帝竜戦役⑦~かつて賢竜だった者
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入り組んだ機械とそこから出る蒸気に満たされた魔法迷宮の中。そこから重く、鈍い音が響いていた。
「テキガクルヨ! テキガクルヨ!」
声の元は巨大な竜――オアニーヴに付けられた仮面。煽るような台詞に抗うように、オアニーヴはその頭を壁にぶつけ続ける。
「黙れ……黙れ『大魔王の仮面』よ! 群竜大陸に挑む勇者が現れた以上、貴様の呪いに屈する訳にはいかぬ!」
一つ、大きな咆哮を上げた。何度も、何度も。自らに浸食してくる何かに抵抗するように、体を捩り、一層強く頭をぶつけた。狂ったように、或いは狂ってしまわぬように。
一定の間隔で響く音の中で、仮面は言を掛ける。
「ムリダヨ! ムリダヨ! ナゼナラバ……汝の願いと希望を、この仮面は糧とするからだ。竜神山脈の長『賢竜オアニーヴ』といえど、逃れる事はできぬ」
最終宣告のように、今度は静かにそう告げる。仮面の下の竜は顔を歪め、苦悶の声を上げた。
「おのれウームー・ダブルートゥ…封印時に仮面の呪いを受けた私は、このような事態を避ける為に自ら命を断ったというのに……グアアア、理性が保てぬ……!」
ドンッ。一際大きな音を最後に、オアニーヴは自傷行為を止めた。ゆっくりと体勢を整えたそれは、グルルと唸り声を上げた。
「センノウカンリョウ! ……さあ挑戦者共よ、汝らの全てを喰らい、我が糧としよう」
かつて賢竜と呼ばれたそれは、もうここにはいなかった。
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「今度の敵は、少々面倒な事になりそうだね……」
片手の本を捲り小さく溜息を吐くクラム・ドグマ(黒い読書家・f03711)。その顔に、いつもの穏やかな笑みは無かった。
「2体目の帝竜が発見された。名は『オアニーヴ』……かつてアルダワで共に大魔王と戦った『賢竜オアニーヴ』だよ」
大魔王の仮面の洗脳によるものだろう。かつての賢竜はその意思を失い、人類の敵たらんとしている。
残念ながら、賢竜を洗脳から解放する方法は無い。彼を救う為には、討伐するしかないのだ。
「きっとつらいだろう。オアニーヴに剣を向けるのは心が痛むと思う。……でもお願いだ。彼を苦しみから解放してあげてくれ」
クラムは猟兵たちに頼み込む。とはいえ、そう簡単に討伐出来る相手では無いだろう。
「オアニーヴは必ず先手を取って攻撃を仕掛けてくる。それに対処出来るよう考えてほしいんだ」
少しの油断が命取りになる。そう強く念を押し、クラムは転移の準備を始めた。
「みんな、気を付けてね」
くらげ屋
このシナリオは「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、『帝竜戦役』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオになります。
初めまして。或いはお久しぶりです。くらげ屋です。
初の戦争シナリオになります。よろしくお願いします。
敵は必ず先手攻撃をしてきます。そのため、今回は下記のプレイングボーナスがあります。
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』
皆様のご活躍を期待しています。
第1章 ボス戦
『帝竜オアニーヴ』
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POW : 竜操の仮面
【頭部を覆う仮面が邪悪な光を放つ状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 賢竜オアニーヴのはばたき
【戦意を弱らせる聖なる光】【光輝く爪による引き裂き攻撃】【六翼の羽ばたきが巻き起こす浄化の風】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : ダンジョンメーカー
戦場全体に、【魔導蒸気機械と金属のパイプ群】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:otomo
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
「洗脳から解放する方法は無い」……はっきり聞いてしまうと辛いですね~
倒すことが救いになると願います~……
UC発動まではアイテム「スケープシープちゃん」で凌ぎます~
迷宮に閉じ込められたら~
アイテム「ぐるぐるくん」(眼鏡)の透過スキャナ+熱源探知で敵の位置と
迷宮の構造を解析してから【マジカルケミカルボトル】を発動、
「ぐるぐるくん」で追跡しつつ、次々と迷宮の奥、敵の元へ炎を送り込みます~!
敵の周囲に炎を近づけたら、
そちらの方向目掛けて一気に炎を合体、
巨大化・膨張させた炎で迷宮の通路を満たし、
オアニーヴ……いえ、大魔王の元へ到達させますよ~!
ハルア・ガーラント
自ら命を絶って、また操られて。辛いですね。
【WIZ】
迷宮に囚われ恐怖で竦みそう、だから[セイクリッドデバイス]を最大出力に。
即興で作った変な歌を爆音[歌唱]。わざと音を外し、失礼な歌詞も織り交ぜて。こんな環境なら反響も酷い筈、苛立った帝竜さんに来て貰いましょう。
直接戦闘に入ったら[銀曜銃を誘導弾]で撃ちつつ、相手の攻撃は[咎人の鎖]に魔力を行き渡らせ芯とした[オーラ防御]を。
わたし達鳥類の翼は風切羽根を損傷すれば飛べなくなります。
敵が飛翔した瞬間を狙い、迷宮での恐怖を一気に爆発させUC発動。
白鷲さん達、あの風切羽根を狙って!
敵が体勢を崩したところに[魔力溜め]した銀曜銃の魔弾を撃ち込みます!
「『洗脳から解放する方法は無い』……はっきり聞いてしまうと辛いですね~」
リネットヒロコ・マギアウィゼルーク(【魔導科学者】マギア=ウィゼルーク・リネット・博子・f01528)は静かに呟く。ゆったりとした口調。しかしそこには哀愁が滲んでいた。
リネットヒロコの横では、ハルア・ガーラント(オラトリオのバロックメイカー・f23517)が顔を強張らせて棒立ちになっていた。狭く暗い場所に得体のしれぬ恐怖を感じていたのだ。
彼女らがいるのは、かのアルダワの地下を連想させるような、巨大な迷路の中。複雑に絡み合ったパイプと、絶えず蒸気を排出し続ける魔道機械に囚われれば、ハルアの恐怖心も頷ける話だった。
隣で小さく震えるハルアに、リネットヒロコは優しく声を掛ける。
「大丈夫ですよ~、ハルアさん~。一度、深呼吸をしましょう~」
「は、はい……」
リネットヒロコの声に合わせ深呼吸をする。それでもなお止まらぬ体の震えに困りながら、しかし自分の仕事もしなければと、リネットヒロコがぐるぐるくんで竜の居場所を探そうとした、その時。
彼女の背後から突如、歌声が聞こえた。
声の主はハルア。澄んだ、しかし力強い声。ところどころ音は外れ、また即興と思われる歌詞もかなり失礼なもの。この狭い迷宮ではそれが響き、少々不快な程だった。
彼女の行動に首を傾げるリネットヒロコ。その行動の意味を理解するのは、ぐるぐるくんを通して再び帝竜を確認した時だった。
「て、帝竜が……こちらに近づいてきます~!」
竜の居場所を表す熱源がこちらに近づいている。ハルアの歌を不愉快に思った為に、こちらに来ているのだろう。
「ウルサイ! ウルサイ! ……鬱陶しい。すぐにその耳障りな歌を止めるのだ」
遠くから帝竜の声が聞こえる。リネットヒロコは声の方向にボトルを投げつけた。
割れたボトルから現れた七色の炎。ボトルを投げる度増えるそれは徐々に迷路を埋めつくし、帝竜の元にまで辿り着いた。
「あなたを倒すことが救いになると願います~……」
リネットヒロコは巧みに炎を操り、帝竜の周囲を炎で囲う。身を焦がす熱さに、帝竜は思わず呻きを上げた。
「コノヤロウ! ……ええい、これでも食らうがいい」
一度高く飛び上がった帝竜は一気に下降し、その鋭利な爪を二人に向ける。だがその攻撃は、ハルアの翼の鎖によって防がれてしまった。
すぐさま銀曜銃を構え、弾丸を放つハルア。旋回し避ける帝竜だったが、弾丸は後を負い、その体に当たった。
一際大きな呻きを上げ、帝竜は高く飛翔する。だがそれは、ハルアにとって好機以外の何物でも無かった。
「あぁあああ!」
無意識的にハルアの恐怖が爆発し、同時に淡く光る白鷺たちが現れた。ハルアを守るように近くを飛ぶ白鷺たちに、彼女は帝竜を見据える。
「白鷲さん達、あの風切羽根を狙って!」
彼女の言葉に合わせ、一斉に羽へ向かう。風切羽根を啄む攻撃に体勢を崩したその隙を狙い、ハルアは魔力を溜めた銀曜銃を放つ。
迷路は消え、帝竜の声が響いた。
大成功
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ニコラ・クローディア
そうね、賢竜オアニーヴを相手と思えば心も痛む
…けれど、既にかの竜の意志は塗りつぶされて消えた
ここにいるのは大魔王に体を操られし憐れな竜、骸の海へと屠ることこそ猟兵ができる最大の弔いよ!
バリスティカを用いて幻影魔術を行使
トリガーを引けばニコラの幻影が『打ち出される』ようにして、弾丸の速度で動く幻を囮に理性なき暴撃を攪乱しましょう
幻影魔法で時間を稼ぎ、狙うのは全魔力を注ぎ込んだ双子竜槍の連続槍撃
いつかどこかで仮面なきあなたと出会うため
今は骸の海で眠りなさい、賢竜オアニーヴ
リリース、アンフィスバエナ
竜の吐息がもたらす炎が、あなたの魂を天上へと送り出しますように
アドリブ歓迎
セシリア・サヴェージ
かつて人類に味方し賢竜と呼ばれた方を倒さねばならないのは心苦しいですが……それでもやらなければ。
憎むべきは大魔王の仮面……あれをどうにかできれば勝機を掴むことができるやもしれません。
狙うは大魔王の仮面の破壊です。完全な破壊、洗脳の解除は無理でも力を削ぐことはできるはず。
一先ず【見切り】による回避、あるいは【地形の利用】で蒸気機械に隠れる等の【時間稼ぎ】を行いつつUC【闇の戦士】で力を高め、十分だと判断したら仮面へ【鎧砕き】【捨て身の一撃】を行います。
力が弱まったことを確認できたら次はオアニーヴ本体へ攻撃を。
私の残りの力の全てを込めた【重量攻撃】で決着をつけるとしましょう。
「かつて人類に味方し賢竜と呼ばれた方を倒さねばならないのは心苦しいですが……」
未だ仮面を付けたまま空を駆ける帝竜に目を向け、寂しそうに言葉を紡ぐセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)。彼女の隣に立つニコラ・クローディア(龍師範・f00091)は「そうね」と相槌を打ち、しかし首を横に振る。
「……けれど、既にかの竜の意志は塗りつぶされて消えた。ここにいるのは大魔王に体を操られし憐れな竜、骸の海へと屠ることこそ猟兵ができる最大の弔いよ!」
二コラの言葉にセシリアは小さく目を見開き、静かに視線を帝竜に移した。確かに、あれはすでにかつての賢竜では無い。なればこそ、かの竜に手をかける事を躊躇ってはならない。それこそ賢竜への無礼にあたろう。
強く拳を握りしめるシシリア。杖を構える二コラ。二人の敵は、ただ一つだった。
トリガーを引き、二コラは魔力を放つ。それは弾丸の速度で移動する彼女の姿となった。
何度も、何度も引き金を引く。同時、帝竜の仮面が不気味に光り、その動きが俊敏になった。
幻影が戦っている間に次の仕込みを行う二コラ。取り出したのはアンフィスバエナ。長柄の槍だ。
アンフィスバエナに魔力を注ぐ二コラの眼前で、自身の周りを動く幻影に爪を振るう帝竜。本能のままの行動は、その動きを単純にさせた。
二コラの幻影に混じり、セシリアも帝竜の元に近づく。単純な攻撃は見切るのに容易く、それと並行する形で彼女の体に暗黒のオーラを纏わせていた。
帝竜の攻撃を避けつつ、オーラを維持するセシリア。十分に時間が稼げたと思ったところで、セシリアは次の行動に出た。
一気に駆け出し、高く跳躍する。狙う先は帝竜の頭に付いた悪趣味な仮面だ。
「てやあー!」
暗黒のオーラを纏った右手を握りしめ、仮面に拳をぶつける。極めて頑丈なそれに若干ヒビが入ったと見えたところで帝竜の動きが止まり、声を上げた。
その隙を見逃す二人では無い。まずセシリアが帝竜の弱まった体に向かって力強い蹴りを入れる。未だオーラを纏ったままの攻撃は、例え一発だけであろうと帝竜に大きなダメージを入れた。
セシリアの後ろで力を溜め終わった様子の二コラは、帝竜に向かって槍を放つ。
「いつかどこかで仮面なきあなたと出会うため。今は骸の海で眠りなさい、賢竜オアニーヴ」
しっかり胴に突き刺さったその攻撃は、しかしそれだけでは終わらなかった。槍に込められた真の力を解放するため、二コラは静かに呟いた。
「今ここに真の姿を許す――ゆけ、アンフィスバエナ!」
彼女の声に合わせて、槍は炎に包まれる。そこから現れたのは、銀の体をした二体の竜の姿だった。
二体の竜から放たれた炎は帝竜の体を包み、その身を焼いた。
「竜の吐息がもたらす炎が、あなたの魂を天上へと送り出しますように」
苦悶の声を上げる帝竜に、二コラは静かに呟く。セシリアもまた、静かにその姿を見守っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒城・魅夜
愚劣な大魔王の絞り糟、こんなところにもこびり付いていましたか
希望の繋ぎ手たる我が名にかけて、希望を侮るものを許すわけにはいきません
早業と範囲攻撃・ロープワークで我が鎖を舞わせ、周囲の蒸気機械を広域破壊
連鎖爆発した機械の瓦礫は風と光から私の身を護る盾となるでしょう
同時に、吹き出る蒸気は「闇に紛れ」接近するためにも役立ちます
爪の攻撃は見切りと残像・第六感で回避しながら間合いを詰め
龍の頭部に――いえ、大魔王の仮面にこの鎖を叩きつけましょう
哀れな龍よ、もはや救えるものではないとしても
せめて、この咎人殺したる私が、あなたに代わってその怨みを晴らします
あなたごと、憎い大魔王の仮面を砕くことによって
「愚劣な大魔王の絞り糟、こんなところにもこびり付いていましたか」
飛翔を続ける帝竜の仮面をにらみつけ、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は恨めしそうに呟く。かつてアルダワを荒らした大魔王。その記憶が彼女の脳裏に蘇った。
希望の繋ぎ手と彼女の名にかけて、希望を侮るものを許すわけにはいかなかった。
突如帝竜がその羽ばたきを強める。突風が舞い上がると同時、その体が淡く光り輝いた。その変貌に危険を感じた魅夜は、右手に持った鎖で辺りの魔道蒸気機械を破壊していく。鎖が撫でると同時に起こった機械の爆発は、光と風を防いでくれた。
煙の中に姿を隠す魅夜を、帝竜は目を凝らし探す。
「ドコダ! ドコダ! ……これでも食らうが良いぞ」
苛立ちの声を上げた帝竜は、爆風に隠れる魅夜を切り裂こうと光輝く爪を振り下ろした。しかしその攻撃は魅夜の脇に当たり、彼女自身は少し体をずらすだけに留まった。
魅夜は帝竜に向かって走り出した。彼女の視線が狙いを定めたのは、竜の思考を支配しているのであろう仮面だ。
「哀れな龍よ。もはや救えるものではないとしても、せめてこの咎人殺したる私が、あなたに代わってその怨みを晴らします」
同情を、哀れみを、そして幾分の感謝を込めた言葉を投げかける。高く跳び、その右手を掲げた。
「あなたごと、憎い大魔王の仮面を砕くことによって」
魅夜から放たれた108の鎖が帝竜に集中して襲い掛かる。抵抗の術なく打たれた帝竜は、苦しそうに声を上げたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
マックス・アーキボルト
操られている存在に手を上げる…気が重くなってくる…まして相手はあの賢竜…!
とにかく戦闘不能レベルの致命的被弾だけは避けるために爪・風の攻撃を集中して回避!〈見切り、ダッシュ、地形の利用〉を使うよ!
さあ反撃!逆転の鍵は、僕の心の中にある!
【パンドラガジェットX】:ボタン・レバーの着いた何らかの操作盤
〈学習力、世界知識、メカニック〉技術でこれを鑑定!
これはそう、【この機械群をコントロール出来るガジェット】…!
僕の攻撃力が下がろうとこの蒸気機械なら!
地形の利用として蒸気機械を操作!
巨大歯車アタック!機械を媒介に特大魔力弾発射!
自陣に打ち倒されろ、大魔王!
速度と高度を落としながら、しかし未だ飛行を続ける帝竜。その体から放たれた光は、見上げるマックス・アーキボルト(ブラスハート・マクスウェル・f10252)を直撃した。
かの竜を倒すと心に決めていたマックスの心に迷いが生じたのはその時だった。
「操られている存在に手を上げるのか? ……気が重くなってくる……まして相手はあの賢竜だ……!」
攻撃しようとした腕が上がらない。前に進みたいのに足が動かない。まるで無意識の底で、帝竜と――賢竜と戦いたくないとでもいうように。
それを好機とみたか、帝竜の仮面はケラケラと笑って見せる。
「オクビョウモノ! オクビョウモノ! ……来ないのか。ではこちらから行くぞ!」
告げると、六枚の羽根を大きく羽ばたかせ、強風を巻き起こす帝竜。慌てて魔道蒸気機械の影に隠れ息を潜める。
「そうだ、あいつは賢竜じゃない……アルダワを、僕の住む世界を滅茶苦茶にした大魔王だ……!」
強い決意。彼に手加減の心は消え去った。
物陰に身を隠し続けるマックスに帝竜は失望の眼差しを向ける。もう良いとばかりに光輝く爪を振り上げた。
「ザンネンダ! ザンネンダ! ……つまらん。これで仕舞いだ」
鋭い金属音が響き、マックスの隠れる蒸気機関が崩れる。だが間一髪攻撃を避けたマックス。帝竜を睨む彼の手にはいつの間にか、小さな操作盤があった。
「さあ反撃だ! 逆転の鍵は、僕の心の中にある!」
帝竜に叫ぶマックスは、手元のボタンを一つ押す。同時、周りを囲っていた蒸気機関が動き始めた。
「ナンダ! ナンダ! ……一体何が起きているというのだ……!?」
驚きの声を上げる帝竜に、マックスは壁の機械に手を当て、口端を釣り上げてみせた。
「自陣に打ち倒されろ、大魔王!」
歯車が回り出す。機械が蒸気を排出する。多くの機械群を媒介して、マックスの魔力が通っていく。
帝竜の背後にある一つの排気口から特大の魔力弾が放たれる。完全な死角からの攻撃に防ぐことが出来ず、その体に直撃した。
堪らず呻き声を上げる帝竜。追い打ちをかけるように迫る巨大な歯車を拒めず、羽根と腹に深い切り傷を負ったのだった。
成功
🔵🔵🔴
波山・ヒクイ
叩き割りてぇ
あの仮面叩き割りてぇ
嫌がる相手を無理くりとか悪趣味にもほどがある、そういう奴はぎゃふんと言わせてやりたい!
狭っ苦しい迷路ででっかいドラゴンに追い立てられるとかな、普段だったら超絶望的なロケーションなんじゃけど
ふふん、わっちに対して人造物で出来たその迷路は…追い風以外の何物でもなし!
何故なら、迷路の構造物全てがこのUCでわっちの分身となりうるのじゃ!
ゆくぞー迷路からどんどん生まれる大人数のわっち達!
強力な攻撃からわっちを守りつつ、しっぽを引っ張れ!翼に食いつけ!やつの動きを抑えろ!
全員総出であのいけ好かぬ仮面を叩き割ってやるのじゃー!
波山・ヒクイ(ごく普通のキマイラ・f26985)は高くそびえる迷路の中、その双眸に怒りを滲ませ、帝竜を睨みつけていた。
「叩き割りてぇ……あの仮面叩き割りてぇ……」
嫌がる相手を無理やり洗脳して戦わせる。そんな悪趣味な行為は、ヒクイは許せなかった。
狭苦しい迷路の中ドラゴンに追いかけられる。普段であれば彼女にとって絶望的なシチュエーションだが。
「ふふん、わっちに対して人造物で出来たその迷路は……追い風以外の何物でもなし!」
大層愉快そうに辺りを見渡すヒクイ。この状況が彼女の追い風たる最大の理由。それは彼女が無機物を自身の分身とする事が出来るからだった。
ヒクイは壁面に手を当てる。蒸気機械で出来た迷路の壁は、それだけで多数の分身に姿を変えた。
「ゆくぞー迷路からどんどん生まれる大人数のわっち達!」
ヒクイの分身は本体を守ろうと彼女の前に立つ。また別の分身は帝竜に向かい、その尻尾を、羽根を押さえる。
竜の動きを押さえた分身たち。未だ残る分身に、ヒクイは大きく命令した。
「さあ、全員総出であのいけ好かぬ仮面を叩き割ってやるのじゃー!」
その声を合図に一斉に仮面を攻撃する分身たち。帝竜は大きく体を捩り、必死に抵抗する。
「ヤメロ! ヤメロ! ……ええい鬱陶しい! 離れるのだ!」
帝竜の言葉に素直に従う義理は無い。次々に攻撃を続け、ついにその仮面が音を立てて割れた。
帝竜は今までで一番大きな咆哮を上げ、空高く飛び上がったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
別府・トモエ
「流離いのテニスプレイヤー……別府・トモエじゃい!かかってこい」
ウームー・ダブルートゥそしてオアニーヴの突撃を先ずは凌ぐ
全身を【オーラ防御】で固めながら【視力】で予備動作を【見切って】
【ダッシュ】の要領でスタンスを整えて
「うおぉりゃあ!」
【カウンター】で繰り出す【ラケット武器受け】
デカイ、強い、速いと三拍子揃った帝テニスプレイヤーだ吹き飛ばされる……けどさ
「……軽いぜ」
ちぐはぐな今の貴方達、はウームー・ダブルートゥ本人に遠く及ばない
「……星よ」
迎え撃つは究極のスイング
相手をテニスボールと化して【吹き飛ばす】無類の【ショット誘導弾】で引導を渡してやるぜ!
「心配すんな!人間は!大魔王に勝ったよ!」
大きく咆哮を上げる帝竜。仮面が割れてなお賢竜の理性は戻っていないように見えた。
割れた仮面も無くなった訳では無い。半分程が残り、帝竜の顔を覆っていた。
残った仮面が光る頃、別府・トモエ(ミステニス・f16217)は肩に担いだテニスラケットの先を帝竜に向けた。
「流離いのテニスプレイヤー……別府・トモエじゃい! かかってこい」
宣言した彼女に、帝竜はその鋭利な爪を向ける。
凄まじい速度でトモエに向かう爪。トモエはそれを避けようとせず、逆にそちらに進んでいった。
全身をオーラで包み込み、しっかり爪の先を見据える。そうして自分に振り下ろされたタイミングで、トモエは。
「うおぉりゃあ!」
両手で支えたラケットで攻撃を受け止めた。
当然その衝撃に無傷な訳は無く。強力な攻撃に吹き飛ばされるトモエ。だが彼女は帝竜を睨み、にやりと笑った。
「……軽いぜ」
かつてトモエはアルダワでウームー・ダブルートゥと戦った。今彼女が向かい合っているのは、どうにもちぐはぐな存在。かつての本人には遠く及ばない。
トモエは体勢を立て直し、静かに呟く。
「……星よ」
飛行する帝竜に向かって彼女は、ラケットを素振りした。ボールも何も打っていないはずのスイングは、だが。
その衝撃波が帝竜に直撃した。
呻き声を上げる帝竜。それがテニスボールのようになったところで、トモエはより豪快なスイングで思い切り打った。
「心配すんな! 人間は! 大魔王に勝ったよ!」
微かに残る賢竜の意思に伝えるように、トモエは両手を上げて叫んだ。
大成功
🔵🔵🔵
ソラスティベル・グラスラン
…ありがとうございます
貴方のお陰でアルダワの民は今も生き、世界は続いています
最後に自ら命を絶ってまで人々を救った、その恩に報わせてください
貴方を止めます、賢竜よ
【盾受け・オーラ防御】で全力で守りを固めます!
理性を失い攻撃は単調となるはず…ですがまともに受けるは危険!
【怪力】で受け【見切り】受け流すことに努めます!
オアニーヴさまの仮面、そこにいるのですね!大魔王!
受け流しつつも前進、【勇気】を出してその豊かな毛に飛びつきます!
ゆっくりと、しかし着実に登り頭部へ
賢竜よ、ご覧あれ
大魔王を打倒し、これから貴方を救う…
『勇者』として磨いた、わたしの力です
【我が名は神鳴るが如く】――――ッ!!!!
ルード・シリウス
…やれやれ、あの魔王も大概しぶといな。だが良いぜ、魔王のそれごと喰らい尽くしてやる。元より、帝竜は総て喰らうと決めた事だからな
神喰と無愧を構え、外套と靴の能力で気配と音を殺し、残像を囮に置く様にしながら回避しつつ、二刀による防御で猛攻を凌ぐ。但し、致命傷に至らないなら多少の被弾も辞さない
猛攻を凌ぎ切れたら、【魂装】で武装の真名及び自身の真の姿を開放。更に嘗ての戦いで喰らったウームー・ダブルートゥを始めとした敵を憑依し強化。二刀による連撃、捕食と生命力吸収を以て喰らい尽くす様に斬りつける
互いに大魔王の力を有したモノ同士、全力で殺り合おうぜオアニーヴ…ッ
その呪い諸共お前を喰らい、糧とさせて貰うぜっ
既に虫の息ながら未だ顕在する帝竜に目を向け、ルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)ははあと小さく溜息を吐いた。
「……やれやれ、あの魔王も大概しぶといな」
だが良い。思い直したルードは、かつて対峙した魔王を思い返し、外套を翻した。
「魔王のそれごと喰らい尽くしてやる。元より、帝竜は総て喰らうと決めた事だからな」
決意を述べるルード。それとは対照的に感謝の目を向けるのはソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)だった。
「……ありがとうございます。貴方のお陰でアルダワの民は今も生き、世界は続いています」
ソラスティベルは小さく頭を下げ、それから真剣な眼差しで帝竜を見据えた。
「最後に自ら命を絶ってまで人々を救った、その恩に報わせてください。貴方を止めます、賢竜よ」
無論彼らの声に帝竜は反応を示さない。最早最後の足掻きとでもいうようにでたらめに翼を、爪を、嘴を振るう。
単調ながら威力を伴った攻撃を、ソラスティベルは両手を組み受け流す。それは彼女の怪力があってこそ成せる技だった。
ソラスティベルはそのまま跳び上がり、帝竜の背に捕まった。
彼女を振り下ろそうと暴れまわる帝竜。その爪は蒸気機械を破壊し、ルードさえも切り裂かんとするが。
「このくらいなら……!」
ルードは二刀を構え、それらを巧みに操る事で爪の猛威を受け流す。それからルードは帝竜を睨みつけた。
「さあ、反撃だ。起きろ、神喰! 無愧!」
叫ぶと同時、二刀は姿を変える。漆黒の刀身の剣は血のように赤黒く染まり、もう一刀は相手をより傷付けるのに適しているのであろう形となった。
そして刀と同様ルード自身も上半身に紋様が入る。彼の『真の姿』だった。
彼の変化はそれだけに留まらない。かつてルードが討伐した敵が憑依していく。その中には、いつかアルダワで戦ったかのウームー・ダブルートゥもいた。
すべての変化を終えたルードは、闘志漲る双眸で帝竜に語りかけた。
「互いに大魔王の力を有したモノ同士、全力で殺り合おうぜオアニーヴ……ッ! その呪い諸共お前を喰らい、糧とさせて貰うぜっ!」
力強く地面を蹴り上げるルード。格段に上がった彼の身体能力によって、その体は容易く帝竜の元に辿り着いた。
何度も、何度も剣を振るう。その度帝竜は声を上げ、その体に深い傷を負っていった。
ルードが攻撃している間、ソラスティベルもまた自分の恐怖心と戦っていた。自分の場所は高く、下を見れば体が震えるだろう。
それでも、彼女は前に進む。ゆっくりと、仮面が残る頭部に向かって。
「オアニーヴさまの仮面、そこにいるのですね! 大魔王!」
確認するように叫ぶ。返事は無いが、彼女は着実に進んでいった。
ようやくその首まで辿り着いたソラスティベル。背負った大斧を構え、静かに語りかける。
「賢竜よ、ご覧あれ。大魔王を打倒し、これから貴方を救う……」
『勇者』として磨いた、わたしの力です。そう告げ、斧を振り下ろした。
「【我が名は神鳴るが如く】――――ッ!!!!」
一つ。轟音と共に雷が落ちた。
まもなく帝竜は光の粒となり消えていった。骸の海に帰ったのだろう。
その光景は、大層綺麗だったという。
大成功
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