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剣鎧に秘めし想い、狂おしく

#ダークセイヴァー #異端の神々

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#ダークセイヴァー
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#異端の神々


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 ダークセイヴァーの辺境、ヴァンパイアすら近寄らぬ地に、それはある。
 そそり立つ崖。壁の如く立ちはだかる難所は、『試しの門』と呼ばれている。
 この崖の向こうには自由の大地が広がる……民間伝承にて、そのように語られる場所だ。
 ヴァンパイアの圧政から逃れるべく、『試しの門』に挑み、ユートピアを夢見たものは数知れず。
 しかし、誰一人として、それを成し遂げたものはいない。理由の1つは、『試しの門』が常に荒天に見舞われているということ。
 神々の試練の如く、雷が閃き、風雨が挑戦者の肉体を洗い流す。
 そして、理由のもう1つは……声だ。
『戦う姿を、我が目に』
 女性の声が、風に乗って響く。
『剣を手に、鎧を胸に。戦う姿を我が目に見せよ』
 間断なく虚空より奏でられる声は、聞く者を狂気に駆り立て、精神を蝕む。やがて増大した狂気は、同朋にさえも刃を向けさせ、果ては自死に至ると言う。
 ゆえに、『試しの門』の先、待つのが楽園か地獄か。
 真実は闇の中である。


 集まってくれた猟兵達に、タビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)は、今回の依頼内容を語り始めた。
「ダークセイヴァーで、まだヴァンパイアに支配されてない、辺境の場所を予知したんだよ。ここが安全だってわかれば、この世界の人を移住させる事もできるんだけど……」
 無論、そんな場所が、理由なく放置されているはずがない。
 『異端の神々』の支配下にあるのだというのが、タビタビの説明だった。
「『異端の神々』は、昔ヴァンパイア達に攻められたけど、その体を奪って追い返したっていわれてる存在だよ。だけど、理性をなくしてて、『狂えるオブリビオン』って呼ばれてる」
 どちらにしろ、人々にとっては脅威である。向こうから干渉してこない分、ヴァンパイアよりはマシ、という程度。
「でも、この土地を解放すれば、ヴァンパイアの支配を受けない集落や街を作れるはずなんだ。そこでみんなには『狂えるオブリビオン』退治をお願いしたいんだよ」
 『狂えるオブリビオン』は、そそり立つ崖の向こうに棲んでいるという。
「崖は『試しの門』って呼ばれる場所で、雨や風が年中吹いてて、普通の人だととてもじゃないけど登れない難所なんだ」
 立ちはだかる問題は、悪天候だけではない。
 風に乗り、『狂えるオブリビオン』の声が常に響いてくるらしい。『戦う姿を我が目に』……と。
「この声をずっと聞いてると、魂まで侵蝕されて、狂戦士になってしまうヤバいものだよ。何とか正気を保てるよう頑張って!」
 全く関係ないことを考えるでもいいし、何か楽しい事を考えるでもいい。
「それと……この土地の『狂えるオブリビオン』は、ルーツをずっとさかのぼると女魔術師にして鍛冶師で、禁忌の武具を作っていたらしいよ」
 狂気に至った理由には、そのあたりも関係しているのかもしれない。
「『試練の門』を乗り越えた先は森になってて、『狂えるオブリビオン』の眷属が守ってる。更にその先に『狂えるオブリビオン』が待っているよ」
 これを討ち、狂気の地を解放するのだ。
 そしてタビタビは、試練の地へと、猟兵を導く。


七尾マサムネ
 これは、神を殺す猟兵の物語。

●第一章
 『試しの門』と呼ばれる崖を登ります。
 常に雨や風が吹いていて、危険です。何等かの対策が必要です。
 また、狂えるオブリビオンの声がどこからともなく聞こえますので、こちらにも対処してください。
 なお、声の語る内容に耳を傾けると、後々、狂えるオブリビオンと戦う時の説得材料が見つかるかもしれません。
 ただし、あんまり聞き続けるとまずいので気を付けてください。

●第二章
 『試しの門』の先に広がる森で、狂えるオブリビオンの眷属と戦います。
 眷属も狂えるオブリビオンの影響を受けているので、理性はありません。

●第三章
 森の深部で、狂えるオブリビオンと戦います。
 理性はありませんが、一章で聞いた声から狂気に至った理由を推測できれば、説得などで感情に訴える事により、攻撃の手を和らげる事くらいは出来るかも知れません。

 それでは、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『荒天のロッククライミング』

POW   :    動作ひとつひとつにマッスルな躍動感を込めて登る。

SPD   :    黒い悪魔のようにカサカサと素早く登る。

WIZ   :    にんげんだもの、準備をしっかりとして万全の態勢で登る。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルナリリス・シュヴァリエ
戦う姿を、我が目に
そんな声に対して、私はUC二律背反を発動します。
皆の理想(負けない)と願望(狂気に侵蝕される姿が見たい)が二律背反するヒロインでありたいと願い、狂気に侵蝕されながらも#優しさで心を満たして正気を保ちます。
すぐに行きます、待っていてください

格好は動き易く濡れても大丈夫なロイヤルビキニ。
まずは崖を#視力と#暗視で観察、手足を掛ける岩の凹凸を#見切り
#学習力で記憶・シミュレートして最適な登攀ルートを導き出します。

パワーグローブの#怪力で凹凸を掴み、#足場習熟で足を掛け
適宜ルートを更新しながら、必要なら離れた凹凸に#ジャンプで飛び移り
定期的に休憩を取りつつ、そのように登っていきます。



 『試しの門』を登る人影、1つ。
 ルナリリス・シュヴァリエ(剣姫サキュバス・f25397)である。
 ロイヤルビキニに包まれたその肢体は麗しく、しかしその手にはめられたパワーグローブは、力が漲って。
 岩壁が織りなす、天然の凹凸を確かにつかみ、ルナリリスは遥か天上を目指す。
 登攀に挑む前、しかと観察した崖の地形。そして、足掛かりとなる凸凹を的確に見出し、シミュレートした上で臨んでいる。
 ゆえに、ルナリリスの足取りに、迷いはない。
 だが、降りかかる危難は、地形のみにあらず。
 吹き荒れる風は奔放で、雨と雷に至っては阿吽の呼吸で荒れ狂う。しかし、ルナリリスを襲う荒天も、ビキニの前には無力。
 一見、サバイバルには不向きと見える薄布、しかしてその実態は、エンシェントドラゴンの力により、災禍を退ける加護が宿る秘宝。
 動き易さと耐水性。そこにルナリリス自身の身体能力が加われば、崖登りも乗り越えられる。
 ここまでは、自然の作り出す試練。常人でも、極限まで鍛え上げれば突破できるかもしれぬ。猟兵でなくば抗えぬは……狂気の試し。
『戦う姿を我が目に』
 女の声が、ルナリリスの耳朶を打つ。まるで、大気だけでなく心そのものを震わせているかのよう。
『私の剣、私の鎧。私が守りし貴方の姿を、もう一度この目に』
 ああこれが、とルナリリスは了解した。
 正気を侵す狂気の声に、ルナリリスの心は抗う。ユーベルコードの加護を以て。
 負けないという、皆の理想。一方で、狂気に侵蝕する姿が見たいという、願望。
 二律背反するヒロインでありたいという願いが、ルナリリスの心を不思議な優しさで満たす。声に潜む狂気に、じくじくと侵蝕を受けながらも、正気を保つ。
 途中、体を休める事の出来る岩の上に降り立つと、束の間、憩うルナリリス。
 試練はこの1つではない。待ち受けるオブリビオンとの戦に備え、力を蓄えるのも、猟兵のたしなみだ。
『何故答えてくれないの……貴方は今何処に……』
「すぐに行きます、待っていてください」
 『試練の門』の向こう、声の主へと、ルナリリスが決意をこぼした。
 獣の如く吼える雷鳴にも掻き消されぬ、強き剣姫の意志をもって。

成功 🔵​🔵​🔴​

セシリア・サヴェージ
声の主に言われずとも人々の為ならば喜んで戦いましょう。
いえ……たとえ心の内でさえ声に応えれば狂気に堕ちる。魂を蝕むのは暗黒だけで十分です。

雨風で飛ばされぬよう【グラップル】で強固な箇所をしっかりと掴んで着実に進んでいきます。
崖登りに関しては素人ですが身体能力には自信があります。体力任せではありますが【気合い】で登りきりましょう。

声には耳を貸さず、元来の【狂気耐性】と人々の為に必ずやり遂げるという【覚悟】を以って正気を保ちます。



 『試しの門』。
 狂えるオブリビオンの領域への第一関門へと、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が挑んでいた。
 自然の法則を無視したかのような、でたらめな風雨が、セシリアの銀髪を激しく濡らし、弄ぶ。
『戦う姿を我が目に』
 大気を叩く雷鳴の中、豪風に乗って忍び寄る、狂気の声。
 しかし、セシリアは強く心を保ち、呪いじみた請願をはねのける。
(「言われずとも人々の為ならば喜んで戦いましょう」)
 口には出さず、心にて決意を紡ぐセシリア。
 否、たとえ心の内でさえ声に応えれば、狂気に堕ちるかもしれぬ。
(「魂を蝕むのは暗黒だけで十分です」)
 ゆえに、セシリアは……すでに暗黒を受け入れた騎士は……心を空にした。狂える神の声に貸す耳はない、とばかり。
 しかし、『試練の門』はセシリアを揺さぶる。心のみならず、体も。
 登攀するセシリアの体を、激しい風雨が叩く。自然の脅威か、それともオブリビオンの狂気の具現化か。
 いずれにせよ、吹き飛ばされてしまわぬよう、しっかと岩をつかみ、上方へと進みゆく。
 重力に引かれ、地上へと流れゆく水。手が滑らぬよう、細心の注意を払う。
 崖登りに対して、セシリアが特別習熟している、という事はない。けれども、持ち前の身体能力の高さを駆使して、崖……というより、もはや一枚の壁を、確実に進んでいく。
 そして体力を支えるのは、やはりセシリアの心。振り絞った気合が、日々の研鑽にて得た経験を引き出し、万全に発揮させてくれる。
『貴方の証を示して。誰より勇ましく戦う姿を』
 時に静かに、時に銅鑼のように激しく。狂気の声は、なおも響き続ける。
 もしも、しかと耳を傾けたなら、誰か1人を求めるような切実さを感じ取る事ができたろう。
 聞く者の魂を、あまねく深淵へと引きずり込むような、見えざる魔の手。
 だが、セシリアには、狂気に耐えうる強さがある。騎士として、戦士として。鍛えられた肉体に相応しき、鋼の如き硬さを秘めた心が。
 そして何より、ダークセイヴァーの人々の為、必ずやり遂げるという覚悟。
 その強き信念が、セシリアをこの試練に打ち克つよう支えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木常野・都月
試しの門、か。

多分登ること自体は問題なくいけるはず。

あまり知られていないけど、狐は木の上で寝る事があるくらい、木登りが得意だ。
木も岩も、登る事に大差ないはずだ。

後は、雨と、風と、地の精霊様に手伝って貰いたい。

雨と風の精霊様は、しばらく休憩して欲しい。

地の精霊様は、磁場を発生させて、俺が崖を登る時、岩に吸い付きやすくして欲しい。

あとは…声が問題。

俺は元野生の狐だ。
普通の人より聴力が良い。
全く聞かないのも、この先に支障があるみたいだし、耐えて登るしかない。
[呪詛体制]も無いよりマシ程度か?

出来るだけ耳を貸さないようにしたいけど、どうしても辛かったら、風の精霊様に頼んで、声を遮って貰いたい。



 何故、苦難に挑むのか。それは、そこに苦難があるから。
 苦難を乗り越えた先、この世界の人々に救いがもたらされるのなら、猟兵として挑まぬわけにはいかない。
 猟兵……木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が『試しの門』を登っていく。 その足取りに、迷いはほとんどみられない。
 というのも、そもそも狐は木登りが得意。木の上で寝る事があるくらい。
 岩が織りなす凹凸、そして時折突き出す草木を手がかりとすれば、登攀自体はさほど難しいことではなかった。
 とはいえ、都月を『もてなす』のは、それだけではない。
 雨と風、時折、雷。
 走る光の枝に照らし出された崖が、その複雑にして繊細な表情を束の間、露わにする。
 これも自然の脅威? それとも、オブリビオンの狂気によって呼び起こされたもの?
 いずれにせよ、現象にの元にエレメントの働きがあることは疑いない。都月は、精霊様達に呼び掛けた。
 雨と、風と、そして地の精霊様達。
 すると、都月の上昇速度が上がった。どうやら地の精霊様は、頼みを聞いてくれたらしい。
 磁場を発生させて、岩場に体が吸いつきやすくしてもらったのだ。
 一方で、すいすいと進む分、手足を滑らせる危険度も高まる。雨が足場を濡らし、風が都月の体をさらう機会を狙っている。
 が、いつの間にか、雨風の勢いは弱まっている。こちらの精霊達も、都月の願いを叶えてくれたらしい。助けて欲しい……ではなく、しばらく休憩していて欲しい、という。
 ここまでは、順調だ。だが、問題は残っている。
『戦う姿を見せて、示して』
 ぴくん、と耳が動く。
 心、もしくは魂までも手を伸ばそうとする、狂気の声。
 都月が元野生の狐であり、聴力が良い事が仇となったかも知れぬ。いやおうなしに、耳の奥へと狂気が滑りこんでくる。
 それでも。
 狂えるオブリビオンを知る手がかりを求めて、都月は正気を握りしめ、出来る限り耳を傾ける。
『愛しく勇ましき貴方の姿』
『我が託せし剣の輝き、戦場にあるはず』
(「誰彼構わず戦わせたがっているんじゃなく、誰かを探しているのかな」)
 思考回路を巡らせることで、自らの正気を確かめながら。
 都月は、声の主の元を目指す。

成功 🔵​🔵​🔴​

杼糸・絡新婦
試して、誰に何を試すんやろね。

暫くは普通に崖登り
羽織を頭から被り、
できるだけ雨をしのぎつつ。
鋼糸を命綱代わりに、各所に巻きつけながら進む。
その間、声に耳を傾け【情報収集】
ただし【第六感】で危険を感じたら耳を傾けるのを辞めて
『崖登り』という非戦闘行為に没頭し、
蜘蛛の巣み家発動してみる。

ひとまず考えるのは後にさせてもらいましょ。



 誰が呼んだか、『試しの門』。
「試し、て、誰に何を試すんやろね」
 杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)のつぶやきは、すぐさま強風に吹き飛ばされた。
 挑み、しかし越えられなかった者達の思いがこめられた名前だろうか。それを負け惜しみ……と断じるのは、少々意地が悪いかもしれない。
「ほな、1つ試されてみよか」
 崖に挑む、絡新婦。
 すぐにその体を、風と雨が打ち据える。いささか、否、大分手荒い歓迎だ。
 威光を誇示する雷に照らされながら、絡新婦は、『よくない』気配が辺りを包んでいる事に気づく。
 この荒天、只の自然現象ではなく、狂えるオブリビオンの影響が濃く表れているのか。
 さしあたり、羽織を頭から被ることで、雨をしのぐ術とする。
 つるり、岩をつかむ手が滑りそうになっても、絡新婦には備えがある。各所に巻き付けた鋼糸を、命綱として。吹きつける強風も、絡新婦そのものたる糸を、断ち切る事はかなわぬ。
 ここまでは、普通の……いや常人ならば、とうに普通を逸脱しているに違いないが……ロッククライミング。
 しかし、試しと名が付くからには、これでは終わらぬ。
『戦う姿を我が目に』
「戦う、言われてもこんなとこでどう戦ったもんか」
 思わず声に応えて、絡新婦は苦笑を漏らした。声の主には聞こえていないだろうから。
 よしんば聞こえていたとしても、まともな会話など成立しまい。何せ、相手は、正気を手放した狂気の神。
『戦う姿こそ貴方の証。勇猛にして剛健なる姿を、私が見間違えるはずもなし』
 貴方。
 むやみな闘争を求め、誰彼構わず巻き込んでいるわけではない、ようだ。
 そう、誰かを探し求めている。戦場でならば、見つけ出せるものと信じて。
「向こうさんは、狂えるオブリビオン。なら、探す相手が本当にいるかどうか、怪しいところやね」
『嗚呼、その姿を此処に!』
 雷光が空を食い破るのに合わせて、声の語気が増した。
 これ以上は、彼岸に連れていかれるやも。
 そう判断した絡新婦は、声に耳を傾けるのを止め、崖登りに没頭する。
「考えるのは後にさせてもらいましょ」
 鋼糸が、蜘蛛の巣を編み出す。
 結界のように、危難を祓う加護として。

成功 🔵​🔵​🔴​

卜一・アンリ
辛気臭い世界ね。アリスラビリンスとは違う意味で気が滅入るわ。

UC【ガラスのラビリンス】。
斜めにジグザグ、崖際を伝うような坂道のように展開。
これで雨風は気にしないでいいし、アリスの頃から走り回ってきたのだもの、崖上りに比べれば手慣れたものよ。

狂えるオブリビオンの声は【狂気耐性】で…と思っていたのだけど。
あぁ、気持ち悪い。足取りがハッキリしてるのに視界が揺れ止まない。少し見込みが甘かったかしら…
(無意識に手に取るのは銃…ではなく、飛び出した実家の父から与えられていた退魔刀。【破魔】の力が耐性を補強する)
……。フン。
(意地を張るように鼻息一つ、迷宮を上り続ける)
【アドリブ歓迎】



 卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)は、己の前に立ちふさがる崖を見上げていた。
 『試しの門』。
 門とはよく言ったものだ。登竜門、と考えれば、開くのではなく登るというのも納得がいくかもしれない。
 にしても、崖に叩きつける雨音の激しさもあり、静寂とは無縁とはいえ、辺りの気配は陰鬱だ。
「辛気臭い世界ね。アリスラビリンスとは違う意味で気が滅入るわ」
 心の安らぎとなる、愉快な仲間達もいない。悪天候や雷とは、友達になれそうもないし。
「さあ、アリスにはアリスの流儀があるところを見せてやるとしましょうか」
 トーが、手をかざす。
 無骨な崖を覆うように、透明かつ秩序立った地形……建造物が、成立を開始した。
 ガラスのラビリンス。ユーベルコードによって組み上げられた迷路に、トーは自ら飛び込んだ。
 出口はただ1つ。そして、飛んで逃げるはルール違反。すなわち、迷宮は密閉空間であり、衣服濡らす雨も、髪さらう風も寄せ付けない結界、という事である。
 トーは、作り上げた迷宮を駆ける。何せアリスの頃から走り回ってきたのだから、崖上りに比べれば慣れたもの。
 だが、試しは、トーに牙を剥くのをやめない。
『戦う姿を見せて。鋭き剣を掲げて、堅牢な鎧を誇示して』
 ガラスの防壁をものともせず、狂気の声が、トーの鼓膜と心を震わせた。
 狂気に耐える覚悟くらい、持ち歩いている。だから、多少耳を傾けても進軍のBGМ程度……を想定していたのだけれど。
「あぁ、気持ち悪い……」
 足取りこそしっかりしているのに、視界は揺れて、定まらぬ。
『私の託した剣が目印。戦場の貴方を見間違えるはずがない』
「く……」
 自分と、触れる岩の境界があいまいになり、自分がなくなる感覚。
 トーが、無意識に手に取ったのは、銃……ではなく、刀。飛び出した実家の父から与えられていた、退魔刀だった。
 すると、揺らぎは途端に止み、進むべき道が明瞭となる。
 退魔刀に、視線を落とすトー。忌避していたはずの刀に秘められた力、それは破魔。魔を破り、打ち払う加護。
「…………。フン」
 意地を張るように、鼻息一つ。
 それだけを感想として、トーは試練を再び駆けのぼる。

成功 🔵​🔵​🔴​

ガーネット・グレイローズ
さて、今回の探索は辺境の探索か。
ヴァンパイアの支配が届かぬ楽園…
そんなところが本当に見つかるんだろうか?
いや…見つけなければなるまい!

とはいえ、この断崖を生身で登っていくのは
骨が折れるな。ここは、あれを出すか。

二足歩行戦車に搭乗し、切り立った崖を
少しずつ登っていく。
これは未開の惑星を調査するために設計
されているから、多少の雨風もへっちゃらだ。
…耳を澄ませば、オブリビオンの声が
聞こえてくるだろうか?
…いかん、<操縦>に集中しなければ。

【目覚める巨兵】を発動させ、機体を巨大化。
体が大きいほど、当然安定感が増すはず。
岩肌にクローアームを打ち込んで、アンカー代わりにして
登っていこう。



 赤髪を、荒々しく風になびかせながら。
 ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は、こちらを見下ろす壁を見上げていた。
 その高さたるや、頂が見えぬほど。
「ヴァンパイアの支配が届かぬ楽園、か。そんなところが本当に見つかるんだろうか? いや……見つけなければなるまい!」
 試練、と銘打たれているが、方法については問われていない。そもそも『試練の門』などという仰々しい呼び名は、人々が付けたもの。
 如何に乗り越えるかは、むしろ創意工夫の試しどころと言えよう。
「ここは、あれを出すか」
 ガーネットの背後の空間が、ゲート状に展開したかと思うと、異形が現れた。
 否、異なる形とは、あくまでこの世界の標準に照らしての事。出現したのは、鋼の骨と肉持つ二足歩行戦車。異界技術の結晶体だ。
 ガーネットは文明の利器に搭乗すると、崖を登り始めた。岩肌の織りなす凹凸は、鬼面の如く険しい。
 襲い来るは、雨と風。おまけに雷。
 尋常ならざるその猛威、異端の神々の試練になぞらえるのも道理か。
 しかし、未開の惑星を調査するという設計思想に基づく戦車だ。この程度の荒天、試練としては物足りぬ。
 されど、防音加工すら越えて、声が届く。
『嗚呼、嗚呼。我が鎧をまといて戦場に発った貴方は何処』
 ガーネットが耳をすませば、聴覚を通じて心にまで声が響く。
 誰かを求め、彷徨う声。
『戻って来たのは、折れた剣と砕けた鎧だけ。貴方は何処』
「かつてのヴァンパイアとの戦い……あるいはそれ以前の戦で、狂えるオブリビオンは、誰かと離れ離れ……いや、失ったというのか?」
 推測は、答えを結ぶ前に、狂気の波動に散らされた。
『剣と鎧、貴方の勇姿を見せて、この私に!』
 狂気の圧の高まりに呼応して、風雨の勢いが増した。猟兵の心さえも蝕む、狂神の波動。
「……いかん、操縦に集中しなければ」
 ガーネットは、敵を崖と定めた。
 ユーベルコード、起動。
「狂える神が相手なら、こちらは偽神の力だ」
 操縦する機体が、巨大化を遂げる。安定感を増した巨兵が、クローアームをアンカーよろしく岩へと打ち込む。
 試練の崖を力強く穿ちながら、ガーネットは、天辺を目指す。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『溶かしすり潰す者』

POW   :    すり潰す
【のしかかり】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    強酸噴出
【吹き付ける強酸の塊】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に捕食対象を溶かす酸溜まりを残し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    強酸自爆
【死に際に酸を撒き散らし破裂する為、身体】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。

イラスト:chole

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 『試しの門』を踏破した先、そこに、森が待ち受けていた。
 視界を占めるのは一面の緑……ではなく。黒。
 幹、枝、葉……木々全てが闇黒に染められ、それを支える地面もまた黒。闇から産み落とされたかのよう。
 命の息吹は、ない。小動物の一匹さえも。楽園と呼ぶには程遠い、瘴気と陰気が支配する森。

 やがて、木々を抜けたところに、小さな池が現れた。当然のように水は濁り、潤いを与えてくれるとは到底思えぬ。
 ずるり。水の中から、緑色をした何かが姿を現した。
 ようやくの生き物。だがそれは、命あるものではなかった。
 オブリビオン。ジャイアント・スラッグ……そう呼べば怪物の趣であるが、シンプルに表現するならば、巨大ななめくじである。
 じゅわあ。
 わずかに生えた草がなめくじに触れた瞬間、溶けて消えた。どうやらその体表に触れれば、誰もがかような末路を辿るらしい。
 草で一瞬ならば、人間や、身に着けた武具でさえも耐えられまい。
 そのような危険な怪物が、池から這い出して来る。しかも、群れを成して。
 狂えるオブリビオンの狂気にさらされた事で、理性はおろか野生さえも失い、ただただ凶暴化している。
 これもまた、試練。猟兵達に覚悟を要求するように、怪物たちは襲い掛かった。
 だが、いかに巨大だろうと、その本性がなめくじならば……恐れる事は、あるまい。
セシリア・サヴェージ
この凶暴性は普通ではありませんね……対象に近づいている証でしょうか。
さて、行く手を阻むのであれば容赦なく排除させていただきます。

触れた物を溶かす体というのは少々厄介ですね。接触を避けて戦う必要がありそうです。
UC【闇炎の抱擁】を発動して暗黒剣に炎を付与。間合いを取りつつ【なぎ払い】で迫りくるナメクジたちを焼き払います。

接近される前に仕留め切りたいところですが、仮にそうなっても臆せず暗黒剣による【咄嗟の一撃】で応戦します。
剣身に纏う闇炎が【オーラ防御】となって腐食を防いでくれることでしょう。


ガーネット・グレイローズ
やれやれ、断崖を登ったら今度は毒沼か。
しかも酸を撒き散らすナメクジが相手とは。
まだまだ道のりは遠いな。

それにしてもなんて暗い森なんだ。
メカたまこEXを飛ばし、〈暗視〉モードで周囲の
地形を予め調査しておこう。
基本は敵と距離を置き、クロスグレイブによる〈砲撃〉で
遠距離攻撃。仲間の攻撃とタイミングを合わせたり、
敵の攻撃を妨害するように〈援護射撃〉して
後方から支援したい。敵の強酸攻撃は遮蔽物などを
利用してやり過ごす。酸溜まりで移動を妨害され、
味方と分断されそうになったら【闇夜の住人】を
使い、一気にワープ! 酸を飛び越えて移動し、
攻撃を続行するぞ。



 試練は未だ終わっていなかったのだと、ガーネット・グレイローズは思い知る。尋常ならざる、森の光景を目の当たりにして。
 ずるり、ずるり。
 異界、狂気の邪神をも彷彿させる、禍々しき体を惜しげもなくさらすのは、緑の魔物。
 生理的嫌悪感をもよおすその姿……見る者によっては、悪夢的光景であろう。
「やれやれ、まだまだ道のりは遠いな」
 ガーネットが、肩をすくめる仕草を感想とすると、スラッグ達が地を這い、襲い掛かった。
 意外な俊敏さを垣間みせるスラッグをかわす、ガーネット。そこへ、疾走してくる影。
 事前に放っていたにわとり型ドローン・メカたまこEXだ。宇宙船内のセキュリティを担うマシン達は、森の地形探査という任務を終え、無事帰還を遂げたのである。
「理性を失ったナメクジが相手なら、こちらは頭を使わせてもらおう」
 ガーネットは、知り得た情報を、セシリア・サヴェージにも共有した。
「感謝します。共にこの危難をくぐり抜け、狂気の主の元へ」
 セシリアが前衛を担い、ガーネットは後方からの援護に回った。
 武具まとうセシリアを前に、スラッグ達は体をよじり、地面に叩きつける。食欲の高まりを表現しているのか。
 元々の生態はわからぬ。だが、今のスラッグ達にとってセシリア達は、ただ溶かし尽すべき獲物。
「この凶暴性は普通ではありませんね……対象に近づいている証でしょうか」
 セシリアが見据える森の深奥、狂気の流れを感じる。
 『試しの門』でセシリアに訴えかけて来た声。それよりも強い狂気にさらされ続けたスラッグ達が、理性を放棄するのも無理からぬことか。
「行く手を阻むのであれば容赦なく排除させていただきます」
 飛びかかって来た一匹を横に跳んで交わしながら、セシリアは反攻にうって出る。
 この怪物は、体そのものが武器。出来る限り接近、接触を許さず、確実に攻めていかねば。
 暗黒剣ダークスレイヤーをしかと構えると、その刃が炎に包まれた。
 だが、闇熱におののく事も無く、スラッグ達は牙を剥く。セシリアはその接近を許さず、闇黒炎剣にて、緑の巨躯を薙ぎ払う。
 体をコーティングする酸の粘膜ごと焼却されたスラッグは、幾度かの痙攣の後、粒子となって消えていく。
「骸の海に還りましたか。死骸でさえも触れれば危険がありますから幸いです」
 なおも、敵の接近を逃れ、剣を振るうセシリア。剣勢は衰えるところを知らず、次々とスラッグを屠っていく。
 ガーネットもまた、頑なに敵との距離を一定以上に保つ。
 セシリアの援護に回っていたガーネットのクロスグレイブが、今また火を噴く。裁きの砲弾が、スラッグを各個撃破していく。
 蹂躙への渇望が、理性によらずとも方法の効率化を成し遂げたのか。
 スラッグは、その緑身を震わせたかと思うと、強酸を吐き出した。
 とっさにガーネットは、木の陰に我が身を滑り込ませ、骨化をまぬがれた。代わりに大樹が瞬くまに腐食し、めきめきと音を立てて地面へと倒れ伏した。
 次なる酸の襲来を待たずして、クロスグレイブを放つガーネット。緑の肉塊がはじけ飛ぶ。
「あいにく森については少々詳しいからな」
 すなわち、たまこEXの調査結果を生かした立ち回りである。
 不意に、二体のスラッグが木陰から飛び出した。狙いはセシリア。競うようにして、一気にのしかかるつもりだ。
 オブリビオンをもおののかせる、黒き暴風の如きセシリアの勇姿も、凶化した敵には通じぬか。
 危難の排除に移るガーネット。だが、もう1つの事実にも気づく。
 いつの間にか、セシリアと、距離が離れすぎている。敵が意図的にこのような作戦を取ったとは考えにくいが……ガーネットは、酸溜まりを、闇を、飛び越えた。
 吸血蝙蝠の群れに分化して敵を飛び越えると、再構成。即座に人の姿をとったガーネットは、セシリアを襲う敵を撃ち抜いた。
 残るは一体。セシリアは臆することなく暗黒剣を繰りだし、敵の頭部を貫いた。
 確かな手応えの直後、猛る炎が瞬時にスラッグを焼滅させた。
 剣を振るい、灰を払うセシリア。まとう闇炎が刃の腐食を防ぎ、健在なる姿を保つのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テラ・ウィンディア(サポート)
「我が武を以て挑ませて貰うぞ!」



一人称
おれ

二人称
あんた(敵でも尊敬できる人
お前(敵
貴様(激怒した時

エルフの女の子だが突撃志向で戦闘を好む

基本戦術
【戦闘知識】で敵の動きや陣形等の捕捉と把握
闘いながら敵の性質や心の在り方の把握に努める

その後は敵陣に突撃して暴れまわる

【空中戦】を好んで空間全てを利用した闘い方を好む

敵の攻撃に対しては
【見切り・第六感・残像】を駆使して回避

ユベコで主に使うのは
グラビティブラスト(敵が多数の時
【一斉放射】で破壊力増強
メテオブラスト(敵が単体の時
【踏み付け】で破壊力増強

基本フォローが目的なんだろうが
おれはやっぱり之が一番得意だからな

全霊を以て暴れまわるぞーーーー!!!



 なおも水辺から這い出てくる『溶かしすり潰す者』達。
 加勢に現れたテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は、巨大ナメクジの軍団に、思わずおののいた。
 単純に強いだけ相手なら、臆することはないが、外見がよろしくない。
「うう、真正面からは戦いたくない奴らだな!」
 出来る限り触れずに、速やかに駆逐しよう。テラがそう決めるのと、スラッグ達が襲い掛かって来るのはほぼ同時であった。
 スラッグが通った後、草花は溶かされ、地面もほのかにえぐれている。触れる事さえ高リスク。
 そんな怪物に囲まれるのを避けるべく、テラは森の木々を盾とする。
 自慢の紅龍槍を振るい、敵の接近を阻む。切っ先に宿した炎が、体表を覆う粘膜による腐食を防ぐ。
「おれの大事な『廣利王』には傷付けさせないからな!」
 知った事かとばかり、スラッグ達はテラへの攻撃を緩めない。ナメクジにあるまじきどう猛さ。
「そういえば正気じゃないんだったっけ。けど、馬鹿正直に攻撃してくるならラクチンだ!」
 相手に触れなければいいのなら、テラの戦法なら楽勝だ。
 テラの得手は、空中戦。森の木々を足場として跳び回り、スラッグ達を翻弄。
だが、遂に体当たりの範囲に、テラが踏み込む。鈍重な体からは想像もつかぬ、超加速。
 強酸性の強襲が、テラにのしかかり、すり潰し、溶かす……が、それは残像にすぎぬ。
 身代わりとなった木が、またたく間に腐食し、消滅していく。
 無論、テラ本人は健在である。ただ、野生の勢いに任せたスラッグでは、テラの影さえも捉える事は困難だ。
 そしてテラは、ただ森の中を跳び回っていたわけではない。
 行動を誘導されたスラッグ達は、いつしか森の開けた場所へと集められていた。
 紅龍槍を地面に突き刺し、大跳躍。スラッグ達を見下ろす高さへと到達したテラ、その掌に力が収束する。
「グラビティ・ブラスト……往けぇ!!」
 必殺の、一斉放射。
 狂気をも跳ね除ける重力波砲が、スラッグ達を飲み込んだ。
 エネルギーの放出が終わり、テラが着地した時には、周囲から異形の姿は消えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

卜一・アンリ
門の先はお化けなめくじたちの黒い森、というわけね。

ここは【地形の利用】を考慮した戦い方といきましょう。
周囲の木々の上に【ジャンプ】し、悪魔憑きの拳銃で遠距離戦。
敵の自爆タイミングや効果範囲を【見切り】、範囲外の他の樹木に飛び移ったり陰に隠れてやり過ごしましょう。

攻勢にかかる際は拳銃、即ちダイモンデバイスからUC【悪魔召喚「アスモデウス」】。
事前に手近な木の枝で腕を引っ掻いて垂らした血を代価に焼き殺す。
なめくじ数匹、この程度で十分よね。
人が住まう予定なのだもの、焼き払って回りましょう。
【アドリブ歓迎】



 卜一・アンリもまた、狂気の群れの歓迎を受けていた。
「門の先はお化けなめくじたちの黒い森、というわけね」
 アンリを取り囲むのは、突然変異を遂げたかのような奇妙生物。
 オブリビオンの狂気に蝕まれたその肉体は、緑にぬめり、たたずむだけで大地を溶かす。
 触れるのはもちろん、通り道さえ足を踏み入れたくはない。
 そんなアンリの望みと裏腹に、ジャイアント・スラッグ達は本能に従い、対象の溶解にとりかかった。
 突進して来るスラッグ達。アンリはタイミングを見計らい、跳躍した。
 その身が木の上に到達する頃、地上ではスラッグの衝突事故が起きていた。今まで同士討ちを起こしていなかったのが不思議なほど、互いの体をぶつけあっている。
 緑のなめくじが密集している光景は、実におぞましい。狂気の具現ともいえる敵群へと、アンリは拳銃を向けた。
 撃つ。
 拳銃にはあるまじき連射性能で、スラッグの体表が次々弾けていく。
 拳銃の名は『悪魔憑きの拳銃』。弾倉内に弾丸を転移・装填する事で、連射を叶えているのだ。
 リロード時間を悪魔によって喰らわれる拳銃は、容赦なくスラッグを撃滅していく。体に風穴が空くたび、飛散した酸液が、木々をただれさせていく。
「その酸、なめくじ同士では効かないのね、残念」
 するとスラッグ達は、破れかぶれの攻撃に出た。
 体を膨張させ、アンリのいる樹に体当たりすると、自爆した。
 飛散した酸液が、木々を急速に腐食させた。だが、離れた木に逃れたアンリには、爆風も届かず、爆風の残滓が頬を撫でるのみ。
 だが、自爆は1体では終わらない。
 連鎖的に生じる爆発とともに、緑の花が咲く。
 そして木々が溶かされ、森の一角に広場が出来た後……アンリの健在なる姿があった。
 自爆を選ばなかった残敵を駆逐すべく、アンリは木の枝で自らの腕を傷付けた。こぼれる血が地面を濡らすと同時、悪魔が現れた。
 悪魔・アスモデウス。
「なめくじ数匹、この程度で十分よね。贅沢は言わせないわ」
 いずれこの地は、人が住まうため切り開く事になろう。ならば、多少地形が変わるのもやむなし。
 アスモデウスの獄炎が、黒の森ごとスラッグを焼滅した。

成功 🔵​🔵​🔴​

杼糸・絡新婦
試された後にこれとか、まだお試し足りないんかなあ。
まあ、ここで気持ち悪くない敵がでても、
逆に気味が悪いわな。

他の猟兵に気を取られているなら、一応【忍び足】で接近し攻撃。
逆にこちらに気を取られているなら【パフォーマンス】【フェイント】
で誘導し隙きを作る。
鋼糸を張り巡らせ【罠使い】で動きを止めた【敵を盾にする】
こちらに来た敵は【見切り】でタイミングを図り
脱力して受け止めてオペラツィオン・マカブルを発動。
排し返せ、サイギョウ。


木常野・都月
…大きいな。
なめくじ自体は、嫌じゃないけど、この大きさは凄いな。
しかも溶けるのは嫌だなぁ。

数も多いし、何よりなめくじは雑食。
好き嫌いなく何でも食べるんだよ。
とはいえ、食べられる前に溶かされそうだけどな。

落ち着いて対処すれば大丈夫なはずだ。

まずは[範囲攻撃]氷の精霊様にお願いして、カチコチに凍らせてしまいたい。
水分が多い生き物だ、凍らせてしまえば身動きは取れないはず。

UC【黒の狐火】で凍ったなめくじを壊していきたい。
精気は7割ほど。
しっかり壊しておきたい。

万が一敵の攻撃が来たら[高速詠唱、属性攻撃]の[カウンター]で対処したい。

他に撃ち漏らしがあるなら、[属性攻撃(2回攻撃)]で追撃したい。



 ずるり、ぬるり。
 湿った音を引き連れて、『溶かしすり潰す者』が、杼糸・絡新婦の視界を緑に染めていた。
「試された後にこれとか、まだお試し足りないんかなあ」
 勇猛なる戦い姿を披露するには、敵の外見がおどろおどろしすぎるようにも思われる。
「まあ、ここで気持ち悪くない敵がでても、逆に気味が悪いわな」
 絡新婦の新たな敵は、肉体はおろか、武具をも溶かす強酸の使い手。
 勇者ならばその武具もやすやすと傷付けられるものではあるまいと、そういう試しなのだろうか。
 狂えるオブリビオンの思惑はともあれ、スラッグ達は、溶かせればなんでも構わぬようだ。
「……ホントに大きいな」
 木常野・都月も、ジャイアント・スラッグを観察しながら、小さく感想をこぼした。
「なめくじ自体は、嫌じゃないけど、この大きさは凄いな」
 大の大人すら上回る体長。そんな怪物が、次々と都月達の元に、這い寄って来る。
 見た目だけでも十分な脅威だが、更に体表の粘膜に触れれば……溶ける。
 何よりなめくじは元々雑食。好き嫌いなくは何でも食べる。そこに来て、狂気に冒され、暴れ回るようになったのなら、都月達に対しても、容赦はあるまい。
 だが、理性はない上、いかに巨大でもナメクジであるという本質は変わらない。
 都月は努めて冷静に、落ち着いて敵の群れを迎えうつ。
 そんな都月とは正反対に、獰猛に襲い掛かって来るスラッグ達。
 都月へとスラッグが気を取られているところに、絡新婦が背後から攻撃を仕掛けた。
 ひらり、手を振ってみせる絡新婦に、都月も軽く頭を下げて応えた。
 新たに、都月に襲い来るスラッグ。体を引きずり、地表を溶かしながら接近。
 タイミングをうかがう理性もなく、闇雲に跳びかかって来る。都月はそれをかわし、カウンターで仕留めていく。
 2人の猟兵は、共闘しつつ、各々の戦闘流儀を披露する。
「ほらほら鬼さんこちら」
 手のひらや着物の袖を、これ見よがしに振って。絡新婦は、スラッグを引き寄せる。狂気に浸され、獣以下となったスラッグには、構ってやらぬ理由が無い。
 地を這う緑の塊が、大挙して絡新婦へと殺到。
「人気者はつらいものやね」
 フフと笑って、木々の中に身を躍らせる絡新婦。
 追って来たスラッグ達は、しかしその突進を中止した。いや、させられた。
 絡繰りは、絡新婦が張り巡らせた鋼糸。まさに大蜘蛛の罠のごとく、スラッグ達の体躯を止めたのだ。
 が、後続のスラッグに急停止するという判断力があるはずもなく、次々と衝突、渋滞を起こしていく。
 強酸の粘膜は同族には効かぬようだが、その重々しい体そのものが障害物となって、おしくらまんじゅう状態となる。
 が、鋼糸渋滞を避けたスラッグ達が、なおも絡新婦を追撃する。
 吹き付ける強酸の塊。ひとたび触れれば溶け消える。
 それでも、絡新婦は覚悟を以て足を止め、力を抜いた。
 かすかに溶解音が響いた刹那。現れたのは、狐面の絡繰り人形。
「排し返せ、サイギョウ」
 戦闘用人形としての性能を、サイギョウは忠実に発揮した。
 その身に吸い込まれた強酸の塊は無力となり、ただの液体となって森の土に沈んだのである。
 一方、都月は、絡新婦が離れた事を確かめると、精霊様に呼び掛けた。
「お願い、氷の精霊様」
 暗鬱なる森に、氷気を含んだ風が吹く。
 氷の精霊様の見えざる腕に抱かれた途端、スラッグ達は動きを止めた。全身を瞬時に氷結されて。
 都月も知るように、ナメクジは水分を多く含む生き物。そこに凍気を浴びる、というのは致命的だ。これでは、強酸性の粘膜もどうしようもない。
 競うように都月に殺到していたスラッグ達は、一挙に動きを止められた。後は仕上げといこう。
 都月は、自身の精気を振り絞り、魔力と妖力を放出。身動きできぬスラッグ達へと反撃を開始した。
 精気の出力は、七割ほど。氷像と化したスラッグ達は、それでも十分なすすべなく駆逐されていく。
 散る氷片。陽光なき黒の森では煌めくことも無く、ただ湿った空気に流されていくのみ。
 その行く先は、『骸の海』。
「それじゃあ、狂気の元に進もうか。あの声が、何を、誰を求めてるのか確かめよう」
 都月が見つめた森の奥。
 そこは、狂えるオブリビオンの本質を覆い隠すように、未だ闇黒に包まれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黒騎士の武具造りし黒魔術師ブラックスミス』

POW   :    捧げなさい、我が黒騎士にその命を。
【黒騎士の武具を作り出す黒魔術の青き炎の海】を披露した指定の全対象に【呪詛】を放ち【この炎に飛び込まねばという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    誇りなさい、彼の軍勢に加われる栄誉を。
自身の【黒魔術を施した一般人たち(生死問わず)】を代償に、【創造したレベル×1体の黒騎士】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【剣や鎌、弓矢など様々な呪いの武器】で戦う。
WIZ   :    換わりなさい、いずれ摘まれる贄の姿に。
【呪いの鎚及び鎚から放つ無数の鉛の花びら】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を生命力を吸収し朽ちさせる鉛の花園で覆い】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:宇治野ぬえ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はルパート・ブラックスミスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 終着点は、小さな工房だった。それもどうやら、武器や防具を作っていた場所のよう。
 建物の中に人気は、ない。ただ1つ、オブリビオンの気配を除いては。
「嗚呼、ようやく此処に辿り付いてくれた」
 猟兵を迎えたオブリビオンは、黒衣の女性の姿をしていた。
 黒魔術師にして鍛冶師たる、ブラックスミス。
「私が預けた剣はどうしたの? 鎧は? 戦いで傷ついたでしょう、私がすぐに直してあげる。大丈夫、禁呪を用いて錬成した時に比べれば、修復なんて訳ない事よ」
 猟兵は確信する。ブラックスミスの瞳に映っているのは、自分達ではない。
 否……猟兵はおろか、この世界すらも映っていないのではないだろうか。
「どれほどこの帰還を待ち望んだことでしょう。あの戦いから何年、何十年、もしかして何百年かしら。必ず帰ってきてくれると信じていたのよ、我が愛しき騎士」
 そしてブラックスミスは、飾られていた兜……激しく傷ついたそれを撫でる。
「兜だけが戻って来た時は、悲しかったわ。届けてくれたひとは『黒騎士殿は討ち死にした』と言っていたけれど、死ぬはずなんてない。貴方は強く、そして私の鎧に守られていたのだもの」
 騎士などではない。
 自分達は、ブラックスミスの求める人物ではないと、猟兵は訴える。
 しかし、その言葉は、届かない。
「そんなはずはないわ。今から証明しましょう。私が認めた黒騎士ならば、私の魔術さえも破ることができるはず」
 ブラックスミスの髪が、ふわり、浮かび上がる。邪なる魔力の高まりによって。

 たとえ討伐すべき対象であっても、真実をはっきりと伝えねばなるまい。ブラックスミス自身の言葉から導きだされる、彼女が狂気に至った原因を。
 それが、ブラックスミスを悲嘆させるとしても。
ガーネット・グレイローズ
魔術師にして、ブラックスミス…あの女が声の主だったのか。
我が愛しき騎士、か。その騎士の武具を作るために、異端の神と契約したのか!
だが悪いな、お前の期待には応えてやれそうにない。
私達は、この地をお前の狂気から解放するために来たのだから。

相手が呪いの武具で戦うというなら、
こちらも妖刀アカツキと躯丸の二刀流で戦う。黒騎士軍団の攻撃は
二刀で弾くか、ブレイドウイングを展開させての<武器受け>で防ぐ。
<第六感>で戦場に漂う<呪詛>の流れを読み、
敵が攻めてくる方向や武器の軌道を<戦闘知識>で
把握したい。【妖剣解放】で敵を切り倒しながら包囲を抜け、
高速移動で一気に女魔術師に駆け寄って二刀による<2回攻撃>だ。



 遂に、狂気の主との対面を果たしたガーネット・グレイローズは、真実を編み上げていた。
「魔術師にして、ブラックスミス……この女が声の主だったのか」
「さあ、どのように力を測ろうかしら」
 黒衣の女性の声は、弾んでいた。黒騎士と誤認したガーネットを試す事の嬉しさと、あふれ出す狂気を抑えきれぬ様子。
「我が愛しき騎士、か。その騎士の武具を作るために、異端の神と契約したのか!」
 ガーネットの指摘にも、ブラックスミスは虚ろな笑みをたたえるだけ。
 狂う素地はできていた。決定的に心が歪んだのは、黒騎士を喪ったという事実。
「だが悪いな、お前の期待には応えてやれそうにない。私達は、この地をお前の狂気から解放するために来たのだから」
 ガーネットが抜いたのは、二振り。妖刀アカツキ。そして躯丸。
「嗚呼、素敵な刃。これならばどうかしら」
 ブラックスミスが杖を掲げると、工房に飾られていた黒の鎧たちが起動した。
「貴方の攻撃パターンを、魔術で鎧に転写したものよ」
「人間を素材としてか、厄介なものを!」
 ガーネットは、工房内に満ちる、呪詛の流れを読んだ。敵の数と気配、行動を把握。
 禁術により生み出されし黒騎士たちが、忠実に任務を遂行する。
 繰りだされる剣を、槍を、二刀で弾くガーネット。
 だが敵も、一対多であることを生かして、ガーネットを追い詰めていく。アカツキを黒剣が抑え、反対側からは、戦斧が躯丸と火花を散らす。
 そして更なる三撃目、黒槍がガーネットの胸へと吸い込まれる。これは防げぬ。……否!
「そうでなくては!!」
 感嘆するブラックスミス。
 金属音とともに三撃目を弾いたのは、マントの内より現れし三刀目……ブレイドウイングだった。
 流体金属が、流れるように敵の刃を弾くと、囲む騎士達を振り払う。
 そして、一歩踏み込んだガーネットが、消えた。妖気の残滓を虚空に刻みながら、次々と騎士を斬撃。
 ガーネットの剣舞は、勢いを殺すどころか加速すらしてブラックスミスの元まで迫ると、二刀を存分に振るいきった。
「誇るつもりもないが……どうだ、私の剣は」
 魔女の黒衣の下から、赤血が散る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
俺は剣なんて持ってないし、黒騎士でもない。
…って言っても理解出来ないのか。

崖を登っている時に聞こえた声。
恋人を探してると思っていたけど、実は黒騎士を探していたんだな。

本当は、黒騎士本人から、狂ってる事を伝えたら何か違うんだろうけど…
俺では無理だ。

UC【精霊共鳴】で月の精霊チィに協力を頼みたい。

月の精霊様は狂気や浄化が得意分野のはず。

月の精霊様の[属性攻撃]で、狂気ごと、敵を焼き切ってしまいたい。

敵の攻撃は、[高速詠唱]した[属性攻撃(2回攻撃)]の[カウンター]で対処したい。
雷の精霊様に電磁場を作ってもらって、簡易的な電磁障壁にしたい。
金属の攻撃なら全部電磁障壁で吸い寄せて受け止めたい。



 個人的な狂気の発露か、それとも猟兵を殺すオブリビオンとしての本性か。
 嬉々として魔力を練り上げるブラックスミスの攻撃を、木常野・都月はかわす。
「俺は剣なんて持ってないし、黒騎士でもない。……って言っても理解出来ないのか」
 言葉を紡ぐことはできる。だが、言葉を聞き入れる事は、今のブラックスミスには不可能か。
(「崖を登っている時に聞こえた声。恋人を探してると思っていたけど、実は黒騎士を探していたんだな」)
 或いは、黒騎士こそが恋人だったのかもしれない。
 黒騎士本人の言葉、声ならば、ブラックスミスにも届いたのかもしれない、と都月は思う。
 けれど、だからこそ都月には、ブラックスミスの狂気に手を伸ばす事は出来ない。ここに黒騎士はいないのだから。
「力を貸して、チィ」
 工房内、作成途中の武具すら破壊しながら迫るブラックスミス、その猛攻の間隙を縫って、都月は月の精霊の名を呼んだ。
「さあ、次はどの武器で試してみようかしら?」
 都月を追い、新たに鉄鎚を手にしたブラックスミスは、虚空に浮かぶ月を見た。
 くるり、丸めていた体を伸ばしたのは、狐。月の精霊様がつかさどるのは、狂気と浄化。
 月霊チィは、都月の杖に寄り添うと、その力を宿した。
 月の力を帯びた光が、刃となって、迫りくるブラックスミスを焼き切った。
 光刃が触れた瞬間。ブラックスミスの瞳に、微かに意思の輝きが灯ったように見えたのは、都月の気のせいだろうか。
「……そうでなくてはね。さあ次は私の番よ。耐えきって見せて!」
 ブラックスミスが、黒き鎚を振るった。細腕から繰り出された呪いの武具が、花びらを撒き散らした。
 鈍色に舞う欠片、都月が見抜いたその正体は、鉛。
「それなら」
 都月は、杖を地面に突き立てると、雷の精霊様の助けを請うた。直撃の直前、発生した電磁場が盾となる。金属の性質ゆえ、鉛片の全ては、磁力に引き寄せられるしかなかった。
 そして、都月の反撃。
 落下した花弁の織りなすの絨毯上からブラックスミスを追いやると、持ち替えたダガーを続けて二度閃かせ、ブラックスミスを切りつけた。その狂気ごと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
自らの魔術が破られることを望みますか?ならばお付き合いしましょう。
この感情が彼女が放つ呪詛の影響だとしても、騎士らしく堂々と真っ向から打ち破ります!

暗黒の【オーラ防御】を全身に纏いつつ、青き炎に飛び込みます。
無傷とはいかないでしょうが、多少の火傷ならば【激痛耐性】で耐えられます。
この程度の炎では私を殺すことなどできませんよ。次はこの魔術を打ち破ってみせましょう。

暗黒剣で周囲を【なぎ払い】、【衝撃波】を発生させることで青き炎を消し去ります。
終わりです。UC【魂喰らいの魔剣】による一閃を放ちブラックスミスを倒します。
【生命力吸収】により奪った生命力で先ほどの傷を癒すとしましょう。



 セシリア・サヴェージは、ブラックスミスの眼差しを受けながら、決戦に臨む。
「自らの魔術が破られることを望みますか? ならばお付き合いしましょう」
 セシリアは全身から闘気を溢れさせ、敵へと向かう。
「この感情が、彼女が放つ呪詛の影響だとしても、騎士らしく堂々と真っ向から打ち破ります!」
 その白き肌と騎士道精神を包む鎧から、暗黒のオーラが噴き上がる。
「いいわ、私の鎧の力を最大に引き出せる貴方なら、この程度切り抜けられなくてはね!」
 賛辞と共に、セシリアへと贈られたのは青き炎であった。
 呪術にて灯されし炎はセシリアを囲み、海となる。絶えず波打つ炎が、見る者を呪詛で蝕む、魔の海だ。
 セシリアを焼き尽くそうと、火勢を増す呪いの青炎。
 その熱さ、痛みに耐えながら、セシリアは、ブラックスミスを見据える。
「この程度の炎では私を殺すことなどできませんよ。次はこの魔術を打ち破ってみせましょう」
 そして、押し寄せる炎の波を跳ね除け、炎の海に身を躍らせる。
「少し張り切りすぎてしまったかしら。けれど、もし怪我をしても、私がすぐに『直して』……?」
 ブラックスミスの眼前、青の海が、2つに割れた。
 中から現れたのは、暗黒剣を振るったセシリアの勇姿。
 全くの無傷とは言えぬが、さりとて負傷の域には届かぬ。
 セシリアの瞳には、戦意という名の炎がたぎっていた。
「そう! その姿が見たかったのよ。まるであの人のように……あの人の、よう、に?」
 ブラックスミスの瞳が揺らぐ。初めてみせる迷いと戸惑い。
「これまでの猟兵との戦いで、狂気を乱されたのでしょうか? ……いいえ、ここに至ってそのような感傷など無用」
 セシリアは、暗黒剣を構え直した。
 再び熾る青炎を踏み越え、切りかかる。
「終わりです」
 交錯する暗黒騎士と、黒魔術師。
 暗黒騎士……セシリアの一閃を受けたブラックスミスが、くずおれる。
 ブラックスミスの肉体はもちろん、黒染めの装飾にも傷一つない。ただその生命力、活力のみを両断したのだ。
 代わりに、セシリアの傷が、見る間に癒えていく。黒魔術師から奪った生命力を、糧として。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杼糸・絡新婦
真の姿開放

自分らの戦う姿がお望みかい?
違うやろ、本当に見たい奴がおるんやろ。
捻じ曲がるぐらい強い思いやけど、
それぐらい強いんやったらちゃんと
いま誰がここに立ってるか見い。
証明すると言うならこっちも証明したる、
お前さんを倒すのはお前が望む相手やない。

錬成ヤドリガミで鋼糸をレベル分召喚。
【罠使い】で
張り巡らせ敵の動きを阻害しつつ攻撃。
【フェイント】で隙きを作る。
敵の攻撃は【見切り】で回避するか、
糸を織りなして盾代わりにする。



 杼糸・絡新婦とブラックスミスの操る黒鎧の騎士達が、森の戦の音を響かせる。
「自分らの戦う姿がお望みかい? 違うやろ、本当に見たい奴がおるんやろ」
 腰の毛皮を尾のように振りながら、敵の刃をかわす絡新婦。
 弓手の射撃を、鋼糸を織り束ねて盾と為してしのぐと、狂えるオブリビオンに言葉を飛ばす。
 ほどけた盾の後ろより現れたその姿は、既に真の姿へ。蜘蛛の如き複眼と同じだけの、ブラックスミスが映し出されている。
「捻じ曲がるぐらい強い思いやけど、それぐらい強いんやったらちゃんといま誰がここに立ってるか見い」
「…………」
 正しき記憶と、まがいものの認識。これまで相対した猟兵たちの意志を受け、2つがブラックスミスの中で渦巻いている。
 わざわざ説いてやるなんて、ある意味猟兵はお人好しやな……などという感傷は、甘さであろうか。それとも、狂気の淵にて留まる正気の証か。
「証明すると言うならこっちも証明したる、お前さんを倒すのはお前が望む相手やない」
 絡新婦の周囲に、無数の鋼糸が張り巡らされた。
 先ほどより、戦いの場が工房から森へと移されたのは、ある意味僥倖であった。木々をも罠に組み込めば、敵の動きを封じるのもより容易いのだから。
「ならば、私を連れて行って、あの人の元に!」
 ブラックスミスが、黒騎士団に総攻撃を指示した。しかし、使役者の魂の迷いを反映してか、騎士たちの動きは鈍重であった。
 その行軍は、絡新婦の掌の……いや、糸の上。動きも行く先も、蜘蛛の糸の示すまま。
 張り巡らされた鋼糸に翻弄される黒騎士団。剣刃を切り抜け、絡新婦は、敵の本丸へと攻め込む。
 不意に、背後から飛び出した糸を、こともなげにかわすブラックスミス。
 これだけ周到に準備する相手が、真正面からの攻撃などするはずがない……と読んでいたか。
「荒事にはその頭も回るようやね。さすが鍛冶師、戦いにも精通しとかんと商売にならんものなあ。けど、深読みしすぎや」
 死角を突いてみせたのは、フェイントにすぎぬ。
 絡新婦の本命は、ブラックスミスの正面からの攻撃だったのだ。
 鋼糸の群れが、ブラックスミスの黒衣を、そして青き翼を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

卜一・アンリ
想いに溺れて今にしがみついて。影朧のような人。気に入らない。

UC【強制改心刀】抜刀。
『試しの門』同様に【破魔】の力と【狂気耐性】で正気を維持し突撃。
間合いを【見切り】【ジャンプ】、青き炎の海を飛び『越えて』【捨て身の一撃】。
一撃で足りなければ何撃でも。妄執しか残ってないなら消えるまで削り切る。

どんな剣を用意したか知らないけれど、これは呪いの剣なんかじゃないわ。
わかったでしょ。貴女の騎士は死んだの。
戦って、戦って。きっと一片残らず『燃え尽きた』のよ。
この闇夜に幻朧桜の癒しは届かない。消えなさい。
この世は生者が生きて。死人はあの世で待つものよ。

…ブラックスミス、か。
【アドリブ歓迎】



 卜一・アンリは、工房の外を戦場とし、ブラックスミスの『試練』に抗っていた。
「想いに溺れて今にしがみついて。影朧のような人。気に入らない」
「勇ましいそのまなざし。それこそが私の求める強さ」
 黒衣の魔術鍛冶師を揺さぶるのは、アンリの言葉にあらず、そこに秘めたる思いの強さ。
 敵の攻撃をかいくぐり、アンリは退魔刀を抜いて駆けた。
 骸の海からただ狂気だけをこの世界に抽出したような魔術師は、アンリの正気を蝕む。その強度と速度は、『試しの門』どころのものではない。
 アンリは迫りくる狂気を、強じんなる精神と、破魔の力で振り払う。だが、降りかかる火の粉は海のごとく。青き炎が一面を燃やす。
 突撃。疾風となったアンリが、跳躍した。
「そう、そうでなくては!」
 青き炎の海を飛び越え、アンリが一撃を繰りだした。次の攻撃の事も、守りの事も考えない、全身全霊の捨て身の一撃。
 ただ邪心のみを絶ち斬る刃が、ブラックスミスを両断する。
 狂気を斬ったという『手応え』はあった。だが、一度では足りぬ。返す刀が狂気を刻む。
「どんな剣を用意したか知らないけれど、これは呪いの剣なんかじゃないわ。わかったでしょ。貴女の騎士は死んだの」
 狂気なる魂を幾度も裁断しながら、アンリは語る。
「戦って、戦って。きっと一片残らず『燃え尽きた』のよ」
「…………」
 沈黙のブラックスミス。
 魂の淀んだ部分を切除されたことで、ようやく正気が姿を現したのか。
「この闇夜に幻朧桜の癒しは届かない。消えなさい」
 アンリの刀が、敵の魂の一番深い場所を貫いた。
「この世は生者が生きて。死人はあの世で待つものよ」
「死人……そう……ならば、これでようやく貴方の元に行けるのね」
 猟兵たちの心が、狂気に一滴の正気をもたらしたか。
 アンリの葬送を受け入れるブラックスミスの表情は、不思議と穏やかだった。
「……?」
 気づけばアンリは、森の中に立っていた。
 工房は何処にもない。ブラックスミスと共に、あるべき場所……おそらくは黒騎士の元に……還ったのであろうか。
「……ブラックスミス、か」
 アンリの呟きは、風にさらわれていく。そこに狂気の匂いは、もはや、ない。

 果たして、黒の森は、狂神の呪縛より解き放たれた。
 ここがヴァンパイアの手の届かぬ、人々の安住の地となる日もそう遠くはないだろう。
 だが、猟兵が救ったのは、ダークセイヴァーの人々のみにあらず。
 想いに狂った異端の神、その魂も、また。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月13日
宿敵 『黒騎士の武具造りし黒魔術師ブラックスミス』 を撃破!


挿絵イラスト