5
ブルー・コクーン(作者 雅庵幽谷
7


「皆さん。お集まり頂きまして、ありがとうございます」
 グリモアベースのブリーフィングルームの一つ、立体映像投影機の前で。ノエル・シルヴェストル(Speller Doll・f24838)が、礼儀正しく一礼する。
「この度、皆さんにお願いしたい依頼は……グリードオーシャンの海中にある深海島を、コンキスタドールから護るという。拠点防衛戦となります」

 深海島とは、グリードオーシャン世界の殆どを覆う、海のその中。つまり海中に存在する『島』の総称である。
 深海島は呼吸可能な空気で出来た泡に包まれており、その内部は陸上の生物でも呼吸可能な環境が保たれている。更にその泡が、島にある種の浮力も与えており。島がこれ以上沈没するのを防ぐ役割も果たしているのだ。中々に上手くできた環境と言えよう。
 島内には貝殻や珊瑚で構成された都市があり。そこには数少ない、水棲派の深海人達が居を構えている。とは言え、彼らは基本的に排他的な集団という訳では無く。この島、つまり『蒼い繭』の島民などは――特殊な環境故、頻繁にとは行かないが――近辺の島の住民とも交流や交易を行っており。島内の文化は華やかで、活気ある物だった。

 だが、今回に限って言えば。それが災いしてしまったのかも知れない。無論『蒼い繭』の住民達に責は無いが……彼らとその居住地は、コンキスタドールに目を付けられてしまい。その魔手が伸びてきたのだ。確かにコツコツと築き上げられてきた、島の文化財と蓄えられた富は、彼らの略奪対象に相応しい。
 尤も。コンキスタドールによる略奪と虐殺を、それと分かっていて見逃すのは、猟兵の矜持と存在意義に関わる。是非ともその蛮行は阻止したい所だ。

 幸い、島から沸き上がる無数の『空気の泡』から、呼吸に必要な空気は得られる為、水着は勿論、潜水服や酸素ボンベ、海中用ユニットなどといった装備類は、用意できなくても全く構わない。ただ水圧の方は、気合いで耐えて頂く事になるが……それが猟兵達の不利となる事は、余程の無茶をしない限り発生しない故、そこは安心して欲しい。
 無論、装備や備えの類は、あって邪魔になる事などまず無いが。だが『用意してきた』という事実それだけでは、特に有利になる訳でも無い。
「長々と申し上げましたが……要するに、戦場の様相は異なれど。猟兵のやるべき事は何も変わりません。いつもの依頼と変わる事無く、皆さんの思う『最善』を尽くして頂ければと思います」
 ノエルはそう締めくくり、話を場面毎の詳細へと進める。

「まず、皆さんに対処して頂くのは、集団で押し寄せるコンキスタドールです。個体毎の強さは大した事ありませんが……一人あたり数体は、相手して頂く事になるでしょう」
 ここで襲来する敵は『コンゴウさま』と呼ばれている。コンゴウインコである事を誇りに思っており、オウムと間違えられるとガチギレするらしい。
「まあ、正直な所……私には『赤くて丸っこい何か』にしか見えませんので。インコやオウムどころか『鳥』にすら思えないのですが……」
 ちなみにこの連中。鳥(?)の癖に、水中戦も普通にこなす。或いはそういった個体を選別して、送り込んでいるのかもしれないが……敵の戦闘力が下がる訳では無い事は、念頭に置いておいて良いだろう。

「『コンゴウさま』の襲撃を、防ぐ事が出来たなら。暫くの間『蒼い繭』の住人達と交流する機会があります。この間にコンキスタドールの迎撃準備などを整えておいて下さい」
 その最大の仕事は、この『蒼い繭』島の中央付近に設置されている、島の住民達が『灯台』と呼んでいる施設の修繕だ。
 この『灯台』は、魔力によって灯す光と、やはり魔力によって発しているのであろう、ビーコン波の様な超音波の一種を発振して『蒼い繭』島の場所を知らせるのが主機能だが……ビーコン波をソナー波としても利用して、島に接近するモノの存在を知らせる役割も併せ持ち。それらの音波を送受信及び解析する魔導施設も内包している。要するに、早期警戒レーダーとしての機能を果たしていると思っておけば、概ね間違いないだろう。
「これを修繕しておけば、コンキスタドールの襲撃もいち早く察知する事が可能です。その分こちらの選択肢も広がり、勝機を高める事が叶うでしょう」

「最後に襲来するのは『咎忍』と呼ばれる、今は海賊稼業を生業とするモノの様です」
 一応『忍法』と自称する技を使うが……その人格は狡猾とか卑怯と称するより、セコくて無原則だと表現する方が、事実に近い評価だろう。
 但し、その戦闘力は決して低く無い。油断せずに確実に、始末を付けたい所だ。

「これまでの戦場とは、些か異なる環境での依頼となりますが……猟兵としての活動と行動の基本に則っていれば、充分に対応可能です。無理をする事無く、着実に対処して。全員無事に、帰還して下さいね」
 緑髪のミレナリィドールは、深く一礼すると。鉄甲船乗り場へのゲートを開いた。





第3章 ボス戦 『咎忍『蟇田・素藤』』

POW ●忍法・偽りの改心
自身の【保身のため、命乞いからの不意打ち】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD ●忍法・舞首
自身の身体部位ひとつを【船幽霊】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ ●忍法・蔦絡み
【両掌】から【強化藤蔓】を放ち、【締め付け】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は政木・朱鞠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ふ……ふざけんなよ! コノヤローっ!」
 慌てふためき、喚き散らしながら。派手な格好をした男が、美しい町並みの美しい街路を、みっともなく転がる様に駆け抜けていく。身に纏ったマントは、幾つか焦げた穴が開いており。何処かから逃げ出してきた事は、想像するに難くは無かった。
「平和ボケした島の連中を、ちっと脅かしたら。お宝とメガリスをタンマリ頂けるって話だったんじゃねーのかよぉ!」
 どうやら男は、誰かに唆されて。この島への襲撃を企てたという事らしい。『灯台』に目を付けた事自体は悪くないが、その修繕と改修の為に猟兵が動くという事は、想定に入れていなかった様だ。ついでに言えば『平和ボケ』と『専守防衛』の違いも、理解できなかった様である。
 『灯台』の周囲に築かれた、堀と塀に四苦八苦している間に。外壁に格納された浮揚砲塔で狙われて。何発もお見舞いされた挙げ句、この体たらくで逃走中……というのが、その経緯だった。
 但し、見た目は『派手な格好をしたチンピラ』としか見えない、この男。その正体は歴としたコンキスタドール――つまりオブリビオンである。生前は時流に乗る事で成り上がっただけあって、咄嗟の目利きは悪くない。それでいて、こういう間抜けを晒す羽目になっているのは。恐らく邪気や欲目を多量に抱える一方で、それを律する能力に欠くのだろう。

 自分の足で、走って走って。『蒼い繭』島にある街の郊外まで走り抜いて。そこで乗り捨てた『乗り物』の動力を起動させる。
 本来、島と『泡の外』を行き来する為には。形式上の検問に管理された、魔方陣を使用する必要がある。飛行能力を持っているなら、直接『泡の外』から突入したり、逆に『泡の外』へ脱出する事も可能だが……それはあくまでも、緊急時の手段と定められている。
 但し、それを遵守する必要など。コンキスタドールの男――咎忍『蟇田・素藤』は、全身のポケットを漁ったとしても、持ち合わせていないだろう。叶うなら『灯台』への襲撃が失敗した時点で、さっさと『泡の外』へトンズラしたかった所だが……流石のコンキスタドールも、飛行能力も持たずに四~五百メートルを優に超える距離を、空間移動する事は出来ない。それは襲撃する側の条件でも同様であった為。仕方なしに『乗り物』を乗り捨て、近くの『馬』を奪って『灯台』へ走ったのだが……こうなってみると『乗り物』で直接『灯台』へ乗り付けた方が良かったかも知れない。が。そもそも『馬』が目に入った時点で、彼の思考は停止しており。自らの行動を省みる能力も、また持ち合わせていなかった。
 とは言え、このまま逃げ切ってしまえば、とりあえずはノーゲームだ。次はもっと『使える』奴を子分に付ければ、こんな島など楽々と――
 まだ『現状』を脱してさえもいないのに、状況を舐めきった思考は。或いは生来の物であったろうか。何れにしろ彼の目論見は、十分も待たずに頓挫する事になる。

 コンキスタドール・蟇田の使用する『乗り物』は、大雑把に見ると『適当な鉄屑で組まれたイルカか何か』であり。動力のオンオフが可能な一種のゴーレムだ。胸びれの下方にスクリューの様な推進器があり、これで簡易的な飛行も可能となっている――いや、なっていた。
 不格好なゴーレムモドキは『蒼い繭』島を脱出し、海中に躍り出てやや経つと。不意に異音を発して見る間に分解し。小爆発を連鎖しながら砕けてしまったのだ。そして……蟇田が気付くと。彼の前方も後方も、上下左右に至るまで。猟兵達に包囲されていたのである。
 彼の行動やその位置は、逐次観察されており。『灯台』からの発光信号により、猟兵達に随時伝えられていた。この包囲網は、猟兵の技術と努力、現地深海人の労力と愛郷心。それらを繋ぐ信頼とが築いた、集大成と言えた。
「うああぁぁ……ウゼェ! マジウゼェ…っ! マジメンドクセーから、死んどけや!」
 ……現状に至った経緯は理解できずとも。現状が自身にもたらす可能性くらいは、想像する事は出来たのだろう。蟇田は、敵意露わに喚き散らす。自分の思い通りにならない物は、とりあえず壊してしまえばいい。短絡の極致だが……程度を調整したならば、必ずしも間違っていないのが。人間という存在の、もの悲しさなのかも知れなかった。

 何はともあれ。ここに来て、全てのお膳立ては整った。コンキスタドールによる『蒼い繭』島への襲撃を、ひとまず止める為にも。この島の情報を、奴に持ち帰らせない為にも。この男――咎忍『蟇田・素藤』を、全力で仕留めてしまいたい。


※断章の掲示が遅くなってしまい、誠に申し訳ありません。
 某コロナ様騒ぎのアレコレが、自分の周囲にも降りかかってくるとは思いませんでした。何か、非常事態宣言が解除された後の方が。被害酷くなってる様な…
 さて置き。私事の影響を参加者の皆様に被せてしまい、大変恐縮ですが…
 第三章のプレイングは、7月2日木曜日の午前8:32より、受付させて頂きます。