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星海サーフェスダイブ

#グリードオーシャン #深海人 #深海島 #S08E12

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 広大な海と数多の島からなる世界、グリードオーシャン。
 猟兵たちがこの世界に足を踏み入れてから、既に幾つもの島を訪れ、その数だけ戦いがあった。
 そして、物語の舞台は必然のように海中へと広がっていく。
 深海島。
 海の底にある島々は、そう呼ばれていた。

「今日は星海祭だねぇ」
 桟橋の上で、穏やか過ぎる程の波を眺めて海女は言った。
 今日は一年に一度の海凪の日である。風はなく、波は何処までも穏やかであるが故、帆を張って進む船を出すには向かぬ日だ。それは海中とて同じで、普段は荒れる海流も今日ばかりは寝静まっている。
 何もかもが穏やかな日。一年に一度のそんな日に、海がくれた休日として「星海祭」という祭りを催すのだ。
「海のお隣さんは元気かね。さて、私も祭りの準備に向かおうかい。――空と海が繋がる日、くじらが帰る、お空から。水平線を渡って、迷子が帰る、海の空……」
 海の中へ柔い視線を向けてから、海女は海の恵を手に町へ向かった。無意識のうち、この海域に伝わる子守唄を口ずさみながら。

 そんな静かの海を、虚が泳ぐ。其れは天より戻り来た海の魔獣。悠々と、しかし猛然と、其れは白き海中都市を目指して泳いでいく。

 大きな気泡が海面に浮かび上がった。


「やあ、皆。集まってくれてありがとう。早速だけど、今回はグリードオーシャンだよ」
 グリモアベースの一角。
 初夏の陽射しの中、「見た目がもう暑い」とげんなりする程に全身真っ黒な人形――ディフ・クライン(灰色の雪・f05200)が、猟兵たちに穏やかに声をかけた。
「深海島、聞いたことがあるかな。海中の巨大な気泡に包まれた都市のことだよ」
 多くは貝や珊瑚で出来た都市で、絶えず湧き出す大量の気泡が島を包み込んでいる。その気泡によって島はそれ以上沈まずに、また深海人でなくとも呼吸に支障はないのだという。だがそんな場所でも、オブリビオン――グリードオーシャンで言うところのコンキスタドールの脅威が迫りつつあった。

「今回はね、深海島の一つ、星珊瑚の島パルレに向かって欲しい」
 それはとある海域にある深海島。星珊瑚と呼ばれた真白の珊瑚で出来た海中都市だ。
「今日は星海祭という祭りが催される日なんだけどね。予知が正しければ、その祭りの終盤、パルレはコンキスタドールの襲撃を受ける。多分、クジラだよ」
 故に、猟兵諸氏にはまずはパルレに向かってもらわねばならない。とはいえ潜水艇などがあるわけもないので、生身で泳いでもらうことになる。普段は強い海流のうねりによって生身で潜って辿り着くことは困難だが、今日は一年に一度の海凪の日。空も海も穏やかに鎮まり、パルレへ向かうのも容易になる。
「深海島からは絶えず気泡が溢れているから、その気泡を吸いながら潜れば呼吸は出来る。何よりその気泡を辿れば深海島への道標になるよ。ただ、水圧だけはどうにもできない。気合なり何かしらの対策するなりして、頑張って欲しい」
 少々申し訳なさそうに頭を下げてから、ディフは銀の雪華のグリモアを手にした。雪華がくるくる回る。雪華から降り注いだ雪が、門を形作る。
「無事パルレに辿り着いたら、折角だしお祭りを楽しんでくるといいよ。確か、海に星が降るらしいんだ。星珊瑚にちなんだ装飾品や、海の幸が振る舞われるそうだよ。海の中でのお祭りなんて、なかなか楽しいと思うんだ」
 柔く目を細める間に、雪華の門が開いた。もう、海はすぐそこだ。

 いってらっしゃい、気を付けて。

 低く穏やかな声が背を押して。
 波が、誘っている。


花雪海
 閲覧頂きありがとうございます。
 クジラや海と星が好き、花雪 海で御座います。
 此度はグリードオーシャンの海の中、深海島へと皆様をご案内致します。

●第一章・第三章:
 純戦です。海中戦となりますが、それを意識した戦い方をするかどうかは自由です。
 特に意識せずとも問題なく動けます。

●第二章:星海祭
 星珊瑚の島『パルレ』にて、星と海の祭りをお楽しみ頂けます。
 星珊瑚にまつわる装飾品が買えたり、星海祭ならではのご馳走を食べたりすることが出来ます。
 迫りくるボスに備えつつ、お祭りを楽しみましょう。詳細は断章にてお伝え致します。

●プレイングに関しまして
 各章とも、プレイングの受付日時を設定しております。ご参加の際はお手数ですが、【マスターページ・各章の断章・お知らせ用ツイッター】などにて、一度ご確認下さりますようお願い申し上げます。
 期間外に届いたプレイングは、内容に問題がなくとも採用致しませんのでご注意下さい。
 また、今回は花雪のキャパシティの関係から【一グループは二名様まで】とさせて頂きたく思います。大変申し訳御座いませんが、ご了承頂けますと幸いです。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『呪われた船首像』

POW   :    まとわりつく触腕
【下半身の触腕】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    掻き毟る爪
【水かきのついた指先の爪】による素早い一撃を放つ。また、【自らの肉を削ぎ落す】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    呪われた舟唄
【恨みのこもった悲し気な歌声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 転送ゲートをくぐった先は、もう一面の海だった。
 意を決して飛び込めば、いくつもの気泡が身体を包む。その中の一つを吸えば肺が新鮮な空気で満たされて、猟兵たちは呼吸を苦にすることなく海中へと潜っていくことが出来た。
 祭りの開催もコンキスタドールの襲撃も夜だと言う。故に今はナイトダイビングとなっているわけだが、今宵は海中にも月灯りがよく差し込んでいる。深海島に着く迄灯りは不要であろう。
 気泡を辿り、気泡で酸素を補給して猟兵たちは潜り続ける。ダイビングは順調で、水圧さえ耐えれば周囲の魚たちを眺める余裕もある。
 そしてその余裕が、海中での異変をいち早く察知する一助となった。

 それまでのんびりと泳いでいた魚たちが、急にこの場から離散した。どんな魚もみな、怯えて泳ぎ去り、岩場の隙間に身を潜める。出てくるものは居ない。ただ逃げていく魚たちを追うように、後方から猛烈なスピードで猟兵たちに近づいてくる群れが見えた。

 それは最初、真白の魚の群れに見えた。
 だが違う。泳ぎ方が魚のそれではない。だが、かといってヒトでもない。
 上半身だけみれば愛らしい少女だ。だがその下半身は悍ましい黒の触腕であり、その切っ先は常に猟兵たちへと向けられている。憎悪に滾る表情は愛らしさよりも恐ろしさを増長し、口を開けば呪いのように『沈メテヤル……沈メテヤル……』と繰り返す。
 そして猟兵たちを突き刺すような殺気が、何より猟兵たちの無意識の警鐘が、あれがコンキスタドールだと伝えている――!

 彼女たちは本来であれば美しき船首像だ。もとは航海の無事を祈るものであり、安全な航路を進む為の船の目であったはずだ。
 それが何を理由にか呪われた。
 船を沈めるものとして、ヒトを沈めるものとして。

 彼女たちの敵意は明らかに猟兵たちに向けられている。彼女たちを越えねば、星珊瑚の島パルレへは辿り着けない。
 それを悟った猟兵たちは、迫りくる呪われた船首像の群れを見据えて武器を構えた。
 
*****************
●お知らせ
 呪われた船首像の群れとの集団戦です。
 星珊瑚の島パルレに無事に辿り着くため、彼女たちを撃破して下さい。
 海中戦となりますが、それをプレイングにどう取り入れるかは皆様の自由です。
 特に海中戦を意識せずとも問題なく動けます。
 どうぞ皆様らしい戦い方をなさってください。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。

●受付期間
 【6/18 8:31~6/20 21:00】を予定しております。
 受付期間外に頂いたプレイングは、内容に問題がなくとも流してしまいます。ご注意下さい。
スキアファール・イリャルギ
水圧?
気合で耐えます
まぁ呪瘡包帯に殺されかけるよりはマシです多分
そういや怪奇人間になってから本物の海なんて、泳ぐなんて久々だ……

……コローロ、気を付けて
海は初めてであろうきみに
聲を掛けながら呪瘡包帯を少し解く
ゆらゆらと包帯を漂わせ敵をおびき寄せ
素早い攻撃を見切りすかさず包帯で縛る
それを合図にきみに"色"の弾丸を敵の顔に目掛けて撃ってもらう
視界を"色"で遮ってる間に包帯から呪詛を与えて呪殺

……なんとかなりそうかな
コローロ、ありが――

(プイッ。そっぽ向かれた)

……あー
やっぱりまだ怒ってる、よな……
(※ついこの間のお話。邪神が生んだ夢の中、彼女の制止を振り切り、彼女の幻を抱いて海へ沈んでしまった人)




「そういや怪奇人間になってから本物の海なんて、泳ぐなんて久々だ……」
 上半身を腰から曲げて頭から潜降していきながら、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)がふと思いを巡らせる。
 なお、出発前に懸念されていた水圧は気合で耐えることにしていた。曰く「まぁ呪瘡包帯に殺されかけるよりはマシです多分」とのこと。真偽の程は……実体験するしかあるまい。

 透明度の高い海だった。お陰で見るものには困らない。夜行性の魚や、自ら作り出した膜の中で眠る魚が居た。耳に響く音は存外海の中とは賑やかであることを知る。傍らに添う火花のような光と共に、遠く見聞きしていただけの海の世界を潜っていく。
 
 ――だが、そんな時間も長くは続かせてもらえない。
 
「……コローロ、気を付けて」
 明らかに自分たちに向けられている殺気に気付き、スキアファールは傍らの光――あの日残った『あの子』のひかりに聲をかけた。
 この子は海はきっと初めてだろう。コローロを気遣いながら、スキアファールは自らに巻いた呪瘡包帯を少し解く。
『沈メテヤル……!!』
 そこに猛然と、黒い塊が突進してきた。
 鋭利な爪が解いた包帯の一部を切り裂いたが、直線的な動きを見切っていたスキアファールとコローロに傷は無い。憎悪に滾る呪われた船首像の凶爪が再び翻るその直前、スキアファールはすかさず解いた包帯を一気に引いた。
『……!?』
 海藻のように揺らめいていた黒包帯が一気に船首像を縛り上げる。手も触腕も縛り上げられて藻掻く船首像が首だけをぐるりと動かせば、火花のような光が眼前にあった。
「……力、借りていいかな」
 頷くように力強く瞬いたコローロは、“色”の弾丸を船首像に撃ち出した。
 碧。蒼。紺碧。
 今日見た海の色が船首像の顔を撃つ。色で視界までもを奪われた船首像が滅茶苦茶に藻掻き暴れ――突如硬直したかと思えば、そのまま力無く項垂れほろほろと海に溶けて行く。スキアファールが包帯から呪詛を送り込んでトドメを刺したのだった。

 周囲を見渡せば、未だ戦闘している猟兵の姿が見える。だが、幸いにして船首像は苦戦するような敵ではないようだ。
「……なんとかなりそうかな。コローロ、ありが――」

 プイッ。

 お礼を言い切るより早く、コローロがそっぽを向いた。
「……あー。やっぱりまだ怒ってる、よな……」
 つい最近のこと。邪神が生んだ夢の海で、スキアファールはその希いを止められず、彼女の制止を振り切って、彼女の幻を抱いて海へ沈んだ。幻だとわかっていたのに、心がどうしても「もう一度」を求めてしまった。
 そっぽを向いたままのコローロを、諦めの覚悟を抱いた胸に抱き締める。どうしたら彼女の怒りを収められるか考えながら、スキアファールは再び深海都市を目指すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
オズお兄さんf01136と

お兄さんが作ってくれた鯨型潜水艦に乗り込む
…好きなんだ、鯨
ただ、戦場では別行動になるから、子機と親機を作ってもらって、俺は子機のほうに乗り込む
戦闘が始まるまでは、深海観光に徹する
深海魚とか早々お目にかかれないし
あ。お兄さん。あそこ。あれ。見た?(通信機に話しかける
ほら、そのぐにっとしたの。もっとそっち寄って
とかあれこれお兄さんの運転に要求したり

勿論、戦闘が始まれば切り離して子機は自分で操縦
お兄さんが敵を引き付けてくれてる間に、その背後に回り込むよ
銃も撃てるようにして貰ったし
…こういう機械類は、なんていうか嫌いじゃないし
俺の若干動きがご機嫌だけど、戦闘に支障はないだろう


オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と

ガジェットショータイム
小型潜水艦
鯨と、サイドカーみたいにくっついた子供の鯨

わあ、リュカ
クジラだよっ
リュカがクジラを好きなことは知ってるからにこにこ
これに乗れば、ふかいところまでいけるねっ

あれ?
リュカの声に従いあちこちへ
ぐにっとしたの
あ、みつけたっ

あっちにもしろいさかながいる…
あれ?

リュカと別れてレバーを引けば
鯨の下にガジェットタコさんが現れて攻撃を武器受け
はんげきだっ
足をばたばた当てて生命力吸収
リュカが回り込んだのが見えたら頼もしさに笑って
足で彼女をおさえるよ

旅のぶじをいのっていたことをわすれてしまっていても
彼女たちがだれかをしずめなくてすむように

ごめんね、ここを通るよ




「それじゃあまずは、ガジェットショータイム!」
 オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)が指をぴんと立てれば、深海に行くために最も最適化された形のガジェットが召喚される。酸素や水圧の心配の要らない、小型の潜水艦――。
「わあ、リュカ。クジラだよっ」
「うん。……好きなんだ、鯨」
 鯨の形をとった潜水艦に、思わずオズとリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)がそれぞれに感嘆の声を上げる。リュカが鯨が好きなことは知っているから、オズはにこにこうれし顔だ。
「これに乗れば、ふかいところまでいけるねっ」
 戦闘時は別行動になるからと、リュカの要望通り子機も作ったオズがほわほわ笑えば、リュカも嬉しさを頬に浮かべて頷いた。鯨に乗りこんだらいざ、深海へ。
 
 月と星灯りが深くまで照らす透明度の高い海を、鯨の親子が潜っていく。
 親鯨にはオズが、サイドカーのようにくっついた子供の鯨にはリュカが搭乗している。
 深く深く、ヒトが生身で向かうには向かぬような深さに、海に浮かぶ都市があるのだという。好奇心の塊のような二人は、まずは心ゆく迄深海観光に徹することにした。
 平和に辿り着くわけはないと知っているけれど、それでも普段目にすることのない世界と生き物たちには興味を惹かれるばかり。
 不気味な顔のサメ。長い長い触手のクラゲ。愛らしいメンダコが気泡に遊ばれている。
「あ。お兄さん。あそこ。あれ。見た?」
「え? あれ?」
「ほら、そのぐにっとしたの。もっとそっち寄って」
「ぐにっとしたの……」
 鯨窓から見えるものに興味を抱いて、通信機越しにリュカがオズにあれこれ運転を要求してみる。オズがリュカの要求通りに運転してみると、確かになにかこう……ぐにっとしたものがある。
「あ、みつけたっ」
「なんだろうねあれ」
 ヒトの未知の世界、深海に暮らす生物は不思議な形、不思議な生態ばかり。可愛いもの。不気味なもの。深海とは新世界のようだ。興味の対象は尽きない。
 
「リュカ、あっちにもしろいさかながいる……あれ?」
「……オズお兄さん、あれ魚じゃない。ちょっと離れるよ」
 ガキン、と音がして、リュカが乗る子鯨の潜水艇が親鯨から離れた。オズが潜水艇を向けた先には、真っすぐに此方を狙ってくる白い影。海の生き物ならば、こんなにも肌を刺すような憎悪は放たない。こんなにも猟兵としての本能がざわつかない。それ即ち。
「コンキスタドールだ」
 リュカの声にはっとしたオズが、傍らのレバーを引いた。親鯨の下がガコンと開き、出てきたのはガジェットのタコさん。すぐさまタコさんが太い足を交差させれば、驚異的な速さで突進してきた呪われた船首像の爪を食い止めた。互いにとても真剣な様子だが、クジラさんとタコさんのおかげで見た目がファンシーかもしれない。渾身の一撃を食い止められた船首像が、目を見開きながら体を急速に翻す。
「はんげきだっ」
 オズが傍らのレバーを上げれば、タコさんが向かってくる船首像に対してバタバタと足を振り回して反撃する。やっぱりファンシーだが侮るなかれ、その一撃はどれも船首像の生命力を奪うもの。
 その隙に、リュカの乗る子鯨が船首像の背後に勢いよく回り込んだ。リュカの操縦が若干ご機嫌だが、戦闘には支障ない。こういう機械類は、リュカにとっても嫌いではない。
 そんなリュカの頼もしさにオズがへにゃりと笑い、レバーを操作する。八本の足を上手に使って船首像を相手取っていたタコさんが、操作に呼応して船首像に絡みついた。全身に絡みつき吸盤で吸い付き、締め上げる。逃れようと闇雲に藻掻く船首像をタコさんは決して離さない。
「旅のぶじをいのっていたことをわすれてしまっていても、彼女たちがだれかをしずめなくてすむように」
 オズの声は祈りのように、希うように。
 そしてその声を受け取るのは、リュカ。
 子鯨が大きく口を開ければ、その口には銃口がついていた。その狙いを定めるように、子鯨の周囲には光の小さな星鯨たちが灯を照らし、弾道の計算を行いリュカの乗る子鯨に伝えている。
「ごめんね、ここを通るよ」
 オズの穏やかな声と、リュカが引鉄を引いたのは同時だった。
 海中にくぐもった音が響いた次の瞬間、呪われた船首像の額で真紅が散った。

 無事に呪われた船首像を撃破した二人は、再び親子鯨をドッキングさせた。これで今のところ憂いは無い。
 星鯨たちも一緒に連れて、オズとリュカは再び深海に浮かぶ白い都市を目指し往くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
幻想的で浪漫溢れますね~楽しみです♪

風と水の魔力操作
水圧を打ち消し

ランさんに騎乗
自分&ランさんをぺろぺろ
水抵抗0のランさんと
敵の群れへ飛び込み分断・攪乱
包囲されたら一寸厄介ですからね

ランさんは剣(吻)をランスの如く
超速での一撃離脱戦法

それに呼応し
海から魔力を借り受け練り上げて
弦や剣に水の属性魔力宿し
蒼の音や紺碧の刃で攻撃

敵攻撃はつるりと受け流し
又は空気の泡のバリアで防御
舟歌も竪琴で妨害できるかも(WIZですが

肉を削ぎ落したら
ランさんに水の魔力付与し更に更にスピードup!

コンキスタドールとなり
本来とは逆の宿命に囚われてしまったとはお可哀想に
その軛から解放して差し上げましょう

事後に鎮魂曲
安らかに




 銀の背を光らせた魚の群れがすぐ傍で泳いでいる。
 海へと身を躍らせた箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は、アーモンドアイの目旗魚、ランさんの背に乗って海を深く深く潜っていく。
 事前に仄々もランさんもしっかりペロペロと舐めて毛づくろいをしたので、水抵抗はゼロ。懸念されていた水圧も仄々の得意な魔力操作で打ち消せば、あとは空から落ちるかのように何の抵抗もなく潜っていける。
 高い透明度の海は深くまで見渡せて、普段見ることの少ない世界を探検していく仄々の心が沸き立っていく。
「幻想的で浪漫溢れますね~楽しみです♪」
 その声に同意を示すように、ランさんがふるりと体を震わせた。
 
 ――ぞわり。
 仄々の肌が粟立つと同時に魚たちが散った。危険を瞬時に理解した仄々は、呪われた船首像の群れを視認するや否やその中に飛び込んだ。
「包囲されたら一寸厄介ですからね」
 仄々は先陣を切って船首像の群れを攪乱し、分断していく。目旗魚は海のスプリンターと呼ばれる魚。コンキスタドールですら追い付けない速度で近づき、吻をランスの如く船首像に突き刺していく。
 超速での一撃離脱戦法は、即断で敵の攪乱に動いた仄々の機転によって奇襲の効果も生んでいた。船首像の群れは分断され、それぞれの近くに居た猟兵たちへと向かっていく。攪乱の効果は十分以上と言えるだろう。
 気泡で酸素を補給して向き直れば、仄々の前には一体の呪われた船首像が立ちはだかっていた。
『沈メテヤル……沈メテヤル……』
 繰り返す言葉は怨嗟か呪詛か。いずれにせよ仄々が聞いてやる理由もない。それでもほんの少しだけ、エメラルドの瞳を細めて。
「コンキスタドールとなり、本来とは逆の宿命に囚われてしまったとはお可哀想に」
 仄々が言葉と共に海から魔力を借り受けて練り上げ、リートと魔法剣に水の魔力宿し、構える。
「その軛から解放して差し上げましょう」
『沈メテヤル……!!』
 憎悪に染まり切った顔で船首像が突進し、爪を振り上げた。その凶爪をつるりと受け流し、一つリートを弾けば蒼の音が船首像の背を切り裂く。
『ア、アアアアアア!!』
 怒りに震えて自らの身体を爪で掻き毟りながら、再び船首像が迫る。自らの肉を削ぎ落してでも手に入れた速度は、それでも仄々が水の魔力を纏わせたランさんには敵わない。
 追い縋られて尚突き放す速度を叩き出した目旗魚は、仄々の紺碧の刃と共に、自慢のランスを深々と船首像に突き立てた。
 
 力を失って海の底へと沈んでいく船首像を見下ろしながら、仄々は手にした竪琴をつま弾く。奏でるのは彼女の為の鎮魂曲。
「……安らかに」

大成功 🔵​🔵​🔵​

向坂・要
あちらさんは船首ですかぃ
ある意味親戚みたいなものなんですかねぇ

なんてどこか場違いな感想を抱きつつ
潜水する為の水圧軽減にも利用していたUCによる重力と空気(気圧)を宿した蝶達を一部解除し
凍気を纏った雪豹達に変え【属性攻撃】で【見切り】や【カウンター】を織り交ぜた迎撃を試みますぜ

綺麗な歌声は嫌いじゃありやせんがちょいと趣味とは違うんでね

相手の喉や周りを凍らせ歌を封じるのもついでに試みてみますぜ


アドリブ
絡み歓迎




 気泡を伝い、深く、深く潜っていく。
 パステルブルーからサイアンブルー、そしてセイラーブルーへ。コバルトよりも深く、ブライトンブルーの向こうへ、深く。
 潜る程に色を変える青を紫暗の瞳に写しながら、向坂・要(黄昏通り雨・f08973)は深海を目指す。進むたびに増す水圧を、重力と空気を宿した蝶を纏わせることで軽減しながら往く世界は目新しく、まだまだ彼に飽きを感じさせない。
 だが、その旅路は平穏なままでは済まされなかった。
 悪意だけを滾らせてまっすぐ突進してきた黒い塊を、その直感だけですんでのところで躱す。
『沈メテ、ヤル!!』
「おやおや。あちらさんは船首ですかぃ。ある意味親戚みたいなものなんですかねぇ」
 愛らしい少女の姿で睨みつける呪われた船首像に、要はのんびり目を細めて笑う。元が器物という点でそうは言っているものの、自らに憎悪を向ける相手にかける情があるはずもない。
 繰り出される触腕を避けながら、要は水圧の調整に使っていた重力と空気の蝶の一部を解除した。水中でもひらひらと舞う蝶が、要の意志で凍気纏いし雪豹たちへと変貌する。要に襲い来る触腕を弾き返し、ならばと振り上げた凶爪を見切ったかと思えば、その腕に強く噛みついた。
 本来、動物としての雪豹たちであれば、水中の移動は儘ならない。だが彼等は海中であっても自在に氷の足場を作り出し、縦横無尽に駆けることが出来るのだ。移動制限のない精霊の獣たちの守りに死角は無い。

 腕を噛み千切られた船首像が、大きく距離を取った。要たちがすぐに手を出せぬ程に離れ、船首像が――歌い始めた。
 水中だというのに、なぜか歌声ははっきりと聞き取れた。それは恨みのこもった悲し気な歌声だ。
 怒り憎しみ、恨みつらみ。
 いつしか抱いた憎悪を声にして歌う。
 その歌は自らの傷を癒し、歌を聞いて共感した仲間の傷をも回復してやるセイレーンの歌。聞き惚れる声のその歌は、しかし――。
 
「綺麗な歌声は嫌いじゃありやせんが、ちょいと趣味とは違うんでね」

 共感とは凡そ遠いところにいる要には、何の感動も呼び起こすことは出来なかった。
 綺麗な声だとは思う。
 悲しい歌だとは思う。
 だが、それだけだ。
 
「悪いですがね、お前さんに構ってる暇はないんですよ」
 ――パキパキ、パキリ。
 硝子に罅が入るような音がしたと同時に、歌が止んだ。見れば船首像が喉を掻き毟っている。要の氷が船首像の口を塞ぎ喉を埋めているのだ。
 要の指先が示すのを合図に、雪豹たちが飛び掛かる。一切の遠慮なく、慈悲なく、爪と牙を突き立てて、やがて船首像は断末魔の声すら上げられずに海の藻屑へと散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榛・琴莉
空ならまだしも、海中では分が悪い
Ernestならば敵の動きを監視できますけど…今は巣ごと防水鞄の中ですし
今後に備えて、防水加工を考えるべきでしょうか

不利なフィールドで一方的に殴られる趣味はありませんので、少々変えさせていただきます
極寒の海なんて、泳いだ事あります?
陸でさえ凍える寒さですからねぇ、水に囲まれた海中ともなれば、もはや拷問なのでは…
私は加護(氷結耐性)がありますので。ええ、どうにかなる範囲です
冷えた体は動かし辛いでしょう?声を出すのさえ億劫な程に

【武器改造】で杭状に変化させたHaroldに魔力を乗せ、氷柱にして飛ばします
貫いて【串刺し】にしてしまえば、あとは内から凍て付いて、お終い




 高い空ではなく、深い深い海へ。
 それは榛・琴莉(ブライニクル・f01205)にとってはどうしても慎重にならざるを得ない場所だ。
 空ならばまだいい。琴莉には翼がある。だが、一面を水に囲まれた海中では分が悪い。なにせ身動きが格段に取りづらい。戦闘AIであるErnestならば敵の動きを監視することも可能だが、今は巣であるガスマスクごと防水鞄の中だ。
(「今後に備えて、防水加工を考えるべきでしょうか」)
 などと一瞬だけ考えていたが、対峙する呪われた船首像が歌を奏で始めたことで、意識を目の前に戻す。
 水中では愛銃は使えない。いつもは歪な鳥の姿のHaroldを杭状に変化させて飛ばしているが、穿った傷はみるみる塞がっていく。どうやらあの歌は自らの身体を癒すものであるらしい。
 歌いながらも叩きつける触腕は凶悪で、Haroldで攻撃を受けているが矢張り海は琴莉にとって不利なフィールドだと強く認識する。
 
 だが、ならば。不利を有利に変えればいい。
 
 不利なフィールドで一方的に殴られる趣味など琴莉にはない。ならば得手に相手を引き摺り込むべきだ。例えば琴莉の得手は――氷結の力。
「極寒の海なんて、泳いだ事あります?」
 冷ややかな目で敵を睥睨しながら、琴莉は凍てつく弾丸を撃ちあげた。琴莉の頭上で巨大な氷華が魔法陣のように咲く。
「掛けまくも畏き 白雪の御方に 恐み恐みも白す――」
 捧げた祝詞を聞き届けて、氷華から降り注いだ氷結の魔力は周囲一帯を包み込み、海中温度をみるみるうちに下げていく。氷華の傍の海水温度は最早零下。
 戦場は今、白姫の淵へ。雪と氷に閉ざされた女神の領域へと変貌したのだ。
 それを直下で受けた船首像の動きが、明らかに鈍った。船首像自身が凍結してしてきているのだ。癒えきらなかった傷は凍傷となって広がっていく。
「冷えた体は動かし辛いでしょう? 声を出すのさえ億劫な程に」
 そんなことはないと口を開けば、流れ込んだ零下の海水がみるみるうちに喉を凍らせていく。喋るのが億劫などというレベルではない、声も呼吸も封じられたのだ。
 冬の女神の傭兵たる琴莉は、喉をかきむしって藻掻く船首像を冷たく見つめた。琴莉には女神の加護がある。このくらいの冷たさはどうにかなる範囲だ。動くのにはほぼ支障が無い。
「……Harold」
 呼ばれた水銀の鳥が襟元から顔を出す。伸ばした手によたよたと寄って翼を広げれば、その姿を杭状に変化させた。魔力を上乗せさせて氷の柱となったHaroldを、琴莉は、
「飛べ」
 真っすぐに飛ばし穿った。
 氷柱は寸分の狙いも能わず船首像の腹を貫き、その魔力を全て船首像に内側から叩きつける。氷とヒビが船首像に広がって、包み込み――。
「あとは内から凍て付いて、お終い」
 船首像が真っ白に凍り付いて砕けていく音に背を向けて、帰ってきたharoldと共に琴莉は更に潜っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

辰神・明
妹人格:メイ
アドリブ、連携歓迎

『Thetis』で【深海適応】
ぬいぐるみの『ふーちゃん』にも合羽さんを
一緒に、深海へれっつごー、なのです……!

さみしくて、かなしい声
きれいな歌声なのに、なんだか、こわい……
でも、でも、メイ達はパルレに行きたいです、から
せめて、どうか安らかに、静かに眠れるように……戦う、です

UC:桃花遊覧
【高速詠唱】【全力魔法】で
抱き締めているふーちゃんを、たくさんの花びらに
お星様は出せない、けれど……
船首像さん達が少しでも、優しい気持ちになれますように、って
いっぱいの【祈り】を込めた、一撃を

元の姿に戻ったふーちゃんを
しっかりと抱き締めて、いい子いい子って撫でます、ね




 泳ぐのではなく潜っていく。蒼の海を、どこまでも。
 コバルトブルーのワンピースを着たならば、深海だってへっちゃらだ。大切なお友達のぬいぐるみ、黒狐のふーちゃんにも合羽を着せたなら準備は万端。
「一緒に、深海へれっつごー、なのです……!」
 ぎゅうっとふーちゃんを抱き締めて、辰神・明(双星・f00192)は海へと飛び込んだ。
 
 浅瀬のコーラルリーフの森を抜け、色鮮やかな魚の群れに目を輝かせ、気泡を追って深くへと。背に光を反射して銀色の閃光になった魚が駆け抜けたのを見送って、もっともっと、深くへ。
 
 深く深く潜るにつれ、明の耳に歌が聞こえた。はじめは小さく。だんだん近く大きく。その歌声はさみしくて、悲しい声に聞こえて。
「きれいな歌声なのに、なんだか、こわい……」
 ふるりと震えてふーちゃんをぎゅっと抱きしめる。その声の持ち主がコンキスタドールなのは、猟兵であるからこそ明にもわかる。怖いのはきっとその悲し気な声に込められているのが、恨み辛み妬み嫉み、それらを全部ぐちゃぐちゃに混ぜた悪意の塊であるからだろう。
 慣れぬ海での戦いを予感し、唇をきゅっと引き結んだ。強張る表情は硬い、けれど。
 つん、と。
 その不安を拭うように、雨合羽を着たふーちゃんが鼻先で明の頬を突いた。見れば明にぴったりとくっついてこくこくと頷いている。
 
 ――いっしょだからだいじょーぶ!

 そんな風に言われている気がして。
 あの声は怖い。声の持ち主がついにぬるりと顔を出して、明に憎悪の瞳を向けている。
「でも、でも、メイ達はパルレに行きたいです、から。せめて、どうか安らかに、静かに眠れるように……戦う、です」
 桃色の瞳に、決意の芯が一本通った。
 
 歌声の主、呪われた船首像は歌を止めない。悲しい恨み唄を歌い続けている。それがどうしても、明はそのままにしておけなくて。
「ふーちゃん、おねがい……なのです、よ?」
 抱き締めていたふーちゃんがこくりと頷き――、ぱっと花弁となった。桃や桜。蒼の世界に桃色の花弁がふわりと舞って、船首像の視界に散らばる。
「お星様は出せない、けれど……船首像さん達が少しでも、優しい気持ちになれますように」
 心いっぱいの祈りをこめて、花弁の行く先を示す。
 船首像の視界一杯に、海中にあるはずのない花弁が飛び込んでくる。
 
 ――それはいつか、遠い昔。船の舳先で桜の咲く島へと辿り着いた時の景色に似て。
 
 舞い上がった花弁は船首像を包み込み、その視界ごと船首像を千々に切り裂いた。
 力を失い海の藻屑となって消えゆく直前、何故だか船首像の顔が一瞬穏やかな微笑んでいる気がした。
 
 元の黒い狐のぬいぐるみ姿に戻ったふーちゃんを、明はしっかりと抱き締める。その頭をいいこ、いいこと撫でて微笑み合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・ディーツェ
千鶴(f00683)と
深海に佇む星珊瑚の島…見ていなくても想像が走る、きっととても美しい場所だろうなあ

しかもお祭りだってさ、千鶴!海に星が落ちるなんて珍しいよねー…!
ささっとコンキスタなんとかを倒して目一杯楽しもうね…!(尻尾ふわふわ)

【全力魔法】【限界突破】【オーラ防御】【多重詠唱】で千鶴とオレに守護と戦士のルーンを刻んで攻防を強化

さあ千鶴、キミとの阿吽の連携、奴等に魅せてやろうよ!
俺は氷と雷の【属性攻撃】を纏わせた【指定UC】で引き裂く

塵に帰すのはせめてもの餞
一度水底に朽ちたならば、世を乱すなど許されはすまいよ

散り際を知らぬなら、せめて美しくも空虚なる徒花であれ
なに、首だけは残してやろう


宵鍔・千鶴
ヴォルフ(f09192)と

海中の真白な珊瑚なんて
碧と揺らめいて綺麗なんだろうなあ
ご機嫌に見える尻尾に
くす、と微笑み頷いて
海に落ちてくる星のお祭り楽しみ
早く終わらせて遊びに行かないと、ね

【オーラ防御】【追跡】【おびき寄せ】
防御はヴォルフと重ねて強固に
慣れない海中で見失わないよう

鮮やかな碧に浮かんだまま
きみの手を取って、逸れぬようにそうと握って
勿論、ヴォルフと一緒なら怖いものなんて無いもの
相棒の刀が桜となって咲き、泡沫と共に舞い上がり
その花びらで貫いて

此れは俺からの餞別の華
沈みゆき二度と浮かぶことなど無きように
深い深い暗底へ




 海の中を往く旅路。目指すは深海の白亜の島。
 目の前を走る小魚の群れと、追う大きな魚。イソギンチャクが揺らめいて、ウミガメがのんびりと泳ぎ去っていく。
 透明からエメラルドグリーン、サファイアからコバルトへ。海は緩やかに彩を変えていく。
「深海に佇む星珊瑚の島……見ていなくても想像が走る、きっととても美しい場所だろうなあ」
「海中の真白な珊瑚なんて、碧と揺らめいて綺麗なんだろうなあ」
 ヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)が想像の翼を広げれば、宵鍔・千鶴(nyx・f00683)もまた共に羽搏かせる。深海とは人にとって未知の領域であるが故、まるで新世界を旅するような心地だ。しかも。
「しかもお祭りだってさ、千鶴! 海に星が落ちるなんて珍しいよねー……! ささっとコンキスタなんとかを倒して目一杯楽しもうね……!」
 珊瑚で出来た島。深海まで届く光。海の星と祭り。ヴォルフガングの興味と好奇心は何処までも尽きずにわくわくするばかり。自然とふわふわ揺れる豊かな尾がご機嫌に見えて、千鶴もまたくすりと微笑み頷いた。
「海に落ちてくる星のお祭り楽しみ。早く終わらせて遊びに行かないと、ね」
 微笑む千鶴の視線が、ヴォルフガングと共にその背後に迫る殺気を捉えている。まずは星珊瑚の島に無事辿り着くために、旅路の障害となるコンキスタドールを排除せねばならない。二人は目線を交わし合って頷いた。
 
 遠くに呪われた船首像を視認すれば、ヴォルフガングが素早く守護と戦士のルーンを描き、二人に刻む。守るべきを守り、倒すべきを倒す力を高めたならば、千鶴もまた自らのオーラを二人に纏わせてより強固に守りを固めた。千鶴の瞳の如き淡い紫のオーラがあれば、慣れない海中であっても互いを見失わない。
 
 鮮やかな碧に浮かんだまま、千鶴はヴォルフガングの手を取った。逸れぬようにそうっと握れば、力強く握り返して離さぬと魔狼は笑う。
「さあ千鶴、キミとの阿吽の連携、奴らに魅せてやろうよ!」
「勿論、ヴォルフと一緒なら怖いものなんて無いもの」
 笑み合ったらもう無敵だ。
 
『沈メテヤル……沈メテヤル……!!』
 船首像が触腕を振り回してヴォルフガングを狙う。攻撃回数に特化した触腕の攻撃は防ぐことに手を焼き、その身体を徐々に傷つける――はずであったけれども。
 大きく振り払ったヴォルフガングの爪が触腕の一つを弾いた瞬間、触腕の一つがみるみる腐って落ちた。
『……!?』
 船首像にはヴォルフガングの爪の軌道が見えなかった。ただ、気付いた時には自らの身体に呪詛が走り氷が徐々に侵食し、触腕の一本を落とされていた。
 そのはずだ。ヴォルフガングが纏った雷は海中でも神速の動きを補助する。その速度は残像すら生む神速。慌てて距離を取ろうと動かした触腕を、ヴォルフガングの魔爪は逃がしはしない。瞬く程の間に、船首像の下半身から全ての触腕が腐り消えていた。
「塵に帰すのはせめてもの餞。一度水底に朽ちたならば、世を乱すことなど許されはすまいよ」
 ヴォルフガングが老獪に告げた。静かの声は追撃の合図。歯噛みする船首像を見据えて、手を繋いだ千鶴が相棒たる刀を構えている。
 逃げようにも触腕を失った船首像の体は距離のジタバタと無様に藻掻くだけ。ならば歌おう。悲しみと恨みの歌で傷を癒し、再び触腕を取り戻して――。
 だがその唇から音が零れることを、千鶴の相棒は許しはしなかった。
「此れは俺からの餞別の華。沈みゆき、二度と浮かぶことなど無きように」
 千鶴の言葉で海中に桜花が咲いた。
 淡紅の花は泡沫と共に舞い上がり、足掻く船首像を包み込むように貫いていく。ズタズタに裂かれた腕と水掻きに、船首像は完全に泳ぐ手段を失った。
「散り際を知らぬなら、せめて美しくも空虚なる徒花であれ。なに、首だけは残してやろう」

 葬送の言葉を贈り、花を手向け、あとはそう、散らすだけ。

 ヴォルフガングの爪が再び閃いて、此度は鮮血の華が海中に咲く。自らの身体で作った徒花を最期に目にしながら、言葉通り首だけの船首像が深く深くへ崩れながら落ちていく。
 もう二度と、ヒトに仇成さぬよう。
 深い深い暗底へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナターシャ・フォーサイス
WIZ
貴女がたの祈りは何でしょう。
導くものたる役目は最早残滓でしかないのでしょうか。
もし、そうであるならば…使徒として、貴女がたを導きましょう。

貴女がたの歌声は、なんと悲しいのでしょう。
傷つけるより癒すそれは、本来の役目が変質したものなのでしょう。
天使達を呼び、楽園へと書き換え受け止めます。
貴女がたのその力は封じぬよう天使達に命じましょう。
受け止めるべきものを封じてしまっては、浄化することもできませんから。

杖の灯を道標とし、楽園への道行きへと誘います。
貴女がたの道行きが、どうか穏やかなものでありますよう。
【祈り】をもって送りましょう。




 海の深くで歌が響いている。
 セイレーンの歌が船乗りを惑わすものであるのなら、呪われて在り方が歪んだ船首像の歌にはどんな意味があるのだろう。
 
「貴女がたの祈りは何でしょう。導くものたる役目は最早残滓でしかないのでしょうか」
 船首像たちに問うナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)の声に、何処か寂し気な色があった。導くものという役目も知らぬものではなく、それを根底から失ったというのなら、それも全く知らぬ感覚ではない。だからこそ、ナターシャは武器を取る。
「もし、そうであるならば……使徒として、貴女がたを導きましょう」
 惑う哀れな魂を導くことが、自分自身で再び課したナターシャの役目なのだから。
 
 船首像の凶爪を天使が受け止める。
 鋭い爪を天使たちが受け止めることは容易だが、船首像が受けた傷もまたみるみるうちに癒えていく。まるでいたちごっこだ。先程からこの繰り返し。 
 呪われた船首像は攻撃の最中も歌い続けている。その歌に自らを癒す効果があることは明白であった。
「貴女がたの歌声は、なんと悲しいのでしょう」
 悲しい声が奏でるのは、恨みを歌い上げる憎悪の歌。愛も優しさも慈しみもない。零れる言葉一つ一つにどろどろの呪いが染みついたように真っ黒で、聞く者の心までもを揺さぶる力を持つ。
 だがそんな歌なのに傷つけるよりも共感した者を癒すそれは、船首像たる本来の役目が変質したものなのだろうか。船の導き手。航路の守り手。船員たちの安全を守るのがその役目であったのなら、或いは――。
 
 その歌はきっと――船首像たちの叫び声なのだ。
 
「天使たちよ、おいでなさい」
 戦場に楽園の概念が駆け抜けた。天使たちが海中を駆けて温かな楽園を敷く。夜の海と思えぬ温かな光が差す世界が顕現し、その光を中心で浴びた船首像の動きが止まった。天使たちが船首像の凶悪な爪も、悍ましい触腕も全てを取り押さえている。ただ声だけは天使たち――ナターシャは封じなかった。
「受け止めるべきものを封じてしまっては、浄化することもできませんから」
 ナターシャは静かに聖祓杖を手にした。楽園の名を冠する宝杖は光を湛えた標の灯火。それを持ち立つナターシャの姿は、まさしく使徒であり聖職者だ。
 
 ついと泳いで、ナターシャは船首像の前に立つ。
 船首像は憎悪を隠しもせずにナターシャを睨みつけながら、呪いを歌い続ける。その言葉の全ては、理解できずとも――。
 その呪われた在り方が、悲しき叫びが、元の優しいものに戻りますように。 
「貴女がたの道行きが、どうか穏やかなものでありますよう」
 祈りを込めて杖を優しく船首像に当てた。
 ナターシャの祈りは楽園の光となって船首像を包み込む。船首像が淡く薄れていく中で、物言わぬ器物であるはずだったそれは一粒の涙を流し、楽園へと導かれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
海の中の、島…
地上で生きてきた身としては、不思議だけど…楽しみ

とはいえ…泳いで行くのか…(広く深い海を見渡し
が、頑張ろ、くろ丸(はぐれないよう、自分と相棒をロープで繋ぐ

海の色や差す光、生き物も水の音も…綺麗だ
水圧には『深海適応』で対応
くろ丸も、適応できるかな?
無理そうなら放つけど…
きっと大丈夫、スーパーDOGだから(?

…来たね
船を護る女神の、悲しい姿
戻るべき「海」に帰って貰おう

ロープを切り、くろ丸と二人で迎え撃つ

泡の中で図鑑を広げ、【煌星】を発動
借りるのは、うお座の星
突進する魚の群の如く、光弾を奔らせて
念動力で光弾を操って、竜巻みたいに広く攻撃出来ないかやってみよう

防御は、オーラ防御や盾受けで




 ゲートを潜ればそこはすぐ海の上だった。
「海の中の、島……地上で生きてきた身としては、不思議だけど……楽しみ」
 鼻腔を擽る潮風の匂い。満天の星空と大きな月。耳を撫でる波の音。美しい夜の海の景色に青和・イチ(藍色夜灯・f05526)は思わず深呼吸をした。
 年頃の男子とは好奇心の塊だ。知らぬものを怖れる心とてあれど、矢張り好奇心が勝ってくるもの。
 ――とは、いえ。
「……泳いで行くのか……」
 浅瀬とかではなくて深海へ。
 しかも生身で。
 泳いで潜る。
 せめて船とか……などと広く深い海を見渡して思うのは、地上で生きている者としては至極当然の欲求ではないだろうか。
「が、頑張ろ、くろ丸」
 だがないものはないので仕方がない。
 相棒のくろ丸と絶対にはぐれないよう自分とロープで繋ぎながら、イチは覚悟を決めた。
 
 意を決してざぶんと飛び込めば、海は優しくイチを受け入れてくれた。
「海の色や差す光、生き物も水の音も……綺麗だ」
 ナイトダイビングということを忘れさせる月明り。暗い海を今宵ばかりはと深くまで照らしだしてくれているお陰で、深くまで潜ることへの不安もない。ただただ、美しい海がどこまでも広がっている。
 生身で深海へ潜ることへの不安はあったが、絶えず浮き上がってくる気泡があるから呼吸には困らないし、深海環境への適応を身につけてきたので懸念された水圧も問題ない。残る最後の懸念は――。
「くろ丸も、適応できるかな?」
 無理そうなら放つけれど……と思い心配な目を向ければ、魚にちょっかいをかけたり気泡と戯れたりと、思い切り海の中を満喫しているくろ丸の姿が飛び込んでくる。
 さすが、スーパーDOGだ。
 
 穏やかな海中散歩のままに、深海島へと辿り着ければよかったけれども。
 海中だというのに響く憎悪の歌が、イチとくろ丸の緊張レべルを上げた。
「……来たね」
 イチの視界の先、明るい海中にあるのに黒い影から染み出すように、呪われた船首像が姿を現した。
 船を護る女神の、悲しい姿。在り様と共に姿形まで歪み切った、もう戻れない過去の残滓。
『沈メテヤル……!!』
 絶叫のような叫びと共に、船首像が爪を振りかざして襲い来る。イチとくろ丸は互いを繋ぐロープを切ると、互いの足を蹴り合って二手に分かれた。その間を船首像の爪が虚しく海を掻いた。
 くろ丸が岩場を蹴って果敢に船首像に牙を剥く。爪を掻い潜って牙を突き立て、船首像の体を蹴って距離を取る。攪乱しているのだ。
 その隙に、イチが泡の中で大切な星座図鑑を開いた。
「うお座。力を、貸して」
 意志を持って星座の名を読み上げれば、図鑑から星座線が浮かび上がり、光を得て星光の魚になる。
 イチの攻撃態勢が整ったのを見て、くろ丸が船首像から距離を取った。攻撃対象が居なくなったことで、より眩い光を放つイチへと向き直る。その瞬間、船首像の耳に静かの声が届く。
「もどるべき『海』に帰ってもらおう」
 言葉と一緒に、星光の魚が弾けた。
 光は魚の群の如く奔り、船首像を中心に竜巻のように渦を巻く。光と渦の奔流が船首像を掴み取り、あるべき海へと還していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロビン・ダッシュウッド
海の底では美しき祝祭が待ち受けていると言うのに……美しくないね
僕の行く手を塞がないでくれるかな?
邪魔しても無駄さ、僕の服は何者にも負けないからね

『幸運の釦』を握りしめ芸術的インスピレーションを高めたら、【アリスナイト・イマジネイション】でエメラルドグリーンの鱗の付いた鎧を創りだす
敵の触手がどれだけ僕を叩きのめしても、僕は痛くも痒くもないさ
だってこの鎧は海神ポセイドンをイメージしたもの
この美しい鎧の前にひれ伏すがいい

『運命の縫針』を手に突撃
触手を好きに出来ないようランスチャージで穿ち、赤い糸をロープ代わりに足と足とを結びつけてしまおうか
その隙に『真珠貝の羅針盤』を頼りに深海を目指そう




 ミントブルーの世界ではコーラルリーフに色とりどりの魚たちが遊んでいた。
 月灯りのアクアブルーではマンタが悠々と翼を広げ、更に深くターコイズブルーへと潜っていけば一面の青い世界。
 創作意欲を掻き立てられるような海の世界を満喫しながら潜っていたロビン・ダッシュウッド(時計ウサギの服飾家・f19510)の前にも、呪われた船首像が立ちはだかっている。
「海の底では美しき祝祭が待ち受けていると言うのに……美しくないね。僕の行く手を塞がないでくれるかな?」
 やれやれと優雅に肩を竦めれば、ふわりと波に銀糸が揺れる。
 船首像が威嚇するように触腕を大きく広げても、ロビンは決して怯えることなく不敵な笑みを浮かべるだけ。だって、
「邪魔しても無駄さ、僕の服は何者にも負けないからね」
 自らのイマジネイションは簡単には敗れはしないと、ロビンは知っている。
 
 『幸運の釦』と呼ぶ四つ葉の釦を握り締めれば、ロビンの芸術的なイマジネイションが高まっていくのがわかる。溢れる想像力を創造に変えて、思い描くのはこの海に最も適した美しい鎧。
 エメラルドグリーンの鱗が波のように幾重にも重なっていく。気品に溢れた金の装飾は、堅牢でありながら優美さを忘れない。美しき鎧がロビンを包み込んでいく。
『沈メテヤル……!!』
 そんなことはお構いなしに、船首像が触腕をしならせてロビンを殴打した。攻撃力に重きを置いた触腕が、何度も何度もロビンを殴りつける。
 けれども、ロビンは鎧の中で美しく笑っていた。船首像がどれだけロビンを叩きのめしても、痛くも痒くもない。全て鎧に弾かれて、その衝撃はいささかもロビンに届きはしないのだ。
『……!?』
「そんなに不思議かい? だってこの鎧は海神ポセイドンをイメージしたもの。この美しい鎧の前にひれ伏すがいい」
 それはまさに海を統べる神の為の鎧。
 コンキスタドールの攻撃など、海神の鎧を前には児戯に等しい。それを欠片程も疑わないロビンのイマジネイションを糧に、この鎧は今、この場にて「最硬」と名乗るに相応しい力を得ているのだ。
 
 ムキになったようにロビンを殴打し続けるコンキスタドールの意にも介さず、ロビンは赤い糸のついた大きな縫い針を手に持った。何事かの気配を察して飛び退いた船首像に、今度はロビンが突進する。
「さあ、その触手を縫い付けてあげようか」
 勢いのままに憎悪滾る船首像の顔を寄せ、ロビンが微笑み囁く。振り払おうとした触腕を穿ち、赤い糸をロープ代わりにして足と足を結び付けてしまう。最後にしっかり玉結びをしたらお終いだ。
 腕は自由なままでも、推進力となる足が全く動かないのでは船首像に素早く動く術もない。まずは赤い糸を断ち切らねばと爪を立てるが、なんど爪で弾いても赤い糸が切れない。船首像に苛立ちが募る。
「それは簡単には切れないしほどけないよ。なにせ運命を結びつける糸だからね」
 自らの足ごと削り取る勢いで滅茶苦茶に糸を切ろうとする船首像を後目に、ロビンは羅針盤を手に背を向ける。
 ――それじゃあね。
 それだけの言葉と優雅な笑みを残し、ロビンは船首像を置いて更に深くへ潜っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルファ・ルイエ
水族館には行った事がありますけど、夜の海の中に潜るのは初めてです。
行った事のない場所や、見たことのないものが見られるのはわくわくしますね。

めいっぱい空気を吸い込んだら、どぼんって飛び込みます!
水圧は《属性魔法》と《オーラ防御》で問題ない圧に調整しますね。
水中で羽ばたくには、羽根はやっぱり少し重いでしょうか。でも、動くのにそんなに支障はなさそうです。
こぽこぽ上がってくる泡も、月明かりに照らされて泳ぐ魚もきれいです。

現れた彼女達には、《先制攻撃》と《全力魔法》で回復の間を与えない様に【燈花】を。
呪われて在り方を歪められるのは、本来の彼女達からすればかなしい事なんじゃないかと思いますから。




 星空の下でめいっぱい空気を吸い込んだら、思い切って一気にどぼん!と飛び込んだ。
 海に包み込まれた瞬間、水音に混じり気泡が弾ける音がする。ゆらゆらと揺れる青い髪が海と溶け合って、柔らかな波になったかのようで。
 ゆっくりと潜っていくシャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)は、水族館には行ったことがあるけれど、夜の海の中に潜るのは初めてだ。行った事のない場所や、見たことのないものが見られるのはわくわくする。高鳴る胸に、思わず唇に柔い弧を描いた。
 
 水圧にも対策はばっちり。どれだけ深く潜っても、その圧は気にならない。
 ふと、シャルファは背に広がる自身の翼を見た。美しい翼は水を含み、海中で羽搏くにはちょっと重い。けれど動くのに支障があるかと言われれば、そうでもなさそうだ。翼は水中で羽搏けば大きな推進力になる。シャルファは海中で強く羽搏いた。
 
 月灯りの海はナイトダイビングとは言え充分明るい。髪を擽る熱帯魚に手を振って、人懐こいイルカと共に深く潜る。深く潜って海がコバルトに染まる頃、岸壁には見たこともない海藻が揺れている。その間も絶え間なく気泡は沸き上がり、シャルファを包み込む。柔い月灯りに照らされた泳ぐ魚たちは、皆綺麗でシャルファの胸はいっぱいになっていった。
 
 だが楽しい海中の旅路は、深海に差し掛かったところで突如終わりを告げた。岩場の暗黒ともいえる影から憎しみを滾らせた呪われた船首像が飛び出してきたのだ。
 鋭い爪を羽搏いた推進力で避けて、シャルファは美しき真白の杖を構えた。触腕を機敏に動かして急制動をかけた船首像がシャルファへと向き直る。それとほぼ同時に、シャルファの杖が淡い光が零れ始めた。硝子のベルが海中だと言うのにちりりと鳴る。
「……あなたが還る行き先を」
 ――示してあげたい。
 船首像に何があったかは知らない。けれども、元は航海の無事を祈り、航路の安全を見守るものだったはずなのだ。
 呪われてその在り方を歪められてしまうのは、本来の彼女たちからすれば悲しいことなのではないかと思う。でなければ船首像の顔が、何処か悲し気になど見えることはないはずだから。
『沈メテ……!』
「いいえ、お還りなさい」
 過去抱く骸の海へ。
 温かな燈は花となって散り、船首像が恨み唄を歌うよりも早く、光の花弁となって船首像を包み込む。船首像は藻掻くことすら間に合わずに、光の中で目を見開いた。その愛らしい顔に見た最後は何だったのだろう。それを知ることはシャルファにも出来ぬまま、船首像は傷一つつくことなく骸の海へと還っていった。
 
 光がふわと散ったあと、海はまた静かに戻る。光を最後まで見送ったシャルファは、再び翼を羽搏かせた。潜っていく先で、淡く光る白が見え始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天音・亮
ハーモニア(f12114)と

わあ!見て見てハーモニア!
海だよ!海の中!
どんどん泡が集まってきて…すごい!本当に息ができる!

なんだか人魚になった気分だね、ふふ

綺麗な海を泳いで、泳いで
それでもどうしたって黒い影が向かってくるから
荒れる波にきみが流されてしまわぬ様に手を伸ばして

一緒に戦おう、ハーモニア
船を見守ってきた女神様達を助けてあげなきゃ
…確り掴まっててね?

駆動する武装ブーツは海の中でだって止まらない
速度増した蹴りで2回攻撃
波を裂いて渦を作る
女神様達の動きが抑制できたなら
さあ、今度はきみの番!

ハーモニア、決め技ひとつかましちゃえっ
きみの身体は私がしっかり支えてるから
って片手を背中に添えて


ハーモニア・ミルクティー
亮(f26138)と参加よ

そうね!
水中なのに息ができるって、不思議な感覚だわ!
魚も泳いでいて、神秘的な光景ね。人魚もこんな気分で水中を泳いでいるのかしら

亮と手を掴み合ったら、向かってくる黒い影に立ち向かっていくわ
亮こそ、流されないように気をつけてちょうだい?

亮、開幕は頼んだわ!
派手に決めちゃって!
亮の攻撃がしっかり命中するように、ハープボウの【Astraea】に矢を番えて、【先制攻撃】の【乱れ撃ち】を放って【時間稼ぎ】をするわ。

亮が足止めをしてくれたら、今度はわたしの番ね。回復させる隙も与えさせないわよ!
【零距離射撃】で確実に仕留めるわ
お休みなさい。よい子はもう眠る時間だもの




 二人でせーので飛び込めば、たちまち世界が青に包まれる。
 月光と星灯り照らす夜の海はとても明るくて、凪の海は二人の体を優しく波で揺らす。浅瀬に広がるコーラルリーフからは、熱帯魚たちが海へのお客様を歓迎するように顔を覗かせて。
「わあ! 見て見てハーモニア! 海だよ! 海の中! どんどん泡が集まってきて……すごい! 本当に息ができる!」
「そうね! 水中なのに息が出来るって、不思議な感覚だわ!」
 天音・亮(手をのばそう・f26138)がサファイアのような瞳をキラキラさせれば、傍らに居る愛らしいレディ――ハーモニア・ミルクティー(太陽に向かって・f12114)も満面の笑みを浮かべている。
 水と戯れることはあっても、海の中を生身で深海まで潜るなんてことは勿論二人とも未体験。湧き上がる気泡のお陰で息苦しくなることもないし、友と一緒だから深海への不安よりも楽しさの方が先立つ。
「なんだか人魚になった気分だね、ふふ」
「魚も泳いでいて、神秘的な光景ね。人魚もこんな気分で水中を泳いでいるのかしら」
 人魚みたいだと笑い合えば、人魚の気分で足を揃えて水を蹴ってみる。腕を使って水を掻けば、いかにもそれっぽくてまた笑って。そんな二人を、ウミガメがのんびり泳いで眺めている。
 
 綺麗な海だった。透明度が高く波のうねりがない今日は遠くまで見渡せる。二人で気泡を辿りながら泳いで、泳いで――それでもどうしたってこの旅路が平穏なまま星珊瑚の島には辿り着かせてくれなくて、黒い影が亮とハーモニアに向かってくるから。
 戦闘を予感して、荒れるであろう波にきみが流されてしまわぬように。亮はハーモニアに手を伸ばした。
「一緒に戦おう、ハーモニア。船を見守ってきた女神様達を助けてあげなきゃ」
 太陽の名を冠した亮のレガリアスシューズが回転を始める。黒い影はもうすぐそこ。けれども亮は笑う。
「……確り掴まっててね?」
「亮こそ、流されないように気をつけてちょうだい?」
 その太陽のような笑顔にほわほわとした温かな笑顔で返して、確りと手を握り合った。
 
 影は輪郭を得て、呪われた船首像の姿が明らかになる。悲しげにも見える表情だが、その全身から零れるのは明らかな憎悪。恨み。負の感情ばかり。鋭い爪を振り上げ、視認した二人に向かい船首像は勢いよく触腕をしならせた。
「亮、開幕は頼んだわ! 派手に決めちゃって!」
「まっかせて!」
 Soleilが全開で回転する。大気を圧縮して推進力と成すのなら、それが水であれ同じこと。海の中でだって止まらない!
 亮が海中を飛んだ。船首像にも負けない推進力で一気に船首像に肉薄する。船首像の凶爪が亮に突き出され――、だが爪は亮を逸れていく。ハーモニアが星乙女の名を持つハープボウに矢を番えて放ち、船首像の腕を穿ったのだ。
 攻撃を潜り抜けた亮は、長い足を跳ね上げて船首像の片腕をSoleilで落とす。船首像が叫んだ。
『ア、ア、アアァァァ!!! 沈メル、沈メテヤル……!!!!』
 叫びを耳にしながらも、亮はそのまま波を裂いて渦を描きはじめた。勢いよく回転を増した渦は船首像を巻き込み渦へと巻きあげる。触腕も渦に取られて脱出することも出来ず、船首像が翻弄されていた。
「さあ、今度はきみの番! ハーモニア、決め技ひとつかましちゃえっ」
「ええ、ええ! 回復させる隙も与えさせないわよ!」
 渦の底で亮がハーモニアを呼ぶ。笑みかわし合ってハーモニアが確りと船首像を見据えた。生じた淡い光にハーモニアの小さな体が包まれる。光が一際強く輝けば、そこには翅を緩く羽搏かせる人間の女性――真の姿を開放したハーモニアが立っていた。緩やかなミルクティーの髪を海に揺蕩わせたハーモニアが、Astraeaの弦を引く。
 その背に、温かな手が添えられた。
「きみの身体は私がしっかり支えてるから」
 友達が支えていてくれるなら、ハーモニアはきっと倒れない。渦に翻弄されて歌うことも儘ならない船首像をぴたりと狙って、
「お休みなさい。よい子はもう眠る時間だもの」
 矢を放った。
 一条の閃光のように矢は船首像に吸い込まれ――、船首像の中心を貫いた。
 力を失って船首像がほろほろと崩れながら沈んでいく。全てが海の藻屑に消える瞬間、その顔が穏やかに目を閉じるのを二人は見た。
 
 海に静寂が満ちた。
 戦闘では魚はすっかり居なくなってしまったけれど、だからこそ青一色の世界が広く美しいまま広がっている。
 浮かび上がる気泡の出所を探るように足元を見た時、然程遠くない場所に真白の都市が見えた。
 あれがきっと、星珊瑚の島パルレ。
 亮とハーモニアは、猟兵たちはついに辿り着いたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『星海祭』

POW   :    海を祝おう。恵みを歓び、海と共に祝おう。

SPD   :    星を祝おう。光を歓び、星屑と共に遊ぼう。

WIZ   :    人を祝おう。生を歓び、共に在るものに感謝して。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 真っ白な星珊瑚で出来た島は、同じく星珊瑚で出来た家々も立ち並ぶ一つの大きな街だ。花の代わりにカラフルなイソギンチャクが飾られ、風の代わりに波音が街を渡り、鳥の代わりに魚が気泡の外を飛んでいる。
 深海に浮かぶ白亜の都市は、気泡で柔らかく猟兵たちを迎え入れた。
 
「まあまあいらっしゃいませ! 見ていましたよ、あの子たちを退治してくれてありがとう。みんな怖がっていたのよ」
 猟兵たちを迎え入れたのは、島の女王だというセイレーンだった。女王の猟兵たちを見る目は信頼と感謝に満ちている。猟兵たちは一通り事情を説明すると、女王は納得したように部下と思しき者に伝令を頼んだ。伝令が駆けて行った先の街は、今まさに祭りが開催されようとしている。
「事情は承知致しました。此方である程度の手はずは整えておきましょう。ですが、襲撃はこの祭りが終わった後ですよね? でしたらば是非、皆様も星海祭に参加していってくださいませ。一年に今日だけのお祭りですから!」
 人懐こい笑みで女王が笑った。そして、建物でもある星珊瑚を指差す。
「ほら、今まさに星が降りますよ」
 月灯りに照らされた凪の海で、星珊瑚の島から光が舞い始めた。ぽつりぽつりと零れた光は、やがてどんどん増えていく。
 
 ――それは一年に一度。星珊瑚の産卵の日。
 
 島を構成する星珊瑚から、ふわりとまんまるの卵が海中に舞い始める。一部からではなく、島の全体の星珊瑚が一斉に産卵していた。月灯りを受けた卵がキラキラと海中で煌いている。
 数多の星珊瑚の卵は一度ふわりと海中に舞い上がり、やがて海流に漂いながらゆっくりと降り注いでいく。星珊瑚の名の通り、星屑のように煌くそれは今夜一晩は止むことはない。気泡の外側の海を煌いて舞うその様はまさに“海に星が降る”という表現に相応しい光景だった。

 星珊瑚の産卵が祭り開始の合図だ。
 各所で一斉に出店が星のランタンを灯して人を呼び込みはじめている。
 通りを歩けば、あちこちに星珊瑚をアクセサリーに加工して売っている店がある。真白の星珊瑚を磨けば星の如く煌く宝石珊瑚になる。形も珊瑚の枝そのままや、星やハート、魚やくじらなど様々にある。望めば店主が快く好きな形でアクセサリーを作ってくれるだろう。
 海の幸をふんだんに使った屋台からは、胃袋を刺激する匂いが漂っている。炭で豪快に炙ってタレを絡めたイカ焼き。がっつり腹を満たしたいのならば、好きな魚介を好きなだけ漏れる海鮮丼も人気だ。手軽に食べ歩きたいのならば、スモークサーモンにチーズとレタスを挟んだサンドイッチも美味しいだろう。
 喉が渇いたならば、深海の海洋深層水から作ったソーダが一番のおすすめ。甘さの中にほんのちょっぴり塩っ気がある味わいは、今の季節にぴったりの爽やかさだ。
 そして祭りでは星珊瑚と同じくらい、くじらのモチーフがよくよく並んでいた。聞けば「今日は星鯨が帰ってくる日なのです」と女王は言った。この海域に伝わるお伽話なのだという。
「ほら、ちょうどステージで歌がはじまっていますよ。星鯨の歌です」
 島の中心に据えられたステージでは、美しき人魚が海の星屑を見上げながら歌を歌っている。
 優しい歌だ。子ども達も共に歌っている。
 
 ――海の底から眺めてた。くじらは夢見る空の星。
 キラキラお空に行きたくて。くじらは跳ねる空の海。
 しばらく星を泳いだが、帰り道を忘れて
 ぽたり、ぽたり。くじらが泣いた

 それを見ていた空と海、一晩だけ手を繋いだ
 空と海が繋がる日。くじらは帰る、お空から。
 水平線を渡って、迷子は帰る海の底。
 土産はお空のきらり星、くじらは泳ぐ海の空。”

 優しい歌が響いている。
 星珊瑚の卵は星屑のように海中を漂い煌く。
 星と海の祭りが、はじまる。
 
*****************
●お知らせ
 無事星珊瑚の島パルレに辿り着きました。「星海祭」を楽しむ章です。
 星屑のような星珊瑚の産卵真っ最中の海を空に、月灯りのお祭りがはじまっています。
 祭りでは星珊瑚の加工品を求めたり、海鮮料理を楽しんだり、星珊瑚の産卵の海を楽しむことが出来ます。
 (尚、ボス戦に関しての避難誘導などは既に島中に連絡がいっていますので、この章では気にする必要はありません)
 POW/SPD/WIZは一例ですので、あまり気にしなくて大丈夫です。
 また今章でも花雪のキャパシティの関係上、【1グループは2名様まで】とさせて下さいませ。

●受付期間
 【6/30 8:31~7/02 22:00】を予定しております。
 受付期間外に頂いたプレイングは、内容に問題がなくとも流してしまいます。ご注意下さい。
 また、一度再送をお願いする場合があります。もし失効致しましたら、その日の23時までに再送して下さると助かります。23時以降でもシステム的に締まるまでは受付出来ますが、返却を始めている場合間に合わない場合が御座いますので、ご了承頂けますと幸いです。
 
 それでは、皆様のご参加を心檻お待ちしております。
箒星・仄々
想像以上の美しい光景です
思い切り楽しみましょう!

色々とやりたいことが目白押しで悩ましいですが…
月明りのナイトダイブと行きましょう

水の魔力で呼吸や移動に心配はありません
海流に乗り卵さんと一緒に
ふわふわ
ゆらゆら
星の中を泳いでいるようです

仰ぎ見る月光で染まる海も
足元の真っ白な街並みも
息をのむほど美しいです

ランさんも召喚して自由に泳いでもらいましょう
卵さんを傷つけないようお願いしますね

風の魔力をそっと発動
空気のあぶくに包まれて
やっぱりふわふわゆらゆらしながら
星鯨の歌を奏で歌います
卵さん達のこれからの旅路を祝して
そして…
予知されているコンキスタドールの鯨さんのお心が
少しでも癒えるよう願って




「わあ!」
 白亜の珊瑚で出来た海中都市と、きらきらと輝きながら舞う星珊瑚。深海にまで届く淡い淡い月灯り。
 パルレに辿り着いた箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)の目の前には、仄々の想像以上に美しい光景が広がっていた。幻想的な光景の深海島パルレは今、祭りの開催と同時に島中に熱気が溢れている。ならば今、仄々がすべきことはきっとひとつだけ。
「思い切り楽しみましょう!」
 エメラルドの瞳を輝かせて、仄々は喧騒の中に飛び込んだ。
 
 所狭しと並ぶ星珊瑚のアクセサリーや、美味しい匂いのする屋台。どれにも興味を惹かれて、やりたいことは目白押しだ。その中から一つだけを選び取るのは中々に悩ましかったが、悩んだ末に仄々が選んだのは月明りのナイトダイブだった。
 水の魔力を纏えば呼吸や移動、無論水圧だって心配はない。島全体を覆う気泡からぽよんと抜け出せば、穏やかな海流が仄々を撫でていく。そのまま身を任せるように海流に乗れば、あっという間にきらきら星に包まれた。
 ふわふわふわり。
 ゆらゆらゆらり。
 海流に身を任せて、仄々は星珊瑚の卵と共にのんびり泳ぐ。月明りの中の星珊瑚の卵たちは、鯨の歌にある空の海という表現に相応しい。気分は星の中を泳いでいるようだ。くるりと身を反転させれば、眼下にパルレが見える。仰ぎ見る月光で染まる海も、仄々の足元にある真っ白な街並みも、息を飲むほど美しかった。
 
 召喚したランさんが仄々に擦り寄り、また海を自由に駆けていく。
「ランさん、卵さんを傷つけないようにお願いしますね」
 卵と戯れるように泳ぐランさんが仄々と一度、アーモンドの瞳を合わせる。頷くように身を震わせたランさんが勢いよく泳げば、まるで彗星が尾を引くように星屑が後を追った。
 
 ふと、仄々が指をくるりと回して風の魔力をそっと発動した。途端に空気のあぶくに包まれれば、それに身を委ねるように力を抜く。ふわふわと海中に漂うあぶくは、まるで仄々自身が星のひとつになったかのよう。
 海流にゆらゆら揺られ、ふわふわとしゃぼん玉のように漂う。
「海の底から眺めてた、くじらは夢見る空の星――」
 パルレから聞こえる星鯨の歌をなぞり、竪琴を奏で歌う。星珊瑚の卵たちのこれからの旅路を祝して。
 そして、予知されている脅威。訪れるであろうコンキスタドールの鯨の心が、少しでも癒えるようにと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

辰神・明
妹人格:メイ
アドリブ、連携歓迎

パルレ、着きました、です……!
ふーちゃん、メイ達には
とーっても大事なお仕事があるの、です
キラキラのお土産、プレゼントを買いたいなって

星珊瑚、みーんなキラキラさん、です
はぐれないように、ふーちゃんをぎゅってしながら
星鯨の歌に合わせて歩いていきますね
優しくて、とっても綺麗な歌……
聞き入って、気付けば足を止めていて
はっ!お土産さん、探さないと、です!?

綺麗なクジラさんの宝石珊瑚を、えっと……
お兄様、アキラお姉ちゃん
お友達、お友達の精霊さん
ふーちゃんの分も!5個買っても、いいです、か……?

ふーちゃん
頑張ってくれました、から
……さっきの船首像さん達にも、この歌が届くといいな




「パルレ、着きました、です……!」
 星珊瑚で出来た都市に降り立った辰神・明(双星・f00192)は、薄桃の瞳いっぱいに見たこともない深海島という景色を映し出して笑った。
 深海にある島や星珊瑚、きらきらと煌いて揺れる星珊瑚の卵たち。全てが目新しい。
 けれども今日、明が此処に来たのは一つの目的があるからだ。黒狐のぬいぐるみことふーちゃんと向かい合って、明はとっても真剣な顔をする。
「ふーちゃん、メイ達にはとーっても大事なお仕事があるの、です」
 そう。それは一大ミッションだ。ふーちゃんも心なしか真剣な様子で明の言葉を聞いて頷いている。
「キラキラのお土産、プレゼントを買いたいなって」
 明の提案に、ふーちゃんが賛成するように万歳した。更にゴーゴー!と言わんばかりに片手を天に突き上げるから、明は満面の笑みを浮かべてふーちゃんを抱き締める。見知らぬ土地でも、ふーちゃんが居るからきっと大丈夫だ。
 
「星珊瑚、みーんなキラキラさん、です」
 天を見上げれば気泡の外には海が広がり、海の中には星屑のような珊瑚の卵がふわふわと漂っている。その光景は、まるで海に星空が広がっているようにも見えた。
「土産はお空のきらり星、くじらは泳ぐ海の空……――♪」
 誰かが常に星鯨の歌を歌っているものだから、明もつられて歌って歩く。
「優しくて、とっても綺麗な歌……」
 思わず聞き入ってしまって、気付けば明はそのまま目を閉じ足も止めてしまった。抱き締めていたふーちゃんが明のお顔をぱたぱたぺちぺち。
 ――ねえねえ、なにか忘れてない?
「はっ! お土産さん、探さないと、です!?」
 
 大事な目的を思い出した明は、ふーちゃんを連れて星珊瑚のアクセサリー店を覗きに行った。艶々に磨いた宝石珊瑚は、真っ白できらきらと星のように煌いている。星やハート、加工された形も様々だけれども、明が手に取ったのは星珊瑚のクジラ。
「綺麗なクジラさんの宝石珊瑚を、えっと……お兄様、アキラお姉ちゃん。お友達。お友達の精霊さん、ふーちゃんの分も!」
 明が指折り数え、最後にふーちゃんの名前が出れば腕の中でふーちゃんが万歳をした。
 ふーちゃんは頑張ってくれたからと笑えば、更にぽこぽことリボンに花を咲かせている。ふーちゃんなりの嬉しさの証明だろう。
「5個買っても、いいです、か……?」
「もちろんだよ!」
 明とふーちゃんの可愛さに頬と目尻が緩みっぱなしの店主は、力強く頷いた。

 大切な贈り物を入れた箱を持って、明は空を――海を見上げる。
 歌はまだ響いている。
「……さっきの船首像さん達にも、この歌が届くといいな」
 
 ――迷子は帰る海の底。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榛・琴莉
なんだか美味しそうな匂いが…何かのタレが良い感じに焦げた匂い…
ここまで泳いで来たからか、丁度良い具合に空腹です。
後に控える大仕事の為にも、今のうちに腹ごしらえしておきましょうか。
腹が減ってはなんとやら、と言いますし。
なにより、美味しい物を逃すのは惜しい。
あ、すみません。イカ焼き一つください

星が海に降る…なるほど、珊瑚の産卵だったんですね。
夜の海にキラキラしてて、とても綺麗…
…なんですかHarold、ゲソ引っ張らないでください。
好奇心旺盛なのは良いですけど、あなた味覚は…あ、もげた。
もー…ちゃんと味わって食べてくださいよ。味覚あんのか知りませんけど。
そもそも、消化器官どうなってんですか?




 どこの世界、どこの国でも、祭りには美味しい食事は外せない。それはこのグリードオーシャンでだって、深海島でだって同じこと。
「なんだか美味しそうな匂いが……何かタレが良い感じに焦げた匂い……」
 榛・琴莉(ブライニクル・f01205)が鼻を鳴らせば、これでもかと食欲を刺激する匂いが胃をノックした。
 思えばここパルレに来る為深海まで泳いできたし、途中戦闘だってしてきた。だからか、丁度良い具合に空腹だ。だが、祭りの後には大仕事も控えている。空腹のままではいられない。
「よし、今のうちに腹ごしらえをしておきましょうか。腹が減ってはなんとやら、と言いますし」
 何より、美味しい物を逃すのは惜しい。とても惜しい。
「あ、すみません。イカ焼き一つください」
 
 真珠貝のベンチに座ってイカ焼きを齧れば、香ばしいタレと肉厚ながら柔らかな歯ざわりの身が口いっぱいに広がった。イカ本来の甘味とタレのしょっぱさが互いを引き立て合って、すぐにもう一口が欲しくなる美味しさだ。ぐっと近づいたいい匂いに釣られたのか、コートの内からHaroldもひょこりと顔を出す。
 琴莉は空腹を満たしながら見上げれば、星珊瑚の卵が漂い、淡い月明りの中でキラキラと煌いている。
「星が海に降る……なるほど、珊瑚の産卵だったんですね。夜の海にキラキラして、とても綺麗……」
 卵は星屑のように輝いて、海流に漂って旅をする。気泡の内から見上げたその光景は、まさに星が海に降り注いだように見えた。
 
 そんな光景を眺めていると、ふと手元のイカ焼きをぐいと引かれた。
「……なんですかHarold、ゲソ引っ張らないでください」
 思わずじとりと見つめた先で、一羽のHaroldが一生懸命にゲソを引っ張っている。取り上げるようにイカ焼きをHaroldから離すが、諦められずにHaroldはジャンプを繰り返してゲソを追う。
「好奇心旺盛なのは良いですけど、あなた味覚は……あ、もげた」
 ぶちっと音がして、ゲソの一本がついにもがれた。真珠貝に着地したHaroldは、すぐさま嬉しそうにゲソを啄みはじめる。もうこうなっては取り返すわけにもいかず、琴莉は深く溜息をついた。
「もー……ちゃんと味わって食べてくださいよ。味覚あんのか知りませんけど。そもそも、消化器官どうなってんですか?」
 問いかける琴莉の声も今は届いていないようで、Haroldは獲得したゲソを満足そうに飲み込んでいる。
 残りのイカ焼きを取られないよう自分の口に運びつつ、琴莉は改めて、未だ謎が多い相棒の食事風景を眺めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天音・亮
ハーモニア(f12114)と

途中で買ったスモークサーモンのサンドイッチ片手に見上げれば
視界いっぱいに星珊瑚の卵が舞っているのがすごく綺麗で
感嘆の声をわぁ、ってこぼしながら

まるで星空の中を泳いでるみたい
普通の星空とは違う
波に揺らめいて流れる星々はどれだけ見ていても見足りない

優しい鯨の歌が耳を撫でていけば
一層星空の海に包まれる心地
気付けばサンドイッチを食べるのも忘れちゃって

あ、そうだお土産!
歌の最後ではっと瞬く
皆に素敵なお土産買ってかなきゃ
この海を閉じ込めたみたいな
星珊瑚のスノードームとかはあるかな?
あっ私もアクセサリー気になる!たくさん見て回っちゃおう!
行こう、ハーモニア!

きみと泳いでく星空の海


ハーモニア・ミルクティー
亮(f26138)と参加よ

スモークサーモンとチーズのサンドを食べながら、星珊瑚と卵を見上げるわ!
きらきらしていて、海の中なのに、星が降っているわね!不思議な光景だわ!

海の中に星が沈んでいるみたいね
滅多に見られないもの。しっかり目に焼き付けておかないと

亮と一緒に鯨の歌に耳を傾けるわ
優しい歌ね
本当に鯨が帰ってきているのかもしれないわ

ああ、そうね!
危ない。目を引く物がたくさんあって、忘れてしまうところだったわ
スノードーム、素敵だと思うわ!
あとは……ソーダなんかだったら、持って帰る事ができるかしら?
自分用のお土産に星珊瑚のアクセサリーも気になるわ。
ええ、そうと決まれば探しに行きましょう!




 白亜の海底都市パルレは活気に溢れていた。
 星珊瑚で出来た街並みは、星の名を冠するに相応しく光を反射してキラキラと光っている。パルレを構成するものの全てが、海の中にあるもので出来ている。鳥の代わりに魚が飛ぶ。深海島であるからこそ見られるこの光景は、まるで竜宮城のようだ。
 今日は一年に一度のお祭り、星海祭。
 星海祭の活気に包まれながら、天音・亮(手をのばそう・f26138)とハーモニア・ミルクティー(太陽に向かって・f12114)は仲良く連れ立って歩く。二人の手には先程買ったばかりのスモークサーモンとチーズのサンドイッチ。柔らかくスモーキーな風味のサーモンをクリームチーズが酸味で纏め、ふかふかのパンで包み込むサンドは口当たりも軽い。
「わぁ」
 気泡の向こうを見上げた亮が声をあげた。つられてハーモニアも見上げれば気泡の向こうでは、星珊瑚の卵がふわりと舞い上がっていた。卵は徐々に数を増し、パルレ全土を包み込むほどだ。淡く煌く星屑が、気泡の外側でいっぱい舞っている。
「きらきらしていて、海の中なのに、星が降っているわね! 不思議な光景だわ!」
「うん、まるで星空の中を泳いでるみたい」
 亮の視界いっぱいに、星珊瑚の卵が舞っている。星屑に似たそれは、けれども普通の星空とは違う。波に揺らめいて流れる星々はどれだけ見ていたって見足りない。
 ゆらゆら揺れて、浮かんで沈み、星屑は海にゆったりと流れていく。
「海の中に星が沈んでいるみたいね」
 こんな光景はきっと深海島ならではだ。この海域の特有種である星珊瑚の産卵は一年に一度、この海凪の日だけなのだという。滅多に見られる光景ではない。だからハーモニアも亮も、しっかりとこの光景を目に焼きつけた。
 真珠貝のベンチに座って飽きずに海の空を眺めていた二人の耳朶を、優しい星鯨の歌が撫でていく。歌は何度も何度も繰り返し、島のあらゆるところで歌われていた。きっと地域に根差したお伽の歌なのだろう。

 ――海の底から眺めてた。くじらは夢見る空の星。
 
「優しい歌ね」
「うん。もっと星空の海に包まれるみたいな心地」
 ハーモニアは目を閉じて、亮と一緒に歌に耳を傾ける。子守歌のように優しい曲調だ。そのお伽歌では、今日は天に跳ねた星鯨が帰ってくる日だという。
 星に焦がれて宙へと渡り、帰り道を忘れた迷子のクジラ。帰りたいと泣くクジラに空と海が手を繋いで。水平線を渡って帰ってくるクジラは、土産に星を連れてくる。ならば今、この海の空に無数の星が舞っているのだから。
「本当に鯨が帰ってきているのかもしれないわ」
 想像は翼を得て、星を連れて泳ぐ鯨を瞼の裏に描き出すことが出来る。星屑を連れ、悠々と泳ぐ星鯨の姿が見えるようで。
 風の音の代わりに届くのは波の音。気付けばサンドイッチを食べるのも忘れて、二人は海の世界に浸る。音で、心地よい水の冷たさで、海は亮とハーモニアを包んでくれる――。
 
「……あ、そうだお土産! 皆に素敵なお土産買ってかなきゃ」
「ああ、そうね!」
 しっかり歌を最後まで聞き終えたあたりで、亮がはっと瞬いた。同じように目を閉じて聴き入っていたハーモニアも、ぱちりと目を開く。
「危ない。目を引く物がたくさんあって、忘れてしまうところだったわ」
 残りのサンドイッチを口にして、ハーモニアが亮を見上げる。亮もハーモニアを見ていて、顔を合わせれば何だかおかしくて、思わず二人で吹き出した。
「この海を閉じ込めたみたいな、星珊瑚のスノードームとかはあるかな?」
「スノードーム、素敵だと思うわ! あとは……ソーダなんかだったら、持って帰る事ができるかしら? 自分用のお土産に星珊瑚のアクセサリーも気になるわ」
「あっ私もアクセサリー気になる! たくさん見て回っちゃおう!」
「ええ! そうと決まれば探しに行きましょう!」
 ハーモニアが手を差し伸べる。その小さく可憐な手を亮はしっかりと握って。
「行こう、ハーモニア!」
 二人は星海祭に沸くパルレの大通りへと飛び出した。

 咲く笑みは二つ。
 きみと泳いでく星空の海。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と

イカ焼きとサンドイッチとー
おいしそうなもの全部買って

わあ
すごいね、海にながれぼしっ
ながれさんご?
ねがいごとがかなうかな

ふつうのさんごはねえ、一年でこのくらいだって
指で10cmの幅を作って
この子たちもおなじかなあ

あ、リュカこれおいしい
はんぶんこ

リュカの鼻歌に頭ゆらしにこにこ
あれ、たのまれちゃった
笑って覚えたフレーズを口ずさむ

クジラさんは夢がかなったけど
さみしくなっちゃったんだね

いいよ、おやすみリュカ
起こさないようそっと頬寄せ

クジラさんの夢も
空と海のねがいもかなったもの
やっぱり、ながれぼしとおんなじだ
空と海を見る

泣かないでって、ねがったんだよね

リュカがいい夢みられますように


リュカ・エンキアンサス
オズお兄さんf01136と
ある程度屋台で食べ物を買い込んで、星珊瑚の産卵を見に行く
どこかに座って、綺麗だな……。って、ぼんやり景色を見ながら食べ物をつまんで
願い事?そうだなあ
叶ったらいいな
半分こには、ありがとうと言ったり
後は産卵を見ながら、この星珊瑚ってのが大きくなるまで、どれくらいかかるのかなあ。とか、そんな話をしてた

……クジラの歌だって
面白いな
夢がかなって、寂しいって気づくなんて、人生は儘ならないね
(鼻歌でちょっと歌ってみて、自分の余りの下手さ加減に嫌気がさして
…お兄さん、続き、頼んだ
(投げた

……お兄さんの歌聞いてたら、なんだか眠くなってきた
ごめん、お兄さん、肩貸して
ちょっとだけおやすみ




 巨大な気泡に包まれた、星珊瑚の島パルレ。
 星海祭真っ最中の大通りでは、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)とオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)が屋台を覗いていた。
「イカ焼きとサンドイッチとー」
 指折り数えるオズの手には、既にたくさんの食べ物がある。美味しそうなものは全部買うと笑うオズの隣で、リュカもまた気になる食べ物を買い求めている。それぞれ欲しいだけを手にしたら、屋台からは少し離れて二人は公園に向かった。
 真珠貝のベンチに座って天を仰げば、透明な気泡の向こうには海の空が広がっている。
 星珊瑚の産卵はピークを迎えていて、星屑のように煌く無数の星珊瑚の卵が舞っていた。海流に揺られてふわふわ舞って、それは宙の星とはまた違った星空の世界を魅せてくれる。
「綺麗だな……」
 リュカが呟けば、サンドイッチを食べていたオズもまた星珊瑚の天を仰いで。
「わあ。すごいね、海にながれぼしっ。……ながれさんご? ねがいごとがかなうかな」
「願い事?」
 イカ焼きを口にしていたリュカが瞬いた。柔らかく香ばしい身を噛みしめながら少しだけ思案して、やがてこくりと頷いて。
「そうだなあ。叶ったらいいな」
 あれは手を伸ばせば届く星。いずれ燃え尽きる星屑に願いを託すことが出来るのなら、いずれ何処かに辿り着いて育つ海の星にだって願いを預けてもいいように思えた。

 それから二人は、ベンチに座って他愛ない話をした。
「あ、リュカこれおいしい。はんぶんこ」
「ありがとう、オズおにいさん」 
 屋台で買った食べ物を食べて、美味しかったのなら半分こ。
 視界を埋め尽くす星珊瑚の産卵を眺めながら、ふとリュカは建物にも利用されている巨大な星珊瑚の存在に気付く。
「この星珊瑚ってのが大きくなるまで、どれくらいかかるのかなあ」
「ふつうのさんごはねえ、一年でこのくらいだって」
 湧き上がった疑問に、オズが指で十センチくらいの幅を作って答えてくれる。星珊瑚の成長速度は知らないけれど、少なくとも建物になるくらいに大きくなるには長い年月が必要そうだ。途方もない時間を過ごすという意味では、正しく「星」なのかもしれない。
 
 ――キラキラお空に行きたくて、くじらは跳ねる空の海。
 
 ふと耳に届いた星鯨の歌。
 今日は何度も耳にする歌だ。余程この深海島に浸透しているのか、あちこちで口ずさむ人が居る。
「……クジラの歌だって。面白いな」
 簡単なメロディーの繰り返しである星鯨の歌は、少し聞けばメロディーラインを覚えることは出来る。リュカもそっと鼻歌で歌ってみた。
 けれどなんだか思った風と違う。早々に自分の余りの下手さ加減に嫌気がさしてしまって、リュカは鼻歌を諦めた。
「……お兄さん、続き、頼んだ」
 その上、オズに投げた。
「あれ、たのまれちゃった」
 リュカの鼻歌に頭を揺らし、にこにことご機嫌に聞いていたオズは突然のパスに目を瞬かせる。けれどそれも一瞬。ふんわり笑って、覚えたフレーズを口ずさんだ。

 ――しばらく星を泳いだが、帰り道を忘れて。ぽたり、ぽたり。くじらが泣いた
 
「……クジラさんは夢がかなったけど、さみしくなっちゃったんだね」
「夢がかなって、寂しいって気づくなんて、人生は儘ならないね」
 星空に焦がれて海から跳ねて、宙を泳いで迷子になって、帰れなくて泣いて。手に在るものの大切さは、手から零れてから気づくなんてよくある話だけれど。
 オズの歌声が柔く、水音と一緒になってリュカを包み込む。その心地よさに、リュカはゆっくりと眠りの波が自身に満ちてくるのを感じた。
「……お兄さんの歌聞いてたら、なんだか眠くなってきた。ごめん、お兄さん、肩貸して」
「いいよ、おやすみリュカ」
 こてり、オズの肩にもたれた頃にはもうリュカは目を閉じていた。やがて規則正しく寝息をたてるリュカを起さぬよう、オズはそっと頬を寄せる。
 歌を最後まで歌って、オズは天を――海の空を見上げる。
「クジラさんの夢も、空と海のねがいもかなったもの。やっぱり、ながれぼしとおんなじだ」
 穏やかにオズは目を細める。海へ、遠い空へ。二つの海を泳ぐ鯨を空想して。
 
「泣かないでって、ねがったんだよね」

 星鯨の歌は優しさで満ちた歌。
 オズはもう一度それを口ずさむ。肩で眠るリュカが良い夢を見られますようにと願いをかけて。
 
 ちょっとだけ、おやすみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロビン・ダッシュウッド
美味しい食べ物、優しい歌声……それらにも惹かれるけれど、やはり僕の心を捕らえるのは美しい装飾品や衣装さ

まずは麗しきマーメイド達の歌声に耳を澄ませながら、彼女達の晴れ姿を鑑賞しよう
尾鰭を持つ人魚にはどのような衣装がふさわしいのか
それから幻想的なステージをより効果的に見せるためにどんな工夫が必要かをね

次に露店を周りアクセサリーを見て回ろう
宝石珊瑚にはもちろん興味津々だよ
一族の者への土産に、僕のデサインでアクセサリーを仕上げる
まあ、きらきらしたものに縁が無い白黒兎と、金目の物にしか興味の無い性悪兎と、アクセサリーに興味ないけど義理で受け取りそうな老兎なんだけどね
自己満足の押し付けってやつさ




 深海に浮かぶ白亜の海底都市。食欲を刺激する香りの美味しそうな食べ物。そして響く優しい歌声。
「……それらにも惹かれるけれど、やはり僕の心を捕らえるのは美しい装飾品や衣装さ」
 目指すはアリスラビリンス界の神デザイナー。新進気鋭の服飾家であるロビン・ダッシュウッド(時計ウサギの服飾家・f19510)は、優雅に笑みを浮かべた。
 美しいものを作りたいのならば、美しいものを知らなければならない。それは服飾家のみならず、あらゆる芸術家に言えることだ。
 想像力は内からのみ生まれるものではなく、外からの刺激にも大きく影響されるもの。幸いこのパルレには星珊瑚や人魚など、美しいものが溢れている。これからロビンの手によって生み出される未来の作品の為、ロビンは自身を大いに刺激しにいくのだ。
 
 まず向かったのは広場のステージだ。今は麗しきマーメイド達が、晴れ舞台に相応しく着飾って歌を奏でている。マーメイドたちの歌に耳を澄ませながら、ロビンは空いた席に座った。
 尾鰭を持った人魚には、どのような衣装が相応しいだろう。幻想的なステージをより効果的に見せるためには、どんな工夫が必要なのだろう。
 彼女達の舞台からは得られるものが多い。ロビンは歌も衣装も舞台も心ゆく迄鑑賞していった。
 
 舞台が終わればロビンもまた席を立つ。次に向かったのは露店通り。特に目を惹かれるのは矢張り、宝石珊瑚だろう。
「お兄さん、宝石珊瑚が気になる?」
「もちろん興味津々だよ。好みのデザインで作ってくれるって聞いたけど?」
「ええ喜んで! デザイン案はありますか?」
 店主が見上げたロビンの顔には、「当然」と書いてある。今日の目的の一つがこの宝石珊瑚だ。既製品だって美しいけれど、土産にと購入するものだ。手ずからデザイン出来る機会があるのなら、デザイナーとしてそれを逃す手はないだろう。
 デザインの詳細を伝えれば、職人は丁寧にそれを作り上げていく。
「三つだね。誰へのお土産にするんだい?」
「一族の者へだよ」
「一族?」
「そう。まあ、きらきらしたものに縁が無い白黒兎と、金目の物にしか興味のない性悪兎と、アクセサリーに興味ないけど義理で受け取りそうな老兎なんだけどね。自己満足の押し付けってやつさ」
 店主の手元を見ながらも、ロビンの目は遠く思いを馳せている。その唇には、満更でもなさそうな笑みが浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
綺麗な街…
珊瑚の島って…歩いても、平気かな?

……星が降るって、こういう事か
増えていく海の星をじっと見上げ
宇宙にいるみたいだ…
うまく言葉に、ならないけど…
命を包む海の凄さを、思い知る…(涙腺が危うい


(腹が鳴る)
…お祭行こう
くろ丸、頑張ったし、沢山食べよう
良い香りの屋台へ

イカ焼きカニ脚海鮮丼はもちろん…あ、網で焼いてる貝も美味そう
海老天に魚のフライ、出汁のきいた味噌汁は、泳いだ身体に染み渡る…
すいませんシーフードカレーおかわり
産卵に感動しておいて申し訳ないんですが、僕イクラも大好物で
そろそろデザート…え?たい焼きがある?
さすがくろ丸、いい鼻

※元々大食い成長期(技能未使用


アドリブ・食材追加大歓迎です




 気泡に包まれた深海の島は、幻想的な風景だった。
「綺麗な街……。珊瑚の島って……歩いても平気かな?」
 パルレへと降り立った青和・イチ(藍色夜灯・f05526)と相棒のくろ丸は、自らが立つ道を見る。靴に返る感触はしっかりしたもので、歩いたり走ったりしても壊れたりはしなさそうだ。
 天を見上げれば、気泡の向こうでは星珊瑚の産卵がはじまっていた。星屑のようにきらきらと煌くそれは、まさに星の卵というべきか。ふわりと舞い上がり、海流に揺られ、ゆっくりと降ってまた流れ。
「……星が降るって、こういう事か」
 イチは増えていく海の星をじっと見上げる。宙に瞬く星とは違うけれど、煌く星珊瑚の卵たちは確かに海に星空を描き出していた。
「宇宙にいるみたいだ……。うまく言葉に、ならないけど……命を包む海の凄さを、思い知る……」
 海は全ての生命の母だという。それを目の当たりにしたような気がして、既にイチの涙腺が危うい。込み上げてくる感動が今にも溢れそう――と、いうところで。
 
 ぐぅぅぅぅ。
 
 くろ丸がイチを見上げる。イチの溢れかけた涙はすんと引っ込んでいた。
 だって深海まで生身で泳いだのだ。戦闘だってした。当然、減るものは減る。
「……お祭り行こう」
 即決だった。
「くろ丸、頑張ったし、沢山食べよう」
 そう告げたイチの目線は、通りの向こうの屋台に真っすぐ向けられていた。
 決して、ちょっと気恥ずかしくてくろ丸と目線を合わせづらいとかではない。
 
 食べ物を扱う屋台は、どこからも良い匂いがしていた。匂いが食欲を誘い手招きしいてる。
「イカ焼きカニ脚海鮮丼はもちろん……あ、網で焼いてる貝も美味しそう」
 その手招きに逆らわず、イチは目に入ったものを片っ端から買っていく。くろ丸が食べられそうなものはシェアして、食事スペースでぺろりと平らげたら次の屋台へと。
「海老天に魚のフライ。ああ、出汁のきいた味噌汁は、泳いだ身体に染み渡る……」
「すいませんシーフードカレーおかわり」
「産卵に感動しておいて申し訳ないんですが、僕イクラも大好物で」
「あ、その海鮮お好み焼き、一枚ください」
 イチは大変良く食べる。
 その身体の何処に吸い込まれているのかと店員たちは疑問に思っていたが、これでいて猟兵の特殊な技能などは使っていない。もともとよく食べるし、何より成長期なのだ。
「そろそろデザート。マーメイドパフェひとつ、……え? たい焼きがある?」
 更に追加で注文しようとするイチの耳に、くろ丸の声が届いた。見ればたい焼きの屋台の前で尻尾を振っている。
「さすがくろ丸、いい鼻」
 グッジョブスーパードッグ。
 しっかりパフェも買ったイチは、尾を振って待つ相棒の元に急いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
星を見て嬉しそうに飛び回るきみが微笑ましい
迷子になるよ、なんて言ったらまた怒るかな

星鯨の歌を口遊みながら見守ろう
私には鮮やかな世界は眩しすぎるから

……きみに沢山の色を見せてあげたいんだ
今も、これからも――
きみを何度も置いて行ってしまった償いが
それで出来てるかはわからないけど

遊び疲れたら戻っておいで
……あぁ、でも
きみの意思を海から呼び戻して捕らえてしまった、私のエゴに付き合う必要は――

――コローロ?

(いつの間にか傍に居たきみは
何かを言おうとして躊躇してるように光っていた

……そうだよな、気恥ずかしいよな
だってお互い勇気が無かったから私たちは――)

一緒に、行こうか

(でも
覚悟ならちょっとだけ持てたよ)




 深海島パルレをすっぽりと覆う気泡。その外側で、数多の星珊瑚の卵たちが舞っている。星珊瑚の名に相応しく、星屑のようにきらきらと煌いて。
 火花ような星屑のような、そんな君――コローロもまた、海に舞う星を見て嬉しそうに飛び回っている。その光景が、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)にとっては心から微笑ましかった。
 星のように瞬くコローロは、はしゃぎながら星珊瑚の卵を追いかける。
(「迷子になるよ、なんて言ったらまた怒るかな」)
 そう思うスキアファールだったが、浮かべるのは笑みだった。彼女が嬉しそうならそれでいい。星鯨の歌を口遊みながら、スキアファールはコローロをそっと見守ることにした。影人間である彼にとって鮮やかな世界は、混じ入るには眩しすぎるから。
 
「……君に沢山の色を見せてあげたいんだ。今も、これからも――」
 祈るように呟く。
 きみを何度も置いていってしまった。その度に悲しい思いをさせた償いが、それで出来ているかはスキアファール自身もわからないけれど。
 色を欲した彼女がたくさんの色に包まれますよう。祈るように、誓うように、願いを言葉という形にするのだ。
 
「コローロ、遊び疲れたら戻っておいで」
 星屑と戯れるコローロに優しく声をかけた。ずっとはしゃいでいては疲れてしまうだろう。美しい景色に混じるのもいいけれど、疲れたら――。
「……あぁ、でも」
 コローロに手を伸ばそうとして、ふと言い淀んだ。伸ばしかけた手は所在なく空を掴み、やがて下ろされてしまう。
「きみの意思を海から呼び戻して捕らえてしまった、私のエゴに付き合う必要は――」
 ないのでは、ないだろうか。
 そんな考えが過った時。
 ふ、と、火花のような光がスキアファールの目の前でチカリと瞬いた。
「――コローロ?」
 いつの間にかコローロはスキアファールの傍に居た。まるで何かを言おうとして、けれど躊躇するように、惑いながら光っている。ふと、なんだかそれがスキアファール自身の姿と重なった気がして。
(「……そうだよな、気恥ずかしいよな。だってお互い勇気が無かったから私たちは――」)
 口にすることはないその言葉の代わりに、スキアファールはもう一度コローロに手を伸ばして微笑む。
「一緒に、行こうか」
 伸ばされた手にコローロがぱっと煌いて、スキアファールの手に寄り添った。彼女の光を見ながら、スキアファールは胸にそっと想いを抱くのだ。
 
 あの時勇気が無かった自分だけれど。
 でも。
 覚悟ならちょっとだけ持てたよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・ディーツェ
千鶴(f00683)と

どれだけ綺麗だろうと想像したけれど、実際の「星降り」を見れば語る言葉は紡げず
珊瑚は無機物めいて生命という実感が乏しかったけれど…確かに生きて、いのちを紡いでいるんだね

本当に星が降るようだね、と千鶴にやわり笑い掛ける
綺麗で何処か儚い…生そのものの様な風景に目を細め

前の俺であればきっと直視すら出来なかった
こうして命を全うする事が叶うのかと感じただろう

…でも今は不思議と恐ろしくない
君が居てくれるから、信じてくれるから…この呪われた生が鮮やかに色付いたんだ

…有り難う、俺は年甲斐もなく君に頼ってばかりだ
例えこの命が尽きずとも、思いは君の側に

俺の宵照星、君だけは永遠に忘れやしない


宵鍔・千鶴
ヴォルフ(f09192)と

海の中で星屑が降って瞬いて
ちかちかと自分の瞳にうつろい流れてゆく
手を伸ばしても
自分などでは到底掴めぬ程の生命が溢れていて

…まだ、自分が知らないところに
こんなに綺麗な沢山のいのちが在るんだね
隣で微笑む彼にそうと囁くように零し
感情が、心が動いて、ほどけてゆく

…ヴォルフ、
此の広い海で俺達は欠片ほどの
存在かもしれないけれど
(繋ぐ手をぎゅうと握って、)
…でも、今、此処で隣に居てくれるきみがいること
その事実だけが俺を安心させてくれる

過去も未来も何があっても
ずっと、きみが見る景色が色付く様に
楽しくて仕方ないって笑わせてあげたい
命在る限り、傍に居るよ
ねえ、俺の暁星




 どれだけ綺麗だろうと想像したけれど、実際の「星降り」を前にしたら語る言葉を失った。

 星珊瑚の産卵は丁度ピークを迎えていた。
 数多の星珊瑚の卵は星屑のようにパルレを包むように舞っている。星珊瑚の名の通り、煌き瞬くその卵は海の中の星というに相応しい。星屑に包まれた島は海の中だというのに宙を思わせた。
「珊瑚は無機物めいて生命という実感が乏しかったけれど……確かに生きて、いのちを紡いでいるんだね」
 しばらく言葉を紡げずにいたヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)が、海の空を見上げて呟いた。綺麗で何処か儚い、生そのものの様な風景に思わず目を細める。
 海の星屑はちかちかと宵鍔・千鶴(nyx・f00683)の瞳いっぱいに煌いて、うつろい流れてゆく。手を伸ばしてみたって、自分などでは到底掴めぬ程の生命が溢れていて。
「……まだ、自分が知らないところに、こんなに綺麗な沢山の命が在るんだね」
 目を離せぬままに、千鶴は隣で微笑むヴォルフガングに囁くように零した。命宿した星屑は、海を漂い、ゆっくりと降り注いでいく。
「本当に星が降るようだね」
 ヴォルフガングの言葉に千鶴はこくりと頷いた。
 感情が、心が動いて、ほどけてゆく――。
 
 あの星珊瑚の卵たちも、海流に連れられていつか何処かに辿り着いて命を繋ぐのだろう。那由他と溢れる生命の海で、これが生命の営みだと、ずっと。
「前の俺であればきっと直視すら出来なかった。こうして命を全うする事が叶うのかと感じただろう」
 生命で溢れる世界は、きっと恐ろしかった。
 余すことなく神に喰らわれた神器の身。人並みの生とは離れてしまったこの身には、きっとこの溢れかえる生命が恐ろしかった。
 ――でも。
「……でも今は不思議と恐ろしくない。君が居てくれるから、信じてくれるから……この呪われた生が鮮やかに色付いたんだ」
 伝える言葉は熱を帯びて、千鶴へと向ける笑みは蕩ける程に愛おしげに。そうしてヴォルフガングは、そっと千鶴と手を繋いだ。
 恐ろしくなくなったのは他の誰でもない、貴方がそうしてくれたとその手の熱が語る。
「……ヴォルフ。此の広い海で俺達は欠片ほどの存在かもしれないけれど」
 千鶴はヴォルフガングと繋ぐ手をぎゅうっと強く握った。
 彼の熱も視線も、その手で強く強く、握り返した。
「……でも、今、此処で隣にいてくれるきみがいること。その事実だけが俺を安心させてくれる」
 海は広い。命は那由他と在る。
 けれど無数の中での孤独を感じずに済むのは他の誰でもない、貴方が居るからだと、握り返す力強さが語っている。
 一人で得られる安心ではないのだ。共に与え合う“貴方”が居るからだと何度だって伝えあう。
 過去も未来も何があってもずっと、ヴォルフガングの見る景色が色付く様に、千鶴は願う。
 共に歩むこれからを、楽しくて仕方ないと笑わせてあげたいのだ。
「命在る限り、傍に居るよ。ねえ、俺の暁星」
 真っすぐに見つめ返して柔く微笑む千鶴の視線に、ヴォルフガングの瞳が嬉し気に細められた。頬を千鶴の髪に摺り寄せる。愛しくて愛しくて、仕方がない。
「……有難う、俺は年甲斐もなく君に頼ってばかりだ」
 ふわりとした千鶴の髪の感触を楽しみながら、ヴォルフガングはほんの少しだけ瞳を沈ませる。
 そう、例えヴォルフガングの命が尽きずとも、思いは千鶴の側に。そう誓える。
「俺の宵照星、君だけは永遠に忘れやしない」
 
 ひそやかな二人の誓いは、深海の白亜の都市で交わされる。
 その言葉を祝福するように、海の星がゆっくりと降り注いでいた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

向坂・要
へぇ、こいつぁなかなか……,
サーモンとクリームチーズのサンドイッチを片手にふらりと店を覗いて土産を買ったりランタンを眺めたり

星に鯨、と言われて思い出すのはいつか宇宙で相対した寂しそうな鯨

鯨は帰る、迷子は帰る
あの鯨は帰りたいところに行けたんだろうか、なんて、ふと過った想いに苦笑して

少しは心、ってやつを覚えたんですかねぇ

なんて、ひとりごち

ステージの歌声に耳を傾けながら、眺めるは街をいく人の姿、そしてその輝き

こいつぁ、ちょいとやる気ださなぁと、ですね。




 星珊瑚の産卵もピークを迎え、気泡の外――この深海島パルレで言う空には今、数多の星珊瑚の卵が舞っていた。星を名を冠するに相応しく、その卵はきらきらと煌き瞬いて、まるで星屑のようだ。
 凪の日を祝う祭りもまた、それに合わせて最高潮を迎えている。歌は響きダンスが始まり、店は一層客を呼び込んで人は人を呼ぶ。
 そんな賑わいのなかを、向坂・要(黄昏通り雨・f08973)はのんびり散策していた。
「へぇ、こいつぁなかなか……」
 手にはスモークサーモンとクリームチーズのサンドイッチ。口に近づければスモーキーな香りと酸いクリームチーズの香りが鼻腔をくすぐり、口にすればサーモンとクリームチーズの甘味が口いっぱいに広がっていく。
 サンドイッチを片手に、要はふらりと出店をひやかしていく。途中土産を買ったり、星珊瑚とシーグラスで出来たランタンを眺めたり、その道中は飽きることが無い。
 
 特に当てもなく歩いてきた道は、やがて全て都市の中央の広場へと続いていく。開けた要の視界で、華やかなステージが開催されていた。歌姫と呼ばれたマーメイドのステージなのだそうだ。美しい歌がいくつも披露され、そして最後には「星鯨の歌」を歌う。

 星に鯨。
 そう言われて、要はひとつの記憶を思い出す。いつか――そう、去年。同じくらいの時期に、宇宙で相対した寂しそうな鯨のことを。
 巨大な鯨だった。星喰いと呼ばれたそれは、友の遺骸と寄り添い永い永い時を彗星と共に泳いでいた。その果てで飢えに狂いかけても、あの鯨は最後まで彗星を守りぬいたのだ。やがて猟兵の力によって友との束の間の再開を果たして、共に消えて行った。
 そう。あの時も確か、「あるべき海に還してやって欲しい」と乞われた気がする。
「鯨は帰る、迷子は帰る。……あの鯨は帰りたいところにいけたんだろうか」
 骸の海ではなく、例えば友と過ごした故郷など――。
 なんて、ふとそんな想いが要の胸に過る。その事実に思わず苦笑いを零した。
 まるで共感だ。要には遠かったもの。理解したいと願えど実感は出来なかったそれ。だというのに、今の言葉はまるで。
「少しは心、ってやつを覚えたんですかねぇ」
 なんて、独り言ちた。
 
 広場の飲食スペースにある椅子に腰かけて、要はステージの歌声に耳を傾けた。歌は優しく響き、いつの間にか広場に居る人々もまた同じように歌っている。街を行く人の姿や、その輝き。
 それらを眺め、やがてサンドイッチを全て口に押し込んだ。一度閉じて開いた瞳の奥に、決意の芯が通る。
「こいつぁ、ちょいとやる気ださなぁと、ですね」
 
 ――鯨が、帰ってくるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナターシャ・フォーサイス
この世界は初めてですが…なんと綺麗なのでしょう。
海の中と言うのに、文字通り星の降るようで。
すこしだけ、のんびりしましょうか。

まずは折角ですし、星珊瑚のアクセサリを見てみましょう。
穢れのない白、清浄なもの。
天使の翼を思わせますが…煌きは、それ以上にでしょう。
私のぶんとあの人のぶん、どれが似合うでしょうか…
いつもの雪の結晶か、たまには趣向を変えるのがいいのか…

…それから。海の幸をいただきながら、かの星鯨に想いを馳せましょう。
空を泳ぐ鯨と言うのは、物語としてたまに聞くことはありますが…
彼は、穏やかだったのでしょう。
…今も、そうあってほしいですが…




 大海の世界、グリードオーシャン。
 海に抱かれ、海に脅かされ、海に生かされ、そしていつか命は海に還る。
 これ程までに海と近しい世界もそうはないだろう。そして海に近しいがゆえ、海と共に生きるヒトの営みは深海にまでも及ぶ。
「この世界は初めてですが……なんと綺麗なのでしょう。海の中と言うのに、文字通り星の降るようで……」
 深海島パルレに辿り着いたナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)は、到着とほぼ同時にはじまった星珊瑚の産卵に目を奪われた。
 星珊瑚の卵は星屑のようにきらきらと煌きながら生まれ、海に揺蕩う。海流に揺られて舞い上がり、静かに降ってはまた流されて。雪のようで雪ではなく。星のようで星ではなく。海の中で生まれた星空――海の空というに相応しい光景が広がっていた。
 耳を澄ませば水の音。静かにはじまった産卵は今ピークを迎え、満天の星空が海に、そしてこのパルレに生まれている。
 急く気持ちは波に流されていき、ただ心地よい時間が静かに流れている。
「すこしだけ、のんびりしましょうか」
 未だ自らの在り方を模索し続けるナターシャも、今は使命も自身の行く道も忘れて一人の少女へ――。
 
 星海祭の始まったパルレを、ナターシャは楽しみながらゆっくり散策する。まず折角パルレに来たのだからと立ち寄ったのは、星珊瑚のアクセサリーの店だ。
「天使の翼を思わせますが……煌きは、それ以上にでしょうか」
 白亜の星珊瑚は丁寧に磨き上げられて、触れれば滑らかな手触りが心地いい。磨かれることで放つ光は光沢となり、穢れない清浄な白の宝石となっている。
「私のぶんとあの人のぶん、どれが似合うでしょうか……。いつもの雪の結晶か、たまには趣向を変えるのがいいか……」
 ナターシャの目は真剣そのもの。顎に手を当てて何度も考えつつ、それでも選ぶこと自体はとても楽しい。
 
 悩んだ末に目当ての物を購入したナターシャは、次は食べ物の屋台が並ぶ通りへと向かった。新鮮な海の幸を使った料理に舌鼓を打ちつつも、その心はかの歌の星鯨へと思いを馳せていた。
「空を泳ぐ鯨と言うのは、物語としてたまに聞くことはありますが……」
 この歌もまたお伽歌だ。
 焦がれた星空へ行って、迷子になってまた海に戻る。お礼に星を連れて――。
「彼は、穏やかだったのでしょう。……今も、そうあってほしいですが……」
 歌の鯨はとても優しい。
 だからこそここに来る前にグリモア猟兵が言っていた、「コンキスタドールはたぶん鯨だ」という言葉がナターシャの心に引っ掛かっていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルファ・ルイエ
来た事の無い海の底でのお祭りですもの。
ウィルだけじゃなくオルとレディも呼んで楽しみます。
一緒にたくさん、綺麗なものを見たいですから。

本当に星が降ってるみたいですね……!
空と海は、違うのにどこか似ていて不思議です。

見惚れてるだけじゃお祭りが終わってしまいますから、先に屋台を覗きましょうか。
アクセサリーも素敵ですけど、宝石珊瑚のくじらの置物が気になります。どの子が良いか、目を惹かれた子をひとつお迎えして。
あとはご飯も大事です!スモークサーモンならレディやオルも食べられそうですし、サンドイッチを買いましょう。
ソーダも外せません。

響く歌声につられて歌を口ずさんで、時間までは海の星に見惚れていたいです。




 初めての世界。初めての深海島。
 来た事の無い海の底でのお祭りとあらば、その楽しみを分け合いたい友達がいる。
「ウィル。オル。レディ」
 シャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)は歌うように友を呼んだ。弾んだ声に応えるように、まずは硝子製のベルを持つ白龍のベルが。それから緑混じりの金の目の黒豹のオルが。そして最後に縞模様の尾を揺らした白猫のレディが、シャルファに寄り添い見上げる。
「皆も楽しみましょう。一緒にたくさん、綺麗なものを見たいですから」
 そう言って屈んで皆と視線を合わせたシャルファは、花開くように笑みを咲かせた。
 
 星珊瑚の卵は星屑のように煌きながら、生まれたばかりの海を舞う。ふわふわ浮かんで、ゆらゆら流れ、静かに降って、卵はパルレ全体を包みこんでいた。
「本当に星が降っているみたいですね……!」
 パルレを包む気泡の内から見るこの産卵風景は、まるで宙から星が降ってきたように見えた。天は瞬く星で溢れかえり、淡い光は深海を照らしながら広がっていく。深海に来たはずなのに、まるで宇宙に浮かんでいる気分だ。
「空と海は、違うのに何処か似ていて不思議です」
 シャルファから零れた声は感嘆の色を含んでいた。ウィルもオルトゥスもレディも皆、見たこともない景色を見上げている。
 普段ならば似ているとは思わない二つだが、星鯨の歌を聞けば少しだけその理由が分かるような気もするのだ。
 今日は海と空が手を繋ぐ日だからか、と。
 
 美しい光景は目を奪うけれども、見惚れているだけでは祭りが終わってしまうからと、シャルファは友と一緒に屋台を覗くことにした。
 まず足を止めたのは星珊瑚の装飾品。工芸品のようなアクセサリーも素敵だけれど、シャルファが何より気になったのは宝石珊瑚のくじらの置物だった。いくつもの種類の在るそれを、シャルファはひとつひとつ、どの子が良いか丁寧に見定めていき。
 やがて一際目を惹くひとつを見つけたシャルファは、そっとそれを掌に乗せた。

 宝石珊瑚のくじらをひとつお迎えしたら、次はもちろん腹ごしらえ。
「ご飯も大事です!」と意気込んで向かったのは、サンドイッチの屋台だ。スモークサーモンならばレディやオルトゥスも一緒に食べられる。皆と分け合うならばそれが一番いいように思えたのだ。
 そして深海に来たからには深海ソーダだって外せない。自分用にひとつ買い求めたならば笑みも浮かぶ。
 飲食エリアで皆で仲良くサンドイッチを頬張れば、今日何度目かの星鯨の歌がシャルファたちの耳を擽っていった。麗しいマーメイドの歌声につられて、ついシャルファも歌を口遊む。それに合わせて、ウィルが楽し気に身体を揺らした。
 
 帰ってきた星鯨が、空の星を連れてきた夜。海凪の日の星海祭。
 いずれ戦いの時間が始まるけれど――、今はただ、深海に静かに降る海の星に見惚れていよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ケートゥス』

POW   :    カファルジドマの嵐
【電気伝導率の高い雨と雷】を降らせる事で、戦場全体が【雷を伴う大嵐】と同じ環境に変化する。[雷を伴う大嵐]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    バテン・カイトスの雷霆
自身の【周囲に漂う双つの極星】が輝く間、【翅の様な発電器官から放つ体内電流】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    ステラ・ミラの群れ
【不思議な色のヒトデの群れ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ルシル・フューラーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 祭りの後は静かなものだ。
 深海島パルレの住人たちは、現地の人々の協力もあって滞りなく避難を終えていた。その場に残るのは女王と猟兵たちだけだ。そして猟兵たちも、近づく「それ」によって肌が粟立つのを感じている。もうかなり近いのだろう。
 そして、どんな存在が襲撃してくるのであれ、ここパルレを構成する星珊瑚は然程頑丈ではない。島の中で戦闘するのは得策でないように思えて女王に問うと、それならばと女王は島の向こうを指差した。
「星鯨の岩場ならば、どうでしょう」
「星鯨?」
 瞬いた猟兵たちに女王は静かに微笑んで頷いた。曰く、あの星鯨の歌はお伽歌だが、一部事実もあるというのだ。
「遠い昔。天からくじら程もある大きく黒い岩が落ちてきました。それは海をかき乱しながら海底にぶつかって、その時に崩れて巻きあがった巨大な岩と、乱された海流に乗ってどこかから流れついた星珊瑚の卵が合わさって、このパルレは生まれたのです。その岩は今も、パルレのすぐ傍に在るのです」

 女王に案内された星鯨の岩場は、荒涼としていた。
 そこに広がっていたのは巨大な岩がぶつかって、砕けて割れて出来た複雑な岩場。柱のように突き立った岩の破片や、折り重なってトンネルのようになっている箇所が点在する天然の砦のようにも思える。
 猟兵たちの呼吸を補佐する気泡も絶えずあちこちから噴き出ているし、隠れたり誘い込んだりと、様々な戦法にも使える地形だ。これならば何が相手であってもどうとでも戦うことは出来るだろう。
 猟兵たちが頷き合ったその時。
 ――突如、咆哮が響いた。
 
 ブォォォォォォォン!!!!!!!!
 
 声のした方を一斉に振り向けば、それは最初、光のように見えた。
 やがてそれはバチバチと雷を放っていることがわかり、ついで接近する巨体が極光のように揺らめき輝いている姿を見る。
 それは、恐らく鯨だった。
 背に翅のような器官を持ち、二つの極星と巨大なヒトデを連れた、極光のクジラだった。
 
 一直線にパルレへと泳いできた鯨のその目が、敵意を滾らせ猟兵たちを睨みつけている。視線の交錯だけで心がぞわりとざわついた。
 『あれは倒さねばならぬものだ』と猟兵の本能が叫んでいる。
 
 星鯨の岩場で、猟兵たちとコンキスタドールたる鯨が相対した。鯨の目には敵意しかなく、その咆哮は言葉を交わすことなど出来ぬと容易に知れる。故に、何の因果で此処に来たのかなど、知ることも不可能だ。

 その鯨は、奇しくもくじら座の名を冠するもの。天に召し上げられた海の魔獣。
 名を、ケートゥスという。
 
----------------------------------------
●お知らせ
 ボス戦、ケートゥスとの戦いとなります。
 呼吸は第一章のように気泡を使うことが出来ますし、また移動も岩場を使うことが出来ますので動きに制限はありません。
 
 また敵ユーベルコードについて一点補足が御座います。
 POWのユーベルコードは、海中ということで【電気伝導率の高い雨と雷による、大嵐のよって荒れる海のうねり、そして雷撃】という戦場変化となります。 
 行動の際の参考にして頂ければと思います。
 
●プレイング受付期間
 今回は【7/15 8:31~プレイングを送れなくなる迄】とさせて頂きます。
 16日23時頃までは確実に受付致しますが、それ以降は書きあがったものから提出していく予定です。
 変則的で申し訳ありませんが、ご了承頂けますと幸いです。
 
 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
スキアファール・イリャルギ
……あなたも帰りたかったんですかね
空を泳ぎ迷子になって
空と海が繋がるこの日に、帰り道を見つけて――
想像でしかないのは承知の上です
今わかるのは、あなたが此処を壊そうとしていることだけ

コローロ
きみの"色"で電流から護ってほしい
この場所を、私を
……大丈夫
きみが見て感じた儘に創った色は奪った借り物じゃない
紛れもない、きみの無敵の色だよ

彼女に護りを任せ霊障で極星を狙い撃つ
"土産はお空のきらり星"――
とても綺麗で眩しくて
あなたの大切なものなんでしょうね
でもすみません
星珊瑚の島には少し眩しすぎるから
壊せはしないでしょうが
威力の軽減ならもしかしたら

きみの創る色と
口遊む星鯨の歌で
あなたの心に何か残せるでしょうか


榛・琴莉
※真の姿:翼が巨大化、腕のように扱う事も可能な構造になる

海中ではHaroldしか使えませんが、あの巨体を討つには火力不足ですねぇ
…本当の事じゃないですか、拗ねないでください

【冬告げ】で機動力を確保
海中ではたかが知れていますが、無いよりはマシかと
とはいえ小回りは利きませんので、しっかり防御してくださいね。Harold

翼でヒトデを『なぎ払い』、鯨から引き離します
瞬間的に冷気を翼に集中させ、凍らせてしまえば、多少は動きも鈍るでしょうか
大きいのに追従する小さいのはお邪魔虫と相場が決まっています
ならばこれの相手をする意味もあるでしょう
本体はお任せします

美しい海の余韻に、征服者も、怪物も不要です




「……あなたも帰りたかったんですかね」
 スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)がケートゥスへと語り掛ける口調は、何処か沈んでいた。
 あの歌にあった通り、空を泳ぎ迷子になって。空と海が繋がるこの日に、帰り道を見つけて――。
 けれどすぐに頭を振った。
 それがスキアファールの想像でしかないのは承知の上だ。答えは覗き見る事のできないケートゥスの最奥にあって、知ることはきっと最期まで出来ない。今分かるのは、ケートゥスが此処を壊そうとしていることだけ。
 
 一方、敵を目の当たりにした榛・琴莉(ブライニクル・f01205)は、強く岩場を蹴って距離を取った。
「海中ではHaroldしか使えませんが、あの巨体を討つには火力不足ですねぇ」
 顎に手を当てて思案すれば、フードの内やコートの中から次々顔を出すHaroldたち。何やら頬を膨らませて、抗議するように翼を広げている。精一杯の力強いアピールのポーズなのだろう。
「…本当の事じゃないですか、拗ねないでください」
 呆れて琴莉が見つめれば、しゅんとなってコートに戻っていく。随分と感情豊かなになったものだと気泡の中で息を吐いた琴莉だが、迫る脅威は忘れていない。
「私は鳥、冬の鳥。風花連れて飛ぶ一羽。冱つる魁、貴女の走狗」
 ケートゥスをしっかりと視界に捉えた琴莉は、真の姿を開放した。
 背に、呪いのような祝福を纏った翼が咲く。それは常のものよりも大きく、そして腕と同じように扱える冬鳥の翼。
 水圧に負けずに羽搏く巨大な翼は、海中でも大きな推進力となる。空中に比べれば速度は落ちるが、無いよりは遥かに良い。
「とはいえ小回りは利きませんので、しっかり防御して下さいね。Harold」
 海中を飛ぶ琴莉の言葉に、Halordたちがぴっ!と顔を出した。やる気みなぎる瞳は大変頼もしいことだ。
 
 ケートゥスへと飛ぶ琴莉を見たスキアファールは、掌の上に居たコローロへと向き直る。
「コローロ。きみの”色”で電流から護ってほしい。この場所を、私を」
 真っすぐな瞳を向けられたコローロは、迷うように弱く光を明滅させた。もしかしたら自信が無いのかもしれない。けれどスキアファールは真っすぐに見つめて、真摯な顔で紡ぐ。
「……大丈夫。きみが見て感じた儘に創った色は奪った借り物じゃない。紛れもない、きみの無敵の色だよ」
 はっきりと言い切られた言葉に、コローロは瞬いた。やがて頷くように何度も、光を徐々に強めて瞬く。やってみせると言わんばかりにスキアファールの前で強く光る。
 頼もしきコローロに頷いて、スキアファールは迫りくるケートゥスの側面へと回り込んだ。
 巨大な鯨であるケートゥスには、追従する二つの友を連れている。バテン・カイトスの名を持つ二つの極星と、ステラ・ミラと呼ばれるヒトデの群れだ。
 うねうねと動くステラ・ミラは、思いの外俊敏な動きで近づくスキアファールを捉えようと襲い来る。コローロが迎撃しようと身構えた、その時。

 二者の間を冬鳥が駆け抜けた。

 Haroldを水銀の膜に変化させて、それを盾のように構えた琴莉が突っ込んだのだ。先陣を切っていた一体を弾き飛ばし、続く二体を翼で薙ぎ払う。ヒットの瞬間冷気を翼に集約させることで、相手を凍らせるのも忘れない。凍り付くステラ・ミラを更に鯨から遠くへ弾き飛ばし、更なるステラ・ミラの群れを鯨から引き離しにかかる。
「大きいのに追従する小さいのは、お邪魔虫と相場が決まっています。ならばこれの相手をする意味もあるでしょう」
 冷静に、冷徹に。
 決して焦らずうろたえず、琴莉はステラ・ミラを一人で相手取る。一瞬振り向いた深い青の瞳が、スキアファールの目線と交錯した。
 先に行けと言っている気がして。
 弾かれたようにスキアファールはコローロと共に飛び出した。鯨を守るように極星が輝いている。その光に呼応するように、発電器官である翅から何条もの雷撃が奔った。無差別に放たれた雷撃は岩を穿ちステラ・ミラを焼き、更にスキアファールへと牙を剥く。
 だがその雷撃がスキアファールに届く前に、稲妻にも負けぬ淡い白光がスキアファールを包んだ。
 それはきっと、星珊瑚の彩だった。
 奪った彩ではなくて、彼女が見て創った彼女だけの想い出の彩だ。そしてそれは、スキアファールに傷一つ付けることを許さない。
 コローロに守られながら雷撃を潜り抜け、影人間の霊障で極星を狙い撃つ。
「”土産はお空のきらり星”――とても綺麗で眩しくて、あなたの大切なものなんでしょうね」
 彼に付き従う極星が、そう見えてしまって。
「でもすみません。星珊瑚の島には少し眩しすぎるから」
「美しい海の余韻に、征服者も、怪物も不要です」
 自分だけでは極星を壊せはしなくても、威力軽減ならもしかしたら。そう望んでスキアファールは極星を撃ち続ける。琴莉はステラ・ミラを抑え続け、その身はHaroldたちがよく守っている。

 あれは倒さねばならぬ敵なのは判っている。
 けれど、コローロの創る色と口遊む星鯨の歌が届いたならば。
「……あなたの心に何か残せるでしょうか」
 あの優しい歌の鯨ではなくても、何か。
 雷霆を躱しながら、スキアファールは静かに目を細めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

箒星・仄々
星海祭のこの日にやって来る…
迷子の星鯨さんが戻って来たと
想像したくなります
猶の事パルレに指一本触れさせるわけには行きません
骸の海へお還りいただきましょう

ランさんに騎乗

弦を爪弾き魔力練り上げ
音色に属性宿します
奏でるは星鯨の歌

風の魔力
気の膜でランさん全体を覆います
空気は絶縁体なんですよ

翠の音:風
蒼の音:水
組み合わせて水竜巻を生み出し
ランさんの進行に合わせ
うねりにぶつけて相殺し高速移動

ヒトデさんも水竜巻で彼方へ吹き飛ばします

動きは鈍く死角は多い筈
うねりが減じ凪いだその時
背中なら翅又はお腹目掛け
緋の音:炎も加え三魔力の旋律で矢を放ち槍衾に

終幕
鎮魂の調べも星鯨の歌
骸の海で穏やかに泳ぎお休みされますように


向坂・要
こりゃまた…最近の鯨は羽も生えてるんですかねぇ
なんで軽口叩きつつも油断なく

UCで呼び出すは雷と竜巻を内包した巨大な鯨、そして引力の渦を宿したホラガイの群れ

流石にここまでデカかったり数があるんじゃ制御も楽じゃありませんがね
だからってあちらさんの好き勝手を黙って見てる、って気分でもないんでね

【属性攻撃】【範囲攻撃】【全力魔法】相当の力を【第六感】も生かして味方や周囲を極力巻き込まない様に気をつけて

お前さんは空じゃねぇ
塵へかえりなせぇ
なぁに、帰り道がわからねぇだなんだと駄々こねるんなら無理にでも送り出してやりますぜ



アドリブ
絡み歓迎




 仲間がステラ・ミラの群れと極星を抑えている間に、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が目旗魚のランさんの背に乗ってケートゥスを正面から迎え撃つ。
「星海祭のこの日にやって来る……毎度の星鯨さんが戻って来たと想像したくなります」
 仄々の髭が少しだけ下がる。偶然なのか必然なのか、その答えはきっと判らない。ただ、敵意に満ちた目だけが、破壊を物語るから。
「ならば猶の事、パルレに指一本触れさせるわけには行きません。骸の海へお還り頂きましょう」
 仄々はカッツェンリートを手にして立つ。例えその返答が、拒絶の咆哮であっても。
 
 ケートゥスが泳ぎながら体を捻った。極星が強く瞬いて、背の翅が辺り一帯に雷撃を撒き散らしていく。ケートゥスの泳ぎによって生まれた強いうねりと雷撃は周囲の海中をかき乱す。それはさながら、巨大な手によって水中をかき混ぜられたようだ。
「なんの!」
 うねりに翻弄されつつも、仄々は弦を爪弾いた。練り上げた魔力を音色に宿して、奏で始める音は――星鯨の歌。
 荒れ狂う戦場に不釣り合いな程、優しい歌が響く。音色と共にまず放つのは翠の音。風は水中で空気の膜となってランさん全体を覆っていく。空気は絶縁体だ。これならばいくら強力な雷撃が放たれようとも、仄々が翠の音を奏で続ける限りランさんには雷は効かない。
 次いで爪弾くは蒼と翠の音。和音として響かせれば音の魔力が組み合わさり、仄々たちの前に水竜巻を生む。
 咆哮にも怯まずにケートゥスへと突進するランさんの動きに合わせ、仄々が水竜巻をうねりにぶつけ、相殺しながら矢のように進む。途中迫りくるステラ・ミラの群れも水竜巻で彼方で吹き飛ばし、一時的にがら空きになったその背で、ランさんが到達するよりも早く雷撃が奔る直前。
「こりゃまた……最近の鯨は羽も生えてるんですかねぇ」
 飄々とした口調と共に、雷と竜巻を内包した巨大な鯨が体当たりをぶつけた。ケートゥスが苦悶の叫びと共に身体をくの字に折る。星鯨の岩にケートゥスを叩きつけた嵐の鯨の背に、向坂・要(黄昏通り雨・f08973)の姿がある。
 重そうに腕を振れば、引力の渦を宿したホラガイの群れがケートゥスを引き寄せて、岩場に激突させる。
「流石にここまでデカかったり数があるんじゃ制御も楽じゃありませんがね。だからってあちらさんの好き勝手を黙って見てる、って気分でもないんでね」
 エレメンタル・ファンタジアとは、本来制御が難しいユーベルコードだ。口調は飄々としているものの、その制御に全力を割いているは容易に見て取れた。長く制御し切れるものではないことは一目見た仄々にも、そして要自身にも明確な事実だ。
「お前さんは空じゃねぇ。塵へかえりなせぇ。なぁに、帰り道がわからねぇだなんだと駄々こねるんなら、無理にでも送り出してやりますぜ」
 それでも要は全力を以て出来る限り嵐の鯨とホラガイを操り、ケートゥスを抑える。その間も仲間の誰も巻き込まぬよう、出来る限り気を遣うことも忘れない。
 要の操る嵐の鯨と引力のホラガイの猛攻に、たまらずケートゥスが咆哮を上げた。新たに生まれたステラ・ミラの群れが要へと解き放たれる。ステラ・ミラをホラガイが引力を以て攪乱し、嵐の鯨が強烈に尾を叩きつけて抑える。
 
 要がステラ・ミラを抑えているうちに、仄々とランさんが再び駆け抜ける。ケートゥスの身体に沿い、腹の下に潜り込。もともとケートゥス自体の動きは鈍く、視界は多い。水竜巻によってうねりを減じて進み、やがて荒れ狂う海が突如として凪いだ。そこはケートゥスの腹の真下だ。仄々はすかさずリートを弾く。奏でるは三つの属性が混じり合う緋の音――!
「さあ、ちょっと派手にいきますよ~」
 炎を加えた三魔力の旋律で放った矢が、次々とケートゥスの腹へと突き刺さった。たまらず身悶えたケートゥスの腹の内で、さらに矢に込められた魔力が爆発を起こす。
 ケートゥスが弾き飛ばされて、星鯨の岩に激突した。

「……骸の海で穏やかに泳ぎお休みされますように」
 一度距離を取ろうと駆けるランさんの背で、仄々が小さく呟く。
 在るべき場所へ在るべきように。けれどもどうか平穏に。
 仄々は祈りを込めて、星鯨の歌を紡ぎ続けていた。 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天音・亮
ハーモニア(f12114)と

大きな大きな咆哮に耳を押さえてた両手を離して見上げる
び、っくりしたー
身体が大きい分声も一段と大きいね

さて、それじゃあ行きますか
パルレの素敵なお祭りを壊したりなんてさせない

駆け出す私の役割は陽動
オーラ防御を全身に纏いマカニで上げたスピード駆使し
極星から放たれる電流を躱しながら
パフォーマンスと誘惑で鯨さんの注意を引き付ける

あれれ、全然当たらないね?
ほらほらこっちだよ!

ハーモニアが攻撃する隙が生まれたなら
さあ、きみの出番

ハーモニアの技、すごく綺麗
声に頷いて
星珊瑚の煌きにも負けない程の流星の嵐の中
高く高く駆けあがる
鯨の頭部に向かって超加速で両足蹴り
私も流星と一緒に降り注ごう


ハーモニア・ミルクティー
亮(f26138)と一緒よ!

とても大きな鳴き声ね……!
急に来たから、驚いちゃったわ
耳がジンジンするのだけど、亮は大丈夫かしら?

そうね
素敵な街やお祭りを壊される訳には、いかないもの!

亮、ありがとうよ!
亮が陽動しているうちに、確実に攻撃を当てなくちゃいけないわね!
【スナイパー】として、少し離れた所から【天翔ける流星嵐】を【乱れ撃ち】するわ
クジラもヒトデも、纏めて狙っちゃいましょう!
上手く命中させて、矢が【串刺し】になると良いのだけど

私の攻撃で足止め出来たのなら、亮、次はあなたの番ね!
華麗に何処までも高く駆けていくあなたも、とっても素敵よ!




 弾き飛ばされたケートゥスが、星鯨の岩場に激突した。轟音が叩きつけられた威力を物語る。思わず身をくねらせたケートゥスが、腹の底から怒りに吼えた。
 水が強く振動するような咆哮に、天音・亮(手をのばそう・f26138)とハーモニア・ミルクティー(太陽に向かって・f12114)は思わず両手で耳を塞ぐ。
「び、っくりしたー……」
「とても大きな鳴き声ね……! 急に来たから、驚いちゃったわ」
 亮もハーモニアも目を丸くしつつ、その場からいったん距離を取る。ヒレをバタつかせ、尾鰭を岩に叩きつけるケートゥスは今は危険だ。あまりの怒りからか、その口からは絶えず唸り声が響いている。
「身体が大きい分声も一段と大きいね」
「耳がジンジンするのだけど、亮は大丈夫かしら?」
「うん、なんとか」
 互いを気遣いつつ、二人は前を向く。背の方角にはパルレがある。今しがた祭りを終えたばかりの深海島と、然程遠くへは流れていない星珊瑚の卵たちは、猟兵たちがケートゥスを抑えきれなければ皆海の藻屑と化す。そんなことは断じて許すわけにはいかない。
「さて、それじゃあ行きますか。パルレの素敵なお祭りを壊したりなんてさせない」
「そうね。素敵な街やお祭りを壊される訳には、いかないもの!」
 二人顔を合わせて頷き合ったら、あとは振り返ることもいらない。亮はハーモニアを、ハーモニアは亮を信じているから。だから亮は自らの役割を明確に悟って、前へと駆けだせる。亮のレガリアスシューズ“Soleil”が超高速で回転しはじめる。
 ケートゥスは極星を回転させ、水中とは思えない程に高速で駆ける亮を狙い穿った。
「あれれ、全然当たらないね?」
 だが、当たらない。ケートゥスに比べれば小さく、だが海を駆ける疾風となって高速で駆ける亮を狙い撃つことは難しいのだ。
「ほらほらこっちだよ!」
 亮が岩場を駆けあがって海中を舞う。キラキラの笑顔と派手なパフォーマンスは、ケートゥスの目を惹きつけてやまない。攻撃は亮一人に集中するけれど、今はそれこそが狙いだ。
 
 ――さあ、きみの出番。
 
 亮の笑顔が伝える意志を、ハーモニアは正確に受け取った。
「亮、ありがとうよ!」
 確りと頷いて、ハーモニアは周囲に500本を超える矢を展開する。亮が陽動してくれている間に、確実に攻撃を当てるのはハーモニアの役割だ。
 星と海と空と鯨。
 この物語の幕には、きっと星こそ相応しい。
「とっておきの星空を見せてあげるわ!」
 ハーモニアが掲げた手を振り降ろすと同時。矢が光の流星と成ってケートゥスへと飛んだ。幾何学模様を描いて複雑に飛翔する矢は、その本数も相まって避けることは難しい。亮が退避したことにケートゥスが気づいた時には、既に手遅れだ。
 天翔ける流星は今宵海の流星嵐となってケートゥスへと降り注ぐ。ステラ・ミラもバテン・カイトスも、そしてケートゥス本体も、皆纏めて流星嵐に飲み込まれていく。特に流星を多く受けたバテン・カイトスの一つが貫かれて砕け散った。
 着弾の衝撃と極星を一つ失ったことにより、ケートゥスのバランスが大きく崩れる。
「亮、次はあなたの番ね!」
 未だ降り注ぎ続ける流星の美しさに見惚れていた亮は、届いた声に頷いた。岩場を高く高く、ケートゥスよりも高く駆けあがっていく。その高さが頂点に達した瞬間、亮は力いっぱい岩場を蹴った。
「華麗に何処までも高く駆けていくあなたも、とっても素敵よ!」
 駆けあがり流星となる友が眩しい。太陽のように眩しい亮に添うように、ハーモニアは流星嵐を手繰る。
 飛び上がった亮が、星珊瑚の煌きにも負けない程の流星と共に降り注ぎ、その頭部を岩場に叩きつけた。
  
 ケートゥスは混乱していた。
 己が翻弄されているという事実を理解することが出来ない。簡単に捻り潰し、焼き尽くしてしまえるはずだったのに、気づけば幾度も地に叩きつけられ、体を貫かれ、遂には極星の一つ迄失った。
 沸騰したように湧き上がる怒りのまま、ケートゥスは身悶えながら吼え猛った

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
この島には、優しいお伽噺と歌がある
みんなきっと、鯨が好きだ
だから…君の目から、敵意しか感じないのが悲しい

引き続き『深海適応』を

星座図鑑を開いて星を喚ぶ
くじら座を倒すなら、ペルセウス座かな――いや、
ペガスス座を喚ぼう
せめて、天の海に帰れるように

あの電流は厄介そう
極星と翅を集中攻撃し『部位破壊』を狙ってみる
避ける間を与えず高速で光弾を撃ち、更に『2回攻撃』

破壊不可なら、本体攻撃に切換え
バテン・カイトス…文字通り、どてっ腹に穴開けるよ

反撃は『第六感』で『見切り』、岩陰やトンネル等『地形の利用』で躱す
ダメージは『オーラ防御、電撃・激痛耐性』で痛くない(と思い込む…

迷子の鯨…
君が帰る海は、ここじゃないよ


ナターシャ・フォーサイス
WIZ
…かの歌の鯨、そのものではないのですね。
ですがパルレの誕生に、深く関わっていたとは…
興味を惹かれるお話です。

…そして。貴方は何故、我々に敵意を向けるのでしょう。
文字通り星のような、極光の鯨。
それが今度は、終わりを齎すのであるならば。
使徒として浄化し、楽園へと導いて差し上げねばなりません。

天使達を呼び、ヒトデ達を任せましょう。
巨体がゆえに近付くと痛いでしょうから、なるべく引き離すように。
そして、鯨へは私が。
空を飛ぶ要領で泳ぎ、【高速詠唱】【祈り】【全力魔法】【範囲攻撃】の聖なる光で導きましょう。
大きさは時に弱点たりうる…とは、よく言われますが。
せめて苦しまぬよう、速やかに。




「……かの歌の鯨、そのものではないのですね。ですがパルレの誕生に、深く関わっていたとは……。興味を惹かれるお話です」
 自らが立ち、またケートゥスが悶絶する星鯨の岩場に触れ、ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)は不思議そうに呟いた。激しい戦闘と度重なるケートゥスの激突にも、この岩は堅牢に耐えている。星から降った大岩を基にパルレの住人がお伽歌を作ったのだとしたら、それは浪漫のある話かもしれない。
「……そして、貴方は何故、我々に敵意を向けるのでしょう」
 その目には、はじめから敵意しかなかった。
 いくら想像したってその理由を得られることはなく、ただ「破壊する者」として現れたケートゥスは猟兵として倒されなければ不幸を撒き散らすだけだ。いくらそこが、星と鯨を慈しむ島であっても、ケートゥスはそれを理由に足を止めることはない。
「この島には、優しいお伽噺と歌がある。みんなきっと、鯨が好きだ。だから……」
 青和・イチ(藍色夜灯・f05526)は少しだけ悲し気に、星座図鑑をめくる。大好きな星座だった。パルレの皆は星と鯨を愛していた。だから。
「……君の目から、敵意しか感じないのが悲しい」
 ――悲しいんだ。
 
 文字通り星のような、極光の鯨。空から舞い降りてきたかのような姿は神話に似て、またお伽噺を彷彿とさせるものであるのに、どうしてこんなにも違って、どうしてこんなにも、終わりを齎すものであるのだろう。
「……わからないことを悩んでいても、仕方ありませんね。使徒として浄化し、楽園へと導いて差し上げねばなりません」
 ゆるゆると頭を振って、ナターシャは自らの姿を機械仕掛けの大天使へ変える。水の中でも強く羽搏けば、その力は大きな推進力となってナターシャを前に押し上げる。
 接近を察知して護衛のように現れたステラ・ミラが、俊敏な動きでナターシャたちへと襲い掛かってくる。大きく身体を広げて飛び掛かる姿は海の星にも花にも見えるが、その実は猟兵たちを捕縛する縄だ。
 そんなものに捕まっている場合ではないと、ナターシャはすぐさま天使たちを召喚しステラ・ミラへ抑えに向かわせた。呼び出された天使たちは少しずつステラ・ミラを惹きつけケートゥスから引き離していく。
 その隙に、ナターシャはケートゥスへと問題なく接近していく。巨大であり怒りに満ちているが故に、視界が限られていることをケートゥスは理解できていない。そしてその集中は、イチが一身に引き受けていた。
 
「くじら座を倒すなら、ペルセウス座かな――いや、ペガスス座を呼ぼう」
 イチは素早く星座図鑑を捲って星を呼ぶ。かの英雄のように、石にして海底に沈めてしまうのではなくて、翼持つ天馬の手でせめて、天の海に帰れるように。
 攻撃に巻き込まれないよう駆け続けながら、イチは極星と翅に狙いを絞った。水の中での雷の伝導は早い。イチにとっても他の猟兵にとっても厄介な攻撃だ。
 図鑑から現れた星弾は、天馬のような翼を得て一直線に翅と極星へと飛んでいく。巨体のケートゥスに動かれれば簡単に狙いが逸れる。故に避ける間を与えない程に高速で穿ち続けていくのだ。
「っと!」
 大きく岩場を蹴ったイチの真横を雷撃が掠めていく。余波が腕を焼いた。だが痛がっている余裕はないのだ。足を止めれば全身を焼かれるだけ。岩陰やトンネルを上手く使いながら、イチはペガススで極星を撃ち続ける。
「迷子の鯨……君が還る海は、ここじゃないよ」
 イチが一際に力を、そして想いを籠められた星弾がペガススを描いた。ペガススはあちこちに罅割れた極星へと一直線に飛び、――遂に星を貫いた。
 
 ケートゥスが悲鳴を上げた。その好機を見逃さずに、ナターシャは一気にケートゥスへと肉薄する。空を飛ぶ要領で泳ぎ、聖祓杖に楽園の光を湛えてケートゥスへと振りかざした。
 全力の浄化魔法がケートゥスの身体を光で包み込む。コンキスタドールとしてケートゥスを構成する何かが、光によって浄化されていく。
「せめて苦しまぬよう、速やかに。……っ」
 このまま浄化されてくれれば。
 だがナターシャの祈りは、ケートゥスの咆哮によってかき消された。尾鰭で強く水を掻いて、光の中からケートゥスが脱出したのだ。
 極星を失い雷の制御を失って、多くの傷を負い浄化されかけてなお、ケートゥスの敵意は火山のように滾り狂っている。
 ――まだ死ねない。
 そう言っているようだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と

きれい
だけど、あぶないね
いつもみたいに斧片手に飛び込もうとしたけれど
リュカの提案にパッと笑って

うん、ちかくで見たいっ
まちぶせまちぶせ

小声で
リュカみて、あのクジラ、はねがはえてる
あの場所からバチバチしてるように見えるね

切ったらバチバチ、とまるかな

リュカの一撃が命中したら飛び降りる
いってきますっ

ごめんね
でも、みんなをあぶない目にあわせるわけにはいかないから

斧を振り下ろす
空に帰りたいのかもっていうリュカの言葉
一瞬躊躇うけれど
翅を狙って

またヒトデを出してくるならミレナリオ・リフレクション
リュカのじゃまはさせないからね
ああ、でも、この子たちも星みたい

いっしょに空にのぼれたらいいね


リュカ・エンキアンサス
オズお兄さんf01136と

すごいな
今まで何度か鯨を倒したけれど、こいつは飛び切り不思議かもしれない
もう少し近くで見てみよう、お兄さん
…敵であることは変わりがないから、
上から隠れて鯨を拝めるところで…
鯨が通過した時を見計らって、上から攻撃を仕掛けようか

本当だ。怖そうだけれども、綺麗な羽だね
かっこいい
確かにあそこは狙い目かも…
でもお兄さん、気を付けて
いってらっしゃい
奇襲は成るべくヒトデを避けて攻撃を叩き込んでいくけど、本格的な戦闘になったらヒトデも掃除する

この鯨は星座の鯨らしいから、逆に空に帰りたいのかもしれないな
…倒すことによって帰れたらいいなって
うん…ヒトデの星も一緒に空でいられるといいね



●。
「すごいな。今まで何度か鯨を倒したけれど、こいつは飛び切り不思議かもしれない。もう少し近くで見てみよう、お兄さん」
 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)の目は、戦闘中であるということを忘れてはいなくても、興味が勝るきらめきを灯していた。隣に立つオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)も頷く。
「きれい。だけど、あぶないね」
 どれだけ不思議であろうと、ケートゥスが危険な存在であることに変わりはない。まして今は、傷ついて怒り狂っている状態だ。安易には近づけない。
「うん。敵であることは変わりがないから、上から隠れて鯨を拝めるところで……鯨が通過した時を見計らって、上から攻撃を仕掛けようか」
「うん、ちかくで見たいっ。まちぶせまちぶせ」
 けれども見ておける時に見ておきたいリュカに、同じく興味はあったオズはぱっと笑った。いつものように斧を片手に飛び込もうとしたけれど、リュカの提案はとっても魅力的だ。好奇心とは、少年の心を動かす原動力なのかもしれない。
 
 二人は岩場を登り、ケートゥスを見下ろせる位置で身を潜めて観察する。
 極星二つは割れて海底に沈んだけれど、ケートゥス本体と付き従う不思議な色のヒトデ――ステラ・ミラの群れは未だ健在だ。
「リュカみて、あのクジラ、はねがはえてる。あの場所からバチバチしてるように見えるね」
「本当だ。怖そうだけれども、綺麗な羽だね。かっこいい」
 小声でオズがケートゥスの背にある翅のような器官を指差せば、リュカが少し身を乗り出した。極星を失い、翅からの雷撃発生が安定していない。
「切ったらバチバチ、とまるかな」
「確かにあそこは狙い目かも……」
 リュカが愛銃を構える。ステラ・ミラの群れを避け、奇襲に狙うのは既に何人もの猟兵たちが攻撃を叩き込んでいる頭だ。リュカがスコープを覗きながら引鉄を引くタイミングを計る間に、オズは斧を手に立ち上がった。
「でもお兄さん、気を付けて」
「うん!」
 一度スコープから顔をあげたリュカがオズの顔を見上げれば、ほわほわな笑みが返ってくる。ならばあとは、引鉄を引くだけ。
「……星よ、力を、祈りを砕け」
 詠唱と共に星の弾丸が放たれた。星弾は吸い込まれるように一際傷の深い場所に突き刺さる。
「いってきますっ」
「いってらっしゃい」
 着弾と同時にオズが岩場を蹴った。ひるんだケートゥスの背の翅めがけ飛び降りたオズは、Hermesを振り上げる。

 ――この鯨は星座の鯨らしいから、逆に空に帰りたいのかもしれないな。
 
 リュカが呟いていた言葉が、一瞬だけオズの斧握る手を躊躇わせた。
 帰りたいの、かも。
 ……けれど。
 
「ごめんね。でも、みんなをあぶない目にあわせるわけにはいかないから」

 オズは思い切りHermesを振り回した。
 刃はすぱりと翅を斬る。だが、翅が大きすぎて一度では落としきれない。オズは再びHermesを振り上げる。
 だがそれをステラ・ミラが見逃すはずもない。すぐにオズへと接近し、その身体を捕縛しようと体を大きく開く。その姿は――。
(「ああ、でも、この子たちも星みたい」)
 どうしても、そう見えてしまって。
 一瞬だけ足の止まったオズを狙うステラ・ミラを、弾丸が弾き飛ばした。リュカの援護射撃だ。
 後続のステラ・ミラを牽制しながら、翅を狙ってリュカも星弾を撃ち続ける。だが弾丸の発射位置をケートゥスに見られたか、ステラ・ミラの一体がリュカへと向けて踵を返した。
「リュカのじゃまはさせないからね」
 オズが幾度も見たステラ・ミラを出す光景を正確にトレースし、同じように極光輝くヒトデを召喚してステラ・ミラを捕縛する。それに気づいたリュカは、捕縛されたステラ・ミラの中心を撃ち抜いた。

「せーのっ」
 オズが振り回した最後の一刀。
 Hermesの横凪ぎが、まずは一枚、翅を切り離す。残るもう一枚の翅も、リュカが容赦なく穿ち続けたおかげで最早翅として見る影もない。雷撃を発生させることも出来ず、翅は遂に機能を停止した。
 
 体の器官を失いバランスを崩したケートゥスが、星鯨の岩場に頭から突っ込んでいく。その直前でケートゥスの背から離れたオズは、再びリュカの許へと帰還した。
 極星は墜ちて、翅は斬り落とされ千切れて機能を失った。もうケートゥスは満身創痍だ。
「……倒すことによって帰れたらいいなって」
 リュカはケートゥスを見つめながらそう呟く。オズもまた、ケートゥスに寄り添うステラ・ミラを見つめていたオズも静かに頷いた。
「いっしょに空にのぼれたらいいね」
「うん……ヒトデの星も一緒に空でいられるといいね」
 
 くじらは帰る。もうすぐ帰る。
 やっぱり――が恋しくて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロビン・ダッシュウッド
放たれた雷光が海中に広がる様は、まるでネオンの洪水にいるかのようだ
さすがは深海の帝王ケートゥス、荒々しくも美しい光の饗宴に僕は満足だ

ふふ、何故僕がこの嵐の中を平気でいられるのか知りたいって顔だね
簡単さ、今僕が纏っている黄金の鎧は【アリスナイト・イマジネイション】によって作られたもの
雷霆を武器とする全知全能の天空神・ゼウスの鎧だからね

雷はむしろ望むところだよ
嵐さえも物ともしないのさ

鎧の力で深海の嵐に対抗し、『お妃様の魔法鏡』で敵の心を読んだら、『運命の縫針』でランスチャージ
僕の役目は針と糸とで敵を縫い止め、味方がとどめを刺すタイミングを作ることさ

さあ、みんな、僕に続くといいよ




 放たれた雷光が海中に広がる様は、まるでネオンの洪水に居るようだった。翅を斬り落とされる直前に放った雷撃は、まるで花火のようだった。
「さすがは深海の帝王ケートゥス、荒々しくも美しい光の饗宴に僕は満足だ」
 薄暗い海中だからこそ殊更に、雷光の光もケートゥス自身の極光の煌きも美しいと、ロビン・ダッシュウッド(時計ウサギの服飾家・f19510)は平然と歩んで笑っていた。
 先に発動したカファルジドマの嵐は、かなり威力を弱めているものの未だに発動している。海を奔る雷に当たれば人を焼き焦がしてしまう。だというのに黄金の鎧を纏ったロビンには、何一つ効いた様子が無い。
 最早泳ぐ姿にすら力無く、けれどもギラギラと滾り続けるケートゥスの目が困惑に満ちていく。それとは対照的に、相対するロビンは笑みを深めた。
「ふふ、何故僕がこの嵐の中を平気でいられるか知りたいって顔だね」
 ロビンが足を止めて、鎧がよく見えるようにすらりと立つ。黄金の鎧が極光を反射して煌いた。
「簡単さ、今僕が纏っている黄金の鎧はアリスナイト・イマジネイションによって作られたもの。雷霆を武器とする全知全能の天空神・ゼウスの鎧だからね。雷はむしろ望むところだよ」
 ロビンの言葉を何処までケートゥスが理解出来ただろう。怒り狂うケートゥスは、再び海に大嵐を呼んだ。嵐の雷がデタラメに海を奔り、海流は大きくうねる。
 けれどもそんな雷も、海のうねりさえも、想像力を力と信じるロビンの自信を揺るがせることは出来ない。
「嵐さえもものともしないのさ」
 神話ではケートゥスを作り出したのは神だ。だから神の主たるゼウスの鎧に、海獣が叶う道理はないのだ。
 
 鎧の力によってケートゥスの攻撃を相殺してみせたロビンは、素早く「お妃様の魔法鏡」にケートゥスを映す。「お妃様の魔法鏡」はありのままの姿を映す鏡。そこに映っていたのは――。
 
 一頭の鯨。星のように輝く真白の鯨だった。
 鯨は泣いていた。
 帰りたいと泣いていた。
 帰れないと泣いていた。
 帰り方がわからないと泣いていた。
 それが、ケートゥスと呼ばれたこの鯨のありのまま、そして唯一だった。
 
「……そうなのかい」
 運命の縫い針を構え、まるで槍騎士の突撃のようにケートゥスに肉薄した。縦横無尽に駆けながら、ロビンは針と糸を使ってケートゥスを星鯨の岩に縫いとめていく。
 
 彼はコンキスタドール。過去の海から来たもの。
 その願いが何であれ、このままこの世界に居続けては何処にも帰れないから。
 
「さあ、僕に続くといいよ」
 
 ロビンは最後の一手を繋いで託す。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルファ・ルイエ
天から落ちて来た岩は、もしかしたら隕石だったんでしょうか。
空に昇って、星と一緒に空から帰って来た鯨。

歌の鯨と同一の鯨では無いのかもしれませんし、どうしてそんなに荒れているのかもわかりませんけど……。
珊瑚も、街も、壊させたりしません。

海の中を飛ぶ鳥だっているんですよ。
それに、魔法の鳥なら空以外の場所も問題ありません。【統べる虹翼】で現れたヒトデの群れとケートゥスを攻撃します。
翅から電気を発生させているみたいですし、翅が残っているならそこを集中的に狙って攻撃の手段を減らせないか試しますね。

あの歌が歌うには、空に昇っても鯨の帰る場所は海だそうですから。
眠るのなら、この綺麗な海にしませんか。




 岩場に縫いとめられたケートゥスは全力で藻掻いていた。滅茶苦茶にヒレを動かし身体をくねらせ、尾鰭を周囲に叩きつけては岩場を壊す。だが、どれだけ藻掻いても運命を繋ぐ糸は切れない。此処にケートゥスの運命は定まったとでもいうかのように。
 
 星鯨の岩場の上で、シャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)は星鯨の岩とケートゥスと眺めていた。
 天から落ちて来た岩は、もしかしたら隕石だったのだろうか。空に昇って、星と一緒に帰ってきた星鯨。
「歌の鯨と同一の鯨では無いのかもしれませんし、どうしてそんなに荒れているのかもわかりませんけど……」
 つい、とシャルファは手を伸ばす。まるで空に居る小鳥を指にとめるような仕草。その指に集まった魔力が小鳥の姿を象った。それは虹翼の魔法の鳥。シャルファの鳥。
「珊瑚も、街も、壊させたりしません。いってらっしゃい、わたしの鳥」
 一羽の鳥はやがて大きな群れとなる。弧を描く群れはまるで深海に架かる虹のよう。
 鳥がシャルファの指から飛び立った。それを合図に、虹翼の群れが一斉にケートゥスに向けて飛びだった。
 魔法の鳥は海を飛ぶ。翼に宿した属性は「天」。水底を這うケートゥスとは真逆のものだ。鳥たちは残ったステラ・ミラを飲み込み翼で切り裂いて、ケートゥスへと飛ぶ。
 極星も翅ももうない。ステラ・ミラは全て地に落ちた。あとはケートゥス本体だけだ。
 
 ――帰りたいんだってさ。
 
 ケートゥスを縫いとめた彼は、一言だけそう言った。
 何処にとは言わなかった。もうケートゥス自身にもわからないのかもしれない。
 帰りたいとだけ願いながら、もしかしたらコンキスタドールになってなにもかもが歪んでしまったのかもしれない。
 全ては想像の中の話だ。答えはわからない。
 だからシャルファは、歌をなぞることにした。
 魔法の鳥に包まれて、既に勝敗は決している。あとは送るだけ。シャルファはケートゥスへと一歩踏み出した。
「あの歌が歌うには、空に昇っても鯨の帰る場所は海だそうですから。……眠るのなら、この綺麗な海にしませんか」
 貴方の帰る場所はわからないけれど、海に抱かれて眠るのならきっと穏やかに眠れて、そして次はきっと、帰れるかもしれないから。
 虹翼に抱かれたケートゥスがふわりと浮き上がった。天の虹翼はゆっくりとケートゥスを海底へと誘っていく。
 
 最期にケートゥスとシャルファの目が合った。
 鯨の目にはもう怒りも敵意もなかった。
 そこには何処までも深く、何処までも穏やかな黒い目があって、只一粒、大きな大きな涙が浮かんでいた。
 
「おやすみなさい」

 虹翼に誘われて、ケートゥスはゆっくりと海底に横たわった。
 見上げれば真白に輝くパルレがあって、星珊瑚の卵たちが星屑のように煌いている。あれは空だ。海の中の満天の星空だ。
 ケートゥスはゆっくりと目を閉じる。その姿が波にゆっくりと流れて消えていくまで、シャルファは静かに見守っていた。
 
 ――土産はお空のきらり星。くじらは眠る、海の空。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月20日


挿絵イラスト