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三千世界に咲かせましょう

#サクラミラージュ #逢魔が辻

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#サクラミラージュ
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#逢魔が辻


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●共に参りましょう
 誰にも気づかれず。誰もが近寄りもしない。
 そんな、町の隅を覆う陰の中を夢幻の如く歩き彷徨う――人型の影。
「あ、ノ――」
 侍女服を纏うその姿はうら若き乙女のそれを思わせ、事実その容姿は若い女性を模している。
 だが柔和な笑みを浮かべる女の瞳の片方は罅割れており、その亀裂から漏れる淡い電光は彼女が人を模した機械人形であると如実に語っていた。
 女は手を伸ばし眼下を這いずる『モノ』に声をかけた。
「どこカ、痛むノですか。何カ、お手伝いヲ……致しまショウか?」
「――」
 途切れかけの掠れた音声が紡ぐ問いに答えたのは、南京袋に入った魍魎が如き様相をした女の呻き一つのみ。
 ただ、偶然だろうか。
 伸ばされた手を反射的に掴もうとした影朧、南京袋の女は一度は掴んだそれを撫でる様にして離したのである。
 女――過去『藤咲さん』と名を与えられていた試作パーラーメイドロボットの一機――は、罅割れた瞳の奥から邪気を纏った妖光を漏らして歓喜する。
 ロボットでありながらその感情を露わにする姿は、まるで。
「嗚呼……ソウなのですね。何か、できる事ガあるのです……ネ?」
 壁際に手を当て、その柔和な笑みを浮かべていた表情を上書きするように。
 轟音。続いて石造りの壁を砕き割ったメイドロボットは、周囲を見回した。誰も居ない寂れた町の一画を覆う陰の中を蠢いている、傷付いた影朧達の存在を彼女は認識する。
 そして。

●それで
 シック・モルモット(人狼のバーバリアン・f13567)は気まずそうな顔をしながら首を傾げた。
「……私がグリモアに、ねぇ。
 ああ、こっちの話だ……なんでもない。それより仕事の話をしようか」
 シックは予知した事件について語り始めた。
 事が起きたのはサクラミラージュの帝都から程近い位置にある山村だ。
 かつては都市に近い立地から幾人かの資産家が土地を管理していたのだが、長い歴史の中で管理者が不在となった小さな町が在ったのである。
「誰も居ない町。ゴーストタウンっていうにはちっさい町だよ、ロクな管理もされなくなった山景色なんか鬱蒼とし過ぎてて陰気臭いってトコさ。
 でもってそんな人の気配が無い場所に実は『逢魔が辻』が発生してたらしい。
 今日に至るまで影朧はどいつも知性の薄い連中ばっかりだったみたいで外に出て来なかったようだがね、どうにも……"頭"を張れるようなヤツが現れたんだろう。急に影朧が統率された動きで近隣の村々を襲い始めたみたいだった」
 シックが見たのは、魑魅魍魎が溢れ出したかのような光景だという。
 麻袋を被った女達に襲われる村人達。花を全身から咲かせ助けを乞いながら救助に来た者を襲う警官や子供達。
 知性乏しき影朧達を統率し、導いていたのはメイド服姿の女だ。
「今なら……酷いことになる前に間に合うと思う。
 脅威になり得る要素は数の多さとボスだけ、集団戦が続く事さえ目を瞑ればメイドの相手をするだけで『逢魔が辻』から湧いた連中を潰せる筈だ。
 ……私は腕に関しちゃあんまりだけど、猟兵なら問題ないと思ってる。だろ?」
 シックは「歯痒いけど、頼んだ」と小さく頭を下げるとそこで話を終えた。
 彼女の言う通り。後は猟兵達の出番である。


やさしいせかい
 はじめまして、やさしいせかいと申します。
 初のシナリオとなります故、手探りな一面が際立つ事もあるかと思われますがよろしくお願いします。

「シナリオ詳細」

『第一章:集団戦』
 山道、或いは山村に現れた影朧の群れを撃破する。
 シンプルに発見し次第掃討してしまいましょう。

『第二章:集団戦』
 第一章にて影朧の群れを撃破した頃に現れる植物人形達。
 近隣の村民に寄生し体を乗っ取った影朧の集団を、撃滅ないしは何らかの方法で影朧のみを除く事がメインとなります。(撃破or無力化)

『第三章:ボス戦』
 ひとしきり影朧の群れを撃破し終えた後に棄てられた町の廃屋でボス戦となります。
 怪力を軸に置いた短期決戦を挑んで来る敵である事が予想されているため、皆様のプレイング次第で派手なタタミバトルになると思います。

●当シナリオにおける描写について
 三章全てにおいて描写(リプレイ)中、同行者または連携などのアクションが必要な場合はプレイング中にそういった『同行者:◯◯』や『他者との連携OK』などの一文を添えて頂けると良いかと思います。
 また、三章通して戦闘オンリーなシナリオになると思われます。

 以上。
 皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『南京袋の女たち』

POW   :    イヤ! ヤメテッ!
【爪や噛みつき】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    キャーッ!
【激しい悲鳴】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ヤメテッ! サワラナイデッ!
全身を【南京袋】で覆い、自身が敵から受けた【怪我と心の傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●さあさあこちらへどうぞ
 木陰を縫う様に、陰と影を伝い渡るように。
 人の気配を求め往く南京袋の女達は奇声や呻き声を個々に漏らしながら、導き手なる者の後を追う。
 道無き道は、やがて人が行き交って往った名残ある山道へと辿り着く。黒ずんだ瘴気が森の奥から流れ込んでいく。
 もう少しで人里の距離、いずれ此処を人が通らないとも限らない。もしそうなれば無数の影朧によって引き裂かれ、冒涜的な最期を遂げる事も有り得るだろう。
 事実――グリモア猟兵が予知した光景の中ではそうだったのだから。

「寂シイ、のでしょう? 大丈夫ですよ……私なラお役に立てまスから――さァ、こちらへ」
 手招きする様に誘うメイドロボットは夕闇の奥へと消え、南京袋の女達は往く。
戦刃・ミュート(サポート)
 人間のサイキッカー×ウィザード、22歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、なの?)」で寡黙め。独り言のときは饒舌です。
なぜなら人見知りだから

なるべくやばそうな威力の高い攻撃を防御せず覚悟で受けてカウンターで逆転魔術を使います
ワンセットで捨て身の一撃です
近くに危険に晒されてる仲間とか一般的その他がいればかばって攻撃を受けます

…私は誰かを傷つける奴が嫌い。誰かに傷つけられるのが嫌い。誰かを傷つけるのが嫌い。
私や私が好きな人を傷つけた奴だけを私は殺す。
「私の戦いは全て…最低から始まる逆転魔術(リヴァーサル)」



 鈍く、それでいて鋭い音が鳴り響く。
 駆ける戦刃・ミュート(人間のサイキッカー・f00240)の揮う鋒の無い剣は横薙ぎに南京袋の女を斬り伏せる。
「ひぃっ、ひぃ……!」
 駆け付けたミュートの背後には近場にある村の猟師であろう男が腰を抜かしていた。
 影朧に囲まれていたようだが、間一髪。大事には至らない様子だった。
 一瞥し、無事である事を確認したミュートは「行け」と小さく手を振ってこの場からの退避を促す。同時、両腕をバネの様に弾いて飛び込んで来た南京袋の女がミュートに襲い掛かった。
 土と肉がこびり付いた鋭い爪の一撃。それをミュートは臆せず正面から華奢な体躯に受け止め、僅かに鮮血が散った。
 しかしその瞬間。閃いた様に彼女の全身がブレる。
「……私は誰かを傷つける奴が嫌い」
 両断。直前の隙だらけだった体勢から精密な動作によって繰り出された兜割りは、影朧を消し飛ばす勢いで切り飛ばしたのだ。
「――――!!」
 断末魔。悲痛な叫びに呼応した影朧達がミュートへと殺到して行く。
 無鋒剣が逆袈裟に切り上げられる。鉈の如きそれは振り終わりが無い、宙を切り裂くその軌跡が縦横無尽に奮い切り裂き打ち上げるのだ。
「誰かに傷つけられるのが嫌い。誰かを傷つけるのが嫌い――私や私が好きな人を傷つけた奴だけを私は殺す」
 眼前に飛び掛かって来た南京袋を腕で受け止める。袋越しに腕を噛み砕こうと軋む。
 そしてその時こそミュートの『逆転魔術』は真価を発揮するのだ。
「私の戦いは全て……最低から始まる逆転魔術(リヴァーサル)」
 魔力が操る自らの肉体は再び弾かれたように躍り、哀れな魍魎共を蹴散らすのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ノエル・フィッシャー(サポート)
『例え全ては救えずとも、誰一人として見捨てはしない』
アリス適合者の王子様×アリスナイト、19歳。性別は見ての通りだよ。

・経験値が欲しいから、雑な扱いでもいいので採用してくれると嬉しいな。
・全技能を3~5保有してるから、何かいい感じのがあればそれを使うよ。
・ユーベルコードは所持してるものからいい感じのを使うよ。
・他の猟兵との絡みも歓迎だよ。共闘するのなら、ボクは補助に回して構わないよ。その味方が技能を使用するのなら、ボクも同じ技能でサポートするよ。
・もし男なのか女なのか問われたら「見ての通り」と答えるよ。
・他の猟兵に迷惑をかける行為、公序良俗に反する行動はしないよ。

あとはお任せ。好きに使ってね。


ロニ・グィー(サポート)
アドリブ・連携歓迎
「サプラーイズッ!驚いた?」
基本的に極々自分勝手で悪戯好きな神様
怖いもの知らずで迷うこと無く(考えも無く)、直感に従って行動する
うまくいけばふんぞり返り、失敗しても悪びれない(が強く詰られると涙目になって逃げだす。三分後には忘れてる)
自分を信頼する人はダダ甘やかし(お菓子とかあげる)、自分の我が儘を許容してくれる人にはダダ甘える

・戦闘
たくさんの空飛ぶ球体を操って攻撃・防御する
球体のサイズや機能は様々、銃弾の様に蜂の巣にする、巨大な球で圧し潰す、ビームや雷を飛ばす等何でも適当に
影の中から全弾撃ち出しての不意打ちだまし討ちや、最後には力押し(拳・暴力)で解決するのが好き




 行く手を遮るように現れた彼等を前にして、女達は何を思い金切り声を挙げたのだろうか。
「サプラーイズッ! 驚いた?」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の第一声が木々の向こうから聴こえた直後、南京袋の女達が手の平大の光球によって吹っ飛ぶ。奇襲、というよりは直感的に放った広域への攻撃が見事的中した事に、幼くも悪戯が成功した事を喜ぶ無垢な笑みを見せていた。
 しかし浅い。否、元々存在が希薄にも思える傷ついた影朧である南京袋の女達は確かに深手を負っている。だが、それ以上に数の利はそのまま群体として耐久値になり得る。
 山道に並ぶ鬱蒼とした森の木々の隙間から、影朧達の気配が濃くなって来る。
 ――そこへ投じられた鋒。煌びやかなる細身の馬上槍がロニへ伸ばされた影朧の手を淀んだ空気ごと吹き散らした。
「……何が彼女達を歪めてしまったのか、その様相から想像するより他に無いのだけど。
 それでも来るならボクはここで止めさせて貰うよ」
 地に突き立った『魁一番槍』を引き抜いたノエル・フィッシャー(呪いの名は『王子様』・f19578)は真剣な眼差しで宣言する。此より先は通さないと、麻袋に囚われた女達を射抜く様な視線と共に。
「それにしても勘が良いというのも羨ましいね。君について行けば影朧と遭遇できると踏んだ甲斐があったよ……これも第六感のうちに入るかな?」
「まあね! ボクは神様だからね!」
 金の瞳を細くしてニンマリと言うロニの返しにノエルが不敵に笑みを溢す。
 山道、森のあちこちから聴こえ響いてくる南京袋の女達が発しているであろう狂気の叫び。
 痛ましい声だとノエルが思う間もなく、草葉揺れる波の音と共に影朧が押し寄せる。
「少し、手を増やそうか」
 純白の光が僅かに辺りを照らし、ノエルのユーベルコードが起動する。
 それは、『未来』と『過去』を顕現させる召喚術。二人のノエルがロニと並んでいた。
「それじゃー、あれだね。おもいっきりやらせて貰おうかな!」
 砂塵が何処からともなく吹き荒れる。
 飛ばされぬよう眼帯を一度手で押さえた彼はノエルの存在があることで討ち洩らしを気にせず――"思い切り"自らのユーベルコードによって生じさせた砂嵐を影朧達に叩き付けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ビードット・ワイワイ(サポート)
ビーえもんという名前のゆるキャラです
自由に楽しみ自身の布教に努める
見た目は浴衣JC

ユーベルコードは指定した物をどれでもよいですが、嫌らしい攻撃をすることで相手の強みを消す攻撃を得意とします。最近は真面目風に見えるネタ戦法をよく取っています。

ウォーマシンですので脅しや誘惑には屈しません。完全機械ウォーマシンらしくそれを活かした行動をします。一番かわいいと思っているのは自分自身です

アイテムは色々ありますが無視して構いません。実際どのような形をしているかは私も分かりません。正体不明です。

普段の一人称は「我」
あとはおまかせします




 近付けない。
 何かを――それは物ではないかもしれないが――掴もうと手を伸ばし、南京袋の内で足掻き飛び込んで行く影朧の女達。
 悲痛な、助けを乞うようにも聴こえる悲鳴。それは途切れず、絶えず、空気を走り続け聴く者を掻き乱す音波となって襲い掛かる。
 だがそれも届かない。
「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり」
 ビードット・ワイワイ(根源的破滅招来者・f02622)は無機質に告げる。燦然と輝く、偽りの太陽と共に。
「己を縛り捕え両眼を塞ぐ殻に閉じ籠る愚者共。悲観を悲劇と違えて尚無様に手を振り回す白痴の影。生者に集るその姿、羽虫にも劣る醜さよ。その手が何者も掴まぬ間に逢魔の淵へ還るがよい」
 彼は。木々の合間から続々と草葉を掻き分け集う影朧達との距離を図り、間合いを維持する。
 無機質な宣告はビードットの背後で膨張する人口太陽の熱と同じく。眩くも鋭い熱を感じさせ、同時に冷徹な雰囲気を纏っていた。
「ここが汝等の破滅なり」
 瞬間。
「――――ッッ!?」
 一度に複数の南京袋の女がビードットの背後から閃いた熱線に貫かれ、凄絶な断末魔と共に瘴気が迸り霧散する。
 誰も、逃がしはしない。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「申し訳ありませんが…貴女達だけを倒させていただきます」

UC「桜吹雪」使用
術範囲内の敵のみ切り刻む
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
一般人に当たりそうな攻撃は割り込んで盾受け
手数が不足していると思ったら高速・多重詠唱で破魔と炎の属性攻撃も行う

「貴女達も何かの被害者のように思えます」
「貴女達を滅する私が言うのでは説得力に欠けますが…もう貴女達を怖がらせるもの、望まぬことを強いるものはなくなります。外の世界を、明るい光を望んでみませんか?貴女達が隠れる必要はありません。貴女達はもう、望むまま、欠けることのないままの、まったき貴女達です。恐れず、どうか転生を望んで下さい」
慰め乗せた子守唄歌い最期を見送る




 舞い散るは花弁か。刻みし影の残滓か。
「申し訳ありませんが……貴女達だけを倒させていただきます」
 翼が打つ様に、鉄扇が広がり山道に射し込む陽光によって瞬く。
 桜の花弁が如き薫り纏う髪。御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は悠然と影朧達を前に鉄扇を仰ぎ構える。
 鉄扇は淡い輝きを帯びて桜花の前で無数の花弁と化し、宙を舞う。
「貴女達も何かの被害者のように思えます」
 トン、と地を跳ねる音。優美に後ろへ跳んだ彼女を追うように、鋭い爪を露わにした南京袋の女達の魔手が空を切る。
「貴女達を滅する私が言うのでは説得力に欠けますが……もう貴女達を怖がらせるもの、望まぬことを強いるものはなくなります。外の世界を、明るい光を望んでみませんか?」
 返答は無い。ただ、数瞬の間の後に衝撃を伴う悲鳴が駆けるのみ。
 鼓膜だけでなく全身を引き裂かんとする音の波である。しかし、桜花はそれらを難なく手の中から飛び立った桜の花弁が広がり正面から受け止め霧散する。
 桜花は影朧達を正面から、真っ直ぐな目を向けていた。
「――貴女達が隠れる必要はありません。貴女達はもう、望むまま、欠けることのないままの、まったき貴女達です。恐れず、どうか転生を望んで下さい」
 憐憫とは違う。これは救済であると、そう語りかける様に。
 ふわりと着地しながら袖を揮った桜花の内から再び無数の桜の花弁が飛翔する。
 影朧に殺到するその花弁は幻朧桜が鳴らす風の音に似ていて――静かに、温かな桜吹雪に満ちたまま。
「……あぁ…………」
 傷付き彷徨っていた女達は桜花の前で桜吹雪と共に消えて行く。優しい花の薫りに包まれた女達は最後、深く息を吐く様な声を漏らしていた。
 影朧達を乗せ昇り消え行く桜を見上げながら桜花は瞼を閉じる。
 そうして、彼女は慰めを乗せた子守唄を独り紡ぐのだった。

 ――逝った彼女達の旅路に安穏の終着がある事を願って。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『死に添う華』

POW   :    こんくらべ
【死を連想する呪い】を籠めた【根】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【生命力】のみを攻撃する。
SPD   :    はなうた
自身の【寄生対象から奪った生命力】を代償に、【自身の宿主】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【肉体本来の得意とする手段】で戦う。
WIZ   :    くさむすび
召喚したレベル×1体の【急速に成長する苗】に【花弁】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●お客様を御迎えに上がりましょう
 何処からか流れ込んで来た桜の花弁を手に、パーラーメイドロボットだった者は首を傾げる。
 それまで自ら誘い、そして導いて来た者達の気配が消失していたのだ。
「……どなタか、御越しにならレたのでしょうカ」
 『藤咲さん』はゆっくりと確かめる様に首を回した。彼女がいるそこは薄暗い、武家屋敷が打ち棄てられて久しい廃屋だった。
 暗がりの向こうから呻き声や喘ぎ声のような物が響いてくる。緩やかな足取りで、強かに踏み締める足音が連続して木霊する。
「如何でショウ、皆様――お客様ヲ御迎えに上がりませんカ? きっと、喜ンで頂けル事でしょう。皆様も寂シくなくなるかも知れませン」

 暗がりの向こうから『藤咲さん』の呼び掛けに応えるかのように、それらは姿を現す。
「うぁああ……」
 儚くて、醜くて。死に添う華は森の外へ向かい往く。
 猟兵達にも咲かせる為に。
メイリン・コスモロード(サポート)
『一緒に頑張りましょうね。』
人間の竜騎士×黒騎士、13歳の女です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、時々「対人恐怖症(ワタシ、アナタ、デス、マス、デショウ、デスカ?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
人と話すのに慣れていなくて
「えっと……」とか「あの……」とか多様します。
戦闘ではドラゴンランスを使う事が多い。

その他、キャラの台詞はアドリブ等も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




 大気を震わせんとする轟音に次いで、粉砕されバラバラに吹き飛んだ木片が山林を薙ぎ払う。
 濛々と立ち込める粉塵の奥から駆け抜けて来るのはメイリン・コスモロード(飛竜の鉾・f13235)と、彼女が揮うドラゴンランスと打ち合う影朧だ。
「ぁああああ……!」
 呻き声。そこに連なり重なる、千鳥足気味な足音。
 『逢魔が辻』から最も近い位置に在ったのだろう何処かの村を襲い、村民を乗っ取ったと思しき植物型の影朧は美醜に迷いを覚える外観で花と根を振り乱している。
「今……私が解放しますから!」
 携える双槍を構え、メイリンが呼吸を合わせる。
 寄生している影朧の能力は長期戦になればなるほど分を悪くする。彼女は竜槍を軋むほど掴み直し、浅く吐いた呼吸と同時に一気に踏み込んで行く。
 聖なる力を纏いし竜槍が描く白銀の軌跡、夜空を流れ往く星の流れに等しい一閃が真っ直ぐに影朧を貫く。
「せぁ!」
 地面を踏み砕き直角に、突き穿つ穂先の下から更に踏み込んで繰り出された流星が次々に影朧を貫き穿ち、吹き飛ばして行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「…寄生された方への、回復が不足するかもしれません」

呪詛耐性あり
UC「桜吹雪」使用
高速・多重詠唱で桜吹雪に破魔の属性与え、寄生された人間部分以外の敵本体だけでなく、攻撃に使用された根や花や苗も切り刻み殲滅する

「一部分でも逃がすと、また他の場所で同じ事が起こるかもしれません。生への狂おしいほどの執着が、私達植物の生存戦略ですから」

「貴方達とは共存出来ません…ごめんなさい。可能ならば、普通の草花になって戻られますよう」
寄生者に申し訳なく思いつつも殲滅優先
事件終了後に桜の癒やしを使わせて貰おうと思いつつ花殲滅後の寄生者の様子を改め、脇に集めて寝かせておく

「此処を辻にした方との決着まで、お待ち下さい」




 地形と能力が合致し、その相性が良いというものほど恐ろしい事は無い。
 『死に添う華』の殆どは主に寄生対象――人間の元々の性能や能力に依存している部分が多い。そこに加えて寄生体である影朧自身が攻撃を加えて来る事も含めば、相応に厄介なのは間違いない。
 だが、これらは植物だ。
「……寄生された方への、回復が不足するかもしれません」
 それを御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はよく理解していた。外観からの判断だけでなく"そう感じる"が故に。
 桜花の眼前で蠢く影朧は、寄生し体を乗っ取った村民の体内から管を伸ばし幾つかの塊を吐き出す。それらはこの悍ましい植物が生んだ苗であり、召喚した分身体だ。
 ふしゅるる。と漏れ出す様な声を挙げた本体に呼応した苗は急速に成長を遂げ、やがて桜花の前で大きな極彩色の花弁を開くと表現し難い動きと共に飛翔を始める。
「……!」
 袖口から滑る銀盆。桜花の胸元で弾かれる金属音に次ぎ、彼女は反射的に後退し空を切る蔓の刃を見抜いた。
 元来、植物の本質はシンプルに増殖に向かっている。根を張り、エネルギーを吸い上げ、成長し花をつけ種を撒く。そこに何の違いも無い。
「――……一部分でも逃がすと、また他の場所で同じ事が起こるかもしれません。生への狂おしいほどの執着が、"私達"植物の生存戦略ですから」
 そう、そこに何の間違いも無い。
 桜花の足下から吹き荒れる霊的なまでの気配は風を纏い、そこに温かな桜の薫りが混ざり昇る。否、桜吹雪そのものとなって辺りを飲み込んだのだ。
 鉄扇をひらりと揮った直後、それら桜吹雪は破魔の力を宿す。既に桜吹雪は静かに死の華を刻み掻き散らしている。
 それを、まとめて焼き払うかの様に。幾重にも連なった破魔の刃が切り刻み、桜花の視界に映る苗含む全ての影朧を粉微塵にして飛ばしたのだった。
 一切の容赦もすることなく、迷わず桜花は殲滅を選んでいた。
「貴方達とは共存出来ません……ごめんなさい」
 重い音を響かせて地に崩れ落ちる村民達とは別に、舞い上がって行った桜の花弁を追い空を見上げ彼女は祈る。
 どうかせめて普通の草花に戻るように……と。
「く、うぅ……っ」
「……よかった」
 近付き、様子を検めて見れば村民達の息はまだあるようだった。
 直ぐにでも治療に掛かりたいが、それにはまだ早い。未だここから程近い『逢魔が辻』の内から漏れる嫌な物を感じ取っていた。
「此処を辻にした方との決着まで、お待ち下さい」
 安全そうな場所に村民達を集め寝かせた桜花はそう告げると一人、また森の奥へと駆けて行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベッジ・トラッシュ(サポート)
◆戦闘時
戦うのは怖い!
なのでボス戦ではだいたい逃げ回っている。
(味方の手助けになる行動や、囮になるなどの功績を得ることはあるがだいたい無意識)
「こ、ここ…怖いのではないゾ!ベッジさんは様子をうかがってイタのだ!!」

手の届かない相手にはパチンコで苦し紛れに絵の具弾を飛ばすこともある。

◆冒険時
基本的に好奇心が強く、巻き込まれ体質。

敵味方関係なく、言われたことには素直に従う。
怪しいような気がしても多少なら気にしない。
後先考えずに近づいて痛い目を見るタイプ。

◆他
口癖「ぎゃぴー?!」
お気に入りの帽子は絶対にとらない。
食べ物は目を離した隙に消えている系。
(口は存在しない)
性能に問題はないが濡れるのは嫌い。


グレース・マクローリン(サポート)
口調 フレンドリーで中性的(アタシ、~君、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )
怒った時は チンピラ(アタシ、お前、だ、だね、だろう、だよね?)

言動:表向きはフレンドリーな態度を装ってるが実際は狡猾で計算高い。…が直情的なのでその場のテンションの高低や感情に左右されがち。

敵対するなら女子供や愛玩動物類などにも容赦はないが、昆虫や節足動物に対してはやたら感傷的になる。

戦闘時には刀剣や長物に銃火器等なんでも使用する。


鞍馬・景正(サポート)
※サポートを受け付けない場合は却下でお願いします。

◆キャラ指針
サムライエンパイア出身。
実直で真面目な性格の青年武士。

人助けや強敵と戦える依頼には積極的に参戦します。

どんな状況でも真摯に取り組みますが、勘違い等でおかしな行動に走るケースもあります。

◆戦闘
接近戦では剣術や組討、遠距離なら弓を使用。
羅刹の【怪力】と、武術稽古で培った【見切り】を活かした戦法が得意。

状況によって味方や一般人を【かばう】盾となったり、愛馬に【騎乗】もします。

どんな場合でも武士道に背く卑劣な行為はしません。

◆備考
アドリブ、連携可。
悪事や不正、他猟兵への迷惑行為等はNGで。




 陽は落ちて。夕闇が広がり始めたことで山道に重なる影が濃く、裏返り、黒く塗り潰された様な瘴気を纏う影朧たちを景色の中に映し出す。
 人の形を持ちながらも冒涜的に蠢く奇怪な姿に、緊張感のない悲鳴が挙がった。
「ぎゃぴー!? はっ、木の枝だと思って油断してた……これしきで震え上がるベッジさんじゃナイ!」
 小躯。器用に木々の上をロープ伝いに駆け回りながらベッジ・トラッシュ(深淵を覗く瞳・f18666)は眼下の植物型影朧に悪態をついてやる。
 見渡せば見える見える、無数の影。
 『逢魔が辻』から溢れ出した影朧たちは何者かの手引きに依って近隣の村々を襲おうとしていたようだったものの、どうやらこの場に集まっている個体で最後のようだ。
 しかしそれは裏を返せばそれだけの時間を活動し続けていたという事でもあり、自らの分身体となる苗はいずれも花を咲かせていたのである。
「既に寄生された村人は事切れている様子。多少歯痒いものの致し方無し、相手は多勢なれど後衛さえ万全ならば容易い相手でしょう」
「ひゃはっ! 後ろは任せな……ってか、前もアタシに任せなよ!」
 ベッジに並び様子を伺っていた鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)とグレース・マクローリン(コスプレ海賊・f12443)両名が自らの得物を一瞥し検め、地上へと飛び込んで行く。
 それは、これ以上の進攻を阻むほか無いのもある。だがそれ以上に、彼等の言はどちらも真実。

 手始めに近場の触手を斬り伏せ、蹴り潰しながら。影朧の核と見た花を景正は切り飛ばす。
 鮮やかな剣閃はその場から弧を描いて滑る。竜胆の軌跡が半円上にいた影朧の分身体を全て薙ぎ払うと同時に、頭上の個体を羽虫を散らすかの如く鋭い剣戟が次々に打ち上がり切り刻んで落として行く。
 景正の間合いの内に入った敵がクリアされたその時、グレースとベッジが彼の後ろから足取り確かに歩を進め照準を定めて行く。
 既に影朧の進行速度、間合いを図り終えているベッジが先に景正へと群がりつつある個体を狙い撃ち始めた。
「進め進めーっ!」
 遅れはない。グレースの手元から軽く放物線を描いた手製の爆弾が影朧たちの足元へと落ちた時、爆ぜ飛んだ土砂に紛れてフルオートの射撃を浴びせていた。
 後衛の牽制、制圧射撃が伸びる最中にも景正はそれら弾幕を潜り抜けて奥部へと駆け抜ける。
 開かれた道筋を辿り、ベッジ達も続く。
 包囲しようと蠢くは狩りの本能的それか。「ぴゃー!」と叫びながらもベッジは景正の傍へ向かい、時折脇から繰り出される触手の一撃を受け止め、或いは飛び越え、更にはUCを用いながら相殺して前へ進んでいた。
「ハハッ! 燃えちまいなよ!」
 グレースのMARカービンが文字通り火を噴く。
 取り巻く影朧の包囲を突破し、群れと再び対峙する最中に繰り出される彼女のUCは銃撃による効果を延焼によって引き上げる。
 特に、相手は植物である。寄生することで誤魔化されていた脆弱性は燃え盛る炎と連なる斬撃、銃撃によって為す術もなく駆逐されて行くのだった。

 そうして繰り返す事、十数分後。
 灰が僅かに混じった瘴気の残滓が払われた中に、彼等猟兵だけが立っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『試作パーラーメイドロボット『藤咲さん』』

POW   :    致命的欠陥
【力の制御が甘くなった怪力の一挙手一投足】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    オール・ワークス! 藤咲さんカスタム
対象の攻撃を軽減する【戦闘メイド服姿(己の怪力でも破れない)】に変身しつつ、【独自理論設計で改善不可能な欠陥由来の怪力】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ユーベルコヲドと戦闘技術はパーラーメイドの嗜み
【転生ウォーマシンが参考にされた戦闘モード】に変形し、自身の【メイド業や得意分野で力を発揮する演算能力】を代償に、自身の【耳が発光。怪力と特殊部隊顔負けの戦術行動】を強化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はトリテレイア・ゼロナインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●咲かぬまま
 素敵な華を咲かせる、素敵なモノ達を送り出して暫く経った頃だった。
 彼女は『逢魔が辻』近くの村に棄てられていた、かつて武家屋敷だった廃屋を見つけていた。そして今、暫しの間に塵を掃き捨て終えた彼女はカビの臭気漂う廃屋を野花を飾るなどして少しでも見栄えを良くしようとしている。
 彼女は思う。此処ならばこれから訪れるであろう素敵な、素敵な誰かを迎えに上がるに相応しいだろうと。
 もしもその時が来れば、彼女はこれからたくさんの奉仕をするのだ。
「たくさん――沢山、喜ンデ下さるでショウか……」
 眼球が動く。軋みを上げる身の内で、何事かを想像する度にバチリと紫電が散る。
 影朧として存在を得たパーラーメイドロボットは、己が狂っているとは微塵も思わない。彼女が優先するのは他者のためであり、そして他者から求められる事なのだ。

「……アァ」

 ギシリ。うぐいす張りのように軋みを上げた廊下の音に、『藤咲さん』は振り返る。
 その先に待っている誰かを、彼女は両手を広げて迎えに行こうとする。
 天井梁を破壊しても顔色一つ変えずに迫るその姿が、果たして来客にどう映るかは――。
御園・桜花
「貴女は…自分の職務に、とても忠実だったのですね」

高速・多重詠唱で銃弾に破魔と電撃の属性のせ制圧射撃
敵の行動を阻害したら
UC「召喚・精霊覚醒」使用
周囲が閃光で埋め尽くされるほど大量の雷属性の追尾する魔力弾を何十発も当て完全に回路をショートさせる

「貴女は元々の命を喪い影朧になった。尽くそうとするほど人を苦しめる存在になってしまった。思い出せませんか。貴女に人に尽くせと言う命題を与えた主人のことを。その方との別れを。貴女が起動するエネルギーを喪い影朧になった日のことを。それを思い出せれば、貴女はすぐにでも転生できると思います」
「もう1度、生者として生者の役に立ちたいと、転生を願って下さいませんか」




 迎えるはどこか桜の花びらを纏いし御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)一人。
 屋敷の広間へと誘うように歩いて来た桜花と、影朧『藤咲さん』は互いに目を見つめ合う。
「サア、どうぞごゆるりト。タダ今何かおもてなしの品ヲお持ち致しマスね……」
 そう言って何処かへ向かおうとする。
 しかしそれを桜花は黙したまま、首を小さく振って制止した。
 罅割れた瞳の奥を覗き込むように、或いは『彼女』が覗き込ませたように。暫し互いに沈黙したまま足を止め再度目を合わせる間があった。
 暫しの後。桜花がゆっくりと笑顔を向けた。
「貴女は……自分の職務に、とても忠実だったのですね」
「アリがとうございマス」
 雑音の混ざった声が僅かに弾む。褒められた、と勘違いしたのだろうか。
 直後、木片散らし畳が捲れ上がるほどの破壊が桜花の立って居た位置を直撃した。後ろへ跳びながら、その刹那に桜花は「ヤッタぁ」という、無邪気なようで儚げな小さな声が聴こえた気がした。
 無邪気、そう。無邪気なのだ。
 このパーラーメイドの姿を模したロボットは恐らく、自身の行動原理の裏に巣食う影の意思を認識していないのだ。影朧であるが故に、そして人ならざる無機であるが故に。
「オ客様」
「貴女は元々の命を喪い影朧になった」
 次いで両手を広げ駆けて来る藤咲さん。桜花は腰裏から取り出した軽機関銃で無数の銃弾を浴びせ、動きを再度停止させた。
 ただの弾丸ではなく、そこには高速で紡ぎ出した破魔と雷光の属性が籠められている。
「貴女は、尽くそうとするほど――人を苦しめる存在になってしまった。
 思い出せませんか。貴女に『人に尽くせ』という命題を与えた主人のことを。その方との別れを。貴女が起動するエネルギーを喪い影朧になった日のことを」
 それを思い出せれば、すぐにでも転生できる筈だと。そう桜花は静かに語りかける。
 荒々しい制圧射撃に動きを止められその場に縫いつけられた藤咲さんは、桜花のその言葉に首を傾げた。

「……ワタシ、の。主人……?」
 空白が生まれる。それは、機体記憶領域に保存されていた何かに靄がかったように、取り出せない物の正体を手探りで探るような一瞬だった。

 だが、その数瞬を越えた先。藤咲さんの内から瘴気が溢れたと思いきや突如、桜花の銃撃に襤褸切れとなりかけていた侍女服が別のメイド服へと換装されたのだ。
 戦闘用メイド服。その姿を目の当たりにした桜花が目を細めて言葉を紡ぎ出す。
「おいで精霊、数多の精霊、お前の力を貸しておくれ」
 桜花の周囲に光が集まったのと同時、藤咲さんの様子が一変する。
 それまで『彼女』の内に反響していたメイドロボットとしての使命が消え、代わりに戦闘技術のみが発露する。
 つまり――今度は純粋に、桜花の首を薙ぐように攻撃を繰り出して来たのだ。
 バネ仕掛けのように飛び上がり、天井を足蹴にして桜花の背後を取った戦闘メイドは目にも止まらぬ勢いのまま手刀を放つ。
 しかしその手は桜花に触れるより先、雷電が空中で爆ぜて。その手を弾かれ藤咲さんの体勢が怯む。

「もう1度、生者として――生者の役に立ちたいと、転生を願って下さいませんか」
 諭すように。静かな声音が流れる。
 それが藤咲さんに届いているかどうかは定かではない。
 瞬間、桜花に呼応した精霊達が練り上げた雷光纏う無数の魔力弾が部屋を埋め尽くし、藤咲さんの視界とセンサー機器に異常が来す程の閃光が迸ったのだった。

 屋根が吹き飛び崩れる屋敷。
 著しいダメージを負う一方。その狭間で、藤咲さんはたった一瞬だけ。誰かの笑顔を思い出した気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダスク・ドーン(サポート)

煮るなり焼くなり。
人数穴埋めから不採用まで幅広くお使いください。
キャラの扱いはアドリブでも何でもお好きにお願いします。
口調は適当なので細かいとこは気にしない。

ただし、
他の猟兵に迷惑をかける行為や公序良俗に反する行動はしません。


『また日が沈むな』
人間のフォースナイト × スカイダンサー
年齢 27歳 男
特徴 面倒見がいい くーる 女性が好き とんでもない甘党
口調 やわらか(自分、相手の名前+ちゃん、ぜ、だぜ、じゃん、じゃねぇの? )


戦闘ならいずれかのフォースブレイドを使用。
シンプルな正面勝負を好む。

冒険や日常は……、
うむ、メンドウだな。
(テンション低くても仕事はきちんとやります)


ステラ・クロセ(サポート)
真紅の瞳。燃える炎。あふれる勇気。直情正義、元気全開、単純明快!
正しい心で悪しきを討ち、そして弱き者を救い、その盾とならん、我こそは義侠のスーパーセル!
スーパー純粋熱血、ハイパーテンプレ系ヒロイン、それがステラです。

一人称は「アタシ」ですが殆どの猟兵は先輩に相当するので話すときは「わたし、あなた」といった礼儀正しい振舞いとなります。
探索系はストレートな解決法を選び、
戦闘では正々堂々と敵の正面に立って攻撃を引き受け味方にチャンスを作る方が好みです。なお、近接戦闘派です。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
正義を大事にするので、他の猟兵の意図を阻害したり公序良俗に反する行動はしません。


ミスティ・ストレルカ(サポート)
基本方針は専守防衛・他者フォローです
サポート故、連携重視のお任せ

知らない人にはどうにも気後れしてしまうけど
それでも他の人が怪我するのも嫌なので押すところは押すのですよ
主にサモン・シープ等攻撃系のUCで他者行動の隙を消す様に立ち回るのです
中遠距離をとり全体を掴む感じですね

防御系の技能で時間稼ぎも行けますので
生まれながらの光での前線維持、魔力性防御障壁の囮役も…ちょっと怖いけど
でもでも、みんなの居場所を守るのですよー

そうそう、えっちなのはいけないと思います。
興味がない…訳ではないですがひつじさんが怖い雰囲気纏って凄い勢いで止めにツッコんでくるのです
年齢制限がどうとか、らしいです


家綿・衣更着
アドリブ歓迎
冥土さんの誤奉死と聞いて!

こんにちは素敵なメイドさん!きれいなお花っすね!飲み物お願いしまっす!
(回避しつつ行動に支障が出なければ飲み干し)ありがごふっ、おいしかったっす!
座布団、歌など要求、お礼と賛辞は惜しみなく、捕まらぬよう頭撫で。

影朧でなければもっと素敵っす!
自分にUC発動。敵UCを誘発しひたすら回避専念。演算にないだろう寿命削りの自滅狙い。
【地形の利用】で畳返し。自分の綿マフラーも盾に変形。走り回り妖怪煙を煙幕に。
捕まりそうな時は【化術】で【おどろかす】【体勢を崩す】し回避。

お疲れ様…転生してまた奉仕してくださいっす。
必要なら止め、戦闘終了なら桜の精を呼び、修理できる場所へ




 どうして。
 そんな声が何処かで鈴の音のように落ちた気がした。

「こんにちは素敵なメイドさん! きれいなお花っすね!」
 いつの間にか瞼が閉じてしまっていた事に気付いたメイドの罅割れた瞳に、塵が舞っている中で誰かがにっこりと笑ってる姿が最初に映った。
 きれいなお花。その声に反応して辺りを見回す。
「あ……コレは、大変……」
 半壊した武家屋敷の惨状に、パーラーメイドロボットの彼女は勢いよく立ち上がった。
 せっかくの飾りも、埃を掃いたばかりの畳もすっかり汚れてしまっている。そんな状態の中で御客人を迎えるなど、とてもではないが堪えられない。
「あノ、申し訳御座いマセン……タダ今なにか……」
「飲み物お願いしまっす!」
 まるで周囲を意に介さぬ様子で家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)は胡坐を掻いたまま、まだ崩れていない別館の炊事場へと小走りで去って行くメイドを見送った。
 彼女の足取りは半ば千鳥足めいているものの。それでも力の抑制ができていないのか、一歩ごとに畳みを踏み抜いていた。
「こ、これでいいのです……?」
「……やりにくい相手だからな。流れは任せていいんじゃねぇか」
 衣更着から少々後ろに離れた位置。
 遠慮がちに座布団を敷いた上にちょこんと座ったミスティ・ストレルカ(白羽に願う・f10486)と、傾いた梁柱に背を預け静観しているダスク・ドーン(人間のフォースナイト・f13904)が互いに視線を交わし、それから重い振動響く足音の方へと視線を戻した。
 それから、ダスクは苦々しい表情で天を仰いだ。
 純粋に戦り合うだけなら、恐らく今すぐにでも撃滅は可能だ。だがそれで終わらせるにはあの影朧は無垢に過ぎた。なんら悪意が無い相手なのだ。
 もしも、少しでもマシな終わり方があるのなら。救いがある結末があるのならそれに一度手を伸ばしてみてもいいのではないか。
「アタシも何かお願いした方が良かったかな」
 壮絶な足音を鳴らし戻って来たパーラーメイドを眺めている衣更着の隣に、ゆっくりと後ろ手でスカートを押さえ座り込むステラ・クロセ(星の光は紅焔となる・f12371)が小さく言った。
 衣更着は飄々とした様子で首を傾げる。
「ちゃんと大事なトコ忘れなければ、なんだってイイと思うっすよ」

 ズン。最後の一歩だけ半ば跳躍して、文字通り飛んで帰って来たパーラーメイドロボットの『藤咲さん』は盆に並んだお茶を一つ手に取り差し出して来た。
「ありがごふっ――」
「お待たセ致しマシた、お茶デス!」
 差し出されたお茶。その突き出しは途中から急加速し、衣更着が間一髪の所で首を捻って回避した後から熱湯が降り注いだ。
 思わずステラが立ち上がりかける。が、それを片手で制止した衣更着が軽く顔にかかった茶を掃うだけで収める。
 ありがとう。その一言を改めて告げながら、伸ばし切った腕の先に握り締められた器を手に取った衣更着がわずかに残った茶を飲み干した。
「あ……」
「ふぅ、おいしかったっす!」
 屈託のない笑顔で、衣更着が告げる。
 その表情。その声。その言葉。目に映るその景色を微動だにせず受け取った藤咲さんは、次の瞬間片手に乗せていた盆を下から指先によって突き破った。
 茶器が破砕し爆散する瞬間、衣更着が一度後転すると同時に畳を弾き上げて不意の一撃を防いで見せた。
「アアッ! オ客様、お客様ッ! 他には何をッ! この『藤咲』喜ンデご奉仕サセテいただきマスわ――オキャクサマッ!」
「あっはは。じゃあここでいっちょ歌でもどうっすか!」
 突如豹変した少女の姿が激しい火花と漏電に包まれ、その身を纏っていた慎ましやかな侍女服から戦闘メイド服姿へと変身を遂げる。
 目前に弾き上がった畳が粉々に吹き飛ぶ。同時に、反射的に頭上へ逃れた衣更着と畳に添えた怪力一つで粉砕した藤咲さんの視線が絡み合う。
「ちょっ……!?」
「歌ワセテ、いただきマ……スッ……!」
 雑音が混じっていた声が、音が、激情に任せるかのように強く喉を震わせる度に途切れる。
 突然の戦闘開始に驚きながらも抜剣したステラの眼前で、振り抜かれた手刀と刃が衝突し火花が散る。
 歌声に合わせて舞うその姿は、戦闘メイドとしての戦闘技術と本来彼女が望む奉仕行動が入り混じった産物だった。
「よっ、綺麗な歌声っすね! 思わず、聞き惚れちまうっす!」
「ッ――――!!」
 霞んだ吐息。
 それは歌でもなければ声にすら出ていない。それでも自らの為にと喉を震わせる彼女へ衣更着からの惜しみない賛辞がやんややんやと何度も繰り返される。
 例え、彼が発動したユーベルコヲド越しに凄まじい衝撃が走っても。

 激動と暴走が混ざった歪な破壊行動。
 衣更着が褒めれば、衣更着が求めれば、全てに応えて歓喜する。
「……これ以上は……!」
 思わず白い翼を羽ばたかせ飛び上がるミスティ。
 宙を舞い、時に煙幕すら駆使して回避に専念する衣更着は未だ無傷である。しかし、その行動に『回避』や『防御』はあっても『逃走』だけは無い。
 ゆえにその場から離れはしても逃れず。付かず離れずの距離を維持しようとすれば攻撃に対する被弾率も上昇してしまうのだ。
 そしてそれは徐々に、一方的にさえ見える暴力が押し寄せて来る。
「姉さんは歌が上手い。気配り上手で、おいらみたいな客相手にも丁寧にもてなしてくれるし、何より美人さんっす!」
 側転。宙返り捻り。
 声が二転三転する中でも衣更着は飄々とした笑みを崩さず、時に自らの『化術』を駆使して狂乱するメイドの猛攻を躱していく。
「……!」
 その最中、彼が張った結界に重なる形で防御障壁が展開される。弾かれた手が、軋みを上げる。
 刹那。その場に渦巻いていた空気が一度だけ、衣更着に迫った危機が引き金となって一つの行動を生む。
「真鉄の盾、黒鉄の甲、秋の陽炎……正義は高き主を動かし、神威は、最上智は、最初愛は、アタシを作る! 倫敦塔!!」
 それまで、衣更着が意図していたものは即ち"自壊"だ。
 人に異常なまでに執着を持ちながら人を傷付ける事を目的とした機能を有するばかりに、影朧となってその歪な在り方に亀裂が生じていたのが『藤咲さん』という存在だった。
 しかしてその意志に悪意はなく、その在り方は紛れも無く善性。
 衣更着は半壊した武家屋敷の中で一時眠っていたパーラーメイドに乗った、一輪の桜花を見て決める。彼女をただ破壊する以外の方法で終わらせようと。

 ステラの連撃が決まり、戦闘メイド服が爆ぜる。
 それでもまだ踏み込む彼女を包み押し返すミスティの召喚した鳥たち。
「――」
 それは、ネジを回し抜いたかのように。程なくしてパーラーメイドロボットに限界が訪れた。
「……お疲れ様……転生してまた奉仕してくださいっす」
 ふわりと、花弁でも乗ったかのように。
 最後に彼女は頭に触れられた事に、笑顔を見せて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​


●その花は枯れずに
 機能を停止した影朧は、静かに朽ちて行こうとする。
 あれだけ騒いでいたパーラーメイドはどこにもなく、ただ本人が真に在りたかった慎ましく咲く花の様に。

 落ちた花弁。
 それを、誰かが手の平に留めた。

 夕闇が落ちる中。
 飄々と、風に乗せられて――桜の薫へと向かう。

最終結果:成功

完成日:2020年08月01日


挿絵イラスト