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のこされ島

#グリードオーシャン #メガリス #一人称リレー形式 #Testudo_et_Canis #てすかに島 #N04E03 #わんこ

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#メガリス
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#わんこ


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●グリードオーシャンにて
 小さな名もなき無人島。
 人はいないが、犬がいる。
 それはもう沢山いる。
 大型の犬に中型の犬に小型の犬、白い犬に黒い犬に茶色の犬、長毛の犬に短毛の犬、立ち耳の犬に垂れ耳の犬、口吻の長い犬に平面顔の犬――十人十色ならぬ百犬百色。
 見た目だけでなく、内面も個性に富んでいるのだが、今日はすべての犬が一箇所に集まり、同じ行動を取っていた。
「わん! わん! わん!」
「わおぉぉぉーん!」
「わふっ!」
 砂浜で吠えているのだ。
 島の中心にそびえる斜塔に向かって。
 そこから感じられる不気味な力を恐れて。
 もし、犬たちが人の言葉を喋れたとしたら、その不気味な力を発している存在をこう呼ぶだろう。
 コンキスタドール。
 もしくはオブリビオン。

●グリモアベースにて
「今日のおやつはグリードオーシャン産のココナッツジュースだぜ!」
 伊達姿のケットシーが猟兵たちの前でココナッツにナイフを突き立てていた。
 グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトである。
 ナイフで抉った穴にストローを差し込みながら、JJは本題に入った。
「グリードオーシャンの無人島に行ってほしい。予知で得られた情報によると、その無人島に建ってる塔の中にメガリスがあるらしいんだわ。あ? もしかして『無人島なのに塔があるのは変じゃね?』とか思ってる? 実はその無人島は最初から無人島だったわけじゃないし、その塔も本当は塔じゃないんだ」
 塔の正体はスペースシップワールドの宇宙船。遙か昔に小惑星にぶつかり、その小惑星もろともグリードオーシャンに落下したらしい。
「宇宙船の突き刺さった小惑星は島となり、宇宙船に乗っていたスペースノイドの生き残りは島の住人になった。で、その住人たちがメガリスを見つけて、宇宙船の中に運び込んだ……ってなことがあったんだと思う」
 住人たちはメガリスの力で宇宙船を修復させるつもりだったのかもしれない。
 しかし、彼らや彼女らは死に絶え、島は無人島と化した。
「つーことで、巨大な異物にして遺物でもある宇宙船に侵入し、メガリスを確保してほしい。だが、気をつけなくちゃいけないことが三つある。
 一つ目。宇宙船内の防衛装置みたいなのがまだ生きていてる可能性が高い。メガリスの影響で暴走している恐れもある。おまえさんたちを侵入者と見做して攻撃してくるかもしれないから、充分に注意してくれ。
 二つ目。メガリスがある場所にオブリビオンがいるようだ。グリードオーシャンは予知が制限されることがあるから、はっきりとしたことは判らないが、別のメガリスでコンキスタドール化した動物だと思う。
 三つ目。宇宙船の外にも、おまえさんたちの行く手を阻む奴らがいる。島に上陸した瞬間から、そいつらに囲まれることになるだろうな」
 猟兵たちは緊張に身を強張らせた。舞台が無人島ならば、『行く手を阻む奴ら』というのも人間ではあるまい。きっと、血に飢えた凶悪な野獣だ。
「そいつらは……犬だ」
 一瞬にして緊張が解けた。
「人間を見たことは一度もないはずだが、おまえさんたちにめっちゃ懐いてくると思うぜ。宇宙船内で遺伝子改造された愛玩用の犬たちの子孫だからな」
 満足するまで構ってやらないと、犬たちはずっとつきまとう。『むしろ、つきまとってほしいんですけど?』と願う愛犬家の猟兵もいたが、犬の群れを引き連れた状態で任務を遂行するのは困難だろう。
「犬の相手をして、宇宙船の防衛装置を突破して、オブリビオンを倒して……と、やることがいっぱいあるから大変だとは思うが、まあ、頑張ってくれや。あ、そうそう。もう一つ、とても大事な仕事があった」
 JJはにっこり笑い、『とても大事な仕事』なるものの内容を告げた。
「島に名前をつけてくれよ。なんかカッコいいやつを頼むわー」
 そして、ストローをくわえ、ココナッツミルクを飲み始めた。
 じゅるじゅると音を立てながら。


土師三良
 土師三良(はじ・さぶろう)です。
 本件は、犬たちと楽しく遊んだ後、宇宙船に侵入してトラップを掻い潜り、最後にオブリビオンと戦うというシナリオです。

 第1章では、もふもふなワンちゃん軍団との一時。アクティブに遊び回るもよし。静かに癒しの時を過ごすもよし。第1章だけの参加も大歓迎です。
 オープニングでJJが述べたように、犬たちのルーツはスペースシップワールドの遺伝子改造ペットです。繁殖力は弱めに設定されています(宇宙船内の資源や空間は限られているので)が、個々の生命力は通常の犬よりも強いです。そのために無人島でも生き残り、なおかつバランスを崩すほど大繁殖することもなかった模様。知能は普通の犬と変わりません。

 第2章では宇宙船に侵入します。ビーム等によるトラップ群を突破してください。真面目な手段で突破することもできますが、ネタっぽい手段(具体的な内容は第2章開始時に判ります)で突破することもできます。

 第3章はボス戦。敵は、オブリビオン化した可哀想な亀さん。悪意ある存在ではありませんが、オブリビオンを放置しておくわけにはいかないので、心を鬼にして倒してください。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。

 ※章の冒頭にあるPOW/SPD/WIZのプレイングはあくまでも一例です。それ以外の行動が禁止というわけではありません、念のため。

 ※基本的に一度のプレイングにつき一種のユーベルコードしか描写しません。あくまでも『基本的に』であり、例外はありますが。
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第1章 日常 『もふもふパラダイス!』

POW   :    大きなもふもふに思い切りダイブ!

SPD   :    中くらいのもふもふと追いかけっこしてもふる

WIZ   :    小さなもふもふに癒やされる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 名もなき無人島の砂浜に猟兵たちは上陸した。
 砂浜のすぐ先には森林が広がり、森林の中央からは蔓まみれの塔が斜めに伸びている。
 いや、それは塔ではなく、メガリスが眠る宇宙船。
 その宇宙船に積まれていた種子や環境整備用ナノマシンが(他の島から風や波で運ばれた種子もあるだろうが)島を覆うほどの森林を生み出すまでにどれほどの月日がかかったのだろう? ……と、感慨にふける余裕など、猟兵たちにはなかった。
 なぜなら――
「きゃんきゃん! きゃうーん!」
「ばうばうばう!」
「がおー!」
 ――島の住人ならぬ住犬たちに囲まれていたからだ。
 その数は百頭を超えていた。
 人の手で交配管理されていないのだから、すべての犬が雑種のはずなのだが、様々な純血種の特徴を色濃く残した犬も少なくない。ブルドッグやチワワやパグなど、自然分娩が不可能もしくは困難な犬種の姿も見えた。
 しかし、バラエティー豊かな外見に反して、猟兵への接し方は二種類だけ。
『ねえ、構って! 構って! 構ってよー! 一緒に遊んでよー!』
 と、ばかりにじゃれついてくるか――
『あの塔に行くの? ダメだよ! 危ないよ、危ないよ! なんか、ヘンなのがいるんだよ!』
 ――と、ばかりに足止めしてくるか。
 初めて見たはずの人間(と、その他諸々の種族)をまったく警戒していないという点ではどちらも同じだが……。
 
木霊・ウタ
心情
へへ
犬って可愛いよな

遺伝子改造された愛玩用なのに
人間と触れ合えないとは可哀想だぜ

せめて今だけでも
思いっきり遊んでやりたいぜ

一先ずは目的を忘れて楽しむぜ(ぐっ

手段
犬といったらボールだろ、ボール
ボールを投げてもってこさせてってやつ
飽きるまで何度も付き合うぜ

炎の魔球てカンジで
ブレイズFでボールを急角度で曲がらせたり
逆に跳ねさせたりすると
よりノッてくれるかもな
勿論怪我させないようにやるぜ


事後
ありがとな
楽しかったぜ

心配してくれてサンキュ
俺達なら大丈夫だ

危ないのを倒したらまた戻ってきて
遊んでやるからな(ハグハグ&ぺろぺろ


ミア・ミュラー
おー、犬がいっぱい、ね。長い間誰も来なくて、寂しかったの、かな。……ん、わたしでよければ、たくさん遊んであげるから、ね。

じゃあ、わたしは追いかけっこして遊ぼう、かな。わたしが逃げるから、みんなで追いかけて、ね。逃げるのは、得意。わたしを捕まえられる、かな?
走り疲れたら一緒に、休む。ついでに遊んでくれた子たちを順番になでてあげる、よ。んー、色んな子たちに囲まれてのんびりしてると、何だか幸せな気持ちに、なる。
けど、そろそろ行かなきゃ、ね。わたしたちはあの塔を調査しに、来たの。みんなはここで、待ってて。……帰ってきたらまた遊んで、くれる?


シチカ・ダンテス
ベイメリアさん(f01781)と

大量のワンコたちに囲まれ、目の輝きがいつもの数倍になっているベイメリアさんも可愛いく思いながら
俺も犬は好きだからワンコたちと少し遊んであげよう

ベイメリアさんにボールを借りて一緒に投げあうよ
ジャーキーもいっぱい上げたら眠くなるかな?
ベイメリアさんのフジモト(柴犬)と同じくらい犬達が可愛く見える
真っ白な毛玉のポメラニアンが特に好きだから抱っこしたり顔を埋めてみたり
フジモトや他のわんこも頭や体を撫でてあげる
いっそのこと飛び込んでみよう!
楽しそうなベイメリアさんはまるで天使で俺もほっこりと笑う

心配してくれてありがとう
俺とベイメリアさんなら大丈夫
わんこも彼女も守ってみせる


ベイメリア・ミハイロフ
シチカさま(f21761)と


なんと…ここは楽園、でございますか…!
シチカさま、ど、どうしましょう…
わたくしわくわくを止められません…!

めいっぱい遊んで
疲れさせて眠っていただくよう仕向けます
ボールとおもちゃとわんこ用ジャーキーと
フジモト(バディペット)をご用意

フジモトは群れに自ら飛び込んで行くことでしょう
ボールはシチカさまと投げあいっこをして
わんこさんたちを往復させたりして
おもちゃ等にご興味を持たれないわんこさんは
わしゃわしゃもふもふマッサージを
ふふ、シチカさまもお楽しそう…!

塔の危険をお知らせくださってありがとうございます
大丈夫でございますよ、わたくしたちが
きっとなんとかいたして参りますから



●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
 ってなわけで、犬だらけの島にやってきたわけだが……なんか凄いことになってるなぁ。
「わんわん!」
「わんわんわん!」
「わんわんわんわーん!」
 百頭以上の犬たちがお出迎えしてくれるだけでも壮観なのに、一匹残らずハイテンションと来たもんだ。
 こうなると、出迎えられた側だって、平常心を維持できない。
 そのいい例がベイメリアだ。敬虔な聖職者って感じのお姉さんなんだが――
「なんと……ここは……楽園でございますか」
 ――今は神サマよりも犬たちのほうに魂を鷲掴みにされているらしく、深紅のシスター服に包んだ体を感動に震わせてる。
「シチカ様……ど、どうしましょう? ……わたくし、わくわくを止められません」
「止めなくていいと思うよ」
 ベイメリアと言葉を交わしている銀髪の小僧(俺よりちょっと年下……十四歳か十五歳くらい?)はオウガブラッドのシチカ。その中に潜むオウガの存在に気付いていないのか、あるいは気にしていないのか、犬たちは尻尾を振りまくり、じゃれつこうとしている。もちろん、シチカのほうも楽しそうな顔をしてるぜ。
 まあ、かく言う俺もついつい顔がにやけちまうんだけどな。やっぱ、犬は可愛いし。
「だけど、可愛いだけじゃなくて、可哀想な連中なんだよな」
 目についた一匹の中型犬(モップみたいな毛むくじゃらの茶色い犬だ)の頭を俺は撫でてやった。ほんの一秒ほどしか撫でられなかったけど、それは他の犬たちが『ボクも撫でて!』とばかりに顔を手に擦り寄せてきたからだ。
「愛玩用に遺伝子改造されたってのに、人間と触れ合えずにずっと過ごしてきたんだから」
「うん」
 と、頷いたのはミア。シチカと同じ年頃の女の子だ。俺と同じように、ミアの手にも犬たちが群がっている。それにベイメリアやシチカや他の猟兵たちにもな(猟兵の中には人狼やシャーマンズゴーストやセイレーンの姿もあるが、例によって犬たちは物怖じしていない)。
「長い間、誰も来なくて……寂しかっただろうね」
 犬たちに向けられたミアの顔は無表情。でも、胸を痛めてないわけじゃないだろう。ぼそぼそと語る声からは、犬たちへの想いが感じられる。
「わたしでよければ、たくさん遊んであげるから、ね」
「俺も一緒に遊んでやるぜ。任務のことはひとまず忘れてな」
 俺たちが任務を終えて島から去ったら、この犬たちはまた寂しい日々に逆戻りだ。
 だから、せめて、今だけでも……。

●ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)
「犬との遊びといったら、これだろ! これ!」
 片手を犬たちの好きなようにさせながら(舐められまくって、涎でべちゃべちゃになってる、よ)、ウタさんは反対の手を空に突き上げた。
 そこに握られていたのは、ごく普通の、どこにでもある、なんの変哲もない、白いボール。
 それを見上げる犬たちの目はキラキラと輝いて、いる。期待の眼差し、だね。無人島で生きてきたんだから、ボールというのは未知の存在のはずだけど、先祖から受け継いできた遺伝子に刻み込まれているの、かも。
 ボールを介したヒトとの交わりが。
 そう、『とってこい遊び』という定番にして至上の娯楽が。
「そーれ、とってこぉーい!」
 ウタさんがダナミックなフォームでボールを投げると――
「わふっ!」
「わおーん!」
「わんわーん!」
 ――彼にまとわりついていた犬たちが走り出した。数が多い上に勢いがあるから、巻き起こる砂煙の規模も凄いことに、なってる。まるで、砂嵐。
 ウタさんの傍にいなかった犬たちもボールに興味を持った、みたい。百頭を超える犬がたった一つのボールで遊べるわけもないけれど……心配御無用。他の人たちもボールやフリスビーを取り出した、から。
 そのうちの一人であるベイメリアさんがシチカさんに声をかけた。
「準備はよろしいですか、シチカ様」
「うん」
 そして、周囲の犬たちの視線がボールに集まるまで待ってから(数秒とかからなかったけど)、ゆるりと投げた。
 途端に犬たちが、走り出す。
「よっと!」
 と、シチカさんがボールを受け止め、すぐに投げ返した。
 ベイメリアさんもまた受け止めて、すぐに返球。
 そうやってキャッチボールをしている間、犬たちは二人の間をずっと行ったり来たり。ただ同じことを繰り返しているだけだけど、どの犬もとても楽しそう。
 ちなみに『どの犬も』というのは、この島の犬たちのことだけじゃない、よ。
「きゃん! きゃん! きゃーん!」
 ベイメリアさんが連れてきたフジモト(柴犬に似た小さな犬、だよ)も群れに混じって、一際大きな声で鳴きながら、ちょこまかとボールを追っている、の。
 少し離れた場所では、別の猟兵さんが連れてきた二匹の犬(柴犬とセントバーナードという取り合わせ)が島の犬たちと遊んで、いる。
 さて、わたしも遊ぼう、かな。

●ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)
「いい具合に犬たちを楽しませてるじゃねえか」
 ボールをやり取りしているシチカ様とわたくしにウタ様が話しかけてこられました。
「俺も負けてられないぜ」
「いや、べつに勝負をしてるわけじゃないんだから……」
 苦笑混じりの言葉をシチカ様が返されてる間に、ボールを追いかけていた犬の群れがウタ様のところに戻ってきました。
 ウタ様は、先頭の犬がくわえていたボールを受け取り――
「よし! 次は炎の魔球ってな感じでやってみっか!」
 ――また、お投げになりました。先程よりも勢いよく。
 次の瞬間、彼の周囲に火の粉が舞い散りました。おそらく、ユーベルコードの『ブレイズフレイム』を用いて炎弾を撃ち出し、先に投げたボールにぶつけ、すぐに消去されたのだと思います。
 衝撃を受けたボールは急角度で軌道を変えました。それを追っていた犬たちも砂浜を足で抉るようにして急制動。そして、急発進。
「わん!?」
 と、戸惑いの声を発している犬もいますね。しかし、想定外のボールの動きに翻弄されながらも……いえ、翻弄されているからこそ、今まで以上に興奮し、楽しんでいるようです。
 そんな犬たちの横を別の犬の一団が駆け抜けました。
 彼らや彼女らが追っているのはボールではありません。
 ミア様です。
「さあ、わたしを捕まえられる、かな?」
 追いかけっこをしているのですね。
 時には蛇行し、時には直進し、不規則な軌跡を砂浜に描いて走り続けるミア様。大半の犬はその後を追っていますが、前方に回り込もうとしている犬も何匹かいます。
 もっとも――
「逃げるのは得意、だよ」
 ――挟み撃ちされそうになっても、ミア様は巧みに擦り抜けていきますが。
「きゃん! きゃん! きゃーん!」
 あら? いつの間にか、ミア様を追いかける犬たちにフジモトが加わっていますわ。

 そして、二時間ほどが過ぎました。
 寄せては返す波の音と森の奥から流れてくる鳥の鳴き声が耳に心地よいですわ。
 犬たちのけたたましい鳴き声はもう聞こえません。
 皆、遊び疲れて、砂浜のあちこちで寝転がっているのです。
「んー。こうやって、いろんな子たちに囲まれて、のんびりしてると――」
 と、誰にともなく仰ったのはミア様。円を描くような形で横たわっている何匹かの犬たちの中心に陣取り、順番に撫でておられます。
「――なんだか幸せな気持ちに、なる」
「そうだねぇ」
 シチカ様が頷きました。重なり合って小山のようになった犬たちを撫でながら。
 その『小山』にはフジモトがちゃっかり混じっていました。

●シチカ・ダンテス(オウガブラッドの殺人鬼・f21761)
 いっぱい遊んだ。
 いっぱい撫でた。
 でも、まだ足りない。
 お腹もいっぱいにしないとね。
 というわけで、俺とベイメリアさんはワンコたちにジャーキーを配って回った。もちろん、ペット用のジャーキーだよ。
「んんんむわぅぉーん!?」
 と、目の色を変えて奇声を発する犬が続出。凄い食いつきだ。まあ、当然だよね。このワンコたちは加工済みの肉なんて味わったことがないんだから。たぶん、普段のご飯は鳥とか魚とか木の実とか……あと、地虫の類(おえっ!)なんだろう。
「美味しすぎて焦るのは判るけど、ゆっくりよく噛んで食べるんだよ」
 と、自分の舌まで噛みちぎりそうな勢いでジャーキーを貪る白いポメラニアンに俺は声をかけた。
 それにしても可愛いポメラニアンだ。つぶらな瞳をじっと見つめていると、吸い込まれてしまいそう……なんてことを思ってたら、本当に吸い込まれちゃった。
「おいおい。なにやってんだよ、シチカ」
 ウタさんの呆れ声が聞こえた。だけど、姿は見えない。俺の視界は白い被毛に覆われているから。
 そう、俺は瞳に吸い込まれたわけじゃなかった。無意識のうちにポメラニアンに顔を埋めてしまっていたんだ。
 我に返り、顔を上げる。ちょっと頭を冷やそう。立ち上がって、ワンコたちから離れ……いや、ダメだ。ちっとも冷えない。
 こうなったら、いっそのこと――
「――ダイブだ!」
 ワンコの群れめがけて、俺は飛び込んだ。
「ふふふ。シチカ様もわくわくが止められないみたいですね」
 ベイメリアさんが笑ってる。普段よりもっと瞳をキラキラさせて。可愛い。うん、可愛い。まるで、天使。

「そろそろ行かなきゃ、ね」
 島の中心にある塔を指さして、ミアさんがワンコたちに言った。
「わたしたちはあの塔を調査しに、来たの。皆はここで、待ってて。帰ってきたら、また遊んで、くれる?」
「わん!」
 一匹のワンコが鳴いた。仲間たちの想いを代表して伝えるかのように。
 もう、どのワンコも行く手を阻む素振りを見せない。俺たちの意思の固さを悟ったんだろうね。だけど、俺たちを見る眼差しは不安げだ。
「心配してくれて、サンキュ」
 腰を屈めて、代表格のワンコを撫でるウタさん。
 ワンコは撫でられている間はじっとしていたけど、手が離れた途端、前足をウタさんの両肩に乗せるようにしてハグをした。
「大丈夫。俺たちなら、大丈夫だ」
「ええ、大丈夫でございますよ。ご心配には及びません」
 ベイメリアさんが優しく囁くような調子で諭すと、ワンコはウタさんを解放した。
(「安心して」)
 と、俺もワンコに決意を伝えた。
 心の中で。
(「必ず守ってみせるよ。キミたちもベイメリアさんも……」)
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水貝・雁之助
犬って本当に人間大好きだもんねえ
まして此の子達、そういう特性を強化されてたみたいだし
そんな犬が人間達がいない環境でずっと生きてたら、そりゃあこうなるかあ
モコ、ベルナール卿、この子達と一緒に遊んであげようなんだなー

UCで動物使いの技術を強化
装備品相当の柴犬のモコとセントバーナードのベルナール卿の手も借りて犬と遊ぶ
強化した動物使いの技術で犬達を満足させる為にフリスビー投げや追いかけっこ等で全力で遊んであげたりブラシで毛をすいたり気持ちよさそうな所を見抜いて撫でてあげたりして遊ぶ
又、『動物と話す』技能を活かし動物達の反応への配慮も怠らない

兎に角、犬達の人と関われなかったうっ憤を晴らす為に全力で遊ぶ


ハディール・イルドラート
ハイネくん(f26238)と

空の向こうの海に思いを馳せるような雰囲気でもなく、長閑だねぇ。
遺伝子改造ペットという言葉には、色々と複雑な気持ちになるが――。
なんて、子々孫々みんな幸せみたいだね。

え、あのペンギン撫でられるのかい。
我も後々一撫で、と予約を入れつつ。

よーし、この投げ舵輪をフリスビー代わりに。
我と勝負だ。

おお、凄い速さじゃないか!
次は全力で行くよ!
全力で投げてどこまで飛ぶのか、我も把握してないのだが。
うむ、確かに戻ってくるが――でも彼らは優秀だ、ほら、咥えて帰ってきた。

我は危険すら冒険として楽しい。ゆえに行く。
だが、その前に、全力でもって遊んでやろうじゃないか。
だって楽しいからね?


ハイネ・アーラス
ハディール(f26738)と

空の彼方はあまりに遠くて、この地は時に無情ですね。
愛玩用……愛されるべき、愛すべきもの。
人ごとには思えなかったんですが、いや、キミ達と俺は違いますね

ふふん。普段ペンギンたちの世話で磨いた俺の撫でスキルを見せる時
ふふふふ、うちのペンギンたちは魅力的ですよ? ハディール

さぁもっふもふに撫でてやりましょう
……もふもふだ……

ハディールが全力で投げたら何処まで行くのか…
あれ、確か最後には帰ってくるのでは?
あぁ、お帰りなさい。と撫でてあげますとも

冒険に、危険と浪漫はつきものですよ。
だから全力で今を楽しみましょう。それが我らが海の流儀であれば
この島での冒険の前に



●ハイネ・アーラス(海華の契約・f26238)
 ここはさして大きな島ではありませんから、中心部に聳える塔――宇宙船の成れの果てを砂浜から望むことができます。
 しかし、その塔頂部(あるいは『船尾』と呼ぶべきでしょうか?)が指し示す方向に目をやったところで、宇宙船が翔けていた星の海までもが見えるはずもなく……この地は時に無情ですね。なんだか、傾いだ塔が大きな墓標に見えてきました。
「うむ」
 私の心を読んだかのように、いかにも『海の漢(おとこ)』然とした出で立ちの人狼が頷きました。
 ゴーストキャプテンのハディールです。
「新天地を求めて星の海を航海していたであろう船が本物の海に落ち、こうして小さな新天地を作るとは、なんとも皮肉な話である……なーんて、感傷に浸るような雰囲気じゃないかー」
『海の漢』モード、唐突に終了。
 まあ、終了せざるを得ませんよね。本人が言うように――
「わんわん!」
「わんわんわん!」
「わんわんわんわーん!」
 ――感傷に浸ることが許される雰囲気ではありませんから。
 百匹以上の犬が俺たちを取り囲んでいるのです。いえ、ただ取り囲んでいたのは先程までの話。ある犬は手を舐め回し、ある犬は体をこすりつけ、ある犬は後足で立って抱きつき、ある犬は何度もジャンプして自分の存在をアピールし、ある犬はお腹を見せてごろごろと転がり……とにかく、いろんなやり方で気を引こうとしています。
「いやー、長閑だねぇ」
 犬たちにもみくちゃにされながら、微笑を浮かべるハディール。意識しておこなっているのかどうか判りませんが、ボリューム満点の尻尾が揺れていますし、頭頂から突き出た獣の耳もぴこぴこと動いています。
「『愛玩用に遺伝子改造云々』と聞いた時にはちょっと複雑な気分になったけど……まあ、子々孫々みぃーんな幸せそうでなによりだ」
 複雑な気分になったのは俺も同じです。愛玩用……愛されるべき、愛すべきもの……籠の鳥ならぬ水槽のセイレーンとして扱われていたことがある身として、他人事とは思えませんでした。
 でも、やっぱり、この子たちと俺は違いますね。たぶん。
「犬って、本当に人間が大好きだもんね」
 声が聞こえてきた方向を見ると、長身のシャーマンズゴーストがハディールと同じように犬の海で溺れかけていました。放浪の画家、雁之助です。シャーマンズゴーストという種族を知らない人が見たら、彼こそが遺伝子改造等の技術の産物と思うかもしれませんね。
「まして、この子たちはそういう特性を強化されてたみたいだし……そんな犬が人間たちがいない環境でずう~っと生きてたら、そりゃあ、こうなるか……うわぁ!?」
 すべてを言い終える前に雁之助は何匹もの犬に押し倒されて、俺の視界から消えました。

●ハディール・イルドラート(黄金狂の夢・f26738)
「あー、びっくりしたー」
 犬の海に沈んでいた雁之助君が顔を出した。生存確認! ……なんて言うと、余裕があるように思えるかもしれないけれど、我だって(それにハイネ君や他の皆も)いつ犬の海に沈んでもおかしくない状況だ。どの犬も遠慮なくじゃれついてくるから。
 とはいえ、犬たちは『人間と遊びたい!』という欲求だけで動いているわけではなく、我らのことを心配しているらしい。斜塔のほうに少しでも目をやると(いや、ちょっと意識を向けただけでも、すぐに察して)『あっちに行っちゃダメ!』とばかりに裾を噛んで引っ張ってきたりするし。
 心配してくれる気持ちはありがたいけど、ここはビシっと言っておこうか。
「案ずるな、犬たちよ。我は危険すら冒険として楽しむことができる。故に行く!」
「海の漢モード、再起動ですね」
 と、ハイネ君が茶々を入れてきたけど、聞こえない振りをして、我は犬たちに語り続けた。
「しかし、その前に全力を以て遊んでやろうではないか。だって――」
 ハイネ君が言うところの『海の漢モード』とやらを終了。
「――そのほうが楽しいからね!」
「そうですね」
 ハイネ君がまた口を開いたけど、今度は茶々じゃなかった。
「冒険に危険はつきもの。だからこそ、全力で今を楽しみましょう。それが我らが海の流儀であれば……」
「海の流儀はよく知らないけど、僕も楽しむよ」
 と、話に加わったのは雁之助君。
「皆、よろしくお願いするんだなー」
 鬣(なのかな?)のある特徴的な顔で犬たちをぐるりと見回し、雁之助君は改めてご挨拶。
 いや、それはただのご挨拶ではなく、ユーベルコードだったらしい。彼を取り囲んでいた犬たちが騒ぐのをやめて、整然と円陣を組んだから。
「モコとベルナール卿もこの子たちと一緒に遊んであげてほしいんだな」
「きゃん!」
「わふっ!」
 雁之助君の言葉に甲高い鳴き声と野太い鳴き声で答えたのは、円陣を組んでいた犬たちの中にいた柴犬とセントバーナード。この二頭は島の住人(住犬?)じゃない。雁之助君の相棒たちだ。
「じゃあ、いくよー」
 雁之助君はフリスビーを取り出し、犬たちにしっかりと誇示した後で放り投げた。
 それを追って走り出す二匹の相棒。半秒ほど遅れて、他の犬たちもダッシュ。
「『フリスビー』はUDCアースで登録商標になっているらしいけど、べつに問題ないよね?」
 雁之助君は空を見上げて、誰にともなく問いかけた。
 返事はどこからも返ってこなかった(故に我が答えよう。『問題なし』と!)けど、代わりに犬たちが帰ってきた。フリスビーをくわえているのは、シェパードの特徴を残した雑種の犬。先頭を切って走ってた二匹の相棒を実力で追い抜かしたのか。たいしたもんだ。それとも、アウェーチームである相棒たちがホームに忖度したのかな?
「おりこうさんなんだな」
 雁之助君はシェパードモドキの頭を一撫でしてフリスビーを受け取り、再び放り投げた。
 またもや、犬たちがダッシュ。どの犬の走りっぷりも凄い……と、感心して見ている場合じゃなかった。我の周りにいる犬たちがきゃんきゃんと騒ぎ続けている。
 待たせて悪かったね。君らにもフリスビーを追わせてあげよう。
 ちょっと大きめのフリスビーだけど。

●水貝・雁之助(おにぎり大将放浪記・f06042)
「よーし! 犬たちよ、我と勝負だ」
 ハディールさんもフリスビーを持ち出した……って、え!? あれはフリスビーじゃないんだな。
「もしかして……舵輪?」
 僕が確認すると、ハディールさんは頷いた。
 でも、すぐにかぶりを振った。
「そのとおり。でも、違う。これはただの舵輪ではなく、投げ舵輪。グリードオーシャンでは――」
 ハディールさんは体をぐるんと回転させて、舵輪を投げた。
「――ポピュラーな武器なんだ」
「わおーん!」
 雄叫びを響かせて、まっしぐらに駆け出す犬たち。
 そして、三十秒も経たないうちに戻ってきた。先頭のグレイハウンドみたいな犬が舵輪をくわえている(フリスビーよりも分厚い上に重いから、くわえ難そう。ペット用品メーカーは早急に犬用の投げ舵輪を開発すべきなんだな)。
「おおう!? 凄い速さじゃないか! よーし、次は全力でいくぞ!」
 ハディールさんはグレイハウンドから舵輪から受け取ると、また体を回転させ始めた。さっきは一回転だけだったけど、今度は何回も何回も何回もまわってるんだな。
「ほう。全力ですか……」
 コマみたいに回り続けるハディールさんの後ろで、青くて長い髪をしたセイレーン――ハイネさんが呟いた。
「はたして、どこまで飛ぶんでしょうね?」
「さあ? 全力で投げてどこまで飛ぶのか、我も把握していないのだぁー!」
 叫ぶハディールさんの手から舵輪が離れ、飛んでいった。ものすごい勢い。アニメや漫画なら、空の彼方でキラっと輝いて消えてしまうこと間違いなし。
 でも、犬たちも負けてないんだな。舵輪が飛び立つと同時に砂煙をあげて走り出してる。
「あれ? そういえば、投げ舵輪というのは――」
 目の上に手を翳し、遠ざかる砂煙を見送るハイネさん。
「――自動的に戻ってくるのでは?」
「うむ」
 と、ハディールさんが頷いた。目を回して尻餅をついた状態で。
「確かに戻ってくる。でも、彼らは優秀だ。きっと、くわえて帰ってくる」
 目を回しながらも自信満々な物言い。
 その自信は間違っていなかった。
 そう、犬たちが戻ってきたんだな。もちろん、先頭の犬(さっきのグレイハウンドとは別の犬なんだな)は舵輪をくわえてる。
「わん!」
 犬は舵輪を地面に置き、『どんなもんだい』とでも言うように吠えた。
「よーしよしよし。よくやった」
 ハディールさんが犬の頭を撫で始めた。
「ハイネ君も撫でてあげてよ」
「ええ、撫でますとも。今こそ、ペンギンたちの世話で磨いた俺の撫でスキルを見せる時です。ふふふふ……」
「え?」
 ハイネさんの足下に目をやるハディールさん。犬の群れに紛れて見えにくいけど、そこには可愛いペンギンさんがいたんだな。聞いたところによると、ハイネさんとともに海を征く優秀な海賊ペンギンなんだとか。
「そのペンギン、撫でられるのかい?」
「はい。うちのペンギンたちの撫で心地は最高ですよ」
「じゃあ、我も後で一撫でさせて」
「ええ、いいですよ」
 そんな風にハディールさんとやりとりをしている間もハイネさんは自慢の『撫でスキル』とやらで犬をめろめろにしてるんだな。
 でも、ハイネさんも結構めろめろになっているみたいで――
「もふもふだ……」
 ――と、幸せそうに呟いたりしてるんだな。
「きゅおーん!」
 ん? 黒い子犬が僕の足を鼻先でつついてる。きっと、この子も『撫でスキル』をせがんでるんだな。
 よしよし。心ゆくまで撫でてあげるんだな。

 この任務が終わったら、僕もペンギンさんを撫でさせてほしいんだな。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『宇宙船島に残ったトラップ群を突破せよ!』

POW   :    力づくでトラップ群を突破する!

SPD   :    スピードでトラップ群を突破する!

WIZ   :    知恵を持ってトラップ群を突破する!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 猟兵たちは塔/宇宙船の中に難なく入ることができた。いくつもの進入口があったからだ。小惑星への衝突時もしくはグリードオーシャンへの落下時に生じたであろう亀裂、落下後にクルーたちが設けたと思われる扉、外殻に備えられた本来のハッチなど。
 おそらく、件のオブリビオンもそれらのうちの一つから船内に入ったのだろう。オブリビオンがやってくる前は犬たちも頻繁に出入りしていたかもしれない。
 船内の照明装置はまだかろうじて生きていた。赤い非常灯なので落ち着かないが、なにもないよりもは良い。また、重力を発生させる装置も健在であるらしく、傾いている空間を普通に歩くことができた。
 それらだけでも充分に有用だが――
「わんわんわんわーん!」
 ――更に有用かつ重要(かもしれない)装置が自らの存在を猟兵たちにアピールした。
 バセットハウンドの立体映像を表示するという形で。
「やった、やった、やったー! ヒトのお役に立てる日がまた来ましたわん!」
 実体なきバセットハウンドは四本の短い足をちょこまかと動かして猟兵たちの周囲を走り回っていたが、我に返って急停止し(ブレーキ音のSE付きだった)、ぺこりと頭を下げた。
「すいませんわん。約七百二十万時間振りにヒトに会ったので、取り乱してしまいましたわん。私は、この船の総合案内システム〈Dynamical Overall Guides〉のインターフェースAIですわん。お気軽に『DOG』とお呼びくださいわん」
 そのまんまのネーミングじゃん……と、ツッコミを入れる間もあらばこそ、DOGは尻尾を振りながら、猟兵たちにずいと近寄ってきた。半透明の小さな体であるにもかかわらず、妙な迫力がある。
「ヒトに奉仕することが僕の幸せですわん! さあ、命令してくださいわん! 僕にできることなら、なんでもやりますわん! ……と、言いたいところですが、七百万時間以上もヒトと接していないので、船外の状況が判らないのですわん」
 お座りの姿勢を取るDOG。
「いったい、なにがあったのか。そして、皆さんはなんのために来たのか。それを教えてくださいわん」

「なるほど、なるほど」
 猟兵たちの話を聞き終えると、DOGは何度も頷いた。
「つまり、皆さんが『オブリビオン』もしくは『コンキスタドール』と呼ぶイレギュラーな存在が船内にいるということですわん? それなら、心当たりがありますわん」
 DOGの頭上に船内図が浮かび上がった。船尾の近く――『AE35』と記された広いエリアが点滅している。
「約百三十時間前、亀らしき生物が船内に入り込み、船倉AE35に居着いてしまいましたわん。おそらく、その亀が『オブリビオン』もしくは『コンキスタドール』と思われますわん。ちなみに、船倉AE35はこの船の生き残りたちがなにかを設置した場所でもありますわん。『生き残り』と言っても、それから間もなく死に絶えてしまいましたが……」
 おそらく、その『なにか』というのがメガリスなのであろう。
「ここからAE35までのルートはいくつかありますが――」
 船内図に何本もの線引かれた。現在地であろうポイントとAE35を結ぶ線だ。
「――そこかしこに防衛用のレーザーが備えられていますわん。防衛システムはハードもソフトも経年劣化している上、AE35に設置された『なにか』の影響で暴走し、判別装置がまともに働かなくなっていますわん。おそらく、射程内にヒトが入ってきたら、問答無用で撃ってきますわん」
 案内システムに過ぎないDOGには防衛システムに干渉する手立てがない。宇宙船が無傷だった頃のデータの大半が消失しているため(なおかつ、防衛システムが自身を改造した可能性もあるため)各レーザーの正確な位置も判らないという。
「とはいえ、防衛システムの目を眩ませる方法がないわけではないですわん。防衛システムが侵入者と見做すのはヒトだけ。つまり、ヒト以外のもの――動物は素通りできるのですわん」
 亀のオブリビオンが船内に入ることができたのもヒトではなかったからだろう。
「そして、先程も言ったように防衛システムはハードもソフトもガタが来てますわん。『動物の振りをしているヒト』と『本物の動物』の区別もつかない可能性が高いですわん」
『つまり、どういうこと?』という顔をする猟兵たちに向かって、DOGはにっこり笑ってみせた。
「というわけで、動物になりきってAE35を目指してくださいわん!」


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●DOGからのお知らせ

 第2章の種別は「冒険」ですわん。
 レーザーを素早くかいくぐったり、ブチ壊したり、ハッキングして操ったり……と、真面目な方向でいくもよし。
 動物の振りをして防衛システムの目をごまかすというネタっぽい方向でいくもよし。え? 『賢い動物でなきゃ無理じゃん』ですって? いえいえ、賢い動物以外の種族でも大丈夫ですわん。防衛システムの判別装置はアレな状態なので、着ぐるみを纏ったり、猫耳をつけたり、四つん這いで歩いたり、なんなら『わんわん』とか『にゃあにゃあ』とか言ってるだけでも突破できるかもしれませんわん。ただし、傍目にはおバカっぽく見えるので、羞恥心や自尊心が大ダメージを受けるかもしれませんわん。

 僕は直接的なお手伝いはできませんが、どこにでも立体映像で現れ、皆様のお相手をすることができますわん。ただし、僕(だけでなく、他の猟兵さんとも)と人語でコミュニケーションを取っていると、防衛システムにヒトと見做されて攻撃されるかもしれませんわん。
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木霊・ウタ
心情
もふもふタイムの終了は残念だけど
DOGも可愛いなー
よしよし
犬派の人達の船だったんだな
きっと

ともあれ突破して
亀を海へ還してやろうぜ(ぐっ

手段
POW
へへ
こういうのはシンプルに行くに限るぜ

わんわんと言いながら進むぜ
一応

仲間と会話が必要な時は語尾に
~わんってつけるカンジで

誤魔化せず攻撃を喰らった時は
噴出した炎の高熱で空気を歪ませて
レーザーの軌道を逸らしつつ
炎を壁として展開して武器受け
必要なら仲間を庇う

センサーは強烈な炎の輝きで目眩ししたり
炎の壁で視界を覆ったり
熱探知を使えなくしたり

見える範囲にある防衛装置やセンサーは炎で溶かす

強力な攻撃を喰らったり閉じ込められたら
壁や床を高熱で溶かして脱出


シチカ・ダンテス
ベイメリアさん(f01781)と

ちょっと動物のマネは恥ずかしいけど…撃たれちゃうよりは幾分マシか
こんなこともあろうかと用意しておいた狼耳と尻尾をつけて進むよ
ベイメリアさん、合図了解!
わんにゃあなベイメリアさん…ちょっと可愛いなと思いつつ気を引き締めていざ出陣

防御に長けたベイメリアさんに前を任せるワン
動物のように低い態勢を後ろから同じように追いかけるワン
語尾だけでも良いのではと思いつつもこのまま行くワン…
で、でもベイメリアさんのお尻がなんかその
背徳的に見えてしまうのはミッション上の事故ですワン(目をそらす)
目立たないと暗殺の技能で装置にも用心して少しずつ進んでいくつもりだワン


ベイメリア・ミハイロフ
シチカさま(f21761)と


成程、動物になりきれば良いのでございますね
…シチカさま、いかがいたしましょう?
ここはひとつ、試みてみましょうか

予め合図を決めて
わん、は進む、にゃあ、は止まる
良いですか、わん、とにゃあ、でございますよ
打合せは手短に
では、参りますよ…

謎の犬耳(柴)を着用
ふふ、シチカさまの耳も尻尾も、よく似合っておられますよ

匍匐前進で動物のように低い姿勢で参ります
万が一、シチカさまがレーザーに打たれてしまわれないよう
わたくしが先に参りますね

レーザーの気配は第六感にて察知し
にゃあとお声がけしてお止まり頂き
オーラ防御にて防ぎつつ
ジャッジメント・クルセイドにて破壊を
後はいそいそと前進を続けます


ミア・ミュラー
ん、コンキスタドールとの戦いが待ってるなら、無傷でたどり着けた方がいい、よね。じゃあわたしも動物の振り、するね。亀さんは先に進めたみたいだから、わたしも亀さんになって進む、よ。

んーと、とりあえず手足を広げて腹ばいになって行けばいい、かな?小さい亀さんはけっこう速く進めるらしいから、わたしも加減しないでどんどんずりずり進んで行く、よ。あっ、傘を広げて背中に乗れば、甲羅になる、かも。こうすればもし背中を撃たれちゃっても、防げる。名案。
ん、床がひんやりしてて、ちょっと気持ちいい。こういうのも楽しいけど、進むの疲れるし、周りもあんまり見えない、ね。DOGさんに前を走って道案内してもらえると、いいかも。



●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
 犬たちとの楽しい一時が終わって、『もふロス』とでも呼ぶべき精神状態になりかけてたけど、ここに来て新たな犬が登場するとはな。
 ダイナミカル・ナントカ・カントカ……略してDOGか。立体映像とはいえ、なかなか可愛いじゃねえか。こんなAIを作ったところから察するに、この船に乗ってた人たちはきっと犬派だったんだろうな。
「よしよし」
「わんわんわーん!」
 手を近付けて撫でる真似をしてやると、DOGは嬉しそうに尻尾を振りまくった。わざわざ『ぶんぶん!』という効果音まで発生させて。外の犬たちと同じように人間とのコミュニケーションに飢えていたようだ。
 とはいえ、いつまでもDOGと戯れているわけにはいかない。任務が待ってるからな。オブリビオン化した哀れな亀を骸の海に還してやるという任務が……。
「動物になりきれば、防衛システムとやらを欺けるのでございますね?」
 ベイメリアが改めて確認すると、DOGは尻尾を止めた。
「そうですわん」
「なるほど」
 ベイメリアはシチカに目を向けた。
「シチカ様。ここはひとつ、試みてみましょうか」
「うん。こんなこともあろうかと――」
 シチカが懐に手をやり、なにかを取り出した。
「――狼の耳と尻尾を持ってきたんだ」
 いや、用意が良すぎるだろ。

●シチカ・ダンテス(オウガブラッドの殺人鬼・f21761)
 動物の真似をするのはちょっと恥ずかしいけど……まあ、レーザーで撃たれちゃうよりはマシだよね。
 というわけで、俺は耳と尻尾を装着した。なんだか、コウ(ボクに取り憑いてる半人半獣っぽいオウガのことだよ)の姿にほんの少し近付いたみたいでイヤな感じ。
 でも、そのイヤな感じはすぐに吹き飛んだ。
「あら? 耳も尻尾もよく似合っておられますね」
 と、ベイメリアさんが褒めてくれたからね。
 ちなみに彼女も付け耳を頭に乗っけてる。どうやら、柴犬の耳っぽい。足下に控えているフジモトに合わせたのかな?
 そのフジモトが吠えた。
「わん!」
「……ふむ」
 ベイメリアさんはフジモトを見やり、小さく頷いた。なにやら思いついたみたい。
 そして、俺に視線を戻した。
「フジモトに倣って、わたくしたちも『わん』でいきましょう」
「なんの話?」
「前に進む時の合図です。止まる時は『にゃあ』にしましょう。いいですか、『わん』と『にゃあ』でございますよ」
「『わん』と『にゃあ』か……了解!」
 と、答える俺の横でウタさんが苦笑した。
「そこまでしてなりきる必要あるのか? べつに語尾に『わん』って付けるだけでいいんじゃね?」

●ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)
「いいえ、ウタ様。ここは慎重にいくべきですわ」
 笑顔のウタさんを真顔で諭すベイメリアさん。
 わたしも彼女に賛成、かな。やっぱり、慎重にいかないと、ね。コンキスタドールとの戦いが待ってるのなら、無傷でたどり着くに越したことはない、から。
 DOGさんの話によると、そのコンキスタドールは亀なんだとか。これって、重要なポイントだと、思う。
「亀さんが先に進めたのなら――」
 わたしは傘を取り出して開いた。これはアリスラビリンスのとある国でもらったメアリー・アンブレラ、なんだ。
「――わたしも亀さんになろう、かな」
「なるほど。いい考えですわね」
 ベイメリアさんが感心してくれてる。でも、わたしの傘を見る目が訝しげ。訊かれる前に説明しておこう、かな。
「この傘は亀の甲羅の代わり。盾として使えるくらい丈夫にできてるから、レーザーも防げる、よ」
 うん。我ながら、名案。
 だけど、シチカさんは名案と思ってないのかな? ちょっと心配そうな顔をしている、よ。
「亀になりきるってことは這っていくんだよね? ペースがゆっくり目になるんじゃない?」
「大丈夫、だよ」
 と、わたしはシチカさんに答えた。
「小さい亀さんはけっこう速く進めるらしい、から」
 皆を置いてきぼりにしちゃうほどのペースで、ずりずり進んじゃう、よ。

●ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)
 ユニークな動物を選んだのはミア様だけではありません。ペンギンになりきっている方もいれば、カエルになりきっている方もいます(泳ぎが得意な動物ばかりなのは、ここがグリードオーシャンだからでしょうか?)。また、フジモトを始めとするペットの面々やユーベルコードで召喚された本物の動物たちもいます。ちょっとした動物園のようですね。
「すごい、すごーい! わんわんわーん!」
 歓声をあげながら、DOG様がわたくしたちの周囲を走り回りました。
「皆さん、完璧に動物になりきってますわん! これなら、絶対にヒトだとバレることはありませんわん!」
「そうかあ?」
 ウタ様が首を傾げておられます。わたくしは意見を保留しておきましょう。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
 シチカ様の言葉に答えて、わたくしは両肘と両膝を床につけました。動物になりきるからには、姿勢もそれらしく見せないといけません。
 振り返ると、シチカさんも同じ姿勢を取っていました。
「わたくしが先陣を務めますね」
「う、うん。任せるよ。ベイメリアさんのほうが防御に長けてるし……」
 あら? シチカ様のご様子が少しばかり変ですね。お顔が微かに紅潮しているように見えますが、気のせいでしょうか?
 いえ、今はそんなことを気にしている場合ではありませんね。
 私は前に向き直り、『進め』の合図を皆に伝えました。
「わん!」

●再び、シチカ
 宇宙船の通路を四つん這いで進むベイメリアさん。
 その後に続く俺。
 フジモトとお揃いの耳をつけたベイメリアさんはとても可愛い。もとい、可愛いわん。今の俺は犬だから、声に出さない時も語尾にわんをつけるわん。
 できれば、犬耳付きの可愛い後頭部をずっと見ていたいけど……目のやり場に困るわん。ベイメリアさん、お尻を突き出した姿勢になっちゃってるから、なにやら背徳的というか扇情的というか……いや、もちろん、本人にヘンな意図はなくて、俺の心が汚れてるだけなんだけど。
 ちょっと目を逸らして、頭を冷やすわん。
 ……あー、冷えたわん。よく冷えたわん。すぐに冷えたわん。
 なぜなら、ベイメリアさんの代わりに視界に入ってきたのは亀さんだから。
 言うまでもなく、本物の亀さんじゃないわん。亀さんになりきったミアさんわん。甲羅に見立てた傘を背中に乗せて、なかなかのスピードで這い進んでるわん。
 でも、ミアさんはいきなり動きを止めたわん。
「にゃあ」
 と、ベイメリアさんが『止まれ』の指示を出したからわん。
 もちろん、僕も止まったわん(でないと、ベイメリアさんのお尻にぶつかっちゃうわん)。
 僕が視線を前に戻すと――
「……」
 ――ベイメリアさんが無言で天井の一角を指さしたわん。そこには監視カメラとレーザー銃を合わせたような機械が設置されてたわん。
『吾輩は船内防衛システム『CALICO CAT』だにゃん!』
 突然、どこかに備えられたスピーカーから声が聞こえ、レーザーらしき機械が半回転したわん。
『十秒以内に退去するにゃん! さもないと、害意ある侵入者と見做し、排除するにゃん!』
 レーザーの銃口の先にいるのはウタさんわん。耳や尻尾を付けてないし、普通に二本歩行してたから、侵入者と見做されたみたいわん。

●再び、ウタ
 この防衛システムは『ナントカ・キャット』って名乗りやがったな(DOGみたいになにかの略なのか?)。宇宙船に乗ってた人たちは犬派だろうと思ってたけど、実は猫派もいたのか……って、そんなことはどうでもいいか。
 ナントカ・キャットの警告など聞こえないような顔をして、俺は犬みたいに鳴いてみせた。
「わんわんわん」
 だけど、いくらなんでも、こんなことでは誤魔化せないかなぁ。
『え? ヒトじゃなくて、犬だったにゃん?』
 ……いや、誤魔化せた!? 思ってた以上にポンコツな防衛システムだな。
「そうですわん! このヒトは犬ですわん!」
 DOGが言葉を添えてくれた。気持ちはありがたいけど、『このヒト』なんて言ったら、意味がないだろう。
『うーん』
 と、迷いを示す唸り声をナントカ・キャットは出した(そんな声をわざわざ聴かせる意味があるとは思えないけど)。
『そう言われてみれば、なんだか犬っぽいにゃん……しかし、吾輩の計算によると、そいつが侵入者である可能性は五十八パーセントもあるにゃん』
 五十八パーセントしかないのかよ。つまり、ただ『わんわんわん』と鳴くだけで四十二パーセントも確保できたのか? こいつはもうポンコツってレベルじゃねえぞ。
 あー、もうめんどくせえな。さっさと壊しまおう……と、思った矢先にレーザー銃が爆発した。
 ベイメリアが指先を突きつけて、『ジャッジメント・クルセイド』を命中させたんだ。

●再び、ベイメリア
『な、なにをするにゃあ!? 許さん!』
 防衛システムが怒声を響かせると、天井のそこかしこが展開し、新たな機械が次々と顔を覗かせました。
 それらから光線が迸りましたが、誰一人として傷つくことはありませんでした。わたくしが即座にオーラの障壁を展開して防いだからです。『防御に長けている』というシチカ様の評価を裏切るわけにはいきませんわ。
「サンキューわん!」
 と、語尾に『わん』をつけて感謝の言葉をかけてくださったのはウタ様。同時に言葉以外のものも放っておられます。わたくしではなく、防衛システムの機械群に向かって。
 それは地獄の炎。
 そう、砂浜で炎の魔球を投じた時と同じように『ブレイズフレイム』を使用されたのです。
 紅蓮の炎を浴びた機械が次々と溶け落ちていきます。機能を停止する前に光線を発射した機械もいくつかありましたが、今回はオーラを展開するまでもありませんでした。『ブレイズフレイム』の高熱によって空気が歪んだためか、ほとんどの光線はあらぬ方向に飛んでいきましたから。
『ほとんど』に属さない光線が向かった先には、亀になりきって這いつくばっているミア様がいたものの――
「やっぱり、名案だった、ね」
 ――彼女は無傷でした。
 甲羅に見立てて背中に乗せていた傘がすべての光線を跳ね返したのです。

●再び、ミア
 ウタさんとベイメリアさんのユーベルコードによって、目に見える範囲のレーザー銃は一つ残らず破壊された、よ。
「わん!」
『進め』の合図を出して、ベイメリアさんが四つん這いの行軍を再開、した。なにごともなかったかのように、粛々と。
「わん!」
 と、答えて、同じく四つん這いで進み始めるシチカさん。なぜだか判らないけど、前を行くベイメリアさんから目を逸らしている、ね。それに、どぎまぎしているように見えるけど……どうかしたの、かな?
「よし。行くぜわん!」
 ウタさんも歩き出した。
 わたしも行こうっと。甲羅にして盾である傘を背中に乗せたまま、ずりずりずりずりずりずり……けっこうなスピードを出してるつもりだけど、さすがに『皆を置いてきぼりにしちゃうほどのペース』は無理だったみたい。
 まあ、いいか。期待通りの速度は出なかったものの、この移動方法は悪くない感じ。床がひんやりして、ちょっと気持ちいいから。周りが見えにくい(顔を伏せ気味にしているから、ね)という問題も気にならない、よ。
 だって――
「わんわんわーん!」
 ――と、前を走ってるDOGさんが元気な鳴き声で案内してくれてるから。
『あー!? 機能がどんどん停止していくにゃーん!』
 ん? 防衛システムの声がまた聞こえて、きた。今度は遠くから。他の猟兵さんがなにかしたの、かな?
 防衛システムが本当に停止したのなら、もう動物になりきる必要はないけど……まあ、亀のままでいこう、か。
 ずりずりずりずりずりずり……。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

水貝・雁之助
動物のふり、動物の振りかあ
んー・・・マンゴーの見掛け的に鳥関係、ペンギンの振りとか?
こう、鬣を黒一色にしてペンギンのひれを手につけてペンギン風味の服を着るとか
後は移動用に皆でソリを引いたりしたら面白いかもねー
まあ、此れも経験さ

ペンギン風味の仮装を行う
UCを使用しモコやベルナール卿の他にローランドゴリラのオルランドやオカピ?のろくたんと共にソリを引いて移動
ペンギンの格好なので動き難いし船内という『地形の利用』をし車輪付きソリで移動
『拠点防御』と『罠使い』の心得を元に仮装せずに罠に対応しようという人達の為に罠を可能な限り解除、対応しながら移動していく
可能なら猟兵の移動にも協力する事を忘れないで動く


ハイネ・アーラス
ハディール(f26738)と

これが、外界の船。
宇宙船なるものは流石に初めてみました。
ふふん、トラップであれば暗殺者である俺にとってはお手の物。
腕を試す時が来たというもの。

……が、動物。動物? なりきれと?
ハディールが、レーザーを突破できるかは……分かりませんね。
ギリギリ……いや耳が焦げる気がする。尻尾とか。
——やるしかないか。

下手に防衛システムを刺激したくはないので、じっと見て視線で合図を送り
ソーダ水の髪で耳をつくって

わおーん?

ハディールが驚いた顔をしている。
その舵輪、え、まさか投げようとしていたと。
……っもう退けない。ソーダ水で尻尾もつくり。
やるからには完璧を。

次こそ、腕を試して見ますとも。


ハディール・イルドラート
ハイネくん(f26238)と

……我には、ひとつ夢があった。
こういうメカメカしい防衛システムを、華麗に突破するという夢が――。

だがどうだろう、なんというか――もしや我、そのまま通れるのでは?
人語を喋らなければ、この耳と尾がセンサーをかいくぐってしまうのでは?

……それは切ない。
何よりハイネくんがいる。
DOGくん含め、あまり会話をすると危険らしいから、視線で合図を送りつつ。
えっ。(投げ舵輪を、飛ばそうと構えていた)

ハイネくんが動物の振りで突破しようとしている。
それは犬なのか。犬なのかい。
だが投げる前で良かった。
耳を動かすことでリアリティを増し、わんわんと、我も付き合おう。

夢は、お預けだねぇ。


レンディア・バルフォニー
【連携・アドリブ歓迎】

動物の振りをしてごまかすって楽しそうだねぇ。
俺はどうしようかな……。
あぁ、そうだ。世界のどこかには体が透き通ったカエルがいるらしい。
あれなら簡単に変身出来そうだ。
ソーダ水で出来た肉体を人型からカエルに変身、と。
ただのカエルじゃつまらない、着崩したスーツを身に纏ったカエルになる。
俺のスーツ『Kai』はセイレーン専用でね。肉体の変化に合わせて形状等も変えられる代物だ。

普段は人型だから動物型になるのは新鮮な気分。
ゲコゲコ言いながら(鳴きながら?)カエルになりきり、進み方は勿論ぴょんぴょん飛び跳ねて。
……で、気付いたことがある。飛び跳ねて進むのって結構きつい!(主に足腰が)



●ハイネ・アーラス(海華の契約・f26238)
 宇宙船に足を踏み入れたのは初めてです。
 しかし、数々の罠をくぐり抜けて標的がいる場所に進むことなら慣れたもの。こう見えても、暗殺を裏家業にしていますからね。
 最近は表の家業(貿易会社を営んでおります)のほうが忙しかったので、この種の仕事はご無沙汰だったのですが、腕は鈍っていないはず。皆さんの前でそれを証明してみせましょう。ふふふ……。

 ……と、凄腕の暗殺者に相応しい不適な微笑を浮かべていた時期が俺にもありました。ええ、つい三十秒ほど前の話なんですけどね。
「わんわんわーん! 皆さん、作戦の内容は呑み込めましたわん?」
『動物の振りをする』という暗殺者に相応しからぬ作戦を三十秒ほど前に提示してくれたDOGが元気に走り回っています。元気すぎて俺たちの足にぶつかり、そのまますり抜けていく(立体映像ですから)ことも屡々。
「ハイネ君……」
 傍らでハディールがぼそりと呟きました。目が虚ろですが、俺もきっと同じような目をしていると思います。
「我にはひとつ夢があった。こういうメカメカしい防衛システムを華麗に突破する……そんな夢が……夢が……夢が……」
 判ります。よく判りますよ。その夢が叶うと思っていたのですね。つい三十秒前までは……。

●ハディール・イルドラート(黄金狂の夢・f26738)
 行く手を阻むインポッシブルなミッションをクールかつダイナミックにクリアする!
 そんな展開が幻と消えた今、我はただ立ち尽くすばかり。
 ハイネ君も同じように脱力している。
 いや、我らばかりじゃない。
 他の猟兵たちも一様にしょぼーんと――
「じゃあ、僕はペンギンになるんだな」
「俺はカエルでいこう」
 ――してないじゃないか。ノリノリじゃないか。
 しかも、チョイスがなんか変だよ。なぜにペンギン? なぜにカエル? あっちのほうでは亀になりきってる娘もいるし……。
「もしかして、ハイネ君のペンギンさんに触発されちゃった?」
 ペンギンをチョイスした雁之助君に尋ねてみると、彼は鬣(なんだよね?)のある顔を左右に振った。
「そういうわけでもないよ。ほら、僕はシャーマンズゴーストだから、見た目的に鳥関係――その中でもとくにペンギンが向いているような気がしたんだな」
「確かに」
 と、サングラスをかけたおじさんが頷いた。彼はレンディア君。ハイネ君と同じくセイレーン。そして、よりにもよってカエルをチョイスした猟兵。
 雁之助君をまじまじと見ながら、レンディア君は言った。
「シャーマンズゴーストとペンギンは実によく似ている。ざっと思いつくだけで共通点が四十二個もあるし」
 なんと! 四十二個も!?
「その一、どちらも嘴がある」
 ふむふむ。
「その二、どちらもUDCアースに生息している」
 なるほど。
「その三……えーっと……」
 ん?
「まあ、二つで充分だよ」
 えぇぇぇー!?

●レンディア・バルフォニー(朱龍・f27097)
 よく考えてみたら、シャーマンズゴーストとペンギンとの共通点をわざわざ四十二個も挙げる必要はないんだ。
 だって、水貝くんが身を以て示してくれるだろうから。百聞は一見にしかずって言うだろう?
「よし。できたんだな」
 お? ペンギンへの変身が完了したみたいだ。
「こんな感じでどうかな?」
 両手を腰の横でパタパタさせる水貝くん。その手の先にあるのは作り物の鰭。鬣は黒一色に染められ、体も黒い衣装に包まれている。
 うん。ペンギンに見えなくもないに違いないわけがないでもないような気がしないでもない……こともないか? でも、まあ、こういうのもアリだと思うよ。上出来、上出来。
「歩き方もペンギンを真似るんですか?」
 本物のペンギン(水貝くんと比較してみたら、共通点どころか相違点がざっと百八個ぐらい見つかった)を連れたハイネくんが訊いた。
「うーん。さすがにペンギン風のよちよち歩きで船内を進むのは難しいんだな。だから、これに乗って、引っ張ってもらうんだな」
 そう答えながら、水貝くんはユーベルコードを発動させた。
 それに応じて出現したのは、車輪付きのソリ。
 そして、ソリを引くための要員であろう動物たち。大もいれば、ゴリラもいるし、シマウマとキリンを掛け合わせたような奇妙ながらも美しい動物もいる。
 なんだか、ちょっとした動物園の様相を呈してきた……って、同じような感想を抱いている人が他にもいそうだな。

●水貝・雁之助(おにぎり大将放浪記・f06042)
 柴犬のモコやセントバーナードのベルナール卿やローランドゴリラのオルランドやオカピ(に似てるなにか)のろくたんやインドクジャクのマユリたちの体にハーネスを付け、丈夫なラインでソリに繋げた。
 そのソリに乗り込むペンギン姿の僕。
 これで準備完了なんだな。
 レンディアさんも準備を終えてる。セイレーンの特性を活かして、カエルの形になったんだな。でも、形はともかく、色はカエルっぽくない。というか、色がない。
「体を構成しているソーダ水の透明度を上げてみたよ。世界のどこかには体が透き通ったカエルがいるらしいから、それを真似たんだ。ゲコゲコ」
 透明といっても、向こう側が透けて見えるわけじゃないんだな。ゼリーに似てなくもない体の大部分は、着崩したスーツに覆い隠されているから。
「しつもーん」
 と、ハディールさんが手をあげた。
「どうして、カエルがスーツを着ているの?」
「ただのカエルじゃあ、つまらないじゃないか。ゲコゲコ」
 気取った仕草でスーツの襟の辺りに手(というか、今は前足なんだな?)をやるカエルのレンディアさん。
「ちなみにこのスーツはセイレーン専用でね。肉体の変化に合わせて形状とかを変えられるんだよ。ゲコゲコ」
 シャーマンズゴースト専用の衣装もあるといいのにな。ペンペン。

●再び、ハイネ
 動物になりきった猟兵たちを、ペンギンを始めとする本物の動物たちが見つめています。
 なんとも言えない顔をして(雁之助のゴリラが浮かべている表情は一見の価値ありです)見つめています。
『なんなんだ、こいつら?』とでも思ってるのでしょうね。
 一方、DOGはハイテンション。また走り回り始めました。
「すごい、すごーい! わんわんわーん! 皆さん、完璧に動物になりきってますわん! これなら、絶対にヒトだとバレることはありませんわん!」
「そうかな?」
 と、首を傾げてる猟兵さんがおられますね。
 DOGは人間に奉仕するために生み出されたようですから、追従じみたことしか言えないのかもしれません。だとしたら、ちょっと哀れですね。
 あるいは本気で『完璧』だと思っているのでしょうか? だとしたら……別の意味でアワレですね。はい。
「ねえ、ハイネ君」
 ペンギンさんたちと一緒に皆を見つめながら、ハディールが口を開きました。
「他の人たちのクオリティーもなんかアレな感じだし……我もこの耳と尻尾を普通にアピールすれば、防衛システムをかいくぐれるんじゃなかろうか?」
「うーん。どうでしょう?」
 ボリュームたっぷりなハディールの尻尾をじっくり眺めてみました。
「ギリギリいけそうな気もしますが……いや、やっぱり、ギリギリでアウトかも……」
「アウトかー」
 肩を落とすハディール。
「アウトだったら、レーザーの餌食になるんだよね」
「はい。耳も尻尾も焦げてしまうでしょうね」
「そ、それは切ない……」
「いやいやいやいや! ゲコゲコ!」
 と、レンディアがカエル型の頭を左右に振りました。
「焦げるどころじゃ済まないし、切ないだけでも済まないと思うよ。ゲコゲコ」

●再び、ハディール
 なんやかやがあったが、我らは歩き始めた。
 コンキスタドール化した亀がいるというAE35を目指して。
 アウトにならぬことを祈りながら。
 しかし、祈りは通じなかったらしく、十分も経たぬうちに――
『吾輩は船内防衛システム『CALICO CAT』だにゃん!』
 ――防衛システムの警告が通路の響いた。
 いや、『響いた』と言うほどのことでもないかな? その声は遠くのほうから聞こえてきた。
『十秒以内に退去するにゃん! さもないと、害意ある侵入者と見做し、排除するにゃん!』
 どうやら、防衛システムの警告を受けているのは、別の場所にいる猟兵たちらしい。言い忘れたけど、我らはDOGたちと早々にはぐれてしまったんだよね。ここにいるのは我とハイネ君とハディール君とレンディア君と動物たちだけ。全員が立ち止まってる。
 警告を受けている猟兵たちのことは気がかりだけども、我らは我らで先に進ませてもらおう。そう思って、再び歩き出そうとした時、我は気付いた。
 天井の一部が開き、センサー兼レーザーらしき機械が姿を現したことに。
 見るからに物騒なその機械は銃口を我らに向けている。
 でも、撃ってくる気配はないし、向こうから聞こえてきたような『十秒以内に云々』とかいう警告もない。たぶん、我らはまだ侵入者と見做されてないんだな。
「……」
 我は無言で(言葉を口にすると、人間だとバレてしまうから)手をじりじりと動かし、投げ舵輪を構えた。
 機械に勘付かれる前に舵輪をぶつけて、強行突破してやろう。

●再び、雁之助
 投げ舵輪を構えるハディール君の横でハイネ君も武器を構え……あれ? 構えてない?
 でも、なにもしてないわけじゃないんだな。ソーダ水の髪を変化させてるんだな。
 犬の耳の形に。
 そして――
「わおーん!」
 ――と、鳴いたんだな。
「ゲコゲコ! ゲコゲコ!」
 レンディア君も鳴いた。飛び跳ねながら。
 驚いたのはハディール君。横を向いて、犬耳付きのハイネ君を見た。
 ハイネ君もハディール君を見た。
 お互いに目をぱちくり。
『え?』
『え?』
『その舵輪、まさか投げようとしていました?』
『だって、ギリギリでアウトだって言ってたし……そっちこそ、その耳はなに? 犬なの? ねえ、犬なの?』
『そのつもりですけど……』
 以上、ハイネ君とハディール君の心の声を想像して実況してみたんだな。
 実際にそんな感じのやりとりを目と目で交わしたのかどうかは判らないけど、二人は方針を一つにまとめたらしく、頷き合った後、同時に前に向き直った。
「わおーん!」
 もう一度、ハイネ君が鳴いた。お尻の辺りを変形させて、尻尾を生やしながら。
「わんわん!」
 自前の尻尾を振りながら、ハディール君も鳴いた。舵輪はもう構えていない。
 そして、二人は歩き始めたんだな。
 例の機械は無反応。出発する前にハイネ君は『ギリギリでアウト』とか言ってたけど、余裕でセーフだったんだな。
 でも、この先もセーフとは限らないから、念のために手を打っておこう。
 僕はモコたちに合図を送り、ソリをまた走らせた。
 さっきよりも速いスピードで。

●再び、レンディア
 水貝くんのアニマル軍団が引くソリのスピードが上がった。僕やハイネくんハディールくんを追い抜かし、通路の先へ先へと進み、やがて見えなくなった。
 僕はマイペースでいくよ。ぴょんぴょん跳ねながらね。
 それに鳴き声も忘れない。
「ゲコゲコ!」
 さっきの機械の反応(というか、無反応)から判断する限り、変身の完成度が低くても問題はないんだろう。
 でも、僕はカエルになりきり、飛び跳ね、ゲコゲコ鳴き続ける。
「ゲコゲコ!」
 これがまたけっこう楽しい。なおかつ、新鮮な気分。普段はずっと人型をしているからね。
『あー!? 機能がどんどん停止していくにゃーん!』
 おや? 警報システムの悲鳴(?)が通路の先から聞こえてきたぞ。
 しばらくすると、ソリに乗った水貝くんが戻ってきた。
「もう大丈夫なんだな」
 と、水貝くんが言った。人語はタブーのはずだけど、先程と同じような機械が姿を現すことはなかった。
「できる限り、罠を解除してきたんだな」
 えー? そんなに簡単に解除できるものだったんだ……。
 ここは『最初からそうしろよ!』ってツッコむべきなのかな? いや、やめておこう。最初に罠を解除しなかったからこそ、カエルになりきって楽しい思いをすることができたんだからね。
 とはいえ――
「――楽しいことばかりじゃないんだよなあ」
 俺は久々に『ゲコゲコ』以外の言葉を吐き、跳ねるのをやめた。
「カエルの真似をやってみって判ったんだけど……飛び跳ねて進むのって、けっこうキツい。足腰に来るよぉ」
 人の形に戻って、腰をとんとんとん。
 あー、我ながらオッサンくさい動作だ。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『最後のピンタゾウガメ・ロンサムジョージ』

POW   :    ヒトリ寂シイ、嫌ダ・・・!
【もう二度と独りに戻りたくないという恐怖 】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    俺達、ヒトリ、戻ラナイ!戻リタクナイ・・・!
自身が戦闘で瀕死になると【自らの様に人に種の最後の一頭にされた者達】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    皆、居ル・・・アノ寂シイ時間モウ終ワッタンダ!
戦場全体に、【滅びた種で溢れ来訪者を彼等に変貌させる森】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ヨナルデ・パズトーリです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
「あのドアを抜けた通路の突き当たりがAE35ですわん!」
 DOGが指し示したドアは壁から半ば剥がれ落ち、ドアとしての役割を果たしていなかった。
 だが、そのことを指摘する猟兵はいない。
 皆、前方のドアよりも横手の壁に気を取られていたからだ。
 そこにはUDCアースのドラム型洗濯機に似た機械が並んでいた。大半は壊れているようだが、微かに駆動音を発している物もある。
「あれらは犬を生み出す機械ですわん」
 DOGが振り返り、猟兵たちに説明した。
「もちろん、無の状態から生み出しているわけではないですわん。船内のメモリに保管されている純血種の遺伝子データをクローニングしているのですわん。約八万八千時間毎に機械から純血種の成犬が出てきますわん。生成サイクルが長いのは、遺伝子の多様性を損なわないようにするためですわん」
 島の犬たちの中に純血種が含まれていたのは、この機械がずっと稼働していたからだったらしい。
 しかし、何故に犬だけなのか?
 この技術を活用すれば、島はもっと多種多様な生命で溢れ返っていただろう。宇宙船に乗っていた人々が死に絶えることもなかったはずだ(ただし、すべてクローンだが)。
 それについて猟兵たちが問いかけると、DOGは悲しげに頭を垂れた。
「宇宙船が小惑星に衝突した際、メモリ内の遺伝子データのほとんどが失われたばかりか、遺伝子データを採取して記録するための機械も壊れてしまったのですわん。無事に残ったのは、愛玩用に改造された犬のデータばかり……」
 DOGが語る間も例の機械は駆動音を発し続けていた。
 ヒトに愛されるために改造された犬を生み出すために。
 愛してくれるヒトがいない世界へと送り出すために。

 一同は気を取り直し、船倉AE35へと足を踏み入れた。
 だが、気を取り直せなかった。
 何者かの悲しみの感情が心に打ち寄せてきたからだ。
『寂シイ! 寂シイ! 寂シイ!』
 その『何者か』はドーム状の船倉に陣取っていた。
 血の涙を流している大きな陸亀である。
「あららー?」
 DOGが奇声をあげた。
「おかしいですわん! あの『オブリビオン』もしくは『コンキスタドール』、船内に侵入してきた時に比べて大きくなってますわん! 気をつけてくださいわん!」
 そう言ってる間に亀の体が一回り大きくなった。
 そして、またもや声なき慟哭が猟兵たちに伝わってきた。
『寂シイィーッ!』
 激しい感情ではあるものの、人間に対する怒りや憎しみは感じられない。亀の心を占めているのは悲しみのみ。目の前の猟兵たちに危害を加えるつもりはないのだろう。いや、猟兵の存在に気付いてすらいないかもしれない。
 しかし、だからといって、見逃すわけにはいかない。
 亀に敵意はなくとも、その深い悲しみから生じたユーベルコードは猟兵たちを傷つけるはずだ。また、巨大化が際限なく進行すれば、宇宙船が内側から破壊され、更には島全土に危機が及ぶだろう。
 言うまでもなく、島に危害が及ぶというのは、そこに暮らす犬たちに危害を及ぶよいうことでもある。


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●DOGからのお知らせ
 第3章の種別は『ボス戦』ですわん。
 グリモアベースでJJさんが最後に仰ったことを覚えてますわん?
 そう、島の命名ですわん。
 というわけで、余裕のあるかたは島の名前を考えてくださいわん(名前を書くのはプレイング本文でなく、感想欄でも構いませんわん)。複数の候補がありましたら、僕がドクダンとヘンケンで選びますわーん。誰も候補も挙げなかった場合、JJさんが超テキトー(『犬ヶ島』とか『わんだふる島』とか『どきどき☆ドギーランド』とか)に命名しちゃいますわん。
 それから、純血種のクローニング装置は(こういうのに憤りを感じるかたもいるかもしれませんので)破壊したり、停止させたりしても構いませんわん。装置を破壊しても、島の犬が絶滅することはありませんわん。交雑が進んで、いずれすべての犬が雑種になるだけですわん。
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木霊・ウタ
心情
独りぼっちは寂しいよな
骸の海へ還してやるぜ
仲間が沢山いる海へ、な

戦闘
デカくなればその分動きは鈍くなるよな
動き回り回避
避けれない時は火壁を展開し武器受け
必要なら仲間を庇う

亀相手にアレだけど声をかけたいぜ
少しでも寄り添ってやりたい

向ける感情は慈しみ・優しさ
優しくハグ

こうなっちまう前に何とか出来たらよかったんだけどな
悪ィ
仲間が一杯いる場所へ俺達が還してやる
何も怖くないぜ
これからずっと仲間と一緒だ

炎で葬る

事後
弦を爪弾き亀へ鎮魂曲を捧げる
仲間と楽しく、な

でその後はDOGやわんこたちとまた遊ぶぜ!
クローン機械?
俺は別にいいと思うぜ
生まれてくる命には違いないもんな
これからも俺達が来て沢山遊んでやろうぜ


ベイメリア・ミハイロフ
シチカさま(f21761)と

ああ、なんと、おかわいそうな…
一人きりで、お寂しかったのでございますね
ですが、今のわたくしには
貴方さまをお救いする術がございません
シチカさま、一体どうしたら…!

コ、コンさま…
左様でございましょう、この方も
人の勝手が生み出した悲しい生き物なのでございましょう
しかし、しかしながら…

とにかく巨大化と、迷路を作られる事ををお止めしなくては
早業・高速詠唱による先制攻撃にて対応を
可能であれば気絶攻撃・マヒ攻撃を付与

お相手の攻撃は、激痛耐性を活用しつつ抱き止め
召喚が行われた後でしたら、範囲攻撃も用いながら
至近距離での攻撃を致します

ああ、わたくしは、なんと無力なのでございましょう…


シチカ・ダンテス
ベイメリア(f01781)さんと

せめて楽にしてあげるのが優しさかもしれない
ただコンは侮蔑を込めてこう言うだろう

『この亀も貴様ら人間が乱獲した種ではないのか?
殺せば救いになる等と良くもその口で吠えられものだ』

『つまらぬ観念は捨てよ。喰らい、糧とすることは摂理だ。
 立ちはだかる者は排斥し、目の前の餌は欲望のままに食らい尽くせ!』

何が正しいのかなんて分からない
でも此処で死ぬわけにはいかないしベイメリアさんが傷つくのは嫌だ…だから戦う!
野生の勘と残像で敵の攻撃を掻い潜り近接戦闘を仕掛ける

『美味そうな娘が作った隙を狙え』


戦いが終わったらベイメリアさんを慰めて…
考えていくことが俺達の役目なんだと思う


水貝・雁之助
うん、人の代わりに君に謝罪はしないよ
其れは余りに傲慢に過ぎるし君達の生を侮辱する事だから
ただ今を生きる為に君達を倒す

ちょっとした感傷だけどTestudo canis、テツドキャニス?ってどうかな?
ラテン語で亀と犬って意味だけど、さ
島の名前に遺してあげたいな、って

そして……君達の事を忘れない
僕に出来るのはそれだけ、かな?

船内という狭い『地形の利用』をし此方に攻撃する勢いの侭、壁に敵がぶつかるよう誘導
オーロックスやコーカサスバイソンの突進をエピオルニスやジャイアントモアの体躯で防ぎフクロオオカミやニホンオオカミの攻撃をシロサイで防ぐ等『敵を盾にする』様に戦闘
隙を突き獅子の牙をジョージに突き立てる


ミア・ミュラー
想いがこんなに伝わってくるなんて、あの亀さんはよっぽど寂しかったんだろう、ね。

森の、迷路。長居してると危険な気がする、ね。わたしは【陽はまた昇る】で作った太陽で迷路を照らして、自分を強化して「ダッシュ」で駆け抜ける、よ。光で迷路に穴をあけたり、地形を変えられればもっと突破しやすい、かな。
迷路を抜けたら、悲しいけど、亀さんを太陽の光で攻撃する、ね。地形を光らせてみんなを支援するのも、忘れない。ひとりぼっちが寂しいのは、わかる。けど、あなたを放っておいたらもっと悲しいことになる、から……ごめん、ね。せめて安らかに眠れるように、優しく光で包んで、あげる。
あっ、島の命名はみんなに任せる、よ。


ハイネ・アーラス
ハディール(f26738)と

生み出す機械。生まれるもの
キミ達は——……
幸も不幸も、難しいですね。ハディール

キミも残された側ですか?
たった一人、残された記憶は俺にもある
キミと俺は違うけれど
えぇ、だから言えます。キミの望む地は此処には無い

還しましょう。骸の海へ
えぇ、海賊たる我等には相応の矜持がある。
キミの命を奪います。仲間がいても——俺も今は一人じゃありませんから
寿命は構わず、ナイフで斬り込もう。
ハディールの背は守りますよ。寿命は無視して、奪うべきを速やかに奪うだけ
——さよならです。

島の名前……ですか
わんわん島でも悪くはないと思うんですが
良いですね。幸福。きっと、彼らが幸せを招いてくれる気がします


ハディール・イルドラート
ハイネくん(f26238)と

そうか、文明は凄いねぇ。装置の方は誰かに任せよう。
愛玩のために生まれくる運命が幸か不幸か、我には判断できない。
……あの幸福そうな彼らを見ると。
ああ、本当に難しい。

寂しいだろうね、仲間がいないのは。
しかし何処を探しても同じ仲間はいないだろう。
だからあの海へ還るといい。

我はヒトのエゴを論じるつもりはない。
我らは海賊。欲のままに奪うもの。
仲間を召喚したところで、すまない。我にも仲間がいる。
後ろはハイネくんに任せて飛び込むよ。

島の名前かぁ。
うーん、格好良い名前が良いかと思ったんだけど。
幸福島、かな。
住み着かなくても沢山の人達が訪れる場所になれば、彼ら、幸福かもしれないね。


レンディア・バルフォニー
連携・アドリブ歓迎

この亀さん、ずっと独りぼっちだったのかねぇ
だとしたら、そりゃあ悲しいな
だけど、寂しさと悲しさ渦巻く感情に、こっちまで飲まれる訳にはいかない
よし(気合いを入れて)
眠らせてあげるとするか

攻撃力強化重視のトリニティ・エンハンスを使用
思い切って攻撃する。ちまちま攻撃するより亀が苦しまないかと思ってね
ヒット&アウェイで、巨大な体と攻撃に巻き込まれないように意識
ルーンソードで斬りつつ、見切れなかった攻撃はビームシールドで受け止めようか
戦闘終了後、亀に一言だけ「おやすみ」と

島の名前と装置をどうするかはみんなに任せるよ
(言えない……『わんわんあいらんど』位しか思いつかなかったなんて!)



●ハディール・イルドラート(黄金狂の夢・f26738)
『寂シイ! 寂シイ! 寂シイ!』
 亀くんの嘆きが心に響く。念のために言っておくと、この場合の『心に響く』というのは慣用句じゃない。本当に響いてるんだな。テレパシーみたいなものなの?
 それにしても、血の涙を流している亀くんを見ていると、外の犬たちの姿が重なってくるな。かたや、一匹だけ残されて寂しがっているオブリビオン。かたや、愛玩用として生み出された犬たち。置かれた状況はぜっんぜん違うのに……。
「生み出す機械……生み出されるもの……」
 囁くような調子でハイネ君が呟いた。どうやら、彼も目の前の亀のことを考えると同時に犬たちのことを思っているみたい。
「愛玩のために生まれくる運命が幸か不幸か……我には判断できない」
 と、我も心の内を声に出してみた。
「幸も不幸も難しいですね、ハディール」
「ああ、本当に難しい」
 でも、考えるのは後にしよう。
 今は――
『寂シイ! 寂シイ! 寂シイ!』
 ――この亀くんをなんとかしないと。
「ああっ! なんと、おかわいそうな……」
 と、亀くんに負けないくらい悲しい声をベイメリアが出した。
「一人きりで、お寂しかったのでございますね」
『寂シイ! 寂シイ! 寂シイ!』
「ですが、今のわたくしには貴方さまをお救いする術がございません。ああ、シチカ様。いったい、どうしたら……」
「せめて、楽に逝かせてあげよう。それ以外に救う方法はない」
 救いを求められるような眼差しをベイメリアから向けられて、シチカはそう答えた。
 でも、その答えに納得しなかった奴がいる。
「なにを言うか!」
 シチカの傍に立つ人狼(狐の要素もあるけど)めいた異形の存在――オウガだ。
 なぜ、そんなのがここにいるって? オウガブラッドであるシチカがユーベルコードを使って召喚(分離?)したんだよ。
「あの亀は貴様ら人間が乱獲した種ではないのか? それを救うだのなんだのと、よくもまあその口で吠えられたものだな」
「黙ってろ、コン!」
 シチカがオウガに怒鳴った。
 一方、ベイメリアは悲しげな顔を更に悲しげにしている。
「さようでございましょう。あれは人の勝手が生み出した悲しい生き物……しかし……しかしながら……」
「えーい、つまらぬ感傷は捨てよ!」
 ベイメリアの言葉を苛立たしげにオウガは遮った。
「喰らい、糧とすることは摂理だ。立ちはだかる者は排斥し、目の前の餌は欲望のままに食らい尽くせばいい!」
「なにを……」
 と、シチカがまた怒鳴りかけたけど、我は手をあげて、それを押しとどめた。
 ハイネくんが言うところの『海の漢モード』を起動。
「そのオーガの言葉にいろいろと思うところもあるが、我はヒトのエゴを論じるつもりはないし、その資格もない。なぜなら――」
 亀を見据えて、ずいと前に出る。
「――我は海賊。欲のままに奪うもの故に」
「ええ。海賊たる我らには相応の矜持があります」
 ハイネくんもずいと前に出て、我の右横に並んだ。
 決まったー!
「よし!」
 と、レンディアが気合いを入れるかのように自分の両頬を平手で軽く叩いた。
「眠らせてあげるとするか」
 そう言いながら、我の左横にちゃっかり並ぶレンディア。
 そして、亀との激闘が始まった……と、思いきや、異変が起きた。

●水貝・雁之助(おにぎり大将放浪記・f06042)
 気がつくと、僕は森の中にいたんだな。
 普通の森じゃないよ。生い茂った木々が絡み合って壁をつくり、迷路みたいになってるんだな。
 どこかに転移させられた……というわけじゃないみたい。たぶん、僕たちがいた倉庫が自然の迷路に変わったんだな。
 しかも、変わったのは場所だけじゃない。僕の姿も、ペンギンに似た鳥の姿に変わってるんだな(ペンギンの仮装をしていたから、姿が変わったことに気付くのにちょっと時間がかかったんだな)。
 他の猟兵さんの姿も変わっているみたい。もっとも、木の壁に隔てられて、ほとんどの猟兵さんの姿は見えないんだな。視界に入っているのはミアさんだけ。
「いったい、なにがおこった、の?」
 きょろきょろと周囲を見回すミアさん。
 声はそのままだけど、外見は亀ともアルマジロともつかない奇妙な動物のものなんだな。あれはUDCアースで大昔に滅んだグリプトドンかな? ミアさんのサイズ(百五十センチ足らず)にまで縮んでるけど、本当はもっと大きかったらしいんだな。
 あ? グリプトドンなミアさんを見てたら、僕が変身した動物のこともピンと来たんだな。これは十九世紀に滅びたオオウミガラスなんだな。
「きっと、これは亀さんのユーベルコードなんだな」
 と、僕はグリプトドンなミアさんに言った。
「迷路みたいな森に閉じこめて、絶滅した動物に変えてしまうんだな」
「うーん? なんだかよく判らないけど――」
 グリプトドンなミアさんが頭の上に手を伸ばすと、太陽の光が眩しく照りつけてきた。宇宙船の中だから、太陽なんてないはずだけど……たぶん、ユーベルコードを使ったんだな。
「――長居してると、危険な気がする、ね」
 光を浴びて木の壁の一部が崩れ落ちた。
 すると、その周囲に隠れていた鳥たちが飛び立ち、動物たちが飛び出したんだな。たぶん、オオウミガラスな僕やグリプトドンなミアさんとは違う、本物の動物たち。
『皆、ドコニ行クノ? 置イテカナイデ! ヒトリニシナイデ!』
 亀さんの思いがまた伝わってきたんだな。僕たちじゃなくて、森の動物たちに向けられた思い。
 今になって気付いたけど、あの動物たちも既に滅んでしまった種ばっかりなんだな。
「ごめん、ね」
 動物たちが逃げ惑う中、グリプトドンなミアさんは崩れた壁の向こう側に歩いていく。当然、僕も後を追ったんだな。
「ひとりぼっちが寂しいのは、判る。けど、あなたを放っておいたら……もっと、悲しいことになる、から」
 グリプトドンなミアさんは先へ先へと進み続けたんだな。
 行く手を塞ぐ迷路の壁を太陽の光で壊しながら。
 その果てにいる亀さんに謝りながら。

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
 周囲が森に変わった挙げ句、自分の体までもが動物(狼と熊をかけあわせたようなヤツだ)に変わった時には少しばかりビビッたが、五分も経たないうちに森は消え去った。もちろん、俺の形も人間に戻ったぜ。
 森が消えたから、木の壁に隠されていた仲間たちの姿もまた見えるようになった。
 それに可哀想な亀も。
「ごめん、ね」
 亀の前で謝っているのはミア(人を動物に変えるユーベルコードの影響が残っているのか、ほんの一瞬だけ、亀だかアルマジロみたいなものに見えた)。屋内だっていうのに、その頭上では太陽が輝いている。
「せめて安らかに眠れるように、優しく光で包んで、あげる」
 亀は眩しそうに目を閉じ、頭を下げている。太陽の光のダメージを受けているらしい。たぶん、森が消えたのも、ミアが光を浴びせたからなんだろう。
「安らかに? 笑わせるな。安らかに眠らせようが、責め苛んで殺そうが、命を奪うことに変わりはない」
「うるさいぞ、コン!」
 シチカがオウガと睨み合ってる(これまた先程のユーベルコードの影響で、一瞬だけ、二人がサーベルタイガーに見えた)。
 喧嘩は後にしろ……と、注意をするまでもなく、二人は亀のほうに視線を戻した。ベイメリア(一瞬、どっしりとした狼に見えた)がミアの横に並んだからだ。
『寂シ……』
「申し訳ありません」
 亀の悲しい心の声が届くよりも早く、ベイメリアは右手の人指し指を突き出した。ミアが生み出したのとはまた別の光が閃き、亀の大きな甲羅を雷のように打ち据える。ナントカ・キャットの機械を壊す時にも使った『ジャッジメント・クルセイド』だ。
「今だ! 美味そうな娘が作ってくれた隙を逃すな!」
 オウガが走り出した。『美味そうな娘』というのはベイメリアのことか? オウガって、本当に人を食うんだな。
「言われてなくても判ってる!」
 オウガに怒鳴り返しながら、シチカも走り出した。
『寂シイィーッ!』
 亀が長くて太い首をブンブンと振り回した。たぶん、シチカたちを迎撃しているつもりじゃなくて、ミアとベイメリアの光を受けて苦しんでいるだけだと思う。
 なんにせよ、その行動がシチカとオウガを傷つけることはなかった。
 二人とも残像を生むほどのスピードで動いて、首を躱したからな。

●シチカ・ダンテス(オウガブラッドの殺人鬼・f21761)
「実に不味そうな亀だ。図体がデカいから、食い出はあるだろうがな」
 カメを嘲笑いながら、青白い炎を撃ち込むコン。
 ヘドが出そうになるほど憎たらしいけど、あいつを責めることはできない。
 だって、俺も亀を攻撃しているから。
 走り回って首を避けつつ、殺戮刃物で何度も斬りつけているから。
 これが正しいことなのかどうかは判らない。
 でも、やるしかないんだ。
 ここで死ぬわけにはいかないし……それにベイメリアさんが傷つくのも嫌だから。
 絶対に嫌だから。
 そのベイメリアさんはミアさんと一緒にユーベルコードの光を亀に降らせ続けている。森の迷宮がまた現れていないのは、二人の攻撃が効いているからだろう。
『痛イ! 痛イ! 痛イ!』
 亀の悲鳴が俺の心で(きっと、他の皆の心でも)爆竹みたいに弾けた。こんなに苦しんでいるにもかかわらず、俺たちへの恨みは感じられない。それが逆に辛い。
「いっそ、恨んでくれたほうが……」
 そう呟きながら、レンディアさんが俺の前を横切った。森の迷宮の名残りなのか、その姿がオレンジ色のカエルにダブって見えたけど、すぐにカエルの姿は消えた。代わりにダブったのは、風に巻き上がる火の粉と水飛沫。『トリニティ・エンハンス』を使って、自分の力を強化してるんだな。
「攻撃力を重点的に上昇させたよ。ちまちま攻めると、亀さんがより長く苦しむことになるだろうからね。とはいえ――」
 レンディアさんは綺麗な白銀のルーンソードを亀に叩きつけた。
 そして、素早く飛び退った。そうしなければ、吹き飛ばされていただろう。一撃を食らった途端に亀の体がまた大きくなり、首の動きも激しくなったから。
「――すぐにケリをつけさせてはくれないようだね」
 悲しげに溜息をつきながらも、レンディアさんは再び斬りかかる。そして、飛び退り、斬りかかり、また飛び退り、また斬りかかり……。
 俺も同じようにヒット&ウェイを繰り返した。
 亀の声なき叫びを心で聞きながら。
『痛イヨ! 寂シイヨ! 痛イヨ! 寂シイヨォーッ!』
「ああ、痛いだろう。寂しいだろう。悲しいだろうね」
 レンディアさんは攻撃の手を休めなかった。
「でも、その感情にこっちまで飲まれるわけにはいかないんだ」

●ハイネ・アーラス(海華の契約・f26238)
『寂シイヨー!』
「キミも残された側ですか?」
 俺は亀に問いかけました。答えが返ってくるわけがないと知りながら。
「たった一人、残された記憶は俺にもありますが……」
『寂シイヨー!』
「でも、やっぱりキミと俺は違う。だからこそ、言えます。キミの望む地は――」
 攻撃のタイミングを計りつつ、ゆっくりと亀に近づいていく。
「――ここではない、と」
「そのとおり」
 横を歩いているハディールが頷きました。この場所が森の迷宮に変わった時は俺と彼の姿も動物のそれ(鉤爪を有した犬のような獣です)に変わったのですが、今は人狼とセイレーンに戻っています。
「仲間がいないのは寂しいだろうが、どこを探しても、同じ仲間はいない」
 歩き続けながら、武器を構えるハディール。獣の牙を思わせる両刃にして曲刃の短剣を左右の手に一つずつ。
「だから、あの海へ……還るといい」
「還してやるぜ!」
 と、ハディールの言葉の後半に叫びを重ねて、ウタが亀の側面に突き進んでいきます。
『寂シイ!』
「悪いな」
 亀に詫びながら、ウタは跳躍して――
「こうなっちまう前に、なんとか出来たらよかったんだけど……」
 ――宙で自分の腕をかき切りました。
 腕の傷口から地獄の炎が噴出し、亀に降り注いでいきます。
 ウタ自身も亀の真上から落下しましたが、甲羅を蹴りつけて後方に飛び、着地と同時にまた突進。凄まじい勢いで振り回される首を回避しながら、再び炎を浴びせました。
『痛イ! 熱イ! 苦シイ!』
 亀の悲鳴が一際大きくなりました。本当に声を出しているわけではありませんが、そんな気がしたのです。
『助ケテ! 誰カ助ケテ!』
 頭を激しく振り、血の涙を撒き散らしながら、悲しくも虚しい慟哭をあげる亀。
 いえ、悲しいのは確かですが、『虚しい』とは言い切れないかもしれません。
 助けを求める声に応じるかのように、どこからともなく援軍が出現したのですから。
 おそらく、亀が無意識のうちに召喚したのでしょう。
「オーロックス、ジャイアントモア、カスピトラ、フクロオオカミ、モーリシャスクイナ……」
 雁之助がぶつぶつと呟き始めました。
 援軍の面々の名前らしきものを。
「コーカサスバイソン、バーバリライオン、エピオルニス、ニホンオオカミ、リョコウバト……」
 そう、それらは動物だったのです。

●ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)
 亀の周囲にずらりと並ぶ動物たち。種類は様々。角を持ってるのもいれば、牙を持っているのもいて、翼を持ってるのも、いる。あの森の迷宮の中で見かけた動物もいる、ね。
「もしかして、これは絶滅種ってやつなのかな?」
 動物たちを見回しながら、レンディアさんが誰にともなく訊いた。
「森の中にいたのは『絶滅種』という言葉で括れるけど、ここにいるのは――」
 雁之助さんも同じように動物たちを見回した。
「――『ヒトの手で絶滅に追い込まれた動物』だと思うんだな」
『仲間、イル! 仲間、イル! ヒトリジャナイ! モウヒトリジャナイ!』
 亀さん、すごく興奮してる。でも……なぜ、かな? 悲しみの感情は消えてない。むしろ、さっきよりも悲しそうな気が、する。
『ヒトリジャナーイ!』
 亀さんの叫びに合わせるように、動物たちが一斉に襲いかかって、きた。皆に向かって。
 もちろん、その『皆』の中にはわたしも含まれた、けど――
「おっと!」
 ――ウタさんが炎を防壁にして守ってくれた。
「ありがとう」
「いいってことよ」
 お礼に答えながら、四方に炎を放つウタさん。
 その攻撃に怯む動物たちの間を縫うよにして、ハディールさんが亀に近付いていく。炎をかいくぐって彼に迫る動物もいたけど、次々と弾き飛ばされ、赤い線を描いて地面に落ちた。線の正体は、喉笛から噴き出している血、だよ。
「すまないね。どんなに仲間を召喚したところで、君は助からないんだよ」
 近付いては弾き飛ばされていく動物たちには目もくれず、ハディールさんは亀に語りかけた。
「なぜなら、我にも――」
「――仲間がいますから」
 後を引き取ったのはハイネさん。ハディールさんの後ろで折りたたみ式のナイフを縦横無尽に振るい、動物たちの喉笛を斬りさいて、いる。
「先程も言いましたが、俺もたった一人で残されたことがあります。しかし、それは昔の話。今はもう違います」
 たぶん、ハイネさんは『九死殺戮刃』を使ってる。味方を一度でも攻撃しないと、寿命が減っちゃうユーベルコード。でも、動物しか攻撃してない。自分の寿命よりも大切なものを守る、ため。
「今は、もう、違うんですよ。だから――」
 何匹目かの動物を斬り殺して、ハディールさんは亀に視線を向けた。
「――キミの命を奪います」
「うん。奪わせてもらうんだな」
 と、雁之助さんが言った。いつの間にか、大きな黄金のライオンの背中に乗ってる。『ライオンライド』で召喚したんだ、ね。

●ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)
「体の調子がヘンだなぁ」
 襲い来る動物たちをルーンソードで斬り伏せながら、レンディア様が首をかしげました。
「いや、良い意味でヘンなんだけどね。なんだか、自分のパワーアップしてるような気がするんだ。『トリニティ・エンハンス』での上昇分を差し引いてもさ」
「それは、ここに立っているからだと思う、よ」
 ミア様が足下を指さされました。見ると、床が淡い光を放っています。きっと、ミア様が照射された太陽光の影響でしょう。
「この上にいると、戦闘力が高まる、の」
「なるほど。それはありがたいね」
 と、ミア様とやりとりをしている隙をつくようにして一匹の動物が飛び込んできましたが、レンディア様は咄嗟に手を翳し、それを防ぎました。
 当然のことながら、獣の一撃を手だけで防いだわけではありません。その手を包む黒い革手袋から、小波立つ水面のごとき楯が出現したのです。
 その横では馬上ならぬ獅子上の雁之助様も攻撃を防いでいました。
 攻撃を仕掛けたのは野牛のような動物(雁之助様が『オーロックス』と呼んでいた動物だと思われます)。そして、楯となったのは、長い首を持つ巨鳥(『ジャイアントモア』と呼んでいた動物だと思われます)。そう、頭突きをしかけてきた野牛の軌道を読み、別の敵である巨鳥の後方に素早く回り込んだのです。
 敵を楯にして別の敵の攻撃を受けるというその離れ業を繰り返しながら、雁之助様(を乗せたライオン)は亀に向かっていきます。
「宣言通り、僕らは君の命を奪うんだな」
 ライオンが地を蹴り、一気に間合いを詰めて、亀に牙を突き立てました。
『痛イ!』
「ただ今を生きるために君を倒すんだな」
『寂シイ!』
「だけど、ヒトに代わって、君に謝罪……とかはできないんだな」
『悲シイ!』
「それはあまりに傲慢に過ぎるし、君たちの生を侮辱することのように思えるから……」
『嫌ダ! 嫌ダ! 嫌ダヨォーッ!』
 亀は悲痛な叫びをあげ続けていますが……叫んでいるのは亀ではなく、実はわたくしたちなのではないでしょうか? そんな錯覚に陥ってしまいそうです。
「ハディール」
「うむ……」
 ハイネ様の合図を受けて、ハディール様が亀の懐に飛び込み、二本の短剣を振るいました。いえ、それらは『短剣』とは呼べないかもしれません。ユーベルコードによって巨大化しているのですから。同じく巨大化した亀の首をいとも簡単に断ち切れるほど。
「さよならです」
 と、ハディール様の背後で呟くハイネ様の声に続いて、亀の絶叫がまた聞こえてくると思いましたが――
『……』
 ――心にはなにも届きませんでした。

●レンディア・バルフォニー(朱龍・f27097)
 切断された亀の首が床に落ち、倉庫内が激しく揺れた。
「おやすみ」
 と、俺は亀に別れを告げたけど、当人(当亀?)にも他の猟兵にも聞こえなかっただろうね。地響きならぬ床響きが声をかき消してしまったから。
「……」
 振動が収まると、木霊くんが亀の大きな頭に近付いた。
 そして、血に塗れた双眸を見開いたままのその頭をそっとハグした。

「わたくしは、なんと無力なのでございましょう……」
「無力っていうのは、『なにもできないこと』じゃなくて『なにもしない』ことなんじゃないかな。だから、ベイメリアさんは無力じゃないよ」
 悲しみに打ちひしがれているベイメリアちゃんと、それを慰めるシチカくん。口の悪いあのオーガの姿はない。シチカの中に戻ったらしいね。
「なにができるのかを考えていくことが俺たちの役目なんだと思う」
「そうかもしれませんね」
 そんな二人のやりとりには静かなBGMがついている。木霊くんがギターを爪弾いているんだ。亀に捧げる鎮魂歌だろう。
「ところで――」
 木霊くんの演奏が終わったところでミアちゃんが口を開いた。
「――JJが『島の名前を考えてくれ』とか言ってなかった?」
 言ってたね。実は既に考えてあるんだけど、発表しないでおこう。
 だって、恥ずかしいし。
『わんわんあいらんど』なんて……。
「ちょっと感傷が入ってるけど、『Testudo et Canis』っていうのはどうかな?」
 と、提案したのは水貝くん。
「たぶん、ラテン語で『亀と犬』って意味だと思う。島の名前に残してあげたいなって……」
 あー、やっぱり、そういう真面目な路線でいくのね。『わんわんあいらんど』は発表しないで正解。
「『わんパーク島』とかはどうよ?」
 え? マジかい、木霊くん? ちょっぴり『わんわんあいらんど』と被ってるじゃないか。この路線も意外とアリなのかしらん?
「『わんわん島』というのも悪くないと思いますが――」
 ハイネくんも被ってるー! しかも、ちょっぴりどころじゃなーい!
「――ハディールはなにか案はないんですか?」
「うーん……幸福島とか、どうかな? 誰かが住み着くことはないかもしれないけど、沢山の人たちが頻繁に訪れる島になれば、あの犬たちも幸福かもしれない」
 真面目な路線に回帰したね。
「どの名前も素敵ですけど――」
 と、DOGくんが話の和に加わった。
「――僕は『Testudo et Canis』が良いと思いますわん」
 ほほう。DOGくんは真面目系の名前がお好みか。
「横文字やカナだと、カッコいいロゴが使えそうだからですわん」
 えー、そんな理由!? まあ、いいけど……。
「さーて、島の名前も決まったことだし――」
 木霊くんが満面の笑みで皆を見回した。
「――もう一回、犬たちと遊んでやろうぜ。帰る前によ」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月13日


挿絵イラスト