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#UDCアース #【Q】 #UDC-P

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●THE同調圧力
 真昼の蒸し暑さが、冷えていく空にゆっくり吸い込まれるような夕暮れ時。
 おやつの時間はとっくに過ぎているだろうけれど、こういう日はアイスが食べたくなる。
 暑い日差しから解放されて、冷く甘いそれを楽しめるような、そんな気がするからだ。

 滲み出るように夕暮れ時へ足を踏み入れた私は、ひぐらしの鳴く悲し気な声にせかされるように、チョコミント色の集団に混ざって歩いている。

 ひたすら怖かった。
 夕闇時に人を捕まえてはひたすらチョコミントをねじ込む周りが。
 チョコミントを神のように崇める周りが。

 確かにチョコミントは好きだけど。
 私はチョコミント『だけ』が良いなんて思えないんだ。

●叫べない
「チョコミン党ばんざい!」
「ばんざーい!」
「スーッとする感覚、ほのかな甘さ!なんて夏にぴったりなのでしょう!」
「ぶっちゃけ他のアイスが邪魔!」
「歯磨き粉味だとかバカにする人間も邪魔ー!!」

 口や鼻にまでチョコミントアイスをねじ込まれて泡を吹く人。チョコミント色の集団。
 チョコミントコール渦巻く中で、ひとり。バニラのように白いハンカチを握りしめた少女が、力なく俯いている。

(違うアイスが食べたい……チョコミント以外なんて食えたものじゃないって聞くけれど、でも、だって。)

 おいしそう、なんだもの。
 チョコミント色の抑圧があるとはいえ、彼女はそれでも他のアイスへ強い熱意を持っていた。

(爽やかなバニラ、甘いイチゴ。キャラメル。ラムネ。ああ、食べてみたい……)
(ケチャップ味、味噌味、砂糖しょうゆ味……生姜味もいいかも……)

 チョコミント以外が欲しすぎたのか。それ以外を本でしか知らないからなのか。
 小声で呟くアイスの味はどんどん斜め上になっていく。

●グリモアベースにて
「UDCアースの町中で、行方不明事件が出ています。人と、本が消えてしまっているようです」

 伊能・龍己(鳳雛・f21577)の発した言葉に、どことなくひりつく空気が漂った。
 邪神召喚の生贄収集、眷属の大量作成など、なにかとそういった行方不明の起こりがちな世界でその言葉。顔を顰めた誰かが続きを促すと。
「すみません、言葉が足らなかったっす。……数時間ぐらいで皆帰ってきてます」
 なんじゃそりゃ??……という空気が漂ったとか、そうでないとか。
「でも、消えた人は全員『チョコミント』を怖がるようになり、雑誌はアイスクリーム特集のところだけめちゃめちゃ読まれた感で返ってきます」
 なんじゃそりゃ??パート2。

「行方不明は、UDC怪物『過激派チョコミン党員』の仕業っす。布教のつもり、なんすかね。人を攫ってチョコミントアイスをひたすら食べさせてきます」
 そりゃ怖がるわ。
 誰かが呟いた言葉に龍己は頷いて、グリモアに映像を映し出す。

 夕暮れ時の路地を行進する、チョコミント色の怪集団。

 その後ろを涙目でとぼとぼ歩く、白のハンカチを持った少女の姿。

「最後尾の……ええと、この子。UDC-P……って存在みたいで」
 UDC-Pは、人類に友好的なUDC。オブリビオンとしての「破壊の意志」を持たずに現れる存在だ。オブリビオンにとっては、人間側にいる彼らは異常に映るかもしれない。
「『過激派チョコミン党員』を骸の海へ還してもらうのもあるんすけど、この子の保護もお願いしたいんす」
「こっそり、こっそり他のアイスについて調べていたみたいなんすけど。このままだと異質さがバレてしまうし、ほかのチョコミン党員さんが黙ってないと思うんす」
 少女を他のチョコミン党員から引き離し、守りながらチョコミン党員達を退ける必要があるだろう。
「近隣のUDC組織……場所、あとで送りますね。そこに連れて帰ってください」
 友好的ではあるが、未知の部分が多いUDC-P。引き渡しがスムーズになるよう、スタッフたちに出来るだけ資料を作っておいたほうがいいようだ。

 ……そうだ、と。ぽつり、龍己は口を開く。
「UDC-Pのあの子、こっそり集団から外れては、街のアイス屋さんやかき氷屋さん、コンビニを見ているみたいなんすけど。なにか、手がかりになるかもしれません。」


佃煮
 はじめましての人ははじめまして。佃煮です。
 アイス食べたくて作りました。UDC-Pをめぐるシナリオをお届けします。
 タイトルは「あいすくりーみんと」って感じの読みです。

●本シナリオの流れ
 第一章は情報収集。
 UDC-Pである少女の出没、過激派チョコミン党員が人を連れ去る基準など。
 アイス屋さんやかき氷屋さんも増えてきたので、おいしく涼んでも大丈夫。

 第二章は集団戦です。
 過激派チョコミン党員たちが襲ってきます。
 UDC-Pの女の子が紛れているので、守りながらの戦い(?)になります。

 三章は保護したUDC-Pのマニュアル作成です。
 どうやら、アイスに対してなにか注意点があるらしい……?

●UDC-P
 白いハンカチを持った女の子。それ以外はチョコミント色のワンピース姿です。猟兵達には彼女がUDC-Pであることがわかります。
 チョコミントは好きだけれど、過激な布教に対しては否定的。他のアイスは食べたことがなく、憧れをもっています。
 周囲の圧力に心が折れそうです。
 こっそり集団を抜け出して、街を歩くことがあるらしい……。
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第1章 冒険 『黄昏時にひらく異界への扉の噂』

POW   :    連れ去られる条件を発生させないようにする、自分が囮になる等

SPD   :    速さを活かして効率的に聞き込みを行う等

WIZ   :    異変の情報を精査して原因を突き止める等

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

宵雛花・十雉
ニット(f22060)と

チョコミントアイスってのはオレも好きだけどさァ
さすがにそればっかだと飽きちまうよ
やっぱ欲張りに色々食いたいわけ
なぁ、ニット

しっかし暑いよなぁ
俺達もアイス食ってこうぜ
だぁいじょうぶだって、ちゃんと女の子も探すよ
ほんとほんと

オレ、あの二段重ねのやつにするわ
味は抹茶と苺にしよっかな
ニットのも食ってみたいから一口くれよ
だよなぁ、分かってねぇ
チョコミント同士交換したって面白くねぇしな

アイス食いながら『聞き耳』立てて『情報収集』
ディスりに反応する奴がいりゃあ、そいつはチョコミン党について何か知ってる奴かもしれねぇな
過激派チョコミン党についてそいつに聞き込みしてみよ


日東寺・有頂
十雉さん(f23050)と

あちいあちいと二人してアイス屋に入店。
歯磨き粉にチョコチップ混ぜたみてえな
青緑鮮やかなアイスか。
いやオイも好きなんばいね、あん味
ばってん。
おうよ十雉さんは分かっとー。
どがんに美味うてもそいばっか食うてたら飽きが来よる。
強制されるなんもっての外よなあ。
言うこって。オイはモカとマンゴーにしよかしらん。
ホレ。十雉さん食うてみ。
へへ。こうしてな。
色んな味組み合わせたり食べ比べたりすんのが楽しいんだよなあ。
あいつらはいっちょん(全然)分かっとらん。

と声高にミン党員どもをディスりつつ
店員さんらに白いハンカチ持ってチョコミント以外のアイスに関心もっとー女ん子について聴きよります。




 黄昏時にはまだ早く、おやつ時がもうすぐか。そんな時間帯。
 かっと白く眩しい日の光はまだ弱る様子も無く、容赦なく街路を照らしている。
 その中を、できるだけ木陰や家屋の側を通りながら歩く人影がふたつ。
横を車が走る度、車道のアスファルトに残った熱気が渦を巻く。胡散臭げなゆるい表情を僅かに顰め、ぱたぱたと手で首を扇ぎながら、件の人影の片方……宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)は、横を歩く青年、日東寺・有頂(手放し・f22060)に声をかけた。

「ニット、俺達もアイス食ってこうぜ」
「おお十雉さん、オイも丁度そう思うとったところやけん」

 快活な笑顔で頷いた有頂につられるように、十雉は一段と嬉しそうな笑みを返した。だぁいじょうぶだって、と誰にともなく呟いて。当初の目的が暑さに溶けていないことを示す。
「勿論、ちゃんと女の子も探すよ」
「確か、あん子はチョコミント以外に関心もっとーとか」
「そうそう。そんならあの子を見かけた人もいそうだよな、アイス屋。……あった、アレだ」
 ぽつぽつ言葉をかわし、あちいあちいと言葉を零しつつ。二人は近くのアイス屋の扉を開けた。

 ごう、と強くなる冷房の音と共に、ひんやりした心地いい空気が漂ってくる。目に鮮やかな色のあしらわれた店内と、ショーケースに収まる色とりどりのアイスたち。店内に客はまばらで、誰もがのんびりと各々の色のアイスを楽しんでいる。
「お、二段重ねが得なんだってよ」
「おおホントだ、割引しとーね」
 二段重ねで、個別にアイスの種類を選べる。二種類同じものを選んでたっぷり食べるのもいいかもしれないが、そうでない場合も楽しいのだと。二人はどちらからともなく笑うと、別の楽しみ方を選ぶことにした。
「俺のは抹茶と苺にしよっかな。ニットのも食ってみたいから、一口くれよ」
「ええよ、オイはモカとマンゴーにしよかしらん。ここで食べるけん、店員さん、よろしゅう~」
「はーいっ、ご注文ありがとうございます!」
 にこりと頷いた店員によって、くるりくるりとアイスが掬われていく。それを受け取り口で待つついでの、世間話の体を維持しながら。にこやかな笑みで十雉は有頂へ話しかける。
「チョコミントアイスってのはオレも好きだけどさァ」
「ああ、さっきん端にあった、青緑鮮やかなアイス。歯磨き粉にチョコチップ混ぜたみてぇな。いや、オイも好きなんばいね、あん味」
「ちょっと迷ったけどな。そればっかじゃなく、やっぱ欲張りに色々食いたいわけ」
 そう迷ってもいないような口ぶりで、会話しつつの情報収集。過激派チョコミン党員の布教に遭った一般人が怖がるらしい『チョコミント』の言葉に反応する人がいるかどうか。静かな店内に耳をすませていると。ひとつ、言葉に反応するように、息を呑む音が耳にとどいた。
 それに有頂の方も気がついたらしく、目線がその席……あずき味アイスを食べている少年の方へ動く。店員がカップにアイスを乗せ終えたことに気がついて、ふんふんと首肯を返した。
「おうよ、十雉さんは分かっとー。どがんに美味うても、そいばっか食うてたら飽きが来よる。強制されるなんもっての外よなあ。チョコミントば食えて強制する奴は、いっちょん分かっとらん」
 また、肩を震わせる少年。目星はついた。
「だよなぁ、そういう奴は全然分かってねぇ。……お、注文来たみてぇだし、あっちの席へ行こうか」
二人の足は、あずき味アイスの少年の、隣の席へ向いていた。ふわり、煮た豆の甘い香りが鼻に届く。

「はぁ……美味い」
「美味かねぇ……」
 苺味は優しい甘さが溶けるようで、抹茶も独特のいい香り。ほろ苦いモカに、甘酸っぱいマンゴー。そして何より、ひんやりと柔らかな口あたりが先程までの酷暑の癒しとなる。さくりさくりと匙が進み、途中でカップ自体をくるりと交換。
「へへ。こうしてな。色んな味組み合わせたり食べ比べたりすんのが楽しいんだよなあ。十雉さん、食うてみ」
「だよな。違う味を交換した方がずっと面白い……お、ありがと。こっちも美味いね」
 笑顔も話も色々出てくるのは、様々なアイスあってこそ。そう話しつつ、ひと息。そうして、情報収集へ本腰を入れてゆく。

「なあ、あんた、チョコミントが怖い?」
 ひくり、と肩を震わせる少年に向けて、十雉が人好きのしそうなゆるい笑みを返す。
「こんお兄さんがな、チョコミントんこと話しょうる時に怖がっとーようだったけん」
「ああ、まるで怖いものでも聞いたかのような、ね」
 おどおどした少年が、ふたりの言葉に縋る様に頷いたのを有頂は見逃さなかった。
「……話しても、笑いませんか?」
「おん、笑わん」
「ああ、大丈夫だ」
 二人がそう声をかければ、少年はぺこりと頭を下げた。そうして目を伏せつつ、小声で話し出す。
「あ、ありがとうございます。前はびっくりしなかったんですけど」
「怖がるほどじゃなかった、と?」
「はい。進んではあんまり食べないかな、ぐらいの」
「なんでかは、よく思い出せないんですけど……」
 記憶が明確ではないのは、UDC組織の方で不測の事態……不意の広まりが防がれているからだろうか。ここまでは予測通りで、予知で聞いた通り。考えつつ十雉が更に問えば、少年は首を傾げた後、ハッキリとしたものが思い出せたらしく答えを返す。
「この前の夕方からチョコミントを見たり、聴くだけでも震えてきて。もう食べたくない!って感じになったんです」
「”もう”食べとうない、か」
 好みではないものを、たらふく、もう嫌という程食べたりしなければ、そういった言葉はつかないだろう。どちらからともなく確信が浮かぶ。少年は過激派チョコミン党員の被害に遭った、と。
「その時、何をしていたんだ?」
「あずきの棒アイスを食べながら、帰っていました。怒ったような女の子の声がして、そっから、ちょっと」
「そうか、ありがとう。その子を見かけたら、お兄さんたちが言っておこう」
「そーそー、安心してよかよ」
 きょとん、と瞬きをした少年は、とりあえずはトラウマの原因がどうにかなるかもしれないと思ったのか、頭を下げる。お互い笑顔で別れると、十雉と有頂はカップを返却口へ。

 先程注文を受け取った店員が、にこにこ笑顔で回収に来たのを見ると、今度は有頂が口火を切った。
「店員さん、あん子知らん?」
「あの子、とは?」
「白いハンカチ持って、チョコミント以外んアイスが気になっとー女ん子ばい」
「チョコミント色のお洋服の……」
「……ああ、あの子ですね、知ってますよ!私は勝手にバニラちゃん、なんて呼んでいるんですけど」
 白いハンカチが、バニラアイスの色みたいだと。そう前置きをして、店員はぽつぽつ話し出す。
「よく入り口から覗いているんですけれど、入ってはこないんですよね。羨ましそうで、目をキラキラさせてます。お入りにならないんですか?って呼んでみたんですけど、ぴゃっと逃げちゃうんで。……人見知りなのかな?それともお財布忘れたのかも」
「あだ名つくほど、よく来とるんと?」
「夕方になる前にはどっか行っちゃいますけどね」
「ほーん……あんがとうネ、店員さん」
 
 
「違うアイスを食べていて、襲われた子がいて」
「白いハンカチ持った女ん子は、店内に入れない」
「他の人にも連絡しとこうか」
「そうさね」

 あの子に会ったら、怖がらなくてもいいよって伝えてください、と。
そう残した快活な店員の笑顔に見送られ、二人は日差しの落ち着いてきた街路へ出ていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

波狼・拓哉
チョコミントなぁ…いやまあ、嫌いなわけではないけどそれだけってなるとちょっとしんどいよね。チョコミントに限りませんけど

まあ、いいや。調査調査っと、得意分野です
…けど連れ去る基準ってチョコミント以外のアイス買ったとか、チョコミント馬鹿にしたとかじゃないんですかね。正直それ以外の可能性考えられなくないです?

取り敢えず、コミュ力使っての聞き込み。好きなアイスについて調べててるって体で行きますか。その中で上手くチョコミントを話題に出そうっと。チョコミント怖がり始めた人話題が出れば居なくなる前の言動とか聞きますかね…アイス屋付近とかの方がお店の調査ぽさがでますかねー?

(アドリブ絡み歓迎)




 ブレスレットの先についた黒い結晶が、ころころと揺れる。日光を吸い込むような色のそれは、街路樹の影をちいさく映しながらきらきらと光った。
 手持ち無沙汰に結晶を触れば、これでも落ち着いてきたらしい日差しをほんの少しだけ食ったような熱さが指先に伝わってくる。なんとなく、結晶の中に住まう箱型の相棒もやや参っている気がして、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は手を放した。
 そのまま手を軽く振って熱を逃し、拓哉は陽炎ゆらぐ路地を改めて真っ直ぐ見通す。なるほど、アイス屋やかき氷屋の旗がよく目につく。夏らしい暑さ満点のこの時間帯だと猶更だ。
 ひらひらと翻る旗に描かれているのは、ふわふわのかき氷。ソフトクリーム。この時期限定品のような、眩しい色合いの蜂蜜レモンアイス。二段重ね▲%OFFというような文字が躍る下を飾るように、イチゴとチョコミントの二段重ね。
(チョコミントなぁ……。いやまあ、嫌いなわけではないけれど)
 視界の端でふわふわ動く旗の、爽やかな緑色。グリモアベースで聞いた過激派チョコミン党員の件が思い起こされる。
(それだけ、ってなるとちょっとしんどいよね)
 チョコミントの一件に限ったことではないけれど、と。肩を竦めて。
「ま、いいや。調査調査っと。得意分野です」

 過激派チョコミン党員が人を攫う基準に、UDC-Pの少女の情報。気になることも色々あるし、先んじて行っていた猟兵達からの情報も無事共有されている。
「まあ、過激派とつくからには……基準はちょっと予想がついちゃうような気がしますね」
 たとえば、共有された情報にもあったように、チョコミント以外のアイスを買った者だとか。チョコミントを馬鹿にしたとか。過激派が噛みつく理由といえば、そういう類が多い。
 それ以外はあんまり思いつかないな、と苦笑いが零れる。でもなにかしら確証を得ておこうとも思いつつ、そのまま日陰で涼む拓哉の目に、ある客が映った。
 持ち帰りの袋を重たそうに下げている女子大生。バリューパックらしいその平べったい形、味を示すような模様の透けるその袋に、チョコミントだけが見当たらない。
「袋、落ちそうですよ。大丈夫ですか?」
「えっ。……はい、大丈夫です。落としたら、友達が更に元気なくなっちゃう」
 後半の呟くような小声を拓哉は聞き取ると、信号待ちの間にでも、と話を切り出す。
「友達と一緒に食べるんですか?」
 よく買うアイス、好きなアイスについて聞いてまわっているんです、と。そう聞いてみれば、なんとなく納得したように女性は首肯を返す。
「はい、どっちもアイス大好きなので。普通のバリューパックじゃなくて、あの子の為に一個一個選んだんですよ」
「それはやっぱり、好きな味があるから、とか」
 疲れが和らいできたように、女性はにこりと笑顔を返す。
「はい。蜂蜜レモンに、苺チーズケーキとか。……好きを選ぶのもありますけれど、実は、怖いっていう味を抜こうとも思って」
「……怖い?」
 苦手ならそう表す筈なのに、怖いということは。もしかすると。そう思った拓哉ははっきりと首を傾げてみせる。ちかちか、信号が瞬きはじめるのが見えた。
「チョコミント、前は大好きだったんですけど。この前遊んで、アイス食べて、分かれてから人が変わったみたいになって」
「なにか、変わったことはありました?」
 そう問えば、女性は眩し気に目を瞑って、友人の一言を真似するように紡ぎ始める。
「うーん……。チョコミントが怖いって言い始めたあたり、『好きだからって山盛り食べられるわけないでしょー!』って言っていたような。山盛り食べたなんて聞いてないのに」
「山盛り……」

「あの、もう行きますね。話聞いてくれてありがとうございます」
「あ、はい。お友達、早く落ち着くといいですね」

 信号が、青になる。雑踏に紛れてゆく女性を見送って、拓哉はふぅと溜息をついた。
「好きだからって山盛りはね……」
 好きでなくても布教と称してアイスをねじこみ、好きならば善意でアイスをねじこむ。どっちでもめちゃくちゃ独善的だ、と思う。過激派とつくものは、どこもそういった面があるらしい。
 ぶわっと舞い上がった熱気から逃げるように、拓哉は蜂蜜レモンの旗がひらめくアイス屋の扉を開ける。
「よし、俺もなにかアイス食べますかね」
 折角だし、限定品もいいなぁ、と思いつつ。黄昏に差し掛かるまで、休憩兼場所を移しての情報収集は続くだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スミス・ガランティア
【WIZ】
【アドリブ歓迎】

アイス……ほう、そのような冷たい甘味が……なんと。氷を削ったもの(かき氷)を食す? 冷たいものが好きな我としては気になるね。

……っと、未知の甘味に気を取られてる場合じゃなかった。

えーと、彼ら、「過激派」って言うくらいだからチョコミント味のアイスとやらを売りにしてないお店には目をつけそうだよね。

なので、我はそんな感じのお店を回って【情報収集】してみようかな。変わったことが起きてないか【コミュ力】を活かして聞き込みをするとかね。

それをしつつついでに……あくまでついでに……かき氷とやら、食べてみようかなって……その、氷の神として気になって……暑いし……




 眩しい程の夏空に、真っ白な入道雲が浮かぶ。
 山のような雲がまるで、旗で見た『かき氷』のようだ、などと。街路を行く一人……いや、一柱の神はそんなことを考えた。
 しゃらしゃらと耳元で氷の結晶が浮かび、細い冷気が陽炎を割るように辺りを漂う。冷房のよく効いた室内から出たばかりのような、人がすれ違えばほんの少しだけ暑さが和らぐような冷気が、金髪青目の青年の形をした神の側を漂っていた。

 氷と虚像の神、スミス・ガランティア(春望む氷雪のおうさま・f17217)は『アイス』や『かき氷』とかいう名前の、知らない甘味へ思いを馳せる。
 氷の居城にいたままでは知らなかった、彼の好きな冷たいもの。牛乳などをクリーム状に凍らせ、果実や菓子で彩る『アイス』。氷を細かく削り、甘いシロップをかけて食べる『かき氷』。ひんやりとして甘いそれらは、特にこんな暑い日にはさぞ美味しいことだろう。
(未知の氷菓、我としてはとても気になるね。……っと、気を取られている場合じゃなかった)
 確かチョコミントなる味わいのアイスは、チョコレートなる菓子の甘さと爽やかなハーブの味が一度に楽しめるものらしいが、どうにもそんな爽やか+甘味の組み合わせにおいて、好き嫌いが分かれがちなようだ。だからこそ、好きがヘンな方向にぶっちぎった、過激派を表すオブリビオンも現れるのだろう。
 他の猟兵から共有された情報で、おのずと過激派チョコミン党員の目につくものは分かってくる。……違う味を楽しむ者を攫うなら、チョコミントを売りにしていない店はどうだろうか。
(『過激派』と名前につくからには、そんなお店にも彼らは目をつけそうだよね)
 そう推測の元スミスが赴くのは、かき氷屋。古びた店の扉を覗けば、四角いつややかな氷塊が彼の顔を映し出した。
「ええと、なんて言うんだったかな。……すみませーん」
「はーい」
 すぐさま、店内のどこかから返答が。タオルを首にかけた壮年の女性がスミスへ気がついて、よっこらせと歩いてくる。彼女に会釈をして視線をメニュー表へ落とせば、鮮やかに映るのは、彩り豊かなシロップのかき氷たち。
 つやつやした触り心地のメニュー表を指でなぞりながら各々の味を見ていくと、ぺたり。なにか糊を拭いた後のようなものにひっかかった。スミスが怪訝そうに指を擦れば、すぐに粘こい感触は消えてなくなる。
 さて、神生(じんせい)初のかき氷はどれにするか。ぱっと目に留まったのは……
「いちごれんにゅう……というものを、お願いするよ。それと、今忙しくなければ……」
「はいはい、なんでしょう?」
 かき氷機のスイッチを入れ、かりかりと回しはじめた女性は首を傾げる。にこり、人好きのする笑みを浮かべ、スミスは話を切り出した。
「なにか最近、変わったことはなかったかな」
「最近、ですか。そうですねぇ……。『チョコミントを置きなさーい!』とかいう、変な紙が貼られていて。……ああでも、私が見たのは女の子がそれを剥がしているところでしたね」
「それは……、剥がれてよかったよ。そのまま貼ってあったら折角のかき氷が見えないからね」
「でしょう。あの子はすぐどこかへ行ってしまいましたけれど、優しい子だなあと。ハンカチで糊も一生懸命拭いてくれていて……」
 張り紙に書かれた強い口調。チョコミント一点押しのような圧。こっそりそれを剥がした少女。過激派チョコミン党員と、UDC-Pの少女のことだろう。
 しゃりりりり。二人が話している間にも、高速回転する氷塊が削られ、ふわふわと器へ降り積もっていく。果肉の入った赤いシロップに、『練乳』というらしい白い模様が刻まれて、完成だ。
「はい、おまちどうさま」
「おお、ありがとう。おいしそうだね」
 雲のようにふわふわの氷を一匙すくい、赤いシロップに染めながら頂けばほっとするような甘さが口に満ちてゆく。情報収集のついで。……あくまで、ついでだ、と自分に言い聞かせつつも匙は進み、優しい果実の甘さにほうと一息。
「よければ夕方ぐらいまで、ゆっくりしてってください。その頃には暑さも収まるでしょうし」
「ああ、そうさせてもらうよ」
 一息つける口実が更に加われば、心おきなくかき氷を食べることができるというもの。しゃりしゃりふわふわとした食感を楽しみつつ、スミスはにっこりと笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『過激派チョコミン党員』

POW   :    チョコミントおいしいです
戦闘中に食べた【チョコミント系のお菓子】の量と質に応じて【テンションが上がり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    あなたもチョコミン党に入るのです
【チョコミント系のお菓子】を給仕している間、戦場にいるチョコミント系のお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    取り消せバカ舌ぁ!
自身が【チョコミントへの侮辱】を感じると、レベル×1体の【鬼っぽい形の怨念】が召喚される。鬼っぽい形の怨念はチョコミントへの侮辱を与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:善治郎

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●叫べない少女へ
 暑さが一応の落ち着きをみせてきた、黄昏時。
 不思議と、少女達以外には他に街路をゆく者はいない。猟兵達が店を出たのを見計らったかのように、路地は夕日で紅く染められていた。
 しゃくり、しゃくり。鮮やかな緑色をした棒アイスが、気の強そうな少女の口に消えていく。他にも、器用に緑のカップアイスを食べる者、黒いクッキーで緑を挟んだようなアイスを食べる者。傍目から見ればそれは女子高生ぐらいの集団の帰り道のようで、アイスを食べているのにも暑いからだろうなぁ、と思えるような。そんな光景。
 だが、彼女らは皆示し合わせたかのように、チョコミント色の衣服を着ている。示し合わせたように、チョコミントのアイスを食べている。
 そうして……猟兵達にはわかるような、独特の、人の域にいる者ではない雰囲気を纏っている。

 そんな少女達……『過激派チョコミン党員』で構成された怪集団の、後ろの方。白いハンカチを握りしめた少女が俯いている。彼女に話しかける周りの少女は、慰めているのだろうか?いや、全然違う。
「夏にぴったりチョコミントアイス、この機会を逃すわけにはいきません」
「今日も布教だよ、チョコミントの布教布教」
「バカ舌にも良さをわからせなくちゃね」

「うう……」
 目線を彷徨わせた少女の涙目に、猟兵達は気づいただろうか。

「ん、猟兵がいるっぽい。うちらを邪魔してくるやつじゃん」
「逆に布教のチャンスかもしれませんね」
 チョコミン党員達はさんざめくように話し合うと、判で押したかのような笑顔を猟兵達に向ける。……怯え慌てる白ハンカチの少女を、除いて。

「「チョコミント、如何ですか?」」
日東寺・有頂
十雉さん(f23050)と

おうおう皆しゃんみじょかお顔して涼しげどころかサブイボねえ!
ああ十雉さん。分かっとー。
ミント狂いん中で浮いとー可憐なあん子ね。
へっへ?そうかしら。
あがんナイーブな女ん子、
…いや。男やろうと守ってやりとーなるもんよ。

ナイフ両手にダッシュで集団の足元滑り込み。
ミントギャル共の腱ば斬りつつお目当てん子ん真ん前に躍り出る。
怖くなか。チョコミン党に反旗ば翻しきましたん。
十雉さんナ〜〜イス。
足止めさせていいとこもろうてすいまっしぇん!
さて、ミン党しゃんら。
お休みんとこすまねえばってん、毒手裏剣でとわに止まってくれよっと?
ミントより幾らかシビれるけん。味わって。


宵雛花・十雉
ニット(f22060)と

おう、早速おいでなすったな
いいぜ、相手になってやろうじゃあねぇか

ところでさ、ニットならもう気付いてんだろ?
あの一人だけ雰囲気の違う子
たぶんあの子が噂の白ハンカチの子だよな
つまり、あの子を守りながら戦えばいいってことか
なァんかそういうの得意そうだよな、お前
んじゃあ前衛はニットに任せた
オレ達で守ってやろうぜ

オレが援護してやっからさ、大船に乗ったつもりでいなよ
霊縛符を敵に張っつけて動きを止めるぜ
どうだい?オレの霊力の味は
アンタらの好きな味に比べりゃあ、ちと刺激が強すぎたかな
オレのダチを傷付ける奴ァ、絶対に許さねぇよ

まったく、自分の好きなモン無理やり押し付けんじゃねぇっての




「おう、早速おいでなすったな」
「おうおう皆しゃんみじょかお顔して、涼しげどころかサブイボねえ!」
 夕暮れ時、アイス二段重ね割引の店近く。日東寺・有頂(手放し・f22060)と宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)の二人は、少女の集団の道を塞ぐように立つ。
 自分達猟兵がオブリビオンの活動を邪魔する者だと、向こうが知っているのなら話が早い。そう考えつつ、粘こい夕焼けを乾かすようなからりとした笑顔と、夕焼けに似た橙の目を鋭くした笑顔を各々が返せば、つい先程非人間らしさの欠片を見せた少女達は、まぁ、と引き攣り笑いに変わった。敵意が消えたわけではなく、挑発じみた声に乗ったような、顔と声色。
「は?暑い夏には最適っしょ?アイスもチョコミントもさ!」
「うんにゃ、そん味だけが良かなんてわかっとらんね」
 その言葉を聞いた緑色の集団がきゃいきゃいと怒る中、小さく見えるのは白いハンカチ。少女が有頂の言葉に涙目を見開いて、その白をぎゅうと握りしめる姿。
 霊符を取り出した十雉はその姿に気がつくと、有頂にこそりと呼び掛ける。
「ニット、もう気付いてんだろ?あの一人だけ雰囲気の違う子」
「ああ十雉さん、分かっとー。ミント狂いん中で浮いとー可憐なあん子ね」
「たぶんあの子が、アイス屋で聞いた噂の白ハンカチの子だよな」
 害意も敵意も感じられず、ただ周囲に戸惑っているようなUDCの少女。UDC-Pたる存在。周囲にいる同じような姿の存在を仲間を仲間とも思えなかったであろう彼女は、なにか考えるように押し黙っている。
「つまり、あの子を守りながら……ってことか。なァんかそういうの得意そうだよな、お前」
と、冗談めかして聞いてみれば。そうかしら? と。へらりとした笑みと共に返事がくる。
「あがんナイーブな女ん子、……いや。男やろうと守ってやりとーなるもんよ」
 オレ達で守ってやろうぜ、と。頷き合い、二人は各々の武器を構える。有頂が前衛で、十雉が後方からサポートにまわる。友人同士の連携は機敏で、細かく言わずともわかるものだ。

 有頂はナイフを両手に、先手を打とうとチョコミン党の少女達に斬撃を。健を斬られて倒れる少女を跳び越えて、舞い飛ぶアイスを寸前で躱し。ひとつチョコミントを斬り飛ばして、また走る。
「む、タダの妨害じゃないわね!」
 白ハンカチの、UDCから見れば異質な少女が狙いだと。察知した少女が追いすがろうとすれば、ひらり。後ろで紙が舞い上がった。

「おっと、オレのダチは追わせねぇよ」
 十雉の【霊縛符】が彼女らを痺れさせ、動きを止める。ゆらりと背後で怨念じみた鬼が揺らぐも、それも少女と繋がっていたのか、しょんぼりした顔を浮かべて霧散した。
「どうだい?オレの霊力の味は。アンタらの好きな味に比べりゃあ、ちと刺激が強すぎたかな」
「し、しびしび……」
 ぽろぽろとアイスが落ち、陽炎のように揺らいで消えていく。

「まったく、自分の好きなモン無理やり押し付けんじゃねぇっての」
 骸の海へ主より先に還ってゆくそれらを横目で見て、再び十雉の視線は前の、友人(ダチ)の背中へ。
「オレが援護してやっからさ、大船に乗ったつもりでいなよ」
「十雉さんナ〜〜イス!いやあ、足止めさせていいとこもろうてすいまっしぇん!」
 からからと笑い声が返ってくる。どうやら少女の真正面に躍り出たらしく、ハンカチを持たない方の手を引く姿が見えた。

「怖くなか。チョコミン党に反旗ば翻しきましたん」
「……!」
 有頂はそう笑顔を浮かべ、白ハンカチの少女へ視線を合わせる。ほっと息を吐き、有頂の手をとった少女に、敵意の視線が突き刺さった。
「ちょっとあんた、猟兵に味方するの!?」
「前々から布教に行かないと思ってたけど……!」
 チョコミン党にとっての、UDCにとっての異分子であると証明した彼女を排除すべく、他の少女が追おうとする少女へチョコミントアイスを渡そうとする。過激派チョコミン党らにとっての拠り所を使い、自分達だけを強化しようというのだ。だが。
 白ハンカチの手が、そのアイスを寸前で払いのけた。

「チョコミント『だけが良い』も、ムリヤリな布教も、ダメだと思う……!」
「おお、よう言うた!……さて、ミン党しゃんら。お休みしようとしたとこすまねえ ばってん、毒手裏剣でとわに止まってくれよっと?」
 今までは叫べなかったであろう少女の叫びに、動揺と敵意がチョコミントな色合いに広がってゆく。
 そのばらばらと散るアイスに混じり、神経毒手裏剣が【ハヤい】速度で飛んだ。ぺぺぺっと無意識に漏れた声よりも、空気を裂くように鋭く突き刺さる。
「ミントより幾らかシビれるけん。味わって」
 きゅう、とのびて静かになったチョコミン党の少女たちが、骸の海へと帰ってゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トレイシー・ライト(サポート)
「……また事件、か。さて、どうしたものかな」
 あまり積極的に解決に意気込みを見せず、「なんとなく気になった」という理由で首を突っ込みに現れます。
 冷めた性格ですが、比較的真面目で正攻法を好みます。他の猟兵に迷惑をかけること、飲酒喫煙・公序良俗に反することはしません。
 戦闘においては、基本的には魔法を用いて遠隔攻撃を行います。前衛がおらず距離を詰められるなど、やむを得ない場合は、ドラゴンランス【ポレドラ】等を用いて接近戦も行います。
「たとえ事情があったとしても、あんたがオブリビオンである以上、倒さなきゃいけないんだよね」
「さて、俺の仕事は終わりだな」




「チョコミント……か」
 チョコミントなる味を、好きか嫌いかといえば。トレイシー・ライト(スターシーカー・f05807)はどちらでもない、と結論づけた。
 そもそも彼の性格上他のことに関心が少なく、ゆえに好き嫌いもそれほど無いからだ。ふと目に留まれば食べようかなとも思うし、そうでない時もある。人狼の鼻には少しばかり、爽やかな香りが強めに来るぐらいだろうか。
 そんなことを考えつつ彼が転移してみれば、まず目に飛び込んできたのは白いソフトクリームの眩しい旗。ソフトクリーム売りのワゴンがある通りを、白いハンカチを手放さない少女が走り、風景に滲み出るように似た服装の少女達が捕まえようと道を塞ぐ。
 どこで骸の海に伝達が為されたのだろう、『過激派チョコミン党員』の少女達は倒されても人数をへらしながら異分子を捕まえようとしているらしい。追う少女に逃げる少女。涙目と目が合った。
「……気になったから来てみれば」
と、ぽつり。冷めた目を向け。トレイシーはバイクに跨ると、【ゴッドスピードライド】を使い、白ハンカチの少女と追う少女達の間に割って入る。
「あなたもチョコミン党を邪魔する気ですか?」
「生憎、チョコミントは好きでも嫌いでもない。あんたにも事情はあるんだろうけれど、オブリビオンである以上は、倒さなきゃいけないんだよね」
 追っていた少女は顔をしかめると、小分けでボールのようになったチョコミントアイスの袋を開ける。しゃりしゃりと食べて、周囲の少女にも分ければ。トレイシーの元へ一瞬で距離を詰めてきた。勢いで退くも、いつもより自分が酷く遅くなったような。

「好きでも嫌いでもないのなら、布教チャンスです。一粒いかが?」
(給仕の対象にならないと、こちらの動きが遅くなるらしいな)
 差し出されるチョコミントアイスを受け取ったトレイシーは、一口サイズのそれを食べてみる。好きでも嫌いでもないのは変わらないが、独特のスース―する感覚はこの酷暑にはぴったり……なのかもしれない。あと、やっぱり鼻にくるものがある。
 トレイシーはチョコミントアイスを食べつつ、指のサインでドラゴンランスのポレドラを呼ぶと、バイクのすぐ背後へ待機させる。次に白ハンカチの少女に目配せをして、再びチョコミン党の少女の方へと向き直った。

「チョコミン党に入りますか?あと猟兵に味方しちゃった子渡してください」
「……入らないし渡さない。俺、首を突っ込んだ仕事はきちんとやり通すからね」
 直後、バイクの後ろからポレドラが飛び、槍に変わるや否やトレイシーがそれを見ないでキャッチ。
くるり、と槍を回すと、チョコミン党の少女達へ、至近距離の一撃を見舞った。
「美味しかったけれど、それ狂いにはならないかな」
「うう、ざんねんです……」

 ほろほろと、暑い日に食べるアイスの白い冷気のように少女達は消えていく。
 トレイシーは白ハンカチの少女のお辞儀に会釈を返す。そのあと、バイクで通る時に見た、支部への近道を教えてから、
「さて、俺の仕事は終わりだな」
 再び、バイクを走らせていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

スミス・ガランティア
うーん、好きなものを広めたい気持ちは分かるけど……迷惑行為じみたことは我、どうかと思うよ? さっきのお店の張り紙とか、さ。

……と、あの子が救出対象のUDC-Pかな。
(涙目になってるのを見て)あれは……早く助けてあげたくなる、ね。

さて、我、そもそもバカ舌の意味がよく分かってないのだけど……刺激しないようにすれば怨念は出てこない感じなのかな? チョコミントアイスも我は食べたことないし、食べたことないものを侮辱はできないししたくないしねえ。

チョコミン党員達を刺激しないようにしつつ、我はUDC-Pを【かばい】ながら、【雪待草の宴】で攻撃したり、たくさんの花での目くらましをしたりしようかな?




 白ハンカチの少女はソフトクリームワゴンの通りを曲がり、かき氷店のある道へ。ひたすら逃げたくて走っていたのだが、道の先に立ちふさがる影が見えた。骸の海から染み出てきた、『過激派チョコミン党員』の少女たち。
 怯える少女にとって、彼女らはもう仲間でもなんでもなくなっていた。今の彼女らは、異分子である自分を再びチョコミントアイスに染めようとしているか、バカ舌と蔑みながら骸の海に沈めるかのどちらかだだろう。
 人数こそ猟兵達が退け続けて少なくなってはいるようだが、捕まりたくはない、と。一歩後ずさり。
 そうして開いた感覚に、細い冷気が漂ったかと思えば。
 少女らと白ハンカチの少女の間を、スノードロップの吹雪が夕焼けごと遮った。

「よかった、間に合ったようだね」
 スミス・ガランティア(春望む氷雪のおうさま・f17217)は、白ハンカチの少女の無事を見るや安堵の息をつく。こくこくと首肯を返した少女に笑みを送って、【雪待草の宴】の起こした嵐で目を回す過激派チョコミン党へ向き直った。
「君たち、好きなものを広めたい気持ちは分かるけど……。迷惑行為じみたことは我、どうかと思うよ?」
 かき氷店に勝手に貼った張り紙といい、人攫いといい。布教のつもりでも、実害の出ている迷惑行為だ。
 追走で怒りより疲労の色が濃くなったのだろう、過激派チョコミン党員の少女達。集団から、さんざめくような声が聞こえてくる。
 いっぱい広まれば、チョコミント味がおいしくないと聞かなくなる。
 皆チョコミン党になれば、チョコミント味が好きなのはバカ舌だって悪口聞かなくなる、と。それはオブリビオン特有の破壊の意志に乗せた布教の裏、らしき本音。逆にチョコミントを嫌う者をバカ舌と言ってやれという過激派の執念。
 すっかりふやけたクッキーサンドアイスを一口かじり、少女達が数人で白ハンカチの少女へ掴みかかろうと走りだすも、スミスの呼んだ花嵐がそれを阻む。
 刃のごとく鋭い白花が、少女のアイスを切り裂いて、チョコミント色の破片を散らす。残念そうに花の嵐にまかれていく少女達に、ぽつり。スミスは口を開いた。
「我ね、チョコミントアイス食べたことがないんだよね」
「えっ、マジで」
 ゆらり、少女の背後に出かけていた鬼のような怨念が形を失った。
「食べたことないものを侮辱はできないし、したくないかな」
 侮辱ではないその言葉に、少女は意外そうに目をみひらいて、骸の海へ消えてゆく。まあ、ちょっとでいいから食べてみてよ、と。最後に口が動いた気がした。

 花の嵐が収まった後には、過激派チョコミン党員の少女は、白ハンカチの子を残して骸の海へ還っていた。
 そわそわと辺りを見回す白ハンカチの少女と共に、スミスは他の猟兵との連絡を待つ。
 程なくして、UDC組織のスタッフが迎えに現れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『UDC-P対処マニュアル』

POW   :    UDC-Pの危険な難点に体力や気合、ユーベルコードで耐えながら対処法のヒントを探す

SPD   :    超高速演算や鋭い観察眼によって、UDC-Pへの特性を導き出す

WIZ   :    UDC-Pと出来得る限りのコミュニケーションを図り、情報を集積する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 今回『過激派チョコミン党員』の少女を保護することになった、UDC組織のとある支部。その施設のスタッフたちにUDC-Pである少女を渡すべく、猟兵達は資料作りのために施設の戸を開ける。
 暫く施設内を進んで見えてきたのは、広めの給湯室のような場所。白ハンカチを机に置いた少女……UDC-Pが、もぐもぐとアイスを食べている姿。
 手に持っているのはチョコミントではなく、苺の果肉入りカップアイスだ。だが、少女はチョコミントとは異なる甘さを楽しみつつも、どこか浮かない顔をしている。彼女は猟兵達の姿にはっと気がつくと、職員のひとりに手招き。

「この子、チョコミント以外の味を感じる感覚が、薄いみたいでして」
 当人……当UDCも知らなかったのだろう、しゅんとした表情になっている。
 そもそも『過激派チョコミン党員』なるUDC怪物は、「あんなの歯磨き粉じゃん」「あんなの好きなのバカ舌じゃん」等の侮辱に曝され続けた、チョコミン党の人達の怨念が怪物となったもの。
 特に今回の事例で出現した彼女らは、『チョコミントを推しまくる』という怨念を軸に、暴走気味の布教をする過激派として確立したらしい。
 そのため、彼女らからはみ出たUDC-Pの少女も、薄まったとはいえ軸らしいものが干渉して、たとえ他のものを食べても、感覚が「チョコミント程ではない」と認識してしまうのだろう。そう、UDC組織は推論を組み立てていた。

 もぐもぐと苺アイスを食べ終わった少女は、職員と猟兵を交互に見ると、意を決したように口を開く。
「わたし、違う味をとても楽しみにしていたんです。本もこっそり読んで、美味しいアイスや美味しい氷、名前や形は知りました。……もっと知りたいです」
 好きなアイスを。いいや、アイスだけでなくても。冷たいものならなんでもいいのだろう。おいしいものを教えて、できれば自分と一緒に食べて欲しいのだと。少女は続ける。
 軸に据えられた怨念がUDC-Pとして変質した為、誰かに教えて貰うなら、好きなものの上書きが出来るかもしれないのだと、少女は自分なりに話し終えた。その目は話すにつれ、再びきらきらとし始めている。
 UDC組織の方でも、きちんと保護するためにそういうデータも要るということになったのだろう。職員が開けた冷凍庫には、アイスのバリューパックが入っていた。


 避暑しつつ、UDC-Pの子とまったりアイス食べよう、の章です。
 アイスはいろいろな種類が冷凍庫に入っています。冷蔵庫の方にはジュース等。
 店が近いので、テイクアウトかき氷も出来ると思います。
 ほんのり適温のお茶も、ポットと紙コップが用意されています。
宵雛花・十雉
ニット(f22060)と

ひとまず無事でよかったぜ
お、いいじゃんゆーちゃん
可愛いし呼びやすくってさ

しっかし成る程ねぇ、チョコミント以外の味の感覚が
そりゃあ勿体ねぇ
優しい優しい十雉お兄さんが夏の味ってやつを教えてやるよ

じゃーん、これがかき氷ってやつ
普通にシロップかけたのもいいけど、オレは宇治金時ってのが好きでさァ
小豆と白玉がたまんねぇんだ
ほれ、お嬢さんも食ってみな

う、うるせぇや
じゃーんって言って悪いか、ばか
まぁ、楽しいってのは間違ってねぇけどさ

ニットのそれはすげぇ甘そう
食ってみてぇようなおっかないような

自分でも勧めたのと同じ宇治金時を食ってみる
あ、やべ
キーンときた…!
けどこれもかき氷の醍醐味ってな


日東寺・有頂
十雉さん(f23050)と

あんねUDCぴ… ゆーちゃんや
味覚と言うんは色んな要素に左右されるん
一人で寂しゅう食いよっても美味かとは思えんもんなんばい

こん涼し気な白かニイサン見てみんね
こがんなきれいなお顔してジャーン言うて燥いでなあ
アンタとかき氷食えるん楽しかやって
へへ、オイもよ

オイはメロンに練乳ぶちまけてな
あっまあまにして食うてやる
スプーンあるけ ホレゆーちゃんも食うてみんね?
あらん?十雉のニイやんもミルクメロンする?
甘美味うてキクわよ〜〜
オイにも白玉ひと玉ちょーだい

自分の食いたかもんたらふく食うて
楽しか気持ちなってくれたら
オイ達も幸せよ




「ひとまず無事でよかったぜ。……しっかし成る程ねぇ、チョコミント以外の味の感覚が」
 そりゃあ勿体ねぇな、と宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)は呟いた。素直に首肯を返す少女を見て、何を教えようかと思案を巡らせる。
 窓の外に小さくはためくかき氷ののぼり旗を見ていると、日東寺・有頂(手放し・f22060)が、壁に立てかけてあったパイプ椅子をがちゃがちゃ取り出して、十雉へひとつ渡す。彼もまた、先程まで見ていたのはかき氷のテイクアウトメニューだった。
 言わずとも考えが似通う、友二人。ドアの方へ座る職員へ、ひとつ頼みをしてから少女の元へ向かう。

「あんね。UDCぴ……、ゆーちゃんや」
 ゆーちゃん、と呼ばれた少女はぱちりと瞬きをして、有頂の方を見上げた。今まで固有名が無かったであろう少女は、自分に向けて呼ばれた『名前』に新鮮な反応を返す。
「はい。えっと、わたしのことですか?」
「そうそう。ゆーちゃんというんはどがんな?」
「お、いいじゃんゆーちゃん。可愛いし呼びやすくってさ」
 ゆーちゃん、と呼ばれた少女は自分の名前だと理解すると、嬉しそうに笑った。初めてのプレゼントに喜ぶように、数度小声で自分の名前を呟く。
「ゆーちゃん……、はい、ありがとうございますっ」
「おん、どういたしまして」

 ふわふわと笑う『ゆーちゃん』につられたように笑みをこぼした後、有頂と十雉は改めて話を切り出す。施設の玄関辺りから、ぴんぽんとチャイムの音がした。
「ゆーちゃん、味覚と言うんは色んな要素に左右されるん。一人で寂しゅう食いよっても美味かとは思えんもんなんばい」
「一人だから余計に薄い……ってのは、俺もそう思うな。だからな?」
 なるほど、と頷く『ゆーちゃん』と二人が話している間、職員が受け取ってきたのはテイクアウトのかき氷。
 緑色の透けるカップを受け取って、十雉はにっこりと笑う。目を輝かせる少女に、つい滲み出る兄気質。
「優しい優しい十雉お兄さんが、夏の味ってやつを教えてやるよ」
 かき氷のカップをひとつ手に取り、崩れ防止のドーム蓋を開けた。

「じゃーん。これがかき氷ってやつ」
 蓋がとられ、鮮明に見えてきたのは宇治金時のかき氷だ。抹茶に彩られた氷にかかる、つやつやした白玉と餡子。餡子の方に細かくまぶされたのは、砕いた栗だ。好きなものを頼めたこともあってか、十雉は幸せそうに笑う。
「こん涼し気な白かニイサン見てみんね。こがんなきれいなお顔して、ジャーン言うて燥いでなあ」
「う、うるせぇや。じゃーんって言って悪いか、ばか」
 つい吹き出したような有頂の言に、思わず苦笑と咳払い。つられて笑う『ゆーちゃん』は、気心知れた友達、という実例をなんとなく学べた様子でぱちぱちと瞬きをした。
「アンタとかき氷食えるん楽しかやって。勿論オイもよ」
「まぁ、楽しいってのは間違ってねぇけどさ」
その友達二人がこちらへも笑いかけるものだから、更に嬉しくなる。
「はい、わたしも楽しいです!」

 シェア用の、空のカップとスプーンを『ゆーちゃん』含め三人に。
「んでな、普通にシロップかけたのもいいけど、オレは宇治金時ってのが好きでさァ」
「それで、こっちがさっき十雉さんが言うたよな、シロップかけたやつばい」
 『ゆーちゃん』に見えるように、有頂もカップの蓋を開ける。そこから見えるシロップの色も、また緑色だった。抹茶の色とは違う、すっきりとした緑。有頂はつけてもらった練乳の小さなチューブの蓋を開け、そこにつやを帯びた白を器用に降らせてゆく。メロンシロップに白い模様が出来上がった辺りで、しゃくりとスプーンをかき氷に刺した。
「こっちんはミルクメロンばい。メロンに練乳をだーっとかけて、あっまあまにな」
「おお、ニットのはすげー甘そう」
 食べてみたいようなおっかないような。驚いた様子の十雉に、有頂はにんまりと笑みを返す。『ゆーちゃん』は興味深げに、ふたつのカップを交互に見た。
「抹茶に、あずきと白玉……がかかっているものが、宇治金時。メロンのシロップに練乳をかけて、ミルクメロン……」
 こっそりと本で、あるいはメニューの写真で読んでいたのだろう。それでおそらく、形は知っていたのだろう。それでも間近で見た本物は、やっぱりキラキラと輝いているように見える。

「ほれ、お嬢さんも食ってみな?」
 十雉はシェアのスプーンを手に取って、『ゆーちゃん』のぶんの宇治金時を盛ってゆく。
 そわそわと『ゆーちゃん』が出来上がったそれを一口食べれば、ぱっと幸せの表情に。
「餡子が優しくて、甘くて、白玉はもちもちですね……!」
「だろ?抹茶と合うと最高なんだよな」
 十雉の言葉にこくこくと頷いて、二口、三口と食べ進める『ゆーちゃん』。小盛りぐらいのそれが半分になった辺りで、有頂もスプーンをひらひらと振った。昼頃アイスをシェアした時のように、にかりと笑う。
「十雉さん、オイにも白玉ひと玉ちょーだい」
「はいよ、餡子もやるぜ」
「あんがとうネ~。ホレ、ゆーちゃんもメロンん方も食うてみんね?」
 んで、十雉のニイやんも。そう有頂が自分のカップを勧めてみれば、十雉は少し迷った素振りの後、ちょっとだけ、と貰いに。違う味を交換するのも、誰かと一緒だからできること。
『ゆーちゃん』も今度はミルクメロンをしゃくしゃくと口に運び、押し寄せるような甘々にびっくり混じりの喜びを返す。
「これ、すっごく甘いです!こっちも美味しい……」
「そうやろ?甘美味うてキクばい」
 しゃりしゃりと食べ進める中、ふと十雉が蟀谷を押さえて眉を顰める。きいんと冷たく、急にやってきてすぐ消える頭痛は、氷菓を沢山食べる時特有のもの。ある意味、これも風物詩ともいえるだろう。
「やっべ、キーンときた……!」
「おお、大丈夫と?」
「だ、だいじょうぶですか?」
蟀谷をくりくりと指で押さえながら、十雉は二人に笑顔を返す。
「大丈夫大丈夫、これもかき氷の醍醐味ってな」
「あはは、もう少しゆっくり食べんね」

 白玉入りの宇治金時に、練乳たっぷりかかったメロン味。話しながら食べる楽しさは、ひとりではきっと味わえなかっただろう。にこにこと幸せそうにかき氷を食べる『ゆーちゃん』を見ながら、有頂は零す。
「自分の食いたかもんたらふく食うて、楽しか気持ちなってくれたらオイ達も幸せよ」
「はいっ。おいしいもの、教えてくれてありがとうございます!」

 それからもUDC-P『ゆーちゃん』との交流は続き、二人が帰る頃にはすっかり元気になった彼女が、窓からずっと見送っていたという。好きな味が増えた彼女は、これからの保護生活も楽しく過ごせるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年06月26日


挿絵イラスト