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シャーク・ハント

#グリードオーシャン #メガリス

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#グリードオーシャン
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#メガリス


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「皆さん。お集まり頂きまして、ありがとうございます」
 グリモアベースのブリーフィングルームの一つ、立体映像投影機の前で。ノエル・シルヴェストル(Speller Doll・f24838)が、礼儀正しく一礼する。
「この度、皆さんにお願いしたいのは……グリードオーシャンの、とある無人島にある。メガリスの確保です」
 嫋やかな内に凜とした声で、彼女はそう告げた。

 その予知の切っ掛けは、グリードオーシャンに伝わる『宝の地図』だった。
 勿論、かの世界に伝わる『宝の地図』が、一枚きりな訳は無く。真贋も確かで無い、数多ある地図の一枚であったが……ノエルの予知の切っ掛けとなった地図は、様々なリスクを考慮から外せば『当たり』の部類と言えるだろう。
 それはグリードオーシャンの秘宝の一つ、メガリスの在処を示す地図だったのだ。

 メガリスは、それに触れる者に試練を課す。その浸食に耐え抜き、力の制御に成功した者には、ユーベルコードという力を与えるが……耐えられなかった者は、コンキスタドールへと変貌させられるという、大きなリスクを伴う。
 だが、それでも尚。様々な者達がメガリスを求める。それだけユーベルコードの力は、彼らにとっては魅力的なのだろう。
 しかしコンキスタドールもまた、メガリスを求め探している。彼らは自分達の仲間を増やす為、そして自身の力をより高める為に。メガリスの力を求めているのだ。
「グリードオーシャンでは昨今、コンキスタドールの勢力が増しております。彼らにこれ以上、力と勢いを与える訳には参りません」
 コンキスタドールの力を削ぐという意味でも。コンキスタドールの撃退と排除、メガリスの確保は重要であると、ノエルはそう猟兵達に告げる。

「問題の島へ至るには、残念ながら。グリードオーシャンという世界の現状の特性として……直接この島へ、皆さんを転送する事は出来ません」
 グリードオーシャンは今のところ、気流や気象が極めて不安定であり。飛行での長距離・長時間移動は不可能な上……どういった理由か、グリモア猟兵の予知や転送能力も著しく制限を受ける。故に、転送や予知予測能力が安定して発揮可能なポイントから、徐々に周辺海域へ調査の手を広げていく必要があるのだ。
「今回は近郊の転送可能な場所から、鉄甲船に乗船して頂いての短距離航海の後、問題の島へ接岸。障害を突破しつつ、メガリスへ至り……目標を回収して頂く事となります」
 最初に言付けた通り、この島自体は無人島だ。どうやらUDCアース由来であるらしく、半ば朽ちた機能的な鉄筋コンクリートの建物が、鬱蒼とした森の中に点在しており。野生動物や原生生物は、朽ちかけた建物も利用した独特の生態系を構築している。但しそれらは障害にはなり得ない故、放置しておいて一向に構わない。

 唯一にして最大の問題は。どうやら島には既に、コンキスタドールが先行している点だ。島に到着するまでは、何の問題も危険も無いが……島に到着して以後は、彼らによる妨害が存在すると、思っておいて間違いない。
「幸い、猟兵の皆さんにとっては。致死的な妨害とはならないでしょうが……時間的余裕から、長々と付き合っていられない事も、また確かです。密林内での迅速な行動が、求められる事となるでしょう。キーワードは……鮫です」
 今回対立する事になるコンキスタドールは、鮫を眷属として使役できるらしく。様々な特性を持つ鮫を、島の各所に配している。これらが道程における最大の障害となるだろう。勿論コンキスタドール自身の能力も、一見シュールではあるが……侮って良い物ではあり得ない。油断は禁物である。

「何時もに比べ、私達グリモア猟兵がサポートできる範囲は狭く。必ずしも確かで無い情報しか、提供できないのは心苦しいですが……どうか皆さん。お気を付けて、行ってらして下さい」
 ノエルは深く頭を下げると、グリモアを両手で掲げ。転送可能なポイントへのゲートを開くのだった。


雅庵幽谷
 初めましてor三度目まして。当シナリオ担当、雅庵幽谷と申します。
 当シナリオOPを、ここまで読んで頂き。ありがとうございました。
 三作目のシナリオはグリードオーシャン世界の、無人島でのメガリス争奪戦を、お届けさせて頂きます。

 それでは、OPの補足です。

●第一章:
 とりあえず……島に到着するまでは。猟兵の皆さんは、ほぼやる事はありません。
 鉄甲船の甲板から釣り糸を垂らして、魚釣りでも楽しんで下さい(遠い目)
 尚、鉄甲船はそれなりの速度で航行しているので……素潜りや飛行など、船から足を離しての漁は、ウッカリすると船に置いて行かれる可能性があります。
 所詮は任務前の暇つぶしですので、まったりのんびりして頂ければ幸いです。

●第二章:
 冒険パートです。
 今回のメインは『妨害の突破』なので『探索』要素は添え物程度です。
 シチュエーション的には、猟兵達は『グリモア猟兵の予知の元となった宝の地図』を持っているので、宝=メガリスの大まかな場所自体は分かっている為。道自体に迷う事は無い……といった所でしょうか。
 『タ・プローム寺院』宜しく、ジャングルに浸食されたビルが点在する中を、突き進んでいく事となるでしょう。

●第三章:
 メガリスが安置されている場所で、コンキスタドールと対峙する事になります。
 基本的には、猟兵達がコンキスタドールに先行できるか、ほぼ同時に到着する事になりますが……場合によっては、それ以外のシチュエーションで対峙する事になるかも知れません。
 その辺は、第二章のプレイング次第となっております。

 それでは……皆様のプレイング、お待ちしております。
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第1章 日常 『釣りは一生の趣味』

POW   :    大物を狙って、体力の続く限り釣り続ける。釣りは格闘技だ!

SPD   :    素早い釣り竿捌きとタイミングで、狙った魚を釣り上げろ! 外道はリリースするのがマナーです

WIZ   :    釣るべき魚の習性を理解し、餌の種類やポイントを工夫して、クレバーに釣りを楽しむ

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 グリモア猟兵が確保した転送ポイントには、既に一隻の鉄甲船が停泊していた。それに乗り込み、問題の無人島へ向かう猟兵達。
 船出には、何の問題も無かった。一切。問題が発生したのは、ある意味当然だが……出航の後である。

 尤も、問題と称しはしても。食糧や飲料水の不足や、それらに伴う病の類では無い。船への襲撃や嵐の襲来でも無い。
 その『問題』とは……即ち『退屈』である。
 猟兵達に、やる事が全く無いのだ。それこそ、食べて寝るくらいしか、出来る事が無い。大抵の猟兵は航海術なと心得ないし、心得た者が居ても、彼らが割り込む余地も無い程に。鉄甲船のクルーの仕事は完璧だった。

 ウッカリすると『退屈』に殺されそうな、そんな折。誰かがこう言い出した。
「釣りをやろう!」

 『釣り』という文化を知らない者も、幾人か居た様だが……それでも、とりあえず『やる事がある』という事自体が貴重となっていた、ここ数日である。誰も彼もが、とりあえず釣り竿を手にして。クルーの邪魔にならない場所に陣取り、釣り糸を海面に垂らし始めたのであった。

※第一章のプレイングは、4月25日(土)の午前8:32より受付させて頂きます。
緋神・美麗
アドリブ・絡み歓迎
【WIZ】
釣りかぁ。最近は忙しくてやれてなかったわねぇ。折角だし大物狙いましょうか。
船員からコミュ力で釣れる魚の情報収集して大物を狙う
罠使いやサバイバルで大物用の仕掛けを用意し、第六感や野生の勘も働かせて仕掛けをリリースする
「仕掛けはこんなものかしらね。後は大物が掛かってくれることを祈って待ちましょうか。」
ある程度釣れたら捌いて刺身にしたり粗汁を作り他の人達にも振る舞う
「釣った以上しっかり美味しく頂かないとね。」



「釣りかぁ……最近は忙しくて、やれてなかったわねぇ」
 配られた釣り竿の具合を確かめながら、緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)が呟いた。深層のお嬢様然とした美少女ぶりに反して、野外活動の類にも精通している美麗にとって。釣りもまた勝手知ったる分野である。
「折角だし、大物狙いましょうか」
 竿を一振りすると、それを肩に引っ掛けて。彼女は周辺海域と棲息する魚に詳しい、鉄甲船クルーの元へ向かった。

 結果として……『大物然とした大物』つまり、大型魚の生息域や漁場、そしてその付近を通過する予定は無いものの。この時期ならば、この近海では。UDCアースの日本で呼ぶところの『キハダマグロ』の近似種が、生息域からはぐれた個体が竿にかかる可能性があるという。
 ただ基本的にマグロ釣りは、海面付近の小魚の魚群を餌にする為に集まってきた個体を引っ掛けて釣り上げる物だ。その為、少なくとも竿釣りの場合、船を走らせながら狙うのは難しい。故に糸を垂れている間は、船を停めて狙いを定めるのが大抵だ。
 尤も、一本釣り漁で生計を立てるつもりなら兎も角。今は単なる暇つぶしの遊びである。釣れるに越した事無いのは無論だが、釣れなくても手慰めにはなる。それに……どうせ遊びであるのなら。むしろ少々困難な方が、甲斐があるという物だ。
 様々な情報を提供してくれたクルーに礼を言うと、美麗は工作室へ足を向けた。

 工作室での作業の後、美麗が再び甲板へ姿を現したのは、その約一時間後だった。手にした竿は、皆に配られた物と同一だったが……釣り糸は丈夫な強度を持つ物に替え、釣り針も大振りな物を採用した。針は小さい方が、見破られる可能性が下がりそうな物だが、しかし大物釣りの場合。狙った獲物の歯よりも大振りな物を使わないと、針を簡単に深く飲み込まれて、得物の歯が糸に当たる様になり。ほぼ100%噛み切られてしまうらしい。
 ただ元々が、思いつきによる突発的な遊びであった為。撒き餌の類は用意できない。美麗は咄嗟に自作のルアーを作り、それに選別した針を仕込む事にした。海面近くに小魚類の群れが居なければ、成立しない仕掛けだが……上手く行けば撒き餌は省略できる。
 そして仕掛け同士を繋ぐ結び目も、シンプルながら強度が高い技法を使用した。大物は長時間の勝負になる事も少なくないので、仕掛けの繋ぎ目である結び目は、往々にして仕掛けの弱点になる。ある意味では針や糸よりも、気を使わねばならない項目だ。
「さて……仕掛けは、こんなものかしらね。後は、大物が釣れるチャンスが訪れる事を、祈って待ちましょうか」
 そう呟くと、美麗は甲板脇に座り込み。じっと時を待つ。忍耐心を試される様な一時だが、それもまた。釣りの要素と言えばその通りである。ただ比較的幸いな事に、待つ時間はそう長くは無かった。

 鉄甲船の進行方向から、やや右に寄った海域に。海面が不自然にざわめき、更にそこへ向かって数羽の海鳥が飛翔している。海面近くの小魚を餌にすべく、群がってきているのだ。
 そして……その魚群を半ば突き破る様に。大柄な魚の背が見え隠れしている。目標のキハダマグロもどきか、別の魚かは分からないが……少なくとも、結構な大魚である事は間違いない。
 美麗は竿を一振りして、慎重に狙いを定める。遊びと暇つぶしの釣りの為に、船を停める訳にはいかない。チャンスは普通に考えれば、一回きり。失敗したら後は無い。
 竿がしなりつつ鋭い風切り音を立て。仕掛けが美しい弧を描いて、魚群の只中に落下する。都合良く、手作りのルアーと魚群の魚とは、大きさがよく似ているらしい。そのまま、海面下から襲い来る大魚から逃げようとする小魚に紛れさせ。小魚達と一緒に逃げを打っている風に、ルアーを動かしてみせる。
 ここが、腕の見せ所だ。あまりにも動かしすぎると、わざとらしくなるし……動きを止めすぎると、仕掛けがバレてしまう。様々なテクニックを駆使して、演技を続ける美麗の額からは。汗が滲んで流れ落ちていた。
 それでも瞬きすら行わず、ルアーを操る彼女の両手に。不意に、全く不意に。竿を、或いは身体全体を持って行かれそうな程の、凄まじい負荷がかかった。毛ほどでも油断していたら、竿か美麗自身は波の下であったろう。
 ――かかった!
 そう心中で喝采しつつ……美麗の両腕は無意識的に、竿を思い切り引き立てた。得物が針を吐き出すか、逆に奥まで飲み込んでしまう前に、得物の唇などに針を引っ掛け、抜け難くする為の手法である。
 上手く針がかかったか否かは、実際の所。釣り上げられるか、逃げられるまでは分からない。しかし、かかった事を前提としなければ『釣り』自体が成り立たない。幸い今のところ、手応えは変わらず両手に伝わってくる。マグロと言えば、海の魚の中で屈指の遊泳速度を誇る魚である。その抵抗する力も、また凄まじい。
 美麗と大魚との戦いは、ここからが本番だった。

 それから、数時間の後である。
「釣った以上、しっかり美味しく頂かないとね」
 大物――キハダマグロもどきとの、一時間近くにも渡る激闘を制した美麗は。調理場の予備エプロンを借りて、調理クルーと共に腕を振るっていた。
 何せ『大魚』の呼称に相応しく、体長二メートルあまりの巨体である。解体するだけなら兎も角、切り出した部位を余さず調理するには、流石に人手が足りない。幸い、この鉄甲船の調理クルーはこういった、航海中に確保した食材の取り扱いに長けており。血抜きと解体作業は殊の外、手際よく進んでいった。
 部位ごとに解体された生肉は、赤身やトロ部位、そして中落ちは刺身と丼に。内臓はモツ煮に仕立て、尻尾の輪切りはステーキに。そして頭は豪快に丸ごと、かぶと焼きに仕立て。残った粗は、他の食材と合わせて粗汁に。
 この鉄甲船に乗り込んだメンバーの全員が、お腹いっぱい食べられる……とはいかないが。ご馳走を食したと、満足感を得られる程度の量は。充分に確保できただろう。
 当然ながら、この夕食にちょっとしたご馳走をもたらした美麗は、手放しで賞賛され。背をどやされたり、握手を求められたり。幾人かには拝まれたりと……夕食の片付けが終わるまで、色々と忙しい時間を過ごす事になったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エメ・パラディール
出来るだけ先行して、あわよくばメガリスをいただきたかったけど、これじゃあどうしようもない!
野心を秘めながら踊って暇を潰していたけれど、釣りが楽しそうだったので便乗。
珍しい魚とかでっかい魚とか釣って皆に自慢するぞ!
野生の勘を頼りに釣りに挑む!

釣れるたびに周りの人(クルーの人とか)に盛大に見せびらかす。
「この魚珍しいんじゃないか?どうだ!」
珍しくないといわれると一瞬落胆するけど、すぐ気を取り直して釣り再開。
珍しいといわれたら、さすが私と自画自賛。

釣った魚は美味しく食べたいけれど、誰か料理が出来たりしないか?
余裕がありそうな人に聞いてみる。
料理してもらえたら万々歳、皆忙しかったら残念そのまま食べる!


上野・修介
※絡み・アドリブOK
暇があれば鍛錬をするのが自分にとっての常ではある。

しかし、すごく広いというわけでもない船の上。
みんなが釣りをやろうというに傍でトレーニングしてたら邪魔だろう。

「そういえば、海釣りってやったことないな」
折角なので参加。

基本的には結果にはこだわらず、ぼーっと海を眺めながら糸を垂らす。

念の為、奇襲や不測の事態に備え、周囲を警戒しておく。
楽しんでいる他の猟兵達や作業をしている船員達に水を差さない程度に、さり気なく。


(補足:非戦闘時、誰かと話すときは基本的に年齢性別種族関係なく敬語。呼ぶときは左に来る名前(姓・名なら姓、名・姓なら名)+さん付け。戦闘時は口数は最低限)



「出来るだけ先行して、あわよくばメガリスを頂きたかったけど……これじゃあどうしようもない!」
 エメ・パラディール(キマイラのパラディン・f06803)は、鉄甲船の甲板で握りこぶしを天に突き上げ、大声で叫んだ。
 ある意味では、正直で宜しいと言うべきなのかも知れない。実際、そのシャウトを耳にした鉄甲船のクルーも。半ばは苦笑、半ばは生暖かい微笑を彼女に注いでいる。鉄甲船の甲板で、どれだけ一生懸命走り回ってみても。それで目的地への到着が早まる訳では無いが……腹の中で企んで、コソコソと動き回られた挙げ句。自分達の仕事の邪魔をされるよりは余程マシ、といった所なのだろう。

 ちなみに今回の場合、発見されたメガリスはグリモアベースで管理・保管される為。誰かの手に渡るとか、報酬として支払われる事は無い。爆発物処理班が解体した爆弾が、爆弾を処理した者の手に渡る訳では無いのと、同列の理由と称すれば。概ね解釈可能だろうか。

 そんな訳で、暇と体力を持て余したエメは、甲板で踊って――比喩表現では無い――発散していたのだが。他の猟兵達が甲板から釣り糸を垂らしているのに興をそそられ。彼女も真似してみる事にした様だ。
 その隣で、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)もまた、甲板から黙々と釣り糸を垂らしている。彼もまた、他の猟兵が竿を振るうのに興味を持って、竿を手にした一人である。
 修介の場合、やる事が無ければ。黙々と鍛錬を行うのが常なのだが……他の猟兵が釣りに興じている傍で、トレーニングをしていたら邪魔になりかねないのと、もう一つ。
「そういえば、海釣りってやった事ないな……」
 その二つの理由によって。彼は海を眺めながら、ぼんやりと釣り糸を垂らしているのだった。
 尤も、その風体は穏やかにのんびり構えていても。完全に気を抜いている訳では無い。奇襲や突発的なトラブルに対処できる様、密かに気を張り。警戒を続けている。無論、鉄甲船のクルーや他の猟兵達に勘付かれない様。さり気なくではあったが。
 ……実際問題、猟兵達の方から余計な行動を起こさない限り。グリモア猟兵の予知から大きく外れた『突発事』は起こりえないのだが……身に染みついた習慣や行動といった物は、簡単に変えられる物では無い。恐らく修介の『用心』に気付いた猟兵は居るだろうが、それでも誰も何も言わないのは。それを理解している故である。

「どりゃぁぁ~っ!!」
 掛け声というか、怒鳴り声というか、雄叫びというか。いや、単に身体の動きにつられて漏れただけの、合気の声なのだろう。しかし、魚がかかっていようがいまいが、竿を上げる度。エメはこの手の叫びを上げている。勢い余ってすっぽ抜け、ひっくり返った事も一度や二度では無いのだが……当人は一切気にしていないし、周囲もむしろ微笑ましげに、生暖かく見守っている態だ。
 ちなみに今回は、そこそこに大きな魚がかかっていた。竿を立てて魚を引き寄せると、わしっと魚を鷲掴みにして、ニンマリと笑む。感触が気持ち悪いと、生魚に触る事を嫌がる女の子は決して少なくないのだが、エメはその手の嫌悪とは無縁であるらしい。むしろそのまま魚を咥えて駆け出しそう……と思えなくもないのは、恐らく彼女の容姿から来る錯覚ないし偏見であろうが。
 鷲掴みにした魚を、隣の修介に突き出して。上がったテンションのままにまくし立てる。
「この魚、珍しいんじゃないか? どうだ!」
「珍しいかどうかは分からないけど……旨そうですね」
 問われた修介だが、彼も魚に詳しい訳では無い。海釣りは初体験なのもあり、何が釣れるのかも分からないのだ。ただ、自身の記憶を照らし合わせると、その魚は大きめの『鯖』に見えた。連想で鯖の塩焼きや味噌煮込みを思い出し。その印象のまま答えてみた訳だ。
 答えを受けたエメは、尻尾をパタパタ振りながら目を輝かせる。
「美味しそう!? どうやって食べよう!? 何が美味しいかな!?」
 見た目の印象で鯖だと勝手に決めつけたが……本当に鯖なのかは保証の外だ。だが、大きく外れてはいないだろうと思い直し。今まで食べた事のある鯖のメニューを引っ張り出す。
「塩焼きとか、味噌煮とか……ムニエルとか、唐揚げとか?」
 修介が品名をひとつ挙げる都度、エメは尻尾を振りつつ何度も頷く。半ば開いた口からは、涎でも垂れそうな勢いだ。
「多分、調理場に持って行ったら。料理して貰えると思いますよ」
 修介がそう締めくくると、エメは釣果の詰まった――大小取り混ぜ、仕分けもしていないが。まず『大漁』と称して良いだろう――バケツを抱え。上機嫌で料理場へ向かおうとしたが。目に入った修介の竿が、思い切り引いている事に気付く。
「ちょっとちょっと! 引いてるよ!?」
 大騒ぎするエメの声で、ようやく修介も自身の竿に気がついた。
「おっと……っ!」
 慌てて竿を手に取り、竿を立て。戦闘態勢(?)に入る。中々に良い引きだ。少なくとも、先程エメが釣り上げた鯖くらいのサイズは、期待できそうである。
 グイグイと左右に振り回される竿を御しながら、修介は機会を待つ。
 あえて力を込めず、溜めず。息も殺さず――しかし、意地は貫く。
 竿を通して伝わる、魚の挙動をしかと捉え。さりとて、それに逆らわず。ただ心の内に、その動線を描き映して……機会をしかと、窺い続ける。
 生物が相手である以上、無限の運動などあり得ない。必ず疲労し、隙が生まれる。その時こそが、勝負の時だ。
 自他の力を正確に見極め、機会を図り。訪れた好機を、絶対に逃さない。それは戦士の矜持であり、戦士で在り続ける為の心得であった。

「おおー! 大っきいの釣れたねぇ!」
 魚が疲れ切り、思わず沈下ではなく浮上を選んでしまった刹那を見計らい、修介が見事釣り上げた魚を、エメが評した第一声である。彼女は手放しで誉めそやしているが、釣り上げた当人は差程喜んでいる風は無い。満足があるとすれば、自身を無駄なく御する事が出来た、その一事である。
 ただ実際として、釣り上げた魚は五十センチ前後。先程エメが釣り上げた鯖にも全く見劣りしない。見事な釣果と称して良いだろう。
「これ、なんて魚かな?」
 エメは重ねて問うてみたが、修介も首を傾げるしかなかった。結局、通りすがりのクルーに訊ねた所「恐らくハマチだろう」との答えが返ってきた。言われてみれば、確かに小型のブリといった体である。
「ハマチかあ……刺身か照り焼きか、それとも唐揚げか……」
 修介がとりあえず挙げてみた料理名で、既にエメは食欲全開の顔つきだ。しかしそれを見やっていたら、修介の方も腹が減ってきた。或いは釣られただけかも知れないが……そろそろ夕飯の仕込みをしても良い頃合いである。自分達の釣果を差し入れつつ、ついでに少し摘まませて貰っても罰は当たるまい。
「お刺身、照り焼き。竜田揚げ~! 塩焼き、味噌煮に、カルパッチョ!」
 前を行くエメの歌声(?)を、適当に聞き流しつつ。修介も自身の釣果を差し入れる為。得物入れのバケツと、二人の釣り竿を手に。甲板を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハズキ・トーン
POW
「おや、釣りですか?
釣りはやったことないですねぇ。
でも聞いたことはありますよ。
そう、釣り針に餌…をつけ…魚が掛かったら引き上げるんですよね?
小さい魚は逃がしてあげる…
よし、やってみましょう!」
なんの知識もなく見様見真似で釣りを。
魚の知識もないのでほどよい大きさの魚を釣ってもリリース。
知らぬうちにただの大物狙いに。
釣れても釣れなくても、誰かに教えられるまで、体力が続くまで、釣りを楽しむ。


ファラン・ウルフブラッド
◇アドリブ・絡み歓迎◇

クハハハハ! お宝の眠る無人島、そしてメガリス! いいねぇロマンがあるじゃねぇか! 必ず見つけ出して、この手に掴んでみせるぜぇ。

行動:POW

狙うは一点、大物狙い!使うエモノは……コイツだぁ!!
『特大網カゴ』

……え、釣りはって?釣るぜ? 『宝釣り』
コイツを怪しい場所に投げるだろ? 船で引くだろ? で、しばらくしたら引っ張り上げるのさ。 そしたら何か面白い物が採れるって寸法さ!
…いいんだよ!浪漫と情熱!そして諦めなければ、夢はいつか叶うんだぜ!

というわけで『第六感』と『航海術』そして『情熱』を持って『宝探し』をするぜぇ!(魚は・・・まぁカゴに入れば儲け物位のノリです)



「クハハハハ! お宝の眠る無人島、そしてメガリス! いいねぇ。ロマンがあるじゃねぇか! 必ず見つけ出して、この手に掴んでみせるぜぇ!」
 まるで演劇の役者の様に、大音声で見得を切るのは、ファラン・ウルフブラッド(紅嵐の航海者.EX・f03735)だ。海岸線の向こう側に、点の様に見えてきた目的地を見やり。気分が盛り上がっているらしい。
 その足下にある大きな網籠を見やり。首を傾げたのは、ハズキ・トーン(キマイラの聖者・f04256)である。何せ、用途が全く思い付かなかったのだ。彼の視線に気付いたファランは、両手を腰に当てて声を張る。
「どうした、お主? 何か気になる事でもあるか?」
 問う前に問いかけられて。ならばとハズキは、疑問をそのまま口にした。
「この籠は……一体何に使うんですか?」
 答えは、明瞭に返ってきた。
「これか? これは……『釣り』に使うのだ!」
 しかし、返答の明快さに比すれば。答えを得た者の反応は芳しくない。
「私も釣りは、やった事ないんですが……『釣り』というのは、竿に釣り糸を張って、釣り針に餌をつけ。魚が掛かったら引き上げるんじゃなかったでしょうか?」
「ん? 『釣り』なのかという意味か? 釣るぜ? 『宝釣り』だ!」
 ハズキの疑問に対して、またしても明瞭な返答が返ってきた。が、更に聞き慣れない単語に、ハズキの疑問は一向に解けない。流石に解説が必要かと、籠を手にして、ファランは言を継ぐ。
「コイツを怪しい場所に投げるだろ? 船で引くだろ? で……しばらくしたら、引っ張り上げるのさ。そしたら、何か面白い物が採れるって寸法さ!」
 要するに、一種の引き網漁である。その単語は知らなくとも、原理自体は分かり易い。故に、ハズキも一応納得は出来た。尤も『釣り』と称せるかは、中々に微妙なラインではあったか。
「何なら、やってみるか?」
 言いつつ、ファランはハズキに籠を手渡す。何となしに受け取った方も、しばし籠を眺めていたが
「そうですね。やってみましょう」
 肯定の意思を示し。ファランの言う所の『宝釣り』を、始める事にした。

「さあ。思い切って、この籠を投げ込むがいい!」
 投げ込む場所やら、投げ方など。ハズキは悩まなくも無かったが……
「いいんだよ! 浪漫と情熱! そして諦めなければ、夢はいつか叶うんだぜ!」
 という、ファランのゴリ押し、或いは無茶な論法に押し負け。とりあえず、適当に海へ投げ込んでみた。籠の口には縄が結ってあり、その端はファランが甲板の縁に結びつけている。大きさの割に軽い籠は、ゆっくりと海中へ没していき。やがてその姿は完全に見えなくなった。
「よし。後は成果を待つだけだな!」
 満足げに頷くファラン。一方、これだけで良いのかと、ハズキの方は釈然としない物が無くもなかったが
「釣りとは、果報を待つ物だ!」
 自信満々なファランの断言に、そんな物なのかと納得してしまうのだった。まあ確かに、釣りにはそんな一面が無くもないのは事実である。

 さて、そんなやり取りより数十分が過ぎて。『果報の回収』の時が来た。ファランとハズキ、二人で綱を手に取って、それをたぐり寄せ初める。水の抵抗や、綱の長さも相まって。一人で引き揚げるのは少々酷であったからだが……この『籠を引き揚げる』という作業。案外と楽しい物だった。何が入っているか、または何も入っていないのか。宝箱の蓋を開ける寸前の昂揚と、割と似た様な物であったろう。
 或いは独りで作業をしていたら、後ろ向きがちの思考に支配されたかも知れないが。二人であるという事が、思考を前向きに引っ張っていてくれる。
「ふふふ……この重さ。きっと何か、面白い物がかかったに違いない!」
 ファランはそう決めつけて、喜色満面である。ハズキは彼ほどには楽観的な意見を持っていないが、言われてみれば何となく、手応えは籠だけより重い様にも思える。
「ええ。何か入っていたら、面白いですね」
 故に笑みを浮かべながら、そう返した。嘘偽り無い、本心からの言葉だ。その返答に満足げに頷きながら、ファランは甲板の縁に足をかけ。一気に綱を引っ張る。ハヅキも同じ体勢で綱を引くと、海面近くに籠が姿を現した。
「一気に捲るぞ!」
「はい!」
 二人で息を合わせて、一気呵成に綱を引き上げ。籠は無事に、鉄甲船の甲板へ揚げられた。籠の中からは、何やらがゴソゴソと蠢く様な音と、狭い所から空気が噴き出している様な奇妙な音が、断続的に聞こえてくる。
「何の音でしょう……?」
 ハヅキはそう問うてみたが、ファランにもすぐには判然としない。結局、
「中を見てみれば分かる!」
 という、安直だが妥当な答えを発し。二人は同時に、籠の中を覗き込んだ。
 途端。
 二人の視界を、黒い何かが遮蔽した。質の悪い霧吹きで噴出した様に、黒い液体が噴き撒かれたのである。
 流石に、二人の顔が真っ黒になる……という程では無かったが。一部はファランとハズキの顔や服の襟元にかかり、しっかりと汚してくれた。
 キョトン、と。思わず固まってしまったハズキであるが……ファランの方は呵々大笑して、籠の中に手を突っ込む。籠から引き抜かれた手には、赤黒い様な色をした、ウネウネと蠢く『何か』が掴まれている。正直、気色悪い事この上ない。
「蛸だ!」
 ファランがそう宣言するに至って、ハズキもようやく『それ』の正体に得心を得た。
「食材として切り分けられた後や、戯画化されたイラストでは。それなりに見かけた事はありますが……生きた本物は初めてです。意外とグロテスクな物なのですね……」
 すっかり感心した風で、まじまじと『それ』を見つめるハズキである。
「デビルフィッシュとか、悪魔の眷属とか言われる事もあるらしいな! まあ、この見た目では仕方あるまい!」
 バッサリと斬り捨てられた。まあ、蛸に人語が分かる訳も無し。異論を唱える事も無かろう。彼(?)には更に、過酷な運命が待ち受けている事を思えば。容姿を貶された事など些末事に違いない。つまり、
「見た目はコレだが……美味いぞ!」
 という事である。
「なるほど……例えば、タコ焼きですか?」
 一番に浮かんだ蛸料理を、ハズキは口にしてみたが
「それも良いが……むしろここは『焼き蛸』と行きたい所だな。きっと刺身や唐揚げも美味いぞ!」
「どれも確かに、美味しそうですね……」
 ファランが列挙した数種の蛸料理の名を聞いて。納得した様に、幾度も首を縦に振り。顔と仮面を拭ったハズキは、改めて提案する。
「では早速、調理場へ差し入れに参りましょうか」
「無論だ! 今回の『宝釣り』は、中々の成果であったな!」
 こうして、ウッカリ妙な籠の中に入ってしまった不幸な蛸は。自らをもって、猟兵達の食卓を彩る事になったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『鮫! 鮫!! 鮫!!!』

POW   :    もちろん堂々正面突破!

SPD   :    物陰に隠れたり見つからないようひっそりスニーキング!

WIZ   :    鮫類皆兄弟! 説得して平和的に切り抜ける!?

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 目的の島へと上陸を果たし。その奥地、メガリスの安置場所へと向かう猟兵達。
 彼らを待ち受けるのは……過酷な自然環境でも、獰猛な原生生物でも無く。

 例えば、まるで泳ぐ様に宙を回游する鮫。
 例えば、周囲の自然物に溶け込む様に一体化して得物を待ち受ける鮫。
 例えば、木々の間を跳び移りながら得物を窺う鮫。
 例えば、地中こそが我が領域とばかりに地面を泳ぎ回る鮫。

 その他、様々な……鮫、鮫、鮫。

 様々な鮫が猟兵達を待ち受け、その足を止めんと襲い掛かってくる。
 これが、グリモア猟兵の言っていた『コンキスタドールの妨害』なのだろう。
 彼らを撃退し、或いは避けながら。猟兵達は、先へ進まねばならない。


※断章に例を挙げた鮫の他、様々な鮫が皆さんを待ち受けています。
『こういった鮫が居たら、こう対処する』といったプレイングを頂けましたら
無茶なアイディアで無い限り、採用させて頂く予定です。
皆様のプレイング、お待ちしております。
上野・修介
※アドリブ、連携歓迎
「……鮫か」
どんな鮫でだろうと、鮫である以上は弱点は鼻先だろう。

「後は、どう『釣り』出すか」

呼吸を整え、無駄な力を抜き、この拳【グラップル+戦闘知識】を以て推して参る。

UCは防御重視

・鮫
地中を泳ぐ鮫

・対処
恐らく音と振動で獲物の位置と状態を識別しているはず。

先ずは観【視力+第六感+情報取集】る。
高所に上がって周囲の地形、対処する鮫の特性と数を把握。

しかる後、地面に降りて
『走って逃げ、段々に速度を落とし、疲れて止まる』
というふりをしておびき寄せる。【ダッシュ+逃げ足+だまし討ち】

十分に引付け、食らい付く為に地面から出てきた瞬間を狙って鼻っ柱をぶん殴る。
【見切り+カウンター】



「……鮫か」
 最早、この島の原生生物ではないかと思える程。この島の生態系に溶け込み。我が物顔で宙を漂い、のさばっている『鮫』を見やり。上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は呟く。
 ただし、基本的なフォルムは海洋性の鮫と変わる所は無い。ならば、その弱点は『鼻先』にあるだろうと、概ねの当たりは付いた。
「後は、どう『釣り』出すか……か」
 呼気を整え、身体から余分な力を抜き。彼の拳を以て、推して参る。それが、修介のスタイルである。
 目下、彼が一番厄介に感じるのは、地中を泳ぎ来るタイプの鮫だ。恐らくは、足が地を打つ音と振動で、こちらを察知しているのだろうが……修介は現状、空を舞う類の能力も装備も持たず。移動するには、どうしても地を蹴って移動するしかない。故に、こちらの位置を常に知らせ、向こうの位置は必ずしも察知し得ないとなれば。早い内に追跡者を叩いておいた方が、移動効率も精神衛生にも具合が良い。

 精神を研ぎ澄ませ、ひとたび一際強く地を蹴って。高木の枝の上に舞い降りて……高い視力と第六感にて。地を泳ぐ鮫どもが泳ぎ回る姿と、その数、その反応速度などを把握する。
 修介が地を蹴り、跳躍する様に反応した地中鮫は、全部で三匹。その反応速度と、狩りを行う為の習性や行動原理を見切った後。彼はおもむろに、樹の上から地面に舞い降りた。そのまま、自身が動きやすい地面を選んで駆ける。無論、単に走る訳は無い。『走って逃げる』体を装い、疲れを演じて徐々に速度を落とし。やがて力尽きたかの様に、足を止めた。
 少々クサい演技だろうかと、修介自身は若干心配もしていたが……幸い、鮫たちはそこまで感受性は高くない様で。修介を取り囲み、追い込む様に弧を描き。その径を徐々に狭めて、飛び掛かる時を図る。
 無論、その時こそが。修介の反撃と蹂躙の為、窺ってきた好機その物で。追跡者と妨害者を、一気に排除する機会。

 まるで海面を割るかの様に、地面から躍り上がってくる三頭の地中鮫。スケールで計ったかの様に、ほぼ百二十度ずつのポイントから、同時に飛び掛かってくる。
 しかし、なまじ計ったかの様に正確な行動は。逆に待ち受ける側からは、分かり易く対処しやすい行動となってしまっていた。その時間差すらも、対処側である修介の裁量する事柄であり。結果、迎撃は容易であった。
 一頭目の鮫の鼻面に、右のストレートを叩き込み。二頭目には左に体を旋回させながら、左の裏拳を叩き込む。そのまま体を回しつつ、三頭目の鮫に後ろ回し蹴りをブチ込んで。ほんの数秒で、海洋生命体の上位種である筈の鮫は、地の上でのたうち回り……まな板の上の何とやらを、体現する存在と成り果てた。
 どうやら、一度地の上で撃墜されたなら。再度地に潜る為には、姿勢なり意識なりを制御する必要があるらしい。地表でピチピチと跳ねる様は、滑稽にも哀れにも感ずる体で。修介にしてみれば、無理にトドメを刺す気にもなれない。

 結果、地で跳ね回る鮫たちを捨て置いて。修介は先を進む事にしたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋神・美麗
鮫鮫鮫…多過ぎでしょ全く

大鮫の口の中に子鮫がいっぱいとか放電する鮫とか一体どうなってるのよ。

大量の鮫撃退に出力可変式極光砲を攻撃回数重視で使用しまとめて薙ぎ払う

放電鮫は遠距離から超巨大電磁砲で粉砕する

他の鮫も数が多いなら出力可変式極光砲、大型は超巨大電磁砲で対処していく

いい加減、鮫の相手も飽きてきたわね…。親玉はまだかしら



「鮫、鮫、鮫……多過ぎでしょ、全く……」
 緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)が、思わずぼやくのも仕方ない。お前達は本当に元は海洋生物なのかと、誰かにツッコみたくなる程。ここの鮫どもは『陸上』に適応しきっていた。いつの間にやら『縄張り』すら持っている様で。互いのそれに干渉せぬ様に生き。そこを犯す者だけを襲っている風にも感じられる。
 元はコンキスタドールが、足止めの為に放った者共の筈だが……軽く観察する限り、この島の生態系の一部と、成り果てている風すらあった。
 尤も、島の生態系の一部となっているからと言って。島の生物を襲わないという訳では無い。むしろ『島の生態系の一部』である故に、島の生物を襲い。それを捕食する事で、自身を生態系に組み込んでいる様でもある。そして……その生態系の埒外である物を襲うのも、彼らの役割である様にも見えた。
 要するに、生態系の外来種を迎撃する役を、生態系の役割として与えられているのが。この異様な生態を誇る、鮫たちであるらしい。最早コンキスタドールの手による物か否かは、何の関係も無いのかも知れない。
 しかし、これが猟兵達にとって、最も重要な事だが……彼らが生態系に受け入れられたか否かは関係無く。猟兵達の足止め役としては、この鮫たちは立派に機能しているのだった。

 背ビレと胸ヒレを帯電させて。その口を大きく開けて、雷球を吐き出す鮫も居れば……どういう外的影響を受けたのか。突撃しながら、口の中から多弾頭ミサイル宜しく。自律的に標的を定めて飛び回る小鮫を、大漁に吐き出す鮫も居る。
「いやいや。一体どうなってるのよ……」
 思わず、そう愚痴ってしまうのも無理はない。最早、生命体なのかも疑いたくなる奇抜ぶりだ。ユーベルコードで無いだけ、まだ対処しやすいが……兎角心臓に悪い。だがしかし。いつまでもお付き合いしていられる程、任務中の猟兵は暇では無い。何とかご退散頂くなり、無理矢理道をこじ開けるなり。する必要がある。自主的に退散頂けないなら、こちらからそう仕向ける必要があろう。環境破壊の誹りは免れなかろうが……コンキスタドールへメガリスを渡さない為、目を瞑って頂く事にする。

 美麗は両手を頭上に翳すと、サイキックエナジーで生成した雷球を生み出す。そのまま体を躱して、多弾頭鮫(?)の斉射と突撃を回避すると。身体を捻って方向転換しながら、口中に小鮫を再装填する鮫へ向け。雷球を連続して撃ち放つ。
 数発は鮫の身体に当たり、焦げ目を作った程度だったが。一発は片目に当たり、眼球を焼き潰し。更に数発は口中に飛び込んで、中の小鮫を盛大に誘爆させた。その炸裂は鮫の口中で増幅されて膨れあがり……それが連動して、大掛かりな爆発へ変貌すると。鮫の身体その物が耐えきれずに、周囲の木々を巻き込んで大爆発を起こし。後には小規模の爆発痕以外、何も残らなかった。
 その隙に、美麗は大樹の枝へと登り。雷電を放つ鮫へと狙いをつける。両手を前方に突き出して構え、掌中に雷球を生み出す。そのまま、雷球を巨大化させて威力を増大させつつ、狙いを定め。
「チャージ、セット。いっせーのっ……‼」
 雷撃鮫が彼女に気付く前に、一気に撃ち放った。
 雷球が放たれた瞬間に、鮫の方もそれに気付いた感はあったが……鮫が反応を示すより、雷球が鮫へと到達する方が速く。直撃を受けた雷撃鮫は、大きく身体を硬直させると。香ばしい香りを放ちながら、その巨体を地へと投げ出すのだった。

 美麗は、ひとつ頭を振ると。軽く吐息する。
「いい加減、鮫の相手も飽きてきたわね……親玉はまだかしら」
 言いつつ、配布された地図を確認。ざっと眺めやると、もう暫く歩く必要がある様だ。それを折り畳んで、ポケットへ詰めると。美麗は気を取り直して、その先へと歩を進める。
 後には彼女と鮫との戦闘痕と、幾つかの死骸とが残された。

成功 🔵​🔵​🔴​

ファラン・ウルフブラッド
◇アドリブ・絡み歓迎

オイオイ、なんだこりゃ?ガラパゴス化ってレヴェルじゃねーな!こんなクッソおもしれー島初めて見たぜえ。
コイツ等捕まえて金持ちの好事家共が良い値で買いそうだなぁ!
よーっし、お宝ついでにこいつ等何匹か頂くとするか!

【POW】
売れそうな変異鮫を探してたら森の奥から現れたブッ太い四本脚を生やした怪獣鮫とこんにちわ。

持ち返りサイズじゃないので、バラす方向にシフトチェンジ。バルムンクを抜いて解体ショーの始まりだぜえ!

周囲に殺気をばら撒いて他の鮫を遠ざける。
攻撃は見切りで対処し、衝撃波と範囲攻撃の乗ったUCで手足の付け根や間接を重点的に破壊します。
陸に上がった鮫なんざ、まな板の上の鮫だぜ!



「オイオイ、なんだこりゃ? ガラパゴス化ってレヴェルじゃねーな!」
 驚きの声を上げたのは、ファラン・ウルフブラッド(紅嵐の航海者.EX・f03735)。全く、彼の言通り。とんでもない光景が、彼の眼前に繰り広げられている。本来海生生物である筈の鮫が、宙を飛んだり樹の上を跳ねたり、地面を泳いだりと。真っ当な進化の系統を辿れば、絶対にあり得ない状況だ。しかし、ファランの意見は別の方向を向いていた。
「ハッハーッ! こんなクッソおもしれー島、初めて見たぜえ!」
 ……確かに、その危険度を考慮から外せば。愉快痛快・奇妙奇天烈な光景ではある。しかし、ファランの商魂はある意味、留まる所を知らなかった。
「コイツ等捕まえたら。金持ちの好事家共が、良い値で買いそうだなぁ! よーっし、お宝ついでに、こいつ等何匹か頂くとするか!」
 最早彼にとって、眼前の鮫どもは敵でも障害でもなく。単なる『商品』として映っていた。流石は海賊であり冒険商人、といった所であろうか。

 という訳で。メガリスへの道程を行きながら、ファランは良い感じに売れそうな変異鮫を探し求め始めた。しかし『商品』として眺めやってみると……『売れ筋』になりそうな『ブツ』は、案外少ない。どの鮫も頓狂ではあるのだが、それでありながら扱いやすそうな個体となると、想像以上に限られてくる。
 それでも粘り強く『獲物』を探し求めていたファランであったが……『それ』が現れたのは、字義通りの意味で唐突であった。森の奥から『足音』を響かせて現れたのは……野太い脚を四本持ち、十メートル以上の体長を持つ。正に『怪獣』の名にふさわしい、お化け鮫。そんな奴と正面から『こんにちわ』してしまい。流石のファランも、思わず真顔になってしまう。尤も、怪獣鮫の方も予期せぬ『こんにちわ』であった様で。そちらも動きが固まった。対面したまま、しばしの時間が流れ……どちらともなく、嘆声とも怒声ともつかぬ声を張り上げ。互いに間合いを取り、戦闘態勢を整えた。

「どう考えても、お持ち帰りサイズじゃねぇからな……バラす方向にシフトチェンジさせて貰うぜ!」
 聞き様によっては、酷い話だと思えなくも無いが……ファラン自身は至って本気の本音で、神剣バルムンクを抜く。それが伝わった訳でも無かろうが、怪物鮫の方も雄叫びめいた音を発しながら、ファランへ飛び掛かる。四本の脚で自身を跳ね上げ、跳躍したのである。そうして、ファランに食らい付こうとした刹那。まさに四肢の付け根を斬り裂かれ……怪物鮫は地に落ちた。
 ファランのユーベルコード『吹き荒ぶ風の刃』によって、真空の刃をもって斬りつけ、斬り裂いて。怪物の四肢を斬り落として見せたのである。更にバルムンクで、首と胴とを斬り分けられて。さしもの図体を誇る怪物鮫も、その息の根を止められたのであった。
「陸に上がった鮫なんざ、まな板の上の鮫だぜ!」
 正しく、その言葉の通りの結末であったと言えよう。まな板に乗ったモノを捌いたのは、包丁では無かったが。

 意図せぬ解体ショーを演じたファランは、神剣を鞘に収め。再び『売り物』を探索しつつ、メガリスの元へと歩みを進めていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハズキ・トーン
WIZ
「おやまあ、たくさんの鮫ですねぇ。鮫と言ったら…あれですね。
皆さんは全部で何頭いらっしゃるのですか?よろしければ私が数えてみましょう。さあ、並んでください」
そんなわけで因幡の白兎作戦を。
並んでくれたら上を歩くなりで数え先に進みます。
攻撃されるなら
「いけません!」
とべしっと。もしくらすたこら逃げます。倒す気は基本ありません。

無事進めたら、鮫に何頭であったかちゃんと教えます。
皮を剥がれるのは絶対嫌なので馬鹿にもしませんとも。



「おやまあ、随分たくさんの鮫ですねぇ……」
 感心しているのか、或いは呆れているのか。ハズキ・トーン(キマイラの聖者・f04256)の口調からは、どちらとも取りがたい。
 が……他の猟兵達が取らなかった方法を、ハズキは思い付いたのである。
「相手が『鮫』と言ったら……アレですね」
 ひとつ頷くと、ハズキは手近な変異鮫へ『話しかけた』のだった。

「ところで……皆さんは、全部で何頭いらっしゃるのですか?」
 キョトンとした表情……なのかは分からないが。話しかけた相手が、丁度良かったのだろう。ハズキに襲い掛かろうと、手ぐすね引いて待ち受けていた鮫は、確かにその行動を一端取り止め。話に耳を傾けたのである。
 その結果に奢る事無く、ハズキは言葉を綴る。
「よろしければ……私が、ここにいる皆さんの数。数えてみましょう」
 ハズキが最初に話しかけた鮫だけでは無く、更に数頭が近寄ってくる。その数頭は鼻面を互いにくっつける様にして、互いを見やった。人間で言えば、額を寄せ合って話し合っている所だろうか。
 そうこうしている内、更に数頭の変異鮫が集まってきて……気付くと結構な頭数が、その場に集まっていた。もしこれらが一斉に襲ってきたら、ちょっと無事では済みそうも無い頭数だ。だがあえて、ハズキは翻意する事も逃げ出す事もしなかった。どの道、彼は元々。鮫たちと戦う意思がないのだから。
 やがて、鮫たちの群れが割れ。最初に集まってきた数頭が、ハズキの前に泳ぎ来て。そしてハズキを見つめる。経過と意思は、よく分からないが……少なくとも、今すぐ彼と戦おうという風では無い。それを好意的に解釈して、ハズキは微笑と共に言葉を紡いだ。
「それでは……皆さん。一列に並んでください。私がその上を歩きながら、皆さんの数を数えますので」
 つまり『因幡の白兎』の故事に、倣おうというのである。まさか、鮫たちがそれを知っているとは思えなかったが……鮫たちは大人しく、ハズキの眼前から、一列に並ぶ。まず眼前の一頭の上に飛び乗って、ハズキは並んだ鮫たちの上を飛び移り始めた。

 集まってきた変異鮫は、当然一種類では無く。様々な種が適当に寄り集まり、列を成している。故に、大きさも形状も肌の質感も、全て異なる。ある鮫はザラッとした肌と引き締まった質感を持ち、ある鮫はヌラヌラした肌で質感は柔らかい。油断したら、足を取られて滑り落ちかねないが……軽く足が滑ってしまった折は、足場である鮫その物が、身体を捻って受け止めてくれた。
 そんな鮫たちの上を飛び移り続けながら、ハズキはこう思う。つまり、コンキスタドールに足止めの為に召喚された鮫たちも。必ずしも全てが、好戦的では無いのだろう、と。結果として、ある程度『足止め』の機能は果たしているが。戦闘行為とは随分、かけ離れている。偶然、最初に話しかけた個体が、知能や悟性の高い相手だったのかも知れず。多分に運の要素も大きいのだろうが……それでも、無闇に殺し合いを演じずに済んだのは、ハズキにとっても幸運だったに違いない。

 結果として、集まってきたのは本当に『ハズキの周囲』の鮫たちに過ぎず。他の猟兵の進路上には影響なかったが。少なくとも、ハズキが奥地へ進む分には、充分助けとなる数ではあった。その鮫たちの列の、最後の一頭の背を蹴って。ハズキは地に降り立った。最後の足場となった鮫は、身体の前後を入れ替え。その瞳で彼を見やる。恐らく、数えた数字を聞きたいのだろう。ハズキはひとつ頷くと、口を開く。
「集まった方々は、全部で百九十三頭でした。流石に口の中とか、お腹に張り付いている子達までは、勘定に入っていませんが……」
 原典である『因幡の白兎』は。うっかり最後の鮫に謀を口にして、怒った鮫に皮を剥がれてしまったが……ハズキは、その轍を踏むつもりは無論無い。そもそも、相手を馬鹿にする意図が無いのだ。折角、こちらの意思を汲んでくれたのだから。こちらも誠意を尽くすのが『道』という物である。
 数えた数を、しかと聞き遂げた鮫たちは。解散だと言わんばかりに、三々五々に散っていく。その背に深く一礼して、ハズキは身を翻し。森の奥地へ歩を進めていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エメ・パラディール
コンキスタドールにメガリスを渡すことは絶対に避けたいし、そのためにもなるべく早く行くしかない!
なんと私はエネルギー満タン準備万端!この状態なら速攻でいけるはず!

野生の勘を使用して鮫がいないところを選び、スカイステッパーを駆使し、木々の間や建物の影を飛び回って先に進む。
しかし空を飛んでいる鮫と出くわしたり、見つかったりはすると思う。
その場合は一度鮫の上に飛んでからの必殺、「スカイステッパー・踵落とし」(スカイステッパーで落下に勢いをつけた踵落とし)で大人しくなってもらう。
技名はもっとかっこいいのを考えておこうと一瞬思うけど、頭の片隅にしまって先を急ぐ。



「コンキスタドールに、メガリスを渡すことは絶対に避けたいし……その為にも、なるべく早く行くしかない!」
 握りこぶしを天高く突き上げて、エメ・パラディール(キマイラのパラディン・f06803)が熱く燃える。
「なんと私は、エネルギー満タン準備万端! この状態なら速攻でいけるはず!」
 どうやら接岸前の最後の食事で、自分達が釣り上げた食材を含めたボリューム満点のメニューを供されて。それをたらふく平らげた事を指しているらしい。お腹を満たしすぎて苦しい……などというオチに至らなかったのは幸いであった。
 トントンと数度、軽く跳躍して身体感覚を確認。いきなり全開で動いて問題無い事を確かめる。
「それじゃ……行ってみよーか!」
 宣言すると同時に、大きく跳躍。密集した木々の枝の上に足をかけ、枝がしなる前に次の枝へ飛び移る。まるきり猫の身軽さで、エメは道程の制覇に挑む。

 ユーベルコード【スカイステッパー】を駆使して、木々や廃ビルの間や屋内を跳躍によって突き進み。野生の勘働きで、鮫の気配を察しては、慎重に連中との接触を回避する。暫くは順調に進撃できたが……やはり、鮫どもと全く遭遇せずに済む、という訳にはいかなかった。
 木々の頭上スレスレを飛空していた変異鮫をやり過ごす為、エメは中腹付近の枝に隠れたのだが。どういう手段で察したか、飛行鮫は真っ直ぐに、エメを目掛けて飛び掛かってきたのである。更にその動きを察して、木々の枝を跳ね回る変異鮫までもが、彼女を見つけて跳び迫って来る。
 エメは枝を蹴って跳躍すると、更に宙を蹴って空を舞う。それこそが【スカイステッパー】の真骨頂。このユーベルコードは『宙を蹴ってジャンプする』物であるからだ。何も無い中空でジャンプの角度を変えたエメに、同じく宙を舞う変異鮫でさえ、追従できない。まして枝を蹴ってジャンプする鮫は、完全にタイミングを逸して、明後日の方向へスッ跳んでいった。
 そして……宙を舞う変異鮫には、その飛翔タイミングを完璧に計り。もう一度宙を蹴って、空飛ぶ鮫の頭上を取ると。そのまま自由落下に身体を任せ――
「ひっさーつ! スカイステッパー・踵落としっ!」
 鮫の脳天目掛けて、フリーフォールの加速度を込めた、踵落としを叩き込んだ。もんどり打って、落下していく飛翔鮫。跳躍鮫も、仲間の巨体が邪魔で、エメに追従する事が出来ず。悠と距離を稼がれてしまった。

 鮫たちが自身の軌道から完全に外れた事を横目で確認したエメは。更に宙を蹴って、この場を離れた。無論、森林の更に奥地、メガリスの安置されている筈の場所目指して、である。華麗に鮫を撃墜して見せた少女は、華麗に中空を蹴って、その場所に急ぐ。
 ――先程の中空で放った踵落としの、もっと格好良いネーミングを考えようと。頭の片隅で思いながら。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『暗黒鮫魔術師『ルル・クラドセラキー』』

POW   :    ロドリゲスちゃん……おいで……
自身の身長の2倍の【飛翔能力を持つ巨大なゾンビ鮫】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD   :    あいつを……やっつけて……
【魔杖の髑髏から放つ、マヒ効果の暗黒ビーム】が命中した対象に対し、高威力高命中の【巨大ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    深淵より来たれ……混沌の使徒……
召喚したレベル×1体の【ゾンビ鮫】に【禍々しき触手】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:TFJ,

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 様々な鮫達が徘徊する森林地帯を通り抜け、その先の洞窟を踏破した先に待っていたのは……洞窟の中とは思えぬ程の広大な空間と、その中央に佇む祭壇。
 そして祭壇上に安置された。気密カプセルの中に納まった、一株の花。その花こそが、猟兵とコンキスタドールが探していた『メガリス』であるらしい。
 確かに、遠目で見ても美しい花だが……どこか只ならぬ雰囲気を醸している。気品と共に妖しさを持ち合わせ。聖なる花とも妖物の花とも取れる、尋常ならぬ存在感を持つ花だった。

 猟兵達は、それを回収する為。祭壇に歩み寄って行く。が……それに妨害が入った。猟兵達が潜ってきた洞窟の他に、もう一つ。出入口となっているらしい穴があり。そこから祭壇の空間に押し入ってきたものらしい……明らかに尋常では無い雰囲気を纏った少女がひとり、姿を現す。
 その少女だけでも、あからさまな妖気を纏っているのに。その背後には『ゾンビ鮫』としか評価のできぬ、妖物が控えていた。少女は気怠げに、口を開く。
「面倒臭い、生き餌がいっぱい……ロドリゲスちゃん。全部、食べていいよ」
 どうやら、このコンキスタドールは。猟兵達も『自分が従えた鮫達の餌』としか見えていないらしい。対等の存在どころか、障害とすら認識されていない。
 尤も。その認識、或いは齟齬や妄想を、猟兵達が共有しなければならないという法は、何処にも存在しない。先方が此方を対等未満と思っているのなら、こちらも相応の認識と覚悟を以て、相対すれば良い。礼儀や情けはこの場合、不要どころか罪悪とすら言えた。この敵を倒さなければ、メガリスを回収する事も、猟兵としての任務も矜持も、達成する事が出来ない。
 そうとなれば……戦って勝つ。それしか道は存在しない。


※ちょっと、色々スケジュールの都合がありまして。
申し訳ありませんが…第三章のプレイング受付は
勝手ながら『5月14日(木)午前8:32』から、行わせて頂きます。
それ以前に送信されたプレイングは、失礼ですが。一度お返しさせて頂きます。
緋神・美麗
絡み・アドリブ歓迎

最後の最後まで鮫の相手とか本当にやれやれねぇ。
「もう鮫の相手も厭き厭きよ。ここできっちり終わらせるからね。」

飛翔する鮫、何気に厄介よね。それでも動きさえ読めれば
見切り・学習力・野生の勘・第六感でロドリゲスの動きを予測し、そのでかい口めがけて力溜め・気合い・覇気・限界突破で威力強化した超巨大電磁砲を二回攻撃・鎧無視攻撃・衝撃波を付与して誘導弾で叩き込む。
「なんでも餌にするほどお腹減ってるんならこれをたらふく食らいなさいな。」

さて、邪魔者も排除したしこれでメガリスゲットできるわね。


ファラン・ウルフブラッド
◇アドリブ・絡み歓迎

海賊ってのはよォ。金・名声・宝に奴隷!全部略奪するまでが仕事ってもんさ!
だからよォ・・・オレの大事な仕事の邪魔するってんなら、そこの腐れザメごと撒き餌にして海に撒いてやるぜェ!(コンキスタドール?いいえ、猟兵です。猟兵なんです)

行動【POW】
テメェが二倍ならオレは三倍で相手してやんぜェ!!(UC発動)

昔のエライ人は言いました。『相手が飛んでるなら、自分が大きくなって【怪力+グラップル】を使って地面に叩き落せばいいじゃない』と!(脳筋思考)

相手の攻撃は【見切り・武器受け】で対処、もしくは【カウンター】。
攻撃する際は【二回攻撃・聖属性攻撃(破魔)】で叩っ斬るぜ!


上野・修介
※連携、アドリブ歓迎
「ゾンビか。厄介だな」
生きているなら心臓なり脳なりを潰せばいい。
だが死体となるとそういった分かり易い『箇所』というのはないだろう。

――ならばどうする?

「まあ、闘りようはあるか」

調息、脱力、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
まずは敵の戦力を把握。体格・得物とする部位・視線等から拍子と間合いを量【学習力+見切り】る。

鮫から『削ぎ落す』

得物は素手格闘【グラップル+戦闘知識】

基本はヒット&アウェー【ダッシュ+逃げ足】
狙いを付けさせないよう常に動き回り、【フェイント】を混ぜつつサイドから回り込むように、また低く腹の下に潜り込むように攻め、UCによる手刀足刀の斬撃を叩き込む。


エメ・パラディール
あの少女がコンキスタドール!
ぐぬぬ、私のことなんてまったく眼中になさそう!
確かに私は猟兵として未熟だけれど、悔しいな。
なんとしてでも、正しく敵として認識してもらわなきゃ!
「私の名前はエメ・パラディール、あなたにメガリスは渡さない!」

彼女は私たちを餌といった。その認識が変わっていないのならば、ロドリゲスちゃんは私たちを食べに突っ込んでくるはず。
ならば私は待ち構え、無敵城塞を使用して、相手の攻撃を受け止めてみせよう!
だが無敵城塞を使ったままでは、私はまったく動けない!
一回受け止めたら、相手が引くときを狙って、無敵城塞を解除するぞ。
そして一歩踏み出して、剣でさくさくっと攻撃だ!


ハズキ・トーン
「ロドリゲスちゃんですか、これは初めまして。私はハズキと申します。して、貴女のお名前は?」
「ロドリゲスちゃんはゾンビですかね、私はゾンビにお会いするのは初めてでして」
「ちょっとそのお花をいただきたいのですが」
「ここにいる鮫さんの数、知っていますか?」

戦うことが驚きの苦手なので、野生の勘と逃げ足を駆使しぺらぺら喋りながらできうる限り避け続けます。

負傷者がいるなら治療を。
ロドリゲスちゃんにかけるとどうなるのか…気になりますけど…

フック付きワイヤーを投げ、メガリスを引っかけて逃げられると…いいですねぇ

連携歓迎



「最後の最後まで鮫の相手とか、本当にやれやれねぇ……」
 明るい色の髪をかき上げて。緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)が、軽く溜息を吐く。実際、この島に上陸して以来。猟兵の敵や障害の類は全て、鮫・鮫・鮫の鮫尽くしである。いい加減、嫌気のひとつも差そうという物だ。
「もう鮫の相手も厭き厭きよ。ここできっちり終わらせるからね」
 『ライトニングセイバー』を鮫魔術師に突きつけて、決然と言い放つ。

(あの女の子が、コンキスタドール! ぐぬぬ……私の事なんてまったく眼中になさそう!)
 確かに自分は猟兵として未熟だが、それでもやはり悔しいと。エメ・パラディール(キマイラのパラディン・f06803)は口惜しく思う。より正確には猟兵全員が、等しくコンキスタドールの関心の外なのだが……『エメも眼中に無い』という意味では、間違った認識とも言えない。
 ともあれ……なんとしてでも、正しく敵として認識してもらわなきゃ! と、意気込むエメは。バスタードソードを抜剣すると、それを構え宣告する。
「私の名前はエメ・パラディール。あなたにメガリスは渡さない!」

 しかし、二人の宣言を聞いても。暗黒鮫魔術師は面倒そうに一瞥するだけであった。関心を持つ事すら必要無いと、言いたげな素振りである。
 一方で、些かの好奇心を以て、コンキスタドールへ話しかける猟兵も居る。ハズキ・トーン(キマイラの聖者・f04256)が、その人だ。
「ロドリゲスちゃんですか……これは初めまして。私はハズキと申します。して、貴女のお名前は?」
「……ルル」
 至極面倒臭そうに、投げやりな声ではあるが。鮫魔術師のコンキスタドールは、一応そう応答した。どうやら猟兵達を、丸きり無視する意図は無いらしい。が、
「ロドリゲスちゃんはゾンビですかね? 私はゾンビにお会いするのは初めてでして」
「……五月蠅い」
 長々と会話なり交渉なりを、行うつもりも無い様だった。

 鮫魔術師ルルの、傲慢とも取れる一方的な振る舞いに。ファラン・ウルフブラッド(紅嵐の航海者.EX・f03735)が、憤然とも傲然とも言える語調で言い捨てる。
「海賊ってのはよォ。金・名声・宝に奴隷! 全部略奪するまでが仕事ってもんさ!」
 まるで興味なさそうな、コンキスタドールの態度など委細気にせず。ファランは言を継ぐ。
「だからよォ……オレの大事な仕事の邪魔するってんなら、そこの腐れザメごと撒き餌にして海に撒いてやるぜェ!」
 戦意と敵意に満ちたそれは、即ち彼の宣戦布告である。あからさまな害意を突きつけられ、無気力と無関心を体現する様な態度であった鮫魔術師ルルの、表情が僅かに動く。
 それは、明らかな『敵意』。
「生き餌如きが……五月蠅くて、偉そう。餌になるのは、そっち……」
 彼女の言葉が終わると同時に、コンキスタドールが従えたゾンビ鮫が、身をよじって声なき雄叫びを上げる。
 それが、開戦の合図であった。

 暗黒鮫魔術師の少女が高く跳躍すると、ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』が、その着地点へ空を泳いで待ち受け。ルルはゾンビ鮫へ跨がる。
 更に彼女が何かの文言を唱えると、ゾンビ鮫が更に複数体現れ……それらの背や腹に触手が生える。何ともおぞましい光景が現出した。
 それまで黙したまま、腕を組んで佇んでいた上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)が、おもむろに組んだ腕を解く。彼はずっと、彼女達の攻略法を黙考していたのである。
「ゾンビとは……厄介だな」
 真っ当に『生』ある相手なら、必ず『生命活動を維持、或いは制御する器官』が存在する。それは例えば心臓であったり、脳であるが……ゾンビとは即ち『死体』。生者ほどに、分かり易い『活動を制御或いは維持する部位』は存在しない。
 ――ならば、どうするか。
「まあ、闘(や)り様はあるか」
 そう呟くと修介は、あえてゾンビ鮫達から若干の距離を取った。余分な力を抜き、呼気を整え……戦う相手を、戦場自体を冷静に見据える。
 ロドリゲスちゃんに騎乗したルルを護る様に、触手鮫達が前衛に出てくる、その行動と攻撃方法を観察しながら。それに対して正確に対処を図る。
「――シュッ!」
 触手の伸びる限界を見切り、運動や挙動の『癖』を見抜いて。修介の足刀が、一頭の触手鮫の触手を、一連撃で断ち切った。
 更に足刀を振り抜いた勢いのままに、体を旋回させ。今一度地を強く蹴り、触手を断ち切った死体鮫の喉元近くに接地。更に強く鋭く跳躍し、その鋭い跳躍力を蹴撃力に乗算し……その強烈な脚技は、死体鮫の喉元を爆ぜ割り。頭と胴を泣き別れに追いやって。
 触手を断たれた触手鮫は、完全にその活動を停止した。

「おお……すごーい!」
 感嘆と驚嘆を込めて、エメが修介の戦果を絶賛し。ハズキもその隣で、小さく拍手をしている。猟兵として新米の為、戦闘力は練達の者に及ばないエメと、戦闘行為がとことん苦手で戦闘力を碌に持たないハズキは。この戦況において、中々自身の役割を把握できずにいた。
 出来る事が無い訳ではない。ただ力量に劣る為、その力の使い処は的確である事を要求される。その見極めが、難しいのだ。
 ただ。己の力量を正確に把握し、出来る事を必死で考え抜き。その最大効果を発揮できる機会を待ち、その機会を待ち続ける事。それは立派な『戦士』としての素質であると言える。どれだけの力を持とうとも、闇雲に強大な力を振るうのは。単なる乱射魔か、只の莫迦かの二択である。
 一方で、その『練達した猟兵』である美麗も。最も効果的な一撃の機会を図りつつ、雷電の念動剣を振るって触手鮫と切り結んでいる。この触手を持つゾンビ鮫は、ルルが騎乗するゾンビ鮫に比すれば、サイズも差程無く力量も劣る。彼女ならば、片手間とは言わぬまでも。ユーベルコード無しで渡り合うのは充分可能だ。
 それは、修介やファランにとっても、ほぼ同様だった。特に間合いを見切った修介にとっては、殆ど物の数では無くなっていた。
 更にもう十数分が経過すると。それなりの数がいた触手鮫であったが……猟兵達の手によって、完全に掃討されてしまったのである。

「さーて。テメーの配下は全滅しちまったぜ。あの世での永住ビザは用意できたか? クソッタレのコンキスタドール!」
 指関節を鳴らしながら、ファランが暗黒鮫魔術師を威嚇する。尤も彼にとっては、これが通常営業なのかも知れないが。
「一応、聞いてみるけど……降伏する気はある? 私としては『メガリス』が回収できるなら、無理して貴女と戦う必要は、特に無いんだけど……」
 欠片も期待はしていなかったが、一応、美麗は訊ねてみる。案の定、答えは
「……猟兵なんかが、生意気。ロドリゲスちゃんは、お前達なんかに。負けない……!」
 拒絶と虚勢の二重奏であるが、戦意と敵意は未だに失われていなかった。
「……で? 本体とゾンビ鮫、どっちを先に叩く?」
 先程までと打って変わって、猟兵達だけに聞こえる密やかな声で。ファランが皆に語りかける。この男、些か好戦的ではあっても、普段の言動ほどには粗暴では無い。
 論を挟んだのは、修介だった。
「……いや。どちらか片方を狙ったり、分断する必要は無い。今、あのコンキスタドールとゾンビ鮫は、生命力を共有している。どちらかを倒せば、共倒れにできる」
 普段と違い、冷徹な声と語り口調だが。その観察結果と内容は正確だ。
「それなら私には、一撃必殺を狙える手があるわ。ただ出来れば、一瞬で良いから。敵の動きを止めるか、牽制できれば完璧なんだけど……」
 美麗の懸念に、応じたのはエメである。
「それじゃ、私が囮になって。敵の動きを惹き付けて、止めてみよーか?」
 全員の頭上に、見えないクエスチョンマークが浮かんだが、
「【無敵城塞】! 私アレ使えるよ!」
 エメの追句で、全員が納得した。更に
「でしたら、追撃と言うのも変ですが……私ももしかしたら、お役に立てるかも知れません」
 ハズキが立候補の言を継ぐと、全員が無言で続きを促す。
「通用するかどうか、分かりませんが……私は治癒のユーベルコードを使えます。ダメージを与えるまでは無理だとしても、怯ませる程度は出来るかもと」
「ちょっとした博打ね……アンデッドはヒール系でダメージ可能って、一部のゲームの話だし」
 美麗は疑念を口にするが、ファランがそれを否定する。
「良いじゃねーか。もし傷が治っちまっても、アンタの一撃必殺で沈めちまえば一緒だろ?」
「まあ、そうね」
 美麗が頷くと、修介が再び口を開いた。
「それじゃ……まず俺と、そっちの海賊とで。コンキスタドールに一発ずつくれてやろう。そして、上手く頭に血を上らせてやれば……」
「よし、それで行こうぜ。オレも一発くれぇ、かましてやらねーと。つまんねー所だったしな」
 応答したのはファランだけだったが、他の猟兵達も僅かに首肯する事で、同意を伝える。これまでの間、僅かに三十秒程度。
 かくして、最終局面が到来した。

 まず動いたのは、修介だった。軽やかに、そして俊敏に。天然のドームの中を駆ける。だが、その挙動はフェイントであった。暗黒鮫魔術師が、その杖を掲げて魔術を放とうとした刹那。続いてファランが動く。
「剣に宿りし英雄の力……その片鱗を使わせてもらうぜ!」
 吼えると同時に、彼は手にした神剣の力を解き放つ。その体躯は巨大化し、ドラゴンの角と尾が生えて。後は翼が生えてしまえば、一見すると群竜大陸における『ドラゴン化』の態である。
「昔のエライ人は言いました。『相手が飛んでるなら、自分が大きくなって怪力と素手格闘術を使って、地面に叩き落せばいいじゃない』と!」
 ファランは大笑しつつ豪語する。しかし誰がそう言ったのか、正確な出典は恐らく不明であろう。
 それはさて置き……ファランの身長は約百九十センチ。暗黒鮫魔術師ルルは百五十センチそこそこである。故に、ロドリゲスちゃんのサイズは精々三~四メートルであるが……『神剣バルムング』の力を解放し、半竜人化したファランの頭頂高は六メートル近く。サイズ差は最早、子供と大人のそれだった。
「アレってさ……もしかして私、要らなくない?」
 半ば引きつりつつ、美麗が呻く。流石に外部からぶん殴っただけで倒せる程、楽な相手では無かろうが……思わずそう言いたくなる威圧感を『巨体』という存在は保有している物だ。
 鮫魔術師ルルごと、騎乗しているゾンビ鮫を叩き落とさんと。巨人化したファランの拳が、逆落としの様に唸る。カウンター気味に放たれた黒い雷球を、体を捻って躱しつつ。巨人の拳が、鮫コンビの背中に叩き付けられた。凄まじい勢いで、ルルとロドリゲスちゃんとは、地面に叩き付けられる。ゾンビ鮫の背から転がり落ちなかったのは、ユーベルコードの効果であろう。
 しかしその背後から、修介の跳躍からの後ろ回し蹴りが迫る。咄嗟にルルは、手にした杖で襲撃を受け止めた。が、その代償に杖は真っ二つに『斬り落とされ』。魔術の媒体としての機能は半減してしまった。
 着地間際にロドリゲスちゃんの鼻先を更に蹴り飛ばし、そこから数メートル前方に舞い降りて。修介は某ドラゴンと呼ばれた男の如く、鼻先をキュッと拭うと、挑発的に片手をクイクイと手招いて見せた。
 幼稚ですらある挑発だが、自身と武器とにダメージを受けた心身の衝撃が、冷静な思考の発露を塞ぎ。感情の赴くままの行動を、彼女らに取らせてしまう。
「ロドリゲスちゃん……アイツら全部、食い散らしちゃえ……!」
 声なき雄叫びを上げて、美麗・エメ・ハズキの元へ突進するロドリゲスちゃん。その眼前に躍り出たのは、エメだった。大口を開いて突っ込んでくる鮫、それもゾンビとなれば。その迫力は筆舌に尽くしがたい。だが、エメは猟兵の矜持を以てその威に耐えた。バスタードソードを構え、次の瞬間に遅い来るであろう衝撃に備える。
 インパクト。
 衝突によるダメージも、牙による負傷も無く。エメは外見上無傷で、ゾンビ鮫の突進に耐えた。まるで不可視の障壁にでも追突したかの様に、むしろ衝撃によるダメージを負ったのは、ロドリゲスちゃんの方である。
 尤もエメの方も。本来ならば突進の衝撃に耐えかねて、後方へ吹っ飛ばされていてもおかしくは無かった。そうならずに済んだのは、咄嗟に身体全体でエメの背を支えてくれた、ハズキのフォローあっての成果だ。
「おお……ありがとーございます!」
「いえいえ。どういたしまして」
 戦闘の只中にあって、いささか呑気な会話が為される。無論、善戦の渦中にあるが故、多少なりと余裕が出来た故の事だろう。
 見えざる障壁との追突により、のたうつロドリゲスちゃん。それを屹然と見つめると、ハズキは『聖なる光』を、鮫どもに向かって撃ち放った。美麗の言通り、半ば博打の一手であったが……勝負は、猟兵達の勝ちであった。ロドリゲスちゃんは、ビクン、と身体を硬直させ。大口を開けて半ば固まってしまう。尤も、その効果は長くて数秒であろう事、猟兵達は疑いもしない。
 しかし、最大の好機である。これを逃す手は、何処にも無い。
 美麗は徐ろに、両手を前に突き出すと……そこに現れたのは、巨大な鉄塊。
 召喚された宙に浮く鉄塊の周囲から、サイキックエナジーによって一直線に、鉄塊の直径と同じ径の導電層が形成され。それによって、不可視の砲身が現出する。
 不可視のバレルに沿って、高圧電流と、それによって発生する磁力が発生したならば……高圧のサイキックエナジーが炸裂し、鉄塊の尻をひっぱたく。見えない銃身の中を鉄塊が滑走し、それを銃身に流れる電流による磁界が加速させ。それは擬似的なレールキャノンとなって、鉄塊は超音速で短距離を飛翔して……ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』の口中へ、狙い過たず叩き込まれた。
 その腹の中で鉄塊は爆散し、爆発による圧力と炸裂した鉄片が、ゾンビ鮫の腹を内部からズタズタに切り刻んだ。爆発圧は鮫の全身に及び、ロドリゲスちゃんは千々の肉片に引き裂かれ。その巨体は跡形も無く消え去った。

「やったぁ~っ!!」
「っしゃあぁぁぁー!!」
 エメとファランが、雄叫びの様な歓喜の声を上げ。美麗は額に浮く汗を拭い。修介は表情を和らげつつ腕を組む。ハズキもそれに唱和しようとして……ふと、ロドリゲスちゃんが爆散した付近に目をやった。
 ……驚いた。
 ロドリゲスちゃんと運命を共にしたと思った、暗黒鮫魔術師ルルが。肉片の中に隠れた身体の大半を、光の粒子と化して消え去りながら……最期の力を魔力に変えて、何とメガリス目掛け、特大の雷球を放ったのだ。
「全部、消えちゃえ……っ!!」
 ルルの絶叫と、凍り付く猟兵達の中。その光景を先に見ていたハズキだけは、咄嗟に動く事が出来た。メガリスに向かって疾走し、気密カプセルごとメガリスの花を抱え、祭壇から飛び退く。その刹那、祭壇は雷球によって砕け散り。同時に鮫魔術師ルルも、完全に粒子と化して消え去った。
 大きな溜息と共に、へたり込むハズキに。猟兵達は駆けよって絶賛する。肩やら背やらを叩かれつつ、ハズキは咄嗟の運動と緊張による疲労を感じながら。それでも会心の笑みを浮かべる。

 ……こうして、誰一人欠ける事無く。猟兵達はメガリスを回収し。帰還の為の鉄甲船へ乗船する為、海岸へ向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月18日


挿絵イラスト