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魅せるは奇天烈怪奇兵(作者 夜団子
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●幻朧イントリィグ!
「うーん文恵ちゃんは失敗しちゃったねぇ。まあ彼女はアレでもよかったんだろうけど」
 つまらなそうに己の白髪をいじりながら、男は黄昏る。ぶらぶらと揺れるもう一方の手には無造作に黒色の拳銃が握られていた。
 グラッジ弾―――失われたはずの兵器を持つ彼の元へ、ひょろりとした影が訪れる。やってきたのはどこにでもいそうな若い男……否、チャラそうな、という形容詞がぴったりの男だった。
「文恵ちゃんのやりたいこと、最期までよくわかんなかったなー☆ 一応英霊サマは呼べたけど、チョー地味だったんでしょ? 派手じゃなきゃ意味なくない?」
「ははは、僕としては君の派手好きもなかなかだと思うけどね。まあいいや、今度は確実に観客の目に入るところで暴れてくれよ。君はそういうの得意だろう?」
 お小遣いでも渡すように、はい、とその拳銃をチャラ男へと手渡す。一見すれば友人同士が軽くおもちゃでも貸し合っているように見えるが、これは、れっきとしたテロの指示だった。
「かしこまり☆ 俺、呼んでみたい英霊サマがいんだよね~だからできれば怪奇人間とか見つかるといいんだけど……レアだからな~」
「怪奇……ああ、あの英霊か。グラッジ弾は影朧を引き寄せるだけだから、そこは君の運次第だなぁ」
「代わりに出来るだけ派手にして確率あげてみるね☆ ま、俺に任せとけば大丈夫だよ~。じゃ、さっそく面白そうなこと探してきちゃいまーっす!」
 出来るだけ派手に魅せるためには、観客もより多い方がいい。山奥で行われる花見の場なんて全然足りない。求めるのは、老若男女が集って熱狂するような、そんな場所。
「街中でグラッジ弾乱射! うーん、やっぱりなんか地味ぃ~。これは最終手段だなぁ。なーんか面白いことやらないかな。できれば近くだとサイコーなんだけど」
 ぶつくさと呟きながらチャラ男は歩く。白髪の男がいる部屋を、建物をあとにして街へとブラ歩きを開始した。なにか面白そうな―――暴れ甲斐のありそうなものはないかと、目を光らせて。
 彼の忍耐力はあまり強くない。ある程度歩き回って飽きてしまえばその銃を街行く一般人へと向けてしまうことだろう。その前に彼好みの「面白いこと」がない限り―――。

●奇天烈サァカス!
「諸君、一度サァカス体験をしてみる気はないかな?」
 グリモア猟兵アメーラ・ソロモンは開口一番、猟兵たちにそんなことを告げた。映像魔法を展開し、チャラ男の姿を映し出しつつ、彼女は補足説明を始める。
「以前起きた“幻朧戦線”によるテロ。それに関する予知を得てね。なんでも、まぁたやらかす気らしい。今回は厄介なことに、首謀者がどこに向かうか予測不可能と来た。しかも、放っておけば街中で被害が出かねない」
 予知を見る限り、首謀者であるチャラ男は「面白いこと」を探してぶらついている。帝都は広いため彼の足取りを完全に追うのは不可能だ。しかし、下手に大捜索でもしようものなら確実に逃げられてしまうだろう。
「それなら、飛んで火に入ってもらおうかと思ってね。“楽しいこと”を君たちに作り出してほしいんだ。具体的には即席で一夜限りのサァカスを開催しようと思って。現地のユーベルコヲド使いたちも協力してくれるけど、流石に戦力に不安が残るからね……。ああもちろん、大至急だから演目は問わないよ」
 笑顔で告げるにはいささか無茶ぶりだが、なんと既に帝都の許可はとってあるのだという。帝都公式の看板は観客を呼ぶのに一役買ってくれることだろう。
「サァカスの開演は夜だ。君たちにはまず、昼間の街で大々的に客引きをしてほしい。チラシを配ったりサァカスの噂を広めたり。ああもちろん往来で芸を披露して呼び込んでも構わないよ。首謀者の耳に届けるためでもあるが、そもそも観客を集めないと敵はやってきてくれないからねぇ」
 演目は本当になんでもいい。なんでもいいが、できればサクラミラージュでは目に出来ない真新しいものだとより良いだろう。特に客引きでは、サァカスであることにこだわる必要はない。なにか目を引くようなことをして人だかりを作った上で、サァカスへ誘導してしまえばいいのだ。
「さぁてどんな奇天烈サァカスになることやら。実に楽しみ……いや、テロリストをサァカスで捕えるのが一番の目的だとも。ふふふ」
 少し含みがあるのは気になるが、これもサクラミラージュの平穏を護るためである。己のユーベルコードや技能をどう芸に活かせるか。それを考えながら猟兵たちはサクラミラージュの街へとテレポートするのだった。





第2章 冒険 『イザ参ル奇天烈サアカス』

POW派手な技で観客を盛り上げる
SPD器用な技で観客を盛り上げる
WIZ不思議な技で観客を盛り上げる
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ポン、ポン、ポン。
 夜のとばりが落ちたころ、軽快な音楽が街中の広場に響く。
 「帝都公認」の看板を掲げ、「超弩級な団員勢ぞろい!」の襷をたなびかせ。一夜漬けで作り出されたとは到底思えない豪華なサァカステントが広場にでかでかと建っていた。
 今日突然開幕したというのに観客は波のように押し寄せ、チケット売り場が人であふれかえる。チラシを目にした者はもちろん、街中で派手な芸を見た者たちがこぞって集まっていた。もっとすごいものを見れるのだろうと、期待に目を輝かせて。
「ヒュー! こんなもん見つけられるなんて、やっぱ俺ってツイてる♪ ここでいっちばん盛り上がったときに飛び出せば……ふふふ」
 その懐に黒い拳銃を仕込んだ男も、観客の中に交じりチケットを手にしていた。虫は、火に飛び込んできてくれたようだ。

「紳士淑女の皆さま、お集まりいただき誠にありがとうございます。今宵始まりますのは一夜限りの特別ショウ! 超弩級な団員たちによる奇想天外なパフォーマンスにございます! 種も仕掛けもカラクリもありはしません。どうぞ心行くまでお楽しみください!」
 団長服に身を包んだ女の盛大な挨拶で舞台は開演する。降り注がれる視線の中、一人目の演者が舞台へ躍り出た。
 魅せるのはその見た目でも、芸でも、技巧でも良い。観客をあっと驚かせ、その好奇心を満たすものであるのならばなんでも、だ。
 さあ、既に幕は上げられた。奇天烈サァカスの始まりだ。

~~~
【PL情報】
 サァカス本番です。基本的には一人ずつ(共にパフォーマンスを行うのならば一グループずつ)演技を行います。観客席にはぐるりと囲まれているものと考えてください。
 観客席に被害が及ぶようなことがない限り、基本的になんでもありです。もちろん公共良俗に反するものはNGですが……。
 チャラ男は最も盛り上がったタイミング(第二章終了後)に飛び出してくるのでこの章で乱入してくることはありません。

 連携リプレイ大歓迎ですので、その際は【名前(呼称可)とfから始まるID】もしくはグループ名を記載ください!
パトリシア・パープル
さて、いよいよ本番ってことで、新技を見せるわよ!

UCで超能力スカンクを召喚し、それを全身に纏ってアーマー化!
奇天烈な見た目だけど、これでもパワーアップしてるんだからね

超能力スカンクの【念動力】を使って、ありえない量のナイフを物理法則無視した起動でジャグリングしたり、【空中浮遊】から音速ぎりぎりの速度で飛び回ったり
最後は【怪力】で大岩をブチ砕いてみせるわ

それぞれの技能は大したことなくても、UCで強化された状態なら、いつもよりパワーアップして使えるはずよね?

その一方で、「リッキー・ジョー」に観客席を探らせて、チャラそうな男がいたらマーク
観客の避難経路なんかも、しっかり確保させておかないとね


 ファンファーレと共に派手にサァカスは始まった。観客の期待の眼差しを一身に受けながら舞台へと躍り出るのはパトリシア・パープル(スカンクガール・f03038)だ。スカンクのキマイラたる彼女は周囲にたくさんのスカンクを連れ、華やかに登場する。街中で彼女の芸を見た者たちは一様に盛り上がりを見せ、次は何を見せてくれるのかと目を輝かせていた。
「さて、いよいよ本番ってことで、新技を見せるわよ!」
 彼女の一声に、周囲のスカンクたちが一斉にパトリシアの元へ集っていく。わらわらとその体に上り、覆い、埋め尽くし。パトリシアは、わさわさもふもふの甲冑を着たような奇妙な姿へ変貌していった。
「な、なんだありゃ……」
「あの嬢ちゃん獣使いなのか……?」
「あれモフモフで気持ちよさそー!」
 観客の反応は様々だが全体的に戸惑っている人が多い。一見するとスカンクに群がられているだけに見えるので「これが芸なのか?」と肩透かしを食らっている者もいるようだ。だがしかし、もちろんここで終わるはずがない。本番はここからだ。
「奇天烈な見た目だけど、これでもパワーアップしてるんだからね。わたしたちのヒーロースーツの力、たくさん見ていってよね!」
 MOFアーマーを纏ったパトリシアは、どこからともなく無数のナイフを取り出し、それを宙に投げつけた。ばらばらに散っていくナイフはその鋭い刃を観客席の方に向けかけ……そこで停止する。ナイフの軌道を見て悲鳴をあげかけていた観客たちは、ぴたりと止まったナイフを唖然と見上げた。
「カモン! こっちよ!」
 パトリシアがぱちんと指を鳴らすとナイフは一斉にパトリシアへ刃を向け、弾かれたように飛来する。それをひょいひょいとジャグリングしながら、最後は用意されたリンゴへ全て投げつけた。
「ハリネズミみたいになっちゃったわね。でもまだまだこんなものじゃないわよ!」
 舞台の奈落がせりあがり、パトリシアよりも大きな岩が舞台へ現れた。今度はどうする気なのか。わくわくと観客が見守る中パトリシアは意識を集中させ……。
「お、おい! あの嬢ちゃん浮いてるぞ!」
「ほんとだ! 飛んでる!」
 ふわりと浮き上がったパトリシアはカッと目を見開き、そのまま自由自在に飛び回った。観客が直視できる、音速ギリギリのスピードで。歓声が上がる中、その体をくるりと回し、大岩を狙う。
「MOF・キーック!!」
 見事な踵落としが決まり、大岩は派手な音を立てて砕け散った。大岩を一撃でブチ砕いたパトリシアに盛大な拍手と歓声が投げかけられる。それに手を大きく振ってこたえながら、パトリシアは舞台を降りていくのだった。

「うわーマジすっげェ! そうそうこういうの求めてたんだよね!」
 歓声を上げる客の一人。どこかチャラそうなその男は楽しそうに手を打ちながらニヤニヤと笑みを浮かべていた。その首には黒い鉄の首輪。膨らんだポケットには拳銃が仕込まれているのだろう。
 観客の足元に隠れながら、その男を監視する者がいた。彼はリッキー・ジョー。パトリシアの相棒だ。
 『標的発見。引き続き監視を続ける』。賢いスカンクはメッセージを送信しながら、湧く観客席に身をひそめ続けるのだった。
大成功 🔵🔵🔵

神楽・鈴音
幻朧戦線……また、碌でもないこと考えてるみたいね

とりあえず、何か芸やって盛り上げればいいのよね?
大道芸の心得はないし、やれることといえば、賽銭箱降らすくらいね

UC使って賽銭箱を大量に召喚
それら全てを操り、浮遊させながら連結させることで、様々な形にしてみせるわ

山積みにした社の形から、それを崩して細長く連結させて竜へ
竜の形を空中で崩したら、それを再び連結させて人型へ
他にも、色々な形にくっつけたり離したりして、最後は再び社の形に戻すわね

「さあ、この奇跡のご利益に授かりたい人は、帰りにお賽銭入れて帰るのよ!

御布施を求めるのも忘れておかないわよ
当然でしょ?


 興奮冷めやらない舞台に、また一人の少女が躍り出る。小柄な体躯に可憐な巫女服。巫女自体はサクラミラージュでもまま見かけるものの、その少女が纏う空気は普通の巫女とは違うものだった。そんな彼女が何を披露してくれるのか―――観客たちは期待を胸に神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)へ視線を集中させていく。
「幻朧戦線……また、碌でもないこと考えてるみたいね」
 ぽつり、と観客には聞こえない声で鈴音はつぶやく。この観客席のどこにそれが潜んでいるかは定かではないが、おびき寄せることはできているはずだ。
 それならば、今はド派手な見世物で大捕り物の前座と行こう。ついでに、お賽銭で軽く懐を温めることができれば、もはや言うことなしだ。
「さあ、出でよ! 賽銭箱!!」
 少し演技がかった、大仰なしぐさに合わせて鈴音は自分の本体、つまり賽銭箱を大量に複製する。観客たちからみれば、突然虚空から賽銭箱が大量に降り注いだように見えただろう。そのこと自体には驚くものの、生み出されたものが賽銭箱だったために、どう反応していいものか、という戸惑いも広がっていた。
「……なんで賽銭箱?」
 怪訝なつぶやきは誰の口から漏れたものか。しかしその困惑も、次の瞬間には歓声へと変わる。無造作に降り注ぎ積みあがっていたように見えた賽銭箱は『社の形』を作っていたのである。
「うちの祭神様の奇跡はこんなものじゃないわよ!」
 鈴音のその言葉に呼応するように、賽銭箱の社がぐらりと傾く。ぼろぼろと崩れていく社に観客席から悲鳴が上がるが、それもパフォーマンスのひとつ。崩れていった賽銭箱は決して床へと打ち付けられることなく、ふわりと浮き上がった。
「お、おい、違うぞ。壊れたんじゃない!!」
「竜だ! 次は竜になったぞ!!」
 浮き上がった賽銭箱たちは細長く連結し竜の形をかたどっていく。それに気が付いた者から歓声があがり、そしてその興奮は伝播していった。賽銭箱で竜ができあがると、観客たちは手を叩いて感嘆の声をあげる。
 ぐるりぐるりとその体をねじり、舞台の空中を飛び回る賽銭箱の竜に、誰もが釘付けになった。
「ハイ次!」
 鈴音の次の一声にまた竜の姿がぼろぼろと崩れていく。しかし先ほどのような悲鳴は上がらなかった。次はなにが現れるのか。それを期待する囃しばかりがサァカス内に響く。
 次に現れるのは巨大な人型。その大きな腕をゆっくりと振り回し、賽銭箱の鈴の音を響かせながら舞台上をノシノシと歩き回る。ひとしきりアピールをし終えた賽銭箱の巨人は、その頭の頂点からまたぼろぼろと崩れていった。
 形を成しては崩れ、崩れてはなにかの形になりを繰り返し、宙に浮かぶ賽銭箱たちはパフォーマンスを続けた。最後にその場で大きく散らばったあと、賽銭箱は一斉に鈴音の元へと集まっていく。始めに鈴音が賽銭箱を召喚した時のように降り注いだそれは、元の社の形へと積みあがっていった。
「どうだったかしら? さあ、この奇跡のご利益に授かりたい人は、帰りにお賽銭入れて帰るのよ!」
 爆発のような拍手の中、鈴音は意気揚々と両腕を広げ恭しくお辞儀をしてみせる。いくつかの賽銭箱は社に組み込まれずに観客席の方へ飛び回っており、ちゃっかりとお賽銭を回収していた。
「神様の奇跡を見たんだからお布施はもらわなくちゃね。当然でしょ?」
 にひひと重くなった賽銭箱を覗き込みつつ、鈴音は軽やかに舞台を降りていった。
大成功 🔵🔵🔵

日紫樹・蒼
「凄い芸?
「う~ん、とりあえずネタもないし、悪魔に頼るしかないかな……

もっとも、蒼の実力が低いので、こんな願いでも言うことを聞いてくれません
「あの……派手な演目で、お客さんを楽しませられないかな?
『そうねぇ……だったら、串刺しショーとかどうかしら?

蒼を閉じ込めた箱に刀を突き刺す水の悪魔
「ね、ねぇ! これ、ちゃんと種も仕掛けもあるんだよね!?
『勿論よ。ちゃんと梅干しの【種】を箱の中に入れておいたわ♪

中で避けようとするも、全身串刺し状態に
ただし、刺さった傷口は悪魔が呪いで水に変えるので、痛みはあっても死にません
最後は服だけボロボロの状態で箱の中から出て来ます
「うぅ……な、なんで僕が、こんな目に……


「凄い芸? ……う~ん、とりあえずネタもないし、悪魔に頼るしかないかな……」
 会場が大盛り上がりを見せる中、舞台裏で日紫樹・蒼(呪われた受難体質・f22709)は腕を組みながら唸り声をあげた。できることと言えば、己に憑いた悪魔『ウェパル』の力を借りることくらいである。
「あの……派手な演目で、お客さんを楽しませられないかな?」
 その腕に光る黄金の腕輪、水影の腕輪より召喚された悪魔はおずおずとそう頼む蒼に対し小さく首を傾げた。指を唇にあてなにか考えるような動作をしてから、麗しい女悪魔はその口元を歪める。
『そうねぇ……だったら、串刺しショーとかどうかしら?』
「く、串刺しショー!? 僕そんなのできないよ!?」
『大丈夫よ、私に任せておけば。ちゃんと種は用意しておくから♪』
 任せなさい、と言わんばかりにウインクするウェパルに蒼はうなずくことしかできなかった。もう登場のときはそこまで迫っているのだ、考えている時間はない。その判断を深く後悔することになるとも知らず、蒼はウェパルを一度腕輪に宿し直して舞台へと踏み出でた。

「おお! 悪魔召喚士か!」
 蒼の水影の腕輪から飛び出す悪魔『ウェパル』。頭に翼を生やした美しい女性の人魚の姿に、観客は釘付けになる。くるりと宙で体を翻したウェパルはその視線の中を泳ぎながら恭しく蒼の元へ降り立って見せた。はたから見れば、蒼がウェパルを完全に従えているようにしか見えないだろう。
「今宵ご覧に居れるのは摩訶不思議な串刺しショー! さあ、この少年は無事箱の中から生きて帰れるだろうか!?」
 司会の言葉がさらに観客の興味を煽り、ウェパルに集まっていた視線が一斉に蒼へと移ろった。突き刺さるたくさんの視線にパーラーメイドの服装も相まって蒼の羞恥心が高まっていく。
 あれやこれやのうちに箱の中に閉じ込められた蒼は、自分に「大丈夫……大丈夫……」と言い聞かせながらぎゅっと目をつぶった。
 ジャキンッ!!
 そんな蒼の目の前に、青く輝く刀が突き刺さった。
「ヒッ!? ね、ねぇ! これ、ちゃんと種も仕掛けもあるんだよね!?」
『勿論よ。ちゃんと種は入れたもの』
 蒼とウェパルにしか聞こえない会話。そのウェパルの楽しそうな声色に蒼はいやな予感しかしなかった。
『ちゃんと梅干しの【種】を箱の中に入れておいたわ♪』

 水の悪魔によってハリセンボンのように串刺しにされた箱。蒼が入ったその箱の惨状に、観客たちはもはや悲鳴をあげることもできずに舞台を眺めていた。「あれ生きてんの?」などといたるところから不安そうな声が聞こえてくる。それほどに容赦なく、ウェパルは蒼入りの箱をグサグサに突き刺していた。
 突き刺さっていた刀たちが一斉に引き抜かれる。青く霧散したそれに観客が湧くことはなく、彼らは皆固唾を飲みながら開かれる扉に注目していた。ギィ、と開いたその扉から現れるのは死体ではなく―――
「うぅ……な、なんで僕が、こんな目に……」
 服がぼろぼろになりつつも、無傷な蒼であった。
 全身を串刺しにはされたが、ウェパルの呪いにより傷口は水へと変わり蒼の肌には残っていない。痛みは確かに感じたので蒼の精神は服と同じようにズタボロだが。
「すげぇ!! 本当に生きて帰って来た!」
「なんで服はぼろぼろなんだ……?」
 そんな言葉と共に静まっていた観客席から割れんばかりの歓声があがった。それに弱々しく手を振って応えることしか蒼にはできなかった。
大成功 🔵🔵🔵