梳かしながら整えいっきに仕上げる。途中からテンポの速さについていけず目を回していたアグレッシブさんも、気がつけばゴージャスなまでのふわふわもこもこのモフィンクスに早変わり。
「ふわつやになったでしょ? ほら、大人しくここ乗って。元の場所に帰るの」
「モフー……」
「……」
リヤカーに乗せられ、じゃあ最後に、と言うかのような態度で腹を見せてくるアグレッシブさんを無言で撫でて揉み込む絲。漸く満足した様子のアグレッシブさんは、最後に彼女の手にホカホカの肉球をぷにぷにして別れを惜しんでくれた。ここに、理由はわからないけれどいきなり発生した一匹のモフィンクスとの因縁にケリが付き。絲はまた新しい戦いへと赴いていく。
「よーし、次に遊びたいのは誰ー!」
「「「モッフゥー!!」」」
「……うん。いっぱいいるねー」
がんばれ負けるなイェーガー、暫くの間は入れ食い状態だ!
大成功
🔵🔵🔵
寧宮・澪
わーい、ぬくぬくお風呂ー……。
湿ったモフィンクス、も、かわういー……。
みっちしー……少し入れて、くださいなー……ふぉーとろけるー……。
あ、抱きしめても、いいですかー……?
あ、対話ですよー……。
もふさんは、どこがいいお湯ですー……?
もっと広くて、良いお湯、ゴーレムさんと一緒に、作るんですがー……できたら、そっちにも行きますー……?
みっちしも順番待ち時間も少なく、ぬくぬくなお風呂……いかが、ですー……?
モフィンクスがくっついてくれるなら、そのまま岸まで連れていきますよー……鈴生り、いいなぁと思ってたのでー……。
水の中なら、浮力で軽そう、ですしー……あ、すべっt(ぽちゃん)
(水着着用)
寧宮・澪(澪標・f04690)はまず、持参した水着に着替えていそいそと川の中に入っていった。モフィンクスが多く固まっている場所に近づくと、これもまたいそいそと隙間に潜り込むようにお邪魔していく。みちみちに詰まりあったモフィンクスに挟まれ、温 泉の暖かさと湿ったもふもふの柔らかさに包まれた澪は極楽と言わんばかりの顔で腰を落ち着けた。
「ふぉー……これはとろける……あ、抱きしめても、いいですかー……?」
近くにいたのを一匹胸元に抱きしめると、暖かくてやわこいものに包まれたモフィンクスもリラックスムードで濡れた鼻をこしこしと澪に擦りつけている。やわこいものが何かというのには、今回は言及しないでおこう。何にせよ心地は最高に良さそうだ。澪が 持つのんびりとした雰囲気も、モフィンクスとは波長が合うのだろう。よしよしと撫でて、まるで銭湯で一緒になった人と雑談でもするかのようなノリで話し始める。
「もふさんは、どこがいいお湯ですー……?」
この川の中で一番居心地がいいのはどこかとの問いに、モフィンクス達それぞれがおすすめスポットの方を向いて教えてくる。密集度合いの高い現在地も当然ながら、流れが緩やかでじっくりつかれるポイント。逆に流れが早く入浴とエキサイティングを同時に 味わえるポイント。浅瀬で半身浴が楽しめるポイントなどなど、おすすめの理由は様々。その一つ一つを微笑ましく聞いてから、澪はとっておきの情報があると人差し指を立てる。
「実はー……もっと広くて、良いお湯、ゴーレムさんと一緒に、作るんですがー……できたら、そっちにも行きますー……?」
ここよりも広く、待ち時間が少なく、みっちみちにもなりすぎない夢のような温泉。それを作る予定があると聞いて、にわかにざわめきだすモフィンクス。しかもその場所は、自分達がストーンゴーレムに運んできてもらった元の住処その場所だと知り、ナンダ ッテーといった顔をしている。表情が意外と豊かだ。
「広くて、すぐに入れて、一年中楽しめる夢の温泉ですよー……?」
「モフゥ」
でもお高いでしょう?
「それがなんとー……もふさん達は無料で入れるのですよ―……」
ええっ!!
そんなうまい話が、みたいな風に驚くモフィンクス達。……ちなみに、この温泉川に入るに当たって入浴料とかをモフィンクスが支払った事実はない。どこまでもノリがいい。ともあれ、誰に邪魔されるでもなく温泉を楽しめるというのであれば、いつまでも上 層に留まっている理由は無い。下層へ戻ることを快諾してくれたモフィンクスと共に、川辺に上がろうと立ち上がった澪は、ふと何かを思い出して悪戯な笑みを浮かべる。
「川の外まで運びますのでー……ええ、そう、そんな感じでくっついてくださーい……」
先程見かけた、モフィンクスを鈴なりにさせた猟兵が羨ましかったらしく、全身に濡れたモフィンクスをぺたりぺたりと貼り付けるようにしがみつかせていく澪。あっという間に顔以外の殆どをモフィンクスで埋め尽くすと、まるで毛布を被りながら温泉につか っているかのような暖かさ。水分を含んで通常よりも重たくなっているモフィンクスだが、それでも澪の顔は満足げ。浮力を利用して重みを緩和しながらざぶざぶと川辺に近づいているが、元々あまり水深が深くないため水面はすぐに彼女の膝辺りまで下がり、重 量の殆どをその身一つに押し付けてくる。
「おお、さすがにちょっとー……おもた」
い、の形に口を開いた澪の体が、水柱と共に消える。川底の滑りに足を取られたようで、前のめりに水中へ転んでしまったのだ。
ぶくぶくぶくぶくぶく。
ぶくぶくぶく。
ぶくぶく。
……。
水中からの泡が消えた。モフィンクス。澪の上に鎮座して動く気配一切なし。いつまでも澪が浮上して運んでくれるのを待っている。
結局、これから一分後、沈没しかけていた澪は近くにいた猟兵に救助されることになるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
パーム・アンテルシオ
ふふふ。また、ここに戻ってきちゃった。
最後の一仕事、がんばろうか。
うーん、どうしよう。今度ばかりは、一旦退けるだけじゃダメだし…
抱えるのも…後々、絶対寒いよね…
…そうだ。モフィンクスには、自発的に動いてもらう事にしよう。
●WIZ
動物は、気になるものを追いかける。
それなら、目の前で尻尾が動いてたら?
ふふふ。それじゃあ、一緒に階段まで歩こうか。
急に体当たりでもされない限り、失敗する事はないよ、きっと。
そういえば。戦闘が終わったなら…戦闘…してないけど…
うん。事後処理なら、グリモア猟兵も、こっちに来てもよかったんだっけ?
それなら、手伝って貰おうか。もちろん、忙しくなければ…だけどね?
【アドリブ歓迎】
「やあ、来てくれたんだね」
「お疲れさまパーム。……いや、それにしてもこれは」
パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)に労いの言葉をかけたユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)は、今日初めて肉眼で確認した現場の状況に驚きを隠せないようだ。予知で見たそれよりも確実に多く、インパクトもすごい。始まりから終わりまで戦闘と呼べる事は一切なかったが、もしもの時にと待機をしていたユアにとって、滞りなく平和に事が片付きそうだという知らせは嬉しいものだった。あとはこのモフィンクス達を下層へ降りる階段まで誘導する必要があるが、猟兵達はそれぞれ知恵を絞りあの手この手できかん坊達を運んでいる。
「何か手伝えることはあるかな」
「もちろん、そのために呼んだんだからね」
首を傾げるユアにパームはニコッと笑い、二人連れ立って川辺まで歩いていく。濡れそぼったモフィンクスを抱き上げて運ぶのは、後々自分が寒い思いをするのでできれば避けたい所。それに、中途半端な所まで運んでもまた川に戻ってきてしまうだろう事は想像に難くなく。どうするべきかと考えた彼女は、ここでも自分の得意を活かすことを思いついた。得意とは何かと問われれば当然、その豊かなもふもふ度のある尻尾のことだ。
「動物は気になるものを追いかける性質があるからね。こうして、尻尾を餌にしてやれば……」
川辺に背中を向けてしまうと、パームの体は殆どが尻尾で見えなくなる。その尻尾がゆさゆさと揺れることで、案の定興味を持ったモフィンクス達がざぶざぶと川から上がって近づいてきた。濡れた体でふんふんと鼻を寄せて来るのをすかさずユアがタオルで包み、体を拭いてやる。
「いい感じだね。それじゃあ、一緒に階段まで歩こうか」
やはりパームの尻尾は人もそれ以外も魅了するのか、見るからに柔らかく包容力がカンストしていそうな尻尾が動いているのに誘われて川辺に集まったモフィンクスは多い。ざっくりと水分を拭き取り、残りは自分でぶるぶると体を振ることで雫を飛ばすのに任せておけば、やがて毛皮を乾かしたモフィンクス達は彼女の後をついてぞろぞろと歩いていく。その光景は、ちょっとした親ガモと子ガモのようにも見えてなんともほのぼのとする。
「すごいな、皆パームの尻尾に首ったけになってる」
「引きつけてるのは、私の尻尾だけでもないと思うよ?」
パームが指さしたのは、隣を歩くユアの尻尾。暖かそうな春色の毛並みを持つ彼女とは対象的に、冷たい冬のような色をしている尻尾をユアが軽く振ってみると、そちらにも興味を抱いたモフィンクスは列を二つにしてトテトテと近寄ってくる。飛びつきたいけれど飛びつくには少し高い絶妙な位置にある二人の尻尾を見上げては、時折ジャンプしたり果敢にも足元に特攻を仕掛けてくるのだからその執着心や凄まじい。途中、パームがタックルで転びかけたのをユアが受け止める形でフォローする場面もあったが。概ね順調に二人は下層へ繋がる階段の前まで、モフィンクス達を誘導することができた。
「これでよしと。手伝ってくれてありがとう、助かったよ」
ここに待機させておけば、そのうちストーンゴーレムが回収のためにやってくる。またね、とじゃれついてくるモフィンクスを撫でてから踵を返すパームだったが、数歩歩いた所で妙な違和感を感じて立ち止まった。なんだか、妙に足が重い気がする。もっと言えば、後ろから引っ張られるような重力も感じる。
「あ、あれ? おかしいな」
「ん? ……あ、尻尾の中に何匹か隠れてるぞこれ!」
後ろから見ていたユアがパームの尻尾の中に手を入れ、隙間に隠れていたモフィンクスを引きずり出す。転びかけた時に勢いで飛び込んでいたのか、そこまで彼女のもふもふが魅力的だったのだろう。居心地のいい場所から出されてしまい不満げな顔だ。しかも、その一匹を取り除いてもなお、重みの違和感は完全には治らない。一体何匹潜んでいるのか、数が分からない上に逃げ惑うのでパームの尻尾はあちこちが膨らんでは元に戻るのを繰り返していて収集がつかない。
「参ったな、悪いんだけど、もう少し手伝ってくれるかな」
「了解。甘えん坊ばかりで困ったものだな」
顔を見合わせ、クスクスと笑いながら尻尾の中を探ったり大きく振ったりしてモフィンクスの排出に勤しむ二人。狭いながらも広大な尻尾をフィールドにした隠れんぼは、すっかり眠りこけた最後の一匹が溢れてくるまで続いた。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
あ、説得終わりましたか?皆さんお疲れ様でした!
……え、今までどこにいたのか?気にしてはいけませんよ(目逸らし)
とりあえずモフィンクスをドライヤーで乾かしてましょうかね。
しっかり乾かさないと湯冷めしちゃいますから。
……あぁ、しかししっとりモフモフも大変な強敵でしたが……これは、やばいです……。
ドライヤーの温かい空気を……モフ毛がしっかり閉じ込めて、あったかふわふわで……。
……やばいです……。
顔アイコン消えちゃうくらいに表情緩んでる自覚あります……。
(運搬係に連れていかれるモフィンクス
名残惜しそうなシャル
次のモフィンクスを乾かし始めるシャル
振出しに戻る)
赤星・緋色
ああっなんか顔に穴が開いたみたいに痛い!
(次のシーンで元に戻るバーチャルキャラ補正)
おのれーオブリビオンめ!
うぇーーーーーーい!
モフィンクスたちを下層まで返せばいいんだよね
ちゃきちゃきっと頑張るよ
へこんじゃったゴーレムさんも助けないとだからね
ひっさつ、のりもの!
このために作って、さっき完成したユーベルコードを使うよ
学園側から運搬用リヤカーを借りてきて乗り物の後ろに接続
一番下層に近い方からぽんぽんモフィンクスたちを投げ込んで運ぶ感じ
燃料切れたらそこら辺の配管バルブから魔導蒸気を回収していって他の猟兵達とも連携して効率よく運ぼうね
ぶおーん、ひゃっふーう!
誰にも私は止められないよ
あっ(段差)
ストーンゴーレムを説得している間、シャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)がどこで何をしていたのかは誰も知らない。
ただいつの間にかモフィンクスと共に消え、その後モフィンクスと共に現れたのだ。決して仕事を忘れてもふもふしていたとか、ふっと気がついたら説得が完了していたとか、そういうことはないのだと本人は主張している。そんな彼女だが今は川から上がってきたモフィンクスを乾かす係を率先的にこなし、膝上に乗せたタオルの上で寝そべらせてはドライヤーの温風をふきかけて毛の一本一本まで丹念に仕上げている最中だ。
「あぁ、しっとりモフモフも大変な強敵でしたが……これは、やばいです……」
湯冷めをしてはいけないとそれはもうじっくりドライヤーをあて、乾燥具合を確かめるためという大義名分の元触ってみたオレンジ色の毛並みは、フアサァ……とシャルロッテの掌を極上の感触で包み込んでいく。暖かい風を受け止めた毛は濡れてへたっていた状態からまるでパンが焼けていくかのようにゆっくり膨れていき。完成形ともなればそよ風がふくだけで豊作の小麦畑のごとく表面をなびかせ、キラキラと艶めいて輝く。
「ああ……ドライヤーの温かい空気を……モフ毛がしっかり閉じ込めて、あったかふわふわで……」
手のひらを当て、手の甲を当て、指先を潜らせて軽く揺すってから梳いて。最後に顔を埋めてひとしきり吸う。
己の持てる触感全てでモフィンクスを味わっているシャルロットの顔は、本人の名誉と乙女への配慮のため詳しくお伝えすることはできない。近いものを挙げるなら、ペットにやばいぐらいデレデレの飼い主を思い浮かべてもらえれば近い。完全にハイ状態である。
しかしそんな幸せも長くは続かず、乾いたモフィンクスは運搬係の猟兵が回収していってしまい残念そうな顔をするシャルロット。そしてまた次のモフィンクスにドライヤーを向けては、以降同じことの繰り返しをしている。まだまだおかわりモフィンクスはたくさんいるが、それでも連れて行かれてしまう時はちょっと切ない。
と、そんな彼女に声を掛ける人影が現れた。
「へーいかーのじょー、ちょっとのってかなーい?」
「え? あ、あなたは……えーと」
声に聞き覚えがあったシャルロットが振り返ると、そこには顔面がめっこりへこんだ赤毛の少年が立っている。人相がわからない。しかし、それがちょっとした事情でグリモア猟兵に顔面を殴り抜かれた赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)であることはすぐに分かった。どうしてそんな全力を出されたのかは、あえて聞かないようにしておこうと彼女は思う。
「顔に穴が開いたみたいに痛い! おのれーオブリビオンめ!」
「多分オブリビオンのせいじゃないですよそれ。ところで、乗っていくっていうのは、これにですか?」
「そう!」
ぽこんとマンガめいたSEと共に顔を戻す緋色がててーんと更にマンガっぽいSEを出す勢いで指さしたのは、のりものだ。ざっくりとしたカテゴライズを少しでも狭めるのであれば、四輪の乗り物。タイヤが回って走るやつだ。緋色は自らのガジェットを変形させて作り出した乗り物にリヤカーを接続し、下層に近い位置からモフィンクスを積んでは運搬を繰り返していたらしい。機動性の高さが功を奏して順調に作業が進んだため、温泉川の方まで様子を見に来たようだ。
ついでに、燃料補給と称してその辺の配管から魔導蒸気を拝借もしている。
「乾かしてばっかも疲れるでしょ。下層の入り口までもふもふしながら移動できるし一緒に行こうよ」
「い、いいんですか?」
思いがけない提案に少し声が上ずるシャルロッテ。乾かしたモフィンクスをいの一番に楽しむのも良かったが、その時間をより延長できるかもしれない提案に表情がキラキラと輝いて、早速とばかりリヤカーの荷台にあたため完了済みのほかほかモフィンクスを積んでいく。川から上る前はぐずって嫌がる個体も多かったが、乾燥されたことで暖かさに包まれ大半が眠たそうである。ある程度いっぱいになってきた所でシャルロッテもリヤカーに搭乗。のりものに助手席はないのだ。
「それじゃいっくよー」
「はい、お願いしまうわわわ!?」
元気よく発進を宣言した途端、緋色の運転する乗り物はシャルロットが想定していたよりも速いスピードで走り出す。のんびりゆっくり運転でもふもふを楽しみながらの旅路になるとの彼女の思惑は少し外れてしまったが、乗り心地自体はそう悪くない。モフィンクス達も、まどろみとスピード感を同時に味わえて楽しそうだ。そんな中の一匹を膝上で撫でながら、なびく髪を耳に引っ掛けてシャルロットが緋色に声を掛ける。
「ちょっと驚きましたけど、案外いいものですね」
「でしょー? ぶおーん、ひゃっふーう! 誰にも私は止められないよ」
ノリノリでハンドルを握りアクセルを踏みしめる緋色。この辺りの地面は比較的平らなので、走行するには向いているというのも、彼のテンションに火をつけたのだろう。……ただし、あくまでそれは『比較的』なのだ。
どんなに平らそうに見えても基本は迷宮、ダンジョン。急な地形の変化はあって当然だということを。二人は忘れていた。その事に気づいたのは乗り物がスピードを乗せたまま高めの段差よりダイブした瞬間だったので、手遅れだったのだが。
「あっ」
「あっ」
ふわりと浮く乗り物とリヤカー。短い滞空時間と浮遊感の後に来るもの、それは自由落下だ。
「「うわああああ!!」」
――なお、モフィンクスとリヤカーは無事だったという。モフィンクスとリヤカーは。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
自然の中のお風呂なんてスペースシップのとはぜんぜん違う……お仕事しながら、ちょっとだけなら、いいわよね?
水着は、学園の人に貸してもらうわ。
サイコキネシスでタオルと一緒に持ち上げて、水気を拭きながら運ぶわ。
あ、ダメよ、あなた達はこの後に運ぶから、もう少し待ってて……きゃぁ!?
(待機もふに集られべしゃあと)
……暴れないで?
このタオルみたいに絞って乾かすのは、かわいそうだもの
(念力で水気を拭いたタオルをぎゅっと絞るのを見せ)
でも……温かくて気持ちいい……これなら、あの子達が夢中になるのもわかるかも。
下のフロアにも温泉施設をつくるのなら……時々お邪魔しちゃだめかしら……?
※アドリブ歓迎、水着もおまかせ
「自然の中のお風呂なんてスペースシップのとはぜんぜん違う……」
学園から借りた水着姿(淡いピンクのワンピーススタイル)で温泉川に足を踏み入れたアヴァロマリア・イーシュヴァリエ(救世の極光・f13378)にとって、こうした形式の温泉は物珍しく映るようだ。彼女の故郷であるスペースシップワールドではお目にかかれない光景に、好奇心を刺激されたのか仕事のついでに温泉を体験してみようと思い立ったようだ。猟兵達の努力でモフィンクスはかなり片付いてきており、堰き止められていた川も今は通常の流れを取り戻しつつある。まだ数はそれなりに残っているものの、漸く下層への撤退が現実味を帯びてくる所まではこぎつけることができた。
「毛むくじゃらも結構残ってるのね……暴れると大変だし、持ち上げて拭いた方がいいわね」
「モフッ、モフッ?」
足でお湯を掻き分けて進み、近くにいた一匹をサイコキネシスで持ち上げるといきなり体が浮き上がったことに驚いたモフィンクスが空中でじたじたともがく。川辺に置いてあるタオルを一緒に浮かせて拭いてあげながら岸に移動したアヴァロマリアが地面に下ろすと、よくわからないままに浮き上がってよくわからないままに拭かれてよくわからないままに乾いたモフィンクスが、何が起きたのか理解出来ないといった様子のまま運搬係の猟兵に回収されていく。
「これでよし。ええと次は……」
一仕事を終えて振り向いたアヴァロマリアの眼下に、何やら楽しそうなアクティビティを見つけたとばかりに集う濡れモフィンクス達。仲間が浮き上がりながら拭かれていったのを面白いと判断したらしく、どうやらその現象の発生源らしい彼女の所に行けば同じことをしてもらえると考えた様子。羽を持たず地面を移動する事がメインのモフィンクスにとって、自由度はないものの空を飛べる体験というのは中々に魅力的なようだ。
「な、なんだかすごい期待されている気がするわ。とりあえず次はあなたよ」
湯気にも負けない熱気に少し怯みつつ、また別の一匹を持ち上げて拭きながら移動させる。順番が回ってきたモフィンクスはきゃっきゃと喜んでいるが、逆に順番待ちになっているモフィンクス達は気が急いてしまい、徐々にアヴァロマリアを取り囲んで次は自分が選んでもらおうと一斉にもふーもふー鳴き声でアピールをし始めた。水鳥に餌をやる人とその餌を全力で欲しがるカモの光景に似ている。
「あ、ダメよ、あなた達はこの後に運ぶから、もう少し待ってて……きゃぁ!?」
興奮していくばかりのモフィンクスを宥めようとしたアヴァロマリアだったが、エキサイトしていく彼らを止めることができない。はては強引に自分を選んでもらおうと飛びついてきたモフィンクスの勢いに押され、お湯の中へ尻もちをつくように派手な水音を立てて倒れ込んでしまう。跳ね上がった水を頭の上から被り、宝石が交じる彼女の体を煌めかせる様は美しいが、当の本人はびしょ濡れになりながらゆっくりと立ち上がる。気のせいでなければ、また目元が暗くなっている。
「……暴れないで?」
「モ、モフ……」
こうして乾かすのはかわいそうだからと、濡れタオルをサイコキネシスでギッチギチに絞るアヴァロマリアの気迫に慄くモフィンクス達。水分を一滴残さず絞られたどころか、そのまま捩じ切れそうな勢いで歪むタオルに我が身を見たのか。あんなに賑やかに暴れまわっていたのが嘘のように静まり返り、きれいな円を描いてアヴァロマリアを中心としたサークルを形成していく。大人しくするので絞るのはやめてください。といった空気がひしひしと伝わる。
「ふう、分かってくれればいいの。……それにしても」
勢いで浸かったとはいえ、すぐに立ち上がってしまったのがなんだかもったいなく感じられてもう一度座り込むアヴァロマリア。お湯を軽く手で掬って水面に流し、近寄ってきたモフィンクスの口元が水しぶきで濡れてぷしゅんとくしゃみをするのを見て思わず笑う。
「確かに、あなた達が夢中になるのもわかるかも。暖かくて気持ちいいわ」
地下に作られる温泉施設は人が入ってもいいらしい。完成したら時々お邪魔してもいいかしらと呟くアヴァロマリアに、返事をするようにモフィンクスが一匹、もふーんと鳴き声を上げた。
大成功
🔵🔵🔵
エル・クーゴー
●WIZ
最終フェーズへと移行します(モフの湯へと向き直る)
躯体番号L-95
当機は高度な【学習力】を有し、投入された戦線に於いては稼働時間に比例して戦術的効果追求の為の最適化を随時実施します
プロトコル・シミュレーション完了
……当機の説教(マジレス)は対象への折衝に不適と判断
当機はステルスモード(迷彩&目立たない)にてその辺に引っ込み、本作戦の遂行を友軍に委託します
コール、ウイングキャット『マネギ』
(マックス110体召喚&【武器改造】を施しスフィンクス帽かぶったデザインに仕立てる)
マネギ達にモフィンクス達への接触を指示
似たような格好のモフモフ同士で交歓、後、モフィンクス達へ速やかな帰還を促させます
「最終フェーズへと移行します」
エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)が向き合う温泉川には、今もモフィンクスの姿が多く見られる。本当にどれだけの数をストーンゴーレムはつれてきていたのか、当人にも把握はできていなかったのだろう。下層に連れ戻す作業をあの一体に任せていたら、おそらく今頃川の氾濫の方が先に起こっていたのは明白だ。
最悪の事態を未然に防ぎ、エルはこの場において自身が遂行可能かつ最も適切な行動を計算し始める。現場の環境や任務更新における標的の変更、それにより必要となるだろう情報のアップデートを高速で行うことにより、ゴーグルからは再び緑色の光が溢れていく。
それを見ているモフィンクス。きらきらしててきれい、くらいの雰囲気だ。
既にエルの中にはモフィンクス達のデータも取り込まれており、多角的な解析を基にストーンゴレームとの比較、同様の戦術を行使した際に得られるだろう結果の検証が思考の中で進む。同じ戦場での稼働時間が長くなればなるほど理解と最適化を深め、より精密に次の一手を導き出すことができるのも彼女の持つ学習能力の強みだ。
それを見ているモフィンクス。まだきらきらしてるー、くらいの雰囲気だ。
「プロトコル・シミュレーション完了。……当機の説教(マジレス)は対象への折衝に不適と判断」
そうして導き出された結論はつまるところ、「言って聞くような相手じゃないなこれ」につきる。知能が決して低いわけではないものの、その性質がどこまでも気ままで無邪気なモフィンクス相手に正論を並べ立てても不思議そうな顔をされるか逃げられるか寝られるか纏わりつかれるか、である。ストーンゴーレム相手とは逆に、今度は物理的なアプローチが必要となってくる。しかし、乱暴な真似はご法度。
「本作戦の遂行を友軍に委託し、当機はステルスモードに移行します」
物陰へと隠れるエルの周辺に展開された迷彩用のバリアが、周りの風景を写し込んで彼女の姿を覆い隠す。近くに寄らなければ気がつけないくらいの隠密っぷりに、モフィンクス達もすっかりその姿を見失ってしまったようだ。
身を隠したといっても、なにも任務を放棄したわけではない。自分自身が行動を起こすよりも効果のある選択肢があれば、それを取るのがもっとも適切だとエルは判断している。
「コール、ウイングキャット『マネギ』」
わらわらわらわらわらわらわらわらわら……。
どこからともなく響いてくる存在感の地鳴りに、モフィンクス達が発信源を探して辺りを見回す。その視界に、一見何もないような物陰から自分達と似たシルエットの生き物が突如沸いて出てきたのが見えただろうか。
エルの言う友軍とは、この小型戦闘兵器の群れ。その数マックス百十体。基本は羽の生えたなんともふくふくしいデブ猫のような姿をしているが、今回はエルの手によってモフィンクス達が被っているのと同デザインのスフィンクス帽を被っている。それらは次々と川に飛び込み、モフィンクスへの接触を試み始めた。
「モフ?」
『モフ、モフ』
「モフン、モフーン!」
『モフモフ、モフン』
若干機械音声めいているのはご愛嬌。マネギ達の擬態はあっさりと受け入れられ、モフィクス達は仲間が増えたという感覚で接してくる。暫く温泉を楽しみ、水遊びに興じるなどしていく二種。マネギの匹数で少し川の水が増えている部分もあるが、一時的なのでセーフだ。
『モッフ、モッフ』
「モフ?」
やがてすっかり意気投合したマネギ達の誘導に、モフィンクスも特に疑問を抱くこと無く応じて次々と川辺へと上がっていく。一体のマネギに一体のモフィンクスくらいの割合になっているのでその総数は二百を超え、逆に川はからは一気にモフィンクスの姿が減ったためいっそ寒々しい。
ちなみにマネギ達ではタオルを使えないので、お互いを毛づくろいで乾かしている。完全に一つの群れだ。
体も乾かし下層へ向け移動を始める中で一匹、勘のいいモフィンクスが物陰に近づいて匂いを嗅いでいると、何もない空間からにゅっと伸びた細い手がやんわりと頭を撫でる。
「離脱行為は推奨されません。……あちらへ」
指させば、自分が取り残されそうになっていることに気づいたモフィンクスが駆けていく。
走り去る後ろ姿を見送りながら迷彩を解除したエルは、すっかり静けさを取り戻しつつある温泉川を眺め踵を返した。
「躯体番号L-95。任務を完了しました」
大成功
🔵🔵🔵
ルフトゥ・カメリア
あー……ほらもう行くぞテメェら。もう良いよ勝手にそのままくっついてろよ畜生……おら、テメェらはこっちだ!俺にそんなに乗るかっつの!
既にくっついているのは剥がすと鳴くから諦めた
花食う奴はとりあえず捕まえて両手でこれでもかと捏ねくり回してもふもふを堪能してやった。花は咲かそうと思えば咲かせられる。が、また食われる気がしてならないのでやめておく
他のモフィンクスは地面やお湯の中から拾い上げてはタオルを何枚も敷いたリヤカーに積んで、その周囲を自分の炎で囲む
逃亡防止も兼ねているが、概ね、寒くないようにという気遣いである
燃やさない炎の熱で、良い感じに身体もぽかぽかする筈だ
……1匹くらい欲しい……駄目か……
殆どのモフィンクスは無事に運ばれ、川に居座っている残りはそう多くない。逆に下層と上層を往復するストーンゴーレムが疲れてきてしまったため、猟兵達の殆どはそちらのフォローに向かっている。
「あー……ほらもう行くぞテメェら」
ルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)はその場に残り、最後のリヤカー便を準備している真っ最中だった。元祖鈴なり猟兵となった彼にへばりついているモフィンクス達は、多少のメンバーチェンジをしながらもその殆どが迷宮突入時からずっとへばりついている歴戦の兵。もうここが巣でいいじゃんと言わんばかりである。動く手間が省けるし。
「今ものすげー腹立つこと考えてただろ」
ふてぶてしいことこの上ないというのに、いざ剥がそうとすると未練タラタラの悲しげな声を上げるのだから性質が悪い。結局無下にもできず、またモフモフの感触が心地よいということもあってひっつかせるままにさせている。ひっつかせるままにさせているが、一部のモフィンクスに関してはそうは問屋が卸さない。ルフトゥの頭部を更地(花的な意味で)にした一匹は、これでもかというほど捏ねくり回して揉み混んである。
「ハナモフゥ?」
「花は生えねーよ。お前が食うからな」
「ナゼ」
「ナゼじゃねぇんだよ思いの外流暢に喋んなテメェ!」
反省はおろか自分が悪いことをしたとは一切思っていないモフィンクスをさらにこねたくり、肉質がより柔らかになった所で後頭部に戻す。勢いで地面に置いてしまえないのが、彼の本質を物語っている。とはいえ、既に自分という輸送装置の定員がオーバーしているのも自覚はしている。なので乗せきれない分は、素直にリヤカーに任せることにした。
「おら、テメェらはこっちだ! 俺にそんなに乗るかっつの!」
川から引き上げたりその辺りをうろついていたモフィンクスを回収していくと、どのモフィンクスも大抵ルフトゥにひっつきたがって仲間を足蹴に昇ってこようとする。彼の体温は相当心地よいらしいが、いかな怪力持ちとはいえこれ以上は本格的に移動が困難になってしまうため、新規客は全てリヤカー行きになる。
そのかわり、リヤカーの荷台にはタオルが無数に敷き詰められておりふかふかのベッドのような柔らかさ。更にその周辺はルフトゥが生み出したネモフィラ色の炎に取り囲まれ、程よい熱でモフィンクスを温めている。モフィンクスの逃走防止も兼ねているが、濡れた体を冷やさずじっくりと乾かすためという意味合いが強い。
「よーし、これで全部だな、もういないな?」
モフィンクスーツに身を包み、歩きにくい屈みにくい常に耳元でむふーむふー鼻息をかけられる三重苦に耐えながら最後の一匹をリヤカーに乗せる。注意深く辺りを見渡し、川も少し下流まで下ってみたが拾い漏らしはいないようだ。改めて見てみると、最初は狭いとすら感じていた温泉川もかなり広い。そこにみちみちに詰まっていたモフィンクスを思うと、少し寂しさも感じてしまう。感傷に耽るには、今だにモフィンクスまみれなのだが。
「はー……一匹くらい欲しい」
思わず本音が漏れるが。それが無理なのは百も承知。どんなに無害でも、オブリビオンである以上むやみに外へは出すことはできない。幸いなのは、今後下層にある温泉に行けばいつでも会えるということか。
「モフー……」
「……起こしてもうるせーし、ゆっくり行くか」
ガラガラとリヤカーをゆっくりと引き、その場から立ち去るルフトゥとモフィンクス達。この後最後まで駄々をこねるまとわりつき隊を引き剥がすまで、彼のもふもふパラダイスは、あともう少しだけ続く。
――かくして、一時はモフィンクスで埋め尽くされていた川も元通りになり。地下迷宮に流れる時間は再び緩やかなリズムを取り戻すのだった。
大成功
🔵🔵🔵