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夜霧幻影

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●紅夜霧
 昼間は良く晴れたが、夜になって急激に冷えた。
 そんな日の夜、湖畔の村ではでは良く夜霧が出る。
 その夜も、そうだった。
 特に濃い夜霧に覆われた村は、シンと寝静まっていた。そうでなくとも、ヴァンパイアに支配されたこの世界で夜に出歩く人は多くあるまい。
 だが、その夜は違った。
 夜霧の中から現れたのだ。切り裂き魔が。
「さあ、殺戮を始めましょう」
 そして――夜霧が紅く染まった。

「ナイトフォグ。切り裂き魔にしてオブリビオンだ」
 黒いコートに黒いシルクハットに黒手袋。嘴のついた白亜の仮面と帽子についたカード以外黒ずくめの存在が、ルシル・フューラー(エルフのマジックナイト・f03676)によって猟兵達に伝えられていた。
「夜霧が出ているなら何処にでも現れる。まるで手品のようにね。実際、手品の類も得意とするようだから、切り裂き魔にして手品師、と言っても良いかな」
 そう告げるルシルの顔は、珍しく眉間が寄っていた。
「夜霧があるから現れるのか。それとも夜霧と共に現れるのか。どちらにせよ、コイツは常に夜霧と共にあると言う事だよ。お陰で予知でも霧に包まれてるような状況しか見えなくてね。詳細な居場所が不明――だった」
 その言い回しは、もう違うと言う事。
 映し出されたのは、湖だろうか。
「かの世界のとある湖だ。周囲に泥濘の森が点在する中、乾いた畔もある。その乾いた土の上に小さな村が幾つかあるんだよ。その1つがナイトフォグの手で一夜で廃墟となった。そして、このままならまだ惨劇が続くと予知出来たんだ」
 つまり、その近くにいると言う事だ。
「凡その位置が判れば、何か手がかりがある筈と思ってね。調べてみたらね。廃墟となった筈の村で呻き声のような音を聞いたという女性の商人がいるんだ」
 音の正体は、生存者だろうか。
 それとも、切り裂き魔の罠だろうか。
「どちらの可能性もあるけれど、どちらにせよ手がかりになる筈だよ。その商人に案内を頼んでおいたから、現地に着いたらまずは廃村を目指して欲しい」
 手がかりを得て、切り裂き魔を追い詰める為に。
「それとこの切り裂き魔の手口だけどね。1人ずつは殺さない。多数を一気に殺す。それは戦闘でも同じ筈だ」
 多数を相手取る事に慣れている。追い詰めたとしても、油断は出来ない。
「危険な敵だけれど、どうかよろしく頼むよ」


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 さて、たまにはシリアスに行きましょう。
 ダークセイヴァーで、夜霧と共に現れる切り裂き魔討伐のお仕事です。

 まずは既に滅んだ村から。
 女性商人の案内で、村に着いたところから1章の開始となります。

 そして1章の内容ですが。
 参加して頂いた方々次第になります。
 廃村に聞こえる呻き声が、生存者である事を望みますか?
 敵の罠でそれを破って追い詰めたいですか?

 『生存者』か『敵の罠』か、好きな方を選んで下さい。
 選択が多かった方で話を進めます。
 同数だった場合は、内容も加味して決めさせていただきます。
 なお、敢えて選ばない、のもありです。
(1章に関しては必ずしも全てご希望通りとは行かない部分が出るかと思います)

 また、どちらに決まっても、2章、3章の難易度、判定には、影響は在りません。
 2章の導入が若干変わるかな、と言うくらいの違いの想定です。
 後は助けられる命がどうなるか、と言う部分です。

 以上の点から、今回は1章を一括採用で進める予定です。
 23日(水)の夜になる予定ですので、プレイングは21日以降に送って頂いた方が期限的に安全かもしれません。

 2章以降について。2章はこんな特殊な事はしません。
 今回の戦闘は3章のナイトフォグ戦のみとなります。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 冒険 『廃村に潜む影』

POW   :    邪魔な瓦礫などを撤去して痕跡を探す。

SPD   :    足跡や何かを動かした跡などを探して調査する。

WIZ   :    情報をもたらした者を探して話を聞く。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ペイン・フィン
・・・・・・切り裂き魔ね。
どんな相手なんだろうね。
少なくとも、・・・・・・嫌な相手だとは思うけども。

ひとまずは、足跡とか、動かした跡とか、
そういった痕跡を中心に探ってみようか。
情報収集や、第六感、暗視の技能が役に立つかな?

罠の可能性もあるらしいし、罠を警戒。
万が一発見したら、解除できるものは適切な技能を使って解除しておこう。
生存者の場合は、他の猟兵か案内役に任せるかな。
怖がらせたら、いけないし。


フラン・ロス
「霧の中でしか動けない陰気な奴が……生存者なんて残すはず、ないよねぇ?」

廃村へと向かう女商人の馬車の中で、フランはつぶやく。
うめき声はまず間違いなく敵の罠だ。
フランは女商人に気付かれないよう術式をくみ上げ、ユーベルコード【影の追跡者の召喚】を廃村へ向け先行させる。

「さて女商人さん、まだ話してないこと、あるでしょ」
「私には教えてほしいなあ……親友の私には、ね?」

フランは女商人の目をのぞき込み、旧知の親友であると【催眠術】で思い込ませる。そして高い【コミュ力】で探りを入れることにした。


ジズルズィーク・ジグルリズリィ
SPD判定
『生存者』

声の先に〈賢者の影〉を伸ばし、問いかけるつもりです
質問は、生存者かどうか、です
「はい」「いいえ」で答えられる質問、これは単純
答えなかったり真意を違えば相当の痛手のはず

勿論、無論。当然のこと、ジズたちは害をなすものではない
むしろ夜霧幻影、ナイトフォグを祓うものだと誠心誠意伝えたうえで
ユーベルコードの使用に踏み切るつもりです

たとえ罠でも、助けを求める声に手を差し伸べなければ
ジズたちが戦う意義も喪われるというもの
懇願、魂胆。聖人として、胸中に被害者の無事を【祈り】願うばかりです


ジニア・ドグダラ
「呻き声……敵の罠の可能性が高いですが、それでも生きている人がいるなら……」

敵の罠に注意は必要です。それでも、生きている方がいるのなら、私は救っていきたいと思います。
その為にも他の猟兵の方もいるとはいえ、人手はまず必要と考えます。【オルタナティブ・ダブル】でもう一人の自分を召喚し、探索者としての経験から痕跡を【追跡】します。

廃墟となった以上、足場が不安定なところがあるかもしれませんが己のフックワイヤーを駆使しつつ【クライミング】で行動を妨げずに行きたいです。

その上で、生存者がいたら手持ちの鎮痛剤やフックワイヤーを駆使して【救助活動】を行おうとしましょう。

※アドリブ・他者との協力歓迎です。


霧島・ニュイ
『敵の罠』
だって僕が楽しいし

※絡み歓迎
【SPD】

案内人について現地へ
身を隠しながら廃村まで

霧を避けて隠れ耳を済ます
呻き声はどこから?わざとらしさはない?
【視力】を使い、目も凝らす
皆はどっちだと思う?やっぱり見に行ってみないとね

からくり人形を動かし、【フェイント】を使い、歩かせて呻き声の方に様子を見に行かせる
もしくは見に行く仲間に任せよう
周囲注意、いつでも戦えるようにしておく
掛かったら【スナイパー】で罠や敵を射撃して壊し、仲間と共有

罠無し、生存者がいた場合は介抱【コミュ力】
生存者がオビリオンじゃないかも気を抜かずに判断
話に矛盾点がないか、何か隠してないか
心配そうな人畜無害そうな顔は得意だよー


アルノルト・ブルーメ
呻き声、ね……
『生存者』を使った『敵の罠』と考えても良いんじゃないかな
尤も、一度に多くの命を奪うやり方が好みの敵が
こんなまどろっこしいやり方をする意味は分からないけれど

到着までに道案内役の商人に
声が聞こえた時の状況や村の構造や建物の配置とか
知っている事、気付いた事を情報収集

村に入ったら情報を元に
声が罠でも生存者でも対応が出来るよう注意深く行動
出来るだけ一人での行動は避けて探索者としての経験を許に
周囲への警戒は怠らず、足跡等の痕跡を主に探索
不自然な箇所がある場合はViperを投擲
罠の有無を確認の後調査

仲間の異常事態を知らせる声がする場合は
多少遠回りでも探索済みのルートで移動

非常時は咎力封じで対応


春霞・遙
ルシルさんが伝えたオブリビオンの姿が、別人なのですが知っている者に似ていたので、無視できなくて。
あとは単純に救える命を救いたい、です。

【WIZ】
「生存者」でも敵の罠でも構いませんが、救えるかも知れない命があるのであれば行って声をかけて手当をしてあげたい。
商人の方がそんな廃村になんのようがあったのかは知りませんが、道中付近の地理地形、呻き声の聞こえた場所の他にも生存者のいる可能性のある場所を聞いておきたいです。
「聞き耳」「追跡」等で呻き声や生存者について捜索。
生きた人が居るなら「医術」で簡単な治療。
死者しかいないのであれば簡単に検死して、あとは魂の安寧を「祈る」くらいしかできないですね。


リーヴァルディ・カーライル
※選択しない

…ん。滅ぼされた村から聞こえるうめき声…ね
生存者が生きていれば嬉しいけど…高望みはしない
罠の可能性もある以上、両方に備えて準備は万全に…

…事前に救助活動に必要な物資を準備
防具(外套)を改造し、生命力を吸収して魔力を溜める事で発動する、
第六感を高め僅かな存在感から罠や探索対象を見切る呪詛を施す

探索は自前の暗視と【限定解放・血の波濤】を応用
何も指定せず、極々微少な魔力の波を一定の間隔で連続で発動(2回攻撃)
返ってきた手応えから痕跡を追跡するレーダーとして使用する
…これなら吸血鬼化しなくても問題は無い
何か手がかりがあれば良いんだけど…

必要に迫られれたら全力でUCを発動して吹き飛ばす


鈴・月華
箱を選び、開けた瞬間に事象が決まるのではないさ
選ぼうと選ばまいと。開けようと開けまいと、全ては――
だから、私は『どちらでもいい』のだよ

廃村に残る痕跡を探して、追跡する
まだ新しめな、物体が動いた跡とかだね
精神は尖らせて油断はしない。起きたら都合が悪いことの方を考えて行動する
警戒し過ぎだと思うかい?
だけどその方が、本当に悪いことが起こった時の対処がはやくなる

聞こえるというその声の答えが罠だったならば、咎力封じで抑えて反撃する
もし生き残りならば、周囲や様子を見て本当に安全か確認した後に、手当をするかな


ソラスティベル・グラスラン
滅ぼされた村、わたしたちが間に合わなかった村……
…いいえ、悲しむ暇はありませんっ
あの村にはまだ、『生存者』がいることを耳にしたのですから
それが罠だろうと関係ありません、勇者として、まずは勇気を持って手を伸ばすこと!
わたしは、わたしの【勇気】を信じます!
これが、わたしの【勇者理論】なのだから!(防御重視)

罠と疑う人がいるならば、わたしが率先して『生存者』へ向かいます。
瓦礫や障害物を【怪力】で退かし、【第六感】で声の下へ一刻も早く!
『生存者』を発見したら武器はしまい、すぐさま救出へ!
罠であれば、【オーラ防御・盾受け・見切り・かばう】で『生存者』を安全な場所まで強硬で運びます!


リュカ・エンキアンサス
セロ(f06061)と。
アドリブ歓迎
『生存者』を探す
いてほしいと願。
普段は旅荷物を積んでる鞄に簡単だけど医療道具を積んできた。これで。【救助活動】ぐらいはできるだろう
【医術】の心得も多少はある。邪魔にはならないはずだ
【地形の利用】と【追跡】で人がいそうなところを虱潰しに探す
見つけたら声をかけて傷の手当。手遅れならせめて見取る
死体は気にしない。仕方がない
罠であれば冷静に応戦。別に腹を立てたり怒ったりはしない
出来ることはやる。出来ないことはあきらめる。
悔しいけれど現実は見えてる。

●セロ
こっちに向けてダガーを構えてる姿が目に入ったところで問答無用で撃つ。
…外したか
…なんだ、アンタか
(始終無愛想)


セロ・アルコイリス
リュカ(f02586)と
互いの依頼に応じた事はあるが、
ちゃんと対峙するのは初めて、という関係

霧に紛れた入り口だかどっかで出会ったときには
敵かと警戒してダガー構える
……なんだ、あんたですか
ちょ、オイ
……ま、お互いさまですけどねぇ

罠でもいい
それでも生存者を探す
使えそうなのは『野生の勘』くらいしかねーですが
常に警戒しながら先を進む
声は聴こえるか
生存者が見つかってリュカが治療に掛かれりゃ
その周囲を警戒、
邪魔はさせねー

カナシイもアワレミも判んねーですが
この景色が楽しくねーのは判る
死体がありゃその瞼伏せてやるくらいは

※アドリブ歓迎
※終始笑顔


稿・綴子
『生存者』
女性商人に話しかける
最初は莫迦丁寧に案内の礼をする
「ところで、この村は貴嬢の馴染みの商売どころでしょうか?随分お詳しいようで」

「なぁ
――貴嬢が霧かい?それとも唯の駒か?」

もし正体を現したならば、此方も顕わそうか
「はっはっはぁ!大方吾輩達は追加の被害者であろう?
みぃんな死しては舞台が終って仕舞うものなぁ?それはつまらぬ!」
「でも知っておるか?貴様の仕掛けた『罠』が真実だと言うことを
……先程助けを求める気配を察知したのだよ
何処かってだぁれが教えるかっ、阿呆!
嘘から出た誠たぁこのことであるなぁ!いや、愉快愉快!」

「ついでに貴様の首をもろうてどんでん返しと洒落込もうか」
可能なら虚構召喚で先制



●旅路
 蓋のされた箱があるとしよう。
 箱は不透明で固く閉ざされており、隙間もない厳重なものだ。
 中身は蓋を開けてみるまで判らない。そもそも何か入っているのか、それすらも。
(「箱を選び、開けた瞬間に事象が決まるのではないさ」)
 馬車に揺られながら鈴・月華(月来香・f01199)は、胸中で呟いていた。
(「選ぼうと選ばまいと。開けようと開けまいと、全ては――だから私は」)
 月華は緩々と紫晶の瞳を閉じ、馬車の揺れに身を任せた。

 月華以外にも多くの猟兵を乗せて、商人の荷馬車がゴトゴト進んでいた。
 商人の荷物もあり、流石に全員は乗り切れなかったので、一部の猟兵は馬車の脇を歩くことになっている。ちょっとした商隊のレベルだ。
「この度は大所帯の案内、ありがとうございます」
「いえいえ。お陰で安全な旅が出来ます。持ちつ持たれつです」
 荷台の中から莫迦丁寧に頭を下げる稿・綴子(奇譚蒐集・f13141)に、御者台に座った女商人は笑顔で答える。
「ところで、村は貴嬢の馴染みの商売どころでしょうか? 随分お詳しいようで」
「この辺り一帯は、湖の水が良いんですよ」
 綴子の問いに商人が返した答えは、成程、筋は通っているように聞こえた。
 良質な水は、世界と地域によっては商品になり得る。
「ちょっと良いかな。滅んだ村で呻き声が聞こえた、その時の状況を、覚えている限り教えて欲しいのだけど」
「と言いますと?」
 横を歩くアルノルト・ブルーメ(暁闇の華・f05229)の問いに、商人は首を傾げた。
「例えば村の何処から聞こえてきたか、その方向は覚えている、とか」
「んー……村の奥としか。驚いてすぐに離れてしまったので」
 アルノルトの問いに、商人は頬を掻き苦笑する。
「付近の地理地形は判りますか?」
「そうですね……湖と深い森に挟まれているような位置にあります。馬車で通れる道は限られるんですよ。あ、地図ありますよ?」
 荷台の中から顔を出した春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)の問いに返しながら、商人は懐から折りたたんだ地図を差し出した。
 遙が見慣れた地図より精度は劣りそうだが、周辺を確認するには充分だろう。

(「まるで私達の事を警戒していないようだね」)
 そのやり取りを眺めながら、フラン・ロス(人間の探索者・f10218)は小さな笑みを浮かべて胸中で呟いていた。
 商人は荷台にいるこちらを気にしてはいないようだった。いつもの馬車にはいないであろう、猟兵数人を乗せているのに。
(「本当に無警戒なら、無用心ね」)
 胸中で続けながら、フランは影の追跡者をこの馬車の影の中へ喚び出した。
「さて、女商人さん。私からもちょっと良いかな?」
 馬車の下に現れた追跡者を先に廃村へと向かわせておいて、フラン自身は荷台の幌の中から御者台に顔を出す。
「まだ話してないこと、あるでしょ」
「んー? そりゃまあ、商人ですから秘密の1つや2つ――」
 言いかけた商人の瞳を、フランの青い瞳が覗き込む。
「私には教えてほしいなあ……私達、親友だろう? ――え?」
 催眠術で己の存在を商人の中に刷り込もうとしたフランは、しかし逆に驚きに目を見開く事になったのだった。

 それからややあって。
 陽が傾きかけた頃、猟兵達を乗せた荷馬車が廃村に着いた。
「滅ぼされた村、わたしたちが間に合わなかった村……」
 静まり返った廃村の入り口に立ち、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)はその命の気配が感じられない景色に唇を噛んだ。
「呻き声……今は聞こえませんね?」
「この前は聞こえたんですけどねぇ?」
(「こうなると、敵の罠の可能性が高くなりますね」)
 首を傾げる女商人の様子に、ジニア・ドグダラ(朝焼けの背を追う者・f01191)は胸中で呟いた。
「声が聞こえなくても、この村にはまだ『生存者』がいる筈なのです。ええ。悲しむ暇はありませんっ」
 ソラスティベルの中に、諦める、と言う言葉はない。
「ああ。急いで取り掛かるとしよう。とは言え、『生存者』を利用した『敵の罠』と考えても良さそうだね」
 アルノルトの呟きに、他の猟兵も頷き同意を示した。
「尤も、こんなまどろっこしいやり方をする意味は判らないけれどね」
 穏やかな笑みを浮かべて、アルノルトは歩みを進める。
 夜になるまで、余り長くはない。
 だが、猟兵達は構わず村の探索に入った。

 敵の罠があるかもしれない。注意が必要だ。
 ジニアもそれは重々判っているつもりだ。
 それでも。いいや、だからこそ人手が欲しい。
「生きている人がいるなら……私は救っていきたい。だからお願いします、ヒャッカ」
 ジニアの前に、もうひとりのジニアが現れる。
「私はこちらを調べます。あちら側をお願いします」
 400mほどは離れて動けるもう1人の自分と手分けすれば効率も上がるだろう。ジニアは生存者の可能性を信じているからこそ、捜索範囲を広げたかった。
 手数を増やしたあとは、探索者としてのジニアの経験、そして追跡の技能をあわせて村に残る痕跡を丹念に調べていくだけだ。
 崩れそうな残骸や足場には、フックワイヤーを絡ませ固定しながら。ジニアは高所も含めてくまなく調べていく。

 屋根がどこかへ行ってしまった建物の中に、ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)が佇んでいた。
「これは……切り裂き魔が『斬った』のかな?」
 まだらに赤黒く染まった壁に刻まれた深い溝に、ペインが眉を潜める。壁の色は、時間が経った血液である事は間違いないだろう。
 指潰しという小さな拷問危惧のヤドリガミであるペインにとって、この手の色は見慣れた色だ。だが、その中に刻まれた溝は違う。
 この溝を刻んだモノは、薄い壁であれば切断していただろう。
(「中から外へ向けて斬ってるね……この中に直接現れた?」)
 図らずも触れた切り裂き魔の手口の一端を思いながら、ペインは他の痕跡を探しに次の場所へと向かっていった。

「これは……血痕、ですね」
 別の家屋だったものの跡地で、遙も同じ赤黒い染みを見つけていた。
 指で撫でると、僅かに赤が指に着く。
 ――救える命があるのなら、行って声をかけて手当をしてあげたい。
 遙がこの場を訪れた動機のひとつだったが、今のところ、見つかったのは救えなかった命の痕跡ばかりだった。
 けれど、それで諦める理由にはならない。
「……あとでまた来ます。救える命を見つけたら」
 染みの隣に残る人だったモノにあとの弔いと検死を約束し、その魂の安寧を祈ると、遙は聞き耳を立てながら他の場所へ向かっていった。

 ヴァンパイアと戦い続けているリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)にとって、この村の様な光景は珍しいものではなかったのかもしれない。
 だからこそ、リーヴァルディは高望みしない。
 どちらの可能性も考慮し、其々に備える。
 それは生存者を探す事を諦めると言うわけでもなかった。
(「生存者が生きていれば、嬉しいけれど……罠の可能性もある」)
 リーヴァルディのいつもの外套には、生命力を吸収し魔力に変え、第六感を高める呪詛が施されている。
「……これで……何か手がかりが出れば良いんだけど……」
 さらにリーヴァルディは極々微少な血色の魔力を波と変え、一定間隔で放ちながら廃村を歩いて回っていた。
 その波の手応えで探りながら、村に残るものをリーヴァルディは村を探し回る。

 其々の技術や道具を駆使して、痕跡を探るもの。
 独自の術で、生命を探るもの。
 それぞれの手法で生存者を探す猟兵達の中で、月華は精神を尖らせていた。
 こうしている背後を、切り裂き魔が狙っているかもしれない。
「何かを引き摺ったような跡に見えるけど……罠かな?」
 起きたら都合の悪い方を、月華は常に考えるようにしていた。
 人に寄っては、警戒し過ぎ、とも言うだろう。
「だけどね。悪い事を考えておいた方が、本当に悪い事が起きたときの対処が早くなるものだよ」
 そんな月華と、対照的なのがソラスティベルだ。
 少なからず罠の可能性を疑う猟兵が多い中、彼女はひたすらに生存者を探すために足を進め続けていた。瓦礫を力で退かし、第六感に従って突き進む。
 もし罠があっても関係ない勢いだ。
「わたしは、わたしの『勇気』を信じます!!」
 そしてまず手を伸ばす。それが、ソラスティベルの勇気の形だ。

●霧、深まりて
「陽が落ちたか……急いだ方がいいな」
 誰に言うでもなく、リュカ・エンキアンサス(人間の探索者・f02586)が呟く。いつの間にか、霧が濃くなって来た。
 だが、急ぐより早く周りが霧に覆われていった。
 目の前の霧の中に、ゆらりと人影が動いた。
 リュカが迷わず灯り木の銃口を向けると同時に、影が牙の様に無骨なダガーが霧を破って飛び出してきた。
「……なんだ、あんたですか」
 セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)は一足早く、野生の勘で相手が仲間であると気づいてダガーを降ろし、警戒を解いていつもの笑顔に戻る。
 直後、灯り木が火花を吹いた。
「ちょ、オイ!」
「……なんだ、アンタか」
 流石に少し笑顔が引きつったセロの抗議を無視して、リュカは淡々と銃を降ろした。
 どちらもグリモア猟兵であり、互いの依頼に応じた事はある。だが、別のグリモア猟兵の依頼の場でこうして対峙するのは、初めてだった。
「そちらも、生存者は見つけられてねーみたいですね」
「ああ」
 無愛想に頷くリュカの後ろの骸に、セロが手を伸ばしその瞳を閉じさせる。その顔は笑顔ではあったが、質は変わっていた。
 リュカとて、骸に気づいていなかったわけではない。
 だが、全てを弔うには時も場所も足りなかった。出来ることには限りがある。その事実に悔しさを感じないわけでもないが、現実が見えないほど子供ではない。
「生きてる人がいるなら、早く見つけてやらねーとですね。おれにはカナシイもアワレミも判んねーですが、この景色が楽しくねーのは判りますよ」
「そうだな」
 セロの長い言葉にリュカが短く返して頷く。
 2人は拳を軽く合わせて、また別の方向へ捜索に向かった。

「霧が濃くなってきてるね……罠があるなら、そろそろ何か起きるかな?」
 それを期待するような物言いで、霧島・ニュイ(霧雲・f12029)は視線を巡らせた。
 これまでは霧を避けていたが、逃げ場がなくなってきた。
 可憐な少女羅刹の人形――椿の君のを動かす手を止めて、ニュイは黒眼鏡の奥で瞳を細めて目を凝らし、耳を澄ます。
 大丈夫だ。見えるし聞こえる。まだ、目も耳もこの霧は効く。
 とは言え、からくり人形はそうは行かない。少し先行させると、もう繰り糸が途中で見えなくなっていた。
 だからこそ、ニュイは椿の君を先行させ、その動きをフェイントとする。誰かが隠れてこちらを狙ってるのなら、人形を狙わせるように。

 多くの生き物は、視界がぼやければ自ずと、目よりも耳に頼るようになるものだ。
 霧が深くなって、ようやくだった。
 霧の中でも諦めなかった猟兵達の耳に、僅かな声が届いたのは。
「こっちですっ! 何か聞こえました!」
 猟兵以外に見つかるかもしれないのを気にせず、ソラスティベルが大声を上げる。
 その声に猟兵達が集まって来た。手分けして幾つも重なった瓦礫を持ち上げ、倒れた壁を押し退ける。
 そこに――床に扉があった。貯蔵庫の類だろう。
「ジズ達は、貴方に害を為す者ではありません」
 扉の前に膝を付き、扉を叩いて。ジズルズィーク・ジグルリズリィ(虚無恬淡・f10389)は中に聞こえるように大きく声を上げた。
「むしろ逆です。ナイトフォグ――この村をこんなにした存在を祓うものです」
 カタリと小さく物音がする。
 中に気配も感じる。その主は、ジズルズィークの言葉に反応している。
 だが――返事は聞こえなかった。
 だからこそ、ジズルズィークは己の影を放っても良いものか迷っていた。
 賢者の影――対象に影を伸ばすと共に問いかけを放ち、その答えが真実でなければ痛手を与える魔法。
 ジズルズィークはそれで、生存者かを確かめるつもりでいた。
 だが、この術は対象が質問を理解できない場合、真実を語らなかったと同義になる。
 ならば、もしも。この向こうにいる相手が、満足に喋れない状態だとしたら?
 相手の顔が見えない状態では、弱った相手に追い討ちをかける事になってしまうやもしれない。安全を取るか、リスクを飲んで手を差し伸べる事を取るか。
(「迷うまでもありませんね。助けを求める声に手を差し伸べなければ、ジズ達が戦う意義も喪われるというもの」)
 ジズルズィークは僅かな逡巡の後に、後者を選んだ。床の扉に手をかけ――るのを、ニュイが制する。
 開けるな、と言うのではない。
 ニュイは椿の君を操り、ジズルズィークの代わりに手を扉にかけさせた。
 貯蔵庫の扉が、人形の細い腕でゆっくりと開かれていくのを、ジズルズィークはただその中の誰かの無事を懇願しながら見守っている。

 願えば全てが変わるほど、世界は優しくはない。
 だが、願う事すらしなければ、願いが叶う事もないだろう。そして時には、願う事が揺らぐ流れの中から望む結末を引き寄せる事も――あるかもしれない。
 この地に集まりし猟兵13名。
 その内、生存者の存在を強く願い、信じていたのは7名。切り裂き魔の罠の可能性を考えつつも、生存も望んでいた者を合わせればもっと増える。
 彼らの願いが、この瞬間を引き寄せたのかは――神のみぞ知る、と言うべきだ。
 或いは道中、月華が胸中で言っていたように、この蓋を開ける前から、この瞬間は確定していたのかも知れない。
 ただ1つ確かな事がある。猟兵達の手は、残された命に届いた。
 ぐったりした小さな子供が2人、地下の中でか細い息を立てていた。

 ヒュンッと音を立てて、毒蛇の異名を持つアルノルトのフックワイヤーが地下室に突き刺さる。カツンと乾いた音以外、何事も起きなかった。
「降りた途端に足場が崩れる、なんてことはなさそうだね」
 ならばと最も長身のアルノルトが地下に降りて、子供達を軽々と持ち上げると上で待つ猟兵に渡していった。
「衰弱が激しいですね」
「俺も診よう。医術の心得は多少ある。道具も持ってきた」
 横たえられた2人にすぐに遙が駆け寄り、リュカも彼らの横に膝を着く。鞄を開いたところに、足音。
「そっちは任せますよ。その代わり邪魔はさせねー」
 リュカの背中を護るように、信頼の笑みを浮かべたセロが牙を構え立つ。
「鎮痛剤ならありますが……目立った傷はなさそうですね」
「本当なら、安全を確認をしてから手当てした方が良いと思うけどね?」
 ジニアは安堵した様子で膝をつき、月華も口ではそう言いながら治療の輪に加わる。
 4人は事前の打ち合わせなど何もなかったが、手分けして、手際よく子供達の手当てを進めていった。
 そこに、ゆらりと近づく黒い影。
「なぁ」
 言葉遣いと声色をがらりと変貌させた綴子の声が、その黒い影の背後にかかる。
「――貴嬢が霧かい? それとも唯の駒か? 商人さん?」
 金瞳に見据えられ、影が狼狽する。
「なぁんてなぁ! はっはっはぁ! どうせどこかで見ているのだろう霧の阿呆! 貴様の手管はぜぇんぶ見破ってやったわ!」
 にぃと笑みを浮かべた綴子が、霧の中に大声を向けた。
「女商人さんにかけられた催眠術、解くのは出来なかったけどね。深い深い催眠術をかけられているって事まで、探らせて貰ったよ」
 後ろから現れたフランが、商人がつけたペストマスクを外しその瞳を覗き込んだ。くたりと商人の体が崩れ落ちる。

 ――女商人さん! その催眠術、どこでかけられたの!
 道中の馬車の中。
 催眠術で自分を親友だと思い込ませようとしたフランは、女商人にかけられた別のもっと深く強いの催眠術に気づいた。催眠に心得のある遙と2人で解除を試みて叶わなかったものの、それが何らかの条件で自動的に催眠状態になる後催眠の類である事までは、突き止める事が出来たのだ。
 更に猟兵達は徹底的に彼女の荷物を探り、黒衣とペストマスクを見つけるに至る。
 つまり、猟兵達はかなり早い段階で、ナイトフォグの企みに気づいていたのだ。村に着いたばかりのアルノルトの「意味が判らない」と言う言葉は、ブラフだ。
 そして生存者を探す間、大なり小なり警戒していた猟兵が多かったのは、他の罠がないとは限らなかったからに過ぎない。
「大方、吾輩達に貴様に扮したこの者を討たせておいて、自分を死んだ事にしてのうのうとこの舞台から降りようと言う魂胆だったのだろう?
 そのあとつもりかは知らんが、ご破算だなぁ? いや、愉快愉快!
 さあ、どうする? 吾輩達もこの場で始末するか? できるものならやってみぃ! 貴様の首をもろうて、どんでん返しと洒落込むも一興よ!」
 綴子が霧に向けて啖呵を切る。
 治療中の4人の傍についたセロが、油断なく身構える。
「……やっぱり、嫌な相手だった」
 ペインも4人と子供達を守る様に、近くに立った。
 ニュイも椿の君を傍らに、そこに加わる。
「来るなら来いです! わたしの勇気、そう簡単に貫けると思わぬことです」
 ソラスティベルはオーラを展開し、その身を盾にする気満々だった。
 リーヴァルディの手から、極々微少な血色の波が放たれる。
「……そこ……」
 その手応えから位置を掴んだリーヴァルディが指差したのは、幹の半ばで切り倒された木の上だった。
『いやはや……お見事です。ここまで看破されるとは』
 パチパチパチ、と乾いた拍手とくぐもった声が聞こえる。
 声だけ聞けば、とても切り裂き魔とは思えない。恐らくはマスクのせいでくぐもってはいるものの、澄んだ女性の声だった。
『今宵この場は譲りましょう。その子らも、差し上げます。代わりに、もっと良い舞台でお待ちしておりますよ。次の夜、禁忌の森のその奥で』
「顔も見せないなんて、やっぱり陰気な奴ね。誘いに乗るとでも?」
『ご自由に? 来ないのならば、私は他所で殺します。他の村も殺します。貴方達が今助けたその子らも、大人になる前にきっと殺しますよ――では、またいずれ』
 フランの反応にナイトフォグの声が言い終わると同時に、霧が薄れていき――その気配も遠くなっていった。村の外に広がる、森の中へと。
 結局声のみ。今宵は一度も姿を見せる事無く、切り裂き魔は姿を消した。
 後に残っていたのは、木に張られた一枚のカード。
 絵柄は死神。ジョーカー。
 死神からの招待状、と言う事になりそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『禁忌の森』

POW   :    道なき道をひたすら進む

SPD   :    迷わないように事前に対策する

WIZ   :    村人から森の情報を得る

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●隣村
 夜霧との邂逅となった一夜が明けた、明け方。
「ん……あれ? 私――」
 目を覚ました女商人の馬車を使い、猟兵達は治療を終えた2人の子供を一番近い村へと運ばせた。
 子供達は衰弱は酷かったが、幸い、切り傷は1つもなかった。
 切り裂き魔の手にかかる前、親が咄嗟に床下に隠したのだろう。
 運び込まれた村の人々も最初は余り良い顔をしなかったが、それは彼らとて生活が楽ではないからだ。女商人が物資と費用を用立てると約束すれば、首を縦に振った。
「私には、このくらいしか出来ませんから」
 何もかも、とは行かないが、当座の問題は片付いただろう。これで森に入って、ナイトフォグを追う事が出来る――そう思っていた。
「ももも、森に入るですとぉ!? やめなされ、アレは禁忌の森ですぞ!」
 猟兵達から次の目的地を聞いた村人達が、そう青ざめた顔になるまでは。
 禁忌の森――そう言えば、ナイトフォグもそう言っていた。
 村人達にどういう禁忌か尋ねても、特に大人が口を噤んで目を逸らすばかり。何か訳がありそうだ。
 森の対策を考えたり、村人から森の話を聞き出すくらいの時間はある。
 助けた子供達も話せるようになるかもしれない。
 このまま真っ直ぐ、禁忌の森に向かっても良いだろう。何があっても、猟兵達なら超えられるだろうから。
アルノルト・ブルーメ
禁忌、ねぇ……
この世界ではダンピールも割と忌み仔だけれど
禁忌というからには厄災の類か
生きるための悪行の墓場か

取り敢えず、村人……
特に子を持つ親から情報収集してみようか

禁忌、とは何を指し示しているのか
近隣の村ぐるみでやましい事があるのか

やましい事があったとして、それは口外する事はないと言い含め
ただただ、厄災である、危険であるというのであれば
今森に居るモノは移動し思考する厄災である事
此処で倒さねばこの村が、あなたが……
あなたを親と慕うその子が、次には息絶える事になりかねない
それでも、「禁忌」の正体は語れない?

皆と情報を持ち寄って対策を行う
森の中で不測の事態に遭遇した際は咎力封じとViperで対応


ソラスティベル・グラスラン
救えた命が確かにある、この村に来たのは無駄ではなかった…
今のわたしにはそれで充分です!さあ進みましょう、皆さん!

【第六感】と【勇気】を頼りに、只管に森を進み抜けます!一直線に!
そう文字通り…大斧で眼前の木々をなぎ倒しながら!
木を一本迂回するのも積み重なれば迷いの素
【怪力】で倒した木を退け、2Mほど幅があれば道として十分でしょうっ
道が無いならば作るのみ!勇気ある者の前に、常に道は有り!

常に警戒し防御重視の【勇者理論】
【オーラ防御・盾受け・見切り・かばう】で味方を守護!
不安が蔓延り始めれば【鼓舞】を!

今そちらに行きます。待っていなさい、悪鬼よ!
霧に怯え隠れる勇気無き者に、わたしを阻めはしませんよ!


春霞・遙
未来ある子供たちの命が救われたのはよかった。
けれど、この子達が受けるべき両親の愛を失って、この先の長い人生、深い傷を背負って生きるなんて、なんて酷い。
せめてここでたくさんの人に愛されてくれるといいのですが…。

【WIZ】
子供たちの住んでいた村もこの付近ですし、子供たちも親から森についての話を聞いていないでしょうか。
介抱をしたり折り紙で花や動物などを作ってあげたりしながら子供達とお話しようと思います。
両親が亡くなったこと、村が廃墟となったことは、最後には伝えなければならないけれど体調が戻るまでは忘れていられるように、お話しましょう。
「医術」「情報収集」「優しさ」「言いくるめ」


リーヴァルディ・カーライル
…ん。森に何か秘密がある?
大人が口をつぐむなら、子供から聞きだした方が良さ気?
…まぁ、一先ずは正攻法で攻めてみる事にしよう

【常夜の鍵】から大量の保存食を出して村人に配って回る
名目上は救出した子供達を良く見てあげて欲しいと礼儀正しく頼み、
別れ際に禁忌の森について問いかけてみる

…女商人が子供達の物資を用立てると言っても、生活が苦しい事に変わりはない
だから、こういう物資の提供は何よりの誘惑になる…はず

…後は防具を改造して生命力を微弱に吸収して魔力を溜め、
第六感を強化して僅かな存在感も見逃さなくなる呪詛を付与
【吸血鬼狩りの業】を応用して敵の足跡を追跡できないか試みる

…さぁ、夜霧狩りを始めよう


ペイン・フィン
迷わないようにするやり方も、いくつかあるね。
ひとまず、木に切れ込みを入れて、そこに色を塗った小石を詰める方法でいこう。
通った方向が分かるように、矢印形にね。
小石が落ちても、色つきだから目立つし、木にも傷が残る。
・・・・・・まあ、目立ってしまうのが難点だけどね。


・・・・・・この先に何がいるのか分からないけども、
少なくとも、アレはそのままにはしておけないよね。


鈴・月華
禁忌の森って口にするということは、禁忌である理由を何か知っているという事だよね
けれどもそれを知る大人が揃いも揃って目を逸らすならば、私は歳の近い子か、小さい子供にでも話を聞いてみるとしようか
大人には見つからないようにして、内緒話みたいに

例えば、森について大人達が話していたことを、立ち聞きしたことは無いかとか
何かが出るから森には入るなと、言い伝えられていないかとか
断片的に、遠回しに伝えられていることからでも、多少は理由が推察が出来るだろうから


ジニア・ドグダラ
火のない所に煙は立たぬ、という言葉がありますように、ここの禁忌の森も、何らかの所以があったからこそ、こう呼ばれているはず、です。……警戒して、行きましょうか。

UCを発動し、人格を切り替えながら、敵や存在する獣達からの【だまし討ち】に警戒して行動します。怪しそうな所や、入り込んでいる場所には【呪詛】や死霊を放ち、警戒していきます。
奇襲を受けた際は、森であるという【地形を利用】し、フックワイヤーで【おびき寄せ】つつ【逃げ足】に徹します。
UC発動による出血や毒に対しては【鎮痛剤】による【激痛耐性】【毒使い】【医療】で我慢・対応しておきましょう。


ジズルズィーク・ジグルリズリィ
POW判定

邁進、前進。ジズは、警戒を密にするのです
何者かが通ったり、仕掛けられているものの痕跡がないか探りながら進むのです
【見切り】を試み、気づいたことは周りに逐一報告です

禁忌の森、森の民であるエルフとしては神聖なる森に
そのような忌み名で呼ぶとは、物々しいことこの上ないです

とはいえ【覚悟】は決めているのです
何が出ようとも、立ち向かうつもりです


セロ・アルコイリス
リュカ(f02586)と
ま、子供らが無事で良かった
次はアイツの息の根止めにいかねーとですね

禁忌、禁忌、禁忌ねぇ
なにが禁忌なんでしょうか
霧がまた迷わせたりするんでしょうか
まずは村人から話を聞いて、
例えば大切にしてるモンが居るとか、在るとかなら
ソイツにゃ手ぇ出さねーことを約束しましょうか
子供相手ならちゃんとしゃがんで視線合わせて

森の中じゃ『学習力』と『野生の勘』使いながら、禁忌に触れねーように
禁忌との戦いが避けらんねーなら
【存在意義】で相殺だけを狙う
誰かの命に危機がねー限りは攻撃は加えない
相手が『禁忌』じゃねーなら容赦はしねーです
オイあんた、ヘバんじゃねーですよ?

※アドリブ歓迎


リュカ・エンキアンサス
セロ(f06061)と。
村人から森の情報を得る
村人たちにとりあえず話を聞いておく
俺たちは森に入らなければいけない理由がある
けれども、いってはならない理由によってはやめるかもしれない。
俺たちも、命は大事だからな
でも訳がわからなきゃ行くしかないんだ。だから危険があるなら教えてほしい。頼む(軽く頭下げて)
とかわりと丁寧に話をあわせながら聞く。
……いや、やめる気はまったくないけどね。本当は。
いいんだよ、口に出さなきゃ、それで。
後大人が口を閉ざすなら子供はどうだろう。
子供のほうにも聞いてみる。誰に対してもあくまで丁寧に接する。
そして聞いた情報から照らし合わせて準備をして森に向かうとしよう。

※アドリブ歓迎


霧島・ニュイ
※絡み大歓迎

【コミュ力】で村人達から情報収集
愛嬌の良さと明るさには自信があるんだー
あの子供達のこと、ありがとう…!
ねーねー、あの森に何かあるのー?禁忌の森…?
ねーねー教えてよー。理由教えてくんないと納得出来ないしー(ぷくー)
話すことすら禁忌なのかなあ…(しゅん…)
昔何かあったとかー?
経験談が出れば、相手に感情を合わせて接したり共感したりして、相手に好感持って貰うようにするよー

どう危ないのか分かったら必要なの調達
道具類なら、女商人さんから仕入れたり、村人さんから借りたり
勿論お金は出すからね!

準備が終わったら皆で向かおっか…
安全そうな木に登って周りを見渡したり【視力】を使ったり、慎重に進むよ


稿・綴子
起承転結の未だ承と云う事かい?
勿体つけおる
気が合いそうだなぁ、霧
さぁて
であれば『盛り上げ』材料を探してやろうじゃあないか

>禁忌の森
「入ったら誰も帰ってこなかったとかそういう類かね?
それとも生贄を求める魔物でも居ついたか?
迷い道ならば帰ってきた『例外』はあったかい?
戻った其奴から話が聞きたい」

霧で迷わせているなんてドストレートな話なら、思わず笑いかけて「失礼」とせき込むふり
まぁ王道は大事か

霧が森を利用しているのか
霧がそもそも禁忌にしたのか

まぁよ
霧は猟兵に来て欲しいはず抜け道はあるだろうよ

想定と違う『禁忌』なら村人の話に相槌を打ち聞き出す
手にした情報を手に森へ
情報足りず迷う仲間がいるなら当然助ける



●命ある村
 猟兵達が、廃村で見つけた子供達は、1人暮らしの女性の家に運び込まれた。
 2人ともまだ幼く髪も短くしているが、霧のない場で落ち着いて見れば、どちらも少女だとすぐに判った。顔つきも似ているので、おそらく姉妹だろう。
 春霞・遙の見下ろす先で、寝息を立てていた2人の少女の瞳がゆっくりと開いた。
「やあ、良かった。目が覚めたね……気分はどうかな?」
 手を取り脈を診る遙の顔を見て、姉妹はぱちくりと瞬かせる。
 そしてゆっくりと首を動かし辺りを見回し――。
「となりの村、ですか?」
 姉、だろう。少し背の高い方の少女が、遙にそう問いかけた。
「……わかるの?」
「じぶんの家でないことはわかります。村の家も、すべて知っていますから」
(「2人とも聡い子ですね……この分なら、恐らくは――」)
 小声ながらはっきり答える姉と、その袖をぎゅっと握って黙って頷く妹。その様子を見るに、2人とも両親が、村がどうなったかは、子供なりに把握しているのだろう。
 だからこそ、遙はあえてそこには触れないように別の話を切り出した。
「もう大丈夫だよ……ところで、村の外の大きな森について、何か知ってるかな?」
 だが遙の問いに姉妹たちが何か言うよりも早く、2人のお腹がほとんど同時に、ぐぅぅぅっと盛大に自己主張した。
「「……!」」
「ふふ。食欲があるのは良い事だよ。2人に何か、暖かいものをお願いします――」
 顔を赤くする姉妹に笑いかけ、遙は奥の部屋の村人に声をかけた。
「はいよー」
「使うと良い」
 そう返事して炊事場に入った村の女性に、リーヴァルディ・カーライルが『常世の鍵』で魔法陣から取り出した保存食を差し出す。
「いいのかい?」
「決して、生活は楽ではないのだろう? それで、あの子らを良く見てあげて欲しい。別にあなたが食べても構わないが」
 リーヴァルディから物資を受け取った女性は、それらを調理に使い始めた。やがて、ぽつぽつと口を開く。
「そんなことしないよ。私も家族と故郷を失って流れて来た、他所者でね。あの子達の事は他人事に思えないんだ」
 女性の話を、リーヴァルディは黙って聞いていた。
 この世界では、決して珍しい話ではない。
「……禁忌の森の事は詳しく知らないけど。昔は禁忌の森なんかじゃなかったって、聞いたことがある。話を聞くなら年配の人が良いかもねぇ」
「そうか」
 それだけ短く言って、リーヴァルディは他の家に物資を配りに出て行った。

(「優しそうお姉さん、はっけーん」)
 まだ年配の人が良いと言う情報を貰って居なかった霧島・ニュイは、立ち話をしている2人の女性に近寄って行った。
「ねーねー。お話良いかな?」
「確かあの商人の……」
「構わないけど、何が聞きたいの?」
 ニュイの浮かべた明るい笑みに、女性達は小さく笑みを返す。
「あの森に何かあるのー? 禁忌の森って……?」
 だが、ニュイがその話題を口にすると、2人は少し困ったように顔を見合わせた。
「ねーねー教えてよー。理由教えてくんないと納得出来ないしー」
「それはそうだろうけど……」
 ぷくーっと頬を膨らませたニュイに、ショートカットのお姉さんは眉を潜める。
「それとも、話すことすら禁忌なの……昔何かあったとかー?」
 押して駄目なら引いてみろ。しゅんと、ニュイは瞳を伏せてみせた。
 愛嬌を振りまき、ころころと表情を変えて。まるで子供の様に感情を隠さないニュイのコミュ力に、お姉さん達はすっかり警戒を解いていた。
「あの森はね。ある時から、禁忌になったんだよ」
「どう言う事?」
「詳しい人を教えてあげるから、その人に聞いてね?」

 禁忌の森。
(「そう口にするという事は、禁忌である理由を誰か知っている、という事だよね」)
 ここからでも遠くに見える森を眺め、鈴・月華は胸中で呟いた。
 禁忌を知る大人が口を噤み目を逸らすと言うのなら。
 月華は、自分と歳の近い――或いはもっと歳若い子供に、禁忌の森の話を聞こうと企んでいた。
 子供と言うのは、どんな環境であれ好奇心を持っているものだ。
 子供達の傍で水琴鈴をしゃらんと鳴らし、沈丁花香る帯を揺らせば、大人に聞こえない内緒話のような環境を作るのは、さほど難しい事ではなかった。
「森のこと?」
「そう。何か大人達から聞いていないかい?」
 首を傾げる子供達に、月華は警戒させないよう微笑を浮かべて問いかける。
「入っちゃいけないんだよー」
「うん、それは知ってるけど、何故かな? 何かが出るから、とか?」
 月華が重ねる問いに子供達は顔を見合わせて。
「入ったら出られないんだよー」
「出てきた人とも話しちゃいけないんだよー」
「うん? 森から誰かが出て来るのかい?」
『見た事なーい』
 子供達が揃って首を振る。それが、1つの答えだ。
 誰も出てくるのを見た事がないのに、出てきた人と話してはいけない、と言うのは矛盾しているではないか。
(「まあ、断片は得られたか……このくらいにしておこう」)
 あまり長話になると大人達に警戒されるかもしれない。月華は話を切り上げ、子供達に礼を言って手を振って見送ったのだが。
「子供達に、禁忌の森の話は止めておいて頂けませんか?」
 離れていくのを見られていたか。
 1人の男性が、月華にそう声をかけてきた。その口調からは脅すような意図は感じられない。これは懇願だ。
「なら、その禁忌とは何を指し示しているのか。あなたが教えて貰えるかな?」
 そこに現れたアルノルト・ブルーメが、男性の背中に声をかける。
 アルノルトは子を持つ親から聞こうと探し回っていた所、男性同様に子供達が出てきたのを見つけて親が居ないかと寄ってきたのだ。
「どんなものであれ、口外はしない。隣の村を滅ぼした厄災が森の奥に居る。それを倒さなければ、あなたを親と慕うその子が、次には息絶える事になりかねない」
 アルノルトの言葉に、男性の肩がびくりと震える。
「――それでも、「禁忌」の正体は語れないか?」
 そして、男性は何かを諦めた様に肩を落とすと、着いて来い、と歩き出した。

 一方、村の別の場所では。
「禁忌の森の事を教えてくれ」
「なにが禁忌なんでしょうね。霧がまた迷わせたりするんでしょうか?」
 リュカ・エンキアンサスとセロ・アルコイリスも、数人の村人が集まっているのを説き伏せようとしていた。
「俺たちは森に入らなければいけない理由がある。運び込んだ隣村の子供達。隣村がそうなった事に関係する理由だ」
 リュカの話を、村人達は黙って聞いている。
「俺たちも、命は大事だ。入ってはならない理由によっては、やめるかもしれない。けれども、訳がわからなきゃ行くしかないんだ」
 続けたリュカの言葉に、村人の1人が何か言いたげな表情を一瞬見せた。
 隣でセロも、『えっ!?』と思っていたりしたが、笑顔は崩さない。
「だから『禁忌』が危険なものなら教えてほしい。頼む」
「おれからも、頼む。あんた達が大切にしてるモンが居るとか、在るとかなら、ソイツにゃ手ぇ出さねーし、出させねーから」
 軽く頭を下げるリュカに合わせて、セロも隣で頭を下げる。
「長老に話を聞いた方が確かだよ」
 2人の頼みに、村人達も態度を軟化させてそう口を開いた。

●忌みて禁じたもの
「ご老体、森の事を何か知らぬかね? 入ったら誰も帰ってこなかったとか、そういう類かね? それとも生贄を求める魔物でも居ついたか?」
 そして猟兵達が幾つかのルートで、長老の下に案内された時、広場に居た長老は稿・綴子に質問を受けていた。すぐ後ろには、リーヴァルディがいる。
 偶々2人が目に着いた年配の者が、どうやら長老だったようだ。
「長老。彼らには、話しても良いと思うんだ。彼らなら、密告なんかしない」
 密告。その言葉に周囲の空気がピリッとしたが。
「……少し長い話になりますぞ」
 猟兵達の顔を見回し、其々の決意が固いと察したのだろう。
 長老はゆっくりと口を開いた。

「ずっと昔から、あの森は霧が溜まっている事が多くての。入った人が迷い易い場所だったのですじゃ。だから迷い人、特に子供が迷わぬよう、を惑わす霧に覆われた森だと、言い聞かせていたのです」
(「火のない所に煙は立たぬ、という言葉がありますように、禁忌の森も、何らかの所以があったからこそ呼ばれている筈と思いましたが……存外普通ですね」)
 老人の話の出だしに、ジニア・ドグダラはそう胸中で呟く。
(「おいおい、霧で迷わせているなんてドストレートな話じゃないか……これで終わりじゃないよな?」)
 綴子は思わず笑いそうになり、口元を抑えて胸中で声を上げていた。
 だが、長老の話は続く。
「状況が変わったのは、ほんの10年程前のことですじゃ」
 何処からか流れてきた10人にも満たない集団が、森の様子を見て――その奥に住みたいと申し出てきたのだ。
「彼らは簡素ではあるものの武器を持っておりましたので、凡そ判りました」
 吸血鬼の支配を受け入れるのを、由としない人々だった。
 彼らにしてみれば、霧に包まれた森に隠れる事が出来れば、これ以上の拠点はない。
「そこで、彼らとも相談し、森を禁忌の場と、大人も子供も一切入らない森だと。そう言う場所になったのですじゃ」
 もしもの時に、周囲の村に累が及ばぬように。
 そして、当時の村人達も、彼らをこの一体から追放するような事は出来ず――気づけばそれから10年ほどが過ぎていた。
 もう、森に入った彼らの顔を見ることもなくなった。
「それでも我々には、森を禁忌にし続けるしかなかったのですじゃ」
 時効など、吸血鬼に支配されたこの世界にあるものか。
「成程……道理で、子供達の話に矛盾があったわけだ」
 月華が呟いて、肩をすくめる。
「ダンピールも忌み仔の様に言われる事もあるけれど。彼らも、難儀な『禁忌』を背負ってしまったものだね」
「さて、それはどうであろうな?」
 アルノルトの呟きに、綴子が口を開く。
「霧め、知ってて勿体つけおったと思われるぞ。我輩たちに選ばせる気か」
(「起承転結の未だ承、ないしは転と云う事かい? ……気が合いそうだなぁ」)
 続く言葉は口には出さず、綴子は口の端を微かに上げた。
 禁忌は、村人達の今の暮らしを守る為のものだった。そこに踏み込んででも、追ってくる気はあるのかと。
 猟兵達の答えは、決まっていた。
「往かれるのですな?」
 村を出ようとする猟兵達に、長老が声をかける。
「ああ。先程、別の人にも言ったのだけど。今森に居るモノは、移動し思考する正真正銘の厄災。此処で倒さねば、この村も滅ぼされかねない」
「そうでしたか……」
 アルノルトの言葉に、長老は大きく息を吐いて頷いた。
「約束するよ。森の中で何を見ようと、それは口外しないと」
 そう改めて言い含め、アルノルトは村の出口へ向かって行く。
「すみません、助けた子供達も、森の事は詳しく知らないそうです」
「問題ない。夜霧狩りの準備は整った」
 姉妹が食事を終えて寝るまで残って、そこに合流した遙にリーヴァルディが返す。
 そのやり取りで、ニュイは言い忘れていた事を思い出し、くるりと振り向いた。
「子供達のこと、受け入れてくれてありがとう……!」
 その一言に村人達は黙って頷いて、猟兵達を見送った。

●猟兵達の路
 聞き込みを終えた猟兵達は、最初の廃村に戻ってきていた。
 万が一にも、助けた子供達を運んだ村から森に入ったとは、何者にも思わせるわけには行かない。
「さあ進みましょう、皆さん!」
 森の前に立ったソラスティベル・グラスランは、その手に握った蒼空色の巨大な斧を軽々と掲げていた。それを見た綴子が、首を傾げる。
「そいつで如何とするのだね? 霧は猟兵に来て欲しい筈。道は探せばあるだろうよ」
「ですが木の1つを迂回するのも、それが積み重なれば迷いの元です」
 ならばどうするか。
 ソラスティベルの出した答えは、これだ。
「道が無いならば作るのみ! 勇気ある者の前に、常に道は有り!」
 告げて振り下ろした大斧が、雷のような轟音を立ててソラスティベルの眼前の木の数本を纏めて粉砕し、なぎ倒した。
「ただ只管に、一直線に、最短を進み抜けるまでです!」
 ソラスティベルの前には、道が出来ていた。
 確かにこれならば、霧が出ようが関係なく直進できる。派手だが。
「迷わないようにするやり方、幾つかあるけど……これは迷いようがないね」
 ペイン・フィンはその豪快な方法に、軽く驚きを感じていた。
「だけどお陰で切込みを入れる手間が、省けたよ」
 切り倒された木の残骸に、ペインは色の付いた小石を詰めていった。これから進む方向に向いた矢印の形を作るように。
「こうしていけば、迷っても通った方向がわかるよ」
 一度通った場所かどうかの判断も、つくと言うわけだ。
「……目立ってしまうのが難点だと思ってたけど。まあ、それは仕方ないかな」
「ん。何か来るね。吸血鬼の類ではなさそう」
 呪詛で第六感を強化しているリーヴァルディが、近づく気配に声を上げる。
「ここは、私が」
 進み出たジニアが、死霊騎士と死霊蛇竜を気配の方に向かわせる。ただの獣か何かだったようだが、それは死霊があっさりと蹴散らされた。
「……この先に何がいるのか分からないけども、アレにも気取られそうだね」
 ペインの危惧は尤もだ。
 木々をなぎ倒し進むのは確かに最短だが、音が派手になるのはどうしようもない。
「霧に怯え隠れる勇気無き者など、恐れるに足りません! 今そちらに行きます。待っていなさい、悪鬼よ!」
(「救えた命があった。この村に来たのは無駄ではなかった……今のわたしにはそれで充分です!」)
 だがソラスティベルの胸に、勇気は強く燃えている。
「アレはそのままにはしておけないよね」
 ペインも、同意を示した。
 他の猟兵達も、他意は上がらなかった。やるべき事は、変わらない。

「ところで、気になってんですけどね?」
「なんだ?」
 共に断ち割られた木の上に立ったセロは、野生の勘で周囲の獣の気配がない事を確かめながら、後ろのリュカに声をかける。
「村で話してた時ですがねー。理由によっては森に入るのをやめるかも、なーんて言ってましたよねー」
「ああ、言ったな」
 笑顔でセロが続ける言葉に、リュカが無愛想に頷く。
「やめる気なんか、あったんですか?」
「……いや、まったくなかった。いいんだよ、口に出さなきゃ」
「ま、確かにアイツの息の根止めにいかねーとですね」
 しれっと返すリュカにセロも頷いて、同時に木から飛び降りる。
「ヘバんじゃねーですよ?」
「大きなお世話だ」
 へらりと笑うセロに、リュカが少し憮然とした様子で返した。

(「大きな脅威は恐らくない……とは言っても、警戒して行きましょう」)
 やや先行して森を行くジニアの頭の中で、声がする。
 ――さて、それでは始めましょう。
 ――すべて騙し切ってみましょう。
 ――敵対存在を殲滅しましょう。
 全て、ジニアの中の異なる人格の声。其々、悪辣で、卑劣で、鬼畜外道。
 ろくな人格達ではないが、だからこそ、警戒には向いている。
「相変わらず、頭が、割れそうですが、今はこれしか……」
 代償に開いた傷から赤い雫を流しながら、ジゼルは鎮痛剤を飲み軽い治療で痛みを誤魔化し、人格を切り替えながら森に潜む獣達を排除して行った。

「森の民であるエルフとしては、森は神聖なものなのです」
 ジズルズィーク・ジグルリズリィも警戒を密に、森を先行していた。何者かが通った痕跡や、まだ残っている罠がないか探っていく。
「ジズとしては、禁忌の森と、忌み名で呼ぶのは物々しい事この上ないのですが」
 誰に言うでもなく呟きながら、ジズルズィークは見つけた罠を掘り返す。埋まっていた虎バサミは錆びてまともに動きそうになかったが、念のために破壊しておいた。
「とは言え、彼らの事情も理解できなくはないのです」
 ならばこそ、その元凶を断つのが先決だ。
 ジズルズィークは警戒しながらも、邁進し、前進する。

 そして――先行していたジズルズィークとジニアは、ほぼ同時に急に霧が濃くなった場所に踏み込んでいた。そして、濃霧の向こうに漂う謎の気配と血の匂いに気づく。
 どうやら、目指す場所は近いようだ。
 2人は、ズドーン、ドゴーンッと木々をなぎ倒す音のする方へ戻っていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『切り裂き魔・ナイトフォグ』

POW   :    ジェノサイド
【コートに仕込んだ隠しナイフ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ミスリーディング
【無数のトランプ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ミスディレクション
自身が装備する【ナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鈴・月華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ナイトフォグの思惑
『ようこそ。禁忌の森へ』
 猟兵達が霧を抜けたそこで、何処からか声がする。
 あの廃村でも聞いた、切り裂き魔と同じ声。
『ふむ……問う声が上がらないと言う事は、禁忌の事は調べて来ましたか』
 すぅっと、声以外の物音を立てずに。
 白い仮面を付けた黒ずくめの怪人が、夜霧と共に現れた。
『では、私はこう言いましょう。貴方達が私を殺せなければ、私はこの森は禁忌などではなかったと近隣の領主をしている連中に告げ口しますよ、と。
 どうでしょう? 逃げるわけには行かなくなりましたよね? 最後の1人になっても、切り裂かれてくれますよねぇ?』
 ナイトフォグが猟兵達をこの森に誘った理由はこれだった。
 退路を心理的に断つ為。確実に、殺す為。
『ああ、そうそう。此処、何人か居ましたよ? 殺しましたけど』
 そのペストマスクの下で、ナイトフォグがどんな表情を浮かべているのか――聞こえる声からでは、窺い知る事は出来なかった。
ジズルズィーク・ジグルリズリィ
SPD判定

挑発、丁半。その啖呵が吉と出るか凶と出るか、身をもって知るのです

どうやら件の怪人は饒舌な様子?
隙を【見切り】懐に飛び込んで〈私に七難八苦を与えたまえ〉で突撃するのです

諸刃の剣ですが、怪人が防御に気をやってくれるならよし
軽くいなされるにしても味方が突くにはかっこうの好機です

そして
とうに朽ち果てているかとも思うのですが
森で殺された犠牲者さんたちに【祈り】を

かれらには知らぬことかもしれないですが
これからは子どもたちがあらたな伝承をのこしてくれるのですよ
そうすれば、寂しく朽ちることはない、きっと顔を見せてくれることです


ジニア・ドグダラ
「……此処にいた、方々を、ですか……」『…………くたばれ、外道が!』

此処に居た方も、きっと生きたかったはずでしょう。しかし、それも途絶えてしまったのなら、きっと私の術に協力してくれるはずです。
人格を第二人格『ヒャッカ』に変更し、【高速詠唱】にて素早く【蛾者髑髏襲来】を発動したいと思います。邪魔が入るかもしれませんが、ワイヤーフックで木々を飛び回って回避しつつ、事前に飲んでいた【鎮痛剤】による【激痛耐性】が継続しているはずなので被弾を【覚悟】して詠唱を続けます。

召喚した骸骨の霊には【呪詛】に満ちた【怨嗟の声】による【範囲攻撃】で相手の攻撃を阻害したり、両腕の【拳】による【二回攻撃】を仕掛けます。


ペイン・フィン
そう、か・・・・・・。
・・・・・・お前は、そんなにあっさりと殺せるんだな。
・・・・・・腹立たしいけど、少しだけ、羨ましいよ。

真の姿を解放。
血霧のようなモノを身に纏い、数歳程度幼い姿になる。
同時にコードを使用。
周囲の霧に溶け込む様に姿を消し、
背後に現れて攻撃をする。
使用する拷問具は、膝砕き。
最も、膝以外にも使われてたものだけどね。
だから、その腕を、砕かせてもらうよ。

・・・・・・お前が誰かを殺すことなんて、もう、あり得ない。
だから・・・・・・。この腕、もういらないよね?


ソラスティベル・グラスラン
…そうですか。10年前、此処に来たという人々も、貴方が
ええ、良く分かりましたとも
―――貴方を討ちます、霧の悪鬼よ!今、ここで必ず!!(【鼓舞】)

要らぬ心配です!
もとより逃げるなど、わたしの選択肢にはありません
貴方を討たねば、今を生きる人々の未来も晴れぬのですから!

【力溜め】をしてただ只管に前へ、前へ!
【怪力・盾受け・オーラ防御・見切り】
その全ては森の王に近づく為だけに。尚届かぬなら【勇気】で補います!
今ここに誓うは不退転の意思!勇者とは誰より前に立つ者!
風よ、雷よ、天空の大斧よ、わたしに力を…!
暗き夜霧を晴らし、蒼天を齎さんッ!!


アルノルト・ブルーメ
何か思い違いをしているようだけれど……
元より、逃げるつもりはないし、引き裂かれるのは君の方だよ

彼の『殺した』という言葉も想定していた事だと受け止めて

血統覚醒を使用
Viperで先制攻撃からの2回攻撃
ジェノサイド・ミスリーディング・ミスディレクション、
総ての攻撃を手首を返したViperの不規則な動きで
弾く、もしくは叩き落して対応

攻撃を受けて出血した場合は
血を用いてVictoriaを起動させ攻撃

無差別に殺した者の末路など、判っていただろう?
僕らは君を逃さない、逃れる事など許しはしないよ

骸の海に還ると良い、オブリビオン

戦闘後、可能なら森で殺された人達を埋葬出来れば……

そして、禁忌の森は禁忌の森のままで


春霞・遙
あなたが密告するにしろあなたの手で切り裂くにしろ、あなたを逃したらここにいる人たちが生き残る未来がないじゃないですか。

WIZ
【生まれながらの光】での回復と拳銃による「援護射撃」で戦闘の補助を。森を守る闇と霧は晴らしてはいけないようだけど、命を奪う霧を払うためにこの一時のみ光で霧を照らそうと思います。
「聞き耳」を立て、夜霧がそばにいるようであれば杖で「なぎ払い」「吹き飛ば」そうとする。
援護射撃としては味方に向かうナイフやトランプに気づけそうなら撃ち落とす、とかでしょうか。


鈴・月華
ここに来ている時点で、逃げる気は更々無いけれど?
だって君を仕留めに来たのだから

少し距離を取って相手の出方を伺う
飛んでくる攻撃は、鋼糸で樹々を薙ぎ払って、それを盾にしてやり過ごす
まぁ、喰らっても激痛耐性が多少付いているから、少しくらいの痛みならば意に介さない

ある程度相手の動きを読み込めたら、服の袖から暗器毒薬諸々エトセトラを捨てて身軽になる
ひらひらしている袖の何処にそんなもの隠していたんだって?
女の子には秘密が一杯なのだよ

さて。身軽になったし、これで愛用の大鎌を思うように振るえるね
一気に距離を詰めて仕留めに行こうか
その為なら、刺されることなんて厭わない。痛みに怯んで動きを止めたりなんかしないよ


セロ・アルコイリス
リュカ(f02586)と

なぁんか釈然としねーんですよね
禁忌を作らせたヤツらも、それを律儀に守っちまうヤツらも
えええ、アレも人間ですか
あーあ、難しいですね

けど、なによりそういう必死なヤツらを嗤うあんた(ナイトフォグ)の存在が楽しくねー
お望みどおり、最後のひとりになったって逃げやしねーですよ
……なりゃしねーですがね

【シーブズ・ギャンビット】、ダガーをメインに
『カウンター』と『学習力』、『激痛耐性』で耐えながら
他のUCも使いながら
斬り裂かれた分、斬り裂いてやりますよ
傷付くのは怖くない
守るべき『人間』を喪うよりは

援護射撃にゃ素直に感謝
リュカに攻撃が向くようなら【暴風雨】とかで邪魔したい

※アドリブ歓迎


リュカ・エンキアンサス
セロ(f06061)と。
アドリブ・ほかの方との絡みも歓迎

……
釈然としない、か。
俺は、「人間ってのはそういうものだ」と思うけれどね。
痛い目遭ってまで守るものでもないだろう。
ナイトフォグ……だっけ。こいつも妙なところで人間臭いよ。
俺は、細かいこと言わないがとりあえずこいつ嫌いだ。

ともあれ元より逃げるつもりはない。
セロが突っ込んでいくなら俺は少しはなれた場所、可能なら相手の攻撃が届かなさそうな場所から「援護射撃」する。
攻撃が来るなら絶望の福音を使用しつつ回避。回避が難しそうなら持ってる鞄を盾にして盾受け。
相手の感じから多分ないだろうけどやむなく接近された場合はダガーを抜いて時間稼ぎしつつ援護を待つ。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。道化の戯れ言を聞く気は、ない
私はお前の命を狩りとるだけ…
その悪逆の報いを受けなさい

事前に改造した防具の呪詛を反転
第六感に訴え小石のように存在感を消す魔力を付与
目立たないように【見えざる鏡像】で不可視化して、
敵の攻撃を見切りながら接近する

敵の隙をついて力を溜めた怪力で大鎌をなぎ払い生命力を吸収
その後、死刺弾を銃撃する2回攻撃を行う

…ん。まさか自分が霧に紛れて切り裂かれるなんて、思ってもいなかった…って雰囲気ね?

…その後、仲間と連携して行動
攻撃が避けられそうなら、敵に命中した死刺弾のギミックを解放し、傷口を抉る事で隙を作る

不意を討つのは、お前だけの流儀じゃない…
良い気味ね、ナイトフォッグ?


霧島・ニュイ
【SPD】
そんな脅し掛けられなくたって、逃げる気はさらさらないんだよー
夜の遊戯を楽しもーよ、おねーさん♪

お姉さんって、何してた人なのー?
売れない商人で吸血鬼の元についてた人とかー
そのペースマスクの下が気になるなー

他の猟兵と連携
【視力】を使いながら、霧に誤魔化されないよう留意
彼女の気配は逃さないよ
【二回攻撃】【咎力封じ】で手枷、拘束ロープ、猿轡を投げながら攻撃力を封じることを目指す
人形リサと攻撃
軽口叩きながら、スピード出して寄り、【スナイパー】【零距離射撃】で攻撃
【騙し討ち】で死角からリサが攻撃

苦しいふりして膝をついて【スナイパー】で【騙し討ち】
騙し合いだねー(楽しい
同時攻撃辛いけど本体を叩くよ


稿・綴子
霧よ
貴様、本当に可愛い奴であるなぁ
猟兵が逃げぬ為に舞台を仕込むたぁ、寂しがりにも程があるぞ
しかし乍ら甘いぞ、霧よ
殺したとタネ明かしがはやすぎるわ!
これでは禁忌でないとバラした所で領主は無駄足
見せしめに村人が殺される?
――貴様、殺人鬼であろう?直接手をかけずにしてどうするよ?まさか紛い物かね?

さぁて
其れでは本物の殺人鬼、とくとご覧あれ!

【虚構召喚】使用
此度の殺人鬼は勝手な逆恨みで村人3桁屠った輩
鉈で殴りもがれた手足は花火の如くどぉん!
さぁさぁ貴様はどのような花火かね?
吾輩に記すに値する『奇譚』と咲いてくれ給え

殺人鬼や仲間の影に入り喰らわぬよう逃げ回る
散らかしてくる攻撃は原稿用紙と人形を盾にし相殺



●RIPPER'S NIGHT
「……此処にいた、方々を、ですか……」
 ナイトフォグの告白を聞いて、ジニア・ドグダラの眉根が釣り上がる。
「此処に居た方も、きっと生きたかったはずでしょう」
 闇に支配された世界でも、生きていれば得られた幸せもあったかもしれない。
(「それも途絶えてしまった。だからこそ、きっと私の術に応えてくれる筈です」)
「任せましたよ」
 短く呟いて、首にかけたロケットに視線を落とす。
 開かれた中の写真がジニアの目に映り――その表情が変わった。
「…………くたばれ、外道が!」
 茶色の瞳に冷酷な光を灯して告げるその人格は、ジニアであってジニアでない。ヒャッカのものだ。
 もう1人、怒りを隠さぬ者が居る。
「此処に居た人々も、貴方が――ええ、良く分かりましたとも」
 ソラスティベル・グラスランが張り上げた声は、怒りが露わになっていた。
「逃げるなどと、要らぬ心配です! 元よりわたしの選択肢にはありません!」
『嗚呼。いいですねぇ。こんなにストレートな怒りを浴びたのは、何時以来でしょう』
 森に響き霧を揺らすソラスティベルの声を、ナイトフォグは柳に風の如く受け流す。
「まだやるか、霧よ。貴様、本当に可愛い奴であるなぁ」
『――はい?』
 怒りから一転、稿・綴子の言葉にナイトフォグが意表を突かれたような声を上げる。
「猟兵が逃げぬ為に舞台を仕込んで、舞台に乗って尚も怒りを煽るたぁ、寂しがりにも程がある――しかし乍ら甘いぞ、霧よ。殺したとタネ明かしがはやすぎるわ!
 ――貴様、殺人鬼であろうが? 見せしめに村人が殺される? 直接手をかけぬ筈がなかろうよ、紛い物でもあるまいに」
『あ、バレましたか。そうですよ。この辺りの領主なんて、顔も知りません』
 綴子の言葉を、あっさりとナイトフォグは認める。
『まあ、だからって逃げるわけに行かないことに変わりは――』
「何か思い違いをしているようだけれど……元より逃げるつもりはないし、引き裂かれるのは君の方だよ」
 ナイトフォグの言葉を遮って、瞳を紅に染めたアルノルト・ブルーメが口を開く。
 此処もナイトフォグの切り裂きがあった――それも想定していた事ではある。だからと言って看過できるものではない。
「あなたが密告するにしろ、あなたの手で切り裂くにしろ。あなたを逃したら、森の外にいる人たちが生き残る未来がないじゃないですか」
 逃げるのではなく逃がさない為に。助けた子供達の未来の為に。
 春霞・遙の手が、拳銃のグリップを握る。
「つまり、ここに来た時点で、誰も逃げる気は更々無いってことだよ? だって君を仕留めに来たのだから」
 鈴・月華は出方を伺う様に紫晶の瞳を細めて告げた。
 他の猟兵達も、それぞれに間合いを取りながら、ナイトフォグを取り囲んでいく。
「そうそう。脅し掛けられなくたって、逃げる気はさらさらないんだよー。だから、夜の遊戯を楽しもーよ、おねーさん♪」
『良いでしょう。それでは、今宵の切り裂き遊戯、開幕でございます!』
 霧島・ニュイの軽口に応えて、ナイトフォグは慇懃に右手を体の前に回し腰を折る。
 深い礼と同時に、背中に回した左手から無数の札が一斉に飛び出した。

「させないよ」
 アルノルトが先制で伸ばしたワイヤーフック『Viper』が、蛇のようにしなりペストマスクへと迫っていく。しかし、ナイトフォグは右手でそれを振り払いながら、左手からトランプの札を飛ばし続けた。
 指でしならせ次々と尽きる事無く飛び出すのは、全てスペードの札だ。その意匠の意味する剣が如く、札が嵐の様にナイトフォグの周りを切り裂きながら広がっていく。
 指でしならせ次々と尽きる事無く飛び出す札は、全てスペード。その意匠の意味する剣が如く、札が嵐の様にナイトフォグの周りを切り裂きながら広がっていく。
「数が多い……ですね」
 拳銃の引鉄を続けて引きながら、遙が小声で溢す。
 仲間に向かいそうな札を狙って援護射撃で撃ち落しているが、それでも幾らか数を減らすので精一杯だ。
(「風よ、雷よ、天空の大斧よ、わたしに力を……!」)
 切れ味鋭い札が舞う中、ソラスティベルは微動だにせず力を溜めていた。
(「暗き夜霧を晴らし、蒼天を齎さん為にッ!!」)
 勇者とは誰より前に立つ者。溜めた力は、霧に隠れる悪鬼に届くその為に。
 そしてもう1人。
「挑発、丁半。その饒舌さと啖呵が吉と出るか凶と出るか、身を以って知るのです」
 札の嵐の中に、ジズルズィーク・ジグルリズリィはさらに飛び込んだ。
『はは、来てくれますか!』
「無私、不死。ジズの受難は、常しえに苛むのです」
 流れる血も経たれる神経も気にせず、それらを恐れる心を捨て、瓦礫を足場に飛ぶように間合いを詰める。七難八苦に自ら踏み込んだ先が、ジズルズィークが見出した隙。
 諸刃の剣なのは判っている。
 朱を撒き散らし、ジズルズィークが振るうはかつての拘束具。岩を砕く一撃が黒衣に吸い込まれ――霧と消えた。
「いなされましたか。ですが――動きましたね?」
『私の足は飾りでは――っ!?』
 ジズルズィークの言葉に霧の中から返って来た声が、息を飲んで途切れた。
「悪逆の報いを受けなさい」
 霧の中、小さく響いた声はリーヴァルディ・カーライルのもの。されど彼女の姿は何処かにも見えず。
 見えざる鏡像。透明化の秘術だ。リーヴァルディと共に透明になった大鎌、グリムリーパーが霧の中を再びなぎ払った。
『っと……怖い怖い』
「……ん。まさか自分が霧に紛れて切り裂かれるなんて、思ってもいなかった……って雰囲気ね? 良い気味ね、ナイトフォッグ?」
 切り裂かれた傷を手でなぞり、おどけたように告げるナイトフォグに、リーヴァルディが姿を消したまま言い放つ。
『そうですね。些か予想外ですよ。ですがそれ程までに皆様の怒りを買えたのなら、私が切り裂いた者達も無駄死にではなかったと言えましょう』
「道化の戯言を聞く気は、ない。悪逆の報いを受けなさい」
 リーヴァルディが放った弾丸は、しかしナイトフォグの放ったナイフとぶつかった。

「……なぁ。アレも人間ですか?」
 死者を嗤う切り裂き魔の姿を、セロ・アルコイリスの瞳が追っている。
「種族としては判らんけど。妙なところで、人間臭いよ」
 リュカ・エンキアンサスはナイトフォグから視線を外さず、返した。
「……まだ、釈然としないか?」
「そーですねー……」
 逆にリュカに問い返され、セロが言いあぐねる。

 ――なぁんか釈然としねーんですよね。
 ――禁忌を作らせたヤツらも、それを律儀に守っちまうヤツらも。
 いつもと変わらぬ笑みを浮かべたまま、セロが迷うように呟いたのはほんの少し前。
 それにリュカは、こう返していた。
 ――人間ってのはそういうものだ。4つの感情だけで語れやしないよ。

「アレも人間臭いですか。難しいですね……けれど、そう言う必死なヤツらを嗤うアレの存在が楽しくねーですよ」
「そうか。俺も嫌いだ」
 そして2人が同時に動く。セロが前に、リュカが後ろに。
『札では切れませぬか。では、より鋭き刃を!』
 両腕を広げたナイトフォグが、舞うようにその場でグルッと回った。袖が広がりコートの裾が翻る。そして放たれる切り裂き魔の隠し刃が猟兵達を切り裂いていく。
「痛ぅ……おねーさん、容赦ないなぁ……」
 肩と足を押さえ、ニュイが膝を付く。その隣で、椿の花を纏った少女人形も力尽きたように崩れ落ちた。
「守るべき『人間』を喪わせやしねーですよ」
 傷つくのを恐れず、セロが無骨な刃を抜いて駆けだした。飛来する敵の刃は、武器を持たぬ拳で傷つくのも構わず打ち払って突き進む。
 切り裂かれたら、その分斬り裂くまでだ。
 ――タァーンッ!
 そこに、後ろから灯り木の甲高い銃声が聞こえて、セロに追い討ちをかけようとしていた切り裂き魔のナイフが全て砕け散った。
「助かった」
 リュカの方を振り向かずに背中で告げて、セロが地を蹴る。
 直前にナイフを放たれたが、その軌道をセロは既に覚えていた。ギリギリで避けて間合いに飛び込むと、カウンターで牙を一閃。加速の勢いを載せた一撃が、黒衣を斬った。
『っ、その射撃が厄介ですねぇ』
 すぅっとナイトフォグの姿が再び霧の中に消えて。
 ほんの数秒後、別の場所からナイフが――リュカが既に向けていた銃口から放たれた弾丸に全て撃ち砕かれた。
『なんですかそれ!?』
「さあな」
 まるで未来を見てきたかの様な射撃に驚くナイトフォグに、リュカが淡々と告げる。
 その驚きが、隙となった。
「不意を討つのは、お前だけの流儀じゃない……」
 リーヴァルディの声がして、銃声が響く。
 Kresnikから放たれた死刺弾に撃ち抜かれたナイトフォグの背後に現れる、紅い血霧のようなモノを纏った小柄な姿。
「……お前は、あっさりと殺せるんだな」
 腹立たしさと少しの羨ましさを抱えて、ペイン・フィンは真の姿を解放していた。
『くっ』
 流石に慌てた様子でナイトフォグが再び霧に身を隠す。
「……逃がさない」
 だが、ペインも霧に溶け込むように姿を消し、一瞬でナイトフォグの背後に現れる。
「……お前が誰かを殺すことなんて、もう、あり得ない」
『っ!?』
 隠しナイフを飛ばそうとした黒衣の腕を、ペインが掴む。ナイトフォグの腕に突きつけたのは、膝砕きと呼ばれる拷問具。砕けるのは、膝のみではない。
「だから……この腕、もういらないよね?」
 ボキンッと鈍い音を立てて、黒衣の中の細腕の骨が粉々に砕ける――数秒遅れて、ゴキッとペインが予想していなかったところから骨が外れる音が鳴った。
「このっ!」
 音に気づいたペインが押さえ込むより早く、ナイトフォグはペインから大きく距離を取っていた。
「自分で関節外したか……」
『脱出の手品……得意なんですよ?』
 呻くペインにナイトフォグが返すが、その声は大分弱くなっていた。見た目には猟兵達の攻撃の影響はなさそうにしても、隠し切れなくなっている。
 その証拠に――隙が増えていた。
「やるよ、リサちゃん」
 ニュイの声がすると同時に、先ほど倒れた筈の人形のリサの腕が、ナイトフォグの足をむんずと掴む。そこに放たれた拘束具が、ナイトフォグの腕に絡みついた。
『っ!? さっきのは芝居ですか』
「騙し合いは僕の勝ちだねー」
 外した肩を戻す前に手枷を嵌められたナイトフォグに、ニュイが楽しげな笑みを向けて告げる。斬られたのは本当だが、それほどの深手ではない。
「お姉さんって、何してた人なのー? 売れない商人で吸血鬼の元についてたとかー? そのペストマスクの下が気になるなー」
『切り裂き魔でなかった私など、何処かに置いてきましたよ。だから、あっさり殺せるのですよ――切り裂き魔ですから。切り裂き魔が切り裂かないでどうするんです』
 ニュイと、ペインに、ナイトフォグが淡々と返す。
 オブリビオンは過去からの存在。
 そして今のナイトフォグは、切り裂き魔としてしか戻っていないのだろう。その言葉を信用するならば、だが。
『だから――こんな事も出来るんです。片腕を砕かれ枷を受けたくらいで、切り裂けなくなるなんて事はないのですよ!』
 ナイトフォグが握っていたナイフがふわりと宙に浮き上がり、そして増えていく。
 数十の刃が、ナイトフォグの意思で猟兵達に襲い掛かった。
「此処に来て攻撃のパターンを変えたか!」
「だが、このくらいの数なら――」
 体捌きで放たれるのではない。思念で操られた刃は、これまでと違う軌道を描く。月華が鋼糸で操り盾とした木を避けて、アルノルトが手首を返し毒蛇の様に操っていたワイヤーフックも掻い潜って――2人が切り裂かれる。
 そこに温かな光が届いて、月華の傷が瞬時に癒された。
 遙の放った生まれながらの光の力だ。
「この森を守る意味で、この闇と霧は晴らすべきではないのでしょう。ですが、命を奪う霧を払う為に、この一時、霧を照らします」
 自らの疲労を省みず、遙が光を広げて猟兵達の傷を癒していく。
 当然、それをナイトフォグが見逃す筈もない。
 その思念を反映し漂うナイフの切先が、遙に向けられ――白い壁に阻まれた。
 それは、骨が集まって出来た巨大な掌だった。
「応えろ! そして集え! 己に刃を突き立てた者への惨劇を祈る、怨恨晴れぬ朽ちた者達よ!」
 ジニア――ヒャッカの口が最後の詠唱を紡ぐ。
 応えたのは、この地で死した人々。その亡骸。或いは――いずれにせよ、死した人々が集まり生まれた巨大な骸骨の霊が、ナイトフォグを見下ろしていた。
『――は?』
 呆けた声を漏らしたナイトフォグに、骨の拳が容赦なく振り下ろされる。
「ははは! 随分と間抜けた声を上げるではないか、霧の!」
 ジニアが操る骨霊の一撃を辛くも逃れたナイトフォグを、綴子が嘲笑う。
「しかしだ! 腕を砕かれても切り裂くその執念や由!
 ――返礼だ。本物の殺人鬼を、我輩が語って進ぜよう。とくとご覧あれ! 今宵顕現せしめし殺人鬼は、逆恨みで村人3桁屠った輩だ」
 綴子の語りで喚び出される小説の殺人犯は、血塗れの巨漢。三桁殺し。
「鉈で殴りもがれた手足は花火の如くどぉん! さぁ貴様はどのような花火かね?」
 次々と振り下ろされる鉈を、ナイトフォグは思念で操るナイフの数で対抗する。
「口数が減ったね? 無差別に殺した者の末路など、判っていただろう?」
『誰であれ死という末路は同じでしょうに』
 嗤うナイトフォグは、何処まで本心なのか。
 遙の癒しを断り、アルノルトが進み出る。血を流したからこそ、使える武器がある。アルノルトの腕を伝う血を受けて、起動するナイフ形の処刑道具。
 ガチャン、ゴトン。
 月華の袖の中から零れ落ちる、暗器毒薬エトセトラ。
『私より仕込み上手ですねぇ』
「君まだそんな事言う余裕あるのかい? 女の子には秘密が一杯なのだよ」
 ナイトフォグの軽口に、それ以上の軽口で返して。
 軽くなった腕で月華が握るは、白銀の大鎌・鈴華。
 そして綴子の殺人犯と切り裂き魔の斬り合いに、2人が飛び込んだ。
 2人とも切られるのは覚悟の上だ。
 アルノルトは逆に生命力を奪うことで対抗しながら、吸血鬼化の膂力で以って思念で飛ばされる刃を叩き落としていく。
 月華は痛みをただただ堪えて、長い髪とドレスの裾を翻し、白銀の鈴華を軽々と振り回して刃を斬り砕く。
『――っ!』
 間断なく響いていた金属音。その間隔が次第に空いていった所を、ジニアの骨霊の呪詛の篭った怨嗟の声が残る刃の殆どを纏めて吹き飛ばした。
「僕らは君を逃さない」
「逃げられないは君の方だよ」
 アルノルトの突き出したVictoriaが黒衣を貫き、月華が振るう鈴華が三日月を描いて逆袈裟に斬り裂く。
「そろそろ終幕の頃合であろう。吾輩に記すに値する『奇譚』と散ってくれ給え」
 綴子が何かを振り下ろすような仕草をすると、よろめいたナイトフォグの鎖骨を、殺人鬼がどぉんっと振り下ろした鉈が砕いた。
「潰れてろ!」
 ジニアの声で、骨霊の左右の拳がそこに叩き込まれる。
 よろめいたナイトフォグが、ぐらりと膝を付く。だが――4本。ナイトフォグが操る数を減らし音もなく迫らせたナイフが、1本ずつ4人に迫っていた。
 4人に届く直前、ナイトフォグの体の中から棘が伸びた。リーヴァルディの弾丸から伸びた棘だ。思念が途切れ、ただ漂うナイフをリュカと遙の援護射撃が撃ち砕く。
『く……くはははっ』
 満身創痍でペストマスクの奥で上げるくぐもった笑い声を、ズドンッと重たく響いた雷鳴が打ち消した。
 札に切られても、刃に刺され斬られても。只管、力を溜め続けたソラスティベルの大斧は蒼雷を纏って輝いていた。
 それを手に、ソラスティベルが進み出る。
『っ!』
 それを見たナイトフォグが足を振り上げる。苦し紛れではない。まだ、靴底に仕込んだ刃を隠していたのだ。
「無駄な事―――貴方を討ちます、霧の悪鬼よ! 今、ここで必ず!」
 喉元を狙った一刺しを、不退転の意思と勇気の篭ったオーラの盾で弾いて、ソラスティベルは、そのまま間合いを詰める。伸ばせば手の届く距離でなければ、この一撃は届かない。それに気づいたか、ナイトフォグが左の靴から隠し刃を伸ばす。
「我が勇気の証明、そして何よりも今を生きる人々の未来の為に! 応えなさい、勇者の大斧よ!」
 だが――蒼雷を纏った大斧が、風よりも疾く振り下ろされた。神鳴りが如き一撃が轟音を立てて最後の刃を撃ち砕き、黒衣も白亜の仮面も雷光の中に包み込んだ。
『嗚呼、これで――終幕ですか』
 蒼い雷光と音が収まった時――残っていたのは黒衣の切れ端と、半分になったペストマスクだけだった。それも崩れて消えていくのを、遙が黙って見やる。
 もう霧の中からも気配も殺気も感じなかった。
 次第に警戒が緩んで確信に、安堵に変わる。猟兵達は、勝ったのだ。
 そしてこの場に月華が居ると言う事は――時の因果も断たれた事を意味する。多少の残響はあるやも知れぬが、もうこれ以上、夜霧が紅に染まる事はない筈である。
 ジニアの術で巨体を為していた骨が、骸へと戻っていく。
「せめて、彼らをこの場に埋葬しないかい?」
 アルノルトの提案に、反対の声は上がらなかった。とは言え、髑髏の数で辛うじて人数が判るくらいだ。纏めて1つに葬るより他になかったが――野ざらしよりはずっとましと言えるだろう。
「……いつかきっと、子供達があらたな伝承をのこしてくれるのですよ」
 だから寂しく朽ちる事もない――今はまだ禁忌のままだとしても。
 そうあって欲しいと、ジズルズィークは彼らの魂の安寧を願い、祈りを捧げた。

 そして――禁忌の森は、また静寂と霧に包まれる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月31日
宿敵 『切り裂き魔・ナイトフォグ』 を撃破!


挿絵イラスト