帝竜戦役②〜竜化せし妖精兵
●ドラゴン化した妖精たち
「諸君、ついにアックス&ウィザーズで戦争が始まった! 武具の用意はいいかい?」
予言書を手にグリモア猟兵アメーラ・ソロモンが、集う猟兵たちへ声を上げた。ついに姿を現した帝竜たちによる蹂躙の予兆。それを見逃しみすみす世界を壊されるわけにはいかない。
「侵攻計画を前倒しにしてきた帝竜たちの準備は十分とはいえないようでね。態勢が整う前に畳みかけて倒してしまいたいところだ。なにせ彼らは数が多いし、そもそも強力なオブリビオンだからね」
そのためにもまず、帝竜のところまでたどり着かねばならない。そこまでの道にも当然オブリビオンたちが潜んでおり、倒さねば次の戦場にたどり着くことすら難しいだろう。
「まずは以前から問題になっていた『皆殺しの平野』を踏破してほしい。この荒野は面倒なことに……オブリビオンをドラゴン化する風、とやらが吹いているんだ。これの影響か襲来するオブリビオンが強力になっている」
アメーラの予言書から投影魔法が展開される。映し出されたのは妖精姿のオブリビオン……なのだが、その羽根は竜の強靭な翼に置き換わり、その肌は硬い鱗に覆われ。その頭からは妖精の身には少し大きな角が生えていた。
「元が妖精なので小さく速い上に、鱗によって防御力が底上げされているようでね。ちょーっと厄介な感じだけど……まあ、君たちなら蹴散らせるだろう?」
もとより空を飛ぶ妖精であり空兵でもある彼らは空から一斉に襲い掛かってくる。その空中からの攻撃をいかに防ぎ、硬い鱗の下にある急所を突くか、がカギとなるだろう。彼らの体は小さいので、硬い鱗をどうにかすれば大抵の攻撃は急所に当たるはずだ。
「ではさっそく出陣といこう。なぁに、これはまだまだ小手調べさ」
それに、一体倒せば金貨四十枚の臨時収入にもなるよ、とニコニコ笑いながらアメーラは転送を開始した。
夜団子
さあ来ました戦争ですぞ!! あ、今回の敵は一匹倒せば二十万円相当の「竜胆石」が手に入るそうです。アイテムプレゼントはできないのでフレーバー程度にどうぞ。
●今回の概要
このシナリオは「戦争シナリオ」です。判定も普段と異なる戦争仕様となります。(下記を参照)
●プレイングボーナス
このシナリオには特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。
今回の条件は「空中からの攻撃に対処し、硬いうろこに覆われた「急所」を攻撃する」です。
妖精たちはちっちゃいので攻撃を当てる、かつ、鱗の硬ささえどうにかすれば急所に攻撃が通りそうです。
●判定について
夜団子の基準になりますが、上記「プレイングボーナス」を満たしたものを大成功判定とし、そうでないものを苦戦といたします。そしてその合間(悩んだもの)が成功になります。
基本的に「大成功」判定になるものだけをリプレイ化し、シナリオのクリアが難しいようであれば他のものもリプレイ化します。シナリオクリア地点で成功以下のプレイングは素早く流しますので、他のシナリオでその☆を活かしていただけたらと思います。
それでは、皆さまのプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『謎の空兵』
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POW : 妖精の奮闘
敵を【爆破魔法】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
SPD : 妖精の早撃ち
見えない【マスケット銃の弾丸】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
WIZ : 小さいからと甘く見るな!
【敵合計レベル×5の謎の精兵(妖精)】の霊を召喚する。これは【マスケット銃を使った弾丸】や【魔法】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:Moi
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神楽・鈴音
一匹につき金貨40枚!
これは是非、狩らなくちゃ!
敵の襲撃に合わせてUC発動
迷宮を盾にし、相手を中へと誘い込む
「さあ、私を倒したければ中に入って来なさい。ただし、お代は高くつくけどね
UC効果で敵と、敵の召喚した霊の認識まで歪めて、互いに敵同士だと思わせ同士討ち狙いね
混乱に乗じて、私はハンマーで妖精を叩き潰して行くわよ
「てりゃぁぁぁっ! 潰れろ、カトンボ!!
【力溜め】した状態で【なぎ払い】すれば、体重の軽い妖精なら潰せなくても【衝撃波】で【吹き飛ばし】を食らわせることくらいはできるはず
吹き飛ばされて体勢を崩している妖精を狙って、【鎧砕き】の【鎧無視攻撃】で鱗ごと潰すわ
「逃がすかぁ!一匹、金貨40枚
「一匹につき金貨40枚! これは是非、狩らなくちゃ!」
戦場に向かうとは思えないほど浮足立ち、それでいて異常に気合の入った神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)が空を駆ける妖精兵たちを見上げた。ぶんぶんとその手の賽銭箱ハンマーを振り回しながら、襲来する妖精兵たちを迎え撃つ。
妖精兵から見ればなんの防御もしていない上に隙の大きそうな近接武器持ちの鈴音。空中戦かつ遠距離武器を持つ彼らからすれば鈴音の方がよほど狩られるカモらしい格好だ。頭数を増やし囲ってとっとと倒してしまえ、と妖精同士連携しながら空から襲ってきた。
しかしみすみすと攻撃させる気はない。鈴音はしゃら、とハンマーの鈴を鳴らしあるものを召喚した。あるもの―――それは大量の鉄でできた賽銭箱。鈴音を守る盾のように現れた賽銭箱の迷宮に妖精たちは一度その勢いを削いで空中に留まった。
「さあ、私を倒したければ中に入って来なさい。ただし、お代は高くつくけどね。……それとも、こんな小娘が怖くて入って来られないかしら、小さい妖精さん?」
「っ、小さいからと甘く見るな!」
所詮はただの迷宮。翼を持つ自分たちに通用するものではない。そう血の上った頭で判断したのか、妖精の大軍は一度削いだ勢いを持ち直してまた鈴音へと向かって襲来する。例え数匹があのハンマーの餌食となったとしても、他の者たちで撃ち殺してしまえばいい。そんな人海戦術の元で彼らは迷宮の中に足を踏み入れた。
彼らにとっての誤算は、迷宮に見た目以上の能力があったことである。
「敵を討て、敵を討てぇい!!」
リーダーらしき妖精兵のその一言で、妖精たちは一斉に『互いを』攻撃し始めた。戸惑いも困惑もなく、真剣な表情で一心不乱に味方同士で撃ち合っている。撃ち抜かれた妖精兵は落下しながらも自分を撃った妖精兵へ撃ち返し、戦場は一気に混戦化していった。
『御寄進神隠しの魔窟』―――鈴音の生み出したこの迷宮の最も恐ろしいところは、壁となる賽銭箱に“敵対する者の思考を歪める”力があることである。この迷路に入ってしまえば最後、敵味方に対する認識を歪め、同士討ちをさせることも可能だ。
妖精兵の同士討ちを引き起こし、一滴も血を浴びることなく敵戦力を削いだ鈴音は、お賽銭ハンマー片手に意気揚々と乱戦へ参加した。その混乱に乗じて、ハンマーをぶん回す!
「てりゃぁぁぁっ! 潰れろ、カトンボ!!」
直撃した妖精はもちろん、そうでない妖精も、お賽銭ハンマーが生み出す衝撃波に吹き飛ばされてバランスを崩し、壁に、地面に叩きつけられる。同士討ちで撃ち落とされた妖精と同じように、彼らも地を這う。
容赦なく、鈴音は彼らにハンマーを振り上げる。墜落した妖精にとっては堪らない。逃げることもできずにハンマーにぺしゃんこにされ、鱗ごと急所も潰され、あっけなく絶命してしまった。どんなに鱗が硬くとも、中身が柔らかければ圧に負けてつぶされてしまう。
「逃がすかぁ! 一匹、金貨40枚、全部いただくわよ!」
お金に目がない鈴音に目を着けられてしまったのが運の尽き。いつも以上に気合の入った鈴音によって、妖精兵の一部隊は一匹残らず潰され竜胆石にされてしまうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
亞東・霧亥
【UC】
竜の力を封じる。
あとは自前の機動力と射撃の技量のみ。
その射撃も当たればの話だがな。
・罠使い、残像
クリエイトフォースを粉末状のプリズムに変化させ、周囲に散布する。
光の屈折は無数の虚像を作り出し、実像を掴ませない。
・毒使い、スナイパー
吹き矢に仕込むのは麻痺針。
硬い鱗が失われた今、針は容易に身体に刺さる。
後は落下した羽虫を殺すだけだ。
「竜の力を得た羽虫か」
草原を飛び回り猟兵たちを阻む竜化した妖精兵たち。彼らを眺め亞東・霧亥(峻刻・f05789)はフンと鼻を鳴らした。霧亥にとって、ドラゴン化した相手など大した脅威ではない。特殊な戦場でその力を得たのならば、まずその力を無効化してやればいい。
「これが7thの竜殺しの力!」
天へと掲げられた霧亥の手より美しい光が湧きたち、天へと昇る。自分たちに向けられたわけでもないその光に妖精兵たちが怪訝な顔をした、その刹那。立ち上ったそれはまるで光のシャワーのように、戦場へ降り注いだ。
浄化の光が戦場にまんべんなく注がれていく。一見幻想的なその光景は、妖精兵たちの意識さえも一瞬散らせたが……空兵たる彼らはそれに気を取られて隙を見せるようなまねはしなかった。すぐに霧亥に向き直り、そのマスケット銃を向けようと―――
「……!? なにッ!?」
ボロボロッ、と妖精兵たちの皮膚が崩れる。正確には、その肌を覆っていたドラゴンの鱗が、背中に力強く生えたドラゴンの翼が、頭に雄々しく立ったドラゴンの角が、ボロボロと土クズのように崩れていっているのである。
霧亥が放ったのは『ドラゴンの呪いを打ち消す』浄化の光であった。その光によってこの戦場は一時的にドラゴンの影響を完全に失い、ドラゴン化した妖精兵たちはその力を完全に失ってしまったのである。そうなれば妖精兵たちに残されるのは、自前の機動力と射撃の技量のみである。
「その射撃も当たればの話だがな」
「っ、頭数を増やして狙撃しろ! ドラゴンの力を失っても我らの優位は変わらな……っ!?」
指令兵らしき妖精兵の言葉は最後まで続かなかった。その体に刺さったのは吹き矢。それも、全身を痺れさせる麻痺毒の仕込まれた、暗殺者の針だ。
「ど、どこから……っ!? 敵はどれだ!?」
さっきまですぐそばにいたはずの霧亥を撃ち抜かんと、多くの妖精たちがマスケット銃を構えた。しかし、彼らは撃つことができない。いくつもの霧亥の虚像が眼前に広がり、どれを狙ったらよいのか全く分からなくなってしまったからだ。
彼らの標的はたったひとり、数ではこちらが有利だったはず。だというのに無数の虚像に踊らされ狙いを定められずに手をこまねいている間に、ひとりまたひとりと麻酔針の餌食となっていく。数はどんどん減らされていくのに、妖精兵たちに有効な反撃方法はなかった。
「た、たす、け」
グチャッ。
地へ落ち、麻痺のせいで動けない妖精兵がまたひとり、踏みつぶされた。転がるその小さく柔らかい体を急所ごと踏みつぶすのはとても簡単で、暗殺者たる霧亥であれば物音ひとつ立てることなく済むことであった。
淡々と、坦々と、霧亥は地に落ちた羽虫を踏みつぶしていく。場所を変えてまた吹き矢で数匹狩り、踏みつぶし、の繰り返し。戦いともいえぬ一方的な蹂躙に、妖精兵たちは瞬く間に全滅してしまうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
亜儀流野・珠
むむ……妖精か。
大きい相手に木槌を振り回す方が得意なんだがな。
まあいい、小さい相手にはそれ用の戦い方もある!
奥義「焔弾」……超圧縮した狐火による弾丸だ!
これを次々と撃ち込み爆発させる!
堅き鱗の鎧を纏おうと、強烈な爆発の衝撃は体を突き抜ける。
その体の小ささなら尚更だ!
奴らがまとまっていればそこを狙い撃ち込み。
奴らが何か呼んで集団を形成すれば爆発で散らす。
小さい奴、集団の奴には特に効く技だ!
もし接近できた、または奴らが落ちて来たなら
木槌「砕」で攻撃だ。
これもまた衝撃と質量による内部への攻撃。
俺の腕力と槌の質量、耐えられるか!
「むむ……妖精か。大きい相手に木槌を振り回す方が得意なんだがな」
たとえ相手が硬い鱗に守られた大きなドラゴンだったとして、そちらの方がよほど倒しやすい。そうぼやきながら亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)は大きなその木槌を肩に担いだ。空から珠へ目がけて妖精兵たちが襲い掛かってくるが、彼女に焦る様子は一切なく。
「まあいい、小さい相手にはそれ用の戦い方もある!」
彼らを迎え討つためその木槌・砕を構えなおす―――こともせず。珠はただ、己の拳を引き、その手に炎を纏った。
「奥義、『焔弾』! 貫き通せっ!!」
その拳を勢いよく撃ち放てば、超圧縮された狐火が撃ち出され隊列を成していた妖精兵たちのど真ん中で爆発した。爆心地にいた妖精兵はその鱗の内側から爆発させられ、悲鳴をあげることもできずに散る。その周囲にいた妖精兵たちも至近距離の爆発の衝撃に耐え切れず血反吐を吐いた。
「堅き鱗の鎧を纏おうと、強烈な爆発の衝撃は体を突き抜ける。その体の小ささなら尚更だ!」
覚悟しろ! と元気に指さす珠に妖精たちはたじろぐように空中に留まった。たったいま一人の仲間が爆裂四散し、その周囲の仲間たちも無残に散らされたのだ。恐怖を感じない方がおかしい。しかしその隙を見逃すような珠ではなかった。
「はああああっ!!」
一撃、二撃と連続で焔弾を繰り出す珠に散らされ、妖精兵たちは叫びながらそれぞれに散り始めた。的が小さくとも集合していれば爆発で一網打尽だ。それも爆発でダメージが鱗を貫通してくるのだからたまったものではない。
「頭数を増やせ! とにかく数で圧倒するんだ!」
その一声に合わせて妖精兵たちは己の仲間の霊を呼び出し始める。召喚されたそれらを合わせれば大群といえる数となり、空を埋め尽くした。それらの銃口が一斉に珠を狙う。
「はっ、これは小さい奴、集団の奴には特に効く技だ! 選択を間違えたな!」
それでも一切、珠は怯まなかった。数が増えた? ならばもっともっと、撃ち込んでやればいい。ボンッボンッ! と鳴り響く爆発音に撃たれるマスケット銃。互いの攻撃が錯綜しあい、戦場は爆風による砂塵とマスケット銃の火薬で視界が悪くなっていった。戦況は、大人数を一気に巻き込める珠に傾いている。
視界の悪くなった戦場で、珠は彼らにとどめを刺すべく地を蹴った。その手には炎ではなく、愛用の木槌。人間でも喰らったらひとたまりもないであろうその木槌を妖精に振り下ろせばどうなるか。―――もはや鱗の強度がどうとか、そう言ったレベルの話ではない。
「俺の腕力と槌の質量、耐えられるか!」
喰らえーっ! と叫んだ珠の声が果たして聞こえたかどうか。爆発の混乱の中近づかれた妖精たちは、逃げることもできずその木槌のシミとなって散ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ソラスティベル・グラスラン
妖精さんにとって小ささは武器
それに竜の頑強さが加わってしまうだけで、こうも厄介な存在となるのですね…!
始めに謝ります、手加減は期待しないでくださいね!
空を飛ぶ敵にはこちらも翼を広げ【空中戦】、一方的な有利はとらせません!
【盾受け】で身の守りを固め突撃
【勇者理論】(防御重視)を発動、【オーラ防御】を強化し周囲に展開
【見切り】、或いは【気合】で耐え抜き、【ダッシュ】で一気に爆撃の中を抜けて
【怪力】のままに盾を構えて体当たり
敵の体勢を崩した隙を狙い【見切り】、急所ごと真っ二つにする【鎧砕き】の大斧を!
タフネスさでは負けません、本物の竜の戦いをおしえてあげます!
これがわたしの【勇者理論】!!
「妖精さんにとって小ささは武器。それに竜の頑強さが加わってしまうだけで、こうも厄介な存在となるのですね……!」
妖精の的は小さく、素早い動きでそもそも攻撃は当てにくい。だというのに当てても、ドラゴンの硬い鱗によって攻撃は跳ね返されてしまう。この上なく厄介で面倒な相手。だが、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)がひるむことはない。
「始めに謝ります―――手加減は期待しないでくださいね!」
力強くその背の翼を広げ、ソラスティベルは空へ躍り出た。空を飛び、妖精たちと同じ目線に立つ。これで戦場の優位はかき消された。相手がドラゴン化した魔物ならば、自分はドラゴニアンの勇者として対抗するまで。
「勇気で攻め! 気合で守り! 根性で進む! 一部の隙も無い、完璧な作戦ではないですか!」
盾を構え、溢れるばかりの勇気と気合を胸に、ソラスティベルは真正面から妖精兵たちへ突っ込んでいった。もちろんソラスティベルを迎え撃つ妖精兵たちがそれをみすみすと許すわけはない。彼らは隊列を組みながら爆裂魔法の詠唱を始め、愚直な勇者を撃ち落とさんと撃ち放った。
しかし、ソラスティベルは止まらない。盾で防げる程度をとっくに越しているというのに、彼女の歩みは止まるどころか減速すらしなかった。その身をオーラが覆い、急所を狙う攻撃は的確に見切って盾で防ぎ。それ以外の攻撃は、なんと胸にした気合ひとつで耐えきってしまう。根性のままに、彼女は進み続ける。
「勇者」とはなんなのか。単純に「勇気ある者」が勇者だとする者もいれば、誰もが恐れる困難に立ち向かう者であると言う者もおり、いやいや武勇に優れた戦士を指すのだよと答える者もいる。その定義は三者三様、人によって異なるが―――
―――ある者は。心意気一つで全てを凌駕してみせる、そういう者を勇者と呼んだ。
「タフネスさでは負けません、本物の竜の戦いをおしえてあげます!」
爆撃をものともせず、怯むことも怖気づくことも決してなく。肉薄してきた勇者に対して、妖精兵たちに何ができようか。
盾を構えたままその怪力と今までの助走の力を乗せて、ソラスティベルは思い切り体当たりをかます。隊列を組んでいたばかりに妖精兵たちはそれぞれ逃げることができず、ソラスティベルの体当たりをもろに受けた。弾かれ千々に散らされた彼らが体勢を整えるよりも早く、ソラスティベルは蒼空色の大斧を振り上げる。その蒼い瞳でしっかりと彼らの弱点を見切り、一閃で片が付くようにその腕に力を籠め。
言葉に熱を与える高揚のままに、彼女は叫ぶ。
「これがわたしの! 勇者理論!!」
勇気を込めて振るわれたその斧にドラゴンの鱗は歯が立たず。その硬いはずの鱗ごと胴体を真っ二つに薙ぎ払われ、妖精兵たちは討ち果たされたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
西条・霧華
「不本意ですが、立ち塞がると言うのなら…、道を切り拓くだけです。」
例え怨まれ様とも、それが私の、守護者の【覚悟】ですから…
相手の攻撃は【視力】で相手の位置取りや攻撃の予備動作を【見切り】、纏う【残像】で眩惑する事で回避
回避が困難なら【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止めます
何れの場合も攻撃を凌いだ後に【視力】で敵を確りと見据え、【ダッシュ】で接近
返す刀での【カウンター】として、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]による『ブレイズフレイム』で反撃
掠りさえすれば、延焼する炎で急所ごと焼きます
炎に焼かれる苦しみは…痛い程に知っています
だからせめて、苦しまぬ様に一撃で…
「囲え! 数と地の利を活かせ! 恐れるな!」
焦りを声ににじませながら、妖精の指令兵が怒号を飛ばす。妖精ならではの機動力と訓練された統率力に加え、ドラゴンの頑強さを得たはずの彼らは本来猟兵たちに対して優位に立っていたはずだった。だというのにすでにかなりの数の同胞が討ち果たされ、もはや残るのはこの部隊だけ。それが彼らの焦りとなり、彼らを駆り立てた。
「不本意ですが、立ち塞がると言うのなら……、道を切り拓くだけです」
そんな彼らに相対するは西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)。この世界を、この世界の人々を、護るためにこの戦争には勝たねばならない。それを阻むというのならば、霧華にできるのはその刀を振るうことだけであった。
「例え怨まれようとも、それが私の、守護者の“覚悟”ですから……」
「撃て、撃て! 相手はひとりだ、まとめて爆殺してしまえ!」
焦りに昇った妖精兵たちと、冷静に戦場を見据える霧華。空中と地上のアドバンテージがあったとしてもこの覚悟の差を埋めるのは難しいことだった。
トッ、と地を蹴り霧華は走る。ただ相手との距離を詰めるのではなく、右へ左へ惑わすように駆け妖精兵たちの爆裂魔法の狙いを散らしながら走る。残像に惑わされ霧華本人には爆風すら届かない。より焦った妖精兵たちの狙いはさらに雑になり、読みやすくなっていく。
たとえまぐれでも霧華に爆発が届いたところで―――
ドンッ
「! やったか!?」
もくもくと上がる土埃に、妖精兵が少し上ずった声をあげる。だが、その言葉はフラグというもの。籠釣瓶妙法村正による一閃が、土煙を吹き飛ばした。
「捉えました」
その声は果たして妖精兵たちに届いただろうか。次の瞬間には、霧華は妖精兵を通り抜けた反対側まで走り抜けていた。カチン、と籠釣瓶妙法村正が鞘に収められる音が小さく響く。
「ッギャアアッ!? なんだこれはッ! 熱いッ!!」
ボァッと火の手が上がり、一斉に妖精兵たちが悲鳴を上げる。どうにかして逃れようとする者、火を消さんと飛び回る者、すでに手遅れで地へと落ちていく者。皆火から逃れることはできずにその身を燃やし尽くされていく。地獄の炎は霧華が手を貸さぬ限り、消えることはない。
「炎に焼かれる苦しみは……痛い程に知っています」
戦場に響く悲鳴の大合唱は、意外なことにすぐに途切れて消えていった。炎もそれに応じて消えていく。妖精兵たちが助かったわけではない。ただ彼ら全てが、炭と灰になって物も言えなくなってしまっただけである。
「だからせめて、苦しまぬ様に一撃で……」
霧華は少し眉を寄せ悲痛な面持ちを見せ、そしてすぐにそれを消した。自分の成したことを憂いている暇はない。戦争はまだ始まったばかりなのだから。
振り返ることなく霧華は歩む。こうして草原での戦いは幕を閉じ、次の戦場へと猟兵たちは誘われていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵