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帝竜戦役⑪〜その歌はまだ聞こえるか

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #帝竜 #女媧 #群竜大陸 #銀の五月雨

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●無限氾濫瀑布
 郡竜大陸、無限氾濫瀑布は常に雨となって地上に降り注ぐ無限の瀑布である。
 それは絶え間なく降り注ぐ。
「何故、抗う。生命よ」
 そこに君臨するは、黄金の飛翔竜。その黄金の体は禍々しくも美しき巨躯。全長10kmにも及ぶ姿は、瀑布にありて金属の体を輝かしい金色に光り輝かせている。
「偉大なるヴァルギリオスの『再孵化』によりて、我は全てを理解せり」
 降り注ぐ瀑布から齎される圧倒的な水量によって大地は常に雨が降り注ぐ。それはまるで生命を謳歌する原初の水の如く。
「我らオブリビオンこそが、この世界の真なる主」
 黄金の飛翔竜の名を女媧。帝竜『女媧』。その言葉は絶対者たる者の言葉である。
「過去と死は、既に確定したものであるがゆえに、絶対の概念である。未来や生命のように、世界をおぞましき不確定要素で汚し事などない」
 女媧の体が震える。
 それは憤怒である。己の掲げる絶対の概念に泥をつけるが如き存在を認められぬが故の憤怒。許してはおけぬ。

「生命よ、消えよ!」
 女媧の咆哮が無限氾濫瀑布に響き渡る。大気を震わせ、止まぬはずの雨が一瞬ではあるが消え去るほどの咆哮が放たれる。
 それほどまでの憤怒。生命への憎悪。
「汝に力あらば、そのおぞましき肉や意志を捨て、オブリビオンとなることもできよう。我らに勝つことなど出来ぬ。下らぬ児戯を辞め、潔く死を受け入れよ!」
 女媧の咆哮は怒り狂う感情のままに生命という生命を冒涜する。
 生命よ、疾く絶命せよ。

●帝竜戦役
「お集まり頂きありがとうございます。4体目の帝竜、女媧の出現が確認されました。場所は無限氾濫瀑布。常に雨が降り注ぐ大地にて、かの帝竜を討ち果たして頂きたいのです」
 グリモアベースに集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えたのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)である。
 帝竜戦役が勃発してから、猟兵たちが遭遇した帝竜は4体目を数えた。
 此度、無限氾濫瀑布にて彼らを待ち受けるのは、黄金の金属竜『女媧』。かの竜は全長10kmにも及ぶ巨体を持つ。
 生命体を憎悪し、災厄を撒き散らし虐殺を敢行しようとしている。

「この帝龍は理由はわかりませんが、ひどく生命に対して悪しき感情を持っているようです。それは執拗なまでに生命を憎む感情だと言えるでしょう。2対の宝珠からは知性在る生命体を全て殺す光を。八尾を備えた物言わぬ妖狐の女性を呼び出し、自身を操らせることで能力向上を図ったりと、その能力は凄まじいの一言です」
 さらに災厄の嵐とも言うべき自然現象と属性を合成した減少を発動することもできるのだという。
 まさに生命全てを憎む災厄そのものであると言えよう。

 だが、ナイアルテは断言した。彼女の瞳は今までにないほどに煌々と輝いていた。
「帝竜たちは全て、必ず先制攻撃を加えてきます。これに対策を打ち出し、防御し、反撃しなくてはなりません。どれだけ強大な能力を持っていたとしても、私達にはユーベルコードがあります」
 そう、帝竜たちのユーベルコードは、必ず猟兵たちに先んじて発動する。
 これらを如何に防御し、受け流すかが問題となる。一方的にやられてしまっては、どれだけ強力なユーベルコードがあろうと唯ではすまないだろう。
 それでもナイアルテの瞳は輝く。

「それでも、と私は言うでしょう。敵は強大です。それでも、皆さんには出来ます。生命の営みを下らぬ児戯と言い放つ女媧には聞こえないのでしょう。皆さんの、私の、世界に住まう人々全ての胸に打つ生命賛歌の鼓動を!」
 生命全てに宿る鼓動。
 その鼓動をリズムだというのであれば、生命在る者たちが歩む道程は楽譜である。それを奏でるのは、その人生を生きる者に他ならぬ。
 それ故に、人はその歌を生命賛歌と呼ぶ。まだ聞こえるだろう、その歌が。

 ナイアルテは猟兵たちを頭を下げて見送る。
 彼女は信じている。送り出した猟兵達の胸に宿る歌を。彼らの生命讃歌が、かの生命を憎悪する帝竜『女媧』を必ずや打ち倒すと。

 全ての生命の歌を護るために、戦え猟兵―――!


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『帝竜戦役』の戦争シナリオとなります。

 無限氾濫瀑布へ進撃し、帝竜『女媧』を打倒しましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』
 (敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)

 それでは、帝竜戦役を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『帝竜女禍』

POW   :    抗体霊波光線
【宝珠から、知性ある生命体全てを殺す光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    まことのあるじ
【八尾を備えた、物言わぬ妖狐の女性】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ   :    災厄の嵐
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:佐々木なの

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

秋月・信子
・SPD

生命体を憎悪し、災厄を撒き散らし虐殺する帝竜…
戦いましょう
全ての生命の歌を、護るために

戦場は水上と上空
それなら、スーツの反重力装置を作動
これで【空中戦】と【水中機動】に対応させ、水上でも【ダッシュ】、空中でも【ジャンプ】ができます
帝竜の攻撃は【情報収集】した解析を元に回避し、操る妖狐を銃で牽制します

『随分デカいガラクタね。さっさと鉄屑にするわよ』
私の影より、姿は瓜二つですが性格は真逆の影、姉さんと呼ぶ二重身と合流したならば、攻勢に転じます
『まずは、あのデカい的な珠を撃つわよ。同時に撃って注意が反れたら眼球にもう一発、いいわね?』
呼吸を合わせた連携攻撃、【鎧砕き】の魔弾を同時に撃ちます



 無限氾濫瀑布により降りしきる雨は大地を潤し、生命を育む。
 その生命の循環を拒む者もいる。帝竜『女禍』。その咆哮は、ありとあらゆる生命体に対する憎悪に満ちていた。
 何故生命に対して、そこまで憎しみを募らせるのかはわからない。だが、まだ聞こえるのだろう、その歌が。
 その歌は、鼓動。生命の脈動たる鼓動は、きっと帝竜『女禍』の耳を、そして過去の化身たるオブリビオンである身を粟立たせる。
 かの帝竜にとって、過去と死こそが絶対である。確定したものであるからこそ、美しい。それ以上もそれ以下もない。進化もなければ、劣化もない。
「生も未来も、死と過去という絶対の前には不確定そのもの―――混沌である!そのような混沌の寵児に、我は絶対なる死をくれよう!過去こそが永遠に変わらぬものと知れ!」 
 黄金の金属竜は無限氾濫瀑布を我がものとするように飛翔する。
 可能性閉じたる灰色の永遠を美しいというのであれば、知れ。生は終わる。未来は過去になる。だが、一瞬の煌きにも似た刹那の輝きであるからこそ、生命は虹色に輝く。

「生命体を憎悪し、災厄を撒き散らし虐殺する帝竜……戦いましょう。全ての生命の歌を、護るために」
 ミネルヴァ重工製の強化スーツであるアサルトバニーに身を包んだ秋月・信子(魔弾の射手・f00732)が無限氾濫瀑布の水上を統べるように駆ける。
 スーツに備えられた反重力装置は、彼女の体をまるで水上を駆けるホバークラフトのように滑走させる。
 対峙するは、圧倒的な巨躯を持つ帝竜『女禍』。その姿は黄金の金属が瀑布から舞い散る霧雨のような雨粒が煌き美しくも輝いている。

「猟兵―――!未来と生の寵児!許してはおけぬ!生かしてはおけぬ!疾く根絶やしにしてくれる!」
 帝竜『女禍』の遥か上空に現れるは八尾を備えた、物言わぬ妖狐の女性。それは女禍の真の主である。
 それが一体何を示しているのかはわからない。しかし、その指先が信子を示す。あれを討て。あれなる猟兵を尽く絶命せよと視線がかち合う。
 それだけで異様なる重圧を感じながらも信子は宝珠から放たれた雷撃を躱していく。
 あの宝珠。2対たる宝珠から放たれる属性と自然現象をあわせた攻撃はすでにグリモア猟兵からの情報によってわかっている。
 どのような攻撃が来るかわかっているのであれば、対抗策はいくらでもある。手にしたショットガンから放たれた鉄の礫に雷撃が誘導されていく。
 雷撃を交わせば、躊躇なく得物を捨てる。代わりに構えたのは、スイーパー。かつての「都市の狩人」と呼ばれた男の愛用していたマグナムリボルバー。

「私の中に居る私…お願い、力を貸して!姉さん!」
 信子のユーベルコード、Esの影法師(ダークサイド・シャドウ)が輝く。それは己の影を依り代にした彼女の二重身。信子と同じ顔をしているが、全く別の性格を持つ二重身が信子と共に水上を駆ける。
『随分デカいガラクタね。さっさと鉄屑にするわよ』
 二人は雷撃をかいくぐりながら、息を合わせる。いや、息を合わせる必要なんて無い。何故なら、彼女たちは二つにして一つ。一つより生じた二つのものである。
 であれば、彼女たちの間に認識の齟齬は起きない。ズレも生じない。
 一つの生命に二つの可能性。
 それこそが、生命の持つ可能性であり、女禍が忌み嫌う生命の鼓動。
『まずは、あのデカい的な珠を撃つわよ』
「同時に撃って注意が反れたら眼球にもう一発」

 視線を交わす必要すらない。彼女たちの瞳に写っているのは、黄金の飛翔竜である女禍のみ。
 女禍の二つの宝珠に狙いをつける。二人の背が重なり、構えたマグナムリボルバーの銃口がそれぞれの放銃を撃つ。
 轟音がして、宝珠に罅が入った瞬間、シリンダーが回転する。撃鉄が引かれ、迷いなく引かれるトリガー。
 二発目の轟音が鳴り響き、放たれた銃弾は違わず女禍の赤き眼球へとぶつかる。
 鎧砕きの概念を込めた魔弾が女禍の赤き眼球へと罅を入れる。大きく悶えるように空中で身動ぎする女禍の体を尻目に、二人は再び一つになる。

 のたうち回る女禍の巨躯から信子は水上から跳躍し逃れていく。
 その痛みこそ―――。
「それが生きる痛み。その痛みを忌み嫌うというのなら、その歌はまだ聞こえているようね」
 信子の撃ち出した生命を冒涜する女禍への魔弾であった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天御鏡・百々
生命は何より尊きものだ
我は道具の身であるからこそ、それをよく知っている
故に、其方のその思想は看過できぬ!

瀑布での戦い、まともな足場はなさそうか?
なれば、念動力25にて我が身を水上に浮かべて戦うとしよう
(+本体の神鏡は濡れないようにオーラ防御で保護)

恐るべき死の光も、光であるならば対処はできる
我は鏡、その光を反射して防いでくれる!

無事に防げたならば
天之浄魔弓(武器:弓)より放つ『清浄の矢』にて攻撃だ
金属の体を持とうと、この光の矢には無意味
その悪しき魂を貫いてくれる!!
(破魔79、誘導弾20、スナイパー10、祈り10)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎
●本体の神鏡へのダメージ描写NG



 過去の化身たるオブリビオンが未来を喰らう存在であるのだとすれば、帝竜『女禍』の言葉は一方的な言葉であったことだろう。
 過去は変わらない。変えられない。時は未来に進む。消費された現在が過去となり、過去は質量を伴って骸の海へと流れ込んでいく。
 それはどれだけ絶対的なものであったとしても、変えようのない事実である。
 だからこそ、帝竜『女禍』は己の灰色の永遠たる姿を照らす生命の輝きを忌み嫌うのだろう。
 郡竜大陸の無限氾濫瀑布において、その黄金の飛翔竜の輝きは正に灰色の輝きである。永遠が一瞬を捉えることができぬように、過去の化身たるオブリビオン、帝竜である女禍が、その輝きを纏うことなどできようはずもない。
「疾く絶命せよ!生命よ!絶命せよ!我が名は女禍―――!全ての穢れを払うもの!」
 女禍の生命を憎悪する咆哮は、ありとあらゆる生命を拒絶する。
 二対の宝珠から、知性ある生命体全てを殺す光がこぼれだす。それはあまりにもまばゆい光である。
 その光から逃れる術はない。その光を受けて知性ある生命体は、一つも残らず絶命することだろう。

「生命は何より尊きものだ。我は道具の身であるからこそ、それをよく知っている」
 天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)の力ある言葉が、女禍の言葉を否定する。
 その身はヤドリガミである。彼女は旅をした。彼女は多くを見てきた。彼女の瞳には、生命を謳歌する人々があった。生きとし生けるものたちの生命讃歌が彼女の魂に響いていた。
 己もそうであるのだ。たとえ元が器物であったとしても、今ここに在る百々は確かに生命である。

「故に、其方の、其の思想は看過できぬ!」
 百々の体は水上にあっても、その類まれなる念動力によって身を浮かばせている。迫りくる光から逃れる術はない。
 知性ある生命体を絶命へと追いやる光であるというのならば、それは真に恐るべき死の光である。
 だが―――。
「光であるならば、対象は出来る!我は鏡、破魔の神鏡である!」
 彼女の本体である神鏡が顕現する。その未来と真実を映す御鏡は、光である以上死を強要する光ですら反射してのける。
 眩き光が無限氾濫瀑布において降りしきる雨へと乱反射し、あちらこちらに虹がかかる。
 それは刹那の七色。疾く消えていく輝きである。だが、それこそが百々の美しいと思える生命の輝きである。
 今、彼女は生命を謳歌している。生命賛歌を歌うは、己の身に脈打つ心である。

「穢れしその魂、浄化してくれようぞ!」
 百々のユーベルコードが輝く。番えたるは、清浄の矢(セイジョウノヤ)。神聖なる祈りを込めた神弓より放たれる光の矢である。
 女禍が如何なる金属の体で身を覆うとも、この光の矢の前には無意味である。
 是なる矢は肉体を傷つける矢ではない。
 魂の穢れのみを払う一射である。故に、彼女の心に迷いはない。
「ほざけ―――!我が体に穢れなし!我が身は過去の化身であれば、この身に可能性などという穢は存在せぬ―――!」
 咆哮する女禍。その巨躯が百々の体を押しつぶさんと空を駆ける。

「他者を害し、他者の可能性を忌み嫌い……今を生きる生命を憎む其方の悪しき魂は貫く……それが我の務め!」
 百々の祈りは、生命への讃歌である。神弓の弦が引き絞られる。見据える瞳に映るは、過去の化身。
 放たれた清浄の矢は過たず、その魂を打ち貫く。
 過たず貫かれた女禍の巨躯が百々の脇をすり抜けるようにして、無限氾濫瀑布へと失墜する。
 盛大なる水柱を上げながら、其の巨躯が沈む。飛沫が上がり、太陽の光が虹を作る。死を齎す光ではない、生命を育む太陽の光の元で生み出される虹の輝きは、百々の瞳にどのように映っただろうか―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「良い演説だったねぇ。あのグリモアの人。」
ちっとばかし、テンション上げていこうか。

水の上ってのがまず厄介だなぁ。ここはもう悪魔の見えざる手に頑張ってもらうしかないか。
悪魔の見えざる手を足場に敵さんの攻撃を躱していく。デカい分動きも見切りやすそうだし、敵さんの動きの初動を見逃さない様にしよう。
緊急時は悪魔の見えざる手にぶん投げてもらって緊急離脱するのもあり。
あ、血を捧げて強化したLadyで狐のおねーさんを狙撃して邪魔するのも忘れずに。

敵さんの攻撃を躱せたら、切り裂き鬼のUCを発動。
ここまで散々動きは見せてもらったし、動きは見極められたかな?せっせとバラしにかかるとしようか。



 歌が聞こえる。忌々しい歌。生命賛歌。
 今を生きる生命全てが歌う、その忌々しき歌を尽く消し去らねばならぬ。生命とは、可能性という不確定を持つ穢れ。
 過去の化身であればこそわかる。不確定であるからこそ、生命は穢れていく。確定していないものは劣化していく。
 それを美しいと思う感覚こそが、唾棄すべきものである。不変であるものが最上である。不滅の永遠こそが、最も美しきものであるはずなのだ。
 水中より飛び出した黄金の飛翔竜、帝竜『女禍』は吼えたける。
「生命全て、尽く滅ぶべし!絶命すべし!我が、永遠たる不滅の前に生命など無意味!」
 その咆哮は、裂帛の勢いと共に無限氾濫瀑布に降り注ぐ雨を打ち払う。赤き眼球がギラリと輝き、世界の尖兵たる猟兵をねめつける。

 だが、その鋭き憎悪込められる視線を受けても、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は怯まない。
 彼が思い出していたのは、グリモアベースでグリモア猟兵が言った言葉だった。
「良い演説だったねぇ。あのグリモアの人」
 拙い言葉であった。けれど、それは真摯な言葉であったのかもしれない。誰かの心に何かを灯すことができたのかもしれない。
 だからこそ、莉亜は己のテンションを少しばかりあげようと腰を上げたのだ。

 水の上が厄介であると思ったのは誰しもが同じであったのかもしれない。悪魔の見えざる手―――契約者である彼を護る透明な悪魔の両腕が水上での足場へと変わる。
 ふぅ、と一息をつく。
 目の前には帝竜『女禍』の巨躯。黄金に輝く姿は、見ようによっては美しいのかも知れない。
 だが、そこに彼の求めるものはなかったようだった。
「まあ、デカい金属の竜だしね。あんまり吸い応えもなさそうだ」
 帝竜『女禍』の頭上には、女媧の真の主である八尾を備えた、物言わぬ妖狐の女性の姿。その女性の指が莉亜へと向けられる。
 その巨大なる尾が瀑布の水を切り裂きながら、莉亜へと迫る。
「デカいぶん、動きも見切りやすそう、だっ―――!」
 悪魔の見えざる手が莉亜の体を放り投げる。一瞬の判断。20kmはあろうかという巨躯である。その尾であるのならば、どれだけ早く動こうが彼を追尾してくるだろう。
 ならば、それを逆に使わぬ手はない。己自身を囮にするのだ。

 女媧の注意は自身に向いている。ならば、悪魔の見えざる手には頑張ってもらうしかない。悪魔の見えざる手には、彼が血を捧げしLadyと呼ばれる白い対物ライフル。
 その引き金を引き、轟音と共に放たれる血で強化された銃弾が、女媧を操る妖狐の女性へと迫る。
 其の狙いに気がついた女媧が吼えたける。
「我が主に手を出すか―――!その行い!万死!」
 莉亜を追いかけていた尾が、その銃弾を防がんと振るわれる。銃弾を弾き飛ばす金属に覆われた尾。それは決定的な隙となる。
「もう見切ったよ……」
 そう、散々に帝竜『女媧』の動きは見せてもらった。もう見る必要もない。
 後は―――。

「せっせとバラしにかかるとしようか……出番だよ。血飲み子、黒啜」
 彼の持つ二振りの黒と白の鎌が掲げられる。彼のユーベルコード、切り裂き鬼(ヴァンプ・ザ・リッパー)が発動する。
 帝竜『女媧』の動きはすでに見極めた。なれば、己の吸血鬼化された身体能力の前に、攻撃を防ぐ術は女媧にはない。
 其の巨躯に降り立ち、莉亜は大鎌を振るう。それはまるで巨躯を駆け回る旋風そのものであった。
 彼が通った後には血路しかない。血飛沫が舞い、更に加速した彼の斬撃は女媧の体のありとあらゆる場所を傷つけ続ける。
 黄金の輝く金属竜であろうとも、黒啜の流血を止まらなくする能力の前には無意味である。血飲み子と味覚を共有する彼の口には、帝竜たる女媧の血の味が教えられていた。

 ああ、と彼は微笑む。
「―――」
 彼がなんとい言ったのかは、彼自身しかわからぬこと。
 その帝竜の血の味。それが如何なるものであったのか。彼の放った斬撃は、いつまえも女媧の体を苛み続けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
◆SPD
あの妖狐が女禍を操るなら、そちらを狙って仕掛けてみせる
女禍に遮られない位置へ走り妖狐へ銃で狙いを付ける

易々とそれを許す相手だとは思っていない、これは『フェイント』だ
強化の条件である妖狐を狙われれば、まずはそれを防ぎに来るはず
そこまで動きを予測できるなら、捉える事も難しくはないだろう
そこを狙って、女禍へ反撃する

妖狐を狙っていると疑わせない為にギリギリまで引き付け、
こちらを攻撃する瞬間に女禍へ向き直り、ユーベルコードを発動
頭部や鱗の無い部分を狙撃する(『スナイパー』)

世界に主など必要無い
生命が生きていく事を、誰かに許される必要も無い
あんたが生命を滅ぼそうとするのなら、全力で抗わせてもらうぞ



 郡竜大陸において勃発した帝竜戦役。
 その無限氾濫瀑布において、止まぬ雨降りしきる中、黄金の飛翔竜は咆哮する。
「全ての生命に疾く絶命を!死を!未来はいらぬ、生はいらぬ!オブリビオンたる身であることこそが、不変たる絶対である。生命は全て絶命せねばならぬ」
 生とは死へと至る道程である。
 生まれ出るからこそ、死は終着点である。そこに至る速度が早いか遅いかは、その生命の歩みが決めることであって、絶対者がそれを決定することなどできようはずもない。
 だからこそ、帝竜『女媧』の言葉は、怨嗟に塗れていた。
 未だ世界に鳴り響く生命賛歌。その歌声が、かの帝竜を苛む。
「聞こえる……!あの歌!生命を謳歌せんとする歌……!忌々しき歌声が聞こえる!」
 女媧の咆哮は降り止まぬ瀑布の雨すらも一瞬で晴らすほどの衝撃となって、周囲へと降り注ぐ。
 かの帝竜の頭上には、女媧の真の主である八尾を備えた、物言わぬ妖狐の女性があった。それは女媧に支持を出すように手を伸ばす。
 あれを、と。
 あれなる猟兵を討て。

 その視線の先にあったのは、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の姿であった。
「……易々と、などと思える相手だとは思っていなかったが」
 己の身に向けられる女媧の視線を肌で感じながらシキは駆ける。彼の狙いは、女媧にとっては容易く看破できるものであった。
 おおかた、女媧を操り強化している真の主である妖狐の女性を狙っているのだろうと。
 シキの動きは正にそれであった。駆け、女媧に妖狐の女性への攻撃を遮られない位置を探しているのだろう。
「浅はかなり、猟兵―――!」
 やはり、この程度である。生命、未来、そんな不確定たるものの為に戦う猟兵など、我におよばず。その絶対者たる過去の化身は嗤う。
 シキのハンドガン、シロガネの銃口が妖狐の女性へと向けられる。
 やはり、と女媧は唇が釣り上がるのを抑えられなかった。見え透いたことをする。何もかもが無意味であるというのに、それでも抗おうとする存在。
 それを憐れに思うからこそ、こうして己が疾く滅ぼそうというのに。

「終わりだ、猟兵!その生命、ここですり潰してくれる―――!」
 振るわれるは巨大な尾。全長20kmにも及ぶ圧倒的質量がシキを狙う。
 簡単な相手であった。単調な、それでいて愚直な相手。
「―――……」
 シキの瞳が女媧を捉える。なんだ、と違和感を覚えた瞬間、女媧が今まで思い描いていた者全てが慢心であったと知るだろう。
 シキの狙いは最初から女媧そのものであったのだ。強化の条件である妖狐を狙う、そう思い込まされていたのだと、ここに来て漸く思い至ったのだ。
 だが、全てはもう遅い。
 シキにとっては、すでにもう終わったことだった。ハンドガン、シロガネの銃口は、最初から女媧を狙い付けていた。

 シキの息が止まる。無言だった。其の瞳がただ、女媧を睨みつけていた。
 引き金を引く瞬間ですら、その瞳にゆらぎはなかった。
 彼のユーベルコード、ブルズアイ・エイムが発動する。両手で構えたハンドガンの反動が彼の肩にのしかかる。放たれた弾丸は過たず、女媧の頭部……黄金金属で覆われぬ部分を穿ち貫く。
「―――!!」
 声に鳴らぬ絶叫じみた咆哮が無限氾濫瀑布に響き渡る。
 それは己の慢心への報いか、それとも生命在るものからの思わぬ一撃に怒り狂ってか。
 だが、そんな女媧を前にしてもシキは変わらぬ淡々とした口調で告げる。それは宣言だった。

「世界に主など必要ない」
 それは絶対者たる女媧の全てを否定する言葉だった。
 何を言っている?導く者がいなければ、誰が生命という穢れを払って不変たる永遠へと導けるというのだ。女媧は、其の言葉に戦慄する。
 何も分かっていないのではないか。真理を!

「生命が生きていく事を、誰かに許される必要もない。あんたが生命を滅ぼそうとするのなら、全力で抗わせてもらうぞ」
 何者にも縛られぬ世界の徒。今を生きる生命すべての讃歌を歌いし者。
 そこにあって、シキは何者にも縛られぬ者であるが故に、不変たる永遠の過去たるオブリビオンを打倒する猟兵なのだから。
 其の言葉は銃弾よりも重く女媧に響いたことだろう―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クレオ・バトラー
上から見下ろして頭が高く目障りなやつだ。
私の頭上で輝いて良いのは偉大なる太陽だけだ、生命を愚弄するのであれば引きずり降ろしてやろう。

紛い物の光であれば砂漠の太陽と同じ対処で十分だな。
『オシリステープ』を多めに生成して籠手に巻き付け、籠手に内蔵された『アンクリフレクター』のバリアで広げれば遮光フィールドの完成だ。

視界は防がれるが相手があれだけ大きければ問題無いだろう。
無駄に長い身体のどこかしらに組み付き、『オシリステープ』を巻き付け私の身体を固定させる。
もう逃げられんぞ、【殺戮の赤い息吹】で『セクメトネイル』の最大出力を出す!

真の陽光の威力をその身に刻んでやる、真昼の太陽に灼かれて灰塵へ還れ!



 生命とは一体何であろうか。
 其の問いに応えはないのかもしれない。明確な答えを持つという者あれば、それは己の生命を全うしたこともない者の戯言であるのかもしれない。
 死という概念を理解しないものに生命のなんたるかはわからない。
 それ故に過去の化身である帝竜『女禍』は吼え猛る。過去に死せる身なればこそ、再孵化を果たした女禍は、確かに死という概念を体現する者であったのかもしれない。
 かの帝竜は言う。
「過去と死は、すでに確定したものであるがゆえに絶対の概念である。不確定要素はおぞましく、どんな堅牢堅固たるものであっても変わっていく」
 その変わりゆく、移ろう姿のなんと醜きこと。
 己の身にですら、起こったその劣化は許しがたきものだった。それ故に生命は、疾く消えなければならない。
 おぞましきは肉体と意志を持ち、未来という可能性のために戦う猟兵という存在である。

 無限氾濫瀑布において、その巨躯はゆうに20km以上の全長を持つ黄金の金属飛翔竜であった。
 その名は女禍。帝竜『女禍』である。その異様を見上げるのは、一人の猟兵、クレオ・バトラー(Cleo type battler No.Ⅶ・f20973)である。
 その身にまといし、オリシステープは風にはためく。全身を覆うそれはナノマシンによる余過剰分のエネルギーを白い包帯状へと変じたものである。
「上から見下ろして頭が高く目障りなやつだ。私の頭上で輝いて良いのは偉大なる太陽だけだ」
 クレオの赤と青の瞳が、帝竜『女禍』をねめつける。
 彼女にとって生命とは戦って勝ち取ってきたものである。生命の連続に連なる先にあるのが自身のこの体であるのだ。
 だからこそ、彼女の前で生命を罵倒することは許されざる行為である。彼女の瞳が輝く。それは彼女の感情の高ぶりを知らせるものであったかもしれない。
「生命を愚弄するのであれば、引きずり下ろしてやろう」
「ほざいたな―――猟兵!」
 帝竜『女禍』から放たれる抗体霊波光線。それはあらゆる知性を持つ生命体を殺す光である。
 猟兵であるクレオとて例外ではない。

「紛い物の光―――!ならば、砂漠の太陽と同じ対処で十分だな」
 彼女の体に纏うオリシステープの端から燃えていく。それはエネルギーへと変換され、彼女の篭手に埋め込まれたアンクリフレクター……赤き水晶へと流れ込み、強力なバリアを発生させる。
 広範囲に広げられた遮光フィールドは、その強力な遮光能力のおかげで、女禍の持つ2対の宝珠から放たれる光を完全に遮断しきる。
「この程度のフィールドすら敗れないのであれば、お前の言う言葉もすべて偽りであろう!」

 抗体霊波光線の初撃は防いだ。次なる攻撃が来る前に、女媧をなんとかしなければならない。第二撃を放たれれば、己だけではなく、この場に駆けつける猟兵たちをも巻き込みかねない。
 そうはさせぬと女禍の巨躯へと組み付くクレオ。彼女のオリシステープが、鎖のように女禍の尾を縛り上げる。
「我に何をする。不敬なるぞ!我が体を!」
 どれだけ身をよじろうとも、クレオを振り払うことなどできようはずもない。
 それだけの力がオリシステープにはあるのだ。純エネルギーとナノマシンの結合。それを断ち切る術などあるはずもない。
 彼女の篭手の五指に備えられた高周波振動を放つセクメトネイル。オリシステープがエネルギ変換され、その赤き爪へと力を伝える。
「この悪を屠るためならば蓄えなどいくらでも持っていけ。代わりのその首貰い受ける!」
 
 それは彼女のユーベルコード、殺戮の赤い息吹(ミッドデイリヴェンジャー)。セクメトネイルが何故赤いのか。
 それは高周波振動による赤熱によるものであるからだ。彼女の身に纏うオリシステープが一瞬で燃え尽きるほどの大量なエネルギー変換が起こり、彼女の篭手が燃える。
「馬鹿な―――!己の手が燃え尽きても構わぬというのか!」
 その膨大なる熱量に女禍が驚愕する。即座にクレオの篭手が燃え尽きてもおかしくないほどの熱量を放つセクメトネイル。
 だが、クレオは止まらない。
 なぜならば、女禍は生命を愚弄した。それは彼女の勝ち取ってきた生命に対する冒涜そのものである。
 それを許せるわけがない。

「もう逃げられんぞ……!真の陽光の威力をその身に刻んでやる……!真昼の太陽に灼かれて灰燼へと還れ!」
 赤熱するセクメトネイルの一撃が帝竜『女禍』の巨躯へと打ち込まれる。それは金属に鎧われた龍鱗を物ともせずに一気に穴を穿つ。
 クレオはそのまま一直線に女禍の体を突き抜け、無限氾濫瀑布へと落ちていく。
 彼女の放つ熱は、瀑布へと近づいた瞬間、水が気化し蒸気となってあたりに立ち込める。
 その蒸気の向こう側に女禍は見た。

 真に生命の輝きを放つ赤と青の瞳を。
 おぞけも走るような、迸る生命の歌。その歌はまだ、女媧の耳にこびりついて離れなかった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルテネス・エストレア
生命無き世界など、わたしには価値の無いもの
生命溢れるこの世界がわたしは愛しい
だからわたしはこの世界を守るわ
終焉すべき者はあなたよ、帝竜『女禍』

自身の纏う聖者の光を織りあげた光の翼を飛行手段とするわ
光と風の加護をわたしに
そして魔力を紡ぎ探知魔法を【全力魔法】で起動する
女禍とその主の攻撃は探知魔法ですべて予測して身を躱す
光と風の加護を受けたわたしはどこまでも身を軽く出来る

そろそろ此方の番かしら
探知用の魔法を攻撃用へと転換
これはあなたの世界を葬る星の魔法
天より飛来せし彗星、すべてを打ち砕く光の星
主諸共この星で沈むといいわ
わたしの【全力魔法】を以てあなたの物語を終焉へと導きましょう



 己を「再孵化」させた帝竜ヴァルギリオスを偉大なる者と評したのは、帝竜『女禍』である。
 全てを理解した。己がなんであるか。それは世界の主たるオブリビオンとしての自覚である。
 過去と死こそが既に確定し、絶対である。真逆の存在である未来や生命は不確定そのものである。
 それはおぞましきものであり、そのような怪我で美しき世界を汚してはならない。
 故に帝竜『女禍』は咆哮する。
「生命よ、消えよ!」
 己たちに勝てる者はいない。肉と意志を捨て、過去の化身となることこそが、この世界を清浄なるものへと導く絶対者であるのだ。
 下らぬ児戯など、我らがオブリビオンに叶うべくもないのであるから、抵抗など無意味である。
「潔く死を受け入れよ……!」

 ルテネス・エストレア(Estrellita・f16335)は真っ向から、帝竜『女禍』の巨躯を見上げて言い放つ。
 そこに怯えも恐怖も畏怖もなかった。ただ純然たる想いがあった。彼女の心の内より溢れる言葉は、言霊のようになって対峙する帝竜『女禍』へとぶつけられる。
「生命無き世界など、わたしには価値の無いもの。生命溢れるこの世界が私は愛おしい」
 彼女の言葉は本物である。ふわりと風が、髪をさらう。珊瑚の瞳は黄金に輝く巨躯を見据える。
 帝竜『女禍』が絶対者であるというのなら、彼女は立ち向かうだろう。どれだけ無意味だと謗られようと、ルテネスには意味のない言葉だった。
「だから、わたしはこの世界を守るわ。終焉すべき者はあなたよ、帝竜『女禍』」

 ルテネスの身を覆う聖者としての光が翼となって織り上げられていく。光と風の加護を受けたルテネスの姿は天使そのものであったかもしれない。
 対する女禍の頭上に現れたるは、真の主である八尾を備えた、物言わぬ妖狐の女性の姿。その異様なる雰囲気を放つ女性が、指をルテネスへと向ける。
 それはかの敵を討ち果たせと女禍に命ずる。
 宝珠より放たれる雷撃がルテネスを襲う。

「光と風の加護はわたしに……どこまでも見を軽く出来る……」
 その瞳は雷撃の軌跡を確かに捉えていた。魔力紡ぎ、彼女の探知魔法によって放たれる雷撃の軌道を予測しているのだ。
 見える。感じるのはそれだけでいい。光の翼が羽撃き、彼女の体は自然と雷撃を躱していく。
 それは舞い踊るような軌跡を持って、女禍へと迫っていく。
「そろそろ此方の番かしら」

 紡がれた魔力が変じていく。
 それは彼女のユーベルコードの輝き。星結(ステラルム)である。ルテネスの掲げた先にある空が、星空瞬く空へと変ずるように、星々の輝きを強くする。
 ユーベルコードの輝きによって生み出された星々は、彼女の手の内に。
「これはあなたの世界を葬る星の魔法」
 生み出された星々はルテネスの手の内で弧を描く。
 女禍は見ただろう。その眩き天の光を。その星々は、ただの宇宙にありし星の礫ではない。
 その星の輝は全て生命である。
「天より飛来せし彗星、すべてを打ち砕く光の星……主諸共、この星で沈むと良いわ」

 ルテネスの手のひらより放たれるは、結ぶ星の魔法。
 全力で持って放たれた極光の如き輝きは、流星雨となって次々と女禍の体を覆う龍鱗を蒸発させていく。
 打ち込まれる度に、音が響く。それは轟音であったはずであろう。ルテネスにも、そのように聞こえたかもしれない。
 だが、女禍にとって、星々の光は生命の輝き。その一撃一撃は、かの帝竜が忌み嫌う生命そのものであった。
 故に、今もまだ、生命賛歌の歌は鳴り響き、止まぬ。

 それはきっと、ルテネスの星の魔法が途切れたとしても、帝竜『女禍』の物語が終焉するまで、きっと続く―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
鳥の形の氷晶ゴーレムに乗り空中戦を。

随分とお喋りなんですね。
自身が絶対だと言うのであれば、早く私を叩き落してみてはどうでしょう?

小回りを活かした空中戦で敵の巨体の周りを飛び回り、敵の体を盾にすることで宝珠の陰に入ることで光を避けます。
大きな体が仇となりましたね。

また、事前にデリンジャーを煙幕噴射用に武器改造、2つある宝珠に挟まれて陰に隠れられない時などの緊急時にはクイックドロウで煙幕を噴射し光を減衰させることで凌ぎます。
数に限りがあるので何度も使える手ではありませんが……

隙を見つけたら頭部に接近、【凍風一陣】を撃ち込みます。
体は大きいですが……生物ならばここに撃ち込めば効くでしょう



 無限氾濫瀑布は雨降り止まぬ大地である。
 それは膨大なる水量が常に氾濫し、流れ落ちる瀑布にて巻き上げられた水が雨となって降り注ぐからだ。
 本来であれば、このような大量の水がある場所では生命が溢れ、満ちていることであろう。だが、この大地において生命は生存を許されない。
 それは帝竜『女禍』が生命を許さぬ故。
「生命とは穢れである。過去が絶対に変わらぬように、死とは必ず訪れる執着にして頂点である。生の謳歌は許さぬ。疾く、絶対である死を受け入れよ―――!」
 その咆哮は衝撃波となって無限反乱瀑布に降り注ぐ雨を吹き飛ばす。太陽の光を受けて輝く虹は、一瞬であったが、それは生命の輝きにも似ていた。
 過去の化身たるオブリビオンにとって、それは忌むべき色であった。
 永遠の灰色たる己たちが失い、しかし忌避すべき色。その虹色の輝きを放つが如き生命が、帝竜『女禍』の元へとやってくるのだから。

 その名は猟兵。
 鳥の形をした氷晶ゴーレムに騎乗するは、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)である。
「随分とお喋りなんですね。自身が絶対だと言うのであれば、早く私を叩き落としてみてはどうでしょう?」
 氷晶ゴーレムは空を自在に飛び回る。その上で彼女は挑発する。冷静に。どんなときであっても、得物よりも冷静で賢くなければならない。
 彼女にとって、それは単なる布石である。
「ほざけ―――!猟兵であろうと、生命は我が光の前には須らく、絶命せしもの―――!」
 帝竜『女禍』より放たれるは、抗体霊波光線。知性ある生命体は、この光の前では無残にも死してしまう。
 それは恐るべき能力である。だが、セルマは氷晶ゴーレムと共に、その女禍の巨躯の下へと回り込む。
 これだけの巨躯である。二対の宝珠がどれだけ彼女を追いかけ回そうが、女禍の体が大きければ大きいほどに、仇となって影ができる。

 しかし、セルマを追う二対の宝珠は、彼女を追い込むように空を舞う。
「大きな体が仇となりましたね……ですが、今更。そんなふうに追いかけ回したとしても」
 二つの宝珠がセルマを挟み撃ちにしようと空を飛ぶ。
 だが、セルマは慌てない。慌てふためくと失敗する。備えはしておくべきものである。手にしたデリンジャーに装填されているのは煙幕噴射弾。
 即座に判断し、放たれる煙幕弾から吹き出す煙幕は濃く、光を屈折させ、その威力を十全に発揮できない。
「数に限りがあるので、何度も使える手ではありませんが……これで十分ですよね」
 そう、煙幕はただの時間稼ぎである。
 煙幕に紛れ、宝珠がセルマの姿を見失う瞬間。それこそが、帝竜『女禍』の決定的な隙である。
 注意はセルマの姿を探して散漫となっている。

「『寒い』と思う暇も与えません……今です」
 構えたマスケット銃、フィンブルヴェト。煙幕より飛び出した氷晶ゴーレムから飛び降りたセルマが向ける銃口の先には、帝竜『女禍』の頭部。
 過去の化身たるオブリビオンである女禍といえど、生物である以上頭に弾丸を打ち込めば効くだろう。
 彼女のユーベルコード、凍風一陣(イテカゼイチジン)が発動する。
 きらめくは放たれた銃弾。その銃弾はすでに絶対零度の冷気を凝縮された魔弾である。放たれた一撃は、違わず女禍の頭部へとぶつかり、一瞬で全身を凍結させる。
 空を飛翔することもかなわず、凍結した体のまま、瀑布へと失墜する女禍の体を、戻ってきた氷晶ゴーレムの背に着地しながら、セルマは見下ろす。

「……絶対ではなかったですね。貴方の言う不確定に満ちた生命が、貴方の絶対を穿つ」
 その証拠にセルマは空を悠々と氷晶ゴーレムと共に舞い飛ぶのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
帝竜女禍――可能性を使い果たした過去をいくら誇ったところで、未来を切り開く生命の輝きには敵わない。それを証明してみせる。

「空中戦」の飛鉢法で「目立たない」ように現地入り。全長10kmは巨大だけど、それよりも巨大なガルシェンとだってあたしたちは戦った。今更大きさに圧倒はされないわ。

自然の摂理をねじ曲げるような力ね。「全力魔法」の「オーラ防御」で災厄の嵐を凌ぐ。
終わったらこちらの番。
「範囲攻撃」の器物覚醒。
対象は、無尽蔵にあるこの水!
霊符に呪を込めて撒き散らし、水竜巻を無数作成、女禍の身体に巻き付かせて動きを封じ、装甲内部へ侵入させる。
装甲が硬いほど内部は脆いもの。染み入った水よ、帝竜を破壊せよ!



 骸の海へと流入するは世界より排出された過去である。
 集積し、世界へと滲み出た存在……それがオブリビオンである。過去の化身と呼ばれる所以である。
 未来が可能性というものに満ちあふれているからこそ、時間は先に進むのだとすれば、過去は可能性を使い果たしたものである。
 それの言葉は、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)のものである。
 彼女は言う。
「可能性を使い果たした過去をいくら誇ったところで、未来を切り拓く生命の輝きには敵わない」
 その言葉には、彼女の自身の持つ生命脈打つ強き心が込められていた。
 この言葉があれば、彼女は決して諦めることはしないだろう。敵がどれだけ強大なる存在であったとしても、くじけない。

 ユーベルコード、飛鉢法(ヒハツホウ)にて彼女は無限氾濫瀑布へと侵入を果たしていた。
 すでに数多の猟兵たちが帝竜『女禍』へと攻撃を果たしていた。その混乱に乗じて彼女は浮かぶ鉄の大鉢によって、雨の降り止まぬ大地にて帝竜『女禍』との邂逅するのだ。
「生命は疾く、絶命させねばならぬ―――!かような穢は消して世界に残していてはならぬ!」
 その巨躯にもはや、ゆかりは圧倒されることはない。
 何故なら、この帝竜『女禍』よりもさらに巨大なる帝竜ガルシェンとの戦いも経験しているのだ。
「今更よね、大きさに圧倒されてしまうなんて!」
 ゆかりの言葉に女禍がねめつける。見つけた、とその視線が釣り上がる。許してはおけぬ。生命であるだけではいざしらず、その身に秘めたる可能性という結晶そのものが、女禍にとっては眩きものである。
 だからこそ、徹底的にこれを討ち果たさなければならない。

「滅べ!滅べ!滅べ!生命は全て滅ぼす!その歌を止めろ―――!!」
 絶叫のような咆哮が女禍より放たれる。それは二対の宝珠が煌き、雷撃と炎を織り交ぜたまさに炎の嵐とも言うべき自然現象を生み出し、ゆかりへと放つのだ。
「自然の摂理を捻じ曲げるような力ね」
 だが、ゆかりは強大な力を前にしても立ちすくむことはしない。何故なら、彼女は猟兵である。どれだけ困難な道であっても前進するのだ。
 それこそがゆかりを猟兵たらしめるからだ。彼女の全力を込めたオーラが荒れ狂う炎と雷撃を防ぐ。災厄の嵐と呼ぶに相応しき攻撃を凌ぐ。
 手に籠もった力が逆流しようとする。ギシギシと体のあちこちが軋む音を聞いた。
 これほどの力を猟兵ではない、抗う力のない人々に震わせるわけにはいかない。紫の瞳に力が籠もる。

「凌ぎ―――きった!今度はこちらの番!」
 彼女のユーベルコード、器物覚醒(キブツカクセイ)が発動する。彼女の周辺にある無機物を、式神憑依させることによって自由に動ける付喪神へと変ずるユーベルコードである。
 そして、この無限氾濫瀑布において、無機物は―――。
「無尽蔵に在るこの水!急急如律令! 汝ら、我が下知に応じ、手足の如く動くべし!」
 霊符に呪を込めて、周辺に撒き散らす。
 それは花弁が川に舞い散るように降り注ぎ、その力で持ってゆかりの意のままに操る付喪神となる。水竜巻のように渦巻く圧倒的な水量が、いくつも無限氾濫瀑布に生まれ出る。

「停滞した過去には生まれない力がこれよ、女禍!」
 ゆかりの手が帝竜『女禍』を指し示す。いくつもの生まれた水竜巻の付喪神が女禍の巨躯へとまとわりつく。動きを止めさせ、まるで絡みつく大蛇の如く女禍の動きを封じるのだ。
「ぐぅ、う―――!この程度で、我の動きを止めたつもりか!」
 女禍の体に力がこもろうとして、それができなくなっていることに気がついた。
 何故か、混乱する女禍の体内に隅々まで入り込むは水の付喪神たち。それは水であるがゆえに不定形である。
 まさに形定まらぬ不確定そのもの。帝竜『女禍』の忌み嫌う不確定なるものである。
 怖気が走る。だが、それももう遅い。金属で囲われた隙間へと入り込んだ水の付喪神達がゆかりの言葉を待つ。
「染み入った水よ、帝竜を破壊せよ!」
 その言葉が号令となって水の付喪神たちが一斉に女禍の龍鱗たる金属の中で爆ぜる。龍鱗が剥がれ落ち、痛みにのたうち回る女禍。
 それは瀑布が落ち、上げる水飛沫の比ではない。これが、帝竜『女禍』の無意味だと罵った生命の氾濫である。

「証明してみせたわよ、女禍。これが未来を切り拓く生命の輝きよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
水の透明度が…微生物すら生存を許さないとは
ある意味、御伽噺の悪役の竜よりも邪悪と言えますね
…討たねばなりません

「知性ある」以上、直撃すればウォーマシンも人格データを崩壊させられるやも…

機械飛竜に●騎乗
水面近くを飛行
宝珠の発光で光線発射を●見切りアンカーを接続した大盾を●怪力ロープワークで水面に叩きつけ
巨大な水の壁の●目潰し兼乱反射で光線を軽減、●盾受け防御

飛竜を●ハッキングし●限界突破した●空中戦能力で一気に肉薄

背負ったUCを装備し体表に叩きつけ発射し離脱
遠隔●操縦で体内を掘り進め起爆

この世界も星の海に漕ぎ出す時が来るやもしれません
御伽の騎士の様にとはいきませんが、その可能性を摘ませはしません



 無限氾濫瀑布に流れ落ちる水は、以前から透明度を誇っていたわけではない。
 水は生命の源であると言われる。それは瞳に映らぬだけで微細なる生物が存在しているからである。
 だからこそ、生命は海より出るとまで言われる。小さき生命は、自身よりも大きな生命の糧となる。その連鎖を連綿と繰り返してきたからこそ、今日の我らのような生命が発生するにいたったのかもしれない。
 そう思えば、現状の無限氾濫瀑布の水質は以上であると言わざるを得ない。
「水の透明度が……微生物すら生存を許さないとは」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、帝竜『女禍』を討ち果たさんと無限氾濫瀑布へと赴いていた。
 騎乗せし、機械飛竜ロシナンテⅢと共に水面近くを飛行していた。だが、彼のアイセンサーから得られる無限氾濫瀑布の水質データは、どれも異常な数値を導き出していた。
 ほぼ純粋なのである。かの帝竜『女禍』は、生命の存在を許さぬもの。己の持つ概念、過去と死が揺るがぬ絶対であるというそれを、光に変え、あらゆる生命を死滅させてきたのだろう。
 グリモア猟兵からの言葉が思い出される。
「ある意味、御伽噺の悪役の竜よりも邪悪と言えますね……討たねばなりません」

 しかし、懸念も在る。彼もまた『知性在る』ウォーマシンである。それが故に、かの帝竜『女禍』が放つ抗体霊波光線の直撃を受ければ、己の人格データを崩壊させられるやもしれないからだ。
 これは確かに対策を討たねば、と彼の演算回路が動き始めた瞬間、無限氾濫瀑布より不浄した黄金に輝く金属飛翔竜が眼前に現れる。
 水飛沫を飛ばし、それでも己が仇敵である猟兵を睨めつけていた。その体は今まで数多の猟兵達の攻撃によって傷ついてはいたが、それでもなお、この巨躯は生命全てに対する憎悪に駆り立てられていた。
「此処にもいたか、生命―――猟兵!!」
 その咆哮は憤怒そのものであった。生命を憎むだけでは飽き足らない。死滅させなければ気がすまぬと吼えたける。
 宝珠より一斉に放たれる抗体霊波光線はウォーマシンであるトリテレイアを破壊せしめんと迫る。

「過去の化身であろうとも、その考え、改める気はないと―――!」
 瞬間、アンカー接続した大盾を水面へと叩きつける。巨大な水柱が立ち上がり、宝珠より放たれる光を水の壁による乱反射による光の軽減を狙う。
 さらにアンカーにより戻ってきた大盾により身を隠し、光を遮断せしめるのだ。
「リミット・オーバー……!行きますよ!」
 トリテレイアが騎乗せし、機械飛竜ロシナンテⅢへと彼のマニュピレーターから接続した端子が、その限界を突破させるほどのジェネレーターとスラスターの噴出、さらには機動を可能とする。
 空を飛ぶ生物では考えられぬほどの軌道を描き、いかに帝竜といえど、その巨躯では超絶変幻自在たる軌道を描くロシナンテⅢを捉えることなどできようはずもない。

「……騎士の武器どころか兵器ですらないのですが……」
 背に負った小惑星爆砕用特殊削岩弾発射装置を装備するトリテレイア。沈んだ声を響かせるのは、これが己の思い描く騎士の武器ではないからであろうか。
 だからと言って、これを使わぬ手はないのだ。ロシナンテⅢと共に空をかけ、その先端に装着された極太杭状爆弾を女禍の体に打ち込む。
 それは巨大な質量による砲撃に見えただろう。
 だが、それは違う。

 打ち込まれた極太杭状爆弾は、自動で女禍の巨躯を掘削し、さらには遠隔で操作された箇所で爆破されるのだ。
 女禍の体内で何かが爆ぜる轟音が響き、その巨躯が失墜していく。
 それをオーバーロードで黒炎を上げ始めたロシナンテⅢと共に帰投しながら、トリテレイアは見やるのだ。
「この世界も星の海に漕ぎ出す時がくるやもしれません。御伽の騎士の様にとはいきませんが、その可能性摘ませはしません」
 それは生命の可能性であり未来である。
 過去の化身たるオブリビオンである帝竜が言う、絶対の概念など、未来という不確定で先の見えぬ……だからこそ、それを切り開いて進もとする人々の生命燃える生命讃歌は、きっとトリテレイアのいう星の海を征く情熱へと変わることだってあるだろう。
 だからこそ、先に星の海を征く者として、その未来の可能性を守らねばならない。
 それこそが、トリテレイアが星々の騎士としての務めだと信じているからだ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
全ての生命を憎んでる災厄か
放っておく訳にはいかないよね
皆と協力して打倒を目指すよ

知性ある生命体全てを殺す光か
厄介だけれど光であるなら
遮る事ができれば防げないかな

相手の攻撃に合わせて
水面をガトリングガンで薙ぎ払い続けて
水柱と飛沫で光の透過を邪魔しよう
さらに神気に触れた飛沫を固定することで
濃い霧にして効果を強めよう
オーラ防御の応用だよ

相手の状況を把握するために
ドローンと使い魔は外に出して観測
どちらも知性を持たないから大丈夫だと思うよ

凌いだら邪神の領域を使用
一気に近づいて速度で翻弄しつつ
目や宝玉、指を構成するコードっぽいものなど
重要そうな部位を射撃

とどめを刺せそうになければ
石化で動けなくなる前に撤退



 帝竜『女禍』。それは、無限氾濫瀑布において、飛翔せし黄金の金属竜である。
 その姿は瀑布より舞い散る水飛沫を雨として降りしきる中にあって、なお、輝きを強めている。
 だが、その輝きは生命を祝福しない。
 ありとあらゆる生命を滅する光となって、この地を蹂躙し尽くした。
 それは知性ある生命体全てを滅ぼす光。
「我は世界の真なる主。何故抗うのだ、生命よ。何故我らに仇名すのだ。我らは絶対の概念である過去と死より生まれし過去の化身オブリビオンであるぞ!」
 その咆哮は降りしきる雨を吹き飛ばすには十分すぎるほどの衝撃を以て、無限氾濫瀑布に轟く。
 それは憎悪。生きとし生けるもの全てへの憎悪の化身であった。

「全ての生命を憎んでる災厄か。放っておく訳にはいかないよね」
 どれだけ強大なるオブリビオンであっても、皆との協力があれば打倒できぬものいない。
 だからこそ、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、無限氾濫瀑布という戦場を駆けている。空を飛翔する黄金金属竜である帝竜『女禍』を見上げる。
 彼女の言葉の通りである。
 これまで数多の猟兵たちが帝竜『女禍』へと打撃を与えてきた。龍鱗は剥がれ落ち、崩れ、その身にはいくつもの穿たれた痕がある。
 これが猟兵達の戦いである。一人では打倒できぬ相手であっても、自分たちは一人ではない。だから戦えるのだ。

「猟兵―――!許さぬ!許さぬ!我らこそが世界の主であるというのに!汝ら生命は尽く滅せねばならぬ!」
 女禍の咆哮が無限氾濫瀑布に響き渡る。その二対の宝珠が光を放つ。抗体霊波光線と呼ばれる、知性在る生命体を殺す光が晶を襲う。
 それは恐るべき攻撃である。他の生命体であれば、どう防ぎようもない攻撃。
「知性ある生命体を全て殺す光か。厄介だけれど光であるなら、遮ることで防ぐことができる!」
 そう、どうしようもない攻撃であっても、猟兵であれば防ぐことができる。
 それだけの経験を重ねてきたのだ。
 ユーベルコードが輝く。邪神の領域(スタグナント・フィールド)、それは己を覆う、周囲の存在を停滞・固定させる神気を生み出すユーベルコード。
 彼女の手にした携行型ガトリングガンが火を吹く。それは彼女の身に宿る邪神の物質想像力を利用し、作り出された携行火器だ。
 砲口を水面へと向け、飛び散る瀑布の水面にいくつもの水柱と飛沫を作り出す。こうすることによって、この邪神創造による銃弾は神気を帯び、それに触れた飛沫は、まるで空間に固定されたように濃い霧として彼女を光から守る壁となるのだ。

「これがオーラ防御の応用だよ!」
 それと同時に彼女は邪神の力で創造されて妖精型の使い魔と情報収集用ドローンを解き放つ。
 それは神気によって生み出された光を防御する神気によって固定された水の壁から外の様子を伺うためのもの。
 知性在るものを殺す光だというのなら、どいらも知性を持たぬモノ。であれば、光の影響は受けず、こちらから一方的に女禍の情報を得られるということだ。
 リンクした視界は晶に女禍の所在を教える。ここで一気に攻めに転じなければ、ユーベルコードの副作用が始まってしまう。

「一気に行くよ!」
 一瞬で空を駆ける晶。それはユーベルコードによって得た飛翔能力である。
 天高く舞い上がり、女禍の頭上より舞い降り、宝玉と女禍をつなぐコードの連なった腕や目を的確にガトリングガンの斉射でもって打ち貫いていく。
「疾い……!なんだ、この力は―――!?」
 晶の身体能力は明らかに常軌を逸している。帝竜である女禍であっても目で得ぬほどのスピードで持って翻弄し、ガトリングガンを打ち込み続ける。
「僕が速くなったんじゃない。皆が止まってただけだよ」
 帝竜が一方的に翻弄されるユーベルコードの力が、何の代償もないわけではない。
 今も尚、晶の体は徐々に石化してきているのだ。

 ぐ、と晶の体が沈み込む。これ以上は限界である。石化で動けなくなる前に離脱しなければならない。
 晶は一人で戦っているわけではない。自分たちは猟兵である。一人で為し得ないことでも、他の誰かと共に何かを為すことが出来る。
 これがオブリビオンになくて猟兵にあるものである。晶は後を任せて交代していく。安心できる。
 だって、自分がトドメを刺さなくても、きっと他の誰かが女禍を骸の海へと還すだろう。それだけは確信できるのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
ふむ……何の理由があって憎んだるんだろうね…
…まあ…勝てないかどうかは試してみないと。ね…

…まずは災厄の嵐をどうにかしないと…遅発連動術式【クロノス】を利用した多重障壁と共に、●災厄の嵐凌ぐ…
…最悪、時間を稼ぐために丁度良い地形を使って耐えるとしよう…
…【竜屠る英雄の詩】を発動する時間さえ稼げれば…充分…
…竜殺しの概念を得た黎明剣【アウローラ】で帝竜である女禍の放った災厄の嵐を切り裂いて『殺し』…
…術式銃【アヌエヌエ】で女禍の持つ二つの宝珠を狙い撃つよ…
…その宝珠も竜にまつわる品であるなら……この竜殺しの銃弾で殺せる…
宝珠を撃たれて動揺している隙に…女禍の頭を狙って更に銃弾を浴びせるとしよう…



「何故。何故。何故だ。生命よ、何故抗う。抵抗など無意味。どれだけ我を傷つけようとも、全ては無意味である。我を今、滅しようとも、オブリビオンであるかぎり、再び現れよう。骸の海より何度でも、汝ら生命を滅しよう!」
 その咆哮は正に憎悪そのものであった。
 数多の猟兵達の攻撃を受け、壮麗であった黄金の飛翔竜は、龍鱗剥がれ落ち、宝珠は罅が入り、その巨躯を穿つ傷は一つ二つでは済まない。
 それでも帝竜『女禍』は滅ばない。
 確かにかの帝竜の言うことも最もであった。過去の化身たるオブリビオンは、今とは違う存在ではあっても、同じ姿の存在が再び現れることがある。
 だからこそ無意味だというのだろう。だが、猟兵たちにはもうわかっている。何も無意味なことなどない。何一つ無い。
 この胸を打つ鼓動。それが教えてくれる。
 自分たちの敵がなんであるのか。自分たちが倒さねばならない敵を誤ることはない。これを生命讃歌と呼ぶのであれば、聞かせよう。

「ふむ……何の理由があって憎んでいるんだろうね……まあ……勝てないかどうかは試してみないと。ね……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の青い瞳に映る黄金の飛翔竜、女禍の姿は、憎悪に満ちた帝竜としての姿であった。
 彼女はわからない。何故、そこまで生命を忌み嫌うのか。もはやそれは憎悪と言っても差し支えないほどの感情であるように思えた。
 だからこそ、そこに理由があるはずなのだが……女媧の咆哮が力となって荒れ狂う。二対の宝珠から放たれた雷撃と風、炎が混ざり合って、炎の嵐となって具現化される。

「……まずは災厄の嵐をどうにかしないと……」
 疑問はまだまだあるのだが、まずは自身が為すべきことをしなければはじまらない。彼女の手が上がる。そこに組み上げられたるは、遅発連動術式『クロノス』。
 それは一瞬で多重障壁を組み上げる。
 一度に扱える術式というもは限られている。だからこその遅発連動術式である。これならば、条件を整えるだけで一度に発動できない術式であっても多重に張り巡らせることができる。

 しかし、だからといって災厄の嵐たる女禍の攻撃を防げる確証はない。いや、理論はできあがっている。後は実証するだけだ。
「……時間さえ稼げれば十分……私の計算に間違いはない」
 多重障壁が次々と炎の嵐によって破られていく。
 だが、メンカルの瞳に焦りはない。どれだけ障壁が破られようと、彼女のユーベルコードが発動するまでに一枚でも残っていれば良いのだ。全てを防ぐ必要はない。

「厄討つ譚歌よ、応じよ、宿れ。汝は鏖殺、汝は屠龍。魔女が望むは災厄断ち切る英傑の業」
 メンカルの詠唱は歌うような流麗な言葉によって紡がれた。それは自身の武器……黎明剣アウローラに竜にまつわるものを殺す、竜殺しの概念術式を搭載するユーベルコード。
 濃紺の刀身が輝く。魔力受け、夜明けのごとき東雲色を経て、白く輝く。
「障壁の残りは、3……問題ない」
 最期の障壁が炎の嵐の前に崩れ去る。その瞬間、メンカルの持つ黎明剣が翻る。一瞬で炎の嵐を切り裂くは黎明剣。
 驚愕に目を見開く女禍を前にメンカルは駆ける。

「何故だ!何故、我がユーベルコートが尽く破られる!」
 炎の嵐が再びメンカルを襲う。だが、それはもはや、メンカルにとっては脅威ではない。何故なら、すでに彼女は歌ったのだ。
 竜屠る英雄の詩(ドラゴンスレイヤーズ・バラッド)を。
 それは彼女の武器に竜殺しの概念を付与する物である。炎の嵐、災厄の嵐は竜より放たれたものであるのなら、これを打ち払うは竜殺し。
 故に、炎の嵐は打ち消されたのではなく、『殺し』たのだ。

「……その宝珠も竜にまつわる品であるなら……この竜殺しの銃弾で殺せる」
 彼女の術式銃アヌエヌエの銃口から放たれた銃弾が宝珠の一つ、ひび割れたそれを完全に打ち砕く。
 シリンダーが廻る。それはあまりにもあっけない一撃。されど、その一撃で砕けぬはずの宝珠が砕けた。
「な―――!?」
 女禍が動揺した瞬間を逃すわけもない。一瞬で照準を女禍の頭へと向ける。撃鉄が卸され、回転式リボルバーのシリンダーが一回転する頃には、女禍の巨体が無限氾濫瀑布へと失墜していく。

「……だから言ったでしょう。これはすでに竜殺しの概念を持つ。竜である以上、これらから逃れる術はない……あなたがすべきことは、私に立ち向かうことではなく―――」

 全力で逃げるべきであった―――。
 そう小さくメンカルは呟くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御狐・稲見之守
[WIZ]
彼奴の術がどういうモノか、ああよく知っている。ちょいと突付けば容易く暴走することもな。[呪詛]災厄の嵐よ猛り狂え――その術を暴走させてやる。彼奴も此方もただでは済まぬが、[オーラ防御]霊符の結界で耐えることとす。

さて、災厄を鎮める? とんでもない。悪いが定まらず移ろい易きを愛でる身でなァ。その絶対とやら、汚してやろうじゃァないか。

[UC荒魂顕現]――来たれ雷鎚の嵐。制御せず、彼奴の暴走する災厄の嵐の中でさらに暴走させてやる。[電撃耐性]霊符の結界を重ねておくが、自爆上等の風任せ運任せ。

さあさあ此処は混沌の渦中、魔女釜の底よ。確たるモノなぞ何処にもありゃしない。児戯にて失礼、帝竜殿。



 ギチギチと金属同士がこすれる音が無限氾濫瀑布に響き渡る。
 それは大量の水が流れ込み、無限の如き水量でもって流れ落ちる瀑布において異質なものであった。本来であれば存在しないもの。
 だが、今や郡竜大陸にて勃発した帝竜戦役によって雪崩込んできた猟兵たちによって、この無限氾濫瀑布へと失墜を余儀なくされた帝竜『女禍』の姿であった。
 それは、この地において絶対者であった者の姿ではなくなっていた。
 龍鱗は砕け、巨躯は穿たれ付けられた穴が空き、宝珠の一つは砕けた。全て猟兵が為したことだ。
 だが、それでも尚、帝竜『女禍』は健在であった。未だその力は消えず、失墜してはいるものの、飛び立つ余力は在る。己の存在が在る限り、生命に繁栄はないと言わんばかりに咆哮するのだ。
「我は絶対の概念……!過去と死の権化である!こんなところで、生命を絶することなく消えるなど、許されるはずがない……!」

 その瞳が猟兵の姿を捉える。初めて見る猟兵である。だが、それが確実に猟兵であるとわかる。わかってしまう。
 己の身がオブリビオンであるがゆえだ。対する猟兵もそうなのであろう。
 不敵に笑うのは、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)である。彼女は笑っていた。
「何を―――笑っている、猟兵―――!」
 女禍の咆哮と共に放たれるは災厄の嵐。雷撃と炎、そして嵐とが融合し、炎の嵐となって稲見之守を襲う。
 それはあまりにも強力なユーベルコードであった。あれほどの傷を負っていながらも、これだけの力が放つことができるのか。
 だが、稲見之守は余裕のままである。何故なら―――。
「彼奴の術がどういうものか……ああ、よく知っている」
 だからこそ笑うのだ。下策であると。稲見之守の放つ呪詛が炎の嵐と混ざり合う。それは精緻なる回転を見せる独楽に小石をぶつけるが如く。
「ちょっと突けば、容易く暴走することもな。ほれ……災厄のあらしよ、猛り狂え―――」
 混ざりあった呪詛は、容易に災厄の嵐のコントロールを複雑にし、精緻たる独楽の回転を少しに力で歪めるように、一瞬で暴走させてしまうのだ。

「ほれ、ご覧のとおり。まあ、彼奴も此方も唯ではすまぬが……」
 稲見之守は霊符を構える。張り巡らされた結界が暴走する災厄の嵐を受けて軋む。暴走したがゆえの威力である。これをそのまま受け止めるわけにはいかなかったが、もしも霊符による結界がなければと思うと、女禍のちからもまた凄まじいものであるとわかるだろう。
 このまま災厄の嵐をやり過ごす……そう思われた瞬間、稲見之守の唇が釣り上がる。
「さて、災厄を鎮める?とんでもない。悪いが定まらず移ろい易きを愛でる身でなァ……主の言う、その絶対とやら、汚してやろうじゃァないか」
 彼女のユーベルコード、荒魂顕現(アラミタマケンゲン)が発動する。それは災厄の嵐と同じく属性と自然現象を合成した現象を発動するユーベルコードである。
「我と同じユーベルコードだと……!?馬鹿な―――!」
 だが、歴然たる事実である。
 彼女のユーベルコードもまた災厄の嵐と同種。オブリビオンに出来ることが、何故、猟兵に出来ぬと思った。
 それこそが驕りである。その絶対はすでに崩れた。

「我為す一切是神事也、天裂き地割る神業畏み畏み奉願祈るべし―――来たれ雷鎚の嵐」
 その言葉は雷鳴轟く嵐。放たれたるユーベルコードは、未だ暴走覚めやらぬ災厄の嵐の中で、さらなる意図した暴走を引き起こす。
 稲見之守の表情がいよいよもって楽しげなものへと変わる。それはまるで祭りを喜ぶ子供のようであった。
 結界に重ねられる雷に対する態勢の霊符によって、結界は軋む程度で済んでいるが、この嵐の最中にあるであろう帝竜『女禍』の姿は嵐の向こう側に薄っすらとしか見えない。

 だが、彼女には見えているようだった。
「さあさあ此処は混沌の渦中。魔女釜の底よ。確たるモノなぞ何処にもありゃしない」
 笑う。笑う。童女が笑う。それはとても楽しそうに、祭りのお囃子を聞くが如く、雷鳴と嵐荒ぶ音を聞く。
 女禍の絶叫じみた咆哮も、彼女にとってはただの音楽そのものであったのかも知れない。
 ああ、楽しい。愉快である。稲見之守は笑い、そして密やかに言葉を紡ぐのだ。

「児戯にて失礼。帝竜殿」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
響かせてみましょう、生命賛歌。

女禍の先制攻撃:抗体霊波光線には
めいっぱい【力溜め】た風の【属性攻撃】を籠めた
武器を【なぎ払い】、【衝撃波】を生み出し光線を相殺します
相殺しきれなくても【オーラ防御】で全て弾く!

凌いだら、次はこちらの番!
空中を舞うために、宇宙バイクの「世界を駆ける馬」に
【騎乗】し、【空中戦】を挑みます
【ダッシュ】で頭の方まで豪速で迫り、
【鎧砕き】の重い一撃をねじ込んでいく
私の、生命の【怪力】、思い知れっ!

女禍の再反撃が来ても【電撃耐性】などで凌ぎ、
【カウンター】で迎え撃ちます

好機と見れば女禍の額までバイクを迫らせ、
超々至近距離からの《トランスバスター》!
これが、命の……力だぁっ!



 あの歌がまだ聞こえる。
 帝竜『女禍』は憎悪に満ちた瞳をあげた。どれだけ猟兵たちが己を滅しようとも、己は不滅である。
 過去と死が確定した絶対の概念であれば、その化身である己もまた絶対なのである。
 その中で、あの歌……生命賛歌だけが己の耳にこびりついてはなれない。
 おぞましき生命を謳歌する鼓動。それはあまりにもおぞましく、存在してはならぬものである。
 尽く滅ぼさねばならない。二対の宝珠のうち、一つは猟兵によって砕かれた。力は半減したと断じられてもしかたのない姿ではある。
 だが、その生命を憎む咆哮は、その力の全てが健在であることを数位に知らしめるように響き渡る。
「我は絶対者である……!我は帝竜!我は女禍!過去の化身たるオブリビオン……我に歯向かうは無意味!我は全ての生命を尽く滅ぼし、生命讃歌を止めて見せる……!」
 その憎悪満ちる瞳に映るは、一人の猟兵。
 彼女はまっすぐに此方を見据えている。立ちすくむわけでもない。畏怖するでもない。ただ、己を見ている。
 討ち果たすべき敵であると正しく認識している瞳。

「響かせてみせましょう、生命讃歌」
 その言葉は、女禍の逆鱗に触れた。咆哮が強烈な衝撃波となって響き渡り、宝珠が輝き、全ての生命を殺す光を放つ。
 手にした大剣は銘をディアボロス。ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)の部族に伝わりし、創生の大剣である。
 その剣に超えられし風が開放され、光を薙ぎ払うように衝撃波を生み出し打ち払う。相殺しきれぬ光がユーフィに及ぶも、オーラの力によって光を防ぐ。
 オーラの外殻がひび割れる。だが、彼女は負けるわけにはいかない。
 彼女の歌はまだ聞こえている。
 この胸に宿る鼓動が脈打つ限り、彼女が諦めるということはない。再び振るわれるディアボロスに組み込まれたディアボロスエンジンが唸り、その込められし風を加速させる。

「守っていては負ける!なら!」
 彼女が騎乗せしは、宇宙を駆ける馬。譲り受けたそれを駆り、一気にユーフィは女禍へと肉薄する。
 それは光を受けても尚潰えぬ生命の輝きと共に女禍の巨躯を超え、その頭部へと至る。大剣ディアボロスの一撃が振るわれ、女禍の頭蓋の一部を砕く。
 それでもまだ浅い。
「―――!!」
 女禍の咆哮と共に宝珠より放たれたる雷撃を、その身に宿した雷撃の耐性で耐えしのぐ。それでも彼女の肌を焼く一撃は、流石は帝竜の一柱であると言わざるを得ない。
 一撃、一撃、その大剣の一撃を打ち込む度にユーフィは、胸の鼓動を高めていく。それはディアボロスに埋め込まれたウェポンエンジンの脈動ではない。
 己の生命の脈動。
 どうしてだろうと思う。こんなときであるというのに、戦いの最中であるというのぬに、胸は戦いの高ぶりに高鳴っている。

「行きますよぉっ!これが森の勇者の、一撃ですっ!」
 この胸の高鳴りと共に一撃を放つ。
 それは彼女のユーベルコード、トランスバスター。それは鍛え上げられ、絞りきられた肉体より放たれる拳技。
 女禍の額まで飛び上がるユーフィの体。脈動する鼓動。ああ、と思う。
 この一撃はきっと、自身の生命を燃やす一撃であると確信した。

 だからこそ、これこそが、ユーフィが放つことのできる最高の一撃。
「これが、生命の……力だぁっ!」
 裂帛の気合と共に放つ拳は、女禍の額を割り、その衝撃は女禍の体を突き抜け、無限氾濫瀑布たる川を一直線に切り裂く。
 圧倒的な一撃は、女媧を失墜させ、川を割るほどの一撃は、一拍遅れてユーフィの熱を持った体を覚ますように雨となって降り注ぐのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ
鏡面状態にした盾を即座に具現化し光を反射してみるか。
それができれば、あとは一気に距離を詰めればいい。
空中戦は向こうさんの専売特許じゃないからな。
あの巨体が飛べるのなら、翼のある俺が飛べない道理もないって話だ。
接近てきたら、その長いから度を掴んでぶん回す……
ってわけには、流石にいかんだろうな。
精神帯を少しでも引きはがして弱体化を狙うか、もしくは鱗の一枚でもはがして、露出部分を攻めるかだな。そいつを武器代わりにしてもいい。
いずれにしても、敵の防御や攻撃が軽減できれば僥倖だ。
あとは槍やら斧やらで攻め立てればいい。
中々骨は折れるだろうが、相手が取れるまで叩き込み続けるだけだ。



 それは全ての生命滅ぼす光であった。
 帝竜『女媧』の放ちし抗体霊波光線は、これまでもあらゆる生命を尽く破滅させてきた。それは決定的な滅びの一撃となる光であった。
 郡竜大陸において勃発した帝竜戦役。此度の戦いにおいて、この光が焼き尽くした生命は一つもない。
 放つ光全てが防がれ、未然にまるで準備していたかのごとく猟兵たちは対策講じていた。初見であるはずだった。
 いや、初見以外ありえない。なぜならば、これまでこの光を見て生き残ったものはいないからだ。完全なる初見殺し。それが抗体霊波光線である。
 だが、それでも猟兵たちは屠ること能わず。
「何故だ!何故だ!何故滅びぬ―――!」
 その理解を超えた事実に帝竜『女媧』は忌々しげに咆哮する。何故、倒せない。何故、我には抗うのだ。
「我は絶対なるぞ―――!オブリビオンにし帝竜!過去と死の絶対者なる者!」

 その咆哮と滅びの光を鏡面状態に変えて防ぐ猟兵がいた。
 名を、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)と言う。蒼き竜人は豪快に笑う。そんなに怒るなよ、と。
「だが、これでお前さんの頼みの綱の、面倒くさい光による初手はくじかれたってわけだ―――!」
 鏡面状態にした盾を掲げ、一気に空へと舞い上がるセゲル。その雄々しき翼は、戦いの神そのものであった。
 そう、帝竜たる女媧の巨躯が空を飛べるのであれば、翼ある己が飛ぶことができようはずもない。これは道理の話である。
 一気に空を駆ける。宝珠より放たれた雷撃など何するものぞ。
「オォ―――!この程度で俺を止めようなど!」

 急接近したセゲルの腕が、20kmはあろうかという巨躯を掴む。
 セゲルの牙の揃った顎が噛み締められる音がした。何を、と女禍が怯んだ瞬間、セゲルのユーベルコードが輝く。
 心胆ヲ握緊メル腕(ゲレパ・アンデ)―――それは、帝竜である女禍の精神体……それを無理矢理体から引き剥がし、掴み振り回すほどの膂力を与えるユーベルコードである。
「握れば拳開けば掌。全ては我が手中にあり―――」
 牙鳴る音が響く。
 それはセゲルの顎が噛み締められる音。引き剥がされた精神体ごと、女禍の巨躯が宙に舞う。まさか、と思った瞬間、セゲルの豪腕が女禍の巨躯を振り回し、無限氾濫瀑布へと叩きつける。
 凄まじい轟音と共に水飛沫が上がり、その巨躯を瀑布へと失墜させた。

「一本、取ったぞ……!だが、戦とはこれよりが本番よな―――!」 
 手にするは錨斧イースヴィーグ。片爪型の首振りの錨……いや、もはや錨とも斧とも呼べぬ。
 むしろ、その真価を発揮するは槌としての扱い方。
 空より急降下したセゲルが振るう一撃は、まさに天よりの鉄槌である。並のオブリビオンであれば、その一撃で事足りたであろう。
 それほどまでの一撃は、女媧の巨躯を覆う金属の龍鱗を尽く砕き、破砕せしめるのだ。
「骨は折れるとは思っていたが、想像以上であるな!だが、しばらく付き合ってもらうぞ、帝竜『女禍』!己が滅した生命のぶんだけ、俺はお前の龍鱗を奪おう―――」
 覚悟せよ。
 セゲルの瞳が輝く。それこそが己の脅かした生命に対する贖罪であると物語っていた。
 龍鱗打ち砕く音が響き渡り、セゲルを振りほどかんとのたうち回る女禍の巨躯が、無限氾濫瀑布において、飛沫を上げ続ける。
 
 それはようやくにして、セゲルを振りほどいてもなお、女禍におぞましき生命の力強さを刻み込み続けたのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尖晶・十紀
【がれき】
確定した過去と死を尊ぶだって、未来や生命はおぞましき不確定要素だって…?喧嘩売ってるの……?なら高値で買ってやる。

対策:怪力で武器受けし、仲間をかばいながら戦う
妖狐を挑発しジフテリアから気をそらせるように動く
ちょっとのダメージは逆手に取り自身の血を用いて{毒使い}で動きを鈍らせたり仲間の攻撃が当たりやすいよう{呪詛}をかけておく
自身には動きが鈍らないよう{激痛耐性}をつけておく
解除と同時にUC
鎧砕きの二回攻撃、どんなに大きくたって…弱点はないわけじゃ、ないよね……野生の勘で弱点を狙い{暗殺}


……潔く死を受け入れるのは……お前の方だ……!


ジフテリア・クレステッド
【がれき】
うるせえよ。私たちは、死にたくないんだ。

先制対策に【目立たない】ように瀑布の雨に隠れながら【毒使い】特製の毒弾を【スナイパー】ライフルで撃って妖狐を【暗殺】する。それだけデカイ図体じゃ隠れる私を見つけるのは難しいだろうし、操り手がいなきゃ強化終わるんでしょ。
隙ができたらUC発動。半径4km動くスピーカーでデカブツの広範囲を【範囲攻撃】。全てを殺す力はお前だけのものじゃない。致死性の毒音波の【衝撃波】で【目潰し】【マヒ攻撃】で弱らせ、毒で体内を【蹂躙】してぶっ殺す。弱らせることが2人への援護にもなるはずだしね。

死にたきゃ1人で死んで過去になってろ。忘れられて永遠に消えちまえ、バーカ。


イヴェット・アンクタン
【がれき】
絶対故に揺るがず、化身である貴方も然りと――では早々敗北して頂けるのですね。
何故?オブリビオンは嗾けた戦争全てで敗北を喫した過去があります。絶対ならば従って下さい。

皆さまが動きやすいよう私は撹乱を。
特性ボックスから煙幕罠を起動し、スモーク弾も撃ちます。罠使いの本領発揮です。暗殺技術の静かな走法で撒きましょう。
途中で爆破罠と追加煙幕を大量に。援護射撃や破壊工作しつつ逃走……正面から挑むと思いませんよう。

機を見て集中射撃――は囮です。メカニックの技を用い即興で立て掛け自動式にしました。
別個所から演奏器で射撃しつつUCで帝竜かあるいは妖狐を撃ち抜きます。
……故郷の、復興の意思を侮辱するな。



 時間は消費されるがゆえに過去となり、骸の海へと排出される。
 時が前に進むためには、消費された過去が必要である。消費された過去は最早変えようのない確定した概念であるが故に、不変たる物質そのものだ。
 だからこそ、未来は不確定そのものの可能性の象徴。
 だからこそ、生命とは未来に溢れた可能性の塊。

 ならば―――。
「過去の化身たる我は、絶対の象徴である。最早変えようがない。変わる必要がない。これ以上がなくとも、これ以下はない。生命在るが故に劣化がある。どのような強者であっても、劣化して崩れていく」
 それは穢れと同じである。生命在るがゆえに劣化があるのだとしたら、それはおぞましきものである。存在を劣化させる可能性などあってはならぬのだ。
 だからこそ、今も聞こえる歌を嫌悪するのだ。

「確定した過去と死を尊ぶだって……?」
 その声は静かなる怒気がくすぶるようであった。
「未来や生命はおぞましき不確定要素だって……?喧嘩、売ってるの?」
 尖晶・十紀(紅華・f24470)は静かに歩みを進める。一歩を踏み出す度に銀髪が揺れる。無限氾濫瀑布において、瀑布に落ちる飛沫は雨となって常にこの大地を湿らせる。
 彼女の髪もまたそうであった。水分を吸った銀髪が光を受けてきらめく。
「なら、高値で買ってやる」
「ほざいたな、猟兵風情が―――不完全なる生命、それこそが不確定そのもの!穢らわしき生命が、我の前に立つな!」
 帝竜『女禍』が吠える。その咆哮の衝撃は荒ぶ風を呼び、無限氾濫瀑布の水量を吹き飛ばすほどであった。
 だが、十紀は躊躇わない。畏怖しない。恐怖しない。彼女はもうすでに決めている。生命を汚らわしいものと言った女禍を、何があっても倒すと。
 だから駆け出す。最初の一歩は、誰しもが躊躇う。けれど、今の彼女には躊躇う理由がない。

 どれだけ巨躯であろうと構わない。
「愚かな―――……我が真の主の姿の前にひれ伏せ!我は過去の化身たるオブリビオンにして帝竜である!我への抵抗は全て無意味としれ!」
 帝竜『女禍』の頭上に現れたるは、真の主たる八尾を備えた、物言わぬ妖狐の女性。その妖狐は目を見開かずに手をのばす。
 帝竜である女禍を操り、それ故に戦闘力を増すのだ。数多の猟兵たちによって傷つけられた体が、まるで全盛のように動き出す。
 尾が蠢き、宝珠が輝く。雷が落ち、雷撃が飛ぶ。
 だが、それでも怯まぬ者が居る。
「絶対故に揺るがず、化身である貴方も然りと―――では、そうそうそに敗北して頂けるのですね」
 その声は、イヴェット・アンクタン(神出鬼没のサバイバー・f24643)。彼女は無限氾濫瀑布の大地を駆け抜けていた。
 手にした特性ボックスから煙幕罠を起動する。もうもうと白き煙幕が立ち込める。

「何を言っている―――?巫山戯たことを!何故、そのような戯言を―――!」
 女禍が訝しむ声と共にイヴェットへと雷撃を見舞うも、それは煙幕に紛れてスモーク弾まで放つ彼女を捉えることはできなかった。
 その言葉にイヴェットは差も当然というように応えるのだ。
「何故?オブリビオンは嗾けた戦争全てで敗北を喫した過去があります」
 そう、これまで猟兵たちが経験してきた戦争の尽くに置いて、オブリビオンは配備句を喫している。それは変わらぬ事実である。
 過去が絶対であるというのなら、これまでオブリビオンが重ねてきた敗北もまたひっていである。
 故に―――。
「絶対ならば、従ってください」
 それは明らかなる挑発であった。しかし、これまでの戦いにおいて冷静さを喪っている女禍にとっては有効でしかない言葉であった。
 己が絶対者であるが故の傲慢である。
 だからこそ、イヴェットの言葉は女禍の心中をかき回し、かき乱したのだ。彼女を追うように雷撃が落ち続ける。
 雷撃が爆破罠に落ち、盛大なる爆発が起こるも、さらなる大量なる煙幕が周囲を包み込む。

「ええい―――……!ちょこまかと!絶対者たる我が言うのだ!生命は尽く絶命せよ!おぞましき生命は全て滅ぶべし―――!」
 女禍の咆哮と共に雷撃が勢いを増す。
 もはやそれは、雷の雨であった。十紀がイヴェットをかばい、それでもなお、雷撃止まぬ大地を駆け抜ける。
 彼女たちは二人、散々に雷撃の標的とされていた。十紀は滴り落ちる血を気にもとめずに己へと雷撃を集中させるように立ち回る。
 彼女の血は特異である。燃焼や個体化など、様々な異能を秘めし血液である灼血であるのだ。
 それこそが彼女の異能の血であり、フラスコチャイルドたる彼女の力。

「十紀はまだ生きてる……!この生命の鼓動が消えない限り、いくらでも戦うことができる」
「猟兵……それも紛い物の生命が我に楯突くか!」
 女禍の咆哮はイヴェットのアサルトライフルから放たれた銃弾に遮いられる。即座に雷撃が落ち、イヴェットの体を焼く……いや、違う。アサルトライフルを囮にした立て掛け自動式の即興の罠へと変えたのだ。
 すでにそこにイヴェットの姿はない。
 完全に撹乱されている。女禍がそう感じた瞬間、その身に怖気が走る。それは、殺気ととも言うべきものであったかも知れない

「うるせえよ。私達は死にたくないんだ」
 その言葉は、簡潔であるが切実なる願いであり祈りであったのかも知れない。
 ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)のくぐもった声が毒素を封印されたガスマスクの中で響いた。
 無限氾濫瀑布によって降りしきる雨に濡れた灰色の髪が肌に張り付く。けれど、その雨に濡れた己の髪すらも愛おしい。
 何故なら、彼女は、彼女たちは生きている。生きているからこそ、雨の冷たさも、頬に張り付く髪の感触も分かる。
 ジフテリアは先んじて、女禍に感づかれぬように瀑布の雨を隠れ蓑に息を潜めていた。自身の吐き出す息もまた己の生存を強調させるものであった。

 十紀とイヴェットのジフテリアの存在を隠蔽する行動は、見事に女禍を出し抜いていた。
 おぞけ走る女媧が気がつく前に、既にジフテリアの行動は完了していた。
 覗くスナイパーライフルは子供用に調整されたものであるが、威力は何ら遜色ない。
 巨躯である女媧の何に狙いをつけるのか。あの巨躯である。一撃で破壊出来る場所は何処にもない。
 いや、この時、この瞬間、女禍にだけある弱点が露出している。
「ま―――」
 その言葉は、まさかとも、待て、とも取れる響きであったことだろう。
 ジフテリアが狙うは、女禍を操る妖狐の女性。それが女禍の能力を向上させる条件であるというのなら、それを撃ち貫かんと狙いを定めていたのだ。
「なぁ……それだけデカイ図体じゃ、隠れる私を見つけるのは難しいだろうね。それに……操り手がいなきゃ、強化終わるんでしょ。そうなんでしょ?」
 すでに引き金は引かれた。毒性込められし銃弾が狙い過たずに女禍の頭上にあった妖狐の女性を穿つ。
 それは儚くも霧散して消えていく。明らかに強化された女媧の力が衰えたのがわかった。

「今だ!行くよ!」
 ジフテリアのユーベルコードが輝く。それは殺人スピーカー!カモン!と鳴り響く致死毒性の毒電波を撒き散らすスピーカーである。
「何も全てを殺す力はお前だけのもじょじゃない」
 召喚された殺人スピーカーが放つ衝撃波は、20kmあろう女媧の巨躯すべてを包み込むほどに広範囲で展開される。
 その衝撃は、あまりの毒性となって女媧の瞳を押しつぶす。
 この毒電波から逃れようと藻掻くも、さらなる追撃が放たれる。

 それはイヴェットのユーベルコードが発動した瞬間だった。
「速い?当然でしょう、逃がさない為ですから」
 放たれたるユーベルコードの名は、烈弩穿(ハイスティンガー)。イヴェットの左腕側にて作成された長大なる薄橙の槍弾が、放たれた瞬間、瞬く間もなく女禍の胴へと打ち込まれていく。
 まるでその場に釘付けにするかのように次々と放たれる槍弾は、まさに集中砲火である。
 絶叫じみた女禍の咆哮が無限氾濫瀑布に響き渡る。
「……故郷の」
 彼女たちフラスコチャイルドの故郷。それは文明の荒廃せし世界。その世界において文明の復興は急務であり、責務である。そして、願いでもある。
 だからこそ、その地にて生まれ出る生命の尊さは理解している。だからこそ、生命を踏みにじる行為を行う女禍の存在そのものが侮辱であった。
「復興の意志を侮辱するな」

 ジフテリアの殺人スピーカーが限界を迎えようとしていた。音が割れ、白煙が上がり始めている。
 限界を超えての毒音波の行使は、それだけ負荷がかかるのだ。
 だが、それでも止めない。止めてはならない。
「死にたきゃ、一人で死んで過去になってろ。忘れられて永遠に消えちまえ、バーカ」
 その言葉こそが、ジフテリアの偽らざる本心であった。過去がなんだというのだと。消えてしまえと。
 過去が絶対であるからなんだというのだ。今を生きる可能性を食らって存在するものの何処に彼女たちの生命を紛い物だと言う資格があるのだ。
 だからこそ、彼女たちは許せない。女禍の巨躯は打ち込まれ続けるイヴェットの槍弾とジフテリアの放った毒電波が体内に染み込むことによって動くことも叶わなくなった。

「どんなに大きくたって……弱点はないわけじゃ、ないよね……!」
 十紀のユーベルコード、紅弾:蛍火・陽炎之舞(ブラッドバレット・ホタルビカゲロウノマイ)が輝きを増す。
 握りしめた独鈷杵型採血具である赫炉から針が展開し、異能の地たる灼地が溢れ出す。
 揺らめく蛍火が彼女の体を囲む。手を伸ばした先にあるのは、女禍の巨躯。一斉に蛍火が飛び立ち、その巨躯を波状攻撃によって燃やす。
 のたうち、逃れようとする女禍の体は未だにジフテリアとイヴェットによって抑えられ続けている。
 もはや逃げる術はない。
「や、やめろ!やめろ!来るな!その歌を聞かせるな!なんだ、お前たちは!紛い物の音ばかり響かせる、それは、なんだ―――!」
 女禍の絶叫が響く。
 もはや意味はない。
 だが、十紀は躊躇わない。己たちは生きている。この鼓動に響く生命の歌が証拠だ。
「十紀たちは生きてる。ただそれだけ……潔く死を受け入れるのは……お前の方だ……!」
 その灼血が女禍を打ち貫く。
 その針のように個体化された一撃は、女禍の体内へと駆け巡り、そして……内側から全てを焼き切るように燃焼し、帝竜『女禍』を骸の海へと還すのだった。

 十紀、ジフテリア、イヴェットの三人は漸くにして息を吐き出す。
 背中を合わせるようにして無限氾濫瀑布にて座り込む。彼女たちの背中越しに、互いに伝わるは三人の誰しもが欠けること無く戦い終えた証である。

 生命が歌であるというのであれば、生きるということは生命賛歌に他ならない。それ故に、いつかの誰かが、こう問いかけるだろう。

 ―――その歌はまだ歌えるか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月10日


挿絵イラスト