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最終回

#サクラミラージュ #逢魔が辻

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#サクラミラージュ
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#逢魔が辻


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 猟兵。重なり合った世界で幾千と紡がれる、六番目の英雄譚。
 ある者は自らの身を削り、ある者はかつて居た世界との繋がりを断たれ、ある者はその精神を狂気に晒され、尚も世界を守る英雄譚。
 顧みられぬ犠牲の僕、終焉へと突き進みながら、終わることのない英雄譚。
 『彼』はそれを観て……その心境をこう綴った。

『憐れである』

 辛苦に終わりがないのなら、終わりという名の救済を。慟哭に終わりがないのなら、終わりのいう名の静寂を。災禍に終わりがないのなら、終わりという名の平穏を。この手は余りに小さく、与える言葉はまやかしに過ぎない。しかし手の届く者だけでも救ってやるのが、良心というものだ。
 故に綴ろう。希望に拐かされた彼らの最後。戦い続けた先にある勝利と、本当の希望。
 最終回を。

●『ターミナル』
「皆さんは、猟兵を……辞めたい、とか。そう思ったことは、ありますか?」
 予知を行った猟兵、月見里見月の語り出しは、このような言葉だった。
 言ってしまってから拙い発言だと思ったのか、慌てて他所を向くと両手をぶんぶんと振り、「今のは忘れてください!」と叫ぶ。一呼吸おいて落ち着きを取り戻すと、予知の内容を語り始めた。
「現場はサクラミラージュ……影朧の巣とも呼べる異空間、『逢魔が辻』が発生しました。一般の方々が迷い込む可能性があるので、早急の対処をお願いします」
 大量発生した影朧により空間そのものが歪められてしまった危険区域、『逢魔が辻』。影朧自体の危険度もさることながら、彼らにとって都合良く改竄された状況で戦わなければならない、という点で、猟兵としても総力を上げて取り組まなければならない問題だ。
 それから月見里は、今回発生した逢魔が辻についての詳細な情報を伝え始める。帝都の中心から離れた市街地の廃墟に入口があり、既に桜學府による閉鎖が行われていること。予知で見えた敵の姿は黒い狼のような姿で、群れで襲ってきたこと。そして、内部は風化した塔の最上階を模しており、足場は張り巡らされた鉄骨、壁と天井は存在しないという不安定な状況であること。
 言い終わってから、呟くように付け加えた。
「廃墟の塔のてっぺんで戦うなんて、なんというか……『最終回』、みたいですよね……」
 そして、ちらり、と横目で猟兵達の方を見る。先程の態度といい、彼女には何か言いたくないことがあるようだ。
 暫くそんな思わせぶりな態度を続けてから、大きく息を吐くと、観念したかのように再び口を開いた。
「実は、學府の方が数名偵察に入っていました。彼らは目的を果たして、無事に出てきたそうなんですが……どうも様子がおかしい、ですね。その人達が仰るには——」
 『戦いは終わった』。學府の兵はそう言っていたという。逢魔が辻に突入した彼らは一匹の狼型影朧と遭遇、交戦の末それを倒した。ここまでが事実として確認が取れている部分だ。
 そしてそれによって、帝都に巣食う全ての影朧は浄化された……それが、彼らが事実報告の後に続けた主張だ。しかし現実として逢魔が辻は存在し続けており、他の場所でも影朧の存在が報告されている。何らかの異常が発生したことは明らかだ。
「つまりこの逢魔が辻には、精神汚染に特化した影朧が潜んでいる可能性が高いです。それも、かなり悪質で強力ですね」
 そう言って、少女はまたため息をついた。
 現在偵察隊の治療が行われているが、彼らは一様に多幸感を覚えているという。終わりの見えない防衛戦に終止符が打たれたのだから、さもありなんと言ったところだ。
「私としても、戦いが本当にこれで終わってくれるのなら嬉しいのですが。そんな事は……無いと思います。だから、どうか……戦う理由を、守りたいものを、忘れないでくださいね」
 残酷な祈りの声と共に、グリモア猟兵は半透明の立方体に手を翳す。その光が辺りを包み込み……猟兵た君たちは、辿り着いた。下の見えない鉄塔の最上部。諸悪の根源、全てのオブリビオンの王が座す場所だ。君たちは各々の武器を構え、或いは術式を唱え、来るべき敵に備える。
 さあ、最後の戦いの始まりだ。


眠る世界史教師
 お疲れ様でした、眠る世界史教師・ザ・ファイナルです。私の仕事も最後です。
 とうとう長い戦いに終止符を打つ時がやって来ました。逢魔が辻を牛耳る狼の影朧を殲滅した時点で全世界からオブリビオンが消滅し、平和がもたらされることでしょう。それと同時に猟兵達にも、戦いの運命からの解放が与えられます。これは正真正銘の最終決戦、英雄譚の最終回なのです。

 ……しかし、そのように与えられる救済を是としないのなら。戦い続ける理由が有るのなら。
 全てが終わった後でそれを見ている誰かに向かって、貴方の言葉を突き付けてやりましょう。その強い意志が、まやかしの終わりを打ち破り、続きの物語を記す力になるかもしれません。
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第1章 集団戦 『影狼』

POW   :    シャドーウルフ
【影から影に移動して、奇襲攻撃する事】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    復讐の狼影
自身の身体部位ひとつを【代償に、対象の影が自身の影】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    ラビッドファング
【噛み付き攻撃(病)】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 強風吹き荒ぶ鉄塔の最上階。辺りを不自然な闇が覆っている。視界は効かない……しかし、その向こう側から聞こえる不気味な唸り声と、身を刺すほどの殺気には、君たちの全員が否が応にも気がつくところであった。
 やがて、一匹の獣が姿を表す。闇に解ける墨色の体躯、ちろちろと口から漏れる紅蓮の炎。全ての世界のオブリビオンの主、ラストオブリビオンの姿が露わになった。
 それは君たちを正面から見据えると、一声吠える。自分を忘却した全ての存在への憎しみが籠った唸り声に引き寄せられるかのように、周囲から放たれる殺気がその数を増す。
 寸毫の間隙……そして、君たちの立つ足場に向けて勢い良く跳躍。
 最後の戦いの始まりを告げる、渇いた鉄骨の音が響いた。

(精神汚染はこれらの影朧を倒した直後に発動します。精神汚染への対処を行うプレイングは二章で募集させていただきます。)
神代・凶津
「・・・ここに最後のオブリビオンが。」
ああ、相棒。これが猟兵として最後の戦いだ。気合い入れていくぜッ!

って、んな訳あるかあああああッ!!?
「・・・まあ、ですよね。」
何処の誰だか知らねえが悪趣味な事しやがるぜッ!
見つけだしてぶちのめしてやるッ!

その前にこの犬っころを倒さねえとな。いくぜ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」
鬼神霊装を纏って戦闘開始だッ!

高速移動で一気に距離を詰めて
左手の破魔の力が篭った薙刀でなぎ払ってやる。
敵の攻撃タイミングを見切って上空に飛翔して避け、右手の妖刀に雷撃を纏わせて斬撃の放射を浴びせてやる。

最後の敵にしては役不足だぜッ!


【技能・破魔、なぎ払い、見切り、空中戦】
【アドリブ歓迎】



 くぐもった呻き声と遠くから響く雷鳴だけがある、闇の向こう側。
「……ここに、最後のオブリビオンが」
——ああ、その通りだ。相棒
 先陣を切るは、鬼面の呪物を従えた退魔師の少女。朱色の浅沓に包まれた右足を一歩前に、高らかな金属音を響かせ、目の前の闇に向き合った。携えた妖刀は光源が無いにも関わらず鈍く輝き、まるで原初の神から齎された火のように、静かに、しかし確かに。目の前の絶望を塗り固めたに似た闇を切り裂いている。
 意志持つ鬼面は、滾る呪力でその身を震わせながら、これまで連れ添ってきた退魔師に語る。
——これが、猟兵として最後の戦いだ……
 その声色には、普段のものとは異なる感情があった。
 最後の戦い。猟兵としての使命の終わり。退魔師として、そしてその連帯者として、戦い続けてきた彼らは、戦いが終わった後どうなるのか。未来は目の前に広がる闇よりも深く、先の見えないものだ。故に先程の感情にあえて名前をつけるとしたら、恐怖か躊躇、或いは怒りだろうか?
——気合い入れていくぜ
「■■、です■ね」
 否。彼らは終わりを恐れない。短く喝を入れた鬼面の言葉に、少女もまた短く返し、それだけで二人の意思は疎通した。全ての終わりは絶対の救い、戦いの運命からの救済……恐れようはずが無いのだ。
——■■■あああああッッッ!!
「……転身ッ!」
 裂帛の気合いの一声と共に、先程から渦巻いていた呪力が鬼面に収束する。二人の姿は、迸る血の朱から周囲の闇を取り込んだかのような墨に。対して少女は面越しでも分かる無表情を崩さず、右手の妖刀を後方に薙ぐ。背後から飛びかかって来ていた魔狼の一体が、その喉を貫かれる。
——悪趣味な事しやがるぜッ!
「……」
 鬼面の怒りの声に無声で返答した少女は、更に左の手に聖なる輝きを秘めた薙刀を顕現させる。間合いに優れたその武装と共に、闇へと駆け出したその刹那、黒色を切り裂く一閃!
——ぶちのめしてやるッ!
 目にも留まらぬ韋駄天に、優位な場所にいた筈の狼達は、理性を失ったその瞳にも確かな動揺を見せた。先程の一撃で三匹が纏めて屠られ、突然飛び込んできた敵に対応することもできず、本来彼らの強さであった連携を乱してしまう。
 焦燥に駆られて、少女の生命を吸い尽くそうと無謀にも飛びかかった数筋の牙は、ひらりと空を駆けることで容易く躱され、更に輝きを増した妖刀から放たれる稲光によってその身体ごと蒸発させられてしまった。
 退魔師と呪物、風と雷。二つの相反する力を調和させ、自らの力とする秘技。大きすぎる力による代償をもたらすその技を、しかし彼らは恐れる事はない。
——最後■だ■ッ!
 何故なら、これこそが最後の戦い。恐れるものなど何も無いのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
猟兵を辞めたいと思った事は無かった
故郷では疎まれた『埒外』としての力も、猟兵の戦いでは必要とされる
その上、子供の俺を拾ってくれた恩人から継いだ銃と教わった戦い方を活かせるなら、辞める理由が無い

交戦中は足場の悪さを考慮して動き回らずに敵を待ち受ける
敵の口から漏れる炎を目印に、銃の射撃によって攻撃する
敵の位置は『聞き耳』を立てれば唸り声でも判断できるだろうか
一撃受けるくらいは覚悟し、ユーベルコードの範囲に入った瞬間に反撃を試みる

敵に有利な状況だからか、敵が妙に手強く感じる
これが最後の戦いと言われても納得してしまえるかもしれないなどと
…何を馬鹿な。これで終わるわけがない…そんなことはあり得ない、筈だ



「猟兵を、辞めたい■……」
 月も見えぬ闇の中。耳と尾を持つ人狼の傭兵は、グリモア猟兵の言葉を口の中で反芻する。
 彼が最後に戦うことになったのは、奇しくも彼に似た存在であった。人々の記憶から追いやられ、無念の中から這い出て骸の海を創り出した狼。対するは自らの内に秘めた狂暴性を恐れつつ、世界の護り手となった狼。夜目の利く彼ですら見通しきれない暗闇の中、人狼は目を瞑り瞑想しながら思索する。
(故郷では疎まれた『埒外』としての力も、猟兵としての戦いでは必要とされた)
 世界の理を外れた力で以て、彼は世界から受け入れられた。皮肉に思えるが事実であり、裏切りと別離が傷つけた彼の心を保つものでもあった。猟兵としての戦いを共に果たした仲間も、自分に生きる術を伝えてくれた師も、力が無ければ関わり合いになることは無かっただろう。
 種族や力が無かった未来のことを、想像したことが無いとは言わない。
(しかし──)
 彼は白銀色の拳銃を構え、静かに息を吸い始める。身体中に血液が巡り、彼の五感を研ぎ澄ます。そして与えられる膨大な情報から、たった今必要な物だけを抜き出して行く作業。雷鳴は彼の耳に入らない。鉄骨の鈍い光を見ることは無い。そして、あったかもしれない未来のことは顧みない。
 それらのどれも、今目の前にある仕事を少しも楽にしてはくれないのだ。
(……来る!)
 目を見開き、前方右側に一発発砲。闇から這い出ようとしていた炎のような舌から悲鳴が漏れる。生まれた屍が鉄骨に衝突して音を鳴らす前に、僅かに狙いを上に定め、邪悪な炎に向けての二発目。小さな銃火が、吹き出ようとしていた火焔を吹き消す。
 彼は三発目の狙いを付けようとし、しかしその刹那顔を歪めると僅かに上半身を前に傾ける。先程まで彼の身体があった場所を、闇から出た爪が通り抜け、彼の背を僅かに切り裂く。彼の影、文字通りの死角からの、避け得ぬ一撃。彼は痛みに怯むことはせず、冴え切った五感で背面の敵を捉え、至近距離から撃ちぬく。
 決して大きな戦いではない。自ら攻めに転じることは無い。しかし、彼の周囲には決して入ることの敵わない領域が存在していた。如何なる連携も奇襲も、闇に溶けて消えて行く影の数を増やす結果に終わった。
(流石に強敵だが……今は考える必要は無い。そう、これが最後の戦い■な■)
 彼は弾丸を交換し、再び周囲に意識を張り巡らせる。
(……■■■)

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクター・グレイン
「オブリビオン、影朧の終幕?馬鹿な話だ。俺達の心の中にこそ、其れ等の根源が眠っていると言うのに…。」
目標を捉え、前進しつつ、
「俺も『お前達側』ではある。」
自身の足元の影から三つ目の黒い狼が這い出てくる。
「目には目を、歯には歯を、獣には獣を、オブリビオンにはオブリビオンをだ…。」
自身と契約した黒狼猟が唸る。
『ガルルルル…。』

ヴィクター自身は近づきひたすら拳で殴る。
黒狼猟は自身の肉体を変化させ大量の影触手や牙、爪を用いて戦う。



「オブリビオン、影朧■、俺たちの心にこそ、其れ等の根源が眠っている■……」
先を見据えること能わぬ、怨念に似た闇を真っ直ぐに見通すのは、右手が義手の男。全身が黒色に覆われたその佇まいは、希望を切り拓く猟兵というよりむしろその敵、オブリビオンに近しいものを漂わせていた。
 深い闇から、警戒しているかのような唸り声が聞こえる。向けられるは純粋なる敵意、しかし男はそれを気にした風もなく、まるで毎日使っている散歩道を歩くかのような足取りで、"敵地"へと入って行った。
「俺も『お前達側』ではある」
 親しい相手に挨拶でもするかのような台詞。しかしその声色にあるのは、ぞっとするほど冷たい、自分の敵をただ冷静に見つめる視線だけ。右手の指に嵌めた指輪が、怪しく輝く。
 彼は歩みを止めず、服から小瓶を取り出し、その中身を地面にばらまき、瓶を放り投げる。死と怨嗟の匂いが満ちた場には似つかわしくない、純白の角砂糖。落下していく中でその白色は闇に溶け、見えなくなる……するとすぐ傍の地面から、黒い狼が這い出てくる。それは彼が相対している影朧の王ではない。それよりもっと異様な、全身が黒く、三つの眼を持つ狼。
「目には目を、歯には歯を、獣には獣を……」
 どちらのものとも付かない唸りがいよいよ空間を満たし、
「オブリビオンには、オブリビオンを、だ」
 それを収束させたのは、硝子瓶の砕ける澄んだ音。
『ガルルル……』
『グアアアッ!』
 闇が、爆ぜた。
 焔を帯びた狼と、異形の狼。あちこちで爪が振るわれ、噛み殺した一頭を別の一頭が噛み殺し、影が混じり合う。駆ける風が暴風となり、嵐となった。
 その嵐の中心に、男は立っていた。
「先程も言ったが……お前達も俺も、大した違いがある訳じゃない」
 死角から狼が飛び出す。黒い制服に包まれた喉笛を嚙み千切らんと、一直線に飛び掛かり──
「あるとするのなら──」
 振り返った男がそのまま放った拳に打ち据えられ、飛び掛かる時と同じ速度で反対の方向へと姿を消した。
『お前達はあの時終わった。俺は……終わっていない』
 今のところはな、と付け加え。男は更に、戦場の中心へと向かうのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒沼・藍亜
最後の戦い、ねぇ……
(一体敵を倒せば問題が全部解決するなら、これほど楽な話もないけど)
ま、今はまずこいつらの退治、っと

ボクの中の黒い粘液状UDC『昏く暗い黒い沼』を足元の鉄骨沿いに滴らせ広げ、UCを使用、連中に紛れ込み味方と誤認させる幻影から不意打ちを仕掛けて集団をかき回すっす

で、粘液の中より伸びる触腕ではぐれた奴へ不意打ち、噛もうと突っ込んできた奴は攻撃を受け止め捕縛、他の連中への盾にする

残りへボクが銃から拘束用ワイヤーを撃って捕まえ通電、マヒさせてそいつも触腕が捕まえる……の繰り返し。

後は触腕の接触箇所から生命力吸収し続け、最期は粘液の中に引き込んでさようなら、っすよ

※アドリブ歓迎っすよ



「最後の戦い、ねえ」
 この敵を倒すだけで問題が全部解決する■■、これほど楽な話も無い■■。気怠げにそう呟く者がいる。
 それは一見、どこにでもいるような一般人。どこにでもあるような服を着て、見たところはほぼ丸腰。命のやり取りをする戦場には全く似つかわしくない女性だった。それが、知り合いでも待っているかのようにただ佇んでいた。
 或いは、気づくことも出来たかもしれない。その不自然さに一度目を向ければ、彼女が内在する異様としか形容しようのない気配を察知できたかもしれない。まるで目立たないことだけに熟練したかのような、一度気が付けば看過することなど不可能な矛盾に。
 しかし、全てのオブリビオンの王として。圧倒的な力を持っているがゆえに、狼たちはそれを見逃してしまった。
「一先ずこいつらの退治、ボクはやることをやっておきますかっと……」
 この戦いを、全ての戦いを終える為に。彼女が既に策を──文字通り、『張り巡らせている』ことに。
 足場は古びた鉄骨。当然あちこちに隙間が空いている。そこを縫うように、鉄骨の下側に、闇よりも暗く昏い『何か』が這っている。戦場にあって、彼女以外にそれをはっきりと知覚できたのは私くらいだろう。
 確かなのは、彼女の周囲は完全に、気付かれぬうちに彼女の支配下に置かれていたということ……

 三匹の狼が、哀れな獲物を見つける。彼らはすぐさま獲物を取り囲み、狩りを始める。
 一匹目が目の前から飛び掛かって牽制、応撃か回避をしようとしたところを残りの二体が仕留める。単純ながら、それを理解していたとしても対処するのは難しい。数的有利こそが戦場を支配する絶対原則なのだ。少なくとも、彼らにとっては。狼たちは慣れた方法で連携を取り、最初に飛び掛かった狼の牙が過たず捉える……黒い狼の首筋を。
 悲鳴に似た咆哮。
 三体目の狼は、明らかな異常を察してそちらに視線を向ける。つい先ほどまで共にいたはずの仲間は、二人とも居ない。彼は空中で姿勢を変え、着地して体勢を立て直すことを優先しようとした。それは悪くはない判断だ。
 この戦場が、彼女一人に掌握されていなければ。
 逸らした視線の反対側から、『何か』が姿を現す。鋭く尖った黒色が、哀れな獲物の胴体を貫いた。狼が驚愕と痛みから体を震わせる度に、それは呼応するかのように大きく震え、脈動し、育って行く。
「さ、終わらせてくるっすよ」
 彼女は懐から武器を取り出し、鉄骨の上を進み始める。巨大な黒色も、それに従って数多の狼の身体をぶら下げながら進む。やがてその姿が闇に溶けた時、闇よりも昏いものが更にその色を濃くするのだった。
 戦いの終わりが、確実に近づいていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ガンドル・ドルバ
オブリビオンの主、のぉ…
成る程、これはまた随分な大物じゃな
確かにこれを討てば誉れを得よう
(火酒を一口煽り)
さあ始めようぞ
勝利の美酒を味わうためにの!

山掴みの鉄縄を振るってなぎ払い、何匹か捕らえて剛弓で撃ち抜く
更に怪力で乱れ撃ち、縄から逃れた獣共を撃ち抜くぞ
ドワーフの弓は鉄をも射抜く

弓の雨を抜けてきた獣共はそれがしの声で怯ませ(衝撃波、大声)、怯んだところを怪力で大斧を振るいなぎ払い、奴らの脳天を叩き潰してやろう

まだ来るか
ならばそれがしの渾身の一撃を喰らわせてやろう!
【巨人の一撃】よ!全ての獣をなぎ払え!

闇の獣共よ、骸の海に還るといい



「オブリビオンの主、のお……」
 戦場の只中にあって悠々と火酒を煽るは、大柄な鉱精の老人。言葉こそ少ないものの、その声色からは隠しきれない情動が伺い知れた。
 自らが終わる場所を追い求め、数多の戦場を転々としてきた傭兵。しかし今、その戦いの方が先に終わろうとしていた。彼の声に浮かぶのは落胆か?
「……これを討てば最上の栄誉を得よう」
 否。今彼の意識にあるのは、この最後の戦場を戦い抜くことだけ。前線に立つことは、彼にとって並ぶもののない悦楽。それを逃すことなど、出来ない。
「さあ、勝利の美酒を味わうための下準備を始めるとしようかの!」
 駆ける。その体躯からは想像もできないような速さで、闇に対する恐れを微塵も見せることなく。
 オブリビオンの王は狡猾であった。こちらの優位な戦場に足を踏み入れた足手を一方的に狩るだけの力と知恵、そして連携があった。一度足を止めれば、その人間は全方位からの攻撃により骨も残らぬ有様になっていたことは間違いがない。
 しかしそれは、やってくる人間が恐れから立ち止まることを前提としたもの。
「らああぁぁぁ!!」
 愚かしいともいえる位置までの突出。防御という概念を捨て去った、大振りな鉄縄での攻撃。本来負けるはずのない状況で、彼らは容易く蹴散らされる。彼らは人間を狩ることに長けていた。しかしそこにいたのは、人間ではなかった。
「そこだっ!」
 それは、一人の戦士であった。戦いに生き、戦いの中で終わる為にある。
 利き手ではない側の手で無造作に持ち上げられた弓から放たれた矢が、縄から逃れた狼たちを正確に貫く。異なる世界に住まう精霊の加護を得た鏃は、毛皮をやすやすと切り裂いていった。
 やがて、十数匹の生き残りを残すまでになった。未だ最も慣れ親しんだ闇の中にあって、しかし彼らの置かれた状況は完全に逆転してしまっていた。
 弱きものが強きものに打ち克つには、数の力を使うしかない。残された狼の全てが、一斉に老人に飛び掛かる。
「まだ来るか……ならば容赦は無用!」
 それを見てすら、彼は喜色を浮かべる。愉快で仕方がないかのように数刻の間呵呵大笑、そして突然顔を引き締めると、
「喝!」
 それは魔法ではない。道具でもない。呪詛などであろうはずがない。単なる声。単なる声が、今まさに最後の勝機を見出そうとしていた狼たちの意識を一瞬だけ無にした。
 そして、戦場にある傭兵にとって一瞬の価値は永遠に等しいのである。
「薙ぎ払え!」
 老人の声に呼応するかのように、その身長の二倍はあろうかというほど巨大な斧が更にその大きさを増す。その有様はもはや処刑具に等しかった。
 彼は両手で斧を構え、右から左に向け一閃。たったそれだけで、数多の狼たちのうち一体が……一体だけが、生き残った。
「これで……」
 もはや飛び掛かって来ることしかできない一匹の王に対し、老人が小手に覆われた拳を固め、
「終わりだ!」
 全力で殴りつけた。
 形容しようのない叫び声をあげ、塔の外郭から弾き飛ばされてその姿を消す。
 暫くの間、戦場は闇に包まれた。
 やがて、どこからか勝鬨の声が上がり始めた。
 深い深い闇を切り裂き、晴らさんとするかのような声が。
 全ての戦いが終わった喜び、今までの苦しみ、これからの未来への希望、その全てがない交ぜになった声が。

 これからも、世界が完全に平和になる日は訪れないだろう。
 所詮人の心は脆く、弱い。私達のような人間を忘却に追いやることでしか生きて行けない、哀れで惨めな生物だ。
 しかし、それでも。今日この日、だけは。
 この場所にいたすべての人間が、喜びを共有した。
 戦いは、終わったのだと。

【完】

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『旧帝都軍突撃隊・敷島組隊員』

POW   :    悪魔変身(ダイモン・トランスフォーム)
【悪魔(ダイモン)の力】に覚醒して【コウモリの翼と獣の肉体を持った悪魔の姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    悪魔憑依(ダイモン・ポゼッション)
自身に【悪魔(ダイモン)の姿をした霊体】をまとい、高速移動と【敵を追尾する魔力弾】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    悪魔大隊(ダイモン・バタリオン)
自身の【寿命】を代償に、【レベル×1体の小型悪魔達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【手足の爪や口から吐く炎】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

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 苦戦🔵🔴🔴
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※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 私は筆を置き、勝利に沸き立つ猟兵たちを俯瞰した。
 そう、これでいい。彼らは永久に終わることのない争いの輪廻から解放された。これ以上の幸福があるだろうか? そしてそれを成し遂げた自分に対しても、誇りのようなものを感じる。
 頬が緩むのをなんとか抑え、私は後ろに控えた部下たちに合図を出す。彼らは一斉に銃を構え、向かい側の塔に照準を定めた。
 戦いが終わった後に、暗闇の向こう側に存在するもう一つの塔からの斉射。彼我の距離は役十五メートル。逃れられるものは居ないだろう。もはや彼らには戦う理由がないのだから。
 さあ、終わりの時だ。せめて安らかに眠ってくれ、憐れな猟兵たちよ。
(現在、戦場全体に戦う気力を失わせる精神汚染が発生しています。戦いを続けなければならない理由を添えてプレイングをして頂くと、評価が上がります)
ヴィクター・グレイン
戦闘前に羽ばたかせていた夜咫鴉が銃弾の音を聴き、ヴィクターに知らせる。
『ヴィクター!銃弾がtonでくるぞ!doughにかして身を守れ、カッカー。』
恐らく直ぐにでも動かないと蜂の巣になるだろう。
「闇人!暫く俺の盾になれ!」
自身の足元の影から巨大な蠢く一つ目のオブリビオンマシン"闇人"を呼び出し守らせる。



 戦いの勝利と終焉に沸き立つ、かつての戦場。
『ガア、ア! ガア、ア!』
 そこに突如として降り注ぐ、不躾で、不気味な声。
 歓喜の喧騒から一人離れていた男は、その声を聴くと闇の向こう側を見据えて目を細める。その頬を、高速で飛来する何かが掠めた。
『ヴィクター! 銃弾がtonでくるぞ! doughにかして身を守れ、カッカー!』
 上空を飛び回る影朧は、どこか揶揄うような口調で告げる。その主である黒い外套の男、ヴィクター・グレインは、表情を変えることすらせずに右腕を大きく広げる。露わになるは、複雑な機構を擁する義手。そしてその手には、一本の黒い鍵が握られていた。
 訓練を積んだ人間ならば、一見何の変哲もないその鍵に尋常ではない量の邪気が込められていることに気づいて肝を冷やすだろう。近づくことすら躊躇われるそれを一切臆することなく手に持ち、唸りを上げる右手によって半分に折った。
「闇人、暫く俺の盾になれ!」
 折れた鍵から、煤のようなものが立ち上る。それを中心にして、辺りの闇を形成するかのような形で一体の巨大な人型が浮かび上がる。それは頭にバケツを被っており、不格好に作られた案山子のように見える。僅かに覗く顔に貼り付けられているのは、異形の一つ目。
「先程も言ったが。オブリビオンとの戦いが終わる日など、来よう筈がない」
 人と呼ぶには余りに巨大なそれが、ヴィクターや後方の猟兵に向かう銃弾を弾く盾となる。
 銃弾が飛んでくる方向を何の感慨も無いような瞳で見据えながら、彼は一人呟いた。
「その源泉が、俺たちの心の中にある以上──」
 戦いが終わることは無い。
 どこか自分に言い聞かせるような彼の言葉は、闇の中に溶け……戦いの始まりを告げる嚆矢となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
最後の戦いが終わり、喜びと共に銃を下ろしかけるが、達成感に違和感が混じる
これでいいのか?
しかし目的は敵を倒す事だ、俺の戦いはここで終わり…

…違う
自分を庇って斃れた師の遺志を銃と共に継ごうと決めてここまで来た
その戦いは、敵を倒す事だけが目的ではなかった
全ての世界を平和にする為に戦うのだと、あのお人好しは大真面目に語っていただろう

この闇では救ったものも倒した敵も何も見えない
気力を保ち周囲を探る
まだ弾は残っている、違和感があればすぐにでも撃ち抜ける
手始めにこの闇を裂いて、世界を暴いてやらなければ

平和になった世界を自分の目で確かめるまで終われない
その瞬間まで戦い続けると、この銃を継いだ時から決めている



 果て無い闇の中、彼は終わらない戦いの終わりに安堵していた。最期の敵が消滅したのを確認し、五秒ほど油断なく周囲を警戒した後、ほっと一息ついて武器を下ろそうとする──
「──ッ」
 その手が、すんでのところで止まった。受け継いだ種族的特徴である耳が逆立ち、ぴくぴくと震える。
 彼は傭兵気質の人だ。与えられた仕事をこなすことが使命であり、それ以下はもちろん、それ以上の仕事をしようとすることも稀だった。そして、今彼に与えられた使命は戦いを終えること。それが果たされた以上、彼に戦う理由は残っていない。
「……違う」
 しかし。彼は……シキ・ジルモントは、再び銃を構える。シロガネ色の拳銃には、まだ弾が残されている。胸元に右手を置いて、どの方向にも即座の発砲が可能な姿勢へ。安堵と歓喜で萎えそうになる全身を奮い立たせ、再び戦場に立った。
 彼は仕事を果たすために戦う。少なくとも先程までは、そうだった。
「この戦いは、敵を倒すものではない。あのお人好しは……大真面目に語っていた」
 彼を現実へと引き戻したのは、ただの私情。戦いからは程遠い、かつての懐かしい光景だ。しかし、その光景こそが今までの彼を形作る由来の重要な一要素であり、今こうして戦場に立つ理由でもある。
 それは、師との思い出。師はジルモントに戦う術を、生きる術を教えた。人生のある一瞬で儚く潰えるはずだった命を、自らを犠牲にして繋ぎもした。
 しかし、師が伝えた中で最も尊く、忘れ難いもの……それは、理想。
『全ての世界を、平和にして見せる』
 遠くから銃声が聞こえる。猟兵たちの戦いを終わらせるための、慈悲に似た殺意。シキはその全てを躱しきり、そちらに向けて銃を構える。
「俺の眼で、確かめる。倒すべき敵も……あの人の夢も」
 在りし日の、師の願いを果たすため。今、暗闇の向こう側に向けて引き金を引いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガンドル・ドルバ
これで終わりか…?
…全ての争いの終わりに飲む勝利の一杯
さて、その味はどうか?
(火酒を一口飲み)
おお!これはまたなんと…

なんと不味い酒じゃ

闇の向こうから殺気を幾つか感じるのう
オーラ防御と兜割りの大斧を地面に突き立て壁とし(武器受け)守りを固め、剛弓で殺気目掛けて乱れ撃つぞ
闇から現れた悪魔共も斧でなぎ払い、殺気の群れには【闇女神の旋風】を放ち、心の臓を止めてやろう

生憎、「俺」は生まれた頃より戦狂いよ

猟兵を辞めればまた次の戦を探すのみ
戦場こそ我が魂の故郷、死に場所よ
ひりつくような命のやり取りを求めて好きなように生き、勝利と誉れを肴に酒を飲み、そして理不尽に死ぬ

それが俺だ

この程度の戦ではまだ足りぬわ



「ふむ……? あれが最後だったか。」
 狼を屠った地精の老人は髭を撫でながら呟くと、武装を解除してその場にどっしりと腰を下ろす。
 瓶詰めして持ち歩いている火酒を取り出し、闇の中で一人傾ける。地精の殆どは酒を非常に好む、彼もその一人だ。戦いを終えた時には一杯の酒を飲む、それが傭兵だった頃からの習慣であった。
「さて、全ての争いの終わりに飲む勝利の美酒の味を確かめるとしよう」
 火山の溶岩を使って火入れされた、最高級の酒。度数は世に出回っている者の比ではなく、ただの人間であれば香りの酒精だけで昏倒してしまうだろうそれを、一気に半分飲み干す。老人の頬が紅潮した。
「おお、これはまたなんと……!」
 叫ぶや否や、未だ中身の残った酒瓶を片手で前方に放り投げる。
 空中で一回転、二回転……回る酒瓶が、突然甲高い金属音と共に砕け散った。火酒が雨のように降り注ぐ。
「なんと、不味いものだ」
 闇の向こう側から放たれ、酒瓶を砕いた銃弾の主。姿なき、酒宴への闖入者を睨み、老人……ガンドル・ドルバは、つまらなさそうに吐き捨てる。
 『オブリビオンとの戦いの終わり』という大事件は、彼を止めるには些末に過ぎる出来事であった。
「生憎、『俺』は生来の戦狂いなのでな……!」
 向こう側から、再び統制の取れた銃声が響く。逃げ場の存在しない攻撃に対し、ドルバは地面の鉄骨の隙間に巨斧を無造作に突き立てて応じた。殆どの鉛玉は彼の元に辿り着く前に霊的な加護によって勢いを失い、残った攻撃は全て、鋼板かと思われるような大きさの斧の前に弾かれる。
「お粗末なお情けなど、全く以て無用」
 闇から躍り出た小型の悪魔たちの吐き出す炎を、地面から引き抜いた斧でその小さな身体ごと薙ぎ払い、
「俺は猟兵を辞めたとて、次の戦場へと赴くのみ」
 返す刃で、再び銃弾の雨を払い落とし、
「戦場こそが俺の魂の故郷であり、俺の人生が終わる場所よ」
 深い闇よりも遠く、いつか来たるべき己の死地を見つめる瞳で、その右足を力強く踏み鳴らす。
「ひりつくような命のやり取りを求めて好きなように生き、勝利と誉れを肴に酒を飲み、そして理不尽に死ぬ」
 闇の向こう側で、『死なずの兵』たちが死ぬ気配がした。
 老人は間髪入れず、攻城兵器かと思われる大きさの弓矢で以て、向こう側の気配を狙い撃つ。
「それが俺だ……この程度の戦では、まだ足りぬ」
 終わる場所を求め続ける老兵は、終わることのない殺戮を繰り広げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

斑染近・紬姫
真の平和が訪れて、みんなに笑顔が戻っていく。でもなぜかしら?
あーしの心には抜けない膿が残ってるのよ?

他の誰かと同じ様に戦って、他の誰かと同じ様に生きて、それで?それであーしは誰に成れたの?誰に成りたかったの?
最初から理解っていたことよね?
あーしが成りたいのは誰でもない唯一無二の個有性(オリジナリティー)を持った欠け替えの無いあーし。

誰もやらない事がしたい。多くの人が無駄と言い、価値がない事を続ければ、それがあーしの個有性に成ってくれるはずよ。

平和と幸福で満たされた世界で、無意味で無価値の戦い其の続きを。

あーしの物語は、ここから始まるのよ!

あーしの様な存在は、どこでも疎まれてしまうわね。ふふふ。



「全ての戦いは終わり、世界に平和が訪れて、みんなの顔に笑顔が、心に幸せが戻りました……」
 闇の中に歌うような声が響く。戦いの終わりを喜ぶ声とも、新たに始まった戦いの声とも性質を異にする声が。
 ふらふらとその場を歩き回りながら御伽噺じみたハッピーエンドを語るのは、妖精の姫、斑染近紬姫。浮世離れした見た目の赤色の少女は、闇の中にあってもよく見えた。
 当然、『彼ら』はその標的を見逃さない。逃げ場を封じるため、一列に並んだ突撃兵による斉射が、容赦なく彼女を襲う。
「でも、なぜかしら……あーしの心には、抜けない膿が残ってるのよ?」
 当たらない方が、ありえない。そんな攻撃だったにもかかわらず、銃声の後、彼女は変わらずそこにいた。
 銃を構えなおし、発砲。
「他の誰かと同じ様に戦って、他の誰かと同じ様に生きて……世界が平和になる。それで、あーしは? あーしは、何かになれるの?」
 彼女は未だ健在。銃砲など存在しないかのように、一人呟き続けていた。
 だが、ふと足を止めると、ゆっくりと顔を上げ……銃弾が飛んでくる方へと、視線を合わせる。
「最初から、分かっていた」
 右手を前にかざすと、周囲から膨大な量の魔力がそこに集積され始める。白色の公団はその大きさと輝きを増し、やがて空中へと真っ直ぐに飛び出して……
「あーしは誰でもない、唯一無二の個有性(オリジナリティー)を持った欠け替えの無いあーしになりたいの」
 敵の遥か頭上を通過した。
 対して、意志を失った兵士たちは、三度目の攻撃を試みる。しかし、少女の身体にかすり傷一つつけることも叶わない。
「世界だってそう……争いが終わりました、なんて一言じゃ、納得できない。そんなお仕着せ(レディメイド)の平和なんて……」
 再び彼女の手から光弾が放たれる。今度は下に軌道を修正し、兵たちの身体を掠めた。
 間髪入れず、三発目の光弾が放たれた。
「だから、どれだけ間違え続けても、苦しい時を過ごしても無意味で無価値な戦いをしても……あーしはあーしを諦めない。終わりになんて、しない!」
 それはゆっくりと放物線を描き、向こう側の塔に着弾。
 固まっていた兵士たちが吹き飛ばされ、奈落の底へと落ちて行くのが照らされた。相手からの攻撃はもはや連携を欠いており、運命を読み切った紬姫に通じる道理が存在しない。
「あーしの物語は、ここから始まるの!」
 そう叫ぶと、更なる攻撃に転じるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神代・凶津
遂に最後のオブリビオンを倒したぜ、相棒ッ!
「・・・まだ気を抜かないで。倒しても何があるか分からないから今から神楽舞で場を清めます。」

『神楽鈴』の音が心地いいぜ。場が浄化する感覚って言うか頭のモヤモヤが晴れるような。



・・・って、俺達まんまと敵の術中に嵌まってんじゃねえかッ!?
「・・・不覚です。」
暗闇の向こうから殺気だッ!
飛んでくる攻撃を見切って霊光弓でカウンターしてやるぜッ!

こんな悪趣味な脚本を書いた奴、観てるんだろッ!教えてやるぜッ!
生憎ウチの相棒は泣いてる誰かがいたら見過ごせない難儀な性格でなッ!
オブリビオンが居ようが居まいが戦いを止めるような奴じゃねえんだよ、覚えとけッ!


【アドリブ歓迎】



 戦場は喜びに包まれている。抱き合う男女、酒を開ける老人、こちらに向けられた殺気。皆が戦いの終わりを祝っていた。
 そんな空気に浮かれながらも、退魔師の少女は己の使命を最後まで全うしようとする。
──ついに最後のオブリビオンを倒してやったぜ、相棒!
「……相手はオブリビオンの王だから、何があるか分かりません。気を抜かないで、神楽舞で場を清めますから」
 今まで共に戦ってきた鬼面の叫びに対応するのもそこそこに、少女は己の持つ神器を取り出し、舞い始める。
 不浄を祓う神聖なる鈴の音が、闇を切り裂くように響いた。
──心地いいぜ。場が浄化する感覚って言うか頭のモヤモヤが晴れるような音だよな。
 そう言いながら、鬼面がふと目をやった(?)先には、こちらに向けて殺気を発する何かがあった。深い闇であっても確かに伝わるような邪念、彼らは何を?
 思考と台詞が改竄されていたかのような違和感が晴れる。相も変わらず殺気が向けられている。銃声が聞こえる。
 尋常ではない!
──俺達まんまと敵の術中に嵌まってんじゃねえかッ!?
 三時の方向から発砲! 鬼面の叫びに、踊りを中断した少女は即座に答えた。先程まで舞に使っていた神楽鈴を振りかざし、霊的な防御を展開する。その直後、何十発もの銃弾が地面に落ちる音が響いた。
「……不覚です」
──おい、悪趣味野郎! 聞いてんだろ、教えてやるッ!
 二人の対処は早かった。少女、神代桜が霊木から作られた弓を構える。鬼面、神代凶津が更なる霊力を込めると、破魔弓が光り輝き始めた。
 そのまま、籠の鳥を解放するかのような優しい手つきで矢を放つ。
──ウチの相棒はなぁ、泣いてる誰かを放っておけない難儀な性格なんだよ!
 夜闇を切り拓く稲光のように、矢は直線の軌道を描いて進み続け……
──自分一人で戦いを終えて良かったなんて、思える程器用じゃねえんだ!
 向かい側の塔で銃を構えていた兵士の一人の胸に、過たず突き立った。
 鬼面が快哉を叫び、少女は次の矢を構える。終わらない戦いを終える嚆矢として、今二本目の矢が放たれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒沼・藍亜
終わったー、ってUDCアースでもないのについいつもの癖で後処理とか始めるつもりで
さっき盛大に出したUDCを回収しようとしたところ、察知したUDCが触腕出して銃弾を止める

そしてペンダントが視界に入って
(中には、突然引きこもったしまったわたしを心配し、手を尽くして、悪い人間に騙されて、最期は邪教の儀式からわたしを庇おうとして死んでしまった両親との、写真)

どうせボクは赦されない、ううん、自分自身が赦さない
……なら、こんな親不孝の、化け物憑きのバカ娘でも、せめて
邪神だけでなく、邪教徒やら悪党に同じ目に遭わされる誰かを出さない為に、って

だから、ここで終わる訳に行かない
……盛大に同士討ちさせてやるっすよ



「ん-っ。終わった、っすね」
 黒色の制服に身を包んだ彼女は、大きく伸びをしながら呟く。オブリビオン──影朧の存在が周知されている世界でありながらその痕跡を消そうとし始めたのは、所謂職業病だ。
 いや、そうでなかったとしても後片付けはもう必要ないのだ。戦いは終わり、敵は消え去ったのだから。影朧も、オブリビオンも、邪神も、UDCも。その辛く悲しい記憶と共に、無くなってしまった……
 そんな彼女の思考を切り裂く、一発の銃声。
「……」
 呆然と見上げた先で、巨大な黒い触手が蠢いていた。それは紛れもなく、消滅していたはずのUDCの姿。
 惚けたまま少し後ずさると、荷物を飾り付けるペンダントが小さな金属音を立てる。そこにあったのは、幸せな家族の写真だった。彼女にとってそれは幸福の似姿であり、もう二度と戻ることのない日々の象徴であり、何よりも彼女が犯した罪の証明。
 彼女は……黒沼・藍亜は、一つ大きなため息をついた。
「……ボクの贖罪は終わらないってのに。どうしてあんなこと、思ったんすかね」
 数刻前までの愚かな自分を嘲笑う。例えそれが、何の力も持たない人間にはどうすることのできない運命だったとしても。彼女は今まで、家族の死の原因となった自分を許したことは無かった。
 終わりなき自罰と悔悟こそが、黒沼藍亜の戦う理由。
「こんな親不孝の、化け物憑きのバカ娘でも……せめて二度と、こんな人間が現れないように」
 彼女は、戦い始める。
 彼女の力の性質は、この場を包む闇と瘴気に近しい。そんな彼女にとり、深い闇の向こう側を覗くことは児戯に等しいことだ。こちらに銃口を構える、兵士が見える。今にもこちらの命を奪うだろう彼らを、彼女はどこか寂し気な目で見つめていた。
 五、四、三、二……銃声──
 誰かが、倒れる音がした──

 『向こう側』がどうなったのか、敢えて語るまでもない。簡単に言うのなら、それは『終わった』のだ。連携と信頼を絶たれた組織は、その強大な力を自らに振るった。
 そして、それから暫くの後……それは唐突に始まる。
 あり得ない事態が起こったことに動揺するかのように、辺りを包む闇が、胎動を始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『はぐれ陰陽師・人生紡ぐ呪詛『賀茂・保琳』』

POW   :    嗚呼、では君の物語を記そう
非戦闘行為に没頭している間、自身の【執筆している巻物】が【呪詛による防護壁を作り出し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD   :    呪詛返しの準備は万全に決まっているだろう?
【自身の喚び出した式神たち】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、自身の喚び出した式神たちから何度でも発動できる。
WIZ   :    著作は大切だが、邪魔者を始末する方が優先だ
自身の【著作である他人の人生を歪めた呪詛本の原本】を代償に、【常軌を逸するほど執着を増幅させる呪い】を籠めた一撃を放つ。自分にとって著作である他人の人生を歪めた呪詛本の原本を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠紫丿宮・馨子です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 戦いは続いた。まやかしの終わりを打ち破った猟兵たちによって、意思なき影朧の兵士たちは殲滅されつつあった。
 ふと、あたりを包み込んでいる闇が揺れ動く。
『……本当なら、私はここには出て来ない筈だった』
 闇が言葉を発する。否、その向こうにいる何かが、その意思を猟兵たちの思考に強制的に紛れ込ませているのだ。
 そのやり方には、全員が覚えがあった。先ほどまで、存在するはずもない終わりを何故か信じ込んでいた、その原因。
 姿を見ることは叶わない。しかしその言葉からは、彼の感情がありありと伝わってくる。
 それは憎悪でも、怒りでもない。
『君たちは、いったい何をしているんだ?』
 それは困惑。さもすれば恐怖に近い。
『終わらない戦いなどない。我々と君たちのどちらかが滅びる時はやってくる。それなのに、君たちは戦いを続けようとする。泥に塗れ、苦難に喘ぎ、他者を傷つけることを己の存在意義だと宣って見せる』
 倒れていた兵士たちが、再びその身体を持ち上げるのが分かった。
『しかしね、ことここに至って、ようやく私には君たちが何なのか、理解することができたと思うよ』
 かつて腕利きの陰陽師だった、それ。外道に身を堕とし、自らが書く文章によって他人の運命を歪める影朧。彼は闇の向こう側から、こちらを見ている。
『異常者どもが』
 戦いが、終わろうとしている。
ガンドル・ドルバ
はっはっはっ

まだ分からぬようだの、影朧の男よ
簡単な話よ
俺達一人一人が歩んできた道は常に別のもの
ここに集いし者共がどんな人生を辿ってきたかなぞ俺は知らん
だが、一人一人がその人生を経て得た譲れぬ「信念」があるのは分かるぞ
固き信念は狂気に似るものじゃ
ここにいるのは自ら闘争の地獄を進み、明日を切り拓く誇り高き戦士達よ
その者共の人生の厚みに比べれば、貴様の筋書きなぞ尻を拭くのにも使えんよ

さあ、講釈はもう良いな?
(武器を全て置き、鎧と兜と上着を脱ぎ傷だらけの上半身を晒す)
貴様に得物は不要
式神の攻撃も呪いの一撃も、貴様の全てを受け止めよう
繰り出すは我が怪力の拳、それのみ
これが俺の人生の重みじゃ!
受けとれい!



 重苦しい憎悪と拒絶が渦巻く、一触即発の空気の中。
「はっ、はっ、はっ……」
 まるで喜劇の幕が下りた後のように響く、軽快な笑い声。余りにも場違いな声の主は、先ほどまで殺戮を演じていた老兵、ガンドル・ドルバであった。
 敵味方、全ての視線が彼に向けられる。
「俺たちが何故、お前の救済を拒んだのか……それは簡単な話だ、影朧の男よ」
『蛮人が何を──』
「まあ、聞くが良い」
 逸る陰陽師を制しながら、ドルバは抱えていた巨大な弓を手放した。大樹が倒壊したかのような音が響く。
「ここに集まった面々がどんな運命を辿って来たのか、俺は知らん。戦う理由もそれぞれだろう」
 続けて斧を手放す。
「──だが、各々が自らの譲れぬ『信念』を掲げ、ここに立っている。それだけは、分かるぞ」
『その信念とやらのために、命も精神も投げ出すなんて──』
「狂っている、か?」
 老翁の眼が光る。
 好々爺じみた笑顔を浮かべている、ドルバ。しかし、兜の奥から覗くその瞳にありありと浮かんでいるのは……
「そうだろうとも!」
 常闇に住まうものをも恐怖させうる、赤い炎。
「ここにいるのは自ら闘争の地獄を進み、明日を切り拓く誇り高き戦士達……その硬き信念は、狂気に似る。何を犠牲にし、何を傷つけようとも、先へと進むのが俺たちだ」
 辺りを見渡しながら、彼は嬉しそうに言う。そして、身を守る兜を外し、地面に抛った。続いて鎧、更に上着までもを脱ぎ捨てる。
 露わになったのは、彼が今まで渡り歩いてきた戦場の証明……おびただしい数の傷跡であった。
「その人生の厚みに比べれば、貴様の筋書きは青臭いものよ。尻を拭くにも使えぬ……」
『なッ……』
 絶句する影朧を気にもしない風に薄ら笑いを浮かべながら、大儀そうに立ち上がって。
「さて、講釈はもう十分だな?」
 彼は構えた。上体を起こし、腕を広げ、ただ真っ直ぐに直進するための姿勢へ。
 当然、回避や防御は不可能になる。己を守る術の全てを捨てた老翁は、それでも笑っている。
 銃を構えた影朧たちが、一斉に彼に狙いを定め……
「貴様に得物は不要。俺はその式も呪詛も、全てをこの身で受け止めようぞ」
 銃声を合図に、彼は駆け出す。
 銃弾に逆行して、敵陣へと突進。いっそ愚かしいまでの戦いぶりに、陰陽師だけでなく、意思を失った筈の兵士たちまで驚愕に目を見開く。
 飛び交う銃弾が彼を捉えた。そのうち幾つかは、ドルバの身体に傷を負わせたが……殆どは彼の鋼のような肉体に弾かれ、虚しく地に落ちる。
 そして流れ出た血を吸い取ったかのように、瞳の赤色は輝きを増す。
 影朧は、動けなかった。彼は頑丈な防護に守られている。第一に彼を取り囲む兵士たち、そして陰陽術と呪詛からなるバリア。大規模な霊的儀式を経なければ、解除どころか干渉すら不可能な代物。それ故、一老人の武器をも持たぬ一撃が自分のもとに届くことを、想像できなかったのだ。『書き手』として傍観者であろうとしていたことも、仇になった。
 ドルバはただ駆けた。彼は誰の目にも留まらぬ暴風であった。彼は全ての攻撃を意にも解さぬ鋼鉄であった。彼は立ちふさがる全てを破壊する火焔であった。
 彼は、戦場に渦巻く狂気そのものであった。
「これが俺の、戦士の人生の重みじゃ」
 少しだけ身を屈め、跳躍。
「存分に……受け取れい!」
 右の拳を、全力で振り抜く。
 たったそれだけで、塔の全体が地震に遭ったかのように揺れ動いた。
『……!』
 影朧は息を呑む。
 陰陽術の神髄が、死した後に完成された呪詛の防護壁が……たった一人の老人の拳によって、打ち砕かれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒沼・藍亜
……アンタに理解を求めた覚えはないんすけどね

それはそうと(ペンダントを握る)

よくも一方的にヒトの事情も何も無視してあんな「救い」
上から目線で押し付けてくれたっすね
救われるべきじゃない、赦されるべきじゃない“わたし”に。

スカート内から『昏く暗い黒い沼』を足元へとじわじわと広げ、触腕を伸ばし捕縛したり、沼に踏み込んだりして触れた箇所から生命力吸収し、敵の攻撃は捕らえた奴か触腕自体を盾にして対応、UDCの領域を広げつつ、UCを使用。
見る者に応じて「その心を抉る姿」で映る幻影を召喚。

さあ終章っすよ
幻影で精神を、触腕で肉体を嬲り抉りズタズタにして、
救いなんてない、この奈落の沼底に引き摺り落とし沈めてやる



『だから何だって言うんだ! 自分の欲望のために全てを捨てるなんて、そんなのおかしいじゃないか、理解不能だ……!』
「……はあ」
 絶対の自信を持っていた障壁が破られたことで、影朧は完全に冷静さを失っていた。しかし一旦猟兵たちから距離を取り、障壁の再展開を試みるくらいの思慮は残していた。猟兵たちの殺害……彼の言うところの救済を諦める気はないようだ。
 捨て台詞を吐く陰陽師を見て、気だるげにため息をつく影が一つ。
「別にアンタに理解を覚えた覚えはないっすけどね。ここにいる誰も……」
 その言葉は影朧には届いていない、それは彼女にも分かっていた。それは半分は、自分に言い聞かせるための言葉だったのだから。
 彼女は顔を上げる。術式を展開しなおす陰陽師、再び攻撃を試みる兵士たち、その全てを視界に入れて。
「それはそうと」
 そのまま、顔を下げることはせず。
 右手で持っていた何かを、強く握りこんだ。
「よくもまあ、ヒトの都合も無視してあんな……あんな『救い』を、一方的に、押し付けてくれたもんっすよね」
 遥か遠くにいる陰陽師が、はっとして顔を上げる。
 彼女の声が聞こえたわけではない。それはかつて、人間だったころに捨てて来た筈の感覚……第六感が何かを感知したものだ。
 その主が何か、彼は把握できない。しかし焦りを強くして、懸命に障壁の再展開を試みた。先ほどまで自分たちを護っていた闇の向こうからやって来る何かを恐れるかのように。
「ボクに……救われるべきじゃない、赦されるべきじゃない“わたし”に』
 だが、遅かった。
 藍亜の声には、今まで飄々とした態度で見せることのなかったむき出しの感情がありありと現れていた。それは嫌悪であり、拒絶。その対象は必死になって身を守ろうとしている影朧風情ではなく、自分自身。
 可愛らしいスカートの中から、何かが這い出てくる。
 光を失った瞳が見据える先へ、闇色の沼が襲い掛かる。こちらに銃口を向けていた兵士たちが目を見開き、次々と倒れ伏した。彼らは自分たちに襲い掛かったものが何かすら理解することはできなかっただろう。
『こ、今度はなんだ……!』
 陰陽師にとっても、それは同じだった。
 古の時代から陰陽術に親しんだ彼は、この世界に存在するすべての術式を把握しているといってもいい。或いは式神などの神秘に属する生物についてもそうだ。
 しかし彼が相対したのは、異なる世界の、更に外からやって来たイキモノだった。
『そんなに終わりが好きなら……終わらせてやる。この奈落の沼の中で……』
 もはや藍亜の顔は、闇色に塗りつぶされて見えなくなった。陰陽師は救いを求めるかのようにそちらを見たが……
『……あ、あ』
 彼が何を見てしまったかは、闇の中に葬り去られるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
おうおう、異常者とは随分言ってくれるじゃねえか。
「・・・人の気持ちを弄ぶ事をする貴方に言われたくありません。」
相棒の言う通りだぜ。いい加減、そのふざけた事を言う口をふさいでやるよ。
いくぜ、相棒ッ!炎神霊装だッ!
「・・・転身ッ!」

先手必勝、炎翼から弾幕の如く炎刃を放つぜ。
敵が攻撃を返してきたら戦場を高速で飛翔しながら敵の動きを見切りタイミングを見計らって一気に距離を詰めるぜ。
近距離まで近付いたら破魔の力を宿した炎刀を生成してめった斬りにしてやるよッ!

「・・・私達は貴方の書くまやかしの終わりを越えて次の物語に進みます。」


【技能・先制攻撃、弾幕、空中戦、見切り、破魔】
【アドリブ歓迎】



──おうおう、誰が異常者だって!?
 敵の数が減り、少しだけ静かになった戦場に、男の声が響き渡る。
 もはや闇を維持するだけの力も尽きかけているようで、視界の通った空間。その中で一際明るく輝いている、神に仕える少女……と共に行動する、不思議な鬼面のものだった。
 "相棒"である凶津の声に、桜も呼応して霊刀を振るい、叫ぶ。
「……人の思いを踏みにじる、あなたに言われたくありません!」
──相棒の言う通りだ……いい加減、そのふざけた口を塞いでやらなきゃな!
 性格も性別も種族も違う二人の声が、重なる。
『転身!』
 聖と魔、人と鬼面、理と情の力が融合することで、本来辿り着けるはずのない領域の力を行使する。それが彼女たちの本領だ。
 全身に翼のような炎を纏った桜は、闇の先を強く照らしながら空を駆ける。その様、その速さはまさに夜空を流れる星のようだった。狙いを定めることもできずに呆けた顔でそれを見上げていた兵士たちは、羽ばたきのたびに降り注ぐ炎によって焼かれて行く。
 炎に包まれつつも、彼らの顔はどこか満足げだ。魔の領域にも精通した退魔師である彼女の振るう力は、オブリビオン……ことこの世界に存在する影朧にとっては転生のきっかけをもたらしてもくれるものなのだ。
 長く永い生命の苦しみが、終わりを告げてゆく。
『こんな筈じゃなかったんだ、どうして分かってくれないんだ、おかしいじゃないか、だって……』
──ごちゃごちゃうるせえ!
 戦場から逃れようとしていた影朧に追いつき、その繰り言を一喝して見せた。陰陽師はびくりと肩を震わせ、猟兵たちの方に向き直る。
 何かを言いたいが、言葉にはならなかったようだ。震える手で著作を引き出し、そこから式神を召還するが……
──護るための戦いから逃げることが、お前の言う救いだってんなら!
「……貴方の書くまやかしの終わりを越えて──」
 霊力を込めた炎の刃を、一閃。
『私達は、次の物語に進む!』
 溢れ出ようとしていた式神もろとも、彼の著作を……歪んだ運命が記された呪具を、焼き切った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
異常者、あんたにはそう見えるか
…なるほど、それも間違いではないのかもしれないな
納得してしまう自分もどうかと思いつつ、精神にが乱れが無い事を確認してユーベルコードを発動
今度こそ、この戦いを終わらせる

ユーベルコードをコピーされて使われたら、写し取った能力の効果が切れるまでそのまま抗戦を続ける
能力の代償はあるが、それでも相手のコピーが切れるより長く発動を続けられる
切れた瞬間、増大した速度で式神を抜いて影朧本体を射撃で撃ち抜く

…これだけの力があるのなら、人を救う為に取れる方法は他にもあった筈だ
影朧の身を捨てて今一度やり直す気はないかと、問いかけてみる
この世界では、別の道を歩み直す事も許されるのだろう?



「……」
 激しくなった戦闘も峠を越え、本当の終わりを迎えようとしていた。月が僅かに覗くようになった空を見つめ、シキ・ジルモントは影朧の言葉を静かに反芻していた。
『異常者どもが』
 明らかな侮蔑、異質な存在への拒絶が込められた台詞。そんな敵の言葉に対して、彼の心中は揺れ動いていた。しかしそれは怒りや悲しみではなく……
 ふと、銀色の耳が震える。向こう側からやって来る何者かの音を感知したのだ。彼は思考を中断し、来るべき戦いに備え、銃を握りしめる。
 現れたのは、満身創痍の影朧ただ一人であった。消滅の運命から逃れようとしていた彼は、退路に待ち伏せていた猟兵を憎々しげに睨む。
『そこを退け、この──』
「悪いが、それは出来ない」
 相手の言葉を遮り、銃を向ける。
 同時に、巨大な影が彼の前に立ち塞がった。赤く隆起した肌を持つ、龍の式神。影朧が使役する中で最も強大な力を持っているが、更に相対している人狼の異能を模倣することで、限界を超えた力を手にしている。
 龍が咆哮する。空間に形成された炎が、シキを取り囲み、一斉に襲い掛かった。
「──っ」
 猟兵は、それを回避することに全神経を集中させる。巧みな身のこなしで、軽やかな跳躍で、時には手にした銃で……絶え間なく降り注ぐ巨大な炎の僅かな隙間を潜り抜ける。
 限界を超えた機動は、彼の身体に少なからず被害を与えていた。渦巻く呪詛と熱が合わさり、シキの意識が遠くなる。しかし動きを止めることはしない。
 自分自身が、逃れえぬ終焉に近づいていると知りながらも。
 永遠に続くかと思えた守勢だが、突然に終わりが訪れる。式神が操る炎が、目に見えてその勢いを失う。式神を操る陰陽師が、複雑な術式を維持するための力を使いつくしてしまったのだ。
 ふう、と息をつき、すぐさま攻勢に移る。白銀の銃を持ち上げ、龍の頭部に素早く三発。少し距離を詰め、再び一発。
 霊力で構成された身体が、ガラスが砕けるかのように崩れ落ちる。その向かい側には、肩で息をする陰陽師だけがいた。
 こちらを睨む顔に向けた銃を……彼は下ろす。
「さっき、言いかけていたようだったが」
 飛び出した言葉には意外にも、敵に向けるものとも、普段の事務的なものとも違った響きが込められている。
「異常者……それもあながち、間違ってはいないと思う」
『何を……どういう、ことだ……?』
 もはや相手に抵抗する力は残されていなかった。場違いにも思える会話が始まる。
 異常者。その言葉が人狼の脳裏に呼び覚ましたのは、戦士としての彼を導いた人物。
 戦場に生きながら、平和を求めた。異常とも言える矛盾を孕んだ理想を一心に信じた。彼の師であった。
 そしてその”異常”な信念は、過去の日々の中で彼にも受け継がれているのだ。
「そうそう、悪いものでもない……そうも思っている」
 傭兵として、彼は言葉少なく話す。しかし彼の言葉に込められた思いは、忘却の海から這い出た怨念の化身にも通じていた。先ほどまでの拒絶と憎悪が和らぎ、会話は対話へと変化する。
「お前も、これだけの力があるのなら、人を救うことができたはずだ。もっと他の方法で」
『影朧が……人を? ハハ、そんなもの、それこそ……』
 陰陽師は、それより先は語らなかった。疲れ切った顔を敵に向け、自重するように笑う。
「この世界では、そういうことも許されると聞く。やり直せるというのは……幸運なことだ」
 その言葉には、彼の実感が込められていた。
『そんな気は、毛頭ありませんでしたが……そうですね……まあ、ええ』
 言葉を纏めることは、結局最後まで出来なかった。
 小説家はゆっくりと全身の力を抜き、猟兵に言った。
『一先ず……終わらせて下さい。その後……ゆっくり、考えることにしますよ』
「そうか」
 傭兵は軽く頷くと、再び銃を持ち上げる。照準をしっかりと影朧に合わせ、
「──」
 ゆっくりと引き金を引いた。

 こうして、一つの戦いが終わった。
 しかし、猟兵たちの戦いに終わりは今だ訪れない。人々の記憶によって掬いだされる魂は余りにも少なく、今日も忘却の海は拡がり続けている。
 しかし、或いは、だからこそ。彼らは戦うことを止めない。その歩みを嘆かない。その運命を呪わない。それぞれの思いに支えられながら。
 狂気に似た、彼らの信念。それが行き着く先、その果てを……
 私は暫し、見守ろうと思う。

【続く】

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月21日


挿絵イラスト