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星占いと夜空の彩華

#UDCアース #呪炎のエーリカ

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#UDCアース
#呪炎のエーリカ


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●占う未来の行方
 宵の頃、郊外にひっそりと建つ洋館の奥。
 其処には妖しい水晶玉や燭台が置かれ、周囲は宵闇色のヴェールに包まれていた。
 広く作られた部屋には邪神教団員が多く集まっており、その視線は豪奢な椅子に座る人物に向けられている。
 魔女帽子にマント、しなやかな肢体が顕になった服装の女性。
 教団が何らかの儀式で召喚したのだろう。邪神として復活した彼女――呪炎のエーリカは脚を組み直しながら双眸を細めた。
「あなた達がこの子達と一緒にあたしを蘇らせてくれたことで、新たな力に覚醒したわ」
 彼女の傍には一ツ目の千里眼獣が何匹も控えていた。
 未来を見通す獣の力と彼女が持っている呪いの宝石の力が合わさることで、邪神としての力が増したらしい。それは一体どのような能力なのかと邪神教団員が問いかけると、魔女は得意気に胸を張った。
「見せてあげるわ! ドキドキ💗エーリカの未来視星占い!」

「は?」
 立ち上がった魔女が不可解なことを語ったので教団員は戸惑う。その反応に構わずエーリカは杖を掲げ、十二星座の紋章を周囲に浮かびあがらせた。
「怖いもの知らずで目立ちたがり屋のあなたはまさしくリーダー格ね。人を引き寄せる力もあるから正しいと思ったことをこれからも貫いていけばいいわ。けれど自分の怒りに任せて動くとよくないことが起こるの。強引な行動は避けた方が良いわね。アンラッキーアイテムは蝋燭!」
 どうやら其処から教団員の未来を占ったらしい。
 対する教団員のリーダーはわなわなと震えて怒りを顕にする。近くに立てられていた燭台を握った彼は魔女に殴りかかろうとしていた。
「ふざけるな! 俺達はそんなことのためにお前を呼び出したのでは――」
「言ったばかりよ。怒りで動いちゃいけないって」
「……何だ!? 力が、抜けて……」
「ふふ、占いの代価にあなたの生命力を貰っちゃった」
 男は老人のように老けていき、瞬く間に生気が失われていく。一連の状況を見ていた教団員達は恐れ慄き、蜘蛛の子を散らすように洋館から逃げていった。
 人の気配が消えた洋館内で魔女は肩を落とす。
「つまらないわね。せっかくまたこの世界に顕現出来たっていうのに……ねえ?」
 魔女は傍に控える千里眼獣達に呼び掛け、小首を傾げた。

 それから暫し後、洋館から続く海岸線の向こう側に幾つもの火花が散った。
 鋭く響く音と同時に夜空に咲いたのは色鮮やかな花火の数々。奇しくも今夜、その街では春と初夏の花火大会が行われる日で――。
「向こうに行けば人がたくさんいるのかしら。丁度良いわ、皆を占ってあげましょ」
 魔女はそっと窓辺に立つ。
 スターマインと呼ばれる花火は空をきらきらと彩っている。
 そうして彼女はくすくすと笑い、星と共に耀く大輪の華を見上げ続けた。

●夜に咲く華
「夏の花火はよく聞くが、春の花火ってのはめずらしいよな」
 しかし、まったく存在しないわけでもないのだと語ったのはUDCエージェントのディイ・ディー(Six Sides・f21861)だ。或る街で開催されるという海岸線での花火大会の話を仲間達に語った彼は、続けて深い溜息をついた。
「悪いが、邪神退治を頼まれてくれないか」
 千里眼獣プレビジオニスと呪炎の魔女エーリカ。それが今回の倒すべき対象だ。
 獣を引き連れた魔女はこのままでは花火会場に向かい、無差別に人々の命を奪っていく可能性がある。それゆえに邪神達が件の洋館に留まっている間に決着を付けて欲しいという願いだ。
「逃げた邪神教団のメンバーはUDC組織の方で何とかしておく。お前らは洋館内部にいる千里眼獣を倒して、その奥にいる呪炎の魔女と戦ってくれ」
 敵は千里眼や未来視の力を使う。
 厄介ではあるが勝てない相手ではないだろう。また、魔女は星占いと称して何かと猟兵を占おうとする。一般人だと魂を抜かれることもあるが、猟兵ならばその程度の力は何ともない。占いについては聞いても聞かなくても問題はないだろうと語り、ディイは敵の説明を終えた。
「あいつ、何て妙な力を手に入れて……ああ、いやこっちの話」
 咳払いをしたディイは困ったような表情を浮かべた後、頼むぜ、と皆に告げる。
 そして、事が無事に終わった後は花火を見に行くと良いと話した。
「戦いの序でになっちまうが、たまにはこういうご褒美も良いだろ。好きな子とか友人とか誘ってさ、これから来る夏に思いを馳せながら花火を見る。最高じゃね?」
 菊に牡丹、冠にダリヤ、スターマイン。
 様々な花火が打ち上げられるらしいので見応えもあるはずだ。
 夜空に咲く彩の華は美しい。ひとりで思いを馳せてみたり、皆でわいわいと騒いで楽しんだり――この夜にどのような思い出が出来るかもまた、楽しみのひとつだ。


犬塚ひなこ
 今回の世界は『UDCアース』
 邪神を倒して花火を見に行こう、というシナリオとなります。

●第一章
 集団戦『千里眼獣プレビジオニス』
 戦場は郊外の洋館のエントランス。
 難しいことは考えずにおもいっきり戦ってください。

●第二章
 ボス戦『呪炎のエーリカ』
 戦場は洋館奥の広い部屋。真剣にやれば苦戦する相手ではありません。
 プレイング冒頭に下記の絵文字を入れた場合、エーリカが星占いをしてくれます。

 ✡️:総合運。 ❤️:恋愛運。 🙏:対人運。

 何も告げなくても自動的に占います。
 気になることがあれば魔女に話して頂いても大丈夫です。全部をご希望して頂いても良いのですが、その際は占いの都合上、台詞がずっとエーリカのターン!になりますことをご了承下さい。
 占いは必須ではなく、占い希望の有無で戦闘が有利不利になることはありませんので気分次第でご自由に!

 ※一章、二章は出来る限り早い返却を目指しています。締め切り告知はなく、システム的にプレイングを送信できなくなるまでが締め切りとなります。

●第三章
 日常『エンジョイ・スターマイン』
 春から初夏にかけての花火大会。夏じゃなくても花火は楽しい!
 こちらは三章開始時に詳しい情景を描写します。
 締め切りまでの時間も比較的長めに取らせていただく予定です。三章のみのご参加や、グループでのご参加も歓迎致します。

 犬塚が登録しているいずれかのPCをお呼び頂ければご一緒します。一人参加だけど誰かと話したい、大勢で楽しみたいから誰かを呼びたいなど、お気軽にどうぞ。初対面でも気にせずお声がけください。
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第1章 集団戦 『千里眼獣プレビジオニス』

POW   :    未来すら視る単眼
【未来の一場面を視ることで】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    千里を見通す獣
【視力強化・視野拡大・透視・目眩まし耐性】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【見失うことなく追尾し、鋭い爪】で攻撃する。
WIZ   :    幻の千里眼
【すべてを見通す超視力に集中する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

篝・倫太郎
春の花火って夏のまた違うんだよなぁ……
空の色とか空気が違うからだろか?
サクサクっと片付けちまおっと

エレクトロレギオン使用

召還したで機械兵器で敵を攻撃
同時に俺も華焔刀でなぎ払いの範囲攻撃
刃先返して2回攻撃

集中なんざ、させてやるかよ!

どちらの攻撃もすり抜けた対象は
念動力で問答無用でぶん投げる
コントロールはまぁ、運任せ!
でも、他の敵の多そうなトコに行ってくれりゃ御の字かな

敵の攻撃は視力も使った見切りとフェイントも交ぜた残像で回避
回避が間に合わない場合はオーラ防御で防いでカウンター

本命はこの先……?
予知で聞いたテンションって結構、うん
(嫌な予感しかしないという顔)
ま、楽しく花火観るために、頑張りますか



●夜を待ち侘びて
「春の花火って夏のまた違うんだよなぁ……」
 倫太郎が思うのは今夜に予定されている花火大会のこと。
 未だ任務も終えていない夕暮れ過ぎではあるが、夜を思えば楽しみも募る。きっと空の色や空気が違うからだろう。そう思えば春の花火を早く見たいという気持ちが巡り、倫太郎は気合を入れた。
「サクサクっと片付けちまおっと」
 そう言って彼が見据えたのは件の洋館のエントランス内。
 玄関扉を開けてすぐに猟兵を出迎えたのは単眼の獣達だ。侵入者だと察知した千里眼獣プレビジオニスは倫太郎を睨み付ける。
 対する倫太郎はエレクトロレギオンを召喚していった。
「数には数で、ってな!」
 召還した機械兵器に突撃を指示した倫太郎は華焔刀を構える。レギオン達が千里眼獣に向かっていく中、倫太郎は周囲の敵の動きを確かめた。
 相手は無理に向かっては来ず、集中して未来視を行おうとしているらしい。
 おそらく後手に回れば此方の動きが読まれてしまう。そのように察した倫太郎はひといきに床を蹴った。
「集中なんざ、させてやるかよ!」
 勢いに乗せて薙刀を振るえば、衝撃波が周囲に散る。そして刃先を返してもう一閃を薙ぎ払うことで近くの獣を切り裂く。
 レギオンと衝撃波。
 運良くどちらの攻撃もすり抜けた敵を見つけた倫太郎は更に力を紡ぐ。
 念動力で敵を捉えた彼は、相手が何かをする前に問答無用でその身を放り投げた。きゃん、という犬めいた鳴き声が響いたが容赦はしない。
 そのまま敵の群れに突っ込むように叩き付けられた獣は引っ繰り返って伸びてしまう。
「悪かったな。コントロールは運任せなんでな!」
 割と適当に投げてしまったが、他の敵を巻き込んでくれたので御の字だ。
 倫太郎はレギオン達が千里眼獣に蹴散らされている様を確かめながら、よくやってくれた、とちいさく告げる。
 エントランスの柱の影に向かい、倫太郎は敵の死角を取った。
 レギオン達に気を取られている獣を狙った倫太郎は一気に刃を下ろす。残像を纏った一閃は見事に巡り、獣を地に伏せさせた。
「本命はこの先……? けど、まだまだ出てくるのか」
 エントランス奥に続く廊下を見据えた倫太郎だが、プレビジオニスの数は未だ多い。本命との戦闘を邪魔されぬ為にも此処で決着を付けていくのが良いだろう。
 嫌な予感がするな、と胸中で呟いた倫太郎は新たな標的に目を向ける。
「ま、楽しく花火観るために、頑張りますか」
 何処に行ったとしてもやることは変わらない。ただこの華焔刀を振るって敵を屠るだけだとして、倫太郎は敵に刃を差し向ける。
 そうして、星占いと花火を巡る戦いは始まりを迎えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

斬断・彩萌
花火かぁ、去年海辺でやったのを思い出すわね
あの時は夏だったけど、見上げる花火もやっぱりステキ

館の闇に紛れて接近、銃の射程に敵が入ったら【光楼】をぶちかましてあげる
目眩まし耐性上等よ、どっちの力が強いか勝負といきましょう、
ほら、ねぇ。その大きな目には眩しすぎる光でしょう?
眩暈でクラついてる間に通常弾も発砲
敵が複数で襲ってきたら武器受けで受け流してから
光楼を上に打ち上げて敵全体の目を眩ませるわ

ああ、ある意味これも花火にみえるかしら
邪悪なるものを滅する聖なる火花、未来を決めるのはあなたたち獣じゃない
それはそれとして……占いは気になるけど
仕方ないじゃない! 乙女はみんな占いが好きなのよ



●光の銃弾と火花
 花火と聞いて思い出すのは去年の夏と海辺。
 少し懐かしく感じた彩萌は過ぎ去っていった季節を思う。あれからあっという間に時が巡って、もうすぐまた夏がやってくる。
 未だ初夏ではあるが花火を見るのも悪くはない。
「あの時は夏だったけど、見上げる花火もやっぱりステキ。けど、その前に――」
 息をひそめた彩萌は前方を見据えた。
 既に洋館の扉はひらかれている。館の闇に紛れてエントランス内部へと踏み入った彩萌は気配を消して、敵の様子を窺う。
 どうやら千里眼獣はまだ彩萌に気付いていないらしい。
 侵入と同時に柱に身を隠していた彩萌は素早く床を蹴った。其処から即座に二丁拳銃を構えた彩萌は銃口をそれぞれ別の獣に向ける。
 接近、同時に響く銃声。
 光楼の力を纏った弾丸がプレビジオニス達を穿った。
 それによって何匹かが堪えきれずに倒れていく。しかし千里眼獣の中には光と衝撃に耐えた個体もおり、此方に狙いを定めて動き出した。
 彩萌は咄嗟に身を翻しながら、迫り来ていた鋭い爪を躱す。
「まだ足りないならもっとぶちかましてあげるわ」
 相手は単眼。されどそれゆえに千里を見通す力を得ているようだ。光に怯まないのならば純粋な力比べをすれば良い。
 追い縋って来た千里眼獣を捉えた彩萌は敢えて正面から銃口を向けた。
「上等よ、どっちの力が強いか勝負といきましょう」
 飛びかかる獣。
 交差する視線。引かれる銃爪。
 そして、一瞬で辺りに光楼の輝きが満ちた。真正面から銃弾を受けた千里眼獣は眼を灼かれて倒れ、力尽きた。
「ほら、ねぇ。その大きな目には眩しすぎる光でしょう?」
 彩萌が起こした光は他方から駆けてきていた敵にも影響を与えたようだ。眩んでいる様子の相手に通常弾を発砲しながら距離を取り、彩萌は身構えた。
 振り下ろされた爪の軌道を見切った彼女は瞬時に得物を持ち変える。精神力を実体化させた剣を振り上げれば、敵の爪が見事に弾かれた。
「少し掠ったかしら。でも――!」
 敵の爪が彩萌の肌を掠めたが、そんな痛みなど無視できる程度だ。
 敵を蹴り飛ばして全体を見通せる柱の前まで下がった彩萌は、一気に勝負を付けにかかった。銃口を頭上に向けた彩萌は銃爪を思いきり引く。
「ある意味これも花火にみえるかしら!」
 打ち上げたのは光楼の輝き。目映い煌めきが散ると同時に光が溢れ、プレビジオニス達が貫かれていった。それは宛ら、邪悪なるものを滅する聖なる火花のようだ。
「未来を決めるのはあなたたち獣じゃない」
 凛と告げた彩萌は銃を下ろし、エントランスの向こう側に目を向けた。
「それはそれとして……占いが気になるわね」
 あの奥にいる魔女は自分達を占おうとしている。聞いた話を思い返した彩萌は思わずそんなことを呟いていた。
 しかし、すぐにはっとした彩萌は首を振る。
「仕方ないじゃない! 乙女はみんな占いが好きなのよ」
 だからこの感情も当たり前。
 気を取り直した彩萌は二丁拳銃を握り直し、洋館の奥に意識を向けた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

花菱・真紀
ふふ、今度は少し早めの花火ですね。
最近は十朱さんとお出掛けするの楽しくて…っとその前にUDCを倒さないとですね。

UC【バトルキャラクターズ】
数を多めに召喚。バトルキャラクター達には敵の行動の【情報収集】というか半分は囮だな。
どんなに見えてても爪で攻撃できるのは一体が限度だろうからな。敵がバトルキャラクターに攻撃中に俺が【援護射撃】【スナイパー】【クイックドロウ】でどんどん撃ち落とす…!俺の方に来た場合は【戦闘知識】と【第六感】で【見切り】…それに今は一人じゃないしね。

次の相手は占いに目覚めちゃったみたいだけどイメージがすごく女子の雑誌の占いって言うか…いや面白いんですけどね…え?恋占い、とか?


十朱・幸也
花菱(f06119)と
アドリブ大歓迎

春の花火っつーのも洒落てるよな
ま、楽しんでもらえてんなら嬉しいけどな
いつもはインドア派だけど
お前と出掛けるのは悪くねぇし

UC:戦姫を発動
近付いてくる敵は【カウンター】がてら
千薙の衝撃波で吹き飛ばすぜ
花菱に対する攻撃は出来る限り
バトルキャラクターズ達と連携しつつ、必要があれば俺が【かばう】
【挑発】する様に派手に立ち回って
敵の意識を俺の方に向ける事が出来ればと
――花菱、気にせずガンガン撃ち落とせ!こっちは任せろ!

女子向け雑誌の占いのノリとか
絶対にパリピだろ……レッツパーリーな邪神だろ……
まあ、占い自体は興味あるけどな
花菱は何を占ってもらうか、決めてんのか?



●銃弾と千の薙
「春の花火っつーのも洒落てるよな」
「ふふ、今度は少し早めの花火ですね」
 幸也と真紀。二人は今夜に行われる花火に思いを馳せていた。幸也は周囲を見渡しながら、対する真紀はその反対を見つめて言葉だけを交わしている。
「最近は十朱さんとお出掛けするの楽しくて……」
「ま、楽しんでもらえてんなら嬉しいけどな。いつもはインドア派だけど、お前と出掛けるのは悪くねぇし」
「俺も嬉しいです。っとその前にUDCを倒さないとですね」
 そんな会話をする彼らの周囲には今、単眼の獣達が何匹も現れていた。
 エントランスに入った途端に出てきた千里眼獣は猟兵達の目的を悟り、今の主である邪神に近付けぬように陣取っている。或いは、主よりも先に此方の未来を視ようとしているのかもしれない。
「それじゃやるぜ」
「こっちからも行きます」
 ――踊り狂え、千薙。
 怨嗟と呪詛を纏った幸也が戦姫の力を発動させる。それと同時に真紀がバトルキャラクターズを召喚していく。
 その半分を囮として突撃させた真紀は敵の様子を窺った。幸也も迫りくる敵を見遣り、千薙から放った衝撃波で吹き飛ばしにかかる。
 真紀はバトルキャラクターズが爪によって蹴散らされている様をしかと見つめた。
 やはり爪で攻撃できるのは一度に一体、或いは数体が限度。どれほど相手が千里眼を持っていようとも身体まで見た目以上に動くものではない。
 敵がバトルキャラクターズに集中している隙を見計らい、真紀は自動拳銃を構えた。
 その瞬間、幸也が真紀に向かってきた獣の前に立ち塞がる。
「通すかよ」
 挑発するが如く、敢えて自分に注意を向けさせる幸也。
 プレビジオニスの単眼は彼だけを映し、鋭い爪が振り下ろされた。
「十朱さん!」
「大丈夫だ、そのまま撃ってくれ」
 真紀は千里眼獣の爪を受け止めた彼に心配の声を投げかける。されど幸也はこんなものは何でもないと言って首を振る。血が散ったが、この程度の痛みなら耐えられた。
 頷いた真紀は銃弾を次々と撃つことで敵に対抗していった。銃声が響き、其処に重ねられた千薙の衝撃波が迸っていく。
(今は、一人じゃない)
 真紀は幸也が共に戦ってくれているという実感を抱き、頼もしさを感じた。
 尚も千里眼獣は幸也に爪を振るおうとしている。しかし幸也自身は身を翻すことで避け、相手を翻弄していた。
 そして、真紀に向けて強く呼びかける。
「――花菱、気にせずガンガン撃ち落とせ! こっちは任せろ!」
「任されました。これで!」
 どうだと告げた真紀は残っているバトルキャラクターズに指示を出し、自らも獣に銃口を向けた。刹那、突撃と共に銃弾が戦場に舞い踊る。
 千里眼獣の身が揺らぎ、何体かが同時に倒れた。
 しかし真紀の攻撃に耐えた相手もいる。其処へ幸也が千薙と共に踏み込み、弱った獣をひといきに斬り裂いた。
 千の敵をも薙ぎ払うという名の通り、千薙の持つ薙刀から放たれた衝撃はプレビジオニスを真正面から貫いていく。
 それによって彼らの周囲に集っていた獣はすべて倒れる。
 ほっとして構えを解いた真紀は、眼鏡の奥の双眸を柔らかく細めた。
「助かりました。十朱さんのおかげです」
「そうか? 花菱が居たからこそだ」
 そうして二人は互いの健闘を労いあい、エントランスの奥に続く廊下に目を向けた。未だこれは前哨戦。奥には首魁が控えているのだろう。
 何というか、とやや言い淀んだ真紀は軽く頰を掻いた。
「次の相手は占いに目覚めちゃったみたいだけど、イメージがすごく女子の雑誌の占いって言うか……いや面白いんですけどね」
「女子向け雑誌の占いのノリとか絶対にパリピだろ。レッツパーリーな邪神だろ……」
 何とも言えない感想を落とした真紀に頷き、幸也も神妙な表情を浮かべた。
 しかし、何だかんだで二人とも占い自体には興味があるらしい。
「花菱は何を占ってもらうか、決めてんのか?」
「え? 恋占い、とか?」
「恋? ま、悪かないけどな」
 邪神に占って貰って良いものなのかは兎も角。そんなこんなで真紀と幸也は占い――ではなく、次の戦いに思いを馳せ、先に進んでゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジウ・ココドコ
へぇ、春の花火かー
夏の花火も好きけど、春も華やかで良いよねぇ
いつもと違うちょっとレアな感じもまた良しだ、うん!
よっし、それじゃあ花火のために、僕も頑張ろうかね

敵がすばしっこそうだから『シェイプ・オブ・ウォーター』使用
ソーダ水の雨を降らせて「深海適応」の僕に動きやすい環境を整えるよ
敵さんはどうかな、ちょっとは動きにくくなってくれると嬉しいんだけど

ソーダ水の雨を降らせたら、敵に向かってクリーピングコインで攻撃
一対一ならコインを集中させて、相手が複数ならそれに合わせて「範囲攻撃」するよ

敵が接近してきたらバトルアンカーをガード目的で振り回します
近づかれると厄介だから、ある程度の距離を確保しておきたいな



●金貨の煌めき
 思いを馳せるのは夏と春の花火。
 気温と空模様が違えばきっと雰囲気も火花の見え方や散り方も変わって見えるはず。今夜に行われる花火大会を思うと、何だか気分もあがってくる。
「夏の花火も好きだけど、春も華やかで良いよねぇ」
 よし、と気合を入れたジウは身構えた。
 ジウが見つめているのは洋館の扉をひらいた先のエントランス。其処には既に何匹もの千里眼獣達が集まっており、奥には行かせないと語るように陣取っていた。
「いつもと違うちょっとレアな感じもまた良しだ、うん!」
 花火を楽しみにしながら、ジウは単眼の獣達をしっかりと見つめる。
 床に爪を立て、此方を睨み返してくるプレビジオニス達の視線は鋭い。相手がすばしっこそうだと感じたジウは手を胸の前に掲げた。
 其処から降りはじめたのはソーダ水の雨。
 見る間に深海めいた空間が周囲に広がっていく。敵はこのことを見透かしていたようだったが、対応策は持っていないようだ。
 対して深海適応の力があるジウならば、この領域を自由に動ける。
「少し動き難そうにしてるね」
 これなら行けると感じたジウは床を大きく蹴りあげた。跳躍と共に千里眼獣の頭上へと移動したジウはまるで宙を泳いでいるかのようだ。
 プレビジオニスも前脚でもがきながら駆け、ジウを目で追う。しかし相手の動きは通常と比べるとやや緩慢だ。
「今のうちに!」
 ジウは敵の頭上から一気に星々の金貨を打ち出した。
 コインもまた雨が降っていくかの如く、きらきらと煌めきながら降り注ぐ。星模様が洋館に灯った明かりに反射する様は妙に美しい。
 ジウはコインを打ち出し続けながら、迫りくる千里眼獣達の爪を躱す。
 此方の動きなど読ませはしない。
 読まれたとしてもそれ以上の速度で敵を翻弄して止めを与えていくだけ。ジウは一体、また一体と確実に敵を仕留めていく。
 相手はジウを厄介な相手だと察したらしく、それまで此方に向かってきていなかった個体までもが集まってきていた。
 敵の数は多い。だが、ジウとて何も対抗手段を持っていないわけではない。
「そっちが一気にかかってくるつもりなら、こっちだって考えがあるよ!」
 ジウはとっさにバトルアンカーを振り回すことで敵の接近を阻む。風圧ならぬ水圧めいた波動が巻き起こった。それによって敵が怯んで下がった隙を狙い、ジウは空飛ぶ金貨を更に降らせた。
 瞬く間に単眼獣の瞳に燦めく金貨が映る。そして、次の瞬間。
「これで片が付いたかな」
 千里眼獣は次々と倒れていく。それらを見下ろしたジウは指先を軽く鳴らし、他の仲間のために周囲の深海化を解除した。同時に自分の元に舞い戻ってくるコイン。其処に手を伸ばしたジウは、戦いに勝てたことを安堵するようにそっと羽耳を下ろした。
 これで第一関門は突破できる。花火のためにも、と気合を入れ直したジウはソーダ水の翼をはためかせ、夜への思いを募らせた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「占い好きの邪神とは。また妙なものが現れたな。
何が趣味だろうと興味はないけど。
人の命を奪うのはどうあっても見過ごす訳にはいかないね。」

(あの異様な一つ眼、何を見るのかはしらないが。
相手のペースになると厄介そうだ。)
先手を打った【高速詠唱】で生命を喰らう漆黒の息吹を発動。
花びらを纏った【ダッシュ】で
敵全てを順に攻撃。
仕留める事より攻撃で敵の集中を乱す事を重視。
常に敵の配置に気を付け、敵の見逃しが無い様に注意。
花びらが届かなければ【念動力】で敵を壁に叩き付けたり。
【衝撃波】で周囲の物品ごと攻撃、衝撃や音でかき乱す。
消耗した敵には花びらを集中して仕留める。
「その眼で、己が滅びる未来は見えていたか?」



●手向けの黒花
「また妙なものが現れたな」
 此度の事件について考えたフォルクは軽く肩を竦めた。
 相手は占い好きの邪神。此方を占いたがるという奇妙な存在に思うのは呆れでも興味でもなく、単なる感想。
 何が趣味だろうと興味はないのだと断じたフォルクは、問題は占いではなくその先にある結果だと考えた。
「人の命を奪うのはどうあっても見過ごす訳にはいかないね」
 ただ占うだけならば悪くはなかった。
 だが、その代価に命を取っていくなど到底釣りあってなどいない代償だ。その未来を止めるために、と洋館へと踏み入ったフォルクは周囲を見渡した。
 薄暗いエントランス内。
 僅かな明かりに照らされた其処には、千里眼獣達が待ち受けていた。
(あの異様な一つ眼、何を見るのかはしらないが――)
 相手のペースになると厄介そうだ。フォルクは敵が動く前に詠唱を紡ぐ。プレビジオニス達はその動きを察知したが、予知はできていなかったので対応が遅れた。
 先手を取ったフォルクは冥界の鳳仙花を戦場に舞わせる。
 生命を喰らう漆黒の花弁が周囲に散っていった。その花を纏ったフォルクは一気に駆け、千里眼獣を穿ってゆく。
 まずは目の前の一体。獣が伏したことを確かめ、床を蹴って身を翻す。そうすることでフォルクは側面に布陣していたもう一体を花で貫く。
 二体目は一撃では屠れなかったが、それでも構わずにフォルクは動き続けた。
 仕留めることよりも敵の集中を崩す。
 全体の統制を掻き乱すことを重視したフォルクは漆黒の息吹を広げていった。漆黒の花は千里眼獣に纏わりつき、集中することを阻んでいく。
 彼の行動はこの場で戦う仲間達への補助となっていった。
 しかし、千里眼獣とて黙ってはいない。フォルクに狙いを定めた獣達は同時に左右から挟撃しようと狙っている。
 フォルクは囲まれたことを察しながら片方に意識を向けた。もう片方には焦ることなく花を放って穿つ。同時に念動力で以て獣を壁に叩き付けたフォルクは、その隙に挟撃状態から抜け出す。
 千里眼獣はすぐに起きあがってきたが、更にフォルクは衝撃波を重ねる。
 洋館の柱、片隅に設置されていた調度品やランプ。そういった周囲の物品ごと衝撃で跳ね飛ばしたフォルクはその音でも敵の集中を乱す。
 しっかりとした狙いがある行動は強い。そして、辺りに冥界の鳳仙花を集わせたフォルクはふらついている千里眼獣達に狙いを定めた。
 この一撃で相手は倒れると確信したフォルクは口を開き、問いかけてみる。
「その眼で、己が滅びる未来は見えていたか?」
 刹那、花がひといきに散らされた。
 問いかけに対する答えは得られなかったがそれで構わない。床に倒れ伏して消えていく千里眼獣達を見下ろし、フォルクは魔力を収束させていった。
 周りを見れば仲間達が次々と獣を倒している。
 この奥に進んで魔女と対峙する時は間もなく訪れるだろう。
 フォルクは薄暗い廊下の奥から漂う魔力を捉え、静かに警戒を強めていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

彩波・いちご
【あかねさんと】

花火の前にお仕事ですけどね
…さすがにまだ浴衣は早いのでは?お似合いですけども
というか、今そういう事言われても…(告白っぽい事聞いて真っ赤に
そういうのはあとにしましょう、あとにっ

【異界の顕現】で四尾の邪神の依代体に変化
あかねさんの支援を受けての高速の徒手空拳で戦います
予知を超えるスピードって、簡単に言いますけどねっ!
…ちょっときついですけど…そんな事言われたら頑張りますよっ
幼馴染だからって遠慮がないんですから、もぉ…

基本的には強化された力で殴る蹴る
予知しても追いつけない速度で敵の動きを先回りするように
カウンターで殴り
回し蹴りで吹き飛ばし
あかねさんの方に敵を行かさないよう、戦います


静宮・あかね
幼馴染のいちごはん(f00301)と二人で花火や
ウチ、浴衣もこっそり用意したんよ♪
※彼にのみ京言葉

ほれ、いちごはんてば恋華荘の娘らにようけモテはるし?
夏休みで取り合いなる前に、2人きりでしっぽり…な♪
そら大胆や思うけど、昔からそこそこ想うてたんよ

ま、その前にいけずなワンコとペテン師を退治しよか!
なんぼ予知しても、追いつけんならどうしようもあらへん
せやからいちごはん、頑張ってスピード出してぇな♪

え、キツい?いちごはん、んな事あらしまへんえ!
昔の時分みたく頼もしいトコ、久しぶりに見せてぇな♪
ウチも頑張ったるし、後でええもん奢るんよ…な?
※発破を掛けて【海慈屋の陣貸し】、『幾月島の護り銭』を数本使用



●予知より速く
 雲ひとつない夕暮れの空を見送り、訪れた宵の空気を感じる。
 何も遮るものがない空模様。本日はきっと花火日和だ。洋館前に訪れたいちごとあかねは今夜の花火に思いを馳せていた。
「花火の前にお仕事ですけど、頑張りましょう」
 いちごが意気込みを見せると、あかねは嬉しげにはんなりと笑った。幼馴染のいちごといることで今日は言葉遣いが普段よりも柔らかい。
「ウチ、浴衣もこっそり用意したんよ♪」
「……さすがにまだ浴衣は早いのでは?」
 お似合いですけども、と付け加えたいちごはあかねを見つめる。すると更に笑みを深めたあかねが悪戯っぽい視線を向けた。
「ほれ、いちごはんてば恋華荘の娘らにようけモテはるし? 夏休みで取り合いなる前に、ふたりきりでしっぽり……な♪」
「というか、今そういう事言われても……」
「そら大胆や思うけど、昔からそこそこ想うてたんよ」
「そういうのはあとにしましょう、あとにっ」
 あかねから告げられたのはまるで告白のような言葉。真っ赤になってしまったいちごは慌てて洋館のエントランスの方を示す。
「ま、その前にいけずなワンコとペテン師を退治しよか!」
 既に扉はひらいており、内部には千里眼獣が待ち受けている姿が見えた。
 何にせよ仕事を終わらせない限りは後の楽しみもない。あかねといちごは頷きを交わし、戦場となっている洋館へと踏み入った。
 その途端、単眼獣からの鋭い視線がふたりに突き刺さる。
「いきます!」
 ――無限無窮の最奥より夢見る力をこの内に。
 いちごは体内に封じられている異界の邪神の力に覚醒し、四尾の邪神の依代体としての姿に変化した。
 あかねは支援を行うべく彼の背後に周り、その背をしかと見つめる。
 いちごは床を蹴り、一気に敵を殴り抜こうと狙った。対する獣達はいちごの動きを読み、ひらりと身を躱していく。
「速い……いえ、全部の動きが読まれているみたいですね」
 いちごはこのままでは一撃も当てられないと察した。しかしあかねは心配などしておらず、敵の動きをしかと捉える。
「なんぼ予知しても、追いつけんならどうしようもあらへん。せやからいちごはん、頑張ってスピード出してぇな♪」
「予知を超えるスピードって、簡単に言いますけどねっ!」
 思わずそんな言葉を返したいちごだったが、そうするしか対抗策はない。
 意識を集中させたいちごは高速の徒手空拳で以て敵へと迫った。そのスピードは先程よりも疾く、今にも千里眼獣を貫かんとする勢いだ。
「その調子や。かっこええなぁ、いちごはん」
「ちょっときついですけど……そんな事言われたら頑張りますよっ」
「え、キツい? いちごはん、んな事あらしまへんえ! 昔の時分みたく頼もしいトコ、久しぶりに見せてぇな♪」
「幼馴染だからって遠慮がないんですから、もぉ……」
 あかねからの声援はいちごの心に勇気とやる気を与えていた。少しでも格好良いところを見せたい、彼女を守りたいという思いが次第に強くなっていく。
 振るう拳での殴打。隙を見ての蹴り。
 いちごは敵が予知しても追いつけない速度で以て、相手の動きよりも先回りする形で戦場を駆け巡る。
「あかねさんの方には通しません!」
 後方のあかねに狙いを定めていた獣を見つけたいちごは、即座に放った回し蹴りで敵を吹き飛ばした。
 その姿は可愛らしいながらも凛々しく感じられ、あかねはそっと微笑む。
「ウチも頑張ったるし、後でええもん奢るんよ……な?」
 そうやって発破を掛ければ更にいちごの力も強まっていく。あかねには傷ひとつ付けさせないと決めたいちごは懸命に力を振るい続け、そして――。
「これで終わりでしょうか?」
「みたいやね、流石はいちごはん」
「あかねさんの援護があったからです」
 自分達を狙う千里眼獣がいなくなったことを確かめ、ふたりは視線を交わす。
 まだ戦っている仲間もちらほらといるようだが、いずれはエントランスに居る獣達はすべて掃討されていくだろう。
 まずひとつめの仕事は終わったとして、いちごとあかねは健闘を称えあった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「点の攻撃も線の攻撃も見切られるなら。逃げようのない、面の攻撃、範囲の攻撃をいたしましょう」

術領域内まで走って接敵しUC「桜吹雪」
敵が何処に逃げようと桜吹雪で斬り刻む
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
躱せない攻撃は盾受け又は高速詠唱で風の属性攻撃行い進路を逸らせる

肉を斬らせて骨を断つ状況に持ち込めるなら自分の怪我は度外視
仲間の戦闘が手こずっていた場合高速詠唱で風の属性攻撃行い、敵の攻撃を逸らせたり注意を惹いたりしてフォロー

「貴方達がどんなに先読みしようとも、乱戦での流れ弾全てを予測するのは難しいでしょう。どうぞ骸の海へお還りを。そして…叶うなら、次は共存できる生命としてお戻り下さい」
鎮魂歌で送る



●舞い散る花の中で
 未来を見通す眼を持つ獣達。
 低い唸り声をあげて此方を威嚇する彼らを見つめ、桜花は双眸を細める。
 プレビジオニスの単眼は千里眼だ。しかし、だからといって恐れることなどない。
「点の攻撃も線の攻撃も見切られるなら。逃げようのない、面の攻撃、範囲の攻撃をいたしましょう」
 宣戦布告のように告げた桜花は一気に駆け出す。
 戦場となった洋館のエントランスには何匹もの千里眼獣が待ち受けていた。それらの何体かが桜花に意識を向ける。
 貫くような視線を感じながら、桜花は術領域内まで接近した。
 刹那、桜吹雪が戦場に舞う。
 この行動がたとえ読まれていようとも、避けられぬほどに花で満たしてしまえばいいだけだ。敵が何処に逃げようと桜吹雪で斬り刻むのだと決め、桜花は力を揮う。
 対する千里眼獣は花を受けつつも突進してくる。
 その動きを察知した桜花は身を翻した。迫る爪の一閃を既の所で躱した彼女は視線を敵に戻し、警戒を強める。
「速いですね。見切るのもなかなか――」
 敵の動きを認めた桜花は、すぐにはたとして言葉を止めた。
 一体だけではない。二体目、三体目の千里眼獣が側面と背後から襲ってきている。遅れを取ったわけではないが、躱せないことを理解した桜花は詠唱を紡ぐ。
 横から来た対象の一撃はとっさにひらいた桜鋼扇で受け止め、背後の敵には巻き起こした風の属性攻撃で軌道を逸らす。
 しかし、獣達は連携していた。先程の一体目が体勢を立て直して襲ってきたのだ。
 鋭い爪が桜花の身を抉る。
 痛みが巡ったが、桜花は決して怯まなかった。
 肉を斬らせて骨を断つ。そういった状況に持ち込めるなら自身の怪我は度外視してもいい。寧ろ三体もの相手が自分に意識を向けているならば好都合。
「貴方達がどんなに先読みしようとも、この乱戦です。流れ弾や攻撃全てを予測するのは難しいでしょう」
 これまでの動きから、敵が全ての行動を予知できているわけではないと悟っている。
 凛と宣言した彼女はふたたび桜吹雪を解き放ってゆく。
 其処に風の力を加えれば花の軌跡が更に鋭さを増した。それによって一体、そしてもう一体が地に伏していった。
 桜花以外の猟兵達の攻撃も順調だ。このまま戦えば必ず勝利を得られると確信した桜花は残る一体に掌を差し向ける。
「どうぞ骸の海へお還りを。そして……」
 ――叶うなら、次は共存できる生命としてお戻り下さい。
 桜花は鎮魂歌と共に彼らを送り、そっといつかの未来を願う。そして、桜の花は華麗に美しく戦場に舞った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助
占いにそれほど興味も無かった筈じゃが
やけにソワソワしてしまうのは何故なのか…
人に見られぬよう迅速に済まそう

黒剣に炎纏わせ、身に火花の護り(オーラ防御
多少行動を読まれても、一気に深手を負うのは避けられるように。

折角の洋館を破壊しては勿体ないし、
飛び火せぬよう獣に狙い定めて焔の華を。
千里眼を持てど速度が半減すれば活かせまい
得た生命力は次の戦い(と占い)にためておこう

ちっこい獣じゃが、物陰に隠れとる奴おらぬかな?
第六感をアテに見回しつつ奥へ進む

戯れにでも占ってほしいのは、…これは何運と言えばいいのか
いや…わかって、いる
…あつい。まだ夏でもないのに。調子狂う。もうずっと。



●千之助
 未来を見通す力から成る占い。
 元より占いという存在にはそれほど興味も無かった――はずなのだが、今の千之助の心境は妙にざわついて落ち着かない。
「やけにソワソワしてしまうのは何故なのか……いや、駄目だ」
 結果が気になる。どのような運勢や未来が告げられるのか。
 そう思うと浮ついた気持ちになってしまう。しかし、こんな姿は人には見せられないと感じた千之助は迅速に事を済ませようと決めた。
 見据える先には千里眼獣が何体も陣取っている。まるでエントランスの奥には進ませないと語っているかのようだ。
 されど千之助はその奥に控えている存在に用がある。
 単眼の獣からの視線を受け止めた千之助は黒剣に炎を纏わせていく。己の身には火花の護りを巡らせ、敵の攻撃に備える。
 相手は未来視の千里眼を持っているが、これで多少は行動を読まれても攻撃を受け止められるだろう。刹那、敵が動いた。
「おっと、流石に疾いか」
 瞬時に近付いた単眼獣が爪を振り下せば、周囲に火花が散る。
 衝撃はあったが一気に深手を負うことは避けられた。次は此方の番だと告げるが如く、千之助は床を大きく蹴りあげる。
 狙いをしかと定め、黒剣を振り下ろした彼から炎華が迸った。
 斬り上げ、返す刃でもう一閃。折角の洋館を壊さぬように注意を払いながら、千之助は敵だけを斬り裂いていく。
 鮮やかに散りゆく炎はまるでちいさな花火のようだ。飛び火はしないように獣だけに集中させた焔の軌跡は、対象の動きを鈍らせていった。
「千里眼を持てど、速度が半減すれば活かせまい」
 どうだ、と千之助が問いかけた先には動き辛そうに身じろぎする獣の姿がある。
 其処に隙を見出した千之助は更に斬りかかった。素早い剣閃は何度も、幾度も千里眼獣の身を抉りながら生命力を吸収していく。
 此の力は次の戦いと占いの魔女のために蓄積していこうと決め、千之助は一体目をその場で屠った。そして、彼は次の標的に目を向ける。
「まだまだやれるぞ。物陰に隠れとる奴はおらぬかな?」
 たとえ身を隠していても見つけて倒す。そうすることが今の自分の役目だと己を律した千之助なのだが――。
 やはりどうしても、心の隅に占いのことが過る。
(戯れにでも占ってほしいのは、……これは何運と言えばいいのか)
 獣と対峙しながら思うのは複雑な心境。
 首を左右に振った千之助は緩く息を吐き、片手を胸の上に添えた。同時にもう片方の腕で刃を振るえば、自分を狙っていた千里眼獣が倒れる。
(いや……わかって、いる)
 気持ちの整理をしようと感じた千之助は自身の中にある思いを僅かだが認めた。
「……あつい」
 まだ夏でもないのに、と呟いた彼は黒剣を下ろした。
 調子が狂う。もうずっと前から。
 この気持ちと感情を然と表せるのはいつなのだろう。考えても答えが出せぬ思いはそっとひそめ、千之助は洋館の奥を見つめた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
夜空を彩る大輪の花
ハナビというものはうつくしいのかしら
あたたかな春を咲かす色彩たち
それをこの目で見てみたいの

なゆはまだ、歩みを始めたばかり
立ち止まることはあっても
停滞をすることは望まない
留まり続けたくないの
往く先を阻むというなら薙ぎ払うだけ

黒い鍵刀で道を斬りひらきましょう
あなたのあかを絡めて編み込んで
ひとつの糸を仕立て、宙へと放つ

集中なんてさせないわ
なゆの姿を、みて
あなたの眸はなにを見映すのかしら
どうか見届けてちょうだいね

一歩、また一歩
歩みを進めてゆくことはたのしい
そう感じる心を得たばかり
恐れも惑いも、すべてを抱えて歩んでいきたい
往く先に待ち構えるものが何であろうと
いきてゆくことは、あたたかい



●えにしの先へ
 思いを馳せるのは、夜空を彩るという大輪の花の光景。
「ハナビというものはうつくしいのかしら」
 未だ見たことのないけれども情景だけは聞いたことのあるもの。七結は宵の口に入った空を見上げてから、件の洋館に踏み入る。
 きっと、空に咲く火花はあたたかな春を咲かす色彩となる。
 伝聞だけで想像を巡らせる他ないものに対して少女は淡い期待を抱いていた。
 それをこの目で見てみたい。
 桜でもなく、桃や蒲公英などでもない、春に咲く花。その光景を見るためにはこの先に控える悪しきものたちを屠らねばならない。
 七結が見つめる先には千里眼を持つ獣達が待ち受けていた。
「こんばんは、あなたたち」
 緩やかに言葉を掛けてから七結は鍵刀を静かに構える。夜に混ざるような彩を宿す黒鍵が洋館に灯る明かりを鈍く反射した。
 ――なゆはまだ、歩みを始めたばかり。
 七結は此れまでの軌跡と、ただの少女としての此処までのことを胸の裡で確かめる。
 ひととしての想いを得た今、ときに立ち止まることはあっても、停滞をすることは望んではいない。
 留まり続けたくない。そう思うからこそ、留められはしない。
 目の前の獣達が往く先を阻むというなら薙ぎ払うだけ。一度だけ目を伏せた七結は駆けてくる単眼獣の動きを察して顔をあげた。
 月のような金色を宿す単眼と、七結のくれなゐを映す瞳が交差する。
 飛び掛かった獣。振るいあげる鍵刀。
 その切っ先が敵に向けられた刹那、鮮血の紅い糸が迸る。
 あなたのあかを絡めて、編み込んで、ひとつの糸を仕立てて宙へと放つ。
 そうすれば獣の悲鳴じみた声があがった。七結の身にも薄く掠った爪の傷跡が刻まれたが、このような痛みなど些事に過ぎない。
 集中なんてさせない。
 七結は刃を切り返し、演舞を踊るかのように更に斬り込んでゆく。
「なゆの姿を、みて」
 空の月を思わせる眸はなにを見て、映すのか。
 その眼差しが曇らぬ内に彼の色を確かめたい。そして、どうか――。
「見届けてちょうだいね」
 柔らかな声が紡がれた瞬間、くれないの糸が千里眼獣を穿った。倒れゆく獣を見下ろした七結はそうっと双眸を細める。
 骸の海に還っていくかれらに思うのは、ちいさな感慨。
 紡いで、結いで、一歩、また一歩。
 戦いを経て、其処から続く日常を感じて歩みを進めてゆくことはたのしい。
 未だ道の途中で、先を見通す力は自分にはないけれど。そのように感じる心を得たばかりの七結にとっては未来など視えない方が良い。
 何故なら、恐れも惑いも、すべてを抱えて歩んでいきたいから。
 往く先に待ち構えるものが何であろうと、たしかな想いと気持ちが此処にある。
 ああ、だから――。
 いきてゆくことは、あたたかい。
 小指から仄かに広がったぬくもりを感じながら、七結は先へと歩んでいく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
つーか…くっそめんどくせぇ事しやがって…
まぁ憂さ晴らしにはちょうどいいか?

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波撒き散らし残像纏い手近な敵にダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る
よぉ
何か今無性に腹立ってんだ
何匹でもかかってこいよ
全部ぶっ倒してやる
吹き飛ばしで他の敵にぶつけ
さらに間合い詰め足払いでなぎ払い

つーか見えてんの一場面だろ?
それだけ見てそれだけ避けてどうすんだ?
それ以上の攻撃叩き込めばいいだけの話じゃねぇか
動き見切り
戦闘知識と暗殺用い
数倒せば倒すだけ急所理解
正確に確実に攻撃当て
拳と蹴りの乱れ撃ち
最後にUCで締め
はー…めんどくさ

…やっぱ俺には戦いが似合ってるわ
ため息ついて


砂羽風・きよ
【秋】

綾華は占いとか信じるか…?
い、いや!俺はあまり信じねーと思う。多分
ショック受けねーよ!

とりあえずコイツら倒しちまおうぜ!
ゴミ袋を取り出し綾華の援護をしようとしたら

うおお、コイツら見通す力あんのかよ!
ゴミ袋ダメじゃん!見えちゃうわ!くそ、こうなったら――
屋台と合体して戦ってやる!
変身ポーズを取って合体!きよしロボっ

よっしゃ、これならどうだ!
きよしパンチを繰り出そうとすれば避けられ
喰らわないんかい!と漫才のようにずさーっと転ぶ

…おぉ、なんか知らんが転んだお陰で他の敵倒せたぜ!
このままどんどんやってやる!

綾華、肩に乗れ!
意味はねーが、なんか強くなった気がするだろ
きよしののぼり旗を持ってぶん回す


浮世・綾華
【秋】

あんまり気にしたことなかったが
お前そう言いながら
悪い占いショック受けそ

敵の能力は…成程な
そんじゃ集中する時間を与えなけりゃいい
囲うように1体に鬼火を集中
追い詰めるように駆け扇振るって兎に角燃す
全部除けるってのは流石に無理だろ
少しずつでも削ってやればいい

きよが何か喚いてる
おい、きよ
だいじょ…出た…きよしロボ

(つーかきよしロボって自分で言ってんじゃねーか
…きよしじゃねーんだろ?
心の中でつっこんでやる優しい俺

…いや、もうきよしだな)

って、きよしに気をとられてる場合じゃ…
えっ、わ――

なあ俺、肩に乗ってなんか意味ある?
返答にめちゃくちゃ蹴りたくなったが
今は堅そうなので後で思いきり蹴り飛ばしてやろう



●憂さ晴らしの先に
 空には雲ひとつない宵の色が広がっている。
 絶好の花火日和の良い空模様だというのに、気持ちは何だか晴れない。
「つーか……くっそめんどくせぇ事しやがって」
 肩を竦めた理玖は事件現場となる洋館の外観を見上げた。この中に潜む者達に対しては呆れの感情しか浮かばない。
 はあ、と何度目かの溜息をついた理玖は何とか気を取り直す。
「まぁ憂さ晴らしにはちょうどいいか?」
 そう思えば良いと自分に言い聞かせ、理玖は洋館の扉の奥を見据えた。
 其処には行く手を阻む単眼の獣達が集っている。
 虹色の龍珠を弾き、握り締めた理玖。呼吸を整え、龍珠をドラゴンドライバーに装着した理玖は高らかな声をあげた。
「――変身ッ!」
 彼の声と同時にバックルが光り、その身体が瞬く間に全身装甲に包まれる。
 強く地を蹴った理玖は衝撃波を纏いながら敵群に吶喊してゆく。残像が幾重にも見えるほどに疾い動きは、単眼獣にも読めなかったようだ。
 振るわれた拳が一瞬で千里眼獣の一体を穿ち、その身を大きく吹き飛ばした。
「よぉ」
 軽く挨拶でもするように敵に呼び掛けた理玖は拳を更に固く握る。
 殴り抜いた一匹がよろよろと起き上がり、体勢を整えていく。その最中に他の獣達が理玖に狙いを定めてきた。おそらく此方が油断できない相手だと察知したのだろう。
「今は無性に腹立ってんだ、何匹でもかかってこいよ」
 掌を上に向けた理玖は挑発するように相手を手招く。
 すると低く唸った千里眼獣達が次々と飛び掛かってきた。鋭い爪が館の灯火を反射して鈍く光っている様が見える。
「上等だ、全部ぶっ倒してやる」
 たとえ敵が此方の動きを読んでいようとも構わない。
 眼前に迫った単眼の煌めきを見据えた理玖は右腕を振りあげた。爪が装甲に衝突したが、その衝撃すら利用して全力で腕を振るう。
 そうすれば千里眼獣は横薙ぎに穿たれ、もう一方から迫ってきていた獣の方に飛ばされた。二体がぶつかり、悲鳴めいた鳴き声があがった。
 その様子を一瞥した少年は更に間合いを詰める。理玖は敵が立ち上がる前に足払いで体勢を崩させながら衝撃波を放った。見事な連撃だ。
「つーか見えてんの一場面だろ? これは見えてなかったみたいだな」
 敵は確実に自分を視ていた。
 だが、予知はできても対抗する術を繰り出せていない。それだけを見て、その動きのみを避けてどうするのだと言って理玖は苦笑する。
 獣達は複数での連携を行いたいようだが、理玖が片っ端から動きを封じているので付いて来れてはいなかった。
 それならば対応される前に攻撃を叩き込み続ければいいだけの話だ。
 憂さ晴らしだと語った通り、理玖は思いと力が向くままに敵を蹴散らしていく。
「やっぱ目の辺りが急所か」
 千里眼獣達の弱点を見極めた理玖は狙いを定めた。単眼で大きい分だけ穿ちやすい。其処から拳と蹴りの乱れ撃ちを繰り出せば、周囲の獣が次々と倒れていく。
 自分に群がっていた最後の一匹を見遣った理玖は身構えた。
 くらっとけ、と短く告げた彼は拳を握り込む。
 そして――。
「はー……めんどくさ。俺には戦いのが似合ってるわ」
 再び溜息をついた理玖の足元には倒れた千里眼獣が転がっていた。何も考えずに殴り抜く方が性にも合っている。そう感じる中、理玖はふと仲間の気配に気が付く。
「あれって兄さん達か。……何かめちゃくちゃやってんな」
 視線の先にはよく知った青年達がいた。
 何やら屋台が大変なことになっているようだ。
 ふ、と微かに口元を緩めた理玖の心から少しだけ、苛立ちめいた気分が薄れていった。
 
●変身合体! 屋台のきよしロボ!
 戦いが始まる少し前。
 洋館の前に訪れたきよと綾華は、宵空の下で突入の準備を整えていた。そんな中できよが問いかける。
「綾華は占いとか信じるか……?」
「占い? あんまり気にしたことなかったが、きよしは?」
「い、いや! 俺はあまり信じねーと思う。多分」
 きよしという呼び方への指摘は最早なく、きよは頬を掻いて視線を逸らす。占いが気になっているとは素直に言えないらしい。
「お前ってそう言いながら、悪い占いにはショック受けそ」
「受けねーよ!」
 しかし、思わず突っ込んでしまったきよ。
 そうですか、と淡々と口にした綾華が興味なさそうに踏み出したので、きよも慌てて後についていく。その先にはエントランスに集う千里眼獣達の姿があった。
 既に交戦している者も多く、激しい戦いが繰り広げられている。敵の何体かが彼らの到来に気付き、鋭い視線を向けていた。
「とりあえずコイツら倒しちまおうぜ!」
「そんじゃ適度にやるか」
 きよの呼び掛けに頷き、綾華は黒金の扇を取り出す。
 華麗に腕を振るえば其処から緋色の鬼火が舞い躍った。伸縮可能なゴミ袋を取り出したきよは鬼火を操る綾華の援護に回ろうとする。
 だが、駆けてきた千里眼獣によってゴミ袋が引き裂かれそうになった。
「うおお、コイツら確実に動きを読んできたぞ!」
 驚いたきよがはっとした。
 破くなよ、絶対に破くなよ、と袋を後ろに隠した彼は身構え直す。
「ゴミ袋ダメじゃん! 見えちゃうわ!」
「きよしうるさい」
 騒ぐきよを一言で断じた綾華は冷静に敵の能力を分析していく。先程に放った鬼火も読まれていたらしく、獣達は明らかに攻撃の軌道から逸れていた。
「成程な」
 あの瞳に映した者の未来が視られてしまう。
 それならば集中する時間さえ与えなければいいだろう。綾華は一体を囲うように鬼火を集わせていった。そして、標的を追い詰めるように駆けてゆく。こうして扇を振るって、仰いで、兎に角燃やしていけばいい。
 流石の千里眼獣も全ての炎を避けることは出来ない。少しずつでも削ってやればいいのだと綾華が判断した、そのとき。
「くそ、こうなったら――変身!」
 綾華が頑張っている間に屋台を組み立てたきよが、片手を天に高く掲げた。
 それは言葉通りの変身ポーズだ。
「合体! きよしロボっ」
 次の瞬間。屋台が彼の身体に装着されていき、ビルドロボットが形成された。
「おい、きよ。だいじょ……出た、きよしロボ」
 綾華なりに彼を心配していたのだが、其処に見えた光景に思わず「うわ」という声が零れ落ちる。意気揚々とロボ化したきよは両腕を振るう。
 それだけで千里眼獣達は警戒を強め、きよを睨みつけていた。
 対するきよはもう動きを読ませはしないと決めて駆け出す。ガシャンガシャンと鳴り響く足音はロボットだけに重厚だ。
「これならどうだ! ――きよしパンチ!」
 だが、掛け声と共に繰り出した一撃は見事に読まれていた。おそらくは未来視ではなく、きよの声と足音がうるさくて普通に避けられた形だ。
「喰らわないんかい!」
 きよは漫才のようにずさーっと転んでしまう。
(つーかきよしロボって自分で言ってんじゃねーか。……きよしじゃねーんだろ?)
 心の中で突っ込んだ綾華は、俺って優しいな、なんてことを考えながらきよのドタバタロボット攻防戦を見守った。その間もちゃんと鬼火は迸らせている。
 しかし、ふと思い至る。
(……いや、もう本人も認めてるからきよしだな)
 見ればきよは転んだ拍子に何体かの千里眼獣を押し潰したようだ。その状況はまさに棚から牡丹餅、瓢箪から駒、或いは怪我の功名。
 調子が狂うなぁ、と考えた綾華は呆れながらも彼の豪運に感心していた。
「おぉ、なんか知らんが転んだお陰で他の敵を倒せたぜ!」
「って、きよしに気をとられてる場合じゃ……」
「このままどんどんやってやる! 綾華、肩に乗れ!」
「えっ、わ――」
 綾華が気を取り直そうとしたとき、きよは勢いのままに彼を肩口に持ち上げる。屋台ロボットの上に乗らされた綾華はいつもより高い視線から敵を見下ろした。
 千里眼獣達は不思議な光景に慄いているようだ。
「なあ、俺が肩に乗ってなんか意味ある?」
「意味はない! でもなんか強くなった気がするだろ」
「……」
 問いかければきよが自信満々に答える。その声と態度が気に障り、無言のまま蹴りたくなった綾華だったが既の所で止めた。きよしロボが硬そうだったからだ。
「よっしゃ、行くぜ綾華!」
「え、何か嫌なんだケド……」
「何でだよっ!!」
「しゃーねーな、合わせるか。でも後で蹴るからな。絶対」
「おい!? おっと、向こうに理玖も居るのか。おーい、理玖ー!」
「うるさいきよし。お前と違って理玖は真面目にやってんだ」
 賑わしい遣り取りを交わすふたりは残っている敵に意識を向けた。
 彼らは仲間の姿を見つけて手を振ってから、果敢に戦っていく。きよは屋台のきよしと大きく書かれたのぼり旗を振り回し、綾華は更なる鬼火を紡いでいった。
 そうして暫し後。
 エントランス内での千里眼獣との戦いは収束することになる。
 それでも――まだもう少しの間、彼らの騒がしさは続いていくのだろう。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荻原・志桜
⭐🌸

祈里ちゃん花火みたことない?
それじゃあ、ビックリするかもね
……すごく、キレイなんだよ

最後に見たのは、隣で一緒に居たのは、
脳裏に浮かぶひとりの影を追いやって笑顔を向けた

まあ、それを見るのはもうちょっと後かな
お仕事がんばりますか!

ぜんぶ分かっちゃうのってつまらないと思うけど
…キミたちの未来は見えたのかな?

大鎌を使い獣の攻撃を去なす
同時に少しずつ周囲に陣を増やしていく
準備ができるまで彼女にその爪が届かぬように

ふふっ、はいはーい。任されました……よっ!!
合図の声に口を緩まして狙いを定める
陣から白銀の鎖を獣に向け穿つ

この先にいる魔女を思えば苦笑する
……なんかその、心境の変化があったんだよ。たぶん


朝日奈・祈里
⭐️🌸
はなび。
理論は知ってるけど見たことは無い
ストロンチウムの赤色が見たいな

っと、その前に仕事をしなきゃ
じゃ、いこっか!

千里眼持ちなんだって?
可哀想になぁ
おまえたちが全滅する未来も見えるってことだろ?

どんなに行動を読もうがぼくたちには関係ない
こんびねーしょん、というやつでやっつけてやる

くるり、長杖を回して獣の周りに魔法陣を敷いて、行動開始!
闇の槍、音の渦、水の剣……
桜髪の少女、隙間から狙ってくれ!

……しかし
占い、だっけ?
キャラ変著しいな……



●星の輝きと月の色
 夕暮れは過ぎ去り、宵色が空に滲みはじめた時刻。
 空気は澄んでいて夜空には雲がひとつもない。一番星が遠くに見えていることを確かめ、祈里は今夜に行われる催しについて考えた。
「はなび。……はなび」
 その声が何だか不思議そうな響きだったので志桜はちいさく笑む。
「祈里ちゃん、花火はみたことない?」
「理論は知ってるけど見たことは無いな。空に咲く花って言われてもピンとこない」
「それじゃあ、ビックリするかもね」
 どんなものなのかと期待しているらしい幼子を見つめ、志桜は双眸を細めた。この後に待っている楽しみを思えばこれからの戦いに気合いも入るというもの。
「ストロンチウムの赤色が見たいな」
「すとろんちうむ?」
 思わず聞き返した志桜に対して元素記号でSrと表す元素だと祈里が答えた。
 元素記号のアイドルソングもあるのだと話す祈里。軽く首を傾げていた志桜はとても賢い幼女に感心を覚える。
 そうして、志桜はそっと花火への思いを馳せた。
「……花火ってすごく、キレイなんだよ」
 最後に花火を見たのは、隣で一緒に居たのは――。
 不意に脳裏に浮かぶひとりの姿。あのとき、確か彼の人は。
 それは過去の記憶。すぐに何でもないように記憶を心の片隅に追いやった志桜は、懐かしさを押し込めて静かに笑った。
 その視線の先にいる祈里は、花火について更に考えを巡らせているようだ。
「花火はつまり、計算された美というやつだな」
「まあ、それを見るのはもうちょっと後かな」
 花火に馳せる思いはそれぞれ。
 件の洋館の扉が見えてきたことで、ふたりは意識をそちらに向ける。
「その前に仕事をしなきゃ。じゃ、いこっか!」
「がんばりますか! えいえいおーっ!」
 祈里が誘うと志桜は気を取り直す形で片手を大きくあげた。
 そして――少女達は千里眼獣と呪炎の魔女がひそむ洋館へと足を踏み入れる。
 エントランス内。
 其処には此方を睨み付ける単眼の獣達が集っていた。猟兵を害成す侵入者だと判断した彼らは月色の瞳を向けてくる。
「確か、おまえたちは千里眼持ちなんだって?」
 祈里は空中から長杖を取り出し、手の中でくるりと回した。志桜も大鎌を両手で持ち、刃を獣達に向ける。
 杖に宿る宝石と月影の刃が洋館内に灯った明かりを反射して鈍く光った。
 此方を見据える千里眼獣達は数体。どうやら彼らは未来を見通しているらしい。志桜は魔力を紡ぎながら、獣に問いかけてみる。
「この先のことがぜんぶ分かっちゃうのってつまらないと思うけど……キミたちの未来は見えたのかな?」
 対する獣達は唸るだけで答えはしない。
 代わりに床を蹴り、志桜と祈里に飛び掛かってきた。志桜は祈里を庇う形で一歩前に踏み込み、大鎌で敵の刃を受け止める。
 その背を見つめ、防御を託した祈里は即座に魔法陣を描いた。
「可哀想になぁ」
 闇の槍、音の渦に水の剣。陣から現れ出たものが宙に浮かんで渦巻いていく。祈里は着々と準備を整えながら、言葉の続きを口にした。
「おまえたちが全滅する未来も見えるってことだろ?」
「それを視て回避するつもりなのかもしれないけど、させないよ!」
 祈里の言葉に頷き、志桜は一気に月影の刃を振るうことで敵を弾く。危うく爪に引き裂かれそうになったが、敵の攻撃は去なすことができた。
 地を蹴りあげた志桜は桜色の髪を翻しながら敵を引きつける。
 同時に少しずつ、志桜自身も周囲に白銀の鎖陣を増やしてゆく。浮かび上がる魔法陣は淡く光り、祈里の紡ぐ魔力に重なる形で明滅していった。
 祈里に鋭い爪が届かぬよう、志桜は懸命に刃を振るい続ける。そして、幾度かの鋭い攻防が巡った先で祈里の声が響いた。
「桜髪の少女!」
 刹那、闇と音と水が激しい勢いを伴って迸る。
 槍は突き刺さり、渦は敵を翻弄して、更に剣が幾つもの軌跡を描いた。
「隙間から狙ってくれ!」
「ふふっ、はいはーい。任されました……よっ!!」
 祈里からの合図に応えた志桜は口許を緩める。少しだけ息が切れていたが、此処から巡る展開に何の不安もない。
 志桜は魔法陣から白銀の鎖を顕現させていった。
 迸った鎖は千里眼獣達を拘束し、先端に付いた鋭利な刃でその身を貫く。敵は二人の行動を読んでいたが、次々と飛来する刃や鎖に対抗できないでいた。
「甘かったな、どんなに行動を読もうがぼくたちには関係ない。これがこんびねーしょん、というやつだ」
「そう、最強のコンビネーションだよ!」
 杖先を敵に突きつけて宣言した祈里。
 其処に続き、月影の鎌をくるくると回した志桜は身構え直した。貫かれた獣達は次々と倒れており、残っている個体もかなり体力を削られている。
 たじろぐ千里眼獣は後方に下がった。
 しかし、その間にも祈里と志桜が形成する陣が魔力を放ち続ける。
「さぁ桜髪の少女、そろそろ決めようか」
「準備はばっちりだよ、祈里ちゃん」
 白銀の鎖が千里眼獣を捕らえれば、音の渦が対象を包み込む。其処へ展開された幾つもの槍と剣が獣の身に突き刺さった。
 響く断末魔。地に伏す獣。
 瞬く間に戦いは終わり、周囲に倒れた獣達も消滅していった。
 終わったね、と微笑んだ志桜。彼女に視線を返した祈里は杖を下ろす。大鎌を片手に持ち替えた志桜も一先ずの安堵を覚えた。
 まだ残っている個体もいるが、他の猟兵達がすぐに片付けてくれるだろう。
「……しかし。占い、だっけ?」
 そんな中で祈里が件の魔女を思って首を傾げる。キャラ変が著しいな、と口にしたのは思ったままの感想だった。
 どうしたんだろうね、と志桜も苦笑いを浮かべる。
「うん……なんかその、心境の変化があったんだよ。たぶん」
 再び骸の海から蘇った魔女のことを思い、少女達は薄暗い廊下の奥に目を向けた。
 この先には更なる戦いが待っている。
 未来を見通すという星占い。その行方は、果たして――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
星読みも生業の一つだけれど
自らを占って貰ったことは無かったものだから
胸が弾んでしまいますね

先ずは眼前の障壁を崩しましょ、と
千里眼獣へ朗らかな笑み

ゆるりと構える符で描く、五芒星に八芒星
向けられた眼差しを揺らす誘い
先読みさせる前に
機先を制してしまいましょう

動作と同時に高速で詠い紡ぐ、花筐
巻き起こる花の嵐を彩る花々は
五芒星の桔梗に八芒星の大甘菜

過去の骸の「未来」は
もはや閉ざされているのだから
幾ら先読みしようと憐れでもあるけれど
涯ての海まで送って差し上げる

ね、
そんなあなたの未来が、視えませんでしたか?

悪戯な笑みで遠い彼方を指さして

きらきら舞い散る星花の幻想は
先で待つ魔女殿にも
気に入って貰えるでしょうか



●花と星の彩
 星読みも己が生業のひとつ。
 けれども綾は自らの運勢や相を人に見て貰ったことは無かった。
「胸が弾んでしまいますね」
 思わず零れ落ちた声には、言葉通りの楽しげな雰囲気が見て取れる。然し綾は占い師が邪神の力を得ている者だと知っている。
 心を躍らせるだけにはいかないのだと己を律し、綾は洋館に踏み入った。
「先ずは眼前の障壁を崩しましょう」
 猟兵を出迎えるように布陣している千里眼獣。かれらへと朗らかな笑みを向け、綾は符を構える。此方を敵だと認識したらしいプレビジオニスは唸り声をあげていた。
「いやはや、つれない態度ですね」
 少しばかりおどけてみせた綾は符でゆるりと五芒星と八芒星を描く。
 それは此方に向けられた眼差しを揺らす誘いだ。
 相手は未来視の力を持っているが、先読みをされる前に制してしまえばいい。綾が打って出た次の瞬間、千里眼獣は此方を睨みつけながら駆けてきた。
 符の揺らぎを避け、眼前まで迫る獣。
 されど綾とて無策で動いたわけではない。其処から詠い紡ぐは、花筐の唱。
 ――未だ見ぬ花景の柩に眠れ。
 瞬く間に巻き起こる花の嵐。戦場に広がる彩花は五芒星の桔梗と八芒星の大甘菜。紫と白の花が舞い散り、迸る様は美しい。
 対する千里眼獣はその動きを見咎め、地を蹴ることで花を避けようと狙った。
 どうやら未来視ではなく目視で対抗してきているようだ。
 綾は花の奔流を止めぬまま、千里眼獣達を見据える。いくら相手が先を視ようとも根本的に違っていることがある。
 かれらは過去の骸。
 現在では消費されてしまった存在。その『未来』はもう有り得ない。
「あなた達の先は、もはや閉ざされているのだから――」
 綾は薄く双眸を細めた。幾ら先読みしようとも光ある未来は永劫に訪れない。憐れでもあるが、涯ての海まで葬送するのが綾に出来る手向けだ。
 千里眼獣は地に伏し、その主も屠る。
「ね、そんなあなたの未来が、視えませんでしたか?」
 悪戯な笑みを浮かべた綾は遠い彼方を指で示す。
 其処に躍っていたのはきらきらと舞い散る星花の幻想。花の嵐は一体、また一体と千里眼獣を蹴散らし、そして――。
 綾が齎した色彩が収まったとき、周囲から獣の姿は消えていた。花に葬られるように斃され、花弁が消えると同時に骸の海に還されたのだろう。
 綾は自分が彩った星花を思い、エントランスから続く薄暗い廊下の先に目を向けた。
「魔女殿にも気に入って貰えるでしょうか」
 彼女がお気に召すかは対面しなければ判らないけれど。喩え倒す相手であっても、束の間でも美しさを共有できればいい。
 そっと願った綾は、先へと歩を進めていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

杣友・椋
春の旻に開く花火も、夏の其れとは亦違って
きっと美しいのだろう
愛しいあの子にも見せられたら良い――そう想い馳せ
まあ先ずは敵をぶっ潰してからだな

正直、獣の類を相手にするのは好きじゃねえけど
街の人々と花火を護る為なら仕方ない

奴らを自由にさせるつもりは無えよ
得物の黒槍を振るい先制攻撃
起こした疾風で敵どもを薙ぎ払う
それでも此方へ立ち向かってくる奴はこの槍で串刺しに
……ごめんな。痛いの、我慢してくれよ
散る獣たちに、ちりりと心が痛む

己の手首で揺れる連数珠が耀う
――大丈夫。おまえが護ってくれるから
天色の貴い煌きに眼を細めた
奴らからの攻撃には見切りで回避を試みつつ
食らってしまう場合はオーラ防御
痛いのには慣れてる



●葬る槍閃
 夜空にひらく春の花火。
 夏の其れとは違って、涼やかな澄んだ空気の中に咲く花火も亦佳いものなのだろう。
 きっと旻に散る花火は美しいと考え、椋は想いを馳せる。
 ――愛しいあの子にも見せられたら。
 言葉にはしない思いを胸に秘め、椋は歩みを進めた。向かっていくのは邪神教団に放棄された洋館内。
 ひらいていた扉を潜れば、其処には魔女の手下である千里眼獣が待ち受けていた。
「まあ先ずは敵をぶっ潰してからだな」
 敵を見渡した椋は黒竜の鎗を構え、佇まいを直した。
 警戒を十分に抱きながら一歩を踏み出せば、単眼獣が唸り声をあげる。此方を睨み付ける獣達は奥には通さないと言わんばかりに此方を威嚇していた。
「正直、獣の類を相手にするのは好きじゃねえけど……」
 椋は知っている。
 このままかれらと魔女を放っておけば、花火大会を楽しむ街の人々が犠牲になってしまう。護る為だと思えば力を揮うのも致し方ない。
 悪しき存在であると分かっていて自由にさせるつもりなどなかった。
 椋は黒槍を振るうことで飆風を巻き起こす。周囲に集い始めていた千里眼獣が鋭い風によって斬り裂かれる中、椋は身を翻した。
 一体の敵が疾風を掻い潜り、傷を受けながらも迫ってきたのだ。
 敵の爪が眼前まで近付く。しかし椋は怯まずに槍の柄で爪を受け止め、一気に薙ぎ払った。体勢を崩した相手が傾いだ瞬間を狙い、椋は得物の切っ先を向ける。
「……ごめんな」
 謝罪の言葉を口にした彼はひといきに獣の身を串刺しにした。
 甲高い悲鳴めいた鳴き声があがったことで椋の胸がちりりと痛む。それでも相手は骸の海から蘇ってきた存在だ。
 情けをかけて生かし続けることもまた苦しみを生んでしまう。
 椋は疾風を巻き起こしながら他の個体を穿っていく。きゅうん、という痛々しい声を聞く度に目を逸らしたくなったがそうはいかなかった。
「痛いの、我慢してくれよ」
 獣達を蹴散らしながら黒竜の鎗を振るう椋は次々と敵を屠っていく。
 胸が痛くとも耐えられる。
 何故なら、己の手首で揺れる連数珠が耀いているからだ。それを見れば蒼昊に憧れる天使の姿が思い浮かぶ。
 ――大丈夫。おまえが護ってくれるから。
 天色の貴い煌きに眼を細め、椋は静かに微笑んだ。
 すべてを乗り越えて屠ったら賑わう花火の景色が見られる。それまでは己の力を揮っていくのだと決め、椋は戦い続けた。
 幾ら未来を視られようとも、それを上回る飆風で未来を塗り潰していけばいい。
 襲い来る千里眼獣の動きを見切った椋は爪撃を躱し、時にはその身で以て一閃を受けながら立ち回った。
「……痛いのには慣れてる」
 互いに苦痛を与えているならばこれで文字通りの痛み分けだ。
 そうして戦いは巡り――。
 椋は疾風を受けて倒れていく千里眼獣を見下ろし、どうか安らかに、と願った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユヴェン・ポシェット
花火か…今まで馴染みが無かったが、大迫力で美しいらしいな。

さて。まずは…
千里眼獣か、確かに見るからに不思議な瞳をしているな。
アンタ達は…何処までのものを見透せるのだろうか

布の盾「sateenkaari」を構え、敵に応戦。向かってくる敵には咄嗟に布の盾で受け止め、押し返す。
此方の動きが予想されるのであればアイツらが避けきれないだけの動きをするだけだ。
UC「halu」使用。
自身の身体の左上半身を茨に変え、周囲を巻き込む様に茨を広げ、広範囲を刺で攻撃。
俺の刺は通常の植物とは違ってだな、鉱物混じりの鋭い刺になる。
なかなか面白いだろう?

決めるのはやはりお前とだな、行こうミヌレ。
竜槍を構え、敵に串刺し攻撃



●棘と未来視
 澄んだ空気が心地好い宵の頃。
 ユヴェンは件の洋館に踏み入る準備を整えながら、今夜に行われる花火を思う。
「花火か……」
 この世界では当たり前にあるものだが、ユヴェンにとっては今まで馴染みが無かったものだ。話に聞くには大迫力で美しいらしい。
 楽しみだと感じたユヴェンは思いを馳せながら、前方を見つめる。
「さて。まずは……」
 ひらかれた洋館の扉の奥には幾つも光るものがあった。
 あれが千里眼獣だと察した彼は身構え、一気に内部へと踏み込んでいく。月の色のような金の瞳はとても印象的だ。
 あの単眼には未来を見通す力が宿っているという。
 獣達は此方に鋭い眼差しを向けており、痛いほどの視線が突き刺さっている。
 確かに相手は見るからに不思議な瞳をしていた。引き込まれそうなほどだと思ったユヴェンは竜槍を強く握り締める。
「アンタ達は……何処までのものを見透せるのだろうか」
 問いかけても唸り声しか返ってこないことは分かっている。ユヴェンは槍と共に布の盾を構え、敵の出方を窺った。
 床を大きく蹴りあげた千里眼獣はユヴェンに迫る。
 爪で斬り裂こうとしているのだと察した彼は床を踏み締めた。敵が眼前に飛び掛かってきた直後に布盾を翻し、爪を受け止めて押し返す。
 だが、その動きは別の獣に読まれていたようだ。側面から駆けてきた千里眼獣がユヴェンを捉えた。
「そう来るか。だが――」
 ユヴェンは自らの身体を植物へと変化させる。
 左腕を掲げると同時に広がった茨は千里眼獣を棘で捕らえた。自分の動きが察されているのならば、相手が見切れない以上の行動で返すのみ。
 それにこの茨はただの植物ではない。
 鉱物混じりの鋭い棘で獣を巻き込んだユヴェンは、そのまま勢いをつけて数歩だけ後方に下がる。そして、竜槍の切っ先を敵に差し向けた。
「どうだ、なかなか面白いだろう?」
 茨は更に広範囲に展開され、ユヴェンを狙っていた千里眼獣を絡め取る。これならば未来を視られようとも相手は動けない。
 ユヴェンは一気にカタを付けようと決め、ミヌレに呼び掛けた。
「決めるのはやはりお前とだな、行こうミヌレ」
 握る槍が言葉に応えてくれていると感じたユヴェンは、ひといきに獣へと向かう。
 その一瞬後。
 貫かれた千里眼獣は地に伏し、断末魔の鳴き声が響いた。自分に向かってきていた敵をすべて倒したことを確認したユヴェンは槍を下ろす。
 未来を見通せても対応できなければそれまでだ。敵の能力もそれほど恐れることはないものだったとして、ユヴェンは一先ずの安堵を覚える。
 茨化した半身が元に戻っていく中、洋館の奥からは妖しい魔力が漂ってきた。
 今しがた倒した獣達も主を守るために戦っていたのだろう。そう感じたユヴェンはささやかに瞳を伏せ、千里眼獣達の冥福を願った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン
ワッ目がひとつしかない
ねえオスカー、UDCアースにはたくさん珍しい生き物がいるらしい
……ああ、アレ野生の動物じゃないのか。間違えた

キミの爪、なかなか鋭いようだけれど
私の剣だって負けないぜ
視力を強化したり、追尾をしようとしてみたり
そんなコトする必要ないよ
私がキミから逃げるワケないじゃないか

爪の攻撃には剣で応戦する
近くに盾になるものがあれば、身を《かばう》ように使っちゃおう
多少引っ掻かれても、多分私は気づかない
反撃のタイミングは逃さず、《早業》で“Eの誓約”

私、花火っていうの楽しみなんだよねえ
今まで見たことあったかは……ちょっと覚えてないけれど
空に火の花が咲くんだろう
ウーン、なかなか想像できないや



●夜彩の華を思う
 花火と占いと未来視の獣。
 そんな話を聞いて洋館にやってきたエドガーは大いに驚いていた。
「ワッ目がひとつしかない」
 思わず声をあげた彼は千里眼獣と呼ばれるプレビジオニスを見て、幾度も瞳を瞬いている。かれらが持つ月色の瞳は妙に綺麗だ。それに単眼の獣などこれまでに見たことがなく、ついじっと眺めてしまった。
「ねえオスカー、この世界にはたくさん珍しい生き物がいるらしい」
 傍らの燕に語りかけると、ちいさな囀りが返ってきた。
 違うという旨を告げたオスカー。その言葉を理解したエドガーは軽く首を振る。
「……ああ、アレは野生の動物じゃないのか」
 間違えた、と頰を掻いたエドガーは気を取り直した。
 何にせよ単眼の獣を倒すことは必須。レイピアを抜き放ったエドガーはエントランスに踏み込み、戦いに意識を向ける。
 対する千里眼獣達はエドガーを排除せんとして動き出した。
 交差する視線。
 地を蹴ったプレビジオニスがエドガーに接近することで、鋭利な爪と刺突剣の切っ先までもが交錯する。
 双方の刃と爪が衝突した瞬間、甲高い音が響いた。
 衝撃に耐えたエドガーはレイピアで敵を押し返し、隙を見て身を翻す。
「キミの爪はなかなか鋭いようだけれど、私の剣だって負けないぜ」
 爽やかに告げてみせた彼は片目を閉じる。相手は此方を強く見据えて逃さぬよう見張っているようだが、エドガーは軽く首を振った。
「そんなコトする必要ないよ。私がキミから逃げるワケないじゃないか」
 一度は爪から逃れるために距離を取ったが、此処からは離れはしない。そう宣言したエドガーは接敵すると同時に剣を振るった。
 千里眼獣の身を貫けば鮮血が散る。獣の姿をしていても、かれらもまた骸の海に還すべきオブリビオンだ。エドガーは一片の容赦も見せはしないと決め、聖痕の力を得た鋭利な剣戟を重ねていった。
 一体を屠り、次の一体へ視線を向ける。
 爪が彼の身を裂いたが、少しの痛みでしかない。苦痛に鈍感なエドガー自身は傷には気付かないままだ。其処から更に剣戟が鳴り響き、攻防が巡った。
 刃で標的を薙ぎ払ったエドガーは何体目かの千里眼獣を倒し、レイピアに付いた血を払う。ごめんよ、と静かに告げた彼は周囲を見渡した。
 倒れ伏した獣達は消滅していく。これで自分を狙う獣はいなくなったと察し、エドガーは刺突剣を収めた。
 そして、近くの窓辺から見えた宵空を何となく見上げる。
「花火か……」
 もっと深く夜が巡った頃に始まる催しを思うと楽しみな気持ちが募った。
 多分、おそらく今までに花火は見たことがないはず。曖昧な記憶を辿っても出て来ないということはきっとそうだ。
「確か空に火の花が咲くんだったよね」
 星とはまた違うのだろうか。ねえオスカー、とエドガーが呼び掛けると燕は不思議そうに首を傾げた。
「ウーン、なかなか想像できないや」
 考えても仕方がないと感じたエドガーは空から視線を外す。
 百聞は一見に如かず。それに今は未だ戦いの途中だ。すべては終わってみてから確かめればいいとして、エドガーはエントランスから奥に続く廊下を見遣った。
 この向こうに魔女がいる。
 魔力を察知したエドガーはその先を見つめ、最奥の部屋を目指してゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

花火は昨年初めて見て、びっくりしたのを覚えています
夏以外でも楽しめるんですね
そうですね、皆さんが楽しめるように一緒に頑張りましょうね

未来を見据える力は恐ろしいですけど…
積極的に攻撃することで、その隙を与えないように
沢山の炎、数の力で解決します
辺りが燃えないようコントロールはしっかりと

占いは魔法の一部なので、私は好きです
素質が無くて下手っぴだったので、自分では出来ないんですけど
だから強い力を持った人の占いは
楽しみだけど、ちょっぴり怖くもありますね

え、どんなことを、ですか…?
それは、えっと…
その言葉に視線を泳がせ、少し頬を染めながら
内緒、です
はい、気を抜かずに行きましょう


月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

本格的な夏が来る前に花火が楽しめるなんて…!
これは迅速に解決して存分に(デートを)楽しまないと…
じゃなかった
皆さんが無事に花火を楽しめるように頑張りましょうね、ラナさん!

獣達の攻撃からラナさんを庇えるような立ち回りを
高速詠唱、煌天の標を範囲攻撃で
千里眼を使わせる暇なんか与えずにどんどん倒します

目の前で占われちゃうのは少し恥ずかしい気もするけど…
敵は魔女だっていうし、邪神と言われる位強い力があるなら
何だか当たりそうな予感がしなくも…いえ
ラナさんだったらどんなことを聞きますか?内緒ですか?(微笑んで)
俺は…無難に総合的な運勢とかですかね…?
何にせよ、油断せずに行きましょう



●占星魔法と千里眼
 天涯は夕暮れの彩から宵色に染まっていく。
 暮れ泥んだ空に雲はなく、花火が上がるのに相応しい空模様だ。
「本格的な夏が来る前に花火が楽しめるなんて……!」
 蒼汰は空を見上げながら、絶好の花火日和であることを喜んでいた。彼がこんなにも嬉しがっているのは花火デートという時間が待っているから。
 事件に成り得る事柄を迅速に、それはもう素早く解決して花火に向かう。完璧な流れが彼の中で形成されている。
 妙に気合いの入った蒼汰の思惑には気付かぬまま、ラナは頼もしさを覚えた。
 そんなラナはかつて見た花火のことを思い返している。
「花火って、夏以外でも楽しめるんですね」
 昨年に初めて見たとき、とても大きな音と鮮やかな色彩に驚いた。
 何だかそれは最近のことのように思えたが、もうすぐ季節がひとめぐりする。ひととせの早さにも思いを馳せながら、ラナは淡い笑みを浮かべた。
 彼女の瞳や表情が眩い花火に照らされる様を想像した蒼汰は、自分の頬が緩んでいくことを感じていた。
(これはめいっぱい存分にデートを楽しまないと……じゃなかった)
 はっとした蒼汰は軽く咳払いをした後、ラナに向き直る。思考を花火から戦闘に切り替えていかなければならないと思い直したからだ。
「無事に花火を楽しめるように頑張りましょうね、ラナさん!」
「そうですね、皆さんが平和に過ごせるように一緒に頑張りましょうね」
 力を尽くします、と答えたラナもまた、蒼汰と過ごす花火の夜を楽しみにしていた。
 そして、ふたりは件の洋館に向かう。
 エントランスで彼らを迎えたのは多数の千里眼獣、プレビジオニス達。
 月を思わせる金色の瞳は未来を見通すという。
 単眼の獣を見つめ返したラナは花杖を構えた。自然に彼女を庇う形で布陣した蒼汰も敵を瞳に捉え、魔力を紡いでゆく。
「未来を見据える力は恐ろしいですけど……」
「視られる前に動けばいいんです。千里眼を使わせる暇なんか与えません」
「はい……!」
 ラナが少し不安気に零した言葉に対して蒼汰は力強く答えた。その声に更に勇気付けられた気がしたラナは意識を集中させる。
 そして、ふたりは一気にそれぞれの力を練りあげていった。
 ラナが放つのは炎の矢。
 其処に合わせて蒼汰が光の矢を打ち込んだ。
 激しく燃える焔と星月の光は鋭い軌跡を描く。ひとつの動作は既に千里眼獣に読まれているかもしれないが、次々と矢を紡げばいつかは未来視の力も追いつかなくなるはず。
 めいっぱいの炎と光。即ち数の力で解決すればいいという作戦だ。
 ラナは敵が避けてしまった炎が他に飛び火しないように操り、蒼汰は炎の影に魔法の矢を重ねて解き放っていった。
 その最中、千里眼獣がラナに向かって飛び掛かってくる。
「ラナさん、下がって!」
 即座に敵の動きを察知した蒼汰は相手の前に飛び込んだ。振り下ろされる爪を受け止めるようにして彼は零距離から煌天の標を放つ。
 そうすれば千里眼獣が真正面から貫かれ、その場に崩れ落ちた。
 はっとしたラナは彼の身に大事がないかを案じる。
「蒼汰さん、今のは……!」
「大丈夫です、掠りもしませんでした」
 彼女の方に振り返り、これくらいは任せてください、と笑ってみせる蒼汰。爪が突き立てられそうになった瞬間は内心で焦っていたが結果的に問題はなかった。
 大怪我をしたらラナに心配をさせてしまう。
 蒼汰にとっては彼女を守ることが一番だが、自分の身を捨てるようなことはしない。
 其処から戦いは激しく巡る。
 炎と光は螺旋を描くように千里眼獣を穿ち、それらを骸の海に返していく。
 そうして、ふたりは周囲の獣を一掃した。
 杖を下ろしたラナの傍らに立つ蒼汰は安堵を覚え、第一関門は突破したと感じる。
 エントランスの奥に続く廊下は薄暗い。あの奥に占いの力を得た魔女がいると思うと、妙に気が引き締まった。
「目の前で占われちゃうのは少し恥ずかしい気がしますね」
「占いは魔法の一部なので、私は好きです。どんな風に占うのでしょうか?」
 蒼汰とラナは魔女の力を思い、各々の思いを馳せる。
 ラナとしては興味があっても素質が無かった。下手っぴだったので自分では出来ない、と語った彼女は敵の占いに少しの期待を抱いているようだ。
「敵は魔女だっていうし、邪神と言われるくらいに強い力があるなら何だか当たりそうな予感がしなくも……」
「強い力を持った人の占いは楽しみだけど、ちょっぴり怖くもありますね」
 当たる方が良いのか、当たらないと笑い飛ばせる方がいいのか。
 どちらにしろ魔女が自分達を占うことは間違いない。洋館の奥にひそむ魔女の魔力を辿りながら、蒼汰はふと問う。
「ラナさんだったらどんなことを聞きますか?」
「それは、えっと……」
 ラナは視線を泳がせ、少し頬を染めながら「内緒、です」と囁いた。その仕草が可愛らしく感じた蒼汰はそっと微笑む。
「内緒ですか? 俺は無難に総合的な運勢とかですかね?」
 占いの内容はいずれ聞けるだろう。
 無理に相手の結果まで聞くつもりはないが、今は内緒のままでも構わない。蒼汰は改めて気をしっかりと持ち、最奥の部屋を目指す。
「何にせよ、油断せずに行きましょうか」
「はい、気を抜かずに進みましょう」
 花火や占いだけではなく、この先には邪神との対決も待ち受けている。ふたりは使命を忘れないようにと頷きあい、首魁がいるという部屋へ向かっていった。
 
 いよいよ次は魔女との対面だ。
 果たして、此処から始まる星占いと戦いの行方は如何に――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『呪炎のエーリカ』

POW   :    全てを焼き尽くす炎の魔女の力、思い知るといいわ!
【紅玉の輝石から巻き起こした呪いの炎】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【性質や戦法】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    スフェーンの魔石よ、呪いの楔を齎しなさい!
【呪われたスフェーンの宝石飾り】から【目映い光を放つ炎】を放ち、【楔の魔力】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    キャッツアイの石に秘められた力、見せてあげる!
【呪いの猫睛石に宿る未来視の力を使って】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ディイ・ディーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●占星と呪炎の魔女
 千里眼獣が守っていたエントランスを抜け、薄暗い廊下の奥に進む。
 魔女の魔力を辿っていった猟兵達が訪れたのは両開きの大きな扉に閉ざされていた広い部屋の中。其処には燭台が並び、灯された蝋燭の明かりが揺らめいていた。
 その部屋の最奥には魔女が立っている。

「いらっしゃい。ふふ、あの子達を通してすべて視ていたわ」
 猟兵達を迎えた魔女、呪炎のエーリカは妖しく笑う。あの子達というのはこれまでに倒してきた獣のことだろう。彼女は千里眼を通して猟兵を監視していたらしい。
 手にしている杖を掲げた魔女は双眸を細める。
 その手足や首元、杖先に飾られた呪いの宝石は奇妙な光を放っていた。豪奢な椅子の前に立っていた彼女は一歩だけ踏み出し、猟兵達を見定めるような視線を向ける。
「誰から占われたいの?」
 うふふ、と楽しげに笑んだ魔女は自分の周囲に十二星座の魔法陣を展開した。
 どうやら戦うことではなく占いに気持ちが向いているらしい。得意気な表情を浮かべたエーリカは人差し指をぴんと立てて語る。
「定番の恋占いに対人関係の占い、人生の総合運まで何だって占ってあげる!」
 魔女は此方の出方に期待している。
 何だか拍子抜けしてしまう言動だが、彼女は紛れもなく邪神だ。占い結果を聞くか聞くまいかは兎も角、いずれは倒さねばならない相手となる。手心は加えずに全力で攻撃を行う他ないだろう。
 そして、魔女は冗談めかしながら告げた。
「――当たるも八卦当たらぬも八卦、なんてね。さあ、始めるわよ」
 
蘭・七結
御機嫌よう、ステキな魔女さん
占いがお得意なのね
わたしを占ってくださるかしら

そうね、わたしの望みは
あなたが占える、そのすべてを
なゆはとても欲張りなの
あなたの言葉を聞かせてちょうだいな
わたしはここで、きいているわ

対人に愛、総合の運
占いを信じているわけではない
往き先は自分自身で切り開くけれど
ちょっぴり、興が乗ってしまうの

嗚呼、貴重な言葉をありがとう
忘れないように心に刻みましょう
では、はじめましょう
あなたを見過ごすわけにはいかないの

喚び起こすのは黒鍵刀
命中率重視であなたの姿を狙う
その動きのほんの僅かでも見切って
あなたごと呪いの炎を薙ぎ払う
無になんてさせないわ

縁を刻んで、結いで
わたしだけの未来へと繋ごう



●絡まる糸の先
 揺れる蝋燭の火が部屋に幾つもの影を作り出す。
 魔女と猟兵。対峙する双方の視線が重なったが、未だ戦いの気配はない。
「――御機嫌よう、ステキな魔女さん」
 一歩、緩やかに踏み出した七結は呪炎の魔女を見つめる。十二星座のシンボルを模った魔方陣が明滅する中、エーリカは七結を爪先から頭の先まで見遣った。
「へぇ、あなた……」
 意味ありげな呟きを落とした魔女に対し、七結は占いを願う。わたしを占ってくださるかしら、と告げた彼女はエーリカに思いのままに言葉を伝えていく。
「そうね、わたしの望みはあなたが占える、そのすべて」
 なゆはとても欲張りだから。
 得られるものなら全てを手にしたい。それが言葉ならば聞きつくしたい。
 対人に愛、総合の運。そういった占いをそのまま信じているわけではないし、自身の往き先は己で切り拓くのが常。
 けれども七結とて今はひとりの少女。
 ちょっぴり興が乗ってしまうのはご愛嬌。わたしはここできいているから、と七結が告げればエーリカは薄く笑った。
「あなたは、そうね。……ええ、色々と『混ざって』いるわね」
 そして、魔女は語っていく。
 見える感情をコントロールすることを得手とするあなたは、それゆえに感情を押し殺すこともできる。取り乱すことも少ない性質だが、それは逆に言えば発するべきときに思いを伝えられないことにも繋がる。
 されど意志は強く、決めたことにしっかりと向かう力も持ち得ているだろう。
「複雑な生まれなのね。ああ、けれど昔のあなたからすれば、生まれなんて些細なことだったのかしら。でも今は……ふふ、この先にあなたの苦難が視えるわ」
 順風満帆とは言えない、とエーリカは言う。
「特にあなたの傍にいる人。彼はいずれ様々な柵と糸に雁字搦めにされてしまうわ。あなたにはそれを解ける力がある。けれど、これはあなたの役目ではないの」
 解かずに繋いでいなさい。
 たとえ、それが大切な人にとっての呪いとなるときが来ても――。
「それから気を付けて。あなたの近くに裏切り者が居るわ。断じるか否かであなたの未来は大きく変わる。解決方法なんて教えてあげないけれどね。それにあなたのラッキーカラーはあかいろだけど、きっとそれは幸福も苦境もつれてくるでしょうね」
 エーリカは其処で話を終えた。
 語られていく言葉は占いだけあって曖昧だ。されど、元から全てを信じようという気はない。七結はゆるりと頷き、ありがとう、と魔女に伝えた。
「嗚呼、貴重な言葉ね」
 占いだけに頼るのではないが忘れないように心に刻んでおきたい。そう話した七結は、彼女のなりの敬意を表す。
「良い心掛けね。そうよ、未来なんて本当は定まっていないの。だから……」
「自分の手で変えられる、ということかしら」
「ええ、その通り」
 自分が言いかけた言葉を継いだ七結をエーリカは気に入ったらしい。
 そうして、七結は占いの行方を見守る。
 複雑に絡み合う糸と糸。
 運命や出逢いを繋ぐそれらがどのように絡みあうのか、静かな興味を抱いて――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助
❤️
と…年上の可愛い人との、~~運を…
(何やら一部小声早口で聞き取りにくい

その、占いに縋るつもりではなく…
思うまま気楽に言ってほしい
ラッキーアイテムなど聞いた日には毎日持ち歩く気がするが…

…そ、そうなん?
(占いを聞き始めたら夢中
うぅ…あぁ…などと言葉少なに、しかし本気で一喜一憂
聞きながら想い人が浮かび
部屋の隅でカーテンに顔を埋めたりチラ見したり

何を言われてもきっと楽しい
想うことからして幸せだから
終わったら丁寧にお礼を

防御は先程と同様に
獣の生命力を上乗せしてUC
先読みは巧かろうが、放つのは自在に動く74の火矢
視界を遮り、着地点を狙い、着実にダメージを蓄積し
隙があれば残っている矢を一本に纏めて放つ



●想い人と眼鏡
「さあ、あなたが占って欲しいのは何?」
 杖先を向けた魔女は千之助に問いかけ、返答を待つ。
 対する千之助は視線を逸しつつ、頬を掻く仕草をしながら小声で答える。
「と……年上の可愛い人との、……、~~運を……」
 その言葉は何やら一部が小声かつ早口で聞き取りにくい。薄く笑ったエーリカは千之助を揶揄うように問う。
「よく聞こえないわ。年上の兎のような想い人さんへの恋何運なのかしら?」
「きっ……聞こえて、おるではないか……ああ、しかも言ってないことまで」
 魔女はどうやら既に色々視ているようだ。
 もしかすれば何か不思議な未来視の力を使ったのかもしれない。千之助は両手で頬を押さえ、顔から火が出そうなほどの恥ずかしさを覚えた。
 しかし魔女はちゃんと答えるまでそれ以上を告げないつもりらしい。覚悟を決めた千之助は恥も外聞もなく、照れをかなぐり捨てた。
「年上の可愛い人との恋愛運を……!!」
「よくできました」
 エーリカは千之助を褒め、星座の魔方陣を光らせていく。
 無論、占いのみに縋るつもりはない。それゆえに思うまま気楽に言って欲しいと告げ、千之助は魔女の言葉を待った。
「そうねえ、あなたは……穏やかさの中に熱さを秘めているひとね」
 魔女は語っていく。
 常に客観的に物事を見ることができるあなたは、様々な角度から冷静に事実を判断できる。されどそのために自分のことを諦めてしまうきらいがある。
「……そ、そうなん?」
 そわそわとしながらも千之助は魔女の言葉を夢中で聞いていた。
 他者を思うことで己を殺すこともあるので、ときに心が折れそうになるだろう。だが、表には出せないので気付かれ辛い。
 そして、持ち前の優しさは秘めた衝動の裏返し。
 対人関係、それも想い人が関わることで我を見失うこともあるはずだ。
「お相手は表の顔こそ強そうだけれど、心の奥は柔いわ。支えてあげなければいけない局面が必ずくるでしょう。けれど、あなた自身も支えてもらうことね。じゃなきゃ自分の重さを察してどちらかが身を引く、という未来が引き寄せられてしまうわ」
「うぅ……あぁ……そう、そうか」
 思い当たることが有るような無いような、奇妙な気持ちが千之助の中に生まれる。
 支えること。支えてもらうこと。
 自身が抱く思いの欠片。それらをこれまでの心情と照らし合わせていくと一喜一憂してしまいそうだ。そして、千之助が一番気になっていたことがいよいよ告げられる。
「そんなあなたのラッキーアイテムはメガネ!」
「眼鏡?」
 それを聞いたら毎日でも持ち歩くつもりだったが、そんな思いも一気に吹き飛んでしまった。アイテムを想像することで一緒に想い人の顔が浮かんでしまい、千之助は思わず部屋の隅のカーテンに隠れる。
 恥ずかしさのあまりに顔を埋めた千之助だが、エーリカの言葉も未だ気になった。彼は暫しちらちらと魔女の方を見ていた。
「メガネはあなたが持ち歩かなくてもいいわ。傍にいれば運気アップかしらね。ただそれが割れたとき、大変なことが起こるわね。……大事にしなさい」
「うむ、わかった……」
 何となくしゃんと佇まいを直した千之助は頷く。
 端々に気になる懸念もあったが、こうして占われるのは悪くない。楽しいという気持ちを言葉の裏に秘めた千之助は、魔女へと丁寧に礼を告げた。
 何があっても彼の人を想うことからして幸せだ。
 こう思えていることこそが今の千之助の想いの根源なのだろう。
 されど、礼を告げた事と戦いはまた別の話。魔女もそれを分かっているらしく、千之助に鋭い視線を向ける。
「でも、あたしが此処であなたを殺したらすべてがおしまいね?」
「……そうはさせん」
 凛とした口調で答えた千之助は身構え、戦うべき時を待つ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
✡️

あー……ほんと、予知のテンションまんまかぁ

人生つか邪神生楽しそうデスネ
覗き見とか犯罪デスヨ

あんたの場合、存在そのものがアウトだけどさ……

まぁ、恋愛関係は順風満帆だし
対人も、家族居てくれりゃそんで良いし……
総合で一つ頼んでみよーっと

病気や怪我とかその辺も判ンのかな?
自信満々なんだしまーったく判んねぇってこたぁねぇだろ

俺に何かあったら、絶対泣くだろうしな、あの人……
だから……結果は話半分で聞いとくけど一応な?

結果を聞き終わったら

攻撃力強化に篝火使用
破魔と生命力吸収を乗せた華焔刀で一撃
刃先返して2回攻撃

敵の攻撃は見切りと残像で回避
当たらなきゃなんてことはねぇし

ま、あんたの忠告は適度に気を付けるさ



●未来は未知数
 広い部屋の中、倫太郎は辟易していた。
「あー……ほんと、聞いてたテンションまんまかぁ」
 魔女を前にして溜息をついた彼はその姿を軽く見遣る。楽しげに笑っている彼女は邪神であり、自分とは相容れないものだと感じた。
「人生つか邪神生楽しそうデスネ。覗き見とか犯罪デスヨ。あんたの場合、存在そのものがアウトだけどさ……」
「あら、言うわね。あたしはそんなことでは屈さないわよ」
「そーデスカ」
「でも気を付けなさい。人に対する言葉は自分を写す鏡よ。あなたの愛しい人は、誰かを貶すあなたを好ましく思うかしら?」
「人を呪い殺すようなあんたに言われたくはないな」
「ふふ、それもそうだわ!」
 倫太郎は魔女を一瞥してから、占いを願う。
 恋愛関係は順風満帆。対人も家族が居てくれればそれでいい。ならば総合運だ。
「病気や怪我とかその辺も判ンのかな? 自信満々なんだしまーったく判んねぇってこたぁねぇだろ。ほら、頼んだ」
 俺に何かあったら、絶対泣くだろうしな、と呟いた倫太郎。
 彼を見遣った魔女は暫し双眸を鋭く細めていた。先程の愛しい人という云々で自分の何かが視られていたことは感じていた。
「へぇ、あなたって『そう』なのね。男同士……或る意味で未来は無いわね」
「何だ、どういう意味だよ」
「あなたは一直線に見えて搦手で出るタイプかしら。怪我をするとしたら変に策を練りすぎたときだし、病気は……あら、夏風邪の未来が見えたわ。看病してもらったら?」
 魔女は告げてゆく。
 そして、あなたは誰かの役に立ちたいという気持ちを強く秘めていると話す。あなたは生まれつきの神秘性や直観力が備わっているのですぐに動くことができる。
 だが、冷静な面もあるので本当にそう行動していいか迷う思考力を持つ。それゆえに正攻法ではない方法で進んでしまうことがある。
 責任感も強く、自分のせいで、と悩むこともあるだろう。
「あなた、同じことをずっとループする傾向があるわ。それは今も未来も同じ。進んでいるように見えて同じところを回っているだけになってしまいそうね」
 だが、その傾向は自分で正せる。
 されどループについては自己の判断。それを是とするか否とするかは倫太郎次第だ。また、高い理想を持ちすぎた場合に逆風が吹く。何かが崩れ去るとすれば自分勝手な理想を押し付けたときになるだろう。
 告げ終えた魔女に対し、倫太郎は何とも言えない気持ちを抱く。
「……結果は話半分で聞いとく」
「そうしなさい。あたしの占いは変えるためのものだもの」
「じゃ、あとは戦うだけだな」
「待って。他の人も占わなきゃ」
 倫太郎が薙刀を身構えようとしたが魔女は首を横に振る。意外に義理堅いのだと感じながら、倫太郎は華焔刀を握るだけに留めた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ジウ・ココドコ
うわっいいなぁ!
話には聞いていたけど、占ってもらえるの?タダでいいの?本当に?
いや、僕まだ長生きする予定だから、魂はあげられないんだけども
じゃ、じゃあ……僕、総合運で……!

占いの結果問わず、魔女さんにはお礼を言うよ
で、それはそれ、これはこれだ。ここからは猟兵としての仕事しないとね!

それにしてもあの宝石、禍々しいけど、良い仕事してるじゃないかっ
炎の攻撃はちと厄介だね
ひとまず炎で攻撃されたら、バトルアンカーを振り回して、かきけします

振り回しながら魔女さんに近づき、バトルアンカーを投げつけます
避けられてもオッケー
戦いの状況次第で『海賊王の怒り』を使用し、
避けた先を狙って、星々の金貨で範囲攻撃するよっ



●水難と欲の相
 妖しく揺らめく蝋燭に照らされる部屋内。
 魔女が紡ぐ占いの言葉が告げられていく中で、ジウは瞳を輝かせていた。
「うわっいいなぁ!」
 既に総合運を聞いた者、恋愛運に一喜一憂した者、半信半疑ながらも占いを聞いた者と猟兵の興味や反応は様々だ。
 そして、ジウが羨ましそうな声をあげたことで魔女は此方に向き直った。
「あら、あなたも興味があるの?」
「うん! 話には聞いていたけど、占ってもらえるの? タダでいいの? 本当に?」
「いいえ、タダじゃないわ。生命力を貰っているもの」
「いや、僕はまだ長生きする予定だから、魂はあげられないんだけども。ちょっとくらいなら……ううん、でも――」
 魔女がきっぱりと答えたのでジウは僅かに戸惑った。
 しかし猟兵である自分ならばきっと耐えられる。もし命が吸われたとしても戦いに挑めるだろうと感じ、ジウは意を決した。
「じゃ、じゃあ……僕、総合運で……!」
「好奇心は猫を殺すって言葉、知ってる? けれど素直な子は好きよ」
 占ってあげる。
 そう告げた魔女は杖を掲げ、周囲に浮かばせた星座の魔方陣を明滅させた。すると少しだけジウの身体から力が抜けていく。だが、やはり耐えられないほどではない。
 魔女は、ふぅん、と頷いてから口をひらいた。
「あなたは結構な欲が眠っているわね。明るさに隠されているけれど、裡に情熱……いえ、もっと大きな情念かしらね。大層なものが秘められているわ」
 そして、あなたは思慮深い。
 目的のためにどう動くかを考えているので大成を収められる可能性がある。好奇心も旺盛な方なので関心を持てば知識も豊富になっていくだろう。
「ふむふむ、あなたは芸術関係で財を成すわね。あなたが創るのか、もとあった芸術品をどうにかするかは分からないけれど、興味があるなら目を光らせておいて」
「芸術品? 一攫千金できるものかな!」
 未来で銭の音がした気がする、とジウは期待を募らせた。
 くすくすと笑った魔女は更に続ける。
「だけど気を付けなさい。あなた、このままだと欲に目が眩んで命を落とすわ。水の中にとけてきえる運命が視えているの」
 あなたが水そのものなのにね、と魔女は悪戯っぽく話した。
 されど彼女が視ているのは或るひとつの世界線に過ぎない。自ら変える意思があれば避けられる運命でもあるらしい。
「それは困るな。水難の相ってことなのかな?」
「ふふ、どう転ぶかはあなた次第ね。でも……そうね、此処であたしに命を捧げて死ぬ運命を捩じ込むこともできるわ」
「それはごめんだね。でも、ありがとう!」
 ジウは首を横に振り、魔女が戯れに告げた揶揄いを真正面から否定した。
 お礼を告げる礼儀正しさも忘れず、ジウは確りと身構える。まだ占いは続くようだが、それが終われば戦いの時間だ。
 それはそれ、これはこれ。そして、この後――猟兵としての仕事が始まる。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
❤️or🙏でお任せ

…うぜぇ
占いとか何言ってんだ

(恋とか愛とか…よく分かんねぇ
大体あれだ
好きの度合いで言ったら普段遊んでくれてる兄さん達の方が断然上だし
でも別にそういうんじゃ全然ねぇし

…ただ
何か
悲しそうにしてると
胸が痛ぇ

俺は笑って欲しい
幸せになって欲しい
それだけで

別にそこに俺は関わっている必要はなくて

それ言ったら兄さん達にも幸せであってほしくて)

っておい!
人の事読み取って占ってやがんだ!!

邪神マジ胸くそ悪ぃ!!

キレ気味でUC起動
間合い詰め拳の乱れ撃ち

大体何で返ってきたし!
再生怪人流行ってんのか!!
もうやり口分かってんぞ
動き見切り
…いい加減還れ!

…ほんと
何で戻ってきたし
…未練か

やっぱわっかんね





●己の在り方
 過去を読み、未来視の力で先を占う邪神。
 揺らめく蝋燭の火の前に佇む彼女へと理玖が告げた思いは、たった一言。
「……うぜぇ」
 理玖は未だ戦いの気配が薄い部屋の中で頭を振る。占いとか何言ってんだ、と独り言ちた彼は面倒そうな表情を浮かべた。
 さっさとこんな邪神を倒してしまいたい。そんな意思がよく見える。
「あらあら、良いお年頃の少年くんね」
 魔女はくすりと笑うと紅玉色の双眸を鋭く細めた。
 理玖は視線すら返さなかったが、エーリカの方は此方に興味を示しているようだ。魔女が占うという恋だとか愛なんてものは今の理玖にはよく分からない。
(大体あれだ、好きの度合いで言ったら普段遊んでくれてる兄さん達の方が断然上だし、でも別にそういうんじゃ全然ねぇし)
「ふぅん、なるほどね」
 理玖は仲間達のことを思い返していた。
 握り締めた拳にはやはり自然に力が入っている。恋愛の関係ない対人占いを、という考えも過ぎらなかったこともないが、わざわざ占って貰うのは何かが違う。
 そもそも自分達は敵同士。
 理玖にとって、あの魔女は倒すべき相手でしかない相手だ。もとより邪神退治をして欲しいと聞いて訪れたこともある。
(……ただ、兄さん達が何か悲しそうにしてると胸が痛ぇ)
「まだ少し青春は通そうね。それはあなたが辿ってきた道に起因していそうだわ」
 理玖が視線を外しているにもかかわらず、魔女は何かを納得している。
 そのことに気付かぬ理玖は思いを深めた。
 笑っていて欲しい。
 幸せになって欲しい。それだけで――。
(皆がそうあってくれれば別にそこに俺は関わっている必要はなくて、それ言ったら兄さん達にも幸せであってほしくて……)
「あなたは自己犠牲の精神が強いわね。自分なんか、自分ばかりが……それから、どうして自分が、という気持ちを抱くことも多くないかしら」
「っておい! 人の事読み取って占ってやがんだ!!」
 はっとしてエーリカを見た理玖だが、相手の言葉は止まらない。
 あなたは頑固な一面があり、感受性も強い。
 それゆえにこうと決めたら譲らない部分がある。しかし、それが目標と重なれば一直線に進める強さに変わるだろう。
 されど、そのことは独りで突っ走ってしまう危険も孕んでいる。
 現在、周囲にいる人物との縁は問題ない。
 しかし自分はどうなってもいいという感情がある限りは何も好転しない。今一度、自分自身の行動が周りの人にとってどんな影響があるかを深く考えてみる必要がある――と、魔女は有無を言わさず話していった。
「そして、未来だけれど……。あなた、このままだと尊敬していた人と同じような末路を辿るわ。それこそが報いだと信じて、ね」
「勝手に視てんじゃねぇ! 何も知らねぇ癖に!」
「ふふ、怒る姿も可愛い。あなたみたいな子は他人に頼れば大体が解決するのに、簡単にはできない矛盾を抱えているのよね。でも――あら? あらあら、少なからずあなたを想ってくれるひとがこの先に現れるみたいね。ふふふ……」
 理玖は勝手に語るエーリカを睨み付ける。
「邪神マジ胸くそ悪ぃ!!」
 占いなんて勝手に相手が言っているだけ。何も気にする必要はない。
 それ以上深く考えてしまうと相手のペースに嵌りそうだった。理玖は憤りや苛立ちめいた感情を隠さず、魔女を瞳に映し続ける。
 そして、理玖はこれから始まる戦いに備え――龍珠を鋭く弾いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

朝日奈・祈里
⭐🌸

(呆気に取られている)
……おっ?お、おう!行ってこい!

いやいや、微笑ましいものだな
夢がかなってよかったな、うんうん
あ、どうぞごゆっくり
写真には写らんかもだから、微笑ましい様子をスケッチでもしてるよ

終わった?よし、じゃあ行くぞ桜髪の少女よ
スケッチブックを魔法陣に仕舞い込んで、代わりに長杖を引っ張り出す

イフリート!魔性の炎を覆い尽くせ!
炎で勝負でもしようじゃないか、な?

……や、やりにくい相手だ
なんとなくやりにくい!
えーい!最大火力だ!
なんでも持ってけイフリート!

貧血でふらーっとしながらも
この後のお楽しみのために寝たりなんかしない!


荻原・志桜
⭐️🌸

魔女が占ってくれる……あっ!
これって小さいとき夢みたシチュエーションなんじゃ?!
本の中でも魔女が占いをしてたシーンがあったもん
相手はエーリカさんだけど夢がひとつ叶うチャンス…!

…祈里ちゃん、わたし占いしてもいいかな?!
エーリカさんもお願いしますっ!(シュッと挙手

対人関係、恋愛……脳裏に浮かぶ好きな人
別に一度くらい良いよね…

い、いまお付き合いしてる人がいるのですが、
その人との今後の運勢をお願いします…

良い結果でも悪い結果でも必要以上に喜ばないし落ち込まない
気持ちの問題でもあるし
幾らでも変わってく未来だから

祈里ちゃんお待たせ、終わったよ!
あれ、祈里ちゃんは占い――あ、そういえば倒すんだった



●変える未来
「どきどきえーりかのみらいしほしうらない……」
 そんなのだったっけ、と呟いた祈里は呆気に取られていた。以前に会った邪神と再び対面した現在、祈里は驚きを隠せないでいる。
 明らかに以前とは違う雰囲気だ。主に魔女の言動が。
 そう感じているのは志桜もだが、骸の海から幾度も蘇る者は性質や行動原理に様々な違いを孕んでいるものだという。多分きっと今回もそういったパターンだ。
 魔方陣を描いた魔女は占いの力を行使していく。その最中で志桜がはっとする。
 今は魔女が未来を占ってくれる状況。
「……あっ! これって!」
 幼い頃に夢みたシチュエーションだと気が付けば、違和や少しの不安も何処かに飛んでいってしまう。よく読んでいた絵本の中でも魔女が占いをしていたシーンがあった。相手がエーリカであることは気になるが、夢がひとつ叶うチャンスだ。
「ねえ、祈里ちゃん」
「ん? 何だ、桜髪の少女」
 エーリカが気になって仕方なかった志桜は、意を決して祈里に問いかける。
「わたし、占いしてもいいかな?!」
「……おっ? お、おう! 行ってこい!」
「やった!」
 魔女に占って貰うことが夢だったのだと聞けば、祈里に止める理由はなかった。戦いも暫くは始まらないだろうと判断した祈里は志桜を送り出す。
 はい、と元気よく挙手した志桜。魔女に向けたその眼差しには期待が満ちていた。
「次はあなたね」
 エーリカは志桜を紅玉めいた瞳に捉える。
 対人関係に恋愛。占う方向性を思えば、志桜の脳裏に好きな人の姿が浮かんだ。
 彼と彼女には因縁があるが――別に一度くらい良いよね、とちいさく頷いた志桜は恥ずかしそうに切り出した。
「い、いまお付き合いしてる人がいるのですが……その人との……」
「恋愛運ってことね。ふふっ」
 すると魔女は志桜の言いたいことを判断して薄く笑った。その様子を見守っていた祈里はスケッチブックを取り出しながらこくこくと頷く。
「いやいや、微笑ましいものだな」
「祈里ちゃんまで……! とにかくお願いしますっ!」
 頬が熱くなっていくことを感じた志桜だが、それ以上に占いへの期待が強かった。やがて魔女の周囲に浮かんでいた陣が光を放ちはじめ、そして――。
 エーリカは僅かに双眸を細めた。
「あなた、あの子と……。いえ、良いわ。視えた未来を語りましょう。端的に言えば、あなた達は呪いに引き裂かれる可能性があるわね」
「……!」
「あなたもあの子も少しの障害くらいは乗り越えられるでしょう。あなた自身の気質が優しくて思慮深いところもあるからよ。心の痛みをよく知っているひとは強いわ。流した涙の分だけ成長してきたんじゃないかしら」
 心当たりがあった志桜は思わず口許に手を当てた。
 エーリカは彼女の様子を探りながらも、言葉を続けていく。
 あなたはそう見えても欲が深い。求めたものへの執着、欲しいと願ったものを追い求める意思。それらは良くもあり悪くもある。己の想いを優先するがゆえに無理をしたり、わがままを言ってしまうこともあるだろう。
「それはそれで良いわ。二人で好きに生きなさい。でも、あの子の変化にあなたがついていけなくなったら終わりね。その人自身を作り変える呪いに添う覚悟はある?」
 エーリカは知った風な口調で話す。
 おそらくは本当に何かを視て識っているのだろう。次第に魔女の口調は挑発するようなものになってきた。
「覚悟がないなら……そうね、あたしがあの子を砕いて終わらせるわ」
「それは――」
 志桜は一歩だけ後退ってしまった。魔女は確実に彼のことを語っている。そんなことはさせないと思う気持ちが強くなると同時に、自分が知らない彼の一面を魔女が知っていることに複雑な思いが巡った。
 
「おっと。そこまでだ、魔女達」
 其処に祈里が割って入った。不穏な気配を感じたからだろう。
 志桜の隣に寄り添うように立った祈里は敢えて今の話題には触れず、それまで描いていたスケッチを二人に見せた。
「魔女と魔女の対面もなかなかだった。夢がかなってよかったな、桜髪の少女」
「う、うん。ありがとう、祈里ちゃん」
「ふふ、上手なスケッチじゃない。あなたも視てあげましょうか」
 それによって魔女達の遣り取りは終えられた。
 エーリカは祈里を見つめ、頼んでもいないというのに占いをはじめる。別にいい、と祈里が断る前に魔女は語っていく。
「あら? 残念だけど、あなたは長生きできそうにないわね。まだ幼いのに妙なものにばかり関わって雁字搦めにされているみたい」
「ぼくさまのことを見通すつもりか? 面白い」
 スケッチブックを魔法陣に仕舞い込んだ祈里は肯定するでも否定するでもなく、代わりに長杖を引っ張り出した。戦いに備えて魔力を紡いでるからなのか、祈里の髪の赤いメッシュが微かに浮きはじめている。
 そうして、魔女は更に祈里について話した。
「あなた、これまでにたくさん失ってきたでしょう。成熟した姿勢は失う代わりの防御機構みたいなものね。才能もあるし努力もしているのは素晴らしいことだわ。けれど……それがあなた自身の可能性を逆に狭めるわ」
 知識欲、好奇心ともに旺盛であるがゆえに物怖じしないことが祈里の長所だ。
 だが、己に能力があると知っているために、力をこう使うべきだという固定観念に囚われているきらいがある。
 未だ頑なさを和らげることを知らない。命を縮める理由は其処にあるとして、エーリカは祈里に告げていく。
「現時点のままではあなたの未来に光はないし、何も報われないまま。道を間違えば暗闇に歩いていくだけになるの。助けを求めたい相手……あなたにとってのきょうだいのような人もきっと、手を差し伸べられないほどに――」
「そうか。だが、所詮は占いだろ?」
 祈里は感情の機微を見せぬよう魔女を見つめ返した。じっと占い聞いていた志桜も、祈里の言葉通りだと感じて揺らぎそうになった心を鎮める。
 告げられたことがすべて当たっているわけではない。そういった傾向がある、或いは可能性が存在するというだけだ。
「未来は幾らでも変わってくものだよね。悪いのなら良いことにだってできるはず!」
 志桜は希望を抱き、桜杖を握り締めた。
 自分達の未来も、祈里への占い結果も気に掛からないと言えば嘘になるが、悪い未来が分かっているのならばそうならないように進むのみ。おそらくエーリカもそのために未来を視ているのだろう。
「ええ。変えてみせなさい。ただし、出来るものならね」
 挑戦的な眼差しが魔女から向けられたことで祈里と志桜は強く身構えた。
 いずれ始まる、彼女との戦いに備えて――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラナ・スピラエア
✡️(❤️)
蒼汰さん(f16730)と

戦いよりも、つい気になってしまう占い
聞きたいのは恋愛運だけど…
蒼汰さんに聞かれてしまうのは恥ずかしくて

蒼汰さんが占って貰っている間に悩んだ結果
総合運を聞かせて貰えますか?
私のこの先のこと…

話を聞けても、やっぱりちょっと気になるから
えっと、その
こっそり恋愛運も教えて頂けますか?
あ、いえ
特定の方がいるとかでは、なくって…
(ちらりと蒼汰さんを見つつ)

良いお話なら嬉しいです
きちんとエーリカさんにお礼を言いますね
えっと、蒼汰さんはいかがでしたか?
蒼汰さんが幸せなら私も嬉しいです

蒼汰さんが動いたのを合図に春咲ノ花片を
花火を邪魔させるわけにはいかないので、ごめんなさい!


月居・蒼汰
✡️(❤️)
ラナさん(f06644)と

わあ…凄い、めちゃくちゃ本格的ですね…じゃなかった
一応俺達、貴女を倒しに来たんですけど
本当に占って貰っちゃってもいいんでしょうか?
…じゃあ、取り敢えず総合運からお願いしてもいいですか?
ついでに…恋愛運もこっそり占って頂けると嬉しいです…
(ラナさんをチラ見しつつこそこそ)

占いの結果に耳をぴこぴこさせながら一喜一憂しつつ
ラナさんの占いの間はなるべく聞かないよう心掛けて

占ってくれたことにお礼を言ってから
俺は…それなり、です?

折角占って貰ったのに戦うのはちょっと心苦しいけど
願い星の憧憬で攻撃を
でも、邪神になった貴女をこのまま野放しにしておくわけにはいかないので…!



●重なる想いとひとつの未来
 豪奢な燭台の影が揺らめく部屋の中。
 未だ戦いの気配や敵意は薄く、魔女の占いが始まった空間。
 戦いよりもついつい占いが気になってしまいながら、ラナはちらりと蒼汰の方を見る。
(聞きたいのは恋愛運ですが……)
 彼に聞かれてしまうのは恥ずかしくて出来れば秘めていたい。ラナが頬を押さえてちいさな葛藤を抱いている中で蒼汰は魔女に感心を抱いていた。
「わあ……凄い、めちゃくちゃ本格的ですね。じゃなかった。一応俺達、貴女を倒しに来たんですけど本当に占って貰っちゃってもいいんでしょうか?」
 蒼汰は興味津々に問う。
 対するエーリカは勿論だと答え、蒼汰とラナに聞き返した。
「ええ、いいわよ。さぁ、あなた達はどんなことを占って欲しいのかしら?」
「……じゃあ、取り敢えず総合運からお願いしてもいいですか? ついでに――」
 恋愛運も占って貰いたい。
 最初に答えた蒼汰は、先程にラナがそうしていたように彼女をそっと見遣る。続けた言葉はラナに聞こえぬようにこっそりと。
 魔女がくすくすと笑い、まずは蒼汰の占いを始めた。
「それじゃ、まずは彼の方ね。ふむふむ……へぇ、なるほどね」
 エーリカは十二星座の魔方陣を宙に描き、思わせぶりな口調で頷く。蒼汰はどんなことが告げられるのかと耳をぴこぴこと動かして待つ。
 魔女は語っていく。
「あなたは根っからのヒーローで、自分の正義を抱いているひとね。道徳や倫理に反することには絶対に手を染めない、優等生の気質だわ」
 嘘や偽りのない道を望み、自分に対しても他人に対しても正直でいようとする。
 しかし絶対に自分が正しいのだという主張をすることはない。違う正義に出逢ったとしても否定はせずに受け入れ、それでも相容れないなら立ち向かう強さがある。
「だけど負けず嫌いな部分があって決して諦めない。表面的には穏やかだけれど、その気持ちがあるから情熱や闘争心も忘れていない、と――」
 蒼汰を見つめる魔女は次にラナに声を掛ける。
「それで、あなたは?」
「総合運を聞かせて貰えますか? 私のこの先のこと……えっと、あと」
 こっそり恋愛運も。
 視線だけでエーリカに願ったラナはとても照れている。しかし懸命にそれを押し隠そうとしているようだ。
 魔女は蒼汰とラナを見比べた後、またくすりと笑った。
「はいはい、彼と同じね」
「あ、いえ。特定の方がいるとかでは、なくって……」
「分かっているわ。安心なさい」
 再び蒼汰を見たラナの様子がおかしく感じたのか、魔女は口許を押さえて肩を震わせていた。この二人、互いにはバレてはいないが他から見れば丸分かりだ。
 そして魔女はラナを視る。
「あなたは……人が何を求めているか直感的に感じ取って、人が欲するものを与えることができるひとね。でも、本当はそれ以上に自分のことを見て欲しいと思っている」
 争うことを避けたがる性質を持つあなたは大抵は自分が譲歩する。自らが犠牲になってもいいと考えているが、それは他者に自分のような辛い思いをさせたくないからだ。
 痛みを知り、痛みを避けたがる。
 それゆえに自分の苦悩や辛さを人に打ち明けることは少ない。どちらかと言えば諦めが良いと表せるタイプだ。
「心をよく知るあなただから、悪いことにも敏感ね。何かが悪い方向に向かうとしたら他者に嫌悪感を抱いたときよ。その気持ちを忘れるか、心に残すかによって運命が大きく変わる……ということが視えたわ」
「運命、ですか?」
 きょとんとしたラナは幾度か瞼を瞬く。
 ラナにとっては実感が無いような言葉が並べられ、蒼汰にとっては思い当たる節があるようなことが告げられた。
 しかし二人にとって本当に大事なことがまだ告げられていない。
「あの……」
「ええっと」
 ラナと蒼汰は同時に魔女に問いかけようとした。無論、恋愛運についてだ。
 するとエーリカは笑いを堪えながら人差し指をぴんと立てた。
「あなた達が一番気になることね。同じ未来が視えているから一緒に教えてあげる。一言でいえば順風満帆よ。何の心配も要らないわ!」
 魔女は揶揄い気味に宣言する。
 二人が歩む道。その中でのひとつの可能性を視たらしいエーリカは更に語った。
「どちらも人を大切に想うことの尊さを知っているわよね。だから良いものを引き出しあえるわ。懸念があるとしたら、大切だからこそああしたくはない、こうしたくはないという思いが生まれることかしら」
 だが、それも想い合っているから。
 敢えて魔女がそのことを口にしなかったのは、ラナと蒼汰が未だ想いを隠していると察したからだ。
「ということで終わりよ。全力で幸せになりなさい!」
 ごちそうさま、と告げたエーリカはひらひらと手を振って占いを終了した。二人はきっちりと彼女に礼を告げた後、顔を見合わせた。
「えっと、蒼汰さんはいかがでしたか?」
「俺は……それなり、です?」
「一緒に占われちゃいましたが、蒼汰さんが幸せなら私も嬉しいです」
 蒼汰は僅かに照れたような表情を見せた後、そっと笑む。ラナもつられて笑顔を浮かべてふわりと告げる。
 そして、二人はそっと身構えた。
 魔女との戦いはもうすぐ。全ての占いが終わったこの後に控えている。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

世母都・かんろ
十雉さん(f23050)

🙏

うら、ない
当たるの、かな
最近、お話する人、増えた、から
色んな人、と
仲良く、なりたい

どんな結果でも
動揺しちゃだめ
十雉さんが頼もしいから
がんばらなきゃ

足手まといは嫌
落ち着いて
うたう
【歌唱、高速詠唱、パフォーマンス


きみの居ない
明日の話

机の花も
みんなの涙も
全部嘘に思えたんだ

きみの居ない
明日の話

世界が丸ごとどうしてきみを
昨日のどっかに置いていく

笑顔の写真が傾いて
お前のことも
視えやしないよ


指揮棒を竜巻に変換
十雉さんを巻き込まぬよう意識し
敵を一気に押し流す
【全力魔法、属性攻撃、呪詛

あ、え、えと
だい、じょうぶ、です、か?
(心配そうに

やっぱりこの力は
不気味かな
それが少し、不安で


宵雛花・十雉
かんろちゃん(f18159)と

🙏

どんな結果が出ても気にしねぇ
こういうのはいい結果だけ信じりゃいいのさ

大の男としての義務感っての?
今日の相方は可愛らしいお友達だからさ、オレが前に出て戦うよ
実を言うと攻撃より支援の方が得意なんだけど
こう…オレが盾になるくらいの気概でさ
おう、頑張ろうぜと笑って見せて

薙刀振り回して戦ってたら歌が聞こえた
男の声ってのは分かるんだけど、なんてぇのかな…すげぇ透き通って感じる歌声
聞き惚れかけてたら敵を押し流した、可愛い顔から想像できねぇ威力の竜巻

思わず唖然
えーと…オレ、支援させて貰おっかな
符で敵の動き止めるんで、ハイ
…男として自信喪失しそ



●揺らぐ未来の一欠片
 蝋燭の火、明滅する魔方陣。
 薄く笑む魔女と星座が占う未来の行方。それが――。
(うら、ない。当たるの、かな)
 茫洋とした瞳を魔女に向け、かんろはじっと占いの声を聞く。既に占われている人々への言葉を聞けば、かんろも興味が湧いてくる。
 最近はお話する人が増えた。だから色んな人と仲良くなりたい。
「わたし、も」
 占ってほしい。かんろが微かな言葉を紡ぐと、呪炎の魔女が此方に視線を向ける。かんろの傍らに立つ十雉もその眼差しを受け止め、自分もと主張する。
「よォ、占って貰えるかい」
「構わないわよ、じゃあまずは可愛いあなたから」
 そして、かんろの前に十二星座の魔方陣を顕現させた魔女は語っていく。かんろはぎゅっと掌を握り締め、紡がれていく言葉に耳を傾けた。
「へぇ、あなたは届かない理想を追い求めているのね。けれどあなた自身、どうやっても届かないと知っている」
 魔女は語る。
 あなたは懸命に努力を積み重ねることが出来るひと。けれども努力でどうにもならないことを望んでしまっている。
 だから目を瞑って、押し隠してなかったことにする。
 心と事実は相反しているが、己の信ずるところを決して曲げようとはしない性質だ。信念があり、正しいことをしようとする。だが、それが自分から柔軟性を奪っていることには気がつけていない。
「そんなあなたは、人と自分が共通して嬉しいと思うことを見つけて行えばいいわ。そうすればいま付き合っている人達との縁は続く。でも気を付けなさい。あなた自身も楽しい、嬉しいと思わなければならないの」
 己の意思を殺してしまえば、縁は途端に切れる。
 他者のことだけを思いすぎても駄目だということだ。
「誰かとの、縁。仲良く、たのしく」
 途切れ途切れの遠慮がちな言葉を落とし、かんろはこくりと頷く。
 へえ、と感心する十雉は敢えて口を出さないでいた。すると魔女は次に彼の方に向き直り、再び魔方陣に魔力を注いだ。
 紅玉色の瞳が細められ、魔女は十雉の背後に視線を向ける。
 まるで何か、彼の背に負っているものを視ているかのようだ。
「さて、そっちのあなただけど……。随分と絡まった感情やこんがらがったものをお持ちのようねえ。苦しくない?」
 くすくすと笑った魔女は揶揄っている。
 十雉は腕を組み、言ってみると良い、といった様子で続く言葉を待った。
「あなたは深い夜の最中に取り残されているわ。とても暗い、ひとりぼっちの世界。少し先からはたくさんの楽しげな誰かの声がするのに、それは自分には遠い存在だ――なんて、そんな風に思ったことはないかしら」
 喩えるならば終わらない夜。
 あなたみたいな人は寂しがりであるくせに、自分の信じるところにたったひとりで向かっていく。それゆえに方向性などを人から干渉されるようなことがあると反発してしまう。認めて欲しいだけなのだが、それが人との距離を作る要因となる。
 でも、と魔女は続けていく。
「世渡りも上手ね。自分をつくっているからかしら。それが無理なく続くならそのまま生きていけばいいけれど、辛い道だわ。けれど大丈夫そうね。あなたの近くに目映いお日様が見える。そのひとは、きっと――」
 これ以上は言わなくても分かるでしょう、と魔女は言葉を止めた。
「そりゃどうも。……お日様なァ」
「すごい。うら、ない」
 少し考え込んだ十雉の傍、かんろも聞いたばかりの占い結果を反芻している。これが当たっているのか、それとも外れているのか。その答えは誰も知らない。
 どんな結果でも動揺はしないと決めた。
「十雉さん」
 大丈夫かというような視線をかんろが向けると、十雉は笑ってみせる。
「こういうのはいい結果だけ信じりゃいいのさ」
「……はい」
「ふふ、良い心掛けだわ。嫌な結果なら抗いなさい。変えていきなさい。視えたままの未来なんてつまらないもの!」
 魔女は十雉達を見つめ、それで良いのだと語った。
 そして、かんろと十雉は魔女との戦いに備える。共に立つ互いの存在が頼もしく感じられる。がんばらなきゃ、と意気込むかんろに頷き、十雉は一歩前に踏み出した。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
✡️

ヨル!占いをしてくれるんだって
え?恋愛運じゃないのかって?
もう。おませなぺんちゃんだな
戀はちゃんと叶ったよ

僕は今後のことを占ってもらうんだ
匣舟のことも、櫻宵と師匠とのことも
…これから僕がどうすべきか、とか今後の運勢
そんなヒントだよ
ひとつ幕を閉じたならまた幕が開くんだ
そして歌う
踊る、演じる
泳いでいく
僕の舞台を
僕らの舞台を

ヨルは?恋愛運?
意外だな…おませだ!

占ってくれてありがとう
良いところも悪いところも
胸の内に抱く

お礼に歌を歌ってあげる
ひとりで戦うのは苦手だけど…
ちゃんと守れるようになりたいから

水のベールで身を守り
歌う
破魔をのせた「恋の歌」
炎ごと燃やし尽くすよ

ヨルが応援してくれるんだ
頑張れる!



●戀枷
「ヨル! 占いをしてくれるんだって」
「きゅ? きゅきゅ!」
 魔方陣を描く魔女の前、リルは式神ペンギンと一緒に順番を待っていた。ヨルは鰭をぱたぱたと動かしてリルに何やら伝えていく。どうやら恋愛運を視てもらわないのか、と聞いているらしい。
「もう。おませなぺんちゃんだな。戀はちゃんと叶ったよ」
 だから今後のことを占って貰いたい。
 匣舟のこと、大切な櫻宵とその師匠とのこと。そのためにこれから自分がどうすべきか。それは即ち今後の運勢。
 ひとつ幕が閉じたなら、また別の幕が開く。
 歌って、踊って、演じて、泳いでいく。
 僕の舞台を。僕らの舞台を。そのために識りたい。
 しかし全てを占いに託すのではなくヒントを貰いたい。そのような志を持つリルは魔女に游ぎ寄りながら問う。
「占い、してもらっていいかな?」
「ええ。そっちのペンちゃんも一緒に?」
「きゅー!」
 分かったわ、と答えた魔女はふたりを紅玉の瞳に映す。
 そして、先ず占われたのはリル。なるほどね、と感心した魔女は語り始める。
「あなたは潜在的に他者を仲裁できる能力を持っているわ。暗闇の中でも真っ直ぐに育ってきた……いえ、育てられてきたのが影響しているのかしら」
 嫉妬深さや慾も深いが滅多なことでは揺らがない。生まれ持った性質も起因しているのか、とにかく心が強い。
 何か目標を持っている場合、成し遂げる力も持ち得ている。
 しかし、一度懐いた相手に依存するきらいがある。それ以外の人に対しては疑い深いところもあるので、自分の深い部分や本音を語れる相手は少ない。
「あなたはもう少し交友関係を広げた方が良いわ。……なんて忠告されても、たったひとりだけが居れば良いと思ってしまうかしら。一途な上に戀に囚われているのだもの」
 それは良くもあり、悪いことにも繋がっていく。
 そして、大切な人の力になりたいのならば時には離れることも必要だ。自身の存在が枷になりそうなら見守るだけが良い。
 されど闇に向かっていく相手を光で照らすのもリルの役目。
 都度、状況を見極めなさい。そう告げた魔女は語り終え、次はヨルを視る。
 リルは占いへの想いをそっと胸の内に抱きながら、ヨルに問いかけた。するとペンギンは羽を掲げて身体全体でハートを形作る。
「ヨルは恋愛運? 意外だな。やっぱりおませだ!」
「きゅっきゅ」
「恋愛、運……? え、ええ。まぁいいわ。ペンちゃんはそうねえ、なるほど。クラゲみたいなふわふわした子と出会う運命が視えるわね」
 おさかなをプレゼントすれば一気に仲が深まる大チャンス。
 ラッキーアイテムは薔薇の花!
 ペンギン向けの簡単なやさしい占いを告げた魔女はヨルとリルを交互に見遣った。
「それからペンちゃん。あなたはご主人にいつか伝えたいことがあるようね。それをいつ告げるのが良いかはあたしにも視えないわ。あなたの好きにしなさい」
「ヨルが伝えたいこと?」
「きゅ……!」
 リルが不思議そうに首を傾げるとヨルは格好良くポーズを決めてみせた。待っててという意味合いらしい。そうして、魔女の占いは終わった。
「占ってくれてありがとう」
 エーリカに軽くお辞儀をしたリルは、お礼に歌を歌ってあげる、と告げる。
 ひとりで戦うのは苦手だ。けれどもちゃんと守れるようになりたいから。これから始まる戦いに向け、リルは強い意思を見せた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸宵戯
✡️

うっ…私、占いって苦手なのよ…
なんだか怖くて
先を見通して示される、なんて
私に未来なんてみえないもの

お、陰陽師だもん占えるわよ?
自分の事は占わないわ
……厄にあたるばかり
未来をみるのが怖いのよ
引っ張らないで、ロキっ
怖!みてる!

ふるふるしながら総合運と口にする
…絶対結果は良くないわ
気安く口にするロキが羨ましいわ

…そういうものなのかしら
占いで死にはしないわ!
きっといい事だって…
…それはそれとして悪かったら泣くわ
私にだけこっそり教えて頂戴な

内緒よ!
占ってもらったお礼に綺麗な花を咲かせてあげる
「哭華」
ロキが相殺してくれたなら
命喰らう桜嵐でなぎ払い
その隙をつくように思い切り
衝撃波と共に斬り込むわ


ロキ・バロックヒート
🌸宵戯
✡️🙏

ねぇねぇ宵ちゃん占いだって
陰陽師って未来占ったりもしないっけ?
宵ちゃんが厭がるの知ってるけど
いーじゃんたまにはさ
ぐいぐい引っ張ってって

魔女で占いってハマってるよね
面白そう
んじゃ総合運とー
あとは俺様と宵ちゃんの相性とかどーかな?
気軽に頼んじゃう
占星術とかも齧ってるから興味津々
占いなんてその時の気紛れな囁きなんだから
どんな結果でも気にすることないって
フォローしつつも
好い結果なら嬉しいし
悪い結果ならからかうし
自分のことは占わないの?
なんて魔女に聞いたり

えー戦わなきゃ駄目?
他の子の結果とかも聞いていたいんだけどな
戦いになれば【UC】で相殺
宵ちゃんが戦いやすいように
ね、息はぴったりでしょ



●過去と未来と、現在と
「ねぇねぇ宵ちゃん占いだって」
「うっ……私、占いって苦手なのよ……」
 揺らぐ蝋燭の火を見遣り、ロキは軽い調子で櫻宵を呼ぶ。対する櫻宵は額に手を添え、いやいやと首を振った。
「陰陽師って未来占ったりもしないっけ?」
「占えるわよ? でも自分の事は占わないわ」
 先を見通して示されるということは何だか怖い。厄にあたるばかりの未来をみるのが恐ろしい。それに、過去に縛られた自分には未来なんてみえない。
 俯いた櫻宵に対してロキは遥か過去の『彼』を懐う。しかし、それとこれとは別だとして敢えて何も言わずに手を伸ばした。
「いーじゃんたまにはさ」
「引っ張らないで、ロキっ。怖! 魔女がみてる!」
「魔女で占いってハマってるよね。面白そうだし、なかなかないよ」
 彼が厭がることは知っているが、ロキは腕をぐいぐいと引っ張った。そして魔方陣を描く魔女の元へと櫻宵を連れて行く。
「あなた達も占って欲しいの?」
「お願いしたいな。んじゃ総合運とー、あとは俺様と宵ちゃんの相性とかどーかな?」
「……総合運を」
 興味津々な様子で気軽に頼むロキ。ふるふると慄きながら願う櫻宵。
 二人の姿は対極だ。
「占いなんてその時の気紛れな囁きなんだから、宵ちゃんも適当にいこうよ」
「絶対に結果は良くないわ」
 ロキが羨ましいと感じながら櫻宵は彼の背にそっと隠れた。その遣り取りをくすくすと笑いながら見ていた魔女は杖を掲げる。
 そうして、未来視の星占いが巡ってゆく。先ず語られたのはロキの方だ。
「あら? あなた……空っぽね」
 魔女はロキを見つめて意外そうに首を傾げていた。しかし彼の未来自体は視えるのか、言葉を続けていく。
 あなたは独自の視点を持った一風変わったひと。
 否、ひとではないからこそ普通という言葉では計りきれない。集団から少し離れたところに常にいて、人が悟れないようなことによく気が付く。人間に対する洞察力や分析力には目を見張るものがあり、好奇心も旺盛。
「けれど自分のことに頓着しない……出来ない性質だから、全部台無しね。その気楽さも、どうせ全て壊れるから、と思っているからかしら。ふふ、面白い子ね」
 其処で話を一区切りした魔女は、次に櫻宵を視る。
 あなたは――と口にしたエーリカは肩を竦めてみせた。
「桜との因縁が深いわね。深すぎて底無しよ。美しいけれど儚く散りゆく運命を定められている存在。まさにそれがあなたね」
 あなたは過去の出来事や前世の影響もあり、とても強い力を内に秘めた人。
 生まれながらに植え付けられた不安や疑心を埋めるために、鋭い衝動に身を任せてしまうこともある。先の見えないことはあまり好まず、現在だけを見ようとしている。だが、周囲は常に過去に目を向けさせようする。
 抗いたくもあるが、抗えない。そして人間関係では浅く広くよりも、狭く深くを好む傾向がある。周囲の影響を受けやすい為、人選を間違えば一気に闇の中へ。
 寧ろひとりで暗闇に進んでいくので、道を照らす光が必要だ。
「それを踏まえてのあなた達の相性だけど……」
 一言で云えば最悪。
 だが、世の中には良い縁だけが巡っているわけではないのだとエーリカは語る。櫻宵はロキに引き摺られ、引っ張られる。しかしロキは逆に、無意識に立ち止まってしまう櫻宵と一緒にいることで止めて貰えている。
 相反する性質ゆえに最悪と評したが、違うもの同士が重なることも必要だ。
「……そういうものなのかしら」
 結果を聞いた櫻宵はぽつりと呟いた。ロキは最初と変わらない様子で薄く口許を緩めている。良いのか悪いのか、ひとまずは櫻宵が泣かなくて良かったと感じた。勿論、ロキにとっては櫻宵が泣いても面白かったのだが、それはさておき。
 占いはただの指標。
 当たっているかどうかなど自分の気持ち次第だ。
「平気だよ宵ちゃん、どんな結果でも気にすることないって。それよりも魔女ちゃん、自分のことは占わないの?」
「ふふ、あたしにはもう占いなんて必要ないの」
 だからご心配なく、という言葉が魔女からロキに向けられた。そっかぁ、と軽く口にしたロキは頭の上で両腕を組む。
 すると、何とか気を取り直した櫻宵が顔をあげた。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦だったものね。そうよ、占いで死にはしないわ!」
「おー、宵ちゃん復活?」
 ロキはからからと笑い、刀に手を掛けた櫻宵を見遣る。
 占いについての思いはまだ完全には消えていないが、この後には魔女との戦いが待っている。そのことを思えば心の準備も整う。
 ロキはというと、未だ続くであろう魔女の占いに意識を向けていた。
 何にせよ、戦いの時はいずれ訪れる。
 それまではのんびりできるかな、と零したロキは蜂蜜色の双眸を緩やかに細めた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
やぁやぁ
魔女さん
総合運、占ってくださいな!

わくわく耀く瞳は
魔法陣を映し
いっそうきらきら煌いて

偽物のいのちを宿す、ひとに非ずな身でも
十二星座の廻りに組み込んで貰えるのでしょうか

そして
骸となり、ひとの命の廻りから外れた魔女殿にも
星の加護はあるのでしょうか

私とあなた
「ひと」ではない者同士

嬉々として杖繰る姿を見遣り
胸を過る少しばかりの感傷
魔法陣から零れる光の粒子が
幼き迷子にも見えたからか

憂いは口にせず
朗らかな彼女へと微笑んで
占い結果に感謝を

ありがとうございます
楽しかった
あなたも、楽しんでくださいましたか?

ゆるり問いながら
ふわり放つ馨遙で、眠りへ誘う
星の瞬く宙の夢を游いで、彼方の海まで辿り着けますように



●巡る星の灯
「やぁやぁ、魔女さん」
 片目を眇め、綾は呪炎の魔女に語りかける。
 占って欲しいと彼が願ったのは総合運。期待に満ちてわくわくと耀く瞳は明滅する魔法陣を映している。
 その光を受けた綾の眸はいっそう、きらきら煌いていた。
「ええ、香炉のあなた。その過去と現在から未来を視てあげましょう」
 笑みを返した魔女は術杖を掲げた。
 其処から巡る十二星座のひかりは綾の周囲に広がっていく。その光景を眺めた綾は笑みを絶やさぬまま思う。
 偽物のいのちを宿す、ひとに非ず身。
 それでも――己は十二星座の廻りに組み込んで貰えるのだろうか。
 そして、骸となりってひとの命の廻りから外れた魔女にも星の加護はあるのか、と。
 私とあなた。
 決して『ひと』ではない者同士の視線が交錯する。
「視えたわ」
 先程の口調から既に綾の過去を視ていたらしい魔女は、新たに未来を捉えた。
 あなたは、という語り口から語られていく話。それは――。
「ひとにあらず。けれども、その心はもう殆どひとそのものね。けれど……思い通りの人生を生きたい人と願うからこそ、逆にひとからは外れているわ」
 穏やかさの中に人望が光る。
 その生まれゆえに他者を惹き付けて陶酔させる力も秘めているだろう。ひととしては決断力や判断力に優れていることもあり、指針を示すのが得意だ。
 だが、反して誰かの思いのままに動くのは苦手な傾向にある。そうなるくらいならば己から離れる非情さも持ち合わせている。
「あなた、近しかった人を失っていない? そう遠くない記憶に心の痛みが視えたわ。それに似た痛みがこれから幾度も訪れるわ。あなたを慕う人が苦しい決断をする。そして、あなたはそれを見送ることしか出来ない、とね」
 自らの手が届かぬところで不幸が巡る。どうしようもないと諦めてしまう。
 そんな占い結果を聞けば、それまで嬉々として魔女が杖を繰る姿を見ていた綾の顔に僅かな変化が訪れる。
 胸を過る、少しばかりの感傷。
 魔法陣から零れる光の粒子が幼き迷子にも見えた。しかしそれ以上に、告げられた言葉の意味を確かめてみたくなった。
 されど綾は憂いなど口にしない。
 そうですか、と頷いた彼は常の笑みを浮かべて、魔女に礼を告げた。
 占いは占い。ただの言葉であって全てが真実ではない。また、未来にそういった可能性もあるということでしかない。
 朗らかに彼女へと微笑んでみせた綾はそっと告げる。
「ありがとうございます。楽しかったです」
 あなたも楽しんでくれましたか、と問うと魔女は静かに口元を緩めた。
「本当はね、あなた達の未来を奪うのがあたしの目的なの。だから……ふふ、後を楽しみにしていて頂戴」
 妖しく笑んだ魔女は綾にウインクをしてみせる。
 綾は脅しめいた言葉にも怯まず納得する。いずれ彼女とは戦わねばならない。
 戦いの時が近付いていると感じながら、綾は静かに身構えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
✡️
呪詛耐性あり

「例え未来視があっても。稼いだ時間と記憶を十全に使いこなせねば、意味のないものとなりましょう。そして…私達は1人で貴女に対しているわけではありません」

UC「魂の歌劇」使用
声に破魔の力乗せ魔女に関する童謡を歌い続けエーリカの気を逸らす
また占いを催促し皆の攻撃が当たりやすくなるよう隙を作る
エーリカの攻撃は第六感や見切りで躱す

「エーリカさん、先を読むこと占うことで、貴女の望みは手に入りましたか」
「先読みも占いも戦いすらも。ただの手段に過ぎないかと。貴女の望みは…此処に在ること、他者に関わることではないかと思えるのです」

「お休みなさい。次は共存できる方としてお戻りを」
最後は鎮魂歌で送る



●未来の価値は
 妖しく揺らぐ蝋燭の火が魔女と猟兵を照らし出している。
 桜花は妖しく笑っているエーリカを見つめながら、思ったことを伝えていく。
「それがあなたの未来視ですか」
「ええ、占って欲しいのかしら?」
 エーリカは桜花を見つめ返し、何を占って欲しいのか問う。
 しかし彼女は敢えて何も告げることなく、それすら読んでみて欲しいと訴えた。いいわ、と頷いた魔女は十二星座の魔方陣を広げていく。
 そして、相手は占い結果を桜花に語った。
「あなたは……そうね、自分を色んなもので飾って普通を装っているみたい」
 桜花はじっとその声を聞いている。
 当たっているかはどうかはすべてを聞いてから判断する心算だ。
 あなたは自分がやりたいことがあっても、相手に合わせなくてはいけない場面ではあえて封じ込めてしまうことがある。
 新しい物に興味があり、流行の最先端のチェックを怠らない。
 しかし、本当の心は未来ではなく過去にある。流行を確かめるのは今という時間に自分が置いていかれない為の手段だ。
「あら。もしかしてあなた、平穏な日々が退屈だと思っていない? そんな思いから道を少し踏み外す未来が視えたわ」
 しかし、あなたは何でも自分の目で確かめようとする。
 其処から何を思い、どんなことを選んでいくかで未来は変わる。そういったものだと語った魔女は其処で話を終えた。
 そうですか、と答えた桜花はそっと唇をひらく。
「例え未来視があっても。稼いだ時間と記憶を十全に使いこなせねば、意味のないものとなりましょう。そして……私達は一人で貴女に対しているわけではありません」
「ええ、そうね。たくさんの子が占いを求めてきてくれて嬉しいわ」
 魔女はくすくすと笑った。
 其処に何か秘められた感情があると察した桜花は問いかけてみる。
「エーリカさん、先を読むことや占うことで、貴女の望みは手に入りましたか」
「さあ、どうかしら」
 しかし魔女は意味ありげにはぐらかした。まるで真意を悟られたくはないかのようだ。桜花は身構えながら、自分の思いを言葉にしていく。
「先読みも占いも戦いすらも。ただの手段に過ぎないかと」
「なあに、あたしの目的を探りたいのかしら。聡いわね、あなた」
 はい、と頷いた桜花は間もなく始まる戦いに多いを馳せながら更に話した。
「貴女の望みは……」
 ――此処に在ること、他者に関わることではないか。
 桜花が真っ直ぐな視線を向けるとエーリカは敢えて目を背けた。その様子から察するに、おそらく答え合わせはしてくれないだろう。
 彼女にもまた何か抱えたものがあるのだと知り、桜花は強い眼差しを向け続けた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

杣友・椋
✡️

部屋の最奥に佇む妖しい笑みの女
おまえがあの獣たちの主人かよ
現れる魔法陣に後退るも、彼女の言葉にぱちくり瞬き
……は?
拍子抜けした面差しののち、じとりと女を見遣った

恋占いは遠慮する
自分以外に俺のそういうのを判断されたくねえからさ
まあ、総合運くらいなら占われてやってもいいけど
……おい、ちゃんと占えよ
適当に占ったらぶっ潰すからな
……ちなみに、あの、これは恋に絡むかもしれないけど
いちいち意地を張ってしまうのが悩みです、

彼女の言葉を聞き届けたならば
――ああ、分かった
ありがとうな、エーリカ
おまえのアドバイスはちゃんと憶えておく
でも、……悪い
攻撃力に重きを置いた贋作彗星で彼女を攻撃
人々と花火を守りたいんだ



●占う心の向こう側
 辿り着いた部屋の最奥。
 その奥に佇んでいる魔女は妖しい笑みを浮かべている。椋は彼女をしかと瞳に映しながら、先程の単眼獣達を思い返した。
「おまえがあの獣たちの主人かよ」
「ええ、あの子達はよくやってくれたわ」
 魔女は頷き、椋と戦った獣達への感想を口にした。同時に彼女が十二星座の魔方陣を紡いだことで椋は思わず後退る。
「さぁさぁ、あなたは何を占って欲しい? 恋かしら、それとも対人運?」
「……は?」
 しかし、彼女の言葉を聞いた椋はぱちくりと瞼を瞬かせた。拍子抜けした面差しになったのも一瞬のこと。彼はジト目で魔女を見遣る。
「見るに素直に恋を相談できるタイプでもないかしら。誰かとの人間関係に悩んでいるようでもないなら……そうね、そうしましょう」
「勝手に盛り上がるな。少なくとも恋占いは遠慮する」
 楽しげに此方を見つめている魔女に対して椋は首を振った。自分以外にそういったことを判断されたくないのだと椋が語れば、エーリカは素直に頷く。
「だったら占いは不要?」
「まあ、総合運くらいなら占われてやってもいいけど」
「見事なツンデレくんだわ。あたし、そういった子はすごく好きよ!」
 ふい、とそっぽを向いた椋は魔女にとって好ましいものだったらしい。何だか揶揄われている気がした椋は、視線だけを戻してエーリカに注文をつける。
「……おい、ちゃんと占えよ」
 適当に占ったらぶっ潰す。そんな風に凄んで見せた椋。されど彼は僅かに表情を崩したかと思うと、そっと付け加えた。
「ちなみに、あの」
「お姉さんに何でも言ってみなさい」
「これは恋に絡むかもしれないけど、いちいち意地を張ってしまうのが悩みです」
「……っ!」
「っておい、笑うな。ツンデレとかいうから素直になったのに」
 その言葉を聞いたエーリカは口元を押さえてぷるぷると震え始めた。おそらくはあまりの椋の可愛さに堪えきれなくなっているのだろう。
 さておき。
 魔女が魔方陣を光らせれば、椋のこれまでと未来が読まれていく。
「なるほどね。あなたは例えるならば野良猫みたいな子ね。警戒心は強いけれど、猫としての気儘な部分もある。気に入ればとことん懐くところも猫そっくり」
 竜なのにね、とウインクしてみせた魔女。
 其処に反応を返すのは癪な気がして椋は敢えて何も言わない。そして、魔女は更に占いの結果を告げていく。
 あなたは直感力に恵まれている。
 思慮深くもあり、時には反骨精神を見せるようなこともあるだろう。また、世間の常識から外れたようなことであってもこれと決めたら貫く。周囲の人に振り回されない意志の強さも持ち合わせている。
「未来は……そうね、ひとつの良縁に恵まれているから穏便ね。でもやっぱりどんな場合でもあなたの行動が鍵になるかしら。それとラッキーカラーはやっぱりブルーね。スカイブルー!」
 悪い未来を回避したいなら素直になる割合を少しずつ増やしていけばいい。
 そのうえで自分らしさを保てば未来は安泰だと魔女は語った。
「それが総合運か?」
「あら、信じられない? 別に信じなくてもいいけれど」
 恋愛運も混ざっていないかと聞きたくなったが、エーリカが揶揄って来そうだったので椋は押し黙った。そして、静かに頷く。
「――ああ、分かった。ありがとうな、エーリカ」
「どういたしまして。でも……ふふ、あなたの未来はあたしが壊してあげる」
「……そうかよ」
 魔女が不敵に告げたことで椋は身構えた。
 やはりどうあっても自分達は敵同士。相手が倒すべき存在なのだと己を律した椋は魔女を見据え、此処から巡る戦いへの意思を固めた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

花菱・真紀
十朱さん(f13277)と
❤️

わわっ、思ったより本科的に占いにハマってるみたいですね。
さっきの獣を通してたなら分かってると思うけど…俺は恋愛運を占って欲しいかなーって。
…俺、恋人いない歴年齢なんだよねー…姉ちゃんと二人で遊んでるうちに気が付いたらこうなっててさ…まぁ、俺はあんまり後悔はないんだけど。
姉ちゃんはどうだったかな?
姉ちゃんが死んで一人になって寂しくてこんな時だからかなぁちょっと人恋しいと言うか。
そう言う人が出来たらなって…。

うわーガチで聞いちゃったよ。相手はUDCだってのに…あ、十朱さんも占ってもらいます?

と、忘れずにUC【匿名の悪意】で攻撃。
匿名の声って多くて混乱しない?


十朱・幸也
✡️

花菱(f06119)と
アドリブ大歓迎

つか、案外本格的な占いなんだな
思ったより、パリピ感無くて安心したっつーか
ほら、占ってもらうんだろ?
先にどうぞ、ってな

彼女いない歴=年齢……
(思わず目逸らしつつ、占い内容を聞いて)
こういう機会はあんまりねぇし
少しくらい、真剣になってもいいんじゃねぇか?

って、俺もか?
んじゃ、折角だし総合運で
次のピックアップで、目当てのレアキャラ出る可能性あるか!?
……とか浮かんだけど、今回は止めとくか

これからの人生
何か転機というか、前向きに生きる切っ掛けとかありそうか?
二次元だけじゃなくて
三次元に対しても前向きになれるか、みてぇな感じで
占いの結果を聞いたら、UC:戦姫で攻撃



●恋の先と好転する未来
「つか、案外本格的な占いなんだな」
「わわっ、思ったより本科的に占いにハマってるみたいですね」
 占われていく人々の結果を聞き、真紀と幸也は魔女に対しての感想を言葉にする。
「思ったより、パリピ感無くて安心したっつーか」
「ですね、少し安心です」
 二人がそんな会話をしていると、魔女の意識が此方に向いた。お、と声をあげて視線を移した幸也は真紀の背を押した。
「ほら、占ってもらうんだろ? 先にどうぞ」
 頷いた真紀は魔女に歩み寄った。
 どうしたいのかしら、と問う魔女は真紀を見つめている。
「さっきの獣を通してたなら分かってると思うけど……俺は恋愛運を占って欲しいかなーって。……俺、恋人いない歴年齢なんだよねー」
「彼女いない歴イコール年齢か」
「なるほどねえ」
 真紀の言葉を聞いた幸也と魔女はしみじみとした声を落とす。
「いや、姉ちゃんと二人で遊んでるうちに気が付いたらこうなっててさ……まぁ、俺はあんまり後悔はないんだけど」
「悔やんでないならいいんだけどな」
 幸也は思わず目逸らしつつ、此処から語られるであろう占い内容を思う。
 確かにこういう機会はあまりない。こんなことを聞いて良いのか照れくさそうにしている真紀に、少しくらいは真剣になってもいいのではないかと告げる幸也。
 なるほど、と頷く真紀は更に魔女に願う。
「あと姉ちゃんはどうだったかな? 姉ちゃんが死んで一人になって寂しくて、こんな時だからかなぁちょっと人恋しいと言うか……そう言う人が出来たらなって」
「ふふ、分かったわ」
 可愛いわねぇ、と口にしたエーリカは十二星座の魔方陣を輝かせる。
 そして、占いの結果が告げられていった。
「あなたはそうね、すこしうっかりしているところがあるでしょ? それは多分お姉さんに頼ってフォローしてもらっていたことが理由ね」
 まさに弟気質がある。
 そう語った魔女は彼の恋愛運について話していく。
 あなたは思いやりがあって穏やかな性格で、情に深いところがあるので人からも信頼されるタイプだ。それゆえに好きになってくれる人は必ず現れる。
 だが、問題は姉が好きであるという部分だ。
 例えば誰かが真紀を想ったり、恋人になったとする。しかし本人がずっと死んだ姉を想っていると相手の気持ちは少しずつ離れていく。
「死者を思うのは悪くないことよ。忘れなくてもいいわ。でも、少しだけお姉さん離れをしなきゃ良い恋は訪れないわね」
「そっか……。うわーガチで聞いちゃったよ。相手はUDCだってのに……あ、十朱さんも占ってもらいます?」
 結果を聞いた真紀は妙に納得する。そして、幸也に向き直った。
「って、俺もか? んじゃ、折角だし総合運で」
「はいはい、あなたの方もね」
 それもありかと考えた幸也が望むと、魔女は杖を回しながら魔方陣に力を込めた。
 ――次のピックアップで、目当てのレアキャラが出る可能性あるか!?
 そんな思いが幸也の中に浮かんだが、今回は止めておいた方が良さそうだ。そうして彼が願ったのはこれからの人生のこと。
「何か転機というか、前向きに生きる切っ掛けとかありそうか?」
「うーん、そうねえ」
「二次元だけじゃなくて、三次元に対しても前向きになれるかなって」
「あなたの本来の気質は自己犠牲。どんな場面でもそれがついて回るわね。そうしてまでも誰かのために役立ちたい、という気持ちが視えているわ。オンラインゲームでタンク役とかやってない?」
 もしくは壁役キャラを好きになっているとか。
 敢えて二次元の話からはじめた魔女は更に語っていく。
 あなたは直感やひらめきといった第六感に優れている。それゆえに的確な判断を行うことが出来るだろう。負けず嫌いな面もあるので、腐るのではなく、その気持ちを上手く利用して物事を進めていけば好転の未来も視える。
 また、面倒見のよさもある。しかし面倒を見すぎることによって幸也に依存してしまう人も現れるので注意が必要だ。
「こんなものかしら?」
「当たってるような、当たってねぇような」
「姉ちゃん……」
 幸也が首を傾げる中、真紀も色々と考え込んでいたようだ。
 しかし占いはただの言葉。当たっているかどうかよりも自分がやりたいことを見つけていけばいいのだと魔女は付け加えた。
「けれど、ふふふ……。この後にあたしに殺される未来の可能性もあるのよ?」
 魔女は妖しく笑い、二人を見据える。
 はっとした彼らは相手が邪神であることを改めて感じた。占いが終わればいよいよ戦いが始まるのだとして、幸也と真紀は強く頷きあった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【花守】✡️❤️🙏
占い、なぁ
生憎と俺はそーいうのに一喜一憂するよーな可愛げは持ち合わせな…いや、なんでそーなんの!?
不運の星って何、そりゃまぁ不吉や厄難とは常に隣合わせみたいなモンだケドさ~!
くっ…もう好きにしろよ
どーなったって気にしないし!
(――と言いつつ、一応大人しく耳は傾け)
…気にしない、し――ホントに!

よし、気が済んだなら厄除けだ
悪いがどう在っても人を不運に落とす邪神にゃ、お還り願う他にない

早業で先制攻撃
UCを毒と闇に特化させ、2回攻撃で多量に広範囲へ放つ
予想は出来ても逃れる場所を与えぬ様に連携
毒で動き鈍らせ、闇で目潰し狙い、次手をより当て易いよう阻害
此方も見切りと残像でひらりと撹乱


千家・菊里
【花守】(さらりと伊織に全部回す形)
何やら面白い力をお持ちの様ですね
色々と興味深いので、是非お願いします――伊織の彼是の占いを
可哀想に、何故か不運の星の下でばかり輝く子でしてねぇ
いつもやたらと厄を招いていますし、一体どういう星回りなのか――信じる信じないはさておき、気になりません?
(言うだけ言って、どんな結果でも無言の微笑で見守るだけなのでした――ふふふ)

さて、ではお礼というにはなんですが――貴方には花火に代わり送火を
人々に迫る不穏な未来は覆させて頂きますね

伊織と重ね早業でUC+麻痺齎す霊符で範囲攻撃
破魔も込め呪いの力を相殺
第六感で回避先読みつつ、逃場すら絶つ様に攻撃展開

身はオーラや耐性で防御



●視えた未来は未だ白紙
「占い、なぁ」
 神妙な面持ちの後、伊織は魔女に意識を向ける。
 菊里も彼の視線の先を目で追い、猟兵達の占い結果を語る邪神を見つめた。
「何やら面白い力をお持ちの様ですね」
 占って貰ったらどうですか、と菊里が軽く勧めると伊織は首を振る。
「生憎と俺はそーいうのに一喜一憂するよーな可愛げは持ち合わせな……」
「色々と興味深いので、是非お願いします」
 しかし彼の言葉を遮った菊里が呪炎の魔女へと声を掛けた。問いかけておいてさらりと自然に無視する見事な流れだ。そして、菊里は此方に気を向けた魔女に願う。
「――伊織の彼是の占いを」
「ええ、わかったわ」
「いや、なんでそーなんの!?」
 伊織の突っ込みも虚しく、魔女と菊里は頷きあった。
「占うのはその子だけで、あなたは占わなくてもいいのね?」
「はい。なんと可哀想に、何故か不運の星の下でばかり輝く子でしてねぇ」
「それは生まれが悪いのね。占わなくても雰囲気でわかるわ」
 伊織を置いて話し込む二人。
 勝手に語りやがって、と拳を握ってふるふると震える伊織。魔女に占われる前にあんなことを言われてしまう自分は何なのだろう、と思ってしまう。
「不運の星って何、そりゃまぁ不吉や厄難とは常に隣合わせみたいなモンだケドさ~!」
「ふふ、それじゃあ始めましょうか」
「良かったですね、理解が得られましたよ」
 何だか妙に意気投合しているらしい魔女と菊里。伊織はもう抗えないと感じながら、ふいっとそっぽを向く。
「くっ……もう好きにしろよ。どーなったって気にしないし!」
 そう言いつつも実のところは気になっている伊織。
「いつもやたらと厄を招いていますし、一体どういう星回りなのか――信じる信じないはさておき、気になりません?」
「いや、まあ……」
 菊里が双眸を細めて問うと、伊織はばつが悪そうに呟く。どうやら大人しく耳は傾けようとしてるようだ。そんな彼らを見てくすりと笑った魔女は魔方陣に力を注ぐ。
 そして――。
「あら、あなたは変化を厭っているのね。本当は元からそんなに軽い性格ではないのに、敢えてそう演じている節も視えるわ」
 まるで道化のように。
 魔女が語る言葉を聞いても伊織は何も答えない。菊里はというと微笑を浮かべたまま伊織をそっと見守っていた。
 それから更に魔女は続けていく。
 あなたの原動力となっているのは、真面目さと几帳面さ、信念の強さ。
 変化を求めていないかわりに何事においても安定を求めている。元の性質は堅いイメージを持たれがちだが、実際はかなりの社交家。明るいユーモアもあるので、その人柄を慕って人が多く集まるようだ。
 根も正直で純粋だが、ときおり冷徹な部分が見え隠れする。
 その二面性とどう付き合うか。周囲の人々にどのように理解して貰えるかが今後を良く過ごしていく為の鍵となるだろう。
 以上が総合運と対人についてだと話した魔女は、最後に恋愛運を占う。
「……脈なしね」
「え!?」
「それはそれは、残念ですねぇ」
 たった一言であらわされた恋愛運に伊織は驚き、菊里は慰めの言葉を告げた。肩を落とす伊織を哀れに思ったのか、魔女は少しだけ付け加える。
「だってあなたにその気がないんだもの。過去だって少し視えてるわよ。あなたは炬燵だとかひよこだとかに逃避しているように見せかけて、その実は肝心な話題を逸しているだけ。そういうところだって自分でもわかってるでしょ?」
 ねえ、と語りかけた魔女はくすくすと笑った。
 つまりは自分の気の持ちようなのだと告げられ、占いは其処で終わる。
「気にしない、し――ホントに!」
「……ふふふ」
 伊織はなんと言っていいか戸惑いながら再び首を横に振る。そんな中、菊里は先程と変わらぬ無言の微笑で彼を見守るだけ。
 こうして、彼らの未来と現在を占うひとときは終幕した。
 あとは魔女を倒して先に進むだけ。そう、占われた未来の向こう側へと――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

彩波・いちご
【あかねさんと🙏】
…私、恋愛運だと色々怖いことになりそうなので、対人運という事で…(逃
そもそも占いで決めるようなものでもないですしっ

と、それはともかく今は魔女退治です
そういう話はあとあと!

あかねさんの綾の攻撃で移動場所を制限された魔女がこちらに向かってくるのなら、【異界の邪剣】で迎え撃ちます
悲鳴を上げるあかねさんを庇って抱きしめるようにしたりしつつ
「大丈夫ですか…?」
あかねさんを下がらせて、邪剣で切り結びますね

…いえ、あかねさん抱いたままだと戦いにくいので、そろそろ離れてほしいのですが…(赤面

ともあれ、援護よろしくです
呪いの炎を邪剣で切り裂いて一気に接近、体当たりのような突撃で突き刺します!


静宮・あかね
【いちごはんと❤️】
※彼以外には標準語

占うてもらうなら、そらウチらの恋愛運や♪
ただ…神頼みも悪ない思うけど、信じ過ぎもなあ
何せ恋華荘は、色恋のアレコレえろう複雑やし

…大体、いちごはん優しすぎるんよ?(くすっ)
ま、コレはさっき言われた通り、花火見ながらやね

さて、『呪炎の魔女』エーリカさんでしたか
炎使いでしたら、コレはどうなさいます?

綾、こっちや!

砕け散る窓の先に見えたのは、白鯨の勇姿
部屋中を【雲龍乳泉】で【なぎ払い】予知を無意味とします
注水を避けるには、ウチらの方に来るしかありませんよ?

って狙い通り来たんはええけど、ウチに攻撃が…きゃんっ!?
よろけたウチを抱いてくれはるいちごはん…頼もしいわぁ♪



●恋の華咲く
 魔女の占いは続き、次はいちごとあかねの番。
「さぁ、あなた達は何を占うの?」
「……私、恋愛運だと色々怖いことになりそうなので、対人運という事で……」
「でしたら、ウチらの恋愛運をお願いしたいです」
 思い当たる節が多すぎるのでいちごは思わず逃避してしまう。対するあかねは口調をただしながら素直に願う。
 そもそも占いで決めるようなものでもないですし、と少しばかり後退ったいちご。その姿を見遣ったあかねはそっと頷く。
 神頼みも悪くはないと思うが、信じ過ぎもいけない。
 それはいちごもあかねもしっかりと理解している。それゆえにこれから聞く占いは当たる当たらないではなく、ただの指標だ。
(何せ恋華荘は、色恋のアレコレえろう複雑やし……)
 思いは胸に秘めつつあかねはいちごを見遣り、くすりと笑った。そして、二人を見つめた魔女は十二星座の魔方陣を光らせ――。
 過去と現在、未来を占う言葉が紡がれていく。

「まずはそうね、女の子みたいなあなたからよ」
「はい、私ですね」
 佇まいをしゃんと整えたいちごは、ドキドキしながら魔女の言葉に耳を傾ける。
「あなたは基本的に優しい気質を持っているわ。だからかしらね、人を引き寄せる魅力を持っているの。それに加えて刺激を好む傾向があるみたい」
 魔女は語る。
 あなたは自分を高めるための刺激を無意識に求めている。そして感性が豊かなこともあって想像力があり、直感にも優れている。
 だが、たとえ恋愛が関係なくとも人間関係は複雑になりがちだ。ただしいちご自身に災難が降り掛かるのではなく周囲に禍根や負の感情が渦巻く。
 それを無視するか、上手く付き合っていくか、それとも別の方法で対処するのか。
 そのことを持ち前の優しさや感性で解決していけば未来は明るい。
「それから次はあなたね」
 続けて魔女はあかねの方に向き直った。
 少しの期待を抱いたあかねはいちごが告げられたことを思い返しつつ、自分にどんなことが伝えられるのか待つ。
「あなたの方は……そうねえ、とても社交的なタイプだから今の立場がとてもよく似合っているわ。けれど恋愛運となると苦労しそうね」
 あかねには大胆で率直な所がある、と魔女は評した。
 人とはいつでも本音で話したいと考えているので裏表はない。とても他人思いで気配り上手なため、みんなが快適に過ごせるように裏方役に回ってもてなすことも得意だ。
 されど時には率直すぎて周りを驚かせることもある。
 それが自分の本心からの意見であっても、表現がストレートであったり、場の空気を読まずに告げると後々にトラブルを生んでしまうだろう。
 しかし気をつけていればいいことであり、素直なことだって悪いことではない。あとは本人の立ち回り次第だ。
「それを踏まえてのあなた達の相性や将来だけど……女の子の方が我慢して、男の子の方が自由に振る舞うままだと破滅を呼ぶわ。とはいってもこれは一般論。それすら乗り越えていける自信があるなら思うままに生きなさい!」
 それならば万事上手くいくと伝え、魔女は占いを終えた。
 話を聞いていたあかねといちごは互いに顔を見合わせる。当たっているか、心当たりがあるのかないのかは其々の胸の裡に仕舞われた。
 あかねはぽつりと呟く。
「……大体、いちごはん誰にでも優しすぎるんよ?」
 其処に込められた意味を察せないいちごではなく、頬を赤く染める。だが、首を横に振ったいちごは魔女を見つめた。
「と、それはともかくこの後は魔女退治です。そういう話はあとあと!」
「ま、言われた通り、コレは花火見ながらやね」
 何はともあれ本番はこの後。
 あかねも素直に頷き、いちごと共にこれから始まる戦いへの思いを馳せてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

氷月・望
✡️

楪(f16731)と
アドリブ等歓迎

邪神のリアル占いキター!
えっ、マジで占うの?マジでやってくれんの?
恋愛はゆーくん以外は見向きもしねぇし
対人はぶっちゃけ、秘技:コミュ力で大体何とかしてるし……
総合運で頼んじゃおうかな?

(占いには耳を傾けつつ)
ちょっとヤバそうな内容があれば、スマホでメモしとくかな
早死にするのは何となく、ね
……ゆーくんはいいの?
思ったより、割と面白かったケド……ははっ、ゆずらしいや

占いを聞き終わったら一言礼を告げて
【先制攻撃】【部位破壊】込みのUC:紅雨
この後に花火デートの予定があるし、悪いなー?
本気で謝る気はねぇケドさ


月待・楪
氷月(f16824)と
アドリブ等歓迎

占いってこーゆーコトか
邪神とはいえ、神ってつくならそれなりなのか?
で?氷月、何占ってもらうんだよ

…別に何を言われても俺は俺のやりたいようにするだけ
だから別に何言われても同じだ
占われるっつーなら聞きはするケド
そこまで興味ねぇしなァ

でも…望に関することだけは覚えておく
コイツと離れるつもりは全くねェけど…引き離されんのも気に食わない
抗うための材料くらいにはなんだろ

……さっさと仕留めんぞ
【ダッシュ】しながら【先制攻撃・乱れ撃ち】で撹乱
【念動力】で攻撃を【カウンター】
回避が意味をなさなきゃいーんだろ?
【EasterLily】で【制圧射撃】
花火の邪魔はさせねーよ



●邪神と占い
 妖しい魔方陣から漏れる光と揺らめく蝋燭の火。
 ふたつの灯に照らされる薄暗い部屋の中、望は魔女が語る占いに興味を抱く。
「邪神のリアル占いキター!」
「あらあら、注目してくれてるの? それは光栄ね」
 他者の占いを終えた魔女が望の声を聞いて振り向いた。次はあなた達の番だというような視線が向けられ、望は期待を抱く。
「えっ、マジで占うの? マジでやってくれんの?」
「ええ」
 望に頷いた魔女はくるくると杖を回し、楪にも視線を向けた。対する楪は成程なと納得しながら魔女を見つめ返す。
「占いってこーゆーコトか。邪神とはいえ、神ってつくならそれなりなのか? で? 氷月、何占ってもらうんだよ」
 楪は軽く望にも目を向け、軽く問う。
「どうするかなー。恋愛はゆーくん以外は見向きもしねぇし、対人はぶっちゃけ大体何とかしてるし……総合運で頼んじゃおうかな? ゆーくんは?」
「別に何を言われても俺は俺のやりたいようにするだけだからな」
 望からも問いかけが投げられたことで、楪は顎に手を当てる。だから別に何言われても同じだ、と楪は答えた。
「そっか。じゃあ俺だけ?」
「占ってくれるなら聞きはするケド、そこまで興味ねぇしなァ」
「ははっ、ゆずらしいや」
 望は彼の占いも気になっていたが、本人がその気なら無理強いはできないと感じた。
「安心なさい、興味がないなら占うのはそっちの子だけにするから」
 魔女は望に目を向けて魔力を集中させていく。そして――過去から現在、未来に続いていく可能性のひとつが読まれていった。
「あなたは……そうねえ」
 望を見つめ続けていた魔女は語りはじめる。
 あなたは感性が個性的で、価値観も世界観も独特。しかしそれが最大の魅力となっているので上手く世を渡っている。そして、平和で安心な日常よりも刺激のある事柄を求めている傾向があるだろう。
 それは理想を追い求めるゆえの行動なのだが、道を踏み外す可能性もある。
 だが、それは独りでいる場合だけ。
 誠実で愛情深いのでパートナーがいればとても大切にする。自分の個性を理解してくれる相手や友人に出会えれば、穏やかな関係が長続きする。
「孤独でないなら早々死ぬことはないわ。けれど、関係を失いそうになったり、実際に失った場合は暗闇の未来しかないわ。大切にすれば応えてくれる、そんな相手が……ふふ、もういるのなら良いことね」
 魔女は再びくすくすと笑った。
「……それにしても、刺激のあること?」
 道を踏み外す、という点が気になった望はスマートフォンを開いてメモしていく。
 暗にぼかされているが、条件が合致したら早死にするという意味かもしれない。良い締め括りの占いだったが、楪も望の危うさを思って心に留めておく。
(コイツと離れるつもりは全くねェけど……引き離されんのも気に食わないからな)
 無論、占いを完全に信じているわけではないが何かがあった時のためだ。きっと抗うための材料くらいにはなるだろう。
「さて、これであなたへの占いは終了!」
「思ったより、割と面白かったケド……」
「油断も慢心もしないでいかねェとな」
 望と楪は頷きあい、占いを終えた魔女にそれぞれの視線を向けた。
 今は未だ戦いの気配は薄いが、これが終われば本格的な戦いになる。気を引き締めておこうと考え、二人は静かに身構えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

斬断・彩萌
❤️

べ、別にあんたの占いなんて信じないけど!
聞くだけなら聞いてあげても良いんだからねっ
(内心めちゃ気になってる)

あんたも炎を操るのね
面白い、さっきの敵とも目眩まし対決したけど
今度は炎勝負といきましょうか

【翠炎】で相手に網をかけて、行動を封じるわ
命中したところから燃やしてそのお綺麗な髪を焦がしてあげる
敵に行動を覚えられないように、【翠炎】は一発ずつしか使わない
以降は念動力や二挺拳銃の技を以って
色んな攻撃方法を織り交ぜながら戦っていくわよ

占いってさ、それに左右されちゃう人もいるけど
私は『そうなるよう』に、または『そうならないよう』にって
指標に過ぎないと思う
振り回されるなんて、私的にはまっぴら御免!



●縁を斬り断つもの
 仄かに赤く染まった頬。
 真っ直ぐには見られないので僅かに逸した瞳。
 そして――。
「べ、別にあんたの占いなんて本気では信じたりなんてないけど! 聞くだけなら聞いてあげても良いんだからねっ」
 言葉は尖っているが、内心ではとても気になっていることがよく分かる態度。
 魔女の占いが巡る中、いじらしさを存分に発揮しているのは彩萌だ。その姿を見遣った魔女はくすりと笑み、可愛いわねぇ、と口にする。
「はいはい、そんなあなたには恋愛占いをお勧めするわ。そういうことでしょ?」
「れっ、恋愛……?」
「――私はそんなこと一言も言ってない、といいたげね。ふふふ、いいわよ。あたしが勝手に占ったことにしてあげる」
 恋する乙女のことはお見通しだというように魔女は杖を掲げた。
 彩萌が反論する余地も与えられぬまま、十二星座の魔方陣が光りはじめる。きっと自分でも素直に言えなかったので、彩萌はこの展開に安堵していた。
「勝手になら、そうね……」
 後ろに回した手をもじもじとした様子で重ねた彩萌は胸の高鳴りを感じる。
 そして、魔女は語ってゆく。
「まずはあなた自身の傾向ね。個人で動くことに長けていてフットワークの良さと、行動力もあるわね。未知の分野でも勇敢に進めるみたい。明るいのも取り柄だわ」
 社交的でコミュニケーション能力も抜群。
 様々な人と交流を持てるのでどんな集団にも飛び込んでいける。人を導く中心的な存在にもなれるポテンシャルがある。
 特にスタートダッシュなら誰にも負けない。勢いよく駆けていくのが得意で似合う。
「ただ、恋愛となると……負け戦をしていたって感じていないかしら。あなたの流儀とは反するかもしれないけど、恋はある意味で戦いでもあるわ。そうしたくはないのに関わる人を傷つけてしまう。それでも、負けたくはないと思う。心当たりはない?」
 合っていると感じるか否かはあなた次第だけど。
 そんな風に告げた魔女は更に続ける。
「きっとあなたはこれからも苦しい思いをするわ。だけどあなた自身がそれすら受け入れたまま進むでしょうね」
 だから、誰に頼るでもなく未来を自分の手で掴む。
 或いは自ら繋がりを斬って断つ決断も必要なのかもしれない。
 アドバイスを告げたとしても彩萌はきっと自分で道を見つけていくだろう。それがあなた、と告げた魔女は薄く笑む。
「そう……その通りかもしれない」
 それまでとは違った冷静な瞳を向けた彩萌は頷く。占いのすべてに左右されてしまう人もいるが、自分はそれだけではない。
「でも私はね、占いって……『そうなるよう』に、または『そうならないよう』にって、指標に過ぎないと思う」
「ええ、よく解っているわね。賢い子だわ」
 彩萌と魔女の視線が交差する。
 これで占いは終わり。そう告げた魔女は徐々に敵意を滲ませた。戯れも終わりなのだろうと感じた彩萌は鋭く身構え、此処から始まる戦いに意識を向けていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

砂羽風・きよ
【秋】
❤️

占いか…

い、いや!気にならねーからな?!
ちげーからな!後、きよしじゃねぇからな?!
顔を覆いチラチラ目線を送る

おいおい、綾華はどーすんだよ!
綾華も占いたくないのか?!

やめろやめろっ
恥ずかしいじゃねーか!
なんて言いつつもしっかりエーリカの言葉を聞いて

(結果お任せ)くそ、信じねぇからな!
当たっても当たらなくても俺が運命を変えてやる!
俺、今いいこと言ったな

そりゃマッスルでイケメンなあれだろ
それとレディーファーストな!

…因みにラッキーアイテムとかってあるか?
運気は上げといた方がいいと思っただけだからな!

占ってくれたお礼に飯作ってやるよ
屋台を組み立ててたこ焼きを作る

うまそーだろ
たんと食いやがれ!


浮世・綾華
【秋】

なんだよ
やっぱり占い、気になるんだな

いいじゃん折角だし占って貰えば
俺?きよしの後でいーよ
ほら、気になるあの子とのこと
どうすればいいか占って貰えばいいだろ?

結果を聞いてきよしの様子を伺う
おお、いいぞきよし、その意気だ
頑張れ、いつでもかっこよくて最強のきよしを思い浮かべろ

――ちなみにさ、最強のきよしってどんななの?
まっする…?
て、それ後半はあいつが言ったことじゃん

料理を作ってる間に…
折角だし、俺のことも占って貰える?
内容はお任せ
結果はまあ、それなりに受け止めるよ

動くがのろくなるなら咎力封じが当たりやすくなるだろ
完全でなくても威力が弱まるはずだ

扇で仰ぎ飛ばしつつ
鍵刀で少しでもダメージを与えよう



●運命に抗う
「占いか……」
「なんだよきよし。やっぱり占い、気になるんだな」
 魔女を前にしてそわそわしはじめたきよが呟く。その声を聞いた綾華は、先程に占いを信じないと豪語していた彼を思い出す。
 きよもそれを思い返したのか、慌てて首を横に振った。
「い、いや。気にならねーからな?! ちげーからな! あときよしじゃねぇから!」
 これまでのきよし呼びに突っ込みつつ顔を覆ったきよ。彼はちらちらと綾華と魔女に目線を送る。そのことに気が付いたエーリカは二人の前に歩み寄った。
「次はあなた達を占いましょうか」
「マジか。でも気になってねーし……」
「いいじゃん、折角だし占って貰えば」
 尚も取り繕うきよに対して綾華がさらりと告げる。きよは一瞬だけ嬉しそうな顔をしたが、すぐに何とか誤魔化した。
「おいおい、綾華はどーすんだよ! 綾華も占いたくないのか?!」
「俺? きよしの後でいーよ。ほら、気になるあの子とのこともどうすればいいか占って貰えばいいだろ?」
「なるほどね、恋愛について占って欲しいってことで理解したわ」
 慌てるきよと冷静な綾華。
 魔女はそんな二人の様子から占うべきことを判断したようだ。
「やめろやめろっ、恥ずかしいじゃねーか!」
「いいから聞きなさい。ふふ」
 きよは未だ素直になれていなかったが、エーリカが十二星座の魔方陣を輝かせたので観念した。それに本心ではあの子との相性や運勢が気になっているのだ。
「そうね、うぶなあなたは……」
 魔女は語り始める。
 思い込んだら一直線、とことん没頭するタイプだ。
 素直で感情が顔に出やすく、とてもわかりやすい性格なので裏がない。行動も発言もストレートゆえに周囲からは親しまれている。面倒見が良いところがあり、自分を慕う人にはとても親身になれる優しさを持っている。
「あら? でもあなた、『もうひとり』いるのね。重なってよく視えないわ」
 エーリカはどうやら、きのについて言っているようだ。
 そちらは承認欲求が強い。
 或る意味で豪快且つ温厚。本質はきよと似ているが、こちらは相手に合わせるだけではなく我を通す強さがある。だが、二人でひとつであるせいでエーリカには未来がよく読めないらしい。
 しかし恋愛運は僅かに見えるようだ。
「あなたは自分から好きになってアプローチする方が合うわね。猪突猛進で少し強引な行動に出てしまいそうだから、当たって砕ける可能性が高いわ。それを回避するためのラッキーアイテムは……たこ焼きをひっくり返すアレね」
 あのピックみたいなの、と告げたエーリカはおかしそうに笑った。対するきよはあまりの情報量に混乱している。
「当たって砕ける?! くそ、信じねぇからな!」
「確かにな」
 綾華は妙に納得していた。それでこそきよだと思えることもある。きよは納得がいかない部分があるらしく、拳を強く握った。
「当たっても当たらなくても俺が運命を変えてやる!」
「おお、いいぞきよし、その意気だ」
「ふ、俺もたまにはいいこと言うだろ」
 綾華なりの応援を聞けば、きよも少しずつ気を取り直していく。
「頑張れ、いつでもかっこよくて最強のきよしを思い浮かべろ。ちなみにさ、最強のきよしってどんななの?」
「そりゃマッスルでイケメンなあれだろ。それとレディーファーストな!」
「まっする……? て、それ後半はあいつが言ったことじゃん」
「良いんだよ、あいつなら怒らねぇはずだ」
 そういった遣り取りを交わす綾華ときよを微笑ましげに眺めながら、魔女は再び杖を構える。どうやら次は綾華を占うようだ。
「それじゃあ、あなたの番よ。……ふぅん、なるほどね」
 魔方陣が淡く明滅する。
 そして、エーリカは綾華の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「あなたの方は、そうね。誰に対してもオープンな自分を作って見せているけれど、とても寂しがり屋ね。だから賑やかなその子といると妙に安らぐでしょ?」
 そして、困っている人に手を伸べる優しさ、的確に状況を判断できる力がある。
 大胆に見えて慎重だが、それゆえに本意が伝えられないこともあるだろう。いつも人に囲まれていたこともあり、自分ひとりだけの時間をすごく寂しく感じてしまう。
 しかし実際は人に対して疑い深い。されど寂しさの方が強く、それを紛らわせるために動き続けている面もある。
 更にエーリカは語っていく。
「それから、自分が何もできていないちっぽけな存在だと感じていない? あなたは今までもそうだったけれど、これからも大切な人を失っていくわ。今は思っていなくても、その所為でそんなことを感じてしまうかもしれないわね」
「……そっか」
 綾華は特に大きな反応は見せず、告げられた結果を受け止めた。
 何とも言えない。そんな感情を察したきよは戸惑いつつも魔女と綾華を交互に見遣った後、心配そうに彼の顔を覗き込んだ。
「大丈夫か、綾華」
「きよこそ玉砕するって言われたケド、いーの? あと近い」
「しねーよ! ピックがあれば大丈夫だって!」
「だから近いってまず離れろ」
「ふふっ」
 途端に賑わしくなった様子を眺めた魔女は、暫しくすくすと笑っていた。
 占いはただの占い。伝えられた言葉を信じるのか否定するのか。それとも未来を変えることを志すのか。選ぶ道はやはり、その人次第――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン
✡️
占いかい?なるほど、占いか
せっかくだしキミの話を聞いてみようかなあ

かつて、どこかの国には占い師に頼る王もいたと聞くよ
エーリカ君の占い力(ぢから)を試してみようじゃない

えーと占う内容はね……うるさいよレディ
そうご、レディ黙ってもらえるか?
そう…… あのねえ、キミの声は私にしか聞こえないんだ
恋愛運なんて三択の中で一番私には意味ないだろ!

エーリカ君、総合運でお願いします!!
私、いつの日か立派な王になれそうかしら

結果がどうであれ反応は変わらない
きっと私は聞いたことを忘れるし、私は運命に沿って未来を掴むだけ

未来視の力があっても、動きを止められたら無意味だろう
“Sの御諚”
生まれた隙を逃さず、早業で斬撃



●揺らがぬ運命
 嘗て、或る国では占いで国政を決めたという。
 王が占い師に頼り、繁栄あるいは滅亡を辿った国の話を思い返す。どこで聞いたのだったかなあ、と曖昧な記憶を辿ったエドガーは、意識を魔女に向けた。
 彼女も占いを嗜み、此方の未来を視てくれるという。
「占いかい? なるほど、占いか」
「興味はない? あるなら視てあげましょう」
 エドガーは魔女からの視線を受け止め、それなら、と一歩だけ前に踏み出した。
「せっかくだしキミの話を聞いてみようかなあ」
 先程に思い出した国のことを考えながら、エーリカを見つめるエドガー。彼はその占い力へのちいさな期待を馳せた。
「ふふ。じゃあ何を占えばいいのかしら」
「えーと、それじゃあそうご……うるさいよレディ」
「レディ?」
 エーリカはエドガーが左腕に向かって話しかけたことを怪訝に感じているようだ。
 それもそのはず。
 彼に宿る狂気のバラの言葉は宿主にしか届かない。
「そう……レディ、黙ってもらえるかい? そ……あのねえ、恋愛運なんて三択の中で一番私には意味ないだろ!」
 どうやらレディは全力で恋愛運を視て欲しいと主張しているようだ。
 淑女であり、勢いも宿す彼女。
 やはり乙女(?)としては気になる事柄らしい。エドガーは何とかレディを宥め、改めて魔女に向き直る。
「エーリカ君、総合運でお願いします!!」
「面白い子ね。それじゃあ行くわよ」
「頼んだよ。私、いつの日か立派な王になれそうかしら」
 願ったエドガーに応え、魔女は十二星座の魔方陣から光を放った。
 そして、語られるのは――。
「あなたは純粋な心を持っているのね。周囲からは浮世離れした不思議な人だと思われているわ。でも、あなたはそんなこと気にしていないでしょう。いいえ……気にすることが出来ないのかしら」
 意味深に首を傾げた魔女は更に続けていく。
 あなたは不思議な雰囲気を纏っているが、現実では常識をわきまえて周囲に合わせた誠実で知的な行動が出来る。また、強い意志と理想を持つ信念の人であり、周りとの和を乱すことは好まないので王の器として相応しい。
 だが、石橋を叩いて渡るということはしない大胆な性格でもある。
「すごいわね。気質については褒めることしかないわ。けれどあなた自身の体質が大成を為すことを阻んでしまうわね」
 運命を受け入れるがゆえに運命に翻弄される。
 そんな未来が視えているのだと話した魔女は、続けてエドガーの腕を見た。
「そして貴女。どうしても彼と添い遂げたいのね。とても歪で、けれども強い愛情。身を滅ぼすのはきっと――いえ、」
 魔女は何かを言いかけたが、それ以上を語ることはなかった。
「そうか、なるほどねえ」
 対するエドガーは動じた様子などは見せず、レディも占って貰えたね、と少しだけ可笑しそうに口元を緩めた。
 彼にとっては結果がどうであれ何も変わらない。無意識の内に、自分がいま聞いたことを忘れることを理解しているからだ。
 それに、己は運命に沿って未来を掴むだけ。
 その未来の形が何であっても、たとえ翻弄されたとしても自分の歩む道だ。
「ありがとう、エーリカ君」
「どういたしまして。立派な王様になれるといいわね」
 エドガーが礼を告げれば、エーリカは何か含みのある様子で答えた。されど彼は気にすることはなく、携えたレイピアの柄に手を添える。
 恩を仇で返す気もしたが、相手がオブリビオンであるならば立ち向かうのが常。
 礼を尽くしたいからこそ全力を賭すのだと決め、エドガーは戦いの時を待つ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子

……おまえ、見覚えがあるわね。
なあに、今日は占い屋さんになったの。

占い自体は好きでも嫌いでもないわ。
良い卦は心に留めて、悪い卦は慎めばよいだけだもの。
何を言われようと気にはしないのだけれど、……そうね。
これ、只の趣味なの?
それならお好きにどうぞ。お代はたましいでとか言わないなら聞きましょう。

渦巻く炎を斬って。
精度が上がるのに合わせて剣閃を増やしてゆくわ。

あんまりヒトらしいことをされると調子も狂うのだけれど、
それで加えてあげる手心なんてないのよ。
……、…………でも。ありがとう、とは、言いましょう。
あたしが邪神を好かないことと、貰った卦は別だもの。

これで差し引きゼロよ。
もう一度、お帰りなさいな。



●過去は近く、未来は遠く
 揺らぐ蝋燭の炎が薄暗い部屋を照らしている。
 窓辺から見える空はもう随分と暗く、深い夜が巡り始めていた。しかし耀子は外には目を向けず、部屋の奥に立つ魔女を見つめている。
「……おまえ、見覚えがあるわね」
「あら、何処かで会ったかしら?」
「覚えていないならいいわ。なあに、今日は占い屋さんになったの」
 以前の邂逅を思い返す耀子に対し、魔女はとぼけているのか本当に記憶がないのか判断がつかない様子で答えた。
「ふふ、今なら格安で視てあげられるわ。あなたは占いは好き?」
「好きでも嫌いでもないわ」
 魔女からの問いかけに対して耀子は淡々と答えた。
 良い卦は心に留めて、悪い卦は慎めばよい。それだけのことなので彼女としては何を言われようと気にはしない。自分の運勢がどうであれ、斬って進めばいいだけだ。
「そう、だったら占いは無しかしら」
 何処か残念そうに魔女が語る中、耀子は軽く首を傾げてみせる。
「だけれど、……そうね。これ、只の趣味なの?」
「そうね、趣味といえば趣味になるのかしらね」
「それならお好きにどうぞ。お代はたましいでとか言わないなら聞きましょう」
「欲を言えば魂が欲しいけど、いいわ。占わせて頂戴」
 くすくすと笑った魔女と耀子の視線が重なる。占う方針で話が纏まったことで、エーリカは魔術杖を掲げた。
 十二星座のシンボルがひとつずつ光っていき、やがて全てが明滅する。
 そして、魔女は耀子を視た。
「あなたは力強いエネルギーに満ちているわ。鎮めているようだけれど、端々から強い霊の光が見えているわね。仲間意識が強いからかしら、縁の力も漂っているようね」
 魔女は語る。
 あなたは観察力と洞察力に優れている。困っている仲間を見るとそっと気付かれぬように手を差し伸べ、自ら率先して成功に導いていく。
 また、勝負好きな一面もある。一か八かの賭けに強く、他人が躊躇するような事柄でも大胆にあっさりと決断を下す。
 そして、万が一に負けたとしても簡単には折れない。
「それに反骨精神もなかなかのものね。敗北しても努力を重ねて、必ずリベンジを果たすガッツもあるみたい。でもあなたの場合、未来に刃を向けるよりも過去の方が――」
 其処まで語ったエーリカは言葉を止める。
 耀子は思わず問い返す。
「過去?」
「ふふふ、この先は有料になるわ。具体的には生命力を頂きたいのだけど」
「それなら別に聞かなくてもいいわ」
 先程に告げたように耀子は占いに拘りはしない。今だって魔女の戯れに付き合っているだけだという認識であり、いつでも戦える準備はしている。
 つれないわねえ、と呟いたエーリカは耀子を見据えた。
「ひとつだけ言っておくと、お勉強はしっかりしておいた方がいいわ。いえ、あなたなりにちゃんとはしているのだろうけど……」
「……余計なお世話」
 耀子はばつが悪そうに肩を竦める。
 忠告をくれた魔女があまりにもヒトらしいものだから調子が狂ってしまう。だが、だからといって加えてやる手心も無い。
 されど自分が邪神を好かないことと、貰った卦は別のもの。
「……、…………でも」
「ええ、なに?」
「ありがとう」
「お礼が言える子は良い子だわ。そのまま大人になっていきなさい。ふふっ」
 ややあって礼を告げた耀子に対して魔女は嬉しそうに笑った。
 しかし、機械剣に手を掛けた彼女に対して魔女も身構えはじめている。こうなればあとは戦って決着をつけるだけ。
 ふたたび交差した双方の視線が真っ直ぐに重なり、そして――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「見ていたのなら分る筈だ。
俺が占いに興味がないと言う事は。」
「それでも、というなら。
未来を占って貰おうか。
…俺のじゃなく占い好きの邪神の末路をね。」

言葉を語るも油断なく構えてナイトメアフォースを発動。
悪夢は実際の時間では一瞬で
占いの結果がエーリカ自身の死を予見するもので
それが決して変えられないという悪夢を見せ
【恐怖を与える】【催眠術】にかけ。
目を覚ました瞬間、恐怖に囚われている隙を見逃さずに
呪装銃「カオスエンペラー」により死霊を顕現させて攻撃。
【呪詛】により傷を負わせる共に幻覚で悪夢が
現実に起こっているような錯覚を与える。
「得意の占いは当たっていたか?
それが嫌なら自分の力で覆して見せる事だ。」



●齎す呪詛と巡る悪夢
 魔女の占いが巡り、言葉が紡がれていった果て。
 その様子をフードの奥からじっと見つめていたフォルクは戦いの気配を感じ取る。
「あら、あなたは占いはいいの?」
 フォルクに気が付いた魔女が問いかけると、彼は僅かに首を振った。其処から鋭い声色が紡がれる。
「見ていたのなら分る筈だ。俺が占いに興味がないと言う事は」
「ええ、そうだったわ。興味を示すでもなく淡々と戦っていた子だったかしら」
 そういえば、と先程の戦いを思い返した魔女は杖を掲げる。フォルクが占いなど求めていないと察したことで、彼女は敵意を滲ませはじめた。
 いよいよ戦いが始まる。
 不穏な空気を感じ取ったフォルクは呪装銃に手を掛けた。そして、魔女に告げる。
「それでも、というなら。未来を占って貰おうか」
「まあ、何の?」
「……俺のじゃなく占い好きの邪神の末路をね」
 声の調子は変わらずとも、フォルクは明らかに魔女を挑発している。紅玉色の双眸を鋭く細めた魔女は彼を睨み付けた。
「ふふ、言うじゃない」
 その瞬間、魔女はフォルクの動きを読む。
 彼はそれ以上は何も語らずに呪装銃に宿った幾多の死霊を顕現させていった。フォルクの周囲に死霊が揺らいでいく中、放たれたのは精神を蝕む冥界の闇。
「甘いわね」
 杖から防御魔方陣を放ち、それを避けた魔女は薄く笑む。
 だが、邪神に先が読まれることなど承知の上。フォルクは油断なく銃を構え直し、更なる悪夢の帳を下ろしていく。
「――悪夢の世界へ、堕ちろ」
「……っ!」
 瞬く間に魔女の身体に悪夢を齎す闇が纏わりついた。エーリカが視せられたのは占いの結果が自分に出るという幻想。
 自身の死を予見する未来を視る、という悪夢が広げられていく。
「何よ、これ……」
 そして、それが決して変えられないという幻が彼女に突きつけられていった。
 悪夢は実際の時間ではたった一瞬。
 彼女が目を覚ました瞬間、フォルクは驚きと恐怖に囚われている相手の隙を突く。呪詛の力がよく巡っていると察した彼は銃爪を引いた。
 途端に死霊がエーリカに群がる。魔女に傷を負わせると共に巡らせた幻覚は、悪夢が現実に起こっているような錯覚を与えた。
「う……く……」
「得意の占いは当たっていたか? それが嫌なら自分の力で覆して見せる事だ」
「ええ……そう、させてもらうわ」
 フォルクが静かに告げると、魔女はふらつきながらも不敵に笑う。
 そして、紅玉の瞳がフォルクを捉え――。
 其処から更に激しい戦いが繰り広げられていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​


 

 呪詛と悪夢から幕を開けた戦い。
 戯れは終わりだと察した七結は、邪神と猟兵としての決着をつける時を察した。
「では、はじめましょう」
 あなたを見過ごすわけにはいかないのだと語り、七結が喚び起こすのは黒鍵刀。
 魔女を狙って振るわれた一閃が闇の中に黒を閃かせる。
「まだ終わらせたりなんかしないわ!」
 対する魔女は紅玉の輝石から巻き起こした呪炎で対抗した。だが、七結はその炎を振るった鍵で以て払う。
「――無になんてさせないわ」
 先程告げたように、わたしは欲張りだから。何であっても取り落とさない。
 縁を刻んで、結いで。
 わたしだけの未来へと繋いでいくために。いま此処で巡った縁を敢えて断つ。
 七結の一閃は炎を切り裂き、魔女の終わりを導いていく。


「――狩る」
 戦いが始まった今、千之助の表情には先程の幸福そうな様子は見えない。
 今の彼は真剣そのものだ。
 獣達と戦ったことで得た生命力を上乗せして、炎を纏う矢を作り上げていく。
「先読みは巧かろうが、これはどうだ」
 そう告げてから千之助が放ったのは自在に動く七十四の火矢の嵐。魔女はその動きを読んでいたようだが、全てを避けるには至らない。
 炎は彼女の視界を遮り、千之助は着地点を狙うことで着実に痛みを与えていた。
「きゃ……!」
 魔女が悲鳴をあげたことで彼は更に力を紡ぐ。
 当たらなかった矢を一本に纏めたことで威力が増す。そして、まるで銀の花が咲いていくかのように鋭い一閃が戦場に煌めいた。


 それは――祓い、喰らい、砕く、カミの力。
 倫太郎は焔と水、そして風の力を己に纏わせていた。華焔刀を振るう彼はその刃に破魔と生命力を奪う力を乗せ、一気に魔女に斬りかかる。
 対する魔女は紅玉石から放つ炎を巻き起こした。
「喰らいなさい!」
 だが、倫太郎はその軌道を見切って避ける。
「さっきの呪詛で鈍ってんのか。当たらなきゃなんてことはねぇな」
 仲間が魔女に与えた攻撃を思い出した倫太郎は斬り込む。其処から全力を込めた一閃を叩き込めば、魔女と視線が重なった。
「ま、あんたの忠告は適度に気を付けるさ」
 そう告げた倫太郎は災魔を祓う焔の神力を巡らせ、更に刃を返した。


 戦いが始まったことを察し、ジウはバトルアンカーを構えた。
 戦場となった部屋には炎が舞い、様々なユーベルコードが飛び交っている。
「それにしてもあの宝石……」
 炎の魔石、楔の魔力を宿す緑の宝石、そして未来を見通す猫睛石。それらの力を目の当たりにしたジウは感心している。
「禍々しいけど良い仕事してるじゃないかっ」
 でも厄介だね、と口にしたジウは迫ってきた炎をバトルアンカーで振り払った。攻撃の勢いを掻き消したジウは背の翼を羽ばたかせる。
 そして、得物を振り回しながら魔女に近付いたジウは一気にそれを投げつけた。
「何よ、こんなもの!」
 相手は錨を避けたが、ジウにとってはそれも計算のうち。湧き上がるオーラで身を包んだジウは星々の金貨を解き放つ。
「金貨と宝石! どうかな、すごくキラキラしてるでしょ!」
 ジウは周囲を煌めきで彩りながら、魔女の最期を送ると心に決めた。


「――いい加減、還れ!」
 憤りを力に変え、理玖は魔女との距離を一気に詰める。
 間合いを一瞬で詰めた彼は拳を叩き込み、其処から更に殴打の乱れ撃ちを見舞った。
「大体、何で返ってきたし! 再生怪人でも流行ってんのか!!」
 以前に戦ったときのことを思い出し、理玖は魔女が放った楔の魔力を振り払う。
 もう相手のやり口は分かっている。
 それに未だ暫くは悲しませないと思っていたのに。どうして、と呟いた理玖は魔女の姿にある人の姿を重ねていた。
「あたしにはやるべきことがあるの。そのためなら何度だって……!」
 魔女と理玖の視線が戦いの中で交錯する。
「……ほんと、何でだよ」
 ――未練か。
 ふと或る答えに辿り着いた理玖だったが、すぐに頭を振って身構えなおした。
「やっぱわっかんね」
 ぽつりと呟いた理玖は拳を強く握り締め、そして――。
 明鏡止水の一閃で以て、呪炎の魔女を貫いた。


 戦いが始まれば、占いの結果は二の次。
 魔術杖の先に魔力を集わせた志桜は幼子を庇うように立った。その姿勢は獣達との戦いと同じであり、祈里を絶対に守るという意志が見える。
「祈里ちゃん、行くよ!」
「ああ、桜髪の少女! ――イフリート! 魔性の炎を覆い尽くせ!」
 頷いた祈里の髪が揺れ、赤いメッシュが浮かびあがった。
 炎で勝負でもしよう。
 不敵な笑みと共に魔女に告げた祈里。彼女に続いて志桜も魔力を解放した。イフリートが起こした紅蓮の炎に重なるように、志桜の放った焔が魔女に飛来していく。
 対するエーリカは紅玉の炎を打ち返す。
 三者三様の炎が戦場に迸った。
 刹那、志桜に呪いの炎が襲いかかる。その軌跡を何とか見切った志桜は魔方陣を展開することで焔を受け止めた。
「呪いの炎……そんなものに押し負けたりなんてしないから!」
「ふふ、お手並み拝見ね」
 魔女と魔女見習いの炎と陣が衝突しあう中、祈里は妙な感覚をおぼえていた。
「く……や、やりにくい相手だ。なんとなくやりにくい!」
 しかし怯んでなどいられない。
「わたしが抑えてるから、今だよ祈里ちゃん!」
「えーい! 最大火力だ! なんでも持ってけイフリート!」
 桜髪の少女に報いる為にも自分がやらなければならない。そう感じた祈里はイフリートにありったけの血液と魔力を渡す。
 その瞬間、煉獄の炎が全周囲に広がっていった。魔女はその炎に押される形で後退したが、祈里自身もふらついてしまっている。瞬間的な貧血だ。
「わ、わあ。大丈夫!?」
「まだ、へいき……それよりも、」
 志桜が慌てて祈里の体を支えたことで転倒は免れた。この後のお楽しみのために寝たりなんかしないと心に決め、祈里は魔女に視線を向ける。
 そして、戦いは更に続いていく。


「折角占って貰ったのに戦うのはちょっと心苦しいけど……」
「花火を邪魔させるわけにはいかないので、ごめんなさい!」
 戦場となった部屋の中、蒼汰とラナは各々の思いを魔女に告げた。占いへの感謝はもう既に告げているゆえ、容赦はしない。
 本当なら手荒なことはしたくないのだが、戦いの意思を見せた魔女が此方を殺そうとしていることも分かる。
「邪神になった貴女をこのまま野放しにしておくわけにはいかないので……!」
 蒼汰も戦う意志を持って指先を敵に向ける。
 それを合図にしてラナも魔力を杖に込めていった。
「ええ、それでいいわ。どうあっても、あたしは命を喰らうものだもの――!」
 魔女は呪の炎を放ち、猟兵達の生命力を吸い取ろうとしている。蒼汰は解き放たれた炎を自ら受け止めに駆けることで、ラナへの攻撃を防いだ。
 だが、彼もやられてばかりではない。
 次の瞬間、彼方の空から降る星の輝きが魔女を貫いていく。
 更にラナが周囲に散らせた春色の花が星の光に重なっていった。
「ラナさん、やりましょう」
「はい、最後まで蒼汰さんと一緒に……!」
 互いの名を呼び合うふたり。
 彼らが全力で紡いだ力は魔女を包み込む。甘く香る春の花と願い星の耀き。それらはやさしい閃きと輝きで以て、邪神の戦う力を奪っていく。


 占いの言葉など今は関係ない。
 気を取り直し、大の男としての義務感を抱いて前に出た十雉。
 今日の相方は可愛らしいお友達だから――と強がって笑い、駆けていった彼。その顔を思い出したかんろは、前線で戦い続けてくれている十雉の背に頼もしさを抱く。
 視線を受けた十雉は薙刀を振るい、魔女が放った炎を振り払った。
 実を言えば彼は支援の方が得意だ。
 しかし、今日はオレが、と意気込んで盾役を買って出ている。
「少しばかり炎が熱すぎるが、頑張ろうぜ」
 魔女の呪炎に対抗するため振り向くことはしないまま、十雉はかんろに呼びかけた。
 そのとき、歌が響いてきた。


 きみの居ない 明日の話
 机の花も みんなの涙も 全部嘘に思えたんだ
 きみの居ない 明日の話

 世界が丸ごとどうしてきみを 昨日のどっかに置いていく
 笑顔の写真が傾いて お前のことも 視えやしないよ


 それは指揮棒を振るったかんろが歌う声。
 途端に竜巻が周囲に広がり、十雉に迫っていた炎を押し返した。
「……え」
 十雉は圧倒されている。男の声だと感じたが、とても透き通った歌声。それに聞き惚れかけてたのだが――其処から巻き起こった暴雨が炎と敵を押し流したのだ。
「あ、え、えと、だい、じょうぶ、です、か?」
「えーと……オレ、支援させて貰おっかな。符で敵の動き止めるんで、ハイ」
 かんろの可愛い顔から想像できないほどの力が巡ったことで、十雉はしずしずと後ろに下がった。男として自信喪失しそう、と感じた思いは言葉にできない。それでも、かんろが頼もしいと感じた気持ちもある。
 対するかんろは心配と不安な気持ちを抱いていた。十雉に怪我をさせたくないから全力を出したのに、逆に彼を怖がらせてしまったかもしれない。
(――やっぱり、この力は不気味かな)
「さて、頼んだぜ」
「は、はい」
 だが、呼び掛けてくれた十雉は変わらぬ笑みを浮かべていた。そのことに少しの安堵を覚えたかんろはもう一度、慟哭の歌を紡ぐことを決める。
 そして、霊縛の符が魔女に叩き込まれ――雷雨を秘めた竜巻が戦場に広がった。


 人魚の歌が紡がれ、甘やかな心地が戦場に満ちていく。
 迫りくる炎は水のヴェールで包み込み、リルは蠱惑の歌声を響かせていった。
(ヨルが応援してくれるんだ。頑張れる!)
 前を駆けてくれる君がいなくても、ひとりでだって歌える。そのとき、静かな決意を抱いていたリルの耳に届いたのは聞き慣れた声だった。
「リル!」
「おー、やっぱりリルくんの歌だった」
「……櫻にロキ?」
「きゅ! きゅきゅ!」
 その声の主はリルを守るように布陣した櫻宵と、ひらりと手を振っているロキ。
 ヨルは見知った二人の到来に羽を広げて喜ぶ。
「ちょうど良かったわ。リル、魔女を一緒に倒しましょ。もちろんロキもね」
「えー俺様も戦わなきゃ駄目?」
「いいからやるのよ!」
 ぺしん、とロキの背を軽く叩いた櫻宵。彼はそのまま刃を抜き放ち、魔女の炎を切り裂きながら距離を詰めていく。
 その遣り取りを見ていたリルは口許が緩んでいくことを感じていた。
「……ふふ」
「リルくん、何かいーことあった?」
「ううん、そうじゃないけど。やろう、ロキ!」
 ロキの問いかけにふるふると首を振ったリルは、力強く呼び掛けた。ロキはしょーがないなぁと呟いてから掌を掲げる。
 彼らの視線の先には今まさに櫻宵を穿たんとしている炎の奔流があった。
「させないよ!」
「そーそー、宵ちゃんが燃やされたら困るんだよね」
 リルが巡らせた泡沫の護りが櫻宵を包み、焔の方はロキが捉える。刹那、魂を灼く破壊の光に貫かれた炎は四方に散って消えた。
「ね、息はぴったりでしょ」
「櫻、今だよ!」
 ロキは魔女に軽く笑いかけ、リルは櫻宵に真っ直ぐな視線を向けた。
 櫻宵は二人の援護に頼もしさを覚え、魔女の懐へと潜り込む勢いで近付く。
「きゃ、疾いッ!?」
「占ってもらったお礼に綺麗な花を咲かせてあげる」
 目を見開いた魔女に向け、櫻宵は命を喰らう桜嵐を解き放った。
 響く歌。戦場を疾走る救済の光。そして、桜吹雪に併せて振り下ろされた刃。それらは確かな手応えと共に魔女の力を大きく削った。


 ――神の世、現し臣、涯てなる海も、夢路に遥か花薫れ。
 綾が紡ぐ聲が戦場に響く。
 其処から広がっていったのは鎮静と浄化を齎す力。
「あなたに眠りを」
 綾はふわりと放つ馨遙の力で以て、魔女を眠りへと誘おうと狙っていた。ひとときの戯れの時を過ごしても自分達は敵同士。
 相容れぬのだと己を律し、綾は更なる力を重ねて紡ぎ続けた。
 どうか――星の瞬く宙の夢を游いで、彼方の海まで辿り着けますように。
 願う思いは静かに、戦場の最中にとけきえていった。


 戦いは巡り続ける。
 桜花はそっと声を紡ぎ、魂の歌劇を謳いあげてゆく。
 ――響け魂の歌劇、この一瞬を永遠に。
 その声に破魔の力を乗せた桜花は、魔女に関する童謡を歌い続けた。それはエーリカの気を逸らすため。
 共に戦う皆の攻撃が当たりやすくなるよう隙を作る狙いだ。
 響いていく歌はこの曲を聴き続けていたいという感情を魔女に与えていた。そして一瞬だけ、魔女が放つ炎の勢いが弱まる。
 桜花は間もなく終わりが訪れると察し、両手を重ねて願っていった。
「お休みなさい。次は共存できる方としてお戻りを」
 最期にはこの歌を鎮魂歌にして送ろう。
 思いを胸に秘めた桜花は更に歌い続ける。最後まで、終わりまで、ずっと――。


 なぁ、エーリカ。
 激しい炎が飛び交う戦場で、椋は魔女の名を呼んだ。しかし敵意を滲ませた魔女にはもう椋の声が届いていないようだ。
 それでも良いと首を振り、椋は自分の中にある思いを言葉にしていく。
「おまえのアドバイスはちゃんと憶えておく。でも、……悪い」
 せっかく教えてもらったけど、と続けた椋は己の力を巡らせていった。攻撃に重きを置いた贋作彗星は、瞬く間に周囲に散らばってゆく。
「人々と花火を守りたいんだ」
 それにこんなところで魔女に魂を奪われて、未来を壊されるなんて有り得ない。
 自分が歩く道は愛しいあの子と共に進むものだから。
 椋は最後まで戦い続けることを決め、真っ直ぐに魔女の姿を瞳に映した。
 

「ほら、匿名の声って多くて混乱しない?」
 魔女が徐々に追い詰められていく中、真紀が放ったのは匿名の悪意。
 ネット上の人々の悪意を集わせた力が魔女と、そして猟兵達も巻き込みながら無差別攻撃となって巡っていった。
「っと、やっぱり悪意ってきついな……」
 幸也は悪意の波動を受けながら、仲間をも穿つ真紀の力を確かめる。
 ここからは自分達が、と真紀に告げた幸也は戦姫の力を発動させていった。怨嗟と呪詛が周囲に広がり、千薙の持つ薙刀の一閃が魔女の身を切り裂く。
 それによって魔女の身が傾ぐ。
 二人はしかと互いを支えあい、此処から更に巡っていく戦いを見据えた。


「よし、気が済んだなら厄除けだ」
 占いが終わればあとはやるべきことは決まっている。伊織が身構えれば、菊里も魔女に静かな敵意を向けた。
「さて、ではお礼というにはなんですが――貴方には花火に代わり送火を」
「悪いがどう在っても人を不運に落とす邪神にゃ、お還り願う他にない」
 毒と闇を纏う暗器を放つ伊織。
 其処に続いた菊里が麻痺を齎す霊符を振り撒いた。此方の動きは読まれているだろうが、逃れる場所を与えぬように二人は立ち回る。
 毒で動きを鈍らせ、闇で目潰しを狙い、伊織は菊里の次手をより当て易いよう阻害していった。放たれた炎は見切り、残像でひらりと撹乱していく。
 菊里は伊織の立ち回りに遣り易さを感じ、ひといきに狐火を広げていった。
「人々に迫る不穏な未来は覆させて頂きますね」
 そして、宣言の直後。
 伊織の手裏剣が炎に重なるように放たれ、狐火が大きく燃え上がった。


 炎が激しく散り、赤々と揺らいでいく。
「さて、確か二つ名は『呪炎の魔女』エーリカさんでしたか。炎使いでしたら、コレはどうなさいます?」
 あかねは魔女に問いかけ、一気に呼びかける。
「――綾、こっちや!」
 途端に砕け散る窓の先。其処に見えたのは白鯨の勇姿。
「注水を避けるには、ウチらの方に来るしかありませんよ?」
 いちごはあかねが綾に攻撃を願ったのだと察し、水を避ける為に此方に向かってくる魔女を見つめた。魔女は迎え撃つための力は異界の邪剣。
 いちごが禍々しい剣を振るえば、魔女は舌打ちをして踵を返した。
「それならこっちを先に倒すわ」
「って狙い通り来たんはええけど、もしかしてウチに攻撃が……きゃんっ!?」
「あかねさん!」
 悲鳴にはっとしたいちごはあかねを庇った。
 そのままあかね抱きしめたいちごは、心配そうな顔で問いかける。
「大丈夫ですか……?」
「いちごはん、頼もしいわぁ♪」
 彼の腕にぎゅっと掴まったあかねは嬉しげな笑みを浮かべた。あかねはこの心地を離したくないと感じて、彼と身体を密着させる。
「大丈夫そうですね。あの……いえ、あかねさんを抱いたままだと戦いにくいので、そろそろ離れてほしいのですが……」
 赤面するいちごもまた可愛らしく、あかねはくすりと笑む。
「それなら続きはこの後で♪」
「は、はい……ともあれ、援護よろしくです」
 何とかあかねに下がって貰ったいちごは、邪剣の切っ先を敵に差し向けた。そして、呪いの炎を邪剣で切り結びんだ彼は一気に駆ける。
 魔女に接近したいちごは体当たりめいた突撃で以て相手を突き刺す。
 その勇姿をあかねはしかと見守り、そっと寄り添いながら援護を続けていった。


「……さっさと仕留めんぞ」
「切り替えていくしかないか!」
 楪の呼び掛けに応え、望は魔女に視線で礼を告げる。占いのことに感謝は抱いているが、それと戦いはまた別の話。
 戦いは激しく、望や楪にも魔女が放つ呪炎が迫ってくる。
 その軌道をしかと見つめて見切った望はお返しに力を紡いでいった。
「この後に花火デートの予定があるし、悪いなー?」
 本気で謝る気はねぇケドさ。
 そんな言葉を付け加えた彼は続けて『墜ちろ』と口にする。その途端、言の葉に反応した紅雷の槍が魔女の元に飛来していった。
 その間に楪が駆け出し、顕現させた銃の乱れ撃ちで以て魔女を穿っていく。
「回避が意味をなさなきゃいーんだろ?」
 例え動きを読まれたとしても先回りする勢いで攻撃を放ち続ければいい。楪は銃弾を次々と撃ち放っていった。
 勝てると踏んだ望は楪に呼び掛け、口許を薄く緩めた。交わされる視線。其処に宿っているのは互いに抱く揺るぎない信頼だ。
「やっちまうか」
「花火の邪魔はさせねーよ」
 紅雷の槍が作り出す刃の雨。そして銃弾の嵐。
 重なりあったふたつの力は戦場に巡り、魔女の戦う力を削ぎ落としていった。


「あんたも炎を操るのね」
 面白い、と言葉にした彩萌は魔女の力を確かめる。
 先程の獣達とも目眩まし対決をしたが、今度は炎同士の競り合いになるだろう。
「力比べといきましょうか」
 彩萌は不可視の蜘蛛の巣状の網を広げ、透き通る翠緑の炎で敵を絡め取ろうと狙う。魔女は即座に網を避けたが、その髪が僅かに炎に掠った。
「きゃ、いけない……!」
「そのお綺麗な髪を焦がしてあげる」
 刹那、翠炎が瞬く間に相手を燃やしながら行動を封じていく。
 其処から念動力を発動させた彩萌は二挺拳銃を構え、二度と敵に動きを読まれぬように立ち回っていった。
「さっきも言った通り、私の未来は占いの通りにはならないわ」
「その心掛け、見上げたものね」
「そんなもの振り回されるなんて、私的にはまっぴら御免!」
 強く宣言した彩萌は更に炎を迸らせた。燃えあがる翠緑は魔女の魔力ごと奪い取るように大きく揺らいでいく。


「占ってくれたお礼に飯作ってやるよ」
 戦いの最中、きよは組み立てた屋台の中でたこ焼きを作りはじめた。
 またか、と彼を見遣った綾華だが、止めるようなことはしない。それが此度の魔女にとって、本当の意味での最後の晩餐に成り得ることを知っていたからだ。
 後は純粋にきよの戦い方に慣れたからでもある。
 てきぱきと生地を焼き上げていくきよは、皿にたこ焼きを盛ってエーリカに差し出す。
「うまそーだろ。たんと食いやがれ!」
「あら、おいしい」
「だろ! 自慢の美味さで……って楽しんでるのかよエーリカ?!」
「あー、いつかこうなると思ってた」
 きよは屋台の力で魔女の動きを遅くするつもりだったのだが、当の本人が屋台飯を楽しんでいるので効果がない。
 綾華は予想していたことだったので、額に手を当てながらも落ち着いていた。
「でもまぁ美味いなら良かった! てことで綾華、後は頼む!!」
 きよは笑いつつも器用に焦りながら後方に下がり、綾華にもたこ焼きを渡す。仕方ないと溜息をついた綾華は、たこ焼きをひとつ頬張りながら前に出る。敵がそのままで、自分だけが鈍くなるわけにはいかないからだ。
 きよに後を託された綾華は、咎の力を宿す暗器を投げ放つ。
「悪いケド縛るよ」
「え? あっ!?」
 六個目のたこ焼きを食べていたエーリカは瞬く間にそれらに拘束される。ずるいわよ、と抗議した魔女だが自業自得だ。
 攻撃が何とか通ったようだと安堵したきよは綾華を応援する。
「今だ綾華! たこ焼きもまだまだあるからな!」
「うわ、何かやりずれー……」
 そんなちょっとした緩い一幕も巡りつつ、戦いは更に続いていく。


 ふふ、とエドガーの口許に笑みが宿る。
 あんな戦い方もあるんだね、と左腕のレディに呼び掛けた彼は、他の猟兵達が出した屋台飯の力を見ていた。
 そして、彼らが敵の動きを止めてくれたのだと察したエドガーは駆ける。
 魔女はすぐに拘束から抜け出したが、距離を詰める隙は得られた。未来視の力があっても動きを止められれば無意味であることをエドガーは知っている。
 エドガーは刺突剣で以て斬撃を見舞った。そして、右手の指先を魔女に差し向ける。
 ――これは威令だ。
 鋭く向けた瞳から威光が放たれ、魔女に畏怖する心が与えられていった。
「くっ……!」
 エーリカは更に動きを阻まれたことで膝をつく。
 咄嗟に身を引いたエドガーは同じ戦場に立つ仲間のひとりに声を掛けた。其処に立っていたのは黒耀石の角と髪を持つ娘――耀子だ。
「頼んだよ、ヨーコ君!」
「ええ、エドガーくん」
 任されたわ、と応えた耀子は駆ける。
 彼女はそれまで魔女が放っていた渦巻く炎を斬り伏せ続けていた。次第に炎が巡る際の癖を理解していった耀子は、刃を振るう度に剣閃を増やしていた。
 そして、白刃は今まさに魔女本人を貫かんとして迫っていった。
「これで差し引きゼロよ。もう一度、お帰りなさいな」
 刹那――声と共に迸った幾重もの剣筋が魔女の炎ごと、その身体を斬り裂いていく。
「次で終わりね」
「私達の力と思い、彼女に届いたかな」
「そうね、きっと――」
 耀子とエドガーは仲間に最後の一撃を託し、終わりゆく戦いを見守った。


 フォルクは戦いの中で魔女の力を削り続けていた。
 そして、猟兵達の攻撃を受けて膝をついたエーリカ。その姿を見咎めた彼は、己が次に放つ力が終わりを導くと感じ取っていた。
「……そろそろか」
 齎すことが出来るのは悪夢だけだが、終わりを与えることは出来る。
 顔をあげた魔女はフォルクをはじめとした猟兵達を見渡し、震える声で語っていく。
「ふ、ふふ……。あなた達の力はやっぱり、強いわね……。そっかあ、あたしの未来の方が変えられちゃったのね」
 本当は花火を見に行くはずだったのに。
 そう呟いた魔女は、フォルクが齎していく眠りの力に抗いきれなくなっている。その言葉に力はなく、彼女は間もなく倒れるだろう。
「でも、そうよ。未来は変えられるの。だからどうか、あなた達も――」
 魔女は敢えてその先は紡がずに薄く笑う。
 そして、フォルクは彼女へとふたたび悪夢の帳を下ろした。
「――もう眠れ」
 静かに落とされたフォルクの言葉と共に、占いと戦いの一夜は終幕を迎えた。
 


第3章 日常 『エンジョイ・スターマイン』

POW   :    皆でわいわい楽しむ

SPD   :    少人数でしっとり楽しむ

WIZ   :    花火イベントの露店なども楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●咲きゆく光
 無数の煌めく星が夜空に見えた。
 透き徹るような、澄んだ紺青の天には雲ひとつない。静かな海岸線には遍く漣の音がささやかに響いていた。
 しかし今夜、海辺は星や月よりも明るい光と音に満たされる。
 天空に打ち上げられる花火に期待を寄せたひとびとは海岸に集っていた。砂浜や消波堤、海岸線の片隅。思い思いの場所に腰を下ろし、空を仰ぐ人達の表情は明るい。
 これこそが猟兵達がひそやかに守った日常だ。
 
 今夜に打ち上げられるのは様々な光。
 花火の目映い光は、ときに星や華という呼ばれ方をする。
 牡丹という名の通り、空で開花しながら球形にひらく花火。
 ゆるやかに垂れ下がるように星が降下していく冠菊に、時間が経つと無数の小花が辺りに咲き乱れる千輪菊。
 明るい星を用いる牡丹型のダリヤ、小花が枝分かれしていくクロセット。
 ハートや星、おさかな等を模った型物。
 そして、それらを内包した速射連発花火と呼ばれる仕掛け花火――スターマイン。
 
 銀波に細波、錦。光り方の名称も様々だが、消え方の名も多種多彩。
 星が消える直前に輝く光露。
 然程は輝かずに、ふわりとした綿雪のような消え方をする降雪。消える間際に波のような音を発する郡声。
 星先が消えた後に淡い花のような銀色を残す霞草と呼ばれるもの。弾けるような音を発する先割。光の先端が不規則に動く流星や飛星、遊星。

 無病息災。家運隆盛。武運長久。
 千差万別の色彩を見せてくれる花火は、元は魂の癒しを神に願い、未来の繁栄や幸福を祈る奉納行事だったという。
 空に昇るひかりの花に何か願いを掛けるのも悪くない。
 純粋に綺麗だと感じる思いの儘に、夜空を彩る光を眺めるだけでも良い。
 穏やかにひとりで、或いは賑やかに仲間達と。食事や飲み物を持ち込んでわいわいと過ごすもよし。海に映る光や、空に彩成す星と華を静かに楽しむのもよし。
 どう過ごすのかは君次第。
 
 やがて、夜の色は更に深まり――。
 高く澄んだ伸びやかな音が響いた刹那、夜空に大輪の花と光が咲いてゆく。
 
黒鵺・瑞樹
人があんまりいなくて、それでもって、見てる人も眺められるような場所に座って。
缶ビール片手に他は若干のつまみをつまみながら、花火とそれを眺める人々を見つめる。

花火は冠菊だっけ?しだれ柳ともいわれるあれが好きだ。
カラフルなわけじゃないけど、すーっと尾を引いてゆっくりと消えていく光がなんとも言えない。
あんな風に誰かの心に残せる生き方ができたらなぁって思う。

二缶開けたら酒は終わり。あとは飲み物を水に変えてゆっくり花火を見るだけにする。
時折楽しそうな人々をみて、それもまた嬉しいと思う。



●花火の始まり
 夜空を振り仰ぎ、缶のプルタブに手を掛ける。
 軽く指先に力を入れると、軽快な音と共にビール缶があいた。
 夜風が心地好い。
 そう感じながら瑞樹は缶を傾ける。
 浜辺の方に人はたくさん集まっているが、今の彼は人気のない海岸の片隅にいる。
 此処もなかなかに眺めが良いのだが、おそらくは知る人も少ない穴場なのだろう。視線を巡らせれば様々な人々の姿が遠くに見える。
 賑わいと静けさ。
 両方を楽しめる場所を見つけられたことで瑞樹は上機嫌だ。
 それを大きく顔に出すことはないが、これから始まる花火への期待もある。
 缶ビールと少しのつまみ。
 それらを傍らに置いて、暫し待っていると――。
「始まったかな」
 口笛のような澄んだ長い音が響き、夜空に向けて一筋の線が昇っていった。
 そして、一瞬後。
 腹に響くような重い音と共に空に大輪の花が咲く。
 暗かった夜空を彩る色は見事で、瑞樹は暫しその様子を眺めていた。
 少し後。
「今の、冠菊だっけ?」
 しだれ柳ともいわれる花火の軌跡は美しい。好きだな、と口にした瑞樹はおつまみを口に運ぶ。続けてビールを飲もうとしたが、一缶目はいつの間にか空になっていた。
 二缶目をあけた瑞樹は次々と上がる菊花火を見つめる。
 カラフルなわけではないが、すっと尾を引いてゆっくりと消えていく光。それらがなんとも言えずつい魅入ってしまう。
 あんな風に誰かの心に残せる生き方ができたら――。
 決して色鮮やかでなくても良い。自然と自分がそう思っていることに気付き、瑞樹は薄く口許を緩めた。
 その間にも花火の色彩や種類は移り変わり、華やかなものへと変わっていく。
 暫し後、いつしか二缶目のビールも空になった。
 それでもまだまだ花火のひとときは終わらない。酒は終わりにしようと決め、瑞樹はゆっくりと空を振り仰いだ。
 花火の音に混じって湧く人々の声が耳に届く。
 瑞樹は楽しげな人々にも目を向け、それもまた嬉しいものだと感じた。
 そうして、花火の夜のひとときはゆっくりと流れていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジウ・ココドコ
うーん、つっかれたぁー。でも今日は充実感あったなー。
仕事はいつも通り大変だったけど、魔女さんから占って貰っちゃったし。
それに楽しみにしていた春の花火も見れるし!

露店があれば焼きそばか、たこ焼きあたりを買って、適当な場所に座って花火を楽しみます。
そう言えば噂で聞いたんだけど、花火を上げる時ってかぎやとか、たまやって言うんだっけ?
ちょっと真似してみようかな。

花火、ほんと綺麗だなー。
魔女さんが占ってくれた時に、芸術関係で財を成すって言ってくれたっけ。
……うん。この花火も一つの財だね。
手元には残らないけれど、これも財で、そしてとっても浪漫だ。

※犬塚ひなこ様のPC様のどなたかと、お話出来たら嬉しいです!



●花火と海とりんご飴
「うーん、つっかれたぁー」
 夜の浜辺を歩き、大きく両腕を伸ばす。
 澄んだ空気と海風。月を映す水面を眺め、ジウはこれまでを思い返していく。
 単眼獣や魔女との戦いに占い。様々なことがあって身体にも少しばかり疲れが溜まっていた。しかしジウの表情は明るい。
「でも今日は充実感あったなー」
 仕事はいつも通り大変だ。けれども魔女に占って貰えた話も興味深かった。
 それに――。
「楽しみにしていた春の花火も見れるし!」
 ジウの手には通りの夜店で購入したたこ焼きとりんご飴がある。
 最初はたこ焼きだけにしようかと思っていたのだが、道行く人が艶々としたりんご飴を持っていたので興味を引かれた。
 赤い飴と青い飴。ふたつのどちらも選べなくて両方買ってしまったのだが――。
「ちょっと多かったかなぁ」
 こんな特別な日だし良いよね、と考えたジウは辺りを見渡す。
 何処に座るのが良いかと探していた、そのとき。
「わっ、りんご飴だ! 良いなぁ、俺が行ったときは売り切れだったんだ」
 兎耳をぴこぴこと揺らした少年がジウの持っている飴を見て瞳を輝かせた。ジウは彼も猟兵だと気付き、ふふ、とちいさく笑う。
「ひとついる?」
「え? 違う違う、そういう意味で言ったんじゃなくて……」
 ジウのやさしい申し出に対して時計ウサギの少年は慌てて首を振った。しかしジウは自分はひとりだからと告げて赤いりんご飴を差し出す。
「はい、どうぞ!」
「あ、ありがとう。すげー嬉しい!」
 照れくさそうに飴を受け取った少年は、メグメル・チェスナットだと名乗った。ジウは頷き、何かお礼をしようと考えているらしい少年に告げる。
「僕はジウ・ココドコ。良かったら一緒に眺めの良い場所を探してくれないかな」
「ここどこ? あはは、面白い名前だ! それじゃ行こうぜ、ジウ!」
 メグメルはすっかりジウのことが気に入ったらしく、それくらいならいくらでも付き合うと答えた。
 そして、少年達は海岸線のとある場所に辿り着く。
 花火をまっすぐに臨むことができる絶好の場所だ。まずは其処でたこ焼きを食べて、封を開けたりんご飴を片手に空を見上げれば、花火が夜空にあがりはじめる。
「綺麗だね!」
「おおー!」
「そう言えば噂で聞いたんだけど、花火を上げる時ってかぎやとか、たまやって言うんだっけ?」
「俺も詳しくないけど確かそのはず。試しに言ってみる?」
「うん、ちょっと真似してみようかな」
 顔を見合わせたジウとメグメルは互いに笑みを浮かべる。
 そして、次の花火が空を彩った瞬間。
「かーぎやー!」
「たーまやー!」
「あれ? そっちか!」
「あはは、全然揃わなかったね!」
 少年達は相手が違う掛け声をかけたことでおかしくなり、くすくすと笑った。
 そして二人は楽しげに花火を眺めていく。
「花火、ほんと綺麗だなー」
 ジウは輝きと音に彩られた夜空を見上げながらしみじみと思う。
 そういえば魔女が占いで言っていたのは芸術関係で財を成すということ。どうしたのかとメグメルが問うとジウはそっと笑み、考えていたことを伝える。
「……うん。この花火も一つの財だね」
 決して手元には残らないもの。けれど、これもまた財と呼べる景色だろう。
 そして――この思い出も。とっても浪漫に満ちた、ひとつの宝物だ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
冠菊見上げ
「花火がとてもきれいで美しい。その感想を言い合える誰かが居ないのは、とても寂しく感じます。エーリカさん、貴女もきっとそうだったのでしょう。貴女が会いたかったのは、誰だったのでしょう」

エーリカの最期が誰かに会いたかっただけのように思えて、しんみりした気分で花火見物
喧騒の中で一人花火を見上げることが寂しくなってしまい、UC「ノームの召喚」使用
食べ歩きにシフトする

「何時もお世話になっていますから、今日は賑やかにみんなで食べ歩きと参りましょう。任せて下さい、軍資金はちゃんと持ってきましたから、お腹がはち切れるくらい食べても大丈夫です」
ノーム達と大騒ぎしながら出店全制覇
皆で分け合い食べ尽くす



●ノームと一緒に
 花火が上がる音が耳に響く。
 身体にまで伝わってくる空気の振動を感じながら桜花は空を見上げていた。
 冠菊と呼ばれる花火が空で開く。
「きれいですね」
 桜花はその美しさに感嘆の言葉を落とした。
 そして、桜花はそっと周囲を見渡す。浜辺や海岸線所々には誰かと共に花火を見に来た人々の姿が見えた。
 多くの人は家族や友人、仲間内と花火を見に訪れているようだ。
 桜花は敢えてひとり。それであるからこそ思うこともある。
「この感想を言い合える誰かが居ないのは、とても寂しく感じますね。エーリカさん、貴女もきっとそうだったのでしょう」
 ふと桜花が思ったのは先程に倒した魔女のこと。
 問いかけても答えるような相手ではなかったので桜花の言葉に返答はなかった。しかし、やはり間違ってはいないはずだと強く思える。
「貴女が会いたかったのは、誰だったのでしょう」
 彼女の最期が誰かに会いたかっただけのように思えて、桜花はしんみりした気分になっていた。骸の海に還した今、桜花が言葉にしたことの答えは見つからない。花火はその間も上がり続け、暗い夜空を明るく彩っていく。
 わあ、と周囲から驚きや楽しげな声が聞こえた。花火の音や喧騒は心地よくもあるが、その中でひとり花火を見上げることが寂しくなる。
 浜辺の片隅に腰掛けていた桜花は立ち上がり、傍にノーム達を呼んだ。
 すると周囲に土小人がたくさん現れる。
「何時もお世話になっていますから、今日は賑やかにみんなで食べ歩きと参りましょう」
 かれらに呼び掛けた桜花は屋台が並ぶ方へと歩き出した。
 ノーム達は桜花の後をついてくる。
 ほんとうに? と問うように桜花を見上げる土小人達。かれらの方に振り返った彼女は、自分の胸に手を当てた。
「任せて下さい、軍資金はちゃんと持ってきましたから、お腹がはち切れるくらい食べても大丈夫です」
 心配しなくても良いと桜花が告げると、ノーム達が嬉しそうに飛び跳ねた。
 そうして桜花達は賑やかに夜店通りに繰り出す。
 これでもうひとりではない。ノーム達と大騒ぎしながら出店の全制覇を目指す桜花の口許には笑みが浮かんでいた。
 焼きそばにたこ焼き、お好み焼き。りんご飴や鯛焼きだってある。
 皆で分け合い、食べ尽くすひととき。
 其処にはきっと寂しさなどないはずで――賑やかな時間が巡っていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラウン・メリー
リグリグ(f10093)と

飲み物とクッキーが入った袋を持って
海岸近くで座れる場所を探す

あ、リグリグ!ここ空いてるよ
自分の隣をぽんぽんと叩いて
海、綺麗だね!もうすぐ打ち上がるかな

リグリグこれ食べる?とクッキーを差し出し
これなら空を見ながら食べやすいかなって思って!

花火が始まれば、空を見上げてお魚花火に指差す
あっ!見て見て!お魚さんみっけ!
んー、あれはお星様かな!わぁ、ほんとだ!にこにこ!
一つ一つ、咲き方が違って綺麗だね!

また一緒に花火見よう!
なんて笑顔の花を咲かせ彼女に伝える

大きな音に瞳を瞬かせスターマインに見惚れる
――わぁ、綺麗!まるで花束みたい!

ふふ、実は俺も!
夜なのに眩くて賑やかで壮大だっ


リグ・アシュリーズ
クラウ(f03642)と

これから花火、上がるのね!
隣へ腰掛け、いいの?ありがとう!とクッキーを受け取り。
待つ間、絵葉書でしか見た事ない花火に思いを馳せるわ!

私はきっと、夜空に咲く花の名前もわからないけれど。
えっ。空にお魚?
見て!あっちのはクラウみたいなニコニコ笑顔!
目の奥に焼き付く、眩い光。一瞬一瞬、逃さないように見入ってるわ。

また一緒に見ようって声に、ええ!もちろん、と返そうとした矢先。
届くスターマインの爆ぜる音。

――すごい。
一声漏らしたきり、視線は空に釘付けに。
次々と押し寄せる音の波が、いつになっても引かなくて。

すごいわ、クラウ!
私、はじめてなの。こんなに夜空が明るいなんて……!



●花咲く夜に
 夜空には小さな星々が輝いている。
 今はまだ空は静かなままだが、周囲の空気には仄かな熱が宿っていた。浜辺や周囲に集っている人々も花火に期待を寄せているようだ。
「あ、リグリグ! ここ空いてるよ」
 辺りの空気を快く感じながら、クラウンはリグを呼ぶ。
 飲み物と食べ物が入った袋を抱えた彼は大きく手を振った。ちょうどふたりが座れる場所を見つけたクラウンは腰を下ろす。
「待って、今行くわ!」
 自分の隣をぽんぽんと叩いているクラウンを追い、リグも座り込む。
 潮騒が幽かに聞こえる海辺。間もなく始まる花火に湧く人々のわくわくとした気持ちが伝わってくるかのようだ。
「海、綺麗だね! もうすぐ打ち上がるかな」
「これから花火、上がるのね!」
「リグリグこれ食べる?」
「いいの? ありがとう!」
 袋から取り出したクッキーを差し出したクラウンは明るく笑う。これなら空を見ながら食べやすいと思って、と話す彼からリグはクッキーを受け取った。
 リグも笑顔を浮かべて空を見上げる。
 花火はまだ絵葉書でしか見たことがない。実際に聞く音と色彩がどんなものなのか、リグが思いを馳せていると――。
 高い口笛のような音が耳に届いた。
 頭上を見上げると一筋の線が天に昇っていく様子が見える。あれが花火? とリグが軽く首を傾げた瞬間。
 夜空に大輪の花が咲いた。
「わあー!」
「……!」
 嬉しそうな声をあげるクラウンに対し、リグは目を見開いていた。
 花がひらいた際に感じた空気の振動。暗い夜を照らす明るさは予想以上だ。夜空に咲く花の名前はわからなかったが綺麗だということは分かる。
 咲いた花が枝分かれしていき、星が散った。
 其処から更に違う花火に移り変わり、大小様々な火が夜空を照らしていった。
 最初は驚いていたリグが次第に花火に見とれていく様を確かめ、クラウンは口許に笑みを浮かべる。
 其処に型物花火があがっていった。
「あっ! 見て見て! お魚さんみっけ!」
「えっ。空にお魚?」
 クラウンが指差す先に目を向けたリグは瞳を瞬く。確かに可愛い魚の形をしている。そう思った次の瞬間には笑顔のマークの花火が上がっていた。
「見て! あっちのはクラウみたいなニコニコ笑顔!」
「あれはお星様と……わぁ、ほんとだ! にこにこ!」
 星と笑顔の花が咲いたことで、リグとクラウンの間にも笑みが宿る。
「可愛い!」
「うん! 一つ一つ、咲き方が違って綺麗だね!」
 リグが感嘆の声をあげ、クラウンも次々とあがる花火に瞳を輝かせた。
 目の奥に焼き付く眩い光。
 この一瞬一瞬を逃さないように空を見上げるリグは暫し夜の華に見入っていた。何だかこの時間が終わってしまうのが惜しい。
 そんなことも思うほどに花火は美しい。
 そうして上がっていた花火が小休止に入る。リグの横顔が少しだけ名残惜しそうに見え、クラウンは次もまた彼女を花火に誘おうと決めた。
「また一緒に花火見よう!」
「ええ! もちろ――」
 笑顔の花を咲かせたクラウンにリグが勿論だと答えようとした、そのとき。
 幾つもの高い音と光の筋が空に昇っていく。
 刹那、大きな音が幾つもあがった。スターマインの爆ぜる音と耳に届き、数多の光がふたりの瞳に映る。
「わぁ、綺麗! まるで花束みたい!」
「――すごい」
 クラウンがはしゃぐ最中、リグは一言を零したきり空に釘付けになった。次々と押し寄せる音の波はいつになっても引かず、まるで心に光が焼き付いていったようだ。
 やがて光と音は収まり、夜空に花火の名残である煙が揺らぐ。
「クラウ!」
「リグリグ、どうしたの?」
「私、はじめてなの。こんなに夜空が明るいなんて……!」
 興奮冷めやらぬ様子のリグが身振り手振りで話すのでクラウンも嬉しくなってくる。
「ふふ、実は俺も!」
 夜なのに眩くて賑やかで壮大で。それからとっても楽しい!
 ふたりの思いは同じ。
 そうして、また別の花火が上がり始め――賑わうひとときはまだ暫し終わらない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
見上げた天に咲く大輪の花
まばゆい光に鼓膜を打つ音色
そのどれもこれもが
なゆには未知なる出来事で
……、言葉が出てこない

咲いては散ってを繰り返す花
この口でどんな言葉を紡いだとしても
そのうつくしさには叶わないでしょう
嗚呼、なんてキレイなの

緑が青へ、橙が白へ
つめたい紫が鮮明なあかへ
色が移ろうのは、どうしてかしら
この世界に生きる人であったなら
魔法のような現象を知っていたのかしらね
そんな“もしも”を浮かべてしまう

変幻するとりどりの花たち
ひとつ足りともおんなじ彩は存在しない
ひとの手によって咲いてゆく花だけれど
まるで、それぞれがいきているよう

常夜に戻ったなら皆さんに語らいましょう
次の機会には、共に眺めてみたいわ



●結び、散る華の跡
 響く細波。
 微かに聞こえていた音を掻き消すように鋭く高い音が空にあがった。
 天空に咲くのは大輪の花。
 見上げた天に光を宿しながら散る華の大きさと潔さは美しい。まばゆい光、鼓膜を打つ音色。そのどれもこれもが七結にとっては未知のもの。
 綺麗。大きい。凄い。
 過ぎっていく思いはあれど、言葉が出てこない。
 あれほどに暗かった空の色が一瞬で照らされて、光ったかと思うと消える。
 暫し空を振り仰いだままの姿勢でいた七結は、不意にはたとした。
 いつもならば言の葉として綴る感嘆も出ないほどに見惚れていたからだ。響く音の衝撃は身体中を駆け抜けていくようだが、不思議と居心地は悪くない。
 咲いては散ってを繰り返す花。
 きっと、この口でどんな言葉を紡いだとしても表せない。
 この目で見たものがすべて。あのうつくしさは言葉ではなくこころで感じるもの。
 ――嗚呼、なんてキレイなの。
 銀の波が空に揺蕩って、光の露となって散っていく。
 緑が青へ、橙が白へ。
 その色彩を眺める七結の瞳にも様々な光が映っては消えていった。
 つめたい紫が鮮明なあかへ変わるとき、七結はふと思う。
 色が移ろうのは、どうしてかしら。
 この世界に表立った魔法はないので不思議だ。けれども周囲で楽しげに花火を眺めている人と同じであったなら、自分もこの魔法のような現象を知っていただろう。
 そんな“もしも”を浮かべてしまう。
 けれど描く夢よりも今はこの景色を楽しんでいたい。
 移りゆき、あがり方やひらき方、姿を変えながら光るとりどりの花たち。ひとつたりともおなじ彩は存在しないのだと知れば、まるでひとのようだと思った。
 それはひとの手によって咲いてゆく花。
 つくりものではあるけれど、それぞれがいきているようで興味深い。
 ふわりと雪が散るように火花の名残を宿していった降雪の光を眺めた七結は、きゅう、と掌を握り締めた。
 この光景を見つめて、瞼の裏に焼き付けて、憶えて――。
 光と音の共演が終わって常夜に戻ったならば、皆と語らいにいこう。
 いつか、また。
 巡りゆく夏にもあがる花火を見たいと誘うために。共にうつくしい華を眺めてみたいと感じたひとたちのことを思い浮かべ、七結は緩やかに双眸を細めた。
 尾を引く花火の色彩は明快で、とても快いものとして心に残ってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

砂羽風・きよ
【PZ】

ここに座って花火見ようぜ

ピックを握りしめたこ焼きを食べる
へーきだろ
ちゃんと握ってるし
信じてねぇけど、運気は上げたいだろ?!

2人は何買ったんだ?お、いいねぇ
俺にもくれよ
なぁ、俺には?!
そうだ、俺のたこ焼きも食うか

あれディイじゃね?おーい少しだけ付き合ってくれよ
邪魔はしねーから、てかデートって……
泣かねーわ!

お、始まった
スゲーめっちゃ綺麗
あの花火面白い消え方すんな

興奮しながら指差し
おお!あれタコ焼きの形じゃね?!(違う)

な、スゲー楽しい
ふがふががが!

そういや、願い事も出来んだっけ
またみんなと見れますように、なんてな

おいおい!なんで真似すんだよ!
恥ずかしいじゃねーかっ
くそ、俺も真似してやる!


浮世・綾華
【PZ】

……なあ、それって焼く時に使うんだろ?
ラッキーアイテムだからって、危なくねえ?
占い信じないとか言ってなかったっけ
めちゃめちゃ信じてるじゃねーか

そんなに腹は減っていないが買ってきたのはベビーカステラ
いや、ちょこちょこつまめると思って
理玖にもやる。いっぱい食っていーよ

うんうん、ちょっとくらいは男の友情にも付き合えよ
きよしが寂しくて泣いちまうから
えー、ほんとに泣かない?

はしゃぐ理玖に目を細め
ベビーカステラうまい

ん?ほんとだ、ねこ可愛い

そっか、理玖が楽しいなら俺も楽しいよ
きよしはうるせーとカステラを口につっこむ

――なんてな。と大げさにきよしの真似をする
あははっ…なんてな?…ふふ


陽向・理玖
【PZ】

…好きだなぁ
ラッキー?んな事言われたの?
さっきも2人して何か食ってただろ…
俺は焼きそば
腹減った
くれんなら貰うけど
どっちも美味いな

ほんとだ
手を振り
ちょっとくらいならデートの邪魔にはならねぇだろ

去年は見れなかったんだよな…
始まれば一緒にテンション上げ
ほんとだ
スターマインやべぇ

まぁ丸いもんな花火
あっ綾華兄さん
あれ猫っぽくね?

うん
師匠以外と来たのは初めてだし
わいわい楽しい
綾華兄さんは?

えっ願い事?マジで?
見上げ
(兄さん達が幸せであってくれたらそれでいいけど
俺も一緒じゃダメかなって
もう少し…欲張ってもいいんだろうか
別に占いを真に受ける訳じゃねぇが)

それいいな

…似てねぇ
肩震わせ
なんてな
一緒に真似る



●共に過ごす時間を
「ここに座って花火見ようぜ!」
 こっちこっち、と海岸の一角に腰を下ろしたきよは空を見上げる。
 なかなかに眺めのいい場所を見つけられたことを誇らしく思いながら、きよはピックを握り締めた。その手には屋台の残りのたこ焼きが提げられている。
「なあ、それって焼く時に使うんだろ。ラッキーアイテムだからって、危なくねえ?」
 きよに続いて綾華が少し離れた場所に座り、ピックを見て問いかけた。
「へーきだろ。ちゃんと握ってるし」
「ラッキー? んな事言われたの?」
 綾華ときよの間に腰掛けた理玖は二人を交互に見遣った。先程の占いで何かを告げられた結果なのだと察した理玖は、なんとなく納得する。
 そうだ、と頷いたきよはピックを離そうとしない。
「占い信じないとか言ってなかったっけ。めちゃめちゃ信じてるじゃねーか」
「信じてねぇけど、運気は上げたいだろ?!」
 綾華ときよのやりとりを眺めた理玖はそっと息を吐く。賑わしいのは彼等らしくて不思議な心地が巡った。
「……好きだなぁ。さっきも二人して何か食ってただろ」
「きよのたこ焼きだな」
「理玖も食うか? そういや二人は何買ったんだ?」
「腹減ったから、くれんなら貰うけど。俺は焼きそば」
「そんなに腹は減ってなかったからベビーカステラ」
 きよが問うと、理玖と綾華はそれぞれに屋台で買ってきたものを示す。花火が始まる前の間、三人はそれぞれに食べ物を分け合った。其処に顔を出したのはディイだ。
「お! お前ら、俺も仲間に入れろよ」
「ディイか。こっちこそ少しだけ付き合ってくれよ」
「兄さんも来たのか。ちょっとくらいならデートの邪魔にはならねぇだろ」
 きよが手招き、理玖も手を振った。
「うんうん、ちょっとくらいは男の友情にも付き合えよ」
「デート? 今夜は特にその予定はねーな。というか俺がお前らのことを邪魔だって言ったこと、あるか?」
 それじゃあ遠慮なく、と綾華の隣に座ったディイは勝手にベビーカステラを摘む。ふっと笑いあった青年達は視線を交わした。
「てかデートって……」
「じゃなくてもきよしが寂しくて泣いちまうから」
「泣かねーわ!」
「えー、ほんとに泣かない?」
 きよと綾華は理玖を挟んで座っていても大いに普段通りだ。ディイは二人の間にいる理玖が左右を見遣っていることに気付き、おかしそうに口元を緩めた。
「両方から兄さん達の声が……」
「あはは。理玖、何でその間に座ったんだ」
「何となく……?」
 少年と青年が言葉を交わした、そのとき。
 ひゅるる、という高い口笛めいた音が辺りに響き渡った。
「お、始まった」
「去年は見れなかったんだよな……」
 きよが視線を上げ、理玖も以前を思い返しながら空を見上げる。その瞬間、夜空に大輪の花が咲き乱れた。
「おー」
「たくさん上がったな」
「スゲーめっちゃ綺麗! あの花火面白い消え方すんな」
「うわ、ほんとだ。やべぇ!」
 綾華とディイが穏やかに眺め、きよと理玖はテンション高めにはしゃぎ始める。
 きよは兎も角、理玖がこうしているのはなかなか見られない。綾華はベビーカステラをひとつ頬張った。
 牡丹に千輪菊、細波の星と錦。
 次々と上がってい花火の音と光に照らされ、四人は暫し空を振り仰いでいた。
 するときよが興奮しながら天を指差す。
「おお! あれってたこ焼きの形じゃね?!」
「違うな」
「違うっぽいな」
 すかさず綾華とディイから突っ込みが入った。そっか? と首を傾げたきよの様子がおかしくなり、理玖は薄く笑う。
「まぁ丸いもんな花火。あっ綾華兄さん、あれ猫っぽくね?」
「ん? ほんとだ、ねこ可愛い」
 次に上がった型物花火が可愛らしい形だったので彼らは和みを覚えた。またたこ焼き花火が上がらないかと探すきよ、残念ながらと首を振るディイ。花火を見上げ続ける理玖の瞳に映る光を見守る綾華。
「理玖、楽しい?」
「うん。師匠以外と来たのは初めてだし、わいわい楽しい。綾華兄さんは?」
「そっか、理玖が楽しいなら俺も楽しいよ」
 花火の最中に交わした言葉は快い。その声を聞いたきよは笑顔で振り返る。
「な、俺もスゲー楽し――」
「きよしはうるせー」
「ふがふががが!」
「あっ、俺が狙ってた最後の一個!」
 すかさず綾華がベビーカステラをきよの口に突っ込めば、ディイが声をあげた。一連の流れを見ていた理玖はきょとんとしたが、口許には笑みが浮かびはじめていた。
 そんなこんなで夜は巡る。
「そういや、願い事も出来んだっけ」
「えっ願い事? マジで?」
 きよの言葉を聞き、空を振り仰ぎ直した理玖は無意識に願いを紡いでいた。
(兄さん達が幸せであってくれたら、それでいい。けど、俺も一緒じゃダメかなって――もう少し……欲張ってもいいんだろうか)
 別に占いを真に受ける訳じゃないが、と胸中で独り言ちた理玖。
 その横顔をディイが微笑ましげに見守っていた。そして、きよはピックを握ったまま両手を重ねて願う。
「またみんなと見れますように、なんてな」
「――なんてな」
 すると大袈裟気味に彼の真似をした綾華が悪戯っぽく笑った。はっとしたきよの頬が仄かに赤くなっていた。
「おいおい! なんで真似すんだよ! 恥ずかしいじゃねーかっ」
「あははっ……なんてな? ……ふふ」
「それいいな。……似てねぇ。なんてな」
 綾華は笑い、理玖も肩を震わせながら一緒に真似ていく。ディイも笑いを堪えきれずにいるらしく、きよは拳を強く握った。
「くそ、俺も真似してやる!」
 しかし一体誰の何を真似れば良いのか。それを悩むことから始めなければいけないきよの前途は多難だ。
 そうして、花火は明るく華々しく空を彩っていく。
 今夜の思い出。
 それもまたきっと――鮮やかな光の華と同じように、記憶の中で輝くものになる。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

空に咲く大輪の花
それが目的だった筈なのに
さっきの占いの結果に心がそわそわする
花火は綺麗で眩しくて
お腹の底から響いてくる音が
一瞬現実を忘れさせてくれるよう
…でも

…俺、実は恋愛運も占ってもらったんですけど
同じ未来が視えているって魔女さんは言ってたから…
…ラナさんは、どうですか?
俺は、これからも
ラナさんと同じ未来を見ることが出来たらって
思ってるけど
ラナさんは、どうなのかな、って…

…気になってる人、なら、俺は
ラナさんのことしか気になってない、ですよ
ラナさんからなるべく目を逸らさないように
聴こえた言葉に瞬いて、笑う
…はい、また見に行きましょう
叶うなら来年だけじゃなくて、その先も


ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

綺麗に咲く夜空の花
大きな音も夜も少し苦手だけど
蒼汰さんが一緒なら安心で
隣を見れば視線が合う

恋愛運?
そう、ですか
蒼汰さんには、気になる方がいらっしゃるんですね
その、私も占って貰いましたよ

私だけ?
予想外の言葉に思わず顔を上げ
花火に染まった眼差しを見て、すぐに反らす
…えっと、その意味は
―どういう?
続く言葉は心に秘めて

でも私も、蒼汰さんと同じ未来を、見ていきたいです
だから、その
夏になったら去年みたいに
浴衣で花火を、楽しみたいです

勇気を出して零した言葉
顔は赤いし心臓は苦しいけど
花火の明かりでばれないかな?
交わした約束を確かめるように瞳を上げて
視線が合えば、また反らしてしまう



●共に歩む未来は
 星が散らばる夜空に華が咲きはじめる。
 軽快な音に続いて響く大きな音と、天を彩るとりどりの花々。
 蒼汰は次々とあがっていく花火の色彩を眺めながら、不思議とそわそわする気持ちを覚えていた。空に咲く大輪の花をラナと見てデート――もとい、ささやかな時間を過ごせれば、と思っていたのに。
 どうしてだろう。先程の占いの結果が心に残ったままだ。
 何となく蒼汰が隣を見た瞬間、ひときわ大きな音と共に空に花火が咲いた。
「……!」
「ラナさん、今のはびっくりしましたね」
 思わず身体を震わせたラナに気付いた蒼汰はそっと微笑んでみせる。ラナも無意識に隣に視線を向けてしまっていたらしく、互いの視線が重なった。
「はい。でも、大丈夫です」
 蒼汰さんが一緒だから、という言葉を飲み込んだラナは安堵の笑みを浮かべる。
 それから暫し、隣り合って座るふたりは花火を眺めていた。
 花火の光は綺麗で眩しくて、お腹の底から響いてくる音が一瞬だけ現実を忘れさせてくれるようだった。
 しかし、やはり心模様は先程のまま。
 黙っていては何も始まらないと感じた蒼汰はラナに語りかける。
「……俺、実は恋愛運も占ってもらったんですけど」
「恋愛運? そう、ですか」
 蒼汰の声を聞き、ラナは胸が騒ぐような感覚をおぼえた。
 誰との恋愛運を占って貰ったのか。そういった相手がいなければ申し出たりなどしないはず。複雑な気持ちが生まれていることにラナは戸惑っていた。
 その機微には気付けず、蒼汰はラナに問う。
「同じ未来が視えているって魔女さんは言ってたから……ラナさんは、どうですか?」
「その、私も占って貰いましたよ。蒼汰さんには気になる方がいらっしゃるんですね」
 意を決して聞いた蒼汰に対してラナは不安なまま。
 少し怖かった。上がり続けている花火の音のように、ほんの少しだけ。
 ラナの表情が僅かに硬くなっていると察した蒼汰は、違うんです、と首を振る。
「……気になってる人、なら、俺は。ラナさんのことしか気になってない、ですよ」
「私だけ?」
 照れが乗じて言葉が途切れがちになる。
 もしかすれば別の誰かの名前が紡がれるのかと思っていたが、予想外の言葉に思わず顔を上げたラナ。その眼差しを受け止めた蒼汰は言葉を続ける。
「俺は――これからもラナさんと同じ未来を見ることが出来たらって思ってるけど。ラナさんはどうなのかな、って……」
 互いに花火の色に染まった眼差し。
 視線をすぐに逸らしたラナは何と答えていいか迷っていた。
「……えっと、」
 その意味は――どういう?
 浮かぶ言葉は言えずに心に秘める。しかし、続けたい言の葉もあった。
「私も、蒼汰さんと同じ未来を、見ていきたいです」
「ラナさん……」
「だから、その。夏になったら去年みたいに、浴衣で花火を楽しみたいです」
 お互いに遠慮がちなのが何だかおかしくて同じ気持ちだったことが分かる。ラナから目を逸らさないようにしていた蒼汰は幾度か瞬き、穏やかに笑った。
「……はい、また見に行きましょう」
「よろしくおねがいします」
 勇気を出してラナが伝えた言葉は少しだけ震えていた。顔は赤くて心臓は苦しいけれど、きっと煌々と照らしてくれる花火の明かりでばれないはず。
 交わした約束を確かめるように瞳を上げれば、再び視線が合った。
 ふい、と逸してしまう視線は照れと嬉しさの証。
 蒼汰は花火が彩る空を見上げたラナに倣い、自分も天涯を振り仰いだ。
 ――叶うなら来年だけじゃなくて、その先も。
 同じ未来を過ごせたら。
 花火の光にそっと込めたのは大切な願い。今はただ、互いに抱く想いが少しでも同じことが幸せで――。
 散った遊星花火の光は、ふたりの視線の先できらきらと輝いていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミンリーシャン・ズォートン
椋(f19197)
チョコミント色の服を着用

椋、お待たせ!
最愛の人の姿を見つければ
彼の腕の中へ飛び込んで幸せに満ちた表情で額を擦り寄せ
ぎゅ。
手を繋ぎ暗い天を見上げます
わくわくしながらその時を待ち

ねぇねぇ、椋。花火ってもうすぐ?
なんて彼に問いかけていると
突如響く空気を裂く音
敵襲かと驚いて
咄嗟に彼を庇うように強く抱き締めるけれど
其れは花火の音で――。

わぁぁ――……っ!
空いっぱいの煌めく花々に私は一瞬で魅了される

うんっ、凄く綺麗!
椋、椋
花火ってすごいね!
大好きな彼と二人寄り添い
世界の美しさを瞳に焼きつけます

――っは!
椋、写真っ。スマホで写真撮ってねっ、綺麗にね!
なんて無茶振りを

楽しいね
綺麗だね
愛してる


杣友・椋
リィ(ミンリーシャン/f06716)

約束していた場所で待ち合わせ
――リィ、
飛び込む君をぎゅっと受け止め、額を合わせる
戦いの疲れも君を見ればすっかり忘れて

手を繋ぎ仰ぐ宵空
ああ、そろそろじゃねえかな

大きな音を連れ咲き始める華
何故だか庇うみたいに抱き締められながら、
幼い頃ぶりに目にする光に見蕩れてしまう

綺麗だな。凄いだろ、リィ
空彩る華は初めてだという君へ笑いかけ
天色の眸に映る煌きは喩えようもなく美しく
仰ぐ彼女の姿にもまた惚れ惚れと

彼女の無茶振りに思わず微笑んで
この眼で堪能したあとで、もう少し後ろから撮ろうか

紺青に開いては融けていく其れ
――どうか君と永く共に居たい
流星の如き輝きに願いを懸けた

愛してる



●心を重ねて
 夜が深まっていく最中。
 チョコミント色のスカートがふんわりと揺れる様が見えた。
「――椋!」
 それと同時に聞こえたのはミンリーシャンの声。約束の場所に椋を見つけた彼女は、お待たせ、と告げると共に最愛の人の腕の中に飛び込む。
「――リィ、」
 腕を広げた椋はミンリーシャンをぎゅっと受け止め、額を合わせた。
 幸せに満ちた表情が見られること。そして、こうして触れあえること。それまで感じていた戦いの疲れも、彼女と居るだけですっかり忘れてしまう。
 お疲れ様。ありがとう。
 そっと告げあったふたりは身体を離して手を繋ぐ。
 空は暗くて明かりも仄かな街灯だけだが、こうして隣同士で歩けば絶対にはぐれたりなどしない。見上げた天にはちいさな星が見える。
 浜辺の片隅に丁度良い場所を見つけたふたりはそっと其処に腰掛けた。手は重ねたまま宵空を仰ぎ、間もなくだという開始の時間を待つ。
「ねぇねぇ、椋。花火ってもうすぐ?」
「ああ、そろそろじゃねえかな」
 ミンリーシャンがわくわくしながら問う言葉に椋が頷いた、そのとき――。
 空気を裂くような音が耳に届く。
 続けて響いていく破裂音と、身体中に走った不思議な衝撃。
「……っ!?」
 敵襲かと驚いたミンリーシャンは咄嗟に椋を庇うように強く抱き締めた。彼女が懸命に自分を守ってくれるものだから少しだけおかしくなって、椋は双眸を細める。
 大丈夫。リィ。
 耳元を擽る彼の優しい言葉を聞き、顔を上げたミンリーシャンは気付く。
 今のは花火の音と衝撃だったのだ、と。
「わぁぁ――……っ!」
 彼女の真剣な顔は途端に綻び、別の意味での驚きの表情に変わった。椋はミンリーシャンの瞳に花火の光が映っている様を見遣り、自分も空に目を向ける。
 大きな音を連れて次々と咲き始める華。
 最初の花火に続いて連続で上がった光と音は幼い頃ぶりに目にするものだ。思わず見蕩れてしまっている椋の隣、ミンリーシャンも夜の華に魅了されていた。
 けれどもまだ少し音には驚いてしまう。
 ぎゅう、と彼の腕に掴まったミンリーシャンは空いっぱいの煌めく花々を眺める。
「綺麗だな。凄いだろ、リィ」
「うんっ、凄く綺麗!」
 空を彩る華を見るのは初めてである彼女の瞳はきらきらと輝いていた。花火と天使を交互に見た椋は穏やかに笑いかける。
 天色の眸に映る煌きは花火に負けないほど、喩えようもなく美しかった。
 空を振り仰ぐ彼女の姿にもまた惚れ惚れとして、椋は今というひとときを楽しむ。
「椋、椋。花火ってすごいね!」
 大好きな彼。素敵な光と音の共演。どちらも心地好い。
 ミンリーシャンは寄り添うぬくもりを確かに感じながら、瞼の裏に世界の美しさをしっかりと焼きつけていく。
 こんなにも世界が煌めいて見えるのはきっと、ひとりではないから。
「そうだな、リィ。この後にも凄い花火があるはず」
「――っは! だったら椋、写真っ。スマホで写真撮ってねっ、綺麗にね!」
「綺麗に? ……分かった」
 後で見たいから、と写真を所望する彼女の眼差しは期待に満ちていた。その無茶振りに思わず微笑んだ椋は頷く。
 どんな我儘でも聞いてあげたくなる。こんなに可愛い願いならば尚更だ。
 この眼で堪能したあとで必ず撮ると約束した椋は、ミンリーシャンをそうっと抱き寄せた。その理由は少しでも同じ位置で、同じ景色を同じ視線で見たかったから。
 紺青に開いては融けていく光の華。
 其処に込めるのはちいさくてささやかな、けれども大切な願い。
 ――どうか君と永く共に居たい。
 椋が流星の如き輝きに願いを懸ければミンリーシャンが淡く笑む。そうして、彼女は浮かぶ想いのままに言葉を紡いでいく。
「楽しいね。綺麗だね」
 それから。
 椋にはその先の言葉がわかっていた。ミンリーシャンが花唇をひらいたときに合わせて、彼は己の思いを言葉にしていく。
 ――愛してる。
 言の葉が重なり、ふたりの視線も交わる。
 彼らの姿と未来を明るく照らすように、夜空には大輪の花が咲き誇った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

十朱・幸也
花菱(f06119)と
アドリブ大歓迎

お、サンキュな
つか、覚えてたのか(笑いつつ、日本酒を受け取り
乾杯……今回の依頼もお疲れさんってな

花火は夏のイメージ強かったけど
春の花火っていうのも風情あるもんだな
童心に帰ったつもりで、たーまやーとか言ってみるか?

花菱、どうした?
なんつーか、思春期真っ盛りみたいな顔に見えるぜ
あー、占いの事か……そうか……

(不意打ちでデコピンを試みる)
バーカ
お前一人で思い悩んでるんじゃねぇよ
人との距離感なんて
実際に言葉を重ねねぇとわかんねぇだろ
だから、あー……お互いに楽しいならいいんじゃねぇか?

って、無駄に年食ったオッサンの説教みたいになっちまったか
(誤魔化しに酒を呷った


花菱・真紀
十朱さん(f13277)と

はい、お酒とおつまみです!
十朱さんは日本酒がお好きでしたよね。
じゃ、乾杯。

ふふっ、俺にとっては今年初花火なんでめっちゃ嬉しいです!
と言うかここ数年誰かと見たことってなかったなー…ははっ、こう言うのがいけないんでしょうね。占いだってのは分かってるんですけどね…言ってたじゃないですか十朱さんに依存する人もでてくるんじゃないかって。あれ俺のことかなって
…一緒に依頼に行くの楽しくて…もっとって思っちゃうんです。もっと一緒にいられたらいいなって。
だからこうやってずるずる依存しちゃうんじゃないかって。
…ごめんなさい。俺、まだ人との距離の取り方が分からなくて。

…ありがとうございます



●空に耀く
 海岸線が見える浜辺の片隅。
 無事に一仕事を終えた二人は花火見物に洒落込んでいた。
「はい、お酒とおつまみです!」
「お、サンキュな」
 真紀が用意してきた花火のお供を受け取り、幸也は静かに笑った。花火の前の熱を帯びた雰囲気には冷たい酒が似合う。
「十朱さんは日本酒がお好きでしたよね」
「つか、覚えてたのか。それじゃあ、乾杯……今回もお疲れさんってな」
「じゃ、乾杯」
 視線を交わし、片手を掲げたふたりは良い夜に乾杯を重ねた。
 すると空に一筋の光が昇り、始まりを告げる花火が空にあがる。大きな音と共に空を彩った花火は空気を震わせた。
 おお、と声をあげた彼らの視線は天に釘付けになる。
「花火は夏のイメージが強かったけど、春の花火っていうのも風情あるもんだな」
 暑くはない分、澄んだ空気が快い。
 幸也が酒を傾けながら感心する中、真紀も楽しげに口許を緩めた。
「ふふっ、俺にとっては今年初花火なんでめっちゃ嬉しいです!」
 冠菊からの千輪菊。
 牡丹がその後に続き、きらきらとした星の尾を散らしていく。空を見上げた真紀の横顔を見遣った幸也はふと提案する。
「童心に帰ったつもりで、たーまやーとか言ってみるか?」
「いいですね。と言うかここ数年、誰かと見たことってなかったなー……」
 対する真紀は少しだけ浮かない顔をしていた。
「花菱、どうした?」
「ははっ、こう言うのがいけないんでしょうね」
 幸也が問いかけると、彼は花火から視線を外す。下を向いてしまった真紀の顔は何だか思春期真っ盛りの少年のようにも見えた。
 誰かと。数年。
 彼が零した言葉から色々と察した幸也は合点がいったように何度か頷く。
「あー、占いの事か……そうか……」
 おそらく真紀は魔女から聞いたことを気にかけているようだ。
 そうです、と答えた彼は頭を振る。
「占いだってのは分かってるんですけどね……。言ってたじゃないですか、十朱さんに依存する人もでてくるんじゃないかって。あれ、俺のことかなって」
「……」
「十朱さん?」
 複雑な気分で思いを言葉にした真紀だが、幸也から反応はない。
 どうかしたのかと顔を上げた瞬間。
「バーカ」
「痛っ」
 不意打ちでくらったのは幸也からのデコピン。ぺちっという音が響いたが、それは次に上がった花火の音に掻き消されてしまう。
 額を押さえた真紀は不思議そうに彼を見つめる。
「お前一人で思い悩んでるんじゃねぇよ」
「でも……一緒にいるのが楽しくて……もっと、って思っちゃうんです。もっと一緒にいられたらいいなって」
「成程な」
 彼が言いたいことをまずは吐き出してもらうべきだと感じた幸也は、その言葉に耳を傾けていく。これも大人の余裕だ。
「だからこうやってずるずる依存しちゃうんじゃないかって。俺、まだ人との距離の取り方が分からなくて」
「人との距離感なんて実際に言葉を重ねねぇとわかんねぇだろ」
「……ごめんなさい」
 謝った真紀はまだ不安そうだったが、幸也は気にするなと告げ返した。
 依存が悪いことだとは一概には言えない。
 それにこれは自分の結果であり、真紀の未来はまた別のもの。それに当たっていない部分もあり、魔女も未来は変えられると言っていた。
 それに――。
「だから、あー……お互いに楽しいならいいんじゃねぇか?」
 幸也は語る。
 そんなことは何とも思っていない。自分も楽しいと感じている、と。
「って、無駄に年食ったオッサンの説教みたいになっちまったか」
 何だか照れくさく感じたらしい幸也は誤魔化し気味に酒を呷った。ほら、と真紀にもつまみを勧めた彼は元の穏やかな笑みを浮かべ続けている。
「……ありがとうございます」
 真紀は心の奥があたたかくなった気がして、心からの礼を伝え返した。
 同じ戦いを乗り越え、同じ景色を見る。頼もしくて楽しいと感じられること。今はきっと、それだけで良い。
 其処からゆっくりと空を眺める二人。
 その瞳には、美しく輝く鮮やかな光の輪が映っていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネロ・ヴェスナー
【黒焔】
リンタロウオトウサンガ、ドコカニツレテイッテクレルッテ
アリスラビリンスジャナイトコロ、コワイ

床を嗅いで確認してから後を追う
それを繰り返して高台へ

ドンとお腹に響くような音
未知の感覚は不安と混乱に煽られて
ウ……ウ……と呻きながら耳と身を伏せる

オトウサン、オトウサン……コレ、ナァニ?
怯えながら問い、撫でて話す彼の言葉に思い切って目を開く

……?
空に光の玉が花を咲かせるように広がって
響いた音は争いのでも何でもなくて
空に「あれ」を上げるものだと理解すれば気にならなくて

オトウサン……!アレ、ハナビ?ハナビ!
ぴょこぴょこと軽く跳びながら空を見つめる

キレイ、モット、ミレルノ?
ウン、コンドハ、ミンナデ


篝・倫太郎
【黒焔】
人気の無い場所高台で
ネロと一緒に花火を観る

最後にウチにやって来た子供
心優しくて、怖がりな大きな子供

花火の打ち上がる音に耳をぺたんと伏せて
ぎゅうっと瞳を瞑って……
そんな風に怖れるものだから
そっとそっと頭を撫でる

ネロ、ネロ
大丈夫……大丈夫だから、空を見てみな?

おっかなびっくりで空を見る様子に小さく笑って
綺麗だろ?

今度は花火の美しさに
少しばかり興奮した様子ではしゃぐから
つい、微笑ましくて笑っちまう

ネロ?気に入ったか?

ん、花火はこれからの時期が本番だから
今度は皆で観に行こうな?

そう、みんなで、だ……

嬉しそうに揺れるネロの尾が
やっぱりなんだか微笑ましくて

みんなで見る時は、美味しいもん食べような?



●初めての花火
 海辺に近い人気の無い場所。
 波の音は聞こえても、喧騒からは少し離れた高台。
 もうすぐ花火が始まるという最中に倫太郎はネロを呼ぶ。
「こっちだ、ネロ」
 呼ばれたのはおそるおそる付いてくる黒い毛並みの狼だ。
「リンタロウオトウサン、マッテ」
 ――アリスラビリンスジャナイトコロ、コワイ。
 辺りの匂いを嗅いで確認してから後を追ったネロは、それを繰り返してやっと高台へと辿り着いた。身体は大きくても、心優しくて怖がりな幼子のような子。彼は最後に倫太郎達のところにやって来た子供だ。
 オトウサン、と倫太郎を呼んだネロは腰を下ろした彼の傍にぴったりとくっついた。
 周囲すべてが知らない匂いだが、倫太郎の匂いだけは安心する。言葉にはしないが、ネロがそう思ってくれているのだと感じられた。
 倫太郎はネロを軽く撫で、もうすぐだと伝える。
「そろそろ空に凄いのが……っと!」
「……!? ――!!」
 彼が言い終わる前に口笛のような甲高い音が鳴り、続けて大きな衝撃が空気に伝わって響いてきた。それは一瞬のことで、ネロは混乱する。
 ドンとお腹に響くような音に驚いたネロは尻尾を即座にくるりと丸めた。
「ウ……ウ……」
 未知の感覚は不安で仕方ない。呻きながら耳と身を伏せたネロ。尾も耳も不安気な彼を見た倫太郎はそっと問いかけた。
「ごめんな、怖かったのか?」
「オトウサン、オトウサン……コレ、ナァニ?」
 ぎゅうっと瞳を瞑ってそんな風にネロが怖れるものだから、倫太郎は先程よりもやさしく頭を撫でてやる。
「ネロ、ネロ。大丈夫……大丈夫だから、空を見てみな?」
 その声がとても穏やかだったので危険なことが起こったのではないと判断できた。ネロが思い切って目を開くと、ちょうど二発目の花火があがっていくところだった。
「……?」
 先程は音に驚いて何も見ていなかったが、空に光の玉が昇っている。
 そしてそれは花を咲かせるように広がっていった。同時に響いた音は争いのでも何でもなく、空に『あれ』を上げるものだと理解できた。
 おっかなびっくりでも、しかと空を見るネロの様子に倫太郎がちいさく笑った。
「オトウサン……! アレ、ハナビ? ハナビ!」
「綺麗だろ?」
「キレイ! トテモキレイ!」
 怯えていた子がもうすっかり花火に夢中である姿は微笑ましくて可愛い。美しいものをみたというようにぴょこぴょことはしゃぐネロ。その瞳にはきらきらと光って弾ける花火の軌跡が映っていた。
 不安そうに丸まっていた尻尾はもう随分と楽しげに揺れている。
 どうやら少しばかり興奮してもいるらしい。転がり落ちるなよ、と告げてネロを支えた倫太郎はおかしそうに笑った。
「ネロ? 気に入ったか?」
「ウン! コレッテ、モットミレルノ?」
 軽く跳びながら空を見つめ続けるネロは期待の眼差しを向けている。この後の時間も、それからこの先の季節でも見られると答えた倫太郎は頷いた。
「ん、花火はこれからの時期が本番だから。今度は皆で観に行こうな?」
「ウン、コンドハ、ミンナデ」
「そう、みんなで、だ……」
 みんな、という言葉をネロが発したことで倫太郎の中に家族の姿が思い浮かぶ。
 それはネロも同じらしい。ミンナ、ミンナ、とはしゃいで嬉しそうに揺れるネロの尾がやっぱりなんだか微笑ましくて――。
「みんなで見る時は、美味しいもん食べような?」
「タベル! イマモナニカ、タベル?」
「はは、帰りに買っていっても良いな」
 もうネロに怯えの感情はない。生まれ故郷以外の世界も怖くはないのだと知れたことで、きっと彼も少し成長できただろう。
 倫太郎はもっとたくさんの景色を教えたいと願い、そっと双眸を緩めた。
 ネロと共に見つめる視線の先。
 其処には咲いては散り、夜空を染めあげる見事な花火が輝き続けていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

斬断・彩萌
ヴぃっちゃん(f01172)と

港の倉庫の屋根に昇って、二人きりの花火大会
空に咲く燃える花に照らされるあなたの表情は、とてもカッコイイ

――ね、今日さぁ、恋占いしてもらったんだ
『恋は戦いで、誰かを傷つけるかも』って言われちゃった
『これからもきっと苦しい思いをする』ともね
でも、それでいいんだ
簡単に落ちるヴぃっちゃんじゃないでしょう?
胸が苦しいのは……慣れてる
だからさ、ヴぃっちゃん。私を差し置いて他のポっと出の女なんかにひっかかっちゃダメだからね?

花火を横目に、ずっとあなたを見る
やっぱり好きだなぁ
……ん。花火のこと!綺麗だね。一緒に見れて、良かった
来年も、また一緒に見れたらいいな。


ヴィクティム・ウィンターミュート
彩萌(f03307)と

…花火、か
見るのはいつぶりだ
ストリートでは見たこと無かったし、猟兵になってからも忙しくて見る暇がほとんど無かったな…

……物好きだよな
相手が俺じゃなきゃ、素直に応援できていたんだろうけど
よりにもよって俺にそんな感情抱くなんて、本当アンラッキーだと思うよ
…なんて言っても、お前は全然止める気ねーんだもんな
好きにしたらいいさ、俺には止めようがない
どう足掻いても結末は哀しいだけ、報いてはやれない
──誰も恋人にはしないし、させねえからな
急にフラッと旅に出てお終い、なんてこともあるんだぜ?

…花火、綺麗だな
(此処に居るのも、生きているのも…俺じゃなければな)
(ずっと、そう思い続けてる)



●夜波に映る華
 光が咲いて、夜に色彩が満ちる。
 遠く響いていた漣の音は既に花火の音に掻き消されていた。
 港にある倉庫の屋根の上。彩萌とヴィクティムは頭上を振り仰いでいる。天を彩っていく華は様々な形をしていて、空にあがる度に違う色や様子を見せてくれていた。
 海辺には人影があるが、今は此処で二人きり。
 ヴィクティムは屋根に立ったまま。彩萌はその片隅に腰を下ろして。
 まるで自分達だけの花火大会のようだ。
 海が少し遠いからこそわかる、水面に映る光華の影。視線を下ろした彩萌は空を見上げ続けているヴィクティムの横顔を見つめた。
 空に咲く燃える花の光に照らされる彼の表情はとてもカッコイイ。
 その視線に気が付いたヴィクティムが振り返る。
 何だ、と片目を眇めた彼の仕草も彩萌にとってはまた良いものだと感じられる。
「海に映る花火も綺麗だと思って」
「……そうか。それにしても花火、か」
 或る意味で偽りない言葉を告げた彩萌に頷き、ヴィクティムは再び空を仰いだ。
 花火を見るのはいつぶりだろう。
 幼い頃、ストリートに居た頃はもちろん見たことが無かったし、猟兵になってからも忙しくて見る暇がほとんど無かったものだ。
 ヴィクティムが花火に意識を向けている中、彩萌はそっと立ち上がった。
 花火の音に声が消されてしまわぬように彼の隣に歩み寄る。そうすれば彼と同じ目線で空の華を見られるようで少し嬉しかった。
「――ね、今日さぁ、恋占いしてもらったんだ」
「占い?」
 花火を見つめながら問い返すヴィクティムに対して彩萌は語っていく。
 恋は戦いであること、誰かを傷つけるかもしれないこと。そして、これからもきっと苦しい思いをするということ。
 占いはただの占いで、自身もそれを信じきるわけではないが――。
「でも、それでいいんだ」
 自分の背に回した腕。その指先を重ねた彩萌は遠い目をした。
「……物好きだよな」
 ヴィクティムは彼女が誰との恋愛を占って貰ったのかを理解していた。相手が俺じゃなきゃな、と零したヴィクティムは肩を竦める。そうでさえなければ素直に応援できたのだろうが、対象が自分だと知っているとなると話は別だ。
 彩萌も彼が恋よりも違う事柄に比重を置いていることを知っている。
「簡単に落ちるヴぃっちゃんじゃないでしょう?」
「よりにもよって俺にそんな感情抱くなんて、本当アンラッキーだと思うよ」
 ――なんて言っても、絶対に聞かない。彩萌はそういった娘であるのだとヴィクティムはよく理解していた。
「お前は全然止める気ねーんだもんな」
 ヴィクティムは彩萌の想いを止める術を持ち得ていない。そして、無理に人の心を変えることもよしとしていなかった。
「胸が苦しいのは……慣れてるから」
「好きにしたらいいさ、俺には止めようがない」
 それにどう足掻いても結末は哀しいだけで報いてはやれない。
 ヴィクティムの言葉は冷たいようでいて優しい。どうしてか彩萌にはそう思えた。
「うん、そうする。だからさ、ヴぃっちゃん。私を差し置いて他のポっと出の女なんかにひっかかっちゃダメだからね?」
 彩萌の願いに対してヴィクティムは軽く首を振る。
「――誰も恋人にはしないし、させねえからな。急にフラッと旅に出てお終い、なんてこともあるんだぜ?」
「それは……」
 旅に出るなら追いかけても良い。或いは――。
 それも悪くないのかも、という思いが過ぎったが彩萌は口にはしない。
 二人の間に暫しの沈黙が満ちた。
「花火、綺麗だな」
 ヴィクティムは波のような音を発する郡声花火を観て、ぽつりと零す。
 彩萌は頷き、花火を横目にしながらずっと彼を見つめていた。こうやって花火にしか目を向けない彼の瞳に自分は映らないのかもしれないけれど。
「やっぱり好きだなぁ」
「――ああ」
 彩萌の声を聞き、ヴィクティムはそれだけを答えた。彩萌は視界が僅かに滲んだことを感じながら、明るく笑ってみせる。
「……ん。花火のこと! 綺麗だね。一緒に見れて、良かった」
 来年もまた一緒に見れたらいいな。
 健気な彩萌の願いを耳にしたヴィクティムは何も答えず、遥かな空を見つめ続ける。
 ――此処に居るのも、生きているのも、俺じゃなければ。
 ずっと、そう思い続けている。
 決して報いることの出来ぬ想いが此処にある。それでも今は、この光と音に浸ろう。
 そして、二人が見上げる夜空に銀波の光が揺れた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

彩波・いちご
あかねさんと

改めてあかねさんとデートです
幼馴染ではありますが、急に積極的に来られてちょっと困惑気味…嫌ではありませんけども
「浴衣お似合いですよ」
とりあえず困惑は引っ込めて、笑顔でエスコートです
ツケとか言われても困りますけどねっ

え、今なんて?
花火の音で聞こえなかったんですけど…
でも多分もう1人の幼馴染との事言われてるのはわかるので…何を知ってるんです…?と恐る恐る

うぅ…ほんとストレートですね…
今誰かを選べと言われても困るので、返事はすぐにはできませんが…
…嬉しく、思います

でも、あまり攻められると、その…(顔真っ赤

ほら、花火綺麗ですから見ましょう?
(軽く肩を抱いて寄せて…今はこれが精いっぱい


静宮・あかね
いちごはん(f00301)と逢引
晩春用に桜柄浴衣
巨乳はサラシで潰すも先程より緩め

占いの所為やないけど、ツケは払うてもらうんよ
何?って、ホンマいけずやわぁ♪(強く腕を抱く)
優しすぎて、今のいちごはん簀巻きやないの
でも肝心なトコで、なぁ?(くす)

いちごはんの事情はウチも承知や
一人に絞れる時やないし、薄情にもなれへん

せやかて、ウチも幼馴染2号や
(花火の音)はんみたく踏み込みたいんよ?
知ってた!?って、おなごの直感♪
当然(花火の音)も覚悟の上やさかい

せやから、今夜言うんよ…(じっ)
ウチ、いちごはんが好きになってしもてん
返事はせかんけど、他の娘みたく攻めてええんよ?
ウチも攻めてくさかい、な♪(頬にキス)



●告白と決意と夜の色彩
 花火の夜。
 海辺に満ちる空気は澄んでいる。
 あかねが装うのは晩春用の桜柄浴衣。先程よりも緩めに着こなした様相は今夜の雰囲気にぴったりで、微笑んだいちごは彼女を褒めた。
「浴衣お似合いですよ」
 改めてのデートということで、二人は隣同士で並んで座っている。
 幼馴染という関係であるゆえに気負いはないが、急に積極的に来られたことでいちごは少しだけ困惑気味。しかし嫌ではないので、その気持ちは引っ込めていた。
「エスコートありがとなぁ♪」
「いいえ、これくらいは当然です」
 眺めの良い場所を探してくれたいちごに礼を告げるあかね。
 もう少しで花火が上がるというとき、あかねは真っ直ぐにいちごを見つめた。
「占いの所為やないけど、ツケは払うてもらうんよ」
「ツケとか言われても困りますけどねっ」
 あかねの視線が恥ずかしくて、いちごは照れ隠しにふるふると首を振る。彼の腕を強く抱いたあかねはくすりと笑った。
「ホンマいけずやわぁ♪」
 いちごは優しすぎる。それゆえに今の彼は簀巻きになっている、というのがあかねの思いだ。皆がいちごを慕う状況は悪いものではないが――。
「でも肝心なトコで、なぁ?」
「うぅ……」
 いちごの頬が赤く染まっている。それもまた可愛らしいと思えた。
 しかし、あかねだっていちごの事情は承知している。一人に絞れるときでもなければ、薄情にもなれないのはよく分かっていた。
「せやかて、ウチも幼馴染二号や」
 更にぎゅっと腕に力を込めたあかねはいちごを見つめ続ける。今日は大切なことを告げようと思っていた。
 しかし、そのとき――。
 夜空に光の筋があがり、大きな音と共に大輪の花が咲いた。
「――はんみたく踏み込みたいんよ?」
「え、今なんて?」
 あかねの言葉は花火の音に掻き消されてしまう。其処から次々と花火が上がりはじめたが、いちごの意識と視線は空ではなくあかねに向いてしまう。
 赤い軌跡を描く花火。
 きらきらと尾を引いて消えていく星の残滓。
 それらはとても綺麗だが、今はお互いのことが気になって仕方がない。
 花火の音は相手の声をよく聞こえなくしてしまっているが、おそらくもう一人の幼馴染とのことを言われていることだけは分かった。
「何を知ってるんです……?」
 いちごが恐る恐る問うと、あかねは笑みを返す。
「おなごの直感♪ せやから、当然――も覚悟の上やさかい」
 再び花火が上がる。音に隠れてしまった言葉は、今度はいちごだけに伝わった。
 そして、あかねは思いの丈を告げることを決める。
「せやから、今夜言うんよ……」
「……はい」
 花火が収まった頃合いを見計らい、あかねはじっといちごを見つめて語る。
「ウチ、いちごはんが好きになってしもてん」
 真っ直ぐで飾らない素直な言葉。それは実にあかねらしいものだ。
 いちごは頬を掻き、伝えてくれたことをそっと受け止めた。
「ほんとストレートですね……」
「返事はせかんけど、他の娘みたく攻めてええんよ? ウチも攻めてくさかい、な♪」
 あかねは宣言と同時に、いちごの頬にキスを落とす。
 そうすれば彼の顔が更に真っ赤に染まった。
 彼女に察して貰っている通りに今は誰かを選べと言われても困ってしまう。そのため返事はすぐにはできないのだが、いちごは精一杯の言葉を返す。
「嬉しく、思います。でも、その……」
 あまり攻められると――。
 気持ちが何だかふわふわとしてしまう。唇が触れた頬が熱い。けれどこれも空にあがる花火の熱のせいだということにして、いちごは上空を指差した。
「ほら、花火が綺麗ですから見ましょう?」
「せやね、今夜は二人っきりで……♪」
 いちごが軽く肩を抱いて寄せてくれたので、あかねも嬉しくなる。
 そうして暫し、二人は色鮮やかな花火の夜を楽しんだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

兎乃・零時
アドリブ絡み歓迎

花火大会

自身の出身世界じゃ中々見る機会のない花火
この機会にしっかり見てみたい

見える形は色々あって華やかだ

普段だったら誰かと一緒に!ってなる事も多い俺だが、偶には一人で来ることも有る
もしかしたら知ってる奴にも会うかもだし、その時はその時で楽しもう

花火大会特有の食べ物も有るなら買って食べるのも有だろう

かき氷……ってのもあるらしいな?
氷に味付けるのは中々凄い事だ!

なんだろう、あれは火花……光……
俺様もいつか、あんな空に花を開かせるみたいな魔術使えたらなぁ…
絵じゃないけど、こう、…こう…!
(上手く言葉に出来ない

…知ってる魔術の掛け合わせで上手く行かないかな…?
火と光の魔術で上手い事…!



●光と炎の魔法
 花火という存在は知っている。
 しかし零時にとってはなかなか見る機会のなかったものだ。それゆえにこの機会にしっかり見てみたいと考え、零時は海辺に訪れていた。
 初夏の海風は心地好い。
 催しが始まる直前、周囲も何だか浮足立っているようだ。そろそろ始まるかと感じた零時が空を振り仰いだとき。
 口笛めいた音が耳に届き、光の一閃が夜空を裂いていった。
 次の瞬間、天に色とりどりの華が咲く。
「おお……!!」
 大きな音と身体を伝っていく心地好い衝撃。零時は空に散る星の欠片を瞳に映し、一人で過ごす夜の心地を確かめていく。
 赤の軌跡、蒼の軌跡。
 尾を引く光に、ぱっと消えていく光。見える形は色々あって華やかだ。
 普段の少年であれば誰かと一緒に賑やかに過ごしただろう。しかし今夜は少しだけ特別。偶には一人でこうして訪れるのも悪くはない。
「うわ、冷たっ!」
 花火に暫し見とれていると、零時の掌に氷の欠片が落ちてきた。
 はっとした零時は手にしていたかき氷が溶けているのだと察する。花火が始まる前に屋台で買ってきたのをすっかり忘れていた。
 それほどに花火が綺麗だったということだが、そろそろ食べ始めなければ徐々に氷が水になっていってしまう。ストローで出来たスプーンを使ってしゃくしゃくと氷を崩し、一口を頬張る。
 選んだのは零時の髪の色に少し似た、ブルーハワイのシロップだ。
 ひんやりとした感触と爽やかな風味が広がっていく。
「これ良いな、氷に味を付けるのは中々凄い事だ!」
 美味い、とかき氷を食べ進めていく零時だったが、彼は知らなかった。
 一気に食べると頭がキーンとすることを。
「……、――?!」
 思わず仰け反る零時。だが、何とか乗り切った彼は事なきを得る。
 そうしている間にも様々な花火があがり、零時はひとつひとつを感心しながら眺めた。
「なんだろう、あれは火花……光……」
 其処から思いを巡らせるのは魔法のこと。
 魔法のように光り輝く花火をヒントにすれば何かに近付ける気がした。自分もいつか、あんな空に花を開かせるみたいな魔術が使えたら――。
「絵じゃないけど、こう、……こう……!」
 様々な色彩を描く友人のことを思い出し、零時は上手く言葉に出来ない思いを巡らせてゆく。彼の瞳には光が映り込んでいる。
 知っている魔術の掛け合わせで、或いは火と光の魔術で。
「何か閃いた気がする!」
 気付けば立ち上がっていた零時は空を振り仰ぐ。
 そうして、其処から何を考えて、どんなものを生み出すのか。それは――未来の最強の魔術師たる彼しか知らないこと。
 空に咲き続ける華々は前途有望な少年の姿を明るく照らしていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

朝日奈・祈里
⭐🌸
お、本当だ
折角だし、蒼眼の少年も花火見ようぜ!

穴場とかある?とか聞きながら、場所の品定め
ふむ、そろそろ時間……?
…み゛ッ?!
突如聞こえた大きな音に身を固くする
な、なに今、の…み゛ッ?!

こ、これが、花火?!
そらに咲く花を
儚く散り逝く花を
愛でるつもりが…
すげぇ迫力だな?!

驚きすぎてふたりの服の裾をぎゅっとにぎる
大丈夫、ちゃんと見えてる…!
すげぇ!見れてよかった!
…えっ、これを…手に…?!
死ぬ気か?!

やきそば!焼きそば食べたいなっ!あるかなぁ?

いつか食われるだろう優しくあたたかな時間を
今は大切に、楽しんで行こう。


荻原・志桜
⭐🌸
あっ!祈里ちゃん。あそこにいるのディイくんじゃない?
にひひ、ディイくん確保! 時間あったら一緒に遊ぼうよ

夜空に浮かぶ大輪の花
鮮やかで眩く空を彩れば儚く消えていく
わあ…!いまの見た?!大きい花火のあとに小さな花がたくさん!
祈里ちゃん初めての花火はどう? ちゃんと見えてる?
抱っこしようか――あ、ディイくんの方がいいかな?

打ち上げ花火もいいけど手持ち花火も好きなんだよね
そうだ!今度買ってみんなでやろうよ
あんなに大きくないけどすごくキレイで色んな種類があるんだよ
絶対にやろうね、ふふっ

遠い日の思い出も。向き合わないといけない未来も
いまこの瞬間も確りと胸に刻んで

そうだ、屋台もあるんだよね
ほら行こう!



●散りゆく光
 花火が上がり始める少し前。
「あっ! 祈里ちゃん。あそこにいるのって……!」
「お、本当だ」
 はぐれないように手を繋いで歩いていた志桜と祈里は、一人で歩いていた青年の背を見つける。二人は其方に駆けていき、その名を呼んだ。
「にひひ、ディイくん」
「折角だし、蒼眼の少年も花火見ようぜ!」
 ぽすっと後ろから軽く背に触れる志桜と、服の裾を引っ張る祈里。振り向いたディイは少女達に笑みを向けた。
「お前らか。じゃあ向こうの方で待ってろ。ちょっと友達に会ってくる」
「それじゃ後でだな」
「はーい!」
 そっちが穴場だから、と指差された方向を見遣った祈里は頷き、志桜はいってらっしゃいと手を振った。
 そうして、海辺の一角に腰を下ろした少女達は花火が上がるのを待つ。
「ふむ、そろそろ時間……?」
「もう始まるみたいだよ!」
 祈里が空を見上げ、志桜も期待に胸を弾ませる。
 そして――口笛のような音と共に海面から一本の線が上がった、次の瞬間。
「み゛ッ?!」
 突如聞こえた大きな音に身を固くして叫ぶ祈里。
 しかし、その声すら花火の音に掻き消されている。驚く祈里とは逆に志桜は瞳を輝かせ、大輪の花を見つめていた。
「わあ……!」
 夜空に浮かぶ光の華は美しい。鮮やかな色彩は空を彩り、尾を引きながら儚く消えていく。その様はきらきらと耀く星の軌跡のようで、志桜は口許を緩める。
 そして、志桜は千輪菊の光に目を細めた。
「祈里ちゃん、いまの見た?! 大きい花火のあとに小さな花がたくさん!」
「見、見た……。でも、な、なに今、の……み゛ッ?!」
 しかし初めてこれを見る祈里にとっては驚きばかり。続けて上がった牡丹型の花火が更に大きい音を立てたので、祈里は毛を逆立てた猫のようになってしまう。
「祈里ちゃん初めての花火はどう?」
「おまたせ。何だ祈里、めちゃくちゃ怖がってねえ?」
 志桜が隣を向いたとき、後ろから青年の声が聞こえた。大丈夫だぜ、と告げて祈里を抱きあげたディイはそのまま志桜の隣に腰掛ける。
「……こわくはない」
 されるがまま膝の上に乗せられた祈里は首を振る。
 志桜は祈里が驚いていたことに気が付いた。しかしそんな様子もまた可愛らしく思え、すぐに慣れるよ、と笑ってみせる。
 そらに咲く花、儚く散り逝く花。
 そう聞いていたから祈里はそっと花火を愛でるつもりだった。だが――再び大きな大輪の花がひらいたことで、祈里はびくっと身体を震わせる。
「すげぇ迫力だな?!」
「綺麗だよね。おっきな音も身体に響いてくるし!」
「あはは。志桜の言う通り、慣れるまでの辛抱だ」
 そんなやり取りを交わしながら、三人は暫し空に咲く華を眺めていった。
 驚きすぎて二人の服の裾をぎゅっと握る祈里だったが、徐々に音と光にも慣れていく。すげぇ、と感心する彼女を見守る志桜達も実に楽しげだ。
 そうして、ふと志桜が思い立つ。
「打ち上げ花火もいいけど手持ち花火も好きなんだよね」
「ああ、あっちも風流だよな」
「そうだ! 今度買ってみんなでやろうよ」
「えっ、あれを……手に……?! 死ぬ気か?!」
 志桜とディイが手持ち花火に付いて語ると、祈里は空の花火と自分の掌を交互に見て驚く。思わず笑った二人は祈里の勘違いがとても可愛らしいと感じていた。
「あんなに大きくないけどすごくキレイで色んな種類があるんだよ」
 絶対にやろうね。
 そういって約束の言葉を告げた志桜は、そっとディイの肩に寄り掛かり、祈里の掌を握った。祈里も志桜の手を握り返し、賑わしくも穏やかな時間を思う。
「そうだ、屋台もあるんだよね」
「やきそば! 焼きそば食べたいなっ! あるかなぁ?」
「おう、あったぜ。よし、何でも好きなの買ってやるよ」
「やった!」
 三人はこの後のことについても思いを巡らせ、笑みを浮かべた。花火の後にも楽しい時間が待っている。そう思うと心も躍った。
 されど、この記憶もいつか食われるのだろう。祈里は優しくあたたかな時間を思いながらも己の未来に思いを馳せた。
 それでも今は大切に、楽しんで行こう。消えたとしても二人は憶えていてくれる。
「――大丈夫だぜ」
「……うん」
 遠くを見ている様子に気が付いたディイが囁き、祈里もこくりと頷く。何が、と敢えて言わないのは、自分達が抱える様々な事柄についての言葉だからだろう。
「そうだね、きっと」
 志桜も空に耀く光を見つめて思いを抱く。
 遠い日の思い出も。向き合わなければいけない未来も――。
 いまこの瞬間も、確りと胸に刻んで。
 天を彩る光の華は今日という夜を明るく照らし、鮮やかな色彩となって咲いていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

世母都・かんろ
十雉さん(f23050)

花火、近く、で、見るの
はじめて
それに、屋台、も

淡い春色浴衣で遊びに
人混みが怖いけど
互いに背が高くて
すぐ見つけられて安心

食事を勧められるまま少しずつ

これ、が、りんご、飴
…!
飴、すごく、びっくりする、くらい、甘い、の
あん、まり、食べると
きっと、虫歯、に、なっちゃう
チョコバナ、ナ、も、贅沢

焼きそば、ソース、が、濃くて
おいしいけど、濃い…!

わ、るい、味
たまに、だから
楽しい、ん、です、ね
内、緒…!(こくこく

花火が空に弾けて
華の形、流れ星、色々なひかり
夜に溶けて
後を追う音に驚く

合言葉、が、あるんですね
え、と
た、まやー
たーま、やー

ふふ
楽し、い、です、ね
お友達、と、おで、かけ、する、の


宵雛花・十雉
かんろちゃん(f18159)と
オレはいつもの格好で

え、マジ?かんろちゃん、こういった花火も屋台も初めてかい?
んじゃあ、ここはオレが一肌脱ぐっきゃねぇなァ

ほらほら、オススメのヤツ買ってくっから遠慮せず食いな
あぁ、でも浴衣は汚さないように気を付けなよ
せっかく似合ってて可愛いんだからさ

りんご飴にチョコバナナに焼きそば、どれも屋台の鉄板だろ
オレも一緒になって楽しんじまお
何度目でもいくつになっても楽しいもんなのさ、こういうのは

そうそ、悪い味
だから家の人には内緒だよ
怒られちまうからな

花火を見る時はな、こう言うのさ
たーまやーってな
ほれ、真似して言ってみ

おう、オレも楽しいよ
友達だもんなァ



●夜色の思い出
 淡い春色の浴衣と普段の装い。
 間もなく花火があがる海辺に並び立ち、かんろと十雉は辺りを見渡す。
 賑わう屋台。海に集う人々。ざわめきと海の音が重なる夜の風景はとても穏やかだ。今から此処に光の華が咲くと思うと、かんろの胸もひそやかに高鳴る。
「花火、近く、で、見るの。はじめて」
「え、マジ? かんろちゃん、こういった花火も屋台も初めてかい?」
「うん、屋台、も」
「んじゃあ、ここはオレが一肌脱ぐっきゃねぇなァ」
 かんろの言葉を聞いた十雉は腕捲くりをするような仕草を見せた。それならばまずは屋台でおもいきり好きなものを買うのが良い。
 こっちこっち、とかんろを導いていく十雉はかなりやる気だ。何せ先程の戦いのこともある。此処で張り切らなくて何処で大人の男としての面子を見せられるのか。
 人混みがこわいというかんろを海辺で待たせ、十雉は屋台を巡る。
 りんご飴にチョコバナナ、焼きそば。
 十雉は屋台の鉄板だと思うものを見て回り、しっかりと二人分を確保をしていく。
「ほらほら、これがオススメのヤツ」
「十雉、さん。よかった」
 合流地点でかんろがほっとした顔をしていたので、十雉は首を傾げた。
「ん?」
「背が高いから、すぐ、みつけられた」
「あぁ、はぐれるかと思ってたのか」
 大丈夫だと告げた十雉は薄く笑み、かんろにりんご雨を渡す。遠慮せず食いな、と伝えられたことでかんろもこくんと頷く。
「これ、が、りんご、飴。……!」
「でも浴衣は汚さないように気を付けなよ。せっかく似合ってて可愛いんだからさ」
「ありが、とう。飴、甘い、の」
 凄く驚いているらしいかんろに微笑ましさを感じながら、十雉はチョコバナナを軽く齧った。確かに甘いなァ、と口許を緩めた彼はかんろの様子を見守る。
 十雉に勧められるまま少しずつ屋台飯を味わっていくかんろ。嬉しさを感じながらも、何だか贅沢過ぎるとも思えた。
「あん、まり、食べると、きっと、虫歯、に、なっちゃう」
「今日だけは特別ってことで、な? ほら、次は焼きそばな」
 十雉も一緒になって屋台飯を楽しんでいく。こういったものは何度目でも、いくつになっても楽しい。
 十雉がそういって本当に楽しげにしているので、かんろの心もふわりと浮き立つ。
「おいしいけど、濃い……!」
「そうそ、悪い味」
 だから家の人には内緒だよ、と十雉は口許に扇を当てる。
 その仕草がとても悪戯っぽくて妙に可愛らしく思えたかんろは淡く笑んだ。
「わ、るい、味。たまに、だから、楽しい、ん、です、ね」
 内緒だということにもこくこく頷いて、かんろは焼きそばを一本ずつ丁寧に味わっていった。そうして、暫し後――。
 花火が空に上がり、大きな音を響かせながら夜空を光で彩った。
 わ、と小さな声をあげたかんろは天を仰ぐ。
 十雉はかんろの横顔を見遣り、その瞳に映った光を確かめた。そうして自分も次々にあがっていく光の華を眺める。
 花火が空に弾けて、華の形となって流れ星を生んで、色々なひかりと音を響かせた。
 夜に溶けゆく星の欠片。
 その後を追う音に驚きはしたが、かんろは心地好さを感じていた。
「そうだ、かんろちゃん」
「はい?」
「花火を見る時はな、こう言うのさ」
 十雉は次の花火があがるタイミングを見計らい、空に向かって呼びかける。
「たーまやー! ってな。ほれ、真似して言ってみ」
「合言葉、が、あるんですね。え、と」
 かんろも光の筋が空に上っていく様子を見て、心の準備を整えた。そして、
「た、まやー。たーま、やー」
 次は連続で上がる花火だったので続けて二度。そうそう、とかんろの掛け声を褒めた十雉は、ゆるやかに尾を引く冠菊の星を片目に映した。
 銀の波、白の波。鮮やかな色彩に満ちた空。
 波のような音を響かせていく郡声の光華は見事で、かんろ達は大いに夜空を楽しむ。
「ふふ」
「どうした?」
 不意にかんろが笑ったので十雉はのんびりと問いかけた。かんろは彼の方を見遣り、もう一度花火を見て、笑みを深める。
「楽し、い、です、ね。お友達、と、おで、かけ、する、の」
「おう、オレも楽しいよ」
 友達だもんなァ、と続けられた十雉の言葉はかんろにとって何より嬉しいものだ。
 怖がられてなどいない。同じ思いを抱いてくれていると分かる。
 出来れば、この時間をもっと。
 そう望むのも贅沢かな、と考えながらもかんろは空を振り仰ぎ続ける。十雉も口許を緩め、まだまだ続いていく花火への思いを馳せた。
 そして――輝く光の露は、二人の姿を目映く照らしてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
【湯煙】
同行者さんは名前にさん付け
見晴らしのいい場所を探してそこで

花火でものすごくドキドキしてておとなげないかもしれないですが、僕は嬉しいんですよ
こうして皆さんと過ごせる平穏な日常が
そして夜空に咲く綺麗な花火
お酒は缶ビール、甘い果実のチューハイ等ありますが
未成年さんやお酒よりも甘いものが、って方にはクーラーボックスに瓶ラムネを
おや?案外人気なラムネ
開け方はね、こうするんですよ(手馴れた手つきでラムネの栓を開け)

いやぁ、いい気分で観る花火は最高ですね
あっ、また花火です
(スマホで撮るのも忘れて見入って)
またこうやってみなさんとお出かけ出来る時が来ればいいですね
夏はまだこれから
(同じくビー玉を見て)


和泉・壱華
【湯煙】
薬師神・草野・ポシェット・ウェスペルティリオ、んで俺の5人で参加だな。

見晴らしの良い場所で花火鑑賞だ。
食べたいものを持ち寄って、楽しもうぜって事で…
俺は『動物(うさぎ・ねこ・とり)の大福』と『水まんじゅう』持ってきたぜ!

打ち上げられる、空に咲く大輪の花に思わず目が奪われるぜ…。
いやぁ、ちーっと早い夏を満喫してるって感じだなァ。
草野から瓶ラムネを貰って飲みつつ(ちょっと零した…)、
焼き鳥も美味そうだし、おにぎりもいいな…。

こうやって皆で夏の花見を楽しむってのもいいもんだな…。
願い事と言やぁ、また皆で遊びに行けたらいいな!

…あ、願い事って誰かに言ったらダメなんだったっけか?



アドリブ歓迎


フロース・ウェスペルティリオ
【湯煙】の皆さんと参加

夜の静寂も良いけれど、花火の壮麗な響きと輝きもまた素敵だねぇ
ふふ、花火に海にと一足早い夏に混ぜて頂き、ありがたい限りです
ウチは冷えたスイカを持って行くよ
瑞々しくて甘いのです
イチョウ型に切っておくねぇ

んー、お酒も気になるけど、今回は千秋さんの瓶ラムネを頂きます
甘いしゅわしゅわが花火と相まって楽しい
瓶の中のビー玉も花火を映し込んで綺麗だよ
壱華さんの大福も可愛らしいねぇ
うさぎ(ユヴェン)さん、ねこ(悟郎)さん、とり(千秋)さんかな?
連想したお人の前にちょんと置いたら、どんなお顔をするだろう
水まんじゅうも美味しそう
共食い? 気のせいだよ

うん
来年もまたこうして花火が見れると良いねぇ


薬師神・悟郎
【湯煙】五人
仲間のことは名前呼び捨て

友人達と共に見晴らしの良い場所から花火を見よう
俺は焼き鳥各種と缶ビール、未成年でも飲めるようにとジュースも持ち込む
事前にシートを敷く等して準備を終えれば、それぞれ持ち込んだものを摘まみながらその時を待とう
果物にラムネ、和菓子まで、皆が持ち寄ったものはそれぞれ個性があるな

花火の音に友人達へ声をかけてから空を見上げれば、願いをかけたりする者もいるという話を思い出す
「せっかくだから、皆で何か願ってみないか?」
俺は…
来年もこうして皆と仲良く花火を見たい、とか

皆は何を願ったのだろう?
ここだけの話、教えてくれないか?


ユヴェン・ポシェット
【湯煙】
薬師神 和泉 草野 フロースと共に

人と集まり飲食というのは慣れていなくてな
結局、米(一口サイズのおにぎり)と茶をもってきた。薬師神の焼鳥と合わせて食っても良いんじゃないかと。
草野のそれ、ラムネ。俺も気になっていたんだ。
が…開け方が分からねぇ。
(フロース見て)そんな仕掛けになっていたのか、面白い。
これは和泉の大福か?うさぎか、可愛いな。
最後に西瓜を齧りつつ花火を見送る。

花火ってのは思っていた以上にバリエーション豊富で驚いた。形や輝き方、色が変化するものまであるんだな。この、大きな音も何故か心地好い。
皆で見れて良かった。…良いものだな
願い事か…そうだな。俺も和泉と同じだよ。



●夏への願い
 これから花火が上がる海辺。
 見渡せば浜辺に集う人々の姿が見え、ざわめきと一緒に細波の音が耳に届く。
 催しが始まる直前の空気は不思議だ。皆が馳せる期待が空気に滲んで、楽しさが伝わってくるからだろうか。そう思うとこの雰囲気も良いものだと感じられる。
「この辺りにするか」
 悟郎は皆が座れる見晴らしの良い場所を選び、シートを用意していった。ありがとう、と告げた仲間達は其処に腰を下ろした。
 千秋はその声に頷き、花火への思いを言葉にする。
「ものすごくドキドキしてておとなげないかもしれないですが、僕は嬉しいんですよ。こうして皆さんと過ごせる平穏な日常が」
「夜の静寂も良いけれど、花火の壮麗な響きと輝きもまた素敵だねぇ」
 フロースは夜空を見てから、次に星を映す海面を見下ろした。
 花火に海。
 一足早い夏に混ぜて貰えてありがたい限りだとフロースが語れば、壱華が笑みを返す。ユヴェンも仲間達の元に歩み寄り、広げられていく花火のお供を眺めた。
「なかなかに豪華だな」
「皆が食べたいものを持ち寄ってきたからなァ。俺はこれ!」
 ユヴェンは持参した一口サイズのおにぎりとお茶を皆に配り、壱華は動物の大福と水まんじゅうを並べていく。
 うさぎにねこ、とり。可愛らしい形の大福は目するだけでも楽しい。
 悟郎は焼き鳥と缶ビール、未成年でも飲めるようにとジュースを持ち込んでいた。
 こっちにもありますよ、千秋が示したのはクーラーボックスに入った甘い果実のチューハイと、瓶ラムネだ。
「おにぎりと焼き鳥は実に合って良いな」
「ありがたく頂こう」
「じゃあ僕もいただきます」
 悟郎から焼き鳥を受け取ったユヴェンに続き、千秋も手を伸ばす。
「ふふ、ウチは冷やしたスイカを持ってきたよ。瑞々しくて甘いのです」
 イチョウ型に切ったそれを見せたフロースはぜひデザートに、と皆に勧めた。壱華は夏らしい雰囲気に期待を寄せ、一行もそれぞれに持ち込んだものを摘まみながら花火が始まる時を待つ。
「んー、お酒も気になるけど、今回は千秋さんの瓶ラムネを頂きます」
「草野のそれ、ラムネか。俺も気になっていたんだ」
 フロースが手に取った瓶を見てユヴェンもラムネに挑戦してみる。だが、開け方が分からない。
「おや? 案外ラムネが人気ですね。開け方はね、こうするんですよ」
 その様子に気付いた千秋が手馴れた手つきでラムネの栓を開ける。
「そんな仕掛けになっていたのか、面白い」
「いやぁ、ちーっと早い夏を満喫してるって感じだなァ」
 ユヴェンが感心する中、壱華も瓶ラムネを貰って開ける。軽快な音が鳴ったかと思うと少しだけ雫が溢れた。
 冷た、という声が壱華から零れ落ちたことで一同はくすりと笑う。
「果物にラムネ、和菓子まで、皆が持ち寄ったものはそれぞれ個性があるな」
 悟郎が穏やかに皆を見渡した、そのとき。
 鋭い音が耳に届く。
 はたとした仲間達が視線を頭上に向けると、ちょうど花火があがったところだった。瞬く間に空に咲いた大輪の花を見上げた一行は目を奪われる。
「綺麗だな……」
 壱華が思わず零したのは素直な感想。
「いいですねぇ」
 フロースはゆるりと答え、手にしたラムネ瓶を軽く掲げた。甘いしゅわしゅわが花火と相まって楽しい。瓶の中のビー玉も花火を映し込んでとても綺麗だ。
「いやぁ、いい気分で観る花火は最高ですね」
 千秋がのんびりと呟くと、ユヴェンも同意を示した。
 空で開花して球形にひらく牡丹花火。
 ゆるやかに星が降下していく冠菊の火や、無数の小花が咲き乱れる千輪の菊。ダリヤやクロセットと呼ばれる花火も次々と打ち上げられていく。
 そして、プログラムは星や魚、猫などの形を模った型物花火に移っていった。
 風に乗って可愛らしく広がる形は面白い。
 そういえば、と気付いた悟郎は壱華が持ってきた大福に目を向ける。
「これも猫だったな」
「そっちは和泉の大福だったか。うさぎ、可愛いな」
「鳥の大福、何だか食べるのが持ったないですね」
 ユヴェンと千秋も並べられている大福を見下ろした。そうするとフロースは何かピンときたらしく、壱華の大福を移動させていく。
「ほら、みんな可愛らしいね」
 うさぎはユヴェンへ、ねこは悟郎、とりは千秋へ。
 動物から連想した人の前に大福を置いたら、どんな顔をするだろうと想像したからだ。皆がそれぞれに笑みを浮かべたことでフロースも嬉しくなる。そして、壱華は残るひとつをフロースの前に差し出した。
「水まんじゅうはフロースにと思って!」
「美味しそう。共食い? 気のせいだよ」
 他愛ないが楽しい会話を交わしながら、皆で過ごす時間はとても良いものだ。
 そんな中、千秋が空を指差した。
「あっ、また花火です」
 スマートフォンで景色を撮ることも忘れて見入っている彼に倣い、ユヴェンもスイカを齧りつつ花火を見送る。
 俺も、僕も、と壱華と千秋がスイカに手を伸ばした。
 悟郎も改めてフロースに礼を告げ、丁寧に種を取りながらスイカを味わっていく。
 思っていた以上に花火のバリエーションが豊富で驚いたのだとユヴェンが語れば、悟郎もしみじみと頷く。形や輝き方、色が変化するものまで。身体に響く大きな音も何故か心地好く、この時間が尊いものに思えた。
 特に美しいのは降雪と呼ばれる散り方。
 初夏だと言うのにふわりと散る綿雪のような消え方をする光は儚い。消える前にひときわ耀く光露も美しく、淡い花のような銀色を残す霞の輝きも目映かった。
 銀波に飛星、錦。
 ひとつずつの名前がたとえ分からずとも、綺麗だと思う心は変わらない。
 そうして一行は夜の華を楽しむ。
 どうやら次の大きな花火の準備をしているらしく、音と光は一時的に収まった。
「こうやって皆で夏の花見を楽しむってのもいいもんだな」
 壱華は余韻に浸る。
 その横顔を見た悟郎はふと思い立ち、友人達へ声をかけた。少しだけ静かになった空を見上げ、嘗ては人々が花火に願いをかけたと云ういわれを思い出したのだ。
「せっかくだから、皆で何か願ってみないか?」
「うん、それはいいね」
 フロースをはじめとした仲間達は悟郎の提案に頷いた。
 そして、次の花火が上がる。
 響き渡る音が身体に伝わっていく中、五人はそれぞれに願いを込めてゆく。
「皆は何を願ったんだ? ここだけの話、教えてくれないか? 俺は……来年もこうして皆と仲良く花火を見たい、とか」
 悟郎は問いかけると同時に自分が願ったことを告げた。
 ユヴェンは薄く笑み、まずは皆でこの景色を見れたことに感謝を抱いたのだと語る。良い時間だと感じている気持ちはとても快いものだったからだ。
「願い事か……そうだな。俺も和泉と同じだよ」
「そうですね、僕もです。またこうやってみなさんとお出かけ出来る時が来ればいいと思って願いを込めました」
「奇遇だね、ウチもです。来年もまたこうして花火が見られると良いねぇ」
 千秋とフロースは楽しげに笑い、壱華も明るい表情を浮かべた。
「うんうん、また皆で遊びに行けたらいいな! ……あ、願い事って誰かに言ったらダメなんだったっけか? でもまぁいっか!」
 ふと願いについての考えが過ぎったが、きっと今回は大丈夫。
 何故なら、話した方が叶いそうな願いだからだ。
 そんな彼らの姿を照らし出すようにスターマインの連続花火が空に上がりはじめた。息つく暇もなく空を飾っていく花火を見上げ、千秋はラムネ瓶を天にかざす。
 ユヴェンとフロースも倣ってそうしてみる。
 煌めく花火の色彩を映すビー玉を見て、壱華と悟郎が目を細めた。ビー玉の様相はまるで思い出を閉じ込めた宝石のようだ。
 ひとりではなく皆で過ごす時間は大切なひととき。
 これから巡っていく季節に思いを馳せた一行は、華が煌めく夜空を眺めた。
 ――夏はまだ、これから。
 花火に込めた願いはきっと、確かな約束へと変わっていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f11024/花世

浜辺に寝転んで
降り来る光の雨を眺めよう

次々に咲いては散る天の花
儚い花火の一生
連綿と続く歴史の中では
いきものもまた
あっという間に去って逝く

けれど
ひとりひとり
ひとつひとつに
物語がある

占術は
過去見も先見も
そんな「物語」の頁を捲るような心地がして
魔女が占ってくれた己自身の結果でさえ
やはり「物語」を読んでいるような他人事の感覚だったから

――いつか「ひと」になれるでしょうか、

ぽつり零れた呟きは花火の音にかき消される

傍らからの朗らかな提案に数度瞬き
其れは素敵な占いですねぇ、と
共に声を出して
花咲く時間を数えようか

…梅雨菓子、楽しみにしていますねぇ

新たに結んだ甘やかな約束は
明るい未来への、一歩


境・花世
綾(f01786)と

目を開けば満開の空の華
星のひかりよりも強く鮮やかに
きらきらと瞼に降ってくる

花びらが咲いて散りゆく夜の底
きみの凪いだ横顔はどうしてだろう、
さみしい迷子の表情にも見えて――
かすかに動いたくちびるが
笑ってくれたらいいのにって思うから

綾、きみに花火占いをしてあげる

あの蒼色の花火がたくさんきらめいたら、
きっといいことがあるよ
ひぃ、ふぅ、みぃ、数える視線の先
ゆっくりと枝垂れてく絢爛の華

おめでとう、明日のきみは幸運なひと!
楽しいお茶の時間が過ごせるでしょう
100%当たるよ、わたしが紫陽花寒天を持っていくからね

澄まし顔で占い(?)結果を告げたなら、
きみの頬にも頭上にも、まばゆい光が咲き誇る



●続く物語
 夜の海辺は穏やかで風も心地好い。
 これまでは漣の音も聞こえていたが、今は次々と花火があがりはじめていた。目映い光と音が辺りに満ちており、身体に振動が伝わってくる。
 綾は浜辺に寝転び、天から降り来る光の雨を眺めていた。
 その隣には花世が腰を下ろしている。
 爪先を軽く動かせば、さりさりと仄かに崩れる砂の感触が何だか心地好い。
 音を聴く為に閉じていた瞼をひらけば、満開の空の華が瞳に映る。海辺に訪れた際に見えていた星のひかりよりも強く、鮮やかに光るもの。
 空のそれと同じように、星と呼ばれる散りゆく煌きはきらきらと瞼に降ってきた。
 郡声のざわめき。
 銀波の残滓に、消える前にひときわ耀く光露。
 次々に咲いては散る天の花は見ていて飽きない。昇っては咲き誇り、散っては消えていく。綾は儚い花火の一生を見届けて、双眸を緩やかに細めた。
 其処に重ねるのはひとやものの歴史。
 連綿と続く時間の中では、いきものもまたあっという間に去って逝く。
 けれど――。
 其処には物語がある。
 ひとりひとり、ひとつひとつ。違った光を宿し、時には闇に混ざり、様々な道を歩いてゆく。全く同じものなど存在せず、唯一のものばかりだ。
 花開く夜空を眺める綾が思うのは占術のこと。
 過去見も先見も、そんな『物語』の頁を捲るような心地がしている。
 魔女が占ってくれた己自身の結果でさえ、やはり物語を読んでいるような他人事の感覚として捉えてしまった。
「――いつか『ひと』になれるでしょうか」
 零れ落ちた呟きは、光の筋を描いてあがった花火の音にかき消されていく。
 花火よりも儚げに見えた彼の横顔。
 その様子を見ていた花世には、言の葉が聞き取れなかった。
 けれども、花びらが咲いて散りゆく夜の底。此処にあるきみの凪いだ横顔はどうしてだろう、さみしい迷子の表情にも見えて――。
 かすかに動いたくちびるが笑ってくれたらいいのに。
 思いを言葉にはできないまま、花世は綾をそうっと覗き込んだ。笑みをしずめた彼の代わりにめいっぱい微笑んで、花世は告げてゆく。
「綾、きみに花火占いをしてあげる」
 その声に幾度か瞬きを返した綾は、続く花世の言葉を待つ。
 花世は光が散っていった夜空を指差してから、綾と天を交互に見遣った。其処には朗らかな表情と笑顔が宿っている。
「あの蒼色の花火がたくさんきらめいたら、きっといいことがあるよ」
「其れは素敵な占いですねぇ」
 ひぃ、ふぅ、みぃ。
 数える視線の先で、ゆっくりと枝垂れて煌めく絢爛の華。
 花世と綾は共に声を出して、光の欠片を数えていく。花咲く時間に重ねる声と音。同じ空に向ける視線。
 ね、と振り向いた花世は更に笑みを深めた。
「おめでとう、明日のきみは幸運なひと! 楽しいお茶の時間が過ごせるでしょう」
「お茶の時間を、ですか?」
「100%当たるよ。だって、わたしが紫陽花寒天を持っていくからね」
 澄まし顔で占い結果を告げた花世は綾を瞳に映す。
 彼女なりに自分を思ってくれているのだろうと感じた綾は淡い笑みを浮かべた。それならば百発百中だ。
 それに明日のお茶の時間がどのように巡るのかを考える嬉しさも出来た。
「……梅雨菓子、楽しみにしていますねぇ」
 そして、綾は天を振り仰ぐ。
 淡い薄紅に爽やかな青、気品ある紫。夜空にひらく華の彩は紫陽花の色にも似ているように思えた。
 きらきらと散った光は、海面に映ってふわふわと揺れている。
 花世も綾に倣って花火の空に視線を向けた。
 ああ、きみの頬にも頭上にも、まばゆい光が咲き誇る。
 この一瞬を切り取ってひとつの思い出にしていこう。他の誰も持っていない、自分達だけの記憶として。
 新たに結んだ甘やかな約束はきっと――明るい未来への、一歩。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月待・楪
氷月(f16824)と
アドリブ等歓迎

海岸で花火を見んのもいいけど
せっかくだ空から見……ああ、なるほど
こういうとこから見るのもいいか
飛ぶよりは低いが見やすい

すげーキレイ
花に例えられんのもわかるな
昔は音が五月蝿いだけだと思ってたケド
こうして見てるとあんまり気になんねーかも
ひづ、見たか今の!
三回も色が変わってた
もしかしてそーいうUC持ちとかか…?

アー…なぁ、氷月
さっきの占い…道を踏み外すっつーやつ
早死にさせてェわけじゃねーし
お前が変なモンに引っ掛かんのも気に食わないっつーか…
ぁーくそ、柄じゃねー
お前の隣から意地でも離れねェから早死に云々とか気にすんな

…ふは、もちろん
死んでも離さねェよdarling


氷月・望
楪(f16731)と
アドリブ等歓迎

ゆず、ストーップ!
空の散歩をしながらもいいケド……
こっちに飛んで来ても危ないし、さ?
映えスポットを【情報収集】しておいたから、そっち行こうよ

海と花火、星空
全部が眺められる浜辺近くの高台とか?
おおー!すっげ、あんな色が変わるヤツもあるんだねー
あははっ、実は花火師の猟兵主催だったり?
そんな他愛の無い話もしつつ
屋台で買った物を飲み食いしたり、写真を撮ったり

ゆーくん、どうかしたか?
もしかして、実は気になってた……なんて?
(合っていたと思い、嬉しそうに噴き出して笑う)
俺だって、意地でも離れたりしないし……離れる気もないからさ
死んだ後だって一緒にいようぜ、Honey?



●死すら越えて
 海辺に上がる花火の色彩は美しく、空が様々な光で照らされていく。
 水面に映った光の華を見下ろした楪はあの空へと飛んで行きたくなった。そうすれば光が間近で眺められる。
 響く音。煌めく光。全てに近付ける気がして――。
「海岸で花火を見んのもいいけど、せっかくだ空から見……」
「ゆず、ストーップ!」
 しかし、そんな楪を望が止めた。
「空の散歩をしながらもいいケド……こっちに飛んで来ても危ないし、さ?」
「ああ、なるほど」
 手招きをした望が示したのは海岸通り。
 花火が映えて見える場所を事前に調べていた彼は抜かりがない。頷いた楪は彼が教えてくれた場所と空を見比べ、納得したように頷いた。
「こういうとこから見るのもいいか」
 其処は消波堤が見える塀が並んでいる箇所だった。少し高くなっているので腰掛けるにも丁度良い。それに浜辺よりも人が少ないのがポイントだ。
 海と花火、星空。
 全てが眺められる場所で二人は並んで座る。
 そうして同じ空を見上げれば、花火が連続で次々と上がっていった。
「すげーキレイ」
「おおー! あんな色が変わるヤツもあるんだねー」
 白い光の筋を描いて空に昇ったと思えば花ひらいた光が赤に染まり、散っていく際に光の欠片が青になっていく。
「花に例えられんのもわかるな」
 綺麗だ、と素直に思える。昔は音が五月蝿いだけだと思っていたが、こうして見ているとあまり気にならないことが不思議だ。
「ほんと、キラキラしてるなー」
 楪の言葉に頷いた望の声が花火の合間に聞こえた。
 きっと気分が良いのは一人ではなく二人で過ごしているからだろう。共に同じものを眺めるだけでこんなにも気分が違う。それは他でもない望が隣にいるからでもある。
 その瞬間、口笛めいた甲高い音が鳴った。
 また花火が上がるのだと察して上空を見遣った楪は目を軽く見開く。
「ひづ、見たか今の!」
 散る星の色が黄色から橙、赤へと移り変わったからだ。三回も色が変化したのに加えて、尾を引いていく光が淡くなって消えていく。
 楪は感心して、もしかしてそういう能力が発動したのかと首を傾げる。
 その様子が妙に可愛らしく思えた望は冗談めかして笑ってみせた。
「あははっ、実は花火師の猟兵主催だったり?」
 そういって他愛の無い言葉を交わし、二人は屋台で買ったものを飲み食いしたり、写真を撮ったりと大いに夜の時間を楽しんだ。
 光の華が細波となって視界に入り、銀色を残す霞がきらきらと煌めく。
 やがて、花火も終わりに近付いてきた頃。
「アー……なぁ、氷月」
「ゆーくん、どうかしたか?」
 神妙な表情で語り掛けてきた楪に目を向け、望はその声に耳を欹てる。
「さっきの占い。道を踏み外すっつーやつ」
「もしかして、実は気になってた……なんて?」
「早死にさせてェわけじゃねーし、お前が変なモンに引っ掛かんのも気に食わないっつーか……ぁーくそ、柄じゃねー」
 望が問いかけると楪は頬を掻いて答えた。
 予想が合っていたと思った望は嬉しそうに噴き出して、くすくすと笑った。その反応に少しだけ不服そうな顔を見せた楪だったが、すぐに頭を振る。
「だから、お前の隣から意地でも離れねェから早死に云々とか気にすんな」
 彼なりの真剣な言葉が紡がれた。
 望は更に嬉しくなり、楪の気遣いと愛情をしかと確かめる。
「俺だって、意地でも離れたりしないし……離れる気もないからさ」
「それなら良いケド」
 隣同士、ほんの少しだけ距離を詰めてみる。触れ合った箇所は仄かに熱を持っていて、それが何だか心地よかった。
「死んだ後だって一緒にいようぜ、Honey?」
 望が悪戯っぽく、それでいて真剣な眼差しを向けてくるものだから楪も同じような視線を返して静かに笑う。
「……ふは、もちろん。死んでも離さねェよ、Darling」
 重なる思い。夜空にひらく色彩。
 見つめ合う二人の瞳には、暗い夜ですら明るく照らす光の華が映り込んでいた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千家・菊里
【花守】
ラムネやアイスを調達してきて浜辺で一息

一仕事後、そして大輪の花と共に楽しむご馳走は格別ですねぇ
おや、何ですか、またそんな顔をして?
やっぱりさっきの占い、ちょっと気にしてます?
こういう時は本当によく顔に出る――正直で純粋とは言い得て妙でしたねぇ
(それこそ花火の様に次々と色んな顔を見せる様も、中々面白くはあるのですけれど――とは流石に続けず、はいはいと悠々笑いながら空を見上げて)

そうだ、普段はあまり願掛け等しませんが、今宵は折角ですし特別に――良縁祈願とかしてあげましょうか?
ふふ、不幸の星ではなく、彼の花の様な輝きを、伊織も得られる日が来ると良いですね?
(後はやはり静かに笑って見守るだけ)


呉羽・伊織
【花守】
事此処に至って流石になんぱ…なんて訳にもいかず、大人しく片隅へ

――嗚呼、でも!
やっぱこーいう目映い光景の中に野郎二人とかツラ…いや、お前はホント幸せそーで何よりだよ
(相変わらずの食気一筋に肩竦めつつラムネを煽り――コレは断じて自棄ラムネとかじゃない、たぶん)
気にしてないし妙なコト言うなよ!
ソレに今はオレの顔よか空見る時だろ!
序でにほら、無駄口はその溶けそーなアイスで塞いどけ!
(再度ラムネを飲みつつ遠い目、もとい空仰ぎ)

願掛けって柄でもないが、まぁ、今宵ぐらいは――ってまーた余計なお世話!

…良い縁と輝かしい思い出にゃ恵まれてるよ、十分に
色恋沙汰は置いとくとしてなっ
(花火の音に紛れぽそり)



●縁と記憶
 ラムネの瓶と棒アイス。
 花火のお供に調達してきた夏らしいものを手に、菊里と伊織は浜辺に向かう。
 来る途中に様々な人を見た。親子連れに友人同士、可愛い女の子達。されど事此処に至って流石に軟派――などという訳にもいかず、伊織は菊里と一緒に大人しく海辺の片隅へと歩を進めた。
「もうすぐ始まるみたいだな」
 ラムネ瓶を開けた伊織が空を見上げた。
「一仕事後、そして大輪の花と共に楽しむご馳走は格別ですねぇ」
 アイスが溶けぬうちに封を開けた菊里はのんびりと頷く。そうしている間に一発目の花火が空に軌跡を描き、大きな音を立てて花ひらいた。
 花火の色彩は美しい。
「――嗚呼、でも! やっぱこーいう目映い光景の中に野郎二人とかツラ……」
 伊織は深い溜息をつきかけたがすぐに言葉を押し込める。ちらりと隣を見遣れば、アイスとラムネを楽しむ菊里の姿が花火に照らされてよく見えた。
「おや、何ですか、またそんな顔をして?」
「いや、お前はホント幸せそーで何よりだよ」
 相変わらずの食気一筋な様子に肩を竦め、伊織はラムネを一気に呷る。コレは断じて自棄ラムネなどではない。多分、と自分に言い聞かせた伊織は、瓶の中でからからと音を立てたビー玉を見下ろす。
 透き通った球体には次々と上がる花火の彩が映り込んでいた。
 菊里も倣ってラムネ瓶越しの光の華を見つめ、ふと伊織に問いかけてみる。
「やっぱりさっきの占い、ちょっと気にしてます?」
「気にしてないし妙なコト言うなよ!」
 伊織は慌てて否定したが、その表情はまさに気にしていますといった風だ。菊里は可笑しくなって双眸を細め、
「こういう時は本当によく顔に出る――正直で純粋とは言い得て妙でしたねぇ」
 それこそ花火のように。
 次々と色んな顔を見せる様もなかなかに面白くはあるのですけれど、と――そんな言葉は流石に続けず菊里は悠々と笑った。
 伊織はジト目で彼を見遣った後、次に天に上がった花火を指差す。
「ソレに今はオレの顔よか空見る時だろ!」
「ふふ、そうですねぇ」
「序でにほら、無駄口はその溶けそーなアイスで塞いどけ!」
 はいはい、と答えて空を見上げた菊里は千輪菊の光を眺めた。
 無数の小花が空中に咲き乱れ、ちいさな明かりを灯しながら消えていく。儚さを感じると同時に遠くから漣の音が聞こえた。
 伊織は再びラムネを飲みつつ、遠い目をして空を仰ぐ。
 その様子に気が付いた菊里は或る提案を投げ掛けた。
「そうだ、普段はあまり願掛け等しませんが、今宵は折角ですし特別に――良縁祈願とかしてあげましょうか?」
 ん、と視線を下ろした伊織は軽く頬を掻いた。
 それくらいなら、とその視線は語っている。
「願掛けって柄でもないが、まぁ、今宵ぐらいは――」
「ふふ、それでは願いましょう。不幸の星ではなく、彼の花の様な輝きを、伊織も得られる日が来ると良いですね?」
「ってまーた余計なお世話!」
 菊里が掛けた思いに対して伊織はふいっとそっぽを向く。
 されど菊里は彼の思いを分かっている。余計なお世話だと言われていても伊織が本当に迷惑だと考えているとは微塵も感じていなかった。
 後はやはり静かに笑って見守るだけ。
 伊織は肩を落としながらも、菊里が願ってくれたことを思い返していく。
「……良い縁と輝かしい思い出にゃ恵まれてるよ、十分に」
 色恋沙汰は置いとくとして、と花火の音に紛れて呟いた言葉。その声が菊里に届いたかどうかは定かではないが――。
 共に見上げる夜空の華が綺麗だと思う気持ちが快いことは確かだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟🌸🎲

やったぁ!櫻とロキと花火だよ

ふうん2人とも占ってもらったんだ
僕は――内緒
でも櫻がいつか言ってくれたように、色んな人と触れ合って色んなものを見て
世界をひろげるべきなのだと思ったよ
ロキはそうなの?台無しにしないようにしなきゃ
ふふ
指針だよ、櫻
ひとつの道標…目が離せないのは同感だけれど

ヨル?
ここにクラゲはいないと思う
うん、恋愛運でね
運命のクラゲを探してるんだ
おませなんだよ
ロキに抱っこされてご機嫌なヨルをつつく

わぁ?!
弾けた花火に驚いて尾鰭が開く
笑わないでよね!
僕は小さいのが沢山咲くのが好き
おーたまーー!ていうんだ
え?違う?

厄祓い
綺麗な花火になって、幸福が舞い降りるといい

呟きにただ、寄り添う


ロキ・バロックヒート
🐟🌸🎲

うたありがとねリルくん
このまま花火も一緒に行こっか

占いどうだった?
俺様は自分のことに頓着しないから台無しだって
櫻宵ちゃんはちゃんと見てないとダメっぽい感じ
リルくんは内緒なの?ちぇー
世界を広げるときっといろんな劇も思いつくかもね
ヨルくんのはクラゲじゃなくて…まいっか可愛いから

そーだリルくん
ヨルくん抱っこさせてよ
前から抱き心地が気になってさ
いいの?やった
わーふかふか
ヨルくん抱っこして花火見上げ
俺様はなんとかの滝が一番好き
空におちる光の帳
おーたまー
たーまやー?
リルくんの尾鰭も見てかわいーって笑って
占いも花火も結構楽しかったな

あ、そうだ
ディーくんにはタコ焼きでも差し入れとくね
お疲れさまだよ


誘名・櫻宵
🐟🌸🎲

リルの歌だってすぐわかったわ!
皆で花火行きましょ

痛いところをつかれた占いだったわ
ひとの影響を受けやすいのも過去に囚われているって、他の事も…そのとおりね
1週間位気にするわ
ロキはもっと自分に頓着したほうがいいわ

ヨルは何してるの?え?くらげ?
へ、へぇ……

ロキと抱っこされて喜ぶヨルと空を見上げるリルを見守り小さく笑う
過去のよりもこういう今を大切にしたいのに

ロキが好きなのはナイアガラの滝?
枝垂れる火の華が華麗
弾ける音と共に開くリルの尾鰭に思わず笑う
たーまやー!っていうの

満開に咲く焔の花の、美しきこと
花火には厄祓いの意味もあるの

福が廻ればいいわね
あなたにも

呟きはきっと、花咲く音に紛れるけれど



●往く先に咲く華
 戦いを経て訪れた海辺。
 三人で連れ立って来た浜辺には人々が集っていてとても賑やかだ。その景色を眺めた櫻宵はロキとリルを誘い、海辺の片隅へ向かう。
「この辺りで良いかしら」
「うん、いーねぇ」
「あの辺に座ろう、櫻。ロキも!」
 櫻宵が選んだのは少し人気のない場所。ロキは頷き、ふわりと泳いだリルは腰を下ろしたかれらの間に位置取った。
 花火が始まるまではまだ少しあるらしい。
 暫し待つ間に、とロキは小さな紙袋を取り出した。
「そうだ。ディーくんにタコ焼きを差し入れしたらさ、これ貰っちゃった」
 ベビーカステラだって、と告げたロキはふたりにもお裾分けだといって軽く笑う。べびかすてら、と喜ぶリルとはしゃぐヨル。その隣で櫻宵も穏やかに微笑む。
 そんな中で話題は先程の魔女の占いに向いた。
「占いどうだった?」
「ふうん、二人とも占ってもらったんだ」
「痛いところをつかれた占いだったわ」
 ロキは何でもないことのように、自分のことに頓着しないから台無しだと言われたことを語り、リルはきょとりと首を傾げる。
 櫻宵は肩を竦め、ぽつぽつと内容を語っていった。
「ひとの影響を受けやすいのも過去に囚われているって、他の事も……そのとおりね」
「俺様は櫻宵ちゃんをちゃんと見てないとダメっぽい感じ」
 ロキがすかさず頷きを返す。
 そして、リルは? という視線が櫻宵から向けられる。
 ロキも興味津々な様子だったが、リルはふるふると首を振った。
「僕は――内緒。でもね、櫻がいつか言ってくれたように、色んな人と触れ合って色んなものを見て、世界をひろげるべきなのだと思ったよ」
「内緒なの? でもそうだね、世界を広げるときっといろんな劇も思いつくかもね」
 ちぇー、とわざとらしく嘆く仕草をみせたロキに続き、櫻宵もそっと頷く。
「そうなの。はあ……一週間くらいは気にしてしまいそうだわ」
「ふふ。指針だよ、櫻。ひとつの道標」
 目が離せないのは同感だけれど、と先程のロキの言葉に同意を示すリル。そうそう、と答えたロキに、もっと自分に頓着したほうがいいのだと返した櫻宵。
 それぞれの占いに対する反応や思いも三者三様。
 否、四者だ。ヨルも先程からそわそわしており、海の方にクラゲがいないかを確認している様子だからだ。
「ヨル? ここにクラゲはいないと思うよ」
「ヨルは何してるの? え? くらげ?」
 どうかしたのかと櫻宵が聞くと、リルはヨルも恋愛運を占って貰ったのだと話す。
 運命のクラゲを探しているらしいヨルはやる気いっぱいだ。
 おませなんだよ、とリルがくすりと笑むと、櫻宵とロキは浜辺にぺちぺちと走っていくヨルに目を向けた。やがてヨルがくるっと方向転換して戻ってきたので、ロキはおいでと両手を広げる。
「ヨルくんのはクラゲじゃなくて……まいっか可愛いから」
 そのままヨルはロキの膝の上に収まった。
「よかったね、ヨル」
「わーふかふか。抱き心地がいいねぇ」
 ご機嫌に羽を揺らすヨルをつついたリルと、楽しげに笑むロキの姿は微笑ましい。櫻宵は抱っこされて喜ぶヨルと空を見上げるロキやリルを見守り、小さく笑う。
 過去よりもこういう今を大切にしたい。
 そう思うことはきっと罪でも何でもないはずだと自分に言い聞かせた。
 そして、そのとき。
 甲高い音が耳に届いたかと思うと、突如として大きな音と光が空に咲いた。
「わぁ?!」
 弾けた花火に驚いたリルの尾鰭がばっと開く。
「あら、始まったのね」
「大きい音だったね」
 リルが驚いたことで櫻宵がくすくすと笑い、ロキもつられて笑む。
「笑わないでよね!」
 もう、と頬を赤く染めて尾鰭を整えたリルは次は驚かないと心に決めた。次々とあがる花火の色や形は様々で、光と音の共演は快く巡っていく。
「僕は小さいのが沢山咲くのが好き」
「俺様はなんとかの滝が一番好き。ほら、きらきら落ちるやつ」
「ロキが好きなのはナイアガラの滝?」
 そういった会話を交わしながら、三人と一匹は花火の夜を謳歌していった。
 そうだ、とふと思い立ったリルは次の光があがると同時に掛け声をかける。
「おーたまーー!」
 こうするんだよ、とリルが得意気にいうのでロキとヨルも合わせて声を出した。
「おーたまー」
「きゅーきゅきゅー!」
 その様子がとてもおかしくて可愛らしくて櫻宵は思わずお腹を押さえた。笑いを堪えているからか、先程の不安も和らいでいくようで妙に心地好い。
「違うわ、リル」
「え? 違う?」
「たーまやー! っていうの」
「たーまやー?」
「きゅきゅやー!」
 櫻宵がリルに本当の掛け声を伝えると、ロキとヨルが両手を上げて声を紡ぐ。花火の中で巡る言葉も思いも楽しく、海面に映る光もきらきらと弾けていく。
 空におちる光の帳。
 枝垂れる火の華。弾けては消える音。
 あの占いも、此処で見られる花火も楽しいものだと感じたロキはリルと櫻宵を交互に見つめた。自分のことも気にならないことはないが、近い未来にかれらに訪れるであろう転機や物事を思うと見守りたくなる。
 視線に気付いた櫻宵が、どうしたのかと振り返ったがロキは何でもないと首を振った。
「花火には厄祓いの意味もあるの」
「厄祓いかぁ」
 櫻宵が落とした言葉に首肯したリルは咲き誇る華の軌跡を見つめる。
 満開に咲く焔の花は美しい。だからこそ此処で願おう。
「――福が廻ればいいわね」
 あなたにも、と櫻宵が呟いた声は花咲く音に紛れていった。
 綺麗な花火になって、幸福が舞い降りるといい。同じようにそう思ったリルは、その呟きにただ寄り添おうと決めた。
「きゅ!」
「うん、そうだね」
 二人の姿を見ていたヨルとロキもまた、それぞれに何かを思っていた。
 音に消えた思いも、そっと交わした言葉も――。すべてを包み込んで照らすように夜を彩る華は、艶やかに咲いては散っていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
辺りを見渡せる小高い場所を確保して人々や街の無事を確認し。
「戦いの後に平和な風景を見るとほっとするね。
ここからなら花火もよく見られるかな。」

花火が始まったらどこを見るか迷いながら一つ一つ観察し。
(花開く様子も散りゆく様も、いつまでも見ていられるくらいで。
本当に色々な種類があるんだと感心してしまうよ。
俺が言うのもなんだけど。まるで魔法みたいっていうところかな。)

花火を見ながらエーリカの言葉を思い出し。
「占いには興味はなかったけど。
未来は変えられるというその言葉は
胸に刻んでおこう。」
(そう言えばやつの二つ名は呪炎だったか。
この花火もまじないの一つと言えば
そう、なのか。)
と夜空に何か思いを馳せつつ。



●まじないの炎
 空を仰ぎ、ちいさく耀く星を見る。
「戦いの後に平和な風景を見るとほっとするね」
 海辺の片隅。賑わう人々の姿や無事を確かめたフォルクは、人波から少し外れた高台に訪れていた。海面は遠く、いつしか漣の音も聞こえなくなっている。
 しかし、離れているからこそ海が一望できた。
「ここからなら花火もよく見られるかな」
 水面に夜空が映っていると気付いたフォルクは交互に空と海を眺める。
 花火が上がり始めたら、きっと鏡のようにあの水面に光が映るだろう。そうなれば何処を見て楽しむか迷ってしまう。
 どうしようかとフォルクが考えていると――。
 海面から一筋の光が昇った。
 暗い夜を裂くように天を目指した光が鋭い音を立てた一瞬後。空気を震わせるほどの大きな音と同時に目映い大輪の花が空に咲いた。
 夜空を彩る光。
 水に映った華。
 ひとつひとつを観察していくフォルクは二発目の花火にも目を向ける。最初は牡丹、次にあがったのは冠菊。
 球形に咲いた華に続き、緩やかに折りていく光の尾はとても綺麗だ。
 花開く様子も、散りゆく様も、いつまでも見ていられるくらいだとフォルクは思う。
 僅かな風向きで開く角度も変わる。
 咲いた小花が枝分かれして揺れ動く様々な動きも、移り変わっていく色もひとつとして同じものはなかった。
 種類もそうだが、本当に色々な光り方があるのだと感心してしまう。
(俺が言うのもなんだけど。まるで魔法みたいっていうところかな)
 まるで夜を彩る魔法。
 そう考えると不思議だ。フォルクはそのままゆっくりと花火を見ながら、ふとエーリカの言葉を思い出す。
「未来は変えられるというその言葉は胸に刻んでおこう」
 自身の未来は求めず、彼女から何かを聞くこともなかった。言葉にした思いは胸の奥に沈め、フォルクは続く花火に思いを馳せる。
(そう言えばやつの二つ名は呪炎だったか。となれば、この花火もまじないの一つと言えばそう、なのか)
 夜空を見上げるフォルクは光り続ける花火に意識を向けた。
 弔いか、願いか、それとも別の思いなのか。
 花火に込めた思いの形を知るのは、フォルク自身だけ――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
春の花火も乙なものね。
空に咲く花を見上げながら、林檎飴を片手にのんびりしましょう。

何を言われようと気にしない。
それは本心、なのだけれど。

……――過去と云われて、思い当たる節は多いのよ。
過去の因は終わっていない。
現在は地続きで、転んで立ち上がって歩き出せても、なかったことにはならないもの。
それは重々承知していて、だから棘のように引っかかる。

……結局あたしは、あたしのやりたいようにしか生きられない。
気にしなくても、気に留めても、進む先は同じだわ。
ことばとして受け取らなくたって、いずれ辿ることになるのでしょう。

とじたまぶたのうらにも花。

明日も天気でありますように。
あたしの手がとどかない、ねがいごと。



●過ぎ去りし日々に
 もうすぐ春も終わる。
 初夏と呼べる季節に入りつつある時期の花火もまた乙なものだ。
 林檎飴を片手に夜空を見上げ、耀子は空に咲きゆく華々を眺めていた。艶めく真っ赤な飴に反射した光がぴかぴかと煌めいている。
 まるで花が瞬きをしているようだと感じながら、耀子は夜を過ごす。
 銀の波が寄せ、空に弾けるような音を発する蒼先割の花が散った。その音と光を見つめる耀子はぼんやりと或ることを考えている。
 何を言われようと気にしない。
 告げた言葉は本心で、嘘などついてはいなかった。それでも――。
(……過去と云われて、思い当たる節は多いのよ)
 過去の因は終わっていない。
 どれほど遠ざけようとしても現在は地続きのもの。転んで立ち上がって歩き出せても、何もかもがなかったことにはならない。
 分かっている。重々承知しているからこそ棘のように引っかかる。
 今だって、時間は刻々と過去になっている。
 こうしてひとりで花火を見たことも、耳や身体に響く音に静かな感慨を覚えたことも、咲いては散っていく儚さに誰かの姿を重ねることも。
 きらきらと散る星。ゆるやかに垂れ下がるように降下していく冠菊の煌めきを瞳に映した耀子はちいさく息をつく。
「……結局あたしは、あたしのやりたいようにしか生きられない」
 身体を震わせる程の大きな花火の音に紛れさせるように、耀子は思いを声に出した。
 あの言葉を気にしない自分。
 気に留めて進む自分。どちらを想像してみても、往く先は同じだと思えた。
 ことばとして受け取らなくたって、いずれは辿ることになる。まだ何も視えぬ未来を思う耀子は目を閉じてみる。
 とじたまぶたのうらにも、花が滲んでいる。
 どうせなら此処で願いを掛けてみよう。どんなものがいいだろうか。とっておきではなくていい、続く毎日がほんの少しだけ嬉しくなって、自分の力ではどうにも出来ないことが叶えばいい。
 だったら、きっとそう。これがいい。
「明日も天気でありますように」
 紡いだ言葉は天に解けて、再び夜空に咲いた大輪の花へと向けられた。
 ――あたしの手がとどかない、ねがいごと。
 叶うも叶わないも、てんのかみさまの思い次第。勿論、そんなに都合の良いかみさまがいるなんて思ってはいないけれど。
 今だけは、何かを願ってみたい気分だった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン
ヤッホー、アキラ君(f03255)
これから花火っていうヤツが空に上がるんだって
一緒に見よう。なんかスゴいらしいよ

アキラ君はー、花火って見たことある?
私は多分見たことがないんだ。忘れてるだけかもしれないけど
へえ~、キミにとってカブトムシと並ぶくらいなら相当だ
何か食べる!花火大会ってスゴいんだね…

ワッ青い食べ物がある。かき氷?ひとつください!
キミのやつは本当に雪みたいだ
ハワイっていうトコロの海は甘い味がするんだねえ
また一つ学んだよ
でもオスカーにはあげないよ

打ち上がる花火を見上げ
光の花が咲くから、花火という名前がついたんだね
すごくキレイだ

鳥のかたちの花火は上がらないかなあ
キミも見たいだろう、オスカー


鵜飼・章
あれ、エドガーさん(f21503)
賑やかだと思ったら花火が上がるのか
いいよ、一緒に見よう

流石の僕も花火の事は覚えてる
日本の夏といえばカブトムシと花火さ
DNAに刻まれてるって感じでね…
あ、何か食べる?
ここだけの話…花火大会で食べる食べ物はおいしいんだ

その青い氷はブルーハワイっていって
ハワイの海の味がするんだよ
僕はみぞれにしよう
雪を食べているみたいでいいよね
こっちも食べる?おいしいよ
あはは、オスカーさんも食べたがってる

あ…花火が上がったよ
こんな風にちゃんと見るのすごく久しぶりだ
子供の頃に戻ったみたい
エドガーさんも嬉しそうでよかった
思い出に残るといいな

鴉の花火、僕も見たい
皆で上がるように祈ってみよう



●色彩の記憶
 夜も深まり、海辺の花火が始まるという頃。
「ヤッホー、アキラ君」
「あれ、エドガーさん」
 海岸通りで章とばったりと出会ったことでエドガーは軽く手を振る。章も良い偶然の縁だと感じて彼の元へ歩み寄った。
 これから花火っていうヤツが空に上がるんだって、とエドガーは語る。
「一緒に見よう。なんかスゴいらしいよ」
「賑やかだと思ったら花火が上がるのか。いいよ、行こうか」
 成程、と頷いた章は空を見上げながら快く答えた。
 そうして二人は何処が見晴らしが良いかと探していく。連れ立って歩くエドガー達は間もなく始まるという花火に思いを馳せた。
「アキラ君はー、花火って見たことある?」
 私は多分、見たことがない。
 忘れてるだけかもしれないけど、と彼が語る言葉に耳を傾けた章は空を仰いだ。まだ空は暗く、ちいさく光る星が水面に映っている。
「流石の僕も花火の事は覚えてるよ。日本の夏といえばカブトムシと花火さ」
「へえ~、キミにとってカブトムシと並ぶくらいなら相当だ」
「DNAに刻まれてるって感じでね」
 交わす会話は快く、二人はのんびりと進めていく。
 すると視界に屋台の明かりが入った。夜店が出ているのだと気付いた章はそちらを指差してエドガーを誘う。
「あ、何か食べる? ここだけの話……花火大会で食べる食べ物はおいしいんだ」
「何か食べる! 花火大会ってスゴいんだね」
 即答したエドガーはまるで純粋な少年のようで、章は双眸を緩く細めた。
 そうして訪れたのは、かき氷屋台の前。
「ワッ青い食べ物がある」
「その青い氷はブルーハワイっていって、ハワイの海の味がするんだよ」
「かき氷? ハワイ? ひとつください!」
「じゃあ僕はみぞれにしよう」
 初夏ではあるが、仄かな熱を宿す夜に食べるかき氷もいいものだろう。それぞれに気になったシロップ選んだ二人はカップに山盛りになった氷を見つめる。
「キミのやつは本当に雪みたいだ」
「雪を食べているみたいでいいよね」
 向こうで食べよう、と歩き出した二人は或るポイントを見つける。其処はブロック塀が並ぶ海岸の片隅だ。
 座るのに丁度いい塀の上に腰掛けたエドガーと章は花火を待つ。
 その際に一口味わったブルーハワイの味は爽やかな風味がした。
「ハワイっていうトコロの海は甘い味がするんだねえ」
 また一つ学んだと頷くエドガーは感心している。楽しげな彼を見遣る章もみぞれ味のかき氷を口にする。
「こっちも食べる? おいしいよ」
「頂くね。これは……また違う甘さだね」
 章から差し出されたみぞれとブルーハワイの味の差に驚くエドガー。その頭の上でツバメがこてりと首を傾げる。
「あはは、オスカーさんも食べたがってる」
「オスカーにはあげないよ。また虫を探してあげるからね」
 相棒ツバメに語るエドガーとそれを見守る章。
 暫し穏やかな時間が流れていき――そして、いよいよ花火が空を彩る時間が訪れた。
 例えるなら口笛のような甲高い音が響き、光の筋が夜の最中に昇っていく。続けて眩い光が夜空を照らし、空気を震わせる程の音と共に華が咲いた。
「ワッ」
「あ……花火が上がったよ」
 思わず驚くエドガーと、何だか懐かしい気分になる章。
 エドガーはすぐに音と光に慣れ、かき氷をしゃくしゃくと崩しながら光と音が満ちる世界を眺めていく。
 次々と打ち上がる軌跡を見上げるエドガーはしみじみと呟いた。
「光の花が咲くから、花火という名前がついたんだね。すごくキレイだ」
「きっとそうだね。こんな風にちゃんと見るの、すごく久しぶりだ」
 子供の頃に戻ったようで悪くない。
 エドガーが嬉しそうな様子でよかったと感じながら、章も夜空を見上げ続ける。
 すると花火は様々な形を成す型物へと移り変わっていった。
 猫に魚、星。
 可愛らしい形は見ているだけで楽しく、口許が自然に綻ぶ。
「鳥のかたちの花火は上がらないかなあ」
「いいね。鴉の花火、僕も見たい」
「キミも見たいだろう、オスカー」
「皆で上がるように祈ってみよう」
 二人と一羽は天涯を見上げて期待を抱く。これからどのような花火が上がるのか、どんな光の軌跡が空に描かれるのかが楽しみだ。
 章とエドガーの瞳には闇を照らす光の輪が映り込み、きらきらと輝いていた。
 今日という夜が思い出に残るといい。
 たとえ忘れてしまっても、感じた思いだけは胸の奥に宿るように――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
【かんにき】

花火見物か、ワクワクするね。
食べ物はコンビニでも買えるけど、実は前から屋台のタコ焼きを食べてみたかったんだ。
冷めてしまわないよう、アツアツのうちに食べたいな。杏も欲しいのか?
木元村のお米で作ったおにぎりはどんな味かな?
なんて好き勝手に食べ物をつまんでいると、もう花火が始まった。
ニホンの打ち上げ花火は種類が豊富と聞いたけど、どの花火もとても綺麗だね。音楽に合わせて打ち上げたり、演出方法も趣向を凝らしているね。恋人や友達にメッセージを送ることもできるのか。
光と音のマジックショーを存分に堪能し、UDCアースで買ったスマホで写真撮影。
その後は海辺を流れる夜風に当たって、ノンビリと。


駒鳥・了
【かんにき】
花火といえば出店が楽しみ!
だけど静かな場所なら先に買って行くのもアリか
さくっと買えるチキンとポテトをチョイスしよ
双子ちゃんたちの御握りとも合うだろーし!

各自食料をゲットしたら海辺へ
まだ早いかな?
レジャーシートを広げて皆で摘まみながら花火を待つ!
てか祭莉くんのおにぎり、おかずいらなくない?
たこ焼きあっついからお茶は冷たいので!
落ち着いたら焼き鳥も!
A&Wにも花火あるんだ!そっちも見たいなあ

昔ながらのでっかい花も派手で良いけど、いろんな形のヤツも面白いよね
ドーンって腹に響く音も好き!夏ってカンジがする!

花火終わったからってスグ帰るの勿体ないよねー
ちょっと海辺で遊んで行こっか!


木元・杏
【かんにき】7人

打ち上げ花火、大きな音の後に咲く一瞬の大花、そして散る花の音
想像するだけでわくわくする

そんな気持ちをおにぎりにぎゅっと詰めた、まつりん(祭莉)と合作のおにぎりお弁当
砂辺に敷いたシートに置いて
ふふ、そのゆかりおにぎりはわたし作
こっちはまつりん作
どうぞ召し上がって?

ポテトにチキン、おにぎりと一緒に頬張って
ん、焼鳥…(もぐもぐしつつ串を手に

皆で買ったおつまみ沢山
ガーネットの初たこ焼きの様子を見守りつつ、わたしもたこ焼き

ん、至福の時間…

ぱっと咲く花火にはっと空を見上げ
想像ではない本物の花に
食べるの忘れ魅入ってしまう

花火が終わると少し淋しい気持ち
ん、遊ぶ!
アキに賛同し裸足で波打ち際へ


シリン・カービン
【かんにき】

今日はTシャツとデニムのホットパンツ。
この世界に合わせた服装で楽しみます。

花火は私の世界(A&W)にもありますが、
皆、そんなにワクワクするものなのですか?
(合図に使われる様なシンプルなイメージ)

慣れぬUDCアースの人混みにキョロキョロ。
…私は下手に動かない方がよさそうですね。
皆が買い集めてくるおつまみをいただきましょう。
チキン、ポテト、たこ焼きに双子の合作おにぎり。
真琴のお茶を含むと、ふふ、至福ですね。

深く響く音と夜空を彩る光の華。
趣向を凝らした花火の数々に圧倒されます。
…皆のワクワク、よくわかりました。

海で遊ぶ子供たちを眺めていると、
「ガーネット、行きましょう」
皆が呼んでいます。


木元・祭莉
【かんにき】だよ!

花火! UDCでもやってるんだねー。
どこから上げるの? どこで見るといいかなあ?
わー、ワクワクするねー!(くるくる)

待ってる間は、もぐもぐターイム!
ハイ、どっちがおいらの作ったおにぎりでしょうー?
え、あれ、なんでわかるの!?
(山賊むすびの中にタコさんウィンナーや海老天)

ソースとバターと、お肉の香ばしい匂い。
あ、青海苔かと思ったら、海の匂いも。
いっぱい混じって、幸せだね♪
ん、ゆでたまごもあるから、あったかい麦茶とドーゾ♪

(狼耳ぴく)
あ、始まるよ?
うわあ。
ひゅるるるー、どーん!(声合わせ)
すごーい! どどーん♪(笑顔でぴょんぴょん)

あー、終わっちゃった。
もうちょっと遊んで帰ろっ♪


鈍・小太刀
【かんにき】

夜空でも花に団子は付き物だしね♪
という事で今回は焼き鳥ゲット
お勧めはこれ、塩味の豚バラよ!
焼き鳥だけど豚なのはキニシナイキニシナイ

ははは
シリンが花火って言うと狩猟の合図みたいだね

ガーネットは初タコ焼き?
丸い形は打ち上げ前の花火に似てるかも

ふむふむおにぎりか
こっちの綺麗な形が杏の作で
こっちの大きいのが祭莉んね
美味しい♪

真琴がトマトを!?…雨、降らないよね?(空見上げ

あ、花火始まった!
(どーんと上がる花火に『たーまこー!』の掛け声を
(※たまこは、杏と祭莉の飼ってる狂暴なニワトリの名

うん、夏ってカンジ(アキに同意
今年の夏も満喫するぞ♪

あ、カニさんいた!
シリン達もおいでよー!

※アドリブ歓迎



●美味しいひととき
 花火が打ち上げられる時間は間もなく。
 賑わう海辺、様々な明かりが灯った屋台の通り。ざわめく人々の声や、海から微かに聞こえる波の音。すべてが心が浮き立つような快い気持ちを運んできていた。
 シリンとガーネットは浜辺を見遣り、吹き抜けてきた夜風を受ける。
「花火見物か、ワクワクするね」
「皆も楽しみにしているようですね」
 ガーネットの声に答えたシリンの今日の装いはTシャツとデニムのホットパンツという、この世界に合わせた服装だ。慣れぬ人混みにキョロキョロと辺りを見渡すシリンは少しだけそわそわとしていた。
 ガーネットの手には屋台で買ったタコ焼きの袋が提げられている。
 コンビニで買うものとは違う焼き立てのもの。それは今日という夜の特別な食べ物である気がして、とても楽しみになってくる。
 其処へ、屋台に繰り出していた少女達が駆けてきた。
「花火といえば出店! 色々あったね!」
「夜空でも花に団子は付き物だしね♪ いいものゲット!」
 了はチキンとポテトをチョイスして、小太刀は焼き鳥――という名の塩味の豚バラを買ってきたようだ。
 杏と祭莉はというと、自分達が握ってきたおにぎりに合う食べ物を選んでくれた二人に嬉しさを覚えているらしい。
 顔を見合わせ、微笑んだ双子達は花火に思いを馳せる。
「花火ってどこから上げるの? どこで見るといいかなあ?」
「あっちかな……?」
 祭莉は楽しげにくるくるとその場でまわり、見晴らしの良い場所を探す。杏は向こうの浜辺がいいかも、と指をさして花火に想像を巡らせた。
 打ち上げ花火。大きな音の後に咲く一瞬の大花と、散る花の音。
 考えるだけで楽しくなる。
 シリンや了をはじめとした皆も同じ気持ちらしく、一同の間に明るい笑みが咲いた。

 そうして一行は海辺に向かう。
 適度に人気がなく、良い感じに賑やかさも感じられる絶好の位置にレジャーシートを敷き、腰を下ろした彼女達は食べ物を広げていく。
 やはりこういった時は皆で美味しいものを味わうのが一番。
 ガーネットはまだ熱を持っているタコ焼きの箱を開け、ふわりと広がるソースの香りに双眸を緩めた。
「冷めてしまわないよう、アツアツのうちに食べようか」
「ガーネット、初たこ焼き……?」
「ああ。杏も欲しいのか?」
 その様子を見守っていた杏に気付いたガーネットは楊枝の串を渡してやる。
 ほのぼのとしたやりとりが巡る中で、小太刀はタコ焼きの丸い形が花火のようだと感じていた。そして、小太刀は皆に焼き鳥を勧める。
「お勧めはこれ、よ! 焼き鳥だけど豚なのはキニシナイキニシナイ!」
「待ってる間は、もぐもぐターイム!」
 小太刀から串を受け取った祭莉は明るく笑った。
 そんな中で了とシリンは空を見上げている。花火はもうすぐだと聞いていたが、こうやって食事を楽しむ時間はまだあるようだ。
「まだ早いかな?」
「花火は私の世界にもありますが、皆、そんなにワクワクするものなのですか?」
「そっちにも花火あるんだ! 見てみたいなあ」
 了が花火を楽しみにしている様子にシリンは首を傾げた。シリンは合図や狩猟に使われるシンプルなものを想像していて、了は華やかな火花を思い浮かべている。
 小太刀はその差異に気付き、おかしげに口許を緩めた。
 祭莉は杏と二人で作ってきたおにぎりを広げて得意げに胸を張る。
「ハイ、どっちがおいらの作ったおにぎりでしょうー?」
 ずらりと並ぶのそれらには個性が見える。
 片方は山賊むすびの中にタコさんウィンナーや海老天が入ったもの。もう片方は淑やかな雰囲気のゆかりおにぎり。
 小太刀はすぐにピンと来たらしく、ふむふむと頷く。
「こっちの綺麗な形が杏の作で、こっちの大きいのが祭莉んね」
「え、あれ、なんでわかるの!?」
「てか祭莉くんのおにぎり、おかずいらなくない?」
 驚いてしまった祭莉は小太刀の洞察力に感心した。了はあまりの分かりやすさにくすくすと笑い、食べごたえのありそうなおにぎりを手に取る。
 ガーネットもおにぎりを貰いたいと申し出て、ゆかりの方に手を伸ばした。
「ふふ、正解。そのゆかりおにぎりはわたし作で、こっちはまつりん作」
「木元村のお米で作ったおにぎりはどんな味かな?」
「どうぞ召し上がって?」
「美味しい♪」
 杏が穏やかに告げると、小太刀が早速おにぎりを味わっていく。杏と祭莉もかわりにポテトやチキンを貰い、おにぎりと一緒に頬張る。
 食欲をそそる揚げ物にたこ焼き、双子の合作おにぎり。
 ソースとバターとお肉の香ばしい匂い。実に最高の布陣だ。
「青海苔かと思ったら、海の匂いもする。いっぱい混じって、幸せだね♪ ん、ゆでたまごもあるから、麦茶とドーゾ♪」
 祭莉は幸せいっぱいの笑みで皆にお茶も勧めていく。
 シリンも少しずつ皆のお裾分けを貰い、楽しくて美味しい時間を満喫していった。
「ふふ、至福ですね」
「ん、至福の時間……」
 こくりと頷いた杏は勿論、了と小太刀も満足気だ。
 ガーネットも遠慮なく好きなものを好きなだけ味わっていく。特にタコ焼きは熱さの中にとろける風味があってとても良いものだと思えた。
 そして――。
「おっと、もう花火が始まるみたいだ」
「あ、始まるよ?」
 祭莉の狼耳もぴくりと反応する。
 ガーネット達は皆に呼び掛け、幽かな星が見える夜空を振り仰いだ。
 はたとしたシリンや少女達が倣って天を仰ぐと――口笛めいた軽快な音が響き、海面から光の筋が昇っていく様が見えた。

●花火と夜空
 深く響く音と、夜空を鮮やかに彩る光の華。
「これがこの世界の花火……?」
 その色彩はシリンにとって、はじめて体験するものだった。自分の知る花火とは違う勢いに圧倒された彼女は軽く目を見開いていた。
「すごい……」
 杏もぱっと咲いて散った花火に見とれている。
 想像ではない本物の花に、焼き鳥を食べるのも忘れて魅入ってしまったようだ。
「ね、綺麗だよね! ドーンって腹に響く音も好き! 夏ってカンジがする!」
 両手を広げた了は満面の笑みを浮かべている。
 小太刀も次々と上がる花火に視線を映しながら、了に同意の言葉を向けた。
「うん、夏ってカンジ。今年の夏も満喫するぞ♪」
 彼女のちょっとした決意の後、別の光の花が夜空に咲き誇っていく。
 空で球形に開花するのは牡丹。
 星とも呼ばれる光の欠片がゆるやかに垂れ下がっていく花火は冠菊。たくさんの小花が辺りに咲き乱れるのは千輪菊と呼ばれる花火だ。
 ガーネットは感心しながら、ひとつずつをしっかりと確かめていく。
「ニホンの打ち上げ花火は種類が豊富と聞いたけど、どの花火もとても綺麗だね」
 音に合わせて打ち上げたりと演出方法も趣向を凝らしている。まるで光と音のマジックショーだと感じたガーネットは、スマートフォンで夜に咲く華を撮影していく。
 花火の様相は更に移り変わる。
 祭莉は立ち上がり、尻尾を振りながらぴょんぴょんと跳ねた。
「うわあ。ひゅるるるー、どーん!」
「……どーん」
 杏もささやかに声を合わせ、花火の大きな音と光を楽しんでいく。
「すごーい! どどーん♪」
「たーまこー!」
 はしゃぐ祭莉の横で小太刀は掛け声をかける。たまやではなくたまこである理由は、杏と祭莉が飼っている狂暴なニワトリに似た鳥の型物花火が上がったからだ。
 了は楽しさとおかしさを同時に感じる。
 そして、更に空を飾ったハートや星型の花火に目を細めた。
「昔ながらのでっかい花も派手で良いけど、いろんな形のヤツも面白いよね」
「本当に良いものだね」
「……皆のワクワク、よくわかりました」
 ガーネットも同意し、シリンも趣向を凝らした花火の数々に感嘆混じりの息をつく。ひとりで見るのではなく皆と同じ景色を共有できること。そのことを思うと、この瞬間のひとつひとつが尊く思えて、何だか良い気分になれた。
 花火のプログラムは進んでいく。
 ナイアガラの滝、ダリヤやクロセット。この花火大会の最大の売りである華やかな連続仕掛け花火、スターマイン。
 飛沫を散らしながら海に光を宿す花火はどれも綺麗だ。
 天に彩を飾る星と華。その煌めきは何処までも華やかで美しかった。

 やがて――花火は終わり、海辺には静けさが戻っていく。
 浜辺にはそれぞれに帰路につく人々の姿が見える。反対にそれまで水面に映っていた光や耀きは見えなくなっていた。
 ガーネットとシリンは来た時と同じようにのんびりと海風を感じている。
 杏は少し淋しい気持ちになり、そっと夜空を眺めた。
 その思いを察してか、了は砂浜を駆けていく。目指す先は波打ち際だ。
「花火終わったからってスグ帰るの勿体ないよねー。だから、ちょっと海辺で遊んで行こっか!」
「終わっちゃったけど、もうちょっと遊んで帰ろっ♪」
 祭莉もその後に続いて走っていく。
 砂を蹴って進む少年達の背を見つめ、暫しぱちぱちと瞳を瞬いていた杏。
「行こう!」
 しかし小太刀が手招いてくれたことで杏は大きく首肯する。
「ん、遊ぶ!」
 裸足で波打ち際へ向かうと清々しい心地が感じられた。小太刀も海辺を思いっきり楽しもうと決め、何か面白いものがないかと辺りを探して――或るものを見つける。
「あ、カニさんいた!」
「本当だ」
「可愛い……」
「わっ、はさみをチョキチョキしてる!」
 海で遊ぶ子供達がわいわいとはしゃぐ様をガーネットとシリンが微笑ましそうに眺めていた。すると小太刀がそちらに振り返り、大きく手を振る。
「シリン達もおいでよー!」
「ガーネット、行きましょう。皆が呼んでいます」
「ああ、行こうか」
 静かに歩き出した彼女達は穏やかな気持ちを抱いていた。
 寄せては返す波の音、跳ねる雫。楽しげに響く少女達の声。其処に満ちているのは、これから巡る季節の始まりを告げる楽しさ。
 夜空の彩華が海に消えても仲間と過ごす素敵な時間はまだまだ終わらない。
 天にひかる星々は皆を見守るかのように、やさしく輝き続けていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年06月11日
宿敵 『呪炎のエーリカ』 を撃破!


挿絵イラスト