帝竜戦役㉓〜冷却の蒼空に眠れ
●脳髄牧場
一方的に殺し続けてぶち撒けられた生々しい赫。
それを楽しく牧場という主の姿は標高の高い、澄み過ぎた色の緑の竜の、貫禄ある頭部にこそある。
立っている、――ではない。
竜より直接生えているように見える人影が一人愉しげに喋っているのだ。
「ムシュシュ、こんなに色濃くしたら動物的感の働く奴には気づかれちゃうかなぁ~」
引きずり出されたおびただしい数の脳髄。
小さな小さなそれらが集まり、不気味な『蠢く巨大脳髄』の山は築かれている。
これは殺戮痕。脳髄以外はあまりに無残の終わりに沈んだのだろう。
幾万の命の灯が溶解していく刹那の断末魔は、此の地にこびり付いて。
瞬間的永遠を心做しか反響し続ける。
彼ら全ての無念は恨みの強風となり、寒々しく体を叩くが……竜にしてみればあまりに微風の"それ"だった。
「ボクの"記憶"はとりあえず消しておいたけど、やっぱり惜しいことしたかも。1より7とか8の軍勢を並べる方が爽快だったかもだからね」
この地で生きていた生命体は、ドクター・オロチに酷似した存在がたった一人で摘み取った。誰が命名したか、その名も"カリスティックボディ"。
自身の体を緑の粘液へと変えて、片っ端から溶解し、意図的に脳髄以外を全て取り込みながらたった一つの"帝竜"は後に形造られた。
「……勿体ないけど仕方ないよね。あれもこれも、今のボクには必要ないし」
全てを終えた後に作り出された姿。
故に、足元を一瞥する竜帝に、返り血の赤い点は一切ない。
「この場所が悪いんだよ、少なくとも幾つもの巡り回る色濃い魔力が交差しているからね。ムシュシュシュシュ……」
毒々しい程の牧場で、ムシュシュと笑う声が木霊する。
●魔力は囁く
「よし、魔法蛇を狩りに行こう」
フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は第一声にそう言う。
「……順番に、説明する。まず赴いて欲しい場所は"脳髄牧場"なんぞと趣味の悪い名が付いている。いや、これは無視してもいい。だが……何万もの死の上に、帝竜が発生した」
出現したでも、孵化したでもなく、"発生した"とフィッダはいう。
『再孵化』した予知に見たのはあくまで小さな人型らしきものだった、というのがフィッダの言い分だ。
「目に見えて巨大な"竜"は後にその姿を作ッたらしい。つまり、人型と"竜"は同じ名を持つ。ただ……人型の方は過去に姿を見たと報告も受けてる。そのものかは断定できないが、便宜上『帝竜ドクター・オロチ』と呼ぶ」
総合して『帝竜ドクター・オロチ』である。
竜だけを呼ぶなら、オロチ、と称するのが妥当か。
「……緑色の竜は特徴として緑色の粘液体だ。ドクターオロチもそういうのを使ッたんだろう?不思議な事に竜にその力が色濃くでたようだな」
不用意に触ることは何より勧めない。
その気になれば触れたものは溶解を促され、取り込まれてしまう。
「消えた命の事は想像するな。それらはオロチの活動源ともいえる魔力的変換に使われてもう個々の意識はもう亡い」
寒々しい断末魔の混ざる風が脳髄牧場には吹いているが、名残だ。
"誰かが確かに此処にいた"それだけの、名残でしかない。
「魔術的に作り出されたオロチは魔力を扱う。水火闇光樹雷土、全部で7の要素が……此の地には集まッてるんだと」
魔素の溢れる土地でもあった。故に全てを失った地。
「それらを盛大に使ッて、帝竜ドクターオロチは先制を仕掛けてくるだろう。まァ想像通りだろ?」
ユーベルコードは必ず先に放たれる。
思う存分の魔力放出が、検出されるだろう。
「……オロチは全力でてめェらを殺しに来るだろうが、ひとつ」
フィッダが静かに軽く足元を指差す。
「戦場の、それらから目を逸らすな、とは生憎強く言えないが……」
脳髄以外、それらは全て"帝竜"たる姿を魔力で作り出すために消費された。
幻想的な色合いだが現実で、実体も在る。ほぼ全てが魔力体の、竜。
「なんの為に"脳髄牧場"と呼ばれるのか。……考えてみても良いんじャねェか?」
竜の体を継続して保つため、何かは継続して生存していなければならない。
体を失い、死後亡霊のような扱いとなって尚。
風にしがみつくように此の地に立つ誰かへと叫びと共に何かを囁き続ける意味。
「残されたそれは……今も尚蠢いてるッて話だ。"終わッてもいねェ"と思うぞ、俺様は」
不気味な戦場だが、魔力は己が死そうとも"強い想い"があれば遺るもの。
フィッダはそう呟いて、猟兵たちを見送った。
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
ムシュシュ、この依頼は【一章で完結する】戦争系のシナリオです。
帝竜ドクター・オロチ。人型の存在の事も指すし、竜のことも指します。
本体はどちら、ということはなくどちらも"帝竜"です。竜であり人型である。
オロチは魔術的に、攻撃する方を主流とします。
この依頼では、SPDに対し対向する属性は、猟兵が使おうとする魔術要素に準じます。特にそういうことでなければ、ダイスロールでランダムで選ばれます。
戦場の様子等は大体、OPの通りです。まっか、うごうご、やばい。
上記を踏まえた上で、グリモア猟兵がプレイングボーナスになりそうな事を告げていると思いますので、よおく読んで、お考え頂けると幸いです。
場合により全採用は出来ないかも知れません。
ご留意頂けますと、幸いです。
第1章 ボス戦
『帝竜ドクター・オロチ』
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POW : グリーン・ディザスター
【口から放射される緑の粘液】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : オロチ分体
【水火闇光樹雷土のうち1つの属性を持つ竜】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : オロチミサイル
レベル×5本の【水火闇光樹雷土の7つの】属性の【エネルギー塊】を放つ。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
いよぅ初めまして、
銀河帝国じゃあアンタに会えなくて残念だったよ。
っても分からねぇんだろうな……
周りの雰囲気もあまり気持ち良くない、
なるべく長引かせないようにしないとな!
まずはカブに『騎乗』しながら、周囲の『情報収集』。
粘液は必死に『操縦』テクを駆使して躱すけど、まぁ厳しいだろうね。
だからなるべく被害が少なくなるように受ける。
受けつつ『カウンター』の電撃で『目潰し』しておくよ。
奴の眼が眩んでる間に脳髄たちの無念の想いを紡ぎ、
カブに施す【戦地改修】の魔力的な素材に仕上げるよ。
そうすりゃオロチ、アンタの粘液はアタシ達には通じない!
『ジャンプ』一番、脳天を『踏みつけ』る!
テラ・ウィンディア
色々と恐ろしそうな龍だ
いや…龍は恐ろしい物だったな
対POW
【戦闘知識】でその動きと癖と方向性の把握
【見切り・第六感・残像・空中戦】を駆使して全力での回避
特に残像を利用して被弾の可能性を極限まで下げる!
それでも尚回避できない時はあえて腕を犠牲にする!
つーか…やっぱり痛い!
ぶっちゃけ何度やっても慣れない!(何度もこんな捨て身してる
だがなぁ…それぐらい耐えてこその勇者って奴だよな!
上空を制すれば
槍を投げつけ上に乗ってる人型【串刺し】
メテオブラスト!
【踏みつけ】
で破壊力を増強してそのまま突き刺した槍の石突に叩き落し破壊力増強しつつドラゴンの巨体という地形ごと粉砕にかかるぞ!
竜よ
空の星によって散れぇ!!
●良い目印がそこにあったから
「ムシュシュ、意外と早かったねぇ~?」
のんきな声で迎えた帝竜オロチの声は、緊張感に欠けていた。誰が見ても気分のよくない光景を作り出してもそこに思い入れがないのがよく分かる。
「どうしたの?真っ直ぐボクを見据えてきたの~?せっかちなんだからぁ~」
畝るように身を捻り、竜帝は空を泳ぐ。
「あ。それとも此処の何万匹の仇討ち?えぇ~それは格好いいとはいえないんじゃな~い?」
「生憎、おれはどちらでもないな!」
テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は勝手な帝竜の想像力を絶つ。
「違うんだ?じゃあなんだろ……牧場を楽しむ為?それならいいよ、歓迎するね!」
あれでもないならこれかな、という想像力は全く消え去る様子を見せない。
「歓迎も特にいらないかな。だが……いよぅ初めまして」
帝竜オロチを前にして、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は友人に声を掛けるように手を上げる。
「はじめましてぇ?」
「聞いた話じゃアンタ、銀河帝国でもちょっかい出したって話だろ。あたしはアンタに会えなくて残念だったよ」
――っても、わからねぇんだろうな……。
多喜は応答を求めていたわけではないが、そう言わずにいられなかった。
躯の海から戻るものが記憶を引き継ぐわけが……。
「……へえ、有名になったものだねぇボクも!ムシュシュシュ!」
心底おかしい。そんな笑い方が多喜に返る。
「残念な気持ちにさせてごめんね!ボクもあえて嬉しいよ!再会?のステージは既に完成済みだし……じゃあもう早速はじめよっか~!」
竜の透明性すら感じる翡翠色が、突如不気味に蠢く。
長い長い尾までの間でどくん、と脈打ちすごいスピードで腹を上るなにか。
「全く……色々と恐ろしい竜だな…………」
独り言のように口に出してその時やっと。
おかしなことを言ったような、とテラは頭を振った。
「いいや……竜は始めから恐ろしい物だったな」
「だね。ああいう殺戮者気質は放っておくのが一番やばいよ」
多喜と共に見ている間に、胸へ至り、どんどんとせり上がる。
「おまたせ!歓迎のグリィイイーン・ディザスタァアアア!」
口内に集まったそれを、竜は思い切り吐き出すように発射する。
緑の謎の粘液が猟兵達に雨のように降りかかる――。
「……そんなのありかい!?」
宇宙バイク、カブに乗り急発進で降り注ぐ粘液を躱す多喜。
――周りの雰囲気もあまり気持ち良くない。
――なるべく長引かせないようにしないとな!
そして、戦闘知識で溜め込みが攻撃の動作だと悟ったテラは、即座にオロチが何をするかを感じ取って距離をとっていた。
単体で空を走り加速するようにするりするりと、弾丸を避ける。
残像を利用して、被弾する可能性を最小限に抑えているのだ。
粘液が当たるより早く、他の猟兵には当たったようにしか見えない速さで空中を制して、突然振り返る。
見上げるばかりの竜の巨体は、堂々とテラを見下すように見下していた。
「避けきったと思ったけど!つーか……やっぱり痛い!」
実は腕に重たい一撃を貰ってしまっていた。
避けられないと瞬時に判断し、あえて腕で受けたのだ。
「ぶっちゃけ何度やっても慣れない!」
捨て身の戦い方をこれまで続けてきたテラの我慢の限界が突然訪れる。
「だがなぁ……それぐらい耐えてこその勇者って奴だよな!」
腕を抑えながら、テラは竜より高く飛び上がり、槍を投げつけた。
人型に対して、貫くような投擲。
生えているような風貌の人型にざっくりと突き刺さる。
「耐え忍ぶ勇者もいいけど、ボクはやっぱり格好いい勇者が」
「お前は勇者には全く向いてなれないからな?」
「そんなこといわないでよ~♪ボクも頑張っちゃうから~」
テラと普通に会話する人型は、ただ愉しげでどこか調子が狂う気がした。
この間も、――吐き出され続ける粘液弾。
情報を探るために走り出した多喜だったが……。
雨のように降る粘液から逃げ切るには少々数が多すぎた。
「……うわっ!?」
カブに当たるのが見える。多喜は激しく動揺して操縦を誤った。
脳髄の小山にてついにバランスを崩し、致命的な着弾を許してしまった。
「うん……でも一応最小限だ、これでも。そら、お返しだ!」
カウンターに帝竜へと放つ雷撃で目潰しを狙う。
少しでも撃ち続ける雨を、弱めるために。
「……うわぁびりびりだ~!」
雷撃に驚いたようで、オロチからは声が上がる。
――チャンス、だねぇ?
足元の脳髄たちの無念の想いを集めるように、魔力の流れを読む。
全てがオロチに向かって流れていくのが、――多喜には手にとるように分かった。
根こそぎ利用されている、そのために抵抗出来ない最小限で"生かされている"。
「……悪いね、借りるよ」
撃ち抜かれたカブの破壊された部分に、魔力的修繕を施す。
――……一方的に殺したやつに使われんのは、嫌だろ?
「ううう、ビリビリようやく解除、っと。なにしてるの~?」
雷撃をようやく振り切ったオロチに対して、多喜は輝かんばかりの笑顔を向けて。
改修を終えたカブに乗り、加速。
「アンタの粘液はもうアタシ達には通じない!」
加速に加速を重ねて、ガッと多喜は超ジャンプを見せつける。
「なにしろ、アンタがやった恨みがあたしを後押ししてるからなぁ!!」
「ひゃあっ!?」
ギュルルルルル、とタイヤが竜の脳天を踏み潰して走り抜けていく。
竜の頭部に生えた人型は、無残に、ご丁寧な頭狙いの轢き潰しに巻き込まれた。
「そうそう。一度あることはニ度あるって学ぶことだなぁっ!」
「えっ……ちょ、ちょっと待って」
「待たない!」
絶好のタイミングをここ、と見定めたテラの上空からのメテオブラストが更なる事故をオロチに呼び寄せる。
超重力を伴った破壊力が増した踵落としが、槍の石突を目印に突き刺さるのだ。
「竜よ……空の星によって散れぇ!!」
ドラゴンの巨体が、頭部に生えた人型が浴びたそのままの威力に引っ張られて派手に地面へと突き落とし、――激突させた。問答無用の、竜と人型が一つであったがための連帯責任状態だ。地形ごと破壊する威力の流星の蹴りにより、翡翠の身体は自身が配置した紅の鮮麗を、その身に盛大に浴びることとなる――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大神・零児
前世の記憶っつーのか?
悪夢の内容は少し覚えてんだ
して
『龍脈』か
その見た目も攻撃方も悪夢のまま
違うのはお前だ
対策
鮮血の氣のオーラ防御を纏わせリミッター解除したC-BAに騎乗し各種センサーと戦闘知識、第六感、野性の勘で攻撃の軌道やわずかな事前動作等を情報収集
運転と操縦技術を駆使して残像を使い収集した情報も使って回避
回避不能な攻撃
鮮血の氣を妖刀『魂喰』に纏わせ念動力も加えたなぎ払いで衝撃波にオーラ防御をのせて乱れ撃ちのように飛ばし何度も吹き飛ばす
時間稼ぎができたら一瞬の隙をつき咄嗟の一撃による早業で鮮血の氣のオーラ防御とUCを融合させて纏い余波で発生するゴーストウルフと共に突進して蹂躙
アドリブ共闘可
●フェンリルの遠吠
この光景に、違和感がある。
現実といい難い光景。
……いいや、男が抱えたものは――どちらかといえば既視感だ。
「……前世の記憶っつーのかねぇ」
大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)は、そんな気がして頭を軽く横に振る。
信じる信じないではない。現実で、体験した覚えはない。
己の災難に染まる夢の中で、僅かに見た覚えがあると思うのだ。
「"悪夢の内容"は、少し覚えてんだ」
夢の中身を覚えている事は片隅に置いておけても、何故どうしてそうなのかが想像を刺激する。
「つまり此処には『地脈』が集まってる、ってことだろ?」
「お?その言葉を知ってるなんて"通"だねぇ~!」
帝竜オロチは"肯定"で示した。
地面の下を流れる魔術的なエネルギーの通り道。"地脈"。
「竜の見た目も、攻撃の仕方がも。どれも悪夢のままだ。しかし……」
零児は鼻面にシワを寄せて、牙を剥く。
「違うものがある。違うのは……お前だ」
オロチの頭部に生える"ソレ"。
人型だけが、違和感の塊だと指摘する。
「へえ。ボク以外が此処に在る姿を見たことあるっていうんだね?へーーーーえ?」
丁度先程、別の猟兵達の活躍でその巨体が牧場に叩き落された。
ずるずると、竜の体を持ち上げて再度飛翔。体の中が蠢き、射出の為の粘液が、ゾゾゾゾと気持ち悪い音を立てながら這い上がっていく。
「じゃあ現実と悪夢をゴチャ混ぜに再現しよっか!」
言葉と同時に吐き出されるディザスターを、零児は鮮血の氣のオーラ防御を纏わせリミッターを解除したC-BA(シーバ)に乗り、躱す。
騎乗してあれやこれやと各種センサーを駆使するにも、知識がいる。
「再現なんぞ悪趣味だ!」
「もしかしてキミ"悪夢で殺され続けた"の?負けるのが予想できて怖いのかな~?」
ドバァと遠慮なくぶち撒ける緑。
零児は舌打ちと共に勘で、機械獣に右を選ばせる。
――左は駄目だ、避けきれない気がする……!
「負けてない。だから俺は此処に居るだろうッ……!」
僅かに動いた竜の巨体の中で液体が昇る音。
そして吸い込むような動作を読み、躱しながら情報を集め続ける零児。
「どうかなぁ~?時間の問題じゃない?」
竜が何度目かの息を深く吸い込み――。
鮮血の氣を妖刀『魂喰』に纏わせて、機敏に構える。念動力を加えた薙ぎ払いの衝撃波に、更にオーラ防御の硬さを与え、乱れ撃つように飛ばし続けるのだ。
「ソレは見切った。吐き出せなければ……撃てないだろ?」
「キミの攻撃より早く撃てばいいだけじゃーん?」
赤き刃と化した衝撃波を撃ち続け、落ちてくる粘液を吹き飛ばし続ける。
「しかし、こちらの方こそ時間は……存分に稼がせて貰った」
特大の刃を振り抜き、竜の首に畳み掛けるように当てて零児は咄嗟の一撃を決める為、動きを止めた。
「人狼……メガリス……破壊……い駆ゾ!」
炎の破壊エネルギーが爆発的に膨れ上がる。
魔狼フェンリルが牙を剥くように陽炎のように揺らめきボア、と過剰に炎上する。
元々纏っていた鮮血の氣のオーラ防御と魔狼を重ねて纏い、零児と妖刀『魂喰』は噛み殺す破壊の権化と変貌していく。
「………ッあああああ!」
魔狼の眷属、ゴーストウルフたちがが力の余波で、燃え上がるように現れて。
零児は群れを率いるボスと共に戦場を走る。
「ちょっとちょっと!燃え過ぎだよ!焦げ臭いって!」
雪崩込む突進はフェンリルが如し蹂躙で帝竜オロチの体を大きく揺らし、――喉笛、腹。巨体の至るところに食らいつき、ダメージを蓄積させていく。
「駆ケヨ……」
人狼の悪夢は、此処に再現されるように、敵影を炎の向こうに沈めた。竜がぶち撒けようとしていた粘液諸共炎上させて、狼の群れに竜は後退を余儀なくされる……。
成功
🔵🔵🔴
アンテロ・ヴィルスカ
使える属性が水火闇光樹雷土?随分と欲張るねぇ…
ベタベタしたのは好きになれないな、いくら色合いが幻想的でもね
攻撃や粘液はムスタタンマに【騎乗】し回避
火の魔法が当たった箇所に水の魔法を誘導するなどして相殺させよう
回避困難な魔法はaaveの見せる【残像】に向かうようトリッキーな動きで立ち回り斬りつける
それだけ膨大な魔力を使えば熱も出るだろう?擦り傷でも傷は傷…
ある程度攻撃を加えたらjahdataを発動し、徐々に攻撃の精度とダメージを上げていこうか
だが変な笑い方のドクターは何となくこちらで殴っておく
《銀鎖を繋いだ歪んだバス停》ならピンポイントで上だけ狙えそうだ
これだって立派な【投擲】…だろう?お嬢さん
●曜の始めに燃える蛇
怒涛の燃える狼の群れに集られる様子。
その男は催し物でも見るように、静観している。
「……よく燃えているねぇ」
アンテロ・ヴィルスカ(黒錆・f03396)は正しく他人事なので遠巻きに見ていた。
「燃えやすい素材なのかい?」
「これがそう見える?アチチ、ボクが何に見えるっていうのさキミは~」
上から下まで、じっくりと観察して暫しの間。
ぶくぶくと身体の内側で液体が蠢く様は水気が強そうだ、と思う。絶妙に透き通っていて、大量の獣と炎に喰らいつかれても千切れた様子の見えない身体はゴムの上をいくのか?
「幻想的だけど……色合いが奇妙な大きな蛇かな」
「おしい!蛇は蛇でもドラゴンかな~!蛇は飛ばないでしょ?でも、ご要望には答えてあげるよ」
帝竜オロチは望む"地脈"の上に巨体を泳がせて、息を大きく吸い込み始めた。
身体が魔炎で延焼していても気にせず、周辺の魔力を過剰に吸い上げる。
――オォオオオオオオ――。
地面に大きく、召喚の魔法陣が描かれる。
すると、大量の脳髄は魔力源として使い潰され、反動で弾け飛ぶ。
真新しい大量の赤で埋まった地面を割り、召喚陣下から何かが姿を表した。
体は鮮血より赤銅の色近く、帝竜オロチよりも大分小柄な体躯。
しかし、人よりはふたまわりは大きなその姿は、不思議と蛇にしかみえない。
――要望に応える、ってそういう……?
燃え上がる火の竜が鎌首を視線をアンテロに向け、ちろりと口元を舐めたのが見えた。動作は完全に、蛇のそれだった。
ブシュウウと体表に吹き出す火炎。
周囲ごと燃やす怒涛の竜が、ずるずると胴体を這わせて帝竜よりも一体ぶん前に進みでる。余りの熱量で牧場の脳髄が炭化し、流れるように灰となって自然に砕けて消える。無残な光景だ。砂漠でもこんなに急激な消失は起こらない。
「お嬢さん、一度離れよう」
軽く蹴るように合図を送り、ムスタ・タンマが、走り出す。
青毛すら赤っぽく染まるほどの煌々とした熱量だ。
走るあまりの暑さに、鬣を揺らし首を揺らし、嫌がるような動作が目立った。
「ムシュシュ、火のオロチ!火炎弾で行く手を遮っちゃえ!」
合図と同時に、火炎の魔法が発動し矢のようにアンテロの向かう先に突き立つ。
牧場は火の海の様相を拡大しながら、牝馬の進みたい道を奪っていく。
「火の手も早いね。ところで、……使える属性は幾つあるんだい?」
氷剣aaveで誘発での魔法の水量では足りないかもしれない、とすら思える暑さ。
「水火闇光樹雷土、かな。幾つだろ。幾つ在る?」
「いや……俺に聞かれても。反応を含めて、随分と欲張るねぇ……」
しかし、熱量が凄いならそれはそれで利用する事もできるというもの。
揺らめく氷の紋章と冷気と熱量が、残像……いや、蜃気楼となって帝竜と火の蛇の視界を欺いた。
「そこに留まっていたと思ったなら間違いだ。お嬢さんは足を止めてなどいないよ」
声の主は火の蛇の傍へ接敵していた。
火の蛇の体を馬の走る動きに合わせて、通りすがりざまに斬りつける。
深々と抉られた横腹に、火のオロチは悲鳴を上げて哭く。
「居場所を教えてくれるなんてお優しい!お礼に綺麗に燃やし尽くしてあげちゃおうね~!」
「さあ?礼を言われる覚えはないよ」
膨大な魔力の体を切りつけ、浴びるほどの熱量を浴たのだ。
――もう、覚えたよ。
「いい加減、冷ましてしまおう」
ふわりと漂う魔力の流れ、火の属性の流れ。魔術的な流れを絶つように、深々と抉り、切り込み、無駄のない動きで斬り捨てる。ぼたり、と落ちたものは火のオロチの胴体だ。完全に切断されると同時に凍結していく。
周囲の延焼も、氷の魔力の余波でじわじわと凍りついていった。
「これが熱源なら、これでいいね」
「ムシュ~、蛇は斬るものじゃないでしょ~?あーあ、派手にばっさりだよぉ……」
帝竜からのしょんぼりとした口調。
戦闘に協力してくれた分体が容易く没したショックがあるらしい。
「…………」
――……変な笑い方だ。
アンテロがなんとなく、何かを馬上から投擲を決意する。
それはカウボーイが使う手段に似ていた。
ただし……用いられたものは、ロープではない。
振り回すのに使用したのは銀鎖であり、繋いだ先にあったものは歪んだバス停だ。
ふぉんふぉんと振り回した予備動作が短くとも遠心力が異様に掛かっており、投擲すると同時に目標までピンポイントで風を切り、貫くように飛んでいく。
「これだって立派な投擲……だろう?お嬢さん」
暑さが和らいで落ち着いた様子のムスタ・タンマは嘶いて同意を示した。
ごしゃぁあ――酷い打撃音が響く。
「どうしたんだい、ドクター?」
投げつけた犯人は、何事もなかったように症状を尋ねる。
どこに当たったのか、それ自体はアンテロの感心を誘わない。
しかし、不思議と声は返ってこなかった。
帝竜ドクターオロチはバス停の石部分の直撃を受けて――悶絶していたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
龍・雨豪
あっ、ふーん。そうなの。
そのオロチってヤツの事はよく知らないけど、話を聞く限り生理的に受け付けないクソ野郎ってことは分かったわ。
多分竜を維持するために脳髄が必要って事よね。気は進まないけど死して尚利用されるなんて望んじゃいないでしょうし、先に脳髄を片付けましょ。
低高度を飛んで、放たれた粘液を極力避けるように動き回りつつ、それでも当たりそうな分は念動力で逸らしていくわ。こうすれば、粘液が外れたところにある脳髄が勝手に破壊されるわよね。
もちろん、余力があれば私自身も殴ったり踏んだりして破壊するわ。
最終的に人型の方を一発は殴っておきたいわね。
直接触りたくは無いから、水身投影でやらせてもらうけどね!
カタラ・プレケス
アドリブ歓迎
……ここまでの外道とは思わなかったよ
死に触れればそれに惹かれる
だから僕は死者の願いを聞き遂げるとかはさ、本来しないんだ
でも余りに多すぎる怨嗟の声だ
彼らに変わって跡形も無く消し飛ばそう
粘液に当たったものが破壊されるのならすぐに直る壁を作ればいい
「矛盾宝瓶」から海水を召喚し続け
それを操作して壁を作ろう
ついでに粘液自体に呪詛をかけて勢いを弱めておこう
凌ぎ切り次第、竜目掛けて【願え、其は星をも超える輝き示す者】発動
「これは願いを束ねる雷霆
よってこの場に残った死者の願いも束ねて今放とう
星光と共に滅べ、狂いしモノ」
唐草・魅華音
他の人の話を聞いていて奇妙さは感じていましたが…意図的に世界を渡るオブリビオンがいる、というのは確定でしょうかね。
脳髄の存在が、恨みを残してでもあれを形作るために必要ならば。
それは相手の弱点ともなりうるはず。
あえて脳髄の多い個所を選んで飛び込むように【ダッシュ】【ロープワーク】を駆使し飛び込み、相手の攻撃をためらわせて攻撃を凌ぐのを狙います。
反撃は、【呪殺弾】込みの【制圧射撃】で攻撃動作を妨害しつつ接近、そうしながら「竜に呑まれた存在達。もし恨みを晴らしたいならこの一撃に乗っかり共に恨みをぶつけなさい」
と呼びかけて懐へ飛び込みUCの強力な呪殺弾を胴体めがけて撃ちこみます。
アドリブ・共闘OK
●冷却の蒼空
「あっ、ふーん?そうなのね」
龍・雨豪(虚像の龍人・f26969)は情報として貰った紙に目を通しながら一言。
「そのドクターオロチってヤツの事はよく知らないけど……」
ぐしゃり。見るべき情報は目の前に広がっている。
ならば、紙の情報を何度も読み直す事に意味はないと早々に握りつぶした。
「……話を聞く限り、生理的に受け付けないクソ野郎ってことは分かったわ」
それで戦う動機は充分。
雨豪は武人気質が色濃く出て、無意識にニヤリと口角をあげる。
「わたしも、他の人に話を聞いていて奇妙さは感じていましたが……」
それはドクター・オロチという存在だけではない。唐草・魅華音(戦場の咲き響く華・f03360)は目の前にした異常を、頷きながら見る。
――……意図的に世界を渡るオブリビオンがいる、というのは。
――……確定でしょうかね?
もしもの事があれば、"口に出した情報"が呪いとなって後を引く。
考えの纏めを心の内に留め、魅華音は作戦の遂行を優先する。
「最後まで読まなかったけどあれでしょ、多分竜を維持するために脳髄が必要って事よね」
「はい。恐らくそういう意味だったと思いました。脳髄の存在が恨みを残してて……あれを形作るのに必要なら、弱点ともなり得るはず」
確認事項はこれで全て。
今しがた自分の身体で潰してしまっている領域は放置していいだろう。
「気は進まないけど……死して尚利用されるなんて望んじゃいないでしょうし、先に脳髄を片付けましょ」
「……ここまでの外道とは、思わなかったよ」
カタラ・プレケス(夜騙る終末の鴉・f07768)が向けるオロチへの視線は冷たい。
「此処に響く音は死に近い。いやそのものでも在るだろう」
身体を叩く風は、物乞いをする人間に服を引っ張られるような。
ただ世界が吹かせる自然の風とは、"重さ"の比重が異なった。
悪意ではない。悲しみではない。
これはヒトに涼を与えるための風ではなく、ただ純粋な辛みが情を誘うものだ。
無念が生者にすがり、求めていることがある。これは、――その証。
「死に触れれば、それに惹かれる。だから僕は死者の願いを聞き届けるとかはさ、……本来しないんだ」
それとなく服を叩き、"見えない手引"を払うカタラ。
「でも……これは余りに多すぎる怨嗟の声だ。聞こえないとは言わせない」
思わず耳を塞ぎたくなるほどの音。悲鳴。
絶命の瞬間のリフレイン。
「彼らに変わって跡形も無く消し飛ばそう」
「そうはうまくいくかなぁ~?イテテ、もうすーぐひどいことするんだから~!」
悶絶から立ち直り、再び攻撃の意志を示す帝竜オロチの緑の体から夥しい赤が流れて落ちる。
火のオロチ召喚に伴い使った莫大な資源。倒された火のオロチ分の魔力の消失が、オロチ本体の魔力を著しく損なったための大量出血。竜の巨体を維持し続ける力が凄い勢いで損なわれ、オロチの体は死者の呪いに大いに蝕まれたのだ。
周辺を炎で燃やし、己の巨体で潰し、魔力として使って周辺は脳髄どころではなく血の池に等しい。巨体で潰した区画も素手印派手に砕け散り、ミンチな欠片も残らず液体になってしまっていた。
「ああよく見ると凄く勿体ないなぁ……!折角何万匹も収容してたのにぃ~……」
しかし、帝竜オロチに怒った様子はなく、攻撃の再開に容赦はない。
竜の身体を構成するかのような緑の粘液を、細身の腹に溜め始める。
ぶくぶくと太る竜の体に集まる、"魔力"。
牧場全体から吸い上げている、純粋な魔力だ。
魔力をわざわざ粘液状に変換し二重に三重に派手に浪費して、精製している。
「でも大丈夫!まーだまだ在るからね♪拒みたいなら、頑張って。ボクはどんどんじゃんじゃん続けちゃうから!」
足りなくなったら補っていけばいい。そんな言い方だった。
竜の口が大きく息を吸った――。
「今日は楽しいレイニーデイ♪ああ、楽しい雨が降るね~!」
脳天気な声と全く釣り合わない殺戮の雨。
それは、魔力の限りに竜の口から吐き出され続ける。
べた、べたと音が降り注ぐ。
猟兵の居場所に向けて放たれる粘液は、"どれか一つが当たればいい"等と楽観視のもとで放たれている。残虐だがな破壊だが、遊び感覚。
「粘液に当たったものが破壊されるのなら、すぐに直る壁を作ればいい」
カタラは矛盾宝瓶・アクエリアスを使って無尽蔵の海水を呼び寄せる。
濁濁と呼ばれ続ける水量の流れを操作し、水壁を高く築きあげて着弾を退ける手段とした。
「僕は此処から始める。君たちは君たちの作戦を」
頷いて、雨豪は吹き付けられる粘液を極力躱す様に努めて低高度で飛翔する。
雨と表現するにふさわしいが、粒の色は全てが翡翠。
奇妙にもほどがあり、殺意は雨より何十倍も高かった。
「こんなのを雨と呼ぶなんて、悪趣味よ」
身を翻しながら雨豪は、体に降りかかりそうな粘液を念動力で僅かに逸らす。躱しきれた礫の着弾先、そして僅かにずらした先には、絶賛稼働中の"脳髄"があった。
――こうすれば。
――外れたところにある脳髄が勝手に破壊されて、弱体化が進むでしょ。
命中箇所を的確に破壊し、まるでトマトのような破裂が徐々に広がっていく。
「成程です。ちょっともっと効率のいい方法を思い付きました」
魅華音が脳髄が集中している個所を選んで飛び込むように走り出すのを、雨豪は見送った。
「それって褒め言葉だね?ありがとう!」
「……いや、褒めてないわよ…………本当に胸クソ悪い奴ね」
軽業のような動きで魅華音は、目標とした区画に飛び込んで。
堂々と平和そうな会話に割り込んだ。
「わたしはここです。どうぞやるなら思い切り」
「自殺志願の宣言かな~?いいね、じゃあご要望通りに!」
オロチが誘導されるがままにグリーンディザスターを吹き付けようとして……。
「……え、ちょっとまって?そこってまだ沢山の脳髄があるところだよね?」
「そうですね。わたしがざっと眺めて此処が一番多いと思いました」
「ここに来てオロチのパワーの見せ所だけど、うーん……?」
攻撃をためらい、龍の頭が困った表情を浮かべる。
「あ!でもキミだけ狙えば充分だよね!」
狙う箇所を絞り放たれる粘液を、避けるのは容易くなる。
「その大きな巨体が、人ひとりを的確に殺せるならですけどね」
オロチはたったひとりの、魅華音を殺すためにじりじりと距離を詰めていた。
敵を狙い定めるにはやはり、距離と大きさが違いすぎたのだ。
「そうも大きいと、こちらはとても狙いやすくて助かります」
呪殺弾込みの制圧射撃を近づいてきた帝竜に打ち込み続けて、周囲の"生きた"脳髄にその持ち主に。風に向かって語りかける。
「竜に呑まれた存在達。もし恨みを晴らしたいならこの一撃に乗っかり共に恨みをぶつけなさい」
竜へと臆さずに突っ込む魅華音は、ユーベルコードによる特別性の"弾"に集中すると周囲が恐ろしく寒い風が吹き付けた。
ヒュォオオオオ、重苦しい音。
怨嗟の声が絡みつくように寄ってくるのが、分かった。
願っている。恨みを晴らせる可能性ある一撃を。
『この弾丸に込められてるのは、世界に広がる悲劇と憎しみの連鎖を生み出す悪を憎んだ断罪の想い……咲き響け、断罪血花』
帝竜の体に直接殴り込むように打ち込むと、劫火の剣の欠片は刃となって、内側より暴れて、切り刻む。
魅華音の手を離れて尚、突き刺さり突き進むヤバとなって蝕むのだ。
帝竜オロチの中に残留する呑まれた恨みが、殺せるチャンスを、逃さない――。
「なにを入れたのさあ!?」
「呪殺されるような事を先にしたのは、君だろう」
粘液の雨を海水の召喚で退けていたカタラ。
「それに、燃やし燃やされ既に万全ともいい難い。気付いて、……ないのか」
カタラも、ただ防いでいただけではない。
粘液自体に呪詛をかけ続け、威力を徐々に弱めていた。
今の弾丸であるなら破壊を起こせる力も、当たりどころが悪い以外で何人も殺せないだろう。
「ボクは常に万全だからね~♪不調とか関係ないよ」
「……そうか。なら、受けるにふさわしいな。間違いなく」
――束ねよ。我らが、願いを。
「これは願いを束ねる雷霆。……よってこの場に残った死者の願いも束ねて 今放とう。星光と共に滅べ、狂いしモノ」
――願え、其は星をも超える輝き示す者。
恨み辛み願い、想い呪い。
種類様々な願いが合わさった、星牛の雷霆が動きの鈍った緑の体を射抜いて焼く。
刺さるさまは一瞬だった。それほどに、帝竜ドクター・オロチが殺し尽くした数は多かった。その数、何万と、駆けつけた猟兵達の想いも乗る。
「ああああああああああああ!!!!」
「燃え尽きそうなトコわるいけどね、此処一番のタイミングじゃない?これ」
雨豪の水から創造された龍人が、今にも内側から蒸発しそうな人型に語りかけてくる。それは、雨豪の動きと連動し、事を成すモノだ。
低温の氷を掌に集め、握り込む。
「一発、殴っておきたかったのよこの――クソ野郎!」
振りかぶった一撃が、人型の頭……脳みそにしかみえないそれを潰し、カタラの雷槌の衝撃で蒸発して消えた。人型の蒸発と共に竜の姿も蒸発し魔力となって元の大地に溶けて消えていく。周辺地帯ごと雷槌は激しく刳り、残存していた脳髄も一緒になって蒸発して消えていく。
誰にとっても、遺される事は望まないだろうから、跡形もなく消し飛ばす。
――――。
猟兵たちは風の声を聞く。服を触るような感触がないと気付いたのは誰だったか。
冷たい風は、辛さを弱め、徐々に穏やかな気配へと変わっていく。
「直接触りたくはないから、ああしたのよ」
握り込んだ手を開き、ある猟兵はどことも言えない空に手を振る。
「じゃあね。もう自由よ。どこにでも好きに行くといいわ」
軽く頬を撫でるように吹いた風。
右から左ではなく、それは、蒼空へ向けて吹き抜けていった。
大成功
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