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恋ぞつもりて

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #籠絡ラムプ #藤の花は朔夜に香る

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#籠絡ラムプ
#藤の花は朔夜に香る


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 帝都から少し離れた小さな街。
「捕まえて! ひったくりよ!!」
 その街の大通りに女性の悲鳴が響く。
 咄嗟のことで誰もが動けない中、ひとりの少女が逃げようとしている犯人の前に立ち塞がった。
「どけぇぇっ!」
 少女に向かってナイフを無茶苦茶に振るう犯人。対して、少女は。
「ごめんあそばせ」
 1枚のカードを犯人に投げつける。それは弧を描いて犯人のバッグを持つ腕に突き刺さり……次の瞬間。
「ぐふっ?!」
 悲鳴を上げて、ひったくり犯が吹っ飛ばされる。そして、少女の手には女性のバッグがあった。
 何が何やら。目を白黒させている周囲に対して、少女は女性に歩み寄り、バッグを差し出す。
「お役に立てましたか?」
「え、ええ!」
 喜びながら立ち去る女性を見送り、少女は自分の懐にあるオイルランプを見つめる。
(この力があれば……わたくしも朔様のお役に立てるはず……!)
 そうと解れば、こんなところで立ち止まっている場合ではない。早く、朔の元へ駆けつけねば。
(朔様、お待ちください。香、今参ります!)
 藤田・香(ふじた・かおる)は、決意も新たに帝都に向かうため、駆け出すのであった。


「恋は盲目、とはよく言ったもので」
 グリモアベースにて。
 深護・刹那(花誘う蝶・f03199)は集まってくれた猟兵たちに思わず微苦笑を零す。これがただの恋や青春の物語なら、ゆっくりと見守ったり手助けしたりとできたのだが……残念ながら事件だ。
 刹那は表情を引き締めて、猟兵たちに改めて向き直る。
「皆さんは『籠絡ラムプ』というものをご存知ですか?」
 既に聞き及んでいる猟兵もいるだろう。念のため、と前置きして刹那が話し出す。
「影朧の力を『自分のユーベルコヲド』のように扱うことができる不思議なオイルランプですの」
 これによって擬似的な……いや、『偽ユーベルコヲド使い』となれる。
 問題は、その偽ユーベルコヲド使いが、その力を利用して本来の身の丈に合わない立場を得ようとしていることだ。例えば猟兵や學徒兵のように立ち振舞ったり。あるいは国民的スタアに成りあがったり。
 害がないのなら、と思わなくもないが刹那の表情は暗い。
「この籠絡ラムプ……実は影朧兵器ですの」
 つまり、幻朧戦線が密かに市井にばらまいたモノなのだ。そのため、『このまま何も起こらない』はずが無く。
「ラムプの中の影朧は、いずれ暴走します。その際、使い手を含めた市井の人々に多大な被害が出ると予想されますわ」
 その前に、籠絡ラムプを取り上げ、安全に破壊しなければいけない。
「皆さんに今回お願いしたいのは、その籠絡ラムプの破壊なのです」


「今回の目標は、藤田・香。とある街に続く名士に仕える使用人ですわ」
 正確には父が使用人で、香はその娘。そして、香が言っていた朔というのが、その名士の家――月下(つきした)家の子息になる。
「月下・朔(つきした・さく)。今は帝都で、帝都桜學府へ通っていますの」
 なんでも月下家は代々ユーベルコヲド使いを輩出する家系のようで、そこそこ有名らしい。
「朔さんも例に漏れず、ユーベルコヲドの才能があったようで、それで帝都へ上京したのですわ」
 そんな朔を慕う香。しかし、仕える家の子息にしてユーベルコヲド使いという、なかなかに身分違いの恋。そのため、朔が帝都へ上京する際に、香も一度は諦めたのだが。
 消えぬ恋心は募りに募って、いまや香の全てを飲みこむほどの淵となって。
「そんな時、香さんは籠絡ラムプを手に入れたのですわ」


「今から行けば、香が乗る列車に間に合いますわ」
 そこで一緒の列車に乗り込んで、帝都へ向かって欲しい。速攻で片付ける……のも手なのだが、万が一、人混みに紛れて逃げられた場合が最悪になる。そのため、籠絡ラムプ奪取のタイミングは機を待って欲しい。
 車内では自由にしてもらっても構わない。のんびり景色を楽しんだり、駅弁食べてみたり、同行者とおしゃべりしてみたり。
「香も密かに浮かれてるようで、皆さんが話しかけても警戒しないようです」
 彼女の身の上話や惚気話など、色々と話を聞いておくと後々の説得に活用できるかもしれない。

「列車を降りた香は一直線に桜學府へ……向かわず、帝都の雰囲気に感化されて、少し散策するようですの」
 これを尾行し、人気の少ない場所に行ったなら、その機を逃さず、ラムプ奪取作戦に移行する。
 その際、香は影朧をラムプから呼び出すはずだ。
「その影朧を倒すのが、第一段階。無事倒したら、次はラムプを取り上げてくださいませ」
 その際も香は必死に抵抗するだろう。
 強引に奪って破壊しても構わない。しかし、香について得た情報を活用すれば、彼女の説得は可能である。そうなれば、ラムプの譲渡に応じてくれる。
「ラムプを手に入れたら、後は安全な場所で破壊すれば、今回の依頼は完了ですわ」
 刹那が説明を入れてひと息ついて。再び話し出すのは香のこと。
「香さんは決して力に飲まれたわけではありません。むしろ今も正義を成そうとしているのです」
 ただ、ほんの少し、周りが見えていない。それは恋が見るのを邪魔しているから。
「その目隠しが取れたなら、彼女はきっと、影朧の力に頼らずとも前に進めますわ」
 出来れば、そうなるように、と刹那が微笑む。
「それでは、皆さんよろしくお願いします」
 と刹那は小さく一礼するのであった。


るちる
 こんにちはとかこんばんは、るちるです。サクミラはネタがいっぱいじゃよ。
 そんなわけでサクミラより籠絡ラムプのお話をお届けします。オープニングはシリアスですが、シリアス、真面目に限らず、コミカル、ネタもお待ちしております。エッチなのはダメですが。

 シナリオの補足です。
 当シナリオは、日常、ボス戦、日常の3章構成です。途中参加も大歓迎です。

 1章はのんびりリラックスタイム。
 列車に揺られて、外の景色を楽しんだり、お食事したり、車両探検ができます。また、おしゃべりしたり、香と接触してお話しすることも。
 外の景色は田園風景から始まり、帝都の都会っぽい感じで終わる流れ。車内販売は各地の名産や様々な駅弁が揃えてあります。車内の探索はそれっぽいものが完備ということで。

 2章以降や詳細な情報については、各章の最初にシチュエーションなどを追記していく予定です。

 香の恋の行方と籠絡ラムプはどうなるのか、皆様のプレイングにて、いい感じに導いてあげてください!
 それではご参加お待ちしておりまーす!
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第1章 日常 『列車に揺られて』

POW   :    まったりと食事

SPD   :    車両を探検

WIZ   :    外の景色を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「ああー! 待って、乗ります!」
 発車間際の列車に飛び乗る香。
 そしてさらに、列車の発車までの間に、だだだだっと数名が乗り込んだ。サクラミラージュに転送されてきた猟兵たちである。
「はぁ、はぁ……」
 荒い息をつきながら、ちらりとこちらを見てくる香。ギリギリ駆け込んだお仲間だと思われたのかもしれない。そのまま香は普通席の方へ歩いて行く。
 もしかしたら手際良く既に車内で待機している猟兵もいるかもしれない。
 何はともあれ、香と同じ列車に乗り込めた。とりあえず、帝都まではのんびりしてもらって大丈夫だ。思い思いに過ごして欲しい。
 当然ながら、列車には他の乗客も、運転手や車掌をはじめとした従業員も乗っている。食堂車や指定席、個室もあるようだ。
 あまりはしゃぎすぎて怒られないように。少なくとも列車破壊はダメですよ。
ヴィクター・グレイン
「(あれか…今回のターゲットは。)」
列車の壁にもたれて様子を見る。
「(蝶は街に着くまで待てと言っていたが、態々この気を逃すわけがない。
他の奴等には悪いが俺流のやり方でやらせてもらう。)」
ターゲットまで近ついて左手を掴む。と同時に腕を後ろに回してそのまま床に押し付ける。
「今から一つ一つ質問をする。正直に答えたら解放してやる。だが、嘘を吐くのなら指を一本一本へし折る。どうだ?簡単な話だろう?」
周りの響めきなどお構いなしに。
「質問だ。ランプは何処だ?」

もし答えたのなら「出せ。」と言う、答えなかったら人差し指をへし折る。
答え続けなかった場合順番にへし折っていく。



●列車の旅は唐突に終わりを告げて(時刻は帝都に着く直前)
『次で終点の帝都です』
 車掌が歩いて乗客たちに告げて回る。

 その声を聞いて、藤田・香は席から立ちあがる。
「少し、お花を摘みに行ってきます」
 今のうちに、と。微苦笑する香を同席していた猟兵たちは同じように微苦笑で見送る。

 トイレはもうひとつ後方の車両にある。そちらへ向かって通路を歩いていく香に……密かに鋭い視線を投げかける者がいた。
 ヴィクター・グレイン(真実を探求する者・f28558)である。
(あれか……今回のターゲットは)
 車両出口付近の座席からずっと状況を監視していたヴィクター。
(蝶は街に着くまで待てと言っていたが、態々この気を逃すわけがない)
 そう、彼は『機』を狙っていた。今まではずっと他の猟兵が側にいたのだが……今、席を外したこのタイミングならば。香が自身の横を通り過ぎるよりも早く、自席を立ちあがり、隣の車両へ用を足しに行く振りをする。
(他の奴等には悪いが俺流のやり方でやらせてもらう)
 そしてヴィクターはその心に忠実に実行へ移す。

 車両を区切るドアが開けて、閉める。隣の車両に移り、トイレの方へ歩き出した瞬間。
「きゃっ?!」
 横合いから左手を掴まれる香。そのまま腕を後ろに回され、床に押し付けられるようにして拘束される。
「だ、だれ!?」
「今から一つ一つ質問をする」
 しかし、香の言葉にヴィクターは応えず、彼は言葉をナイフのように突きつける。
「正直に答えたら解放してやる。だが、嘘を吐くのなら指を一本一本へし折る。どうだ?簡単な話だろう?」
「なっ!? 何が目的なんですか!?」
 拘束されながらも気丈に振舞う香。少し震えているのを指先から感じ取るも、ヴィクターに油断は無い。
 助けを求めようにも、この車両は貨物車。荷物や用具入れやトイレはあっても、客はいない。タイミングが悪いことに従業員も誰もいない。
 ならば。大きな声を出そうと香が息を吸い込むんだ瞬間へ、ヴィクターが問いかける。

「質問だ。ランプは何処だ?」
「!!!!」

 それは、ヴィクターにとっては単純明快な目的にして、香にとっては『うかつに触れてはいけない地雷』であった。
 助けを求める声は放たれず、香はひとつの意思に持ち替えて叫ぶ。
「ラムプさん!」
 直後、香を中心に華やかな爆発とともに煙幕が張り巡らされる。ついでヴィクターに襲ってくる強烈な眠気。
「ちっ、これは……ユーベルコードか!」
 油断していたわけではない。しかし、完全に組み伏せた状態から突如放たれたユーベルコード、さらには状態異常をもたらすソレ。ヴィクターが一瞬戸惑った瞬間に、香が拘束から抜け出す。そのままその姿は煙幕に紛れて。
「このラムプは正しき事に使うもの! あなたのような悪党には渡しません!」
「っ!! 言ってくれる……!」
 煙幕の中から響く香の声。
 誰よりも悪人を許さない。それが信条のヴィクターへ、香はその言葉を叩き付けて。
 その誤解を生んでしまったことが、この状況を作り出してしまったのかもしれない。香にとって『ユーベルコヲド使い』とは正義の味方。正義を、目的を共有できたならあるいは話し合いの余地もあったのかもしれない。

 香を再び拘束しようとするが、煙幕の中では位置が特定できない。そして響く銃声に列車の窓が割れる音。

 煙幕が晴れた後、その場にいたのはヴィクターだけであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​


●幕間―香、逃走中(時刻は帝都目前)
 唐突な、ラムプを狙った襲撃。

(これを渡すわけにはいかないのです!)

 それは藤田・香の盲目的な想いの結果。
 だけど、今。ラムプを抱えながら、帝都に続く川沿いを駆けているのはそれだけが理由ではない。
(私のせいで、皆さんに迷惑をかけるには……!)
 香の脳裏によぎるのは列車の中で知り合った人々。偶然にも帝都へ向かおうとしていた同席者。
(相手の狙いはこのラムプ。なら、私だけが狙いのはず)
 列車から無理やり飛び降りたせいか、着地の時にどうやら足を痛めたらしい。それでも駆けることをやめるわけにはいかない。少しでも遠くに行かないと。

 ――でも、彼はどこでこのラムプのことを?

 見た目はただの小さなオイルランプ。持ち歩いてて首を傾げられることはあっても、持っていること自体に違和感はないはず。

(いえ、それよりも今は!)
 追撃して来るであろう襲撃者を迎撃するか、あるいは帝都に辿り着く。
 どちらかを達成できればこの状況は打破できるはず。

 様々な疑問を振り払うようにして香は必死に帝都へ向かうのであった。


 少し、捻じれてしまった運命の糸。
 この先、どのような色を、形を紡ぐかはまだわからない。
 逃走した香の、その行動には猟兵たちが強くかかわっている。だけど、まだ彼女は彼女らが、後に相対する者であることを……知らない。

 今、香の胸中を占めるのは『彼女らに迷惑をかけるわけには』と思う程度に、列車の中で思い出ができたこと。
 これより先に綴られるのは、その思い出の詳細である。
アハト・アリスズナンバー
恋をしてると人は輝くといいますが……影朧兵器の光で輝くのなら破壊しないといけませんね。
まだ取り返しのつかない事になる前に。

最初から有栖川ハチ子変装セットを着用し、急いで乗り込みます。
同じく乗ってきたであろう香に話しかけ、後の為に信用と得るとします。

貴方も駆け込んできたご様子ですね。一つ帝都まで貴方の旅のお供をさせて頂けませんか?と、共に自由席に座りましょう。
私ですか?私は有栖川ハチ子。道楽で探偵をしてるものです。
帝都で少し仕事に行く用事がありまして。
車内販売で人数分のお茶を奢りつつ、後は香の事を聞きましょう。
身の上話や恋の話を聞きながら、ゆったりと帝都への到着を待ちます。
仕事の内容は伏せつつ。


祝聖嬢・ティファーナ
※アドリブ歓迎

車両に乗ったら車掌に「ミンナ(精霊・聖霊)を出しても良い?」と聞いてみて了承を得れたら「お行儀良く悪戯はしないでね♪」と開放して上げます☆
景色を楽しみながら車両の中も探索しながら気付いてくれた方に“七色こんぺいとう”を精霊・聖霊に配りながら、お客様にも「お1つ如何ですか?♪」と聞いてみて手を差し出されたら“七色こんぺいとう”を「はい、どうぞ☆」と配ります♪

「目的地は何方ですか?♪」や「最近、何かありましたか?♪」などを笑顔で聞いてみて気になる点や事があったらメモとチビ鉛筆で残して置きます☆彡
猟兵が居たら近付いて、挨拶と自己紹介をして情報交換を申し出て“七色こんぺいとう”も配ります


備・香
「いっ行かないで!乗ります!乗りますから、止まれないのは理解っています!そこをなんとか!」

走れる列車に、文字通り『飛んで』跳び乗った。

他の猟兵なら、駅のホームで乗れたのだろう。

UCで召喚した『オート羊』の群れをクッションにして、ダイナミック乗車。

「いっ、痛くはない。へっちゃらですよこんなのっ」

体は傷まないが乗客の視線は、痛い。

慌ててやってきた車掌さんに切符を見せて。駅弁は売店で買うのと車内で買うのとどっちが、雰囲気込みで美味しいかを考えて居たことから説明した後、無事に座席についた。

「駆け落ち。いつか、備家を捨てて、私も公(きみ)くんと、してみたい」

窓の外は流れる時間の累積、誰にも平等で残酷な。


鳳凰院・ひりょ
(せっかくだから、香さんには接触しておきたいかな)

うきうきした雰囲気を放ちつつ、香さんに接触
「やぁ、こんにちは。君は一人旅かい?
俺は帝都に用事があってね。あまり行く事のない場所だから今から楽しみでね。
君もどこかうきうきしている感じに見えるけれど、帝都が楽しみなのかな?」

さりげなく「どんな用事で行くのか」は伝えずにコミュ力を活用し香さんに話し掛け、どんな用事で行くのか、どんな思いなのかを聞いてみる
基本的に香さんが話しやすいように話してもらう
事前情報としてある程度は聞いているが、大事なのは「香さんの口から話を聞く事」
聞いた情報もだが、聞いたという事実がこの後大事になってくるはず


アイ・リスパー
『さて、先日はゆっくり観光もできなかったので、改めて列車の旅でも満喫しようか』

【強化外装】によって周囲の材料で作ったパワードスーツを纏った『チューリングX』として、列車に乗り込むとしよう。

……なんでパワードスーツか?
それは――そんな気分だからだ!

『ふむ、この身体の大きさだと、ちょっと列車内は窮屈だろうか……』

仕方がないので、二人分の席を占領して腰掛けよう。
れ、列車破壊の意図はないぞ?

『あ、名物駅弁を一つ頼む。
あとお茶を』

車内販売で駅弁を頼み、パワードスーツ内で食べるとしましょう。

「って、きゃああっ」

ガタンと列車が揺れた拍子に、コックピット内でお茶をこぼして熱さにのたうち回るのでした。


天星・雲雀
ひりょ(f27864)さんと同行。

「恋する乙女の顛末やいかに」

「帝都にて、香さんを待ち構えてても良かったんですが。先に顔見知りに成って置いた方が話しやすいだろうと、列車に乗り込みましたが、無事に帝都にたどり着けるか怪しい気配が、車内に立ち込めてますね」

「それとなく、香さんが、車内で一人に成らないように見張っておきましょう。少なくとも帝都に付くまでは」

【行動】ひりょさんと、香さんが話し始めたら、それとなく自分も話に混ざります。(自分に空気が読めれば良いんですが)

「帝都には帝都でしか出来ない事も有るでしょうね。香さんも帝都でやっておきたい事が御有りですか?」

追跡機を香さんの持ち物の中に忍ばせます。



●列車の旅はその時を待つ(時刻は列車到着前)
 件の列車が駅に駆け込んでくる。
「恋する乙女の顛末やいかに」
 そう呟きながら。列車が止まるのを待つ天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)。
(帝都にて、香さんを待ち構えてても良かったんですが)
 何をするにも、先に顔見知りに成って置いた方が。そう思いながら列車に乗り込む雲雀。「……無事に帝都にたどり着けるか怪しい気配が、車内に立ち込めてますね」
 その予感が当たらないことを祈りつつ。
「それとなく、香さんが、車内で一人に成らないように見張っておきましょう」
 少なくとも帝都に付くまでは。そう思い直す雲雀であった。

●列車の旅は始まりを告げる(時刻は香の街の駅)
「ああー! 待って、乗ります!」
 発車間際の列車に飛び乗る藤田・香。
 それに続くように、ストレートヘアを揺らしながらシャッポを押さえながら飛び乗ってきたのはアハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)……今は、有栖川・ハチ子である。サクラミラージュらしいハイカラ衣装で変装した彼女はどこからどう見てもこの世界に生きる女性に見える。
「はぁ、はぁ……」
 同じように荒い息をついている香と視線が合うハチ子。

 がたんごとんと音を立てて列車が走り出す。

 呼吸を整える演技をしながらハチ子は思う。
(恋をしてると人は輝くといいますが……影朧兵器の光で輝くのなら破壊しないといけませんね)
 まだ取り返しのつかない事になる前に。そのためにもまず香からの信頼を得ねば。
「貴方も駆け込んできたご様子ですね」
 ハチ子が声をかけてきたことに少しびっくりしたのだろう。目をきょとんとさせながら、香が答える。
「ええ、思い立って来たから思ったより時間が無くて」
 ふぅ、と息を吐いて、香が立ち上がる。
「一つ、貴方の旅のお供をさせて頂けませんか?」
 袖振り合うも他生の縁、と申し出たハチ子の提案に笑顔で頷きを返す香。
「私は有栖川・ハチ子。道楽で探偵をしてるものです」
「私は、藤田・香と申します」
 二人揃って自由席に向かう……その時事件は起こった!!

「いっ行かないで! 乗ります! 乗りますから!」

 その声は外から聞こえた。つまり、列車の外である。
「!?」
 慌ててドアの窓に貼りつく香。その横からひょいと覗くハチ子。外には和風な衣装を纏ったオラトリオが列車に並行して飛んでいた。備・香(歴史の管理者・f28612)さんである。どうやら時刻に乗り遅れたらしい。全力飛行で張りついているが、車掌さんが捕まらない。そのまま先頭の運転席の方まで飛んでいく備・香。
「乗ります! 切符あります!」
「そういう問題じゃ無くない!?」
 ようやく事態を把握した車掌さんんが窓から顔を出して備・香と話をする。何が問題かって、どうやって列車に乗るかである。停まるわけにはいかないし、そんなことできないのは備・香も分かっているわけでして。
「そこをなんとか!」
 大切なことなので必死に頼み込む備・香さん。
「ああもう! どうにか乗ってきなよ!!」
 しまいには車掌さんが折れてそう告げる。
「……!」
 ぱぁっと顔を明るくさせて備・香さんが向かうのは貨物車両。その上で【ガジェットショータイム】発動である。貨物車両の屋根に召喚されたのは『オート羊』さんの群れ。それをクッションにして、ダイナミック乗車する備・香。
 ごん、とか重い音がしたが。
「いっ、痛くはない。へっちゃらですよこんなのっ」
 らしいので大丈夫らしい。
 その後、列車の中に入ってきた備・香さんに対する乗客からのアツイ(?)視線。
「う、ううう……」
 体は傷まないが乗客の視線は、痛い。

 そんな視線に耐えながら、自由席に向かう備・香。
 ふと立ち止まり、外を見て。視線を戻し、車両の中を見て。
「何してるの?」
「……っ?!」
 びっくぅぅと飛び上がる備・香は慌てて車掌さんに切符を見せる。どうやら、駅弁は売店で買うのと車内で買うのとどっちが、雰囲気込みで美味しいかを考えていたらしい。切符があったのと説明に納得してもらったので。備・香さんは無事に座席についた。

 そんなこんなで列車の旅は順調に走り出したのである。

●列車の旅の閑話休題(時刻はヒミツ)
 備・香さんダイナミック乗車事件があってからしばし。

 自由席のドアが開いてそこに乗り込んできたのはロボ……じゃなくてパワードスーツであった。
『さて、先日はゆっくり観光もできなかったので、改めて列車の旅でも満喫しようか』
 どこかで見かけたようなアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)……じゃなくて、チューリングXである。備・香に続き、乗客の視線を釘づけにしているチューリングXさん。なんでこんなのが乗車時に話題にならなかったのか。世界は不思議に満ち溢れている。
 ちなみに、アイがここまで乗ってきたオベイロンを【強化外装】によってパワードスーツにした上で纏っているのだが、それは秘密である(公然の)。
(……なんでパワードスーツか? それは――そんな気分だからだ!)
 パワードスーツの中でくわっと目を見開くアイさんでした(誰にも見られてない)。

 ともあれ、観光気分で外の風景でも、とか思ったチューリングXですが。
『ふむ、この身体の大きさだと、ちょっと列車内は窮屈だろうか……』
 そりゃね。でかいからね。むしろ座れるのか?
 仕方ないので、二人分の席を占領して腰掛けることにするチューリングX。ぎぎぎぎっと座席が抗議の声をあげる。
『れ、列車破壊の意図はないぞ?』
 偶然なのです、たぶん。
 そんな様子を遠巻きに見ていた車内販売のお姉さんですが、見た目ほど危険(?)ではないことに胸を撫で下ろし、お仕事に勤しみ始めた。
『あ、名物駅弁を一つ頼む。あとお茶を』
「……!? は、はい」
 まさかの注文に目を白黒させるお姉さん。でも商売はきちんとしました。
(パワードスーツ内で食べるとしましょう)
 中の人はとても笑顔でした。

 そしてこちらは車内を歩いて、じゃなくて飛んでいた祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)。
「ねえ、ミンナを出しても良い?」
 自分の切符を確認しに来た車掌さんにそう問いかけ。
「他の人に迷惑じゃなかったら大丈夫だよ」
「やった☆」
 了承を得たなら、ティファーナはミンナこと精霊・聖霊を呼び出す。
「お行儀良く悪戯はしないでね♪」
 というティファーナの言葉に頷きを返す精霊・聖霊を開放し、一緒に車内を移動するティファーナ。
「おー!」
 外の景色を楽しみつつ、ふわふわと飛んで回り。ティファーナたちに興味の視線を投げかけている人がいれば、笑顔をたたえて近付いていく。
「お1つ如何ですか?♪」
 と差し出すのは七色こんぺいとう。いつの間にか精霊・聖霊の手にも握られている不思議なこんぺいとうを差し出された手に。
「はい、どうぞ☆」
 と配りながら。
 ひとまず走り出した列車の旅を堪能するティファーナたちなのでした。

●列車の旅は帝都へ進む(時刻は帝都へ向かう列車の中)
 ようやく自由席の車両まで移動してきたハチ子と香。
「帝都で少し仕事に行く用事がありまして。」
「そうなの? 私も帝都へ行く途中なの」
 奇妙な偶然に香が笑いかける。この車両に至るまでにだいぶ親しくなったようで。見つけた空席に自然と二人で座る香とハチ子。
「おっ」
 と突然降ってくる声。それはびっくりした表情で立ち止まっている鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)のものであった。
(せっかくだから、香さんには接触しておきたいかな)
 と列車に乗り込んで彼女を探していたひりょだが、ちょっと気を抜いている時に見つけてしまったらしい。
 ひりょの声と表情に、ハチ子は猟兵だと察する。その視線があまり動揺していなかったので。
「ハチ子さんの知り合い?」
「いえ?」
 香の言葉に即答するハチ子。そりゃ知り合いかって言われたら同業者っていうだけですし。しかしその時間稼ぎはひりょにとってありがたかった。
「いや、二人がとっても楽しそうに話しているものだから」
 いつも通りの笑顔に戻り、そう話し出すひりょ。
「挨拶もまだだったね。やぁ、こんにちは」
 先程まではなかったうきうきした雰囲気を纏いつつ、香に話しかけるひりょ。
「実は俺も帝都に用事があって。あまり行く事のない場所だから今から楽しみでね」
 先に二人が話していた帝都という単語が聞こえてきた、とひりょが告げる。
「よかったら、帝都に着くまで同席してもいいかい?」
 ひりょの申し出に、顔を見合わせる香とハチ子。しかし、そこまでの道行ならば、と頷きを返す香。
「君もどこかうきうきしている感じに見えるけれど、帝都が楽しみなのかな?」
「え、っと……実は……」
 全然会えていなかった大好きな人に会いに行くのだと言う。
「これまでは、その、不躾かなって思っていたんですけど。今なら、会えるって」
 そう思って。
「これは……コイバナの気配でしょうか?」
「ち、違います!?」
 ハチ子が調査よろしく、手帳を取り出してめもめも。その様子に慌てふためく香。そんな様子に微笑するひりょ。
「あれ?」
「天星さん?」
 その声は再び降ってきて。声の方をひりょが向くと、そこには今度はまさしくひりょの友人である雲雀がいた。その縁で、ちゃっかり同じ席に入り込む。ちらっと香の方を見る雲雀。
「あ、ちょうどいいところに」
 雲雀を追いかけるかのように現れた車内販売をハチ子が呼びとめる。人数分のお茶を買って、皆に配って。
 ほっとしたひと時の後、次いで現れる妖精行なティファーナたち。
「目的地は何方ですか?♪」
 とか。
「最近、何かありましたか?♪」
 など。七色こんぺいとうを手渡した人々に聞いてるようで。
「何かいいことありましたか?♪」 
「いいこと? うーん……これを手に入れたことかしら?」
 ティファーナの言葉に、懐から小さなオイルランプを取り出す香。
「とっても不思議なオイルラムプ。私に勇気を与えてくれるの」
 ゆらり揺れるその様は、どこにでもあるオイルランプで。しかし、それが『ただのオイルランプでは無い』ことをその場の誰もが知っていた。
「これがあったから、私、帝都にいるあの方に会いに行く勇気が出たの」
「ふむふむ☆」
 香の言葉をメモとチビ鉛筆で書き残していくティファーナ。
「じっくり見せてもらっても?」
 ひりょが遠慮がちにそう申し出るが、香は首を横に振る。
「ごめんなさい。大切なものだから」
 信頼してないわけではないけれど。そっと抱きしめるようにして手元に戻す香。
「これは帝都に持って行かないといけないの。必ず」
 その言葉が染み渡るように、その場の皆へ届き。
 雲雀が問いかける。
「香さんも帝都でやっておきたい事が御有りですか?」
「やっておきたいこと? そうね、せっかくだから帝都を観光していかないと!」
 そう言って笑う香。

 帝都には、大好きな人に会いに行く。そして観光する。その道行きにランプは必ず必要だと言う。

 メモを残すティファーナとハチ子。そして言葉をゆっくりと頭の中で整理するひりょ。
(大事なのは『香さんの口から話を聞く事』)
 聞いた情報はもちろんのこと、『聞いたという事実』がこの後大事になってくるはずだ。そう、考えながらひりょは、香が話しやすいよう微笑を絶やさない努力を続けていたのである。

●列車の旅の幕間にて(時刻は帝都のひとつ前の駅を過ぎた頃)
 列車は順調に帝都に近づいていく。

 風のように後ろへ流れていく景色を見ていた備・香。彼女もまた香の事件のために駆けつけた猟兵である。決して列車に乗り遅れただけのドジっ子ではない。
 だが、今は。帝都に着くまでは香のいる同じ車両でのんびりしていても問題ないだろう。
「駆け落ち。いつか、備家を捨てて、私も公(きみ)くんと、してみたい」
 ぽつりと呟く備・香。

 窓の外は流れる時間。そのの累積は……誰にも平等で、残酷な。

『次で終点の帝都です』
 車掌が歩いて乗客たちに告げて回る。
『おお、もう?』
 景色を楽しみつつ、(中の人は)駅弁を堪能していたチューリングXはその言葉にびっくりする。
(ということはそろそろ任務が開始)

 ガッタン。

 列車がめっちゃ揺れた。
「って、きゃああっ!!!」
 コックピット内で膝の上に零したお茶の熱さにのた打ち回るチューリングX(の中の人)でした。なお、列車破壊は免れた模様です。

●列車の旅は唐突に終わりを告げて(時刻は帝都に着く直前)
『次で終点の帝都です』
 車掌が歩いて乗客たちに告げて回る。
 その声は香たちがいる席にも届いて。

 ひりょが周辺を見回す。……どうやらこの車両で待機している猟兵もたくさんいるようで。
「俺、ちょっとお土産を見てきます」
 念のため、他の車両を見て回ろうと立ち上がるひりょ。
 そこへ対向するように近付いてきたのはティファーナである。
「ボク、祝聖嬢・ティファーナ。猟兵さ」
 七色こんぺいとうを差し出しながら、ひりょとの情報交換を申し出てくるのであった。

 立ち上がったひりょを見て。香もうーんと悩みつつ、その場が女の子ばかりになったのでちょっと気恥ずかしげに告げる。
「少し、お花を摘みに行ってきます」
 今のうちに、と。微苦笑する香を同席していたハチ子は同じように微苦笑で見送る。彼女が立ちあがったその隙に。香の手荷物に追跡機を忍ばせる雲雀。
「……」
 後は彼女を一人にしないように。少し時間差で香の後をこっそり追い掛けようと雲雀が立ち上がる。香の手で閉められたドアを開けて。
 開いた瞬間、ドアの向こうから吹き込んでくる煙幕の煙。
「皆さん!」
 それは誰かに向けた言葉では無かったが。切迫した声にその場にいた猟兵たちが一斉に振り向く。雪崩れ込んでくる大量の煙幕と、香の声。
「このラムプは正しき事に使うもの! あなたのような悪党には渡しません!」
 香の声に猟兵たちが状況を把握するより早く。

 香はこの列車を飛び下りたのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『怪盗少女『千代子』』

POW   :    邪魔をするならば、この絡繰り銃でお相手しよう
いま戦っている対象に有効な【絡繰り仕掛けが内蔵された銃】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD   :    次の標的は……それにしようか!
【予告状】が命中した対象に対し、高威力高命中の【盗み攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    私が盗み出すまで、眠っていてくれたまえ
【華やかな爆発と共に、煙幕】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。

イラスト:麦島

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●予知より外れかけ、なお在る
 もし、グリモア猟兵が列車の中で起こったことを知ったならこう言うだろう。
『ですから、機を待って欲しいと申しましたのにっ』
 この場合の機とは、地の利や優位性だけではなく。藤田・香が持つ能力の特定や逃走を許さぬ態勢も含まれていたのだ。帝都の中であれば、能力を使わせたり、路地裏に誘い込んだり等でそれが叶ったのに。

 しかし、やっちゃったものは仕方ない。事に当たるのは猟兵たちなのだから。現場の彼らの判断こそが優先されるべきである

 実際、状況はそんなに悪くない。帝都に着くまでの間なら周囲への影響は少ない。香を追跡し、籠絡ラムプを確保することができれば。
 爆発によって緊急停車していた列車の関係者に謝り倒し、猟兵たちは逃げた香の後を追跡し始める。

●想いの突き進む、果て
「はぁっ、はぁっ」
 もう、息が続かない。
 まだ帝都まで距離があるが、今休まないと倒れてしまう。それでは意味が無い。
 座り込み、呼吸を整える。

 ――私は、朔様にお会いするの。
 ――私は、朔様のお役に立ちたいだけ。
 ――私は、このラムプは、きっと朔様のお力になれる。

 だから、あの方のお側にいることができるなら、私は何でもする。そのためにはこのラムプを死守しなければ。

 足音が近づいてくる。ラムプを狙っていたあの男……だけじゃない、足音が複数。つまり仲間がいる。

 ふぅ、と一度深呼吸して、立ち上がりながら振り返る。
「…………え?」
 そこにいたのは、あの男と……さっきまで楽しく一緒に帝都へ行こうと話していたあの人たち。

 ――どうして?

 その疑問が脳裏をよぎる。声を出すより早く、オイルラムプが揺れた。中から抗議するように。

 ――そうだ。何者であれ、今ここでラムプを盗られるわけにはいかない!

「あなた方がこのラムプを狙うというのなら! 私は迎え撃つのみです!」
 しかし、多勢に無勢。それに真正面から戦うとなれば……鍛えていない私では彼らには勝てない。だったら。
「ラムプさん!」
 オイルラムプの表面を撫でる。直後、煙が巻き起こり……それが晴れた後、そこに立っていたのは、ラムプの中に『居る』影朧。
「おや、おやおや。いいのかい、ボクを出現させて」
 その名は『怪盗少女『千代子』』。私がラムプを通じて力を借りていた存在。
「いいのです。人目もありませんし、出し惜しみしている状況じゃありませんし」
「おっと、観客無しか。それは辛い。でもまあ」
 背中越しに感じる視線に怪盗少女は、猟兵たちへ向き直る。

 猟兵たちに向き直り、千代子が不敵に笑う。
「怪盗少女のお相手になる探偵の方々はいるようだ」
 香を守るかのようにマントを翻す千代子。
「というわけで諸君。キミたちの相手はボクがしよう」
 戦闘態勢を取る千代子。
「観客がいないのが残念だが、何、キミたちを倒してから帝都でゆっくり怪盗の舞台に上がるとしよう」
 不敵に笑う千代子を前に、猟兵たちが戦闘態勢に入る。

 千代子に絶大な信頼を寄せている香。戦闘は彼女に任せ、香は後方で待機している。
 ゆえに、ここでは千代子の撃破に注力してもらいたい。千代子を放置して香の対処に当たる場合、怪盗の奇策によって状況を覆される可能性がある。
 しかしながら、戦闘の最中でも香に呼びかけることは可能だ。まだ聞きたいことがあるのなら、声をあげて問うてほしい。

 籠絡ラムプの行方を決める戦いが今。
ヴィクター・グレイン
「お前はそれが良く無い物と分かって使っているのか?」
話しながら近づく。
コートの中から中華包丁を取り出す。
「もしそうだとするならば、貴様は悪だ。理由がどうであれ悪党は豚箱にぶち込まなければ…。」
そう言って右手の包丁を香目掛けて投げつける。
勿論ただの脅しだが…。
投げた瞬間走り出し、懐から火炎放射器を取り出し千代子に向けて放つ。
スプレー缶が切れたらそれを仕舞い、その場にあった鉄パイプ等を使い、足、腕、頭の順に殴り付ける。
特に頭を何度も何度も殴り付ける。
「このっ‼︎売女めがぁ‼︎」
周りの奴等からすればそれは残酷極まりない光景だろう。
もう動かなくなったのを確認して香な向き直る。


アハト・アリスズナンバー
WIZ判定
まずいですね。ここで取り逃がすとは思えませんが……説明が面倒です。
香さんの前に怪盗を何とかしましょう。
丁度、探偵はおりますので。

予めUCを使用しておきます。効果時間に倒せるなら重畳。でも倒せないのが本命です。相手のUCの煙幕に対して、丁度効果時間が切れて眠ってしまうように発動タイミングを調整します。
1分で起きたら、【誘導弾】の性質を持った【グラップル】弾で一気に肉薄。ランスで【ランスチャージ】して【鎧無視攻撃】します。

怪盗には探偵。しかし私は本職ではないので、容赦なく捕えずに倒してあげるとしましょう。


鳳凰院・ひりょ
今の状況、香さんは俺達に明確な敵意を持って接してくるだろう
不本意だが目の前の怪盗少女を倒してから話を聞いてもらうしかないのか
香さんや彼女の大事な人に害が及ぶ危険性がないなら、こんな手荒な事はしなかった
そこまでしてラムプを守りたいのか

煙幕は厄介、無効化しなくては
香さんの元へ行く道中で小石を拾い、それを媒体として固有結界・黄昏を発動
風の疑似精霊を呼び出し自分含め味方の周囲に薄い風の被膜を形成
煙幕が体に触れないよう風のバリアとする

自分は疑似精霊の維持に集中
煙幕を実際に使われた場合、風の疑似精霊に煙幕の吹き飛ばしを指示
また結界範囲に香さん存在時は彼女が戦闘余波受けないよう、密かに香さんにも防御膜を付与


祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
※アドリブ歓迎

『フェアリーランド』の壺の中から風/戦乙女/力天使と聖霊と月霊を呼び出して『クリスタライズ』で姿を隠して『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃を仕掛けます♪
敵の攻撃を『月世界の英霊』で空間飛翔して避けながら『月霊覚醒』で敵のUCを封印/弱体化させます☆
機会を見て『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で苛烈な猛攻を仕掛けます!
『聖精月天飛翔』でWIZを強化して、『祝聖嬢なる光輝精』で怪我を直しで『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒やします♪

精霊・聖霊・月霊と猟兵に“七色こんぺいとう”を配ってお礼を伝えます☆彡
「悪さは許さないよ!」


天星・雲雀
ひりょ(f27864)と、同行。

香さんの方には、ひりょさんが付いてるから大丈夫そうですね。

「既視感は、そういうことですか、骸の海では色々混ざるものですからね」

雲雀は白無垢姿で戦います。

「そっちのランプの中身が怪盗さんなら、こっちのランプの中身は、『オトモ』です!」

UC獅子の座流星群を使います。

「怪盗さん、流星の大河で踊りましょう?」

「帝都で朔様と会って、既成事実を作りたいなら止めません。ですが、影朧の運搬は許容しません!」

戦いが終わったら、UC別の一面で早着替えして、白無垢と列車に置き忘れていた手荷物を香さんに手渡します。

「何事にもヴィジョンというものが大事です。行けるところまで進みなさい」


備・香
「こんな所で!影朧さん、もう出てきちゃうんですか?!」

「予定日はいつだったんですか?早産は体の負担が大きいんですよ?!」

「桜の精さんを呼んできますからちょっと待てて、え?待てない、もう無理って!!!」

時計の針は戻すこと能わず。されど進めるは容易き。

「戦闘不可避とおっしゃるなら、この場面は好都合。備・香、大義の為に参ります」

【戦闘】UCで、『パイナップルやバナナなどの南国フルーツの形をした爆弾の山盛り御見舞いセット』を召喚して、怪盗さんに盗ませて爆発させます。
一つ爆発すると連鎖的に全部が爆発します。籠ごと持ってってください!

爆弾フルーツを地上にばら撒きながら空中に避難します。(空中戦の方が得意)


アイ・リスパー
【強化外装】でパワードスーツ装着

『籠絡ラムプなどというまやかしの力に頼るのは感心しないな、香君。
この力はラムプの魔神の力。君自身の力ではないだろう』

ここは香君に借り物の力では何もできないという現実を突きつけ、目を覚ましてもらうしかあるまい。

『全武装召喚、セーフティ解除!』

電脳空間からガトリングガン、ミサイル、ロケットランチャーを召喚して装着。
ラムプの魔神に向かって引き金を引こう。

『くっ、なにっ!?』

だが、反撃の電撃銃によってパワードスーツがショート。
動作を停止してしまい……

『見たか、香君。
パワードスーツという借り物の力に頼った末路が……これだ……』

倒れ込むパワードスーツの中で気を失うのでした。




 臨戦態勢の猟兵たちと、『怪盗少女『千代子』』&藤田・香(ふじた・かおる)。

 距離を取りながらその間に張り詰めるのは緊張感。
「既視感は、そういうことですか、骸の海では色々混ざるものですからね」
「ふむ。それは挑発かい?」
 天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)の視線を、不敵に笑いながら千代子は白いマントで遮り、座り込んでいる香を隠す。
「悪さは許さないよ!」
「と、言われても。悪いコトなんてしてないんだが。ねえ香」
 祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)の言葉に、千代子は肩を竦める。香もまた同じ意見のようで頷きを返すばかり。

 その中で、有栖川・ハチ子に変装したアハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)と鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)はわずかに視線をかわす。
(まずいですね。ここで取り逃がすとは思えませんが……説明が面倒です)
 視線もほぼ動かさず、小声で話しかけるアハトにひりょも頷きを返す。
(今の状況……香さんは俺達に明確な敵意を持って接してくるだろう)
 であるなら、不本意ながら、まずは目の前の怪盗少女を倒してから。話を聞いてもらうしかない。
(香さんの前に怪盗を何とかしましょう)
 同じ意見であったアハトもひりょに頷きを返して。タイミングを計る。

 じりじりと張り詰める緊張感がはち切れそうになった瞬間。文字通り、空から降ってきたのは備・香(歴史の管理者・f28612)であった。
「こんな所で! 影朧さん、もう出てきちゃうんですか?!」
 緊張感関係なく、思ったままを叫ぶ備・香。その様子に千代子は一瞬、きょとんとして。
「予定日はいつだったんですか?」
「……は?」
 そして間の抜けた声をあげた。
「早産は体の負担が大きいんですよ?!」
「何を言っているんだ、この子は」
「さ、さぁ?」
 緊張感を完全にぶっ飛ばした備・香に、千代子が呆れ返りながら香を振り向く。

 その瞬間、それが戦闘開始の合図となった。


 まず動いたのはヴィクター・グレイン(真実を探求する者・f28558)。
「お前はそれが良く無い物と分かって使っているのか?」
 ヴィクターの問いかけは香に向けて。その足もまた香の方へ向かっている。
「おっと、ボクを」
「待って!」
 そのヴィクターを遮ろうとする千代子を押し留めたのは、備・香である。
「桜の精さんを呼んできますからちょっと待っ」
「ふむ。それは不要だよ」
 備・香の言葉を遮って、千代子の手から予告状が飛ぶ。それは備・香の胸に突き刺さり。直後、千代子の姿が消える。
「ボクは転生する気なんて無いのだから」
 千代子の声は備・香の背後から。側頭部を狙った鋭い蹴りが炸裂する。
「あぅっ!?」
 吹っ飛ばされる備・香。
「あんまりボケているとキミたちが死んでしまうよ?」
 千代子の手には攻撃と同時に備・香から掠め取ったリボン。

 備・香と千代子の攻防の横をヴィクターは突き進む。
「人の物を勝手に良く無いとか言わないでください!」
 ヴィクターに噛みつくように叫ぶ香。

 もし。そのランプを『良く無い物』と知って使っているなら、ヴィクターの考えの通り、香は悪であろう。であるなら、いかなる理由であれ、『悪党は豚箱にぶち込む』という彼の論理はどこまでも正しい。
 しかし、そうでないのなら?
 でもその判断がつかない。それは香が本心を見せる前に壁を作ってしまったから。

 流れるようにヴィクターはコートの中から中華包丁を取り出す。
「もしそうだとするならば、貴様は悪だ」
 そう言って中華包丁を香に向かって投げつける。今の段階では、それはあくまで仮定。そしてあくまでただの脅し。
「……!」
「伏せたまえ!」
 投げつけられた包丁に、息を飲む香。叫ぶ千代子。その瞬間、香に駆け寄ろうとした千代子に対して、ヴィクターが走り出し、懐から火炎放射器を取り出し千代子に向けて放つ。

 判断がつかないのなら、まずは『決定的な悪』たる影朧を倒すしかあるまい。

「くっ?!」
 咄嗟にマントを翻して炎を遮る千代子。完全には遮断できず、彼女のマントが燃え始める。
 直後、ガスの切れた火炎放射器を仕舞い込んで次の武器を手に取ろうとしたヴィクターに。
「ボクにはユーベルコヲドすらもったいないと? 舐めてくれるねキミは!」
 千代子がマントを炎ごと投げつける。マントがヴィクターの顔に巻きつき、マントの火がコートに燃え移る。
「っっ!」
「お返しするよ。普段ならこんな華麗じゃない反撃はしないんだが」
 炎を対処しようとするヴィクターの僅かな隙へ、千代子が飛び上がる。
「端的に言えば、ユーベルコヲドを使わないキミが悪い」
 ヴィクターの頭へ飛び回り蹴りを叩き込む千代子。蹴り飛ばされたヴィクターは態勢を崩すもなんとか踏みとどまる。追撃しようとした千代子の前に……雲雀が割り込んだ。
 白無垢姿の雲雀を見て、一度距離を取る千代子。

 瞬間。
「歌唱う、我らが精霊・聖霊・月霊よ♪ 歌い、踊り、唄い、舞踏れ♪ 素ノ源ヨリ来タレリ……」
 頭上から降ってくるティファーナの声と魔法の矢の雨。ユーベルコード【エレメンタル・ピクシィーズ】。
「っ!!」
 今度は千代子が息を飲む。

 それはティファーナが【フェアリーランド】から呼び出した風/戦乙女/力天使と聖霊と月霊とが放つ、それぞれの力を持つ魔法の矢。さらには【クリスタライズ】でそれら全てを透明化して行動していたがゆえの、不意打ち。
「いいね、美しい攻撃だ!」
 千代子は叫びながら、魔法の矢の雨を横っ飛びから前回転、さらには走り出して回避する。しかしこれで終わりではない!
「光りを怯える闇と悪よ、悔い改めなさい……」
 ティファーナの指先から放たれる【神罰の聖矢】が千代子の足元をを貫く。
「くっ。良い攻撃だ!」
 間髪入れず、さらに降り注ぐ絨毯爆撃のような魔法の矢。かわし切ることなどできず、幾本かの矢が千代子の体に突き刺さっていく。
「備・香、大義の為に参ります」
 復帰した備・香が【ガジェットショータイム】で召喚した爆弾フルーツを、さらに空中から地上にばら撒く。

 時計の針は戻すこと能わず。されど進めるは容易き。戦闘不可避というのなら、むしろこの場面は備・香にとって好都合だ。

「遠慮なしにやってくれる!」
 爆弾の直撃を何とかかわしながら、しかし動きが鈍ったそこへ雲雀が声を張り上げる。
「そっちのランプの中身が怪盗さんなら、こっちのランプの中身は『オトモ』です!」
 雲雀が千代子に繰り出すのは【獅子の座流星弾】で光速超重力推進装置を得た狐火の『オトモ』たち。千代子の周りを縦横無尽に飛び回る。
「怪盗さん、流星の大河で踊りましょう?」
「遠慮させてもらえないかね!」
 四方八方を囲まれている。襲い掛かってくるオトモの攻撃を千代子は耐えるしかない。
 しかし、一瞬の隙を見て、その包囲網を脱出する千代子。
「ボクを捕えたければ、探偵でも連れてくることだ!」
「丁度、探偵はおりますので」
 それは読んでいた、と。千代子の進路を塞ぐハチ子。
「探偵まで! いいね、盛り上がってきたじゃないか!」
 嬉しそうに笑う千代子に対して、ハチ子は【アルジャーノンエフェクト】を発動。能力を6倍まで増強したハチ子が千代子を捉える。ハチ子の槍を千代子が銃で跳ね上げ、千代子が銃を構えれれば、ハチ子が槍の柄でその腕を弾き飛ばす。
「厄介……なのはどいつもこいつもか!」
 接近戦はハチ子の間合い。離れればオトモが突撃してきて、ティファーナたちが射抜き、動きが完全に止まれば頭上から備・香が爆弾を撒いてくる。
「これを打破するには……これしかなさそうだ!」
 直後、千代子の足元が華やかな爆発に包まれた。


 ヴィクターの仕掛けから始まった千代子。その戦闘が繰り広げられている中。
『うむ。完全に出遅れたッ!』
 アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)、じゃないんだチューリングXが戦場へ駆けつける。道中、移動手段に戻せばいいのに、【強化外装】でパワードスーツ装着したまま来るから。
 しかしそのおかげで戦闘に巻き込まれない位置から、戦場を見渡すことができた。
(香君は……あそこか)
 戦場を回り込むようにして、香に近づくチューリングX。ステルスモードで至近距離まで近づき、地面にあぐらをかいてから話しかける。
『籠絡ラムプなどというまやかしの力に頼るのは感心しないな、香君』
「……っ?!」
 感覚的には突然現れたウォーマシン? ロボ? に警戒する香。だが相手は座っている。その距離感に警戒をしつつも、香は動かない。
『君の力はラムプの魔神の力。君自身の力ではないだろう』
 チューリングXの言葉を聞いて、香が答える。
「……私が私のお金で買ったものが私のモノじゃないって意味がわからないわ」
『……何?』
 想定外、とも言える言葉。彼女はこのランプを『買った』と言ったのか。
「それより『籠絡ラムプ』って? 貴方たち、何者なの?」
『……今、何と?』
 さらに返ってくる言葉にチューリングXは言葉を失う。

 もしかしたら、大きな勘違いが、すれ違いがあるのではないか。

 それを問おうとしたチューリングXに。
「人の主人へ勝手なナンパはご遠慮いただきたいんだが」
 声とともに空か降ってくる千代子。煙幕を隠れ蓑にまずは離脱したらしい。
「ボクが呼び出されたということは、香はキミたちに追い詰められたってことだよ」
 今更、何を語り合うと言うのか。言外にそう言って絡繰り銃を構える千代子。
 その様子を見て、チューリングXが立ち上がる。
『ここは……目を覚ましてもらうしかあるまい』
 どのような経緯と目的であれ、借り物の力では何もできないという現実を突きつけるしか。その意思を持ってチューリングXが叫ぶ。
『全武装召喚、セーフティ解除!』
 チューリングXからコネクトされる電脳空間から呼び出されるガトリングガン、ミサイル、ロケットランチャー。データが形状を成して実体化する。装着と同時に、千代子に向かって引き金を引くチューリングX!
「ちぃぃぃ! さっきから過剰火力すぎて美しくない!!」
 チューリングXの攻撃に、香を庇うようにして攻撃を引き受ける千代子。
「香、だいじょ……何?!」
「え?」
 振り向いた千代子が見たものは爆風が香を避けて通る光景。誰の仕業かわからないが、香を守る意思が働いているらしい。
「なら!」
 千代子が叫ぶ。反撃の一手はユーベルコヲドで呼び出した絡繰り銃。
「効いてくれよ!」
『くっ、なにっ!?』
 その一撃は電撃の一撃。迸った雷によってチューリングXのパワードスーツがショートする。途端に動作を停止してしまうチューリングX。
『見たか、香君。パワードスーツという借り物の力に頼った末路が……これだ……』
 音を立てて倒れ込むチューリングX。その中の人もショートしたフィードバックで気を失ったのである。


 少し時間を遡る。
「これを打破するには……これしかなさそうだ!」
 千代子が煙幕で以て状況を打破しようとした直後。

「場よ変われ!」
 叫んだのはずっと後方から回復支援をしていたひりょである。拾った小石を千代子に向かって投げつけ、それを媒体・基点として。ひりょの【固有結界・黄昏】を発動する。小石が風の疑似精霊に姿を変え、その力で以て、仲間たちの周りに薄い風の被膜を、風のバリアを形成する。
 千代子の煙幕は既に列車で経験済み。
(眠気をもたらすのがこの煙幕の副作用なら)
 触れないように遮ってしまえば。かくしてひりょの読みは当たる。
「ふぅ☆」
 咄嗟に【月世界の英霊】でひりょの元へ転移してきたティファーナはもちろんのこと。風の守りを付与された備・香、ヴィクターも健在。ハチ子(クールタイム中)に関しては、どっちの効果で寝ているのかわかんないけど。たぶん、守れている、はず、はず?
「このまま、蹴散らしてくれ!」
 遮るだけでなく、そのまま煙幕を吹き飛ばすよう、風の疑似精霊に指示を飛ばすひりょ。
 そして視線は香へ。
(このままだと香さんを巻き込んでしまう)
 思った以上過激になってきた戦闘の余波。それが香に及ばないよう、煙幕に紛れて密かに、彼女用の新たな風の防御膜を作り出していたのであった。


 チューリングXが倒れ、彼(?)の攻撃が千代子と香の周囲に爆風と土煙をまき散らしている中。
「このっ!! ――めがぁ!!」
 好機とその中を突っ切ってきたのはヴィクターであった。手にした鉄パイプで千代子に殴りかかる。
「くっ?!」
 その一撃を足に受け、呻く千代子。次の、腕を狙った一撃をかわし、距離を取る。それに合わせて土煙が動く。そこを目印に、再びティファーナの【神罰の聖矢】と備・香の爆弾フルーツ攻撃が降り注ぐ。
「面倒だな本当に!」
 香のことを心配しなくていい、と徐々に距離を取りながら、千代子の予告状が再び備・香に直撃し、飛び上がった千代子は備・香にスティール&アタックを仕掛ける。
「その爆弾、奪わせてもらおう」
 備・香を蹴り落としながら腕に抱えていた爆弾の籠を奪う千代子。落下しながら備・香が叫ぶ。
「それ、です!」
「ちっ! スイッチ式か!」
 慌てて手放すも、千代子の手元で爆発する爆弾たち。その爆風に千代子が吹き飛ばされる。

「千代子!」
 吹き飛ばされた千代子に香が叫ぶ。ヴィクターが千代子の元へ走っていったからだ。
「帝都で朔様と会って」
「……!」
 香に声をかけるのは雲雀。その後ろにひりょが続く。
「既成事実を作りたいなら止めません。ですが、影朧の運搬は許容しません!」
「……最低」
 振り向いた先にいた雲雀は冗談ではなく、ただ推測で言っている、ようだ。その様子に思わず香が吐き捨てる。
「貴方たちが誰だか知らないけれど。いえ、名前と帝都に行くことは知っているけれど」
 香の言葉と視線には随所に棘がある。
「ユーベルコヲド使いが何で私の帝都行きをするわけ?」
「それは……」
 しかし言いかけたひりょの言葉を遮って、香が叫ぶ。
「というかユーベルコヲド使いが悪人と共同作戦とか、本気で意味わからないんだけど。何? 貴方たち不良なの? そんなに強いのに?」
 香の視線はひりょに集中していて。その背後を囲い込むように、ティファーナ、備・香が降りたつ。
「とにかく! 貴方たちに千代子を救う気がないなら、どいて!」
「いや、だからボクは転生する気など無いと何度言えば。聞いてる、香?」
 すたっと香の真横に降り立つ千代子。ヴィクターの追撃を受けながらも振り切って。もはや満身創痍、だがまだ動ける、まだ戦える。
 直後、何かを小声で話し合う香と千代子。猟兵たちにも緊張が走る。

「いくぞ!」
「……っ!」
 その緊迫を破るように千代子が叫び、絡繰り銃を構えて突撃してくる。息を飲むひりょ。

 だが。

「うっかり寝すぎたようです」
 クールタイムを経て復活したハチ子が、誘導弾の性質を持たせた、曰く『グラップル弾』で千代子へ一気に肉薄してきた。
「……ちっ!」
 完全なる不意打ちに対応し切れない千代子。
「怪盗には探偵」
 ハチ子が『アリスズナンバーランス』を構えて突撃する。
「探偵にしては、脳筋すぎないかね?!」
 アリスの一撃をなんとか弾き返す千代子。しかし、完全に態勢が崩れた。次の一撃は……防げない!
「ええ、私は本職ではないので、容赦なく捕えずに倒してあげるとしましょう」
「ちぃぃっ!」
 ハチ子のランスが千代子のあらゆる防御を貫く。それは千代子の影朧としての核すらも。
「探偵にやられたなら、仕方ない、か。怪盗だものなボクは」
 ランスチャージの一撃に、ゆっくりと消えていく千代子。その視線は香の方を向いて……小さく、口が動いて。
 『怪盗少女『千代子』』はサクラミラージュから消えたのである。


「千代子!!」
 姿の消えた相棒に香が叫ぶ。そのまま泣き崩れる香。

 戦闘が終わり、【別の一面】で早着替えした雲雀は、白無垢と香が列車に置き忘れていた手荷物を……持て余す。
『何事にもヴィジョンというものが大事です。行けるところまで進みなさい』
 と告げるつもりだった。では『香が描いていたヴィジョン』とはどういうものだったのだろう?

(香さんや彼女の大事な人に害が及ぶ危険性がないなら、こんな手荒な事はしなかった)
 とひりょは思う。そう、持っているモノが『籠絡ラムプ』でなければ。危険性がなければ。では香はそれを知った上で行動していたのだろうか? 仮に『そこまでしてラムプを守りたいのか』と問いかけたなら、彼女はなんと答えるだろう。

 だが、今の香に言葉を掛けられる猟兵はいない。彼女は本気で泣き悲しんでいるのだから。

 そして……香がゆっくりと顔を上げる。
「……オイルラムプ。そんなに欲しいならあげる」
 戻ってきたヴィクターにオイルランプを押し付けて。香はゆっくりと、よろよろっと立ち上がる。
「貴方たち、帝都にいくんでしょ? 楽しんできて」
 帝都へ行くと言っていたハチ子にそう告げて。
 ティファーナと備・香が見守る中、藤田・香は帝都とは真逆に歩いていくのであった。

 声をかけようとした者もいるだろう。ただ状況に圧倒された者もいるだろう。ただ、考えが想いが個々人の中ですらまとまらない今は、香を見送るしか猟兵たちに為す術は無かったのである。
『ム……状況は……』
 意識が回復したチューリングXへ皆が困ったような顔を向けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『籠絡ラムプの後始末』

POW   :    本物のユベルコヲド使いの矜持を見せつけ、目指すべき正しい道を力強く指し示す

SPD   :    事件の関係者や目撃者、残された証拠品などを上手く利用して、相応しい罰を与える(与えなくても良い)

WIZ   :    偽ユーベルコヲド使いを説得したり、問題を解決するなどして、同じ過ちを繰り返さないように教育する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●猟兵の任務における事実だけを述べるなら
 猟兵たちは、幻朧戦線が密かにばらまいた影朧兵器『籠絡ラムプ』の中にいた影朧を倒し、ラムプを入手した。
 後はこれを破壊するだけである。
 それでグリモア猟兵から頼まれた任務は完了だ。

 だからこそ、ここから先どうするかは、猟兵各人に委ねられる。

●列車の中で猟兵たちが藤田・香(ふじた・かおる)聞いたお話
 簡単にまとめるなら、無計画すぎる……というか目的が曖昧すぎるという印象だろうか。話を聞いても具体的な事項が出て来ず、感情からの言葉が多い。
 
 帝都には、大好きな人に会いに行く。せっかくだから観光もしたい。
 あっさり人に見せるのに触られるのは嫌だと言うオイルランプ。必ず帝都まで持って行きたいと言っていたのは、どういう理由からなのだろう?

 彼女の行動の源はきっと恋と呼んでいい想いの形。しかし、グリモア猟兵は何と言っていただろうか? 『恋は盲目』と刹那が評したのは、香の何に対してであったのだろう? その欠片は先の戦闘で誰かが犠牲になりながらも伝えたのだけれども、届いているのだろうか?

●河川敷にて
 気を失っていた一名に状況を説明しながら、情報を改めて共有して。
 猟兵たちは『籠絡ラムプ』を手に、しかし持て余す。

 ポイントは戦闘中に香から聞いた内容だ。
 彼女は『籠絡ラムプ』という言葉を知らなかった。あのランプは彼女にとっては、自分のお金を使ってお店で買ったオイルランプ。その不思議な力に気付いたのは買う前か後か。

「ああ、もう! 皆さん探しましたわよ!」
 遠くから聞こえてきた声はグリモア猟兵の刹那のもの。
「終わった頃かと思って帝都に行ってみれば、皆さんの乗っていた列車がテロにあったとかなんとかで、わたくし肝を冷やしたんですが!」
 帝都で話を聞けば聞くほどに、猟兵たちに解決を頼んだ事件の事だとわかれば冷や汗も出るというもの。
「列車の被害については死傷者いませんでしたし、修理に関しては、ええ、わたくしが、わたくしが……」
 しくしくしくと崩れ落ちる刹那。頼んだ手前、これは仕方ないのである。
「で、籠絡ラムプは……あ、確保済でしたのね。では後はそれを破壊して、今回の任務は終了ですわ」
 手を叩いて喜ぶ刹那に対して、猟兵の反応は薄い。
「……? 何かありましたの?」
 首を傾げながら刹那は事の次第を猟兵たちから聞くのであった。

●グリモア猟兵の推察
「な、なにか盛大な誤解というかすれ違いが発生しているみたいですわね?」
 口端をひくひく痙攣させながら引いている刹那さん。状況は理解したらしい。
「んー……ところで、皆さんは何故『自分たちは猟兵だ』と告げませんでしたの?」
 刹那の言葉に猟兵たちが顔を見合わせる。
「何かどう聞いても香さんは、皆さんを猟兵の方々だと気付いていないみたいなんですが」
 刹那の気付いたポイントその1がそれ。2つ目は。
「皆さんは香さんの行動をどう捉えているのでしょう?」
 最初に聞いた刹那の話を思い出してほしい。『香さんは決して力に飲まれたわけではありません。むしろ今も正義を成そうとしているのです』と告げていた。
「主義主張が合わないのは仕方ないのですが、それにしたって香さん、いじめられ過ぎだと思うのですが」
 ひったくりを捕まえたり、自分のことで他の人を巻き込まないようにしたりしてるのに。少なくとも予知の内容は皆聞いているはずだ。
「わたくしが今回皆さんにラムプの回収をお願いしたのは、これがいずれ暴走して周囲に被害をもたらすからですわ」
 その危険を回避するために猟兵たちへお願いしたのだ。もし、その危険性が無かったら?
 誰かも言っていたではないか、その危険性がなかったら手荒な真似はしなかった、と。

『正義を成そうとしている香がその危険性を知ってなお帝都に行こうとしていた』。

「それは誰かが確かめた事実ですの?」
 大切なのはそこ。もし、それが推測でしかなく、さらに推測が外れていたとしたなら? 影朧との関係もまた然り。

 まだ推し測るチャンスも問い質すチャンスもあったのだが、戦闘になったことで気持ちが逸ってしまったのか。一部が主義主張を叩き付けた形になってしまった。
 それが今の現状である。

「うーん、さくっと帰ろうと思っていたのですが……アフターケアに行かれる方いらっしゃいます?」
 もしそうなら帝都で観光しながら待っていると告げて。刹那はその場を後にするのであった。

●香のいる街へ向かう列車の中
 藤田・香はぼんやりと窓の外を見つめながら列車に揺られていた。
(早く帰らないと。急に家を抜け出してきたから、ご主人様に怒られるわ)
 ラムプが、千代子がいたから帝都に行く理由もこじつけできた。でもそれはもう無くなった。
(私はただ。朔様にお会いしたかっただけなのに)
 家の仕事や都合で帝都に行くだけでもやっとなのに。諦めた身分違いの恋を再び再燃させるほどの、誰にも文句を言われない理由を手に入れたのに。
(ごめんなさい、千代子。私が貴方を見つけなければ、こんなことにはならなかったかもしれないのに)
 ぼんやりと窓の外を見つめる香。

 もうすぐ、故郷の街が見えてくる。

●猟兵たちも香のいる街へ
 刹那が言ったアフターケアに訪れた猟兵たちは、香のいた街まで戻ってきた。彼女の家は既にわかっている。訪れれば家の中に居るだろう。ただ、どういう反応を返してくるか。それを乗り越えて彼女に何を言って、何を伝えるのか。それが重要なポイントだ。

「誰かが言っていたように、時計の針は戻すことは叶いません」
「取り戻せないなら、言葉で語り合うも殴り合うも気の済むまでしてみては?」
 去り際に刹那が言った言葉を思い出しながら。猟兵たちは香の元へ向かう。


※※※※※※※※
通常、参加者による差はつけないというのが公平性です。
しかし、1章~2章の行動が違い過ぎて、3章において同じシチュエーションを適用するのはかえって不公平だと判断しました。
そのため、1章・2章において以下の行動を取ったか否かで、香の初期対応が異なることにします(それによる影響はプレイングで回避可能です)

①1章で香と同席していた
②1章で香に攻撃を仕掛けた
③2章で香に声をかけた⇒「」書きの台詞で香に呼びかけた(()は除外。謎のウォーマシンさんは『』でも適用)
④猟兵だと明かさない

合計値で不信感が変わります。
ひとつ当てはまると不審度が+1されていきます。最大4点ですが、①と②は同時両立しないので、3点が事実上最大でしょう。

3点以上⇒ドア開けた瞬間に水をぶっかけられる。ドア越し会話からスタート。
2点  ⇒めちゃくちゃ不機嫌そうな顔をするも家の中に入れてくれる。話は聞いてくれるが頭からは信じない。
1点  ⇒好意的ではなく、やや敵対的。ただ話はきちんと聞いてくれる。
0点  ⇒好意的ではないが、不信感もほぼ無い。事情があれば納得してくれるレベル。

継続参加なら特別キャラボーナス。
人間の聖者さんと真実を探求する者さん
人間の聖者さん⇒2章の防護膜の件があるので、-1点。
真実を探求する者さん⇒誰よりも香に近い性格をしている貴方は猟兵と言う身分を明かすことで上記の合計数字を半減することができます。

結局のところ、香は何をしに帝都に向かったのでしょう?
表向きの『朔に会う』という理由以外に、裏はないのでしょうか?

それでは皆さんの参加を改めて、お待ちしています。
ヴィクター・グレイン
(扉を無理矢理こじ開ける。勿論、水をかけられるが…。)
さて、少し話をしようか?
あまり自分の素性を明かしたく無いが、言っておこうか。
俺は他の奴らと同じく猟兵だ。
最もその立場を利用しているに過ぎないが。
お前は朔と言う男に恋をしているのだったな。
だが一つ言わせてもらう。
UCがないから?身分が違うから?
そんな事で諦めるのならその程度の恋だったと言う事だ。
お前がそれらに不満を持つなら、己が手で変えてみろ。
少なくとも俺は今までそうしてきた。
あとはお前次第だ。
(立ち去ろうとする手前で。)
お前にその気があるなら…こいつをやる。
(猟兵の招待状を床に投げ捨てる。)
ではな。
(立ち去る。)




「帰れ!」
 ヴィクター・グレイン(真実を探求する者・f28558)の顔を見るなり、藤田・香(ふじた・かおる)は家のドアを全力で閉めた。締め出したのだ。
 嘆息をつき、玄関の花瓶を活け替えようと香が花瓶を持ち上げたところで。

 バギャッ!

 扉を無理矢理にこじ開けて入ってくるヴィクター。
「……は?」
 花瓶を持ったまま固まる香。数瞬後、我に返った香は全力で花瓶の水をぶっかける。
「帰れっつってんの!」
「……さて、少し話をしようか?」
 それを意にも介さず、そう告げるヴィクターに。
「いっそ清々しいわね!!」
 香の強烈なビンタが炸裂するのであった。


 言い忘れていたが、香は家族と暮らしている。そんな環境において玄関で騒ごうものなら家人は当然様子を見に来る。もちろん周辺の住人も。
 全てを誤魔化すためには、なし崩し的にヴィクターを家に上げるしかなく。応接室で対面するヴィクターと香。

 険悪な雰囲気の中、話し始めたのはヴィクターであった。
「あまり自分の素性を明かしたく無いが、言っておこうか」
「自分は極悪非道の悪人様でございって?」
 ヴィクターの言葉を香が茶化す。事実、それは香の認識であったのだが。
「俺は他の奴らと同じく猟兵だ」
「ふーん、猟兵……え? 貴方猟兵なの?!」
 衝撃的な言葉に思わず椅子から立ち上がる香。
「最もその立場を利用しているに過ぎないが」
「というか、あの人たち全員猟兵なの!?」
「……? そうだが……?」
 ぽかーんと口を開いたまま、硬直する香。理由が分からず、沈黙するヴィクター。
「……なんだ。じゃあ……貴方も『仕事』だった」
 つまり、あのオイルランプには『猟兵が絡まないといけない何かがあった』。
 そこまでわかって。力が抜けたように、とすん、と椅子に座り込む香。そのまま背もたれに体重を預けて天井を見上げる。
「そう、か。貴方たちでも千代子を……救うことが出来たのね」
 それはもう戻らない過去だけれども。影朧の転生が學徒兵や猟兵の手によって行われていることは、いかに帝都から離れた街暮らしの香でも知っている。
 猟兵たちの手によって千代子が倒されたのなら。もしかしたら……一縷の望みがあるかもしれない。

 感傷に耽る香。それを遮ったのはヴィクターの言葉であった。
「お前は朔と言う男に恋をしているのだったな」
「それが何?」
 幾分か、棘の抜けた言葉で。ヴィクターの問いかけに答える香。
「俺には関係の無いことだ。だが一つ言わせてもらう」
 ヴィクターの言葉に香が態勢を戻す。
「ユーベルコヲドがないから? 身分が違うから? そんな事で諦めるのならその程度の恋だったと言う事だ」
「……邪魔した人間が言う言葉じゃないと思うんだけど?」
 ヴィクターの言葉は限りなく真理だ。香の言ったことさえ無ければ。
 こめかみをぴくつかせながら、それでも手を出すのを我慢して香は呟く。
「はぁ。正義って何なのかしらね?」
「知らん。俺は悪人を許さないだけだ」
「それは正義とは言わないんだ?」
 他愛も無く、されど己が道に対する見解をぶつけあう。どうしようもなく、突き進む性質の二人であるから。ぶつからなければ最初からこんなものなのだ、きっと。

 話すことは終わった、とヴィクターが立ち上がる。
「お前がそれらに不満を持つなら、己が手で変えてみろ。少なくとも俺は今までそうしてきた」
「……」
 ヴィクターの言葉に無言を返す香。
「あとはお前次第だ。……お前にその気があるなら……こいつをやる」
 懐から取り出した一枚の紙をぴんと指ではねて床に投げ捨てるヴィクター。
 それを拾い上げた香が不思議そうな顔をする。
「……猟兵ってそんな簡単になれるものなの?」
 世界の不思議を目の当たりにして頭を抱える香であった。

「ではな」
「待て」
 今度こそ立ち去ろうとするヴィクターを香が呼びとめた。
「何だ?」
 香の声に振り向くヴィクター。そこにいたのは満面の笑顔の香であった。
「ドア、直してもらえるのよね?」
「……」
 ヴィクターの返事は無言。彼の性格上、これは任務遂行上の避けようのない犠牲だと言うだろう。しかし、香は有無を言わさず、次の言葉を叩き付ける。
「唐突に他人様の家のドアを破壊するのはまごうこと無き悪人だと思うんですけど?」
 ぐうの音も出ないほどの正論である。
「あれ? 貴方は、悪人はどうするんでしたっけ???」
「……ぐ」
 己が信念に背かぬためには、悪人は許してはいけない。

 その後、香監視下でドアを修復するヴィクターの姿があったそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀
結局の所、今回の件の当事者である香さんの事情は、わからずじまいでした。

もう勝手にやっててくださいと言うのは、簡単なことかもしれませんが、旅は道連れと言いますし、もう少しだけ御供いたしましょう。

香さんの元へ行って、自分が猟兵で在る事と、こちらが受けていた依頼のあらましを伝えて、その上で、香さんから、その願いと経緯と真の目的と今後の可能性を聞いた上で、自分は出来る限り惜しむことのない助力を誠心誠意、突き詰めてしていきたいと思います。

箱の中身は開けてみるまでわからない。
でも、何が出てきても力を貸します!

あなたの乗った、特急天星は、途中下車を許しません!

恋でも仕事でも、全力前進何でもござれです!




 香の家へ向かう天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)。
(結局の所、今回の件の当事者である香さんの事情は、わからずじまいでした)
 となると、正直なところ、ピンポイントに対処することは難しい。
(もう勝手にやっててくださいと言うのは、簡単なことかもしれませんが)
 ここまで来たということもある。
「旅は道連れと言いますし、もう少しだけ御供いたしましょう」
 そう考えて、雲雀は香の家のドアを叩くのであった。


「……あがれば?」
 雲雀の顔を一瞥して香がそう告げる。とりあえず訪問してきた雲雀を追い返すほどの理由は無いようだ。ただし、顔はとても不機嫌そうである。

 応接室で向かい合う雲雀と香。最初に話し始めたのは雲雀である。
「まず、自分は猟兵で……」
「それは知ってる」
 雲雀の言葉に香が反応する。
「香さんの持っていたオイルラムプ――籠絡ラムプを回収して破壊することが自分たちの受けた依頼だったのです」
「ふーん。それが貴方たちのお仕事の内容ってわけね」
 ここまでは雲雀の話に理解を示す香。ただ、薄い板一枚を挟んだような距離感は払拭できていない。
「それで? わざわざそれを言いに来たの?」
 それでも話に乗ってきた香に対して、雲雀が目的を告げる。
「香さんの願いと真の目的が聞きたくて」
「……は?」
 雲雀の言葉に、香がよくわからないといった感じの声をあげる。
「経緯とか今後の可能性とか、そういうものが聞けたら、きっと」
「ああ、事情聴取? ふむ……いいわ、付き合ってあげる」
「え、そういうわけでは」
 雲雀が言い切る前に、香が雲雀の求めることを話し出した。


「私の目的は、朔様にお会いすることだったわ」
 曰く、一度は諦めた恋。そうなった以上、朔と香は家長の息子と使用人の間柄でしかない。使用人の身では上京する機会すら無く。そもそも理由や用事も無く朔を訪ねることなどできない。そういう間柄なのだから。
「だから、千代子と会えた時は『これだ!』って思った」
 このオイルラムプを持って帝都へ。朔に会う理由としては最高だ。
 影朧のことについて相談しにいく体で朔に会う。ましてや、千代子はラムプの中から出れないという、今までに聞いたこともないような影朧だった。
「知り合いにユーベルコヲド使いがいるなら、まずはこっそり相談したいって思わない?」
 その中の影朧が友好的な、親交を深めるほどの相手ならなおさらだ。
「最初は千代子の態度も演技かなって疑ったけど、どうもそうじゃないとわかったし」
 異常すぎる事態に朔を頼ろうとしたのである。
「ま、欲を言うなら千代子の力を借り続けて、ユーベルコヲド使いになれたらなって思ってた」
 そして朔の側で彼を支える。その夢はくすぶっていた想いを再燃させるには最適だった。
「そんな虫のいい話は無かった、ってことよね」
 帝都に辿り着けないどころか、千代子もオイルラムプも失った、手放した。『理由』が無くなった以上、朔に会う伝手が潰えたことになる。
「だから戻ってきたの。ショックすぎて帝都に向かえなかったのも事実だけどね」


「これで満足かしら?」
 香の言葉に雲雀は頷きを返す。願いも経緯も真の目的も彼女の言葉に含まれている。
「香さんは今後どうするんですか?」
 最後に、雲雀が一番聞きたかったことを問う。
「今後? 知らないわよ」
「え?」
 香から即答された回答に、さすがの雲雀も動揺を隠せない。
「今後なんて考えて行動してるわけないでしょう?」
 燻っていた恋があった。それを再燃させる事柄が出来た。だから、なりふり構わず動いた。
「……そうね。誰が言ったか、『恋は盲目』ってこういう状況を言うんでしょうね」
 はぁ、とため息をつく香。冷静に振り返ってみると、まぁ恥ずかしいところもあるようで。

 しかし雲雀の聞きたいことは聞けた。ならば後は。
 雲雀が香に話しかける。それは彼女に出来る限り、惜しむことのない助力を誠心誠意、突き詰めてしていきたいという熱い想い。
「何であっても力を貸します! 恋でも仕事でも、全力前進何でもござれです!」
 力強く告げる雲雀。その様子を見て、香は目を丸くした後、笑う。
「うん。遠慮しておく」
「……え?」
 予想外の答えに雲雀の勢いが萎む。
「ん? 私が誰の手を借りようとするかは私の自由じゃない?」
 あっけらかんと香が告げ。そうね、と言葉を続ける。
「私と千代子が貴方と相対した時、貴方は何と言って、私が何て返したか、覚えてる?」
「え?」
 河川敷で戦闘をしていた最中。邂逅した二人が交わした会話。
「あれ聞いて。貴方の考え、ちょっと怖いなって思ったの。それが理由」
 そう言って香は椅子から立ち上がる。
「でも、ここまで来てもらったことには感謝するわ」
 話せてすっきりしたしね、と香は笑う。
「お話はこれで終わり。じゃあね」
 こうして雲雀と香の話し合いは終わったのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

アハト・アリスズナンバー
えー、この度はなんだかものすごいややこしい事になってすみませんでした。
我々は猟兵で、そのラムプが影朧兵器という事で破壊するように命を受けてました。
……それで香さん。何しに帝都に向かってたんですか?

とりあえず事情を聴いて、朔さんに会う理由をつけられそうならUCを使用。
帝都桜學府へのアポを取ります。
恋模様の行方までサポートすることは出来ませんが、とりあえず会えるようにはしておきますよ。

どうしてこんなに曲がりくねってややこしい事になったか……
まあここで嘆いても仕方ないですね。
もちろんラムプは破壊しておきます。


アイ・リスパー
「猟兵で電脳探偵のアイと申します。
謎のウォーマシン、チューリングXさんから事情を伺いました」

生身で香さんの元を訪れ【演算加速】して説得しましょう。

「香さんには事情をお話しないといけませんね。
今回の事件には影朧兵器である籠絡ラムプが関わっていて
その回収任務中だったのです」

そのあたりのお詫びは他の皆さんにお任せします。

「ここからは電脳探偵である私の推理ですが……
香さんは影朧である千代子さんを朔さんに転生させてもらおうとしていたのでは?
それでしたら、まだ望みはあります。
千代子さんを倒したのは猟兵。
今から桜の精による癒やしを受ければ転生可能かもしれません。
帝都桜學府の朔さんを頼ればあるいは……」




「そろそろ次が来るかなって思ってた」
 家のドアを叩いたアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)と有栖川・ハチ子ことアハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)を見て、半眼の香はそう告げた。機嫌が悪いというよりは、若干呆れているように見える。
「私たちが来るとわかっていたんですか?」
「そりゃ、なんかよくわからないけど今日に限って来客続けば何かあるかなって思うでしょ」
 アイの質問に香は自分の推測を話す。こうも立て続けにあれば、確かにそれくらいはわかるのかもしれない。
「あがれば? 探偵さんたち。立ち話も何だし」
 そう言って香はアイとハチ子を応接室に通すのであった。


 応接室で向かい合う香とアイ&ハチ子。
「猟兵で電脳探偵のアイと申します。謎のウォーマシン、チューリングXさんから事情を伺いました」
「……誰?」
 自己紹介をしたアイに、真剣に問う香。問うているのは『チューリングX』の部分である。お間違えの無いように。
 アイが説明をすると、得心がいったらしい。
「ああ、あのでかいの。アレ来たら家の中入らないし、どうしようかなーって思ってたのよね」
 また家が破壊される可能性は除去された。香がほっと胸を撫で下ろしたのも事実である。
 そして既知のハチ子は視線で挨拶をして。

「で、ご用件は何かしら?」
 膝を組んでその上に肘を突きながら。香が問いかけてくる。
「まず、香さんには事情をお話しないといけませんね」
「ふむ?」
 理知的なアイの対応に香は聞く態勢を取る。密かに仕掛けておいた【演算加速】の効果もあるだろうか、会話は順調にスタートした。

 アイが事のあらましを話し出す。
「今回の事件には、影朧兵器である籠絡ラムプが関わっていて、私たちはその回収任務中に携わっていたのです」
「影朧兵器って……教科書くらいでしか見たこと無いんだけど」
 過去の大戦で使われ、その後すべて破棄されたという影朧兵器。それが現存するなど、普通に考えて一般市民が信じられるわけがない。
「その影朧兵器が密かに市井にばら撒かれているんです。幻朧戦線の手で」
「幻朧戦線って……時折聞くあのテロル過激派?」
 だが、現実は小説よりも奇なり。今現在、サクラミラージュの世界を騒がしている幻朧戦線の話は、正確ではなくとも市井に広がりつつある。『密かに』幻朧戦線が動いたのはそういった事情もあるのかもしれない。
 アイとハチ子の話に、目を閉じ腕組みしながら唸る香。
「それが本当なら……私が貴方たちに襲われたことは責められない、わね」
 香の口から零れたのは全ての事情を把握したがゆえの、冷静な判断。
「というか、そういうことならそれを先に言って」
「いえ、そうは言われても。あの興奮状態で信じられましたか?」
「う……それは……」
 最初の列車の中でならまだしも、河川敷の戦闘においてそこまでの理解へ落とし込む会話は出来なかったであろう。
 そこでハチ子が謝罪を告げる
「この度はなんだかものすごいややこしい事になってすみませんでした」
「まぁ……そういうことなら仕方ないわよね」
 ハチ子の言葉に、若干共感すら込められた言葉が香の口から紡がれる。どこかで情報が食い違うことなく、共有できていたのなら。違う方策も取れたのであろう。

 徐々に事情が分かってきた香。深い事情があるならば、と少しずつその態度も軟化していく。それにつれて、わずかとはいえ感じていた敵対心のようなものが消えた。
 本題を繰り出すなら今、とハチ子が問いかける。
「……それで香さん。何しに帝都に向かってたんですか?」
「何しにって……貴方たち皆聞いてくるけど、私は朔様にお会いしたかっただけよ?」
 首を傾げる香に、今度はアイが問いかける。
「ここからは電脳探偵である私の推理ですが……香さんは影朧である千代子さんを朔さんに転生させてもらおうとしていたのでは?」
 アイの真剣なまなざしが香の視線を絡み合う。
「それは……まあ考えてなかったといえば嘘だけど……主目的ではないわ」
 香の、表の目的はあくまで朔に会うこと。裏でいろいろ考えていたひとつが千代子の転生。表に対して裏がある時、裏の方が重要とは限らない。

 そこまでの情報を整理したところで、アイがこくりと頷く。
「そうですか……しかしそれでしたら」
「そうね。まだ望みはある」
 アイの言いたいことは既に香も何度も考えてきたのだろう。以心伝心したかのような会話。それは千代子の転生について。
 彼女を倒したのは猟兵であるならば。
「今から桜の精による癒やしを受ければ転生可能かもしれません。帝都桜學府の朔さんを頼ればあるいは……」
「そうね……」
 アイの言葉に、香は再び思索を巡らせる。次の一手をどうするかと考える棋士のごとく。
 そして。
「それはその通りだと思う。でも、やめておくわ」
「どうしてですか?」
 ハチ子が香の真意を問う。その言葉に、香はちょっと困ったような微苦笑を浮かべて話し出す。
「んー、ほら。あの子、転生する気ないって言い張ってたでしょう?」
 それは紛れも無く千代子の本心。
「あの子、ラムプに捕われてから華々しい怪盗らしい活躍が出来なくてふてくされてたのよ」
 だからこそ、香との邂逅に喜んだ。ラムプ越しとは言え、自分の力を振るえることに喜んでいた。特に香が人助けをした時。
「ほら、困ってる人を助ける時って人目があるでしょう? それは妙に快感だったみたい」
 もちろん香はそんな目的では無く、困った人を助けたいと千代子の力を振るっていたのだけれども。
「きっと楽しくなったのね、ラムプ暮らしが。だから何度言っても『転生だけは断る!』って全然聞かなかった」
 と思い出話を語る香はとても楽しそうで。
「それで、説得しないまま倒しちゃったでしょ?」
 少しだけ真剣な顔をして香は告げる。それは猟兵を責める言葉では無く、単なる経過と事実。
「それを私の意思で転生させるのはちょっと違うかなって」
「なるほど」
 香の言葉にアイが頷きを返す。
「きっとまた影朧として現れるわ、あの子。その時は私のことなんて覚えてないでしょうけど」
「その時に、ということですね」
 ハチ子の言葉に今度は香が頷きを返す。その時こそ、香が千代子を説得する。そして転生させるのだ、と。

 香の意思を確認したことでアイとハチ子は顔を見合わせて頷き合う。
「それじゃ帝都桜學府へのアポは取らなくていいですね」
 香の想い次第では、と色々用意していたハチ子の何気ない言葉。
「ん? 待った! いえ待ってください!」
 がたっと椅子から立ち上がりながら香の顔がハチ子に迫る。
「はい?」
 ハチ子がきょとんとした顔で香に問う。
「今、なんと?」
「帝都桜學府へのアポは取らなくていいですね、と」
「取れるの!?」
 香の顔がぐぐっと近付いてくる、近い近い。
「そりゃ……猟兵ですから」
 ハチ子の言葉を聞いて、再び椅子に戻り、深く腰掛ける香。額に手を当てて、悩むなやむナヤム……! つまり、この好機を活かすかどうかである。
 そして。
「こ、今回は月下の家にも迷惑かけたし、や、やめておくわ……」
 ぷるぷる涙目になりながら我慢する香。
 その様子にハチ子は嘆息ひとつ。
「恋模様の行方までサポートすることは出来ませんが、とりあえずいつでも、会えるようにはしておきますよ」
 とハチ子は告げて。
「あ、ありがとう。頑張る……」
 香はこくりと頷きを返すのであった。

 終わってみれば。猟兵たちと香のすれ違いは小さなことから発展して絡みに絡まっていたのだが、それはほぼ解消されたような状態になったといえる。
 彼女の不信感も排除できたことだろう。
(どうしてこんなに曲がりくねってややこしい事になったか……)
 まあここで嘆いても仕方ないですね、とハチ子も思い直して。本当にどうしてこんなことになったのか。
 そういえば、とハチ子が香の顔を見て告げる。
「ラムプは破壊しておきますよ。よろしいですね?」
「ええ、どうぞ」
 それは確かに香の言葉で、意思で、猟兵たちに託され。
「貴方たちに任せるわ。お願いします」
 ハチ子の申し出に香は笑顔で答える。
「それでは私たちはこれで」
「ありがとう、探偵さんたち」
 アイの言葉に香が手を振って二人を見送ってくれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

備・香
「こんにちは、あれから、いかがお過ごしでしょうか。私は、やりきれない思いで、いっぱいでした」

「誰?っと思われるかもしれないので自己紹介を私は備・香と言います。猟兵として先日の件に関わっておりました」

「藤田さん、帝都に行ってください。きっと、今からでもやらなきゃいけないことが在るはずなんです」

「列車は、途中で止まってしまったけど、あなたの道は、続いていないとおかしいんです」

「今回の件で不完全燃焼してるのは、誰でもなく、藤田さん、あなたです」

「今、あなたがうごいてください!」

「ここからが、スタート地点なんです!」

「藤田さんの願いは、今も繋がってるんです!」

「どうか立ち止まろうとしないで!」



●番外編
「こんにちは、あれから、いかがお過ごしでしょうか」
 家のドアを開けた香に、開口一番、備・香(歴史の管理者・f28612)が尋ねた。
「はあ、それはなんというか」
 そんなこと言われても困る、といった表情の香。相手が備・香だからということではなく、真剣に困っているようだ。
「私は、やりきれない思いで、いっぱいでした」
「はあ」
 さらに備・香の唐突な告白に、香も流石に間の抜けた声を出さざるを得ない。
「誰? っと思われるかもしれないので自己紹介を。私は備・香と言います。猟兵として先日の件に関わっておりました」
「うん、見たことあるから猟兵ってことは知ってる」
 立ち話も何だし。
 そういう雰囲気を醸し出しつつ、家の中に案内しようとした香の手を備・香ががしっと掴む。
 びっくりして振り向いた香に、備・香が告げる。
「藤田さん、帝都に行ってください。きっと、今からでもやらなきゃいけないことが在るはずなんです」
 それは備・香のとても熱い想い。
「列車は、途中で止まってしまったけど、あなたの道は、続いていないとおかしいんです」
 そして備・香の願いでもある。
「今回の件で不完全燃焼してるのは、誰でもなく、藤田さん、あなたです」
 ずいっと身を乗り出しながら話す備・香。
「今、あなたがうごいてください! ここからが、スタート地点なんです!」
 まだ諦める時では無い、と。
「藤田さんの願いは、今も繋がってるんです! どうか立ち止まろうとしないで!」
 両腕をがしっと掴みながら、熱く熱く話しかける備・香。その想いに殉じて欲しいと思いの丈を香に届ける。

「…………」
 無言の香。備・香の想いが伝わっていないわけではない。確かに確実に伝わっている。……けれども。
「んー、応援してくれて、本当にありがとう。それは嬉しいわ」
 微苦笑しながら香は話し出す。
「でも、でもね。私の道が帝都に続いているとは限らない。そう思わない?」
 それは暗に『今、帝都に行くことが全てでは無い』と告げている。
 その時、ぴんと香の頭に閃いた。
「……あ。今なんとなく気付いたんだけど……貴方、もしかして私と朔様が恋仲だと思ってる? 身分違いの恋で苦しんでるとか」
 きょとんとしながら問いかける香。備・香が返事をするより早く、香は笑い出す。
「そんなの全然。片思いもいいところ。朔様がどう思ってるかは、気にならないといえば嘘だけど」
 月下の家に居た頃、想いは届いていたと信じている。けれども、返ってきたものはなく。
 だからこそ、諦めた……つもりだったが、胸の奥で何かが燻って、より募ってしまったのだ。切欠を得た燻りは思った以上に燃え盛って、周りの全てを飲みこんでしまった。その勢いが先日までの香を突き動かしていたのだ。

「今、冷静に振り返るとそんなとこ」
 『恋は盲目』とはよく言ったものだ、と香は言う。
「それにね、立ち止まった今だからこそ、身支度を整えることができるの。朔様に胸を張って会えるようにね」
 それが今の香の答え。道が続いているのは備・香の言う通りだが、その道を作るのは香なのだ。
「というか、恋仲とか好き合ってるなら、私だって万難排除して突撃するわよ」
 遠慮する必要なんてないんだし、とは香の言葉。
「ま、そういうことよ。ありがとうね」
 そう言って香は備・香に笑いかけるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
先程の戦いは精神的に凄く辛い戦いとなった
でも、それで済ませてはいけない気がする
香さんの元へ向かおう

まず香さんの元へ行ったら怪我がなかったか確認を取る
まだ慣れない防護膜付与だったから香さんに怪我がなかったか気が気でなかった
それを確認した上で謝る
「ごめん、最初に遭った時にまず俺達が猟兵である事を告げなきゃいけなかった。それを怠った為にすれ違い・勘違いが起きてしまった」
素直に謝った後、本題に切り込む
「香さん、君は一体何をしようとしていたんだい?」
今からでも香さんの力になれる事があるのかもしれない
「もし今からでも俺達に出来る事があるなら協力させてほしい」と頭を下げる
出来る事があるなら全力で協力しよう




 鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)は少し重くなりがちな自分の足を奮い立たせて、香の家に向かう。
(先程の戦いは精神的に凄く辛い戦いとなった)
 しかし、その一言で済ませてはいけない。そんな気がする。
 その想いが、ひりょを香の元へと向かわせるのだった。


「本当に今日は千客万来ね」
 ドアを開けて、ひりょを見た香の開口一番。ため息とともにはかれたその言葉に悪意は無く、単純に呆れているようなそんな言葉。
「どうぞ。もう今日は猟兵さん専用になりかけているけど」
 そう言って、香はひりょを応接室へと通すのであった。

 応接室で香と向かい合って座ったひりょはすぐさま香に問いかける。
「怪我は、ありませんか?」
「怪我?」
 これまで全く無かった質問に香も思わず首を傾げる。
 ひりょ曰く。河川敷の戦闘の際に密かに香に敷いた防護膜。まだ慣れない防護膜付与だったので、香が無事だったか気が気でなかったのだ。
「千代子が驚いていたのは、そのせいだったのね」
 確かあれはチューリングXの爆撃に巻き込まれた時。確かに千代子が驚いていた。
「ありがとう。おかげさまで怪我は無し……体はね」
 そう言って微苦笑する香。その言葉は言外に、精神的にダメージを受けていることを示している。
 その言葉を聞いて、ひりょは頭を下げた。
「ごめん、最初に遭った時にまず俺達が猟兵である事を告げなきゃいけなかった」
「……」
「それを怠った為にすれ違い・勘違いが起きてしまった」
「仕方ないでしょう。身分を明かすのが最適解にならないことも多いわ」
 何度も何度も聞いた話。それはすなわち猟兵たちがそのことをとても気にかけていたということだ。その想いは確実に香に伝わっている。

 香の言葉にひりょは頭をあげて、聞きたかったことを問う。
「香さん、君は一体何をしようとしていたんだい?」
「うん。それはもう何度も言った……って貴方には初めてか」
 香としては本日5度目くらいの勢いだが、それが相手に伝わっているとは限らないのが悲しいところである。
「私は朔様にお会いしたかっただけよ。それ以上でもそれ以下でも無い……とは言い切れないか」
 それは籠絡ラムプのこと。悪用しようとしていたわけではない。ただ利用しようとしていた。その上で千代子のこともあったけれども。
 少なくとも帝都に向かったのは朔に会うためで、他の全てはそれを支える動機や理由でしかない。
「もし、今からでも俺達に出来る事があるなら……協力させてほしい」
 今からでも香の力になれる事があるのなら。全力で協力したいとひりょは香に告げ、頭を下げる。それは……ややもすれば謝罪のように見えたかもしれない。
 それでも。
「頭上げて」
 香はひりょにそう告げる。
「今はその気持ちだけで十分だから。ありがとう」
 笑みを浮かべながら香はそう告げて。

 手を組んで伸びをしながら香は天井を見つめる。思い出すのは今日一日のこと。
「なんだかんだで私のことを気にかけてくれていたのでしょう」
 この事件に関わったほぼ全員が香の元へ訪れていた。来なかった者とて気にかけていなかったわけではないだろう。それは、これまでの訪問で香も身に染みてわかっている。
「大丈夫よ。かなりの荒療治だったけど。今は休息中なだけ」
 『恋は盲目』と刹那が言っていた。香はその状態は脱したのだ。だから前に進む方法を考えるだけ。
「色々話せて、私も自分の気持ちを整理できたし、色々考えることも出来た」
 それはとてもありがたいことよ、と香は告げる。
「まあ、結局、私は私なのよね。千代子にも誤魔化していたけど筒抜けだったし」
 納得いかないという風に腕組みしながら香が大きなひとりごと。
「千代子さんが何か言っていたのかな?」
「ん、あの子との最後の会話を思い出しただけよ。すっかり忘れていたけど」
 ひりょの言葉に香は笑う。思い出し笑いのような、面白おかしくて笑ったような。それを思い出せたのも、ほんの少し香が前に進んだからなのだろう。
「彼女は何と?」
「秘密。そこまで教える義理は無いわね」
 ただひとつ言えるのは、誰の悪口でもないということ。

 話はここで終わりのようだ。
「貴方たちも安心して本来の仕事に戻ったら?」
 香がひりょにそう告げる。もう心配はいらないのだ、と。
「次に会う機会があるのかどうかは知らないけれど。次があるなら協力をお願いするかも、ね?」
 それはひりょを含めたこの事件で邂逅した猟兵たちすべてに対しての言葉。

 彼女が立ち上がるのはもっと先かもしれないが、きっと香は後悔しない道を選ぶのだろう。

 その予感を胸に、ひりょは帰還したのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月29日


挿絵イラスト