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ラビリンス・オブ・デュエリスト

#アルダワ魔法学園 #戦後 #カードゲーム

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#アルダワ魔法学園
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#戦後
#カードゲーム


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●グリモアベース
「皆様、お集まり頂きありがとうございますの。実は先の魔王戦争での皆様の活躍を見込んで、アルダワ魔法学園から臨時教師として来てくれないかというお話が来ているのです。行ってあげてくれませんか?」
 ドラゴニアンのグリモア猟兵、ミネルバはグリモアベースを行き交う猟兵達にそう呼びかけた。
 現在、アルダワ魔法学園では大魔王を打倒した真の英雄である猟兵にぜひ教えを乞いたいと、世界各国の有力者の子弟たちや、成績優秀な学生たちが学園に押し寄せているのだという。
「魔王は討たれたとはいえ、災魔の残党はまだ迷宮に残っておりますの。そこで災魔の残党狩りがてら、実戦形式で学生達に迷宮攻略の術を教授してあげて欲しいのです。学園では今、学生達の間でとあるトレーディングカードゲームが流行しているそうですから、まずは自己紹介がてら一緒に遊んでみると良いと思いますの」
 そう、アルダワ魔法学園では今、「M&M(マジック・アンド・モンスターズ)」というカードゲームが流行しているのだ。M&Mは魔法やモンスター、英雄、マジックアイテム等を駆使して対戦するゲームであり、「魔法の力でカードの絵柄が実際に幻影として現れる」点が最大の特徴だ。
 幻ではなく本物の英雄である猟兵達が臨時教師として登場すれば、きっと大歓迎されることだろう。
「ですが、臨時教師として現地に赴くにあたり、一つ問題がありまして。大半の生徒達は素直に猟兵達を尊敬している純粋な若者達ですの。けれど、一部そうではない学生もいるようですの」
 新参者の学生達の中には教師の言うことをまるで聞かず、訓練もサボり、ひたすらカードゲームばかりしている《問題児》達がいるというのだ。
「『我こそが世界最強、訓練なんてしなくても災魔など恐るるに足らず、大魔王だってその場にいれば自分達で倒せていた』、そう信じて疑わない子達ですの。
 ぶっちゃけ親が無理矢理学園に放り込んだ金持ちのボンボン達ですわ。彼らの指導には学園の教師達も手を焼いているので、もし可能でしたら彼らを更正させてやってくださいませ」
 問題児達もみな「M&M」にハマっていることに変わりはない。むしろ問題児達の方がドハマリしているぐらいだ。猟兵達が彼らの土俵、すなわちカードゲームの《決闘》で実力を示せば、彼らも猟兵達を指導者の器と認めることだろう。
「説明は以上ですの。デッキを既に持っている方は持ち込んでも構いませんし、無ければ現地調達もできますの。
 決闘で学生達と絆を育み、共に迷宮に挑み、共に災魔と戦うのです。どうか偉大なる先達として未来の英雄達を導いてあげて下さいませ」
 そう言って、ミネルバはスカートを摘まんで一礼した。


大熊猫
 こんにちは。大熊猫です。数あるシナリオの中から本シナリオをご覧頂きましてありがとうございます。アルダワ魔法学園の臨時教師となり、次世代の英雄の育成に協力しましょう!
 ところでアルダワ魔法学園ではカードゲームが大流行中です!さあ、デュエルだ!

●章構成
 一章 アルダワ魔法学園で流行しているカードゲーム「M&M」を通じて、学生達と交流を図りましょう。
「対戦型ゲーム」という体裁さえ守ってもらえれば、ルールについてはアバウトな感じです。色々種類があるんでしょう。
 勝負の内容はがっつり詳細に書いて頂いても構いませんし、「●属性デッキで●●種族デッキの学生と戦う」ぐらいのアバウトな内容でも構いません。ちなみにクラスで一番カードゲームが強いのは《委員長》です。
 ※著作権やその他まずいと判断したものは不採用になりますのでご注意下さい。
 あと、フラグメントは全部決闘する感じになってますが、生徒との交流の方に焦点を絞ったプレイングでも構いません。

 ☆《問題児》達について☆
 普通の学生ではなく問題児達の交流をご希望の場合は別途ご記入下さい。特に記載が無い場合は普通の生徒との交流になります。
 問題児達はTCGアニメ的なノリで猟兵に決闘を挑んできます。どんな雰囲気の問題児なのか、プレイングでおおまかに指定して頂いても構いません。

 二章 学生達と共に地下迷宮で冒険しましょう。二章でもカードゲームが可能です。

 三章 【黄金】の属性を持つ災魔達との集団戦です。学生達もその場にいます。

●文字数省略用記号
 アドリブ歓迎→☆、連携歓迎→★、何でも歓迎→◎(☆★と同じ)、ソロ描写希望→▲、可能な限りプレイングそのままで→■。
 問題児との交流希望→#。

●合わせプレイングについて
 合わせプレイングでのグループ参加の場合は、迷子防止の為プレイング冒頭にグループ名をご記載下さい。3名以上の場合はどなたか合計人数をご記載いただけると助かります。
 ※一章では合わせプレイングの場合に限り、猟兵同士でカードゲームをしても構いません。タッグマッチ形式で学生と対決することも可能です。

●プレイング受付期間
 OP公開時~4/12(日)朝7:00まで。
 ※各章開始前に状況説明の為に断章を入れます。
 以上です。皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『魔法学園の決闘者たち』

POW   :    パワーでゴリ押しして勝利を目指す。

SPD   :    華麗なコンボで勝利を目指す。

WIZ   :    心理戦で圧倒して勝利を目指す。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●アルダワ魔法学園:3年M組:ホームルーム
「皆さんに重大なお知らせがあります。今日はなんと、魔王戦争で大活躍された『猟兵』さん達が私達に指導をしに来てくれるそうです!
 この機会に真の英雄達から様々なことを学びましょう!」
 サラ委員長の重大発表にクラスはたちまち騒然となった。魔王を倒した英雄達がこの教室に来る......!やべー!
 思春期真っ只中の学生達のテンションは急上昇だ。
 だがビッグニュースにクラス中が沸き立つ中、クラスメイト達に冷ややかな視線を送る者達もいた。
「へえ、英雄か。学園の先生達より強そうだね。でも、本当にボク達より強いのかな?」
「真の英雄......。その力が本物か、試してみるのも一興」
「キャハハ♪英雄をボコボコにするって楽しそう♪」
『地獄竜』カイト、『闇の鎧』エレン。『呪殺人形』キャンディ。
 彼らは噂の《問題児》達だ。みな自信満々だが、彼らが言っているのは魔法学園の《学生》としての実力ではなく、彼らがハマっているカードゲームの話である。彼らの中では「カードゲームが強い=実戦でも強い」という謎の等式が成立しているのだ。
「英雄かー。凄い魔法教えて貰えるかな?超強力な攻撃呪文とか、デーモンの召喚術とか、石ころを金に変える魔法とか!」
「カードにサインもらわなきゃ......!あわよくばツーショットも......!」
「フッ......。猟兵はオレが倒す!英雄の称号はオレのものだ!」
 様々な思惑が交錯し、クラス中の学生達が注目する中、ついに入り口の扉が開き、《臨時教師》達が教室へと入ってきた。
テフラ・カルデラ


えっと…カードゲームはキマイラフューチャーでちょっと見たことありますね…
それとはまた違う内容で魅力的なのです!

わたしの好きそうなもので適当に組んでみましたが…これでいいんでしょうか?
と…とりあえず勝負なのですっ!
(ほぼ石化や凍結、黄金化など関連する趣味極振りデッキ、勝敗はお任せ)



●楽しいデッキメイキング
「せんせー!一緒に決闘しよ!」
「先生ちっちゃいねー!あとうさ耳かわいいー!本物?」
「ねえ先生、このゲームは初めてー?」
「えっと…カードゲームはキマイラフューチャーでちょっと見たことありますね…。それとはまた違う内容で魅力的なのです!」
 教室に入ってすぐ、アルダワの学生達に群がられカードが詰まった箱を渡されたテフラ・カルデラは中身をしげしげと眺めた。この「M&M」は以前キマイラフューチャーで見かけたものとは種類は異なるが、なかなかに興味深い。このカードゲームは色々とルールの種類があり、攻撃の仕方やカードの出し方がルールごとに微妙に違うらしいのだが、初心者のテフラはとりあえず比較的シンプルな「マスタールール」に基づいてデッキを構築することにした。ああでもない、こうでもない、とテフラは学生達と自己紹介や雑談など交えつつ、ルールやコツを教わってデッキを構築していく。ちなみに学生達はテフラが実は男性であることには気づいていないようだ。
「わたしの好きそうなもので適当に組んでみましたが…これでいいんでしょうか?」
 そうこうするうちにテフラのデッキが完成した。「趣味」を満載したが、果たしてちゃんとデッキとして機能するのだろうか。
「いいと思うよ!早速私のもふもふデッキと勝負だ!」
 さあ。デュエルスタートだ!果たして勝つのはどちらだろうか?

●特殊系ドMウサギキマイラ・テフラVSもふもふ使いアシュリー
「私のターン!『肥え過ぎたイエネコ』を召喚!」
 ボンッ!アシュリーの掛け声と共に、メタボなイエネコの姿をしたモンスターの幻影が現れた。見た目通り(?)、攻撃よりも防御が得意なモンスターのようだ。
「いきます……!わたしは『雪の女王』召喚です。このモンスターは召喚された時、相手のモンスター一体を氷漬けにします」
 テフラが召喚したのは凍てつく冷気を纏う雪の女王。強力な効果を持つモンスターだが、デメリットもある。雪の女王の強烈な冷気は召喚者であるプレイヤーにも毎ターンダメージを与えるのだ。
「さむい……!」
 幻のダメージを受け、冷気に震えるテフラ。だが、どことなくその表情は嬉しそうだ。
「やるね、先生!でも負けない!私は『背中にチャックがあるクマ』を召喚だよ!」
「『ゴルゴーンのスナイパー』召喚!クマさんを狙撃して石化させます!」
「なんの!私は『チワワの三頭犬』を召喚!雪の女王にアタック!」
 癖が無く扱いやすい動物型モンスター中心のアシュリーのデッキに対し、テフラのデッキは自身に自傷などのデメリットをもたらす代わりに強力な性能を持つハイリスクハイリターンなモンスターを中心に構築されたデッキだ。盤面はテフラが有利だが、テフラは自身のモンスターの性能の代償として、凍結、石化、麻痺、液体化、水晶化、黄金化などの様々な反動を享受し、割と大変なことになっていた。
「先生だいじょぶ?見た目が凄いことになってるけど」
「お構いなく!『黄金の扇風!』全てのモンスターを黄金にしてしまう代わりに、私自身も1ターン黄金化して動けません!やったぁ!」
 そこはかとなく満ち足りた表情で黄金像と化していくテフラ。
「先生、今『やったぁ』って言わなかった……?ううん、気のせいだよね。私は『ヴォーパルバニー』を召喚!モンスターをすり抜けてプレイヤーに直接攻撃!2回攻撃で私の勝ちだよ!やった!」
 どかーん!テフラは黄金化の隙を突かれ、アシュリーに僅差で敗北してしまった。敗因はやはり趣味に走り過ぎたせいだろうか。だが、敗者であるはずのテフラの顔は満ち足りている。 そう、この戦いは勝つことが目的なのではない、趣味である状態異常をエンジョイすること、じゃなかった、学生達と親睦を深めることが目的なのだから、必ずしも勝利する必要はないのだ。お互いが楽しめればそれでいい。
「あはは。負けてしまいました。アシュリーさんお強いですね」
「先生もいいセンいってたよ!何回かやればもっと強くなれるって!」
 互いの健闘を称え、握手を交わすテフラとアシュリー。決闘の目的は無事に果たせたようだ。
「アシュリーばっかズルい!先生!次は僕がこの『豚化の魔女デッキ』で相手をするよ!」
「いや、この私の『有毒植物デッキ』が先よ!」
「はい、順番にお願いしますぅ!」
 次々と勝負を申し込んでくる学生達。テフラは楽しい時間を学生達と共に過ごし、親睦を深めることに成功したのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

グレアム・マックスウェル
▲#
未熟な全能感と反抗心か…
少し現実の厳しさを教える必要がありそうだ

この手のタイプが取る戦法は「コストのかかる大型クリーチャーや高火力魔法」「違反ギリギリのチート能力」に頼る力押し
逆に言えばそこに付け込む隙がある
下手な小細工はしない
ルールを遵守し、有利な手が来るまで待ちの構え
勝利への渇望も、敗北の悔しさも捨てて、冷静に戦術を組み立てる
【完全なる自立式人型機械】に敗北の文字はない

逆転のカードを引いた
今まで仕込んできた仕掛けを一気に発動させる
チェックメイトだ

悔しいかい?何度でも受けてあげるよ
君が正々堂々勝負を挑めるようになって、お互いに「心から楽しい」と思えるようになる。その時が「僕の負ける時」だ



●完全なる自動人形VS殺戮の魔王(自称)
「なあセンセイ!誰でもいいから俺と決闘してくれよ。本気でさ。真の英雄なら俺達学生なんかに負けるはずないよな?」
 和気あいあいとした猟兵達と学生達の触れ合いが始まる中、一人の学生が立ち上がり猟兵達にぎらついた視線を送った。
「俺は無敵だ、相手が英雄であろうとも負けるはずがない、恥をかかせてやる」
 とその瞳が雄弁に語っている。どうやら彼は噂の問題児の一人のようだ。
「僕が相手をしよう」
 対戦相手に名乗りを上げたのは銀髪の少年猟兵、グレアム・マックスウェルだ。
(未熟な全能感と反抗心か…。
 少し現実の厳しさを教える必要がありそうだ)
「へえ。アンタか。俺達とそう変わらない年じゃん。俺は『殺戮の災厄』ラクール。アンタは?」
 災魔の一体すらまだ殺したことがない少年は虚名と共に名乗りを上げ、《英雄》の名を尋ねた。
「グレアム・マックスウェルだよ」
 互いの名を確認した二人は決闘を開始した。
「ルールは『エキスパートルール』。先攻は俺がもらうぜ!『魔力の棺』を召喚。アンタのターンだ」
「二つ目の『魔力の棺』を場に出す。ターンエンドだ」
(クリーチャーを出さない……?)
 ラクールはクリーチャー(モンスターと同義)も出さずに魔力ブーストを繰り返していた。『魔力コスト』の概念がある「エキスパートルール」では序盤はコストの軽い戦力を召喚していき、魔力が溜まってくる後半に切り札を投入するのが定石だ。グレアムはそのセオリー通り、序盤は軽めのクリーチャーを召喚し、少しずつラクールのライフを削っていた。それに対し無防備で攻撃を受け、魔力だけを溜め続けているということは。
(理由は幾つか考えられるが、彼のデッキの属性やこれまで出したカードから見て狙いはおそらく……)
「来たァ!俺は全ての魔力の棺を生贄に捧げ、コイツを召喚するぜ!出でよ、虚空より出でて滅びの時を告げる者よ!『殺戮の魔神カイザー!』」
 やはり。ラクールはコストが高い代わりに場に出てしまえば無双を誇る超大型クリーチャーを召喚してきた。
「こいつはただデカいだけじゃないぜ!場に出た瞬間に相手の全てのモンスターを破壊する!さらに手札も三枚捨てさせる!そしてこいつは絶対に死なない!」
 無茶苦茶な性能である。おそらく公式大会では使用を禁止されているか、まだ禁止されていないがもうじき禁止されるかのどちらかであろう。相手の切り札の召喚を許したグレアムは全ての兵を失い、手札の殆どをも失った。絶対絶命のピンチだ。
 しかし、サイボーグであるグレアムならば、その身体能力で常人には視認不可能な速度での山札のすり替えなどをすることも十分可能だ。ただ「勝つ」だけならば、この状況からでもいくらでも可能なのだが――。
(それは、しない)
 グレアムはその手段は選ばなかった。彼はただゲームに勝ちたいのではない。《臨時教師》の一人として、ラクールに教えたいことがあるのだ。グレアムはルールを遵守し、魔神の蹂躙に必死に耐え、軽量クリーチャーを盾に時間を稼いで逆転の目を待つ。勝利への渇望も、敗北の悔しさも捨てて、冷静に戦術を組み立てる。
「はははははは!英雄も大したことねえな!やはり俺が最強だ!わざわざ遠いところからやられに御苦労さん!」
 もはや壁はいない。あと一撃で終わる。勝利を確信し、高笑いをするラクール。だが、遂に逆転のカードをドローしたグレアムはそんなラクールに冷静に告げた。
「……『復活の祝祭』。全ての僕のクリーチャーを墓地から場に戻す」
 グレアムが出したカードにラクールは表情を歪めた。厄介なカードだ。エキスパートルールでは場に出たカードはそのターンは攻撃できないから、このまま負けるということはないが、これでうかつに攻撃はできなくなった。
「さらに『凍結する時間』を発動。次の僕のターンの終わりまで、君のクリーチャーは行動できない。チェックメイトだ」
「なんだと……!」
 行動ができないということは防御もできないということだ。ならば、このターンは無事でも次のターンの相手の総攻撃で自分のライフは0になってしまう。クリーチャーを倒すカードをドローできれば相手の数を減らすことはできるが、相手の場にはラクールが調子に乗って殺しまくったクリーチャーが全員復活している。数体削ったところでどうにもならない。
「俺の……負けだ……!」
 踊らされていた。悔しさに歯ぎしりし、机を叩くラクール。【完全なる自立式人型機械】に敗北の文字はない。全てはグレアムの計算通りだったのだ。
「悔しいかい?何度でも受けてあげるよ」
「......もう一度だ!」
 ラクールのデッキはただ勝つ為のデッキだ。そこには対戦相手への敬意が欠けている。グレアムはそれをラクールに教えてやりたかった。
(君が正々堂々勝負を挑めるようになって、お互いに「心から楽しい」と思えるようになる。その時が「僕の負ける時」だ)
 ラクールがチート魔神と訣別し、「蒸気サイボーグデッキ」を愛用するようになるのは、それから数時間後のことであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・シフファート
◎#
問題児の後に普通の生徒たちと学術交流をする感じね。

全権炎属性(炎に特化した全能のような物)デッキで勝負。

で、一度TCGで負けて舐められた口を利かれるけど、なんやかんやで問題児集団対一人の状況の実戦で叩きのめして更生させたい。
けどそれが難しいなら普通にTCGで圧勝させて天狗の鼻を折るわ。

で、後は今回の全権炎属性についての講義を普通の生徒に行うわ。
炎だけでなく属性の比重が異なる世界についてやそれを扱う危険性、それをも解決して制御できた場合の有効性など高度すぎるかもしれないけど確実にいつか有用になる属性魔術の講義が生徒たちを感心させるわ。



●全権炎使いシャルロットVS『死神』ジョン
 シャルロット・シフファートは決闘を挑んできた問題児の一人と戦っていた。
「私が先攻ね。『炎の精霊』を召喚。ターンエンド」
「我のターン。骸骨の剣士を召喚」
「『不死鳥の炎』で『骸骨の剣士』を焼くわ。そして『炎の精霊』でアタック。さらに『劫火の竜巻』でプレイヤーにダメージよ」
「くっ!早い!」
 シャルロットの『全権炎デッキ』は自身の操る魔術属性の一つである『全権炎属性』をイメージして作ったものだ。炎属性のモンスターに加え、炎によるモンスター破壊やプレイヤーへの直接攻撃も行える超攻撃力重視のデッキである。その圧倒的な火力により、ジョンの闇属性モンスター達は態勢を整える前に次々と燃え尽きていった。
「『浄火の聖霊』でダイレクトアタック」
「我の負けだ……!」
 
●万象を灼す未踏級の理たる聖火世界
「『死神』がやられた……!」
「だが奴は我らの中で最弱」
「臨時教師風情に敗れるとは四天王の面汚しよ」
「次はこの『天に愛されし』バンザが出るよ。まあ、任しときなって」
 どうやらシャルロットに瞬殺された『死神』は四天王の一人だったらしい。敵討ちとばかり、シャルロットに勝負を挑んできたのはバンザという名の、いかにもボンボンといった雰囲気の少年だった。実際、彼はこの学園の生徒でも有数の金持ちの息子であり、金に飽かせて作ったデッキをたくさん持っている。バンザはシャルロットのデッキに対して一番相性のいい水属性特化デッキをぶつけてきた。
『死神』を瞬殺したシャルロットも、炎属性の弱点である水属性特化デッキが相手ではさすがに分が悪い。シャルロットはバンザのライフポイントをろくに削れないままストレート負けしてしまった。
「ハハハハ!なんだ、弱っちいな!真の英雄ってのはその程度かい!僕の方が圧倒的に強いじゃないか!」
「さすがはバンザさん!」
 勝ち誇るバンザ。拍手する取り巻き達。それに対し、シャルロットは不敵に笑いながら彼を挑発した。
「ふふ。私が弱いですって?なら、今度は本物の魔法で試してみる?水でも風でもいいわよ」
「ハン!結果は変わらないと思うけどね。でもそっちがそう言うなら……!風の精霊よ。我が剣となりて敵を切り刻め。『ウインドカッター!』」
 バンザは風の初級魔法を発動し、シャルロットを攻撃した。風属性の魔法を選んだのは服でも切り刻んでさらに辱めてやろうという彼の嗜虐心である。しかし、直撃を受けたはずのシャルロットはびくともしない。スカートすらそよがなかった。
「あれ……?おかしいな。もう一度だ!風の精霊よ。我が剣となりて敵を切り刻め。『ウインドカッター』!」
「今度は見えるようにやってあげるわ」
 シャルロットが指をパチンと鳴らすと、バンザの巻き起こした風が小さな炎に呑まれて消えた。シャルロットが無詠唱の魔術で相殺したのだ。初歩の呪文の詠唱すら省略できないバンザとは、天地の開きがあると言える。
「その程度じゃ、魔王どころか浅い階層の災魔にも勝てないわよ」
 シャルロットは鼻で笑う。つい本音が出てしまった。
「こ、このヤロ~!お前達、何してるんだ!この無礼な女を叩きのめしてやれ!『ウォーター・ハンマー』だ!水属性なら炎では防げないはずだ!」
 激昂したバンザは取り巻き達にシャルロットの攻撃を命じた。取り巻き達は一斉に呪文を詠唱し、シャルロットへと『ウォーター・ハンマー』を放つ。シャルロットは溜息を吐き、『魔術』で水の魔法を防御した。
『其れは、異なる灼滅。其れは異なる生きる真。炎産霊が捧げる全ての理を焼く邪炎にして聖火。それ即ち創造と終焉司る神話の起源なり』
 ゴウッ!シャルロットの詠唱と共に円を描くように炎が走り、教室の風景が一瞬にして紅蓮の世界へと変化した。これは空間そのものを炎の世界へと塗りつぶす大魔術。チンピラ達の放ったウォーター・ハンマーはシャルロットには届く前に蒸発した。シャルロットの魔術は「炎は水に弱い」とか、そういった次元を遥かに超越している。
「こ、これは……?」
 うろたえるバンザとその取り巻き達。この世界にいるのはシャルロットと彼らだけだ。
「『万象を灼す未踏級の理たる聖火世界』(バーニング・ナインワールド・レーヴァテイン)。これが私の魔術であり、世界の神秘たる『ユーベルコード』よ」
 シャルロットが指を動かすと、空間に溢れた聖なる炎が次々と合体し、熾天使を形取ってバンザ達を取り囲んだ。自身も炎を凝縮した灼熱の剣を向けながら、シャルロットは問う。
「どう、続ける?」
「すみませんでしたァ―――――!!!」
 バンザとチンピラ達は一斉に土下座した。
 その後、シャルロットは興味のある学生達を集めて全権炎属性魔術についての講義を行った。炎だけでなく属性の比重が異なる世界についてや、それを扱う危険性、それをも解決して制御できた場合の有効性など、高度すぎるかもしれないが、確実にいつか有用になる属性魔術の講義だ。実践的で見た目も派手はシャルロットの魔術の講義は多くの学生達を虜にした。そして、その恐ろしさを間近で目撃したバンザ一味は大いに反省し、シャルロットの講義を最前列で拝聴したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天樹・咲耶
◎#
裏人格のサクヤ(中二病)です

「ふふふ、アルダワの悩める子羊たち!
大魔王を倒した猟兵の一人である、この私が直々に来てあげたわ!
感謝しなさい!」(注:サクヤは戦争に参加していません)

『地獄竜』に『闇の鎧』、『呪殺人形』ね。
けれども、私は学生ごときには負けないわ!
何故なら、私こそ『邪炎竜(ルビ:アビスドラゴン)』のサクヤなのだからっ!

「というわけで私が相手になるわ!
どんなデッキでもかかってきなさい!」

私のデッキは最強の即死コンボデッキ!
呪いの魔眼のトラップカードで相手モンスターを生贄にアビスドラゴンを召喚!
邪竜獄炎咆でプレイヤーにダイレクトアタックよ!

「真の魔王たる私に勝てると思わないことね!」



●竜の決闘!邪炎竜VS地獄竜
「ふふふ、アルダワの悩める子羊たち!
 大魔王を倒した猟兵の一人である、この私が直々に来てあげたわ!
 感謝しなさい!」
 天樹・咲耶……の体を乗っ取って顕現した第二の人格「サクヤ」は大きな声で教室の学生達へと宣言した。彼女はこのアルダワ魔法学園でカードゲームが流行っていると聞き、駆け付けてきたのだ。なお、彼女はアルダワ魔王戦争には参戦しておらず、魔王のどの形態とも交戦していない。完全に勢いだけの台詞である。
「ヘエ……貴女は魔王と直接戦った英雄なのか。面白い。ならこの『地獄竜』(ヘル)カイトと戦ってもらおうか」
「いや、ここはこの『闇の鎧』(ダークアーマー)エレンが」
「待った!彼女は『呪殺人形』(カース・オブ・ドール)キャンディの獲物よ!」
 まさかサクヤの口上がハッタリとは露知らず、「魔王を倒した英雄」の出現に色めき立つ問題児達。誰がサクヤの相手をするか言い争いを始めた。
「『地獄竜』に『闇の鎧』、『呪殺人形』ね。
 けれども、私は学生ごときには負けないわ!
 何故なら、私こそ『邪炎竜』(アビスドラゴン)のサクヤなのだからっ!」
 そんな問題児達に対し、自分も『邪炎竜』という称号を名乗るサクヤ。この臨時教師、ノリノリである。
「みんな、ここは同じ竜である僕がやらせてくれ。デカい口を叩くのはこの『地獄竜』カイトを倒してからにしてもらおうか!どちらが学園最強のドラゴンなのか勝負だ!アビスドラゴン!」
「いいわ!かかってきなさい!格の違いを見せてあげるわ!駄竜!」
 「邪炎竜」というサクヤの名乗りにドラゴニアンの誇りが刺激されたのか。強く対戦を希望した『地獄竜』カイトがサクヤの対戦相手に決まった。二人は屋上に舞台を移し、マスタールールでの決闘を開始する!

●サクヤ先生の危ない課外授業
「僕のターン!出でよ、冥界の竜よ!赤き死の化身よ!地獄の業火で敵を焼き払え!『冥界の赤竜』召喚!」
 決闘の終盤。ついにカイトはエースモンスターである『冥界の赤竜』を召喚した。ゴアアアアア!という竜の咆哮と共に、赤き竜の幻影が地面に置かれたカードから飛び出した。このドラゴンは高い攻撃力に加え、攻撃のたびに火炎をばら撒いて弱いモンスターを根こそぎ根絶してしまう強力なモンスターだ。
「フハハハ!どうだ!僕の無敵のドラゴンデッキは!」
 場に並べたドラゴン軍団を眺め、悦に入るカイト。ドラゴンはたいていのカードゲームで高スペックを誇り、人気も高いモンスターだ。この「M&M」においてもそれは例外ではない。精強なるドラゴン軍団を突破してカイトのライフポイントを奪うのは至難といえよう。サクヤもここまでは防戦一方でひたすら壁役のモンスターを葬られていくのみだった。そして迎えたサクヤのターン。ここでいいカードがドローできなければおそらく次のターンは回ってこないだろう。
「……カードを一枚場に伏せてターンエンドよ」
 しかし、サクヤは引いたカードを一枚裏向きに場に出しただけでターンを流した。
「ふはははは!どうやら逆転できるカードではなかったようだね!さあ、ラストターンだ!ドラゴン軍団よ!彼女を焼き尽くせ!全員攻撃だ!」
 勝利を確信し、ドラゴン達に総攻撃を命じるカイト。だがその時、サクヤの右眼が眼帯の奥でキラリと光った。
「かかったわね!私は場に伏せていた『呪いの魔眼』を発動!貴方のモンスターは私がもらったわ!」
「馬鹿な……!罠だと!」
 サクヤは場に罠を仕掛け、獲物を呼び込む為にあえてターンを流したのだ。サクヤのデッキタイプは「即死コンボデッキ」。彼女はこの時をずっと待っていた!
 『呪いの魔眼』の効果により、サクヤを攻撃しようとした全てのモンスターが呪いに堕ち、主を裏切った。返しのターンでサクヤは奪ったモンスター達を次々と生贄に捧げ、切り札を召喚する!
「出でよ!私の右腕に封じられた邪竜!アビスドラゴン!」
 詠唱と共に、サクヤの右腕の包帯が弾け飛び、邪悪なる竜が顕現する!
 ゴアアアアア!
 封印から解放されたアビスドラゴンはカイトを睨み付け、威嚇するように忌まわしい咆哮を上げた。
「なんという迫力……!まるで本物のドラゴンのようだ……!」
「『邪竜獄炎咆』(アビスドラゴン・フレイム)!ダイレクトアタックよ!」
 ゴアアアア!アビスドラゴンの口が大きく開き、爆炎のブレスが運動場に着弾した。運動場に火柱が立ち昇る。カイトのライフポイントはこれで0。サクヤの勝利だ。
「俺の負けだ……」
「フッ……。真の魔王たる私に勝てると思わないことね!……ってあれ?」
 華々しく勝利を飾ったサクヤだったが、そこで違和感に気付いた。自分の中のUDC、邪炎竜の気配がない。
「しまったああああ!このアビスドラゴンホンモノだわ!」
「えええええええええええええええっ!?」
 封印から解放され、悠然と空を泳ぐアビス・ドラゴン。このままではアルダワ魔法学園が火の海になってしまう!サクヤが第二の魔王として伝説になってしまう!
「こうなったら……!ついてきなさいカイト!UDCとの戦い方をマンツーマンで教えてあげるわ!」
「UDCって何!?」
 こうして、カイトを助手に仕立て上げてなんとか怪我人が出る前に暴走したアビスドラゴンの再封印に成功したサクヤは、地獄竜カイト君と戦場の絆を育くんだのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリス・セカンドカラー
◎#
おまかせプレイング。
問題児ねぇ、ま、この手の輩は見た目で判断してくるから、私みたいなのは与しやすそうと仕掛けてくるわよね。(誘惑/おびき寄せ)
ふむ、カードゲームね。ルールとかわからないけど平気平気。だって私はサイキッカー、予知も読心もお手のものよ☆(第六感/ハッキング/情報収集)
ノクターンでデッキとゲームメイキングのスキルを想造し、中盤までは苦戦を演じるわ。うふふ、その場で有効なカードも想造できるんですもの、逆転劇を演出するのも簡単だわ☆
イカサマ?災魔はもっとえげつない手を使ってくるのだからこのくらいは粉砕出来ないとダメよ?
あら、逆上して殴りかかるのは悪手よ?これでも私パワーファイターなの



●フィッシング
「うーん、私はどうしようかしら……」
 ピンクのエプロンドレスを着て不安そうに周囲をきょろきょろするアリス・セカンドカラー。彼女は「M&M」はおろか、カードゲーム自体をよく知らない。クラスのあちこちで猟兵と学生の決闘が始まる中、アリスは一人うろうろしていたのであった。すると……。
「あんた、暇?アタシと決闘しなさいよ。アタシよりちっこいけどアンタも臨時教師でしょ?」
 問題児の一人である、孔雀の尾のような奇抜なヘアースタイルをした少女がアリスへと声をかけてきた。弱そうなアリスなら与しやすしと声をかけてきたのだろう。
「ありがとう。じゃあお願いするわ。お手柔らかにね」
 計画通り。うまく問題児を釣り上げることに成功したアリスはにこにこと笑いながら、問題児と共にテーブルについたのだった。 

●不可思議な腐敗の魔少女アリスVS『孔雀明王』ゲルダ
「えっと……私は『初心なポテト娘』を召喚。これでいいのかしら」
「ええ、合ってるわよ。だがアタシのハーピィの方が強い!ポテト娘を攻撃!撃破!」
「あーれー☆」
 ルールの確認をしながら、テキトーに組んだデッキで『孔雀明王』ゲルダと対戦するアリス。当然のようにアリスは蹂躙され、モンスターは次々と墓場に送られていく。
「『家政婦のスパイ』を召喚。山札の一番上を見せてね」
「フン。微妙なカードを……。『ハーピィの歌姫』で攻撃!家政婦は死んだ!」
 アリスのモンスターをことごとく粉砕し、順調にライフポイントを削り取っていくゲルダ。それに対し、ゲルダの場にはモンスターが揃っており、ライフポイントも初期値のまま。
(ふっ。やはりアタシの睨んだ通りだったな。弱っちい。なんでこんな奴が英雄なんだか)
 カードゲームの強さ=リアルファイトの強さという妄想に縛られているゲルダは心の中でほくそ笑んだ。こいつを倒せばアタシも英雄だ。アタシが何をしていても親も教師も文句は言うまい。本当の決闘ならともかく、カードゲームで勝ったところで実際にはそんなことは無いのだが、ともかくゲルダはそんな風に考えているのであった。それに対しアリスは……。
(さて、そろそろいいかしら。反撃開始よ☆)
「私のターンね。『雷の大佐』を召喚。全ての鳥族モンスターを破壊し、破壊した数に応じて私のライフポイントを回復するわ☆」
 火炎放射器を持ったガタイのいい老人が召喚され、ハーピィ達を次々と丸焼きにしていく。さらに、アリスのライフは大幅に回復した。アリスの手札には鳥族で構成されたゲルダのデッキの天敵と言えるカードが入っていたのだ。
(ふふふー。ルールとかわからないけど平気平気。だって私はサイキッカー、予知も読心もお手のものよ☆)
 もちろんこれは偶然ではない。アリスはたった今超能力でカードの絵柄とテキストを変更し、鳥族対策カードを創造したのである。
「ぐっ……!そんなカードを入れているとは!だが、まだイーブンに戻っただけだ!」
 だが、アリスが本気を出した以上、普通にゲームをしていても勝つことはもはや不可能だ。想像から創造するスキル『不可思議『夜』想曲』により、アリスはこのゲームの支配者となったのだから。
「アタシは『夜の帳』を発動!辺りは闇に包まれ、おまえのモンスターは攻撃できなくなる!」
「結界魔法カード、『貴腐人の聖地』。あなたの『夜の帳』は無効よ」
「これならどうだ!『ワタリガラスの女王』!アタシの切り札だ!」
 切り札をドローしたゲルダは自身満々にカードを召喚した!
「『敏腕スカウトマン』!その女王様は私のものよ☆」
 しかし、ゲルダの切り札もあっさりアリスの軍門に下ってしまった。
「ちょっとアンタ、イカサマしてるんじゃないの!?」
 あまりにもアレなゲーム展開に、ついにゲルダが切れた。
「イカサマ?災魔はもっとえげつない手を使ってくるのだからこのくらいは粉砕出来ないとダメよ?
 それに、私はただカードを創造しているだけよ。こんな風にね。ごにゃーぽ☆想造から創造する想造の力をとくとご覧あれ☆」
 アリスの手が光り、手にしたカードの絵柄が変化していく!すると、アリスが手に持っていたまな板娘の絵柄のモンスター「おませなリリス」はわがままボディのセクシーな美女モンスター、「完全究極変態・リリム」へと進化した!
「やっぱりイカサマじゃないの!勝負の途中でカードを書き換えるなんて……!」
「えー。ルールブックにはこうあります。『カードの効果以外でデッキのカードを増減させてはいけません。デッキ外からカードを加えたり、また、カードを抜き取ったりする行為は禁止します』。つまりこれは合法よ。カードの枚数は増減していないのだから。カードの幻影もちゃんと出てるし☆」
「そんな屁理屈が通るかあ!」
 ゲームを放棄し、立ち上がったゲルダはアリスへとぐーで殴りかかった!しかし、アリスはその拳を片手でぱしっと軽々と受け止め、その腕をねじりあげてゲルダを地面にひきずり倒した。さらにアリスはゲルダの腕をホールドしたまま背中に馬乗りになり、耳元で囁く。
「あら、逆上して殴りかかるのは悪手よ?これでも私パワーファイターなの」
「ギブ!ギブ!先生ごめんなさい!」
 英雄の実力を見せつけられたクラスメイトたちがゴクリと息を呑む(主に男子)。この後、アリスはカリスマ女王として一部の学生達の熱烈な支持を受け、教室に君臨するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緑川・小夜
◎#

問題児の方の曲がった精神をへし折ればいいのね。そういうのは得意よ

使用デッキは、モンスターはアンデッドの女王というエースモンスターを複数枚のみ、あとはそれが場にいる時に使えるカウンターカードや、エースカードをどこからでも呼び出せるカードなどのサポートで固めたデッキでいくわ

初めの方は侮られるくらいに腰の低い態度で、ゲーム中も相手が何かする度、誉めたり焦ったりの演技をして、相手を持ち上げながら戦法を見定める

見定めが終わったら、一転攻勢。エースを呼び出し、相手の打つ手をことごとく対処していき、わたくしには勝てないというイメージを植え付けるわ

とくと味わいなさいな、わたくしの「教育」を!

【WIZ】



●人を見た目で判断してはいけません
「行くぜ、チビっこ!格の違いを見せてやる!」
 各所で猟兵達と学生との白熱したカードバトルやリアルファイトが繰り広げられる中、また新たな決闘が行われようとしていた。なお、ここで行われようとしているのはカードバトル的な意味合いの「決闘」なので、ご安心いただきたい。
「よろしくお願いします。『剣聖』ミツルギ様」
 緑川・小夜は対戦相手の少女に深々と一礼した。9歳という幼さのせいか学生に思いっきり舐められているが、そこはスルーするようだ。……今は。
(問題児の方の曲がった精神をへし折ればいいのね。そういうのは得意よ)
「……わたくしから参りますわね。カードを二枚場に伏せてターンエンドです」
「なんだ、モンスターは引けずか?俺は『百人衆の目付』を召喚!さらに『百人衆の先手弓』を手札から追加で召喚!そのまま二体でプレイヤーに攻撃だ!」
「きゃあっ!」
 ズバッ!ザシュッ!二体の侍モンスターが召喚され、小夜のライフポイントはいきなり四分の一ほど減ってしまった。しかし、返しのターンでも小夜はモンスターを場に出さず、オタオタしながら新しくカードを場に裏向きで一枚出すのみであった。
「ハッ!運が悪いのかそれともデッキそのものが悪いのか……。俺は二体の侍を生贄に捧げる!出でよ、古今無双の兵!最強のサムライにして、常勝無敗の大将軍よ!『百人衆の大将軍・ノブナガブレイド』を召喚!さらにマジックカード、『将軍の号令』を発動!デッキから百人衆を三体追加で召喚だ!」
 ズラリと並ぶ侍達。まだ四ターン目だが、この総攻撃が通れば小夜はそのまま敗北である。
「なんて速攻なの……!わたくしは伏せていた『停戦の使者』を発動。ダメージを回避します」
 小夜は慌てた様子で事前に仕掛けていた防御用魔法カードを発動。なんとか戦闘ダメージを回避する。
「チッ……!防御カードを仕掛けていたか。だが、盤面は圧倒的に俺が有利だ。次で決めるぜ!」
 確かに、小夜はダメージを回避しただけで敵の数は減っていない。さらに、場にモンスターはゼロ。このままでは一ターン後に再び敵は総攻撃を受けて敗北するだろう。小夜に逆転の目はあるのか。そして小夜のターンが来た。
 そこで、小夜はくすりと笑った。
(もう、様子見は十分でしょう。相手のデッキは典型的な『百人衆』のビートダウンデッキ……。ここから逆転してあげますわ)
「わたくしは伏せていた『泰山府君の祭』を発動し、デッキからアンデッド族モンスター1体を召喚します。来なさい!『アンデッドの女王』!」
「アンデッドの女王……!凶悪な効果を持つアンデッド族の最上級モンスター!」
 終始にやついていたミツルギの表情が変わった。
「アンデッドの女王!大将軍に攻撃しなさい!」
「そうはさせるか!『百人衆の老中』の効果、『人身御供』を発動!足軽を盾にして大将軍を守る!」
「そう来ると思っておりましたわ!手札を一枚捨て、アンデッドの女王の『冥界の檻』を発動!アンデッド族以外の全てのモンスターの効果はこのターン無効化されます!喰らいなさい!女王ラリアット!」
「くっ!」
 激しいモンスター効果の応酬を制したのは小夜だった。ミツルギ自慢の将軍は女王の攻撃により絶命し、ゾンビ化して小夜の陣営の手駒となった。
「まずい……!エースモンスターを奪われた!」
 一気に不利となった状態でターンを回されたミツルギだったが、ドローしたカードを見てニヤリと笑った。
「いいカードを引いたぜ!魔法カード『雷の暴風』!全ての相手モンスターを破壊する!魔法カードならアンデッドの女王でも無効化はできまい!」
 雷の暴風がフィールドに吹き荒れ、小夜の女王とゾンビ化した大将軍は破壊された。これでまた小夜はモンスターがゼロだ。
「いけ!サムライ達!二体で直接攻撃だ!このまま押し切れる!」
 生き残っている二体のサムライに突撃を命じるミツルギ。
「それはどうでしょうか?」
 小夜はころころと笑いながら、伏せていたもう一枚のカードを発動した。
「『死者の呼び声』よ。アンデッドの女王よ、蘇りなさい!」
 小夜の蘇生魔法カードにより、アンデッドの女王は墓地から復活!サムライ達を返り討ちにした!そして、倒したサムライ達をゾンビ化。形勢逆転だ。
「ああ……」
 絶望にうちひしがれながらターンエンドするミツルギ。モンスター効果も駄目、魔法も駄目となればもはや打つ手はない。
「わたくしのデッキにはモンスターはアンデッドの女王が三体のみ。ですが、わたくしは手札、デッキ、墓地、異次元、あらゆる場所から女王を召喚できるように構築してあるのです」
 そう言うと、小夜はドローした二枚目の『泰山府君の祭』を発動し、二体目の『アンデッドの女王』を召喚した。これでモンスターは4体。全員で攻撃すればミツルギは即死だ。
「『格の違い』を教えて差し上げましょう。とくと味わいなさいな、わたくしの『教育』を!」
「うわああああああ!!!」
 どごーん。小夜のアンデッド軍団の総攻撃を受けて完敗したミツルギはその鼻っ柱を見事にへし折られたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

桐府田・丈華
【行動】
「ふふーん、カードゲーム ね…
ボクに勝てるかな!?」
キメポーズなんかで言ってみたり
ノリノリで挑みます
手は抜かない全力で

【戦法】
新入生とカードバトル開始して
自分は速攻の華麗なコンボで攻め
「よし、ボクのターン!行くよ!」
新入生のプレイングに苦戦する場面もあるけど
最後に電光石火のコンボを決めてとどめをさします
「ボクの勝ち!
君もすごく強かった!ボクもうかうかしてられないよ」
最後はなかよく!



●バトルゲーマーVS箱入りお嬢様!
「ふふーん。カードゲームね。ボクに勝てるかな!?」
 桐府田・丈華は早速新入生に勝負を申し込まれ、びしっと決めポーズを取りながら快く挑戦を受けた。
 この3年M組は問題児の多いクラスではあるが、何も新入生の全てが問題児というわけではない。真剣に英雄に教えを乞いたいというものもちゃんといる。今から丈華と決闘するローリエもそんな新入生の一人だった。ローリエは典型的な箱入り娘といった雰囲気の金髪お嬢様である。対して、丈華は魂のカードを武器に戦うバトルゲーマーであり、あらゆるカードゲームに通じた生粋の決闘者。二人は一体どんな戦いを見せてくれるのか。
「行くよ、ローリエ!ボクは『飛びかかるゴブリン』を召喚!いきなり攻撃だ!」
「くっ!速攻デッキ!魔力を貯めてターン終了です」
「ボクはゴブリンに『怒りの仮面』を装備させ、さらにパワーアップだ!ついてこれるかな?」
「いきます、先生!『剣竜ステゴサウルス』を召喚!」
 丈華の速攻に耐えながら魔力を貯めていたローリエは満を持して高火力モンスターを召喚した。彼女は大人しそうな見た目とは裏腹に、強力なパワーがウリの恐竜デッキ使いだ!
 魔力が安定してきたローリエは『トリケラトプス』、『プテラノドン』、『ブラキオサウルス』と、次々と恐竜モンスターを召喚。顔に似合わず激しいローリエの攻撃に、丈華のライフは勢いよく減っていく。
「よし、ボクのターン!行くよ!ボクは追加コストとして手札を一枚捨て、マジックカード『メテオ・ストライク』を発動!恐竜を絶滅させる!」
 丈華は並んだローリエの恐竜達に対し、全体攻撃魔法をお見舞いし、恐竜モンスターを全滅させた。しかし、この隕石魔法の効果はこれだけではない。
「隕石の衝突によって戦場には氷河期が訪れる!ボクは『霜の巨人』(フロスト・ジャイアント)を召喚!パワーアップした状態でアタックだ!」
「くっ!冷気コンボ......!さすがです先生!」
 戦場を氷の大地に書き換えた丈華は、氷属性のパワーファイター『霜の巨人』を呼び出し、ローリエに痛烈な一撃をお見舞いした。さらに、次のターンに追撃。ローリエのライフは残り半分になった。
「私、負けません!結界魔法『はじまりの大地』を発動!戦場を氷河期から原始時代に逆戻りさせ、私は『暴君竜ティラノサウルス』を召喚します!」
 戦場に地響きが鳴り、最強の恐竜が降臨する!
「ティラノサウルス......!それが君の切り札だね!」
「その通りです!ティラノサウルス!霜の巨人を噛み砕け!」
 ゴアアアア!うなり声を上げながら突撃してきたティラノサウルスに噛み砕かれ、丈華の霜の巨人は粉砕され、丈華にも貫通ダメージが入る。ティラノサウルスのパワーは「M&M」随一。もう一度攻撃を通してしまえば丈華のライフは0になってしまう。
「けど、そうはさせない!ティラノサウルスがもう一度攻撃してくる前にこのターンで決着をつける!ボクは『復活の角笛』を発動!墓地から『不死鳥の王』を復活だ!」
「なっ......!それはさっきコストとして捨てていたカード!これが本当の狙い!」
 強力なモンスターは総じて魔力コストも高く召喚には手間がかかる。だが抜け道もある。丈華はコストを踏み倒して召喚する為、わざとジョーカーを墓地に捨てていたのだ。
「その通り!これがボクの切り札だ!余った魔力は全てフェニックスの強化に使う!いけっ!不死鳥!」
 死を乗り越えて蘇った火の鳥は丈華に与えられた炎の魔力を吸って巨大化し、ローリエへと突撃した!ティラノサウルスは強力なモンスターだが陸上モンスター。遥か上空の舞うフェニックスは迎撃できない!
「きゃああ!」
 フェニックスの一撃を受け、ローリエのライフは0になった。丈華の勝利だ。
「ボクの勝ち!
 君もすごく強かった!ボクもうかうかしてられないよ」
 丈華は倒れたローリエにそっと手を差し出す。そして二人は固く握手を交わしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リダン・ムグルエギ
#【ワイルドハント】の【事前準備担当】
ニコの助手席で参戦
全力で遊びに来たわ!

狸親父フドウさんの効果で無人島の地図をサーチしライフの半分をコストに発動
地図の効果でキマイラを展開するわー

アタシは巷で流行のAnimalClothingデッキ
膨大な借金(コスト)で爆アドを生むキマイラを展開し
衣装で強化し戦う装備ビート

龍族封印のミコや光晦ましのシロブチ、呪を喰らうものナミルー等
普通使わぬメタカードも織り混ぜ圧倒するわ

魔王は逃げられない一本勝負
最初から対策(サイド)を入れて当然よ

英雄を名乗りたいなら
この程度乗り越えなさい!

ま、仮に乗り越えても…
衣装って人型なら
誰でも着れるのよね
(乗物王をフリフリ服で強化し


ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】
持前のコミュ力で学園内で聞き込みをし
不良達の使用デッキを情報収集
突き止めた居場所に営業車でブッ込み
ドリフトをキメてリアルダイレクトアタック!

さぁ授業を始めましょ
ボンボンを鍛え直すにはガツンといかないと
ドライビングデュエル……疾走感のある刺激的な決闘はいかが?
不良達にUCで召喚した自動運転車輛を貸与し
自身は仲間と共にチーム戦を挑む

隣にリダンさん
空に副団長と深菜さん
負ける気がしないわ

私ののりものデッキも強いわよ
地属性の戦車
炎属性の機関車
風属性の飛行機
水属性の潜水艦
全てを合体させた「エレメンタル乗物王」、格好佳いでしょ?
更に私を融合!
強靭・無敵・最強の運び屋が、皆の攻撃を届けるわ!


エル・クーゴー
【ワイルドハント】
◎♯(呪殺人形)


躯体番号L-95
エル・クーゴー
当機は『M&M』猫属性デッキの運用に高い適性を発揮します
(無表情で突っ立っている)


・猫属性デッキらしく「猫じゃらし」や「マタタビ」等のアイテムを細やかに配置
・しかし肝心のケットシー系のカードを場に展開しない謎のプレイング

・敵側の呪殺コンボのスタートを見次第、デッキの真価をカウンター気味に発揮!

・アイテムによるバフを踏まえ、満を持してウイングキャット『マネギ』を召喚!
・このカードは一撃破壊可能ユニット『マネギ(子機)』トークンを量産する能力を有する!
・トークンを呪殺に対する肉壁として無尽に繰り出しつつ、同時に人海戦術で敵陣を圧殺せん


白鳥・深菜
【ワイルドハント】◎

「さて。誰でもいいわ、勝負」

構築はエレファン主軸。
エレファンは、それ単体では不安定な全体除去でしかない。

しかし、エレファンの本領はサポートカードとの組み合わせにある。
属性と現象を制御し、状況に応じて狙った効果を引き出す――

時にはいぶし銀の効果を引き出し、時には派手に戦況を塗り替える――
エレファンの制御に特化したデッキは
「引き」次第ではあるが、通常の構築を遥かに超える対応力を持ちうる――

「希うは<金>の<氾濫>。望むは全員のドロー2枚――
さて、貴方。これでデッキアウトね?」

事故のリスクを恐れず、隙あらばそこを穿ち、狩る。
これがエレファン・コントロールデッキ。



●『ワイルドハント』VS『自由連合』!ドライビングデュエルの誘い!
「ダイレクトアタックよ!」
 ニコリネ・ユーリカは発見した問題児グループに対し、いきなりダイレクトアタックを敢行した。この「ダイレクトアタック」はカードゲームにおけるプレイヤーへの直接攻撃のことではない。愛用の営業車「Floral Fallal」で問題児達のたまり場に、ワイルドに突っ込んだのである。
「ぎゃー!」
 突然の襲撃に悲鳴を上げる問題児達。無論、いかに不良と言えどもオブリビオンとは違って轢き殺すわけにはいかないので直前で急ブレーキ。ニコリネは綺麗にドリフトをキメて問題児達の前に急停車した。
「さあボンボンたち、授業の時間よ!ドライビングデュエル……疾走感のある刺激的な決闘はいかが?」
 ニコリネは運転席から降り、問題児達にびしっと指を突き付ける。
「なにい、ドライビングデュエルだと!?」
 ドライビング・デュエル。それは、「M&M」の読み込み専用端末「Mリーダー」を搭載した専用車両で併走しながら、カードバトルを行うという、最も過酷なルールでの決闘である。常人以上の運動神経を持つ「学生」達の間でも、その余りにエキセントリックなデュエル形式に馴染んでいる者はほとんどおらず、そのルールに対応したデッキを持っているだけで「勇敢」と評されるほど危険なデュエルなのだ。ましてや、それが団体戦ともなれば、もはやテクニカル過ぎてわけがわからない。
「面白いわ!その決闘、受けて立とうじゃない!」
 だが、問題児達のリーダー格である『呪殺人形』キャンディはニコリネの挑戦を快諾した。そう、ニコリネの溢れるコミュ力を活かした事前調査で判明した通り、彼女達は学園でも髄一のドライビング・デュエリストチームだったのだ。
 こうして、決闘者猟兵チーム「ワイルドハント」と問題児達のグループ「自由連合」(フリーダム・ユニオン)の4対4の団体ドライビングデュエルが始まった。コースは学園内部にあるサーキット。特に仕掛けはない平凡なコースだが、彼らはレーサーではなく決闘者。レースを制しつつ、8人が入り乱れて戦う盤面からも目を離せない過酷な戦場である。
 ニコリネが用意した自動運転車輛や、自前のバイクに搭乗した問題児達は、勢ぞろいした『ワイルドハント』の決闘者達と対峙した!エンジンが唸り、8人を乗せたビーグルが一斉にスタートする。ドライビングチームデュエルの始まりだ!

●あつまれキマイラの島!
「全力で遊びに来たわ!さあ決闘よ!」
 ニコリネの営業車の助手席に乗っているキマイラの決闘者はリダン・ムグルエギ。
彼女はこの学園での決闘を楽しむ為に参戦した生粋の決闘者である。
「アタシのターン!『狸親父フドウさん』を召喚!効果で『無人島の地図』をサーチし、ライフの半分をコストに地図を発動するわ!」
 地図をプレイヤーに売りつけ、ぐへへ、と笑う狸親父。法外な価格で取引された『無人島の地図』の効果により、リダンのデッキから大量の「キマイラ」モンスター達が連続召喚される!
 リダンの使用するデッキは巷で流行の「Animal Clothing」(アニマル・クロージング)デッキ。いまや品薄で難民が続出しているという程のレアデッキだ。その詳細は、膨大な借金(コスト)を負う代わりに爆アドを生むキマイラを展開し、動物モンスター達を衣装で強化し戦う装備ビートデッキだ。プレイヤーであるリダンからライフをゆすったキマイラ達は、デッキから呼び出されたダンダラ羽織や十二単、ウェディングドレスなどの様々な衣装を装備してパワーアップしていく!
「獣共よ、貴様の相手はこの私だ!ドライビングカード『ホーミング甲羅』発動!本体に攻撃だ!」
 このドライビング・デュエルではカードの腕だけでなく、ドライビングテクニックも重要となる。ドライビング・デュエル中はコース上に時折専用のカードが出現する。それらは獲得した瞬間に「ドライビング・マジック」となり、ゲームに様々な影響を及ぼすのだ。誘導甲羅爆弾をぶつけられたリダンの狸親父は着ていた衣装もろとも爆散した。
 リダンに反撃を仕掛けてきたのは<『俺より弱い奴に会いに行く』ドラン>。ニコリネの事前調査によれば、竜人モンスター「竜闘士」を駆使して戦う高速ビートダウンタイプのデッキ使いだ。ちなみに彼の情けない異名は初心者としか戦いたがらないことからついた蔑称らしい。だが、今回はチーム戦なので強気に出ているようだ。キマイラの一体を葬ったドランは攻撃力の高い竜闘士モンスターを駆り、リダンにさらなる追撃を仕掛けてきた。
「龍族封印のミコ、召喚!」
 しかし、リダンは返しのターンでドラゴン族対策カードを手札から召喚。あっさり竜闘士の動きを封じた。事前調査で問題児達の手の内は割れていたので、本来はサイドボードにしか入れないようなカードも最初からデッキに突っ込んでいたのである。
「なっ!ドラゴンメタカードだと!なぜ都合よくそんなカードが!?」
 驚きに目を見張るドラン。
「魔王は逃げられない一本勝負!最初から対策(サイド)を入れて当然よ!
 英雄を名乗りたいならこの程度乗り越えなさい!」
「うーわーーーーーーーーー!!!」
 一喝しながら、リダンは無防備になったドランにキマイラの集中攻撃を浴びせてあっさりライフポイントを0にした。これで一人脱落だ。

●白VS黒!
「ドランがやられた!」
 仲間の早々の脱落にどよめく問題児達。
「さて。誰でもいいわ、勝負」
 改造バイクに跨り、不敵に笑うのは白鳥・深菜。相手が誰であろうとも負けない。口にはせずとも、その自信を表情が雄弁に語っていた。
「ならば、この吾輩、『暗黒卿』(ダークロード)トムが相手だ!」
 深菜の対戦相手として名乗りを上げ、空を征く深菜のバイクに車体を近づけてきたのは仮面を付け、黒いローブを纏った少年だった。いかにも悪の幹部といった風貌だが、まだ声変わりはしていない。たぶんローティーンだろう。とはいえ、やるべきことに変わりはない。その鼻っ柱をへし折り、胃の中の蛙に現実を教えてやるのが深菜の仕事だ。
「この『暗黒魔術デッキ』の恐ろしさ、たっぷりと教えてやろう!」

●二人目の脱落者
「私のターン。『エレメンタル・ファンタジア』を発動」
 深菜のデッキは『エレファン』。多種多様なユーベルコードの中でも、使い手が多く、比較的よく知られている精霊魔法『エレメンタル・ファンタジア』の略称と同名のカテゴリである。しかし、使い手は多いもののエレファンは制御が難しく、扱いには熟練を要する。『M&M』のエレファンもそんな性質を反映し、「2回振ったダイスの目の組み合わせで効果が決まる」という極めて不安定なものとなっていた。その代わり、同名カードの枚数制限はないのだが。
「エレファンだと……?ギャンブルデッキか?」
「さて、どうかしら。さらに私は結界魔法『精霊の隠れ里』を発動。エレファンの効果決定のダイスを3回ずつ振れるわ」
 コロコロ。コロコロ。高速で走るバイクを片手で制御しながら、用意したカップの中で十面ダイスを振る深菜。深菜は<火>の<蹂躙>、「全てのモンスターを破壊する」効果を選んだ。
「チッ……!」
 モンスターを破壊され、舌打ちする暗黒卿。しかし、彼も黙ってはいない。得意の暗黒魔術カードですぐに反撃してきた。
「『魂の略奪!』おまえのライフポイントを奪い、俺のライフポイントに吸収する!」
「そうはさせないわ。『エレメンタル・ファンタジア』。さらにサポートカード『精霊の加護』。一度だけ好きな効果を選べる。私は闇属性魔法を無効化する<聖>の<結界>の効果を選ぶわ」
 時にはいぶし銀の効果を引き出し、時には派手に戦況を塗り替える――。
エレファンの制御に特化したデッキは「引き」次第ではあるが、通常の構築を遥かに超える対応力を持ちうる――。それがエレファンデッキだ。
 深菜は不安定なエレファンカードをサポートカードで見事にコントロールし、ことごとく問題児達の攻撃を捌いた。そして、深菜のターン。彼女は遂に必殺のコンボを発動する。
「「希うは<金>の<氾濫>。望むは全員のドロー2枚――」
「さらに<光>の<奔流>。一人のプレイヤーを対象に取り、直前の魔法の効果を墓地のエレファンの数だけコピーするわ」
「なんだと……!」
 このコンボにより、暗黒卿は一気に20枚以上のカードをドローすることになった。だが、彼のデッキにカードはもはや20枚も残されてはいない。
「さて、貴方。これでデッキアウトね?」
『M&M』ではカードをドローできなければライフが残っていても敗北となる。暗黒卿はこれでリタイアだ。
「くっ……!まさかエレファンでデッキ切れ狙いだと……!」
「事故のリスクを恐れず、隙あらばそこを穿ち、狩る。
 これがエレファン・コントロールデッキ」
 扱いの難しいエレファンデッキを見事に制御し、問題児の一人を仕留めた深菜はバイクに乗ったまま決めポーズを取るのだった。

●最強の決闘人形決定戦!
「躯体番号L-95、
 エル・クーゴー。
 当機は『M&M』猫属性デッキの運用に高い適性を発揮します」
 エル・クーゴーは無表情のまま、猛スピードで空を飛ぶ車輛の上に棒立ちしていた。並みの神経ならば「レースをしながらカードゲームをする」という狂気の沙汰に気後れしそうなものだが、ミレナリィ・ドールである彼女は恐怖も希薄らしい。エルは車体のコントロールは自動運転に丸投げし、淡々と決闘をしていた。
「アンタもミレナリィ・ドールね。このアタシもそうよ。『呪殺人形』(カース・オブ・ドール)キャンディの呪いの人形デッキの恐ろしさ、教えてあ・げ・る♪」
 エルの真下に車を寄せ、不敵に笑うキャンディ。同じミレナリィ・ドールでも、キャンディはずいぶんと感情豊かだ。もっとも、その豊かな感情のせいでドロップアウトしているのだが……。
 ともかく、こうして対照的な二体のミレナリィ・ドールによる学園最強の「決闘人形」決定戦が始まったのである。

●悪魔と化した招き猫
「アタシの先攻!『執念深いチャッピー』を召喚!」
「ドローフェイズ。カードをドローします。メインフェイズ。『猫じゃらし』を設置します」
「……チャッピーで直接攻撃。そしてさらに『首のないミキ』を召喚だ!」
「メインフェイズ。『マタタビ』を設置します。エンドフェイズ。ターン終了です」
(こいつ、どういうつもり……?猫デッキと言ってたけど、肝心のモンスターを出してこないじゃない……。ケット・シーデッキじゃないのかしら?)
 人形モンスターを次々と召喚するキャンディに対し、エルはモンスターを召喚せず、黙々とアイテムカードを場に出していく。通常、「猫デッキ」といえばケット・シー族を次々と召喚していく手堅いデッキのはずだが……。
 キャンディは訝しんだが、悩んでも仕方ない。相手がコンボデッキならば準備が整う前に一気に畳みかける!
「アタシは『邪神アルテイア』を召喚!さらに結界魔法カード、『魔女の家』を発動!全ての人形モンスターは呪殺能力を得るわ!」
 キャンディは一気に勝負を決めるべく、十八番の呪殺コンボを発動した!このコンボにより、キャンディのモンスターは一方的に相手モンスターを破壊できる。どんな強力な切り札が出てこようが、もはや敵ではない!
 などと、思っていると。
「準備フェイズ。当機はドライビングカード『迷い猫のお知らせ』を取得しました。すぐに発動します」
「チッ!先に取られたか!」
 急加速でドライビングカードを取得したエルは、ドライビングカードを発動してデッキからカードをサーチした。
「メインフェイズ。当機はウイングキャット『マネギ』を召喚します」
 ついにエルがモンスターを召喚した。その名もウイングキャット『マネギ』!マネギは羽生やしたデブ猫みたいなブサ可愛いモンスターである。マネギは先んじて設置されていたアイテムを次々と吸収・装備し、いきなり超大型飛行モンスターとして場に降臨した。
 大気圏突入機能をも有する六枚羽。一撃で巨大宇宙ステーションさえも撃墜する超高出力ビームライフル。そして無限の戦力を生み出すマネギ(子機)トークン量産機能!まさに戦場を支配する白い悪魔である。
「何……!ウイングマネギですって!?確かに猫だけど……!あれはまずい!人形達!あのデブ猫を撃墜しなさい!」
 慌てて人形達にマネギの呪殺を命じるキャンディだが、そうはさせない。大量発生した子機達は身を挺して人形達の呪いを遮り、次々と爆散していった。マネギトークンは一撃で破壊可能な脆弱なユニットだが、身代わり効果があるのだ。
「くそっ……!トークンが邪魔を……!きゃああああああああ!!!」
 大量発生したマネギトークン軍団と共に押し寄せて来るウイングキャット「マネキ」の進撃は、呪殺人形キャンディを呑み込み、そのライフを奪い尽くしたのであった。

●ラストバトル!
 そして、決着の時。問題児グループで最後に残ったのは『昆虫博士』グラスだ。グラスは昆虫モンスターを次から次へと展開し、ニコリネと激しいモンスター同士の殴り合いを繰り広げていた。
「あとは俺一人か……」
 ニコリネの車にぴったりと横づけし、ニコリネを睨み付けるグラス。
「私ののりものデッキも強いでしょ?」
 ニコリネの場には4体の「のりもの」モンスターが並んでいた。地属性の戦車、炎属性の機関車、風属性の飛行機、水属性の潜水艦。いずれも四大精霊の力を秘めた頼もしいはたらくのりものたちだ。だが彼らは、合体した時こそ真価を発揮する!
「魔法カード『精霊合体』発動!四体の乗り物を合体させ、『エレメンタル乗物王』を召喚!格好佳いでしょ?」
白鳥のカード効果で2ドローしたニコリネはこのターン、ついに切り札の合体モンスターを降臨させた。顔と胴体は機関車、両腕は飛行機、両足は潜水艦。エレメンタル乗物王は四属性の精霊力を秘めた超モンスターだ!
「合体、だと!?ええい、それがどうした!所詮は寄せ集めのガラクタに過ぎぬ!マジックカード『天罰の矢』発動!そのデカブツを破壊する!」
「そうはさせないわ!『エレメンタル・フュージョン』発動!エレメンタル乗物王に更に『私』を融合させるわ!」
「な、なんだってー!」
 なんと、ニコリネは営業車から飛び降りると、プレイヤーである自分自身をエレメンタル乗物王に融合させた!助手席のリダンは急いで運転を代わる。空間がスパークし、落雷と共に最強モンスターが爆誕する!

 『エレメンタル究極乗物神ニコリネ』 パワー:無限大 

「馬鹿な……!攻撃力が無限!『天罰の矢』も弾き返しただと!?」
 その異常なステータスに驚愕する問題児。そこには、胴体にニコリネを吸収した美しい魔神(マシン)が立っていた。まさに強靭・無敵・最強の三拍子が揃った最強の運び屋である!
「さらに!フリフリ衣装も追加よ!」
 助手席に座っていたリダンがアイテムカードを使い、究極乗物神ニコリネにフリフリ衣装アーマーを追加した。これでニコリネは相手モンスターを破壊した時、貫通ダメージを与えることができる!これでグラスには打つ手なしだ。
「うつくしい……」
 しかし、敗北が確定したはずのグラスは究極乗物神ニコリネの荘厳な姿に思わず見惚れ、息を呑んでいた。
「ニコリネ!トドメよ!」
「ええ、分かってる!強靭・無敵・最強の運び屋が皆の攻撃を届けるわ!」
 ピー!ドカーン!
 直後、エレメンタル究極乗物神ニコリネから爆裂ビームが放たれ、爆発音と共に最後の問題児のライフポイントは0になった。
 こうして、『ワイルドハント』決闘者チームは問題児グループ『自由連合』相手に完勝し、その実力を認めさせたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェルト・ユメノアール

よーし、強い決闘者を求めて【S.C(スマイルサーカス)】デッキで問題児の子たちと決闘だ!

まずはボクの舞台の花形をお見せするよ!
カモン!S.Cクラウンジェスター!
花形を魔法で守りつつコンボで勝利を掴み取る

ボクは手札からモンスターを1体召喚し
魔法カード「グランギニョルの夜」を発動!
デッキからさらに闇属性モンスター2体を追加召喚!
クラウンジェスターはフィールド上のモンスターの数だけ攻撃力がアップする
クラウンジェスターで相手モンスターを攻撃!
笑撃幻想魔術<スマイル・イリュージョン>

勝っても負けても決闘が終わったら笑顔で握手
キミのデッキ、とっても魅力的だったよ
と相手を褒めて、改善点などをアドバイス



●エンターテインメントデュエル!
「腕に自信がある子はいるかい?ボクと決闘しようよ!」
 フェルト・ユメノアールは教室に入るや否や、教壇に登って学生達に問いかけた。
「俺だ!俺!俺と勝負しよう!」
「いーえ!あのピエロ先生と勝負するのは私よ!」
 すると、みんな腕に自信があるのか学生達は一斉に挙手した。できたら問題児の方がいいんだけど。フェルトが戦うか迷っていると……。
「雑魚共は下がっていろ……。俺の名はエンペルト。人は俺を『覇王』と呼ぶ……。貴様からは強者の気配を感じる。俺と勝負してもらおうか」
 一人の学生がフェルトの前へと進み出てきた。この不敵な態度、オーダーメイドと思われる高級そうな魔法の軽鎧……。彼も「問題児」の一人で間違いないだろう。ターゲットを発見したフェルトは笑顔で言った。
「わかった!じゃあ君と決闘しよう!」

●『夢と笑顔の道化師』フェルトVS『覇王』エンペルト
「まずはボクの舞台の花形をお見せするよ!変幻自在の魔術師よ!その歓声に答え、鮮やかに舞台を彩れ!カモン!『S.Cクラウンジェスター』!さらにカードを2枚伏せてエンドだ!」
 フェルトの先攻!フェルトは早速花形モンスター、『S.Cクラウンジェスター』
を召喚した!コミカルな音と光と共に、王冠を被ったカラフルな道化師が召喚される!フェルトのデッキは【S.C(スマイルサーカス)】デッキ!サーカスをモチーフとしたエンタメ性溢れる楽しいデッキだ!
「いくぞ!フェルト!俺のターン!俺は手札の『覇王キングペンギン』を公開し、『キングペンギン・オルタナティブ』を召喚!」
 対するエンペルトの『ペンギン』デッキは1ターン目から攻撃力の高い鳥族モンスターをガンガン召喚するガチガチの実用デッキ!果たしてフェルトは勝利することができるのか!
「キングペンギンよ!道化師を破壊せよ!『爆裂フットスタンプ!』」
 主の攻撃命令を受け、キングペンギンは飛翔した!
「そうはさせない!バトル中にマジックカードを発動!『ブーイング』!キングペンギンの攻撃力を下げ、返り討ちだ!」
 観客席から灰皿や座布団を投げつけられ、キングペンギンがたじろいだ隙にジェスターはステッキから魔法を放った!
 ドゥン!
 キングペンギンの巨体が爆砕し、エンペルトは反射ダメージを受けた!
「おのれ、フェルト!よくも俺のライフポイントに傷を!」
「チッチッチ♪」
 指を振るS.Cクラウンジェスター。その気障な演出にギャラリーが湧き立つ!
「く……。カードを1枚伏せてターンエンド。貴様のターンだ!」
「さあ、ボクのターンだ!手札から『S.Cタンブルタイガー」を召喚!』
 火の輪をくぐり、新たに召喚されたのはサーカスには付き物の猛獣モンスターだ!
「ジェスター!タンブルタイガー!プレイヤーにアタックだ!」
「甘いぞ、フェルト!俺は魔法カード『閉園の時間』を発動!バトルを強制終了させる!」
 来客に退園を促す物悲しいメロディーが流れ、出現した動物園の門が閉まる。フェルトの攻撃は無かったことになった。
「やるね!エンペルト!ボクはターンエンドだ!」
「フッ……」
 再びターンはエンペルトへと回る。フェルトとエンペルトはしばらくの間互いに譲らず、一進一退の攻防を続けていた。だが、それももう終わる。先に切り札を召喚したのはエンペルトだった。
「結界魔法カード『南極大陸』!俺は『ペンギン』と名のつくモンスターをノーコストで手札から召喚できる!出でよ!至高の霊鳥!全ての翼ある者の王!『南極皇帝エンペラーペンギン』召喚!」
 ズズン……。流氷が割れ、その下から姿を現したのは山ほどの巨体を持つエンペラーペンギンだ!
「『南極大陸』の効果で召喚したモンスターはこのターンは攻撃できない……。だが、次のターンで終わる!さあ、貴様のターンだ。最後のな……」
「ボクのターン!君のエンペラーペンギンは確かに凄いモンスターだ!でも、ボクは負けない!手札からモンスターを召喚!魔法カード『グランギニョルの夜』を発動!デッキからさらに闇属性モンスター2体を追加召喚!」
 ジェスターの背後のシアターにおどろおどろしい怪物の姿が映し出され、不気味な夜が訪れる。そしてずらりと並ぶS.Cモンスター。
「なにっ!一気に場にモンスターが5体だと!?」
「クラウンジェスターはフィールド上のモンスターの数だけ攻撃力がアップする!クラウンジェスターでエンペラーペンギンを攻撃!――笑撃幻想魔術<スマイル・イリュージョン>!」
「ぐわあーーーーーーー!!」
 巨大なスマイルマークがジェスターのステッキから飛び出し、エンペラーペンギンは爆砕した。これでエンペルトのライフポイントは0。このデュエルはフェルトの勝利だ!
「キミのデッキ、とっても魅力的だったよ。でもちょっと力押し過ぎるかな?」
 フェルトはアドバイスを送りながら、笑顔でエンペルトに手を差し出した。
「フン……。貴様と対峙しているとどうも毒気が抜かれる……。不思議な奴だ……。なら、もう少し改良に付き合ってもらうぞ」
 口元を綻ばせ、フェルトの手を握り返すエンペルト。こうして、この3-Mにまた新たな絆が生まれたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナーテ・フレンベルク
◎#
M&M、か……実は私もデッキを持っているの
ヒルデや死霊たち相手に決闘して、調整したデッキを見せる時が来たようね
――え? べ、別に遊ぶ相手がいなかったとか、今日はワクワクしながら来たとか、そんなわけじゃないのよ?

■行動
私が使用するのは死霊術軸の闇属性、アンデッド種族デッキよ
基本戦法は、下級モンスターを壁にしながら
墓地のモンスターを増やしていき、機が熟したら
切り札の『終焉のギガントスケルトン』を召喚!
効果によって自分の墓地のモンスターを全て取り込み、
その分まで強化された切り札による逆転の一撃を叩き込んであげる

死霊術魔法カード群によるサポートもあって、トリッキー且つ
かなりしぶといデッキだと思うわ



●死霊と遊ぶ決闘者
「M&M、か……実は私もデッキを持っているの。
 ヒルデや死霊たち相手に決闘して、調整したデッキを見せる時が来たようね」
 レナーテ・フレンベルクは一人呟きながら銀色の髪を掻き上げた。彼女もまた「M&M」を嗜む決闘者の一人。恐らくは決闘者の本能により、このアルダワに招き寄せられたのだ。
「――え? べ、別に遊ぶ相手がいなかったとか、今日はワクワクしながら来たとか、そんなわけじゃないのよ?」
 そんな彼女に生暖かい視線を注いでくる「ヒルデ」に言い訳するレナーテ。彼女の決闘相手は終始無言の従者兼ボディガード、巨大ガイコツ「ヒルデ」や、呼び寄せた死霊達だけ。ようやく生きている相手と対戦できる!その歓喜にレナーテは内心ではテンションアップを隠せなかった。しかし、そこをなんとか胸の高鳴りを抑えて優雅な仕草で教室へ入っていく。デッキを持ってうろうろしていると、一人の学生と目が合った。
「手合わせ願いたい。真の英雄の力……試させて頂こう」
 その生徒は、なぜか教室なのに黒い甲冑に全身を包んでいた。『闇の鎧』(ダークアーマー)エレン。いわゆる「問題児」達の一人である。慇懃無礼な態度だったが、レナーテはその挑戦を快諾した。
「受けて立つわ。決闘よ!」

●闇と闇の戦い!
「いくぞ、臨時教師殿!その力を見せてみよ!『魂無き騎士』を召喚!攻撃!」
「私は『スケルトンナイト』でガード!スケルトンナイトは戦闘では破壊されてもすぐ復活するわよ!」
 エレンのデッキは闇属性の戦士モンスターデッキ。それに対し、レナーテのデッキは死霊術を軸にした闇属性アンデッド族デッキだ。レナーテの基本戦略は長期戦。しばらくは下級アンデッドモンスターをひたすら盾にし、時間を稼ぐつもりだ。
「再生モンスター……。面倒な。ならば『地獄の鎖』でスケルトン・ナイトを封印する!」
 スケルトンナイトに延々と攻撃をガードされるのは厄介だと踏んだエレンは、アイテムで殺さずに封印する戦術をとってきた。
「なら、スケルトンナイトを生贄にして上級魔法『亡者の嘆き』を発動!ライフを吸収するわ!さらに墓地に送られたスケルトンナイトを『死霊術』で再召喚よ!」
 だが、その程度なら対策済みだ。レナーテはあえて生贄にすることでスケルトンナイトをいったん墓地に送り、蘇生で自由になったスケルトンナイトを再び壁にする!レナーテはスケルトンを壁にコストに使い倒しつつ、順調に時間を稼いでいった。
「我のターン!『漆黒の騎士』を召喚し、『悪魔の尖兵』と共にアタック!」
「2体の『彷徨うスピリット』でガード。スピリットは玉砕するけど、『反魂香』で墓地のアンデッドモンスター2体を手札に戻し、再び召喚するわ」
「くっ……!しつこい!」
 エレンの苛烈な攻撃をレナーテは墓地から何度も蘇る死霊モンスターや呪術カードによるモンスター破壊で凌いでいた。闇と闇の戦いは長引いたが、迎えた13回目のレナーテのターン。ついに決着の時が来た。
「やるわね。私をここまで追い詰めた決闘者は今まで皆無だったわ」
 レナーテの全てのアンデッドモンスターを破壊し墓地へ送ったエレンに対し、心から賛辞を贈るレナーテ。生きている人間と対戦するのは実は今日が初めてなんじゃないのか、とか突っ込んではいけない。
「けど、勝つのは私。とても楽しかったけどこの戦いももう終わりよ!これが私の切り札!『終焉のギガントスケルトン』召喚!」
「何!?」
 暗黒のオーラが戦場に溢れ、レナーテの墓地から山を跨ぐほど巨大な骸骨が出現した!
「『終焉のギガントスケルトン』!このモンスターのパワーとディフェンスは自分の全てのモンスターの合計値よ!」
 レナーテはこの切り札の為、下級モンスターの死霊達を使い捨てていたのだ。レナーテの墓地のモンスターカードを全て吸収した骸骨の巨人は、戦いに終焉をもたらさんと、圧倒的なパワーでエレンの闇の騎士団へと迫る!
「きゃあああっ!」
 正に一撃必殺。骸骨の巨人の剣の一撃でエレンは吹っ飛んだ。レナーテの勝ちだ。
「見事だ……!臨時教師殿……」
 エレンは兜を脱ぎ、その素顔を晒した。意外にも『闇の鎧』の下には可愛い少女が隠れていた。その表情は晴れやかだ。
「レナーテよ。貴女も強かったわ」
 初めて対人戦ができたレナーテも笑顔だ。二人は固く握手を交わし、互いの健闘を称え合ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

七那原・エクル
【★】
勝敗おまかせ

こちらもTCGアニメ主人公のごとくノリノリで対戦をうけるよ

せっかくだからボクが開発したこの「M&M専用試作型デュエルゴーグル」を装着して戦おう。このゴーグルは装着者が視たカード情報を読み取り仮想現実、VRとして擬似的に実体化させるのだ!

使用デッキ
【アニマロイド&ガジェッターズ・フォース】

攻撃力に優れた動物型のウォーマシン群「アニマロイド」とオーバーテクノロジーの超兵器を装備して時には「アニマロイド」と強化合体して戦うサイボーグ戦士集団の「ガジェッターズ・フォース」で戦うよ

命名法則

「ガジェッターズ・クラス名」
ガジェッターズ・ガンナー

「アニマロイド・動物名」
アニマロイド・イーグル



●最強の挑戦者
「先生、私と勝負してください!これは宿命の決闘です!」
「いいんちょ……?」
 教室で、屋上で、サーキットで――。アルダワ魔法学園はすっかりバトル・スクールと化し、学園内の様々な場所で猟兵と学生達が決闘を繰り広げていた。そして、交流会もえんもたけなわとなった頃。ついに3-M最強の決闘者と名高い少女が動き出した。クラス委員長『蒸気機械の女王』サラである。
 彼女は別に問題児というわけではないが、クラスメートや猟兵達のノリに当てられたのか、すっかりTCGアニメのキャラクターのようなテンションになっていた。
「分かった!この決闘受けて立つぜ!サラ!」
 彼女の挑戦に応じたのは奇しくも同じ機械族デッキ【アニマロイド&ガジェッターズ・フォース】の使い手七那原・エクルだ。そういう雰囲気は嫌いではないのか、彼もノリノリだ。
「せっかくだからボクが開発したこの「M&M専用試作型デュエルゴーグル」を装着して戦おう。このゴーグルは装着者が視たカード情報を読み取り仮想現実、VRとして擬似的に実体化させるのだ!」
 二人はエクルの用意したデュエルゴーグルを着用し、仮想世界にダイブ!
 クラスメートたちがモニターで見守る中、交流会最後の決闘が始まった!

●宿命の決闘!
「ボクのターン!『アニマロイド・イーグル』召喚!さらに追加で『ガジェッターズ・ガンナー』を召喚!ガジェッターズ・ガンナーをアイテム扱いでイーグルガンナーに装備させる!ターンエンドだ!」
 流れるようにエクルのコンボが決まり、『アニマロイド・イーグル』は鷹の機動力と高い火力を併せ持つ強力なモンスターへと変貌した。序盤から強力モンスターの登場に、ギャラリーが歓声を上げる。
「『ガジェッターズ・フォース』……!攻撃力に優れた動物型のウォーマシン群「アニマロイド」とオーバーテクノロジーの超兵器を装備して時には「アニマロイド」と強化合体して戦うサイボーグ戦士集団のデッキですね……!」
 眼鏡をくいっと上げ、ギャラリーに解説するサラ。クラス最強と言われるだけあって強力なデッキのリサーチはしっかりしているらしい。
「ですが、機械族対決なら私も負けません!相手の場にモンスターがいるので『蒸気機械竜スチーム・ドラゴン』をノーコストで召喚!さらに、マジックカード『蒸気機械連結』!手札の蒸気機械とスチームドラゴンを連結させ、『デュアル・スチームドラゴン』に進化させます!」
 だがサラも負けじと、速攻でエースモンスターを召喚した。体のあちこちに空いた穴から蒸気を吐き出す銀色の機械竜はエクルのアニマロイド・イーグルをギロリと睨み付ける。
 サラの『蒸気機械』デッキは『機械竜スチームドラゴン』を中心とし、様々な蒸気機械モンスターと連結していく単体強化型の合体デッキだ。エクルとサラ、どちらの機械が上なのか……。ギャラリーが固唾をのんで見守る中、サラはエクルに攻撃を仕掛けた。
「デュアルスチームドラゴン!アニマロイド・イーグルに攻撃よ!」
 攻撃力はスチームドラゴンが上!サラは臆さずに攻撃を仕掛けた!攻撃が通ればイーグルは破壊される!
「そうはさせないよ!手札から『ガジェッターズ・ランサー』を捨て、イーグルの攻撃力を一時的にアップ!」
「なんですって!?」
 このコンバット・トリックにより、イーグルの攻撃力はスチームドラゴンを上回った!だが今更攻撃は中断できず、スチームドラゴンはそのままイーグルに突っ込む!
 ドゥンッ!
 イーグルは砲撃でスチーム・ドラゴンを迎撃!スチーム・ドラゴンは木端微塵になった。着弾の衝撃で仮想空間の大気が震える。
「くっ……!私はカードを二枚伏せてターンエンドです!」
「ボクのターン!『アニマロイド・バイソン』を召喚!イーグルとバイソンでダイレクトアタックだ!」
「させません!防御魔法カード『セブンエレメンタルシールド』!攻撃に参加した全てのモンスターを破壊します!」
「なんだって!?」
 今度はエクルが瞠目する番だった。これでお互いにモンスターは0。勝負は振り出しだ!
「くっ!カードを1枚伏せてターンエンドだ!」
「私のターン!ドロー!よし!魔法カード『マシーン・リブート』!墓地の『デュアル・スチームドラゴン』を蘇生召喚!連続攻撃!」
 墓地から蘇り、再びエクルに牙を剥くスチーム・ドラゴン。デュアル・スチームドラゴンの2回連続攻撃で、エクルのライフポイントは一気に減少した。これはピンチだ。
(エクル、代わりましょうか?)
 エクルのピンチに、エクルの心の中にいるもう一人の人格、『ヒメ』が声をかけてきた。
「ううん、これはボクの戦いだ。ここはボク一人にやらせてほしいんだ!」
 TCGアニメのノリでヒメの申し出を辞退するエクル。それならと、ヒメも空気を読んでエクルの戦いを見守ることにした。
「ボクのターン!ドロー!ボクは『アニマロイド・ラビット』を召喚。さらにカードを一枚伏せてターンエンドだ」
 エクルは攻撃はせず。カードを一枚伏せてターンを終了した。
「先生、この勝負、私が勝たせてもらいます!デュアルスチーム・ドラゴン!攻撃よ!」
 一度目の攻撃でラビットを破壊し、さらに二回目の攻撃で直接攻撃すればエクルのライフは0。このまま押し勝つ!
「マジックカード発動!『ガジェッターズ・レイリー』!ボクは墓地のガジェッターズを全て『アニマロイド・ラビット」に装備する!さらに、『リミット・オーバー』!このターン、ラビットの攻撃力は3倍となる!」
 このコンボにより、アニマロイド・ラビットとスチーム・ツインドラゴンの攻撃力は逆転!カウンターダメージで一気にサラのライフポイントは0になった。
「きゃあああっ!……さすがです、先生。決闘もお強いのですね。でも、次は負けません!」
「危なかった……。けど次もボクが勝たせてもらうよ!」
 宿命の決闘は終わった。二人は握手を交わし、再戦を誓う。こうして、交流会は無事成功し、多くの猟兵達と学生、そして問題児達が決闘を通じて親睦を深めたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『暇を持て余す精霊達と遊ぼう』

POW   :    身体を使って挑戦。<楽器演奏>や<歌唱>など、場を和ませて楽しんでもらおうか。

SPD   :    技術を使って挑戦。<料理>や<パフォーマンス>など、技術を使ってご機嫌を取ってみようか。

WIZ   :    知恵を使って挑戦。<世界知識>や<優しさ>など、感性や知恵で満足させてみようか。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 交流会は無事に成功し、《臨時教師》と《学生》達の顔見せは終わった。普段は訓練をサボりがちな問題児の面々も、今日は真面目に訓練に参加する気になったようだ。午後は地下迷宮での災魔討伐訓練。いよいよこれからが本番だ。猟兵達は災魔の出現が確認されている階層をめざして、さしたるトラブルもなく順調に学生達と地下迷宮を進んでいたのだがーー。
「ねえ、君達学生さん達だよね!僕達ヒマでヒマで仕方がないんだ!何か面白いもの見せてよ!特技でも《決闘》でも何でもいいからさ!」
 災魔が出現したとされる階層の手前で迷宮に住んでいる《精霊》達が先への道を塞ぐように大量発生し、パフォーマンスを要求してきた。どうやら精霊達はヒマをもし余しているようだ。彼らがヘソを曲げてしまえば、今後の迷宮内での精霊魔法の行使に悪影響が出ないとも限らない。ここは彼らの願いに応えてやろう。学生達を助手にして。


 MSより:
 二章でも引き続き『M&M』が可能です。一章で登場したNPCの誰かを名指ししてリプレイに登場させることもできます。
文字数省略記号:♪(前章で直接戦った学生の再登場希望)
アリス・セカンドカラー

おまかせプレイング。お好きなように。
ふむ、暇なら私と鬼ごっこは如何?もし捕まえられたら私のこと好きにしてもいいわよ☆勿論学生さん達もね♡
リミッター解除して限界突破した感応能力(第六感/読心術/情報収集/見切り)で動きを先読みし、早業の先制攻撃で機先を制してその機会を盗み攻撃で略奪し、存在感を示すことで場の空気を支配して呑み込みましょう(捕食)。
実戦的な錯覚やミスディレクションで動きを誘導し常に逃げ場を確保(催眠術/残像/おびき寄せ/集団戦術/逃げ足)。
当然イカサマもあります☆種は明かさないけど♪ま、不可思議体ある残機を消費して捕まったのを残像のように偽装して別所にリポップしてるだけだけどね。



●聖戦(ジハード)
「ふむ、暇なら私と鬼ごっこは如何?もし捕まえられたら私のこと好きにしてもいいわよ☆勿論学生さん達もね♡」
 その言葉を聞き、交流会の時に結成された『アリス先生ファンクラブ』の連中の眼の色が変わった。アリス先生を合法的に好きにできる……!ということはあんなことやこんなことも……!ぐへへ。
 アリス先生ファンクラブの会長レベッカはよだれを拭き、マイクを握って学生達に呼びかけた。
「みんな、分かっているわね。これは遊びではないわ!聖戦よ!」
 レベッカ会長は拳を突き上げ、力強く皆に呼びかけた。

●アリス先生攻略作戦
「座標A-24に行ったわよ!近くにいる奴は回り込め!!魔導書班はもっと本の壁を厚くして!薄い本の壁だと先生に破られる!」
「アリス先生はっけん!風の精霊よ!力を貸して!ロケットじゃーんぷ!あれ?すり抜けた!ぎゃー!」
「座標P-09にアリス先生の群れ出現!攻撃を受けています!本部応答せよ!うわあああああ!」
 鬼ごっこが始まって約1時間。アルダワ地下迷宮に学生達の雄叫びや悲鳴が響く。当初ファンクラブメンバーの学生達は個人プレイでアリス・セカンドカラーを追い立てていたが、彼女の様々なサイキックアーツに翻弄され、成果は一向に上がらなかった。
 やがて個の力では全く歯が立たないと判断した学生達は、しっかり役割分担をして攻略チームを組織し始め、もはやゲームは鬼ごっこではなく軍事演習のような何かになっていた。白熱したゲーム展開に、主賓である精霊達は大興奮だ。
「通信ガジェットに異常発生!なんかアリス先生のいやらしい動画が流れててガジェットの映像が見えないわ!」
「誰かガジェットを奪われたな!信号パターンを変えろ!あと動画は録画しておいて下さい!」
「緊急事態発生!迷宮中央に巨大アリス先生出現!天井につっかえるほどのサイズです!」
「たぶん幻影だ!放置でいい!」
 当初はアリスの珍妙な技の数々に戸惑っていた学生達も、だんだん場慣れしてきたようだ。
「ゲルダ!アリス先生は美少女に弱い!それは間違いない!だから見てくれはクラスで上位に入るお前がミニスカメイドで誘惑しておびき寄せる作戦はどうだ!?」
 正攻法では無理と悟った一人の男子学生がゲルダにそう提案した。そう、『孔雀明王』ゲルダは性格はともかく、黙っていればロリ可愛い美少女なのだ。
「分かった!その作戦採用!アリス先生に一泡吹かせる為だ、仕方ない!お前が見たいだけの気もするけど!準備するからガジェットの管理は代わって!」
 普段訓練をサボっていた問題児ゲルダ・チョコラッテも自慢の蒸気式偵察ドローン達をフル投入し、チームのレーダーとしてばりばり働いていた。クラスで浮いていた彼女も、この演習で協調性を学びつつあるようだ。彼女は「アリス先生ファンクラブ」のメンバーではないが、「アリス先生に一泡吹かせたい」という想いで真剣に鬼ごっこに臨んでいた。目的は違っても志は同じだ。彼女の囮作戦は果たしてうまくいくのだろうか?

●絆の力!アリスの誤算
「ほーら、こっちよ。捕まえてご覧なさい♡」
 余裕しゃくしゃくの態度だが、アリスの方も実は本気だ。サイキック能力のリミッターを解除している。限界突破した感応能力――シックス・センスによる未来予知、テレパシーによるマインドリーディング。サイコメトリーなどをフル活用して情報収集しながら迷宮の中を逃げ回る。捕まって学生達に好きにされるのもそれはそれで楽しそうではあるが、授業でもあることだし、決して手は抜かないのであった。
 ひたすら学生達を翻弄していたアリスは、ふと興味深いものを見つけ、目をやった。
「あら、可愛いメイドさん発見☆あれはゲルダちゃんね」
 そう、囮役を引き受けたゲルダである。これはなかなか。アリスは舌なめずりをしながら、スカートの短さを気にしてもじもじしているロリメイドに接近していく。
(ふふふ、何を企んでいても心を読めば作戦は筒抜けよ☆)
 アリスはくすりと笑い、ゲルダの心を覗き見た。しかし、アリスは予想外の出来事に驚愕することとなる。
「これは……!ゲルダちゃんの心の中に他の学生さん達が!」
 アリスが見たものはゲルダの心の中でスクラムを組み、ゲルダの姿を隠す「アリス先生ファンクラブ」のメンバー達の姿だった。これではゲルダの心は読めない。全くの偶然ではあるが、学生達は心を一つにすることでアリスの読心能力を破ったのだ。しかも、ファンクラブメンバー達がアリスに抱く邪念がアリスの中に流れこんでくる。これはいかん。興奮したアリスの動きが一瞬止まった。
「今よ!『暴風結界!』」
 その一瞬の隙を突き、ゲルダは詠唱を完了させていた風の結界魔法を発動。自分達ごと、四方から突き上げる暴風の檻にアリスを捕獲した。
「しまった!」
「今だタッチよ!アリス先生、覚悟ぉー!」
 ゲルダは猛ダッシュでアリスに突進した!
 すかっ。しかし、ゲルダが触れる寸前にアリスの姿は溶けるように消えてしまった。
「くそっ!あれも分身だったのか!また一からやり直しだ!」
「くそー!惜しかったー!」
 悔しがる学生達。実は捕まりそうになった残機を自ら消し、近くにリポップしていたアリスは壁の裏で学生達の会話を盗み聞きながら一息つく。
「ふー。危ない危ない。まさか本体があそこまで追い詰められるなんてね。学生さん達頑張ったじゃない。ご褒美にもうちょっと遊んであげましょう☆」
 ぶっちゃけイカサマなのだが、学生達には種明かしはしない。せっかく学生達も「妖精を楽しませる」という本来の目的も忘れるほどに熱中しているのだ。超えられない壁として学生達に立ちはだかり続け、その才能を伸ばしてあげよう。アリスはファンクラブの学生達が疲れ果てるまで、ひたすら逃げ続けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナーテ・フレンベルク
◎♪【wiz】
何とか力を認めてもらえたみたいね
女性だったのは少し驚いたけど、後は交流して
更生のヒントを探していけるかしら

■行動
そう、この精霊達も決闘者なのね
彼らも決闘者ならデッキを持っているでしょうし、
大抵の物事は決闘で解決できる筈
エレン、ここは精霊達を相手にタッグデュエルよ
私達の強さを見せる事で彼らを満足させてあげましょう

エレンのデッキは戦士族中心の攻撃が得意なデッキ……
それなら私は今回、サポート魔法が豊富な『不死の黒魔術師』
メインのデッキで戦うわ
後は……もしかしたら使えるかもしれないし『融合』魔法も
入れておきましょうか

私達のデッキはお互いに闇属性……闇の精霊がいれば
特にお気に召すかしら?



●決闘精霊
「レナーテ殿、この組み合わせはどうでしょうか。コンボ成立すれば相手の場のモンスターを根こそぎ奪えます」
「なかなか面白いコンボね。三枚だとちょっと成立条件が厳しいけど、魔法じゃなくてモンスターで同じ効果のカードを探して二枚でコンボ発動にできれば実用圏内に入るかも……」
「なるほど、ならばモンスターで探してみましょう、確か一年ぐらい前のパックにそういうのがいたような……」
 レナーテ・フレンベルクは休憩がてら『闇の鎧』エレン・マクダネルと『M&M』談義をしていた。もう迷宮の中だがこの階層は安全だ。他の猟兵と学生達が精霊の相手をしている間、少し休むぐらいは問題ないだろう。
(何とか力を認めてもらえたみたいね。女性だったのは少し驚いたけど、後は交流して更生のヒントを探していけるかしら)
 兜を外し、楽しそうにカードゲームについて語るエレンの雰囲気は年相応の少女のもので、第一印象とはずいぶん違う。あの後も何度か決闘をしたが、どうやらエレンに指導者たる器だと認めてもらえたようだ。ちなみにエレンがいつも鎧姿なのは「その方がかっこいいから」で、特に深い理由はないらしい。しばしレナーテがエレンと談笑していると、精霊の内の一体が床に置いた二人のカードを覗き込みながら話しかけてきた。
「あ、それ『M&M』だよね?」
「あら、知ってるの?」
 レナーテは意外そうな顔をした。学生達はともかく、精霊が地上で流行しているホビーに通じているとは思わなかったからだ。この精霊は黒い靄に包まれた幽霊のような姿をしているから、おそらく闇を司る精霊だろう。
「もちろん!前に災魔から逃げ帰った学生達の荷物の中にそれが混ざってたんだ。僕達精霊にだって「決闘者」はいるんだぜ」
 胸を張る闇の精霊。精霊は自然の一部とされているが、ずいぶん道楽な精霊もいたものである。
「ほう。それは面白い。ならば我らと戦い、勝てばここを通してもらう、というのはいかがか?」
 エレンは好戦的な笑みを浮かべ、精霊達にそう提案した。精霊も決闘者と聞き、決闘者の血が騒いだようだ。
「いいよ!けど、一つだけ条件がある。勝負は二対二でやろう。僕は光の精霊と組む。我ら、『カオス・エレメンタルズ』!二人まとめてかかって来な!」
「面白い!先生、我ら『闇の師弟』(ダーク・ソウルズ)の力、見せてやりましょう!」
 精霊の出した条件にエレンはノリノリだ。精霊達に対抗して勝手にチーム名まで名乗っている。
「いいでしょう!エレン!私達の絆の力、見せてあげましょう!」
 レナーテもエレンに負けず劣らずノリノリだった。二人の進退を賭けた運命のタッグデュエルが今始まる!

●タッグデュエル!『闇の師弟』VS『カオス・エレメンタルズ』!
「我のターン!『魂無き騎士』を召喚!闇の精霊!貴公のターンだ!」
「僕のターン!『ダークスライム』を召喚!『魂無き騎士』の攻撃力を下げ、アタック!」
 ドゥン!エレンの召喚した騎士がスライムに飲み込まれ、溶かされて消えた。エレンの闇属性戦士族デッキに対し、闇の精霊のデッキはボード・アドバンテージを重視した妨害型デッキ。場に出た時に様々なバッドステータスを付与するモンスター中心のなかなか嫌らしいデッキだ。
「私のターン!『ネクロマンシー』を使って『魂無き騎士』本来の攻撃力で蘇生!スライムにアタック!」
 レナーテはエレンと戦った時と違うデッキを使用している。今回は豊富なマジックカードで直線的な戦士デッキであるエレンのサポートに徹するつもりだ。
「ぼくのターンだね。『断罪の天使メタトロン』召喚!魂無き騎士を攻撃!」
 光の精霊は名前通りというべきか、やはり光属性を中心とした『天使』デッキだった。パワーに優れる天使たちはエレンの騎士達と互角以上の力を持っており、油断ならない相手だ。
「そうはさせないわ!『怨霊の呪縛』!攻撃の瞬間に天使を金縛りにし、攻撃力を0にするわ!返り討ちよ!」
「レナーテ殿、かたじけない!」
 しっかりと役割分担された二人のデッキは精霊達をじわじわと追い込んでいった。だが、決闘も終盤に差し掛かった時、突然戦局は精霊達に傾いた。精霊達が切り札のモンスターを召喚したのだ。
「天使と悪魔を一体ずつ生贄に捧げ、『混沌の精霊獣』(カオティック・ビースト)を召喚!こいつは敵の魔法は受け付けないよ!さあ、反撃開始だ!」
 精霊達のエースモンスター、混沌の精霊獣は暴れ回り、エレンの騎士達はことごとく粉砕されていく。このままでは敗北する……!
「ぐっ……!油断した!拾いもののデッキの割によく使い込んでいるな……!」
 エレンが毒づく。そしてレナーテのターンが来た。引いたカードを確認し、レテーナは不敵な笑みを浮かべた。
「私も切り札を引いたわ!『蟲毒死霊術』!墓地の『不死の黒魔術師』と『闇に魅入られし騎士王』を融合させ、新たな死霊を降臨させるわよ!」
「「なんだとっ……!?」」
 闇のオーラと共に戦場に古ぼけた井戸が出現し、中に二つの魂が放り込まれる。そしてエレンとレナーテのエースモンスター同士が墓地で合体し、最強の闇属性モンスターが降臨する!
「『黄泉返りの魔法騎士(マジックナイト)』召喚!このモンスターは攻撃するたび冥界の門を開き、モンスターを墓地に送り込むわ!ガードはできないわよ!」
 まさにジョーカー。黄泉返りの魔導騎士の効果で場をがら空きにされた精霊達はなすすべもなく、黄泉返りの魔法騎士の攻撃を受け、敗北した。
「くっ……!約束だ、通るがいい!」
「さっさと片付けて戻ってきなよ。帰り道もぼくらと戦わないと通さないからな。今度は負けないぞ!」
 くやしそうに道を開ける精霊達。
「さすがはレナーテ殿。こんな隠し玉を用意していたとは!感服いたしました!」
「念のために融合用のカードも入れておいて良かったわ。せっかくのタッグだしね」
 二人は勝利の喜びを噛みしめ、ハイタッチを交わす。そして、災魔達の待つ下の階層へと降りていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エル・クーゴー

【ワイルドハント】


当機は『M&M』猫属性デッキの運用に高い適性を以下略
(さっきとおんなじこと言いながら突っ立っている)


・キャンディと再戦
・相変わらず「猫じゃらし」「マタタビ」「キャットタワー」等の、猫にブーストを掛けるようなアイテムをモリモリ配置しまくるプレイング

・相手がウイングマネギ降臨を警戒しアイテム群を除去する類のカードを繰り出して来たら『再装填(リロード)』なるカードを手札より直接発動

・猫属性デッキ云々言っていたのはフェイク、情報戦
・このデッキは、墓場に送られたカードを弾丸として召し上げ、銃座や砲台めいたデザインのメカニカルなクリーチャーからガンガンぶっぱなす「銃属性デッキ」である!


ニコリネ・ユーリカ

ワイルドハント
リダンさんチームと決闘

グラス君、いえハカセ
問題児だけどデッキは優秀だったわ
タッグを組んで精霊達に刺激的な決闘を見せてあげましょ
私の事は先生……女王様と呼びなさい

私は花屋
お花デッキなら貴方の昆虫族とも相性が佳い筈
フィールド魔法で迷宮を花畑に
蜜で昆虫を強化したり、叢に隠して守ったり
蛹モンスターの羽化まで時間を稼ぐの

無事に蝶になったら私と融合!
今度は「究極完全態・グレート・バタフライ」に進化しちゃう
特殊効果「女王の羽搏き」で花畑に嵐を巻き起こし
花葩の乱舞で精霊を魅了するわ

そう、私は真の決闘者
精霊術士として今後も協力して貰えるようご機嫌を取る
ハカセ、これがオトナの接待決闘よ!(くわっ)


白鳥・深菜
【ワイルドハント】◎♪

「先ほどの戦いで何が足りなかったか分かる?
それはね……実況解説役よ」

というわけで悪いけど、
私は実況解説<パフォーマンス>に専念するわね。

「虫属性と草属性は親和性は高いけど、
弱点も似た感じになるのがネック。
でも、そこは王道……ブッコむ気かしら」
「エレファン禁止の仕込みだけは止めて頂きたい。
私がただのマイナー芸人と化すから(割とガチトーンで)」
「そもそもアレ、猫って言ってるけど、中身は
……いやネタバレはよしましょう。いずれすぐ分かるわ」

……ところで、黒い貴方。一緒にやってみる?
大丈夫よ。相手を見て、理解して、自身が動く。
私がやったのはそれだけだから。


リダン・ムグルエギ
☆♪#ワイルドハント
ね、ドラン君
折角だし初心者以外を狩る方法、学んでみない?
ニコ達とのタッグ決闘を提案

取るべき対策は何だと思う?
機械や昆虫メタ…は過度だと友達無くすし…
自分の嫌な展開を潰せる汎用カードがいいわ

例えばコレ使ってみて
名称指定でカード発動を封じる「封印の黄金電話箱」
敵デッキの全貌を想像し
キーカードを事前に止めるの
(己が勉強する程、敵が初心者では無い程強くなる一枚を挙げ

外してもいいわ
思い切って指定GO!

アタシは衣装で歯が立たぬ大型敵対策に「便乗融合」投入

序盤は衣装を渡した竜闘士に戦を任せ
キマイラでアド稼ぎ
大型敵が出る度に便乗して
伝家の宝刀、竜に獣が乗っただけ融合!

激突で場を盛り上げるわ



●再戦!エルVSキャンディ!
「何か面白いものを見せろだって?……なら、最高のショーをみせてあげるよ!エル先生!アンタにもう一度決闘を申し込むよ!今度は一対一だ!」
 『呪殺人形』キャンディ・グッドスマイルは左手の手袋代わりにトークン・カードをエル・クーゴーに投げつけた。ヒュン!小気味よい音を立て、エルの足元に突き刺さるトークン・カード。キャンディの挑戦に対しエルは……。
「躯体番号L-95、
 エル・クーゴー。
 当機は『M&M』猫属性デッキの運用に高い適性を以下略」
 さっきと同じことを言いながら突っ立っているエル。無表情故に闘志は伺い知れないが、決闘を受諾したようだ。
「おおっと!キャンディがエルにリターン・マッチを申し込んだわ。精霊達の為に解説しましょう。彼女の名は『呪殺人形』キャンディ。『自由連合』のリーダーで、同じミレナリィ・ドール決闘者のエル・クーゴーにドライビング・デュエルで敗れて以来、彼女をライバル視しているの」
 突然、マイクを片手に解説を始める白鳥・深菜。その様子を見て『暗黒卿』トムは不思議そうに深菜に問いかけた。
「白鳥先生、突然どうした?」
「先ほどの戦いで何が足りなかったか分かる?
 それはね……実況解説役よ」
 したり顔で答える深菜。多くの精霊達を前に、精霊術士……否、エレファン芸人の血が騒いだのだろうか。
「はあ、なるほど」
 生返事をしながら取り出しかけたデッキをしまうトム。そんな二人をよそに、エルとキャンディの二人の闘志は静かに燃え上がる。
「学園最強の決闘人形の座、返してもらうよ!」
「決闘、開始します」

●新たなる絆!『キマイラ&ドラゴン』VS『花屋&昆虫博士』
「ね、ドラン君。
 折角だし初心者以外を狩る方法、学んでみない?アタシと一緒にタッグデュエルしましょう!」
 エルとキャンディの決闘が始まる傍らで、リダン・ムグルエギは『俺より弱い奴に会いに行く』ドランに誘いをかけていた。
「面白そうね。グラス君、いえハカセ。
 問題児だけどデッキは優秀だったわ。
 タッグを組んで精霊達に刺激的な決闘を見せてあげましょ」
 リダンに共鳴し、ニコリネ・ユーリカ交流会で激突した『昆虫博士』グラスにパートナーの誘いをかける。
「分かりました。ニコリネ先生。望むところです!ドラン!やろうぜ!」
 ニコリネの申し出をデレデレ顔で快諾するグラス。決闘で彼女に敗れたせいか、はたまた別の要因か、グラスのニコリネへの態度はかなり柔らかくなっていた。
「分かった。やろう」
『自由連合』の同志グラスにも誘われ、ドランもタッグデュエルを了承する。
「おおっと!もう一組、決闘が決定!こちらは二対二によるタッグデュエル!かつては敵同士だった二人同士が組むという熱い展開よ!果たしてこの決闘を制し、先へと進めるのはどちらなのか!」
 マイクを握り締め、熱っぽく語る深菜。そこに、ギャラリーの精霊から突っ込みが入った。
「負けた方も先に進んでいいよ?」

●クイーン
「先攻はアタシよ!『流離の琵琶法師・ホトケケ』を召喚!」
『天空樹の花の色……盛者必衰の理を知る……』
 べべん、と琵琶を奏でながら召喚される犬型キマイラ。リダンが召喚したのはキマイラモンスターのエース、ホトケケ。自軍モンスターを全体強化し、さらにデッキから毎ターンキマイラモンスターの援軍を呼ぶ力を持つ強力なカードだ。その分多額のお布施(しゃっきん)を要求してくるが。
「結界魔法カード、『フラワーガーデン』!フィールドをダンジョンから花畑に書き換えるわ!ハカセ、お花デッキなら貴方の昆虫族とも相性が佳い筈よ!」
 ニコリネの魔法により、フィールドはデフォルト設定の迷宮から春の花園へと書き換わった。これで昆虫と植物のモンスターは出るだけでパワーアップ。ホトケケの強化効果にも対抗できるだろう。
「ありがとうございます、先生!」
「私の事は先生……いえ、女王様と呼びなさい!」
「ハイ、女王様!」
 あっさりニコリネに傅くグラス。割とノリのいい問題児である。
「おや、ニコリネ先生のデッキはさっきと変わっているな。のりものデッキではないのか」
「おっと、ニコリネはのりものデッキからお花デッキにデッキを変えたようね。メガネ君の昆虫デッキとの相性を意識したのかしら。女王としもべ……じゃなかった、花屋と昆虫博士のコンビは好相性よ」
 解説を続ける深菜。あぶれたトムはなんとなく深菜のそばに座っていた。
「俺のターンだな。えっと、竜闘士『ゴーキ』を召喚。カードを一枚場に伏せてターンエンドだ」
 モンスターを場に出し、ターンを終了するドラン。相手が経験豊富な二人とあって慎重になっているのか、攻撃はしなかった。次はグラスのターンだ。
「俺のターン!俺は『ハングリーキャタピラー』を場に出してターンエンドだ」
  双方共に慎重な立ち上がり。序盤は静かな展開が繰り広げられた。

●ダーティ・プレイ
「『キャットタワー』を場に出してエンド」
(『ねこじゃらし』に『またたび』、また猫用のエサばかり……。さっきと同じ猫デッキ(?)か。なら、『ウイングマネキ』さえ抑えれば怖くはない!)
「『ナパーム・ボム』!『ハンド・グレネード』!キャットタワーとまたたびを破壊する!」
 一度エルのアイテム戦術に痛い目を見たキャンディはアイテム破壊カードを大量に用意していた。エルのアイテムは次々とキャンディによって破壊されていく。
「エル先生のデッキは前と同じようだな。しかしキャンディきたねえ。アイテム破壊カード入れまくってやがる」
「綺麗汚いならエルもたいがいね。アレ、猫って言ってるけど、中身は……。
 いやネタバレはよしましょう。いずれすぐ分かるわ」
 エルのデッキの中身を知っているのか、トムの言葉に苦笑する深菜。
「『再装填(リロード)』!このターン破壊されたアイテムの数だけカードをドローします」
 エルはアイテムを破壊されたことを逆手に取り、大量にカードをドローする。盤面はキャンディ有利だが、これで手札は大幅にエルが有利となった。
「チッ……!」
 舌打ちするキャンディ。
(これ以上アイテム破壊の無駄撃ちは避けないとね。『ウイングマネキ』も機械だからアイテム扱い……破壊カードは一枚は残しておかないと)
「……ところで、黒い貴方。一緒にやってみる?
 大丈夫よ。相手を見て、理解して、自身が動く。
 私がやったのはそれだけだから」
「えっ」
 横にいたトムに不意討ちを仕掛ける深菜。突然の打診に困惑する『暗黒卿』トムであった。

●エース激突!昆虫女王VS竜騎兵(笑)
「『封印の黄金電話箱』発動!対象は……」
 ドランは魔法カードを発動した。これは相手のデッキを読み、キーカードを指定することで効果を発揮するカード。リダンが彼の成長を促す為に勧めたカードである。 
「外してもいいわ。思い切って指定GO!」
 親指を立てるリダン。
「わかったぜ先生!『精霊合体』の発動を禁止する!」
 ドランはニコリネの十八番である合体用の魔法カードの発動を禁止した。
「くっ……!いやらしいカードを……!」
 ニコリネの表情が曇る。そろそろ植物と昆虫の素敵なコラボをしようと思っていたのに。
「エレファン禁止の仕込みだけは止めて頂きたい。
 私がただのマイナー芸人と化すから」
 ドランが『封印の黄金電話箱』を場に出すと深菜は真顔になった。割とガチトーンである。あのコンボデッキの宿敵のようなカードは流行らせないでいただきたい。
「竜闘士カインで『ハングリー・クリサリス』を攻撃!」
「させないわ!『叢のバリア・グラスシールド』で攻撃を無力化!」
「ちっ!ターンエンドだ!」
 一進一退の攻防が続き、お互いのモンスターや魔法が墓地に溜まっていく。そして決闘は終盤へ差し掛かった。
「俺は女王様が伏せた『天空樹の蜂蜜』を発動!昆虫兵器バッタ―マンを強化し、『竜闘士カイン』を攻撃!これで墓地行きだ!」
「そいつはどうかしら!?アタシはマジックカード『シンデレラ・マジック』を発動!デッキから衣装カード『火の紅白衣装・ナンバー2006』を『竜闘士カイン』に装備するわ!これで植物・昆虫モンスターには相性有利よ!」
 ゴウッ!巨大な火の鳥の姿になった竜闘士カインは一瞬にしてバッタ―マンを焼き尽くした。火の鳥はニコリネ陣営のモンスターを次々と燃やしていった。
「虫属性と草属性は親和性は高いけど、
 弱点も似た感じになるのがネック」
「なるほど。ではこの勝負、あの火の鳥が蹂躙してこのままドラン達が押し勝つのでしょうか、解説の深根さん」
「でも、そこは王道……。ニコリネ達も想定しているはず。ブッコむ気かしら」
 深菜と共に、ニュースキャスターのような口調でコメントをするトム。彼は結局深菜の助手ということになったようだ。
 解説通り、ニコリネ陣営はうまく弱点を突かれた形だ。しかし彼女の予想通りなんとか死守したグラスの蛹モンスターが羽化し、ニコリネ達が反撃する時がやってきた!『ハングリー・クリサリス』の背中が割れ、中から巨大な蝶のモンスターが出現する!
「待たせたな!『完成態・グレート・バタフライ』降臨!これが俺のエースだ!」
「さらに!『エレメンタル・フュージョン』でバタフライに私を融合!」
 ニコリネの体が巨大な蝶へと吸い込まれ、バタフライは眩い光に包まれさらなる進化を遂げる。光が止むと、そこには虹色の翅を生やした巨大なニコリネが宙に浮かんでいた。
『究極完全態・グレート・バタフライ・ニコリネ』 パワー無限大
「すごいぞー!かっこいいぞー!」
 ニコリネを見つめ、熱い声援を送るしもべ君。
「『便乗融合』!アタシ達のモンスターも融合よ!」
 その時、リダンもとっておきのマジックカードを発動した。ニコリネの融合魔法に便乗し、閃光と共にリダンのキマイラとドランの竜闘士モンスターも融合する……!?
 そして、閃光が止むとそこには、竜闘士に肩車されたカエル型キマイラの姿があった。
『竜騎兵ゲコゲコ』 パワー????
「融、合……?」
 精霊達は訝しんだ。
「伝家の宝刀、竜に獣が乗っただけ融合!」
 再び親指を立てるリダン。
「さて、お互いのエースモンスターが出そろったわね。このターンで決着が着くでしょう」
「竜闘士がカエルを肩車しているのもシュールで面白いですが、ニコリネさんは実に美しいですね」
 解説する深菜とトム。戦場には両雄が並び立ち、いよいよ決着の時だ。
「いけえええ!女王様ああああ!」
「いくわよー!『女王の羽搏き』(クイーン・トルネード)!」
ニコリネの攻撃と共に花葩の乱舞が巻き起こり、精霊を魅了する。
「そう、私は真の決闘者。精霊術士として今後も協力して貰えるようご機嫌を取る!ハカセ、これがオトナの接待決闘よ!」
 くわっと目を見開くニコリネ。趣味に没頭しているように見えても、彼女の魂に根付いた商人根性は失われてはいなかった!
「なるほど……!女王様のオトナの接待……!」
 こいつ、絶対なんかやらしいこと考えてる。その場にいる者達はそう思った。
「いくわよドラン!『ドラゴニック・トードウィップ』!」
 竜闘士に肩車されたカエルは伸ばした舌を振り回しながら、巨大ニコリネに突っ込む!
 ドゥン!竜騎兵ゲコゲコはバタフライの風圧に吹き飛ばされ、星になった。戦闘ダメージが入り、リダン組のライフポイントは0に。
「私達の勝ちね!……あれ?」
 勝ったのに勝利エフェクトが発生しない。ニコリネが不思議に思っていると、なんとニコリネ達のライフポイントも0になっていた。
「『竜騎兵ゲコゲコ』は自分を破壊したモンスターのパワー分のダメージを相手にも返すのよ。カエルなだけに。つまりこの勝負ドローね」
 持ち主のリダンに代わり、効果の解説をする深菜。こうして、四名の決闘者が死力を尽くして戦ったタッグデュエルは引き分けで決着した。
「さて、エルの方はどうなってるかしら?」

●其れは猫にあらず
 ドゥンドゥンドゥン!エルの並べた鉄色のクリーチャー達の銃撃・砲撃がキャンディの人形達を撃ち抜いていく。迷宮を突破したエルのクリーチャー達はキャンディの目前まで迫り、本陣は陥落寸前であった。
「クソッ……!どこが猫デッキよ……!猫全く関係ないじゃない……!」
 そう。猫デッキ云々は情報戦としてのフェイク。エルのこのデッキは、墓場に送られたカードを弾丸として召し上げ、銃座や砲台めいたデザインのメカニカルなクリーチャーからガンガンぶっぱなす「銃属性デッキ」である!
 序盤にキャンディをうまく利用して墓地に送りこんだアイテムカードを弾丸として次から次へとぶっぱなすエルの奇襲の前に、キャンディは成す術はなかった。いわゆる「バーン」に分類されるデッキなので、キャンディが物量作戦対策に用意していた壁も意味をなさなかった。
「ゲームオーバーです」
「ギャ―!またしてもーーーーー!!!」
 砲弾の嵐がライフポイントをごっそり奪い、キャンディは再びエルに完敗した。
「あ、キャンディまた負けてる」
「エル、無表情だから嘘ついても分かりにくいのよ」
「キャンディは顔に出るタイプですからね……。ハッタリやポーカーフェイスも決闘者の武器ということですか」
「そういうことね。さて、そろそろ十分かしら。アルダワ地下迷宮、決闘者二番勝負。解説は私、白鳥深菜と」
「『暗黒卿』トムがお送りしました!」
「「死力を尽くして名勝負を見せてくれた決闘者達六人にもう一度拍手を!」」
 そして、精霊達の万来の喝采が巻き起こる。こうして『ワイルドハント』と愉快な問題児達は災魔のいる階層へと進む資格を勝ち取ったのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

シャルロット・シフファート

では、電脳精霊術をお見せしましょうか。
エレクトロレギオンとガラスのラビリンスでMR空間に生徒と精霊を招待し魔王戦争の魔王戦を再現した公開演習を見させるわ。
魔王戦争の苛烈さを将来の英雄に刻み込むためにも演習を披露させ、生徒と精霊たちを感嘆させる。

まず迷宮内の壁や床をエーテルに変換し、四大属性魔法で一撃。
次にファイブレガリアで属性武装の絨毯爆撃を魔王に放ち、フリズスキャルブの空間付与魔術で防御。
コレダ―イグナイターでそれぞれの形態に有効な属性と機能を有した精霊炉改造兵器を鋳造し、放射。
止めにレーヴァテインで空間ごと炎の異世界に変換して焼き尽くす。

と、何か質問があれば再現を見させて教えるわ。



●再現されし魔王戦争
「次は何を見せてくれるんだい?」
 猟兵や学生達の様々な出し物に、精霊達は上機嫌だ。もっと面白いものが見たい――。そんな風に、キラキラした目で見つめてくる。
「では、電脳精霊術をお見せしましょうか」
 シャルロット・シフファートはそう言って指をパチンと鳴らす。すると、辺りの空間が一瞬揺らいだ。見た目は特に変わった所はないがここは既に異空間。シャルロットは自身に付き従う精霊と電脳魔術で世界に働きかけ、MR(複合現実)空間を作り出したのだ。大規模な魔術行使に、おおー、と学生と精霊達が感嘆する。
「さて、ここから先はここの精霊達の力も必要だから、貴方達も協力してね」
 シャルロットは周囲の精霊達の力も借り、電脳機械兵士を召喚した。さらにデータを書き換え、シャルロットの望む姿へと変化させる。
「我はウームー・ダブルートゥ。
 汝らが『大魔王』と呼ぶ、この世の全てを喰らうもの……!」
 機械兵士が変化した姿は、この地下迷宮の奥深くに封印されていた全ての災魔達のたる者、《大魔王》の最終形態だった。電脳精霊術で再現された幻想にすぎないとはいえ、その凄まじい迫力に学生達は戦慄する。
「これが――。大魔王――!」
「もちろん本物には及ぶべくもないけど、技はオリジナルと同じよ。あなたたちにはこれから私とこの大魔王の戦いを見てもらうわ。公開演習よ。
『無垢なる基礎よ、汝は原初の荘厳。その無色は万華の如き色彩となり、万の元素を流出する』」
 そう言うが早いか、シャルロットは周囲の壁や床をエーテルへと変換して魔術の燃料にすると、「大魔王」に向かって地水火風の四大精霊の力を複合させた光の槍を大魔王へと投げつけた!
「我との戦いの苛烈さを学生達に刻み込み、未来の英雄の糧とする――。それが汝の望みか」
 幻想の大魔王はそう呟くと、シャルロットの魔法を即座にコピーし、シャルロットが放った光の槍を撃ち落とした!二人の間に魔力の大爆発が巻き起こり、熱風が学生達の頬を撫でる。
「これが大魔王の力よ。敵対者の望みを読み取り、敵対者自身の望みで自らを強化する……。『五行たる聖装よ。汝、剣にして刀、槍にして弓、極東の彼方より大和の聖火と煌輝を掲げて凱旋する者の聖なる武装なり』」
 シャルロットはすかさず呼び寄せた五行属性の魔力を込めた無数の刀剣類をガトリング砲の如く撃ち放ち、大魔王に絨毯爆撃を浴びせた。しかし、爆炎が止んだ時、大魔王は当然のように五体満足でそこに立っていた。大魔王はシャルロットの五行の魔術も複製し、シャルロットへと撃ち返した。
 ズドドドドドド!ドゥンドゥンドゥン!
 着弾と同時に断続的に魔力が炸裂し、爆炎がシャルロットを覆い隠す。
「おいおい、先生大丈夫なのかよ!死んだんじゃね?」
 その様子を遠巻きに眺めていた学生達は不安そうな声を上げる。しかしシャルロットは大魔王の反撃を異なる空間に飛ばし、しっかり防御していた。
「自分の技でやられるわけないでしょ!よく見てなさい!」
 シャルロットはきりもみ回転しながら爆風から飛び出し、態勢を立て直す。
「我は、汝らの肉の他に、希望そのものも喰らう。
 汝らが武力を願えば、我も強き形態を得る。
 汝らが勝利を望めば、我も勝利の術を得る。
 汝らが幸せを祈れば、我に幸運が齎される」
 大魔王はそう呟くと、己の別形態である五体の魔王達を召喚した。『ホープブレイカー』。魔王戦争で猛威を振るった、大魔王のユーベルコードの再現である。
「こんな怪物を先生達は倒したのか……!」
 学生達は魔王の恐ろしさと猟兵の凄まじい力に驚嘆するばかりだ。
「『暴虐の終焉は告死と鏖殺を宣する人の造りし神滅の剣にして弾丸。それは神界を砕く夕闇に染まる聖光に満ちている』!」
シャルロットは破砕砲のような形の巨大な精霊炉改造兵器を鋳造し、大魔王に向けて放射した!六つに分かれた虹色の拡散魔力砲は、呼び出された魔王の分身達をことごとく貫く!だが、最終形態だけはやはりシャルロットの攻撃に耐え、同じ技で反撃を繰り出してきた。
「大魔王には並の攻撃は通じない。ならば、空間ごと炎の世界に変換して焼き尽くす!『其れは、異なる灼滅。其れは異なる生きる真。炎産霊が捧げる全ての理を焼く邪炎にして聖火。それ即ち創造と終焉司る神話の起源なり。レーヴァテイン』!」
 シャルロットは空間内にいた炎の精霊をありったけかき集め、紅蓮の炎の空間をMR空間内部に作り出すと、大魔王を空間ごと焼き尽くした!
 しゅうう。大魔王の再現データは消滅した。実演はひとまず終了だ。
「こんなところかしら。何か質問は?」
 シャルロットは汗をぬぐい、息を呑んでいる学生達に質問を促した。すると、我に返った学生達が一斉に挙手をした。その中にはシャルロットが交流会でぶっとばした問題児達も混ざっている。彼らもやる気を出してくれているようだ。シャルロットはふっと口元に笑みを浮かべると、学生達や精霊との質疑応答に移ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・ユメノアール
面白い事ならボクたち道化師の本分だね!
よーし、精霊さんたちも学生のみんなも全員楽しませてみせるよ!

手札からカードを一枚高々と掲げて宣言
ショウマストゴーオン!
変幻自在の魔術師よ!その歓声に答え、鮮やかに舞台を彩れ!
カモン!【SPクラウンジェスター】!
さらに、【SPタンブルタイガー】も召喚!
『動物使い』でタンブルタイガーを操り、その背中に立ったまま騎乗して『トリックスター』をジャグリング
さらにそれをクラウンジェスターに向けて『投擲』
交互にキャッチ&パスを繰り返す

最後は『ミラクルシルクハット』から『ハートロッド』を飛び立たせると同時に花火を空に打ち上げ
ご観覧いただきありがとうございました!と一礼



●トリックスターズ・ドリーム・サーカス
「面白い事ならボクたち道化師の本分だね!
 よーし、精霊さんたちも学生のみんなも全員楽しませてみせるよ!」
 フェルト・ユメノアールは迷宮に置かれていた石の台の上に飛び乗ると、両手を広げてフロアにいる精霊や学生達の注目を集めた。彼女は元気と笑顔が取り柄の道化師。エンターテイメントが必要な時こそ彼女が最も輝く時だ。
「ショウマストゴーオン!
 変幻自在の魔術師よ!その歓声に答え、鮮やかに舞台を彩れ!
 カモン!【SPクラウンジェスター】!」
 フェルトが一枚のカードを空高く掲げると、鮮やかなエメラルドグリーンの閃光と共に王冠を被ったカラフルな仮面の道化師が姿を現した。
「さらに、【SPタンブルタイガー】も召喚!」
 フェルトが二枚目のカードを出すと、今度は赤いマフラーを巻いた白虎がカードから飛び出した。わーっと、精霊達が拍手をする。しかし、学生達の反応はイマイチだ。彼らはまだ「勘違い」をしているのだ。フェルトが呼び出したジェスターとタンブルタイガーは「M&M」のカードが創り出した幻影だと。
「カモン!タンブルタイガー!」
 フェルトはタンブルタイガーの名を呼んでこちらを向かせると、くるくると回転しながらその背に「飛び乗った」。
「タンブルタイガー!お散歩!」
 タンブルタイガーは背中に直立するフェルトを乗せたまま、ゆっくりと周囲を歩き始めた。
「え……?」
 学生達はきょとんとした。「M&M」で呼び出されるモンスターは幻だ。一部の特殊なカードなどの効果の場合は例外だが、人間が背中に乗れるわけがない。
「あれ、本物だ!」
 ざわつく学生達。そう、フェルトは『バトルゲーマー』。カードに魔力を込めることでキャラクタ-を実体化させることができる不思議な力の持ち主なのだ。カードゲームにハマっているアルダワの学生達からすれば、まさに夢のような能力の持ち主と言えるだろう。
 フェルトは派手な装飾が施されたダガーを数本、懐から取り出すと、タンブルタイガーの背中に乗ったまま両手でジャグリングを始めた。五本、六本。ダガーの本数は少しずつ増えていく。
 ギャラリーの熱気の高まりを感じたフェルトは、ついに十本まで増えたダガーをジャグリングしながら、タンブルタイガーの背中の上で宙返り。フェルトは空中で逆さになったまま、カードマジックを披露していたクラウンジェスターに向けて勢い良くダガーを投擲した!
 突然のフェルトの不意打ちにギャラリーは息を呑む。クラウンジェスターは大袈裟に驚いたリアクションをすると、ぱしっとダガーを二本の指で挟んで受け止めた。
 ぱちぱちぱちぱち。ギャラリーから拍手が巻き起こる。クラウンジェスターは手首を返し、ダガーを指で弾いてフェルトに投げ返した。フェルトはジャグリングを続けながら器用のダガーをぱしっと受け止め、今度は持っていたダガーを次から次へとクラウンジェスターに向けて雨あられと投げつけた。
 クラウンジェスターは手に持ったままだったマジック用のカードをパッと消すと、両手で飛んできたダガーを掴み、次々とフェルトに向かって投げ返した。
 ヒュンヒュンヒュン。パシパシパシパシ。二人の道化師の間を猛スピードで行きかう十本のダガー。様子を見守る精霊と学生達は緊張のあまり息が詰まりそうだ。一歩間違えば大惨事のまさしく「曲芸」だが、フェルトとクラウンジェスターは超人的な器用さと反射神経、そして集中力で実に五分のもの間ダガーのやり取りを続けた。
 ダガーの演目を終えたフェルトは最後にステージの中央に立ち、【ミラクルシルクハット】を取り出すと、ハットの中に【ハートロッド】を放り込んだ。
 ポンッ!
 コミカルな音と共に、ステッキは白い鳩へと変わり、ハットから迷宮へと飛び立っていった。さらに、フェルトはハットの中から小さな花火を連続で打ち上げ、「FIN」の文字を形どる。夢の時間はこれにて終幕だ。
「ご観覧いただきありがとうございました!」
 ギャラリーに向けて一礼をするフェルトとSPクラウンジェスター。
 一瞬の静寂の後、ギャラリー達はいつまでも二人に惜しみない拍手を送り続けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・エクル
【♪】

勝敗おまかせ

【性格】
凛とした佇まい、誰に対してもクールで落ち着いた態度をとる。誇り高い性格

エクルからヒメに人格を切り替えて決闘に臨みます

相手は精霊とはいえ決闘を挑まれたからには受けないわけにはいきません

貴方たちの華麗なタクティクスをワタシに魅せてくださいな

さぁ共に闘いましょうサラさん
貴女に勝利の栄光を


【デッキ】
王冠戴きし紋章の剣姫《ロイヤルスートプリンセス》

トランプの絵札のスート「紋章」の力と卓越した剣技を駆使して戦うスートの剣姫たちのカテゴリ群

エースモンスター

ロイヤルスートスラッシャー
スペード、スート、ハート、クローバー、4つのスートの力を宿した最強の紋章剣姫



●精霊達の挑戦! ヒメ&サラVS石と土の精霊!
 ズゴゴゴゴゴ……!突然地面が盛り上がり、石畳の床が隆起していく。盛り上がった石畳は三mほどの石の巨人の姿となった。さらに、剥き出しになった地面からも土が盛り上がり、人の形となっていく。
「我は石の精ストーン・エレメンタル。人間たちよ、我と決闘せよ」
「我は土の精アース・エレメンタル。誰でも良いぞ、かかってくるが良い」
 どうやら彼らも決闘者らしい。猟兵や学生達、そして仲間の精霊達が遊んでいるのを見て、闘争本能(?)が刺激されたようだ。
「相手は精霊とはいえ決闘を挑まれたからには受けないわけにはいきません」
「エクル先生?」
 いきなり雰囲気が変わった七那原・エクルの様子にサラ委員長は戸惑った。よく見れば、紫色だった瞳も左だけ鮮やかなエメラルドグリーンに変わっている。
「貴方達がとても楽しそうだからつい出てきてしまいました。ワタシはヒメ。貴方たちの華麗なタクティクスをワタシに魅せてくださいな」
 どうやら、猟兵や学生達の決闘に魅了されたのは精霊達だけではなかったらしい。普段はエクルの内に隠れている人格『ヒメ』までもがついに姿を現した。
「二重人格者……!自称ならクラスにたくさんいるけど、『本物』は初めてみました!なんだかかっこいい!」
「さぁ共に闘いましょうサラさん。貴女に勝利の栄光を!」
「その意気やよし。この勝負はタッグデュエルで行う!いざ、尋常に!」
「「勝負!」」

●ジャイアントキリング!
「ワタシのターン!『紋章剣姫(スートプリンセス)―ハート・10』召喚!さらに手札から『紋章剣姫(スートプリンセス)―ダイヤ・9』を追加で召喚!二体の連携攻撃で『アース・ジャイアント』に攻撃!」
「グウッ!ならば『ストーン・ウォール』を発動!防御力をアップして攻撃に耐える!」
「そうはさせないわ!『スチームガジェット・アーマー』を発動!『ハート・10』に機械の鎧を装備させて攻撃力をアップよ!アースジャイアントは破壊されるわ!」
 ザシュッ!蒸気機械の鎧を装備したヒメのスートプリンセスの一撃でアース・ジャイアントは一刀両断された。ヒメのデッキはエクルとは異なり、動物とオーバーテクノロジーをモチーフとした「ガジェッターズ・フォース」ではない。彼女のデッキはトランプの絵札のスート「紋章」の力と卓越した剣技を駆使して戦うスートの剣姫たちのカテゴリ群、「紋章剣姫」(スート・プリンセス)」である。サラの蒸気機械のサポートを受けた剣姫達は、剣技と紋章魔法を駆使し、次々と精霊達のゴーレム・ジャイアントモンスター達を破壊していった。
「やるな、小娘!だがお遊びはここまでだ。墓地の全てのジャイアントカードを異次元に送ることを代償に、我は『空を支えし巨人、アトラス』を召喚!」
 口上と共に、土の精の側にとてつもなく巨大な巨人の姿が現れた。これが彼らのエースモンスターだろう。
「アトラスは全てのモンスターに一度に攻撃できる!いけっ!アトラス!」
 巨大な脚がヒメ達のスートプリンセスを踏みつぶさんと迫る。攻撃が通ればこちらのモンスターは全滅だ。しかし、ヒメとサラは至って冷静だった。
「手札を二枚捨て、マジックカード、『スチーム・ディメンジョン・ゲート』発動!このターン、私達はデッキから直接モンスターを召喚できる!たとえそれが相手ターンでも!」
 サラはとっておきの魔法カードを発動し、ヒメに目配せした。
「ありがとうサラ。ワタシは墓地と場の四体のスートプリンセスを生贄に捧げ、デッキから『紋章剣姫(スートプリンセス)―ロイヤルスートスラッシャー』を召喚!巨人アトラス!勝負です!」
 ヒメとサラ、二人のコンボにより、荘厳なオーラを放つ豪奢な騎士姫が召喚された。ロイヤルスートスラッシャー。スペード、スート、ハート、クローバー、4つのスートの力を宿した最強の紋章剣姫である。
「ぬう!それが貴様らの奥の手か!だがパワーはこちらが上だ!叩き潰してくれる!」
 攻撃は止まらない。アトラスはロイヤルスートスラッシャーを踏みつぶさんと、脚を勢いよく振り降ろした!
 ズガァン!凄まじい衝突音と共にアトラスのスタンプが大地を抉り、剣姫が立っていた場所には巨大なクレータが出来上がった!
「フハハハ!跡形もなく消えたか!」
 高笑いをする石と土の精霊達。
「それはどうかしら」
 しかし、ヒメは不敵に笑った。その視線の先―アトラスの肩の上には、美しくも巨大な両手剣を構えるロイヤルスートスラッシャーの姿が。
「『紋章剣・ロイヤルストレートフラッシュ』!ロイヤルスートスラッシャーは一ターンに一度、墓地の紋章魔法カードの効果を自身の効果として使用できる!このターンのみ、ロイヤルスートスラッシャーの攻撃力は4倍となります!」
「いっけー!ヒメ先生!」
 拳を天に突き上げるサラ。紋章の魔力で超強化されたロイヤルストレートスラッシャーは剣に魔力を滾らせ、アトラスの肩に向かって渾身の力で剣を振り降ろした!
 一瞬四斬。ほぼ同時に放たれた四撃の剣閃は、アトラスの巨体を五等分した。
「ぐおおおおー!」
 これで精霊チームのライフポイントは0。ヒメ&サラの勝利だ。
「グウッ……!見事だ。人の子らよ。下にいる災魔共もその調子で蹴散らしてくるがよい」
「貴方達もなかなか手ごわい相手でした。またいつか勝負しましょうね」
 精霊達からすればワタシも人の子に見えるのね。密かにそんな感想を抱きながら、ヒメはサラとハイタッチし、下の階層に向かう準備をするのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天樹・咲耶

表人格の咲耶(優等生)です
サクヤとの記憶共有はありません

「はっ、ここは一体……!? 」

なんだかアルダワの迷宮のようですが、またサクヤが勝手に依頼を受けましたね!?

「って、誰が邪炎竜の咲耶ですかっ!」

地獄竜のカイト君とかいう生徒が『M&M』の勝負を申し込んできましたので、いいでしょう、受けてたちます。

サクヤに無理やり対戦相手として付き合わされて、私も詳しくなってしまいましたからね。

「私のデッキの強さ、見せて上げましょう!」

私のデッキはサクヤに勝つための対ドラゴンデッキ。
ドラゴンに対するカウンターカードで構成されたデッキです。

サクヤってば、これでドラゴン封じられて、よく涙目になってましたっけ。



●アナザー・マインド
「はっ、ここは一体……!? 」
 人格交代を果たし、意識を取り戻した天樹・咲耶はきょろきょろと付近を見回した。見慣れない景色……というわけではないが、明らかに自室とは違う場所だ。ふと腕時計を見ると、最後に記憶があった時から数時間ほど針が進んでいた。
「なんだかアルダワの迷宮のようですが、またサクヤが勝手に依頼を受けましたね!?」
 そう、咲耶は多重人格者。その内には、たびたび咲耶の体を乗っ取って暴走する厄介な裏の人格「サクヤ」が宿っているのだ。そして二人は記憶を共有していない。「自分は今アルダワに臨時教師としてやってきていて、災魔を倒す訓練の為に大勢の学生達を引率している途中である」ということすら咲耶には分からないのであった。
「……?どうした、『邪炎竜』のサクヤ。我が永遠のライバルよ。さっさとデッキの剣を鞄から抜くがいい。宿命の決闘を始めようじゃないか!」
 精霊達への出し物にかこつけてサクヤにリベンジを決めるべく、決闘を申し込んできた『地獄竜』カイトは呆れた声で言った。どうやら彼は宿命のライバル自分を放置して人格交代してしまったことに気付いていないようだ。まあ、人格交代した瞬間に髪の色が変わるとか、光に包まれるとか、何か分かりやすい変化が発生するわけではないので無理もないが……。
「って、誰が邪炎竜の咲耶ですかっ!私は天樹・咲耶!サクヤと一緒にしないでください!私はあの子とは違って常識人なんです!」
 咲耶は片眼を覆っていた眼帯(オサレ装備)をむしり取り、ライバルを自称するドラゴニアンの少年に対して抗議する。どうやら、咲耶はこのアルダワで波長の合う学生とカードゲームで遊んでいたようだ。咲耶はそう判断した。
 まさか自分がいない間に自分の腕に宿るUDCが暴走したのでサクヤはカイトの背中に乗って邪悪なる竜に空中戦を挑みました、なんとか再封印に成功し、命を賭けた戦いの中で絆が芽生えました、などという事実は神ならぬ咲耶には想像の埒外であった。脳内会話はできるので、心の中にいるサクヤから事情を聞くことはできるはずなのだが、当のサクヤは心の中で居留守の真っ最中だ。
「何っ!?サクヤではない、だと!?ずるいぞ!二重人格の決闘者なんてかっこよすぎるじゃないか!だが俺は器に過ぎぬ貴様などに用はない!本物のサクヤを出してもらおうか!」
 咲耶の抗議に対し、無礼千万なコメントを返すカイト。よりにもよってサクヤの偽物扱いされた咲耶はさすがに怒った。
「いいでしょう、受けてたちます」
 自分のデッキを鞄から取り出し、怒りのオーラを漂わせる咲耶。この生意気な少年には躾が必要のようだ。その為には彼と決闘することもやぶさかではない。できれば愛用のリボルバーでアメリカンスタイルの決闘をしたいところだが、常識人を自称する咲耶はリアルファイトは勘弁してあげることにした。
「ほう、どうやらサクヤと再び戦う前に貴様を倒さねばならんようだな。いいだろう!」
 不敵な笑みを浮かべ、手札をドローするカイト。闘志バチバチの二人の決闘が始まった!

●マインド・クラッシュ
「『ジャスティス・ドラゴン』召喚!赤き竜よ!我が敵に断罪を!」
「させません!『封竜の電子ジャー』!全てのドラゴンはこのアイテムの中に封印されます!」
「ぬおおっ!またドラゴンメタカード!」
「私のデッキはサクヤに勝つための対ドラゴンデッキ。
 ドラゴンに対するカウンターカードで構成されたデッキです!」
 咲耶のデッキはそのほとんどが対ドラゴン特化カード。サクヤに無理やり決闘に付き合わされてうんざりした咲耶が、サクヤの心を折るべく作り出した非情なるデッキだ。サクヤと同じくドラゴン使いであるカイトに勝ち目はなかった。
「まだだっ!まだ終わらん!俺のターン!『伝説のスナイパー』で電子ジャーを破壊!このターンで一気にケリをつける!ライフを半分支払い、マジックカード『竜の巣』を発動!『ブルーマンデー・ドラゴン』!『サタデーナイト・ドラゴン』!『アフターファイブ・ドラゴン』!さらに『グッドモーニング・ドラゴン』を召喚!どうだ!これが俺の新ドラゴン四天王だ!わははは!」
 稲光と共に、カイトの場に四体のかっこいいドラゴンが召喚された。このドラゴン達は全て聖・火の二重属性。サクヤの切り札である邪炎竜に対し有利な属性であり、サクヤ対策として新たに追加したカードである。だが。
「『強制終了』を発動!あなたのターンは戦闘前に終了です!そして私のターン!『竜殺しの英雄ジークフリート』と『対龍兵器メカドラゴン』を生贄に捧げ、『ドラゴンスレイヤー・ヤマト』を召喚!この英雄はドラゴンに対する絶対的な殺害権を持ち、さらにドラゴンを倒すたびに追加攻撃ができます!」
「なんだと―――!?」
「ウリャーーーー!!」
 異様の長い剣を持ち、竜の群れへと突っ込んでいくドラゴンスレイヤー・ヤマト。カイトが自信満々に召喚したドラゴン四天王とやらはヤマトにまとめて串刺しにされ、葬られてしまった。そのあまりに無残な有様に、カイトはライフポイントの前に心が折れて投了した。
「うう、ひどい、あんまりだ……人の心が無い……」
「サクヤってば、これでドラゴン封じられて、よく涙目になってましたっけ」
 ボロ負けしたショックで地面に手を突いて打ちひしがれるカイトを見下ろしながら、咲耶はサクヤとの決闘を思い出すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緑川・小夜
◎♪
[WIZ]

なるほど、精霊の方達のご機嫌とりと…
まあいいわ、わたくしの力を見せてあげる

という訳なので、わたくしの助手になりなさいな、ミツルギ

嫌だ?ふーん…なら、わたくしの椅子になってもらおうかしら

…あら、是非助手をやりたいと。急に素直になったわね

では、選択UCと【変装】と「変装道具一式」を使って、百面相の早変わりをお見せしましょう

ミツルギはわたくしを布で隠してなさい。わたくしが合図を送ったら、布をどかしてわたくしの姿を開放するのよ

さあ、選択UCでわたくし自らの改造をし、変装道具を使って、衣装や体格まで全くの別人へと姿を変えるわ

これを短時間で繰り返していくの。まさに百面相でしょう?



●百面相!劇的ビフォーアフター!
「なるほど、精霊の方達のご機嫌とりと…。
 まあいいわ、わたくしの力を見せてあげる。
 という訳なので、わたくしの助手になりなさいな、ミツルギ」
 緑川・小夜は交流会で倒した問題児・『剣聖』ミツルギに突然命令を下した。彼女の芸には助手が必要なのだ。顔見知りの猟兵に頼むこともできなくはないが、さすがに畏れ多い。というわけで、ちょうどいいパシリ役としてミツルギに白羽の矢が立ったのであった。
「嫌だよ。めんどくさい。なんで俺がチビッ子先生の手伝いしなきゃならないんだよ」
 だが、ミツルギは小夜の命令を拒否した。決闘前と比べて『先生』がついている分マシだが、どうやらまだ敬意が足りないようだ。
「嫌だ?ふーん…なら、わたくしの椅子になってもらおうかしら」
 小夜は反抗的な教え子に再教育を施すべく、仙術用の鈴を取り出した。
「助手やります!やらせてください!」
「…あら、是非助手をやりたいと。急に素直になったわね」
 ミツルギはあっさり屈服した。小夜が本気になったら決闘はもちろん、リアルファイトでも歯が立たない。それは交流会の時に思い知らされていた。小夜は見た目の通りの無力で儚げな9歳女児ではないのだ。それに幼女の椅子にされているというのは絵的にまずい。アルダワ魔法学園変態番付にランクイン待ったなしである。
「ミツルギはわたくしを布で隠してなさい。わたくしが合図を送ったら、布をどかしてわたくしの姿を開放するのよ。あとこちらは絶対に見ないように」
「へいへい」
 つるぺたボディのアンタの着替えに興味はないよ、とミツルギは付け加えようとしたが、機嫌を損ねたら大変そうなのでミツルギは言葉を飲み込んだ。君子危うきに近寄らず、である。だがミツルギは数秒後、布を取った小夜を見て仰天することになる。
「さあ、布を取りなさい!」
 ばっ。小夜の合図でミツルギが布を取ると、そこには蝶をあしらった全身タイツに身を包んだナイスバディな美女が出現していた。こぼれ落ちそうな豊かなバスト。艶やかな唇に、幼さを残すぱっちりした瞳。小夜の面影は残っていたが、もはや変装の域を超えて別人である。
「……お母さん、いえ、お姉さんですか!?」
 ショックで布を取り落したミツルギは頬を染めながら思わず叫んだ。
「何を言っているのです、ミツルギ。わたくしです。さっさと布を拾いなさい。まだわたくしの演目は始まったばかりなのですから」
 体格の変化で大人びてはいるが、確かに小夜の声だ。
「そ、そうでしたか!それは失礼しました!」
 先ほどまでとは打って変わり、敬語で小夜に返事をするミツルギ。分かりやす過ぎる彼の変化に、小夜はくすりと笑みを浮かべた。
「さあ、取りなさい!」
 バッ。再びミツルギが布を取ると、今度は小夜はヴィクトリア式のクラシックなメイド服を着た十五歳ぐらいの少女に変身していた。変身した小夜はギャラリーに向けてスカートをつまみ上げ、恭しく一礼する。
「若返った!でもこれはこれでイイ!」
「静かにしてなさい。クビにするわよ」
「はっ!失礼しました!」
 小夜に叱責され、黙るミツルギ。もはや彼は完全に小夜のしもべ状態であった。
「はい」
 バッ。
「はい」
 ババッ!
「はい」
 バババッ!
 天女、ネズミ、白狼、ミニスカポリス、バニー、コンビニの店員……。次々と衣装と体格を変えていく小夜の華麗な百面相に、精霊と学生達はたちまち虜になった。
「ふう。こんなものかしら」
 一通り用意していた衣装を出し尽くし、元の姿に戻って汗をぬぐう小夜。
「先生、お疲れ様です!タオルです!」
 ミツルギは主の労をねぎらうべく、タオルを差し出す忠犬ミツルギ。
「あら、ミツルギ、貴方にしては気が利くわね」
「光栄であります!なんなりとお申し付け下さい!」
 (典型的な小物ね……。けれど、美しいものにひれ伏したその感性は褒めてあげましょう)
 小夜はミツルギを遠慮なくこき使って戦いの準備をした後、災魔を倒す為に下の階層へと降りていったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

桐府田・丈華
【行動】
[テフラさん(f03212)と同行します]
行動や優しさで妖精たちと合流します
座って膝の上に休ませてあげたり色々な会話でリラックスさせてあげて、、、みんなでまったり過ごします


テフラ・カルデラ
丈華(f01937)と同行
※アドリブ可

妖精さんとは丈華さんにお任せしましょう…!

それはそうと…うーん…特技ですか…
そうだ!わたしは魔法少女(男だけど…)なので変身シーンを見せちゃいましょう!
「キラッと変身!魔法兎テフラくんなのですっ!」
これで喜んでいただけるのであれば…!

やることをやったのでのんびり過ごしていきましょうか♪
ついでに災魔について何か聞き出せれば良いですね…



●丈華の異世界冒険譚
「坊や、ボクと一緒にお話しよ?」
 桐府田・丈華は小さな男の子の姿をした精霊に話しかけた。外見からして彼は地の精ブラウニーあたりだろうか。
「うん、いいよ!ぼく、冒険のお話が聞きたい!冒険の話を聞かせて!」
「よかった。じゃあ、こっちにおいで」
 丈華はにこにこしながら精霊に手招きをした。すると、精霊はふわりと舞い上がり、丈華の膝の上に着地した。
「どんなお話がいい?」
「うーん、魔法使い同士の戦いの話!」
 丈華が精霊の少年に尋ねると、精霊は元気よく答えた。
「わかった、じゃあボクが前に戦った『仮面を集める悪い魔法使い』の話をしてあげるね。
 『それは、この世界と違い、獣と人が混ざった人達、『キマイラ』達が暮らす世界のことでした。その時、その世界は真っ二つに分かれてしまい……』」
 滔々と、かつてキマイラフューチャーで戦った仮面の召喚士との戦いについて語る丈華。
 ここではないどこか遠い世界の物語に、精霊の少年は目を輝かせる。物語が佳境に入り、彼女が切り札の巨人を召喚した頃には、いつの間にかたくさんの精霊達が周りに群がっていた。

●変身!魔法少女テフラ!
「丈華さん、すっかり人気者になっているのです!」
 迷宮に潜る直前に彼女と合流していたテフラ・カルデラは、精霊に囲まれてぼんやり発光している丈華を見ながら呟いた。
 共に戦った『バトルキャラクターズ』達を実際に召喚しながら、様々な異世界の戦いについて語る丈華に年若い精霊達はすっかり夢中だ。その優しくも幻想的な風景に、テフラもついほっこりする。にこにこしながら丈華の様子を見守っていると、小さな少女の姿をした精霊がテフラに話しかけてきた。たぶん水の精ウンディーネあたりだろうか。
「おねえちゃんはなにができるの?なにか芸をみせて!」
 案の定、精霊はテフラにもパフォーマンスを要求してきた。
「うーん…特技ですか…」
 悩むテフラ。自分にも何か精霊が喜びそうな芸が何かあっただろうか。
「そうだ!わたしは魔法少女なので変身シーンを見せちゃいましょう!」
 テフラはぽんと手を打ち、魔法少女に変身する準備を始めた。実はテフラは男の子だが、それに気づいている精霊はいないようだ。学園で密かに活動していると噂されている魔法少女の杖……のレプリカを振りかざし、光の粒子に包まれたテフラは華麗に変身する!
「キラッと変身!魔法兎テフラくんなのですっ!」
「わー!かわいいー!魔法少女だー!」
「写真撮らせてー!」 
 ぱちぱちぱちぱち。精霊達、それに回りで見ていた学生達がテフラに拍手を送る。どうやらテフラの変身は好評のようだ。いつの間にか戻ってきていた丈華も、テフラと目が合い、微笑みを交わした。

●黄金の予感
「そういえば、貴方達は下にいる災魔について知っていますか?」
 テフラは精霊達に尋ねてみた。彼らはこの迷宮の住人だ。もしかしたら、災魔攻略のヒントを教えてくれるかもしれない。
「うん、知ってるよ!前にこっそり下に降りて見たことがあるんだ!なんか、金ぴかで手の形をした奴だったよ!」
「歯車の精のじいちゃんが言ってた!災魔は呪いのゴーレムだって!欲深い人間はすぐ黄金にされちゃうけど、心の清い人なら呪いがあまり効きにくいんだって!」
 口々に語る精霊達。その言葉にテフラはどきっとした。
「黄金に……!?」
 魅惑のキーワードにテフラの胸が高鳴る。だが、彼は決して黄金に目が眩んでいるわけではない。興味津々なのはあくまで黄金になる呪いの方である。テフラは実は石になったり氷になったりといった状態異常にかかるのが大好きな特殊な性癖の持ち主なのだ。
「気を付けて。戻ってきたらまた戦いのお話、聞かせてね」
「うん、ありがとう!行ってくるね!」
「ありがとうございます。強敵ですね。素晴らしい訓練になりそうなのです……!」
 丈華とテフラは精霊達に礼を言い、災魔のいる下の階層へと歩みを進めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 集団戦 『黄金の守護者『ミダスハンドゴーレム』』

POW   :    ミダス・キャッチ
【掴み取りによる拘束】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黄金化の呪い】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ゴーレム・コール
【もう一体のミダス・ゴーレム】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    ゴールド・ウェーブ
【本体】から【黄金色の波動】を放ち、【黄金化】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●黄金の守護者
 猟兵達は楽しい時間を過ごせて満足した精霊達に見送られ、迷宮の階段を下りて行った。ここが災魔の出現した階層だ。いよいよ災魔討伐訓練の本番が始まる。緊張を隠せない様子の学生達を後ろに庇いながら、猟兵達はゆっくりと迷宮の中を進んでいった。
 しばらくすると、黄金で出来た腕の形をした災魔がわらわらと迷宮の奥から飛び出してきた。
「あれは、ミダスハンド!あのゴーレムは侵入者を黄金にしてしまう呪いの使い手です!呪いにかかると『物欲・金銭欲が強い者』ほど早く黄金化していきます!気をつけて下さい!」
 学生達の代表、サラ委員長が猟兵やクラスメート達に警告した。
 肝が据わっていてしっかり武器を構える者、災魔相手に見栄切りを始める者、土壇場でパニクり、鞄をひっくり返している者、猟兵の背中から動こうとしない者、学生達の反応は様々だが、猟兵達は《臨時教師》として、彼らに災魔との戦い方を示さねばならない。さあ、英雄の戦いを見せてやろう。
アリス・セカンドカラー
◎♪
力が欲しいか?
ならば“貸して”やろう。
うん、貸すだけでこの授業限定よ。
ではでは、GET A GLORY! 頑張った子には御褒美に御奉仕してあげるわ☆
重要なのは黄金化を解除する封印を解く。
そもそもの黄金化を防ぐオーラ防御による各種耐性の強化。
回避率を高める感応能力(第六感/情報収集)。
連携を強化する戦闘知識に集団戦術。
戦線を維持するための継戦能力、この辺りかしら?
後は各生徒の得意分野に合わせて技能を貸しましょう。
さて、鬼ごっこMVPのゲルダちゃんには御褒美に私との合体技の権利をあげましょう。あら?ライバルとの共闘の末の合体技は物語でも盛り上がるシーンでしょ♪ふふ、本気で口説き落としたいわ♡



●ご褒美の時間
「きゃー☆」
 アリス・セカンドカラーは突っ込んできたミダスハンドゴーレムに掴まれ、一瞬で黄金像と化した。
「あ、アリス先生がやられた!?もうだめだ、おしまいだ!」
「『解呪』!だめ、効かない!』
 早くも絶望的な状況に頭を抱える学生達。回復魔法が得意な学生がアリスの解呪を試みたが、それも失敗に終わった。
 「まだよ!あいつを倒せば呪いは解けるはず!みんな、呪文で集中攻撃よ!『フレイム・アロー!』」
 それでも冷静さを保っていた『アリス先生ファンクラブ』会長レベッカは近くにいたクラスメートたちに号令をかける。クラスメートたちは即座にレベッカに習い、炎の魔法を一斉にアリスを黄金化した災魔に浴びせかける。
 ゴウッ!炎の矢が災魔に直撃し、火柱が上がる。真面目に訓練を受けているだけあり、皆なかなかの火力の呪文だ。野生の熊や下級災魔ぐらいなら一撃で倒せるだろう。だが、火柱を突っ切り、ミダスハンドゴーレムは猛然と学生達に襲い掛かった。学生達の火炎呪文はほとんど効いていなかったのだ。
「馬鹿な、無傷だと……!?」
 悲しいかな、ミダスハンドゴーレムは魔法金属製。猟兵ならばともかく、学生の魔力で傷つけられるような強度ではなかった。アリス先生ファンクラブのメンバーを「敵」と認識したゴーレム達は、猛スピードで突っ込んできた。
「ぐわー!」
 拳で殴りつけられ、壁に叩きつけられるもの。ミダスハンドに掴まれ、黄金像と化してしまうもの。ファンクラブメンバー達の戦線は瞬く間に崩壊し、次々と戦線離脱していった。
「この……!『ウインドハンマー』!」
『孔雀明王』ガルダは我が身に迫ったミダスハンドゴーレムに向け、風の鉄槌を放つ。彼女が最も得意とするこの魔法には、ヘビー級ボクサーの右ストレート並の威力がある。この一撃ならば――。
 しかし、ガルダの渾身の魔法は、災魔に僅かな傷すらもつけられなかった。ぶぅん、と風を切って手を振り、災魔は手刀でガルダを吹き飛ばす。
「く、ああ……!」
 ここまでか……。地面に倒れ伏したガルダは迷宮の天井を見上げる。
 ああ、こんなことなら真面目に訓練を受けておくんだった。私にもっと、力があれば。妄想じゃなくて、本物の力があれば、みんなを守れるのに……。
「力が欲しいか?」
 その時、ガルダの心の中に声が響いた。誰だろう。よく知っている声のような気もするが、思い出せない。だが、異様な迫力がある不思議な声だ。
「欲しい。力が欲しい!みんなを守れるだけ力が!」
「ならば“貸して”やろう。うん、貸すだけでこの授業限定よ。
 ではでは、『GET A GLORY』! 頑張った子には御褒美に御奉仕してあげるわ☆」
 アリスの声がガルダの心の中に響き、「アリス先生ファンクラブ」のメンバー達は光に包まれた。
「力が溢れて来る……!」
 立ち上がったガルダは魔法の杖を振り、ミダスハンドゴーレムを風を纏った一撃で打ち据えた。バキィン!と金属の砕ける音がし、ミダスハンドゴーレムの指がもげた。
「うおおおッ!」
 ガルダだけではない。倒れ伏していた『アリス先生ファンクラブ』のメンバー達はみな不思議な光に包まれて息を吹き返していた。ただ息を吹き返しただけではない。誰もが遥かにパワーアップしていたのだ。
 ガシィ!
 学生達の不意を突き、災魔は一人の学生に掴みかかった。『黄金化』の呪い。並の魔法使いなら瞬く間に動けなくなる強力な呪いだ。だが、捕まれた学生は呪いを打ち破り、強引にミダスハンドの拘束を脱出して反撃した。
 「前衛の魔法騎士は前へ!ミダスハンドは酸に弱いわ!後衛は『アシッド・レイン』の準備をして」
 統率の取れた動きでミダスハンドに反撃を試みる学生達。学生達はミダスハンドゴーレムと戦える力を手に入れていた。
「……すぐに直してあげる。『解呪』!」
 黄金化したクラスメートに解呪の呪文をかける少女。今度はすぐに黄金化が解除された。
「黄金化を解除する『封印を解く』。
 そもそもの黄金化を防ぐオーラ防御による各種耐性の強化。
 回避率を高める感応能力。
 連携を強化する戦闘知識に集団戦術。
 戦線を維持するための継戦能力、必要な能力はこの辺りかしら?」
 パワーアップした学生達の戦いぶりを空から眺めながら、アリスはうむうむと頷く。戦闘開始直後にいきなり黄金化していたアリスだが、もちろんあれは死んだふりだ。学生達に死力を尽くして戦わせる為、あえていったん戦線離脱したのだ。
「さて、鬼ごっこMVPのゲルダちゃんには御褒美に私との合体技の権利をあげましょう」
 ふわりと瞬間移動でゲルダの隣に出現したアリスは、念動力でミダスハンドゴーレムを三体ほど抑え込みながらゲルダに微笑みかける。
「やっぱりあれは残像だったか。この奇跡もアンタの仕業ね?」
 不機嫌そうな顔でアリスを睨むゲルダ。
「あら?ご不満?ライバルとの共闘の末の合体技は物語でも盛り上がるシーンでしょ♪」
「とんでもない力を貸しておいて『ライバル』とはよく言うわね……!いいわ!この借りはそれでチャラよ!」
「気の強い子ね♪ふふ、本気で口説き落としたいわ♡」
 ウインクしながら、アリスはゲルダの『風』の属性に合わせ、『発火』のサイキックを発動する。
「ウインド・ハンマー!」
「『オールラウダーサイキッカーの力、魅せてあげる♡』不可思議な超能力者(ワンダーサイキッカー)!」
 ボオッ!
 業火が生まれ、敵を包む。ゲルダの風に煽られたアリスの火は、群がっていたミダスハンドゴーレム達をまとめて焼き尽くしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・シフファート
能力的に炉心改造兵装を顕現した方が安全そうね。
ミダスゴーレムの分身を発現させた後、対物質属性の兵器を顕現すると同時に、『変換』と『波動』に関する属性を使い『変換する為の波動』に対して『ミュートのように打ち消す対の波動を放射』することで物質変換を無力化する。
それにより周囲の安全を確保しながら戦況構築を進めていくわ。
物質特効属性ガトリング砲弾兵装、シオウルタルタロスと能力逆波動発生消去音響兵器アンフェイタルラファエルの二つの偉容を以てね。



●ダブル・ウェポン
「アンタ達は離れていなさい。近くにいると巻き添えになるわよ」
 シャルロットは学生達を下がらせ、自らはゴーレム達の前に立った。ほぼ同時に、数体のミダスゴーレム達がシャルロット・シフファートに襲い掛かる。
 ギュンッ!
 風を切って放たれたミダスハンドゴーレムの拳がシャルロット目掛けて突っ込む。シャルロットは身をひねって攻撃を回避したが、代わりにミダスハンドに激突した迷宮の壁が拳型に凹み、黄金へと変化していた。
 ゴウッ!
 シャルロットは炎の電脳精霊術を発動し、間近に迫ったミダスハンドゴーレムの一体を焼き払った。しかし、ミダスハンドゴーレム達は仲間がやられたとみると、すぐに増援を召喚し、二倍に増えてしまった。
「能力的に炉心改造兵装を顕現した方が安全そうね」
 ミダスハンドゴーレム達は増援を召喚する能力を持っている上に、黄金化すれば一撃で戦闘不能になってしまう。ならば、黄金化の呪いを無効化しつつ、一気に仕留めるのが上策。シャルロットはそう判断し、二つの兵器を顕現させた。
「『暴虐の終焉は告死と鏖殺を宣する人の造りし神滅の剣にして弾丸。それは神界を砕く夕闇に染まる聖光に満ちている。『神戮人器・銀悠を奏するは臨界の聖剣にして魔弾なり(コレダー・イグナイター)』』
 一つは、物質特効属性ガトリング砲弾兵装、「シオウルタルタロス」。もう一つは、能力逆波動発生消去音響兵器「アンフェイタルラファエル」だ。
 ガルルルルルルル!
 巨大なシオウルタルタロスが唸り声を上げ、砲弾の嵐をゴーレム達に向かって吐き出す。物質を崩壊させる特性を持つ魔法の砲弾は、ミダスハンドゴーレム達をビスケットのように容易く貫通して粉々に粉砕した。だが、ミダスハンドゴーレム達は群体。一体でも残ればすぐさま骸の海から援軍を呼び出し、態勢を立て直せる強みがある。ミダスハンド達はシャルロットの呼び出したガトリング砲を脅威と見たのか、そちらに向けて一斉に黄金化の波動を放った。
 キィイイイイイイイイイイン!
 その瞬間、もう一つの召喚兵器であるアンフェイタルラファエルがジェット機のエンジンのような凄まじい音を立てて駆動し、黄金化の波動を無効化した。アンフェイタルラファエルの能力は敵の能力の強制キャンセル。ミダスハンドゴーレム達の『変換する為の波動』に対して、『ミュートのように打ち消す対の波動を放射』することで物質変換を無力化したのだ。ガトリング砲の奏でる砲撃音と音響兵器の超音波が折り重なって凄まじい騒音が鳴り響き、遠巻きに見ていた学生達は思わず耳を塞いだ。
「巻き添えって……こういうことかよ!」
 二体の兵器が奏でる物凄い騒音の中でも、シャルロット本人は平然としている。恐らく何らかの魔法で自分の耳をガードしているのだろう。
「おい、そんなこと言ってる場合じゃない。一体こっちに来たぞ!」
その時、シャルロットのガトリング砲が撃ち漏らした災魔の一体が人差し指を立てて学生の方へと突っ込んできた。学生達は慌てて魔法で迎撃の準備をするが、間に合わない!
 ガガガガガガ!
 しかし、ミダスハンドゴーレムが学生を掴む直前、シャルロットが召喚した二台目のシオウルタルタロスが背後から砲弾を吐き出し、災魔を粉砕した。
「先生ありがとう!」
「油断すると死ぬわよ。怪我は無いわね?……こっちにももう一機必要ね」
 ミダスハンドの残骸を踏んづけながら学生の側に着地したシャルロットは、再び大地を蹴って前線に戻っていった。
 シャルロットは愛想が無いようでいてしっかり学生の安全には気を配りつつ、ミダスハンドゴーレムの軍勢を薙ぎ払い続けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

テフラ・カルデラ
丈華(f01937)と同行
※アドリブ可
POW

ひゃわわわ…ホントにいますね…とりあえず皆さん落ち着いてください!
そうですね丈華さん!まずわたしは黄金像にされてしまった生徒さん達を戻さなくては…にゃーん♪

丈華さんが戦っている間にわたしは黄金像に変えられた猟兵さんや生徒さん達を戻してあげましょう!
はわわ!?丈華さんが捕まった!?助けなくちゃ…ってひゃわ!?わたしまで!?
このままじゃ黄金像に変えられてしまいます…だけど…丈華さんだけでも…
首まで変化したら…もう鳴けないのです…一か八かで…にゃー…ん…
(そのまま黄金像へと変えられる、丈華さんが戻るかはお任せ)


桐府田・丈華
【行動】
[テフラさん(f03212)と同行します]
「これで最後だね!気を抜かないように行くよ!」
迫る黄金の手を前に毅然と構えて戦闘準備
慣れない生徒さんを庇うように戦います
使用ユーベルコードはバトルキャラクターで他の猟兵さんと連携するように戦います
危なくなった生徒さんを庇うように戦うので敵を撃破るも油断して黄金像になってしまうかも?



●丈華&テフラVS黄金の腕!
「ひゃわわわ…ホントにいますね…とりあえず皆さん落ち着いてください!」
 真っ直ぐ突っ込んできたミダスハンド・ゴーレム達を見て、慌てる学生達に声をかけるテフラ・カルデラ。どうやらテフラ達の班の学生達はかなり経験が浅いようだ。戦力としてはあまり期待できないかもしれない。そして、精霊達に聞いた通りこの階層に巣くった災魔は黄金の腕型のゴーレム達だった。ということは、この災魔達の能力も恐らく......。ごくり。テフラは唾を飲み込んだ。
「これで最後だね!気を抜かないように行くよ!」
 学生達を庇うようにテフラの隣に立った桐府田丈華は、迫る黄金の手を前に毅然と構えて戦闘準備をした。
「出でよ!ボクの仲間達!」
 腕に固定したデッキに手を添え、カードを引き抜きながら、丈華はデッキのバトルキャラクター達を次々と具現化させていった。彼ら六十余りの【バトルキャラクターズ】たちこそ彼女の魂のカードであり、自慢の相棒だ。
《騎士》の大盾が突っ込んできた黄金の腕を受け止める。すかさず《魔法使い》の氷結魔法が黄金の腕を凍結させ、後列から躍り出た《忍者》が放った手裏剣がミダスハンドの全身に突き刺さった。さらに《僧侶》の神聖魔法が黄金の腕の防御力を下げ、《戦士》の鉄球がミダスハンドを粉々に打ち砕いた。
 M&Mのカードが生み出した幻とは違い、バトルゲーマーたる丈華の力により現世に実体として召喚された丈華の戦士達はフォーメーションを組んで次々とミダスハンドゴーレム達を撃破していった。
「桐府田先生すげえ!本当にモンスターを召喚してる!あの魔法俺も習いたい!」
「いけっ!ぶっとばせー!」
 バトルキャラクター達に見惚れ、歓声を上げる学生達。しかし、黄金の腕達の戦力は丈華の想定以上だった。ユーベルコードで二倍に増殖した黄金の腕達は、バトルキャラクター達の隙間を抜けてこちら側まで到達し、学生達に襲い掛かってきたのだ。
「うわあああ!」
 黄金化の波動に呑まれ、次々と黄金像と化す学生達。
「くっ!みんな、下がって!ここはボク達が食い止める!テフラさん、お願い!」
 丈華は大急ぎでバトルキャラクター達を呼び戻し、さらに合体させてより強大なキャラクターに進化させた。彼女のバトルキャラクター達は一心同体。合体させることでより強くなるのだ。
「そうですね丈華さん!まずわたしは黄金像にされてしまった生徒さん達を戻さなくては…にゃーん♪」
 テフラは丈華の言葉に頷くと、猫のポーズを取って可愛く鳴き声を上げた。彼は決してふざけているわけではない。テフラの『癒しの鳴き声』(カワイイネコサンイヤサレル)には傷や呪いを癒やす効果があるのだ。テフラの鳴き声を聞いた学生達は、黄金化を解除され、ほっこりした表情で復活した。
「テフラ先生、ありがとう!」
「治って良かったですっ……!」
 テフラが黄金化した学生達の解呪をしていたころ、丈華はミダスハンドに狙われている学生を庇って戦っていた。
「危ない!」
 黄金の腕に掴まれそうになっている小さな女学生を庇う為、丈華はミダスハンドの手のひらに大気を圧縮・加速して割って入った。しかし、ミダスハンドはニ体がかりでゴールキーパーのように丈華をキャッチしてその体を受け止めてしまった。そのまま体を鷲掴みにされ、丈華は脱出できずに黄金像と化していく。
「しまっ......!」
「はわわ!?丈華さんが捕まった!?助けなくちゃ…ってひゃわ!?わたしまで!?」
 丈華が黄金化したことに気を取られ、動きが止まったテフラは、ミダスハンドゴーレムの放った黄金化の波動をまともに浴びてしまった。テフラも足首からパキパキと、黄金像へと変化していく。自身の声で呪いに抗ってはいるが、あと数秒も保たないだろう。
「このままじゃ黄金像に変えられてしまいます…だけど…丈華さんだけでも…」
 テフラは最後の力を振り絞り、ありったけの声で丈華に向かって鳴き声を上げた。
「首まで変化したら…もう鳴けないのです…一か八かで…にゃー…ん…」
 パキン。テフラはついに完全に黄金像になってしまった。
「桐府田先生!?テフラ先生!?もうだめだ!みんな黄金になっちまう!」
 丈華、テフラの二人が黄金化してしまったことで、絶望に包まれる学生達。再びミダスハンド・ゴーレムの魔の手が学生達に迫る。しかし、その時ーー。
 豪華絢爛な鎧と剣を身に付けた輝く剣士がミダスハンドゴーレムを一刀両断した。この剣士は丈華の【バトルキャラクターズ】の集合体。テフラの癒しの声はギリギリ丈華に届いていたのだ。
「先生!体が!」
 しかし、丈華の体はところどころ黄金化したままだった。テフラの解呪はギリギリの状況だった為、完全には効果を発揮しなかったのだ。学生達は心配そうに丈華を見つめる。
「大丈夫!ボクはまだ戦える!テフラさん……ありがとう。すぐに戻すよ。こいつらを倒して。勝負はまだこれからだ!キミ達も油断しないで!」
 丈華は学生達を鼓舞するように元気よく声を張り上げた。そして、丈華は黄金像になってしまったテフラをそっと撫でると、再びデッキからカードを抜き、ミダスハンドゴーレム達と対峙するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レナーテ・フレンベルク

さて、遊びの時間はここまでよ
私も猟兵の端くれとして、しっかりと戦ってみせないとね
あとエレンたちが災魔に対してどう反応するにせよ、
彼女たちの事はしっかりと守らないといけないわね

■戦闘
ここはまず【UC】で喚びよせた霊たちを周辺に展開
私や生徒たちに襲い掛かろうとしているゴーレムを、
霊たちが放つ束縛の【呪詛】で金縛り状態にして
動きを止めてからヒルデの【怪力】で粉砕してあげるわ

波動については、あれも呪いの一種のようだし【呪詛】を
纏わせた死霊の障壁で相殺したり逸らすことができるかしら?
(【呪詛耐性】)

物欲に金銭欲は……正直そんなに興味はないわね
私はただ色々な世界を見て、誰かと楽しく過ごせればそれで……



●この世ならざる者達の盾
「さて、遊びの時間はここまでよ。
 私も猟兵の端くれとして、しっかりと戦ってみせないとね」
 レナーテ・フレンベルクはこちらへと進撃してくる災魔達を見ながら、気持ちを切り替えた。いよいよ訓練本番。ここからは決闘者ではなく猟兵として戦う時間だ。
(あとエレンたちが災魔に対してどう反応するにせよ、
 彼女たちの事はしっかりと守らないといけないわね)
 共に精霊と(カードで)戦った『闇の鎧』エレンや、近くにいる他の学生達を横目で見るレナーテ。彼らの実力は未知数だ。もしかしたら初めての実戦でパニックになるような子もいるかもしれない。
 レナーテは『迫り来る死霊の嵐』(ヴィルデ・ヤークト)を発動し、迷宮を彷徨う死霊達を呼び寄せると、学生達を守るように周辺に展開した。人間型の災魔なら死霊に恐れをなす者もいるが、ゴーレムには感情などないのか、死霊達に臆することなくこちらに向かってくる。
「先生、こっちに来るよ!どうしよう!?」
 実戦慣れしていないのか、一人の女学生が不安そうにこちらを見てきた。その隙を突き、ゴーレムは拳を握って女学生目掛けて突っ込んできた。
 しかし、先んじて展開していた死霊達が呪詛を放ち、災魔の金縛りにして空中で静止させる。レナーテはそのままボディガードである巨骸ヒルデに攻撃を命じ、拳で殴りつけてゴーレムを粉砕してやった。
「敵から目を逸らさない!」
「は、はいっ!」
 さて、学園で「問題児」と称されたエレンはというと、死霊に拘束された所を狙い、しっかり両手剣で災魔を撃破していた。彼女は他の問題児達とは違い、座学をフルプレートで受けたり、教師への態度が問題視されていただけで、実技系の訓練は真面目に受けていたそうだ。こういった実戦系の訓練は元々得意なのだろう。
 だが、戦い方は少々危なっかしい。頑丈な鎧に身を包んでいるせいか、防御はかなりお粗末だ。
「しまった……!」
 案の定、突っ込み過ぎて死霊のフォローが間に合わず、エレンは災魔に捕まってしまった。エレンはその巨大な手にがっしりと体を掴まれ、ぴきぴきと黄金化していく。
「死霊達!ヒルデ!お願い!」
 主の願いに応え、死霊がエレンを掴んでいた災魔に殺到した。呪詛で拘束した災魔にヒルデが掴みかかり、ミダスハンドを引き裂いてバラバラにする。さらにヒルデは怪力で慎重に黄金化した鎧をエレンから引っぺがした。どうやらフルプレートが幸いし、中身は無傷のようだ。
「面目ありませぬ……」
 ヒルデに救出され、ばつの悪そうな顔をする素顔のエレン。
「鎧があるからって油断してはダメよ。鎧が効かない攻撃をしてくる災魔もいるんだから」
 ヒルデを前に立たせ、エレンを庇うように隣に立つレナーテ。すると、ミダスハンドゴーレム達は接近戦は不利と判断したのか、黄金色の波動を二人に向けて放ってきた。
(あれも呪いの一種のようだし呪詛を纏わせた死霊の障壁で相殺したり逸らすことができるかしら?)
 レナーテは死霊を自分達の目の前に呼び集め、障壁を作り出した。直後、黄金の波動が、レナーテの作り出した死霊の障壁に直撃する。しかし、形ある物体にしか効力を及ぼさない黄金化の呪いは死霊達の怨嗟の声にかき消され、霧散してしまった。すかさずヒルデが災魔に反撃の一撃を叩き込む。ヒルデは浮遊霊達とは違い、骸を寄せ集めて造り出された実体ある死霊だが、彼女もこの世ならざる存在のせいか黄金化の呪いは効かないようだ。レナーテ達は死霊の障壁で身を護り、呪いが効かないヒルデがミダスハンド達を一方的に破壊していく。ほどなく彼女達の周辺にいた災魔達は駆逐された。
「一先ず、こんなところかしら」
「流石です。レナーテ殿。ヒルデ殿や死霊達には呪いは全くの無力でしたね。死霊には金銭欲や物欲はないということでしょうか」
 エレンはぺこりと一礼してから、レナーテに尋ねた。
「そうでもないわ。たまたまヒルデや呼び出した死霊達がそうだっただけよ。
 けれど、物欲に金銭欲は……私も正直そんなに興味はないわね。
 私はただ色々な世界を見て、誰かと楽しく過ごせればそれで……」
 死霊がこの世に留まる理由は様々だ。中には土地や品物に強く執着する霊もいる。だが、レナーテは物質にはさほど執着していない。彼女が望むのは、世界の美しさに触れたり、誰かと絆を育むことだ。例えば、生きている人間のカードゲーム仲間とか。
 ――訓練が終わっても、また時々様子を見に来ようかな。
 レナーテは教え子の顔を見ながら、そんな風に考えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エル・クーゴー
【ワイルドハント】
●WIZ


当機は対オブリビオン戦闘に高い適性を発揮します
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します


・【ウイングキャット『マネギ』】発動
・マネギを十数体ずつ敵へ適宜殺到させ、黄金化の呪いに対する盾として仲間の為に運用
・敵呪詛を人海戦術でシャットアウトする――
・これは猫属性デッキの再現だ!

・黄金化したマネギ達はマニピュレーターで拾って回り、アームドフォートの砲身に再装填
・そして黄金のマネギを黄金の砲弾として【援護射撃】にブッぱなす
・もう既に黄金ならば、この砲弾は黄金化の呪いも何も関係無く飛ぶ
・一度潰えた物を、弾丸として再び召し上げる――
・これは銃属性デッキの再現だ!


リダン・ムグルエギ
♪☆【ワイルドハント】
さ、勉強成果を早速試しましょ?
戦いも、M&Mも
同じよ

皆、自分が強いなんて思ってないわよね
M&Mで弱いモンスターで勝つならどうする?

装備で強化し
弱点属性を狙い(ミナを
力を重ね(ニコを
タイミングを見て一気に倒すのよ(そしてエルを見る

アタシは事前準備済の強化改造マントを配るわ
お代は決闘動画の公開許可でよろしく♪

強敵相手なら出方を伺い攻撃しないのも正解よ!
敵は増えるわ。昆虫軍団への対策は何だった?
アレも呪いよ。呪いデッキがされて嫌な対策を思い出して!
解説も大事。先生達の対策を見て、周りに伝えて

アタシは戦わず声をかけ続け
ゲームという『流行』を
現実の実力へに昇華する『操作』を試みるわ


白鳥・深菜
【ワイルドハント】♪☆

「私が強いのは知識欲とか誇示欲――モノには興味がない方なの」

いい?相手の傾向――属性である<黄金>だけど。
これはモノ――固体や液体には作用するけど、気体やエネルギーにはさほど作用しないと思われるわ。
現時点で相手の周囲の空気や光が黄金化してそうにいない、というのが推論の根拠ね。

つまり、その方向で術式を組む。
<黄金>の輝きとの相性を考慮すると、
属性の軸は輝きを奪う<闇>。さらに現象から気体の性質を導いて――

「希うは<闇>の<つむじ風>、望むは不可視触れずの漆黒の鎌鼬!」

――闇の風刃一閃!

さて。ここまで導けば有効打が打てるんじゃない?
自身の望むに姿に沿って、やってみなさい。


ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】
強欲なほど黄金に
んンッ、なんだかピンチ

お金は好きだけど黄金になるのはイヤ
究極完全態(真の姿)を解放し
蝶になって掴み掛かる手を躱しつつ敵を惹き付ける
臨時教師でも大事な生徒は絶対守ってみせる

飛翔中に迷宮の構造を把握し、地形を利用して回避
洞察鋭く攻撃の初動や射線を見極める

私が次第に大きくなっている事に気付いたかしら
そろそろ掴める大きさではなくなってきたわよ
今度は私があなたを掴む番!
大きな手に包み込んであげる

先の決闘でご機嫌取りした精霊の協力を得て
黄金が融解する超高熱の炎の属性魔法で溶かしちゃう
金塊みたいにできないかなぁ(こねこね

いいこと教えてあげる
弱点だって武器になるのよ!(ドン☆



●強欲な花屋!
「あれは、ミダスハンド!あのゴーレムは侵入者を黄金にしてしまう呪いの使い手です!呪いにかかると『物欲・金銭欲が強い者』ほど早く黄金化していきます!気をつけて下さい!」
 サラ委員長が警告した瞬間、【ワイルドハント】のメンバー、リダン・ムグルエギ、エル・クーゴー、白鳥・深菜の視線が一か所に集中した。視線を集めたのはこの場にいるもう一人のワイルドハントのメンバーにしてお花屋さん、ニコリネ・ユーリカさんである。彼女が人並み以上にガメつ……、商魂たくましいのはワイルドハントのメンバーには周知の事実であった。
「強欲なほど黄金に。んンッ、なんだかピンチ」
 ニコリネ本人も自覚があるのか、冷や汗をかく。けれど、だからといって逃げるわけには行かない。今の彼女はアルダワ魔法学園の《臨時教師》としてこの場に立っている。学生達に英雄としての範を示す為にも、仲間達や学生を置いて逃げ出すわけには行かないのだ。
「お金は好きだけど黄金になるのはイヤ」
 ニコリネはそう宣言すると、全身から黄金の光を放ち、美しきアゲハ蝶の翼を生やした姿へと変身した。これがニコリネの真の姿――「完全究極態」である。
「臨時教師でも大事な生徒は絶対守ってみせる!」
 ニコリネはふわりと飛翔し、ミダスハンドゴーレムを惹きつけて迷宮の奥へと逃げていく。物欲センサーでも付いているのか、ミダスハンドゴーレム達の多くはニコリネを追いかけて迷宮の奥へと消えていった。

●暗黒の精霊術士達!
「私が強いのは知識欲とか誇示欲――モノには興味がない方なの」
 『暗黒卿』トムと一緒にミダスハンドゴーレムを数体誘導しつつ、白鳥・深菜は言った。ミダスハンドゴーレムの呪いはお金やモノに執着が強い者に対して強く働くらしいが、深菜の良く知る約一名と違い、深菜はモノにはさほど執着はない。ミダスハンドの呪いも過剰に恐れる必要はないだろう。
「いい?相手の傾向――属性である<黄金>だけど。これはモノ――固体や液体には作用するけど、気体やエネルギーにはさほど作用しないと思われるわ。現時点で相手の周囲の空気や光が黄金化してそうにいない、というのが推論の根拠ね」
 深菜は冷静に、災魔の呪いの性質について分析する。
「なるほど、確かにそうです。災魔はニコリネ先生を追いかけながら黄金色の波動を放っていましたが、波動が直撃した壁しか黄金化していませんでした」
 暗黒卿トムは深菜の言葉に頷いた。もし災魔の呪いが何でもかんでも黄金にしてしまうようなものなら、このフロアはすでに黄金の海のような状態になっているはずだ。
「つまり、その方向で術式を組む。
 <黄金>の輝きとの相性を考慮すると、
 属性の軸は輝きを奪う<闇>。さらに現象から気体の性質を導いて――」
 深菜は周囲にいる精霊に働きかけ、精霊魔法を行使する。彼女が呼びかけたのは闇の精霊達。光を拒み、夜を導く暗き精霊――。ただし、集まった精霊の数は尋常ではない。並の術者ならば暴発して自身をも飲み込みかねない規模の、『災厄魔術』と呼ばれる危険な術式だ。
「希うは<闇>の<つむじ風>、望むは不可視触れずの漆黒の鎌鼬!
 ――闇の風刃一閃!」
 深菜の詠唱と共に無数の黒い風の刃が発生し、嵐の如き獰猛さでミダスハンドゴーレム達を切り刻んだ!ミダスハンドゴーレム達は術者である深菜に向けて黄金化の波動を飛ばすが、深菜の闇の刃は黄金化の波動を呑み込み、そのまま掻き消してしまった。
「さて。ここまで導けば有効打が打てるんじゃない?
 自身の望むに姿に沿って、やってみなさい」
 深菜はトムに目配せする。『暗黒卿』を名乗るだけあり、トムも闇の魔術を得意としている。トムは周囲の闇の精霊を集め、全力で闇の魔法をミダスゴーレムに向けて放った。
「『サモン・ダークネス・エレファント』!」
 トムの呪文と共に闇が黒い巨象を象り、ミダスハンド・ゴーレム達をまとめて踏みつぶした。

●悪夢再び!マネギは実在した!?
「当機は対オブリビオン戦闘に高い適性を発揮します
 これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します」
 エルは専用携行型固定砲台【L95式アームドフォート】を展開し、砲弾をミダスハンドゴーレムに向けてぷっぱなした。大気が震えるほどの衝撃と共に、猛スピードで砲弾が飛び、ミダスゴーレムの群れに風穴を空ける。直撃した災魔はおろか、近くにいて爆風に巻き込まれた災魔までも粉々だ。ミダスハンドゴーレム達は数を減らしつつも、黄金の波動を放ってエルの無力化を試みる。
 しかし、エルはユーベルコードで虚空から友軍――羽生やしたデブ猫みたいな機械猫の軍勢を召喚した。エルはそのまま呼び出した友軍を盾にしてミダスハンドゴーレムの『ゴールド・ウェーブ』を遮断した。
「あれは……エル先生のデブ猫!実在したの!?」
 驚きの声を上げる『呪殺人形』キャンディ。そう、これらはエルの追加兵装、ウイングキャット『マネギ』(エレクトロレギオン・オルタ)。カードではなく実在する異界の兵器だ。マネギ達は十数体ごとの群れとなり、災魔達に踊りかかっていく。災魔が波動を放つ度にマネギ達は黄金の招き猫と化し、地面に転がっていくが、彼らは囮であり、肉壁ならぬ猫壁なので問題ない。
 ドカンドカンドカンドカン!
 エルはマネギの壁に隠れたまま、アームズフォートから放つ砲弾で次々とミダスハンドゴーレム達を撃墜していった。
「敵の呪詛を人海戦術でシャットアウトする――。
 これは猫属性デッキの再現だ!」
 エルの戦術を看破したキャンディは叫んだ。まさか実戦であの悪夢のような決闘を再現するとは!
 さらに、エルはウイングマネギをビットの如く周囲に対空させながら、高速で迷宮内を飛翔し、アームズフォートに増設されたマニピュレーターを器用に動かして黄金化したマネギを次々と回収していく。
 彼女は黄金に目が眩んだのだろうか?否、そうではない。彼女は回収した黄金マネギ達をアームズフォートの砲身に詰めると、なんと質量弾としてマネギ達をミダスハンドゴーレム達に向けて射出した。黄金のデブ猫はミダスハンドに直撃し、互いに黄金の破片を撒き散らす。
「もう既に黄金ならば、この砲弾は黄金化の呪いも何も関係無く飛ぶ。
 一度潰えた物を、弾丸として再び召し上げる――。
 これは銃属性デッキの再現だ!」
 またしても自身が喰らわされた戦術を再現するエルのドS戦術にキャンディは叫んだ。トラウマを刺激された形のキャンディだが、エルは特にキャンディに対する悪意はない。というかミレナリィドールなのでそういう感情自体が乏しい。たまたま物量作戦・呪詛型という災魔の性質がキャンディの決闘戦術とかみ合っているだけなのであった。ある意味、あの決闘はエルにとってもいい訓練だったのかもしれない。

●決着の時!巨神降臨!
「さ、勉強成果を早速試しましょ?
 戦いも、M&Mも同じよ」
 仲間達が次々に災魔を撃破していく姿を横目に見ながら、学生達に微笑みかけるリダン・ムグルエギ。ワイルドハントのメンバーが絶賛奮戦中だが、ミダスハンド達の数はまだまだ多い。ここを凌ぐにはリダンや学生達の力も必要だ。
リダンはユーベルコード『トレンドコンダクター・GOATia(ハヤリハヤギノテノナカ)』を発動した。これはゲームという『流行』を現実の実力に昇華する『操作』を試みであり、この場にいるゲームを楽しんでいた者達の戦力を底上げする為の術だ。
「皆、自分が強いなんて思ってないわよね
 M&Mで弱いモンスターで勝つならどうする?」
 リダンは学生達に質問した。カードゲームにおいて弱いモンスターで相手に勝つにはどうすればいいか?
「相手のデッキに弱いモンスターを仕込めばいいんだね!」
 『昆虫博士』グラスは挙手し、自身満々に答えた。
「盤外戦術以外で」
 リダンは問題児に対して菩薩のような微笑みを浮かべた。
「自分のモンスターを強化するか、相手の弱体化を狙います」
 『俺より弱い奴に会いに行く』改め『竜騎兵』(ドラグーン)ドランもリダンの問いに回答する。こちらが模範解答だろう。
「うん、正解ね」
 リダンは戦っている仲間達に視線を送りながら、ドランに解説する。
「強敵と戦う時はこちらの戦力を装備で強化!」
 リダンが指を振ると、「GOATia」のロゴが刻まれた、強化改造マントが学生達を包む。これはファッションデザイナーであるリダンの特製強化マント。今回のものは呪詛全般に対して強い抵抗力を持つ逸品である。災魔の黄金の波動が直撃しても、数秒は保ちこたえるだろう。
「お代は決闘動画の公開許可でよろしく♪」
 ウインクするリダン。性能を考えれば非常にリーズナブルなお値段だ。
「リダン先生!こっちに来たぞ!」
 慌てて杖を構える学生達。リダンは慌てず、冷静に学生達にアドバイスを送る。
「強敵相手なら出方を伺い攻撃しないのも正解よ!
敵は増えるわ。昆虫軍団への対策は何だった?」
「弱点をメタる」
 ドランが答える。その言葉にリダンは頷き、深菜の方を指差した。そちらでは、深菜とトムが黄金の波動の弱点である闇属性の精霊魔法を使い、呪いを封じ込めて有利に戦っていた。それに習い、ドランも闇の防護壁を展開し、ミダスハンドゴーレム達の呪いの波動を防御する。
「アレも呪いよ。呪いデッキがされて嫌な対策を思い出して!」
「キャンディが嫌がってたのは……これか!」
 グラスは大地の精霊に呼びかけ、羽虫を大量に発生させた。攻撃は望むべくもないが、黄金の波動を遮る障壁にはなるだろう。ついでに虫が黄金化したら女王様への貢ぎ物にしよう。グラスの機転にリダンは再び満足そうに頷いた。
「そうよ。敵の弱点属性を狙い、力を重ねる」
語りながら、また共に戦っている仲間達に視線を移すリダン。黄金属性の弱点を突き、闇の刃で敵を切り刻んでいるミナ。ウイングキャットを次々と召喚し、物量で呪いを跳ね返しているエル。そして――。
リダンは迷宮を飛び回りながら、一回りも二回りも大きくなって帰ってきたニコリネを指差した。
「――タイミングを見て一気に倒すのよ」
「でかっ!」
 その余りの巨体に、驚きの声を上げるドラン。ニコリネは迷宮の天井につっかえそうなギリギリのサイズまで巨大化していた。これではまるで特撮の怪獣か、自由の国のシンボルだ。
「私が次第に大きくなっている事に気付いたかしら?
 そろそろ掴める大きさではなくなってきたわよ。
 今度は私があなた達を掴む番!
 大きな手に包み込んであげる」
 ニコリネが使用しているユーベルコードは『Over Florist(オーバーフローリスト)』。彼女のがめつい心の感情を爆発させることにより、比例してサイズと戦闘力を増大させるパワフルなユーベルコードだ。敵は黄金製であり、黄金の呪いの使い手。ニコリネのがめつい心は爆発し過ぎてもはやメルトダウン寸前だ。ちなみにニコリネの警護に回っていたウイングマネギの数は全体の実に三分の一。エルの慈しみ(あるいは正確な戦況予測)を一身に受けた形である。
「また一段と美しい……!さすがは女王様!」
 巨大化したニコリネを見上げ、憧憬の視線を送る昆虫博士グラス。
「女王ではないわ!女神よ!」
 態度までXLサイズになったニコリネはびしっとポーズを取りながら、そこら中の火の精霊をかき集める。この階層の精霊だけではない。ちゃっかり連れて来ていた一つ上の階層でご機嫌取りをした精霊達まで一緒だ。
「女神の力を見せてあげる!『ゴッデス・バタフライ・グリード・バーニング』!」
 ニコリネの翅から巻き起こった超高熱の炎がミダスハンドゴーレム達を包み込み、ドロドロに融解させていく。消し炭にしてしまってはもったいないので、形を失う程度の火力に留めることも忘れない。
「いいこと教えてあげる。
 弱点だって武器になるのよ!」」(ドン☆)
 ウインクした後、融解したゴーレムに熱い視線を注ぐニコリネ。訓練が終わったら残骸をガメて金塊にする気満々だ。まさに強欲の勝利である。その姿を横目に見ながら、リダンは学生達に号令をかける。
「えーと。訓練はまだ終わっていないわ。このあたりの災魔は全滅したようだけど、他の班の討ち漏らしが来るかもしれないから最後まで油断しないこと!」
 リダンは元問題児達に親指を立てる。その言葉に、元問題児達は元気よく
「「はい!」」
 と返事をしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェルト・ユメノアール
いよいよ実戦!
みんなの前で少しはカッコいい所を見せないとね!

敵が数で来るならこのカードで勝負だよ!
稀代の奇術師よ!その技巧にて想いを集め、闇を打ち払う光に変えよ!
カモン!【SPソウルジャグラー】!

黄金化は危険、隙を窺いつつ複数の『トリックスター』を『投擲』して相手を牽制
もちろん、逃げてばかりじゃないよ
投擲の中に『ワンダースモーク』を混ぜて、相手を攪乱した隙に一気に接近、交差するように切り裂き撃破する

この瞬間、ソウルジャグラーの効果発動!
敵ユニットを撃破した時、その魂を吸収して戦闘力がアップする!
ソウルエナジーチャージ!
魂で作られた光弾をジャグリングのように操り敵に『投擲』
敵集団を一気に殲滅だ!



●逆転の道化師
「いよいよ実戦!
 みんなの前で少しはカッコいい所を見せないとね!」
 フェルト・ユメノアールはぴょんとジャンプし、華麗に宙返りしながらミダスハンドゴーレム達の前に降り立った。ここまでの道のりは順調だったが、ここからがいよいよ本番。臨時教師として、学生達に災魔との戦い方を示さねばならない。
「敵が数で来るならこのカードで勝負だよ!
 稀代の奇術師よ!その技巧にて想いを集め、闇を打ち払う光に変えよ!
 カモン!【SPソウルジャグラー】!」
 カッ!
 フェルトが腕に装着されたソリッドディスクに一枚のカードをセットし、魔力を込めると、フェルトは眩い閃光に包まれた。だが、取り立てて彼女に変化はない。モンスターを召喚するカードではないようだが......?
 学生達が遠巻きにフェルトと災魔達の様子を窺っていると、ミダスハンドゴーレム達がフェルトの元に到達した。ゴーレムは風を切り、その巨大な手のひらでフェルトにつかみかかってくる。フェルトはあっという間に無数の災魔達に囲まれてしまった。
「おっと!わっと!」
 フェルトはとっさに側転して身をかわし、跳ねるようにして身を起こすと、黄金色に輝く派手な四本のダガーを指の間に挟み、次々と災魔達に向けて投擲した。さらに、態勢を立て直しながら災魔達を牽制すべくダガーを前後左右に投げつけていく。黄金化の能力は危険だ。接近される事はできれば避けたい。フェルトはダガーで黄金の災魔達を牽制しつつ身をかわし、壁を蹴り、距離を保ち続けていた。
 カンカンカンカンッ!
 金属音の衝突音が鳴り響く。ミダスハンドゴーレム達は手のひらで払いのけるようにしてフェルトの【トリックスター】をはたき落としていた。やがて災魔達は延々と飛来するダガーをうっとおしがったのか、手招きするような仕草をすると、虚空から新たな災魔を呼び寄せた。【ゴーレムコール】のユーベルコードである。依然、災魔に囲まれたままの状態であるフェルトの様子を学生達はハラハラした様子で見守っていた。
 ポンッ!
 突然コミカルな音を立て、災魔達の周囲がカラフルな煙に包まれた。フェルトがダガーに混ぜて【ワンダースモーク】を投げつけたのだ。フェルトは災魔が彼女の姿を見失った一瞬の隙を突き、姿勢を低くして一気に距離を詰めた。災魔の一体に肉薄したフェルトはすかさず【ハートロッド】を剣へと変形させると、交差するように切り抜け、ミダスハンドゴーレムの体を真っ二つに断ち割った。
「この瞬間、ソウルジャグラーの効果発動!
 敵ユニットを撃破した時、その魂を吸収して戦闘力がアップする!
 ソウルエナジーチャージ!」
 『<ユニットカード>SPソウルジャグラー』(スマイルパペット・ソウルジャグラー)。フェルトが今回使用した技はモンスター召喚技ではなく、彼女自身にカードの効果を纏うタイプの技だった。戦いの前にセットしていたカードの発動条件が今満たされ、彼女の手のひらに幾つもの光の玉が生まれる。これは彼女が倒した災魔の魂だ。フェルトは光弾をジャグリングのように両手を行き来させると、フェルトを包囲するように宙に浮かんでいた災魔達に向けて光弾を次々と投げつけた。
 ドドドドドドドドン!
 放たれた金色の光弾が災魔達に着弾し、ミダスハンドゴーレム達は残らず爆砕した。辺りにいた災魔達は全滅だ。まさに逆転劇である。
 安全を確認し、フェルトが学生達に大仰な仕草で一礼すると、学生達の拍手喝采が巻き起こったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天樹・咲耶
表人格の咲耶

「まったく、カードゲームしてたと思ったら、いきなり災魔との戦いとか、一体どうなってるんですか!?」(臨時教師のことは知らない咲耶

ミダスハンド……
黄金化の呪いですか……
学生たちを守りながら戦うのは骨が折れそうな相手ですね……

「こうなったら仕方ありません。
これだけは使いたくなかった奥の手なのですが……」

心の中のサクヤに力を貸すよう語りかけます。

『ふふ、どうやら、私の力を欲しているようね!
いいわ!
我が右手に封じられしアビスドラゴンの力、貸してあげるわ!』

【封印・解放】によりリボルバー拳銃に邪竜の力を宿して、災魔に向けて放ちます。

『「これが、私たちの本当の力ですっ!」』



●災厄の銃身
「まったく、カードゲームしてたと思ったら、いきなり災魔との戦いとか、一体どうなってるんですか!?」
 迫り来る黄金の腕に向かってリボルバーを乱射しながら、天樹・咲耶はぼやいた。臨時教師としてアルダワの学生と共に災魔討伐訓練に赴いたことになっている咲耶だが、いまだに勝手にこの依頼を受けた裏人格であるサクヤからは説明がない為、自分が臨時教師になっていることも把握していないままなのであった。
「自宅でごろごろしていたと思ったらいつの間にか迷宮にいて、知らない男の子にカードゲームを挑まれた。やっつけたと思ったらなんやかんやで災魔と戦わされることになった」
 これが彼女が把握している状況の全てだ。巻き込まれ型のロボットアニメの主人公でももうちょっとちゃんと状況説明を受けるだろう。
「もう!学生もいるから逃げるわけにも行かないし!」
 バンバンバン!
 突っ込んでくる災魔の拳を見据え、咲耶は破魔の力を籠めて四十五口径を連射した。
「オブリビオンを撃ち抜く弾丸、受けてください!」
 銀の弾丸がミダスハンドゴーレムの体に六発の穴を穿ち、ミダスハンドゴーレムは停止した。とりあえず一体撃破だ。
 ゴウッ!
 しかし一体倒したと思ったのも束の間、後ろから新手のミダスハンドゴーレムが掴みかかってきた。咲耶は脚から災魔の方へと飛び込み、スライディングで下に潜り込んで攻撃を回避したが、制服の裾を少しちぎられてしまった。巨大な黄金の腕は呪いで黄金化した咲耶の制服の欠片をぽいと投げ捨て、再び咲耶に向き直った。
「ミダスハンド……。黄金化の呪いですか……。
 学生たちを守りながら戦うのは骨が折れそうな相手ですね……」
 咲耶はリボルバーに弾丸を再装填しながら、沈痛な面持ちで戦術を思案する。攻撃が効かないわけではないが、かといって一撃で倒せるほどやわな相手でもないし、災魔の数も多い。自分一人なら時間をかけて少しずつ数を減らしていく戦術も可能だが、厄介なことに今この場には未熟な学生がたくさんいるのだ。ゆっくり戦っている間に黄金化させられてしまってはまずい。解呪とかできないし。
 咲耶は優秀な頭脳をフル回転させていくつもの戦術を検討してみたが、今この場で学生を守りつつ戦える戦法となると、残念ながらたった一つしか思い浮かばなかった。
「こうなったら仕方ありません。
 これだけは使いたくなかった奥の手なのですが……」
 咲耶は精神を集中し、己の中にいるもう一人の人格、「サクヤ」へと呼びかけた。
「サクヤ……サクヤ……私の声が聞こえますか……私に力を貸して下さい……」
 すると、さっきまで(状況説明もせずに)黙りこくっていたサクヤから応答があった。
『ふふ、どうやら、私の力を欲しているようね!
 いいわ!
 我が右手に封じられし邪炎竜アビスドラゴンの力、貸してあげるわ!』
 ノリノリで咲耶の呼びかけに応えるサクヤ。どうやら波長の合う学生達と遊べて今日はゴキゲンのようだ。……この永遠の中学二年生に借りを作るのは癪だが、背に腹はかえられない。私の内に眠るUDC・「アビスドラゴン」はサクヤにしかコントロールできないのだ(実のところ、そのアビスドラゴンは午前中に一度サクヤのコントロールを離れて地上で暴走しかけたのだが、それは咲耶の預かり知らぬ話であった)。サクヤを通じて、咲耶の握っている拳銃にUDCの力が満ちていく。
「なんだっ!?この邪悪な魔力は!?」
 咲耶の近くでミダスハンドと戦っていた学生がただならぬ殺気と凶兆を孕んだドス黒い魔力を感じ取り、驚愕に目を見開いた。今交戦中の災魔達も恐ろしい敵だが、これはもっとヤバい。この魔力の源は、まるでこの世の全てを呪う殺意の塊のような何かだ。
 学生が殺気を感じた方に恐る恐る目をやると、そこには漆黒の巨大なバレルの拳銃を両手で構えた咲耶が立っていた。
「『封印・解放!これが、私たちの本当の力ですっ!』」
 咲耶の喉が二人分の声を紡ぐ。次の瞬間、咲耶の拳銃から黒い焔の竜が解き放たれ、直線状にいた災魔達を迷宮の壁ごとごっそり焼失させた。

成功 🔵​🔵​🔴​

緑川・小夜
◎#
[WIZ]

黄金に変えるね…趣味の悪い成金のような真似をしてくる輩には、遠慮はいらないわね

選択UC発動。鈴を鳴らし、分身16体を生み出すわ

そして、折角下僕になったのだから、ミツルギにはわたくしの美しい戦いを側で見る権利をあげる。僅かでも自分の糧にすることね

とりあえず、一体をミツルギの護衛用に残して、分身達を一気に先行させて攻撃していくわ。

分身達はわたくしの盾の役割も兼ねてもらう。こうして、敵の攻撃で黄金化しても、わたくしが無事なら黄金になった分身はまた元の分身に生み直すことができるのだから

そうして、接近した敵には、「特注の鉈」と、「手持ちの鈴」を振っての【衝撃波】で攻撃するわ



●美しいことは罪?
「黄金に変えるね…趣味の悪い成金のような真似をしてくる輩には、遠慮はいらないわね」
 緑川・小夜はミダスハンドの姿を見て眉をしかめながらそう呟く。小夜は貴金属や宝石などの装飾品にはうるさいのだ。造形美、持ち主、置き場所……。財宝はデザインやふさわしい舞台が伴ってこそ。何でもかんでも金ぴかにすればいいというものではない。小夜は懐から鈴を取り出すと、リィン、と鳴らした。すると、たちまち小夜の姿が蜃気楼のようにぼやけ、彼女は十七人に分身した。
「おお……小夜先生が増えた!」
 感嘆の声を上げるミツルギ。
「折角下僕になったのだから、ミツルギにはわたくしの美しい戦いを側で見る権利をあげる。僅かでも自分の糧にすることね」
「感謝の極み!」
 上の階でのやり取りで下僕認定したミツルギに向けて宣言する小夜。その言葉に、ミツルギは恭しく頭を垂れた。元々育ちのいい坊ちゃんのせいか、小夜に傅くミツルギの姿は妙にハマっていた。その分を弁えた態度に小夜は鷹揚に頷くと、ミツルギの護衛に分身の一体を残し、特注の剣鉈と鈴を携えて災魔の群れへと飛び込んでいった。
 リィン……。
 軽やかな鈴の音と共に、音の塊がミダスハンドゴーレム達に向かって飛んでいく。小夜の鈴から放たれたのは、不可視の破壊音波だ。直撃を受けたゴーレムの体にビシリと罅が入る。ミダスハンドは小夜の衝撃波の威力に耐えきれず、真ん中から真っ二つに破砕した。
 ミダスハンド達は小夜に反撃すべく、一斉に黄金化の波動を放つ。波動を受けた小夜の分身達は、たちまち呪いにより黄金の彫像となった。しかし、小夜が念じると即座に黄金の彫像は自分の色を取り戻し、再びミダスハンド達を包囲した。
「無駄ですわ。わたくしが無事なら黄金になった分身はまた元の分身に生み直すことができるのだから」
 ミツルギの隣にいる小夜がくすりと笑う。
 小夜の『阿羅漢(アルハット)』は『無機物』から自身の分身を生み出すユーベルコード。呪いが分身を「黄金化」するだけならば、小夜の仙力が続く限り戦うことができる。小夜は分身達を黄金化の波動からの盾として利用しながら、次々とミダスハンドゴーレム達を粉砕していった。
(しもべは無事かしら)
 小夜が下がらせているミツルギの方を振り向くと、ミツルギはピンチになっていた。見れば、いつの間にかミツルギは災魔の群れに包囲され、隣に残しておいた自分も黄金の彫像となっていた。
「お、おわあああっ!?せんせー!かむばーっく!」
 半泣きで黄金化した小夜をゆするミツルギ。
「破っ!」
 本物の小夜は剣鉈を振るいながらミツルギの所に舞い戻り、見事な唐竹割でミダスハンドゴーレムを一刀の元に切り捨てた。
「何を狼狽えているのです。私の下僕ならば堂々としていなさい。まだ甘えが抜けないようね」
 分身を生み直しながら、ミツルギを叱責する小夜。
「面目ありません!」
 ちっこい小夜に説教されながらも、どこか嬉しそうなミツルギ。どうやら変なものに目覚めてしまったようだ。
「構えなさい。次が来るわ。わたくしが力を貸してあげているのだから、災魔の一体ぐらいは仕留めて見せなさい」
「はい!小夜先生!」
 小夜は(変な性癖に)覚醒したミツルギを庇いつつ、ミダスハンドゴーレム達を次々と蹴散らしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・エクル
【☆】♪

戦いの腕に自信のある者は前に!戦闘が不得意な者はボクら猟兵の後ろへ下がってください。安全な距離からみんなの援護をお願いします

【メカニック】知識を活かしてボクの装備品「竜核結晶炉」の量産型「スチームガントレット」を複数機持ち込み、戦闘前に使い方をレクチャーしておくよ

【スチームガントレット】
腕部装着型の機械手甲、手の甲に円型の盾を装着。盾を通じて防御した様々なエネルギーを吸収して蓄積、掌の噴出口から超高圧の蒸気に変換して放出する

【ユーベルコード】
ミダスハンドゴーレムに手を動かすな、と竜言語を用いて命じて束縛します

戦闘は生徒が動きやすいように援護にまわり、敵の討伐を手助けするよ



●訓練終了!さらば3-M、また逢う日まで!
「戦いの腕に自信のある者は前に!戦闘が不得意な者はボクら猟兵の後ろへ下がってください。安全な距離からみんなの援護をお願いします」
 七那原・エクルから学生達へと指示が飛ぶ。大量にいたミダスハンドゴーレム達も猟兵や学生達の奮闘の甲斐あって残りは数体となっていた。決着の時は近い。
『ミダスハンドゴーレムに命ずる!手を動かすな!』
 エクルが竜言語(ドラゴンロアを用いてミダスハンドゴーレム達に命令を下すと、ミダスハンド達の体にドラゴンの大顎が出現し、その体に食らいついて身動きを封じた。『貪食なる竜頭』。拘束用のユーベルコードだ。
「今だ!高圧蒸気発射!」
 学生達は装備した機械盾から一斉に圧縮した蒸気が放ち、エクルが拘束している災魔をウォーターカッターのように溶断した。この装備はエクルが学生の強化用に幾つか用意し、事前に使い方をレクチャーしておいた多機能型機械手甲【スチームガントレット】だ。エクル自身の装備である【竜核結晶炉】の量産仕様ゆえに本家と比べて出力は落ちているが、それでも十分に実戦に耐えうる優秀な装備である。
 ギュイン!
 風を切って飛ぶ黄金の腕。エクルの拘束を免れたゴーレムの一体が拳を握り、学生目掛けてパンチを繰り出したのだ。
「きゃあ!」
「危ない!」
 ガキィン!
 不意を打たれた学生と災魔の間に割って入り、スチームガントレットの盾部分でゴーレムの拳を受け止めたのはサラ委員長だ。
「スチーム・ブラスト!」
 サラは激突で生じた運動エネルギーを使って圧縮蒸気砲(技名はサラ自身が命名)を放ち、すかさず反撃した。このスチームガントレットは手の甲部分に取り付けられた円形の盾部分を通じて防御した様々なエネルギーを吸収して蓄積、掌の噴出口から超高圧の蒸気に変換して放出する仕組みなのだ。それは何もエネルギー波のような攻撃に限らず、激突によって生じた衝撃すらも例外ではない。
「そうだサラ!なかなかうまいね!」
 エクルはスチームガントレットの機能を使いこなしているサラを誉めながら、竜核結晶炉と空飛ぶ【スートの紋章四剣】を操り、災魔達を一箇所へと追い込んでいく。今回は学生達の成長を促す為、エクル自身はサポートに徹するつもりだ。
 エクルは竜核結晶炉から蒸気を拡散して放出し、風圧で災魔達をまとめて迷宮の壁に叩きつけた。生き残りの災魔達が全て迷宮の一画へと固まったのを確認したエクルは、再びドラゴンロアでミダスハンドゴーレム達の動きをまとめて封じると、学生達に最後の指令を出した。
「さあ、これが最後だよ!君達の手でとどめを!」
「エクル先生、感謝します!みんな、合体魔法行くわよ!『サンダーボルト』!」
 サラの号令と共に、エクル班全員の魔力を結集した特大の雷が放たれる。稲光の轟音と共に閃光が蒸気に濡れた黄金の災魔達を撃ち抜き、一体残らず黒焦げにした。災魔はこれで全滅。これで戦闘訓練は終了だ。エクルはバイザーを上げ、学生達にサムズアップした。
「先生方!ありがとうございました!」
 学生達は深々と猟兵達に頭を下げる。彼らが今回の訓練で得たものは大きい。英雄への道は果てしなく遠いが、3-Mの学生達は臨時教師との交流や冒険の経験を活かし、それぞれの道を進んでいくことだろう。たまには猟兵達も様子を見に来てあげるのもいいかもしれない。決闘者達の絆は世界を超えて繋がっているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月02日


挿絵イラスト