●深緑からの呼び声
とてもきれいな声がきこえた。
森でお散歩している時にきこえた声。
奥の方からきこえてきた、女の子の声。
その声がとっても楽しそうで、どうしてもそこにいってみたくなった。
「遠くに行ってはいけません」ってママは言っていたけれど、ちょっとだけなら大丈夫。こわいものを見たら、走ってかえれば大丈夫。
でも、こんなにすてきな声だから、きっとこわいものじゃない。すてきな誰かがいるはずなんだ。
ないしょで森の奥にいって、声のきこえる方に行く。奥にいったら、その声が歌だって分かった。だれかが森の奥で歌っているんだ。
歌声がどんどん大きくなってきて、その先に誰かがいる感じがしたから、こっそりと木の後ろから見てみたら、女の子が歌って踊るのが見えた。
お花のおともだちみたいな、頭のてっぺんに葉っぱがついた、土の色をした女の子。
ぴゅいぴゅいと歌いながら輪になって、くるくるおどって、ほんとうに楽しそう。
ほんとうに、とても楽しそうだったから。だからわたしも一緒に歌いたくて、女の子たちに話しかけた。
――たのしそう。わたしも一緒に歌わせて。わたしも歌うのだいすきなの。
そう言ったら、一人の女の子がにこにこ笑顔で、わたしの手をひっぱった。
わたしを輪っかのまんなかまでひっぱって、みんなでぐるりと囲んでくる。
それで、葉っぱの子たちが、みんなで大きく口をあけて、それで――、
●従者は語る
「集まってくれてありがとう、皆」
執事服の青年――セシル・ラピエール(サーヴァント・f01008)がそう言って一礼した。
「アックス&ウィザーズ世界にある森……そこに住み着いたアルラウネが、人を森に誘い込んで殺してしまう事件を予知したんだ」
ただ森に住み着いただけなら事件として予知されることはないのだが、その森のすぐ近くに小さな村があるのだ。
森に住まうアルラウネは、人を魅了する歌を口ずさみ、輪になって踊りながら、歌に誘われてやってきた人間を殺そうとしている。
幸いにしてまだ犠牲者は出ていない。現場近くに転移してすぐ戦闘を開始すれば、アルラウネ達も猟兵たちを排除するために歌を止めて攻撃してくるだろう。
「で、アルラウネ達の歌についてなんだけど……実は悪影響なんて、全然無いんだ。
ボク達猟兵にも、普通の人達にもね。
戦闘になればあっちも歌うのをやめるし、気にしなくていいよ」
アルラウネの歌は、特にこれといって気をつけるべき点もない、ただの歌だ。歌詞も存在しない、ただの音といっても差支えない。
猟兵でも、特別な力を持たない一般人であっても、聞いたところで何の影響もない"歌"を、心底から楽しそうに歌い上げる。
様子を見ようと思わず足を向けてしまいたくなるような、魅力的な音を。
「……正直、アルラウネだけでこんな手の込んだ事を考えたとは、とても思えないんだよね」
セシルは、アルラウネ達に人を魅了する歌い方を教えた誰かがいる事を示唆する。
強い力を持たなくても、雰囲気で人を誘って虜にして、そうして殺す事をできると教えたオブリビオンが。
「キミ達には、その"誰かさん"の討伐までお願いしたいんだ。
アルラウネを全滅させたら、"誰かさん"は、様子を見に戻ってくるはずだよ。
子分が静かになったから、何かあったに違いないって思ってね」
そしてその親玉を倒せば、無事にこの事件は解決だ。
森の安全とその周辺に住まう人々のため、しっかりとオブリビオンを全滅させてほしいと締めくくった。
そして、伝え忘れが無い事を確認して転送の準備に入ろうとしたセシルが、あ、と声をあげる。
何か言い忘れていた事があったらしい。
「そういえば現場の近くに、花畑があるのが見えたんだ。
深い青色の花と小さな白い花がたくさん咲いてて、星空みたいで綺麗なところ。
盛大な宴会というものじゃないけど……そこに軽食とかを持ち込んで、ちょっとしたピクニックがてら休憩とか、どうかな?」
事件に関わった者が必ず参加しなくてはいけないものではないし、もっと言えば、ただピクニックを楽しみに来るだけでも全然構わない。
まあ、考えておいてよ。そう言ってセシルは笑って、軽く手を振った。
すずのほし
初シナリオです。ゆるくやっていこうと思っていますが、よろしくお願いします。
1・2章は戦闘、3章は日常パートです。
人を誘い込もうとするアルラウネと、入れ知恵をしたボスのオブリビオンを倒す流れになっています。
3章では星空を思わせる花畑の景色を楽しみつつ軽食をとったり、雑談したり、ご飯の匂いにつられてやってきた動物達を構いつつお過ごしください。
また、グリモア猟兵のセシルは、第3章でお客様のPCよりお誘いがあった場合以外登場しません。
それでは、ご参加お待ちしています。
第1章 集団戦
『アルラウネ』
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POW : ルナティック・クライ
【聞く者を狂わせるおぞましい叫び声 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : スクリーミング・レギオン
レベル×5体の、小型の戦闘用【マンドレイク(アルラウネの幼生) 】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ : リパルシブ・シャウト
対象のユーベルコードに対し【それを吹き飛ばす程の大音声 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
犬曇・猫晴
うん。
良い歌声だね。人に仇なす存在じゃないなら、持って帰りたくない程に。
ということでお嬢さん方、ぼくと一緒に踊ろうか。
使用する武器は夜鳥と嘴。
人の形をしているなら、狙うは喉。
駄目なら駄目で、根を切る。
許してとは言わないけども、恨むのだけは勘弁して欲しいな。
恨むなら入れ知恵した奴を恨んでね。
君たちが来世で歌姫に生まれ変わるのを祈って待ってるよ。
森の中に響く歌声。そこに拍手の音が割り込んでくる。
アルラウネ達は歌を止めて、一斉にその方向へと向いた。
「うん、良い歌声だね。具体的に言うと――人に仇なす存在じゃないなら、持って帰りたくないぐらい」
褒めているのか貶しているのか分からない発言と共に現れたのは、犬曇・猫晴(亡郷・f01003)。 小手を装着し、片手に剣鉈を携えた長身の青年だ。
「だれ?」「なに?」「てき?」「「りょうへいよ!」「ころさないと!」
不倶戴天の敵である猟兵の登場に、アルラウネ達は表情を強張らせて散開する。
先程までののどかな雰囲気とは違い、周辺から棘のように突き刺さる殺意。その冷ややかな空気に全く怯むこと無く、犬曇は剣鉈を差し向けて、薄い笑みを浮かべた。
「そんなに怖い顔しないでほしいな。さあ、お嬢さん方、ぼくと一緒に踊ろうか」
こうして、猟兵とオブリビオンの戦いは幕を開けた。
犬曇を取り囲んだアルラウネの一人が、大きく息を吸う。
楽しげだった歌とは違う、聞いた者の精神を狂わせる絶叫の予備動作だ。
距離を詰めてくる犬曇を狂わせて苦しめて、あわよくば狂死させようと、必殺の叫びを浴びせようとして、
「――……ッッッ!!??」
透明な細糸に喉を締め上げられ、困惑の表情で首を掻きむしる羽目となった。悶えるたびに、首元からペンダントのように垂れ下がった小刀が揺れる。
アウラウネの生命活動に呼吸は必要なくても、人の形をしているなら、発声を司る器官は一つしかない。
視認性の低いワイヤーでそこを塞がれた少女に、犬曇は優しく語りかける。
「おや、声が詰まったのかな。それは大変だね」
助けてあげよう。
小手から射出されたワイヤーがさらに締まり、アルラウネの細喉がねじ切れる。
突然の死を遂げた仲間。そこにアルラウネ達の視線が集まった隙を突いて、犬曇が肉薄した。
「来世では素敵な歌姫に生まれ変わってね。祈って待ってるから」
片手で振るわれた夜鳥が他の個体の首を切り裂き、巧みに操られた嘴の刃が更に別の個体を貫く。
「ひどい!」「なんてひと!」「よくも!よくも!」「あなたもころしてやるから!」
「おっと、恨んだりするのだけは勘弁して欲しいな。きみたちが恨むのはぼくじゃなくて、お嬢さん方に入れ知恵した奴だよ」
アルラウネ達の怒りの視線と批難をさらりと受け流しながら、犬曇はそう嘯いた。
成功
🔵🔵🔴
リコリス・シュピーゲル
どんなに楽しい歌でも、それを凶器として使うつもりなら黙っていませんわ
それはいけないことだとしっかり教えて差し上げましょう
【ドラゴニック・エンド】を射程ぎりぎりの距離から撃ちます
ある程度の人数がいるのなら、一体に確実に当てて相手の攻撃を誘発しましょう
叫ぶ前兆が見えた、あるいは私が槍を投げ終えたらあの子たちから全力で距離を取りますの
間に合わなかったときは「オーラ防御」で叫び声の影響を抑えることができるといいのですけど、どうでしょう?
フラム、あのかわいいお花に拍手代わりの炎をお願い
真っ赤な炎で、あの子たちを彩ってあげて
絡みアドリブ等大歓迎
リコリス・シュピーゲル(月華の誓い・f01271)は戦場と、そこでひしめくアルラウネ達を見据える。
歌は凶器として使われるものではないのに、あの花達は人を殺す道具として扱った。
「それはいけない事だと、その身をもってしっかり教えて差し上げましょう」
静かに呟いたリコリスの手に握られているのは、小柄な体躯に似つかわしくない長大な朱のランス。
朱槍を携えたまま、その場で踊るようにターン。黒いドレスの裾が翻り、新手へと群がろうとするアルラウネへと槍が投射された。
そして、緑の群れから即座に離れる。歌と違って、アルラウネ達の絶叫は凶器そのものだ。彼女らの攻撃圏内に居残るわけにいかない。
だが、離脱の際も優雅に。たとえ戦場であっても、身に付けた乙女の嗜みは忘れてはならない。
舞踏の要領で距離を取ったリコリスの視界に映ったのは、息を吸い込み終わったアルラウネと、その個体に向けて槍が突き刺さろうとする瞬間だった。
「GYAaaaaaaaa――――――――ッ!!!!」
槍が己の腹を突き破っても、否、突き破った激痛が合わさったからこそ放たれる、狂気の絶叫。
周囲の空気が震え、戦場を取り囲む木々がざわめき、葉が落ちて幹が抉れる。
十分に距離が開いていた事で威力は減衰されて、僅かに後退する程度で済んだが、ダメージになる程ではない「音」はしっかりとリコリスの耳に届いた。
「……ん、くっ」
思わず耳を塞いでしまう。至近距離でなかったおかげで、叫びに含まれる人を狂わせる力は発揮されなかったものの、普通に聞いても色々な意味で狂ってしまいそうなぐらい、耳障りな声だった。
「ええ、ええ。とても良い"歌"ですこと。だから――」
叫び終わったアルラウネの腹部から、ちろりと紅が漏れる。
「あのかわいいお花に、拍手代わりの炎をお願いしたいわ」
観客が惜しみない拍手を歌姫に送るように、それでいて賞賛の欠片もない冷ややかな声で命じれば、槍の刺さったアルラウネが瞬く間に炎に包まれた。
乾いた薪の如く燃え上がり、崩れ落ちていくアルラウネの中から、炎よりも赤い鮮やかな朱が躍り出る。
空へと上る鮮やかな朱。蒼空に映える、その翼を広げたのは――
「ねえ、フラム。あなたの真っ赤な炎で、あの子たちを彩ってあげて」
翼竜フラム。
【ドラゴニック・エンド】として放たれた槍の、もう一つの姿。
焼却を命じられた翼竜は喉を反らし――散り散りになって逃げ惑う植物の娘達を、容赦なく焼き払った。
大成功
🔵🔵🔵
坂上・半
おまんまのため今日もひと働き、と
俺って働きもんだね
んで、あー、数
数かー……寄って斬って乱戦、って思ったけど俺よりちっさくて面倒だな
よし、全部吹っ飛ばそう
地形の利用と呪詛耐性、オーラ防御で身を守って時々敵を盾にするもだな
んで回避は第六感と見切りに任せる
妖剣解放、丁寧にやる相手じゃあない
ざっと薙ぎ払って数を減らすぜ
あぁ、子供が紛れ込まないようにある程度は注意しといてやらぁな
あん?
俺も子供?
俺はお仕事中のいっぱしですー
「ちいと遅れたが、おまんまのため今日もひと働き、と。俺って働きもんだね」
下草が焼き払われた戦場。そこに妖刀を携えた坂上・半(羅刹の妖剣士・f06254)が現れる。
出遅れたとは言うが、彼だけが離れた場所に転送される事故があったわけではない。
アルラウネの歌に誘われる未来を予知され、本来は精神もろとも肉体を破壊されるはずだった少女。
歌が聞こえなくなった事を疑問に思いながらも、それでもなお森の奥へ踏み入ろうとした彼女に、注意をしに向かっていたのだ。
「あなたも、わたしとおんなじぐらいの男の子なのに……」
「俺は仕事ですー。お仕事のいっぱしですー」
……そんな一幕もあったが、さておき。
「またきたわ!」「かずをふやそう!」「かこんでたたいて!」「いっせいに!」
まだまだ数の多いアルラウネ達が集い、地面からマンドレイクを召喚する。
その様子を見た坂上は、あー、と声を上げた。
数が多すぎるのは構わない。乱戦は望むところだ。
だが――相手が小さすぎるのが良くない。坂上よりもずっと小柄のアルラウネと、ぽこぽこと湧き出てくる更に小さいマンドレイク。どいつもこいつも、寄って斬るのに骨が折れそうな大きさだ。
これは面倒だ。面倒だし、真面目に相手をしていたら日が暮れる。ならば、
「これは丁寧にやる相手じゃあないな――全部吹っ飛ばそう」
坂上の言葉と意志を合図として、彼の持つ刀から瘴気が噴き出す。
数多の羅刹を、そして一族を斬り殺した怨念を封じた妖刀、その力の解放。
自身の周囲にオーラとして展開された怨念を纏い、紫の残光を引きながら、少年は戦場を駆ける。
一瞬の内に間合いを詰めて放たれたのは、妖気を帯びた銀の一閃。坂上のいた場所目掛けて飛びかかろうとしたマンドレイクが、たった一刀の下に斬り伏せられ、生み出された衝撃波は後ろにいたアルラウネ達を消し飛ばした。
「え、な、」
残像だけ残して消える少年。その姿を追おうとしたアルラウネが、逆袈裟に裂かれて倒れ伏す。
捉えられぬなら無差別に攻撃するまでと、悲鳴を上げようとしたアルラウネの首がころりと落ちる。
斬撃で穿たれた大地の破片が槌となり、生み出される過程にあった幼体を叩き潰す。
振りまかれる殺気の根源を何とか捉え、坂上の懐に入ろうと踏み込んできた勇敢なアルラウネが、一際強く噴き出した怨念を諸に浴びて、泡を吹いて悶死する。
反則じみた第六感で背後から噛み付こうとしたマンドレイクを避けて鷲掴みにし、別の個体に叩きつける。
この戦場で繰り広げられた光景は、まさしく無双。
薙ぎ払い、数を減らす。坂上の狙いは、自身が想定していた以上の効果を上げていた。
大成功
🔵🔵🔵
ライヴァルト・ナトゥア
可愛く、そして歌が上手い
これで人を襲わなければ言うことはないんだけどなぁ
(ゆらりと狼の幻影を漂わせ、戦闘準備に入る)
それでも、慈悲がかけられるかどうかはまた別だ。仕事は仕事、せめて苦しむことのないよう一瞬で葬ってあげよう
(そう言って駆け出す、ダッシュ、ジャンプで縦横無尽に動き回り、二回攻撃で手数を増やして攻撃する)
小さいのが出てきたな。まぁ、有象無象なんて無いも同じことだ
(鎧袖一触、マンドレイクを鎌と爪で切り飛ばしながら進む)
一つ、二つ、三つ!
(飛ぶ斬撃も駆使して周囲を切り刻む。味方には当てないよう注意は払う)
声も上げさせやしないさ。断末魔の声なんて、頼まれたって聞きたく無いからな。
ミスト・ペルメオス
(POW)
いずれ人を殺めるというなら、その前に殲滅させてもらいます。
…これが猟兵です。赦せなんて言いません、恨んでくれて結構。
わざわざ機械鎧を駆って参戦。オブリビオンに容赦するつもりは無い。
得意とする射撃戦で挑む。間合いを見切り、互いの距離を保ちつつ一方的に攻撃するのが理想。
【オープンファイア】。遠距離から先制攻撃を仕掛ける。
使用する火器はビームアサルトライフル、余力があればマシンキャノンも。
命中率を重視。念動力を活用して機体と照準を制御しつつ、1体ずつ着実に撃ち抜いていく。
…それと、流れ弾で森を無闇に傷つけるのは避けたい。
※絡み・アドリブ歓迎です
「可愛く、そして歌が上手いオブリビオンか」
悲鳴と絶叫、少女たちの甲高い声が響き、樹液らしきものが飛び散る戦場。
愛らしさも、人を魅了する歌声も消え失せてしまったその場に降り立ったライヴァルト・ナトゥア(巫女の護人・f00051)は、残念そうに溜息を吐いた。
「これで人を襲わなければ、言うことはないんだけどなぁ」
「ええ、ですが……いずれ人を殺めるという事が分かっているなら、その前に殲滅させてもらいます」
傍らに並び立つミスト・ペルメオス(新米猟兵・f05377)が頷いて同意を示しながらも、険しい表情で未だ残るアルラウネ達を睨みつける。
彼女らの所業は、誰かに唆されてやったことだと聞いている。だからといって、慈悲がかけられるかは別の話だ。赦されるつもりもないし、自分達は恨まれて当然だろう。
ならば、せめて苦しませないように屠るべき。
思うことは二人とも同じ。やる事も当然同じだと、互いに打ち合わせるように視線を交わした。
迫るアルラウネとマンドレイクの群れを前に、銀髪の青年が駆け出す。
「一瞬で葬ってあげよう――封印限定解除、此処に来るは大いなりし蒼き狼。地を駆け、空駆け、獲物を屠れ」
低い声で唱えられる、力を宿した言葉。左手に宿る蒼狼の封印を解く詠唱。ゆらりと漂う狼の幻影が、徐々にその形を成してくる。
「……ブラックバード」
端的に相棒の名を呼ぶ灰髪の少年。彼の使うユーベルコードに、その戦いに、余計な言葉は不要。装着者の意志に応じて、機械鎧が駆動音を上げる。
「疾くあれかし、《限定解放・天狼疾駆せし戦場幻景》」
「――!」
蒼狼の幻影に覆われたライヴァルトの姿が消えるのと、機械鎧の火器が吼えるのは殆ど同時だった。
薙ぎ払うように振るわれた鎌と牙と迸った熱線が、群がるアルラウネだけを的確に消し飛ばす。
「ほら、一つ、二つ、三つ!」
叫ぶたび、数が数えられるたびにアルラウネが切り裂かれ、噛み砕かれて絶命する。
蒼狼の間合いから何とか離れた少女たちは、遠方にいるミストへと狂気の悲鳴を浴びせてきた。
が、その悍しい悲鳴も、ミストの念動力を駆使した防御と、機械鎧の前腕に展開されたシールドで、物理的な衝撃ごと威力と脅威を打ち消される。
盛大な"合唱"への拍手代わりに叩き込まれたのは、ビームアサルトライフルから放たれる連撃。
連射性と射撃精度を両立した火器。そこに念動力による機体調整と照準の制御が加わって、"針の穴を通すような"と言って差支えない超高精度の射撃が実現する。
森を無闇に傷つける事を避けたい。そう思うミストの心情を反映した、アルラウネ達だけを射抜く一撃だ。
「かこんで!」「あっちもおねがい!」
蒼狼を纏う影が瞬間移動ではなく、高速移動をしていると気付いたアルラウネが、マンドレイクを召喚して2人を取り囲もうとする。速さと力で叶わないなら、数を揃えて擦り潰そうという魂胆だ。
高速の世界の中、生み出されたマンドレイクを一瞥したライヴァルトは、躊躇う事なく幼体達の只中へと飛び込む。
「有象無象なんて、無いも同じことだ!」
ライヴァルトの両腕で薙ぎ払われ、生み出されたばかりのマンドレイクが親のアルラウネごと切り倒される。
暴風に晒されて空に打ち上げられた個体も、ミストのマシンキャノンで跡形もなく消滅させられた。
蒼狼の動きは読めないと諦め、代わりに周囲一帯の者全員を狂わせようと叫びかけたアルラウネの頭部が、アサルトライフルの熱線で消し炭と変わる。
ミストの背後に呼び出されたマンドレイクは、先程の防御への礼とばかりに飛来した斬撃で、一瞬で刈り尽くされた。
時に空中へ飛び上がり、樹木を蹴って方向を変えながら、断末魔の声を上げさせないと縦横無尽に動き回るライヴァルト。
大きく動かず、得意な間合いを維持し続けて射撃を続け、時に念動力での機体制御と防御を行うミスト。
対象的な戦法で異なる間合いに陣取り、時として互いをフォローする一撃を放つ二人。そんな彼らの活躍により、立ち向かってきたアルラウネと際限なく増えるマンドレイクは、着実に数を減らしていく。
雑草のように焼き払われ、戦場を縦横無尽に駆け回る二つの暴風に刻まれ、矮躯を活かして接近しようにも射ち抜かれる。
運良くそれらの暴力の嵐を掻い潜ったとしても、喉元を的確に狙う細糸と剣鉈に倒れ伏す。
まさしくどうしようもない状況。
人を誑かそうと企んでいたアルラウネ達は、猟兵達の手で速やかに駆逐され――――叫ぶ者のいなくなった森は、ゆっくりと沈黙していった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『ハーピー』
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POW : エキドナブラッド
【伝説に語られる『魔獣の母』の血】に覚醒して【怒りと食欲をあらわにした怪物の形相】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : ハーピーシャウト
【金切り声と羽ばたきに乗せて衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ハーピーズソング
【ハーピーの歌声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アルラウネを駆逐した猟兵達の頭上から、猛禽の如き羽撃きが聞こえてくる。
グリモア猟兵が示した通り、アルラウネに入れ知恵をしたオブリビオンが現れたようだ。
巨大な鳥の胴体に女の頭を持つ音の主は、ゆっくりと地面に降りてくる。
そして、戦場だった大地を湿らせるほどに飛散した樹液を、羽毛で覆われた手でそっと掬い、ああ、と声を漏らす。
「……かわいそうに。この子達は、ただ楽しく歌っていただけなのに」
「あなた達には、優しさというものが、慈しみという心が無いの?」
橙の瞳を潤ませて訴えかけてくる女。
散っていったアルラウネ達を心の底から憐れむ姿。まさしく慈母。
――涙で潤むその瞳の底。悪意と敵意に満ちた光が、見え隠れさえしていなければ。
そもそも、こんな安い芝居で騙されるような猟兵など存在しない。
無言で構える猟兵を見た女は、つまらなさそうな舌打ちの後、再び空へと舞い上がった――!
イデア・ファンタジア
空を飛んでいれば有利だと思った?残念!私のアートを見せてあげる。
「ファンタジアを今ここに、その姿を描き出そう!君の名は――スカイキャスター!」
今日の天気は所により雷。落ちる場所は当然、高い所にいるあなたよ!
私が描いた曇天、それをキャンパスに紫の絵筆が走るたびに、軌跡が紫電になってどんどん落ちていくよ。
射程は多分こっちの方が上だもの、ハマれば強いはず!
近づけさせないようグラフィティスプラッシュで牽制しとくね。
もし接近されたら、衝撃波は『最果ての世界壁』でガード!
リコリス・シュピーゲル
そうね、実に楽しそうに歌ってましたわ
ですがこの現実を呼んだのはどなた様でしょう?
歌を汚したのは、あなたの方よね?
【死を謳う氷雨】でハーピーを氷漬けに致しましょう
ついでに先程の耳障りな演説のチップよ、「属性攻撃」で特別大きくした氷の弾丸を「スナイパー」でその口にプレゼントしてあげる
簡単には歌わせてあげないわ
上から目線は結構ですので、どうぞ地上で這いつくばってなさいな
そうして絶命の歌をがなりたてている方がきっと似合うわ
絡みアドリブ等大歓迎
飛び上がるハーピーに、リコリスが語りかける。
「そうね、実に楽しそうに歌ってましたわ。ですが、この現実を呼んだのはどなた様でしょう?」
樹液とアルラウネ、そしてその幼体の残骸が残り、残火がちろちろと残る戦場。
人を襲う予知がなければ、否、アルラウネ達が住み着いて人を襲おうとしなければ、存在することのなかった惨状。
この場がそうなるように、事件が起こるように仕向けた者がいる。グリモアベースで受けた説明通りだとすれば。
「歌を汚したのは、あなたの方よね?」
「汚したなんて。私はただ、教えただけよ? こんな風に歌ったら、きっと楽しいわって」
悪びれた様子もなく、こてりと小首を傾げる女。それを見て、リコリスは「呆れました」とボソリと呟く。
「ふふ、何とでも言いなさい。次は私の歌を聞かせてあげるわ――!」
喉を反らしながら上空へと飛び上がるハーピー。自身の攻撃範囲ギリギリまで飛行し、一方的に攻撃する腹積もりだろう。
だが、射程の長さではこちらも負けてはいなかった。
「空を飛んでいれば有利だと思っているのかな? そうだとしたら、すごく残念だね!」
上空へと飛んだハーピーを見上げ、イデア・ファンタジア(理想も空想も描き出す・f04404)が絵筆を構えて不敵な笑みを浮かべる。
相手に届くことのない言葉だが、聞こえなくても構わない。むしろ聞こえたことで、相手に余計な警戒をされる方が困る。
「やっちゃおう、リコリスちゃん」
「ええ。あの女を引きずり下ろしてやりましょう」
少女達は顔を見合わせ、片や親しげな笑顔で、片やほんの少し口角をあげた微笑みで頷きあった。
イデアの手に握られた絵筆が振られると、三色の塗料が空へと飛来する。金切り声を放とうとしていたハーピーはその塊をひらりと避けると、嫌なニヤつき顔で少女を見下ろした。
「いいよいいよ、どんどん避けちゃって!」
意地の悪い笑みも、ひらりひらりと見せつけるように回避を続けるハーピーの姿も気にせず、三原色の絵筆を振り続けるイデア。
リコリスも氷の礫を弾丸として射出することで、ハーピーの行動を阻害する。
どちらも命中させる事が目的ではなく、相手を油断させたまま攻撃を不発にする、守備と次の攻撃に繋げる一手。ハーピーはそれに気付いた様子もなく、小馬鹿にするような笑みのまま、空を飛び回り続ける。
塗料と氷、そして羽撃きの応酬。最初の塗料が飛んでから一分もしない内に、ハーピーが軽やかに踊っていた空が不穏な灰色へと塗り潰されていた。
「準備オッケー! 私のアートを見せてあげる!」
曇天に覆われた空を見上げて、イデアは紫のドゥーベを取る。
今まで投げつけた塗料は、灰色を作り出すための前準備だ。ハーピーが金切り声を上げないように牽制しつつ、曇り空を描くための布石。
目的の風景さえ完成すれば、もう遠慮する必要など無い。
「今日の天気は所により雷。それが落ちる場所は当然、高いところにいるあなたよ!
ファンタジアを今ここに、その姿を描き出そう! 君の名は――スカイキャスター!」
曇天をキャンパスに、灰の上を紫の絵筆が走れば、紫の軌跡が紫電へと変ずる。
【空想現界『空色の空』】――紫の七大絵筆で描き出された無数の電が、一斉にハーピーへと殺到した。
「ギャアッ!?」
まさしく青天の霹靂。予想外の雷に撃たれるたび、ハーピーの異形の体が大きく痙攣する。だが、それだけでは終わらない。この一撃を待っていた者がいる。
「此れが奪うは生の温もり。降り注げ、悲しみの雨よ」
幾度となく紫電に打たれて、上空で不格好に踊り狂うハーピーに追い打ちをかけたのは、鈴を転がすような声音で唱えられる、絶対零度を招く詠唱。
リコリスの【死を謳う氷雨】によって現れた氷の弾丸が、紫電の落ちる曇天より降り注いだ。
無数の雷に撃たれ、鋭利な氷に全身を滅多打ちにされたハーピーが、羽ばたく力も失って地上へと落下を始め――
「ああ、そうですわ。耳障りな演説のチップよ、受け取りなさい」
氷弾の最後の一発。リコリスの手元で大きく成長した氷の塊が、狙い澄まされた一撃としてハーピーの口へと叩き込まれた。
「ガアァァァァッッッッッ!!!?」
口内をズタズタに裂かれ、みっともなくバタつきながら地面へと落下する異形を眺めながら、リコリスは冷たく言い放つ。
「上から目線は結構ですので、どうぞ地上で這いつくばってなさいな。
お前はそうやってのたうち回って、汚い声でがなりたてている方が、きっと似合うわ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミスト・ペルメオス
(SPD)
敵対的なオブリビオンは、実力で排除するのみだ。
…彼女たちも、お前も、その時が来たに過ぎない。
敵の本領は飛びながらの戦いと判断。機械鎧を駆り、可能な限りこちらも空中戦で対応する。
重力下の活動にも対応はしている…が、どこまでやれるのかは未知数。
それでも、地に足付けて頭を抑えられたまま応戦するよりは余程良い。
各部のスラスターを全力稼働させて飛翔。
ハーピーよりも高く、ハーピーよりも速く…!
暫くは距離を保ち、フェイントによる回避機動やビームシールドも使って敵の攻撃を凌ぐ。
可能な限り機体の高度や速度を稼いでからの、【ヒット&ラン】、一撃離脱戦法による攻撃を仕掛けていく。
坂上・半
近寄ってくるんなら切り捨てる
離れてるんなら絡め落とす
鳥も蜘蛛に食われるんだぜ
【早着替え】で適宜射程に合わせて武器を変更しつつ対応
敵が近づいてくるなら【見切り】から【残像】で回避し【カウンター】へつなげる
まだアルラウネの残骸が残っているなら【敵を盾にする】でぶつけて視界を潰そう
一定の距離から衝撃波を放ってくるのなら【呪詛耐性】と【オーラ防御】、【地形の利用】で耐えながら集中し『忍び寄るは地獄蜘蛛』
【呪詛】と【殺気】と【恫喝】を載せて体と精神を絡めとり、止まった体を振り回して地面に叩き落とす
おいおい、これでもこっちは羅刹だぜ
体重の軽さなんて地面に足叩き込んで固定しちまえば関係ねえよ
力が足りねぇ
ライヴァルト・ナトゥア
(カラカラと笑って)
アンタが元凶かい?あんなこと教えればどうなるかなんて火を見るより明らかだったろうに。やっぱり見た目通りトリ頭って事なのかな?
(再び幻霊を纏って)
空は自分の領分だと思っているんだろう?何処までだって追い縋って、きっちりと息の根を止めてやるよ
(ジャンプ技能も併用して飛び回りながら戦う。急な方向転換は飛ぶ斬撃や、可能なら空中を蹴って行う)
自分の欲のために生きるというのなら、そのツケだって自分で支払わなければならないことを覚えるべきだな
(二回攻撃で手数を重視。浅くとも他の猟兵のための隙を作る。余裕があれば翼を刻んで地面へ堕とす)
思ったより脆い翼だな?飛べない鳥は、何なんだろうな
犬曇・猫晴
そんな……!まさかぼく達が倒した子達が無実だったなんて──
なんて、キミが彼女達に入れ知恵した張本人だね。
キミがそそのかす事さえしなければ、こんな人里近くに出てくる事も、殺される事もなかったのかもしれないのにね。
嘴、礫で注意を引かせてみよう。周りに群がる羽虫は痛くなくても邪魔なものだからね。
いざ標的になったなら、槍で迎え撃とう。
アドリブ、連携歓迎
ドゥルール・ブラッドティアーズ
「優しさ、慈しみの心……あるのかしら?
私が自覚できるのは、貴女を私のモノにしたい欲望だけ。
貴女も私と永遠になるの。この子達のように!!」
『リザレクト・オブリビオン』で死霊騎士と蛇竜を召喚。
彼らは私と同じ強さ。つまり技能も使える。
2体に【衝撃波】を連発させて攻撃。
2対1なら衝撃波の撃ち合いにも負けないわ
エキドナブラッドは寿命を削る技。
2体に【呪詛】を唱えさせ
体力と精神力を削れば、すぐに力尽きるはず
ハーピーが抵抗する力を失ったら
悲愴の剣で手首を切っての自傷で
死霊の召喚を解除
最期は彼女を抱きしめ
素肌を撫でながらの【吸血】で
快楽と共に逝かせてあげる
……ねぇ教えて。
心地よい死と永遠を与えるのは、優しさ?
ハーピーという種の為せる回復力か、はたまた別の要因か。砕かれた牙は瞬時に生え変わり、口から血を垂らしながら、堕天した女は猟兵達を睨み付けた。
「こ、の……よくもっ、本当に無粋でつまらなくて、残酷な――」
「こんな風に歌った楽しいよって、キミが入れ知恵したも同然だろう? あの子達もこんな人里近くに出てくることも、殺される事もなかったのかもしれないのにね」
己の所業を棚に上げたハーピーの罵倒を、犬曇の淡々とした声が遮る。
「あんな事を教えればどうなるかなんて、火を見るより明らかだっただろうに。あんた、見た目通りトリ頭って事なのか?」
ライヴァルトもまた畳み掛けるように、カラカラとした笑い混じりで批難を浴びせる。集った猟兵達の中でも一際長身の青年二人に見下される形となったが、ハーピーは怖気付く事無く言い放った。
「何を言うと思えば、そんなどうでもいい事? どうなるかは分かっていたけれど、本当に実行に移したのはあの子達。そして殺したのはあなた達なのにね」
肩を竦める動作。そのまま両腕を広げ、ハーピーはあっという間に空へと逃れる。嫌という程浴びせられたユーベルコードを警戒しているのか、先程よりかは低い高度だ。
回避と立て直しを兼ねた飛行。翼も無いのに空を飛べ者など、いるはずがない。今度は雷と氷に注意しながら飛べばいい。
そう思いながら空中で一回転。体勢を整えて、急降下攻撃を仕掛けようとしたハーピーが見たのは――
「さっき痛い目見たっていうのに飛んだってことは、まだ空は自分の領分だと思っているんだろう? 何処までだって追い縋って、きっちりと息の根を止めてやるよ」
「敵対的なオブリビオンは、実力で排除するのみ。……彼女たちも、お前も、その時が来たに過ぎない」
蒼狼の外装を纏い、驚異的な跳力で空へと飛んだライヴァルトと、機械鎧を駆って空中戦を挑もうとするミストの姿。
ライヴァルトはハーピーの上から右腕を振り下ろし、ミストはハーピーの下方よりビームソードを振るう。
上へと飛翔して、鎌と手甲剣から逃れようとするハーピー。しかし、突如眼前を過ぎる黒ずんだ緑色の塊に怯み、その動きが止まった。
「受け取りなよ。キミが誑かした女の子だったものだよ」
「ああ、忘れ物だ。ちゃんと持って帰っとけ」
地上では犬曇と坂上が、何かを投げた体勢でハーピーを見上げている。植物特有の青臭さを放つ塊――アルラウネの体組織の一部。それを、女の視界を潰すように投げ上げ、投げつけたのだ。
「っく、なんて酷い人達……! 本当に、優しさというものが無いのかしら!」
不意を突かれた結果、腿と翼腕を浅く切られて、己の視界を封じてきた二人を忌々しげに睨むハーピー。
その様子を同じく地上から仰ぎ見ながら、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の姫君・f10671)は己の顎に手をやった。
「そんなの、私にあるのかしら? 私が自覚できるのは、貴女を私のモノにしたい欲望だけよ」
こんな風に。ルージュを引いた唇が弧を描けば、ドゥルールを守るように死霊騎士と死霊蛇竜が現れる。
主人の――友の願いに答えた二体の死霊もまた空へ駆け上がり、ハーピーを引きずり下ろすため、猟兵達に加勢した。
傍らに現れた死霊をちらとだけ見遣り、ミストは機械鎧の調整をする。先の一撃を見舞った速度、高度では到底足りない。
もっと速く、もっと高く。スラスターを全力稼働させて、サイキックエナジーで機械鎧の出力を上げていく。静かに猛る闘志は機体性能の向上に注がれ、攻防一体の補助武器はその強度を増していく。
ライヴァルトはそんなミストの様子を見て、一際高い位置にある樹木の上に降り、そこを蹴って再び空へと戻る。
浅くても構わない。傷は相手への負担となり、他の猟兵のための隙となる――手数を重視した彼は、ハーピーとすれ違いざまに両手の武装で斬り付け、噛み付き、樹木を足場として飛び回る。
ヒット&アウェイで空中を翔る二人と、それをサポートする二体。圧倒的な手数と連携で、猟兵達はオブリビオンを追い詰めにかかった。
戦闘は進み、傷と泥に塗れたハーピーがガチガチと牙を鳴らす。
避けようとしても、群がる羽虫の如く纏わりつく嘴と糸、投げつけられるアルラウネの残骸に妨害される。地上からの牽制から逃げようとすれば、至近から交互に衝撃波を連発してくる二体の死霊が邪魔となる。
接近戦を挑んできた二人もすぐに地に落ちると思っていたのに、その思い込みを嘲笑うように自在に空を飛び回り続ける。
思うように戦えない。傷は負わせているのに、それ以上に自分の負傷が目立つ。自慢の羽根が汚される。不快な状況に置かれ続けたハーピーの苛立ちは、ついに最高潮となった。
「ああ――鬱陶しい、鬱陶しい、なんて奴ら! 目障りだ、纏わりつくな、私の隣に並ぶなッ!!」
愛らしい顔貌が崩れ、猛禽を連想させる憤怒の形相へと変貌する。来るぞ、と声を上げたのは誰だったか。
「まとめて……ッ、消え、失せ、ロオオォォォォォォ――――――――ッッッッッッ!!!!!!」
女のヒステリックな怒声が金切り声となり、羽撃きが周囲に気流を生むほどに激しくなる。
高威力の衝撃波が戦場を、その外周の森を包み――致命的な破壊を齎した。
音による無差別の破壊が終わり、残響が続く空。もうもうと立ち上る土煙を見下ろして、ハーピーは凄惨な笑みを浮かべた。
エキドナブラッドを用いて放つハーピーシャウト。地上にいた猟兵への被害は土煙と、至る箇所が抉られて隆起した大地が証明している。空中も猟兵がいたが、遮る物も何もない空で、この攻撃を一体どう防ぐというのか。
もし猟兵達が生きていたとしても、大ダメージを負って動けないだろう。なら、一体ずつゆっくり殺してやればいい。ハーピーはゆるりと翼を動かして、未だ様子の見えない地上へと降り立とうとする。
「おいおい、まさか『これで勝った』とか思ってないだろうな?」
――その真上から、不敵な声が降ってきた。
「な――、イギャアッ!!」
ハーピーが見上げる間もなく、その翼に二つの弧が描かれれば、極彩色の羽根が茶色く濁った空間へと飛び散っていく。
「思っていたより脆い翼だな? さて、飛べない鳥は、何なんだろうな」
容易く裂かれた羽根を眺めながら、蒼狼の外装を収めて一足先に地上へと戻るライヴァルト。男より僅かに遅れて落下しかけた女の体を、細い糸が包むように伸びていく。
「さあ、どっちにしろ鳥だろ。……なあお前。鳥も蜘蛛に食われるんだぜ」
殺気と恫喝が篭った呪詛。重力に従い落ちるはずだった異形が中空で静止し、傷だらけの肢体に妖糸が絡む。
「百鬼の領域へようこそ。 ――さようなら」
雁字搦めに絡み、滅茶苦茶に振り回された末に地面へと叩き付けられる。
倒したと思っていた相手が、普通にこちらを攻撃してくる驚愕。そして己の体の一部を刻まれた挙げ句、大地に叩きつけられた激痛。息が詰まり、苦悶の声すら満足に上げられない彼女の視界に、一人の男の姿が映る。
「いやあ、意外と間に合うし、防げるものなんだね」
陥没した大地。その真ん中にいる犬曇が、飄々と言い放つ。下降突風と名付けられた、震脚を見舞うユーベルコード。それを地面に撃ち込み、その周辺地形を破壊することで衝撃波への盾としたのだ。
「周りは酷い事になったけど……まあ、キミのせいで元々酷い事になっていたんだし、ぼくはあまり関係ないよね?」
散々破壊され尽くした大地を見渡しながら、大した事はしていない風に語りかけてくる犬曇の姿に、ハーピーは青褪める。
「そん、な……あぅっ!?」
逃げなければ。それぞれの防御手段を駆使した猟兵が、未だ健在な事を理解したオブリビオンが立とうとするが、上体が半端にしか持ち上がらない。目を凝らせば、己の体のあちこちに細糸が纏わり付いているのが見えた。
「蜘蛛の糸から簡単に逃げれると思ったか? 鳥頭かよ、お前」
妖糸を握ったままの坂上が張り巡らした蜘蛛の巣。その中心部に鳥が一羽、縫い留められている。幾らもがいても、ピンと張られた糸は撓む事なく、がっちりとハーピーを捕獲していた。
「あ、力勝負で勝てると思ったか? おいおい、これでもこっちは羅刹だぜ。力が足りねぇよ」
剛力で封じられた体。しかし、幾ら弱っているとは言え、オブリビオンがここまで抵抗できないものなのだろうか。
その答えは、ワンピース姿の娘が知っていた。
「彼らはとてもいい仕事をしてくれたわ。貴女の使っていた、自己強化の術。……あれは、自分の体力や精神力を削るものでしょう? それが尽きたら、どうなるのかしらね」
左の手首から、幾重にも枝分かれする赤い筋を流しつつ、ドゥルールが歩み寄ってくる。
「お前、私に何を……っ!」
「あら。私は何もしていないわ。私は、ね」
ハーピーの傍らにしゃがみ込み、腹部から胸元へ手を這わせる。剥き出しの素肌を撫で上げているドゥルール自身は何もしていない。ハーピーを追い詰める呪詛を衝撃波の間に唱え続けていた、二体の死霊の仕業だ。
「……ねえ、教えて。心地よい死と永遠を与えるのは、優しさ?」
オブリビオンに捧げる、狂おしい程の情愛を込めた囁き。問いかけへの答えを待たず、ドゥルールはハーピーの首筋に齧りついた。
「ぁ、ああ――っ……、こ……のォッ!!」
それは火事場の馬鹿力か。肌への刺激と吸血行為による快楽の只中にありながら、ハーピーは鉤爪のついた足でドゥルールの腹を思い切り蹴り飛ばし、その拘束を解く。
「っん、ふ……激しいのね。そういうのも好きよ。……でも、残念ね」
口の端から溢れた血を舐め取り、ワンピースの裾についた泥を払い落としながら、半魔の娘は立ち上がる。
「私の手にかかれば、気持ちよく逝けたのに。私と永遠になれたのに、本当に残念ね」
蜘蛛の巣から立ち去る娘と、取り残される女。女の頭上に、一つ、大きな影が差す。
土煙の晴れた地上。再び垣間見えた青空にあるものは――
「――終わりだ」
磔にされたハーピー目掛けて剣を構え、空からまっすぐに地上へと墜ちる、少年兵の姿。
それは、受けた衝撃波を己が跳躍する糧として、更に上空へと駆け上がっていたミストが叩き込む、最大の一撃だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
第3章 日常
『森のお茶会』
|
POW : 紅茶や珈琲といった飲み物を楽しむ。
SPD : お茶菓子を楽しむ。
WIZ : 動物達と触れ合う。
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
歌う者がいなくなり、静まり返る森の中。
グリモアベースに帰還する前に、少しだけ休憩を。
そう思って、現場近くにあるらしい花畑を求めて散策する。
辿り着いたのは、さらさらと水の流れる音が気持ちいい川の畔。
川辺一面に広がる群青。その中に、小さな白が浮かび上がる。星がよく見える夜空を連想させる光景。
夜空とは違うのは、この夜景が地上にあること。そして、全て花で作られている事だ。
無数に咲く群青の花の中、無造作に五枚の花弁を持つ花が顔を出す事で生まれた、地上の夜空。
花のない場所にシートを敷いて、持ち込まれたバスケットを置いて、準備は万端。
今までずっと隠れていた動物たちも、食べ物の匂いに気づいて、そっと顔を出し始める。
ほんのちょっとだけ。
グリモアベースに帰るまで、疲れが大体取れるまで楽しむ、ささやかなピクニック。
坂上・半
寝転んでぽけっと空を見上げてる
魚みてーな☁とか思いつつ
おぜぜは弾んでもらうけど現物(おやつ)支給も受け付けるぜ
寝ころんで口の端からかすをこぼしながらぼー
もしも誰かが歌ってたら耳を傾けてそのまま寝る
いいんだよ
お仕事終わったんだし
リコリス・シュピーゲル
【SPD】持ち込んだ紅茶と一緒にスコーンをいただいて、花の星空を目で楽しんでほっと一息入れることにします
仕事を終えた後のティータイムは格別ですのよね
お気に入りのジャム屋さんで教えていただいたマンゴージャム
独特の甘さと少しの酸味が絶妙ですわ
本当はお茶にもこだわりたかったのですが、仕事でしたもの
仕方ありませんね
その分は地上で瞬く星に癒していただくことにしましょう
絡みアドリブ等大歓迎
イデア・ファンタジア
うわぁ、綺麗な場所!これはぜひともスケッチしておきたいわ!
スケッチブックを取り出して描いていくよ。
花畑は逃げないし、サンドイッチでも食べながらのんびりやろうかな。
ふんふんふーん♪青はー……もうちょっと濃いかな?
あ、パンくず撒いたら小鳥がよってくるかも。
ちょっと観察させてもらっちゃうね。
ミスト・ペルメオス
(WIZ)
綺麗、ですね。すごく…。
星の海は見慣れたものですけれど、これだけ大きな花畑は…。
環境をなるべく荒らさずに済む位置に機械鎧を駐機させ、適当な場所に腰を下ろします。
…大地も、川も、花畑も。ぜんぶ本物だ。
(太陽の光。川のせせらぎ。吹き渡るそよ風。土と草花のにおい。黙したままそれらを感じる)
(暫くしてから、栄養バーを取り出してちびちびとかじる)
ン…? …ええと、ぼくはこんなものしか持っていませんよ?
あんまり美味しくないと思いますが…。
(近寄ってきた小動物達に栄養バーを差し出してみたりしつつ。
おっかなびっくりではあるが、動物達と少しだけ触れ合ってみる)
※他の方との絡み・アレンジ等歓迎です
戦いを終えた猟兵達は、思い思いに寛いでいた。
「仕事を終えた後のティータイムは、格別ですのよね」
リコリスは温かな紅茶を一口。上質なものではし、拘ったものでもないが、仕方ない。
今日のお菓子――スコーンとマンゴージャムで優雅なティータイムだ。
一方坂上は、ぼーっと空を眺めていた。片腕を枕にしてシートの上に転がりながら、空いた手でもらったエッグタルトを齧る。
報酬は弾んでもらうつもりだが、当然現物支給も受け付けるし、歓迎だ。ぷるぷるしたクリームが、舌の上でとろりと溶けていく。
「ちょっと、行儀が悪いわ」
ぽろぽろとタルトの欠片がこぼれる様子を見たリコリスが咎めるが、坂上はどこ吹く風だ。
「まるごと落として粗末にしてるわけじゃないから、別にいいだろ。……あ、魚みてーな雲」
「……もう」
「うん、本当にいい景色ね! これはスケッチしておかないと!」
花畑は逃げない。傍らにサンドイッチを入ったバスケットを置いて、イデアはのんびりとスケッチを始める。
「青はー……もうちょっと濃いかな?」
鼻歌交じりに星海を描くイデア。眼の前に広がる群青とスケッチブックの青を見比べ、丁寧に描きあげていく。
他にも何か、描けるものは――そう思って辺りを見渡すと、少し離れた場所で白い小鳥たちがイデアの方を伺っているのが見えた。恐らく、イデアがつまんでいたサンドイッチのおこぼれを狙っているのだろう。
野菜だけでなく、チーズやハム、マヨネーズで和えた卵が挟まれている
「さすがにこれはあげられないけどー……あ、そうだ」
サンドイッチの端をちょっとだけ削ってばらまけば、小鳥たちがご飯にありつこうと飛んでくる。
花畑と遠くに見える川。それを背景にしてパンを啄む白の小鳥。写真に収めたいぐらいの景色だが、イデアの本分はアートだ。
「いい絵になりそう。ちょっと観察させてね?」
ミストにとって星の海は見慣れたものだが、これだけ大きな花畑、それも星海を模したものは初めて見る。
髪を揺らすそよ風。土と草木の匂い。仮想現実でも立体映像でもない、本物の自然。それらを静かに堪能しながらブロック状の栄養食を取り出して、ちびちびとかじる。
そんなミストの下に、ちょろり、と栗鼠がミストの足元へと寄ってきた。
栄養バーを見つめる、黒く潤んだ栗鼠の瞳。それは――「そのごはん、りすもたべれるものですね?」と訴えかけているように見えた。
「あんまり、美味しくないと思いますが……あ、ちょっと」
差し出された栄養バーの匂いを嗅いでそっぽを向いた栗鼠。栄養バーは食べなかった代わりに、ミストの腕をよじ登ってくる。
腕を登られたミストは、小動物を退かすかどうするべきか迷って半端に手を差し出すが、遊んでもらえると思ったのか指にじゃれついてくる。
「ええと、えーと……」
どうしよう。そう思いながらも、指先で栗鼠とふれあうミストの口元には、ほのかな笑みが浮かんでいた。
そんな風にそれぞれ過ごして、少し経った頃。
転がったままお菓子を食べ続ける坂上の傍らに、リコリスがそっと屈み込む。その手には、たっぷりとマンゴージャムを載せたスコーンが一つ。
それを坂上に差し出して、リコリスはいたずらっぽい笑みを向ける。
「エッグタルトも良いですが、こちらもお一つどうぞ。……ちゃんと起きて食べないと、ジャムが垂れてしまいますわよ?」
「……はーいはい、と」
めんどくせーお菓子。そう思いながらもよっこいせ、と勢いをつけて起き上がり、橙色のジャムがきらきらと光るスコーンを受け取る坂上。
「ミストさんも。こういうお菓子は、お好きかしら?」
「ああ、ありがとうございま――って、これは君が食べるものじゃ……」
肩先まで登ってきた栗鼠と遊ぶ手を止めてスコーンを受け取れば、その栗鼠がスコーンを狙おうと移動してくる。流石にこれをあげるわけにいかないと、ミストと栗鼠の地味な戦いが始まった。
「あっ、美味しそうなお菓子! リコリスちゃん、それ私のもあるよね?」
スケッチ途中のイデアが顔を上げれば、なんだか素敵なおすそ分けが行われている。それを見て声を上げた少女に、リコリスは微笑んでスコーンを渡しに行く。
「ええ、せっかくのお茶会ですもの。皆さんで食べるのも良いかと思いまして」
歌の聞こえない深緑の中。
猟兵達の楽しげな声が響いていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴