帝竜戦役⑨〜泡の如く、災禍は竜の裡に溢れ出す
ぽつり、ぽつりと。
その身に尽きせず浮かぶ泡のように、誕生と破滅を抱きながら。
そして、その命の泡を弾けさせて、終わらせてしまう。
いくつも、いくつも、浮かび上がっては消えていく生命。
巨体はさながら宇宙。星の瞬きのように、全ては産まれて、消える。
あらゆる生命が生まれては進化し、絶滅し、流転してまた繰り返すのだ。
何処が始まりだったのか。
何処へと向かおうとしているのか。
帝竜『ガルシェン』自身も解らない。『再孵化』により全てを忘却し、ただそのような在り方で突き進むもの。
絶えない流れこそ、ガルシェンだ。
弾けて消える命が、余りにも儚く、そして、膨大にその巨体の裡で蠢いている。
はたして。
「このように悍ましいものだったのでしょうか」
自分の有り様とはどのようだったのかと、ガルシェンは思うのだ。
「このように美しいものだったのでしょうか」
答えるものはいない。
答えを持つものはいない。
――ただ、身体の中で絶滅した魂の慟哭が、破壊の衝動となって身を突き動かす。
いいや、それは本当に?
身に滾り、身体を突き動かす破壊の力は、別の何処からか付与されたものでは。
自分の有り様。自分の大本。記憶すらないのなら、何かが正しく、何が間違いで、どのように狂っているかも定かではない。
ただ解っているのは。
「ああ、この間々では世界を殺してしまう」
生誕しながらも外の出られなかった命たちが。
破滅の嘆きをあげながら、決して救われなかった魂たちが。
今のガルシェンの身には詰まっている。外の世界、触れるものを壊そうとしている。
死ねばもろともと、破滅に流されながら。
「ああ――勇者よ、私を殺してください」
誰かが殺してくれなければ、何かを、世界をも殺してしまう。
この生誕と破滅の流転に、終止符を。
求めて蠢く姿。巨体に過ぎるそれは、破壊を巻き起こしながら、群竜大陸を渡っていく。
それはまるで、轍を荒野に変えるていくかのようで……。
●
さて、自分を定義できず、ただ身に宿る衝動に突き動かされる。
それを何とよぶのだろうか。
狂気というにはなんともありふれて。
獣の本能というには、いささか奇妙にして奇怪すぎる。
「それが今回の敵。『創世巨獣』の名を持つ帝竜ガルシェンです」
言葉も通じる相手でないでしょう、と秋穂・紗織(木花吐息・f18825)はゆっくりと首を振るう。
理解したとしても、相手も現状と自分を理解していないのだ。
ただ死ぬことを。殺されることを。そして破壊することだけを求めている。
「よって止めねばなりません。求めるならば、殺せねばなりません」
理屈の通じない相手。思いの届かぬ相手。
存在として異質すぎて、何もできないのだから。
滅するのみ。とはいえ、その身は余りにも巨大だ。ただでさえ数十Kmに及ぶ全身は山のようだといっていい。
動くだけでもはや驚異。が、その身の裡に眠る因子を呼び起こし、外へと顕現させ、あらゆる方法で攻撃してくる。
「巨体にして、その身に宿る命と因子は膨大――攻撃や防御に使うものをひとつ、ひとつあげてはキリがありません」
体積、身体のみならず、宿るそれも多種多様にして莫大なのだ。
獣の因子にて、巨大な薔薇を咲かせて創世の獣として蹂躙する。
それは獣と植物の系統の能力を用いることだろうし、宿る生命と破滅をばらまく獣として暴れるという力業だろう。
獣と植物。その系統というだけでも、どのような力の種類があるか。
猟兵を殺す為の毒を宿した巨大生物を召喚し、向かわせる。
それはさながら、自分の一部を切り離すように。自分でその使い方、使役の方法さえ定かではないだろうに、進化した生命は猛毒をばらまくのだ。
もしもそれを上手く利用されれば、ひとたまりもない。
防衛の捕食細胞は全てを飲み込み、破滅するスライムの出現。
あらゆる環境に対応し、飛翔しながら戦闘し、あらゆるものを飲み込むもの。原初の混沌とでもいうべき生命が、形を組み替えながら迫り来る。
それも無数に。ガルシェンの中の因子のひとつかみを、無造作に、けれど膨大にとばらまくように。
「まるでひとつの宇宙と戦うようなもの。命、破滅、因子――宿しているものが大きすぎるのです」
逆に自分で、扱うそれらを正しく理解して把握できないほどに。
隙があるとすればそこ。
山であり、流転する生命と破滅の宇宙なのだから、小回りがきかないということ。
逆に正面からいけば押しつぶされるに過ぎない。
「とはいえ、帝竜。確実にこちらに先制してきますから、それに備えねば。どのようなモノが出てくるか、文字通りの混沌に向かうようなものですが」
力押しでは勝てない相手。
それを繰り返して。
「――出てきさえすれば、形成してしまえば、それはそれとなるのです」
膨大で巨大であっても。
無敵ではないのだと、紗織は瞼を閉じた。
遙月
MSの遙月です。
初めまして、あるいは、この度もどうぞ宜しくお願いいたします。
……あれ、ガルシェンなのに巨人に関係してないのでしょうかと。
朧げな記憶を抱くのは私も同じだったり。
そして、その帝竜『ガルシェン』にはまっとうな会話も、真っ向からの勝負も成り立たないでしょう。問いかけても明確な答えは、決して、かえってきません。
いえ、もしかすれば意識を引きつけることは出来るかもしれませんが。
そして、何かしら隙を作るか、見いだすか。あるいは、勇者に殺されることを望むガルシェン自体に用意させる。どのようかの必要性はあるかもしれません。
まずは先制するユーベルコードに備えてくださいませ。
絶対に先んじるそれらは、確実に猟兵を追い詰めるものです。
逆にその対処法さえ編み出せば、好機は訪れる筈。
プレイングボーナスとなるそれを、どうぞ、活かしてやってくださませ。
プレイングは受付中は何時でもお受けしております。
基本的に問題なければ全採用の予定で、速ければ人数次第で切り上げることもありでしょうが。
なにとぞ、どうぞ宜しくお願いいたします。
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プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
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第1章 ボス戦
『帝竜ガルシェン』
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POW : 創世巨獣ガルシェン
【獣の因子】を使用する事で、【巨大な薔薇】を生やした、自身の身長の3倍の【創世巨獣形態】に変身する。
SPD : アンチイェーガー・ギガンティス
いま戦っている対象に有効な【猟兵を殺す毒を宿した『新種の巨大生物』】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 防衛捕食細胞の創造
召喚したレベル×1体の【外敵を飲み込み自爆する『巨大スライム』】に【虫を思わせる薄羽】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:桜木バンビ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
死之宮・謡
アドリブ歓迎
貴様と私では相容れんな…
破壊を望まぬ貴様と望む私
他の為に死を求む貴様と己が為に死を求む私…
延々と命を生み出す貴様と唯一人在る私
相容れんが同時に理解も出来る…ならば、引導を渡してやろう
嫌とは言わせんし…言わんだろう?
・POW
先ずは相手のUCによる巨大化に巻き込まれぬように全力で距離を取る
その後【万天を喰らうモノ】を発動して空高く
上を取らねばマトモに戦闘も出来ん
サイズ比も…まぁマシにはなったろう
上空を飛びながら三つ首から呪炎・呪氷・呪雷のブレスを放って攻撃
相手が生成してくる生物も基本的にブレスに巻き込んで処理
但し、攻撃には当たらぬように距離はきちんと取り、攻撃より回避を優先する
ああ、ここまで相容れぬものかと。
眼前の巨躯に対して、頷く姿。
それもまたありと、否定や呆れはなし。
表面は静かに、けれど、内面に複雑怪奇な感情の群れを滲ませるは、死之宮・謡(狂魔王・f13193)だ。
「破壊を望まぬ貴様と望む私」
帝竜ガルシェンはそれを聞きながら、前へと這いずるように。
「他の為に死を求む貴様と己が為に死を求む私……延々と命を生み出す貴様と唯一人在る私」
どうして此処まで差のある個体があるのか。
まるで火と水。望むもの、在り方、全てにおいて逆なのだと謡は語る。
「相容れんが同時に理解も出来る……ならば、引導を渡してやろう」
火は火だから、水を知る。
水は水だから、火を知る。
到底相容れない、正反対ものだからこそ、理解はとても容易く、直感として何処までも深く。
それこそ、光と闇のようにはっきりと分かれて、交差するのだ。
「嫌とは言わせんし……言わんだろう?」
「ええ、あなたが勇者ではなくとも、私を殺してくれるのならば。殺すに届くというのならば」
それは祝福、光栄であると、巨大な薔薇を咲かせる創世巨獣ガルシェン。その身体を三倍以上へと至らせれば、見上げることさえ困難。
宿した獣の因子によって加速し、迫る爪の群れ――まるで剣山の如く生えたそれを紙一重で避けながら、謡は転じる。
全力で距離をとった筈が、猫の全力疾走など、象の一歩に届かない。無残に斬り裂かれた身体から鮮血を流す。
「ああ、その通りだ。タダで、大きな木偶として、壊されてくれるなよ」
いや、身から流れるのは血だけではない。悪意と狂気、闇と暴虐の力が溢れ出し、真の姿たる邪竜へと変貌する謡。
翼を広げて飛翔。万天を喰らうべく、三つ首にある全ての眼で帝竜ガルシェンを見下ろす。
上を取らねばまともに相手も出来ないが、上を取るにしても高度の限界がある。これ以上は危険、だが、ここまで欲しいという瀬戸際に至り、呪いよる炎と氷、そして雷のブレスを放っていく。
「多少はサイズ差がまともになった――と思いたいが」
元が巨大。それが三倍となれば、体積として余りに大きい。
槍の一本で城は崩せない。
体表を焼き、凍らせ、紫電を弾かせて、その奥まで呪いで蝕むが。
「浅いか」
常に距離を取り、時折、生成される獣たちも巻き込んでブレスを放つが、攻撃、防御、回避と全てを両立させながら、痛打を与えるには巨大過ぎる相手。
狙う場所のひとつ、定めれば或いはでも――
「ならば、全てを壊し、蹂躙するのみ」
――そのような姑息な手をよしとせぬ謡だ。
相容れぬ故に正面から。如何なる巨躯といえど、己が怨嗟と呪怨で、創世巨獣ガルシェンの身に死をもたらそうと。
邪悪なる竜が、空を翔る。
ばらまく狂気と悪意、憎悪が風を灼き、音を蝕み、光さえ翳らせて。
巨大にすぎる、終わりを望む流転へと、その牙を剥くのだ。
大成功
🔵🔵🔵
アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)
そうなんだ
それじゃあ仕方ないよ
わかったよ
わたしは勇者じゃないけれど、あなたの手伝いをしたい
殺してあげたいの
先制攻撃には兎に角耐えて
オーラを展開して、意識だけでも保てるように
重要なのは、その後なのだから
そして
【開花の時は来たれり、我は天地囲う世界樹なり】
何処までも拡がり続ける「神体」に変貌して、傷も毒も生物も何もかも届かない程に大きくなる
わたしの相手は、本当の意味であなただけになる
わたしは終わりの世界樹。終末に聳え立つ破滅の大樹
輪廻を続けるあなたへの特攻に成り得る存在
それと同時にあなたの痛みも理解できるの
続くか終わるか、わたし達はそれだけの違いなのだから
…断ち切ってあげる
そうか。
そうなんだ。
頷くのはひとつの古き御伽話の存在。
自分も帝竜ガルシェンと同じく、幾つもの命を孕み、そして、死をもたらすからだろうか。
それとも御伽話、幻想――現実の生命を超越してしまったものだからだろうか。
アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)は静かに、勇者による死を望むガルシェンを肯定するのだ。
「それじゃあ仕方ないよ」
咲き誇る薔薇は鮮やかにすぎて、迫る一撃は強烈にすぎる。
打ち据えられるというよりは弾き飛ばされるアウル。一撃で致命傷にならないのは、ガルシェンからすれば逆にその身が軽すぎたせいだ。
だからといって来る痛み、負傷がないわけではない。
「わかったよ」
オーラを展開し、とにかく耐えるアウル。
意識さえ手放さなければ、後は大丈夫なのだから。
「わたしは勇者じゃないけれど、あなたの手伝いをしたい――殺してあげたいの」
静かに告げられた、殺害のそれに。
「出来るものならば。勇者でなくとも、この身が世界を殺す前に」
無数の獣の因子をもって、身体から無数の顎を産み出すそれは、混沌して混濁。無秩序の中から産み出される、誕生から破滅への一直線。
だからこそ。
それらが相手ではないのだと、アウルはその身を神体へと変貌させるのだ。
あくまで、相手はガルシェン。
そこから発生した獣たちは相手ではないのだと。
「わたしの相手は、本当の意味であなただけ」
突き立つ蛇の牙は聞かず、迫る狼の顎では捉えられないアウルの巨体。
代わりに理性を失い、ただ速く動くものへと、その身に詰まった暴力を振るう。
いいや、それは。
終わりの世界樹、なのだ。
終末に聳え立つ破滅の大樹。故に、破滅の威を込めた一撃でガルシェンへと叩き込まれ、その身に詰まった無数の命を終わらせる。
輪廻を繰り返すならば、断ち切るのみ。
そういう身であるのがアウルなのだから。
――同時にあなたの痛みも理解できるの
続くか終わるか、わたし達はそれだけの違いなのだから――
「……断ち切ってあげる」
最後の理性を手放し。
破滅の大樹、その神体として、アウルはガルシェンの前に立ち塞がる。
星を、そして、この群竜大陸の命を蝕み、終わりへと向かわせるだけの存在が。
「ああ、そのようにしてください」
誕生と破滅を繰り返す、創世の薔薇の一撃を、正面から受け止め、そして、破滅の力を叩き返した。
大成功
🔵🔵🔵
アーロン・フェニックス
君を見ていると我慢ならないね。
それだけの力を持っていてぼんやりしているだけなんて。目を覚ませよ
君も僕も、壊す為に壊されたくないのさ。壊すために邪魔するものを壊すのさ!
君が死に物狂いで全部壊したくなるように、僕のチカラを貸したげるよ!
●(背部推進器を噴かし『ダッシュ、空中戦、限界突破』
人間サイズで言う長距離からの射砲撃 機巧腕に連結する《天照》で『なぎ払う、焼却』火中で生きる化物にはもう片腕の《光明》を撃ち込む『蹂躙、乱れ撃ち』
相手の強大さを感じるほどそれを砕けと【指定UC】に願いを込め武装を強化する
(アドリブ絡み歓迎/アーロンは敵の破壊と相手の破壊力を引き出す為に出撃し猟兵の任務は忘れています
目を覚ませと、帝竜ガルシェンへと怒りを向ける。
それは一種の破壊衝動も伴い、ガルシェンの肌へ、意識へと突き刺さるほど。放つアーロン・フェニックス(アーロン・ザ・テンペスト・f24438)が、その巨体からすれば余りにも小さいことなど、関係がない。
「君を見ていると我慢ならないね。それだけの力を持っていてぼんやりしているだけなんて」
ガルシェンがその破壊の衝動を堪えているのに対して、アーロンは従い、突き動かされているのみ。
あれほどの力があれば、どれほの破壊と蹂躙が出来るのか。
産み出される命と、踏み潰される命の数は。
なんて勿体ない。
だからこそ、アーロンは己にとっての真実を吐き出すのだ。
「君も僕も、壊す為に壊されたくないのさ。壊すために邪魔するものを壊すのさ!」
そして、背部推進器より噴かし、飛翔して空中戦へ。
それによって薔薇が咲き、獣の因子を宿した創世巨獣が動き出すが。
だからなんだ。
本当の所は、これなのだろうと、先の言葉を証明すべく、空へと。
「君が死に物狂いで全部壊したくなるように、僕のチカラを貸したげるよ!」
その巨大さは、空を飛ばねばまず確実な一撃など不可能。
そして銃火の届く範囲など、これにとっては腕を伸ばせば届く距離――目の前に躍り出たに過ぎないと、驚異を感じるからこそ。
「さあ、壊す為の力と、壊す為の力で」
機巧腕に連結する《天照》が、アーロンの殺意と衝動を灼熱の炎と化して放ち、周囲に迫る獣を焼き払い、更にガルシェンの身へと。
火に耐性を持つものにはもう片腕の《光明》。滅びを呼び起こす衝動が砲弾となって放たれる。
「砕け、蹂躙しろ。乱れ撃って、全部、壊れてなくなってしまえ!!」
だが、それで尽きぬ創世巨獣ガルシェン。
その強大さ、そして、この程度では揺るがぬ姿に驚異を感じるからこそ――アーロンは己を、《衝動》を現実化する《願望兵器》へと変貌させ、殺傷力を増した火炎と弾丸を放つのだ。
それでも尽きず、それどころか迫る獣の群れ。
創世巨獣ガルシェンの巨躯の一撃が、ゆっくりと、しかし、確実に迫って。
その危機を、まるで自らを薪の火にくべるように、新しい力に変えて、撃ち込み続けるアーロン。
「壊れて、壊れて、壊して、壊れてれてしまえ! その為に、僕たちはあるんだろう!」
帝竜ガルシェンの討伐。
群竜大陸での戦争での勝利。
それらを忘却して、白熱する衝動に身を任せるアーロン。
「ああ、壊せるのなば、殺せるのならば。嫌はなく」
打ち下ろされる巨大な質量の一撃。
まるで崖崩れのようなそれに、全く怯むことなく、アーロンは両腕から砲火を続ける。迫り、触れて、たたき落とされるその瞬間まで。
衝動と殺傷性を、それこそ、自分が壊れるほどに高めながら。
大成功
🔵🔵🔵
キトリ・フローエ
…まるで世界のよう
途方もなく大きなあなたは
ただ見ているだけで呑み込まれてしまいそう
…苦しいのね
世界を壊したくないからこそ自らの死を願う優しくて美しいあなた
その願い、あたし達が叶えるわ
守りのオーラを纏って空を飛び空中戦を
あたしが呑み込まれるのは何としても避けなくちゃ
第六感でスライム達の動きを察知しつつ
ガルシェンの射程圏内まで向かうわ
スライムへは水と氷の全力魔法を
詠唱重ねて広範囲に放ち呑み込ませる
少しでも爆発の威力を抑えられれば
あたしは小さいから、大きなあなたには見えないかもしれない
でも、それこそが隙になる筈
一撃見舞う機を見出した瞬間に高速詠唱
破魔の力と全力籠めた黎明の花彩
夢幻の花弁で包んであげる
始まりを知らぬ身は、同じだけれど。
これは違うものだと、キトリ・フローエ(星導・f02354)は感じてしまう。
巨大だから。多数の命を持つから。誕生と破滅を繰り返すから。
どれも当てはまるようで、いいや、本質から逸れている。
上手く指摘できなくとも、これは違うのだと、 星煌めくアイオライトの眸を向けるのだ。
理解できないし、理解しあえない。
これは一種の概念。そういうものだと認識しなければならないのだと。
「……まるで世界のよう」
ああ、そうだ。
ひとつの世界だから、その外にいる私たちとは全く違うのだと、キリトは頭を振るい、ふわりと銀白色の髪を揺らせる。
違う世界同士。そして、その中に入れない以上。
どんな常識、道理、そして摂理があるかさえ判らない。
理解と共存があるのならば、誕生から破滅の一直線のみとは限らないだろうからこそ。
「…苦しいのね。世界を壊したくないからこそ自らの死を願う優しくて美しいあなた」
悍ましくも、美しいその姿に。
優しさの欠片がなければ、ただ、破壊をばらまく獣であっただろう、死を願う帝竜ガルシェンにささやく。
「その願い、あたし達が叶えるわ」
守りのオーラを纏い、飛翔する銀白のフェアリー。
反応して数多のスライムがガルシェンの身体から射出されるが、これを驚異と思うからこそ、キリトの動きは適切だった。
第六感で空中での動きを察知し、辺り一帯へと水と氷の魔法を放って凍てつかせる。
瞬間、そこは白銀世界。
息は白く、そして、うっすらと青い風。
空気中の水分も凍てつき、星のように輝いて、墜ちていく。
あらゆる環境での飛翔能力といえど、急激な対応は不可能だ。凍てつき、動きを鈍らせ、落下していくスライム達の間を縫うように翔るキリト。
後方で聞こえる爆ぜる音は、自滅が間に合わなかったスライムたちの断末魔だ。
そして、巨大な帝竜ガルシェンは、小さなキリトの姿を、しっかりと認識できない。
差が激しい。理解しあえないほど。
ガルシェンでは見つけられないほど、キリトの姿は小さくて、けれど、秘めたるは破魔の力を乗せた、黎明の花彩。
一瞬の隙を見いだし、咲き誇るは夢と幻の花びらたち。
「夢幻の花弁で包んであげる」
虚空を滑る指先から紡がれたのは、破魔の氷で出来たアイリスの花。
小さくも、色鮮やかな青紫。
それはひとつ、ひとつが氷刃となって、影より舞い踊る。
薔薇の、血の赤さを否定するように、ガルシェンの身を斬り裂き、そして、傷口を凍てつかせながら、更に奥へと。
壊して、殺して欲しいのだと。
その願いを叶える為に、破壊の衝動を斬り捨てる破魔の氷花として。
「さあ、優しい夢を」
或いは、アイリスの花言葉である、希望を。
「届けてあげる」
優しく、冷たく、美しい死の気配が、夢幻の花と共に揺れる。
大成功
🔵🔵🔵
シリン・カービン
【WIZ】
数も能力も脅威ではありますが、何とかするしかないですね。
スライムの攻撃を躱しながらガルシェンに向かってダッシュ。
緩急ダッシュでフェイントをかけ、隙を見切ってすり抜けます。
スライムの集団を抜けたらスピードを緩め、
スライム達がこちらに向かってくるよう誘います。
そのままガルシェンの体を駆け上がり、
スライム達も上がってきたところで氷の精霊弾を連射。
凍り付かせてガルシェンの上に転がします。
数体設置が完了したら【スピリット・ブレッシング】を発動。
「我が声に応えよ」
炎の精霊を宿した精霊弾を冷凍スライムに発射。
まとめて誘爆させます。
生命の循環を正しい姿に。
あなたの願いは私が叶えます、ガルシェン。
その身から放たれたスライムは、大地を覆い尽くすかのように。
膨大にして莫大。
いっそ、自滅する命の津波のようだ。
それらが羽根をもって迫り、命と死の流転に巻き込もう繰り返そうとする。
森の湖畔のようなエメラルドグリーンの瞳で見つめるシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)。
真っ向から勝負などしていられないと、決断するのに時間はいらない。
「数も能力も脅威ではありますが、何とかするしかないですね」
加えて、本体の持つ力とて軽視できない。
言葉通りになんとか。
無茶を押し通すしかない自体に苦笑して、地を駆け抜ける。
高速と低速、緩急をつけた動きでスライム達を騙し、欺き、すり抜けていく。隙あらば通り抜け、ないのならば引き寄せて道を作るまで。
フェンイトを自在に操り、踏破するスライム群。が、目の前の帝竜ガルシェンに痛打を与えられるかというば、それはシリンひとりの力では無理だ。
いいや、出来るかもしれないが時間がかかる。
その間にスライムが迫るのであれば、いっそと、スピードを緩めて、背後から追いかけるものたちを呼び寄せる。
そのまま駆け上がるはガルシェンの巨躯だ。大きすぎるが為に、シリンの動きに気づかない帝竜。
気づかれればその巨体で押しつぶされるだろうからこそ、狙えるのは一瞬だ。
スライム達もよじ登り、固まった所へと、向けるのは精霊の力を宿した猟銃。弾丸に込めたるは、氷の霊力。
「まずは、凍てつきなさい」
そして、構えると同時に速やかに連射。
スライムの粘体を貫く弾丸。びきりと、次々に穿った場所からスライムを氷結させていく。
纏めて固まり、動けないように。それこそ、後続たちの障害物となるように設置して。
「我が声に応えよ」
続けて祈る先は、炎の精霊。
祝福と加護求め、そして、授かった力を弾丸へと宿して、猟銃を構える。
狙うのはガルシェンではない。
けれど、シリンの唇が紡いだのは、ガルシェンに向けての言葉だ。
「生命の循環を正しい姿に。あなたの願いは私が叶えます、ガルシェン」
凍結したスライムの群れへと放たれる、火炎の精霊弾。
元より自滅する為のスライムたちだ。火精の爆炎に包まれ、誘爆し、連鎖する強烈な爆撃へと変化させる。
それはただスライムを葬っただけではなく、付着していたガルシェンの肉体にも激しい爆裂を、至近距離から浴びせたということであり。
僅かに揺らぐ巨体。
薔薇ではない、赤い血をその身からこぼして。
帝竜ガルシェンがシリンを見つけようと、視線を送るが、それより速く、離脱するシリン。
「そう、あなたの願いは叶えるから」
それまで耐えて欲しい。
破壊の衝動に、堪えて欲しい。
まだ痛みは続くだろうけれど。
死という終止符を求める竜に安らぎを与えるべく、シリンは精霊の力宿す猟銃を掲げて、駆け抜ける。
大成功
🔵🔵🔵
ルード・シリウス
一つの宇宙…つまり、一つの世界を相手取るという事か
なら、尚更喰らうしかねぇ。総ての帝竜を喰らうと決めたのだからな
さて、お前なら俺の飢えを満たせるかもな?
先ずは外套と靴の能力で気配と音を殺し、残像を囮にしながら攻撃のタイミングを見切って避けるないし、神喰と無愧の二刀で受け流しつつ凌ぎ、同時に駆け上がれる機会を狙う
駆け上がれる機が来れば、全力で駆け上がり背の上へ。武装の真名及び自身の真の姿を開放し、嘗て喰らった敵を憑依し自身の強化
二刀による連撃と捕食能力を以て帝竜の内側へ、掘り進む様に斬り、喰らいながら突き進む。内包する数多の命をその総てを喰い尽くす為に
受けた傷は喰らった血肉を糧とし癒せばいい。
ひとつの宇宙というのならば。
それを喰らい尽くせば、どれほどの飢えと渇きが満たせるというのか。
一種、ひとつの世界を相手にするということ。
それがどれほど危険であることか、判らないルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)ではない。
が、その暴食の衝動は尽きぬが為に。
例え、宙の星々を喰らっても、止まらぬが故に。
「総ての帝竜を喰らうと決めたのだからな。なら、尚更喰らうしかねぇ」
外套と靴の力で気配と足音を殺し、ガルシェンの懐へと迫るルード。
他が凄まじい勢いで暴れ、ガルシェンと壊し合っているからこそ、それならば容易だ。
が、無傷とはいかず、身体の表皮が大蛇となり、ルードの腕へと食らいつく。毒の有無を確認する余裕などない。
「ちっ……」
その首を神喰で切り落とすが、その断面が膨らみ、今度はまったく別の獣の頭が産まれてくる。それもひとつではなく、複数。
音か、熱か。外套の術式と靴だけではどうしようもなく、残像を産むような動きは、敵に察知されるだけだ。
更に複数の大蛇。鰐。そして、大熊。
ルードを逆に捕食しようとする獣たちの具現に追われ、跳躍した先は帝竜ガルシェンの背の上だ。
立つことで余計に判る。これは、余りにも大きい。ただ剣を振るう、魔術を繰り出す、砲火を浴びせる。それではただ僅かに、僅かに削るしかできないのだと。
「が、そのぶん、食い応えはありそうだ。さて、お前なら俺の飢えを満たせるかもな?」
よって真名を解放し、ぎちぎちと鳴り響かせる漆黒の大剣。
暴食の化身として、まるで全てを吸い尽くし、喰らい尽くす闇の魔人となって駆け抜けるルード。
神喰、そして無愧。
刃を突き立て、斬り裂いて疾走するのは、そのガルシェンの体内へだ。
ただ表面を削るでは意味がない。内蔵、器官、核――そのようなものに一撃を与えなければ意味がなく。
「それを喰らわせてもらう!!」
今まで喰らってきたものの命、力を纏って疾駆する姿は、暴食の闇そのもの。刃が触れたものを貪るかのような生命吸収と捕食能力。
体内へと潜り込んだ異物へと、肉体の中で生成された爪と牙がルードへと無数に突き立つが。
「止まる、ものかよ……っ…」
受けた負傷は奪い、喰らった血肉で癒やせばいい。
それ以上の速度で傷つき、消耗しながら、帝竜ガルシェンという宇宙を掘り進もうとする、その暴食の剣は止まらない。
その命、魂に届くまでと。
破滅と誕生を繰り返すガルシェンの流転に、その有様は似て。
ルードもまた、終わらぬ疾駆を繰り返すのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ビスマス・テルマール
●POW
『激痛耐性』で備え
※当たったら『怪力』と『武器受け』『盾受け』で受け流し
『空中戦』で空中を『ダッシュ』で駆けながら『第六感』で『見切り』
『オーラ防御』と『属性攻撃(炎)』を込めた実体『残像』を残しつつ回避し撹乱
どの位の割合か知りませんが、薔薇の部分があるなら、火には大なり小なり『時間稼ぎ』する為の障害物としては機能するかも
隙を見て『早業』でUC発動
『属性攻撃(油)』を
爆発力を上げる為に
さんが焼きバーガー型鎧装に付いてる爆弾剣に付与し
揚げさんが焼きバーガー(※揚げバーガーは実在してる)型爆弾剣に『武器改造』し『鎧無視攻撃』を込め『怪力』で『投擲』しお見舞いを
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
空中を高速で翔る。
ただそれだけの事に、どれだけの精神が削られていくのか。
「くっ」
振るわれる帝竜ガルシェンの攻撃は、四肢のみならず。
形を変えるのみならず、身体の表面から産まれる獣の姿。大きさもバラバラならば、大本が何か判らないものもある。
触手か、大蛇か。それとも、未完成の命か。
大きく伸びたそれを紙一重で避けたビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)だが、その風圧だけで吹き飛ばされそうになる。
直撃せずとも、纏う衝撃だけでもはやひとつの攻撃だ。
オーラを纏った防御の上から身が軋み、隙を作らぬが為に激痛を耐える。
第六感で見切り、残像を残して撹乱しようとするが、その全てに対応するだけの手数と質量。
それは津波に迎うが如く、山を崩そうと拳を振るが様に似ている。
が、ビスマスは猟兵だ。徒手空拳で山を崩すも不可能ではない。そ信じるからこそ、動きを止めることなく、空を翔けて回れるのだ。
そして、ついに薔薇の根元へと辿り着くビスマス。
「これは障害物にも時間稼ぎにもなりませんね」
放つ芳香は、生命の気に満ちている。
過剰にすぎるそれは、吸うビスマスを内部から破壊するほど。過ぎた癒やしは破壊なのだと何の話か。
確かに、生命と破滅、誕生と絶滅の流転こそがガルシェンならば。
その創世の薔薇に近づくだけで、破滅へと向かうのだ。
「ならば速く。少しでも」
隙などない。あるのは巨体。少なくともビスマスには見つけられないこそ、早業で繰り出される油の属性。
続く炎を、より強烈にする為に、装備した『山河焼きバーガー』鎧装内蔵の爆弾剣へと付与する。
「そう、速く!」
烈火の勢いをもって攻め掛かろうとするビスマス。
怪力によって爆裂剣を、如何なる鎧を穿つべく意志込めて投擲にて繰り出す。
肉薄するは難しすぎる。
だからこそと怪力と、烈火を増す油の属性をもって。
「油で揚げたハンバーガーというのは、奇妙で奇怪でしょうが」
その爆裂する剣の形を、いうのならば。
「ガルシェン、あなたもよほどですよ」
切っ先が薔薇の付け根へと突き刺さり、炸裂する焔と油。周囲へと燃焼していく。
「何かを産み出せば、それは、時折、奇妙で、突拍子もないものになる……命も料理も、創造とはそういうことでしょうか」
薔薇の根元、そして、周囲一帯から。
魚の群れのようにして迫る、無数の帯。
確かにひとつ、ひとつが魚の形をして折り重なり、その先にはカジキの如き角がはえているが――それは何とも奇怪であり、いっそ悪夢のよう。
まだサメが襲いかかるほうがマシだと、身を翻し、避けられぬものは武器にて受ける。
連打、連撃。続き、重なり、繋がるかの如き魚群の波涛。
「全て、捌いて、煮込んでやりましょうか……!」
その頭部にはえた角で、或いは、刃のようになったエラや尾びれでビスマスは斬り裂かれながらも、宙を翔る。
まだだ。まだだと、燃える薔薇の姿を見ながら。
帝竜ガルシェンの命へとは届かないのだと、知るからこそ。
「幾度となく、挑戦させて頂きます。ええ、料理の火加減は、未知の食材なればこそ、試行錯誤!!」
爆剣へと帯びさせる油の属性、その性質を変えて、弄り、この創世巨獣へと適したものを探りながら。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
クエーサービースト
世界を愛し殺せと叫びこの手に掛けたオブリビオン
これらの交戦経験のお陰で驚き少なく
…ただ哀しい
機械馬に●騎乗
センサーでの●情報収集で巨体の範囲、獣と植物の攻勢を●見切り回避、時に●盾受けで防御
敵や大地を●踏みつけ跳躍、地面の振動を躱し体躯を地形と見なし疾駆(●地形の利用)
格納銃器を展開しUC●なぎ払い掃射
●防具改造で付けた給弾装置で弾切れの心配は暫く無用
進路上の全てを燃やし、●怪力で振るう槍で障害排除
薔薇を燃やし体躯を炭とし、心臓部を目指します
御伽の騎士の様に救う事も、一息で退治することも出来ず申し訳ございません
せめて、あなたが愛した世界を守る為
戦機の騎士として出来得ることを
流す涙こそ、ないけれど。
ただ、悲しい。
深く、深く、海の底より。
ああ、確かに深海ならば、涙はこぼれることはないのだから。
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が機械の身だからと、理由をつける必要なく、思いを口に出せるだろう
「……哀しいのです」
宇宙にいた巨大なる獣、クエーサービースト。
世界を愛し、殺せと叫び、この手に掛けたオブリビオン。
それとの交戦経験があるからこそ、驚きは薄く、少ないから。
押し寄せる悲しみに、涙を流せないことに、より心が引き裂かれる。
紛い物ではなく、本物の騎士であれば、涙と共に告げられただろう。だが、トリテレイアに出来るのは、ただ言葉を紡ぐことだけだ。
「御伽の騎士の様に救う事も、一息で退治することも出来ず申し訳ございません」
機械の愛馬に跨がり、駆け抜けながらの言葉。
応えるガルシェンもまた、嘆くように。
それでいて、振るう攻撃は、破壊の衝動を制御出来ていないからだろう。
「構いません。幾らこの身を刻もうとも、幾ら、この身に詰まった血を流させても、私の願いを叶えてくれる勇者だというのならば」
速く、速く、この世界のひとかけら、壊して殺す前に、終わらせてくれと。
トリテレイアもまた、世界のひとかけらなのだから。
圧倒的な破壊の気配を浴びてなお、トリテレイアは止まることはない。
「せめて、あなたが愛した世界を守る為」
掲げるは、機械の白馬「ロシナンテⅡ」に備えられていた馬上槍。
騎兵の突貫の勢いをもって、全てを穿つべきそれを、山の如き威容を燃せる帝竜ガルシェンへと向けるトリテレイア。
「この、戦機の騎士として出来得ることを」
ならばもはや言葉は不要。
発するだけ苦しいだろう。交わすだけ痛むだろう。
速やかに終わらせるべく、スラスターを噴かせ、一気に駆け抜ける。
センサーで捉えた巨体、そしてそこから生える動物と植物の攻撃範囲。それらの攻勢を見切って避け、大地を踏みしめて跳躍する。
受けることなく、全て避けて走るは、必要となる速度が莫大だと、演算が訴えているからこそ。
「――そう、あなたは哀しいからこそ、求める願いを叶えられるべきなのです」
その巨大な体躯を地形と見なし、駆け上がる機械の白馬と騎士の姿。
止めよう、壊そう、殺そうと殺到する植物の茨と、獣の四肢。それらを格納した銃器でなぎ払うように掃射する。
「そう、騎士が銃で火攻めなど笑い話にならないように。あなたの今も、また」
手段を選んでいる場合ではないのだと、トリテレイアはその力を放つのだ。
弾頭に封入された特殊な化学物質は、命中と同時に炸裂し、燃焼する焼夷弾。
有機物ならば、例え水中でも即座に炭化させるそれは、獣と植物の性質を持つガルシェンへの特効の火だ。
更に植物の蔦と茨、獣の顎と蛇の如き胴体を向けるが、尽きせぬ弾丸と、燃え広がる炎に迎え撃たれ、蹂躙されるばかり。
如何に体積とその巨体があろうとも、広がる炎はどうしようもない。あくまで有機物を燃やす。火に耐性があっても、完全には防げない。
これが無機物、金属、機械などであれば効果は薄くても。
帝竜ガルシェンには、十分に過ぎる火焔の園だ。
その炎を突き抜けて駆ける、白馬の姿。
薔薇を燃やし、穂先が狙うはその心臓部。炭化した肉体を貫き、抉り、その先へと。
命へと、憐れみと悲しみよ、終わりとなって届けと。
「あなたの愛に、優しさに、感謝を」
ただ体積を削るような攻撃では意味がなく、足りず、届かない。
だからこそ、薔薇に包まれた奥底の心臓へと、その穂先を突き刺して。
これがトリテレイア。戦機の騎士に果たせる、唯一だと、深く、深く、柄と手元までと、馬上槍を竜の心の臓へと押し込むのだ。
「いえ、私こそ、感謝を」
何も殺さずにすんだのだ。
何も壊さずに終われるのだ。
ならば、この真の騎士の魂と思いを持つものに、せめての感謝と、祝福あれと。
「――ああ、殺してくれたのですね。叶え、救ってくれたのですね。勇者、いえ、騎士よ」
血と薔薇の花びらが。
赤く、赤く、祝いて祝福するように、降り注ぐ。
それは骸の海へと帰りて、塵と消える定め。だからこそ、瞬きもせずに消える、勝利を飾る花びらだけれど。
「言ったではありませんか」
そんなものは求めていない。トリテレイアは。
「……ただ哀しい、のだと」
勝利を、栄光を、手にしたそれらを。
そして向けられる賞賛と祝福を受け取らぬことは、侮辱と知るから、その一身で受け止めながら。
受け止める度に、鋼の身体に、悲しみを募らせて。
涙や花びらのように、それらを零して散らす術を知らぬトリテレイアは。
そこに残った、帝竜ガルシェンの瞳を見つめる。
決して逸らさない。
そういう存在があったということを。
それを討った騎士がある、ことを。
騎士にあるまじき身とならぬことを、誓うように。
大成功
🔵🔵🔵