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「立て続けに帝竜が現れるのぉ、層の厚い事じゃて」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は、感心半分呆れ半分そう切り出した。
「創世雷雲領域、そう呼ばれる質量を持つ雷雲……それが今回の戦場となる。雷雲を足場にできるのじゃが……」
その雷雲の中に潜むのが、帝竜ワームだ。『無限竜』の異名を持ち、周囲に生命体の生まれ得ぬ雷雲の海を広げ、高度な呪いや魔術を操る能力をも持ち合わせる長大な体を持つ帝竜だ。
「二種類のブレスと自分の分身体を召喚する能力……どれも強力な力じゃ。特に雷雲領域という己の最も得意とする戦場に身を潜めておるのが厄介じゃな」
雷雲の海をどう対処し戦いに持ち込むか? その上でワームの強大な戦闘能力にどう対抗するか? 考えるべき事は多い。まともに正面から無策でぶつかれば、それこそ鎧袖一触で薙ぎ払われて終わるだろう。
「どの帝竜においても言える事じゃが、まずどう戦うか? そのビジョンが見えているかどうかが重要になる。帝竜と戦った経験のある者ならわかるじゃろうがな」
ただでさえ強い帝竜が、常に先制攻撃を行える状況にある。今回は特に質量を持つ雷雲という戦場だ。その対策を怠れば、戦うことさえできないだろう。
「ここまで戦い抜いたおぬしらならば、問題はあるまい。ヴァルギリオスまで、後少しじゃ……このまま一気に他の帝竜どもを蹴散らし、駆け抜けるしかあるまい。どうか、頼んだぞ」
波多野志郎
薔薇の香りのする吐息……! どうも、波多野志郎です。
今回は創世雷雲領域にて、帝竜ワームと戦っていただきます。
プレイングボーナスは、『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』というものになります。今回は特に雷雲という相手のフィールドです、アイデア次第で戦況も大きく動くでしょう。
では、雷鳴轟く雲海にて、皆様をお待ち致しております。
第1章 ボス戦
『帝竜ワーム』
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POW : ローズ・ブレス
命中した【薔薇の香気を帯びたブレス】の【中に含まれる、邪なる心を増幅させる呪い】が【対象を操る白い仮面】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD : 遺失魔術『ギガンティア』
【自分の分身体】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : ワーム・サンダー・ブレス
【無数の雷】を降らせる事で、戦場全体が【生命体の存在を拒む雷雲の海】と同じ環境に変化する。[生命体の存在を拒む雷雲の海]に適応した者の行動成功率が上昇する。
イラスト:シャル
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
桐崎・早苗
雷は陰陽五行において木の行…則ち、この場の属性は木!
であれば、同じ属性であり生命とも言えぬこの『式神:こち』が最も馴染みましょう
こちのもつ風の力…【オーラ防御】にて【かばう】われることでこの雷雲の影響を和らげられましょうか
これより行いますは、五行相生による火の活性
狐火の舞の輝きも一層華やかに明滅刷ることでょう
さぁさ狐火の舞に幻想へとお連れしましょう
相手の動きが鈍りましたなら刀と『呪殺符』をそれぞれ
五行相剋―金、則ち刀はこの場に置いて鋭さを増すでしょう
刀でずぶりと傷を広げ、そこへ【呪詛】を込めし呪いの符を【怪力】でねじ込み内部より蝕むことで攻撃といたします
●
アドリブアレンジOK
愛久山・清綱
層が厚い……うむ、確かにそう言わざるを得ない。
だがそれでも、我々は歩むことをやめない……
着実に進み、道を切り拓く……いつもの事でござるな。
■闘
放たれる雷は嵐の如し……されど何処かに「眼」はある筈。
【野生の勘】を巡らせ雷が落ちる瞬間を【見切り】、直撃を
避けつつワームとの距離を詰める。
此れこそ「着実に進め」だな……やってる事は危険だが。
勿論、行くときは一気に行くぞ。
進むと同時に『雷が弱い場所』を勘で探り、発見したら
そこを全力の【ダッシュ】で一気に通過するぞ。
敵に接近できたら中距離から敵の胴体目掛けて
【破魔】の力を込めた【薙鎌・乱】を放つ。
全てでなくとも、多くの刃を当てて見せる。
※アドリブ・連携歓迎
ユヴェン・ポシェット
並ぶ者無き程に美しい姿…に、勝てるものなどこの世にありはしない、ときたか。随分と自信があるんだな。
相手の先制攻撃を受け、一瞬妙な気持ちが膨れ上がるが、自身の呪詛に対する耐性により保ち堪える。
これは薔薇の、香り。
…憎い、俺の…を奪った奴らが…。
否…変なもんつけるんじゃねぇ。俺は操られるつもりも無いし、そんな自分は仮面ごと破壊してやる。
UC「halu」使用。
自身の身体のパーツを植物…茨へと自在に変化。敵の雷による攻撃を避けながら距離を詰める。そのまま敵に茨と化した腕でしがみつく。頭部まできたら茨で敵を締める。
俺の荊はオパールを含んでいる為、鋭さも美しさも特別製。
ワーム、これがアンタへの、戦い方だ。
霧島・絶奈
◆心情
其の終焉を砕くのみです
◆行動
敵先制攻撃対策として【呪詛耐性】を高めた【オーラ防御】を球状に展開
直接ブレスに触れない様に対策
加えて【空中浮遊】を活用
視界や行動可能領域を確保しつつ【聞き耳】を立て奇襲を警戒
また【罠使い】として持ち込んだ大量の「サーモバリック爆薬」を【衝撃波】に乗せて上下を含む全方位に散布
敵の奇襲を攻撃の機会へと転換
密閉空間ではない以上、この【範囲攻撃】から逃れる術はありません
先制攻撃対処後は『二つの三日月』を召喚
生命が生まれ得ぬのなら、死の根源にて相対するまで
私も【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
負傷は各種耐性と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
クーナ・セラフィン
雲の上に乗れるなんて夢物語のよう…雷雲でなければ、だけれども。
帝竜も厄介な能力持っているとは実に苦難。
けど弱気にならず前向きに困難を乗り越えるのが騎士だからね。
望まれぬ帝竜に永久の眠りを。行こうか。
ブレスに対しては雷雲の上を走り回避。
電気で毛並が逆立つけれど痺れなければよし、とオーラで体を覆い守る。
風のルーンを描いた符でブレスを散らせないか回避しながら確認しておき、散らせるなら緊急時の切札として使用。
無理なら私自身に風の衝撃波放ち強引にブレスの射線から外す回避手段に。
膨れる邪心には敵を討つ事のみを考え影響を抑え、準備できたらワームの喉元に飛び込みUCで全力で貫いてやろう。
※アドリブ絡み等お任せ
リミティア・スカイクラッド
魔女の刻印の「リミッター解除」で「オーラ防御」展開
雷雲領域内での最低限の安全を確保し、風神の靴で「空中戦」を挑みます
敵の先制攻撃が来るのを見計らってゼルフォニア鉱の欠片を使用
閃光で「目潰し」を仕掛け、その隙に雷雲に紛れて身を隠します
狙いの定まらない状態なら、ブレスの直撃は避けられるでしょう
それでも被弾してしまった場合は黄金の林檎で回復しつつ
邪心を増幅する呪いは、胸の誓いを強く思い出すことで抗います
エリクシルの輝きに誓って、全ての過去に終焉を
これがリムの果たすべき使命
どんな呪いにも、己自身の邪心にも、穢させはしません
UCを発動して「限界突破」
炎を纏った宝石剣で帝竜ワームの『過去』を「焼却」します
シリン・カービン
【WIZ】
荒れ狂う雷雲であっても、雷の精霊の様子に注意すれば
自ずと危険の少ない領域は見えてきます。
更には雷撃を利用しやすいエリアも。
マントの電撃耐性でダメージを減らしつつ、
雷撃を掻い潜り目標エリアにダッシュ。
到達次第精霊銛を円陣上に投擲し、
避雷針代わりに周囲の雷を呼び込みます。
「我が声に応えよ、雷の精霊!」
【スピリット・ブレッシング】を発動。
円陣上に渦巻く雷のエネルギーを制御し、
精霊猟銃に装填した雷の精霊弾に充填。
例えあなたが雷雲に住まう者であっても、この雷は一味違う。
エネルギーが凝縮された強化精霊弾、受けてもらいます。
「ワーム、あなたは私の獲物」
ブレス直前の口を狙撃。
その野望諸共駆逐します。
ワン・シャウレン
鞍馬(f02972)と
傲慢な気配に満ちた手合いよ
結局は全て倒すが、訳を言わせぬも肝要よな
行くか、雷雲を行くは初じゃが中々心躍るものよ
水霊駆動を起動
元より強大な敵、分身をまともに相手してはおれんの
高速移動で本体に近づき、敵の身体を足場に張り付くようにして戦う
分身が構わず本体と連携して襲ってくるなら、
本体の陰に隠れるなり、一度離れるなり回避。
流水は格闘の延長や刃・槍などにして放つ他、
塊を足場にして空中機動にも利用する。
質量をもった雷雲もまた合わせて利用、空中戦に淀みのないように。
登る最中も隙あれば攻撃するが、
無事頭まで辿り着けばそのまま力の限り叩きに。
鞍馬へのブレスを逸らす手伝いも試みよう
鞍馬・景正
ワン嬢(f00710)と。
再孵化せし帝竜、何やら訳ありの個体が多いようですが。
いずれにせよ為す事は変わらず。
参りましょう、ワン嬢。
◆POW(対策)
首巻で口元覆い、敵の動作を【視力】で注視。
雲で感電する恐れがあれば【電撃耐性】で軽減。
雲間に潜めど、その影や質量の気配など追いつつ、姿を見せブレスを吐く瞬間を【見切り】
斬撃の【衝撃波】と、剣気による【オーラ防御】で香気を吹き散らし。
呪詛を緩和し、邪心は【破魔】の念を巡らせ対抗。
そして仮面の支配を遅らせ、【無明剣】にて邪心も何も無い無我へ。
◆攻撃
後は【怪力】と【早業】の限りの太刀乱舞で仕留めるのみ。
ワン嬢も我が動き見て、臨機応変に連携してくれましょう。
ガルディエ・ワールレイド
ただでさえ帝竜が多くて難儀しているんだ。無限に相手なんて出来ねぇよ
テメェの無限はこの戦没で終わる。覚悟しな!
◆行動
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流
《オーラ防御/電撃耐性》で環境に対応
更にブレスを《見切り》最低でも直撃を避ける
ブレス被弾後は《破魔》で呪い進行を鈍化させつつ、人々を守る為に戦うという騎士の誓いを思い出して邪心に打ち克とうとするぜ
反撃時には【竜撃】使用
場合によっては、質量のある雷雲を【竜撃】で砕いて移動経路を確保
仮面の呪いが進行してきたら、敵の姿に関する挑発を行いつつ《捨て身の一撃》
操られるくらいなら戦闘不能になり味方に託す
「かかって来いよ、蛇野郎」
パル・オールドシェル
帝竜ワーム、貴方とこの戦場で戦うことになったのはある意味では僥倖でしょう。
雷が轟き電波が乱れる此処だからこそ、極限環境の宇宙空間戦に特化した僕の艦隊が真価を発揮するというもの!
別種とはいえワームを扱う者として、貴方を此処で倒します!
あちらが生命体を拒む雷雲、無数の雷を放つのならば此方は生命体ですら無い機械です。生身の戦友諸君ほどの抵抗は無いはず。
そして僕自身電流を用いる機体ですから、僚艦を避雷針代わりに受けた雷は電力に転用させてもらいましょう。
帝国にも怯まず戦い抜いた艦隊です。何隻沈もうと何機墜ちようと止まりません。
物量を頼みに肉薄し、奪った電力を投じた一斉攻撃で帝竜に反撃します!
メイスン・ドットハック
【WIZ】
雷雲の中の帝竜、引きこもりかのー?
なら僕も同じ引きこもりとして負けるわけにはいかんのー
先制対策
揚陸艦ロストリンクに搭乗して参戦
電脳魔術で特大避雷針を船首に着け、電脳魔術による誘導する電磁フィールドを展開し、逃がした雷をエネルギーに転換・保存する
また電脳AIによる、雷の軌道予測・制御回避を担当させて、高速機動で雷を最適に回避する
またホログラムデコイや電撃を吸収する浮遊機雷もばら撒く
先制後はUC「巨人を穿つ叡智の煌めき」を発動して、対巨大生物特攻増幅器を雷転換エネルギーを接続したLPL砲に搭載し、帝竜が驕っているであろう顔面に乾坤一擲の一撃を撃ち込む
油断は大敵じゃのー
アドリブ絡みOK
黒城・魅夜
雷撃使いですか
私にとっては与し易い相手
早業と範囲攻撃・ロープワークで鎖を全方位に射出した上で切り離し
避雷針と為しましょう
雷が鎖に集中しているうちに間合いを詰めます
生命体の存在を拒む?
ふふ、私たち猟兵はもともと生命体の埒外ですよ
とはいえ攻撃を侮りはしません
環境耐性とオーラ防御を併用し
それでも無傷とはいかないでしょうが覚悟と激痛耐性で凌ぎます
そして受けた傷から飛び立った鮮血の胡蝶が戦場を覆うでしょう
いかなる環境でも飛翔する蝶たちがね
ふふ、どうしました?まるで悪夢でも見たようなお顔
ええ、自分の醜さを突きつけられる悪夢でも見たようですよ
けれど安心なさい、その醜い身体は滅びます
胡蝶たちの鱗粉によってね
リステル・クローズエデン
疾く進み、穿つのみ。
視力+偵察+第六勘で、攻撃の予兆を見切り。
引き付けてからの
足場習熟+環境耐性+電撃耐性で足場確保。
早業+ダッシュ+ジャンプ+空中浮遊。
残像+迷彩+闇に紛れる+目立たないで
一気に加速し攻撃をかわし。
魔装の腕輪による
乱れ撃ち+目潰し+部位破壊の範囲攻撃を行います。
相手の攻撃が当たった場合、
オーラ防御+電撃耐性+激痛耐性で耐え。
呪いは呪詛耐性と破魔で抗い。
限界突破。ユーベルコード発動。
悪影響を放出する
魔装の腕輪に紫傷石をセットし、
リミッター解除+鎧無視攻撃+全力魔法で砲撃を行う。
近距離ならば上記の砲撃を
怪力+串刺しに変更し、
呪剣を突き刺した後、
零距離射撃で呪剣を押し込みます。
グロリア・グルッグ
雷バチバチの最高にクールな帝竜ワーム…!
強大な敵ですが雷使いの一人として胸が高鳴るのを抑えきれませんねぇ!
装備中のアイテム制電回路を活用し、落雷を受けた際に雷が外へと放出されるようにしておきます。
それでもダメージは免れませんが出力全開のオーラ防御で軽減しつつ、持ち前の電撃耐性と覚悟で耐えましょう。
先制攻撃を凌いで反撃の好機を得たら敵の術式を妨害すべく計算を開始。
高速詠唱でぶん回した電脳魔術でデータを解析し、ユーベルコードを解除するコードをぶち込んでやります。
たとえ一時的なものであったとしても、敵の攻撃の手が緩む瞬間を作り出せばチャンスメイクになりますから!
仲間達と連携し、帝竜を仕留めましょう!
●蛇龍(ワーム)
どこまでも広がる雲海。ジジジジジ……と低く響くその音は、その雲海が雷雲の海である事を意味していた。
「雲の上に乗れるなんて夢物語のよう……雷雲でなければ、だけれども」
雲を踏みしめ、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は感慨深げに呟く。その雲海の中を泳ぐ、巨大な影を既に視界に捉えていた。
「雷雲の中の帝竜、引きこもりかのー? なら僕も同じ引きこもりとして負けるわけにはいかんのー」
メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は、その影をワダツミ級強襲揚陸艦・帝竜ワーム竜鱗装甲型ロストリンクに搭乗して見下ろす。空海宇宙対応の、対ワーム用に仕立て上げられた逸品だ。
そのロストリンクの目の前で、バチン! と放電光を走らせ雲海が弾ける。まるで海を割るように現れたのは、巨大な蛇龍――帝竜ワームだった。
「来たか、猟兵。無駄な事を……私とヴァルギリオスがいる限り、再孵化の繰り返しは終わらない! その事を、未だ理解できぬとは――」
「ただでさえ帝竜が多くて難儀しているんだ。無限に相手なんて出来ねぇよ。テメェの無限はこの戦没で終わる。覚悟しな!」
ワームの言葉を遮るように言い切ったのは、ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)だ。その言葉に、再び雲海に戻ったワームから低い唸り声がした――喉を鳴らし、笑ったのだ。
「笑止。過去とは無限の積み重ね、それを知らぬお前達に勝機などない!」
「層が厚い……うむ、確かにそう言わざるを得ない。だがそれでも、我々は歩むことをやめない……着実に進み、道を切り拓く……いつもの事でござるな」
呆れるほどいつも通りだ、と愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)はこぼす。その無限の過去から現在と未来を守るのが、猟兵なのだから。
「傲慢な気配に満ちた手合いよ。結局は全て倒すが、訳を言わせぬも肝要よな。行くか、雷雲を行くは初じゃが中々心躍るものよ」
「再孵化せし帝竜、何やら訳ありの個体が多いようですが。いずれにせよ為す事は変わらず。参りましょう、ワン嬢」
不敵に笑うワン・シャウレン(潰夢遺夢・f00710)の隣に、鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)が立つ。その刹那、雷雲に大穴が空いた。
「愚か者めが、身の程をしれい!」
ワーム・サンダー・ブレス――ワームが降らせた、降雷の豪雨が戦いの幕開けを告げた。
●創世雷雲領域
「雷バチバチの最高にクールな帝竜ワーム……! 強大な敵ですが雷使いの一人として胸が高鳴るのを抑えきれませんねぇ!」
グロリア・グルッグ(電脳ハッカー・f00603)は、サンダーロッドを避雷針代わりに構える。ドン! と撃ち抜く電撃は、ロッドを通じて愛用の制電回路から電脳世界へと逃された。
「帝竜ワーム、貴方とこの戦場で戦うことになったのはある意味では僥倖でしょう。雷が轟き電波が乱れる此処だからこそ、極限環境の宇宙空間戦に特化した僕の艦隊が真価を発揮するというもの! 別種とはいえワームを扱う者として、貴方を此処で倒します!」
そして、雲海へとパル・オールドシェル(惑星の守り人・f10995)が軌道防衛艦隊δ-61『星歌隊』(オービタル・クワイア)の人型自律兵器と無数の無人迎撃母艦と共に侵入していく。超高熱、極低温、危険な宇宙線――過酷な宇宙環境で運用を想定された船団にとっては、命を拒む場所こそが故郷のようなものだった。
「帝竜も厄介な能力持っているとは実に苦難。けど弱気にならず前向きに困難を乗り越えるのが騎士だからね。望まれぬ帝竜に永久の眠りを。行こうか」
「荒れ狂う雷雲であっても、雷の精霊の様子に注意すれば自ずと危険の少ない領域は見えてきます。更には雷撃を利用しやすいエリアも」
クーナと同時に駆け出したシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は、迷わずハンター・マントで身を包み雲海へと身を踊らせた。立てるほどの密度を持つ雲は、人間からすれば『隙間』だらけだ。マントで雷を払いながら、シリンはその中を精霊の動きを見極めながら駆けていく。
「む――」
不意に逆だった毛の動きに、クーナが風の魔術符を投擲する。その直後、ルーンの描かれた符に雷が落ちる――ここはワームの領域、言わば胃袋を言い換えてもいい危険地帯なのだ。
「雷撃使いですか、私にとっては与し易い相手」
黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)が、呪いと絆を周囲に展開する。ジャラララララララララ! と踊る鎖が射出され、それが避雷針となって『道』ができた。魅夜が、その道を真っ直ぐに落ちていく。
「雷への対処をしているというのならば――!」
ワームがその口を開き、薔薇の香気を帯びたブレスを放つ。その匂いに、ユヴェン・ポシェット(ඛනිජ・f01669)が呟いた。
「並ぶ者無き程に美しい姿……に、勝てるものなどこの世にありはしない、ときたか。随分と自信があるんだな」
ドクン、とユヴェンの中で調子外れの鼓動がする。しかし、それは心臓の鼓動ではない。膨れ上がろうとした、心の鼓動だ。
「これは薔薇の、香り。……憎い、俺の……を奪った奴らが……」
視界が、暗くなっていく。ユヴェンの顔を覆うのは、白い仮面だ。その仮面が完全に顔を覆う寸前――ユヴェンは、自らの手で引き剥がした。
「否……変なもんつけるんじゃねぇ。俺は操られるつもりも無いし、そんな自分は仮面ごと破壊してやる」
バキン! と呪いに耐え切ったユヴェンは、そのまま荒れ狂う雷雲へと続いた。
「疾く進み、穿つのみ」
リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)が、視線を走らせる。雷には予兆がある――音だ。元来絶縁体である大気、その大気を絶縁破壊するほど膨大なエネルギーが熱で大気を膨れ上がらせるのを、音が現すのだ。その音を聞き取ったリステルが、魔装の腕輪から放った魔力のクナイで雷を穿つ!
「舞うとしよう」
「ええ、参りましょう」
水霊駆動で自身に宿した精霊の加護を受け、ワンは変幻自在の水をまとって雲海を進む。それを守るように首巻で口元覆った景正が、共に降りていく。岩場の隙間を伝わり流れていく水のようにワンは雲の隙間を抜け――不意に、雲を砕きながら振るわれたワームの尾に襲われた。
「させるか」
それを景正の衝撃波が受け止め、ワンの水が押し流す。
「目を閉じて下さい」
リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)が、ゼルフォニア鉱の欠片を放おった。コン、ココン、と雲の隙間を転がっていった欠片は――リミティアの計算通り、ワームの眼前に落ちた。
「む――!」
直後、リミティアが念じたのと同時に目を焼く閃光が走った。ワームが苦しげに目を瞑る――その隙を、ガルディエが見逃さない。魔槍斧ジレイザと魔剣レギアに念動力を帯びさせ、渾身の力でワームに叩きつけた。
「かかって来いよ、蛇野郎」
「蛇ではない!!」
ワームの怒りの言葉と同時、視界が陰った――その正体を、メイスンが告げる。
「分身じゃ!」
ワームが生み出した蛇龍の分身体が、雲を砕きながらその牙を振るった。ガルディエは咄嗟に魔槍斧ジレイザで受け止め、その場を吹き飛ばされた。
そして、ワームと分身体が同時に雷を全方位へと展開した。
「雷は陰陽五行において木の行……則ち、この場の属性は木!であれば、同じ属性であり生命とも言えぬこの『式神:こち』が最も馴染みましょう」
桐崎・早苗(天然風味の狐娘・f10614)の頭上に、式神:こちが白く丸い体を踊らせる。旋風が雷を巻取り、そのまま周囲へと散らした。
「雲の中にいる限り、そう簡単に刃は届きませんね」
清綱は猛禽の翼を広げ、体勢を立て直す。『道』はある。だが、たどり着いたとしても、ワームが動けば雲も動くのだ。このままでは埒が明かなかった。
――だが、そこに浮遊した霧島・絶奈(暗き獣・f20096)がいた。雲海を眼下に、ゴロゴロと音を鳴らす雷雲へ、絶奈は告げた。
「其の終焉を砕くのみです」
隙間隙間に流し込むように展開していたサーモバリック爆薬が、まず爆発した。個体から気体への急激な変化。そして、粉塵と点火性のガスによる爆発を酸素の燃焼と合わせ大爆発を巻き起こす!
「ま、さか――!?」
雲海が、砕けた。そこに姿を現したワームと分身体は更に潜ろうとするが、メイスンのロストリンクとパルの『星歌隊』がそれを許さない。
「乱暴に布団を引っ剥がされる苦痛、よくわかるのじゃ」
「何機墜ちようと、この好機を逃しません」
メイスンとパルが食い止めているその間、猟兵達は体勢を整える。それに、ワームが吼えた。
「舐めるな! ならば、真っ向から叩き潰すまでよ!」
ワームと分身体が、ブレスを放つ。ここが分水嶺――猟兵と帝竜の一歩も退けない正念場が、さっそく訪れた。
●醜き姿と共に
分身体が先行する。その巨体による突撃の前に立ち塞がるのは、早苗だ。
「これより行いますは、五行相生による火の活性。狐火の舞の輝きも一層華やかに明滅刷ることでょう。さぁさ狐火の舞に幻想へとお連れしましょう」
バババババババババババババババババ! と展開されるのは、呪殺符だ。そして、式神:こちの風に押され加速すると、早苗は狐火の舞によって生み出された炎を退魔刀-玖式-の切っ先へと集中させる――。
「五行相剋――金、則ち刀はこの場に置いて鋭さを増すでしょう」
繰り出された刺突が、分身体の額を貫いた。そのまま式神:こちの風で下へ押しやると、もがく分身体へ清綱が風に乗って一気に間合いを詰めた。カチャリ、と空薙の鯉口を切り――清綱が抜き放つ!
「秘伝……薙鎌」
放たれるのは、破魔属性の虚空から現われる斬撃波――清綱の薙鎌・乱が分身体を切り刻み、ワーム本体へと走った。ズドン! とワームはその斬撃波を雷のブレスで受け止め、両者の間で爆発が巻き起こった。
「今でござる!」
爆風に乗って上昇する清綱の声に応えたのは、ユヴェンだ。halu(ペトリファイドウッド)によって右腕を茨へと変えてワームを絡め取っていく。その茨は速く、そのままワームの顔面まで届いた。
「俺の荊はオパールを含んでいる為、鋭さも美しさも特別製。ワーム、これがアンタへの、戦い方だ」
「ああ、こんな時でなければ持ち帰るものを――!」
その美しさを認め、ワームは敢えて上へと飛び上がった。隠れられないのならば、食い破るのみ――ワームは全周方向へワーム・サンダー・ブレスを降らせる!
「デカブツであればあるほど餌食じゃけーのー」
それと同時、メイスンの巨人を穿つ叡智の煌めき(ジャイアント・キリング)がワームの顔面へと放たれた。対巨大生物特攻増幅器を雷転換エネルギーを接続したLPL砲に搭載、そのエネルギーを使った乾坤一擲だ。
「――ッ!」
鋭い呼気と共に、ユヴェンが茨を振るいワームを投げ飛ばす――その瞬間、エネルギー砲の光線がワームの巨体を捉え、大きく揺れた。
「が、あ!?」
「油断は大敵じゃのー。ほれ、まだ終わらんぞ?」
そして、味方を墜とされながらも囲んだ『星歌隊』へ、パルは号令を下す。
「遍く星々に光あれ。私達は其を注ぐもの、今は亡き惑星を護る機構。愛しき故郷の記憶の欠片。δ-61、軌道上に唄いましょう」
「この程度で!」
ワームがローズ・ブレスを薙ぎ払った。ドドドドドドドドドド! と人型自律兵器達はブレスに巻き込まれ、爆発四散していく――だが、怯む機体は一体として無かった。
「帝国にも怯まず戦い抜いた艦隊です。何隻沈もうと何機墜ちようと止まりません」
放たれる奪った電力を投じた一斉掃射、人型自律兵器達の掃射がワームの巨体へ余すこと無く着弾していった。それでもなお墜ちないのは、もはや矜持以外の何物でもない。
「まだだ!」
「ふふ、どうしました?まるで悪夢でも見たようなお顔」
歌うように囁いたのは、魅夜だ。雷の雨を駆け抜け、受けた傷から鮮血の胡蝶を羽ばたかせ微笑んだ。
「ええ、自分の醜さを突きつけられる悪夢でも見たようですよ。けれど安心なさい、その醜い身体は滅びます。胡蝶たちの鱗粉によってね」
「――黙れ!」
ワームの薔薇のブレスと、魅夜の滅びの日、最期に舞うもの、紅き翅(ドゥームズデイ・オブ・エターナルレッド)の胡蝶が激突する。真紅の光が、薔薇園を吹き抜けた強風に散る花弁のように散っていく――その間隙に、クーナが跳んだ。雲を足場にした疾走、クーナは最後に大きく跳んだ瞬間、白雪と白百合の銀槍を抜き放った。
「苦しませるのも心苦しいんだよ――動かないでね?」
白百合のオーラを纏わせたヴァン・フルールによる超高速の刺突、クーナの騎士猫の介錯(ダージュ)がワームの喉元を貫いた。カハ、という呼気と同時に、鮮血が吹き出す。しかし、ワームは止まらない。強引にとぐろを巻くようにクーナを振り払い、なおも前へ飛ぶ。
「とり、もどすのだ。きおくと、すがた、を――!」
「生命が生まれ得ぬのなら、死の根源にて相対するまで」
その妄執を前に、絶奈は【Innocence】を構えその切っ先をワームへと突きつけた。
「其は宇宙開闢の理、無限の宇宙を抱擁する者。永遠の停滞にして久遠の静謐。死の根源にして宇宙新生の福音……。顕現せよ『二つの三日月』」
絶奈の背後、召喚した二つの三日月の如き光の巨人が出現した。上空からワームへ迫る――その巨人の姿に、ワームは吼えた。
「おお、おお、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
無数の小さな二つの三日月を伴う打撃と、ワームの牙が交差する。大質量同士の戦いが、雲海に完全な大穴を開けた。
「消し飛びな!」
巨人の肩からガルディエが飛び降りる。振りかぶる拳、その突き出された腕を駆け抜けて拳から跳んだガルディエはM魔槍斧ジレイザと魔剣レギアを渾身の力で振るう! ガルディエの竜撃(ドラゴニック・インパクト)に、ワームは空いた大穴の底へと墜ちていった。
「鞍馬!」
墜ちるワームの真上。フォースフィールドを展開し、ワンが落下するワームの顔面に鋭く重い一撃を叩き込む。のけぞったワームへ、ワンの真横を通り過ぎて景正が濤景一文字の柄に手を伸ばした。
「我空、人空、剣空――右三空一心観。無明にて断つ」
「ぐ、が、あああああああああああああ!!」
景正の居合の一閃から始まる無明剣に合わせ、ワームがブレスを放とうとする。だが、景正は構わない。反応の必要さえ、感じなかった。そこにあるのは絶大な信頼だ。その信頼に応え、ワンはフォースフィールドで押しやり、強引に軌道を変えた。
「させぬ!」
ワンが、硬い雲へワームの顔面を押し付ける。その間隙に、ズザン! と景正の乱舞がワームを切り刻んでいく。飛び散る鮮血、膨大な体力を持とうと既に致命傷のはずだ。それでもなお倒れないのは、まだ勝機を失っていないからだ。
「ぐ、が、ああああああああああああああああああああああ!!」」
尾を振るい、体勢を立て直しワームが低く身構える。遺失魔術『ギガンティア』――自身の分身体を生み出すユーベルコード。その戦闘能力は、まだ戦況を覆す可能性が――。
「全ては初期化しゼロに還る」
「――ッ!?」
ワームが生み出そうとした分身体が、粒子となって消えていく。グロリアの電脳禁術・零(コード・ゼロリセット)だ。これ以上無いタイミングでのユーベルコードの相殺。
(「ええ、その手しかなかったでしょう!」)
だからこそ、グロリアは読んでいた。ここまで積み上げたすべてをひっくり返る鬼札(ジョーカー)の封殺――それを駄目押しするように、シリンが精霊猟銃の銃口を向けた。
「我が声に応えよ、雷の精霊!」
周囲に帯電していたワームの雷が、精霊猟銃の雷の魔弾へと取り込まれていく。精霊術士として、精霊と共にある者として、雷はシリルにとって決して敵ではない――味方なのだ。
「それは、撃たせられぬ!」
本能で察したのだろう、ワームはすかさずシリルへ向けてブレスを放とうとする。
「ワーム、あなたは私の獲物」
二条の電光が激突し――シリルの一撃が、撃ち抜いた。ワームの雷さえ取り込んだシリルの精密な一撃が、ワームのブレスを放った口を撃ち抜く!
ワームが、のけぞる――そこへリステルとリミティアが同時に駆け込んだ。
『凶雷……放撃……』『この身は刃……荒れ狂う黒き呪いの刃……』『全てを壊す……ベルセルクモード』
「エリクシルの輝きに誓って、全ての過去に終焉を」
リステルの凶雷放撃・狂装纏醒形態(ブラックバースト・ベルセルクモード)で漆黒の鎧を纏って呪剣・黒を繰り出し、限界突破したリミティアが魔女の誓剣(マギア・ブレイド)によって炎を纏った宝石剣エリクシルを振りかぶる。
「ぐ、お、おおおおおおおおおおおおおおおおお!! すがた、を……わ、たしの……ぉ……っ」
リステルの突き立てた呪剣・黒が内側から呪剣の刃を大量に生み出し、リミティアの宝石剣エリクシルの斬撃がワームの身を切り裂く! 燃え上がるワーム――『過去』を焼き尽くされ、ここに帝竜ワームが猟兵達の手で駆逐されていった……。
大成功
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