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花をかえせ。羽根をかえせ。あの子をかえせ。

#ダークセイヴァー #同族殺し

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#ダークセイヴァー
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#同族殺し


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●かえせ
「どうも騒がしいな……」
 己の居城でひとりの吸血鬼がそうつぶやいた。美しい造形を持つその男の背は羽根で覆われ、その頭にはいくつもの花が咲き乱れている。―――それだけであればオラトリオの特徴であるのだが。彼はまぎれもない吸血鬼。つまり、この羽根は、花は、奪い取ったものである。
「天使たちがいないのであれば人間どもになど興味はないのだが……苦し紛れの強襲か? 愚かなことを」
 彼は人呼んで『くたかけ公』。その名の由来はいわずもがな、その背負った大量の羽根にある。吸血鬼らしく人間を支配し領地を持つ彼だがひとつだけ他の同胞とは違う趣味があった。それが、“オラトリオ狩り”。狩られた天使の数は知れず、その背と頭にはより美しいと彼が選んだものが飾られている。皮肉にもそれが彼の美貌を引き立てているわけだが……。
「……む? 強襲者は、ひとり? 飛んでいるのか!」
 窓から退屈そうに強襲者を確認するくたかけ公の目の色が変わる。地を駆ける配下に襲い掛かるその強襲者は空を舞っていた。白いその身は宙を駆け、その背後に雷を伴う。
「……いや、“一匹”か。オラトリオでないのなら興味もない。魔獣は厄介だが……幼体ならそのうち力尽きるだろう」
 その強襲者が、羽根は持てどオラトリオではないと気が付いた瞬間、くたかけ公の興味は失せた。彼は本当に、自分の狩猟対象にしか興味がないのだ。

 強襲者―――天魔の幼獣は吠える。愛らしいはずの顔には憎悪が宿り、つぶらなはずの瞳は血走って。雷がダークセイヴァーの闇夜に轟く。その絶叫は、怒号にも狂乱にも絶望にも……慟哭にも聞こえて。一心不乱にシャドウライダーたちへ襲い掛かっている。
「かえせ、かえせかえせカエセカエセカエセエエエエエエッッッッ!!!!!!」

●幼き『同族殺し』
「ダークセイヴァーにおいての支配者、吸血鬼どもが一番嫌っている存在、『同族殺し』。それの出現を新たに予知したよ」
 予言書を捲り、投影魔法を展開しつつアメーラ・ソロモンは集まった猟兵たちを見まわした。「一応、知らない者に説明しておくとだね」と前置きをしてから、軽く同族殺しについて口にする。
 『同族殺し』とは、オブリビオンでありながらオブリビオンを殺す、文字通りの存在。狂った彼らがなぜオブリビオンを襲うのかはわからない。が、彼らの出現は強力な敵を打ち倒すための最大のチャンスともいえる。ゆえに進んで介入し、『同族殺し』を利用せんとアメーラはもちかけたのだ。
「今回の『同族殺し』はこのふわふわの……んん、失礼。天魔の幼獣と呼ばれる立派な魔獣だ。幼くとも天候を操る能力を持っているから、狂いながら使ってくる今回は正直たまったものじゃないね」
 対して、と羽根を背負った吸血鬼が映し出される。こいつが今回の標的だ。
「通称『くたかけ公』。オラトリオを狩るのが趣味のクソ野郎だよ。コイツ自身も非常に厄介な上、かなりの数の配下たちを従えている。正直、猟兵だけだったら太刀打ちできなかったと思う」
 天魔の幼獣はなんらかの理由で、くたかけ公の命を狙っている。ならばそれに乗じてこの強大な吸血鬼を倒し、狂えるオブリビオンも周囲に被害が出る前に片づけてしまいたい。
「オブリビオンと共闘することになるねぇ。いや、利用と言った方が的確かな? まあどちらにせよまずは天魔の幼獣の暴れっぷりを利用しないことにはくたかけ公を引きずり出すこともできないからね。上手くやってくれたまえ」
 勝ち馬の尻に乗ろうというのに、その馬を射かけてしまっては意味がない。くたかけ公を倒すまでは決して天魔の幼獣に手を出さない方がいいだろう。
「天魔の幼獣がどうして狂ったのか――私も気になっているところだけど気にしすぎて足元を掬われないようにね」
 君たちの健闘を祈っているよ。そう最後にニッコリと笑いかけて、アメーラは転送を開始した。


夜団子
 こんにちは、夜団子です。今回はダークセイヴァー、『同族殺し』のお話です!

●今回の構成&注意事項
 第一章 『同族殺し』を利用して、敵の配下『シャドウライダー』たちを蹴散らそう!
 『シャドウライダー』たちはかなりの数が配備されており、かなり厄介です。そのため『同族殺し』の力なしに制圧することは難しいでしょう。
 この章では『同族殺し』に対する攻撃を仕掛けることはできません。また、『同族殺し』は狂っているので意思疎通をとることもその感情を鎮めることもできません。暴れる『同族殺し』を利用できなければそもそも、警備する配下たちを撃ち倒すことはできないので。こっそり様子を見るとか、『同族殺し』の攻撃を利用するとかは問題ありません!
 『同族殺し』天魔の幼獣は、
 ・光属性の花びらによる無差別攻撃。
 ・落雷による攻撃。
 ・雷や風属性の暴走する嵐による攻撃。
 などを行います。参考までに。
 もちろん『同族殺し』と関係なく配下と戦うのもアリです!

 第二章 『同族殺し』を利用して、敵『くたかけ公』を倒そう!
 注意事項は第二章と同じく、『同族殺し』を攻撃してしまうと勝てない、ということです。詳しいことは追加OPにて。

 第三章 『同族殺し』を、終わらせよう。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『シャドウライダー』

POW   :    戦力補充
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【シャドウライダー】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
SPD   :    人馬一体
自身に【世界に蔓延する絶望】をまとい、高速移動と【その移動により発生する衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    代弁者
【鞭を振るい、死した人々】の霊を召喚する。これは【怨嗟】や【現世への未練】が転じた【呪い】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

終夜・還
あっは、悪趣味な野郎をどうにか出来るの?こんなん乗るしか無いじゃなーい★

俺の真の姿見たら出てくるのかねー…なんて思うけどやめとこ、危なそうだし。欲しいものをチラ付かせた時の吸血鬼の恐ろしさは知ってるからね、俺。

怒り狂った天魔の幼獣を陰ながら支援する
シャドウライダーの使役する死霊に混ぜて俺の召喚した死霊を放ち、無力化を試みる
逆に利用されそうなら直ぐに引っ込めて息を潜めて様子見

ま、完全に隠れてられるとは思ってないし、シャドウライダーの敵視がこっちに流れてきた場合、天魔の幼獣の攻撃を【見切り】、躱しながら持てる技能を駆使して戦うよ

しっかしカエセって、何か大事なものでも狩られたのかね。俺も気になるなぁ



「あっは、悪趣味な野郎をどうにか出来るの? こんなん乗るしか無いじゃなーい★」
 喜色を声にはらませながら、終夜・還(終の狼・f02594)は『同族殺し』の暴れる戦場へ降り立った。オラトリオばかりを狙い、狩り、弄ぶ吸血鬼。そんな反吐の出る存在を狩れるとなれば乗らない理由はない。
「俺の真の姿見たら出てくるのかねー……なんて思うけどやめとこ、危なそうだし」
 還の真の姿……人狼病に侵される以前の姿は、黒き羽根のオラトリオであった。命が脅かされずともその姿を現す手段はあるので領主に対する餌になれなくはないのだが……流石に危険か、と考えを改める。
 ―――欲しいものをチラ付かせた時の吸血鬼の恐ろしさは知ってるからね、俺。
 ぼそりとそう呟き、還は切り替えるように向き直った。視線の先には暴れる天魔の幼獣。吼え、怒り狂いながら暴れる幼き魔獣は、傷つくことも厭わずにシャドウライダーに食いかかっている。
 同族殺しの様子を見て、還は支援に徹することを選択した。相手のシャドウライダーはとにかく数が多い上に、死霊まで召喚する。個々の能力は高くないが人数差で押してくるタイプの敵だ。
「目には目を歯には歯を、死霊には死霊を……てなァ」
 地形を利用し目立たぬよう息をひそめながら還は記憶の書を開く。素早く詠唱を終え、召喚場所をこっそりと、シャドウライダーの喚んだ死霊たちの中に紛れ込ませた。数で押す戦法を取っているあたり、シャドウライダーはあまり頭が働くタイプではないのだろう。他の死霊が紛れ込んでいても、気が付く様子は全くなかった。
 還の召喚した死霊の持つ穢れが、死霊たちの中に蔓延する。敵の力を無力化するその穢れはじわじわと他の死霊やシャドウライダーにしみ込んでいき、知らぬ間に影響を与えていた。怨嗟や未練に囚われ、暴れまわるはずの死霊たちがただ唸り佇むだけの存在へと変わり果てる。
「……? ○※□◇#△!!!?」
 異変に気が付いたシャドウライダーが声を上げ、その手の鞭を振るうがもう遅い。打たれた死霊は動くこともなく、ただかき消されて冥府へと戻っていった。還の呼んだ死霊も何人か返されてしまったが、問題ない。もうシャドウライダーは新たな死霊を喚ぶこともできないのだ。無力化してしまえば、あとは天魔の幼獣が暴れてくれる。
「カ、エセ、カエセェェェェェェェェェェッ!!!!」
「おっと、あぶね」
 天魔の幼獣が荒ぶる雷の嵐を生み出し、シャドウライダーたちに打ち放つ。それに巻き込まれては叶わないと、呼び動作を見切った還は距離をとった。死霊を壁にすることもできず、シャドウライダーたちは嵐に飲み込まれて無残に散っていく。
「しっかしカエセって、何か大事なものでも狩られたのかね。俺も気になるなぁ」
 援護援護、と呪殺弾を多重に展開しながら、ぽりぽりと頭を掻く。自分を送り出した彼女も気になると口にしていた『同族殺しが狂った理由』。どうにも他人事ではないようなそんな心地に、還は小さく息を吐いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紬雁・紅葉
では、黒子となりましょう…

羅刹紋を顕わに
先制UC発動

闇属性を防御力に
空光属性を攻撃力に
付与

纏った闇に紛れる

忍び足で同族殺しの死角に位置

主に鳳翔を使用、適宜九曜に切り替え
地形(同族殺し)を利用し威力を増幅
射程に入り次第破魔風雷属性衝撃波UCを以て回数に任せ範囲を薙ぎ払う

敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければ破魔衝撃波オーラ防御武器受けUC等で受ける

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

雷は良く知っている
その光、その音、その性質…
「彼」の憤怒が私を隠す…
伏雷。激しき憎悪に寄り添い
影を討て…!

黄泉へ去れ、亡霊…!

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※



「では、黒子となりましょう……」
 嵐の轟音、狂乱の咆哮が響き渡る戦場に、紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)のつぶやきが消えていく。羅刹紋【ムラクモ】―――独特の紋様を顕わにした剣神の鬼巫女はその手に馴染む重弓を持って戦場に現れた。その姿は存在感を放ってこそいたが……暴れまわる『同族殺し』の苛烈さに隠れシャドウライダーの目には留まっていないようだった。
 しかしそれも時間の問題。その大きな武具を振るえば彼女はあっという間に目立ってしまい、同族殺しの目にもついてしまうかもしれない。黒子に徹するというのであれば、その身を上手く隠さねばならなかった。
「零の式……来たれ」
 指を口の前にそろえ、小さく詠唱すればどこからともなく闇があふれ出した。その闇が紅葉の全身に纏わりつき、その存在感を包み隠してしまう。荒れ狂う戦場の中で影に消えた紅葉に気が付く敵はおらず。彼女はそのまま、足音をひそめて天魔の幼獣の陰へと隠れた。その身を隠しながら、紅葉は背中から矢を抜く。
 わらわらと虫のようにたかるシャドウライダーを振り払い、天魔の幼獣はその顔を一度空へと向けた。そしてその血走った眼でシャドウライダーを睨みつけ、大きく咆哮を上げる。途端、空をひとつの光が切り裂いた!
「雷は良く知っている……その光、その音、その性質……」
 天魔の幼獣が引き起こした落雷に乗じ、紅葉は弓矢を引き絞った。矢じりには雷光が絡みつき、その威力を底上げする。撃ち放たれた矢はブレることなくシャドウライダーたちへと向かい、その胸元へと、まっすぐ突き刺さる!
「~~~~~△☆♯♭●□▲★※ッッ!!!!!」
 聞き取ることのできない悲鳴をあげてシャドウライダーが派手に落馬する。そのまま焼き焦げたシャドウライダーは動かなくなるが、周囲のシャドウライダーたちが焦る様子はなかった。雄たけびを上げながら、雷の矢が飛んできた方向―――紅葉の方へと勢いのまま突進する。
 ガキンッ、と音が響いて、シャドウライダーの突進が弾かれた。素早くルーンソード『九曜』に持ち変えた紅葉が怪力のままに突進を受け止め、はじき返したのだ。
 バランスを崩したシャドウライダーをそのまま屠り、紅葉は顔を上げる。紅葉の存在に気が付いたシャドウライダーたちがぎろりとこちらへ殺気を向けた。先ほど倒したシャドウライダーも、敵の力によって立ち上がらされている。数を減らすには、一体一体相手にするわけにはいかなそうだ。
「ッカエエエエエエエセエエエエエエエエエエエッッッ!!!!!」
 シャドウライダーたちが紅葉に襲い掛かるその前に、幼獣の雄たけびが響き渡った。次いで雷の轟く音。ビカッと輝いたその隙を突いて、紅葉はまた闇へと消えた。
「『彼』の憤怒が私を隠す……」
 再び『同族殺し』の陰へ隠れた紅葉は、ぎりぎりと弓を引き絞る。多くの矢をつがえ、範囲を薙ぎ払うべく力をこめた。
「伏雷。激しき憎悪に寄り添い、影を討て……!」
 『同族殺し』の怒りに隠れ。羅刹のその一撃は鋭さを増していく。
「―――黄泉へ去れ、亡霊……!」
 ヒュウッ、と放たれた雷光の矢は、シャドウライダーたちを次々と貫き、その光と熱で焼き焦がしていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。元々、感情任せに力を振るう魔獣だったけど…
怒り狂うとここまでの力を発揮するとは…

…狂気に陥った理由は怒り。敵は天使狩り…
予測する事はできるけど…あの子から話を聞くのは難しそうね

気合いや殺気を抑え存在感を消して闇に紛れ
気配を遮断して右眼に魔力を溜め【血の赫眼】を発動

…倒れた者を同族による力、絶望を纏う力、怨霊を召喚する力…
二つ、封じれば後はあの子が仕留めるでしょう

敵の能力を暗視して見極め戦闘知識に加え
左眼の聖痕で周囲の魂の残像を見切り【断末魔の瞳】で吸収

全身を呪詛のオーラで防御して敵のUCの妨害を試み
向かってくる敵は大鎌のカウンターで迎撃

お前達の怨嗟は私が持っていく。眠りなさい、安らかに…



「……ん。元々、感情任せに力を振るう魔獣だったけど……」
 怒り狂うとここまでの力を発揮するとは。紫の双眸を天魔の幼獣へ向けて、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はそう呟いた。
 怒りに狂い『同族殺し』と化した、天魔の幼獣。戦ったことがないわけではないが、ここまで暴れる様はリーヴァルディも初めて見る。その攻撃は苛烈を極め、己の怪我など気にも留めていないように思われた。
「……狂気に陥った理由は怒り。敵は天使狩り……。予測する事はできるけど……あの子から話を聞くのは難しそうね」
 どう見ても、対話ができるとは思えない。事前に得た標的の情報からその悲劇を想像することはできる、が。
 悲劇は既に起き、天魔の幼獣はもう狂ってしまったのだ。それを戦場で考えるだけ、詮無き事。
「……限定解放。光を灯せ、血の赫眼」
 リーヴァルディの右眼が真紅に輝き、その視線がシャドウライダーを俯瞰する。赤き視線に晒されてなお、シャドウライダーたちがリーヴァルディの存在に気が付くことはない。その身に宿る殺気・存在感を内に抑え込んで気配を遮断し、闇へ紛れ込んでいるのだ。
 ぼう、と灯る赤き瞳。その眼には、影の騎士たちの力が次々と映りこんでくる。
「……倒れた者を同族による力、絶望を纏う力、怨霊を召喚する力……。二つ、封じれば後はあの子が仕留めるでしょう」
 それで十分。そう断じたリーヴァルディは一度その力を封じた。一度閉じた目蓋が開かれれば、右眼にあるのは赤ではなく紫の燐光。別に戦いの矛を収めたわけではない。むしろ狩りは、これからだ。
「……汝ら、この瞳をくぐる者、一切の望みを棄てよ」
 今度は左眼に手を当て、そして一気に見開く。左眼に浮かび上がるのは契約の証。名もなき神によって刻まれた、呪縛たる聖痕だ。吸血鬼とはまた違う力。その左眼にはシャドウライダーたちの力ではなく、周囲に揺蕩う魂が映りこんでいた。
 リーヴァルディの予想通り、たくさんの魂の残滓が周囲には漂っていた。死霊というにはもう弱々しい気配。もはや怨念や嘆きの感情だけになってしまったそれらを、リーヴァルディの瞳は吸収していく。
「……お前達の怨嗟は私が持っていく。眠りなさい、安らかに……」
 それらは一体“誰”だったのか。領主に抵抗した人々だろうか。狩られた天使たちだろうか。その中には、『同族殺し』の悲劇も含まれるのだろう。リーヴァルディの体を包み込む魂たちの感情を体に馴染ませて、吸血鬼狩りの少女は力を得る。
 呼び出される死霊も纏う絶望も、今はリーヴァルディの力となった。その手に大鎌を握り、少女は影から戦場へ躍り出る。
「あとは、狩りとるだけ」
 その小さな体を戦場に舞わせ、リーヴァルディの狩りは始まった。

成功 🔵​🔵​🔴​

レナータ・バルダーヌ
領主様、甦っていたのですか……。
いえ、可能性があるのはわかっていたことですし、かえって好都合です。
もう一方のオブリビオンさんは余計ではありますけど、この機を逃すわけにはいきません。
ここを突破できるなら利用させてもらいましょう。

わたしは【B.I.ライダー】で纏った炎の温度を上げ、接近してきた敵を輻射熱で攻撃します。
もしこの場に敵のユーベルコードの対象になるものがあれば、利用される前に炎を延焼させて、可能な限り燃やしてしまいたいです。
同族殺しの攻撃には巻き込まれないよう注意しますけど、攻防一体のこの状態なら多少は防げると思います。

焦ってはいけないのはわかっています、ですけど今日こそは……。



「領主様、甦っていたのですか……」
 ぽつり、と。レナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)の零れるようなつぶやきが、荒れ狂う戦場に落とされる。
 彼女は、レナータ・バルダーヌは、オラトリオである。だが彼女の背中に美しき翼はなく、頭に咲き誇るはずの花はその土台ごと失われていた。
 ……包帯で隠されたその傷が、露わにされている背中の傷が、ずきずきと痛む。“失われた”のではない。“奪われた”のだ。
(いえ、可能性があるのはわかっていたことですし……それに、かえって好都合、です)
 ふー……とゆっくり息を吐き、レナータは努めて胸の中の復讐心を抑える。果たすべき機会を一度失い、常に渇望して燃え上がる復讐心。早く早くと心のどこかで急くが、それを解き放つのはまだ早い。焦っては取り逃すだけなのだ。
 暴れまわるもう一方の敵は余計ではあるが、この機会を逃すわけにはいかない。ここを突破し、あの男を引きずり出せるのならば、全力で利用させてもらおう。
「時間はかけません……すぐに終わらせてみせます!」
 その声と同時に、レナータの背中の傷口から勢いを増して火が噴き出した。普段は翼を形どるその獄炎がレナータの全身を覆い、鎧のように変形する。火力を、熱を、めいっぱい強めながら炎は生き物のようにレナータに応えていった。
 そんな彼女の様子に気が付いたのはシャドウライダーたちだ。明らかに強く、強く燃え上がっていく新たな敵に、数体のシャドウライダーたちが警戒を始める。その手の武器を握り、馬に鞭うち戦場を駆け出した!
「すべて……燃やします……!」
 獄炎の中でその紫の双眸を強く輝かせて、レナータは体内のエネルギーを燃え上がらせた。その熱は馬たちの許容を超え、突進してくるシャドウライダーたちの馬がひるむ。しかし今更逃してやる気などありはしない。
 その強い輻射熱に当てられ、シャドウライダーたちが藻掻いた。レナータのうなりとともに燃え広がる炎はその勢いを増して、周囲に襲い掛かる!
 倒しても倒しても、その遺骸を利用して立ち上がらせるのならば、周囲のすべてを燃やし尽くしてしまえばいい。執拗に燃え上がったその炎はシャドウライダーも馬も、生きているか死んでいるかも関係なく、その全てをぐずぐずの炭へと変えた。熱に当てられ、炎に巻かれたシャドウライダーの体が、その先端からぼろぼろと崩れていく。
 咆哮を上げる天魔の幼獣もまた、無差別に攻撃を繰り返していた。立ちはだかる全てを排除せんと、舞う花弁がシャドウライダーを切り裂く。レナータの方へ向かった花弁は途中で燃え尽き、レナータへ届くことはなかった。
(まだ……。焦ってはいけないのはわかっています、ですけど今日こそは……)
 浮かび上がるのは果てなき苦痛の、受難の記憶。その身を支配する復讐心と、それを果たすことができないという諦念。今日は、今日こそは、至れるかもしれないのだ。渇望する復讐の舞台へと。
「ああ……早く」
 焼き崩れた戦場の中ひとり立ち尽くす天使は、その肩を猛らせながらまたぽつりと言葉を零すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
※連携、アドリブOK

いつものように黒剣で敵を1体ずつ片付けていたら天候を操る同族殺しの強烈な力に巻き込まれそう
同族殺しに倒してもらうように動くのがよさそうだね

現場に到着したらすぐに解放・夜陰を発動
召喚した水晶を総動員して敵を1体ずつ片付けながら同族殺しの動きが把握できる位置まで移動

同族殺しと交戦している数多くの敵(馬)の脚にUCの水晶を飛ばし、脚を水晶で固めて動きを抑制
同族殺しの攻撃に巻き込まれる数を増やし、また同族殺しへの攻撃を妨害する
俺に向かってくる敵はUCや黒剣で斬り倒して身の安全は確保する

敵が呼ぶ霊の呪いは鎮魂を祈りながら
呪詛や狂気に常に晒されていることで身についた【呪詛耐性】でしのぐ



 サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は戦場について即座に、無数の水晶を召喚した。秘めた悪意の欠片。同化を渇望する悪意が源であるその水晶片は、そのひとつひとつが貪欲に敵を求め、シャドウライダーたちへ襲い掛かった。
 まっすぐ飛来したそれは一見ただの小石にも満たない一撃だ。しかし、それがピシリとシャドウライダーの体に食い込むや否や―――音を立てて内側から食い破った。
「¥●&%#ッッ?!」
 悲鳴らしきものをあげながら次々と弾けるシャドウライダーたち。一体一体に水晶を飛ばして倒しながら、サンディは戦場を見渡す。視界に入らなければその咆哮を聞いて、暴れる『同族殺し』が見える場所へ素早く駆け上った。
「よし……じゃあ、支援しよう」
 残った水晶を操り、まとめて『同族殺し』の方へ向ける。もちろん、狙うのは『同族殺し』ではなく、彼と相対するシャドウライダーたち。特にその騎乗する馬の脚へ向けて、一斉に撃ち放った。
 飛来する漆黒の水晶という伏兵にシャドウライダーたちが気が付くはずもなく。その水晶は馬の脚へ被弾し飛び散り、水晶の塊となって動きを奪った。ガチガチッ、と固まってしまった馬の脚は、もう飛びかかることも駆けまわることもできない。けたたましい鳴き声が戦場に響き渡った。
「―――ッ!」
 そして足が止まってしまえば、シャドウライダーたちは『同族殺し』にとって的同然である。逃れることも避けることもできず、あっという間に嵐に巻き込まれていった。
「よいしょっと」
 それでもまだまだ数は向こうが上。懲りずに走り寄ってくるシャドウライダーたちの前へ、次々と水晶を打ち込んでいく。まるで『同族殺し』を守る壁のようになった水晶はそれでいて先端が鋭く、無理に走りこめば馬の脚をえぐり取る容赦のない形になっていた。それに気づかず突っ込めばそこで終わり。例え気が付いても、足をとめれば『同族殺し』の餌食になるだけだ。
「……おっと」
 支援に徹するサンディの元に向かう、馬の足音がする。別方面から現れたシャドウライダーたちは『同族殺し』よりもサンディを先に倒してしまいたいようで、まっすぐとこちらに突っ込んでくる。しかしサンディは慌てず―――むしろうっすらとした笑みを浮かべて、腰の黒剣を引き抜いた。
 飛び込んできたシャドウライダーを馬ごと切り上げ、返す刃で次の頭を刎ねる! その様子を見て警戒したのか、数体のシャドウライダーはサンディに近づかず、その場でパシンと鞭を鳴らした。
「霊……かぁ」
 鞭の音に呼び出されるように、次々と現れる死霊たち。それを一瞥して、サンディは小さくつぶやいた。目を伏せ、鎮魂の祈りを静かに乗せる。
「呪詛や狂気には、常に晒されているから……呪いは効かないよ。残念だね」
 喚ばれた死霊たちの呪いを一身に受け、それに耐えながら水晶を放つ。その身には長年狂気に晒されてついた呪詛耐性がある。まだまだこの程度の恨みでは、サンディに膝をつかせることもできはしない。
「全然足りない。出直してきてほしいかな」
 耐えながらくすくすと笑ったサンディはその手のひらをシャドウライダーへ向ける。残った水晶片が一斉にそちらを向き、そして先を争うようにして襲い掛かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リカルド・マスケラス
颯爽と現れるバイクに乗ったお面。ノリはチャラい

「まー、いい趣味してるっすねえ。同族殺しに狙われるのも当然すね」
同族殺しに思うところはないわけでないっすけど、今は目の前の敵を退治っすね

まずは鎖分銅を射出して【ロープワーク】で敵を拘束。鎖を伸ばして複数の敵をつないで拘束するっす。鎖で繋げば、落雷とか堕ちたら全員に巻き込まれそうっすよね。あ、自分は巻き込まれないようするっすよ。
死霊はバイクの【操縦】でかいくぐりつつ、轍で魔法陣を描き、【森羅穣霊陣】で【破魔】攻撃。
「せめて安らかに還るんすよ~」
作物とか成長促進できるが、その効果は今は使う必要は……何か花でも咲かせておくっすかね?



「まー、いい趣味してるっすねえ。同族殺しに狙われるのも当然すね」
 大量のシャドウライダーに『同族殺し』、そして猟兵が入り乱れる煩雑な戦場を、ひとつのバイクが走り抜ける。『同族殺し』の攻撃に巻き込まれることも、シャドウライダーに捕まることもなくすり抜けているそのバイクには、人らしい姿は乗っておらず。ただ真っ白な狐のお面が、なぜか落ちずに張り付いていた。
 何を隠そうこの仮面が彼の本体。リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)は宇宙バイク『アルタイル』に乗って戦場を横断していた。
「同族殺しに思うところはないわけでないっすけど、今は目の前の敵を退治っすね」
 これだけ派手に走り回ればシャドウライダーたちの目にも、天魔の幼獣の目にも留まる。ピリピリとした緊張感がリカルドへ集中していた。
 走り回るリカルドを追いかけて、かなりの数のシャドウライダーたちが馬を走らせていた。バイクに追いつき、その鞭を叩きつけんと振り回している。それをすんでのところで避けながら翻弄するように走り回り、誘導していく。それを繰り返し数分、突然リカルドとバイクは、ぐるんっと振り返った。
「そらよっと!」
 リカルドの声に合わせて、バイク前方から鎖分銅が射出される。先頭のシャドウライダーに巻き付いたそれはギチギチと体を締め付け、捕らえた相手を逃さない。かかったことを確認して、リカルドはバイクを発進させた。
「○▼※△☆▲!!!!」
「いっちょ上がり~!」
 鎖を繋げたままぐるりとシャドウライダーたちの外周を巡れば、鎖に巻き取られ多くのシャドウライダーたちが雁字搦めに拘束された。しっかりとしばりつけて、ガキンと鎖の接続を外す。そして大急ぎで離れれば……。
「カエセエエエエエエエエエエエエエエッッ!!!!」
 落雷が落ち、直撃したシャドウライダーは炭に、そうでなかった者も鎖越しに感電して動かなくなった。例え生きていたとしてもほとんど身動きが取れないだろう。
 それでも最後の抵抗ということか、じりじりと動く者がいた。最も内側で感電が弱かったそのシャドウライダーは鞭を振るい、死霊たちを召喚する。死霊たちならば雷は関係ない。猟兵や天魔の幼獣に一矢報いることができると思われたが。
「よっ、と失礼するっす~」
 またもやバイクで走り抜けたリカルドは、死霊たちに触れられることなくその場を駆け抜ける。轍を残し、行き来する彼に死霊たちは襲い掛かろうとするが、その手が届くことはなかった。
「さて、と。せめて安らかに還るんすよ~」
 “描き”終わったリカルドはバイクを止め、そんな言葉を死霊たちに投げかける。その答え代わりに死霊たちは呪いをかけようとするが……それより前に、彼らの足元の魔法陣が、起動した。
 【森羅穣霊陣】―――破魔の力を持つそれは死霊たちにとって天敵のようなものだ。悪しきものを打ち払い豊穣の恵みをもたらす強き陣。それに晒され、死霊たちは蒸発するように消え去っていった。
 シャドウライダーももうすでにこと切れた。死霊がいなくなってしまえば、この戦場はもう制圧したも同然。敵がいなくなった戦場に見向きもせず、『同族殺し』は領主の館に直進する。
「自分らもついてかないとっすね。待って~」
 ブルル……とまたバイクを走らせて『同族殺し』を追うリカルド。その後には、いくつもの花が芽吹き、美しい花弁を開かせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『くたかけ公』

POW   :    容易く逃げられるとは思わないことだな
【数多のオラトリオの翼を吊り続けたこと】から【墜落の呪詛を帯びるに至った鉤付きの鎖】を放ち、【攻撃する。飛行する対象を追尾可能で、呪詛】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    選りすぐりを蒐めた至高の一品、称美するがよい
【オラトリオの羽根外套で空気の動きを読んで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    我が血で育てた天使たちの花だ
自身の装備武器を無数の【自身の頭に移植し瘴気を孕ませたオラトリオ】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はレナータ・バルダーヌです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※追加情報を記載した断章掲載まで、少々お待ちください※
「『同族殺し』め……この程度の魔獣に狩られるとは、使えぬ配下共だ」
 シャドウライダーを狩りつくし、領主の館へ強襲をかけた『同族殺し』と猟兵たち。館の主は逃げることも隠れることもせず、むしろ堂々と猟兵たちの前へ現れた。魔獣と猟兵たち程度であれば、負けることはない。そのような傲りが表情と立ち振る舞いに現れている。
「漁夫の利を狙う猟兵共まで群がって来たか。まあいい。私の美しき蒐集品を眺める名誉に酔え。その後、狩りつくしてやる。私の目にかなう天使がいれば言うことはないのだがな……」
 視線を巡らせ、唇を舐める『くたかけ公』。己が狩る側であるということを、疑いもしていないようだ。その手に握られる鉤付きの鎖は黒々と光り、並々ならぬ呪詛を感じさせる。
 『くたかけ公』は強大な吸血鬼だ。『同族殺し』だけでも、猟兵たちだけでも、叶わなかっただろう。しかし、その二つが共に『くたかけ公』を狩ろうとしたならば?
「……えせ……かえ、せ……アノ子の、花……あの子ノ、羽根……かえせ、あの子を、かエセエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!」
 ぶつぶつと呟いていた『同族殺し』が咆哮をあげて『くたかけ公』へ飛びかかる! 対する『くたかけ公』も即座に戦闘態勢へ移行した。
 さあ、戦いの火蓋は切って落とされた。『同族殺し』と共に『くたかけ公』を襲い、どちらが狩られる側なのか、傲慢な吸血鬼へ教えてやる時間だ。

【PL情報】
 『同族殺し』が行う攻撃は第一章と同じです。また、『同族殺し』に攻撃をするとこちらに『同族殺し』の攻撃が向いてしまうこと、『同族殺し』を利用しなければ標的を倒せないことも第一章と同じになります。
 しかし、シャドウライダーと違い『くたかけ公』は猟兵たちがいることを知っており、不意打ちにも警戒しています。彼をどう出し抜くか、どう『同族殺し』を利用するか、がカギとなるでしょう。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
アウグスト・アルトナー
お喜びください、くたかけ公
あなたのために、オラトリオが参じましたよ

オラトリオを狩るの、お好きなのでしょう?
ぼくの羽根、欲しくはありませんか?

などと挑発して、攻撃を誘発します

瘴気の花びらは【呪詛耐性】で耐えます
が、耐えられなかったふりをして、その場に倒れます

そのまま羽根や花を取られるかもしれませんが……
まあ、翼の一本くらいまでならくれてやっても構いません

ですが、『同族殺し』はくたかけ公に攻撃するでしょう
オラトリオの羽根や花を入手する機会を邪魔されて、くたかけ公が冷静でいられるとは思えません

一瞬でも『同族殺し』に注意が向いたなら、チャンスです
【騙し討ち】です。【神の奇跡】でくたかけ公に攻撃します



「お喜びください、くたかけ公。あなたのために、オラトリオが参じましたよ」
 無数にその身を覆う白い翼、そして相反する黒き百合。美しきそれらを伴うオラトリオが戦場に降り立った。アウグスト・アルトナー(永久凍土・f23918)のその姿を見て、くたかけ公の目の色が変わる。
「オラトリオを狩るの、お好きなのでしょう? ぼくの羽根、欲しくはありませんか?」
 その声色はどこまでも冷たく、表情から感情を読み取ることはできない。しかしくたかけ公の興味はアウグストの羽根と花ばかりに割かれ、そのことを気にする様子はなかった。ジャラリ、と鉤付き鎖の音が響く。
「素晴らしい……私が狩るにふさわしい天使だ。その羽根、そのクロユリ……是が非でもコレクションに加えよう」
「光栄です」
 言葉と裏腹にその手に武器を構えたアウグストへくたかけ公は爛々とした目を向けた。アウグストが空へ逃れないのであれば鉤は扱いにくい。ならば、と一度その頭に生える花を撫でる。
「我が血で育てた天使たちの花だ……とくと味わうといい!」
 鉤つき鎖が弾けるように消え、花弁へとその姿を変える。くたかけ公の頭に移植され咲き誇る花たちは毒々しい光を纏っており、舞い散る花弁を己と同じものに変えていった。瘴気を纏う花びらの嵐。それがアウグストへ一斉に襲い掛かった。
「くっ……」
 その身から現るオーラを纏い、呪詛による耐性で瘴気に蝕まれるのを防ぐ。しかし勢いづいた花弁の欧州にアウグストの眉は寄せられ、額には汗がにじんだ。苦痛をこらえるようなその様子に、くたかけ公は歪んだ笑みを浮かべる。
「無駄な抵抗は止めろ。羽根と花に傷が付く」
「…………」
「往生際の悪い天使だ」
 ついにその瘴気に耐えかねたアウグストが苦しそうに息を吐くのと、ほとんど同時にくたかけ公の手がアウグストへ届いた。せめてもの抵抗とその手を弾き、地へ倒れこんだアウグストを、くたかけ公は悦の混じった眼差しで見下ろす。その手には大振りのナイフが握られていた。
「花は準備が必要だからな。先にその羽根をもらうとするか」
 その手がまたアウグストへ伸ばされ、翼に刃を滑らさんとしたその刹那。
「カエセエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!」
「チィッ! 魔獣風情が私の邪魔を!」
 『同族殺し』天魔の幼獣が、くたかけ公へ襲い掛かった。怒りに狂ったその魔獣は花びらに傷つけられようと引くことはなく、そのしつこさもくたかけ公の癪に障る。
 せっかく気に入った羽根と花が手に入るところだったというのに。それを邪魔されたくたかけ公の頭に血が上る。
「八つ裂きにしても飽き足らん! 先に灰にしてくれる!」
「……灰になるのはあなたです」
 だから、すぐそばに倒れるアウグストの行動を見落とした。気が付いていたとしても反応できなかっただろうが。
 声に反応して振り返ったくたかけ公が見たのは、苦しげでも痛ましげでもない、涼しい顔をしたアウグストだった。
「神よ、救いを」
 アウグストのそのつぶやきと同時に、轟々と音を立てて炎が噴きあがった。灼熱の炎はくたかけ公を包み込み、羽根と花ごと彼を焼く。
「がぁぁぁッ!? 私の、コレクションがッ!」
 痛みに悶えながら炎を払うくたかけ公。その肌には痛々しいやけど痕が残り、鼻が曲がるようなにおいが立ち込める。一撃必殺とはいかずとも確かなダメージがくたかけ公に入った。以降、くたかけ公はそのやけどの痛みに耐えながら戦うことを強いられることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
アドリブ・連携歓迎

UC弱者の仮面のために情けない猟兵の演技をする
演技内容:敵(くたかけ公)の圧倒的強さに気圧され足がすくみ戦意喪失
這うように戦場から逃亡

実際は逃亡と見せかけ【闇に紛れ】て近くに潜伏し
敵の攻撃や行動の癖を【情報収集】

頃合いを見て『朔』を【投擲】
情報収集で動きを【見切】ったお前なんて朔でも【怪力】込めれば簡単に捕縛できる
【騙し討ち】されたと敵が察すれば愉しくてたまらない
UCの効果も上乗せされて脱出を許さないよ

同族殺しの攻撃に巻きこまれそうなら魔力を高め【オーラ防御】
でも敵の攻撃は呪いの武器を常用するために持つ【呪詛耐性】だけでしのぎ
一見なにも対応してないように見せて屈辱を与え愉しむ



「っ……う、うわぁッ!」
 ガキンッと鉄が弾かれる音と同時に、情けない男の悲鳴があがる。己の武器を取りこぼしながらしりもちをついた青年は、ガチガチと奥歯を鳴らしてくたかけ公を見上げた。
「か、かてるわけない……」
「フン、所詮は狩る価値もない人間か」
「ひっ!」
 怯え、這うようにしながら逃げ出すサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)の姿を見て、くたかけ公は鼻を鳴らして嘲笑した。気分よく思ったくたかけ公はせめて苦しまず殺してやろうとその鉤を構えたが即座に後ろへ跳んだ。『同族殺し』の一撃がその前髪の先を切り落とす。
「チッ……先ほどから鬱陶しい……」
 忌々しそうに攻撃を跳ね返しながら、くたかけ公はちらりとトドメを刺さんとした獲物の方を見る。しかし、その無様な背中を見つけることはできなかった。今の一撃に巻き込まれたか、逃げ切ったか。どちらにせよ興醒めだと息を吐く。
 まあいい。あんなものは路傍の石のようなもの。気にかけるだけ無駄だ。そう、くたかけ公は頭の中からサンディの姿を消す。それこそが彼の策略だと気が付きもせずに。

「次から次へと……コバエのような連中だな!」
 『同族殺し』と猟兵、それぞれが手を休めず襲い来る戦況にくたかけ公は苛立ちを募らせていた。彼にとって天使狩りではない戦闘は特段楽しいものでもない。さっさと終わらせるつもりであったのに、思いのほか長期戦になってしまっていること自体が許せないのだ。
 怒りは視野を狭める。そんなくたかけ公の様子を、陰より虎視眈々と狙う者が見逃すはずもなく。
 ヒュウッと空を裂く音がくたかけ公の耳へ届いたその瞬間、彼の体は細いワイヤーで雁字搦めに囚われてしまっていた。
「なッ、んだと……ッ!?」
「動きを見切ったお前なんて、朔でも簡単に捕縛できるよ。ははは、いい格好だね」
「き、貴様はさっき逃げたはずの……ッ!?」
 動きを封じられたくたかけ公はその眼を見開き、怪力で己を縛り上げる相手を見上げた。青年―――サンディはその中性的な顔を笑みで歪め、愉しそうにくたかけ公を見下ろしている。
「こんな紐程度……!」
「無理無理。それより俺を倒せるか試してみる方がいいんじゃない?」
 まあそれも無理だろうけど。にこやかにそう挑発するサンディにビシッと青筋を立てるくたかけ公。だまし討ちをされたのだと気が付き、歯ぎしりをする姿が愉しくてたまらず、サンディはますます笑みを深めた。
「ッ、貴様の死体は吊るし、朽ち果てるまで晒してやろう!」
 縛られたくたかけ公の足元に落ちていた鉤つき鎖が、禍々しい光と共にふわりと浮き上がる。くたかけ公を拘束しているうちはサンディも手を離せず動くことができない。驕ったな、人間風情が。その鋭い鉤がサンディの胸を貫くことを確信し、くたかけ公はにやりと笑う。しかし―――
「あれぇそんな程度?」
 カキンッと甲高い音を立ててあっけなく鉤は弾かれた。くたかけ公の瞳は、これ以上ないくらいに見開かれる。
 タネは単純だ。その身から生み出されるオーラによる防御、そして呪いの武器を常用するために持つ呪詛耐性で、サンディはくたかけ公の攻撃を耐え切った。ダメージが全くないわけではないが、さも無傷のようにふるまう。屈辱に震えるくたかけ公を見て、サンディの心は悦びに震えた。
「でもそろそろお終いかな」
 吼える『同族殺し』を見てサンディはため息を吐いた。荒れ狂う嵐がこちらに放たれる。オーラで己の身だけを守りながら、サンディはくたかけ公と共に、襲い来る嵐へ飲み込まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
お久しぶりです、領主様。
といってもオブリビオンですから、わたしのことは知らないでしょうか?
まあ関係ないことです、ようやく……っ、フラッシュバックが……!
早過ぎます、このままでは皆さんも巻き込んで……!
(体中に絶え間ない苦痛を受け、)
でもこれで確信しました、代わりなどいないのだと。
(その前には花を奪われ、)
ですから今度こそ、わたしの復讐を……!
(そして折られた翼が最初の傷痕――)

――本当に?

違います、猟兵は世界を……。
(いえ、最初はもっと以前に別の……)

――誰かを護るために

力の暴走を克服し制御できれば、自身の意志で宿敵を倒せる気がします。
最初の傷痕のことはまだ朧げなので、やがて思い出すでしょう。



「お久しぶりです、領主様」
 震える声を、ドクドクとうるさく高鳴る鼓動を、どうにか押し殺しながらレナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)はくたかけ公の前に立った。対するくたかけ公は怪訝そうな、不機嫌にも見える表情を向けるばかり。レナータはれっきとしたオラトリオだ。しかしその羽根も、花も奪われとっくに失われてしまっている。そのためくたかけ公はレナータに対し、ただ眉をひそめるだけだった。
 小さく息を吐いて、レナータはゆっくり首を振った。
「といってもオブリビオンですから、わたしのことは知らないでしょうか? ……まあ関係ないことです、ようやく……っ!」
 ズキッ
(フラッシュバックが……! 早過ぎます、このままでは皆さんも巻き込んで……!)
 レナータの脳裏を貫くような痛みが襲う。憎き復讐相手を前にしたことで、力がレナータの自我を離れて暴れようとしていた。チカチカと弾ける視界の中で、レナータの記憶がレコードのように浮かび上がる。
(体中に絶え間ない苦痛を受け、)
 狩られ、囚われ、弄ばれ。その肌にまだ傷跡が多く残るほどの痛みを受けた。レナータをいたぶり悦ぶ吸血鬼の顔を忘れた日はない。
(その前には花を奪われ、)
 頭を抉られ花を奪われ。その痛みはいつだってレナータを苦しめてきた。その相手に復讐できるなんて。こんなにうれしいことはない。
「……でもこれで確信しました、代わりなどいないのだと」
 自らの意思で復讐をやり直すため、“代役”を多く打倒してきた。しかしそれでも心が満たされることはなく。また暴走して力を乱暴に叩きつけることしかできなくて。諦めかけていたのだ、復讐を遂げること自体を。
「ですから今度こそ、わたしの復讐を……!」
(そして折られた翼が最初の傷痕――)

 ―――本当に?

「――――――」
 レナータの脳裏を駆け巡っていた記憶にブレが起きる。折られた翼―――最初の傷跡のことが思い出せないのだ。
 この傷の復讐相手は本当にくたかけ公なのか?
 復讐心に突き動かされて、力を振るうのは猟兵として本当に正しいのか?
「違います、猟兵は世界を……」
(いえ、最初はもっと以前に別の……)

 ――誰かを護るために。

「……なんだこの人間は。ぺらぺらと饒舌だと思ったら突然黙りこくって……それほど死にたいのならば、かなえてやるのが慈悲というものか」
 皮肉なことに、傲慢なくたかけ公の声がレナータを正気に引き戻した。くたかけ公が撫でた花は瘴気を纏い、花弁となって散りゆく。花弁の嵐ともいえるそれがレナータへ襲い掛かった。
 激痛に慣れた体は花弁の攻撃などものともしなかった。いつもなら意思を失ってしまい暴走しているであろう頭が、やけにクリアで。制御できる。自分の意思で宿敵を討てる。そう自分に語り掛けて、レナータは顔を上げた。
 体から噴出する炎が、その勢いを増して燃え上がる。花弁を燃やしつつも、くたかけ公へ収束するように放たれた炎は、周囲を巻き込むことなく敵へ襲い掛かった。レナータは、自分の力を制御することができたのである。
「くそッまた炎か! このッ! 消えんッ!」
 獄炎は復讐相手を捉え、そのすべてを燃やし尽くさんと火の手をあげる。それと格闘し藻掻きながら、くたかけ公はじわじわとその身を蝕まれていった。
(最初の傷痕のことはまだ……。……いつか、思い出すでしょう)
 力の制御を失わぬよう必死で暴走を抑えながら、レナータは最初の傷に想いを馳せる。いつかきっと、思い出せるはずだ。だから今は、この復讐を遂げよう。
 レナータの炎は勢いも制御も失うことなく、戦場に燃え続けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。討つべき魔獣とはいえ、利用するだけ利用して殺すのは憐れに過ぎる…か

…これがただの感傷に過ぎないとしても、
せめて自身の手で復讐を果たせるように援護してあげるわ

今までの戦闘知識から敵味方の殺気や気合いを暗視して見切り、
魔力を溜めた怪力の踏み込みで懐に切り込み、
大鎌をなぎ払う早業のカウンターで機先を制し、同族殺しを援護する

第六感が好機を捉えたら【断末魔の瞳】に取り込んだ魂達の怨嗟も用いてUCを発動
暴走魔法陣を纏い限界突破した黒炎鳥を突撃させ、
暴走する呪詛のオーラで防御を無視し敵を自爆させる

…報復の時は来た。この一撃をもって手向けとする
一つ余さず叩き付けるが良い。貴方達の憎悪と怨嗟と絶望を…!


リカルド・マスケラス
「ヒトのおしゃれセンスをとやかく言うもんじゃないのは分かってるっすけど、やはり褒められた趣味じゃないっすねー」
などといいつつも臨戦態勢

今回は【霧影分身術】で分身を作り、それで鎖鎌を振るう。その際に【破魔】と風の【属性攻撃】を込め、強い風を纏わせる
「強風の中、どこまで攻撃を読み切れるっすか!?」
そして徐々に分身を増やして手数を増やしてゆく。本当の狙いはくたかけ公自身よりも、風の攻撃の余波等で外套の羽を毟ってゆくこと。徐々に攻撃を増やすのは相手の感知能力が落ちていることを気づかせないカモフラージュ
「さあ、遊びは終わりっすよ」
相手の回避能力が落ちたら、鎖分銅の【ロープワーク】で縛り、仲間の支援



「ヒトのおしゃれセンスをとやかく言うもんじゃないのは分かってるっすけど、やはり褒められた趣味じゃないっすねー」
 じゃらり、と鎖鎌の鎖分銅をその手で弄びながら、リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)は眉をひそめる。先ほどまで装着者は確かにいなかったはずだが―――藍色の髪の人型のなにかが、そこには確かに立っていた。
 苦笑しながら、満身創痍のくたかけ公に向かうリカルドに対して、もうひとりの猟兵―――リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はくたかけ公に見向きもせず、傷つきながらも彼へ襲い掛かる『同族殺し』を見つめていた。
「……ん。討つべき魔獣とはいえ、利用するだけ利用して殺すのは憐れに過ぎる……か」
「ん、同情っすか?」
 ぽつりとこぼしたリーヴァルディのつぶやきにリカルドが軽く尋ねる。ぷい、とそっぽを向きながらリーヴァルディはその手の大鎌を肩にかけて、ゆらゆらと揺らした。
「……これがただの感傷に過ぎないとしても、せめて自身の手で復讐を果たせるように援護してあげるわ」
「いい人っすね~。じゃ、自分も手伝っちゃうっすよー!」
 そういうの得意なんで、なんて付け足してリカルドは地面を蹴った。リカルドに多くを語らないリーヴァルディだが、彼女が彼の動きを懸念することはなかった。チャラく、アテにならなそうな雰囲気こそ纏ってはいるが、会話しながらも彼は臨戦態勢を崩さず、じっとくたかけ公を観察していた。戦力として、彼は信用ができる。
 『同族殺し』は何度もその攻撃を繰り出しているが、今のところこれといった一撃をくたかけ公に浴びせることはできていない。くたかけ公の体を覆う美しい羽根たちが直情的な『同族殺し』の動きをつぶさに読み切っているようでぎりぎりのところで避けられてしまっている。
 『同族殺し』にくたかけ公の鉤がヒットし、幼き魔獣は一度地へと墜落した。追撃を振るわんとするくたかけ公に、リカルドはすかさずその間へ体を滑り込ませる。
「夢か現か幻か、とくとご覧あれっすよ!」
 その言葉と同時に、リカルドの姿が霧によってぼやけ、その影がブレる。ブレた影はそのままいくつもの姿に変わり、多くの人影になってくたかけ公を取り囲んだ。
「ちッ小癪な……幻影の類か」
「これだけじゃないっすよ! 強風の中、どこまで攻撃を読み切れるっすか!?」
 破魔の力を乗せた強風がさらにくたかけ公を囲う。これを強行突破しようとすれば、流石のくたかけ公もかなりのダメージを覚悟しなければならない。すでにかなりの傷を負っているくたかけ公にそれは選択できなかった。しかし、彼にはまだ愛しき天使の羽根がある。
 リカルドたちの放つ鎖鎌を間一髪で避け続けるくたかけ公。風や鎌に浅く肌を傷つけられようとも、大した傷は与えられていない。囲まれた状況でありながら、くたかけ公はリカルドたちを見下すように嘲笑う。
「どうした、その程度か!」
「あなた、たくさん恨まれているの、ね」
 ゆらり、と強風の壁の向こう側に赤い燐光が浮かび上がった。その光はためらうことなく強風の壁に飛び込み、大鎌を手にくたかけ公に襲いかかる! カキンッと甲高い音が響き、鉤と大鎌が交差した。
 リーヴァルディの左眼は赤く染まり紋が浮かび上がっている。強風の外で周囲の死霊、怨霊を吸収していたリーヴァルディにくたかけ公はじり、と押された。渾身の力を振るい、大鎌を弾くと飛翔能力を得たリーヴァルディへ呪いの鉤つき鎖を放つ。
「!」
 鉤こそ弾いたが墜落の呪いを持つそれはありえない軌道を描いてリーヴァルディを追った。その腕に鎖が巻き付きリーヴァルディは地へと足をつく。
「ハッ、終わりだ!」
「ええ。……あなたが、ね」
 しかしリーヴァルディは少しも焦らなかった。くたかけ公の背面から、たくさんの鎖分銅が投げつけられたのが見えていたからだ。
「さあ、遊びは終わりっすよ」
「なにッ!?」
 複数の鎖に拘束されくたかけ公は一歩も動けなくなる。鎖分銅の襲来を羽根が感知できなかったのだ。度重なる攻撃と強風で羽根は散らされその数を減らされていた。これこそがリカルドの作戦だったのである。
「……限定解放。呪いを纏い翔べ、血の獄鳥……!」
 小声の詠唱が聞こえたと思えば、バキンッと音を立ててリーヴァルディを縛る鎖がバラバラに砕け散った。彼女の左眼が一層禍々しく輝き、呪いの具現化たる獄鳥が声を上げて召喚される。同時に、くたかけ公の足元に魔法陣が浮き上がった。くたかけ公も負けじと花弁を周囲へまき散らすが、黒々とした炎がその全てを燃やし落とす。
「……報復の時は来た。この一撃をもって手向けとする。一つ余さず叩き付けるが良い。貴方達の憎悪と怨嗟と絶望を……!」
 乗るは弄ばれ命までも失ったオラトリオたちの怨念、くたかけ公に屠られた全ての存在の憎悪。拘束されたくたかけ公には、もはやそれから逃れる術などあるはずもなく。
「この、私が―――!?」
 怨念渦巻く領館の戦場に、黒い爆炎が立ち上った。

「まだだ……まだだ……!」
 血の呪いに侵され満身創痍のくたかけ公が煙の中から這い出る。その身を飾っていた羽根は黒く焦げ、花弁は無残に散らされた。痛みに唸る彼へ、リカルドもリーヴァルディもトドメを刺そうとはしなかった。なぜなら―――
「…………エセ」
「っ……! 魔獣、風情が……っ!」
「花を……羽根を……あの子を……カエセエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!」
 怒りに狂った『同族殺し』。その凶刃は、狂おしいほどに恨んだその吸血鬼の命を、確かに奪ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『天魔の幼獣』

POW   :    白の嵐
自身の装備武器を無数の【羽毛を思わせる光属性】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    白の裁き
【視線】を向けた対象に、【天からの雷光】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    天候操作
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 幼き魔獣が、まだまだ暴れることもできなかったほどに幼かったころのお話。
 親とはぐれ、羽根を傷つけてしまった幼獣はある少女に拾われました。自分と同じふわふわの白い羽根、頭に咲き誇るあふれるばかりの美しい花。そのふたつを持つ少女は、幼獣を恐れず優しく抱き上げ、羽根を手当てし、自分の食べ物を分け与えてくれました。彼女の看病の甲斐もあり、幼獣はあっという間に元気になりました。
 天を操る力を得ても、幼獣は少女の住む村で少女と共に暮らすことを望みました。しかし少女と違い、村人たちは幼獣を恐れました。そのためすっかり人間贔屓になった幼獣は少女と村人たちを思い、数日に一度だけ村に訪れることに留めたのです。望みどおりではなくとも、幼獣は幸せでした。
 しかし終わりは唐突に訪れます。
 ある日幼獣が村へ訪れると、村そのものが酷く静かになっていました。井戸も、家も、畑も、無事に残っています。でも生活をしていた村人たちが、皆、物言わぬ死体になっていたのです。
 幼い魔獣には何が起きたのか全くわかりませんでした。死体をひとつひとつ確かめて少女を探す作業は、幼い精神を酷く蝕みました。少女の死体がなかったことだけを心の支えに、幼獣はその翼を広げ、少女を探すため村だった場所を飛び立ちました。
 少女を探して数日が経って。疲弊する精神の中で幼獣はあるものを見つけます。

 ―――自分と同じふわふわの白い羽根、頭に咲き誇るあふれるばかりの美しい花。幼獣が見間違えるはずもないそれを、身に着けた吸血鬼の男を。


 オブリビオン『くたかけ公』が討たれた。その死体にスンスンと鼻を擦りつけ離れない『同族殺し』―――天魔の幼獣。魔獣は危険な存在だ。しかも狂って暴れるのならばなおさら。猟兵たちはこの強力な魔獣が戦いで傷ついた今のうちに、討ってしまわねばならない。
「……アア、アアアァァ……」
 幼獣はくたかけ公の羽根に、花に、顔をうずめてなにかを探しているようだった。感じられるのは先ほどまでの激しい憎悪ではなく、深々とした悲哀。
 不意に、幼獣がその顔を上げた。ぐるりと猟兵たちを見まわし、歯を剥きだして殺気立つ。グルルルル……と喉を鳴らしながら猟兵たちを警戒し始めた幼獣は、まるでくたかけ公の死体を守るように猟兵と相対した。
 ……もう奪わせない。そうとでも言うように。
 怒りに狂った『同族殺し』に、会話などは望めない。殺すべき敵を失った魔獣の暴力が、今度は無差別に周囲へ向く。その力が、罪なき人々に向かわぬよう……そして正気を失った天魔の幼獣をこれ以上苦しめないためにも、猟兵たちは武器を手に取るのだった。
アウグスト・アルトナー
花や羽根を取り戻したところで、『あの子』とやらは戻ってきませんよ
なので、『あの子』の元に早く送ってあげることにしましょう

【リザレクト・オブリビオン】で、死霊騎士と死霊蛇竜を召喚します
ぼくは攻撃を受けないよう、できる限り幼獣から距離をとりましょう

敵の攻撃が風属性の嵐なら、蛇竜の巨体を風除けにします
雷属性の嵐なら、騎士に天高く剣を掲げさせ、避雷針にします
2体のうち片方は、被害を軽減できるはず

攻撃が止んだら、騎士と蛇竜のうち、被害が少ない方を攻撃に向かわせましょう
騎士なら、【呪詛】を纏った剣で斬りつけます
蛇竜なら、大きく口を開け【捕食】です

苦しませず殺す方法は持ち合わせていないんです
謝りはしませんよ



「花や羽根を取り戻したところで、『あの子』とやらは戻ってきませんよ」
 牙を剥き出し、猟兵たちを威嚇する『同族殺し』天魔の幼獣にアウグスト・アルトナー(永久凍土・f23918)は冷たく言い放った。三つ連なった鉄の籠がカチャリと鳴る。中身の頭蓋骨―――『家族』は当然、ぴくりとも動かない。
「ですので―――『あの子』の元に早く送ってあげることにしましょう。ぼくには幸い、その力がある」
 羽根を広げ、できる限り天魔の幼獣と距離を取る。まだ唸り声を上げている幼い魔獣がアウグストを追うことはなかった。そこの死体、正確には死体が身に着けている花と羽根を守っていたいのだろう。その動向は、アウグストにとって都合が良かった。
 アウグストが夜空色のオーブを掲げるとそこからあふれる黒い魔力がぐるぐると形を成し、二体のオブリビオンを召喚した。死霊の騎士と蛇竜はそれぞれがアウグストに付き従いその武器を天魔の幼獣に向ける。明らかな敵意に幼獣の殺意が高まった。その怒りに応えるように、幼獣の周囲に雷がバチバチと集っていく。
「アアアアアアアアアアァァァァッッッ!!!!」
 轟く怒号と共に、雷は嵐の形を生んでアウグストたちに襲い掛かった。喰らえばひとたまりもないであろうその電撃を、アウグストは無感情に見上げる。そばに控える蛇竜はその巨体を大きく広げて壁となり、離れていた騎士はその剣を高く高く掲げた。
 ―――ピシャァァンッ!
 けたたましい音を立てて落雷が死霊騎士を貫いた。掲げた剣は避雷針となり、全身金属鎧の騎士はその一身に雷を集めていた。降り注ぐ落雷に流石の死霊騎士もその身を保てずに、ボロボロと黒ずんで崩れていく。一見戦力を削がれたように見えるが、すべてはアウグストの戦略の通りにことが進んでいた。
 怒りに任せた雷の殺到が済んだのならば。次はこちらが食らいつく番だ。
「ガァアッ!?」
 荒れ狂う嵐の暴風を防いでいた蛇竜がその場から立ち消え、天魔の幼獣の目前へ躍り出る。雷を死霊騎士が全て受け止めてくれたことによって、アウグストはもちろん蛇竜にもほとんどダメージはなかった。戦意を一切削がれていない蛇竜は容赦なくその呪われた牙を剥きだし、幼獣の白い体へと食らいつく。
「苦しませず殺す方法は持ち合わせていないんです。……謝りはしませんよ」
 痛みに悶え苦しみ、暴れまわる天魔の幼獣。しかし蛇竜も幼獣を逃がさず、その体を絡みつけてその体を食いちぎっていく。喉に食らいつくことはできなかったが、天魔の幼獣が蛇竜を振り払った頃には、その白い体は血に塗れて汚れ切っていた。
 さぞかし痛いだろう、苦しい事だろう。だがこれ以上のやりかたをアウグストは知らなかった。だから、できるだけ早く冥府へ送ってやろうとしているのに。
 アウグストとの思いとは裏腹に、天魔の幼獣はまだまだ闘志と戦意を鈍らせてはいないようだった。フーッフーッと荒い息を吐きながら、アウグストを筆頭にした猟兵たちを睨み続けている……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紬雁・紅葉
ええ、布都主
これこそは御鎮めせねばなりません

羅刹紋を顕わに幽笑み
先制UC発動

天羽々斬を鞘祓い十握刃を顕現

"剣神"布都主の名の下に
案内進ぜよう

残像忍び足にて正面からするすると接敵
射程に入り次第破魔雷属性衝撃波UCを以て回数に任せ範囲を薙ぎ払う

敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければ破魔衝撃波オーラ防御武器受けUC等で受ける
いずれもカウンター破魔雷属性衝撃波UCを以て範囲を薙ぎ払う

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

雷が語って居る
静なる常世にて、うぬを待つ者が居る…と
引導仕る

最後は総ての力を溜め渾身の一撃

逝くがよい

事後に瞑目

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※



「ええ、布都主。これこそは御鎮めせねばなりません」
 怒りの矛先を失い、狂気のままに暴れまわる『同族殺し』。猛々しいその唸り声を聞きながら、紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)は天羽々斬を鞘祓った。顕現された十握刃、大蛇断の刃は彩となり、万物を斬らんと光り輝く。
「掛けまくも畏き布都主の遍く剣とす御力お越し畏み畏み申し賜う……!」
 その祝詞に呼応するように紅葉の羅刹紋は輝きを増し、鬼巫女たる彼女の魂が“剣神"布都主に近づいていく。
「“剣神"布都主の名の下に、案内進ぜよう」
 そこに居るのは、まさしく“剣神”。
 神霊体と化し、より一層強い力を得た紅葉は天羽々斬を手に地を蹴った。足音もなく、その身を目に捉えることも能わず。正面から迫っているはずなのに、紅葉がどこから襲い掛かってくるか天魔の幼獣は捉えることも予想することもできない。
 花と羽根を守る天魔の幼獣はジリ、とその四肢で地面を踏みしめ、紅葉の残像たちを睨みつけた。その殺意に呼応するように、雷が轟き始める。接近する紅葉を迎え撃つように、幼獣は溜めに溜めたその力を解放した。
 体を打つ強風と雨、そしてすべてを焼き尽くさんとする怒りの雷。荒れ狂う嵐が紅葉を襲い残像たちが掻き消えていく。
「はぁぁぁぁぁッ!!」
 しかし雷は天魔の幼獣だけのものではない。紅葉もまた、雷を操り戦う者。その雷を敢えて刃で受け止め、その身を焦がす痛みは剣神の加護とオーラで乗り切った。
「―――雷が語って居る」
 刃に乗った雷をもって、紅葉は天羽々斬を大きく薙ぎ払った。その刀身は未だ天魔の幼獣に届かぬ距離。しかし刃から生み出された衝撃波が、雷を纏って天魔の幼獣へと襲い掛かる!
「静なる常世にて、うぬを待つ者が居る……と」
 常に自分の味方であった雷に身を焼かれ、苦しそうに幼獣が声を上げる。その白い体は焦げ、衝撃波で切り裂かれ。それでもまだ彼の爛々とした瞳は光を失わない。
「……引導仕る!」
 地を踏みしめ雷の力をその刃に溜めていく。バチバチと音を立てながら刀身に宿っていく雷と剣神の力。それを、渾身の一振りで抜き放った!
「逝くがよい」
「アアアア、アアアアア゛ア゛ッッ!!!!」
 その一撃は天魔の幼獣の翼を切り裂き。幼き魔獣は血を噴きながら地へと沈む。その様子を見て、紅葉はそっと息を吐き瞑目した。
「ヴ……ア゛……」
「……まだ、立ち上がるか」
 ふらふらとした足取りで、それでも天魔の幼獣は立ち上がった。その形相は必死であり生を求めぬが故の強さがあった。
 紅葉は再度刀を構え、天魔の幼獣に対峙する。今度こそ、この幼き魔獣を待ち人の元へ送ってやるために。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
討たねばならない
…わかってる
だけどただ倒して終わりは嫌だ
傷ついてもいい、幼獣の気持ちを受け止めてから骸の海に返したい
あの子に気持ちが通じなくても構わない
これは俺の自己満足だから

負傷してもそれを力にできる『黒化装甲』を使用
悪意が変じた魔力は幼獣をさらに警戒させてしまうかもしれないけれど、俺も倒れるわけにはいかないからね
それに…発動させて確信する
力の源である呪われた武器が幼獣を倒して終わらせることを望んでいないから俺は幼獣を討つことを躊躇っている

魔力を高め【オーラ防御】を行いながら幼獣の気持ちを受け止めるように攻撃を受けつつ接近
この身が持つ限り力を受け止めて、生命力吸収能力で幼獣の力を削いでいこう



 苦し紛れに吼える天魔の幼獣。その姿を正面に見据えながらサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)はその眉を寄せた。その表情は普段の穏やかさを装ったものとも、敵に対する冷酷で悪意に満ちたものとも、かけ離れている。
「討たねばならない。……わかってる。だけど」
 自分に言い聞かせるようにそう口にして、サンディはその手の黒剣を握りしめた。傷だらけになりながらも必死に花と羽根を―――一度奪われてしまった大切なものを、護ろうとする天魔の幼獣にサンディは悪意を抱ききることができなかった。
(……ただ倒して終わりは嫌だ)
 傷ついてもいい、幼獣の気持ちを受け止めてから骸の海に返したい。そんな願いがサンディの中に沸き立つ。そしてその思いに応えるように、黒々とした魔力がサンディを包み込み始めた。
 それは黒剣から悪意を多量に引き出す技。普段は極力使わず忌避される力だが、願いを叶えるためならば出し惜しみをする気はさらさらない。
「ッ、グルル……」
 悪意が変じた魔力。サンディを包み込む黒剣から引き出された悪意に天魔の幼獣が警戒心を高め殺気をサンディへ向けた。幼獣を刺激してしまうであろうことは予想ができていたがこうするしか術はない。サンディも、倒れるわけにはいかないのだから。
 その力を発動させ、体に黒化装甲を纏ってみて改めてサンディは確信した。サンディの力の源である呪われた武器が、幼獣を倒して終わらせることを望んでいない。故にサンディも幼獣を討つことを躊躇ってしまっているのだ、と。
(それでも……討たねばならない)
 もう一度そう決意して、サンディは天魔の幼獣に向き直る。剣を手に足を踏み出し接近し始めた黒き鎧の敵に、天魔の幼獣は咆哮をあげた。
「グガァァァァアアアアッ!!!!」
 あらゆるものを吹き飛ばすような強風が荒れ、共に鋭くとがった霰がサンディへ殺到する。小さいながらも確実に肉を削いでくるであろうそれは引き出された魔力がいくらかを受け止めていた。
 しかしその全てを止められるわけではなく、サンディの肌に赤い傷をいくつも作っていく。そしてその傷が増えれば増えるほどサンディを覆う黒い魔力はその力を増していった。
(……あの子に気持ちが通じなくても構わない。これは俺の自己満足だから)
 強風と霰に逆らいながら、痛みを耐えて一歩ずつサンディは天魔の幼獣へ歩み寄っていく。その手を前に突き出し、そこから黒剣の悪意を、黒い魔力を展開させて。近づけば近づくほど攻撃の軽減は難しくなりサンディの傷は深く、そして増えていく。だがそれによってサンディへもたらされる力もまた、増していくのだ。
 負傷したことで得た能力、生命力吸収。突き出した手を天魔の幼獣へ向け、彼の魔獣の力を吸い取っていく。痛みでなく衰弱による幼獣の弱体化―――サンディの狙いはそれだった。
 どうか、この子にとっての良き結末を。その願いを叶えるため、サンディは黒剣から悪意を引き出し、倒れる寸前まで幼獣の弱体化に心血を注ぎ続けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。本懐を遂げて理性を失った…か
ならばもはや言葉は不要。猟兵としての使命を果たすわ
…お前がこれ以上、お前が愛した人達を傷付ける前に…

今までの戦闘知識から攻撃の発動を暗視して見切りUCを発動
敵の属性攻撃を吸収魔法陣のオーラで防御して魔力を溜め、
多少の負傷は自身の生命力を吸収して治癒して魔人化する

…お前の動きは見切っている。私には通じないわ

全身を限界突破した魔力で纏い懐に切り込み、
残像が生じる早業で怪力任せに大鎌を連続でなぎ払い、
吸収した魔力を解放して傷口を抉る2回攻撃で敵を乱れ撃つ

…人の住まう世界に、狂ったお前が存在できる居場所は無い
…その狂気を絶つ。眠りなさい、永遠に…



「……ん。本懐を遂げて理性を失った……か。ならばもはや言葉は不要。猟兵としての使命を果たすわ」
 わずかに残っていた理性さえも失い、敵と愛した人間たちとの見分けもつかなくなった狂いし魔獣。幼くつたない心は嘆きと狂気に塗りつぶされ今や生ける災害と化してしまった。そんな天魔の幼獣を前にリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は凛として立つ。その紫の瞳で、まっすぐに幼獣を見据えながら。
「……お前がこれ以上、お前が愛した人達を傷付ける前に……」
 過去を刻むもの―――黒く禍々しいその大鎌を構え、殺気を顕にしたリーヴァルディに天魔の幼獣が敵意を向けた。その背後にバチバチと電流が走り出す。
 リーヴァルディには幼獣がこのあとどんな行動に出るのか予想が付いていた。館を守るシャドウライダーとの戦い、仇であるくたかけ公との戦い。そのどちらでも見せていた、天候を操る力の前兆。それを見切り、嵐が放たれる前にリーヴァルディは大魔法陣を展開した。その一拍後に、天魔の幼獣の咆哮によって雷の嵐が暴走し解き放たれる。暴風と落雷が合わさったそれが、一斉にリーヴァルディへ襲いかかった。
「……お前の動きは見切っている。私には通じないわ」
 彼女を守る盾のように展開されたその魔法陣は、迫りくる風も雷も防ぎ吸収していく。暴風がリーヴァルディの髪を荒らすも、その勢いは削がれており傷を与えるにはほとんど至らなかった。一方で魔法陣から漏れた雷は白い肌を焼くも……その傷は即座に治癒されていく。彼女にほとんど傷を与えることなく、天魔の幼獣の嵐は吸収魔法陣に飲まれてリーヴァルディの力に加わっていった。そして、魔法陣より力を得たリーヴァルディは魔人へとその姿を変じる。
 限界などとうに越え、天井無しの膨れ上がった魔力が魔人となったリーヴァルディの体を包み込んだ。その力を存分に用い、大鎌に吸収した雷を纏わせていく。バチバチと音を立てるそれを構え、リーヴァルディは強化された脚で勢いよく地を蹴った。
「……人の住まう世界に、狂ったお前が存在できる居場所は無い」
 残像が生まれるほどの早業で接近、そして接近に幼獣が反応する前にリーヴァルディは大鎌を振るった。怪力に任せたその一撃は易々と幼獣の腹を薙ぎ払い、電撃がその傷を焼く。リーヴァルディの動きを追えていなかった天魔の幼獣は、突然の痛みに叫び声をあげ単純な噛みつきの反撃しかすることができなかった。
 しかしそんな単純な一撃が魔人に届くはずもなく。最低限の動きで避けたリーヴァルディは大鎌を翻し、魔力を解放した。より強くより速く放たれる二連斬りは、焼けた幼獣の傷を抉り取り、血飛沫を散らす。ごぶ、と血を吐いた幼獣に、大鎌の返す刃が迫った。
「……その狂気を絶つ。眠りなさい、永遠に……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「その境遇に思うところはないわけでないっすけど、すでに起きた過去を救済はできない。自分達にできるのは過去を断ち切ることだけっす」
別世界なら別の救済方法もあったかもっすけど

相手の攻撃には、その属性に有効そうな【属性攻撃】を振るって威力を減らしたり反らしたりを試みる。場合によっては宇宙バイクを自動【操縦】で呼び出して盾にする

「せめてもの手向けっすよ」
【神火分霊撃】で【破魔】の力を込めた炎の【属性攻撃】で相手を抱擁する。幼獣の思い出にある少女の姿が別れば、その姿にするっすけど、手がかりはないっすかね?
オラトリオの少女の幻影を使うものがいれば、それに力を重ねるようにして使ってみたいっすかね


レナータ・バルダーヌ
そうでしたか、このオブリビオンさんもわたしと同じ……。
その想いを否定はしませんけど、今やこの世界にいてはいけない存在です。
骸の海に還っていただかなくてはいけません。

だんだん記憶がはっきりとしてきました。
領主様に花と翼を奪われるよりもっと前、とある少年を庇い背中に受けた傷……それが、最初の傷痕にして奇跡の徴。
わたしがオラトリオに覚醒したのは、他の人を護ることがきっかけでした。
どうして忘れて……いえ、忘れたかったのでしょう。
すべての始まりですから。
でも、この力の意味を思い出した今なら誓えます。
あなたのような方を生み出さない世界を、あなたが護るはずだった方のためにも、いつの日か迎えるために……。



「その境遇に思うところはないわけでないっすけど、すでに起きた過去を救済はできない。自分達にできるのは過去を断ち切ることだけっす」
 別世界なら別の救済方法もあったかもっすけど。リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)のそのつぶやきは、天魔の幼獣に届くことなく戦場に消えていった。
 過去を変えることはできない。一度起きてしまった悲劇をひっくり返すことはできないし、過去の存在たる天魔の幼獣に救いはない。幻朧桜のないこの世界では桜の精の癒しは望めないのだから。
「ウ……ウガ、ァァアア……ッ!」
 フーッフーッと息を漏らしながら、幼獣の口からぼたぼたと血が垂れていく。満身創痍の魔獣はそれでもなお背後の花と羽根を守ろうと魔力を纏っており、その魔力が巻き起こす嵐は依然として吹き荒れていた。
 その暴風は宇宙バイクを盾にして防ぎ、時折飛んでくる氷の刃は炎を纏ったビーム砲で溶かして消し飛ばす。暴走し荒れ狂う天候を冷静に的確に迎え撃ちながら、リカルドは反撃の機会を待った。
(もうちょっと手がかりとかあればよかったんっすけど)
 ないものねだりしても仕方ないっすね、とリカルドは小さく息を吐き、今持つ手がかりと見たことのあるオラトリオの姿を思考の中でかき集めた。完璧な効果は出せずとも、弱り切った天魔の幼獣の心にはもしかしたら届くかもしれない。
「せめて他にオラトリオの少女の幻影でも使う人がいれば……」
「……それなら、お手伝いしましょうか?」
 そう唸ったリカルドに、優しげな声が応えた。リカルドに声をかけたのはレナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)、翼と花を奪われたオラトリオだった。
「……いいんすか? 炎を纏うことになるっすけど」
「炎にも痛みにも慣れていますし、それに……」
 レナータは一度そこで言葉を切り天魔の幼獣へ目を剥ける。リカルドが宇宙バイクで吹き荒れる嵐を耐え始めて既に数分が経っていた。力が尽きていき段々と風も氷も雷も、天魔の幼獣の体力と共に弱まっていく。幼き魔獣の足元は自身の血で塗れ、その毛皮も赤く染まりつくしてしまっていた。そんな幼き魔獣の姿を見て、レナータは目を細める。
「このオブリビオンさんもわたしと同じ……。その想いを否定はしませんけど、今やこの世界にいてはいけない存在です。骸の海に還っていただかなくてはいけません」
 決意に満ちたレナータの言葉は強く、覚悟を感じさせた。それを感じてリカルドは息を吐く。そこにはさっき吐いた息とは真逆の感情が乗っていて。
「それじゃあ自分もできる限り一肌脱ぐっすよ。炎の操作と少女の再現は任せてくださいっす!」
「はい、よろしくお願いします……!」
 擬態する炎を限界まで生み出し、合体させていく。リカルドが慎重に操作し、大きくなったそれを全身に纏いながら、レナータは宇宙バイクの陰から歩み出た。
「ッ、グルルルル……!」
 近づいてくるレナータに気が付き、倒れかけていた天魔の幼獣が威嚇の唸り声をあげた。衰弱し傷だらけの天魔の幼獣は最後の抵抗か、わずかに残った白い体毛を、きらきらと輝く光の花びらに変えてレナータへ放った。
「っ……」
 肌を裂く痛み。その痛みに呼応するように、ずきりと背中の傷が痛んだ。くたかけ公との戦いでレナータの胸によぎった違和感。それに関する記憶がだんだんとはっきりし始める。
(この、傷痕は……)
 背中に深い傷を刻んだのはあの領主ではない。そうだ、領主様に花と翼を奪われるよりもっと前、とある少年を庇ったことで背中に受けた傷だ。それこそが、最初の傷痕にして奇跡の徴―――オラトリオに覚醒した、きっかけ。
(どうして忘れて……いえ、忘れたかったのでしょう。すべての始まりですから)
 オラトリオに覚醒したことであの吸血鬼、くたかけ公に目をつけられ地獄の日々は始まった。玩具にされ心を殺されかけ……復讐心を生んだ。だからこそレナータは心を守るため、この記憶に鍵をかけていたのだろう。
「……でも、この力の意味を思い出した今なら誓えます」
 その言葉と共に、レナータの“翼”が広げられた。花びらによる苦痛、そして天魔の幼獣のため炎を纏うという自己犠牲がレナータの力を一時的に強化し、かつての姿を形どった。
 そしてその羽根と花はリカルドの炎によって上乗せされ―――天魔の幼獣の守る、“あの子”の羽根と花へと擬態する。焼けて煤けた羽根と散った花はそれぞれ元の無事な姿でレナータを彩っていた。
「―――――――――ぁ」
 花びらの襲来がぴたりと止まる。小さな声を漏らして天魔の幼獣は食い入るようにレナータを見つめていた。……その瞳は度重なる戦闘で片目しか開かず、その片目も流れる血と痛みでぼやけ。“あの子”とレナータの差異を認知できなくなっていた。
 満身創痍の天魔の幼獣にレナータは歩み寄り、寄り添う。そっとその頭に手を伸ばせば、幼獣は甘えるようにその手へ顔を擦り寄せた。
「あなたのような方を生み出さない世界を。あなたが護るはずだった方のためにも、いつの日か迎えるために……」
 レナータがそっとその腕の中に幼獣を抱き寄せれば、幼獣はどこか安心したように体を預けその目を閉じた。きっとこの声も届いてはいないのだろう。
 レナータの抱擁によって、リカルドの破魔の炎が幼獣を包み込んでいく。それでも幼獣は苦しみの声をあげることなく、レナータの腕に抱かれていた。炎は粛々と燃え上がり、幼獣の体を灰へと変えていく。
「―――せめてもの手向けっすよ」
 最期はどうか穏やかに。もし冥府があるのならそこで本当の“あの子”と幸せに暮らしてほしい。立ち上る炎とさらさらと消えていく灰を眺めながらリカルドはそう願う。
「自分も作りたいっすね。……みんなが笑顔で暮らせる世界を」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月03日
宿敵 『くたかけ公』 を撃破!


挿絵イラスト