[Ecilaの旅]見知らぬ記憶、見知らぬ日常
●それは本当に私の記憶?
コンクリートジャングルの大都会、満員電車に揺られ朝から上司に説教され同僚達からも余分な仕事を押し付けられエシリアはどんよりとした気分で業務に励んでいた。
時計はすでに夜の9時を回ってしまっている、会社には他に誰も残ってはいない。
エリシアの馬の毛のような癖っ気の赤茶の髪は雑に結ばれ手入れもあまり行き届いていない様子、大きめの眼鏡ごしに覗く瞳は将来への不安で濁りそして押し潰されそうになっている。
「仕事……終わらないな……」
電子ファイルで送ればいい物を全て一人でコピーし後でそれを全員分ホチキス留めし朝までに用意しなければならない。
そういえば給湯室のお茶も朝一番に入れないといけないので湯飲みなども洗っておかないと、さらにはモップ掛や鉛筆を一本一本ナイフで削るよう言い付けられている。
このご時世に電子機器を使わせてもらえず全てがアナログ、シャーペンすらも禁止で鉛筆を削るのも勤労に感謝せよと鉛筆削りの使用も禁じられナイフで一本一本削らねばならないのだ。
それを上司も同僚も誰も手伝ってはくれない、ただエシリアが失敗したりやる事が遅ければ叱責するばかりのこれはただの虐め。
だがこの生活は“やめるわけにはいかない”し、“逃れる事などできない”のだ。
(「クリスマスと正月どうやって過ごそうかな……」)
年末は近い、そうすれば休みはゆっくりと休息がとれるはずだ……そう思うエシリアだがそれはこの世界に囚われた11月の記憶。
実際にはもうクリスマスの時期などとうに過ぎ翌年の初夏になっている。
あまりのブラックな環境に時間間隔までもがエシリアから失われようとしていた……。
●囚われのエリシア
庭園迷宮で記憶のしおりを手に入れたエシリア、そこで見た光景……四角い建物が並ぶ街並みそして車輪のある鉄の箱が駆け巡る道。
溢れんばかりの人人人、それが何なのかはわからない……だがそこへと至れば前へと進めたはずだった。
だが見ての通りエシリアは今この世界に捕らえられている、全ては偽りの日常偽りの記憶。
ここは現実世界ではない、そうここもまたオウガの作り出した「不思議の国」の一つでしかないのだ。
住民も何もかもがオウガによって作り出された幻、食べごろになるまで苛めて虐めて苛め抜いて初めて美味しくいただこうというオウガの巣。
そしてその時は刻一刻と近づいてきていていた、苛め抜かれ疲れ切りつつあるエシリアが限界を迎えるのももはや目の前なのだ。
●グリモアベース
「皆さん集まっていただいてありがとなのです、アリスと呼ばれている方の一人がこのままではオウガに食べられてしまうのです」
グリモア猟兵の文車・妖は集まってくれた猟兵達にペコリと頭を下げると一枚の写真を取り出した。
それは一目見るだけならばUDCアース世界の日本の大都会、いわゆる都心部のビル街に見えるそんな光景なのだが……。
「これは信じれないのですがアリスラビリンスの光景なのです、ほら通行人をよく見ると」
そういって妖が指し示す通行人は確かにこれは人間などではない異形の者、そしてそれは恐らくは不思議の国にいるというアリスを喰うオウガなのだ。
「エリシアさんというこの方は記憶を無くし囚われてしまっています、嫌な上司や同僚そして通りがかりの人に化けたオウガや配下達からの虐めにめげたりしないよう励ましたり手伝ったりしてあげてほしいのです」
だがそこでユーベルコードを派手に使ったりしてしまうとオウガ達は逃げてしまうかもしれないのでまずはエリシアの手助けする方向で動いて欲しいという事だ。
「オウガが強硬手段に出るまではこちらもエシリアさんを肉体的にも精神的にも手助けしてあげてくださいです」
記憶を探す旅の中さらに“アリスである”という記憶まで封じられたエシリア、彼女の苦難は未だここで続いている……。
轟天
このシナリオは[Ecilaの旅]シリーズとして一人のアリスである『エシリア』を舞台装置としてウノアキラMSさん(msf0000556)と雅瑠璃MSさん(msf0001089)と三人で不定期連載していく予定です。
たぶんシェアード・ワールドっぽくなると思います。
●前回のお話はこちらになります。
『[Ecilaの旅]雲の上でかくれんぼ〜記憶を探して』
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=11667
『[Ecilaの旅]見知らぬ記憶~彼方への扉を求めて』
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=14755
とはいえ前作に目を通さなくても大丈夫な造りとなっておりますので初見の方もどうぞお気楽にご参加お待ちしています。
●
第一章では現代社会を模した会社内でオウガ扮する上司や同僚達からの虐めから彼女を守ってあげてください。
ここではあまり事を荒立てずに進めないとオウガ達が逃げてしまいます。
第二章では屈しないエシリアに対し、オウガの配下達が正体を現し襲い掛かってきますので迎え撃ってください。
第三章ではいよいよ業を煮やしたオウガがその正体を現し戦いに発展します。
このオウガがエシリアの記憶の鍵である「白いしおり」を隠し持っており、これが無ければエリシアの記憶は永遠に失われ先へ進めなくなってしまいます。
これはオウガを倒すことでエシリアの元へと戻りますのでやる事はとってもシンプル、悪い奴をぶっとばそう!です。
●エシリア
アリスは次のユーベルコードを会得していますが、使いこなせていない上にボスにはほぼ通用しません。足手まといになるので戦術には組み込まないでください。
【ゴッド・クリエイション】
自身の創造物に生命を与える。身長・繁殖力・硬度・寿命・筋力・知性のどれか一種を「人間以上」にできる。
第1章 冒険
『嫌な現実の国』
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POW : 嫌な奴の嫌がらせに対して、「アリス」を正面から庇う
SPD : 素早く細工や手回しを行い、嫌な奴の嫌がらせをわかりやすく妨害する
WIZ : 親身になって「アリス」の話を聞き、慰めてあげる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
播州・クロリア
(なるべく優しい声で「お疲れ様です」と話しかける)
大丈夫ですか?とても疲れていらっしゃいますね
このまま続けていても作業効率は悪くなるばかり
少し休憩をしましょう
安心してください。休んでいる間、私が代わりとなって
お仕事致しますので...
(『ハッキング』と『鍵開け』で社長室の扉を開けてソファーにエシリアさんを寝かせる)
え?勝手に使っていいのか?
鍵は私が開けたんだから
貴女にはなんの問題ありません
(『催眠術』で眠らせた後、クロリアはオフィスで目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始め『念動力』を使いながら仕事を開始する)
仕事のリズムはつかめました
後数分もあれば完了でしょう
●
時計はすでに深夜を指し今日もエシリアは一人社内に残り仕事を続けていた。昨日も一昨日もずっとこんな状態が続き疲労困憊でもう家に帰ったのはいつだっただろうかと思えるほどに追い込まれている。
表では異形な姿をしたサラリーマン達がすでに仕事を終え飲み屋などで騒ぎ酔っ払いが帰宅していく姿ばかりが目に入りほぅと溜息が出てしまう。
(まだ今日もこんなに会議の資料が……)
山積みの仕事が残され(しかも実際には必要のないものばかりだ)それを整理して職場を掃除し終えた頃には日付が変わっていることばかりな日々に頭がぼやけてきてしまう。
記憶を求めて世界を旅するアリスであるエシリアがこの世界に囚われゆうに半年を越えてしまっていた。
その間……じわりじわりと精神を削られただただ日々を過ごす生活に心が死んでいくのは自分でもわかる。
だがそれでも何処にいけばいいのかと肝心な答えは頭に浮かんでこない、この悪夢の世界の囚われ人……それが今のエシリアなのだ。
「お疲れ様です」
優しい声が背中から聞こえてきた、罵倒され貶されるばかりの日々でどれくらいぶりだろうこんな優しい声をかけてもらえたのは。
「えっ……あなたは?」
「私はクロリア、そうですね……あなたの助っ人にきました」
にっこりと微笑みその手を握りしめてくれる播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)にエシリアはうっすらと涙すら浮かべそうになってしまう。
「大丈夫ですか? とてもお疲れのようですね……このままでは作業効率が悪くなるばかり少し休憩をしましょうね」
そう言いつつも施錠されているはずの社長室の扉を勝手に開け中へと導くクロリア、目を丸くしているエシリアをソファーに寝かせようとする。
「えっ……あの、勝手にここを使ってはその……っ」
「大丈夫! 勝手に開けたのは私、貴女にはなんの問題もありません」
そう言いながら指をパチンと鳴らすとエシリアも瞼は重く閉じていきすぐに安らかな寝息が聞こえ始めた。
よほど疲れていたのだろう、催眠術はきっかけにすぎずすぐに熟睡しているのが見て取れる。
「さて、こちらも始めますか」
オフィスの中心で手を両手に広げるとまるでダンサーのように可憐にその場で踊り始めた。
それと呼応して動き始める文房具や書類たち、ダンスの動きに合わせるように念動力での一大作業が高速で行われていく。
仕事のリズムを掴んだクロリアにとってはこれはあと数分で終える事ができる作業。
(オウガの出方が見物ですね)
こんな嫌がらせだけの世界から早く彼女を救ってあげなければ、クロリアはそう思いつつエシリアの安らかな寝顔に視線を送った。
大成功
🔵🔵🔵
マリオン・ライカート
・心情
…ある意味では牢獄だね
真綿で首を締める様に、鑢を掛ける様に…
緩やかに確実に心を削る…そんな世界
ここがエシリア嬢が元居た世界…なのかな?
・行動
取り合えず、エシリア嬢が休めている内にボクにでも出来そうな作業を手伝っておこうかな
そうだね、鉛筆削りは手伝えそうかな
使う時の力加減は必要だけど、芯を少し長めに露出させて削る事で長く書いていられるようになるらしいね
結果として削る回数も減るから少しは楽になるんじゃないかな?
おや?
エシリア嬢、目が覚めたかい?
取り合えず手伝える所は終わらせておいたよ
次は何を手伝えば良いかな?
一緒なら苦難もまた楽しみだよ
だから遠慮しないで一緒に気持ちを【鼓舞】しようじゃないか
●
彷徨えるアリスであるエシリアが囚われたこの現実世界を模したこの場所はブラック企業と呼ばれるものをベースにしたまさに苦しめるためだけに存在するそんな場所。
(…ある意味では牢獄だね。真綿で首を締める様に、鑢を掛ける様に…)
様々な世界のありようを見てきたものの、このようなエシリアを摩耗させ心が枯れていくさまなど見たくはない。
マリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)はこの人気のない深夜のビル内を悠々と歩き社長室で寝かされていたエシリアの元へと辿り着く。
ソファーに寝かされ久しぶりの快眠を得たエシリアの寝顔を眺めると、マリオンは毛布を掛け直して視線を上げる。
「緩やかに心を削る世界……そんな世界がエシリア嬢がいた世界なのかな……」
思わず口に出したくもなるこの先の見えない圧迫感のある世界、この世界から夢に満ちたアリスラビリンスへと彼女は来たのだろうか?
だとしたら元の世界に帰るということはこの少女にとっては辛い事なのでは……などとついつい想像の翼はいらぬ方向へとついつい羽ばたきそうになってしまう。
(とりあえずエシリア嬢が休めている間にボクでも出来る事をしておこうかな)
マリオンはまだ残っている不毛な仕事の数々から比較的手間だけがかかるものを片付けようと山積みの鉛筆へと目を付けた。
これならば手間さえかければ簡単に削れるのと少しばかりこれはコツになるのだが芯を長めに露出させることで長く使えるようにするというわけだ。
こうしてエシリアの寝息を背にマリオンは静かに作業を続けることになる。
「……ん、んん……あれ? 私……」
眠りについてからそれなりの時間が経過しエシリアはうっすらと目を開けると辺りを見渡した。
連日深夜まで残業をし続けこれほどゆったりと眠れたのはいつぐらいぶりだろう、まだ少しばかり寝ぼけたまま少女は周囲を見渡しそこが普段は立ち入る事ができない社長室の中だと気付くとびっくりし跳び起きてしまった。
「おや? エシリア嬢、目が覚めたかい?」
「え、あなた……は?」
声をかけてくれたのは見た目麗しいまるで王子様、優しく微笑みながら暖かい飲み物を差し出すとそっとエシリアに持たせる。
いつぶりだろうこんな優しさに触れたのは……囚われのエシリアの心に本当に久しぶりに温かいものが流れ込んでくる。
「とりあえず手伝えるところは終わらせておいたよ、次は何を手伝えば良いかな?」
久しぶりの優しさにさらに温かな声、張り詰めていた心が緩みついつい涙がぽろぽろと零れ頬を伝う。
あぁ……こんな優しさを知ってしまったら私は、私は……。
そんな嬉しさに包まれたエシリアの手を取りマリオンは優しく言葉を紡いでいく、悲しみにくれていた心を鼓舞するかのように。
「一緒にするなら苦難もまた楽しみだよ、だから遠慮しないでボクにちゃんと言ってね」
「ありがとう……ありがとうっ」
手を握り返し久しく忘れていた熱い物はもう止まる事をしらない、涙が慟哭が次々と表に出始め……止まっていた時間が再び動き始めた。
そう……囚われのエシリアの心の時計は今まさに刻を再び刻み始めたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
エシリア、久しぶり。あんまり元気そうじゃないわね。
こういう時はゆっくり休んで、紅茶とお菓子で体力回復するに限る。
甘ーいミルクティーと、チョコレートにマドレーヌにフルーツサンドイッチ。他にも甘味はたっぷり持ってきたよ。さ、たっぷり食べて、立ち向かう力をつけよう。
何にって、現実の振りをしたこの悪夢の世界に。
エシリア、あなたは帰るべき世界を捜して旅をしていたはずでしょ? ここがその帰るべき世界だって、本気で思ってる?
違うわ。ここはあなたの記憶からでっち上げられた偽りの世界。あなたの本当の世界は別にある。
だから、こんなところで足を止めちゃダメ。
あたしたちが手伝うから、こんなところで立ち止まらないで。
●目覚めの時
そこは夢の世界とはほど遠いただただ苦しみを生み出しているだけのコンクリートの森の中。
そのような場所に閉じ込められ幾多の夜を越えてきたエシリアの疲労は目に見えてひどいありさまだった。
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)がエシリアと初めて会ったのは去年の夏の事、それからかなりの月日が流れている。
ゆかりが会えなかったほんのしばらくの間にこれほどに変えられてしまうなんてと不憫に思わずにいられない。
「エシリア、久しぶり……あまり元気そうじゃないわね」
「えっ……あっ、あなたは……」
ようやくまともな仮眠から目覚めたエシリアは懐かしい顔を見て驚きと共に何かが自分の内から目覚め始めるのを感じていた。
止まっていた時計の針が再び動き始めるかのようなそんな予感が……。
「まだ本調子じゃなさそうね、こういう時はゆっくりと休んで、紅茶とお菓子で体力回復するに限るよ」
そう言いながらゆかりは持参したチョコレートにマドレーヌそして美味しそうなフルーツサンドイッチをテーブルに並べてあげとっておきのミルクティーにたっぷりのお砂糖。
それはこの数か月エシリアが口にしていなかった甘い思い出、ただただ日常に囚われ何を食べていたのかも思い出せないそんな心が凍えてしまったかのような心に染みわたっていく。
「さ、たっぷり食べて立ち向かう力をつけようね」
「えっとその……何に立ち向かう、んですか?」
覚醒し始めたとはいえまだこの世界に囚われた心は本来のエシリアの物とは程遠い、少しずつはっきりとし始めた眼差しにゆかりはウィンクして見せた。
「何にって、現実の降りをしたこの悪夢の世界によ♪」
その言葉の意味を理解したいという心とまた希望が打ち砕かれ悲惨な現実を受け入れなければという想いが入り乱れ押し潰されそうになる。
だがゆかりに用意してもらったお菓子と一杯の紅茶、その温かさと甘さとどこまでも自分を包み込んでくれるかのような優しさに心に掛けられた鍵にヒビが入り始める。
「エシリア、あなたは帰るべき世界を捜して旅をしていたはずでしょ?ここがその変えるべき世界だって本気で思ってる?」
「私の帰るべき……ここは暗くて辛くて……」
ゆかりに改めて言われてみるとここは確かに歪な場所、まるで何もかもがエシリアを否定しただただあるがままに生きるしか選択肢がないように思えるそんな世界。
「違うわ」
ゆかりはそう断言する。
「ここはあなたの記憶からでっち上げられた偽りの世界、あなたの本当の世界は別にある」
「私の本当の、世界……」
手を握りしめぐっと力をこめる、温かさが伝わり震えていたエシリアのか細い手から震えが消えた。
だんだんと心の奥底から浮かび上がってくるここではないどこかの光景、それはゆかり達と共にラビリンスを駆け抜けたなつかしい思い出……。
ピシリ
心の鎖がまた一本切れて無くなったかのように思える、濁っていた瞳に光が再び戻り始め意思の力が宿り始める。
「だから、こんなところで足を止めちゃダメ! あたしたちが手伝うから」
「ゆかり……さん……っ私、私はっ」
エシリアの手が今度はゆかりの手を逆に握りしめ始めその震えていた小さな手にはこれまでにない強い意思を感じる。
あともう少しだとゆかりは感じる、この少女に課せられた悲しい想いは取り除いて見せると強く強く想う。
「こんなところで立ち止まらないで!」
ゆかりの呼びかけにエシリアの心が反応したのと呼応するようにビル街のあちらこちらでテクスチャーが崩れ始め割れた空間から怪しげなどろどろとした風景が覗き始めた。
ここが帰るべき現実ではないと気付いたエシリアの心を縛っていた鎖が千切れ飛び、そして止まっていた時計の秒針がはっきりと動き出すのを感じられる。
そこにいるのはゆかりが数か月前に出会ったエシリアの表情そのもの、悪夢から目覚め彼女が帰ってきたのだと実感し思わずゆかりはエシリアを抱きしめていた。
「おかえりなさい、エシリア」
「ただいまです、ゆかりさん」
この狂った世界の時計が一気に加速していく、この残業地獄に囚われていた夜中の時間が目覚めを迎える朝に向かって。
……ぐるぐるぐるぐると。
大成功
🔵🔵🔵
彩波・いちご
さすがにここまでもブラックな職場は、そうそうない、とは思いたいですが……
とりあえずOLいちご出撃です
まずは作業中のエシリアさんに飲み物と軽い夜食の差し入れからいきましょうか
「大丈夫ですか?無理はしないでくださいね」
「手伝える仕事あるなら、手分けしてやっちゃいましょう」
そして仕事の手伝いを
手伝いながら、話しかけていきましょう
喋りながらでは仕事効率落ちるかもですけど、ひとりで抱え込むよりは誰かと話しながらの方が気もまぎれるでしょうし
……ついでに、休んでもいい、手を抜いてもいい、やめてもいいし転職してもいいしと、ここでやるしかないみたいな心を解きほぐしていければいいかなあと
「貴方の健康が一番ですよ」
●
もうすぐ朝が近づいた時間帯、軽い睡眠と甘いお菓子と紅茶を頂き英気を取り戻し始めたエシリアが手分けして仕事を片付けている所に一人のOLが到着した。
「エシリアさん、お待たせしました!」
颯爽と可憐にポーズをキメて彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)が取り出したのはこんな時間帯にはありがたい軽食のサンドイッチと温かい飲み物。
こんな物ですら今の今まで奪われエシリアの心は枯れ果てる寸前まで追い込まれていたというのだ。
(さすがにここまでもブラックな職場は、そうそうない、とは思いたいですが……)
いちごとしてはそう思いたいがとにかくこの世界を打ち砕くにはエシリアの強い心が必要だ、なればこそオウガとの遭遇に備え出来るだけ英気は養ってほしいところなのだが。
だがすでにエシリアの心は前を向いている、止まっていた時計の針は確実に動き始めている。
「大丈夫ですか?無理はしないでくださいね」
「はい、彩波さんありがとうございます」
そこには終わりの見えない残業などの無駄に等しい行為に挫けないそんな心を持った少女が戻って来ていた。
いちごはこれはきっとこの場所へ彼女の力になろうとやってきた猟兵達の存在が大きいと考えていた。
喋りながらでは効率は確かに落ちるだろう、だがひとりで抱え込むよりも誰かと話しながらのほうが気も紛れるだろうし打開策を思いつくこともある。
「エシリアさん、貴女の健康が一番ですよ……いやなら休んでもいいしやめてもいいんです」
「そうですよね、なんでこんなに追い詰められていたんだろう私……」
暖かい飲み物を喉に流し込みほうと穏やかな時間が静かに流れていく。
こうして適度に休みを取りつつも全ての押し付けられた仕事を終え迎えた朝日が幾何学的な会社内を照らし出していく。
(これはなんという……絵画も資料もよくよく見ればオウガ達なの丸わかりな……)
そう……エシリアが泊まり込みで仕事をさせられていた会社内はまさに魔物達の巣窟といった惨状だと明るくなりようやく認識することができていた。
いやもしかするとこれはエシリアの心が前向きに動いたことで訪れた結果なのかもしれない。
「もうすぐこの会社の始業時間……いよいよですね」
「はい、仕事は全て出来ています。皆さんのおかげでちゃんと出来ました本当に本当にありがとう」
おおげさにぺこぺこと頭を下げるエシリアにいちごは優しく微笑み返しそして来たるべき会合へと意識を向けた。
対峙の時はすぐそこまで近づいていたのだ。
大成功
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第2章 集団戦
『ミミクリープラント』
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POW : 噛み付く
【球根部分に存在する大きな顎】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【習性と味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD : 突撃捕食
【根を高速で動かして、突進攻撃を放つ。それ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 振り回す
【根や舌を伸ばして振り回しての攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑5
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
始業時間になっても誰も出社してこない、エシリアと猟兵達がいよいよと待ちかねた時間になっても誰も出社する者などいない。
だがエシリアに聞き全員が知っていた、ここの社員(のふりをしているオウガ)達はわざと遅刻しそれでいて偉そうに振る舞い四六時中エシリアを虐めてくるのだと。
「はー、早く出社しすぎて気分いいぜー」
「仕事できてるのか新入り!」
「くだらねえ道具なんか使ってないだろうな!」
大遅刻しながらエシリアを虐めようと思っていた社員たちがざわつき始めた、仕事は全て完璧に仕上げられしかも社内の掃除まで完璧に終わっている。
夜中の散らかっていた状態を知っていればまさにこれは別物の世界、しかも焦燥しきっていたはずのエシリアの目には生気が宿り再び意思の力が戻って来ている。
「くそっ、お前らか……せっかく食べごろになってきたって言うのによう!」
「タベチャエ、タベチャエ!」
次第に社員たちが次々と集まりエシリア達を囲み始めた、ようやく本性を現し最後の手段に訴えるオウガ達。
世界を司るテクスチャーが崩れ始めいよいよ本性を現した化物達との戦いは始まりを告げる事となった。
村崎・ゆかり
もうごまかすつもりさえ無いのね。分かりやすくていいわ。それじゃあ、討滅を始めましょう。
エシリアに流れ弾や攻撃の余波が当たらないよう、「結界術」で安全地帯を作る。
噛みつかれないよう距離を取りながら、「高速詠唱」「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」「破魔」「浄化」の不動明王火界咒で応戦するわ。
どうせなら、その大口の中に突っ込んでみたいわね。
防御は偶神兵装『鎧装豪腕』での「盾受け」と「全力魔法」の「オーラ防御」。
「地形の利用」で、オフィスデスクを障害物として利用しながら立ち回る。そもそも攻撃されなければいいんだしね。
さあ、どんどんいらっしゃい。みんな焼き払ってあげる。
女の子を騙した罪は重いわよ。
●
崩れ落ちるテクスチャそして現代社会のビルという外観が次第に崩れ辺りが不可思議な文様などで満たされた作り物の箱庭なのだと少女達にもようやく認識できるようになってきた。
エシリアを捕らえ続けていた世界の理は乱れ嫌がらせをする社員として振る舞っていたオウガ達がいよいよその本性を見せ凶暴な外見へと変化し始める。
巨大な球根に疑似餌の花が咲いた化物ミミクリープラント、これこそが今までエシリアを虐めた感情をひたすら食べていた魔物達の尖兵だ。
「もうごまかすつもりさえ無いのね! わかりやすくていいわ」
エシリアを庇うように前に立ちふさがり村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は懐から呪符を取り出し構えを取る。
「う、嘘っ! 社員の皆さんが……化物に」
エシリアがそれを見て慌て始めるがゆかりの背中で守られているおかげか次第に状況が飲み込めてくる。
動き出した時計が封じられていた記憶も取り戻させ始めたのだ。
「タベチャエタベチャエ!」
ミミクリープラントがその球根いっぱいに広がる大口を広げ飛び掛かってくる、それは呪符しか持たないゆかりに命中すると思いきや思わぬ障害に阻まれ不発に終わった。
そう……ただの呪符だと思われた中から飛び出した浮遊する籠手型式神に噛みついてしまったのだが装甲の厚さとオーラによる絶対的な堅牢さの前に牙は弾かれ事なきを得ていたのだ。
「ふふん、あたしの偶神兵装『鎧装豪腕』を甘く見ないで欲しいのよね」
ちょっぴり嬉しそうに笑うとハッタリの効かせたポーズで一歩踏み出しゆかりは間合いを取り直したオウガ達へと視線を動かす。
タベテシマエ
コイツハジャマダ
口々に好き勝手言い間合いを詰めてくる、せっかく記憶が戻り始めたエシリアをこれ以上危険に晒すわけにはいかないと再びその手に取り出したのは呪符ではなく白紙のトランプの束。
「さぁ、どんどんいらっしゃい。みんな焼き払ってあげる!」
そう叫ぶと同時に次々と投げつけられた白紙のトランプ達。
「ノウマク サラバタタギャテイビャク――!」
印を結び念じた直後トランプから噴き出した炎が次々とミミクリープラント達を火達磨にし会社のオフィスだった場所を転がりガラスを割ると外へと転がり落ちていく。
「ゆかりさん、すごいっ! ……って後ろまだ一匹残ってます!」
エシリアが咄嗟に身を隠した机の後ろから顔を出し生き残っていたオウガが大口を開けて噛みついてくるのを指差した。
「ったく、女の子を騙した罪は重いわよっ!」
振り返りざまに大口の中へと飛び込んでいく白紙のトランプ、そしてゆかりに届くか否やのタイミングでそれは口内で燃え上がり後ろへと吹き飛ばされていった。
「エシリアありがと♪」
ウィンクしながら次の新手への警戒を続けるゆかり、こうして正体を現した魔物達との戦いは始まりのベルを鳴らしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
({メトロノーム・コイン}でコインロールしながら敵に嘲笑を向ける)
こんなにも簡単にボロを出すとは拍子抜けです
エシリアさんの我慢強さを見習ったらいかがです?
まぁ、もう貴方たちには昨日までのようなくだらない箱庭を作る機会など二度と訪れませんが
(救いを求めるように天を仰ぎ手を伸ばした後{晩秋の旋律}で『ダンス』を始める)
さぁ箱庭世界の破滅の始まりを告げるリズムです
まずは貴方達の断末魔で始まりの鐘を鳴らしましょう
(UC【蠱の珠】を発動し枯死の『呪詛』に満ち溢れた空間に敵を閉じ込める)
囚えたつもりが囚われましたね
それじゃあおやすみなさい
マリオン・ライカート
・心情
さあ、再開しよう
君の記憶を廻る旅路を!
・行動
[SPD]
エシリア嬢、夢から覚めたかな?
じゃあ改めて…久し振りだね
一応聞くけれど、此処は君の探している世界じゃないよね?
違うなら遠慮なくこの理不尽を切り拓くまでさ!
さあ、気持ちを【鼓舞】して、共に立ち向かおうじゃないか!
ちょっと相手の数が多いみたいだから、エシリア嬢もユーベルコードを使って身を護っていてくれるかな?
ボク達も全力で君を護るつもりだけど、念には念を入れておいた方が安心できるからね
エシリア嬢を護りつつ戦うから、「秘心:Obscurite」を盾として利用する事も考えておこうかな
初撃を凌げれば追撃はそこまで怖くない筈さ
今度はこっちの番だよ
彩波・いちご
やれやれですね
正体さえ明らかになってしまえば、これ以上付き合う必要はありません
エシリアさんは危ないですから、なるべく後方に控えていてくださいね
あとは私達にお任せです
植物性のオウガが相手なら、やっぱり燃やしてしまうのが一番でしょうか?
【異界の深焔】にて生きた炎を召喚します
私の操る生きた炎は、狙ったものだけを燃やします
例えオフィスの物陰に隠れようとも関係なく、オウガ以外のものは燃えませんよ?
なんなら、そのわざとらしい向日葵の花だけ燃やしてあげましょうか?
…まぁ、最終的には全部燃やしてあげるんですけどねっ!
エシリアさんの心を傷つけた報いです
どれだけたくさん現れようとも、残さず燃やし尽くしてあげますっ
●
正体を見破られ本性を現したオウガ達がケタケタケタと不気味な笑い声をあげる、だがそれに対し恐怖するであろうエシリアには心強い仲間達が集い守りを固めていた。
「こんなにも簡単にボロを出すとは拍子抜けです」
メトロノーム・コインで操りつつも播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)はオウガ達を嘲笑しガードを固める。
正体さえ現せてくれたのならばようやく我慢から解放され存分に戦えるということだ。
「エシリア嬢、夢から覚めたかな?」
「は、はい! 危ない所をありがとうございました」
マリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)の問いに記憶を取り戻したエシリアが力強く答える。
止まっていた時は動き出した、かくなるうえは幸せな未来へと向かってほしいものだと思わずにいられない。
「一応聞くけれど、此処は君の探している世界ではないよね?」
「違います……ここは私のいるべき場所じゃ、ない……」
少し寂しそうにエシリアが言葉を詰まらせる、いつになったら故郷に帰れるのか少しばかり不安になってしまったのかもしれない。
だがこれまで仲間達に助けられつつも旅を続けてきた彼女がここで心折れるわけがない。
「やれやれですね。正体がわかってしまえば、これ以上付き合う必要はありません!」
エシリアの盾になるような位置に立ちOL姿(注:男の娘)の彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)がいつになくビシっと決める。
ここまでして潜入した会社がまさかエシリア以外全員がオウガだったなどある意味やれやれと愚痴っても仕方がないのだろう。
こうして正体を現したミミクリープラント達とのオフィスを舞台にした戦いが幕をあけたのだ。
「ちょっと数が多いみたいだから、エシリア嬢も身を守っておいてくれるかな? ボク達も全力で守るつもりだけれど……」
「わかりました、足手まといにならないよう頑張ります!」
優しく話しかけるマリオンにエシリアは頑張るぞばかりに後ろで転がっていたモップを拾って構えている。
役に立つかはともかくこれなら大丈夫だよねといい笑顔だけ返しマリオンは秘心:Obscuriteをエシリアの守りへと回しておいた。
少しでも守っておいてあげなければという優しさはきっと伝わっているはずだ、それがあるからこそ前を向きそちらへと意識を集中させることができるのだ。
「ふんぐるいふんぐるい…、遠き星海にて燃え盛る神の炎よ!」
敵のオウガが植物性ならばといちごはどうすれば一番いいのか考え結論はすぐに出た、植物ならば燃やしてしまえばいいのだと。
異界より噴き出した深焔は次々とオフィスを呑み込んでいき周囲が紅蓮の炎で包まれていく。
「エシリアさんの心を傷つけた報いです、どれだけたくさん現れようとも残さず燃やし尽くしてあげますっ!」
いちごの宣言通り一面大惨事のように炎が周囲にも燃え広がった。
ここままでは火事になってしまうと驚いた仲間達もその炎がオフィスには全く燃え移らずオウガ達のみを燃やしていることに目を丸くし心強さに安心して背中を任せ共に前に飛び出していった。
「もう貴方たちには昨日までのようなくだらない箱庭を作る機会など二度と訪れません!」
クロリアが箱庭世界に終わりを告げる晩秋の旋律をかき鳴らしながらダンスし前へと躍り出る。
その旋律とステップはオフィス内に響き渡りいつしか燃えながら転がり苦しむオウガ達の姿が次々とクロリアが作り出した蟲の珠により結界内へと封印され消えていく。
「囚えたつもりが囚われましたね、それじゃあおやすみなさい」
ダンスのフィニッシュと共にパチンと音がし結界の入り口が閉じた、あれだけいたオウガも残らずあちらへと送り出したということだ。
「お見事、初撃を凌ぎ切れば皆がどうにかしてくれると思った通りさ」
守りに徹していたマリオンが周囲の敵が消えたことで一息ついたその時、世界にまだ変化が訪れる……時計の針が高速で逆回転に回り出し社長室の中から何か異様な気配がし始めた。
世界を覆うテクスチャは壊れたまま部屋の外は崩れ落ちおそらくはこの部屋と社長室しかもう残ってはいないだろう。
「な、何なのこれ!?」
エシリアが驚きしりもちをつく、そして忘れてしまっていた大事な事をもう一つ思い出した。
そう先ほどの封印されたオウガ達の中に社長の姿は無かったということに。
大成功
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第3章 ボス戦
『『真の姿』魔法少女マスコットの怪物』
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POW : 食べる食べル食ベルタベルゥゥ!
真の姿を更に強化する。真の姿が、🔴の取得数に比例した大きさの【怪物達と融合した姿】で覆われる。
SPD : 絶望ノ刻
レベル分の1秒で【対象をあと一歩の所まで追い詰め、とどめ】を発射できる。
WIZ : 君ノ力ヲ解放シテアゲルヨ!
自身からレベルm半径内の無機物を【侵す触手が、攻撃した対象を悪堕ち魔法少女】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ポーラリア・ベル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●そして虚構の主は現れる
「ウルサイゾォォ、仕事ハチャントカタヅケタノカ! 新人オマエノコトダァァ!」
エシリアが封じられていた記憶を取り戻した事でオウガ達はその正体を現した。
それはもちろんエシリアをいびり抜いていた社長もまた同じ……オフィスへと怒鳴り込んできた姿がぐにゃりと歪みその正体を現してしまう。
それは歪に歪んだマスコットの成れの果て、アリスたるエシリアをこの世界へと釘付けにしてしまっていた悪夢の根源。
それと同時に周囲のテクスチャはもはや限界まで崩壊してしまっている、壁も天井も崩れ去り残っているのは荒れ果てたオフィスの床と社長室そしてその奥に隠されていた外の世界への新たなる扉。
だがその前には社長であったモノが立ち塞がる、部下たちが全て消し去られた事などは気にしてはいない……ただただエシリアに意思の光が戻った事が気に入らないのだ。
「タックヨウ……オレサマノイウコト聞カネエナラ、バリバリアタマカラクッテヤルヨウ!」
それは理不尽極まるオウガの叫び、この偽りの世界を繋ぎ止めているのはこのオウガの存在。
絶望に染まったエシリアの魂を喰らおうとここまで我慢していた分、その怒りは激しいものでもはやまともな話などできようもない。
猟兵達とエシリアの戦いが今ここで始まろうとしていた。
村崎・ゆかり
ふん、趣味の悪そうなオウガね。一気に叩いてしまいましょ。
「全力魔法」「高速詠唱」雷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「破魔」「浄化」「神罰」の九天応元雷声普化天尊。疾! 裁きの雷で焼き払う。
どれだけ強化しようと、オブリビオンである以上裁きの雷光からは逃れられない。覚悟して。
雷撃で荒れた地面は「地形体制」で対応。
雷撃で弱ったオウガを、この薙刀で狩る。頭上で回転させてからの突き込みで「串刺し」に。
間合いを取りたい時は「衝撃波」を帯びた「なぎ払い」をぶつけて押し戻す。
エシリアから奪った栞は返してもらうわよ。
悪あがきもここまで。不動明王火界咒で骸の海へ送ってあげましょう。
エシリア、先は長いだろうけど頑張って。
●
作られた世界の皮は剥がされた、そしてエシリアを捕らえ続けている元凶が目の前にいる。
……会社というテクスチャが剥がれその正体が露見したオウガを目の前にし村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)はこんな奴に何か月もエシリアが苦しまされていたのかと苛立ちを隠せない。
「ふん、頭の悪そうなオウガね……一気に叩いてあげるわ!」
「戯言ヲヲヲ、小娘ェェェェッ」
社長という擬態を捨て魔法少女のマスコットが異形化したかのようなグロテスクな姿へと姿を変えオウガは吠える。
美味しく実ったエシリアの壊れかけの心をもうすぐ食べごろだと狙っていた矢先の出来事に怒りが止まる事を知らないのだ。
こうなれば目の前の小生意気な小娘(ゆかりの事だ)を頭からパクリと噛み砕くことでこの怒りと飢えた腹を満たすことにしよう。
オウガは叫びながら周囲の飛び散った部下たちの血肉を吸収しその姿が凶悪に肥大化しながら強化されていく。
「食べる食べル食ベルタベルゥゥ!」
狂ったように吠えるその姿に嫌悪感を示し指を突き出し印を切るゆかり。
「九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
溜まりに溜まったフラストレーションがオウガだけのものとは思わないほうがいい、ゆかりにとってはエシリアをここまで追い詰めたオウガの所業はもはや許せるものではなく怒気を含んだこの詠唱に雷気が宿る。
ピカッ
雷鳴が轟き直後に落雷の轟音が響き目の前が真っ白になる、激烈な落雷によりオウガが黒焦げとなり大地は穿たれ砕け散る。
その隙を見逃さず薙刀『紫揚羽』を振るい間合いへと飛び込んでいくゆかり、頭上で回転させながら狙うはオウガの正中線。
だがその前にやらねばならない事もある、一瞬でそう思い直し振るわれるはずの刃は突きへと変化しオウガの身体に突き刺さる。
後ろの壁に串刺しのまま磔にされ呻くオウガにゆかりは全く容赦などしない。
チラリと後ろを見れば気丈にも立ち上がり身構えるエシリアの姿、こんな子をここまで苦しめて……そう思うと怒りにまかせて切り刻んでやりたいがまだやる事がある。
「さあエシリアから奪った“栞”は返してもらうわよ!」
ゆかりが言うそれこそが新たな世界へとエシリアが旅立てない原因、取り返させねばならない次の世界への大事な鍵。
「ケケケ、ソンナ物シラネェナ」
へらず口を叩くオウガにゆかりは怒りの一撃を叩きこむのだった。
大成功
🔵🔵🔵
グレゴール・リッツ(サポート)
西洋妖怪の地獄の獄卒×サバイバルガンナー、外見年齢が31歳の男です。
普段の口調は「口数少なく(俺、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)」、敵には「殺意を込めて(俺、貴様、言い捨て)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
首から上が存在しないガンマンです。戦うことに執着していて、戦闘時は銃と斧を距離によって使い分け戦います。無口で感情を表に出しませんが、悪に対する強い憎しみを原動力に行動しています。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
記憶を封じられアリスたるエシリアが数か月も囚われていた偽りの世界も崩壊を始めていた。
そして社長に化け今の今までエシリアをいびり続けていたオウガがその正体を現し襲いかかろうとしている。
窮地に陥ったエシリアが悲鳴をあげたその時、颯爽と現れた“首の無いガンマン”。
そう文字通りグレゴール・リッツ(首無し銃手・f27979)には首が無いのだ、西洋妖怪たる彼にそんな物は妖怪として生まれてからは存在せず求める者はただ闘争そのもの。
今まさに戦力を欲していたこの状況に助っ人として送り込まれたのは彼にとっては望むところだったろう。
(俺に銃を向けるということは貴様は敵だな……)
言葉はない……だがグレゴールにとっては敵対の意思を見せるオウガはまさに点滴そのもの。
ホルスターより素早く引き抜いた愛用のMk3リボルバーがコンマ数秒の速さで火を噴きオウガが額から血を噴き出しながら後ろへと吹き飛んだ。
二発三発と容赦なのない鉛玉が撃ち込まれそのたびにオウガが苦悶の声をあげ地面を転がった。
「グギギギギ、ナンダ貴様は……ナゼ邪魔ヲスル」
「……。」
孤高のガンマンに必要なのは口数ではない、物をいうのはこの引き金を引けば撃鉄を撃ち鳴らし撃ち出される弾丸のみ。
見知らぬ化物に交わす言葉などここにはありはしない。
「クソォォォ!」
弾切れと見て起き上がり襲いかかろうとするオウガ、だがリボルバーを中折りし廃莢を済ませると即座に装填される弾丸……中腰になりながらトリガーを引きつつ撃鉄を逆手で素早くノックする。
瞬時に放たれた数発の弾丸は、的を外さずオウガの額へと吸い込まれていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
ステラ・クロセ(サポート)
真紅の瞳。燃える炎。あふれる勇気。直情正義、元気全開、単純明快!
正しい心で悪しきを討ち、そして弱き者を救い、その盾とならん、我こそは義侠のスーパーセル!
スーパー純粋熱血、ハイパーテンプレ系ヒロイン、それがステラです。
一人称は「アタシ」ですが殆どの猟兵は先輩に相当するので話すときは「わたし、あなた」といった礼儀正しい振舞いとなります。
探索系はストレートな解決法を選び、
戦闘では正々堂々と敵の正面に立って攻撃を引き受け味方にチャンスを作る方が好みです。なお、近接戦闘派です。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
正義を大事にするので、他の猟兵の意図を阻害したり公序良俗に反する行動はしません。
●
記憶を封じられ社畜生活を強要されていたエシリアが今こそ次の世界へと旅立とうとしている。
だが“栞“をオウガに奪われこれ以上はどこへも行けない状態だった彼女の前にいよいよ黒幕が正体を現した。
社長に化けこれまで数か月の間エシリアを苛め抜いてきたこの男こそがオウガそのもの、姿はあっという間に異形となり今度こそエシリアの命を狙おうとしている。
「アタシが来たからにはここは任せて!」
壁を突き破りオウガとの間に割り込むとステラ・クロセ(星の光は紅焔となる・f12371)は新焔・関勝大刀を抜刀し正眼に構える。
(こんな子を半年以上も捕らえて虐めていたなんて嫌な奴!)
魔法少女のマスコットが異形化したかのような化物が相手でもステラは一歩も引かず間合いを詰めていく。
捕らえられていた少女エシリアにこれ以上の危害が及ぶのは望むところではなくここは攻めの一手……となれば間合いなど測っている場合ではなくやるべきは前進あるのみ。
上段からの返し刃で逆袈裟に刃を空を切る、さらに踏み込み二撃三撃……オウガはその気迫にただただ下がりエシリアとの距離は開いていく。
(このまま一気に決めてやるんだ!)
大上段に構えた刃から炎が噴き出した、それは悪を滅する正義の刃……ステラの正義の心を現すかのような激しい業火。
「アタシは止まらない!行くよ、焔轟…熱風剣!」
全力で全開で一直線に剣は振り下ろされオウガが身に纏った怪物たちとの融合した部位を一閃で斬り落とす。
「ナンダコレハ、消エネェェェ」
しかもその傷口もまた燃え上がり再生など許さないほどの殺意がこめられていた。
これこそステラ自慢の必殺剣『焔轟熱風剣』、そんなものをまともに食らってしまったオウガに出来る事はただただ情けない悲鳴をあげ地面を転がる事だけだった。
成功
🔵🔵🔴
マリオン・ライカート
・心情
エシリア嬢の旅路の為にも、ここで負けるわけにはいかないね
・行動
…と言っても、ボクは相性が悪いかな?
でも負けるわけにはいかないんだ
気持ちを【鼓舞】して頑張るよ
取り合えずこの状況でエシリア嬢が狙われると厄介…かな
だから『ドレスアップ・プリンセス』で変身「します」
エシリア様を抱き上げて飛行し、触手を回避
壁も天井も無くしてしまったのは悪手ですね
お陰で離脱できる空間を確保できます
迫る触手は「天光剣:Lumiere」で切り払いつつ隙を待ちましょう
隙を見せたら、飛行しつつ擦れ違い様に「秘心:Obscurite」で攻撃します
ふう…大丈夫だったかい?
しおりも無事戻ったみたいだね
エシリア嬢、どうか良い旅を…
播州・クロリア
こんにちは、社長さん。猟兵です
貴方と御社の従業員全員からのパワハラによって
エシリアさんは多大な精神的苦痛を被りました
よって損害賠償としてエシリアさんの即時解放と
貴方の骸の海への送還を請求させていただきます
ちなみに拒否をした場合は強制執行です
(肩幅ほどに足を開き、深く息を吐きながら全身の力を抜いた後{霹靂の旋律}で『ダンス』を始める)
貴方たちのごっこ遊びに付き合う時間なんて
エシリアさんの人生には一時もありません
私たちで雷のように刹那で終わらせましょう
(UC【蠱の人】を発動し、人型の雷を召喚すると雷撃による『属性攻撃』を行わせる)
彩波・いちご
正体現したらこれですか…
醜悪な行動をしていたと思ったら、見た目まで醜悪なんですね
エシリアさんは下がってください
あれは私が打ち倒します
醜い怪物と融合して巨大化し、食べようとしてくるのなら
貴方にも食べられる恐怖を教えてあげます
【異界の浸食】
私が呼び出すのは無限に成長し、あらゆるものを喰らいつくすスライム
その全てを覆いつくし、喰らってあげましょう
精神を集中し、こちらやエシリアさんを喰らおうとするオウガの攻撃を避けながら、スライムを制御してけしかけ、その身体を溶かし喰ってあげます
栞以外の全てを
全て食い尽くして栞を取り戻したら
あとはエシリアさんに記憶のことを尋ねてみましょう
何か思い出せましたか?と
●
偽りの世界のテクスチャはもはや崩れ落ちる寸前、そして意思の力を取り戻したエシリアの前には頼もしい仲間達が駆け付け戦いを繰り広げていた。
「エシリア嬢の旅路のためにも、ここで負けるわけにはいかないね」
そう言いながらオウガとの間に立ちふさがったマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)だったが敵と自分の相性を素早く察しどう動くべきかを瞬時に計算していた。
(……と言っても、ボクは相性が悪いかな?)
能力には相性というものがある、そしてこのオウガとまともに戦えばマリオンはただでは済まないしそれではエシリアにも被害が出てしまうだろう。
だがここで負けるわけにはいかない、決断はすぐにせまられてしまうだろうから。
「ドレスアップ!」
王子たるマリオンが豪華絢爛なドレス姿へと変身しプリンセスハートのパワーが最大に発揮できる状態となる。
だがそれは直接戦闘するだけのものではない、エシリアをお姫様抱っこすると可憐に空中へと飛び上がったのだ。
「壁も天井も無くしてしまったのは悪手ですね」
襲い来る触手の届かない高さに飛び上がりマリオンは眼下にいるオウガへと余裕の笑みを見せる。
「グヘヘ、逃ゲテバカリカ王子サマヨウ?」
オウガが下卑た口調で挑発してくるがこのままではマズイ、だがそこへと割り込んできた一陣の風。
華麗なステップを踏みながら現れた播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)がリズムに乗りつつターンを決め指をビシッと突き付けた。
「こんにちは、社長さん。猟兵です。貴方と御社の従業員全員からのパワハラによって
エシリアさんは多大な精神的苦痛を被りました」
「ハッ?」
突然のクロリアの言葉に首を傾げる元社長オウガ、だがさらにクロリアは言葉を続け睨みつける。
「よって損害賠償としてエシリアさんの即時解放と貴方の骸の海への送還を請求させていただきます」
「ンナコト知ルカヨ」
即座に言い返したオウガの言葉を予想通りとばかりにクロリアのステップが激しく床を蹴る。
「ちなみに拒否をした場合は強制執行です!」
「何ダト!?」
次の瞬間激しい雷が周囲に巻き起こりオウガだけがそれを受け黒焦げになる、これはもちろんクロリアの“蟲の人”により生み出した旋律達が作り出したもの。
怒りを最大限こめたそれを不意打ちで浴びてはオウガもタダでは済まなかった、そのダメージを補おうとしたのだろうおうがが配下達の死骸を吸収し巨大化し始めたのは。
「正体現したらこれですか……」
オウガの醜悪な行動から実際に醜悪な外見であったと理解し彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)はマリオンにより被害が出ない場所にエシリアが避難できていると確認しいつになく怒りを露わにし詠唱を始める。
普段身内に犠牲者ばかり出してしまう能力も犠牲者さえ近くにいなければ凶悪なものなのだと今日こそは見せつける時がきたのだ。
「貴方にも食べられる恐怖、教えてあげます……ふんぐるいふんぐるい…、全てを喰らう形なき我が眷属よ!」
いちごの詠唱に答え異界より呼んではいけない魔物が現れ飛び出していく、それはスライム状の不定形生物でありあらゆる物を喰らい尽す異形の魔物。
伸びてきた触手をも飲み込んで溶かしていくそれはまさに恐るべき掃除屋、一応上空を見上げれば伸びていく触手はマリオンが天空剣で切り払い事なきを得ている。
クロリアもそれに呼応しダンスはさらに激しく何度もタタンタタンと踵で床を打ち付ける。
轟く雷鳴そして肉の焼ける臭い、さらにはどこまでも増殖し全てを飲みつくすスライム。
オウガはいよいよもって追い詰められその身体の大半がもはや不定形生物に喰われ吸収されてしまっていた。
「貴方たちのごっこ遊びに付き合う時間なんてエシリアさんの人生には一時もありません、
私たちで雷のように刹那で終わらせましょう」
「ヤメロ、ヤメロ、ヤメロオオオオオオオッ」
クロリアの宣言通り3人の攻撃が一度に合わさりオウガを一気に飲み込みそして内側で断末魔の叫びが周囲に響き渡った……。
こうしてエシリアを捕らえていたオウガが討伐されマリオンも着地しエシリアを丁寧に地面へと下ろす。
「ふう…大丈夫だったかい?」
「はい、マリオンさんのおかげで怪我一つしていません」
マリオンへとにっこり微笑むエシリアの笑顔には先ほどまでの悲壮感などはない。
「ご無事で良かったです」
「クロリアさんのダンス、すごく素敵でした」
エシリアの言葉はダンスを終え優雅にお辞儀をするクロリアには最高の賞賛に違いない。
「あっ……栞が……っ」
いちごが見上げると討伐したオウガが隠し持っていた“栞“がひらひらと舞いエシリアの手にゆっくりと触れると吸い込まれるようにしおりは消えてしまった。
「何か……思い出しましたか?」
いちごが問うてみるとエシリアは胸に手を当てゆっくりと目を閉じる、脳裏に浮かぶのは以前に見た塔より高い四角い建物が並ぶまさにこの囚われていたのと同じような街並み。
だがこのような朝から夜まで囚われ人のように過ごすような場所などでは絶対にない、だがほんの少しだが以前とは違う光景が目に浮かぶ。
景色の少し奥に見えるのは青い海、そして大きく浮かぶ入道雲……エシリア自身の事は思い出せないがそれでもまた一歩記憶の鍵が開いたのかもしれない。
「はい、ほんの少しここよりももっとゆったりとした時間が流れる場所の景色が……」
自然と流れ出る涙、それは真実の記憶に近づいたおかげなのだろうかそれとも?
崩れ落ちもはや床しか残っていない社長室の中に扉があった。
おそらくはこの国を出て別の国へと向かううさぎ穴への繋がるこの世界よりの出口。
記憶は戻らず披露した身体を休めるまでもなくエシリアは新たな世界への旅の一歩を踏み出す、それは止まってしまっていた彼女の時間が動き出した証であり止まる事などもう二度とないようしたいという決意。
「またどこかの世界で……皆さんと出会えたら、今度こそ美味しいお茶をご馳走しますね」
にっこりと微笑み猟兵達に礼を述べるとエシリアは旅立っていった、いつ終わるかもしれない旅路に身を置く彼女を見送ると猟兵達は一人また一人と帰路に着く事となる。
願わくば今度こそ故郷へと帰れますように……っと。
大成功
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