4
ダーク・スイート・オーケストラ

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




 グリモアベースの片隅のカウンターに頬杖をついて、彩・黒月(白雨・f12109)は切れ長の目を興味なさ気に猟兵たちへ向けながら口を開いた。
「……まずは感謝を。集まってくれてありがとう」
 彼女のイケボに少なからず数名の女子猟兵が頬を染めたが、そんなことはどうでもいい。
 黒月は椅子から立ち上がると、胸に手を当てて深呼吸した。
 そして静かに語る内容とは。

「……みんな、チョコレート好きだよね」

 うわぁまたそれ系の事件か、みたいな顔をする猟兵一同。
 ここのところ多いのだ。その手の依頼が。
 そんな猟兵たちの顔を心の中でニマニマしながら、しかしあくまでポーカーフェイスを装いつつ眺める黒月。
 たいへん人が悪い。
「冗談はさて置き。今回の依頼はダークセイヴァーだね。とある村で厄介な事件が起きるという予知をした。……どうでもいいけど、私この地の予知多くない?」
 縁もゆかりもないんだけど、と付け加えつつ話を続ける。
「まぁいいや。で、その村なんだけど……とても平和なんだ。いや、事件が起きるって言ったり平和って言ったり、混乱するのはわかるよ。ごめんね?」
 疑問符を浮かべている猟兵たちに謝ると、黒月は村についての情報を提示していった。

 そもそも、ダークセイヴァーというオブリビオンに支配された地で、平和な村は存在しない――猟兵が解放しない限りは。
 今回の村は、過去に猟兵が立ち入った形跡はなく初の潜入となる。
 また、村は辺境の開けた土地にあるため、オブリビオンに発見されていないというのは考えにくい。
 そんな村が、平和と言われている。
 それはつまり――。

「非常に怪しい村ってわけだよねぇ。いやぁ、何かあるよね絶対」
 やれやれというジェスチャーをしながら喋る黒月を、半眼で見つめる猟兵たち。
 早く本題に入れと言っている気がする。いや、言っている。
 黒月は明後日の方向を見ながら、さて本題なんだけど……と口早に進めた。
「この村の周辺を領地としているオブリビオンが、あろうことか村人に扮して潜んでいるというのが今回の予知内容です」
 彼女の言葉に、猟兵たちはやっぱりなーという表情になった。
 それを面白くなさそうに一瞥して、黒月は続ける。
「居場所も、どんなカタチで潜んでいるかも、予知ではわからなかった。だけど、放置しておくと村が滅ぶことはわかってる。だから君たちを呼んだってわけ」
 彼女はそう言いながら、白い掌の上にグリモアキューブを出現させた。
 猟兵たちは出発の気配を感じ、表情が引き締まる。
 そんな猟兵たちを見渡しながら、黒月は今回最初のミッションを告げた。
「まず君たちには、オブリビオンに関する情報を集めてもらうよ。とは言え、オブリビオン自身が潜伏している村だからね……村人たちが襲って来る可能性だってある」
 脅迫されて襲ったり、そもそも操られていたり、といったケースは十分考えられる。
 気を付けるに越したことはないと注意を促す黒月に、猟兵たちは力強く頷いた。

「さて、準備はいいかな?」
 黒月の問いに、猟兵たちが首肯する。
「おーけー、じゃあ転送しちゃうぞー。健闘を祈る!」


霧雨りあ
 ダークセイヴァーからこんばんは、霧雨りあです。
 またもやこの地が舞台です。好きだから仕方なかった。

 最初は潜入調査となります。
 友好度が底辺な村人たちが出迎えてくれるかと思うので、何とか情報を聞き出してください。
 ちなみに、最初に黒月が立てたフラグは第二章で回収されます。
 季節ネタと関係なさそうで関係あるシナリオ!
 お楽しみいただけたら幸いです。

 それでは、みなさまの冒険が良きものとなりますように。
44




第1章 冒険 『不穏な気配の漂う村』

POW   :    力づくで情報を聞き出す/罠を強引に突破する

SPD   :    村人に自分の存在を気づかせずに情報収集する

WIZ   :    交渉できそうな村人を見つけ出し情報を得る/罠にかかったふりをする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが転送されたのは、村の入り口から少し離れた小高い丘の上だった。
 ここから村の全貌が見渡せるが――早速猟兵たちの表情が曇る。
 村の中央に、巨大な壁があったのだ。
 村への入口は南側にしかなく、壁から北側へは行けないようになっている。
 この距離からだと詳細はわからないが、壁に扉らしきものは付いていない。
 壁から村内の景色へ意識を移せば、綺麗な石畳の道に美しい街灯、アックス&ウィザーズにありそうな所謂『西洋風』と呼ばれる建物……。
 ダークセイヴァーの村としては考えられないその風景に、猟兵たちは眉をひそめた。
 この村では、一体何が起きているのだろうか――。
テラ・グゥスター
はてさて、どうして平和でいられるのかねぇ…何かを代償に、じゃなけりゃあいいが。
【SPD】
オブリビオンが潜んでるのを村の連中が知ってるかどうかわからんが、今表面上平穏なら壊したくないってのが人間だろうなぁ。普段の態度も見てみたいし、隠密行動で探ってみるか。
人の集まるところ、自分の気配が紛れやすいのと村人同士探り合いや怯えがないか確認しやすいので近づく。怯えも疑心暗鬼もなけりゃあ何かしら取引で平穏が保たれてる証拠、逆なら脅されてると推測できる。
後は怯えや横柄、まぁ態度の種別は何でもいいが、極端に振れてる奴は情報持ってそうだな。見つけ次第UCで追跡して居場所と行動パターンを調べよう。



 技能によって目立たなくなったテラ・グゥスター(生存こそ正義・f04573)は、隠れる必要もなく村の中を進んでいく。
(はてさて、どうして平和でいられるのかねぇ……何かを代償に、じゃなけりゃあいいが)
 心の中で呟きながら通り過ぎる村人たちを観察するが、別段怯えている様子もない。
 例の巨大な壁まで何事もなく進むと、壁沿いには露店がずらりと並び、かなりの賑わいを見せていることに驚いた。
 ただの日常の風景と言うよりは、まるで祭りを控えた人々が市場に出向いているかのような賑わいだ。
 テラは最も人だかりが出来ている露店へ近付き、人々の様子を伺った。
 と、前の若い男女の会話が耳に入ってくる。
「――それで、池へ流し込む分は用意出来そうなのか?」
「いいえ、そちらは無理ね」
「仕方ないな……原材料の納品で何とか許してもらうしかねぇか」
 そう言って、男性だけが露店から離れて行く。
 心なしか顔色が悪い。
(池へ流し込む?許してもらう?)
 気になる単語を拾いながら、テラはユーベルコードで呼び出したUDC妖怪べとべとさんを使って男性を尾行することにした。
 べとべとさんと五感を共有するテラは建物の影に潜み、べとべとさんの意識を通して男性の行動を観察する。
 男性は、自身が住んでいると思われる家に立ち寄ると、大きな袋を背負って出てきた。
(原材料の納品とか言っていたな……あれがそうなのか)
 彼は間違いなく青ざめた顔で足早に西へ向かった。
(どこへ行くつもりだ……?)
 男性は民家の密集地を抜け、畑や小さな工場が点在する場所を抜け、最西端まで進んで行く。

 そこには大きな館があった。
 男性は、館の前に立つ筋肉質な巨漢と何事か会話すると、中へ入って行く。
(館にあんなデカブツを配置する必要があるもんかねぇ)
 赤い目を細めて、明らかに普通ではない空気が漂う館を見やる。
 ここは調査の必要がありそうだなと呟いて、テラは他の猟兵たちと合流するために一旦引き上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

阿紫花・スミコ
「旅の者だけど、ここは、いい村だねー」
まずは、村について調査。昼は村人と話したり、夜はこっそり村の様子を探ったり。イーグルアイ(ドローン)を飛ばしてもいいし、ビーストウィスパー(集音ガジェット)で聞き耳を立てるのもいいかも。
もちろん、いざというときのための準備はしておく。サーマルスキャナーで周囲の人の流れを観察したり、万が一にも襲ってくるようなものがいれば、ワイヤーギヤからフックを射出し、巻き取り、空中へ離脱する。
(コミュ力、やさしさ、情報収集、聞き耳、暗視、逃げ足、空中戦)

持てる技術を総動員して、まずは、この村の秘密を探ってやる!



 巨大な壁沿いに立ち並ぶ露店の中を、ひとりの少女が歩いて行く。
 人懐こい笑みを浮かべた黒目黒髪の阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は、ちょうど人がいなくなった露店の店主に声を掛けた。
「こんにちは」
「おう、いらっしゃい!今日は豆を大量に入荷してるよ。今度のイベントがヤバいからなぁ」
 スミコはまだ何も言ってないが、店主が聞いてもいないことを話してくれる。
 彼女の技能も相まって、大抵の人間は初対面でも友好的に応じてくれるものだ。
 そのうち他の村人も集まり、他愛もない日常会話をはじめた。
 本当に危機に瀕した村なのかと疑いたくなる程、村人たちは平和そうな顔をしていた。
 みんなの会話に適度な相槌を打ちつつ、スミコは店主にそっと質問する。
「そういえばイベントの話してなかったっけ?」
「ああ、そうだそうだ。今度のイベントはみんな頭抱えるよなぁ。館主さんも何考えてるんだか」
『館主』という単語を胸に刻みつつ、そうだよねぇと頷く。
 更に何か言おうとした店主は、しかし何かに気付いたように表情を強張らせた。
「……いや、違うんだ。文句なんて言ってねーぞ?館主さんのありがたーいイベントだと思ってるぜ」
 まるで誰かへの言い訳としか聞こえないその言葉に、何か言おうとスミコが口を開きかけたその時。
「あら?そういえばあなた、見ない顔ね?」
 隣で談笑していた女性が声を掛けて来た。
「うん、ボクは旅の者だけど、ここはいい村だねー」
 スミコがそう返答すると、村人全員の表情が凍り付く。
「……旅の者?」
 隣の女性が乾いた声で呟いた。
(あれ、ボクまずいこと言ったかな……?)
 今にも飛びかかって来そうな男性を目の端で捉えつつ、事前にドローンで把握しておいた建物の位置関係を脳内で展開する。
(一旦退くか)
 目的の建物にワイヤーギアから射出したフックを引っ掛け、空中に身を躍らせると同時に、数名の男性が飛びかかって来た。
 しかし彼女のスピードに敵うはずもなく、村人の中にはスミコの移動に気付かない者もいる程の速度で、露店から離れた建物の屋上に着地する。
「ふう、びっくりした」
 スミコは一息つくと、先ほどの会話の内容を反芻する。
 館主が非常に怪しいが、気になることはそこだけではない。
 なかなか重要な情報を得たなと思いながら、一旦他の猟兵と情報を共有するためにも彼女は村を後にした。

成功 🔵​🔵​🔴​

リネット・ルゥセーブル
幸せそうだから何かある、となると最早言いがかりだな。
経験上否定出来そうもないが。

この世界は夜中に出歩くには不向きだ。
だからこそ、夜中に出歩く者がいれば、それは違和感になる。

【目立たない】よう【忍び足】で夜の村を進む。
黒のマントがあるから、ある程度は夜闇に溶け込むだろう。

もし出歩いている者がいれば『総ての路は業を示す』で追跡を開始。
移動経路はマッピングしておき、もし建物等に入っていった場合は場所を把握する。

これを繰り返せば、自然と傾向が見えてくる筈だ。

明らかに人が集まっている場所があれば、なるべく気付かれないようにしつつ潜入し、内情を可能な範囲で見ておこう。



 夜と闇に覆われた世界であるダークセイヴァーにも、稀に晴れる日がある。
 そんな『レアな日』を引き当てた猟兵たちだったが……彼女にはあまり関係のないことだった。
 珍しく星が瞬く空の下を、夜闇に溶けた人影が進んでいく。
 黒いマントに身を包んだリネット・ルゥセーブル(黒ずきん・f10055)は、気配を消して村の様子を探っていた。
(幸せそうだから何かある、となると最早言いがかりだな)
 無暗やたらと疑うものではないと思いつつも、 経験上否定出来そうもなく。
 しかし依頼を受けたからには成果を上げねばと、こうして歩いているわけだ。
 どちらかと言うと単独行動を好む彼女は、ほとんどの猟兵が日中の調査に出向いたため、夜に活動することを選んだ。
 黒いマントと技能を駆使すれば、夜闇で彼女を見つけることは難しい。

 耳が痛い程の静寂。
 夜は更け、人々は寝静まっている――いや、いるはずなのだ。
「……?」
 リネットは気配を察して立ち止まった。
 彼女の前を、少女が小走りに横切る。
 リネットは迷わず黒いハゲタカを召喚すると、後を追わせた。
 五感を共有したハゲタカの目を使って、上空から少女を観察する。
 少女は大きな館の前で立ち止まると、筋肉質の巨漢と会話をし、館の中へと入って行った。
 こんな時間にも関わらず、館は窓には煌々と明かりが灯っている。
(ここで何か行われているのか……?)
 リネットは館に最も近い木を見つけると、そこへハゲタカをとまらせた。
 一番近い窓は小さかったが、明かりのおかげで中がよく見える。
 その部屋は厨房だった。
 しかし、ただの厨房ではなく――中の広さが異様だった。
(何故こんな広い厨房が……?)
 リネットは心の中で呟くと、ここで作られているものに興味を示す。
 コック帽を被った数名の巨漢(外の巨漢と言い、何故か巨漢が多い)は、忙しそうに大釜を掻き混ぜていた。
 大釜の数は相当なもので、中には赤茶色の液体が入っている。
 こんな夜更けに一体何を作っているというのか。
 そして、先ほどの少女はここへ何をしに来たのか。
(これはもう少し探る必要があるな……)
 リネットはハゲタカを還すと、情報を共有するために他の猟兵たちの元へと向かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

碧海・紗
WIZ

この世界で平和な村…
不自然極まりないですね。

居場所もどう潜んでるかもわからないようですが
村人に扮しているのが確かなら…

この村に不自然ではない方を
【視力】で見つけてお声がけしてみましょう。
【コミュ力】【情報収集】でひとつでも手がかりを得られたら。
この村はどんな村なのかしら…
最近何か、変わったことは?
【誘惑】も駆使して人当たり良く。


村人の方が何かしらの理由で襲ってきた場合は
【フェイント】を用いながら空へ飛んで回避しましょう。

そんな回避ですら阻止できる方がいるなら
あなたは本当に村人ですか…?


アドリブ歓迎



 昨日の晴れ渡った空が嘘だったかのような、闇色の空。
 空だけでなく、空気までも闇に包まれてしまったかのような……そんな朝が来た。
(こんな闇の世界で平和な村……不自然極まりないですね)
 周りの闇に溶け込むような黒い翼を羽ばたかせ、碧海・紗(闇雲・f04532)は村の東側にある池の畔に舞い降りた。

「おや、見かけない人ですね?」
 突然後方から声を掛けられ、驚いて振り返る。
 そこには、全身びしょ濡れになった青年が立っていた。
 どうやら池から上がって来たようだ。
「ああ、ごめんなさい。驚かせました?」
 紗は池に入って何をしていたか尋ねようとしたが、これは情報入手の好機と見て、技能を駆使しつつ口を開いた。
「わたし、迷い込んでしまったみたいで……困っていたの」
 黒い肌に映える美しい金の髪を指で弄びながら、妖艶な空気を纏った彼女の声に、青年の頬が一瞬で染まる。
「え、迷い人ですか。僕でよければ力になりますよ?」
 誘惑の技能にあっさりと掛かった青年は、語気を強めて紗の前までやって来た。
「ええ、ありがとう。それじゃ、まずは――」
 彼女は満足そうに微笑むと、村のことを幾つか質問した。

 青年によると、『館主』と呼ばれる人物が定期的に強制イベントを開催しているらしい。
 イベントは事前に準備期間が設けられ、メインとなる催し物の準備は『館主の依頼』として村人全員に発行される。
 今回のイベントでは『村に存在する池の全てを、館主指定の材料で作った液体で満たす』という難題が含まれていたそうだ。

 明らかに怪しい『館主』――紗は続けて青年に質問した。
「館主にはどうすれば会えるかしら?」
 青年は苦笑しながら、しかし熱い視線のまま答える。
「そうですね……あの方が最も楽しみにしている『池を液体で満たす依頼』が失敗に終われば、会えるかも知れませんね」
 その場合、村人の命はなさそうだが……。
 紗は頷きながら聞いていたが、いつの間にか青年の表情が曇っていることに気付いた。
「どうしたの?」
「いえ、実は ……北の池の水は、村の飲み水になっているんです。あそこを謎の液体なんかで満たされたら――僕たちはどうなるんでしょうね」
 とんでもない事実を聞かされて、紗は反射的に言葉が飛び出す。
「そんな……そこは反対すれば良かったではないですか!」
 口調が元に戻っていたが、青年は気にする風でもなく続けた。
「いえいえ、無理ですよ。あの方に逆らったら殺されますから。それに、北の池は昨夜のうちに入れ替わってるはずなんです――」

 紗は青年にかけた魅了を解いて、その場を後にした。
 北の池は、中央の巨大な壁の向こうにあるらしい。
 壁の向こうへの行き方は、誰も知らない。
「さて……もう少し聞き込みを続けましょうか」
 彼女は村の中央へと向かって羽ばたいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リネット・ルゥセーブル
赤茶色の液体……入れ替わっている……ふむ。

とりあえず既に入れ替わっているはず、という北の池に向かおうか。

妨害を防ぐために人が張っているかもしれない、【目立たない】ように木陰等に隠れながら進む。

まずは高台から双眼鏡等も使って確認。幸い【視力】には自信がある。
おそらく本当に入れ替わっているなら、既に風景が変わっている筈だ。

人が居ないようであれば、降りていき、池の液体を舐めてみよう。
一発で解る。
人がいるならば、轍等、液体を入れ替える為に使った痕跡を探し、追いかけていこう。
おそらく夜見つけたあの館に繋がる筈だ。

……私の予想が当たったら恨むぞ、黒月。
君の冗談がこの村を呪ってしまったのかもしれない。



 昼を過ぎても闇に包まれた空は暗く、しかし村人はイベントに向けて最後の仕上げに入って活気に溢れていた。
 実際は『強制的に活気付かされている』のだが。

(赤茶色の液体……入れ替わっている……ふむ)
 高台から双眼鏡で前方を眺めつつ、リネット・ルゥセーブル(黒ずきん・f10055)は、昨夜自身が見たものと、新たに今朝入った情報を整理していた。
 もちろん、単独行動である。
(池を満たすほどの大量の液体?昨夜見た赤茶色の液体ではないのか?)
 リネットはほぼ確信しつつも、確証を得るために調査を進める。

 壁の北側にある池は、壁を突破する術がない猟兵たちを大いに悩ませた。
 しかし、例の館の調査を進めていた猟兵のひとりが、館の裏口から繋がる地下水路を通って、壁の北側に出られることを突き止めたのだ。
 リネットがこちら側にいるのは、そういう理由からだった。

「やはりか……」
 リネットは双眼鏡を下ろした。
 北の池は、紛うことなき赤茶色だった。
 真っ暗な地下水路を抜ける途中で、暗視目の良いリネットは茶色のシミが点々と落ちているのを目撃している。
 地下水路を抜けた先には、何本もの轍。
 例の館から続いているこれ等は、きっと池まで続いているはずだ。

 リネットは、北の池まで静かに駆けた。
 そんなに距離はない。
 ものの数分で辿り着き、池の周りに人がいないことを確認する。
 そして、池の畔にしゃがみ込むと、その赤茶色の液体を指ですくって舐めた。

「……チョコレート」

 リネットは呟いて立ち上がると、ため息交じりに空を見上げた。
(恨むぞ、黒月。君の冗談がこの村を呪ってしまったのかも知れない)
 自分を送り届けたグリモア猟兵に毒突きながら、彼女は軽く首を振って気を取り直す。
 そして、他の猟兵たちが集まっているであろう場所へと戻って行くのだった。

 池をこのままにはしておけない。
 村人のためにも、そして『館主』を表舞台に引きずり出すためにも。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『汚水浄化指令』

POW   :    汚水の中に飛び込み水が汚れた原因を探したり取り除く

SPD   :    排水設備を整えたりして、水の循環を良くする

WIZ   :    魔力や中和剤等で汚水を浄化する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 村人たちが普段飲んでいる水は、北の池を水源としている。
 しかし、その池は今や甘くておいしいチョコレートに支配されていた。
 水の一滴も存在しない。
 一体、誰得だと言うのか。

 村人たちは、明日に控えたイベントの準備に『笑顔で』勤しんでいるが、気が気ではないだろう。
 貯水出来る量には限りがある……明日にも水はなくなってしまうに違いない。

 さあ、猟兵たちの出番である。
 村人を助け、オブリビオンを屠るためにも、チョコレートによって汚染された北の池を元に戻さなければならない。
 かなりの難題ではあるが――道はある。
ルセリア・ニベルーチェ
アドリブ歓迎ですの
他の猟兵さんとの協力も大丈夫よ

えっ、ルセリアさんにチョコレートの池にダイブしろと?
何かの罰ゲームでしょうか、それともご褒美でしょうか
しょうがないですねぇ……(ずぶずぶとチョコの池に沈みゆく)

ユーベルコード【黒式・剣身一体】で黒剣を取り込み
水中呼吸や視界確保などチョコの水中に対応した力を得て探索する。
原因が見つかれば、他の猟兵さんに知らせて取り除きましょうかね。


阿紫花・スミコ
「ゆるさない・・・ゆるさないぞぅ・・・!」
怒りで肩を震わすスミコ。こんなのって・・・ない!
「チョコレートを池にしちゃうなんて・・・なんて、もったいない!」
極度の甘党である彼女にとって、スイーツは命。それを粗末にするものを絶対にゆるさない!

とりあえずは、チョコレートの排出と、水の入れ替えだ。町で現地調達できる機械(もちろん協力してくれるはずもないので手段は選ばない)、グリモアベースに連絡を取って調達してもいい。スーツケースの工具でポンプのようなものを作る。必要があれば、ユーベルコード「スチームエンジン」で出力を強化しよう。(メカニック、掃除)

当然妨害は実力で排除、ボクの人形に勝てると思うのかい?



「ゆるさない……ゆるさないぞぅ……!」
 チョコレート池の畔で、阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は怒りに肩を震わしながら呟いた。
 あまりの形相に、彼女の近くで池を調査していた猟兵たちが後ずさる。
「チョコレートを池にしちゃうなんて……なんて、もったいない!」
 極度の甘党である彼女にとって、スイーツは命。
 それを粗末にする行為は、例え神であっても許されはしないのだ。

 そんなスミコの視線の先で、銀髪赤眼のダンピール、ルセリア・ニベルーチェ(吸血鬼嬢は眠らない・f00532)は、若干浮足立った様子で池を眺めていた。
 そして何を思ったのか、突然池の中へと入って行ったのである。
 正気の沙汰ではないと誰もが思う中、ずぶずぶずぶ……と沈みゆくルセリアだったが――。

(災厄を今ここに。主に従いし呪われた君よ今こそ1つに──『黒式・剣身一体解放』)

 突如としてユーベルコード【黒式・剣身一体】で黒剣を取り込んだ彼女は、視界確保と呼吸を可能にした。

(さて……ここに原因があると良いのですが)

 遊んでいたわけではなかったルセリアは、今回の『池チョコレート化』の原因が池の中にあると見て、池に入ったのだった。

 ずぶずぶずぶ……。

 彼女が移動すると水面に謎の波紋が形成されるため、池の畔で調査や作業をしている猟兵たちが何事かと池に注目する。
 スミコは、ルセリアが池に入って行くのを見ていたので驚きはしなかったが、最初は奇異な目で見ていたものの、どうやら池の中で調査を始めたことに気付いた。
(あの人も体を張ってくれている。ボクも頑張らないとね!)

 スミコは、中央の壁を抜けて露店が立ち並ぶ辺りまで戻ると、水を入れ替えるための道具を探した。
 もちろん村人の力は借りられないため、目ぼしい道具が見つかれば力ずくでも手に入れるつもりだ。
 変装して長い露店の通りを一通り見終えた彼女だったが、目ぼしい道具を見つけることは出来なかった。
 仕方なく別の場所へと移動しかけたその時。
「いたぞ!外の人間だ!」
「うーん、忘れてくれて良かったんだけどな」
 スミコは苦笑いしつつ、ワイヤーフック移動しようとしたが、建物までの距離がある。
 予想より多く集まって来た村人に、しかし容赦なくからくり人形の『ダグザ』で蹴散らすことを考えていたが……。

「あらあら、お困りかしら?」
「キミはさっきの……ってその姿!」
 ひたひたと村人とスミコの間を横切ったのは、全身チョコレートでコーティングされたルセリアだった。
「池に何もなかったから、ひとまず上陸したのだけれど……水がないから体を洗えないわ。困ったわね……」
 本当に困ってるのかわからない表情でそう言ったルセリアは、村人の顔を見てにっこり笑った。
「あなた方は館主に怯えて暮らしているのでしょう?大丈夫よ、ルセリアが助けてあげるから」
「館主さんに怯えてるだと!?」
「うるさいぞ!池に入った怪しい奴め!」
 複雑な表情をしつつも、村人たちは一気に襲い掛かってきた。
 スミコとルセリアはひらりと躱しつつ、スミコはダグザで、ルセリアは黒剣で反撃し、村人をうまく気絶させていく。
「ボクの人形に勝てると思うのかい?」
 スミコのダグザが最後のひとりを気絶させると、十数人いた村人の中で話せる者はいなくなっていた。

「ありがと、早く片付いて助かったよ」
「いいえ、お互い様よ」
 二人は軽く自己紹介しつつ、北の池へと戻って来た。
「仕方ないから、これでチョコレートを排出しよう」
 スミコはそう言うと、スーツケースの工具でポンプのようなものを作り始めた。
「あら、スミコさんは器用ね」
 ルセリアが感心して称賛の声を掛ける。
 スミコは彼女に微笑むと、ポンプを池に入れてチョコレートの排出を試みる。
 機械特有の音を立てながら、ポンプは順調にチョコレートを汲み上げ始めた。
「うん、良さそう」
「……そういえば、先ほど池の中を探索していたら、少し大き目の塊がいくつかあったわ。ポンプに詰まらないと良いのだけれど」
「えっ、それはまずいね」
 ルセリアの言葉に、スミコは慌ててユーベルコード『スチームエンジン』を発動し、エンジンの出力を上げる。
 これで多少の塊は、砕きつつ汲み上げることが可能だ。
「チョコレートの排出はうまくいきそうですわね」
「そうだね。排出が終わったら水を何とかしないと」

 まだまだ浄化完了まで先は長いが、チョコレートは着実に減っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レイチェル・ケイトリン
黒月さんのおしらせきいておてつだいにきました。

この池、すごいことになっちゃってるね。
でも、スミコさんのポンプががんばってくれてるみたい。

なら、念動力と吹き飛ばしの技能で刹那の想いつかって
ポンプのとこにチョコレートをあつめていくね。

ときどき、おおきすぎるものがないかもみて
あったら、そっちはわたしがうごかしてどかすの。

チョコレートなんとかしたら水がはいってくるところをみるね。

まじらないようにせきとめてるだけだと思うけど、
一回流してからまたせきとめて池を水できれいにあらって
スミコさんのポンプで流してから水をためた方がよさそう。

お砂糖とかいっぱい入ったままくさっちゃった水のんだら病気になりそうだもの。


阿紫花・スミコ
まずはチョコの排出に注力。

「まずは水源の確保か。ところで入れ換えた水はどこにいったんだろう」

とりあえずは、地下水路あたりから調査。ドローンなども使って、水源を探し出す。これだけの水源をそれほど遠くへは運べまい。きっと近場にあるはずだ。
水源を見つけたらポンプで水を再び入れるだけだ。
ポンプはスチームエンジンで出力を強化だ。
(情報収集、視力、暗視、学習力、聞き耳)
ドローンが感知されるかも知れないから、一応妨害も警戒(具体的には人形をスタンバイ)しておく。



(この池、すごいことになっちゃってるね……)
 青い瞳のふんわりとした少女、レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)は、眼前に広がるチョコレートの池を、不思議な面もちで見つめていた。
 ふと、対岸に目を向けると、凄い音を立ててチョコレートを排出するポンプがある。
「スミコさんのポンプが、がんばってくれてるみたい」
 ふふっと笑って呟く。
 そして、彼女自身も頑張ろうと気合を入れると、目を閉じてそっと言葉を紡いだ。
『心のなかで時間よ、とまれ』
 ユーベルコード【刹那の想い】が発動し、より精密に能力を行使することが可能になった彼女は、念動力と吹き飛ばしの技能を行使して、スミコのポンプへとチョコレートを導いていく。
 池のチョコレートが減る速度は上がり、順調に排出が進んでいった。

 しかし、ポンプが一際大きな音を立てたかと思うと、突然チョコレートの排出が止まってしまった。
「……あ、おおきなチョコレートのかたまり?あれは吸い込めないね」
 レイチェルはポンプの近くに沈んでいるかなり大きな塊を見つけると、ざぶざぶと池へ入って行く。
 乳白色の小さな手で見つけたチョコレートの塊を持ち上げると――さすがは猟兵、ぽいっと池の外へ投げ捨てた。
『うおっ!?』
 近くを歩いていた他の猟兵が驚くが、そこはご愛嬌。
 淡い水色とチョコレート色のツートンカラーのワンピースを翻しながら、レイチェルはチョコレートがなくなるまで作業を続けた。

 レイチェルが池で奮闘している頃、阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は訝しげな眼差しで、小高い場所から村全体を見つめていた。
「まずは水源の確保か。ところで入れ換えた水はどこにいったんだろう」
 池を満たす程の水量である。
 それほど遠くへは運べないだろうし、近場にあるはずだ。
 スミコはそう考えると、池までの道程で通って来た地下水路へと向かった。
 地下水路へ入る前にドローンを飛ばし、別の場所も探させておくことを忘れない。
 ドローンが見つかった時の妨害対策として、ドローンに人形を追尾させておくのは、さすが猟兵といったところか。

 地下水路に入ると、スミコは暗視や聞き耳の技能を駆使して水源を探した。
 他の猟兵たちも水源を探しにやって来ているようだ。
 情報を共有しつつ、スミコは調査が進んでいない細道を進む。
「ん、この音……」
 スミコは複雑に分岐した細い水路の先を進むんで行くと、少し開けた場所に出た。
 中央には小さな池があり、あちこちから水が湧き出しているようだ。
「ビンゴ、だね」
 にやりと笑うと、早速ポンプを組み立てていく。
 他の猟兵たちの助けも借りつつ池までの道を確保すると、水を池に流し込む準備は完了だ。

 スミコが池に戻ると、レイチェルがやって来た。
「あ、スミコさん、チョコレートぜんぶながしたよ」
「ありがと!排出の手助けをしてくれたんだね?予定より早く終わったよ」
 スミコは笑顔でレイチェルに感謝を述べると、後ろのポンプに視線を向けながら言った。
「こっちも水源を見つけたから、あとは水を流し込むだけだね」
「一回池を水で流してからためた方がよさそう。お砂糖とかいっぱい入ったままくさっちゃった水のんだら病気になりそうだもの」
 レイチェルの言葉に、周りの猟兵たちは、そりゃ違いないなと笑う。
 スミコも頷くと、
「そうだね、そうしようか」
 と言って、早速一回目の池を流す作業に入った。
 水源まで結構な距離がある。
 スミコはユーベルコード【スチームエンジン】でポンプを強化すると、一気に水を汲み上げ池に流し込む。

「いいかんじだね」
 レイチェルがにこにこと見守る中、池に残っていたチョコレートは綺麗になくなった。
「よし、じゃあ池に水をためるよ!」
 スミコが再びポンプを動かすと、綺麗になった池に、綺麗な水が流れ込む。
 順調に池は浄化されていくが――。

「あれ?水が出なくなった?」
 池の水が四分の三ほどたまったところで水が来なくなってしまった。
 どうやらあの水源には、水量に限りがあったようだ。
「おしいね、あと少しなのに」
 レイチェルも残念そうに呟く。

 しかし、池の浄化まで本当にあと一歩だ。
 猟兵たちは、以前よりやる気に満ちた顔で、他の水源を探しに散っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

枯井戸・マックス
アドリブ歓迎です

「あと少しなのに惜しかったな。となると、後は他に水源を見つけて汲み上げるしかないか?」

(俺が参加したら縁起悪くないか?枯井戸的な意味で)
などと考えながら取り出したるはダウジングロッド。
これを手に元の水源から円を描くように歩き回り【第六感】で水源を探す。
【コミュ力】で他の猟兵にもダウジングロッドを渡して総力戦だ。

反応があったらポンプの部品を材料にビルドロボット。
ロボットの力で地面を掘り進み、ポンプの機能でそのまま水を吸い上げる。

「美味い珈琲は良い水から。水にこだわる俺には分かるぜ。この水は向こうの池と遜色ない水質だってな」

(これにて枯井戸・マックス作戦成功だな……流石に寒いか)


阿紫花・スミコ
水探しに参加している猟兵たちに呼びかけ、情報をまとめる。その上で、調査が十分でない地域を重点的に調査を行う。

「さあ、最後の仕上げだ。みんなでこのバカげた遊びを終わらせてやろうぜ。」

そろそろ妨害者があらわれるかもしれない。ボクは、からくり人形を使い、この池を死守する。拠点の防衛と、情報の集合地点として機能できれば効率は上がるだろう。

水源が見つかり次第、浄化作業を再開する。スチームエンジンで一気に水を運び入れる。

(コミュ力、学習力、情報収集、聞き耳、視力、暗視)



 再び水源を探すために、阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は周りの猟兵たちと情報をまとめていた。
 調査が十分でない地域はまだまだある。
 そこを重点的に調査すれば、水源はあるはずだ。
「さあ、最後の仕上げだ。みんなでこのバカげた遊びを終わらせてやろうぜ」
 スミコの号令で、集まっていた猟兵たちが水源探しに向かおうとしたその時。

「あと少しなのに惜しかったな。となると、後は他に水源を見つけて汲み上げるしかないか?」
 突然後ろから声をかけられてスミコが振り返ると、額に仮面をひっかけた、丸サングラスの胡散臭い男が良い笑顔を浮かべて立っていた。
「キミは……?」
 スミコの問いに、先ほど転送されたばかりの枯井戸・マックス(サモナー・ザ・アーティファクト・f03382)は、珈琲店のマスターらしい笑みを浮かべて軽く自己紹介をした。
(――しかし俺が参加したら縁起悪くないか?枯井戸的な意味で……)
 そんなことを考えながらの挨拶だったが。
『枯井戸……?』
 優しい誰かが拾ってくれたので、マックスはニヤリと笑う。
「まぁまぁ、そう言うなよ。ちゃんと水源を見つけ出す手段はあるんだからよ」
 彼はそう言うと、ダウジングロッドを何本か取り出した。
「これをあんたらにも渡すから、みんなで水源探しと行こうじゃないか」
 そう言いながら、周りの猟兵たちに手渡していく。
 スミコも受け取ろうとしたが、池の向こう側からの気配を感じて動きを止めた。
「あーあ、来ちゃったか……」
 これだけ騒いでいたのだから、当たり前と言えばそうなのだが。
 村人たちが武装して、池に押し寄せて来たのだ。
「あいつ!またお前か!」
「いい加減ここから出ていけ!」
 スミコの顔を見た数人の村人が、何事か叫んでいる。
「おや、嬢ちゃん人気者だな?」
 マックスの軽口に笑顔で応え、スミコはからくり人形の『ダグザ』を取り出した。
「ここは死守するよ」
「おう、任せたぜ」
 スミコが戦闘態勢に入ったのを見て、マックスと他の猟兵たちは、急いで水源を探しに向かった。

 マックスは、スミコが見つけた水源まで行くと、周りを円を描くように歩き回り、第六感で水源を探った。
 他の猟兵たちも、マックスに倣って同じようにダウジングを開始する。

『お、反応ありましたよ』
 奥でダウジングしていた猟兵たちがマックスに声をかける。
 彼は呼ばれた場所まで行くと、猟兵たちを下がらせた。
 そして、ユーベルコードでスミコのポンプを材料にした【ビルドロボット】を組み上げる。
「こいつで掘って、水を吸い上げるんだ」
 そう言うと、ロボットがとんでもない轟音を立てながら地面を掘り始めた。
「美味い珈琲は良い水から。水にこだわる俺には分かるぜ。この水は向こうの池と遜色ない水質だってな」
 マックスがうんうんと頷きながら水の解説をした時には、周りにいたはずの猟兵たちはスミコの応援に向かった後だった。
「……なんだ、誰もいないのか」
 ちょっぴり淋しいマックス。
 大丈夫、キミのこの努力が、村人においしい水を運ぶことになるのだから――たぶん。

「ボクの人形に勝てると思うのかい?」
 スミコがそう言いながら、村人の慣れていないであろう攻撃を軽々と避けると、ダグザを操り問答無用で沈めていく。
 無論、気絶させているだけだ。
「――館主が来るかと思ったけど、さすがにそれはなかったか」
 最後の村人を素手でKOさせながら、スミコは呟いた。

 鮮やかに村人を全滅させた彼女の元に、猟兵たちが戻って来た。
「あ、おかえり。こっちは片付いたよ」
 笑顔で迎えるスミコに、猟兵たちも水源を見つけたことを告げる。
 程なくしてマックスが戻って来ると、スミコのポンプから勢いよく水が噴き出し、池への供給が再開された。
「池を満たすには十分な水量があるから、もう心配はいらねぇよ」
「ありがとう、明日のイベントに何とか間に合ったね」
 猟兵たちは安堵の表情を浮かべたが、明日のイベントのことを考えると表情が引き締まる。
 (これにて枯井戸・マックス作戦成功だな……流石に寒いか)
 マックスは猟兵たちの顔を見て、言い掛けたセリフを飲み込んだ。

 最大の楽しみを壊された館主が、一体どんな行動に出るかは誰もわからない。
 明日はハードな1日になりそうだ。


 翌朝。
 イベント開催の花火が、ダークセイヴァーの闇空に上がる。
 恐怖の笑顔を張り付けた村人たちは、大通りの両側に並んでいた。
 村人たちに見守られる中、大通りの中央を巨大な神輿が進んで行く。
 神輿は筋肉隆々の男たちが担ぎ、何人たりとも寄せ付けない雰囲気を醸し出していた。

 猟兵たちを悩ませた南北を隔てる巨大な壁は、今や中心にぽっかりと穴が開き、神輿はその穴を通って北の池へと向かって行く。
「館主さん、怒り狂うぞ!」
「終わりだ……全員殺される……」
 村人は恐怖し、絶望した。

 数分後、北の池から聞くに堪えない館主の叫び声が村中にこだましたのは、言うまでもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『変態的破滅招来体』ランジーリ』

POW   :    本当の自分と向き合って!
【欲望】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【対象の分身】から、高命中力の【本音】を飛ばす。
SPD   :    あなたの気持ち、わかるわ!
【まるで相手の心をわかっているかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    あなたの欲望を教えて?
質問と共に【視線を向けてウィンク】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ウルフシャ・オーゲツです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが北の池へと集まった時には、館主は神輿から降りて池の前に立っていた。

「一体どういうことかしら?」
 美しい黒髪のツインテールと、同色のワンピースを風にはためかせて、館主が口を開いた。
 神輿を担いでいた巨漢たちに劣らない筋肉隆々の腕を組み、ごっつい足で仁王立ち。
 まるで悪鬼の如きその姿は――間違いなく男だ。

「ねえ、どうして池が普通の水のままなのかしら?」
 愁いを帯びた声と表情で、その男ランジーリは問い掛けて来る。
「私の依頼、達成したと聞いていたわ。それなのに、何故この池はチョコレートじゃないのかしら?」
 徐々に顔が赤くなり、体から湯気が立ち上る。
 彼は今、本気で怒っている。
「だ れ か こ た え て!!!」
 絶叫すると、ランジーリは猟兵たちに襲い掛かって来た。

 さあ、このオブリビオンを、君たちは仕留めることが出来るだろうか?
阿紫花・スミコ
(うーん、正直、アイツにかかわっちゃいけないと、ボクの直感がびんびん警告するんだけど・・・。)
そうも言ってられないので、しぶしぶ口を開く。
「あー、あれだ・・・村人を攻めるのはちょっとかわいそうかな。それやったの、ボクたちだし・・・。」

さて、戦闘開始だ。

からくり人形「ダグザ」の棍棒で牽制。(フェイント、怪力)

「見かけによらず、なんて速さだよ。」

他の猟兵とも協力して、なんとか隙を見つける。

「今だ!」

ガン・ハイダー(ガンベルト)により、透明化されていた精霊銃「アヴェンジングフレイム」を出現させ、素早く銃を引き抜く。(早業)
左手で撃鉄をはじき、6発の弾丸すべてを敵に打ち込む。(ファニングショット)


レイチェル・ケイトリン
黒月さんのおしらせきいてとちゅうからきたわたし。
だから、このへんのことあんまりしらないけど、
とりあえず、こいつをやっつければいいみたいだね。

念動力とクイックドロウと早業の技能で刹那の想いをまたつかうよ。
吹き飛ばしの技能で敵も敵の攻撃もふっとばすよ。

敵が分身を出したら範囲攻撃の技能をわたしの攻撃に追加して
分身もまとめてふっとばすよ。

敵が視線を向けてくるなら目潰しの技能をわたしの攻撃に追加して
目もついでにつぶすね。

かばう技能もあるからほかの猟兵さんへの攻撃もおなじようにふせぐね。

わたしの心、よみたいならよめばいい。

一秒間を26分割した時間でうごくわたしの心。

わたしのはやさにはついてこさせないよっ!



(うーん、正直、アイツにかかわっちゃいけないと、ボクの直感がびんびん警告するんだけど……)
 阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は、近付きたくないオーラ全開で、池の向こうからこっちに向かって来るオブリビオン、ランジーリを眺めた。
 どうして奴はああなってしまったのか、と誰もが思う。
 猟兵たちの気持ちはひとつだ。

(そうも言ってられないか……)
 スミコは意を決して、渋々ながらに口を開いた。
「あー、あれだ……村人を責めるのはちょっと可哀想かな?それやったの、ボクたちだし……」
 スミコの声に、ランジーリの真紅の瞳がジロリと彼女を睨む。
 しかし、それも一瞬のこと。
「いいえ、いいえ……」
 ランジーリはそう言って立ち止まると、悲しい瞳をスミコに向ける。
「私の可愛い子供たちは、母である私の言いつけを破ったわ」
『母……?』
 誰かの呟きは、勿論無視である。
「母の言いつけを破ったら、お仕置きが必要よね?」
 ランジーリは、いやいやをする少女のようなポーズで『お仕置きなんて本当はしたくないのよ』というアピールをする。
 スミコはそっと顔を背けた。

 しかし、突然ランジーリの気配が変わった。
 スミコをはじめとする猟兵全員が、一気に戦闘態勢を取る。
「お仕置きは! 即ち! 死ィ!!!!」
 今までの愁いを帯びた声は一転し、地獄の底から響くような重い絶叫がランジーリから迸る。
 声は烈風となって猟兵たちに襲い掛かるが、誰一人として怯まない。
 ランジーリは鼻で笑うと、さも面白くなさそうな表情で、ゆっくりと歩みを進めた。
「そう――死のオーケストラを、この村全体で奏でるのよ?」
 彼はそう言うと、まるで何かを打ち抜いたような音を立てて地を蹴り、一瞬でスミコに肉薄する。
「見かけによらず何て速さだよ!」
 スミコはそう叫びつつ、からくり人形『ダグザ』の棍棒で防ぐ。
 ダグザの棍棒とランジーリの拳が幾度か激しくぶつかり合ったが、ランジーリの顔には笑みが浮かんでいることにスミコは気付いた。
 嫌な予感がしてダグザを引こうとしたその時。
「あなたの気持ち、わかるわ!」
 ランジーリがそう言ったかと思うと、ダグザの攻撃をサラっと躱してスミコ自身に猛接近した。
 その極太の腕が振り上げられ――。

「そうはさせない!」
 スミコの背後から可愛い叫び声が上がり、とてつもない風圧がランジーリを打ち付けた。
 その巨体は軽々と宙を舞い、池へ落ちて盛大な水飛沫を上げる。
「今だ!」
 スミコは自分を守ったレイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)に礼を言いつつ、素早くガン・ハイダーに手を伸ばした。
 ベルトには何もないように見えるが、彼女が引き抜く動作をする頃には、黄金に輝くハンドガンが出現していた。
 炎の精霊銃『アヴェンジング・フレイム』だ。
 コンマ5秒で引き抜き、次のコンマ5秒で撃鉄を弾くように起こすと、彼女は池に銃口を向ける。
「――いくよ!」
 口から滑り出した言葉と共に発動した【ファニングショット】は、僅かコンマ1秒にも見たない速度で、6発の弾丸を撃ち出した。
 それはすべて的確にランジーリを捉え――。

「うがぁぁああああああ!」
 水の中から、痛みと怒りの絶叫を迸らせながら、ランジーリが飛び出して来る。
 スミコの弾丸は腹部に命中したらしく、黒いドレスに空いた穴から血が流れ出していた。
「痛い……痛いわ! 絶対に、許さない!!」
 ランジーリは涙を流しながら、水の抵抗を感じさせない速度で、スミコたち目掛けて水の中を――文字通り『走って』来る。
「わあ、すごいね」
 レイチェルがにこりと笑って感想を述べつつ、再度吹き飛ばしの技能を発動するが、今度は避けられてしまった。
「もうそれは効かないわ! だって、あなたの気持ちもわかるもの!」
 陸に上がったランジーリは、レイチェルに向かってユーベルコードを放つ。
 しかし、レイチェルは静かに目を閉じた。
(わたしの心、よみたいならよめばいい……一秒間を26分割した時間でうごく、わたしの心)
 ランジーリがレイチェルの心に触れた瞬間、その巨体をぐらつかせた。
「何!? 何なのこれは!」
「わたしのはやさには、ついてこさせないよっ!」
 レイチェルの体感時間がほぼゼロまで減速し、止まっているも同然のランジーリに向かって、ユーベルコード【刹那の想い】による念動力が発射される。
 ランジーリは、自分の身に何が起こったか理解出来ないまま、気が付くと背中を巨木に打ち付けていた。
「がはっ」
 肺の中の空気が一瞬でなくなり、顔面から地面に突っ伏して動かなくなる。
「ほら、ついてこれなかった」
 レイチェルは、当たり前の結果にぽつりと呟いた。
「やるね。さあ、このまま更に追い詰めよう」
 隣にやって来たスミコがそう言うと、レイチェルはこくりと頷いた。

 ランジーリの体力はまだまだありそうだ。
 遠くで起き上がるランジーリを見やりつつ、長期戦を覚悟した猟兵たちは攻撃態勢に入るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蛇塚・レモン
うん、キモッ!(率直)
いやマジ無理!
直視したくないから、鏡の盾で視界を遮っとこ……
戦闘は蛇神様、お願いっ!

という事でユーベルコードで呼び出した巨大な蛇神様にすかさず結界を張ってもらうよ
(先制攻撃+オーラ防御+拠点防御)
あたいは結界内に引き篭もって、超霊力オーラガンを乱射してるねっ?
大丈夫! あたいの霊弾は自動追尾あるからっ! 多分当たるよっ!
だだだだだだだっ!
(追跡+誘導弾+クイックドロウ+援護射撃+衝撃波)
んで、蛇神様の邪眼の念動力でどーんっと吹っ飛ばしてからの~池に沈めちゃおうっ!
溺れちゃえっ!
(念動力+呪詛+マヒ攻撃+衝撃波+地形の利用)

敵の攻撃は鏡の盾で敵自身の姿が映るから無意味のはず



 地面からのそりと起き上がったランジーリは、立ち尽くしたまま唐突に泣き出した。
「ひどい、ひどいわ! 何で私がこんな目に合わなければいけないの!?」
 なよなよと謎のポーズを取りながら咽び泣くその姿に、
「うん、キモッ! いやマジ無理!」
 と率直な感想をぶつける蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)。
 いいぞーもっと言ってやれーと言う声がアチコチから上がる。
 猟兵たちの心はやっぱりひとつだ。

 レモンは心底嫌そうな顔で池から顔を背けると、蛇塚家に伝わる三種の神器のひとつ『白蛇の鏡盾』を顔の前にかざして視界を遮った。
「この使い方もどうかと思うけど……」
 ひとまずランジーリが視界から消えたことに安堵しつつ、次なる行動に移る。
「蛇神様の実力、思い知らせちゃうんだからっ! やっちゃえ、蛇神様っ!!」
 レモンが叫ぶと巨大な白い蛇が現れ、彼女の周りに結界を張る。
 どや!と言わんばかりに仁王立ちするレモン。
 しかしランジーリが視界に入りそうになり、慌てて盾を構え直す。
「あたいはここに引き篭もるから! でもちゃんと戦うよっ!」
 不敵な笑みを浮かべ、腕のブレスレットをそっと撫でる。
 ただのブレスレットではない、彼女の武器『超霊力オーラガン』だ。

 何の前触れもなく、だだだだっと連射を始めるレモン。
 遠巻きに見ていた猟兵たちがぎょっとするが、彼女は気にせず明後日の方向を見たまま連射する。
「大丈夫! あたいの霊弾は自動追尾あるからっ! 多分当たるよっ!」
 彼女の言葉通り、霊弾は迷うことなくランジーリへと向かっていく。
「ちょっと! 危ないじゃないの!」
 いつの間にか泣き止んだランジーリが、相変わらずくねくねしながら器用に避ける。
 しかしレモンは彼を見ていないので、キモッというセリフは飛ばなかった。残念。
「もうっ、そこのあなた! 私を見ないなんて失礼よ?」
 ランジーリは、すこーしだけ怒りを込めてそう言いながら、池の中を猛スピードで駆け抜ける。
 もはや物理法則も何もあったものではない。

「あなたの欲望を教えて!!」
 陸へ上がるなり、ユーベルコードを放つランジーリ。
 言いながらウインクをしたが、やはりレモンはそちらを見ていない。
 そろそろ顔色が赤くなって来たところを見ると、ランジーリの怒りゲージがMAXに近いらしい。
「私を……私を見なさい!!!!」
 吼えるように叫んだランジーリは、白い蛇が守るレモンへと一気に距離を詰め――。
「……え?」
 突然止まった。
 彼の目に映るのは、レモンの掲げる盾に映った自分の姿。
「うそよ……私が……そんな姿なわけ……」
 何事か呟く彼は、どうやら自分の姿にショックを受けた模様。
 そんな馬鹿なと思いつつも、レモンはこのチャンスを逃がす気はなかった。
「蛇神様!」
 彼女の掛け声に合わせて、蛇神が邪眼の念動力を解放する。
 凄まじい轟音と共に、猛烈な衝撃波がランジーリを襲い、彼は再び池の中へと還っていった。

 しかし、沈みゆく彼の瞳に不気味な赤い光が灯ったままであることを、猟兵たちは見ていた。
 ランジーリが戦意を失っていないことを確信しつつ、猟兵たちは池の周りに集まるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

阿紫花・スミコ
「さあ、相棒後はたのむぜ!」

精霊銃をガンハイダーに納めると、銃は再びその姿を消す。からくり人形は再び、巨大な棍棒を持ってランジーリへと距離を詰める。

「ボクの欲望・・・?それを君がボクに与えてくれるとは思えないけど。」

両手で操り糸を引き上げるように強くひくと、人形の腰部の歯車がきしみをあげて回転し、人形の上半身が高速回転を始める。回転によりダグザの持つ超重量の棍棒が遠心力を得て、ランジーリを襲う。

スピニングスイーブ・・・!

「森羅万象、全宇宙の真理、この世のすべての知識がボクの望みさ・・・君みたいな場末のオブリビオンに、それが与えられるとでも、言うのかい?」


アレクシア・アークライト
 ここまで村を発展させ、平和に統治しているのはどんな奴かと思っていたんだけど、一つのミスで全員を殺そうとするだなんて、やっぱりオブリビオンね。
 ……オブリビオンよね、アレ? ここがキマイラフューチャーなら納得できるんだけど。

・自分よりも強力な仲間の念動力を耐え、躱していたため、念動力だけでは勝てないと判断。
・「精神感応」で敵の読心を妨害しながら、近接戦を行う。[念動力、グラップル、2回攻撃]【超感覚的知覚】
・敵が読心をやめたなら、「予知」に切り替え、カウンターを狙う。[捨て身の一撃]

 問題なのは、こいつを倒した後よね。
 これだけ目立つ村だもの、次はきっと“普通の領主”に目を付けられるわ。



「ここまで村を発展させ、平和に統治しているのはどんな奴かと思っていたんだけど……」
 やや呆れた表情を池に向けて、アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は肩を竦めた。
「ひとつのミスで全員を殺そうとするだなんて、やっぱりオブリビオンね」
「いや、あいつは平和に統治なんかしてない。恐怖による統治だよ」
 隣で銃を手にしたままの阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は、アレクシアの呟きにそう返した。
「なるほど……恐怖、ね。だったら尚の事、オブリビオンたるオブリビオン」
 視線はそのまま、納得顔になったアレクシアだったが。
 ようやく水面へ浮上してきたランジーリを見やって、顔をしかめた。
「……オブリビオンよね、アレ?」
「キミの気持ちは察するけど、残念ながらオブリビオンだよ」
 苦笑して答えるスミコ。
 ツインテール★筋肉ダルマ、もといランジーリは、顔色を赤から紫へと変化させながら池をゆっくりこちらへ進んで来る。
「……ここってキマイラフューチャーだったかしらね」
 アレクシアが遠い目をして発した言葉に、猟兵が数名吹き出したが、ランジーリが纏う空気に咳払いをして戦闘態勢に入る。
「さて、骸の海へご退場いただきましょうか」
 アレクシアがそう呟いたのを引き金に、猟兵たちは散開した。

「さあ、相棒!後は頼むぜ!」
 精霊銃をガン・ハイダーに納めつつ、再び相棒へと指示を出す。
 彼女のからくり人形『ダグザ』は、巨大な棍棒を振りかざしてランジーリへと肉薄すると、素早く振り下ろした。
 しかしランジーリは腕の筋肉を盛り上げて、ダグザの棍棒を受け止める。
「甘いわよ?」
「いいえ、甘いのはあなたね」
 いつの間にかランジーリの背後へ回ったアレクシアは、隙だらけの脇腹へ渾身の蹴りをお見舞いする。
「ふっ」
 強化した左足がランジーリの脇腹へめり込むその瞬間――。
「だから甘いって言ったでしょ?」
 ランジーリはダグザの棍棒を握りしめたまま、異様な速度で右へステップを踏むと、その勢いでダグザをスミコに向かって投げつけた。
 アレクシアの左足は惜しくも脇腹を掠めただけだったが、蹴りの勢いを殺さずに体を右回転させると、そのまま右足で後ろ蹴りを放つ。
 フォースフライトを活用した見事な連撃だ。
「くっ」
 さすがにランジーリも対応しきれず、彼女の踵を脇腹に食らってよろめく。
 アレクシアはスミコに視線を走らせつつ、ランジーリから距離を置いた。
 スミコは自分に向かって飛来するダグザを、操り糸でうまく操作して自身の前へと着地させる。

(単騎戦だと長引くだけだ。アレクシアと協力して一気に畳みかける)
(先の戦いを見るに、念動力だけでは勝てない。やはり協力しての勝機ね)

 二人はランジーリの前後に対峙し隙を伺った。

「ふふふ……なかなかやるじゃない? でも今の私は無敵。さあ、あなたたちの欲望を教えてちょうだい?」
 ランジーリはそう言ってバチンとウインクすると、二人に衝撃波が襲い掛かる。
「ボクの欲望……? それを君がボクに与えてくれるとは思えないけど」
 スミコはそう言いながら、ダグザの高速スイングで衝撃波を相殺する。
 同時に【超感覚的知覚】で自身を強化したアレクシアも、念動力で防ぎつつ、一瞬無防備になったランジーリの次なる行動を予知した。
「なるほどね」
 ふっと笑みを浮かべると、テレパシーでスミコにそっと共感しつつ、自身は地を蹴って一気にランジーリとの距離を詰める。
 ランジーリは後ろを振り返ると、今までにない満面の笑み(ただしここに居る誰もが笑顔には見えなかった)を浮かべて叫んだ。
「あなたから潰してあげるわぁ!!!!」
 ランジーリの前に、黒いアレクシアが出現する。
 彼のユーベルコードによって作られたアレクシアの分身は、唐突に上へと跳ねた。
 しかしそれは、既知の未来。
 ぶぅんという低い音と共に飛来したダグザが、その巨大な棍棒で黒いアレクシアを殴ると、地面に叩きつけた。
 一瞬で消滅する分身に、ランジーリの気色悪い笑みが消える。
 慌てて再度分身を作ろうとするが、猟兵である彼女たちが許すはずもなく。
「これで決まりだ!!」
 スミコが両手で操り糸を引き上げるように強く引くと、ダグザの腰部の歯車が軋み、上半身が高速回転を始める。
 ダグザの巨大な棍棒は、その遠心力で超重量を得ると、高速でランジーリに激突した。
「!!!!」
 ユーベルコード【スピニング・スイープ】を受けたランジーリは、声にならない叫びを上げて仰向けに倒れるが、ダグザは止まらず何度も何度も打ち付ける。
 ダグザが止まる頃には、ズタズタになって事切れたランジーリの体がそこにあるだけだった。
 不死身の体力とも思えたランジーリを、遂に猟兵たちは撃破したのだ。
「森羅万象、全宇宙の真理、この世のすべての知識がボクの望みさ……君みたいな場末のオブリビオンに、それが与えられるとでも言うのかい?」
 ぼろきれのようになったランジーリの骸を見下ろして、スミコはぽつりと呟いた。


 翌日、村は本物の活気で溢れていた。
 オブリビオン――村人にとっては『館主』の脅威が去り、心から楽しめる祭りに湧き上がる村人たち。
 チョコレート菓子を齧るスミコは、久し振りに穏やかな表情でそれを眺めていた。
「さて、問題なのはこの後よね」
 赤い髪を揺らしながらやって来たアレクシアは、スミコの隣に座って目を伏せる。
「これだけ目立つ村だもの、次はきっと『普通の領主』に目を付けられるわ」
 美しい外観を持つ大きな村が、森でもない開けた場所にぽつんと存在するのだ。
 オブリビオンが放っておくはずがない。
「ま、そしたらボクたち猟兵が倒すまでさ」
 スミコは何でもない風にそう言うと、大好きな甘味を更に頬張る。
 アレクシアはそんな彼女を目を細めて見つめると、そうねと頷いた。
 そして、村人から受け取ったチョコレートを口に含む。
「……甘い」
 戦いで疲れた体に、チョコレートの甘さが心地よく染み渡るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト