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帝竜戦役⑰〜其れを逃れる為の力、退ける為の力~

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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●或る勇者の嘆き
 ――怖い。
 あの竜と戦い、私は魂を千々に引き裂かれ捕らわれてしまいました。
 私と仲間達を食べた竜は、今でも見せつけてくるのです。
 今でも私は竜の中で、魂が千々に引き裂かれ命が奪われる、敗北の恐怖に晒されています。
 どうか助けてください。
 どうか解き放ってください。
 これ以上、私の、私達の力と誇りを使われたくありません。
 これ以上、あの竜の嗤い声なんて、聞きたくありません。

●敗北の恐怖
「恐怖というのは大事な感情だ。自らを制するのに、必要な感情だ」
 信用を失うのが恐ろしいから増長や裏切りを律したり、自らの分を受け入れて真面目に生きたりね……と、グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは笑う。
「しかし呑まれては何も出来なくなる。何事も塩梅が大事だ」
 改めて彼女はグリモアを輝かせて、戦争の渦中にある花咲き乱れる美しき草原を映し出した。

「さぁ語ろうか! 舞台はアックス&ウィザーズの群竜大陸、所は『約束の地』! 君達には恐ろしき竜と戦い、それを倒して貰いたい!」

 群竜大陸は約束の地。
 群竜大陸で最も危険なこの場所は、一見すると色とりどりの花が咲く美しい光景に見えるが、この草花は全て例外なく、恐怖を放っているのだという。
「この花は恐怖に負けた者、または頑なにあることを認めようとしない者に寄生し苗床としてしまう」
 あることを認めないということは、それを恐れているのと同義だからねとスフィーエは肩を竦めながら語る。
「だからこの戦場では、あると認めた上で乗り越えなければならない」
 この場の花が放つ恐怖というのは【敗北】への恐怖。
 相対する敵に惨たらしく負け、自分の尊厳を踏み躙られる恐怖が容赦なく襲い掛かってくる。
 上手くそれと向き合い、乗り越えねば花に呑まれ苗床とされてしまうだろうと彼女は語った。

「今回君達に倒しに行って貰うのは、この竜だ。名を呪骨竜アンフェールという」
 そう言ってスフィーエはグリモアを輝かせると、一頭の恐ろしい姿をした竜の映像を映し出した。
 名は体を表すというか、白骨化した竜のような姿であるが、強力な肉体とそれを更に上回る強力な呪詛の力を持っているのだという。
 特に敗北した者の魂を捉え、その力を利用する術もあり、取り込んだ魂の中には――。
「……かつての勇者達の魂もあって、彼らを死後も苦しめながら利用している。花の恐怖は、容赦なく“君達がそうなる”未来も見せつけてくるだろう」
 竜への怒りを語るスフィーエの銀灰色の瞳は、何処までも冷たく濁っていた。
「だが倒せば、勇者の魂も解放される。どうか、彼らを解放してやって欲しい」
 これ以上彼らが終わりなき恐怖と苦しみに居ること無きように――と彼女は頭を下げた。

「……そうそう、この戦場にはこんな花が手に入る。まぁ、危険物だがね」
 頭を上げたスフィーエは、改めてグリモアを輝かせると一輪の花を映し出す。
 約束の花と呼ばれるそれは、触れた者の思いを吸収し、増幅させた上で次に触れた者をその思いで汚染する代物だ。
 洗脳や隷属にはうってつけの代物で、その価値は金貨にして1200枚だと肩を竦めながら語り。
 改めてグリモアのペン先が約束の地への門を作り出しながら、彼女は最後にこう締めた。
「悪用しないというなら、持って帰るのも一興だろう。では……頼んだよ」


裏山薬草
 どうも裏山毒草です。違います薬草です。
 皆様には怖いものがありますか?
 私はお客様からのご愛顧が怖いです。はい饅頭怖いですね(笑)

 さて今回はですね、約束の地という場所に赴き、恐怖と相対しながら竜退治というシナリオになっております。

 今回相対して頂く恐怖は、『敗北への恐怖』です。
 つまり敵に負けることが怖い!という気持ちになりますので、上手くそれを認めつつ克服するプレイングがあれば、ボーナスになります。

 また採用人数は12~15名辺りを上限とします。
 それを超えると却下の可能性もありますのでご注意ください。
 もし却下となってしまったら、別のシナリオに参加して頂けたら幸いです。

●この戦場で手に入れられる財宝
「約束の花」
 触れた者の「思い」を吸収し、増幅した上で次に触れた者に感染する、おそるべき「感情汚染植物」です。
 告白に使えば相手を奴隷化しかねない危険な代物ですが、一房金貨1200枚(1200万円)で売れます。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
 裏山薬草でした。
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第1章 ボス戦 『呪骨竜アンフェール』

POW   :    ソウルプリズナー
【魂を囚われた勇者】の霊を召喚する。これは【武器】や【魔法】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    イーヴィルアイ
【魔眼から放たれる怪光線】が命中した対象を爆破し、更に互いを【魂を縛る呪詛の鎖】で繋ぐ。
WIZ   :    ミアズマブレス
【呪詛】を籠めた【ブレス】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【魂】のみを攻撃する。
👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はセシリア・サヴェージです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


5/15 追記
沢山のプレイングありがとうございます。
今受け付けております17名様で締め切りたいと思いますので、これ以降来られても却下の可能性が高いです。悪しからず。
==============
宮落・ライア
演出真の姿:透き通る青緑の大剣の担い手

負けるのが怖い?当たり前だろ。
勝って当然の戦場ばかりに立って来たわけじゃない。
届かなかった事だって、膝を付いた事だってある。
だから、戦い続けるんだ。
負けない強さを、届かせる手を、手に入れえるために。
英雄を目指しているんだ。そのくらいの覚悟はとうに出来ている。
未来を斬り開く覚悟くらいな。

囚われているのなら、それは呪いだな。
召喚された勇者の防御や霊体は透過し、縛り付ける呪いのみを切り捨てて
解放する。
で、お前の力の源泉は呪いか?
なら…痛いぞ?
斬りつけ肉体ではなく力に直接攻撃。


トール・テスカコアトル
「……ひぃ!」
トールは負けたことが沢山あるよ
倒れるのは辛い
期待を裏切るのは悲しい
上から蔑んだ目で見られるのは……死にたくなる
「負けたくない……」
だから、戦いたく、ない
段々……なんでヒーローやれてるのかワカンナクなってきた
ああ、ドラゴンでっかい
もう、逃げちゃおうかな……

「……あ」
声が聴こえる
助けてほしい……って、言ってる
「変身」
『説明しよう!助けを求める無辜の声を聴いた時!その時こそ!彼女は恐怖を吹き飛ばし
!勇気の戦士へと覚醒するのだ!』

「やめろぉーーー!」
それはダメだぞ怖いドラゴンめ!
ブレイブソード!力を貸して!
トールの勇気は機動力!光を越えて――
「ブレイブ!スラーーッシュ!!」

絶対、助ける


鬼桐・相馬
敗北の恐怖、考えた事なかったな。

【POW】
敵と対峙した際[黒曜の軍制手袋]内部に違和感を覚える。汗をかいている?
俺の悪意を喰らう[冥府の槍]から立ち昇る炎もガス欠寸前のように大きさが絶え間なく変わる。自覚する鼓動。
――ああ、俺は敗北に恐怖しているのか。

槍へと送る悪意を一瞬ストップさせ、踏み込む力に。
身体が動けば後は闘争本能に少しづつ俺の意識を混ぜ込んでいけばいい。
[勇気と覚悟]で己を奮い立たせ、槍による[見切り、武器受け]から[カウンター]を叩き込んでいく。
囚われた勇者の霊を解放するのは今動ける俺達の役目だ。UC発動し、僅かな[優しさ]から一瞬で終わらせよう。

花は持ち帰らず勇者達への手向けに。



●勇気を以て隷属を破棄する
 髑髏が無情に嗤う乾いた音が鮮やかな花畑の中に響いた。
 目の前に相対せし骨の身を持つ竜の嗤いと、香しき花の匂いはこの約束の地へ脚を踏み入れた猟兵達に齎す。
 呪われた禍々しい殺気を放つ骨の身の竜に敗北し、捕らわれ、踏み躙られていく未来の映像を。
「……ひぃ!!」
 一瞬で身体を動かす体温を全て奪い去られ、血の巡りは滞り血液を送る心臓は正しい律動を刻むこと叶わず。
 膝を着きながら自らの身を抱き、頭を掻き毟る竜の眷属トール・テスカコアトル(ブレイブトール・f13707)は思い出す。
 数多の戦場にて味わってきた敗北、蔑まれ、期待を裏切られ己の価値を全て認められない恐怖。
 心を打ち砕き、自らの命すらも認められなくなる哀しき寒気に彼女はすすり泣く。
 その傍らで、手に携えた大槍に灯る青黒い火炎が、儚く青の割合を強くしながら今にも立ち消えそうになっていた青年がいた。
 呆然と立ち尽くしたまま、何をしたくとも出来ない、動けない。
 ただ掌に感じる、不自然に蒸れた手袋の中の夥しい汗の微かな滑りと、歪んだ心臓の鼓動。
「――……ああそうか。俺は」
 自覚してしまった、動けぬ理由が分かってしまった。
「敗北が、怖いんだ」
 鬼桐・相馬(一角鬼の黒騎士・f23529)はその言葉を口に出してしまった。
 口に出せば出すだけ、煽られていく恐怖は彼の悪意を喰らい盛る炎を、小指の爪に満たぬ程に衰えさせていく。
 打ちひしがれる竜と鬼に、絞り出すように震わせた声を合成幻獣が発した。
「そんなの、当たり前だろ」
 宮落・ライア(ノゾム者・f05053)の声にトールと相馬は一斉に目を向けた。
 その彼らに目を向け返すでもなく、動けない自分達を攻めるでもなく、ただ悠然と立ち嗤いに歯を喧しく打ち鳴らす骨の竜を睨み付ける。
 届かなかったことも、膝を着いたことも何度もあった。
 勝てた戦いだって楽に進んだ戦いばかりではない――しかし、彼女にはあるのだ。
 敗北を恐れ、それでも戦い明日を、未来をその手にする為に立ち向かえる強さが彼女にはある。
「――お前達は、どうなんだ?」
 その覚悟は出来ているのか、と問うようにライアは相馬とトールに瞳を向ければ、トールが呟く。
「負けたくないよ……」
 だから戦いたくない、戦わなければ勝利も、敗北もない。
 自らが英雄を名乗る資格はないのかもしれない、恐ろしい竜の姿に心はもう……されど。
「でも」
 決して無視はできない小さな声、それを無視してしまえば本当に終わりだから。
 彼女は立ち上がり、気高さと何より尊き強さ(優しさ)を瞳の輝きに宿す。
「声が、聞こえる。助けてって――変身!」
 相対する竜の内側より響く嘗ての勇者たちの嘆きの声に答えるように、臆病であった竜は今こそ強さを身に纏う。
 振り絞った勇気をありとあらゆる、戦う為の力に変える英雄の鎧を纏い少女は歩み出す。
 その姿を見送りながら、傲然と立ち尽くしていた筈だった鬼は大槍の柄を握りしめた。
「――俺だけが動けない? 馬鹿言うな……」
 喰らわせる筈の悪意は奮起の力に変えて、自分だけが、という仄暗い怒りにも似た力は相馬の足を踏み出させた。
 一歩を踏み出してみれば、なんだ、どうということは無いではないか。
 歩ける、身体が動く、大槍が持てて目の前の恐ろしい竜を相手に戦える。
 次第に鬼の足取りも軽やかに、前に立ち竜と距離を詰める勇者と英雄に並び。
「絶対、助ける」
「必ず救って見せる!」
「それが……俺達の役目だ!」
「――手を下すまでもなきと思ったが乗り越えるか。だが貴様らのその怯え、現実として定められると知るが良い」
 恐怖を乗り越えた猟兵達を嘲笑うように、竜は翼を広げた。
 青く鮮やかなるその皮膜より現れ出でたるは、かつて竜に挑みし勇者達の霊魂。
 血涙にも似た赤い条を頬に浮かばせ、竜を倒す為に磨き上げられたであろう聖剣を振るう存在を竜は嗾けた。
「やめろぉぉぉぉ!!」
 かつての勇者達が望まぬ殺生を行う前に――勇者の剣を、当代の勇気ある竜は真っ向から受け止めた。
 悲痛の重い響きが奏でられる中、勇気ある阻止を行ったトールを骨竜は嗤う。
「泣いて恐れ、膝を着いた竜の出来損ないが」
「ッ……だから、だから、どうした! それは駄目なことなんだぞ! 怖いドラゴンめ!!」
 勇気ある者の栄誉と安らぎのある筈の死を弄ぶ。
 許されざる冒涜者は、勇者の哀しき剣を受け止めているトールを目掛け、非情にもその顎門を開き――
「――ああ、本当に良い悪意だ。怯えてた自分が勿体無い」
 そこへ真っ向から、迎え撃つように突き出されていた青黒い業火を盛らせる大槍が、骨竜の顎門を貫いた。
 妖しく輝く金色の瞳には、最早敗北の恐れもなく。
 ただ、竜の顎門を貫きながら、竜の骨を灰に帰す勢いで盛る冥府の火炎が踊る――こんなにも濁り切った悪意が相手ならば、もっと最初から向かっていれば良かった。
 唇を歪めながら骨竜の身体を蹴り付け、退避する相馬と入れ替わるように一つの影が走る。
 携えた大剣の、美しく緑に透き通る輝きの尾を残し駆け抜けるライアの姿が其処に在った。
「お前の力の源は呪いか。ならばこれは……痛いぞ」
 竜が噴き出す呪いの力を元に勇者の霊魂を鎧のように纏う――その姿に歯噛みしながらも。
 ライアは、英雄は立ち向かう――虜囚の運命を切り開き、死後の安らぎという道切り拓く刃を手に。
 操られし勇者の霊魂を一刀の下に流した後、滑り込むように――勇者の魂を呪詛で固めた竜を斬り裂けば。
 解放の聖剣は、魂を捉える呪詛断ち斬り勇者の魂を解放していき――力そのものを削られ、苦痛に喘ぎ膝を着いた竜へと。
「ブレイブ! スラーーーッシュ!!」
「――冥府に帰れ。安らかにな」
 勇気ある優しき竜の、恐れることそのものを断ち斬る剣の一閃が。
 突き出す槍の剛きと纏う冥府の業火は鬼の如く、古の勇者思う心仏の如くの羅刹の放つ炎が。
 同時に交錯して、呪骨竜の身体を物理の面で伏せるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
「厄介な場所ね。でも、ここを越えないと奴の首には届かないか」
荒野兵装で足を踏み入れる

花から香るのは匂いから、膝から崩れ落ちそうになる敗北感が胸を衝いた
自身の鍛え上げた技も力も、経験も装備も全てが脆く打ち砕かれ、地に付すイメージだ
培った矜持はへし折られ、反撃の意気地は踏み躙られて、相手の足を舐めて許しを請う己の姿が浮かぶ
妄想と言うには余りに生々しい

「でも……これが足を止める理由にはならないわね」

敗北感を越えて足を踏み出すのは意思だ
己の生き場と死に場は同じと心得、腕に刃を通す
滴る血で紅の戦化粧を施し、勇者の魂に問う

「無念があるなら、私に寄越しなさい」

出血を代償に“楔”の【封印を解き】、邪竜を討とう


弦月・宵
もしも負けたら、消えるモノが多いだろうね…
戦場に立つ時いつも思う。
負けない為に、どうすればいいだろうって。
でもそれは、負けるのが怖い事だって、ちゃんと分かってるから!
逃げたいなら、拒絶するだけなら、戦ってない。
強くなりたいとは望めない…っ

囚われたヒトは、負けた後にもずっと恐怖の中にいるんだね…
解放したい。だから恐怖にも呪骨竜にも立ち向かう!

攻撃は【UC:ゆるゆら】で金剛石を召喚する
硬さと鋭さを武器に、骨も翼も砕いてやるさ!
ブレスは吸い込む動作や、飛び上がる動作で回避を。
左右へ飛び退く際の目安は、羽ばたきの余波が届かない距離を
戦闘中に見て把握しとく。
あたったら、耳を傾けた上で乗り越える覚悟を。


キリカ・リクサール
約束の地…随分とロマンチックな名前だな
物騒な草花や竜がなければ随分と情緒溢れる光景だったろうに

敗北の恐怖か…負けるという事は確かに恐ろしい
どれだけ積み上げた物があっても、仲間達と絆を深めても、敗北は一瞬のうちに奪っていく
そう考えると確かに恐怖で竦み、逃げ出したくなるほど体は震える
だが、己の屍を戦場に晒そうとも想いを次に繋げる事は出来る
私もかつての仲間達から大切な想いを託され生き延びた
この託された想いを次に繋げる事が出来るなら、敗北は恐れる事ではない
囚われた勇者達を倒し、アンフェールに一撃を叩き込む

約束の花…フッ、美しく可憐な花だ
人の欲がこの美しさを曇らせるなら、ここで咲いていた方が幸せだろう



●もつれた糸を千切って今
 恐ろしき竜の群れる大陸、約束の地というどこか心擽る地名と鮮やかな花が咲く穏やかな平原。
 季節の花の彩美しく、見目だけならば戦場とは到底思えないだろうが。
「……こんなモノが無ければ、随分と情緒溢れる光景だっただろうに」
 現れた三つの華の一輪、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)の呟く顔色は華とは呼べず、風に乗りやってくる花の匂いが掻き立てるそれに鮮やかさを曇らせた。
 同様にして、ゴーグルの反射に瞳の色を隠しながら、膝を着いた才堂・紅葉(お嬢・f08859)が胸を掻き毟りながら言葉を必至に吐き出した。
「本当に厄介な場所ね。でも、ここを越えないと奴の首には届かない、か……」
 生存に乏しい荒野を生き抜くための重装備も、外の影響を阻むそれも内側から出でるモノに対してはどうしようもない。
 顔色は顔に差した紅が隠しているようで、着いた膝が震える様は湧き上がる恐怖を否応なしに示してしまう。
 目に映るのは穏やかな草原と美しき花々、されどその先で嗤う骨の竜に這いつくばり無様に爪先に口づけ服従の意を示す姿がありありと浮かぶ。
「怖いよね。いつも思うんだ。負けたら、消えるモノばっかだって」
 その傍らにて月・宵(マヨイゴ・f05409)が呟けば、花の甘い香の後に思い返す敗北と喪失のトラウマ。かつて己が手にし護り受け継ぐべきモノ。
 気が付いた時にはもう遅く、手にするべきモノの意味を知る前に全ては消え失せ、その意味を知った時には二度と取り返せないモノへの嘆きに身が置かれてしまう。
 否、後悔を出来るだけマシなのかもしれない――敗北は、その後悔できる時間すらも奪い去るモノだから。
「ああ……積み上げるのは時間がかかるが、崩れるのは一瞬だ。その一瞬で、その時間は全部無駄になってしまう」
 宵の言葉にキリカが頷けば、彼女も又自嘲しながら震える脚と血流の乱れた、蒼白する顔色に苦笑いを浮かべた。
 敗北のただ一瞬で、積み重ねてきた技術も誇りも、仲間との絆もまた崩れ去り取り戻すことも敵わなくなる時がある。
 妄想というにも生々しすぎる、培ってきた何もかもを踏み躙られ、立ち上がる尊厳を蹂躙される幻影が心を冒す。
 ――実際は、まだ戦ってすらいない。技も試していない、装備だって砕けていない。
 立ち上がる力もまだ十分にある、それでも消えぬ恐怖を誤魔化すようにキリカと宵に向けて紅葉は自嘲気味に笑った。
「……無様だったでしょう?」
「……いや」
「そんなことないよ」
 この自嘲を誰が嗤えようか、いや、無い。
 感じた恐怖は誰も皆同じ、されど――
「でも……これが足を止める理由にはならないわね」
 ゆっくりと腕に刃を通す紅葉に、宵は拳を握り決意を示した。
「――そう。逃げたいんだったら、戦ってない。強くなりたいと、望めないっ……!!」
 戦場に立つときに常に思うは、負けぬ為に何をするか――それは敗北を恐れるが故に。
 ただその恐れは蛮勇を諫め、勝利を確実にする為に――駆け出す宵と紅葉の背と、草原の傍ら、禍々しく心を吸い上げる美しき花咲く姿を軽くキリカは見やる。
「……フッ、美しく可憐な花だ。だからこそ、此処で咲いていた方がいい」
 種実を付けぬ徒花かそうでないか。
 答えを知らずとも、自分達は違う――共に戦った仲間の思いを全て託され生き延びた記憶がある、そして。
「――及ばずとも後に託せる。そうだろう?」
 自分に向けて確かめながら、彼女は駆け出す――竜が嗤い、嗾けた古の勇者の魂が振るった剣を、飛び蹴りの一撃だけで圧し折り。
 その勢いで追い打ちとして放った回し蹴りが、勇者の霊魂を吹き飛ばせば、吹き飛んだ霊魂を竜は掌で受け止めて――嘲笑うように骨の身に纏う呪詛で勇者の霊魂を苛める。
 その光景にあからさまな不快感を猟兵達は竜に向けるものの、竜はそれを意に介さず勇者の霊魂に爪を突き立てた。
「無念があるなら、私に寄越しなさい」
 その霊魂の苦痛を和らげるが如く、一歩を踏み出し声を張り上げた紅葉。
 救いを求めるように嘆きの声が響けば、強く握られ破かれた掌より滴る血を以て紅を差し刻み付ける――この無念を、この苦しみを、晴らす為に。
 捕えた魂へ呼びかける彼女の姿を不快に思ったか、竜はただ静かに眼を向けるも――
「太古より結集せし、大地の結晶よ!」
 ――流し切れなかった勇者の涙よ、今此処に在るように。
 虚空に数多に煌めく星々の如く、尖る金剛石の煌めきが乱れ、流れ星の群れのように堕つる。
 紅葉を爆破せんと、呪われた眼を向けた竜の視界を塞ぐように、金剛石の硬く鋭い刃は呪われた骨の身体に傷を刻んでいく。
 流石の竜も無視できぬ苦痛か、金剛石の刃に身を削られながらも務めて冷静に息を吸い。
 それと同時、竜が吐息を放つ寸前――後方へ宵は跳躍して呪われた靄を躱すも、僅かに吸い込んだ瘴気が彼女の魂を濁らせる。
「……だから、どうした」
 味わうは魂が引き千切られ自分が自分で無くなり、恐怖と苦しみの中に屈してしまうような感覚。
 ――勇者達は、それ以上の苦痛の中で戦って、今も恐怖の中で苦しめられているんだ。
 だから、負けてられない。
 改めて宵は湧き上がる呪いを決意で捻じ伏せると、残った金剛石の刃を一斉に嗾け、骨の身体を埋もれさせ。
「吹き飛べ。何もかも、な」
 この歪み切った愉悦も、皆を支配した濁った恐怖も――埋もれた竜の懐へキリカは一瞬で迫り。
 吐き出される言葉と全ての力を解き放った蹴りは、彼女の何倍もある筈の骨の竜の身体を吹き飛ばし、身体を構成する骨に嫌な音を響かせヒビを入れていく。
 ――そして彼女は視線を交わす。腕の杭撃ちに隠された神が如き力を解放した紅葉に託すように。
「弔い合戦は柄じゃないけど……!」
 寄越せと言って貰った以上、繋げなければ只の徒花。
 否、それにすら劣る花すら咲かせぬ――流れゆく血が命を奪う、体温を奪う、意識を溶け出させていく。
 それど敗北の恐怖は既になく、その魂に在るは邪竜討つ決意――その気高く強き意志を体現した杭が。
 戦友に託すように吹き飛ばされた竜の心臓へ、派手な音を立てて突き立てられた――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

プリンセラ・プリンセス
連携・アドリブ可

敗北への恐怖はこの群龍大陸からずっとついてまわっているものだ。
1年半前まで普通以下の少女だったプリンセラに実戦は常に死の恐怖がつきまとう。
更にこの後には仇である竜帝ヴァルギリオスが控えている。
竜帝との戦いを思えば敗北への恐怖は拭いきることはできない。
それでも剣を振るうのは義務感であり、覚悟であり、感謝であり、意思だ。
負けはしないと【覚悟】をすれば恐怖を克服することができた。

「だから私はここで立ち止まるわけにはいかないのです!」
【ダンス】と【グラップル】【第六感】を合わせて攻撃を踊るように回避。
龍勁次空裂断で霊諸共に【範囲攻撃】で【なぎ払い】


鏡島・嵐
おれは、戦うのが怖ぇ。
負けるのも確かに怖ぇことだけど、それ以前に戦うこと自体が怖ぇ。

こういう戦いで負けたら、どうなるんだろうな。
何を失うんだろう。自分の命か、誰かの命か。あるいは命以外の何かを手放さなくちゃいけねえのか。
……うん。そう考えると、確かに負けるんも怖ぇよな。

それでも、おれは逃げねえ。
負けるのがイヤだってだけじゃねえ。後悔するのがイヤなんだ。
こういう戦いには、きっと逃げ場なんて無ぇ。
だったら、血路を切り拓くしかねえってことだ……!

他の味方と歩調を合わせて、〈援護射撃〉や〈目潰し〉で味方を盛り立てながら、戦いを優位に進められるように。
負傷者は手が回る限りUCで治療。


トリテレイア・ゼロナイン
『敗北への恐怖』は私と常に隣り合わせです
騎士として誰かの…背後の人々の為に戦う者にとって、それは己の死だけでは無い悲劇を招くのですから
共に戦う者すら危険に晒すそれをどうして恐れないでいられましょうか

だから私は策を練り、布石を打ち、装備を整え、騎士として相応しからぬ行為にも手を染めるのです
守るべき物の為に、『めでたしめでたし』の為に!

囚われた勇者達の攻撃を●盾受けで防ぎ
物資収納スペース内の煙幕手榴弾を●投擲し敵を●目潰し
直後に装着UCで呪骨竜へ飛翔し煙幕の中から●だまし討ち

追加装甲での●シールドバッシュで体当たり後に●怪力で振るう剣で翼を叩き斬って空から落とし味方の追撃を援護します



●御伽噺
 ――誰かを護るべくして在る存在にしてみれば、敗北の恐怖というのは常に隣り合わせであった。
 誰かを護るべく在るということは、敗北をすればそれは自分だけで済む問題ではない。
「……私の魂とやらが、どうなるかは予測不能といったところですが」
 天空に身を置きながら現れた猟兵達を見下ろす骨竜を見上げ、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は鋼の身体を軋ませた。
 自嘲気味に肩を竦めたトリテレイアの隣にて、普段の戦場であっても無理矢理押し込めている筈のそれを色濃く出しながら、共に戦う友は呟いた。
「おれはそもそも、戦うこと自体が怖ぇよ」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は何時だって戦場に出れば、恐怖が襲い掛かってきた。
 どんな敵と相対しようと、決して拭えない恐怖――力を振るうことそのものが恐ろしく、約束の地に咲く花の香は否応なしにその恐怖を掻き立てる。
「それでも、この剣を振るわなければならない理由があります」
 プリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)は一年半まで只の少女であった。
 だからこそ分かる、常に付きまとう死の恐怖は誰よりも濃厚に――仇を討つまでは死ねない苦しみと、敗北にて終わる無念への恐怖が立ちはだかる。
 それでも、託された力は退くことを許してくれないし、それはまた己の意志であるから――
「行きましょう。立ち止まってはいられません」
「来たか勇者、否、我が餌よ。さぁ我が餌となりし者よ。うぬらの後輩に作法を教えるが良い」
 何処までも空で猟兵達を嘲笑い竜は体の中より取り出した勇者の魂を嗾けた。
 屈強な馬に跨り、突撃槍を片手に迫る哀しき魂の一撃を淑女の礼(カーテシー)一つ、ダンスを踊るように優雅に廻りプリンセラが躱せば。
 馬の霊が一つ嘶き急激に旋回し、新たに槍を突き出して反撃をすれば、立ちはだかるは強大な白き壁。
「お怪我は?」
「問題ありません!」
 城壁の如く大盾を持ち傷一つ付かず、騎士トリテレイアが姫を護るようにそれを庇えば、勇者の眼を癇癪玉が一つ弾け目を潰す。
 それを為した嵐は、声を張り上げ乍ら傍らに人魚を呼びつけると、
「無茶すんな。二人のように前には出られなくても、絶対支えてやる!」
 ――その調べは悲しく。
 ――その詞は切なく、その末期は儚く。
 ――痛みを遙かに運び去る。
「おやすみなさい、勇者よ」
 大海の姫君の歌声に背中を押されながらプリンセラは剣を握り真っ向から勇者の霊魂に立ち向かう。
 振り上げられたランスを剣で流し、ランスの重量による反動を癒しの歌でカバーしながらプリンセラはそのまま、流れるように赦しを与えるように勇者の霊魂を斬り伏せる。
 同じくして人魚の歌声による援助を受けたトリテレイアが
「かたじけない。……騎士としてらしからぬ行為かもしれませんが、守るべきものの為です!」
 傷一つ無くとも僅かに走った衝撃に歪んだ関節が、癒しの歌声を受けて元の、否、それ以上の滑らかさを取り戻していく。
 そのまま流れるように内部格納庫から取り出した煙幕弾を竜へと投げつければ、竜が回避を試みる。
 当たらないか――そう思われた瞬間、正確にスリングショットでトリテレイアの放った煙幕弾を嵐が撃ち抜けば、爆ぜて広がる煙が竜の視界を覆う。
(流石の全世界サイボーグ連盟メカニック班の技術力、良い仕事ぶりですね……)
 その間にセンサーが煙幕の中に混乱する竜を捉えつつ、新たに纏った装甲とスラスターを噴き上げ煙の中をトリテレイアは飛翔する。
 ――後は扱う自身の技量だが、心配はいらない。
 後ろで援護する者と、自分に及ばぬ者を託せる者がいる、ならば……と空を翔けて、トリテレイアは増した装甲を音を超えた速度を以て骨竜へと叩きつけた。
 勇者の一撃すら通さぬ守護騎士の防護はそのまま敵を打ち据える矛となり、加わった速度は骨の身体を粉に変えていく。
 決して軽くない損傷に於かれながらも、呪われし骨の竜は煙幕を翼で払いながら嘲笑う。
「――随分と卑怯な真似をするのだな。堂々と戦えぬ臆病者が」
「守れる者を守れない恐怖よりはマシというもの、です!」
 騎士の情と機械の理性、相反するそれを同居させ、昇華させる。
 だからこそトリテレイアは準備を整え、策を練り布石を打ち、らしかぬ手――この場合は投げつけた煙幕か――にも手を染める。
 今更、竜の嘲笑などに揺るがず――嘲笑しながら苦痛に呻く竜の、人を嘲笑う為の片翼を、剣で斬り落とす!
 苦痛の叫びを挙げながら、体勢を崩し自由落下を始める竜を後目に、トリテレイアは地にて剣を構え待つプリンセラに声を掛けた。
「騎士として姫に後を任せるのは聊か心苦しいですが……頼みます! 物語を、めでたしめでたしで終わらせる為に!」
「全力でやってくれ! おれは逃げねぇ! 何があったって、最後まで……!」
 ――出来ることは少ないのかもしれない。
 自分に出来ることは、嵐にできることは、召喚した人魚に癒しの歌を歌わせ負傷を押さえ、時に援護射撃を行うこと。
 ――だから、なんだ。
 出来ることが少ないからは理由に非ず、【殆ど出来なかった】と【全く出来なかった】は大きな違い。
 全く出来ずに逃げる後悔よりも――!
「そこだ!」
「はいっ!!」
 反撃のブレスを放たんと開かれた竜の顎門に、嵐は癇癪玉をスリングショットで打ち込めば、竜は更に空中で体勢を崩し自由落下を加速させる。
 その機にと、只の姫君(プリンセラ・プリンセス)は剣を握り駆け出す。
 ――この先の戦いで待ち受ける、真に討つべき竜はきっと、今よりもずっと恐ろしいのだろう。
 それでも進まなければならないのだ。
 この命ある限り、無力な姫であった少女を支えた兄姉への感謝と、応える義務と、意志に従って。
 故に。
「だから私はここで立ち止まるわけにはいかないのです!」
 失われた皇家の刃が一つ閃き、自由落下に悶えながら勇者の魂魄を出した骨竜へ、輝ける軌跡が走る。
 走らせた剣は遠近法を無視し、目に収めた竜を丸ごと斬り伏せるように――朧げな魂魄を解き放ち、骨の身を断つのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
よく笑い話で「砂糖と塩を間違える」ってあるけどさ。
あれ、実際にやってみるととても食えたものじゃなくなるんだぜ?
ちなみに俺は経験済みだ。アイスコーヒーで。
それと同じで、【料理】ってのは失敗を重ね、失敗と向き合う事で上達していくんだ。
失敗するのを恐れたり、失敗を認めなかったりしたら絶対料理は上手くならない。

敗北も、それと同じ。
それを恐れたり、目を背けていたらこの世界もかつての勇者達の魂も救えない。
だから、幾多もの敗北を【勇気】と【気合い】で乗り越える!
囚われた魂達を【飢龍炎牙】で焼き払いながら突き進み、呪骨竜に炎の龍の攻撃と共に炎の【属性攻撃】を付与した大包丁の【二回攻撃】を叩き込む!


シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
ドジや失敗ばかりのボクだけど、やっぱり負けるのは怖いよ
心が折れて立ち上がれなくこともあるし、
過去の記憶に足が止まることだってある

だけど、一番怖いのはそれで何もできなくなっちゃうこと

だからいつもみたいに隣のパートナーと【手をつなぐ】ことで【勇気】を分け合いお互いを【鼓舞】し合う
ボクたちなら、どこへでも、どこまでも行ける!
【エクストリームミッション】を発動させて勇者の霊を【クイックドロウ】+【乱れ撃ち】で蹴散らしながらウィーリィくんと一緒にボスの元を目指し、その周りを高速で飛び回りながら【クイックドロウ】+【スナイパー】でボスに攻撃を集中!
炎龍と宇宙鮫の必殺コラボ、お見舞いするよっ!



●少しずつ積み重ね
 芳しい花の香の筈なのに、心の華やぎも落ち着きも齎してはくれず。
 ただ血の巡りを阻み体温を急速に奪っていく――心が折られ踏み躙られ竜の餌食となる未来が、ありもしない筈の幻影が浮かぶ。
「これは笑い話なんだけどさ」
 それを誤魔化すように、少年ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は笑う。
 ――隣の少女とつないだ手に、振動が振動を煽り共に震えるのは、胸中を物語るものであるが。
「意外とやっちまうんだ。……砂糖と塩を間違えたことがあるんだ、俺」
「……うわあ。都市伝説じゃないんだ、それ」
 少女シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)は震える手と裏腹に陽気に笑って語り出す相方に、不器用に微笑んでみせた。
「アイスコーヒーでな。とても飲めたもんじゃなくなった」
「当たり前だよ!!」
 ちなみに少量であるならば美味にはなるものだが、砂糖の心算の量ならば確かに味わいを壊すだろう。閑話休題。
 ――震える手は少しずつ収まっていくのが、都市伝説めいた失敗談に笑い合えているから。
 珈琲色の肌を仄かに赤らめ、改めてシャーリーはウィーリィの掌を強く握った。
「……でも、怖がってたら何もできない。料理だって上達しない、でしょ?」
 ――ボクだって、何度も失敗して立ち上がれなくなったことがあった。
 けど怖がっていたら本当に何も出来なくなるから、それが本当に一番怖いことだから。
 だから……いつものように、彼と手を繋ぎ勇気を分け合って、分け合った勇気を燃やす。
 ――嗤い声を響かせた竜が嗾けた、哀しい魂を解放する為にも。
「その通りだ。行くぜシャーリー!」
「うんっ!!」
 離した手に残る温もりと、繋ぎ合わせていた手に滲んでいた汗が風に煽られて気化熱で体温が奪われる。
 でも奪われて尚、立ち向える勇気は消えない――その勇気を纏うように、鮫型の単車を鎧として纏うとシャーリーは天高く飛び。
 嗾けられた勇者の魂が錫杖を振り上げ、魔術を行使せんとすれば、それよりも早く突き出した銃口と放たれた熱線がそれを撃ち落とし。
 大地を翔る勇者達の一部を、注ぐ熱線が次々と滅していく。
 その豪雨の中、ウィーリィは大包丁をその手に、嘲笑うように騒めく草草を踏み駆け抜けて、血涙を流す勇者達に立ち向かう。
「喰らい尽くせ、炎の顎! 勇者達の悲しみを、全部喰らい尽せ!!」
 足元で煽る草を鞴で風を送るように踏みしめ、ウィーリィは大包丁を真横一文字に振るう。
 すれば舞い踊る竜の姿象る業火が、迫りくる屈強な勇者の魂を浄化の炎で焼き尽くすように踊り、勇者の悲しみと苦しみを解き放つように彼らの魂を天に召して往く。
 それでも呪骨竜が嗤い、新たな勇者の魂を腹から呼び出さんとすれば、真横を飛ぶシャーリーの、亜音速が生み出す風圧が竜の集中を掻き乱し。
 目を向けた呪骨竜に、更に真っ直ぐに銃口を突きつければ迸る閃光が金属すら凌ぐ骨の身体をいとも容易く貫き、その身を追い詰めていく。
 そのまま更に駆け出すウィーリィの操る炎の多頭竜が、その牙を次々と骨の身へと突き立てる――!
「グガアアアア!!」
 穿たれた孔に流し込まれる灼熱に、苦悶の叫びを響かせる骨竜をウィーリィとシャーリーは真っ直ぐに見据えた。
「「炎龍と宇宙鮫の必殺コラボレーション」」
 ――こうして相対していても、竜の身体から咲く花は尚濃厚に敗北の恐怖を煽る。
 伏せた勇者の魂と同じような目に遭うのかもしれない。
 しかし――怖いと分かって向き合えている限りは進める、受け入れてしまえば意外と進める。だから。
「味わう覚悟は……」「あるよなぁ!!」
 シャーリーの放つ弾かれるように爆ぜた熱線の嵐が、悶える竜の身体をその場に縫い付けるように降り注ぎ。
 竜の業火を宿したウィーリィの大包丁が、昇り竜の如く呪骨竜の身体を強く強く駆け登っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

玉ノ井・狐狛
※アドリブ/連携などお任せ

“敗北への恐怖”――たしかに勇者っつうヤツらには効きそうなネタだ
ああいうヤツらは、ほかの連中のコトまで背負い込んだりしがちだしな

けどよ、相手が悪いぜ呪骨竜サマ?
賭博師ってのは、普段から勝ちか負けかの世界でな
負けたらヤバい目に遭う、ってな脅しも常套手段

つまり
第一に、その“恐怖”にゃ慣れている
第二に、負けそうだろうが怖かろうが、顔に出したり、頭が鈍るようじゃァ務まらない

▻挑発して打撃ではなくブレスを誘う
◈UC▻呪詛▻呪詛耐性▻オーラ防御で対処してバフを得る

▻破魔で呪いを否定して相手の力をダイレクトに削る

……これがくだんの花か
あのドラゴンに弔花は要らないだろ、貰っていくぜ


ノネ・ェメ
連携、アレンジ歓迎


 わたしの信条は戦わず、戦わせない事。それだけに、こうして戦火の真っ只中まで出てきては、いつやられてしまってもおかしくない。その自覚もあるから、いつだって内心は恐怖しかなく。今日こそ何かから目をつけられて、今日で全てを終らされてしまったらどうしよう、って……。

 だけど、そんな恐怖が隣合わせであったとしても、そこに居続ける方がまし、なんだもん。争いは起きて、負の連鎖は続いて。終わらないんだもん! もう見てるだけじゃいれない、それだけ。

 呪骨竜さんにも戦いの制止を訴え、UC発動。それで止まってくれれば、心地の良い音楽や環境音を。そうでなければ、スローモーションになってもらいます。


セツナ・クラルス
敗北の恐怖、か
…そうだね
自慢じゃないが、私は弱い
(言い切った)

しかし、
そんな私だからこそできる秘策があるのだよ
おいで、あなたの罪は私が平らげてみせよう
敵から目を逸らさず全ての攻撃を受け止める

このUCを使用すると常に思い知らされる
心乱されれば、無抵抗の私はその瞬間に刈り取られてしまうだろう
…本当に、恐ろしい
が、私がいつまで希望を抱き続けることができるのかを知りたいという気持ちも同じくらいあるのだよね
このUCを発動することにより自分の覚悟を命を賭けて再確認することができる
ふふ、私は根っからの博打好きなのかもしれないね

攻撃を全て受け流すことができたら、
破魔の力で敵の呪詛を跳ね返そう



●さも当然のように
「随分と余裕に見えるな」
 翼折れて尚、かたかたと髑髏笑うように歯を打ち鳴らす呪竜は、やってきた猟兵達へ嘲りの念を向けた。
 黒衣の聖者ことセツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)はいつものように、変わらない穏やかな微笑みを顔に張り付けながら、恐ろしく歯を打ち鳴らし恐怖導く花の方向を放つ竜に向かい合う。
「いやいや、こう見えても凄く恐ろしい。何せ……わたしは、弱いんだ」
 自慢じゃないがね、と笑うセツナはとてもそうは見えず、体の震えらしきモノすらローブに隠されて窺い知ることも出来ず。
「試してみるかい?」
 細められた黒の瞳と、骨の竜の輝く瞳が暫くの間交錯し合う。
 呪詛を籠め爆破することも容易いが、得体の知れぬ何かを竜は感じ取ったか、竜は肩を竦めて瘴気に満ちた溜息を吐いた。
「やれやれ、当代の勇者(エサ)は恐れを知らぬ蛮勇揃いか」
「ンな高尚なものじゃない」
 同様に肩を竦めるノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)の顔色にも、恐怖による汗の滲み見られど、それに依る停滞は見られない。
 何故ならば狐狛にとって、勝負師にとってこの恐怖は日常にしか過ぎない。
 勝負師にしてみれば、勝つか負けるか得るか失うか――喪失の恐怖など、慣れ切った日常であり、敗北に依る喪失は受け入れねばならない。
 それが勝負師という人種なのだから。敗北は常に全てを失うことと隣合わせの身は、決して揺るぐこともなく。
 ただ、その一方で青い髪を揺らし身体を震わせる女は――ノネ・ェメ(ο・f15208)は呟きと共に湧き上がる恐怖を認めた。
「……わたしは、怖いよ。戦いたくない、戦わせたくない」
「では無抵抗のままにそこで果て、苗床となるが良い」
 竜が嗤う声は悍ましくノエの魂の奥底を震わせ、嫌な寒気を齎す。
 戦火の真っ只中にいれば何れ命を失い、全てが終わる――自覚があるからこそ、何より恐ろしい。しかし。
「だけど、怖いけど、居た方がマシ! 見てるだけじゃ、いられないんだもん」
 どう足掻いても負の連鎖は収まらない。戦いがあれば赴く者が居て、何かを得る者と失う者が出て終わらない無限の円環。
 戦いたくない、戦わせたくない。気高き非戦の意志があっても、誰かが何処かで争いを起こす――それでも。
「分かってる! 分かってるけど、でも言うよ。戦うのもう止めよう? それよりも、みんなで楽しい音楽を聴いて――」
 ── tʃɪ́lɪn’zǽpɪn’──
 奏でられる楽曲が齎すは穏やかな一時。敵を前にして戦わぬ勇気ある選択を為した者には心踊らせ楽しみの花を咲かす調べ。
「いいねぇ。全くもって風流って奴だ」
「ああ、心地良い。心が洗われるようだ」
「――嗚呼。喧しいな。うぬらは遠足をしに来たというのか。不愉快だ」
 ――心地よき浄化の調べも竜に届くことはなく、調停の音色は竜の不快を只煽るだけの結果に終わる。
「……仕方ないね。ではおいで。戦わずに済むなら良いけれど、望まないなら私が受け止めよう。受け止めて、赦そう」
 美しき調べの中、踏み出さんとする動きも今や遅く、それでも庇うようにセツナは前へ出でると、両腕を広げた。
 何もかもが緩やかな停滞の中に置かれる――それは非戦を訴え奏でる歌い手の奏でか。
 されど今更に非戦を受け入れることも叶わず、ただ全てを呪うかの如き視線をセツナに向ける。
「何故うぬらは動ける」
「私にとっては戦いじゃないからさ」
 聖者にとっては嘲笑と暴力という罪であっても、それを赦すことが定め。無抵抗の儘に攻撃を受け、呪詛の眼差しが身体を弾けさせようと、ただ聖者は笑って受け入れる。
 瞳より放たれる光は余りにも遅く、されど全ての力を抜いて受け入れるセツナに竜は更に戦意を高める。
「もうやめな。アタシはンな恐怖にゃ慣れてるし……もう、勝負にすらならねーだろ」
 態々そんな相手を毟ることはない。
 博徒のせめてもの情け在る提案すらも、竜は突っぱねると、その矛先を緩やかに狐狛へと向ける。
「それでもやるってのかい? けど……相手が悪いぜ、呪骨竜サマ?」
 緩やかに開かれる顎門に渦を巻く呪われた波動を見、狐狛は呆れたように肩を竦め内心で呟いた。
 ――ああ、コイツも負けたってことか。
 認められないという恐怖への敗北か――放たれる呪詛の吐息を、呪詛返しの皮膜で容易く防ぐ。
 穏やかな奏でを楽しめぬ竜の動きなど止まって見える、呪詛返しの術を全て巡らせるには十分過ぎたのだ。
 そして――その隣には、爆発が晴れながらも無傷で竜の光線を受け切っていたセツナの微笑みが共にあり。
「――ふ、ふふ。ああ、命がけだ。やはり私は」
「根っからの博打好き、かい? ま、嫌いじゃないぜこういうの」
「その通りだ。さぁ君を赦そう――」
 呪詛を受け止めていたセツナがそれを破る聖なる輝きを放てば、同様に狐狛もそれと重ねるように魔祓の力を放つ。
 奇しくも呪詛返しと破魔を備えた両者の放つ術が、呪われし竜を蝕み、その力の根源を削り取っていく。
「……人を呪わば穴二つ、か」
 和やかな調べを終え、膝を着き虚ろな眼で胸を抑える骨竜の身体を見ながら、ノネは何処か悲しみを瞳に湛えて呟いた。
 応じる勇気が無く、ただ呪ったが故に自らも呪われた竜の姿に憐みすらも覚えながら。
「貰ってくぜ。こいつの弔花には要らないだろ」
 膝を着き、動きを止めた竜の傍らに咲く約束の花を毟りながら、狐狛が吐き捨てるように語り。
 掌に咲く心喰らいの花弁を眺めつつ、狐狛は竜に背を向けて、同時にセツナがノネに後は他に任せよう、と語りつつ。
「災難だったね。また改めて聞かせてくれると嬉しい」
「……」
 頷きを一つ歌い手が聖者に返しながら、痙攣しながら苦悶の中に身を置く竜を後目に。
 差し出された手を拒んだ勇気無き竜の様を見送りながら、彼らは場を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月凪・ハルマ
◆POW

……確かに、敗北する事は怖い
いくら実戦経験を積んだとしても、恐らく
この怖さは消える事はないだろう

オブリビオンに負ければ、大事な物や人、或いは
世界そのものが失われるかもしれない

痛い目に遭って、自分の命を失って、結局それが全部
無駄な事になるかもしれない


――それでも、戦わなければ護れない。だから、俺は戦う
その為の【覚悟】はとうに済んでいるよ

……きっと勇者達もそうだったんだろう
だからこそ、その魂を弄ぶこの竜を許してはおけない

【雷光手榴弾】を投擲
UCの効果と発生する光と音に紛れ、【迷彩】を発動

姿を消した後に【忍び足】で敵の死角に回り込んで
魔導蒸気式旋棍の連打(【早業】【2回攻撃】)を叩き込む


ティアルム・アヴァターラ
「恐怖、ねぇ」

自分は元とはいえ『邪神』である。そんな物とは無縁だ。敗北が怖い? 生まれ出でた時から、世界に敗北しているこの身だから

「そうそぅ、負けるのが怖いからこそ、『嫉妬』してぇ。負けないように、自分以外の全てを飲み込みたいんだからねっ」

マイナスの感情を操る程度で、元よりマイナスな自分を倒せるとはちゃんちゃらおかしい

「弱さにつけ込むだけの雑魚はぁ、引っ込んでいなよっ☆」

呼び出したペットのレヴィと連携して、攻撃を叩き込む

※アドリブ連携歓迎です


フレミア・レイブラッド
敗北…確かに怖いわね。自身の命を失ってしまう事は勿論、負ける事で残される大切な者達や守る事ができず不幸になってしまう人達がいるのが怖いわ…。
でも、負ける事が怖いからといって戦わない選択は無いのよ。戦わなければ何一つ自身を貫けないし、守る事もできないのだから。
だから、怖くてもわたし達は戦うのよ!

自分の心と向き合いながら戦う理由を見つめ直すわ。

【真祖の吸血姫】を発動。
【念動力】で竜本体や勇者達の動きを束縛しつつ、高速で接近。
敵の攻撃を【見切り】ながら急所に魔槍を叩き込み、【力・魔力溜め、限界突破】による全力の神槍グングニルを叩き込むわ!

魂囚われし勇者達…貴方達を解放するわ。今、ここで…!



●決着
 立ち尽くしていた竜がふと、目に夥しい激情を宿したように輝きを放ち吠える。
 大気を震わす音波と、騒めく草花の調べが場に新たに現れた猟兵達に悍ましい敗北への恐怖を煽っていく。
「恐怖、ねぇ」
 ティアルム・アヴァターラ(其ノ罪ハ、母ナル『嫉妬』・f26285)は湧き上がる感情と、自分自身の存在を見比べるように息を吐いた。
 ――何を今更。
 恐怖と共に生まれ、敗北から生まれた邪な神は常に共にあったというのに、今更それに屈することがあるだろうか。
 ただ其処に在るものとして受け入れて、柳のように恐怖の波動を流すティアルムとは裏腹に、少年は拳を胸の前で握り呟いた。
「……確かに、敗北する事は怖い」
 月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)の呟きに対し、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)が沈痛な面持ちで続けた。
「ええ、怖いわ。負けるのは勿論だけど、それがわたし達だけで済まないのも」
 少なくとも今、こうして猟兵としてオブリビオンと相対している以上はこの世界に住まう力無き者の為に。
 敗北の末に待ち受けるのは、守ろうとした者が情け容赦もなく蹂躙されて自分の命を賭した行為すら無と立ち替わる。
「けど、それでも。戦わなければ護れないものがある」
「そうね。進まない選択肢は無いわ。……行けるかしら?」
 横眼で見やるフレミアに静かにハルマが頷くと、彼は懐から手榴弾を象った機構(ガジェット)を取り出した。
「――覚悟は、できてる。だから、少しばかり、派手に行こうか!」
 放たれるは戦いの最高潮を示す花火のように、投げ放たれた手榴弾型の機構が一瞬輝くと、戦場を埋め尽くす白き閃光。
 込められた雷が、裁きの雷が、魂を不当に弄ぶ竜を打ち据え邪な力そのもので作られた身体を削っていく。
 その閃光の中、ハルマは光に身を溶け込ませて戦場を駆け抜ける。
 その立ち込める閃光の中、二人の決意を聞きながら象徴する心を燻らせていた神は笑う。
「いいねぇ、羨ましいねぇ! こんな素敵な理由みたいなのがあって! 負けるのが怖いからこそ、ボクは『嫉妬』してぇ。負けないように、自分以外の全てを飲み込みたいんだからねっ」
 ――甲高く笑う姿が気に障ったか、それとも得体のしれない恐ろしき何かへの恐怖を覚えたか。
 骨の竜はその顎門を開くと、呪われた靄を渦巻かせ魂を引き裂く吐息を吹き付けんとするが――
「弱さにつけ込むだけの雑魚はぁ、引っ込んでいなよっ☆ ――みっともない」
 右足に仕込まれた至宝(メガリス)が一つ駆動し、高圧の水流を噴き上げれば竜の放つ吐息を相殺せしめ、放たれた圧は竜の翼を落し。
 そのまま呼びつけた剛腕と翼を生やした蟲――六十を超える数のそれを嗾け、骨の竜を押さえつける。
「我に眠る全ての力……真祖の姫たる我が真の力を今ここに!」
 その隙にフレミアは自分に秘められた全ての魔力――吸血大公と呼ばれし強大な吸血鬼の血を、その力を全て引き出す。
 迸る圧倒的な魔力は古の魔神すらも凌ぎ、滾る膂力は最高位の竜にすら凌ぐ貴き血の力を以て。
「怖くても戦うしかないのよ。そうしなければ、何一つ得られないのだから!」
 一瞬の内に蟲に捕らわれた呪骨竜に、瞬間移動もかくやの速度でフレミアが距離を詰める。
 蟲の剛腕に捕らわれ、身動き一つ取れぬ竜に勢いよく槍を突き立てれば、それを軽く捻り竜の身体に大きな風穴を開ける。
 堪らずに持ちうる呪詛を振り絞り、体の自壊も厭わずに腕を振った竜が纏わりつく蟲諸共フレミアより逃れると、高く吠えた。
 竜が吠えて体内より無数の勇者の霊魂を呼び出す、正しく総力戦――余裕の無きの表れか。しかし。
「やっちゃぇ、レヴィッ☆ ――ああ、本当に……こんなにっ! たくさんの取り巻きっ! 羨ましいッ、妬ましいッッ!!」
 哀しく血涙を流す姿で大地を蹂躙しに掛かる姿と、悍ましく吠え開かれた顎門に呪われた靄を生み出す姿を嫉妬の邪神は存在意義(レゾンデートル)の感情をぶつけると。
 邪神の加護与えられし大王具足虫の如き謎の怪物達が、開かれた顎門を強引にその剛腕で閉じさせ、鋏を骨の身に突き立てながら纏わりつく。
 絶え間なく動かされる鋏が、骨の身体を苛めヒビを入れつつこの場に拘束し――ここで閃光に紛れ、機を伺っていたハルマが勇者の間を擦り抜けながら呟く。
「……あの勇者達だって、そうだった筈だ。それを……!」
 恐怖を知りながら恐怖に抗い、強大な敵に立ち向かい、各々の思うモノの為に戦った。それを弄び思うがままに奴隷のように行使する――許される要素が、何処にあるのだろうか。
 名状しがたき怪物めいた蟲が呪骨竜の身体を押さえ付け、骨を軋ませる音の中、気配を消していたハルマが竜の背を駆け登る。
 その腕に持つ旋棍に彼の心を表すような蒸気を噴き上げながら一つ、旋回による勢いを乗せた殴打が頸椎を強かに打ち据えて。
 二つ。その頸椎へ、軽い跳躍らの全体重を乗せた旋棍の殴打を強く、強く押し込み――竜の身体を盛大に地面に叩きつける!
 血涙を流し続ける勇者が嫌々ながら竜を助けんと踵を翻しても、それは迸った不可視の力場によって押さえつけられて。
 そして――それを為した鮮やかな真紅の光芒纏うフレミアが弓引き絞るように必滅の槍を構えて。
「魂囚われし勇者達……貴方達を解放するわ。今、ここで……!」
 竜の抗議の雄叫びが挙がるよりも早く、突き出された真紅の槍が。
 限界を超え、後先を考えぬ程に束ねられた莫大な魔力の、破壊力の塊が竜の身体を一瞬で貫けば。
 走った衝撃はヒビ入った身体へ亀裂を広げさせながら、迸る魔力がヒビの隙間より輝き、そして――
 目も耳も眩む轟音の中、迸った真紅の光の柱の中に竜の身体は宿り花ごと塵へと還る。
 立ち上る光の中、恐怖を乗り越えた猟兵達が見た者は……全てから解き放たれ、とても安らかな微笑みを浮かべたかつての勇者たちの姿であったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月18日


挿絵イラスト