帝竜戦役⑱〜サウナ道を求道せしは
●サウナ道、略してサ道。
群龍大陸には奇々怪々なる大地が寄せ集められたかのように、その一角を特色ある現象が占めている。
この地、サウナ珊瑚と呼ばれる珊瑚が生える温泉地帯もまた、そのうちの一つである。
高熱を放つサウナ珊瑚によって、この地は湧き上がる水が温泉となっているのだ。これだけ見れば、帝竜戦役が勃発した大地とは思えないだろう。
高熱を放つ温泉はまさにサウナそのものであり、このサウナ珊瑚の熱から逃れた場所には水風呂の如き泉まであるのだ。
なんだただのパラダイスではないか。
いや、猟兵諸君がそう思うのも無理ないことである。だって、どうみたって健康ランドだもん。
だが、その地に置いてもオブリビオンは存在する。レッサーデーモンと呼ばれる山羊の頭部と脚部、そして鳥の翼を持つ悪魔である。
通常であれば、彼らは邪悪な儀式によって召喚されたり、壺などに封印されたものを破るなりして顕現する。
そして、契約した者の命令に従って悪行の限りを尽くす……のだが。
「はぁ~……整ったぁ~……」
なんて?
今歴戦のサウナーみたいなこと言わなかった?
そう、この温泉は浸かった者に、多幸感と恍惚感……サウナに正しく入る者だけに与えられる多幸感と恍惚感を爆発的に増加させているのだ。
もうそのゆるゆるとした顔は悪魔じゃない。でも天使でもない。オブリビオンであるが、彼らは今、正に!『整った』のである!
この爆発的感情を抑え込み、我慢すれば我慢するほど、戦闘力が一時的似であるが、上昇する。
だが、この抗いがたい多幸感と恍惚感を抑え込むことなど、過去の化身たるオブリビオンには無理というもの!
かんっぜんに!彼らは多幸感と恍惚感に支配され、この温泉へと殺到しているのだ。
故に猟兵はこの温泉ランド……ではない、えっと、冷静と情熱の珊瑚礁?をオブリビオンの手から護り通さねばならないのだ!
●帝竜戦役
「やあ、みんな。集まってくれてありがとうね。早速だけれど、帝竜戦役まだまだ続くけれどがんばっていこうね。さ、今回みんなを転移する場所の説明をするよ」
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えるのは、宝龍印・ヂュイン(バオロン・f26469)だった。
気さくな笑顔を向けながら、集まって来た猟兵たちに、これから向かってもらう大地についての説明を始める。
「今回向かってもらうのは、冷静と情熱の珊瑚礁という土地だね。ここはサウナ珊瑚と呼ばれる高熱を放つ珊瑚が生えていてね。温泉地帯になっているんだ」
言葉だけ聞けば、帝竜戦役によって連戦続きの猟兵達に送られるボーナスステージのように思えたことだろう。
だが、一味違うのだ。
「そう、ここもオブリビオンが占拠しているんだけれど、ここの温泉、実は浸かった人の恍惚感や多幸感……まあ、俗に言う『整った』っていう感情を爆発的に増加させるんだ。サウナ入った事がある人は味わったことがあるかもしれないね?あのなんとも言えない心地よさ……まさに『整った』っていう言葉以外に当てはまる言葉はないよねぇ……」
うっとりとした顔をするヂュイン。
う、と思わず緩みそうになった表情を元に戻すようにぺちぺち頬を叩きながらヂュインは告げる。
「ただね、この『整った』っていう感情を抑え込んで、我慢すれば我慢するほど、戦闘力が一時的とは言え上昇するんだ。これを利用して、『整った』感情を爆発させて支配されてる、ゆるゆるっとしたオブリビオンを蹴散らしてほしいんだ」
一見聞くと簡単そうな戦いである。だが、この地に踏み込めば、否応なしに足湯程度であっても温泉に浸からなければならない。
そうなれば、『整った』という多幸感と恍惚感に忽ち襲われてしまうのだ。
だからこそ、これを制する感情のコントロールが猟兵に求められている。
「かなり難しいと思うんだよねぇ……サウナーなら尚更だよぉ……」
ヂュインにいたっては想像しただけでも、無理って感じらしい。説明もなんか雑だ。
温泉に浸かっているわけでもないに、ヂュインは緩んだ顔をしてしまうが、そのまま説明を続ける。
「オブリビオンはレッサーデーモンっていう悪魔みたいなオブリビオンだね。彼らは『整った』っていう感情に支配されているから、そんなに強くない。どちらかというと、みんなの克己する力を発揮する自分との戦いになるだろうね」
足湯程度に温泉楽しんでもいいし、がっつり浸かっても良い。
それくらいの猶予はオブリビオンも与えてくれるだろう。だってもう『整って』るわけであるから、それくらいゆる~い感じなのだ!
「あ、でも、ちゃんと水着は着ようね。裸はダメだよ。公序良俗。そういうとこはきちんとしないと。ちゃんと転移する前にチェックするからね!」
えっちなのはダメです。そういうようにヂュインは手でばってん印を作る。
冗談みたいな話ではあるが、これもまた帝竜戦役を勝ち抜くために必要な戦いなのである。ヂュインは大真面目に頷いてから、猟兵たちを送り出すのだった―――!
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『帝竜戦役』の戦争シナリオとなります。
冷静と情熱の珊瑚礁進撃し、集団戦にてレッサーデーモンを打倒しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……「爆発的な感情」を発露させた上で、抑え込む。
※この戦場で手に入れられる財宝について。
宝物「サウナ珊瑚」……水を温泉化する、成分が摩耗することもない不思議な珊瑚です。おそらくクリーンな火力発電としても利用でき、親指大のひとかけらでも、金貨100枚(100万円)程度で取引されます。
アイテムとして発行するものではありません。ロールプレイのエッセンスとして扱ってください。
それでは、帝竜戦役を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『レッサーデーモン』
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POW : 悪魔の三叉槍
【手にした三叉槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 金縛りの呪言
【手で複雑な印を結んで】から【呪いの言葉】を放ち、【相手を金縛り状態にさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 呪いの鎖
【投げつけた三叉槍】が命中した対象を爆破し、更に互いを【呪われた漆黒の鎖】で繋ぐ。
イラスト:純志
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ベール・ヌイ
「気持ちいいあとは寝たい…」
整った、ということはあとは寝るだけ
お昼寝倶楽部団員としては寝るしまいたい
だがしかし、今は、敵がいる
これではいつ襲われるかわからない!
すなわちこの感情を押さえて戦わないといけない!なぜなら最高に整うためには邪魔物がいるから!
すやぁしたい感情をぐっとこらえて、泣きたくなるぐらいぐっとこらえて、【不死鳥召喚】起動
いたみで我慢をつよめ、でも「激痛耐性」でいたみは耐えて
デーモン達を燃やします
…終わったらぐだぁってしてもゆるされるよね?
アドリブ協力等歓迎です
冷静と情熱の珊瑚、その地に存在するサウナ珊瑚はサウナーにとっては垂涎たる宝物であったことだろう。
サウナーにとって、自分だけのサウナを持つというのは、テントサウナや、サウナカーなどとは別格の贅沢であるからだ。もう『整う』ことなど自由自在!
あの多幸感と恍惚感は味わったものにしか訪れない人生の極地。サウナを知る前と知った後では、もうサウナなしの人生には戻れない。
大げさかもしれないが、それはサウナーにとっての事実なのだ!
「気持ちいい……あとは寝たい……」
そして、このサウナ珊瑚の存在する冷静と情熱の珊瑚たる大地には温泉がコンコンと湧き出ているのだ。
猟兵たちはこの地をオブリビオンから奪還しないといけないのだが、どうルートをたどったとしても、足湯程度には温泉に身を付けなければならない。
そして、この温泉に浸かったが最後、彼らを襲うのは、『整った』という感情。つまりは絶え間ない恍惚感と多幸感が襲ってくるのだ。
ベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)が、ぐんにゃりしてしまうのもうなずけるというものであった。
彼女はお昼寝倶楽部団員である。だからこそ、この爆発的な感情、『整った』まま眠りについてしまいたい。
「整った、ということはあとは寝るだけ……」
そんな本音がぽつりと溢れてしまう。わかる。すごくわかる。寝たいよね。もうこのままぐっすり寝たい。
だがしかし!
「今は、敵がいる……いつ襲われるかわからない……」
そうなのである。といっても、敵……つまりはレッサーデーモンたちもまた、この『整う』という感情に支配され、ぐんにゃりと温泉の中に沈み込んでしまっている。
いいのか。それで。まじで!
「これでいいのだ~……」
そういって、レッサーデーモンたちが一斉に、いいとも~!と大合唱である。せっかく手に持った三叉槍も投げても、投げやりな雰囲気でベールまで届かない。
凄まじいまでの『整う』という多幸感と恍惚感!まるでゆるきゃらである!
「この感情を抑えて戦わないといけない……!うぅ、なぜなら最高に整うためには、邪魔者がいるからぁ……!」
うぅ、と涙目になるベール。
つらい。とてもつらい。彼女の涙目を見るのはとてもつらい。でも、そんな涙目を乗り越えてこそ、得られる最高の安眠というものもあるのだ。
彼女は泣くのを堪え、ユーベルコード、不死鳥召喚(シヨリサイセイセシアクマ)を発動させる。
自身の体から癒やしと炎と地獄の炎の術を操る悪魔、フェニクスを召喚する。
我慢。我慢をしなければ、と圧倒的、多幸感を我慢するために血肉を灼かれながら食われ、同時に再生するという痛みが代償になるのだが、フェニクスへと、その炎を持ってぐんにゃりしているレッサーデーモンたちを燃やせと命ずる。
もう我慢やら痛みやらなんやらで、感情がおかしなことになってしまいそうになりながら、ベールの召喚したフェニクスがレッサーデーモンたちを一瞬で茹であげるのだ。
それは地獄の炎であるが故に、一瞬で蒸発しかねぬ炎。それは代償とした痛みが、尋常ではないものであったからだろう。
チリも残らずに骸の海へと還ったレッサーデーモンたちを見送り、ベールはぐったりと膝をつく。
なんたる激戦……!だからこそ、彼女にはご褒美が必要だった。
「……終わったら、ぐだぁってしても、ゆるされるよね……?」
誰に言うまでもなく、ベールは、思う存分、ぐだぁ!っとしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ヘンペル・トリックボックス
サウナ……良いですよねぇ。
いやぁ、この歳になると人形と言えども代謝は落ちるし節々は痛むしで……至福の時間ですよ、ホント……ハァ……
──いかん。これじゃ普通にサウナに来たようなモンじゃないですか……どうにかせねば。
と言うわけで大変名残惜しいですがUCを発動。
『なんか急に寒くなってきた』『寒い、凍えるほど寒い』『この寒さの原因はオブリビオン』『全部倒すまで“整わない”』と言う自己暗示を【催眠術】で自分にかけ戦闘開始。
手持ちの霊符による【破魔】【属性攻撃】で、ペタリペタリと倒していくとしましょう。えぇ、出来るだけ迅速且つ紳士的に。何故って、終わるまでひたすらに寒いからネ。
いやコレ水風呂よりキッツい!
紳士、それは彼の老齢な見た目とは裏腹にしゃんと伸びた背筋と佇まいによって、その言葉を贈られるに相応しき人物である。
群竜大陸、冷静と情熱の珊瑚たる大地においても彼の紳士然とした佇まいは崩されることなく―――……。
「サウナ……良いですよねぇ。いやぁ、この歳になると人形と言えども代謝は落ちるし、節々は痛むしで……至福の時間ですよ、ホント……ハァ……」
ヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)はしみじみと呟く。それはもう本当に。
彼の心のうちは、足湯程度にちょんと温泉に付けただけでも、荒れ狂うように爆発的な『整った』感情に支配されかける。
あっという間に紳士としての雰囲気は瓦解したのだ!まずい!これではただの老齢の人になってしまう!いや、ミレナリィドールであるから、えっと、老齢のミレナリィドール……?
それはともかくとして、それはそれでピンチである。ここにはオブリビオンもまた存在しており、猟兵の進撃を阻もうとしているのだ。
爆発的な『整った』という感情に支配されたままでは、如何な猟兵と言えどオブリビオンに太刀打ちできないまでに骨抜きにされてしまう。
「―――いかん。これじゃ普通にサウナに来たようなモンじゃないですか……どうにかせねば」
やったー!ヘンペルの紳士オーラが戻ったようだった。彼の纏う紳士としての風格は、彼の尋常鳴らざる精神力によって『整った』という多幸感と恍惚感を完璧に抑え込んだのだ。
しかし、それだけでは、この大地における猟兵の役割は終わらない。この地に救うオブリビオン、レッサーデーモンを討ち果たさなければ終わらないのだ。
「ぬ~……猟兵、来たか~……金縛りの呪言を受けよ~」
ヘンペルが目にしたのは、温泉にどっぷり浸かって『整う』という多幸感と恍惚感に支配されたレッサーデーモンたちであった。
なんだそのゆるきゃらみたいなノリは!これまで帝竜戦役をシリアスに戦ってきたことが、何かの間違いなのではと思うほどに支配された多幸感と恍惚感に浸っているのだ。
金縛りの呪言を放とうと、へんにゃりした指先で印を結ぼうとして、上手くいかず……途中で諦めて、ぐんにゃりしているのだ!なんたる怠惰!それでも悪魔か!いや、いいわ。怠惰、大罪だから悪魔らしいといえばらしいのだけれど!
「……大変名残惜しいと思うのですが……」
この光景を見て、逆に冷静になる。如何にサウナが善きものであったとしても、あそこまで自堕落になってしまっては自身の何かがこう崩れる気がした。
故に、ヘンペルのユーベルコードが発動する。
紳士的な紳士による紳士のための舌戦理論(リドル・ディドル・スウィンドル)……彼の持つ驚異的な催眠術を自己暗示として己に掛けたのだ。
何を、と訝しむかもしれない。
けれど、彼にはちゃんとした計算があるのだ。
「なんか急に寒くなってきました……寒い、凍える程寒い……この寒さの原因はオブリビオン……全部倒すまで『整わない』」
それは自身の身を襲う爆発的な『整う』という感情を抑え込むための催眠術である。どれだけ爆発的な感情であろうとも、催眠術でコントロールし、抑え込むことなど、彼の技量を持ってすれば朝飯前である。
いや、本当はこう、月見酒とかに洒落込みたい時間帯だと尚嬉しいだろうが、それは後でのお楽しみである。
「えぇ、できるだけ迅速且つ紳士的に……」
ヘンペルが温泉地帯を駆け抜ける。手にした霊符、水行辰星符が司るは水と霊力、そして冷却と浄化の理である。
ぐんにゃりしているレッサーデーモンたちに、その破魔の力も込められた霊符を張ることなど、赤子の手を捻るよりも容易い。なんだったら、まだ掲示板に張り紙するほうが余程難しい。
それくらいにあっさりとレッサーデーモンたちの額に張り付く霊符が一瞬で彼らの体を凍結に導き、骸の海へと還していく。
「終わるまでひたすら寒いからネ……って、がんばりましたが、いやコレ水風呂よりキッい!」
催眠術が洒落にならぬレベルでヘンパルの体に鞭を打つ。さっくりとレッサーデーモンを倒したのはいいのだが、うっかり解除し忘れては、このまま別な意味でダメになってしまう!
催眠術を解いたヘンペル。これで後のご褒美も美味しくいただけることだろう。
あぁ、ホント、サウナって良いものですよねぇ……
しみじみと彼の言葉が魂の底から溢れ出るのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
『整った』という感情か……おおっ(頭に💡)
あれだな?水風呂に長く浸かった時の、あれか!
(注:彼は水風呂好き)
■行
温泉には靴のみ脱いで入ろう。
入ってみると……うむ。確かに水風呂に入ったような感覚だ。
これに対処するには、そうだな……『此処には敵がいる』と
自身に言い聞かせ、緩んではいけない気持ちを作りあげよう。
敵がいたら、安心して風呂にも入れないからな……
■闘
敵の集団を見つけたら、大なぎなたを片手に【ダッシュ】。
たるんでいる悪魔共に【怪力】を込めた大ぶりな【剣刃一閃】を
放ち、その曲がった根性を斬り伏せてやろう。
反撃するようならその動きを【見切り】、【カウンター】の
蹴りを一発だ!
※アドリブ・連携歓迎
一言に『整った』と言っても、それは感じたものでなければわからぬ感覚であったことだろう。
多幸感と恍惚感。言葉にすれば、恐らくこれらの言葉が当てはまる。それはあまりにも抗いがたき感情であり、その感情の前には一切の事柄がどうでもよくなってしまうものである。
冷静と情熱の珊瑚。この地においてサウナ珊瑚と泉が生み出す温泉は感情を爆発させる。それは全サウナーが求めて止まない『整う』という感情を爆発的に浸かった者に与える魔性の温泉と化しているのだ。
故にそれは猟兵であっても、オブリビオンであっても変わりはない。
「……『整った』という感情化……おおっ!」
愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)の頭上に感嘆符がぴこーん!と具現化されそうなほどに彼は得心言った顔をするのだ。
「あれだな?水風呂に長く浸かった時の、あれか!」
彼にも覚えがあるようだった。水風呂……清綱はあの冷たくも体を包み込むような水風呂が好きなのであった。
『整った』という感情について、あまりピンと来ていなかったのだが、転移されてようやく思い至ったようだった。
なるほどなぁ、と関心した。『整う』。正に身も心もリフレッシュするという意味で『整う』という言葉を使うのか。
「うむ。確かに水風呂に入ったような感覚だ」
どうせ温泉を回避しようとしても、足湯程度の高さまで温泉がこんこんと湧き出しているのだから、せっかくであるしと靴のみ脱いで入ってみると、襲ってくる『整う』感情。
それはまるで奔流のように清綱の体の中を駆け巡っていく。至高なる感覚。襲い来る多幸感。そして、その後に脳の奥まで洗い流すかのような恍惚感。
「……コレに対処するには、そうだな……『此処には敵がいる』……」
多幸感と恍惚感に襲われているのに、清綱は整った顔のまま、うむ、と頷く。かなり冷静に対処している!
なんという精神力……!
此処には敵がいる。その一念のみで彼は常在戦場。緩まぬ己の気持ちを作り上げるのだ。
だって、敵がいたら安心して温泉入れないしね!
「来たな、猟兵! 我らが三叉槍の餌食にしてくれる!」
キリッ。
そんなイメージが湧くのは言葉面だけだった。実際に清綱がてオブリビオンであるレッサーデーモンを見つけた時、彼らはぐんにゃりした様子で温泉に浸かって、三叉槍をゆるっと構えただけだった。
なんたる腑抜け。
思わず清綱は手にした大なぎなたを取り落しそうになったが、彼の鍛え抜かれた精神がそれを許さない。
「なんたる腑抜けた性根……斬り伏せてやろう」
清綱は一気に駆ける。
温泉のお湯を跳ねさせながら、疾駆し一気にレッサーデーモンたちとの距離を詰めるのだ。
彼のユーベルコード、剣刃一閃がぐんにゃりしているレッサーデーモンたちを怪力と共に薙ぎ払う!
脱力した彼らの体はこんにゃくのようなものである。鋭すぎる切れ味を誇る刀がこんにゃくだけなんでか切れないみたいなことは―――。
あ、ないですね。
ずんばらりんと清綱の振るった大なぎなたの剣刃一閃は、一撃のもとにレッサーデーモンたちを薙ぎ払って、骸の海に還す。
あまりにもあっけない幕切れ。
それもそのはずだ。今、清綱の戦闘力は、強靭なる精神力によって抑え込まれた爆発的な感情によって、力が増しているのだ。
「曲がった性根を斬り伏せてやったわけだが……なんとも手応えのない。しかし、これで存分に風呂を楽しめるというもの」
清綱の足は心なしか軽快であったが、常に気を張りすぎるというのもまた心の健康によくないもの。
帝竜戦役での連戦の疲れを癒やし、また再び新たな戦場へと向かう活力にするため、浸かれ!猟兵―――!
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「(水着姿でがっつり温泉に入っている)あー、良い気分だねぇ。…ビールが欲しい。」
いやまあ、持って来てるんだけどね。キンキンに冷えたヤツ。
爆発しそうな感情は、完璧な美味しいビールのことを思って押さえ込む。
我慢して我慢してから飲む方が絶対美味しいもんねぇ。
ビールを飲むのに敵さんは邪魔だし、美味しいビールのためにさっさとぶっ殺そう。
致死舞曲のUCで大鎌を複製、何本かは自分の防御用に残しておきそれ以外全部で敵さんらをバラしにかかる。それはもう全力で、ね。
「しまった、ツマミがない。…悪魔の血でイケるかな?」
温泉といえば、お酒である。
贅沢極まりない話であるが、これが大人の特権というやつである。子供はもう少し大きくなってからね。
あぁ~……と変な声がでそうになるのは、帝竜戦役を長らく戦い抜いてきた疲れかもしれない。
もう少しゆっくりと入れればよかったのに、と思うのは須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)である。
ここ、冷静と情熱の珊瑚と呼ばれる大地には高熱を発するサウナ珊瑚と呼ばれる珊瑚が群生している。
そのおかげで、この地に湧き出る泉は温泉と変わるのだが、この温泉こそが魔性なる泉である。この温泉に浸かったが最後、『整った』という恍惚感と多幸感に包まれる感情が否応なしに湧き上がってくるのだ。
それは爆発的な、と表現されるのに相応しいほどの感情の波。
猟兵であっても、オブリビオンであっても、この爆発的『整った』という感情の前にはあまりにも無力。
水着姿ですっかりくつろいだ様子で莉亜は、温泉に浸かっている。いいよね、今日くらい。というか、毎日がんばってるんだから、ここらでリフレッシュしないと体が持たないから仕方ない。
「あー、いい気分だねぇ。……ビールがほしい」
いや持ってきてるんだけどね。とちゃっかりしている!いいなぁ!いいなぁ!それいいなぁ!
キンキンに冷えたヤツである。悪魔的である。いや、本物の悪魔であるレッサーデーモンは―――……。
「りょうへいめ。われらのおんせんをわたしはせぬぞ」
うん。ぐんにゃりしておられる。莉亜の手前、彼らも戦わぬわけにはいかないのだが、『整った』感情に支配されている彼らは、ぐんにゃりしすぎてまともに呪言を放つための印すら結べないで、へにゃへにゃしている。
これはひどい。
「これはひどい」
あ、口に出して言った。莉亜はというと、揺蕩うように温泉を堪能してから、ざっぱり上がる。なにぃ!あの『整った』状態から一気に戦闘態勢へと持っていけるのか!?
レッサーデーモンたちは動揺する。まじの悪魔ですら、ぐんにゃりしてしまうというのに、莉亜はあっさり温泉から上がるのだ。
何故―――!
「や、完璧にキンキンに冷えたビールを思えばね。コレくらいは。それに我慢して、我慢して飲む方が絶対美味しいもんねぇ」
た、たしかに―――!
さて、と莉亜が大鎌を構える。ビールを飲むのに敵さんは邪魔だし。後はわかるよね?と彼の微笑みがすごい怖い。あれはビールのためならなんだってやりそうな顔をしている……!
その微笑みと共に彼のユーベルコードが発動する。致死舞曲(チシブキ)……それは彼の持つ大鎌を複製し、念動力で操るユーベルコードである。
今へんにゃりしているレッサーデーモンたちを骸の海に還すことなど、造作もないことである。
「あっ―――!」
はい、おしまい、とレッサーデーモンたちの断末魔を聞きながら再び温泉に浸かる莉亜。ぐんにゃりしているレッサーデーモンたちなど、猟兵の敵ではないのだ。
あっという間に周辺のオブリビオンを骸の海へと還したのだから、もうお仕事はおしまいである。
あとは……。
そう、お楽しみだけである!ありがてぇ!キンキンに冷えてる!カシュッ!って今、カシュッ!ってプルタブ開ける音したぁ!
ぐびぐびと喉を鳴らしながらのどごしを味わう。口元に泡が付いてたって構いやしない。なーに、ちょっとおしゃれで季節外れのサンタさんになるだけだ。
「あ~……完璧……あ、しまった、ツマミがない」
なんたる不覚!
最後の最後で、こんなミスをするなんて。じ、と莉亜はレッサーデーモンたちの骸の海に還る様子を見やる。
「……悪魔の血でイケるかな?」
これより先は自己責任で!
大成功
🔵🔵🔵
宮落・ライア
なんだいそれはそんな馬鹿な。
温泉なんかでそんな……
足だけ入る
ぁぁぁぁぁぁぁあぁああああああ……。
生まれたての小鹿のようにぷるぷる
いや!いや!いや!今はお仕事!
今はお仕事ぉ!戦争終わったら平和に入れるんだからぁ!
ほっぺパンパン
『狂信者の心(義務感)』で振り払う!
そして英雄は誘惑に負けないのだよ!
ちょうどぴったり【英雄投映】!
精神力でもってお仕事優先でオブリをぶっ飛ばす!
『整う』。その感情を理解出来ないものもいる。
それは体験していないからこそであり、体験してしまえば、なるほど確かに『整う』と納得することであろう。
群竜大陸の一角である冷静と情熱の珊瑚。この地においてサウナ珊瑚と呼ばれる珊瑚によって、湧き出る泉は温泉へと姿を変える。
さらにこの温泉に浸かったものは、『整った』という多幸感と恍惚感を綯い交ぜにしたような感情を爆発的に溢れさせてしまうのだ。
戦闘時でなければ、これほど素晴らしい温泉も類を見ないだろう。
サウナーであるのならば、この温泉に常時浸かりっぱなしになりたいと切に願うものである。
だが、猟兵はそうは行かない。今は帝竜戦役。アックス&ウィザーズ世界の命運を掛けた戦いの真っ只中であるのだ。
こんな時に温泉に入ってなんていられないのだ。
だから、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は、まったくなんて場所だと少し憤慨していたのだ。
や、温泉は嫌いではないけれど、こんな時にまで……とそんな風に思っていたのだ。
そう、思っていたのだ。
「なんだいそれはそんな馬鹿な」
それでもライアが、この地で目にしたのは敵であるオブリビオン、レッサーデーモンのぐんにゃりと温泉に浸かって、戦うこともままならない様子である。
嘘だろお前。
あの悪魔。欲望の化身であるレッサーデーモンが、本来であれば呪言によってライアを金縛りにしようとするのに、その印すらまともに結べず、あまつさえ、ま、いっか、などと言いながら温泉を堪能している光景が広がっていたのだ。
「温泉なんかでそんな……」
ライアはグリモア猟兵の言葉を思い出す。
嘘でしょう、と半信半疑だったのだ。だが……物は試しと足だけを温泉に入れる。
彼女は猟兵である。それもヒーローであることを望む真面目な少女なのだ。
そんな彼女が、こんな温泉ごときに負けるはずなんてない!キリッ。
「ぁぁぁぁぁぁぁあぁああああああ……」
はいだめでしたー。
まるで生まれたての子鹿のようにぷるぷる震えながら、爆発的に己の感情を塗り替えていく恍惚感と多幸感。
これはまずい。まずいと思えるだけの思考ができたのは幸いであった。
「いや! いや! いや! 今は! お仕事!」
ほっぺたを無理矢理パンパン手で叩いて覚醒する。まずい。ほんとまずい!
頬の痛みでもなお、襲い来る爆発的多幸感と恍惚感。これがオブリビオンであるレッサーデーモンを支配し、ぐんにゃりさせた『整う』という感情!
その波の恐ろしさにライアは戦慄した。下手なオブリビオンより余程脅威である。
「今はお仕事ぉ! 戦争終わったら平和に入れるんだからぁ!」
もはやソレは狂信者の心というか、義務感であった。
それだけが今や彼女の心を支えるたった一つの柱!振り払った多幸感と恍惚感を後にして、ライアは緩みそうになる頬をもう一度叩いて、キリッ!とする。
「英雄は誘惑には負けないのだよ! 私は英雄だ。私はヒーローだ。英雄は倒れない。ヒーローは立ち上がる。だから……私は出来る……!」
侵食加速:英雄投映(ユメノトウエイ)、それは彼女の精神力を代償にすることによって得られるユーベルコードの輝き。
その精神力で持って、彼女はあらゆる行動に成功するのだ!
その瞳が輝く! 一刻も早くこの戦争を終わらせて、温泉にゆっくり浸かるんだ!
その気持を受けた攻撃がぐんにゃりしたレッサーデーモンたちを空の星へと還るほど彼方にふっとばし、彼女は我慢に我慢を重ねた感情を爆発させて勝利を掴むのだった。
……恐るべし、魔性の温泉!
大成功
🔵🔵🔵
クシナ・イリオム
アドリブ歓迎
あー…舐めてた、これは確かに整うね…
なんか、長年の不健康が一気に改善されてる感じがする…
私、無表情だから顔は緩まないけど。
あ、整いすぎて真の姿が出そ…
(鎖骨近くの焼印、火傷や切り傷などの古傷、そして幼年時代の栄養不足で非常に貧相な身体)
…うん、急に感情が抑えられたというか若干腹が立ってきた。
魔法罠即席設計でサウナ室と水風呂を召喚。
ホイホイ釣られた敵を急加熱や急冷することで【暗殺】するよ。
他の人ならまだわからなかったけど、残念ながら私は生粋の欠食児でね。
…私だって豊満な身体がほしくなかったわけじゃないんだぞ。
最初にグリモア猟兵から、この土地の話を聞いた時、まさかそんなことないでしょ、と高を括っていた。
いや、流石にね。
いくらなんでもサウナーがあそこまで力説したからって、『整う』っていう感情を経験したことないから、わかんないよ流石に。
そんな風に思っていたことは、もはや軽く遠い昔のことのように思えるのは、クシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)。フェアリーである彼女の体躯は、通常の人間のサイズより遥かに小さい。
だからこそ、小さな泉の自分専用のつぼ湯みたいなくぼみに浸かっていても、多少めだたない。
むしろ、こういう、つぼ湯を独占できるってフェアリーの特権じゃない?とすら思ってしまうほどであった。
「あー……舐めてた、これは確かに整うね……」
あー……とか、うー……とか、そんな声しかでてこないほどの爆発的な恍惚感と多幸感。普通の温泉ではここまでならない。
サウナーであったとしても、サウナと水風呂、休憩のセットを幾度か繰り返さなければ、この『整う』という至福たる感情を味わうことなどできないのだ。
だからこそ、この冷静と情熱の珊瑚たる大地に群生するサウナ珊瑚は凄まじいのだ。そして、この温泉と化した大地に湧き出るお湯は、ここまで浸かる者を『整わせる』とは思いもしなかっただろう。
「なんか、長年の不健康が一気に改善されてる感じがする……」
もう完璧に『整う』感情の虜である。顔はあまり緩んでは居ないが、彼女自身が無表情なのも相まって分かりづらい。
だが、確実に今、クシナの体は長年の不健康を吹き飛ばし、彼女の体をみなぎる活力でもって賦活していたのだ!
「あ、整いすぎて真の姿が出そ……」
え!?
どゆこと!?となる位のあっさり具合で猟兵の切り札とも言うべき真なる姿が開放されそうになるクシナ。
その体が変じていく。鎖骨付近には焼印。やけどや切り傷などの古傷……幼年時代の栄誉不足で非常に貧相な体が現れそうになって……ぴたりと止まる。
緩み過ぎである、とクシナも自覚したのか、ぐ、と堪える。
堪えるついでに『整う』感情もまた、しっかりと抑えられ彼女の戦闘力が跳ね上がっていくのを感じた。
けど、なんか全体的に不機嫌なお顔。表情の変化に乏しいからかもしれないけどぉ……そのぉ……怒ってらっしゃる?
「……うん、急に感情が抑えられたというか、若干腹たってきた」
いえすいえすいえす!ご立腹である!
即座に彼女のユーベルコード、暗殺技能・魔法罠即席設計(マホウワナソクセキセッケイ)によって作成されたトラップが一瞬で完成する。
サウナ質と水風呂を召喚し、レッサーデーモンたちの前にあからさまに設置したのだ。普通のレッサーデーモンであれば、こんなあからさまな罠にハマることはない。
というか、ぐんにゃりゆるきゃらになってない。
だが、この地に在るオブリビオンであるレッサーデーモンたちは、すっかり『整う』感情に支配され、デーモンホイホイよろしくサウナ室へと入っていくのだ。
それこそがクシナの放ったユーベルコードによるサウナ密室暗殺である!
……ちょっと自分でもネーミングおかしいなって思うけど、そういうことなのである!サウナ室での急加熱と水風呂による急冷によって、デーモンであっても生き物である。急激な温度変化に耐えられることなどできようはずもない。
バタバタと水風呂の中に浮かぶデーモンたちを見下ろし、クシナはなんとなしに呟くのだ。
「他の人ならまだわからなかったけど、残念ながら私は生粋の欠食児でね」
ふわふわとフェアリーの羽根で浮かびながら、ため息をつく。
「……私だって豊満な体がほしくなかったわけじゃないんだぞ」
と、クシナは思うのだが、この温泉はまじでやばい。クシナの無表情が心なしかツヤツヤしとる!
さらに言えば、普段あんまりしなさそうなダブルピースまでしながらキラキラしているのだ。
帝竜戦役という続く戦いの最中で一瞬ではあるが、彼女は長年の不健康を洗い流したのだ。キラキラダブルピースだってしたくなる。
―――かわいっ!!
大成功
🔵🔵🔵
ルテネス・エストレア
変わった珊瑚があると聞いて
自分の瞳の色と同じ珊瑚が好きよ
持って帰りたいわ
足湯がとても気持ち良さそう
ちょこんと座って恐る恐る足を浸けて
ふう、ほどよい湯加減が疲れた身体にじんわり染み渡るわ
足湯に浸かっていると、だんだん眠たくなってきちゃうのよね
うとうと、でも我慢よ我慢
微睡んできちゃうような幸せな気持ちはぐっと我慢
だって幸せな気持ちを貯めて貯めて貯めた後は更なる幸せが待っているでしょう?
一番幸せな、『整った』状態でご褒美(お昼寝タイム)が欲しいもの
ふふ、後で大好きな星霊のお友達を呼んでお昼寝するのよ
それを楽しみに、今は我慢の時間よ
そんなわけだから、わたしの幸せ時間の為にもあなたは此処でおやすみなさい
その珊瑚色をした瞳は、群竜大陸で様々な光景を見てきたことだろう。
この大陸には、様々な表情と光景が広がっている。ふんわりと風に揺れる鳥の子色の髪がなびく。
彼女、ルテネス・エストレア(Estrellita・f16335)の瞳は、ずっと冷静と情熱の珊瑚と名付けられた大地に向けられていた。
「変わった珊瑚があると聞いていたの。自分の瞳の色と同じ珊瑚が好きよ。持って帰りたいわ」
ルテネスの珊瑚の色をした瞳が、心なしか輝いて見えたのは間違いではなかったことだろう。彼女の言葉通り、彼女の瞳と同じサウナ珊瑚があるのはわかるだろう。
サウナ珊瑚は高熱を発し、それだけでこの泉溢れる大地を温泉地帯へと変えたのだ。そして、この温泉こそが、今回の戦いにおいてオブリビオンであるレッサーデーモンよりも、強敵になるのだとは思いもしなかっただろう。
グリモア猟兵の言葉を借りるながら、『整う』。それは多幸感と恍惚感が綯い交ぜになった形容し難い感情であるという。
この大地を行くのなら、確実に足湯程度の温泉に浸からなければならぬと告げられていたから、せっかくだし、とルテネスは靴を脱いで適当な岩場に腰掛ける。
「足湯がとても気持ちよさそう……」
気持ちよさそうなのだが、それでもグリモア猟兵の言葉が頭に木霊する。気をしっかり持たねば。
恐る恐る足を温泉につけると、一瞬でルテネスの体を変え上がってくる『整った』感情。これがグリモア猟兵の言っていた『整う』という感情!
「ふぅ、ほどよい湯加減が疲れた体にじんわり染み渡るわ……」
ルテネスもまた帝竜戦役の数多の戦場を駆け抜けてきた猟兵である。ここまでの戦いで疲弊していたとしても何の不思議もない。
だからこそ、足湯程度であっても、彼女の体は疲労を回復していく。それにうとうとと睡魔が襲ってくる。
「足湯に浸かっていると、だんだん眠くなってきちゃうのよね……」
温められた血液が体を巡って、ぽかぽか血色良くしていくのだろう。船を漕ぎそうに鳴る頭を振って、我慢我慢と思い直すルテネス。
「微睡んできちゃうような幸せな気持ちはぐっと我慢」
かなりの忍耐を要する。けれど、彼女にとって幸せな気持ちを我慢するのは、貯めることと同じである。
だって、と彼女の小さな唇が呟く。
幸せな気持ちを貯めて貯めて貯めた後は、さらなる幸せが待っているのだから。
だからこそ、我慢した後にある一番幸せな『整った』状態でご褒美をもらえるのなら、これに勝るものもないだろう。
「そんなわけだから、わたしの幸せな時間のためにも、あなたは此処でおやすみなさい」
彼女のユーベルコード、星維(アルクトス)が発動する。七星の星群が、温泉でぐんにゃりしているレッサーデーモンたちに命中し、発動しようとして、発動すらもできないでぐんにゃりしていた彼らのユーベルコードを発動する。
それはもう、さらなる怠惰へと彼らを誘い、呼吸することも面倒だという感情のままに、安らかに骸の海へと還っていくのだ。
あまりにもあっけない幕切れであったが、ルテネスは微笑む。
もういいわよね?と足湯に付けたまま彼女は大好きな星霊のお友達を呼び寄せ、共にお昼寝をするのだ。
それは最高に『整った』多幸感と恍惚感に包まれた至福の時間。星霊のお友達もまた、彼女に寄り添うように周囲でくるくると回りながら、彼女の、ルテネスの寝顔を護るのだ。
彼女にとって星霊とは大切なお友達である。それは、星霊にとっても同じことなのだ。大切な、大切な友達であるルテネスの寝顔。これを害する者を許さないだろう。
ふわりと彼女の傍で安らかなる眠りを共にできるのは、星霊にとっても喜び。
それは帝竜戦役という厳しい戦いの最中に訪れた、思いがけないご褒美であったのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(連携・アドリブ可)
「こ、細かいことはいいのよ」
フォルセティとサウナ珊瑚へ。もちろん水着着用
■作戦
弟と結ばれるまでは真の幸福を訪れないと、謎の自己暗示で感情を抑え込む
■行動
とりあえず足湯風に浸かってみる
「なんだか整ったわね」
いや、待って、私。確かにこの心身ともにリラックスした気持ち。
心地よいけど、本当に私が望む幸せは―
隣に無邪気に足パシャしているフォルセティと結ばれること。
「・・・・」
フォルセティをじーっと見つめて。
[限界突破]するまで耐えに耐えて…一気に解放する。
「もう我慢できないわ!」
[全力魔法]で【ロンギヌスの槍】を発現させレッサーデーモンを撃退よ
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】 (連携・アドリブ可)
「帝竜戦役の初戦がここでいいのかな」
フィオ姉ちゃんと一緒に温泉、もとい戦場にやってきたよ
【行動】()内は技能
お気に入りの水兵スタイル水着で足だけ温泉に浸かるね
「はぁ~ってなるよね」
でも、ここで我慢しないといけないんだ。
フィオ姉ちゃんが隣で見ている手前、恥ずかしい姿を見られる訳にいかないよ。
ボクだって男の子なんだからね。
隣のフィオ姉ちゃんの息遣いを意識しながらずーっと我慢我慢。
フィオ姉ちゃんが一緒にいるからきっと耐えられる。そして耐えた先で一気に感情を解き放つよ
「喰らえー、ロンギヌスの槍」
(全力魔法)でレッサーデーモンをやっつけちゃうよ。
冷静と情熱の珊瑚。それは帝竜戦役が勃発した群竜大陸の中でも異色の土地であったことだろう。
サウナ珊瑚と呼ばれる高熱を放つ珊瑚があちらこちらに群生しており、泉は全て温泉へと早変わりしている。この温泉は浸かった者に『整った』……つまりは歴戦のサウナーたちが正しく行うサウナ、水風呂、休憩のワンセットを正しく行うことによって得られる恍惚感と多幸感を瞬時に味合わせるのである。
魔性の温泉と化したこの地では、猟兵であっても、オブリビオンであっても関係なく、この爆発的な『整った』という感情に圧倒されるのである。
オブリビオンであるレッサーデーモンたちは、当たり前のように温泉に浸かり、とてもじゃないが、人様には見せられないぐんにゃりとした顔のまま、溶けている。
シリアスという言葉のシの字も見当たらない戦場へと変貌を遂げていたのである―――!
だが、そんな異様なる光景にあっても仲睦まじい姉弟が、並んで足湯に浸かる微笑ましい光景もまたあるのだ。
「帝竜戦役の初戦がここでいいのかな……」
ほんとに戦争?これ?という位緩んだ空気の漂う冷静と情熱の珊瑚。サウナ珊瑚によって温泉から立ち上る湯気がなんとも心地よい。
水兵さんスタイルの水着に身を包んだフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)は、なんとなしに罪悪感を感じてしまう。
大切な姉であるフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)と共にやってきたのだが、グリモア猟兵の説明を聞く限り、ほんとに戦場なのかな?と疑う位の空気の緩みっぱなしに心配になってしまったのだ。
「こ、細かいことはいいのよ」
そんなフォルセティの隣で同じく足湯を楽しみながらも、フィオリナは弟であるフォルセティへと視線を送る。
可愛らしく、時には女の子に間違われるほどのかわいい弟、フォルセティ。ぱちゃぱちゃと足でお湯を弾きながら無邪気に笑う顔がなんとも言えない気持ちになる。
「なんだか整ったわね」
フィオリナの体を駆け巡る多幸感と恍惚感。これが『整った』という感情。コレは確かに心地よい。サウナーたちがこれを求めてサウナに足繁く通う理由も分かった気がする。
「はぁ~ってなるよね」
フォルセティも、心地よいのかとてもリラックスした様子でとろんとした顔をシてしまうのだが……慌てて、ここでは我慢しないといけないんだと思い直して顔を振る。
大切なフィオ姉ちゃんが隣で見ているんだから、恥ずかしい姿は見られる訳にはいかないのだ。
ふんす!
と、フォルセティは奮起する。だって、ボクだって男の子なんだと。男の子であるからこそ、隣に座るフィオリナの息遣いに意識してしまう。フォルセティの顔が赤いのはサウナのせいだけではないはずだ。
我慢。我慢。我慢。なんだかしんどい。けれど、フィオ姉ちゃんがいるからきっと耐えられるのだと、フォルセティは男の子だからこその自制心で必至に『整う』感情を制御し続けるのだ。
一方、フィオリナはというと―――。
「……」
案外余裕そうである。隣で弟が居る手前、姉としては余裕を見せるものであるから、と奮起しているのかもしれない。
だが、内心彼女の心の中は色々とごちゃごちゃしていた。それを外面に出さぬ精神力の凄まじさは言うまでもない。
襲い来る多幸感と恍惚感。このすさまじいまでの『整った』感情は、爆発的にフィオリナの体の中で渦巻いている。このまま身を任せて、何もかも『整って』しまいたいという欲求は、この温泉の魔力か。
いや、待って、私。確かにこの心身ともにリラックスした気持ち。心地よいけど、本当に私が望む幸せは―――。
その心のなかで荒れ狂う心情のまま、フィオリナは弟であるフォルセティを、じぃーっとみつめる。
耐える、というよりはもはや、これは自己暗示である。
弟であるフォルセティと結ばれる。それまでは真の幸福は訪れないと、謎の自己暗示で感情を抑え込む。
彼女がほしいのは、こんなものではない。これよりも、もっと幸せに満ちた感情なのだ!
だが、それでも限界は来る。抑え込んだ感情が押さえれば抑えるほどに戦闘力が増す。その限界を突破して溜め込んだ力がフィオリナの限界を打ち破り―――。
「もう我慢出来ないわ!」
彼女のユーベルコード、ロンギヌスの槍(ランサ・ロンギヌス)が輝く。
膨大な魔力が空中に形成されていく。雷属性の力が光り輝く。
「わっ―――フィオ姉ちゃん、今なの!?」
フォルセティは突然立ち上がったフィオリナの姿に驚きながらも、合わせるように同じくユーベルコード、ロンギヌスの槍(ランサ・ロンギヌス)を開放する。
それは姉であるフィオリナと同じユーベルコードであるが、彼が開放する、魔力は氷の属性である。
氷の槍にフィオリナの雷の属性魔力が覆ってく。
二人のユーベルコードが重なり、神をも貫く閃槍へと姿を変え、冷静と情熱の珊瑚の大地の上空に巨大なる槍を形成するのだ。
フォルセティは、フィオリナの膨大な魔力に感心し姉への尊敬を更に高める。
「フィオ姉ちゃん! いっくよー! 喰らえー、ロンギヌスの槍」
フィオリナとフォルセティ、二人の放つ閃光の槍が、ぐんにゃりと温泉に浸かっていたレッサーデーモンたちを容赦なく貫き、蒸発させるようにして骸の海へと還していく。
よくよく考えたら、あれだけぐんにゃりしていた戦う気力すらも『整った』感情に支配されたオブリビオンに此処まで威力上げる必要あったのかな、とフォルセティは思わないでもなかったのだが―――。
「やったわね、フォルセティ! 偉いわ!」
と自分を抱きしめて褒めてくれる姉を思えば、ま、いっかとにっこりと彼女を見上げて微笑むのだった。
「えへへ、やったね! フィオ姉ちゃん」
その言葉は、帝竜戦役の最中ではあったけれど、二人の思い出として残るものであったかもしれない。
戦いが終わってもまた、この地に遊びに来ても良い、そんな風に思えるものであったのなら―――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ナイ・デス
ここにいける、と聞いた時に、思ったのです
冷静と情熱の珊瑚礁。長い戦場名から、解放される、と
……帝竜ヴァルギリオスの名前も長いって、気付かされました(集計メタ話)
と
せめて、疲れをとりたい、です
折角なら、みんなで。ぷにぷにタイム、です『蜜ぷに召喚』!
蜜ぷにさん達も漂わせー……恍惚感と多幸感に蜜ぷにさん達、とろけ
弱過ぎて幸せ死……結果、花の香りも追加な、温泉化
これが、整うー、というのです、ね
……敵も、いますし、まだ戦争中。あまりのんびりも、していられな
……気づきました。戦争後にきたら、最高、ですね?
これは、今のんびり、していられません!
真の整い、もとめて!殲滅ですー!
何かいい感じに戦い倒します
冷静と情熱の珊瑚礁。
その名を口にするだけでとても長ったるい土地の名である。わりとびっくりである。
しかし、その長い戦場の名以上に脅威であるのは、この地を温泉地帯へと変えたサウナ珊瑚の存在であり、その滾々と湧き出る温泉に浸かったものの末路はもはや言うまでもない。
如何な過去の化身たるオブリビオンであったとしても、この魔性の温泉の力からは逃れえぬ。この温泉に浸かったが最後、オブリビオンであっても『整って』しまうのである!
『整う』とは……歴戦のサウナーたちが求めて止まぬ感覚。サウナ、水風呂、休憩のセットを繰り返すことによって得られる極上とも言うべき感覚である。
その恍惚感と多幸感を温泉に浸かるだけで得られるのが、このサウナ珊瑚に囲まれた温泉なのである。
故に、今温泉に浸かってぐんにゃりしているレッサーデーモンもまた溢れ出る多幸感と恍惚感に支配され、もう戦いなんていーやー、な感じでぐんにゃりし続けているのだ!
いいのかそれで!
「いいんじゃない、でしょう、か。せめて、疲れをとりたい、です」
そう言って、ぐんにゃりデーモンたちを見やるはナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)である。
帝竜戦役が勃発してからというもの、ナイはとても忙しい。もうっ、ほんとーに忙しいのである!もう長ったらしい戦場を言うのはイヤだ。よく考えたら、帝竜ヴァルギリオスも結構長い名前で、嫌になる。舌噛みそう。
だから、せめて、とナイは思うのだ。
ユーベルコード、蜜ぷに召喚(プニプニバイキング)によって蜜ぷにと呼ばれる霊を召喚する。せっかくなら彼らみんなで疲れを取ろうと思ったのだ。
『デバンプニー!』『オナカスイタプニー?』『オイシクタベテプニー』『モットキテクレプニー!』『プニプニー!』
一斉に呼び出される蜜ぷにたちの数はもはや、たくさん、と形容する他無いほどに大量である。
温泉につかれば、蜜ぷにたちも『整って』しまい、恍惚感と多幸感にとろとろにとろけてしまっているのだ。
しかし、彼らは弱い。弱いが故に、幸せ死という新たなる死因の元に召されてしまう。花の香りが温泉に広がって、さらになんとも言えない癒やしの空間へと変わっていく。
「これが、整うー、というのです、ね」
ナイもまた『整う』という感覚に身を任せたい衝動に駆られる。それほどまでに、この多幸感と恍惚感は凄まじいのだ。
「……敵も、いますし、まだ戦争中。あんまりのんびりも、していられな……」
はた、と気がつく。
これはもしや、もしかすると……?ぴこーん!とナイの頭に感嘆符が輝く。なんだ簡単なことじゃないですか、と彼は温泉から上がると、弱すぎて幸せ死しかけている蜜ぷにさんたちを招集する。
次々と合体してき、強大な蜜ぷにたちは、ちっとやそっとの幸せでは死なないようになる。巨大な体躯は、それはそのまま質量である。
「気が付きました。戦争後に此処に来たら、最高、ですね?これは、今のんびり、していられません!」
そう、今は戦争中だから慌ただしく敵であるオブリビオンを排除しなければならない。けれど、帝竜戦役が終わった後にくれば、この『整い』は浸りたい放題である。
ならば、と今あるいっときの多幸感や恍惚感を抑え、ナイは宣言する。
「真の整い、もとめて!殲滅ですー!」
なんかすごい言葉を使う!のんびりした口調から、殲滅という物騒な単語が飛び出したギャップがすごい。
だが、それでも我慢に我慢を重ねたナイの戦闘力は、ユーベルコードにて呼び出した蜜ぷにさんたちの力へと流れ込み、巨大な質量となった彼らののしかかりによって、ぐんにゃりしたレッサーデーモンたちは、一気に押しつぶされ骸の海へと還っていく。
「……何かいい感じに、戦って、と言いましたが……」
蜜ぷにさんらしいと言えばらしい、質量攻撃による一撃は、危うく蜜ぷにさんたち自身の体をも自壊させかねなかったが、我慢を重ねたナイの力が流れ込んでいるので大丈夫だろう。
後で食べよ。
そんなことを考えながら、ナイは一刻も早くこの戦いを終わらせるべく、奔走するのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
護堂・結城
整った…とかそんな気持ちがねぇ…?
いや、気持ちいいんだけど…
今は戦争中だぞ!?やっとる場合か!!
終わってから楽しめ!?
【POW】
戦闘開始と同時に【水上歩行】
感情が爆発的に増幅するし、相性がいい戦場なんだよな
氷牙を刀に変化させ【怪力・なぎ払い】で牽制
【歌唱・大声】に【生命力吸収】をのせて戦場に溢れた感情を喰らう【大食い・範囲攻撃】
自身の感情をメインに敵は冷静にならない程度に加減して吸収だ
「――頭を垂れよ、死はお前の名を呼んでいる」
指定UCを発動、【焼却・属性攻撃】をのせた白き劫火の剣群を召喚
剣群を投げ込んでは炸裂させて【爆撃・衝撃波】で攻撃だ
「おかわりはまだまだあるぞ、死ぬほど楽しんでくれ」
帝竜戦役は厳しい戦いである。
勃発してから続く戦いは連戦に次ぐ連戦で疲弊しても仕方のないほどの消耗を猟兵たちに齎していた。
それほどまでに厳しい戦いなのである。だが、それでも猟兵たちは征く。己たちの双肩にこのアックス&ウィザーズ世界の命運、存亡がかかっているのだから。
だからこそ、この冷製と情熱の珊瑚礁へと足を踏み入れた猟兵たちは驚愕しただろう。
高熱放つサウナ珊瑚から生み出される暖かいお湯と、それに伴った水蒸気の凄まじさを。これがどれだけのことであるか、測りしれようもない。
この地にあるサウナ珊瑚を利用すれば、極めてクリーンな火力発電を起こすことだって可能なのだから。
だが、実際はどうだ。
―――ただの温泉ランドやんけ!
というツッコミが何処からか響き渡りそうなほどに、一度浸かってしまえば『整った』とサウナーたちが口を揃えて言う、あの至高の瞬間が襲ってくるのだ。
多幸感と恍惚感。それが綯い交ぜになり、『整った』という言葉以外形容し難いあの感覚が!
「整った……とか、そんな気持ちがねぇ……?」
護堂・結城(雪見九尾・f00944)はちょっと呆れていた。いや、かーなーり、呆れていた。
いや、気持ちいいんだけど……と自身もまた足湯程度には温泉のお湯に足を突っ込んでいるから、否定はしきれない。
だけどさぁ、あのさぁ、グリモア猟兵さぁ。そんな風に思ってしまう。
「今は戦争中だぞ!?やっとる場合か!!」
そう強烈なるツッコミが、ぐんにゃり温泉に浸かっているレッサーデーモンたちに入るのだが……
「猟兵が来たか。我らがサウナーデーモンの聖地に押し入るとは不届き千万である。我らが聖地、踏み荒らさせはせぬぞ」
いってる言葉面は立派……いや、立派じゃないな。サウナーデーモンいってるし。手にした三叉槍もまた、雑な感じで掲げられ、温泉から出てこようとしないのだ。
「終わってから楽しめ!?あ、いや、そうか……俺が倒すから、それ無理か……」
思わず結城も言ってしまったが、オブリビオンである以上、戦役が終わってしまえば、この温泉も楽しめないのだ。
そう思えばちょっと不憫……とか思うこともなく、結城は駆ける。
温泉の上をまるで大地を駆けるがごとく疾駆し、雪見九尾の氷牙を刀へと変ずる。それは変幻自在なる携帯を持つ彼の武器なのだ。
響く歌声は、生命吸収。溢れた感情が渦巻く戦場において、彼の力はさらなる極地へと至る……のだが、溢れた感情といえば『整ったぁ……!』という恍惚感と多幸感ばかりである!
それを吸収しようものであるから、それはもう結城の中に渦巻く多幸感は尋常ではない。
なんか歯を食いしばってないと、やっちゃいけない顔をしそうで怖い。だが、抑えれば抑えるほどに跳ね上がる戦闘力は、彼の放つユーベルコード、雪見九尾の劫火剣乱(ナインテイル・ソードフレア)をさらなる強化へと導く。
「――頭を垂れよ、死はお前の名を呼んでいる」
放たれたるは、復讐の劫火の剣群。一斉にレッサーデーモンたちを襲い、彼らを骸の海へと尽く還していく。
「おかわりはまだまだあるぞ、死ぬほど楽しんでくれ」
そういう結城から放たれ続ける剣群を前にして、ようやくレッサーデーモンたちもぐんにゃりから立ち直るのだが、もはやそれは遅きに失する。
何もかも手遅れのまま、レッサーデーモンたちは、骸の海へと還るしかなかったのだ。
「……いや、ホント食いではなかったな!?」
あまりにもあんまりなレッサーデーモンたちの最期。なんか期待してたのと違う!と結城は思わず天に向かってツッコむのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
猟兵として戦っていると時折あるのですよ、ええ
『機械では有り得ない現象や感覚を起こす戦場や敵との相対』が
最近ですと幼児化しましたね…
それにしても…普段己の身体の一部である認識の全身の武装や装甲
を今すぐにでも取り外したい!
フレーム剥き出しの状態はさぞ軽やかでしょうね…
動力系統の循環はこれ以上無い程オールグリーン
なのに、演算速度は低下してゆく…これが『整った』…
醜態を晒す前にUC起動(目が赤く)
敵性存在確認
排除開始
攻撃を●武器受け盾受けで防御し●武器落とし
装備の消耗軽減の為現地調達開始
槍を奪い串刺し
そのまま●怪力で死体を鈍器に戦闘続行
…もっと酷い醜態を晒した気がしますが、考えるのは今は止めましょう…
世界は驚きと不思議に満ちている。
誰の言葉であったかは、わからない。けれど、たしかに世界はいつも猟兵たちに違った顔を見せてくれるし、思わぬ出会いをもたらしてくれる。
だからこそ、世界を渡って戦う猟兵にとって、新たな発見は常に驚きと不思議との邂逅なのである。
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)自身もまた異なる世界の住人達から見れば、驚嘆すべき存在そのものである。
ウォーマシン。機械じかけの騎士。
だが、そんな彼をして―――。
「猟兵として戦っていると、時折あるおんですよ、ええ」
彼は後にそう語ったのだ。なんかこう、スポットライト浴びながら。
「『機械ではあり得ない現象や感覚を起こす戦場や敵との相対』が。そうですね……最近ですと幼児化しましたね……」
どゆこと!?
え?!ってなる驚愕の事実を吐露したトリテレイアであるが、それ以上は聞けなかった。幼児化……そういうのもあるのか。
そんなトリテレイアがやってきたのは、群竜大陸の一角である冷静と情熱の珊瑚礁。この地にはサウナ珊瑚と呼ばれる高熱を放つ珊瑚が群生しており、滾々と湧き出る温泉を生み出す要因となっていた。
そして、この温泉に浸かったが最期、オブリビオンであったとしても逃れ得ぬ『整った』……つまりは、多幸感と恍惚感の感情を爆発的に増幅させられ、支配されてしまう。
大体はそう、あんなふうにぐんにゃりしているのだ!
「りょうへいがきたぞ、りょうへいがきたぞ、げいげきだ~……」
とまったく別のゆるきゃらオブリビオンじゃない?という位にぐんにゃりしたレッサーデーモンたちの姿があった。
彼らは、この温泉が増幅する『整った』という感情に抗えずに支配されてしまったがゆえのみっともない姿を晒してしまっているのだ。
「……見るに耐えませんが……それにしても……普段、己の体の一部である認識の全身の武装や装甲を今すぐにでも取り外したい!」
トリテレイアもまた『整った』という感情の発露に耐えられない。それは機械の体であっても例外ではないのだ。
フレーム状態のロボット、いいよね。いい……。
なんか今違う人の思考入ってきてなかった?大丈夫?
「フレーム剥き出しの状態はさぞや軽やかでしょうね……動力系統の循環はコレ以上無いほどオールグリーン。なのに、演算速度は……低下、して……ゆく……」
そう、彼もまた人型機械騎士。であれば、その構造もまた人に近しいものがあるのかもしれない。
故に、『整った』という感情は、彼の機械の体の構造に新たなるデータを蓄積させ、その名を刻み込むことになったのだ。
「これが……『整った』……」
極彩色の光景がトリテレイアの視界に広がりかけた瞬間、彼のアイセンサーが朱く輝く。
それは機械騎士は「人」ではない(ベルセルクトリガー・リミテッド)。自身の制震構造を戦闘を最優先とするモードに変ずるユーベルコード。
トリテレイアの持つ豊かな感情表現は失われ、しかし、その戦闘に完全なる悪影響となる『整った』という感情を回復せんと、彼の中のモードが切り替わるのだ。
赤き瞳の機械騎士は、もはや、普段のそれとは違う。
「敵性存在確認。排敵開始」
普段の彼を知る者が見れば、それは異様なる戦闘行動だったであろう。
獣の如き戦い。
三又槍をレッサーデーモンから奪い取り、それを躊躇なく串刺しにする。はたまた、そのまま敵の遺骸すらも鈍器と化すように戦闘を続行し続ける。
その姿はまさに、獣であった。
「―――システム復旧」
は、とトリテレイアが復旧した頃、周囲には骸の海へと還っていくレッサーデーモンたちが転がっていた。
『整った』という感情のままに醜態を晒すところではあったが、己がこの戦場の一角で単独であってよかったと心から思ったのだった。
「……もっとひどい醜態を晒した気がしますが、考えるのは今は止めましょう……」
そう、高度に発達した科学技術は、ウォーマシンのシステムであったとしても、自己をごまかすということさえやってのけるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
蛇塚・レモン
『整った』……それはサウナーが目指す究極の領域っ!
分かるっ! 分かるよっ!
この温泉地帯にいれば、誰だって水風呂浴びて『整いたい』って思うよっ!
けれど、それを抑え込むには別の強い感情が必要っ!
その感情の名は……『物欲』だ~っ!
だって、この『サウナ珊瑚』があれば、あたいの農園にだって露店風呂ができちゃうし、それこそ自家製サウナが作れちゃうっ!
その元が辺りに転がっているんだよっ?
しかも売り払えば大金持ちにっ!
……これはオブリビオンを蹴散らして、早く回収しないとっ!(使命感)
先制攻撃+咄嗟の一撃でUC発動!
投げつけられた三叉槍を神火に変換して、放ったレッサーデーモンの手元に返却して焼却しちゃうよっ!
歴戦のサウナーが言う。
『整う』ことを求めてはならぬと。『整う』ことは齎される物であるゆえに、それは賜りしものであるのだと。
だからこそ、サウナーたちはゆめゆめ忘れてはならぬ。極上の癒やしたる『整い』は、正しきセット……サウナ、水風呂、休憩、それらによって齎されるのであると―――。
「『整った』……それはサウナーが目指す究極の領域っ!」
群竜大陸の一角、冷静と情熱の珊瑚礁において、蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)は思わず声を上げていた。
サウナ珊瑚と呼ばれる珊瑚が群生する大地は、滾々と湧き出る温泉と水蒸気によって、まさにサウナ天国。健康ランド。温泉ランドといった体となっていた。
老若男女、皆おいでよ冷静と情熱の珊瑚礁!そんなキャッチフレーズが思わず思い浮かぶが、これ頃悪いな!
「分かるっ! 分かるよっ! この温泉地帯にいれば、誰だって水風呂浴びて『整いたい』って思うよっ!」
レモンは本当に力説していた。だって今だって彼女もそうなのだから。襲い来る多幸感と恍惚感。これを手放しで受け入れられたら、どんなに心地よいだろう。どれだけの癒やしが得られるのだろう。
想像するだけでも顔がやばい。それは女の子がしちゃダメな顔だ!
だが、レモンはその感情を抑え込む。何故ならっ! 今は帝竜戦役真っ只中なのである。わりと大真面目な戦いの最中、のんびり疲れを癒やしてます、なんてことがあったら、わりと不味い。
「これを抑え込むには別の強い感情が必要っ! その感情の名は……『物欲』だ~っ!」
なるほど。
確かに道理である。抗いがたい『整う』という多幸感と恍惚感。これに対抗するには強い感情をぶつけんだよっ! ということである。
「だって、この『サウナ珊瑚』があれば、あたいの農園にだって露天風呂ができちゃうし、それこそ自家製サウナが作れちゃうっ! その元が辺りに転がっているんだよっ?」
わりと取り放題である。そもそも群竜大陸に至る者たちは猟兵を置いて他にあり得ないのである。かつての勇者たちのような者が、そう多数存在しているとは思えない。
今なら、サウナ珊瑚とり放題である。
「しかも売り払えば大金持ちにっ!」
わりと切実なお金事情である。
レモンのユーベルコードが発動する。憑装・蛇塚ホムラオロチ神楽(ソウルユニゾン・ヘビヅカホムラオロチカグラ)……それは周囲の無機物を裁きの神の火に変換し、操作するユーベルコードである。
だが、レッサーデーモンたちはというと……
「我らがサウナーデーモンの聖地たる、この地のサウナ珊瑚を乱獲するなど、言語道断である。我らサウナーの聖地をあらすな~」
ゆるきゃらの如きぐんにゃりしたレッサーデーモンたちが三又槍を投げやりに投げ飛ばすのだ。
いや、サウナーデーモン言っておるし。というか、攻撃が。これまでオブリビオンと対峙して、これほどまでにやる気のない攻撃をされたことがあるだろうか、いやない。たぶん。めいびー。
「……これはオブリビオンを蹴散らして、早く回収しないとっ!って息巻いたんだけどなぁ……えぇ……」
なんだか肩透かしを喰らった気分である。
でも、とりあえず、投げつけられた三又槍を裁きの神の日へと変換し、ひょいほいっとレモンがサウナーデーモンたちへと投げつけられると、あっという間に骸の海へと還っていく。
サウナーの聖地を荒させはしない!と強烈な抵抗を受けると思っていたレモンは、想像を絶する脆弱なデーモンたちに引いた。
嘘でしょ。
もう終わり?え?とレモンも困惑していたのだが、切り替え早く、いそいそとサウナ珊瑚を回収していく。
「……えぇ……いいの、これで?本当に?」
いいんです。これで。オブリビオンとの戦いというよりは、克己の戦いであったのだから―――!
大成功
🔵🔵🔵
明石・真多子
やったーサウナ!全身筋肉のタコに骨はないけど身に染みるね~!
身が解れてふにゃふにゃの軟体度に磨きがかかる~!
あ~でもこのままだと蒸し蛸になって真っ赤に茹で上がりそう…
このまま冷たい水に身体を沈めて…ひゃぁぁ!ドーパミンがドパドパ出てる!
多幸感に満たされるこの感覚をもっと繰り返したいけど…任務で来たんだから我慢しないとね!
冷水でキリリと身の引き締まってタコ感覚が研ぎ澄まされてる!
今なら何でもできちゃいそう!名付けて【軟体忍法多幸多福の術】ってところかな!
緩み切ってる相手の所に忍び寄って、怪しい動きをしたらガシっとタコ腕吸盤で掴みとって骨外し狙いの関節技を極めてやろう!
これでキミも骨抜き軟体仲間!
帝竜戦役は連戦連戦を猟兵たちに強いる戦いである。
この戦いは急がねば世界の滅亡を引き起こしかねない戦いであるがゆえに、猟兵たちは勃発してからというもの、休む暇なく戦い続けているのである。
だが、彼らは不平不満を漏らすことはしない。
彼らは世界に選ばれた戦士である以上に、このアックス&ウィザーズ世界に住まう人々の生命を尊ぶ者たちであるからだ。
だからこそ、彼らは戦い続けるのである。
群竜大陸、その一角である冷静と情熱の珊瑚礁。その地はサウナ珊瑚と呼ばれる珊瑚によって、コンコンと温泉湧き出る温泉地帯となっていた。
だが、それだけではない。
この温泉に身を浸した者は、須らく『整った』というサウナーたちが求めて止まぬ感覚……つまりは、多幸感と恍惚感が綯い交ぜになった、『整う』という形容以外思いつかぬほどの感情を味合わせるのだ。
それも、爆発的に!
「やったーサウナ! 全身筋肉のタコに骨はないけど、身に染みるね~!」
そんな風にはしゃいで喜んでいるのは、明石・真多子(軟体魔忍マダコ・f00079)である。余程嬉しいのか、温泉に浸かると、その真っ赤な体がさらに茹で上がるように赤くなっていく。
身がほぐれてふにゃふにゃの軟体度に磨きがかかるのだ。
それ以上に、帝竜戦役の疲れが溜まっているのだろう。『整う』という感情が爆発的に齎されるも、体の疲れが溶けてでていくようであった。
「あ~でもこのままだと、蒸し蛸になって真っ赤に茹で上がりそう……」
ざぱぁ!と真多子が温泉から上がると、冷水湧き出る水風呂に体を再び鎮める。
「ひゃぁぁ! ドーパミンがドパドパ出てる!」
茹で上げた蛸を冷水で締めるが如く、真多子は得られる感覚に身を震わせるのだ。これこそが、サウナー垂涎の感覚。
『整う』である!真多子の視界が極彩色の極楽浄土へといたったかのような感覚に陥ってしまうほどに、この多幸感と恍惚感は他では得られるものではない。
いかん!とってもだらしない顔をしていると、自称ライバルのあの子に怒られてしまうぞ、真多子ちゃん!
「……ハッ!いけないけない。この感覚を繰り返してたいけど……任務できたんだから我慢しないとね!」
水風呂から飛び出すと、颯爽と温泉地帯を駆け抜ける真多子。彼女の体は『整う』という感情を、その身に爆ぜさせるほど溜め込まれていたが、それを抑え込む。
それ故に、今の彼女の戦闘力はうなぎのぼりの状態なのだ。
冷水でキリリと身の引き締まってタコ感覚が研ぎ澄まされている!そう感じるのだ。
「今なら何でも、できちゃいそう!名付けて【軟体忍法多幸多福の術】ってところかな!」
軟体忍法多幸多福の術(オクドーパミン)。それこそは、彼女のユーベルコード。彼女の得た多幸感は、もはや、この地において勝るものはいない。
まさしく、彼女の体は今絶好調にあるのだ!
レッサーデーモンたちは、相変わらず温泉に浸かってぐんにゃりとしている。もう緩みっぱなしで、ゆるきゃらも流石にここまで緩まないでしょ!と言いたくなるほどの弛緩っぷりだ。
そこへにゅるにゅるっと忍びよるは軟体魔忍マダコである。
目にも留まらぬ早業で緩みきっているレッサーデーモンたちのありとあらゆる関節を外す関節技で極めてしまうのだ。
それも瞬時に全てのレッサーデーモンたちをだ!ぐんにゃりしていたレッサーデーモンたちは、本来の意味で骨抜きにされてしまい、もがくこともできずに椋尾の海へと還るほかないのだ。
「これでキミも骨抜き軟体仲間!」
ばしぃ!と真多子の決めポーズが決まり、この地において軟体魔忍マダコの名を高く鳴り響かせるのだった―――!
あ、忍びだから鳴り響かせてはいけないんだっけ……でも、いいよね。悪は滅ぶ!オブリビオンも滅ぶ!帝竜もぶっとばーす!細かいことは後で考えよ!
大成功
🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
アドリブ歓迎
なにこれ、素敵な場所……!
ジアム、大きな羽やしっぽを服に変えてまとったり、色々してるから
力持ちだけど、肩とかほら、ね?ほぐしたいの
え、我慢しなきゃいけないの?敵がいる?
……じゃあ、やることはひとつね
蒸気と足元の感覚、広がる安堵
ふわあ……
つい伸びをして寛ごうとする
たまらない。正直たまらないけれど、ダメなのよ!
慌てて『鼓腹』を発動
お願い助けて!じゃまものをたおすのよ!
心なしかふにゃふにゃだけれど
眠気覚ましに猫だましをされ
『護り現』で強化したしっぽの針による【先制攻撃】
この気持ち良さを味わいつくす為に、ごめんなさいね、さようなら!
無事見送ったら飲み物でも用意して、狸たちと一緒に寛ぎたいわ
その場所は、彼女―――ジャム・ジアム(はりの子・f26053)にとって歓声を上げるほどの光景が広がっていた。
湯気が立ち込め、あちらこちらには珊瑚の群生。
「なにこれ、素敵な場所……!」
ジアムの体が微かに跳ねる。それは見たことのない光景……冷静と情熱の珊瑚礁の光景に心が踊っていたからかもしれない。
目にする光景に瞳はキラキラと輝くようだった。それに温泉という言葉の響きも、彼女にとってはとても魅力的な言葉であったのだろう。
帝竜戦役が勃発してからというもの、猟兵たちは休むこと無く戦い続けていた。それはこのアックス&ウィザーズ世界の存亡が彼らの双肩にかかっていることもあったが、この世界に住まう人々に塁が及ばぬようにと願ったからこその連戦に次ぐ連戦であった。
ジアムもまた戦いに奔走し、そのバイオモンスターとしての通常の人間よりも大きな体を酷使し続けていたのだ。
力持ち、と言う自負はある。けれど、生身の体である以上、彼女だって不調は訪れるのだ。
連戦続きであれば尚更である。だから、グリモア猟兵から話を聞いたときには、嬉しかったのだ。
「肩とかほら、ね?ほぐしたいの。え、我慢しなきゃいけないの?敵がいる?」
グリモア猟兵の言葉にいささかトーンダウンしてしまったが、今、この光景を見れば、それも帳消しだ。
敵がいる。それもオブリビオン、レッサーデーモンである。
「……じゃあ、やることはひとつね」
でも、その前に。ジアムは少しだけ、と素足を足湯のような塩梅の温泉につける。
足先から広がっていく感覚。広がる安堵。それは久方ぶりの感覚であったのかもしれない。
襲いかかる爆発的な感情、『整う』という感情は初めてであったのか、いささか戸惑いもあったかもしれない。
圧倒的な多幸感と恍惚感。これが『整う』ということ―――!
「ふあぁ……」
思わず伸びして、当初の目的を忘れてしまいそうになってしまう。たまらない。正直たまらない。もう、このまま寝転がって眠りたい。
ああ!でも! だめよ! ジアム! そう自分に言い聞かせる。
「ダメなのよ!」
がばっ!と体を起こし、ユーベルコード、鼓腹(ヘイワエノ・タヌキバヤシ)が発動する。現れたのは、ぽんぽこ狸たち。え、何?何?と狸たちも、なんだかびっくりした様子でジアムの元にぽこぽこやってくるのだ。
「お願い助けて! じゃまものをたおすのよ!」
ふにゃっとした声色なのはご愛嬌である。彼女だって、本当はこのまま『整って』しまいたいのだ。
けど、だめだ。我慢しなくては。懸命なる彼女の我慢を見上げるぽんぽこ狸たち。
なるほどなー、とガッテン承知之助!という具合に、気を抜けば、ぐんにゃりしてしまいそうなジアムの前で猫騙しをされて、びっくりして飛び上がるジアム。
目が覚めた、とジアムは護り現のオーラによって包み込まれた、しっぽの針を強化する。鋭い針は、さらなる剣呑さを見せ、その鋭さは何者をも貫けぬことはないであろう。
彼女は疾駆する。その後をタヌキたちがぽこぽこ追いかけていく。
見つけた!とレッサーデーモンたちの影に迫るのだが、彼らは―――。
「ぬぉ…猟兵であるか。我らサウナーデーモンの聖地を荒さんとするものはなんぴとたりとて……あー……」
あ、だめだこれは。
この温泉から与えられる爆発的なまでの多幸感と恍惚感に完全に支配されて、もはやレッサーデーモンとしての矜持すらなくなってる様子。はっきりいって弱そう。
ていうか、サウナーデーモンって自分で言った!
一瞬、呆気に取られそうになったジアムであったが、気を取り直す。
だって、この後にはご褒美タイムがあるのだから!
「この気持ちよさを味わい尽くす為に、ごめんなさいね、さようなら!」
レッサーデーモン、いや、サウナーデーモンとの別れはあっけなかった。
特に描写する必要あったかな?と思うほどにあっけなくジアムはレッサーデーモンを骸の海へと還す。
なんというか、最後まで締まらないレッサーデーモンたちであったなぁ……とかそんなことを考える間もなく、ジアムは早速飲み物を用意して温泉に浸かるのだ。
ジアムの傍にいた狸たちが戯れるようにまとわりつきながら、一緒に仲良く温泉に浸かるのだ。
湯煙の向こうに楽しげな声が響き渡る。
時にはお湯鉄砲でお湯を掛け合ったり、背中を流したり。それはもう仲睦まじく、戦いの疲労を癒やすのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵