●蒸気魔法迷宮
帝竜オアニーヴが陣取っていたのは、大地を埋め尽くすほどの魔法蒸気機械群の中だった。
その場所は、まるで地下迷宮アルダワ。
まるで異世界に迷い込んでしまったような錯覚を覚える場所に、帝竜オアニーヴがいた。
「テキガクルヨ! テキガクルヨ!」
ただならぬ気配を感じ取り、『大魔王の仮面』が帝竜オアニーヴに対して警告し始めた。
それは呪い……忌々しい呪い……。
封印されたのと同時に、仮面の呪いを受けた帝竜オアニーヴにとって、『大魔王の仮面』は邪魔なモノでしかなかった。
「テキガクルヨ! テキガクルヨ!」
その間も大魔王の仮面がまったく空気を読まず、帝竜オアニーヴの感情を逆撫でるようにして、耳障りな声で警告を発していた。
「黙れ、大魔王の仮面よ! 群竜大陸に挑む勇者が現れた以上、貴様の呪いに屈する訳にはいかぬ! いかぬのだ……ぐぬ、ぐぬぬ!」
帝竜オアニーヴが苛立った様子で、大魔王の仮面を叱りつけた。
このような事態を避けるため、自ら命を断ったものの、蘇生したのと同時に願いと希望を糧に精神を蝕まれ、理性を保つ事が出来なくなっていた。
「センノウカンリョウ! これで何も怖いモノはない。挑戦者共を蹴散らし、我の糧とするのみ……」
そう言って帝竜オアニーヴだったモノが、瞳をギラリと輝かせた。
●ガジルからの依頼
「みんなに頼みたい事があるんだよ!」
ガジル・コリアンダー(キマイラのスカイダンサー・f00907)が真剣な表情を浮かべ、今回の依頼を説明し始めた。
今回の目的は帝竜オアニーヴの撃破。
帝竜オアニーヴは、かつて地下迷宮アルダワで人類と共に大魔王ウームー・ダブルートゥと戦ったドラゴン達の長。
『賢竜』と称される程の叡智と優しさを持っていたものの、何故か帝竜としてアックス&ウィザーズに現れたようだ。
かつて人類と戦った賢竜も、帝竜と化した事で、猟兵達を完全に敵として認識しているため、説得する事など考えず、撃破して欲しいという事だった。
ゆうきつかさ
この依頼は戦争依頼です。
基本的には、キャラクターらしさを重視しますので、世界観や設定に問題が無ければ採用していこうと思います。
また敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります。
第1章 ボス戦
『帝竜オアニーヴ』
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POW : 竜操の仮面
【頭部を覆う仮面が邪悪な光を放つ状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 賢竜オアニーヴのはばたき
【戦意を弱らせる聖なる光】【光輝く爪による引き裂き攻撃】【六翼の羽ばたきが巻き起こす浄化の風】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : ダンジョンメーカー
戦場全体に、【魔導蒸気機械と金属のパイプ群】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:otomo
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
高柳・零
WIZ
あのドツキ漫才魔王があの仮面を…。
仮面を割る方法があれば割ってみたいですが、おそらく無理なんでしょうねえ…。
「TRPGマニアに迷宮なんてご褒美ですよ?」
迷宮はTRPGの経験で鍛えたマッピング技術で挑みます。蒸気機械でできているので、内部構造が変わる可能性もあるので、それにも注意しつつ短時間での突破を目指します。
迷宮の出口では盾を構え、オーラを全力で全身に張り不意打ちに備えてからUCを発動させて一気に飛び出します。
指6本は翼の付け根、残り4本は仮面を狙って天からの光を落とします!
「せめて、仮面の呪いが解ければ…」
アドリブ歓迎です
メイスン・ドットハック
【WIZ】
言うなれば世界の英雄がこうも利用されるとはのー
哀れではあるけー、しっかり解放してやらにゃのー
二足歩行戦車KIYOMORIに搭乗して参戦
電脳魔術によるハッキングで機械類による制御があれば侵入して、自身の制御下におけるよう試みる
さらに電脳魔術の空間振動波で、パイプの反響をハックし、マッピングを試し、迷宮攻略を目指す
高速機動を行いながら、妨害はレーザー砲ユニットで撃ち落とす
オアニーヴ到達後はUC「電磁力もまた自然の摂理」を発動して、電磁属性の砂嵐を巻き起こし、パイプや蒸気機械を破壊しながらながらオアニーヴに激突させて巻き込む
自分の迷宮じゃけー、責任持って処理してくれのー
アドリブ絡みOK
尾崎・ナオ
ゲート転送直後から、ケラケラ笑いながら。
「あっはは!ホントだ!洗脳されてやーーーんの!ばっかでーーー!」
相手を煽るよう、全力で馬鹿にする行動をとります。
「やっぱ所詮トカゲ類ですかぁ。ナオちゃんのように気高い存在じゃないと、誘惑には抗えないんですねぇ。悲しいですぅ☆」
あ、怒った? 怒った? いいよ、先制攻撃するんでしょ? 知ってるぅ☆
実は一言目からUC発動中。攻撃はしてないよ、UC発動して構えてただけ~♪
スピードと反応速度が爆発的に増大。
光は避けきれなくてもさ、爪程度ならナオちゃん軽々避けちゃいますぅ☆
このままのスピードでクイックドロウ192!
この技能値、そうそう見切れないっしょ!
ソラスティベル・グラスラン
その仮面から聞こえる声……大魔王
貴方をこの手で倒しました、何度も何度も
けれど、まだ倒されたりないようですね…!
【盾受け・オーラ防御】で全力で守りを固めます!
理性を失い攻撃は単調となるはず…ですがまともに受けるは危険!
【怪力】で受け【見切り】受け流すことに努めます!
オアニーヴさまの仮面、そこにいるのですね!大魔王!!
受け流しつつも前進、【勇気】を出してその豊かな毛に飛びつきます!
ゆっくりと、しかし着実に登り頭部へ
『勇者』を目指し磨いた力、そして勇気
偉大な竜を救い、大魔王を倒せるならば…是非もありません!
幾度となく大魔王を討ち果たした、【鎧砕き】の一撃を!
【我が名は神鳴るが如く】――――ッ!!!!
マックス・アーキボルト
ウームー・ダブルートゥははそんな呪いを仕掛けていたのか…謎は尽きないけど、今は賢竜を止めるしかない!
竜操の仮面の攻撃は、蒸気機械の露出した歯車を〈念動力・メカニック〉で高速で動かして一度やり過ごす!
こちらの攻撃は一度きり…それに全力全開を込める!
マキナ・エンジン、封印拘束解放。〈火炎・激痛耐性〉で鎧、体のオーバーヒートを耐える…!
限界まで魔力溜め、表面に〈鎧砕き〉の魔法付与…!
我が心の光、誇り高き賢竜へ今一度永遠の安眠を齎せ…【終幕を照らす光】!!!
その体を滅ぼす事しか出来ない優しさだけれど…大魔王に操られることなく、眠ってもらう為に…僕は貴方を討ちます…!!
山梨・玄信
魔王ウームー?
ああ、あのテニヌ魔王か。ならばこれが必要じゃな(テニスボール準備)
【POWを使用】
最初の攻撃に対し、衝撃波を使って高速でテニスボールを飛ばし、そちらに攻撃を向けさせるのじゃ。
その後も自身は動かないようにテニスボールを転がし、離れたら同じく衝撃波で飛ばし、そちらに気を向けるのじゃ。
その隙に忍び足でオアニーグの背後を取り、何時もの女神様(?)に呼びかけるぞい。
「何時もの人、あの毛を吹き飛ばしてやるのじゃ!」
UCの効果で突風に煽られれば体勢は崩すじゃろう。
そこに追撃で拳に気を纏わせて連続拳(2回攻撃+鎧無視攻撃)をお見舞いするぞい。
アドリブ、絡み歓迎じゃ
別府・トモエ
「どーも別府・トモエです!久しぶりだなテニス大魔王!」
先ずは三連続サーブを凌ぐぜ
【ダッシュ】で意表を突いて光を避ける
爪の攻撃は【カウンター】で繰り出す【ラケット武器受け】こっちが吹きとばされても直撃は有り得ぬ
すかさず来る風を前に【ジャンプ】して【空中戦】じゃい
「……仰観俯察の極み」
無我の扉の向こう側
頭脳を活性化させるテニスでお相手仕るさ
「乱れてる、ね」
分かるよオアニーヴさん、貴方も未だ必死に戦ってるってね
任せときなって
【サーブ先制攻撃】でテニスボールを当てて反って来たのを【ショット誘導弾】試合を優位に展開する
常に相手の動きを読んで回避して、渾身のショットを叩き込む
「覚えとけ!これがテニスだ!」
ミラリア・レリクストゥラ
…この厭な感じ…どこかで?
【WIZ】
いえ、今は目の前の敵に集中を…!?
機械の迷宮…厄介ですね。私には直接戦闘力が無い以上、味方の援護を、と思っていましたが…
分断されては…え、機械?
材質は……いけます!この迷宮を攻略する必要はありませんね!
【過去は過去たる地へ沈む】を唄い、付近一帯の壁を私の操る土塊に変えてしまいます!
そのまま土塊で帝竜の捕縛や、味方の足場作りでの援護を行いましょう!
亞東・霧亥
【POW】
先制攻撃に対して
・見切り、激痛耐性、怪力、盾受け、シールドバッシュ
真正面から受けるとやられる。
少しでも軸をずらして攻撃を受ける。
痛みに怯まぬ様に耐性を付け、膂力を増して、受け流す。
先制攻撃を凌いだら
・武器改造、罠使い
クリエイトフォースを無数の隼に変化させ、賢竜に向けて飛ばし囮にする。
【UC】+高速詠唱、スナイパー
倒せと言われたが嫌な予感がする。顔の仮面が怪しい。
弥勒菩薩の真言を唱え、救済(魂を呪縛から解放)の加護を籠める。
これは賢竜の身体は傷付けず、呪縛のみに作用する。
「簡単に祓えるとは思っていない。祓えるまで何度でも挑戦してやる。」
リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
『賢竜』と称される叡智と優しさ……そんな方を利用してまで。
まだ暗躍するんですか、大魔王!
正しい智慧が悪用されるのを見過ごすわけにはいきませんっ!
オアニーヴさんを助けられないのは分かっていますが。
狙いはあの仮面……“大魔王”です!
こちらのUC発動まではアイテム「スケープシープちゃん」で凌ぎまして~
アイテム「ぐるぐるくん」(眼鏡)の透過スキャナ+熱源探知で敵の位置を探ったら、
【眼魔光(ガンマレイ)】を使用します~!
高い貫通力のレーザーで壁越しに大魔王の仮面を狙い撃ちです~!
魔力補充は持参の「まじかるポーション」で行い、
貫通するまでの魔力を維持しますよ~!
ニコラ・クローディア
アルダワに酷似した蒸気機械群、もしやと思っていたがやはりか!
己が意志すら貫けぬトカゲには過ぎたる場所だ
この土地、もらい受けるぞ!
オアニーヴが羽ばたきと共に爪を振りかざせばそれがチャンスだ!
戦意を奪う光については呪詛と見做して魔術的に耐え、物理攻撃と言える爪と翼は攻撃の前兆を見切ることで対処
限界ギリギリまで引きつけてからの早業で転移魔術を発動
座標は「オレサマの頭上」だ
オアニーヴがオレサマの消えた場所を爪で切り裂くころには、その真上へのポジショニングが完了だ
「仮面如きに意志を奪われ、同類とは思いたくないものだよオアニーヴ!」
追撃は光盾で防ぎ、ドラゴハウザーから全力の呪殺弾で仮面を砕いてやろう
エルザ・メレディウス
*他の方との絡み大歓迎です。その場合は【集団戦術】に気を付けて、上手く連携を取りながら相手へ大打撃を与えられるように効率の良い戦い方を工夫いたします
●POWを使用します
呪いから解放するために...あなたのお命をいただきます
・先制攻撃の対策:【残像】を使用して、相手の攻撃がそちらに向かうように【誘惑】いたします。私自身の動きは、なるべく動きはゆっくりと...少なくとも残像よりは遅く行動するように気を付けます。相手へは尊厳の念を抱きながら...その想いをじっと心の底に抱きながら、【地形の利用】を活かして、相手の懐へ飛び込みます。相手の懐まで接近したら、必殺の白王煉獄を使用いたします
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
アルダワの大魔王の仮面だぁ?
まったく、魔王は滅んだってのにまた迷惑をかけるのかよ。
しかも別の世界にまで!
とっとと骸の海でおとなしくしてやがれ!
その為にも……ちょいと辛抱しとくれよ、オアニーヴさん!
とかく攻撃自体を封じられるのは厄介だからね。
光と風はどうしようもないとして、爪の攻撃からは必死で
『ダッシュ』や『ジャンプ』、『スライディング』を駆使して避け続ける。
その間に思念を飛ばし、大魔王の仮面の中の呪いの『核』を探し。
その術式の経路を探って遮断し、一時的にでも賢竜を正気に戻す!
正気に戻ってくれたなら、『マヒ攻撃』で動きを止める。
皆、後は任せた、介錯してやっとくれ!
ヴィヴ・クロックロック
大魔王の仮面…アルダワのフォーミュラーのモノか…。形態が多いだけあってやらかしてることも世界を超えるか、はた迷惑だな。
やつの先制攻撃に対して聖なる光はおやつ精製装置で美味なるおやつに、引き裂きは外套を拡げて浄化の風に乗って後ろに飛びあがり回避をする。
必然風は受けるが被害は最小限で抑えられるだろう。
飛びあがった後は隙を見て仮面の角に分銅を絡めて一気に近づき胸に鬼火を燈してUCを発動。首の裏から黒閃を使い回転をしつつ奴の羽の付け根を打ち砕いて地に落とす!ついでにギースバッハを最後に打ち込み反動で距離を取って安全圏に着地をする。
せめてさっさと倒すのが偉大な竜に対する礼儀だろう…。
(アドリブ連携歓迎)
デイヴィー・ファイアダンプ
ずいぶんと優しいね。むしろ優しすぎたんだろう。
人と共に歩むことを選んだその姿勢は好きだけど、いささか傲慢と呼べるね。
なにせずっと守ってもらわなければ戦えないほど人は弱くないのだから。
それを証明するためにも彼を打倒しなければならないね。
作られた迷宮の複雑さときたら賢竜と称されるにふさわしいものだ。
それなら今回は力を込めた一撃で賢竜の元へ迷宮の道を切り開こう。
その憂慮を吹き飛ばすため、そして困難に打ち勝つ勇者の姿を彼に見せつけるために。
一撃とは名乗っているけど、この迷宮がそう簡単に壊れるとは思ってないさ。
だから何度でも一撃を重ねよう。そうやって乗り越えてこそ、彼は安心して再び眠れるだろうから。
ルード・シリウス
かの大魔王と殺り合った竜…そいつが帝竜として、立ちはだかるか
良いぜ、立ちはだかるなら喰らい尽くして先へ往くだけだ
二体目、帝竜オアニーヴ…その血肉と命、総て貰うぜ
神喰と無愧を構え、外套と靴の能力で気配と音を殺しつつ、残像を囮として置きながら掻い潜る様に回避、同時に二刀で防御しつつ猛攻を凌ぐ
被弾は覚悟の上だが、致命傷に至る一撃は全力で防ぐ
猛攻を凌ぎ切ったら、一気に接近
【魂装】で武装の真名及び自身の真の姿を解放。これまで倒して喰らった帝竜や敵を憑依して身体能力を強化
怪力乗せた二刀による連撃と、捕食の能力で暴食するが如く斬って喰らい、受けた傷を癒しながら戦う
アルフレッド・モトロ
(連携アドリブ歓迎)
理性を失った状態で速く動く物を察知してる…っつーことは
とにかく視界に映ったものを無差別に追うんだろう。
敵がこっちに気付く前に【先制攻撃】。
【投擲】で【ワンダレイアンカー】を遠くへ【吹き飛ばし】て気を引こう。
その隙にUC発動!
仮面で元々視界は悪そうだしな、他の猟兵たちのサポートも兼ねて
敵の視線を遮るように渦を動かすぜ。
あとは……
【野生の勘】で頃合いを見て
【気合い】を込めた渦を叩きつけてやろう!
●蒸気魔法迷宮
「……この厭な感じ……どこかで?」
ミラリア・レリクストゥラ(目覚めの唄の尖晶石・f21929)は仲間達と共に突如と出現した蒸気迷宮に足を踏み入れ、ただならぬ気配を感じ取った。
そこは、まるで別世界。
周囲にあるのは、魔導蒸気機械と金属のパイプ群。
その場所は、明らかにアックス&ウィザーズの世界とは異なっていたが、何処かで見た事のある景色が広がっていた。
「オワリダヨ、オワリダヨ……。ここは我が作り出した死の迷宮……。残念だが、貴様らは終わりだ」
その途端、蒸気魔法迷宮に、不気味な声が響き渡った。
「その声は、大魔王! 貴方をこの手で倒しました、何度も何度も! けれど、まだ倒され足りないようですね……!」
ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が険しい表情を浮かべ、迷宮の支配者に言い放った。
それは此処とは異なる場所、地下迷宮アルダワで戦った大魔王ウームー・ダブルートゥと同じ声。
その声とは異なる声も混ざっていたが、どちらにしても倒すべき相手である事に違いはなかった。
「……アルダワのフォーミュラーが、何故……? 形態が多かっただけでなく、世界も飛び越えたって訳か。まったくはた迷惑な奴だな」
ヴィヴ・クロックロック(世界を救う音(自称)・f04080)は、呆れた様子で溜息を洩らした。
「チガウヨ、ソウダヨ、マチガイダヨ。我が名は帝竜オアニーヴ! 帝竜であり、賢竜であり、大魔王! ウームー・ダブルートゥであり、オアニーヴでもある存在……」
その問いかけに応えるようにして、蒸気魔法迷宮が激しく震え、迷宮の支配者……帝竜オアニーヴが言い放った。
「ひょっとして、乗っ取られてるの? 大魔王にさ! あっはっはっ! 洗脳されてや――んの! ばっかで――!」
そんな空気を察した尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)が、腹を抱えてケラケラと笑い出した。
「それは……」
帝竜オアニーヴが口を噤んだ。
その途端に迷宮全体が、どんよりとした空気に包まれた。
「まさか……泣いているのか?」
亞東・霧亥(峻刻・f05789)が何やら察した様子で、天井を見上げた。
「ナ、ナ、ナイテナイヨ、カナシクナイヨ。……これは呪い。呪いのせいだ」
帝竜オアニーヴが動揺した様子で、激しく声を上擦らせた。
笑われた事が、よほどショックなのか、鼻をすする音まで聞こえていた。
「『賢竜』と称される叡智と優しさ……そんな方を利用してまで。まだ暗躍するんですか、大魔王! 正しい智慧が悪用されるのを見過ごすわけにはいきませんっ!」
リネットヒロコ・マギアウィゼルーク(【魔導科学者】マギア=ウィゼルーク・リネット・博子・f01528)が空気を読み、帝竜オアニーヴに話を合わせた。
ここで大泣きされるような事があれば、一大事。
迷宮の仕掛けを次々と作動させ、えげつない攻撃を仕掛けてくる可能性が高いため、先々を考えての選択であった。
「まさか、そんな呪いを仕掛けていたとは……。……謎は尽きないけど、今は賢竜を止めるしかない!」
マックス・アーキボルト(ブラスハート・マクスウェル・f10252)も、大人の対応で答えを返した。
「……♪」
その反応に気を良くしたのか、帝竜オアニーヴのゴキゲンな気持ちが、迷宮全体に広がった。
「……まったく、大魔王が滅びたってのに、まだ迷惑をかけるのかよ。しかも別の世界にまで! とっとと骸の海でおとなしくしてやがれ!」
その態度にイラっとしたのか、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が文句を言った。
「ならば、我の元まで来るがいい! フハハハハハハハハハハハハッ!」
帝竜オアニーヴが大魔王の如き貫禄で、迷宮内に高笑いを響かせた。
「世界の英雄が、いまや操り人形とはのー。哀れではあるけー、しっかり解放してやらにゃのー」
メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)が、同情した様子で天井を見上げた。
帝竜オアニーヴの意識が、何処まで残っているのか分からないが、大魔王の仮面に支配され、消えかかっているのは間違いないだろう。
「ああ、あのテニヌ魔王か。ならば、これが必要じゃな」
そんな中、山梨・玄信(3-Eの迷宮主・f06912)が、テニスボールを握り締めた。
「そ、それは……! まさか!?」
大魔王の仮面にとって、それはトラウマ。
見ただけで忌々しい記憶が蘇るほどのシロモノだった。
だが、それは大魔王の仮面が、経験した記憶ではない。
それでも、嫌悪し、恐れてしまうのは、テニスボールに、それだけの力が秘められているため。
ある意味、トラウマボールと呼べるモノだった。
「どーも別府・トモエです! 久しぶりだな、テニス大魔王!」
そのトラウマを別府・トモエ(ミステニス・f16217)が、言葉のスマッシュで打ち抜いた。
「コ、コワクナイヨ、コワイヨ、ヤバイヨ、アブナイヨ!」
その言葉に反応するようにして、帝竜オアニーヴ……いや、大魔王の仮面がパニックに陥った。
おそらく、幾度も撃破された時の記憶が、トモエを通じて伝わってきたのだろう。
明らかに動揺している様子で、声が震えていた。
「……と言うか、あの仮面……騒ぎ過ぎです。出来る事なら叩き割りたいところですが、おそらく無理でしょうね……」
高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)が、何処か遠くを見つめた。
その間も大魔王の仮面が『コワイ、コワクナイ、マジコワイ』と騒いでいるため、さらにイライラが増していた。
「だからと言って、このまま放っておく訳にもいかないね。こんな仮面に乗っ取られてしまうなんて、オアニーヴは優し過ぎたんだろうけど……。なんにせよ、ずっと守ってもらわなければ戦えないほど人は弱くないのだから、それを証明するためにも彼を打倒しなければね」
デイヴィー・ファイアダンプ(灯火の惑い・f04833)が、自分自身に気合を入れた。
今の所、帝竜オアニーヴが、どこにいるのか分からない。
しかし、前に進まなければ、戦う事も出来なかった。
「我を打倒するだと……。思い上がるな、挑戦者共よ!」
その言葉に腹を立てた帝竜オアニーヴが、怒り狂った様子で迷宮全体を震わせた。
「思い上がっているのは、どっちだか……。そもそも、そんな状態で俺達に勝てるのか?」
アルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)が呆れた様子で、帝竜オアニーヴをジロリと睨みつけた。
「デキルヨ、デキルヨ、カンタンダヨ。ああ、もちろん」
帝竜オアニーヴが、躊躇う事なく答えを返した。
だが、その意識は大魔王の仮面に乗っ取られており、むりやり台詞を言わされているような感じであった。
「呪いから解放するために……あなたのお命をいただきます」
そんな空気を察したエルザ・メレディウス(復讐者・f19492)が、力強く宣言をした。
「オマエラ、イケニエ、ナマイキ、イウナ! 我の命を貰う……だと? 我に命を差し出すの、間違いだろう」
帝竜オアニーヴが小馬鹿にした様子で、フンと大きく鼻を鳴らした。
「……良いぜ、立ちはだかるなら喰らい尽くして先へ往くだけだ。二体目、帝竜オアニーヴ……その血肉と命、総て貰うぜ」
それでも、ルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)は躊躇う事なく、キッパリと言い放った。
どちらにしても、この迷宮から脱出するためには、帝竜オアニーヴを倒さねばならない。
それ故に、やるべき事は、ひとつだった。
「己が意志すら貫けぬトカゲには過ぎたる場所だ。この土地、もらい受けるぞ!」
そう言ってニコラ・クローディア(龍師範・f00091)が、何処かにいるはずの帝竜オアニーヴに対して言い放ち、力強い足取りで前に進むのであった。
●ダンジョンメーカー
「……とは言え、まずはここを突破しなければ駄目ですが……」
ミラリアが目の前に広がる迷宮を眺め、気まずい様子で汗を流した。
迷宮の中は似たような景色が広がっており、今にも猟兵達を飲み込みそうな勢いだった。
「いや、TRPGマニアに迷宮なんてご褒美ですよ?」
それとは対照的に、零がTRPGの経験で鍛えたマッピング技術を駆使して、迷宮の中を突き進んでいった。
メイスンも電脳魔術の空間振動波で、パイプの反響をハックし、同じようにマッピングをしたものの、迷宮の中は蒸気を噴き出しながら、絶えず内部構造が変わっており、猟兵達を出口から遠ざけていた。
それでも、最短ルートを目指して、出口に向かっているものの、そう言う時に限って、内部構造が変化してしまうため、なかなか帝竜オアニーヴが待つフロアに行く事が出来なかった。
「……これは厄介ですね。帝竜オアニーヴが待つフロアは、すぐそこなのに……」
そんな中、リネットヒロコがスケープシープちゃんで噴き出す蒸気をガードしつつ、瓶底眼鏡型多機能デバイス「ぐるぐるくん(眼鏡)」の透過スキャナと熱源探知で、帝竜オアニーヴの居場所を特定した。
帝竜オアニーヴがいるのは、目と鼻の先。
もっとハッキリ言ってしまえば、目の前にある壁の向こう側だった。
だが、そこに近づくためには、内部構造が変化する前に、グルリと回るようにして、その場所を目指す必要があった。
「さすが賢竜と称されるだけあって、それに相応しい迷宮だな。それなら今回は力を込めた一撃で賢竜の元へ迷宮の道を切り開こう。その憂慮を吹き飛ばすため、そして困難に打ち勝つ勇者の姿を彼に見せつけるために……」
デイヴィーが行き止まりの壁をジロリと睨み、【偉大なる一撃(グレイテスト・ヒッツ)】で、力任せの一撃を壁に放った。
その途端、壁にわずかにヒビが入り、その欠片がポロポロと床に落ちた。
その勢いに乗って、デイヴィーが一撃、二撃、三撃と攻撃を加えていき、徐々に壁のヒビを広げていった。
「また内部構造が変わっても面倒じゃけ―、いまのうちにハッキングしておいた方がよさそうじゃのー」
その間にメイスンがO-Ⅶ型機動強襲用二足歩行戦車「KIYOMORI」に乗ったまま、電脳魔術によるハッキングで迷宮のコアにアクセスすると、セキュリティを突破して自分の制御下に置いた。
「……ですが、この材質なら……いけます!」
すぐさま、ミラリアが【過去は過去たる地へ沈む(アッシュ・トゥ・アッシュ・ダスト・トゥ・ダスト)】を発動させ、付近一帯の壁を捕縛する土塊に変換した。
「まさか、壁を土塊に変えるとは……。まあ、これで彼にようやく挨拶が出来るという訳か」
デイヴィーがホッとした表情を浮かべ、帝竜オアニーヴが待つフロアに足を踏み入れた。
それと同時に猟兵達を出迎えたのは、無数の槍。
その槍が雨の如く天井から降り注ぎ、猟兵達に襲い掛かった。
「迷宮の出口にトラップがあるのは、御約束中の御約束です」
即座に零が盾を構えてオーラを全力で全身に張ると、【ジャッジメント・クルセイド改(ジャッジメントクルセイドカイ)】を発動させ、再生を封じる天からの光で次々と槍を破壊していった。
「こういう場所が一番気を抜くけーのー。じゃが、それは相手も同じ……」
メイスンが「KIYOMORI」に乗ったまま、【電磁力もまた自然の摂理(ルール・オブ・ネイチャー)】を発動させ、電磁属性の砂嵐を巻き起こし、パイプや蒸気機械を破壊しながら、帝竜オアニーヴに激突させようとした。
「キカナイ、キカナイ、ソンナコウゲキ、キカナイヨ」
その事に気づいた大魔王の仮面が、帝竜オアニーヴで操り、六翼の羽ばたきが巻き起こす浄化の風で、電磁属性の砂嵐を相殺した。
「それも……予測済みです」
それに合わせて、ミラリアが土塊を操り、帝竜オアニーヴの動きを封じ込めた。
「狙いは、あの仮面……『大魔王』です!」
次の瞬間、リネットヒロコが【眼魔光(ガンマレイ)】を仕掛け、眼鏡から貫通性が高い光速のレーザーを放ち、大魔王の仮面を攻撃した。
「ユルサナイ、ユルサナイ、ゼッタイニ……ユルサナイ」
その一撃で大魔王の仮面にヒビが入り、凄まじい殺気が爆発的に膨らむと、猟兵達が床にキスをする勢いで、崩れ落ちるようにして膝をついた。
●賢竜オアニーヴのはばたき
「ユルサン、ユルセン、ユルサナイ!」
大魔王の仮面から溢れたのは、凄まじい殺気。
その殺気が猟兵達の身体に纏わりつき、猟兵達に圧し掛かってきた。
「しかし、ここまで来た事だけは褒めてやろう」
それとは対照的に帝竜オアニーヴが落ち着いた様子で、戦意を弱らせる聖なる光を放った。
「……なるほど、アメと鞭……という訳か。だが、オレサマの戦意を削ぐには、弱い力だな!」
だが、ニコラはまったく怯まない。
聖なる光を見做して魔術的に耐えると、帝竜オアニーヴをジロリと睨みつけた。
「でも、味は悪くない。これは病みつきになる味だな」
その間にヴィヴが光子変換式多目的携帯おやつ精製装置で聖なる光を取り込み、美味なるおやつに変えて口の中に放り込んだ。
「なん……だと!?」
それは帝竜オアニーヴにとって、予想外の展開。
自信満々で放った聖なる光が、美味なるおやつに変えられ、猟兵達に振る舞われていたのだから、そのショックもハンパない。
「ダイジョウブ、ゼンゼン、ヘイキ、ヘイキダヨ」
その隙をつくようにして大魔王の仮面が、帝竜オアニーヴの精神を乗っ取り、再び自分の支配下に置いた。
「あはは、ウケる! さっきまでブチ切れていた癖に平気って……。やっぱ所詮トカゲ……いや、仮面ですねぇ。ナオちゃんのように気高い存在ならまだしも、仮面では中身空っぽスカスカですねのねぇ。……悲しいですぅ☆」
その途端、ナオが残念なナマモノを見るような感じで、大魔王の仮面を見上げつつ、煽って煽って煽りまくった。
「グガァァァァァァァァァ! 許さない! ユルサナイ! 許サなイ!」
次の瞬間、帝竜オアニーヴが咆哮を響かせ、六翼を羽ばたかせて、浄化の風を巻き起こした。
「あ、怒った? 怒った? この程度の事で怒るなんて、格好悪いですねー。あは、ウケるー!」
即座にナオが【煽りは任せろ(イエーイ)】を発動させ、全力で相手を馬鹿にする軽口マシーンに変身すると、爆発的に増大した反応速度とスピードを駆使して、帝竜オアニーヴを翻弄した。
「すべて仮面が原因か。ならば、せめてさっさと倒すのが偉大な竜に対する礼儀だろう……」
その隙をつくようにして、ヴィヴが仮面の角に縄分銅を絡めて一気に近づき、胸に鬼火を燈して【限界駆動・星の瞬き(オーバーロード・リトルスターボウ)】を発動させ、首の裏から三節棍-黒閃を使って回転しつつ、羽の付け根を打ち砕いて地に落とし、中折れ爆弾銃・ギースバッハを撃ち込んだ。
その反動で距離を取ると、安全圏に着地した。
それに合わせて、ナオが帝竜オアニーヴにクイックドロウを仕掛け、仮面のヒビを徐々にではあるが確実に広げていった。
「カオガ……羽が……許さない!」
帝竜オアニーヴを怒り狂った様子で、猟兵達の命を狙って、光輝く爪を振り下ろした。
「それで、私に……私のテニスに勝てると思っているの!?」
その事に気づいたトモエがダッシュで間合いを取りつつ、光り輝く爪をラケットで受け止め、カウンターを繰り出すと、三連続サーブで帝竜オアニーヴの羽を狙った。
「……テニスをナメるな!」
次の瞬間、大魔王の仮面がキュピィーンと輝き、帝竜オアニーヴの背後に、ユニフォーム姿の大魔王ウームー・ダブルートゥ(幻)が浮かび上がった。
それに応えるようにして、帝竜オアニーヴの羽がテニスラケットの如く唸り、トモエの攻撃を弾き返した。
「……まったく、テニスをナメているのは、どっちなんだか。まあ、とにかく……ちょいと辛抱しとくれよ、オアニーヴさん!」
多喜がダッシュとジャンプとスライディングを駆使して、帝竜オアニーヴに攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
その間もユニフォーム姿の大魔王ウームー・ダブルートゥ(幻)が猟兵達を見下ろし、必要以上にドヤ顔を浮かべていた。
ここまでの自信が何処から湧いてくるのか分からないが、『こっち見んな!』感がハンパなく、イライラが止まらなかった。
「分かるよ、オアニーヴさん。貴方も未だ必死に戦ってるってね。だから私も、本物のテニスを貴方に見せてあげる! だから魂に刻んでね。これが……テニスだああああああああああああああああああああああ!」
次の瞬間、トモエが【仰観俯察の極み(ギョウカンフサツノキワミ)】を発動させ、感覚を高める事で情報を超高速処理して、帝竜オアニーヴの行動を先読みすると、渾身のショットを叩き込んで、テニスラケットと化した羽を貫いた。
これには帝竜オアニーヴだけでなく、ユニフォーム姿の大魔王ウームー・ダブルートゥ(幻)も、驚いた様子で口を開けた。
「いや、テニスじゃないだろ! それよりも、仮面! 仮面を壊す事を優先しなっ!」
多喜が反射的にツッコミを入れつつ、【過去に抗う腕(カウンターパスト)】を発動させ、存在の本質を捉える思念波を放って、仮面の中の核を見つけ出した。
「やれやれ……、仮面如きに意志を奪われ、同類とは思いたくないものだよ、オアニーヴ!」
それに合わせて、ニコラが早業で転移魔術を発動すると、自らの頭上に移動し、【光盾突撃(シールドアサルト)】で全方位を守る光の盾を展開した。
続いて、ニコラが魔力拳銃「ドラゴハウザー.50」を構え、全力の呪殺弾で大魔王の仮面を攻撃した。
「ググ……グワアアアアアアアアアアアアア!」
その途端、大魔王の仮面が悲鳴を響かせ、大魔王ウームー・ダブルートゥ(幻)のドヤ顔が跡形もなく……消えた。
「……って、そっちかああああああああああああ!」
これには多喜も、思わずツッコミ。
大魔王の仮面の核にダメージを受けた事で、大魔王ウームー・ダブルートゥ(幻)が死んだ魚のような目になっているものの、求めていた結果とは明らかに違うモノだった。
●竜操の仮面
「ナニガ、テニスダ。コンナモノハ……テニス……ジャナイ!」
次の瞬間、大魔王の仮面が邪悪な光を放ち、帝竜オアニーヴの理性を消し飛ばした。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」
その影響で帝竜オアニーヴが殺戮マシーンと化し、血に飢えたケモノの如く勢いで、猟兵達に襲い掛かってきた。
「どうやら完全に乗っ取られてしまったようね」
エルザが複雑な気持ちになりながら、残像を使って帝竜オアニーヴの注意を引いた。
なるべく、ゆっくりと、残像よりも遅く行動しながら……。
その間も相手に尊厳の念を抱きながら……その想いをじっと心の底に抱きつつ、帝竜オアニーヴを誘導していった。
「理性を失った分、攻撃は単調ですが……。マトモに受けるのは、危険ですね」
一方、ソラスティベルは盾受けとオーラ防御を駆使して、全力で守りを固め、帝竜オアニーヴに攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
「つまり、動く物を察知してる……って訳か。つーことは、とにかく視界に映ったものを無差別に追うんだろう」
アルフレッドが投擲でワンダレイアンカーを遠くに吹き飛ばし、【狂騒海域(ライオット・イン・ブルー)】を発動させた。
それと同時に帝竜オアニーヴの視界を遮るようにして、複数の巨大な渦潮を操った。
霧亥がクリエイトフォースを無数の隼に変化させ、帝竜オアニーヴを牽制するようにして飛ばしていった。
「……これで容易に近づける」
すぐさま、ルードが暴食剣「神喰」と呪詛剣「無愧」を構え、幻影の外套と音無しの靴で気配と音を殺し、残像を囮として置きながら、一気に距離を縮めていった。
「コロセ、コロセ、コロセェェェェェェェェェェェェェ!」
その事に気づいた大魔王の仮面が、帝竜オアニーヴを煽って、煽って、煽りまくった。
それに応えるようにして、帝竜オアニーヴが傷つく事も恐れず、巨大な渦潮に突っ込み、大量の血を流しながら猟兵達に襲い掛かった。
(早く仮面をどうにかしないと……オアニーヴの方がもたないな)
霧亥が帝竜オアニーヴの攻撃を見切り、盾受けとシールドバッシュを駆使しつつ、大魔王の仮面に視線を送った。
大魔王の仮面は無数のヒビが入っており、そこから伸びた血管のような無数の触手が、帝竜オアニーヴの顔に張りついていた。
「こちらの攻撃は一度きり……それに全力全開を込める!」
その間に、マックスが蒸気機械の露出した歯車を念動力で動かし、帝竜オアニーヴの攻撃を妨害した。
だが、帝竜オアニーヴはまったく怯んでおらず、隙あらば今にも飛び掛かってきそうな勢いだった。
「ならば、わしに任せるのじゃ!」
即座に玄信が衝撃波を使って高速でテニスボールを飛ばし、帝竜オアニーヴの注意を引いた。
「……!」
その途端、ユニフォーム姿の大魔王ウームー・ダブルートゥ(幻)が、ハッとした表情を浮かべて、黄金のオーラを身に纏い、絶妙なタイミングでセクシーポーズを繰り出し、華麗に美麗に打ち返した。
「ボールに気を取られたのが、間違いね」
その隙をつくようにして、エルザが帝竜オアニーヴの懐に潜り込み、【白王煉獄(ハクオウレンゴク)】を仕掛け、炎を纏った刀による一閃で斬りつけた。
それに合わせて、ソラスティベルが勇気を出して帝竜オアニーヴに飛びつき、ゆっくりとだが着実に頭部を目指して登っていった。
「何時もの人、あの毛を吹き飛ばしてやるのじゃ!」
一方、玄信は帝竜オアニーヴの背後に回り込み、【脱衣の国より来たりしもの(ダツイノクニヨリキタリシモノ)】を発動させ、自らの脱衣を代償に、脱衣の国からやってきた神々しい女性の幻影を呼び寄せた。
「玄信、わたくしも戦いましょう。さぁ、共に正義をなすのです」
それに答えるようにして、神々しい女性の幻影が、着衣を吹き飛ばす程激しい光を帯びた風を纏った玄信と共に、帝竜オアニーヴの毛を毟るようにして吹き飛ばした。
「さあ、そろそろ終わりにしよう」
その間に、霧亥が弥勒菩薩の真言を唱え、魂を呪縛から解放する救済の加護を弾丸に籠めると、【解呪(ディスペル)】を発動させ、大魔王の仮面を撃ち込んだ。
「グワアアアアアアアアアアアアアア」
それと同時に、大魔王の仮面に、さらに無数のヒビが入り、そこから大量の血が溢れ出した。
「我が心の光、誇り高き賢竜へ今一度永遠の安眠を齎せ……終幕を照らす光!!!」
次の瞬間、マックスが【終幕を照らす光(デウス・エクス・マキナ)】を発動させ、無限魔心炉『マキナ・エンジン』を封印拘束から解放すると、そこから溢れる無限の魔力エネルギーを込めて、大魔王の仮面を攻撃した。
「ナンデ、ドウシテ、イヤダ、イヤダ!」
その一撃を喰らった大魔王の仮面がパニックに陥り、断末魔を上げて砕け散った。
だが、理性を失った帝竜オアニーヴが、元に戻る事はない。
まるで拘束具から解放された狂人の如く勢いで、手当たり次第に辺りのモノを壊し始めた。
「いまこそ、これを使う時のようですね。幾度となく大魔王を討ち果たした、この一撃を……! これぞ我が勇気の証明、至る戦火の最前線! 今こそ応えて、蒼雷の竜よ!!」
それを迎え撃つようにして、ソラスティベルが【我が名は神鳴るが如く(サンダラー)】を発動させ、蒼雷を纏う大斧による超高速かつ大威力の一撃を、帝竜オアニーヴに繰り出した。
「……安心しろ。お前は俺の中で生きる。例え、肉体が滅びたとしても、永遠に……」
続いてルードが【魂装・神魔喰ライシ暴食ノ暴君(リンケージ・タイラント)】で神喰と無愧を真名開放形態に変形させ、真の姿を解放すると、捕食衝動の理性侵食を代償に、これまで倒して喰らった帝竜や敵を憑依させた。
その上で怪力を乗せた二刀による連撃を繰り出し、帝竜オアニーヴを喰らって、喰らって、喰らいまくった。
そのため、帝竜オアニーヴは成す術もなく崩れ落ち、迷宮の消滅と共に解放された魂が天に昇っていく姿が見えた。
そんな中、ユニフォーム姿の大魔王ウームー・ダブルートゥ(幻)が、完全に消えるタイミングを逃して、猟兵達と一緒に空を見上げていた。
大成功
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