●其は帝竜『垓王牙』
炎。
それは命の源。
全てのモノは命を燃やし、燃え尽きるまでその生を全うする。
ただ、そうではない炎も存在する。
焼き尽くし、なにものさえも許さぬ炎。
蹂躙し、命を焼き尽くす炎。
そう、この炎は――。
全てを灼き尽くし、あらゆる生命の存在を許さぬ、圧倒的な炎であった。
●向かうは龍脈火山帯
「帝竜『ガイオウガ』、ね……」
グリモアベースの一角で海老名・轟(轟く流星・f13159)は資料へ目を通しながらつぶやいた。
帝竜『ガイオウガ』。
赤熱する火山に住まう『燃え盛る獣の帝竜』。
燃え盛る炎の如き巨怪。
火山と同等の巨体を誇る、煮えたぎる溶岩の如き帝竜。
「で、今回はお前達にこの竜帝ガイオウガと戦ってもらうんだが、一つ気を付けてほしい事がある」
言いながら資料から目を離し、轟は猟兵達へと言葉を続ける。
それは、ガイオウガは必ず先手を取ってくるというシンプルで厄介極まりない注意点だ。
「先制攻撃だが、これだけはどうにもできない。お前達は必ず先制攻撃を受ける事になるから、それに対する対策を考えた上で挑んでくれ」
グリモアキューブを展開させ、轟は真摯な瞳を向ける。
「今回ばかりはちと強力で厄介な敵だ。何せ竜帝だからな。気を引き締めて挑んでほしい」
燃え滾るマグマ、流れる溶岩。
広がる光景は戦いを挑む龍脈火山帯。
「覚悟は決まったか? ならOK、よし行くぞ!」
グリモア猟兵の導きにより、猟兵達は竜帝の元へと赴いていくのだった。
カンナミユ
カンナミユです。
帝竜ガイオウガとの戦いになります。
今回のシナリオにはプレイングボーナスがあります。
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
それではよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『帝竜ガイオウガ』
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POW : 垓王牙炎弾
【全身の火口から吹き出す火山弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【『炎の獣』に変身する】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 垓王牙溶岩流
自身の身体部位ひとつを【大地を消滅させる程の超高熱溶岩流】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 垓王牙炎操
レベル×1個の【ガイオウガに似た竜の姿】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
イラスト:阿賀之上
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
木霊・ウタ
心情
命を焼き尽くす炎なんかに負けられるかよ
世界と命を守る戦いだ
ここは押し通らせてもらうぜ
戦闘
火山弾は爆炎による高速機動で回避
間に合わなければ火壁を展開しつつ武器受け
で俺の獄炎で敵の炎を喰らってやるぜ
獄炎で獣を包み込み
そのまま炎として獄炎に吸収し取り込むってカンジで
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払い
ガイオウガの身を砕く
吸収した炎が乗じた獄炎を放ち
ガイオウガを形作る溶岩も、そして炎も灰に変えてやるぜ
これが命の煌き
未来を紡ぐ生命の輝きだ
焔摩様がお迎えに来てやったんだ
さっさと骸の海へ還りやがれ!
事後
静まった大地で弦を爪弾く
あんたの炎も中々だったぜ
骸の海で安らかにな
木常野・都月
大きいな…流石に大きすぎてドン引きだ。
でも逆に考えれば、弱点になりそうな隙間くらい見つかりそうだ。
まずは敵の先制攻撃を防がないと先に進まないか。
先制攻撃は、[野生の勘、第六感]で、敵の動きに注視したい。
氷の精霊様にお願いして[高速詠唱、属性攻撃、カウンター]で相殺をしたい。
防ぎきれないなら、氷の精霊様の[オーラ防御]で凌ぎたい。
先制攻撃を凌げたら、風の精霊様に敵の弱点になる隙間を[情報収集]して貰いたい。
弱点が見つかったらUC【精霊の矢】を氷の精霊様にお願いして発射、風の精霊様に氷の矢を誘導して貰って、ピンポイントで弱点を強襲したい。
更に氷の[属性攻撃(2回攻撃)、全力魔法]で追い討ちしたい。
ビスマス・テルマール
●POW
『激痛耐性』と『火炎耐性』で備え低空で『空中戦』『ダッシュ』で駆け
『第六感』で敵のUCや炎の獣の攻撃を『見切り』つつ『属性攻撃(火除け味噌)』と『オーラ防御』を込めた実体『残像』をばら蒔き
火の炎上の燃え広がりや攻撃を阻みつつ回避
※とあるお寺の火事を味噌で消し逸話もあり味噌も炎等に有効
隙見て『早業』でUCを攻撃力重視発動
【蒼鉛式火除け味噌ビーム砲】を『一斉発射』の『砲撃』と併用し
炎の獣ごと『範囲攻撃』で『制圧射撃』し
『残像』で撹乱しつつ『ダッシュ』し
『鎧無視攻撃』と『怪力』と『重量攻撃』込めた【ご当地キック用ビスマスブレード】で
火除け味噌キックを敵にお見舞いを
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
斬断・彩萌
あっつ!!ちょっと~肌が焼けちゃうじゃないのよ
こゆ時氷の技とか持ってれば良いんでしょうけど
生憎無いのよね~
てワケで彩萌ちゃんは自分スタイルでキメるわよ!
相手が先制攻撃してくるのが分かってる以上、避けるか防御がテッパン
私が選ぶのは……両方!
まずは咄嗟の見切りで火山弾を回避、避けきれない分は武器受けで防御
地面や火山弾そのものの熱さは環境耐性で凌ぐ!
もし被弾が大きければ下がり、そうでない場合は前へ進むわ
さぁて反撃
此処には固まった溶岩やら吹っ飛んできた火山弾やらで
飛ばすものが多くて助かるわ。
ガイオウガの死角に素早く回り込んで
その辺の岩をUCで操作してぶつけていく
そのバランスの悪い体を倒してあげるわ!
生浦・栴
最早火山そのものと云った体だな
炎へは全力魔法で無酸素地帯を壁として作り炎の勢いを弱らせ
潜り抜けたものは高速詠唱と氷属性の魔法でスナイプ・迎撃
更に抜けて来れば第六感で避け、オーラ防御と火炎耐性で凌ぐ
先制を凌げばUCで獣形態の死霊共に氷や水の属性を持たせ炎獣を迎撃させる
俺から垓王牙の足までのルートを開けるため
目的が叶えば炎獣を引きつけさせつつ垓王牙へ向かわせる
その間にオーブから改めて呪詛を練る
狙いは奴の足
尾が有れど自重をその二本足で支えるのは困難であろう
動きを封じれば近接戦戦を狙う者の助けにもなる
全力で凍結の魔法をスナイプ
其処ら更に高速で次撃の衝撃波で破壊を狙う
アドリブ、連携歓迎
空裂・迦楼羅
炎の獣……ふふん、不思議ね?
なんだか、親近感が湧くのだわ?
燃やされるのは構わないわ、先制を避けられないなら……
バーチャルな身体を構成する地獄の炎と、バトルオーラな覇気で
二重のオーラ防御を試みる!
単純な防御なんてしないわ、噛み付く切り裂かれるような形状をしてるなら怪力で受け止めるかわ。真っ向勝負!
覚悟は、出来てるんだから!(不敵に笑う)
私戦闘狂なの、でも……私は貴方みたいな破壊はしないわ
しそうって言われたことも在るけど、しないわ
だから、……その敵意を私に向けてよ、ガツンといくわよ!
空中から炎の翼を広げて愛用のガトリンガンでぶん殴りにいくから
殴ると蹴るはオーラを纏ったバトル好き元女子高生の嗜みよ!
リフィクル・ナータス
噎せ返る死の熱気……誰かの魂がこの炎を知っていると囁く。
俺は直接的には知らないがな。
世を灰燼にせんと顕現した存在……なぁ『お前』は生まれ変われないのかい?
※POW対策
UCにて『自身の生成した領域にて炎の獣を封じる』事で防御
炎の獣が封じきれない、封じられない場合も考慮し【残像】を用いての回避も心掛け、同時に【見切り】も併用
被弾時は【激痛耐性】で受ける覚悟はしておくが、【二回攻撃】と【生命力吸収】を合わせた【呪殺弾】での回復も意識する
基本的に遠距離戦を軸にし、攻撃のミスを誘発するために【挑発】も時折行ない、攻撃の軌跡を見切る事が出来ていたら【カウンター】の呪殺弾も放つ
※アドリブ絡み掛け合い◎
忠海・雷火
弾は落下放物線の軌道を取ると予想
岩場等の地形があればそれを盾に、無ければ着弾予測地点を避けるように移動
弾が炎獣となる迄の間に可能な限り多く死霊を喚ぶ
獣同士を干渉させ、敵が四方から押し寄せぬよう立ち回り
獣の下をくぐる様に回避する事で、他の獣に対しての盾とする
また、動きは姿形の通りと想定し対獣・竜型の戦闘知識を活用、見切や武器受け。間に合わなければ死霊を盾に凌ぐ
カウンターで周囲の獣を脚を薙ぎ払い、動きを鈍らせ切り抜ける
UC発動、煙化で狭い亀裂に逃げ込むと見せかけ誘き寄せ
残る獣が亀裂に気を取られた隙に、敵本体の角や牙等の鋭角へ転移し騙し討ち
目を刺突し視界を制限し、その後は口内へ武器を投擲する二回攻撃
●
転送された猟兵達を出迎えたのは容赦のない熱波だった。
「あっつ!! ちょっと~肌が焼けちゃうじゃないのよ」
肌どころか髪さえも焼けそうな熱に斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)は思わず声を上げてしまう。
そよぐ風でさえ熱波となり、吹き出す汗も瞬時に乾いてしまう。皮膚を撫でるその感覚は正に肌が焼けるようであった。
吸えばむせ返る程の熱が喉をあぶり、乾ききった息を吐くのも億劫で。
こういう時こそ氷の技とか持ってい良かったのだろうが、彩萌は生憎そのような技を持っていなかった。
「噎せ返る死の熱気……誰かの魂がこの炎を知っていると囁く」
リフィクル・ナータス(昏き異界より出でしモノ・f22103)は誰に言うでもなく呟き周囲を見せば、直接的に知らずとも、分かる。
死だ。
死せる熱気が近づいてくる。
――来た。
……ずん……。
ずし、ん……ず、しんん……。
地鳴りと共に現れるソレとへ忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)は向く。あれほどのものを見逃す事などできなかった。
燃え盛る炎の如き巨怪。
火山と同等の巨体を誇る、煮えたぎる溶岩の如き帝竜。
帝竜『垓王牙』。
その巨体を木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は遠くから見やり、
「大きいな……流石に大きすぎてドン引きだ」
「最早火山そのものと云った体だな」
ロッドを握る都月のそばで生浦・栴(calling・f00276)が言い放つ。
「炎の獣……ふふん、不思議ね? なんだか、親近感が湧くのだわ?」
フレイムバード――空裂・迦楼羅(焔鳳フライヤー・f00684)も姿を見せた帝竜を見て目に口にすると、炎の獣はこちらに気付いたようだ。ゆっくりとした歩は早くなり、ずしんずしんと地響きと共にこちらへとやってくる。
近づいてくればくるほどその巨体はその威圧感を見せつけてきた。
でかい。でかすぎる。
でも。
「どんなに大きな相手でもわたしたちは負けません」
身構えたビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f0202)はぐっと拳を握り、
「命を焼き尽くす炎なんかに負けられるかよ」
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)もしゃんと巨大剣を抜き放つ。
「世界と命を守る戦いだ。ここは押し通らせてもらうぜ」
「オオオオオオオオォォォォォオオオオオオオ……!!」
噴火の如き咆哮を上げ、帝竜は更に速度を上げる。猟兵達も戦闘態勢を整え――、
戦いの火蓋が切って落とされる。
●
「グル……グオオオオォォォォァァァァァァア……!!!」
大地を揺るがす怒号が響き、ガイオウガの全身の火口から火炎弾が放たれた。
巨大なそれは炎の獣と化して猟兵達へと牙を剥く。
「来たな、行くぜ」
地を蹴りウタは身構えた。
――ガイオウガは必ず先手を取ってくる。
グリモアベースで説明するグリモア猟兵はシンプルかつ厄介な注意点を説明していた事もあり、各々で対策を講じて来たようだ。
「っと!」
爆炎による高速機動で襲い掛かる炎をいくつも避けていくが、全身からの攻撃である。数え切れぬ全てを防ぐのは難しい。
「来てるよ!」
迦楼羅の声に応えるかのように巨大剣で受け流す。
食らいつこうとする牙を払い、獄炎で敵の炎を喰らえばそれで獣を包み込んで吸収していく。
まだまだそれは降り注ぐ。
「そっち行ったぜ」
ちらりと見れば火炎弾は今にも仲間達へ襲い掛からんとしているではないか。
だが、ビスマスと彩萌の覚悟は決まっている。
「彩萌ちゃんは自分スタイルでキメるわよ!」
必ず先制攻撃が来るのなら、避けるか防御が鉄板である。ではどちらを選択するか。
「私が選ぶのは……両方!」
迫る火炎を咄嗟の見切りで回避し、避けきれない分は剣で受け止め防御する。
「ちょっ、これは無理!」
突然噴き出す炎を凌ぎ見れば、ビスマスの腕に炎が絡みついているではないか。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
低空を駆けていたビスマスは少しばかり眉を寄せていたが耐えたようだ。
「まだ来るの?」
「でしたらこれで対抗します」
獣を受け流し払うんざりする彩萌と並走するビスマスはすいと手を動かすと、囮として残像をあちこちへとばらまいていく。
「うん? この香ばしいにおいは……」
駆け抜ける迦楼羅はふと鼻孔をくすぐるにおいに鼻を鳴らし――味噌だ。味噌が焼けている。
それはビスマスが取った行動の一つ。かつて火災による延焼を防ぐ為に屋根に味噌を塗ったとか。なめろうの材料である味噌を込めた残像を展開させているようである。
なんともビスマスらしい策であったが、もちろん迦楼羅にも策はある。
「燃やされるのは構わないわ、先制を避けられないなら……」
見上げ、紅の双眸に映るのは一匹の燃え滾る獣。
「覚悟は、出来てるんだから!」
にっと不敵な笑みと共に、炎の咢と真っ向勝負!
がっ、つ!
「ぐっ……!」
地獄の炎とバトルオーラの覇気を纏っていてもこの熱はこちらを焼こうとちろちろと炎を伸ばす。
どっしりとした超重量の獣をがっしり受け止め、その勢いに押されそうになってもその手を離さなかった。
獣はまだ幾重も降り注ぐ。これ一つにてこずってなんかいられない。
「ぉおりゃあっ!!」
力任せにぶん投げガイオウガへと送り返す。
「よし次だね」
ずんと落ちてくる火球を避けつつ真っ向勝負を繰り返す中、
「キリがないな」
思わずリフィクルは眉をひそめてしまう。
襲い掛かる炎の獣を生成した領域に封じる事で攻撃を防いでいるが如何せん数が多すぎる。
「後ろから来てます」
「3ついったよ」
ビスマスと迦楼羅の声に振り返れば火炎弾が3つ獣と化して突進してきているではないか。
1体は残像に牙を立て、残りの2体はこちらへやってくる。1体は躱し、残りの1体はその炎で頬をじりとあぶった。髪が焦げ、嫌なにおいが鼻につく。
これくらい耐えられる。
反撃で襲い掛かる獣を撃退し、新たな獣は領域に封じながら呪殺弾で回復を図る。
「まだ来るか」
咆哮と火炎弾は容赦なく降り注ぐ。
ぽつりとつぶやきふと見ると雷火の姿がある。
雷火は弾は落下放物線の軌道を取ると予想し岩場の地形があればそれを盾にしていた。
とはいえ、開けた場所だであり身を隠す場所はそう多くない。
獣に砕かれ、盾にする場所が無ければ着弾予測地点を避けるように移動して弾が炎獣となる迄の間に可能な限り多く死霊を喚んだ。
炎の獣と化した火炎弾は数多に襲い掛かってくる。
獣同士を干渉させて敵が四方から押し寄せぬよう雷火はうまく立ち回り、獣の下をくぐる様に回避すると他の獣に対しての盾にする。
対獣・竜型の戦闘知識を活用して見切や武器受け、間に合わなければ死霊を盾に凌ぎきった。
そこからカウンターで周囲の獣を脚を薙ぎ払うと、動きを鈍らせ切り抜け、ふと火炎弾は止まる。
どうやら敵は攻撃方法を変えるようだ。
「アアアアアアアァァァァァァァ……!!!」
火山口を思わせるガイオウガの口から炎が放たれ、それが姿を成すのを都月と栴は目撃した。
巨大な、ガイオウガを彷彿とさせる巨体の炎。
ドン引きするほどの巨体の炎。
「でも逆に考えれば、弱点になりそうな隙間くらい見つかりそうだ」
「なるほど、それはそうだ」
都月へ頷く栴は魔導書を手にするとぱらぱらと頁がめくりあがり、
「まずは俺からだ」
「グオアアァァァアアア!」
ぼうと浮かび上がる魔法は押し寄せる巨体の炎をへ放たれ、直撃する炎はその勢いが弱まっていく。
「無酸素地帯を作ってしまえば燃え盛るのも容易ではないであろう」
不敵な笑みと共に見上げれば、全力魔法によって展開されたその壁によって巨体の炎はその勢いを殺し、近づけないでいる。
だが、物事すべてが完璧に進むことはない。ちょっとしたトラブルもつきものである。
「グルアアアアァァァ!!」
「オオオオオオオォォ!!」
壁をすり抜けた数体がこちらへと向かってくるではないか。
「あっちのは俺に任せて」
「頼んだ」
こくりと頷いて都月は駆ける。
地を蹴り尾がなびき、黒い瞳は炎を映す。
「いまだ」
生きてきた中で培ってきた勘をフル稼働させその身が炎の中をすり抜ける。
1体、2体3体と躱し――まずい!
「精霊様」
炎に髪が軽く焼け、ロッドを構えて召喚するは氷の精霊。高速詠唱で放った氷のカウンターは巨体の炎をあっという間に消し去っていく。
火炎弾に巨体の炎。先制はすべて防ぎ切った。ならば次に打って出るのは攻勢である。
「冥府からの迎えだ」
ばっと手をかざし言い放つと同時に獣形態の死霊が栴に応えてずるりとその姿を現した。
「行け死霊共、垓王牙の足までのルートを開けるぞ」
氷や水の属性を持たせた炎獣を迎撃に動き、ついに道は拓かれる。
「行こう、みんな」
都月は耐えきった仲間達へと声をかけ、
「精霊様」
小さく囁き風の精霊へとお願いをそっとささやきかけた。
さあ道は開かれた。
後はその一撃を叩きつけるのみである。
●
攻撃を耐えきった猟兵達は駆け抜ける。その巨体が目前に迫る。
見上げるほどの巨体は正に火山のごとく。
「グオアアァァァアアアァァァァァ……!!」
竜帝は吼える。
その怒号は滾る炎、そして命をも震わせ攻撃を浴びせかける。
「Namerou Heart Omaguro!」
再びの火炎弾。天をきっと見上げて響くは鎧装の起動音。
「海と沖膾の鮪の覇者は今此処に、オーマグロ転送!」
クロマグロ型水陸両用鎧装オーマグロを装着した蒼鉛の少女は蒼鉛竜騎士となり竜帝へと距離を一気に縮めていく。
「その攻撃は対策済みです」
先手をしのいだビスマスの蒼鉛式火除け味噌ビーム砲一斉掃射が炎の獣を打ち崩し、
「此処には固まった溶岩やら吹っ飛んできた火山弾やらで飛ばすものが多くて助かるわ」
走った振動でずれた眼鏡をクイと直し、竜帝の死角へもぐりこんだ彩萌は手近な溶岩へすと手を伸ばす。
ぐら、り……。
彩萌の何倍もある溶岩が持ち上がるとそれをみたビスマスもトドメとばかりに渾身の一撃を繰り出した。
「そのバランスの悪い体を倒してあげるわ!」
「火除け味噌キ――ック!!」
「ギャアアァァァッッ!!」
ビスマスのキックと彩萌の溶岩攻撃に竜帝は叫びバランスを崩すが、まだだ。まだ倒れない。
「お次は私の番よ!」
炎と共に迦楼羅が突っ込んでいく。
どれ程の攻撃が立ち塞がろうとも迦楼羅は受けて立った。
そして、炎の竜と焔鳳は対峙する。
(「私戦闘狂なの、でも……私は貴方みたいな破壊はしないわ」)
全てを焼き尽くさんとするオブリビオンを前にかつてそうしろと言われた過去がよぎるが、それもまた遠い話。
迦楼羅はしない。破壊はしない。
だから。
「……その敵意を私に向けてよ、ガツンといくわよ!」
ばさりっ。
炎の翼は舞い上がる。
高く飛んだ迦楼羅は重火器、ガトリングガンを構えている。狙いは十分、いつでもOK。
竜帝へ銃口を向け――、
「殴ると蹴るはオーラを纏ったバトル好き元女子高生の嗜みよ!」
「グオオオオォォォォォアアアアア!!」
殴!!!
巨体は大きくよろめいた。
「随分としぶとい奴だ」
ぼうと鈍く淡い光を放つオーブを手に栴は思わず口にする。
「我が身に融けし餓犬よ。我が意の下に此の身を食みて、其の躰、其の力の一端を顕せ」
青黒い煙と姿を変えた雷火は狭い亀裂に逃げ込むと見せかけ誘き寄せ、新たに牙を剥く獣が亀裂に気を取られた隙に、敵本体の角や牙等の鋭角へ転移し騙し討ちを行っていた。
目を刺突し視界を制限すると、口内へ武器を投擲して動きを封じ、絶命させる。
「アアアアアアアァァァ!!」
見上げれば新たな火炎弾が獣と化して襲い掛かってくる。
まだやるつもりか。
挑発に乗った獣へカウンターを浴びせ、仲間達へと襲い掛かろうとする敵を封じ込め。
「禁錮れたら逃がさないぜ? このままずっとイカせ続けてやるよ」
詠唱と共に生じる領域を立て続けに展開させ、リフィクルはさらに襲い掛かる攻撃をいなしていく。
「そっちに2……3体行ったよ」
新たに降りかかる敵を目にリフィクルは雷火へと知らせ、
「気をつけろ、行ったぞ」
「ありがと」
リフィクルからの声に都月が応えた。
「精霊様」
そっと囁き現れる氷の精霊が襲い来る獣を打ち消し、展開させたオーラで防ぎきり。
――竜帝の動きが止まる。
いや、正確には動けないでいるのだ。
「狙い通りだ」
練り上げた呪詛を放ち栴は不敵な笑みを見せた。
「グ……オオ、オォ……!」
「尾が有れど自重をその二本足で支えるのは困難であろう。動きを封じれば近接戦戦を狙う者の助けにもなる」
動けぬ竜帝を前にする都月にふと風の精霊が優しくささやくのだ。
「ありがとう、精霊様」
その情報を聞き握るロッドを構えなおして都月は再び精霊達へと呼びかける。
「精霊様、ご助力下さい」
「そこか」
「オオオオオオォォォオオオオオ!!」
氷の精霊様と風の精霊様の力で放たれる矢は竜帝の弱点をピンポイントに貫き、その軌道を見た栴も凍結の魔法と衝撃波を放った。
あと一歩、あと一撃。
「行くぜ!」
獄炎を纏うウタは飛び出すと焔摩天で薙ぎ払い、ガイオウガの身を砕かんとする。
ガイオウガを形作る溶岩も、そして炎も灰に変えるべく吸収した炎を乗せた獄炎がガイオウガを包み込み、仲間達は渾身の一撃を叩きつけた。
ビスマスの蹴りが、都月と栴の魔法が、彩萌のサイコキネシスが、迦楼羅のガトリングが、雷火とリフィクルの攻撃がガイオウガを確実に追い詰める。
ああ、見上げれば炎が輝いている。
これが命の煌き。
未来を紡ぐ生命の輝きだ。
「焔摩様がお迎えに来てやったんだ。さっさと骸の海へ還りやがれ!」
ウタが構える断罪の炎は竜帝へと振り下ろされ――、
最期の咆哮が響き渡る。
●
竜帝は斃れた。
命の灯はとうに潰え、巨体はガラガラと崩れ落ちていく。崩れたソレは萌えつき灰となり、何一つをも残さない。
戦い、残ったのは勝利した猟兵達だけである。
雷火はふと聞こえた音に耳を傾ける。見ればウタが静まり返った地に音を奏でているではないか。
「あんたの炎も中々だったぜ、骸の海で安らかにな」
灼熱の中でウタが爪弾くギターの調べは静かな鎮魂。
「世を灰燼にせんと顕現した存在……なぁ『お前』は生まれ変われないのかい?」
熱風に流されていく竜帝だったモノに問うが答えが返る訳もないが、いつかきっと――。
「さあみなさん帰りましょう」
「うん、そうだね」
「そうね、ここにいても仕方ないし戻るわよ」
ビスマスに都月も頷き、彩萌も踵を返す。
戦いが終わった以上、ここに長居する理由もない。それに、戻ってくるのを心待ちにしている者たちもいるではないか。
「ふむ、では帰還するとしよう」
「皆お疲れ様!」
栴と迦楼羅も歩き出す。
爪弾く音も既に消え。
猟兵達は来た道を戻っていくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴