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UDCアース某所。
夜、女子高生、田中・砂羽(たなか・さわ)は塾の帰りに自転車をこいで家路へとついていた。
高校2年生の彼女は進学校に通っており、日々、学校の後に塾通いと忙しない日々が続く。
「すっかり、遅くなっちゃったな」
風を切って走る砂羽は薄暗い木陰の道を進む。
片側は雑木林になっており、道路の真上にまで枝葉が伸びてきている。
もう片側は畑になっているが、月明かりが雑木林に遮られていた。
時折街灯が道路を照らしているが、砂羽もライトを点灯させて進む。
普段通い慣れている道のはずなのだが、どうにも今日は様子がおかしい。
先程から、周囲に何か靄のようなものが憑りついているようにも見え、人の姿を象っていく。
ヒヒヒ……。
「ひいっ……!」
不気味な長い黒髪の男の姿をさらしたそれは、刹那、砂羽の知人であるクラスメイトや担任、先輩の姿を取って睨みつける。
「何、なんなの……!?」
ヒヒヒ……。
そして、再び、男の姿をとった靄は気色の悪い笑いを浮かべると姿を消していく。
砂羽は身震いしながら、その木陰の道を走り抜けていった。
●
現状、UDCアースに出現している恐るべき新種のUDC。
それは、人間の「噂」で増殖してしまうのだという。
UDC組織に「感染型UDC」と呼称されるその個体は、自身を見た人間、自身の存在を噂話やSNSなどで広めた人間、広まった噂を知った人間全ての「精神エネルギー」を餌として大量の配下を生み出すのだという。
「UDCアースでも、この感染型UDCは見逃すことのできない存在となっているようね」
グリモアベースにて、セレイン・オランケット(エルフの聖者・f00242)が集まる猟兵達へと、今回の事態について説明を行う。
幸いにも、現状はまだ事態がさほど大事にはなっていないが、至急対処しないと致命的なパンデミックに陥る危険すらある。
「取り急ぎ、現地に向かって対処をお願いしたいの」
すでに、今回現れる感染型UDCについて、『木陰の道に自分の知った人の姿に変化する、人型の男の靄が現れる』と噂になっている。
その噂を知った人々の精神エネルギーが、感染型UDCの第一発見者である田中・砂羽とその周辺に大量発生し、多数の感染型UDCの配下を呼び寄せてしまう。
「夕方、彼女は放課後、自宅近辺でその襲撃に遭ってしまうようね」
そこはなんてことの無い住宅地にある大通りを外れた裏路地。
車がギリギリ2台通行できるくらいの幅の道に現れるのは、王冠を被った大きな口の形をした『災いの王』の集団だ。
【力強い問いかけ】、【巧みな問いかけ】、そして、【卑劣な問いかけ】。
そいつらは砂羽の知人男性を呼び寄せ、噂だけでなく、あることないことプライバシーに関することまで聞き出そうとしてくるようだ。
「力押しで質問してくる大量の男性は全て一般人よ。その一般人を無力化させてから、『災いの王』の集団の討伐をお願いするわ」
砂羽を救い出したら、彼女が発見した感染型UDCの出現場所について詳しく聞いておきたい。
「まずは一つずつ、感染型UDCの情報を集めていきましょう」
セレインは依頼を受けた猟兵達にそう願い、彼らを現地へと呼ぶべく先に転移していくのだった。
●
ある日の夕方。
放課後、砂羽は学校のカバンを置いて塾の荷物と自転車を取りに戻るべく、自宅へと徒歩で戻っていた。
すでに、周辺では、靄の姿をした感染型UDCの噂で持ちきりとなっており、精神エネルギーが高まっている。
それは、砂羽の周辺へと集まって……。
「えっ、何……!?」
次の瞬間、彼女は虚空から現れた化け物の群れに取り囲まれることに。
「なあ、教えてくれよ。あの噂……」
それは大きな口の形をしたUDC怪物の群れだった。
「なんでも、靄みたいなのが出るんだって?」
『災いの王』は自らでも問いかけてくる他、自らの周囲に多数の一般人男性を呼び寄せてくる。
「なあ、……質問があるのだが」
「もっと君のこと知りたいな」
全て、見覚えのある男性達。彼らはこぞって砂羽へと質問を投げかけようとしてくる。
「ひ……っ!」
いくら何でも、多数の男性に押し寄せられれば、かよわい女子高生なら恐怖を覚えるのも無理はない。
怯える砂羽は多数の男性に抵抗しきれず、完全に押されてしまう。
呼び寄せた男性達の姿を、『災いの王』達が笑って見続ける。
そんな状況の中、駆けつけた猟兵達は事態を解決すべく、UDC怪物に煽られた男性達の対処に加えて砂羽の救出、そして、煽動するUDC怪物『災いの王』の集団の討伐に乗り出すのである。
なちゅい
猟兵の皆様、こんにちは。なちゅいです。
当シナリオを目にしていただき、ありがとうございます。
UDCアースのシナリオOPをお送り致します。
真相を探りつつ、事件を解決していただければ幸いです。
第1章は30日朝からの執筆を予定しています。30日朝8時半までにプレイングを頂けますと幸いです。その後はできる範囲で採用させていただきます。
章間はプレイングの幅を広げる為の情報を加筆します。
その最後に、次の締め切りに関しまして記述させていただきますので、ご確認の上でプレイングを頂けますと幸いです。
なお、第1章に断章執筆の予定はありません。
シナリオの運営状況はマイページ、またはツイッターでお知らせいたします。
それでは、行ってらっしゃいませ。
第1章 集団戦
『災いの王』
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POW : 力強い問いかけ
対象への質問と共に、【対象の知人やファンである一般人の中】から【対象が抵抗しきれない数の男性陣】を召喚する。満足な答えを得るまで、対象が抵抗しきれない数の男性陣は対象を【力強くあんな手段やこんな手段】で攻撃する。
SPD : 巧みな問いかけ
対象への質問と共に、【対象の知人やファンである一般人の中】から【対象が抵抗しきれない数の男性陣】を召喚する。満足な答えを得るまで、対象が抵抗しきれない数の男性陣は対象を【巧みにあんな手段やこんな手段】で攻撃する。
WIZ : 卑劣な問いかけ
対象への質問と共に、【対象の知人やファンである一般人の中】から【対象が抵抗しきれない数の男性陣】を召喚する。満足な答えを得るまで、対象が抵抗しきれない数の男性陣は対象を【魔術や催眠を使ってあんな手段やこんな手段】で攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
秋津洲・瑞穂
「無力化」ね?
操られた一般人を救助しろという話ではないのね?
ならば確かに、わたしは適任だわ。
サムライエンパイアの世襲巫女にして剣豪。
尋常の死生観は持ち合わせていない。
敵に与する者に、いちいち情など掛けはしないわ。
鞘に納めたままの神獣刀で、片端から張り倒す。
あえて斬り捨てないのは田中砂羽だかが見ているからよ。
それ以上の加減は無用。
さて、災いの王とやら。あなたたちは斬るわね。
雑兵に用はない。数がどうあれ対峙しなければ意味もない。
[ダッシュ・ジャンプ・見切り・残像]ですり抜けて王たちを直撃、
[2回攻撃・鎧無視攻撃・剣刃一閃]の一刀二斬で滅びなさい。
……ああ、調査ね。敵を斃してからでいいわ。
黒沼・藍亜
はいそこー!集団で女子高生囲むとかちょっとオイタが過ぎるっすよ!
とりあえずボクを対象にしてこないなら男性陣を片っ端から記憶消去銃の鎮圧モードで気絶攻撃し無力化狙いで。
数が多く時間がかかるならスカートの中からUDCを地面に広げて触腕を出して捕縛した上で気絶攻撃で無力化。
彼女の安全確保を優先っすよ。
安全確保後はもうその口開かないよう触腕に捕縛させて生命力吸収しつつUC【きらいきらいだいきらい】の餌食になってもらうっす
もしボクの知人男性を出してきたら?どうせ同僚なので即気絶させます
気絶しなくても一般人よりはボクのUCで出す幻影を見ても被害は少ないでしょうから撃破優先で
※アドリブ連携歓迎です。
波狼・拓哉
噂というか不審者では…?
取り敢えず一般人対処からだね。殺傷能力抑えた衝撃波込めた弾で出来るだけ穏便に済む箇所を戦闘知識、第六感、視力で見切り、気絶攻撃として脳を揺らすように撃ち込んでいこう
本体を確認出来りゃ、こっちが質問。質問するってことは質問される覚悟はあるというわけで。化け開きな、ミミック。『知りたい目的はなんだ?』…まさか、知りたいだけで終わるわけないよな。彼女を質問攻めにしないといけない理由…お前が噂で広がる為とかでも彼女である必要はない。気になったから…それも嘘になるだろうし納得のいく答えを頂きましょうか
自分に来る質問は適宜答える。冥土の土産に持たせてあげましょう
(アドリブ絡み歓迎)
シビラ・レーヴェンス
●露(f19223)と。
まずは田中砂羽という女子高生をこの悪意から救出する。
このまま放置しては女子高生にとって精神的にキツイだろう。
方法は念動力で自身を浮かせて人垣を飛び越え砂羽の元へ。
それから黙って砂羽を抱きかかえて直ぐ再び飛び越える。
自転車は残す。申し訳ないが流石に自転車ごと運べない。
「驚かせてすまない。…大丈夫か?」
私では恐らく怖がらせるだけだろうから後は露に任せる。
さて。この不愉快で阿呆な男共と怪物の対応だ。
対応する前に狂気や呪詛の耐性とオーラ防御を施す。
言葉をよく聞き矛盾やちぐはぐな問と判断したら指摘。
はっきりと辛辣に正論で返す。
言葉に威厳と存在感を織り込ませ少しでも反論をさせない。
神坂・露
レーちゃん(f14377)と一緒。
「もう安心よ。えと…田中さん」
砂羽さんを安心させるように笑顔笑顔♪
それから…護らないと。レーちゃんとの約束は守るわ。
武器を構えつつ周囲を警戒しながら砂羽さんを背中に。
傷つけるつもりはないわ。牽制に利用するだけ。
「あたし達に任せておいて。悪いようにしないわ」
男の人達を無効化しないといけないのね。
レーちゃんはお話でどうにかしようとしてるみたい。
でもそれができなかったらあたしがしないと!
えっとえっと。じゃあダガーでマヒ攻撃を与えてみる。
身体を痺れさせればいいんだから薄く斬るだけで効果出るわ。
うん。でもこれはレーちゃんの作戦がダメだった時のね。
狂気とオーラ防御するわ。
●
UDCアースで起きる感染型UDCによる事件解決に乗り出す猟兵達。
彼らがやってきたのは、とある住宅街だった。
「噂というか不審者では……?」
UDC事件の解決を主に行う探偵、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)はそんな印象を抱きつつ、周囲を見回す。
すでに、現場では、被害者である女子高生が多数の王冠を被った口の姿をしたUDC怪物に囲まれていて。
「なあ、教えてくれよ。あの噂……」
その敵『災いの王』の群れは、女子高生、田中・砂羽に問いかけながら、ユーベルコードを使う。
質問と同時にこの場へと呼び寄せられたのは、砂羽の知人、クラスメイトである男性達だ。
「なんでも、靄みたいなのが出るんだって?」
「なあ、……質問があるのだが」
「もっと君のこと知りたいな」
一度に押し寄せてくる男性達に恐怖を覚え、たじろぐ砂羽。
だが、後ろからも男性が取り囲み、徐々に砂羽は追い込まれていく。
「はいそこー!」
そこに、駆け込んでいく黒い長髪女性、黒沼・藍亜(人間のUDCエージェント・f26067)だ。
「集団で女子高生囲むとか、ちょっとオイタが過ぎるっすよ!」
藍亜に合わせ、さらに後ろから3人の猟兵の姿が。
「まずは、田中・砂羽という女子高生をこの悪意から救出する」
全身黒衣のダンピール、シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は、連れの少女へとそう話す。
「このまま放置しては、女子高生にとって精神的にキツイだろう」
「分かったわ、レーちゃん」
連れである神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)はにこにこと微笑みを湛え、レーちゃんことシビラを追いかけていく。
「『無力化』ね? 操られた一般人を救助しろという話ではないのね?」
さらに後ろからは、太刀を背負った妖狐の少女、秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)が確認を取りつつ近づいて。
「ならば確かに、わたしは適任だわ」
確たる自信を見せ、瑞穂は一般人男性に囲まれる女子高生の救出へと当たるのだった。
●
「教えてくれ、靄って一体何なんだ?」
「お前、何に襲われかけたんだよ」
「頼む、貴方なら知っていると聞いたのです」
田中・砂羽へと詰め寄り、口々に噂を始めとして関係ないことまで聞き出そうとしてくる一般人男性達。
その目は正気を失っており、砂羽のことなど一切考えずに矢継ぎ早に質問を投げかけていく。
彼らは満足するまで、問いかけを繰り返す。
それは、傍でその様子を窺う『災いの王』の群れのユーベルコードの影響だ。
砂羽の見知った男性達が本人の意図せぬ状況で呼び出され、あの手この手で質問しようとしていたのだ。
「取り敢えず、一般人対処からだね」
まずは、砂羽を助ける必要があると拓哉は判断する。
出来るだけ穏便に済ませられそうな箇所を、拓哉は【戦闘知識】、【第六感】、【視力】で【見切り】、構えた『二丁拳銃のモデルガン』から【衝撃波】を込めた弾丸を撃ち込む。
相手が一般人ということもあり、拓哉も弾丸は殺傷能力を抑えている。上半身をメインに拓哉の弾丸を浴びた男性達は、脳を揺さぶられて【気絶】していく。
「とりあえず、ボクを対象にしてこないなら……」
藍亜もまた、砂羽へと注意が向いている男性達目がけ、『改造記憶消去銃』を突き付ける。
「彼女の安全確保を優先っすよ」
藍亜はそのまま鎮圧モードで【気絶攻撃】を行い、男性達を無力化していく。
瑞穂もまた一般人男性の対処から当たり始めるが、サムライエンパイアの世襲巫女にして剣豪である彼女は尋常の死生観を持ち合わせてはいない。
「敵に与する者に、いちいち情など掛けはしないわ」
瑞穂は鞘に納めたままの『神獣刀』で、片っ端から男性達を張り倒していく。
敢えて刃を抜かないのは、砂羽の目を気にしてのことだが、瑞穂はそれ以上の加減は無量と容赦なく男性達を地面へと沈めていく。
仲間達が男性達の無力化を目指す中、シビラは【念動力】で自身を浮かせ、人垣を飛び越えて砂羽の元へと近づく。
「えっ、あの……?」
戸惑う砂羽を抱きかかえたシビラ。
さすがに砂羽の自転車は抱えられず、それを残したまま再び人垣を飛び越えて露の元へと戻っていく。
「驚かせてすまない。……大丈夫か?」
地面へと降り立ったシビラが問いかけるが、砂羽はまだ状況を整理できずに混乱していたようだ。
シビラはおそらく自分が怖がらせているのだろうと考え、砂羽を露に託すことに。
「もう安心よ。えと……田中さん」
露は砂羽を安心させようと笑顔で接する。
男性達はある程度、他の仲間が気絶させていたが、まだ討伐対象である『災いの王』達は舌なめずりして砂羽を狙っていたのだ。
「噂のこと、教えてくれよ。なあ、なあ……」
そいつらはこの場にあった精神エネルギーを食らっていたのだが、まだ足りないのか砂羽を狙っている。
『ダガー』を構えた露は周辺を見回しながらも、砂羽を背にして庇うポーズをとる。
「お願い、皆を傷つけないで……!」
そこで、砂羽がシビラや露へと願う。
知人、クラスメイト程度の縁であっても、見知った人が傷付く様を見るのは気分がいいものではない。その願いも致し方ないことだろう。
露もまた傷つけるつもりはなく、牽制に利用をと考えていて。
「あたし達に任せておいて。悪いようにしないわ」
女子高生へと一声かけ、露は男性達の無力化と口の形をしたUDC怪物の討伐へと当たり始めるのである。
●
ほとんどの一般人男性は拓哉、藍亜、瑞穂の3人で倒していたが、一部が移動した砂羽を狙ってシビラ、砂羽の方へとやってくる。
「さて。この不愉快で阿呆な男共と怪物の対応だ」
シビラは相手の問いかけに対抗べく、【狂気・呪詛耐性】に【オーラ防御】を施す。
(「レーちゃんはお話でどうにかしようとしてるみたいね」)
露はしばしシビラの行いについて、成り行きを見守る。
「噂のこと、聞かせてくれよ……」
「知らないわ。むしろ私が教えてほしいわね」
シビラは相手の問いかけをよく聞き、少しでも矛盾を感じ、ちぐはぐな問いだと判断したらはっきりと指摘する。
「あの靄、人に化けるって聞いたが本当か?」
「君のことを教えてくれ。頼むよ」
「人に化ける……ユーベルコードだろうか。……見知らぬ私のことに聞いてどうする?」
言葉に威厳と存在感を織り込み、シビラは少しでも反論をさせないようにする。
男性達はある程度それで抑えられそうだが、『災いの王』達はそうもいかない。
「「教えてくれ、噂のこと……」」
満足な答えを得られぬUDC怪物達はなおも勢いを増して、問いかけを繰り返そうとする。
「えっとえっと。じゃあ……」
露もまた【狂気耐性】と【オーラ防御】で、災いの王が使うユーベルコードによる問いかけを防ぎつつ、『ダガー』で切りかかる。
その刃に【マヒ攻撃】を乗せて攻撃する露は、薄く切る形で相手の体を痺れさせていく。
「……ああ、調査ね。敵を斃してからでいいわ」
その間に、男性達の無力化をあらかた済ませた瑞穂が災いの王の殲滅へと転じて。
「さて、災いの王とやら。あなたたちは斬るわね」
「噂のこと、知りたいんだ」
「教えてくれ、教えてくれ……」
災いの王達が再び、一般男性を呼び寄せようとしてくるが、瑞穂はその問いかけを【見切り】、【残像】で避け、神獣刀を今度は鞘から抜く。
「雑兵に用はない」
数がどうあれ、対峙しなければ意味もないと判断した【ダッシュ】した瑞穂は高く【ジャンプ】し、敵との直接的な対峙を避ける。
瑞穂は【残像】を使い、相手の動きを翻弄しつつ【見切り】、王達を狙う。
敵の【守りを無視】し、瑞穂は刃を【連続】で浴びせかける。
「【剣刃一閃】……滅びなさい」
空中で煌めく刃は災いの王1体を切り裂き、空中で霧散させてしまう。
他の猟兵が砂羽の安全を確保したことで、藍亜も災いの王の討伐に動く。
彼女が操るのは、『啜り孕む黒い触腕』。
UDCエージェントである藍亜は黒い粘液状のUDCを体内に飼っており、それを触腕へと変形させていたのだ。
その口が開かぬようにと捕縛した上で【生命力吸収】し、藍亜は災いの王へと問いかけを返す。
「アンタには……何が見えてるんすかね」
この口だけの怪物に視覚があるかは分からぬが、藍亜は嫌悪感を抱いて、多数の幻影を出現させる。
現れた幻影は靄を思わせ、男性の姿を取り始める。
これが今回噂になっている靄……感染型UDCだろうか……?
「早く、噂を、噂を教えろ……!」
災いの王は急に暴れ始め、藍亜へとなんとか問いかけを繰り返そうとする。
藍亜の知人男性がこの場に現れるが、同僚であれば彼女も躊躇なく気絶させて。
「それじゃ、餌食になってもらうっす」
藍亜の呼びかけに合わせ、触腕が生命力を奪いつくした敵は姿をかき消してしまった。
拓哉も災いの王へと近づく。
質問するということは、質問される覚悟はあるのだろうと、彼はユーベルコード【偽正・千桜塵殺】を使いながら問いかける。
「化け開きな、ミミック。『知りたい目的はなんだ?』」
拓哉の左腕にある黒水晶のブレスレットから、幻朧桜に化けた箱型生命体が現れ、大きく口を開く。
「教えろよ、噂のこと……」
だが、災いの王達は拓哉の問いには答えず、うわ言のように噂について質問してくるのみだ。
「……まさか、知りたいだけで終わるわけないよな」
砂羽を質問攻めにしなければならない理由は一体何なのか。
噂を広げる為なら、別段砂羽である必要はない。
気になったから? ……それも嘘であるだろう。
「納得のいく答えを頂きましょうか」
「噂、教えてくれよ……」
もはや、ユーベルコードを使って誰かの知人男性を呼び出す力もなくなってきていた災いの王。
「生憎と、噂についてはこちらが知りたいくらいなんでね」
冥土の土産に情報をと考えていた拓哉だったが、これ以上の問答は無意味と判断した彼は、幻影の中に敵を閉じ込める。
その中へと鋭利な桜の花びらを降り注がせ、拓哉は災いの王を切り裂いていったのだった。
大成功
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第2章 冒険
『事故・事件現場を調査せよ』
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POW : ●『己の身体能力で調査する』:捜査は足だ。それに腕力に話術に度胸に…。とにかく何でもだ。
SPD : ●『己の感覚で調査する』:嗅覚や聴覚…。今、己の脳内には、当時の状況がありありと再現されている。
WIZ : ●『己の技術や術法で調査する』:自分達は猟兵だ。過去を覗き見るのも、なんだったら霊媒だって…。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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全ての『災いの王』を撃破したことで、それらに呼び出された一般人男性達も正気を取り戻す。
彼らの処遇、事情説明についてはUDC組織に任せるとして、今は女子高生、田中・砂羽から事情を聴くのが先だ。
「助けてくれてありがとう……」
彼女は倒れた自転車を起こしつつ、押し寄せてくる知人男性達や災いの王の群れから助けてくれた猟兵達へと感謝の言葉を告げた。
その後、猟兵達は簡単に、砂羽へと事情を説明する。
UDCについての話をぼかしながらも、彼女が見た人の姿を象る靄についての情報を求めていることを伝える。
ただ質問攻めでは、先程の男性や怪物どもと同じだ。
その為、猟兵達も慎重に、落ち着いた態度で砂羽に問いかける。
「えっと、夜、塾の帰りで……」
少しずつ落ち着きを取り戻してきた彼女はぽつりぽつりと、その靄をみた状況を猟兵達へと語ってくれた。
ある程度情報を聞いた猟兵達は砂羽と別れ、今度は直接現地へと向かうことにする。
第一目撃者である田中・砂羽が人の姿を象る靄……感染型UDCと思われる存在を見たのは、住宅地の郊外。
片面は畑だが、逆側が林となっており、頭上は木々の枝葉が覆っていて夜は月夜の明かりが届きにくい場所となる。
街灯は設置されているが、距離があって全ての道を網羅するには至らない。
昼間でも出現する可能性があるが、猟兵達は砂羽と同様の状況で探る為、夜に現地へと向かう。
砂羽が言っていた通りの光景が広がるその場所は、すでに感染型UDCの巣となっているようで、怪奇現象によって変貌していた。
その道には黒い靄が立ち込めており、どこに敵がいるか分かりづらい状況となっている。
街灯の光すらも届かぬ暗い場所では襲撃を受ける危険もあるので、調査に当たっては十分に注意したい。
自分の身一つで調査するのもいいが、猟兵達はそれぞれ技能やユーベルコードを使うことができる。
それらをうまく使いこなすことで危険が及ぶ確率を軽減させ、効率的に調査を進めることができるだろう。
ここで感染型UDCをしっかりと倒す為に、情報を集めたい。
今回の事態を解決しなければ、先程の砂羽が襲われたような事態が世界中のあちらこちらで発生してしまう危険があるのだ。
しっかりと現場で調査を行い、猟兵達の目で靄の正体を確かめ、その原因を排除したい。
(※今回は、6月2日朝8時30分までの予定で受付しております。その後の受付分は間に合う分のみ対応致します)
秋津洲・瑞穂
また雲を掴むような話ね――この場合は霧を掴むのかしら。
ともあれ[聞き耳・暗視・野生の勘]で奇襲は判るので、
深く踏み込んでも何とかなるわ。
霧の湧き出す場所を探してみよう。
まず外周へ行って、ぐるっと大回りして範囲を確認。
霧が流れていればその方向を確かめつつ、中心部へと進む。
流れがあったら上流側を重点的に探してみよう。
「大概こういう場合は、何かの物品などがあるものだけれど」
呪いの関係であれば、祓いを本業とするわたしの感覚に
何か引っかからないかしらね。
[呪詛耐性]や厄除けの護符はこの際関係ないとしても。
奇襲、暗すぎる、霧が濃すぎて邪魔などがあるなら
狐火を呼んで吹き飛ばそう。敵だろうと暗さだろうと全部。
波狼・拓哉
…いやー分かりやすいですね?ここまで露骨だとは思いませんでしたわ
取り敢えず…ミミックー出番ー。…なんか久しぶりに箱の姿で動いてるの見た気がしますわ。まあ、今回頼みたいのは周りの偵察です、自分が見れてない場所とかよろしくお願いしますね
自分は暗視ゴーグル掛けて捜索開始。第六感、失せ物探し、視力でわずかな痕跡も逃さないように探して回りましょう。痕跡見つかるまでは根気強く色々回って…見つけたら追跡ですかね
なんか出てきたら衝撃波込めた弾で撃ったりして対応。味方猟兵以外は敵でしょうし…手心加えず早業で撃ち込んでやりましょうか
(アドリブ絡み歓迎)
青原・理仁
つまりなんだ、どこかの靄の中に敵が隠れてるから探し出せ、ってことで合ってるか?
さて、どうしたもんかな…
靄のあるところで迎撃雷電陣を使ってみるか
範囲攻撃で範囲を拡大させて
手応えがあれば…雷電が放出されれば、そこに敵がいるってことだろう
後は向かえばいいだけだ
靄のある所を片っ端から試していくぜ
黒沼・藍亜
【WIZ】
アイツらにとって「今噂の靄」が「心抉る幻影」……?
しかも他には無反応だったのに靄には露骨に反応したっすよあいつら
もしかして、靄なんじゃなくて単に姿形みたいな詳細がまだ定まってない?
だから目撃者である彼女から「何を」見たのか聞き出して
「詳細」を確定させようとした……とか?
んー、じゃあ
UCで落とし子:奈落這う黒群を呼び出しいかにもな暗がりを調査させ、
ボクはさっき気絶させた同僚でも思い浮かべつつ別の、比較的明るい場所を調べます
これで「わざわざボクの方に」「その同僚の姿で」出てきたなら形を得るつもり、でアタリっすかね?
※アドリブ連携歓迎です、同僚は所詮ただの同僚なので外見他ご自由にどうぞ!
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)と調査。
夜の所為もあると思うが現場は靄で視界が悪いな。
【陰炎】を行使し私と露の周囲の明かりとしよう。
露の手をしっかりと握りはぐれない様にする。
それからお互い左と右に分担し周囲の警戒を怠らない。
「露。迂闊な行動は避けろよ?」
嬉しそうに上機嫌な露に念のために一応言っておく。
オーラ防御と狂気耐性を身体に纏う。
…砂羽から聞いた説明から推測するが…。
恐らく負の感情が感染のキッカケになっているのだろう。
感情から暗示か何かを利用して『感染』している…か?
ゴーグルで辺りの解析。
パフォーマンス技能で性能を上げ第六感と野生の勘で調査する。
魔力の痕跡が…とは上手くはいかないだろうが何か出るかもな。
神坂・露
レーちゃん(f14377)と調べるわ。
砂羽さんの言う通りすっごく見通し悪いわね。
怖いって感じるのもわかる気がするわ。
それでなのかしら手を握ってくれるの♪
えへへ♪レーちゃんからって珍しいから嬉しいわ♪
耐性もしておかないと。えへへ~…嬉しー♪
「うんッ♪ 大丈夫よ。ありがと~」
調べるのはレーちゃんに任せる。その方がよさそう。
ならあたしは危機に備えるために周囲の厳重警戒よ。
見切りとか第六感とか野生の勘って技能で警戒するわ。
そうそう【先見の瞳】も利用しようかしら。
なんだか目に見えない攻撃?してくるみたいだから回避できるかなって。
調査中のレーちゃんへ危機報告する方法は手を数回握り返すことね。
●
UDCアースのとある住宅地にて、寄生型UDCの第一発見者である田中・砂羽を保護することができた猟兵達。
彼女から人の姿をとる靄を見た時の状況を聞いたメンバー達は夜に現場に向かい、直接調査に当たる。
「……いやー、分かりやすいですね? ここまで露骨だとは思いませんでしたわ」
超常現象を専門とする探偵一族の出である波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は現地の様子を見て、驚いてしまう。
畑と森に挟まれたその道、砂羽の話では普通の道に黒い靄が出現するというものであった。
しかし、その後、噂によって寄生型UDCは精神エネルギーを蓄えたのだろう。
拓哉の目の前の道はどのくらい先まで続いているかは分からないが、黒い靄に覆われてしまっていたのだ。
ただでさえ林によって月明かりは遮られ、街灯の光は道路をほとんど網羅できておらず靄に飲み込まれて全く機能していない。
「つまりなんだ。どこかの靄の中に敵が隠れてるから探し出せ、ってことで合ってるか?」
このタイミングからの参加、武術を嗜む金髪少年、青原・理仁(青天の雷霆・f03611)がこの場の猟兵達へと状況を確かめる。
「そうですね。それが寄生型UDCとみてよさそうです」
「……なるほど、さて、どうしたもんかな……」
拓哉らこの場のメンバー達から簡単に事情を聞いた理仁は、しばし敵を探す対処法を脳内で巡らしていた。
「また雲を掴むような話ね――この場合は霧を掴むのかしら」
太刀を背負った妖狐の少女、秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)は目の前の靄……彼女が言うように距離を考えれば霧という表現が正しいのかもしれないが、この何処かにいると思われる寄生型UDCを確実に捕らえたいところである。
「アイツらにとって、『今、噂の靄』が『心抉る幻影』……?」
この状況について、黒い粘液状UDCを操る黒髪女性、黒沼・藍亜(人間のUDCエージェント・f26067)も考える。
先ほど交戦した『災いの王』の集団は、他はさておき靄についてだけは露骨に反応した。
それから、藍亜はもしかして靄なのではなく、単に姿形がまだ細かく定まっていない相手なのではないかと推察する。
「だから、目撃者である彼女から『何を』見たのか聞き出して、『詳細』を確定させようとした……とか?」
藍亜はそう考えていたが、果たして、靄を展開する寄生型UDCの狙いは……。
●
早速、猟兵達は靄の中へと突入し、それぞれの手法で、靄の中にいるはずの寄生型UDCの姿を探す。
ゆっくりと道路を包み込む靄の中へと突入する、見た目は冷淡な態度のダンピール少女といったシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)が周囲を見回して。
「夜の所為もあると思うが、靄で視界が悪いな」
視界を確保する為、シビラは魔力を帯びた紫色の炎を多数放ち、自身と連れの少女を照らす明かりとする。
「すっごく見通し悪いわね」
それでも、シビラの連れである民族衣装を纏うおっとりのんびり少女、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)もすぐ先すらまともに見えずにいる。
元々の道路ですら、被害者の砂羽が怖いと感じる状況だったが、靄によって視界すらも完全に封じられたこの状況。
仮に噂を確かめようとやってきた一般人は靄から出られず、感染型UDCの餌食となってしまうことだろう。
はぐれないようにと、シビラがしっかりと手を握ると、露はにっこりと満面の笑みを浮かべて。
「えへへ♪ レーちゃんからって珍しいから嬉しいわ♪」
嬉しそうに上機嫌な露に、レーちゃんことシビラは念の為と一応言うことに。
「露。迂闊な行動は避けろよ?」
そうして、シビラは左右に警戒の範囲を分担することに。
「うんッ♪ 大丈夫よ。ありがと~」
靄の中での奇襲の対策しておかないと返答する露だが、シビラから手を握ってもらったことに顔の緩みが止まらないようだった。
ヒヒヒ……。
その時、靄の中で笑い声が響く。
新たな餌が多数やってきたと、そいつは喜んでいるのだろう。
「んー、じゃあ……お仕事の時間っす。出てくるっすよー」
藍亜がユーベルコードで呼び出したのは、黒い球体が連結した虫のような姿をした60体余りの落とし子達だ。
「暗がりの調査を頼むっすよ」
まずは、比較的木々の間から月明かりや街灯の光が差し込む明るい場所から靄内部の状況を探り、本命の寄生型UDCの居場所を藍亜は探る。
その際、靄が知人の姿を取るという情報を元に、藍亜は先程気絶させた同僚の姿を思い浮かべる。
それは、同じUDCエージェントである爽やかな同僚男性。
人当たりは良いのだが、能力的な問題でなかなか前線には出られず歯痒い思いをしていて……。
「あとはわざわざ、ボクの方に彼の姿で現れたら、形を得るつもりでアタリっすかね?」
この人数では自分の方にはやってこない可能性もあるが、それはそれ。
まずは囮となって敵を誘い出せたなら、藍亜としてはめっけものだ。
他のメンバーもほぼ全員が自身の技能やユーベルコードを使い、倒すべき靄の居場所、そして、その本当の姿を探ろうとする。
「取り敢えず……ミミックー、出番ー」
拓哉が【偽正・偽箱基態(ミミクリー・スタンダート)】で呼び出したのは、箱型生命体だった。
どうやら、最近の依頼の都合で久しぶりに箱の姿で動いているのを見たと拓哉は感じていたようだが、それはさておき。
「今回頼みたいのは周りの偵察です。自分が見れてない場所とかよろしくお願いしますね」
拓哉の呼びかけに応えたミミックは大きく頷き、てくてく歩いて周辺を捜索。
【暗視】性能を備えた『探索用ゴーグル』をかけた拓哉自身も、【第六感】、【失せ物探し】、【視力】とフルに有用と思割れる技能を活用し、敵の僅かな痕跡をも逃さぬよう探して回る。
少し離れた場所では瑞穂もまた、【聞き耳・暗視・野生の勘】と技能を働かせる。
それらによって、靄……感染型UDCの奇襲に備えることができる為、瑞穂は多少深く踏み込んでもなんとかなると判断していた。
それでも、瑞穂は靄の外周からぐるっと大回りし、畑や林にも踏み入りつつ靄の広がる範囲を確かめる。
「道幅より広いわね」
林側は木々に遮られてほとんど広がらないが、畑側にはかなり食い込むように広がっていたようだ。
「あと、どのくらいの長さまで広がっているか、確認しましょうか」
その途中、靄が流れる場所も発見したが、瑞穂はこの靄の湧き出す場所を目指す前に広がる範囲を探ろうと考え、林側の木々を視認しながら前方へと歩く。
他方、理仁などは早くも実力行使に出ていて。
「逃がしはしねぇ」
理仁は【迎撃雷電陣】を使い、雷電で出来た迷路を展開したうえでその【範囲】を拡大させていく。
雷電は敵を迷路で逃がさぬようにするだけでなく、敵対者へ自動的に放電し麻痺させる効果もあるのだ。
「手応えがあれば……そこに敵がいるってことだ」
理仁は靄の中に雷電の迷路を維持し、内部に潜む敵の存在の探るのである。
●
瑞穂は一度向こう側の道路まで靄を突っ切り、その距離が数百mほどに及んでいることを突き止める。
後は靄が流れる方向を遡り、発生源を目指すべく引き返そうとしたところで、彼女は雷電の迷路に阻まれてしまう。
「誰かのユーベルコードかしら」
ともあれ、迷路内でも靄の流れは感じられる為、瑞穂はその出元となる部分を目指して歩くことにしていた。
シビラ・露ペアも靄の中で雷電の迷路に囚われていたが、別の猟兵が展開したものと分かり、多少は気を楽にして迷路を進む。
とはいえ、何が起こるか分からないのは変わりなく、2人は【オーラ防御】、【狂気耐性】を意識して身体に纏う。
また、シビラは『電脳ゴーグル』も合わせ、【パフォーマンス】技能で性能を上げつつ【第六感】と【野生の勘】で調査を進める。
露はというと、調査はシビラに任せる方がよさそうと判断して。
「なら、あたしは危機に備えるために周囲の厳重警戒よ」
彼女もまた【第六感】と【野生の勘】を使い、敵がこの靄に紛れて奇襲してきても回避できるよう、ユーベルコード【先見の明】も働かせていた。
何かに気付いた場合、露は手を数回握り返すことで危機報告する手はずとしていた。
迷宮は靄を網羅するように展開されていた為、時に畑側へと出なければならなくなっていたが、一方で敵の襲撃方向がかなり制限されたことをプラスと考えながらも2人は進む。
「恐らく、負の感情が感染のキッカケになっているのだろう」
砂羽の話から、そう判断していたシビラ。
あれだけの人々を利用していたのは、配下の『災いの王』の力も大きいが……。
「感情から暗示か何かを利用して『感染』している……か?」
魔力の痕跡があればいいが、何かが出ることを期待し、シビラは靄の中央部を目指す。
他メンバー達も徐々に、靄の中央部へと近づいていて。
「大概こういう場合は、何かの物品などがあるものだけれど」
瑞穂もまた何かの発見できるかもと考えていた。
それが呪いの関係であれば、祓いを本業とする巫女である彼女であれば、その感覚に引っかかるかもと考えていた。
その際、【呪詛耐性】や『厄除けの護符』でその直感まで防いでしまうとは考えなくはないが……。
「にしても、暗すぎるわね」
進むごとに、靄が濃くなっている気がすると感じた瑞穂はユーベルコードで狐火を呼び、靄を吹き飛ばそうとする。
刹那、視界が晴れたところに、藍亜が歩いていた。
靄が晴れたにもかかわらず、藍亜の傍には靄らしきものが纏わりつく。
ヒヒヒ……。
不気味に笑う靄が人の姿を象ると、藍亜にはそれが同僚の姿に見えたらしい。
「やっぱり、アタリっすね!?」
どうやら、相手には獲物の負の感情などは一切関係ないらしい。
靄そのものが悪意を抱き、無作為に獲物を定めて襲っているようだ。
ただ、そこで靄目がけて周囲の壁から雷電が襲い掛かる。
「思ったより早かったな」
片っ端から靄のある場所へと攻撃を試していた理仁は、敵の捕捉が思った以上に早く感じていたようだ。
さらに、箱型ミミックが勢いよくその靄へとぶつかっていく。
元々霊ということもあってか、靄にもダメージを与えていたようだ。
さらに、追撃をと【衝撃波】を籠めた弾を【早業】で発射し、人型を取りかけていた靄を晴らしていたのはミミックの主である拓哉だ。
「根気よく狙ってと思ってましたが、皆さんのおかげで助かりました」
拓哉の一撃は確かに命中したはず。
しかし、悪意ある靄はすぐに人の形をとって。
ヒヒヒ……。
そいつは藍亜の同僚とは異なる黒髪の男の姿をとり、この場の猟兵達の姿をじっと見回すのだった。
大成功
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第3章 ボス戦
『『悪意ある靄』』
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POW : 靄の姿は千差万別
命中した【己の一部である靄】の【形】が【様々な武器に】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD : この靄はあらゆるものを記録する。
【自身の体】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、自身の体から何度でも発動できる。
WIZ : 精神揺さぶる靄
【悪意に満ちた記憶】を籠めた【黒い靄】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【精神】のみを攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リン・イスハガル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
UDCアース某所の、畑と林に挟まれた暗い道。
ヒヒヒ……。
そこに出現していた黒い靄……寄生型UDCはやってきた猟兵達を認めて不気味に笑う。
一度攻撃を受けたそいつは、誰の知人でもない和装の長く黒い髪の男性の姿を取っていた。
「まさか、この靄の中で俺の姿を捉えるとはな……」
姿を露わにしたのは、そのままズバリ『悪意のある靄』という名のUDC怪物だ。
そいつが一度靄へと姿を変えて再び人型を取ると、この場にいた猟兵達それぞれに思い入れのある人物へと姿を変えた。
ベースとして取る姿はどうやら先ほどの男性の姿のようだが、相手の記憶を読んで変わった姿は老若男女問わないらしい。
「…………!!」
猟兵達がこの場に現れた相手の姿に驚くと、そいつはゆらりと男性の姿へと戻って。
ヒヒヒ……。
笑いながら身を翻し、林の方へと逃げ出していった。
逃がすまいと、靄を追いかける猟兵達は林の中を駆けていく。
やはり、月夜の光が入りづらく暗い場所だが、先程の靄に包まれた道に比べればまだ明度はある。
闇に慣れた目なら、技能なしでも多少は林の先の方まで見通せそうだ。
さて、悪意ある靄は逃げる気でいたのかと思いきや、とある木の近くでやってくる猟兵を待ち受けていた。
「ここが俺の住処だ」
ただ、どう見てもこの場は木々が立ち並ぶ林でしかなく、人が住むような家など確認することはできない。
そこで、猟兵の1人が靄の後ろのある木に、呪いの藁人形に杭が深々と打ち込まれていたことに気付く。
相手はヤドリガミではない為、それが本体というわけではないはずだが、悪意ある靄に何らかの力を与えている可能性は考えられる。
「ヒヒ、靄の姿は千差万別……あらゆる物を俺は記録することができる……」
そして、相手の精神を揺さぶり、精神エネルギーを頂いて自らを強化しようというのだろう。
またも、悪意ある靄はゆらりと自らの体を変化させ、対する猟兵それぞれが思い描く思い入れのある人物へと姿を変えて。
「噂に誘い出された獲物……ようやく、直接ご馳走になれそうだ……!」
狂気の笑みを浮かべながらそいつは自らの身体から靄を放ち、猟兵達へと攻撃を仕掛けてくるのである。
(※今回は、6月4日朝8時30分までの予定で受付しております。その後の受付分は間に合う分のみ対応致します)
(※訂正です。4日→5日朝8時30分までの予定で受付しております。大変失礼いたしました)
秋津洲・瑞穂
ああ、そう。
こちらも教えておくわ。
剣豪の刃は、あらゆるものを斬ることができる。
御霊であろうと概念であろうと逃れることはできない。
ましてや靄ごとき、斬ればお仕舞よ。
神獣刀を構えて呼気を一つ。
「新当流太刀術、秋津洲瑞穂。参ります」
放たれた靄も、己の一部だそうね?
とすると、斬られれば本体も弱るのかしらね。
いずれにしても、わたしに中てるのは無理よ。
[見切り]、[野生の勘]、短距離[ダッシュ]による[残像]。
触れることも出来ないまま[鎧無視攻撃+なぎ払い]の
[2回攻撃]で蹴散らされてしまいなさい。
ま、武器の一本くらい刺さっても、
さほどの障害にならないけれども。
藁人形は後回し。どうせ大した影響はないわ。
波狼・拓哉
…なるほどね。と言っても流石に思いれがある相手だといっても手を緩める理由にはなりませんね…話た事ある猟兵しか見えないし…
まあ、何よりミミックさんには効かないし。化け狂いなー。理性無くなったら関係ないですからね。霧だろうと攻撃する時は動きはあるわけで…あ、今の状態無差別だし味方は気を付けてくださいね?
自分は地形の利用、目立たない、闇にまぎれる、第六感、視力、暗視でミミックの誘導を衝撃波込めた弾で無差別に撃ってるようフェイントしつつ、隙を見切って藁人形に向けて早業で撃ち込んで破壊してやりましょうか
(アドリブ絡み歓迎)
黒沼・藍亜
記憶を読み取り化ける、悪意に満ちた靄、ね
悪意は藁人形由来っすかね?
破魔とかはできないから、さっき同様UDCと触腕を出して
藁人形奪取を試みます
奪えたら破魔ができそうな味方にパス
それと同時に、化け・UC対策に囮として同僚達を浮かべておきます
攻撃に躊躇しなくていいし、同僚絡みの悪意ある記憶って言ってもそんな大したものじゃないだろうし
こっちには『狂気耐性・呪詛耐性』もあるし
でも気分はよくないので、
UC【祈り絶え、果てに病め】で相手の意識へ直接精神汚染する囁きを、
内容は「行動理念の歪曲」、つまり「相手の感情を揺さぶるために読み取る記憶の選択基準」を歪めてしまうっすよ!
※アドリブ・UC詠唱改変◎です
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)と共闘。
変わる姿は露…ということになるのだろうな。私の場合。
だが躊躇せずに無言で【紫黒】を容赦なく放つ。
(早業、破魔、高速詠唱、範囲攻撃、2回攻撃、限界突破)
露本人からは酷いとか鬼とか文句を言われそうだが…。
本人が隣にいる時点で偽物だろう?何も躊躇することはない。
例え靄で視界を奪われて誤って本人が受けてもこの術なら問題なかろう。
靄にも心がないなど色々言われそうだが君に言われるのは筋違いだ。
問答無用。重ねて魔術を行使し靄と怪物を倒してしまおう。
露や他の者達との連携と協力でさっさと片づける。
「…わかった。私が悪かったよ」
倒した後。露の頭を撫でつつ謝罪しよう。やれやれ。
神坂・露
レーちゃん(f14377)と。
レーちゃんの姿になったらあたしは攻撃できないわ。
うーん。困ったわね。…じゃあUCを封じちゃいましょう!
【三種の盗呪】でぱぱっと靄の力を封じちゃうわ♪
(早業、破魔、高速詠唱、範囲攻撃、全力魔法、限界突破)
力を封じてからレーちゃんと連携波状攻撃で倒しちゃう♪
「…やっぱり大好きな人は、攻撃…できな…い」
あー!レーちゃんあたしの姿の靄を迷いなく攻撃してるわ!
しかもしかも連続で。むぅう…れーちゃんのいぢわるぅ~。
「ひっどいレーちゃん! あたしなのに! 鬼。悪魔」
でも。れーちゃんと連携波状攻撃で靄を倒すわ。
「酷い酷い。いくら敵でもレーちゃん酷い!」
ちょっと苦情をれーちゃんに。
青原・理仁
てめぇが元凶か
虎穴に入らずんば虎子を得ずってな
どっちが獲物でどっちが狩人か、教えてやるよ
暗視も併用して敵の動きを見切り、攻撃を当てていくぜ
雷霆を纏いつつ、使うのは破魔を込めた雷勁気砕拳
実体のない靄でも、邪気を乱せばダメージは入るだろ
だが気になるのは、奴の背後にある藁人形だよな
隙を見て壊しに行くか
あるいは、他の猟兵も狙うだろうから、俺が囮になってやるから壊してもらうか
上手くやれよ
敵の攻撃は第六感で感知し、見切り、回避
回避できなければオーラ防御だ
それでも食らった場合は激痛耐性で耐えて戦闘続行だ
●
第一発見者が見たという知人の姿を取る靄。
それが現れた道に隣接する林へと逃げ出したそいつ……寄生型UDCを猟兵達は追っていく。
暗い林だが、メンバー達はしばらく黒い靄の中でしばらく行動していたこともあり、闇夜に目が慣れている。
その為、各自逃げる敵を見失うことなく追跡して。
ヒヒヒ……。
逃げる靄はとある木の手前で止まり、和服を着た長髪の男性の姿を取る。
「ここが俺の住処だ」
「てめぇが元凶か」
根無し草の青年、青原・理仁(青天の雷霆・f03611)が眼光鋭く睨みつけると、そいつ……悪意ある靄はにやけて引き笑いして。
「ヒヒ、ああそうさ。俺がやった」
猟兵達を待ち受けていたそいつが後ろを指さすと、そこには木の幹に深々と杭を打ち付けられた藁人形があった。
「虎穴に入らずんば虎子を得ずってな」
それでも、危険を承知して飛び込んできていると、理仁も『包帯』を巻いた拳を構える。
すると、ゆらりとそいつは自らの体を一度靄に変え、様々な人の姿に変えた。
その中には、第一発見者である田中・砂羽の姿も……。
「記憶を読み取り化ける、悪意に満ちた靄、ね」
ややだらしない服装をした長髪女性、黒沼・藍亜(人間のUDCエージェント・f26067)は敵とその後ろの気を眺めて。
「悪意は藁人形由来っすかね?」
藍亜が主張通りの可能性は高そうだが、相手はオブリビオン。
この場の悪意ある靄が具現化したきっかけであり、力の源といったところだろうか。
「……なるほどね」
対UDCをメインに討伐依頼へと参加する波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)の視界には今、その靄はこれまで接したことのある猟兵の姿にしか見えない。
どうやら、取ることのできる姿は全員が同じように識別できるものだけでなく、相対する猟兵それぞれに異なる友人知人の姿で認識させることもできるらしい。
「流石に思い入れがある相手だといっても、手を緩める理由にはなりませんね……」
拓哉も現状の姿は、話したことのある程度の猟兵にしか見えていたようだ。
また、序盤からペアで参加の少女達も、相手が変化した姿を目にしていて。
「変わる姿は私の場合……やはり、露だろうな」
見た目に対して非常にクールで大人びたシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は、倒すべき敵の姿がすぐ隣にいるおっとりのんびりヤドリガミの神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)の姿を取るのを確認する。
「レーちゃんの姿なんて、あたしは攻撃できないわ」
その露には、靄がとった姿はレーちゃんことシビラに見えたらしく、攻撃を躊躇してしまっていた。
「ああ、そう。こちらも教えておくわ」
ただ、見た目は可愛らしい妖狐少女、秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)は普段はやや高めの声を低くして声をすごませて。
「剣豪の刃は、あらゆるものを斬ることができる」
御霊であろうと概念であろうと、彼女が背から抜く刃からは逃れられない。
「ましてや靄ごとき、斬ればお仕舞よ」
『神獣刀』を構え、瑞穂は呼気を一つ置いて。
「新当流太刀術、秋津洲瑞穂。参ります」
「どっちが獲物でどっちが狩人か、教えてやるよ」
瑞穂に合わせて、理仁も全身に雷霆……覇気を纏い、悪意ある靄へと距離を詰めていくのだった。
●
暗い林の中、不気味な靄の笑い声が響く。
ヒヒヒ……。
まさに悪意の塊が靄として顕現したそいつは、相手の知人友人の姿を取る。
攻撃しづらい相手に変化し、そいつは靄で作った武器を手にして襲い掛かってくるのだ。
「覚悟しな……!」
闇夜の中、人型を取った靄が手にした刃が煌めく。
ただ、拓哉はそれにもさほど動揺した素振りを見せずに。
「まあ、何よりミミックさんには効かないし。化け狂いなー」
拓哉は召喚した【箱型生命体】を顔の無い二足歩行の獣へと変化させて。
「理性無くなったら、関係ないですからね」
靄だろうが、攻撃するときには必ず動きがある。
だから、それを狙って拓哉はミミックさんと呼ぶ箱型生命体をけしかけて。
「……あ、今の状態無差別だし、味方は気を付けてくださいね?」
理性を失って荒ぶるミミックが靄へとのしかかり、鋭い爪を幾度もなぎ払って蹴りかかる。
攻撃を受ける悪意ある靄は、相手の心理の弱い部分を突いて攻めるのが得手なUDC怪物。
ヒッ……。
正面切っての戦いでは猟兵達に分がありそうだが、相手は得体のしれないオブリビオン。油断はできない。
「放たれた靄も、己の一部だそうね?」
それなら、斬られれば本体も弱るのではないかと瑞穂は推察して。
短距離【ダッシュ】による【残像】を展開した彼女は、悪意のある靄が本体から漏れ出す靄を狙い、切りかかる。
拓哉のミミックの攻撃を瑞穂も受けることとなるが、彼女はそれをも【野生の勘】で【見切り】ながら靄を切り裂く。
「ヒッ……、小癪な……!」
悪意ある靄の刃もまた、ミミックと瑞穂を纏めて斬りつける。
理性の無い拓哉のミミックは傷ついてもなおも攻め立てるが、瑞穂も僅かに斬撃を受けて怯む。
(「ま、武器の一本くらい刺さっても……」)
相手も深くまで突き刺す余裕がないのか、瑞穂にとってさほどの障害はなっていないようだ。
ところで、その間も悪意ある靄はそれぞれの猟兵の知り合いの姿を取り続けていて。
露にとっては、例え正体がオブリビオンであっても、大切なシビラの姿をした相手。
普段は天真爛漫に笑う露が悲痛な表情をしていた。
「……やっぱり大好きな人は、攻撃……できな……い」
ところが、そんな露の表情は数秒後に一転することとなる。
そのシビラ、【高速詠唱】してユーベルコードを使っていて。
「O lovitură pentru a rupe sufletul ……」
シビラが展開していくのは、【限界突破】した【火属性の魔力】を込めて青白く舞える13もの鉄杭。
それらを、彼女は【早業】で、かつ【連続】して躊躇なく、露に見えているはずの相手目がけて飛ばす。
【破魔】の力を籠めたシビラは、悪意ある靄の魂だけを攻撃していく。
「本人が隣にいる時点で偽物だろう? 何も躊躇することはない」
例え靄で視界を奪われ、謝って本人を攻撃してしまってもこの術なら問題ないとシビラは判断したからこそ、このユーベルコードを使ったのだが……。
「あー! レーちゃん、あたしの姿の靄を迷いなく攻撃してるわ!」
シビラの思慮が露に伝わることはなく、ただ自分の姿をした相手を、連続攻撃で攻め立てているシビラに露が腹を立てて。
「ひっどい、レーちゃん! あたしなのに! 鬼。悪魔」
『レーちゃんのいぢわるぅ~』と罵声を浴びせかけられるシビラだが、それを甘んじて受けつつさらに攻撃を続けるのだった。
●
シビラも攻撃に加わったことで、攻撃や回避に余裕ができた瑞穂はふと藁人形を視界に収めて。
「後回しね。どうせ大した影響はないわ」
そう判断し、彼女は悪意ある靄へと斬りかかり続ける。
理仁も途中から【暗視】を利用して戦場となる林を立ち回り、敵の刃を【見切って】攻撃を仕掛けてはいた。
「砕く!」
雷霆を纏った理仁は、拳で靄を殴りつけていく。
彼もまた、邪気を攻撃することでダメージを与えられると踏んでおり、事実、靄は少しずつ薄くなってきている感もある。
ただ、複数を相手にしている相手は押されているはずなのに、しっかりと全員に反撃してきており、まだ余力を残す。
理仁は靄が繰り出さす刃を【第六感】で感知してしっかりと【見切り】、【回避】に当たる。
仲間の数もあり、敵の刃が命中することはほとんどなかったが、理仁は【オーラ防御】に【激痛耐性】を重ねて体に刻まれる刃をできる限り気にかけぬよう交戦を続ける。
その理仁は、敵の背後にある藁人形を注視していた。
「壊しに行くか」
「私が奪取するっす」
どうやら、藍亜も藁人形を狙っていたようで、2人は連携することに。
「俺が囮になる。上手くやれよ」
すると、理仁が正面から飛び出して悪意ある靄の注意を引く。
同時に、藍亜が戦場を回り込み、黒い粘液状UDC『啜り孕む黒い触腕』で木から杭ごと藁人形を引き抜いて奪い取ってしまう。
「なっ……」
藁人形が奪われたことに気付いた悪意ある靄は藍亜へと攻撃を仕掛けてくる。
そいつは予め、対策として彼女が思い浮かべたUDCエージェントの同僚達の姿をとり、悪意ある記憶となって襲い掛かってくる。
(「そんなに大したものじゃないし、こちらには耐性もあるし」)
精神を多少は揺さぶられるが、藍亜は躊躇なくその同僚の姿をした靄に『改造記憶消去銃』を撃ち込み、牽制を行う。
「これ、頼むっす!」
同時に、藍亜は自身で【破魔】ができないこともあり、仲間へと奪った藁人形を託すべく、パスする。
すると、そこで【闇夜に紛れて】【目立たない】よう【木々の陰に隠れていた】拓哉が動く。
拓哉は自身のミミックを敵にけしかけた後、『二丁拳銃のモデルガン』に【衝撃波】を込めた銃弾を無差別に発射し、ミミックの誘導を行っていた。
【フェイント】も織り交ぜながらも、拓哉は弾丸を連射していたのだが、飛んできた藁人形に気付いた彼は【早業】で撃ち抜き、破壊してしまう。
「ヒッ……!」
悪意ある靄は力の源を破壊され、大きく声を上げる。
「ユーベルコードを封じちゃいましょう! ……言葉を三つの力にして剥奪す!」
その時、シビラの攻撃によって戦意を取り戻した露が【早業】でユーベルコード【三種の盗呪】を【高速詠唱】する。
3つの力とは、金環(手枷)、黒革(禁言)、銀鎖(拘束)。
口を封じるだけでなく、露はジェスチャーなども封じるべく、【全力】でかつ【広範囲】に術を発動させる。
「ヒ!?」
力を封じられた悪意ある靄は人の姿へと戻ってしまう。
「あとは一緒に倒しちゃおう♪」
露がうまく敵の力を封じたことで、シビラが遠慮なく攻撃をと再度燃える鉄杭を敵の身体へと打ち込んでいく。
「ま、待て! 仲間の姿をした相手を攻撃するなど……、心がないのか!?」
力を奪われ、武器すらもろくに作れぬ悪意ある靄が動揺を誘おうとしたのか、シビラへと問いかける。
「君に言われるのは筋違いだ。問答無用」
彼女は先ほどと変わらぬ力で、敵の体を幾度も杭で打ち付けていく。
猟兵の攻撃はそれだけでは終わらない。
「まあ、気分は良くないっすよね」
同僚の姿をした相手に攻撃していた藍亜も、相手がベースとなる姿から変わることができなくなったことで、遠慮なくその背後から黒い影を伸ばす。
「またユーベルコードを使われると骨っすからね。念入りに攻めるっすよ!」
藍亜が出現させた影はそっと、悪意ある靄へと囁きかける。
それは、相手の精神を汚染する効果があり、「行動理念の歪曲」……つまり、「相手の感情を揺さぶる為に読み取る記憶の選択基準」を歪めてしまう。
「ヒ、ヒイッ……!」
藍亜の一撃に呻く寄生型UDCは退路を探しそうとするが、この場の猟兵達がそれを許さない。
もう攻撃を躱す必要はないと、理仁は拳を直接相手の身体へと打ち込む。
肉体は一切傷付いていないが、相手は悪意の塊。
気の流れを乱され、悪意ある靄は苦しみ悶える。
「ヒ、ヒイイッ……」
たじろぎ、地面を這いつくばって逃げようとする敵の背後にいつの間にか瑞穂が回り込んでいて。
「大人しく蹴散らさせてしまいなさい」
「ヒ…………」
もはや声すら上げることなく、瑞穂の刃による【連続なぎ払い】を浴びた敵は姿を消し去ってしまったのだった。
事後、猟兵達はUDC組織と連絡を取りつつ、今回の状況の説明を行う。
その傍らで、かなりご立腹な露の姿が。
「酷い酷い。いくら敵でもレーちゃん酷い!」
自分の姿をした敵を躊躇なく攻撃していたシビラへと、露は苦情を入れていたのだ。
「……わかった。私が悪かったよ」
シビラが頭を撫でつつ謝罪をすると、少しずつ露はいつもの笑顔を見せ始める。
「えへへ……♪」
そんな甘えん坊な彼女に、シビラはやれやれと嘆息してしまうのだった。
大成功
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