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帝竜戦役㉙〜終幕に咲く竜の災花

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #帝竜 #ヴァルギリオス #群竜大陸 #オブリビオン・フォーミュラ

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 世界樹の中で、八つの災禍が脈動する。
 はらはらと、壊れた何かを花びらのように舞い散らせながら。
 放つ魔力で、呪力で、そして武威で、世界樹を軋ませ、砕き。
 その欠片をまるで徒花が咲いて流れるように、漂わせて。
 最強の名を冠する帝竜ヴァルギリオスは、自ら決着をつけるべく、その瞳を開くのだ。

「よく来た。全てを乗り越え、踏破し、打倒し、我が元に」

 が、それはヴァルギリオスも同じこと。
 世界を滅ぼす為に。もしくは、ひとつの結末を迎える為に。
 封印で一度止められたとしても、その目的は不変。
 なれば先へ。定めたことを成し遂げるべく、帝竜の長は進むのみ。
 ヴァルギリオスが身じろぎしただけで、戦いの舞台たる世界樹が壊れていく。
 

「さあ猟兵達よ、最終決戦といこうではないか! 全ての終止符は己が手でつけねばならぬというもの。いいや、そうではなくとはならぬ」


 瞳に宿るは炎の苛烈さと、氷の冷徹さ。
 声色より感じる意志は稲妻の瞬きに似て、大地のように揺るがない。


「最強――何もせず座す者が冠してよいのではない。終わらせる為に。壊す為に。滅ぼす為に。その前に、我こそ最強であると示して」


 脈動するヴァルギリオスの力。
 それは何処か歓喜するようであり、何処か憤激にかられるようであり。
 いわば混沌。
 どうしようもない、破滅の渦として。

「世界の行く末。終わりが今か、決めよう。勝者にこそ、その先を定める権利はある」
 
 壊れ、終わり、滅せざるべきものなどあるものか。
 流転と移ろいこそ美なれば。
 破滅の脈動に伴い、帝竜ヴァルギリオスの周囲に咲く光と闇の花もまた、美しく。

「こい。それとも――我からいくか」
 
 八つの首が、それぞれ秘めた力と彩を以て、終幕へと全てを堕としていく。
 全ては用意された流れのまま。
 或いは。
 終わりへと抗ってみせよと。
 





 最終決戦の名に相応しい場なのでしょう。
 秋穂・紗織(木花吐息・f18825)はゆっくりと声を導いていく。
 緩やかな雰囲気はそのままに。
 けれど、決戦の意味を匂わせて。
「ついに帝竜ヴァルギリオスの元へと道が作られました」
 張られていた結界も既に解かれ、あとは雌雄を決するのみ。
 が、彼は世界最強の竜だ。
 他の帝竜とも格が違う。それこそ、カタストロフを呼ぶような存在。
 扱う力は炎水土氷雷光闇毒――それぞれの属性を宿した八つ首。
 必ずや先制攻撃をしてくるという凶悪さはそのままに、より強く、強靱で、恐ろしいものへとなっている。
「周囲には、帝竜ヴァルギリオスの放つその魔力の属性の欠片が光となって、まるで花びらのように舞っているでしょうね。……それら全て、触れるだけで終わらせるものなれど」
 美しくも。
 人類滅亡の為の災いの花だ。
 群竜大陸の世界樹の中では、今まさに、それが咲き誇る。
「散るはどちらか。終わるは今か、それとこ過去たる竜が唱える覇か」
 それらは皆さんに託されているのだと。
 紗織はお辞儀をして送り出す。
「この大陸を駆けた皆様に、言葉を紡ぎ、重ね続けるは無粋というもの」
 その姿に、その思いに、その心に。
 戦い抜いて、辿りついたからこその意味がある。
 全てを向けるならば今こそと。
「どうかご武運を。そして、悔いも不完全燃焼もなく、望むものを叶えてくださいませ」
 ゆるり、ふわりと。
 風のように揺れる声色が、背を送り出す。


遙月
 初めまして、或いは、いつもお世話になっております。
 マスターの遥月です。

 群竜戦役よりマスター活動をはじめさせて頂きましたが、終わりというのも早きもの。
 或いは、そこまで皆さんが駆け抜けて頂いたお陰なのもかしれません。
 ならばと。
 心残りや、これをしたかったなど。
 一切の思い残しがないように、帝竜ヴァルギリオスへと向けてくださいませ。


 こちらはボスの中でもラスボスたるシナリオとなりますので、判定は何時もと違って厳しいかもしれませんが。
 心情を何より大事にと受け取り、見て、判定させて頂く所存です。

 このアックス&ウィザーズの世界の歩みは如何でしたか。
 この群竜大陸の戦いの中で、感じたものはありませんか。
 そして、このあと、どのように世界を生きたいですか?


 それを描くべく……完全に心情シナリオとはいいませんが。
 激戦の中で、その思いをこそ、描かせて頂ければと思ってリオます。
 何より、生きているその感情を、と。
 私にできることはひとかけのことなれど……。


 問題なければ全員採用をと考えておりますが。
 スケジュールやキャパシの問題と衝突した場合は、どうかご容赦くださいませ。



 なお、帝竜ヴァルギリオスは必ず先制攻撃をしてきます。
 複数のユーベルコードを用いれば、用いた数だけ先制となります。
 対策する事でボーナスを得られますが、逆に、ユーベルコード以外での対策を講じなければ苦戦する可能性もある、ということです。
 その点はどうかご注意とご容赦、宜しくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『帝竜ヴァルギリオス』

POW   :    スペクトラル・ウォール
【毒+水+闇の『触れた者を毒にするバリア』】【炎+雷+光の『攻撃を反射し燃やすバリア』】【氷+土の『触れた者を凍結するバリア』】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    完全帝竜体
【炎と水と雷の尾】【土と氷と毒の鱗】【光と闇の翼】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    ヴァルギリオス・ブレス
【8本の首】を向けた対象に、【炎水土氷雷光闇毒の全属性ブレス】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※)追記
=============================
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
=============================

また、プレイングは送信出来る際ならば何時でもどうぞ。
可能な限り、頑張ります。
ナハト・ダァト
サテ、君ノ弱点
こノ叡智デ、証明しようカ

対策
先手の毒、水、闇のバリアを庇う形で受け止める

その後、タールの液体純度を水に合わせてバリアの内に溶け込み
闇属性は闇に紛れる技能で自身の力へ
毒に対しては、ドーピング、限界突破、継戦能力を使いながら
世界知識、情報収集、医術、早業で抗体を作って相殺

「トラップツールⅡ」、武器改造でバリアを体に馴染ませたら
敵を盾にする、シールドバッシュ技能でその他のバリアの相殺に掛かる

炎、雷、光のバリアへ2番目にぶつかり
尚燃える体を、氷と土のバリアへぶつける

相殺後、弱点を実証した事でユーベルコード発動

君ノ弱点ハ
互いヲ殺し合ウ事ダ
まるデ蠱毒…いヤ、孤独だネ



 揺るぎない最強。
 それは八つの属性の応じた色彩と共に。
 花と咲き、散るは光と闇。
 世界樹の中は激しい嵐の中に包まれ、揺れ、軋む。
 終わりは今、ここにと叫ぶかのようだからこそ。
「サテ、君ノ弱点」
 言葉と共にまずはと進むはナハト・ダァト(聖泥・f01760)。
 タールの身体からは光を宿し、輪郭を朧ろに見せている。
 一種の異形。だが、そこにあるのは決して混沌ではない。
「こノ叡智デ、証明しようカ」
 むしろその逆。
 美しきものを明日へと導き、生きるものを救う為に、ナハトの身に光はあるのだ。
 ならばこそ、ここで終わりという帝竜ヴァルギリオスの在り方は認められない。
「真に、最強にしテ不変なル者など、ないのだト」
「では、試してみよ」
 応じるヴァルギリオスの咆哮。
 八つの首から輝きが放たれ、それが三重のバリアとなってナハトの前へと広がる。これを踏破しなければ、如何なる攻撃とてヴァルギリオスへとは辿り着けない。
 が、弱点を証明して見せると宣言したナハト。
 その通りにと、更に広がろうとするバリアの中へと投じる。
 一つ目は毒、水、闇によるバリア。
 水の力には身体であるタールの液体純度をバリアのそれに変えて適応し、闇には自ら、紛れるようにして自身の力へと変える。
 が、最後の毒ばかりは削り合いだ。身体どころか精神をも蝕まれる中、只管に堪えつつ、蝕む毒を解析して抗体を作りだそうとするが。
「……完璧にハ無理、ですカ」
 これが物理的な毒であれば或いは。が、魔的なものや霊魂をも穢す呪詛をも含む。完璧な対策とはならず、文字通り、身と心を汚染されながらもナハトのタールは、バリアと馴染んだ身体を動かす。
 それはつまり、自分と一体化した一枚目のバリアを二枚目のものへと衝突させる事に他ならない。
 燃え盛る炎、弾ける雷撃、瞬く光のそれへと、水闇毒のそれを重ねるように。
「何故、バリアという障壁をひとつに重ねズ、三つに分けたのカ」
 それは一枚目のバリアを伴うナハトの身体が、二枚目に触れた瞬間に顕れる。水が炎を、闇が光を、対消滅させ、崩れるバリア。
「それは、君ノ力が、別の君ノ力と対消滅するからダ。火と水は相容れなイ」
 毒に蝕まれ、雷撃で焼かれるナハトの身。
 それでもなおと三つ目のバリアへと衝突し、身に宿らせた毒と雷をもって、氷と土のバリアを相殺させる。
 三つのバリアをその身体と慧眼を以て踏破したナハト。
「ほう、目の付け所はよいな。が、満身創痍とはこの事だ」
 けれど、ヴァルギリオスの言葉通り、その身は深い傷を負っている。
 これ以上の戦闘行為は不可能だと、身体から溢れる光が薄らいでいるせいではっきりと。

 いいや、果たしてそうなのか。
 ただバリアを解除させる為だけに、その賢者が。
 身をここまで削り、酷使するのか。

「言った筈だヨ。君ノ弱点を証明しようカ、と」
 そして、帝竜ヴァルギリオス自身も認めた事を明確に言葉にする。
「君ノ弱点ハ――互いヲ殺し合ウ事ダ」
 全てを終わらせる為に。
 己を終わらせることも内包している。
「まるデ蠱毒……いヤ、孤独だネ。哀しいネ」
 ナハトの声に咎めるような色はなく。
痛ましく、切実なものを見つめるように。
 どうしようもない病魔の名を告げるように、ヴァルギリオスへと言葉を向ける。
「でも、だからその在り方なのだろうネ。自分の持つ多様性をも認めれないかラ、他者には更になんテ」
 だからこそ。
 せめて夢見るままに、待ち至れ。
 決して哀しい終わり方にはしないと、ナハトは誓うから。
 現れる触手は、真実、弱点を捉えた証。
 僅かな間とはいえ、帝竜ヴァルギリオスの敵対行動を封じる力が発現する。
「君の終わりこそガ、少しでも救われる事を祈ろうカ」
「…………」
 帝竜ヴァルギリオスの沈黙は、ただ急所を突かれたというには威厳に満ちている。
 むしろ、夢見て誇るかのようだ。
 こうでなくてはならないと、喜びながら、次を待つように。
 僅か百八十秒。けれど、それがどれほど致命的な敵対行動の封印か。いうまでもなく。
「我を終わらせられぬならば、その時は、お前が終わる時と知れ――献身の闇と、叡智の光を持つ賢者よ」
 翼がはためき、帝竜を統べるヴァルギレオスが回避行動へと専念する。
「孤独だネ」
 たくさんいた筈の配下も。
 他の帝竜たちも今はなく。
「蠱毒の、群竜大陸……変えさせて貰うヨ」
 そこを踏破したナハトだからこその、宣言を向けるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレシェイラ・フロレセール
はじめまして帝竜『ヴァルギリオス』
わたしは猟兵だけれど、勇者でも大賢者でもないただの童話作家
自身の綴る物語が誰かの慰めになるのならば、わたしは喜んで物語を綴ろう
世界を、人々を慰めたいという気持ちは世界の誰にも負けない
この気持ちを胸に、キミの物語の一欠片となろう

慰めのわたしの桜、咲き誇って
世界を、人々を慰めたい気持ちのすべてを此処に結ぼう
魔力を込めた桜の硝子ペンで守りの魔法陣を描く
八重咲きの桜の如く、魔力も慰めの力もすべて重ね、眼前の大いなる災いから守る術を
わたしはもう恐れない
帝竜『ヴァルギリオス』の終焉を以て傷ついた世界の慰めとすることを誓う

反撃の時は今
ただわたしは祈るだけ
桜の軌跡が紡ぐ奇跡を



 軋む世界樹の中で、薄桜の色彩が柔らかく揺れる。
巻き上がる暴威など知らないと優しく。
 それで変わるような己ではないのだと。
 どこまでも繊細に、可憐に。
 桜の花が咲くように、セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)はゆったりとその足を進める。
「はじめまして帝竜『ヴァルギリオス』」
 硝子のように澄んだ声で告げて。
「わたしは猟兵だけれど、勇者でも大賢者でもないただの童話作家」
 甘い桜の匂いを纏わせて。
「自身の綴る物語が誰かの慰めになるのならば、わたしは喜んで物語を綴ろう」
 それは優しく、暖かく、涙のように。
 けれど、帝竜ヴァルギリオスの前でも屈さない、確かな意志で紡がれるのだ。
 桜と夢のように儚くあれど。
 どのようなものを前にしても、掻き消えたりしないのだと。
「世界を、人々を慰めたいという気持ちは世界の誰にも負けない」
 桜の硝子ペンをするりと虚空を滑らせて、告げるセレシェイラ。
「ほう、我にも負けないと」
 対するヴァルギリオスは最強と冠するものだ。
 負けないと告げる少女へと、八つ首のそれぞれの瞳が猛る。
 八つの属性のブレスをその顎に収束させ。
 破滅の唸りをあげさせながら。
「ならば示してみせよ」
「ええ、勿論。この気持ちを胸に、キミの物語の一欠片となろう」
 だから恐れない。
 帝竜ヴァルギリオスの物語。
 その結末が、目を背けたくなるように凄惨で、悲しく、酷いものとならないように。
 終わりを求めたキミの望むものではなくとも。
 傷ついたキミへ、悲しむキミへ、世界にいる色んなキミへ。
 つまりは世界の魂たちへと。
 綴りし夢よ届けと、セレシェイラの硝子のペンは走る。
 
「慰めのわたしの桜、咲き誇って」
 
 この戦いだけでない。
 いろんな場所の、世界の、或いは、相打ちとなって失われた勇者にも。
 慰めたい気持ちがあるのだ。
 無駄じゃない。苦しいだけじゃない。悲しみこそ終わり、涙が零れるのは幸せの結末を迎えた時に。
 あと一瞬だけ、この大いなる災いに立ち向かう強さと優しさを。
 その想いを結ぶべく描かれるは八重咲きの桜の紋章。
 そこからなる魔法陣の結界をもって、竜が起こす八つの災禍に対抗するべく。
 儚く、美しい色彩に、滅びの色彩が衝突する。
 轟音すら焼かれ、凍てつき、砕かれ、そして稲妻が走って光は瞬き、闇に呑まれる。何もかも終わってしまえと、叫ぶ竜の唄。
 だがセレシェイラの筆は止まらない。
 綴る思いは脈打ち、八重桜の陣が削られる度に書き足していく。
 それはさながらペンより溢れ出る桜吹雪。
 あらゆる傷を、災いを隠して流す、優しき色の流れ。
 竜の吐息に掻き消されながらも、綴られ続ける慰めの夢物語だ。
 どんなに帝竜ヴァルギリオスが世界を傷つけても。
 それ以上の幸せと優しさ、温もりと絆はある筈なのだからと。
 ついに竜の終焉の吐息をもっても、その夢を壊しきれず。
 セレシェイラの桜色の眸にヴァルギリオスの姿が映る。
「誓いましょう」
 この帝竜に傷つけれた世界の全ての慰めとすることを。
 ただ悲しい。
 ただ終わった。
 それだけでは済ませないことを。
 童話という物語は、幸せな結末をもって結ばれるのだから。
 反撃は今。
 この瞬間、途切れぬ想いと願いの末に辿り着いた刹那にしかないのだ。
「ただ、わたしは祈るだけ」
 魔力は防御陣で使い果たした。
 ならこの身、この裡に残るものは。
 言わなくても判っている。誓ったから。信じたから。そして、そのままに動くだけだから。
 ふわりと、呼吸と鼓動が揺れて。
 無数の花が綻ぶように、桜色の魔法弾が溢れ出す。
 まるでセレシェイラの魂に誘われたかのように。
 その祈りの元に、残る全てを賭けて。

「桜の軌跡が紡ぐ奇跡を――わたしたちの望む、終わりを綴るために」

 一斉に降り注ぐそれは、硝子のペンで綴りたいものの数だけ。
 いまだに綴れていない、そして綴られるべく夢桜の物語の優しさで。
 破滅の竜、ヴァルギリオスへと、確かに届けられる。
 決して傷つけるものは許さないのだと。
 キミの物語がただ破壊と悲しみだけでいいのかなと。
 儚き桜色が、瞬いて、揺らめいて、竜の姿を包むのだ。

 奇跡をこのペン先に、零して欲しい。
 そうすれば、奇跡の物語を幾つだって紡いでみせるから。

 世界樹の中で、儚き夢の花と彩が綴られて、巡る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
やっぱり巨体にゃねぇ…それでも退くことは出来ないにゃん。どれだけ強化されても適した攻撃じゃないなら。

呪いで子猫に変身し体格差で適した攻撃を限定させて、髭感知で動きを見切り、子猫たれ子猫姿に拘る呪いのオーラ防御で敵の属性攻撃や状態異常を跳ね除け、くるりくるりとダンスを舞う様に攻撃の隙間を潜り、呪われた肉体を武器に盾に攻撃を受け捌く(武器・盾受け)、それはバーバリアン&妖剣士からヒーローに置き換わった今も変わらない、僕の道にゃ。翼で羽ばたこうものなら大音量のヘヴィなミュージックエナジーによる気絶・重量攻撃で阻止、隙を見てくるりくるりと限界突破の【ブラッディダンシング】。



 揺るがぬ巨体は、ただあるだけで恐怖を感じさせる。
 放つ威圧はいうまでもなく、ただ脚を動かすだけで、翼をはためかせるだけで何かが壊れる。
 それが帝竜ヴァルギリオス。
「やっぱり巨体にゃねぇ……」
 見上げるレフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)の呟きは、果たして、帝竜ヴァルギリオスへと届いたか。
「それでも退くことは出来ないにゃん」
 どれだけ強く、更に強化されたとしても、適した攻撃でなければ。
 この身の芯に届かなければ、全ては無意味。ヒーローとなる前から変わらぬ、レフティのスタイルだ。
 呪いをもって子猫へと変身し、ステップを刻むように前へと躍り出るレフティ。
 体格は小柄。竜とは比較にもならない。
 いいや、だからこそと飛び跳ねる姿をヴァルギリオスは捉えられない。
 それはくるりと回す子猫のワルツにして、俊敏なる戦の舞踏だ。
 だからこそ、姿ではなくその気配のみを掴むヴァルギリオス。
「小さくも、勇者がくるか」
 ヴァルギリオスの鱗と鱗の間から流れる鮮血は代償。
 三つの尾は炎と水と雷、鱗に重なるは土と氷と毒。広がる翼は光と闇。
 八つの属性、八つの災いを呼ぶ帝竜が、その姿を現す。
「八つの顔、十六の瞳でも捉えられぬ。ならば、全てを押しつぶすのみ」
 見えないのならば、感じる面の全てを打ち据える。
 翼がはためいて、頭上から押し寄せる烈風と共に降り注ぐ光と闇。
 三連の尾は大地を破砕して馴らすが如く。
 レフティの姿が見えないのならそのいる大地ごと粉砕せんと、続けて繰り出される猛撃の連打。
 だが、竜の呪いを守りの力へと変え、水流の尾があたり、身を削られてもなお前へと跳ねる。
 炎で焼けた。雷で痺れる。
 だから何だというのだろう。我が身を武器に、盾に、突き進むこそレフティの道だ。
 隙間があればそこを。
 ないのなら、それこそ勢いをもって。
 くるり、くるり。
 回転して巡るその道は、ダンスは、止まらない。
くるり。くる、くる、と。
 白い毛が、自らの血で染まっても、なお駆け抜ける。
 ヴァルギリオスの脚へと。そして、その身体へと跳ねて、登り上がっていくレフティ。
「空に飛ばないのは余裕かにゃ?」
 帝竜ヴァルギリオスに隙などはありはしない。
 少なくとも作り出さなければ、そういったものは皆無。あるとすれば、破壊へと叩きつけるその意志。戦意。
「なら、いただくのみにゃ」
 くるりと、廻る姿で輝く、惨殺の爪。
 瞬間で限界を突破させ、高速で旋回する共に放つ魂さえ蝕む惨殺爪が、連続で放たれる。
 強化された鱗は一度では切り裂けない。ならば、回転する速度をあげながら。
 子猫の喉から紡がれるは、秘めたる力を解放し、更に加速させる祈りの言葉。
『我が呪と爪を以て、解体を始めよう。亡者の怨念よ、我が刃となれ。私と共に肉を抉り、魂をも切り裂こう――私は子猫の解体屋にして殺神鬼』
 かくあれかしと、己に告げて。
 恐怖に震えた鱗へと、鮮血の舞踏が、螺旋を描いて奔る。
 くるり、くるりと。
 それこそ子猫の姿の解体屋にして、神すら殺す鬼として。
 竜の魂を刻む、猫の舞踏会――赤き色彩と斬撃の音が絶えることなく奏でられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルード・シリウス
嗚呼、漸くだ…漸く辿り着いたぜ
幾度となく傷つき、幾度となく膝をつき、それでも幾度も挑み、突き進み、そして喰らってきた
さぁ、お前で最後だ…お前を喰らって更なる高みへ、その先へ
お前の血肉と魂、貰い受けるぞ

攻撃の軌道を見切り、残像を含ませ緩急つけた動きで掻い潜る様に回避し、或いは武器で衝撃を受け流す様に防いで凌ぎ近づく。避けるは致命傷のみ、それ以外は最悪受ける事も辞さない
凌ぎ切れたら、血晶飴を口に含んで噛み砕き、呼吸整え見据えるは帝竜の首

暴食の血核起動させ、喰らった血肉を糧に肉体を限界超えて強化。一気に間合いを詰め、踏み込み擦れ違い様に捕食の呪い乗せた【一閃】の一撃を首に叩き込む



 八つの災禍を宿した帝龍ヴァルギリオス。
 荒れ狂う猛撃は止まることを知らず、世界樹を激震させる。
 これを凌ぎ切る。それは余りにも無謀なことだ。
 増してや、その目標や手段が明確でなければ。
 炎の尾に身を焼かれながら、弾き飛ばされたのはルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)。
「ぐっ」
 焼ける肌と肉は、むしろ骨まで達する。
 残像を作り出しても、緩急を産み出すほどのスピードがない。
 武器で受けようとしても怪力任せ。
 何より、避けるか受けるの主軸も確かではない。防御の方法が定かでもないのならば、ただ翻弄されるに他ならない。
 致命傷だけは防ぎながらの前進。
 それだけに意識を裂いていれば、まだ違っただろう。
 その為に取る手段の具体性と軸となる手がなければただの突進。竜に轢き殺される無謀者だ。
「漸く、漸くだ……」
 けれど、全身から血をしたらせながらルードは呟く。
 受けるも避けるも、主軸を定めないが為に深手を負い続けながら。
 それでもルードにとっては、それが己が歩んできた道と他ならない。
 幾度となく傷つき。
 幾度となく膝をつき。
 それでも幾度も挑み、突き進み、そして喰らってきた。
 あくまで己が道を踏破するのだという意志こそが、ルードを支える。
 今までがあるからこそ、自分がある。ならば成せぬ筈がないと、手にした呪刀「闇斬」を握り締めるのだ。
「さぁ、お前で最後だ…お前を喰らって更なる高みへ、その先へ」
 頭上より降り注ぐ、無数の光と闇の矢。
 それに更に肉と骨を砕かれながら、前へと駆け抜ける。
 後には血飛沫。
 喰らう者の自負は、まるで、自滅と自壊を伴うかのようで。
「狂戦士か。そのようなものと、払いのけるにはタチが悪い」
 帝竜ヴァルギリオスをして看過出来ないと、既に重傷のルードへと視線が向けられている。
 話が通じる相手ではない。
 道理など説いても無駄だ。全身を己が血で濡らし、なお走る姿は赤と黒に染まった鬼のよう。
 事実、ヴァルギリオスの言葉などルードは聞いていない。
「お前の血肉と魂、貰い受けるぞ」
 何かを喰らい、発動させる余裕などない。
 ただ、敵の攻撃へと踏み込むのみ。狙う竜の首は遠く、高く。
 踏み込み、擦れ違い、刀の間合いに捉えられるものではないからこそ。
 なればと納刀した呪刀を構え、高速で一気に迫る。
 それは捨て身。防御の基礎も知らず、敵の猛撃に突き進むという。
 狂戦士の所業に他ならない。
 それでしか、この刃を届ける方法を知らないと。
 暴食の呪詛を纏った刃が、鞘より走りて神速の抜刀一閃を放つ。
 それは距離を無視する斬術。
 刀身より飛翔するは漆黒の斬撃。
 神速の斬風は、交差法として、確かにヴァルギリオスへと届けられた。
「ほう?」
 確実にルードの身体を打ち砕いた感触を覚えながら、深々と己が首へと届いた斬撃跡を確かめる。
「が、定めが足りんな。所詮は狂った獣」
 更に追撃と稲妻の尾が振り下ろされて。
「狗が獅子を喰らえば、獅子を越えるか。なんとも小さき狗如きが好みそうな論だ」
 続けて水流の尾が。
「己が狗ではないと吼えてみせよ。我の前に立ったのならば。雑魂ばかり喰らったのではないと、示してみせよ」
 応えるべく。
 打ち砕かれた瓦礫の中から、漆黒の斬撃が閃き、ヴァルギリオスへと飛ぶ。
「御託を、並べるのが、竜……かよ」
 もはや立つ事もできないルード。
 だが、震える手で呪刀を再び鞘に納める姿。
 闘志のみで奮い立つ姿は。
 己が信念のみで戦うモノのそれだった。
「喰らうと、決めた。なら、止まる……か、よ」
 足りぬならば。
 何をもって補うか。
 飢えて、渇き、足りないとルードの鼓動は脈打つ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ノエシア・ファンダーヌ
ご機嫌よう、帝竜ヴァルギリオス
その威容――さすが、帝竜たちを束ねるだけはあるね
確かにキミは"最強"なのかもしれない
……だとしても、私は諦めないよ
私はまだ、この世界と一緒に歩み続けたいんだ

攻撃の類には【オーラ防御】で私も結界を張って防御
また、極力距離をとってバリアの効果範囲から逃れたいね
とはいえ相手の攻撃は苛烈。結界が壊れることもあるかも
その際はまたすぐに結界を再構築
生身に攻撃を受けようとも、多少の痛みなら堪えてみせる覚悟だよ

使用UCは【幻影顕現・炎竜】
どうか、最強を乗り越える力を……私に貸して
キミなら帝竜の結界ごと破壊し尽くす力を持てると、私は信じてるよ
さあ、共に私たちの愛する世界を救おう



 荒れ狂う破壊の中で、優雅なる一礼。
 それは恐れも怯みもなく、対峙するという証明に他ならない。
 確かに強いのだろう。
 とても恐ろしい程なのだろう。
 最強と対峙するには、この身は小さくて。
 けれど足りぬ事はないと、ノエシア・ファンダーヌ(夕闇に溶けゆく・f03589)はオレンジ色の瞳で帝竜ヴァルギリオスを見つめるのだ。
「ご機嫌よう、帝竜ヴァルギリオス」
 その声に、首の一つがノエシアへと向けられる。
 続けよと。
 此処まで辿り着き、未だ果てぬ身ならば、その思い、見せてみせよと。
「その威容――さすが、帝竜たちを束ねるだけはあるね」
 ただ視線。ただ問いかける意志。
 そこに感じる、なんという重さと威圧か。
 帝竜。その名を確かに感じて、ノエシアは眦を決す。
「確かにキミは"最強"なのかもしれない……だとしても、私は諦めないよ

 だって、世界はまだ、未知に満ちあふれている。
 触れるべきもの、出会うべきもの。
 感じるものは夢よりなお多く。
 ノエシアの一生を使って足りない程なのだ。
 だから不本意な終わりなど、拒絶する。
「私はまだ、この世界と一緒に歩み続けたいんだ」
 未だ知らぬものと、巡り会う明日へ。
 知り得て、更なる場所へと踏み出す一歩を。
 決して奪わせないのだと、ノエシアはヴァルギリオスの前で、誓うように告げる。
 その真っ直ぐな姿に、誇りさえ感じて。
 ヴァルギリスの八つの顔が、それぞれ、笑う。
「ならば、この世界と共に、終わりへと歩み、落ちよ。嫌というのならば、覆すがいい。このヴァルギリオスの身と魂ごと」
 故に試すが如く張り巡らせる三つのバリア。
 障壁はそれぞれ属性を持ち、そして触れるものに影響を与える。
 攻防一体とはこのこと。展開に巻き込まれないように距離を取り、身構えるノエシア。オーラを練り上げて、自らも結界とするが、長くは持たないということはノエシア自身も判っている。
 だが、現実はそれ以上。
 振り上げられた爪撃のひとつ。
 受け止めた途端にひび割れる結界を再構築しながら、狙うは一瞬、持てる力を一点に凝縮するしかないのだと悟る。
 通常の戦闘の削り合い、凌ぎ合いなど、地力の差が激しすぎて無意味なのだ。零れる滴がいずれ岩を穿つといえど、それは時と水の量も莫大であるならばの前提。
「だとすれば、信じるのは君だよ」
 故に、求められるは魂の燃焼。
 そこから放たれる一撃が、帝竜の芯に届くか否か。
 揺らぎ、迷いがあれば、全ては無に帰す。判っているから、ゆったりと微笑むノエシア。
 ならばこそ。


 夢幻から湧き上がる炎は如何なる災禍も祓い。
 泡沫の炎獄は、魔を喰らう優しき竜の熱なのだから。


 そうだ。
「信じるのは自分の思い。ここに立って、求める魂そのもの」
 百度あれど、百度繰り返す。
 絶対なる不変こそ、己が魂。
 泡沫の如きその中から、溢れるは幻想の火竜たちだ。
 揺らめき、ざわめき、そして燃え上がる姿は幻影とは思えぬ程に鮮明で。
「どうか、最強を乗り越える力を……私に貸して」
主たるノエシアの信頼と、願いを受けて、更に燃え上がる。
 目指すは最強の竜たるヴァルギリオス。
 張り巡らす結界は八つの属性。対して、ノエシアと共にあるは火のひとつだけ。
 けれど。
 負けるなんてあり得ない。
「我に、火竜が挑むか。よい。やるがよい。越えて、この鱗に覆われた身に、見事、その跡を刻んでみせよ」
 出来なくばそのまま轢殺するのみと突進するヴァルギリオス。
 或いは、シエシアの勇と信から紡がれた、炎を確かめるべく、自ら向かうように。
「キミなら帝竜の結界ごと破壊し尽くす力を持てると、私は信じてるよ」
 自らの周囲を飛び交う火竜たちへと告げて、
 指先を迫るヴァルギリオスへと向ける。
「ひとりでしかない最強に、この火を示そう」
 なぜならば、と。
 揺らめく火は、囁くように。
「世界は、けっして、ひとりじゃない」
 ならばこそ、と。
 炎が奏でる、優しくも激しき音と共に。
「さあ、共に私たちの愛する世界を救おう。たったひとりの、孤独にして、最強の竜から」
 紅蓮の色彩が咲き誇り、八つの属性からなるヴァルギリオスの障壁へと衝突する火竜たち。
 一体、一体では届かない。毒に蝕まれ、凍結させられ、果てていく幻影の火竜たち。
 反射によって起きるダメージに、ノエシアの肌が焼かれても。
 それは、確かに、火竜たちの持つ火の強さだから。
「信じている。祈っている。願っているよ。……そして疑わない、私と君達の強さを」
 だから。
 繰り返して波打つ竜の炎は。
 最強の障壁の一角を少しずつ、焼き崩して。
 それが幻想、何も出来ない空想ではないのだと、帝竜ヴァルギリオスの眼に、赤々と刻ませる。
 ついに障壁を突き抜けた先で、想いより紡がれた火竜たちが。
 世界へと歌うように、紅蓮の花を咲かせる。
 まだ見ぬ愛すべきものたちに。
 いずれ届けるべき、優しい炎の音色を。
 終わりを焼き、続ける夢の光景を織りなして。

――それは強い訳ではなく、儚いものだけれど。
 確かにノエシアの胸で脈打つ、世界を祝う楽想。

 ここから。
 またはじめよう。
 炎は歌う。災いの花を、焼きながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戦場外院・晶
八つの災花を踏破して、我が身の愚かしさを証明しましょう
「戦場外院・晶と申します……よしなに」
必ず殺すと祈りを込めたオーラを纏い、いざヴァルギリオス・ブレスに真っ向挑む
「……っ」
防ぎ切れるものでなくとも命は護り、進んで、回復し、進んで、焼かれ、回復し……八つの地獄を巡る苦行
「……ふふ」
超重力の回廊という苦行を越えねば、辛かったでしょう
「……そこ!」
どんな攻撃も防御も必ず隙はでき、そこを突く術は骨の平原にて会得済み

【手をつなぐ】

「……捕まえました」
帝竜であれ手があり、肉と骨格を有するならば、我が技巧と怪力、そして彼自身の力を利用して崩す

「……破ぁ!」
すかさず破魔を高めて、拳に乗せて解き放つ……届け



 満たされないのは何故なのか。
 戦い続けるのはどうしてなのか。
 嘘偽りなく、その身は進む。愚かしさを表しながら。
 そして、隠すこともなく。
 困難にして苦難の道行きを。
 地獄を巡れど、止まるこのない巡礼を。
「戦場外院・晶と申します……よしなに」
 必殺を身に誓うが如く、殺意の気を身に纏いて告げるは戦場外院・晶(燃えよドラゴン……この手を掴め・f09489)だ。
 真っ向から向けられる殺意に、帝竜ヴァルギリオスは目を細める。
 それ以上を言うまでもない。
 苛烈なるまでの殺意は、祈りの如く戦場外院の身を包み、そしてヴァルギリオスへと向けられているのだ。 
 戦場外院が正面より疾走するのならば、言葉は不要。
 殺気の塊であるその身へと、ヴァルギリオスの八つの首から、破滅の奔流と化したブレスが放たれる。
 防ぐは、やはり殺気と祈りをもって身を包むオーラによる防御。
 だが、それでも到底防ぎきれるものではない。
「……っ」
 身と肉は弾けるように吹き飛ばされ、骨と神経も焼かれ、精神までもが汚染される。単純な暴威の前に破壊される肉体。
 が、紙一重。僅かながらの、風前の灯火で。
 戦場外院の戦意が、意識を失わせない。
 命をこそ護ればまだ戦えるのだと、自らに治癒を施す聖なる光を降り注がせる。
「……ふふ」
致命傷のみは避けて進み、焼かれ、回復しながら、更に進む。
 まるで八つの地獄を巡る苦行そのもの。回避を捨て、防御を固めているから前進できる。防ぎきれない暴威は、そのまま癒やしによって補って、更に進む姿はまるで修羅。
 尼僧というには苛烈に過ぎる、その姿。
 超重力の回廊という試練を越えなければ、その威力と激痛で膝を折っていただろう。が、全てに意味ありしと、確かに一歩を刻む戦場外院。
 いや、それを越えてもなお、余り在るそれに、果たすべき望みがなければ、心は折れる。掴むべき光があるから、突き進むことはできる。
 それが人の強さで。
 決して満たされない、光への憧れ。
 それが身を滅ぼすものであっても、蝋の翼で太陽に近づくべく。
 人は進む。そして、手を伸ばすのだ。
 八つの災花を踏破し、自らを示すべく。
「……そこ!」
 どんな攻撃と防御にも隙は出来る。
 八つの災禍が重なる奔流の中から突き出された戦場外院の手は、必ず出来るその間隙を逃さず、貫く。
 逆鱗にはほど遠くとも。
 赤い瞳は、鱗を貫き、ヴァルギリオスを掴む己の手を捉える。
「……捕まえました」
 喉が焼け、痛みで煤け、声は掠れている。
 それでも確かに、その腕を捉えたのだと告げる。帝竜といえど、四肢があり、肉体と骨格があるのならば。
 戦場外院の怪力、そして技巧を持ってして、その身、その姿勢を崩してみせる。
 只管に祈るように。
 繋ぐのは何も、手だけではなく、その気と呼吸の流れもだと。
 捻り、抗う帝竜ヴァルギリオスの力を利用して一気に崩しにかかる。激しい負傷と疲労を負う身で出来ることなど、ほんの僅かなれど。
 ただ一撃の為に。防ぐも流すもできない、一瞬を作って。
 手を繋ぎ、さあ、救世へと。
 帝竜ヴァルギリオス。その身が滅びることこそ、世界の為ならば。
「……破ぁ!」
 裂帛の気迫は、破魔を帯びて。
 高めて、研ぎ澄まし、拳へと凝縮した一打を、この竜の魂にまで届けと、解き放つ。
 激震に揺れるヴァルギリオスの巨体。
 鱗を通し、骨を砕いた感触に。
「届け」
 拳を再び、振り上げる。
「我が身の愚かさ。災花を越える苦行。その果てに、世の終わりはないと――竜の心臓まで」
 打ち据える一撃は、再びヴァルギリオスの身体を軋ませた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
嵯泉/f05845と

随分な大きさの上に無茶苦茶だなあ
本物の竜の力って奴?ちょっと羨ましいな
こんだけ強かったら、もっと役に立ちそうじゃねえ?
そうかな
……ならいっか!

戦場全体へ呪詛の防御幕を展開、氷と織り交ぜ障壁とする
嵯泉の負担は出来る限り減らそう
第六感で致命打と……光の翼だけは避けよう、私とは相性が悪い

お返しだ
現世失楽、【悪徳竜】
代償を背負うなら長期戦になればあちらが不利
八本の首全て、視界を奪って行動を阻害する
惑っている時間があると思うな
嵯泉の刃がすぐに行く

たかだか人の剣と舐めるなよ
――その男は竜殺しだ

世界樹の根本は『ニーズヘッグ』の席だ
紛い物でもこの名を背負った私と、その友に、譲ってもらおうか


鷲生・嵯泉
ニルズヘッグ:f01811同道
本物だとしても、過去の残滓に過ぎん
世界を壊す竜を羨ましく思ってどうする、お前は世界を愛する竜だろう
――今でも十二分に役立っているよ

集中した第六感と五感の総てで攻撃方向を見極め
前に立ちカウンターのなぎ払いで威力を削ぎ、軌道を逸らし
武器受けにて弾いて決して後ろへは通さん
致命のものを躱し切れれば十分、多少の傷は激痛耐性で無視する

氷竜が繰る氷獄の霧から逃れる事なぞ出来はしまい
――壱伐覇壊、一刀躱す事能わず
衝撃波の音をフェイントに使い接敵
首全て刎ね飛ばすまで怪力乗せた斬撃をくれてやる

世界樹の根に在るべきはお前では無い
其れを喰らう竜の名冠する我が友の為に――退け、我らの為に



破滅の災花を咲かせる、帝竜ヴァルギリオス。
 その姿へと灰燼色が、僅かに感情を滲ませる。
 それはこうあれば良いという羨望だったのかもしれない。
 或いは。もしかすれば。
 察して、考えることはできるだろう。
 だが、矛盾する心を抱くのがニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)だ。よほど親しいものでなければ、その本心を読み取ることは出来ない。
「随分な大きさの上に無茶苦茶だなあ。本物の竜の力って奴?」
繰り広げられる戦いの余波として吹き抜ける風に、残された灰の如きニルズヘッグの髪が揺れる。
 その金の瞳に浮かぶ感情は、さあ、どうなのだろう。
 纏う黒いコートを握り締める指は、揺れるように。迷うに。それでいて、確かに力強く。
「ちょっと羨ましいな。こんだけ強かったら、もっと役に立ちそうじゃねえ?」
 尊大なまでの自信と、それを冷たく卑屈に笑う二面性。
 そのふたつが、揺れて、変わって、表と裏に移ろう。
 自分がこうあれば。もしかして。
 それを聞く鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は一笑に伏す。
「本物だとしても、過去の残滓に過ぎん。最強、だから、なんだ。世界を壊す竜を羨ましく思ってどうする」
 石榴のような赤い瞳は、世を滅ぼす竜と、愛に満ちる世を信じるニルズヘッグを見て。
「お前は世界を愛する竜だろう。比べる必要もない。比べる間もない。お前は、お前だ。――今でも十二分に役立っているよ」
 本質としてニルズヘッグは動物なのだ。
 しっかりと示さなければならないと言葉にする鷲生。
 光を受けた鷲生の琥珀の髪は、ニルズヘッグの瞳のような金の色彩を瞬間だけ帯びて、弾いて。
「そうかな」
 一瞬だけ戸惑う顔をするニルズヘッグに、石榴の色を持つ隻眼を、ゆっくりと細めた。
 続く応えは判っている。
「……ならいっか!」
「そう、それだけ判ればいい。お前の姿は、お前のままにだ」
 僅かな言葉の応酬。それだけで迷いは消え、覚悟をもってヴァルギリオスの前へと立つふたり。
 愛刀を携え、更に前へ一歩踏み出す鷲生。
 言葉は少なく、背は任せたと。全神経を集中させ、研ぎ澄ました感覚と、第六感を以て捉えようとする。
 ひとつたりとも、後ろへとは通さないと、愛刀たる秋水の柄に手をけて。
 瞬間、戦場に張り巡らされるのはニルズヘッグの呪詛による防御幕。
 氷を編み込んだそれは、ヴァルギリスの動きと視界を制限する。
「ほう、姑息な手か。それとも、聡き絡め手か」
 応じるヴァルギリオスの三つの尾。粉砕し、焼き尽くし、蹂躙する暴威。ただでさえ強力な帝竜が、呪縛の代償の変わりに放つそれは強烈に過ぎる。
 呪詛と氷で編まれた防壁が打ち砕かれ、周囲に炎が燃え盛り、稲妻が走る。
「全てを防ぐは無理か」
 ならばと抜き放たれる秋水。
 露払う怜悧なる一閃と共に、迫る災禍を斬り祓う。
 受けるも、斬るも巨大に過ぎるというのなら受け流し、捌くのみ。
 軌道を逸らし、直撃を避ければそれでいいのだ。
 少なくとも、一撃たりとも後方へは抜けさせないと、閃き続ける護るべき為の鷲生の刀。
 致命、即時の戦闘不能さえ防げればと、見る間に負傷を重ねていくが、動じることはない。
 そんな鷲生の負担を軽減させるべく、呪詛と氷の防壁を連続で展開し続けるニルズヘッグ。
 まるで火炎と稲妻、そして津波が同時に悪阻掛かってくるようなそれを、二人で合わせてかろうじて防ぐ。
 絶え間なく続くとと思ったヴァルギリオスの攻勢の中、僅かに出来た一瞬に放たれる、呪いの返礼。
「お返しだ。現世失楽、『悪徳竜』」
 ニルズヘッグの悪意ひとつが、氷獄の武器と変じる。
 ヴァルギリオスの視覚を侵すのは冷気の霧だ。八本全ての顔を覆われ、
動きが止まる。
 制限された五感と動き。更に、心まで蝕む悪意の冷気が、心と思考、挙動までを読み取っていく。一度掛かれば容易に抜け出せるものではない。
 ならば聴覚、嗅覚か。
 それとも魔力を放って、その反響で調べるか。
「長期戦は、代償を払うお前のほうが不利だろうな。いいや」
 その思考、挙動、何をしようとするのかという事を読み取り、隙を見出すニルズヘッグの視線の先、駆け抜けるは鷲生だ。
「惑っている時間があると思うな。嵯泉の刃がすぐに行く」
 言葉通り、一振りの刃と化して、ヴァルギリオスへと迫る鷲生。
 愛刀である秋水は露を掃うかのような鋭き色艶を帯びて。
 悪意の氷獄の中で、ただ斬意の元に手繰り寄せられる。
「氷竜が繰る氷獄の霧から逃れる事なぞ出来はしまい」
 ましてや、眼前に鷲生が既にいるのならばなおさらだ。
 振るわれた刀身が放つ衝撃波。その音を拾い、ヴァルギリオスがそちらへと意識を向ければ、隙を晒すのみ。

――壱伐覇壊、一刀躱す事能わず

 それは距離という概念、防御という行為そのものさえ斬り裂く斬閃。
 ひゅん、と鳴る風切りの音さえ置き去りに奔る鷲生の斬撃。
 怪力を乗せ、全ての首を切り落とさんと一閃が瞬く。
 が、一太刀では叶わぬ。ならばと二之太刀、三之太刀と立て続けに繰り出されるそれは、より深く、より致命的に。
 ヴァルギリオスの弱点、急所を覚え、捉えて、刃が強化された鱗を斬り裂いていく。
「たかだか人の剣と舐めるなよ――その男は竜殺しだ」
 五度と刃が奔れば、鮮血が溢れる。
 既に竜は殺したことがある。ならば最強とてと。
 いいや、それよりもと鷲生には斬るべき理由があるのだ。
「世界樹の根に在るべきはお前では無い」
 故に刀身に溢れる斬気が衰えることななく。
「其れを喰らう竜の名冠する我が友の為に――退け、我らの為に」
「そう。世界樹の根本は『ニーズヘッグ』の席だ」
 氷獄と斬滅が、より深く、その存在を捉え、より確かな斬撃を刻み、言葉を打ち込む。
「紛い物でもこの名を背負った私と、その友に、譲ってもらおうか」
 翼が広がり、それを拒むように、光と闇の翼がはためく。
 放たれる幾つもの光と闇の弾丸は、何も見えぬ帝竜ヴァルギリオスの応えであり。
「ならば、見事屠ってみよ。相手を認められぬなら、排除するしかあるまい。どちらがこの世界樹に座すモノか、見せてみよ。この程度で、世界樹を囓るモノは名乗れまい、互いに」
 変わらずヴァルギリオスを蝕む無明たる氷獄と、鋭利さを増して奔り続ける斬撃。
 そして、竜の翼が放つ光と闇が、交差する。
 判らず屋め。
 そういったのは、どちらか、誰か。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウルスラ・クライスト
【庭】
贅沢者ねぇ、他の花を許さないなんて
大事な花は沢山あるの
それを枯らしてしまうなら
美しくたって、伐るしかないのよ

防御は可愛い子達に任せ
狙うは、連撃を撃つべくこっちを向く
8つの頭――あれを、止めるわ。

敵先制のカウンターで毒罠使いが放つは終焉の蝶
力溜めの全力魔法で紡ぎ上げ
範囲攻撃は遍く広く…蔽わん程に限界まで
勢いよく吐いただけ、どうぞ一息に吸い込んで
さしもの帝竜でも喉が爛れてしまうわね

マヒ攻撃を全力魔法の高速詠唱で
分担は臨機も、優先して毒首を討つわ
蝶が蒼炎を灯した標を目掛け
適した属性攻撃を意識し、矢継ぎ早に
ひたすら頭を狙いましょう
息もできなくなるほどに

あなたがここで咲き誇ったこと
せめて忘れないわ


アース・ゼノビア
【庭】
終わりしか求めないほど飽いたのか、竜よ
これ程に力を得て他に道がなかったなら
確かに滅ぶ為に此処へ来たのだろうね

環境・氷結・毒の各耐性にオーラ防御し
土壁と氷壁の結界を仲間を覆うよう展開
高速詠唱の全力魔法で足りねば多重詠唱を重ねよう
燃えず溶けず雷を受け流し
土と氷を飲み込んで
光も闇も凌ぐ幾重もの盾
俺はただ護りきる――その為に来た
竜統べる者。お前に挑もう

氷の首を最優先も
仲間の危機を庇えるよう臨機に見定め
ウルスラの灯した蒼炎を標に
常に適する属性魔法で部位破壊を狙う

UCはオズ、ルゥ―と息合わせ
水竜の呼ぶ激流で破壊の王に終焉を

この樹は亡骸をも未来へ繋ぐだろうか
過去を繰り返すだけが道ではない
そう、祈りたい


オズウェルド・ソルクラヴィス
【庭】
対峙し、見据える先はまさに破滅―
されど心は不思議と静かだ
何せ、腹は決まっている
何一つ奪われない為に

―アレを斃す。ただ、それだけでいい

二人の防壁の真後へ重ねる様に
全力魔法と高速詠唱にて
土氷水毒と魔力の花をいなし
拡散、防ぐ強固な風の防壁を生成

反撃へは
感を高め、見切り、仲間や桜の危機には魔の槍を投げ、援護し目標へ肉薄
魔力で高めた火耐性を纏い、切り込む先は火の首
蒼炎を印に、強化なき首へと
鱗の鎧すら貫く全力の一撃を喰らわせる

一矢で終わると思うなよ―

槍を突き立てたまま
花びらにて軟弱化した鱗を剥ぎ取るように
共に喚ぶは―【緋星】
狙うは、火の首合わせた八首共々その体内
一欠けらの傷も逃さず黒炎を解き放つ―


ルゥー・ブランシュ
【庭】
あたしは、終わらない
みんなにも、終わりなんて来ない
大好きなこの世界は、まだまだこれからも続くから
その為に、あたしは今ここに立つの―

魔導書を開き
全力魔法と高速・多重詠唱にてアースと共に土と氷の結界を何重にも展開
火水氷雷と闇と光―そう簡単に、通したりはしないんだから!

攻め込む二人から先に、負傷の軽減と環境耐性強化のバリアを張り
帝竜からは距離を取り
動きを注視し感とオーラ防御も展開しながら攻撃を避ける
自分自身も含めバリアが剥がれそうになったなら、常に重ね掛けていく

―諦めないの、ぜったいに

皆と息を合わせ
魔導書を花びらへと変え
火と氷の首を中心に
攻撃が通り易いよう鱗を切り刻み
この先で待つ未来を見るの―



対峙し、見据える先はまさに破滅――。
 激しく負傷し、なお衰えぬ災いの脈動。
 これが帝竜ヴァルギリオス。
 人類滅亡と世界の終わりを求める、最強の竜
 オズウェルド・ソルクラヴィス(明宵の槍・f26755)は目を細めた。
不思議と心は穏やか。何しろ、腹の裡にある決意はひとつだけ。
 何一つ、奪われない為に。
 アレを斃す。ただそれだけでいい。
 決めて、定めた以上、ウズウェルドは揺れたりしない。
「終わりしか求めないほど飽いたのか、竜よ」
 対してアース・ゼノビア(蒼翼の楯・f14634)の声色は感傷的だ。
 むしろ悲しいのかもしれない。
 これ程に力を得て他に道がなかったのか。
 自らの裡に八つもの力を得て、その多様性を認めて、他のものと進む道はなかったのかと。
「ああ、ないから――滅ぶ為に此処に来たのだろうね」
 そう納得するしかない。
 ヴァルギリオスの魂は見通せない。判らない。最強たるものに、並ぶことで理解できるものはなにもいないのだから。
「だからって」
 紡がれる声は、ルゥー・ブランシュ(白寵櫻・f26800)のものだ。
 耐えきれない。我慢できない。認められない。
 そういう意味ではオズウェルドと同感ながら。
「わたしは、終わらない。みんなにも、終わりなんて来ない」
 それを定めていいものなんていない筈。
 事実、決めることができないから、ヴァルギリオスは力でねじ伏せようとしているだけだ。
「大好きなこの世界は、まだまだこれからも続くから」
 それは願いであり、祈り。
 揺るぎない意志であると同時に、求めるもの。
「その為に、あたしは今ここに立つの」
 桜葉を想わせる眸に、ありったけの想いを込めて、ルゥーは告げる。
 だが、それがヴァルギリオスに届くことはないのだ。
「立つか。我の前に。ならば、その勇を、信念を、想いを受け止めよう。それが力だ。それが魂だ。それを壊して、なお進もう」
 世界を滅ぼそう。
 そんな思いと発想は理解できない。
 共感などある筈はなく、ならば、ここはすれ違って平行線。
 幾らやれど、ただ力だけがぶつかるのみ。
 ただ。
「贅沢者ねぇ、他の花を許さないなんて」
 赤い瞳を揺らめかせ、ウルスラ・クライスト(バタフライエフェクト・f03499)は囁くように告げるのだ。
「この世界に、この花園に、みんなが大切に思う庭には、大事な花が沢山あるの」
 たったひとつで成り立つ。
 代わりに全てを奪い取り、吸い尽くすというのなら。
「それを枯らしてしまうなら。美しくたって、伐るしかないのよ」
 ああ、だからとこの場の全員が理解する。
 自分を枯らしてしまうか。
 世界を枯れ果てさせるか。
 どのような経緯を辿ったかは不明でも、ヴァルギリオスのいる場と視線はそれなのだ。
「我は変わらぬ。変わぬのだ。さあ――悉く、滅ぶがよい」
 八つ首から放たれるは、災花の波涛。
 それぞの属性、力、特性を秘める、自らさえも皆殺しへと誘う竜の吐息。
 そこに立ちはだかるはルゥーとアースだ。
 ルゥの腕の中で魔導書が開かれ、秘められた魔術が解き放たれる。全力にして高速、そして多重で紡がれるのは氷と土の結界だ。
 それもひとつやふたつではない。幾らでも重ねていく。
「そう、幾らあっても足りることはないのだろうからね」
 環境、毒、氷結の耐性と、オーラによる守りを重ねるアース。
 仲間を取り囲む結界は多重にして堅牢な盾。
 燃えず、溶けず、雷を受け流し、同属たる土と氷を飲み込んで。
 光も闇も徹さぬ盾であろうと。
 だが、それを粉砕していくのが竜の吐息だ。属性と同時、単純にその威力が凄まじすぎる。
 崩された所から更に構築していくが、全ては不可能。
 だとしても。
「俺はただ護りきる――その為に来た」
 アースはルゥーと共に、終わりの見えない守りを巡らせる。
「そう、火水氷雷と闇と光――その全てが来たとしても、そう簡単に、通したりはしないんだから!」
 轟音に負けないルゥーの声。その上に重ねるように。
「竜統べる者。お前に挑もう」
 宣言するアース。ならばこそ負ける訳にはいかないと、鬩ぎ合う土と氷の結界と竜の吐息。
 十秒か、二十秒か。或いはもっと短かったのか。
 弾けるように壊れ、止まるその奔流の果てで、ついに八つのブレスが止まる。ヴァルギリオスの攻勢を凌いだのだ。
 だからこそ、反撃の開始とウルスラが放つのは姿は美しき蒼蝶の群れだ。
「さて、長く息を吐いた分、たーんと吸ってね?」
 麻痺性の神経毒と強酸の鱗粉を振りまき、ヴァルギリウスの竜の鱗を爛れさせ、脆くなった箇所へと蒼き炎を目印として宿す。
 それは標。脆くなった一箇所と信じて、それぞれが攻撃を繰り出す。
 アーズによって召喚された巨大な水竜が、敵意あるものを凍てつかせる激流を繰り出して動きを封じ込め、ルゥーは魔導書を桜の花びらへと変えて、蒼炎を目印にして鱗を斬り刻む。
「が、先んじて鱗も、翼も、尻尾も強化されるか」
 呟くオズウェルドの声は苦い。
 こちらが攻撃の種類を増やせば、また、ヴァルギウスも先んじて技を発動させる。流血の代償に、鱗には毒と土と氷による防御が宿っているのだ。
 翼をはためせれば光と闇の弾丸。奮い立つは、炎と稲妻と水流の尻尾。
 それを恐れず、駆け寄るオズウェルドの目には信頼。
 呼吸を合わせた仲間との攻撃でヴァルギリオスの元へと辿り着き、蒼炎灯る場所へと全力で二又槍をその喉元へと突き刺す。
「一矢で終わると思うなよ」
 のみならず、ルゥーの操る桜の花びらが槍の突き刺さった場所へと殺到し、更に斬り刻みながら鱗と肉体を穂先が抉り、剥ぎ取るオズウェルド。
 更にトドメとばかりに呼ぶは、一族を統べる緋星という名を冠する竜だ。
 鱗を剥ぎ取り、その肉体へと刻んだ傷口へと黒炎を解き放たせる。
「これでも、ね」
「この程度で終わるならば、かつての勇者達がトドメを刺している」
 確かに負傷を与え、傷口からは黒い炎を零すヴァルギリオス。
 尋常ではない生命力もまた、帝竜のものかとウルスラは蒼蝶と共に属性を乗せた魔弾を手繰りながら、吐息をつく。
 その身体は止まることなく、強化された身体を以て周囲を蹂躙する。
 深手を負えど、終わりはしないのだ。
その命が終わるまで。
 或いは、世界が終わるまで。
 もう始まってしまったのだから。
「ならばせめて」
 勝利の先を見据えて、アースが口にする。
 敗北へと転がることは思えず、次第に優勢へと向かっている戦いだからこそ。
 この世界樹は亡骸をも未来へ繋ぐだろうか。
 過去を繰り返すだけが道ではない筈なのだ。
 そう、祈りたい。
 ただ勝つだけではなく。
 ウルスラもまた、言葉を紡ぐ。
「あなたがここで咲き誇ったこと。せめて忘れないわ」
「我に勝ち、その遺骸の上で歌え」
 なお振るわれる烈火の尾が、大地を引き裂いて燃え上がらせる中で。
 ルゥーは静かに、けれど、しっかりと。
 この先で待つ未来を見るために、その眼差しを向ける。
 何があろうと、決して、視線をそらない。瞼を閉じない。
 この世界樹の中で、どのような未来が、綻ぶのか。
 蕾の予感がする。
 何かが咲く。破滅ではない何かが。
 明日という花が。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナイ・デス
ソラ(f05892)と

かつての勇者達は、ヴァルギリオスと相討った
そんな勇者さん達がいたから、今ここに私達はいるのです、ね
託された……なら、負けられない、ですね!

ソラの盾を、私も一緒に【念動力オーラ防御】支える
【かばう】
【覚悟激痛耐性継戦能力】私は再生する。ですから、大丈夫

反撃、しましょう。あのバリアは、私が!

聖剣に変身

私達が、破ります!

光輝く。願う

光を集める。勇気の光を束ねて

私達の力は、守る為に。救う為に
守りきるには、不足だとしても、諦めない
そんなパートナーに
力を、今一度

いってください、ソラ!

これは無謀ではない。勇気の力!

剣となった私は【鎧無視】の刃
【生命力吸収】する光を放ちながら、敵を滅す!


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

数多くの勇者に想いを託され、此処まで来ました
皆がわたしたちの背を押しています…簡単に倒れませんよ!

全力で守りを固め、【盾受け・オーラ防御】
各種属性の【耐性】を全開
ナイくんの前に立ち全属性のブレスを【見切り】受け流す!
勇者は決して、退きません!【気合い・かばう】

彼の変身した聖剣を手に、一気に飛翔!
今まで縁を紡いだ彼らの声が聞こえます

わたしの背を押す癒しの風
『勇者の墓標』の義の勇士たちを、わたしは覚えている
また、わたしに力を貸してくれるのですね
―――貴方たちの義に、感謝を!

剣に【属性攻撃】を纏わせバリアの属性を中和
【勇気】を胸に更に一歩!抜けた先で全力の一撃を叩き込む!!



 いまだ破滅は地上へと降り注がず。
 戦乱はただ群竜大陸の中でのみ。 
それはかつて帝竜ヴァルギリオスと相打つように、古き勇者たちが封印したからに他ならない。
 果てた勇者たち。けれど、残された思いは確かに受け継がれている。
 そう。この場に立ち、この戦いで決着を迎えられるのは、自分達の力だけではないのだと知るからこそ。
「託された……かつての勇者さん達がいたから、今ここに私達はいるのです、ね」
 言葉にすることで、それを確かなものとして胸に刻むのはナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)だ。
 無念はあったかもしれない。
 だが、必ず意志を受け継ぎ、宿願を果たしてくれると信じたからこそ、彼らは戦い抜いたのだ。
 最後の最後まで。
 だから、今日という日がある。
 勝利に、帝竜ヴァルギリオスの命へと手が届く今が。
「だからこそ、負けられない、ですね!」
「ええ、数多くの勇者たちに想いを託され、此処まで来たんです」
 今も背を押されている気がする。
 願いを遂げて欲しいのだと、切なる思いの鼓動を感じるのだ。
 決して後ろに退くことなどできないのだと、青い瞳に決意を浮かべるソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は、蒸気機械を搭載した盾を構える。
「簡単に倒れませんよ!」
 迎えるは帝竜ヴァルギリオス。
 八つの災いをその顎に湛えながら、ヴァルギリオスは二人へと言葉を向ける。
「そうだとも。簡単に倒れるものはいないのだ。我も、かつての勇者も、そしてお前達も」
 誰も無意味に倒れることはなかった、かつての戦い。
 勇者達が果敢に戦ったからこそヴァルギリオスは封印され。
 封印されようともヴァルギリオスは倒れなかった。
 そして、果てることのなかった勇者たちの思いと魂が受け継がれ、今があるのだ。
 ならばこそ。
「今この決戦で、最後まで立っているものこそが勝者。かつて決まらなかった決着をつけようぞ!」
 最強の名を冠するヴァルギリオスが吼え、八属性のブレスが放たれる。
 万物、この世のあらゆるものを滅ぶす為の竜の吐息は破滅の奔流そのものだ。
 だが、これを凌がねば始まらない。
 ソラスティベルがナイの前へと出ると同時、各種への耐性を持たせたオーラによる防御を張り巡らせる。
 全ての攻撃をその一身で受け止めようと。
 勇者を目指すソラスティベルの行動には迷いも躊躇いもないからこそ、ナイも彼女を支えるべく、後方よりその力を注ぎ込む。
 全てを正面から受け止めるのは無理と判っているからこそ、ソラスティベルは盾でブレスの流れを見切って大半を受け流し、どうしても防ぎきれない被害はナイがその身で庇う。
 弾ける紫電、流れ込む呪詛の毒、凍てつく波涛。ソラスティベルの盾では受けきれないそれらを、身を削れることを厭わずに。
「私は再生する。ですから、大丈夫!」
 轟音の中、苦痛を堪えながら叫ぶナイの声に偽りはない。
 あくまでこのブレスを凌いで、反撃へと繋げる必要があるのだ。
 ならば、その一振りを担うソラスティベルを倒れさせる訳にはいかないのだから。
「ええ。でも私は、勇者は、決して退きません!」
 けれど、ソラスティベルの勇気もまた本物。
 だってそうだ。
 友達が身を投げ打つ場で、何もしないなど、ありえない。
 信じて追い求めるのは何時だって英雄譚。
 悲しさも、苦痛もそこにはなく。
「そして、友達の信頼に応えないわけも、またないんです!」
 絶え間なく続くと思われた災禍の奔流。それを裂帛の気迫をもって打ち払い、瞬間の隙を産み出すソラスティベル。
 ならば。
 反撃は今。
 帝竜ヴァルギリオスの張り巡らせるバリアを斬り裂くべく、光輝き、その身を変じさせるナイ。
 願うのは輝き。
 求めるのは勝利。
 だからこそと、破滅の渦の中にある光を集め。
 束ねて、ナイはその身を一振りの剣へと。
 守る為、救う為の光をその刃に映すは、英雄たらんとする友が為の聖なる光輝の聖剣。

――行ってください、ソラ
 
 あの障壁を斬り裂くのはこの身を以て。
 例え不足していたしても、掻き集めた思いをもって、乗り越えてみせる。
 勇気あるものたちの越えたによって紡がれた光は、如何なる闇をも祓うのだと。
 そんな自分と、パートナー。ソラスティベルの道を照らす剣こそ、今のナイの姿。
 故に握り締めるソラスティベルに迷いはない。

――これは無謀ではない。勇気の力!

 そうやって後押ししてくれる、声があるのだから。
 握り締めた光輝の剣を構え、ソラスティベルのしなやかなる脚が大地を蹴る。
 ふいに。
 吹き抜けた優しい風は、何処か懐かしく。
 この場に似合わない癒やしを感じさせるから。覚えているから。
 その名を義という。
 誰がか為に、振るう勇気の名と風に、背を押されて。
「―――貴方たちの義に、感謝を!」
 誰も倒れなかったといったのはヴァルギリオス、あなただと。
 そう、今も確かに息づき、脈打ち、受け継がれる思いこそ、永久不変の輝きであり、誇るべきもの。
 今、手にする剣に宿された、光そのものだから。

「この手に有りしは一振りの光。共に在りしは、強き意思!」
 
 駆け抜ける姿は、聖なる光に包まれ、その色彩をも変じさせる。
 純白の髪は神聖なる輝きのように。
 赤き瞳は、決して衰えぬ焔のように。
 何より、パートナーの姿とよく似た色として。
「帝竜ヴァルギリオス、覚悟を!」
 飛翔し、迫る姿はまるで天からの御使い。
 邪たる闇、全てを滅ぼす光となって瞬く剣閃。
 聖剣となったナイが毒と氷結の障壁を斬り裂き、反射する残る一枚を強引にソラスティベルが斬り伏せる。
 もはやヴァルギリオスへと、聖剣を突き立てるを阻むものは何もない。
 踏み出す勇気こそ全て。
 残る想いを、力を、輝きを込めて。
 まるで白き焔のように。
 如何なる災い。どのような困難。そして破滅さえ、斬り伏せるのだと。
 終焉の竜の胸へと、光輝の剣が奔る。
「――見事。だがまだだ」
「ええ、まだ」
 心臓に、命に、魂には届かない。
 ああ、そうだ。この程度で終わるならば、かつての勇者たちが倒れる訳がなく。
 そして自分たちもまだ、戦い続けられる。
 零れる光と血を伴って、舞い踊るは竜と輝ける勇士。 
 周囲に舞い散る、光のかけら。
 そのひとひら、ひとひらは、滅びの災禍によってもたらされたものではなく。
 福音のように降り注ぐのだ。
 此処まで辿り着き、刃を届かせた勇者たちを。かつてと今の皆を、讃えるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
騎士として邪竜と相対する
御伽噺の一篇のようなこの現実にも不思議と高揚感は覚えません

この世界には苦い思い出も、良き思い出も数多あったというのに
あるのは眼前のA&Wにとっての災厄をどう討ち果たすか
只その思考演算のみ

…かつて帝竜と相対した勇者の中にも似たような方はいたのでしょうか

バリアを纏った肉弾を●見切って回避し接近
元より恒星の熱と真空の極寒に縁近き星海出身の鋼の身
毒も炎も氷も尋常であれば寄せ付けません(●環境耐性)

そして、尋常で無くとも此処まで近づければ十分
UC使用

この障壁、騎士として真っ向から破らせて頂く!

バリアを無理矢理突き破り突貫

体躯を駆け上がり大盾殴打で竜頭を脳天から叩き割り剣を突きたて



 夢や御伽噺の一篇のような状況で。
 それこそ邪竜と対峙する、理想の如き騎士の姿たる場だというのに。
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はただ冷徹なままにある。
 どうして、高揚感はないのだろう。
 鼓動がないから。この身は鋼だから。
 いいや、違う。この世界に対する記憶は明るき喜びも、苦き悲しみもあった筈だというのに。
 ただ思考して演算する。勝利の為に。
 果たして、このような身が勇者と呼ばれるのだろうか。
「……かつて相対した勇者の中にも似たような方はいたのでしょうか」
 トリテレイアの呟きは、どうしてか帝竜ヴァルギリオスが捉えて。
「冷徹にて果敢。勝利を追い求める、剣のようなものはいた。我は覚えている。懐かしいと、お前を見て思っている」
「…………」
「無謀とて計算の内でやるのだろう。討ち果たす為に不要なものを削ぎ落とし、研ぎ澄まして我に刃を突き立てるのであろう。そういうものだと、見て取れる」
「言葉もない。褒められているようで、手中にあるようで」
 何故そのような返事をヴァルギリオスはしたのか。
 なんとなくトリテレイアには判るのだ。少しでも迷い、躊躇う相手に勝ったとしても、そこに誉れはないのだから。
 手にいれるものが破滅だとしても。
 その決着を自らの手でというのなら、誇りたい。
 故に自分とは違うのだと心の底で自嘲する。理想は余りに遠く、自らにないものばかりで。
「そこまで云われるならば、見せねばなりませんね」
 構えるは薄紫の装飾の施された白銀の騎士剣「義護剣ブリッジェシー」と、身の丈はあろかという大型の盾。
 それは重厚なる鎧を纏った騎士であるかのように。
 けれど、冷徹な思考を宿す緑の瞳は、あくまで機械のそれで。
「ひとりの戦機の騎士として、参りましょう。ヴァルギリオス、あなたを許容できない」
 清廉なる声で告げてトリテレイアは駆け出す。
 迫る最中での肉弾戦は見切りて避けようとして、けれど唐突に張り巡らされたのは三重のバリア。
 これで動きを止めた瞬間を穿つのだと、掲げられたヴァルギリオスの腕が訴えている。
 越えられるか。
 それとも、止まるか。
 ふたつに一つの局面。退くには速度を付けすぎているし、衝突とは自滅への前進だ。
「故にこそ、止まらぬのが騎士!」
 せめて瞬間でもそうあろうと、自ら障壁へと飛び込むトリテレイア。
 例え恒星の熱と真空の極寒に晒された宇宙の星に生まれたとしても、ヴァルギリオスの力は尋常ではない。
 鋼の身を焼き尽くす炎と雷、凍てつかせる水と氷、軋ませるは地と闇と光。毒にいたっては、鋼を蝕み、腐食させていくと同時、精神にまで蝕む呪詛のそれ。
「止まらぬのが騎士だろう?」
 その瞬間に横凪ぎに振るわれるヴァルギリオスの爪。止まれば微塵に砕くのみと迫る猛威。
 だが、冷徹なる剣と評されたトリテレイアがこの程度なのか。
 いいや、違う。点滅する瞳が、次第に強い輝きを宿していく。
 尋常ならば、産まれと戦場で鍛え上げられたこの身でよし。
 尋常ならざるならば、理想の力を得るまで。
「御伽噺に謳われる騎士達よ。鋼の我が身、災禍を払う守護の盾と成ることをここに誓う」
 物語の騎士達は、如何なる障壁をも乗り越え、災禍を払う守護者である故に。その姿たらんと、トリテレイアの身に力が宿る。
 騎士として相応しい姿を貫こうと不利な行いをすればするほど、その力を増すトリテレイアのユーベルコード。
 ならば効果は十分。
 正面から邪竜という理不尽に挑む姿。
それが誉れ高き騎士でなくて、何だというのか。
「この障壁、騎士として真っ向から破らせて頂く!」
 理想を原動力に強引に突き破るバリア。
 鋼の身のほうが持たず、機能とパーツの幾割かが壊れて失われたが、だから何だというのだ。
「我の権能を、力のみで正面から」
 驚愕するからこそ、ヴァルギリオスの反応は鈍い。
 迫る爪を盾で打ち払い、弾き飛ばしてヴァルギリオスの巨躯を駆け上がるトリテレイア。
 頭部への大盾の一撃。爪撃を弾いた際に罅のはいった左腕の一撃では、十分なものではないけれど。
「世界を滅ぼす。そのような悪夢、この剣をもって滅ぼさせて頂く」
 手にした白銀の騎士剣は何処までも研ぎ澄まされている。
 一太刀に、残る力を込めて。
 火を司る竜の頭。その脳天へと、騎士の剣を突き立てる。
 激烈なる一閃。鋼の身に血飛沫と共に、火炎が溢れてその身を赤く濡らし、焼いて、更に負傷を著しく加速させ。
 けれどと盾を手放し、諸手で深く、深く、柄まで通れと帝竜ヴァルギリオスの頭蓋骨へと、その脳髄へと貫いていく。
「――あるべきではないのです」
 それは、破滅の邪竜にいったのか。
 紛い物の懊悩が、心の描く理想の姿に焼かれて零れたのか。
 ただ、ここでヴァルギリオスを滅ぼすのだと、トリテレイアは更に騎士剣を突き刺し、そして、抉る。
 竜を屠る、勇者の姿のように。
 いずれ、御伽話の欠片となることを、願って。
 誰かの理想であるからこそ。
 それは誠の騎士となるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナハト・ダァト
リベンジといこウ

真の姿を解放

多様サなラ叡智デ補うサ

残像を9体生成
へその緒を持たせ、遠隔操作を可能にした8体を散らしたら

残りの1体と共に迷彩で消える

残像はかばう技能で
ブレスを分散させて受けさせる
オーラ防御で耐え
倒れた残像から得た
首に対応した属性の情報をへその緒で把握

8体倒れたら9体目を出現
精神攻撃、催眠術、言いくるめで本人と錯覚させ

ブレスの防御を指示
最後の残像には
オーラ防御に残像から得た属性情報を反映させた武器改造と
時間稼ぎ、限界突破、ドーピング、継戦能力技能で持ち堪えるよう細工

本体は迷彩、闇に紛れる技能で接近

最後の残像が
本体が倒れたように演出した瞬間

UCを騙し討ちで繰り出す

既ニ、答えハ得たヨ



 さて。
 示された弱点と、叡智をもってしても。
 まだ、まだだと戦いが続くというのならば。
「リベンジといこウ。この解では、君は納得できないだろうウ」
 真の姿を解放するナハト。
 長くは持たない、超常のそれを身に宿して。
 そして、長くはかけないのだと、言葉は胸の奥に沈めて。
「多様サなラ叡智デ補うサ」
 産み出すのは九つの残像。
 へその緒という生命の繋がりで結ばれたそれらのうち八体が周囲へと駆け抜け、ナハトと残る一体は自らに迷彩を施して隠れ、潜む。
 飛び行く残像たちは、それぞれ異なる属性を持つ八つの首を相手取り、放たれるブレスをそれぞれオーラ防御で耐えながらその力の詳細と情報を、繋がった緒を経由してナハトへと送る。
 もっとも、真の姿を解放していなければ、残像など情報を集める前に掻き消されている。解放したとしても、ナハトの身にかかる負担は尋常ではない。
 自らを殺すことこそ、ヴァルギリオスの弱点。
 それ以外の明確なものは捉えられないものの、炎の首が著しく弱体化しているのは判る。
 ならば付けいる隙はそこだと、八体目が倒れた所で精神攻撃を乗せた催眠術を放つナハト。
 通常ならば届かず、弾かれているだろう。が、騎士の剣にて貫かれた頭には、文字通りの隙があるのだ。
「我を孤独といったものか。が、よし。後に残るが我のみならば、それもまただ」
 故に、残像を本人と認識し、破滅の災花を咲かせるヴァルギリオス。
 弱点を見抜かれた事に驚異と感じるからこその全霊の攻撃。残像から得た属性情報を反映させた武器を持たせ、オーラを変化させて耐え凌ぐことにだけ特化させた残像が、見る間もなく焼き尽くされていく。
 自己強化、限界突破、時間稼ぎ……どれもがそれ以上の破滅の威の上に潰されていくのみ。
 だが、それでも時間は稼げる。
 ナハト本人を確実に殺し、終わらせているのだと錯覚させられている。
 ならばと闇に潜み、迫る真実に気づけない。
 残像と武器が砕けて掻き消え、破滅の竜の吐息が終わる。
「孤独にしても、己覇道を歩む。そして、我が我を殺した先に何があるか。など、我は知らぬよ。気にも止めぬ」
 残滓と思い込む残像へと、語りかけるヴァルギリオス。
「いいヤ?」
 だが、全ては騙し討ち。
 闇に潜む叡智は、終わりさえ欺く術を知っているのだから。
『ALHIM TzBAVTh』
 深淵より召喚され、放たれるのは弱点属性に対応した無数の触手だ。
 炎には水を。などと生やさしいものではなく、それぞれに複数の弱点の属性と要素を持たせ、絡ませたものがヴァルギリオスの首を貫く。
 より具体的に。
 そして、より詳細で緻密に。
 欺き、騙し、紡いだ間隙へと刺さるナハトの一撃。
「既ニ、答えハ得たヨ」
 これがどういうものか。
 自らで自らを殺し合う、蠱毒がどういうものなのか。
 だが、それを教える義理はなく。
「もウ、終わっテおくんダ」
 自らの身から溢れる、産まれ持った光に意味をどう見出すか。
 その理由を知っても、そこに意味を持たせたのはナハトであり。
「終わりヲ呼ぶダけの君は、そレがいイ」
 明日を、優しき命を尊ぶ異形は。
 深淵より手繰る触手で帝竜ヴァルギレオスを貫きながら、口にする。
 真実と叡智をもたらすには、この竜は終わりへと傾きすぎているから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アネット・レインフォール
▼静
あの時…勇者の墓標で確かに感じた。
彼らの姿や息づかいを。

このまま約束を果たすのはいい。
だが、過程が最良ではない気がする。

…すまないな、帝竜。
やはり俺は凡才らしい。

理想は視えた――後は想い描くだけだ

▼動
先制には首の同士討ちを狙う。

葬剣を無数の鋼糸にし首に絡めて
相反属性等をぶつけ合う事でバリアを逆利用。
必要なら単車で旋回も。

折を見て過去の勇者達や戦い等を聞き
空へ雄叫びを以って詠唱。

先へ行きし同胞達よ!
たとえ全てが過去へ還ろうとも――
我々の魂が敗北する事は無い!

無限ノ絆、展開

過去の勇者達や義勇軍を無数に再現し一斉攻撃。
俺も霽刀を手に指揮しつつ挑む。

もし終局なら全員で剣を掲げ勝鬨でも。

アドリブ歓迎



 未だに息遣いを、その姿を。
 感じるからこそ、僅かな疑問が浮かぶのだ。
 これが果たして最良なのだろうかと。
 アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)が思い浮かべるは、かつての『勇者の墓標』。そこに確かにあった想いと、魂たち。
「どうして、我に挑まぬのか?」
 既に剣士の間合い。
 少なくとも駆け抜けば辿り着くその距離になって、なお踏み込まぬアネットへと帝竜ヴァルギリオスは問いかける。
「ああ、そうだな。……すまないな、帝竜。俺はどうやら凡才のようだ。最高の結末は見えても、自分ひとりで、その最良の過程を辿れない」
 だって未だに息づくのだ。
 鼓動のように、思いは脈打つのだ。
 このままに、かつての勇者たちとの約束を果たすのはいい。
 けれど、果たしてそれが最善と最良の過程かといえば、ああ、違う。ならばこうではと巡るアネットの思考と心。
「果たせないから、託された。受け継がれたから、ここにいる」
 なら、奇跡であれ、あるべきなのだ。
 目的は共に、帝竜ヴァルギリオスの討滅。
 その志を同じくする同志たち。
 何もできず、ただ応援して背を押すだけなど――。
「理想は見えた――後は思い描くのみだ」
「ならば、思い描いた刃を、現実に結んでみせよ!」
 竜の方向が世界樹の中を打ち振るわせ、三つの障壁を周囲に展開させる。心に浮かび、見えた理想の刃とやらでこれを切り崩してみせよと。
 だが、そこに突き刺さるのは蛇腹剣として伸びたアネットの葬剣【逢魔ガ刻】だ。銀翼の刻まれたそれは更に、すらりと鋼糸を伸ばし、複数のヴァルギリオスの首を絡め取る。
「ぐっっ」
 結界の反射によって肩口を斬り裂かれたアネット。
 決して浅くない傷だが、疾走の勢い乗せて葬剣を手繰り寄せ、張り巡らされた障壁に、異なる属性を持つ首を衝突させる。
 相反する能力を秘めるが故の自滅。
 開幕で暴かれたヴァルギリオスの弱点を利用し、結界の対消滅を狙うアネット。いうは容易いが、越えるには険しき道だ。
 薙ぎ払う竜の腕がその身体を打ち据え、弾き飛ばす。それでも離さなかった葬剣が、ついに竜の首をその障壁へと衝突させる。
 相反する属性。火と水、雷と土、光と闇が、それぞれ弾けて、結界を壊していく。
 完全に消滅せず残ったとしても、結界を成り立たせる力のバランスが崩れて、ばらばと崩さる障壁たち。
 対してヴァルギリオスは感嘆。これだけではないのだろう、と滲ませて。
「ほう。凡才といったのは、自らの力では成し遂げられないから、か。その非力さを言ったのか?」
 それだけではあるまいと、その巨躯でアネットを踏み潰そうとするその間際で。
 紡がれたのは、夢は想いか。
 確かにアネットはこの地で聞き届けた。
 かの地でも聞こえた、かつての戦いの慟哭を。
 折りを見て。隙をうかがい。そんな余裕ないからこそ、刹那に見えた光を手繰りよせる。
 それは過去から受け継ぎし、魂の絆か。
『奥式・無限ノ絆』
 紡がれる武人の経験と、幾星霜の年月を経て編み出された奇跡。
 武人だからこそ判る。
 共感し理解しあえるのだ。
 揺るぎない意志と信念にこそ、その無窮たる夢と絆は、奇跡を引き寄せるのだと。
「俺は凡才だ。勇者には劣る。……だが、彼らは、かつて、お前を封じた彼らは違う!」
 そこにまず顕れたのは剣だ。
 剣士たるアネットに続くように。そして槍が、盾が、弓が、杖が。
 武器だけではなく、それを握る手と、身体が。薄らと透けて見えるそれは、過去の勇者たちの姿に他ならない。
「ほう」
 再度、ヴァルギリオスが吐息を漏らす。
 見た顔だ。斃した相手だ。
 決着がつかず、封印という相打ちになった皆がここに。
 これは何とも。
「喜ばしい。かつてをも葬らねば、この身の枷となる記憶は終わらぬ故に」
 歓喜をあげるヴァルギリオス。
 対するかつての勇者達、その残照たる身は戦意を燃え上がらせる。
 再び、もう一度。
 叶うのならこの手で滅ぼすこと。
 望むのは勝利であり、滅びなどではないのだ。
 全滅したのは明日に託したからだが、明日にこの災禍の竜を残したことに悔いがないわけではない。
 だから感謝を。
 例えアネットの想像から産み出されたものだとしても。
 それは絶対の真実。アネットとて、自らの手でこの帝竜は斃すのだと想うのだから。
「先へ行きし同胞達よ!」
 吼えるは竜だけはない。
 烈士たるアネットもまた、虚空へとその想いを響かせる。
「たとえ全てが過去へ還ろうとも――我々の魂が敗北する事は無い!」
 負傷したアネットの身体を癒やす力もまた、過去から拾い上げられた、誰かの力のひとつ。
 諸手で構えた霽刀【月祈滄溟】を掲げて。
「だからいこう。全滅の過去を打ち破り、勝利の光を受けよう。俺たちは、勝ったのだと」
 決して、決して。
 相打ちなんて、認めてなるものかと。
 指揮として振るわれるアネットの一閃は、青の漣を帯びた滄溟晶を浮かび上がらせ。
 一気呵成にと突撃する勇者の残滓たち。
駆ける先達。刃振るう者はかくあるべしと果敢に斬り込み、ヴァルギリオスの鱗を斬り裂く夢幻の勇者。
 続く槍には烈風が纏われ、火炎の弾丸がヴァルギリオスの顔面で炸裂する。
「誠に喜ばしいぞ。だから、だから、人類は滅ぼす程の価値がある。我のように、自らをも滅ぼすものを内包しながら――同胞と共に、ここまで果敢に、挑み、戦い、そして過ごすものは!」
 疾走するアネット。狙うは帝竜ヴァルギリオスの喉笛――つまりは逆鱗。
「その傲慢さが竜ならば、それを受け入れられず抗うが人で」
 研ぎ澄まされた刃。
 それは何も、鋼としてだけではなく。
 幾度となく振るわれた技として。思いと信念と共に、受け継がれた武術だからこそ。
 帝竜ヴァルギリオスの逆鱗を裂いて、生命にも届く一閃を繰り出せるのだ。
「その為に戦うのが武人だ。一度、負けたとしても、その魂が潰えて終わることがないと知れ」
 奇跡の具現で負荷は甚大。
 アネットの身体の動きはすぐに鈍るだろう。
だが、その僅かな中だけでも。
 この勇者達と共に戦うという誉れの中で剣を振るおうと、漆黒の瞳に戦意を燃やす。
 この帝竜ヴァルギリオスの命、尽きるまで。
 剣掲げて、皆で勝ち鬨をあげるその時までと。
 振るう刃が、再びヴァルギリオスの肉体を斬り裂く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助
オブリビオンの界渡る力は残らず潰す
人々を守るため。災いを広げぬよう。
…そして何より
私を憎むモノが世界を越え、私の大切なひとを
決して奪いに来ぬように

火花のオーラ防御を体と大剣(黒剣)に。
攻撃は八首同時に此方を向けば来る
首、口の動きを見て真正面の直撃を避けるよう躱し
剣でブレスを切り裂きながら横へ駆け凌ぐ

竜の齎す終わりを拒むよう災花を裂き
黒剣に纏う力を防御から獄炎へ

鱗が固かろうと獄炎で熔けおとしたい
返り血から力を得て(吸血・生命力吸収)回復・力の底上げ

73の特大炎の矢で一番弱った首を狙うふりをして(フェイント
隙ができれば儲けもの。矢を一本に収束させ
八つ首の根元を貫き、更に体内を燃やし熔かす(二回攻撃



 目の前で動くは、終わりの災禍たる帝竜なればこそ。
人々を守るために。
 災いを広げぬように。
 この世界だけではなく、あらゆる世界、自らが大切とするものを奪われぬ為に。
「オブリビオンの界渡る力は残らず潰す」
 それは宣誓。
 陽光の如き長髪を靡かせ疾走する佐那・千之助(火輪・f00454)の唇から零れしもの。
 火花のオーラを全身と、手にする黒剣へと施しながら、佐那は帝竜ヴァルギリオスへと向かっていく。
 恐れを知らぬ訳ではない。
 それ以上に認められないのだ。
「我に挑む剣士の、なんと勇ましきことか。踏みにじる甲斐のあるものだ」
 八つ首が動き、佐那へと狙いを定める。
 放たれるのは破滅の吐息であり、如何なる属性と耐性をもっても凌ぎきれぬ終わりへの誘い。
 だから直撃を避ける。回避に全身全霊を尽くすのだ。
 幸い、度重なる攻撃で鈍り始めたヴァルギリオスの動きは捉えやすい。
 首、口の動きを見ながら真正面は全て避けて。
 けれど、どうしようもない破壊の奔流となったブレスが佐那を襲う。
「ぐっ……!」
 正面、直線上にいる事は避けた筈だが、四方八方より迫る全てを避けるのは不可能。かつ、追尾して迫るが竜の息だ。
 黒剣を振るってブレスを斬り裂き、横へと駆け抜けて避けるが、腕に、肩に、脇腹にと被弾。言葉通りに肉が消滅し、夥しい血が流れる。
「だが、おぬしが仕留めきれぬのもまた、事実」
 先制たる一撃で仕留めきれず、佐那の攻勢への隙を与えたのは変わらない。
 ヴァルギリオスのもたらす終わりを拒むよう、災花を裂きながら、黒剣に纏わせるのは獄炎。
 防御を幾段か落としたとしても、必ずやこの竜の鱗を焼き斬り、その身に刃を届けるのだと。
「いった通り。界渡る力は全て潰す。大切な者の為に」
 この破滅の竜が他の世界に及べばどうなるか。
 孤立して浮遊する群竜大陸だからこそ、犠牲は出ないのだから。
「ここで、おぬしこそを終わらせる」
 果敢に踏み込み、そして振るう獄炎を纏う黒剣の一閃。
 鱗を溶断しながら肉へと届き、生命と血を吸い上げる。脈打つような刀身は、その力を増した証。黒騎士の心を受け継いだ一振りは、生命を得るごとにその力を膨れ上がらせる為に。
「さて、燃えよ」
 紡ぐのは七十九にもなる特大の炎矢。
 火樹銀花。ひとつひとつを個別に操作する火の矢なればこそ。
 もっとも弱った首を狙うとみせて騙し、それらを一つに纏めて凝縮した劫火の矢を放つ。
 全力を込めた、火炎の一撃。帝竜といえど、タダですむものではなく、首の付け根へと深々と刺さり、肉体を焼く。
「そして、灰となれ」
 大切なものを守るために。
 決して奪われぬ為に。
 何より、憎しみが産まれる前に。
 突き刺さった劫火の矢が更に奥へと突き刺さり、内部で炸裂し、体内にも火を撒き散らす。
 全ては灰に。
 憎むもの。終わらせるもの。奪うもの。
 その境を作る為に、ごうっ、と火は揺れるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリス・ステラ
華乃音(f03169)と

「竜を体現するかのような威容です」

故に最強
けれど、彼も決して無敵ではない
それに、

「世界の危機を救おうというのですから、私達も決して見劣りはしません」

問いには首を横に振り、

「代償を含めて完全ならば、この形態こそ最も危険なのでは?」

先制攻撃は『オーラ防御』の星の輝きで受け止め『破魔』の力で退ける

華乃音を『かばう』
彼には攻撃に専念して貰わなくては困ります

一撃で輝きが弾けて星屑のように散るも『祈り』を捧げる

【親愛なる世界へ】を使用

「世界は残酷です。しかし、だからこそ美しい」

破壊と滅びをもたらす者よ
終焉を迎える覚悟があるならば、座してその時を待てるでしょう
あなたには覚悟が足りない


緋翠・華乃音
マリス・ステラ(f03202)と共に


「……どれだけ優れていようと、単騎で全てを変えられるほど戦場は甘くない」

そう、思っていたが。
これは――

「戦略的だな。放っておけば世界が滅ぶ」

本当の事を言えば、世界の趨勢や興亡になんて興味は無いけれど。
だったらなぜ戦うのか――心中で問うてみても、答えは出ない。

「……ブレスやバリアよりはマシだと思うか?」

初手は回避に全力を。

鋭く研ぎ澄まされた合理性。
最善を瞬時に選択する判断力。

即ち数理と条理と方程式。
見切り得た全ての情報が、回避という最適解を導き出す。

――成功すれば反撃だ。

構えた狙撃銃。
破滅の概念を内包した一撃。

呪縛に呪縛が重なる――が、代償としては易いものだ。



 まるで、花が散るように。
 周囲の全てが壊れて、破片となり、降り注ぐ。
 粉々に砕けたものは、更なる風に乗って、何処か遠くへと消えていく。
「……どれだけ優れていようと、単騎で全てを変えられるほど戦場は甘くない」
 そう思っていたのだと、緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は瞳を向ける。
 ただひとつ。ただひとり。
 それで世界を滅ぼすという、帝竜ヴァルギリオスがそこにいる。
「これは――戦略的だな。放っておけば世界が滅ぶ」
 静謐な声に揺らぎはない。
 だからこそ、真実、偽りなく思いを述べているのだと伝わるのだ。
「竜を体現するかのような威容です」
 幽かに甘い星が転がる音のような、静かな声はマリス・ステラ(星の織り手・f03202)だ。
 故に、いいや、重ねて最強。
 けれど、彼も決して無敵ではない筈。
 それはかつて封印され、今、まさに深き傷を負っている身体が示している。
 それに、と。
「世界の危機を救おうというのですから、私達も決して見劣りはしません」
 今、此処に立ち、戦っているのならば、それは疑いないのようの真実。
 云われて苦笑する緋翠。
 本当のことをいえば、世界の趨勢や興亡になんて興味は無いのだ。
 では、なぜ戦うのか。
 静かに、深く、幾度となく心中で問うてみても、答えは出ない。
 ひらりと蝶が舞うように。
 漂い、流れ、ここにいる。
 傍らには星の加護と光を伴うマリス。
 ただいるということ。ただあるということ。
 それが全てであり、他の疑問の方が大事なのだ。
 つまりは、光と闇の翼をはためかせ、火雷水の尾を、鱗には氷土毒の守りを重ねるその姿。
 ヴァルギリオスの完全体。破壊と破滅をもたらす為に、全ての力を纏い、止まらぬ血の流れを代償に零し続けている。
「……ブレスやバリアよりはマシだと思うか?」
 緩やかな緋翠の問いには、マリスはゆったりと首を横に振るう。
「代償を含めて完全ならば、この形態こそ最も危険なのでは?」
 では、何故挑むのか。
 やはり緋翠の中で応えは出ないけれど。
 だからと止まる訳がはない、帝竜ヴァルギリオス。
 翼から放たれる光と槍の弾丸は驟雨の如く。
 絶え間なく降り注ぎ、大地に穴を穿っていく。
 全力で回避する緋翠に対して、マリスはその身をもって彼を庇うのだ。
 オーラ防御で受け止め、破魔の力をもって退けようと。
 それこそ闇は抗い、斬るのではない。照らし、清め、祓うものなれば。
 が、光は悉くマリスの身を打ち据え、焼いていく。
 一撃ごとに纏う輝きが砕けて、弾け、星屑のように散りゆく中で。
 なお祈るのは、星と桜の加護を受けしマリス。
 緋翠には攻撃に専念し、集中して貰わねばならいのだからと、身を削り、光を散らせてなお、その思いをひとつに託す。
「主はあなたと共に」
 その祈りは、清く、尊く、そして輝き続けるもの。
 巡る星の流れのように、変わらぬもの。
 何をどうしようとも、不変なるものあるのだ。それを信じて、祈るからこそ、思いとは美しい。
 そのように思わせる、マリスの献身と光輝。
「世界は残酷です。しかし、だからこそ美しい」
 そう、変わらない。終わらない。
 移ろうばかりで、先ほど、分かれたものと、また出会う。
 流転する夜空の姿こそ、世界そのものだと。
 いいや、だから、その中で祈り続けて、信じ続けて。
 願いを果たすから、奇跡なのだ。
「破壊と滅びをもたらす者よ」
 その声は甘く、揺れて流れる星のように微かなれど。
「終焉を迎える覚悟があるならば、座してその時を待てるでしょう」
 変わらぬ夜空の中にあるように、変わることなく。
 けれど、百年と流れる裡に、ひとつだけ訪れる何かはあるのだと。
「あなたには覚悟が足りない」
 何れ訪れる、流星のようなか細くも確かな一筋を見いだせないのだと。
 残酷なまでに変わらぬ中で起きる、夢を待てないのが弱さだと告げる。
 ならば。
 戦う理由がわからない、緋翠はどうだろうか。
 来たる流星。星辰さえも変えてしまう、残酷な変化を待てるだろうか。
 或いは、埋まらぬ心をそのままに。いずれ、いずれと、佇めるだろうか。
 光と闇という破滅を雨のように、その身で受けるマリスのように。
 判らない。
 判らないからこそ、漂う明日が欲しいのだと、瑠璃の蝶は翅を揺らす。
「今は、ただあるものを」
 思考の中にあるのはふたつ。
 鋭く研ぎ澄まされた合理性。
 最善を瞬時に選択する判断力。
すなわち、即ち数理と条理と方程式。
 マリスに大半を庇われ、流れてきたものも回避しながら、構えるのは狙撃銃。必中の解答は既に、その弾丸へと込められいる。
「終わりの帝竜には、破滅の弾丸を」
 その概念を内包させて。
 自滅さえ引き起こすというのならば、避けられる道理もない。
 緋翠の身に呪縛が重なるが、代償としては安いものだと。
 運命の歯車ごと滅ぼす、破滅の弾丸が放たれる。
 敵が強力であればあるほど。
 運命という変わらぬ夜空のようなものさえ壊してしまう。
 破滅の流星として、帝竜ヴァルギリオスへと突き刺さるのだ。
 その身に、魂に、確かな亀裂を刻まれながらも。
 揺らぐ竜の身体は、己こそが世界に幕引きをもたらす破滅の星であると示そうと、大地を震わせる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セツリ・ミナカタ
桁違いの威容に微かに震える手足
だが目は逸らさず、抗い、打ち勝ってみせよう
奴を見つけ討ち果たすまで、終わるわけにはいかないのだから

オーラの守りを前に厚く
全てを避け切ることかなわねど
八つ首の向く先を見切り
できうる限り射線から外れ受け流すよう試みて
体の一部などくれてやる
致命傷でないのなら地獄の炎で補えよう
我が身の内の、憎悪に塗れた白き炎

初撃凌いだならUC発動
我が身を守る浄炎を纏って
多くの竜達と戦った蓄積を活かしつつ
首、牙、爪の動き、吐息の予兆に警戒しながら
お前の元へ駆け抜ける

これで最後ならば大盤振る舞いだ
……祈りを
貴石の全て、握る火明の先、燃え盛る焔へ注ぎ込んだなら
散華せよ、終わりの帝竜……ッ!!!



 微かであれ、その手足が震えることを。
 誰がどうして、咎められるだろうか。
 そこにいるのは帝竜ヴァルギリオス。
 桁違い、そして、存在としての格も違いすぎる。
 世界を滅ぼす。そんなお伽噺のようなことが出来るもの。
 他にいるだろうか。いたしても数えるほどだ。
 だが、虎眼石の瞳は視線を逸らさない。
 抗い、打ち勝ってみせるのだ。
 果たすべき目的があり、その為に、セツリ・ミナカタ(シャトヤンシー・f27093)は終わることなど出来ないのだ。
「そうだ。奴を見つけ討ち果たすまで、終わるわけにはいかないのだから」
 火明と名付けられた短剣を構え、浄化の火を灯すセツリ。
 オーラの守りを前方に厚く重ね、待ち構えるは破滅の竜の吐息だ。
 全てを防げない。
 そして、全てを避けるのもまた同様に。
ならばこそ、八つ首の向く先、その視線を見切る。どの向きにブレスが来るのか予測さえ出来れば。
 全ては避けられない。
 けれど、一部さえ避けられれば、それだけでいいのだと。
 そんなセツリの覚悟を前に、滅びの奔流と化して流れる災禍の吐息。
 オーラの守りが焼かれ、凍てつかされ、毒で蝕まれる。肉体の何処かかが消し飛び、或いは炭化して激痛が走る。
 だが直撃と致命傷さえ避ければよいのだ。
 前方に収束させたオーラも、動きを予測したのもその為。
 何処が著しい負傷をしたかと確認する間も惜しんで駆け抜けるセツリ。地獄の炎でそれを補い、奮い立たせて身体を戦いへと駆り立てる。
 そう、セツリの身の裡で渦巻く、憎悪の白き炎が、その身を支え、破滅の帝竜へと挑ませるのだ。
「恐れ、震え、かつ、駆ける。傷つき、倒れかけ、なお戦う」
 帝竜ヴァルギリオスが讃えるように言葉を紡ぐ。
「それは確かに勇者の姿だ。我と決着の戦いを挑むに値する」
「私の狙いはお前ではない。その過程に、宿敵を討ち果たす未来を滅ぼすというのなら、お前こそを先に滅ぼすというだけだ」
 発動したセツリのユーベルコード。
 それは浄化の炎を纏いし姿は、まるで修羅の如く。
 身に付ける貴石を対価に燃え盛る白炎は、気流を操りセツリを高速飛翔させて、ヴァルギリオスの翔け抜けさせる。
 迎え撃つ爪が、翼が、そして牙がセツリへと迫る。
 だが、セツリとて戦ってきた竜との経験がある。僅かな予兆を読み取り、紙一重で、或いは肉を裂かれながらも、更に接近する。
 もう距離はなく、肉薄するほど。
 元よりセツリの負傷は深い。長期戦など不可能なのだと、身体が理解している。
「これで最後ならば大盤振る舞いだ」
 祈りを込め、身に纏う貴石の全てから燃え盛る炎を生み出し、握る火明の切っ先へと注ぎ込む。
「散華せよ、終わりの帝竜……ッ!!!」
 振るわれる火明の刃が、帝竜ヴァルギリオスの身を斬り裂くと同時。
 炸裂する、白き浄化の炎。
 周囲を包み込む、閃光のように、辺りを白く染めるそれは、まるで黎明のようで。
 かつて迎えられなかった勝利という明日が来たかのように、光は広がるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
畏怖はある。
勝って後に戦うべき兵法の通じる相手でもないと分かる。
ですが――挑みたいとも思う。


結界に触れず、体勢を整える事を優先。

総体を【視力】以て捉え、攻撃動作と思えるものは【見切り】、先んじて回避。

十分な間合を離し、刀身一如となる集中が完了すれば
愛馬に【騎乗】し、帝竜目掛け疾走。

直前で跳躍し、渾身の斬撃を。

結界の内、2つは触れた"者"のみ害するなら、刀という物質への効力は弱い筈。
反射結界は【火炎耐性】で、刃を立てる一秒か二秒の間は耐えてみせましょう。

何よりそう信じ、絶対に斬り徹すと念じる事で
この【屠竜】の太刀は結界も割り、龍に絶対の威力を発揮する。

その首、八岐大蛇が如く断ってくれましょう。



 神話の如きその災禍の渦に、畏怖を感じることを認めよう。
 この戦争に勝って、後に挑むべき。
 そして、兵法の悉くが通じぬ相手だとも。
 だとしても。
「挑みたいと切に願うのですよ」
 鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)の胸の奥で沸き立つ鼓動がある。
 剣士としてこれほどの強者をこそ斬りたいという願いがあるのだ。瑠璃色の眸は細められ、怜悧に最強たる帝竜、ヴァルギリオスへと向けられる。
 敵を知り、己を知り、最後に振るう剣を知る。
「まるで神世の存在。ならばこそ、私の剣がそこに、辿り着くか否か」
 斬らねば判らぬ。
 試させねばならぬ。
 故に流れるは血と命。
 全ては、瞬く刃のひとひらに。
 それらは風のひとつ、吹き抜ける間に終わることなれば。
「――知りたいのですよ。だから、挑むのですよ」
 そこにあるのは正剣の遣い手にして、蒼瞑の剣鬼たる鞍馬の姿。
 するりと抜き放つ濤景一文字。持ち主の意に応じて、波涛の如き威を放つ。騎乗する愛馬、夙夜もその忠誠をもって、帝竜の正面より。
「……ほう。一騎打ちか」
「でなくば、何も知れぬ故に」
 気づいたヴァルギリオスが唸り声を上げ、三つの障壁を張り巡らせる。
「酔狂。或いは、求道の夢か。……斯様な勇者は、なんとも心躍る」
「全てを討ち滅ぼしてきた。だからこれからも。それが最強の所以と」
「然り。故に我は示させねばならぬ。不本意な決着など求めぬよ。その刃で斬れぬ身と示してくれよう。斬れねば、その身をこの顎で砕くのみ」
 相打ちなど。
 勝者のなき終わりなど。
 なんと虚しきことかと、空を見上げるヴァルギリオス。
 そこに嘘偽りはなく、求める破滅も、自らの手で勝ち取らせねばならぬと瞳が燃える。
 それは一太刀浴びせろという姿ではない。
 牙あり、爪あり、翼と尾ありて。
 その全てを以て、鞍馬の一太刀を砕くのだと判ったからこそ。
「然らば……駆けよ、夙夜」
 取っていた距離を愛馬の脚力で一気に駆ける鞍馬。
 総体を視力にて捉えながら、脈打つ想いと心を愛刀へと。刀身一如。この身と、握る刀は同じものなれば。
 突き進む姿はまるで帚星。
刹那に全てを身も心も魂を込めて。
 疾走からヴァルギリオの障壁へと跳躍する。
 全ては諸行無常。
 流れる儘に終わり往き、朽ちて、移ろうが定めならば。
「ひとときの刃に、映るものこそ」
 誠なれば。
「徒爾か、究竟か。確かめて頂こう」
 何よりも振るう斬撃を信じ、貫き、斬り徹すのだと。
 沙羅双樹の花の色は、この白刃に宿りけりと、破滅の彩の障壁へと衝突する屠竜の一閃。
 全てをただ一太刀に。それだけを念じ、祈り、信じるからこそ、神速の刃はするりと、三重からなるその障壁を一息に斬り伏せる。
 抜ければ如何なる効果があれど、岩も豆腐も、紙も鉄も同じこと。ましてや秒にも満たぬなら、剣戟のそれと何が違うのだ。
 恐れる事は何も無い。
 反射からなる斬撃が鞍馬の胸を袈裟に切れど、その眸は揺るがない。
 流れる血は、つまり、それほどの剣威をもつということ。
 ならばより、この太刀は竜さえ屠る絶技であると信じて疑わない。研ぎ澄まされた想いは、切っ先にさらなる苛烈さを宿らせて。
「その首、八岐大蛇が如く断ってくれましょう」
 竜無き世界で紡がれ、磨かれた羅刹の剣の極致。
 詐術か酔狂か。そのような問いを挟む間もなく。
 冴え冴えと三日月を描き、ヴァルギリオスの首の一つを切り飛ばす。
 翻る刃は血の赤さを振り払い、蒼瞑の剣鬼たる鞍馬と共に、次へと転ずる。
――残さず討ち尽くす。
 かの世界が、そうであったかもしれぬように。
「見事。だが、まだ残る。我のこの命は尽きておらぬぞ」
「故に、故に、まだ刃を繰り出せるのでしょう」
 剣威は衰えず、瞬く間もなく鞍馬は次なる一閃を繰り出していた。
「更なる高みへ、剣の極致へは未だ辿り着かぬ故に――いざ」
 まだ足りぬ。まだ上へと駆け上がれると刃が鳴くのだから。
 その為の相手がここにいるのだから。
 赤い血と、竜の轟きが世界樹の中で舞い、散り、斬滅の刃が閃く。
 二つ、三つと竜の首が落ちる。
 まるで続けて首を落とす椿のように。
 或いは、梅が零れ、牡丹が崩れるように。
 四つ、五つ、六つと斬首された竜の頸は、何と例えるべきか。
 返す間も、思案して迷う暇もなく。
 巡りて巡る。早く、迅くと、鞍馬の太刀は流れて舞うのだ。
 斬りして至り。至るから更に斬る。
 研ぎ澄まされる屠竜の太刀は、信じるからこそ凄絶な斬威を誇り、それを示すから、天さえ絶つほどの剣気を宿していく。
 これを詠い、名付けるならば何とするべきか。
 八岐大蛇、それを斬滅せし、速須佐之男命が振るう十握剣か。
 七つと斬り裂き、至る鞍馬の剣技こそ、神話の竜の尾より見出されし草薙剣と詠うべきか。
 知らぬ。判らぬ。
 振るわれる刃は、それら与り知らぬ所と、鞍馬は残る一太刀の為に構える。
「残す言葉は、如何に」
 刹那の静寂。
 挑みたいと思った相手に残る、唯一の頸に、問いかけて。
 越えたのだと、自負があるからこそ。
「……終わるならば」
 帝竜ヴァルギリオスの声は、紛れもない敗北を前にして、されど震えず。
 物静かに、けれど竜を屠る烈威を秘めた、鞍馬が濤景一文字を捧げ持たれる前で。
「我さえ終わるならば、世界も終わる。それを冥府より、骸の海より見届けよう。その刃が、何を終わらせ、斬っていくか、楽しみつつ」
「然らば、地獄の悪鬼と共に見るがよいでしょう。あなたのようなもの、悉く、そちらへとお送りします」
 放たれる刃はいっそ静謐。
 薙いだ刃は、帝竜の頸の悉くを斬り払い。
 音も無く、ヴァルギリオスという最強の竜を骸の海へと帰すのだ。
「根の国に流れつくほうが、あなたの為でしょう。何もかも終わらせて……など考えるものは、そちらにいるかもしれない」
 そこにいるものこそ、八岐大蛇という神話を屠りし神なれど。
「そう。対等に、共に並び立てるものが、そこにならばいるかもしれない。終わらなければ、いずれ、そういう者が辿り着くかもしれない」
 終わらなければ。
 続くのならば。
 いずれ、どのような夢と願いは叶うのだと。
 ならばなんとも。それこそ、今、試させねばならなかったのだというのは、鞍馬だけではなく、帝竜ヴァルギリオスもだったということなのだろう。
 戦うものの、常なのだと。
 ひゅんと三段に風切りて、濤景一文字が竜の血を払う。
 そこら産まれるものは、ないれども。
 この日、そして明日より、産まれるものは確かにある筈なのだから。
穏やかな竜胆の眸が、破滅の花が消えた世界樹の中を映し出す。
 ただ静寂。
 黎明に似た、穏やかさのみを残して。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月24日


挿絵イラスト