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帝竜戦役⑤~喋る剣には名前を付けよう~

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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●こんな勇者も居た
 群竜大陸に『勇者の墓標』と呼ばれる地がある。
 ……かつて群竜大陸に渡った数千人の勇者たちは、ここでヴァルギリオスと戦い……そして相討ったのだという。
 その戦いの余波で縦に大きく穴が穿たれたこの大地に、悲痛な声がこだまする。
『やめるのだ、友よ……!』
 この地で今も暴れ、血の雨を降らすオブリビオンへ、過去にヴァルギリオスとその命を相殺し合った勇者の一名が必死に訴えていた。……けれど、その声は空しく虚空へ溶けるのみ。彼は遥か過去にこの地にて我が身を砕かれ、ここに残るは残留思念だけなのだから。
 現代に干渉することは、このままでは出来ない……。
 彼が友と呼んだオブリビオンは――一振りの細剣である。……『祝華武装』と呼ばれる、帝竜征伐に向かう勇者たちへ花の妖精が授けた武具の一つ。
 この地で勇者たちと共にヴァルギリオスに破壊されたその剣は、今はそのヴァルギリオスたち帝竜の敵を屠る道具へと成り下がっていた。そのことを彼は決して許せない。何故なら……。
『……何が不安だったと言うのだ? どのような妄執があって、そのような歪な形で甦った? 貴様たちは、我よりもずっと幸せだったはずなのに……!?』
 今は、『紫陽細剣』という異名に相応しい、可憐な紫のロングヘアの少女の姿の分身体を生み出し、その手に握られている『ハイドレンジア』という銘のレイピアへ、彼は文字通り魂からの絶叫を上げた。
『こっちは、製作者に銘も付けてもらえなかったんだぞぉぉおおおおおおおおおおっっ!?』
 金色に輝く刀身には銀色の紋章がいくつも刻印され、刃の鋭さは降り注ぐ陽光さえ切り裂かんばかり。1m台の半ばにまで達する刃渡りを支える柄は剛健かつ美麗。嵌め込まれた蒼い宝玉とそれを咥える獅子の意匠は芸術品かと見紛いそうなほどである。
 そう――実体無き魂だけとなった勇者も、『剣』だった。

●命銘権は誰のもの?
「皆ー、ちぃと群竜大陸の勇者の墓標へ向かってくれんかな~?」
 帝竜との戦いも佳境へと差し掛かりつつあるこの時期、グリモア猟兵の灘杜・ころな(鉄壁スカートのひもろぎJK・f04167)からそんな声が掛かった。
 パタパタとグリモアベースを駆け回る姿からは、帝竜たちとの連戦の疲労が窺えたが……そんな時でさえ、UDCアースの学校の制服であるという衣装の、短いプリーツスカートは翻りつつも中身は絶対に見せない。本当にどうなっているのだろう……?
 何はともあれ、ころなは今回の案件の説明を始める。
「ほとんどの帝竜とも交戦に入って、ヴァルギリオスとの開戦も間近……と思われる時期や。そのせいか、帝竜配下のオブリビオンたちも活性化しとってなぁ。群竜大陸の各地で、猟兵に散発的な襲撃を仕掛けとるんよ。今回の敵もそういう相手やね」
 紫陽細剣・ハイドレンジアというらしいそのオブリビオンの資料を配りつつ、ころなは続ける。
「帝竜よりは当然劣るわけやけど……なかなか強力なオブリビオンやね。せやけど、今回は戦場が良かったわ。上手くすることで、その地に居る過去の勇者から力を貸してもらえるんやから」
 勇者から力を借りられれば、ハイドレンジアとて物の数ではないところなは語る。
「何せ、その勇者は――『ネームレス』。ヴァルギリオスを討つ為に鍛えられた伝説の聖剣なんやから」
 ……剣!? 一部の猟兵から上がった驚愕の声に、ころなは返す。
「『優れた武器には魂が宿る』、そんな感じで意思を持ったいわゆるインテリジェンス・ソードやね。……まあ、もっと端的に言うとヤドリガミの一種なんやろうけど」
 だからこそ、彼は今なお魂と化して勇者の墓標に留まっておれるのだ。
「ヴァルギリオスとの最後の戦いでは、『蒼玉の姫騎士・ジュノン』っちゅう勇者に持たれて奮戦したそうやで。ヴァルギリオスのブレスを一振りで吹き飛ばし、余波の剣風だけでヴァルギリオスの身体を裂いた……とかな」
 上手くネームレスの残留思念と心を通わせられれば、彼は猟兵たちの武器へと宿り、その性能を一時的に大きく増大させてくれるという。
「んで、その方法なんやけど……『カッコいい名前を付けてあげる』、これや!」
 ……はい?
「……どうも、製作者に何かこだわりがあったみたいでな? 彼は銘を与えてもらえんかった無銘の名剣なんよ。ネームレスっちゅう名前も、それにちなんで仲間たちが付けた渾名でなぁ……」
 ただ、それは実のところネームレスのかなり強いコンプレックスになっていた模様である。そのコンプレックスを吹き飛ばすような名前を付けてもらえれば、ネームレス(仮銘)は大層喜んで猟兵たちに力を貸してくれるだろう。
「あ、ただ一点ご注意や。ネームレス、結構尊大な口調で偉そうぶっとるけど、実際の精神年齢はまだ少年みたいやで。大体……中学二年生くらいかなぁ? 『カッコいい』の基準はその年頃の男の子たちと同様のもんやから、気ぃ付けてな?」
 そう言って、ころなは猟兵たちを群竜大陸へと送り出すのだった。


天羽伊吹清
 どうも、天羽伊吹清です。
 マスター復帰から結構日数も経ち、勘が少しは戻ってきた……かも?

 さて、こちらは帝竜戦役に関連する戦争シナリオとなります。一つのフラグメント、一章のみで完結し、以下の内容をプレイングに組み込むことでボーナスが貰えます。

『勇者の残留思念と心を通わせ、そのパワーを借りる』

 また、戦争シナリオは期間も限定されている関係上、なるべく早く完結させることも大切となります。その為、全てのプレイングの採用は行えないかもしれないこと、ご了承の上でご参加下さい。

 ……まあ、要は、厨二な剣に素敵な名前を付けて無双しようって話ですよ!
 なお、本当にカッコいい名前を付けても良いですが、ネタ枠採用を狙っても良いのよ?

 ちなみに、OP中でチラリと名前が出た件の剣の最後の使い手は、拙作『ぶっちゃけるとビキニアーマー』でも名前が出てきた勇者です。そちらのシナリオを一切存じずとも、全く問題はありませんが……ビキニアーマーを纏った、けれどもそんな衣装とは裏腹に、真面目で思いやりがあり高潔な……古き良きファンタジーRPGのヒロインのような勇者だったという設定です。
 まあ、つまり、この剣君……お察し下さい。

 それでは、皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『紫陽細剣』ハイドレンジア』

POW   :    祝散華~スカッタード・ブラッサム~
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【レベル 】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
SPD   :    装飾花~オルナメンタル・フラワーズ~
レベル×1体の、【柄の花びら 】に1と刻印された戦闘用【の自身の分身たる装飾花】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    赤色変化~シフト・レッド~
【猟兵の取得🔴を自身のレベルに転写する 】事で【赤紫陽形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:蒼夜冬騎

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

火奈本・火花
「センスが問われそうな条件ですね……」

■銘
UDC組織のネーミングセンスでは味気がないですし、元邪教集団のDクラス職員を呼んで協力して貰いましょう
確かゲームに精通していた人物のはず

銘は【蒼艶風撃苦殺之剣】
「略して苦殺之剣でも可、ですか……え? 「くさつ」じゃなくて「くっころ」でも可? それは教育上悪いのでは……?」

■戦闘
力を借りれるならば、グローブに宿って貰うのが良いですね
出来ればハイドレンジア本体を鋼糸と『怪力』で捕獲して『敵を盾にする』事で、召喚された装飾花を牽制しつつ、銃撃で片付けましょう

縛り上げた格好も銘っぽいとか、そういうDクラスは無視しておきましょう


アドリブ、絡み、色気もある時は可



 火奈本・火花(エージェント・f00795)が現地へ転移した時、撃破対象のオブリビオン・『紫陽細剣』ハイドレンジアはその場には見当たらなかった。
「……獲物を探し、この勇者の墓標を移動しているのかもしれませんね……」
 とはいえ、今はそれが僥倖であった。今回力を借りるべき勇者――文字通りの『剣の』勇者であるネームレス(仮銘)とじっくり話す時間が出来たのだから。
 火花が視線を一巡りさせてみれば……『居た』と言うべきか『あった』と言うべきか? 巨大なる竪穴の一角に金色の長剣が突き立っているのが発見出来た。もっとも、その輪郭は微かに揺らぎ、よく見れば向こうの景色が透けている。残留思念……幽霊のようなものであることははっきりと解った。
 火花は彼に歩み寄る。
「……ネームレスさん――とひとまずお呼びします。お話しさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
『――猟兵というらしいな? ここしばらくの間、この群竜大陸で帝竜たちと戦っているという話は、耳にしている。今の我の姿を見、声を聞けるのであれば資格はありと見なそう。……話せ』
 グリモア猟兵から説明されてはいたが……大仰な口調の割にその声は思いの他高く、本当に10代も前半の少年が背伸びをして喋っているような感じだった。零れ落ちそうになる微笑みを何とか堪えつつ、火花は自分たち猟兵の今回の目的――ハイドレンジアの撃破とその為にネームレスの力を借りたい旨を伝える。
『彼女――ハイドレンジアはかつての同胞だ。旧き友が怨敵たるヴァルギリオスに操られているのは我とて許し難い。良かろう。貴様たちに力を貸してやる……と言いたいところだが』
 と、そこでネームレスは台詞を切って咳払い。少々おずおずとした雰囲気を醸し出しながら、告げた。
『わ――我が力を貴様らに貸し与えるには、仮初めながら契りを交わさねばならない。我には本来無き銘を、貴様らが名付けるのだっ。それによって契約が為され、貴様らは我が力を振るう資格を得るっっ……!!』
(あ、そういう設定なんですね)
 何だか納得してしまいつつ――ここからが本番の火花だった。
「……センスが問われそうな条件ですね……」
 改めて考えてみて、火花は難しい顔をする。実のところ、生まれはかなり裕福『だった』身でお嬢様と呼ばれるような少女時代を過ごしたはずの火花。アンダーグラウンド・ディフェンス・コープに所属するようになってからは、アンディファインド・クリーチャーとの戦いに明け暮れてきた身でもある。……中学生くらいの年頃の少年が好むセンスなど、未知の領域だった。
(私に解るのはUDC組織のネーミングセンスくらいですね。ですが、それでは味気無いですし……)
 きっと、目の前で何やらワクテカしているネームレスが満足しないだろうことは、火花にも悟れた。
「……そうですね。元邪教集団のDクラス職員を呼んで協力してもらいましょう。確かゲームにも精通していた人物のはずですし」

 ――いや、それ、アカンやつや……。

 ……けれど、天の声のツッコミを残念ながら火花は聞き取れない……。結果、どうなったかといえば次の通りである。
『我の銘は――【蒼艶風撃苦殺之剣】……!』
 柄の中央の蒼い宝玉を輝かせ、誇らしげに言うネームレス――改め蒼艶風撃苦殺之剣。……うん、そうだよね……。あの年頃の男子って、画数の多い漢字やあまり良い意味では使われない漢字に心惹かれるよね……。どうやら蒼艶風撃苦殺之剣もその例から漏れなかったらしい。……それはいいが、変換し難いなこの名前……。
「略して苦殺之剣でも可、ですか……。――え? 『くさつ』じゃなくて『くっころ』でも可? ……それは教育上悪いのでは……?」
 火花が命銘者であるUDC組織のDクラス職員に眉をひそめて呟く。……流石にくっころはアレなので苦殺之剣と略すことにする。
 ――そこへ、誰かが砂を踏み締める音が響いた。はっと火花が音の方へ顔を向ければ、紫の髪を長いリボンでまとめた可憐な少女の姿。アジサイの意匠が特徴的な衣装を身に纏い、その手には流麗なレイピアを携えた……。
 グリモアベースで渡された資料にあった、オブリビオン・ハイドレンジアとその分身体だと火花は察する。
「あなたは下がっていて下さい。ここは私が」
 Dクラス職員を下がらせ、自分が前に出る火花。ハイドレンジアは、既に彼女を猟兵=自分の敵と認識しているようだ。戦闘突入は避けられない。
 そんな火花とハイドレンジアの様子を見据え――苦殺之剣は厳かに声を上げた。
『悪いがハイドレンジア……この者を貴様に殺させるわけにはいかぬ。火奈本・火花よ、今こそ契約に基づき、我が力を貴様に託す。叫べ――我の新たなる名を!』
「……え? えぇと……蒼艶風撃苦殺之剣ー?」
 火花がわたわたとその名を呼べば――苦殺之剣の霊体が光へと変じ、火花の両手に装着されたグローブへと吸い込まれた。ドクンッと心臓が脈動するような音が聞こえ……火花の両の拳に金色の輝きが宿り、銀色の紋章が浮かび上がる。
 そこから噴き上がるユーベルコードは、火花をして目を見張るものであった。
「……凄い……!」
 感嘆の言葉を発して、火花がこの力でハイドレンジアを討たんと彼女の方を見れば……。
 ――直立姿勢のまま、顔面からぶっ倒れていた。
 火花が呆気に取られていると、分身体の鼻の頭を赤くさせたハイドレンジアがふるふると震えながら立ち上がる。
「……何なのその名前はっっっっ!?」
「……喋れたんですね……」
 変なところに感心する火花を置き去りに、ハイドレンジアは絶叫を繰り返す。
「ちょっと、ネームレスっ。本当に何なのその名前は!? 一体どんな風に書くわけっ? ……蒼艶風撃苦殺之剣? いや……あのねぇ! 本当にやめなさい! あなた、使われている文字の意味も解らずに名乗っているでしょう!?」
 まるで、誤った道に進もうとする弟を諭す姉のように訴えるハイドレンジア。……気持ちは解る。けれど、苦殺之剣は聞く耳を持たなかった。
『歪な復活をし、ヴァルギリオスの配下となった貴様の言葉に心動かされることなど最早無い。ここからは刃で語る時間だ、ハイドレンジア!』
「……くっ、いいわ、やってあげる! わたしが勝ったらその名前は撤回するのよ、いいわね!?」
(……何となく、姉弟喧嘩に巻き込まれた感がありますね……)
 そんな感想を抱きつつ、本来の目的――ハイドレンジアの撃破を思い出し、火花は精神を戦闘用に切り替えた。
「わたしの華麗な技を受けなさい! 『装飾花~オルナメンタル・フラワーズ~』!!」
 ハイドレンジアの切っ先が宙に円を描くと、その軌跡に沿って彼女の本体とそっくりな細剣が何十本も生じた。それが流星の如く、火花に向かって殺到する。
(いつもなら、凌げなかったかもしれない)
 火花がそう思ってしまうほど、ハイドレンジアの技は鋭かった。だが、今の火花から見たら鈍過ぎる。
「――え、何!?」
 ハイドレンジアの可憐な少女の姿の分身体が、瞬間移動させられたかのように火花の眼前へと移動していた。戸惑いの表情の分身体の細身に、火花に刺さるはずだったレイピアが次々に突き立つ。
 何が起こっているかも解らない様子のハイドレンジアの本体へ、火花は押し付けた拳銃の引鉄を引いた。甲高い音を立てて分身体の手から弾かれたハイドレンジアは、クルクルと回りながら竪穴の底へと落ちていく。
「……凄まじいですね」
 火花の目は驚愕の色を湛えていた。
 ハイドレンジアの分身体を瞬間転移させたのは、火花のグローブの指の先端より射出された鋼糸である。元から艶を消され、視認性を下げているものだが――今は本当に全く見えない。にもかかわらず、火花にはきちんと位置が把握出来る。ハイドレンジアの分身体を雁字搦めにしていた。鋼糸の巻き取り機構すら強化されており、紫の髪の少女をここまで、稲妻よりも速く運んだのである。
(効果は一見地味ですが……それは私が宿ってもらった武器が問題ですね)
 暗殺用の武器だからこそ、性能の強化が質実剛健な方向になったのだろう。武器によっては本当に、苦殺之剣の憑依は凄絶な形となるはずだった。
「……とにかく、一旦の始末は付けましょう」
 本体のハイドレンジアはまだ生きているはずだ。いずれまたこの場に戻ってくるだろう。それまでにおかしな動きをされないように、火花は鋼糸を絞めて、レイピアのオブリビオンの人型の分身体を片付けに掛かる。……華やかな少女を縛り上げるのも銘っぽいと抜かすDクラス職員は無視した。
 鋼糸の切れ味でバラバラになって消えたハイドレンジアの分身体を後ろに、苦殺之剣は述べる。
『良い技だ。この蒼艶風撃苦殺之剣、感服したぞ』
「……ありがとうございます」
(何か、シリアスな雰囲気になり切りません、ね……)
 それがネームマジックなのだと、火花は実感するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・奏
義兄の瞬(f06558)と参加。

蒼玉の姫騎士ジュノン・・・色的にも名前的にも私とは気が合いそうな方ですね。そんな方が使った剣なのに、ネームレスとは寂しいですね。私にもこのブレイズセイバーがありますし。かっこいい名前、付けて上げましょう!!

ええと、「スターライトブレイカー」っていうのはどうでしょう?キラキラ輝いてるようで良さそうじゃないですか?無事力を借りれたら、(仮名)スターライトブレイカーと敵に立ち向かいます!!【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】でしっかり攻撃を防いでから、【二回攻撃】【切り込み】を併せた信念の一撃で攻撃します!!この世界の未来を照らす一撃を!!


神城・瞬
義妹の奏(f03210)と同行。

蒼玉の姫騎士ジュノンですか。彼の名高き騎士の相棒である剣の銘がネームレスとはいささか不似合いかもですね。少々変わった概念を持っているようですが、相応しき銘をつけてあげましょう。

そうですね、「フルムーンハウリング」なんかどうですか?良さげでしょう?騎士である奏を見ていますので、騎士の剣には親しみがあります。彼の力を借りれたら、【オーラ防御】【見切り】で攻撃を凌ぎつつ、高速で迫って来る敵を【全力魔法】【多重詠唱】【高速詠唱】を併せた氷晶の槍で攻撃します。槍には【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】も乗せましょうかね。



「『蒼玉の姫騎士・ジュノン』……色的にも名前的にも私とは気が合いそうな方ですね」
 文字通りの『剣の』勇者たるネームレス(ちなみに、先発の猟兵により『蒼艶風撃苦殺之剣』という銘が付けられたが、解り易さの為に元に戻しております)のかつての主のことを、真宮・奏(絢爛の星・f03210)はそのように評した。彼女の義理の兄である神城・瞬(清光の月・f06558)は、義妹にグリモア猟兵から伝え聞いたジュノンの逸話を話す。
「帝竜ヴァルギリオスとの戦い以外にも、数多くの逸話を残している英雄ですね。『サファイアの大滝』という場所で、猛毒を持つ多頭の大蛇も退治しているとか」
 UDCアースの英雄に当て嵌めるなら、ジャンヌ・ダルクとかヘラクレスとか、そのレベルの知名度がある人物であるとのこと。
『その通りだ。我もジュノンの前に幾人かの手によって振るわれたが……彼女ほど我の力を引き出してくれた使い手は他に居なかった。他の者も比類なき英雄であったことは確かであり、彼らの手にあった時、我が不満を覚えたことは一度も無かったが……ジュノンの手に渡って以降こそが、我が剣生で最も充実していた時間であった……』
 何処か熱っぽい口調で奏と瞬に補足するネームレス。言葉遣いこそ大仰であったが……その雰囲気は、小さい頃に優しくしてくれた親戚のお姉さんを思い返している少年のような、そんな感じである。
「そんな方が使った剣なのに、ネームレスとは寂しいですね。私にもこの『ブレイズセイバー』がありますし。かっこいい名前、付けてあげましょう!」
「彼の名高き騎士の相棒である剣の銘がネームレスとは些か不似合いかもですね。相応しき銘を付けてあげましょう」
『そ、そうだなっ。あくまでも我が貴様たちに力を貸す為に必要な契約の儀であるが……少しは、楽しみにしてやろうっ』
 奏と瞬の言葉に偉そうに返事をしているものの、ワクテカしているのが隠し切れていないツンデレ気味なネームレスである。
 ――さて、そんなこんなしている内に、巨大な竪穴を底から駆け上ってくる影が一つ。長いリボンでまとめた紫のロングヘアをなびかせた可憐な少女……ハイドレンジアの分身体である。その手には彼女の本体であるレイピアも握られていた。
 先発の猟兵に竪穴の底まで叩き落とされていたが、舞い戻ってきたのである。
「……よくもやってくれたわね、猟兵! ネームレスも許さないから……!!」
 先の戦闘のダメージを感じさせない軽やかな動きで、ハイドレンジアの切っ先が奏たちへと向けられた。このレイピアを転落させたのは奏でも瞬でもないが、同じ猟兵ならば同罪ということなのだろう。
「ですが、それを甘んじて受け入れるほどお人好しではありません――」
 奏を庇うように一歩前へ踏み出した瞬を、しかし当の奏が追い越して前に立った。
「まずは私から行きます! お願いします、ネームレス……いえ――」
『そうだ、奏。貴様が与えてくれた新しき我が銘を呼べ。さすれば我が力、貴様のブレイズセイバーへと宿ろう!』
「共に戦いましょう――『スターライトブレイカー』!!」
「――さっきと名前が変わっているじゃない!?」
 ガビンッとしたハイドレンジアを尻目に、奏の愛用のバスタードソードへとネームレス改めスターライトブレイカーの霊体が憑依する。ブレイズセイバーの刀身を中心に、金色と銀色、二色の炎のようなオーラが渦を巻いた。
 けれど、その神々しい様よりも、ハイドレンジアはスターライトブレイカーという名前の方が気になるらしい。
「待って、少し待って! え? スターライトブレイカー? ……あなたが付けたの?」
 ハイドレンジアの確認に、隠す必要も無いので奏はコクンと頷く。
「ええ、キラキラ輝いてるようで良さそうじゃないですか?」
『星の輝きとは即ち不滅のもの。それを銘に冠するのは、永遠にその名が伝えられていくだろうことを予感させて悪くない』
 ドヤ顔を浮かべているような声音で語るスターライトブレイカーへ、分身体を半眼にしたハイドレンジアが問う。
「……スターライトは確かにそうだけど……その星の光をブレイクしたら駄目ではないの……?」
『……………………』
「…………。とにかく、私とスターライトブレイカーがあなたを討ちます!」
「わたしの意見、無視しないで!?」
 なおも何か言いたげなハイドレンジアを置いてきぼりに、奏とスターライトブレイカーは戦端を開く。戦意を漲らせる奏を前にすれば、流石に向こうも武具の化身。ハイドレンジアも戦闘モードに切り替わったようだった。分身体が地面を砕くような踏み込みから、掻き消える。
「っ!?」
「遅いわ」
 たった一瞬、一歩で間合いを詰めてきたハイドレンジアの切っ先が、奏の脳、喉、心臓……三つの急所へと飛来する。その全てが同時に放たれたと認識されるほどの三連突き――しかし。
「遅いのはあなたの方です!」
「なっ――きゃあっ!?」
 ハイドレンジアが必殺を期したはずの三つの刺突は、一撃目は高まった奏のオーラに、二撃目は彼女の左手に構えられた精霊の力を秘める盾に、三撃目はスターライトブレイカーを宿すブレイズセイバーの刀身にて弾かれた。特に、ブレイズセイバーに弾かれた影響は凄まじく、ハイドレンジアは分身体ごと竪穴を数十mは下へ転がり落ちる。
 片膝を突いた姿勢で見上げてくるハイドレンジアを見下ろしながら、奏は内心の興奮を抑えることに精一杯だった。
(……凄い……これは本当に……!)
 ブレイズセイバーを通じて、怖くなるほど莫大なユーベルコードが奏に注がれてきていた。活火山を思わせるほど熱く、爆発的で……正直、これを何もせずに蓄積しておくなど出来そうにはない。奏はブレイズセイバーの剣先を天に向け、眼下に向けて一気に振り下ろした。
「この世界の未来を照らす……『信念を貫く一撃を!!』」
 ブレイズセイバーの刀身が巨大化したように――天を衝くまでに噴き上がった金と銀のオーラが、奏の斬撃の軌道に沿ってハイドレンジアへと迸った。一太刀目を紫の髪の少女剣士はどうにか躱したが、直後に跳ね上がった二の太刀で左腕を肩口から斬り飛ばされる。それだけでは飽き足らず、暴風の如き剣風が彼女を木の葉のように吹き飛ばした。
「……わ……ぁ……っ……!?」
 自分が為したことに、奏は声が出ない。――勇者の墓標の竪穴の一角に、底の見えないほど深い亀裂が走っていた。スターライトブレイカーの力を借りた奏の攻撃……それの余波だけでこれである。
 奏の側の反動も大きく、全身から力が抜けて彼女は座り込んでしまった。――だが、ハイドレンジアはまだ健在。その分身体は左腕を失い、全身に打撲とすり傷を負っているが、再び竪穴をこちらに向けて登ってきている。
 ブレイズセイバーを杖代わりに立とうとした奏の前へ――今度は瞬が立つ。
「奏は休んでいて下さい。今度は僕が」
『いいだろう。瞬よ、貴様が決めた我のさらなる新銘……ここに示せ!』
 促すスターライトブレイカーに、瞬は氷の結晶のように透き通った杖を掲げる。ブレイズセイバーから飛び出した剣の勇者の魂は、今度はその杖へと吸い込まれた。
「――『フルムーンハウリング』!」
「また別の名前に!?」
 ハイドレンジアの分身体が「えー?」という顔になった。
「柄に獅子の意匠がありましたからね。満月に向かい、獣が吠え猛る様が連想されました。どうですか? 良さげでしょう?」
『月光が照らす荒野に響き渡る、獅子の咆哮……。実に雄々しく、良い銘ではないか』
 瞬と、スターライトブレイカー改めフルムーンハウリングの主張に、少し疲れた様子でハイドレンジアが返す。
「……まあ、スターライトブレイカーよりは、詩的かしら……?」
「……え? ちょっと待って」
 物凄く解せないという表情になった奏を脇に置いて、今度は瞬とハイドレンジアの戦いの火蓋が切られた。直後、ハイドレンジアの刀身と分身体の髪色が真っ赤に変じ、その姿が奏と相対した時よりもなお速く霞んで消える。稲妻さえも追い抜きそうなそのスピードに――けれども瞬は反応した。
(なんと……!)
 見える。ハイドレンジアの体動が手に取るように瞬には把握出来た。まるで、視覚や聴覚などの五感に続き、未知の感覚が開花したかのようである。音の壁すら貫く鋭さで突き出された紫陽細剣の先端をミリ単位で見切って回避、オーラ防御を瞬間的に増大させ、相手の分身体を押し退けた。
「そんな……!?」
 足場無き空中へと押し上げられたハイドレンジアとその分身体へ、瞬はフルムーンハウリングが憑依した杖を突き付ける。そこに、一瞬の閃光が走るごとに、巨大かつ複雑な魔法陣が展開していった。その数は瞬く間に百を大きく超えていく……。
「……ひ――」
「『逃がしませんよ!! 貫いて見せます!!』」
 瞬の杖と同じく氷の結晶のような槍が、空の星の数ほどにも生じてハイドレンジアへと襲い掛かった。彼女の分身体は1秒の100分の1と保たずに散華し、ハイドレンジア本体も氷と霜を幾重にも纏って竪穴の遥か下へと墜落していく。……霧氷が舞うほどに急降下した周辺の気温に、瞬は白い息を吐き出した。
「……この力は、些か怖いですね……」
 今もなお、『六花の杖』を介して自分へと流れ込んでくる壮絶なユーベルコード……これがフルムーンハウリングのものだとするのなら、下手をするとこの群竜大陸に今も座す帝竜たちよりも恐ろしいのではないかと、瞬は考えるのだった。
 ――ところで。ついでに言っておくと、この後の奏は少々機嫌が悪く、彼女をなだめることにも瞬は腐心することとなる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鈴木・志乃
名付け……?
剣に……? 名前付けるの……?
凄いロマンじゃん!!!

※相棒の天馬精霊にユミト(希望)とか付ける程度のネーミングセンス

無銘は辛いよな、分かる分かるぞ、私も生まれてしばらくは名無しだったもん。名前付いて嬉しかったよ!

芸術品みたいな装飾なのに無銘だったんだね?
そうだなぁ、貴方を作った人は貴方に可能性を持って欲しくてわざと名無しにしたんじゃないかな?

青は奇跡、不可能を表す色。転じて可能性を意味する。
それの玉(ぎょく)だから、奇跡を起こすってことかな
獅子は王様、一番ってことね

デュナミス・アズ・レオナルダス
(可能性の青き獅子)
……どうかな?

UCでユミトに乗りながら剣でばっさりなぎ払い攻撃!



「……名付け……? 剣に……? 名前付けるの……? ――凄いロマンじゃん!!!!」
 グリモア猟兵から事の経緯の説明を聞き終えた時、鈴木・志乃(ブラック・f12101)はそう叫んでいたという。
 本当に、実に大乗り気で勇者の墓標へと転移した志乃は、それからずっとネームレス(寸前の銘はスターライトブレイカーとフルムーンハウリング)と話し込んでいた。
「無銘はつらいよな、解る解るぞ、私も生まれてしばらくは名無しだったもん。名前付いて嬉しかったよ!」
『そうだよね! ほんと、無銘はつらくてさぁ……! 名前は大事、ほんとこれ!』
 元々名前が無かった者と、現在進行形で名前が無い存在……共感し合える部分も多く、志乃とネームレスが意気投合するまで時間は掛からなかった。いつの間にかネームレスの口調も大仰なものではなく、年若い少年のようなものに変わっている。……恐らくはこちらの方が素なのだろう。
 志乃は、会話しながらネームレスの姿形を改めて見遣る。金色の刀身には歪みが一切無く、絶妙の重心バランスが為されているのが見て取れた。柄の部分の獅子の彫刻も精緻かつ精密。まるで生きているかのようである。
 武器としてはもちろん、芸術品としても一級品だったであろう生前のネームレスに、思わず感嘆の溜息が零れてしまう志乃。……同時に、少しだけ疑問が彼女の脳裏に生じた。
「……芸術品みたいな装飾なのに無銘だったんだね?」
 彼女の言葉に、ネームレスからは憮然とした雰囲気が放たれた。
『だから、オレの製作者ってかなりの変人なんだよ! 普通、ここまで作り込んだ剣に名前を付けずに放り出すかよ……』
 相当不本意に感じているのだろう。ぷりぷりと怒りながら、ネームレスは事情をまくし立てていく。
 ――ネームレスは、今はもう無いある国の依頼で製作されたのだという。その国が群竜大陸へと送り出した勇者の佩剣として。……もっとも、その勇者は群竜大陸に足を踏み入れることは叶わず、旅の途中で命を落としてしまったのだそうだ。
『ただ、その最初の持ち主の仲間が、オレを形見として引き継いでくれたんだ。その二番目の持ち主は群竜大陸まで辿り着いたんだけど……自分では最初の持ち主ほどオレの力を引き出せないって、別の勇者にオレを託して――』
 そんな風に勇者たちの間を転々としていったネームレスだが、中には無銘のネームレスを憐れに思い、きちんとした銘を付けてくれようとした持ち主も居たのだという。……だが……。
『……クソ製作者がさぁ……変な術式をオレに施してたんだよっ。渾名を付けてそれを呼ぶ程度なら何の影響も無いんだけど……オレに正式な銘を付けて、それをオレに刻もうとしたら、それをやろうとした人を石化させるっていうさぁ……』
「……え?」
 聞き捨てならぬ内容に志乃の目が丸くなる。そんな彼女へ、ネームレスは慌てて弁解した。
『石化はするけどそんな強力なものじゃなくてさっ、丸一日もしない内に解けるんだよ。……だけどそういう事情もあって、オレに銘を付けてくれる勇者も居なくなっちゃってさ……』
「それは……」
 志乃は暫し考え込んで……手探りのような感じで言葉を紡ぐ。
「……そうだなぁ……貴方を作った人は貴方に可能性を持ってほしくてわざと名無しにしたんじゃない、かな……?」
『絶対違うと思う』
「……ですよねー……」
 志乃の予想通りだとしたら、流石にきちんとした銘を与えようとした者を、一時的とはいえ石化させるトラップを仕込むのはやり過ぎだ。……どうも、ネームレスの製作者には、何が何でもネームレスに正式な銘を与えたくなかった理由があったらしい。
 だからといって、それがネームレスが銘無しのままでいい理由にはならないだろうとも、志乃は思ったが。
 どのみち、問題の石化トラップは、ネームレスの実際の剣身が砕け散った段階で一緒に失われたはずである。猟兵たちがネームレスに銘を与えてやることに、今さら障害は無い。
 だから、志乃は自分なりに考えた。ネームレスに相応しい銘を。……相棒の天馬の姿の精霊にユミト――『希望』と名付ける程度のネーミングセンスだけれども。
 ……まあ、『蒼艶風撃苦殺之剣』と付けた人だって居るしね。
 何にせよ、思い付いた名前を志乃は朗々と語り出す。
「……青は奇跡、不可能を表す色。転じて可能性を意味する。それの玉(ぎょく)だから、奇跡を起こすってことかな。獅子は王様、一番ってことね」
 それらを統合して、志乃は名付けた……。

「――『デュナミス・アズ・レオナルダス』……意味は、『可能性の青き獅子』。……どうかな?」

『……! うん、うんっ、凄く、凄くいいよ……!!』
 本当に嬉しそうに、大変興奮した様子で了解するネームレス……デュナミス・アズ・レオナルダスに、志乃の頬にも微笑が浮かんだ。
 さて……彼の剣の製作者の意図について、些か気になることも出てきたが――それを追求している時間は志乃には無いようである。竪穴の底から、怒り心頭のハイドレンジアが姿を見せたのだから。
 けれど――志乃は不思議と負ける気は一向にしなかった。
「『駆けろ、希望の流れ星』」
 ユミト――天馬の精霊が彼女の隣に具現化する。その翼も鬣も、普段よりも遥かに輝きを増していて……眩いくらい。そして、志乃の手の中には、いつの間にか実体あるデュナミス・アズ・レオナルダスが握られていた……。
「ああ――天馬を駆る剣士って何だか本当に英雄みたい」
『ほんと、カッコいいぜ!』
 天真爛漫な少年の声に背中を押され、志乃はユミトへと跨る。
 ――彼女とハイドレンジアの戦いは、一瞬で決着がついたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天樹・咲耶
裏人格のサクヤ(厨二病)です

「ネームレス……
なかなかカッコいい名前じゃないっ!
この邪炎龍のサクヤの相棒に相応しい剣ね!」

え、せっかくカッコいい名前なのに不満なの?
ならば仕方がないわね!

「ネームレス……あなたの真銘(ソウルネーム)、このサクヤが与えてあげるわっ!」

左目の眼帯を外し、赤い瞳の封印を解放!(注:カラーコンタクトです)

「全てを見通す我が左目よ、アカシックレコードにアクセスし、ネームレスのソウルネームを明らかにせよ……」

よし、わかったわ!

「あなたのソウルネームは刻を凍らせし神竜(アブソリュートフリーズドラゴン)よっ!」

あ、私、剣持ってないからあなたの助力は不要よ。(邪竜獄炎咆で敵を攻撃



 ……次に来た猟兵は見るからにヤバかった。
 黒を主体に山ほどのフリルがあしらわれたゴシックロリータファッションなのは、まあ猟兵としてはむしろ普通な部類だろう。だが……。
 ――左目を覆う眼帯を時折何かが疼くように押さえ……!
 ――包帯を幾重にも巻き付けた右腕を、「鎮まれ……まだその時ではないわ……」と左手で掴む姿……!!
 ……何処から見ても厨二病罹患者です本当にありがとうございました。
 誤解の無いように言っておくと、普段の彼女……天樹・咲耶(中二病の二重人格・f20341)は実に真面目で常識人な優等生なのである。……ただ、その内に眠る第二の人格・サクヤが……ご覧の通りなのだ。
 彼女とネームレス(これの前に与えてもらった銘のデュナミス・アズ・レオナルダスがちょっとお気に入り)……両名の邂逅がどんな化学反応を起こすのか、怖くて仕方が無い……。
「……鋼の輩(ともがら)よ。幾星霜の刻(とき)を越え、こうして相まみえることになるなんて……大いなる世界の記憶、アカシックレコードが囁くわ。これこそが魂の共鳴――ソウル・レゾナンスなのだと!」
『……邪龍の焔をその身に封じし乙女よ。黒き衣を纏いし貴様の来訪を、我は一日千秋の思いで待ち侘びていた! 今こそ約束の刻!! 古の契約に基づき、その義務を果たさん……!!』
 ………………。
 ……ええ、まあ、訳すとサクヤが「初めましてー、今日はよろしくお願いしまーす」と言い、ネームレスの方も「こちらこそよろしくお願いしまーす」と返したような感じである。
 ともかく、サクヤは左腕を胸の前に添え、右手を右目に翳すようなポーズ(厨二病罹患者がよくやるやつ)を取り、ネームレスの半ば透き通った刀身を上から下まで視線でなぞった。
「……ネームレス……なかなかカッコいい名前じゃないっ! この邪炎龍のサクヤの相棒に相応しい剣ね!」
『……や、そこは何とかこう……別の銘をお願いしたい……!!』
「……え、折角カッコいい名前なのに不満なの?」
 ――あ、ここは意見が違った模様。
 うん、ああ、でも……確かに中学二年生くらいだと好きだよね。『敢えて名前が無い』……そういう設定。
 もっとも、サクヤはそうでもネームレスにとっては長年の……本当に長い年月を掛けて己を蝕んできたコンプレックスである。敢えて名前が無いままでいるというのは、やはり耐え難いのであろう。サクヤも流石にそこは汲んだらしい。
「ならば仕方が無いわね! ネームレス……あなたの真銘(ソウルネーム)、このサクヤが与えてあげるわ――」

「――ちょっと待ちなさいーっっ!!」

 制止を叫びながら、この勇者の墓標の特徴的な竪穴を駆け上ってきたのはハイドレンジアであった。可憐な少女の姿の分身体の髪を振り乱し、息を荒げさせた彼女は、ビシィッとサクヤを糾弾するように指差す。
「ネームレスっ! さっきからわたしをいいようにボコボコにして……それについても色々と言いたいけど……今はそれよりもっ! あなたいくら何でもこいつはやめておきなさい! 見るからに今までの猟兵で一番厄介そうではないその精神性が!!」
「いきなり乱入して言いたいことを言ってくれるわね!?」
 ここまで言われればサクヤとて憤慨するものである。
 地面に突き立つ剣の幽霊の前で、猫の喧嘩のようにお互いを威嚇し合う黒髪ゴスロリ少女と紫髪剣士少女。……何となく、弟に付いた悪い虫を必死で振り払おうとする姉感がハイドレンジアにはあった。或いは――過去の勇者たちの時代には、本当に彼女とネームレスはそういう関係だったのかもしれない……。
 しかし、今のハイドレンジアはれっきとしたオブリビオン。ネームレスとの関係は、最早刃を交える敵でしかないのだ……。
『サクヤ、惑わされるな! それもまた、ヴァルギリオスの僕に成り下がったハイドレンジアの策略……。構わずに探すのだ! 我が真銘……ソウルネームを! そして、叫べ!!』
「……ネームレス、よくそんなにスラスラと台詞が出てくるわね……?」
『……。そんな素で驚いたようなツッコミを受けても、我は惑わされんぞハイドレンジアぁぁっ!!』
 若干羞恥心を滲ませるネームレスの雄叫びをBGMに、サクヤが左目の眼帯へと指を掛ける。
「……ここで、この力を使うことになるなんてね……。それもまた引き寄せ合う運命の悪戯……フェイタル・アトラクション!」
 毟り取るように眼帯を外すサクヤ。開かれたその左目は……右目とは異なる赤い光を宿していた(カラーコンタクトです)。
「全てを見通す我が左目よ……アカシックレコードにアクセスし、ネームレスのソウルネームを明らかにせよ……! さあ、今こそ、遥か時の流れの中で交わされた約束を成就する刻!!」
「……ネームレスといい、この女といい、異常に滑舌が良いのは何故なの……?」
 ツッコミ疲れてきたハイドレンジアは、うっかりサクヤの妨害を忘れている……。
「……よし、見えた……解ったわ!」
 仰々しく左手を天へと伸ばし、サクヤは仁王立ちする。……ここで空に暗雲が立ち込め、稲妻の一つでも閃いたら雰囲気があったのだろうが……生憎、今日の群竜大陸は晴天であった。

「ネームレス……いえ、『刻を凍らせし神竜』――『アブソリュートフリーズドラゴン』ッッ!! その真銘と共に、力をここに示せっっ!!」

「っっ……!?」
 サクヤが新しいネームレスの名前……刻を凍らせし神竜(アブソリュートフリーズドラゴン)を叫んだ瞬間、ハイドレンジアは自分を握る分身体を大きく跳び退かせた。何であれ、こうやって猟兵たちがネームレスに新たな銘を与えることでその力を借り受けていることは、いい加減解ってきたのだろう。彼女は警戒心を高め、防御を固めようとした――が。
「『くっ、鎮まって、私の右腕に封じられた邪竜!』……うっ、くぅっ……これ以上は――ああっ……!!」
「……え?」
 新たな名前を授けられたことで光り輝いた刻を凍らせし神竜が何かアクションを起こすよりも早く、サクヤが大仰な仕草で振り上げた右腕より噴き上がった炎がハイドレンジアを襲った。まさかこのタイミングで攻撃されるとは思っていなかったらしいレイピアは、炎に巻かれつつ竪穴を転がり落ちていく……。
「……こんな所で邪竜の業火が漏れ出してくるなんて……アカシックレコードに触れ過ぎた代償かしら……? ん?」
『……あのー……?』
 力を貸す機会を完全に見失った刻を凍らせし神竜の訴えるような声に、サクヤは左目をそっと隠しながら言った。
「私、剣持ってないから貴方の助力は不要よ」
 ……おい、邪炎竜のサクヤ。「相棒に相応しい剣」と言ったのはどの口だ?

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
「製作者の方」のこだわりは気になりますが。
お名前、検討させていただきますねぇ。

嘗ての持ち主の異名が『蒼玉』、彼自身も『蒼い宝玉』が嵌っていることを考えますと、其方に因む名前で「サピルス」というのは如何でしょう?
或る異世界に於いて、『蒼玉』=『サファイア』の語源の一つとされる、『青』を意味する言葉ですぅ。
ただ「姓」がお入り用なら、そこは「製作者の方」の物を受け継いでいただけると?

力を貸していただけたら【耀衣舞】を使用、『F●S』を強化に回した『光の結界』を纏い『光速の突撃』を行いますねぇ。
衝突の際に『刀』に『結界』の力を集中させ貫きますぅ。

『魂晶石』も欲しいところですが。



「――そういえば、『魂晶石』も欲しいところですがぁ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は勇者の墓標の特徴的な竪穴地形をぐるりと見回して、そう言った。

『魂晶石:かつての勇者たちとヴァルギリオスの激しい戦いの余波で生まれた、高純度の魔力結晶体。1個につき金貨600枚(日本円換算で600万円)の価値がある』

 ……この勇者の墓標で手に入る宝物である。グリモア猟兵、これの説明をすっかり忘れていた……すっかり忘れていた!
 大変申し訳ございません……。

 閑話休題。

 何はともあれ、猟兵たちに幾度となく竪穴の底まで突き落とされているハイドレンジアが、またここまで這い登ってくる前に、るこるもネームレス(直前の銘は『刻を凍らせし神竜』)から力を貸してもらわなければならない。
「お名前、検討させて頂きますねぇ」
『あ……ああ、よろしく頼むぞ……』
 何やらネームレスの返事の歯切れが悪いのは……きっとるこるの豊満という単語すら生温い発育のボディから必死で意識を逸らしているからだろう。実際のところ、精神年齢は中学二年生程度に留まるというネームレス。るこるのカラダは……刺激が強過ぎる……!
 当のるこるはといえば、別のことに気を取られていたのだが。
(……『製作者の方』のこだわりも気になるのですけどねぇ……?)
 それについては、るこるよりも先にネームレスに接触した猟兵の中にいくらか聞き出した者が居た。……どうもネームレスの製作者は、詳細は不明だがかなり明確な意図をもってネームレスに銘を与えなかったらしい。それどころか、自分以外の者がネームレスに正式な銘を与えられないように、ネームレス自体に魔術的なトラップも仕掛けていたという。
(そうまでして彼に銘を与えたくなかった理由とは、何なのでしょうかぁ?)
 るこるも色々と想像してみるが……文字通り、想像の域は出ない。何せ、ネームレスの本来の剣身はとうの昔に失われている以上、問題のトラップも確認しようが無い。製作者を問い質すことはもっと無理だ。経過した時間を考えれば、とっくに鬼籍に入っているだろう。……もしも、オブリビオンとして甦っているのであれば真実を教えてもらえる可能性はあるが――それを望むことは、るこるも猟兵として出来なかった。
(ままなりませんねぇ……)
 なので、るこるも思考を完全にネームレスの新しい銘を考える方に向けることにした。……やがて、思い付いたアイディアを彼女は口にする。
「かつての持ち主の異名が『蒼玉』、ネームレスさん自身も『蒼い宝玉』が嵌まっていることを考えますと、そちらにちなむ名前で『サピルス』というのは如何でしょう?」
『サピルス……?』
 初めて聞く言葉だったのか、ネームレスが不思議そうにるこるに続いて口にした。
「ある異世界において、『蒼玉』=『サファイア』の語源の一つとされる、『青』を意味する言葉ですぅ」
『なるほど……サピルスか。……ああ、悪くない……』
 ロマンチックさに酔うように、ネームレスが頷く気配。それに、るこるはふと思い付いて訊く。
「ただ、『姓』がお入り用なら、そこは『製作者の方』のものを受け継いで頂けると――すみません何でもないですぅ」
 るこるが慌てて意見を翻したのは、ネームレスから物凄い不本意そうな雰囲気が発散したからだ。声は無くとも『死んでもご免だ』と主張しているのは明白だったのである。
 ……しかし、るこるに八つ当たりしたような形になったのは、ネームレス改めサピルスも反省したのだろう。言い訳するように遠回しな感じでこんな風に語った。
『……姓が必要なら、むしろジュノンのものを受け継ぎたい。我にとっては、製作者などよりも彼女の方が余程特別だからな』
「……そうですかぁ」
 ……ここで、綺麗に収まれば良かったのだが……。
 ――カラァンッと、乾いた音がした。そちらへとるこるが目線を向けてみれば……紫のロングヘアを長いリボンで飾った可憐な少女の姿が。ハイドレンジアの分身体であるが、その手から滑り落ちた本体が足元に転がっている。その本体と連動しているはずの分身体の愛らしい顔は……今は引き攣っていた。
 慎重に慎重を期したような声音で、ハイドレンジアがサピルスへ問うてくる。
「あの……ね、ネームレス……? ジュノンと同じ姓を名乗りたいって……あなたどれだけあの子が好きなの……? しかも、本人の死後に許可も取らずとか……ねぇ……?」
 何処からどう見てもドン引いている様子のハイドレンジアに、流石にネームレスも激昂した。
『関係無いだろハイドレンジアにはさぁっ!? 大体、剣が持ち主を好きになることの何がいけないのさ!? ハイドレンジアだってカッコいい男性が持ち主だった時と女性が持ち主だった時とで明らかにテンションが違ったじゃん!?』
「んきゃああああああっ!? ちょ、バカ、ネームレスぅっ!? 何でよりにもよってその当人たちが迷い出てきているかもしれないこんな場所で暴露するのよ、バカバカバカッ!!」
『自業自得だろ! 自分が嫌なことは他人にするなって製作者から習わなかったのかよ!?』
「………………」
(……どうしましょうかぁ、これ……?)
 お互いを本当に子どものような語彙力で罵り合い始めたネームレスとハイドレンジアに、るこるは若干遠い目をした。ネームレスからは大仰な口振りが消えて思春期の少年のようだし、ハイドレンジアも邪悪なオブリビオンというよりは女子中高生という感じである。
 けれども……もしかしたら、これこそが過去に勇者たちと共にあった時のネームレスとハイドレンジアの本来の関係だったのかもしれなかった。それを歪め、壊したヴァルギリオスたちには……るこるも憤りを感じてしまう。ならばこそ……。
(きちんと、もう一度終わらせてあげなければいけませんねぇ)
 るこるは猟兵の本分を思い出す。
「――サピルスさん、力をお貸し願えますかぁ?」
『……え? ああ、いや、承知したぞるこるよ!!』
 大仰な雰囲気を取り繕って、サピルスの霊体が光へと変じる。るこるが腰に差していた紫の柄糸の白鞘の刀……『霊刀・純夢天』へとその光は宿った。並行して両腕、両脚へと装着した『フローティングブレイドシステム』――『FBS』の機能で空へ舞い上がりながら、るこるはユーベルコードを発動させる。
「『大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて舞を捧げましょう』」
 るこるの全身を包み込むように、光り輝く結界が形成された。『フローティングシールドシステム』……『FSS』と称される光の盾がその結界を強化するように彼女の周囲を回り――そして、るこるは閃光と化す。
「……っ!?」
 音すら軽く置き去りにする、るこるの光速の体動。それに追い付くことがハイドレンジアには出来ない。分身体が拾い上げた本体でるこるの突進へカウンターを放とうとするが――その時、るこるは既に方向を変えて彼女の後ろに居た。
「――きゃああぁぁああああああああああっっ!?」
「んんっっ……!?」
 ハイドレンジアと衝突する瞬間、るこるは結界を純夢天の刀身へと集束させ、相手の分身体を貫いた……だけのつもりだった。ネームレスからの力を上乗せされたその刺突は、火山噴火を思わせる光の奔流となってハイドレンジアを呑み込む。一瞬も保たずに可憐な少女の姿の分身体は消し飛んで、ハイドレンジアの本体たるレイピアは竪穴の底まで真っ逆様に落ちていった。……それでも収まり切らなかった爆発的な光は空に向かって龍のように飛翔し、その軌道上に咆哮のような衝撃波を乱舞させてようやく消失する。
 ……直撃すれば帝竜でもただでは済まなかったはずのサピルスの力を実感し、るこるの中である疑念が形を成した。
(サピルスさん……彼の製作者が彼に銘を付けなかった本当の理由は……『それ』なんですかぁ……!?)
 武器にとって銘は非常に大事なものである。UDCアースの日本の刀の中にも、銘が変わったことで名刀であった物がその性質を失ったり、逆に最初は何の変哲もない刀だった物が数々の伝説を残した例だってあった。
 それに当て嵌めてみると――サピルス=ネームレスは、無銘の剣であるにもかかわらず『強過ぎる』のである。事実、彼は過去の戦いでもヴァルギリオスという強敵中の強敵に相当な痛撃を与えているのだから。
 逆説的に言えば――無銘であってもそれほどの力を発揮する剣が、銘を得たらどれほどのものに化けるのか?
 ……今、オブリビオン・フォーミュラとしてこのアックス&ウィザーズを脅かしているヴァルギリオスよりも、危険な存在になり得るのではないか……?
(『銘が無い』……それこそが彼の『安全装置』なんですねぇ……)
 サピルス=ネームレスの製作者の意図……そこをやっと、るこるは理解出来たのであった……。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレミア・レイブラッド
ジュノン…あぁ、あのビキニアーマーの!
懐かしいわ。…そういえば、あのビキニアーマーどうなったのかしら?
ころなが着てたりするのかしら?

それにしても…実用的な作りながら、意匠も素晴らしい。本当に素晴らしい剣ね…

雪花「おねぇさま、獲物を狙う目になってるのー」

…とにかく、名前ね。
こういうのはシンプルが良いのよ。グローリィ・レオとかどうかしら♪
栄光の獅子なんて勇者にピッタリじゃない?

雪花「そのまま過ぎな気もするのー」


雪花と参加。厨二な名称提案しつつ、戦闘参加。
【神滅の焔剣】を発動し、真の力を解放。
剣の力を借り、焔剣レーヴァテインの力を剣に纏わせて高速戦闘。
一気にその花を焼き払い、溶断させて貰うわ!



 今回の依頼に際して、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は首を傾げていた。何やら聞き覚えのある名前が出てきたからである。
「……ジュノン……? ――ああ、あのビキニアーマーの!」
 フレミアは過去に、ネームレス(これの前の銘はサピルス)の最後の持ち主であったという勇者の遺物を探索したことがあったのである。
「懐かしいわ。……そういえば、あのビキニアーマーどうなったのかしら?」
 フレミアたちが発見したジュノンの遺物――サファイア色のビキニアーマーはグリモアベースへと持ち帰られ、この群竜大陸を発見する為の予知の助力になったはずであるが……その後はどうなったのだろうか?
「……ころなが着てたりするのかしら?」
 ノーコメントでお願いします。
 さて、そんな風にネームレスと縁があるような無いようなフレミアであるが……今、彼女の目は爛々と輝いていた。
(敵を確実に屠らんとする如き鋭利な切っ先……だけど、刀身自体は案外肉厚で、敵と打ち合っても揺るがない頑丈さが見て取れるわね。その上で武骨に堕ちない洗練された装飾の数々……)
「……実用的な作りながら、意匠も素晴らしい。本当に素晴らしい剣ね……」
 幽霊になった今も在りし日の姿を留めるネームレスに、猛禽類のような視線を走らせているフレミア、正直ちょっと怖い。
『……ひぃっ……!?』
「……おねぇさま、獲物を狙う目になってるのー」
 若干ビビっているネームレスの傍らで、フレミアの眷属の一人である雪女見習いの『雪花』が呆れた顔をしていた。
「……だってしょうがないじゃない。実際の剣身は既に失われてることが残念でならないわ……」
 紅の魔槍『ドラグ・グングニル』とか、念と魔力で実体無き光の刀身を形成する『念動魔剣クラウ・ソラス』とか。案外武器にはこだわりが強いフレミア……かつてのネームレスは、そんな彼女のお眼鏡に適う業物であったようである。
「……とにかく、名前ね。こういうのはシンプルが良いのよ」
 事実、フレミアが扱うドラグ・グングニルもクラウ・ソラスも、そこまで捻った銘ではない。シンプルだからこそカッコいい名前というものは、実際に数多いのだ。
「そうね……『グローリィ・レオ』とかどうかしら♪ 栄光の獅子なんて勇者にピッタリじゃない?」
「そのまま過ぎな気もするのー」
 フレミアが自信満々で提案した名前へ、雪花が異を唱える。唇を尖らせたフレミアが雪花を睨め付けるのを見て、ネームレスがフォローの声を上げた。
『い、いや、我は悪くないと思うぞ。……栄光も獅子も、何処かジュノンのイメージと重なるしな……』
 ついでに言うと、『栄光』を『グローリー』ではなく『グローリィ』と表現したこともポイントが高いらしい。微妙な違いであるし、大多数の人はどちらでも変わらないと思うだろうが……こういうところにこだわってしまうのが、実に中学二年生の男子っぽいのである。
「ほら、見なさい。わたしのセンス、なかなかのものよね♪」
「むぅ……」
 自画自賛するフレミアに、今度は逆に雪花が納得出来なさそうな表情になっていた。
 ……ネームレス改めグローリィ・レオでさえ何だかほっこりとするフレミアと雪花のやり取りだが――それもここまでのようである。竪穴を登ってくるハイドレンジアの分身体の姿が見えたのだ。向こうもグローリィ・レオの隣にフレミアと雪花が並んでいるのを見て、状況を察したらしい。
 分身体に深々と溜息を吐かせて、ハイドレンジアはもう慣れてきた様子で問いを発した。
「……また新しい銘を貰ったのね、ネームレス。今度はどんなものなの?」
『そうだな。聞かせてやろう、フレミアよ。貴様が授けてくれた我の新しき名前を!』
「グローリィ・レオよ。彼には好評だったのだけど、こっちの子――うちの雪花には不評だったの。あなたはどう思うかしら?」
 右手でグローリィ・レオを、左手で雪花を示し、ハイドレンジアへ意見を求めるフレミア。それに、アジサイの意匠を持つレイピアは律義に返答した。
「今までに聞いた中では良い方よ。シンプルで解り易いわ」
「あら、ありがとう♪ あなたとは結構センスが合いそうだわ」
「……そうね。だけど、センスが合っても他が決定的に合わないでしょう? あなたが猟兵である以上は」
「……残念、フラれちゃったわね」
 会話を続けつつ……フレミアとハイドレンジアの間で戦意が高まっていく。片や猟兵。片やその猟兵と敵対するヴァルギリオス配下のオブリビオン。この帝竜戦役という状況下で……戦場という場所でまみえて、馴れ合うことなど出来なかった。
「雪花は下がってなさい。グローリィ・レオ、行くわよ」
『承知した、フレミア。我が力、貴様へと託そう!』
「おねぇさま、気を付けてなのー……」
 雪花が後方へと駆け、幽体へと変じたグローリィ・レオがクラウ・ソラスへと憑依する。クラウ・ソラス自体の性質も影響したのか――その形状は元のグローリィ・レオと同じものへ変化した。
「――『装飾花~オルナメンタル・フラワーズ~』……!」
 ハイドレンジアの分身体が紫の長髪をなびかせながら疾駆し――その横に並ぶように出現したハイドレンジア本体の似姿たちが次々にフレミアに向けて射出された。しかし、その剣先がフレミアの美貌に届く前に、彼女の方もユーベルコードを発動し終えている。
「『我が血に眠る力……今こそ目覚めよ! 我が眼前の全てに滅びの焔を与えよう!』」
 解放されるはフレミアの中に眠る吸血鬼の真祖の魔力。その瞬間に膨れ上がったプレッシャーは、或いは帝竜たちすら凌ぐものであったか……? それに気圧されるようにして、1秒の10分の1にも満たぬ時間、静止するハイドレンジア本体の似姿たち。そのことごとくが、刀身を真っ二つに焼き切られた。
「そんなっ……!?」
「『神滅の焔剣』……レーヴァテイン! これの前には『祝華武装』とやらも手折られる花と何ら変わりはないわ……!!」
 グローリィ・レオの姿を再現したクラウ・ソラスに、レーヴァテインもまた重なる。普段のレーヴァテインにも増して輝くそれは、地上へと降臨した太陽そのもの。相対するだけで、ハイドレンジアの本体も分身体も焦がしていく。
 さらに、その速さは稲妻すら追い抜いた。次の瞬間にはハイドレンジアには認識不可能となったフレミアとグローリィ・レオが、彼女を死の舞踏へと誘う。
「くっ、あっ、きゃああああああっっ……!?」
 嵐の海に漕ぎ出した小舟の如く、不安定に揺れるハイドレンジアの周囲で、光と炎の竜巻と化したフレミアがグローリィ・レオを振り翳した。
「一気にその花を焼き払い、溶断させてもらうわ!」
「――っあぁぁああああああああっっ……!!」
 音すらもその超高熱で焼き払われたか――無音の中、ハイドレンジアという銘のレイピアの刀身が半ばから断ち切られる。柄の方と切っ先の方とで泣き別れとなった祝華武装の細剣は、高々と天に舞った後……竪穴の底へと墜落していった。
『………………』
 それを、グローリィ・レオは無言で見送る。
「形あるものはいずれ壊れるわ。あなただってそうだし、彼女だってそうだったのよ。だけど……二度目の最期も戦いの中で迎えられたのなら、武器として彼女も本望だったのではないかしら?」
『……そうだな……』
 フレミアの弁に、グローリィ・レオは言葉少なにそう答えたのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

彩波・いちご
名前を付けてもらえなかったっていうのは辛いですよね
私なんて、元は捨て子でしたけど、それでもいちごという名前だけはつけてもらっていましたし…そこだけは顔も知らない親に感謝です

なのでまぁ、名前のない悲しみはわかります
私でよければ……そうですね
『♰蒼穹を断つ神剣・エターナルブルー♰』
…なんてどうでしょう?(邪気の無い笑み

ネーミングセンスには自信はないんですけど、気にいってもらえたら嬉しいです

もし気に入ってくれたら、私の召喚する【異界の邪剣】に力を貸してもらえればいいかなと
禍々しい邪剣も、あなたの力で聖剣のように輝いて
あと剣術は苦手な私でも、ジュノンさんのように戦えるはずです
…たぶん!



 ……猟兵たちの奮戦とネームレス(この時点で最後の銘はグローリィ・レオ)の協力により、オブリビオン・ハイドレンジアは討ち果たされた――と思われたのだが……。
『……え? また戻ってきた!?』
 刀身が半ばから断たれた本体を右手に握り締めたハイドレンジアの分身体が、ネームレスの許にまたも出現していたのである。……とはいえ、幾度となく消滅と再構築を繰り返すこととなった分身体は、紫のロングヘアをまとめていたリボンも失われ、服装もかなりボロボロの様相であった。
 それでも、目から力は失われていない……。
「本当に……散々な目に遭ったわ。だけど、流石にもう猟兵は来ないでしょう? 向こうはもう、わたしを倒したと思い込んでいるはずだから……」
 分身体に荒く息を吐かせるハイドレンジア。……彼女に残された時間は最早少ないだろうことは、明白に見て取れる……。
「それでも――せめてあなたには一矢報いないと気が済まないの! 覚悟しなさい、ネームレス!!」
『くっ……!?』
 ……冷静に考えれば、霊体のネームレスに物理攻撃しか出来ないハイドレンジアがどうやって一矢報いるのかという疑問があるのだが――何にせよ、想定外の危機に直面したネームレスに、救いの手は差し伸べられたのである。
「――そこまでです!」
「……え、猟兵!? まさか……何でまだ……!?」
 勇者の墓標に凛とした声を響かせたのは、一見すると青髪青眼の見目麗しい少女。――その正体はれっきとした男の娘である彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)であった。
 想定外の猟兵の登場に、ハイドレンジアは動揺する。
「……ネームレスさんとどうしてもお話ししたくて、無理を言って転移させてもらいましたが――それが僥倖だったみたいですね。まさか、まだ倒し切れていなかったなんて……」
 腰を軽く越す髪を揺らして、いちごが首を横に振る。そんな彼へ、ネームレスの方も戸惑いつつ問い掛けた。
『我と……話したい? 一体何故だ……?』
 ネームレスへ、いちごは複雑な微笑を向ける。
「名前を付けてもらえなかったっていうのは、つらいですよね。私なんて、元は捨て子でしたけど……それでも『いちご』という名前だけは付けてもらっていましたし……そこだけは顔も知らない親に感謝です」
 自分のつらい境遇を語ったいちごへ、ネームレスは声も出せないでいた。
「なのでまぁ、名前の無い悲しみは解ります。だから……私も。私で良ければ……って……」
 そのような気持ちで、いちごはネームレスへ会いに来たのだ。その気持ちは、ネームレスの側の心も震わせる。
『ありがとう……我は幸せ者だ。いちご、良かったら貴様も我に銘を付けてくれ。そして――』
「――はい、解っています。あなたのお友達も、今度こそ……!」
「くぅっ……こんな……!」
 いちごとネームレスから発せられる覇気に、ハイドレンジアは気圧されていた。そして……いちごの唇から朗々と『その銘』が滑り出る。

「そうですね……『♰蒼穹を断つ神剣・エターナルブルー♰』……なんてどうでしょう?」

『……なんと! なんという……我の魂を震わせる銘だ……!! 実にいい、実にいい名だぞ、いちご――』
「――ちょぉぉぉぉっと、待ってぇぇええええええええええええええええええええっっっっ!!」
 邪気の無い笑顔を浮かべるいちごへ、感激も露わな返事をするネームレス改め♰蒼穹を断つ神剣・エターナルブルー♰。……そこへ割り込む、ハイドレンジアの涙ながらの絶叫。
 キョトンとした様子のいちごと♰エターナルブルー♰へ、声をからしてレイピアのインテリジェンス・ソードは訴えた。
「ネームレス、やめて……それだけは本当にダメよ! 今までで一番酷い名前だから……!!」
「失敬な!?」
 自分のネーミングセンスを全否定されて、いくら何でもいちごも憤慨する。
「確かに、私はネーミングセンスには自信が無いですけど……ネームレスさん――いえ、♰エターナルブルー♰さんも気に入ってくれているじゃないですか!?」
「ネーミングセンスに自信が無いどころの話ではないでしょう!? そもそも何なの、『♰』って!? 何でわざわざ名前の前と後ろにそんな変なもの付けるの!?」
「……え、カッコよくないですか?」
『カッコいいと思うぞ、我も』
「そのセンスがまず世間一般から大きく乖離していることに気付いてぇぇええええええええええっっ!!」
 オブリビオンから世間一般の常識について諭される猟兵・いちご。……何だろう、この光景……?
 ハイドレンジアはいちごを正座させて一時間でも二時間でも説教したい風な面持ちであったが、生憎いちごは猟兵。そんなことに付き合う義理は無かった。
「話していても埒が明きませんね。♰エターナルブルー♰さん、助力をお願いします!」
『我はいつでもいけるぞ、いちご!』
「お願いだから話を聞いて!!」
 ハイドレンジアの悲痛な声を尻目に、いちごは自身のユーベルコードを発動させた。
「『ふんぐるいふんぐるい……、我が眷属よ、来りてその身を我が敵を滅ぼす邪剣と化せ』」
 いちごの足元の影がまるで水面のように波打ち、そこから禍々しいという言葉を凝り固めたかの如き剣が浮上してきた。
「……ちょっと、その剣にネームレスを宿すの!?」
「確かに、この剣は邪剣ですが……禍々しい邪剣も、♰エターナルブルー♰さんの力があれば、聖剣のように輝くと私は信じています!」
『聖と邪が合わさることで、究極の力が生まれるということだな! 望むところだ!!』
 ハイドレンジアは凄く困惑した顔だが、いちごと♰エターナルブルー♰はノリノリである。いちごの邪剣に♰エターナルブルー♰が憑依した瞬間、数多の色が入り混じった光が天へと届くほどに噴き上がった。
「……この色、どう見ても善なる力には見えないのだけど……? どちらかというと混沌というか、人が触れてはいけない類いのこの世の法則の外の……」
 ハイドレンジアが何か言ったが、いちごも♰エターナルブルー♰も聞いてはいなかった。
「この力は……! 今なら、剣術が苦手な私でもジュノンさんのように戦える気がします!! ……たぶん!」
『我と我が力を信じろ、いちご。我と貴様が揃えば、その力はまさしく地上最強に他ならない!! ……多分!』
「あなたたち……アバウト過ぎよっっっっ!!」
 そんなハイドレンジアの悲鳴を、いちごと♰蒼穹を断つ神剣・エターナルブルー♰の混沌色の斬撃が断ち切ったのだった……。

『……ハイドレンジア……』
 いちごの邪剣から憑依を解いた♰エターナルブルー♰の呼び掛けに、アジサイ色のレイピアは分身体の目をそっと開かせた。
 ……彼女の分身体はもう上半身しか残っておらず、本体の方もサラサラと砂のように崩れていっている。今度こそ――骸の海へと還るのだろう。
「……負けたわ。剣として、あなたに完敗よ……ネームレス。あなたは本当に……あの頃から、変わらずに最強の剣……。少しだけ、羨ましかったわ……」
 自分に羨望の眼差しを向けるハイドレンジアへ、ネームレス……♰エターナルブルー♰は返す。
『……オレは、ずっとハイドレンジアたちの方が羨ましかったよ。そして――大好きだった。姉さんみたいで……』
「……ありがとう、弟くん」
 そうして、ハイドレンジアの分身体はいちごの方にも目を向けた。その瞳は何処までも真剣で……いちごは大事なことを伝えられると察し、居住まいを正す。
「いちご……と言ったわね。一つ、忠告よ」
「はい……」
「このままだと、あなたはきっと後悔するわ。いつかの未来で、必ず自分自身を恨むことになるの。そうならない為に心に留めておいて……」
「……はい……」

「――親になる前に、そのネーミングセンスは直した方がいいわ……」

「最後の最後でとんでもない暴言を吐かれました!?」
 ハイドレンジアが分身体、本体共に崩れ去って消えた瞬間、いちごの雄叫びが勇者の墓標にこだましたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月23日


挿絵イラスト