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『S県H市における邪神召喚事件の報告書』

#UDCアース

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#UDCアース


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『ファイル番号:J-1911-JP』
 本事件はカテゴリー『J』案件となります。

 ――そこは異界であった。
 鼻の曲がるような悪臭がする沼で満たされ、迷路の如く入り組んだ洞窟。
 その沼に腰ほどまで浸かりながら進んだ先に、異教の神殿があった。
 神殿にはヒキガエルの様な怪物の石造が立ち並び、その石造の周囲には丸で群がるように苦悶とも恍惚ともとれるような表情で這い寄る人の像。
 人の生理的嫌悪感を刺激するその神殿で何かの声がする。
 言葉の意味は分からなかった、理解しようとすれば脳が拒む。
 しかし脳裏にぞわりぞわりと這い寄るように響くそれが悍ましい何かであるのは分かった。
 神殿の奥へと進む、深みへ行く。
 不意に、悪臭でひん曲がった鼻を、それでも刺激する悪臭が襲う。
 油の匂い、血の匂い、腐った肉の匂い、体液の匂い、人の……匂い。
 まるでファンタジーノベルの世界をそのまま持ってきたようなチープさをもった光景を受け入れられないのはその非現実性の為か、自己防衛の為か。
 嗚呼、哀れな犠牲者が見える。
 先の人の像と同じ、苦悶とも恍惚ともとれる表情で転がる人の骸。
 血か何かで描かれた魔法陣と奇怪な装飾に彩られた祭壇、それに捧げられた生贄達の屍を取り囲むローブの集団。
 そしてその中央に、この不釣り合いなほど可憐な少女がいる。
 しかし、その少女の宝石の様な瞳は狂気に染まっており、頬を上気させながら愛らしい唇から漏れるのは吐息ではなく異界の呪詛。
 この少女こそがこの狂気の中心、邪神を崇拝する巫女、今ここに自らの主人を招き入れようとする狂信者である。
 少女は言う、我らが主をお呼び致しましょうと。
 この世界に救済を、我らに救済を、沼の安寧をこの世界に齎しましょう。
 その為の歌を、我らの讃美を、讃美歌を、皆で歌うのです……と。
 少女が歌う……邪教徒達が賛美歌を歌う……異界の主を讃える忌々しく禍々しい讃美歌を。
 ――嗚呼、呼ばれてしまう。
 曰く、沼地の主、安寧の沼の中で微睡む者、生きとし生けるすべてのモノをその沼の中に引きずり込み快感と苦痛の中で緩やかに溶かし捕食する怪物。
 祭壇から水が……いや、沼があふれ出す。
 その中に……その奥に……その底に……何か巨大な物の双眸が浮かび上が――――。

 目まぐるしく風景の変わる不安定な世界、異世界への交差点『グリモアベース』。
 君は呼ばれたのか、別の用事があったのか、あるいは全くの偶然に、この場所に立っている。
 そこには君とは別にもう一人、男が立っていた。
 男の名はアダム・アルフレッド……彼は君の姿を見つけると、焦った様な表情で、しかし口調は穏やかに話し始めた。

「ようこそ《猟兵》、どうか少しの間私の言葉に耳を傾けてほしい」

 彼は自ら見た予知を語り出す。
 邪教の集団が儀式の末、邪神の一柱をこの世界に呼び出してしまうのだと。
 場所はS県H市の街はずれにある小さな洞窟、その最奥。
 本来ここには洞窟などなかったが、予知を元に付近のUDCエージェントに調査を依頼したところ発見された。
 中は通常の空間とは異なる異界と化しており、沼の洞窟になっていたとの事。
 また、この近辺では数日前から行方不明事件が多数発生しており、その被害者は十数名に上る。
 誘拐現場で目撃されているトラックが洞窟のすぐ近くに乗り捨てられていた事から、邪教徒たちが生贄として誘拐した可能性が非常に高い。
 そこで、《猟兵》達にこの邪悪な儀式の妨害、そしてその主犯と思われる人物の討伐を依頼したいのだと。

「神殿にたどり着くにはまずは沼の洞窟の踏破が必要になる」

 曰く、勇敢なUDCのエージェントが迷宮の攻略に乗り出したがすべて失敗に終わっている。
 内部は膝まで沈むほど深く柔らかい沼で満たされており、歩くだけでも困難な上、迷宮の様に複雑に入り組んでいる。
 その上、沼が自身の足跡を隠す為引き返す事も難しく、ただ進むだけで精神的にも肉体的にも疲労する事だろう。
 また、今だ帰還していないエージェントもいると言う。
 邪教徒に発見され拘束された可能性もあるが、もし発見した場合余裕があれば保護してほしいとアダムは付け加える。

「予知では沼の洞窟を踏破した先には神殿があるハズだ、そこで儀式の妨害工作を行ってほしい」

 到着すればそこは儀式の真っ最中だ。
 彼等は君たちの襲撃に気づけば儀式を強行するだろう、彼等にしてみれば召喚さえできれば勝利であり、自身の命等顧みない。
 ゆえに、どんな手を使ってでも儀式の阻止をしてほしい。
 神殿そのものを破壊するのもよし、邪教徒共を蹴散らすもよし、生贄を救い出すもよし、魔術に長けた者なら術式そのものに介入するのも良いだろう。
 邪神の召喚が彼等の勝利条件であるなら、こちらの勝利条件は召喚の阻止なのだから。
 そして最後に……。

「首謀者である、少女を討伐してほしい」

 その可憐な姿に騙されないでくれよ、そうアダムは言う。
 曰く、少女は完全に狂気に身を委ねてしまっている。
 説得は不可能、その上彼女は邪神の力の一端を身に宿りておりその力は《猟兵》にも匹敵する。
 彼女は力尽きるまでその力を振るうだろうし、手加減をすれば君自身の身を危険にさらす可能性も十分考えられる。
 たとえ拘束に成功したとしても……彼女は隔離された特別牢の中で死ぬまで邪神の崇拝を続けるだろう。
 かと言って逃がせば、まだ同じ事件が起きるだけだ。

「実に難しい案件だと思う、だが《猟兵》、君の力が必要なんだ」

 ――どうか力を貸してほしい。彼はそう言った。
 この事件に手を貸すか、否か、その選択権は君の手の中にある。


K.U.M.A.
 皆さま初めまして、K.U.M.A.と申します。
 初のシナリオとなります、至らない点もあるかと思いますが、皆様に読み応えのあるリプレイを、皆さまのキャラクターの活躍を届けたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
 また、第2章は自由度が高い暴れ放題の章ですので最高にカッコイイ皆様の活躍をお待ちしております!

 私のMS性は以下の通り。
 ・アドリブさせます。
 ・他PCと絡ませます。
 ・遅筆です、採用が間に合わない事もあります。
 ・ネタはググリますが、分からない場合もあります。
 ・ステータス画面は見ます。
 ・ユベコは同時に二つくらいまでなら多分描写します。

 よろしければ以下の省略をご利用ください。
 ・チームまたはペア参加したい場合。
 {チーム名orペア名}、{}の中を自由に記入してプレイングの頭に入れてください。
 {}の中は4桁数字でも単語でも何でもどうぞ。
 ・アドリブを遠慮したい方。
 《◎》、コチラをプレイングの頭に入れて下さい。
 ・他PCとの絡みを遠慮したい方。
 《▽》、コチラをプレイングの頭に入れて下さい。
 ・アドリブ、他PCとの絡みを遠慮したい方。
 《◎▽》、コチラをプレイングの頭に入れて下さい。
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第1章 冒険 『沼の中へ』

POW   :    ゆっくり歩き転ばないように進む。

SPD   :    忍者のようにぬかるみを駆け抜ける。

WIZ   :    板やボートなど道具を使い賢く進む。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エーカ・ライスフェルト
wiz
UDCに以下の依頼を行います
「幅50センチ以上1メートル以下、長さ4メートルくらいの板を百枚集めて欲しいの。場所は洞窟の近くで安全が確認されている場所。安い板でいいわ。使い捨てになるだろうから」

その後、バイクで洞窟前まで板を運搬
バイクはそこに置いておく

次に、【エレクトロレギオン】で呼び出した機械兵器に1枚ずつ運ばせ、洞窟の入り口から奥に向かって1枚ずつ並べるよう命じる
運んだ後の機械兵器は重し代わりに板の上に載せておく

私自身は、その時点で一番奥の板の近くで警戒と板の護衛よ
「私の体力では1時間もたないわ。倒れる前に後続の猟兵が来てくれればいいけど」

敵襲撃時は【属性攻撃】の単発炎属性矢で応戦


ボゴ・ソート

なんと冒涜的な臭いなんだ!
この仕事で汚れた服をぶちこまれる洗濯機には同情するね。


【POW】
[クライミング]仕込みの腕力で洞窟の壁をしっかりと掴みながら慎重に進み、余裕があれば[フック付きワイヤー]を使った[ロープワーク]で後から来る人達を牽引して移動を手伝います。
塗料や光源を持っている人がいたら、生贄や未帰還エージェントの脱出が楽になるように、通路へのマーキングをお願いしたいです。
もし誰かが転んで泥だらけになってしまったら「迷彩かい? 良い考えだね」と軽口を叩きながら手を差し伸べて、自分が転んだなら「これは迷彩ってやつだよ」と強がります。


ギルバート・グレイウルフ
邪教徒による儀式の阻止、なぁ。
UDCのエージェントが失敗した案件ってのがちと気になるが、金払いはいいし受けない理由はねぇ、か。

【SPD】
うげ、ひでぇ臭い……こりゃ今日の装備は依頼が終わったら、クリーニングいきだな。あーあ、せっかくの依頼料がどんだけ飛ぶやら。
なるべく浸かりたくねぇよなぁ……いっちょ頑張って駆け抜けてみますか。

まずは【影の追跡者の召喚】を使って、どの程度ひでぇぬかるみか確認しますか。
ふむふむ、割とこのルートならあんまり足をつっこまずに行けそうか?


なんとか駆け抜けたとしても、装備は汚れちまいそうだな。
この後邪教徒共と一戦構えるんだし、ちょいと手入れしておきますか。


ジード・フラミア
ジード「メリア、これを付けて。たぶん沈みにくくなるはず。」
メリア『たぶんデスカ…… まあ、沈みにくそうデスネ。ジードはワタシに捕まっててクダサイ』

ユーベルコード『変化する人形』を使用

メリアのボディの足の方に、板や空気の入ったペットボトルなど沈みにくそうな物を取り付けます。
ジードはメリアにおぶってもらいます。


青葉・まどか
切迫した状況だね。エージェントさんの安否も心配だけど、邪神の復活はなんとしても防がなきゃ!

SPD重視で行動。
洞窟の入り口を【暗視】と【視力】で観察して【情報収集】。
エージェントさんや誘拐行為した際の足跡なんかが残っていないかな?残っているなら【追跡】が役立つかな?

注意しながら迷宮をフック付きワイヤーと【クライミング】や【早業】等の技能を活かしながら進行。
要所要所で『影の追跡者』で進行先を偵察します。

進行中、疲れを感じたら小休憩。「体力もキツイけど神経の方が辛いね」

ギターのピック等、帰る際の目印として随所に残しておく。


三千院・操
【WIZ】
うわ! すげー沼ー。これは普通に渡るのめんどくさそー。
確か迷子のエージェントがいるんだっけ! UDC機関にはちょろっと協力してたし、見つけてあげたいな。
よーし! はりきってこー!

そのまま進むのなんてナンセンス!
おれは周りにある木材や泥を使って簡易ボートを作るよ!
もし作れなかったら死霊術(呪詛)を使っておれを運ばせるよ!
洞窟の中は暗そうだから、LEDライトでも持ってこうかなぁ。
あ! 他の仲間の為にもエナジードリンクも持ってこーっと

首謀者の女の子がどんな術式を使うかは知らないけど、邪神の力を宿してるってのは興味深いなぁ。
……やっちゃえば自由にできるかな?


ソフィア・テレンティア
沼ですか……服が汚れてしまいますし、態々歩いていく必要もありませんね。
【ガジェット・ショータイム】でソフィアが乗れる大きさの飛行ガジェットを召喚し、沼には触れないように飛んでいく事と致しましょう。
洞窟ですのであまりスピードは出せませんが、致し方のないことですね。目的地はこの先の神殿。こんなところで消耗するわけには行きませんので。


月山・カムイ
沼の洞窟とか、足を取られて身動きが取れなくなる事請け合い、ってところですねコレ
仕方ない、ここは慎重にマッピングしながら進むとしましょう

POWでの判定
慎重に進むのがいいでしょう

携帯端末を利用してマッピングを行いながら進む
壁には夜光塗料のペンを使い、どちらから来たのかの→と分岐点番号を記載
迷ったりしないように注意をします
ペンについては何色か持ち込む

時間はかかるかもしれないが、とにかく踏破する事を目標に
既に消息を絶っているエージェントの身柄、もしくは遺留品だけでも見つけられれば、と網羅するように進む
なんとなくですが、闇雲に進むよりはこの方が最終的に時間短縮になりそうです

アドリブ、他の人と絡みOKデス


エミリィ・ジゼル
沼ですか、底なしだったりするんですかね?
どちらにせよ普通に踏破するのは避けたいところですね。

決められたレギュレーションをいかに違反しない程度に裏をかくか。
メイドとしての腕の見せ所ですね。

というわけで今回は【メイド流サメ騎乗術】を使って、
水陸両用のサメを召喚。
そのサメに乗って沼を踏破したいと思います。

歩くのが困難だろうが入り組んでいようが、
水陸両用のサメの前には些末です。

ずんどこ踏破していきましょう。



 ■■月■■日■■時■■分
 本案件の主導権を《猟兵》へ委任する。


●《沼の洞窟、あるいは異界の門》
 街はずれの山道、UDCのエージェントが周辺を封鎖する沼の洞窟の前。
 そこに、美しい桜色の髪を靡かせバイクに跨って現れたのはエーカ・ライスフェルトだ。
 彼女は現場である洞窟の前でバイク止め、周囲を見渡す。

「……注文通りね」
 
 彼女の視線の先には山積みにされた資材が用意されていた。
  ――幅50センチ以上1メートル以下、長さ4メートルくらいの板を百枚集めて欲しいの。
 場所は洞窟の近くで安全が確認されている場所。安い板でいいわ。使い捨てになるだろうから――。
 そう言ってエージェントに頼み、彼等が用意したものだ。
 彼女はバイクを降りて資材に歩み寄る。
 そして、資材の前でゆるりと手を上げ……パチンッと指を弾いた。
 一瞬の出来事だ。
 閃光が走り、虚空に電流が走り、大気を焼き、空間が歪む。
 その歪んだ空間から、ゴトリゴトリと無数の金属の塊が地面に落ちたかと思えば、小気味よい機械音と共にそれらは形を変え……エーカの意のままに動く小型機械兵《エレクトロレギオン》が整列していた。
 その数、実に95体。
 彼女が再び指を弾けば機械兵達は一斉に動き出し、統率をもって資材を解き、積み上げられた木材を洞窟の中へ運び入れる。
 彼女が作りだしたのは道だ。
 それは長方形の木材を、道なりにまっすぐ繋ぎ合わせた簡素なモノではあったが、沼の泥に足を取られずかなり奥まで続く道を作ったのだ。
 エーカは沼に浸からぬ様ドレスの裾を持ち上げ、自らの兵団が作り出した道を渡り行く。
 この沼の洞窟に何が居るのか、それは今だ分からない。
 後に続く猟兵の助けになるように、救助されたエージェントや被害者が脱出できるように、この道は守らなければならない。
 しかし、もしここで戦闘になるようなことがあれば……。
 
「私の体力では1時間も持たないわ。 倒れる前に後続の猟兵が来てくれればいいけど……」

 足から伝わる沼の冷たさで体が震えた。
 一度道を振り返るが、入り組んだ洞窟だ、すでに入口の光は見えなくなっていた。
 ……寒さで少し弱気になったのかもしれない。頭を振り、気持ちを切り替える。
 と、そこで背後から人の気配を感じた。
 気配に邪悪さはなかった、敵意も感じなかった。
 ふぅ、とエーリカはため息を吐いて、振り返らずこう言った。

「――少し、到着が遅いんじゃなくって?」


●《迷宮踏破、その冴えた攻略法》
 エーカが作った道の先は今だ沼の洞窟が続いていた。
 いや、むしろここからが本番なのかもしれない。
 道は幾重にも分かれ、合流し、猟兵達を惑わす。
 五人の猟兵達はそれぞれの方法で協力し合い、この洞窟を攻略する。
 たとえば、気弱そうな銀髪の美少年ジード・フラミアと、その別人格にして金髪の愛らしい少女人形メリア。
 この二人の場合、ジードが《変化する人形》にて、彼女の為だけの道具を作り出す。
 木の板や空気の入ったペットボトルで作られたそれは、一見スクラップの様に見えるが、彼女の足にぴったりな靴であった。

「メリア、これを付けて。 たぶん沈み難くなるはず」
『たぶんデスカ……。 まあ、沈み難そうデスネ』

 メリアはその靴を履いて、二度、三度と沼を踏みしめる。
 元々軽い人形である彼女には必要なかったかもしれないが、人一人を背負うなら話は別だ。

『大丈夫そうデスネ。 ジードはワタシに捕まっててクダサイ』
「……うん、お願いメリア」
 
 そう言ってメリアがジードを背負う。
 踏み出した足はやや沼に沈むものの、歩行に問題は無さそうであった。

「うわっ! ほんと柔らかいですねココ。 足を取られて身動きが取れなくなる事請け合い、ってところですねコレ」

 そのあとに続いたのは月山・カムイだ。
 彼の手には携帯端末と、夜間蛍光塗料が握られていた。
 複雑な洞窟を攻略するための堅実な手段……それは、マッピングと通路の目印である。
 時間はかかってしまうかもしれないが、闇雲に歩き回るよりははるかに効率的だ。
 何より、もし消息不明のエージェントを発見しても、地図を目印をおってもらえれば帰還させることができる。
 
「既に消息を絶っているエージェントの身柄、もしくは遺留品だけでも見つけられれば良いのですが……」
「う~ん、分かりにくいけど……痕跡はあるみたい。 うん、追跡できるよ! まっかせて!」

 カムイの言葉に続いたのは青葉・まどかだ。
 彼女はここに至るまでにも通路をよく観察していた。
 沼は歩くたびに濁り、柔らかい泥はすぐに形を変えて足跡等の痕跡を隠してしまう。
 それでも、僅かにだが形跡はあったのだ。
 例えば、洞窟の壁に跳ねた泥、踏み固められたおかげで他より歩きやすい場所、熟練の探索者であるまどかだから見つけることができた僅かな痕跡だ。
 そして、彼女もまたカムイと同じように、道に目印を用意していた。
 それは小さなギターのピック。
 彼のモノとは違い目立たぬそれは、悪意あるものが目印を隠す危険を回避できるだろう。
 二重の目印が彼女たちの来た道を保証するのだ。

「とは言ったものの、歩くのだけでもかなりキツイね……」
「ハハッ、なら二人は俺が引っ張るよ。まかせくれ!」

 沼に沈む足の不快感と重量感に悩むその声に答えたのがボゴ・ソートだ。
 ボコは元々人型人型探査機である。
 すなわち、過酷な環境に耐えうるボディと、馬力を持っており、まさにこんな環境ではうってつけの人材である。
 彼はまどかとカムイに自らのフック付きワイヤーを渡し、先行する。
 ガシリと壁を掴み、力強く踏み出す。
 巨体が沼に沈むのも気にせずに、二人を牽引しながらグングンと進む、驚くべきパワーだ。

「しかし、なんと冒涜的な臭いなんだ! この仕事で汚れた服をぶちこまれる洗濯機には同情するね!!」
「わかるわかる、すっげーやべーよな? 普通に渡るのめんどくさそー」

 なんとも軽い口調で、他人事のように言うのは三千院・操だ。
 それもそのはず……この中で彼だけが唯一ボートに乗っているのだ。
 それはもちろん、本格的なモノではなく簡易的な木造ボートだ。
 洞窟内は狭く、大きな船では取り回しが効かない為、一人用……無理に乗っても二人が限度の小型ボートとはなったが、それでも沼に浸からずに進めるというのは気が楽になる。
 一見、彼だけが楽をしているようにも見えるが、一人先に進むこともできるのに、手に持ったLEDライトで皆の行く先を照らしている。
 子供っぽい口調に誤解されそうだが、けして軽薄な男ではないのだ。

「……たしかにそうだね、ホント、鼻がおかしくなりそうな臭いだし……ううぅ、服を洗うの大変かも……」
『臭いはちょっと分からないデスケド。 ワタシのスカートとかも、ちょっと大変な事になってそうデス……』
「うん……少し濡れちゃってるかも。 ごめんねメアリ。帰ったらちゃんと綺麗にしようね」
「皆さん、気持ちはわかりますが集中しましょう? 気持ちは分かりますが……」
 
 ボゴの言葉を皮切りに、今まで耐えていた悪臭への不満かこぼれる。
 実際その通りで、この洞窟に立ち込める臭いは強烈で、いるだけで不快感を煽ってくる。
 その上、臭いの元は明らかに足元の沼であり・・・染み込んだ衣服が異臭をも取り込むのは自明の理であろう。
 ちょっとやそっとの洗濯では落ちないかもしれない。
 沼は体力と共に精神をも蝕んでいくのだ。
 それは臭いだけではない、右へ左へ、大きく迂回したと思えば同じ場所に合流する。
 複雑に分岐する洞窟が、猟兵達の徒労感を煽るのだ。
 マッパーであるカムイの指揮のもと、探索を進めるも一向には疲労がたまり始める。
 消息不明のエージェントを捜索する為にも、道を取りこぼすことができないからだ。
 あるい程度探索を進めたの後に、体力もキツイけど神経の方が辛いね! とまどかが休息を提案したのは致し方ない事であった。

「ほらよ、ジードくん。 コイツでも飲めよ」
「あっ、ありがとう……ございます……」
 
 操が休憩中に、ボートに積んでいたエナジードリンクを猟兵達配る。
 なんと気の利く事だろうか。
 ふたを開けた瞬間に漂う爽やかな香り、喉を刺激し、体に染み渡るそれは猟兵達の心と体を癒す。

『大分進みマシタケド、全然先がみえないデスネ? 私達は大丈夫デスケド、皆さんはかなりツライのデハ?』
「おかえりなさい。いえいえ、まだ大丈夫ですよ。 ……体力面では、ですが」

 疲れ知らずの人形であるメアリと、その背に乗ったジードの二人には余裕があり、まどかの《影の追跡者の召喚》にて呼び出された『影の追跡者』と共に出ていた先行探索から戻ってきた。
 その点は、体格のよいウォーマシンであるボコと、ボートに乗った操も同じである。
 猟兵として高い経験と積んでいるカムイは持ち前の身体能力で、同様のまどかはフック付きワイヤーを洞窟の僅かな凹凸に投げて引っ掛けるという早業をもって、腕の力も使い進んでいるため全員身体的疲労はそこまででもなかった。

「やはりネックなのは精神面ですね……どれだけ進んでるのか……」
「そうだねー。 いや、俺は全然平気だけど、まどかさんとか大丈夫かい? 女の子として臭い的にもキツイでしょ?」

 地図を見ながら言うカムイに、ボコが続くき、まどかの方を見た。
 当のまどかはと言うと……エナジードリンクを飲みつつも、何やら熱心に周囲の痕跡を調べている。

「おいおい、どうしたんだいまどかさん。 熱心に壁なんて見ちゃってさ?」
「……うん、ちょっと……変だなぁ……って」

 まどかは壁に手を触れる。

「此処だけ、妙に足場がしっかりしてるし……壁に跳ねた泥の量も多い……」
「え、なに、つまりどういう事だい?」
「つまり、ここで何かが争ったような形跡が――「静かに!!」――ッッ!」

 まどかの言葉を遮るように、カムイが声を上げた。
 彼は全員が静止するように目で指示を飛ばす。
 洞窟に静寂が訪れる。
 ……ジャブ、……ジャブと何かが沼をかき分け進む音が聞こえる。
 カムイはその僅かな水音をいち早く聞き取ったのだ。
 全員に緊張が走る。
 ……ジャブ、……ジャブ。
 音は次第に大きくなる、それに付随して、何かの唸り声の様な、激しく洗い呼吸音も洞窟に響き渡る。
 それは、それは、それは、静寂を切り裂いて、間違いなく猟兵達に迫りくる!
  
「そこッ!右の道です!!」
「はいよぉ!」

 カムイが指し示す方向に操がライトを向ける。
 映し出されるのは黒い影、それは…………。

「う、うあぁああぁあ!?」

 ――ライト驚き、腰を抜かして倒れこむUDCのエージェントであった。

『……大丈夫デスカー?』
「ハハッ迷彩かい?良い考えだね」

 一期に金箔した空気が解れていく。
 メリアが心配そうにのぞき込み、ボゴが陽気な笑顔を浮かべつつ倒れこんだエージェントに手を差し伸べ助け起こす。
 エージェントは全身泥まみれになりつつ、なんとか起き上がり猟兵達を見渡した。

「あ、有難う、君たちは……?」
「俺たちは猟兵さ」
『それよりも、アナタの方デス。 一体何があったのデスカ? 大丈夫デスカ?』
「そうです、メアリの言う通りです……。何があったのか教えてくださいませんか……?」

 エージェントは安堵の息を零した後に、メアリとジードに促されここまでの経緯を猟兵達に話す。
 彼等はこの沼の洞窟の攻略に乗り出すも、邪教徒達の襲撃にあってしまった。
 自分を含め何名かは邪教徒達につかまってしまい、奥に連れていかれたのだという。
 しかし、最奥の神殿にたどり着く前に、運よくその場から逃げ出すことに成功し、今に至るのだと。
 彼は覚えてる範囲でこの先の道のりを教えてくれた。 

「なるほど……ご無事で何より、出口はまでの道のりをお教えしますね」
「ありがとう、恩に着るよ、猟兵」
 
 カムイが自身の記したマップを見せつつエージェントに出口の方向を伝えている。
 そんな光景を眺めつつ、操は思考の中にあった。
 繰り返すが、子供っぽい言動に惑わされガチだが、操という男は頭が回わる。
 一人、船を作ろうと考えた発想力もそうだが、先のエナジードリンクを用意しておく等、周囲に気を回す余裕もある。
 そして、いざ迷宮の先が分かり、決戦の時が近づくとこの依頼を受けた時より考えていた事が頭をよぎる。
 首謀者の女の子がどんな術式を使うかは知らないが、邪神の力を宿してるというのは実に興味深い……。

 ――やっちゃえば自由にできるかな?

 彼がぼそっと呟いた一言は誰の耳にも入らなかった。


●《その先にあるモノ》
 先ほどの五人とは別に、先行する三人の猟兵達が居る。

「……沼ですか……あまり、汚れたくはありませんね」

 それは何とも形容しがたい形状でであったが、空飛ぶスノーボートと呼ぶのが一番相応しいのかもしれない。
 《ガジェットショータイム》によって呼び出された飛行ユニットの上で、跳ねる泥を割けるようにスカートを摘み、優雅に佇むのは可憐な猫耳メイド、ソフィア・テレンティアだ。
 そう言うソフィアの衣服は、靴にすら泥が付いていない状態だ。
 洞窟の天井はあまり高く無い為に水面スレスレを飛行しており、曲がり角ではボードを巧みに操り波並を立てず、水面を踊るように滑る姿は、まさに瀟洒なメイドであると言えよう。

「本当ですねぇ、この子が居て助かりました。」
 
 それは、人間の根源的な恐怖心を煽るモノであった。
 妙なツヤと弾力のある皮膚に覆われたその背には、鋭角のヒレを持を持つ海洋生物。
 その割けた様な巨大な口には、ギラギラとのこぎりじみた歯が並び、今にも獲物を捕食せんとする獰猛な瞳を光らせていた。
 すなわち……サメである。
 《メイド流サメ騎乗術》沼地を泳ぐサメの背に跨っているのが、エミリィ・ジゼル。
 清楚かつ愛らしい外見と共にシュールな光景をまとう姿は、ソフィアとは対極のメイドであると言えよう。
 そも、水陸両用のサメはサメであるのだろうか?そんな疑念を抱きかねないが、ここはあえて無視をする。
 サメを覗く時、サメもまた覗いているのだ。あるいは、触らぬサメに祟り無し。

「まったく、お嬢ちゃん達が羨ましいぜ……コッチは臭いまみれで泥まみれの装備のクリーニング代で頭が痛くならぁ」

 対照的に、その恵まれた体格をもって豪快に沼をかき分け進んでいるのが強面の傭兵、ギルバート・グレイウルフだ。
 無論、彼もただ強引に駆け抜けている訳ではない。
 《影の追跡者の召喚》で召喚した【影の追跡者】を先行させ、より踏み抜きやすい道を選び、同時に索敵をこなしている。
 熟練の傭兵であるギルバートだからこそ出来るマルチタスクだ。

「申し訳ありませんギルバート様、なにぶん一人用でして……」
「わたくしのサメも、二人目は些か……」
「冗談だ、ジョーダン。 可憐なお嬢さん方を泥まみれにぁできねぇさ」

 伏し目がちに言う二人のメイドに対して、ギルバードはばつの悪そうに笑いながら返す。
 二人の可憐なメイドを泥まみれに……まぁ、悪くはない光景かもしれないが、二人の道具(?)を奪うわけにもいくまい。
 それに、隣を泳ぐサメが、チラチラをコチラを窺っているのはおそらく気のせいであろう。

「それにしても、グレイウルフさんはラッキーですね? 両手のメイドさんですよ? わたくし、かじできないさんですけど!」
「いや、できないのかよ!? メイドなのに!?」
「……それは、メイドと言って良いのでございましょうか……」
「もちろん、メイドさんですよ???」
「いやいや、何をもって『もちろん』なんだ!?」
「決められたレギュレーションをいかに違反しない程度に裏をかくか……その腕前ですかね?」

 この様な環境でも軽口が飛び交うのは、歴戦故の丹力か。
 それともこのできないさんが極度のマイペースでシリアスな雰囲気を台無しにしいていくためか。
 多分、きっと、後者だと思う。

「さようでございますか……ギルバート様、次は右です」
「ったく、調子が狂うな……了解。 ……この先はクリアだ。 このまま進んで問題はねぇぜお嬢ちゃん」
「いやぁ、お二人には助かっちゃいますね? じゃぁ先行しますよー。 ずんどこ踏破していきましょう」

 どんな状況でも優雅なソフィアは、この緩い空気の中でも流されず、冷静に問題に対処していく。
 分かれ道を前に、ソフィアは『音響増幅機構搭載型ヘッドドレス』を起動させていた。
 ソフィアが頭に装着しているネコミミ『音響増幅機構搭載型ヘッドドレス・猫耳型』は音波探知機能が搭載されている。
 それにより、音波の跳ね返りで洞窟の構造を把握し、正しいルートを選定する事ができるのだ。
 そしてそのルートに、ギルバードが《影の追跡者》を走らせ安全を確認する。
 安全が確認されたルートを、この沼で最も自在に動きまわれるエミリィが先行し、不測の事態に対応する。
 緩い空気とは反して、それぞれが完璧な仕事をこなす見事な連携をもって複雑な洞窟を駆け抜ける三人。

「次は……左に広い空間と構造物がありますね。 おそらく目的地かと」
「おっと、やっとか」
「たしかに、沼が浅くなり始めてますね」

 ソフィアの指示に従い、三人は洞窟の分かれ道を左へ曲がる。
 ――するとそこには、異教の神殿があった。
 神殿にはヒキガエルの様な怪物の石造が立ち並び、その石造の周囲には丸で群がるように苦悶とも恍惚ともとれるような表情で這い寄る人の像。
 人の生理的嫌悪感を刺激するその神殿で何かの声がする。
 言葉の意味は分からなかった、理解しようとすれば脳が拒む。
 しかし脳裏にぞわりぞわりと這い寄るように響くそれが悍ましい何かであるのは分かった。
 ここだ、ここが目的の神殿だ。
 三人は神殿に、降り立ち、上陸し、打ち上がり、周囲を見渡す。
 神殿の内部からは、確かに人の気配があり、少なくない数の人間がうごめいているのが分かる。
 幸い、儀式の準備で忙しいのか神殿の周囲を警備しているような邪教徒は居ない様だった。

「……一度この場を確保いたしましょう。後続の方々ももうすぐ到着するでしょうから」
「ああ、そうだな、ここからが本番だ。俺も武器のメンテをしておきてぇしな……」
「では、わたくしもサメのお手入れを……」

 それぞれが獲物を構え、あるいは手入れをし、周囲を警戒する。
 けして、気圧されたわけではない。
 しかし、たった三人で仕掛けるには余りに危険であることも事実である。
 彼等はこの神殿の入口で後続の到着を待つこととなる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ヘクター・ラファーガ
すごいな……泥の洞窟なんて初めてみたぜ。これ洞窟自体が罠だろ。一度入ったら出口に出るまで抜け出せねぇじゃねぇか。
だが、もしヤツらもここを出入りしてるんのなら突破はできるな。

【POW】『フォックスファイア』をばらまいて洞窟内を明るく照らして、ゆっくり進むことにする。多分他より遅れを取ることになるから、俺は他の奴らが出口を見つけるまで先に行って帰ってこれなくなったエージェントたちを探すとしようか。もしかしたらまだ間に合うかもしれねぇ。

泥まみれになろうが最後に目的をはたせりゃそれでいい。



 先行した猟兵達とは別に、単独で沼の洞窟に挑む者が一人。
 女性と見間違うほどの美貌をもつ青年、ヘクター・ラファーガだ。
 彼は、流石に暗いな……と言葉を溢すと、ゆっくりと手の平を上に向ける。
 次の瞬間、何もないその手の平に燃え盛る炎が灯った。
 ゆらゆらと揺らめくその炎は、確かな熱を持つハズなのに彼の手を焼くことは無い。
 ――《フォックスファイア》それは妖狐が持つ、意のままに操る事のできる狐火である。
 彼が狐火に息を吹きかければ、それは十に分裂し彼を周囲を自在に飛び回り洞窟を明るく照らす。

「まぁ、こんなモンかな……? しっかし……」

 彼は狐火で明るくなった洞窟を改めて見渡す。
 
「すごいな……泥の洞窟なんて初めてみたぜ」

 その洞窟の異様な光景に呆れたような、もしくは感嘆とも思える言葉を溢す。

「これ洞窟自体が罠だろ? 一度入ったら出口に出るまで抜け出せねぇじゃねぇか」

 今でこそ猟兵達が残した道と目印で簡単に道を覚えることが出来るが、それが無ければ幸運でもなければ迷い続けるであろうその迷宮。
 外敵を拒む城壁であると同時に、哀れな被害者を取り込む罠でもあるのだ。
 そんな迷宮を、彼は臆することなく進む。
 自らの衣服が泥まみれになることも顧みずにだ。
 それは彼の覚悟の表れであろう。
 最後に目的を果たせればそれで良い、そんな確固たる強い意志だ。

「さて、それじゃぁ行きますか。 もしかしたらまだ間に合うかもしれねぇしな!」

 そう言って彼は『目印のついていない道』をあえて進みゆく。
 なぜか?それは、先行した猟兵達がきっと神殿にたどり着くという信頼があるからだ。
 彼らは出口へたどり着く、では少し出遅れた自分の役割とは?
 それは、今だ見つかっていないエージェントを救い出す事だ。
 その高潔な意思は何処から生まれるのか、彼が受けた教育か、それとも……彼の目指す夢ゆえにか。
 ヘクター・ラファーガは単身、洞窟を進み行く。
 
 
 のちに彼に救出されたエージェントはこう語る。
 絶望の淵に現れた彼はまさに“ヒーロー”の様に見えたよ……と。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『邪神召喚儀式阻止』

POW   :    正面突破による邪教徒の撃滅

SPD   :    さらわれた人間が儀式によって殺される前に救出する

WIZ   :    秘密裏に召喚用の魔方陣に手を加える。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そこは、神殿である。
 邪神を奉る神殿である。
 見よ、あの悍ましき石像を!
 潰れたヒキガエルの様な怪物がニタニタと嗤っている!!
 奴は嘲り嗤っているのだ、群れる人間共を!!
 奴の前では等しく贄である。
 奴の前では等しく玩具である。
 なのに、なぜ彼等は甲斐甲斐しくもかの邪神を崇拝するのか?
 それは奴が、すべてに置いて等しくするからである。
 安寧に沈め、苦悶のうちの殺すかの神は、まさしく平等であると言えよう。
 苦痛な世界を滅ぼす救世主とも思えよう。

『嗚呼、嗚呼、神よ!■■■■■■■よ!沼の主よ!』

 邪教徒たちが歌い上げる。

『生贄を此処に、崇拝を此処に、賛美を此処に、神の祝福を此処に!!』

 彼等は一様に恍惚の笑みを浮かべている。
 後に現れる物が苦痛であると知りながら。
 哀れな犠牲者を祭壇へ、生贄を捧げよ、神へ賛美を捧げよと囃し立てる。
 このような醜悪を見過ごしては置けぬ。
 このような邪悪を見過ごしては置けぬ。
 《猟兵》よ!
 この邪悪な儀式を打ち砕く時だ!! 
月山・カムイ
生贄を捧げる、なんてさせはしませんよ
この世界のものを邪神になぞ、欠片もくれてやる気はありません
ソレが例え、自ら望んで贄となろうとする邪教徒であろうとも
今ここで奪い返してみせましょう

生贄とするため祭壇に捕まっている人達の救出にまず動く
一気に祭壇へ肉薄して、その周辺の邪教徒達をなぎ倒す
突出するような事があれば当然こちらへ攻撃が集中するだろうが
それはそれで狙いの一つ、敵の攻撃を紙一重で見切り、代わりにカウンターでユーベルコードを叩き込む

捕まっている人を助ける為
他の猟兵が攻撃しやすい環境を作る為
まず祭壇周辺の敵をなぎ倒してから
敵の注意をこちらへ引き付けるように戦っていく


ギルバート・グレイウルフ
おぅおぅ、また随分と醜悪な神様を祀ってるようじゃねぇか。
あんなんに頼らないと生きていけねぇとは、落ちるところまで落ちたもんだな、こいつらも。

【SPD】
主役をはれそうな役者は十分そろってるみたいだし、おじさんはわき役に回りますかね。
はいはい、俺たちが来たからって慌てて生贄を殺そうとしないの。早い男は嫌われるぜ?
邪教徒なんだし遠慮はいらねぇだろ。ナイフ投げたり、拳銃で撃ちぬいたり……あ、もちろん胴体狙いだぜ?外して救出対象にあてたら目もあてられねぇ。
タフそうなのがいたら、仕方ねぇから刀で切り結ぶか。あんま汚したくねぇんだけどなー。
【忍び寄る死の気配】で周囲の警戒は怠らないようにしておきますか。


ヘクター・ラファーガ
あーつっかれた。やっぱ泥の中歩くんじゃなかったわ!こんなところに拠点設けやがって邪教共ぜってぇ許さねぇ……(前に言ったことは完全に忘れている)

【SPD】『ジーブズ・ギャンビット』使用。泥まみれになった上着とブーツを脱いで、ダガー片手に儀式しようとしている奴らを真っ先に叩く。ついでに邪教徒が何か武器を持ってたら、そいつを盗んで他に儀式をしようとしてる奴の喉笛に突き立ててやる。
それが終わったら、"汎用型魔力式自動小銃"で援護射撃だな。邪教徒の撃滅を手伝うぜ。



 3人の猟兵が神殿を進む。

「あーつっかれた。やっぱ泥の中歩くんじゃなかったわ!こんなところに拠点設けやがって邪教共ぜってぇ許さねぇ……」

 ヘクターが泥まみれになって重くなった上着とブーツを脱ぎ捨てながらぼやく。

「いや、気持ちは分かりますけど、怒る所ソコですか……?」
「いいや、大事な所だ。 装備の手入れも楽じゃぁないんだぜ?」

 カムイがツッコミ、ギルバートは同意しつつ神殿の階段を上っていく。
 この異常な空間で世間話をするような気軽さをもって。 

「さて、行けますか?」

 階段を登り切った先、三人の眼前には儀式の場があった。
 カムイは腰に下げた小太刀である『絶影』を抜き放つ。
 刃渡り二尺、真紅の刀身、異形を絶つ為の術刻印が施された、清廉なる破魔の小太刀。
 二度三度振り、手にその重みをなじませる。

「当然」

 祭壇の上には縛られた被害者の女性、その隣には歪なナイフを持った邪教徒が猟兵達を驚愕の表情で見ていた。
 ヘクターは『汎用型魔力式自動小銃』を背に回し、ダガーを抜く。
 手首のスナップで放り投げたダガーを、逆手でキャッチし、再び放って順手握り直す。
 手首を返して刃を見れば、丹念に手入れされた刀身が鈍い光を放つ。

「誰に聞いてやがる?」

 いや、その者だけではない。そこには数十人を超える邪教徒共が列をなし、君たちを凝視していた。
 ギルバードは慣れた手つきで、ホルスターから『Glock Custom』を引き抜く。
 素早くスライドを引き初段を装填、安全然装置を外し、アイアンサイトをのぞき込む。
 動作に問題なし、サイトのズレは無し、バレルのゆがみ無し、オーケイ、ベストコンディションだ。

「侵入者だ!!奴等も生贄に捧げてしまえ!!」

 一人の邪教徒が声を上げた。
 血走った眼で奴等は武器を取り、祭壇までの道を塞ぐ。

「ボウズ共、主役は譲ってやる。背中は任せて存分に踊れ」

 ギルバードがニヒルな笑みを浮かべる。

「おや、そうですか?では遠慮なく」
「ハンッ!任せなおっさん」

 それに答え、カムイとヘクターが祭壇に向かって飛び込んだ。
 道を遮る邪教徒共を素早い身のこなしで躱し、切り払い、駆け抜け、その背を追いかける者には容赦なくギルバードの放った銃弾が襲う。
 二人は一気に祭壇へ肉薄し、生贄にナイフを突き立てんと振りかぶる邪教徒を、まるで競争でもするかのように切り捨てた。
 
「人質の解放、任せますよ」
「はいよ!」

 カムイが一歩前に出て祭壇へ群がる邪教徒共を切り捨てる。
 襲い来る凶刃を紙一重で躱し、返す刀で切り払う。 
ヘクターが囚われの女性の縄を解く。
 どうやら大事は無いらしい、女性は二人に感謝を述べようとするが、ヘクターがそれを遮った。

「礼なんて後だ後!……ギルバート!!」
「おう!嬢ちゃんはコッチで預かる!!道を開けてやりな!!」
「ええ!……貴女は私が道を切り開いたら出口まで駆け抜けるんですよ?大丈夫、貴女には指一本ふれさせませんから」

 女性が不安げな表情を浮かべつつ、頷いたのを確認した後に、カムイは一歩前に出て、その『絶影』を構えた。

「音も無く――――その身に刻め」

 カムイが呟いた瞬間、周囲と取り囲んでいた邪教徒達が細切れと成り、吹き飛んだ。
 いや違う、カムイの小太刀が瞬きよりも疾く閃いたのだ、それも……尋常ではない疾さで。
 横に一閃、返して二閃、重ね三閃、踏み込む四閃、五、六、七、……幾重にも重ね合わせ幾千万。
 ――《無響剣舞・絶影》――数千万にも及ぶ斬撃を唯の一息で。
 祭壇と出口を結ぶ線上が開く。

「さぁ、走って!!」

 開いた道を女性が駆ける、駆ける、駆ける。
 しかし、有象無象の邪教徒共は今だおり、逃げだす彼女を捕まえんと手を伸ばす。

「遅すぎんだよ!!」

 ヘクターのダガーがその邪教徒の喉を掻き切る。
 その勢いのまま、一歩踏み出せば……彼の姿は掻き消え、別の場所で血飛沫が上がった。
 彼が一歩踏み出す度に、別の場所へ現れては一刀に置いて首を刈る。
 それは《シーブズ・ギャンビット》、身軽なその身だからこそ出来る神速の一撃だ。
 彼は女性へ近寄る邪教徒共を一歩一殺してゆく。
 時には敵が持つ武器を奪って、“返して”やる。

「さぁ、コッチだ!…………よし、よぉし!もう大丈夫だ!!」

 そして彼女はギルバードの元へたどり着く、彼は彼女に手を伸ばし、その手を掴んで引き寄せる。
 彼女の無事を確認し、ほっと一息。
 ……だが、まだ終わりではない。
 女性の安否を確認しているギルバードの背後から邪教徒の凶刃が迫りくる。
 ――危ない――女性がそう叫ぶよりも早く彼が動いた。

「おっと、欠伸がでるぜ?」

 彼は後ろを振り返るまでもなく、上半身を逸らせるだけで邪教徒の凶刃を躱し、その勢いを殺さず一歩下がるようにソイツの足を払う。
 たまらず倒れたソイツの頭に弾丸を一発、その光景に怯まずヤツラは襲い掛かってくる。
 馬鹿正直に斧振り上げたヤツには、姿勢を低く一歩踏み出し、腹の内に肩を入れ、膝に銃口を押し当て一発。
 跪いたソイツの頭を蹴り抜いて、背後から忍び寄るヤツの顔面に裏拳をお見舞いする。
 まるで、何時何処から、何がどうやって襲い掛かってくるのか、そのすべてを把握しているかのように的確に邪教徒達を処理していく。
 《忍び寄る死の気配》傭兵としての経験と勘が彼に強烈な死の気配を感じさせる。
 それは明確なビジョンとして彼の脳裏に再生され、未来予知のごとき対応を可能とさせるのだ。

「この程度ならコイツに頼る必要もないか……」

 彼はその腰に携える刀の柄を撫でてやり。

「さて、離れると危険だ。ちょいと刺激的な光景が続くだろうがそこで我慢してくれや」

 ギルバードは戦場に不釣り合い……いや、慣れ親しむ彼であるならピッタリな笑顔を浮かべ。

「ええ、手早く済ませますので」
「まったく、数だけは多いぜ」

 カムイは小太刀に付いた血を払いながら、ヘクターはダガーだけでは手が足りないと汎用型魔力式自動小銃を構える。
 三人の舞台はまだ続く、この戦いに決着がつくまで。
 そして、決着の時は近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジード・フラミア
メリア『まだ生きている方を守りナガラ戦わないといけまセンネ…… ジード!ワタシを"要塞"のようにしてクダサイ!!』

ジード「え……分かった!!すぐに造り上げるよ!!」


ユーベルコード『変化する人形』を使用

 メリアのボディの背中に、巨大な壁と大砲を取り付けます。連れ去られた人や、怪我をした猟兵たちを壁の後ろに連れて行き守ります。
 回復が上手い人がいれば任せて、居なかったらジードが持ってきていた応急セットで簡単な処置をします。


青葉・まどか
神殿を目にして「心底、嫌。頭おかしくなりそう。…それはそれとして私、ゴキブリと邪教徒は徹底的に叩き潰す主義です」
青葉まどかの闘志に火が付いた!

SPD重視
「潜入行動は探索者の嗜みよね」
神殿に潜入して捕らえられている人達の拘束場所と安否の確認をする。
【影の追跡者】を召喚して先行偵察。
使える技能をフル活用。
戦闘行為は極力避けて行動。隠密性を重視します。

捕らえられたUDCエージェント達と出会えたら聞き込み、情報収集。
全員の救助が無事に可能なら実行するが、無理なら以後は妨害活動に専念。


ボゴ・ソート
神殿周囲の警備なんてしてられないという気持ちはわかる。
それがどんなに血なまぐさいものであっても、お祭りは楽しいからね。
なのでそのまま儀式に集中していてくれると嬉しいな。
できれば生贄全員を助け終わるまで。

【SPD】
なるべく[目立たない]ように[忍び足]で生贄に近付いて、拘束されているならダガーで戒めを解き、意識を失っているなら抱えて助け出します。
UDC組織のエージェントがまだ洞窟内に留まってくれているなら、「君にしか頼めない!」と[鼓舞]して、洞窟の外まで連れて行ってもらいます。
青葉さんや月山さんの残した目印があるので、きっと大丈夫です。



 三人の猟兵が暴れまわる少し前、被害者救出へ向かう別動隊が居た。
 
「心底、嫌。頭おかしくなりそう」
 
 《影の追跡者の召喚》で呼び出された【影の追跡者】を走らせながら青葉・まどかは溢す。
 神殿の狂気を前にして、それは正しい拒絶反応である。
 そして、そうであるという事は『青葉・まどか』は正気であるという事だ。
 この様な狂気を前にして最も大事なことはけして飲まれず正気を保つ事であるのを熟練の探索者である彼女は良く知っている。
 ゆえに彼女戦いではなく、救出を選んだ。

「……それはそれとして私、ゴキブリと邪教徒は徹底的に叩き潰す主義です」

 たぶん、きっと、そう。
 ちょっと闘志が熱く燃え上がり過ぎたに違いない。
 神殿の通路を静かに速やかに駆け抜けていく。
 
「いやはや、警備なんてしてられないという気持ちはわかる。どんなに血なまぐさいものであっても、お祭りは楽しいからね」

 隣を駆けるボゴ・ソートが、周囲を見渡しながら言う。
 先ほどから神殿内を探索しているものの、警備をしている様な気配が感じられない。
 邪教徒が居ないわけではない、が、誰もかれも物置に道具を取りに来た、だとか、石像に祈りを捧げているだとか……。
 用事があってそこにいるだけであり、回避しようと思えば簡単に回避することができた。
 勿論、素人ではそうもいかず曲がり角でバッタリ……なんてことはあるだろうが、ここに居るのは猟兵である。

「このままコッチに気付かないでいてくれると嬉しいなぁ」
『とは言っても、流石に牢屋とかには常駐してそうデスケドネ』
「……逆に、誰かが居るという事はそこに何かあるという事ではないでしょうか」

 ボゴのぼやきに対して、メリアとジード・フラミアが続く。
 彼等二人もまた、連れ去られた被害者を助けるために行動を共にしていたのだった。

「確かにね、これだけ無警戒なら寧ろ……」

 ジードの言葉で何か思いついたのか、まどかが【影の追跡者】を走らせる。

「……いたいた、祈りも捧げてないし、ずっと扉の前で突っ立てる奴」
「おや、当たりっぽそうだね?青葉さん、ドッチだい?」

 どうやら当たりを見つけたようだ。
 まどかは【影の追跡者】の位置と、現在位置からルートを割り出す

「うーんと……ここを右に行って……左にいって……階段を下りて……」
『ふむふむ、こっちデスネ?』

 まどかのナビであっちへこっちへ、駆けまわる猟兵達。
 そして、とある角で足を止めた。
 ボゴが角の先をこっそりと覗くと、そこには何とも暇そうに鍵付きの扉の前で突っ立っている邪教徒が一人。

「うわ、あからさまだね」
「でしょ?あからさますぎてちょっと不安になるレベルかも」
『沼地を抜けてくるなんて想定してなかったんでショウネ?』

 いったん物陰に隠れて、相談をする4人。
 あからさまに、あからさまだが、問題はある。
 この角から飛び出せば流石にあの牢番に見つかってしまう。
 あの奥に捕らわれた人達が居るのならば騒ぎは起こさずこっそりと助け出したいが……。
 ……ここで、神殿内の雰囲気がガラリと変わった。
 何やら上層の方が騒がしくなり始めたのだ。
 丁度このタイミングで、カムイ達が暴れ出したのだが神殿の下層部にいた彼等は知る由もない。
 が、チャンス到来である。
 今なら多少騒いだとしても問題はない!
 ボゴが角から飛び出す。

「だ、だれだ貴様ら!!侵入――」
「はいどーん!」

 問答無用で一気に駆け寄り、その勢いのままにボゴの巨体から繰り出された右ストレートによって、哀れ牢番は綺麗な放物線を描きながら壁に激突し一発ノックアウト。
 人間はウォーマシンに殴られると死ぬ(ほど痛い)、ごくごく単純な物理法則の勝利である。

 4人は牢番から鍵を奪い取り、奥の扉を開く。
 そこに十数名の捕らわれた被害者たちと数名のエージェントが居た。
 狭い牢獄に詰め込まれ、ある者は抵抗しようとした為に鎮圧されたのだろうか、多少の怪我をしている。
 だが、深刻な状態である者はおらず、皆一様に疲弊しているものの、生贄として最低限の扱いはされていたようだ。

「さぁさぁ、立ちがって。助けに来たよ!」
「けっ……怪我をした方はいますか……?ぼくが、手当をします……」
『ジードは手当が上手なんデスヨ!さぁ、安心し言ってくだサイ!』

 ボゴが被害者たちに拘束を解いて回り、ジードとメアリが怪我人を診る。
 彼等はボゴの明るさと、ジードの手当に勇気付けられたのか、暗かった表情は明るくなり、活力が出てきた。
 これならば、安全さえ確保できればエージェントたちだけで彼等を無事に外へ連れ出すことが出来るだろう。

「ちょっと待って、まずいかも……!」   

 二人が被害者たちの様子を見ている間、まどかは【影の追跡者】で周辺に邪教徒が近寄らないか警戒をしていた。
 その警戒網に邪教徒の集団がコチラに向かって血走った目で向かってきている。
 上部での騒ぎがピークに達し、生贄を人質にしようとコチラへ向かってきているのだ。
 無論、詳細まではここに居る4人には分からないのだが、それでも問題は問題である。
 彼等を此処に置いたままにはしておけない。
 沼の洞窟まで行けば、あとは目印にそって帰るだけだが……そこまでの護衛は必要だろう、であるならば答えは一つだ。
 4人は顔を見合わせ、大きくうなずく。

「さぁ、脱出だ!ついてきてくれ!!」
 
 ボゴの号令の下、脱出劇が始まった。
 来た時と同じように、まどかが先頭になって神殿の道を右へ左へ駆け抜けていく。
 しばらくすると。

「脱走だ!!追え!!神へ捧げる贄を一人たりとも逃すわけには行かない!!」
 
 神殿の通路を走り抜ける猟兵達の後方からそんな声が響いた、先ほどのまどかが察知した邪教徒の集団がもぬけの殻になった牢屋を見たのだろう。
 沢山の足音がコチラに向かってきているのが聞こえる。
 猟兵達なら難なく逃げ切れるだろう、……そう猟兵達彼等だけであるなら。
 助け出した被害者達はどうだろうか?手荒な真似はされていないとはいえ、狭い牢に放り込まれていた彼等には疲労がたまっている。
 一人二人ならボゴが抱えることもできようが、出口まではまだ大分距離があり、このままでは追い付かれてしまうかもしれない。

『このままでは、まだ生きている方を守りナガラ戦わないといけまセンネ……』
「……メリア……?」

 メリアが立ち止まり、振り返る。つられて、ジードも。

『ジード!ワタシを"要塞"のようにしてクダサイ!!』
「……分かった!!すぐに造り上げるよ!!」

 力強く言ったメリアに、ジードは答える。
 《変化する人形》……メリアの背中を起点として、たちまちスクラップが組みあがっていく。
 背中から延びるアームのには盾……いや、堅牢な壁が作り出され、通路の大半を塞いでしまう。
 それだけに留まらず、両肩に担ぐように二門の大砲が生まれ、愛らしい人形はたちまち城壁となったのだ。

「やっちゃえ、メリア!」
『オーケー!イキマスヨ!』

 大砲が火を噴いた。
 轟音、轟音、また轟音。砲撃に晒された邪教徒達はたちまち総崩れになる。
 なんとか応戦しようと試みるも、通路一杯に作られた城壁に阻まれては手も足も出ない。
 どうしたものかとまごついているうちに、また砲撃の雨あられに晒されるのだ。

『ここは私達が食い止めマス!先に行ってクダサイ!!』
「ありがとう!メリアさん、ジードさん!」
「カッコイイことしてくれるじゃないか!助かるよ二人とも!」

 まどかとボゴはこの場を二人に任せ、被害者たちを連れて駆け出す。
 まどかが【影の追跡者】で比較的安全なルートを導き出し、避けられない敵はボゴが拳で殴り抜いた。
 追跡者はジードとメリアが防いでくれている。
 彼らは誰一人欠けることなく、無事神殿外まで脱出することができたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エミリィ・ジゼル
どうやら≪迷彩≫と≪破壊工作≫の技能が生きる時が来たようですね。
よーし、はりきっちゃうぞー。

おそらくですが、わたくしたちが現場に踏み込めば
向こうがこちらに気づき、どちらかが手を出して戦闘を開始され、
そのうち状況はしっちゃかめっちゃかになるでしょう。
そしてその時が狙い目です。
闇にまぎれ、物陰で息をひそめ、ここぞいうタイミングがきたら


【グラフィティスプラッシュ】で魔法陣をぬったくります


それはもう完膚なきまでに。

「これ…なに? え、魔法陣…?これが…?
なんかサメの落書きとか描いてあるんだけど…」

ってぐらいベッチャベチャのドロドロにします。

これでなんかの間違いでサメが召喚されたらチョーうけますね。


三千院・操
【WIZ】
うわ、げろー。いかにもって感じー。見れたもんじゃないな………。
でも、こうやって儀式場がきちんとあるのは僥倖僥倖!
面倒くさいものが呼ばれる前に、これを綺麗に改ざんしちゃお!

おれの持つ魔術的知識を利用して魔法陣を弄っちゃうよ!
こっちだって、伊達に魔導書のUDCを体に宿してるわけじゃないもんね。
神を呼ぶほどの魔法陣だったらそれだけ作りは繊細なはず。だったらそれと同じく繊細に丁寧に手を加えれば気づかれずに干渉できるかも。

もし召喚されようとした時のために、儀式に参加した人物を攻撃する呪詛を組み込んどこ!
他の猟兵と協力できるんだったらしたいかな!
どうせ手を加えるなら色々したいしね!



 上でも下でも大騒ぎになっている頃合い、暗躍する二つの影。
 影から影へ、闇から闇へ、騒乱の合間を縫い、誰にも見つから無い様に。
 
「うわ、げろー。いかにもって感じー。見れたもんじゃないな………」

 趣味の悪い装飾、悪趣味な石像、禍々しい魔術式、目に映る狂気の産物に三千院・操は辟易といった面持ちで呟く。
 魔術に慣れ親しむ彼であれば見慣れたものではあるだろう、それでも趣味が悪いと感じる事には違いは無い。
 
「いやはや、本当ですね?ですがそんなことよりこの状況です、だいぶしっちゃかめっちゃかなのでは?チャンスなのでは?」 

 隣で潜むエミリィが相槌をうつ。
 二人は儀式の場である上層部、それも3人の猟兵が大立ち回りしている直ぐ近くに身を潜めていた。
 それはなぜか?答えは簡単である。
 この邪悪な儀式をぶっつぶす為である!

「よぉ~し!それじゃぁ面倒くさいものが呼ばれる前に、これを綺麗に改ざんしちゃお!」
「どうやらメイドとしての技能を活かす時が来たようですね。よーし、はりきっちゃうぞー」

 エミリィはスカートの下から大量のインク缶を取り出す。
 …………もう一度言おう、エミリィは スカートの下 から 大量のインク缶 を取り出す。
 一体、どこにどうやって収納されていたのだろうか、メイドさんのスカートの中には秘密がいっぱい☆等と言うちゃちなものじゃ断じて無い、もっと恐ろしいモノのの片鱗とを感じさせ……。
 ――話題休閑――
 とにもかくにも、小細工をするならこの騒乱の内に済ませるべきだ。
 二人は騒動の裏でこっそりと暗躍し、この場に刻まれた魔法陣を改竄するつもりだったのだ。

「どっせ~~~い!」

 インク缶を持ったエミリィが《グラフィティスプラッシュ》にはこういう使い方もあるんだ!等と言わんばかりにインクをぶちまける。
 儀式の場のあちこちが鮮やかなマリンブルーカラーに彩られていく。
 ついでにラクガキもおまけもしておきましょうか!ノリノリで筆を取り出し(再びスカートの下から!!)実にサメサメしいアートが書き加えられる。
 大丈夫なんだろうかこれ、下手したら某オカルティクシャーク的な奴が召喚されたりしない?別の事件になってしまうんじゃないだろうか?

「ハッハッハ、すっげーなこれ。おれも負けてらんないよねー!」 

 さて、エミリィ画伯の芸術のお陰で気付かれず魔法陣の術式を改変すると言う目論見はご破算となってしまったが。
 それは、それ、これは、これ、最終的に妨害ができていればそれでよいのだ。
 操は神殿に刻まれた魔法陣を指でなぞり、思案する。
 繊細な魔術式だ、神を呼ぶと言うのは伊達ではないようだ。
 彼と、彼の中にいる人格達はそう表する。
 丹念に刻まれた呪詛、呪文、魔力のラインは一種の芸術とも言える。
 ――しかし、其れゆえに脆弱だ。
 操は自身が持つ魔術知識を総動員し、魔法陣に手を加えていく。
 繊細に、時に大胆に、魔力の流れを変え、呪文を打ち消し、術式を無力化していく。
 巧妙に書き換えられた術式は、一流の魔術師ですら発見が難しいように隠蔽されている。
 そこに、エミリィのド級の存在感を放つアートが加わればどうなるか?
 見た物は見事なアートに意識が奪われてしまい、その裏に隠された致命的な改変に気づく者は居ないであろう。

「うーん、芸術的。でも、もっと躍動感がほしいですね」
「そーかー?んじゃ、こんな感じでどーよ!」
「バッチリです!!」
「よーしよし、……あ、エミリィちゃんそこ塗りたくっておいて、重要な起点っぽいから」
「合点承知の助です!」

 公園の壁に落書きをするような、実際落書きも混じっているのだが。
 子供が遊ぶように、そんな気軽さで魔法陣は次々と改竄されていく。
 しかし、これだけ派手に改竄すれば、いかに騒ぎの渦中であろうと、異常に気付きだすものもいる。

「な、なんだこれは!神聖な魔法陣が塗りたくられて……!!!」
「え、なに、この絵……サメ……??」
「そんなことはどうでもいい!!魔法陣を復旧させるのだ!!」

 奴らが慌てて修復を始めようと、魔法陣に触れたその瞬間。――邪教徒は魔法陣ごと爆発した。

「芸術は爆発だって言いますし?」

 それはエミリィが仕掛けた罠であったり。

「はは、エミリィちゃんって案外おっかないねー」

 ある者は術式に介入した瞬間、仕掛けられた呪詛により絶命していった。
 この二人、遊んでいるようにも見えて用意周到にも罠を仕掛けていたのだ。
 エミリィに言わせればメイドの嗜み、操にしてみれば魔術を扱う者として当然の仕込みである。
 二人は楽しみながら、そして緻密に入念に徹底的に、儀式の場を破壊していく。
 これだけ弄繰り回せばもう復旧はできないだろう。
 完成した作品を前に、二人は「「イエーイ!」」とハイタッチを交わしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『敬虔なる邪神官』

POW   :    不信神者に救いの一撃を
【手に持つ大鎌の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    出でよ私の信じる愛しき神よ
いま戦っている対象に有効な【信奉する邪神の肉片】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    神よ彼方の信徒に微笑みを
戦闘力のない【邪神の儀式像】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【邪神の加護】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天通・ジンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「これは一体なんの騒ぎですか」

 この場に似つかわしくない、鈴の音のような声が響く。
 祭壇のさらに奥から、青い髪を靡かせ、美しい衣服を身にまとい、歪な大鎌を手に少女が姿を現す。

「し、侵入者です!生贄を奪われ、儀式の場も……」

 邪教徒の一人が少女に駆け寄り、状況を報告する。
 彼女が首謀者、邪神の巫女である。

「そうでしたか……」

 少女の表情が曇る。
 嗚呼、なぜ抵抗をするのか、救いはすぐそこにあると言うのに。
 しかし、この程度では諦めるわけには行かない。
 なに、活きの良い贄は他にもいる。
 どうやら侵入者共は特別な力を持っているようだ。
 なればこそ、生贄に相応しい。

「場はまた整えればよいでしょう……贄は彼らとします」
「では……」
「ええ、捧げなさい。私が相手をします」
「かしこまりました。皆のモノ!!巫女様がそのお力をお示しになる!!身を捧げよ!!」

 その言葉に、猟兵達に襲い掛かっていた邪教徒共は一斉に動きを止める。 
 そして、――――彼等は皆一様に、その首へ自ら短刀を突き立てた。
 誰もが喜びの表情で自死していく、許されたのだ、許されたのだ、贄となることを。
 そんな狂乱の中で少女は祈る、少女が歌う。

「嗚呼、我が主、沼地の主よ、我が身を捧げし夫よ……どうかmどうかこの身に貴方のご加護を」

 ――場の空気が変わった。
 神殿が脈動する。
 ずるり……その場に転がっていた邪教徒の死体が動いた。
 いや、動いたのではない、引き寄せられたのだ!
 ずるり、ずるり、ずるりと、この神殿で横たわる邪教徒達の死体が少女の足元に引き寄せられる。
 それはぐちゃぐちゃと不快な音を立てながら、肉を混ぜ合わせるように形作っていく。
 それは人でできた邪神の像だ。
 にちゃにちゃと不快な笑みを浮かべるヒキガエルのような怪物の像。
 その像は心臓の鼓動の様に脈動し、邪教徒の血を肉を屍を魂を対価に、少女に力を与える。

「嗚呼、貴方の愛が、貴方の加護が、私へ注がれている!!IA!!IA!!我が愛しの神よ!!」

 少女は悶えるように、恍惚の表情を浮かべ、笑う。

「さぁ、さぁさぁさぁさぁさぁ!!!狼藉はそこまでです侵入者共!!貴方達も神の贄となりなさい!!」

 狂気に血走った目で、その大鎌を構えた。
ソフィア・テレンティア
哀れな……死の先に救いなど有りはしませんのに……。
その醜悪な像と一緒に、引導を与えて差し上げましょう。UC【魔導蒸気機関複製機構】にて【蒸気駆動式機関銃・冥土式】を20機召喚。その全火力をもって全ての敵を撃滅致します。
ええ、相手が何を召喚しようが、それを上回る火力で押しつぶせばよいのでございます。


三千院・操
ふーん……死体を使うことによる祭具の作成、か。なかなか粋なこと考えるじゃん
でも! 残念だけど生贄になるつもりはあっりませーん!
それに! おれのほうがそんなのよりずっとすごいの作れるし!
──だから、死んどこ? そっちのほうがきっといいよ。

呼び出すのは『蝿の王(ベルゼブブ)』
邪神官ちゃんの相手は蝿王に任せて、おれは人肉邪神像を弄りにいくよ!
適当な呪詛を重ねて、それを高速詠唱で圧縮してねじ込めばどうにかできないかな?
もし無理そうだったら蝿王の操作に集中する!

「そのカミサマ、頂戴よ」
殺したら自由にしていいよね?

※絡み、アドリブ歓迎です


青葉・まどか
なるほど、会話は出来るけど成立しないタイプですか。…めんどくせー。
お仲間同士で殺し合うだけなら問題ないですけど…邪神、復活させる訳にはいきません。

自分より戦い慣れした方が多いようですし、攪乱や敵を妨害する事を主眼に戦闘。
仲間との連携・フォローを心掛ける。

常に動き回り、ヒット&ウェイ。
敵の攻撃が一人に集中しないように妨害したい。

敵の攻撃を【見切り】、可能なら【カウンター】を狙う

【破魔】のダガーで『シーブズ・ギャンビット』
フック付きワイヤーで【フェイント】、【早業】で【2回攻撃】していく。

さっさと終わらせて救出した方々の手助けをしたいです。


月山・カムイ
愛を謳う邪神とか、ぞっとしないにも程がありますね、本当に
貴女の思い込みの愛と加護、それに人々を犠牲にさせる訳にも行きませんからね
貴女を神の元へ送って上げるのが、一番でしょうけど
まずは、その悪趣味な像を直ちに……喰らい尽くしてやろうじゃないか!

死体を組み上げて作り出された邪神像へ向けて斬りかかる
ブラッドガイストにより、絶影が殺戮捕食態へと姿と変える
待っていましたとばかりに邪神像へ喰らいつく
めった切りにしよう
その像へ宿り脈動する、糞悪趣味な邪神をこの世界から放逐する為に
全てを喰らい尽くす勢いで絶影を叩き込む
その力を呪翼刻印より取り込み、段々と斬撃と抉撃は加速していく


ギルバート・グレイウルフ
うげぇ……いくら可愛い嬢ちゃんでも、あんな神様を愛してるやつはノーサンキュー。こっちから願い下げだ。
さってと、いよいよラスボスとご対面ってことか。身体も温まってきたころだ。いっちょかましてやりますか!
【真の姿】解放。姿かたちは変わらず、ただ感覚が鋭敏になり、身体能力が上昇する。
【SPD】で勝負だ。

構えるは居合。狙うは相手の得物。武器破壊を目標に。
神経を研ぎ澄ませて、隙を伺う。
味方の攻撃で敵の注意がそれた瞬間。一撃にすべてを掛ける。
多少の傷はかまわねぇ。死ななきゃそれでOKだ。

一撃をお見舞いできたら、後は後方でうろちょろ援護してますか。
いやぁ、おじさんの身体には堪えるわ。


ヘクター・ラファーガ
コイツが元凶か……。
女だろうがオブリビオンにやることは同じだな、速攻でカタをつける。

【SPD】で判定。『刹那の取捨選択』で"殺人鬼が持っていた刺突剣"を邪神官ぶん投げて加速、"ワンダラーブレード"を持って邪神官めがけて突撃だ。残像で見えない一撃をお見舞いしてやるし、回避されたらぶん投げたエストックが当たることを願うぜ。
突撃が成功したら、そのまま邪神官めがけて"ワンダラーブレード"を振るわせてもらうぜ。ただ、邪魔が来たらそっちの対処をするか。邪神とはいえ肉片程度なら斬れるだろ


ジード・フラミア
通路での戦闘があらかた終わらせてから向かいます。


メリア『ホホー、あれがアダムさんが言ってイタ少女デスカ。確かに可愛いデスネ……ってナンデスカ!この肉片!!?』

ジード「メリア気をつけて!あの肉片相手に合わせて攻撃を変えている!」

メリア『ナラ、ワタシが狙われてる間にジードが倒してクダサイ!』



『出でよ私の信じる愛しき神よ』に対して『オルタナティブ・ダブル』で対抗

メリアに有効な肉片はジードが、ジードに有効な肉片はメリアが倒します。

余力があれば同じ方法で他の猟兵を支援します。


エミリィ・ジゼル
沼地の主。ヒキガエルもどきですか。
ふーむ、旦那さんを悪く言うのもなんですが、趣味悪いですね。
血色悪いですし、不味そうですし、なによりサメではない。
そもそもカエルを伴侶にするド変態っぷりは流石のわたくしもドン引きです。

と言った感じで挑発して怒らせることで、【サメを呼ぶメイドの術】の条件を満たし、使役している「すべてのサメの父」を召喚。
そこからサメの群れを放って変態ロリに放ちます。

「沼地の主がなんですか。こっちは大海を支配する、《すべてのサメの父》ですよ。そして《すべてのサメの父》はまたの名を、リヴァイアサンとも言います」



 戦いが始まった、剣戟が鳴り響く。
 前線に立ち少女の大鎌を捌くのは月山・カムイだ。
 
「愛を謳う邪神とか、ぞっとしないにも程がありますね、本当に……ッ!!」
「あら、愛は尊いモノでしょう?美しいものでしょう?なぜ拒絶するのですか?」

 少女はその華奢な体からは想像ができないほどの膂力と速度をもって猟兵達を圧倒していた。
 カムイはその卓越した小太刀術をもって、何とか凌いでいるものの、一撃を受けるたびに腕が痺れ『絶影』を手放しそうになる。

「おらぁ!!」
「まったく鬱陶しい方……!!」

 そんなカムイの隙をカバーしているのがヘクター・ラファーガだ。
 その俊足をもって少女へ強襲し、一撃離脱を行っている。
 しかし、少女はそれをも対応し、いなす。
 最初の内こそ翻弄されていたものの、次第に対応をはじめ、ヘクターの動きをとらえ始めていた。
 そして、彼の突撃に合わせその大鎌を振り下ろす。

「死になさい!!」
「おっと、そうはさせねぇぜ!」

 そこにギルバードの正確無比な銃撃が大鎌を捉え、その軌跡を逸らし、ヘクターへの凶刃を弾く。
 少女を含め三人の高速戦に、誤射を恐れず援護射撃するその腕前は見事なモノだろう、だがそこまでだ。

「忌々しい……!!」
「そりゃ、こっちのセリフだぜお嬢ちゃん……!」

 カムイ、ヘクター、ギルバートの三人の連携が合わさり、戦況は拮抗していた。
 だが、それは徐々に覆り始めようとしている。
 彼女の反応速度も、スピードも、力も、戦いが続くにつれドンドン高まっているのだ。 

「貴女を神の元へ送って上げるのが、一番でしょうけど……」

 カムイは戦いのさなか、チラリと敵から視線を逸らす。
 その視線の先には、先ほど作られたあの邪神像……あの肉の像が彼女に加護を与えているのだ。
 まずはアレの力を削がなければならない。
 だが、そうするには手が、一手が足りない、ほんの一手さえあれば……!
 
「よそ見ですか!余裕ですね!!」
「くっ!」

 再びカムイに向かってその大鎌が振り下ろされ――――それは振り下ろされることなく頭上で静止していた。
 少女の手には『フック付きワイヤー』が巻き付けられており、そのワイヤーを引っ張って妨害する者。

「皆さん!お待たせ!!」

 少女の後方に人影があった、愛らしいポニーテールを振り、明るく良く響く声……青葉・まどかだ。
 彼女は被害者を送り届け、大急ぎでこの場に戻ってきたのだ。

「鬱陶しい小細工をっ!!」
「おっと危ない!」
 
 少女が強引にワイヤーを引き千切ろうとするが、まどかはワイヤーを巧みに操りあえて拘束を外す。
 まどかの狙いは妨害だ、わざわざ相手の土俵に乗ってる必要はない。
 相手の行動を潰しさせできればそれでよいのだ。
 ……すなわち、ここに、均衡を崩す一手が加わった。

「今こそ……その悪趣味な像……喰らい尽くしてやろうじゃないか!」
 
 カムイが小太刀を構え直し、肉の像へ駆け出す。

「しま……ッ!?させるものかぁ!!」
「それはコッチの」「セリフだぜお嬢ちゃん!!って二回目か?」「何回目でもいいでしょ!?」

 カムイを止めようと少女が駆けだすが、それをヘクター、ギルバート、まどかが防ぐ。
 今、カムイを止める者はいない。
 彼はは肉の像の前に立つと、『絶影』を正眼に構え、強く念じ『絶影』の本来の力を引きずり出す。

「食い破れ……『絶影』ッ!!!!」

 ――――《ブラッドガイスト》絶影刀身がギチギチと形を変え、殺戮捕食形態へと変貌する。
 それは、顎だ。
 鋭い牙を持ち、歯軋りを響かせ、敵の血肉を欲する飢えた獣。
 ありとあらゆるものを捕食し、その鮮血を己の力とする『絶影』のもう一つの姿。

「うぉおおおおおお!!!」

 カムイは肉像へとその刀身を振り下ろす。
 一閃の下、『絶影』は肉像を喰い千切り、脈動しカムイの脊髄に埋め込まれた『呪翼刻印』が呼応する。
 二閃、三閃、四閃……。
 カムイが『絶影』を閃かせる度、その一閃は鋭さを増し、肉の像を深くえぐり取る。

「あぁ!!!神が!!私の神がぁ!!!やめろぉおおおお!!!」
「くっ!止まらない!!」
「まだそんな力が出るのか!!」
「分かってたが正気じゃねぇぜ!!」

 その光景をみて、少女が絶叫する。
 少女は走り出す、自らの足を縛るまどかのワイヤーを引きはがし、、自らの体に食い込むギルバート弾丸を無視して、強襲するヘクターの刺突剣に肉を削がれようとも、少女は疾走しカムイの背後へ迫る。
 その無防備な背中に向け大鎌を振りかざし、愛する神を捕食する愚か者に死の一撃を与えるために!
 しかし、そこに一つの影が割って入る。
 いや、ただの影ではない、それは動く巨大な城壁。

「邪魔だぁ!!!」

 少女の一撃を受けて城壁が落ちる。
 
『いやぁ、遅れマシタッ!紙一重デスネ!』

 その壁の向こう現れたのは少年と人形、一人で二人の猟兵ジード・フラミアとメリアだ!

『ホホー、あれがアダムさんが言ってイタ少女デスカ。確かに可愛いデスネ……ってナンデスカ!この肉塊!!?』
「ちょっと……グロテスクだね……って、メリア前!!」
「邪魔です!!どきなさい!!!」
『おっと!危ないデスネ!』

 城壁が崩れ去ると同時に襲い掛かる少女、メリアはジードを抱えて大きく後方に跳躍しカムイの隣へ着地し、いまだ稼働する2門の大砲で少女を牽制する。
 憎々しげに少女も後方へ跳躍し、その砲撃を躱す。

「助かりました、お二人とも」

 カムイは直もその小太刀で肉の像を削ぎ落しながら言う。
 像はその大部分をえぐられつつもいまだ脈動していた。

『どういたしマシテ!』
「それに、増援は僕達だけじゃないですよ」

 そう、増援は彼等だけではない。

「来なよぉ、《蠅の王》ゥウ!!!」
「援護射撃を開始しいたします。射線上から退避を」
「『重力子放射線射出なんちゃら』発射ーーー!!」

 三千院・操が召喚した巨大な蠅の怪物が少女へと飛来する。
 《蝿の王》古き時代より伝わる悪魔、魔界の王の一人。それは巨体に似合わぬ俊敏さで少女を追跡し、その口から『腐敗する吐息』を噴き出す。
 その息から逃れようと疾走する少女に無数の銃弾の雨が降り注ぐ。
 ソフィア・テレンティアの持つ『蒸気駆動式機関銃・冥土式』それは6砲身を回転させ、毎分数千発の鋼製弾芯弾を射出するガトリング銃。
 その咆哮は、一度浴びれば生身の人間であれば一瞬にして血飛沫と化すであろう。
 進路をふさぐ形で降り注いだそれを少女は紙一重で跳躍し、回避する。
 しかし、その着地地点に『重力子弾』が飛来する。
 エミリィ・ジゼルの『重力子放射線射出なんちゃら』から射出されるそれはあらゆる物質を空間ごとえぐり取る究極の破壊兵器。

「ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛! ! 」

 獣の如き叫び上げ少女はそれを迎え撃つ。
 本来ありえざる拮抗、邪神の加護によって成立するそれは耳を劈く甲高い音共に激しい火花と閃光が視界を覆う。
 その爆音と閃光が収まると、そこには、大きく肩で息をし、血を流し、その身を焦がしながらもいまだ立つ少女。

「ほんとに邪魔ばかり……!!」
「ふーん、やるじゃん」 
「想定以上の頑丈さです」
「正直無いのでは??」

 少女のなんとい強靭さ、猟兵達は驚愕する。
 しかし、手傷は負わせている。
 肉の像はカムイが食い破るであろう。
 このまま連携し攻め続けれ、勝機はある!

「……不本意です」

 少女がぽつりとつぶやく。

「神とのつながりを断つその不徳……不本意ですが、このままでは手が足りないのも事実。このまま不信神者に食われるくらいなら……」

 肉の像がぐにゃりと、自ら自壊する。

「むっ!?」

 この像を食い破っていたカムイが違和感を感じて飛びのく。
 確かにその大半は食い破っていた、だがいまだ像は脈動し、力を発していた。
 それがとたんに途絶え、手ごたえを失った。
 まるでそれが急に役目を終えたかの様に。
 ぐずり、崩れた肉片が動き出す。
 それは新たな形を得ようとしていた。

「まずい!」

 誰かが叫んだ、全員が一斉に少女へ駆け出す。

「遅い!!」

 少女の前には無数の怪物が立ちふさがっていた。
 それはそれぞれが異なる形を持ち、何一つとして共通点を見いだせない。
 しいて言うのならばその醜い姿だろうか、どれもこれも到底生き物とは思えない荒唐無稽な姿形をしていた。
 目や口らしきものはあるモノのそれ到底役目を果たせるとは思えない不格好なものであった。
 だが、奴等は君たちを見て、その口から耳障りな声を発し、猟兵達を威嚇する。

「美しいでしょう?神の子達です。彼等の手を煩わせることになったのは遺憾ですが、この際致し方ありません……」
「冗談だろ?」
「ぞっとしないにも程がありますね、本当に」

 一体どこに目を付けているのか、あの怪物が美しい等と。
 ヘクターとカムイが吐き捨てる。

「今、許しを乞い、その血肉を神にささげると言うのなら、きっと貴方達も救われるでしょう」
「哀れな……死の先に救いなど有りはしませんのに……」
「なかなか粋だけど、おれのほうがそんなのよりずっとすごいの作れるし!」

 どこまでも狂気に染まった哀れな少女。
 あまりの救えなさにソフィアは嘆息し、もとより魔術にしか興味のない操は嘲笑する。

「なんと哀れな……我々と共にあれば、その神の恩寵に預かれるというのに……」
「いやほんと、会話は出来るけど成立しないタイプですか。……めんどくせー」
「いくら可愛い嬢ちゃんの誘いでも、あんな神様を愛してるやつはノーサンキュー。こっちから願い下げだ」
「サメじゃないので遠慮いたしますね」

 すでに交渉の段階は過ぎている、そのうえ、なぜ我々がこの程度で降伏すると思ったのか。
 まどかは頭を抱え、ギルバートは軽口をたたき、エミリィはいつもの様に飄々とマイペースに。

「ならば、無理やり贄にするまで!!子達よ、不信神者に誅罰を!!」
「「「「■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!」」」」

 少女の号令のもと、歪な落とし子達が咆哮をあげ、猟兵達へ襲い掛かる。

「皆、サポートは私に任せて!」
「ヘクター君!ギルバートさん!行きますよ!……自分達が前衛を務める!!」
「言われなくても!」
「まったく、おじさんの身体には堪えるわ」
「メリア!」
『ええ、ジード!わかってマスヨ!私達も前に出マス!!』
「私も援護させて頂きます」
「《蠅の王》!雑魚はまかせた!……その間におれは……」
「おや、操様、暗躍ですか?でしたらご協力いたしますよー面白そうですし」

 第二ラウンドが切って落とされる。
 まず仕掛けたのはジードとメリアだ。
 メリアがその二門の砲を巧みに操り、砲撃する。
 思考すらないかのように只管にまっすぐ遅い掛かってくる落とし子の相手は容易かった。
 落とし子は次々と爆散していく、が、突然動きを変える。
 姿を変え、砲台の様になり肉塊を発射するモノ、あるものは獣のような四足歩行となり俊敏な動きで二人を襲う
 突如変わったその動きに、メリアは戸惑うが、なんとか躱し、砲撃を打ち込む。 
 
「メリア気をつけて!あの肉片、相手に合わせて攻撃を変えている!」
『ほんとうデスカ!?』

 周囲を見渡せば、他の猟兵達と戦う肉塊共もそれぞれ姿かたちを変えて猟兵達を翻弄していた。  

『……ナラ、ワタシが狙われてる間にジードが倒してクダサイ!』
「……うん、わかった。まかせて!」

 相手に合わせて攻撃を変える、なるほど、確かに恐ろしいだろう。
 だがこの二人の前には無意味だ。
 彼等は二人で一人、一人で二人、お互いのことなど分かり切ったまさに一心同体。
 ならば、この二人の連携は変幻自在、コチラも相手に合わせて戦いを変えればよいだけの事。
 《オルタナティブ・ダブル》本来はもう一人の自分を生み出すユーベルコード。
 しかし、ジードの扱うそれは、一人分の猟兵の力を二人分に増やす能力。
 今までメリアに守られていたジードが、その手に『バラックスクラップ』を持ち、ともに並び立つ。

「いくよメリア!」
『はい、ジード!』

 二人の輪舞が始まる。
 メリアが砲撃する、その隙を狙って襲い来る落とし子をジードが打ち払う。
 そして、ジードに襲い掛かる落とし子を、メリアが容赦なく撃ち落とす。
 目くばせはいらない、声かけもいらない、二人は心で繋がっているから。
 二人は踊るように、互いの背を守り、敵を殲滅していく。

「なにかおかしい……っとぉ!」

 落とし後の攻撃を見切り、カウンターでダガーを叩き込み、切り裂いたのはまどかだ。
 彼女は戦場を俯瞰してみていた。
 ジード&メリアは安定している。
 バリバリの戦闘系男子3人は前線で切り込んでいる。
 変わり者の二人は……アレ、何してるんだろう……?
 まぁ、彼が呼び出した蠅の王は戦っているのだけれど。
 それと、もう一人は……。

「まどか様、頭上を失礼いたします」

 ブォン!と物凄い重量のあるものが頭上を通り過ぎた。
 続いて鳴り響いたのは肉がつぶれる音と、骨が砕けるような音。

「ひぇ!?」
「失礼いたしました、お怪我はございませんでしたか?」

 それは、ソフィアが手に持った巨大な凶器で、まどかの頭上から飛び掛かってきた落とし子を殴り飛ばしたのだ。
 足元には見事な肉塊に戻った落とし子が痙攣している。

「あぁ、うん、大丈夫。ありがとうソフィアさん」
「お気になさらず、メイドとしての義務ですので……。其れよりも何か考え事をされてた様ですが?」
「ええ、うん、そうなんだ。なんか違和感があって……」
「違和感……?」
「うん、減ってないなって」

 それはサポートに徹していたまどかだから気づけた事である。
 結論から言えば、それは“落とし後の数が減っていない”という事。
 確かに猟兵達は見事な連携で落とし子を難なくと葬り去っている。
 だが、少女を守る肉の壁が少ししか薄くなってない。
 それは何故か?

「そうか、肉片!!」

 まどかは足元を見る、そこには先ほどソフィアがつぶしたはずの落とし子がいたはずだ。
 しかし、それはいつの間にやらいなくなっていた。
 戦いのさなかではあまり意識していない、倒した敵、それが繰り返し利用されているのだ。
 わずかに数を減らしているのはカムイの刀が捕食した分は復活していないためであろう。

「なんとかして数を減らさないと!」
「なるほど再生ですか……ならば、それを上回る火力で押しつぶせばよいのでございます」


 まどかの言葉にソフィアは目を閉じ、自らのシステムを起動させる。

 ――複製機構始動。

 蒸気機関が駆動し、魔力が生成させる。
 そうして、その美しい声で歌い上げるのだ。 

 ――操作領域展開。

 彼女の美しい声が響く度に、周囲の空間が振動し、そこに物体を浮かび上がらせていく。
 空間に実を結ぶのは彼女の『蒸気駆動式機関銃・冥土式』だ。
 それは一つだけでなく、二つ、三つと増えていき、遂にはその周囲に20機が展開されていた。
 それらは手も触れていないのに、ソフィアの歌声にて自在に動き、照準を合わせる。

「目標の掃討を開始いたします」

 手に持ったソレと合わせ、総計21連装の『蒸気駆動式機関銃・冥土式』は蒸気を噴出させその砲身を回転させる。
 蒸気機械の怪物の咆哮が鳴り響く、轟音にして爆音、機関銃の咆哮は断続的に響き渡り、それらは精密な操作によって猟兵達を避け、放たれた鋼製弾芯弾が標的を無慈悲に削り飛ばす。
 一瞬にして肉片へと戻る落とし子達、それは再び形をとり立ち上がろうとするが、その途中で再び肉片へと粉砕される。
 すなわち、少女を守る防壁が減ったという事。
 戦場で目敏い傭兵である二人がその好機を逃すなんてマネをするはずもなく。

「へへ、良く分からねぇが絶好のタイミングだ」
「ならば仕掛けるしかないよな、ヘクター?」
「背中は自分が、行け二人とも!」
「「応よ!!!」」

 前線で戦っていたカムイが敵を引き付け、ヘクターとギルバートが少女に向かって走り出す。
 ヘクターはその俊足をもって、ギルバートは真の姿を解放し、《忍び寄る死の気配》をもって今だ残る落とし子の猛威をくぐり。
 避ける避ける避ける、怪物達を潜り抜けて、少女の元へ。
 ギルバートの手が、その腰に下げられた『無銘の刀』に伸びる。
 どんな武器をも扱うギルバードが愛用する品、手によくなじむ相棒、師より渡された名も無いの刀。
 これこそがギルバードの真骨頂、その柄を握り、さらに駆ける。
 先に仕掛けたのはヘクターだ。
 その手に握られた『殺人鬼が持っていた刺突剣』を握り、鋭く、そして素早く投擲する。
 殺人への執念が込められたそれは、呪詛の様なもの纏い空気を割き、少女へ真っすぐに飛来する。
 しかし、それは少女の隣に控えていた落とし子が身を挺して守る。

「ふん、苦し紛れですか?」

 刺突剣を受けて、目の前で落とし子が崩れていく様をみて嘲笑する。
 彼等は肉片から生まれしもの、また肉片から生み出されるだけだ。
 何の問題もない、であれば向かってくる二人の不信神者をこの大鎌で切り捨てればよい。
 それだけの事。
 そう、そうなるはずだった。

「どっちを見てるんだ?」

 背後から声がした。
 誰だ?ここにはもう私以外言葉を話す者は猟兵しかいないハズだ。
 そして、その猟兵は目の前に……。
 少女が声に振り返りまえに、その背が切り裂かれた。
 投げられた刺突剣は目くらましでしかなかったのだ《刹那の取捨選択》ヘクターは刺突剣を投げたその瞬間爆発的な加速を得て、投げた刺突剣すら追い越して少女の背後へ回り、もう一つの武器である『ワンダラーブレード』でその背中を切り裂いたのだ。

「いつの……まに……!?」
「おっと、お嬢さん。コッチも忘れてもらっては困る」
「ッッ!!」

 その隙にギルバートが懐に飛び込んだ。
 姿勢を低く、脱力し、手は刀の柄に添えるだけ……まだだ、まだ引き付ける。
 少女が驚愕の表情で、慌ててその武器を振りかぶるのが見える。
 死の予感がチリチリと背筋を焦がすが、まだだ、まだ早い。
 でたらめな振り方だ、驚いて握りが甘い。
 少女の大鎌がギルバートに迫る……死ぬぞ、もう直ぐ死ぬ、勘と経験が警鐘を鳴らす、今だ!!
 ギルバートの『無銘の刀』が閃いた。
 その刀は寸分たがわず“少女の持った大鎌”に吸い込まれ、それを両断した。

「なッッ!?」

 少女は自らの武具が両断される姿を驚愕の表情で見ている。
 そら、もう一撃。
 ギルバートとヘクターが少女へ追撃を仕掛ける。

「くっ」

 少女は使えなくなったぶ武器を手放し、身を捩り、刃に身を掠められながらも、無様に地面を転がってその追撃から逃れる。
 なぜ、なぜ、なぜ、少女は自問する。
 なぜこんなにも追い詰められる。
 なぜ奴等は立っている。
 なぜ私は無様にも地を這っている。
 私には神の加護があるはず、そうあるハズなのだ。
 それさえあればあのような者どもは一掃できるはず、神の力は強大なのだ。

「沼地の主。ヒキガエルもどきですか」

 ころころと、実に愉快そうに喋る女の声が聞こえる。

「ふーむ、旦那さんを悪く言うのもなんですが、趣味悪いですね」

 耳障りな声だ、何より、その言葉が不快だ。

「血色悪いですし、不味そうですし、なによりサメではない」

 何だあの女は。何だあの女は!何だあの女は!!
 私の神を愚弄するのか、私を愚弄するのか、私を貶めるのか。
 ふざけるな……!
 我が神がおかしいとでも、我が信仰がおかしいとでも、私がおかしい……とでも……。

「そもそもカエルを伴侶にするド変態っぷりは流石のわたくしもドン引きです」
 
 そんな――――いや、まて、そうか。
 そうだった、この愚か共を屠る為に神の像を作り変えてしまった。
 嗚呼、だからだ、私が神とのつながりを断ってしまったから。
 申し訳ありません我が神よ、我が伴侶よ、大丈夫、今一度、今一度繋がれば大丈夫。
 そう、またちゃんと助けてくれるはず、私の神様は、きっと、わたしはおかしくなんて……!

「うっわ、えぐい追い込みすんね?」
「そうですか?あ、こっちの条件は整いましたのでまずはソチラから」
「自覚なし?ま、頼んだおれが言うのもアレか。はーいよ、仕込みもばっちりだかんね」

 奴らが何かを言っている、何だろう、いや、そんなことはもうどうでもいい。
 今は、神の像を作り直さねばならないのだから。
 少女は歌う、震える声で、神を称賛する歌を。
 その歌に合わせて、落とし子たちは崩れ落ち、また一つの肉塊になり、邪神の像を作り上げる。
 落とし子は崩れ落ちた、魔術が正常に発動したから。
 その肉は集まって肉塊となった、魔術は確かに発動していたから。
 像もちゃんとできた、魔術は発動したのだから当然だ。

「かはっ!?……なに、これ…………」

 少女は喀血した。視界はぐるぐると回り、頭が痛む、体が痛む。
 なんぜ?
 繋がりは感じる、我が神とのつながりは、しかし与えられるのは加護ではなく、代わりにあるのはこの体を蝕む呪詛だけ。
 それが、操の仕込みだった。
 飛び散った肉片に何重もの呪詛圧縮してねじ込んでいたのだ。
 それは一つや二つではない、戦いは《蠅の王》に任せその間、何重にも何重にも飛び散った落とし子の中に。
 何故そんなことをしたのか?それは彼は知っていたからだ。
 少女が最後に頼るのは彼女が信じる神であることを。
 ゆえに、もう一度その像を組み立てる時、呪詛が解放されるように。

「像の方はダメになっちゃったけどさー。まぁ、もう一つあるし……いーよねー」

 操は笑う、嗤う。
 それは、もうすぐ玩具が手に入る事を喜ぶ、子供の笑い。
 像の方にも興味があったが、致し方ない、神の力を宿す少女がまだ残っている。
 
「なぁ、そのカミサマ、頂戴よ」
 
 ぞわりと、少女の体に怖気が走る。
 なんだあれは、あの恐ろしいものは、あれがただの人間であるはずがない。
 そう、あれは、我が神に似た……。
 いや、違う、認めてはならない、そんなことは、我が神こそ唯一、私を救う神様なのだから。

「違うッ、違うッ違う違う違う!!!!我が神は、我が主は、私のかみさまは……!!」

 魔力を回し、強引にでも像との繋がりを強める。
 呪詛が体を蝕むが……神の力が流れ込むのを感じる。 
 嗚呼、大丈夫まだ戦える。この力さえあればまだ!!

「往生際がわるいですねぇ」

 軽い口調で、エミリィがユーベルコードを発動させる。
 《サメを呼ぶメイドの術》ふざけた名前だが、それはある条件を満たした時にだけ発動できるモノ。
 その条件は、恐怖、動揺、疑心……怯え惑う者の感情だ。
 その感情を依り代として、ある大海の主が呼び出される。
 大地が震動する、沼地より水が吹きあがりエミリィの周囲に集まった。
 その水の中に巨大影が居る、其れこそが、呼び出され者。

「沼地の主がなんですか。こっちは大海を支配する、《すべてのサメの父》ですよ」

 それは海原を自在に泳ぐ、巨大なサメだ。
 その体躯は鯨にも匹敵する巨体、《すべてのサメの父》と呼ばれるもの、あるいは……。

「そして《すべてのサメの父》はまたの名を、リヴァイアサンとも言います」

 リヴァイアサン、古き時代より海中に住む巨大な怪物、神話の怪物。
 その眷属たちが、王の命の元、醜き邪神像を食い尽くす。
 あとに残されたは、少女だけ。
 誰の目にも決着はついたと見えるだろう。
 しかし、少女は足元に転がっていた邪教徒のナイフを拾い上げ、なおも猟兵をにらみつけていた。

「一人でも多く、神も元へ向かう道ずれにしてやる!!!」

 もう、彼女は止まる事などできないのだ、狂気に染まった心は、現実を歪め、ただ神への奉仕のみに縋る。
 決着の時だ。

「あぁあああ!!」

 少女を猟兵達が迎え撃つ。

「メリア!」
『ジード!』

 ジードとメリアが巧なコンビネーションで翻弄する。

「援護いたします」
「アシストは私達にお任せ!」

 ソフィアのガトリングと、まどかのワイヤーが動きを牽制する。

「最後まで気を抜くんじゃないぞ!」
「手負いが一番怖いってのが傭兵の常識だもんなぁ!」

 ギルバートとヘクター、二人の剣が閃き、手傷を負わせる。

「うーん、ダメかも」
「持ち帰ったらまずいと思いますよ??」

 操とエミリィの操る、蠅の王とサメが少女を拘束する。
 
「これで……終わりだ!」

 そして……カムイの小太刀が少女を食らった。


 こうして、『S県H市における邪神召喚事件』は未遂として幕を閉じた。
 救出された行方不明者は18名、いずれも軽症。
 未帰還のエージェントはすべて帰還を確認された。
 邪教徒は全滅、死体の損壊が激しく身元および正確な人数は不明だが、推定40名以上が死亡。
 首謀者とされる少女はエージェントの証言により、3年前に死亡した■■■・■■■であるとされるが、こちらも損壊が激しく詳細は現在調査中。
 本件はカテゴリー『J』通称“猟兵”の介入によって、不測の事態は回避された。
 『J』は今後においても我々UDCの貴重な戦力となる事は間違いない。
 より一層の連携を進言するとともに本件の報告を完了とする。


 ■■月■■日
 追記1 洞窟内神殿部にて淡水生のサメが発見される。サイト■■■へ移送。

 ■■月■■日
 追記2 サメに特異性を確認。以後対象をUDC‐8332‐JPと呼称する。 
 陸も泳ぐサメとかどういう事だ!?(報告者の書きなぐり)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月29日


挿絵イラスト