グリードオーシャン。
異世界から落ちてきた島々を巡り海賊達が覇権を争う、戦乱に満ちた海。
荒れ狂う海流によって交流を絶たれた島々は、それぞれ独自の文化を有している。
そんな島々の中には、そもそも「島」ですらないものすら珍しくはなく……。
「……つまりは、『スペースシップ』であるな。無人島サイズの移民船だ」
グリモアベースにて猟兵達を迎えたツェリスカ・ディートリッヒ(熔熱界の主・f06873)は、愛用の椅子にゆったりと腰掛けたままそう説明する。
「スペースシップワールドからグリードオーシャンへ漂着した宇宙船がそのまま島として定着し、生存者の子孫が暮らしているというケースは既にいくつか報告があるようだ。
此度、汝らにはそのひとつ『ネビュラ島』と呼ばれている場所へと向かってもらう」
投影された映像によると、元々はドーム内に自然環境を再現した船だったようだ。
だが遙かな時を経たせいか天蓋は半壊し、本来の意味での自然が育まれている。
住民達はみな宇宙移民の末裔で、今では地上生活にすっかり適応しているようだ。
「島では銀河戦争の物語が英雄譚として残り、今でも住民達の文化を支えているらしい。
一見すれば平和そのものだが、無論、本当に平和なら汝らをこうして呼びはせぬ」
グリードオーシャンにおけるグリモアの予知は未だ限定的だが、それでも今回の事件の首謀者は突き止められた。『殺戮航海士ヴェノム・サーペント』と名乗る元深海人のコンキスタドールが、人知れず配下を連れてネビュラ島に潜入しているらしい。
「女性的な言葉遣いで話す美青年といった風貌だが、本性は卑劣にして狡猾だという。
加えてその目的が不味い……奴の狙いは『移民船の再起動』なのだと判明した」
いくらかつては宇宙船だったとはいえ、今のネビュラ島を再び起動することは、その上で暮らす全島民の命と文明とを根こそぎ破壊し尽くすことに他ならない。
ヴェノムが島の中枢に辿り着くより先に、彼の野望を阻止する必要があるだろう。
「テレポートで直接転送できれば話は早いが、知っての通りあの世界では転移が使えぬ。
汝らは鉄甲船で直接上陸し、島民達と交流しながら敵を追ってもらうことになるな。
もっとも、住民に危険を伝えればパニックを引き起こしかねん。事は穏便に頼むぞ」
当時のスペースシップワールドの文明は既にほぼ失われているとはいえ、島のことを一番よく知っているのは現地の人々だ。交流することで得られるものもあるだろう。
「ある意味では、星の世界の民がようやく手に入れた大地だ。救ってやってくれ」
ツェリスカはそう言って目配せし、鉄甲船へと向かう猟兵達を見送ったのだった。
滝戸ジョウイチ
お久しぶりです、滝戸ジョウイチと申します。
今回は海と戦乱の世界ことグリードオーシャンが舞台です。
●シナリオ概要
鉄甲船で上陸した猟兵達が島民達と交流しつつ情報収集するのが第一章。その後の流れは第一章の結果次第で若干変化しますが、第二章では『殺戮航海士ヴェノム・サーペント』の配下との集団戦。第三章がヴェノム本人との戦闘となります。
●ネビュラ島について
正確には島ではなく、スペースシップワールドから流れ着いた宇宙船です。移民船として内部に自然環境を再現したり豊富な資源を持っていたのが幸いしたのか、現在では人工物が土台とは思えないほど自然豊かな島となっています。島民達はみな当時の移民船クルーや宇宙移民の子孫で、その出自からか今でも星の世界の物語を語り継ぎ、当時の英雄や文明に強い憧れを持っているようです。
●プレイング補足
第一章では、各能力に対応した行動に当てはまらないことをしても構いません。
ユーベルコードの使用も任意ですので、柔軟に動いてもらえれば嬉しいです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
第1章 日常
『伝説の英雄たち』
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POW : パワーで伝説を再現して住民と仲良くなる。
SPD : スピードやテクニックで伝説を再現して住民と仲良くなる。
WIZ : 知恵や魔法で伝説を再現して住民と仲良くなる。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
航海は無事に終わり、鉄甲船は目的地のネビュラ島へと辿り着いた。
船の甲板から一望すると、この島そのものが巨大な宇宙船なのが改めて分かる。
スペースシップワールド由来ゆえのスケールを感じながら、猟兵達は上陸した。
土と草と、ところどころ剥き出しの金属とで構成された道を行くこと数刻。
猟兵達を出迎えたのは、見上げるほど大きな『フォースナイトの戦士像』だ。
どうやらここがネビュラ島の人々が暮らす集落の中心地らしい。
「あら、珍しいね外の人なんて。ネビュラ島に何の御用?」
出迎えてくれた島民は、宇宙服を着崩したような民族衣装を纏っていた。
スペースノイドの末裔だろう。周りにはクリスタリアンやウォーマシンの姿もある。
この服装といい戦士像といい、島民は宇宙の伝統に強い誇りと関心があるようだ。
さて、ネビュラ島の中枢を目指すには、そんな島民達と交流する必要がある。
彼らが関心を持ちそうな話をしてもいいし、実際に技や道具を見せてもいい。
上手く交流できれば、島民達は快く猟兵達を受け入れてくれるだろう。
リグ・アシュリーズ
遠い昔に、星の海から落ちた船。
こんな形で永住の地が見つかるなんて、運命ってわからないものね!
素敵な島があったから、航海中の羽休めに来たの!
なんて、島の人にはそう伝えておくわ。
漁や料理を手伝いながら、ネビュラ島の歴史や伝説について尋ね。
特に島の成り立ち……宇宙船の伝承について聞けるようなら、
島の人々がどうやってそれを守り管理してるのか、把握したいの。
もし敵が船を再起動する気なら、中核エリアに忍び込む可能性もあるわ。
先手を打つか、最悪即座に駆けつけられるよう
場所のメドだけは立てられたらって思うの。
でも、そんな思惑は前面に出さず、まずは普通に打ち解けたいわ。
せっかくのお料理、熱いうちに頂かないとね!
ユーイ・コスモナッツ
フォースナイトの戦士像……
つまり、宇宙の騎士の像、ですね!
この像にまつわる伝承など、
いろいろうかがってみたいです
わあ~~、そうですよね、
いつの世も騎士というものは、
守るべき正義と誇りのために、
命を賭けて戦うものなのですよねっ!
艦上……もとい島内に、
ゆかりの地などあるようでしたら、
そちらにも足を運んでみたいです
お礼に、私が猟兵として体験してきた冒険と戦いの話を、
「私の故郷に伝わる宇宙騎士の物語」として紹介してみよう
話すのは得意ではありませんが、
雷穹龍グローレール、
鏡の迷宮とシェイプシフター、
宇宙怪獣クェーサービーストなどなど
話のネタには事欠きません
多少の脚色は勘弁していただくとして……
セルマ・エンフィールド
先日行ったサムライエンパイア由来の島とは違う雰囲気ですね……島ごとに異なる文化があるのでしょう。
普段使うことはあまりありませんが、彼らの興味を引けそうなものが手持ちにありました。
小型ブラスターを取り出して彼らに見せましょう。
関心があれば手に取ってもらっても構いませんよ。ただし人には向けないように。小型ですが実戦用の本物なので。
そうしながら銃を持つにはまだ早い子どもや話に関心のある人にはスペースシップワールドで外宇宙探索艦ゴールデンレコード号に乗ってクェーサービーストと戦った時の話をしましょうか。
ある程度話したら船内、特にオブリビオンが狙いそうな艦の制御に関係しそうなところを案内してもらいます。
南国らしい陽気に迎えられた猟兵達の頬を、海からの潮風が撫でる。
ここはネビュラ島。宇宙の民の伝承が色濃く残る絶海の孤島だ。
「先日行った島とは違う雰囲気ですね……島ごとに異なる文化があるのでしょう」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、サムライエンパイアの古城がそびえ立っていた『黎明島』のことを思い出す。島同士の往来が殆ど起こらないのもあって、それぞれの島の風土は同じ世界とは思えないほどに独自の道を歩んでいるようだ。
「しかし、商船も滅多に立ち寄らない島なのに、よく来たもんだね」
「素敵な島があったから、航海中の羽休めに来たの!」
先ほど声を掛けてきた島の女性とは、リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)が朗らかに会話している。実際は島に潜入したコンキスタドールを追ってきたのだが、それを島民に伝えるのは無用な不安を招く。偶然通りかかったと伝えるのが無難だろう。
「せっかくの御縁だもの、私も何かお仕事手伝うわ!」
「お客さんに働かせるわけにゃいかないよ、それに海の仕事は若い子には酷だろう?」
「大丈夫、こう見えて鍛えてるんだから」
そう言ってリグは、漁から戻ってきたらしい島民のほうへと駆けていった。宇宙文明の超技術が生み出したウォーマシン達が、魚の詰まった網を担いで歩いてくる。リグはそんな奇妙な一団へと走り寄り、言葉を交わしてから網の一つを受け取って運び始めた。
「……私も私なりに行動してみましょうか」
セルマはリグの背中を見送ってから、別の方向へ歩き出した。あのやり方は真似できなくても、島民達から受け入れられてもらうために出来ることはあるだろう。
▼ ▼ ▼
セルマが集落の正面にある戦士像のところまで戻ってみると、ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)が島の子供達に囲まれて、何やら熱心に語りかけられていた。
「この像は、大昔にネビュラ島の民を悪の帝国から守った勇者の像なんだぜ!」
「ネビュラ島が星の海にいた頃は、帝国のいない新天地を探す旅をしていたんだって」
「勇者と仲間達は帝国の追手と勇敢に戦ったんだ! 帝国って何かは知らないけど」
子供達が口々に語る星の世界のおとぎ話を聞いて、ユーイは目を輝かせた。
「わあ~、そうですよね! いつの世も騎士というものは、守るべき正義と誇りのために、
命を賭けて戦うものなのですよねっ!」
スペースシップワールドで宇宙騎士の家系に生まれたユーイにとって、それは単なるおとぎ話ではなく英雄譚だった。そんな事情は知らないだろうが、普段外の人間と交流する機会のない子供達は、島の先祖の話でユーイが感動したのが嬉しかったようだ。
「お返しといってはなんですが、私の故郷に伝わる宇宙騎士の話をしましょうか」
そう言ってユーイは、自分自身が猟兵として経験した冒険を語り始めた。
「まずはそうですね、星の海で巨大怪獣クェーサービーストと戦った話を……」
「巨大ってどれくらい? あの『鉄の丘』より大きいの?」
「ええと、もっとずっと大きくて……うーん、小惑星って言っても通じませんよね」
島の外れに見える鉄の丘(巨大構造物の残骸だろうか?)を指さす子供達にどう伝えたものか考えあぐねているユーイへ、歩み寄ったセルマが助け船を出す。
「もしかしたら、この集落の端から端までよりも大きいかも知れませんね」
「ええっ、そんなに!?」
スケールの大きさに驚く子供達。かつてユーイと同じ艦に乗り込んでクェーサービーストと戦ったセルマを輪に加え、改めて『ゴールデンレコード号の冒険』が語られていく。
「――こうして打ち倒されたビーストは、その身を吹雪に変えて消えていき……」
語るうち、子供達の輪は村の大人達も加えて更に大きくなっていった。
▼ ▼ ▼
「――あら、なんだか随分打ち解けたみたいね!」
村の集会場に設けられた歓迎の席へと料理の皿を運びながら、リグは村人に囲まれる他の猟兵達を目にして驚きの声を上げてみせた。盛り付けられた料理は新鮮な魚を使った島の郷土料理が主だが、どうやら他の世界のレシピも加わっているようだ。
「リグさんのほうがよほど溶け込んでいるように思えますが……」
「人との距離って同じ台所に立てば自然と縮まるものよ」
ユーイの言葉に目配せで返し、リグは島民と一緒に作った料理を次々に並べていく。一通りの品が出揃う頃には、この集落の長も集会場へと姿を見せていた。
「皆様、遠路はるばるようこそいらした。何もないところだがゆっくりしてくだされ」
長の言葉は随分と柔らかい。島民から既に評判を伝え聞いていたのだろう。
「先ほども若い衆が、セルマ殿に伝説の武器『熱線銃(ブラスター)』をみせていただいたと大はしゃぎしていましてな。ネビュラ島には現存するものがありませんで、誰もが一生に一度でいいからこの目で本物を見てみたいと思っておるのですよ」
もちろん私もですがなと顔を綻ばせる長は、本心から猟兵を歓迎している様子だった。
猟兵達は島民と食卓を囲み、時には先の『昔話』を再演したりしながら歓談した。そしてその中で、さりげなくこのネビュラ島の構造についての質問を投げかけてみる。
既に来訪者を信頼している島民達は快く受け入れ、皆を代表して長が語り始めた。
「このネビュラ島は東西に長く、この集落はおよそ中ほどにありますが、実を言えば人が住まぬところのほうが多いのです。特に東の『鉄の丘』は、禁断の地でありまして」
「鉄の丘……さっき島の子達が話していたところですね?」
先ほどの子供達と同じ方向を指さすユーイに、長は大きく頷いてみせた。
「ご存じでしたか。かの地は、伝説の勇者が最後の戦いで命を落とした場所なのです。
勇者は伝説の秘宝『コア』を命を捨てて守り抜き、ネビュラは救われたと聞きます」
コア、とは物質を食糧やエネルギーに変換する、スペースシップのコアマシンのことだろうか。もしそうなら当時のフォースナイトが決死の覚悟で守ったのも納得がいく。
「そのコア……伝説の秘宝は、今もあの丘に存在するの?」
リグがそれとなく尋ねてみるが、長は小さく首を振った。
「さて……何しろ『艦の中枢ブロックには不用意に近付くな』というのが先祖代々の掟ですから。ああ、中枢ブロックというのは鉄の丘の一帯を指す古い言い回しのようです」
「つまり島の人達は滅多に中枢に近付くことはなく、内状は分からない……」
「そうなります。踏み入れば災いが起こると子供の頃から脅かされましたからな」
長は懐かしそうな目をしていたが、猟兵達はそれが求めていた情報だと確信する。
住民が誰も寄りつかない艦の中枢。コアマシンが今も眠っているのなら、この宇宙船を再び起動しようと企む者は、その中枢ブロックを目指すに違いないだろう。
「面白い話をありがと、村長さん。さ、お礼に私の異世界料理も食べてくださいな」
十分な情報を聞き終えたあたりで、リグがお皿を差し出して話を切り替える。
陰謀の影を視界の隅に捉えながらも、歓迎の宴は滞りなく進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ウォーマシン・タイプマリン』
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POW : 襲撃は速やかに
【急速接近からの超高温ヒートカトラス 】による素早い一撃を放つ。また、【水中から船・陸上へ強襲出来る推進機構起動】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD : 障害は燃やし沈めて
【機敏な動きで右腕に担いだマルチランチャー】を向けた対象に、【通常炸裂弾頭か高速誘導魚雷】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 命と宝は根こそぎに
自身の【頭部(メガリス探知用センサーユニット)】が輝く間、【敵位置を常に補足し】放つ【銛型高速徹甲弾】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
イラスト:良之助
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ネビュラ島の集落の東側に位置する『鉄の丘』。
かつて星の世界の勇者が命を落としたと伝わるそこは、島民にとっては禁断の地。
そして同時に、このスペースシップの中枢ブロックであった場所でもある。
島民達から聞き出したルートに沿って、猟兵達は『丘』の麓へと到着した。
間近で見る『鉄の丘』は紛れもなく人工物で、強固な造りだったことを伺わせる。
やがて外壁にかつての通路と思われる横穴を発見し、猟兵達は足を踏み入れた。
薄暗い通路を進むことしばらく。
猟兵達はついに、外壁の亀裂からの光が差し込む開けた空間へと辿り着いた。
だが感慨にふける間もなく、不機嫌そうな若い男の声がフロア内で反響する。
「忌々しいお邪魔虫たちね。いったいどこであたしの計画を嗅ぎつけたのかしら。
でも悪いわね、この世界に二つとない船はあたしにこそ相応しい乗り物なの。
ここで諦めてたまるもんですか。あんた達はあたしの手駒とでも遊んでなさい!」
直後、風化したフロアの外壁を突き崩して何機ものウォーマシンが現れる。
黒幕のヴェノム・サーペントを止めるために、まずはこの場を切り抜けるしかない。
ユーイ・コスモナッツ
私にとって得意とはいえない、限られた空間での戦い
さらに敵は多数
だけど負けることは許されない
どうするか?
答えはひとつ、『正々堂々とたたかう』
これに尽きます
そう! いつもの私、これは【私の騎士道】だっ
超高温ヒートカトラスを剣で弾き、
マルチランチャーの弾は避けるか盾で受け止めます
そうして間合いに入った敵機を、
一体一体、紋章の剣で倒していく
我ながら、賢い戦いかたではないと思います
多少のダメージを受けることもあるでしょうが、
なんの負けるもんか
かつて命を賭してコアマシンを守り抜いたという、
『伝説の勇者』に報いるためにも!
「敵対勢力ヲ確認。殲滅シマス」
フロア内の猟兵達を取り囲むように現れた、水陸両用仕様のウォーマシン達。
ヴェノム・サーペントの手下か、あるいはこの陰謀のために調達した戦力か。
いずれにせよ、文字通り機械的な動きからは一切の情動が読み取れない。
島で暮らすウォーマシンとは違う、全てを蹂躙するコンキスタドールそのものだ。
(私にとって得意とはいえない限られた空間での戦い、さらに敵は多数……)
油断なく周囲へと目を走らせながら、ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)は状況を打開する術を考える。普段ならば反重力シールドを用いた高機動戦を挑む場面だが、この閉鎖空間では封じられたも同然だ。地に足をつけて戦わざるを得ない。
「……だけど、負けることは許されない!」
ユーイが覚悟を決めて抜剣したその瞬間、ウォーマシンの一機が背部の推進機構を起動し、その巨体を急加速させた。このマリンタイプは本来、水中からの強襲を最も得意とする機体。鈍重そうな外見からは想像も出来ない動きでユーイとの距離を詰める。
「速い――!」
敵が振り下ろした超高熱のヒートカトラスを、ユーイは間一髪クレストソードで弾き返した。凌がれることは想定していなかったのだろう、敵の反応が一瞬鈍る。その隙を突いて反撃を見舞おうとしたユーイを、側面から炸裂弾が襲う。咄嗟に浮遊させた反重力シールドを空中に固定し、防御。爆風を盾で凌いで、ユーイは体勢を立て直した。
「賢い戦い方をしていない自覚はありますが……これが『いつもの私』ですから!」
ユーイは己を奮い立たせ、白銀の剣を構える。たとえ空が飛べなくても、胸に秘めた想いは、ユーイにとっての『私の騎士道(アイディールシヴァリィ)』は不変だ。
視線だけで炸裂弾頭を放った敵を追う。今まで斬り結んでいたのとは別のウォーマシンが、再びユーイに砲門を向けようとしている。だが次弾が発射されるより先に、爆炎がその機体を吹き飛ばした。既に他の猟兵も戦っている。独りではない。
「私がすべきは正々堂々、真っ向勝負です!」
側面の敵は味方に任せ、ユーイは再び正面のウォーマシンへと斬りかかった。
クレストソードとヒートカトラスが激突し、火花が散る。体格差とパワーをもって押さえ込もうとするウォーマシンを、しかしユーイは全身が軋むのも構わずに弾き返した。
「負けるもんか! 命を賭してコアを守り抜いた『伝説の勇者』に報いるためにも!」
脳裏によぎる戦士像の雄姿と、その伝説を語る子供達の笑顔。星の世界に生を受けた当代の騎士として、先人に恥じるような戦い方は出来ない。
よろめく敵機の装甲の隙間を紋章の剣の切っ先が貫き、その機能を停止させた。
引き抜いた剣に付着した油を拭うと、ユーイはすぐさま次の敵へと刃を振るう。
大成功
🔵🔵🔵
グロリア・グルッグ(サポート)
おおっと戦闘案件ですか。いいですよ、受けて立ちます。
死と隣り合わせな星の海で鍛えられた騎兵の強さを教育して差し上げましょう。
覚悟しろよおまえら~?
二足歩行型戦車エンジェルに騎乗して戦闘です。
騎兵が戦車の操縦に長けているのは確定的に明らか。
ガン積みした戦車ミサイルランチャーから一斉発射で大量のミサイルをぶっぱします。
ミサイルには電脳魔術でハッキングを仕掛け、超高精度かつ常識外れの誘導弾にして敵にぶつけましょう。
弾切れになっても問題ありません。
天使の抱擁でミサイルを補充しつつ、さらに火力を高めたミサイルを敵にぶっぱなしましょう。
戦場における絶対正義……それは超火力……。
火力こそパワーなんですよ。
射撃体勢に入っていたウォーマシンの一機が、突如爆炎に包まれ沈黙した。
「同じ星の海生まれのよしみ、なんて」
狙われていた仲間が無事に戦闘を続行するのを確認しながら、グロリア・グルッグ(電脳ハッカー・f00603)は自身が跨がる二足歩行型戦車エンジェルのハンドルを切る。
バイクの車体に鋼の二脚を接続した形状のエンジェルは、歩行戦車ならではの動きで敵のヒートカトラスを横っ飛びに回避した。最高速度こそ車両に劣るものの、タイヤでは走破不可能な地形、そしてこのような閉所での戦闘であれば二足歩行型に分がある。
「おおっと……こちらを狙ってきますか。いいですよ、受けて立ちます。
死と隣り合わせな星の海で鍛えられた騎兵の強さを、教育して差し上げましょう」
戦車の性能は乗り手が引き出すもの。そして騎兵が戦車の操縦に長けているのは確定的に明らかだ。水陸両用装備のウォーマシンに遅れを取るはずがない。
「さあ、覚悟しろよおまえら~?」
エンジェルに搭載された大天使の名を持つ多弾頭ミサイルランチャー「ミカエル」「ガブリエル」「ラファエル」が、一斉に発射態勢へと移行する。回避行動を取ったエンジェルの両脚が再び接地したその瞬間、グロリアはありったけのミサイルを射出した。
このような閉鎖空間で大量のミサイルを放つなど、本来ならば悪手中の悪手。敵のウォーマシンもそれを理解し、直撃の可能性を排除した動きを取った。戦闘機械ゆえの合理的な判断。だが海の世界のウォーマシンは、星の世界の電脳魔術士を知らなさすぎた。
「電脳魔術でハックすれば、超高精度誘導ミサイルの出来上がりです!」
一発一発が本来のミサイルでは有り得ないほど精密な動きで、敵機だけを正確に狙い殺到する。誤爆も無駄弾も存在せず。それでいてピンポイントに集中する破壊力もまた本来のミサイルの比ではない。これこそが『天使の抱擁(エンジェル・フレア)』。威力・弾数・正確さの全てにおいて通常兵器を凌駕する、電脳魔術士グロリアの切り札。
「戦場における絶対正義……それは超火力……。火力こそパワーなんですよ」
グロリアが一つの真理を口にした時、既に標的となった敵機は全て沈黙した後だった。
成功
🔵🔵🔴
セルマ・エンフィールド
相応しさを論じるのであれば、この宇宙船の持主の子孫である彼らこそが所有者として相応しいでしょう。
その彼らが自然とともに地上で生きることを選んでいるんです。その生活を害させはしません。
ヴェノム・サーペントが中枢を掌握する前に止める必要がありますし、こんなところで時間をかけている場合ではありません。
フィンブルヴェトからの氷の弾丸で敵の腕や足の関節部を狙った『部位破壊』で他の猟兵の『援護射撃』を。
こちらの射撃の合間を抜けて接近してくる個体には『カウンター』の【アイシクル・エンド】を。水中や船上であればもう少し厄介だったのでしょうが……この程度であれば問題ありません。
リグ・アシュリーズ
あら、ずいぶんと自分に正直なのね!
迷わない所は尊敬するわ。
でも、部下を置き去りは好都合。ここで倒しちゃいましょう!
使い慣れた黒剣で迎撃作戦に出るわ!
今回、速度はあちらが上。
なら相手の動きを制限し、確実に捉えるまで!
開けた場所じゃ難しいから、まずは障害物を増やすわ!
相手の攻撃をかわしては周囲の構造物を壊させるの。
敵が直進できないほど鉄塊が増えたら、
聞き耳を立てて相手の来る方角を予測。
衝突の勢いも乗せたカウンターをお見舞いするわ。
敵がよろめいたり動きを止めたら、畳み掛けるチャンス。
鉄の塊を撃ち上げ、回転斬りで次々と降らせ、
生き埋め状態のまま押し潰すわ。
砂礫の雨、あらため鋼の雨。本日の雨は重量級よ!
戦場は、敵味方が入り乱れる混戦状態となりつつあった。
比較的開けた空間とはいえこのフロアは猟兵やコンキスタドールには手狭に過ぎる。
加えて敵のウォーマシンが周囲の破壊を躊躇わないのが混沌に拍車を掛けていた。
コアマシンが無事ならそれ以外がどうなっても構わないということなのだろうか。
「この割り切り方といい、随分と自分に正直なのね! 迷わない所は尊敬するわ」
ヴェノム・サーペントが向かったと思われる方向を見やり、リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)はそう口にした。これまでの行動から窺えるヴェノムの行動原理は、己の欲望のみを優先するもの。ある意味では非常にコンキスタドールらしいと言える。
「ですが少々思い切りが良すぎましたね。水陸両用機を水際ではなくここで使うとは」
だが、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)がリグの呟きを受けてそう返したように、この待ち伏せは猟兵達だけでなく、ウォーマシンの戦闘力にまで制限を掛けてしまっている。タイプマリンは推進力を活かした水中からの強襲を最大の武器とする機体であり、陸上かつ閉所での戦闘では持ち味がスポイルされているようなものだ。
「そうね、この状況で部下を置き去りにしたのは好都合。全部倒しちゃいましょう!」
セルマが愛銃フィンブルヴェトを発砲したのを合図に、リグは使い慣れた黒剣を振りかぶりながら突進した。敵機が咄嗟に構えたヒートカトラスとリグの渾身の斬撃とが激突し、衝撃が大気を震わせる。
よろめいたウォーマシンだったが、たたらを踏みながらも即座に背部の推進機構を噴射させ、強引にリグ目がけて突進を仕掛けてきた。
「やっぱり直線での速度はあちらが上ね。だったら確実に捉えるまで!」
リグが突進をいなすように回避すると、ウォーマシンはろくに減速しようともせずにフロアの壁へと激突した。長い年月を経て劣化していた外壁はその衝撃で破砕され、周囲に金属の塊を撒き散らす。やはり敵はこの周辺を破壊することに躊躇がないようだ。
「お次はこっちよ! 手加減無しで突っ込んで来なさい!」
敵は再び突撃したが敢えなくかわされ、更なるスクラップを生むだけの結果となった。
(なるほど、そういうことですか)
程なく、セルマもリグの作戦を理解する。水中戦タイプなのだから当然ではあるが、敵の突進はあくまで直線的なものであり、戦場に障害物があることを想定していない。戦闘で破壊された構造物が即席のバリケードとなり、敵の動きを阻害しているのだ。
「――ならば、より効果的に撃つのは容易いことです」
セルマは瞬時に狙いを微修正し、強襲を仕掛けようとする一機を狙い撃った。フィンブルヴェトから放たれるのは氷の魔力を籠めた弾丸。敵の軸足の関節部を狙ったそれは確実に着弾地点周辺を凍結させ、バランスを崩したウォーマシンは残骸に激突する。
戦場は既にスクラップの山だ。もはや敵の優位性だった機動力は大幅に削がれ、マルチランチャーによる炸裂弾すらも遮蔽物に阻まれて本来の攻撃性能を発揮できない。
残骸を蹴散らしながら強引に距離を詰めたウォーマシンの一機が、セルマを斬り伏せようと赤熱化したヒートカトラスを振り上げる。だが障害物に加え、関節部の凍結により機動力を殺された状態での攻撃よりも、セルマがカウンターで迎え撃つ方が遙かに速い。
「水中や船上であればもう少し厄介でしょうが……この状況ならば問題ありません」
フィンブルヴェトの銃剣が装甲の隙間に突き刺さった瞬間、セルマは躊躇わず銃爪を引いた。『アイシクル・エンド』。氷の零距離射撃が敵の内部メカを一瞬で破壊する。
「畳み掛けるチャンスね! 『砂礫の雨』改め『鋼の雨』!!」
同様に黒剣でカウンターを叩き込んだリグが、ユーベルコードを発動する。
本来『砂礫の雨(ダスティ・レイン)』は剣で破砕した砂礫によって広範囲を攻撃する技。この戦場においては無数の残骸が巻き上げられ、身動きの取れない敵へ降り注ぐ!
「――本日の雨は重量級よ!!」
鋼の雨に叩き潰されて機能停止する者。生き埋めにされて更なる追撃を受ける者。
いずれにせよこれが決定打となり、程なく全てのウォーマシンは完全に沈黙した。
「……聞こえているのでしょう、ヴェノム・サーペント」
静寂を取り戻した瓦礫の山に、セルマが投げかけた言葉が響く。
「所有者を論じるのであれば、この船の持主の子孫である彼らこそが相応しいでしょう。
その彼らが自然と共に生きることを選んでいるんです。その生活を害させはしません」
返事はない。だが、猟兵達はその影に潜む気配を確かに感じていた。
大成功
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第3章 ボス戦
『殺戮航海士ヴェノム・サーペント』
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POW : あらあら、隙だらけよ。
肉体の一部もしくは全部を【エラブウミヘビ 】に変異させ、エラブウミヘビ の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD : そんじゃ……かますわよっ!
【毒爪や毒投げナイフ 】による素早い一撃を放つ。また、【襟高の海賊服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 真実が美しいとは限らない。そうでしょう?
【誘惑と挑発 】を籠めた【手厳しい正論口撃】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【戦意と自尊心】のみを攻撃する。
イラスト:唐草
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠枯井戸・マックス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
突如、フロア内に轟音が鳴り響いた。
周囲に爆薬が仕掛けられていたようだ。だが猟兵を仕留められる威力ではない。
しかし衝撃で外壁全体に亀裂が走っていき、遂には天蓋が音を立てて崩れ始めた。
崩落が止んだ後には老朽化した壁も天井も既に無く、ただ頭上に空があるだけだ。
宇宙船には似つかわしくない、グリードオーシャンの澄み切った空が。
「……ざぁんねん。今ので生き埋めになってくれれば楽だったんだけど」
シェルターめいた頑強さで破壊を免れた中枢ブロックを背に、男が立っている。
容姿だけを見るならば、美女と形容しても通るほどに妖しい美貌を持つ青年。
殺戮航海士ヴェノム・サーペント。このコンキスタドールが首謀者に他ならない。
「この船の住民ですって? お笑いだわ、あんた達あんな連中に肩入れしていたの?」
両手の十指から伸びる鋭い爪を構えながら、ヴェノムの美貌が嘲笑に歪む。
「あいつらは、いわば帆船に巣食う船食い虫みたいな存在よ。つまりは害虫ってわけ。
船は動いてこそ美しいの。その邪魔になる虫は、綺麗に駆除するべきじゃない?」
いつの間にかヴェノムの爪の先からは、黒々とした液体が滴っている。
「あたしはヴェノム。メガリスに触れて真の力を手に入れた『ウミヘビ』の深海人よ。
ご存じかしら? ウミヘビの『神経毒』は海で最も危険な毒の一つだってこと。
あんた達だろうとひとたまりもないわ。あたしの前で苦しみ抜いて死になさい!」
殺戮航海士ヴェノム・サーペントは両手を広げ、戦闘態勢を取った。
中枢ブロックへ侵入させるわけにはいかない。何としてもここで倒さなければ――!
アルタ・ユーザック
【SPD】
「毒・・・かすり傷でもおそらく致命傷になる・・・」
対処法としては遠距離で攻撃するか、相手の武器を無効化するしかない・・・
わたし一人なら遠距離攻撃でもいいけど、他の人を助けるには武器を無効化できた方が良いはず・・・
「それなら『抵抗を許さぬ流体の雨』」
対象の摩擦抵抗を極限までなくすこのユーベルコードを相手の全身にぶっかける・・・
これで、相手の爪で攻撃されても私の体を滑っていくから傷がつかずに、毒を摂取することもないはず・・・
何か隠し武器を持ってたとしてもヌルヌル滑って、持てないだろうから飛び道具系統も無効化できるはず・・・
足元も滑るだろうから転んで起き上がれなくなると最高・・・
ユーイ・コスモナッツ
ここまでの用意周到さは大したものです
ですが、天井を崩したのは失敗でしたね
私にも奥の手がある、ということです
空が見えれば――勝てる!
敵の初撃を反重力シールドに乗って避けつつ、
そのまま空へ
高度をとったところで反転し、
ヴェノム・サーペントの斜め上空から、
一直線に突撃を仕掛けます
これに対して、
ヴェノム・サーペントが迎撃する構えを見せたら、
その瞬間に【流星の運動方程式】を起動
敵の間合いの外から超急加速で後の先をとって、
「シールドバッシュ」で体当たりですっ!
回避行動をとるなら、
同じく【流星の運動方程式】を起動
急加速しつつ、避けた方向に直角ターン
回避行動中の無防備なところを、
「ランスチャージ」で追撃します
セルマ・エンフィールド
元より説得などするつもりはありませんでしたし、仮にこの島の住民に危害を加えないと言っても容赦をするつもりもありません。
ここであなたを退けても他のコンキスタドールがこの島に来るかもしれないし、あなたもいずれ復活する。ここであなたを倒しても無駄なこと……ですか。
それがどうかしましたか?
領主を倒したと思えば別の吸血鬼がやってくることなんて、私の故郷でもよくあること。
それらを全て駆逐するのが私の役目です、この世界でもやることは変わりません。あなたも言っていたでしょう?
『邪魔になる虫は、綺麗に駆除するべき』だと。
375体の【スノウマンレギオン】を展開、避ける隙間もない雪玉の乱れ撃ちを。
リグ・アシュリーズ
思い切りがいいって、さっき褒めちゃったけど。
……まあ、いいわ。問答で分かる相手じゃないものね。
短機関銃で牽制しながら、敵の隙を窺うわ!
私の毒への対抗手段なんて、毒血を流すか気合で耐えるぐらい。
だったら可能な限り致命打を避け、先にこちらが与えるまで。
敵の軌道を逸らして、最低でも動脈への直撃はかわしてみせるわ!
でも、キツイの一発お見舞いしないと埒があかないものね。
弾切れのフリして、狙撃銃に持ち換え。
大穴開けた時点で船を捨てたも同然。
それにね、あなた、大事なところを履き違えてるわ。
一発目の通常弾を確実に当て、気を惹いたところで二番目の嘘をプレゼント。
とっくの昔にもう沈んでるのよ。船も、あなたもね!!
潮の香りを含んだ風が、戦場を吹き抜けていく。
つい先程まで『鉄の丘』と呼ばれていた場所は、既に殆ど瓦礫の山に変わっていた。
ただ一カ所だけ崩落を免れて、未だ巨大な記念碑のように存在する中枢を除いて。
「あとほんの少し、あそこに足を踏み入れるだけでこの最高のお宝が手に入るのよ。
そうなれば、この海では誰もあたしに敵わない。邪魔立てする奴は許さないわ!」
その中枢ブロックを背にして、猛毒の爪を構える妖貌のコンキスタドール。
殺戮航海士ヴェノム・サーペント。剥き出しになった、その卑劣で傲慢な本性。
「……思い切りがいいって、さっき褒めちゃったけど」
リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)が小さく呟いた。
無理もない。ヴェノム・サーペントの思い切りは、結局のところ潔さとは真逆のもの。自分だけを優先するから躊躇無く他を斬り捨てられる、そういう割り切りに過ぎない。
「元より説得も容赦もするつもりはありません。仮に住民へ危害を加えないと言っても」
「ハッ! 偉大な船乗りの末裔にしちゃお粗末な連中じゃない。ありえない仮定だわ」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)に対してヴェノムが返した言葉もただこのコンキスタドールの独善性を露わにするだけで、対話にすらなっていない。
「……まあ、いいわ。問答で分かる相手じゃないものね」
リグが短機関銃を構える。他の猟兵達も各々の武器を手にし、一斉に攻撃を開始した。
「揃いも揃ってお馬鹿さんね! 何人来ようが、あたしの敵じゃないのよ!」
ヴェノムが嘲笑い、同時に隠し持っていた投げナイフを纏めて投擲した。
アルタ・ユーザック(クール系隠密魔刀士・f26092)はルーン文字の刻まれた愛用の魔法刀『氷桜丸』を構え、迫り来るナイフを前にして瞬時に思考を巡らせる。
「毒……かすり傷でもおそらく致命傷になる……」
間違いなく、あの投げナイフにも『ウミヘビの神経毒』が塗られているはずだ。数で勝る猟兵達を相手取りながらヴェノムが全く焦る様子を見せないのも、自らの毒の威力を誰よりも知っていて、一撃でも入れれば勝ちだと確信しているからこその余裕だろう。
「それなら……『抵抗を許さぬ流体の雨(ルブリカント・シャワー)』」
ナイフが接触する直前、アルタのユーベルコードによって生み出された高濃度の潤滑液が一瞬早く肌を覆う。この流体によって摩擦抵抗が極限まで減らされた結果、突き刺さるはずの刃はアルタの体表でスリップし、毒を流し込むことなく受け流された。
「これを直接浴びせられれば、相手の爪も滑って使えなくなるはず……」
「何よ、妙なワザ使うじゃない!? でも、そう何度も凌げると思わないコトね!」
全速力で距離を詰めようとするアルタ目がけて、先程以上に高密度のナイフが迫る。
だが空中に割って入った反重力シールドが凶刃の進路を遮り、一気に弾き返した。
「ここまでの用意周到さは大したものです。ですが、天井を崩したのは失敗でしたね」
ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)はナイフを防御したシールドに磁気式ソールシートで両脚を固定し、そのまま急加速。一気に上空へと舞い上がっていく。
「私にも奥の手がある、ということです。空が見えれば――勝てる!」
閉鎖空間での襲撃ゆえにウォーマシン戦では使うことが出来なかった、宇宙騎士ならではの高機動戦闘。敵が自分からその枷を解いた以上、出し惜しみをする理由などない。
「ナマイキ言ってんじゃないわよ小娘! 一発当たれば終わりなのは変わらないわ!」
「当たればの話でしょう? それくらい何とかしてみせるわ!」
上空のユーイへ意識を向けたヴェノムを狙い、リグの短機関銃WOL-8から放たれた弾丸が殺到する。威力も命中精度も決してメインウェポン足りうる性能ではないが、これ自体が致命的な一撃にならなくても、敵の牽制と味方の支援が目的ならば十分に過ぎる。
「鬱陶しいわね!」
ヴェノム・サーペントが吠え、毒爪が空を割く。リグは一定の距離を保ちながら弾をばら撒き、敵の機動力を削ぎ続けた。同時に接近したアルタが氷桜丸を振るい、『抵抗を許さぬ流体の雨』をヴェノムの左手に浴びせかけた。五本の爪に潤滑液が纏わり付いて動きを殺すと共に、摩擦が奪うことでその殺傷力と毒の注入を大いに減退させる。
そして敵が二人に気を取られたということは、上空のユーイが自由になっているということ。態勢を立て直してヴェノムが空を見上げた時には、反重力シールドは十分な加速をつけて反転し、グリードオーシャンの大空を背景に急降下を始めていた。
「この、ナイフで撃ち落として――!」
「ブースト・オン! 言ったはずです、奥の手があると!」
ヴェノム・サーペントが最速の動きで毒のナイフを投擲する、その動きよりも更に上を行く超加速。『流星の運動方程式(フルアクセルシューティングスター)』――その限界速度の勢いを乗せ、ユーイは渾身のシールドバッシュを叩き込んだ。
「ごめん、弾切れしちゃった! しばらくお願いね!」
「問題ありません。こちらの準備も完了しましたから」
再度上空へと飛翔するユーイを見送りつつ、リグは空の短機関銃を片手に後退する。
愛銃フィンブルヴェトで味方を援護しながらユーベルコードを展開していたセルマは、リグを目で追うことなくそう答え、同時に銃口の先のヴェノム・サーペントを睨んだ。
開戦直後の余裕は既に無く、全身に傷を負ったヴェノムは苦々しげに顔を歪めている。
「……ふん、何よ何よ。熱くなっちゃって。こんなこと、この世界じゃ日常茶飯事よ?
仮にあたしを倒しても、いずれ次のコンキスタドールが来るだけ。無駄な苦労だわ」
劣勢を自覚しながら、それでもヴェノムはその悪意ある舌を止めようとはしない。だがその言葉はある意味で真実でもある。コンキスタドールの討滅は戦いの終わりを意味しない。戦乱の海では常に新たな火種が生まれ、ヴェノム自身もいずれ復活するだろう。
「それがどうかしましたか?」
だが、セルマは動じない。
「領主を倒したと思えば別の吸血鬼がやってくるなんて、私の故郷でもよくあること。
それらを全て駆逐するのが私の役目です、この世界でもやることは変わりません」
ヴェノム・サーペントは知らない。セルマの故郷、ダークセイヴァーの灰色の空を。
吸血鬼に虐げられた人々が何を思い、何のために戦うのか、その意味を知らない。
「それにあなたも言っていたでしょう?『邪魔になる虫は、綺麗に駆除するべき』だと」
今度こそヴェノムの顔から嘲笑が消えた。剥き出しの怒りを繕う余裕すら消えている。
「虫!? 虫ですって!? この美しいあたしを言うに事欠いて虫呼ばわりだなんて!」
激情のままに猛毒のナイフを撒き散らそうとして、しかしヴェノムは動きを止めた。
ようやく気付いたのだ。戦闘中にセルマが召喚していた戦闘用雪だるま――雪玉銃を装備した375体の『スノウマンレギオン』達が、先のウォーマシン戦と施設爆破で散乱した大量のスクラップを隠れ蓑にして、ヴェノムの全方位を既に取り囲んでいることに。
「避ける隙間もない雪玉の乱れ撃ち、受けてもらいましょうか」
「な――ふ、ふざけんじゃないわよ、このあたしがその程度凌げないとでも――」
一斉に射撃体勢に移るスノウマン達の包囲を脱しようと渾身の力で跳躍しようとしたヴェノム・サーペント。だがその直後、彼は足をもつれさせて無様に地面へ転がった。
「……既に、足元の摩擦は奪っておいた……このまま起き上がれなくなれば最高」
地面に撒かれたアルタの『抵抗を許さぬ流体の雨』が生み出した、決定的な隙。
その現実を認められず、ヴェノム・サーペントは恥も外聞もなく喚き散らす。
「こんな、みっともない結末おかしいわ! この船はあたしにこそ相応しいのにっ!」
「その船をこうして爆破した時点で、自分から捨てたも同然でしょう?」
後方で狙撃銃に持ち替えていたリグが放った弾丸がヴェノムを撃ち抜く。
「それにね、あなた、大事なところを履き違えてるわ」
「な、何を……」
「とっくの昔にもう沈んでるのよ。船も、あなたもね!」
間髪入れずに放たれる『二番目の嘘(ダーティ・ストライク)』。五秒間だけ全ての動きを封じ込める炸裂弾が、僅かな抵抗の余地すらもヴェノム・サーペントから奪い去る。
「かつて『伝説の勇者』が命懸けで守った船です! 起こしていいはずがないんです!」
ユーイが叫び、ヴァルキリーランスを構えて上空から渾身の突撃をかける。その動きに合わせ、スノウマンレギオン達が一斉に雪玉銃を発射した。強烈な威力の雪玉が全方位から殺到し、ヴェノムの全身を打ちのめしながら雪の塊で埋め尽くしていき――最大速度で急降下したユーイのランスチャージが、その雪山の中心を一撃で貫いた。
「終わりです。いずれ蘇るというなら……相手になりましょう。何度でも」
セルマの呟きに答える声はない。ヴェノム・サーペントの野望はこうして潰えた。
▼ ▼ ▼
「――それにしても、ほとんど更地になっちゃったわね」
残敵がいないことを確認してから、リグが改めて周囲を見渡した。
「そうですね。相当老朽化していましたから、いずれこうなる運命だったのでしょうが」
セルマの言葉に頷きつつ、猟兵達は唯一残った中枢ブロックへと歩み寄る。
コアが眠っているはずの中枢が無事だったのは、果たして良かったのかどうか。
ここは島民達にとって特別な場所であると同時に、新たな火種にもなり得る場所だ。
思案しながら中枢ブロックの外壁を眺めていたアルタが、ふと気付く。
「……ここの壁。何か書いてある……?」
指さした先には、レーザー照射のようなもので文字が刻みつけてあった。
『――偉大なる宇宙の騎士、ここに眠る』
かすれて読めない部分も多いが、間違いなくスペースシップワールドの公用語だ。
この海に辿り着いた人々が、かつての戦いを忘れないために彫ったのだろう。
中枢ブロックは本来の役目を終え、『伝説の勇者』の墓標として今もここにある。
「……このままにしておきましょう。それが一番いいと思うんです」
ユーイの言葉に異を唱える者は誰もいなかった。
ここはネビュラ島。かつて星の世界から流れ落ちた、絶海のスターシップ。
そして故郷無き星の民が、放浪の果てに辿り着いた新天地。
その営みがこれからも変わらず続くことを願いながら、猟兵達は島に別れを告げた。
【絶海のスターシップ】終
大成功
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