帝竜戦役㉕〜美醜の境目
●最も美しかったはずのモノ
質量を持つ雷雲の中を蠢くのは巨大な蛇のような姿をした帝竜だった。
稲光と轟音が響き渡る創生雷雲領域において、その長大なる体の全容は要として知れず。
「ええい、忌々しい!」
その言葉は雷鳴と共に響き渡る。
心底苛立たしげに紡がれる言葉は、どんな雷鳴よりも耳をつんざく。
「私はおそらく、並ぶ者無き程に美しい姿を持っていた。それを、このように醜き蛇の姿に産み落とすとは!」
それは事実であったかどうかはわからない。何せ再孵化によって記憶を手放してしまっているからであろう帝竜―――かつて、無限竜と呼ばれた『ワーム』は、それでも己の姿に不服を募らせるのだ。
「腹立たしい、忌々しい……だが……許してやろう。ヴァルギリオスの『再孵化』は恐らく、私と同じ能力。私は、ヴァルギリオスを死後数日で『再孵化』できる。つまり、私とヴァルギリオスのどちらかがいれば、私達は不滅。姿かたちと過去の記憶は、再孵化を繰り返す内に取り戻してゆこう」
それは恐るべき事実である。
帝竜ヴァルギリオスだけでなく、この帝竜ワームもまた『再孵化』という能力を持っているのだ。ならば、これを討たねばならない。
「そうと決まれば、助力は惜しまぬ。全てを喰らい、駆逐してやろう」
雷雲の沈み込み、一気に質量を持った雷雲を突き抜けて長大なる体が蠢く。
その姿、光景は、まさに天地開闢の時と同じものであったのかも知れない。
「私こそが、世界の全て。私に勝てるものなど、この世にはありはしないのだ……!」
●帝竜戦役
「お集まり頂きありがとうございます」
そう言って頭を下げて猟兵たちを出迎えたのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)である。
彼女は微笑み、猟兵たちの顔をそれぞれみつめる。
「創生雷雲領域に潜む帝竜『ワーム』を討ち果たして頂きたく、この場に集まっていただきました」
創生雷雲領域。それは質量を持った雷雲立ち込める群竜大陸の一角である。質量を持つ故に、その雷雲の上で戦うことになるだろう。雷雲の上は問題なく歩くことができる。
だが、この地に潜む帝竜『ワーム』はまるで大地を耕す蚯蚓の如く雷雲を長大なる体で持って掘り進むようにしてうごめいているのだ。
「まずは、この帝竜『ワーム』の能力から……薔薇の香気を帯びたブレスが放たれ、その中に含まれる邪なる心を増幅させる呪いに注意してください。これを受けてしまうと、受けた者を操る白い仮面に変形し、脱げなくなってしまうのです。これは猟兵であっても変わらぬ効果を発揮するようです……」
帝竜の全ては、猟兵に先制する能力を持っている。故に、このユーベルコードの危険性は言うまでもないだろう。
これに対する対策と防御。これがなければ、猟兵たち同士の戦いに陥ってしまう可能性もあるのだ。
「さらに自分自身の分身体を呼び出すユーベルコード。無数の雷を降らせることにより、生命体の存在を拒む雷雲の海と同じ環境へと変化させるユーベルコードと……隙のない能力を持っています」
自身の分身を呼び出す能力はこれまでの帝竜も持っていたものだ。だが、己の得意とするフィールドを強制的に作り出すのは厄介である。
「予知の内容ですが……どうやら、ワームは帝竜と同じ様な能力を持ち合わせているようなのです。これによってワームもまたヴァルギリオスと同等の脅威と見なしていいでしょう。これを打ち損じれば、また帝竜戦役を繰り返されてしまうかも知れません」
どうやら予知した光景の中に、そうと取れる光景があったのだろう。
『再孵化』―――この能力により、帝竜ヴァルギリオスは様々なオブリビオンを帝竜として再生してきたのだ。
これを止めなければ、この帝竜戦役は終戦を迎えない。
アックス&ウィザーズ世界の人々のためにも、一刻も早くこの戦いを終わらせねばならない。
「かの帝竜たちの企みを打ち砕いてください。どうか……」
どうか、よろしくお願いします。そう再びナイアルテは頭を下げ、猟兵たちを見送るのだった―――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『帝竜戦役』の戦争シナリオとなります。
創生雷雲領域へと進撃し、帝竜『ワーム』を打倒しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
それでは、帝竜戦役を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『帝竜ワーム』
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POW : ローズ・ブレス
命中した【薔薇の香気を帯びたブレス】の【中に含まれる、邪なる心を増幅させる呪い】が【対象を操る白い仮面】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD : 遺失魔術『ギガンティア』
【自分の分身体】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : ワーム・サンダー・ブレス
【無数の雷】を降らせる事で、戦場全体が【生命体の存在を拒む雷雲の海】と同じ環境に変化する。[生命体の存在を拒む雷雲の海]に適応した者の行動成功率が上昇する。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
須藤・莉亜
「その姿もわりと綺麗だと思うけどね、僕は。」
さてと、今回は僕が食らう番じゃないんだよねぇ…。お腹空いたって言ってる眷属がいるからね。
深紅を伸ばし、敵さんに固定する事で接近し取り付く。敵さんを盾にしつつ、分身体がこちらに攻撃し辛いようにしてみる事にしよう。
悪魔の見えざる手にはLadyを持たせて、分身体の目を狙って銃撃しといてもらって妨害を頼んどく。
敵さんらの動きをよく見て、こちらのUCを発動するまで逃げ回るとするかな。吸血して味見しつつ回復しとくのも忘れずに。
凌げたら世界喰らいのUCを発動。強化されたスーパー腐蝕竜さんに全力で攻撃してもらう。
あ、僕は腐蝕竜さんの方に避難しときます。危ないからね。
天地開闢の様相を呈する創生雷雲領域。
質量を持った雷雲は大地そのものであったことだろう。その質量持つ雷雲の中を蠢くのは長大なる帝竜『ワーム』
「やはり許せぬ……忌々しい……我の姿はこのようなものではなかったはずである……!」
それは助力を惜しまないと宣言していても尚、収まることのない怒り。
自身の本来の姿。その姿に関する記憶はない。だが、それでも帝竜『ワーム』の尊厳は、己の姿を違うものであると認識していた。
雷雲かき分け、それでもこの地に進撃してくる猟兵たちを打ち倒さんとワームは、その瞳を輝かせる。
見る者にとっては、それは美しき者であったのかもしれない。少なくとも―――。
「その姿もわりと綺麗だと思うけどね、僕は」
そう呟くように雷雲を大地にして、立つ須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)の姿は、長大なる者、ワームの前にして些かの怯みもなく見上げていた。
いつもであれば、敵さん……つまりはオブリビオンの血液を欲する彼。普段抑えている吸血衝動をぶつける相手が目の前にいるというのに、落ち着いた声色で見上げるのだ。
何故なら、今回、帝竜『ワーム』を喰らうのは莉亜ではない。
「お腹空いたって言ってる眷属がいるからね」
「―――吐かせ、猟兵! この世界に置いて我に敵う者などいない!」
帝竜『ワーム』の咆哮が響き渡る。それは圧倒的な轟音となって、雷鳴すらもかき消すように響き渡る。
その長大なるワームの巨躯と、さらに雷雲の中に潜むモノがいる。
蠢く姿は、帝竜であるワームと同等……いや、まったく『同じモノ』である。遺失魔術『ギガンティア』。それにより呼び出されたのは、帝竜『ワーム』の分身体。
この創生雷雲領域において、ワームと同じ姿のオブリビオンがニ体もひしめいているのだ。
「ほんと、領域の中にひしめきすぎて、すし詰め状態じゃない?」
軽口を叩きながらも莉亜は、領域内を蠢くワームたちの隙間を縫うように駆け抜ける。伸ばした赤い鎖、深紅が本体であるワームへと絡みつき、雷雲へと固定する。
一体を封じたが、それでも分身体を止めるには足りない。
「これで我を封じたつもりか!」
怒号のような咆哮が響き渡り、雷撃が雨のように降り注ぐ。だが、その雷撃はワーム本体を盾にするようにして立ち回る莉亜には届かない。
透明なる悪魔の見えざる手が手にしたLadyと呼ばれる白い対物ライフルを構える。放たれる弾丸は常に分身体を狙い続けている。
注意をそらす目的もあったが、彼にとって重要なのは時間であった。
「……僕の敵を滅ぼせ」
静かに眷属―――世界喰らい(ワールドイーター)が雷雲の力を奪い取り、集積していく。
その姿は、腐蝕竜。この雷雲の中で得られる力は雷撃となって放たれ続けている。この力を得た己の眷属である腐蝕竜は、今や通常の眷属の姿とは違う。
「言う成れば、スーパー腐蝕竜さんってやつだね!」
彼の号令に合わせるように腐蝕竜が飛ぶ。その空を舞う姿は電光石火。雷雲の中をかき分け、ワームへと迫る。
それはあまりの速さ故に弾丸そのものとなってワームの長大なる体を覆う龍鱗を砕いて、巨穴を穿つ。
それは全力と呼ぶに相応しき力だった。
ワームの絶叫が響く。それは己の体を醜いと評しておきながら―――。
「我が! 我が体に傷を! 傷を付けたな、猟兵―――!」
怒号じみた咆哮が響き渡る。その様子を莉亜は笑って腐蝕竜とともに、その場を離脱していく。
「あは、お腹いっぱいになったかな? ―――あれだけ大きいから、食べがいがあったんじゃない?」
眷属の満足度は伺い知れない。けれど、帝竜『ワーム』に盛大なる一撃を加えたのだ。今はこれで良しとしよう。
最初の一撃としては、十分すぎるほどだ。穿たれた巨穴を見下ろしながら、莉亜は再び笑うのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
グロリア・グルッグ
目標、創世雷雲領域の主『帝竜ワーム』!
雷ばちばちの強敵ですが、ここで確実に仕留めていきましょう!
敵の物理・雷攻撃には基本的に全力魔法で強化したオーラ防御を用います。
電脳魔術で攻撃の前兆を予測し回避したり、落雷を受けた場合は電撃耐性と覚悟で耐えましょう。
先制攻撃を凌げれば反撃開始です。
動画撮影用のドローンを召喚し、私の戦いを故郷の皆へと届けます。
戦場は違っても守るべき人々が見ている前で戦うのがエースってやつなんですよ。
強敵が相手なので相当苦しい戦いになりますが、歴戦の軍人っぽくクールに行くぜ。
応援で強化された戦車を華麗に操り、火力を増したミサイルをばかすか撃ち込んでドラゴン退治と参りましょう!
己をかつて美しき者であり、今は醜き姿と評する帝竜『ワーム』。
この創生雷雲領域において、その姿は雷雲かき分け蠢く巨大な蚯蚓の如き姿であった。だが、その長大なる姿も猟兵の初撃によって巨大な穴が穿たれていた。
痛みにあえぐというよりも、己の体に傷が付いたことに怒り狂う帝竜『ワーム』。
「おのれ……! おのれ! おのれ! 我が玉鱗に傷をつけたか! 猟兵! 許さぬ! 断じて許さぬ! この我の体に……傷を……!」
雷雲包む領域に置いて、無数の雷撃が雨のように降り注ぐ。それは生命体の存在を拒む雷雲の海へと姿を変える。
状況が一変した。
急変したと言ってもいい戦場の雰囲気に飲み込まれる猟兵はいない。
グロリア・グルッグ(電脳ハッカー・f00603)は、己が駆る星船電脳騎兵と共に雷雲ひしめき、雷撃降り注ぐ海のごとき領域を飛ぶ。
「目標、創生雷雲領域の主『帝竜』ワーム!」
彼女の駆る星船電脳騎兵のモニターのあちこちから警告音が鳴り響く。それは異常なる雷撃の雨と、己の機体をロックした反応を知らせる警告音だった。
長大なるワームの姿を捉えながら、グロリアの星船電脳騎兵は雷雲の中を飛ぶ。雷撃が狙いすましたようにグロリアの機体をうがとうと放たれるも、全力の力で張り出したオーラによってなんとか防げるようだった。
電脳魔術を駆使し、雷撃を予測し躱す。だが、今はそれで精一杯だった。
どれだけの雷撃にまで耐えられるのか。
「無駄! 無駄である! この世界において我に敵う者などいないのだ! 疾く、我の前から消え失せよ! 猟兵!」
ワーム雷撃は激しさを増す。オーラ防御を突き破って飛来する槍の如き雷撃を受けて、機体がきしむ。
「無駄―――無駄かどうかは! 私が決めることです!」
そう、グロリアの戦いとは常に故郷の船の命運を背負っての戦いであった。
己は槍であり盾である。
展開された電脳世界をラプラスを通してみつめる。その先にあったのは、紛れもなく己の敵。手にしたサンダーロッド……その契約を結んだ雷の精霊が雷撃を受けても尚、グロリアを支える。
彼女の心の一念は、負けられないという強い想いだった。
「エースの私が墜ちたら船が沈みますからねぇ、負けられないんですよ絶対に…!!」
それは彼女の覚悟。
機体から動画撮影用のドローンが飛ぶ。それはワームの雷撃を受け止めるためのものではない。
己の戦いを故郷の星船へと映像を送るためのドローンである。彼女の戦いとは、護るための戦いであると同時に、故郷の皆を鼓舞するためのものである。
「戦場が違っても護るべき人々が見ている前で戦うのが、エースってやつなんですよ!」
その気迫は、帝竜『ワーム』をして理解しがたき力であった。
何故なら、この創生雷雲領域は、すでに生命体を許さぬ雷雲の海である。
だというのに、あの猟兵は何故未だに生存していられるのか。それは、グロリアが生まれた世界が常に、この雷雲の世界と同様に生命体が生きるのに厳しい世界であったからだ―――!
「さあ、サーカスの時間です。でも、その体では踊ることもできないでしょうが―――!」
エンジェル。そう名付けられた機体。その大天使の名を関したミサイルランチャーが映像を見た故郷の星船の人々の声援を受けて、あり得ない火力を持ち得るのだ。
放たれるミサイルは、雷雲の先にきらめく星星の数よりも多き弾頭となって長大なるワームの体を散々に焼き尽くさんばかりに爆発を引き起こす。
その爆風の中、グロリアは機体と共に飛び出す。故郷の星船、その映像を見ていた者たちの歓声がグロリアの耳に届く。
歴戦の軍人のようにクールにしていたかったが、それでも彼らの声を聞けば、やはり微笑んでしまうのだ。
常勝不敗の撃墜嬢(エース・パイロット)の戦いぶりは、正しく遠き地にある故郷をさらなる鼓舞でもって包み込むのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
うーん元の姿より今の姿のが綺麗ってよくある話だよね?
このワームがそうとは限らないけどさ。
でも言葉だけでここまで酷い性格とわかるのも珍しいよね。
…こんなの世に解き放つ訳にはいかないし、頑張ろう。
基本は小柄な体活かしつつ雷雲を利用し姿と気配隠しながら隙を窺う。
分身体含めた視覚から逃れるのは難しいだろうけどできるだけ走り回り直撃避ける。
大きな体で私みたいな小さいのを狙うのは難しくないかにゃーとか煽ったり。
もし追い込まれたら私への攻撃の瞬間目覚まし時計爆発させ催眠術、一瞬意識を爆発へと逸らしその隙に窮地脱出。
準備できたらUC発動、竜の瞳から行動予測しその眼に一撃喰らわせてやるね。
※アドリブ絡み等お任せ
創生雷雲領域において爆発の嵐が吹き荒れる。
それは猟兵の放った攻撃によるものだった。雷撃が、この領域を包み込んだとしても猟兵の苛烈なる攻撃は止むことはない。
のたうつ長大なる体は雷雲の中にあっても尚、その姿を明確に浮き彫りにするほど強大でもあった。
「ぐぬぅぅぅ! 我を! 我の体を傷つけるな―――! 我が玉鱗なるぞ! 不敬者め―――!」
帝竜『ワーム』の怒号の如き咆哮が鳴り響く。それに呼応するように雷雲から雷撃が降り注ぎ、それはまるで雨のようであった。しかし、それはもはや嵐そのものであり、光が領域全てを照らし、目が眩むほどであった。
そんな領域にあって、再びワームの巨躯の分身体が雷雲の中を蠢く。
未だ猟兵は健在であり、続々とこの場に集結しつつある。ここで手をこまねいていては、帝竜ヴァルギリオスに助力するどころではない。
「うーん、元の姿より今の姿が綺麗ってよくある話だよね?」
小さなケットシーが、雷撃閃く領域に現れる。騎士然とした帽子の羽根が嵐の風を受けて揺れる。男装の麗人……ケットシーであるクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)の藍色の瞳が帝竜『ワーム』と分身体の長大なる姿を見据える。
「我の姿を侮辱するか、猟兵―――!」
ワームの怒号が響き、分身体であるワームが雷雲をかき分けてクーナへと迫る。
だがクーナは少しも怯えることはなかった。この体はワームと比べても、他の猟兵と比べても、小さな体躯であろう。
いつだってそうだ。
彼女が立ち向かう敵は常に彼女よりも大きい。けれど、それが彼女の足を止める理由にはなっていない。
「キミもそうだとは限らないけれどね。でも、言葉だけで此処まで酷い性格と分かるのも珍しいよね」
その小さな体をワームは取られられない。雷撃による攻撃も、クーナの身のこなしの前には意味をなさない。
躱し続け、その小さな体である利点を最大限に活かしながら彼女は雷雲領域を駆け抜ける。
「……こんなの世に解き放つ訳にはいかないし、がんばろう……ふふ、キミ、そんな大きな体で私みたいな小さいのを狙うのは難しくないかにゃー?」
クーナの煽りは、その体躯と相まってワームの逆鱗に触れたようだった。
体の大きさは、その力の大きさと比例する。だが、クーナのように小さき者から恐れられることはあっても、煽られることなど終ぞなかったのだ。
だからこそ、その不敬―――。
「―――万死に値する! 小さい獣よ!」
万雷の衝撃を以て、雷撃がクーナを襲う。
鈍色の懐中時計が宙へと放り投げられる。瞬間、衝撃を受けた懐中時計は爆発し、ワームの眼前に弾けた。
それは一瞬の空白であった。ワームにとっては長い空白の時間。己の意識全てが爆発へと向けられ、それ以外の全てが瞳の中より消え失せた。
そして、茫然自失となったワームの眼前に再び現れたのは―――。
「それはもう視てるんだよ。残念だろうけどね」
『それ』とは騎士猫は終焉を識る(スコアリーダー)ことである。
彼女の瞳はすでに、帝竜『ワーム』の心と、辿るであろう終焉を見透かす。クーナの瞳に映るのは骸の海へと霧散し還っていく終焉。
それが帝竜『ワーム』に約束された終焉である。それは必定。クーナの藍色の瞳が見た変えがたき運命である。
そして、彼女の手にした白雪と白百合の銀槍―――ヴァン・フルールが無防備にも見開かれた帝竜『ワーム』の眼を刺し貫き、穿つ。
一瞬の間。
それは小さきもの、クーナ放った騎士の一撃。それがワームの眼を完膚なきまでに貫いたのだ。
絶叫じみた苦痛にあえぐような咆哮が響き渡る。小さき騎士猫は華麗に宙を舞い、白き羽飾りの帽子を目深にかぶり、騎士の返礼を以て、彼女の功と為したのだった―――。
「―――キミの終焉は、もう決まったよ」
大成功
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メイスン・ドットハック
【WIZ】
帝竜にしては策を弄するのが好きなようじゃのー
じゃけど悪だくみもここまでじゃのー
先制対策
揚陸艦ロストリンクに搭乗して参戦
電脳魔術で特大避雷針を構築、さらにそこに誘導する電磁フィールドを展開し、雷を集め拡散させる
また電脳AIによる、雷の軌道予測・制御回避を行わせ、危険な雷や雷雲を避ける
回避だけではなく、ホログラムデコイを撒いて攪乱する
先制後はUC「未知の夢よ、それは踏破する為にある」を発動し、自身の雷撃に対する耐性を上げると共に、空間把握を開始
雷雲を空間振動で吹き飛ばし、空間圧縮で竜鱗を握りつぶし、隙ができたところを空間断絶で肉体を斬り裂く
その傷を艦の兵装を持って一斉攻撃
アドリブ絡みOK
帝竜『ワーム』の咆哮が雷雲に轟く。
それは猟兵の一人が放った槍の一撃により喪った片眼の痛みによるものであった。苦痛にあえぐ、その咆哮は次第に憤怒へと変わる。
「我の玉鱗だけでなく、眼までも傷つけるとは―――! わかっているのか! 我こそが世界! 我こそが全て! だというのに何の価値もわからぬ猟兵風情が―――!」
『再孵化』。己を不滅と謡う能力があるからこそ、絶対の自信を持っていたワームであるが、猟兵ごときと侮った相手に己の体を傷つけられるのは我慢のならぬことであった。
断じて許せぬ。雷雲の中に蠢く長大なる最も美しき者であった自身の姿。蛇の如き姿ではあるが、元の姿を手放した記憶と共に思い出していけば、『再孵化』によって取り戻すことも可能である。
だが、それとこれとでは問題が違う。
「我こそが至高にして最高の帝竜! 我の美しさを取り戻す礎でしか無い猟兵どもが―――!」
ワームは怒りに任せて雷撃を放つ。それは雨のごとく創生雷雲領域の質量在る雷雲を貫き、それでもなお、生命体の存在を拒む雷雲の海へと変えていく。
そんな中で航行するのは、ワダツミ級強襲揚陸艦・亜種『ロストリンク』。
揚陸艦としては小型の部類に入るそれは、電脳魔術の運用に長けた艦である。
「帝竜にしては策を弄するのが好きなようじゃのー。じゃけど悪巧みもここまでじゃのー」
メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)が艦橋で電脳魔術を展開しながら、眼前に迫る長大なる帝竜『ワーム』の姿を捉えていた。
展開された電脳魔術は特大避雷針を構築する。
さらに電磁フィールドを展開し、雷雲の海にて放たれ続ける雷撃を収束し、避雷針へと誘導するのだ。
誘導された雷撃は即座に拡散させられ、航行するロストリンクへと迫ることができない。
「我の計画を悪巧みと評するか、猟兵―――! 崇高なる我を前にして、その様な物言い! 不敬である!」
ロストリンクの船体を襲う雷撃。避雷針へと誘導されなかった強烈な雷撃がロストリンクの船体を穿つ。
だが、穿たれたと思った船体はホログラムドコイ。これもまた電脳魔術により生み出された実体を持たない囮である。
「なに―――、幻、だと?」
ワームの雷撃は、尽くがホログラムデコイへと吸い込まれていく。
全てがデコイ。ならば、本体はどこに、とワームが隻眼となった眼で雷雲の中を目まぐるしく探る。
だが、その瞳がついぞメイスンの乗艦せしロストリンクを捉えることはできなかった。
「それじゃちょっとばかし、遊ぶとするかのー。空間把握開始じゃ」
彼女のユーベルコード、未知の夢よ、それは踏破する為にある(ドリーム・レボリューション)が発動する。
それはこの生命体を拒む雷雲という環境において、高速遊泳する電脳虚数体へと姿を変じるユーベルコード。
己自身が電脳虚数体へと変ずることは電脳魔術に長けたものでなければ、視認することすらも難しいだろう。
「さーいくけぇのー! 覚悟するんじゃー!」
すでにメイスンの視界にある全ての雷雲は彼女の把握した認識の中にある。迫りくる雷撃は、ロストリンクから観測されるデータを元に機動予測など容易いもの。
虚数体と変じたメイスンの手が掲げられる。
雷雲が一気に開ける。それは空間振動によるものだ。吹き飛ばされた雷雲にあるは帝竜『ワーム』の巨躯。吹き飛ばし晴れた雷雲。その空間そのものを圧縮するようにワームの龍鱗を握りつぶすように砕く。
再びワームの絶叫じみた咆哮が響く。
「ぐあぁぁぁ! 我の! 我の玉鱗ぞ! 我の体を傷つけるな!」
だが、それで終わるわけがない。この空間全てを把握する虚数体にとって、あらゆる空間が彼女の武器と成るのだ。砕けた龍鱗。圧縮した空間を、今度は容易く断絶し、その肉を引き裂く。
鮮血じみたワームの体液が飛び散り、雷雲が再び体を覆っていく。
「今更遅きに失するというやつじゃー! 全砲門開けー! いっせ射撃よーい! っ撃てー!」
空間断絶により開かれた傷口目掛けて雷雲に控えていたロストリンクに搭載された火器が一斉に火を噴く。
その長大なるワームの体を爆風と閃光が包み込み、その体を容赦なく灼く。その光景は、雷雲ひしめく中にあって雷撃も眩むほどの閃光となってきらめくのだった―――。
大成功
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ニィエン・バハムート
その姿の何が不満なんですの!!
凄くカッコいいのに!
この贅沢者!!
先制対策ですが分身の攻撃も基本的にはブレスのはずなので薔薇ブレスには全身から【衝撃波】を放ち対応。サンダーブレスには私自身も雷【属性・範囲攻撃】を放つことでできる限り相殺しますの。相殺しきれない分は【激痛耐性】で耐えます。
この戦場自体には翼による【空中戦】とドレスによる【環境耐性】で適応します。
隙ができたらUC発動。発動したが最後、世界の敵は自らの内側から生じた大地震に【蹂躙】されることでしょう。
あなたが裁きを下される理由はたった1つ!!
その羨ましいことこの上ない姿に『醜い』だなんて文句をつけたことですの!!
数多の閃光が戦場となった創生雷雲領域に瞬く。
それは火砲から放たれた爆発であり、帝竜『ワーム』の長大なる体を焼き尽くさんばかりの勢いで包み込んでいく。
龍鱗は穿たれた穴から、その傷口を広げるが如く焼き焦げる。その長大なる姿故に未だ全容はわからぬ巨躯。
それでも確実に帝竜『ワーム』は消耗され続けていた。
「我を追い詰めたつもりか、猟兵―――!」
その咆哮は隻眼となった今もまだ健在である。傷を穿たれて入るものの、ワームの己への絶対の自信は揺らがず、『再孵化』を繰り返すことによって取り戻さんとする、かつての己の美しき姿への執着があった。
「その姿の何が不満なんですの!!」
しかし、その美醜の価値観に異を唱える者もまた猟兵である。ニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)の声が雷鳴轟く戦場に置いても、よく通る声で響き渡るのだ。
「凄くカッコいいのに!この贅沢者!!」
ニィエンの気迫に一瞬気圧されそうになる帝竜『ワーム』。美醜の価値がそれぞれのものであるというのなら、ワームの持つ美の価値観もまた、一つの形である。
今の姿を己は醜い蛇の姿と評したが、目の前の猟兵は違うようだった。
美醜の価値観が違うのならば、互いに歩み寄る……そんなことはない。価値観と価値観とが違う時、あるのはどちらかを尽く滅ぼさんとする根源的な争いしか生み出さない。
相互の理解など不要である。
「黙れ! 猟兵……我の美醜を決めるのは我のみ! 世界が我である以上、美の絶対は我である!」
雷鳴轟き、雷雲の中にもう一体のワームの分身体が現れる。それは雷雲の中で蠢き、二体のワームの口蓋が開く。
放たれるワームのブレスはニィエンへと迫るのだが、薔薇舞う衝撃波をニィエン自身が放つ衝撃波によって相殺する。
「言うことまで、いちいち! 本当に贅沢者過ぎますわね! 自分の恵まれた姿をもうちょっと顧みては!?」
それは裂帛の気合と同じものであっただろう。
彼女自身が竜王バハムートに憧れるのと同じ様に、長大なるワームの姿は彼女にとっては美しきものに映ったのだろう。
だからこそ、その美しさを否定することは許せない。
雷撃轟く空をニィエンは羽撃く。その翼を広げた姿は美しかった。
だが、帝竜であるワームにとって、美しさとは己自身のことである。己以外のものに美しさを感じることなどあり得ない。あってはならないことである。
「我の頭上を征くか! 天より我の上をゆくものなどあってはならぬ! 我の頭上にあるは天のみ!」
雷撃がニィエンを撃つ。だが、ニィエンは怯まない。
「私の審判が終わる時、竜王の裁きは下される…バハムート・ジャッジメント!」
彼女にとって雷撃の激痛など、恐れるに足らない。
ニィエンの心の内側は今、まさに荒れ狂う嵐のようであった。彼女のユーベルコードの輝きが、その心情を吐露するようであった。
ナマズのグラグラ大地震Ver2.0(ナマズノグラグラダイジシンバージョンツー)。それは、ニィエンが世界の敵と定義する存在の内部から発せられるもの。
ニィエンにとって、ワームは世界の敵である以上に、己の美への冒涜を行う許しがたい敵である。
「あなたが捌きを下される理由はたった一つ!!」
何を、とワームが狼狽えた気配があった。尋常ならざる気配。そして、己に何かをしたのだとわかるほどに、ワームの長大なる体の内側から揺れ動く感触。
そう、ニィエンのユーベルコードは、その適正存在の体内にて、全てを破壊する大地震を引き起こすのだ。
「その羨ましいことこの上ない姿に『醜い』だなんて文句をつけたことですの!!」
そう、彼女にとって長大なる巨躯は憧れそのものである。
その姿を醜いと評するワームとの美醜は相容れぬもの。
相容れぬ者同士が出会った時、互いのどちらかが破滅することでしか決着は起こり得ない。
故に。
―――帝竜『ワーム』の内部より引き起こされた大地震の破壊の力は、帝竜『ワーム』の内部をずたずたに引き裂き、それでも飽き足らずに破壊の限りを尽くすのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
ノイシュ・ユコスティア
●対ユーベルコード
手数を増やすつもりか…
分身体が現れた後、その敵の攻撃をうまく回避(またはダメージを極力抑える)
体勢を立て直して距離を取り
こちらもユーベルコードを使わせてもらう!
2対2なら五分…とはいくはずはないけれど、簡単には倒れない!
騎士には前衛で攻撃してもらう
僕は彼の後ろに立ち、ロングボウで攻撃する
戦闘を有利に進めるため、狙えるなら急所と思われる部位(目など)を狙う
あとはひたすらに矢をその身に射ち込むだけだ
彼が攻撃を受けそうになったら庇う
前に出てダガーで攻撃
「主といっても、ここでは相棒。
先に倒れてもらっては困るよ。」
僕の攻撃がどこまで通じるか…?
●ソロ希望
技能は適当に拾っていただければ
質量を持つ雷雲を揺るがすほどの振動が響く。
それは帝竜『ワーム』の体の内側から響く第自身の如き振動であった。すでに隻眼へと傷を負い、長大なる体へと穿たれた穴は猟兵によるものだった。
さらにその巨躯の内部を破壊し尽くす振動によって、帝竜『ワーム』は咆哮する。それは怒号であった。
「どこまで猟兵は我を愚弄するか―――! 我は並ぶべきもの無き美しき者! 我の玉鱗を傷つけるなど、あってはならぬことである!」
生前の記憶の残滓がそうさせるのか、帝竜『ワーム』は殊更に己の美醜を口にする。
かつて在りし、己の美しさと、今ある己の姿の醜さは耐えられるものではないのだろう。だからこそ、帝竜『ワーム』は求めるのだ、『再孵化』を繰り返すことによって得られる、己のかつての美しさを。
「我は天にして一つ! 我に並び立つ者など我のみ!」
帝竜『ワーム』の分身体が雷雲の中で蠢く。それはまるで蚯蚓の如き姿ではあったが、長大なる体はそれだけで脅威であったことだろう。
「手数を増やすつもりか……」
ノイシュ・ユコスティア(風の旅人・f12684)は放たれる雷撃を躱しながら、質量を持った雷雲を駆け抜ける。一体よりニ体。その放たれる雷撃の苛烈さは言うまでもない。
一旦態勢を立て直すほかないのだが、この雷撃の嵐は、猟兵に必ず先制を取る帝竜にとって一人でかいくぐれるほど甘いものではなかった。
「こちらもユーベルコードを使わせてもらう!」
ノイシュのユーベルコードが輝く。主を守る騎士(ガーディアンソウル)によって呼び出されたるは、聡明で勇敢な騎士マクシムス。その姿は主を護るための決意に満ち溢れていたことだろう。
「2対2なら五分……とはいくはずないけれど、簡単には倒れない!」
騎士マクシムスが雷雲を駆ける。それに付随するようにノイシュもまたロングボウを構えて走るのだ。
それは彼ら自身が己の役割をしっかりと把握し、心得ているがゆえの連携であった。
「主。すでに数多の猟兵が攻撃し、破壊した場所にこそ追い打ちを掛けるのが定石かと」
騎士マクシムスの言葉にノイシュも同意を示す。すでに隻眼へと成り果てた帝竜『ワーム』の傷口は深い。ならば、そこを狙っていくのも悪くはない。
矢をつがえる。後はひたすらに矢を打ち込んでいくだけだ。
騎士マクシムスの盾が雷撃を受け止める。だが、それだけではなく帝竜『ワーム』の巨大な爪が彼を狙う。
それを受けてしまえば、騎士とてひとたまりもないだろう。
「主といっても、ここでは相棒。先に倒れてもらっては困るよ」
騎士マクシムスをかばうようにノイシュは前に出る。手にしたダガーでどこまで自分がやれるかわからない。
わからないが、だからといって己が前に出ない理由にはなってない。猟兵たる己の膂力で持って巨大な爪をダガー一本で受け止め、凌ぎ切る。
「さあ、戦いはまだまだ始まったばかりさ、力を貸してくれるね、相棒?」
再び騎士マクシムスとノイシュは付かず離れずに帝竜『ワーム』へと攻撃を加えていく。矢を放ち、他の猟兵たちが付けた傷を広げるように重点的に矢を放っていくのだ。
その戦いぶりは、帝竜よりも小さき姿の人間が戦いを挑む御伽噺そのもの活躍ぶりであった―――!
大成功
🔵🔵🔵
シズホ・トヒソズマ
避ければいい、とは思いますが敵は格上ですからね
万一の予防はしておきます
転移前にユングフラウ内に本来の着用者を隠し
リキッドメタルを人型にし◆変装させそこにマスクとして被さり
人間のように偽装します
クロスリベルの効果で反射と移動力を強化し大技を回避
回避が無理ならデザイアキメラのバリア◆オーラ防御
人形なら邪悪な心はそもそも無いので仮面は付かない筈
操作者のこちらに白仮面が付いてきたならマスクに付く前に
リキッドメタルの人型を解除
白仮面を包むようにリキッドメタルを変形させ封じます
人形に付いて来たら別の人形で白仮面を破壊
着用者に合体しUC発動
敵のほぼ零距離に巨大な宇宙船を転移させ鋭利な船首で◆串刺しにします
帝竜『ワーム』の長大なる巨躯に射掛けられた弓矢の数は、あまりにも膨大であった。それが数多の猟兵たちの攻撃にさらされたワームに巨躯に穿たれた傷を広げんと打ち込まれ続けたのだ。
「愚かである! 我は帝竜『ワーム』! 我等は不滅である! 『再孵化』の能力を持つヴァルギリオスと我が居る限り、帝竜は不滅である。ならば、汝ら猟兵の戦いは全て無意味である」
そう、ヴァルギリオスとワームのどちらかが残る限り、帝竜戦役が終わったとしても再び『再孵化』により蘇ってしまうのだ。これほどに堂々巡りな戦いもないだろう。
だが、それでも猟兵たちは抗い続ける。その折れぬ意志に帝竜『ワーム』は苛立たしげに咆哮するのだ。
薔薇の香気を帯びたブレスが、その口蓋より放たれ質量を持った雷雲の中で充満していく。
それは浴びた者の心の内にある邪なるものを増幅し、白き仮面によって操るユーベルコードである。
それを受けようものならば、猟兵と言えど邪念ある者には覿面効果を発揮することであろう。
だが、同じく仮面としての生命を持つヒーロー・マスクであるのならばどうであろうか。
「良ければいい、とは思いますが敵は格上ですからね。万一の予防はしておきます」
シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は転移する前に己であるヒーローマスクの装着者をアイアンメイデン型の戦闘人形の中へと隠す。
装着者が心をもつ以上、あの薔薇の香気を帯びたブレスを浴びせるわけにはいかないのだ。
ユングフラウと呼ばれたアイアンメイデン型戦闘人形と離れてシズホはリキッドメタルを人型へと偽装する。
そこに本体であるヒーローマスクがかぶされば人間のように見えるだろう。
「我の邪魔をするものは、この天の下において断罪してくれる!」
帝竜『ワーム』の放つブレスが雷雲の中に充満する。その中をシズホは駆け抜ける。クロスリベル―――巨腕型強襲人形。その逆反の句の十字架を再現した装置を持つ強化人形により、シズホは反射と移動力を強化し、ブレスを躱し続ける。
だが、それでも薔薇の香気を持つブレスは人形やシズホ本体を追いかけますように、白き仮面へと変じて意識を奪おうとするのだ。
「囮に食いつくのを待つなんて性には合わないですが」
戦闘人形とリキッドメタルの人型、それぞれに白き仮面が食いつく。両者が互いをカバーし合うように迫る白仮面を互いに破壊し、帝竜『ワーム』の攻撃をしのぎきるのだ。
「銀河を支配する頂点なる過去、我が力となりて宇宙を駆け全て貫く船を呼ばん!」
凌ぎきった瞬間、ユングフラウ内から射出された本来の着用者と合体を果たしたシズホのユーベルコード、幻影装身・極:星海の玉座に座す皇帝(アームドフォーミュラミラージュ・リスアット)が輝く。
それは、外宇宙からワープしてくる『黒き槍の船』そのものである。距離はすでに詰めてある。
「この距離で外すわけがないですよね……ゼロ距離で―――」
ワープしてきた『黒き槍の船』その鋭利なる選手が長大なる『帝竜』ワームの体を杭で打ちのめすように串刺しにする。
それはスケールの違う光景に映ったかもしれない。黒い槍の如き宇宙船が長大なるワームへと打ち付けられ、その身を穿つのだ。
「これが、私達の力です―――!」
大成功
🔵🔵🔵
パル・オールドシェル
僕の前でワームを名乗ろうなど、如何に準フォーミュラ級のオブリビオンと言えど見過ごせません。
要らぬ風評被害を撒き散らされる前に仕留めさせてもらいます!
生命体を拒む雷雲ならば、生き物でない僕らに有利とも取れます。
召喚したM.T.Rsを輸送艦に詰め込んで戦地に向かいましょう。雷撃を受けて船が沈んでも構いません。それこそ望むところ。
適当なところに艦を降ろして歩兵ドロイドたちと一緒に作業開始です。
艦のジェネレーターを多脚戦車に接続、ついでに雷雲にもケーブルを垂らして電力を失敬しちゃいましょう。
人類の技術が生んだ僕ら機械の兵団が、竜の雷を以て人類の時代の存続を示します!
レーザーキャノン、撃て――ッ!!
黒き槍の如き宇宙船の船首が長大なる帝竜『ワーム』の巨躯へと突き刺さる。
それはまるで槍が蛇をうがったかのような光景であったであろう。帝竜『ワーム』の咆哮が響き渡る。
何もかもが美醜によって成立するのであれば、かの帝竜にとって、現状は正しく醜き抵抗そのものであったのかもしれない。
「我は帝竜『ワーム』なるぞ! 我の力を何故恐れぬ! 何故怯えぬ!」
創生雷雲領域において、その長大なる体は質量を持った雷雲の中で蠢く姿は、恐怖を駆り立てたものであったかもしれない。
だが、帝竜『ワーム』が対峙するのは、猟兵である。彼らは恐れを知りながら、恐れ知らぬ戦闘者である。
「僕の前でワームを名乗ろうなど、如何に準フォーミュラ級のオブリビオンと言えど見過ごせません」
パル・オールドシェル(惑星の守り人・f10995)は創生雷雲領域の質量を持った雷雲の上に立ちて、その姿を現す。
対峙するのは巨躯である帝竜『ワーム』。その咆哮が轟けば、パルのウォーマシンたる体にもビリビリと衝撃が走るほどである。
だが、この身はウォーマシンである。少女の姿をしていたとしても、彼女は戦う者である。
「ほざけ! 猟兵風情が我等帝竜に意見を弄すか!」
帝竜『ワーム』の雷撃が雨のように雷雲領域を穿ち続ける。それは生命体を拒む雷雲の海へと周辺の地形を変える。
この領域において、この環境に適応できるのは帝竜であるワームのみ。故に、この地においてワームは無類の強さを誇るはずだった。
もしも、それがまだ雷を人が恐れる時代であったのならの話だ。
「要らぬ風評被害を撒き散らされる前に仕留めさせてもらいます!」
彼女のユーベルコードが輝く。Control:M.T.Raiders(マルチレッグタンク・レイダーズ)により、呼び出されたのは複数の随伴歩兵ドロイド。そして、彼らが随伴する無人多脚歩行戦車である。
彼らは当然のように絶縁処理が施され、雷撃を無効化する。パルは魔改造施された高速輸送艦へと彼らを搭載すると長大なる巨躯を誇るワームへと立ち向かう。
「生命体を拒む雷雲ならば、生き物でない僕らに有利と言えます! 構いません! 吶喊しましょう―――!」
輸送艦が雷撃の中をかいくぐって進む。それはまるで槍の穂先のように空を舞い、雷撃落ちる中を飛ぶのだ。
だが、雷撃はまるで意志を持つかのように輸送艦へと直撃する。このままでは爆発炎上してしまう。
そう判断したパルは多脚戦車に接続登場し、随伴ドロイドたちと共に質量を持った雷雲へと降下していく。
艦船の消火活動は艦内ドロイドたちに任せパルはジェネレーターと多脚戦車をつなぐケーブルを接続したまま降下したのだ。
随伴ドロイドたちが次々とパルの多脚戦車へとケーブルを接続していく。
「雷雲へとケーブルソケットを! 一番から二十番まで!」
次々と雷雲へと接続されるケーブル。それは雷雲に立ち込める電力をも奪い取り、パルの多脚戦車へと集中させるのだ。
それは―――。
「人類の技術が産んだ僕ら機械の兵団が、竜の雷を以て人類の時代の存続を示します!」
そう、機械もまた人の叡智の結晶である。あらゆる機械技術もまた昇華されるのであれば、到達点は一つである。
パルは、その到達点の一つの起点へと手をかける。充填された多脚戦車へのエネルギーゲインが限界を突破し、臨界を迎える瞬間にパルは叫ぶ。
それは号令と言ってよかった。
「レーザーキャノン、撃て―――ッ!!」
砲身が灼き切れるほどの熱量が帝竜『ワーム』へと放たれる。火線は随伴ドロイドたちと多脚戦車に装備されたレーザーキャノンから豪雨のように放たれ、その龍鱗を尽く突き破り、その身を焼き尽くさんと放たれた。
ここに人の時代の到来在りき。
パルはその時代の象徴として、そのウォーマシンたる我が身を誇るのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
ううむ、これは何とも厄介な力を持っていることか。
一刻も早く討たねば、後々面倒なことになりそうだ。
其方が以前どのような姿をしていたかは知らぬが……勝負。
■闘
凄まじい雷だ……よし、此処は俺の獣の力の出番でござる。
大鷲の翼で羽ばたき、【空中戦】だ。
先ずは【野生の勘】で落雷が落ちる場所を【見切り】つつ
予測、雷から逃れつつ戦場を進むぞ。
かわし切れないものは【オーラ防御】で耐える。
同時に『比較的雷の少ない場所』を探し出し、発見したら
そこを全力の空中【ダッシュ】で突き抜け、急接近を図る。
接近できたら中距離から素手で刀を振るう動作を見せ、
【破魔】の力を込めた【無刃】で其の身体を斬り伏せる!
※アドリブ・連携歓迎
火線が帝竜『ワーム』へと殺到する様子は、圧巻の一言であったことだろう。
その火線は龍鱗を焼き尽くす。帝竜『ワーム』の咆哮が雷雲より鳴り響き、その姿は消耗に消耗を重ねていた。
どれだけ強大な者であったとしても、猟兵よりも強大であったとしても、猟兵たちの怯まぬ姿の前には意味をなさない。
それを理解できぬのはワームである。かの帝竜の判断基準は美しさ。美醜を己の絶対とするのであれば、今の自身の姿は醜悪そのものであろう。
望まぬ姿、望まぬ状況。猟兵により尽く踏破される己の力。それが歯がゆいのだ。
「おのれ! おのれおのれおのれ!! 我の体を此処まで傷つけるとは! 我は並ぶものなき美しき帝竜『ワーム』なるぞ! 我が体は未だかような醜悪そのものであるが、『再孵化』を重ねれば汝らの及ばぬ美の化身となろうものを!」
咆哮が雷鳴を押しのけて響き渡る。
だが、それを前にしても揺るがぬ者がいる。
「ううむ、これはなんとも厄介な力を持っていることか。一刻も早く討たねば、後々面倒なことになりそうだ」
愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は、『再孵化』という能力を持ってしても厄介であるという以上の感想を持ち得ないようだった。
猛禽の翼を広げ、清綱は首を傾げるのだ。
「其方が以前どのような姿をしていたかは知らぬが……勝負」
清綱の猛禽の翼が羽撃く。それは雷雲立ち込める領域へと一気呵成に飛び込み、帝竜『ワーム』を討ち果たさんと駆け抜ける若武者の一騎駆であった。
雷撃が雨のように降りしきる中、その生命体を拒絶するかのような雷雲の海の中であっても尚、清綱は慌てていなかった。冷静そのものであったと言っていいだろう。
「凄まじい雷だ……よし、此処は俺の獣のちからの出番でござる」
猛禽の翼が羽撃く度に、落雷を避けながら飛ぶ。それは野生の勘とも言うべき直感力であった。
落雷の直前に感じる肌を灼く感覚。それを覚えながら、雷から逃れつつ戦場を飛ぶ。
「我の雷撃を躱すかよ、猟兵―――!」
雷撃の雨は凄まじい。この雷雲の海へと適応しているのは帝竜『ワーム』のみだ。この地において、かの帝竜のちからは凄まじい。
凄まじいからこそ、その力は大雑把なのだ。確実に雷撃の少ない場所が生まれる。
こうして戦場を雷から逃れつつ飛びわかった。かの帝竜は元から雷撃に適応していたわけではない。
雷撃を放つ生物が己の体を灼かぬようにリミッターを設けるように、帝竜『ワーム』もまた己を雷撃で灼かぬように意図的に雷撃の薄い場所を作り出している。
「―――ならば」
全力の飛行。猛禽の翼が力強く羽撃き、雷撃の空白を生み出す場所へと突っ込む。それは、帝竜『ワーム』の首の付根。そここそが雷撃を避けている場所である。
清綱の瞳は鋭く見据えられている。徒に声を発することもない。
彼の手は無手である。武器を持っていない。だが、その素手は、もはやユーベルコードへと昇華したもの。
そう、彼のユーベルコード、無刃(ムジン)によって清綱の手が刀を振る動作を流麗なる仕草で持って行った瞬間、帝竜『ワーム』の首の付根を突如起こった斬撃の嵐が襲う。
それは突然の出来事であった。
見えぬ斬撃。その嵐如き力は、ワームの体を強かに斬り伏せ、鮮血の如き体液を飛び散らせる。
雷撃がまるで、傷つけられたこと、逆鱗に触れたことを証明するかのように豪雨じみた嵐となって稲光を放ち続ける。
清綱は猛禽の翼で持って、その雷撃の嵐から逃れた。
「刀は要らず。一刀にて……とはまだまだ。俺も未熟だ。だが、帝竜『ワーム』しかと、その体に我が一撃を刻ませてもらったでござる!」
大成功
🔵🔵🔵
天御鏡・百々
オブリビオン・フォーミュラの再孵化など、悪夢そのものではないか!
それだけは絶対に阻止せねばならぬ
帝竜ワームよ!
汝はここで我らが必ず討ち滅ぼす!
念動力25にて宙を浮遊し接近
『ローズ・ブレス』は神通力(武器)の障壁(オーラ防御94)で防御する
とはいえ、呪いを受けるのは避けられぬだろう
しかし、我は破魔の神鏡、御神体として祀られる神器である
我が心に邪心なぞ、あろうはずも無い!
呪詛耐性10と破魔79で呪いを吹き飛ばし
天之浄魔弓(武器:弓)より放つ『清浄の矢』で反撃だ
(誘導弾20、祈り10、スナイパー10)
邪なる汝に
この矢は良く効くであろう?
●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ歓迎
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
悪しき帝竜『ワーム』を襲った無数の刃の嵐。それらが切り裂く巨躯から噴き出す血液の如き体液は、創生雷雲領域において雷撃を誘発するかのように落雷を生み出す。
稲光の光は絶え間なく領域を照らし、その光の激しさこそが帝竜『ワーム』の身に起こった激痛を表しているかのようだった。
「猟兵ぃぃぃぃっ! 我の! 我の体を此処まで! 許さぬ! 許せぬ! 断じて許せぬ!」
其の言葉にもはや、絶対者たる帝竜としての余裕はどこにもなかった。雷撃がまるで樹の枝のように枝分けれし、領域を照らす。
其の力の凄まじさは言うまでもない。だが、最も恐ろしき力は―――。
「オブリビオン・フォーミュラの『再孵化』など、悪夢そのものではないか!」
そう、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)の言うオブリビオン・フォーミュラである帝竜ヴァルギリオスの蘇生が可能である『再孵化』の力は、ヴァルギリオスかワームのどちらかが残っていれば可能であるということだ。
それは彼らの不滅を意味する。
「それだけは絶対に阻止せねばならぬ。帝竜『ワーム』よ!汝はここで我等が必ず討ち滅ぼす!」
「ほざけ―――! 猟兵如きが、絶対たる我等を討ち滅ぼそうなど―――!」
帝竜『ワーム』の声は怒りに震えていた。
今までは己をこんな醜い体へと産み直したことへの怒りであった。生前の記憶の残滓では、己は並ぶものなき美しき者であったはず。
なのに何故、とその怒りが原動力であった。だが、今は違う。醜いとは言え、己の体を傷つけた猟兵たちへの怒りと激痛で気が狂いそうであった。
宙を舞う百々の体目掛けて薔薇の香気を纏うブレスが吹き付けられる。それは触れた者の心に住まう邪なものを増幅させ、白き仮面をとりつかせることによって猟兵であったとしても傀儡としてしまう恐ろしき力である。
「くっ―――! 神通力でも防ぎきれぬか!」
百々のオーラはブレスの攻撃を防ぐことはできる。だが、心の中にある邪念を増幅させる呪いまでは軽減できなかったのだ。
だが、彼女はヤドリガミである。そして、その本体はただの鏡ではない。破魔の神鏡、御神体として祀られる神器である。
故に。
「我が心に邪神なぞ、あろうはずもない!」
圧倒的な神気によって呪詛は全て払われる。其の手には、天之浄魔弓。番えしは清浄の矢(セイジョウノヤ)である。
その神聖なる祈りの籠められし光の矢が見据えるは、大蛇の如き帝竜『ワーム』。かの邪悪が人間の心の中に在る邪念を増幅するのであれば、百々の体は人の善性を依り代にしたもの。
人の祈りと願いの籠められた体である。
だからこそ、彼女の放つ矢は!
「穢れしその魂、浄化してくれようぞ!」
放たれた光の矢は過たずに帝竜『ワーム』の巨躯へと吸い込まれ、貫いていく。だが、その光矢がオブリビオンであるワームの体を傷つけることはない。
代わりに貫くのは、魂の穢れのみ。
そう、彼女の放つ矢は、肉を傷つける一射ではなく、その邪なる心を祓う一撃である。
その魂はオブリビオンである以上、穢れにまみれているであろう。だからこそ、この一射は、ただの一射以上の力を持ってワームを苦しめる。
傷を受けたわけではない。だが、己の持つ魂のちからの弱まりを感じる。
「邪なる汝に、この矢は良く効くであろう?」
百々の一射は、確実に穢れた魂のみを貫き、その一射でもってワームの身を、さらなる消耗へと導いたのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
ガルディエ・ワールレイド
美しさとは誇りであり気高さだ。
姿形に拘っていて、何故に本当の美しさが得られようか。
お前が醜いと思うべきものは自身の心だ。
◆行動
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流
先ずは2体がかりとかいう敵を凌ぐ
《オーラ防御/電撃耐性》で環境と敵の雷の攻撃に対応
敵は相当なデカブツだ。位置次第ではお互いが邪魔になる筈
その辺を考慮して、時には片方の懐近くに移動する等し《見切り/ダッシュ》で立ち回るぜ
反撃は【魔槍斧】
捨て身覚悟で、敵の分身体の攻撃を《武器受け》し、敵本体目掛けて俺の分身体を可能な限り何度でも射ち込み、それぞれが深い斬撃を放つ
やられたら、やり返すのが性分なんでな
光の矢の一射が強大なる帝竜『ワーム』の身を貫く。肉体を傷つけず、穢れた魂のみを打ち払う一射。
それは邪なる心を持つ帝竜『ワーム』にとっては、よほど効果的であったのだろう。のたうつように質量を持つ雷雲をかき分けて蠢く長大なる体躯。
「この我の魂に罅が入るなど! 許せぬ! 我の体のみならず、魂までをもぉぉぉぉッ!!」
その咆哮は創生雷雲領域においてもなお轟く雷鳴よりも、耳をつんざく。雷撃の空気の壁を突き破る音は、あまりにも強大で、その音を聞くだけで足の竦む者だっているだろう。
だが、猟兵にとって真に足の竦む瞬間というのは、恐怖でも不安が降り掛かったときではない。
それは己が己でなくなる時。己の矜持をかなぐり捨てなければならない時である。だからこそ、ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は怯むことなど知らない。
「美しさとは誇りであり気高さだ。姿形にこだわっていて、何故に本当の美しさが得られようか」
其の言葉は帝竜『ワーム』にとって聞き捨てならない言葉であったことは確かであった。
黒き鎧ニミを包んだガルディエの眼前に現れるのは、帝竜『ワーム』の分身体。その巨躯や威容はあまりにも凄まじいと言う他無い。
長大なる姿は質量ある雷雲に隠れて全容を知るすべもない。だが、それが理由に成るだろうか。いや、ガルディエが恐れる理由にはならない。
「うそぶいたな、猟兵! 我こそが絶対的な美しさを持つ帝竜である! ならば、我のこの醜き蛇の如き姿は侮辱以外の何者でもあるまい!」
しかし、其の言葉はガルディエの真芯を捉えることはない。何一つガルディエには届かない薄っぺらい言葉であった。
「お前が醜いと思うべきものは自身の心だ」
ガルディエを次の瞬間襲ったのは、恐るべき雷撃であった。二体のワームから放たれた雷撃は、瞬時に生命という生命を絶命へと導く電撃だった。
だが、ガルディエの両の手に携えた魔槍おのジレイザと魔剣レギアのニ刀が受け止める。
「二体がかりか―――……ちょうどいい」
ガルディエは雷雲の中を駆け回る。相手が巨躯であり、さらには二体がかりで己を襲うというのならば、立ち回ってみせるしかない。
敵は相当なデカブツ。
ならば、位置取りさえ間違えなければ、お互いは連携を取り合うものではなく、互いに邪魔をする障害物にしかならない。
「うろちょろと―――!」
帝竜『ワーム』の忌々しげな声が響く。だが、それを意に介さずにガルディエは戦場を翻弄するように駆け巡り、分身体の懐へと潜り込む。
振り下ろされた爪がガルディエを圧潰せんとし、それを魔槍斧ジレイザにて受け止める。
ガルディエの比類なき膂力を持ってしても、巨躯を受け止めるのには体のあちこちがきしむ音を聞くしか無いほどだった。
だが、彼のユーベルコードは輝く。圧倒的不利な状況であっても、ガルディエの瞳はユーベルコードの輝きによって曇ることなき瞳見せる。
魔槍斧(ジレイザ)―――それは、受け止めた対象ユーベルコードをコピーする力。今、彼が受け止めているのは、帝竜『ワーム』の分身体である。
ならば、今彼が獲得したユーベルコード、それは。
「吼えろジレイザ!」
魔槍斧ジレイザが輝く。ガルディエから生み出されるのは己の分身体。それが帝竜『ワーム』本体目掛けて弾丸のように打ち込まれていく。
捨て身の全力の攻撃を、分身体が次々と放っていくのだ。
それも己の力が尽きるまで、何度も何度も。それは雷撃の如き一撃を放つガルディエの力でもって、帝竜『ワーム』の身を焦がし、刺し貫いていくのだった―――。
「―――やられたら、やり返すのが性分なんでな」
大成功
🔵🔵🔵
フェルト・フィルファーデン
アナタの見た目なんか興味は無いわ。
……だけどね、理を超えた巫山戯た力で蘇り何度でもこの世界を滅ぼさんとするのなら、絶対に許さない。消えなさい、帝竜!
まずは距離を取りUC発動までの【時間稼ぎよ。
【フェイントをかけつつ素早く空を飛び回り(空中戦、早業】更に【第六感【野生の感も駆使して躱し続ける。
接近されたら騎士人形の弓矢で目を狙い(スナイパー】牽制しつつ二体の敵の隙間を掻い潜りあわよくば同士討ちを狙ってひたすら逃げる。
さあ、準備は出来た。その片割れ、足止めさせてもらうわよ!
敵のデータから作り出した絡繰人形を操り突撃させる!
もう片方はわたしが相手よ!わたしの騎士人形よ、その眼を槍で貫いて……!
猟兵とは世界に選ばれし戦士の名前である。世界が数多あるように猟兵の真の姿もまた千差万別数多のものである。
違う者たちが手を取り合って戦うからこそ得られる力というものがある。帝竜『ワーム』は己の力こそが絶対であると思っているのであろう。
帝竜ヴァルギリオスによって『再孵化』したとはいえ、己の姿は本来のものではないという確信がある。
手放した生前の記憶の残滓をたどれば、己の姿はこんなものではないのだ。並ぶものなきほどに美しい姿。それこそが帝竜『ワーム』の本来の姿なのだ。
「ぐぬぅぅぅ! 我の体をここまで……猟兵! 美しきものを知らぬ者たちよ……!」
その言葉は猟兵に対する怒りと美しさを理解しない者たちへの侮蔑に満ちていた。だが、それこそ詮無きことである。
帝竜『ワーム』にとって、この体は醜い蛇の如き姿。失うのは何も問題はない。だが、この戦いの敗北によって己とヴァルギリオス両名が滅ぶことだけは避けねばならない。
「アナタの見た目なんか興味はないわ」
フェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)の小さな体が黄金の羽根の瞬きと共に創生雷雲領域へと訪れる。
そう、興味はない。帝竜『ワーム』の本来の姿がどれだけ美しいものであろうとも、フェルトは一つも興味を動かされなかった。
ならば何故この戦場に、と誰かが問うことがあれば、それは愚問である。
「……だけどね、理を超えた巫山戯た力で蘇り、何度でもこの世界を滅ぼさんとするのなら、絶対に許さない。消えなさい、帝竜!」
そう、彼女にとって護るべきはアックス&ウィザーズ世界と、そこに住まう人々である。帝竜『ワーム』とヴァルギリオスのちからは、度を越した力である。それが在る限り、この世界は脅威にさらされ続けるだろう。
それは、とうてい容認できるものではない。
「我ら帝竜にとって、世界など一つの収穫物にすぎん! 我等、帝竜こそが絶対者である! 其の中でもさらに選ばれし者こそが絶対たる美を持つ我である!」
ワームの言葉は傲慢そのものでありながら、事実である。
そう、世界は帝竜たちにとって収穫そのものである。だからこそ、容易に踏みにじることができる。
雷雲の中に蠢くもう一体のワームの分身体がかき分けるようにして顔を覗かせる。口蓋がゆっくりと開き、咆哮がほとばしった。
ニ体のワームが放つ雷撃は、まさに雨のように降り注いだ。
ユーベルコードを発動するための時間稼ぎではあったが、その雷撃を躱し続けるのは至難の技であった。
小さな体ではあるが、それゆえに移動距離は短い。躱し続けるのならば、空中で最速最短最小の動きで持って事をなさなければ、即座に雷撃に捉えられてしまうだろう。
第六感、野生の勘とも言うべき感覚でもってフェルトはフェアリーの羽根を羽撃かせるのだ。彼女の指から接続される騎士人形が弓矢で目を狙う。
隻眼となったワームにはもう一つの目しかないのだが、それでも雷撃が防ぐのだ。
「中々、近づけ、ない―――!」
雷撃は益々持って勢いを増す。もう少し、もう少し……そう、何故時間を稼いでいるのか。ユーベルコードであるのならば、逆転が狙えるはずだ。
だが、フェルトが時間を稼ぐのか。それは―――。
「……解析完了。さあ、即興劇といきましょうか!」
それは、彼女が解析を必要としていたからだ。何を?そう、敵―――帝竜『ワーム』の解析だ。その長大なる姿故に解析には手間取ったが、彼女のユーベルコードは解析が明確であればあるほどに力を増す。
Doppel-creation(デンシノキロクヨヤドリシスガタヲツムギダセ)によって生み出されるのは、帝竜『ワーム』と同じ戦闘力を持った絡繰り人形。
「―――我、だと! 否! 我の姿はそうではない―――!」
だからこそのユーベルコード。
生み出されたワームの力を得た絡繰人形は、本体であるワームの残った目へと槍を突き出す。
其の力は違わず帝竜『ワーム』へと放たれる。それを阻止せんと、分身体のワームが唸り声を上げて騎士人形へと迫る。
だが、それを遮るようにフェルトが立ちはだかる。残った指から接続した人形たちが一斉に彼女を護るように戦い、分身体ワームの足を止める。
「もう片方はわたしが相手よ! わたしの騎士人形よ、その眼を槍で貫いて……!」
その一撃は隻眼となった原因である騎士の一撃と同じ槍による攻撃だった。奇しくも、結果もまた同じであった。
増強されたワームと同じ雷撃纏った槍の一撃は、残った最期の眼すらも奪い去るように放たれ、癒えぬ傷を穿つのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘
はっはっは、カッコ良き威容ではないか!
蛇を醜いとディスるとは、お主、実に分かっておらんの~
邪神オーラを全身に纏い、ダメージを出来るだけ緩和しよう
まあそもそも邪心の件なんぞ心配無用よ! 妾は常に邪心で一杯!
世界の平和など、そもそも妾にとっては割とどーでもよい! そういうのは仲間に任せてしまおう!
いかに素晴らしいバトルを映像に収めるか、それが大切であるからな!
右手で眼前の空間をコンコンコンっと
はーっはっはっは! ようこそ妾の統べる世界へ!
雷雲の中に広がる花畑、なんと壮大でエモいシチュエーション!
さあド派手に楽しくバトろうではないか!
限界まで攻撃力のブチ上がった、妾の左腕の一撃に耐えてみせよ!
邪心無き者と、邪心だけの者。
そのどちらもが同じものであるのかも知れない。表裏一体。聖なる者と邪なる者。それが相反するものであるというのなら、それらは背中合わせのものである。
対極に位置しているのではない。常に同じ点より出ずるものである。
だからこそ、帝竜『ワーム』は己の両眼を奪った猟兵たちに怨嗟の声を上げる。
それは己の傲慢さが招いた結果ではある。どちらの眼も小さき者から受けた傷である。猛り狂う姿は、帝竜『ワーム』が忌避する醜き者そのものであった。だが、すでに両眼を潰された帝竜『ワーム』にそれを知る術はない。
「オォォッ! 我の眼を! 我が玉の如き眼をよくもっ! 猟兵ぃっ!!」
創生雷雲領域に置いて轟く雷鳴をも押しのけて響き渡る咆哮。それは凄まじきものであった。だからこそ、その姿……御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)の蛇神にして邪神たる彼女の姿を見ることを敵わなかった。
「はっはっは、カッコ良き威容ではないか!蛇を醜いとディスるとは、お主実にわかっておらんの~」
その身に纏いしは邪神のオーラ。
だが、もはや帝竜『ワーム』には、姿は捉えられず、超感覚と聴覚によってのみ猟兵の存在を嗅ぎつけ、薔薇の香気を放つブレスを口蓋より吹き付けるのだ。
有無を言わさぬ先制。
そのブレスに触れたものは、その者が持つ邪心を増幅させられる。増幅させられた邪心のままに白き仮面にて帝竜『ワーム』の傀儡へと墜ちるのだ。
だが、菘に変化は訪れなかった。確かに薔薇の香気を放つブレスは彼女の体を呪詛で持って蝕んだ。
なのに彼女の顔に白き仮面は現れない。
「何故だ―――我のブレスを受けて何故、傀儡へと堕ちぬ……!」
「ハッ!心配無用よ! 妾は常に邪心で一杯! 世界の平和など、そもそも妾にとっては割とどーでもよい!」
菘は一笑に付す。
邪心しかないものに、邪心を増幅させたとろこで本質は何も変わらない。己が絶対の頂点と思う者同士が相対しているのだ。
そこに何者にも侵せぬ領域がある。それこそが邪神たる本質。
「そういうのは仲間に任せてしまおう! 如何に素晴らしいバトルを映像に納めるか、それが大切であるからな!」
菘の右手が眼前の空間をノックする。コンコン。それはキマイラフューチャーにてのみ見られる独特のものであった。
当然のごとく、帝竜『ワーム』に理解できるものではなかった。訝しむ帝竜『ワーム』が感じたのは、雷撃の音でもなければ、大気を焦がす匂いでもなかった。
あるのは花の空間。
「はーっはっはっは!ようこそ妾の統べる世界へ!歓迎するぞ、妾に挑む勇気あるモノよ! 妾の動画高評価の糧となる栄誉を与えよう!」
菘のユーベルコード、落花狼藉・散華世界(イキナリクライマックスバトル)がッ発動する。
それはシステム・フラワーズ。通称コンコン。その力を一時的に借用して、戦場である創生雷雲領域を花々の咲き乱れる百花繚乱の戦場へと変える力。
雷雲と雷撃の中に咲き乱れ、散り散りになって舞う花弁。その壮絶なる光景に菘は震える。感動で震える。エモーションが溢れて止まない。
「雷雲の中に広がる花畑、なんと壮大でエモいシチュエーション!さあ、ド派手に楽しくバトろうではないか!」
菘の言葉は、感動に打ち震えた者の言葉だった。自身で生み出した空間ではあるが、彼女にとってそれは史上最高のシチュエーションであった。
雷雲は質量を持ち、花が散る。その中で蠢く長大なる巨躯を誇る帝竜『ワーム』。それはまるで天地開闢の時そのものである。
だからこそ、菘の攻撃力はうなぎのぼりどころではないほどに上限を突破する。これ以上無いほどの矛。
左腕が灼ききれそうなほどに高まる力。高ぶる。菘の心がこれ以上無いほどに舞い上がり、高揚し、その最高の一撃は―――。
「これが―――サイッコーにぶち上がるというやつで、ある!」
放たれた左腕の一撃は、帝竜『ワーム』ですら防げぬ絶対なる一撃。
己が絶対であるという確信のもとに放たれる一撃はワームの頭蓋を叩き、其の衝撃は雷雲を割って尚、ワームの巨躯を失墜させるに相応しい一撃であった―――!
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
美醜に拘りのある帝竜のようですが…
災厄を齎されるA&Wの人々にとっては至極無関係な話
再孵化の輪廻、騎士として断ち切らななければなりません
接近しながら●防具改造で大盾の装甲を強化しブレスを●盾受け
ブレスは防げましたが…これが『白い仮面』ですか…!
電子頭脳に干渉して縺ァ縺吶
戦闘前に自己●ハッキングで設定していた異常発生時の動作実行
●怪力で己の頭部の首を刎ね、仮面ごと廃棄
生憎、私の電子頭脳は『頭』では無いのですよ
UC発動
電子演算で構成された精神への干渉を無効化しながらブレスを防ぎ口へ突撃
●怪力で振るう剣や盾、格納銃器の乱射で体内に攻撃を加えながら進み、●限界突破した馬力で内側から体躯を突き破り離脱
強大なる一撃によって失墜した帝竜『ワーム』が、まず思い浮かべたのは何故こうなってしまったのかという自問であった。
何故だ―――。
己の姿が完全ではないからか。それとも己の記憶が生前のものであったのならば。
だが、その自問に答えは出ない。
すでにその長大なる巨躯は両眼を失い、身を穿たれている。数多の猟兵たちの攻撃がそれを為したのだ。
確かに猟兵は個々の力では帝竜に及ばない。だというのに、彼らは何故か帝竜たちの能力、ユーベルコードに対策を打ち出して戦いに赴いている。
何故だ―――。
「何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!!!」
その咆哮と共に帝竜『ワーム』は再び雷雲を割り、その巨躯を現す。それは怨嗟での苦痛でもない、単純なる疑問の咆哮だった。
己の体が完璧なる美しさであったのなら、ここまで手間取ることはなかったはずだ。まずは、この地に蔓延る猟兵、奴らを全て根絶やしにして―――。
そこまで思い至った帝竜『ワーム』が知覚する。
「美醜に拘りのある帝竜のようですが……災厄を齎されるアックス&ウィザーズの人々にとっては至極無関係な話。再孵化の輪廻、騎士として断ち切らななければなりません」
そこに在ったのは、機械騎士。トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)である。
彼の体は即座に動いていた。雷雲を割って出る帝竜『ワーム』の巨躯。これを止めねば、この世界に巻き起こる戦役の傷痕は癒えることはない。
だからこそ、ここで確実に帝竜『ワーム』は討ち滅ぼさなければならない。
だが、帝竜『ワーム』の口蓋が開き、一斉に噴出する薔薇の香気を纏ったブレスはトリテレイアの体を包み込む。
大型化した装甲たる大盾でブレスの衝撃は防がれた。だが、そのブレスに籠められた邪心を増幅する呪い―――猟兵といえども傀儡とする白き仮面は防げない。
トリテレイアの機械の頭蓋に張り付くように顕現する白き仮面。それは奇妙な笑うような仮面であった。
「ブレスは防げましたが……これが『白い仮面』ですか……! 電子頭脳に干渉して縺ァ縺吶」
ガクガクと機械の体が震える。機体の中の回路が書き換えられようとしている。電子頭脳が揺れる。揺れる。
瞬間、トリテレイアの手にしていた剣が己の首を刎ね飛ばす。白き仮面毎、その頭部は切り飛ばされ宙を舞い、雷雲の中へと消えていく。
帝竜『ワーム』は、しばし其の姿をみつめる。
―――何故だ。
その疑問が湧き上がる。それは今まで抱いていた疑問ではない。
―――何故、この機械騎士は己の首を、『己の意志で』刎ねたのだ?
その疑問が解ける前に、首なしとなったトリテレイアの体が動く。その機体の名は、式典・要人護衛用銀河帝国製ウォーマシン(トリテレイアシリーズ・シリアルナンバーゼロナイン)!
「生憎、私の電子頭脳は『頭』ではないのですよ」
それは彼の駆動、演算リミットを解除した代償。常に敵を細くする護衛機そのものへと変形した姿である。
再び放たれるブレス。だが、もはやそれは意味がない。大盾で防ぎながら、開かれた口蓋へと突撃し、其の内部から剣や盾、格納銃器を乱れ打ちながら体内への攻撃を加えていく。
その内部からの攻撃にのたうち回るしかできないワームの内側から突き破るようにしてトリテレイアの機体が飛び出す。
それは首無し騎士の姿そのもの。
―――それは、死を運ぶ者。デュラハンそのものであった。
大成功
🔵🔵🔵
リステル・クローズエデン
たまには、なにも考えずにやってみますか。
視力+偵察+第六勘で、攻撃の予兆を見切り。
引き付けてからの
足場習熟+環境耐性+電撃耐性で足場確保。
早業+ダッシュ+ジャンプ+空中浮遊。
残像+迷彩+闇に紛れる+目立たないで
一気に加速し攻撃をかわし。
その勢いのままユーベルコード発動。
急上昇します。
相手の攻撃が当たった場合、
オーラ防御+電撃耐性+激痛耐性で耐え。
呪いは呪詛耐性と破魔で抗う。
なにより、心にあるのは。
真っ直ぐ突っ切って奴を斬る
ただそれだけ。
斬る切るきるキルkill斬る
空中戦+鎧無視攻撃+鎧砕き+部位破壊。
限界突破とリミッター解除も発動。
最高速度で急降下し呪剣・黒で斬る。
斬っ……既に斬った……か……
創生雷雲領域は、質量を持った雷雲で構成される領域である。
そこにあって帝竜『ワーム』のちからは絶大なる物であったことだろう。だが、その力も今や失墜したに等しい。
数多の猟兵達による攻撃により、両眼は失われ、体の内部をずたずたに引き裂かれた。
だが、その状態であったとしても帝竜『ワーム』としての意志は途切れなかった。
「我をここまで追い詰めるとは……猟兵とは、猟兵とは一体なんなのだ。我の生前の記憶があれば、このような事態には……!」
それは詮無きことである。すでに『再孵化』によって手放した記憶を手繰ることに意味はない。
だからこそ、苛立たしげに帝竜『ワーム』は吼え猛る。狂ったように吠えるのだ。己の姿の不完全さを、醜さを呪うように吠える。
だが、そんな咆哮など意に介しない者があった。
リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)の思考はクリアそのものであった。斬る。ただそれだけ。
たまには何も考えずにやってみますか、と彼女の意志は一つに纏まっていた。サイボーグの身ではあるけれど、彼女とて猟兵である。
帝竜『ワーム』の口蓋が開いた瞬間に、彼女の体は動いていた。
その尋常ならざる視力は、攻撃の予兆をつぶさに見切っていたのだ。攻撃を見てから動くのでは遅すぎる。
攻撃の予兆、その初動すら超えた第六感とも言うべき感覚を頼りに、リステルの体は動いていた。
「……斬る」
口にすればそれだけの言葉である。
質量を持つ雷雲の感触はすでにわかっている。残像を残すほどの超スピードで放たれるブレスから身を隠す。
帝竜『ワーム』からすれば、攻撃を放ったはずの対象であるリステルの姿が消えたように映っただろう。実際には、彼女の体捌きによって躱したに過ぎない。
だが、それでも対峙する者にとっては恐怖そのものであったであろう。一気に加速する体。
体が軽い。あれこれ考える必要がない。ただ、斬ることだけを考えていれば―――。
「躱すだと、猟兵が……! あの広範囲を!?」
駆け抜けるままにリステルのユーベルコードが輝く。鎧装変換・斬翼断空(ブレイドウィングメイル・カスタマイズ)は、彼女の鎧を光と闇の刃を発生させるものへと変える。
そこに敵を斬るという意志があればあるほどに、力が増していく。駆け抜けるスピードのままにリステルの体が飛翔する。
ああ、と溜息が漏れるほどに頭の中は透明そのものであった。在るのはたった一つの『斬る』という意志のみ。
「まっすぐ突っ切ってやつを斬る。ただそれだけ」
ただそれだけでいい。身に纏った刃と共に彼女の限界はすでに突破している。目指す巨躯へと弾丸の如く突進すれば、手にした呪剣・黒の業が冴え渡る。
帝竜『ワーム』の龍鱗を切り裂くはユーベルコードによって強化されし邪神の欠片を錬磨せし黒剣である。
「斬る切るきるキルkill斬る」
次々と切り裂かれる龍鱗と飛び散る体液。長大なる巨躯を縦横無尽に駆け抜け、切り裂き続ける。
帝竜『ワーム』の絶叫も遠い。
「斬っ……既に斬った……か……」
彼女の意志が、斬ること以外を思い出した時、彼女の目の前には斬るべき帝竜『ワーム』の巨躯は尾の終着までいたっていた。
もう斬るべき場所はない。雷雲立ち込めし空を見上げ、帝竜『ワーム』の切り刻まれた龍鱗が降りしきる領域において、リステルは一人独白するのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『ワーム』。それはドラゴンの最も原始的な姿。故に最も純粋な本質を示す。群竜大陸の奥地に潜むだけのことはある。
ご機嫌よう、ワーム。あたしと踊ってもらえるかしら?
「全力魔法」で「オーラ防御」の結界を展開。これである程度はもたせる。
結界が生きているうちに、霊符を撒いて「範囲攻撃」の器物覚醒を使うわ。
操る無機物は、周囲の「質量ある雷雲」! これ以上にこの雷雲の海に適応した存在はないでしょ?
ここはやっぱり、蛇に――ワームに――似た姿が一番扱いやすい。
大きさでは劣るだろうけど、その雷撃の牙は決して負けないわ。
さあ、あなたたち。あたしの手足となって、ワームの鱗を食い破りなさい!
戦場の状況は黒鴉の式で把握。
彼女が見た帝竜『ワーム』の姿は凄絶なる姿であった。
数多の猟兵たちとの戦いの傷痕が深々と刻まれ、その戦いの激しさを物語っていたことだろう。
両眼はすでに失われ、龍鱗は尽くが切り裂かれている。だというのに、それでもなお、帝竜としての力は健在であることを感じさせた。
「『ワーム』。それはドラゴンの最も原始的な姿。故に最も純粋な本質を示す。群竜大陸の奥地に潜むだけのことはある」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)の言葉には敬意があったのかもしれない。原始的なもの。それこそが帝竜『ワーム』の本質であったのかもしれない。
だが、生前の記憶を手放す『再孵化』によって誕生したオブリビオンである帝竜であるからこそ、その本質からずれていたのかもしれない。
「我は……我は、絶対にして、並ぶものなき美しきもの……猟兵……! 我を傷つけた罪、その代償を払ってもらう!」
帝竜『ワーム』の咆哮は創生雷雲領域にあって、その雷雲より雨の如き雷撃を放つ。その一撃一撃は、生命体を拒絶する光だった。
雷雲の海へと変じた戦場の中でゆかりは、恐れること無く一歩を踏み出す。
「ご機嫌よう、ワーム。あたしと踊ってもらえるかしら?」
全力魔法によるオーラの防御結界が張り巡らされる。これである程度は持たせられる、と雷撃降りしきる雷雲の中を駆け抜ける。
質量を持った雷雲は、踏みしめると大地と変わらない。雷撃がゆかり襲う。ばらまく霊符は、ユーベルコードのトリガーだ。
「無駄だ! 猟兵! この生命拒む雷雲において生命とは滅ぼされるものである! 無論、貴様もだ!」
再び雷撃が、ゆかりの体を撃つ。防御結界は問題なく発動している。けれど、それでも防御を貫いてくる一撃の重さは、流石は帝竜というほかない。
だが、それでも彼女のユーベルコード、器物覚醒(キブツカクセイ)は、この盤面をひっくり返せる一手であった。
「急急如律令! 汝ら、我が下知に応じ、手足の如く動くべし!」
ばらまかれた霊符はこのために。式神が憑依する無機物……この雷雲犇めく戦場にあって、選ぶ無機物は―――。
「質量在る雷雲よ!」
そう、質量がある雷雲。それならば、この地において多数存在する。言わば、これはシェア争いである。縄張り争いと言っても良い。
帝竜『ワーム』が、この領域をユーベルコードによって自身の強化に使うというのなら、ゆかりはばらまいた霊符によって、この地の雷雲を己の手足の如く使役せしめるのだ。
「これ以上に、この雷雲の海に適した存在はないでしょ?」
さらにゆかりに手が加わる。式神が憑依した雷雲の形が変わっていく。それはワームを模した、蛇。その姿は一番扱いやすいと判断したものであるが、その姿こそが帝竜『ワーム』の忌避する醜き姿。
その激昂は、天地開闢の如き雷雲の地において大地を震撼させるほどのものであった。
だが、その怒りが力へと直結しない。ゆかりの放った式神が憑依した付喪神と化した蛇の雷雲たちが一斉に帝竜『ワーム』の巨躯へと群がる。
「さあ、あなたたち。あたしの手足となって、ワームの鱗を食い破りなさい!」
ゆかりの号令の元、蛇の雷雲たちが帝竜『ワーム』のボロボロになった龍鱗を引き剥がし、貪るように巨躯へと傷痕を刻み込んでいく。
食い破るような動きは、あまりにも凄惨なる光景であった。
だが、帝竜を捨て置けば、これ以上の惨劇となることは間違いない。ゆかりは黒鴉の式で戦場を把握しつつも、帝竜『ワーム』を逃さぬように徹底的に、その長大なる巨躯へと消耗を強い続けたのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
リミティア・スカイクラッド
魔女の刻印の「リミッター解除」で「オーラ防御」展開
雷雲領域内での最低限の安全を確保し、風神の靴で「空中戦」を挑みます
ブレスの直撃は耐えられないでしょうから
攻撃の瞬間にゼルフォニア鉱の欠片で「目潰し」を仕掛け
その隙に靴の「封印を解く」と全速力で回避を試みます
それでも避け切れず仮面の呪いに侵された時は
宝石剣を握りしめてUCを発動
――全ての過去に終焉を
この誓いは呪いにも、己自身の邪心にも穢させはしません
誓いを支えに「限界突破」、呪いに抗いながら急接近
頑丈な鱗に守られていても、この一撃は『過去』を断つ
炎を纏わせた宝石剣で、斬撃と共に「焼却」します
ここが、あなたの終焉です
骸の海に墜ちなさい、オブリビオン
その姿を知る者は、その生前の美しき姿を知っていたのかもしれない。
だが、『再孵化』を果たした姿は、その生前の記憶の残滓として残る光景とは裏腹のものであったのだろう。その落差に耐えきれない。
こぼれ出たのは醜いという感情そのもの。醜さと美しさの境目は一体どこにあるのだろうか。
美しさの定義も、醜さの定義も、観測するものによって変わる曖昧なものである。そうだとすれば、美しさとは不定形のものだ。そこに最高もなければ、最低もない。
「否! 否! 我は並ぶもの無き美しき者であったはずだ―――!」
その咆哮は数多の猟兵たちの戦いによってかき消されてきた。それは意味がないと。その美醜の境目に意味はないのだと。
そして、ここに世界に終焉を齎す帝竜を破壊せしめる徒の姿が顕現する。
創生雷雲領域。その地に降り立つは、魔女の刻印刻まれし体を持つ者。その刻印の封が放たれる。魔女―――その名は、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)。
その溢れ出る魔力の奔流は、彼女を護る障壁そのものとなってオーラの如き力で持って雷撃を防ぐ。
まるで大気を踏み、ステップを降りるように彼女は風神の靴『風に乗りて歩むもの』そのものとなりて、雷雲領域を歩む。
その歩みは流麗そのものであった。その姿は美しかった。見上げる帝竜『ワーム』をして、そのすでに猟兵によって穿たれ潰れた両眼を向けさせるものであった。
口蓋が開く。
「許せぬ―――! 許せぬ―――! 我が眼が潰れていたとしても分かる! 分かるぞ! 我は汝を許せぬ―――!」
その咆哮を、ブレスをリミティアは見据える。恐らく直撃には耐えられない。故に、ブレスが放たれようとした瞬間、手にした創世の天使の力宿すゼルフォニア鉱の欠片が産前と輝く。
それはワームの潰れた両眼であっても知覚する光。創世の天使の光。燦然天使の輝きは、その魂をも灼く光だ。
封を解かれた風神の靴の全速力を以てブレスを回避する。だが、それでも追いすがる薔薇の香気を纏ったブレスは、リミティアの体を覆う。
「―――!」
リミティアの声鳴らぬ声が響いた。それは悲鳴であったのかもしれない。嘆きの声であったのかもしれない。
彼女の中にある邪な心。それが増幅され、白き仮面が彼女の顔を覆う。それは呪いにして絶対たる傀儡の呪い。どれだけの勇者であっても、勇者であるが故に逃れられぬ呪い。
だが、宝石剣エリクシルを持つ魔女はどうか。
「―――全ての過去に終焉を」
それはエリクシルの輝きに誓った想いである。世界を護ると、そう誓った想い。だからこそ、白き仮面の呪いにも―――。
「―――己自身の邪神にも穢させはしません」
その言葉はリミティアの心に輝く宝石の如き想い。誓いは支えに。想いは力に。白き仮面がひび割れる。
だが、それでも傀儡の力は彼女のユーベルコードに抗う。
リミティアの体が限界を超えていく。呪いを凌駕する想いが、それこそが彼女の唯一の武器である。
宝石剣があろうとなかろうと、彼女はきっと呪いを凌駕しただろう。それは誓ったからだけではない。純然たる彼女の想いがそうさせているのだ。
彼女の体が空を舞う。駆け抜けるのは、風に乗りて歩む姿そのものである。振り上げた宝石剣の一撃が、『過去』を断つ。
炎を纏う宝石剣が帝竜『ワーム』が存在したという『過去』を切り裂き、滅却する。
それこそが、彼女のユーベルコード、魔女の誓剣(マギア・ブレイド)である。
断末魔の声も、苦痛に喘ぐ咆哮も存在しなかった。世界に響くことなどなかった。そのための魔女の誓剣である。
「ここが、あなたの終焉です」
静かに宣言する。それはただの事実である。彼女は魔女である。終焉を齎す世界の敵、オブリビオンに終焉を齎す者。
「―――骸の海に墜ちなさい、オブリビオン」
その『名』を滅却し、過去の集積、オブリビオンとして帝竜を還らせるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵