帝竜戦役①〜月は森にて魂を啜る
「集まってくれてありがとう。さて……今回はアックス&ウィザーズで起きている帝竜戦役、その戦いの地へ向かってもらいたいんだ」
グリモアベースへ集まった猟兵に一礼し、ネルウェザ・イェルドット(彼の娘・f21838)は早速任務の説明を始める。
「皆を送るのは『魂喰らいの森』。その名の通り、生物の魂を喰らうという動植物が蔓延る危険な森だ」
そう語ると、ネルウェザはぽんとモニターを浮かべてその森を映し出した。
鬱蒼と茂る木々は不気味に揺れ、地を這う蔦は蛇のように蠢いている。それが『魂を喰らう動植物』であることは容易に想像出来たが、しかしその中心にはどういうわけか悠々とその森を歩く人影が映っていた。
「この森には『番人』が存在している。皆にはこの『番人』の討伐を依頼したい」
ネルウェザは映像を止め、人影を指差して続ける。
「……番人の正体、それは重力操作の魔術を扱う『月の魔女』というオブリビオンだ。強力な敵というだけでなく、森の番人となったことで『魂すすり』――要は魂を喰らう力を得ている。これに対抗する手段はひとつ、皆の『楽しい思い出』だよ」
そう告げるとネルウェザは笑みを少し柔らかくして。
「何でも良い。楽しかった場所、美味しかったもの、嬉しかったこと……そういう明るく楽しい思い出が、この森に於いては強力な魂の盾となる。今回の戦いの間は、それを頭に浮かべながら行動してくれ」
説明は以上、とモニターを仕舞い、ネルウェザはふわりとグリモアを浮かべる。
「それでは転送を始めるよ。皆、気をつけて」
グリモアが強く光を帯び始め、猟兵の視界が白く染まっていく。
ふっと身体が浮き上がる感覚のあと、猟兵はアックス&ウィザーズの世界へと送られていくのであった。
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アックス&ウィザーズ、『魂喰らいの森』。先程の説明通り周囲は不気味な動植物に覆われ――そして、出迎えるようにこちらへ近づく人影があった。
「貴方達も……魔女狩りかしら」
ふ、と妖しい笑みを浮かべるのは、オブリビオン『『花鳥風月』月の魔女』。彼女は静かに杖を構えると――猟兵に向かって、明らかな殺意を放ち始めた。
「……私は、もっと魔術の可能性を探求したいだけなのよ。その為なら何でも使うし――何でも殺す。犠牲よ、必要な犠牲。それが、いけないのかしら」
微笑みながら、月の魔女はそう問いかける。
しかし彼女はその答えを待つこと無く、猟兵の魂を喰らおうと力を練り始めていた。
みかろっと
こんにちは、みかろっとと申します。
今回はアックス&ウィザーズの戦争、『魂喰らいの森』での戦いです。こちらはボス戦一章のみの戦争シナリオとなります。
敵はユーベルコードに『魂を喰らう力』を加えて使用してきます。
皆さんの『楽しい思い出』がその力を防ぐ唯一の手段となりますので、それを思い浮かべつつ戦ってください。
それではご参加お待ちしております!
第1章 ボス戦
『『花鳥風月』月の魔女』
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POW : 花鳥風月・万物引力
レベル分の1秒で【重力操作で、Lv×1㎞の彼方まで敵自身】を発射できる。
SPD : 静かな月海
非戦闘行為に没頭している間、自身の【周囲に影響は無いが、自身】が【戦闘行為に没頭している間、光が身体を包み】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : クォーク・スターシューター
レベル×5本の【軌道上の周囲に重力異常の影響を与える、星】属性の【、影響下の物体を粉々に粉砕する、小さな星】を放つ。
イラスト:香
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
五条・巴
月の魔女、いい、いいね。
自分の目的の為に何でもする姿勢
僕、そういうの凄く好きだよ。
楽しかった記憶、たくさんあるよ。
毎日のお月見、猟兵以外の仕事は勿論刺激的でやりがいがある
他には恐竜に会ったり空を迎えに行ったことも、語り尽くせないくらい
今、月の魔女という名を持つ君と、対面しているのも楽しい
いや、ぞくぞくする。
君"月"を見下ろす彼女と一緒に遊んであげるね
”薄雪の星”
ふは、あはは、小さな星たちが砕けて綺麗だね。
新しい星座になる前に、ああ堕ちちゃった。
流れ星、せっかくなら君もお願いしたら?
魔術で新しい発見ができますように
猟兵たちに殺されませんように
とかね
ついでに僕もお願いしておこう
月に、なれますように
「いい、いいね。自分の目的の為に何でもする姿勢――僕、そういうの凄く好きだよ」
番人の前へと進み、五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)はそう告げて微笑む。
しかし第一声にて肯定を示した巴に対し、番人は警戒と疑念を露わに眉を顰めた。
「……なら。なら……そのまま、私の為に消えると良いわ」
番人が杖を振り、魔術を紡ぎ出す。
周囲の空気が変わる中、巴は魂を喰われぬようにと過去の記憶を思い浮かべていた。
毎日のお月見――季節や景色に表情を変えるお月様を眺める夜の時間。やりがいのある猟兵以外の仕事は刺激的で、これも巴が『楽しかった記憶』と認識するものだ。
他にも恐竜に出会ったこと、空を迎えに行ったこと。語り尽くせない思い出を心に念じれば――番人は巴の魂へその魔力を届かせることすら出来なくなっていた。
「(……それに)」
今巴が向き合うのは『月の魔女』、彼が愛して止まぬ其れと、同じ名を持つ者。
それを意識すれば巴の笑みは楽しげに――否、半ば昂ぶったようにぞくぞくと感情を沸き立たせる。
「その笑顔は……何、かしら」
かくりと首を傾げる番人の前。
――巴はユーベルコード『薄雪の星』を発動させた。
「君――『月』を見下ろす彼女と一緒に遊んであげるね」
直後、番人は息を呑む。彼女の真横、銃弾が音もなく遥か後方へと駆け抜けたのだ。
「……!?」
「ふは、あはは――」
声を零して笑う巴の視線が番人の首を捉える。
焦りを見せた番人は杖を高く掲げると、巴に向かって無数の星を撃ち出した。
「……潰れなさい」
周囲の植物を圧し潰して飛ぶ、月から放たれた魔法の星。
巴はふっと瞳を揺らしつつ、向かってくる其れを相殺するように銃弾を放つ。
次々に小さな星が砕け散り、星座を結ぶより疾く堕ちて行く中――巴は番人を見遣って言った。
「流れ星、せっかくなら君もお願いしたら?」
タン、とひとつ天へと弾を打ち上げて。
「魔術で新しい発見が出来ますように、猟兵たちに殺されませんように――とかね」
「……ッ!!!」
挑発に似たその言葉に番人が歯を軋り、杖を握りしめると同時。
巴は狙いを定め――無防備な月の魔女の右胸を撃ち抜いた。
息を整えると、巴は木々の隙間の空を見上げる。
ついでに、と彼は自ら打ち上げた流星に願いを呟くのであった。
――月に、なれますように。
大成功
🔵🔵🔵
御狐・稲見之守
ふふ、月は良い。逢瀬をするにゃ綺麗なお月様の晩に限るってナ。月を見ると今まで逢うて来たいろんな男達を思い出すが……ふふ、喰わずの約定を交わしたあの男は実にいい男じゃったナ。
なあ月の魔女よ、満月の晩に狐と踊ったことはあるかナ?
[UC万象変幻]、彼奴が放った重力異常を起こす星を全て塵へと変えてしまえ。隙を見て彼奴に接近したらば、首根っこを掴み[生命力吸収]で精気を啜ってやる。
[呪詛][精神攻撃]……さあ月の魔女よ、大人しく喰われるがいい。
星の残骸の中、月の魔女が痛みに息を震わせる。
彼女が再び魔術を紡ぎ出す中、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)は空を見上げて笑みを零した。
「ふふ、月は良い。逢瀬をするにゃ綺麗なお月様の晩に限るってナ」
そう呟くと同時に思い出すのは、今までに逢った様々な男達の顔。
そして――ヒトを喰らい都を脅かしたその過去の、おわり。
――あの男は実に良い男じゃったナ、と。
もうヒトを喰らわぬと約定を交わした男を思い浮かべれば、稲見之守の表情はふっと僅かに綻ぶ。
こちらを睨む月の魔女に視線を戻すと、稲見之守はこてりと小さく首を傾げて問うた。
「なあ月の魔女よ、満月の晩に狐と踊ったことはあるかナ?」
「無い、と言えば……どうなるのかしら」
魔女は脂汗を滲ませて笑い、杖を掲げる。呼び出された無数の星は周囲の植物を容赦なく潰し、魂喰らいの力を纏いながら稲見之守の元へ直進した。
しかし、楽しい記憶を心に留める稲見之守の魂にその魔力は届かない。
ならば、迎え撃つべきはあの厄介な星のみ――稲見之守は力を集中させると、ユーベルコード『万象変幻』を発動させた。
「夢と現つの狭間、ご覧入れよう」
彼女の力が魔女の星を捕らえた瞬間、星は纏う重力諸共ぼろりと砕けて地に堕ちる。
魔女が負けじと星を放ち続けるも虚しく、星は残らず只の塵へと変えられてしまった。
「何、……何なの!!」
明らかな焦りを見せた魔女が、再び魔術をと杖を振りかぶった隙。
稲見之守はたんと素早く駆け出すと、一気に距離を詰めて魔女の首へと手を伸ばした。
「ッ!!」
目を丸くした魔女が再び星を喚びだそうとするも、遅い。
背後へと回り込み、魔女の首根っこをがしっと掴んだ稲見之守は――妖しく微笑んで囁いた。
「……さぁ月の魔女よ、大人しく喰われるがいい」
魂すすりの番人は稲見之守にその命を啜られ、がくりと体勢を崩す。
そのまま地面に膝を着くと、魔女は満身創痍の様子で必死に杖を握りしめるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシェ・ユヴェール
ふふ、ここのところ楽しい事が多過ぎて
むしろ戦闘の方が疎かになってしまいそうですが
先日のUDCアースでのお買い物デートの事でも思い出してみましょうか
私が彼女に選んだ服、彼女が私にと選んで下さった服
あの世界の衣服は工夫が凝らされていて、着慣れなくとも心地よく
普段と異なる装いで笑い合える時間はとても、とても幸いな――
さて、戦闘でない行動を取らせれば無敵を消せると
光が消えるなら分かり易い
私とて魔法使い、魔術の可能性を求める心は解らなくもありません
然しそれでは不足なのです
貴女もデートをしてみれば宜しいのでは
とても視野が広がりますよ?
魔女が思わず意識を乱されればしめたもの
魔女の足元より水晶柱で貫きましょう
傷を癒やすべく、月の魔女はこの森で得た力に縋る。
異質な魔力を感じ取りながら、ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)は常の微笑――否、普段よりも緩んだ笑みを浮かべて歩み出た。
――魂を啜られぬ為の『楽しかった記憶』。
彼の頭に蘇るのはつい先日、想い人と共にUDCアースへ赴いた日――お買い物デートの思い出。
ふわもこを求めて訪れた其処で最初に巡った衣料店、互いを互いの好みにと服を選び合ったあの時間だ。
ファルシェが彼女に選んだ服、そして彼女が彼に選んだ服。
かの世界の衣服はファルシェが普段纏う服とは異なる感触ではあったものの、工夫が凝らされたそれは着慣れずとも心地良く感じられるものであった。
そして、何より。
普段と異なる装いで笑い合える時間はとても、とても幸いな――
――そう、彼がゆらりと紫瞳を揺らす中。
月の魔女は魂すすりの力をファルシェに向けるも、既にそれが一切効果を示さぬものになっていることに気がつく。回復できぬなら守りを、そう判断を変えた魔女は杖を握り直すと、眩い光を纏いながらファルシェを睨んだ。
「嗚呼――邪魔。邪魔よ、潰れなさい」
重力を操る魔術がぶち、ぶちと少しずつファルシェの周囲を圧し潰し始める。
ファルシェは自らも魔力を練りながら、魔女に向かって言葉を紡いだ。
「私とて魔法使い、魔術の可能性を求める心は解らなくもありません……然し」
それでは不足なのです、と目を伏せて。
ファルシェはそっと顔を上げると、戦いの最中とは思えない笑みと共に続けた。
「貴女もデートをしてみれば宜しいのでは。とても視野が広がりますよ?」
「それは……巫山戯ている、つもり?」
魔女の声がワントーン低く響く。その会話――攻撃でも防御でもないその一瞬の行動に、魔女の纏う光がふっとその眩さを弱めた。
その隙を狙い、ファルシェはユーベルコード『Die Hand des Zauberers』を魔女の足元へ向ける。組み上げられた魔力は地面を這う動植物の真下より、鋭い水晶の柱を結んで魔女の身体を貫いた。
「ッ、ぁあ……!!!!!」
満身創痍であった月の魔女は、遂にからんと杖を手放し落とす。
透き通る水晶の先でその身を散らしながら、彼女は骸の海へと還って行くのであった。
大成功
🔵🔵🔵