落ち着いた聞き心地の良い声を響かせる白い翼を背負ったかろうじて四肢を備えたように見える造形の崩れ切った何かの彫刻の前でわかりませんか?と首を傾げる。その様子に溜息のような羽搏きの音を刻んだ魔導具が正解を応え変わらない時間が流れ続ける。
「ようこそ、御足労いただきありがとうございます。さて、もうご存知の方も多いと思いますので、手短に説明させていただきます。現在、アルダワ魔法学園の始まりの迷宮で発見されたダンジョンメイカーという魔法装置を用いて強力な災魔を呼び出し、討伐するということがおこなわれております」
アルダワ魔法学園の地下迷宮を造りあげたダンジョンメイカーが、大魔王の封印という役割から解放されたことで可能となった、迷宮の創造と強大な災魔を1体強制召喚という機能を利用している現状を語った七曜が猟兵達にこれから目的について話を繋げてゆく。
「現在のアルダワ魔法学園に関しましては重篤な危機は起きておりません。しかし、地下迷宮にはまだ強力な災魔が残っており魔法学園の生徒では対処の難しい存在がいるのは変わりありません。なので、ダンジョンメイカーを利用し、その危険を減らしていくのが今回の依頼となります」
「迷宮の創造に関しましては、皆さんがダンジョンメイカーで創りたいと考えた迷宮が様々に混ざった形で顕現するようです。例えば、数多くの美術品や骨董品から最も価値のある物を探す迷宮を望めばそのような要素を含み、敵の哨戒や罠を予測し回避して展示された何かを奪取する迷宮を望めばそのように。知識や経験をもって散らばった物品の歴史考察を重ねて正しい場所に戻すような迷宮を望めばそのような構造が組み込まれることになります」
「この度は災魔の強制召喚と討伐に協力いただけることに感謝を。もう説明はされていると思うから単刀直入に進めさせてもらうよ。まず呼びだす災魔はアーラ・イリュティム。虚飾の名前を冠する少女と天使の翼にも見える白翼型の魔導具。もしかしたらちょっと聞き覚えのある人もいるかもしれないけれど、魔導実験の被験者が災魔になったそんな相手になる」
私がこんな状態になる前に縁のあった災魔になるから気になることがあれば聞いてもらえれば出来るだけこたえたいと思うからよろしくお願いするよ、と締めくくり迷宮を想像する区画へと向けて道案内を始める。
カタリツヅル
当依頼に興味を持っていただきありがとうございます。初めてお会いする方も、再びご覧になっていただけた方もよろしくお願いいたします。カタリツヅルと申します。ご縁ありましたら、皆さんの活躍を描かせていただければと思っております。
舞台はアルダワ魔法学園となります。ダンジョンメイカーにより新たな迷宮を創造し、そこへ災魔を呼び込むことにより、学園迷宮に潜む災魔の討伐を行う流れとなります。
一章は、攻略したい迷宮を考えていただきます。必ずしも美術品にこだわる必要はなくゴーレムのような魔導機械との1対1の戦闘をする迷宮、トラップが行く手を阻む迷宮、先に進むために謎を解いたりギミックを動かしたりする迷宮等…皆さんの考えた何かが反映されるので自由に発想していただければと思います。
※召喚されるアーラ・イリュティムの影響により魔鏡に関する要素が盛り込まれます。
二章は、出来上がった迷宮の探索となります。どのような迷宮が出来上がったかは間幕で記載いたしますのでそちらを参考にしてみてください。アーラ・イリュティムの影響により設置された魔鏡に皆様の理想の姿、過去の姿、秘めた姿が映し込まれ何らかの干渉が発生する可能性があります。
三章はボス戦です。迷宮の最奥で待ち受ける? アーラ・イリュティムとの戦いとなります。特徴は間幕等で差し込んでゆきますので参考にしてください。
第1章 冒険
『ダンジョンメーカー』
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POW | 肉体や気合で突破するタイプのダンジョンを創造してみる |
SPD | 速さや技量で突破するタイプのダンジョンを創造してみる |
WIZ | 魔力や賢さで突破するタイプのダンジョンを想像してみる |
👑7 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴 |
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●過去の英雄の想い出
それぞれに迷宮の創造に向き合う猟兵達にエイルマーからの声が届く。過去を思い出すように紡がれていくのは呼び寄せる災魔の概要と印象。
「さて、軽く聞き流してもらえると嬉しい。呼びだそうとしているのはアーラ・イリュティム。白い翼の魔導具がアーラで、少女がイリュティムになる」
出会うのは先になると思うけど、覚えておいてもらえると助かる。
「特徴としては心の中に在るその人の姿を現実へと映し込む能力がある。あとは…、美術品を好むという所かな。正確に言えば個人や多くの人に執着される品を好むという感じになるよ」
古い武具や絢爛な美術品に思い出の品……贅沢なものから武骨なものまで幅広い感じでね、と価値の感じ方は人それぞれと補足しながら話が続き。
「戦いに関しては積極的ではないけれど、自衛の能力は高い感じだね。これ以外にももし…興味があるようなら出来る範囲で範囲で答えるから、質問してもらえればうれしい。彼女たちを呼び寄せたことで出来上がった迷宮へどんな影響が出たかは別途、説明するから迷宮作りは気軽な感じで問題ないよ」
それじゃ…邪魔して悪かったね、と話を締めくくったエイルマーが猟兵達の邪魔にならないように身を引いてゆく。
紫洲川・珠璃(サポート)
キャラの雰囲気は落ち着いたお姉さんの感じ
口数はどちらかというと少なく物静か
戦闘は速度を生かした撹乱を主として手数重視の攻撃で戦います
足は止めず常に動き回ります
武器は主に一振りの刀を両手持ちで使い、まれに脇差として所持している二本目を抜きます。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●ダンジョンメイク
幾つかの旧校舎を横切り進み開けた場所へと辿り着いた猟兵達が、新たな迷宮を創造するために割り当てられた場所で思い思い行動してゆく。
●ダンジョンメイカー
金彩の華模様が艶やかな黒染めの着物を纏った紫洲川・珠璃(夜を追う者・f00262)が、案内された人気のない旧校舎群の端のあたりでこれまで受けた説明を思い返しながら言葉を零す。
「迷宮を造るって……聞き間違えじゃなかったのね。実際そういうものみたいだし、細かいことは気にしても仕方ないのだろうけど、魔法装置ってすごいのね」
地下に巨大な構造体を構築する魔法装置の機能に夜空のように独特な色彩を見せる深蒼の瞳を瞬かせた珠璃が、依頼された内容を果たすために緩やかに歩きだす。
●新たな迷宮
九尾の血を引く銀麗の剣士が髪飾りをゆらゆらと揺らしながら考えを纏めるように周囲をゆっくりと散策してゆく。
●迷宮想像
静かに流れる空気に僅かな足音が刻まれる。落ち着いた様子で銀色の髪に僅かに風をはらませながら進む珠璃が、転送される前に聞いた内容と自身の知識を鑑みながら始まりの魔法装置が創り上げる迷宮の内容を思い浮かべてゆく。
「美術品に芸術品、ねぇ。審美眼を問われる迷宮になりそうだけど、武具関連であれば大丈夫かしら? 普通の迷宮でもいいみたいだけど…。まぁ、呼び出される災魔にあわせておきましょうか」
腰に佩いた刀としては比較的長く、飾り気の少ない頑丈な緋拵えの鞘に納まった愛刀の柄に手を置いた珠璃が、一つの指針を決めてふとグリモア猟兵が語っていた言葉を思い出し。
「…そういえば、最も価値のある物を探すとも言われていましたね。何をもって最も価値があるのかというのは難しい問題だと思うのですけど」
頤に手を当て首を傾げながら幾つかの価値という言葉にから考えられる評価の方法を羅列してゆく。
一つ、質実剛健な実用品……実用性の点で価値の高いもの
一つ、希少な材料が使われている等……金銭的に価値が高いもの
一つ、現在では遺失した技術が使われている等……考古学的に価値が高いもの
一つ、歴史の考察や時代の流れで役割を果たしている等……学術的に価値が高いもの
一つ、―――個人や一族にとって意義や意味を持っている等……特殊的な価値を持つもの
指折り数える珠璃が穏やかな雰囲気を瞬刻、冷たく冷徹なものに変え……その雰囲気が幻だったかのように穏やかな雰囲気を取り戻す。
「迷宮自体が創造されるならその中にある美術品も、ダンジョンメイカーが創り上げた何かか……もしくは、召喚された災魔によって骸の海から拾い上げられたものでしょう」
脳裏に浮かんだ自身の探し求める一族の家宝の事から意識を引き戻した珠璃が、迷宮の攻略に必要となる価値への考えに試行を戻し言葉を重ねていく。
「歴史的価値のある実用品……と言うのもあるでしょうけど、刀剣類であれば私でも判断は出来そうですね」
●新たな迷宮
散策するように旧校舎の一角を歩いていた九尾の血を引く銀麗の剣士が元の場所へと戻り蒸気幽霊に出迎えられる。
●迷宮創造
足元を僅かな揺れが奔り抜けてゆく。魔法学園の旧校舎群のさらに下にある何かへと繋がった感覚に珠璃が、エイルマーへと視線を向けて確認するように言葉を紡ぐ。
「今のがダンジョンメイカーかしら? 少し不思議な感覚がした気がしたわ」
『それで間違いないと思うよ。ただ、迷宮が出来るまでにはもう少し時間がかかるようだ』
肯定の言葉と現状を語ったエイルマーに珠璃が頷きを返し、再び散策を始めようと別の方角へと去ってゆく。
成功
🔵🔵🔴
●虚飾の白翼
アルダワ魔法学園の地下迷宮。微かな音の響く封印の間に変化が訪れ、穏やかな声が響く。
『おや、これは何でしょうね。……ん、別の封印でしょうか?』
【そのようだな。我らを呼ぶ存在がいるらしい。我が契約者殿】
柔らかな金髪を揺らす少女がそれならば身嗜みを整えなければなりませんね、と言葉を零し白翼を模した魔導具から同意の声が響く。
ジャスティス・ボトムズ(サポート)
★アドリブ大歓迎
正義を執行することに全力を注ぐぜ。
敵と認識した相手は叩き潰す。
それが俺の正義だ。
俺は闘争や探索などあらゆるものをシンプルに考えて行動するのを好む。
戦い方は武器での攻撃と素手での格闘を敵を見て使い分けている。
物事はシンプルに考えて動いた方が白黒ついて分かりやすくなるってもんさ。
正義を執行するという意志は俺にとって絶対だ。
何があっても絶対にこれだけは曲げないぜ。
やること決めたら後は全力で突っ込んでいくだけだぜ。
技能は怪力、鎧砕き、存在感を使って力で問題解決を目指す。
正義を執行するのにはパワーをフルで発揮するのが俺好みだぜ。
正義の力で敵を叩き潰して、優しさを持って民間人に接するぜ。
●ダンジョンメイク
蒸気機械の動作音を響かせる旧校舎群を見上げていた猟兵が、依頼された内容を確認するために案内をしてきた蒸気幽霊の元へと足を向ける。
●ダンジョンメイカー
身体の要所を保護する赤色が印象的な不死の怪物の毛皮をあしらった衣装を纏ったジャスティス・ボトムズ(正義の執行者・f22965)が、今はまだ何もない迷宮が出来上がる場所を視界に入れながら単刀直入にエイルマーへと問いかける。
「よぅ、俺はジャスティス・ボトムズだ。あんたがエイルマーだよな? いや、細かいことはいいか。敵を呼び寄せる迷宮を創り上げて……その迷宮を踏破して敵を倒すってことでいいんだよな?」
『あぁ、それであっているよ。とはいっても、幾つものイメージが混ざった迷宮になってしまうけど』
大きく覇気のある声で現状を確認したジャスティスに、エイルマーが頷きを返しながら肯定を示し……その様子にじゃぁ…とっとと始めるか、とジャスティスが周囲を見渡す。
「まぁ、件の魔法装置がそういうもんならしかたねぇな。……おっ、ちょうどいいな。悪いがちょっと場所を借りるぜ。あと、暇なら少し付き合ってくれよ」
●新たな迷宮
曲がらぬ正義を掲げる男が旧校舎への入口に近い場所に置かれていた頑丈そうな石塊へと背中を預け頭上を仰ぎ見る。
●迷宮想像
遠く響く蒸気魔導機関のたてる音が空気を微かに揺らす。腕を組み意識を呼吸を落ち着けてゆくジャスティスが、自身の在り方を迷うことなく言葉にのせ、旧校舎群の地下の奥深くにある始まりの魔法装置へと繋げてゆく。
「正義を執行することに全力を注ぐ。敵と認識した相手は叩き潰す。それが俺の正義だ。なに、物事はシンプルに考えて動いた方が白黒ついて分かりやすくなるってもんさ」
自身の言葉を黙ったままエイルマーが聞いていることを、視界の端で確認するジャスティスが異世界で起こった戦争の記憶や新たな世界での出来事も織り交ぜ続けて言葉へと変え。
「だから、俺は闘争や探索…猟兵として依頼も含めてあらゆるものをシンプルに考えて行動するのを好む。今度の迷宮も俺らしく動ける迷宮がいい」
『それなら、今回だと…障害を突破して進む迷宮が好みかも知れないね』
転移される前にグリモア猟兵が予知から提示していた迷宮と重ねるならば、と言葉を返したエイルマーにジャスティスが得意とする方法を加味したやり方を模索してゆく。
「罠の類なら無策に突っ込む気はないが、どんな内容かわかったならそのまま正面突破だな。わからなかったとしても正面突破だ。なに、やること決めたら後は全力で突っ込んでいくだけだぜ」
潔いほどに明快な方法にエイルマーが僅かに苦笑し、ふと気が付いたようにジャスティスが以前同じような迷宮が作られたのかを問いかける。
『あぁ、あるよ。その時は守護者という立ち塞がる存在もいたね』
「俺的にはそっちの方がいいな。こいつを使って戦って突破する方がシンプルでいい」
問いかけに応えたエイルマーへと腰に吊るした正義を執行するために作られた剣の柄を叩き獰猛に笑ったジャスティスが足元に奔った揺れに警戒する様に気配を鋭くする。
●新たな迷宮
微細に奔る振動に紛れて曲がらぬ正義を掲げる男が引かれるような押されるような不思議な感覚を感じ取る。
●迷宮創造
微かな揺れが収まり元の空気がもどってくる。周囲にそれ以上の変化が起きないことを理解したジャスティスがエイルマーに確認を取り。
「さっきのでここに来た目的は終わりだよな? 他にないなら一度戻るぜ」
自身の問いかけに肯定の言葉が返ったことを聞いたジャスティスが別の世界へと戻るために踵を返す。
成功
🔵🔵🔴
●虚飾の白翼
アルダワ魔法学園の地下迷宮。緩やかに響く羽搏きと、パタパタと布を叩く微かな音が響き……困ったような穏やかな声が響く。
『ん~、どうしましょうか? あまり派手な服は印象が悪いでしょうし…』
【残念ながら一張羅以外持っていないだろう……、我が契約者殿】
そこは…努力で何とか、と優しく響く金髪の少女の声に白翼を模した魔導具から困ったような声が返り……浸食する黒い広がりへとその声が吸い込まれてゆく。
天翳・緋雨
【詳細はお任せです】【SPD対応】
うーん。そうだなあ。
生死に関わる深刻な危険は無いけれど自身を鍛え上げて行かないと踏破出来ない様な試練場があるといいのかな。最初は無理でも少しずつ乗り越えて、いつかクリア出来たら自分の成長を実感できる様な。
そんなダンジョンが有ってもいいよね。ここは学園の迷宮なのだから。
・魔法や物理攻撃でダンジョン内の構造物は破壊できない
・タイムアタックや正確性を取られるアトラクションが多数存在する
・咄嗟の判断力を問われる様なものもある
・空間内では破魔の力が作用して挑戦者の魔力等は半減する
・機械系やサイキック等の能力もジャミングで集中力を削ぐ
成績が記録される仕組みがあるといいかも
●ダンジョンメイク
旧校舎群から戻る道を歩く猟兵とすれ違った猟兵が、無事に目的地に着いたことを安堵しつつ、この場所を管理する蒸気幽霊へと近づいてゆく。
●アルダワ魔法学園の旧校舎
特殊繊維で出来たスーツを魔法学園で目立たないように彩色を調整して纏った天翳・緋雨(時の迷い人・f12072)が、緋雨に気が付き頭を下げ迎え入れるエイルマーの周囲に先行したであろう猟兵達がいないことに僅かに足を速め。
「ごめんなさい! もしかして遅れましたか? っと、ボクは天翳・緋雨。あなたがエイルマーさんで…いいんですよね?」
『初めましてかな、天翳さん。あぁ、エイルマーであっている』
それと…特に時間指定がある訳ではないから遅刻ではないよ、と続いた言葉に緋雨が胸をなでおろし、初めてとなる迷宮の創造に関して考えを纏めるのに過去の英雄にして此処周辺の管理者でもある目の前の存在に協力を願えないかと声を掛ける。
「もしよければ、ダンジョンメイカーへのどんな迷宮を創るか伝えるのを手伝ってもらえませんか? 助言とか気になる点があれば教えてほしいのです」
●新たな迷宮
首肯した蒸気幽霊が僅かに場所を移動し緋瞳を象嵌した異能者の目の前で蒸気と歯車の奏でる音と共に周囲の様子が変化してゆく。
●トライアルダンジョン
金属と金属が組み上がってゆく機械的な音が周囲に響き溶けてゆく。僅かな時間で組み上がった椅子とテーブルのセットに少しの間、目を丸くした緋雨に硬くて申し訳ないけどね、とエイルマーが席を勧め。感謝の言葉と共に席に着いた緋雨の前にエイルマーが腰を下ろすような様子で漂う。
「…それじゃ、お言葉に甘えて。ボクとしては生死に関わる深刻な危険は無いけれど自身を鍛え上げて行かないと踏破出来ない様な試練場があるといいのかな……と思うのです」
頷きながら促すように聞く姿勢を取るエイルマーに、魔法学園という場所と役割として大切なものになればいいと緋雨が話を繋ぎ。
「そう、最初は無理でも少しずつ乗り越えて、いつかクリア出来たら自分の成長を実感できる様な。そんなダンジョンが有ってもいいですよね。ここは学園の迷宮なのだから」
『……なるほど。魔法学園としては、確かにそうかもしれないね』
緋雨が語る創造する迷宮の在り方についてエイルマーの雰囲気が少しの悲しみと寂寥に彩られ、その様子に緋雨が何かおかしなことがあっただろうかと疑問符を浮かべ周囲を見渡し……蒸気魔導機関の立てる音しか響いていない状況に思考が加速する。
(……あれ? すれ違った猟兵の人以外…誰も見ていない? 人の気配も全くしないし、まるで廃墟……?)
「エイルマーさん。答えにくかったらいいのですけど、ここってもしかして誰もいないのですか?」
『恥ずかしながら、そうなる。でも、天翳さんの考えは面白いと思うよ』
ここまで辿り着く生徒達もいつかは増えるだろう、と心配させないように表情を戻したエイルマーにそれじゃあ…先に繋がりそうな内容を考えてみるのです、と緋雨が気を取り直し考えを纏めてゆき。
一つ、知識を身に着けるために魔法や物理攻撃でダンジョン内の構造を破壊して不正規に攻略できない。
一つ、技術を身に着けるために動作の正確性を問われるようなアトラクションが存在する。
一つ、経験を重ねるために咄嗟の判断力が必要になるを内容の変化するギミックがある。
つらつらと語られる緋雨の言葉が旧校舎の近くに誂えられた仮設の休息所へと響いて消えてゆく。
●新たな迷宮
緋瞳を象嵌した異能者の言葉は周囲に溶ける度に僅かな振動が旧校舎群を揺らし、蒸気幽霊がそれを静かに見守る。
●迷宮創造
震えるような微かな振動に落ち着いた声が重なり消えてゆく。数えるように創り出す迷宮の特徴を考えてゆく緋雨が、負荷トレーニングを模した能力を向上させる内容を考えつき言葉へと変え。
「それと、迷宮内では破魔の力…のようなものが作用して迷宮に挑戦する人の能力が半減したり、蒸気魔導機械やその他の機械……それに超能力やサイキック等の能力も何かしらのジャミングで十全に扱えないというのも良さそうなのです」
『向上心は素晴らしいと思うけれど…それだけの不利を背負って迷宮主に対峙するのは危険ではないかな?』
あくまで…目的は呼び出した強力な災魔の討伐だからね、と申し訳なさそうにエイルマーが緋雨へと言葉を掛け。
「なら、せめてタイムアタックみたいに成績が記録されたりする仕組みがあるといいかも」
それなら、と成長のために有用なシステムを緋雨が願ってゆく。
成功
🔵🔵🔴
●虚飾の白翼
アルダワ魔法学園の地下迷宮。徐々に大きさを増してゆく漆黒の浸食を覗き込んでいた金髪の少女の前で、ぐにゃりと黒穴が波打つ。
『あら…? …なるほど、悪くないですね』
【この頃はこういう追い求め方もあるのか】
『虚飾は憧憬。飾る姿は、憧れる明日の自分自身』
【目指すのならば望みを叶えよう】
『未来の姿を望むのならばそれを現在に映しましょう』
【いつか届きうるその姿を現在に。標としよう】
『とても、楽しみね。私のアーラ』
【同意しよう。我がイリュティム】
ぐにゃりぐにゃりと歪む漆黒へと手を浸すように楽しげな金髪の少女と緩やかに力強く羽搏く白翼を模した魔導具の声が吸い込まれるように消えてゆく。
ワズラ・ウルスラグナ
翼と虚飾か。成程、皮肉が効いている。
意図せずそうなっただけかも知れんが、ならば益々面白い。
さて、折角の縁だ。虚ろに消えぬ様、紡ぎに往こう。
心象を現実に映し込む、か
ダンジョンメイカ―然り、心を読む物ばかりだな
思い返せば魔導具と契約者達は『願い』に反応していたな
まあ相手が何であれ、俺が願う事は変わらん
求め得る最高の戦いを
創る迷宮は天井が高く、広い物を
大聖堂の様なのが洒落てるか
何処までが迷宮主の間に影響するかは分からんが、どうせなら空中戦を意識したいのでな
アーラ自体が虚飾なら飛べんかも知れんが、何方にせよ何を映し出されても見切れない程度の広さは必要だろう?
さあ鬼が出るか蛇が出るか
願わくば、善き闘争を
クララ・リンドヴァル
※アドリブ連携OK
※以降の参加は未定です
魔法学園……久々に戻って来ました。
災魔を此方から引きずり出せるようになったのですね。大魔王を封印していただけあって、すごい機能ですね。
【WIZ】
知識や経験を使って突破するタイプの迷宮を作ります。
見渡す限り立ち並ぶ書架。
当面の手掛かりは目の前にある物品。
美術品の類かも知れませんし、質の高い本そのものかも知れません。
周りの本に書いてある内容や物品そのものから推理を重ねて、
最終的に物品を正しい場所に戻せば道が開かれるのです。
え?他の要素が混ざる……ですか?
まぁ……それも面白いでしょう。
蒸気幽霊のエイルマーさんにもお話をうかがって見ましょう
●ダンジョンメイク
始まりの魔法装置へと何度かの干渉が行われた少し後。アルダワ魔法学園と地下深くの旧校舎群に到着した猟兵達がそれぞれに行動してゆく。
●アルダワ魔法学園の新校舎と旧校舎
柔らかな白を基調としたローブを纏いゆったりとした歩調で歩くクララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)が、以前よりも穏やかな雰囲気の魔法学園の廊下を歩きながら抱えた本に視線を落とす。
「……ふぅ。魔法学園……久々に戻って来ました。図書館も普通に開いていて……よかったです。お借りした本は帰りに……返却に行きましょう」 依頼の内容から役に立てば、と借用した数冊の本の重みとインクと紙の匂いに僅かに口元が笑む。そして、ゆらりと沸き上がった昏い光に包まれたクララが旧校舎へと転送されてゆく。
「しかし、……災魔を此方から引きずり出せるようになったのですね。ダンジョンメイカーと呼ぶらしいですが……、大魔王を封印していただけあって、すごい機能です」
時を同じくして、地下迷宮の奥の旧校舎群。左腕の欠けた古傷だらけの龍躯を誇るワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)が、慣れた様子で旧校舎群を抜けてエイルマーの待つ一角へと危なげなくたどり着く。
「……ふむ。また別の場所か、ここもなかなか広いな。この場所の探索も面白そうだが、今回は別件だな」
『あぁ、今回もよろしく頼む。質問があれば答えるし、必要な物があれば言ってくれ』
「では、折角の機会だ。落ち着いて話せる場所を用意してもらえるか?」
あと…少し大きめに頼む、と苦笑交じりに付け加えたワズラにエイルマーが任せておいてくれ、と答え案内を始める。
「さて、今度の迷宮はどうなるか…。なかなかに楽しみだな」
●新たな迷宮
蒸気幽霊に案内された戦獄龍の目の前で歯車と発条の噛み合う音が響き椅子と机を模した構造体が組み上がり、近くに昏い光が灯りそのなかから魔に捧げられし本の魔女が姿を顕し驚いた表情を見せ……それぞれが自己紹介を行ってゆく。
●迷宮大聖堂
ギシリと軋む音と重ねられた本が机に置かれる独特の音が響く。丸形のテーブルに等間隔で配置された椅子のような物の一つ、特に大きく作られたそれにそのまま腰を落ち着けたワズラが、エイルマーが用意したクッションを使いつつ隣席に当たる場所へと座るクララの様子をみやり。
「さて、よろしく頼む。そちらからでも構わんが、俺が先の方が良さそうだな。しかし、今回は翼と虚飾か。成程、皮肉が効いている」
「あっ、は…はい。お先にどうぞ」
初対面の男性二人と同席し、少しばかり気後れするクララが、注目されることに微かに恥ずかしそうに身を縮めつつも声を返し。
「でも、確かに。諷刺と言うのか……興味深い名付けですね。魔導具が翼の飾りなのに虚飾というのは面白い……です」「だろう? もしかすると意図せずそうなっただけかも知れんが、ならば益々面白い。これに関してエイルマーは何か知っているか?」
ワズラとクララの会話を興味深そうに聞いていたエイルマーへとワズラが水を向け、問われた内容にエイルマーが答えてゆく。
『そうだね。そう振舞ってる感じはあったかな。イリュティムが愛用してるのは修道女のような服に派手な孔雀が刺繍されたものだからね』
その言葉に脳裏に過った印象そのままの存在がありますね、と持参した本の中から似通ったテーマで描かれた絵画を見つけたクララが暖橙色の双眸を瞬かせながら、ポツリポツリとそのタイトルを零しながらその意味を考え思考に沈んでゆく。
「純白の翼に修道女の服…、穏やかに微笑む金髪の少女ですか。天の御使い、希望の運び手、秩序の守護者……えぇ、まさに天使ですよね」
「だな。アーラとイリュティムもいい性格をしていそうだ。いや、もしかすると魔導具の製作者の趣味かも知れんがな」
どちらにしろ面白い、とワズラの口元から黒焔と共に笑い声が零れる。
そうして、その空想を紡ぐように新たに知った情報を整理するクララの邪魔をしないようにワズラがイリュティム達へと揶揄するように牙を剥きながら、エイルマーへと迷宮の構想を語り紡ぐ。
「善いな、実に善い。ならば、もてなしてやろう。創る迷宮は天井が高く、広い物を。光降り注ぎ、万華鏡のように飾り硝子の影の落ちる大聖堂の様なのが洒落てるか」
『まぁ、あの二人なら喜ぶだろう。飾ることが好きだからね』
ならば…外に出たくなくなるほど飾ってやろう、と悪戯げさらに想像を加速させていくワズラにエイルマーが真意を問うような冷静な瞳を向け。
「まぁ、なんだ、何処までが迷宮主の間に影響するかは分からんが、どうせなら空中戦を意識したいのでな。もしかするとアーラ自体が虚飾なら飛べんかも知れんが、何方にせよ何を映し出されても見切れない程度の広さは必要だろう?」
造られた椅子や机…目の前で考え事に耽るクララとエイルマーに配慮しながらも徐々にパチリパチリと火勢を上げてゆく戦獄に載せるようにワズラが期待に目を輝かせる。
「まぁ、相手が何であれ、俺が願う事は変わらん。求め得る最高の戦いを。折角の縁だ。虚ろに消えぬ様、紡ぎに往こう」
●新たな迷宮
旧校舎群に弾ける黒焔に己の願いを乗せ、変化を期待するように話を止めた戦獄龍に頷いた蒸気幽霊が、近くに控えていた魔導蒸気機械を呼び寄せる。そうして、僅か後。柔らかな香りが周囲に漂いその匂いに瞳を瞬かせた魔に捧げられし本の魔女が小首をかしげ…僅かに頬を染め下を向く。
●迷宮大図書館あるいは迷宮大美術館
陶器がこすれ合う儚く繊細な音が周囲へと響く。つい考え込んでしまったことに気恥ずかしげに視線を下げたクララが、目の前に出された飲み物に暖橙色も双眸をぱちくりとし……勧められるままに一口、口を付ける。
「…あ、……不思議な味ですけど、とても美味しいです。これ、ハーブティーでしょうか?」
『あぁ、近頃は猟兵さん達にはお世話になってるからね。用意してみたよ』
「すまんな。ありがたく頂こう。…ふむ、気が張るならば俺は席を外しておくか? ひとまず、伝えるべきことは終えたし…そちらの考えに興味はあるが邪魔をしては本末転倒だろうからな」
器用にハーブティーを飲むワズラが昂る気持ちを落ち着けるようにゆっくりと言葉を紡ぎ、黒焔を抑えてゆき。厳つい見た目と違い穏やかなワズラの様子にクララが呼吸を落ち着けつつ言葉を繋ぎ。
「いえ、大丈夫です。折角ですし、聞いていただければと思います。はい」
そこで一度、話を区切ったクララがこれまでの間に纏めていた内容を口にしてゆく。
「最初の区分けでは、知識や経験を使って突破するタイプの迷宮を作りたいです。イメージとしては見渡す限り立ち並ぶ書架と書物を読むための閲覧室を備えた図書館や、数多もの美術品や芸術品を展示した美術館でしょうか」
『なるほど、骸の海から引き揚げられたそれらはきっと素晴らしいだろうね』
瞳を閉じて聞くワズラがその様子を想像するように首を傾け、話を先へと促すようにエイルマーの相槌が響く。
「突破するための当面の手掛かりは目の前にある物品。美術品の類かも知れませんし、質の高い本そのものかも知れません。もしかすると、古い蒸気魔導機械等の歴史的な物品の可能性もあるでしょう」
「ふむ…。面白そうだな。で、どうやって攻略してゆくつもりだ? 価値の見出し方は人それぞれになるかもしれん」
だが…先人の残した軌跡に触れるのも悪くない、と隻眼を開き肯定的な意見を零したワズラがエイルマーと共にクララを興味深げに見つめ。
「そうですね。はい、例えば周りの本に書いてある内容や物品そのものから推理を重ねて、最終的に物品を正しい場所に戻せば道が開かれるとかでしょうか?」
『その攻略方法は素晴らしいね。失われたものを正しく学べるのも……ね。ただ、他の猟兵さんの考えとイリュティム達の趣向でどう変化するかが気になるところかな』
語られた内容にどこか嬉しそうに表情を緩めたエイルマーがダンジョンメイカーによる影響をクララへと語り、先日の光景を思い返しながらワズラが言葉を繋ぐ。
「確かに以前、創り上げた迷宮はそれぞれの考えたことが混ざり合っていたな。となると、イリュティムを象徴するものというのは何なのだろうな?」
「え? 他の要素が混ざる……ですか? まぁ……それも面白いでしょう。あ…でも、よければどんな影響がでそうかお伺いしてもいいでしょうか? 知り合いなんですよね…?」
『あぁ、随分と古い知り合いになるよ。あと、影響に関しては予測混じりだけど精度は高いと思うよ』
●新たな迷宮
蒸気幽霊の言葉に重なるように僅かな揺れが周囲を揺らし、戦獄龍が龍躯に奔る古傷から黒焔が零れないように気持ちを落ち着け……振動の元を探るように魔に捧げられし本の魔女が幾重にも波紋を浮かべる白磁の茶器に入れられた香茶へと視線を落とす。
●迷宮創造
旧校舎群を揺らした振動が収まり僅か後。エイルマーがアーラとイリュティムのことを語り終り、その内容を噛み砕く様にクララが整理してゆき。
「影響は魔鏡……。迷宮に創り上げられた魔境は映された人の望む未来を封じた過去を秘める現在を映し込み現実に浮かび上がらせる……ですか。妨害はしないとのことですけど気になりますね」
「同意だ、心象を映し込む魔境とはな。しかし、ダンジョンメイカ―然り、心を読むものばかりだな。思い返せば魔導具と契約者達は『願い』に反応していた…このあたりも興味深いが本人に聞くのが吉かもしれんな」
幾度かの縁を持った大罪の名を騙る魔導具と契約者達を思い返し…これから始まる戦いという交わりにワズラが牙を剥き笑う。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●虚飾の白翼
アルダワ魔法学園の地下迷宮。人が十分に飲み込めるほどに拡がった漆黒の浸食の前に佇む金髪の少女が迷いなく足を踏み出し、ずぶりと何処かに沈んでゆく。
『なるほど、私も少し興味がありますね』
【過ぎ去った過去も未知の一つと言えるからな】
『虚飾は憧憬。飾る姿は、朧に霞む過去の自分自身』
【識りたいのならば望みを叶えよう】
『過去の姿を識りたいのならばそれを現在に映しましょう』
【今を築いたその姿を現在に。楔としよう】
『さて、向かう先はどうなっているのかしらね?』
【なに、悪い場所ではないだろう。我が契約者殿】
ずぶりずぶりと波打つ漆黒の何かに飲み込まれていくイリュティムが変らぬ調子でアーラに話しかけ、僅か後。誰もいなくなった封印の間をゆっくりと残された漆黒が浸食し続けてゆく。
第2章 冒険
『『ダンジョンメーカー』ダンジョンの探索』
|
|
POW | 肉体や気合でダンジョンを探索、突破する |
SPD | 速さや技量でダンジョンを探索、突破する |
WIZ | 魔力や賢さでダンジョンを探索、突破する |
👑7 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 |
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●嫉妬あるいは渇望の迷宮
始まりの魔法装置たるダンジョンメイカーが幾つのも願いを受けてその機能を動作させる。
地下深くに巨大で荘厳な迷宮主の間が作り出され…その部屋を護るように幾本もの通路が生まれ、迷宮主の間を飾り付けるかのように侵入者が深層に辿り着くのを遮るかのように幾つもの部屋が創り出され、それぞれを繋ぐ通路がさらに形成されてゆく。
ある部屋では広く幾つもの区画に区切られた部屋に様々な美術品、芸術品が置かれ…
ある部屋では様々なギミックと複雑な回廊が組み合わされた空間が創り出され…
ある部屋では幾体かの巨大な蒸気魔導機械の人型が造られ出番も待つように控える…
始まりの魔法装置に伝わった想像が様々な形で混ざり合い迷宮が創り出されてゆき……出来上がった迷宮の通路に部屋に天井に……豪奢な装飾をされた縁に納まった魔境が顕れる。鈍く曇ったように鏡面を濁らせる幾多もの魔鏡が、朧に美術品や芸術品を映し、鈍く動作音を響かせる蒸気魔導機械を照らし出す。
●状況確認
迷宮の入口へと集まった猟兵達に蒸気幽霊のエイルマーが感謝と共に状況の説明を始める。
『迷宮の創造から協力してくれた皆さんも攻略に名乗り出てくれた皆さんもありがとう。アーラとイリュティムを迷宮に呼び寄せるのは成功している。出来上がった迷宮は幾つかの特徴的な区画が連なった形で出来がっていてそれぞれの区画を攻略して迷宮主の間へと繋がる場所を探していくこととなるよ』
迷宮の構造を概要図で簡略に説明した後、猟兵達へとエイルマーが確認した内容を伝えていく。
【一つ目は、様々な美術品、本…武具まで置かれている区画】
『美術館と図書館が合わさった区画…と言うべきかな? 整然と並んだ書架に豪勢な展示棚…そんな感じで本や美術品に古い蒸気魔導機械や武具まで置かれている。ここ一帯にはトラップの類はなく、一応警護用のゴーレムが要所に立っているけど内部の物を故意に壊さない限り動かないよ。本題になるけど、ここで先に進むには人それぞれになるようだけど、例えばこの場所に入った時点で書物に興味を持っていたら書架の前に数冊の本が出されている状態になっているからその中で最も価値のあると思うものを元の場所へ戻すと先に進める。戻す場所は本を手に取れば感覚的にわかるらしいから心配はいらない。あと、武具だと試し斬りするような場所も用意されるみたいだね。総じて最も価値があると思うものを選ぶ場所と思ってもらえれば構わない。もちろん、残りの物ももとの場所に戻してもらって大丈夫だし情報を入手したければ書架や展示棚を巡ってもらえればと思う』
【二つ目は、ギミックや罠の満ちた迷宮のような区画】
『こちらは幾つかのギミックや罠が仕掛けられているちょっとした迷宮のような感じだ。特徴としてはギミックや罠を含めて破壊が不可能ということかな。罠はオーソドックスに矢が撃ちだされたりする射出系からトラバサミなどの足止め系に…落とし穴など罠らしい罠になるかな。ギミックに関しては、正しい順序で押さないといけないボタンや一つずつしか開けられない扉をくぐり抜けて先に進む扉の間だったりする。罠やギミックが解けなくなって進めない状況になれば強制的に元の場所に戻ることになる。あと、一番の特徴は前回攻略した自身の姿が投影されるということかな。攻略のヒントや自身の能力向上に使えるかなと感じるよ』
【三つ目は、守護者がいるタイプの部屋】
『これに関しては、正面突破の区画になるね。一人一体…部屋に入った人数と同じだけの巨大な蒸気魔導機械が動き出してそれを撃破してもらうことになる。武装は遠距離用の実弾兵器に近距離は蒸気魔導機械自体が武器だね。特殊なものとしては腹部についた鏡面。皆さんが使ったユーベルコードを映し込むようにそれを相殺する何かを行ってくる。わかりやすく戦う区画になるね』
『それと、共通して注意…と言うほどでもないのだけど通路や部屋には魔鏡が飾られていて、皆さんの望む未来の姿や後悔する過去の姿……心の奥に秘めた姿が映り込む。迷宮の攻略の邪魔にはならないけど、どんなものが映るか心を定めておいた方がいいかもしれないね。あと、魔境はアーラとイリュティムがに繋がりがあるから識られてしまうのは、留意しておいてほしいかな。最後になるけど、アーラとイリュティムの特性は転写。形のあるものからないものまで、映し出し結実させる……そんな、能力になるから覚えておいてほしい』
●虚飾の白翼
荘厳に煌びやかな迷宮主の中心で降り注ぐ光に照らされ神秘的に輝く金髪の少女がその背にある白翼を羽ばたかせながら、………実に俗な言葉が零れる。
『うっわー、高そう。戦いで壊すのもったいなくない? にまにましちゃうわぁ』
【化けの皮剥がれてるぞ? 相棒。しかし、どこのだれかは知らないが悪くないセンスだな】
『ごめんあそばせ。これまでが味気ない場所でしたのでつい本音が漏れてしまいましたわ』
【失礼ながら、我が契約者殿。メッキを盛りすぎではないでしょうか?】
クルクルと姿勢を変える金髪の少女に合わせて純白の翼が揺れ、一枚の絵画に相応しい雰囲気を醸し出しながら楽しげな会話が紡がれ……その眼前に巨大な魔鏡が揺らぐように顕れる。
天翳・緋雨
【SPD】
【真の姿】
身体の各所に施された呪印による身体強化がより顕在化し
雷光を纏った幻影を常時纏う様に
あー。そっかあ。鍛錬面を重視しすぎると今回クリアするのが難しくなってしまうのか…。でもクリア後には鍛錬用のツールとなって欲しいなあ。
まずはボクがクリアしないとね!
第六感をフル稼働
ギミックを読み解いて最適解を探しつつ道程を走破していこう
UCは【浮雲】を
我が身と秘めた異能を以って全力で挑む
自身のイメージを超えていけ
スピードの向こう側へと……!
培った様々な経験がきっと答えを教えてくれる
解法に迷ったなら心行く迄試せばよい
息が上がったら一休み
なんだかルーキーの頃を思い出すね
さあ、今の自分を再確認しよう
●虚飾あるいは羨望の迷宮
説明を聞き終えた猟兵達が迷宮へと消えてゆくなか、迷宮の傍で佇む蒸気幽霊の元へと一人の猟兵が移動してゆく。
●鍛錬の迷宮
用意された椅子に腰かけ足元を鎧う幾つもの動輪を覗かせた機動靴の調整を終えた天翳・緋雨(時の迷い人・f12072)が、新たに出来上がった迷宮の入口を瞳に映し込みながら隣に佇むエイルマーへと声を掛ける。
「信じていなかったわけじゃないけど、本当に出来上がるんだね。まさに魔法装置ってことなのかもしれないけど、どういうことなんだろう?」
『かの装置の由来に関しては、長い話になってしまうから気が向いたら旧校舎の図書館にもで行ってもらうといいかもしれないね』
緋雨の言葉に懐かし気に目を細めたエイルマーが生きていた時代を思い出すかのように言葉を零す。
「あー、そっか。昔の資料も始まりの迷宮の中や旧校舎に残っているんだね。っと、それと鍛錬面を重視しすぎると今回クリアするのが難しくなってしまうのは盲点だったよ」
エイルマーの様子に複雑なものを感じた緋雨がダンジョンメーカーの生い立ちは後にして…と、気合を入れるように立ち上がり感謝の言葉を残しつつ迷宮の暗がりへと消えてゆく。
●仕掛けと魔鏡
微かな駆動音を響かせながら駆ける緋瞳を象嵌した異能者の身体の周囲に雷光が奔り出し、並ぶ魔鏡に輝きが映りこんでゆく。
●歩んできた道
奔る白雷の輝きが高く弾ける反響と共に迷宮の中へと拡散してゆく。身体の各所に施された呪印――ナノマシンの制御チップ――を淡く輝がやかせ、柔光を幻影のように纏った緋雨が目の前に迫った大扉に僅かに速度を緩めながら、押し開けるように部屋の中へと飛び込む。
「無事、ギミック部屋についた……のかな? さて、どうしよう? あぁ、でもクリア後には鍛錬用のツールとなって欲しいなぁ。そのためにもまずはボクがクリアしないとね!」
見渡すほどに広々とした部屋の見上げるほどに高い場所に設置された次の場所へと繋がる扉。背後の壁に全てを映し込むような巨大な魔鏡が飾られているのを確認した緋雨が、肌に感じる緩やかな圧迫感にも似た独特の雰囲気に額に巻いたバンダナを解き第三の瞳を露する。
そうして、一度大きく息を吸った緋雨の足元から響く駆動音を徐々に高まってゆく。
―――キィッッッッ!!
―――ガゴンッ! ガガガッ!
甲高い音と共に弾かれるように飛び出した緋雨の目の前で、床に壁そして天井から幾重にもブロック状の構造物が飛び出し即席の迷宮を創り上げ、合わせて現れた射出機がガキリと音を立てる。
(なるほど、毎回同じトラップだと鍛錬にならないよね。事前に攻略方法を確認するズルは出来ないってことだね)
「でも、きっと培った様々な経験がきっと道を示してくれる!」
連続した射出音と共に進路を妨害するように飛来する幾本もの矢を沈み込むように姿勢を低くした緋雨が潜り抜け……そのまま地面を滑るように進む緋雨へと新たに発射された矢が弾幕のように迫る。
―――トッッ! キュッッ!
―――ガガッ……ガンッ!
地面を蹴り中空へと身を躍らせた緋雨が、さらに虚空を蹴りつけ…クルリと捻られた身体が天井に届き天地を逆に瞬刻、疾走する。
「空というには狭いけどこの瞬間から、ここはボクの領域さ…」
肌で、予感で、経験で感じるままに造られた試練を超えるイメージを緋雨が描きだす。その理想の動きのさらに先を目指す緋雨が、目標を外し壁や床に弾かれた矢が立てる硬い音を置き去りに、重力に引かれた再び虚空を蹴り、複雑な軌跡を迷宮を刻んでゆく。
「さぁ、スピードの向こう側へ……! どこまでもっ!」
それから、しばし後。部屋の入口へと戻された緋雨が頭上の魔鏡に映されている先ほどの自身が挑戦している姿を見上げながら攻略の手順を脳裏へと描いてゆく。
「流石に一発じゃ突破は無理だったみたいだね……罠のある所に追い詰められたのが敗因かな…? まぁ、解法に迷ったなら心行く迄試せばいいよね」
●仕掛けと魔鏡
積み上げるように繰り返す緋瞳を象嵌した異能者が弾かれるように駆け出し迷宮を創り出した試練を鮮やかな動きで乗り越えてゆく。
●積み上げてゆくモノ
幾度もの挑戦の後……迷宮に背中を預け熱を持った身体が冷やされる心地よさに頭上を仰いでいた緋雨が、落ち着いてきた呼吸に次の挑戦の準備を整えながら言葉を零す。
「ふぅ、こういうのも楽しくていいね。なんだかルーキーの頃を思い出すよ。さぁ、休憩はここまでにして今の自分を再確認に……目指す自分を見つけに行こうか」
成功
🔵🔵🔴
●虚飾の白翼
新たに生まれた地下迷宮の最奥。絢爛な迷宮主の間にて金髪の少女が目の前に創り出した魔鏡を虚空に散らしながら口元を緩める。
『一人突破ですね。まっすぐに突破してくるところは好感がもてますね』
【願ったままによい攻略だったな。次も期待しておこう】
白翼を模した魔導具の声に頷いた金髪の少女の頭上でステンドクラスが銀煌を湛え新たな魔鏡に変わり…、大きく翼を羽ばたかせた金髪の少女の視線がそれを捉える。
霧崎・蛇駆(サポート)
『あーあーヤダヤダ、めんどくさいったらありゃしねぇ』
『やるからにはやるさ、給料分はな』
『いいじゃんいいじゃん!楽しくなってきた』
口では面倒くさいと言いつつも仕事はこなす猟兵で、戦闘だとやる気を最初から見せる戦闘バカです。
捜索系ではハッキングを駆使して情報を集めたり、演技で騙したり脅したりします。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使います。正面きって無数のテンタクルによる物量戦も好きですが、触手による立体的な移動からの相手の死角から攻撃も別格です。弱い相手だといたぶる傾向があります。
メインの武器は『テンタクル』です。
基本的な口調は『オレ』です。
あとはおまかせします。よろしくお願いいたします。
●虚飾あるいは羨望の迷宮
幾人かの猟兵達が迷宮に消えた後。遅れて転送されてきた猟兵が蒸気幽霊の元へと近づいてゆく。
●欲望の迷宮
それ自身が知性を持つ呪われた緑色のフード付きコートを羽織った霧崎・蛇駆(ヴィリジアンモンスター・f20261)が、めんどくさそうな雰囲気を纏いながらも油断ない足取りで迷宮の入口へと歩みを進め。
「あーあー…ヤダヤダ、めんどくさいったらありゃしねぇ。なんか面倒なことになってんだろう?」
『わざわざ来てもらって申し訳ないね。あぁ、出来上がった迷宮は少しばかり特殊な状況だよ』
来訪者を迎えるように佇むエイルマーへと蛇駆の雰囲気に違わないやる気の薄い声が掛かり、その様子を気にすることなく軽く頭を下げ感謝を示したエイルマーが迷宮の状況を語りだす。
そうして僅か後。雰囲気を一変させた蛇駆がやる気に満ちた声を残し、ひらひらと手を振りながら迷宮の入口へと消えてゆく。
「なんだよ。そうならそうと先に言えよなぁ。面白そうじゃねぇか。骨董品をパクれんならもっと面白かったんだがまぁ、そこはしかたねぇ」
●蒸気魔導機械と魔鏡
周囲の魔鏡に自身の姿が映り込むことを気にすることなく進む緑色の怪物が通路の先に見える扉に笑みを深め足を速める。
●テンタクル・マキシマム
軋る音と共に解放された扉の奥から蒸気機関の唸る音が響いてくる。蛇駆を迎え撃つように各所に仕込まれた遠距離武器を稼働を始めた蒸気魔導機械の様子に、ずるりと羽織ったローブに仕込まれた隙間からナノマシン内蔵型脳波制御式液体金属――テンタクルス――を触手状に操り揺らめかせ駆け出す。
「準備が整ってねぇーんなら、そのまま潰してやるぜっ!」
踏み込みを補うように叩きつけられたテンタクルスの一つが迷宮を震わせながら蛇駆を打ち上げるように中空へと飛ばし……、グルリと生物的に蠢いた幾本もの触手が叩きつけるように突き刺すように蒸気魔導機械へと襲い掛かる。
ガガガガガガッ!
響き渡る轟音は蒸気の力により撃ちだされた無数の弾丸と幾本もの液体金属の触手が互いを弾き合う音。
テンタクルスの重量ごと自身を吹き飛ばすような衝撃に蛇駆が笑みを深め、その身体が宙を舞う。
迷宮の壁に天井にいつの間にか突き刺さっていた液体金属の細触手が蛇駆を重力の軛から解き放ち、蒸気魔導機械の放った弾丸の衝撃を飲み込むようにベクトルを変え、緑の尾を引く変則軌道の終端は蒸気魔導機械の正面。
「アハハハハハ! アーハハハハハハハハハ!!!」
『……………』
狂ったように楽しそうに笑う蛇駆の身体から100を優に超える液体金属の触手が爆発するように飛び出し、それに無言で応じた蒸気魔導機械に備えられた魔境から歯車と発条を軋ませる金属触手が顕れ迎え撃つ。
ドッッ………ッッ!!!
重なりあい連続する衝突音が一つの衝撃として迷宮を震わせ周囲へと放射線状の深い亀裂を刻みつけながら、交錯した影が二つに分かれる。
「悪くはねぇが……まぁ、オレをとめるにゃ足りねぇなぁ」
そう言って立ち上がったのは蛇駆。速度と質量を持って蒸気魔導機械を潰した蛇駆が、幾つもの鉤裂きの出来た愛用のコートが修復されていくのを確認しながら奥に見える扉へと向かって歩き出す。
●蒸気魔導機械と魔鏡
扉の先に拡がる回廊を戦闘の余韻に上機嫌そうに進んでゆく緑の怪物が幾つもの通路が繋がった部屋へと辿り着き足を止める。
●迷宮攻略
更なる下層へと続く階段を備えた迷宮の中継地点……迷宮主の間へと続くと思しき部屋へと辿り着いた蛇駆が一度周囲を見渡し言葉を零す。
「さて、そろそろ帰るとするか。なぁに、ここまで進めば給料分は十分に働いただろうしよ」
成功
🔵🔵🔴
●虚飾の白翼
カツリカツリと絢爛な迷宮主の間に足音が響く。足音を響かせる金髪の少女の頭上では色とりどりのステンドグラスの一部が迷宮の様子を映しこみ煌めいてゆく。
『お金もいいものですよね。使うのも貯めるのもとても良いものですし』
【稼ぐが意図的に抜けていないか? 我が契約者殿】
さらりと髪を揺らしながら視線を上げ、その様子を楽しんでいた金髪の少女が溢した言葉に白翼を模した魔導具のあきれた声が繋げられ……、一人と一つの会話が穏やかに続けられてゆく。
ハルピュイア・フォスター(サポート)
絶望を与えるのがわたしの仕事…。
無表情で口調は事実を淡々と告げます
【暗殺】が得意
また【迷彩】【目立たない】【闇に紛れる】【地形の利用】など使用して隠密にまた撹乱しながらサポート行動
Lost memory…ユーベルコードの弱点を指摘し封じ込む
回避は【残像】で、怪我は厭わず積極的に行動
武器;首にマフラーの様に巻いてある武器『零刀(未完)』は基本は両手ナイフだが鞭や大鎌など状況に合わせて形を変貌させ使用
他猟兵に迷惑をかける行為はしないが、デザートは別問題…奪います
後はおまかせでよろしくおねがいします
●虚飾あるいは羨望の迷宮
猟兵達による迷宮攻略が進んでゆく最中。新たに転送されてきた猟兵がぽっかりと口を開ける迷宮へと進める足を止める。
●迷宮攻略
どこか翼のような雰囲気をさせる黒と白のツートンカラーの衣装を纏ったハルピュイア・フォスター(天獄の凶鳥・f01741)が、ふと何かに気が付いたように迷宮の入り口を監視するように佇む蒸気幽霊の元へと行く先を変更する。
「わたしは、ハルピュイア・フォスター……あなたがここの管理をしている人?」
『あぁ、それで間違いない。苗字はなくてね、エイルマーと名乗っているよ』
長い金色の髪を揺らし無表情にエイルマーを見上げたハルピュイアが、無表情のままに淡々と事実を確認しエイルマーが感謝の言葉と共に肯定を示す。
そのエイルマーの反応に赤と青の双眸……炎と氷を思わせるオッドアイをゆっくりと瞬かせ、ハルピュイアが呼び出された迷宮主に関して言葉を重ねる。
「絶望を与えるのがわたしの仕事…。その為に来た。……どうすれば効果的?」
『……ふむ、なるほど。何を嫌うかと何を嫌がるか…か。時間をもらっても構わないかな?』
ハルピュイアの端的な言葉をかみ砕き、求められていることを整理したエイルマーの言葉に……構わない、とハルピュイアが答え……、周囲に歯車と発条が噛合い起こす微細な振動が奔り始める。
その変化に警戒するように雰囲気を変えたハルピュイアに驚かせたことを謝罪するエイルマーの声がかかり…僅か後。歯車と発条で形づくられた大きめの円卓と椅子が姿を見せる。
『立ち話もなんだからね。腰を落ち着けてくれると嬉しいよ。あと、少しなら甘味もあるけどどうかな?』
「ありがとう。あと、甘いものは……もちろん、もらう。……何がある?」
●羨望の迷宮と災魔
蒸気機関の奏でる重たい音と共に小型の蒸気魔導機械が現れ、天獄の凶鳥と蒸気幽霊の座る円卓にお茶会の準備が整う
●虚飾と羨望
遠ざかる蒸気と歯車が奏でる音へと陶器のなる音が重なる。さりげなくクッキーが盛られた皿を自身の近くへと移動させたハルピュイアが、エイルマーの口元と手元を微かに警戒するように眺め……、薄く微笑んだエイルマーが安心させるように言葉を紡ぐ。
『私は名前の通り幽霊だからね。用意したお菓子はフォスターさんが食べるといい』
「…………ッ…………ッ……」
エイルマーの言葉にはサクサクと軽い咀嚼音が重なり、言われなくとも遠慮なく頂くつもりだったハルピュイアが口の中に広がる甘味を楽しみながら話の本題を促すようにエイルマーへと視線を合わせる。
『ふむ…、ならこのまましゃべらせてもらおうかな? 気になった部分は改めて聞いてくれば答えるよ』
「……っ……………っっ……」
口の中に広がる小麦の上質な香りや砂糖の溶ける甘み……それを彩る乾燥させた果物の酸味や柔らかさ等、地下迷宮の先に存在する旧校舎らしからぬ丁寧な仕事のお菓子に意識を大きく裂きながらも、ハルピュイアがエイルマーの語る迷宮主の嫌がりそうな内容を聞き取ってゆく。
●羨望の迷宮と災魔
出された焼き菓子をすべて食べ終えた天獄の凶鳥がお代わりの紅茶を飲み終え席を立ち……蒸気幽霊に見送られて迷宮へと向かってゆく。
●迷宮挑戦?
迷宮の暗がりに足音が消え……瞬刻の後。再び足音が響き始めほどなくしてハルピュイアが戻ってくる。無表情ながらもどこか釈然としないようなそんな雰囲気を纏ったハルピュイアが言葉を零す。
「……もどった。 あとは任せていい? でも、これで本当に効果があるの?」
『おそらくは。何度もやって効果のあることではないだろうけどね』
その言葉に首を僅かにかしげながらもハルピュイアが、エイルマーへと軽く手を振り昏い光に包まれて迷宮の外へと転送される。
成功
🔵🔵🔴
●虚飾の白翼
バサリと翼が震える音に重なり…壁に掛けられた魔境を素手で叩く音が響き渡る。プルプルと身を震わせる金髪の少女が魔境に身を預けるように屈めていた身体をガバリと起こして声を上げる。
『帰る…帰るって……なしでしょ!? 呼んでおいてひどくない!?』
【確かにひどいが…。まぁ、効率的ではあるな。我が契約者殿】
口調を乱して悔しがる金髪の少女に、その熱を冷ますように白翼を模した魔道具が羽搏き落ち着かせるように声を掛け続ける。
ワズラ・ウルスラグナ
ふむ。善い迷宮が出来たな。
思えばこれも迷宮としては無駄だらけだな。
虚飾とは、さて、何処からを指すのだろうな。
さて攻略だ
正面突破も良いが、ここは一つ目の区画を探そう
知りたい事が多いのでな
俺にとっての価値とは戦いそのもの
価値有る物とは戦いの痕跡が色濃く残った物だ
葛藤、迷走、研鑽、覚悟と、所謂魂の籠った物が良い
勝敗は、さておきな
加えてもう一つ、今の俺の興味は迷宮主達に向いている
アーラとイリュティムの戦いの、即ち生涯の痕跡を辿りたい
既に終わった者、これから還す者の過去など、本来最も要らぬ物だろうが、
俺はそれが何よりも欲しい
来たる決戦に無関係であろうともな
時間が許す限り探索し続ける
最後には全て元に戻そう
●虚飾あるいは羨望の迷宮
魔女と過去の英雄に見送られた猟兵が軽い別れの言葉を残し、黒焔を纏い始めた龍躯を出来上がったばかりの迷宮へと進めてゆく。
●想望の迷宮
左腕の欠けた龍躯に黒焔を纏わせながら重く足音を響かせるワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)が、次第に煌びやかに荘厳な様相を見せ始めた迷宮の様子を黄金色の隻眼に映し込み。
「ふむ。善い迷宮が出来たな。こちらがそう望んだことではあるが…思えばこれも迷宮としては無駄だらけで面白い」
侵入者を迎え入れるのに不必要な精緻な彫刻と不思議と明るく照らされた迷宮の通路に、迷宮の奥で待つ迷宮主の呼名を思い起こし言葉が零れる。
「それはさておき、攻略だな。試練の迷宮を正面突破も良いが…、ここは一つ目の区画を探すとしよう。知りたい事が多いのでな」
●在りし日の遺物と魔鏡
武骨な足音が響き方を変え数々の展示台と…墓標のように突き立てられた数多の武具が姿を見せ呼応するかのように黒焔が左腕を創り上げる。
●闘争の歴史
肌を刺すような重く深い空気が炙られるように熱を帯びてゆく。荘厳でありながら寂寥とした迷宮の一角に活力を孕んだ黒焔を振り撒くワズラが呼び出した少女と魔導具…一人と一つのことを思い返しながら足を止める。
「虚飾とは、さて、何処からを指すのだろうな。在り方か、生き様か、それともそれ以外か楽しみにさせてもらおう」
零した言葉と共に無造作に突き出された右腕が漆黒の柄を掴みバキリと床材の砕ける音が響く。
形容しがたい何かを纏い引き抜かれた昏い刀身が周囲を陰らすようにその存在感を主張し…、沈むような重圧が周囲を圧迫する。
――――ッッ!!
――――オォォ!
――――!!!!!!!
苦痛、愉悦、願い、後悔、絶望、安堵。
……殺めた者、殺められた者
………奪った者、奪われた者
………遺した者、遺された者
混ざり合い、絡み合った執念とも情念とも言うべき想いが過去から溢れだす。
あたかも骸の海から零れだし現実を浸食する災魔の如く絡む想いに龍の咢が笑みを刻み込む。
「うむ、善いな。善い経歴だ。なるほど、俺にとっての価値のある物が用意されたか。確かにこれほど戦いの痕跡が色濃く残った物は、なかなか在るものではない」
さて…戻すべき場所は、と周囲に視線を彷徨わせたワズラの視界に白銀の甲冑が映り、誘われるようにそちらへと足を進めてゆく。
「葛藤、迷走、研鑽、覚悟……あぁ、魂の籠った物は善い。うむ、勝敗以上に心を震わせてくれるものばかりだな」
●在りし日の遺物と魔鏡
朽ち果てた大斧…砕け散った武具だった何か……積み重ねた戦いの果てを感じさせる数々を戦獄龍が手に取りあるべき場所へと戻してゆく。
●願いの裏に積み上がったもの
深く響く音が静かな空気へと沁み込んでゆく。幾つか目の武具をあるべき場所に戻したワズラが、何かを探すように今一度、周囲を見渡し飾られた魔鏡へと視線を止める。
「このままでも善いのだが、もう一つ気になっていることがある。エイルマーからも少々聞いたがお前たちの戦いの、即ち生涯の痕跡と言うものにな」
「確かに既に終わった者、これから還す者の過去など、本来最も要らぬ物だろうが、俺はそれが何よりも欲しい。来たる決戦に無関係であろうともな」
鏡越しではアーラとイリュティムに声は届かんかもしれんが…まぁそれもよし、といまだに散らばったままの美術品に向け踵を返そうとしたときガコンと何かが外れる音が響く。
誘うように暗がりを見せる魔境の飾られた壁面に迷うことなくワズラが足を進め、沈むように潜り抜けた先には飾られたかのように並べられた多くの人型に僅かな異形。
「ふむ……? 魔法学園の生徒が多いな。しかし、生徒達は一部、災魔はすべて止めを刺しているようだが。違いは何だろうな?」
並ぶ生徒達に呆然とした表情を見せる者が多いことにさらにワズラが首を傾げつつも奥へと進み最奥に刻まれた言葉を見つける。
「虚飾は憧憬…か、それにしては相対した者の表情は対照的なもののようだな。それと、武器らしきものがなかったのも気になるところか。しかし、わざわざ俺の為に用意したとは思えないことを考えると隠していたのか?」
●喪失の歴史
一際大きな音が響き迷宮の最奥へと繋がる通路への扉が開かれる。周囲の展示台へと正しく武具を戻したワズラが振り返り多くの歴史を刻んだ数々の僅かに黙礼し、近づく戦いの気配に黒焔を弾けさせてゆく。
「善い時間だった。幾らが疑問も残りはしたが、それは直接尋ねればよいだろう」
成功
🔵🔵🔴
●虚飾の白翼
いつからか静寂に満ちていた迷宮主の間にポツリと言葉が零れる。懐かしむような穏やかな声にゆっくりと羽搏いた白翼の羽根の擦れる音が重なる。
『こうなってからも……こうなって終わってからもいろいろあったわね』
【今となっては懐かしいと言ってもいいのかもしれないな。我が契約者殿】
とはいえ…どういう心境の変化だ?と問う白翼を模した魔道具に金髪の少女が、鍍金の下もたまにはさらさないと忘れてしまうじゃないと気楽そうに返す。
荘厳な迷宮を深層に向けて進む猟兵達や新たに訪れた猟兵達にエイルマーの声が届く。地下迷宮に潜り攻略を進めることに関する感謝の言葉に続き判明した迷宮主の間の位置と迷宮主に関しての様々なことが伝えられていく。
迷宮主の間に居るのは、アーラ・イリュティム。虚飾の名前を冠する少女と白翼型の魔導具……魔導実験の被験者が災魔になったそんな相手になる。迷宮の創造から関わって貰った人には重複する部分もあるかもしれないけれどよければ聞いてほしい。
見た目は清楚な雰囲気の修道女。口調もそれに似あった落ち着いた上品なもの……だが、虚飾の名前の通り本来の口調とは違うものになる。本来の口調は、普通というとあれだけど気負いのない女性口調というのかな? まぁ、普通な感じだよ。
それはさておき、戦闘に関わることに関して話していこう。まず、イリュティムもアーラも戦闘はかなり得意な部類になる。とはいっても直接、矛を交える可能性はそう高くないと思う。まぁ、そのあたりはこの後、詳しく説明させてもらうよ。
まず、アーラ・イリュティムの能力はあらゆるものを転写する。効果範囲は白翼型の魔導具を中心に拡がっていて、迷宮の最下層すべてを覆うほどには広い感じだ。あとわずかばかりだけど近いほど効果が強力になる。転写に関しては名前の通り認識した物体を再現して実体化する能力でもあるのだけど、そういう使い方はあまりしてこない…と思われる。
基本的にアーラとイリュティムが転写の対象としてくるのは主に相対した人物の心の中にあるその人自身になる。ただ、映し身を創り出した後、アーラとイリュティムは積極的に攻撃は仕掛けてこないから2対1での戦闘を考慮する必要はあまりないよ。それと、人一人を現実世界に映し出すというのは、イリュティムとアーラにとっても負担が大きいようだから、映し身さえ撃破できれば二人を無理に攻撃して打ち破る必要がないことも覚えていてほしいと思う。
一つ目は、理想の転写。語弊を恐れずにいえば未来の転写といえるかもしれない。相対した人物の努力の先、こうありたいという姿を映し出してくる。理想の在り方は人それぞれ違うと思うからどんな自分が顕れるかは人それぞれになる。
二つ目は、後悔の転写。こちらはある意味過去の転写ともいえるのかもしれない。相対した人物の……そう、こうあれたのならばよかったという後悔を元にした姿を映し込んでくる。後悔と言っても色んな形があるかもしれないけれどその場合は、より心に深く根付いている事象の姿が顕れることになる。
三つ目は、秘密の転写。これは、少々特殊な転写になる。善悪好悪に関わらずその人が心に秘めている姿が映し出される。その人自身が気が付いていない姿になることもあるけど、多くは隠しておきたいと願っている姿が顕れると思う。これに関しては、その人が秘密にしておきたいと感じていることが重要みたいだね。
それと、転写されて現れる映し身に関して重要なことが一つ。映し身はイリュティムとアーラに協力的ではあるけれどイリュティム達の命令に絶対服従というわけではないから映し身と協力してイリュティム達と戦うことも可能かもしれない。ただし、その場合はイリュティムとアーラが本気で抵抗してくるから容易な戦いにはならないと思って覚悟してほしい。
絢爛な迷宮主の間に踊るような足音が刻まれる。何処からともなく降り注ぐ光に照らされる白翼が煌きを中空に刻み、讃美歌を模すような歌声が涼やかに響き溶ける。何かを隠すかのように飾り立てるように紡がれる光輝が薄絹のように帳を降ろし……一際大きく羽搏いた白翼から零れる羽根を美しく微笑んだ金髪の少女が瞳へと映し込む。
額に象嵌された第三の瞳を煌々と輝かせた天翳・緋雨(時の迷い人・f12072)が、深紅に染まった瞳に清楚に佇む迷宮主達を映し込み……問いかけた言葉にその口元が笑むように綻ぶ。
緋雨の深紅に輝く双眸と青年の藍色と緋色……片目が機械化されたオッドアイが交わる。丁寧に修繕された緋雨と同じ多目的スーツを纏ったその姿に緋雨が目の前の青年が誰であるかを悟り……。
その姿を見ているだけで不安に押しつぶされるような、心を締め上げられるような……そんな戦い進む中で心の片隅で感じていた懸念を浮き彫りにされる心境に言葉が詰まる。
ただの蹴撃とは思えない音を響かせ迫る虚像の一撃に緋雨の緋瞳が周囲の変化を演算し……、これまでにない稼働率を見せる呪印から雷光が溢れると共に揺らぐようにその姿が掻き消える。
転移寸前に届いた衝撃に揺さぶられながらも態勢を立て直した緋雨へと、どこに転移するか予測したかのように――否、失った片眼と置き換えた義眼に備わった機構で正に予測した虚像が迫り、重い一撃がさらに緋雨を吹き飛ばす。
幾度かの交錯の果てに二人の緋雨が向かい合う。身体のいたるところに激戦の名残を刻んだ緋雨が、破損した個所から火花を散らしつつも悠然と佇む自身の虚像を見据える。
時計の針がわずか戻り激戦の後。戦いの痕跡が残る迷宮主の間にバチリバチリと火花が儚く音を立てるなか、壊れかけの機械の身体で為すべきことが為されたのを見た未来の虚像が言葉を零す。
金髪の少女が纏う服に恥じない真摯な表情で両膝をつき祈りをささげ、白翼型の魔導具が羽根を零すように大きく広げられるなか、機械の身体を持った虚像が穏やかに消えてゆく。