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帝竜戦役㉘〜大地疾走、タートルチャリオット

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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●亀竜戦車
 竜の宝物庫……そう呼ばれる領域が群竜大陸には存在する。
 帝竜ヴァルギリオス、かの最強の帝竜が蓄えた無尽蔵の財宝がばらまかれた領域である。だが、疑問も残る。貯蔵した財宝を何故ばらまくのか。
 竜の本能として財宝を蓄えるのはわかる。しかし、この領域にばらまく理由がわからない。

 否。それはヴァルギリオスの財宝そのものが強大な防衛システムであるからであり、それを得たオブリビオンは巨大かつ強大なる力を得て、その領域を守護するのだ。

 巨大なる亀竜バリスカン。
 かつては鈍足と罵られた竜種である亀の姿をとった大地を粘土のように操る力をもつオブリビオンは、その能力と足の遅さ故に力の凄まじさを発揮できずにいた。

 だが、今やこの竜の宝物庫たる領域において、このオブリビオン以上に地形を破壊し、猟兵の行く手を阻むことのできるオブリビオンは存在しないかもしれない。
 そう、バリスカンと呼ばれるオブリビオンは、己の身を載せ縦横無尽に駆け回ることのできる宝物の戦車と、その口に加えた曲刀は己が造った地形へと斬撃を放った対象を引きずり込む能力を得たのだ。

 これによりかつての鈍足と謗られた亀竜はもうどこにもいない。ぬかるんだ大地を疾走する凄まじき戦車と化し、猟兵たちの行く手を阻むのだ―――!

●帝竜戦役
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)の姿であった。
 帝竜戦役も終盤である。
 流石に猟兵たちにも疲れが見えているのではないかと、多少の心配を頂きつつも彼女は事情を説明しはじめる。
「お集まり頂きありがとうございます。今回は竜の宝物庫と呼ばれる領域において、巨大なる一体のオブリビオンの討伐をお願いいたします。」
 帝竜ヴァルギリオス、かの帝竜が蓄えた財宝がばらまかれた領域、それが竜の宝物庫である。
 言葉面だけを捉えるのであれば冒険者たちが眼を輝かせそうな話である。
 だが、ここにきて帝竜ヴァルギリオスの蓄えた財宝が一筋縄で行かぬ事を知る。

「はい、そのとおりです。帝竜ヴァルギリオスが蓄えた財宝は、それだけで強大な防衛システムへと変化する財宝なのです。今回、予知したオブリビオン、バリスカン……本来であれば、大地を粘土へと変える力を持つ、鈍足の亀竜でした」
 でした、と前置きする以上、鈍足であるという情報は過去のものなのであろう。さらに地形を粘土に変える力。
 確かに亀の姿を取った竜であるのなら、鈍足であるという先入観があってもおかしくはない。

「かのオブリビオンが取り込んだ財宝は2つ。一つは己の体を乗せて素早く走り回りながら地形を変えていく戦車。チャリオットとも言われる古代の戦車ですね。さらに口に加えた曲刀。これにより、斬撃は己が作りあげた地形へと敵を誘い動きを鈍くさせるのです」
 なるほど、この能力であれば猟兵たちの進撃を遅らせることも十分可能であろう。
 故に今回集まった猟兵たちにナイアルテは託すのだ。終盤戦とはいえ、帝竜ヴァルギリオスとの戦いである帝竜戦役はスピードが生命である。
 この宝物庫で猟兵たちが足を取られてしまうのは、決定的な遅れになりかねない。

「この2つの財宝を取り込んだ亀竜バリスカンの特性を考え、弱点を突くことで有利に戦いをすすめることができるでしょう」
 まずは戦車による速度強化。そして、曲刀による斬撃。この2つの弱点をそれぞれ見抜き、対策を取らなければ苦戦は必至だろう。
「大地を粘土に変える力も厄介ですが、まずは取り込んだ財宝2つへの対処が必要になるかと思います。どうか、この戦いを制し、今後のヴァルギリオスとの戦いを有利に進めてください」

 そう言ってナイアルテは猟兵たちを送り出す。
 猟兵たちも必至に戦ってきた。疲労も凄まじいだろう。けれど、それでも戦わなければならない猟兵たちをナイアルテはせめて、と微笑みで以て送り出すのだった―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『帝竜戦役』の戦争シナリオとなります。

 竜の宝物庫へ進撃し、をバリスカン打倒しましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……シナリオごとに提示された「財宝」の特性を考え、その弱点をつくような作戦を実行する。

 ※この戦場で手に入れられる財宝について。
 宝物「ヴァルギリオスの財宝」……強力なモンスターに変身する、恐るべき財宝です。変身方法は今の所不明ですが、ただ美術品としても、ひとつにつき金貨2000枚(2000万円)を下ることはありません。

 アイテムとして発行するものではありません。ロールプレイのエッセンスとして扱ってください。

 それでは、帝竜戦役を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『バリスカン』

POW   :    クラッシャー・ロード
予め【突進する為の道を作る】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    アースクラフト
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【集中して地形(形状は毎回変わる)】を作った場合のみ極めて精巧になる。
WIZ   :    ゲシュタルト・テラ
【自身の装備武器】から【対象を誘導する攻撃】を放ち、【作った地形】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:イガラ

👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルト・カントリックです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月灘・うる
亀っていえば、風水でも金運の象徴のはずだよね。
……悪者に金運なんてもったいない!
うーちゃんがしっかり倒して、金運ごともらってあげるよ!

うーちゃんはおたからげっと、
ついでにアックス&ウィザーズの平和も守れるなんで、
これが一石二鳥ってやつだよね。

相手の攻撃は【第六感】を使って回避していこう。
こっちの攻撃は【オックスブラッド】で
【海神殺し】を使って撃ち込んでいきたいな。

【乱れ撃ち】【制圧射撃】【範囲攻撃】
もいっしょに使って、徹底的に遠距離戦。
相手の機動力や近接攻撃力を生かさせないように戦うね。

亀を倒したら、ゆっくりお宝探索だね!
【宝探し】を使って、
なるべく高そうなのをげっとして帰りたいな!



 ある世界によっては亀とは亀卜、つまりは甲羅を使った占いにも使われることがある。ならば、その亀の甲羅を背負いしオブリビオンである亀竜バリスカンもまた、それにちなんだ逸話があるのかもしれない。
 だが、この群竜大陸にあってバリスカンは古の戦車、チャリオットにまたがり、その鈍足を補って余る速度を得ていた。
 さらに口に加えた曲刀。その二つはヴァルギリオスの財宝に間違いなく、それを取り込んだからこそ、この竜の宝物庫と呼ばれる領域の守護者となったのだ。
 咆哮が響き渡る。大地を粘土に変える能力によって、泥濘んだ土をかき分けるようにしてバリスカンの進撃は続く。あちらこちらに轍のようにバリスカンがかき分けた大地は、往々にして地形を変えていた。
「ガァァァァァ―――!!!」

 その咆哮を前にしても月灘・うる(salvage of a treasure・f26690)の意識は、この領域にばらまかれたヴァルギリオスの宝に持っていかれていた。
 だからだろうか、対峙する亀竜バリスカンを見ても―――。
「亀っていえば、風水でも金運の象徴のはずだよね」
 そう、どうしても、そういう方面にしか思いが及ばない。しかし、彼女とて猟兵である。天真爛漫な表情の裏ではしっかりとお宝をどうしようかな、だとか、なるべく高いそうなのをげっとしたいな!とか考えているしっかり者である。

「……悪者に金運なんてもったいない!うーちゃんがしっかり倒して、金運毎もらってあげるよ!」
 ふんす。
 うるは気合を入れてバリスカンと対峙し直す。バリスカンは突進するための道を着々と作りあげていこうと大地を粘土に変え続けている。
 このままではお宝を探そうとすればするほどに粘土に変えられた大地で四苦八苦してしまう未来が現実のものとなってしまう。

「もう!うーちゃんはおたからげっと、ついでにアックス&ウィザーズの平和も守れる!これが一石二鳥ってやつだよね!って思っていたのに、これ以上宝物庫を粘土にしたらだめー!」
 大分、お宝の方に重きを持っていかれている気もするのだが、そこはご愛嬌である。
 バリスカンが曲刀を咥え直し、うるへと突進の準備を整える。咆哮が響き、戦車に乗ったバリスカンの巨躯がうるの体目掛けて突進してくる!
 突進するための道を作っていたバリスカンであるが、道を整えれば整えるほどに、うるは回避しやすくなる。
 何故なら、その突進するための道筋は整えれば整えるほどに攻撃の射線が丸わかりだからだ!

「どうやって攻撃してこようかなんて、うーちゃんに見え見えよ!」
 粘土質になった大地を、まるで整備された道路に走るが如く戦車毎突進してくるバリスカン。
 うるはひらりと華麗に避け、空を舞う。
 手にしたパーカッションロック式のブランダーバス……その短い銃身ながらも広がる銃口から放たれる弾丸は、彼女のユーベルコード、海神殺しによって銛の如き形状へと変じて固い甲羅に突き刺さる。
 その鋭い先端が甲羅にヒビを入れた瞬間、無数の針に変形し、楔のようにバリスカンの甲羅に広がったヒビを押し広げる。

「よけよーったって、そうはいかないんだからね」
 彼女の持つオックスブラッドと呼ばれる深く濃い赤の装飾が施された銃は、次々とバリスカンの足を止める。
 面による制圧射撃を乱れ撃つことによって、再び突進するための準備を整えさえないのだ。
 彼女の望みである、なるべく高そうなお宝をげっとすることは、ほどなくして叶えられそうであった。
「あなたを倒して、ゆっくりとお宝探索したいんだから!その金運にあやからせてもらうよ」
 うるは微笑みながらも、バリスカンを見事な銃撃によって、その場に押し留め続けるのだった。
 
 そして、彼女の狙う高そうなお宝、それはきっと彼女の両の手に収まることだろう―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

髪塚・鍬丸
偏った能力の敵が、弱点を補ってきたか。
厄介な話だが、地獄巡りの覚悟はとうに済ませてる。御下命如何にしても果たすべし。

地形を操り機動力を増す能力。その弱点は、操った地表上しか走れない事と見た。即ち、軌道の先読みが可能。
空戦特化型忍装束「忍鎧·天戎」のスラスターを全開にして飛び上がり【空中戦】に移行。
無論、空に道を伸ばしてくる可能性もある。油断はしない。

弱点を突くのはここからだ。UC【飯綱の術】。「八法手裏剣」を無数に作成。
敵の走る道の先に打ち込む。【罠使い】だ。お前はここを通らざるを得ない。
仕込んだ鋼糸が車輪に絡み、手裏剣を巻き込ませる。
車輪軸内で一斉に爆薬を起爆。足場の地形ごと吹き飛びな。



 亀竜バリスカンの甲羅は、楔を穿たれたようにひび割れている。
 古の人々は、甲羅のひび割れ具合を見て、時勢を占ったとされるが、その真偽は如何なるものであろう。
 バリスカンにとっては、どちらにしても運命の行く末は、この場にて猟兵と対峙した以上決定付けられていたのかもしれないが―――。

 髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は咆哮を上げるバリスカンの巨躯を見上げる。
「偏った能力の敵が、弱点を補ってきたか」
 冷静に分析を済ませる。それは彼我の戦力を正確に知る行為であると同時に、かのオブリビオンにどのように対処するかを決定するために必要不可欠な情報である。
 厄介な話だが、と鍬丸は嘆息する。
 しかし、すでに彼には地獄めぐりの覚悟はとうに済ませているのだ。故に、彼の言葉はいつもどおりである。
 そう―――。
「御下命如何にしても果たすべし」

 その言葉と同時に駆け出す。
 オブリビオンであるバリスカンが地形を操り、機動力を増す能力を持つというのならば、その弱点は操った地表状しか走れないということ。
 つまりは、
「即ち、軌道の先読みが可能」
 バリスカンにとって道とは即ち粘土化しもろくした大地をかき分けて進むことである。鍬丸の分析の通り、その能力上、大地しか疾駆できないのだ。
 地形を変える凄まじ能力であるが、それがわかってしまえば、対処することは容易かった。

 鍬丸の体が空戦特化型忍装束「忍鎧·天戎」……スラスターの付いた改良宇宙服の機能を十全に発揮すれば、恐れる足らないのだ。
 スラスターが噴き出し、鍬丸の体が空に飛び上がる。それは彼が忍びであるからだとか、そういう次元ではない立体的な軌道を得るための装備である。
 こと空中戦に持ち込めれば、大地を走るバリスカンにとって一方的なアドバンテージを得たも同然である。
 彼の思惑通り、バリスカンは大地を疾駆するしかなく、どれだけ地形を複製しようとも、空を舞う鍬丸に攻撃が届くことはない。
「弱点を突くのはここからだ……」
 鍬丸の手にした八法手裏剣をユーベルコード、飯綱の術(イヅナノジュツ)にて70本以上複製し、念力で宙に浮かばせる。

「霊……宿……動!」
 バリスカンが逃げるようにして大地を走り抜ける。だが、鍬丸の念力によってバラバラニ操作される手裏剣が、バリスカンの道の先に打ち込まれ、方向転換を余儀なくされる。
 そうしているうちに、空中から放たれる手裏剣に誘導されるようにしてバリスカンの戦車は手裏剣によって張り巡らされた罠へと追い込まれるのだ。

「お前さんは此処へ至らなければならない……そう、通らざるを得ないように俺が誘導したからだ」
 手裏剣を打ち込む度に、周到に用意された鍬丸の鋼糸がバリスカンの戦車の車輪に絡み、多数の手裏剣を巻き込んでしまう。
 まさか、と思った瞬間にはもう遅い。

 鍬丸の放った手裏剣……八法手裏剣とは爆薬をも仕込む事が可能な武器なのである。
 そして、それを巻き込んだ車輪の行く末は―――。

「足場の地形ごと吹き飛びな」
 起爆した爆薬が一斉に車輪の軸内で弾け、その内部をずたずたに破壊する。
 鍬丸は、彼の優れた判断と分析、そして策によってバリスカンの機動力を半減させることに成功したのである。

 それは続く猟兵たちの戦いをどれだけ助けたかわからぬほどの戦果であった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
なんて機動力なのかしら……亀なのに

思わず呆然としちゃいましたがお仕事と参りましょう
まともにぶつかればミンチなので工夫します
開幕に引き付け、閃光手榴弾で【目潰し】。同時に、機構靴の跳躍機構で横っ飛びし、戦車を回避します

「しょっ!!」
滞空時間中に「紋章板」を分銅のように振り回し、【投擲】で奴の戦車に引っ掛け、【怪力】で奴にしがみ付きます
やる事は奴と戦車を繋ぐ鎖の結節部の破壊。「高周波シャベル」を起動し、振動【属性攻撃】で【部位破壊】を狙います
繋ぐ鎖が一部でも断たれれば、奴の機動は不安定になります
その曲刀のキレも落ちるでしょう

「そこっ!!」
曲刀を【見切り】、【カウンター】でパイルバンカーを狙います



 亀竜バリスカンの咆哮が轟く。
 大地を粘土に変える圧倒的な能力ながら、その鈍足によって力を発揮できていなかったバリスカンは帝竜ヴァルギリオスの宝物―――戦車と曲刀によって、その弱点を克服したのである。
 しかし、続く猟兵たちの攻撃によって、その機動力は減ぜられてしまう。それでもなお、大地を粘土に変える力に遜色はなく、無理矢理にでも動く姿は亀の鈍足と侮ることはできなかった。

「なんて機動力なのかしら……亀なのに」
 思わずといった体で言葉が漏れてしまったのは、才堂・紅葉(お嬢・f08859)である。ヴァルギリオスの財宝を取り込んだオブリビオンは巨大化する。
 猟兵の活躍によって機動力は減衰しているとはいえ、あの巨躯で動き回られるのは厄介極まりないことである。
「まともにぶつかればミンチね……」
 確かに並の人間であれば、あの巨躯にぶつかっただけで、彼女の想像通りになってしまうだろう。
 だが、彼女には猟兵としての力がある以上に、彼女の育ちも関係した経験値がある。歴戦の工作員としての彼女の技量はもはや、歴戦という枠組みを超えていたのかも知れない。

「グォァァァ!!!」
 亀竜バリスカンの咆哮が響き渡る。それは対峙する猟兵、紅葉に向けられた敵意である。大地を踏み鳴らし、彼女へと突進するための道を形成していく。
 それは大地を踏み鳴らし、己の道を作る開拓者そのもの。

 だが、かのオブリビオンが対峙するのは、荒野を征く者(ワイルドウォーカー)である。
 彼女の中にあるユーベルコードは輝きを放つ。
「さて……狩りの時間ね」
 凄まじい勢いで紅葉へと突進してくるバリスカンに落ち着いた様子で閃光手榴弾を投げつける。
 凄まじい光が周囲に広がり、バリスカンの動きが鈍る。ガジェットブーツが紅葉の体を跳躍させ、横っ飛びに突進を回避すると、そのまま極薄の特殊鋼と鎖がつながることで出来た紋章板をバリスカンの巨躯へと投げつける。

「しょっ!!」
 まるで分銅の要領でバリスカンの体に引っ掛け、その膂力のままにかのオブリビオンの巨躯に張り付く。
 自身の甲羅に何者かが張り付いたと知ったバリスカンが身動ぎ、彼女を振り落とそうとするも、もはやそれは遅きに失する行為であった。
 手にしたのは高周波しゃべる。極めて強靭かつ堅牢なそれは、高周波機構に耐えうるだけの剛性を持っていた。

「ただのシャベルと侮ることなかれってね」
 それは硬い岩盤や鋼板をもたやすく掘削するための力。さらにユーベルコードによって強化された力が狙うのは戦車とバリスカンを接続する鎖。
 そう、彼女の狙いは部位破壊である。体をつなぐ鎖の一部でも断たれれば、他の部分に干渉し、動きは鈍ることだろう。
 更に不安定になれば、曲刀を振るう首の動きだってキレがなくなる。紅葉にとって、戦いとは如何に相手の得意を受けずに削ぐかである。
 泥臭いというものもいるだろう。だが、それは己と他者の生命を護りながら戦うための術である。

 振り下ろしたシャベルの一撃が鎖を断つ。
 バリスカンが咆哮し、紅葉の体を振り落とすようによじり、たまらず振り落とされてしまう。
「そこっ!!」
 再度バリスカンの巨躯が紅葉に迫るも、彼女にとって、この戦いは決したものであった。振り下ろされる曲刀は彼女の思惑通りキレはなく、手にした対戦車杭打銃“楔“の一撃は、バリスカンの戦車の装甲を貫いて、超偽神兵器の欠片たる杭が硬い甲羅を割るのだった。

「弱点を克服するのは良いですが……それを使いこなすには、些か習熟が足りなかったようですね―――?」
 彼女のパイルバンカーの一撃は、バリスカンの巨躯を押し留め、粘土化した大地へとその巨躯を叩きつけるには十分過ぎる威力であった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
チャリオット。古代で用いられた戦闘馬車だな。
小さい頃から歴史を学んでいたから、大体分かるぞ。
といっても、此奴は亀(?)型のようだが。
■決
この車輪は、方向を変えられなさそうだな……
となるとコーナーを曲がる時に、スピードが落ちるかもな。
敵の正面には極力立たず、攻撃の際は『横』或いは
『斜め』から仕掛けよう。

■闘
あえて先手を譲り、道を作らせてしまうか。
仕掛けてきたら此方に来る瞬間を【見切り】つつ、
【残像】を見せながら躱し敵の真横に潜り込む。

そこから大なぎなたを構え、【怪力】を込めた【剣刃一閃】を
斜めに放ち、その甲羅と車輪を同時に斬り伏せることで装甲と
機動力の双方を奪ってやろう。

※アドリブ・連携歓迎



 バリスカンの強固なる甲羅が砕ける轟音が竜の宝物庫に鳴り響く。
 直後、バリスカンの体は猟兵の攻撃のよって粘土へと変えられた大地へと吹き飛ばされ、盛大に地形を変える。
 元より巨躯であったバリスカンの体である、意図せずして地形を変えてしまったが、それでもまだ健在であることを示すように減ぜられた機動力のままに態勢を整える。

 その姿を見て、感心したように呟くのは、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)である。
 彼にとってバリスカンの姿は見覚えのあるものであったことだろう。幼少の頃から学んでいた歴史。その歴史の中に現れる兵器の存在。古の次代に在りしもの。
「チャリオット。古代で用いられた戦闘馬車だな」
 ふむふむ、と清綱はバリスカンの姿を見やる。
「といっても、此奴は亀型のようだが」
 彼の分析は正しい。戦車の上に亀が乗っかり、曲刀を構えた姿というのは、巨躯であったとしても、多少不格好に映ったかも知れない。
 しかし、それでもバリスカンはオブリビオンである。あの巨躯の突進を受けてはただでは済まないことは明白だ。

「ガァァァァ!!!」
 バリスカンの咆哮が響き渡り、大地を粘土質に変える力でもって突進のための道を作り出す。
 警戒したように、あの突進は受けてはならない。だが、敢えて清綱はバリスカンに先手を譲った。道を作らせれば、己への攻撃の線は見える。それを見切れるか否かは、己次第―――。

「わかるぞ。その車輪は、方向を変えられなさそうだな……ならば」
 咆哮と共にバリスカンが粘土質の土を蹴り上げて清綱へと突進する。その勢いは猟兵たちの攻撃によって減衰されたとは思えぬほどの力強さ。
 しかし、その攻撃が直線的なものであるというのなら、話は別である。バリスカンの突進が清綱を捉えたと思った瞬間、彼の体は残像を残して真横へと体移動を済ませていた。
 あまりにも流麗なる体捌き。
 それは彼のたゆまぬ修練の賜であろう。その修練は彼を裏切ることはない。考え、学び、習得した彼の持つ技量は彼をいつでも助けるのだ。

 構えたるは大なぎなた。
 裂帛の気合と共に放たれる彼のユーベルコード、剣刃一閃は袈裟懸けに振り下ろされ、その甲羅と戦車の車輪を同時に切り伏せる。
 命中した大なぎなたの一撃は、そのユーベルコードの名の通り、その甲羅の装甲を切り飛ばし、車輪を破壊せしめる。
 盛大にバリスカンは体制を崩し、そのまま粘土質の大地に突っ込んでしまう。
 それを背に負いながら、清綱は猛禽の翼を羽撃かせる。
「すでに斬った……凄まじき宝物の力であるが、重ねた修練の差であろうな」

 その言葉を自身の胸へと刻みながら、清綱は粘土質の大地で藻搔くバリスカンを横目に新たなる戦場を目指して飛ぶのであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

月宮・ユイ
アドリブ連携◎
※ヤドリガミ

『戦車』に『曲刀』、か
弱点を補っているわけね
「厄介ですね

予知で特性は判明。
動き○情報収集し斬撃自体は回避するが、
【地形】へ引きずり込まれる事前提で準備。
誘導後は戦車突撃が予想されるが、速度は戦車がある為出ており、
突撃の速度は脅威だが逆に細かい操作自体は難しいはず。
また地形は事前準備されたもの故突撃タイミング把握は可能。
◇静寂雪原起動、地面は無機物故力呪と為し侵蝕掌握
相手が私を引きずり込み突撃を開始、
進路変更難しくなった所で氷成形、
坂作りつつ滑らせ止まらせず、打ち上げ転倒させ動き止める。
すかさず氷で槍作成○捕食○呪詛込め投擲
操作範囲内では加速誘導し敵に串刺し○生命力吸収



 帝竜ヴァルギリオスの蓄えた財宝がばらまかれた大地である竜の宝物庫。
 ヴァルギリオスの財宝そのものがすでに強力な防衛機構であることは言うまでもない。そして、それを取り込んだオブリビオンもまた、強力無比成る敵へと変じるのである。
 だが、その強大なる力も猟兵たちの攻撃によって消耗を強いられる。
 自らが粘土質へと変えた大地へと叩きつけられ、藻搔くようにしながら起き上がる亀竜バリスカン。
「ガァァァァ!!!!」
 その咆哮は度重なる攻撃による痛みか、それとも強力な財宝を得ても尚、翻弄される己の身を呪ってのことか。

「『戦車』に『曲刀』か。弱点を補っているわけね……厄介ですね」
 そう冷静にオブリビオンの能力を評するのは、月宮・ユイ(月城・f02933)である。
 グリモア猟兵の予知により、特性の情報はすでに掴んでいる。それを元に戦術を組み上げることなど、歴戦の猟兵であるユイにとっては造作もないことである。
 咆哮と共にバリスカンから放たれる斬撃は、ユイを己の形成した地形へと引きずり込むもの。
 斬撃そのものを受ける義理はないが、彼女自身の経験から引きずり込まれてしまうことまで織り込み済みの準備を行っているのだ。

 すでに竜の宝物庫たる大地は、バリスカンによって様々な地形へと変えられている。丘であったり亀裂であったりと様々であるが、そこに一定の法則を見出すことができる。
 そう、直線が多いのだ。
 何故ならバリスカンの取り込んだ宝物の特性上、その突進能力を最大限に引き出せるのは直線である。
 ならば、ユイを引きずり込もうと放たれる斬撃の誘導は常に直線上の地形。
「誘導後は戦車突撃が定石……なら、ここへと誘導しようとするのはわかりきっていることです」
 斬撃を躱すユイは、誘導されるように直線上の地形へと引きずり込まれているように思えただろう。
 だが、それも彼女の計算の内である。

「事前準備までは、用意周到と言えるでしょうが……」
 直線上、その真っ向から戦車にまたがったバリスカンの巨躯が突進してくる。凄まじい突撃速度。
 これが予測不可能な場所であったのなら、為すすべもなかったであろう。相手がユイでなかったのならば、その攻撃も友好であったのだ。
「故に突撃タイミング把握は可能なのです」

 ユイのユーベルコードが発動する。
 彼女の持つ電脳空間保管庫に共鳴、接続され、彼女の能力が強化されていく。起動される無限連環増幅術式。地表は無機物故に、その術式によって侵食され、彼女の力となっていく。
 それこそが彼女の持つユーベルコード、静寂雪原(コキュートス)。
「世界よ止まれ…」
 それは絶対者の宣言である。
 彼女の力に侵食された粘土質の大地は彼女の氷雪へと変換されている。故に、その大地を変えるほどの力を持つバリスカンは、否応なしに彼女の掌の上で転がされるほかない。

 突進するスピード故に止まれず、雪原により坂を形成され滑り落ちるほかない。
 さらにまるで発射台のようにバリスカンの体は勢いのままに打ち上げられ、ユイの脇を凄まじい速度で通り過ぎ、雪原の大地へと横転してようやく止まる。
 何が起こったのかわからないだろう。
 それほどまでに精密なる術式によって編まれた地形は、もはや自身が思う様に変えてきた大地とは別物なのである。

「……厄介極まりない能力ですが……それもこうして対策を立てれば、脆い。あなたの進撃もそれまでです」
 ユイの手には氷の槍が形成されるう。この周辺空間全ての無機物を変換し得た力によって得られる氷の槍は強大であり、動きを止めたバリスカンには為す術のない一撃となって打ち込まれ、その甲羅を突き破って大穴を穿つ。

「―――ふぅ……力を使うと目減りしますが……こうして生命力もいただけることですし」
 ユーベルコードが解除され、この大地を覆っていた氷雪が粘土質へと元に戻る。
 その大地にて、ユイはバリスカンより得られた生命力で体力を回復し、さらなる戦いへと馳せ参じるために駆け抜けていくのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シノギ・リンダリンダリンダ
なかなか立派な船ですね
つまりお前はこう言いたいのですね?
このお宝の海で、この粘土の海で
この大海賊、"強欲"のシノギと戦うと

【幽玄な溟海の蝗害】で無敵の海賊船シャニムニーを召喚
この宝物庫がお宝の海で、そしてここが粘土の海であるなら、海上で海賊が負けるはずがない
海賊としての矜持、海上戦の自信、お宝の山を前にした興奮
ならば、無敵の海賊船がこの粘土の海を駆けるのは道理だ
そう信じて疑わない

「航海術」「地形の利用」「船上戦」
海が舞台ならば朝飯前
亀の動きに先回りし、Midās Lichによる呪いの黄金の銃弾の嵐
「乱れ撃ち」「鎧無視攻撃」「呪殺弾」

さぁ、略奪です蹂躙です
この海で海賊に敵いますか?鈍亀よ



 帝竜ヴァルギリオスの蓄えし財宝。
 その集積地たる竜の宝物庫にばらまかれた財宝は、それだけで強大なる防衛機構となるものばかりである。
 故に、その財宝である『戦車』と『曲刀』を取り込んだ亀竜バリスカンは強大なる力を宿したオブリビオンであると言えるだろう。
 元より持っていた大地を粘土に変える力によって、今やこの大地は粘土の海へと化していた。
 しかし、それだけの能力を持ちながらも鈍足であったバリスカン。財宝によって強化されてもなお、数多の猟兵たちの攻撃の前には消耗するしかないほどに追い詰められていた。

 まるで子供が粘土で遊ぶが如く地形の尽くは、一歩を踏み出しただけでも、ぐにゃりと形を変える。
 亀竜バリスカンは、傷つきながらも己の本分を全うしようとするかのように戦車にまたがったまま咆哮する。
「ガァァァァ!!!!」
 その咆哮に呼応するように曲刀から放たれた斬撃が大地を切り裂き、突進のための路面を整える。その真っ向にあるのは、シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)の姿である。
 セーラー服を身にまとい、サージャケットを肩で引っ掛けるスタイル。それは紛うこと無く海賊船長そのものであった。

「なかなか立派な船ですね」
 バリスカンの姿を見て、彼女はそう思ったのだろう。戦車―――チャリオット。古代の兵器。それに跨る亀の巨躯は……そう、見えなくもない。
 それは無理くりな理屈であったのかもしれない。猟兵を前にして、バリスカンの咆哮が響き渡る。

「つまりお前はこう言いたいのですね?このお宝の海で、この粘土の海で、この大海賊"強欲"のシノギと戦うと」
 彼女のサーコートが一陣の風にさらわれるようにしてはためく。
 それは彼女のユーベルコード、幽玄な溟海の蝗害(ウェイクアップ・シャニ・ムニー)が発動した瞬間だった。
 無敵の海賊船シャニムニーを己の想像から創造するユーベルコード。
 それは彼女の能力に疑念を感じることがなければ、紛うことなき無敵の海賊船となるのだ。
「さぁ海賊の時間です。36の海を駆けましょう、略奪の限りを尽くしましょう!!海賊団しゃにむにー、出航です!」
 現れた海賊船シャニムニーに乗り込むと、シノギは己の胸に頂いた思いを否定しない。少しの疑念も挟まない。
 ここは大地ではない。ここは宝物庫というお宝の海!そして、ここが粘土の海であるなら、海上で海賊が負けるわけがない。

 その信念とも言うべき想いは、彼女のユーベルコードを揺るがぬ絶対無敵へと昇華するのだ。
「さあ、略奪です蹂躙です。この海で海賊に敵いますか?鈍亀よ」
 その鈍足をあざ笑う言葉に、挑発に、バリスカンは激昂するかのような咆哮を上げ、海賊船へと突っ込んでくる。
 だが、シノギのもつ航海術と地形を利用する巧みさ、そして、彼女が海賊船シャニムニーに乗り込むことによって得られる力は、彼女が疑念を抱かぬ限り、負けることはない!

 シノギの黄金の腕が輝く。それは燦然たる欲望の輝きである。
 粘土の海を征く海賊船がバリスカンの突進を躱すように船体を90度にドリフトじみた挙動を行う。その船上よりシノギの黄金の腕―――Midās Lichから放たれるのは呪いの黄金銃弾の嵐。
 まさにワイルドハント。嵐のごとき黄金弾は呪詛を籠められし弾丸。
 バリスカンの甲羅は散々にひび割れはじめ、その肉体に多大なる打撃を与える。粘土の海であろうと、海と形容されるのであれば、海賊船シャニムニーは溶岩の海であっても征くだろう。

 まさに粘土と宝物の海となった竜の宝物庫、その欲望の海を征くシノギは、船頭に立ち、己の欲望のままに宝物を求めてバリスカンの巨躯を海賊船によって轢き倒すのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィロメーラ・アステール
「なるほどー、地面を素早く……」
地面が使い物にならなくなったらどう?
アイスバーンを走ったことはあるかな!

【蒼天まわしむ千変の星冠】発動!
冷気を操り、地面を凍結させ摩擦をゼロに!
これで敵のタイヤが回転してもうまく進めない!

【気合い】の【全力魔法】で効果を拡大し、巨体に対応!
敵が地形を作った上からでも滑らせる事ができる!
アイスバーンを砕かれても、今度は水分を操って摩擦を無くす!

移動できなきゃ斬撃できない!
もし来たら【空中浮遊】して超速い【残像】【ダッシュ】で上へ避ける!
巨大になっても上へ追うには限度があるだろ?
地形を変えられても飛べば平気!

亀は冷気に弱いし【属性攻撃】としても効果があるんじゃない?



 帝竜ヴァルギリオスが集めた財宝。
 それは単体一つだけでも強大な防衛機構となりえるだけの力を秘めたものである。それを竜の宝物庫と呼ばれる大地にばらまくことによって、猟兵の進撃を食い止めようとしたのである。
 その宝物である『戦車』と『曲刀』を取り込んだオブリビオン、亀竜バリスカンは、大地を粘土に変える能力と合わさって強力な力を持つにいたったのである。
 だが、猟兵たちには予知により齎されたバリスカンの能力への対策がある。これまでも数多の猟兵たちがバリスカンの能力を打開し、大きな打撃を与えてきた。
 巨大なる幽霊船にて轢き倒されたバリスカンが、損害を受けた体を立ち上がらせ、咆哮する。
「ガァァァァ!!!」
 その咆哮は未だバリスカンの健在を示しており、油断はならないということを示していた。

「なるほどー、地面を素早く……」
 フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は、フェアリーの小さな体で竜の宝物庫たる大地の空を飛んでいた。
 見下ろす先にはバリスカンの巨躯。猟兵たちの攻撃によって相当な打撃を受けていることはわかるが、それでもまだ動くのだ。
 大地を粘土に変える力によって、地形を変え、己の思うままに戦車によって走り抜ける姿は脅威であったことだろう。
「なら、地面が使い物にならなくなったらどう?アイスバーンを走ったことはあるかな!」

 彼女のユーベルコードが輝く。
 蒼天まわしむ千変の星冠(ナーサリープライム)、それは水と冷気を自在に操るユーベルコードである。
 その力の範囲は広い。例えば、自身や対象……バリスカンの摩擦抵抗を極限まで減らすことだって可能なのだ。
「踊れー! 青い星の風の中で!」
 一瞬でバリスカンが作り出した地形を、冷気を操ることによって地面を凍結させ、さらには摩擦をゼロにしてしまったのだ。
 これにはバリスカンも整地した大地を走ろうにも戦車の車輪が空転を起こし、自慢の突撃攻撃を行えなくなってしまう。

「グアァァ!!!」
 だが、再び地形をアースクラフトと呼ばれるユーベルコードによって凍結した地形の上から上書きして作り出してしまう。
 生み出された地形は凍結させた地形を砕き、車輪の空転を回避する。
「けど、それは、わかってたことだよ! それー!」
 フィロメーラのユーベルコードが今度は水分を操って摩擦を無くす。水と粘土が混ざり合って泥の飛沫を上げる戦車。まるでぬかるみにハマったかの如き、身動きが再び取れなくなってしまったのだ。

「移動できなきゃ斬撃できない! 巨大になっても空を飛ぶ、あたしを追うには限度があるだろ?」
 宝物を取り込んで巨大になったとしても、フィロメーラの小さな体を追うことは難しいだろう。
 さらにはユーベルコードによって動きは封じられ、斬撃も飛ばすことは出来ない。
 前にも進めず、後にも進めない。そんな状況でバリスカンに与えられるのは、彼女のユーベルコードによって操られた冷気を伴う属性攻撃の雨。

「亀は冷気に弱いし、こういうのも効果があるだろ!」
 動けぬバリスカンの巨躯に降り注ぐフィロメーラの氷の属性攻撃。
 氷の礫であったり、ユーベルコードによって操作された水分が針のように形成され、身じろぎするバリスカンの足を穿つ。
 フィロメーラのユーベルコード一つで、完全にバリスカンの有効打は封じられ、巨躯に対して小さな体でフィロメーラは完璧なる封殺を決めたのであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
先行した味方のお陰で敵の機動力は削がれている様子
一気呵成に畳みかけましょう

作成した地形をセンサーの●情報収集で把握
彼我の相対位置から相手の取り得る攻撃ルートを●見切り、迎撃態勢を整え

格納銃器の●スナイパー射撃で車輪にUCを塗布
摩擦係数がゼロの片輪での突進などスリップに横転は必至

少々卑怯ではありますが…

通常弾頭の格納銃器で固定用の鎖を狙撃し切断
この後の戦車制御の難度を上昇
●怪力で剣を先の猟兵が入れた甲羅の亀裂に●投擲
追撃でワイヤーアンカーを接続し●ロープワークで鉄球宜しく操る大盾で楔の如く押し込み

敵の撃破を優先する為に財宝ごと破壊も手ではありますが…
士気の観点から避けた方が良いでしょうね(苦笑)



 凍結し摩擦を限りなくゼロにされ、身動きの取れなかった亀竜バリスカンがようやく悪路から這い出してきた時、その機械騎士の姿はバリスカンにとって、どのような姿に映ったことだろうか。
 数多の猟兵達によって車輪の内軸は破壊され、堅牢であったはずの甲羅はひび割れ、穿たれている。
 さらには己の特性である粘土質の大地へと変える力も攻略されたにも等しい。
 だが、それでもバリスカンには執着があった。己が取り込んだ宝物への執着である。
 鈍足と嘲笑われた過去。それを打開する宝物の力は、今更奪われることがあってはならない。
 そんなこと到底許容できるものではない。だからこそ、バリスカンはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)を前にしても、未だ力を発揮せんと咆哮するのだ。

「先行した味方のお陰で敵の機動力は削がれている様子。一気呵成に畳み掛けましょう」
 トリテレイアは、バリスカンの巨躯に臆することはなかった。
 帝竜戦役が始まって以来、数多の帝竜たちと戦ってきたのだ。バリスカン程度の巨躯ではもはや怯むことはない。
 これ以上に巨大で強大なる帝竜と戦ってきたからこその自負がある。
 彼のアイセンサーが捉える地形のデータはつぶさに彼の電脳へと蓄積され、シュミレートをはじき出す。

「……突撃が攻撃の主体であるというのなら」
 電脳がはじき出したバリスカンの突撃ルートは、たった一つ。
 それは最も突進の威力が発揮される直線のルート一つである。大盾を泥濘んだ粘土質の大地へと突き立て、構える。
 それは迎撃の態勢であって、防御の態勢ではない。

 バリスカンの咆哮と共に減衰されているとはいえ、猛烈なる勢いで突進してくる戦車。トリテレイアのアイセンサーが輝き、ユーベルコード、対襲撃者行動抑制用薬剤(ノン・フレクション)が塗布された弾丸を格納銃器から車輪目掛けて放つ。
「御伽噺の魔法の薬ほどではありませんが、色々と応用が効くんですよ」
 それは弾丸に塗布された特殊な薬品によって、命中した箇所の摩擦抵抗を極限まで減らすことができる。
 しかも、片方の車輪にだけ塗布するように射撃すればどうなるか……

「少々卑怯ではありますが……」
 そう、片輪が滑れば突進の勢いで突っ込んだ戦車がスリップし横転するのは自明の理である。
 横転したバリスカンを見やれば、即座に格納銃器の弾丸を入れ替える。通常の弾丸へと切り替えた銃器が火を噴き、戦車とバリスカン本体をつなぐ固定用の鎖を狙撃し、弾き飛ばすように切断していく。

「先行した猟兵たちの与えた打撃……有効に使わせて頂きます!」
 手にした剣と共に駆け出し、助走の付いた状態で甲羅へと剣を投擲、亀裂へと深々と刺さる剣はそのままに、大地へと突き立てた大盾が宙へと翻る。
 ワイヤーアンカーと接続された大盾は鉄球の如き働きを見せ、亀裂へ突き刺さった剣を打ち込んだ楔のように強かに打ち据える。
 ひび割れを起こした甲羅が瓦解し、絶叫じみた咆哮が響き渡る。

 押し込んだ剣を回収しながら、さらに剣と大盾の投擲によって打撃を与えていくトリテレイア。
 このまま宝物である『戦車』と『曲刀』を破壊してしまおうかと考えたのだが、彼の機械では在るが、人間らしい演算回路が導き出した答えは……

「士気の観点から破壊は避けた方がよいでしょうね」
 アイセンサーの奥で苦笑いをしたような雰囲気が漂う。それは彼の思考回路、演算がひどく人間よりになっている証拠であったのかもしれない―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……ふむ……
…走り回りながら地形を変えていく戦車…そして、自分が作り上げた地形に誘う斬撃…
…なるほど…能力が判れば対処も判る…
…まずは戦車の車軸に向けて【支え能わぬ絆の手】を発動…戦車である以上、その車軸の摩擦を無くして空転させてしまえば走れない…
…走れなければ地形の変更は困難になる…
…そして今まで変更した地形は【我が手に傅く万物の理】により無機物…即ち地面を操作して『私が変更した地形』にしてしまおう…
…ついでに斬撃に対する盾としてしまうか…
…ここまで来たら後は倒すだけ…術式銃【アヌエヌエ】で爆裂術式を込めた銃弾を撃ち込んで打倒しよう…



 甲羅は穿たれ、戦車の内軸は破壊された。
 己と戦車をつなぐ鎖も半分は断ち切られ、固定するというには心もとない状態である。だが、それでも亀竜バリスカンは咆哮する。
 未だ戦意は衰えず、数多の猟兵たちの攻撃を受けてもなお、執着するのは帝竜ヴァルギリオスがばらまいた財宝である。
 『戦車』と『曲刀』。それがバリスカンの取り込んだ宝物である。
 それは鈍足と罵られた己の過去から来るコンプレックスの解消のためのものであったのかもしれない。
 大地を粘土に変える能力故に、さらなる鈍足へと成ってしまうのは仕方のないことだった。だが、この財宝は己の力をさらなる高みへといざなってくれる。
 巨躯になったことにより、己はさらに一層あらゆる大地を蹂躙し破壊することができるのだ。
「グガァァァァァ!!!!」
 だからここそ、バリスカンは猟兵と対峙する。咆哮し、己の取り込んだ宝は渡さぬと言わんばかりに抵抗する。
 その抵抗は粘土へと変えた大地を尽く破壊し、あらゆる地形を変えていく。

「……ふむ……」
 荒れ狂う亀竜バリスカン。粘土質へと変わった大地において、暴れ狂うのは容易に地形を変え、複雑化していく。
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、アルゴスの眼から贈られてくる情報を精査し、分析していく。すでにグリモア猟兵から亀竜バリスカンの能力の仔細は得ていた。
 しかし、こうやって実際に目の当たりにして得られる情報も貴重なのである。
「……走りながら地形を変えていく戦車……そして、自分が作りあげた地形に誘う斬撃……」
 目の前でバリスカンが荒れ狂い、咆哮する。放たれた斬撃は粘土質の大地を容易に切り裂き、整地するかのように戦車で均していく。
 それはさながら重機のようであり、その巨躯はまさしく、重機と同じ役割を担っていた。

「なるほど……能力が判れば対処も判る……」
 メンカルのユーベルコード、支え能わぬ絆の手(フリクション・ゼロ)が発動する。それはアルゴスの眼を通して得た物理情報を改竄するユーベルコードである。
「繋ぎ止める絆よ、弱れ、停まれ。汝は摺動、汝は潤滑。魔女が望むは寄る辺剥ぎ取る悪魔の手」
 そう、戦車である以上、その車軸の摩擦を無くして空転させてしまえば走れない。走れなければ地形の変更は困難になるのである。
 バリスカンの咆哮が虚しく響き渡る。それは己が頼みにした戦車を完全に無効化された嘆きであるかもしれない。

 しかし、それでも猟兵への攻撃は緩めることはない。戦車による轢き潰すことが出来ぬのであればと、口に咥えた曲刀から放たれる斬撃がメンカルを襲う。
「……数多の元素よ、記せ、綴れ、汝は見識、汝は目録。魔女が望むは森羅万物全て操る百科の書」
 我が手に傅く万物の理(マテリアル・コントロール)……メンカルのユーベルコードによってリスト化された無機物を操作し、メンカルが『変更した地形』へと変える。
 即ち、斬撃を阻む土塊の盾である。斬撃が粘土化した土塊を切り裂くのは容易であった。
 だが、その斬撃を防ぐ数瞬でよかったのだ。メンカルの構えるのは、術式銃『アヌエヌエ』。

「……ここまで来たら後は倒すだけ……爆裂術式、装填」
 回転式拳銃に装填された弾丸は、爆裂術式の籠められし弾丸である。
 銃口がバリスカンを狙う。切り裂かれた粘土質の土塊が宙を舞う中、メンカルの瞳はアルゴスの眼を通して、正確にバリスカン本体へと狙いをつけていた。
 飛び散る土塊の間を正確に見極め、アルゴスの眼がロックした瞬間、彼女の術式銃は撃鉄を下ろし、その術式弾丸を放つ。

 火を噴く銃撃の後、バリスカンの体を包み込むは爆裂術式の炸裂した爆発。
 身を焦がすような強烈なる熱風が土塊を吹き飛ばし、その威力の凄まじさを語るであろう。
 メンカルの放った術式銃『アヌエヌエ』の一撃は、たしかにバリスカンの体を爆炎で多大なる打撃を与えたのであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナミル・タグイール
金ぴかお宝いっぱいにゃー!天国デスにゃ!
全部ナミルのにゃー!

…なんかうるさいのがいるにゃ。
しかもお宝荒らして走ってるにゃ!許せないにゃー!
追いつくのはめんどくさそうだし道で真正面待機にゃ!
相手が地形変えるならこっちも変えてやるにゃ。
【呪詛】で体と斧をぱわーあっぷ
敵に来る前に地面を斧でドッカーンして大穴開けてやるにゃ!【怪力】
地面作れたり粘土にできてもでっかければすぐには直せないはず
バランス崩れたところに【捨て身】突撃にゃー!
早くなければただの亀にゃ!曲刀もパワー勝負でなんとかするにゃ
お宝荒らしは許さないデスにゃー!(自分のことは棚に上げる猫)



 爆炎上がる竜の宝物庫たる大地。
 そこは帝竜ヴァルギリオスが集積した財宝の貯蔵庫である。だが、無造作にばらまかれた宝は、それ自体が強力な防衛機構と成り得るものばかりであった。
 オブリビオンが取り込むことによって、巨大化し、その力を増幅させる。
 亀竜バリスカンも、そのうちの一体であった。
 だが、そのバリスカンも数多の猟兵の攻撃にさらされて、もはや瀕死の体である。しかし、それでも宝物を手放すことはできない。
 それは執着であったのかもしれない。『戦車』たる宝物は、鈍足と謗られた己の過去を払拭できる唯一の宝物である。
 だからこそ、奪われたくない。失いたくない。

 オブリビオンになってもなお、その欲望は捨てきれないのである。故にオブリビオンであるとも言えるのかも知れない。
「ガァァァァァ!!!!」
 疾走する。逃げ出しているのだ。バリスカンは、ただただ、己の欲望のために猟兵から逃げている。
 この戦車は奪われたくない。だからこその潰走。大地を粘土に変える力を最大限に使い、戦車毎地形を変えながら逃げているのだ。

「金ピカお宝いっぱいにゃー! 天国デスにゃ! 全部ナミルのにゃー!」
 だが、その逃走は一人の猟兵によって阻まれる。
 ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)は金色の装飾を身に纏ったキマイラである。彼女にとってお肉と金ピカ財宝は何者にも変えがたい大好きなものである。
 強欲、金欲、溢れ出る欲望は、バリスカンの抱える欲望よりも大きいものであったかもしれない。
 そんな彼女の前にバリスカンが現れたのは不幸であったと言うしかない。

「……なんかうるさいのがいるにゃ……って、あ! しかもお宝あらして走ってるにゃ! 許せないにゃー!」
 そうこの大地にばら撒かれた財宝。それらには目もくれずにバリスカンは大地をかき分けて逃走しているのだ。
 そうなれば、粘土質の土に埋まった財宝を掘り出すのは至難である。そんなことを許せるわけもないナミルは、バリスカンの逃走経路の正面に立ち、待ち構えた。
 追いつくのが面倒くさいとかそういう理由でもあったのだが、バリスカンが地形を変える力を持つのであれば、下手に小細工を弄するより、ナミル自身は正面から叩き潰したほうが良いと判断したのだろう。

「さー! 斧でドッカーン! にゃ!」
 その身に宿る呪詛によってナミルの筋力が飛躍する。手にした黄金に輝く巨大な斧が妖しく光る。その輝きにナミルはうっとりしてしまう。きれいだにゃー。
 振りかぶった大斧によって、大地へと穿たれる大穴。
 それはバリスカンが地形を変える前に、ナミル自身が地形を変えることによって先回りした落とし穴のようなものだった。

「グガァアァァァ!?」
 バリスカンが突進してくる直前に穿たれた大穴に、その巨躯が大勢を崩して墜ちる。巨躯故に、くぼみにハマった、という表現が正しいのかも知れない。
 だが、それでも態勢が崩れたことだけで十分である。
 後は、彼女の捨て身の一撃が全てを終わらせる。

「早くなければ、ただの亀にゃ! さー! おとなしく退治されるの、にゃー!」
 彼女のユーベルコード、グラウンドダッシャーが輝く。呪詛により強化された膂力が、大斧へと伝わる。
 その大斧の銘をカタストロフと言う。籠められた力が強ければ強いほどに妖しく輝く姿は、黄金の輝き。
 放たれる一撃は、まさに大いなる破滅。破局である。

 バリスカンの巨躯へと放たれる一撃は、単純な重さによる攻撃であっただろう。
 だが、放つ者の欲望の強さを見よ。
 きっと彼女の欲望、金欲は大地さえ割ることだろう。黄金の大斧はバリスカンの甲羅に穿たれたヒビや大穴が起点となって粉々に砕けた。
 さらに本体を断ち切り、その宝物の一つである戦車を散々に破壊せしめた。此処に亀竜バリスカンは骸の海へと還された。
 その様子を見送りながら、ナミルは猟兵らしく言葉を決めるのだ。
「お宝嵐は許さないデスにゃー!」

 にっこり良い笑顔でナミルは、ものすごい勢いでばら撒かれたお宝を回収しまくる。その姿はまさに自分のことを棚に上げる猫そのものであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月24日


挿絵イラスト