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帝竜戦役⑨〜原初の因子此処に在リ

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #帝竜 #ガルシェン #群竜大陸 #帝竜ガルシェン

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●生々流転沼の中央で
 帝竜は広がる広大な土地を見て、想う。
 ――此処は、どこでしょうか。
『再孵化』し、この場所に現れてみたものの、どうも知らない風景だ。
「わたしは、界を渡るものだったのでしょうか」
 何よりも巨大、何よりも広大なガルシェンは自分の存在自体、疑問に思う。
 ――存在してはならないはずです。一体、どうして……。
「……いいえ、どれにしても此処に存在してしまっている以上、破壊の力を当然のように振るわなければならないでしょう」
 毒ガスの蔓延する広大な沼沢地において、体を起こす。
 起こすだけだ、歩むことも手を伸ばすこともしない。
 動いては――いけない。
 眠り続けたほうが、誰のためでも在るはずだ、とさえガルシェンは考える。
 しかし壮大な生命力が邪魔をする。単独で滅びることすら出来ない。
「こうしていれば、――誰かがわたしを殺しに来てくださるでしょう」
 上を向き、呆然とするように帝竜は佇む。
 なにも視界に入らぬよう。
 目を閉ざし、気配を落ち着けて。
 訪れを期待し、ただ静かに待つのだ。
 ――勇士よ。わたしは、ここにいます。
 ――わたしは、待っています……。

●ガルシェンは"死"を待っている
「……ねぇ?君の考える大きい、というのはどれくらいかな」
 ソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)は戯れにそう尋ねる。
「沼沢地、つまりは……まぁ沼だね。綺麗とは言えない所にさ、帝竜が……ぼんやりとしているようなんだ」
 動く様子はなく、何かをしている様子もない。
 遠くからでも目を凝らさずとも、その姿が見えるはずだ、とソウジは言う。
「ガルシェン。彼はそういう名前らしいね?実物を見たことはないけれど……どこか僕は聞き覚えが在るかなぁ」
 別名『創世巨獣(そうせいきょじゅう)』。
 どこかの世界で、そう語り継がれていた生物。
「彼は、更にまたの名を『原初の獣』とも言うんだけど……これはまぁいいね。原初、創世、巨獣。この3つからちょっとだけ想像してほしいのだけど、彼の大きさはなんと、……何十kmもあるんだよね」
 言葉の通り、見上げるほど。
 例えば心臓一つをとっても途方も無い距離を、必要とする。
 帝竜ひとりで、"国"として成立しそうなほどの巨大さだ。
「創世や原初、なんて言葉を使われる生き物が、毒ガスの蔓延する沼にいるんだよ。普通じゃないよね?」
 絶大な生命力がなければ、毒の中で鎮座なんてできない。
 世界の再生と破壊を司るなんて、言われたことすら在る生き物は生き様も壮大だ。
 ガルシェンの体の内側では、ありとあらゆる生命の進化と絶滅が絶えず繰り返されているという。まさしく神話の世界だ。
「大きさだけなら稀にいるかも知れないけれど、体の内側に本当に"国"を抱えているともなると規模が違うよねぇ!」
 内側の生命に、彼は干渉しない。
 観測などもしていない。必要なときは、多少力を借りるけれど。
 彼が死ねば共に死ぬ、それだけの潔い"国"。
 独自の生命の進化を重ねて歩み、人より更に巨大な住人が住むという幻の国。
 ……ただ、"そういう成り立ちの、既に死んだ国"があるだけだ。
「話が少しそれたね。そんなガルシェンは滅びを望んで、猟兵が来るのを待っている様子が見えるんだよ」
 望まずとも帝竜の称号を得てしまったガルシェンは相応に、先制攻撃を仕掛けてくるだろう。破壊衝動を、獣の本能をフル活用して、猟兵を殺しに来る。
「そういう意味でも彼は"獣"であって、"竜"ではないと思うんだけどねぇ……」
 ヴァルギリオスによる『再孵化』で竜を名乗るに相応しいというのなら、確かにそうかもしれない。
「自分の大きさも、力の強大さも理解しているからこそ最低限。――"その場から動かない"ように、しているみたい」
 自分を殺す手段を持つ、勇士の存在を夢に見て。
 再び死が自分を迎えに来る日を夢に見て。故に静かに待っている。
「とんでもなく姿も強大だけど、生命力が半端ない規模でもあるけれど。生き物なんだ」
 還ってきた生き物である以上、死なないはずがない。
 いつか過去で、確かに"死んだ"ことすらあるのだ。命の在庫は無限では、ない。
「……僕が想像する通りなら、彼は獣だからね。空を飛ばないよ」
 帝竜も一枚岩じゃないんだねぇ、なんて軽口を溢しながらソウジは笑った。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は【一章で完結する】戦争系のシナリオです。

 帝竜ガルシェン。毒沼に鎮座して勇士、自分を殺せるモノを待っています。
 生まれ直してしまった事に違和感を抱えているようです。
 死にたいけれど単独で死ねないことを、困っている、ともいうでしょう。
 上記を踏まえた上で、グリモア猟兵がプレイングボーナスになりそうな事を告げていると思いますので、よおく読んで、お考え頂けると幸いです。
 この依頼上では、ガルシェンは基本何十kmもある体躯をほぼ動かしません。
 ※選ばれた戦術ではワニレベルでは動くかもしれませんが、跳ねる程は動きません。

 戦場は、毒ガス蔓延の沼の中央。
 でも大きな体躯のガルシェンがどっかり座っているので猟兵が気にかけるなら毒ガスくらいです。
 足場は殆どガルシェンの上、とか思っていただいてもいいです。

 場合により全採用は出来ないかも知れません。
 ご留意頂けますと、幸いです。
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第1章 ボス戦 『帝竜ガルシェン』

POW   :    創世巨獣ガルシェン
【獣の因子】を使用する事で、【巨大な薔薇】を生やした、自身の身長の3倍の【創世巨獣形態】に変身する。
SPD   :    アンチイェーガー・ギガンティス
いま戦っている対象に有効な【猟兵を殺す毒を宿した『新種の巨大生物』】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    防衛捕食細胞の創造
召喚したレベル×1体の【外敵を飲み込み自爆する『巨大スライム』】に【虫を思わせる薄羽】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:桜木バンビ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

死之宮・謡
アドリブ歓迎

貴様にとって再孵化は望まぬモノだったようだな…
巨躯は武器…其れは変わらんだろうが…動かぬならば楽で結構
正直、サイズ差の問題で闘争は楽しめそうにないからなぁ…少しでも楽をさせてくれたまえよ…

巨大スライム共は黒爆(呪詛・属性攻撃)で近付かれる前に誘爆させて処理
毒ガスは「毒使い」として対処

その後【虚空より】を発動して奴の背中を爆撃
その巨体であろうとも、流星群だ…流石に痛かろうよ…

その後は、効くかは解らないがストライフを怪力で叩きつけて暴れ回る(鎧砕き・衝撃波・2回攻撃)


ヘンペル・トリックボックス
己が存在を理解し、否定し、消滅を望めど自死すら儘ならない──嗚呼、どこかで遭ったような気がするワケだ。そっくりですよ、貴方。少し前の私にネ。

望まずとも防衛機構が働くのなら、黙らせるのが先ですな。喚び出した式群に、火行符で火【属性攻撃】が出来るように付与。補食細胞に喰われた際、自爆の勢いを増幅し周囲の細胞すら巻き込むように細工して解き放ちます。
私自身は【目立たない】ように【忍び足】で頭部へと向かい、頭頂で【高速詠唱】しながら霊符を連続展開。【全力魔法】で威力を最大化した【破魔】【属性攻撃】を、渾身の力で叩き込みます。

私も頭をブッ叩かれて、そうして今、こうして生きてる。──なに、栓のない感傷です。


勘解由小路・津雲
ふむ、クェーサービーストとも戦ったので、でかさにはもう驚かないつもりだったが、こうして目の前にするとやはり途方もないな。さてどうしたものか。

【作戦】WIZを想定
まず毒沼には【毒耐性】の結界をはって対応しよう。それから相手の攻撃、防衛捕食細胞とやらは道具【式神】を飛ばして対応しよう。これはUCの式神と比べると偵察用で戦闘能力は低いが、敵を飲み込み自爆するというなら好都合、あえて飲みこませて自爆を誘い、かわすとしよう。
攻撃は【歳刑神招来】を使い、体を傷つけ、【毒使い】で沼の毒を強化して体内に注ぎ込もう。もともと毒は数ミリで何倍もの体積の生物を殺す、この巨体でも生命力を上回る毒を注ぎ込めば、必ずや!



●Break it!

 訪れた猟兵が見たもの。
 霞を越えて聳える崖、山。
 いいや、生物であるという。
「ようこそいらっしゃいました、勇士の資格を持つ――あなたがた」
 大音量の声、というわけではないのだろうが大地を震わす音。
 帝竜ガルシェンは猟兵が訪れたことを察して声をかける。
「此処はあなた方にはあまり良い環境ではないでしょうに……」
「……ふむ。その点は心配ご無用」
 勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)は片側の眉を上げながら、指を動かす。毒耐性を込めた結界を張れば、環境への侵食は一先ず無視できる。
 沼の殆どはガルシェンで埋まっている為、空気中から器官への汚染を緩和する意味合いの方が強い。
 先の津雲は決して、巨躯に対して驚いたわけではない。ただ、再び此の様な規模の存在を目にしている現実を、不思議に思っていただけだ。
「クェーサービーストとも戦ったので、でかさにはもう驚かないつもりだったが……」
 それは超巨大宇宙生物群の総称だ。
 小惑星規模の巨躯を思い起こしてみても目の前のそれを比較するにはヒトの背丈では語るに足りない。
 なにしろ、"どこまでが1個体"であるかも想像するには情報が少なすぎた。
「こうして目の前にするとやはり途方もないな」
 ――さて、どうしたものか。
「そうでしょうか。やはり、そうなのでしょうね。すみません」
 まるで他人事のような肯定と謝罪。
 小さき人類からすればそう映るのが当然だ、と知る落ち着いた声だった。
 そこへ響く音が、ひとつ。
 ガルシェンの待つ姿勢をおどけるように笑って、確かで強固な足場であると靴音を鳴らす者。死を待つガルシェンの腕の上(らしき場所)にとん、と舞い降りたミレナリィドール。
「己の存在を理解し、否定し、消滅を望めど自死すら儘ならない──」
 ヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)は事実を口に出して、整理する。いつかどこか、そういう存在を見聞きしたような。
 心の形、在り様。目に見えない箇所で苦悩する生き様。これは所謂、紳士の感だ。
「──嗚呼、どこかで遭ったような気がするワケだ」
 ふと、思い当たる。遠く遠く"いつかどこか"の記憶と思ったが、違った。
 違うのだ、とヘンペルは理解した。
「そっくりですよ、貴方。少し前の私にネ」
「あなたと、わたしが?記憶の殆どを持たないわたしが、あなたと?」
「ええ。存在する対象としての大小など無視できるレベルでネ」
 おちゃめに口に当てる指と、ウインク。
 ガルシェンからは見えるのだろうか、いいやきっと"感じる"はずだ。
「それならば、わたしは待っていた意味も少なからずあるでしょう。あなたがたならば、きっと困難を無視して進めるでしょうから……」

 ガルシェンの肌、地表。
 言葉にするには見るも不思議な光景が猟兵達の前で膨らんで、現れる。
 まるで体の内部が細菌へと過剰に見せる反応のような迅速さ。
 増える、増えていく沸騰する水のような速さ。
 泡のようにボコボコと不気味に蠢いて動く巨大な細胞組織が立ち上がり、大きくぶくり、と膨らむ。生き物とは到底思えないそれは、徐々に赤々と色を染め、脈打つ肉質へと変貌していく。
 創造から生まれるには誰が見ても悪趣味で、生まれて落ちるには不自然なほどの生命あふれる肉塊。こうして仔が如き防衛捕食細胞は、猟兵を喰らう為、蟷螂を思わせる薄き羽を生やしてあろうことか――翔ぶ。
「外敵を飲み込む防御機構のスライムです。どうか捕食などされませんよう」
 ガルシェンの一言で、蠢く無数の肉塊が不自然なほど口を開き飛んでくる。まるで親に初めて教えられた事を披露する事に喜びを感じる――獣の仔であるかのような反応速度。

「貴様にとっては再孵化は望まぬモノだったようだな……」
 そうでなければ、死を望む為に生まれたりはしないだろう。
「どうしてここにいるのかを、わたしは知りません。本当に此処に居るべきなのかも……」
 死之宮・謡(狂魔王・f13193)は自身へ向けて飛来する悪夢の塊を、ふわりと繰る黒爆で近づかれる前に誘爆させる。大口を開いた肉塊が飛んでくるのだ、呪い蝕み破砕することなど、謡には手遊びのよう。
 何体と大口を開けて飛び込んでこようが、自爆される前に細胞レベルで破砕する。
 大小など問わない。入り込める箇所から力を行使し、自爆の猶予を与えない。
 見た目の不気味さも相まって、薄き羽で小賢しく逃げる細胞すら在ったほどだ。
 考える頭を持たない口と羽と胃袋だけを持つ肉塊は、脈打つ血管だらけの身を揺らす。謡の攻撃は生まれた仔に対処しきれるものではなかった。
 故に、強敵だからと、観察に回っただけかもしれない。
「……巨躯は武器そのものだろう」
 体を揺するなりするだけで、スライムに飲み込む隙をくれてやることも可能のはず。毒沼に突き落とし、腹で潰すだけで猟兵たちの命だってガルシェンには容易く掃除できるはず。
 闘争本能が在る殺す気で狂う竜であったのなら、幾らでも想像できることだ。
 防衛機構の悪夢の仔を助け、外敵全てを滅ぼす道もあったことだろう。
「そうかもしれませんが、武器として使う口調に聞こえますか」
 ガルシェンは死を願っている。
 故に、自発的に動こうとしない。
 ――其れは、頑なに変わらんのだろう……。
「使おうとしなければ、ただの飾りであるとも言えます。わたしは、置物でしょう」
「そうではあるが、自分で言うことか?しかし……動かぬならば殺しが楽で、大変結構」
 左手の人差し指を、向ける。
「正直、サイズ差の問題で闘争は楽しめそうにないからなぁ……。少しでも楽をさせてくれたまえよ…………」
 一人で死ねない生命力の何たるかを、見せつけるが良い。
「災害トハ、唯ノ生命体程度ニ抗エルモノジャ無イ……」
 此処に災害を呼び込もう。受け止める素材は、此処に居る。
「過ギ去ルノヲ祈リ、乍震エルシカナインダ」
 魔法の発動の気配が周囲を埋め尽くす。
 いいや。周囲に集まったのは喚び込む流れだけだ。
 ――では、その本命は――――。

「色々飛び出して来ましたな」
 ヘンペルは冷静に、火行符に火属性の与える。
 陰陽道の基盤のひとつを込め、短くも長い沈黙が降りる。
「飲み込むか、……ならば」
 常時使役している紙で出来た式神を指の動きに追従させて、津雲は飛ばす。
 向かわせる先を考えれば、これは最適の解ともいえるはずだ。
「喰らうというなら好きにするといい」
「ホットでデンジャラスな味を約束しますよ」
 どちらの陰陽師も作戦を察したように、同時に差し向ける。
 二人の陰陽師が込めて解き放つは、どちらも罠多き"誘発"。
『キシャァアアアアアア!!!』
 声があるなら、そう聞こえただろう。
 肉塊に裂けたような不気味な口がぽっかりと開いていた。涎のような液体を狂うように散らしながら、縦横無尽に翔ぶ式神に釣られて方向を変える。
 増えた"外敵"と認識したのか、熱源や力を察知したのかを判断する材料はない。
「賢いわけではないようだ」
「……しかし、どうやら大食らいではあるようですな」
 薄羽で標的を狙い続け、式神による誘導でばくん、と火行符を飲み込ませる。
 誘導の役目を終え、手頃な個体の大口に式神を収めたと同時。
 ぱちん――。
 たった一つ、ヘンペルの指を鳴らす音。
 符を喰った人肉が如し肉塊が自爆現象を引き起こし、空に花火を打ち上げる。
 染め上げる大爆破の規模は、ヘンペルの符がトリガーだ。
 周囲の細胞諸共焼き焦がし、巻き込む加虐の爆弾。
 ぼとぼとと落下する死する細胞は、二度と飛翔の翼を広げない。
 爆破すること無く死滅したからには、ガルシェンの防衛は無いも同じ。
「あちらはいつの間にか姿を消していたが、おれは此処からだ」
 津雲の周囲に、槍や鉾が浮かぶ。
「八将神が一柱、刑罰を司る歳刑神の名において、――汝を裁かん。急急如律令!」
 斬りつけるように皮膚を、体を、抉る歳刑神の加護を受けた破魔属性。
 如何に簡単に死ねぬ生き物においても、絶対傷つかない等ということはない。
「……些細な傷に泥、いや。毒を盛り続けるが構わないな?」
 沼の毒を強化して、小さな傷口から注ぎ込む事を提案する。
 その先駆けは鉾の先端だ。
「それで滅びが起こるのならば」
 承諾と受け取り、数ミリで何倍もの体積の生物を殺すそれは打ち込まれる。
「生命力を上回る毒を注ぎ込めば、必ずや!」
 外側からの毒で死なずとも、内側より巡り巡って致命傷と成ればあるいは……!

「……いやあ、此処までだいぶ急ぎましたが"遠い"ですね」
「そうでしょう、おつかれさまです」
 ヘンペルの姿は、ガルシェンの頭部付近にあった。
 爆発が起こり続ける間に目立つこと無く、気づかれていたようだが妨害もなく高速詠唱を始める。
 霊符を連続展開を可能とする詠唱で付与するものは、全力を注ぐ破魔の雨。
「どうもです。先程の話の続きですがね、私も頭をブッ叩かれて、そうして今、こうして生きてる。──なに、栓のない感傷です」
 ヘンペルは、途方も無いガルシェンの頭部を渾身の力で、叩き続ける。
 小さくても、浴び続けることで、得るものもあるはずだから。

 遠く遠く、虚空より流星群が降り注ぐ。
 謡に寄る星々がガルシェンの広大な背中を叩く。
「……わたしが、ゆれる…………?」
 ガルシェン頭を軽くあげただけでは、背中の様子などみえないだろう。
 振り向いたところで、虚空から注ぐ"ナニカ"が見えるだけだ。
「その巨大であろうとも、流星群だ……流石に痛いだろう」
「流星群。星々の激突があるのですね、ああ此の痛みが……」
 のんきな返答だ、謡はそう思う。発言が全く痛いように聞こえないことは無視できても容易く死なない事は事実であるらしい。
「だめか。では蹂躙で物理的にやらせてもらおう。悪く思うなよ」
 絶滅魔剣ストライフ、命の終わりで鍛えられた闇に色濃い大剣を、持ち怪力の限りに体表を打ち付ける。
 分厚く硬い鎧のような皮膚が砕ける事を心より願いながら、何度も、何度もだ。
 彼女の爪牙がどこかで突き刺さり、砕ける場所は果たして何処か。
 その一撃が完全なる死を呼び込む呼び水に成ることを――夢に見て。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イリーツァ・ウーツェ
巨きいな
更に、三倍と為ると
動かないとは云え、其れで倒すは難しい

必要なだけ、此方も巨きく為ろう
創生の獣を殺せる程に
本より、此の身は一度
背に森を負っている

目を合わせ、過ぎて見下ろし
全力魔法で自身を強化
渾身の怪力で、踏み潰して呉れよう

滅びた国の、後を追え


アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)
すごい、すごいねぇ
あんなに大きいなんて、すごいや

わたしも、かなり無茶しないと駄目かもね

先制攻撃は受けるよ
もちろんオーラを目一杯に纏ったり、受けた瞬間に相手から少量でも生命力を奪ったりして防御するけど、重要なのはその後

わたしは、私の限界を超えるよ

【開花の時は来たれり、我は天地囲う世界樹なり】
あの巨獣にも負けないほどの「神体」にへと変貌する

拡大し続ける肉体は毒の侵食を追いつかせず、無数の大きな命をも単純な質量で押し潰す
相手が動かずとも、最後の理性で目の前の一番大きな者にぶつかっていけば良いだけ

わかるよ
怪物はいつか倒されるもの。それがめでたしの条件だって
だから
先に殺してあげる


カイム・クローバー
創世巨獣だっけ?デケェだけの奴なら今までにもゴマンと見て来たが…アンタの前じゃそいつらも霞んで見えるな。

加えて更に巨大化するんだろ?巨大化したのを見届け、俺もUCを発動する。発動前に何かしら攻撃を振って来たなら、【見切り】と【残像】で躱すぜ。あの巨大な前爪で殴りかかってくるなら、俺もその前腕に飛び乗ってUCで飛翔(跳躍)しつつ、頭頂部を目指す。沼のガスは身体に登れば高度が上がって、被害を抑えられるだろ。
魔剣を顕現し、狙いは巨大な薔薇。どういう理屈かは知らねぇが、目立つ所にあんならそれを叩き斬る。
【二回攻撃】しつつ、紫雷の【属性攻撃】を刀身に宿して【範囲攻撃】。
どーだい、ちょっとは痺れたか?


龍・雨豪
大きいにも程があるわよねぇ。真の姿の私でもここまで大きくはないわよ。
近縁種って言っていいのか怪しいけど、その好で付き合ってあげようかしら。
毒ガスに特殊性は無さそうだし、ガスマスクでも買ってから向かうわ。

デカブツを倒すなら内側からが定番よね。ただ、さらに大きくなるのはちょっと輪をかけて酷くない?
UC無しじゃ移動だけでも大変だわ。
とりあえず、高速飛行で体内に入れそうな穴を探して心臓の位置を見つけましょ。脳でもいいのだけれど、きっと心臓の方が心音で特定しやすいと思うし。
ある程度位置を特定したら、他の猟兵を呼んでこないとダメよね。
流石に私一人で心臓までの道を切り開いて血管を切って回るのは厳しいわ。



●Destroy me
「痛くないわけではないです。私の生命力を蝕み続ける毒となっています」
 もしも絶大な生命力など無かったら体に大きな異常を抱えている。
 ガルシェンは少なくとも、猟兵を侮っていない。
 敬意を持って、そう評価する。死せる可能性を、確かにみているのだ。
「ですから……隅々まで、死を届けてください」
 記憶は無くとも、持ち得る因子に働きかける事で大きな真紅の薔薇が、爆撃され続けた背中に咲き誇る。
 たった一輪だが、どの場所からでもその花を視認する事ができた。
 はじめに花が、遅れて背中を這うようにずるりと蔦を伸ばし棘で覆われていく。
 突如として咲いた薔薇は、ガルシェン本来の大きさを取り戻させていく。
 いつの時代かすり減って小柄になっていった歴史を巻き戻し、更に巨大に神話の領域に足を踏み込む。
「……創世巨獣だっけ?」
 現在の姿の名。
 それを聞かされていた気がするカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)。
「俺もデケェだけの奴なら今までにもゴマンと見て来たが……アンタの前じゃそいつらも霞んで見えるな」
 自分もガルシェンからすれば霞む程小さいのだろうが。
「創世の時にはわたしより巨大な者は存在していた気もします。わたしはこれでも、小柄なはずです」
「……マジか」
「でも大きいにもほどが在るわよねぇ?」
 龍・雨豪(虚像の龍人・f26969)は毒ガスに致死性や遅延性などの特色が無いと判断し、ガスマスクを持参し付けていた。
 多少くぐもる声でも、気に留めない。
 ガルシェンの更に大きくなった姿をすぐに見上げるのを止めた。どこを見ても竜の身体、竜そのものだというのなら、どこを見ていても同じハズである。
「世の中の近代化は小ささを求めてるのよ、本当に時代遅れね」
 時代を逆行した巨大さに、そう声をかけるが山がさらに山になっただけ。
「小ささですか……わたしに理解させる例えを、お持ちでしょうか」
「……そうねぇ。あなたが見る、私たちくらいかしら」
 ――真の姿の私でもここまで大きくはないわよ。
「近縁種って言っていいのか怪しいけど、その好で付き合ってあげようかしら」
「それは助かります。近代化とやらを知れるいい機会ですね」
「なら一つ、提案よ。あなたの絶大な生命力の恩恵を一時的に受ける事は可能?」
「……?可能だとは、思います。わたしから削り出された何か、…………肉や流血ではなく、もっと固くわたしに密接に関係する物質を所持するなら……」
「そう、了解よ。ひとつの手段として借り受けるわね」
 雨豪とガルシェンのふわふわとした会話が続いていたがそこまで見届けて、カイムは迸る雷電を身に宿す。
「じゃあ俺からは少しばかり手荒い手段をプレゼント、だ!」
 雷電を宿した身で落雷が如き素早さで、途方も無い大きさのガルシェンを攻める。
 近いはずの声に反して、ガルシェンの身体は遠く広く、カイムの足は容易く手にすら届かない。
「ぷれぜんと。それはうれしい。わたしへの死刑宣告でしょうか」
 前足をふわ、と上げるガルシェン。
 鋭利な爪を攻撃のためではなく、カイムを呼び込むように差し伸べた。
 こんなに戦う気のない巨体はそういないだろう。
「ああ。確実な死を伴った片道切符なのは間違いないだろうな!」
 手を背の方に向かわせることで、速さも距離も段違いに跳躍する。
 カイムが狙う先は、背中に咲き誇る真紅なのだから――。


「わあ、わあ。すごい、すごいねぇ」
 感心のあまり言葉を繰り返す。
 少女はアウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)。
「あんなに大きいなんて、すごいや」
 大きいものが大きくなる。
 アウルも大きな方だが、死にたい優しい声は更にその先を行く。
「大きいのがすごいのですか」
「うん。すごいね。わたしも、かなり無茶しないと駄目かもって、思うから」
 ガルシェンの純粋な問いかけに、アウルは頷いて微笑む。
「その姿は原初の、創世巨獣としての溢れる命の姿、なんだよね?」
 高き森の怪物はオーラを目一杯に纏ってその姿に成るのを見ていたが、獣の因子に引きずられ時折優しそうな雰囲気を壊して咆哮を上げるだけに留まっていた。
 手を出したく成るのを、吼える声に乗せて受け流している様子にも見える。
 その代わり、ビリビリと大気を揺るがすので振動が衝撃波となって身体を打ってくるのだが。
「その、ようです。わたしがそう命名したわけではないので、わかりかねますが……」
 衝撃で揺さぶられた分は少量でも生命力を奪って、アウルはやり過ごす。
 絶大な生命力を多少奪われても、優先事項は死。
 ガルシェンにとっては、些末なことだ。
「じゃあさ、じゃあさあ。わたしは、――私の限界を超えるよ」

「……巨きいな。これで更に三倍に為っていると」
 イリーツァ・ウーツェ(竜・f14324)は殺す算段を、竜への問を投げることなく思考する。
「動かないとは云え、其れで倒すは難しい」
 適切な術として、この姿では効率が悪い。
「必要なだけ、此方も巨きく為ろう」
 一口に言えば迷言と、投げ捨てられることだろうがガルシェンは肯定する。
「わたしばかりが大きいというのは幻想でしょう。では、必要な大きさとはどのくらいだと思いますか」
「創生の獣を殺せる程に」
 短く、イリーツァはそれだけを口にして返答とした。
 このままでは約定は果たされない。
 帝竜に殺される可能性は、断然否定する。それはありえない。
 殺せないままのんきな会話が続くばかりだ、此方が疲弊し、撤退するしか無い。
 オブリビオンとして不本意だろうとも返り咲いた竜を、"殺せない"。
 果たされない。
 イリーツァの古き竜の血が、過激に滾る。
 大きく広げる竜の翼共々、イリーツァを起点に魔素濃度を急激に高まっていく。
 青き炎上がイリーツァを包み込むように燃え、その内側に存在感を更に暴威を顕に圧倒的なものに変えていく。
 人間とは異なる常識に身を投じ、果たされる為に容赦なく自身を使う猟兵。
 それが、イリーツァ・ウーツェだ。
「本より、此の身は一度」
 果たされるべき約定を確実に果たすために爆発させた感情分だけ身体のサイズは暴力的な姿をガルシェンの前に顕した。
 何十kmを更に3倍、創世巨獣となった獣より、彼のほうが帝竜と呼ぶに相応しいほどの巨大さ。
「背に、森を負っている」
 巨大が巨大を睨めつけ、見下した。
 見下げる姿はもう巨とは、思わない。
 溢れて燃える青を更に轟々と焚べて、膨れ上がる魔素を全力で自身の肢体へ滞りなく隅々まで強化する。
 堅き鱗は更に強度をあげて、何者も貫き壊す術は無く。
 強化の分だけ燐を舞い上げ、イリーツァの黒々とした鱗を火炎の色に染め上げた。
 静かに高め続けるイリーツァに明確な殺意を根絶する力が、宿る――。

 完全に竜となり君臨するイリーツァより遥か下方で、高き森の怪物もまた声高に載せるものがある。
『――あ――――ぁ――――a――A――i――yA――AAAAAAAAAA!!!』
 ――開花の時は来たれり、我は天地囲う世界樹なり――――。
 大きく吸い込んだ吐息を巨大なる創世獣に負けないほどの発声、
 アウラの姿が、揺れて怪物は限界のない成長を始める。
 群竜大陸を手始めに星そのものを侵食する勢いで、森たる化け物から聖なる域に踏み込む『神体』の高みに登っていく。
 産声を上げた神聖が――限界を越えて、叫び続ける。
 成長を続けるアウラの理性は、反動で徐々に薄れていく。
『――ぁ――――a――AAAAAAAA!!!』
 沼に広がる毒の侵食さえ成長の速度で置き去りに。これは理性をギリギリ留める楔だ。
 しかし、そろそろ純粋な毒の回るより成長の速度がより上へ滑り込む。
 見下げて小さいガルシェンを、可愛い生き物、と見てしまえる程巨大化してしまえば。ガルシェンの体表の上で防衛を努めて溢れ出さんとする無数の脆弱な命の粒も、単純な質量で押し潰す。
 標的は動かないと知っている。
 最後の理性で目の前の一番大きな者にぶつかっていけば良いだけだ。
 ――直ぐ側にさらなる大きさを感じるけれど――――。
 目の前に入れなければいいだけだ。ギリギリの理性でもそれは判断できる。
 このまま成長を続けていけばいずれ――。
「それらの姿が、神すら撃つあなたがたの神話殺しの体現なのでしょうか」
 アウラの手の届く範囲が、その手全てが背中全体を覆える程となったときガルシェンすら潰せる神となる――。

 これに焦り始めたのは、真紅の薔薇を目指して急ぐカイム。
 複数現れた巨大な影が猟兵仲間というのは分かるが、桁が規模が些か違った。
 明らかに彼らは生命力を上回る蹂躙を、振り下ろしてくるだろう。
「……いいや待て待てもう暫く待てって!」
 もう毒ガスの事など考える余裕すらなかった。高度もだいぶ上に居るはずだ、多少吸い込んでも咳き込んですらいないのが良い証拠だ。
「なあ!伐採しても、構わないだろう!」
 雷電を爆ぜさせながら、カイムはその手に魔剣を顕現させる。
 神殺しの魔剣、カイムはそれをそう呼ぶ黒銀の炎を従える一振り。
「いいやガルシェン、返答はいらねぇ。どういう理屈かは知らねぇが、目立つ所にあんならそれを叩き斬る……」
 茨の中を飛び跳ねながら突き進み、最後の飛び上がりに全てを賭けて。
 間近に近づいた太い茎を素早い二度の切りつけに紫電を乗せて、雷槌を派手に響かせながら焼き焦がし――薔薇を撥ねる。
 花は、ただ咲き誇っていただけの、巨大な花でしか無かった。
「どーだい、ちょっとは痺れたか?」
 獣の因子を糧とした花ごと落とされては、創世巨獣形態は長くは保てない。
 獣な身体に刻まれたいつかの記憶の再現でしかないのだ。花が堕ちれば戻る理由を、ガルシェンは知らない。
「ちょっとだけ。……良い庭師になれますよ、あなたは」
 創世の獣は呑気に、見事な伐採を褒める。

 カイムに断ち切られ、すうう、と沼に溺れていく薔薇。体の至る場所に継続的ダメージを受け続けるガルシェンの頭上よりアウラの手が振る。
 ――わかるよ。
 ――怪物はいつか倒されるもの。それがめでたしの条件だって。
 ――だから先に殺してあげる。
 殺すために延びた手で。
 頭から身体をまるで細長い棒でも持つように持ち上げて。問答無用に握りつぶす。

 ごしゃり、ばきり、ぐしゃり。
 がりがりがりがりがりがりがり。

 砕ける音、砕かれる音。
 アウラの指がガルシェンの皮膚を、胸部を返して刺さるように、刳り貫くように――破る。
 最後の理性が、生物であるのならおそらくあるだろう心の臓の場所を想像し、剥がすように穴を開けた。
 おもちゃのように握り、握りしめたままアウラは離さず握り込み続ける。
「……破片だけど、確かに拾ったわ」
 雨豪はガルシェンから砕けて溢れた"骨"らしい一部を手に握る。
 アウラが時折竜を持ち上げてぶんぶんと振り回すので、その勢いで飛んできたのだろう。
「デカブツを倒すなら内側からが定番よね」
 そう雨豪は考え、ガルシェンの上で息を潜め続けて探索していた。
 高速飛行を用いてなるべく疲れない努力はしていたが、竜の体積の大きさにやや屈していた所。
 心まで挫けていないことは幸いか。
 更に大きい事で疲労の色は濃いが、そういう事も言っていられない。
 今、突破口を見た。
 体内に入るための穴を探し続けていたが、今孔は開かれたのだ。
「私からは判断出来ないけど、大きいヒトがみたらそこが――心臓なわけよね」
 胸に空いた孔に、雨豪は迷わず飛び込む。
 ――破壊するなら脳でもいいのだけれど。
 ――きっと心臓の方が心音で特定しやすいと思うし。
 どくん、どくんという音は、想像通り聞こえていた
 ただし、雨豪が想像するよりも、内部はより不思議の光景が広がっていただけだ。
「街……よね、本当に街があるわ…………?」
 心音が聞こえる方へひたすら向かう雨豪は、下を向くと生い茂った森や人類が暮らすには到底巨大な街が存在しているのを見る。
 本当に街は存在した。歩く人影も、賑わう声も色々聞こえてくる。
「……それで、あれが心臓…………?」
 奇っ怪なことに、心臓と呼ばれるものは、不思議の街の一番高い建造物に据え付けられていた。輝く宝石のようななにか。
 しかし、それが心臓部であることを、雨豪は確かに察した。
 音はそこより響いている。心音に抱かれて街は呼吸を続けてきたというのだ。
「……ん。でも、場所がわかっても、他の猟兵を呼んでこないとダメよね」
 何もかもが巨大であるそれらを壊すためには、強大な力がいる。
 自分一人で切り落とせない事を正確に理解し、黄金のオーラを改めて身に纏う。
 今なら――出来そうな者に、情報を届けられるかもしれない。
 意志は固く定まった、出来る限りの最大速度が雨豪の速度を加速させる。
 孔まで戻り、あえて孔の縁に立ち、他の猟兵へ協力を仰いだ。
「此処を!!!」
 言うだけ言って、雨豪は早々にその場を離脱する。
 他の猟兵も、二人の猟兵が巨大化したときから順に射程圏内から一目散に逃げていた。雨豪は多少間に合わない覚悟をもって、それをしたのだ。
「承知した」
 イリーツァは協力を承諾し、孔をめがけた渾身の怪力を持って踏み砕く。
「内側に国を抱くと聞いた」
「そうです。今は"いきて"成長と発展を続けているかもしれませんが」
「では"滅びた"国の、後を追え」
 アウラの手により逃げられず。
 明確な死がガルシェンを仰向けに倒し胸の内側を逞しい足が踏み抜き、碎いて、生命力の根源を轢き潰した。
 呆気ないほど、容易く心の臓は潰されて欠片をも残さぬように潰し尽くす。
「……約定は、成った」

「……まっていて、よかったです」
「あまりに広大な身体が、生きることをやめました」
「いずれ深刻なほど毒が回り、受けた破壊の分だけ相応しい死を迎えるでしょう」
「いえその前に。近代では、最小を求める。なんだか、分かったような気がします」

「わたしが世界を殺すその前に」
「殺してくれて、ありがとう勇士たち」

 徐々に崩れて消えていく帝竜は。
 望んだ死が齎されたことでどこまでも満足げだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月10日


挿絵イラスト