●飛び立つ
群竜大陸、皆殺しの平野。
オブリビオンを竜に変貌させる風が吹き荒れる荒野でまた一体、過去に置き去りにされた者共は異形を得る。
一体が変貌し、また一体。"竜"は伝染し、元は鳥だったオブリビオン達の群れは、瞬く間に半竜半鳥の群れと化した。
与えられた力に高揚する精神のまま、竜となった鳥は鬨の声を上げる。
「あげたてーーーーーッッッッッ!!!!」
……。
季節外れなカラーリングの鳥達は次々に竜の翼を広げて、空へ羽ばたいていった。
●帝竜への道
「今回の戦争もすごい事になっているね。ともあれ、集まってくれてありがとう」
猟兵達に軽く一礼をして、セシル・ラピエール(白磁・f01008)は今回の戦場について説明を始める。
向かう先は、竜化の風が吹き荒れる皆殺しの平野。
そこでは竜となったオブリビオンが飛び回り、猟兵達の行く手を阻んでいる。
「君達にお願いしたいのは、そのオブリビオンの排除だ。ここを抜けない限りには、大陸の奥地に進む事もできないからね」
つまりは前哨戦。帝竜と戦うための第一歩となるのだ。
「で、肝心の敵だけど――」
セシルの碧眼が泳ぐ。どう言うべきか迷ったようで、それはすぐに固まったらしく、はっきりとした口調でオブリビオンの姿を伝えた。
「チキンとターキーを持った鳥がドラゴンになって飛び回っているよ」
チキンとターキーを持った鳥がドラゴンになって飛び回っている。
正気を疑いたくなる状況を真面目な顔で言い放った青年は、「そうとしか言えないんだ」と肩を竦めた。
「まあ、色々言いたい気持ちは分かるけれど、手強いと思うよ。竜となった事で色々な要素を得ているからね」
自前の小さな翼よりも大きく、自在な動きを実現させる被膜の翼、ふかふかの羽毛に隠された頑丈な鱗、竜の証にして武装にもなる角。
完全な竜に至らない姿であっても、十分脅威と成り得る要素は揃えている。
何より彼らは『上空』というアドバンテージを手放す気がない。無策で突撃すれば上空から一方的に攻撃されて、撤退を強いられるのがオチだろう。
「戦うなら対策は必要だろうね。あとは……どうもこのオブリビオン達、弱点があるようでね。硬い鱗、一部分だけ薄い箇所があるんだ」
嘴の真下から突き出た赤い部分――"肉ぜん"と呼ばれるものだ。ここはまだ完全に竜となっていないようで、元々の姿と同程度の防御力で据え置かれている。
うまくここを狙う事ができれば、優位に立つ事ができるだろう。
その為にオブリビオンと同じ空を駆けても良いし、地上からその一点を穿つ一撃を放っても良い。戦い方は全て、猟兵達に一任される。
「では、行ってらっしゃい。ご武運を」
そう締めくくって、セシルは猟兵達を送り出した。
すずのほし
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すすのほしです。これが本当のドラゴンフライ。
こちらのシナリオは1章で完結する戦争シナリオとなっております。戦争の基本情報については帝竜戦役の説明をご確認ください。
竜化して空中戦を仕掛けてくるオブリビオンを退治し、帝竜への道を切り開きましょう!
☆プレイングボーナス☆
空中からの攻撃に対処し、硬いうろこに覆われた「急所」を攻撃する。
本シナリオでは上記に基づいた行動を取ると、戦闘が有利になります。
また、本シナリオでオブリビオンを撃破すると、『竜胆石(りんどうせき)』という美しい宝石がドロップします。おひとつで金貨40枚(40万円)相当。
アイテムとして配布される事はないため、何かがあるわけではありませんが、「そういうのが出るんだなあ」ということでお願いします。
それでは、皆様のご参加お待ちしております。
第1章 集団戦
『ケキリキターキー』
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POW : フェニックス・リボーン
自身が戦闘で瀕死になると【別のケキリキターキー】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD : パーフェクト・ディナー
【パチパチと油のはぜる音】【香辛料の胃を刺激する香り】【鮮やかな彩り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ : フライド・チキンorローストターキーアタック
【武器に超高温の油・衣、または水飴をまぶす】事で【熱々出来立てモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:橡こりす
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
サンディ・ノックス
本来の姿からして愉快なオブリビオンだったんだね
そのままなら普通の食性の同業者でも食べられたかもしれないのに勿体ないなあ
UC解放・夜陰を発動、グリモア猟兵から聞いた弱点を狙い発射
悪意が変じた水晶が刺さればそこから食い破れるはず
敵がUCを発動し高速モードになっても動じず水晶を向かわせる
体のどこかに触れればそこから水晶を増殖させ弱点を貫きにいく
体に当てることさえ困難なら
水晶を撃ちながら魔力を練り上げ【オーラ防御】して敵の攻撃に備える
敵が攻撃のために接近したときや攻撃を受けた直後なら
水晶の数も多いし1匹に一度は当てられるはず
…水晶に変じている魔力(悪意)は雑食
こんなフライでも美味しくいただくみたいだね
「めりー!」
「ちきん、あーんど、ろーすと!」
戦場を一言で表すとしたら、『わけがわからない』物に近かった。
美味しく焼けたローストチキンとローストターキーを振りかざした黒鳥に、いかにも後付感満載の竜の角と翼が生えているのだ。
そんな生物がクリスマスを祝い、鳥料理の出来栄えを声高に叫び、飛び回っている。
「あの見た目だと、元から愉快なオブリビオンだったんだね」
不思議な生物の飛び交う光景を前にして、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)はそう分析した。ドラゴンの要素は竜化を招く風が原因だとしても、全体的にもったりとしたフォルムは、あのオブリビオン特有のものだろう。
(「それにしても……」)
真面目さと愉快さが同居してシュールな姿となった鳥を見遣り、サンディは眉を下げる。
「ああ、勿体ないなあ……こんなにしてしまって」
こんな混ざり物となってしまったら、捻れた食性でもない限り食べてくれるモノなどいやしない。そのままの姿であれば"万人"受けするはずなのに、なんてもったいない話だ。
本当に残念だと肩を竦めて、一人の猟兵が香ばしい鳥料理の香りが充満する戦場へと足を踏み入れた。
「……流石に当たってくれないか」
先手必勝とばかりに放った《解放・夜陰》が高温の油で叩き落され、サンディは小さく呟く。竜の鱗に甘えて守りを疎かにする事はないらしい。
「あつあつ!」
「できたて!」
上空で油と水飴がまぶされれば、目にも留まらぬオブリビオンの高速移動が始まった。黒い線となって飛翔する鳥を水晶で追うが、それら全てが残像を素通りしていく。やはり簡単に当てさせてはくれないようだ。
そんな猟兵への反撃として、上空からローストチキンが振り抜かれた。勢いよく降り落ちる水飴を夜色のオーラで防いで、サンディは静かに機を伺う。
敵は高速で飛び回り、こちらが狙いを定められないようにするつもりなのだろう。もし何処かに当たったとしても、外見からは全く想像できない程の堅牢さを誇る鱗が全てを弾いてくれる。回避と守りは十分ということか。
しかしそれは、動き回るオブリビオン本体と同じく、弱点を抱えた防御行動だ。
例えば、高所から熱々の油でピンポイント爆撃をするために、若干高度を下げる時。
例えば、振り下ろしたローストターキーが、青年が鎧う闘気に防がれた時。
ほんの一瞬。超高速移動と反応速度を誇るケキリキターキーの行動が読める瞬間こそが、半竜を穿つ絶好の機会だ。
「こけっ!?」
「あぁ、これ見えちゃったんだ?」
一度目が放たれた直後、次弾として音もなく展開していた漆黒の水晶が、隙を生んでしまったオブリビオン達に次々と撃ち込まれた。ターキーで攻撃するために最も接近していた一体が慌てて空へ逃れようとしても、もう遅い。
逃げを打った個体の肉ずいを撃ち抜き、蜘蛛の子を散らすように飛び去っていく上空の個体にも、悪意の欠片は次々と打ち込まれていく。唐突な反撃に戸惑って回避行動が疎かになったのを幸いに、彼らの死を一つずつ植えていく。
「……さめかけ?」
痛みもなく、ただ竜鱗に食い込んだ破片を見て、上空のケキリキターキーが鳴いた。肉を貫く事もない、ただ張り付いただけの水晶の意図が掴めなかったらしい。
いまいち意思疎通が難しいが、言いたい事としてはこうだろう――『あれ、大したことないぞ?』と。
内容を正しく把握したサンディは、残念がる――事はなく、困惑するオブリビオンに不敵な笑みを浮かべてみせた。
「残念だね。それに食いつかれた時点で、俺の勝ちなんだよ」
告げるのと同時に、オブリビオンの黒い羽毛に隠された竜の鱗が一枚、水晶に置き換わる。完全に変換されたなら、隣接する鱗へ。腫瘍を思わせる悪意の塊が、おめでたい見た目の鳥を侵蝕していく。
「あ、あわっ、や、やめたれー!」
自身らの窮地を悟ったケキリキターキーが高速で飛び回り、水晶を振り落とそうとする。ある個体は料理で水晶を砕こうとべちんべちんと自分を叩き始めていた。
だが、全て無駄な行為に過ぎない。清水に垂らした黒墨を完全に取り除く事ができないように、広がってしまった『悪意』を防ぐ術はないのだ。弧を描く口元を手で覆い、青年はゆったりと首を横に振る。
「鳴き声のバリエーション、結構豊富なんだね? 悪いけど、俺じゃあその水晶は止めれないよ」
だからご愁傷さま。
同色の水晶に侵蝕されて悲鳴を上げる鳥に、サンディは穏やかに微笑んだまま心にもない謝罪を送る。実際はどうであれ、真偽を確かめる事などできはしない。
いよいよケキリキターキー達の全身は結晶に覆い尽くされて、武器として持っていた料理すら黒く染まる。とても美味しそうだとは思えない有様となってもまだ足りないと、黒水晶はその色を深くした。
「……こんなフライでも、美味しくいただくみたいだね」
体表から数多の結晶に喰い破られた肉ずいの痕。柔らかな鶏肉を剥き出しにした傷を目掛けて再び夜陰を放ち、それが宿した悪意の節操なさを笑う。
崩れていく黒い欠片。そこから零れてきた鮮やかな色彩も漆黒に埋もれていくのを見送り――サンディは僅かに目を細めた。
大成功
🔵🔵🔵
ルテネス・エストレア
突っ込みを、入れた方が良いのかしら……?
それはそれとして、揚げたてのお肉は美味しいわよね
空へと移動する手段を持ち得ないから、地上からの迎撃を試みましょう
空からの攻撃には【第六感】で避けていくわね
演舞するように、優しい優雅なステップを踏んでひらひら躱してみせるわ
わたしは自分の勘を信じているもの
きっと大丈夫よ
攻撃は遠距離から積極的に
弱点の嘴の真下の肉ぜんを狙っていきます
あなたの物語を終わらせるために、星紡の魔法を唱えましょう
【第六感】で弱点への経路を捉え、高速で星色の魔弾を放っていくわ
繰り返し星紡の魔法を放って、ダメージを負わせていきましょう
「あげたてっ!」
「めりくりっ!」
相変わらず、気の抜ける"鳴き声"が戦場で飛び交う。
「ええと……突っ込みを、入れた方が良いのかしら……?」
春の色彩を宿す少女――ルテネス・エストレア(Estrellita・f16335)は、困ったように首を傾げた。
とっくの昔に終わったイベントの帽子を被り、何を主張したいのかフライドチキンとローストターキーを手に持った鳥と言い難い見た目となった生物が、すごい勢いで空を飛び回っているのだ。突っ込みは入れ放題である。
いや、いちいち指摘を入れていれば日がくれてしまう。口を開いて行動する度に言いたい事が増える鳥だ。ずっと気にしていたら帝竜戦争が終わってしまう。
そんなのは良くない。ぷるぷると頭を振って気を取り直してから、ルテネスは香ばしい空間へと赴いた。
そして、戦場で"春"が舞う。
荒れ果てた大地を労るような、優しいステップ。長い鳥の子色の髪が動きを追いかけて、春の衣装がふわりふわりと優雅に揺れた。
何も知らぬ者が遠くから見たなら、透明な光の中で踊る花の精がそこにいると考えただろう。
スコールの勢いで注がれる光る雫は、触れれば火傷で済まないぐらいに熱せられた揚げ油と水飴の"銃弾"で、愛らしい舞踏もそれら全てを避ける為のものだと、誰も思うまい。時折降ってくる琥珀の欠片に至っては、チキンにまぶされた衣の破片が鋭利なものに変貌した物体だ。
「めしあがれっ!」
「また今度、ね」
時折急降下してくるローストターキーの一撃もひらりと躱して踊り続ける少女以外、ロマンチックとかけ離れた要素で構成された荒野の舞台。少しでもステップの順を間違えたり、立ち位置をずらしてしまえば、ふざけた姿に見合わない殺意の籠もる一撃を受ける危険がつきまとう。
あらゆる要素で強化されたオブリビオンの一撃を受けてしまえば、猟兵であっても無事で済むはずもない。
本体であるブックマーカーが無事なら再生する身だとしても、上演中に膝を折った演者に何がぶつけられるか分からないというのに。
それでもルテネスは恐れる事なくステップを踏む。研ぎ澄まされた己の勘に従って、それを疑うことなく、オブリビオンから距離を取るために大地を蹴った。
『大丈夫』という予感と自信を胸に宿したまま、春色の少女は竜殺しの一矢を放つ呪文を紡ぐ。
(「……がまん。揚げたての鶏の香りも、揚げたてな音も、全部がまん……」)
呼吸をすれば嫌でも鼻腔に侵入する香ばしいスパイスの香りと、そこかしこから聞こえる揚げたての鶏特有のぱちぱちという音の誘惑も跳ね除けて、ルテネスは舞踏と"歌"を続ける。この香りと音に猟兵を弱体化させる力はないと聞いているが、本能に訴えかけてくるのが良くない。
油の豪雨を避けるために少し大振りになった動作に合わせて、星とリボンをモチーフにしたドレスの裾が花開いた。
花が開き、すぐさま閉じられた空間。そこには《星紡》が生み出した、星色の魔弾が浮かんでいる。
「紡ぐのは星の魔法。あなたの物語を終わらせましょう」
演劇の台詞を連想する宣告。狙うはぽっこりと膨らんでいる、オブリビオンの赤い皮膚。放たれた魔弾は冷酷に、空へ向けて奔る流星となって暗色のオブリビオンへと迫る。
「こっ! おおざ、らっ!?」
描く軌道は全てが不規則。星の筋を残して駆ける魔弾は、第六感で導き出した経路を辿り、如何なる武器を以てしても貫けない竜翼で急所を庇ったケキリキターキーの肉ぜんを的確に撃ち抜いた。
やはり要領の掴めない鳴き声だが、意味としては『大皿みたいに硬いもので守るから効かないぞ』と言ったところのようだが、その思惑が外れた驚愕を抱えたまま、消滅していく。
しかし、防御を試みたところで、この魔弾が防げない事をオブリビオンは知らない。翼を広げて防ぐなら、隙間から穿つ。防御が間に合わないなら、そのまま貫く。それがルテネスが紡いだ、勘という要素で補強された『星』の力。
ささやかな流星は一つでは終わらず、軽やかな足取りで大地を踏む動作の最中も生み出されていく。流星群と称しても良いほどの密度と速度で飛来する魔弾を射ち出し続ける射手は、次々と落とされるオブリビオンにそっと手を振った。
「また、冬に。その時になったら、あなた達も楽しく過ごせると思うの」
だから、また今度。半年近く前に終わり、半年以上先の聖夜の事を語り、このオブリビオンが本来いたであろう一夜を想う。振る舞いからしてきっとそうだろう、と。
当然、彼らからの返事はないが――代わりに零れ落ちてきた、星光と似た輝きを宿した宝石を受け止めて、少女は柔らかく微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵
パルピ・ペルポル
これはまた美味しそうな相手ね。
ドラゴン化したら硬くなりそうだけどどうなのかしら…?
ちょっと味見したいところね?
まぁわたしも飛べるしそりゃ空中戦に持ち込むわよね。
まずは念動力で雨紡ぎの風糸を自らの周囲に張り巡らせておいて、敵の行動を阻兼盾として使用するわ。
そこからさらに蜘蛛の巣状に風糸を展開して、急襲されないように警戒しつつ進んで、敵に糸を絡めて動きを阻害したとに火事場のなんとやらを使って全力で切り裂いてあげるわ。
嘴に糸をひっかける感じでその下の弱点を狙うとしますか。
あとはドラゴンの翼も切り落とせば落下するんじゃないかしらね。自分のには何か持ってるし。
竜胆石もちゃんと確保するわよー。
暴力的に本能を刺激してくる肉の芳香。戦場は相変わらず、肉料理に特化したキッチンのような雰囲気を醸し出している。
そんな上空で一人、小さな猟兵が黒い鳥の群れに空中戦を挑んでいた。
外見だけで言うなら柔らかそうな足の間を潜り抜けて、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は足の持ち主をまじまじと見上げる。
「んー、近くで見れば見るほど、美味しそうな相手ね」
ユーベルコードの影響で、全身から香辛料の効いた肉料理の香りを漂わせて、つやつや輝く鳥料理を振り回すオブリビオンだ。ただ、どこから見ても立派な鳥にしか見えない身体に、やっつけ感満載の角と皮膜の翼を生やした状態だが。
(「でも、ドラゴン化したらお肉も硬くなりそうだけど……どうなのかしら?」)
珍妙な半竜半鳥のオブリビオン。中身に詰まっているだろう鶏肉を想像して、パルピは唸る。
はたして竜化の風は、オブリビオンの肉にまで効果を及ぼしているのか。彼らの持つ料理だけは普通の鶏料理に見えるが、あちらもひそかに竜となっているのか。疑問は尽きない。
「……ちょっと味見したいところね」
意外な珍味となっているかもしれない。張り巡らした雨紡ぎの風糸を盾としつつ、パルピはオブリビオンから距離を取る。後を追おうとした個体が不可視の糸に阻まれて、むにぃ、と不思議な形に歪んだ。
「めしあがれー!」
一体は防ぐが、妖精を狙う鳥はこいつだけではない。『味見』という単語に反応したらしいケキリキターキー達が、わらわらと集まってくる。
味見がしたいなら存分にということか。四方から凶悪な棍棒と化したチキンが振り下ろされて、ターキーから滲んだ熱い油が飛び散らされた。
「あ、ごめん。わたし自分のペースで食べたいの」
ケキリキターキーからの"善意"を適当に受け流して、パルピは糸を走らせた。ピンと伸ばされた細く長い盾が、ターキーと油を溢そうとする手羽に食い込んで、攻撃を阻害する。
だが、攻撃が少し妨害された程度で諦める鳥ではない。するりとこの空域を離れていく妖精を追撃するべく、ターキーとチキンを持ち直そうとして、
「れ、れいとうっ!?」
――己の身が動かない事に気付き、愕然とした鳴き声を上げた。
竜の翼を得てあれだけ自由に飛び回れたはずの体が、全く動かない。体を揺らす程の軽い動作ならできるが、どう現状を打破するのか。
「味見って言っただけで、あんなに来るとは思わなかったよ。手間が省けて良かったけどね」
黒い鳥達が藻掻く中、パルピがぐるりと周囲を見渡す。自身の周辺にいたオブリビオンは、これで全てだ。
彼女は風糸を盾にして逃げ回っていたのではない。手を触れずとも操作できるそれを密かに戦場一帯に広げて、不可視の蜘蛛の巣を作り上げていたのだ。
巣の中央に座す狩猟者の元へ必殺の一端が漂い、掴まれる。最早逃亡も叶わない段階となり、狩猟者たるパルピは不敵に唇を歪めた。
「覚悟はいい? ここからは、まとめていくよ……!」
妖精ここ一番の力――という割には平然と発動された《火事場のなんとやら》で宿った人外の怪力が、数多のオブリビオンを絡めた糸を一斉に操作する。
暴れないようにふくれた体を締め上げ、嘴に糸が引っ掛けられる。その流れで肉ぜんも斬り裂かれて、多彩で気の抜けた悲鳴が巣のあちらこちらで上がった。
骸の海へと消えていくオブリビオンの体。それがあった場所に鮮やかに輝く宝石が残されているのを視認し、風糸を繭として包み込む。これは裂いてはいけないし、落としてもいけない。
「……ぬけがけっ!」
弱点に一撃を貰い消滅する群れの中で、一匹のケキリキターキーが這々の体で転がり出た。糸の絡みが少し甘かったらしい。竜翼を羽ばたかせて、体勢を整えている。
「はい、飛ぶ時は自分の力でね」
しかし、得られた自由は一瞬のこと。たわんでいた糸が真っ直ぐに伸びて、その個体が背中に生やした竜の翼に添えられた。目に見えない糸が既に対処に回っている事にも気づかず、鼻息荒く黒い鳥は飛翔する。
そして、細く頑丈な雨紡ぎの風糸が食い込んでいた部位は――冗談じみた容易さで、すっぱりと切断された。
「さ、さんびょう、るーるうぅぅぅぅぅぅぅ……」
立派な竜の翼を根本に近い箇所から切り落とされたケキリキターキーの、哀れな悲鳴がフェードアウトしていく。落下しながらでも料理を手放さないのは(武器として扱っていた時点で疑問符は付くが)、食べ物を粗末にしない鶏の鑑と評していいのかもしれない。
かくして借り物の翼を断たれた個体は、かなり痛そうな音と共に荒れ地に激突する。竜化の風に晒される前ならまだしも、半竜となった事で得た竜鱗は、墜落したぐらいでは傷など付かない。
故にこの個体は、自由自在に飛び回れる移動手段を失っただけだ。少し動きは不自由となってしまうが、元より飛行は可能。大事なチキンとターキーが砂で汚れないように注意しつつ、空へ戻るためケキリキターキーは体を反転させる。
いざ空へ。気合を入れ直して、地面から飛び立つ力を込めた体へ、小さな塊が飛び込んできた。
「空には帰さないわ。味見する暇がなかったのは残念だけど……また今度ね」
飛び込んできた塊――細身の短剣を肉ぜんに深く突き刺したパルピは、ふわふわの羽毛と硬い鱗、そしてもっちりと自分の体を受け止めた柔らかいお肉の体を堪能してから離れる。
「ま、また……またっ、らいねーん!」
急所を貫かれて、不思議な断末魔を残して消滅するケキリキターキー。完全に消えるのを見送ってから、パルピは小さく声を上げる。
「……鶏料理だけは、本当に味見させてもらっても良かったかもしれないわね」
あれは美味しそうだったなあ……という呟きは、吹き抜けた一陣の風に紛れていった。
大成功
🔵🔵🔵
檻神・百々女
空を飛ぶのは翼をもつ者の特権じゃないんだぜーっ!いくわよー!
電脳結界を複製、展開!必要な人は使っちゃってー!
トドメちゃんはちょーっと小細工して複数組み合わせてーもーっと高く飛べるようにしちゃうんだから!
結界術で動きに制限をかけつつ、あとは弱点を狙って結界を叩き込んじゃうわよっ
最近は厚くなってきたからちょっと恋しい気分もあるけど、さっさと片付けちゃいましょ!
――SCRIPT ON!
「とびだしっ!?」
「あっ、驚いたって意味だね? ふふん、空を飛ぶのは翼をもつ者の特権じゃないんだぜーっ!
」
食欲を激しく刺激する揚げ物の香りが漂う上空で、鮮やかな赤と黄緑が翻る。
そう、地上よりも広く、どこまでも自由に動ける空は、有翼種だけのものではない。《代替術式》で複製して、幾重にも重ねられた電脳結界を足場として、檻神・百々女(最新の退魔少女・f26051)はオブリビオンと同じ空を駆けていた。
そこは特別な存在だけに許されたフィールドではないと、術者の意のままに動く結界が少女の体を高く跳ね上げる。ジャンプ台の役目を果たしたパネルは即座に分解されて、再び檻神の周囲に展開。その進路に割って入ろうとした生意気なオブリビオンは、滑り込ませた結界に阻ませた。
むぎゅうという哀れっぽい呻きは命中の合図だ。壁となった結界を即座に細い柱に変換し、肉ぜんを撃ち抜く。オブリビオンの黒い体が消えていくのを確認しつつ、檻神は空中を走り続ける。
「こっちこっち! トドメちゃんを捕まえられるかな!」
ぶつけられるジューシーな鶏料理をガードして、青白い光の足場と己の勘を頼りに進む。デタラメに進むのではなく、有限の電脳結界を効率的に配置できるように。相手が高速移動をするならまだしも、攻撃力や防御力を高めるだけなら、この戦い方で何も問題はないのだ。
檻神の誘導も相まって、周囲のオブリビオンがわらわらと少女を追いかけ始める。スライドしてくる電脳結界が危険物だと理解した鳥達は、目の前にパネルがやってきたらそっと回り道する知恵も見せていた。
が、全部が全部避けられるものではないし、竜化で視野が物凄く広がるものでもない。見えない部分というのは当然存在する。
「こけぶっ」
ケキリキターキーの丸い体が電脳結界にぶつかり、背中側から歪む。青いウォールにチキンを弾かれて、後退していった個体だ。大福餅の如き見た目でも、羽毛の下に生え揃った鱗のお陰で完全に潰れる事はないが、壁に阻まれて動きが止まる。
それは、あまりにも致命的過ぎる隙だ。
「背後不注意だね! 隙ありだよ!」
大なり小なり、何かしらの隙を晒すこと。それはこの戦いにおいて、檻神に必殺の一撃を許す事を意味していた。
即座にスライドしてきた他の結界が、若干平たくなったケキリキターキーの弱点に叩き込まれる。敵を屠るのと同時に結界は散開して、空を飛び回って眈々と機を伺い始めた。
檻神が動いてケキリキターキーを誘導し、結界が動く度に竜胆石が零れていく。中にはターキーをぶつけて電脳結界を破壊すべくとする勇敢な個体もいたが、術者の意志に従って操作できる結界は、三次元的な動きで全て回避していく。
「ち、ちらばれー! ちらばれーっ! ……こっ!?」
そんな戦況に、固まっているよりか散らばって遠距離戦に専念したほうが良いと判断したか。こんがり焼けたチキンをかざして、普通に意味の通り言葉での号令を出した鳥が、短く叫んだ。
見てしまったのは、黒いもっちりボディを青く染めるほどの距離に壁として並べられた、電子的な光を放つパネル。
自分達は檻の中に招かれたのだとケキリキターキー達が気付いた時にはもう遅い。
一部の個体が《パーフェクト・ディナー》の強化を変更しない内に、全力で仕留める準備は整った。
「さっさと片付けちゃいましょ! 一斉攻撃、いっくよー!」
満足な回避行動もできない程の狭い空間。その真上に立った檻神の術式が、電脳結界を通じて発現する。元より与える気はないが、逃げ出す暇すら与えない高速詠唱を以て現実世界に次々と引き出される電脳術式が。
いつか『誰にでも』使えて、その内『ありふれたもの』と呼ばれるようになるはずの彼女の魔術は、過去より染み出してきた亡霊達を射抜き、骸の海へと返していった。
大成功
🔵🔵🔵
亜儀流野・珠
チキンとターキーを持った鳥がドラゴンになって飛び回っているではないか!
……わけわからんな!
まあ良く分からんものはさっさと倒して見なかった事にするのが一番だろう。うん。
ではシンプルに行こう。
空に拳を向け「焔弾」連発だ!
勿論狙いは……その、嘴の下のアレだ!
直接狙うのは難しいだろうから焔弾を顔付近で
爆発させての範囲攻撃で狙ってみるとしよう。
爆風でバランス崩して狙い易くなるかもしれんしな!
弱点は勿論だが、手に持っている肉も狙ってみようか。
武器を落とせば有利に戦えるだろう。
……というのは建前で俺が食べたいだけだがな!
ミスト・ペルメオス
【SPD】
なにあれ。
…いや、見た目はともかくとして…脅威であれば排除するッ。
愛機たる機械鎧(人型機動兵器)を駆って参戦。
マシンヘルム等を介して念動力を活用、機体をフルコントロール。
空中戦を得意とする敵ならば愛機の全力を以て挑む。
スラスターを駆使して飛翔、念動力による超感覚も併せて索敵。
敵を捉え次第【クイックショット・ホークアイ】。
瞬間的に狙いを定め、可変速ビームキャノンの対機動兵器モードを以て撃ち抜く。
弱点を一発で貫ければよいが、そうでなくとも…速射して何度もダメージを与え、弱らせていけば…!
もしも、竜胆石とやらを回収出来たなら…いくつか故郷での研究資料に回そうか。
※他の方との共闘等、歓迎です
荒野の空からオブリビオンの影が一つずつ消えていく。
それでも、チキンとターキーを持った鳥がドラゴンになって、未だ飛び回っている現実は変わっていなかった。
「なにあれ」
「本当にわけわからんな!」
そんな、どの世界でもお目にかかれそうにない理解しがたい光景を前に、ミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)と亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)の声が、きれいに揃った。
異口同音の困惑に、(見た目上は)同年代の二人が顔を見合わせた。その気持ちは分からないでもない。サムライエンパイアにもスペースシップワールドにも、こんな生物いてたまるかという話である。
しかし幾度とない繰り返しとなって恐縮だが、本当に突っ込みを入れていくとキリがないのだ。帝竜戦争のためにも、ある程度は諦めるのが精神衛生的にも良い。
「まあ、よく分からんものはさっさと倒して、見なかった事にするのが一番だろう、うん」
「は、はい。見た目はともかくとして……脅威であれば排除するのみです」
当然猟兵達の切り替えも早い。いくら外見が愉快でも相手はオブリビオン、やる事はたった一つだ。
互いに違う空間に陣取ると決めた猟兵は、それぞれの力を存分に発揮できる場所へと向かっていく。
低い位置で結ばれた銀髪と、それと同色の狐尾を風になびかせて、妖狐は構えを取る。小さな体を取り巻く周囲に突如火が灯り、それらは握り締められた拳へと収束していく。
「貫き通せ!」
そして、天へ向けて突き出された拳から超圧縮した狐火――《焔弾》が撃ち出された。自身に降りかかる油や水飴、衣の欠片から身を守る位置を勘で導き出して回避しつつ、素早く次弾も射出する。
高い命中精度を誇る魔弾と言えど、高速飛行をする相手の弱点を確実に貫けるとは思っていない。故に、火弾が狙うのはその少しだけ上だ。
「くらっかー!?」
様々な性能を発揮できる狐火は変幻自在。幅広な顔の前で、圧縮された狐火が弾ける。肉ぜんごと顔を焼かれたケキリキターキーが叫んだパーティグッズのような華やかさはないが、堅実で派手な一手だ。
進行方向で爆発させてやれば、爆風を諸に受ける事になった黒い体が空中でごろりとひっくり返る。高速飛行を続けるケキリキターキーに唐突に割り込んで爆発する小さな炎の予兆を察知して制止し、方向転換をする器用さは備わっていないらしい。
下から容赦なく放たれる炎に撹乱され、攻撃も忘れて逃げ惑うオブリビオンの群れへと、亜儀流野は構う事なく空を穿ち続ける。四方八方に飛び散る不規則な動きを見切り、青と黒が入り交じる空に焔の色を紛れ込ませた。
「俺は『さっさと倒す』と言っただろう! 有言実行だ!」
その高らかな言葉は、個性豊かな悲鳴を上げて散り散りになるケキリキターキー達の耳にも、確かに届いた。
空中戦を得意とする敵ならば、遠慮はしない。元より上下の概念のない世界で戦うための術を身に着けていたミストにとって、こういった戦闘は望むところだ。黒い鳥の名を持つ愛機と共に、降り落ちる油やらの間を縫って空へと駆け上がる。その過程で行われるのは、戦況の詳細な把握だ。
ちなみに、ブラックバードの嗅覚センサーだけはそっと遮断した。ここまで肉の匂いがきついと、嗅覚での索敵は困難だろう。頼れるのはそれ以外の五感、そしてミストが宿す念動力だ。
マシンヘルムを介した、サイキックエナジーによる索敵。不可視の力が周辺空域をサーチし、《焔弾》の軌道や爆発範囲、《パーフェクト・ディナー》で強化されたオブリビオンの情報が彼の思考に送られていく。
確認。敵の数は随分と減りつつあり、意図的な動きさえしなければ対空砲たる狐火に巻き込まれる事もないだろう。
(「――ならば」)
求められるのは確実かつ迅速な掃討。判断と同時に、可変速ビームキャノンが対機動兵器に特化した形状に変化し、エネルギーを充填する。
仕留めやすいと踏んだのは、攻撃に特化した個体だ。こちらに気付いて丸い体を向けてきたのと同時に、ビームキャノンの砲口が炎とは異なる"火"を放つ。
「こっ!」
相手が水飴を飛ばすよりも早く、狙い澄ました一射が肉ぜんを貫く。超感覚で命中を把握したミストは、ケキリキターキーの消滅を見ずに次なる敵へと狙いを定めた。
「れいとう!」
「ちきん!」
その射線に二体の鳥が割って入る。キャノンの光線をもっちりした頑丈な体で弾くガード担当と言ったところか。
(「その程度……ッ!」)
だが、このぐらいの妨害は想定済みだ。守りに特化した個体は、ビームキャノンの連射を見舞うまで。
一度で駄目なら二度。それも駄目なら三度。弾かれた閃光が羽毛を焦がし、視界を焼いて、与えられる『痛打とは成りえない衝撃』でケキリキターキーを押し切る。仲間の守りを当てにして油や水飴の塊を投げてくる個体の攻撃を回避しながら、ミストはその時を待ち続ける。
「さぷらーいず!」
その背後から、勢いよく振り回される鳥の足。ミストが迎え撃つよりも早く、彼とオブリビオンの間を炎が高速で通過していった。
およそ料理が上げていいものではない音と共に、少年を襲う予定だった武器のチキンが空高く弾き飛ばされる。
「ははっ、こっちを狙われるのは予想してなかっただろう!」
「支援、感謝します!」
感謝は短く、事態の把握は迅速に。一瞬にして隙だらけとなったケキリキターキーの弱点を目掛けて、ビームキャノンの光線が貫通する。
「もっ! もったいないー……!」
悲しすぎる断末魔だった。衝撃で皿もひっくり返り、消滅間際な上に何かをとっさに掴むのに適さない手羽が空を切る。
てかてかに焼かれたチキンだけでなく、きれいに盛り付けられていた七面鳥の丸焼きも重力に従い、落下していった。
「おおっと」
荒れ地に叩き付けられる寸前、亜儀流野の手がそれをさっと掠め取った。遅れてやってきたチキンもしっかりキャッチしてやれば、作り立ての温かさを保った料理は粗末にならずに済む。
尻尾をわさわさと振りながら、ちょっとだけ一口。ユーベルコードのお陰か元々『そういうもの』として定義されていたかは分からないが、出来たての味を彼女に提供してくれた。
「うまっ! 何だこれは、味付けから焼き加減まで完璧すぎるだろう!」
かりかりの皮を抜けた先にある、程よい柔らかさの肉。かじった部分から滲み出してくる肉汁。戦場全体に蔓延していてお腹いっぱいになるぐらい嗅いでいるはずなのに、近くに来るとやはり食欲を刺激するスパイスの芳香。あらゆる要素が完璧な鶏料理に、亜儀流野の頬が緩む。
思わず漏れた声と一緒に鳥の足を握る拳を天に突き出して、対空攻撃も忘れない。これは決して美味しい料理に出会えた事に対するガッツポーズではない、《焔弾》の発動だ。
今まで通りに炎を炸裂させる範囲攻撃と、攻撃を阻害するピンポイント射撃の使い分け。攻防に使用する武器を落とされたなら、ケキリキターキー達は身一つで猟兵達に立ち向かわなくてはならない。それを防ごうとすれば、爆風と火炎に炙られて致命的なまでに隙を晒してしまう。
「しんなり……」
どうしようもない二択を迫られる鳥が、意気消沈した声を上げた。
そんな二つの役割を担う狐火の援護を受けて、ミストもまた動く。ひたすら防御に徹する二匹の体が衝撃で僅かに反り返り、体勢を崩した瞬間は見逃さない。
「……ッ!」
時間として、瞬きの間も無いほどの刹那。防御を解いたケキリキターキー達の弱点が撃ち抜かれた。肉ぜんから貫通したビームが後ろで遠距離攻撃に徹していた個体にも命中し、その体勢を崩させる。
ならばと放たれるのは追撃の一射。悲鳴を上げる暇すら無く、もう一体も骸の海へ帰還していく。
(「三体撃破。残りの数は……!」)
流動的な戦況、そして状況を分析しながら、黒い猟兵は空を駆け続けた。無心に、ここにいるのは珍妙すぎる外見のナマモノではなく、倒すべき脅威だと認識しながら。
精密で正確な炎と光の射撃。
その弾幕が止んだ頃、空から降ってきたのは敵意を持った熱の塊ではなく。流星の煌めきを帯びて落ちてくる、数多の宝石だった。
大成功
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