大魔王の残滓に終焉を
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「魔王戦争の終結以来、アルダワ魔法学園に新たな災魔が出現することはなくなりましたが、地下迷宮には今だ少なくない数の災魔が残党として隠れ潜んでいます。そのうちの一体で、気になる個体を予知しました」
そう語る少女の表情は普段よりも硬く、緊張していることが分かる。それは彼女が予知で見た災魔の姿が、かの魔王戦争時に見覚えのある相手を想起させるものだったからだ。
「存在を確認した災魔の名は『セクスアリス・レプリカ』。アルダワ魔王戦争で討伐された『大魔王』の分体、残滓とも言うべき災魔です」
地下迷宮アルダワ、並びに魔法学園が建造された全ての元凶と言うべき『大魔王』。その全形態は猟兵との激闘の果てに討伐された筈だが、どうやら完全に滅び去る前に置き土産を残していたらしい。
「レプリカにオブリビオン・フォーミュラとしての力はなく、戦闘力も大魔王そのものとは比較になりません。しかし迷宮内の災魔を取り込んで力を取り戻そうとしているようで、このまま放置すれば新たな脅威となる可能性は否定できません」
たとえ残滓であろうとも、世界の危機となりうる要素は芽から摘み取っておくに限る。そのためにリミティアは潜伏するセクスアリス・レプリカを引きずり出すために『ダンジョンメーカー』の使用を提案する。
「地下迷宮アルダワの最深部に隠されていた"はじまりの魔法装置"ダンジョンメーカーは、長く大魔王の封印装置として機能していましたが、その本来の機能は強大な災魔を1体強制召喚し、その周りに『迷宮』を作り上げる、というものです」
この装置を使用すれば、猟兵が創造したダンジョンにセクスアリス・レプリカを強制召喚し、戦いを挑むことができる。無論、そのためには創造したダンジョンを攻略する必要があるが、どんなダンジョンが出来るかは猟兵のイメージ次第なのでやりようはあろう。
「召喚した災魔には不利でこちらは攻略しやすい仕掛けを創造できれば一番でしょうが……ダンジョンは思念反応型で形成され、別々の人間の思念が混ざる事で思いもよらないダンジョンが形成される場合があるので、そう思い通りにはならないかもしれません」
自分の手でダンジョンを作って探索してみたい、という者にはそれも楽しいかもしれない。いずれにせよダンジョンメーカーが造りあげた究極の地下迷宮アルダワさえ攻略した猟兵達であれば、攻略不可能なダンジョンなどは有り得ないだろう。
「創造したダンジョンを攻略し、ダンジョンボスとして強制召喚されたセクスアリス・レプリカを討伐すれば作戦は成功です。どうか皆様のお力と創造力をお貸しください」
そう言って説明を締めくくったリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、アルダワ魔法学園への道を開く。『ダンジョンメーカー』の起動準備は既に整っているようだ。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
アルダワ魔王戦争の勝利からはや2ヶ月近く。今回は迷宮に潜む災魔の残滓を『ダンジョンメーカー』を利用して討伐する依頼です。
第一章では『ダンジョンメーカー』で猟兵オリジナルのダンジョンを創造します。
造られるダンジョンの構造や仕掛けにはこの章に参加した猟兵のイメージや想像が反映されます。時にはイメージが混ざり合って思わぬ結果になることも。
実際にどんなダンジョンが完成したかは、二章開始直後にて結果を告知します。
第二章は創造したダンジョンを探検してダンジョンボスの元を目指します。
第三章は強制召喚された大魔王の残滓『セクスアリス・レプリカ』との決戦です。
ボスは猟兵のことも力を取り戻すための糧にしようと襲い掛かってくるでしょう。
これを撃破すれば、今回の猟兵オリジナルダンジョンは完全攻略となります。
長い戦いの果てに掴んだアルダワ魔法学園の平和が、これからも続くように。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『ダンジョンメーカー』
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POW : 肉体や気合で突破するタイプのダンジョンを創造してみる
SPD : 速さや技量で突破するタイプのダンジョンを創造してみる
WIZ : 魔力や賢さで突破するタイプのダンジョンを想像してみる
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
大魔王の残滓か…
しつこいししぶといな…
さっさと駆除しないとね…
その前に…迷宮を創る?
迷宮って創れるんだ…すごいね…
えぇと…ダークセイヴァーのような…
カタコンベ…暗く黴臭い地下墓地のダンジョンかな…
至る所に朽ちた死者が葬られていたり残骸が転がっていたり…
罠は…仕掛けを作動させてしまった者に対して罪人を鞭打つように激しく打ち据える鎖の鞭が振ってくる罠がいいかな…
ジュリア・ホワイト
ダンジョンか、どんなものが出来上がるのだろう
ワクワクするね?
実際、アルダワのダンジョンを気ままに探索した経験というのはないんだ
学園の催しには数回行ったけどね
というわけで普通に好奇心を刺激されている最中なのだけど
さてどんなダンジョンを望もうか
列車基地の様なダンジョンというのも少し考えたけど、やっぱり普段見ないような景色が良いな
うん、そうだ
ダンジョンとは確か、お城の地下牢が元の意味だったね
ならそれらしく、打ち捨てられた古城のようなものを想像しよう
お城探索なんて面白そうじゃないか?
うん?災魔に有利になれそうな構造?
気にしないよ、ヒーローとは場所を選ばず戦うものだからね!
「大魔王の残滓か……しつこいししぶといな……さっさと駆除しないとね……」
往生際の悪いやつはちゃんと始末しないと――と、ぼんやりとした口調で呟く仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)。彼女も先の戦争で大魔王と戦った猟兵のひとりだが、あんなものが残滓でも生きているなど気持ちのよくない話だ。
「その前に……迷宮を創る? 迷宮って創れるんだ……すごいね……」
大魔王の残滓を強制召喚する手段として用意された、はじまりの魔法装置『ダンジョンメーカー』。ここアルダワの大迷宮もこの装置から創られたと聞けば、彼女も驚きを隠せないようだった。
「ダンジョンか、どんなものが出来上がるのだろう。ワクワクするね?」
アンナと並んで興味深そうな視線をダンジョンメーカーに送るのはジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)。隠れている災魔を引きずり出す手段とはいえ、こんな体験ができる機会は滅多にないだろうし、心が躍るのも無理はない。
「実際、アルダワのダンジョンを気ままに探索した経験というのはないんだ。学園の催しには数回行ったけどね」
「そうね……今はともかく……前はそんな暇めったに無かったし……」
猟兵にとってアルダワの迷宮に潜る機会とは、一般生徒の手には負えない災魔との戦いがほとんどだった。ごく普通にダンジョン探索を楽しむ余裕というのは、実はこれまでのアルダワでは貴重な体験だったのかもしれない。
「さてどんなダンジョンを望もうか」
そんなわけで好奇心を刺激されつつ、ダンジョンメーカーの前で首をひねるジュリア。
装置の近くにいれば思念に反応して勝手に迷宮を創ってくれるるとはいえ、どんなデザインや仕掛けにするか、いざ考えてみると意外と悩みどころである。
「列車基地の様なダンジョンというのも少し考えたけど、やっぱり普段見ないような景色が良いな……うん、そうだ」
思考を纏めるために言葉に出しながら、なにか思いついたように手をぽんと叩き。それに反応したのか、沈黙していたダンジョンメーカーがピカピカと光りはじめる。
「ダンジョンとは確か、お城の地下牢が元の意味だったね。お城探索なんて面白そうじゃないか?」
ならそれらしくと、ジュリアが想像するのは打ち捨てられた古城のようなもの。ゴゴゴゴと地響きを立てて装置を中心とした周囲の構造が変化していき、趣のある城壁や大きな門がにょきにょきと地面から生えてくる。
「えぇと……ダークセイヴァーのような……カタコンベ……暗く黴臭い地下墓地のダンジョンかな……」
それと時を同じくしてアンナが思い浮かべていたのは、闇と土と死の匂いに満ちた暗いイメージ。ふたつの思念が混線することで、古城のダンジョンはより陰鬱かつ禍々しい雰囲気寄りに変化していく。
「至る所に朽ちた死者が葬られていたり残骸が転がっていたり……」
ぽつりぽつりと呟くたびに、ダンジョンの各所にダークな装飾物が増えていく。あくまでダンジョンメーカーが創造したものなので本物の死体ではないのだろうが、内臓まで詰まっていそうなほど真に迫ったデザインである。
「いかにも魔王が住んでそうなお城になったね」
「残滓とはいえ……相応しいんじゃないかな……」
組み上がっていく迷宮のデザインを眺めながら、ジュリアとアンナはどこか満足げに頷く。とはいえ、これだけではちょっと通路が複雑で不気味なだけのお城に過ぎない。ダンジョンをダンジョンたらしめるものと言えばやはりトラップだ。
「罠は……仕掛けを作動させてしまった者に鎖の鞭が振ってくる罠がいいかな……」
じゃらり、と己の武器でもある棘の生えた鉄球つきの鎖を手にアンナは考える。この罠に掛かったものは、鞭打たれる罪人のようにこれで激しく打ち据えられるのだ。
そのイメージはさながら吊るし首の刑場のごとし。うまく相手を仕掛けに誘導さえできれば、ボスに対しても有効打を期待できるだろう。
「あなたは……どんな仕掛けを考えた……?」
「うん? 災魔に有利になれそうな構造?」
そうアンナに尋ねられたジュリアは、爽やかな笑みを浮かべてきっぱりと答える。
「気にしないよ、ヒーローとは場所を選ばず戦うものだからね!」
どんな複雑な迷宮だろうと、こちらにとって不利なトラップだろうと、全て突破して踏破する。それがジュリア――もといヒーロー・オーヴァードライブの心意気だ。
どんなに難易度の高いダンジョンが創造されても、むしろ望むところだと言わんばかりのワクワクした笑顔には、なるほどとアンナも感心せざるをえない。
「そういうのもありなのね……」
果たして彼女らのイメージや思考や信条を汲み取ったダンジョンメーカーは、どんなダンジョンを作り上げるのか。その完成像はまだ杳として知れなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
私が帝都軍の士官階級を与えられてから初めての依頼ね。ふむ、ダンジョンを創造してそれを攻略…最新流行はやっぱり
ダンジョンスタート→ゴール、これよ。
目の前がゴール、これが通の組み合わせ。
だが、待って。本当にそうなのカビパン(キリリッ
何というか、ちょっとだけ良い思いをしてもいいんじゃない?
ゴール前にダンジョンに住まう生物達から
『カビパン様、癒し系!』
『なんてナウなヤングにバカウケな人!』
『節約最高!』
\このカビ野郎!/
と称賛を受けれる道くらい作っても。
――素晴らしい、まさに完璧。完璧すぎるダンジョン!
超くだらない思考を真顔でするカビパン。
見た目に騙されれば、クールで知的な将校と目に映るだろう。
「私が帝都軍の士官階級を与えられてから初めての依頼ね」
心機一転の気持ちの現れか、桜織衣の和風教皇服でビシッと決めたスタイルで、ダンジョン制作現場にやって来たカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。
世界は異なれどもその装束と凛々しい立ち居振る舞いは、他人からはクールな女将校として目に映るだろう。なにせその外見から彼女の内面を察するのは難しいので。
(ふむ、ダンジョンを創造してそれを攻略……最新流行はやっぱり……)
組み上がっていく最中のダンジョンを眺めながら、カビパンは己が望むダンジョンを考える。ダンジョンに流行り廃りがあるというのも素人には初耳だろうが、彼女の思う最新流行とは果たして――。
(ダンジョンスタート→ゴール、これよ。目の前がゴール、これが通の組み合わせ)
それはもはやダンジョンと呼べるのだろうかというツッコミを入れられる者は、残念ながらここにはいなかった。そしてさらに残念なことに、意志なき装置であるダンジョンメーカーはそんな思念も無差別に汲み取って、迷宮の構造に反映させていく。
(だが、待って。本当にそうなのカビパン)
キリリッ、と外面には知的な顔をしながら、帝都の従軍聖職者殿は自問自答する。
やっぱり自分でもこれは流石にダメだと思ったのだろうか。そもそもこの構造だと簡単にボスがダンジョンの外に出てきてしまうのでそれ以前の問題だと思われたが――。
(何というか、ちょっとだけ良い思いをしてもいいんじゃない?)
考えていたのはもっと斜め上のことだった。彼女が求めるダンジョンとは自分がとってもいい気になれるダンジョン。せっかく自分の好きなように創れるのだから、すこぶる自分を甘やかしてくれる代物にしたい。
(ゴール前にダンジョンに住まう生物達から――)
『カビパン様、癒し系!』
『なんてナウなヤングにバカウケな人!』
『節約最高!』
(と称賛を受けれる道くらい作っても)
カビパンの脳内に浮かび上がるのは『このカビ野郎!』とあらん限りの喝采を浴びながら栄光のロードをゴールインする自分の姿。ついでにくす玉が割れたりファンファーレが鳴り響いたりもすれば、きっと素晴らしい気分でボス戦に臨めるだろう。
(――素晴らしい、まさに完璧。完璧すぎるダンジョン!)
と超くだらない思考に酔いしれるカビパンだが、彼女はそんな内面をおくびにも出さないため、傍目には真顔で真剣に災魔を閉じ込める迷宮を検討しているように見える。
知的でクールな女将校、という見た目のイメージを完璧に保ったまま、面倒くさがりな女教皇は自分の願望のままにダンジョンを練り上げていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
ダンジョンねぇ…わたしとしては可愛い子がたくさん出てくる様なダンジョンだと嬉しいかしら♪
あ、久しぶりにリリィと会って遊びに来れる様なアトラクション形式のダンジョンとかお化け屋敷みたいなダンジョンを作ったりも良いわね♪
リリィの可愛い姿がいっぱい見れそうだわ♪
そんなワケで、(欲望が反映した)アトラクションみたいな感じで落とし穴等のトラップが仕掛けられたり、恐怖度重視(で逆に実害性は低い)なホラー要素満載な仕掛けで構成されたダンジョンを想像してみるわ♪
まぁ、他の子達の考えも反映されるからその通りに作られるわけじゃないけど…面白いダンジョンになると良いわね♪
伊美砂・アクアノート
【WIZ】
とりあえず見た目が面白いダンジョンにしたいと思うのだよ。廃屋とか廃墟とか、そういう恐ろしげな道中を進んでいく…えーと、ホラーゲーム?みたいなっ!
そしてー、なんとなんとー、トラップは『クイズの魔神』なのだっ。正解しないと通してくれないから、魔物とかモンスター的なサムシングは内側から外に出てこれない、多分? 『それが、貴様の最終回答か…?』とか、恐ろしく不気味な声で質問してくる魔神さん(見事、全問正解で宝箱)みたいな。『このダンジョンの最奥へ行きたいか…!?』『勝者は天国、敗者は地獄…ッ! 武力知力魔力、そして時の運を見せるがいい…!』 名付けて『アルダワ縦断ミラクルクイズ』なのだわよ!
「ダンジョンねぇ……わたしとしては可愛い子がたくさん出てくる様なダンジョンだと嬉しいかしら♪」
ダンジョンメーカーでどんな迷宮を創るかという問題に対して、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)の回答は自分の欲望にとても正直だった。
滅多にない機会だし、どうせなら実用性だけでなく趣味も存分に盛り込んだダンジョンにしたい。そんな方針に伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)も同意して。
「とりあえず見た目が面白いダンジョンにしたいと思うのだよ。廃屋とか廃墟とか、そういう恐ろしげな道中を進んでいく……えーと、ホラーゲーム? みたいなっ!」
アース系世界で一定の人気を誇るジャンルの絵面をうーんと思い浮かべれば、構築中のダンジョンはより見るものの恐怖感を煽るようなデザインに。他の猟兵のイメージとも混線した結果、気の弱い者なら入り口で泣き出しそうな雰囲気になってきた。
「いい感じじゃない♪ あ、久しぶりにリリィと会って遊びに来れる様なダンジョンを作ったりも良いわね♪」
そこに上機嫌のフレミアの思念が加わることで、迷宮はいよいよホラーゲームの世界から飛び出してきたような、巨大ホラーハウスとでも言うべき代物になっていく。
彼女が想像するのはお化け屋敷のようなアトラクション形式のダンジョン。中には落とし穴等のトラップや、侵入者を震え上がらせるホラー要素満載な――それでいて逆に恐怖を与える以外の実害性の低い仕掛けがたっぷり、といった具合だ。
『クスクスクス……コッチだヨ……』
やがて、暗闇の中から聞こえてくるのは少女の声。どこか不気味ながらも可憐な声に思わず付いて行きたくなるが、その先に待っているのは恐らくトラップだろう。同時にヒュォォォォォ、と首筋を撫でるような生ぬるい風が吹き、恐怖感も演出する。
「これならリリィの可愛い姿がいっぱい見れそうだわ♪」
目の前で組み上げられていく仕掛けを眺めながら、フレミアは学園にいる可愛い後輩の顔を思い浮かべる。召喚された災魔を倒しても創られたダンジョンは消滅しないため、ボスさえ倒せばここは学生にとっても良いアトラクションになるだろう。
「いいなー、面白そうになってきたなー」
徐々に出来上がっていくダンジョンを楽しそうに見ているのは伊美砂も同じ。するとそこにゴゴゴゴゴと音を立てて、地面から禍々しい装飾の施された大きな門が現れる。
「あら、これは何かしら?」
「これはねー、なんとなんとー、トラップの『クイズの魔神』なのだっ」
質問するフレミアに答えて、伊美砂がびしっと指差したのは大門の上に座っている魔神像だった。
『このダンジョンの最奥へ行きたいか……!?』
大門の上から侵入者を見下ろし、恐ろしく不気味な声を発するクイズの魔神。どうやら彼が出題するクイズに答えられなければ先に進めない、という仕掛けのようだ。
『勝者は天国、敗者は地獄……ッ! 武力知力魔力、そして時の運を見せるがいい……!』
「名付けて『アルダワ縦断ミラクルクイズ』なのだわよ!」
ババーンッ! と魔神といっしょに得意げな顔をする伊美砂。まるでテレビ番組のようなタイトルだが、しかしノリの軽さに反して災魔を閉じ込めるといった点でも実用性の高いトラップである。
「正解しないと通してくれないから、魔物とかモンスター的なサムシングは内側から外に出てこれない、多分?」
アルダワの迷宮にも謎かけを利用した仕掛けはあった。ある程度の知性と知識を持ちあわせた災魔でなければ、この魔神が守る門を突破することは不可能だろう。
「ついでに見事、全問正解で宝箱とか!」
「いいじゃない、リリィを連れて挑戦するのも良さそうね♪」
実用性とアトラクション性を兼ね備えた伊美砂のトラップにはフレミアも気に入った様子。とはいえダンジョンは今現在も構築の真っ最中なので、彼女らが作った仕掛けもここから変化していく可能性もある。
「他の子達の考えも反映されるからその通りに作られるわけじゃないけど……面白いダンジョンになると良いわね♪」
「うんうん! はやく探検したいのだよ!」
ホラーハウスにドッキリな仕掛け、そして立ちはだかるクイズの魔神。ノリノリで面白ダンジョンを仕立て上げたふたりはにっこりと笑顔を浮かべながら、完成の時を待ち望むのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
オリジナルのダンジョン…。
自分達でダンジョンを創造するなんて面白いね…。
どうせなら、災魔討伐後も学園や生徒が有効活用できると良いんじゃないかな…。
ラン達と初めて出会った時みたいに温泉ダンジョンとか、どうかな…?
傷や疲労回復とかに効いたりとか…。
日々の訓練や冒険の疲れも癒せるしね…。
「温泉!」
「ゆったり!」
「お背中流す!」
後は温泉饅頭とかコーヒー牛乳とか…甘味処もあると嬉しいな…。
「ご主人!」
「温泉宿じゃ!」
「ない!」
う…わ、わかってるよ…。
まぁ、敵に不利なダンジョンっていうのは、敵のタイプが不明だからイマイチ作り難いよね…。
みんなで戦える様にシンプルな大広間に出口を塞ぐ仕掛けとかかな…。
「オリジナルのダンジョン……。自分達でダンジョンを創造するなんて面白いね……」
稼働中の『ダンジョンメーカー』と、形作られていく新たな迷宮の様子を眺めながら、興味深そうに呟くのは雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)。これ本来の目的は災魔を強制召喚して閉じ込めることだが、うまくすれば他の用途にも活用できそうだ。
「どうせなら、災魔討伐後も学園や生徒が有効活用できると良いんじゃないかな……」
そう考えた彼女は一緒についてきたメイド人形のラン、リン、レンを見る。彼女達と出会ったのもここアルダワの中で、その時の迷宮もいささかユニークな場所だった。
「ラン達と初めて出会った時みたいに温泉ダンジョンとか、どうかな……?」
「温泉!」
「ゆったり!」
「お背中流す!」
思い浮かべるのはアルダワ式の魔法蒸気温泉。特にラン達のいた迷宮はアルダワ名湯10選にも選ばれたそうで、そこで過ごしたひとときは彼女らの大切な思い出だった。
「傷や疲労回復とかに効いたりとか……。日々の訓練や冒険の疲れも癒せるしね……」
大魔王が討たれたとはいえ、迷宮での残党討伐や探索は学生達の鍛錬を兼ねた学業の一環だ。もしも迷宮内にそんな回復スポットが出来れば彼らも大いに助かるだろう。
そんな少女とメイド達の思念がひとつとなった結果、ふいに構築中のダンジョンに大きな穴が開き、そこから蒸気とお湯がこんこんと湧き出してくる。ちょっと触ってみたところ熱すぎず温すぎず、ゆったり肩まで浸かるのに丁度良さそうな温度だ。
「後は温泉饅頭とかコーヒー牛乳とか……甘味処もあると嬉しいな……」
温泉の次に璃奈がぽやんと思い浮かべたのは入浴後のサービス。湯上がりにいただく饅頭と牛乳はさらなる回復効果が見込めるだろうし、疲労回復には糖分も重要である――まあ、これについては単に彼女が甘いものが大好きなのが主な理由だが。
「ご主人!」
「温泉宿じゃ!」
「ない!」
「う……わ、わかってるよ……」
メイド達からもっともなツッコミを喰らってしまい、璃奈はちょっと拗ねたように唇を尖らせ。しかし『ダンジョンメーカー』はそんな願望もきっちりと反映してくれるようで、迷宮のどこかでまたガコンガコンと新たな仕掛けが形作られていく。
「まぁ、敵に不利なダンジョンっていうのは、敵のタイプが不明だからイマイチ作り難いよね……」
気を取り直してまたダンジョンの仕掛けを考える璃奈。ボスの特性から不利な環境を整えるのが難しければ、ここは味方が戦いやすいような造りにするほうが得策か。
「みんなで戦える様にシンプルな大広間に出口を塞ぐ仕掛けとかかな……」
そう考えていると、迷宮の奥のほうで何かが動作する気配がした。おそらくは今の思念でボス部屋の構築が始まったのだろう――ダンジョン自体の規模も相当に広がってきており、実際にボスが召喚されるまではもう一息といったところだ。
大成功
🔵🔵🔵
シェーラ・ミレディ
【WIZ】
魔王の残滓を倒すためのダンジョン、か。
それも複数の猟兵のイメージが混ざり合うとなると、難題だなぁ。
此方の有利になり、向こうには不利となるようなダンジョン、となると……ギミックや遮蔽物が多い方が良いだろうか。
落とし穴を利用した隠し通路や、スイッチ1つで通路を塞ぐ隔壁があれば便利だな。
……その分、攻略の難易度は上がる気がするが。仕掛けを理解していないと、折角のギミックも意味がないし……精査する時間はあるだろうか……。
うん、厄介な代物になりそうだ。
※アドリブ&絡み歓迎
「魔王の残滓を倒すためのダンジョン、か。それも複数の猟兵のイメージが混ざり合うとなると、難題だなぁ」
目標を果たすにはどんなダンジョンが理想だろうかと、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は首を捻る。創造中のダンジョンは今も目の前で『ダンジョンメーカー』と猟兵の想像力で増築と変化を続けており、その完成像は予想だにできない。
ある程度はイメージとは別物になることも織り込んだうえで取り掛かったほうが良いだろう。
「此方の有利になり、向こうには不利となるようなダンジョン、となると……ギミックや遮蔽物が多い方が良いだろうか」
そう考えたシェーラが『ダンジョンメーカー』に向けて思念を送ると、迷宮の構造が再び変化していく。足元には一部分だけ色の違う床が、壁には模様に紛れるように小さなスイッチが、といった具合に。
「落とし穴を利用した隠し通路や、スイッチ1つで通路を塞ぐ隔壁があれば便利だな」
ここは災魔を閉じ込めるためのダンジョン。そこに自分達だけが利用できるような移動・封鎖の手段があれば、ボス災魔を相手に有利な立ち回りができるだろう。
そんな思念に応じるように、迷宮には次々と新たな通路や仕掛け扉が創られていく。回転する壁や宝箱の底のスイッチ、石像の下の隠し階段など、そのディティールも多種多様である。
「……その分、攻略の難易度は上がる気がするが」
より複雑になっていくダンジョンを眺めてシェーラは苦笑をひとつ。当然といえば当然だが、迷宮はどこにどんな仕掛けを用意したかなど創造者にも教えてはくれない。
「仕掛けを理解していないと、折角のギミックも意味がないし……精査する時間はあるだろうか……」
完成したダンジョンを実際に攻略する際、ボス部屋に到達する過程でどれだけの仕掛けを把握できるかが、このギミックの成否を分けるだろう。攻略時間に余裕はあるだろうが、あまりのんびりしすぎてボスがダンジョンから出ていってしまっては大変だ。
「うん、厄介な代物になりそうだ」
ダンジョンを創造した後でも、気は抜けなさそうだと肩をすくめるシェーラ。
だが、自分達で作ったダンジョンが攻略できなかったでは笑い話にもならない。
僕ならやってみせるさと、自信家なミレナリィドールの少年は敢えて強気に笑った。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
第四形態の残滓…有り体に言って騎士として「気に入らない」存在です
相手に不利な迷宮を制作し、確実に討伐したい所
厭う対象でも正確な分析は必要ですが
当時の『魔女』達への非道
あれは彼女達の力の収奪という目的の「結果」でしかありません
つまり第四形態の能力は「力の収奪」と「軟体状の身体の毒性」
この仮説に基づき迷宮作成
迷宮内の試練として評価項目設定
項目は「力の正当性」と「試練に挑む際の身嗜み」
もし催眠、催淫や収奪、吸収で力を得ようとしたり、得た力を振るえば制裁
絆を示した協力者の力は評価し支援や祝福を
身嗜みは…清潔さを第一に
これらを監視・評価し迷宮運営を補助する番人を各地に配置
…息苦しい迷宮になったような
「第四形態の残滓……有り体に言って騎士として『気に入らない』存在です」
アルダワ魔王戦争での魔王との交戦記憶から、今回の敵に関連する情報を引き出して、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は低い声で呟いた。
その外見や名称からして今回のレプリカの大本は大魔王第四形態『ラクリマ・セクスアリス』。多くの『魔女』をその身に取り込むことで強大な魔力を得た形態であり、その非道な所業と囚われの『魔女』達の悲壮な姿は今も彼の記憶に残っている。
「相手に不利な迷宮を制作し、確実に討伐したい所」
大魔王の再来という最悪の可能性を摘み取るために、このダンジョンを彼奴の死地に。
そのために機械仕掛けの騎士はまず、徹底的に敵の性質を分析するところから始めた。
(厭う対象でも正確な分析は必要ですが、当時の『魔女』達への非道、あれは彼女達の力の収奪という目的の「結果」でしかありません)
ラクリマ・セクスアリス――より定義を広げれば『大魔王』の目的とはただ"喰らう"ことに集約される。当時のラクリマも『魔女』を選り好みして喰っていたと言うよりは、彼女らが持つ力が魔王の食欲を惹くほど強かったからと考えるべきだろう。
(つまり第四形態の能力は「力の収奪」と「軟体状の身体の毒性」)
そのような仮説を立てたうえで、トリテレイアはダンジョンの創造に着手する。
念じるのは迷宮内に存在する者への試練。そして裁定を下すための評価基準だ。
「項目は『力の正当性』と『試練に挑む際の身嗜み』」
前者はすなわち力を得るための規範。もし催眠、催淫や収奪、吸収といった不当な手段で力を得ようとしたり、得た力を振るえば制裁が下り、逆に絆を示した協力者の力は評価される。これらの明暗を分けるのは「対象者の自発的な同意」だろうか。
「身嗜みは……清潔さを第一に」
何をもって清潔とするかの判断にも諸々基準はあるだろうが、少なくとも毒々しい粘液の塊などは弾かれてしかるべきだろう。つまりは完全にセクスアリス・レプリカにメタを張ったルールの規定である。
「これらを監視・評価し、迷宮運営を補助する番人を各地に配置できれば……」
機械らしく理路整然としたトリテレイアの思念を受諾した『ダンジョンメーカー』は、その要請に応じて新たなギミックを創造する。現れたのは通路の左右や扉の前に並ぶ全身甲冑の人形。お城のようなダンジョンのデザインによく溶け込んでいる。
彼らの前で不正な力の簒奪を行ったり、ダンジョンを汚す不潔な真似をすれば、実力を以っての制裁が下るだろう。そして清潔で絆深き者には加勢をといった具合だ。
「……息苦しい迷宮になったような」
重厚で威圧感のある鎧が立ち並ぶダンジョンの通路を見て、少し物々しすぎるだろうかとトリテレイアは考えるが――全体的にホラーハウス的なデザインに寄りつつあるこの迷宮では、この鎧も雰囲気作りに一役買っていると言えなくもなさそうだ。
「後は上手く動作するか、実地での検証ですね」
こればかりは実際に試してみなければどうなるかは分からない。トリテレイアは格納スペースの中から騎士物語の書物を取り出し、ダンジョンが完成するまでの暫しの間、暇を潰すことにするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
自分で好きなように迷宮を創る、かぁ。
うーん、意外に難しいなコレ。
単純に通さねえってだけならまだしも、「頑張れば通れる」って塩梅にするんは大変だ。
……真面目な目的のはずなのに、ちょっと遊び心擽られっしさ。
前に友達と一緒に遊んだゲームをヒントにしてみっか。
部屋に散らばったブロックを同じ色同士で集めて全部消していくとか、部屋に隠れたスイッチを全部オンにすると扉が開くとか、ちょっと頭を使うパズル系の仕掛けとかが相性良さそうだ。
「歯ごたえはあるけど、しっかり頭を使って知恵を絞れば誰でもクリアできる」くらいの難易度に出来るのが理想かな。
まあ他の奴らのアイデアと複合したら、どうなるかわかんねーけど(笑って)
「自分で好きなように迷宮を創る、かぁ。うーん、意外に難しいなコレ」
ふってわいた思わぬ難題に悩むのは鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)。人間、自由度が高すぎると、逆に何をすればいいか分からなくなるのは往々にしてあることだ。
「単純に通さねえってだけならまだしも、『頑張れば通れる』って塩梅にするんは大変だ。……真面目な目的のはずなのに、ちょっと遊び心擽られっしさ」
みんなで協力してオリジナルのダンジョンを作ろう。言葉にしてみればなんとも面白そうなフレーズだ。大本の目的を忘れないことも大事だが、案外そうした遊び心に素直になったほうが悩まずに済むかもしれない。
「前に友達と一緒に遊んだゲームをヒントにしてみっか」
嵐が思いついたそれはパズルゲームや脱出ゲームといった、頭を使った謎解きの要素が含まれる遊戯だった。その思念に反応した『ダンジョンメーカー』が、構築中のダンジョンをガコンガコンと変化させていく。
「部屋に散らばったブロックを同じ色同士で集めて全部消していくとか、部屋に隠れたスイッチを全部オンにすると扉が開くとか……」
そうしたちょっと頭を使うパズル系の仕掛けは、そのままダンジョンのギミックに組み込んでも相性が良いだろう。音を立ててダンジョンの壁や床や天井が組み変わり、新しい道や扉を作っていく様子は、まさにこれ自体が巨大なパズルのようでもあった。
「『歯ごたえはあるけど、しっかり頭を使って知恵を絞れば誰でもクリアできる』くらいの難易度に出来るのが理想かな」
変化していく迷宮を面白そうに眺めながら、嵐は難易度設定についても思念を送る。
猟兵がクリアできなくなるような激ムズ設定は避けたほうが無難だし、かといって簡単すぎて災魔にまでクリアされても困る。塩梅としてはこれが適当か。となれば迷宮内の謎は特定の知識が必要なものよりも、直感的に解けるタイプが増えそうだ。
「まあ他の奴らのアイデアと複合したら、どうなるかわかんねーけど」
パズル要素と他のギミックがうまく組み合わさることで、間違えれば罰ゲームとか、クリアすればお宝ゲットといった、より大掛かりな仕掛けになる可能性もある。
それはそれで面白いかもな、と、少年は笑いながら迷宮の完成を待つのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・レヴェリー
【希望の華】で連携
ダンジョンを作るなんて面白そうだわ!わたし達は今まで潜る側だったものね
さっそく作りたいところだけど……いざ考えてみると難しいわね。どういう所にどういう罠があれば良いのかなんていまいちわからないし……此処は得意な環境にしましょうか
罠とか隠し構造とかは特に考えず、ちょっと広めの迷路がいいかしら。それだけじゃアレだから、わたしの【世界の雫】のように、衝撃を加えると爆ぜる属性の結晶がそこら中に生えている感じが良いわ!
中で魔法が放たれたり、何処かの結晶が爆ぜたりすると、散らばった属性がまた集まって結晶になるの!きっとキラキラしていて綺麗だし、何度も使えて楽しいわ!
スピネル・ティーローズ
【希望の華】で連携
アドリブ歓迎
ダンジョンを作るなんて凄い所だなぁ。しかもそれを利用して大魔王のレプリカを倒すなんて、世界は広いや
いざ考えると難しいなぁ……うーん仕掛けは落とし穴の逆で踏んだら上に飛んでいく罠とか、転がってくる岩の代わりに巨大なダイスとか。
ダイスは面にいろんな効果が書かれていて、それに潰されるとその効果が発動するとかね。
あ、攻略しないといけないから休憩できる安全な場所とかもいるよね。
それから…そうだ、手助けしてくれる泉の女神様なんかも居ると助かるかな?それから折角ダンジョンなんだからお宝はいるよね!
大魔王を倒すための伝説のアイテムとか色々出ないかな、楽しみ!
花開院・月下
【希望の華】で連携
はぁぁぁぁぁい!!今回は皆さんでダンジョンを創っていきたいと思いますぅぅぅ!!
えーーっと、せ、せく……せくんふんすぱぷりかを呼び出す為に必要なんだよね!忍びと謳われしあたしが完璧なダンジョンを創り上げてみせるよ!!
UC使ってズバッと考えちゃうよ!!
先ずは三半規管を狂わせて妨害しよう!!
天井にマイクとスピーカーを仕掛けて大音量で流したりとかどうですかぁ!!歩行音が聞こえなくなり歩く感覚も消え、ひたすらに声が聞こえるんだ!!精神にくるよね!!
後はぁ……とりあえずダンジョン内に岩転がしとう!!
フィニッシュ!侵入者達を一網打尽だ!!
え?これからこれを攻略するんですか???
アドリブ歓迎
梅ヶ枝・喜介
【希望の華】連中と挑ませてもらう!
むむむ!申し訳ないことに、せっかくの説明は半分もわからんかったが……何の問題もねえ!委細承知!
仕掛け罠たっぷりの洞穴に潜って奥底に現れる大将をぶっ飛ばせばいいんだよな!
まっかせろォい!腕っぷしでどうにでもなるなら得意分野だぜ!
それによ!こう見えて、おれァ仕掛け罠にも一家言ある!
去年の夏ごろにたっぷりと幽霊屋敷で遊んできたからよ!
突然露る墓石の群れ!
青くゆらめく人魂!おどろおどろしい笛の音!
天井から首筋に落ちる冷やりとした蒟蒻!
白装束のお化けが音もなく近づく様子は心胆に怖気が立ったもんだ!
一度は面食らったが二度は効かねえ!はず!
魔王討伐!いざ行かん!
アドリブ歓迎
ソラ・ネビュラ
【希望の華】で連携
えーっと、ダンジョンを作るのよね?
シミュレーターみたいな感じで、私達に有利になる様に考えればいいのよね?ええと…
見通しの良い所が良いのかしら。その方が射程の長い装備を活かしやすいし…そうすると遮蔽物も欲しくなるわね…
隠し扉や隠し通路、隠し部屋があった方が戦術が広がるのかしら?奇襲や撤退に使えるかもしれないし…何よりダンジョンっぽい気がするわ。
後は…トラップとかが有るとダンジョンっぽいわね。壁に手をかけると矢が飛んできたり、スイッチを踏むと落とし穴だったり、ワイヤーに引っかかるとピンが抜けたり…
あれ、これって私達に有利になるのかしら…?
アドリブ歓迎
八月・九木
【希望の華】で連携
さて探偵のご登場だ。このボクが来たからにはどんな事件も解決してみせよう。
……何!?事件も死体も存在していないだって!?なら作るしかないよね!
さて、賢明な読者諸君に尋ねよう。「一番恐ろしいダンジョンとは何だい?」と。
多くの罠?大層な迷路?突如襲い来る敵の数々?なるほど恐ろしい。
だがそれはダンジョンの一要素が殺人的なだけだ。そこを乗り越えればあとはただのダンジョン。
つまりボクが言いたいのはダンジョンそのものが脅威であれと言う話なんだよ。
中の存在を消化して食らうダンジョンであれ、生物としてあれとね。
さあ食らい尽くせ!死体を量産するんだダンジョンのダン君(0歳)!
「はぁぁぁぁぁい!! 今回は皆さんでダンジョンを創っていきたいと思いますぅぅぅ!!」
すぅー、すぅー、すぅー――と、迷宮に木霊する大音声。その主は花開院・月下(陰陽師は忍べない・f23321)。いつでも元気でハイテンションな陰陽忍者である。
「えーーっと、せ、せく……せくんふんすぱぷりかを呼び出す為に必要なんだよね!」
「セクスアリス・レプリカよね。ぱぷりかだとお野菜になっちゃうわ」
そうツッコミを入れたのは一緒に来た【希望の華】メンバーのひとり、アリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)。わくわくと好奇心で輝いたその眼差しは、絶賛稼働中の『ダンジョンメーカー』に向けられている。
「ダンジョンを作るなんて面白そうだわ! わたし達は今まで潜る側だったものね」
「潜るのも作るのもどんと来い! 忍びと謳われしあたしが完璧なダンジョンを創り上げてみせるよ!!」
自分達の手でダンジョンを作って攻略するという、これまでにない体験を前にしてふたりは意気揚々。そこに、残るメンバー達も続々と迷宮建設予定地にやって来る。
「ダンジョンを作るなんて凄い所だなぁ。しかもそれを利用して大魔王のレプリカを倒すなんて、世界は広いや」
まだ創造中ながらも威容を誇るダンジョンを眺めて、感心したように呟くのはスピネル・ティーローズ(海賊少年・f26425)。災魔一体を閉じ込めるのにこれだけ大掛かりなものを建設できる魔法装置とは、世界には彼のまだ知らない驚きに満ちている。
「えーっと、ダンジョンを作るのよね? シミュレーターみたいな感じで、私達に有利になる様に考えればいいのよね? ええと……」
その迷宮創造装置たる『ダンジョンメーカー』をじぃっと見つめているのはソラ・ネビュラ(繋ぐモノ・f24995)。説明によれば、この近くにいれば自然と装置が周囲の思念を読み取って、新たなダンジョンにそのイメージを反映させるとのことだった。
他の面子もめいめい集まって、輪になってうんうんとダンジョンの造形を考えはじめる。
「さっそく作りたいところだけど……いざ考えてみると難しいわね」
むむむ、とダンジョンメーカーの前で首をひねるアリス。スピネルやソラもすぐにはピンとくるアイデアが出ないようで、いっしょになってこてんと首を傾げている。
そんな中、迷わずいの一番に何かを思いついたのは、やはりというか月下であった。
「ズバッと考えたよ!! 先ずは三半規管を狂わせて妨害しよう!!」
月下の型、護の法「天声細葉榕」によって大きくなった声を張り上げて、提案するのは聴覚に対するトラップ。天井にマイクとスピーカーを仕掛けて大音量で流したりといった、シンプルながらも実際食らうとかなり嫌そうな仕掛けだ。
「歩行音が聞こえなくなり歩く感覚も消え、ひたすらに声が聞こえるんだ!! 精神にくるよね!!」
相手が災魔だろうとこの音波攻撃はきっと堪えるに違いない。そんな月下の思念を汲み取ったダンジョンメーカーが、ゴゴゴゴと音を立ててダンジョンを変形させていく。
喉が枯れる様子もなくニッコニコの笑顔で叫びまくる彼女の騒がしさには、そのアイデアに「一理あるかも」と思わせる説得力があった。
「他にもトラップとかが有るとダンジョンっぽいわね」
一方ソラは電脳ゴーグルのデータベースから「ダンジョンっぽいもの」のイメージを思い浮かべる。薄暗い地下迷宮、最奥に潜むボス、侵入者を阻む数々の仕掛け――。
「壁に手をかけると矢が飛んできたり、スイッチを踏むと落とし穴だったり、ワイヤーに引っかかるとピンが抜けたり……」
「落とし穴の逆で踏んだら上に飛んでいく罠とかもどうかな」
ぽつりぽつりとした呟きに合わせて、スピネルも思いついたものを口にしてみる。落ちる罠に比べると上に飛ぶ罠というのは案外少ないので、意表を突けるかもしれない。
「後はぁ……とりあえずダンジョン内に岩転がしとう!!」
目を爛々と輝かせながらそう言ったのは月下。数々のトラップで疲弊したところに、ゴロゴロと通路を塞ぎながら転がってくる大岩。これまたシンプルながらヤバい。
「なら、転がってくる岩の代わりに巨大なダイスとか。ダイスは面にいろんな効果が書かれていて、それに潰されるとその効果が発動するとかね」
ノリノリの月下に触発されてスピネルもまた新たなアイデアを提案する。単に不利な要素だけでなく、運が良ければメリットにもなる出目を混ぜるのも面白いかな、と。
こうしてそれぞれの思いつきが絡みあうことでダンジョンはより複雑さを増し、ギミックはより豊富でカオスなものとなっていった。
「どういう所にどういう罠があれば良いのかなんていまいちわからないし……此処は得意な環境にしましょうか」
順調にトラップが増えていくなかで、アリスが考えていたのは自分達が有利になるギミックについてだった。敵の足を引っ張るのも大事だがこれもまた重要な要素だ。
「罠とか隠し構造とかは特に考えず、ちょっと広めの迷路がいいかしら。それだけじゃアレだから……」
彼女がポケットの中からキラキラと光る何かを取り出して念じると、ダンジョンのあちらこちらから色とりどりの結晶体が生えてくる。暗い迷宮を照らすように仄かに発光するそれは、とても美しいが、触れれば壊れてしまいそうな危うさも感じる。
「これはなに?」
「わたしの【世界の雫】のように、衝撃を加えると爆ぜる属性の結晶よ」
ソラからの質問に、アリスは手に持った実物の宝石を見せながら答える。それは彼女の【世界の詩う物語】によって換気された、純粋な属性の力を結晶化させたものだ。
「中で魔法が放たれたり、何処かの結晶が爆ぜたりすると、散らばった属性がまた集まって結晶になるの! きっとキラキラしていて綺麗だし、何度も使えて楽しいわ!」
その結晶に負けないくらい青い瞳をキラキラさせて、とても楽しそうに説明するアリス。ようは誤爆さえしないよう注意すれば、誰でも利用できる属性爆弾がそこかしこにあるようなもので、活用すればボス撃破の大きな助けになるだろう。
「面白い仕掛けね。それに明るくなって見通しが良くなるのも射程の長い装備を活かしやすいし……そうすると遮蔽物も欲しくなるわね……」
ソラは色とりどりに光る結晶を眺めながら、これを利用しつつ自分の戦術スタイルに合った環境を考える。物陰に隠れながらボスの近くにある結晶を射撃で爆破――というのは即興の思いつきだが、効果はありそうだ。
「後は……隠し扉や隠し通路、隠し部屋はあった方が戦術が広がるのかしら? 奇襲や撤退に使えるかもしれないし……何よりダンジョンっぽい気がするわ」
単に広いだけの迷路ではなく、こうした隠し要素があったほうがダンジョンらしいとソラは思う。強制召喚されたボスは迷宮の構造について把握してはいないので、この手の秘密のスペースの存在は敵を撹乱するのに必ずや役立つはずだ。
「おっとすまねぇ! 説明を聞いてたら遅くなっちまった!」
「あら喜介さん、大丈夫よ!」
ダンジョンの構造もおおむね纏まりかけてきた頃合いになって、やって来たのは梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)。本番のダンジョン攻略はまだこれからなのだから、気にしなくても心配ないとアリスが微笑みかける。
「むむむ! 申し訳ないことに、せっかくの説明は半分もわからんかったが……何の問題もねえ! 委細承知!」
遅参のぶんを取り戻そうと、気合いも十分に彼は拳をぐっと握って意気込む。なに、だんじょんめぇかあだの大魔王の残滓だのとややこしい要素はくっついているが、やるべきことは単純だ。
「仕掛け罠たっぷりの洞穴に潜って奥底に現れる大将をぶっ飛ばせばいいんだよな!
まっかせろォい! 腕っぷしでどうにでもなるなら得意分野だぜ!」
そう言って彼は腰に佩いた愛用の木刀に手を当てながらにぃっと笑う――大将をぶっ飛ばすのは分かるとして、ひょっとすると仕掛けのほうも腕っぷしで突破する気なのだろうか。
「それによ! こう見えて、おれァ仕掛け罠にも一家言ある! 去年の夏ごろにたっぷりと幽霊屋敷で遊んできたからよ!」
「「幽霊屋敷……?」」
首をかしげる仲間達の前で、その自信の理由を語りだす喜介。その時、まだ絶賛稼働中である『ダンジョンメーカー』がピカッと反応したのに、彼は気付いていない。
「突然露る墓石の群れ! 青くゆらめく人魂! おどろおどろしい笛の音! 天井から首筋に落ちる冷やりとした蒟蒻! 白装束のお化けが音もなく近づく様子は心胆に怖気が立ったもんだ!」
ぶるり、とその時のことを思い出したのか背筋を震わせ。最近のお化け屋敷は本気で手が込んでいるので、ものによっては「本物より怖い」レベルだったのかもしれない。
が、今気にすることはその話自体ではなく。彼がその恐怖体験を語るのに合わせて、ズズズズズ――とまたダンジョンが不気味な音を立てて変化している点だろう。
「えーっと、もしかして今ので……」
「お化け、出てくるかもしれないわね……」
「あんまり変なことを考えると危険そうだね……」
「一度は面食らったが二度は効かねえ! はず!」
ホラー感がさらに増した迷宮に、顔を見合わせるソラ、アリス、スピネルの三人。
喜介は変わらず気合十分だが、果たしてどんな恐ろしいものが追加されたのやら。
と、そこにコツコツとブーツの靴音を響かせて、またひとり新たな猟兵がやって来る。
「さて探偵のご登場だ。このボクが来たからにはどんな事件も解決してみせよう」
主役は最後に現れる、とでも言いそうなクールで自信たっぷりな顔をした、彼女の名は八月・九木(超理論安楽椅子探偵・f22542)。【希望の華】メンバー最後のひとりである。
「……何!? 事件も死体も存在していないだって!? なら作るしかないよね!」
先着していた仲間達から今回の依頼のあらましを聞いた九木は驚きの顔を浮かべた――かと思うとすぐに気を取り直し、担いできた安楽椅子を地面に置いて腰掛ける。なぜそんなものを持って来ているかと言えば、それは彼女が安楽椅子探偵だからである。
事件と死体は作るものなのかとか、それだと犯人は探偵ではないのかとか、そういうツッコミはするだけ野暮である。ここからは彼女の推理ショウの時間だ。
「さて、賢明な読者諸君に尋ねよう。『一番恐ろしいダンジョンとは何だい?』と」
5本の指先をくっつけるように手を合わせて、安楽椅子(持参)探偵は語り始める。
その曖昧な問いかけに、いつの間にか読者役になった猟兵達は誰も答えられない。
「多くの罠? 大層な迷路? 突如襲い来る敵の数々? なるほど恐ろしい。だがそれはダンジョンの一要素が殺人的なだけだ。そこを乗り越えればあとはただのダンジョン」
大抵のダンジョンにおいて脅威とされるものはそれで全てだが、では彼女の考える最恐のダンジョンはどう違うのか。淀みのない語り口調につい皆が引き込まれていく裏で、『ダンジョンメーカー』がボウッと不気味に光っている。
「つまりボクが言いたいのはダンジョンそのものが脅威であれと言う話なんだよ。
中の存在を消化して食らうダンジョンであれ、生物としてあれとね」
【探偵は可能性を殺さない】――九木が導き出した答えとはまさかの生きたダンジョン。中にいる災魔も侵入者もまとめて喰らう脅威の迷宮。確かにそんなものが出来ればある意味一番恐ろしいかもしれないが――なにか本末転倒のような気がする。
「なるほどぉ! こんなダンジョンもアリなんだね!!」
殺意マシマシな九木の最恐のダンジョン案に目をキラキラ輝かせるのは、完璧なダンジョンを目指していた月下。その他の猟兵のなんとも言えない心配そうな表情をよそに、勤勉なダンジョンメーカーはどんな超理論推理でも真面目に反映させていく。
「さあ食らい尽くせ! 死体を量産するんだダンジョンのダン君(0歳)!」
「フィニッシュ! 侵入者達を一網打尽だ!!」
再構築されていくダンジョンに向かってハイテンションに呼びかける九木と月下。
最高にノリにノッているふたりを見守りながら、ソラがそこでぽつり、と一言。
「あれ、これって私達に有利になるのかしら……?」
「え? これからこれを攻略するんですか???」
どうやら如何に完璧なダンジョンを作るかに気を取られるあまり、それをどう攻略するかについては全く考えていなかったらしい。きょとーんとした月下の表情が全てを物語っていた。
「……あ、攻略しないといけないから休憩できる安全な場所とかもいるよね」
ちょっと脅威度が上がりすぎたダンジョンをどうにか軌道修正しようと、やや焦り気味な調子でスピネルが言う。安全地帯も用意しないままこの迷宮に侵入すれば、本当にみんな食べられてしまいかねない。
「それから……そうだ、手助けしてくれる泉の女神様なんかも居ると助かるかな? それから折角ダンジョンなんだからお宝はいるよね!」
リスクがあればリターンもあるのがダンジョン。攻略の助けになってくれるようなスポットをあれこれと挙げてみると、ダンジョンの変動が次第に緩やかになっていく。
「これで完成かしら……?」
迷宮の鳴動が止まり、魔法装置の光がうっすらと消えていくのを見てアリスが呟く。果たして彼女らの目の前には、創造されたダンジョンの入口が開かれていた。
「どうなったか分からないけど、とにかく行ってみるしかないわよね」
この迷宮の奥に倒すべき災魔がいるのだから行くしかない。何が出てきてもいいよう防弾盾を構えながらソラが先頭に立つと、他のメンバーもそのあとに続く。
「大魔王を倒すための伝説のアイテムとか色々出ないかな、楽しみ!」
「魔王討伐! いざ行かん!」
ワクワクと楽しそうに笑いながらメガリスの大剣を担ぐスピネルに、全身に気魄を漲らせながら一歩踏み出す喜介。みな、ダンジョンにかける意気込みは十分そうだ。
「事件と死体はこれで用意できたし、それじゃあ解決に行こうか」
「あたし達ならどんなダンジョンだって攻略可能だよね!!!」
愛用の安楽椅子を肩に担ぎなおした九木が、そして変わらぬ大声でニッコニコの月下が最後に続き――かくして、猟兵オリジナルダンジョンの攻略の幕が開かれる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『『ダンジョンメーカー』ダンジョンの探索』
|
POW : 肉体や気合でダンジョンを探索、突破する
SPD : 速さや技量でダンジョンを探索、突破する
WIZ : 魔力や賢さでダンジョンを探索、突破する
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ゴゴゴゴゴ――と不気味な鳴動を残して『ダンジョンメーカー』の動作が停止する。
多くの猟兵達の想像力によって、ついに完成した新たなダンジョン。その造りはとても一言では表せないほどに、複雑かつギミック満載なものとなっていた。
まず始めにその外観的な印象を述べるとすれば『ホラーハウスの魔王城』だろう。
打ち捨てられた古城と地下墓地(カタコンベ)が一体になったような、陰鬱で黴臭い雰囲気。散見されるのは本物ではないかと疑ってしまうほどリアルな死体や髑髏。
どこからともなく不気味な風の音や亡者の呼びかけまで聞こえてくるような――ダンジョン全体が非常に手のこんだお化け屋敷のようなイメージだ。
暗い迷宮内部を照らす灯りは、壁や天井のあちらこちらに生えた色とりどりの結晶。
これは単なる照明ではなく、衝撃を与えると爆ぜ、迂闊な侵入者を傷つけるトラップともなっている。色によって与えるダメージの属性が異なるため油断は禁物だ。
この結晶は迷宮内で使われた魔法の残滓や、爆ぜて散らばった結晶の破片を集めて生成されるため、決して尽きることはなく破壊と再生のループを繰り返している。
また、結晶と同じくらいに目につくのは、迷宮各所に点在している騎士甲冑だろう。彼らはこの迷宮の番人であり、迷宮の掟にそぐわぬ者を罰するべく襲ってくる。
処罰の対象は「不当な手段で力を収奪する者」「迷宮を汚す不潔なる者」。逆に正当に協力しあう者などは評価し、支援や祝福を与えてくれることもあるようだ。
その他にも様々なトラップが、このダンジョンには至る所に仕掛けられている。
落とし穴、飛び出す矢、ワイヤーといった一般的な罠も多いが、その大部分は相手を驚かせたり恐怖を与えるもので、実害性は低めとなっている。ホラーハウスのアトラクションの仕掛け等を想像してもらえば分かりやすいだろうか。
ただ、全てが全てそういった怖いだけで無害なトラップだけではない。愚かな侵入者を打ち据える棘鉄球つきの鎖鞭、通路の向こうから転がってくる巨大な岩石など、引っ掛かれば猟兵や災魔でも危険な仕掛けもある。
変わり種としては、大岩の代わりにサイコロが転がってきて、ダイス面に書かれた様々な効果を潰した者に与えるという、メリットとデメリットの混在する罠もある。
他には、突如天井のマイクとスピーカーから大音量のボイスが鳴り響くとか――こちらは違う意味で精神に、そして三半規管にダメージを負いそうなトラップである。
また、それと同じくらいに多いのがクイズや謎解き系のギミックの数々である。
部屋に散らばったブロックを同じ色同士で集めて消していく、隠れたスイッチを全部オンにする、等々。さらにダンジョンの途上には不気味な「クイズの魔神」が立ちはだかる扉があり、彼の出題する「アルダワ縦断ミラクルクイズ」に答えなければ先には進めない。なお全問正解した者には豪華賞品の宝箱が進呈される。
謎解きの難易度はおしなべて「歯ごたえはあるが、しっかり頭を使えば誰でも解ける」よう調整されているので、突破不可能ということはそうそう無いはずだ。
そしてダンジョンといえば隠し通路や隠し扉、隠し部屋の存在なども欠かせない。
落とし穴の底や秘密のスイッチなど、様々な場所にこうした隠しスペースは存在しており、逆にスイッチひとつで通路を隔壁で閉鎖できる仕掛けなどもある。発見できれば迷宮攻略のショートカットだけでなく、ボス災魔との戦いにも役立つだろう。
その中には宝箱があったり、ダンジョンの入り口付近からボスのいるゴールまで直通の隠し通路まであるかもしれない――見つけられた者は非常にラッキーである。
これだけ規模が大きくなったためか、このダンジョンには休憩ポイントも存在する。
ダンジョンの各所には外傷や疲労回復に効く魔法蒸気温泉が点在しており、可愛らしい少女や美女の姿をした「温泉の女神様」が来訪者の疲れを癒やしてくれる。なお入浴は男女別、ルールを破ると女神様が怒るので注意されたし。
また、温泉のすぐ近くには和風の茶店があり、温泉饅頭やコーヒー牛乳、和菓子などの甘味を売ってくれるのだが――その店の奥からは「ヒュ~ドロロロロ……」とおどろおどろしい音や背筋の寒くなるような風が吹いてくる。本当に立ち寄っても大丈夫なものか、和風の幽霊屋敷的な不安と恐怖を感じさせるスポットである。
だが――ある意味、ここまで挙げたどれよりも恐ろしい要素がこの迷宮にはある。
ダンジョンの壁にぴったりと肌を当てて、耳を澄ませれば感じるだろう。トクン、トクン、と鼓動のような小さな音と、脈打つような微かな振動を。
そう、このダンジョンはそれ自体が生きている。目に見えて害を起こすような様子は今のところなく、そもそも知性や自我があるかも不明だが生物であるのは確かだ。
超巨大な魔法生物やゴーレムの内部をイメージするといいかもしれない。恐るべしは猟兵の想像力からこんなものまで完成させた『ダンジョンメーカー』の力である。
そしてこのダンジョンの深奥に待ち受けるボスは『セクスアリス・レプリカ』。
突然こんな迷宮に強制召喚を受けたのだ、あるいは困惑しているかもしれない。
彼がダンジョンを脱出する前に発見し、撃破することが今回のクエストである。
ホラーな雰囲気漂うダンジョンの完成をみた猟兵達は、さっそく攻略を開始する。
中に入ってみれば通路や部屋はおおむね広く、数人が並んでぶつからない程度の幅がある。どこで戦闘になっても狭さで不利になることは無いだろう。
果たしてどんな冒険が彼らを待っているのか――自作ダンジョン探索の開幕である。
※マスターより
皆様のプレイングのお陰でなんかすごいダンジョンができました。超すごい。
これだけ色々あると全ギミックを制覇するのも大変だと思いますので、プレイングの際はどの仕掛けや罠に挑戦・対処するか、幾つかに目標を絞るのを推奨します。
迷宮の隅々まで完全攻略せずとも、ボスを発見できればこの章の目標は達成です。
伊美砂・アクアノート
【SPD オルタナティブ・ダブル】
他猟兵の前を先行…一応、本職シーフでゴザルからな。
『鍵開け、暗視、罠使い、偵察、第六感、視力、聞き耳、忍び足、情報収集』仕事はキッチリさせてもらうさ。分身して、片方が罠解除している時には、もう片方は周囲警戒。・・・ああ、ショートカットを発見してしまったら無視します。折角のギミックを短縮してしまうのは、ほら、製作者に悪いし。 ……基本、我輩は面白さ優先であるからな。ダメージのありそうな罠は解除して進むが、ビックリ驚きホラーなギミックはあえて残すのである……後続に楽しみは取っておかねばならぬからな! そう、これは必要なコトなの。(真面目な表情で罠を再セットし)
「まずは私が先行しましょう……一応、本職シーフでゴザルからな」
完成したてのダンジョン攻略の先陣を切ったのは伊美砂。漆黒の潜入用装備に身を包んだ彼女は【オルタナティブ・ダブル】でゴザル口調のもうひとりの自分の人格を分離させ、1人でありながら2人1組となって探索を開始する。
「仕事はキッチリさせてもらうさ」
薄暗い迷宮の内部も少しの灯りさえあれば彼女の視力には問題ない。僅かな異常も見逃さないように聴覚と第六感を研ぎ澄ませ、隠された罠や仕掛けを見つけ出す。そうした手練手管ならいくらでも持っている。
「周辺警戒、頼んだわよ」
「任されたでゴザル」
後続の脅威となりそうなトラップを発見すると伊美砂はすぐに解除を始め、もうひとりの伊美砂が周囲に気を配る。集中力のいる作業を行っている間も警戒を疎かにしない、そのための分身によるダブル体制だ。
「そこまで複雑な構造じゃないわね」
仕掛けられた罠の多くは扉を開けると矢が飛んできたり、天井から突然石が降ってきたりといった、他世界間諜報員の彼女には見慣れたものばかり。起点となるスイッチを作動しないようにしたり、機構そのものを取り外したりと、手際よく解除していく。
「……あら、ここから先に進めそうね」
そうして罠を解きつつ探索を進めていくうちに、伊美砂は壁にカモフラージュされた仕掛け扉を発見する。これを使えばこの先の経路のいくつかをショートカットして、楽にダンジョンの奥に進めそうだが――。
「無視しましょ」
「そうであるな」
伊美砂とその分身はこれを見なかったことにしてスルー。まだまだ幾つもの仕掛けが待ち受けていることを承知のうえで、敢えて正規ルートでの攻略にこだわるようだ。
「折角のギミックを短縮してしまうのは、ほら、製作者に悪いし」
「……基本、我輩は面白さ優先であるからな」
このダンジョンは猟兵皆の想像力がカタチとなったもの。誰かが一生懸命に考えた仕掛けを体験せずにスルーしてしまうのはなんだか申し訳ないし勿体ない、というのが伊美砂たちの総意だった。その考えは、彼女らのトラップ調査行程にも現れている。
「ダメージのありそうな罠は解除して進むが、ビックリ驚きホラーなギミックはあえて残すのである……後続に楽しみは取っておかねばならぬからな!」
落とし穴や突然の物音、いきなり飛び出してくる白いシーツおばけ――そんな驚きや恐怖感はあっても実害はない仕掛けを見つけると、彼女らはそれを放置していた。それどころか一回こっきりのギミックはわざわざ再設置までする手のかけようである。
「そう、これは必要なコトなの」
先行する自分達だけで全てのギミックを解いてしまっては、後続が攻略する意味がなくなってしまう。危険は排除してもドキドキまでは奪わない、それが彼女らの心意気。
どうか平等にこのダンジョンの面白さを味わってほしい――そんな想いを胸に、伊美砂はしごく真面目な表情で罠を再セットするのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ジュリア・ホワイト
…ん?
何だかギミックトラップその他夢盛りてんこ盛りの様な説明があったけど気のせいかな?
気のせいだと良いな、うん
まぁ、元よりギミックに正面から挑むつもりだったし
隠し扉や隠し通路、ワクワクするじゃないか!
その為なら棘鉄球だろうが落とし穴だろうが乗り越えてみせるさ!
(ミラクルクイズの部屋の扉をそっ閉じしつつ)
隅々まで見て回るのは無理だけど、色々体験したいな
おや?ここにも仕掛けがありそうな感じだね?
とりあえず弄ってみy(好奇心が強すぎる。猫は死んだ)
ああ、もし道中猟兵の仲間を見つけたら積極的に協力するよ
パーティ攻略もダンジョンの定番だろう?
それにボクは、誰かを手助けする時が一番力を発揮するものでね!
鏡島・嵐
うーん、すげえダンジョンが出来上がっちまったな。
でかい遊園地とかテーマパークでもここまで凝ったのはそう無ぇと思う。
でもまあ、お化け屋敷っぽい雰囲気なんはちょっと好みかもしれねーな。
(戦いは怖いが、幽霊オバケの類は全く平気)
力を合わせてまっとうに取り組んだ方がいいって話だし、地道に攻略していくか。
《忘れられし十三番目の贈り物》で当たると痛そうな仕掛けを見破りながら、なるべく回避するように先に進んでいく。
休憩ポイントもあるらしいから、多少は喰らっても大丈夫だろうけど。
あと、パズルや仕掛けに挑むがてら隠しギミックを調べておきてえな。
なにかイイもの手に入れられれば、後の戦いが有利になるかもしれねーし。
「……ん? 何だかギミックトラップその他夢盛りてんこ盛りの様な説明があったけど気のせいかな? 気のせいだと良いな、うん」
いかにも魔王の住処らしい古城のダンジョンを歩きながら、首をかしげながら呟くジュリア。彼女は特にこれといった仕掛けを『ダンジョンメーカー』に望まなかったが、それ以上に手の込んだギミックやトラップを考案する猟兵は多かったようだ。
「うーん、すげえダンジョンが出来上がっちまったな。でかい遊園地とかテーマパークでもここまで凝ったのはそう無ぇと思う」
同じく完成したダンジョンの内部を見回して、感心とも驚きともつかない調子で語るのは嵐。十人以上もの猟兵の想像力の融合によって創造されたこの迷宮の全容を把握できる者は、もはや誰もいないだろう。
「でもまあ、お化け屋敷っぽい雰囲気なんはちょっと好みかもしれねーな」
戦うのは怖いが、幽霊やお化けの類は全く平気な嵐は、おどろおどろしい雰囲気の城を前にしてもどこか楽しげである。片やジュリアのほうも、予想外のダンジョンの出来栄えにちょっと驚きはしたものの、威勢を削がれたような様子は微塵もない。
「まぁ、元よりギミックに正面から挑むつもりだったし。隠し扉や隠し通路、ワクワクするじゃないか!」
自分が考えもしなかった仕掛けがてんこ盛りということは、言い換えれば新鮮な気持ちでそれらを味わえるということだ。未知の領域に足を踏み入れ、隠されたものを見つけ出す。それこそまさにダンジョン攻略における一番の楽しみと言えるもの。
「その為なら棘鉄球だろうが落とし穴だろうが乗り越えてみせるさ!」
爽やかな笑みを浮かべたジュリアの高らかな宣言がダンジョンに木霊する。それを聞いた嵐もまた楽しそうな笑みを見せ、歩調を合わせてダンジョンの奥に進んでいく。
「力を合わせてまっとうに取り組んだ方がいいって話だし、地道に攻略していくか」
「パーティ攻略もダンジョンの定番だろう? それにボクは、誰かを手助けする時が一番力を発揮するものでね!」
たまたまダンジョンの道中で出会ったふたりは、それぞれの得意分野を活かして攻略を進めていく。迷宮内に仕掛けられた数々のトラップの多くはドッキリ系だが、中には生命に関わるものもある――二人共攻略を楽しみつつも決して油断はしていない。
「この先の罠は当たると痛そうだな……」
「よし、ここはボクに任せてくれ」
【忘れられし十三番目の贈り物】で身体能力と思考演算能力を引き上げた嵐が、行く手に待ちうけるトラップを見破ると、【明日へ繋げ命の灯! 希望に向かって脱出せよ!】を発動したジュリアが駆け出す。その足元でカチリと音が鳴って次々にトラップが作動するが、機関車さながらに猛進する彼女には触れることさえできない。
棘鉄球を振り切り落とし穴を飛び越えて、無事に彼女が駆け抜けていった後には、全てのトラップが作動済みとなった安全な通路だけが残されていた。
「ボクにかかればざっとこんなものさ。さあ次は何が……」
『よくぞ来た、迷宮の謎に挑む者よ』
トラップ地帯を突破したジュリアは意気揚々と次のエリアに続く扉を開こうとするが――そこに待ち受けていたのはクイズ番組のような雰囲気の部屋と巨大な魔神像。
『さあ、アルダワ縦断ミラクルクイズの時間であ――』
ばたん。"クイズの魔神"がみなまで言い終わる前に、ジュリアは扉をそっと閉じた。そこに彼女の後から追いついてきた嵐が、何があったのだろうかと首をかしげる。
「どうかしたのか?」
「……ヒーローにも苦手なことはあるんだよ。ここは迂回しよう」
物理的にはどんな障害だろうと真っ直ぐぶち抜くのがジュリアの心意気だが、それが通じないギミックもある。中を覗いてみた嵐も「ああ、なるほど」と納得したようで、クイズに挑む前に迂回路はないか探してみようということになった。
「隅々まで見て回るのは無理だけど、色々体験したいな」
「あと、仕掛けに挑むがてら隠しギミックを調べておきてえな」
ジュリアはこつんこつんと黒のスコップで壁や床を叩き、どこかに仕掛けはないかと探しまわる。嵐のほうは自身も考案したパズル系の仕掛けを攻略しながら、隠されたギミックはないかと調べまわっていた。
「えーっと、次にこっちを押して、最後にこっち……と。お、なんか出てきた」
とある部屋の扉に書かれていたリドルの順番通りに、隠されていたスイッチを全て押してみると、開いた扉の先にあったのは宝箱。迷宮の攻略上必須ではないが、クリアすればメリットを得られる――そうした仕掛けもここには用意されているようだ。
「なにかイイもの手に入れられれば、後の戦いが有利になるかもしれねーし」
「そうだね……おや? ここにも仕掛けがありそうな感じだね?」
嵐が宝箱の解錠に取り掛かる一方、ジュリアのほうでも、かつん、と壁を叩いたスコップがそれまでとは違う手応えを伝えてきた。ひょっとすればこの先に隠し部屋か、ダンジョンの奥へと続く隠し通路があるのかもしれない。
「とりあえず弄ってみy」
「あ、ちょっと待――」
嵐が止める間もなく壁を弄りはじめたジュリアの胸に、とすっ、と矢が突き刺さる。
強すぎる好奇心は猫をも殺す。ワクワクに抗えなかった少女はばたーん、と笑顔のままその場に倒れ伏した――。
「ふう、ヤドリガミでなかったら即死だった」
「冷や汗かかせないでくれよ、まったく……」
その後、ジュリアは何事も無かったかのように矢を引っこ抜いて起き上がる。蒸気機関車を本体とするヤドリガミの彼女に、この程度のトラップは致命傷にはならない。
「休憩ポイントもあるらしいから、多少は喰らっても大丈夫だろうけど……」
嵐はほっと胸を撫で下ろすと、彼女が弄っていた壁を改めて用心しつつ調べなおす。どうやら今のは隠し扉を無理やり開けようとする侵入者に対する罠だったらしい。
「罠を起動させないよう、慎重に……と」
岩の隙間に隠されていたスイッチを押すと、ゴゴゴゴと音を立てて壁の一角がぽっかりと開く。その向こうには予想通り、ダンジョンの奥に続く隠し通路が繋がっていた。
「これは怪我の功名というやつだね?」
「まあ、間違ってはいない……のか?」
開かれたショートカットを見て得意げなジュリアと、肩をすくめつつ笑う嵐。大胆な彼女と慎重な彼は、その後も協力して罠を回避し、仕掛けを解き明かして、迷宮の先へと進んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(●防具改造で装甲に滅菌処理をし文字通りの意味で清潔)
この地下墓地で清潔さを求められるのは少々理不尽かもしれませんね…
しかし迷宮各所の結晶は攻略に便利です
遠距離から攻撃して炸裂させ、その衝撃で機構を操作することが出来れば…
(罠や仕掛けを安全圏で作動)
ある程度は操れるようですね
欲を言えば結晶を採取、仕掛け爆弾代わりとしたいのですが…
(手を伸ばす素振りに番人が反応し)
…ならば正当な手段を使いましょう
クイズ魔人に挑戦
謎解きは●世界知識とUCの高速演算でクリア
宝箱を辞退し「迷宮での所得物の猟兵全員の使用権利」への変更を交渉します
流石に厳格にすぎますし…
何より、敵を追い詰める手札は多いほうが望ましいので
「この地下墓地で清潔さを求められるのは少々理不尽かもしれませんね……」
腐臭の漂う陰鬱な雰囲気のダンジョンを進みながら、ぽつりと呟くのはトリテレイア。その装甲は滅菌処理を施され、文字通り一点の汚れもない程の清潔さを保っている。
それは自らが設定した迷宮の掟に抵触しないための措置だが、あの時はダンジョンの形状がまだ定まっていなかった。この場所で常に清潔さを保ち続けるのはなかなか難しいかもしれない――複数の猟兵によるダンジョン創造にはこうした誤算もある。
「しかし迷宮各所の結晶は攻略に便利です」
トリテレイアが目をつけたのは、迷宮の照明の役割も担っている色とりどりの結晶。迂闊に衝撃を与えると破裂する代物だが、その特性は探索者の害にも益にもなる。
「遠距離から攻撃して炸裂させ、その衝撃で機構を操作することが出来れば……」
搭載されたマルチセンサーで結晶と機構の位置関係を把握し、離れた場所から格納銃器を発砲。パリンと澄んだ音を立てて砕けた結晶は小さな爆発を引き起こし、その衝撃が付近にあったトラップのトリガーを引く。
「ある程度は操れるようですね」
天井から降ってきた棘鉄球つきの鎖鞭が、ぶおんと音を立てて床に叩きつけられる――その様子をトリテレイアは安全圏から眺めていた。こうやって仕掛けを遠くから作動させていけば、道中の危険を最小限にしたうえで探索を進められるだろう。
「欲を言えば結晶を採取、仕掛け爆弾代わりとしたいのですが……」
壁に生えている結晶にトリテレイアが手を伸ばす素振りを見せると、近くにいた鎧甲冑の番人が反応する。どうやらこの迷宮内にある物品の採集は彼らに「不当な手段による力の収奪」と見なされてしまうようだ。
「……ならば正当な手段を使いましょう」
罰則を回避しつつ目的物を入手するために、彼が向かったのは迷宮の中程にある大部屋。先行した猟兵からの情報によれば、ここはクイズの魔神による『アルダワ縦断ミラクルクイズ』の部屋だ。
『よくぞ来た、挑戦者よ……このダンジョンの最奥へ行きたいか……!?』
トリテレイアがクイズ部屋に入ると、待ち構えていた魔神が不気味な声を発した。
迷宮の奥へと続く門を守る彼は、ようやく現れた挑戦者にどこか楽しげでもある。
『勝者は天国、敗者は地獄……ッ! 武力知力魔力、そして時の運を見せるがいい……!』
「承知しました。全力を以って解答させていただきましょう」
頷くトリテレイアの兜の奥で、無機質なカメラアイのセンサー光がキラリと輝く。
この試練における彼の切り札、それは【鋼の擬似天眼】。電子頭脳による高速演算と様々な世界で培われた豊富な知識をフルに活用すれば、彼に解けないクイズはない。
『それが、貴様の最終回答か……?』
「はい。間違いありません」
暫く後、順調に解答を重ねていったトリテレイアは、いよいよ最終問題に挑んでいた。ドゥルルルルルルルルルル、とどこからともなく不安感を煽るようなBGMが流れる中、クイズの魔神は穴が空きそうなほど鋭い目つきでトリテレイアを睨みつけ――。
『―――正解ッ!! 見事、全問正解であるッ!!!』
その直後、ぱんぱかぱーん、と明るいファンファーレが鳴り響き、天井からキラキラと輝く宝箱がゆっくりと降りてくる。どうやらこれが全問正解者への報酬らしい。
ユーベルコードなくしてはなかなかに難易度の高い試練だったぶん、中身にもそれなりの期待ができそうなものだが――トリテレイアはすっと頭を横に振った。
「この宝箱は辞退します。代わりにお願いしたいことがあるのですが」
『ほう……言ってみるがよい』
トリテレイアがこの試練に挑んだ目的は宝箱ではなく、この交渉の機会を得るため。
向こうからすれば思わぬ申し出だったろうが、魔神は鷹揚な態度で聞く姿勢を見せる。
「報酬を『迷宮での所得物の猟兵全員の使用権利』への変更して貰いたいのです」
『なるほど……己が求める宝は自らの手で掴み取る……そういうことだな……?』
先刻、彼が採取しようとした結晶のように、現状では猟兵がダンジョン内で宝を発見しても、掟を守る番人との衝突が起こってしまう。彼が求めるのはこの規制を緩和することで、迷宮内のアイテムを自由に使えるようにしたいというものだった。
「流石に厳格にすぎますし……何より、敵を追い詰める手札は多いほうが望ましいので」
『よかろう……この迷宮の最深部を目指して、励むがよい、挑戦者よ……』
ゴゴゴゴゴと音を立てて、魔神の背後で扉が開く。同時に迷宮内のルールも変更されたようで、試しにトリテレイアが近くの結晶をもぎ取ってみても、もう番人が飛んでくる様子はなかった。
「感謝します」
クイズの魔神に礼を言って、機械仕掛けの騎士は扉をくぐる。この最深部で待っているダンジョンのボス――大魔王の残滓を倒すための戦略を電脳内で演算しながら。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
凄いダンジョンね…色々盛りだくさんで楽しめそう♪
温泉の女神様って、わたしの願望(可愛い子たくさん)も含まれてそうね。
くっ…これは強力な罠だわ…。あまりにもこの女神達が魅力的過ぎてここから離れられない…!なんて強力な罠(違)なのかしら…!
…ところで、一人連れて帰れないかしら?
ホラーについては考案した一人として確かめないと、とは思うけど…。
恐怖値極振りで想像した所為か、死体とか慣れてるわたしでもゾクッとなるのが多いわね…。
苦手な子なら多分、無理じゃないかしら…。
リリィとか学園の子達って大丈夫かしら…?
あら?小さい女の子の霊なんかもいるのね。
え?そんな幽霊設定してない…?
…見なかった事にしましょうか
「凄いダンジョンね……色々盛りだくさんで楽しめそう♪」
ダンジョンメーカーにかけた願いどおり、アトラクション要素満載となったダンジョンに、うきうきした様子で足を踏み入れるのはフレミア。1歩中に入ればそこはもう魔王が住まう恐怖の城、ひんやりとした空気と鼻につく死の臭い、どこからともなく聞こえてくる不気味な音が、恐怖や不安をいやがうえにもかきたてる。
「ホラーについては考案した一人として確かめないと、とは思うけど……」
思っていた以上に恐ろしげな雰囲気に、ついつい慎重な足取りとなるフレミア。その爪先がコツンとなにかに当たって――見てみるとそこに転がっていたのは血まみれの生首。
『ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!』
『くすくす……くすくす……』
ぎょっとする間もなく生首は不気味な笑い声を上げ、畳み掛けるようにひゅうと首筋を撫でるような風が吹き――小さな女の子の姿をした半透明の幽霊が目の前に現れる。
「……!!」
思わずフレミアがゾクッと背筋を震わせた直後、まるで全ては幻だったかのように、生首も笑い声も、少女の霊も消えていた。あとに残ったのは元通りの暗闇のみ。
創造する時に恐怖値極振りで想像した所為だろうか、リアルな血や死体には慣れているはずのフレミアでさえ、心臓の鼓動がすこし早くなるほどの迫真の演出だった。
「苦手な子なら多分、無理じゃないかしら……。リリィとか学園の子達って大丈夫かしら……?」
迷宮の災魔に慣れた学生でも、この手のホラーへの耐性があるかは分からない。これも精神を鍛える訓練と思えば悪くないかもしれないが――ともあれ、フレミアはその後も自分たちが生み出した数々のホラーギミックを体感することとなった。
「さすがに少し疲れてきたわね……あら、ここは……?」
体力よりも精神的に消耗してきたフレミアの前に現れたのは、もうもうと湯気を上げる蒸気温泉。温かそうな湯船の中からは「温泉の女神様」達が微笑みながら手招きをしている。
「迷宮温泉にようこそ。ここまでお疲れでしょう、疲れを癒やしていかれては?」
麗しい女性から可憐な少女まで、年齢や容姿に幅はあれどいずれも美しい姿をした女神達に呼びかけられ、フレミアの心はこれまでの恐怖体験以上に大きく動揺する。
「くっ……これは強力な罠だわ……。あまりにもこの女神達が魅力的過ぎてここから離れられない……! なんて強力な罠違なのかしら……!」
あっさりと女神の誘いに魅せられたフレミアはその歓待をたっぷり味わいつつ、ここまでの疲れを温泉で癒やしていた。口では真剣なことを言いつつ表情はご満悦である。
恐らくこの女神達にはダンジョン創造中にフレミアが考えた「可愛い子たくさん」という願望も含まれている。であれば彼女がその魅力に抗えないのも当然かもしれない。
「……ところで、一人連れて帰れないかしら?」
「わ……わたくしでよろしければ……」
【魅了の魔眼・快】を使いながら尋ねてみると、魔眼の魔力にあてられた女神のひとりはぽっと頬を赤らめて頷く。この温泉と迷宮の外ではあまり特別な力は使えないようだが、単に連れ出すだけなら問題はなさそうだ。
『くすくすくす……』
と、そんな風にフレミアが温泉を満喫していると、ふいに囁くような笑い声が聞こえて、温泉の湯気の中に小さな少女の幽霊が現れ――そしてすぐにまた消えていく。
意味深な演出にこれもギミックの一部かと思ったフレミアは、肩まで湯に浸かりつつ。
「あの女の子の幽霊、さっきも出てきたわね……」
「え? そんなのは設定されていませんが……?」
きょとんと首を傾げたのは温泉の女神達。温泉の管理者にして迷宮の一部でもある彼女らは、このダンジョンに「女の子の幽霊が出てくる」という仕掛けは存在しないという。
「え? でも今、確かにそこに……」
「何もいませんでしたけど……?」
フレミアが湯気の向こうを指差しても女神達はみなきょとんとするばかり。たった今現れたはずの幽霊を、誰も――フレミアを除いた誰もが見ていないと口を揃える。
「……見なかった事にしましょうか」
湯に浸かっているはずなのにゾッと寒気を感じたフレミアは、ちょっぴり遠い目をしながら今見たものを忘れることにする。世界には不思議なことは幾らでもあるが、創造されたホラーの中に、本物の恐怖が紛れているなんて――まさか、そんな、ね。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
ラン達と一緒に温泉に…。
ん…温泉ちょうど良い湯加減…とっても気持ち良い…(ふにゃん)
「ご主人!」
「お背中!」
「流す!」
温泉の女神さん達もご苦労様…。
ん…お風呂上りにはコーヒー牛乳だね…。温泉饅頭も美味しい…。あ、餡蜜も一つ…。
「不気味!」
「味は良い!」
「でも不気味!」
璃奈は不気味さを全く気にせず、みんなで甘味を頼んで休憩中。
餡蜜を頼んだところ、何故か一皿多く、いつの間にか着物の女の子が加わってたり…。
そして、気づいた時にはお皿を残していなくなってたり…。
「ご主人?」
「さっきの子」
「誰?」
ここのアトラクションの子じゃないのかな…?
まぁ、そういう事もあるよね…。
「ご主人」
「幽霊」
「慣れ過ぎ!」
「ん……温泉ちょうど良い湯加減……とっても気持ち良い……」
ダンジョンの探索も中層にさしかかろうかという辺りの、とある休憩スポットにて。
もくもくと立ち上る湯気の中で、璃奈はこれまでの疲れをのんびりと癒やしていた。
「ご主人!」
「お背中!」
「流す!」
メイド人形のラン達ももちろん一緒に来ている。ふにゃん、と蕩けている主人の身体を石鹸で泡立てた布で洗ったりと、メイドらしく甲斐甲斐しく世話を焼いている。
「湯加減はこれで宜しいですか? 湯気をもうすこし増やすこともできますよ」
「温泉の女神さん達もご苦労様……」
蒸気温泉の管理と探索者の癒やしのために創造された女神達も、探索者がここで十分に休憩できるように頑張っている。彼女らにとってはこれが喜びなのだろう、その表情はとても楽しげで充足感に満ちていた。
「ん……お風呂上りにはコーヒー牛乳だね……」
温泉で身体の芯までじっくり温まった璃奈が次に向かったのは、近くにあった和風の茶店。出てくる飲み物や甘味にはなんの問題もないが、店構えはひどく傷んでいて、まるで幽霊屋敷のようなおどろおどろしい雰囲気を醸し出している。
「不気味!」
「味は良い!」
「でも不気味!」
ラン達はやや警戒している様子だが、璃奈は不気味さを全く気にせず、好物の甘味を頼んで休憩を満喫している。これまでも数々の陰鬱な事件を経験してきた彼女にとって、この程度のことは恐れるにも値しないのかもしれない。
「温泉饅頭も美味しい……。あ、餡蜜も一つ……」
表情が変わらずとも分かる喜色のオーラを発しつつ、もくもくと甘味を味わう璃奈。
ところが新しい注文を頼んだところ、程なくして出てきた餡蜜の皿は何故か一皿多く。いつの間にか彼女の隣には着物姿の見慣れない女の子がちょこんと座っている。
「餡がたっぷり……美味しい……」
「…………」
女の子の存在に気付いているのかいないのか、璃奈は餡蜜を味わうのに夢中な様子。女の子のほうもなにも言うことなく、ただ餡蜜と璃奈をじっと見つめている。
そして璃奈が餡蜜を食べ終える頃には、現れたときと同じように、彼女の姿も気付けばいなくなっていた――ただ、空っぽになったお皿だけを残して。
「ご主人?」
「さっきの子」
「誰?」
主人が何も言わなかったので黙っていたメイド達だったが、流石にここにきて不気味さを感じたらしく、若干震える声で尋ねる。が、璃奈は相変わらず何てことない風で。
「ここのアトラクションの子じゃないのかな……?」
冷静に考えれば恐怖感を演出するために迷宮が造りあげた何かというのが妥当だろう。だが、それにしてもやけに得体の知れない雰囲気を纏っていた気もするが、まさかアトラクションに紛れて本物の幽霊が紛れていたという可能性は流石に――。
「まぁ、そういう事もあるよね……」
「ご主人」
「幽霊」
「慣れ過ぎ!」
けろっとした顔でおかわりを頼もうとしている主人に、メイド達はぷるぷる震えながら叫ぶ。これまでも霊の相手はしてきたとはいえ、流石に動じなさすぎではないかと。
――そんなふうに休憩を過ごす璃奈の懐で、【共に歩む奇跡】の呪符がぽうっと怪しげな光を放っているのに、彼女たちはまだ気付いてはいなかった。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブOK
うわぁ…なんだか凄い事になっちゃった…
でもこの奥に大魔王の残滓がいるなら…
行くしかないよね…
【絶望の福音】を使用
[ジャンプ、ダッシュ]で落とし穴や鎖鞭の罠を
[地形耐性、見切り]で避け
巨大な岩石は鉄塊剣を振るい
[怪力、鎧砕き]で打ち砕き…え、サイコロ?
温泉か…すごくありがたい…
一風呂浴びて休憩しようね…コーヒー牛乳?ぜひ飲みたい…
おどろおどろしい現象には[狂気耐性]に
[破魔、存在感]によるひと睨みで[恐怖を与えて]黙らせよう…
コーヒー牛乳ぐらい静かに飲ませろ処するぞ…
さてと…あんな仕掛けやこんな仕掛けをいろいろ突破したけど…
この奥に大魔王の残滓がいる…!
行こうか…!
「うわぁ……なんだか凄い事になっちゃった……」
猟兵達の想像が混ざりあった結果、自分のイメージしたよりもずっと壮大になったダンジョンを見回して、驚きとも呆れともつかない声を漏らしたのはアンナだった。
魔王の住処と呼ぶに相応しい不気味さに、仕掛けられた数々のギミックと罠。倒すべき災魔は最深部のボス一体とはいえ、そこまで踏破するのは相当の労苦となろう。
「でもこの奥に大魔王の残滓がいるなら……行くしかないよね……」
鉄の処女をモチーフとした巨大鉄塊剣「錆色の乙女」を軽々と持ち上げ、アンナはゆらりとした足取りでダンジョンに踏み込む。その黒い瞳はただまっすぐに、進むべき道だけを見据えている。
「自分で仕掛けた罠が自分を襲ってくるっていうのも……複雑な気分……」
最初に襲いかかってきたのは鎖鞭の罠。侵入者という名の咎人を打ちすえるべく迫る鎖と鉄球を、アンナはあらかじめ知っていたかのような所作で躱しながら駆け抜ける。
その先で蓋を閉じて待ち構えていた落とし穴の罠は、たんっと軽やかなジャンプで作動させる前に飛び越えて。【絶望の福音】を発動した彼女には、直近の未来に襲ってくるトラップの内容が全て視えていた。
「次は……この先の通路から岩石が……」
侵入者を押し潰すためにやって来る大岩に備えて、錆色の乙女を大きく振りかぶる。
この巨大剣の重量と自らの膂力があれば、ただの岩くらい打ち砕くのは容易いはず。力を溜めて待っていると、ゴロゴロと音を立てて通路の奥から巨大な岩が――。
「……え、サイコロ?」
福音ではここまで予知できなかったのか、果たして転がってきたのは岩ではなく巨大な立方体のサイコロ。情報によればコレに潰された面によって様々な効果が発生するというが。
「潰されないに越したことは無いよね……」
結局、叩き斬ってしまえば大岩もサイコロも同じ。轟、と唸りを上げて振り下ろされた鉄塊剣の一太刀は、迫りくる巨大サイコロをコナゴナに粉砕したのだった。
――それからも障害を避けては砕きつつ、迷宮の奥底を目指して進んでいくアンナ。
そんな彼女の道中に待っていたのは、こんこんと温かな湯と蒸気が湧く温泉だった。
「温泉か……すごくありがたい……」
誰か入っている様子もないことだしと、一風呂浴びてここまでの汗と疲れを流す。
この湯には負傷や疲労の回復効果もあるらしく、しばらく肩まで浸かっているだけで、溜まっていた疲労は嘘のようにリフレッシュされていた。
「コーヒー牛乳? ぜひ飲みたい……」
入浴後に立ち寄った茶店では、湯上がりの一杯としてコーヒー牛乳を注文してみる。
だが、注文した品はすぐに出てきたものの――この茶店、どうにも不気味な雰囲気というか、おどろおどろしい気配が漂ってきている。ひゅ~どろろろろ、と怪しげな音と共に生ぬるい風が吹き、店の奥からはぼんやりと白い人影のような何かが――。
「コーヒー牛乳ぐらい静かに飲ませろ処するぞ……」
ぎろりと威圧感を込めてアンナがひと睨みした途端、人影がびくりと震える。処刑人として数多の咎人を屠ってきた彼女の眼光には、それだけで魔を射竦める力があった。
ひゅぅぅぅぅ――と怪しい音も風も嘘のように消え、ただのボロい茶店だけが残る。それを見届けたアンナはふうと小さく息を吐いて、のんびりとコーヒー牛乳を味わうのだった。
「さてと……あんな仕掛けやこんな仕掛けをいろいろ突破したけど……」
休憩を終えて気力十分といった様子で、ダンジョンの探索を再開するアンナ。
咎人殺したる彼女の直感は、この先にいる邪悪な気配を強く感じ取っていた。
「この奥に大魔王の残滓がいる……! 行こうか……!」
錆色の乙女を担ぎ上げ、炎獄の執行人はダンジョンの最深部へと迫っていく。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
こ、ここがテーマパーク【ホラーハウスの魔王城】!
ふふふ、それでこの私が臆するとでも思って?
今日は閉園するまで、童心に帰って一日中遊ぶ計画立てているのよ(キリッ
そしてカビパンは様々なトラップ(アトラクション)を楽しんだ。
考える系はめんどいため、謎解き系はギミックを破壊して、クイズの魔神はぶっ殺して進んだ。
魔法蒸気温泉でも
「ん”あ”あ”染みる~」
ババくさい入浴。温泉の女神様に、私の女神とチェンジしない?
とナンパする始末。
テーマパークをあらかた堪能し、ボス付近で奴はあろうことか引き返した。
そして再スタート、入り口で隠し通路発見。【女神の幸運】
もう一度遊ぶつもりが意図せずボスまでワープしてしまう。
「こ、ここがテーマパーク【ホラーハウスの魔王城】!」
満を持して完成したダンジョンの威容を前に、カビパンは思わず感嘆の声を上げた。
一応言っておくとテーマパークではなく災魔を閉じ込めるための迷宮である。内容は様々な猟兵の思惑が入り交ざり、ホラーアトラクション要素も強くなっているが。
気の弱い人間であれば入り口で卒倒しそうなおどろおどろしい気配や、随所に施された不気味な装飾は、魔王城という呼び名に一定の説得力を持たせていた。
「ふふふ、それでこの私が臆するとでも思って? 今日は閉園するまで、童心に帰って一日中遊ぶ計画立てているのよ」
キリッ、と凛々しい表情で仕事そっちのけの発言をぶちかまし、見た目将校、中身残念な女教皇は意気揚々とダンジョンに飛び込む。待ち受けているのは各猟兵のイメージから想像されたアトラクション――もといトラップの数々である。
「今さら作りもののお化けや幽霊なんて怖くな……うわぁ怖ぁっ?!」
ラップ音や冷たい風と共に突如出現するお化けに震え上がったり。驚かせ系のギミックや落とし穴に引っ掛かって目を丸くしたり。時々混ざっているガチのトラップは幸運にもスルーしたり。全力でダンジョンのアトラクションを満喫するカビパン。
「あ、考える系はめんどいからどいて」
『グボアアァァァァァァァッ!!!?』
好みではない謎解き系の仕掛けや、道を塞いでいるクイズの魔神などは【本人はただ便利な光と思っている】女神の聖なる光で排除。本来の意図通りに攻略してもらえなかったギミックの断末魔を背にして、どんどん先へと進んでいく。
「ん”あ”あ”染みる~」
道中で立ち寄った休憩所の魔法蒸気温泉でも、ババ臭い声を上げつつ入浴を堪能。
管理者である温泉の女神は、そんなカビパンにニコニコと微笑みかけながらお湯の温度を調整したり、背中を流したりと甲斐甲斐しく疲れを癒やしてくれる。
「湯加減はいかがですか?」
「もう最高。私の女神とチェンジしない?」
ウハウハな気分なカビパンは女神相手にナンパする始末。私はこの温泉の管理しかできないので――と温泉の女神には断られてしまったが、それを聞いた彼女の女神がへそを曲げないかどうか、若干心配になる発言である。
「あー、楽しかったぁ」
100%テーマパーク気分で、ダンジョンをあらかた堪能したカビパンは満足げに笑う。
気がつけばここはもうダンジョンの最深部付近。ボスまであと一息といったところだ。
――だが、そこで彼女はあろうことかくるりと踵を返し、元来た道を引き返し始めた。
「さて、それじゃあもう一度最初からね」
この娘、どうやら本気でこのダンジョンを遊び倒すつもりらしい。一度攻略しただけでは飽き足らず、日が暮れるまで楽しんでやるという執念。真面目に探索している者達からすればツッコミ所満載だが、彼女も彼女なりにこの上なく大真面目であった。
「さーて行くわよ! って、これは何かしら?」
かくしてダンジョンの入口まで戻ってきたカビパンは華麗な再スタートを切ろうとし――たところで、壁に巧妙に隠されたスイッチのようなものを見つけてしまう。
それは遊び呆ける彼女にもたらされた【女神の幸運】だったのか。好奇心に負けてポチッとスイッチを押してみると、ガコンと音を立てて隠し通路への扉が開かれる。
「もしかしてこれは隠しイベントってやつ?」
1周目には無かったアトラクションを体験できるのではないかと、喜び勇んで通路に飛び込むカビパンだが、残念ながら――いや、本来なら残念がるようなものでは無いのだが、それはボスのいる最深部へと繋がるワープポイントだった。
『カビパン様、癒し系!』
『なんてナウなヤングにバカウケな人!』
『節約最高!』
「え、え? なにここ?」
皮肉にもそれはダンジョンのスタート→ゴールまで即直行したいという彼女の願望が具現化されたもの。鳴り響くファンファーレと万雷の拍手、そして数え切れない称賛の声を浴びながら、カビパンはボスの元まで強制的に送り込まれるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シェーラ・ミレディ
魔王の居城として相応しいものに仕上がったなぁ。
……些か過剰な気もするが。攻略難度も相当なものだろう。
内部の詳細な地図が手に入れば最良だが、最低でも隠し通路やギミックの癖、パターンは把握しておきたいところだ。
敵の発見よりも、戦闘時に使いやすい罠や有用な隠し通路を見付ける方に力を入れよう。
考慮する点は……敵を誘導しやすいか、味方を巻き込まないか、辺りだろうか。
攻撃を避けて落とし穴に退避し、隠し通路で移動して奇襲したり、罠で敵を足止めし一斉攻撃、といった行動がとれるような場所に目星をつけておこう。
途中で宝箱を見付けることが出来たら、地図が入っている事を祈るぞ。
※アドリブ&絡み歓迎
「魔王の居城として相応しいものに仕上がったなぁ」
どんよりとした雰囲気に満ちた迷宮の通路を歩きながら、しみじみと呟くシェーラ。
ただでさえおどろおどろしい造形を、どこからともなく響く奇怪な音や冷たい風が、より不気味に演出している。それに怖気を感じた探索者を襲うのは趣向を凝らされた数々の罠――と、まさしく魔王城と呼んでも名前負けしないダンジョンである。
「……些か過剰な気もするが。攻略難度も相当なものだろう」
最深部にたどり着くだけでもなかなか骨が折れそうだが、ボス戦を有利に運ぶためには調査も重要。ひとまず彼は災魔の発見よりも、戦闘時に使いやすい罠や有用な隠し通路を見付ける方に力を入れようと考えていた。
「内部の詳細な地図が手に入れば最良だが、最低でも隠し通路やギミックの癖、パターンは把握しておきたいところだ」
廃城の壁や墓標の裏など、ダンジョンの中に幾つもある怪しいところを、シェーラは慎重に調べていき、隠されたギミックを解き明かしていく。単なる罠や隠し通路ならそれこそそこら中にあるが、彼が求めるのはボスとの戦闘を見越したギミックだ。
「考慮する点は……敵を誘導しやすいか、味方を巻き込まないか、辺りだろうか」
考え込みながら歩いていると、つま先が床にあるスイッチの微かな出っ張りを捉える。押してみるとガコンと音を立てて床が抜け、数人分のスペースはありそうな落とし穴が開く。あらかじめ警戒していたため、シェーラ自身は華麗に回避したが――。
「おや、これは……」
一見すれば何の変哲もない落とし穴。だがシェーラの観察眼は、その底がさらに二重底の構造になっているのに気付いた。敢えて穴に飛び込んで調べてみると、落とし穴の石畳の一部が剥がせるようになっており、その下から頑丈そうな木箱が出てきた。
「こんなところに宝箱とは」
罠に掛かってみなければ見つけられないとは、探索者の思考の裏をかいた仕掛けと言うべきか。落とし穴の下から見つけた宝箱の蓋に手をかけたシェーラは、これに金銀財宝よりも迷宮の地図が入っていないかと祈る。
(この迷宮が僕達の想像から生まれたなら、僕の求める宝があってもいいだろう)
願いを込めて宝箱を開けてみると、果たしてその中にしまわれていたのは一冊の本。
開いてみると、そこには迷宮の見取り図から各種トラップやギミックの配置、隠し通路を含めた攻略ルートや休憩ポイントの場所までが詳らかに記されている。ダンジョンの地図――と言うよりは規模が大きすぎるために設計書といったところか。
「なるほど。これは確かにお宝だ」
望み通りのものが手に入り、思わず笑みを浮かべるシェーラ。読み解くのには手間が要りそうだが、この一冊に彼が求めていた情報の多くが詰まっているのは間違いない。
「この落とし穴は攻撃を避けて退避するのにも使えそうだなぁ。さて他には……」
移動や奇襲に役立ちそうな隠し通路、敵の足止めに使えそうな罠、一斉攻撃を仕掛けるのに適した場所――ぺらぺらと書物のページを捲り、実際の場所にも足を運んでみて活用できそうなものに目星をつけていく。
今や彼以上にこの迷宮について把握している者はいない。その入手した知識と調査の成果は、近いうちにダンジョンボスとの戦いで大いに威力を発揮することだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ソラ・ネビュラ
【希望の華】で連携
生まれて初めて実物のダンジョンを見るけれど、ホラー系な感じなのね…こ、怖くなんかないわよ!
斥候に「グレムリン」を飛ばすわ。それで私が防弾盾を構えながら先頭に立って進めば大抵の事には対応出来ると思うの。設置されているトラップとかにね。
いざとなったら「グレムリン」と二手に分かれることで探索効率を上げることは出来るけど…安全第一よね。
えっダンジョンの中に温泉があるの??温泉ってこういうところにあるものなのね…
入ってみちゃ駄目かしら…?
アドリブ歓迎
スピネル・ティーローズ
【希望の華】で連携
なんだかスゴイ事になっちゃったなぁ。でもみんなで協力すればなんとかなるよね
って、月下一人でツッコみすぎー!あとそこまで言ってカレーじゃないの?!喜介さんもどこいくの?!(以下ツッコミ)
そういえば罠はたくさんあるけどモンスターは見かけないね。あれ、結晶が一つに集まって……ドラゴンに?!
戦闘なら任せて、「赤の海賊」で前に出る!
ここで罠カード発動!転がる巨大サイコロ!
1 種族が変わる
2 性別が変わる
3 どこかに転移
4 潰された拍子に宝箱発見
5 ハイパームテキ状態
6 その他マスターの任意
つ、疲れた……温泉?いいねちょっと入ろうか
あ、先客?すいません失礼します(湯気でよく見えない)
梅ヶ枝・喜介
【希望の華】で行くぜ!
みんなに手ぇ貸しながらな!
おうおうおう!こいつァすげぇや!
まるで絡繰仕掛けの玉手箱だ!興味が尽きねえぜ!
出来ることなら日がな一日見て回りてぇもんだが、目的を見失っちゃあ本末転倒よ!
先ず肝要なのは見つけ出すこと!
そのために必要なのは隅々まで探すこった!
気を付けろよ、みんな!
敵は此所の何処かに潜んでいやがるか!
或いは此所の仕掛けで遊んでいやがるに違いねぇ!そんな楽しそうなこと、抜け駆けなんてさせっかよ!
うぉおおおお待ってろよお化け屋敷ぃ!
ふぅ……満足したぜ……
おう!みんな、どうだった!ほいこれ、お土産の蒟蒻。食う?
大将首ァ―――お化け屋敷にゃ居なかったみたいだぜ!
アドリブ歓迎
八月・九木
【希望の華】で連携
捜査一課のみんなー!最深部へ行きたいかぁー!?
では本日はこちらの47名と一緒にいこう。せーのっ、アルダワ縦断ミラクルクーーイズ!!
さあ舞台はクイズの都、我が子ともいえる生きたダンジョン。
勝って故郷に錦を飾れ!知力、体力、時の運!
立ち向かうは同じく我が子のユーベルコード警官。探偵のボクが出張ると一瞬で解決しかねないだろう???
では肩慣らしに司会のボクから早押しクイズ第一問!
ここにダンジョン産のカレー寿司抜き蒟蒻カレー寿司があります!
こちらの原材料は……警官L早かった!正解!天声細葉榕です!!
はい君が一番この中で頭いい!全員あいつに合体して捜査47課になれ!迷宮踏破だ!
アリス・レヴェリー
【希望の華】で連携
これが完成した迷宮ね!……ん、んー?
いえ、確かに結晶はあるのだけどなんだか思ってたよりも凄く禍々しいわね……ちょっと怖いけど皆と一緒に迷宮を進みながら壁や床を確かめたりして隠し通路が無いか探してみるわ
この中じゃわたしが一番小さいし、もし先に進むために潜る必要がある穴なんかがあったら見に行ってみましょう
時々意識から外れた頃に飛び出してくる罠はびっくりするし、そのままにしておくと迷宮が汚くなってしまうかもしれなから、【記し憶える三の針】の状態の変化を停める秒針を突き立てることで止められる罠は止めていくわ
……でも、温泉とかクイズとか皆楽しそうだし、ちょっとくらい遊んでもいいわよね?
花開院・月下
【希望の華】で連携
かかる罠、アドリブお任せします
よぉぉぉし張り切って行くぞぉぉぉぉぉ!!
月下ちゃん一番槍ぃぃぃぃ!!
金銀財宝求めていざ向かわん!!
罠が沢山? なぁに、掛かっても我慢すれば良いんだよ!!!
行くぞおらぁ!!月下の型ァ!護の法!天声細葉榕ゥゥ!!
非戦闘行為……料理のレシピを思い浮かべながら罠にかかっていくよ!! 壁は任せろ!!
とろりと溶けたじゃがいも、甘い人参……口に含めばホロホロと崩れる豚肉、スパイスの効いたルーと白米がよく合う。ナンとラッシーで頂くのも最高だよね……
よし!!!!!!寿司が食いてぇ!!!!!!
罠に嵌りつつ無敵状態で乗り切っていく作戦
「これが完成した迷宮ね! ……ん、んー?」
ウキウキ気分でダンジョンに飛び込んでみれば、想像していたのとはちょっと違う中の雰囲気に首をかしげるアリス。色とりどりの水晶が照らすのは、荒れた古城の石壁や、陰鬱な気配を漂わせる墓標や、いやにリアルな造りのニセ死体や髑髏だった。
「いえ、確かに結晶はあるのだけどなんだか思ってたよりも凄く禍々しいわね……」
「生まれて初めて実物のダンジョンを見るけれど、ホラー系な感じなのね……こ、怖くなんかないわよ!」
ちょっと怖そうに身をすくめるアリスとは対照的に、不安そうにしながらも強がるのはソラ。暗闇の向こうから何か飛び出して来やしないかと、防弾盾にふたりで身を隠しながらじりじりと前に進む様子は、慎重ながらもどこか微笑ましい。
「なんだかスゴイ事になっちゃったなぁ。でもみんなで協力すればなんとかなるよね――って、月下一人でツッコみすぎー!」
「よぉぉぉし張り切って行くぞぉぉぉぉぉ!! 月下ちゃん一番槍ぃぃぃぃ!!」
その一方ではスピネルの制止も振り切った月下が、まるで戦場を駆ける武者のように――忍者らしさはどこ吹く風の威勢の良さで迷宮を突っ走っていく。当然、そんな無茶な真似をすれば待っているのはトラップの洗礼である。
「金銀財宝求めていざ向かわん!! 罠が沢山? なぁに、掛かっても我慢すれば良いんだよ!!」
突然鳴り響くラップ音、飛来する矢、棘鉄球付きの鎖鞭。驚かせ要素からガチに身の危険のあるものまで、様々なトラップが次々と作動する。が、月下は怯むどころか減速も回避も一切しない。
「行くぞおらぁ!! 月下の型ァ! 護の法! 天声細葉榕ゥゥ!!」
まるで大声が音のバリアとなっているかのように、襲来する罠は彼女に触れることなく弾き返されていく。非戦闘行為に没頭している間、月下のユーベルコードはあらゆる攻撃を遮断するのだ。
「とろりと溶けたじゃがいも、甘い人参……口に含めばホロホロと崩れる豚肉、スパイスの効いたルーと白米がよく合う。ナンとラッシーで頂くのも最高だよね……」
天声細葉榕を維持するために月下が思い浮かべるのは料理のレシピ。口にする内容から推察するに、メニューは日本の家庭料理としても定番のあの料理のようだが――。
「よし!!!!!! 寿司が食いてぇ!!!!!!」
「そこまで言ってカレーじゃないの?!」
ここまでのレシピとまったく関係ない宣言に、思わずツッコミを入れたのはスピネル。
その理不尽さはともかくとして、爆ぜる水晶の破片を突っ切り、転がる大岩を押しのけ、迷宮を突き進んでいく月下はまさに無敵。だからといって一人先行させるのも不安だからと、スピネルも機械剣を担いでその後を追いかけていく。
「おうおうおう! こいつァすげぇや! まるで絡繰仕掛けの玉手箱だ! 興味が尽きねえぜ!」
月下が突っ走っていった先で作動していく数々の仕掛けを眺め、痛快そうな笑みを浮かべるのは喜介。数多の猟兵の想像力を糧として『ダンジョンメーカー』が創り上げた迷宮は、彼の好奇心を大いに刺激するものだった。
「出来ることなら日がな一日見て回りてぇもんだが、目的を見失っちゃあ本末転倒よ!」
未知なるものに心を踊らせつつも浮き足立つことはなく。通りのよい声を迷宮に木霊させながら、共に挑む【希望の華】の面々と今回の探索の目的を改めて共有する。
「敵は此所の何処かに潜んでいやがるか! 或いは此所の仕掛けで遊んでいやがるに違いねぇ! そんな楽しそうなこと、抜け駆けなんてさせっかよ!」
ここは皆で作り上げた会心の玩具箱のようなもの。それを災魔一匹が独り占めを企んだとしても、そうは問屋が卸さない。この迷宮は魔王の居城ではなく、墓標とするために創られたのだから。
「先ず肝要なのは見つけ出すこと! そのために必要なのは隅々まで探すこった! 気を付けろよ、みんな!」
「私はそのつもりだったんだけど、全く気を付けてない子が一人いたわね……」
発破をかける喜介の言葉に同意しつつ、ソラが見やるのは月下が突っ走っていったほう。ギギゴゴグワシャーン! と派手な音が聞こえてくるところから想像するに、どうやら立ちはだかる罠に片っ端から嵌まりつつ無敵状態で乗り切っているようだ。
「まあ、露払いとしては有り難いわね。それでも警戒は怠れないけれど」
月下の大雑把な解除(?)の仕方では、作動せずに見過ごされたトラップも残っているかもしれない。ソラは【Wake Up「GREMLIN」】を起動し、己と五感を同調させた飛行型多目的用支援ドローン「グレムリン」を、斥候として迷宮の奥へと飛ばす。
「みんな、私の後からついて来てね」
防弾盾をしっかりと構え、月下とスピネルを除いた面々の先頭に立つソラ。「グレムリン」に先行偵察させながらこうして慎重に進めば、大抵の事には対応できるだろう。
「いざとなったら『グレムリン』と二手に分かれることで探索効率を上げることは出来るけど……安全第一よね」
「どこに何があるか分からないし、それがいいんじゃないかしら」
ソラの慎重さに頷きながら、アリスも隠された仕掛けはないか探してみる。薄闇に目を凝らしながら壁や床を手探りで確かめていくと、石壁の隙間から微かに風が抜けてくるところがあるのに気付いた。
「あら? もしかしてこの向こうに何か――」
「危ないっ」
「おぉっと!」
壁の隙間を覗き込もうとしたアリスの後ろで、反対側の壁から仕掛けボウガンが起動する。ソラと喜介は同時に反応し、飛んできた太矢を防弾盾と木刀で叩き落とした。
「び、びっくりしたわ……二人共ありがとう!」
アリスは目を丸くしながら仲間達にお礼を言う。あと少し遅ければ後頭部を射抜かれていたかもしれない――こちらの意識と視野の死角を突いた、巧妙なトラップだ。
「どういたしまして。気を付けてね」
防弾盾にアリスを隠すようにしながら、ソラはグレムリンに周囲を念入りに調べさせる。さらに連動する仕掛けはないかと警戒してのことだったが――幸いにも、ここにはこれ以上のトラップは無いようだ。
「これはそのままにしておくと迷宮が汚くなってしまうかもしれないから……」
ソラが罠の位置を確かめてから、アリスは【記し憶える三の針】を発動し、周囲に展開する三種の時計の針のひとつ、状態の変化を停める秒針をボウガンに突き立てる。これでもう、針が抜けない限りこの罠が作動することはない。
「これで安心だわ。さあ、先に進みましょう」
チク、タク、と時計の音を響かせながら微笑むアリス。それに仲間達も頷くと、協力して周囲の警戒と調査、トラップの停止を行いながら、ダンジョンの奥に進んでいく。
「むむむむむむむ……!!」
しばらく歩いたところで彼女達が出くわしたのは、大きな扉の前に立ってなにやら難しい顔をしている月下だった。無敵の天声細葉榕にものを言わせて先行していたはずの彼女が、どうしてここで立ち往生しているのか。
「おうおう、どうしたんでぃ?」
「あ、みんな。それがね……」
一緒にいたスピネルが喜介の問いに答えて指差したのは、大扉の上に鎮座する魔神像。さらに扉の表面には『アルダワ縦断ミラクルクイズ』という文字が刻まれている。
「矢でも鉄砲でも罠でも平気なあたしだけど!! 謎解きだけはちょっと……」
「なーるほどねぃ。そいつぁ仕方ねぇや」
あらゆる攻撃を遮断するユーベルコードでも突破できないギミックは存在する。どうやらこの先は力押しでの攻略が通用しない、クイズ系のトラップ地帯のようだ。
「どうやらボクの出番がやって来たようだね」
クイズと聞いて俄然やる気を見せたのは、ここまで静かに付いてきていた九木だった。安楽椅子を担いだ彼女の後からは、襟に数字のついた警察の制服を着た集団が続く。
「捜査一課のみんなー! 最深部へ行きたいかぁー!?」
「「おおーーーーっ!!!!」」
大扉の前で九木がぐっと拳を振り上げると、【捜査一課出動!】により召喚された彼らは大きな声で応える。探偵の前座には警察はつきものとはいえ、彼らは1人1人が戦闘力も有した有能揃い。頭脳労働においてもそれなり以上の役には立とう。
「では本日はこちらの47名と一緒にいこう。せーのっ」
「「「アルダワ縦断ミラクルクーーイズ!!」」」
めちゃくちゃノリノリであった。
「では肩慣らしに司会のボクから早押しクイズ第一問! ここにダンジョン産のカレー寿司抜き蒟蒻カレー寿司があります!」
ダンジョンの中で突如始まるクイズの時間。いきなり訳のわからないことを言う九木に他の仲間達はハテナマークだが、対する捜査一課の面々はみな真剣な表情である。
「こちらの原材料は……警官L早かった!」
「天声細葉榕!」
「正解!」
「えっあたし!?」
確かにさっきまでカレーのレシピとか寿司とか口走りながら突っ走ってはいたが。きょとーんとする月下をよそに、ピンポンピンポーン、とどこからか鳴り響く正解音。
「はい君が一番この中で頭いい! 全員あいつに合体して捜査47課になれ! 迷宮踏破だ!」
九木の号令の下、残った警察官は警官Lを中心として合体し、襟に「47」と記されたスーパー警官となって、クイズの魔神が守るミラクルクイズの大扉の前に立った。
「さあ舞台はクイズの都、我が子ともいえる生きたダンジョン。勝って故郷に錦を飾れ! 知力、体力、時の運!」
同じく我が子であるユーベルコード警官がミラクルクイズに立ち向かう様子を、九木はエキサイティングに煽り立てながら見守る構え。今回の彼女はあくまで司会者であって、自分で謎を解くつもりはないようだ。
「探偵のボクが出張ると一瞬で解決しかねないだろう???」
「そういうものかしら……? でもクイズって面白そうだし、わたしも参加してみたいわ」
そう言って小さく手を挙げたのはアリス。どうやらこのクイズは解けなければ先に進めないだけで不正解者へのペナルティはなく、気軽に挑戦してみても問題はなさそうだ。
『何人でも掛かってくるがいい……貴様達の頭脳を我に見せてみよ……!!』
立ちはだかるクイズの魔神は不気味ながらも鷹揚な声音で挑戦者を受け入れる。かくして始まった猟兵vsダンジョンのクイズ勝負は白熱を極め、難問珍問に名答迷答えが入り乱れる激戦となったが――残念ながらその全てを語るには余白が狭すぎる。
ともあれ最終的に猟兵達はこのミラクルクイズを制し、無事にダンジョンの先に進むことが出来たのだった。
「いやあ、けだし名勝負だったね。もちろんボクは全問分かっていたけど」
開かれた大扉を抜けて、満足そうに笑いながら歩いていく九木。捜査47課と【希望の華】の仲間達も、次はどんな仕掛けが待っているのかと警戒しながら探索を再開する。
「そういえば罠はたくさんあるけどモンスターは見かけないね。って、あれ……」
そんなことをぽつりと呟いたスピネルの視界の端で、キラリと何かが光った。噂をすれば影とは言うが、まさか――と振り返ってみれば、そこには砕けた結晶の破片が一塊になって、なにか新たなカタチを作ろうとしている最中であった。
「結晶が一つに集まって……ドラゴンに?!」
猟兵達の探索中に破壊された結晶が、再生する過程で何かしらのエラーを引き起こしたのか。色とりどりの煌びやかな輝きはひとつとなって巨大な竜の姿を取り、迷宮中に轟くような咆哮を上げた。
「戦闘なら任せて、僕が前に出る!」
モンスターの出現に最初に気がついたのがスピネルなら、最初に戦闘態勢を取ったのも彼だった。【赤の海賊】を発動した少年の身体は赤い鎧の海賊服に包まれ、紅い花びらのような光のオーラが無数に煌めく。
「気を付けてね」
「援護するわ!」
「くらえぇぇっ!!」
ここの道幅はそこまで広くはなく、大勢で接近戦を挑むのは難しい。ソラ、アリス、月下はそれぞれ銃弾と秒針と手裏剣で援護射撃を仕掛け、敵の足止めを試みる。
『グオオォォォォォッ』
「今だ! 食らえっ!」
正確な射撃が結晶ドラゴンの四肢を射抜いて動きを鈍らせる。その隙を突いて猛然と突っ込んだスピネルのメガリス「クレセントディバイダ―」が、敵を深々と斬り裂いた。
「よし、やった――」
「おぉっと海賊の人! 前を見ねえ、前!」
手応えを感じたスピネルが笑みを浮かべた直後、喜介が警告を発する。見れば崩れ落ちるドラゴンの向こうからゴロゴロと音を立てて、巨大なサイコロが転がってくる。
「あれ、もしかして僕が想像したやつ……」
目を丸くした少年が逃げる間もなく、道幅いっぱいに広がる大きさのサイコロは、ずしーん、と、結晶ドラゴンもろとも彼を押し潰してしまった。
「海賊の人ぉー!! 生きてるかい!」
「死体が欲しいとは思ったけれど、身内のは遠慮したいよ」
慌てて駆け寄った喜介と、九木の連れた捜査47課の警官達が、力を合わせて巨大サイコロをどかす。この質量に潰されればいかに猟兵と言えども無事では済まないだろうが――。
「だ、大丈夫……」
ひょこり、とサイコロの下から出てきたスピネルはなんと無傷で、さらに両手には大きな宝箱を抱えていた。聞けば、幸運にも潰された拍子に足元の床が陥没したことで難を逃れたという。
「この宝箱もこの床下の穴で見つけたんだ。奥のほうにはまだ何かありそうだったけど、僕だと入れなくて」
「それなら、わたしが見に行ってみましょう。この中じゃわたしが一番小さいし」
上がってきたスピネルと入れ替わりに、小柄なアリスが穴の中に飛び込む。肩をすぼめて身をよじりながら進んでいくと、その奥には小さなスイッチが隠されていた。
「こんなところに……?」
また罠にかけられないよう警戒しつつ押してみると、ゴゴゴゴと穴の外から音がする。ひょこりと顔を出してみると、通路の壁の一角が切り取られたように開き、その向こうから通路が現れていた。
「お宝に隠し通路まで見つかるなんて、ラッキーね!」
「本当にね。出目が良かったのかな……?」
にこにこと微笑むアリスに笑顔で応えるスピネル。彼が潰されたサイコロは面によって様々な不思議な効果をもたらす力があるが、今回はいい目を引いたようだ。
「また罠がないとも限らないし、注意していきましょう」
警戒を怠らないようにと、まずはソラが「グレムリン」に隠し通路の中を先行させる。トラップの類が無いことを入念に確認してから今度は全員で進んでいくと、その先にはもうもうと湯気を立てる温泉が待っていた。
「えっダンジョンの中に温泉があるの?? 温泉ってこういうところにあるものなのね……」
どうやらここはダンジョンの探索者のために用意された、休憩スポットのようだ。
ソラは驚いたように目を瞬かせるが、ここまでの探索で疲労の溜まった身体には、温かい湯で汗を流せる機会はとても魅力的に感じられた。
「入ってみちゃ駄目かしら……?」
「皆楽しそうだし、ちょっとくらい遊んでもいいわよね?」
遠慮がちに温泉に近付いていくソラの後から、わくわくを隠せない様子でアリスも続く。依頼とはいえせっかくのダンジョン探索、こうした楽しみのひとつふたつは堪能しなければ、勿体ないというものだろう。
「つ、疲れた……温泉? いいねちょっと入ろうか」
少し遅れて隠し通路を抜けてきたスピネルも、魔法蒸気温泉を見ると目を輝かせる。しかしその一方で、喜介は温泉とはまた別のものに目が釘付けになっていた。
「うん、どうしたの喜介さん」
「よく見ねえ海賊の人……このおどろおどろしい屋敷を……!」
彼が見ていたのは温泉の近くに設営された和風の茶店。その奥からはこれまで以上に不気味な気配が漂い、ひゅ~どろろろろろ、と恐ろしげな音が微かに聞こえてくる。
「この他とは一線を画す佇まい……魔王の住処に相応しいとは思わねぇか?」
「いや、それはどうかなぁ……」
ここまで洋風だったダンジョンにいきなり和風の建築物。スピネルにはこの店舗は異様ながらそこまで警戒すべきには見えなかったが、喜介にとっては違うようだ。何故ならこの茶店はかつて彼が味わった恐怖体験――幽霊屋敷の雰囲気によく似ていたから。
「うぉおおおお待ってろよお化け屋敷ぃ!」
「喜介さんどこいくの?!」
目的は魔王なのか屋敷なのか。スピネルの制止の言葉も虚しく、茶店の奥に突っ込んだ喜介の威勢のいい雄叫びは――やがて闇に吸い込まれるように聞こえなくなった。
「どうしようかな……まあここは安全地帯みたいだし、僕も休憩しようかな……」
追いかける気力もなく、幽霊屋敷(茶店)に消えた喜介を見送ったスピネルも、温泉のほうで羽根を伸ばすことにする。爆走する月下を追いかけたり結晶ドラゴンと戦ったり、彼も彼で結構疲れが溜まっていたのだ。
「あ、先客? すいません失礼します」
ちゃぷん、と湯に浸かってほっと一息吐いていると、同じ湯船の中に薄っすらと人影が見える。湯気のせいでよくは見えないが、ここに居るなら同じ猟兵だろうとスピネルは挨拶するが、返ってきた声には聞き覚えがあった。
「え? その声ってもしかして……」
「あ、あれ? ごめん、間違えたっ?!」
どうも入浴前によく確認しなかったせいで、意図せず混浴になっていたらしい。姿は見えなかったもののわたわたと混乱するスピネルの元に、すぅっと『温泉の女神様』が現れて「入浴は男女別でお願いしますねー」と別の湯船に転移させる。
「惜しかった。あと少しで湯けむり殺人事件が……」
「「起こらなくていいのよ!」」
それを眺めながら安楽椅子に座って休憩中の九木に、温泉の中から異口同音にツッコむ少女ふたり。そんな一幕を挟みつつも、温泉でのひとときは概ね平和だった。
「寿司は!! 寿司は出ないの!!! ナンデ!!!!?!」
一方の茶店に再び視点を移せば、寿司への渇望が頂点に達した月下が騒ぎ立てている。
和風だしワンチャンあるかと思ったようだが、残念ながらここで売ってるのは風呂上がりにいただくコーヒー牛乳や温泉饅頭と、あとは和菓子などの甘味メインである。
「え、カレーならある? 逆に何故あるの!?」
寡黙な店主と噛み合わないやり取りをしていると、店の奥からゆらぁり――と、やや大柄な人影が姿を見せる。すわ幽霊かと身構える月下だったが、よく見ればそれは見知った相手だった。
「ふぅ……満足したぜ……」
快さそうな吐息をもらすその男は誰あろう、先ほどこの店の奥に消えた喜介だった。いったい中でどんな体験をしてきたのか、その頭にはぺちりと濡れた蒟蒻が張り付いている。
「おう! みんな、どうだった! ほいこれ、お土産の蒟蒻。食う?」
「いただきます!!」
満面の笑顔で差し出されたぷるぷるの蒟蒻を、とりあえずもしゃっと頬張る月下。
風味よし。食感よし。職人の技とこだわりが感じられるめっちゃ美味い蒟蒻だった。
一体どういう経緯で彼がこれを手に入れたのかはさておき、喜介は自らの探索の結果を仲間達に報告する。
「大将首ァ―――お化け屋敷にゃ居なかったみたいだぜ!」
流石にそれはそうだよね、と、みんな思ったとか思わなかったとか。
ともあれこれで彼自身がリフレッシュできたなら大いに良しである。
かくして十分に休憩を取った一行は、気力体力とも充実した状態で探索を再開する。
ダンジョンの最深部まではあと僅か。ボスとの邂逅の時はもう間近に迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『大魔王の残滓『セクスアリス・レプリカ』』
|
POW : テンタクル・アブソープション
【無限増殖する身体から伸ばした触手】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【魔力反応と急所】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD : ドレインスプラッシュ
【身体や這いずった跡から放つ粘液爆弾の弾幕】が命中した対象を爆破し、更に互いを【防具の中まで入り込む生命力を吸い取る粘液】で繋ぐ。
WIZ : 魔女狩り
【目から放つ麻痺効果のある怪光線】【口から吐く猛毒の瘴気ガス】【魔力吸収効果のある身体を使ったのしかかり】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
イラスト:ぽにカス
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「テンタクルス・ダークネス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
仕掛けられた数々のギミックを調査し、解決し、あるいは楽しみながら、ダンジョンを攻略していく猟兵達。多くの試練を乗り越えて、ついに彼らは最深部へと到達する。
「ウゥゥゥゥゥオォォォアアァァァァァァァァ―――」
これまでのどのフロアよりも広く、シャンデリアのような大きな結晶に照らされた、玉座の間とでも言うべき荘厳な部屋。そこを支配するのは禍々しい邪気だった。
毒々しい粘液が凝り固まったような、蟲に似た異形の怪異。かつてのような威容も覇気も感じられない、醜く蠢くその災魔こそ、大魔王がこの世界に遺した残滓だった。
「喰ラウ……力……生命……喰ラウ……」
セクスアリス・レプリカと称されたソレは当初、強制的に召喚されたこの場所に戸惑っている様子だったが、猟兵達の存在に気付くと粘液の身体を震わせて迫ってくる。
ずりずりと這いずった後にはおぞましい粘液の跡が残り、全身から漂う瘴気が空気を汚染していく。その頭部のぎょろりとした眼が、爛々と怪しい輝きを放っていた。
かの者に残された意志は、迷宮内に存在するものを喰らい力を取り戻すことのみ。
そのための標的は災魔であろうと猟兵であろうと構わない。かつてとは知性も戦闘力も比較にならないほど劣るが、その執念と飢餓だけは大魔王と呼ぶに相応しいもの。
これを放置していれば大魔王の復活も万に一つ、億に一つはあり得るやもしれない。
――そんな最悪の未来の可能性を確実に摘み取るために、猟兵達はここまで来た。
この最深部で正面から戦うもよし。ダンジョン中を引きずり回し、有利な場所に引き込むのもよし。ここまでの攻略で迷宮の構造や仕掛けは概ね頭に入っているだろう。
大魔王の残滓に終焉を。ホラーダンジョンの攻略はいよいよクライマックスを迎えた。
カビパン・カピパン
最深部に意図せずワープしてしまったカビパンは、セクスアリス・レプリカの影に話しかける。
「テーマパークの管理会社の人?」
姿をみて、ハッと
「何この倒しても手に入る経験値10くらいの虫。ていうかカマドウマ?カマドウマも強制召喚されたみたいだけど、私も強制召喚されたんだから一人で戸惑ってんじゃねーよ。やんのかコラ?あ?」
自分が完璧すぎるダンジョンを考えたのに、称賛されたいタイミングでされなかったカビパン少尉は機嫌が悪かった。
「ディキシィを聞かせてあげるわ!!」
心気を澄ませる。聖杖に光をともした。
瞑想と共に、輝きが増していく。
杖を向け前を見据えると、輝く聖なる光弾が唸りをあげて飛んでいった。
「一体どこかしらここ。迷子向けの案内役とかいないのかしら……」
迷宮の最深部への一番乗りを果たしたのは、意図せずして直通のワープポイントに入ってしまったカビパンだった。まだ普通に遊び気分でいた彼女はきょろきょろと辺りを見回して、そこに居たセクスアリス・レプリカの影に話しかける。
「テーマパークの管理会社の人?」
勿論そんな訳はない。すこし近付いてみればソレが管理人どころかヒトの形すらしていないことにすぐ気付くだろう。毒々しい粘液の塊のような姿を見れば、彼女も流石にハッとして――。
「何この倒しても手に入る経験値10くらいの虫。ていうかカマドウマ? カマドウマも強制召喚されたみたいだけど、私も強制召喚されたんだから一人で戸惑ってんじゃねーよ。やんのかコラ? あ?」
――ここまで息継ぎなし。残滓とはいえ大魔王相手に容赦のない罵詈雑言である。
というのも彼女、実は迷宮の出来について納得いかない部分があった。自分が完璧すぎるダンジョンを考えたのに、称賛されたいタイミングでされなかった点だ。
「もっとゴール前で華々しく褒め称えられながらテープを切る感じが良かったのに微妙なタイミングだったし! しかも待ってんのがカマドウマってなんじゃコラ!」
あれだけテーマパーク感覚でダンジョンを満喫しておいて贅沢な文句のような気もするが、ともあれそういう訳でカビパン少尉は機嫌が悪かった。つまりカマドウマへの態度はおおむね八つ当たりである。
「ディキシィを聞かせてあげるわ!!」
怒りを胸に心気を澄ませる。カビパンに宿る女神の加護が、聖杖に光を灯す。
薄闇に灯ったその輝きに惹かれるように、大魔王の残滓もゆらりと動き出す。
「チカラヲ……ヨコセェェェェェェ……」
煩い黙れという思いを脇に置いて目を閉じる。瞑想と共に輝きが増していく。
まだ状況を把握できていない敵が何かするよりも、彼女が本気を出すほうが速い。
(これ後でめちゃくちゃ疲れんだよね……まいっか今回は)
杖を向けて前を見据えると、輝く聖なる光弾が唸りをあげて飛んでいく。何だかんだと言っても帝都にて士官待遇を与えられたほどの功績も、女教皇の肩書きも伊達ではない。そこいらのエセ聖職者とは違い、彼女は紛れもない本物の聖者である。
「ギイィィィィイィィィィィィィィッ!!?!?!」
光弾の直撃を喰らったセクスアリス・レプリカの体表は焼け爛れたように溶け落ち、耳をつんざくような悲鳴が迷宮の最深部に木霊する。紛れもない邪悪に対して効果覿面な聖者の――それを放ったカビパンはふん、とつまらなそうに鼻を鳴らした。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
ダンジョンは粗方楽しんだコトだし、そろそろ本命に取り掛からないとね♪
…倒した相手の力を使えるわたしだけど、貴方の大元…セクスアリスの力は使う気になれないわ…その所業から悍ましくてね。
おまえは残滓すら残さない。無に還してあげる!
折角の大広間、他の猟兵と連携しながら戦闘するわ。
【神滅の焔剣】を発動。
飛散する敵の粘液爆弾を【念動力】の壁で防ぎつつ、神焔剣レーヴァテインを生成。
真祖の魔力で焔の魔術【属性攻撃、高速詠唱、全力魔法、誘導弾】で敵の這いずった後も含め敵の粘液を全て焼き払いつつ高速で接近し、レーヴァテインで中央の目に突き刺し、内部から焼き尽くしつつ焔断するわ
欠片も残さず燃え尽きると良い!
ジュリア・ホワイト
嗚呼、やっと最深部までこれたよ
あれが大魔王の残滓というやつかい?
威厳の欠片も無い上に、ヘドロのヴィラン並のおぞましさだね
もちろん、餌になってあげる気は毛頭ない
キッチリ此処で討伐させてもらうよ!
触手の第一波を射撃武装で撃ち落とし、反撃の必殺技を準備しよう
無限増殖するとは言え、僅かな時間を稼ぐぐらいなら可能だろうとも
隙を見出し次第、【そして、果てなき疾走の果てに】を発動
魔力だか生命力だかを吸収する身体と行っても、鋼の列車に轢かれればひとたまりもあるまいさ!
「そこの乗り遅れクン、大魔王は躯の海に還ったんだ!送っていくからキミも同じところに行ってくると良い!」
「ダンジョンは粗方楽しんだコトだし、そろそろ本命に取り掛からないとね♪」
様々なアトラクションを存分に堪能して、満足そうな笑顔でやって来たフレミア。しかしそんな彼女の表情も、最深部の大広間に蠢いているモノを見れば一変する。
虫のような脚とギョロギョロした眼球を生やした毒々しい粘液の塊。ただでさえ嫌悪感を抱かせる見た目のソレが、かつて戦った敵を想起させるものなら尚更だろう。
「嗚呼、やっと最深部までこれたよ。あれが大魔王の残滓というやつかい?」
少し遅れて大広間に到着したジュリアも、待ち受けていたボスには不快感を露わにする。これまでに様々なヴィランと戦ってきた彼女でも、こんな相手は滅多にない。
「威厳の欠片も無い上に、ヘドロのヴィラン並のおぞましさだね」
「……倒した相手の力を使えるわたしだけど、これの大元……セクスアリスの力は使う気になれないわ……その所業から悍ましくてね」
かつてフレミアが交戦した大魔王第四形態『ラクリマ・セクスアリス』は数多の『魔女』達を捕らえ、尊厳を蹂躙するかのごとく弄びながら暴虐を尽くした。その話を聞いたジュリアの顔にも、ヒーローとしての義憤の炎が燃え上がる。
「力ヲ……モット……力ヲ……」
今や往時の力など見る影もない大魔王の残滓は、猟兵達に気付くと敵意を露わにする。それはかつて本体が倒された怒りか、あるいは単に力を喰らおうとする本能か。
「もちろん、餌になってあげる気は毛頭ない。キッチリ此処で討伐させてもらうよ!」
「おまえは残滓すら残さない。無に還してあげる!」
ジュリアとフレミアが臨戦態勢となるのと同時、セクスアリス・レプリカの身体が風船のように膨れ上がり――パァン、と音を立てて粘液の塊が大広間に飛び散った。
「汚らわしいわね」
飛散する粘液爆弾の弾幕【ドレインスプラッシュ】を、眉をひそめつつも念動力の防壁を張るフレミア。不可視の力場によって粘液が弾き返されるのを見ると、大魔王の残滓は続いて全身からうねうねと触手を伸ばし、直接猟兵達を捕食せんとする。
「あまり触られたくはないね」
それを撃ち落としたのはジュリアの精霊銃『No.4』。彼女の射撃武装の中でも高い精度を誇るそれは、不規則に蠢く触手にも的確に銃弾を命中させ、攻撃を寄せ付けない。
「ウゥゥ……モット……力……寄越セ……!」
セクスアリス・レプリカは悍ましい呻き声を上げながら、撃ち落とされた触手をすぐさま再生する。その増殖力は腐っても大魔王の残滓と言ったところか――再び放たれる粘液と触手の乱舞を、2人の猟兵は協力して防ぎ止める。
「無限増殖するとは言え、僅かな時間を稼ぐぐらいなら可能だろうとも」
いつまでも凌ぎ続ける必要はない。反撃の必殺技を準備し、逆襲に転じる隙さえ見いだせれば。防戦一方なれども涼しい表情で、ジュリアは精霊銃のトリガーを引き絞る。
「先に行かせて貰うわ。これ以上ダンジョンを汚されたくないもの」
そう言って前に出たのはフレミア。念動力の防壁を保ちながら彼女が唱えるのは、真祖より受け継いだ血の力の解放と、あまねく不浄を灼き祓うための炎の力の具現。
「我が血に眠る力……今こそ目覚めよ! 我が眼前の全てに滅びの焔を与えよう!」
ゴウッと燃え上がる業火の中で、少女の姿は17~8歳程の外見へと変化し、背中には4対の真紅の翼が――そして手には【神滅の焔剣】レーヴァテインが生成される。
「焔よ!」
覚醒せし吸血姫が高らかに叫びながら駆け出すと、全身からあふれ出す真祖の魔力が紅蓮の焔となって軌跡を描く。その焔はセクスアリス・レプリカが這いずった跡や爆弾が飛散したあとに残る粘液を全て焼き払い、迷宮の不浄を一掃していく。
「ギィッ……熱ィ……!!」
燃え上がる戦場、そして急速接近するフレミアの殺気に本能的な危機感を覚えたか、大魔王の残滓はうぞうぞと蟲のような脚を蠢かせて逃走しようとする――だが、そんな災魔の行く手を、黄色と黒の警戒色のラインが阻んだ。
「どこへ行くつもりだい? キミの終着駅はとっくに決まっているんだよ」
それはジュリアが召喚した踏切結界。彼女と敵を結ぶ一本道を挟むように敷かれた結界は、対象の移動を制限して次なる攻撃から絶対に避けられない状況を作り出す。
逃げ道を封じられて困惑するように身体を震わせるセクスアリス・レプリカ。その頭上から真紅の翼を広げた吸血姫が、焔の剣を掲げて凄まじい速度で襲い掛かった。
「貴方は絶対に逃がさない!」
「ギイィィィィィッ!?!?!」
セクスアリス・レプリカの中央の目に深々と突き刺さる神焔剣レーヴァテイン。使い手の怒りを表すかのようにその刀身は燃え盛り、内部から敵を焼き尽くしていく。
「欠片も残さず燃え尽きると良い!」
そのままフレミアは裂帛の気迫を込めて、セクスアリス・レプリカを焔断する。
裂けた粘液の醜塊は、断面から残り火に焦がされながら結界内をのたうち回る。
その直後、甲高いホイッスルと共に、蒸気と動輪の音が大広間に響きはじめた。
「魔力だか生命力だかを吸収する身体と行っても、鋼の列車に轢かれればひとたまりもあるまいさ!」
それはジュリアの本体「D110ブラックタイガー号」。頑丈なる鋼の蒸気機関車は今、その質量と速度そのものを武器として、進路上の標的を粉砕せんと猛進していた。
有翼の吸血姫は上空に逃れる。だが地を這いずるしか能のない大魔王の残滓に選べる末路など、ひとつしかない。
「そこの乗り遅れクン、大魔王は躯の海に還ったんだ! 送っていくからキミも同じところに行ってくると良い!」
【そして、果てなき疾走の果てに】――最高速に達した黒い鋼はセクスアリス・レプリカと正面衝突し、まったく速度を落とすことなく鋼鉄の動輪にて轢き潰す。一切の容赦なきその蹂躙疾走は、ジュリアの裏の呼び名「オーバーキル」の名に相応しく。
「グギィィィィィャァァァァァァァッ!!!!!?!!」
機関車が踏切を通り過ぎていった後には、くっきりと車輪の痕が刻みつけられた、ぺしゃんこで黒焦げの大魔王の残滓が、悲鳴を上げながらぴくぴくと蠢いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブOK
あれが大魔王の残骸…
あんな姿になってまで彷徨う程の執念…
見苦しい奴…きっちり始末しあの世に送ってやろう…
敵を[おびき寄せ]しつつ迷宮内へ戻り[ダッシュ]で駆け抜けよう
迷宮内の罠を[見切り]で回避しつつ
結晶を鎖の鞭の[ロープワーク]で叩き爆破させたり
巨大サイコロや番人、[地形を利用]して敵を攻撃し足止めしよう
触手攻撃を妖刀の[早業、なぎ払い]で切り落とそう
鉄塊剣を振るい回し
[力溜め、重量・鎧無視攻撃]で[投擲]して【聖処女殺し】を発動
敵の肉体に深く[串刺し]、地獄の炎の[属性攻撃、継続ダメージ]で
体内を焼き尽くしてやろう…!
「ウグゥゥゥウゥ……」
初っ端から散々な目にあったセクスアリス・レプリカだが、未だ活動を停止してはいなかった。潰れた粘液塊の中からうねうねと触手が伸びて、増殖して、再生していく。
「あれが大魔王の残骸……あんな姿になってまで彷徨う程の執念……」
その醜怪な光景に思わず眉をひそめたのはアンナ。すべてを喰らうという大魔王の怨念は、力を取り戻したいという妄執を、まざまざと見せつけられたような気分になる。
「見苦しい奴……きっちり始末しあの世に送ってやろう……」
じゃらり、と鎖の鞭を揺らすと、その音に反応したか大魔王の残滓がこちらを向く。
炎獄の執行人はくるりと踵を返して来た道を引き返すと、敵を迷宮内に誘い出した。
「力ヲ……命ヲ……寄越セ……」
潰れていない目をギョロリと動かして、アンナの後を追うセクスアリス・レプリカ。そこに牙を剥いたのは、猟兵達が創造したダンジョンのトラップの数々だった。
「これでも喰らってればいい……」
アンナが迷宮を駆け抜けながら鎖の鞭を振るうと、敵の近くにあった結晶が叩き砕かれ、炸裂する。爆風と共に飛散する鋭い結晶の破片が、大魔王の残滓に降り掛かった。
「ギィィッ!!」
悲鳴とともに残滓の身体から粘液がびちゃびちゃと零れ落ちる。それに反応して、鎧甲冑姿をしたダンジョンの番人達が、掟を乱す者に制裁を与えるべく動きだした。
『迷宮を汚す者には裁きを』
「グゲェェッ!?」
不潔で不快な毒粘液の塊は、ただ這いまわるだけでも清潔からは程遠いものだろう。
罰という名の容赦のない攻撃を加える番人達から、たまらず大魔王の残滓は逃げていく。
「いらっしゃい……」
しかしソレが逃げた方向もまたアンナの狙い通り。1本道の通路に入ったセクスアリス・レプリカは、道の奥からゴトゴトと音を立てて何かが近付いてくるのに気付く。
「何ガ……ッ!!?!」
果たして、転がってきたのは通路の幅いっぱいのサイズの巨大サイコロ。なぜこんなものがここに――と仰天する間もなく、それはグシャリと災魔を押し潰していった。
「残骸になって知能も下がってるのかな……誘導しやすくて助かる……」
敵を罠におびき寄せながら、自らはこれまでの探索から罠を見切って回避していくアンナ。ダンジョンの洗礼をたっぷりと浴びて敵の動きが鈍ったところで、いよいよ彼女自身も攻撃を仕掛ける。
「グゲ……ェ……ヨクモ……ッ」
ひしゃげた粘液の塊から伸びてくる触手攻撃を、妖刀「アサエモン・サーベル」で切り落とし。ワルツを躍るような滑らかな歩法でくるりと回りながら「錆色の乙女」を振りかぶる。
「体内を焼き尽くしてやろう……!」
遠心力による勢いを溜めて、思いっきり投げつけられる巨大な鉄塊剣。本来、投擲武器としてはあまりに重すぎるはずの一撃は、狙い過たず大魔王の残滓を串刺しにした。
その瞬間、発動するのは【聖処女殺し】。錆色の刀身が地獄の業火に包まれると共に、まるで花開くかのように四方に展開され、標的の体内により深く食い込んでいく。
「グゲェアァァァァァァァッッ!!?!?!」
内側から焼き焦がされる激痛にのたうち回っても、変形した刀身が抜けることはない。文字通りの地獄の苦しみを味わうセクスアリス・レプリカの絶叫が、迷宮に木霊した。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
番人は上手くいったようですね
迷宮内を連れまわすだけで無限増殖を抑え消耗を強いることが出来ます
(事前の探索での●情報収集や仲間の情報を基に特定地点へ誘導)
死地の用意は出来ていますよ
採取した大量の凍結属性の結晶を底に敷き詰めた落とし穴起動、敵を落とし凍結で拘束
背負ったUC装備し敵へ串刺し
敵中心部へ掘削
落とし穴から脱出
蓋を閉め密閉後に起爆
屋内用に威力を絞ったので消滅には至っていないかもしれません
ここは追撃して…!?
(UC時の返り液体に番人達が反応、後退迎撃し殲滅しつつ)
嗚呼、成程
この苛立ちは、憎しみの対象は
大魔王の残滓で無く
…あの時『魔女』を積極的に害した私自身
(乾いた笑い)
通りで迷宮が牙剥く訳です
「番人は上手くいったようですね。迷宮内を連れまわすだけで無限増殖を抑え消耗を強いることが出来ます」
迷宮内を這いずるセクスアリス・レプリカに鎧甲冑の番人達が制裁を加えるのを見たトリテレイアは、迷宮の機能が自分の望みどおりの効果を発揮したことを確認する。
元々、不浄の塊のような敵を嵌めることを前提とした『清潔さ』の評価項目だ。迷宮の各所に配置された番人の目に留まるたび、敵は執拗に追い回される羽目になる。
「グギギ……シツコイ……奴ラメ……」
ボスとしての威厳などは微塵も顧みず、ダンジョン内を逃げまわるセクスアリス・レプリカ。その注意を引くようにトリテレイアはガンッと装備している剣で盾を叩く。
「死地の用意は出来ていますよ」
「ギギッ……猟兵……喰ラウ……!」
音に反応した大魔王の残滓はぐるりと振り返り、体表からうねうねと触手を伸ばして這い寄ってくる。上手く注意を引きつけた騎士は付かず離れずの速度で後退し、事前の探索や仲間から得た情報を基に準備しておいた、特定の地点へと敵を誘導していく。
「待テ……マテ……待……ッ!??」
強い力の持ち主を捕食することしか頭にないセクスアリス・レプリカは、自分がどこに誘い込まれているのか、そこにどんな罠が待ち受けているかなど考えもしなかった。
ふいに足元の感覚がなくなり、一瞬の浮遊感に包まれ、驚く間もなく重力に引かれて墜ちていく――それはトリテレイアが起動させた落とし穴の罠のトラップだった。
「ナンダ……コレ……グギィッ?! 冷タイッ!!!」
落ちていった穴の底にぎっしりと敷き詰められていたのは、アイスブルーに輝く氷属性の結晶。落下の衝撃によって炸裂したそれは連鎖的に凄まじい冷気で穴の中を満たし、大魔王の残滓を凍結させた。
「拘束完了ですね」
落とし穴と凍結の二重トラップで敵を捉えたトリテレイアは、背負っていた【小惑星爆砕用特殊削岩弾発射装置&起爆制御装置】を装備する。先端にドリル、後端にジェットを備えたそれは、本来ならより巨大な目標を撃破するための杭状爆弾である。
「……騎士の武器どころか兵器ですらないのですが……」
遠目には辛うじて槍のように見えなくもないそれを構え、彼は落とし穴の中に飛び込んだ。ジェット噴射で加速をつけ、穴の底で凍っている目標目掛けて、回転するドリルを叩き込む。
「グギョェ……ッ!!?!」
身体の中心部を串刺しにされ、醜怪な悲鳴を上げるセクスアリス・レプリカ。だが一度動きだした装置はそこで止まることなく、穴の底を掘削してさらに突き進んでいく。
トリテレイアは命中確認後に装置を腕部から切り離し、スラスター噴射で落とし穴の外に脱出すると、蓋を閉めて内部の密閉を確認後、満を持して炸薬を遠隔起動する。
「起爆」
「グギョァァァァァァァァッ!!!?!!!?!!」
閉じられた穴の中から聞こえてきたのは災魔の絶叫と、それをかき消すほどの爆音。星さえも削る爆発の余波が、地震のような大きな振動となってダンジョンを揺らす。
だが、無事に装置の起爆を確認できても、トリテレイアはまだ気を抜いてはいなかった。
「屋内用に威力を絞ったので消滅には至っていないかもしれません。ここは追撃して……!?」
再び剣を取ろうとしたトリテレイアを妨害したのは、なんと彼自身が想像した迷宮の番人達。どうやら敵を串刺しにした際に浴びた返り粘液が『不潔』と見なされ、罰則の対象と見られてしまったようだ。
(嗚呼、成程)
襲ってくる番人から後退して迎撃しつつ、皮肉にもそれで思索の時間を得たトリテレイアは、今回の依頼中にずっと思考回路の奥で渦巻いていた感情のルーツを悟る。
(この苛立ちは、憎しみの対象は、大魔王の残滓で無く)
大魔王第四形態『ラクリマ・セクスアリス』が遺した残滓を「気に入らない」と感じたのは事実。だが、何故ソレが気に入らなかったのかと言えば、その本質は――。
(……あの時『魔女』を積極的に害した私自身)
――ソレを見れば、あの戦いでの己の所業を、どうしても思い出さざるを得ないから。
「通りで迷宮が牙剥く訳です」
番人達を殲滅するトリテレイアのスピーカーから乾いた笑いが漏れる。どれだけ身嗜みで清潔を装っていても意味はなかった。この手は既に拭い去れぬ汚れに染まっている。
もし、そんな己の無自覚な自虐と自己嫌悪さえ汲み取られていたのだとしたら――流石は大魔王すら封じた『ダンジョンメーカー』だと、感心するほかになかった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
「魔王!」
「邪悪!」
「ご主人頑張って!」
学園のみんなやこの世界に生きる全ての人達、過去の勇者達との約束を果たす為にも、今度こそ、決着をつけるよ…。
【呪詛、高速詠唱、全力魔法、呪殺弾、誘導弾、属性攻撃、乱れ撃ち】凍結呪術を連続発射…。
敵の肉体を凍結させて増殖や触手を封じ、敵の攻撃を迎撃…。
凍結させて身動きを封じたところで【神滅】で敵の存在の核を断ち、今度こそ無に還すよ…。
神滅は相手の力の源や存在の核を断つ技…故に、実体の有無は関係無い…。
大魔王の残滓…貴方に復活を許すわけにはいかない…。
今度こそ、この世界から完全に消えると良い…。
(メイド達に混じっていつの間にか旗降って応援してる少女の霊)
「グ、ゥギ、ィガ……ヨク、モ……」
誰もいなくなった通路にて、落とし穴からずりずりと這い出てくる醜悪な粘液の塊。
深手を負いつつも奇跡的に生き延びたセクスアリス・レプリカは、身体を増殖再生しながらエサを求めて再び迷宮を彷徨いだす――だが、それを見逃されるはずもない。
「学園のみんなやこの世界に生きる全ての人達、過去の勇者達との約束を果たす為にも、今度こそ、決着をつけるよ……」
休む間もなく大魔王の残滓の前に立ちはだかったのは魔剣の巫女、璃奈。
すうと細められた銀の瞳は、秘められし決意によって煌々と輝いていた。
「グゥゥ……貴様ノ……力……寄越セ……!」
目の前の少女から強い力を感じ取ったラクリマ・セクスアリスは【テンタクル・アブソープション】を発動し、まだ再生途中の肉体から幾本もの触手を増殖させる。
璃奈は素早く呪文を唱えると、冷気を発する呪力の弾丸を幾つも生成して乱れ撃ち。吸い込まれるように標的に命中した呪弾は、その肉体や触手を瞬時に凍らせていく。
「魔王!」
「邪悪!」
「ご主人頑張って!」
凍結呪術を連続発射する璃奈の後ろでは、メイド達が一生懸命に声援を送っている。
アルダワ生まれの彼女達にとっても、今となっては大魔王は敵でしかない。この迷宮がこのまま平和で楽しい場所でいられるように、仕えるべき主の勝利を心から願う。
「……ガンバレー……」
「「「!?」」」
そんなメイド達に混じって、いつの間にかそこにいたのは着物姿の少女の霊。
どこで用意してきたのか小さな旗をぱたぱたと振って、小声で応援している。
茶店からここまで付いて来ていたのか、ともあれ彼女も璃奈に勝ってほしい気持ちは同じのようだ。
「みんなありがとう……」
そんなメイドと幽霊の応援を背に受けて、璃奈はふっと口元に微かな笑みを浮かべ。
さらに手数を増して放たれる氷結呪弾の嵐は、大魔王の残滓を完全に凍結させていく。
「ギ……ゥギ……動ケ、ナイ……」
氷の帳に体表を覆われ、身動きを封じられたラクリマ・セクスアリス。もはや触手一本動かすこともできないソレを見た璃奈は、魔剣を抜き放つと一気に駆け出した。
「神をも滅ぼす呪殺の刃……あらゆる敵に滅びを……」
巫女の身体からほとばしる莫大な呪力が魔剣に注がれ、その刀身が漆黒に染まる。
【妖刀魔剣術・神滅】。振るう瞬間が見えないほどの早業で放たれた一撃は、凍りついたラクリマ・セクスアリスを真一文字に切り抜けていった。
「ギ、ギ? 何ガ……」
魔剣に斬られたにも関わらず、ソレの肉体には傷一つない。粘液だから物理的な攻撃が効かなかったわけではない。彼女が"斬った"のはそれよりもっと根源的なものだ。
「神滅は相手の力の源や存在の核を断つ技……故に、実体の有無は関係無い……」
刃に付いた粘液を振るい、魔剣を鞘に納める璃奈。その言葉はもう決着はついたと言わんばかりであり――その直後、ラクリマ・セクスアリスの身体がびくりと痙攣する。
「グ、ゲ、ェ……ッ!! 力……ガ……抜ケテ……!!」
悶えるようにのたうつ粘液塊は次第に原型を失っていき、ドロドロと崩壊を始める。
神滅の魔剣によって存在の核を断たれた者に待つのは、完全なる消滅。多少は持ち堪えられる者もいようが、それも遅かれ早かれの違いでしかない。
「大魔王の残滓……貴方に復活を許すわけにはいかない……」
今度こそ魔王を無に帰すという決意のもとで放たれた必殺の一撃は、ラクリマ・セクスアリスに避けられぬ終焉のタイムリミットを刻みつけた。もはやここにいるのは文字通りの"残滓"――見苦しく足掻く妄執と本能のカタマリに過ぎない。
「今度こそ、この世界から完全に消えると良い……」
「イ、嫌ダ……消エルノハ、嫌ダァァァァァァ……ッ!!!」
冷淡な口調で璃奈が告げると、断末魔にも似た絶叫が木霊する。崩れていく肉体を留めようと必死に増殖を繰り返しながら、大魔王の残滓はずるずると逃げ落ちていく。
大成功
🔵🔵🔵
伊美砂・アクアノート
【SPD オルタナティブ・ダブル】
『地形の利用、罠使い、破壊工作、時間稼ぎ』 後退するヒトがいたら、そこの支援に回って動くよ。正面からは戦いたくないし…いや、ベトベトする粘液とか触りたくないじゃん…。毒香水の瓶を『毒使い』で床に叩きつけ、幽霊蜘蛛の糸を進路予測地点に張り、片方のボクは可能な限りの遅滞戦闘を試みます。 分身したオレの方は迷宮通路で解除してた罠に戻って、めっちゃ急いで罠が起動するように再設置するぜ。・・・ああ、クソっ!まだ動いて使えそうなのは…! もし、罠を再利用できて起動できたら、罠作動と同時に『援護射撃』でグレネードランチャーと対戦車ピストルをそれぞれ叩きこむ。残骸は寝てろッ!
シェーラ・ミレディ
地図は手に入った。罠の構造も頭に入っている。
情報収集は終わった。残るは──本命を片付けるのみ、だ。
ダンジョンのギミックを利用して敵の攻撃を回避、奇襲しよう。
常に罠を使い続けられるよう、敵の前に身を晒して挑発し誘き寄せ、移動していくぞ。
追いつかれそうになった場合は隠し通路を使ったショートカットや、罠を利用した足止めで対応する。動き回らねば、敵の攻撃の餌食となってしまうからなぁ。
敵を照明代わりの結晶に身体ごとぶつけさせたりして、弱らせたところにUCを叩き込むぞ。
狩場に迷い出てた、お前の不運を嘆くがいい!
※アドリブ&絡み歓迎
鏡島・嵐
いよいよ仕上げ、だな。
力が衰えたっていっても元が大魔王サマだ。対峙するんはやっぱり怖ぇ。
……大丈夫、きっと大丈夫だ。
ここまで来たんだ。あとはやるだけ……!
クゥを呼び出して迷宮内を駆け回りながら、隙を見て〈スナイパー〉よろしくしっかり狙って攻撃。
相手の反撃に捉まっちまうと怖ぇので、足を活かして距離を保ちながら〈第六感〉を働かせつつ向こうの攻撃を〈見切り〉、喰らわねえようにする。
道中で見つけた隠し通路とかギミックで足止め・攪乱が狙えるなら、そっちも利用。
近くに他の味方がいる場合は〈援護射撃〉でサポートしたり、〈目潰し〉を敵に喰らわせて妨害したりして、戦いが有利に運ぶようにする。
「地図は手に入った。罠の構造も頭に入っている」
迷宮で入手した書物をしまうと、それに代わり精霊銃を抜いて構えを取るシェーラ。その眼差しは鋭く細められ、禍々しき大魔王の残滓を――このダンジョンのボスを睨みつけている。
「情報収集は終わった。残るは──本命を片付けるのみ、だ」
「いよいよ仕上げ、だな」
その言葉にこくりと頷きながら、緊張と恐れの入り交ざった表情で敵を見るのは嵐。怖いのか、というシェーラの問いかけに彼は正直に答え、だが決して敵から目をそらすことはない。
「力が衰えたっていっても元が大魔王サマだ。対峙するんはやっぱり怖ぇ。……大丈夫、きっと大丈夫だ。ここまで来たんだ。あとはやるだけ……!」
準備は万端。作戦もある。そして、ここにいるのは自分だけではない。
相手がどんな恐ろしい化物だろうと、戦えない理由は一つもなかった。
「グギィィィィ……力ヲ、ハヤク力ヲ……!」
すでに手酷い痛打を負ったセクスアリス・レプリカは、崩れゆく己の存在を維持しようとこれまで以上に捕食に躍起になっていた。正気も見境も失った様子で、猟兵達の姿を捉えるなり、ずりずりと汚らわしい粘液の跡を引きながら襲い掛かってくる。
「ボクを喰いたいのか? なら捕まえてみせろ!」
「さあ行くぞ……力を貸してくれ、クゥ!」
シェーラは敢えて敵の前に身を晒して挑発し、嵐は【我が涅槃に到れ獣】で呼び出した焔纏う黄金のライオンに跨って、示し合わせた通りにダンジョンを後退していく。
逃すものかと追いすがる大魔王の残滓。それを阻んだのは大気に漂うほんのりと甘い香りと、いつの間にか通路に張り巡らされていたガラスの糸だった。
「飛んで火にいるなんとやら……ってね」
それを用意したのは伊美砂。仲間の後退を支援するために、彼女は敵の進路予測地点に『幽霊蜘蛛の糸』で罠を張っていた。極細の糸に気づかなかった敵はまんまとそれに引っかかり、足が止まったところに毒香水『さいはての水香』の瓶が投げ込まれる。
「グゲェ……ッ?!」
床に叩きつけられた瓶は猛毒の香を辺りに広げ、大魔王の残滓が苦しげにもがく。それを見た伊美砂は自らも後退しつつ糸を張り直し、災魔相手に可能な限りの遅滞戦闘を仕掛けていく。
「正面からは戦いたくないし……いや、ベトベトする粘液とか触りたくないじゃん……」
単に生理的に嫌なのもあるが、あの粘液に迂闊に触れればこちらの力を吸われかねない。だから徹底的にこのダンジョンを引きずりまわして罠に嵌める。そのための仕込みは"もうひとり"の方が進めてくれている筈だ。
「グギギ……待テ……!!」
糸や毒で牽制しながら後退する伊美砂に、邪な視線を向けるセクスアリス・レプリカ。
その瞳から標的をマヒさせる怪光線が発射される――その寸前、災魔の後ろの方の壁がくり抜かれたように開かれ、その向こうからシェーラと嵐が飛び出してきた。
「やらせるかよ!」
「こっちだ化物!」
「グギィッ?!」
嵐のスリングショットから放たれた弾丸がセクスアリス・レプリカに目潰しを喰らわせ、マヒ光線の発射を妨害した直後にシェーラの精霊銃が一斉に発砲音を響かせる。
なぜ前に逃げていったはずの相手が後ろから出てきたのか。大魔王の残滓は困惑するが、事前にダンジョンの隠し通路やギミックを調べ上げていた彼らには、この程度のショートカットと奇襲は容易いことだった。
「ここはお前の為に用意された迷宮だ。たっぷりと味わうといい」
「グ、ゲ、ギ……ヨクモ……!」
ぐるりと方向転換して襲い掛かってくる大魔王の残滓に対し、シェーラはあらぬ方へと銃口を向けて発砲。ダンジョンの中を跳ねた弾丸がギミックを作動させ、複数の罠が同時に敵に襲い掛かる。
「ギャィッ!!?!」
壁からは矢が射掛けられ、天井からは棘鉄球つきの鎖鞭が打ち据える。よろめいたところにワイヤーが絡まり、落とし穴に引きずり込まれる。絶え間ないトラップの連鎖に敵を嵌めながら、シェーラは休みなくダンジョンを駆けまわる。
「動き回らねば、敵の攻撃の餌食となってしまうからなぁ」
ヤツに反撃の機会を許すつもりはない。常に罠を使い続けられるよう、頭に叩き込んだ迷宮の知識をフル活用したシェーラの計略に、大魔王の残滓は為す術が無かった。
「相手の反撃に捉まっちまうと怖ぇし。頼むぜクゥ」
一方の嵐は騎獣の脚力を活かして敵との距離を保ちながら、シェーラが作動させる罠に合わせて援護射撃を行う。第六感を働かせて向こうが何をするかを見切り、攻撃の前兆を察知すればすかさずスリングショットで妨害し、絶対に喰らわないように。
「ウギギギ……オノレ……オノレェ……!」
スナイパーよろしく的確な精度とタイミングで放たれる弾丸にセクスアリス・レプリカはことごとく隙を突かれ、ダメージを蓄積されていく。このままここに居るのは不味いと、生命の危機感から転身しても、そこに待っているのは別のトラップ。
「使えるものは利用しないとな」
「ギョッ?!」
突然鳴り響くラップ音やひゅうと吹く不気味な風。直接的な殺傷力がない罠でも撹乱としては十分役立つ。嵐は道中で見つけたギミックを最大限に活かして敵を追い立て――さらに張り直されていた幽霊蜘蛛の糸が、敵の道行きをことごとく妨害する。
「もうちょっとボクらに付き合って貰おうか」
「鬱陶シイ……!!」
徹底して遅滞に専念する伊美砂の仕掛けを、大魔王の残滓は苛立ちながら振りほどき、餌と逃げ場を求めて迷宮を彷徨う。自分がその先にある特上の"プレゼント"の下へ誘導されているとも知らずに。
「げっ、もう来たのかよ!」
視点は戦場からすこし離れ、キラキラと照明代わりの結晶が照らす迷宮のある通路。
そこでは【オルタナティブ・ダブル】で分身したもうひとりの伊美砂の人格が、迷宮探索中に解除した罠の再設置を試みていた。
「……ああ、クソっ! まだ動いて使えそうなのは……!」
近付いてくる戦いの音に急かされながらも、その手際に狂いはなく。バラバラにしたパズルを再び組みなおすように、動かなくした罠をもう一度使えるよう再設置する。
「よし、できた! さすがオレ!」
「やあボク、準備はできてるかな?」
伊美砂がふうと汗を拭った直後、狂奔する大魔王の残滓を引き連れて、もう片方の伊美砂とシェーラと嵐がやって来る。ここまでの道中にも敵は散々に痛めつけられたようで、ボタボタと垂れ落ちる粘液はまるで出血のようだ。
「グゥゥゥゥ……力ヲ……糧ヲ……!」
ドロドロの肉体を引きずって迫りくる化物を前にして、伊美砂は40mmグレネードランチャーを担ぎ上げ。対戦車ピストル『ジャンクメイカー』を抜いたもうひとりの自分と目配せしてから、たった今利用可能になったばかりの罠を作動させた。
「残骸は寝てろッ!」
「ギョッ!!?!」
その瞬間、迷宮の床の一部がバネ仕掛けで跳ね上がり、セクスアリス・レプリカを弾き飛ばす。元は殺傷力の低い驚かし系の罠だが――翼なき災魔は空中で無防備になる。
同時に、ふたりの伊美砂が放ったグレネード弾と14.5x114mm弾が叩き込まれ、凄まじい爆発と衝撃が敵を吹き飛ばした。
「グギャアァァァァァッ!!?!!」
黒煙を上げて吹き飛ばされた先に待っていたのは照明代わりの結晶。衝撃厳禁のそれに叩きつけられた大魔王の残滓は、彩る属性の炸裂によって追加のダメージを負う。
そのままぐったりと崩れ落ちたソレを追い詰めるのは、シェーラの【彩色銃技・華燭之典】。
「狩場に迷い出てた、お前の不運を嘆くがいい!」
マズルフラッシュの輝きが魔法陣を描き、精霊を纏った弾丸が豪雨のように降り注ぐ。
多彩なる属性の力を一斉に叩きつけられたセクスアリス・レプリカは、再びダンジョン中に木霊するような絶叫を上げ。
「ギィィィィィヤァァァァァァァッ!!!」
この世界に残された大魔王の残滓が、再び骸の海へ沈む時は、着実に迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
花開院・月下
【希望の華】で連携
セクスィーアリス・ドリアン、遂に姿を現したね!!
さぁてクライマックスと行こうか!
先手頂きぃ!!
カレーを持ちながらスプーンと蹴りで応戦!
くそが!!!スプーン折れたぁぁ!!!
足止めしつつ時には蒟蒻カレーを食べながらもう少し辛くてもよかったとコメント
味方への被弾を抑える為に弾幕は当たる。服の中に入った粘液に生命力を奪われながらも足止めは止めない
オブリビオンだけに聞こえるように呟く
静かに、冷ややかに
セクスアリス・レプリカ、残滓とは言え可能性とあるならば生かしてはおけない、潰れろ。
流れる血液を気にかける事は無く。血桜を解放した手刀を刺し入れ素早く飛び退けば後は仲間に任せるだろう
スピネル・ティーローズ
【希望の華】で連携
大魔王の成れの果て……僕はこの世界の魔王と戦ったことはないけど、とても大きな戦いだったことは聞いている。
絶対に出すわけにはいかない、ここで仕留める。
アリスが敵を誘導したいようなので皆を守りながら移動。
援護や支援を受けてからUCで突撃。相手の攻撃はGlitter petalによる「オーラ防御」で防ぎます。
月下ーーなんでカレー食べながら戦ってるの?!なんか意味あるそれ!?(例によってツッコミながら戦闘)
成れの果てとはいえ大魔王だったモノ、中々しぶとい…!
そういえばさっき拾った宝箱、僕が考えた事が元になってるならこの中に大魔王を倒す為の物が入って…!?(開封)
梅ヶ枝・喜介
【希望の華】よ!咲き誇れ!
出やがったなァ!大将首ッ!
中々どうして、ちみっこい姿に成り果てたもんだぜ!
そうまでしても諦めきれない欲念があるんだろうがよ……
せっかく救った世界だ!此方だって譲る道理を持ち合わせちゃいない!
気勢を滾らせ真っ直ぐ突貫す!
近寄って大上段から渾身の木刀を振り下ろす!
元よりこれしか知らん!
常ならば敵の攻勢に手痛い傷を負ってただろうが!
おれァ!今は!一人じゃねえ!
先行く者が抉じ開けた道ならば!
後ろっから飛んでくる助けがあれば!
余力を残して近付ける!攻撃のみに全てを込められる!
おれの間合いだぜ、大魔王―――覚悟ッ!!!
ぉおぉおぉぉるるるるあぁあああああああッ!!!!!
アドリブ歓迎
アリス・レヴェリー
【希望の華】で連携
これが大魔王の残滓……以前の戦争では、この形態の魔王とは対峙していないのよね。どんな存在なのか未知数だし、警戒は怠らないようにしないとね。
戦闘時は基本後衛の位置から『刻命の懐中時計』の結界や、迷宮に存在する結晶に『世界の雫』をぶつけて誘爆させるとかで援護するわ。
迷宮の中に拓けた広場を見つけたら中央付近で【交響鈴舞曲『真鍮』】を発動。自身を時計の中心としてそれを取り囲むように鐘塔を生み出して歌いましょう。
ユーベルコードを封じることが出来れば意識外から攻撃を受ける可能性も減るでしょうし、攻撃は皆に任せるわ。
八月・九木
【希望の華】で連携
君はもう完全に包囲されている!大人しくお縄に付きたまえ!
故郷の本体が悲しんでいるぞー!いや本体は討伐されてたね。
さて、戦闘でボクができることは少ない。何せ探偵、戦闘職じゃあないものでね。
しかしボクが多くを行う必要もない。何せ今一人ではないものでね。
まあ具体的に言うと捨て身の特攻だよ、誰にも負けない先の先。
ボクを除いた5人は援護に遅延に本命にと完璧にそろっている。非の打ちどころもないほどだ。
なら全員の準備時間さえあればいい。不測の事態が起こる隙がなければいい。順当に動く余裕が生まれるだけでいい。
つまり最速でぶん殴る!くらえ必殺の安楽椅子キックだあああ!!
ソラ・ネビュラ
【希望の華】で連携
拳銃と「エレクトロレギオン」で皆が動きやすいように、援護メインで立ち回るわ。
罠のある方に誘導したり、気をそらしたりとサポートする形ね。
いざとなったら防弾盾でカバーに入れるけど、余り得策では無いのかしら?
ともかく、皆の役に立つように頑張るわ!
アドリブ歓迎
「出やがったなァ! 大将首ッ! 中々どうして、ちみっこい姿に成り果てたもんだぜ!」
【希望の華】の仲間たちと共に創造と攻略を経て、ついに相見えたダンジョンのボス。喜介は木刀の先端を突きつけて、この時を待っていたとばかりに声を張り上げる。
「セクスィーアリス・ドリアン、遂に姿を現したね!! さぁてクライマックスと行こうか!」
相も変わらず高いテンションで叫ぶのは月下。やっぱり敵の名前は間違えているし、片手にはなぜかカレー皿を持っているが、決着を付けんとする気迫は本物である。
「これが大魔王の残滓……以前の戦争では、この形態の魔王とは対峙していないのよね」
レプリカとはいえ初となる形態との交戦に、緊張の面持ちを浮かべるのはアリス。数ヶ月前のアルダワ魔王戦争において猛威を振るった大魔王の力は、まだ彼女の記憶に新しい。
「大魔王の成れの果て……僕はこの世界の魔王と戦ったことはないけど、とても大きな戦いだったことは聞いている」
グリードオーシャン出身のスピネルもまた、かつてこの世界で勃発したという激闘に思いを馳せ――その再来を万に一つも許すまいと、メガリスの機械剣を構えて気を引き締める。
「絶対に出すわけにはいかない、ここで仕留める」
「どんな存在なのか未知数だし、警戒は怠らないようにしないとね」
けして油断せずに、そして全力で。勇気を心に秘めた少年少女のまっすぐな瞳は、アルダワの未来を脅かす大魔王の残滓、セクスアリス・レプリカに向けられていた。
「君はもう完全に包囲されている! 大人しくお縄に付きたまえ!」
そんな仲間たちの後ろから、安楽椅子に腰掛けつつ声を張り上げるのは九木。まるで探偵というより警察官が犯人にかける言葉だが――この状況、敵に逃げ場がないのは事実である。
「故郷の本体が悲しんでいるぞー! いや本体は討伐されてたね」
オブリビオンの故郷を骸の海とするなら、これも一応間違ってはいないか。そんな本気とも冗談ともつかぬ言葉を投げかける彼女の隣では、ソラが拳銃と防弾盾を構えている。
「いざとなったらカバーに入れるけど、余り得策では無いのかしら? ともかく、皆の役に立つように頑張るわ!」
おぞましい粘液の塊じみた敵が何をやって来るのかと警戒しながら睨みつけ、仲間達の様子にも気を配る。どんな局面からでも皆を的確にサポートできるよう、小柄な身体に気力を漲らせる。
「グ……ウゥゥ……生命ヲ……力ヲ……」
6人もの猟兵と同時に対峙することになったセクスアリス・レプリカは、ドロドロと崩れかけた肉体の中から、うわ言のように不気味な声を吐き散らす。すでに満身創痍のソレは現世に縋りつくための糧を得ようと、もはや死にものぐるいになっていた。
「我ハ喰ラウ……喰ラウ、喰ラウ、喰ラウゥゥゥゥゥゥッ!!!!」
悍ましき咆哮とともに全身から粘液を、触手を、瘴気を撒き散らし、攻撃の構えを見せる大魔王の残滓――だがそれよりも1手速く、希望の華達は先に動いた。
「先手頂きぃ!!」
真っ先に飛び出したのは月下。忍の名に恥じぬ風のごとき疾走で、一気にボスとの距離を詰めようと――だが、そんな彼女の後ろから、別の誰かが追い抜いていく。
「悪いけど、最初の一発は譲って貰えるかな」
「九木ちゃん?!」
忍者の速さを上回り、それも安楽椅子という荷物を担いだまま抜き去った九木に、さしもの月下も目を丸くする。【1時間46分30秒】――真相を語る場面に立ち会ったときの探偵は、それはもう、理不尽なまでに強いのだ。
「さて、戦闘でボクができることは少ない。何せ探偵、戦闘職じゃあないものでね。しかしボクが多くを行う必要もない。何せ今一人ではないものでね」
禍々しい化物の視線を正面に、頼もしい仲間の眼差しを背後に感じながら、九木は全速力で迷宮を駆け抜ける。ユーベルコードにより自己強化したとはいえ、切った張ったが本業ではない彼女にできることはごく限られたものだ。
「ボクを除いた5人は援護に遅延に本命にと完璧にそろっている。非の打ちどころもないほどだ」
なら全員の準備時間さえあればいい。不測の事態が起こる隙がなければいい。順当に動く余裕が生まれるだけでいい。だから彼女はこの一瞬のみに全力を費やす。
「まあ具体的に言うと捨て身の特攻だよ」
誰にも負けない先の先。いの一番に接敵を果たした九木を待ち受けていたのは増殖する触手の乱舞だった。生命体が持つ魔力に反応して殺到する触手から彼女は身を守る素振りさえ見せず、担いでいた安楽椅子を思いっきり振りかぶり――。
「つまり最速でぶん殴る! くらえ必殺の安楽椅子キックだあああ!!」
「ゴギャアァァァァァァァッ!!!?!!?!」
ぶぉん、と、唸りを上げて叩き込まれたとっても頑丈な安楽椅子は、触手をなぎ払ってセクスアリス・レプリカに突き刺さり。ぐしゃりと生々しい手応えと共に、悲鳴が戦場に木霊した。
「オ、オノレ……!」
椅子の形にへこんだ大魔王の残滓は、わなわなと怒りに震えながら反撃しようとする。だが、そこにスプーンとカレーを構えた月下が素早く割り込み、ソラの召喚した【エレクトロレギオン】が、やりきった顔の安楽椅子探偵を守るように周囲に展開する。
「お前の相手はあたしだあぁぁぁっ!!」
「九木さん、下がって!」
仲間に手出しはさせまいと、敵のボディに蹴りを入れる月下。後方より拳銃を連射して後退を援護しようとするソラ。特攻をかました自分のこともすかさずフォローしてくれる仲間の勇姿に、九木はふっと目を細めて。
「どうだい。これがボクの仲間だよ」
ヘンな粘液のついた椅子を担ぎ直し、後を任せて後退していく彼女と入れ替わりに、戦闘準備を整えた仲間達は続々とセクスアリス・レプリカに攻撃を仕掛けていく。
「せっかく自分で考えたんだもの、活用しないとね」
アリスはポケットから取り出した「世界の雫」の結晶を、迷宮を照らす結晶に投げつける。原理を同じくするふたつの結晶は接触の瞬間に共鳴するかのように弾け飛び、属性の爆風と破片の雨を巻き起こす。
「グギャゥッ?! ヨ……ヨクモ……」
「力をここに。理不尽に抗う為に!」
誘爆に巻き込まれたセクスアリス・レプリカが体勢を崩す――その機を狙って動いたのはスピネル。【黒の海賊】を発動し、漆黒の鎧を身にまとった彼は爆発的なオーラを全身から噴出させ、その勢いのまま目標目掛けて突撃する。
「くそが!!! スプーン折れたぁぁ!!!」
「月下――なんで食器を武器にして戦ってるの?!」
ひとり前衛だった月下と合流したスピネルは、ぽっきり曲がったスプーンを手に絶叫する彼女にツッコミを入れつつ、クレセントディバイダーの刃を敵に突き立てた。ずぶりと粘液状の肉体に肉厚な刀身が抉りこみ、大魔王の残滓が再び悲鳴を上げる。
「グギィッ!! 力……力、寄越セェッ!!」
ぐばぁ、と開かれた口から猛毒の瘴気があふれ出し、潰されていないほうの目が怪しく輝く。この期に及んでも貪欲に力を求めるセクスアリス・レプリカの反撃は、しかし紅い花びらのオーラと時計盤を模した結界、2重の防壁によって阻まれた。
「援護は任せてちょうだい!」
結界装置である「刻命の懐中時計」を掲げて、後衛からアリスが叫ぶ。その文字盤に嵌められた世界の雫を代償に展開される彼女の結界は、極めて堅牢な防御を誇る。
「Glitter petal」を纏ったスピネルは後ろ手を上げて感謝を示してから、並び立つ月下に耳打ちする。それは前線に突入する前に、アリスから受け取った伝言だ。
「アリスが敵を誘導したいみたいだ。拓けた広場まで誘い込めるかな?」
「りょーかい! あたし達ならできるっ!」
月下の答えはシンプルだった。蹴り技を主体として攻撃しながら、折れたスプーンの替えを取り出してカレーをもぐもぐ。良く見ると具材に蒟蒻が乗っかっている。
「もう少し辛くても良かった」
「なんでカレー食べながら戦ってるの?! なんか意味あるそれ!?」
辛口なコメントにスピネルはまたツッコミを入れながらも剣を振るい、ツートップ体制で敵を攻め立てる。凸凹コンビのようでいてその連携にそつはなく、後衛からの援護もあれば付け入る隙はない。
「あの場所まで誘導すればいいのね。分かったわ」
一方、アリスから作戦を聞いたソラはこくりと頷くと、エレクトロレギオンの指揮を取りながらパンッ、と天井に向けて銃を撃つ。すると仕掛けられていた罠が作動し、騒々しいサイレンやなにかの叫び声などが大音量で辺りに響き渡った。
「ギェピッ!?!」
三半規管を引っ掻き回されるような騒音のラッシュを浴びたセクスアリス・レプリカは、堪らないといった様子で音の発生源から遠ざかろうとする。そこに数百もの小型機械兵器の群れが殺到し、敵の逃げ道を限定する。
「うまく気をそらせたみたいね」
まんまとこちらが望んだとおりの方向へ逃げ去っていく敵を、見失わないように追いかけるソラと希望の華の仲間達。刻命の懐中時計の結界を何枚か消費することになったが、彼女達の鼓膜は無事だ。
「グギギギギギ………ッ」
セクスアリス・レプリカが逃げ延びた先は、ダンジョンの最深部に位置する大広間。『ダンジョンメーカー』に強制召喚された最初の場所に巡り戻ってきたことになる。
「ヨクモ……ヨクモ、ヨクモォ……ッ」
「――! みんな、気を付けて!」
いよいよ追い詰められたかに見えた大魔王の残滓の肉体が、ボコボコと不気味に泡立ち始める。何か大技がくる予兆だと感じたアリスは結界を張ろうとするが――ここまでの攻防で懐中時計に残された結晶は少なく。全員を保護するには数が足りない。
「カバー入るわ!」
すかさずソラが防弾盾を構えて、エレクトロレギオンと共に後衛にいる味方の護衛につく。しかしそれでも全員は――特に前衛にいる仲間のフォローまでは追いつかない。
「全テ、全テ、我ノ糧トナレェェェェェッ!!!!」
飢餓の咆哮と共に発動する、最大規模の【ドレインスプラッシュ】。風船のように膨れ上がったセクスアリス・レプリカの身体から、大量の粘液爆弾が放射される――まさにその刹那、大魔王の至近距離に立ちはだかったのは黒髪の少女。
「月下さん!」
味方への被弾を抑えるために、敢えて矢面に立つ覚悟。放たれた弾幕のほとんどは彼女の元に集中することになり、盾や結界、オーラといった各々の防御手段もあって、仲間の被害はほとんど無い。
――だが代償として月下自身は爆破の直撃を受け、その身を血に染めることになった。
「ごほっ……」
咳き込んだ月下の口から溢れる血。直撃のダメージもさることながら、爆破の際に浴びたセクスアリス・レプリカの粘液は、衣服の中にまで入り込み生命力を奪っていく。
仲間たちの誰もが思わず眼を見張る中――しかし、彼女はけして動きを止めなかった。
「ギギョ……ッ!?」
大技を放った直後の敵に蹴りを叩き込み、空っぽのカレー皿を放り捨てて。その顔は笑っていたが、しかし今までの笑顔とはまるで雰囲気が異なる。身にまとう気迫も、そして妖力も。
「セクスアリス・レプリカ、残滓とは言え可能性とあるならば生かしてはおけない、潰れろ」
月下の型、禁の法「血闘千桜」――月下の生家にして陰陽師の大家たる花開院が封印したと言われる大妖の力を、その身に降ろす禁呪。代償として流れる血液や苦痛を気にもかけず、彼女は妖力を纏った手刀を渾身の力で刺し入れた。
「グギィィィィッ!!?!」
甲高い絶叫が災魔の口からほとばしり、穿たれた肉体が苦悶にのたうち回る。確かな手応えを感じた月下は素早く飛び退き、最後の決着を仲間に任せる。
「月下さん……ありがとう」
陰陽忍の捨て身の覚悟を目の当たりにしたアリスは、表情を引き締めながら大広間の中央に立つ。彼女がこの場所まで敵を誘い込みたかったのは、これを奏でるためだった。
「交わし響かせ、一つの音へ」
交響鈴舞曲『真鍮』。アリスを時計の中心として、それを取り囲むように12本の真鍮の大鐘塔が出現し、それらを繋ぐ光の帯に吊られた無数の鈴が、少女の周りに現れるホルンが、彼女の歌声に合わせて一斉に音楽を奏で始めた。
「ナン……ダッ、コレハ……力ガ……抜ケテイク……!!!」
その美しくも調和の取れた音色は、この世界を乱すオブリビオン――セクスアリス・レプリカの力を削ぎ、ユーベルコードの発動を封じる。肉体の増殖や粘液の発生も止まり、抵抗の手段を失ったソレは、弱々しく舞台の上を這い回るのみ。
「成れの果てとはいえ大魔王だったモノ、中々しぶとい……!」
それでもまだ現世に踏み留まらんとするセクスアリス・レプリカ。その往生際の悪さに歯噛みしていたスピネルは、ふとダンジョンの探索中に発見したものを思い出す。
「そういえばさっき拾った宝箱、僕が考えた事が元になってるならこの中に大魔王を倒す為の物が入って……!?」
急いで荷物の中から取り出し、開封してみると――その中にあったのは牙と、舌と、獣の吐息。ぎょっとした彼が宝箱を取り落とすと、ソレは足も生えていないのにぴょんぴょんと跳ねて大魔王の残滓に襲い掛かっていく。
「あ、あれって……もしかしてミミック?」
それは"真似る"を語源とする宝箱の形をした怪物の一種。欲にかられた探索者が本物の宝箱と間違えて開けようとすれば、たちまち本性を現してその者を食い殺してしまうという――ダンジョンの殺意を体現するようなモンスター。
「ギェェェェェェェッ!!?!?!」
それが今、ダンジョンのボスたるセクスアリス・レプリカに齧りついている。残滓と成り果ててなお貪欲に力を喰らわんとしていた大迷宮の主が、迷宮の罠に食われそうになっているなど――なんとも皮肉な、因果応報だろうか。
「まぁ、これでもう手も足も出ないだろうし……喜介さん、トドメよろしく!」
「おうよっ! ここまで楽させてもらった分、きっちり決めてやらぁ!」
真鍮の歌声が響き渡る中、宝箱に齧りつかれたセクスアリス・レプリカ。これ以上ない好機に満を持して、気勢を滾らせ真っ直ぐ突貫するのは――武者修行の旅烏、喜介。
「そうまでしても諦めきれない欲念があるんだろうがよ……せっかく救った世界だ! 此方だって譲る道理を持ち合わせちゃいない!」
世界を喰らいつくさんとする不諦の妄執を、一本気な心意気をもって打ち破らんと、彼が考えるのは近寄って大上段から渾身の木刀を振り下ろす、ただそれだけ。
「元よりこれしか知らん!」
だからこそ、この一撃のみに全てを賭ける。後も先もない刹那にありったけをぶつけるという【猛火の構え】、これだけは誰にも負けないという自負が彼にはあった。
「おれァ! 今は! 一人じゃねえ!」
常ならば敵の攻勢に手痛い傷を負っていただろう捨て身の技。だが今はそうではない。九木、月下、スピネル、アリス、ソラ――頼りになる仲間達の奮戦によって障害となりうる要素は排除され、彼の道行きを阻むものは何もない。
「先行く者が抉じ開けた道ならば! 後ろっから飛んでくる助けがあれば! 余力を残して近付ける! 攻撃のみに全てを込められる!」
歌い続けるアリスからは最後の結界が。盾持つソラからは援護射撃が。スピネルの放ったミミックが敵を拘束し、後ろの方では月下と九木が笑顔でゴーサイン。誰もが皆勝利を疑わず、喜介の一撃に決着を託した。これに応えねば漢じゃあるまい。
「おれの間合いだぜ、大魔王―――覚悟ッ!!!」
裂帛の気迫と共に踏み込んだ喜介は、己の全身全霊を込めて木刀を叩きつける。
気炎万丈――まさにその言葉の通り、この瞬間に発せられる彼の気勢は焔の如く。
「ぉおぉおぉぉるるるるあぁあああああああッ!!!!!」
大広間を揺るがすほどの獅子吼と、続く衝撃音が、ダンジョンの最深部に響き渡り。
大魔王の残滓、セクスアリス・レプリカは断末魔の悲鳴を発する暇もなく――跡形もなく、弾けて、散った。
――かくして『ダンジョンメーカー』が創造した、猟兵達の迷宮攻略は果たされる。ダンジョンのボスは完全消滅し、アルダワの未来にかかる不安は未然に阻止された。
後に残されたのは猟兵達の想いが作り上げた、すこし危険で、愉快で、ホラーな迷宮。彼らが望むのであれば、また攻略に来ることもできよう。ボスがいなくなっても、この場所にはまだ冒険の価値はいっぱいに詰まっているはずだから――。
大成功
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