帝竜戦役㉓〜ザ・ディメンジョン・ドレイン
「皆さんお疲れ様でーす! 帝竜もあらかた出揃って、そろそろ戦争も後半戦ですねー!」
シーカー・ワンダーはハイビジョンテレビ型のグリモアを背後に、ぴょんぴょんとバンザイジャンプした。
帝竜戦役! これまで攻略してきた群竜大陸には様々な地形が存在したが、今回戦端が開かれた場所の特異性は極め付けだ。大地が全て蠢く巨大脳髄で作り出された、巨人の頭蓋内が如き戦場! ここに座する帝竜が今回の相手である!
「ここの帝竜の名前は知ってる人も多いと思います。ドクター・オロチ! グリモアベースで初めて発令された、スペースシップワールドの戦争に参加していたオブリビオンです!」
ドクター・オロチは、スペースシップワールド時代には人間型の、フードを被った脳だけの頭部を持つ異形のオブリビオンであった。しかし、このアックス&ウィザーズにおいては何故かドラゴンの頭から胴体を生やした姿をしているのだ。
「体がドラゴンになったせいか、パワーも段違いに強くなってます。ドラゴンはあらゆる生命体を溶かして取り込む粘液で出来ていて、色んな属性の力を宿しています。他の帝竜と比べても遜色ない戦闘力の持ち主です!」
ドクター・オロチは単純な戦闘能力に加え、水火闇光樹雷土のどれかの属性を持つ竜を召喚して使役している。このドラゴンを突破しなければ、ドクター・オロチに辿り着くのは難しいだろう。
「ドクター・オロチは再孵化の技術に興味を持っているみたいで、何か企んでるみたいです! ここで逃したら別の世界でも厄介なことになっちゃうかも! ボコボコにして、復活できないようにしちゃってください!」
鹿崎シーカー
●あらすじ
群竜大陸にはびこる強敵たちを踏み越え、猟兵たちがエントリーしたのは異形の大地! 蠢く巨大脳髄で構築されたこの場所に陣取っているのは―――『帝竜ドクター・オロチ』! かつて銀河を巡る宇宙船団の世界に現れた存在がドラゴンの身体を得て再顕現していたのだ!
再孵化にもなんらかの関わりを持ち、世界を渡るドクター・オロチ。このまま野放しにしておくのは実際危険! 『異次元の排水』で武装したドラゴンを滅ぼすべし!
●ボス戦『帝竜ドクター・オロチ』
あらゆる生命体を溶解し取り込む、緑色の粘液体を持つ帝竜です。その頭部からはスペースシップワールドに現れた「ドクター・オロチ」に酷似した存在が生えています。
ドクター・オロチは必ず『SPD:オロチ分体』で先制攻撃を行います。
プレイングボーナス:『先制攻撃(SPD:オロチ分体)』に対抗する。
アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。
(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
第1章 ボス戦
『帝竜ドクター・オロチ』
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POW : グリーン・ディザスター
【口から放射される緑の粘液】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : オロチ分体
【水火闇光樹雷土のうち1つの属性を持つ竜】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : オロチミサイル
レベル×5本の【水火闇光樹雷土の7つの】属性の【エネルギー塊】を放つ。
イラスト:V-7
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
中村・裕美
「……食らったものの形質を発現させる……竜らしいっちゃ……竜らしいかしら」
脳髄が蠢いているのであれば、【地形の利用】ということで利用させてもらう
「……結局の所……動きの命令なんて電気信号。……しかもこんな剥き出しにされてたら……使ってくれと言わんばかり」
うごめく脳髄に【早業】で【ハッキング】させ、大きな動きをさせて囮にし、自分は【目立たない】ようにオロチのもとへ向かってゆく
「……特に言うこともないし……倒させてもらう」
ネタ被りだけど、【魔竜転身】で巨大な竜に変貌し、オロチに組み付いて、相手の肉体を電子データに分解するブレスを吐きつける。その間、特に理性はなく、パワーとタフネスの限り暴れまわる。
木常野・都月
一人称:俺
二人称:貴方
三人称:先輩や尊敬してるヒトはさん付け、それ以外は呼び捨て
名前:苗字さん
最善は尽くすけど、敵が7属性使えるのは辛い。
俺の主力攻撃が防がれるかも。
まずは先制攻撃だな。
[野生の勘、第六感]で敵の動きに注視しながら、[オーラ防御、高速詠唱]で凌ぎたい。
7属性攻撃が防がれるなら、それ以外で攻撃するか。
ちょっと賭けだけどな。
UC【精霊共鳴】で攻撃の破壊力をあげたい。
火と氷の精霊様にお願いした[属性攻撃、2回攻撃、多重詠唱、全力魔法]で火と氷、2属性を同量ずつ合わせた、消滅エネルギーの無属性で攻撃したい。
魔力切れても敵が動いてるなら、ダガーとエレメンタルダガーに持ち替えて応戦したい。
神代・凶津
中々にヤバい相手なようだぜ、相棒ッ!
「・・・でも、負けられない。」
おうよ、相棒。
気合いいれていくぜッ!
「・・・竜には龍で対抗します。」
マジか相棒。
アイツを喚ぶと相棒と俺で三日三晩は神楽舞を奉納しなけりゃなんねえが、・・・背に腹は代えられねえか。
結界霊符をその場に貼って敵の先制攻撃を何とか防いでみせるぜ。
霊符の力を限界以上に引き出してもどのくらい持つか分からねえがアイツを召喚する時間が稼げれば十分だッ!
「・・・妖刀、解放ッ!」
召喚に成功したら竜と龍の大怪獣バトルの開始だぜ。
俺達は破魔弓で援護射撃するぜ。
さあ、派手にいこうかッ!
【技能・限界突破、破魔、援護射撃】
【アドリブ歓迎】
メルティア・サーゲイト
【私・お前・名前呼び捨て/コンビ:f03411】
「ドーモ、クター・オロチ=サン。サチュレイターです。SSWではよく逃げ切ってくれたな。褒美に宇宙で死に損なった事を後悔させてやるぜ」
転送前から重戦車形態だ。流石の私も帝竜相手に正面からの撃ち合いは、
「やるんだなァ、コレが!」
主砲七門、即種属性弾頭を装填済み!
「好きな属性使えるのがそっちだけだと思ったか。戦車はな、属性攻撃も得意なんだよ!」
樹に火炎弾、火に土砂弾、土に金属徹甲弾、雷に高圧噴水弾、水に宿木弾を発射! 五行相生だ、相手の属性を利用して弾丸を強化してそのまま攻撃だ! 光と闇には聖別済み純銀弾と奈落弾で相殺だ。
「竜退治はもう飽きた!」
フォーネリアス・スカーレット
【私・お前・名前=サン/コンビ:f03470】
「ドーモ、ドクター・オロチ=サン。オブリビオンスレイヤーです。もはや逃げ場はやらん……貴様を殺すのは、貴様自身の紡いだ因果だ」
対応は戦車馬鹿に任せる。砲塔の上で座禅し、繋ぐ。
私が呼びかけるのは電子ネットワークではない、コトダマだ。生死を問わず、オブリビオンによって虐げられし者達……その苦痛と嘆きを吸い上げる。
「そうだ、コイツを殺す。私の意思と、お前達の遺志で」
貫キ殺スを構え、跳躍。
「オブリビオンを皆殺しにするッ!」
フックロープも使い、立体機動的に貫く。死ぬまで貫く。何度でも、何度でも。
「貴様に詠ませる俳句は無い!」
ラモート・レーパー
「狩とはいえこれは軍人じみてて嫌ね」
武器の関係上お姉さんの姿で戦うわ。
装備【常夜の世界】で戦場を夜に変える。
HE製の催涙弾、スタングレネード、シュールストレミングを使って敵の視覚、聴覚、嗅覚を封じる。シュールストレミングは粘液飛ばしてきたときに缶ごと投げつけて防ぐのが目的。加えて殺気による囮で第六感にも対抗する。
攻撃は黒剣を変化させたポンプアクションライフルによる麻酔弾。普段から真夜中で狩りをしてるから夜目が利くしスコープもいらない。数発毎に逃げ回るけど。
UCは無詠唱で普通の呼吸で静かにばら撒く。病魔は狂犬病をアレンジした狂竜病。
「猟兵って意味なら間違ってはいないよね……狩人で兵士だし」
水蓮・レン
既視感がする。
実際スペースシップワールドで戦った相手だから既視なのは当然だけど、『復活したオロチと戦う』こと自体に既視感を覚えるような……。
……考えるのは後。何度出てきても討ち倒すだけだ。
■先制攻撃への対策・戦闘
《武器受け》でオロチ分体の一撃をマントで受け止めて【影写し】。
効果時間の間、オロチ分体のコピーを何匹も召喚して物量で戦おう。
他の猟兵と連携できるならコピーを他のオロチ分体と食い合わせての足止め狙い。
それが無理なら自分がコピーと連携しながら戦うよ。
「オロチの力を誇ってるようだけど、それを逆用される気分はどうだい?」
※アドリブ・連携歓迎
一人称:僕
二人称:君
三人称:あの人
名前呼び:~~さん
土斬・戎兵衛
『拙者・おたく・彼/彼女・名前+くん/ちゃん/さん』
あ~嫌だ嫌だ
デカいのも、実態を掴みにくい属性も、斬り殺しにくいったらないよ
分体竜が襲い掛かってきたら軌道を【見切り】、高速回転させた首枷で【盾受け】して多少なりとも攻撃を逸らす
それから、定切で攻撃から己を弾くように防御回避
防御の後、UCを発動
五大も陰陽も剣を振うしか能のない拙者の手には余るが、幸い手元には代理を果たす"めがりす"がある
拙者は息を意識することなく唱い髑髏に【無酸素詠唱】をさせて、防御した分体竜の属性を分渡に纏わせ、その属性がよく通る相性の属性の分体竜に斬りかかろう
【早業】に分体竜を斬り回り、属性を集め、最後はオロチを両断でござる
大神・零児
前世の記憶っつーのか?
悪夢の内容は少しだが覚えてんだ
して
今度は『龍脈』の力か
その見た目も攻撃方も悪夢のまま
違うのは頭のお前だ
対策
リミッター解除済のC-BAに騎乗し各種センサーと戦闘知識、第六感、野性の勘で攻撃の軌道や事前動作等を情報収集
運転と操縦技術を駆使して残像を使い収集した情報も使って回避
回避不能な攻撃
鮮血の氣を妖刀『魂喰』に纏わせ、念動力も加えたなぎ払いで衝撃波にオーラ防御をのせて乱れ撃ちのように飛ばし何度も吹き飛ばす
時間稼ぎができたら一瞬の隙をつき咄嗟の一撃による早業でUCをスナイパーのように遠方から制圧射撃のごとく乱れ撃ちでC-BAのグレネード一斉発射と共に叩き込む
アドリブ共闘可
ロニ・グィー
【spd】
アドリブ・連携歓迎
ボク・キミ・彼ら・呼び捨てまたは~くん
へ~キミって有名人なんだね
えーと、たしかお、お、オロ…そう、ポロロッカくん!
・対策
シュバっと残像を残すような高速移動で存在感を持たせたUC分身と入れ替わってそのまま分身に相手を挑発させてUCをコピー!
ズバババーっと相手が出してきた竜に有利な属性(があれば)の竜をズララーっと呼び出して相手をしてもらっとこう
さーって、一応こっちは時間制限もあるからさっさとやらないとね
まず餓鬼球たちをけしかけて粘液体を食べてもらって剥ぎ取ってーの噛み付いて捕縛してもらってーの……
大きすぎない範囲で特大級サイズの鉄球を叩き落してドーンッ!グチャーッ!
「ムシュシュシュシュシュ! ムーッシュシュシュシュシュシュシュ!」
飛翔したドクター・オロチの本体が両腕を広げると同時、彼の目前に居並ぶ七匹の竜が咆哮を轟かす!
青のシーサーペント、プロミネンスめいた龍、黒霧に真紅の瞳を浮かべるドラゴン、光芒で輪郭が朧な竜、木製のステルス戦闘機に四本脚を生やしたような異形、タテガミに稲妻を走らせる大蛇、トリケラトプスめいた角持つ地竜!
七体七属性のドラゴンたちは雁首をそろえて大口開き、七つの光球を膨張させる! 彼らの背後に浮かぶドクター・オロチが甲高い声でがなり立てた!
「ムシュシュシュシュシュ! ハローハローボクの前にしつこく立ちはだかってくる猟兵クンたちィ! 今回こそはッ! ボクの研究成果の前に頭を垂れさせてあげようじゃないか! やってしまえ、オロチ分体ィ!」
ドクター・オロチが地上を指差すと同時、七体のドラゴンが七条の極大光線をぶっ放す! アグラ姿勢でそれを見上げたフォーネリアス・スカーレット(復讐の殺戮者・f03411)は騎士兜越しに赤い瞳を光らせながら呟いた。
「来たぞ。迎撃しろ、サチュレイター=サン」
「テメッ、人の上にケツ乗せといて偉そうに……!」
フォーネリアスがザゼンするのは一本の巨大砲塔! その先には重戦車形態をとるメルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)が、左右と後部からそれぞれ二門ずつ、計六門の形の違う巨大キャノンを展開!
「ったく、帝竜サマに加えて取り巻きのドラゴンが七匹だとォ? 流石の私もンな馬鹿な状況で撃ち合いなんざ…………やるんだなァ、これがッ!」
CABOOOOOOOOOOOOM! 七つの巨大砲が同時に火を噴き、六つの砲弾と高圧水流を噴射する! それらは狙い違わずオロチ分体が放つブレスに直撃! それぞれの先端に莫大な変化を引き起こす!
鉄砲水を四方八方に伸びた樹木塊が貪り、爆炎に土砂を固めた砲丸が命中! 直線状の土石流をドリルじみた徹甲弾が穿ち、緑色のエナジービームの先で炎が炸裂! 高圧水流は雷を撃ち、純銀と漆黒の弾が闇と閃光と激突した!
虚空で炸裂するブレスを見上げ、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が快哉を叫ぶ!
「ハッハーッ! 五行相生か! やるじゃあねえか!」
「敵が七属性使えるのが辛かったけど……こっちも同じ条件なら戦えるな。これで多少なりとも弱まるだろうし」
木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が同調し、木製の杖を脳髄の大地に突き刺す。頭上ではドラゴンたちがブレスを強め、メルティアの砲弾を押し返していた! 石突と地面の隙間から滲み出す黒汁に構わず、都月は告げる。
「これなら多少は弱まってるはず。凶津、手伝って」
「おうよォ! いっちょしのいでやるか、相棒ッ!」
「……うん」
凶津を被った巫女服の少女が頷き、片手に広げた無数の札を放り上げる! 札は見えない壁に貼りつくようにして空中に展開し、輝き始めた! 二人の後方ではメルティアが大型六輪を回して後退! ブレスが砲弾を押しのけて降り注ぐ!
「悪ィ、ちょっと凌ぎきれなかった! 後は頼むぜ!」
「わかった」
都月はブレスから目を離さないまま返事をし、空中の霊符越しに七色の輝きを真っ直ぐ見据えた。その背後に回った凶津の依代である少女は、赤黒い刀を引き抜いて右足を引く。
「……都月さん、この場をしばしお任せします。……あれ、やるよ」
「マジかよ相棒」
少女の呟きに凶津が呻いた。
「アイツ呼んだらお前と俺で三日三晩は神楽舞を奉納しなけりゃなんねえぞ」
「……ここで負けるよりはまし。竜には、龍で対抗します」
「へっ。背に腹は代えられねえか!」
少女が刀を時計の針めいて頭上へ持ち上げ、空の片手も柄に添える。そのまま刀身を真横に倒し、右手を刃に滑らせる一方、都月の周囲に赤青緑黄の四色が混ざったオーラが暴風じみて渦巻き始めた! ブレスの命中まであと五秒!
「精霊様! 守護を与えたまえ!」
都月が杖を掲げた瞬間、オーラの竜巻が一気に膨張し斜めに飛翔! 空中で巨大な傘状に展開し、七属性のブレスを全てまとめて受け止める! KRA-TOOOOOOOM! 空間を激しく揺るがす大激震! 都月の腕に衝撃が走る!
「ッ……!」
都月は歯を食いしばり、杖を持つ手に力を込めた。その時、彼の遥か前方に落下の重衝撃の波紋が広がる! トリケラトプスめいた三本角の地竜が着地し、都月めがて突進したのだ!
「BMOOOOOOOOOOOORRRRRRRGGGGHHHHHHH!」
鋭い角がオーラの傘を支える都月めがけて一直線! 都月の額に汗がにじんだ刹那、彼の真横をダッシュで突っ切った中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)が地竜へ真っ直ぐ走り込む! 体の前で交叉した両手はホロキーボードを激しく叩く!
「……結局の所……動きの命令なんて電気信号。……しかもこんな剥き出しにされてたら……使ってくれと言わんばかり。……せいぜい、闘牛ならぬ闘竜に使わせてもらう……」
瓶底眼鏡を怪しく光らせた裕美は進路を右斜めへと僅かに変えて急加速した! 顔面真横を掠める軌道で裕美とすれ違った地竜が、左目で彼女を睨み下ろした―――次の瞬間、地竜の下顎が跳ね上げられた!
「BMUUUUUUOOOOOOOOOOOOOO!」
後ろ脚二本でよろめいた地竜の前脚が落ちる! THOOOOOOOOM! 地竜のすぐ目の前にはモニュメントじみて垂直に盛り上がった脳髄の一部。裕美のハッキングにより変形した大地のひと欠片だ! それを飛び越えるのはバンダナで口元を隠すラモート・レーパー(生きた概念・f03606)!
「狩とはいえこれは軍人じみてて嫌ね」
ぼそりと呟いたラモートはベルトの裏腰からスチール缶めいた物体を取り出し、ピンを抜いて見上げてくる地竜の眉間に投げつけた! ZMAAAAACK! 激しい閃光に視界を潰された地竜が悲鳴を上げて荒れ狂う!
「AAAAAAAARRRRRRRRGGGGGGHHHHHHHH!」
「ムシュッ!?」
地上の閃光に気づいたオロチがそちらを向いた。残った六体のブレスは都月のオーラと凶津の霊符で作られたバリアをぐいぐい押し込み、押し潰すのは時間の問題! オロチは状況判断し、雷竜の背中に命を飛ばした!
「なんか不味い気がするぞ! サンダーオロチ、ブレスを中段! グランドオロチの加勢に迎えーッ!」
「SHRRRRRRRR!」
電光散らすタテガミを生やした大蛇が雷のブレスを中段し、頭から流星の如く地上へ向かう! バチバチと凄絶な稲光を撒き散らすタテガミが青白く発光! 大蛇は両目を瞬かせ、大口を開いた! 輝く口腔!
「FSHAAAAAAAAAARGH!」
ZGRAAAAAAAAAK! 落雷が激しく頭を振って後退する地竜の前方、わだかまる光の中で着地したラモートをめがける! だが裕美によって持ち上げられた脳髄のモニュメントに着地し轟雷を見上げる者あり!
「ドラゴン八匹、闇に光に雷に? あー嫌だ嫌だ。デカいのも、実態を掴みにくい属性も、斬り殺しにくいったらないよ」
土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)は首を鳴らしながらぼやくと、右手に下げたギロチン用の首枷を持ってハンマー投げ選手めいてその場で回転! 勢いつけて落雷へと投げ飛ばした! THROW!
「では、参る!」
戎兵衛はすぐさま居合い抜きの構えを取りワンテンポ遅れて首枷へ跳躍! 回転しながら飛翔する木製の枷は、大蛇が放つ雷に正面から突っ込み、ZGRAAAAAAAAAAK! 派手な雷光を虚空に散らし、弾き飛ばす!
「FSHAッ!」
ブレスをしのがれた大蛇がタテガミを逆立たせて警戒する中、戎兵衛は黒焦げになって力なく回る首枷を蹴って二段ジャンプ! 大蛇は両目を輝かせ、タテガミ外周に点々と現れた雷球から放電を繰り出した!
「SHAAAAAAAAAAAAARGHッ!」
「シャァッ!」
鋭い気勢を上げ、戎兵衛が己へ殺到する雷へ高速の剣閃を連続で抜き放つ! ZGAMZGAMZGAMZGAMZGAM! 斬撃に撃たれた雷たちは放射状に軌道を逸らして戎兵衛を避けた! タツジン! 大蛇は噛みつきで追撃!
「ふんッ!」
戎兵衛は身をひねって錐揉みしつつ斬撃! SLASH! 彼とすれ違った大蛇のタテガミが一部斬り飛ばされて四散! 大蛇の胴体に着地し前傾姿勢で駆け上がり、戎兵衛がガッツポーズめいて輪を嵌めた腕を突き出した!
「今のを見たな唱え髑髏よ! 拙者の剣に稲妻を与えるでござる!」
黄金の腕輪についた髑髏の瞳が蒼く輝く! 戎兵衛は黒鉄の定規じみた刀を納め、もう一本の柄をつかむ! 髑髏を装備した腕輪から彼の手を伝って稲妻が鞘へと流れ込んだ! 目指し走るはオロチ分体が一体!
「さて、五行も陰陽も過ぎた代物であるがしかし。斬るべき敵に、迷いなし!」
蛇の尻尾からハイジャンプした戎兵衛がロケットじみてシーサーペントへ飛んでいく! そちらを目だけ動かして見たシーサーペントは、同時に方向転換して戎兵衛に追いすがる大蛇も確認! 竜の背後でオロチが顎に手を当てて思案!
「ムシュウ……ブレスばかりにかまけてもいられないようだねぇ……。よし!」
顎の手を下ろしたオロチは逆の腕でドラゴンたちを指し示す!
「フレイムオロチとウッドオロチで防御オーラの奴を直接叩いて、ライトオロチとダークオロチはその他を狙え! オーシャンオロチはサンダーオロチと向かってくる奴を殺すんだ! 行けッ!」
『GYAAAAAAAAAAAAAARGH!』
それぞれ咆哮したドラゴンたちはブレスを止め、オロチに従って急降下! そのうち一体、シーサーペントは大蛇と共に戎兵衛を挟み撃ちにする構えだ! 開いた大口に大量の水が渦を巻く!
「ARRRRRRRRRRRRRRRRGH!」
「SHAAAAAAAAAAAAAARGH!」
シーサーペントが口から大洪水を解放し、雷の大蛇が膨大な電光を吐き出した! 戎兵衛は空中で背を丸め、稲妻走る刀を握ったまま琥珀色の瞳を光らせる! そして、CABOOOOOOOOOM! 空中で稲妻と水飛沫が爆発!
空に輝く光を見上げ、地上では狼を模したバイクが走る! それにまたがる大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)は、獣の咆哮が如きエンジン音を響かせながら正面に出現した光の竜と相対す!
「光か。面倒な手合いだが……」
「PIKYUUUUUUUUUUUUUUUNNNG!」
笛の音じみた声で叫んだ光竜は身体を地面と水平に倒し、レーザーじみて加速! 零児はアクセルペダルをキックし、車体側面を前に向けスライディングめいて滑走! その直上を光の槍が突き抜けた! ZQUUUUUUUUM!
「目に悪い奴だ!」
零児は毒づいて車体を起こし、バイクをジグザグに走らせる! 進行方向に落下する黒い霧。闇の中で紅い瞳を開く暗黒の竜が声も無く振りかぶった爪で零児を薙ぎ払いにかかる! 零児はバイクをジャンプさせ回避!
「GRRRRRRRRRR……」
「ああ?」
闇の竜が響かせるうなり声に零児は怪訝そうな顔をした。彼を見つめる赤い瞳は細められ―――嘲笑っている! 零児の全身が総毛だった直後、真後ろで閃光! 肩越しに振り返る彼へ光の竜が槍状になった腕を引き絞った!
「QUUUUUUUUUUNNNNN!」
光の速度で放たれる竜槍! しかし割って入った人影が代わりにそれを受け止める! 白に近い紫のマントで光槍を防御した水蓮・レン(ダンピールのウィザード・f12940)は、影の中で笑みを浮かべた。
「間一髪だね。大神さん、スイッチ頼める?」
「了解だッ!」
零児がバイクを前後反転させると同時にレンはマントを振るって闇の竜に振り返る! 光輝くマントの光芒に照らされ、闇の竜は大きく飛び退いた!
「逃げられないよ。光ある所に影があるものだからね」
FLAAAAASH! レンのマントが激しく発光した次の瞬間、光から吹き出した巨大なビームの槍が闇の竜を貫いた! 黒い霧を吹き飛ばされ、絶叫する闇竜の背後に光の竜が姿を現す。オロチ分体の一体、そのコピー!
「なんとォーッ!?」
空中で身を乗り出したオロチが叫ぶ! レンは彼の方を一瞬見上げ、挑戦的な笑みを見せる!
「オロチの力を誇ってるようだけど、それを逆用される気分はどうだい?」
「ムシューッ……! コピー能力者……! ダークオロチ! 早くそいつを殺すんだッ!」
「GRRRRAAAAAAAAAAAAARGH!」
再び体を黒い霧に包んだ闇竜が漆黒の光線を放射! レンはこれをマントでガード! 彼のまとう光が消し飛び、黒い霧が体を覆う! その背後では脳髄の大地でドリフトを決めた零児がジグザグドリフトで光の雨を掻い潜っていた!
「こっちだ、光野郎! 俺を追って来いッ!」
エンジンペダルを踏み込みバイクを加速! 光の竜は槍状にした左腕をマシンガンめいて繰り出すが疾駆する零児のバイクを捉えられぬ! 刃状にした右腕を零児の背中に振り下ろすが、当たる寸前で姿が掻き消えた! SLAAASH!
「KYUUUUUUUUNNNNNN!」
脳髄の大地を切り裂いた光の竜が訝しげな声を上げる。残像でドラゴンの目を欺いた零児はドラゴンの後方を走り去っていく! その途中、彼はすれ違いざまにラモートとハイタッチ! 加速する零児を背にラモートはハイジャンプする!
「光で出来たドラゴンね。やたらとピカピカしてるけど……」
両腕を交叉するラモートの背中、黒いパーカーに刻まれた三日月をあしらった魔法陣が紫色の光を放つ! 光の竜はラモートの気配を察知し振り返りざまに光の刃を振り回す! その刃が当たる寸前、ラモートの眦がつり上がった!
「夜よ……来たれ!」
SMACK! ラモートの魔法陣が光を失い、代わりに黒い大翼が広がるように闇が噴出! 暗闇の中で空を切る光竜の剣! ラモートが解き放った夜の闇は一瞬で辺りを飲み込み、発光するドラゴンのみが明瞭な世界を生み出した!
「ムシュ!? 何事!?」
視界を夜に閉ざされたオロチが驚き落ち着きなく周囲を見回す。再び敵を見失って身構える光竜の聴覚を、遠いラモートの声が揺らした。
「今よレンさん。その光るドラゴン、任せたから」
「オーケイ。この子もきっと喜ぶだろうね!」
光竜はカッと白熱する目を見開き、声のした方へ極光のブレスを吐き出した! SMAAAAAAAAAAACK! 凄まじい閃光が夜を突き抜け、脳髄の大地を照らし出す! だが、そのビームは半ばで闇に取り込まれて消え去った!
「無駄だよ。こういう状況なら彼が一番強いってこと、君なら知ってるんじゃないのかな。このドラゴンと対を為す、光の君なら!」
どこからかレンの声が響いた瞬間、光竜の遥か頭上で一対の真紅眼が光を放った! 刹那に光の竜は夜闇に圧縮されて消滅! ロウソクめいて消し飛んだ光竜を見送ったレンは闇の中で暗く笑う!
「樹を隠すなら森の中。闇の竜を隠すなら……闇の中さ。もっとも、ボクのはコピー品だけどね」
暗闇に閉ざされた戦場で、レンは中天を見上げた。深い闇の上空で太陽めいて輝くのはシーサーペントの瀑布と激突した雷竜のブレス! その真上で、戎兵衛を頭上に持ち上げたロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)が溌剌とした笑顔を見せる!
「ひゅーう! 危ないところだったね戎兵衛くん!」
「かたじけない。どう斬ったものか悩んでいたところでござる」
ブレスを回避されたシーサーペントがロニを見上げて二発目のブレスを構え、一気に二人を越えて急上昇して雷蛇が空中で円環状に回転しながら稲妻をチャージ! ロニはぐっと背中を逸らすと、やや離れた場所のオロチを見やった!
「……ムシュ?」
「キミ! 名前は忘れたけど、えーっと……まぁいいや! プレゼント・フォー・ユーッ!」
ロニは金色の隻眼をギラリと光らせ、オロチへ戎兵衛をぶん投げた! 同時にウロボロスめいた雷蛇が自身で作った円環中央から巨大な雷を落とし、シーサーペントが砲撃じみた水瀑を発射! ロニは指二本を立てた両手を合わせる!
「ニンポを使うぞーっ!」
無邪気に叫んだ彼に雷と水流が襲いかかった! ZGGGGGRABBBBBOOOOOOM! 激しい電光と水飛沫が散り、地上の夜を照らし出す! 次の瞬間、衝突した二属性の爆発が内側から飛散! 無数のロニが飛び出した!
「いやっほー! 引っかかった!」
「さっすが蛇さん! 思ったとーり!」
「やっぱり蛇じゃ神様の叡智には勝てないんだねー!」
「あははははははははははは!」
面食らうシーサーペントに降り注ぐロニの声! 天空の雷蛇は構わず円環体勢を維持して回転、四方八方に稲光を撒き散らす! しかしその時、蛇の下顎で膨大な水が弾け飛び、さらに上空で赤黒い影がクルクル回転! フォーネリアス!
「あの戦車馬鹿め……オロチまでデリバリーしろと言ったはずだが。まあいい」
回転をやめたフォーネリアスは身の丈以上の巨大槍を振りかぶる! 四角錘状の穂先に書かれた『ツラナイテコロス』のルーンカタカナが炎の如き光を放った! ジャベリンめいて槍を構えたフォーネリアスの腕にカラテが満ちる!
「この距離でも狙うには充分だ。オブリビオン! 殺すべし! イィィィヤァアアアアアアアアアアアーッ!」
THROWWWWWWWWWWWW! 赤黒い炎をジェット噴射しながら巨大槍が後退するオロチの本体めがけて飛翔する! 居合い斬りの姿勢で水平飛翔する戎兵衛を越え、一直線! オロチは色めき立ちながらも両手を広げる!
「ムシューッ! 無茶苦茶やるねキミたちはァ!」
オロチドラゴンの顔周りに七色の光球が出現し、オロチが両腕を前方に振るのと合わせ飛翔! 青い球体がフォーネリアスの槍に命中爆散! ドリアンめいた巨大岩塊が錐揉み回転しながら戎兵衛に突っ込む! 戎兵衛は両目を見開いた!
「ふんッ!」
SLASH! 縦一直線に岩塊を寸断! 滑らかな切断面を稲妻が走るのを遠く、ロニは手でひさしを作りながら見た。
「おおーっ! 二人ともやるぅ! うおっと!」
ぐらりと体勢を崩して跳躍するロニ。彼が足場にしていたのはシーサーペントの後頭部! 身を捩じって振り返ったシーサーペントはロニへ噛みつきにかかる!
「SHAAAAAAAAAAAAARGH!」
「おおっと、ボクばっかり見ていーのかなあ!?」
ロニが振り返りざま、人差し指を口元に立てる。瞬間、シーサーペントのうなじ部分に直撃した木製の砲弾が放射状に根を生やし、ウミヘビの首を締め上げ頭部を多い始める! メルティアの宿木弾だ!
「オラオラオラオラ! 食らいやがれ空飛ぶ蛇がよォ!」
メルティアが吠え、主砲を連続で咆哮させた! BOOOOMBOOOOMBOOOOM! 砲撃がシーサーペントと雷蛇を打ち据え、爆発と共に樹木と水をほとばしらせる。暴れながら樹木と水飛沫に縛られる二竜!
「ケッ。五行相生なんてガラじゃねえが、弱点がわかりゃあチョロいもんだぜ。そんでよォ……」
重戦車のライトが一瞬瞬き、八輪を唸らせて高速でバック! メルティアの居た場所に槍ぶすまめいて伸びた無数の枝が突き刺さる! 枝に引っ張られるようにして特攻したのは樹木のドラゴン! 四つ足に鋭角的な異形のフォルム!
「テメェはしつこいっつってんだろォが!」
メルティアの砲門三つが樹木のドラゴンに向き、虫食い状に穴が開いた砲口から燃える弾丸を発射する! 樹木のドラゴンは脱皮じみて割れた背中から生えた無数の枝を振り回して炎弾を撃ち落とし、メルティアを追って来た!
「GGGGGGGG……!」
「ごごごごごごごごと鬱陶しいぜ!」
BOMBOMBOMBOMB! 引き続き放たれた炎弾を、樹木竜は跳躍して回避! 空中で前転し、無数の枝が生えた背中を下にしてメルティアに落下! 枝々が迎撃の焼夷弾を撃ち落としながら重戦車にからみつく!
「クソッ、離しやがれ!」
メルティアは激しく蛇行するが、木竜は離れぬ! それどころか枝の侵食を進行させて車輪までも覆い尽くした! 何万年も放置された過去の遺物めいて樹木に縛りつけられるメルティア! 砲塔すら動かせない!
「だァーッ! 粘着しやがってこの野郎!」
枝が徐々に太くなりながら圧力を増し、メルティアを押し潰さんとする! メルティアが歯軋りのようなサウンドを響かせた刹那、彼女の前方やや遠くで赤黒い竜巻が吹き上がった! 竜巻の中には刀を掲げる巫女服の少女!
「っしゃあ! 時間かかったがようやく成ったぜ! 待たせたな都月! よく持ちこたえてくれたぜ!」
「構わない……けどっ」
都月が杖を突き出しながら歯を食いしばり、眉根を寄せる。橙色の光に照らされる彼の目と鼻の先では、翡翠色のオーラバリアを今にも噛み潰そうとするプロミネンスが如き龍! 零距離噴射されるブレスにバリアは亀裂まみれだ!
「急いでくれると助かる! そろそろ破られるぞ……!」
「ああ任せろ。行くぜ相棒ッ!」
「……妖刀、解放ッ!」
凶津と少女を包む竜巻が爆発的に規模を拡大! BLOWWWWWWWWW! 吹雪じみた冷たい殺気に満ちた風が都月の背を打ち、彼のバリアに食らいついていた龍を無理矢理吹き剥がす! のけ反った炎龍は吠えながらも竜巻を睨んだ!
「目には目を、歯には歯を、龍には龍をだ! 目ン玉かっ開きやがれ! 五行なんてチャチなもんじゃねえ、マジの災害って奴をよォォォッ!」
「……お願い、空亡ッ!」
凶津たちが叫んだ次の瞬間、SLAAAAAAAAASH! 竜巻を暗赤色の
剣閃が断ち、同時に炎龍の首と樹木竜の枝が寸断される! 吹き散った竜巻の中に居たのは、鬼の面じみた武者鎧を身に着け血濡れの刀剣を握る黒き龍!
『クオォォォォォォォォォォ―――!』
六ツ目の黒龍は一声吠えると、刀を持つ手を掻き消した! 一拍遅れ、SLALALALALALALALALALAAAAASH! 凄まじい速度の斬撃が乱れ飛び、炎龍の全身と木龍の枝を細切れに斬り捨てる! メルティア解放!
「っしゃア! 炭になりやがれえええええッ!」
メルティアは砲門を自由落下を始める樹木竜に向け、一斉に発射! 飛翔したピラニア型の弾頭七つが樹木竜に突き刺さり、発火と共に爆発する! CABOOOOOOOOOM! 樹木竜は火だるまになり脳髄の大地に落ちた!
「GOAAAAAAAAAAAAAAAARGH!」
ひっくり返ったまま四本足をばたつかせてもがく木竜に、メルティアはダメ押しの砲撃を連続で叩き込んでいく! BOOOMBOOOMBOOOMBOOOM! 足を、胴を次々に吹き飛ばし、最後の一発を残った部位に突きつける!
「ハッハァーッ!」
DOOOOOOOM! メルティアの哄笑と爆音が響く一方、ラモートとタンデムした零児が跳躍! 空中を滑るように後退しつつ無数のエネルギーミサイルをばら撒くオロチめがけ、闇を足場に駆け上がる! レンが喚んだ贋作の背を!
「ラモート! ここから狙えるか!」
「射程範囲内よ。でも、出来る限り揺らさないで」
ラモートは零児の背後で腰を浮かせ、黒いロングソードめいた形のスナイパーライフルを構える。アメジストの瞳は闇の奥、両手を振り回すオロチの本体に狙いを定め―――BLAM! 銃弾がオロチの左肩を穿つ!
「あだぁッ!」
思わず被弾部位を抑えるオロチの腹にフックロープがグルグルと巻きつく! ピンと張った縄を握るのはフォーネリアス! 巨大な槍を手に、巻き上げ機構を利用した急降下刺突を繰り出した!
「イヤーッ!」
「ヌゥーン!」
肩に刺さった注射器型銃弾を引き抜いたオロチは左腕をフォーネリアスに突き出した! 彼の左肩近くに生まれた暗黒の球体が弾かれたように飛び、フォーネリアスの槍とかち合って紫の稲妻を四方八方に散らす! ZZZZZZZT!
「ドーモ、ドクター・オロチ=サン。オブリビオンスレイヤーです。もはや逃げ場はやらん。貴様を殺すのは、貴様自身の紡いだ因果だ!」
「ムシュシュシュシュ! 因果か! なるほど、それは確かにその通りだけど……滅ぶのは君たちの方だァーッ!」
オロチは前傾姿勢で両腕を広げる! フォーネリアスの周囲に金の光球が複数出現し、全方位から彼女に殺到! SMAAAAAAAACK! 閃光の爆発が闇球ごとフォーネリアスを飲み込んだ! オロチは周囲に七色の光球を召喚!
「ムシュシュシュシュシュ! そして次はァー……下からバイクで上がって来る君たちィーッ!」
オロチドラゴンの頭部が零児の方を向き、開いた口から緑の粘液を放射! 膨大な濁流を前に、零児はバイクをウィリーさせる! ラモートはライフルを上げ、慌てて彼の首にしがみついた!
「落ちんじゃねえぞ!」
「それは……もちろん!」
DRRRRNG! DRRRRRNG! バイクのマフラーが火を噴き、後輪が勢いよくバウンド! ハイジャンプを決めたバイクの真下を粘液の奔流が貫いた! そこへ襲い来る七色の巨大光球! 全属性を混ぜたオロチミサイルだ!
「初撃は囮か。ドクターを名乗るだけはある。が!」
零児は片手を離し、腰裏に横向きで吊った刀を引き抜く! 刀身にまとわりつく鮮血めいたオーラ! 零児は刃を掲げると、連続で飛ぶ斬撃を繰り出した! SLALALALALALAAAAAASH!
「ぬええええええええええええええええいッ!」
真紅のオーラ斬撃が乱れ飛び、オロチのミサイルと正面衝突! 巨大な光球はバシバシと白い火花を散らし、やや速度を減速しながらも徐々に零児へ詰めていく! 20m、19、18、17、16、15mに達したところで渾身の一撃!
「ぬああああああああああああああッ!」
SLAAAAAAASH! 大きな縦一直線のオーラ斬撃が飛翔し、光球に食い込み爆発四散せしめる! 直後、爆炎を突き抜けた光線が零児とラモートの脇腹を貫通! 右拳を突き出した態勢のオロチが笑う!
「ムシュシュシュシュシュ! 今のを防ぐぐらい予想通りさ! キミたち舐めたら痛い目みるしね……!」
『AAAAAAAARRRRRRRRGGGGGGHHHHHHHH!』
「うん?」
叩きつけてくるような咆哮のサラウンドに顔を上げたオロチが一瞬凍りつく。彼の目の前には、コピーされた無数のオロチ分体! そしてそれにまたがる大量のロニたち!
「いけいけロニドラゴン軍団!」
「一斉攻撃だーっ!」
分身したロニたちが口々に声を上げ、勢いよくオロチに指を突き出した! 贋作のオロチ分体の大群はそれぞれの口を開いてブレスを発射! ZGGGGGGWWWWOOOOOOOOOOSSSSSHHHHH!
「なッ……ええい! これだから猟兵って連中は!」
オロチは毒づき、胸を反らせる。ドラゴンボディが咆哮とともに頭を上げ、斜め上に飛翔して無数のブレスを全力回避! 贋作分体たちは頭を上げてそれを追い、追撃するが追い付かぬ! オロチがロニたちの真上を超える、その寸前!
『クオォォォォォォォォォォ―――ッ!』
夜の闇から飛び出した黒い龍が逆手に持った刀剣をアッパーカットじみて振り上げた! オロチドラゴンの頭がとっさに粘液を吐き出して迎撃! しかし黒龍の左肩に乗った都月が杖を掲げる!
「正直、これはちょっと賭けなんだけどな……。チィ、力を貸してくれ」
「チィ?」
都月の襟元がもぞもぞと動き、白い子狐めいた精霊が顔を出す。精霊は都月の杖先にぴょんと飛び移ると、月光を放出! 都月の頭上に赤青二色のオーラ球が出現し、合体して激しく光り輝き始めた! 都月は震える杖を両手で支える!
「くっ……はあああああっ!」
杖を両手で握って押さえつけ、眉間にしわを寄せながら力を込める! 刹那、白い光を放ったオーラ球は破壊光線を直上に撃ち出した! ZGYAAAAAAAAM! オーラ砲はオロチの粘液ブレスをを容易く貫き、竜頭をかすめる!
「のおおおおおおおおおおおおおおッ!? こッ、これは……! なるほど、この威力! そうか!」
真横から吹きつける破壊エネルギーの余波を片腕でしのぎながら呟くオロチ! 彼は体を都月のオーラ砲とは逆の方向に傾けドラゴン体の飛行進路を変更! そこを黒龍が斬り上げ、オロチ竜体の胴を浅く斬りつけた! 凶津が舌打ち!
「チィッ、外しちまったか!」
「チィ?」
「ティのことじゃないよ」
都月は杖先にしがみついたまま首を傾げる精霊の首根っこをつまみあげる。黒龍の空亡は甲高い声で一声叫ぶと、粘液を撒き散らしてバレルロールを決めるオロチの頭部に真横から縦の斬撃を振り下ろした!
「集え、ダークエレメント!」
オロチが竜の頭に振り回されながら指を鳴らした。直後、闇属性の黒球が黒龍の斬撃軌道上に集中して凝集、巨大な傘状のバリアを生成! ZGRAAAAAAAAK! 空亡の斬撃と衝突し、受け止める!
「ムシュシュシュシュシュ! 無数の贋作! そして猟兵のドラゴン! 実に面倒なことだよ!」
「それは何より」
「ムシュッ!」
オロチが上体をねじって振り返る。ドラゴンの背後に浮上する黒い霧の塊と、それを従えるレン! 黒く染まった両腕をムチのようにしならせ、レンは闇竜の黒い霧からジャンプした! 同時にコピーされた闇の竜が黒煙のブレス!
「オロチの力を誇ってるようだけど、それを逆用される気分はどうだい? 存分に食らった後に感想を聞かせてほしいな!」
「ムシュ―――ッ! ライトエレメント、相殺ッ!」
ドラゴンが竜巻めいて回転し、光のブレスを繰り出した! FLAAAAAAASH! 極太の光線は闇竜のブレスを消し飛ばし、竜体を包む黒い霧ごと贋作を消滅させる! 高く跳躍したレンは影化した両腕を振り上げ、振り下ろす!
「そらッ!」
「甘ァいッ!」
オロチは下段に振り抜いた両腕を光の剣に変え、レンの影ムチをクロスガード! そのまま左右に弾き飛ばし、頭上に呼び出した複数の雷球を彼めがけて撃ち出した! レンは体をひねり、マントで受け止めた! ZZZZZZZT!
「まだまだ! 贋作に殺されてはやれないなァ!」
「ならオリジナルのドラゴンだ! 食らいやがれェェェッ!」
「……空亡!」
凶津と少女の叫び声に合わせ、黒龍が居合いの構えでオロチ竜体に突進! 少女と都月は弓矢と火球を連射してオロチの本体を狙い撃つ! オロチは水と岩塊のオロチミサイルを連続で飛ばし二人の援護射撃を次々に相殺!
「振り払え!」
オロチの命に従い、竜の身体が高速回転! 七色の光をドリル状に回転させた尾が下段斬りを放ったごと空亡を弾き飛ばし強制ノックバック! さらに顔面を鬼面の鎧に向けて粘液のブレスを吐き出した! GLOOOOOOOOOOP!
「クオォォォォォォォォォォ―――ッ!」
「うおおおおおおおおおッ!?」
「……空亡! しっかりして!」
胴体に粘液ブレスを直撃されて後ろに押し流される空亡の首にしがみつく凶津たちと都月! 他方のオロチは裏拳で火炎弾を放ち、影化した足で蹴りかかるレンを撃墜! 直下では追加召喚したオロチ分体がロニの贋作たちと食らい合う!
「ムシュシュシュシュシュ! この帝竜の力、そうそう破れるとは思わないことだ! ムシュシュシュシュシュ!」
オロチは哄笑しながら頭上に上げた両腕を扇状に開く! 空に輝く色とりどりの星空―――否、全力展開したオロチミサイル! オロチドラゴンが六枚翼を羽ばたかせて上昇した刹那、闇の中から01で出来た螺旋状の波が跳ね上がった!
「ムシュッ……!?」
オロチが振り返るより早くオロチドラゴンの尾に達した渦は竜の身体を駆け上がる! 縛られ激しく暴れるドラゴンのうなじ付近で蛇じみて鎌首をもたげた01奔流の中には、眼鏡を外した裕美が浮かんでいる!
「伏兵ッ! またかァッ!」
「……一瞬の油断が命取り……」
金色の瞳をギラつかせた裕美は光る01の中で腕を打ち振るようにして数枚のウィンドウを一気に操作! ウィンドウと01が真っ赤に染まり、黒へと変色! 裕美は静かにつぶやいた!
「……他の人は……既視感とか感じてるみたいだけど。……私は特に言うこともないし……倒させてもらう……目覚めなさい……滅びの竜」
SMAAAAAACK! 裕美が01の奔流ごと黒い輝きを放つ! オロチは両腕を振り下ろし、上空に控えさせたオロチミサイルを雨の如く降り注がせた! 黒い01を爆ぜさせて現れたのはワームの如き魔竜!
『MYAAAAAAAAAAAAARRRRRRRRGGGGGGHHH!』
電子ノイズの混ざった咆哮を上げ、魔竜はミミズめいた口を開いて01のブレスをドラゴンヘッドに吐きかける! オロチは後頭部で手を組み、七属性を混ぜ込んだバリアを展開して防御! しかしバリアは01分解されていく!
「ウヌゥゥゥゥゥゥゥゥ! 厄介な……! けど辛うじて! 辛うじてまだボクが優位だ!」
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARGH!」
吠え猛るオロチドラゴンと魔竜の隙間から緑色の粘液が噴出! 魔竜の身体が粘液に触れた傍からドロドロと溶け出し、粘液と混ぜ合わされていく! 取り込んでいるのだ! 魔竜は叫び声を上げてオロチドラゴンを締め上げる!
「ムシュシュシュシュシュ! この距離でボクに挑むなんて、飢えた獣の前に身を投げ出すようなもの! このまま溶かして食らい尽くしてやる!」
「あ、ごめーん! それは無理!」
「……何?」
オロチは背中を逸らして頭上を見上げた。オロチミサイルを全身に食らって苦しむ魔竜の頭上、いつの間にかそこに立っていたロニが嫌味な笑顔で手を振っていた。周囲には鋭い牙の生えそろった口を開く黒い球体が複数!
「キミは、えーと……たしかお、お、オロ……そう、ポロロッカくん! 敵を食べるのはキミの専売特許じゃないんだよねー、これがさ!」
ロニはニコニコしながら球体のひとつを指先でつつく。オロチは脳に走る稲妻じみた閃きと共に己の竜体に振り向いた。魔竜とオロチドラゴンの隙間から吹き出す粘液がいつの間にか、膨大な数の黒い球体に置き換わっている!
「なッ……こ、これはぁぁぁぁぁっ!?」
「餓鬼球! とっても食いしん坊でさ、なんでも食べちゃうんだよね! あはははははははは!」
高笑いするロニを余所に、オロチはわななく手を握りしめる。ドラゴンの全方位を無数のオロチミサイルが取り囲んだ! ロニは凍りついた笑顔でそれを見回す!
「……あれ。もしかして、怒らせちゃったかな?」
「怒ったさ! 充分怒髪天だとも! 死にたまええええええええええッ!」
オロチが憤怒に叫んだ直後、彼の前にジュース缶めいた物体が落下し、FLAAAAASH! 凄まじい閃光でオロチの視界を白一色に塗りつぶした!
「グワ―――ッ! 閃光手榴弾かァーッ!」
のけ反ったオロチは両腕で顔を覆い隠す。その後方からは魔竜の身体を駆け上がるメルティア重戦車! 七つの砲門は全てオロチの後ろ姿を照準していた!
「やっとここまで来たぜ! ドーモ、ドクター・オロチ=サン! サチュレイターです! スペースシップワールドじゃあよく逃げ切ってくれたなァおい! 褒美に宇宙で死に損なった事を後悔させてやるぜ! 全砲門、発射用意ッ!」
オロチを狙う七つの砲塔! 一方でロニは後ろ手に虹色の浮遊鉄球を放り投げ、スライディングで魔竜のうなじを滑り降りる! メルティアとすれ違う彼が投げた球体は一気に巨大化!
「メルティアくん、頑張ってねーっ! 零児くんたちもね!」
「ああ」
メルティアの真後ろ、バイクで追走する零児がロニに頷く。ハンドルをひねった彼はメルティアの真横に突き出し、バイク後部両側面を展開! ミサイルポッドにオロチを狙わせ、自分は刀を引き抜いた!
「チャンスだ! 腹ぶち抜かれた分の借りは返す!」
「了解」
零児とタンデムしたラモートが腰のベルトに吊った缶詰と青い手榴弾を引き抜き、オロチへ投擲! それらはオロチの左右で爆発した! 鼻を内側から破裂させるような悪臭と催涙ガスがオロチを包む! 同時に零児の刃が光った!
「次元、断絶ッ!」
一瞬早くメルティアが七発の砲弾を一斉発射! それらがオロチを飲み込んだガスに達する寸前、白銀に光る刀を真横に振り抜く! SLAAAAAASH! 空間に白銀の剣閃がいくつも走り、砲弾ごとガスを斬り裂く! BOOOOM!
「もう一発行くぜ! 竜退治はもう飽きた! 念入りに叩き潰してやる!」
メルティアが吠え、再度砲塔が狙いを定める! しかし刹那、斬り裂かれたガスから極大の白いビームが噴き出し、メルティアと零児のバイクをまとめて消し飛ばさんとする! 零児はすんでのジャンプで回避! だが!
「メルティア!」
零児が叫びながら振り返る! メルティア重戦車は車体の半分を光線に吹き飛ばされ、タンブルウィードめいて竜の身体から転げ落ちた!
「ぐああああああああッ! クソったれぇぇぇぇぇッ!」
メルティアは残った車体半分の砲門三つ砲火する! BBBOOOOOOOM! オロチが居た場所めがけて飛翔する砲弾は、薙ぎ払うように繰り出されたビームにより爆発すらせず消滅させられた! 煙が晴れたそこには、オロチ!
「ムシュシュシュシュ……! 危なかったよ……すごく危なかった! これが出来てなかったら間違いなく死んでいたさァ!」
無傷のオロチは右手に闇属性の黒球を、左手に光属性の白い球を召喚して胸の前で合体させる! 凄まじい白黒の光がオロチの両手の間からまき散らされる!
「ムシュシュシュシュシュ! とても良いアイデアをさっきもらった……! 相反する属性を融合させ、その消滅エネルギーで攻撃する! これでなんとか助かったよ! ああ、本当にこれが……活路に差した光だともーッ!」
オロチは両腕を真上に突き上げ、消滅エネルギーの極太ビームを繰り出した! 光で落下しつつあったロニの巨大虹色球を影も残さず消し飛ばし、オロチはブリッジめいて背中を逸らす! 振り下ろされた光は魔竜の頭部を爆散させた!
「ムシュシューッ!」
オロチは爆発した頭部から弾き出された裕美を捉える! 彼女を狙う消滅光線の前に滑り込んだレンがマントでこの光線を防御して庇うが、マントは黒い煙を噴き上げた!
「ぐっ…………!」
「無駄無駄無駄! 仲間もろとも消し飛びなよォーッ!」
レンはとっさの判断でマントを脱ぎ捨て、身をひるがえして急降下! 竜化の反動で気を失った裕美を横抱きにする彼の頭上を、消滅光線が突き抜ける! その背中を嘲笑うオロチの声!
「ムーッシュッシュッシュッシュ! 誰か言ってたなァ、ボクを滅ぼすのはボク自身の因果だと! そしてキミは言ったねえ! ボクの力を逆用される気分はどうかと! 全部そのまま返してあげるよ! ムシュシュシュシューッ!」
ブリッジしたまま両腕を左右に広げたオロチは、弾け消えた消滅光線の代わりに複数の光と闇のミサイルを展開! それぞれを合体させ、上空を抜けようとする零児にビームを放たんとする! ラモートは口元のバンダナを剥がした!
「出来るだけ避けて」
「無茶を言ってくれるな……だが、やんなきゃ死ぬのも事実か」
零児はハンドルを強く握り直す! オロチが哄笑し、消滅エネルギーの光線が放たれようとしたその時! 彼の横合いに空亡が浮上! 左肩の都月が白い光線を放ちオロチの前方に並んだ消滅エネルギー塊を消し飛ばした!
「ぬかったな……俺の攻撃を逆用されるとは思わなかった」
「気にすんなよ! 最終的に勝ちゃあいいんだ、勝ちゃあ!」
「……撃つ!」
凶津が口から火球を、巫女服の少女が弓矢を連続で放ちオロチ後方の消滅エネルギー球を狙い撃つ! オロチは爆散する火の粉を腕でしのぎながら空亡をにらんだ! ほぼ溶解した鎧をまとったドラゴンを!
『クオォォォォォォォォォォ―――ッ!』
「ええいッ、まだ生きてたか……! ボクが言うのもなんだけど、キミたちも大概だよねえッ!」
「たりめーだ! テメェらをぶっ飛ばすまで、死んでも死にきれねえってやつよ!」
凶津が吠えた瞬間、空亡は自身の方を向くドラゴンヘッドの下顎を刀で刺し貫く! ケバブめいて串刺しにされるオロチドラゴン! オロチは構わずオロチミサイルを全力発射! 刀を持たない腕を掲げて肩の二人を庇う空亡!
『クオォォォォォォォォォォ……!』
BBBBBBBBOOOOOOOOOOOM! 空亡の全身で連鎖爆発が巻き起こり、その巨体がゆっくりと仰向けに倒れ始める。同時に泥めいた01の液体となった魔竜裕美の身体が溶け崩れて行く!
「ムシュシュシュシュシュ……! そろそろ決着と行こうか! 決着と……ムシュッ……?」
突如、オロチの脳に黒い斑模様が浮かび上がり、体がガクガクと痙攣し始める! 頭部を形成する脳が、隙間をガバリと押し広げた!
「あ、あ、あ……アバ―――ッ!?」
脳から吹き出す黒い粘液! フード越しに頭を掻きむしりながら苦しみ悶えるオロチに、ラモートは暗緑色の溜め息を吐く。病魔をはらんだ溜め息を!
「ようやく効いてきましたね? 流石にドラゴンの巨体では難しいようですが……」
「アババババババババババーッ!」
SPLAAASH! オロチの脳から絶叫と黒い脳漿が迸る! バイクをキックしドラゴンの鼻先からジャンプした零児はオロチを尻目に呟いた。
「おいラモート……まさか俺もああなったりしねえよな?」
「……多分」
「頼むぜおい……」
げんなりした零児の背後、ラモートは無言でバンダナを引き上げ口元を隠す。零児は嘆息しながら左腕を真横に伸ばした。そこへ下方から飛来したフックロープがグルグルと巻きつく! フォーネリアスだ!
「奴の血は浴びるなよ? どうなるかわかったもんじゃねえぞ」
「問題ない。要するに奴ごと殺せばよいのだ!」
ロープの巻き上げ機構で一気に跳ね上がったフォーネリアスは跳躍から連続前方回転を決め、巨大な槍を投げ放つ! 槍は苦しむオロチの脇腹を貫いて竜の鱗に突き刺さった! フォーネリアスは錐揉み回転してオロチを飛び越え、柄に繋がった鎖を引いて槍を手元に引き戻した!
「アッバーッ!」
「貴様に詠ませるハイクは無い! 死ね、ドクター・オロチ=サン! イヤーッ!」
隕石の如き刺突がオロチの右腕を吹き飛ばす! フォーネリアスはさらに振り向きながらフックロープを投げつけオロチの首を捕縛! 巻き上げ機構で引き戻し、刺突で左腕を吹き飛ばした! さらにオロチの胸板を蹴って跳躍!
「イィィィィィィィィ……」
限界まで捩じった巨槍に火が灯り、フォーネリアスの目がセンコ花火じみた光を放つ! 周囲は夜! ラモートが作り出したウシミツ・アワー! 妖魔の跋扈する時に、フォーネリアスの全身が怨霊の大群じみたオーラと怨嗟を噴出!
「ィィィィィィィヤアアアアアアアアアアアアアアーッ!」
フォーネリアスは槍を投擲! 巨大なオベリスクじみた穂先が邪悪なロケットめいて飛び、オロチ胴体を貫いた!
「アバーッ!」
「ARRRRRRRRRRRRRRRRGH!」
オロチドラゴンがフォーネリアスへ粘液のブレスを吐き出す! 両腕を交叉し、体を丸めてこれを受けたフォーネリアスは押し流されながらも声を張る!
「トドメヲサセ―――ッ!」
その時! オロチドラゴンの上空で虹色の星が光り輝く! その正体は一本の剣。虹色に輝く刀を大上段に構えた戎兵衛! 彼は空中の餓鬼球を飛び渡っていくロニを見下ろした。
「すまぬなロニ殿! 彼奴の分体ごとお主の竜も斬り捨ててしまったが!」
「いーのいーの! どうせ制限時間だったしね!」
「かたじけない。然らば後は只斬るのみ!」
ロニのサムズアップに笑顔で返し、戎兵衛は虚空から垂直に落下する! オロチドラゴンは反射的に彼を見上げてブレスを放射! しかし戎兵衛は振り下ろした刀でブレスを引き裂きながら竜頭へ肉迫!
「いざ竜退治! 仕る!」
SLAAAAAASH! 虹色の光を込めた刀が縦一文字に斬り下ろされ、オロチをドラゴンヘッドごと両断! 魔竜に追い打ちのブレスを吐きかけられ、オロチは竜頭もろとも輪郭を01分解された!
「アバババババババーッ! サ! ヨ! ナ! ラ―――ッ!」
オロチドラゴンの頭部から胴体を伝い尾の先までがボコボコと隆起し、巨体が爆発四散を遂げる! まとわりつく猟兵たちと餓鬼球を吹き飛ばした爆炎から飛び散った粘液が、脳髄の大地に降り注いだ。
大成功
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