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死に彩られた宝石

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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 コツ、コツ、とヒールが大理石の床を叩く音が響く。
「ふふふ、ずいぶん美しい色になったじゃない……。あと一日と言ったところかしら」
「い、いや……」
 恐怖で震えていた人間が、動きにくくなった口から声を漏らす様子に全身を赤い珊瑚で構成している女王は妖艶に笑った。
「そうね、出来あがったらあの像の代わりに置いてあげるとしましょう。……あなた、そういえば近々オークションを開くのでしたっけ」
「はい、コーラルクイン様」
 女王の呼びかけに、護衛として後ろについていた貝のような鎧と水着を身につけた女性兵士が跪き、答えた。
「あれを出品物に加えてもよろしいですわ。私が認めた者ですもの、高値で売れるでしょう」
「ありがたき幸せ」
 粛々と頷いた兵士は立ち上がると、階段の横にある台に飾られていた像を両手で軽々と持ち上げて下がっていった。
「さて、あなた早速あそこに登って……ってあら」
 その後ろ姿を見送った女王は振り返って声をかけようとして、微笑みを浮かべる。
「もうなってしまわれたの? あれだけ大言を吐いておきながら、あっさりでしたわね?」
 その視線の先には人間ではなく、人間の「形をした」美しい珊瑚の像が鎮座していた。
「さて、この子にはどんな題名をつけてあげましょう?」
 そう言って女王は、涙まで珊瑚となった元人間の像の頭を愛おしそうに撫でた。

「皆さま、集中的な調査お疲れ様です」
 デフォルメされたグリードオーシャンの地図の埋まり具合に舌を巻くルウ・アイゼルネ(マイペースな仲介役・f11945)が取り出したのは近隣の島や冒険商人に配られたという一枚の紙だった。
「近々この『シージュエル島』にてオークションが開かれる……という告知がありました。元はアリスラビリンスにあった島だと考えられております」
 白いレンガの建造物が立ち並ぶ港町が名高いシージュエル島では定期的に島の女王が主催するオークションが開かれ、掘り出し物を求めて多くの商人が訪れる。
 その一番の目玉であり、そこでしか手に入れることが出来ないのが人間の形に加工された珊瑚や真珠の像である。
 まるで本物の人間から型を取ったような一点物のそれらは富豪らに非常に受けが良く、出るたびに高値で取引されているそうだ。
「今回のオークションの目玉も『それ』だそうです……ですが、少し気になるタレコミがございまして」
 それは「その像によく似た海賊が最近消息を絶っている」というもの。
 アリスラビリンスに限らず様々な世界で様々な敵性生物を見てきたルウは嫌な予感を覚え、調査をした。
 するとシージュエル島の住民に、とあるおふれが出ていたことが分かった。
 それは「年に一人、新しい使用人を城に寄越すこと」。
 そして使用人として登城した者で……帰ってきた者もその後の安否を知らせる手紙を送って来た者も一人もいないという。
「おそらく殺されているのだろうと、住民の方は語ってました。しかし断れば城の私兵によって街を蹂躙されてもっと被害が出る。ならば、一人の犠牲で残りの住民が生きていける方がマシだ……と考えたそうです」
 そしてその諦めを知り、それを打開しようと城に乗り込んだ流れの海賊達も今まで何十人といたという。そして、彼らも帰っては来なかった。
「……ここまでの話で察しがついた方もいらっしゃると思います。例の行方不明になった海賊もこのうちの一人でした」
 そこから逆算出来ること。
 それは城の中で人々が何かをされ、珊瑚や真珠の像を作る原料にされている、というおぞましい予想だった。
 しかしそれはあくまでルウの予想の範疇であり、その証拠は一切無い。
 もちろん実際に買っている商人達は一切疑念を抱いていない。悪事の片棒を担いでいる、と勝手に判断するのは早計であろう。
「ちなみに出品者代理としてこの城の執事的なポジションの方が出席されているそうです。上手くやればその人物からなら詳しいことを聞き出せるかもしれません」
 会場となるシージュエル城の門は普段は固く閉ざされているが、オークションの日と生贄が捧げられる日に限り一般にも開かれる。
 相手が自ら開けてくれているのであれば、それに乗っからない理由はない。これ以上の犠牲者を出す前に突入し、白黒をはっきり付けたい、とルウは語った。
「今回はオークションの参加者として城内に堂々と侵入し、黒だと判別できたら、奥にいる女王……コンキスタドール『コーラルクイン』の首を取ることが目標となります。皆様よろしくお願いいたします」


平岡祐樹
 皆さまお疲れ様です、平岡祐樹です。発音は「シージュ↘︎エ↗︎ル島」だとか。

 今案件は人々を宝石像にして売り捌き、私腹を満たすコンキスタドールを討伐する物となっております。今話題の「七大海嘯」とは一切の関係はありません。

 第一章では普通にオークションに参加しても良し、ウインドウショッピングをしても良し、出品者落札者から色々と情報を聞くも良し、そして商品から情報を引き出すのも良し……でございます。

 なお、今シナリオに参加したとしてもMSからアイテムが支給されることはございませんが、まつわる品を作ることは禁じておりません。その点を了承した上でのご参加よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『グリードオークション』

POW   :    力づくで手に入れろ!

SPD   :    オークションで真っ当に手に入れろ!

WIZ   :    賢くスマートに盗み出せ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

四王天・燦
《華組》

WIZ

贄と関係者に代理となるべく交渉
いざとなれば手違いを装いな

メイド服でシホと登城
シホのメイド姿にドキドキ
花を挿して頷くぜ
もう呪詛に負けない

二人とも服の下に破魔の稲荷符貼って耐性万全にしておく
装備はシホに預ける

贄に選ばれた親友と離れたくない
後生なので二人で使用人としてくださいと城の者に懇願
帰れぬ覚悟の眼差しを向けるぜ

城に入ったら空回りなやる気で仕事する
好奇心を装って勝手に部屋を開けたり

ふと像に関して質問をするよ
手間のかけずとも原石販売でも充分なのでは?
まさかアタシ達が原石?

シホの腕を抱いて震える
怯えた表情でこの一瞬を真珠・珊瑚化したい欲求を刺激、嗜虐心を誘惑する

何時でも動く準備は万端だ


シホ・エーデルワイス
《華組》


島民に新しい使用人として登城する方法をコミュ力で聞き出し
燦と一緒にメイドへ変装して向かう
装備は【救園】に仕舞う

今回の敵…人を珊瑚や真珠に変える能力があるのね…

以前燦が真珠や蝋人形になりそうになった事を思い出して不安を感じ
私の髪の花を燦の髪に挿す

呪詛に負けないでね


お願いです
私達は最期まで一緒に居ようと誓い合った仲
一生懸命働きますので
どうか二人一緒に仕えさせて下さい


城に入れたら
【供宴】で料理や掃除等の仕事をこなしつつ
問題の珊瑚や真珠の像を探して調べる

必要に応じて城の者に仕事の話を聞く等して
燦が室内を調べ易い様に注意を私に誘き寄せる

なんて精巧な像なのでしょう
きっと腕の良い彫刻家なのでしょうね



「親友と離れたくないんです! 後生なので私達も使用人としてください!」
 オーディション開催の数日前。シージュエル島の中央に位置する城の前ではメイド服姿の二人の少女と門番による押し問答が繰り広げられていた。
 時は遡ることさらに数時間前。四王天・燦(月夜の翼・f04448)とシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は港に程近いカフェのテラス席に座っていた。
 島民に話を聞いたところ、使用人の募集は行っておらず、年に一度たった一人の贄のみを求めるのみだという。
 骸の海があればコンキスタドールという働き手がいくらでも出て来る、と考えれば確かに人間はそんなにいらないだろう。だが必ず一年に一人は求めて来る……というのは間違いなく裏がある。そしてルウが仕入れてきた精巧な人間の形をした宝石の像の情報。
 そして燦はかつて人を珊瑚や真珠に変える能力があるコンキスタドールと戦ったことがある。点と点が線で繋がるのは当然のことだった。
「コーラルクイン、って名前から察するに十中八九前に会ったことのある奴だと思う。同時期に同じ奴が別の島にいる……っていうのは流石はオブリビオンといったところかね?」
 飲み物に刺さったストローに吸い付く燦の髪にシホが自分の頭にある花を一輪抜いて挿す。
「何?」
「……今度は呪詛に負けないでね」
 以前燦が真珠や蝋人形になりそうになった事を思い出して不安を感じたシホの指摘に燦は笑いながら応えた。
「なーに、あらかじめ分かってれば対処出来るさ」
「本当ですね……? 信じますよ?」
 そうして二人は服の下に破魔の稲荷符を貼って耐性を万全にし、疑われそうな装備は全部異空間に隔離させた上で城へ正面から突入しようとしていた。
「お願いです。私達は最期まで一緒に居ようと誓い合った仲……一生懸命働きますのでどうか二人一緒に仕えさせて下さい」
「いらぬと言ったら要らぬ! これ以上来られたら部屋やら何やら面倒くさくなる!」
 涙目になった燦は傍に立つシホの服の袖を握り締め、門番を睨みつける。すると騒ぎに気付いたのか、後ろの木製の門が音を立てて開き始めた。
「何の騒ぎだ……」
「はっ、申し訳ありません! この者達が雇って欲しいと押しかけてきて参りまして……」
 明らかに機嫌が悪そうな上官とみられる女性に門番が直立不動で説明する。燦は二人には見えないようにシホの手首を指でリズム良く叩いた。
「ふむ……」
 話を聞き終わった上官は顎に手を当ててしばらく考えた後、口を開いた。
「確かに今この城の使用人は足りている。しかし近々オークションを開く予定でな、何人か臨時の人手が必要なのだ。その時の臨時の職員としてならば良いだろう」
「臨時……ですか?」
「……我が主人の目に止まれば正式採用も有り得るかもしれんが……まぁ、そこは」
 シホの問いかけに言外に「諦めろ」と言えない上官は視線を泳がせる。しかしそこで燦が口を出した。
「それでも構いません! まず城の中で働けなければ、私達に行く宛は無いんです! 細い蜘蛛の糸のような可能性でもあるなら、ぜひ!」
「なら来るが良い。ちょうど臨時に雇い入れる用の部屋が空いている」
 そう言って上官は中へ戻っていく。シホと燦は互いの顔を見合わせた後、その後に続いた。
「落札者への商品の運び込みが主な仕事になる。今のうちにどのような品を扱うのか見といてくれ」
 通されたのは真珠や珊瑚そのものや、それを用いたアクセサリーの入ったガラスケースが並ぶ大広間。思い思いに見回る中、燦は大広間に隣接する鍵のかかっていない部屋の扉をおもむろに開けた。
 すると暗闇の中に、大広間から入ってきた光に反射する人の姿を見つけてしまった。
「うわっ!?」
 驚いて尻餅をついた燦にシホが慌てて駆け寄る。上官は明らかに機嫌を悪くした様子で語調を荒げた。
「勝手に開けるな、商品に傷がついたらどうしてくれる!」
 燦が驚いたのは真珠で出来た、涙を流しながら天に祈りを捧げる少女の像だった。
「すいません……でもなんて精巧な像なのでしょう」
「ああ、城下にいる石工に彫ってもらった物を真珠貝の中に入れた品です。……このサイズの物は中々出せなくて、次のオークションの目玉商品の予定だ。くれぐれも丁重に扱ってくれ」
「きっと腕の良い彫刻家なのでしょうね」
「あの、でも、手間をかけずとも原石販売だけで充分なのでは?」
「それでは他の島と同じだ。こういうところで差をつけていかねば」
 2人が一通り見終わった所で、上官は明らかに倉庫を適当に片付けた、まさに臨時の宿泊部屋に通す。
「ここが君達の部屋だ。急拵えで悪いが、数日の我慢だ。勘弁してくれ」
 そう言い残して下がっていったところで、周りに聞いている者がいないのを確認してからシホは燦に小声で問いかけた。
「……ビンゴですか」
「うん、間違いねぇ。名前は分からないけど、あいつが私を真珠にしてきた奴だ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

政木・朱鞠
行動【WIZ】
確かに宝石は人を魅了するよね…。
でも、人の命を生贄にしてまでも宝石を生み出す外道を許すわけには行かないよ。
一刻も早く生命を冒涜した咎で骸の海へ送り返してやりたいけど、ここは敵に掌の上、手荒な行動でチャンスを失うのは避けたいね。

オークションなら事前に出品物のカタログがあるはず。
ちょっとフェアじゃないかもしれないけど、参加者の男性を【誘惑】してカタログを盗んで情報を集めようかな。

一方で感覚共有した『忍法・繰り飯綱』を放ち【追跡】や【情報収集】で島の周囲を探っておこうかな。
お宝の大体の位置や大きさとかが解かれば良いんだけど、無理に深掘りしないように注意しないとね。

アドリブも連携もOK



「確かに宝石は人を魅了するよね……」
 太陽が燦々と照りつける中、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は目を覆っていたサングラスを外して首を振った。
「でも、人の命を生贄にしてまでも宝石を生み出す外道を許すわけには行かないよ。一刻も早く生命を冒涜した咎で骸の海へ送り返してやりたいけど……」
 しかしここは敵の掌の上、手荒な行動を起こせば間違いなく面倒くさいことになる。
 そのため朱鞠は敵方の配置や像の大体の大きさを把握するべく、各地に繰り飯綱を放っていた。
 それからもたらさせる情報に従い、朱鞠は遊戯場へと脚を踏み入れた。客の声やコインが落ちる音を掻き消す大音量の音楽をバックに空いている椅子へ座る。
「ねぇ、そこのお兄さん」
 遊ぶわけでもなく人を待っていたのか、男性が見ていた本から頭をあげる。
「そのカタログ私にも見せてくれない?」
「え、ああ、いいとも」
 朱鞠の誘惑に落ちた男性は二つ返事で本を差し出した。それは今回のオークションで出品させる予定の品を紹介するカタログだった。
 真珠の首飾りや珊瑚の簪といった色とりどりの品々が並ぶ中、絵が黒塗りで題名も「secret」と書かれている謎のページに当たった。
「ねぇ、この『secret』って何?」
「ん、君はここのは初めてなのかい?」
 ここの「secret」は有名なのか、意外そうに驚く男性に朱鞠は困ったようにはにかむ。
「ええ、実はそうなの」
「ここは真珠や珊瑚を使った人型の像が有名でね、年に二、三回しか出品されないレア物なんだ。で、どれもこれも生きているかのような素晴らしい出来栄えで、ぜひ写真ではなく実際の目で確かめてほしいというここの女王様の趣向からあえて黒塗りにされているんだ。題名も『ああ、この題ならこんな感じの意匠だろう』と察せられないためのあえての『secret』! どうだい、興味出て来たかい?」
「え、ええ……」
 話しているうちに興奮していく男性の言葉を、朱鞠は頭の中で素早く整理し出した。
 ここで重要なのは男性の口振りから察するに、その像が本当に生きていた人間から作られた物だとは微塵も思っていない、という点である。
 情報統制がしっかりされているのか、血も骨も丸ごと変えられてしまっているのか、その疑問に対する答えは少なくともこの男は持っていない。
「ありがとう。……ちょっとお願いなんだけど、勉強のためにこの本もらっていってもいいかしら?」
「ああ、もちろん良いとも! 結局は現地で見てから決める物だからね! ところでこのあと時間は……」
 朱鞠はその後に続く言葉を聞くことなく席を立って行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ歓迎

「え?アレを手に入れれば良いんだね!♪」と「ソレ、買います!」と解っていないのにオークションに参加して『ゴッド・クリエイション』で“黄金の神様の大甕”を創造して、その中に『ヴァイストン・ヴァビロン』で金銀財宝と宝石を溜めて見せて、周りが黙ったら「まだ足りない?」と聞いて更に金銀財宝を宝石を追加して行きます!
猟兵に「これで帰るかな?」と解っていないので素直に聞いてしまいます…

UCが認められない、他の落札者がデキレースで勝ってしまうなら「何だか敗けちゃったね…ゴメンね」と言います。
勝てるのでしたら購入して早々に猟兵と共に持参して立ち去ります。

「オークションって何かな?」



 そうしてオークション当日を迎える。
 綺麗に商品のみを映えさせるためか、その周囲以外の部屋の照明は落とされている。さらに参加者は個室に入れさせられ、他の客の動向は見せず聞かさず、という徹底ぷりであった。
「オークション、って狭いんだね……」
 大きな体を小さな席に詰め込むようにとぐろを巻いているティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)は不機嫌そうに商品が出される様子を眺めていた。
 綺麗な物は綺麗だとは思うが、大した興味はないティファーナが欠伸を噛み締めていると赤い布に覆われた、謎の巨大な物体が舞台上に運ばれてくる。そして中央につくや否や、運び手はその覆いを外した。
「本日のシークレット一番はとある海賊を模った石像をそのまま真珠とした物でございます」
「え?」
 引きつった顔ながら右手でサーベルを構える姿は、恐怖を内外から感じながらも必死に立ち向かおうとする意志の強さを感じさせる代物だった。
「アレを手に入れれば良いんだね!♪ソレ、買います!」
「はい、おいくら出されますか?」
 先程までの無関心から一転し、身を乗り出して勢い良く手を挙げたティファーナのそばに一人の女性がつく。
「え、いくらって、値段教えてもらわないと……」
「オークションは買い手がその値段を決め、一番お金を出した者にそれをお渡しする物でございます。お客様はあちらにどれだけお支払いになられますか?」
「えー……」
 ティファーナは悩む仕草を見せるとおもむろに目の前に大甕を生成して、女性との間に置いた。その中には大量の金銀財宝が満ちていたが、女性は困ったように微笑んだ。
「申し訳ありません。当会では物々交換は行っておりませんので……」
「むう……」
 膨れ面を浮かべながらもティファーナは甕に手を突っ込み、まるで掴み取りのようにして金貨を取り出し、女性に押し付けた。
「これでどう?」
「……少々お待ち下さい」
 そうして下がった女性はしばらくして金貨を板の上に載せて戻ってきた。
「まだ足りない?」
 女性の無言の肯定にティファーナは唇を尖らせながら更に金貨を板の上に山積みにしてみせる。
 そんなやり取りを何度も繰り返すと木槌が叩かれる音と同時に海賊の真珠像が裏に運ばれていった。そして戻ってきた女性の手元に金貨は無かった。
「ただ今の商品、お客様の落札となりました」
「やた!」
「つきましてはこれより商品とのご対面へと移らせていただきます」
「えー、すぐに帰っちゃダメなのー?」
「はい、直接お目にかかられてからの引き渡しとなっておりますので」
「むー……しょうがないなぁ」
 後ろではシークレット商品の二番の紹介が準備されている。後ろ髪を引かれる思いながら、ティファーナは女性の指示に従って部屋を出た。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティモシー・レンツ(サポート)
基本は『ポンコツ占い師』または『本体を偽るヤドリガミ』です。
カミヤドリも魔法のカードも、「Lv依存の枚数」でしか出ません。(基本的に数え間違えて、実際より少なく宣言します)
戦闘についてはそれなりですが、戦闘以外は若干ポンコツ風味です。(本体はLv組で出せない、UCの枚数宣言や集団戦は数え間違える、UCを使わない占いは言わずもがな)

探しものは疑似妖精(UC)か占い(外れる)で頑張りますが、多くの場合は有効活用を思いつけずにマンパワーで探します。
猟兵としての体力は、可もなく不可もなく。
「本体が無事なら再生する」性質を忘れがちのため、普通の人と同じように危険は避けます。



「んー、こっちにあるはずなんだけど……」
 タキシード姿の客が目立つ城で、和服姿で水晶玉片手に歩くティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)は目立っていた。
 目立っていると言っても悪目立ちの方である。
 大広間を出て行ったかと思えば数分も経たない内に戻ってくる。誰かと待ち合わせをしていて探している訳でもなく、場所を聞こうと話しかけようともしない。
 所在なさげに水晶玉に目を落としては首を傾げ、Uターンを繰り返すティモシーに痺れを切らしたのか、客からクレームが入ったのか警備兵の一人が話しかけた。
「お客様、いかがしましたか?」
「ええ、ああ、いや……ちょっと探し物をしてまして」
「落とし物ですか? でしたら……」
「いや、あれだけの石像を蓄えられるほど大きなアコヤガイはどこにいるのかな……って」
「アコヤガイ」
 復唱した警備兵は苦笑いを浮かべた。
「申し訳ありません。それは城奥で飼育されているのですが、さすがに国宝級の生き物ですので、一般への観覧はお断りしているんです」
「そうですよね、そう言われるのは分かってました。そうなんですけど……」
 すでに同じような質問を何度も受けているのであろう。警備兵の対応はマニュアル化でもされているような口調であった。しかしティモシーの言葉は歯切れが悪い。
「僕の水晶占いだと、ここにある、と出たんです」
 水晶玉に落とした目をティモシーは恐る恐る上にあげ、警備兵を見る。
 見つめられた警備兵の鎧は、アコヤガイの殻のような形をしていた。
「……ひょっとしてこの広間のすぐ真下にいたりとかしません?」
「それは、あり得ませんね」
 大広間の下では現在進行形でオークションの入札が行われる部屋が並んでいる。城の構造上、アコヤガイを飼育するスペースなど用意できるわけがない。
「そうですよね……入札の時に少し歩いたんで分かってたんですけど。それじゃあ……」
 ティモシーはそう言って曖昧な笑みを浮かべ、警備員から離れていく。
 しかし一度でも「国宝を見てみたい」と言ってしまったからか警備兵達の視線はティモシーに釘付けとなった。
「うーん、絶対にこの辺にいるはずなんだけどなぁ……」
 しかしそんな殺気だった視線に気がつきもせず、ティモシーはのんびりと城内の散歩に勤しんでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

麒・嵐(サポート)
商い好きの青年妖怪
仲間に対しても敵に対しても人当たりよく初対面でも物怖じしません
日常の場合は珍しい商品を楽しんだりお喋りに興じます

いろいろな世界を見てみたいしね、どこへなりと
客から預かった大事な銭が戦いの共さ
まあ、あまり期待せずによろしくどうぞ

基本は『クリーピングコイン』による一網打尽
こいつらは嵐のためならなんだって頼みを聞いてくれる
例えばこうやって目くらましに全体へまき散らしてから――目や喉なんかの露出した急所を狙って射抜いてやるとか

相手の気が削げたらうちの特製手投げ弾『庚玉』を放り投げてやる
全員、巻き込まれちまいなよ

銭の舞、爆薬の花
その銭はどこまでだって追いかける
さ、最期に言い残すことは?



「こちらが、今回落札されました真珠の髪飾りでございます。ご確認ください」
「ほぉ……これはこれは」
 引き渡し役の手袋をした手で差し出された簪を麒・嵐(東方妖怪の冒険商人・f29276)は受け取ってじっくりと見回した。
 白銀で出来た簪には波の柄が彫られ、チェーンで繋がれた大ぶりの真珠三つに負けない職人の腕の高さが窺える。
 さらに真珠自体もチェーンを入れるために穴は開けられているが、それ以外の傷は無く歪な形状でもない。
 これだけの出来ならグリードオーシャンでなくても十分な需要があるだろう。
 嵐が思わず唸っていると、ここまで嵐を案内してきた案内役がこちらから目を逸らすと胸元のマイクに手を伸ばし、小声でボソボソと何か話し始めた。
「どなたかが……動きましたかね?」
 案内役が話を聞いて表情を険しくしたのを見て、嵐は簪を置き、代わりに隠し持っていた金貨へ手を伸ばす。そしてまるで手裏剣のようにそれを案内役の喉元に撃ち込んだ。
「ぐっ!?」
 突然気道を塞ぐ衝撃に案内役が咳き込みながら倒れる。突然の凶行に引き渡し役が悲鳴を上げるために口を開けようとした瞬間、嵐はその首元を捕まえて引き寄せ、簪の先を突きつけた。
「お、お客様何を……」
 出した瞬間に刺される、という恐怖が大声を抑圧させる中、引き渡し役は笑顔を貼り付けたままの嵐の目には怒りの感情が滲んでいるのを見た。
「宝石売買の場の皮を被り、人身売買を行なっているのでしょう? そんなことを知っちまったら、ホイホイと帰れませんわなぁ」
「貴様……!」
 立ち上がった案内役がどこからともなくトライデントを取り出してきたところで、嵐は地面に球体の物をポトリと落とす。
 直後に起きた凄まじい爆風が客と引き渡し役を隔てる壁を取っ払い、案内役は咄嗟に肩に担いでいた鎧を盾のように構えて防御を図った。
「さあ、そちらの倉庫に案内していただきましょうか。まだ『在庫』が残っているのでしょう?」
 その隙をついて残骸を乗り越えた嵐は引き渡し役の体を脇に抱えると、突然の爆発で混乱する外を見ずにどんどん奥へと進んでいった。
「くそっ、どこに行った!」
 煙を盾で払った案内役は嵐と引き渡し役の姿がないのを視認するとすぐに胸元のマイクに手を伸ばして叫んだ。
「緊急事態発生、5番にて客が暴れて城内に侵入! 手隙の者はすぐに警護を固めてくれ!」
 先程の爆発で驚いた客が部屋から飛び出し、騒ぐ声が聞こえてくる。唾を吐いた案内役は憤怒の形相を隠そうともせずに嵐が消えていった通路へ走っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『阿古屋貝の戦闘員『パールウォリアー』』

POW   :    アコヤガイシールド
【肩の巨大貝殻を前面へかざしての防御モード】に変形し、自身の【移動速度】を代償に、自身の【高い防御力】を強化する。
SPD   :    トライデントスロウ
【手に持つトライデントを投擲】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    スタチューパールズ
【肩の巨大貝殻の内側】から【真珠色の粘液】を放ち、【真珠化】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ歓迎

「硬さにパワーで勝ってこそ、プロレスラーだ!いくぞ!」とガッツポーズ!
『スカイステッパー』で縦横無尽に動き回り隙を見付けて『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で♥ビーム攻撃を仕掛けながら折を見て『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』で髪の毛と蛇脚尾で白兵攻撃を仕掛けます!
敵の攻撃で避けれない攻撃を『神代世界の天空神』で空間飛翔して敵のUCを『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化をします!
『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化して『ヴァイストン・ヴァビロン』で豪華絢爛な攻撃を仕掛けて『ガディスプリンセス・レディース』で群生攻撃を仕掛けます!
「勝つ!」



 後に続いていたティファーナは周りを確認し、他の者の視線が無いことを認識する。そして案内役が前だけを見ていることを良いことに、蛇の下半身を軽々と浮かせ、振り切った。
 明らかに重そうな風切り音を上げた尾は貝めいた肩の装甲に激突し、案内役の体を壁に叩きつけた。
「かっ、た……!」
「ぐっ……お客様、いったい何のつもり」
 思わず目を見張ったティファーナの行動が理解出来ないのか、壁にめり込んだ案内役が絞り出すように声を出す。
 その衝撃音に気づいた他の警備兵達がわらわらと集まってきた。
「知ってるよ、ここの商品って人なんだって?」
 これだけいれば知っている人もいるだろうとカマをかけてみれば、全員の表情が真顔になる。そして明確な殺気を発した。
「ここで始末すれば誰にもバレない、そう思ったでしょ? それに最初の人がやられなかったから、数で押し込めるって」
 疑惑が確信に変わったところで、ティファーナは衣装を一瞬で切り替える。
「でも硬さにパワーで勝ってこそ、プロレスラーだ! いくぞ!『神々の絢爛豪華な全てを見せてあげる!』」
 ハート型に構えた手から光線を放って目眩しに使ったティファーナは何もないところで何段もジャンプを重ね、群れの中心にいた兵士にボディプレスを仕掛ける。
 それを偶然にも避けた兵士がトライデントを構えるが、ティファーナの髪がそれを巻き取ったかと思えばラリアットが顔面に入り、鼻血を吹き出しながらひっくり返る。
 続けて貝の鎧から謎の粘液を発しながらティファーナを挟み込もうと跳んできた兵士がいたが、ティファーナは一瞬でその場から消え失せると金貨の雨と一緒に真後ろを取った。
「はや……!?」
 光る金の拳が振り返り様の兵士の頬に直撃し、その顔面を揺らしながら吹っ飛ばされた。
 そしてそれを合図にどこに隠れていたのか、様々な動物を混ぜこぜにした見た目の者達が武器を持って突撃してきた。
「な、何なのだ一体、これだけの軍勢がどこに隠れていた! す、すぐに応援を呼べ!」
「ぜったい、勝つ!」
 そんなティファーナ達を鼓舞するかのように、城が爆音と共に揺れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

政木・朱鞠
なるほど…先兵さんのお出ましね。
人間を宝石にして悦に入るなんて、酷い生命冒涜だし…そんなことをしたら『甘やかし』で美味しい物を喰らう事が出来なくなって勿体ないじゃない?
君達には自己満足で大切な命を粗末にした咎を清算して骸の海に消えて貰わないとね。

戦闘【WIZ】
避けきれなければ【真珠化】で動きが封じられちゃうリスクは有るし、分身達がどれだけ攻撃を受けきれるか不安は有るけど『忍法・火煙写身の術』を使用して迎え撃つよ。
武器は忍者手裏剣『鳳仙花』をチョイスして、残りのチビ分身と共に【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】で露出した関節部分を狙ってダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎



 城内がにわかに騒がしくなる中、いつもの忍装束に着替えていた朱鞠は欄干にぶら下がりつつその様子を見ていた。
「なるほど……先兵さんのお出ましね」
 多くの兵士が集まり、ドタドタと地下に降りようとしたところで朱鞠は飛び降りる。突然現れた朱鞠の姿に、兵士達はすぐに武器を構えて威嚇した。
「人間を宝石にして悦に入るなんて、酷い生命冒涜だし……そんなことをしたら『甘やかし』で美味しい物を喰らう事が出来なくなって勿体ないじゃない?」
 朱鞠の言葉を聞いてしまった客からざわめきが起き、互いの顔を見合わせる者もいる。兵士達はそれを鎮静化しようと声を荒げた。
「騙されないでください、これは賊による虚言です! 我々の商品にケチをつけてくるとは……誰の差し金かしっかり後で吐かせてもらう!」
 よくもまあこうペラペラと嘘が言える、と鼻で笑った朱鞠は冷めた目で睨みつけた。
「君達には自己満足で大切な命を粗末にした咎を清算して骸の海に消えて貰わないとね。『言霊にて煙火に暫しの魂魄を与えん…疾く攻めよ!』」
 炎と共に現れた何百体もの小さな朱鞠が一斉に兵士達へと襲いかかる。
「くそっ、手裏剣でチマチマと……!」
 致命傷は与えないが、傷をしっかりとつけてくる投擲武具で攻撃してくる朱鞠達に業を煮やした兵士のうちの1人が肩の装甲を外し、思いっきり振る。
 すると中に溜まっていた水が朱鞠達にかかり、分身の正体である炎によって蒸発しながらもその数を減らした。
「分身は真珠化しない、か。良いことなのか悪いことなのか……」
 辛うじて分身に当たらなかった水が付着した石畳の一部が虹色に輝くが、それを削って客に証明する暇はない。出来れば分身が固まって実証とするのが楽だったのだが……そう上手くはいかないらしい。
「でも、そのためにわざわざ硬い殻を自分から脱いでくれて助かったわ」
 朱鞠の分身が投じた苦無が露出した関節部分を的確に突く。刃に特殊な返しがついたそれは中々抜けずに行動を阻害し、無理矢理抜いても周囲の肉を巻き込んでより重い激痛を与えていた。
「そろそろ本番といきましょうか」
 そう言って本物が投じた手裏剣は装甲を軽々と切断するとその奥にあった肩を深々と切り裂き、血を噴き上がらせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
《華組》

ドジっ子メイド・燦(故意)は止まらない
事態をややこしくする

救園から装備回収

賊から像を守らなきゃ
汚れたら浄化しなきゃ
勝手に像に稲荷符を貼る
封印解除&破魔で元に戻せないか
最悪、髪の部分を壊して中が石像でないことを証明する

アタシ達も真珠にする気ですか!?
シホの袖を掴み怯えた様子で煽る
大丈夫、負けない

粘液が来たら符術でシホに合わせ、風氷属性攻撃のオーラ防御で堰き止め無力化
符術"鏡華散月"に繋ぐべく符に粘液を取り込むぜ

質問だ
何故売るの?
侵入者の像ならまだしも、それ以外も見受けられる
飽きたから?

鏡華散月で反撃
彫像になるのはアンタ達だ
呪詛で命脈を断ち躯の海に送られるか、永久に城の飾りとなるか選びなよ


シホ・エーデルワイス
《華組》

やっぱりパールウォリアーだったのね
以前
別の依頼でも戦った事があったから
もしかしたらとは思っていたけど
あの時は…


燦が騒いで注意を引いている隙に
人型の像に【祝音】を当てる

これで人に戻ったら
流石にお客さんも像が生きた人間から作られたと信じるでしょう


どうせ私達も像にするつもりだったと思いますけどね

燦を庇う様に立って挑発し注意を私におびき寄せつつ
こっそり【救園】から取り出した装備を燦に渡す

燦…大丈夫?

燦と息を合わせて風氷属性攻撃のオーラ防御で粘液を堰き止め凍らせ
聖銃の誘導弾で貫通攻撃


像にされていた人達もお客さんも戦闘に巻き込まれない様に城外へ避難誘導
可能なら腰が抜けて歩けない人等を【救園】で匿う



「賊から像を守らなきゃ!」
 突然現れた賊の対応に兵士達が追われる中、燦もその戦火に紛れ込んでいた。戦場に場違いなメイドがいることや、手に持つ武器の出所をこの非常事態時に聞く者は皆無だった。
「ぐっ!」
 妖狐の忍者の攻撃を受け止めた兵士の盾から粘液が弾け飛び、舞台に置かれた像の頭にかかる。それを見た燦は慌てた様子で舞台に上がった。
「うわわ、汚れたら浄化しなきゃ!」
 そして勝手に像の額へ護符を貼りつけると、それは粘液を吸って虹色の光沢を放ち始める。しかしそれだけでは水気を全て取ることは出来ない。
 燦は続けてポケットから雑巾を取り出して必死に拭う。するとその手際があまりに乱暴すぎたのか、髪の一部が欠けて落ちた。
「貴様、商品に何をやってる!」
「あわわ、ごめんなさいぃぃぃぃ!」
「も、申し訳ございません。私が止められなかったばかりに!」
 燦の動きに遅ればせながら気づいた兵士が怒鳴り声をあげ、燦は頭を即座に下げる。それを見てシホも舞台上に立ち、燦を庇うように前に出て頭を下げた。
 その影で燦は落ちた髪の断面を確認する。表面と全く同じ色をしているのを見て、燦はスカートの前で組んでいた手を広げてシホの左腕に縋り付くように掴んだ。
『主よ、この方にどうか慈悲と祝福をお与え下さい』
 その感触を合図に、シホは会場を光で包み込む。突然の光に周囲の客や兵士達が一斉に目を庇う中、何かが倒れる音が部屋に響く。
 そして光が落ち着いたのを見て恐る恐る目を開ければ、像が置かれていた場所には全く同じ見た目の少女が倒れていた。
「おい、あれ、まさか、生きている……!?」
「な、何が起きたのだ。真珠の像が人になったぞ!?」
「違います、きっと先ほどの閃光の間にすり替えられたのだと……」
 混乱する客を宥める兵士達の努力を無に還すために、燦はダメ押しとばかりに叫んだ。
「アタシ達もこの子と同じように真珠にする気ですか!?」
「まさか、あの忍者の言っていることは真実なのか!」
「ちっ、貴様ら、像を奪うだけでなく悪評を垂れ流すつもりか! 成敗してくれる!」
 説得することは不可能と判断したのか、まずは燦達を黙らせることを優先したのか、兵士達は客を部屋から追い出さないまま武器を構え直す。
「燦……大丈夫?」
「大丈夫、負けない」
 兵士達に見えないようにベロを出した燦は少女の額から護符を剥がす。そんな中、兵士達は盾に溜めた水を豪快に燦達に向けてぶちまけた。
 シホが深く息を吐くのに合わせて、燦は前面に護符をばら撒く。その直後、シホが展開した風がそれらを巻き上げると粘液は凍っていき、護符を包み込む巨大な氷壁となった。
「分断させて逃げる気か、させぬ!」
 その行為が逃走のためだと判断した兵士達がトライデントを構えながら壁に走りかかる。するとその氷壁を大量の弾丸が貫いた。
 氷の奥で手足から血を噴き出しながら悲鳴をあげて倒れていく兵士達を見ず、シホは撃ち終わった銃を素早く手放して両手を組む。
 そしてこちらに走り込んできた燦の足に合わせてその手を上に跳ね上げた。
『御狐・燦が命ず。符よ、宿りし力を此処に解き放て!』
 銃弾の雨霰によって崩れ始める氷を越えた燦の指に挟まれた真珠の護符が光を発して消えたかと思えば、その足元から大量の水が降り注ぐ。
 その水を浴びた兵士達は、まるで先ほどの少女のような真珠の像へと姿を変えた。
「ここまでやれば流石にお客さんも像が生きた人間から作られたと信じるでしょう……大丈夫ですか?」
 燦が無事に着地したのを見届けてからシホはひざまづいて、これだけの騒ぎが間近で起きていながら起きようとしない少女の息を確認する。微かであるが、胸は確かに動いている。
「ずっと飲まず食わずで真珠の中に閉じ込められていたのでしょう、ここでゆっくり休んでいてください」
 ロザリオが瞬くと同時に少女の姿が消える。立ち上がったシホは辺りを見回しながら、未だにざわめき続ける周囲の顔の見えない客に向けて叫んだ。
「皆様もすぐにここからお逃げください! もし腰が抜けてしまった方は今の彼女のように避難場所にまで転送しますので!」
 気になることは山程だが、命あってこその物種である。蜘蛛の子を散らすように駆け出す足音を聞きながら燦は首を回した。
「さぁて、質問だ。何故売るの? 侵入者の像ならまだしも、それ以外も見受けられる。……ひょっとして飽きたから?」
「お答えいたしましょう」
 完全に猫を被るのをやめ、顔面のみが無事だった兵士の頬をグリグリと指で押しながら話しかける。
 するとずっと閉じられていた扉から凛とした声が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『蒐集の女王『コーラルクイン』』

POW   :    侵食する珊瑚の腕
【背の巨大な珊瑚の腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【珊瑚化の侵食】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    変化する珊瑚の杖
【珊瑚杖のメガリス】から【虹色の光線】を放ち、【珊瑚化】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    埋め尽くす珊瑚群
【珊瑚化の呪いがかけられた珊瑚の欠片】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を珊瑚化の呪いがかけられた珊瑚群に変化】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠テフラ・カルデラです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「コーラルクイン様……」
「簡単な理由です」
 お付きの兵士が押し開けた扉から見える階段を、全身を赤く染め上げた女性が進む。
「これだけキレイな物を一人で独占するなんて、その物に不実ではありませんか。美しい物は皆で楽しませませんと。……ですが、その美しい物を作るには大量の金銭がかかります」
 オークションを開き、その物に相応しい金銭を得るのは自らの私腹を膨らませるためではない。
 優れた真珠を作り出す者を雇うことが出来る。材料を苦しめかねない重税をかける必要が無くなる。そして何より商人達に素晴らしい商品を提供することが出来る。
 決して攻め込まれるような悪いことはしていない。
 そう謳うコーラルクインに猟兵が向けたのは納得ではなく、厳しい視線だった。
「なら次の彫像になるのはアンタ達だ。呪詛で命脈を断ち躯の海に送られるか、永久に城の飾りとなるか選びなよ」
「そうすればこの国は滅びます。この国の民のために、あなた方の好き放題にはさせませんわ」
 お互い譲歩をする気はない。意地の張り合いが今、始まろうとしていた。
政木・朱鞠
生贄を用いなければ維持できない国なんて…勝手に滅べば良いんだよ。
結局の所は…自分の利を手放したくないだけの空念仏じゃん。
それに…人間はそんなにヤワじゃないよ。
人間の前向きな欲望を舐めた貴方には咎はキッチリ償ってから骸の海に帰ってもらうよ。

戦闘【SPD】
玉藻の前や一族の祖・政木狐も石化には縁があるけど…たとえ綺麗でも敵の手で石になるのは御免だね。
機動性を狙って真の姿を前借りして足部分に重点的に再現して『忍法・狐龍変化身』で強化状態で牽制しながら隙を作りたいね。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】で防御を緩めて【傷口をえぐる】→【生命力吸収】で絞め潰しダメージを狙うよ。

アドリブ連帯歓迎



「生贄を用いなければ維持できない国なんて……勝手に滅べば良いんだよ」
 兵士達を伸して降りてきた朱鞠はコーラルクインの訴えを鼻で笑った。
「結局の所は……自分の利を手放したくないだけの空念仏じゃん」
 率直な感想を聞いたコーラルクインが怒りを込めた視線を向ける。しかし朱鞠は肩をすくめるだけだった。
「それに……人間はそんなにヤワじゃないよ」
 もちろん先の見えない生活に疲れ、自死を選ぶ者もいる。しかしそれよりも沢山の人々は何が起きるか分からない明日に向けて懸命に生きようとするこもを朱鞠は知っている。
 だからこそ、見逃す理由にはならなかった。
「人間の前向きな欲望を舐めた貴方には咎はキッチリ償ってから骸の海に帰ってもらうよ」
 コーラルクインの手に握られた杖の先から紅色の光線が放たれる。
 不意の攻撃にも関わらず、持ち前の運動神経で避けた朱鞠の後ろにあった大理石の壁はみるみる赤く変色して光沢を放ち始めた。
 触ってはいないが、おそらく珊瑚に作り替えられたことを察した朱鞠は舌を巻いた。
「玉藻の前とか一族の祖・政木狐も石化には縁があるけど……たとえ綺麗でも敵の手で石になるのは御免だね」
 そしてそのままクラウチングスタートの体勢を取る。
『抑えし我が狐龍の力…制御拘束術第壱式にて…強制解放!』
 朱鞠の脚を青い狐火が包んだように見えた瞬間、その姿が掻き消えた。
「くっ、どこへ!?」
 動いた時に散ったとみられる炎や足音から当たりをつけたコーラルクインはやたらめたらに光線を放つが、珊瑚で出来た像は現れず、備え付けの壁や布の材質が変わるのみ。
「では、そろそろこちらの番といかせてもらいましょう」
 当たらない現状に焦りを感じているのか忙しなくコーラルクインが会場全体を見回す中、朱鞠の声が響き渡り、次いで指を鳴らす音が聞こえてくる。
 するとコーラルクインのドレスを囲むようにランダムに棘が配置された鎖が現れた。鎖はそのままコーラルクインの体に巻きつくと、その体を宙に吊り上げる。
 締め付けられた喉からくぐもった声を漏らしたコーラルクインは鎖が伸びる先へ光線を放ったが、鎖の締め付けは緩むことなく赤く綺麗な肌に亀裂を刻ませた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ歓迎

「ボクか!腕が鳴るね!」とガッツポーズを!
『スカイスッテパー』で縦横無尽にジグザクと動いて隙を見て『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で』♥ビーム攻撃を仕掛けます!
敵の避けれない攻撃は『神代世界の天空神』で空間飛翔して敵のUCには『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化をします!
『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化して『ガディスプリンセス・レディース』で従属神を召喚し『ヴァイストン・ヴァビロン』で更なる追撃を仕掛けます!

「母なる“海”を守護するのは猟兵の役割だよ!」

『ゴッド・クリエイション』で海神ポセイドンを創造して海を正常に戻し敵の邪魔をします!
「勝つ」



 亀裂が広がり、コーラルクインの体の一部が欠片となって地面に落ちていく。
 するとまるで仕込み罠のように落ちた場所を中心として大量の珊瑚が生え出した。
「うわわ、危ない!」
 素早く空中へ避難したティファーナがコーラルクインの光線を警戒して、縦横無尽にジグザクと動きながらハートポーズからビームを放っていくとただでさえ傷ついていたコーラルクインの体が砂岩のように崩れていく。
 だが削れれば削れるほど、破片はすでに出来上がった珊瑚礁に跳ね返って他の所に落ち、蝕まれた範囲を広げていった。
「ぐっ……ううっ……」
 顎を上げながら呻き声を漏らすコーラルクインの視線がティファーナを向く。それを証明するかのように全身に痛みが走ってもなお握り続けている杖の先もティファーナへ向けられた。
「次はボクか! 腕が鳴るね!」
 自分に向いた敵意を歓迎するかのように、ティファーナの全身から光が放たれると杖の先に絶えず生じていた光が失せる。
 突然効かなくなった杖に視線が移った瞬間に、ティファーナはどこからともなく取り出した巨大な金の延べ棒でその頬を引っ叩く。
 突然の横からの衝撃に鎖による拘束が解け、ボロボロになったコーラルクインの体が落ちて石畳の上を転がっていく。
「よっし、このまま勝っちゃうよ!」
 しかしこのまま一気にケリをつける気でいたティファーナは一切動揺することなく、勝ち名乗りを上げながら一瞬で舞台の上へ移動する。
 すると何もないところから強靭な肉体を持った男性が現れ、珊瑚を踏みつぶしながら着地した。
 だが男性の体は抵抗する間も無く赤く染まり、珊瑚礁の一部となってしまった。
「うわ、うっそ」
「あなたのとっておきは、無力化されたようですわね……すぐに後を追わせてあげましょう」
「……それはどうかな?」
 よろよろと立ち上がろうとするコーラルクインにティファーナは不敵な笑みを浮かべながら指を差す。同時に、珊瑚の像がぎこちなく動き出した。
「母なる“海”を守護するのは猟兵の役割だよ! 目覚めろ海神ポセイドン!」
 その動きは次第に滑らかとなり、握っていた三叉の銛を助走をつけて投げつける。
 珊瑚となっても鋭利な先端はコーラルクインを捉えると、勢いは落ちることなくその体を壁へ貼り付けにした。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
《華組》

税を課すな
魂入ってるのに『物』もねーわ

愛のない奴隷売買よ

妖魔解放暴発
宿縁のメデューサ『蛇姫』の魂が霊着される
憂い口調に豹変

シホ…似た者でなく似て非なる者よ

大理石の剣と黒曜石の杖で応戦
手始めに兵を一突き大理石像にする
この娘は私が愛でるの

シホを襲う珊瑚群を瞳からの石属性―石化の衝撃波で薙ぐ

這うような高速移動で女王に迫るわ
残像で的を絞らせない
鍔迫り合うと見せかけ黒曜石杖を蛇に変えて噛みつかせる

金満女王は嫌いよ
衝撃波で石に、否、砂になれ

妖魔解放が解けたら
破魔と封印解除とフォックスファイア・零式で像を人に戻すよ

シホを心配げに支える
寝息に安堵し、膝枕で髪を撫で零式で元気を分けるよ
頑張りは報われたぜ


シホ・エーデルワイス
《華組》

貴女なりに島の発展を考えていると…
材料が生者である時点で
これは人身売買でしかありません!

!燦じゃない!?
帝竜戦役で燦が魂喰いした時の…
なるほど…似た者故に興味が

失敬
同じに見られるのは不快ですよね


30℃以上の海水に浸り続けた珊瑚は
白化し死滅する

なら

温水属性攻撃の誘導弾で珊瑚の欠片を優先して迎撃し
味方の援護射撃

珊瑚群は呪詛・地形耐性効果のある破魔の範囲攻撃で解呪


味方が珊瑚化しそうなら【祝音】


戦後
城内を第六感で珊瑚や真珠の像を探し【祝音】で救助活動
けど
量が多く全ての像を人に戻し終えた途端倒れる

燦…ごめん
ちょっと休みます…

燦の温もりを感じ心地良さそうな寝顔を浮かべながら
安らかな寝息を立てて眠る



「今の暮らしのために『税を課す』な」
 燦は左の胸にそっと手を添え、目を閉じる。
「魂入ってるのに『物』もねーわ……それはただの愛のない奴隷売買よ」
 そこへ一通りの露払いと客の避難を終えて戻ってきたシホは普段とは違う燦の雰囲気に、最悪の事態に備えて反射的に銃を構えた。
「あらあら、落ち着きなさいな。あなたを害する気は無いわ」
 その動きを感じ取って向けられた蛇に睨まれたかのような威圧感のある視線とアンニュイな話し方が、シホの記憶中枢を刺激する。
「あなた……帝竜戦役で燦が魂喰いした時の……! なるほど……似た者故に興味が」
 一人で勝手に合点のいった様子のシホを燦は物憂げに睨みつけた。
「シホ……似た者でなく似て非なる者よ。あんなのと一緒にしないで欲しいわ」
「……失敬」
 言い訳せず、すぐに謝ったシホから目を離し、燦はどこからともなく大理石の剣と黒曜石の杖を取り出すと足元で跪かされた兵士のふくらはぎへおもむろにその刃を刺した。
「私はどれだけ持て余そうとも絶対に売ったりしない。どれだけ量があろうと全部自分が死ぬまで責任を持って、きちんとお世話するわ」
「あ、あっ……!?」
 痛みと体の異変に喘ぐ兵士の顔が灰色に染まり、動かなくなる。その顎を一撫でして燦は微笑んだ。
「この娘はあなたの代わりに私が愛でてあげる」
「……そういう、話、でしょうか……?」
「あ、なた……っ!」
 体に突き刺さったトライデントを引き抜いたコーラルクインからこぼれ落ちた欠片が辺りに散らばり、珊瑚礁を形成していく。
 宙に飛んでない2人を飲み込まんと迫るそれに銃口を向け直しながらシホは呼びかけた。
「燦っ!」
「分かっているわ。あなたに心配をかけるような事はしない」
 そう呟いて見開かれた燦の視線を浴びた珊瑚は一瞬で灰色と化し、続けて襲いかかってきた弾丸混じりの大津波に飲まれた。
 石化しただけでなく30℃以上の海水に浸り続けて死滅し、破魔の力で呪いまで消された珊瑚だった物の下を、燦は悠々とまるで蛇のように這って進んでいく。
 手足をなるべく使わないその動きに恐怖を覚えつつも、コーラルクインは歯を食いしばって杖を向けた。
 しかしその光線は浴びた珊瑚を甦らしただけで、燦自身は捉えられない。首を動かせば動かすほど音も無く忍び寄る燦の幻影は増えていき、白化した珊瑚礁全体に広がっているかのような錯覚さえ感じさせる。
 的を絞れない事実に呻き声をあげながらも辺りに注意を配り続けるコーラルクインが咄嗟に振り返り、杖を突き出した。
 すると燦が振り下ろした黒曜石製の杖が交錯し、鈍い音を立てた。
 そしてそのまま鍔迫り合いに移行するかと思えば、黒曜石の杖が突然捻れていく。捻れた黒曜石の杖は珊瑚の杖に巻きつきながらコーラルクインの手からそれを離させようと引っ張った。
 コーラルクインが抵抗しようとさらに力を込め直すと先端が真っ二つに割れ、そこから見えた鋭い4本の牙がコーラルクインの喉笛に突き刺さる。
「あ、なた方、私が、死ねばどうなるかわかっているのですか! この島が、住む者達が、苦しみ、滅ぶのですよ!」
 体が崩れ、毒を与えてもなお、コーラルクインは国のことを思い、叫ぶ。
「貴女なりに島の発展を考えていると……ですがその材料が生者である時点で、これは人身売買でしかありません!」
 しかしシホはロザリオを握りしめながらそれを否定する。何かの犠牲の上に成り立っている平和を享受出来るほど、彼女はもう無垢ではいられないのである。
「金満女王は嫌いよ。石に……否、砂になれ」
 なおも反論しようと口を開いた形でコーラルクインの体が石と化す。すると全身に広がっていたヒビがより大きくなり、埃を立てながら崩れ落ちて燦の足元で小山を形成した。

 数時間後、城内を第六感で探し回るだけでなく大理石にした兵士を叩き起こして案内させ、城内中の宝石像という人々を全員元に戻し切ったことで城内には感動と困惑が入り混じっていた。
 シージュエル島から出荷されてしまった宝石に閉じ込められた人は何十何百に渡る。解呪作業中にも、何人かの商人が在庫だったり売り捌いてしまったそれについての相談をしてきた。
 やるべきことは分かっている。しかしそれに対する購入者への補填や解呪する人員、そもそも像が今どこにあるのかなど、解決するにはあまりにも考慮することが多い。
 難しいことは面倒と蛇姫から意識を戻された燦が段差に座って唸っていると、後ろから足音が聞こえてきた。聴き馴染みのあるそれに燦は笑顔で振り返る。
「おう、おかえり」
「燦……ごめん、ちょっと休みます……」
「え、ちょっ!?」
 そう言い残して、まるで木のように倒れてきたシホの体を燦は受け止める。そして近づけた耳に聞こえる寝息に安堵し、そのままその頭を正座に直した自分の膝の上に乗せた。
 驚きはしたがこうなるのもある意味当然だろう、とコーラルクインを処した後の作業を思い返して燦は息を吐く。
「やるべきことはまだまだ残ってるけど……頑張りは報われたぜ」
 騒ぎを聞きつけ、登城してきた親と子が泣いて抱擁する様を見ながら銀色に輝く髪を撫でる。
 意識が無くともその温もりを感じているのか、シホは心地良さそうな笑み混じりの寝顔を浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月06日


挿絵イラスト