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深海島に降る酒の雨

#グリードオーシャン #深海人 #深海島

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●酔えぬ杯
「一体全体どこにあるっていうんだい! 象だって一滴で酔いつぶれるほど強い酒のある島っていうのは!」
 海賊船の上で苛立たしげに杯を投げつける音が響く。
 屈強なゴリラキマイラの戦闘兵たちが身をすくめた。彼等は一様に緊張した面持ちで、その苛立たしげな声と癇癪を起こしたように、彼等に杯を投げつける女海賊の姿を腫れ物に触るような瞳でみていた。
 それは古くはキネズミと呼ばれるネズミのような動物―――ツパイ目の生物であるハネオツパイのキマイラの如き女海賊の姿であった。

 彼女の名は『紅のフラップテイル』。
 かつて無限に酒が溢れる杯―――メガリスから受けた呪いによって酔わない動物、ハネオツパイのキマイラへと姿を変えられた女海賊であり、今はコンキスタドールである。
 無限に酒が溢れる杯によって、飲んでも飲んでも尽きぬ酒を手に入れたが、呪いによって酔うことが叶わなくなり、常に苛立たしげな様子で部下たちであるゴリラの戦闘兵『アビス・ゴリラ』へと当たり散らしているのだ。

 そんな彼女たちが探しているのは、巨体である象が一粒食べただけで即座に酔いつぶれるという果物の実であるマルーラを使った酒を作る島である。
 このグリードオーシャンの海洋のどこかにあることだけはわかっている。だが、それが見つからない。
「あ~……イライラする……これだけ島々を荒らし回っても、どこにもないっていうのはどういうことだい!」
 『紅のフラップテイル』は忌々しげに一人の『アビス・ゴリラ』の首を鷲掴みにして、脅威的な膂力でもって持ち上げる。『アビス・ゴリラ』は脚をジタバタとさせるが、彼女の万力の如き握力の前には意味をなさない。
 そのままつかつかと海賊船の上を歩き、八つ当たりのように海へと『アビス・ゴリラ』を放り投げる『紅のフラップテイル』。

 盛大な水しぶきを上げて『アビス・ゴリラ』の巨体が海面と沈む。
 その様子を見て、彼女は何かを閃いた。
 そう、海洋に浮かぶ島々のどこを探してもないのなら、次に探すべきは―――。

●深海島アエーシュマ
 グリモアベースへと集まってきた猟兵たちを出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
 いつものように微笑みを湛えながら、頭を下げるのだ。
「お集まり頂きありがとうございます。今回、予知された事件は欲望渦巻く世界、グリードオーシャンです」
 異世界より島が落ちてくることによって形成された海洋世界であるグリードオーシャンは、多種多様なる異世界の断片で出来上がった世界と言えるだろう。
 スペースシップワールドの宇宙船がそのまま島になったものもあれば、幻朧桜咲き乱れるサクラミラージュの土地を感じさせる島もある。

「はい。ですが、それは海洋世界グリードオーシャンの一端でしかありません。今回、コンキスタドールの魔の手が迫っているのは、深海島です。言葉の響きにピンと来た方もいらっしゃるかもしれません」
 そう、深海人である。
 猟兵の中には海の生物と人が融合したような姿を持つグリードオーシャン先住民族がいる。彼等は海の波間に浮かぶ島々に住んでいることが多い。

 だが、一部の深海人は海の中に沈む『深海島』に住んでいるのだ。
「そこは貝や珊瑚でできた都市であり、空気の泡に包まれているのです。この空気の泡があるからこそ、深海島は海中にありながら、それ以上沈むこと無く、かつ普通の人間も息ができる生活圏となっているのです」
 未だ謎多き世界であるが、そんな驚天動地たる島も存在しているのだという。
 ナイアルテは海の中の島々に思いをはせるように微笑んでいる。行ってみたいという気持ちがあるのだろう。

「今回、この深海島……アエーシュマに迫るのは『紅のフラップテイル』と呼ばれるコンキスタドールと、彼女に率いられた『アビス・ゴリラ』と呼ばれる強力なコンキスタドールたちです。彼等は、異世界の痕跡残る深海島アエーシュマを占拠しようとしているのです」
 まずは前哨戦である『アビス・ゴリラ』たちとの戦いになるだろう。
 そこで一人の猟兵が疑問の声を上げる。海中に適正の無いものはどうするのかと。
「ご心配には及びません。深海島からは常に『空気の泡』が大量に湧き上がっています。これを吸いながら潜ればいいのです。そして、この空気の泡こそが、深海島へのガイドにもなるのです。まずは、斥候である『アビス・ゴリラ』を撃退しながら深海島アエーシュマへと至りましょう」

 なるほど、と納得できる。だが、水圧は?
「え……と……その、気合で、耐えて、いただけますか……?」
 ナイアルテは困ったように微笑む。もしくは他の実行可能な装備やユーベルコードで、と彼女があまり考えていなかったことを白状し、平謝りする。

 やるべきことは3つ。
 まずはコンキスタドールの斥候である『アビス・ゴリラ』を撃退しつつ、深海島へ。
 そして、深海島へとたどり着き、迫るコンキスタドール『紅のフラップテイル』を迎え撃つ準備をする。
 その迎撃準備と共に『紅のフラップテイル』を討ち果たす。
「はい、そのとおりです。この深海島アエーシュマは、異世界の痕跡がわずかに残っているようです。どうやら異世界の機械と共に落ちてきた島のようで……その、マルーラという果物の実がコンコンすると無尽蔵に出てくるようなのです。現在は機械は動いていないようで……マルーラの実というのが、ものすごく美味しいお酒の味がして、とても酔い易いそうなのです」

 恐らく、『紅のフラップテイル』の目的はその機械と酒の実とも呼ばれるマルーラであるようだ。
「もちろん、未成年の方は絶対に食べてはいけませんよ。成人済みの方でも、その……一粒で象一頭が酔いつぶれるほどの度数だそうで……できれば、その、戦いに支障を来さない程度でお願いします……」
 彼女自身も未成年である。
 お酒の味はわからないが、お酒で醜態を晒す姿は見ているようだった。

「目的はなんであれ、コンキスタドールの欲望の魔の手から深海島は守らねばなりません。彼等の穏やかな生活は脅かされて良いものではありませんから……どうか、よろしくお願いいたします」
 そう言ってナイアルテは猟兵たちを送り出す。
 マルーラ……どんな味がするのでしょうか、と興味深げな顔をしながら―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回は海洋世界グリードオーシャンでの事件です。深海島という海中に没していながら、人の住める空気在る島をコンキスタドールの魔の手から護り切るためのシナリオとなっております。

●第一章
 集団戦になります。
 皆さんは海中に飛び込み、深海島からボコボコ湧き出る大量の空気の泡を利用しながら、島を目指します。
 当然のように斥候である『アビス・ゴリラ』たちが襲いかかってきますので、彼等を撃退しつつ目指しましょう。
 集団的でありながらも、戦闘用水中服に身を包んだ彼等の戦闘力は油断なりません。ゴリラ強いのです。

●第二章
 日常になります。
 深海島へとたどり着くと、第一章の戦いを見ていた深海島の深海人達に歓待されます。
 まあまあ飲めや歌えやの大宴会なのですが、皆さんは彼等の誘いをやんわり断りながら、島に残された異世界の痕跡である機械を調べたり、無理矢理動かしたり、かつてどんなことを行っていたのかを推察したりしながら、迫るボスへの備えを行いましょう。

 ※勿論、どんなに勧められたからと言っても未成年の方はマルーラの実やお酒を飲んではいけません。

●第三章
 ボス戦です。
 ボスであるコンキスタドール『紅のフラップテイル』が深海島へと襲来します。これを撃破しましょう。
 第二章でのボスへの備えが重要になります。
 正確はオープニングにある通り、お酒大好きですが酔えないイライラで非常に好戦的な正確と、それに見合うだけの強力な力を持つコンキスタドールです。
 これを撃破し、深海島をコンキスタドールから護りましょう。

 それでは、欲望渦巻く海洋世界でも、さらに知られざる深海島を守るために、いざゆかん海の底へ!
 皆様の物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『アビス・ゴリラ』

POW   :    素晴らしきゴリラの体力
【相打ちを恐れない怒れるゴリラ】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    奪われしヒトの技術力
【どんな船舶も破壊する斧】【近未来装甲を模した銃弾をはじき返す装甲】【水中・空中を高速移動できるジェットパック】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    知性を持ったゴリラの団結力
演説や説得を行い、同意した全ての対象(非戦闘員も含む)に、対象の戦闘力を増加する【状態異常を軽減し、体力を回復する肉体能力】を与える。

イラスト:Moi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが目指す深海島アエーシュマ。
 その深海島へとコンキスタドールの魔の手が迫っている。
 深海島への道筋は、深海島より溢れるようにして出る大量の空気の泡が教えてくれる。その泡をたどっていけば、必ず深海島は存在するのだ。

 海中へと飛び込んでいくと確かにグリモア猟兵の語るように空気の泡がこんこんと海中より湧き出ている。
 空気の問題もなさそうだ……と海中を深海島目指して進んでいくと、別方向から水中用戦闘服に身を包んだ『アビス・ゴリラ』たちが襲い来る。
「見るからに怪しげな奴らウホッ! 我等が深海島へと襲撃をかけることが悟られたウホッ!?」

 ゴリラだからだろうか。非常に愉快な雰囲気の喋り口調であるが、彼等とてオブリビオンであるコンキスタドールである。
 それに脅威的な身体能力に加えて、水中用の戦闘服やジェットパックを装備して油断ならぬ敵であることは疑いようがない。
 手にした斧を振りかぶりながら『アビス・ゴリラ』の群れが猟兵達に襲いかかる。

 海中に不慣れな者もいるだろう。
 だが、それでも猟兵はオブリビオンを倒して、深海島へと至らなければならない。
 かの島に彼等『アビス・ゴリラ』たちの首魁たる『紅のフラップテイル』がたどり着くよりも早く―――!
マチルダ・メイルストローム
喋れるのかい!? 知性があるにしたってどこで言葉を覚えたんだろうねぇ。

ま、いいさ。
強力な武器に頑丈な装甲、水中でも苦にならない科学技術。武器以外はあたしは持っちゃいないし、よく揃えたもんだと感心はするけど……そんなもんなかろうと、強い奴は強いんだよ!

【アクアティック・プレデター】の高速泳法で敵を攪乱しながら水中戦をするよ。
装甲は頑丈だけどジェットパックはそうはいかないだろう? 秘宝「シー・ミストレス」でジェットパックに穴を空けて動きを鈍らせたら振るう斧を水中機動で避けて接近、秘宝「メイルストローム」で怪力任せに装甲をたたっ切る!

海中はあたしの縄張りだ。乗り込んできたことを後悔させてやるよ!



 深海島へと至る道程は容易いものではない。
 例え海中に湧き上がる空気の泡で酸素の心配をしなくてもよくても、水圧の問題が在る。水中に適応した者でなければ、それ相応の装備が必要となるだろう。
 だが、そんな水圧の問題でさえも、猟兵であれば気合でどうにかできてしまう。それが世界に選ばれた戦士である猟兵なのだ。

 海中にぼこぼこと浮かび上がってくる空気の泡を捉えながら、マチルダ・メイルストローム(渦潮のマチルダ・f26483)は海中を征く。
 彼女はセイレーン。ソーダ水で出来た肉体は、己の体を自由自在に変更できる。深海より生まれしソーダ水であるが故に彼女は見事に海中の環境に適応しているのだ。
 そんな彼女に迫る影があった。
「ウホッ! まさかここで会ったが百年目ウホッ! 猟兵を蹴散らせば『紅のフラップテイル』様もお喜びになるはずウホッ!」

 そう言葉を海中であっても発するのは群体オブリビオン『アビス・ゴリラ』である。彼等の姿は水中戦闘服に身を包んだゴリラそのものである。
 雄々しき巨躯はそのままに、人の技術によって得た戦闘服は海中での行動を物ともしない。
「喋れるのかい!? 知性があるにしたってどこで言葉を覚えたんだろうねぇ……ま、いいさ」
 マチルダにとって『アビス・ゴリラ』の容貌と能力は驚嘆と賞賛に値するものであたが、すぐにそういうものかと割り切ってしまっていた。
「強力な武器に頑丈な装甲、水中でも苦にならない科学技術……」
 一斉にマチルダへと殺到する『アビス・ゴリラ』たち。一体一体でも強力なオブリビオン、コンキスタドールである彼等は己たちの身を纏う戦闘服の能力を遺憾なく発揮し、彼女へと襲いかかるのだ。

 しかし、マチルダは慌てることはない。
「武器以外はあたしは持っちゃいないし、よく揃えたもんだと関心はするけど……」
 ユーベルコード、アクアティック・プレデターが発動する。
 それは彼女の本来持つセイレーンとしての水中での機動をさらなる高みへと引き上げるユーベルコードである。
 如何に『アビス・ゴリラ』たちが水中戦闘服で強化されていたとしても、元来セイレーンである彼女に陸の生物であるゴリラが敵うべくもないのである。

「そんなもんなかろうと、強いやつは強いんだよ! それに―――海賊が水中で戦えないはずがないだろ?」
 『アビス・ゴリラ』たちの群れを囲むようにして高速泳法で海中を自在に駆け巡るマチルダの体。
 それは目で捉えられぬ程の三次元泳法であった。
 彼女の脚が海水を蹴る度に、どんどん加速していく。手でかき分ける度に自在に曲がり、まるで水そのものが海水に混じって踊るようにして『アビス・ゴリラ』たちの群れを取り囲んでしまう。

 それはまさに彼女の名の通りである。大渦巻の如き泳法で、彼等を撹乱し、手にした秘宝である海中でも地上と同じ様に弾丸を放つことの出来る銃である『シー・ミストレス』から放たれた弾丸が『アビス・ゴリラ』たちの装備するジェットパックへと次々と穴を穿っていく。
「ウホッ!? 我等が後ろを取られただと!?」
 動きが如実に鈍る彼等を尻目にマチルダの体はさらに加速する。彼等が苦し紛れに振るう斧を難なく躱し、秘宝『メイルストローム』、カトラスの如き湾曲した刃を持つ剣を振るう。

 その一撃は強靭な装甲をいとも容易く叩き切り、『アビス・ゴリラ』たちを次々と骸の海へと還していく。
「海中はあたしの縄張りだ。乗り込んできたことを後悔させてやるよ!」
 深海島へと至る道を塞ぐ全ての障害をマチルダは薙ぎ払い、一直線に深海島アエーシュマを目指すのだった―――!

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
「自分の楽しみを奪われた事は可哀想と思わないでもないが。
それで島を荒らすのはいただけないな。」
しかし、今回は海中か。気合は自信がないし
何か対策を練らないとね。

素早く冥空へと至る影を発動。
武器防具を強化し月光のローブ、【オーラ防御】で水圧に耐え
レッドシューターから放つ火炎とスカイロッドから放つ風弾を
推進力に【念動力】も使い体勢を保ち空気の泡を飛び移って進む。

「向こうは準備万端ってとこか。装備では分が悪いけど
そんな事も言ってられないか。」
敵の動きを【見切り】密集したところを
特大の風弾と炎で広範囲攻撃。
敵の体勢を崩した処で
最も狙い易い敵に向けて
今度は一点集中の風弾、炎を撃って敵の戦闘服破壊を狙う。



 深海島アエーシュマを狙うコンキスタドール『紅のフラップテイル』。
 女海賊であり、今はコンキスタドールへと成り果てた彼女の身を襲った災難は無限に酒が湧き出る杯であるメガリスより受けた呪いである。
 ハネオツパイ。それはツパイ目であるキネズミと呼ばれた動物へと姿を変えられた呪いである。
 それは絶対に酔うことのできない動物である。

 故に彼女はどれだけ酒を煽ろうが酔うことはない。
 それは彼女にとって耐え難いものであったのだろう。酩酊状態の心地よい感覚も何もかも奪われたもの。そんな彼女が目をつけたのはマルーラと呼ばれる実から作られる酒である。
 象一体を一粒で酔い潰す実から作られた酒ならば―――と、そう思い深海島を目指すのだ。
「自分の楽しみを奪われた事はかわいそうと思わないでもないが。それで島を荒らすのはいただけないな」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は敵であるコンキスタドールへと同情の念を抱く。だが、それで他人を害するというのであれば、話は別である。
 しかし、とフォルクは頬をかく。

 海洋世界であるグリードオーシャン。
 そこかしこが海であり、今回目指す深海島は海中。空気の心配はないが、水圧の問題がある。気合でとグリモア猟兵は言ったが、それも少し自信がない。
「なにか対策を練らないとね……」
 彼のユーベルコード、冥空へと至る影(ディアボロス)が冥府への門たる忌まわしき影となって、もう一つの自分の影を召喚する。
 それは冥界へと繋がるための儀式と同じである。繋がることで冥界から己に贈られる魔力を魔法の念糸を幾重にも編み込んだ純白のローブへと与え、強化する。

 フォルクの体を覆うオーラが増す。これならば水圧にも耐えることは可能であるし―――。
「ウホッ! すでに猟兵が海中に展開しているとは、これは我等が手柄を立てるチャンスウホッ!」
 そう、海中に至った途端に彼に襲いかかる群体オブリビオン『アビス・ゴリラ』たちと遭遇しても何の問題もないのだ。

「向こうは準備万端ってとこか。装備では分が悪いけど、そんなことも言ってられないか」
 彼等は己たちが手柄を上げるのだと群体である強み、数によってフォルクを圧倒しようと互いを鼓舞する演説を行う。
 それにより、彼等のさらに準備万端な装備と戦闘力は見る見る間に上がっていく。

 だが、フォルクとて猟兵の一人である。
 炎の幻獣を封じた魔導書を黒手袋に再生成したレッドシューター。術者の意志に応じ実体化する風の杖、スカイロッド。
 それらを組み合わせてフォルクは強大なる推進力を得て海中で『アビス・ゴリラ』たちを翻弄するように撹乱する。
 ジェットパックを装備したゴリラたちであっても、彼の動きを捉えることができなかった。
「な、何故だウホッ!? 我等の装備は人の技術力の粋を集めたものウホッ! あんな何も装備していない人間が海中で我等を圧倒するスピードを持つなど!」

 彼等の驚愕も当然であろう。
 火炎と風。それらが組み合わさることによって推進力を得て、さらに彼の操る念動力デモって態勢を保ちながら空気の泡を次々と飛び移っているのだ。
 『アビス・ゴリラ』たちは人間の技術力を集めた装備を操ることができても、フォルクのように自身から生み出すことはできない。
「その動き―――見切った!」
 フォルクの撹乱する動きは、いつしか『アビス・ゴリラ』たちを一箇所に密集させる。その密集を狙ったのはフォルクの撹乱だ。
 そこ目掛けてスカイロッドより放たれた特大の風の弾丸とレッドシューターから放たれた炎が掛け合わされ、凄まじい衝撃となって、密集し一箇所に集まった『アビス・ゴリラ』たちを散り散りに吹き飛ばし、その装備を破壊する。

「装備がなければ、海中ではただの陸の生物だろう」
 体制を崩し、装備も破壊された『アビス・ゴリラ』たちは為すすべもなくフォルクの放つ風弾や炎によって海の藻屑へと消えていき、骸の海へと還る他なかったのだった―――!

成功 🔵​🔵​🔴​

サフィリア・ラズワルド
SPDを選択

【海竜の友人】を召喚して彼女に乗って潜ります。
お酒を飲んだことないから酔うっていうのがよくわからないけど、そんなにいいものなのかな?私達で例えると戦っても戦っても楽しいって思えないって感じかな?だったら辛いね、だって私達戦うの大好きだもん、ねえ、シィちゃん。

さてと、敵についてだけど、うーん、これは避けに徹した方がいいかも、水圧については頑張るよ、大丈夫大丈夫!私今回は手を出さないから、しがみついてるから!強くて固くて速くても攻撃が私達じゃなくて味方に当たったら意味ないんだよーだ!

敵の周りをぐるぐる泳ぎまくってもらいます。

アドリブ協力歓迎です。



 深海島アエーシュマ。
 そこは海中に没していながらも、大量に湧き出る空気の泡によって維持されている深海島である。
 海洋世界であるグリードオーシャンにおいて、そのような島々が存在する。この世界の先住民族である深海人たちの少なくない数がそこに住まうのだという。
 その一つの島にオブリビオンであるコンキスタドールの魔の手が迫っている。
「シィ、全速力で泳いで!」
 サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)のユーベルコード、海竜の友人(サモン・シードラゴン)によって呼び出されたのは彼女の身長を遥かに超える脚がヒレとなっている海竜。彼女の友人であるシィだ。
 その友人に騎乗し、海中へと潜っていくサフィリアは、お酒を飲んで酔うというものがどういうものであるのか考えた。

「お酒を飲んだことないから、酔うっていうのがよくわからないけど、そんなにいいものなのかな?」
 騎乗するシードラゴンであるシィに語りかける。お互いに同い年で未成年であるから、いまいち要領を得ない。
 だが、自分たちの身に置き換えて考えるとどうだろうか。
「私達で例えると戦っても戦っても楽しいって思えないって感じかな?だったら辛いね、だって私達戦うの大好きだもん、ねえ、シィちゃん」
 敵の首魁である『紅のフラップテイル』の身を苛む呪いに対して、そう考えれば多少の同情の余地も在るのかも知れない。
 けれど、それの苛立ちを他人……罪もない深海人へと向けるのは違うと思うのが、彼女たちとコンキスタドールとの違いであった。

「ウホッ! 猟兵がすでにこの海域までやってきているとは、誤算だったウホッ! このままではまたボスに粛清されるウホッ!」
 海中を征くサフィリアたちの目の前に現れるのは、水中戦闘服を身にまとった『アビス・ゴリラ』の群れ。群体オブリビオンである彼等は、ゴリラの身でありながら、水中戦闘服やジェットパック、どんな船の装甲であろうと引き裂く手斧を持っている。
「シィちゃん、よろしくね!」
 サフィリアが友人であるシードラゴンのシィちゃんにしがみつく。
 全速力で海中を駆け回るシードラゴンの速さは、如何に優れた装備を持った『アビス・ゴリラ』たちであっても目で追うことができないほどのスピードだった。
 そう、今回サフィリアは手を出さないと決めていた。

 シードラゴンにしがみつき、水圧に耐える。敵の攻撃は避けるに徹すると決めたのだ。
 海中という圧倒的にこちらに有利な地形。
 そして、彼等の装備。確実に彼等は海中に置いて己たちの装備の利を強みに戦いを挑むことだろう。
 手にした手斧は空を斬るばかりだ。
「どれだけ強くて固くて速くても攻撃が―――」
 サフィリアとシードラゴンが海中で渦を巻くようにして駆け回る。それは巨大な水流となって、『アビス・ゴリラ』たちを巻き込んでいく。
 前後左右、不覚になりながら彼等は手にした手斧を必死に振り回す。だが、それは前後左右の状況を確認できないままに振り回せばどうなるか。

「―――私達じゃなくて味方に当たったら意味ないんだよーだ!」
 そう、『アビス・ゴリラ』たちの手斧は、周囲の状況を確認できないままに振るわれ、近くに味方がいることもわからずに手当たりしだいに同士討ちを誘発させていく。
 そうなれば、もう彼女たちを止める術はない。
 悠々と海竜であり、友人であるシードラゴンのシィと共にサフィリアは深海島アエーシュマを目指すのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギヨーム・エペー
へえ、海中に島!
いいね、住み心地がよさそうだ。ぜひ水圧検査に合格して入島してみたい、なんてな

多少なら深海に適応はできるが、問題はこれからかかる水圧か
UCは防御力を重視して発動する。精霊の加護ましましにして、と。あとは気合と経験で進むしかないね!

水中戦を得意としているが、装備から見るに元は陸生だろうか。きみ肺呼吸派?
本体が強化されたなら装備を狙ってみるかなー……なー、太陽。汝、あの水中服に潜り込めるだろう
わしはあまり動かず銛を投擲して穴を開ける。汝はその隙間に入り込み、内臓を締め上げたり器官を水で満たしたり、だ
此処は汝のテリトリーだぜ。敵に水を掴める理性があったらわしが串刺すから、泳いで来い!



 海中より滾々と湧き出る空気の泡。
 それは深海島を包み込む泡の残滓であり、深海島へと至る道程の道標である。これを利用することによって、海中に適応していない猟兵であっても空気の心配をしなくてもいよいのだ。
 海中に没しながらも島での生活圏は確保されているというのは、海に生きる者たちからすれば浪漫溢れる場所であったのかも知れない。
 言葉面だけ捉えるのなら、それはまるで御伽噺のようであったからだ。
「へえ、海中に島!」
 ギヨーム・エペー(日に焼けたダンピール・f20226)は、グリモア猟兵から、その話を聞いた時思わず口角が上がったのを自覚したかもしれない。
 海洋世界であるグリードオーシャンは彼にとって、すでに馴染んだ世界である。暇つぶしに海へと入り、海辺で過ごす彼にとって海とはもう無くてはならない存在であった。

「いいね、住心地がよさそうだ。ぜひ水圧検査に合格して入湯してみたい、なんてな」
 快活に笑いながらギヨームは海中へと飛び込む。
 胸高鳴るのは、仕方のないことであった。彼のユーベルコード、un tournesol(アントゥルヌソル)が発動する。精霊の加護が彼自身の防御力を強化する。
 これで水圧の問題はクリアーしたも同然であろう。
 契約精霊である太陽『ソレイユ』と共に海中に湧き出る空気の泡を捉えながら、ギヨームの体はまるで最初からそういう生き物であったかのように潜っていく。

 だが、彼の目の前に現れたのは同じく深海島アエーシュマを目指すコンキスタドールの斥候である『アビス・ゴリラ』たちである。
「ウホッ! やはり猟兵の横槍があったウホッ! 我等の水中戦闘服の恐ろしさ、とくと味わうといいウホッ!」
「水中戦を得意としているようだが……見るからに元は陸生だろうか。きみ、肺呼吸派?」
 その言葉は『アビス・ゴリラ』たちを怒れるゴリラへと変える。見ればわかるだろう! というゴリラのプライドが傷つけられたのだ。
 一斉に理性を失い、その代わりに強化された能力は海中において無類の強さを誇り、ギヨームを襲う。

「なー、太陽(ソレイユ)。何時、あの水中服に潜り込めるだろう?わしはあまり動かず銛を投擲して穴を開ける。汝はその隙間に入り込み、内臓を締め上げたり器官を水で満たしたり、だ」
 ギヨームの言葉はいつもより違ったものであった。
 いつもの彼を知る者であれば、彼がリラックスしている証であるとわかったことだろう。うっかりと本性の喋りが出てしまっているのだ。
 それは彼の心が、体が今、グリードオーシャンの海洋に委ねられ、包まれているからである。

 手にした銛、水の精霊を宿した銀で装飾されたトゥルヌソルを構える。
 狙うは怒れる『アビス・ゴリラ』たちの戦闘服である。過たず投げ放たれた銛は、海中であっても勢いを殺されずに『アビス・ゴリラ』たちの戦闘服に穴を穿つ。
「此処は汝のテリトリーだぜ。構わず泳いで来い!」
 契約精霊の水のちからは凄まじい。此処が海中であるからという理由もあるのだろう。強化された『アビス・ゴリラ』たちであっても、ギヨームの契約した精霊の力に及ぶべくもない。

 穿たれた銛の一撃より内部に侵入した契約精霊は、次々と『アビス・ゴリラ』たちを撃破していく。
 ある者は戦闘服の器官内を水で満たされた窒息し、あるものは内蔵を圧迫されて息絶える。
 どちらにしても彼と対峙した以上、『アビス・ゴリラ』たちは骸の海へと還る運命でしかなかったのだ。

 ギヨームはいつも以上にリラックスした様子で海中をゆく。空気の泡をたどり、進む先に見えるのは深海島アエーシュマ。
 珊瑚と貝で出来た空気の膜に覆われた島。その島を視界に収め、彼はどんな笑顔を見せただろうか―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

安里・真優
【心境】
「う~ん。マルーラかぁ…これはひょっとしたら金儲けのチャンスかも。」
うん。これは商人としても狙いどころですね。

【戦闘】
水先案内はダゴタンよろしくねー。
しかし、巨人的に大きめの水泡を狙わないと息が…。がぼがぼ…もっと大きい水泡へ案内してダコタン…。
水圧は大丈夫。巨人は頑丈ですからね≪深海適応≫はばっちりです。

さて、戦闘ですね。
≪魔力溜め≫+≪全力魔法≫=シャーク・トルネード。
それ行け鮫軍団!!
ダコタンは触腕で≪捕獲≫そのまま海上へ打ち上げてください。
知ってます?水圧は加わるより減圧するほうが生命に危険なんですよ?
あ、逃がしません。≪属性攻撃≫+≪砲撃≫=氷の弾丸です。



 深海島アエーシュマ。そこに存在する一粒でも巨体である象を酔い潰すことができるというマルーラの実。
 もしも、それが事実であるというのなら、その実で作った果実酒はどれほどの度数を誇るかわからない。それ故に無限に酒の湧く杯であるメガリスによって呪いを被ったコンキスタドール『紅のフラップテイル』は求めるのだ。
 酔う事のできなくなった己の体を酔わせる酒を。その欲望のままに、他者がどれだけ傷つき、被害を被ろうとも感知せずに、突き進む。
 それが過去の化身たるオブリビオンであるコンキスタドールの本質であるというのならば、それを止めるのが猟兵の務めであろう。

「う~ん。マルーラかなぁ……これはひっとしたら金儲けのチャンスかも」
 グリモア猟兵から伝えられた情報を整理し、安里・真優(巨人の冒険商人・f26177)は商人としての勘を冴え渡らせる。
 一粒でも酔える実。
 それは酒飲みにとっては理想の食べ物であると言っても良いかも知れない。商人としての血が騒ぐ気がした。
 巨人である彼女は、その5mは超える体を海中へと飛び込ませる。勢いよく上がる水飛沫。いや、水柱。
「うん。これは商人としても狙い所ですね」
 彼女のペットであるダコタン……正気度へのチェックが必要そうな特殊な退色をしている蛸に水先案内人としての役を託しながら、空気の泡の出どころを追う。

 海中から滾々と湧き出る空気の泡をたどっていけば、自ずと深海島へとたどり着くのだが、彼女の巨人としての体は通常の人間たちと違い巨大である。それ故に彼女は湧き上がる空気の泡も巨大な物を狙わないといけないのだ。
「がぼがぼ……もっと大きな泡へ案内してダゴタン……がぼがぼ」
 水圧の問題も彼女であれば、容易くクリアーされる。何故なら、彼女は巨人である。頑丈であるし、深海への適応はばっちりなのだ。

 そんな真優の前に現れたのは、群体オブリビオンである『アビス・ゴリラ』たちである。彼等は一様に彼女の姿に驚きを示す。
「ウホッ!? 巨人ウホッ! まさか猟兵に巨人がいるとは思いもしなかったウホッ! だが巨体故に我等の攻撃は当て放題ウホッ!」
 うほうほ、と彼等は群体である数の強みを活かし、彼等自身を鼓舞する。それによって強化される戦闘能力は群体であることを最大限に活かすユーベルコードだった。
 彼等の言葉に同意する仲間たちが多ければ多いほどに、力はましていく。

「聞く耳持ちませーん! それ行け鮫軍団!!」
 真優の体に渦巻く魔力が『アビス・ゴリラ』たちの鼓舞の間に溜め込まれ、その溜め込まれた魔力を全力魔法に乗せて放つは、ユーベルコード、シャーク・トルネード!
 召喚された無数の鮫に回転ノコギリが生え、海中の覇者としての風格そのままに『アビス・ゴリラ』たちを取り囲む。
 如何に強化された『アビス・ゴリラ』たちと言えど鮫の竜巻の前には無力そのものであった。
 次々と竜巻の中で骸の海へと還っていく『アビス・ゴリラ』たち。そして、それから逃れた者たちもダコタンの触腕によって捕獲される。

「ダコタン! そのまま海上へと打ち上げて下さい」
 彼女の言葉に応えるようにタゴタンの触腕に捕まった『アビス・ゴリラ』たちが海上へと急速で打ち上げられる。
「―――知ってます?水圧は加わるより、減圧するほうが生命に危険なんですよ?」
 そう、如何に戦闘服で強化されていたとしても、圧力の掛けられた戦闘服の内部は急速に海上に打ち上げられたことによって減圧しきれずに、その生命を散らすしかないのだ。

 圧倒的な巨人族の力の前にさすがのゴリラたちも逃げるしか無い。
「あ、逃しません。私の商売の芽を邪魔なんてさせませんからね」
 追撃するように打ち出される氷の弾丸は、逃げ惑う『アビス・ゴリラ』全てを散々に打ちのめし、霧散させる。
 障害を排し、真優が見据えるのは深海島アエーシュマ。
 彼女の商売人としての勘が言う。
 あの島こそ、商売のビックチャンス眠る場所であると―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
これは吃驚。特殊な技術を用いてないにも拘らず、
水中で呼吸ができるとは。
世界が、どんどん広くなっていく事を感じるな。
■決
戦場が水中なら、移動の際は【素潜り】をするように移動する。
泳ぎは勿論、得意の平泳ぎ。

■闘
遠距離から居合の構えを取り、獣の【視力】で敵を目視。
そこから全身に【破魔】の力を込めて【心切】を放ち、
見えざる【鎧無視攻撃】で敵の霊魂と闘志を断つ。
放つ際は【範囲攻撃】になるよう、一度に多くの敵を目視する。

接近する敵がいたら【野生の勘】で此方に来る瞬間を予測、
相手の動きに合わせ【カウンター】の太刀を放ち追い払う。

其方達の装備は実に見事。だが俺の『霊剣』を防ぐことはできん。

※アドリブ・連携歓迎



 海中とは陸生の生物であれば、憧れであり、生命を拒絶する場所である。
 酸素がなければ、息が続かず。深く潜れば潜るほどに体を蝕む水圧によって、その身をひしゃげさせる。
 だからこそ、海中に没した深海島は不思議な魅力あふれる場所であったのだろう。
 そして、珊瑚と貝で出来上がった深海島は、深海人の住まう島でもある。彼等がそこで生存できているのは、海中より懇々と湧き出る空気の泡があるからこそである。

「これは吃驚。特殊な技術を用いていないにも拘らず、水中で呼吸ができるとは」
 愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は海中に潜り進みながら、空気の泡を捉えては驚きの声を発する。
 猟兵になってから様々な経験を積んできたであろう清綱にとって見ても、このグリードオーシャンの生み出す環境というものは驚嘆に値するものばかりである。
「世界が、どんどん広くなっていくことを感じるな……」
 知らないことが減っていく。知っているものが増えていく。それは己という存在を持って世界を拡張してく行為であるのかも知れない。

 清綱は得意の平泳ぎですいすいと海中を素潜りの要領で進んでいく。
 息が続かないと判断すれば、空気の泡へと入り込めば、酸素の問題はクリアできていくのだ。
 しかし、そんな順調は深海島への道程も、そう長くは続かない。
 彼の目の前に現れたのは水中戦闘服に身を包んだ『アビス・ゴリラ』たちの群体である。
「ウホッ! 猛禽の翼を持つ者が海中に没しようとは、我等より先んじて深海島を目指す算段ウホッ! そうはさせぬウホッ!」
 紛うことなきゴリラたちである。
 だが、油断はできない。彼等が身にまとうのは人の技術力によって生み出された装甲とジェットパックに、どんな装甲であろうと切り裂く手斧があるのだ。
「我等の装備力は世界一ウホッ! 覚悟ウホッ!」

 一斉に清綱へと襲いかかる群体オブリビオンである『アビス・ゴリラ』達。
 しかし、海中であったとしても清綱の心は常に変わることはない。常在戦場。居合の構えを取る。
 全身に漲るは破魔の力。ユーベルコード、心切(シンキリ)の発動によって、その身に宿る霊力。
 彼の瞳は獣と同じ見通す力である。それは暗き海中であったとしても、彼の眼光から逃れられる『アビス・ゴリラ』はいなかった。
「秘伝……心切」

 放たれる剣撃は不可視の一撃である。
 彼が視認した者全ての気魄と霊魂を断ち切るが故に、その名を『心切』と呼ぶ。一瞬で『アビス・ゴリラ』たちは闘争心を切り捨てられ、己が戦う意義を見いだせぬままに骸の海へと還っていく他ない。
「我等の同胞に何をしたウホッ―――!?」
 何が起こったかわからないままの『アビス・ゴリラ』たち。彼等からすれば、仲間である者たちが、わけも分からずに骸の海へと還されていくのだから、清綱は正体不明の何者かでしかないのだ。

「其方達の装備は実に見事。だが、俺の『霊剣』を防ぐことはできん―――深海に住まう人々に仇を為す前に、ここで討たせてもらう」
 再び振るわれる不可視の一太刀。
 それは恐怖に駆られ、清綱へと切りかかった最後の『アビス・ゴリラ』の霊魂を両断する。
 見事な居合の業の冴えと共に、『アビス・ゴリラ』たちの群れは尽く討ち果たされるのだった。

 清綱は居住まいを正し、深海島アエーシュマを目指すのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『異世界の痕跡』

POW   :    無理やり機構をいじってみる

SPD   :    修復できないか試してみる

WIZ   :    この機構がどんな役割を持っていたのか推測する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 深海島アエーシュマは貝や珊瑚で出来た都市である。
 島全体を巨大な空気の泡で包まれているが故に、ここでは海上の島々と同じように振る舞うことができる。

 猟兵たちは海中で群体オブリビオンである『アビス・ゴリラ』たちを撃破した。
 彼等はこの深海島を占拠しようと企むコンキスタドールの斥候であり、その戦闘を深海島から見ていた住民たちは猟兵たちを快く受け入れたのだった。

 住民たちは島を救ってくれた猟兵たちを歓迎したくて仕方ない様子である。
 次々にお酒や、島の遺跡をコンコンすると出てくるマルーラの実やらを勧めてくるのだ。
 だが、今はそんな事をしている暇はあまりない。
 なぜなら、猟兵たちを襲い、この深海島を占拠しようとしているコンキスタドールの首魁『紅のフラップテイル』が迫っているからだ。
 かのコンキスタドールを迎え撃つために準備をしつつ、住民たちの歓待をかわさなければならない。

 コンコンするとマルーラの実が出てくる機械……恐らくグリードオーシャン由来のものではない、どこか別の異世界から落ちてきたと思われる機械は今は動かない死、住民たちも使い方を理解していないようであった。

 猟兵たちはこれを調査するもよし、これを利用して『紅のフラップテイル』を迎撃する作戦を立ててもいい。
 時間は限られているが、襲撃に備えて準備を進めないといけない。
「な~一粒くらい、いいべ?すんごい、うんまいからさ~」
 うっ、酒臭い。
 これがマルーラの実!周囲はもう宴会ムード。此の楽しげな雰囲気をかわさないとならない生殺し状態にあいながら、奔走せよ、猟兵―――!
安里・真優
【心境】
「ほくほくですねー」
実は少しだけ≪取引≫してきました。
地上の果実やお酒などで物々交換です。≪マルーラの実≫どれだけの価値が出るか楽しみですね。
あ、私は未成年何で要りません。あと盗み食いして泥酔しているマンボンの面倒お願いします。

【行動】
判定:WIZ
実は取引中に住民から≪情報収集≫してきました。
このレバーで…(しーん)あれ?
ひょっとして間違い…いえ、たぶんこっちのハンドルが奥の扉の開閉装置ですね。
ほら。
この扉の奥にコンコンを隠して、マルーラ別の場所に置いておきます。実はここの床ちょっと耐久力落ちてるんですよねー。つまり天然の落とし穴…。行きませんよ私は
最悪コンコンさえ無事に守りませんと



 深海島は、その立地の特殊性から海上の品々に飢えていたと言っても良い。もしくは憧れが在ると言っても良かっただろう。
 逆に海上の者たちにとって深海島の品々は魅惑的に思えた。
 こうした互いの欲しい物を橋渡しするのが商人である。
「ほくほくですねー」
 にんまり笑顔なのは、安里・真優(巨人の冒険商人・f26177)である。実は彼女、すでに深海島アエーシュマの住人たちと取引を終えた後なのである。

 なんというフットワークの軽さ。
 深海島アエーシュマに到着した後、猟兵たちは皆、住民たちに歓迎されていた。それは深海島の外でコンキスタドールと戦う姿を住民たちが見ていたからだ。
 深海島と言えど、コンキスタドールの魔の手は振り払わなければならない脅威である。それを払い除けてくれた猟兵たちを歓迎しないわけがないのである。

 その利を商人である真優が逃すはずもない。
 彼女が事前に容易した海上の島々で取れる果実やお酒と物々交換で、この深海島特産のマルーラの実を確保したのだ。
「どれだけの価値が出るか楽しみですね……あ、私は未成年なんで……あと盗み食いして泥酔しているマンボンの面倒お願いします」
 さらりと真優は、住民たちの宴会への誘いを躱して、異世界の名残である機械へと向かう。
 彼女のペットであるメガリスを食べて飛行能力と巨大化を得たマンボンがぐつぐつ煮えたぎるほどに紅く燃え上がっているのだが、それはそれである。
 え、どうやって面倒見たら良いんだろ、と深海人たちは首を捻るが、恩人の頼みである。面倒みなければ、と奮起している。

 そんな彼等を尻目に真優は、異世界の名残である機械のレバーを引く。
 マルーラの実を取引していた時にしっかりと住民たちから情報を収集していたのだ。曰くレバーを引くと機械が開くのだとか。
「このレバーで……」
 しーん。あれ? と真優が首をかしげる。住民たちの言葉通りであれば、機械の開閉装置のはずなのだが……。

「ひょっとして間違い……いえ、たぶんこっちのハンドルが奥の扉の開閉装置ですね」
 ぐるんとハンドルを回すと、重々しい音を立てて機械が開いていく。開かれた扉の奥にコンコンする場所を隠せばいい。
 そして、得たマルーラの実を別の場所に置いておくのだ。

「ふふふ、実はここの床ちょっと耐久力が落ちてるんですよねー。つまり天然の落とし穴……」
 マルーラを囮にして、コンキスタドールが食いつけば不意打ちの如き落とし穴にハマってしまうというわけだ。
 目論見通りうまくいくかはわからないが、何もしないよりはマシであるし、最悪、コンコンさえ守り通せば、この深海島アエーシュマの特産物は守れるのだ。
 しかし、落とし穴……うまくいくだろうか。一度検証してみたほうが……と一瞬思ったが、自分がハマってしまっては、恥ずかしいどころの話ではない。

 あとは出たとこ勝負!商人に必要なのは計算と度胸!
「最悪コンコンさえ守り通せば、商談のルートは確保できますしね! さあ、いつでもいらっしゃいって感じですよ!」
 コンキスタドールの最大の誤算は、深海島へと魔の手を伸ばしたことではなく、商魂たくましい真優を敵に回したことであった。

「マンボウが火を噴いた~!!?」
 そして、どこか遠くで酔っ払った勢いで火を吹き上げるマンボンの火柱が見えた。その直後、住民たちの喝采を浴びる声が聞こえてきて、真優は頭を抱えたのであった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

お酒を勧められて『私未成年です!……あ、やっぱりお酒ください!違います、飲むのは私じゃないです!』何本かお酒を貰っておきます。

【子竜の遠足】で召喚された子達の半分に遺跡を探索してもらいます。残りの半分の子達にはお酒を見せて(この子達も未成年ですから飲みません)手伝いを頼みます。

すっごく強いお酒だから抜けた竜の角とか鱗とか牙とか血とか入れたら(魔力的なもので)もっと凄いお酒になるんじゃないかな?短時間しか漬けておけないけどやってみよう!

え?こんなの誰が飲むのか?これからやってくる敵に毒味……味見してもらいます!

アドリブ協力歓迎です。



 深海島アエーシュマは、水中に没している貝と珊瑚の都市とは思えぬほどの賑わいを見せていた。
 深海人たちは皆陽気に笑って、どんちゃん騒ぎである。めでたいめでたいめでたいな~という具合に皆浮かれている。
 何故このような自体になっているのかと言うと、深海人たちは猟兵が島付近でオブリビオンであるコンキスタドールの斥候『アビス・ゴリラ』たちを撃退していたのを見ていたのである。
 海中に没している深海島と言えど、コンキスタドールの魔の手は襲い来る。それを未然に防ぎ、打ち払ってくれた猟兵達に深海人たちは皆歓待したくてたまらないのだ。
 それくらい大歓迎ムードであるから、深海島アエーシュマにたどり着いた猟兵たちは、これより訪れるコンキスタドールの首魁である『紅のフラップテイル』を迎撃するための準備をしなければならないにも拘らず、深海人たちの歓待をかわさなければならないのだ。

 そして、此処にも一人、深海人たちの熱烈な歓迎をかわそうとする猟兵がいた。
「お酒を勧められても、私、未成年です!」
 残念ながら未成年であるサフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)はアルコールの類を飲むわけにはいかない。そうでなくても、これよりコンキスタドールとの戦いが控えているのだから、飲むわけにはいかないのだ。
 じゃあ、マルーラの実ならいいんじゃない?ってなるわけであるが、そういうわけでもないのだとサフィリアはハッキリと断る。
「……あ、やっぱりお酒ください!」
 え!?
 サフィリアさん!? となったのも束の間、慌ててサフィリアは訂正する。
「違います、飲むのは私じゃないです!」
 深海人たちからすれば、お酒を飲まないのにお酒がほしいというのはどういうことのなのか不可解な顔をしたが、島の恩人である猟兵、サフィリアの言うことだからと数本のお酒の瓶を手渡してくれる。
 ありがとうございます、とサフィリアは礼を告げ、異世界の遺跡へと歩みをすすめる。

「おいでおいで!一緒に行こう!」
 彼女のユーベルコード、子竜の遠足(ドラゴンズ・ピクニック)によって呼び出された小さな子供の竜たちと共にサフィリアは遺跡を探索するつもりなのだ。
 ここで彼女の工夫が光る。先程手に入れたお酒を召喚した仔竜たちへと見せる。軽く匂いをかいだだけでも、このお酒が強いのだと飲酒経験がなくてもわかってしまう。

 もしも、この遺跡がコンコンすることによって湧き出るマルーラの実と関係があるのだとすれば、この匂いの残滓があるかもしれない。
 探索を続ければ、その糸口がわかるかもしれないのだ。
「……すっごく強いお酒だから、抜けた竜の角とか鱗とか牙とか血とか入れたら……」
 どうなっちゃうんだろう、と仔竜たちは成長期故に、角や牙など生え変わり易い。それらを受け取って、彼女は手に入れたお酒に仕込んでいく。
 竜とは魔力多き生物である。
 であれば、このただでさえ強いお酒に魔力的なものが混ざればどうなるか……コンキスタドールの襲来までの僅かな時間では在るが、試して見る価値はあるのだ。

 遺跡を探索してわかったことは、この機械が何かを製造するものであるということと、コンコンすればマルーラの実がごっそり出てくるということだけだった。
 関連性は見えてきた。
 竜の角や爪などを漬け込んだ酒瓶を抱えているサフィリアに仔竜たちが、それどうするの?という雰囲気で首をかしげる。

「え? こんなの誰が飲むのか?」
 ふふ、とサフィリアが微笑む。決まっているじゃない、と。

「これからやってくる敵に毒味……味見してもらいます!」
 きっと酔えない呪いを掛けられていたとしても、魔力含む竜酒となった、強烈な度数のお酒は酔えなくてもきっと『紅のフラップテイル』の戦闘力に悪影響を与えることだけは間違いない。

 お酒に目がないコンキスタドールであるのなら、確実に飲む。
 そう確信しながら、サフィリアはコンキスタドールを待ち受けるのだった―――!

成功 🔵​🔵​🔴​

マチルダ・メイルストローム
悪いね、あたしが最初に飲む酒はこれ(手持ちのラム酒)で、それはあと1年と1か月後と決めてるんだ。
海賊が社会のルールを語るなんてちゃんちゃらおかしい真似はしないが、自分のルールは曲げられないね。
マルーラの実は受け取りつつ他の物を飲み食いしとくよ。

んー、この島でお宝っぽいお宝はこの実だけみたいだね。腐りそうだしお宝として取っとくわけにもいかないか。今回は島にはあたしの求めるものはなさそうだ。
けど、この実のおかげでわざわざお宝を持った奴がやってくるんだ。感謝させてもらうよ。

紅のフラップテイルをおびき寄せるのに役立つかもしれないし、いくつかマルーラの実をもらったら迎え撃つために島の外周部に行くよ。



 深海人たちの歓迎は熱烈であった。
 猟兵たちの活躍はすでに彼等全員の知る所となっており、深海島アエーシュマは宴会というよりどんちゃん騒ぎのお祭り状態であった。
 一粒でも巨象が酔いつぶれるというマルーラの実がコンコンすれば出てくる異世界の機械がある深海島において、深海人たちの言う歓迎とはつまるところ宴会であった。

 当たりに酒気を帯びた空気が漂う深海島アエーシュマ。
 熱烈な歓迎を受けた猟兵の一人であるマチルダ・メイルストローム(渦潮のマチルダ・f26483)はきっぱりと深海人たちからの宴会への参加を断っていた。
「悪いね、あたしが最初に飲む酒はこれで、それはあと1年と1ヶ月後と決めてるんだ」
 そう言って掲げてみせたのはラム酒の酒瓶であった。
 その言葉を聞いて深海人たちは意外そうな顔をする。彼女の勇猛な戦いぶりを見ていた彼等にとって、彼女はいける口だと思っていたのだから。

「海賊が社会のルールを語るなんて、ちゃんちゃらおかしい真似はしないが、自分のルールは曲げられないね」
 一本筋の通った彼女の矜持から出る言葉は、深海人たちにも理解される。
 そのような事情があるのなら、と深海人たちも無理にはお酒を勧めることはなかったが、ならば食べ物を、と彼女の前に運ばれてくる海の幸やらなんやらかんやら、もう訳がわからないくらい山盛りにされては、さすがの渦潮のマチルダも苦笑いするしかなかったかもしれない。

 そんな彼女が宴会の席を辞してアルクは深海島の外周部。
 手にしているのは深海人たちから受け取ったマルーラの実である。軽く指で弾いて宙に浮かぶマルーラの実。
「んー、この島でお宝っぽいお宝は、この実だけみたいだね。腐りそうだし、お宝として取っとくわけにもいかないか」
 確かにどれだけ保存が効くのかわからないが、食物であるマルーラの実を懐に忍ばせておくというのも、それはそれで問題あるだろう。
 この深海島アエーシュマには、マチルダの求めるお宝はもうなさそうであっった。
「今回の島にはあたしの求めるものはなさそうだ……」
 マチルダは島の外周部、空気の泡がポコポコと海上へと浮かび上がっていくギリギリまでやってきて、その方角をみつめる。

「けど、この実のおかげでわざわざお宝を持った奴がやってくるんだ。感謝せてもらうよ」
 彼女の瞳の先には、彼女の瞳と同じ色の名を持つコンキスタドールの襲来を見据えられていた。
 コンキスタドール『紅のフラップテイル』。彼女の持つ無限に酒が湧き出る杯。それこそが、今回マチルダの求めるものであろう。
 手で弄んでいたマルーラの身を弾く。
 この酒が凝縮したかのような実であれば、『紅のフラップテイル』をおびき寄せるのに使えるかも知れない。

 ゾワゾワとマチルダの心はお宝と戦いの気配に高ぶっていくのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
なぬ?その実、『壁を叩いたら出てきた』と?
……なんか引っかかるでござるなぁ。
失礼。その遺跡、調べさせてくれないか?
■行
【WIZ】
先ずは事前に遭った情報通り「コンコン」をする。
叩いてみると……うむ、やはり彼等が持っている物と
同じ実が出てきたな。

此の出現方法、そして機械たち……まさかとは思うが、
この機械は俺の故郷・キマイラフューチャーから落ちた
島にあったものだろうか?そしてその島が海に沈み……
ううむ、これ以上考えると頭から火が噴きそうでござる。

おっと、そろそろ敵が此処に辿り着きそうだな……
見せて頂き感謝する。皆は安全な場所に隠れてほしい。
これから“大変な事”が起こる故。

※アドリブ・連携歓迎



 海洋世界グリードオーシャンに存在する陸地、島々は元々グリードオーシャン以外の異世界より落ちてきた島である。
 それは元の世界の色を強く残したものであるものが多い。幻朧桜が舞い散る島はサクラミラージュより。宇宙船の残骸のような島は、スペースシップワールドより……と言った具合に、必ずどこかに異世界の片鱗が残ってるのだ。
 この深海島アエーシュマもまた、その一つであることは疑う余地がない。

 そして、この島において、コンコンすると出てくる実、マルーラ。
 その話を聞いた愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は、瞬時にあることを頭に思い描いていた。
「なぬ?その実、『壁を叩いたら出てきた』と? ……なんか引っかかるでござるなぁ」
 ん? んん? と清綱は首をかしげる。
 思い当たる節があるのだが、確証は持てない。実際に見てみなければと思い至るも、深海人たちは清綱を宴会の席から帰したくない様子であった。
 それもそのはずである。
 彼等にとって清綱たち猟兵は、島をコンキスタドールの斥候から守ってくれた恩人であるからだ。

「失礼。その遺跡、調べさせてくれないか?」
 アレも食べろ、これも食べろ、とひっきりなしに清綱の前に立ちふさがる彼等を穏便に引き剥がしながら清綱は遺跡へと向かうのだ。
 遺跡を調べること事態は問題ないようであり、清綱はなんとか住民たちの追撃の手を逃れてやってくる。
 目の前にした遺跡は何かを製造する機械のようである。
「先ずは事前にあった情報通り『コンコン』する……と、うむ、やはり彼等が持っている物と同じ実が出てきたな」

 彼の中で繋がっていくものがある。
 この出現方法、そして、見上げる機械。まさか、という言葉が頭の中に浮かぶ。
「この機械は俺の故郷・キマイラフューチャーから落ちた島にあったものだろうか?そして、その島が海に沈み……」
 彼の憶測と推察はほとんどそのとおりであった。
 だが、先に彼の頭が熱を帯びてくる。色々と慣れない考え事をしたせいだろうか。

「ううむ、これ以上考えると頭から火が噴きそうでござる」
 知恵熱というやつだろうか。
 やはり武芸に生きる者としては、小難しい事を考えるには向いていないかも知れないと清津は考えながら遺跡を後にする。
 この機械と島は元はキマイラフューチャーより落ちてきたものであると清綱の中では結論付けられた。

 もっと色々調べればわかることもあるのかもしれない。
 だが―――。
「おっと、そろそろ敵が此処にたどり着きそうだな……」
 彼の武芸者としての直感がそう告げる。
 そう、この島を狙っているコンキスタドール『紅のフラップテイル』。かのオブリビオンがもうすぐ島に至るだろう。
 それに島の住民たちを巻き込むわけにはいかないと清綱は宴会のどんちゃん騒ぎが行われている場所まで戻り、彼等に促す。

「見せていただき感謝する。皆は安全な場所に隠れて欲しい。これから“大変な事”が起こる故」
 それは戦いの気配。
 もしも、このまま『紅のフラップテイル』が現れれば、住民たちにも累が及ぶことがあったかもしれない。
 それに悪逆無道のコンキスタドールであれば、住民を人質に、盾に、とする非道を行う可能性もある。

 清綱は、その可能性を見逃さずに潰していくのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギヨーム・エペー
WIZ

おー、酒の匂いが強いなー!
うんうん、お酒美味しいね。でも俺休肝日だから実でも口にできないんだ。ごめんな!気持ちだけ受け取らせてくれ

しかし、なあ。対策か。これを口に含んで酔っ払ってくれたら誰もが幸せになれそうだよなー。隙も生まれやすくなるわけだし
一回コンコンしてみるか。なんでこんなものが出てくるんだろうなー
単純に酒の代わりだったんだろうか。消毒とか、掃除……燃料材?

…………この実、燃やしたらどうなるんだろうか。アルコールが爆発的に広がるとか?
……ちょっとだけ、かなーり遠くから、発火してみる。ぼや騒ぎしたらやばいけども!!



 深海島アエーシュマに漂う酒気は凄まじいものであった。
 普段からそうであるのかと疑いたくなるほどに、住民たちは歓迎ムードの宴会騒ぎに興じていた。
 彼等は猟兵たちが、この深海島へと至る前から猟兵たちの活躍を見ていたのだ。
 コンキスタドールの斥候である『アビス・ゴリラ』を蹴散らし、その魔の手から人々を守ってくれるのをしっかりと見ていた。
 だからこそ、彼等は猟兵たちが島へやってきた時、熱烈なる歓待をしてくれたのだ。

 口々に感謝の言葉を告げられ、じゃあ、飲もうか!という、もう脈絡もなにもないけれど、とにかく歓迎してくれていることがわかる住民たちの気性は、平時であれば微笑ましくも受け入れることができたのだが―――。
「おー、酒の匂いが強いなー! うんうん、お酒美味しいね。でも俺、休肝日だから、実でも口にできないんだ」
 ギヨーム・エペー(日に焼けたダンピール・f20226)はあっという間に住民たちに取り囲まれていたのだが、やんわりと杯を断っていた。
 休肝日というのが本当かどうかはわからないが、このまま場の雰囲気に飲まれて、ぐいっと駆けつけ一杯というわけにはいかないのだ。

 この後にコンキスタドール『紅のフラップテイル』との戦いが待っている。
 それを考えると、どうしたって飲むわけには行かない。
「ごめんな! 気持ちだけ受け取らせてくれ」
 そう言いながらギヨーム自身も泣く泣く酒の宴を断らないといけないことに惜しむ気持ちはあったのだろう。
 本当に申し訳無さそうにするギヨームに住民たちもこれ以上勧めるわけにもいかないと道を譲ってくれる。

「しかし、なあ。対策か……これを口に含んで酔っ払ってくれたら誰も幸せになれそうだよなー。隙も生まれやすく成るわけだし」
 そう言って住民たちから受け取ったマルーラの実を弄ぶ。
 こんなに小さい実であるというのに、一粒食しただけで巨象もたちどころに酔いつぶれるというのだから驚きである。
 それほどまでのアルコール度数が、この小さな実に凝縮されているのだ。
 そして、それは特産というよりも、この島を構成している壁をコンコンすると出てくるのだという。

「一回コンコンしてみるか……」
 軽く壁を叩くと、思った以上にどっさりマルーラの実が雪崩れてくる。そのひと粒を掴み上げてギヨームは考える。
 なんでこんなものが出てくるんだろうか? 単純に酒の代わりだったんだろうか。消毒とか、掃除……燃料材?
 様々な考えが駆け巡る。
 アルコールの用途。異世界の住人であり、様々な世界を渡り歩いたギヨームであれば、この遺跡のようになっている機械の用途もわずかながらに推察できる。

 強い度数のアルコールに火を付けて行うフランベやカクテルなどを思い描く。
 マルーラの実が出るコンコン。そして、機械。
 考えられるのは、マルーラの実を使って、機械で何かを製造する、ということ。
 消毒液、燃料……そしてお酒。
 どれが先で、どれが後かはわからない。けれど、どちらかが副産物として生まれることはあり得ない話ではなかった。

「……この実、燃やしたらどうなるんだろうか。アルコールが爆発的に広がるとか?」
 こうなるとギヨームにとっては好奇心が優先されてしまう。
 実の中で熟成されるアルコール。それが小さな実に凝縮されている……ということは。
 ちょっとだけ、ちょっとだけ、な! とギヨームがマルーラの実から離れて、発火させる。
 たった一粒でも盛大に燃え始めてしまい、慌ててギヨームは鎮火する。
 ボヤ騒ぎにならないでよかった、と胸をなでおろしながらギヨームは確信を得る。飲酒に足り得るアルコールは恐らく副産物だ。
 そして、マルーラの実、これを大量に機械に入れて生み出される燃料こそが、この機械の真の目的なのだろう。

「ははぁ……元がどんなこと使うかわからないけど……」
 遠くに聞こえる住民たちの宴会騒ぎ。
 あの楽しげな声を聞いて思う。この遺跡の機械が正しく彼等に理解されず、放置されているのは僥倖だった。
 今回のコンキスタドールとはまた別の意味で、これは争いの種だ。
 ゆっくりとこのまま機械の遺跡は朽ちていくだろう。けれど、それは何も惜しむことではない。

「あの人達、あんなに楽しそうだもんなー」
 あの笑顔を守ろう、そう心に誓ってギヨームは、これより訪れるコンキスタドール『紅のフラップテイル』を迎え撃つのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『紅のフラップテイル』

POW   :    ランバリオン
戦闘中に食べた【酒】の量と質に応じて【酔えない怒りで】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    Hangover!
【意識を混濁させる呪われたラム酒】が命中した対象に対し、高威力高命中の【怒りのこもったラッパ銃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    泥酔の杯
【杯から呪われたラム酒の雨】を降らせる事で、戦場全体が【泥酔している様な状態】と同じ環境に変化する。[泥酔している様な状態]に適応した者の行動成功率が上昇する。

イラスト:なかみね

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「なんだいなんだい、どいつもこいつも役立たずだね! まったく、島の連中は酔いっぱなし……あぁ……イライラしてきた……!」
 深海島アエーシュマに襲撃してきたのはコンキスタドール『紅のフラップテイル』。
 その容貌は酔わない動物ハネオツパイのキマイラの如き姿。
 それは手にしたメガリスである無限に酒の溢れる杯によって与えられた呪いによるものだ。
 呪いは、彼女の最も好きなもの―――酔いどれ気分であるアルコールへの耐性を跳ね上げさせ、まったく酔えなくなってしまうというものであった。

 だからこそ、今、猟兵たちを迎えて宴会ムードで酔いどれしまくっていたであろう雰囲気に腹を立てている。
 すでに猟兵たちの指示で住民たちは避難している。
 これで彼女の苛立ち任せに行う行動は取れなくなる。例えば、住民を人質にするだとか、盾にするだとか。そういうずる賢い戦いはできなくなっていた。

 さらに遺跡である機械、コンコンすればマルーラの実が出てくる装置の前には落とし穴。
 さらには彼女の気を引きそうな竜角、爪、鱗などが漬けこまれたマルーラの実で作られたお酒。これにはさすがの『紅のフラップテイル』も興味をそそられるであろう。

 それにマルーラの実事態が、今回、『紅のフラップテイル』の目的そのものである。
 持っているとなれば、攻撃の手は緩めることはない。つまりは、猟兵に釘付けというものである。
 猟兵の実験で得たのは、マルーラの実は高い着火性を持っているという事実。

 これらは猟兵たちが宴会の誘いを断り続けたからこそ得られた成果である。
 飲みたい者も居ただろう。
 宴会を楽しみたいと思った者も居ただろう。

 だが、今はコンキスタドール『紅のフラップテイル』を討ち果たさなければならない―――!

「あぁ―――!! どいつもこいつも、私より気持ちよさそうに酔いつぶれて―――!! 許せない!! 最低限の労働力以外は、全殺しにしてやる―――!!!」
 深海島アエーシュマに『紅のフラップテイル』の怒号が響き渡るのだった―――!
サフィリア・ラズワルド
POWを選択

酒瓶を敵の前に置きます。竜酒がどんな効果があるのかわからないし敵のUCは発動してしまうけど『酔えない?そんな貴女に!』本命は此方なので!

もう一本酒瓶を取り出します。赤くて液体以外何も入っていないお酒、さっきのは角や牙や鱗のブレンドだったけどこれは血だけを入れたマルーラのお酒、竜の血酒です!おとぎ話によると竜の血は強力な毒だったり延命の薬だったりするらしいです。

『飲みたいですか?そうですかそうですか!じゃあ……差し上げまぁぁぁぁす!』

思いっきり敵にぶん投げます。
酒瓶って武器になりますかね?

酒に酔えなくても動物の本能で血に酔えるかもしれませんね!

アドリブ協力歓迎です。



 その言葉は怨嗟であった。
 己にないものを他者が持っているという事実に対する妬み、嫉み。強欲の限りを尽くし、己の欲望のためだけに力をふるい、簒奪を繰り返した者の末路。
 それがコンキスタドール『紅のフラップテイル』という海賊の成れの果てである。
 手にした杯、メガリスである無限に酒がわき続ける杯をあおる『紅のフラップテイル』。一気にあおったにも拘らず、顔色一つ変えない。
「あ―――、クソッ、なんで酔えない……やっぱり酔えない……!」
 どんどんフラストレーションが溜まっていく『紅のフラップテイル』。しかし、そのいらだちこそが、彼女のコンキスタドールとしての戦闘力を引き上げていくのだから、皮肉であると言わざるを得ない。

 そんな『紅のフラップテイル』の前に現れたのは、酒瓶を抱えたサフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)である。
「マルーラの実のお酒でも酔えなかったら、どうします?」
 酒瓶の一つを敵である『紅のフラップテイル』の前に置く。
 その酒瓶の中には竜の角や鱗など、竜にまつわるものを漬け込んだ竜酒であることが伺える。
 それに目の色を変えたのは『紅のフラップテイル』である。酒豪でありながら、酒に酔うことができず、それを渇望するコンキスタドールにとって、竜酒というのは味わったのことのない未知なる酒である。

「マルーラの実のお酒で酔えなかったら、きっと貴方は当たり散らして住人たちを痛めつけるでしょう。なら、最初からこちらを試して下さい」
 敵である猟兵。
 互いに滅ぼし合う関係である猟兵から、そんな誘いを受けて乗るほど『紅のフラップテイル』は考えなしのコンキスタドールではなかった。
 だが、今は違う。
 彼女の目的である酒。マルーラの酒以上の度数を誇るであろう竜酒が目の前にあるのだ。
「罠―――って考えるのは筋なんだろうけれどねぇ……だが、それでも飲むに決まってるだろう!」
 苛立ちによって強化された『紅のフラップテイル』の身体能力は凄まじい。一瞬で酒瓶を取り上げて飲み干す。
 常人であれば、一瞬で意識を失う竜酒。
 だが、それでも―――。

「―――酔えない! アァ、クソッ! またッ! 酔えないッ!!」
 それでも『紅のフラップテイル』は酔うことができない。酩酊の入り口すら見えない『紅のフラップテイル』は駆け出す。
 だがそれを遮るようにサフィリアが声を発するのだ。
「もう一本あるんです。さっきのは角や牙や鱗のブレンドだったけど、これは血だけを入れたマルーラのお酒、竜の血酒です!」
 彼女はもう一本酒瓶を手にしていた。
 それは赤い色をしており、先程の竜酒と違い、赤い液体以外入っていなかった。彼女の言葉通り、それはマルーラ酒に竜の血液を混ぜた代物である。

 もはや度数は計測不能。
「御伽噺によると竜の血は強力な毒だったり、延命の薬だったりするらしいです」
 だから、今度こそ。
 その言葉に偽りはないかも知れない。けれど、『紅のフラップテイル』は足を止める。本当に酔えるのだろうか。
 ただでさえ強烈な力を持つ竜種、しかも血液を混ぜたもの。曰く付きであると言えば、それまでであるが、今の『紅のフラップテイル』にとっては、保証書付のようなものに思えて仕方なかった。
 アルコールに依存した者の瞳に映るのは、強い酒か弱い酒かではない。
 酒かそれ以外の飲み物かの二択である。

「飲みたいですか?そうですかそうですか!じゃあ……」
 一瞬、サフィリアが何をしているのか、『紅のフラップテイル』はわからなかった。手にした酒瓶、竜の血酒。それをおおきく振りかぶって―――。

「―――差し上げまぁぁぁぁす!」
 彼女のユーベルコード、グラウンドクラッシャーが発動する。
 単純で重い酒瓶の一撃。それはサフィリアの膂力と絶妙なるコントロールを持って投げ放たれる一撃。
 酒瓶の底が綺麗に『紅のフラップテイル』を目掛けて飛んでいく。一瞬の攻防だった。だが、一瞬でよかったのだ。
 酒に目がくらんだ『紅のフラップテイル』の虚を突き、その一撃を畳み込む。酒瓶の底が綺麗に眉間へとぶつかり、盛大な音を響かせる。

 酒瓶が割れる音、そして『紅のフラップテイル』の痛みと怒りに奮える絶叫が深海島に響き渡る。
 投げはなった本人であるサフィリアは言う。
「酒に酔えなくても、動物の本能で血に酔えるかもしれませんね!」
 それは眉間を酒瓶で叩き割られた『紅のフラップテイル』への痛烈なる皮肉となったのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

安里・真優
【心境】
しかし、このコキンスタドール…明らかに飲酒に対して目的と手段が迷走していますね…
あなたの人生の敗因は…酔い以外に酒の楽しみを見いだせなかった。
その心の狭さです。

【行動】
さて、このあたりでご退場願いましょうか。
『魔力溜め』+『砲撃』=エネルギーボルト
『属性攻撃』+『全力魔法』=ファイアーボルト
の『多重詠唱』による同時魔法攻撃です。
どうですか、私の魔法だったやるときはやります。



うっぷ気持ち悪い。
これが泥酔の杯ですか…
お酒は二十歳から…
ダコタン。タコ墨です『深淵からの呼び墨』で環境を上書きしてください。
酔っ払いは…迷惑だ――――ッ



【その他】
アドリブ+協力は歓迎です



 深海島アエーシュマに鈍い音が響き渡る。
 それは猟兵の一人が放った酒瓶の一撃。その単純にして重い一撃はコンキスタドール『紅のフラップテイル』の額を割る。
 流血と一撃の痛みに咆哮する姿は、まさに獣そのものである。
「どいつもこいつも、私の楽しみの邪魔ばかりをする……! 私が酔える酒をもってこい……! メガリス!」
 その言葉と共にメガリスたる無限に酒の湧き出る杯より降り注ぐのは呪われしラム酒の雨。
 戦場となった深海島アエーシュマにラム酒の雨が降り注ぐ。
 それは、この戦場を泥酔しているような状態に塗り替えるユーベルコードである。酒気を帯びた空気が猟兵たちの鼻腔を刺激し、吸い込んだが最後、泥酔したかのような気持ちの悪さが襲ってくるのだ。

「しかし、このコンキスタドール……明らかに飲酒に対して目的と手段が迷走していますね……」
 安里・真優(巨人の冒険商人・f26177)の巨躯がわずかに左右に揺れる。
 戦場がすでに泥酔したかのような状態になったがゆえに、彼女の巨躯であっても、影響は免れない。
 体揺れる。頭の中で釣り鐘を鳴らされているような感覚が続くのだ。
 巨人であっても彼女とてまだ未成年。未だ飲酒の楽しみも、飲酒の後に襲ってくる酩酊状態も経験したことがないのだ。
「うっぷ気持ち悪い。これが泥酔の杯ですか……」
 あまりの気持ち悪さに真優の足がもつれそうになる。千鳥足というやつであろうか、足元がおぼつかなくなり、平衡感覚が喪われる。
 この状況で戦うのは確実に振りどころではない。『紅のフラップテイル』は酔うことがない。それ故に、この戦場において猟兵に圧倒的なアドバンテージを得ているのだ。

 これはまずい、とペットであるダコタンが飛び出す。
「ダコタン。やっちゃってッ!!」
 彼女のユーベルコード、深淵からの呼び墨(シンエンカラノヨビスミ)が発動する。それは冒涜的な色をした彼女のペットである蛸のダコタンが噴き出す、ちょっと怪しいタコ墨を雨のように降り注がせる。
 そのタコ墨は、戦場を墨で塗りつぶすように酒気を帯びた空気をかき消していく。

 いや、塗りつぶしていると言ってもいいだろう。
 そして、ダコタンが塗りつぶした戦場は、タコ墨の範囲をグリードオーシャンの深海と同じ環境に変化させる。
 今、この時だけは、ここは深海と同じ状況なのだ。
 圧倒的な水圧が互いを襲うが、真優は巨人であり、深海への適応もできる。
「あなたの人生の敗因は……酔い以外に酒の楽しみを見いだせなかった。その心の狭さです」
 深海環境に適応した真優の魔力が体の内側から渦巻いて溜め込まれていく。

「ほざけ―――! 酒も飲めない小娘風情が―――!」
 『紅のフラップテイル』が真優に襲いかかる。だが、それはすでに遅きに失するものだった。
 彼女は深海に適応できていない。それでも強化された体は圧倒的な脚力と膂力でもって飛びかかる。そんな『紅のフラップテイル』へと向けるのは多重詠唱による魔法攻撃。
 魔力を貯めた真優の二つの魔法攻撃が『紅のフラップテイル』の体を撃つ。盛大に放たれた魔力の渦は、コンキスタドールの体を散々に打ちのめし、タコ墨に塗れた地面へと叩きつけられる。

「どうですか、私の魔法だってやる時はやります」
 タコ墨に塗れ、深海と同じ水圧に身を晒しながら、膝を折る『紅のフラップテイル』を見下ろし、真優は宣言するのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
イラつく姿を見て
「本当に始末に負えないな。
この酔っ払い…、じゃあないか。」
酔うのを諦めればいいのにそれが出来ないのも
また呪いなのか。それとも性分か。

泥酔しているような状態になり
「酒を飲んだ事ないからか。
頭が痛くて目もかすむ。
それなのに酔いたいなんて気が知れないね。」
と苦労しつつも真羅天掌を発動。
浄化属性の暴風を引き起こして酔いを覚ますと共に
ラム酒の雨を吹き飛ばす。
「さて、酔いも覚めたし。
そろそろ酔えない酔っ払いを片付けるとしよう。」
暴風で敵の動きを封じる間に
呪装銃「カオスエンペラー」に魔力を集中。
【呪詛】を込めた【マヒ攻撃】の死霊を放ち
【2回攻撃】で連続攻撃【全力魔法】で破壊力を高め攻撃。



 タコ墨をぶちまけられた戦場において、そこは深海と同じ環境と同じであった。
 だが、その効果を脱した『紅のフラップテイル』は再び、ユーベルコード、泥酔の杯を発動させる。
 呪われしラム酒の雨が降り注ぎ、そのタコ墨で黒染まった領域を再び酒気を帯びる領域へと変えていく。
「どれだけ酒の雨があっても、酔えないんじゃあ意味がない……! 私以外の誰かが酔っている姿も気に食わない……! どいつもこいつも、私が求めて止まない心地よい酔いに包まれて気に食わないッ!!」
 メガリスの呪いによって呪いを受けた体では、ラム酒の雨が降ろうが、この深海島アエーシュマにて採れるマルーラの実からできる酒を浴びても尚、酔うことができないのだ。

 欲望の果てにある姿が『紅のフラップテイル』の末路である。
「本当に始末に終えないな。この酔っぱらい……じゃあないか」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は、酔えずに苛立つ『紅のフラップテイル』の姿を見て吐き捨てる。
 呪われしラム酒の雨が降り注ぐ戦場は、すでに泥酔状態に適応した者以外はまともに動くこともできなくなってしまう。
 これだけの状況であっても『紅のフラップテイル』は酔うこともできずに、己の欲望を邪魔せんとする猟兵を駆逐しようと動くのだ。

「酔うのを諦めればいいのに、それが出来ないのも、また呪いなのか。それとも性分か」
 フォルクの体がぐらつく。頭が揺れる。フードに隠れて見えないが、顔色も変わってきていることだろう。
 視界が歪み、迫りくる『紅のフラップテイル』の姿が歪に見えてしまうのだ。だが、それでもふらつく足取りで『紅のフラップテイル』の攻撃を躱す。
「酔うのを諦めるなんてふざるんじゃあない! わたしは、永遠に酒を飲み、酔いしれたいのさ! あらゆるものを手に入れるという喜悦、その全てを味わいながら、酒という酒を浴びてね!」

 その欲望は底なしであったのかも知れない。だからこそ、呪いを受けた体は、彼女の底なしの欲望の器を狭めた。
 ただ酔いたい。
 それだけしかもう『紅のフラップテイル』には欲望は残されていないのだ。
「酒を飲んだ事がないからか……頭が痛くて目も霞む。それなのに酔いたいなんて気がしれないね」
 フォルクの体を襲う酩酊状態は酷いものであった。
 この感覚を味わいたいと『紅のフラップテイル』は言う。理解に苦しむ欲望だとフォルクは思う。

 彼のユーベルコード、真羅天掌(シンラテンショウ)が発動する。
「大海の渦。天空の槌。琥珀の轟き。平原の騒響。宵闇の灯。人の世に在りし万象尽く、十指に集いて道行きを拓く一杖となれ」
 舌ももつれるほどの酩酊は、未だ続く。
 けれど、彼のユーベルコードは、彼の掌の中で浄化の属性の防風を生み出す。それは制御の困難故に、泥酔といっても良い状態で行うには難しいユーベルコードであった。

 だが、吹き荒れる風がラム酒の雨を吹き飛ばす。
 そうすれば戦場を覆っていた酒気も吹き飛ばされ、彼の体を蝕む泥酔状態もまた吹き飛ばされるのだ。
「―――さて、酔いも覚めたし。そろそろ酔えない酔っ払いを片付けるとしよう」
 その手をかざす。暴風が彼の掌によって完璧なる制御を見せる。
 今までの泥酔状態ではない完璧なる状態。彼が頭を振る。
 手にしたのは呪装銃『カオスエンペラー』。幾多もの死霊を顕現させて放つ弾丸は、暴風に巻き込まれて身動きの取れない『紅のフラップテイル』を捉える。

「酔えないなら酔えないなりに……酒飲み方っていうものがあるだろう」
 呪詛の籠められた死霊の弾丸は、過たず『紅のフラップテイル』の体を穿つ。さらに全力で魔力を練り上げた一撃が、その呪いの体をうち貫くようにして放たれる
 痛みに喘ぎ、それでもなお、酔えぬ体を呪う『紅のフラップテイル』の姿を視界に収めながら、フォルクは盛大にため息を吐く。

「―――酔う努力の前に呪いを解く努力をしたほうが賢明だろうに」
 だが、その言葉は『紅のフラップテイル』に終ぞ届くことはなかったのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
むむむ?今度はキマイラのような者が現れたぞ。
となると彼は落ちてきた島の住人で、後に……
うむ、考えるのは後だな。
■闘
引き続き【水泳】をしつつ戦闘を行うぞ。勿論平泳ぎ。
して、苛々しているようならそれを利用してやるか。
先ずは敵が向かってくる瞬間を【見切り】つつ躱し、
【残像】を伴う水中【ダッシュ】で逃げ回り距離を取る。
最低でも60mくらいは取っておく。

相手から離れてからが本番でござる。
フラップテイル目掛けて居合の構えを取りつつ、そこから
【早業】の抜刀で【空薙】を放ち、頭から真っ二つだ。

此処に其方が存在することは赦されない。分かっているだろう?
其方の在るべき『海』は此処でないことを。

※アドリブ・連携歓迎



 オブリビオンであるコンキスタドール『紅のフラップテイル』。
 その姿を見て、己が郷里に住まう人々を思い浮かべるのは、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)である。
「むむむ? 今度はキマイラのような者が現れたぞ」
 彼の目の前にはツパイ目と呼ばれ、かつてキネズミと呼ばれた動物の特性を持つ獣人のコンキスタドールがいた。
 猟兵たちの攻撃にさらされ、その身は傷ついてはいるものの健在そのものである。ゆらりと立ち上がる姿は幽鬼のようであり、また酒に酔う者の足取りのようであった。
 だが、それでもメガリスの呪いによって酔うこともできずに苛立ちを見せる。

「となると、落ちてきた島の住人で、後に……うむ、考えるのは後だな」
 清綱は難しく考え始めるとどうにも知恵熱が出そうになってしまう。
 戦いに集中するために、雑念である深海島のことはとりあえず、頭の端に追いやるのだった。
「あぁ……まだ酔えない」
 黄金の灰を傾け、尽きることのない酒を煽っても尚酔えない苛立ちに『紅のフラップテイル』は忌々しげに表情を歪める。
 その先にあるのは己の苛立ちをぶつけるための存在、猟兵がいた。苛立つ。マグマの如き身のうちから溢れる苛立ちは、さらなる力を『紅のフラップテイル』へと与えるのだ。

 その強化された体で跳ね上がると、深海島を包み込む空気の泡から飛び出す。
 それを追って、清綱もまた水中へと飛び込むのだ。得意の平泳ぎで水をかき分け、逃走し、態勢を整えようとする『紅のフラップテイル』を逃さない。
「まったくもってしつこい―――!」
 手にしたマスケット銃の銃口を清綱に向ける。
 水中であっても、その強化された戦闘力で放たれる弾丸は地上で放つものと遜色ないだろう。
 放たれる弾丸。
 それでも清綱は弾丸の軌道を見切り、交わしながら距離を保つ。接近戦では、強化された肉体による膂力には敵わないと判断したのだろう。

 構えるは居合の構え。
「空薙……」
 ユーベルコード、空薙(ソラナギ)。
 それは居合の構えから放たれる絶技の如き剣技である。空間さえも断ち切る一太刀の前には、距離は意味を成さない。
 そして、彼我の間にある海水であったとしても、この剣閃を阻めるものではないのだ。

 放たれた一撃は、袈裟懸けに『紅のフラップテイル』の体を切り裂く。
 さらに急接近した清綱の蹴撃が、その体を海中から再び深海島へと叩き落とすのだ。
 再び深海島へと叩き戻された『紅のフラップテイル』が忌々しげに見上げる先にあるのは、猛禽の翼を広げる清綱の姿。
「此処に其方が存在することは赦されない。わかっているだろう?」
 其の言葉は宣告であった。
 この海、海洋世界グリードオーシャンにおいて、コンキスタドールとは過去の化身であるオブリビオンである。
 此処は現在。今を生きる人々のための時間だ。
 故に、この海にいてはならないのだ。

「其方の在るべき『海』は此処ではないことを」
 再び放たれる剣閃は『紅のフラップテイル』を十字に切り裂き、深海島へと釘付けにするのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギヨーム・エペー
わあ。……うわあ、おれだったらずっと退屈が続いている状態か
それは、腹も立つし八つ当たりするよね。おれはしないけども
マルーラの実はもう食べた?どちらにせよ、欲しいだろこれ!
フラップテイルにマルーラの実を投擲して、火を放つ。フレイミングショットでも飲み込めるか?

酒の雨かー。髪がべた付くから嫌だなって……うおっとと。え、ふらつく?
……酔ってるね!?酔いの感覚、ある!泥酔するまで飲まねえから経験ないけどこれ、うおこれやべえな吐き気がすごい
え、なに太陽。早く攻撃しろ呪文唱えろって?
……おれこの状態で詠唱要求されてんのか。マジか。呂律回らず噛んでも許せよ太陽!!



 深海島から逃走しようとしていた『紅のフラップテイル』の行動は猟兵の一撃によって看破された。
 返り討ちにせんとする『紅のフラップテイル』を逆に深海島へと叩き落とし、その身に消えぬ十字の傷痕を刻み込まれた。
「くそ忌々しい猟兵が……! 私の邪魔をするだけでは飽き足らず……!」
 黄金の杯、メガリス。
 その秘宝の呪いによってツパイ目、キネズミと呼ばれた動物の姿に変えられた海賊の末路がこれである。
 どれだけ酒を煽ろうとも、酔うことができない。

「わあ。……うわあ、おれだったらずっと退屈が続いている状態か。それは、腹も立つし八つ当たりもするよね。おれはしないけども」
 ギヨーム・エペー(日に焼けたダンピール・f20226)は、そんな『紅のフラップテイル』の身を苛む呪いに一定の理解を示した。
 だが、決定的に違うのは彼が誰かに八つ当たりをすることはないということだ。己の問題を誰かになすりつけることはしない。
 だからこそ、彼は猟兵でるのだ。

「マルーラの実はもう食べた?どちらにせよ、欲しいだろこれ!」
 何を、と『紅のフラップテイル』がギヨームを見やる。
 彼女の目的は確かにマルーラの実である。巨象すらも簡単に泥酔させる魔性の実。それを求めてやってきたのだ。
 マルーラの実を投げつけ、それを視線で追う『紅のフラップテイル』。それが攻撃であれば、躱すなり受け止めるなりしただろう。
 だが、投げつけられたのは求めていたマルーラの実である。無防備にもそれを手にしようとした瞬間、ギヨームの放った火によって強烈なる着火剤にもなり得るマルーラの実が弾ける。

 炎が巻き上がり、『紅のフラップテイル』の身を焦がす。
「フレイミングショットでも飲み込めるか?」
 それは強烈なアルコールを含むがゆえの現象。
 放たれたマルーラの実から吹き上がる炎を受けて『紅のフラップテイル』は悶え苦しみながら、ギヨームを睨めつける。

「泥酔の杯よ……!」
 再び戦場が呪われしラム酒の雨に晒される。
 それは戦場全体に存在するものを泥酔状態へと強制的に導くものである。泥酔に耐性のあるもの、適応した者以外は、酩酊状態のまま戦わねばならないのだ。
 猟兵であっても、その泥酔状態から逃れる術を持たぬ者は―――。

「酒の雨かー。髪がベタつくから嫌だなって……うおっとと。え、ふらつく?」
 ぐらりと視界が揺れる。歪む。
 う、と思えば今度は体の平衡感覚がおかしくなっているのを自覚する。けれど、それは自覚したからと言って修正できるものではない。
 あれれ?とギヨームがたたらを踏む。これはまさか。
「……酔ってるね!?酔いの感覚、ある!」
 まずい、とギヨームは思った。泥酔するまで飲んだことがないからこそ、初めての感覚に戸惑うのだ。
 ラム酒の雨とか髪がべとつくから嫌だとか言ってられなくなってきてしまう。髪をかきあげ、それでも頭が揺れる。

「うおこれやべえな、吐き気がすごい」
 ぐらぐらと体が揺れながら、『紅のフラップテイル』より放たれるマスケット銃の弾丸を躱す。さながら酔拳の如き挙動でギヨームはなんとか攻撃を交わし続けるのだ。
「え、なに太陽(ソレイユ)。早く攻撃しろ呪文唱えろって?……おれこの状態で詠唱要求されてんのか。マジか。うっ、太陽が3人……んん?」
 これは完全に不味い。
 舌がまわりきらなくなってきている。このままではやられてしまう。
 ふらつく足取りのまま、ギヨームは腰に力を入れる。き、と眦に力を籠めていないとまぶたが落ちてきそうになる。

「その車輪の……」
 ユーベルコード、système solaire lotus(システムソレールロテュス)が発動する。途中、もにゃもにゃと舌が回っていなかったが、それで良しとされたのだろう。優しい。
 彼のまわりに魔術の炎が浮かび上がる。それは一万度まで温度が上昇すると言われる炎。
 放たれるそれが、どれほどの力を持つのか。途方も無い熱量が放たれ、『紅のフラップテイル』の実を焦がす。

 ラム酒の雨を蒸発させ、放たれた炎によってギヨームも漸く正気を取り戻す。
 あの詠唱のもにゃもにゃ。
 それを思い出して、ああ……と頭を抱える。それは酒飲みが必ず目の当たりにする酒の力の凄まじさであったのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

マチルダ・メイルストローム
やっと来たか、待ってたよ。
酔えない呪いにかかってるんだってね? どれだけ苦しいかは知らないけど、解決方法は探してきてやったよ。
簡単なことさ。大人しくぶっ殺されて呪いごとそのメガリスを寄越しな! そうしたら、最期に飲む酒は酔えるかもしれないよ?

秘宝「メイルストローム」での近接戦闘で敵に張り付いて戦うことで、可能な限りあっちが酒を飲むのを妨害するよ。
ほっといたらどんどん強くなってくだけだし、持久戦も性に合わない。『早業』と『怪力』の剣捌きでガンガン攻めてこう。
あっちがあたしの間合いの外に出て酒を飲もうとしたら【エッジ・ストリーム】でぶった切る!
こいつもあんたの盃と同じでね。ただの剣じゃないんだ。



 呪われしラム酒の雨が降りしきり、炎によって蒸発し消え失せる。
 『紅のフラップテイル』にとって泥酔とは、かつて在りし己の全てであったのかもしれない。永遠に酒の尽きぬ杯、メガリスを手にした瞬間に喪われた全て。
 その呪いは決して酔えぬ獣の姿と、その特性を持ってどんなにアルコールを摂取しても酩酊できぬほどの耐性を身に着けてしまった。
 それは彼女にとって、最大の楽しみを奪われたものと同義である。

 楽しみのない人生は灰色そのもの。
 過去の化身であるオブリビオン、コンキスタドールへとなった今でも呪いは解かれることなく存在している。
 だからこそ、『紅のフラップテイル』は求める。決して酔えぬ体を酔わせる絶対的な酒。それはもはや神酒と言っていいほどのものである。
 この広い海洋世界グリードオーシャンにならばあるのかもしれない。
 だが―――。

「やっと来たか、待ってたよ」
 それはもはや叶わぬ夢であると立ちふさがるのは、マチルダ・メイルストローム(渦潮のマチルダ・f26483)である。
 そのはてなき宝に対する欲望は、コンキスタドールをして及ばぬものである。求めるものは互いに秘宝である。
 ならばコンキスタドールとは決して相容れぬ存在であり、滅ぼし合う関係でしか無い。
「酔えない呪いにかかってるんだってね?どれだけ苦しいかは知らないけど、解決方法を探してきてやったよ」

 其の言葉は『紅のフラップテイル』をして動揺させるものであったに違いない。
 酔えぬ体を酔わせる酒を求めるのが、解決策であると信じて疑わなかった彼女にとって、目の前の女海賊の言葉は青天の霹靂であった。
「何を……言っている?」
「感嘆なことさ。大人しくぶっ殺されて呪いごと、そのメガリスを寄越しな!」
 まさに女海賊。
 欲しいものは奪う。他の誰かが手にしているのならば、それは誰かの所有物ではなく、いつか自身のものになるべきもの。一時の保管場所に過ぎないのだ。
「そうしたら、最期に飲む酒は酔えるかも知れないよ?」

 マチルダの体が深海島アエーシュマの大地を疾駆する。
 その踏み込みと共に放たれる斬撃は鋭い。

 マチルダの曲刀と『紅のフラップテイル』の持つマスケット銃の銃身がかち合う。
「勝手なことをほざいて―――!」
 互いに譲れぬものがあるのならば、決闘にて決着をつけるが海賊の流儀。
 マチルダの剣撃は、息もつかせぬ勢いであった。それは『紅のフラップテイル』にメガリスの杯から溢れる酒を飲ませぬ目的があった。
 酒を飲んでも酔えない苛立ちを感じるほどに『紅のフラップテイル』が力をましていくのであれば、長期戦は苛立ちを招き、力を増すためのきっかけになり得るだろう。

「持久戦ってのは性に合わないんでねぇ!」
 早業の如き剣撃と怪力は徐々に『紅のフラップテイル』を追い詰める。だが、それすらもマチルダにとっては、一連の罠である。
 剣戟の猛攻は、『紅のフラップテイル』に彼女のユーベルコードへの警戒を緩めさせるためのもの。
「それはこっちの台詞だ! ああ! 邪魔、だ―――!」
 マスケット銃の銃身が振り回され、マチルダが一歩足を引く。
 その瞬間を待っていたようにメガリスの杯を煽ろうとして、『紅のフラップテイル』は戦いの駆け引きに置いて、己が敗北したのを知った。

「そうするだろうと思っていたのさ―――!」
 彼女のユーベルコード、エッジ・ストリームが発動する。間合いを一瞬で詰めたマチルダの持つ曲刀。
 それが振るわれる。その刀身より放たれるのは水の刃。水圧によって、どんなものをも貫き切断せしめる。
 その一撃が振り切られ、マチルダは曲刀を肩に背負いながら言う。

「こいつもあんたの盃と同じでね。ただの剣じゃないんだ」
 秘宝『メイルストローム』。それはマチルダが見つけたメガリスである。手にした者に海流を操る力を与える曲刀。
 それが彼女のユーベルコードと合わさる時、断てぬものなど存在しない一撃となって放たれるのだ。

 足元に転がってきた黄金の杯、メガリスを手にし、その中身をこぼすようにして、『紅のフラップテイル』へと振りかける。
 だが、両断された『紅のフラップテイル』の怨嗟の表情と共に、その亡骸は骸の海へと還っていく。
「どうやら最期の酒も酔えなかったようだね」
 彼女の手の内で骸の海へと還っていくメガリス。コンキスタドールたらしめる要因であるそれもまた霧散していく。

 こうして、散々に深海島アエーシュマを騒がせたコンキスタドールの侵攻は此処に潰えたのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年06月13日


挿絵イラスト