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猟書家の魔本「恋は大戦争(物理)」

#アリスラビリンス #猟書家

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●猟書家(ビブリオマニア)の魔本
 そこは色とりどりの花が咲き乱れる平和な世界だった。
 如雨露や鋏、鍬やスコップと言った園芸用品の姿をしたゆかいな仲間たちが、いつアリスが来てもいいようにと一生懸命にお花の世話をしている。
 常春のポカポカとした陽気は、荒んだアリスたちの心を優しく癒してくれるだろう。
 そんな長閑で平和な世界に1人の女が現れた。

「皆様、こんにちは。私は通りすがりの猟書家(ビブリオマニア)と申します」

 黒ずくめの女は微笑みながらそう言うと、ゆかいな仲間たちに向けて、スカートの裾を摘まみ折り目正しく一礼をした。
 見惚れてしまうような美しいカーテシーだった。

「びぶりおまにあ?何だいそれは?聞いたことないよ?」
「おねえさんはアリス?それともオウガなの?」
「ねえ?どこから来たの?」

 突然現れた全身黒ずくめな淑女の元に、ゆかいな仲間たちは興味津々と言った様子で集まって行くと、矢継ぎ早に質問を繰り返した。
 彼らは、この世界の管理者だ。突如現れた謎の存在に対しては、きっちりと対応をしなくてはならない。
 もしもこのおねえさんが、オウガだったらえらいこっちゃだ。

「申し訳ございませんが、私のことについてはお答えすることはできません。お詫びと言っては何ですが、皆様を私の持ってきた素敵な本の世界にご招待させていただきますわ」

 猟書家と名乗った女は、どこからともなく取り出した一冊の本を開く。
 ぱらぱらぱらと頁がひとりでに捲れていき、魔力を宿した光を放った。

「うわあああ、何か光ったああああ」
「みんなー!!にげてえええええ!!!」
「わあああああ!!にげられない―!!!」

 猟書家の女の持つ本から発せられる光から逃れようと、ゆかいな仲間たちは、全身黒ずくめの淑女に背を向けて、一生懸命に走りだした。
 だが、一生懸命に足を動かしても光の速度にはかなわない。彼らは、1人残らず光に飲み込まれると、猟書家の手にした本の中へと吸い込まれていった。

「ふふふ。では、物語をお楽しみください。タイトルは『恋は大戦争(物理)』。物理的な強さが恋愛アピールになる世界で、愛しの王子を口説き落とす、トンチキ恋愛アクションですわ。さあ、この物語がどう終わるか、楽しみにさせていただきますわ」

 猟書家の女はパタンと本を閉じると、誰もいなくなった世界でカーテシーをして、再び何処かへ歩き去って行った。

●恋は大戦争(物理)
 昔々あるところにそりゃあもうイケメンの王子様がいました。サラサラとした黄金の髪に、白い肌。真っ青な瞳はまるでサファイアのよう。文武両道で誰にも身分の隔たりなく親切に接します。まさに理想の王子様。国中の女の子はメロメロで、年頃の女の子は、みんな王子様に恋をしているとさえ言われていました。

 ある時、王子様は言いました。

「好きな女の子のタイプかい?そうだね…強い女の子とか素敵じゃないか?」

 それを聞いた王様が悪乗りをしてこんなことを言い出します。

「我が息子、第四王子の嫁はこの世界で一番強い女にする。腕っぷしに自信のある女、出て来いやぁ!」

 それを聞いた国中の女の子は大忙し。
 みんな、みんな、出来る限りのおめかしをして、武器を持ってお城へと向かいます。
 恋のライバルを物理的に蹴落とし、愛しの王子様の待つ玉座の間へと辿り着き、愛しの王子様に求婚するために。
 さあ、恋の大戦争(物理)の開幕です。

●グリモアベースにて
「みんなー大変なのよー。ゆかいな仲間たちのみんなが、本の世界に閉じ込められてしまったの」

 グリモア猟兵の夢咲・向日葵(魔法王女・シャイニーソレイユ・f20016)は、わたわたと両手を振りながら、集まって来た猟兵たちに向けて依頼の説明を始めた。

「えーっとね、猟書家(ビブリオマニア)っていう真っ黒尽くめの女の人が、不思議な国の住人を本の世界に閉じ込めちゃったのよ。そこでね、みんなには本の世界に入り込んでもらって、囚われた住人たちを助けてほしいの」

 そう言うと向日葵は、石で作ったスクリーンに予知を投影した。そこには、真っ黒尽くめの女が、不思議な国の住人たちを本の世界に閉じ込める様子が映し出されていた。

「ほいでね。今回、みんなが行ってもらう世界は、『恋は大戦争(物理)』ってタイトルの本なのよ。ジャンルはトンチキ恋愛アクション?恋のライバルを物理的に排除しつつ、素敵なイケメン王子様に求婚する恋物語なの」

 えぇ~…と言った感じで軽く引いている猟兵達を尻目に、超マイペースな向日葵は、そのまま説明を続ける。

「そこでね、みんなにはこの恋物語のキャラとして本の世界に入り込んで物語を進めていってほしいの。つまりは恋のライバルを物理的に蹴落として王子様を攻略するの。本の世界にある太陽の矢印の方向に歩いていけば、どんどん物語は進むから、道に迷う事はないから安心してね。そして、物語が完結したら、閉じ込められたゆかいな仲間たちも解放されるのよ」

 太陽のイラストを表示しながら向日葵は言う。
 絵本チックなイラストの太陽に大きな青い矢印が付いているので、目印を見失うことはないだろう。

「それじゃあ、みんな、心はプリンセスになってファイト、ファイトなのよー!まずはおめかしからだね。すっぴんで王子様に会うのはアウトなの!」」

 男もやるの?と思った方。やるんだよ。当然だよなぁ。

「それじゃあ今から転送するのよ!いってらっしゃーい!」

 向日葵はグリモアを操作して黄色い向日葵の花が咲いた石の扉を創り出すと、大きく手を振って猟兵達を送り出した。


しろべびさん
 しゃちーーーっすーーしろへびさんなのよー🐍。
 というわけでー、通常シナリオです。久しぶりの3章仕立て。
 合法的に女装できるシナリオです。需要?知りません。
 まあ、ダイスの導きには従うのみ。
 ではではー、皆様のプレイングをお待ちしております。

 ●1章
 ・おめかししてください。すっぴんで王子様に会おうとするのはNG。別に鎧をピカピカにするでも。お城にあるクローゼットから綺麗なドレスを勇者(意味深)するのでも何でもいいデス。兎に角お洒落をするのです。おめかしをしたら次に進みます。

 ●2章
 ・恋のライバル(集団)を物理的に蹴落とします。恋は大戦争(物理)です。
 ●3章
 ・恋のライバル(ボス)を物理的に蹴落とします。恋は大戦争(物理)です。
  王子様に告白できるかはプレイング次第?

 参考までに。
 ★…ネタを盛ってもOK。好きにして。
 ☆…アドリブましまし。でもシリアスな感じ。
 〇…アドリブは多少ならばOK。
 ×…アドリブ少な目、プレイングに忠実に。
 他の方と一緒に書かないで欲しい場合は、『ソロ』と書いて下さいませ。
 それではみなさんのプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『うふふ……ふふ……うふふっ』

POW   :    うふふで通じるものがあるはず! フィーリング

SPD   :    うふふの傾向は……? 観察し読み取る

WIZ   :    これでどうかな……? 翻訳を試みる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●武闘会(プリンセス・ワルツ)に備えろ!
 向日葵の花で飾られた石の転移門を抜けた先は、城の一角を改造して作った控室でした。
 そこでは、武闘会の開会を待つ参加者たちが、最後のおめかしをしていました。
 これより先は血を血で洗う凄惨な武闘会です。もうお色直しの機会はありません。準備不足のままでこの先に進めば、醜い姿のままで王子様とご対面です。それでは、武闘会を勝ち抜いて、王子様への求婚権を手に入れてもふられてしまいます。
 お妃さま(プリンセス)は、強く、美しくあらねばならないのです。

「うふふ……ふふ……うふふっ」

 参加者のうちの1人は、鏡とにらめっこをしながら、白粉をはたいています。ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん…少々塗りすぎでしょうか。白すぎて妖怪染みた感じになっていますが、まあ本人が良しとしているならば大丈夫でしょう。
 化粧品については、ドレッサーの前に沢山用意されています。どれもこれも王宮御用達の逸品です。品質については問題ありません。勿論、料金は無料です。どうぞ、ご自由にお使いください。

「うふふ……ふふ……うふふっ」
 
 別の参加者は、一心不乱に包丁を研いでいました。血走った眼でやっているので少し怖いですが、武器の切れ味は武闘会での勝率に大きく関わります。準備を怠るずぼらな人は、国の顔であるお妃さまは務まりません。
 砥石や武器の手入れ用の油については、部屋の隅に山にして積んであります。どうぞ、ご自由にお使いください。料金は無料です。

「うふふ……ふふ……うふふっ」

 また別の参加者は、宝石箱からアクセサリーを取り出して、じゃらじゃらと着飾ったり、クローゼットから貸し出し衣装を見繕ったりしています。
 武闘会はどんな身分の人でも参加できるようにと、衣装やアクセサリーの貸し出しも行っています。勿論、無料です。好きなだけ着飾りましょう。
 まあ、それで動きにくくなっても、自己責任でございますが。

「うふふ……ふふ……うふふっ」

 会場を見渡していると奇妙な光景が目に映った。ニンゲンの参加者に混ざって、何故か、如雨露や鋏、鍬やスコップと言った園芸用品が、何故か化粧をしているのだ。
 恐らくは、猟書家によって本に取り込まれたあと、参加者の枠に組み込まれてしまったのだろう。
 貴方達は、準備を早々に切り上げて、彼らから話を聞いても良い。

 それでは、武闘会に向けて悔いのない準備をお願い致します。準備が終わりましたら、頭上の矢印に従って次の頁へと移動してください。
 
セシリア・サヴェージ


なんだか異様な雰囲気ですね……。それはともかく猟書家とは何者なのでしょう。
愉快な仲間たちの救出が最優先ではありますが、彼の者の正体についても探っていかなければ。

化粧や盛装は一見戦いとは無関係に思えますが、敵への威圧や己を奮起させたりと様々な意味合いがあると聞きます。
あの女性が白塗りに白塗りを重ねているのも、敵を恐怖に陥れんが為の戦化粧なのでしょう。大変参考になります。
しかし私が纏うのは暗黒で十分。今は武具の手入れのみにとどめましょう。

戦いが始まる前に参加している愉快な仲間たちに話を聞いておきましょう。
猟書家やこの世界の事について何か知っているかもしれません。



●武闘会(プリンセス・ワルツ)に備えて ①暗黒騎士の場合
「なんだか異様な雰囲気ですね……。それはともかく猟書家とは何者なのでしょう」

 向日葵の花で飾られた石の転移門を抜けて、猟書の世界へとやってきた、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、周囲を見渡しながら呟いた。
 お城の一角を改造して作った控室には、全部で30人くらいの参加者がいた。彼女達は、皆、豪華な衣装を身にまとい、大なり小なりの武器で武装をしている。
 これから、王子様への求婚を掛けた決戦へと赴くというだけあって、凄くピリピリとした雰囲気が漂っている。
 窓から外の景色を見渡すと、絵本のような風景が広がっていて、太陽には大きな矢印と、『準備が終わったら扉を開いて次の頁へ』『9p』と、書かれていた。
 まさに本の中という異世界と言った様相だ。こんな世界を創り出せる或いは、こんな世界にゆかいな仲間たちを呼び寄せることができる猟書家とは何者なのか…。疑問は尽きない。
 猟書家に繋がる何かがないかと、周囲を眺めていると、とある女性の姿が目に留まった。

(化粧や盛装は一見戦いとは無関係に思えますが、敵への威圧や己を奮起させたりと、様々な意味合いがあると聞きます。あの女性が白塗りに白塗りを重ねているのも、敵を恐怖に陥れんが為の戦化粧なのでしょう。大変参考になります)

 真っ白な女性を見て何やらうんうんと頷いているセシリア。
 メイクをしている本人としては、綺麗になる為にやっているつもりではあるのだが、結果的には、戦化粧のようになってしまっているので、何とも言えない。

「愉快な仲間たちの救出が最優先ではありますが、彼の者の正体についても探っていかなければ。しかし私が纏うのは暗黒で十分。今は武具の手入れのみにとどめましょう」

 そう呟くと、部屋の隅に積んである砥石を手にして、ガリガリと武器を研ぎ続けるスコップ頭の愉快な仲間の隣の席に向けて歩を進めていった。

「失礼。隣の席に座ってもよろしいだろうか」
「うふふ…ふふふ‥‥うふふっ」

 セシリアは、スコップ頭に声を掛けながら、椅子の背もたれを引いた。
 残念ながら返事はまともな返事は返って来ない。虚ろな目でうふふふふと笑いながら、ひたすらに刃を研ぎ続けている。恐らく洗脳か何かを受けているのだろう。
 それでも、根気よく声を掛け続けていくと、漸く正気に戻ったのか、何とか会話が可能になった。

「はっ!?今までボクは何を?ここどこ?何でボクは刃物なんて研いでいるの?」
「正気に戻りましたか。良かった。実はですね…」

 セシリアは、正気に戻った愉快な仲間に依頼を受けた経緯を説明する。
 話を聞いたスコップ頭は、セシリアに感謝を告げると、自分が覚えていることについてつらつらと話始める。

「猟書家って人のことはよく分からないんだ。とってもきれいなお姉さんで全身真っ黒尽くめだったってこと以外はね。ごめん。でも、この世界の事については、ちょっとだけならば分かるよ。
 この世界にはね、『PC』『NPC』『ゲスト』の三種類の登場人物がいるんだって。『PC』はボクやお姉さんみたいに何処か別の世界から、この世界に招かれて、物語を進める存在なんだって。『NPC』は元々この本の中にいた存在。例え死んでしまっても、頁をめくれば元通り。最後の『ゲスト』は、オウガらしい。猟書家のお姉さんが言っていたよ。『ゲスト』に気を付けて。『PC』が、本の中で死んでしまったら、そのまま死んじゃうよって。それ以外のことは…ごめん。分からないんだ。」

 申し訳なさそうにスコップ頭の愉快な仲間が言う。
 彼に教えられた情報は、どうやら登場人物に関しての内容だけだったらしい。

「いえ、登場人物のことが分かっただけでも収穫です。やはり、愉快な仲間たちの皆さんは保護する必要があるようですね」
「うん。NPCのお姉ちゃんは平気だけど…ボクたちはここで死んだら死んじゃうから、助けてほしい。ボクの方でも皆を助けてみるけど、お姉さんたちにも協力して欲しいんだ。お礼はできないかもしれないけど…助けてください。お願いします!」

 スコップ頭の申し出をセシリアは、快く受け入れた。元よりそのつもりであるし、報酬はグリモアベースを通じて支払われると告げる。
 その言葉を聞いたスコップ頭は、良かった…と胸を撫でおろす。

「それじゃあ、また何か思い出したら伝えるね」
「ええ。よろしくお願いします。っと、道が開きましたね」

 話をしながら武器を研ぎ終えると、カチャンと言う音が奥の扉から響いた。ここでやることは終えた。さっさと次の頁へ移動しろと世界が急かしているように感じる。

「ここにいる仲間たちは、ボクに任せてお姉さんは先に行って。いってらっしゃい」
「行ってきます」

 セシリアは、手を振って見送るスコップ頭の愉快な仲間に会釈をすると、入り口とは反対側にある扉の取っ手に手をかけ、力強く引いて次の頁へと踏み出していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧

人格:レイリ
女装…お化粧とか、したこと、ないけど。どうしよう
(自分の身体をカンバスに見立てて絵を描けば良いのですよ)
ロキ、ありがと。やってみるね

ドレスは黒に近い濃紺
動きやすいようにワイヤー入りのパニエ
アクセサリーはエメラルドで、ネックレス、ヘッドドレスで揃いの物
イヤリングも揃いで、落とさないようカフス型

パウダーは…色白だから薄めにして、チークを少しだけ
自然で可愛い感じ
口紅は目立ち過ぎないけど力を入れているとわかるローズピンク

アートを強化してお化粧
完成したらロキと交代

人格:ロキ
ドレスの下にUDCと魔銃を隠し、金属の手入れと引換に情報収集
王子様がこの状況をどう思っているか、聞いた方はいませんか?



●武闘会(プリンセス・ワルツ)に備えて ②多重人格者の場合
「女装…お化粧とか、したこと、ないけど。どうしよう」

 と、豪華な装飾がついた化粧台の前で1人の少年が溜息を吐いていた。
 その少年の名は、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)。1つの体に、レイリ、ロキ、アノンという3人分の人格を宿した多重人格者の少年だ。
 鏡に映る困り果てた少年の瞳の色は黒。今はレイリが主人格となっているようだ。

(自分の身体をカンバスに見立てて絵を描けば良いのですよ)

 と、彼の中に宿る別人格、ロキがレイリに話しかける。

「ロキ、ありがと。やってみるね」

 自身の体に宿る別人格にお礼を言うと、鏡を見ながら自分の肉体というカンバスにどういう女性の絵を描くか考えてみる。
 そして、しばらく考えた後、どういう絵を描くか思いついたのだろう。控室の隅に設置されているウォークインクローゼットに向けて歩き出した。

「~♪」

 レイリが異常集中によって作り上げた女装姿(アート)は見事なものだった。
 ドレスは白い肌に映える黒に近い濃紺。スカートの部分は、ワイヤー入りのパニエを吐いて、ボリューム感と動きやすさを同時に満たしている。アクセサリーはエメラルドで、ネックレス、ヘッドドレスに、カフス型のイヤリング。全てお揃いの物で、統一感を齎している。
 メイクの方も可愛らしいナチュラルメイクで、パウダーは薄めにして、チークを少しだけ入れ、口紅は目立ち過ぎないけど力を入れているとわかるローズピンクのものを引いている。
 一心不乱にメイクをしていた参加者たちも思わず見惚れてしまうような美しい女装少年の姿が、そこにはあった。
 
「じゃあ、ロキ。あとは任せるね」
(ええ、任せてください)

 完璧な女装をし終えたレイリは、肉体の主導権をロキへと譲り渡す。瞳の色が緑色になり、人格がレイリからロキへと切り替わったことが分かる。
 ロキは、ドレスの下にUDCと魔銃を隠すと、話を聞けそうな人が居ないかと、周囲の探索を開始するのであった。

 さて、ロキが城の一角を改造して作った控室の中を回っていると、スコップ頭のゆかいな仲間と、如雨露頭のゆかいな仲間が揉めているような場面に出くわした。

「おい…気味悪く笑ってないで正気に戻れって。ニタニタ笑いながら包丁研いでいるのは、絶対にヤバイって…!」
「うふふ……ふふ……うふふっ」
「おい、聞いてるのかよ…!」

 どうやら正気に戻ったスコップ頭のゆかいな仲間が、洗脳されている如雨露頭のゆかいな仲間を正気に戻そうとしているようだった。
 ゆさゆさと肩を揺さぶりながら、一生懸命に声掛けをしている。だが、暖簾に腕押しと言った様子だ。全く聞いていない。

「うふふ……ふふ……うふふっ」

 そんな如雨露頭の態度に、段々とスコップ頭がイライラしているのが、肩を揺する強さから伝わって来る。
 そして限界が来たのだろう。

「いい加減にしろ!」

 ――ゴチン!!

 顔を真っ赤にしたスコップ頭が如雨露頭に頭突きをした。

「痛ったあああ!!何すのよ!あんた!!」
「やっと正気に戻ってくれたかー」

 涙目になって抗議をする如雨露頭に対して、スコップ頭が大きく溜息を吐いた。
 どうやらひと段落ついたようだ。彼らからならば、うふふ‥‥と不気味に笑い続ける他の参加者とは違ってきちんとした話が聞けるだろう。
 ロキは、何やら話し合いを続ける2人の愉快な仲間たちの元へと歩を進め、穏やかな笑顔を浮かべながら話しかけた。
「こんにちは。少しよろしいですか?」
「「こんにちはー。綺麗な【お姉さん】。どうかしたの?」」

 疑いようもなくお姉さんと言葉を返す愉快な仲間たち。彼らからは完全に女性に見えているようだ。
 女装の精度を確認したロキは、続けて質問を投げかける。

「王子様がこの状況をどう思っているか、聞いた方はいませんか?」
「んー…ボクは知らないな」
「あー…それならば、私は知っているわよ。王子様から聞いたからね」

 スコップ頭は首を傾げているが、如雨露頭は何か思い当たることがある様子。

「確か…王様(チチウエ)の思い付きには困ったものだと苦笑いをしていたわ。本当は中止にしたかったんだけど、隣国のお姫様(ゲスト)が参加を表明して大事になっちゃったから、中止にできなかったんだって。ただ、王子様としては武闘会に参加してくれた女の子の気持ちを真摯に受け止めるつもりだと言っていたわ」
「あー…そうか。『ゲスト』はその配役なんだね」
「ほら、6pのシーンで王子様が言っていたじゃない。覚えてないの?」
「ボクは全然覚えてないよ…」

 何やら愉快な仲間たち同士では伝わる何かがあるらしい。盛り上がっている2人に対して詳細な説明を求めると、以下の事が分かった。
 1つ目は、『ゲスト(オウガのこと)』は、隣国のお姫様という配役(ロール)を割り当てられている。隣国のお姫様は、この本におけるライバルヒロイン役を担っているらしい。
 2つ目は、控室のシーンが9pの内容であり、途中参加の猟兵達では知りえない情報を、1p目から参加している愉快な仲間たちが持っているのかもしれないこと。

「成程、興味深い情報ありがとうございました」
「いえいえこちらこそ-。むしろ、ちゃんと全部の情報思い出せなくてゴメンね」
「他の仲間だったら別のことを覚えているかもしれない。ボクたちは他の仲間を正気に戻してくるから、次の頁で待っていて。お姉さん、この頁に留まっているのも限界でしょ?」

 そう言われると、確かに次の頁に行かないといけないような気がしてくる。やるべき事をやったら次の頁へ行けというのがこの世界の法則(ルール)らしい。窓越しに見える太陽にある矢印が自己主張激しくピカピカと光っている。

「ええ、どうやら次の頁へと移らないといけないようですね」
「うん。いってらっしゃーい。ボクたちも後で行くから。先に待っていてね。黒い鎧のお姉さんにもよろしく言っておいて」

 ロキは、愉快な仲間たちに見送られながら入り口とは反対側の扉を開き、黒い鎧を着た女猟兵の待つ、次の頁へと移動した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイリス・レコード
王子様に興味はありませんが、愉快な仲間さんたちが捕らえられているというのなら、助け出すだけ、です
(戦闘が始まってないのでまだ自己暗示ブーストがかかっておらず少し弱気)
【POW】
アリスナイトの私は武器も防具も私のやる気次第ですので、お化粧ぐらいで準備はほどほどに
愉快な仲間さんの話を聞きます
彼らに正気が残っていれば助けに来たことを明かして「鼓舞」し、私やほかの猟兵さんが助け出すので
極力巻き込まれないようにしてほしいと伝えます

彼らも武闘会に参加する気満々でしたら……どうしましょう?
本気で猟兵やオウガと渡り合うことになったら大変なことになりそうですけれど……

※アドリブ歓迎です。よろしくお願いします



●武闘会に備えて ③ オウガブラッドのアリスナイト
「王子様に興味はありませんが、愉快な仲間さんたちが捕らえられているというのなら、助け出すだけ、です」

 オウガ憑きのアリスナイトの少女、アイリス・レコード(記憶の国の継ぎ接ぎアリス・f26787)は、気弱そうな声で決意を口にした。
 皆を守る騎士であるという自己暗示がまだかかっていないため、今は人助けの騎士「アイリス」ではなく、素の気弱で臆病な自分(アイリス)のままだ。
 それでも、困っている愉快な仲間たちがいるならば助けたいと、自分の心を鼓舞して、うふふ‥‥と不気味に笑い続ける参加者たちのいる控室の奥へと進んでいく。

「アリスナイトの私は武器も防具も私のやる気次第ですので、お化粧ぐらいで準備はほどほどでいい、ですね」

 アイリスは、大きな鏡のついた化粧台の前に座ると、簡単な化粧を済ませた。
 すると、入り口とは反対側の扉からカチャンと言う音が響き、窓から見える太陽に刻まれた矢印がピカピカと輝く。次の頁へ行けという事だろう。
 だが、次の頁へ行く前に、アイリスにはやるべきことがあった。

「まずは愉快な仲間さんの話を聞きます」

 アイリスは化粧台から立ち上がると、控室の中にまだ残っている愉快な仲間たちを探して移動を始めた。

「うふふ……ふふ……うふふっ」
「おい…鋏。正気に戻れって…!」
「ねえ、ちょっと、話聞いている?」

 アイリスが、控室の中を歩き回っていると何やら揉め事をしているらしい、愉快な仲間たち3人組の姿が目に映った。
 どうやら、正気を失っておかしくなってしまい、不気味に笑い続けたまま両刃剣を研ぎ続ける鋏頭の愉快な仲間を、如雨露頭とスコップ頭の愉快な仲間たちが、何とか正気に戻そうとしているようだ。
 一人称がボクなのがスコップで、一人称が私で女性的な口調なのが如雨露だ。
 
「私も手伝います」
 そう言って駆け寄ったアイリスを、スコップ頭と如雨露頭の2人は快く受け入れた。彼らは、アイリスに会う前に別の猟兵とも会っているため、猟兵たちが自分たちを助けに来てくれたと知っているからだ。
 そして、アイリス、スコップ頭、如雨露頭による鋏頭への声かけが始まった。

「はっ!?あ…あれ?オレは何をして居んだんだ?ってうわぁ!何で剣?」
「やっと正気にもどったのね」
「寝坊助さんだなぁ…相変わらず」
「良かったです」

 何度目かの声かけで、遂に鋏頭の愉快な仲間が正気に戻った。途中、スコップ頭がキレて手を出さなかったのは、アイリスが短気にならないようにと、励まし続けたおかげだ。
 今の彼らならば、しっかりと話を聞いてくれるだろう。そう思ったアイリスは、お願いの言葉を口にした。

「私やほかの猟兵さんが助け出すので極力巻き込まれないようにしてほしいです」
「うん。それは勿論大賛成だよ。ボクたちとしても危険は避けたい。」
「ただ…先に次の頁へと移動してしまったもの達については何とも言えないわ」
「アイツラはまだ、正気に戻ってはいないだろうからな」

 アイリスの提案に対して、愉快な仲間たちは基本的には賛成と言った様子だ。だが、先に次の頁へと移動したもの達については、正気を失っているので攻撃をしてくるかもしれないとのことだ。

「彼らも武闘会に参加する気満々でしたら……どうしましょう?本気で猟兵やオウガと渡り合うことになったら大変なことになりそうですけれど……」
「大変なことになるだろうな。でもオレたちは、この物語における【主人公である女騎士役】の『PC』だ。だから、全力で武闘会を勝ちに行かないといけない…と、アイツラは思い込んでいる筈だ」
「主人公の女騎士役のPC…ですか?」

 初めて聞く単語にアイリスが首を傾げる。
 それに対して愉快な仲間たちは、今までに得て来た情報を交えつつ、こういう事になっているんじゃないかという推論を話し出した。

「えーっと、猟書家は『恋は大戦争(物理)』という本のシナリオを完成させるというゲームをしている。その物語の主人公である女騎士役を『PC』つまりは猟兵や愉快な仲間たちさんに割り振ったと。だから私たちはゲームの主人公として、物語を完成させる役割がある。そして物語を完成させたら解放される。
 洗脳されている他の愉快な仲間のみなさんは、今、自分のことを物語の女騎士だと思っているので、恋のライバルを蹴落とすために攻撃してくるかもしれない。これで合っていますか?」
「うん。ボクたちが思い出した範囲ではこれで合っている筈だよ」

 アイリスの言葉に、スコップ頭の愉快な仲間が頷く。
 どうやら、戦闘パートの時には正気に戻っていない愉快な仲間たちの攻撃にも多少は注意する必要があるようだ。

「まあ…猟兵さん達に迷惑かけるのも大分不味いが…。それよりもオウガに突撃はヤバイな…。猟兵さんと違って手加減してくれなさそうだし」
「ええ…それだけは何とか阻止しないといけないわね」
「ボクたちで気をつけておくけど、万が一のことがあったら、助けて欲しいんだ」
「任せて。私は、皆を守る騎士なんだから……」
「「「ありがとう!!」」

 アイリスの言葉に愉快な仲間たちは、笑顔で感謝した。

「ここに居る他の仲間たちの事はボクたちに任せて先に行って」
「やるべき事をやった人は、速やかに次の頁へ。それがこの世界のルールらしいわ」
「先に行って、待っていてくれ」

 アイリスは、愉快な仲間たちの言葉に従って、入り口とは反対側の扉に向けて歩いていく。先程から太陽に描かれた矢印がビカビカと眩しい。
 さっさと次へ行けという事だろう。

「それじゃあ、先に行くね」
「「「うん!いってらっしゃーい!!!待っててねー!!」」

 アイリスは、愉快な仲間たちに見送られながら次の頁に続く扉を開いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御魂・神治
天将が持ってきた仕事が女装して殴って勝ってクライアント救出(要約)ってどゆことや...

ワイ、タッパあるし男やし、化粧だけでは誤魔化せへん。
天将に頼んで先ずは「全身を女の偽装ホログラフをリアルタイムで合成」
化粧とか全部タダかいな?!遠慮なく使わせてもらうで!後から払えは無しや!
衣装は「パンツスタイルのウエディングドレス」
声も天将のボイチェンで「男役スター女優」にする。
どや!これで完璧なイケメン女や!

『神治のイケメンとは程遠い言動までは女性化する事は出来ません』
『その煩わしい地が出ない様、せいぜい淑女として振る舞って下さい』
天将は抑揚のない、きつい言葉で答える

★ネタを盛ってもOKやで



●武闘会に備えて! ④ 堅物式神とズボラ除霊師
「天将が持ってきた仕事が女装して殴って勝ってクライアント救出(要約)ってどゆことや…」

 相方である人工式神(AI)『天将』の持ってきた依頼に対して、困惑の声を上げているのは、御魂・神治(除霊(物理)・f28925)という名の除霊師を生業とする男。
 ギリギリになるまで依頼内容に目を通していなかったのだろうか、石で出来た転移門をくぐり抜け、本の中の異世界に入った後に、改めて依頼内容を知ったらしい。
 依頼の内容の精査などを人工式神任せにしたズボラさのツケが回って来たのだろう。諦めて女装をして、武闘会へ参加してもらう他なない。

(ワイ、タッパあるし男やし、化粧だけでは誤魔化せへん)

 色々と諦めがついたのだろうか、女装をする算段を立てる神治であるのだが、184cmもある巨漢の彼では、簡単に女装をすることはできない。
 と、なれば、真っ当な手段ではなく、別の方法を取る。

「全身を女の偽装ホログラフをリアルタイムで合成」
『了解しました』

 神治の要望に対して人工式神が応え、パンツスタイルのウエディングドレスを着た女性のホログラムを投影する。

「化粧とか全部タダかいな?!遠慮なく使わせてもらうで!後から払えは無しや!」
 
 続いて神治は、化粧台の前にあった化粧品をふんだんに使って化粧を行う。勿論、無料なので安心していただきたい。
 そして最後は、ボイスチェンジャー機能を使い「男役スター女優」にすることで、一通りの女装は完成した。

「どや!これで完璧なイケメン女や!」
『神治のイケメンとは程遠い言動までは女性化する事は出来ません』

 気合の入った宝塚風の美女が男らしいポーズをして、男らしい関西弁でしゃべっていた。たまらずに天将は、ツッコミをいれる。
 女装というものは、見た目が完璧でも言動やら仕草やらでバレることが多い。
 まあ…バレたところで依頼の成否が変わるとかそう言う事はないのだが。

『その煩わしい地が出ない様、せいぜい淑女として振る舞って下さい』
「うっさいわ!」

 さて、いつも通りの主従漫才をしていた所に、ぞろぞろと園芸用品の頭をした愉快な仲間たちが現れた。
 彼らは、神治の姿を確認すると笑顔で近寄って来た。

「「「「こんにちはー猟兵のお姉さん」」」」
「えっ、誰?」

 一瞬、誰に声が掛けられたのか分からず、神治はキョロキョロと周囲を見回した。気づいていないだけで実は他の猟兵が周囲に居ないかと思ったのだろう。

「誰って?気合の入った服を着たお姉さんのことだよ?」
「あー!ってオレの事かい」
『神治』
「…お姉さんって俺の事かな?」
「他に誰がいるの?」

 慌てて取り繕って話す神治に対して、不思議そうな顔をする愉快な仲間たち。
当たり前のことではあるが、普段、お姉さんなんて呼ばれることがないので、一瞬誰のことを言っているのか分からなくなるのも無理はないだろう。

「で、俺に何かようかな?」
「うん。実はね、ボクたち愉快な仲間たちを正気に戻して回っているんだけど、その時にね、重要な情報を覚えていた仲間たちがいて。その時の情報を伝えに来たんだ」
「ほぉ~重要な情報かいな」

 どうやら彼らは、先に来ていた猟兵たちの御蔭で正気に戻った愉快な仲間たちらしく、正気を失った仲間たちを元に戻しつつ、猟兵達に伝えられる情報を集めているらしい。
 彼らから伝えられた内容は、掻い摘んで言うとこの本のシナリオは、猟書家の手によって歪められているという事だった。
 シナリオの改ざん内容の主な点は4つ。
 1つ目は、武闘会で刀剣類やら銃火器の使用が解禁されたこと。
 2つ目は、武闘会がトーナメント形式から乱戦形式に変えられたこと。
 3つ目は、主人公とライバルの戦う決戦パートが白紙化されてしまったこと。
 4つ目は、王子様への求婚のシーンが真っ白になってしまったこと。

「まあ、要するに…主人公と王子様が結ばれてめでたしめでたしとなる筈のストーリーが、どっちが勝つのか分からないようにされてしまったということや…だね」
「うん。ボクや猟兵さん達に配役された【主人公の女騎士】が負けるという結末があり得るってコト。だから、気を付けてねってことを伝えに来たんだ」
「成程な。わざわざ伝えに来てくれておおき…ありがとう」
「どういたしまして」

 神治の似非男役スター女優風スマイル&口調に対して、愉快な仲間たちは笑顔で応える。なお、何度かボロが出かけている部分については、突っ込むと面倒になりそうなので、スルーをしていく方針のようだ。

「ボクたちから伝えられる情報はもうないよ。次の頁には入り口とは反対側の扉から行けるから、先に次の頁に行った猟兵さんたちにさっきの情報を伝えて欲しいんだ」
「了解や。ありがとうな」

 神治は、愉快な仲間たちに礼を言うと、次の頁に続く扉に手をかける。
 そして、次の頁へと移動した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
住人の救出に女装が必要と…
人々を救えずして何が騎士か、手段は選びません

自己●ハッキングでスピーカーの己の音声を「凛々しい女性」に調整
甲冑に一輪のブローディアの花あしらい、青紫のマント翻し
UCと礼儀作法と合わせ『女装』

(愉快な仲間たちに話しかけ)
名乗らぬばかりか兜のままの非礼をお許しください
わたくしは『ブローディアの騎士』
この身に掛けられた『名と甲冑と巨躯』の呪いを解くために旅をする遍歴の者
古今東西の猛者集うこの武闘会で呪いの手掛かりがあればと参加したのですが…貴方達はこの世界の住人では無いご様子

何かお困りごとあれば騎士としてお力となれるかもしれません
わたくしにお話していただけませんでしょうか?


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード



おめかしかー。あんまりやった事ないんだよねえ。
とりあえず全員殴り倒すのは得意なんだけど。

まあ、とりあえず姿は普通の人間の姿に擬態してー、
混沌獣の毛皮をそれに合わせてドレスっぽく変異させてー、
あとは化合生成で香水っぽくなんかフローラルな香りを漂わせておこうか。

武器は拳で十分だし、残り時間は愉快な仲間達に話を聞いてみようか。
んー、他の登場人物の話でも聞いてみようかな。
王子様とか以外に、なんか目立つ人とか重要そうな人とか居なかったかどうか。

そういえば、このお話って何も干渉しない本来の物語ってあるのかねえ。



●武闘会に備えて! ⑤ 機械騎士と女キマイラと『バグ枠』
「住人の救出に女装が必要と…人々を救えずして何が騎士か、手段は選びません」

 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、囚われた人々を救い出すという騎士の使命に燃えていた。
 その為ならば、女装も辞さないと言った構えだ。
 尤も、騎士甲冑型の戦機であるトリテレイアの場合は、他の猟兵がしているような化粧やドレスを着ると言ったことをする必要がない。騎士甲冑自体に性別がなく、男向けのデザインであっても、中から聞こえてくる声が女性のものならば、男装の女性騎士と声を聞いた人は思い込むからだ。
 それ故にトリテレイアは自分にハッキングを仕掛け、、スピーカーから発せられる己の音声を「凛々しい女性」に調整する。
 さらに、仕草や口調から来る違和感を消すために、UC【覆面の機械騎士/機械仕掛けの騎士の振舞い】を使い、より女性らしい仕草を行えるようにデータ補正をした。
 ダメ押しとして甲冑に一輪のブローディアの花あしらい、青紫のマントを装備する。
 圧倒的なサイズ感に目を瞑れば、どこからどう見ても女騎士にしか見えない。そしてそのサイズ感をカバーするためのカバーストーリーまでも用意しているという。
 非の打ち所がないほど完璧な女装を行ったトリテレイアは、愉快な仲間たちから話を聞くべく、青紫のマントを翻しながら、控室の中を歩いていった。

「名乗らぬばかりか兜のままの非礼をお許しくださいわたくしは『ブローディアの騎士』。
この身に掛けられた『名と甲冑と巨躯』の呪いを解くために旅をする遍歴の者。
古今東西の猛者集うこの武闘会で呪いの手掛かりがあればと参加したのですが…貴方達は、この世界の住人では無いご様子。
何かお困りごとあれば騎士としてお力となれるかもしれません。わたくしにお話していただけませんでしょうか?」

 真っ白いクロスが掛けられた机の回りに集まり、何やら相談をしていた愉快な仲間に向けて、完璧な女騎士ロールをしたトリテレイアもとい、女騎士ブローディアが話しかけた。
 これならば、違和感なくこの世界に順応できるだろうと彼は考えた。
 だが、彼らの反応はトリテレイアが想定したものとは大きく違ったものとなった。

「「「「えっ!?何!?どういうこと???『ブローディアの騎士』って何???」」」

 機械騎士の言葉に対して愉快な仲間たちがどよめき立つ。信じられないものを見た、或いは信じられない言葉を聞いたと言った様子だ。

「この物語の【原作となった絵本】の登場人物には、『ブローディアの騎士』なんて存在しない筈だ。どういうことだ??私は、こんな登場人物知らないぞ?」

 鍬頭の愉快な仲間が首を傾げる。どうやら彼は、この『恋は大戦争(物理)』の元になった物語を良く知っているようだ。

「成程、貴方はこの世界の基になった物語を知っているのですね。事態解決のヒントになりそうですので、お話を聞かせていただきたいのですが」
「ああ、構わない。猟兵さんの手伝いができるならば、喜んで」

 機械騎士のお願いを、鍬頭は快く受け入れる。
 オホンと息を吐き、話を始めようとしたその時、彼の背後から声がかかる。

「その話、あたしにも聞かせて欲しいな―」

 声の主は、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)だ。
 色々な生物が混ざったキマイラとしての姿を人間の姿に偽装し、混沌の毛皮をドレスのように変化させている。
 優雅なドレスを纏った美女と言った姿の彼女からは、化合物生成によって作り出した香水のフローラルな香りが、漂っている。

「おや、貴女は。その御姿も良く似合っていますよ」
「ブローティアさんのお知り合いですか」
「ええ、他の依頼で何度か」
「う‥うん?」

 何度か一緒に戦った知り合いから、聞きなれない女性の声が聞こえ、さらに聞きなれない呼び名で呼ばれるという事態に、ペトニアロトゥシカは首を傾げる。
 間違いなく見知った騎士甲冑であるのだが、仕草と声色が完全に女性だ。どういうことかと考えてみると、依頼の説明で女装がどうとか言っていたことを思い出す。
 ペトニアロトゥシカは、不思議そうに首を傾げていた彼女を心配そうに見ていた愉快な仲間に向けて大丈夫だと告げると、話の続きを促した。

「この世界の基になった物語は、『賢王物語』と言う賢い王様が活躍する物語集の中にあるとあるエピソードを絵本化したものだと思います」
「そのエピソードとは?」
「はい。『戦姫の恋』と言います」

 そう言った愉快な仲間は、絵本の中身を簡単に伝える。
 その内容を1言で表すと、王子と女騎士の身分違いの恋の話だ。

 貧乏で位の低い家に生まれた女騎士が、偶然目にした王子に一目惚れして、どうしても近くに居たいと思い、頑張って出世して近衛騎士まで上り詰める。
 王子とその護衛の女騎士は、だんだんと惹かれ合っていくのだが、第四王子と貧乏騎士の娘では身分が釣り合わない。まあ色々なしがらみがあるわけだ。
 王様は第四王子のことを溺愛していて、好きな人と恋愛結婚をして欲しいと思っていた。
 そこで王子様の好みの相手、「強い女性」を探すために武闘会を開く。
 女騎士は悩みながらも参戦を決意。慣れない化粧をして、ドレスに着替えて武闘会に臨み、恋のライバルたちを倒して王子様に求婚。
 2人は結婚して幸せに過ごした。

「とまあ…こんな感じです。原作だと…互いに惹かれるまでの描写や、どうして武闘会なんて方法をとったのかや、詳しく書いていますが、絵本ではオミットされています。」

 元の話を絵本にする過程で色々と落ちたり、改変されていることが、気になるのか鍬頭の愉快な仲間はブツブツと言っている。
 因みに彼は、この物語を彼らが元いた世界に迷い込んできたアリスから読ませてもらったという。

「んー、それじゃあ質問。王子様とか以外に、なんか目立つ人とか重要そうな人とか居なかったのー?」
「絵本の主要な人物は、【女騎士(主人公)】【隣国のお姫様(ライバルヒロイン)】【王子様】【王様】くらいだね。登場人物が多すぎると、分かりづらくなってしまうから」

 ペトニアロトゥシカの質問に鍬頭が答える。絵本は文字数の縛りが大きいので、どうしても登場人物が限られてくる。
 それはこの絵本を元にした猟書の中の世界でも同様だ。
 猟兵や愉快な仲間たちは、主要な人物である【女騎士(主人公)】を演じる【PC(プレイヤーキャラ)】として、この世界に組み込まれている。

「じゃあブローディアの騎士はー?」
「そんなものは、原作にも絵本にも出てこない。だから私達はビックリしたんだ」
「成程。それであのリアクションだったのですね」

 武闘会に呪いを解きに来たブローディアなる女騎士は、王子枠にも隣国のお姫様の枠にも、ライバル役の隣国のお姫様にも当てはまらない。
 この世界に用意された枠から完全に外れた存在だ。

「ブローディアさんは、主人公である『PC』でも舞台装置である『NPC』でも招かれてやってきた『ゲスト』でもない第四の枠。猟書家の用意した悪意のシナリオに悪さする『バグ枠』と言った所でしょうか。」
「バグ枠…」
「……大丈夫なんでしょうか?それ…」

 機械騎士の言葉に対して、愉快な仲間たちはお手上げのポーズをする。

「分かんない。『バグ枠』については、猟書家のナレーションには何もなかったし」
「まあそもそも、【主人公役が大量発生しちゃっている時点で変】だからね」
「ただ、ブローディアさんの存在は、猟書家の【想定を超えている】と思う。『PC』枠から外れたことで【不都合がでる】かもしれないけれど、ブローディアさんの存在は、猟書家の企みを破壊する【鬼札(ジョーカー)】になると思うんだ」
「成程…。まさかこうなるとは…」

 女装用のカバーストーリーが思わぬ方向に行ったことに、少なからぬ衝撃を受けるトリテレイア…ではなく、ブローディア。
 だが、ある意味好都合と思い直す。

「人々を救えずして何が騎士か、手段は選びませんと、申した手前、『バグ』でも何でも使いましょう。それで皆様を助けられるならば、何も問題ありません」
「おおっ、格好いいねー」

 ぐっと、拳を握ったブローディアに対して、ペトニアロトゥシカがパチパチと拍手する。

「それで、次の頁に行くにはどうすればいいの?」
「あっちの奥にある扉を開ければ、次の頁に行けるよ。ほら、窓から見える太陽に矢印がかいてあるでしょう?」
「本当だ。ピカピカ光っているね」
「ええ…うっすらと矢印が見えますね」

 窓から太陽を見上げる女キマイラと機械騎士。ペトニアロトゥシカにはくっきり見えるが、ブローディアの方は薄っすらと見える程度らしい。恐らくはバグの影響だろう。

「扉はあたしが開けた方がよさそうだねー」
「…そうですね。お願いします」

 万が一を考えて、扉を開ける役については、ペトニアロトゥシカが行うことにした。

「それじゃあ行ってらっしゃい。先に行った猟兵さんと情報共有よろしく」
「ボクたちも後から行くね」
 
 愉快な仲間達に見送られたペトニアロトゥシカとブローディアことトリテレイアは、女キマイラの開いた扉をくぐり、次の頁に移動するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウィルトス・ユビキタス
WIZで判定。


これも人々を救うため。女装もやむなしといったところか。まあ探偵ならこれくらい造作もない。

女装の内容はウィッグを被り、赤いロングドレスに身を包む。
出来栄えはGMのダイス目に任せる。

他のおめかしの内容としては、装備しているエスクード・マキナの先端を研いでおこうか。普段は整備をさぼりがちな上に、最近使ってなかったからな。変形機構に不備があるとまずいから油もさしておこう。
そういえばイクリプス・フリティラリアも整備していなかったな。
……装備しているもの全部整備していくか!



●武闘会(プリンセス・ワルツ)に備えて ⑥ザ・準備不足な男
「これも人々を救うため。女装もやむなしといったところか。まあ探偵ならこれくらい造作もない」

 そう自信満々に話すのは、ウィルトス・ユビキタス(武闘派デスクワーカー・f01772)という名の、最近になって探偵業を生業にすることにした男だ。
 ここは猟書家(ビブリオマニア)という謎の存在が手にした魔本の中の謎の多い異世界だ。当然、探偵の解くべき謎も多く存在している。是非とも活躍していただきたい。
 故に、彼には、パパっと女装を決めて、サクッと謎を解きに行ってもらいたいものであるが、はてさて、自信満々だったウィルトスの女装の完成度は、如何程なものだろうか。

「ふっ…完璧だな」

 そう言ったウィルトスの女装は、非常に簡素なものだった。
 黒髪のウィッグを被り、赤いロングドレスを着て赤いヒールを履く。以上!
 出来栄えは‥‥うーん、32点。肌は綺麗だし、顔も整っているのでメイク等は最低限でも構わないのだが、体格が完全に男だ。もう少し肩を隠すなりして、男性らしいボディラインを隠した方がいいのではないか…と、思わなくもない。
 尤も、この依頼の成否に女装の出来は、そこまで関係ないので、このようなザックリとした女装でも全く問題はないのだが。

「他のおめかしの内容としては、装備しているエスクード・マキナの先端を研いでおこうか。普段は整備をさぼりがちな上に、最近使ってなかったからな。変形機構に不備があるとまずいから油もさしておこう」

 女装を終えたウィルトスが次に取り掛かったのは、エクスードマキナと名付けられた変形機構を持った盾の整備だ。最近使っていなかったから、良い機会だという事で分解整備をするらしい。
 …まあ、今回のシナリオはこういった準備をするためのシナリオなので問題はないのだが…もう少し準備してから来いよ、名?探偵。
 白いクロスが掛けられた大机の上に、分解したパーツを1つ1つ並べて、塵や埃を飛ばし、油をさしてスムーズに動くように、ウィルトスは、注意深く確認しながら盾を組み上げていく。
 丁寧に時間をかけて整備したこともあり、エクスードマキナは100%のパフォーマンスを発揮するだろう。

「そういえばイクリプス・フリティラリアも整備していなかったな。……装備しているもの全部整備していくか!」

 そう言うとウィルトスは持っていた装備の整備を始めた。この探偵、完全に準備不足である。初手から戦闘だったらどうするつもりだったのだろうか。何というかひどくマイペースな男である
 と言う訳で持ち込んでいた装備をずらりと机の上に並べ、整備を開始した。

 そうしてしばらくの間、1人で黙々と作業に勤しんでいたウィルトスであったが、彼のすぐ傍で、興味深そうに作業を覗いている存在に気付く。

「おねにいさん、こんにちは。何をしてるの?」
「見ての通り、装備の整備だな。見ていてもそんなに面白くないと思うが」
「いや、すっごく面白そうだね」

 分解した武器のパーツの汚れを丁寧に拭き取りながらウィルトスが答える。愉快な仲間は、面白そうに目を輝かせて見ている。
 そんな彼?(女装をしているので判別がつかない)に対してウィルトスは、暇なら眺めていくといいと伝えると、彼?は嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「じゃあ、お礼じゃないけど、ボク達が調べたことを話すね」
「そいつは助かる。こう見えても俺は、推理とか得意なんだ。情報を元に何か推理ができるかもしれない。作業に集中している時は、相づちは打てないかもしれないが、しっかりと聞いているから安心してくれ」

 それじゃあねと、愉快な仲間が語り始め、ウィルトスは装備の整備をしながら話を聞いた。

「ふむ…。成程な。話を聞いて幾つか推理できたことがある」

 可変鎌の変形機構を確認しながらウィルトスが言った。

「ほえー。どんなことが分かったの?」
「そうだな。重要そうな所だと‥‥『王様』と『王子様』は、舞台装置である『NPC』であること。つまりは、武闘会を勝ち進んで王子様の前に立ちさえすれば、【自動的に告白は成功】する。シナリオクリアという訳だ」
「そうなんだ。何か理由はあるの?」
 
 首を傾げながら、質問をしてくる愉快な仲間に対して、あくまでも推理だがなと前置きをしつつ、ウィルトスが答える。

「猟書家の性格だな。俺たち『PC』でも敵の『ゲスト』の【どちらが勝ってもいい】ようにしている。だから王子様の役を乗っ取り、エンディングを滅茶苦茶にすることはないと、推理できるわけだ。まあシナリオを用意して舞台設定を作って後は演者のアドリブに任せてそれを楽しみたいって感じじゃないか」
「成程ー。ほかに何か分かったことは?」

 ウィルトスの推理に対して愉快な仲間は目を輝かせながら続きを促す。

「主人公役とライバル役だが…今は沢山存在しているのだろうが…最終的には…。いや、これは完全に推論だな。まだ発表できるような推理じゃない」
「えー」
「それにもう、装備の整備も終わったしな」

 持ち込んで来た装備、全ての整備を終えたウィルトスが清々しい表情で言う。完全に一仕事終えたといった感じだが、お前にはこれから馬車馬の如く働いてもらわねばならない。

「そっかぁー。じゃあ仕方ないね。次の頁に行かないと」
「次の頁はどうやって行けばいいんだ?」
「えー、知らないの?あんなに凄い推理をしていたのに…」

 女装男を半目になって見つめている愉快な仲間(女装)が、入り口とは反対側の扉を指さす。

「成程、こっちの扉を開けばいいんだな」
「うん。ボクも一緒に行くよ」

 ウィルトスは、愉快な仲間と一緒に、入り口とは反対側の扉へと歩みを進めると、躊躇することなく扉を開き、次の頁へと移って行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オルヒディ・アーデルハイド


愛と勇気と希望を抱きしめて
『華麗なる姫騎士』で
胸部を締め付けないゆったり仕様のケープレット
ウエストは細くギュッと絞り、腰周りを膨らませ釣鐘のような形になっているフィッシュテール重ねのベルラインスカート
波を連想させるフリルよりは大きいひだ飾りのフラウンス
ウェディングドレスのようなプリンセスドレスのプリンセスナイトに変身

自力で全部用意できるから
今更おめかしや手入れや着飾る必要性はない
お色直しはやろうと思えば変身し直せばいいし
パワーアップした白銀の槍を携えていざ出陣


桐崎・早苗
ふむ…
花嫁修業の一環として、巷で言うじょしりょく、とやらを上げるのに良さそうにございます
私もいずれは家の存続のため、相応しき殿方を射止める日が来る筈
備えあれば憂いなしというもの


実家よりハレの日の礼装を持ち出しましょう
それは華麗な模様の本振袖
黒の地へ金の波や雲と、淡く薄い赤や白の牡丹
帯は橙や黄が良いでしょうか
顔や首筋には白粉を薄くのせ、唇と目元には紅を差しましょう

さて、故郷の礼装がこの世界にどれほど通じるかは不明
ですが、【礼儀作法】と【威厳】が形作る佇まいは万国に通じる筈

では、いざ…参りましょう



●武闘会(プリンセス・ワルツ)に備えて(終) 妖狐と姫騎士
「ふむ…花嫁修業の一環として、巷で言うじょしりょく、とやらを上げるのに良さそうにございます。私もいずれは家の存続のため、相応しき殿方を射止める日が来る筈。備えあれば憂いなしというもの」

 桐崎・早苗(天然風味の狐娘・f10614)は何やらやる気に満ち溢れていた。
 どうやら彼女は、今回の依頼を通して、更なるじょしりょく(女子力のことを言いたいのだと思われる)の向上を目指しているようだ。
 まあ確かに真っ当な恋物語の【PC(主人公役)】として、物語を進めていけば、それなりに女子力(定義には諸説あり)なるものも確かに向上するのかもしれない。
 ただ、この世界は猟書家が作ったトンチキ恋愛アクション系の本であり、タイトルにも(物理)と、後ろについている。
 戦乱よりの価値観を持ち、尚且つ天然気味な所がある早苗に、この世界が悪影響を及ぼして、じょしりょく(物理)が身についてしまわないか少し心配だ。

「実家よりハレの日の礼装を持ち出しましょう」

 控室の一角にある更衣室の中で、彼女が取り出したのは、華麗な模様の本振袖。
 黒の地へ金の波や雲と、淡く薄い赤や白の牡丹がものの見事に刺繍されている。サムライエンパイアの腕利き職人たちによる職人芸によって作られた芸術品だ。
 合わせる帯は黒によく映える黄色。
 化粧については、顔や首筋には白粉を薄くのせ、唇と目元には紅を差す程度で済ませる。

(さて、故郷の礼装がこの世界にどれほど通じるかは不明。ですが、礼儀作法と威厳が形作る佇まいは万国に通じる筈)

 ハレの日の礼装を着こなし、準備万端といった様子の早苗は、凛とした雰囲気を身に纏うと、控室の奥にある次の頁へ続く扉を目指して進んでいった。

 早苗がハレの日の礼装を持って、更衣室へと入って行ってしばらく経った頃、最後の猟兵が向日葵の花が飾られた石の転移門を抜けて、『恋は大戦争(物理)』の世界に現れる。
 その猟兵の名は、オルヒディ・アーデルハイド(アリス適合者のプリンセスナイト・f19667)。
 見た目はぷにっとした幼児体型で幼女に見えるが、れっきとした男子である。所謂、男の娘と呼ばれるタイプの人種だ。
 わざわざ『女装』なんてしなくても、普段通りにしていれば、誰もオルヒディの事を男の子だと見破ることができる人間は、ほぼいないだろう。
 美しく澄んだ特徴的な声を聞いてみても、性別の判断は難しい。
 とはいえ、次の頁へ移動する条件が『化粧などおめかしをすること』となっている。それは男の娘であろうと例外はない。
 だから、オルヒディは変身することにした。

「愛と勇気と希望を抱きしめて」

 美しく澄んだ特徴的な声が響き、エーデルシュタインヘルツと名付けられた魂の石が光り輝いて、男の娘の全身を包み込む。
 そして光が収まると、そこにはウェディングドレスのようなプリンセスドレスを、身に纏ったプリンセスナイトの姿があった。
 胸部を締め付けないゆったり仕様のケープレットにウエストは細くギュッと絞り、腰周りを膨らませ、釣鐘のような形になっているフィッシュテール重ねのベルラインスカート。波を連想させるフリルよりは大きいひだ飾りのフラウンスが可愛らしい。
 
「これで次の頁へ移動できそうだね」

 変身したオルヒディが見上げた先には、絵本チックなイラストの太陽がある。
 その太陽に描かれた青い矢印は、ピカピカと光り輝き、転移門があった扉とは、反対側にある大きな扉を指し示している。
 その扉から『ガチャリ』という鍵が、外された音が響いた。

「では、いざ、出陣!」

 パワーアップした白銀の槍を掲げたオルヒディは、意気揚々と次の頁へと続く扉に向けて歩を進めていった。

●妖狐と男の娘の姫騎士と愉快な仲間と主人公力(ヒロインパワー)!
「まあ!うえでぃんぐどれすでございますか。良く似合っていらっしゃいますわ」
「キミの着物も凄いね。とっても綺麗だね」
「ええ。これはハレの日の礼装でございまして…」

 次の頁の扉の前でバッタリと出会った早苗とオルヒディは軽く雑談をしていた。
 同じ依頼に入る猟兵同士、お互いに顔を知っておくことも重要だ。そうすることで誤射のリスクは減少するし、連携にも繋がることもある。
 互いの自慢の衣装について、話を咲かせていると、そこに誰かが近づいてきた。

「うふふ……ふふ……うふふっ。気合が入った衣装の参加者がいるわね。でも、王子様に求婚するのはあたし…。うふふ……ふふ……うふふっ」

 そう声をかけてきたのは、愉快な仲間の1人だった。
 肥料袋の愉快な仲間で、女装をしていた。肥料袋に書かれた顔に濃ゆいメイクがされていて、妖怪染みた迫力がある。また、男性の体格できっついスリットのドレスを着ていて、スリットから見える太ももからは、剃ったのであろう毛の後が生々しく残っていた。
 手には肉厚な包丁を握っていて、洗脳でもされているのだろうか。瞳は虚ろだ。
 思わず後退りをしたくなるようなヤバイ姿である。

「あなたも武闘会に参加なさるのでしょうか?」
「うふふ……ふふ……うふふっ。勿論よ。言ったでしょう。王子様に求婚するのは、あたしだって」
「えっと、危なくないのかな?」
「うふふ……ふふ……うふふっ。大丈夫よ、あたしたち『PC』には『主人公力(ヒロインパワー)』が備わっているもの」
「主人公力だって?」
「ひろいんぱわーでございますか?」

 頭に疑問符を浮かべる早苗とオルヒディに対して、肥料袋頭の愉快な仲間は、不気味な笑みを浮かべながらも丁寧に説明をしてくれた。
 曰く、『主人公力』というものは、猟兵や愉快な仲間たちと言った、この世界の主人公役になってこの物語を進める存在である『PC』に与えられた、この世界からの『補正』のことを言うらしい。
 その効果は主に2つ。身体能力を向上させるバフと、受けるダメージを減衰させるオーラが与えられるらしい。
 このオーラを纏っている対象は、この世界における舞台装置である『NPC』からの攻撃を一切受けない。つまりは、【愉快な仲間たちは、武闘会において猟兵、愉快な仲間、オウガを除いた一般参加者から殺されることはない】という事が分かる。
 これにより、オウガと戦っている時に、背中から『NPC』に刺される心配がないこと、愉快な仲間たちを『NPC』から保護する必要がないことが分かる。
 この情報は、武闘会を勝ち進んでいくのに、非常に重要な情報だ。

「なるほど。教えてくれてありがとう」
「ありがとうございました」
「うふふ……ふふ……うふふっ。別に礼は要らないわ。貴女たちもどうせ…。うふふ……ふふ……うふふっ。じゃあね」

 オルヒディと早苗に対して礼は要らないと告げた愉快な仲間は、不気味な笑みを浮かべ、意味深な言葉を吐いた後、次の頁へと続く扉を開いてその奥へと飛び込んでいった。

「行ってしまいましたね。私達も追いかけましょう」
「うん。ボク達も行こう。あの様子だとちょっと心配だね」
「では、いざ参りましょう」

 早苗とオルヒディは互い顔を見合わせて頷くと、次の頁の扉へと飛び込んで、肥料袋頭の愉快な仲間を追いかけていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『意地悪な三姉妹』

POW   :    長女の飽くなき食欲
【あらゆる物を貪り尽くす暴飲暴食モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    次女の罵詈雑言の嵐
【悪意と侮蔑に満ちた心ない悪口】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    三女の羨みの手
自身が【羨望心】を感じると、レベル×1体の【相手の物を無理矢理奪おうとする無数の腕】が召喚される。相手の物を無理矢理奪おうとする無数の腕は羨望心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●情報収集パート ※シナリオを推理したい人向け
 頁と頁の間にある暗闇の中で、猟兵と愉快な仲間たちは互いの集めた情報を共有した。

★猟書家について
①真っ黒づくめの女の人。正体は愉快な仲間でも分からない。
②彼女の目的は【猟書『恋は大戦争(物理)』】を完成させること。
③この猟書は「賢王物語」という名の本にある小咄を元にした【絵本】を、猟書家が改変したトンチキ恋愛アクションものである。要は二次創作ものの同人誌。
④猟書家はこの物語を完成させるために、【主人公の女騎士役】として愉快な仲間たちを攫い、【ライバルの隣国のお姫様】としてオウガをゲスト(お客様)として招待した。
⑤猟書家は登場人物(演者)のアドリブを楽しみたいタイプの作者である。その為、必要以上の介入はしてこない。キャラクターが勝手に動くことを至上の喜びとするタイプである。

★『恋は大戦争(物理)』について
①原作が絵本であるため、絵本の二次創作であるこの本も絵本である。
②控室のシーンは9pの内容である。1~8pについては、武闘会までの経緯が書かれていた。愉快な仲間たち曰く、1~8pは映画を見ていたような感覚だった。
③この物語は、猟書家の手によって内容改変されている。
 シナリオの改ざん内容の主な点は4つ。
 1つ目は、武闘会で刀剣類やら銃火器の使用が解禁されたこと。
 2つ目は、武闘会がトーナメント形式から乱戦形式に変えられたこと。
 3つ目は、主人公とライバルの戦う決戦パートが白紙化されてしまったこと。
 4つ目は、王子様への求婚のシーンが真っ白になってしまったこと。
④主要な登場人物については、『女騎士』『王子』『王様』『隣国のお姫様』の4人。絵本なのでかなり人数が絞られている。
⑤元々は貧乏で位の低い女騎士が王子様と結ばれるラブロマンス。元の絵本に込められた願いは『夢はひたむきに努力すれば叶う』。作者はホワイトスネイク=サン。
⑥猟書家は【明確な悪意】を持って「戦姫の恋」を改変した。

★配役について
①『PC』:主人公の女騎士役を演じる者。愉快な仲間に配役された役。グリモア猟兵がこの枠に猟兵をねじ込んだ為、猟兵(一部を除く)もこの配役である。主人公役である『PC』には、世界によって【主人公力(ヒロインパワー)】が付与されている。『PC』とは、プレイヤーキャラのことを意味する。
②『ゲスト』:猟書家にお客様として招かれたもの。つまりはオウガのこと。敵役ヒロイン兼ラスボス枠の【隣国のお姫様】を配役されている。『PC』が【主人公力】を持つならば、ライバルである【隣国のお姫様】には【ライバル力】があるかも。
③『NPC』:この世界における舞台装置。【王子様】や【王様】、【武闘会の一般参加者】など。例え死んだとしても頁を捲れば元通り。
④『バグ』:この世界に存在しない配役。本来ならば存在し得ない存在であるため、この世界からの影響を受けづらい(例:矢印が見え辛い)。猟書家の想定を超えた存在であり、猟書家の仕掛けた【悪意】を破壊する鬼札。とある条件を果たすと、『PC』から、『バグ』になることもあるらしい。例:『ブローディアの騎士』となったトリテレイア

★主人公力(ヒロインパワー)
①主人公である『PC』に与えられた世界からの補正。
②その効果は主に2つ。【身体能力を向上させるバフ】と、【受けるダメージを減衰させるオーラ】が与えられる。
③オーラを纏っている対象は、この世界における舞台装置である『NPC』からの攻撃を一切受けない。つまりは、【愉快な仲間たちは、武闘会において猟兵、愉快な仲間、オウガを除いた一般参加者から殺されることはない】。
④気になる台詞「まあそもそも、【主人公役が大量発生しちゃっている時点で変】だからね」
⑤主人公力もあるならば、ライバル力も存在するらしい。
⑥バグ枠には適用されない。(PCに与えられる力なので)
⑦????????????????????????(まだ知らない情報です)
⑧????????????????????????(まだ知らない情報です)

★武闘会
①女性限定の大会(女装でも出られるくらいにはガバガバ)
②何でもありの大会。
③NPCは無限に復活して恋のライバルを物理的に蹴落(ころ)す。
●10p 開会宣言 太陽の文字は『開会宣言を聞くこと』
 登場人物が全員揃うと、頁がぺらりと捲られます。
 次の瞬間、何もなかった暗闇に大地が現れ、その上に石畳が敷かれました。
 空から絵本のイラストのような太陽が照らし、周囲を明るく照らします。
 そこはとても広い、城の中庭でした。
 周囲を見渡すと、物騒な武器を携えた沢山の参加者と、美しい石造りの建物が見えます。
 ほかに何かないかと探していると、突然キャー!キャー!という黄色い声援が『NPC』たちによって発せられました。
 何事かと、声がした方向へと振り向くとバルコニーに人影がありました。
 そこには、目が覚めるほどイケメンな金髪碧眼の王子様と如何にも絵本に出てきそうな王様がいました。

「今日はこの僕の為に、こんなに大勢の女の子が国中から、そして他国からも集まってくれてありがとう。随分と大事になってしまって僕もびっくりしている。
 父の思い付きで始まってしまったこの武闘会であるが、僕は参加してくれた君たちの心を真摯に受け止めようと思う。
 それが、父の思い付きを止められなかった僕のケジメだ。
 僕は、この国の第四王子として、武闘会の優勝者を生涯の伴侶として愛することを、ここに誓おう!」

 王子様の言葉に会場がキャーキャーと黄色い声援で包まれました。
 参加者たちの殺る気(誤字に非ず)もどんどんと上昇しているのが肌で感じます。
 そして、会場の盛り上がりが最高潮に達した頃、王様が一歩前に出て言います。

「それではこの国の王の名の下に、武闘会の開会を宣言する!!」

 その言葉を聞いた参加者たちは、そのまま次の頁へと移動することになりました。
.
●????????
「はぁ~。やっと始まったのね。このわたくしをここまで待たせるとは…まったく。冗談じゃないわね。しかも猟兵が混じっていますし。わたくしは聞いていませんわよ。あいつ等が参加するなんて」

 乱戦が始まった城の中庭の一角で1人の美しい女が溜息を吐いた。
 どうやら、聞いていたことと違ったことが起こったらしい。美しい顔が不機嫌そうに歪んでいる。
 だが、直ぐに何かを思いついたのか。表情を明るいものへと変えると、楽し気に呟く。

「ふふふ。確かに想定外…ですが、これはこれで悪くはありませんわね。折角ですし、彼女達にはあのブサイクどもの始末を任せましょう。ええ、ええ。これはこれでわたくしの手間が、省けますわ。ふふふ。精々わたくしの役に立ちなさい。猟兵共」

 武器を持った『NPC』たちによる乱戦の中を、白雪のように美しい女は、まるで散歩でもするような優雅な足取りで通り過ぎていった。
 

●11p~ 恋のライバルを蹴落とせ(集団戦)
 開会宣言を聞き終えた『PC』たちは、中庭に立っていた。
 どうやら、次の頁へとやって来たらしい。
 先程、王子様たちが居たバルコニーを見ると、人影がなくなっていた。
 代わりに、殺気立った『NPC』たちがそこら中で戦闘を始めていて、先程のキャーキャーと言った黄色い声援の代わりに、ギャーとかうわーと言った悲鳴が響いている、
 すぐさまに戦闘モードへと入る猟兵たちの前に、3人組のオウガが現れる。

「ねえ、見て。あれが『PC』ですって(くちゃくちゃ)」
「やだわぁ。ガキばっかりじゃない。王子様はお子様趣味じゃないわよ」
「でも『PC』。主役ヨ。羨ましい。奪ってしまおうかしら」

 意地悪な三姉妹という種のオウガだ。
 彼女達こそがこの世界に招かれた(ゲスト)なのは間違いない。

「ま、王子様の愛は私の物。邪魔をするならばむさぼり喰らうしかないわ」
「ええ、ええ。ブスどもには王子様は相応しくないわ」
「うふふ‥‥っ。何から奪ってやろうかしら」

 猟兵たちよ、恋のライバルである意地悪な三姉妹を退けて、次の頁へと進むのだ。

●ナレーションなのよー
・この章では意地悪な三姉妹を倒していただきます。
・恋のライバルを倒していくと頁が進み背景が変わります。
・また、何故か知らないけれども、頁が進むたびに【敵が強くなる】気がします。
・洗脳されている愉快な仲間については何故か【愉快な仲間や猟兵】を優先して攻撃をしてきます。また、気絶させた愉快な仲間については、『正常な』愉快な仲間が救助します。
・愉快な仲間たちは『NPC』からの攻撃は、無効ですが『PC』や『ゲスト』からの攻撃には耐えられません。
・青い奴は普通に口が悪いです。
※プレイングの募集は、7月31日(金)の8:30以降とさせていただきます。
桐崎・早苗

ふむ、武術を披露する場も兼ねるとの認識でしたが…
斯様な乱戦の有様は、場が乱れた戦場に似ておりますね

●戦闘
ぶつり…要は『最終的に殴れば』良いのでしょう?
過程は問いますまい
振袖のすそをたすきで縛る等で足回りを確保して霊符をばら撒きUCを使用
【呪詛】も加え効率よく敵の『運と健康』を攻撃いたしましょう
そこへ【戦闘知識】と【怪力】と【早業】を活かした物理を加えれば条件は満たせるかと
みぞおちを打てば、【息止め】…呼吸困難からの気絶も狙えるでしょうか?

●戦闘様式
・右を前に向けた半身の構え
・基本は片足を軸に円の動きで半歩動いての回避や受け流し
・まだ刀は不使用で体術を使用
・頭突き、目潰し、蹴りも躊躇なく放つ



●11p~恋のライバルを蹴散らせ! ①最終的に殴ればOK?
「ふむ、武術を披露する場も兼ねるとの認識でしたが…斯様な乱戦の有様は、場が乱れた戦場に似ておりますね」

 武闘会が始まり、参加者たちによる怒声と悲鳴、剣戟の音が響く城の中庭。
 敵味方が入り乱れ斬り合う姿はさながら戦場のよう。恋は大戦争(物理)というタイトルそのままの様子だった。
 そんな戦場の様子を眼と首を動かすことで、ざっくりと把握した桐崎・早苗(天然風味の狐娘・f10614)は、その場に留まったまま空を見上げる。
 絵本のイラストのような太陽には青い矢印と『恋のライバルを蹴落とせ(物理)』と書かれている。

「ぶつり…要は『最終的に殴れば』良いのでしょう?過程は問いますまい」

 振袖の裾をたすきで縛り、足回りを確保しつつ、早苗は、物騒な結論を出した。
 まあ…その解釈で問題はないだろう。あの文字が意味するのは、恋のライバルを物理的に排除して数を減らせという事である。別に方法は、物理的に仕留めるだけでなく、魔法でも呪殺でも何でも構わない。
 そんな彼女の元に、周囲にいたNPCを蹴散らしながら、三人組のオウガが現れた。

「ねえねえ…見てあの着物。綺麗ね。羨ましいわ…ああ…羨ましい‥‥」
「クフフ!!だったらひん剥いて奪えばいいじゃない。そうすれば貴女のブサイクな顔でもひょっとしたら王子様も振り向いてくれるかもしれないわよ。クフフフ!!」
「まあ…!なんて口が悪い。本当に最悪!!そう思わない?ねえ、聞いてる?」
「むぐむぐ(ケーキを食べている)」

 三女の緑色のドレスを着た女は、早苗の着物を物欲しそうな眼で見つめ、次女の蒼いドレスの女は、その姿を見て馬鹿にするような言葉を吐き、紅いドレスの長女は2人のやり取りに興味がないのか、マイペースにケーキを貪っていた。
 次女に馬鹿にされ、長女に無視された三女は怒り心頭と言った様子だ。

「もういい!分かったわ!何もかも、私が奪ってやるワ!」
「いえ、奪わせはしません」

 左足を下げ、右を前にした半身の構えを取った早苗は、怒りに任せて突っ込んでくるオウガ姉妹の三女を迎え撃つべく、UCを発動する。

「まずは九紫、八白、七赤、六白…、さらに五黄、四緑、三碧、二黒、そして一白。…我、九星の理を以て汝に厄を与えむ…!」

 早苗が呪を口にすると霊符が九宮図を描くように展開する。
 それは、気学における時と場を表す概念の九宮に。五行を配当した九星と呼ばれる占術を応用して創り出された凶の気を集める陣である。
 この陣によって集められた凶の気は、敵対するものの運気を削り、生命力や神秘の力も削ぐという。

「さア、アタシにその着物を寄こしなさああアアイ!!」

 UC【九星凶方陣】の中心にいる早苗に、三女が奇声を上げながら飛びかかる。
 体当たりで吹き飛ばし、馬乗りになって着物をひん剥くという算段だ。
 それに対して早苗は、円の動きで右足を少し右側へとずらし、重心を右に傾けると、そのまま右足を軸にして腰をひねり、左の回し蹴りを放つ。

「ンあああああああああアア!!!」

 陣の効果によって神秘の力(ライバルパワー)が減衰した状態で、鳩尾に強烈な蹴りを入れられた三女は、地面をゴロゴロと転がると、白目を剥いて気絶。
 そのまま呪詛の効果で絶命した。
 すると、光になって消滅した三女から、何かの文字が書かれたようなオーラが飛び去って行き、その一部が、次女や長女の元へと降り注いだ。
 次の瞬間、頁が切り替わり、城の入り口付近へと背景が移っていく。

「背景が切り替わりましたね。次の頁へと移動したという事でしょうか」

 目の前に居る長女と次女への警戒はそのままに、軽く首を動かして太陽を見る。
 『12p』『恋のライバルを蹴落とせ(物理)』と書かれている。
 間違いなく頁移動している。
 だが、UCの陣はそのままだ。

「クフフフ!馬鹿な子。これであの子に掛かっていたライバル力はこっちのものに」
「……(むしゃむしゃ)」
「今度は…あんたがって‥‥ふべらっ!」

 相も変わらずにお菓子を貪り続ける長女は、次女の背中を蹴りだす。どうやらお前が先に行けと言いたいようだ。

「キイイイ!!この紅豚!!良いわよ、やってやるわよ!!」

 ヒステリックな悲鳴を上げながら次女が迫る。
 先程の三女と比べると、速度が上昇して、攻撃が通りにくくなったように感じる。
 だが、それでもUC【九星凶方陣】の中にいる早苗を倒すのには至らず、だんだんと身体能力も神秘の力も削られていき、急所に拳を叩きこまれて絶命した。
 そしてまた、背景が切り替わった。

「最後は貴女だけでございますね」

 早苗が最後のケーキを口の中へと放り込んだ長女に告げる。
 背景はお城のエントランスホールへと変わっている。
 何故か見える太陽には『13p』と『ライバルを蹴落とせ(物理)』の文字。

「はぁー仕方ないわね。ケーキも無くなったし、ライバル力も強化されたし良いわ。では、アタシが貴女を貪り喰らってあげるわ!」

 UC【長女の飽くなき食欲】の効果によって【暴飲暴食モード】へと変身した長女が、陣の中にいる早苗へと襲い掛かる。
 UCによって超攻撃力と超耐久力を得て、さらにライバル力なるもので強化された長女の攻撃は非常に強力だ。まともに受けたならば、大ダメージは免れないだろう。
 防御力についても超耐久力を誇る肉体を、ライバル力によるバリアが保護しているため、かなり堅牢だ。

「うぶぶぶぶ!抵抗は無駄だよ!さあ、このままアタシに貪られなああ!!」
「いえ、決して無駄ではございません」

 長女による何度目かの突進を体術で受け流しながら、早苗が言う。
 はた目から見れば、早苗は防戦一方であり、形勢は長女の方が有利に見える。
 だが、早苗の表情には不思議と余裕がある。
 その理由は、すぐに分かった。

「ご愁傷様。そこは五黄殺。全ての運気が落ちる凶方でございます」
「はあ?何を言って・‥‥うぐううううううう…‥‥」

 突如、長女がお腹を抱えて蹲った。ぐぎゅるるるという悲鳴がお腹から鳴り、全身からは脂汗がダラダラと流れ落ちている。
 そう、長女は、早苗によって気学における凶方へと誘導されていたのだ。

「どうやらけえきが中(あた)ったようでございますね。ついていませんわね」

 腹痛で動けなくなった長女に対して、早苗の体術と呪術が炸裂。長女は碌な抵抗もできないまま、攻撃を撃ち込まれ、覚えていなさいよ…と弱々しく叫んで消滅した。
 長女が消滅すると、再び周囲の背景がぺらりと頁を捲ったように切り替わる。

「また、次の頁へと飛ばされるのでしょうか」

 その言葉を残して、早苗は、次のクライマックスの頁へと移動した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
思っていたよりも複雑な状況なのですね。ですがやることに変わりはありません。

洗脳された者を発見したら【武器落とし】や【気絶攻撃】で無力化します。
少々心苦しいですがこれも保護の為致し方ありません。後の事は既に正気に戻っている方に任せましょう。

……次女の物言いには呆れますね。ですが口撃も立派な戦術ですので惑わされず【落ち着き】を失わず、あくまで平常心で臨みます。
舌戦を所望であれば付き合いましょう。罵詈雑言に対して【挑発】や【言いくるめ】で【カウンター】を行います。さらに【二回攻撃】で反論の隙を与えません。

しかし武闘会で重要なのはあくまで武力。論戦の決着はUC【漆黒の呪剣】にてつけるとしましょう。



●恋のライバルを蹴落とせ(物理) ②暴言女vs暗黒騎士
「思っていたよりも複雑な状況なのですね。ですがやることに変わりはありません」

 後発の猟兵達や愉快な仲間たちから齎された情報を吟味したセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、自分のするべきことは変わらないと結論づけた。
 猟書家の仕掛けた悪意や主人公力やライバル力によるギミックなど、猟兵たち『PC』サイドには考えないといけないことは多々ある。
 だが、それは必ずしも全員が考えないといけない事ではないし、考えたところでオウガを倒し、愉快な仲間たちを救い出すという行動が変わるものでもない。
 参加した猟兵達の中には、こうした謎に対する調査を得意とする者も居る。
 ならば、謎解きはその猟兵に任せて、1人でも多く洗脳されている愉快な仲間たちを保護する方が先決だ。

「気絶した仲間たちはボクたちで正気に戻すから、お姉さんは安心して戦ってね」
「ありがとうございます。では、行きましょう」

 セシリアは、控室で出会ったスコップ頭の愉快な仲間とその仲間たちと一緒に、武器を持って斬り合いを続ける『NPC』たちが入り乱れる戦場を駆けていく。

「これで…3人目ですね」
「うん。順調だね」

 洗脳させて襲い掛かって来たホースリール頭の愉快な仲間の手にしていた包丁を弾き、剣の柄で鳩尾を軽く突き、気絶させたセシリアが一息吐く。
 スコップ頭の愉快な仲間が言うには、この世界に連れて来られた愉快な仲間たちは全部で30人くらい居て、その内の半分以上は正気に戻ったという。
 その残りの内の3人は、今、保護することができたが、まだまだ保護できていない愉快な仲間たち残っている。
 彼らも、ホースリール頭の介抱が終われば助けに行かないといけない。
 そう、考えた時だった。

「良い剣ね。ソレ、私に頂戴?」

 NPC達の間を緑色のドレスが強引に突破して迫る。
 意地悪な三姉妹というオウガの三女だ。

「うわあああ!!何か来たあああああ!!」
「私の後ろに下がってください。オウガは私が相手をします」

 セシリアは愉快な仲間たちとオウガの間に割り込むと、猛烈な勢いで迫る緑女に向けて暗黒剣ダークスレイヤーを袈裟に振り下ろす。

「ぎゃああああああああ!!」

 暗黒騎士の振るう漆黒の大剣に袈裟に切り裂かれた緑色のドレスのオウガは、断末魔の悲鳴を上げて絶命する。
 随分とあっさりとやられたなと首を傾げたセシリアと愉快な仲間たち。
 だが、一体どうしてだろうと考える間もなく状況が目まぐるしく変わっていく。
 風景が歪んだと思ったら、何故か城の入り口へと移動していたのだ。

「この感覚…。もしかして頁移動した?」
「ええ、そのようですね…」

 スコップ頭の愉快な仲間の言葉に対して、セシリアは城の入り口を凝視したまま答える。
 彼女の視線の先には、赤と青のドレスを着た2人のオウガがいる。

「今すぐ私から離れて遠くに隠れていてください。敵が出ました」
「うん。分かった。お姉さん、気を付けてね!」

 セシリアの言葉に頷いた愉快な仲間たちは、気絶しているホースリール頭を抱えて、オウガが居る方とは、反対方向を目指して走っていく。
 その姿を横目にしつつ、暗黒騎士は2人のオウガの元へと向かう。

「ねえ…あの子。何もせずにあっさりと死んだんだけど。ダサ過ぎじゃない。っていうか本当に使えないわね」
「…(むしゃむしゃ)」
「ねえ…私の話聞いてる?ってかいつまで食ってるわけ?だからあんた痩せないのよ。分かる?分かんないでしょうねー。あんたバカだかだらねー。はぁー」

 オウガに近づいたことで、彼女たちの会話の内容が明らかになる。
 内容は、蒼い服の次女が、長女や三女のことをひたすら罵倒しているものだ。
 長女の方は慣れているのか、完全に無視して皿の上のお菓子を貪ることに夢中だ。

「っていうか。猟兵来たわよ。次はじゃんけんに負けたからアンタの番でしょ」
「ちっ。分かっているわよ」

 空っぽになった皿を地面に投げ捨てると、長女はファイティングポーズをとる。どうやら恵まれた体格を生かした格闘戦が得意なようだ。

「クフフフ。私も援護してあげるから、精々私の為に頑張りなさい」
「はぁーっ。面倒だわ」
「…1つ尋ねます。あの緑色のドレスのオウガは貴女達の身内ではないのですか?」

 2人のオウガに対峙したセシリアは、暗黒剣を構えたまま尋ねる。

「クフフフ。ええ身内よ。使えない身内。あの子もバカね。クフフフ。無様に死ぬくらいしか役に立てないバカ。クフフフ!!」
「‥‥私は、長話に付き合う気はないわよ」

 蔑みの表情を浮かべながら暴言を吐き続ける次女。
 長女は、暴言を無視してセシリアへと襲い掛かる。
 セシリアは、長女の繰り出す拳をダークスレイヤーの腹で受け止める。

「そう言えば、貴女。使えない愉快な仲間なんか助けていたわね。なんで殺さないわけ?活かしていく意味なんてないじゃない。貴女、主人公力とかライバル力って知っている?ちゃんと意味分かっている?恋のライバルを蹴落とせって意味、ちゃんと分かっている?いや、分かっているわけないか。クフフフ。きゃははは!!」

 長女と戦っているセシリアに向けて、次女がけたたましくまくしたてる。
 彼女が口にした暴言は、衝撃波となって、セシリアと長女を襲う。

「うっぜえ…あの糞女。後で絶対に黙らせる」
「おい豚ぁ!さっさと倒しなさいよ!」
「うぜえ‥‥」
(……次女の物言いには呆れますね。ですが口撃も立派な戦術ですので惑わされず、落ち着いて平常心で臨みましょう)

 次女の放つ暴言に対してあくまでも平常心を心掛けながら頭に血が昇るのを防ぐ。2対1の戦いだ。冷静さを失って次女に斬りかかれば、長女に殴りかかられる。
 また、先程の三女に比べてかなり攻撃が通りにくくなっているのも気がかりだ。肉体が硬化して力が増しているのもそうだが、それ以上に全身に纏った膜のようなものが邪魔だ。

「舌戦を所望であれば付き合いましょう」
「舌戦?はぁ~何を言っているの?アレはただの事実の指摘よ?分かる?分からないか。じゃあ、教えてあげる。この世界では皆助かってハッピー☆なんて風にはできてないわ。だって、【そういう風にできていない】もの。クフフフ。はっきりと言ってあげるわ!【愉快な仲間たちを全員生かしたままクリアするのは不可能】よ!キャハハハ!!」

 キャハハハと蒼いドレスのオウガは嘲笑する。
 この物語は、猟書家の手によって味方同士で殺し合う【共食い】の物語になった。助け合いなんて無駄だし、意味がないと切って捨てる。

「不可能なんてありませんよ。やろうと思わないからできないだけです。例え猟書家が、仲間同士で殺し合うようにプロットを組んで、この本を書いたのだとしても、その想定を超えてしまえばいい」

 そう、居た筈だ。猟書家の想定を超えて第四の枠を生み出した猟兵が。
 その存在こそが、猟書家の作った共食いの物語を破壊する鬼札となると。

「は???????」

 何を言っているのか分からないと言った様子で、蒼いドレスのオウガが固まる。
 喧しい奴が静かになった。長女を仕留めるのは今だろう。

「暗黒剣よ、今こそ真の力を見せる時だ」

 セシリアは暗黒剣ダークスレイヤーに施された封印を解除して、オウガ姉妹の長女へと斬りかかる。

「ぎゃああああああああ!!!」

 暗黒を纏った大剣が紅いドレスのオウガをばっさりと切り捨てる。
 これで敵は残り1人。

「ちょっと…何やられているのよ‥‥!!」

 長女が消滅し、長女の持っていたライバル力の一部が自分に宿ったことで、ようやく状況を飲み込むことができた次女がうろたえる。
 暗黒騎士は、次の言葉を言わせまいと戦場を駆ける。道中で背景が歪んで次の頁へと行こうと関係ない。同時に転移したもの同士の距離が変わらないのは、先程、愉快な仲間たちと一緒に城の入り口まで飛んできた時に確認済みだ。

「はあああああ!!!」

 距離を詰めたセシリアが、UC【漆黒の呪剣】によって強化された暗黒剣を縦に振り下ろす。
 ――が、それは両腕をクロスして大剣を受け止めた次女によって止められる。
 信じられないことに枯れ枝のような細い腕が分厚い暗黒剣の刃を受けとめている。

「クフフフ!?防いだわよおおお!!」
「いや、まだだ。暗黒剣よ!」

 暗黒剣に施された暗黒の封印をさらに解除する。体にかかる負担は大きくなるが、それ以上に、このオウガに喋らせる方が問題だ。

「嫌あああ!!!この私があああああ、こんな所でええええ!!!!」

 暗黒剣によって真っ二つにされた蒼いドレスのオウガは、断末魔の悲鳴を上げると、その体を文字列の塊へと変えて消滅した。
 そして、この部屋の進行条件を満たしたセシリアも、愉快な仲間たちと一緒に、次のクライマックス頁へと移動していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御魂・神治
※WIZ判定、★アドリブ歓迎


乱戦いうてもこんなに多いとは聞いてへんで!

ドレスのトレーンの中に忍ばせていた神器銃「森羅」と「陰陽」を使い
【乱れ撃ち】でライバルNPCを蹴散らしつつ、洗脳されとる愉快な仲間達は【気絶攻撃】で対応する、こいつらは悪うないでな
三姉妹の攻撃はUC「病魔排撃『大国』」の結界で吸収
逆転効果で威力を上乗せし、「爆龍符」の【範囲攻撃】【爆撃】で三姉妹に攻撃や

男の子って...こういうの好きやろ?
『個人差があります』



●恋のライバルを蹴落とせ(物理) ③爆発は男の浪漫(女装中)
「乱戦いうてもこんなに多いとは聞いてへんで!」

 御魂・神治(除霊(物理)・f28925)は、関西弁で突っ込みを入れていた。
 人工式神(AI)の天将(てんしょう)が控室で言っていた、淑女らしくというアドバイスは既に忘却の彼方と言った様子だ。
 それも無理はないことだった。
 右を見ても、左を見ても、ついでに言うと前を見ても、後ろを振り返ってみても、NPCの女の子が殺し合いをしている。地獄のような…或いは地獄そのものと言っても過言ではないような過酷な大戦場だ。
 これが『夢はひたむきに努力すれば叶う』というテーマの騎士と王子の恋愛ものを元にした絵本から作られたかと思うと、何とも言えない気持ちになって来る。
 猟書家の性格の悪さをひしひしと感じる。

「まさに恋は大戦争(物理)。タイトル回収したな…ってじゃかましいわ!」
『喧しいのは神治の方ですね』
 
 手慣れた様子でノリツッコミを行う見た目と声だけは男役スター女優に対して、相棒のAIはいつも通りに抑揚のないキツイ口調で嗜める。
 NPCからの攻撃は、主人公力とやらが防いでくれても、いつ、オウガの奇襲があるか分からない。警戒はしておいた方が良いだろう。

「ほな、やるか」

 そう言うとドレスのトレーンの中に忍ばせていた神器銃『森羅』と『陰陽』を取り出す。
 狙う対象は、取りあえず周囲に居るNPC。
 景気よく乱れ撃ちをすることで、数を減らす。NPCはこの世界の舞台装置だ。殺したところで、頁を捲れば復活する存在だ。殺したところで然したる問題はない。
 寧ろ、これだけの数がいて尚且つ大声を出して殺し合いをされるのは邪魔だ。剣戟や悲鳴に紛れたオウガに接近されて、奇襲をされるというリスクが生まれる。
 だからこそ、神治は周囲にいるNPCを間引いた。

 NPCを間引くことで思いがけない特典があった。
 それは、洗脳されている愉快な仲間たちを見つけやすいという事だ。

「大人しくしてなー」
「ぐあっ!?」

 腰だめにナイフを構えて突っ込んでくるやくざスタイルの突撃を軽々と交わした神治は、神器銃のグリップで愉快な仲間にノックアウト攻撃を仕掛け、気絶させる。
 気絶した愉快な仲間については、正常な愉快な仲間が介抱してくれている。
 そうやって、『NPC』を間引き、愉快な仲間たちをノックダウンさせていると、周囲の景色が歪んでいくのに気づいた。
 次の瞬間、彼らは城の入り口付近に飛ばされていた。

「ん?なんや、急に場所が変わったで?」
『頁移動かと思われます』

 人工式神が天将の指差す先を見上げる神治。そこには絵本のような太陽があり、『恋のライバルを蹴散らせ(物理)』『12p』という文字が書かれていた。
 先程の中庭が11pだったので、確かに1p分移動したらしい。
 と、そんな風に現状の確認をしていた神治の元に三人組のオウガが現れる。

「げっ。猟兵じゃないの。面倒ね」
「…(もしゃもしゃ)」
「ああ…何か素敵な銃を持っているわ。妬ましい…羨ましイ…!」

 蒼いドレスの次女は悪態をつき、長女はケーキを貪り食っていて、三女はじーっと物欲しそうに神治の持つ神器銃を見つめている。

「これは俺の仕事道具や、あんたにはやらんで」
「キイイイイイイイ!!!欲しい!欲しイ!羨ましい。羨ましい。羨ましい。羨ましい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しイイイイイ!!」

 ダメと言われると余計に欲しくなる。三女の欲しイ欲しいと羨む羨望心が、相手の物を無理矢理奪おうとする無数の腕を召喚する。
 それらは、羨望心を与えた対象を追跡し、攻撃する。

「おもろいヤツやな、100倍返しや」

 神治はにやりと笑うと、全身を、マイナス要因をプラス要因に変える【病魔排撃『大国』】の結界で覆う。
 それは反転の力を持ったユーベルコードの結界。神治から一方的に奪う筈の三女のユーベルコードで召喚された腕は、結界に分解されて、逆に神治に力を与えることになった。

「えっ。えっ。えっ。嘘よ!あたしの腕…消えた!?」
「むぐむぐ…ゲホゲホ、ゲッホ!!」
「どうなってるのよ!!てか、むせてんじゃないわよ!おバカ!!」
「そんじゃあ、ド派手に行こうやないか」

 そう言って神治が取り出したのは『爆龍符』と呼ばれる御札爆弾だ。。
 彼は、それにユーベルコードによって腕を分解したことで得た力を注ぎ込むと、UCの腕を消されたことに驚き、軽くパニックになっていた三姉妹に向けて投げ込んだ。

 ―――ドゴオオオオオオォォォン!!!!

「「「ぎゃああああああああ!!!!」」」

 ド派手な爆音と共に膨大な熱量が炸裂する。
 爆発に巻き込まれ、圧倒的な熱量と爆風に晒された三人組のオウガは、断末魔の悲鳴を上げると、身体を無数の文字列へと変えて、あっけなく消滅した。

「男の子って...こういうの好きやろ?」
『個人差があります』

 いつも通りのやり取りをした神治と天将は、オウガの消滅を見届けると、クライマックスの頁へと移動していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード



んー、勝手に役を名乗っていいなら、女騎士は柄じゃないし別のにしようかな。
【主人公力】なんてあたしはいらないし、
一人しかいない主人公の力を複数に分けたら足りなくなったりしそうだしねえ。

役柄は、そうだねえ。
「隣国のお姫様を暗殺するため人間に化けて大会に参加した怪物」で。
事実からそう離れてもいないし、
これなら姫役のオウガを優先して狙っても不自然じゃないしね。

【嵐撃乱討】でオウガ以外は殴って気絶させつつ、
オウガだけは鋭い爪をこっそり伸ばして串刺しにして確実に仕留める感じで、
紛れ込んだ怪物の役を演じていこうか。

PCじゃなくなったらNPCの攻撃も通るようになりそうだから、
そこは注意しないとねえ。



●11p~恋のライバルを蹴落とせ(物理) ④バグ枠:怪物の暗殺者
「んー、勝手に役を名乗っていいなら、女騎士は柄じゃないし別のにしようかな。
【主人公力】なんてあたしはいらないし、一人しかいない主人公の力を複数に分けたら足りなくなったりしそうだしねえ」

 混沌の毛皮をドレスのように身に纏い、人間の姿を偽装しているペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、何やら考え事をしていた。
 どうやら、人間の女騎士という役柄は、キマイラである彼女には合っていないと感じているようだ。
 この世界における猟兵達は、主人公の女騎士役という事になっているが、そこから外れたオリジナルの役を演じることができることを彼女は知っている。
 知り合いの機械騎士は、『ブローディアの騎士』と名乗り、この世界に本来は存在しえない第四の枠である【バグ枠】として活動することになった。
 それに【主役力】も胡散臭い。一人しかいない筈の主人公の力を複数に分けたら足りなくなるのではないかと彼女は仮説を立てる。
 仮にこのことが事実だと仮定すると、【主人公力=1/【PC数】算出される】可能性が出てくる。
 この仮定を確認するために、女キマイラは、1人の愉快な仲間を呼び出した。

「おや、貴女は。どうしました?」

 ペトニアロトゥシカが呼び出したのは鍬頭の愉快な仲間だ。
 彼ならば、元になった絵本と原典の話を知っている。本来は存在しえないオリジナルな役を語るには、ぴったりな相手だろう。

「実はねー、あたしは隣国のお姫様を暗殺するため人間に化けて大会に参加した怪物なんだねぇ」
「えええええ!!!なんだってええええ!!」

 爪の先を鋭く長く変形させながら、ペトニアロトゥシカは、オリジナルの配役と設定を語った。
 この設定ならば、事実からそう離れてもいないし、これなら姫役のオウガを優先して狙っても不自然じゃないだろうと、彼女は考える。上手い設定である。
 そして、オリジナルな役を語った瞬間に、何か世界から与えられていた力のようなものが抜け、どこかへと去って行ったことが分かる。
 太陽にある矢印も薄っすらと言った感じだ。知人の機械騎士も同じことを言っていたので、バグ枠化は成功したことが分かる。

「さて、何か変わったことはないかねえ?」
「んんー、何かが入って来て、【体がちょっと軽くなった】ような気がします」

 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、鍬頭の愉快な仲間が言う。さっきまで、こんなに高くはジャンプできなかったとのこと。
 つまりは、【主人公力=1/PC数】という仮定が証明されたという事だ。

「ありがとうねぇ。おかげで色々と分かったよぉ」
「あっはい。よく分からないけど、猟兵さんの役に立てたならば良かったです」

 ペトニアロトゥシカは、鍬頭の愉快な仲間に礼を言うと、太陽に薄っすらと書かれた矢印に従って走っていった。

「PCじゃなくなったらNPCの攻撃も通るようになりそうだから、そこは注意しないとねえ」

 NPCの集団の中にド派手な赤、青、緑の3色のドレスを見つけたペトニアロトゥシカは、攻撃を仕掛けるタイミングを確認する。
 PCだった頃ならば、主人公力のバリアでNPCを無視してオウガだけ殴れたのだが、バグ枠となった後だと、そうはいかない。
 背後からの奇襲に気を付けつつ、オウガの周りにいるNPCが少なくなるタイミングをうかがう。
 そして、ここぞというタイミングで打って出た。

「全員まとめて、ボッコボコだよ!」

 UC【嵐撃乱討(バイオレント・ルーラー)】の効果で気配を察知する能力を強化したペトニアロトゥシカは、目についた相手に片っ端からパンチやキックを放ち、片っ端からNPCを気絶させていく。

「えっ、何々?何なの?敵襲?ねえ!あんた、食べてないで戦いなさい…ってぎゃああああああああ!!あの子死んでるううううう!!本当に使えないわねええ!!!」
「むぐむぐ…ん?」

 嵐のような猛攻に次女がヒステリック気味に叫ぶ。
 長女は、マイペースにケーキを食べ続けていて、三女は鋭い爪を伸ばしていたペトニアロトゥシカによって、胸を貫かれて死んでいた。
 暗殺者らしい、背後からの見事な一撃である。

「な、何者よおおおお!!私たちを隣国のお姫様と知っての狼藉なの??」
「あたしは、隣国のお姫様を暗殺するため人間に化けて大会に参加した怪物だよぉ」
「むぐむぐ(ケーキもしゃり…ごくん)」
「はあああああ!!なにそれ、そんな役がいるなんて聞いてないわよ!どうなってるのよ!!ってか、あんたは何時まで食ってるんのよ豚ぁ!まあでも良いわ。私達にはライバル力があるんだからあああ!!!」

 怪物の暗殺者が狙うのは蒼いドレスのオウガ。
 冷静さを失っているようで、一人でヒステリックに喚いている。

「あの子が死んだ分、私のライバルオーラも強化され…」
「2人目…だねぇ」

 言葉を最後まで言い終えることなく、喉を貫かれた次女もその場で崩れ落ちる。
 多少、肉質は固くなった気はするけど、オーラの存在は特に感じない。
 そう、これこそが【バグ枠】化による恩恵の1つだ。バグ枠は世界からの影響を受けにくいため、【受けるダメージを減衰させるオーラ】の効果を殆ど受けない。
 猟書家の想定を超えた発想をした猟兵だけに与えられた特権である。

「ちっ!面倒ね…」

 次女と三女が殺されたことで、漸く危機感を持った長女は、お菓子が載っていた大皿を投げ捨てると、急いでユーベルコードを発動させようとする。
 だが、遅かった。

「もらったよぉ」
「う…嘘よ。なんで…?」

 長女がユーベルコードを発動するよりも前に、怪物の暗殺者の爪が紅いドレスのオウガの急所を貫いた。
 何故、どうしてとオウガは嘆く。
 次女と三女が死んで頭数がさらに減ったのだから、ライバル力も、ダメージを減衰させるオーラも強化されている筈だと。
 だが、怪物の暗殺者の爪は、オーラなんてなかったかのように突き刺さった。
 バグ枠の力は、猟書家の作ったシステムに胡坐をかいている奴ほど鋭く刺さる。

「隣国のお姫様、暗殺完了だねぇ。じゃ、次の相手を狙おうか」

 1組目の隣国のお姫様を仕留めた怪物の暗殺者は、次の獲物を探して太陽に書かれた矢印の方へと駆けていった。
 クライマックスへと続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイリス・レコード
基本愉快な仲間をかばうように動き、ランスで叩いての気絶を試みます
……けど、手が……足りません……!

『あーもう見てられないわ!私にやらせなさい!』
自分の無力さに心折れそうになった時、脳裏に響く知らない声

無意識のUCで、混ざったオウガがかつて同化したアリスの一人「ハートのお姫様」へと存在が書き換えられます

(以下姫様)
私「王子様」には興味ないけど、まあいいわ!
愉快な仲間達は盾代わりにその周囲から刃を「生やし」て……あ、刃の檻みたいになっちゃうかもしれないけど、動かなきゃ平気だから大人しくしてなさい!

で、オウガも変な手もお呼びじゃない。周囲から刃を飛び出させアンタ達全員即行で「クビ(物理)」よ




●11p~恋のライバルを蹴落とせ(物理) ⑤騎士とハートの女王
「猟兵さん。また来たよ!今度は両手剣を持っている!」
「あの馬鹿!何であんな物騒なものをもっているのよ…」
「大丈夫です。任せてください」

 アイリス・レコード(記憶の国の継ぎ接ぎアリス・f26787)は、愉快な仲間たちに斬りかかろうとしている肥料袋頭の愉快な仲間の前に立ちはだかると、手にしたアリスランスで、彼?が振り下ろした大剣を弾き飛し、武器を失いオロオロとしている彼?をランスで気絶させた。
 これでアイリスが気絶させた愉快な仲間は4人目だ。

「猟兵さん大丈夫?」
「ごめんなさいね。私たちの仲間が」
「なんであいつら、僕たちを狙ってくるんだろう」
「…はい。大丈夫です」

 心配そうにアイリスを気遣う愉快な仲間たちに、アイリスは笑顔で答える。
 今の彼女は、皆を守る騎士だ。弱気な所を見せてはいけない。皆を守る騎士が弱気になってしまったら、守られる愉快な仲間たちはもっと不安になってしまう。
 だが、現実問題として手が足りない。愉快な仲間たちを助けていく度に、守らなくてはいけない人が増える。主人公力でNPCである一般参加者から攻撃が受けないだけマシではあるが、それでもしんどいものがある。
 愉快な仲間たちも、なるべく負担にならないように警戒をしてくれてはいるが、それでも猟兵ほど突出した戦闘力は持たない。
 愉快な仲間たちの襲撃と救出だけでも手一杯になっているのに、オウガも来たら手が足りるのか…。
 そんなことを考えている時に限って、オウガはやって来る。

「猟兵さん。猟兵さん。ほら、あそこ」
「…オウガです、ね」

 愉快な仲間たちの1人が指さした先に居たのは、紅いドレスのオウガだった。
 他の2人とははぐれているのか1人っきり。退屈そうな表情で、手にした白い巨大な皿からケーキを素手で掴んで、むしゃむしゃと貪っている。
 今ならば、比較的に楽に倒せるかもしれない。

「1人はぐれている奴から倒していけば、後が楽になると思うんだ。ボクが囮になるから、猟兵さんが仕留めてね」
「…駄目っ」

 アイリスが制止する前に、愉快な仲間たちの1人が大声を上げながら駆けていく。
 彼らは、愉快な仲間たちを守る為に奮闘するアイリスを何とか手伝いたいと思っていた。その手伝いたいという思いが、彼らを危険な行動に走らせる。

「やるしかないです、ね」

 アイリスは、アリスランスを構えて、紅いドレスのオウガにランスチャージを仕掛ける。槍の切っ先は鋭く、オウガを貫くと強く想像する。
 怠そうに伸ばされた紅いドレスのオウガの腕が、愉快な仲間を捕らえる前に、槍を届かせようと全力で駆ける。

「はあ…食事中にちょろちょろと。死になさい」
「死ぬのは貴女です」
「なっ…!」
「やったぁ!」

 愉快な仲間を捕まえようとする紅いドレスのオウガの横合いから、アイリスのランスチャージが決まる。
 紅いドレスのオウガは大きく目を開けると、そのまま絶命して体を無数の文字列を変えて消滅した。
 アイリスは、1息吐いて呼吸を整えると、危険なことをした愉快な仲間を注意しようとした。
 その時だった。
 周囲の風景が歪んで、彼女たちは次の頁へと飛ばされることとなった。

「これは…?」
「頁移動だね。何度も経験してきたから分かるよ」
「猟兵さん!皆一緒について来ているわよ。安心して」

 アイリスと愉快な仲間たちは、12pに来ていた。
 背景は、城の入り口付近と言った所だ。
 そこには、先程までは居なかった、蒼と緑色のドレスのオウガもいた。

「ちょっと…あの赤豚、はぐれて死ぬとかダサ過ぎじゃない?」
「あそこに居る。猟兵にやられたのかな。ああ…綺麗な白銀の槍。欲しイなぁ…欲しイ…欲しイ…欲しイ」

 どうやら、オウガたちはアイリスと愉快な仲間たちの事に気づいたようだ。
 カツカツと石畳を鳴らしながら、こちら側へと近づいてくる。

「うわぁ。愉快な仲間が沢山いるじゃない。何考えているの?あんた。恋のライバルを蹴落とせって文字見えてないのかしら?クフフフ!ひょっとしてNPCを沢山倒せばいいとか、そういう甘っちょろいことを考えているのかしら?それだったら傑作よ。ねえ、そう思わない?」
「……欲しイ。欲しイ。槍。欲しイ」
「ってうわ、聞いてないし。何でこう人の話を聞かないやつばかりなのかしら」

 蒼いドレスの女は、アイリスと愉快な仲間を見て嘲笑を浮かべ、緑色のドレスのオウガは、アイリスのアリスランスを見てブツブツと何かを言っていた。

「…私は皆を守る騎士です。あと槍は渡せません」
「そう。じゃあ、頑張ってね。クフフフ!!!」
「くれないの?じゃあ仕方ないわね。奪わせてもらうわ!」

 緑色のドレスのオウガは、羨望心に顔を歪めると、無数の腕を召喚する。
 それは、アイリスの持つアリスランスを奪おうと、地面を這って襲い掛かる。

「「「うわあああ!!気持ち悪い!」」」
「猟兵さん!!」
「大丈夫です。守ります」

 襲い掛かる無数の腕に向けて槍を振るい、貫き、叩き潰す。
 だが、多数に無勢だ。

「……けど、手が……足りません……!」

 倒しても、倒しても減らない腕に、アイリスは焦りを覚え、自分の無力さに心が折れそうになる。不安が強くなればなるほど、槍の切れ味は鈍くなり、余計に時間がかかる。愉快な仲間たちを守ろうにも、文字通り手が足りない。
 不安と焦りがアイリスを支配する。
 だが、そんなアイリスの脳裏に、聞きなれない声が響く。

『あーもう見てられないわ!私にやらせなさい!』

 それは、アイリスに混ざったオウガが、かつて同化したアリスの一人「ハートのお姫様」の声だった。
 次の瞬間、アイリスの姿が物理法則に護られた、ハートのドレスの少女へと切り替わった。

「私「王子様」には興味ないけど、まあいいわ!
愉快な仲間達は盾代わりにその周囲から刃を「生やし」て……あ、刃の檻みたいになっちゃうかもしれないけど、動かなきゃ平気だから大人しくしてなさい!」
「「「「あっ‥はい」」」」
 
 ハートのお姫様は、愉快の仲間の周囲の石畳からに首切り殺戮刃物の防壁を築く。地面から空に向けて剣山のように伸びた刃の防壁を、地を這う腕は超えることができない。

「なにあれ…邪魔。あれじゃ、奪えないじゃない」
「なぁに?ピンチで覚醒って奴?萎えるわー」
「で、オウガも変な手もお呼びじゃない。アンタ達全員即行でクビ(物理)よ」

 ハートの女王は、緑色のドレスのオウガの召喚した腕の周囲と、オウガ2人の足元の石畳を殺戮刃物へと変えると、無数の腕の手「首」とオウガの首に向けて放つ。

「あ、あたしの腕…」
「わ…私の玉の輿‥‥」

 召喚された無数の腕は、手首から切り落とされて動かなくなり、首と胴が泣き別れになったオウガの姉妹が倒れ伏すと、そのまま体を文字列に変えて消滅した。

「ふん…!いい気味ね」

 ハートの女王はパチンと指を鳴らして、殺戮刃物の檻を解除すると、愉快な仲間たちを引き連れて、クライマックスの頁へと移動していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラヴ・フェイタリティ
【★】
悪かったな。普段は謝らねぇラヴ様だが、今回ばかりは謝らなきゃなんねぇ。何せラヴ様が遅刻したせいで、この国には大事なもんがずっと足りなかったわけだ。そう、ラヴ様というメインヒロインがなぁ!

初っ端から全力だ、遅れを取り戻すぜ!UC発動!オラァッ、そこのぼんやりダイエットサプリだの低糖質コンビニ飯だの食ってそうな面した3姉妹、まずは手始めにテメェらだ!纏めて結果的にコミットさせてやらァ!
見てろそこらのヌーブども!ヒロインオーラを輝かせ破壊光線を放ち空を駆ける、これがヒロインパワーの使い方だ!
ヒロインの格の違いってもんを教えてやる!これが!この輝きが!!メインヒロインだぁア!!!



●恋のライバルを蹴落とせ(物理) ⑥遅れてやって来たぜ!メインヒロイン!
 武闘会が開かれているお城の中庭では、NPC(モブ)たちによる凄惨な殺し合いが行われていた。
 誰も彼もが私こそがメインヒロインになるのだと、武器を振るっている。
 メインヒロイン不足による何とも痛ましい光景だ。
 そんな中で、紅、蒼、緑のドレスを着たオウガたちは、まるで自分たちこそが、真のメインヒロインだと言わんばかりに、威張り散らし、モブたちを蹂躙していた。
 こんなことが許されて良いのだろうか。いや、いい筈がない!
 来てー!メインヒロイン早く来てー!と、誰かが思った時だった。

 ――ゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 と言う音を立てて中庭の石畳が隆起して、向日葵の花が飾られた巨大な石の門が現れる。

「な…何事よおおおお!!」
「何よ、この石の門。意味が分からないわ!」
「もごもごもごもご…」

 突如現れた巨大な石門にオウガたちの視線も釘付けだ。

 ――ゴゴゴゴゴゴゴ!!

 重厚な音を立てて石門が開き、中から後光を纏った1人の少女のシルエットが現れ、すぅーっと息を吸い込んだと思うと、会場全体に響くような大音声で名乗りを上げる。

「悪かったな。普段は謝らねぇラヴ様だが、今回ばかりは謝らなきゃなんねぇ。何せラヴ様が遅刻したせいで、この国には大事なもんがずっと足りなかったわけだ。そう、ラヴ様というメインヒロインがなぁ!」

 向日葵の花が飾られた石の転移門から飛び出してきたのは、ラヴ・フェイタリティ(怪奇!地下世界の落ちものメインヒロイン!・f17338)。
 この物語に足りなかった、待望のメインヒロインだ。
 他の参加者の皆さん、女装男子かそうしょk…奥ゆかしい女子ばかりでガツガツとメインヒロイン枠を狙ってくれる人が居なかったので、彼女はまさに救世主だ。
 いやー、凄いなぁー。憧れちゃうなー。流石メインヒロイン。

「何がメインヒロインよ馬鹿馬鹿しい!あんな小娘よりもよっぽど私たちの方が相応しいわ!!ねえ、貴女たちもそう思わない??」
「もしゃもしゃ」
「派手ねー。羨ましいわー」
「聞きなさいよ!ってかアンタは何時まで食べてるのよ!!ほら行くわよ、アホ共!コルアアアア!!小娘!誰に許可取ってメインヒロイン名乗ってるのよおおお!!」

 ド派手な登場をしたラヴ様が気に入らないのか、オウガたちはモブたちをかき分けて、突然現れて、メインヒロイン宣言した乱入者の元へと詰め寄る。
 だが、ラヴ様は、有象無象の言葉なぞ聞いていない。メインヒロインはひたすらに我が道を行く。

「初っ端から全力だ、遅れを取り戻すぜ!UC発動!オラァッ、そこのぼんやりダイエットサプリだの低糖質コンビニ飯だの食ってそうな面した3姉妹、まずは手始めにテメェらだ!纏めて結果的にコミットさせてやらァ!」

 よくもまあこんな悪口思いつくなぁと感心するような罵倒と共に、ラヴ様はUC発動。物理的に輝くメインヒロインオーラを身に纏うと、そのまま空を駆ける。
 空を飛ぶ手段を持たないオウガたちはただ、見上げるしかない。

「見てろそこらのヌーブども!ヒロインオーラを輝かせ破壊光線を放ち、空を駆ける、これがヒロインパワーの使い方だ!」

 そう叫んだラヴ様は、空から雨あられと破壊光線を降らせる。
 ま、ラヴ様がそういうならば、これが『主人公力』の正しい使い方なんでしょう。一応、世界からの補正で出力が上がっているぞ。

「ぎゃああああああ!!!何か違う、それは何か違うわよオオオ!!!」
「破壊光線とヒロインになんの関係ぎゃあああああ!!」
「もごっもごもがっ…ごほっごほっ!!!」
「なんでまだ食べているのよ!おバカアアアアア!!!」
 
 地上では次女が何やら悪口を喚き散らしている。
 だが、空から降り注ぐ破壊光線の爆裂音と、単純に距離が遠いこともあり、ラヴ様の耳には、次女の罵声が届かない。

「ヒロインの格の違いってもんを教えてやる!これが!この輝きが!!メインヒロインだぁア!!!」

 極限まで高められたヒロインパワーという名の破壊光線が、地上で喚き散らしているオウガ三姉妹を飲み込み、焼き尽くす。

「「「こぉの!クソガキがあああああ!!覚えてなさいよおおお!!」」」

 意地悪な三姉妹は、ラヴ様への恨みの言葉を口にすると、そのまま体を無数の文字列へと変えて、骸の海へと消えていった。
 そして、ラヴ様は、本当のメインヒロインが誰かを分からせるため、そして遅刻の遅れを取り戻すために、クライマックスの頁へと、物理的に輝くオーラを纏い、空を駆けて、かっとんでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧

詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
情報収集と戦闘知識で情報を整理し不足している情報を推察
物語の世界…であれば世界そのものをハッキング出来ないでしょうか。土属性や雷属性の触手を地面に刺し、不足している情報が取れないか試します
ゲストの方には風の触手を騎士剣の形に束ね属性攻撃で応戦
襲われている人が居たら風で加速して救出し医術とメカニックで治療します
後で彼からも情報を聞きましょう
腕の攻撃はスカートの裾から大量の触手を伸ばし、全て氷漬けにします
ゲストも凍らせましょう
「誰が女騎士だと名乗りました?私はエメラルドの魔女。ここへ来たのはこの国の王家に興味があったからです」
バグになったらもう一度ハッキングを試します



●恋のライバルを蹴落とせ(物理) ⑦エメラルドの魔女と最後のゲスト
「物語の世界…であれば世界そのものをハッキング出来ないでしょうか」

 水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は、UC【触手式魔導兵器-シンフォニア】によって呼び出した土属性や雷属性の触手を地面に刺し、ハッキングを試みた。
 今の人格は、控室の時から引き続き、ロキのままだ。
 地面に突き刺した触手からは、この世界に関わる色々な情報が流れてくる。その中には、今まで見つかっていない情報が幾つかあった。

「PCの方に見慣れない名前。これは新しく参戦した猟兵のものでしょう。そしてゲストの方には、やはりもう1人いましたか。でも、名前は、黒塗りされていますね」

 ロキが見ているのは、この物語の参加者リストだ。
 PCの枠には猟兵と愉快な仲間の名前が。いる筈の名前がないのは、『バグ枠』へと移行したのだと推察できる。人数は40人近くとかなり多い。
 一方のゲストの方は9組+黒塗りの1人。
 名前は、意地悪な三姉妹と【『■■』■■の■■■■■■■■】と書かれている。合計22人でPC側よりも人数が少ない。
 また、主人公力やライバル力についての仕様も書かれていた。
 その内容は、主人公力やライバル力はPCやゲストの数によって頭割りされていると言う事だ。

「…成程、敵を倒せば倒すほど敵が強くなると。そして恋のライバルを蹴落とせ(物理)は、ライバルに勝つためのヒントだったと言う事ですね」

 形のいい顎に手を当てながら、ロキは思考する。主人公力の仕組み、わざわざバトルロワイアル形式を選んだこと、元々の主人公は1人。そして恋のライバルを蹴落とせ(物理)。
 それらを戦闘知識と組み合わせることで、分かる猟書家の意図は1つ。

「恋のライバル(ゲスト)に勝ちたければ、1人の主人公を目指して殺し合え、でしょうね」

 と、考えを進めた時だった。
 コツコツとヒールが石畳を叩く音が響き、オウガの3姉妹が現れる。

「…(もしゃりもしゃり)」
「あら、貴女も王子様に求婚を?でもお生憎様。王子様は、大人の女が好みなのよ。クフフフ!キャハハハ!!!」
「…なにそれ?触手?欲しイ‥欲しイワ…」

 長女は、皿に乗せたケーキを貪り、次女は王子様の好みではないと嘲笑し、三女はロキの操る触手に対して興味津々といった様子だ。
 なお、オウガ達は、女装したロキを女の子と思い込んでいる。

「おや、触手ちゃんに興味がありますか?」
「ええ。欲しイわ。欲しイ。欲しイ。欲しイ。ねえ、頂戴?頂戴?頂戴?」
「残念ながら、渡すわけにはいかないわ」
「そうじゃあ、仕方ないわね。奪うわ」

 緑色のドレスのオウガがそう言うと、彼女の周囲に無数の腕が現れる。それらは、ロキから触手を奪おうと、石畳を這って襲い掛かる。

「触手ちゃんはこういうことも出来るんですよ?」

 対するロキは、風の触手を騎士剣の形に束ね、属性を纏った斬撃で薙ぎ払う。

「ぎゃああああああ!!お前ふざけるなああああ!!」

 風の刃が迫りくる無数の腕を斬りはらい、肉盾にされた紅いドレスのオウガが鮮血を流しながら倒れ伏す。
 これで1人撃破だ。
 そう思った矢先に、背景がぺらりと頁を捲ったように、城の入り口付近へと切り替わる。

「クフフフ!ナイス肉壁。無駄に蓄えた脂肪も役に立ったわね」
「へえ…ずるいわぁ。欲しいワぁ。頂戴?頂戴?ねえ‥それ、頂戴?」

 頁の切り替えの事も知っていたのであろう、オウガたちは特に慌てることもなく、追撃を繰り出す。また、紅いドレスの長女のオウガが死んでも、ライバルが1人減ったとしか思っていないことが分かる。
 繰り出された腕に対して、再度、ロキは風属性の触手を振るった。
 だが、先程と比べて強度が上がっているのか、一網打尽とはいかず、傷ついた触手が、ロキに向かって這いながら襲ってくる。

「ライバル力による強化ですかと攻撃の減衰ですか」
「クフフフ!ええ!ええ!その通り!貴女たち女騎士役のいい子ちゃんのPCと違って、私達ゲスト側は、味方を切り捨てるのも厭わないわ。だから女騎士では、主人公力が足りないから、私達には勝てなああああい!」
「ねえ、頂戴?頂戴?頂戴?」

 次女が勝ち誇ったような笑いを浮かべ、三女は頂戴とブツブツ言いながらUCで呼び出した腕を放つ。
 確かに、真っ当に主人公力とライバル力を比べれば勝ちようがない。PC側の元々の人数がオウガに比べて倍くらい多いからだ。それに、相手は積極的にライバル力を持つゲストの頭数を減らそうとしている。
 ならばと、ロキが取った対策は、ゲストの度肝を抜く者だった。

「誰が女騎士だと名乗りました?私はエメラルドの魔女。ここへ来たのはこの国の王家に興味があったからです」
「はぁ?えっ?何それ???意味が分からないんだけど???」
「どういうことなのかしら?」

 存在しない役柄を語ったロキはバグ枠へと配役を変更すると、スカートの裾から大量の氷属性の触手を伸ばす。
 バグ枠は、矢印が見えづらいことから分かるように世界の影響を受けにくい。その為、もろに世界からの補正である主人公力やライバル力の持つ【受けるダメージを減衰させるオーラ】の効果を殆ど受けない。

「腕が、腕が、凍って…!」
「こんなの聞いていないわよ、猟書家ああああああああ!!!」

 故にオーラのお蔭で凍らなかった筈の無数の腕は成す術もないまま凍り付き、オウガたちも抵抗できないまま氷像へと変えられた。

「まあ‥猟書家に言っても知らないでしょうね。だってバグですし」

 オウガ姉妹の氷像を砕きながら、ロキが言う。
 バグ枠化は、ゲストとの戦闘にかなり有用なことが分かった。これも収穫の1つだろう。

「さて、バグ枠になったのでもう一度ハッキングを試しましょう」

 そう言うと、ロキは地属性と雷属性の触手を地面へと突き刺す。

「今度は見えましたね。『七罪』傲慢のスノーホワイト。それが最後のゲストの正体です」

 最後のゲストの正体を暴いたエメラルドの魔女は、地面から触手を引き抜くと、薄っすらと見える太陽の矢印に従って、城の奥へと向かっていった。
 クライマックスへ続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン

この物語…王子射止める者は只一人
ですが本来ある決勝に居るべき主人公は複数人
…『結婚の権利』の取得条件が改竄で明文化されていない?

私は相対的に弱体化中の『バグ』…無理をすべき時です
矢印に反した場合の出力低下、他猟兵の挙動から矢印向き●見切り行動
洗脳PCは●優しく無力化
オウガからPC●かばい

淑女らしい食事の作法を心掛けなさい!

菓子を武器落としの要領で弾き食い気による隙付き排除

NPCの王が出てくる頁目指し
目的が善行による解呪であると説明
結婚の権利放棄と引き換えに武闘会中の王子の護衛と不正監視を行いたいと交渉
『抜け駆け求婚』の可能性へ備え

(そういえば、件のオウガは王子に恋愛感情はあるのでしょうか?)



●恋のライバルを蹴落とせ(物理) ⑧バグ枠:ブローディアの騎士
「この物語…王子射止める者は只一人。
 ですが本来ある決勝に居るべき主人公は複数人。
 …『結婚の権利』の取得条件が改竄で明文化されていない?」

 晴れてPC枠からバグ枠へとクラスチェンジを果たしたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)こと『ブローディアの騎士』は、何やら考えごとをしていた。
 内容は『結婚の権利』の取得条件だ。
 そのことについては、10pにて王子自身が武闘会の優勝者と結婚すると言っていたのだが、おかしなことに、このままPCが勝利すると仮定すると、約40人近くの優勝者が発生し、結婚の権利を得たものが大量発生してしまう。
 本来ならば勝者のは1人だけだという事を鑑みると、確かに異常だ。
 機械騎士は、その原因を『結婚の権利』の曖昧化に原因があると考えたようだ。

「私は相対的に弱体化中の『バグ』…無理をすべき時です。リスクを冒してでも『抜け駆け求婚』の可能性へ備えはするべきでしょう」

 機械騎士は、王様への直談判をするべく、王のいる頁を目指すことにした。
 この物語に詳しい鍬頭の愉快な仲間が言うには、王様のいる頁は、過去である『5p』と『10P』と、王子に求婚する『15p』である。
 因みに、『5p』も『10p』も女騎士と王様は会っていないという。
 話をできる可能性があるのは、未確定の未来である『15p』のみ。
 だが、その『15p』は、猟書家によって白紙化されている。
 では、機械騎士は王様に会えないのか…と、いうとそれは違う。何故なら今のブローディアの騎士は、バグ枠だ。矢印を無視して、城の中を探索することも可能だ。

「まずは、太陽の案内に従って、城の中へと向かうのが妥当でしょうかね」

 機械騎士は、薄っすらと見える青い矢印を頼りに、王城へと向かっていく。
 さて、王様のいる城に向けてスラスターを噴かせて駆けていくトリテレイアこと、ブローディアの騎士であるが、その道のりは意外なことに順調であった。
 先程、ブローディアの騎士は自分のことを『相対的に弱体化』していると言っていた。そのことは間違いなく『事実』ではあるが、『正解』でもない。
 確かに、主人公力を失ったことで、PC枠に与えられる『バフ』と『オーラ』を、機械騎士だけは手にしていない。
 だが、それと同時に『世界からの影響』を受けにくいという『バグ枠』特有の『強み』も手にしていたである。
 それが顕著に現れたのは、オウガとの戦闘だった。

「淑女らしい食事の作法を心掛けなさい!」

 突然現れて、説教臭いことを言いながら攻撃してきた矢鱈とデカい甲冑を着た女騎士を、オウガ三姉妹の長女は無視した。
 機械騎士の放った格納銃器による銃撃くらいならば、次女と三女を処分したことで高めたライバル力のオーラで防げると思ったからだ。
 しかし、機械騎士の放った弾丸は、オーラを素通りして皿に当たる。

「はあ!?えっ…なんで???」
「隙ありです」
「私のことは、オーラが守ってくれる筈…なのに…。ああ、イケメンとのラブロマンスが…」

 目の前の騎士が、『世界からの影響を受けにくい』バグだなんてことを知らない、紅いドレスのオウガは、成す術もないままに、UC【機械人形は守護騎士たらんと希う】によって強化された儀礼長剣によって貫かれ、絶命した。
 ライバル力による強力なバリアは、世界からの影響そのものだ。それ故に、世界からの影響を受けにくいバグ枠と致命的に相性が悪い。
 結果として、紅いドレスの長女は、ユーベルコードも発動できずに絶命した。
 このように、バグ枠には、バグ枠なりの強みがある。

 こうして、オウガを始末した機械騎士は、城の中へと入り込み、矢印を無視して王様を探し始めた。
 そうしてしばらく進んでいった先で、王様を見つけたトリテレイアことブローディアの騎士は、目的が善行による解呪であると説明し、結婚の権利放棄と引き換えに武闘会中の王子の護衛と不正監視を行いたいと交渉した。
 それに対する王様の反応は、次のような感じであった。

「気持ちはありがたいが、私と我が王子の護衛は、近衛騎士団が行う。
 そなたは、武闘会へ戻るとよい。抜け駆けの結婚はさせないと、王として誓おう。
 あと、『PC』殿が沢山いるなどとよく分からないことを言っていたが、それならば、1人になるようにすればよかろう。その為のバトルロワイアル形式なのだから」

 つまりはこういう事だ。『PC』枠が沢山いるならば、殺し合って1人にすれば良いと。そうすれば、優勝者の数と王子の心を射止める者の人数が釣り合うと。
 これこそが、トリテレイアの抱いた疑問に対する【猟書家からの回答】である。
 『PC枠』は、複数いても、王子と結ばれる『PC』自体は1人。たった1人に選ばれたかったならば、『恋のライバルを蹴落とせ(物理)』と。
 だからこそ、洗脳されている愉快な仲間たちは、同じPC枠を優先して狙っていたのだ。

「…不正求婚防止のこと、感謝します。では、私は武闘会に戻りますね」
「…うむ。まあ…ここに来るなんてこと、お主以外にはできないとは思うが。一体、どうやって来たんじゃか…」

 機械騎士は、王に一礼すると、元来た道へ戻り、クライマックスの頁へと進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィルトス・ユビキタス
ここで女装を辞めたらどうなるかという欲望に抗えなかった。
ついでに言えば手加減攻撃とかそんな優しいものも持っていなかった。
そして推理は投げ捨てた。


オウガとの戦闘なら任せろ。
【常在戦場の理】でいつもの服に着替える。
これで女装は終了だ。
その後は飛翔しながら強化された『イクリプス・フリティラリア』の大鎌形態で薙ぎ払う。
最初に腕を薙ぎ払い、それから本体を叩く。



●恋のライバルを蹴落とせ(物理) ⑨バグ枠:『不審者』ウィルトス
「なあ…ここで女装をやめたらどうなると思う?」
「猟兵さん、猟兵さん。どうしたんですか。猟兵さんがアホなのは知っていますけど、アホなことを言うのは止めてもらえません?」

 ウィルトス・ユビキタス(戦場の荒らし屋・f01772)が、真剣な表情でおバカなことを言いだしたので、鎌頭の愉快な仲間は割と辛辣な口調で窘めた。
 今、彼らが参加している武闘会は、王子様への求婚権をかけた男子禁制の女性限定の大会である。
 例え32点の女装であっても、女装を解除したら何が起こるのか分からない。

「辛辣な物言いだな」
「まあまあ…。で、どうしてこんなこと考えたんです?」
「ああ…それはだな…。どうなるか気になるだろう?」
「それだけですか?」
「ああ」
「アホですね!!絶対にやらないで下さいよ!フリじゃないですからね!!」

 信じられないようなものを見るような目をしながら、鎌頭がツッコミを入れる。
 頑張れ、鎌頭。キミにはツッコミで過労死してもらう。

「っていうか、猟兵さん。推理は得意なんじゃなかったんですか?」
「ああ、それか。そうだな。推理は投げ捨てた」
「それを投げ捨てなんてとんでもない!」

 愉快な仲間がツッコミを入れる。
 ウィルトス・ユビキタス。メインジョブは猟奇探偵である。
 探偵が、簡単に推理投げ捨てるんじゃないよ。

「だったらもう…何ができるんですか?」
「オウガとの戦闘なら任せろ」
「まあ、そこは頼りにしていますけど…」

 と、言った具合で、まるで漫才をするようなやり取りをすること5分。
 彼らの前に、赤、青、緑の3色のドレスを着た、オウガの三姉妹が現れる。

「ねえ…何か男みたいなやつが居るんだけど。クフフフ!あれも武闘会の参加者なのかしらクフフフ!」
「本当だぁ。面白―い。うふふっ」
「もごもごもごっ(もしゃりもしゃり)」

 厭味ったらしい笑みを浮かべながら、32点の女装をバカにする意地悪な三姉妹。
 まあ、ウィルトスについては、男みたいではなく、実際に男なのだが。

「猟兵さん。妥当すぎる評価をされていますけど、変なことしないでくださいね」
「ああ。戦闘ならば任せろ」

 オウガの言う事などまるで何も気にしない。
 そう言った様子のウィルトスは、鎌頭の愉快な仲間を庇うように前に出ると、ユーベルコード【常在戦場の理】を発動した。

「纏え」

 たった一言の詠唱台詞が唱えられると、ウィルトスの姿が炎に包まれる。
 次の瞬間、炎の中から現れたのは、変形機構付きの大鎌を持った【いつもの服】を着たウィルトスだった。

「「「「…………」」」」

 ウィルトスの姿を見たすべての武闘会参加者は、一瞬フリーズした。
 そして‥‥

「嫌ああああああ!!変態よ!!変態いいい!!!男、男がいるわあああ!!」
「誰かああああ!!衛兵さーん!!不審者!不審者が出たわあああ!!」
「王子のお尻を狙っているのね!このド変態!!!」
「やりががったなアアアア!!このドアホオオオオオ!!!」

 阿鼻叫喚な大惨事が発生した。
 おめでとう!ウィルトスは、PC枠からバグ枠『変質者』にクラスチェンジだ。

「ここで女装を辞めたらどうなるかという欲望に抗えなかった」
「などと、容疑者は口にしており‥‥じゃねえ!女装解くなっていったじゃん!!」
「すまん」

 ウィルトスが特に反省していない、反省の弁を述べる。
 この男はボケが魂にまで染みついている。やれそうな機会があれば、恐らくまた懲りずにやるだろう。

「では、オウガ退治と行かせてもらおうか」

 ウィルトスはそう言うと、火の粉を纏って空を舞う。
 オウガたちは空を飛ぶ、術を持たない。空中から一気に決める算段だ。

「ぎゃああああああああ!!変態が空を飛んだああ!!」
「あ、あんたの腕でアイツをやっつけなさい!」
「ああ…ああ…。空を飛ぶなんて羨ましイワ…」

 三女は召喚した無数の腕を束ね、つなぎ合わせると、それらを大きく揺らしながら宙を舞うウィルトスを、捕らえようとする。
 だが、時速350キロメートル以上で飛ぶウィルトスを捕らえることはできない。

「まずは、腕!」

 空中から回転しながら急降下したウィルトスは、大鎌で巨大な腕を薙ぎ払う。
 上空からの落下エネルギーと速度、武器の重さに、回転による遠心力。それら全てを武器の破壊力に変えて、大鎌で一閃。
 巨大な腕は、あっさりと斬り落とされて、残るは無謀な本体のみ。

「では、トドメだ!!」
「そ…そんな。私たちが、空飛ぶ不審者に殺されるなんてええええ!!」
「嫌ああああ!!衛兵さーん!!」
「助けてえええ!!変態よおおおおお!!!」

 腕を切り落とした勢いそのままに、意地悪な三姉妹の元へと辿り着いたウィルトスは、無慈悲に大鎌を振るう。
 そして風評被害(でもない)言葉を喚き散らすオウガの三姉妹の首を、一気に纏めて刈り取った。

「ふう…。ま、こんなものだ」
「凄いね、猟兵さん」

 くるりと回転しながら着地したウィルトスの元へ愉快な仲間が駆けよる。

「ところでさ、周囲のNPCたちの様子がおかしいんだけど。あと、何かガシャン!ガシャン!という耳慣れない音がドンドン近づいてくるんだけど…」
「…ふむ。これは俺の推理によるとだな…。女装を解いたせいだな」
「知ってた!知ってたわ!そんなこと!!使えねええええ!!」

 愉快な仲間の悲痛なツッコミの叫びが中庭に響いた。
 頑張れ、ウィルトス係。頑張れ!

「…逃げるか」
「ちょ、俺を巻き込むな。離せえええええ!!」

 愉快な仲間を小脇に抱えたウィルトスは、「コロス…コロス」と呟き、包丁を手に襲い掛かって来るNPCの群れや、「不審者を殺せええ」と襲い掛かって来る衛兵(NPC)から、命からがら逃げだすのであった。

 クライマックスへ続く?

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『七罪』傲慢のスノーホワイト』

POW   :    常時発動型UC『世界で一番美しい者』
【世界で一番の美しさによる魅惑の魔力 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【美貌による魅了・洗脳効果と常時全能力低下】で攻撃する。
SPD   :    勇猛で忠実なる七人の小人(レジェンド・ゴブリン)
【高い戦闘力と殺戮技能を持つ七人の小人 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    スノーホワイト・ストーリー(白雪姫の物語)
【全てを魅了し、虜にする世界一の美貌 】【毒林檎に込められた魔女の魔力と魔法技能】【王子の愛による超再生、不死能力と身体強化】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフレミア・レイブラッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●インフォメーション
・猟兵達の活躍によって新たな情報が開示されました。

★主人公(ライバル)力について
・一人当たりの主人公力=女騎士の持っていた主人公力÷PC数です。
※ライバル力の場合も同様の計算式です。
→つまりはPC枠が増える度、1人分の主人公力は減ります。
 大量の愉快な仲間がPCとして存在しているため、1人当たりの主人公力は、ライバル力に比べて【圧倒的に弱いです】。
→【愉快な仲間たちを助ければ、助けるほど、1人当たりの主人公力が減って不利に】
・主人公(ライバル)力は所有者を【NPCからの攻撃を無効化するオーラ】【敵から受けるダメージを大幅に減衰するオーラ】【世界からの能力補正】で常時強化します。
・主人公力とライバル力は【互いに相殺し合う性質】があります。
・『バグ枠』は主人公力によって付与される【オーラを素通り】します。
・PC達は、バグ化しないように無意識的に名前で呼ぶことを避けます。
 例:『猟兵さん』と呼ぶ愉快な仲間たち。
   愉快な仲間たち同士も鋏頭とか鎌頭と呼び合っていた。
   (彼らにも本来は名がある)

★主人公とライバルの配役について
・主人公もライバルも【原則として1人】。殺し合って1人になるように、猟書家は、原作の絵本を改変している。(バトルロワイアル形式・刃物解禁・主人公力等)
・猟書家の洗脳を強く受け、配役にのめり込んでいる者ほど、たった1人の主人公(ライバル)役になろうと、積極的に殺し合う。
※2章における愉快な仲間が優先的にPC枠を殺しにきたり、オウガの姉妹が仲違いをしていたのは、この影響によるものが大きいです。もう1つの大きな理由は、PC(ゲスト)数が減ると、1人当たりの主人公(ライバル)力が増えて、生存率が上がるため。
・猟書家はライバル役に何やら細工をまだ残している様子…

★バグ枠について
・この世界に存在しない配役。本来ならば存在し得ない存在であるため、【この世界からの影響を殆ど受けない】。猟書家の想定を超えた存在であり、猟書家の仕掛けた【悪意】を破壊する鬼札。
・登場人物に向けて本来存在しない設定を語ると、『PC』から、『バグ』になる。
現在確認されているのは『ブローディアの騎士』『怪物の暗殺者』『エメラルドの魔女』女装を解いた『変質者』
・主人公力やライバル力によって付与された【オーラ】を無効化する。

★猟書家は、何をしたかったのか?
・一言で言うと【仲間同士の殺し合い】を見たかった。
 だからNPCに殺されることがないように、わざわざ【NPCからの攻撃を無効化するオーラ】というギミックを作った。
・その理由は、この物語に相応しいたった1人の『主人公』を決めるため。
 意中の相手を射止めるためには、例え仲間であろうと何だろと、物理的に排除する。目的の為に、血みどろの道を行く『主人公』を探すための蟲毒の儀式。
 蟲毒の果てに相応しい主人公を見出し、同じく蟲毒をくぐり抜けた『ライバル』にぶつけたい。素晴らしい主人公とライバルがいれば名作になりますね、という糞のような理由。
・人の不幸で飯が美味い。

★王子様への求婚について
・王子様への求婚権は【武闘会の優勝者】に与えられる。
・求婚するのは『PC』でも『ゲスト』でも『バグ枠』でも可能。
 告白シーンが真っ白になっているので、誰でも求婚できる。
・王子様への求婚については、【抜け駆け不可】である。つまりは『PC』か『ゲスト』が全滅して、【武闘会が終わる】まで、王子様の元へ行って求婚することはできない。

●13p隣国のお姫様『七罪』傲慢のスノーホワイト
 謁見の間へと繋がる廊下。
 真っ赤な絨毯の上に一人の女がいた。
 とても美しい女だった。
 白雪のような美しく豊満な肉体を、扇情的な赤と黒のドレスが包み込み、絶世の美女と言っても過言ではないような美貌には、嗜虐的な笑みが浮かんでいた。

「ふふふ。まさに計画通りと言った所ですわ。
 猟兵どもの手により、愉快な仲間たちは保護され、ブサイク共は全滅しましたわ。
 わたくしは唯一無二のゲストとなり、『隣国のお姫様』として確定ですわ。
 PC共の1人あたりの主人公力は、PC数が多すぎるため、精々2.5%かそこらですわね。対するわたくしは100%!
 これで、どう負けろと言うのでしょうか。
 ふふふ。あはははは!!」

 くるくると機嫌よく1人で踊りながら女が言う。
 天井からつり下がる照明の中で1人踊る女の姿は、映画のワンシーンのようだ。

「囲んで棒で叩こうとしても無駄ですわ。
 わたくしには、猟書家との契約で手に入れた、【相手を矢印以外の方向へ飛ばす力】がある。この力を使えば、邪魔な敵を何処かへと飛ばして、1対1の戦いを強要できるわ。
 後は、強そうなやつから順番に1体1体仕留めていけばいい」

 誰も居ない筈の廊下で、見ている誰かに向けて女は語る。
 それは猟書家か、それともグリモア猟兵宛てだろうか。

「では、美しい王子と美しい姫が結ばれるハッピーエンドと行きましょう」

●14p 決戦~バグルート!
「ようこそ、いらっしゃいました。貴女方がわたくしのライバルですのね」

 黒いドレスを着た美しい女がカーテシーをする。
 謁見の間へと繋がる廊下の中央、赤い絨毯の上。
 そこに、絵本から出てきたお姫様のような女が居た。

「わたくしは隣の国の姫、スノーホワイト。
 早速ですが、わたくしと王子様への求婚権を賭けた勝負をしてもらいますわ。
 正々堂々、1対1でね!」

 嗜虐的な笑みを浮かべた美女から、凄まじいプレッシャーが襲い掛かる。
 それは、彼女が世界から与えられたライバルに挑むのに相応しくない相手を吹き飛ばす為の力だ。
 この力に抗えないものは、前の頁へとバラバラに飛ばされてしまう。

「ふふふ。主人公力が足りないPCの皆様。
 わたくしが足りない主人公力を満たしてあげましょう。貴女たちを1人1人殺すことによってね。
 では、前の頁へといってらっしゃいですわ!」
「「「「うわああああああ!!と、飛ばされるうううう!!!」」」」

 女が微笑んだ瞬間に、さらなる強烈な力がPC達を襲う。
 このまま吹き飛ばされてしまい、各個撃破の対象となってしまうのか。
 そう思った時に、4人の人影が、スノーホワイトの前に現れる。

「はっ、えっ。何ですの?貴女たち。どうして平気にしているの?」

 勝利を確信し、傲慢な笑みを浮かべていた女の表情が崩れ、驚愕に眼を見開いた。
 まるでありえないもの(バグ)でも見るように。

「私達はどうやらバグ枠となってしまったようで、こういった世界由来の力は効きにくいようなんですよ」
「残念だったねぇ」

 大楯を構えてPC達が飛ばされないように壁になる『ブローディアの騎士』。
 怪物の暗殺者は、鋭い爪を伸ばして隣国のお姫様に殴りかかりながら言う。

「バグ?一体どういう事?」
「この物語に本来存在しない設定を語り、他者にそういう役だと認識されると、バグとしてこの世界は処理するようですね。PCの所から名前が消えていました」
「つまりは、バグ枠化すれば【死なずにPC数を減らせる】という事だ」

 エメラルドの魔女が説明し、変質者が補足を入れた。

「じゃあボクたちも!」
「なろう、バグ枠に!」
「猟兵さんを助けるんだ!!」

 愉快な仲間たちは次々と名乗りを上げてバグ枠へと変わっていく。

「何よ、聞いていないわ!どういうことなの!猟書家!!」

 スノーホワイトが叫ぶ。
 だが、バグ枠化については、猟書家も知らないことだ。
 さあ、反撃の時間だ

●インフォメーション2
・皆さんの行動や情報収集の結果、愉快な仲間たちがほぼ全員バグ枠化するルートになりました。
・全員を助けられるルートです。
・猟兵の皆さんには、選択をしてもらいます。
1 バグ枠化する。『オリジナルな役を名乗ってください』
2 PC数が減ったことで高まった主人公力で戦う。
3 何か思い切って新しいことにチャレンジ
※まあ、特に何かしなければ、主人公力で戦う事になります。
・王子様への求婚したい方は、プレイングに書いてください。
・特にいなければ、PCの中からサイコロを振って決めます。
・2人以上の求婚者が居た場合、プレイングを見てサイコロを振って決めます。
・因みに猟兵全員がバグると、愉快な仲間の1人が主人公として確定します。
※PC枠が全滅すると、武闘会が終了し、ゲストの勝利と世界が処理するためです。
 
アイリス・レコード
(姫様状態)
へぇ……そういう事。じゃあ私も『スノーホワイトに謀殺され、冥府の魔物と契約し帰ってきた妹姫』を名乗り、
姉を止める為冥府の魔物に魂を捧げた、という感じで時間切れで消えるわ
……アリスへの負担からすると多分『アレ』が起きるしね……

(姫様からアイリスに戻る、が様子がおかしい)
『……あなたは、ありす?おうが?でもおなかすいたから、わるいおうがはやっつけて、わたしに、きろくしてあげる』

※UCで『アイリス』の意識に『名すら失くしたオウガ』の意識と衝動が顕在化して、各種能力強化
代償の流血や負傷は激痛耐性任せ。刃物で攻撃し『記憶と意識の侵食同化吸収』を狙います
戦闘後に代償や疲労で気絶し退場です。




御魂・神治
選択肢:1.バグ枠
★アドリブ歓迎、SPD判定

ワイは女騎士でも、結婚候補者でもない!
怪異は爆ぜて排除する、硝煙と火薬の香りの『イケメン除霊師』や!
(女装を解いて何時もの姿に戻る)

『自称が抜けています』

小人は『爆龍札』の【爆撃】を織り交ぜつつ、『森羅』と『天地』の【乱れ撃ち】で対処
攻撃は【オーラ防御】で防御
取り囲まれたら【結界術】で弾く
敵がヘタってきた所で【リミッター解除】したUC【五行霊弾『万物』】を撃つ
【属性攻撃】としての属性は【木】や
白雪姫に相応しい、林檎の木の根や枝が着弾場所から生えてくるで
リミッター解除したから、城突き破ってしまうかもな
それはそれでええか...城の修理費は出さへんで!


水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
さて、最終局面ですか
単純にライバルを倒しては猟書家の狙い通りですね
UCのメカニックスキルと先ほどまでの情報を組み合わせてハッキング
PCの攻撃の瞬間だけ愉快な仲間をライバル枠に変え直ぐに戻します
PCが残っていて優勝した場合は告白の瞬間だけPCをバグ枠に書き換えます
先ほどまでの情報から元々の物語のストーリーは見えていますのでハッキングで再現しつつ、猟書家の望まないただのハッピーエンドへ
誰も告白しないなら適当に終わらせましょう
「以前王子にかけた呪い解きましょう」
王子は女性の姿に戻り、騎士と姉妹のように仲良く暮らしました
やがて王女は別の国の王子に嫁ぎ、幸せに暮らしましたとさ


トリテレイア・ゼロナイン
(自己●ハッキングで電子防壁を構築、不正干渉=誘惑に対抗)

…駄目元で試してみましょう
(味方に)お耳を拝借

やっと見つけましたわ…隣国の姫
いいえ、私に呪いをかけ名と姿を奪った『簒奪の魔女』!
その悪行もここまでです、正体を見せなさい!

私物の本を参考に(●世界知識)NPCの同情誘い説得力ある艱難辛苦の物語を展開
NPCの認識操作
PCの援護によってオウガをライバル枠からバグ枠への降格
若しくは私のライバル枠取得による弱体化試行
こっそりアンカーで物語への●ハッキング敢行

駄目ならPCの方を援護

倒しても呪いは不可逆
世の悪を正す為、ブローディアの騎士は颯爽と去り行く…

めでたしめでたしは他の方にお任せしましょう


桐崎・早苗
話は山あり谷あり、変化があってこそ…つまり『危機に抗うほどに主役として美味しい』のでは?

…という理屈で参ります
これは『3』でしょうか

●不屈からの逆転
引き続き同じ体捌きで、刀を抜き二刀で対応
魅了や洗脳といった誘惑の類の魔は【破魔】と【結界術】で対応
剣戟の合間に蹴りや掌底もはさみ攻防織り交ぜながらも【オーラ防御】【武器受け】で防戦
有効な一撃が入れられずこちらもダメージが蓄積しますが…【激痛耐性】と【気合い】で耐えましょう
戦の心得は、気持ちで負けぬこと
慢心は綻びを生み、諦めは機会を逃します
結末を掴む最後の一手は【覚悟】と【勇気】
これは恋路にも通じるかと
そして最後は、信頼
隙は、必ず生まれます


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK

んー、適当に名乗ったけど、暗殺者って普通なら悪者だよねえ。
よし、適当な因縁をふっかけて隣国のお姫様が悪者だった事にしよう。

ようやく見つけたよ、裏切り者。
一族の精鋭七人を連れて逃げ出し、隣国の姫の立場を得て、
今度は王子に近付きこの国を乗っ取る気かい?
これ以上好きにはさせないよ。

と、なんか連れてるゴブリン関連の因縁があるような感じで、
擬態を解きながら適当に設定を付け足すよ。

戦闘はまあ、【鋭敏感覚】を使って戦おうか。
美貌なんて目を閉じていれば意味ないし、
五感を強化していれば音や気配だけでも十分戦えるしね。
ゴブリンの攻撃を見切って避けながら、爪で切り裂いたり殴ったりでいいかな。


ラヴ・フェイタリティ

つまりこの世界のヒロインパワーは限られていて、奪い合うから弱くなる…そういうことかよ。だがケチなルールに大人しく縛られてやるラヴ様じゃねぇ。

いいかスノホワ。テメーのストーリーじゃ王子とのハッピーエンドで終わるみたいだがな、真のメインヒロインはそこで終わらねぇ。めでたしめでたしなんて軟着陸を振り切って誰よりも自由に、誰よりも輝いてこそメインヒロイン!
ヒロインパワーの源は魂!感情の高ぶりが、ちやほやされたい欲求が、誰よりも主役であるという確信が!!それこそが力となる!!暴走しろヒロインパワー!ハッピーエンドをぶっちぎれメインヒロイン!
今、ラヴ様は、メインヒロインを超えた超メインヒロインになる!!


ウィルトス・ユビキタス
成り行きとはいえ、愉快な仲間には迷惑を掛けたな。
まあ、この物語に取り込まれた時点でツイてないのだから、これも運が悪かったと思って諦めてくれ。

さて、と……俺を変質者と呼びたくば呼ぶがいい。
バグ枠となって台本を飛び出したからにはその役を演じることに不満はない。
俺は誰かの掌の上で踊ることが何よりも嫌いだからな。
さあ変質者の本領を発揮しようか。

二章に引き続き【常在戦場の理】で一気に近付いて、相手に【スノーホワイト・ストーリー】を使わせる。
使わせた後は相手の周囲を旋回するだけして時間を使わせる。
狙いはUCの代償での自滅だ。

人目を引くだけ引いて掻き回す。まさに変質者だな。


セシリア・サヴェージ
私は主人公ではありません。主人公たちを人知れず護る者。影の騎士セシリア、参る!

魅力には【狂気耐性】で抵抗し、【武器受け】と【オーラ防御】で攻撃から身を守ります。
暗黒がそうであるように、大きな力には大きな代償が伴います。
彼女が代償に耐えられなくなるまで防御に徹します。

反撃のチャンスが訪れたらUC【闇の迸発】を発動。
【2回攻撃】で猛攻を仕掛けて最後は【捨て身の一撃】を放ちます。
ひたむきな努力で夢を叶えた騎士の様に、私も力の限り奮戦して勝利を掴みます!

※求婚役になった場合
昏睡から目覚めたら妙な事に……確かに私は女騎士ですが。
物語を完結させる為ならば仕方ないですね。では……(騎士らしく凛々しい求婚)



●14p 決戦~バグルート!① ~第六茶番劇団大活劇~
「ボクは今からえーっと、中庭担当の庭師だ!」
「えっ、ズルい。じゃあ、私は、池の管理者」
「儂は、裏庭担当で…勤続40年のベテランじゃ」
「じゃあ、私は清掃員」
「わたし、主人公力の同僚の騎士Dあたりにするね」

 大きな盾を構えて、愉快な仲間たちの壁になっているブローディアの騎士こと、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の背後では、愉快な仲間たちによる名乗り上げが始まっていた。
 次々と適当な役を名乗り上げ、物語には本来存在しない配役へと変わっていく。その数、約30。とてもじゃないが把握しきれる数ではない。
 しかし、効果は覿面であり、スノーホワイトが放つ強烈なプレッシャーから解放されて、自由になっている。
 これならば、何処かの頁へと飛ばされる心配はないだろう。

「な…何なんですの…この展開!!ふざけるんじゃありませんわよ!!
 どうして、オウガであるわたくしよりも、貴女たちの方が好き勝手しているんですの!?」

 額に青筋を浮かべたスノーホワイトが怒声を上げる。
 まあ…無理もない。
 本来ならば、愉快な仲間たち『PC』とオウガたち『ゲスト』の戦いは100%の確率で『ゲスト』が勝つ展開となるはずだった。
 だからこそ彼女たちは、猟書家の提案に乗って、『ゲスト』として招かれたのだ。
 猟兵というアクシデントが来ても、彼女はそれすらも計画に組み込んだ。
 そして、計画は実現し、100%となった『ライバル力』で、確実な勝利が得られる筈だった。
 しかし、現実はバグ枠大量発生による、バグ祭りだ。
 キレるのも無理はないだろう。

「先に好き勝手したのはそちらでしょう。ならば、私たちもそうするまでです」

 そう言い返すのは、エメラルドの魔女こと、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)だ。
 エメラルドの瞳をしているため、今の人格はロキである。
 ロキは、スカートの裾から、玉虫色の液体金属型UDCを地面に向けて伸ばすと、先ほど得た情報を基にハッキングを試みる。
 より深く、より重要な情報にアクセス(改ざん)できるようにと、UDCを地面に潜らせていく。
 その様子を目ざとく見つけたオウガは、眼を釣り上がらせて声を上げる。

「むっ。また何かしようとしていますわね。ですが、させませんわ。
 さあ、来なさい。七人の小人たち。
 まさか、卑怯とはいいませんわよね。そちらの方が人数は多いのですから」

 パチンとスノーホワイトが指を鳴らすと、絵本の小人のような三角帽と色とりどりの服を着た小人たちが、どこからともなく現れる。
 彼らの手には、斧、小弓、槍、双剣、片手剣、湾刀、猟銃が握られている。
 オウガは、召喚された七人の小人たちに、ロキを襲わせる指示を下そうとした。
 その時だった。

「ようやく見つけたよ、裏切り者。
 一族の精鋭七人を連れて逃げ出し、隣国の姫の立場を得て、
 今度は王子に近付きこの国を乗っ取る気かい?
 これ以上好きにはさせないよ」

 人間の擬態を解いた、怪物の暗殺者こと、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)が現れた。
 因みにこの設定は、んー、適当に名乗ったけど、暗殺者って普通なら悪者だよねえ。よし、適当な因縁をふっかけて隣国のお姫様が悪者だった事にしようという、ノリで、5分くらい前に作られた設定である。
 当然、スノーホワイトにとっては寝耳に水だ。

「誰なんですの!?貴女!?わたくしに変な設定をつけないでくださいまし!!」

 当人も知らない謎の設定をつけられたことに、スノーホワイトは抗議する。
 知らない過去がどんどんとねつ造される恐怖を今、彼女は感じている。

(へぇ……そういう事。じゃあ私も)

 スノーホワイトとペトニアロトゥシカによる即興劇を見ていたハートの姫様状態のアイリス・レコード(記憶の国の継ぎ接ぎアリス・f26787)も動き出す。

「ようやく見つけたわよ!姉さん!!」
「姉さん!?ってわたくしのこと??っていうか誰なんですの!!」
「姫様…どうしてここに…」
「姉さん。私のことを忘れたって言うの…?」
 
 ショックを受けたような表情をするハートのお姫様。
 無論、初対面である。
 ペトニアロトゥシカは、適当にそれっぽいことを喋っているだけである。

「私は『スノーホワイトに謀殺され、冥府の魔物と契約し帰ってきた妹姫』よ。
 姉さん、忘れちゃったの?」
「妹姫様…そこまで、姉君のことを‥‥」
「だ・か・ら!誰!!怖いわよ!!何なんですの、これ!!」

 唐突に始まる偽妹と元従者らしき女との茶番に戦慄を覚えるスノーホワイト。
 だが、茶番はここから更に加速していく。

「私は姉さんを止めるために、冥府の魔物に魂を捧げてここまでやって来たわ。
 でも…時間切れみたいね…」
「妹姫様!」
「姫様あああああ!!」

 変身が解け、糸が切れた人形のように倒れそうになったアイリスを、猛ダッシュでやって来たトリテレイアことブローディアの騎士が抱きかかえる。
 因みに、妹姫がブローディアの騎士の姫様になったのは、30秒ほど前である。
 ハートのお姫様から元に戻ったのは、アイリスの負担を軽減するためである。
 ベストなタイミングでトリテレイアが飛び込んできたが、別に打ち合わせはしていない。全てはアドリブなのである。

「嫌あああ!!まだ増えるんですの!?関係者!!」
「キミは、妹姫様の騎士だった。ブローディアの騎士じゃないかぁ」
「妹姫様…。姉君を止めるべく、少女の体に乗り移り、ここまで来られたのですね。
 何という高貴な魂でしょうか…」
「そうだねぇ」
 
 なんと、ブローディアの騎士と怪物の暗殺者は同僚だったらしい。
 気絶したアイリスを愉快な仲間たちに預けたブローディアの騎士は、スノーホワイトに儀礼長剣の切っ先を向けると、怒りの籠った声で熱弁する。

「やっと見つけましたわ…隣国の姫。
 いいえ、私に呪いをかけ名と姿と主君を奪った『簒奪の魔女』!
 その悪行もここまでです、正体を見せなさい!」
「知りませんわよ!そんなこと!!初対面!!初対面ですわあああ!!」

 バグ枠たちによる謎設定の絨毯爆撃に、スノーホワイトは悲鳴を上げていた。
 本人も知らない設定により、どんどんと余罪が積み上がっていくのだ。
 そりゃあ…恐ろしいわな。
 ここまでの流れについては、軽く打ち合わせはしたが、基本的にはその場の勢いとアドリブである。
 恐るべし、第六猟兵茶番劇団。

「成程、あれが修羅場というやつでございますね。勉強になります」
「設定が玉突き事故起こしとるなぁ。ってかよくあんな即興劇ができると思うわ」
『ええ、同感ですね』
「ゲストの設定が空欄だったのに書き加えておきましょう」

 白熱の茶番劇を、桐崎・早苗(天然風味の狐娘・f10614)はパチパチと拍手をしながら興味深そうに眺めていた。
 御魂・神治(除霊(物理)・f28925)の方は、腕を組みながら第六猟兵茶番劇団の演劇をコーラとポップコーンでも食べながら見ていたいなぁと眺めていた。
 ロキは、茶番劇の内容をハッキングによってアクセスすることができた『隣国のお姫様』の設定欄に書き加えている。
 やりたい放題である。

「あそこまで熱演されると中々入るタイミングに迷うな」
「そうですね。タイミングを見計らって介入しましょう」

 ウィルトス・ユビキタス(戦場の荒らし屋・f01772)と、主人公を支援する役を名乗ろうとしているセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、介入のタイミングを見計らっていた。
 彼らの配役は、茶番劇団のロールプレイとは相性が悪かったので離れて見ている。
 因みに、ウィルトスは、『変質者』という役を得てしまっている。
 理由は、女装を解いてはいけないタイミングで、好奇心に負けて女装を解いたからである。

「成り行きとはいえ、愉快な仲間には迷惑を掛けたな。
まあ、この物語に取り込まれた時点でツイてないのだから、これも運が悪かったと思って諦めてくれ」

 とは、ウィルトスの談。
 なお、同行していた愉快な仲間からは、「ふざけんな!」と1発殴られた模様。
しばらく茶番劇を眺めていると、何やら茶番劇団側で状況が大きく変化したようだ。

「もう!!もう!!もう!!いい加減にしなさい!!」

 隣国の姫様こと『傲慢』のスノーホワイトがついにキレたのだ。
 長かった茶番劇もこれにて一時中断、これよりはPC側(殆どバグ)とゲストとの決戦となる。

●14p 決戦~バグルート!② ~隣国のお姫様『スノーホワイト』~
「七人の小人たちよ、無礼者を殺しなさい!!良いですわね!!」

 レイピアの切っ先を猟兵達へと突きつけながらスノーホワイトは、七人の小人たちに、猟兵達を皆殺しにしろと指示を飛ばす。
 どうせバグ枠とやらなのだ。殺しても主人公力は高まらない。

「「「「「了解ですじゃ!!!!」」」」

 100%のライバル力により、世界からの補正を得て大幅に強化された小人たちは、各々の武器を持ち、矢のように飛び出していく。
 彼らは各々の武器の使い方を熟知した、高い殺戮技能を持つ精鋭だ。
 その戦闘能力は、強めのオブリビオンと同等程度の強敵である。

「私は主人公ではありません。主人公たちを人知れず護る者。影の騎士セシリア、参る!」

 セシリアは『影の騎士』と名乗りバグ枠化すると、湾刀小人と片手剣小人と剣を交えた。
 金属と金属がぶつかり合う剣戟の音が響き、火花が舞い散る。
 暗黒剣ダークスレイヤーによる強力な一撃を得意とする大剣使いのセシリアと、速度と手数を武器にする湾刀と片手剣の対決は一進一退。
 一撃の重さではセシリアの圧勝であるのだが、武器の種類と人数の差でどうしても殺し切れずに、足止めをされていた。
 
「ワイは女騎士でも、結婚候補者でもない!
 怪異は爆ぜて排除する、硝煙と火薬の香りの『イケメン除霊師』や!!」
『自称が抜けています』

 神治もまた、女装を解除しながら名乗りを上げた。
 これで、女装解除組2人目である。
 彼は、猟兵達を遠距離から狙う猟銃と弓の小人と相対している。
 前線で戦う猟兵達を対象とした、遠距離からの狙撃やバックアタックを防ぐ重要な役割だ。
 ハンドガン2刀流と弓&猟銃コンビでは、手数においてはハンドガン側の神治の方が若干有利だ。
 しかし、常に2体の動きを把握して、的確に弾丸を撃ち込み続けなければならないので、かかる負荷は大きく、爆龍札による爆撃に移る余裕がない。
 故に、神治は2匹の小人によって釘付けにされていた。

「さて、やるとするか」
「まずは、小人退治だねぇ」

 変形機構のある大鎌を構えたウィルトスと、爪を鋭く伸ばしたペトニアロトゥシカは、双剣ゴブリンと斧と槍の長物使いの小人たちと戦っていた。
 火の粉を纏い、宙を舞いながら大鎌を繰り出すウィルトスの猛攻に対して、斧小人はひたすらに防戦一方だ。
 同じく、ペトニアロトゥシカと戦う双剣小人も防戦一方と言った様子である。ユーベルコード【鋭敏感覚】による【ESPでの五感の強化と体内時間加速により】対象の攻撃を予想し、回避する効果によって、攻撃を躱しつつ、的確にダメージを与え続けている。
 しかし、どちらの戦いも決定打を入れようと言った場面で、的確に槍小人が邪魔をしてくる。
 ペトニアロトゥシカが3体の攻撃を捌いて、ウィルトスがスノーホワイトに行くことは、彼女の技能とUCを以てすれば可能である。
 だが、そうさせないように槍小人が、チラチラと愉快な仲間たちの方を見て、時折ダッシュするような仕草を見せている。ここから離れたら、オレは即座に非戦闘員を殺しに行くぞと脅しをかけているのだ。
 そう、彼らは時間稼ぎに徹している。時間さえあれば、彼らの主であるスノーホワイトがきっと何とかしてくれると信じているからだ。
 現に、対スノーホワイトを担当している早苗は苦戦を強いられている。

「あらあら、どうしたのかしら?わたくしを倒すのではありませんでしたの?」
「話は山あり谷あり、変化があってこそ…つまり『危機に抗うほどに主役として美味しい』のでは?」
「ふん…!強がりを!」
 
 スノーホワイトが繰り出すレイピアによる刺突。
その猛攻を、二刀を抜いた早苗が、円の動きを駆使しながらなんとか捌こうとする…が、中々うまく行かない。
 スノーホワイトは、細剣術の使い手である。
 細剣術は、外に向いた左ひざとつま先を軸に、弾力のある足捌きを武器にした突きに特化した剣術である。
 細剣術の特に嫌らしいところは、武器のしなりだ。
 円の動きで紙一重で躱したと思っても、細く長い突きに特化した剣は、力のかけ方によってヒュンっとしなり、相手のガードや回避を掻い潜って、肉体に突き刺さる。

「ふふふ!こう見えてもわたくしは文武両道。美貌だけの女ではありませんわ」
「そのようでございます…ね!」

 繰り出される細剣による刺突を、早苗は強く弾いた。
 半端な避け方をすれば、しなりによって思わぬところを突かれるからだ。
世界一の美貌による催眠や弱体化については、破魔の結界で弾いているため、今のところは影響がないが、蓄積する痛みやダメージで結界の維持ができなくなれば危ういだろう。
 ライバル力と主人公力の出力差という違いを差っ引いたとしても、スノーホワイトというオウガは、『傲慢』の罪を冠するくらいには誇り高く強かった。

「へえ~。今のを防ぎますか。中々やりますわね。猟兵とやらも。
 まあ、世界一美しく強いわたくしには、遠く及びませんが」

 傲慢の罪を冠した女は、ボロボロになりながらも抗い続ける妖狐の少女を見下し嗤う。
 おごり高ぶり人を見下すこと。それが彼女の生き方であり、そうするために努力してきた。

「戦の心得は、気持ちで負けぬこと。慢心は綻びを生み、諦めは機会を逃します。
結末を掴む最後の一手は覚悟と勇気。これは恋路にも通じるかと」
「ふん…!言ってなさい!!勝つのは、わ・た・く・し!ですわ!!」

 1対1の結果は劣勢。
 しかし、仲間を信じて、強い気持ちを以て早苗は戦う。

 トリテレイアは動けない。彼には気絶したアイリスとハッキングを続けるロキと愉快な仲間たちを護りながら、ハッキングを続けるという使命があるから。
 ロキは、戦闘を優位にするべく世界のより深い部分まで液体金属型UDCを伸ばしハッキングを続けている。
 アイリスは気絶しているため動けない。
 セシリアは、2体の小人と交戦中で動けない。
 神治は、2体の小人と銃撃戦を行っているため動けない。
 ウィルトスとペトニアロトゥシカは3人の小人と戦闘中だ。
 そう、誰もが精一杯、戦っているため、スノーホワイトと戦う早苗への増援に行けないでいた。
 戦況は猟兵がやや不利で、早苗がどこまで耐えられるか。或いはどれだけ早く小人を仕留められるのかという事に掛かっていた。

 ――だが、そんな状況を一変するヒロインが、遅刻をしてやって来た。

●14p 決戦~バグルート!③ ~メインヒロイン襲来&大反撃~
「つまりこの世界のヒロインパワーは限られていて、奪い合うから弱くなる…そういうことかよ。だがケチなルールに大人しく縛られてやるラヴ様じゃねぇ」

 物理的に輝くメインヒロインオーラを纏い、城の入り口の方から飛んで現れたのは、ラヴ様こと、ラヴ・フェイタリティ(怪奇!地下世界の落ちものメインヒロイン!・f17338)。
 我が道を行くラヴ様は、ラスボスである七罪『傲慢』のスノーホワイトの元へと一直線で飛んで行くと、ヒロインオーラをぺかーっとさせながら、普通に話しかける。

「いいかスノホワ。テメーのストーリーじゃ王子とのハッピーエンドで終わるみたいだがな、真のメインヒロインはそこで終わらねぇ。めでたしめでたしなんて軟着陸を振り切って誰よりも自由に、誰よりも輝いてこそメインヒロイン!」
「スノホワってわたくし?いきなりあだ名ですの!?」

 ラヴ様は、独自のメインヒロイン論を得意げに語る。
 その勢いと、尋常ではないマイペースさに、スノーホワイトは飲み込まれる。
 完全にラヴ様のペースである。

「ヒロインパワーの源は魂!感情の高ぶりが、ちやほやされたい欲求が、誰よりも主役であるという確信が!!それこそが力となる!!暴走しろヒロインパワー!ハッピーエンドを ぶっちぎれメインヒロイン!
今、ラヴ様は、メインヒロインを超えた超メインヒロインになる!!」
「超メインヒロインって何なんですの!?」

 膨大な魔力を精製する『廻天心臓』がどくんどくんと高鳴り、ヒロインパワーがどんどん高まっていく。
 ラヴ様自身のヒロインパワーとこの世界特有の主人公力がしてはいけない化学反応を起こし、何かもうどうしようもないくらいにハチャメチャなことが起きようとしていた。

「二重属性で通常の2倍!暴走させて更に3倍!諸々載せて大体100倍!これが、メインヒロインの力だァアッ!!」
「嫌ああああ!!何かコワイ!!一体何が起きるんですの!??」

 高まりすぎて暴走したヒロインパワーによって謎の爆発が起きる。
 爆発から現れたのは、2つの真の姿を融合させた機甲剣士へと変身したラヴ様。
 変身の余波で城の一部が破損。なんか青空が覗いているが些事だ。些事!
 非常に強力ではあるが、高すぎるヒロインパワ-が、ラヴ様を蝕むので、長時間の変身は危険だ。

「行くぞ!スノホワ!!」
「んもう!!上等ですわ!!」

 対スノーホワイトの方も【スノーホワイト・ストーリー(白雪姫の物語)】で自身を超強化して、ラヴ様を迎え撃つ。
 スーパーヒロイン大戦??が始まった。

「ラヴ様の変身の余波で世界にかなりのダメージが入りましたね。セキュリティがかなり緩んできています」
「ええ、これならばPC側のキャラクター情報をかなり弄れそうです」

 ブローディアの騎士こと、トリテレイアの言葉にエメラルドの魔女役のロキが頷く。
 スノーホワイトとの遭遇直後から、この本の世界へのハッキングをしていたロキは、同じくハッキング能力を持つ機械騎士のサポートもあり、かなりの深い部分まで掌握していた。
 これならば、『PC』側の登場人物を『ゲスト』枠へ一時的にねじ込むことも可能だろう。

「ええ、ではやりましょうか」
「キャラクター情報改ざん。実行します」

 2人のハッカーによる特大の反則(チート)攻撃が発動し、猟兵たちの逆襲劇が幕を開ける。

「なんじゃと!?」
「ち…力がっ!?」
「おや、小人たちの動きがかなり鈍りましたね。何かがあったのでしょうね」

 2体の剣士型ゴブリンの波状攻撃を捌いていたセシリアは、魔剣から伝わる衝撃から、敵の異常に気付いた。
 攻撃が明らかに軽い。動きも明らかに遅くなっている。

「ハッキングをしていた彼らの働きですね。ならばこちらも応えねばなりませんね」

 セシリアは、暗黒剣ダークスレイヤーを正眼に構えつつ、2匹の剣士型ゴブリンと、ラヴ様と早苗と剣戟を交えるスノーホワイトの立ち位置を確認する。
 ゴブリンたちとスノーホワイトの位置は直線上にある。

「今この瞬間に、私の全てをかける!」

 ユーベルコード【闇の迸発】を発動したセシリアは、暗黒のオーラを身に纏い、肉体を強化すると、ボロボロになった絨毯を蹴って、ゴブリンたちへと斬りかかる。

「姫様ああああああ!?」

 剛剣一閃。
 暗黒のオーラを纏ったダークスレイヤーは、何とか武器で受けようとして振るわれたゴブリンたちの武器ごと、横一文字に両断。
 即座に絶命させる。

「このままスノーホワイトも切り伏せます!」

 暗黒のオーラを纏い、全ての能力を6倍にしたセシリアが、対スノーホワイトに助太刀をするべく駆ける。
 残り時間は、あと70秒。

「ウィルトス様を狙って襲い掛かろうとしていた衛兵(NPC)をハックしました。どなたか支援が必要な方はいらっしゃいますでしょうか」
「こっちに送って槍の奴を抑えさせてくれ」
「こっちも何人か送ってくれや。弓と猟銃の奴の所に突撃させてくれ」
「了解しました」

 男性参加者という『バグ』を排除するためにやって来た衛兵をハッキングしたブローディアの騎士ことトリテレイアは、ウィルトスと神治の指示に従って、設定を書き換えて槍と弓の小人の元へと送り込む。
 武闘会に混ざり込んだ魔物退治にやって来たという設定にして。

「槍の妨害とライバル力による強化さえなければ、斧の処理なんて容易い。
 俺は斧を倒したらスノーホワイトの所に行くが、槍の対処は頼めるか」
「問題ないよぉ」

 ウィルトスの提案にペトニアロトゥシカが頷く。
 衛兵はよく鍛えられた兵士のNPCであるのだが、実力は小人たちと比べると大きく劣る。
 彼らができるのは、一時的な時間稼ぎのみだ。

「では、頼んだ」

 ウィルトスは、ボロボロになった絨毯を蹴って、低空飛行を行うと舞い散る火の粉を纏って加速しながら、斧小人へと斬りかかる。

「ぬおおっつ!?」
 
 斧と変形機構鎌がぶつかり、火花を散らす。
 斧小人の方が力負けをして、大きく隙を晒した。
 今までだったら、このタイミングで横合いから槍小人が飛び出してきて妨害をしていた。
 だが、槍小人は今、衛兵によって足止めされている。

「トドメだ」

 炎を纏った鎌による赤い一閃が小人の体に走り、その赤いラインに沿うように、小人の体は切断された。
 セシリアの斬った2人と合わせて3人処理、残りは4人だ。

「では、親玉を殴りに行くか」

 ウィルトスは、早苗とラヴ様と斬り合っているスノーホワイトの元へと火の粉を舞い散らせながら飛んで行った。

「なんや、みんなド派手にやってるし。俺もそうさえてもらおうかな。城がぶっ壊れても修理費なんて出すつもりはないけどな」

 神治は、銃器型神器『天地』をホルスターにしまうと、爆龍符を取り出した。
 弓と猟銃の小人が衛兵の対処をしている今ならば、やりたい放題ができる。
 具体的に言うとだ。
 NPCを巻き込んだ、ド派手な広範囲爆撃である。

「天将!敵の行動予測と爆破された敵の落下地点の予想は?」
『既に終わっています』

 人工式神『天将』の誘導に従って力を込められた2枚の爆龍符が飛ぶ。
 札が飛んで行った先は、衛兵に追い立てられた敵の予想退避先だ。
 そして、予想通りに、2体のゴブリンたちが逃げ込んできた。

「いよし、発破ぁ!!」

 爆龍符が勢いよく起爆し、閃光と共にド派手な破裂音が響いた。
 足元から炸裂した爆発に巻き込まれたゴブリンたちは、全身黒焦げになりながら、弧を描くような軌道で飛ばされていった。
 飛ばされていった先は、槍と双剣のゴブリンと格闘戦をしていた怪物の暗殺者の所だ。

「あああああああ!!」
「衛兵ごと爆破じゃとおおおおお!!」
「ん、今何か爆発したねぇ。しかも何かこっちに飛んできた気がする」

 双剣を振るう小人の連撃を、最小限の足捌きで躱しつつ。横合いから殴りつけるように槍を振るう小人の鼻っ柱に裏拳を叩きこみながら、ペトニアロトゥシカが呟いた。
 彼女が見上げた先には、スローモーションで空から落ちてくる2人の黒焦げの小人の姿が映っていた。
 先程聞こえた爆発音による被害者だろう。
 しつこく足元を斬って来る双剣使いに注意しつつ、周囲を確認すると、人工式神を引き連れた除霊師の男がにやりと嗤いながら近づいてきていた。

「一発、デカいのかますから。動けないようにしてくれへんか」
「了解だよぉ」

 そう言うと、ペトニアロトゥシカはスピードを上げた。
 裏拳を喰らって動けなくなった槍が復活する前に、双剣を動けなくするべく彼女が取ったのは、位置取りの変更だ。
 黒焦げになって動けなくなった2人と、立ち上がろうとする槍、双剣が真っ直ぐになるように位置取る。
 そしてジャンプしてからの胸の前で構えた2刀を使ってのX字斬りを誘発するように足元のガードを固める。
 後は、タイミングを見切ってX字斬りをする前に拳を叩きこんで、立ち上がったばかりの槍にぶつけて、黒焦げになった二体の所まで転がせばいい。

「ストラーイクって奴だねぇ」
「おおきに。自然を嘗めると怖いで?」

 1塊になった4人の小人に向けて、神治は神器銃『森羅』を構えると、躊躇することなく引金を引いた。
 弾丸に込められた属性は『木』。

「白雪姫に相応しい、林檎の木の根や枝が着弾場所から生えてくるで。
リミッター解除したから、城突き破ってしまうかもな
それはそれでええか…城の修理費は出さへんで!」
「「姫様ああああ!!申し訳ありません!!」」

 弾丸に込められた属性が炸裂し、そこから4人の小人を巻き込みながら巨大な林檎の木が生えた。
 メキメキメキと、凄まじい音を立てて成長する林檎の木は、石材をガリガリと砕きながら太くてたくましい根を張り、目に鮮やかな緑の葉を生やした枝を天高く伸ばしていった。

『これは酷い』
「修理で済むかねぇ」
「俺は知らん」

 立派に育った林檎の木を見上げた天将とペトニアロトゥシカがこれは酷いと呟くと、神治はそっぽを向いて知らないふりをした。
 これにて勇猛で忠実なる七人の小人の討伐は為された。
 後は、スノーホワイトとの決着をつけるだけである。

●14p 決戦~バグルート!④ ~決着~
「あれ…ここは?」
 
 ラヴ様のヒロインパワーが爆発していた頃、1人の少女が目覚めていた。
 長い間、ハートのお姫様を維持していた所為で、身体に大きな負荷がかかり、ダウンしていたアイリスだ。
 だが、どうにも様子がおかしい。

「おなかがすいたなぁ…。なにかたべるものはいないかなぁ…」

 ふらふらふらと、アイリスは夢を見ているかのように歩く。
 彼女に宿る『名すら失くしたオウガ』の意識と衝動が顕在化しているようだ。
 くうくうとお腹を空かせたアイリスは、無意識的に歩いていく。
 猟兵たちとスノーホワイトが激戦を繰り広げている戦場に。

「ちっ。速いわですわね。あのよく分からないメインヒロイン」
「オラオラァ!へばってんじゃねーぞ、スノホワァ!!」
「くっ!」

 ラヴ様が、すれ違い様に繰り出す超機動斬撃を、スノーホワイトは何とかレイピアで凌いでいた。
 速い、強い、そして重い一撃だ。
 このままでは不味い。受け続ければ剣が保たないと焦りが生まれる。
 そう、剣と魔法を駆使してさっさと仕留めないと不味いのだ。何故ならば猟兵は9人もいる。1人にこんなに時間をかけてはいられない。

「毒林檎を味わってお眠りなさ…くっ!」
「させません」

 だが、そうはさせないと、タイミングを的確に見切って早苗が斬り込んでくる。
 圧倒的な速さでかく乱する機甲剣士と的確なタイミングで斬り込んでくる二刀流の剣士を、スノーホワイトは攻略できないでいた。
 時間は、猟兵たちの味方だろう。七人の小人は強力な兵士ではあるが、あくまでスノーホワイトを補助するサポーターなのだ。
 彼女ほど強くない。そのため、いつかは耐えきれなくなって敗走するだろう。

「くっ。こうなったら二刀の方の攻撃を受けてでも、超速機動メインヒロインを仕留めるしかないのかしら…」

 UCの効果による再生力でのごり押しを考えた彼女に異常が発生する。

「なっ!?わたしのライバル力が出力低下?どうして…?」

 身体中に満ち溢れていた世界からの力が急に抜けていくような感覚が彼女を襲う。
 体感では100%あったはずの力が、1/3か1/4になったように感じる。
 一体なぜ?そう考えた彼女に、液体金属で何かをしようとしていた猟兵の顔が思い浮かんだ。

「何をしましたの!?」
「一時的にPC枠で残っていた人の配役をゲストに変えただけですよ」
「1人当たりのライバル力は、ライバルの数に反比例する。ですよね」

 簡単なことのようにエメラルドの魔女とブローディアの騎士は言う。
 勿論、簡単な事ではない。
 本来オウガでなければ、なれない配役である『隣国のお姫様』役にオウガ以外をねじ込むことはかなり難しい事である。
 何せ、世界を騙し続けるような行為なのだ。異常な集中力で超強化されたロキのハッキングスキルを、同じくハッキングスキルを持つトリテレイアが全力で支援することで何とか2~3人と言った所だ。

「何という滅茶苦茶なことを。こいつらから先に仕留めないといけませんでしたか」
「貴女の相手は私たちでございます」
「おいおい、余所見してるんじゃねーぜぇ!」
「しまっ…きゃああああああああ!!」
 
 余所見をした隙をついて、早苗が流し斬りを決め、ラヴ様の強烈な一撃がスノーホワイトを吹き飛ばした。
 感触的にはクリーンヒットといった所。
 ライバル力が落ちている時に受けたダメージなのでかなりの深手だろう。

「まだよ…。まだ…負けないわ。わたくしには王子様の愛がついている。
 わたくしは、こんな訳の分からないやつらにも、訳の分からない展開にも絶対に負けませんわ。
 わたくしは七罪『傲慢』のスノーホワイトなのですわよ!こんな奴らに見下されてなるものですか!」

 異常なまでの自己愛、ライドが彼女を奮い立たせる。
 そして、彼女が発動した【スノーホワイト・ストーリー】によって付与された王子様の愛が、彼女の身に刻まれた傷を再生させる。

「へぇ~中々気合が入っているじゃないか」
「っ!?男!!何で男がここにいるんですの!?この変質者!!」
「俺を変質者と呼びたくば呼ぶがいい。
 バグ枠となって台本を飛び出したからにはその役を演じることに不満はない。
 俺は誰かの掌の上で踊ることが何よりも嫌いだからな。
 さあ変質者の本領を発揮しようか」

 合流したウィルトスは、火の粉を纏って空を舞いながら、イクリプス・フリティラリアによる斬撃を仕掛ける。
 彼の取ろうとしていた戦法は徹底したヒットアンドアウェイだ。
 視界の端を火の粉を纏ってちょろちょろと飛び回りつつ、時折ちょっかいをかけてヘイトを集める。
 毒による自滅こそが彼の狙いであった。
 まあ、とある事情で、その作戦は採用されなかったのだが。

「人目を引くだけ引いて掻き回す。まさに変質者だな」
「最低ですわ!!」
「本当に最低だなぁ!変質者!!」
「今、味方から刺されたんだが」
「えっと…まあ。有効な作戦ではございますから」

 2人のハッカーによるライバル力の弱体、前衛が2人から3人になったことによる安定感の向上。
 これらが不死身の再生力を持つスノーホワイトとの戦いを優位に運んでいた。
 そこに、ダメ押しが現れる。

「ひたむきな努力で夢を叶えた騎士の様に、私も力の限り奮戦して勝利を掴みます!」

 戦っていた位置と距離の関係で、ウィルトスに少し遅れてセシリアが現れる。
 UCの代償によって時間がない彼女は速攻をしかける。

「速攻で決めます。スノーホワイト!お覚悟を!」
「新手ですか。小人たちは…やられましたのね」

 暗黒のオーラを纏ったセシリアは、上段に構えた暗黒剣ダークスレイヤーを力いっぱいに振り下ろした。
 スノーホワイトは、レイピアの根本の部分で剛剣を受け止める。
 その部位が一番、金属がぶ厚く、大剣の一撃でも受け止められるほどの強度があるからだ。

 ――ミシッ!ミシッ!パキンッ!!

「なっ!!きゃああああああああ!!」

 ラヴ様の超機動斬撃を何度も受けていたレイピアが、度重なるダメージに耐えきれなくなり、砕けて散った。
 セシリアの振るった暗黒剣ダークスレイヤーは、スノーホワイトの肩口に深々と刺さる。

「もう一撃っ!」
「っしゃ、追撃だァ!」
「俺も続こう」
「あああああああああ!!!!」

 剣を失い、右肩に深手を負ったスノーホワイトに、セシリアの振るう大剣と、ラヴ様の超機動斬撃、ウィルトスの鎌による追撃が決まる。
 不死身じみた再生力を持つとはいえ、今の斬撃によるダメージは非常に大きい。
 再生にはかなりの時間がかかるだろう。
 しかし、スノーホワイトのプライドが膝をつくことを許さない。

「まだよ!わたくしは負けない。負けないわ!!」

 再生中のボロボロの体をプライドが立ち上がらせた。
 その時だった。
 彼女の足元が突如、隆起したのだ。

「きゃっ!?何で木の根っこがこんな所に」

 そう、それは神治が植えて知らんぷりをした林檎の木の根っこだった。
 予想外の出来事にバランスを崩したスノーホワイト。
 そんな彼女を、誰かが後ろから抱きとめた。

『……あなたは、ありす?おうが?でもおなかすいたから、わるいおうがはやっつけて、わたしに、きろくしてあげる』
「貴女は…わたくしの妹を名乗った不届き者の…ぐっ」

 言い終える前にスノーホワイトが吐血した。
 スノーホワイトの胸元から刃物が飛び出ていた。
 彼女に宿る『名すら失くしたオウガ』の影響を受けたアイリスが、背中からスノーホワイトを刺し貫いたからである。

「こ…こいつ。わたくしのことを喰らおうとしていますわね」
『ふふふ…。いただきます』

 そう、アイリスに宿ったオウガの狙いは、『記憶と意識の侵食同化吸収』だ。
 アリスランスを変形させて生み出した包丁を通して、スノーホワイトの存在を喰らいつくそうとしている。

「させませんわ…。離しなさい!!」
『きゃあっ』

 力の半分以上を食われたスノーホワイトは、最後の力を振り絞るとアイリスを強く突き飛ばした。
 代償の大きいユーベルコードの長時間使用によってボロボロになったアイリスは、そのままノックアウト。
 近くに居たウィルトスによって回収される。

「はあっ…はあ…。まだ…」
「いえ、これで終わりに致しましょう」
「い、嫌よ!わたくしは永遠に終わらない!!」

 満身創痍のスノーホワイトの前に立つのは、同じく傷だらけになりながらも、最初からスノーホワイトと戦い続けた早苗であった。

「一族に伝わりし退魔の業がひとつ……秘剣、『石縛ノ太刀』…!」

 極限まで研ぎ澄まされた霊力が込められたサムライブレイドと短刀の2刀が煌めき、スノーホワイトの肉体に斬撃痕を刻んだ。

「ま…まだよ、これくらい…」
「いえ、これで終わりでございます」

 早苗が刻んだ斬撃痕を辿るように放たれた概念ごと断ち切る不可視の斬撃が、オウガを不死身の概念ごと断ち切った。

「あああああ!!嘘よおおおお!!」

 肉体と魂が分かたれた体は石のように固まると、ボロボロと崩れ去り、骸の海へと消えていった。

●エピローグ
 王子様への求婚役は、婚活の予行演習ということで早苗が行くことになった。
 求婚役が居なければ、ロキが適当にハッピーエンドをでっち上げると言っていたが、何が起こるか分からないので止めておいた。
 因みにそのストーリーでは…

「以前王子にかけた呪い解きましょう」

 と言って、エメラルドの魔女が呪いを解いて、王子は女性の姿に戻り、騎士と姉妹のように仲良く暮らしました。
 やがて王女は別の国の王子に嫁ぎ、幸せに暮らしましたとさ。
 と、言う形で終わったらしい。
 ブローディアの騎士については、結局呪いは解けませんでしたか…と、言って何処かへ消えたそうな。最後までロールプレイガチ勢だった。
 物語については、早苗と王子様の婚約が決まって、めでたし、めでたしで終了。
 ENDの文字を見た瞬間に、元いた世界へと飛ばされることとなった。
 猟兵たちは、グリモア猟兵の待つ、グリモアベースに。
 愉快な仲間たちは、アリスラビリンスへと戻って、今回起こった事件を面白おかしく語っていくそうだ。
 斯くして、可笑しな物語は終わり、猟兵や愉快な仲間たちは騒がしい日常へと帰っていくのであった。
 めでたし、めでたし。

●????????????
「ふふふ…くくく…。あはははは!!何なんでしょう、このシナリオ。
 何をどうすればこうなるんでしょうかね。
 いやぁ、猟兵たちのアイデアと行動力は恐ろしいですわね」

 どこか分からないところで、真っ黒ずくめの女が、本を読みながら腹を抱えて笑っていた。
 ずいぶんと愉しそうな様子だ。

「スノーホワイトには悪い事しましたが…。これはこれでアリですわね。
 これだから、役者のアドリブがある即興劇は楽しいというものですわ。
 さあ、次はどんな物語を紡いで下さるんでしょうかね。うふふ。あはははは!!」

 パタンと、本を閉じて猟書家の女は何処かへ歩いていく。
 次はどこに行くのだろうか。
 それは、彼女も知らないのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月10日
宿敵 『『七罪』傲慢のスノーホワイト』 を撃破!


挿絵イラスト