帝竜戦役⑱〜HotSpring,EndSpring
しくしく、めそめそ。
色とりどりの珊瑚犇めき、翡翠色の温泉がそこかしこに湧き出でる、此処は冷静と情熱の珊瑚礁。
しくしく、めそめそ。
その一角にか細く響く、愛らしくも悲しげな鳴き声。
しくしく、めそめそ。
湧き出ている温泉の一つ、その周りにエルフの少女達が集まっている。
その表情は一様に悲しげで、大きな蒼玉の瞳からははらはらと涙が溢れ出て。
何故彼女達がこうも悲しんでいるかと言えばーー。
「ああ…もう、春もおしまいですの…」
「わたし達の季節が、行ってしまいますの…」
「次の春まで、わたし達、どうすれば良いんですの…?」
時は五月の半ば、春より夏へと季節変わりゆく時期。
そして彼女達は春告の妖精・スプリングエルフ。春の訪れと共に現れて、春の終わりと共に去りゆくもの。そのオブリビオン。
彼女達は、ただただ、己の季節の終わりを嘆いていた。
●
「皆さん、群竜大陸の探索お疲れ様ですわ」
グリモアベースに集った猟兵達を、グリモア猟兵、アウレリア・フルブライト(輝くは黄金の闘志・f25694)が労う。
「皆さんのおかげで、群竜大陸もその半ば以上の踏破を果たしております。この調子で残りも踏破しきり、帝竜ヴァルガリオスを討ち果たすと致しましょう」
拳を握り意気込むアウレリアである。
「さて、此度皆様には『冷静と情熱の珊瑚礁』という領域を探索して頂きたいと思います」
それは群竜大陸北西部、帝竜ベルセルクドラゴンの座す領域より北。珊瑚礁の名の通り、色とりどりの大きな珊瑚が密生する領域である。
「この珊瑚は高熱を放つ『サウナ珊瑚』。これには水を温泉化させる効能もありまして、そのためかの領域内には至るところに温泉が湧いておりますの」
ですので、温泉を楽しんでこられるのも良いと思いますわ…と言うアウレリアだが、その言に続いて。
「ただし、二点程注意事項がございますのでご留意くださいませ」
まず一点。
この温泉には、それぞれに特定の感情を爆発的に増幅する働きがあるということ。
「私が予知した範囲の温泉は『悲しみ』の感情を増幅するようですわ」
何か悲しい記憶を思い出すのか、或いは何か悲しい想像をしてしまうのか。とにかく悲しくて堪らない気持ちになるのだという。
しかしこの感情を発露させ、かつ抑え込むことができれば。抑え込む時間に比例して、戦闘力が一時的に増大するらしい。
「もう一点は、ここにもオブリビオンが棲息しているということです」
この領域に住まうオブリビオンは『春告の妖精』スプリングエルフ。春と共に現れて去っていくエルフ達だ。
ただし、温泉の感情増幅効果は彼女達にも影響を及ぼしており。ひたすら過ぎゆく春を悲しみ嘆いている状態なのだという。
元々そこまで強大なオブリビオンではないが、彼女達は悲しみのあまり戦いが手につかず、猟兵はその悲しみを抑え込めれば更なる強化を得られる。
よって、余程でない限り苦戦はしないだろう、とはアウレリアの見立てである。
「ただ、仮にもオブリビオンですし、もう春も終わりなのです。きっちり退治して、今年の春を過去へ送り出して差し上げてくださいませ」
それさえ忘れなければ、後は温泉を堪能してくるのも全く問題ない、と言い添えて。
「後、このサウナ珊瑚ですが。ここから持ち帰っても熱気と水を温泉化させる力は失いません。お土産に持って帰るのも良いかもしれませんわね…あまり大量に持ち帰るのはよろしくないですけれど」
因みに売りに出した場合は、親指大の一欠片でも金貨100枚ーーUDCアースの日本円換算で100万円ほどの値がつくとのこと。
「ともあれ、後は大丈夫ですわね。それでは、転送を始めますわよ!」
そうしてアウレリアはグリモアを展開し、猟兵達をかの珊瑚礁へと送り出していく。
五条新一郎
今年は特に春が短かった気がします。
五条です。
帝竜戦役絶賛進行中ですが、ここでちと小休止的なシナリオをお送りしたいと思います。
温泉回ですよ!
●目的
温泉を堪能する。
『春告の妖精』スプリングエルフを退治する。
●目的地
アックス&ウィザーズ群竜大陸、冷静と情熱の珊瑚礁。
熱気を放つサウナ珊瑚と温泉の湧く領域です。
●プレイングについて
「『悲しみ』の感情を発露させた上で抑え込む」ことでプレイングボーナスがつきます。
ただ今回は敵の戦意がかなり低いというのもあるので、温泉を楽しんだりするお遊び方向にプレイングを割いて頂いても全く問題ありません。
戦闘については最低限どう攻撃するかだけ書いて頂く感じでOKです。
●リプレイについて
届きましたプレイングから順次リプレイ作成して参ります。
17日(日)を目処に完結できればと予定しております。
それでは、皆様の春を送り出すプレイングお待ちしております。
第1章 集団戦
『『春告の妖精』スプリングエルフ』
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POW : 目覚めの春~目覚めを促す鍵~
【対象を眠れる力】に覚醒して【暴走した真の姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 春は恋の季節~心の高鳴りが爆発となって~
【対象二人の意思疎通】が命中した対象を爆破し、更に互いを【互いのレベルの合計の技能「手をつなぐ」】で繋ぐ。
WIZ : 春はお花見~花々の美しさに魅了され~
【お花見】を給仕している間、戦場にいるお花見を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
イラスト:CHINATSU
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
クシナ・イリオム
アドリブ歓迎
こうやって温泉に浸かっていると色んなことを思い…思いだ…
(脳裏をよぎる暗殺者としての乾いた日々)
…うっわ…私の人生寂しすぎない…?
これ以上考えると戦闘終了後も悲しみで後遺症が出そうだから【死心にて穿つ者】でシャットアウト
無心で敵を【暗殺】(UCで6倍)するよ
…いいし。
私には殺しの技能と猟兵の地位があるし。
お金とか安定して暮らせる場所があれば恋人とかいらないから。
考え直してみるとなんかイライラしてきた。
いつもどおりの無表情だけど。
…うん、仕事頑張ろ…
群竜大陸、冷静と情熱の珊瑚礁。
グリモアベースから転移を果たした猟兵達は、早速それぞれに件の温泉へと浸かりだした。
そのうちの一人、クシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)もまた、岩縁の浅いところで温泉を満喫しているところだ。ここなら、フェアリーである彼女でも深さを気にせず浸かっていられる。
「ふー…こうやって温泉に浸かっていると、色んなことを思い…思いだ…」
リラックスしながら、ふと思い浮かべるのは、それまでの思い出。…ただし彼女の場合は、猟兵となる以前の暗殺教団での思い出。暗殺者としての乾いた日々。
教団にとって邪魔なものを始末するための、作業的な殺しの数々。ただそれだけの生活。
(うっわ…私の人生、寂し過ぎない…?)
意識したら、一気に悲しみがこみ上げてきた。これがこの温泉の効能――悲しみの増幅か。寂しい思い出が止め処なく溢れ出てくる。
(…ダメダメ、これ以上考えると後遺症が出そう)
これ以上悲しみに引きずられるわけにはいかない。ユーベルコードを発動。己の感情を封印し、引き換えて理性的な行動力を得る。
ちょうど、湯煙の向こうに、件のオブリビオン――スプリングエルフの一団が見出された。好機。クシナは飛翔してゆく。
「しくしく…もう、春もおしまいですの…」
「わたし達の季節が、終わってしまいますの…くすん…」
悲しみのままに嘆き、涙するスプリングエルフ達。そんな彼女達の影に飛び潜むクシナ。元々の隠密技能は先のユーベルコードで本来の6倍にまで高まっている。スプリングエルフ達には全く気付かれていない。
首筋へ到達、篭手から伸ばした暗殺刃をそこへ突き立てる。細く小さな刃は、しかし膨大な魔力をエルフの体内へ注ぎ込み、内側から肉体を破壊し、絶命せしめてゆく。一人、また一人と命を奪われ倒れゆくエルフ達。
(…いいし。私には殺しの技能と猟兵の地位があるし。お金とか安定して暮らせる場所があれば恋人とかなんて――)
脳裏で淡々と独りごちながら仕事を続行。最後のエルフを仕留めたところでユーベルコードの効果時間が終了。意識を失い、クシナはその場に墜落した。
一分後、意識を取り戻したクシナ。周囲にスプリングエルフはいない。全て討ち取られたか。
しかし昏睡直前の思考のせいか、心中には妙に苛立ちが燻っている。尤も、表情はいつもどおりの無表情のままだが。
(…うん、仕事頑張ろ…)
何より此度の戦争の敵は、かの教団が崇めていた帝竜そのものなのだし。頷き、帰還していくクシナであった。
大成功
🔵🔵🔵
護堂・結城
温泉を楽しみたいだけなのになんで泣いてるだけの敵を抹殺してるんだろ…
温泉の効果とはいえ悲しくなってきた
まぁ、オブリビオンである以上は容赦はできないんだけど
【POW】
お湯に浸かったら戦闘開始と同時に【水上歩行】
【歌唱・大声】に【生命力吸収】をのせて戦場に溢れた悲しみを喰らう【大食い・範囲攻撃】
自身の感情をメインに、敵は冷静にならない程度に加減して吸収だ
「冷静になられても困るが、少しだけ悲しみを減らしてやるよ」
「――頭を垂れよ、死はお前の名を呼んでいる」
指定UCを発動、【焼却・属性攻撃】をのせた白き劫火の剣群を召喚
剣群を投げては炸裂させて【爆撃・衝撃波】だ
「春も終わり、出会いと別れは世の常よな」
しくしく、めそめそと泣き続けているスプリングエルフ達。彼女達の姿を遠目に見遣る護堂・結城(雪見九尾・f00944)は眉根を寄せる。
(温泉を楽しみたいだけなのに、なんで泣いてるだけの敵を抹殺することになってんだろ…)
今の彼女達はほぼ無抵抗に等しい。そんな存在を蹂躙し抹殺するという行動。温泉の効能も相俟って、悲しみが昂ぶってくる。
(まあ…オブリビオンである以上、容赦はできないんだけど)
オブリビオン殺すべし、慈悲はない。改めて確認し、湯より上がった結城はそのまま温泉の水面に立つ。
「――r―r―rr―rr―r―rr――!」
声を張り上げ、歌うように珊瑚礁へ響かせる。それは感情を喰らう歌。今この領域に溢れる悲しみの情を喰らう歌。己のそれを丸ごと喰らい、視線の先の春妖精達のそれも程々に。
(冷静になられても困るが、少しだけ悲しみを減らしてやるよ)
少しだけ。それも結城の力となるが故。そして春妖精達は悲しみから顔を上げる程とはいかず。
「――さて」
結城の五体に力が漲る。喰らった悲しみはユーベルコードによって彼の力となり、白き復讐の劫火となって背より立ち上る。
「――お前達」
春妖精達に声をかける。気付き振り返った彼女達の顔に、一様に悲しみとは別の感情が浮かぶ。それは恐れ、怯え――即ち恐怖。
「――頭を垂れよ、死はお前の名を呼んでいる」
一際強く白炎が噴き上がる。結城の頭上で凝集したそれは剣の形を成し、群れとなって空間を満たす。
「嫌、嫌ですの!わたし達は、春はまだ――」
悲鳴じみた拒む声は皆まで聞かず。白き劫火の剣群が撃ち放たれて。着弾したそれらは次々と炸裂、爆炎と衝撃波が一帯を席巻。周囲の珊瑚ごと、春妖精達を消し飛ばしてみせた。立ち上る土煙。
「…春も終わり、出会いと別れは世の常よな」
吹き抜ける、蒸気を帯びた温い風が、土煙を払えば、春妖精達の姿はもはや無く。結城は遠く、雲なき空を見ていた。
大成功
🔵🔵🔵
紫野崎・結名
はふ…あったかい
…うん、こころの動きは、私たちがここに居る証
だから、悲しいけれど、心地よくてどこか安心するの
雰囲気に合わせて音楽を演奏します
最初はゆっくりしたしんみりしたもので
それは少しずつ細やかで綺麗な旋律になって、少しずつ、やさしい曲調へ
音と悲しさを、しんみりと楽しむよ
●心情
リズムだけでこんなに雰囲気が変わる
だから悲しさも心のリズムできっとかわる
静かに見上げてみれば、ほらこんなに綺麗なお花だもの
悲しみは、優しさと強さを込めた微笑みになるって誰かが言ってた
だからこの悲しみも、優しさと強さに変えられる
●その他
すく水でちょこんと足湯しながら肩からかけたキーボードを演奏
ちゃぷり。控えめに湯面へ浸される白い素足。遡れば付け根に至った処で広がる紺色。所謂スク水と称される類のシンプルな水着は、それが故に彼女の未成熟な肢体にニンフェットな魅力を与える。紫野崎・結名(歪な純白・f19420)。外気に比してより熱帯びた湯の温度を感じ、背筋が小さく震えて。
「はふ…あったかい」
視線を落とす。水面にあどけない貌が映る。悲しそうに、微笑んでいる。今、自分は悲しんでいる。実感する。
(…うん、こころの動きは、私たちがここに居る証)
生きているから嬉しい。生きているから悲しい。誰の言葉であったろうか。何であれ。悲しいけれど、それが故に心地よさを、安心を覚える。
肩にかけていたキーボードに指を這わせ、鍵盤を押し込む。繰り返せば、流れる音の音階が音楽を形作る。緩やかな、しんみりとした旋律。
「…この音…歌ですの…?」
「…悲しい歌ですの…」
見れば、少し遠くにいたスプリングエルフ達が、結名に視線を向けている。泣き腫らした瞳が、鍵盤の上で踊る結名の指を見守っている。
指先のステップが、一段、動きの階梯を上げる。より複雑に。伴って、細やかさを、流麗さを増していく旋律。その音色は何処か、優しさを纏って。
(ほら…リズムだけで、こんなに雰囲気が変わる)
心だって同じ。心のリズムを変えれば、悲しさだって。
(悲しみは、優しさと強さを込めた微笑みになるって。誰かが言ってた)
誰の言葉かは知らないけれど。結名は其を真理と信じている。己の心中を満たす悲しみも、優しさと強さに変えられる――
「ほら、静かに見上げてみれば――」
促すように結名が歌いながら、視線を上へ。つられた春妖精達が見上げたそこには、季節外れの桜の花。スプリングエルフの力で珊瑚礁に咲いた、悲しみ紛らす為だけの花。そのはずなのに。
「――あ…なんだか、胸、いっぱいですの――」
見飽きたはずのそれが、なぜだかとても新鮮で。花々に見とれる春妖精達の体が、徐々に薄れてゆく。
「――いっちゃった、んだ」
演奏を終えた頃、結名の傍にいた春妖精達は、誰一人としていなくなっていた。
大成功
🔵🔵🔵
ベール・ヌイ
「夏がくるよ…」
温泉に浸かりながら次に作る料理のことを考えます
春の旬の料理がまだまだ料理したりない
旬じゃなくても料理できるけど、できれば旬に料理したいよね
つまり料理ができないということは悲しいことなんだよ
でも、悲しいことだけじゃない
新しい季節には新しい季節が来る、新しい旬がくる
新しい旬を料理しなければ
そんな気分で悲しい感情を抑え込みます
とりあえず【ベルフェゴールの矢】を妖精たちに撃ち込みます
さぁ、感情を0にされて動きを止めるが良い
アドリブ協力など歓迎です
「夏がくるよ…」
温泉に浸かりながらベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)、通称ヌイが思い浮かべたのは、次に作る料理のこと。
「…春の料理…まだまだ料理し足りない…」
春が旬の食材の数々。それらで色々な料理を作ってきたが、作り損ねたものも少なからず。その気になれば年中作れる料理ではあるのだが、やはり旬の時期にこそ作りたいもの。
「…あれも、これも…作りたかったな」
心残りが悲しみとなって、ヌイの心に圧し掛かる。
「そうですの…春が終われば春の食べ物も…」
「来年までお預けですの…悲しいですの…」
同じく春の終わりを悲しむ者の存在を察したか、気付けばスプリングエルフ達がヌイの周りに集まってきていた。共感は悲しみを増幅し、傷の舐めあいじみた様相を呈しかけるが。
「…でも、悲しいことだけじゃない」
「え?」
続くヌイのその言葉は予想していなかったのか、きょとんとするエルフ。
「新しい季節には、新しい季節が…新しい旬が来る。新しい旬の食材が、来る」
顔を上げる。その瞳は真っ直ぐに前を向いて。
「今の旬を料理し切れなかったのは…心残り、だけど。その分も…新しい旬を、料理しなきゃ」
過ぎゆく季節への悔恨よりも、新たな季節への希望をもって。溢れる悲しみを堪え、ヌイは立ち上がる。
「酷いですの、裏切りですの…!」
「新しい季節なんて要りませんの、ずっと春のままで…!」
口々に抗議の声を上げる春妖精達。そんな彼女達をヌイは眺め渡して。
「それなら…皆の、その悲しみ…消してあげる」
片手を天に翳せば、上空から降り注ぐのは無数の矢。ベルフェゴール、怠惰を司る悪魔より承りし、怠惰へ至らしめる矢。
命中した春妖精の瞳から光が失せる。過ぎゆく春への悲しみも愛情も、全てが消し飛ぶ。それは、春妖精たる彼女達の死を意味する。
ひととき時雨たる矢が過ぎれば、春妖精達の姿は全てが失せて。
「…ん。夏の料理…夏を先取り。あれがいいかな…」
料理の案が浮かんだらしい。ヌイは温泉より上がってゆく。
大成功
🔵🔵🔵
蛇塚・レモン
悲しみの感情……それは、あたいの農村で作物がうまく育たないこと
根菜類の栽培に挑戦している最中だけど、トラブル続きで本当に悲しい
なんでうまくいかないの……?
あ、お花見?
わーいっ、お花見大好き~っ!
※敵のUCを利用して、花見で悲しみを抑え込む!
ねね、知り合いを呼んでもいいかなっ? いいよねっ?
もっと沢山の人にこのお花見を楽しんでもらうべきだよっ!
UCで390人の眷属と翼竜蛇神様を召喚
お花見を愉しみながらスパスパと霊刀の衝撃波で敵を斬り捨ててゆくよ
あたいも蛇腹剣を振るいながら神楽舞(※ダンス+魅了)
お花見の宴会芸と称して剣舞を繰り出し範囲攻撃+なぎ払いっ!
トドメは蛇神様の八首ビームで吹き飛ばすよっ!
悲しみの感情を増幅せしめる温泉。普段は元気いっぱいな蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)もまた、深い悲しみに包まれていた。
「なんでうまくいかないの…?」
彼女の悲しみの源泉は、自身の農村にて作物が思うように育たないこと。とりわけ、最近挑戦している根菜類の栽培はトラブル続き。もとより農作物の栽培は一朝一夕ではいかぬとはいえ、こうもうまくいかないと流石に悲しみが募る。
考えれば考えるほど、悲しみは深く、重くなる。このまま飲み込まれそうな中、ふとレモンが顔を上げれば。
「桜のお花…ちゃんと咲いたの、もっと見たかったですの…」
過ぎ行く春を嘆くスプリングエルフ達が、せめてもの慰めとしてか珊瑚の一部に桜の花を咲かせたところであった。
「…あ、お花見…?…お花見…!」
それを見たレモンの顔が、一気に輝きを増していく。何しろ彼女は。
「わーいっ、お花見大好き~っ!」
花見への歓喜で悲しみさえ抑え込んで、ざぶざぶ湯を掻き分けて春妖精達のもとへ。
「あなたもお花見しますの?」
「時期を過ぎてて紛い物ですけど、楽しむといいですの」
春妖精達の表情は相変わらず暗いが、とりあえず拒絶はしないらしい。
「うん!あ、そうだ!ねね、知り合いを呼んでもいいかなっ?いいよねっ?」
すっかり元気を取り戻した様子のレモンが嬉々として訊ねる。もっと沢山の人にこのお花見を楽しんでもらうべき、として。
エルフ達の何人かが頷くのを見て、レモンはやおら立ち上がり何処か遠くへ呼びかけるように声を張る。
「村のみんなー!蛇神様とあたしと一緒に、お花見しよー!!」
その直後。温泉が影に覆われた。雲か?いや違う。春妖精達は空を見上げ、そして驚愕した。蛇だ。それも八本もの首を持ち背には大きな翼さえ負った、巨大なる蛇だ。
その背から人影が下りてくる。片手に霊気纏う直剣、片手に水の膜からなる大盾。蛇神オロチヒメ…今はレモンの中に在る神を崇める信徒、その亡霊。総勢、実に390名。一斉に歓喜の声を上げる。咲いた花に喜ぶ声だ。
だが、それだけの数に囲まれれば、花咲かせた当人である春妖精達に為す術は無い。霊剣から迸る衝撃波、その嵐に呑まれて瞬く間に数が減る。
レモン自身も余興と称して蛇腹剣を用い剣舞を舞い、気を惹かれたエルフ達に対し蛇腹剣を展開、一気に薙ぎ払って。
「蛇神様、締めはお願いっ!」
そして最後は、八首大蛇がその全ての首から光線を放ち。一角を残らず吹き飛ばしたとか。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・キャロル
温泉につかると、体の中が悲しい気持ちでいっぱいになって、思わずそのまま崩れて生きそうになるの(発露)
でも、ぐっと堪えて我慢して、元の形に戻って慎重に進むわ
妖精さんにあったらご挨拶
私も春は大好きよ、何もなかった所にお花や草が生えて色づいて、寝ていた動物や遠くにいた鳥たちがまた顔を出して……
でもね、私は夏も秋も冬も好きなの、変わっていく世界が好き、私の世界は全部作り物(宇宙船)だったから
それにね春のままだったら、『また春を迎える』事は出来ないのよ、命達が溢れる素晴らしい出会いは永遠に来なくなっちゃうわ、それは、少し寂しいの
春のお姫様、今は茨の城でお休みをして
次の春にもう一度会いたいわ、ダメかしら?
翡翠色に黒が混じる。ノエル・キャロル(お姫様見習い・f04794)の肉体を構成する黒の粘液だ。
(…なんだか、とっても、悲しいの)
それは物心ついた頃、放棄宇宙船で保育ロボット以外の触れ合える存在がいなかった過去を思い出したが故か、或いはまた別の理由か。ノエルの肉体は、そこへ満ちた悲しみのあまり形を失い、元の黒泥へと化しかけていた。
「…いけない、いけない。それはよくないの」
だが悲しみに飲まれるわけにはいかない。ぐっと堪え、上半身を人の形と戻して進む。下半身は未だうまく人の形を取れないけれど、歩みは確かに。
進むうち、スプリングエルフ達の姿が見えた。しくしく、めそめそ、と悲しそうに泣きじゃくっている。
「こんにちは。どうしてそんなに悲しんでいるの?」
そんな彼女達に、ノエルはご挨拶しながら問いかける。
「もうすぐ、春が…わたし達の季節が、終わってしまいますの」
「わたし達は春の妖精…春が終わったら、用済みですの」
口々に悲しみを答える春妖精達。ノエルは共感するかのように頷いて。
「私も春は大好きよ、何もなかった所にお花や草が生えて色づいて、寝ていた動物や遠くにいた鳥たちがまた顔を出して…」
それは春の始まりの風景。冬の眠りから覚めた大地の色づく様。そうですの、それが素敵ですの、とエルフ達も口々に同意を示す。
「でもね」
だが、ノエルは続ける。
「私は夏も秋も冬も好きなの。変わっていく世界が好き」
それは、彼女の生まれたスペースシップワールドに、四季はおろか自然そのものが存在しなかった故。人の手によるそれよりも遥かに雄大な、世界の流動。それは少女を魅了してやまず。
「それにね…春のままだったら『また春を迎える』ことはできないのよ」
春は出会いの季節であり、別れの季節。出会いがあるからこそ別れが、別れがあるからこそ出会いがある。
「いやですの!ずっと、ずっと春がいいんですの!」
「次の春までお別れは嫌ですの…!」」
反発を見せる春妖精達の身に、茨が絡む。気付けば、ノエルの背後に浮かぶは茨の城の幻影。茨は妖精達の身を戒め、魔力を吸い上げてゆく。
「いいえ、いいえ。次の春に、また素晴らしい出会いを迎えるために、今は」
茨が春妖精達を包み、眠りへ落とす。春の終わりを、告げるように。
全ての春妖精の眠りを確かめ、ノエルは最後に一言。
「――また、春に逢いましょう」
大成功
🔵🔵🔵
クトゥルティア・ドラグノフ
※アドリブ共闘大歓迎
悲しみかぁ
……色々あるなぁ
私大丈夫だろうか
いや、行くだけいこう!
いやだよぉ、独りはいやだ
父さん、母さん、死んじゃいやぁ
どうして、どうしてみんな私を避けるの
私が生き残りだから?
私だけが生き残ったから?
独りは、独りはいやぁ!
……っぁ!
これは、かなり、キツイ……思い出したくない悲しい記憶が殴りかかるように……
でもそれは相手も同じだ
全身を液体化、そのまま高水圧カッターで【野生の勘】や【戦闘知識】で【見切り】した急所に攻撃するよ
防御は【オーラー防御】だ
ごめん、正直私もまともに戦えない
悲しみに、沈んでしまう……
でも、せめて倒すまでは……泣き叫びたいこの気持ちを、抑圧するんだ!
「…悲しみかぁ」
その感情を増幅する温泉。そう聞いて、クトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)は表情を曇らせる。悲しい記憶の心当たりは少なからず。正直な処、堪えられるか自信は無いが。
「…いや、行くだけいこう!」
躊躇していても始まらない。意を決し、クトゥルティアは温泉の湯に身を浸した。
『いやだよぉ、独りはいやだぁ!!』
豊かではないが、穏やかで平和だった漁村。
英雄と呼ばれた父親は彼女の誇りだった。
だが。あの日、すべては奪われた。
『父さん、母さん、死んじゃいやぁ!』
村を襲うオブリビオンの群れ。何もかもが打ち砕かれ、踏み躙られて。
両親の物言わぬ骸を揺さぶる、幼き日のクトゥルディア。だが、彼らは最早、娘の呼ぶ声に応えることなく――
『どうして、どうしてみんな私を避けるの?』
両親を亡くし、それでも惨劇を生き延びた少女。引き取られた先でも避けられ、虐げられる日々。
何故避けられるもか。何故虐げられるのか。悲痛に叫ぶも、応えるものは無く――
「――っぁ…!」
顔を上げるクトゥルディア。温泉の作用が過去の記憶を呼び覚まし、一層に生々しき記憶として彼女の心を苛み。もとより青白い肌はより青く。
(これは、かなり、キツイ…)
端的に言えば、己の過去が殴りかかってくるかのよう。正直、彼女の心も折れる寸前であった。
(でも、それは相手も同じだ)
敵もこれだけの悲しい記憶に苛まれているなら。そう簡単には動けまい。それが彼女の判断。そして前を見れば、悲しい啜り泣きを漏らし続けるスプリングエルフ達。
(せめて、あれを倒すまでは…この気持ちを、抑圧するんだ!)
尚も心を苛み続ける悲しみに、今は蓋をして。それは、彼女の力を爆発的に高めて。
ユーベルコードで己の肉体を海水と変化させ、春妖精達のもとへ突入。
細く、強く噴出した海水が高水圧カッターとなり、彼女達の身を切り刻んでゆく。
どうにか繰り出された反撃も、海水たる身には大して通らず。僅かに脅威高い攻撃は、バリアめいた水膜が防いでしまって。
そこに在った一群が、一人残らず駆逐されるまで、長い時間はかからなかった。
「はぁ…はぁ…あぁ、あぁぁ……うああああああああ……!!」
全ての敵を排除し、元の姿と戻ったクトゥルディア。その瞳からは滂沱の涙、唇から迸るは激しき号泣。
最早悲しみを堪える理由は無い。溢れる悲しみの求めるままに。彼女はそうして小一時間、泣き叫び続けたという。
大成功
🔵🔵🔵
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(連携・アドリブ可)
■作戦
明るい歌で悲しみをぐっと抑えて戦う
■行動
お気に入りのフリル水着で温泉へ。
「どうしようもなく悲しい気分になるわね」
浸かった瞬間から胸を襲う悲しみ。大切な人を失った時のような切なさ。
このままだと悲しみが溢れてしまう
耐えようと思っても一人では抗えない悲しみ。だから…
「フォルセティ、歌よ。明るい歌を歌うの」
弟の奏でる曲にあわせて明るい歌を心から歌う[歌唱]
「ほら、笑顔笑顔」
無理やりにでも笑うことで悲しみの感情を抑え込む。
弟と二人で前を向いてスプリングエルフに対峙する
「笑っていくわよ!」
息ぴったりの【ロンギヌスの槍】でスプリングエルフを殲滅する
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【SPD】 (連携・アドリブ可)
【行動】
セーラー姿の水着で温泉地帯へ。でも温泉に浸かると悲しい気持ちになるんだ
「フィオ姉ちゃん。どうしよう。涙が止まらないよ」
大切にしていたものを無くした時みたいに、
悲しくて辛くてどうしようもないや。
でもフィオ姉ちゃんが前を向いて歌えって。こんな時でも笑えって。
「力が入らない気もするけど、歌えるかな?」
銀月琴を取り出してシンフォニック・キュアを奏でるよ(歌唱&楽器演奏)
明るく元気がでる英雄譚を歌うね
「フィオ姉ちゃん、目真っ赤だよ」
笑顔を作るとだんだん楽しい気分になってきたよ
歌の間を狙ってクラロ・デ・ルーナで妖精さん達は撃退だ
水着に着替え、温泉へとやってきた二人の猟兵、ソルレスティア姉弟。
姉のフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)はお気に入りの白いフリル水着。胸元の赤いリボンが鮮烈な印象と共に甘さを抑え、その装いに優雅さを与える。
弟のフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)は白のセーラーに紺のパンツという水着姿。普段は女の子と間違われがちな彼だが、愛らしくも確かな少年らしい溌剌さを感じさせる装いである。
二人は早速温泉へと身を浸し――その心に、早くも猛烈な悲しみが溢れ出してくる。
「どうしようもなく悲しい気分になるわね…」
フィオリナの表情が暗く沈む。胸に重く圧し掛かる悲しみ、まるで大切な人を失った時のような切なさ。
大切な家族――フォルセティの方を見れば。彼の瞳からは、止め処なく大粒の涙が毀れ出てきていた。
「フィオ姉ちゃん…どうしよう。涙が、止まらないよ…」
彼の心もまた、大切にしていたものを失くしたが如き悲しみに満たされていた。埋め合わせようのない喪失感にも似た、辛さ、悲しさ。
(このままじゃ、悲しみが溢れてしまうわ…)
耐えなければ。フィオリナも頭では理解しているけれども。文字通りに胸が張り裂けそうな程の、この悲しみは。一人ではどうしようもなかった。故に。
「フォルセティ、歌よ。明るい歌を歌うの」
「歌…?こんな時に…?」
姉の、求めにも似た提案に応えるフォルセティ。その声は涙に濡れ震えていた。
「こんな時だから、よ。前を向いて、歌って、心を明るく照らすの」
今にも悲しみに潰れてしまいそうな弟を励ますように、フィオリナ。
「力が入らない気もするけど…歌えるかな?」
自信は無くとも、姉の意図は理解した。愛用の、ハープ型のシンフォニックデバイスを取り出し、爪弾きだせば。済んだ音色が辺りに響く。
次いで歌いだすのは、とある英雄の冒険を主題とした英雄譚。驚き溢れる冒険、希望に満ちた旅路。歌う声音の震えが、少しずつ取れてゆく。
弟の歌声に合わせて、姉も歌いだす。どんな困難を前にしても挫けぬ英雄を称えるように、心からの歌声を。
「ほら、フォルセティ。笑顔笑顔」
歌の合間、フィオリナは弟に笑うよう促し、己も笑顔を作ってみせる。無理矢理にでも笑ってみせることで、悲しみを抑え込まんとばかりに。
「フィオ姉ちゃん、目真っ赤だよ」
涙を堪えるあまりか充血した姉の目を見て、思わず笑みが漏れてしまうフォルセティ。そのまま笑顔を作ってしまえば、少しずつ心が軽くなってくる気がして。
と、そこに。
「こんな歌、場違いですの…」
「冒険なんて迷惑ですの…」
近くにいたらしいスプリングエルフの一団が姿を見せる。どうやら二人の歌は、彼女達の好みには合わなかったらしい。悲しみに憎しみの混じったような視線で二人を睨む。
「来たわね。さあフォルセティ、笑っていくわよ!」
「うん、フィオ姉ちゃん!」
フィオリナが笑いかければ、フォルセティも笑顔で頷いて。二人前を向いて、目の前の春妖精達を見据える。
「全てを貫け、ロンギヌスの槍よ!」
フィオリナの手が天高く掲げられる。その先の空間に雷光が迸ったかと思えば、形作られるのは金色の雷纏う魔法の槍。実に380本にも及ぶそれらが、フィオリナの手の振り下ろされるに従って一斉に撃ち出される。
「放てっ!」
フォルセティも両手を突き出せば、その掌から高密度のエネルギーが波動となって、閃光と共に放たれる。珊瑚礁を駆け抜けた波動は衝撃波となって一帯を席巻。秒間70発以上の勢いで、立て続けに撃ち出され。
「きゃぁぁぁ!?いやっ、いやですの、こんな――」
その凄絶なまでの雷光と閃光の嵐の前に、春妖精達は全く為す術なく、飲み込まれ消し飛ばされていくより、他にはなかったのであった。
大成功
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夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
悲しみ、ですかぁ。
色々と出ては来ますが、目の前にこの様な華奢な方(=オブリビオン)がいますと、どうしても体型の方に思考が行ってしまいますねぇ。
このサイズ故に諦めた服や下着は数え切れませんし、トラブルの類も数知れず、ですので。
色々と思い出して悲しくなっては参りますが、まずは『仕事』ということで思考のスイッチを入れましょう。
『温泉』に浸かったまま『秘薬』を飲んで【霊結】を使用、相手の様子を観察し士気のまだ残っている相手から順に『FRS』『FBS』で仕留めて参りますねぇ。
そしてまた『発育』に影響が(遠い目)。
『サウナ珊瑚』は問題の無い範囲で持ち帰り、帰還後にまた楽しみますぅ。
「…すっごい、おっきいですの…」
悲しみさえも一時忘れたかのように、スプリングエルフ達の凝視する先。聳え立つ大山脈――が如き胸の膨らみ。視線を受けて、ぷるぷると小さく震えている。
(…この視線、この様な華奢な方。意識せざるを得ませんねぇ…)
その主、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)。春妖精達の視線に加え、彼女達の細くしなやかな体つきを見れば、どうしても意識するのはその過剰なまでに豊潤な肉体。
人並み外れたそのサイズは、通常の服で収められるものでは到底有り得ず。デザインが気に入ろうとも、諦めざるを得なかった服など最早数え切れぬし、下着に至っては殆ど特注せねばならぬ領域。
それ程の体型であれば、無論、人目も必要以上に惹いてしまうし、トラブルに巻き込まれた回数など十や二十ではきかぬ。豊穣を体現したが如き恵まれた肉体だが、悲しみも相応に背負っているのだ。
(…はうぅ。流石にちょっと、悲しくなりすぎてしまいますねぇ…)
積もり積もった悲しみは、その巨きな胸すらも張り裂けてしまいそうで。だが、ここで潰れていては仕事にならぬ。
「大いなる豊饒の女神、その鴻大なる知と力をお貸しくださいませ――」
念じて胸元より取り出したるは陶器の瓶、中身の秘薬を一気に呷る。次の行動の精度を高めるユーベルコードの産物であるが、此度はそれ以上に『スイッチ』としての意味合いが強い。意識を仕事に傾け、以て悲しい気持ちを抑え込むために。
「…また、おっきくなった気がしますの」
るこるは視線を巡らせ、その場にいる春妖精達を観察する。士気の残っている者を優先的に――まずは、真正面でるこるの変化――また一回り、胸が大きくなったことに気付いた彼女か。
「これはぁ…一時的な変化ですからぁ!」
視線を跳ね除けるように、浮遊戦輪を投げつける。十二枚一組のそれらが、目の前の春妖精達を切り刻む。
次いで、背後に浮かび上がった十六台一組の浮遊砲台を撃ち放つ。魔力砲弾が着弾、爆発し、離れた場所の春妖精達を吹き飛ばす。
(とはいえ…また、大きくなってしまうでしょうかぁ)
秘薬による体型変化は一時的なものだが、僅かながら不可逆な変化も齎す。重ねて使えば、その影響は明らかで――思わず、遠い目をするるこるであった。
と。
(…あ、これはここの珊瑚ですねぇ…)
足元に転がる、サウナ珊瑚の破片。先程の砲撃の余波で砕け、吹き飛んできたものか。
折角なので持ち帰り、帰還後に温泉を堪能するか。拾い上げ、懐に収めるるこるであった。
大成功
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羽々・一姫
春はあったかくて、サボるにはいい季節なのだけどね。
春はあったかいからサボる。夏は暑いからサボる。秋は涼しいからサボる。冬は寒いからサボる。
うん、隙はないね。
次までなんて……サボればいいと思うのだけれど。
妖精としてはそうはいかないのかしら?
悲しみの感情?
働いてるところよね。こんなに悲しいことはないわ。奴隷だもの。
奴隷なのに健気に命令をこなして働いているなんて悲しみの極地よね。
サボらずになんてやっていられないわ。
サボるのがいやなら、楽にしてあげてもいいけれど、
せっかくだし、次の春まで寝てるっていうのもいいと思うのだけどね。
まぁ、そういうわけにもいかないか。
ほんと命令をこなすわたし、健気ね。
しくしくめそめそと泣き暮らすスプリングエルフ達を眺め、羽々・一姫(gatekeeper of Tartarus・f27342)は思う。
(春はあったかくて、サボるには良い季節なのだけどね)
尤も、一姫は夏は暑いからサボる、秋は涼しいからサボる、冬は寒いからサボるのだが。そのサボり欲求に隙は無かった。
そんな彼女も温泉には浸かっているので、次第に悲しみの感情が湧き上がってくる。
思い浮かぶのは、命令されるがままに働いている己の様子。サボることこそ至高とでも言うべき思考の一姫にとって『働かねばならない』以上の悲しみは無かった。
ある人物の奴隷として健気に働く己の姿は、もはや悲しみの極地と言える。少なくとも彼女にとっては。
(奴隷だからってここまで…サボらずになんてやっていられないわ)
彼女にとっては、そうしてサボり倒すことこそが悲しみを紛らわす手段である様子。と、そこでふと思い立ち。
「しくしく…次の春までどうすればいいんですの…?」
相変わらず悲しみに沈んだままの春妖精のもとまで向かい、声をかける。
「貴女達…それはもう、ずっとサボってればいいと思うのだけれど」
かねてより思っていた『何故そうしないのか』という疑問をぶつける一姫。だがしかし。
「それでも春は行ってしまいますの…意味がありませんの…」
サボろうとも春が終わるという事実からは逃げられない。故にこその悲しみであった。
「そう…それなら、仕方ないわね…」
如何にも面倒臭そうという表情で、鎌に擬した拷問具を構える。流石に抵抗の意思を見せるエルフだが、一姫の刃が早かった。
「せっかくだし、次の春まで寝てるっていうのもいいと思うのだけど」
最初のエルフを切り捨てた後、攻撃の構えを見せる春妖精を見据えつつ呟く。
「まぁ、そういうわけにもいかないか」
ヴァンパイアの力を励起させ、踏み込む。刃を振るうたび、春妖精達が一人、また一人と倒れ。全滅まで然程の時間も要せず。
「――ほんと。命令をこなすわたし、健気ね」
血の覚醒の時が過ぎ、己以外誰もいない珊瑚礁を眺めて。自賛するかのように呟く一姫であった。
大成功
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テラ・ウィンディア
悲しみか…この間の依頼ではお父さんに会えるかもと思っていったけど単なる罠でしかも不可能と告げて絶望させるのが好きな奴との戦いだったな
シルも一緒だったけど…悲しかったしおれが戦って結局命を絶った人もずっと子に会いたいと願ってた
それが…とても悲しかった
姉が亡くなった時も…悲しくて仕方なかった
でも…泣いてばかりだったら心配させちゃうよな
シルも…それでも前を向いてたからな
スプリングエルフにはUCで痛み無く静かに眠ってもらう
春は確かに終わっちまうよ
でも…夏が過ぎて秋を迎え…そして冬を超えれば…また春が来る
その時に…また戻ってこい
お前らは春を告げるんだろう?
春は目覚めの時だ
だから…今は眠れ…
温泉の湯に身を浸し、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は思う。
(悲しみか…)
思い出すのは、以前参加した任務での経験。
『亡くした大切な人に会える』という触れ込みのもと、父に会えるかと思い赴いた地。だがそこにあったのはオブリビオンの罠。待ち構えていたオブリビオンは、その思いを踏み躙り絶望を突き付けることを好む悪辣極まりない存在。
双子の姉も共に赴いていたのもあり、戦いの結果かのオブリビオンの殲滅には成功したものの、同様に子に会えるという希望を踏み躙られた結果自ら命を絶った母親もいた。
改めて思い出した、大切な家族を亡くす悲しみ。双子の姉とは別の姉が亡くなった時も、その悲しみは計り知れず。そうした記憶が思い起こされ、テラの心を押し潰しにかかってくる。
だが。
(でも…泣いてばかりだったら心配させちゃうよな)
あの時も、双子の姉はしっかりと前を向いていた。ならば己もそうあらねばならぬ。彼女に並び立つために。
亡くした家族への思いも、残る家族への思いも。確りと抱いて、前へ。その意思のもと、テラは立ち上がる。
さめざめと泣き暮らすスプリングエルフ達を前に、テラは宣言する。
「お前達には、痛み無く静かに眠ってもらう」
その手には、魔力を凝縮した闇の剣。禍々しくも見えるその様相に、春妖精達は怯えを見せ。
「嫌ですの、春は、春はまだ終わりじゃ――」
抵抗の意思を示さんとしたエルフの胸を、闇の刃が貫く。引き抜けば、そこには一筋の傷も無く。痛みへの苦悶も見せないまま、エルフは崩れ落ちていく。
「え…?」
「言っただろう、痛み無く眠らせる、と」
困惑する春妖精達に、テラは闇剣を振るい。精神のみを断ち切って、終わらせてゆく。
春は確かに終わってしまう。だが、夏が過ぎて秋を迎え、そして冬を越えれば。また春が来る。
「その時に、また戻ってこい。お前らは春を告げるんだろう?」
「わ、わたし達、は…」
最後のエルフもまた、葛藤の合間に闇の刃に斬り割かれ、倒れる。
「春は目覚めの時だ。だから…今は眠れ」
いずれ巡り来る、目覚めの時のために。
そうして、悲しみ招く温泉区域に集まっていた春妖精達は、一人残らず消え失せて。
――春が終わり、夏がやって来る。
大成功
🔵🔵🔵