9
魑魅櫻

#グリードオーシャン #メガリス

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#グリードオーシャン
🔒
#メガリス


0




●花の呼び声
 薄紅色の花弁がちらちらと舞う。
 幻朧桜が咲き誇る山道に、赤い鳥居が立ち並んでいる。
 誰もいない、此処には誰もいないはずなのに。
「おーい、おーい」
 誰かが呼んでいる。
「おーい、おーい」
 誰かが近づいて来ている。
「おーい、おーい」
 その姿は見えない。
「おい」
 何かが、居る。

●新たな島
「やあ。新しい世界の話は、もう聞いたかい?」
 帽子を掲げてお辞儀をしたケビ・ピオシュ(テレビウムのUDCメカニック・f00041)は顔を持ち上げると、そのモニタへと桜が咲き誇る島の画像を映し出し。
 小さく首を傾いで見せた。
「そうそう。貴殿らには今からその新しい世界に行って貰って、『メガリス』を確保してきてほしいのだよ」
 ――グリードオーシャンの世界中に眠る『メガリス』。
 その力を手にした者は、覚醒して島々を統治する力を得た『海賊』と成るか、死んで全てを蹂躙し殺戮するコンキスタドール……オブリビオンと成るか。
 2つに1つの力を秘めた、呪われし秘宝である。
 その秘宝がコンキスタドールの手に落ちる前に、猟兵たちの手で確保をしてきて欲しいと、テレビウムは言った。
「今回メガリスが発見されたのは、無人島でねえ。ただ、すこうしだけ問題があって……」
 この世界の陸地は全て、異世界から落ちてきた『島』で構成されている。
 今回予知に見えた無人島は幻朧桜が咲き誇っている所を見ると、サクラミラージュから落ちてきた島なのであろう。
 ケビはモニタを目とヒゲの表示に戻して、瞬きを1つ、2つ。
「その島は無人島だけれど、沢山の人であった者がひしめいていてね。……そう、幽霊島とでも言おうか」
 肩を大きく竦めたケビは、ゆるゆると首を振って帽子を深く被り直した。
「いや、いや。幽霊なんて聞くと、実にぞっとしない話だと思うけれどね。放っておくとコンキスタドールがそのメガリスを持っていってしまうのさ。……そういう訳で頼んだよ」
 すまないね、なんて付け加えたケビは、ぴかりと掌の中で光を瞬かせて――。


絲上ゆいこ
 こんにちは、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
 新世界ですね! 海ですね!
 この週末、幽霊の居る島へと行ってみませんか!

●今回のシナリオ
 この土日で、採用最低人数程度でサクサクと回していく予定です。
 もし沢山プレイングをいただけた場合は、
 採用は先着順では無く、大成功・またはそれに近いプレイングから採用させて頂く予定です。
 マスターページに便利な記号リスト等を書き足してみたので、必要であればご利用下さいませ!

●1章:日常『鳥居の数をかぞえて』
 鉄甲船で航海した先。
 幻朧桜の咲き誇る鳥居の道の先に、神社がぽつんと一つだけある小さな無人島です。
 この章では、まだ幽霊は出て来ません。
 人のいなくなってしまった神社にお参りや、お花見等をしながら散策をしてみて下さい。
 メガリスのありそうな場所に、目星をつけておくのも良いでしょう。
 まだこの島には名前が無いので、名前を考えたりしてくれても嬉しいです。

●2章:冒険『さまよえる幽霊海賊』
 人の雰囲気と桜に誘われて現れた幽霊達が、話しかけてきます。
 基本的には近隣の海より集まってきた、愉快な海賊の幽霊達ですが、
 もしかするとサクラミラージュより来た、幽霊も混じっているかもしれません。

 その姿が見える人もいるでしょう、見えない人もいるでしょう。
 声すら聞こえない、霊感の無い人もいるかもしれません。
 幽霊を成仏させてあげるも、メガリスへの道を聞くのも自由です。
 幽霊達に対処しながら、メガリスを探してみて下さい。

●3章:ボス戦『女賞金稼ぎ』
 メガリスを強奪して悪に堕ちた、女賞金稼ぎのコンキスタドールです。
 メガリスを見つけていようがいまいが、とにかく大暴れをしてメガリスを強奪しようとします。

 それでは今回も、素敵なプレイングをお待ちしておりまーす。
319




第1章 日常 『鳥居の数をかぞえて』

POW   :    長い階段を駆け上る

SPD   :    参道を歩く

WIZ   :    本尊跡に御参りする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エドガー・ブライトマン
幽霊島なんて、面白そうじゃあないか!
私、そういう誘い文句に弱いみたいなんだよねえ
ウンウン、実にホラーめいているよ

――あ、レディはそういうのニガテだったっけ
まあそんなに怖がらなくてもいいさ
キミみたいな強気なバラは幽霊の方だって怖がるぜ……

とかなんとか喋りながら(怒られながら)
桜の咲く道を散歩しよう
島で見る桜の花もキレイだねえ

こんなにキレイに咲いているのに無人だなんて、もったいないよ
幽霊君は花見をするのかなあ

ああ、そうそう!宝探しだってしなくっちゃ!
いやあ実にロマンのある旅だ
メガリスとやらはどこにあるのかなあ

あのいっとう立派な桜の樹の根元とか
遠くに見える神社の奥とかだったりして
どうおもう?オスカー


誘名・櫻宵
海から解放されたわ!
船は死ぬかと思ったけど、綺麗な島に来れて嬉しいわ!

春うらら、桜も満開ね
うん!あたしも桜もとっても綺麗だわ!
めがりす、っていうのを探すの…楽しそうだわ
お花見しながら探索しましょ!
人がいない神社って物悲しいわ
あるならば御神体なんかにされて神社のどこかに隠されている…なんてね

「呪華」の蝶を舞わせて周囲を探りながら鳥居をくぐって行く
満開の桜に桜瞳を細める
持ってきたチョコレエトを一粒ずつ食みながら
愛し子に見せる為に景観の写真を撮りながら進む

幽霊が出るともきいたわ
櫻幽島、なんていうのもいいかしら
心霊写真、とれるかしらね
逢えるのが楽しみよ
私は陰陽師
祓うか喰らうか…うふふ

これから楽しみだわ



●花幽霊
 ずいぶんと長い間、高い波に揺られる船に乗っていたものだから。
 地面に足をつける事が出来る頃には、エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)は身体が逆に揺れているように感じる程であった。
「ねえ、レディ。君の調子は――、ふふ。そうかい、解るよ。だからって棘は勘弁してくれるかな」
 左手に咲いた真赤なバラに声をかけたエドガーは、苦笑を浮かべて肩を上げて、下げて。
 くるりと空を一回転。薄紅の花弁を咥えて戻ってきた一羽の燕――オスカーを肩に休めてやると、彼は島を見上げた。
 幻朧桜の咲き誇る山。
 その頂まで立ち並び続く、赤い鳥居。
 ちらりはらり。
 空の青に薄紅の花弁が、潮風に乗って舞っている。
「こんなに綺麗なのに、幽霊がでるなんて嘘みたいだなあ。――あ、レディはそういうのニガテだったっけ?」
 この幻朧桜って花は、なんとも綺麗で好きだ。
 ゆっくりと歩みだしながらエドガーが言葉を紡ぐと、左腕に宿り蝕む赤い花が抗議するように揺れて。
 朗らかにエドガーは笑って、花に言い聞かせる様。
「まあそんなに怖がらなくてもいいさ、キミみたいな強気なバラは幽霊の方だって怖がるぜ……」
 甘く言葉を囁やけば、左手に突き刺さる棘。
 だから、痛い、痛いって。
 そうして幾つもの鳥居をくぐり抜けた頃。
 歩む先に、枝垂れ桜を背負う和装の背が見えた。
「……おや」
 エドガーは呟きと共に、空色の瞳を細める。
 黒い蝶を侍らせたその後姿は、どこか儚くも消えてしまいそうな桜の元に佇む幽霊にも、精霊にも見えて。
 ――思わず、幽霊も花見をするのかと思ったけれど。
 カシャリ、と響いた携帯カメラの音で、それが生きている者だとエドガーは確信した。
「やあ、とても綺麗な桜だね」
 ホラーめいた展開は、なかなかワクワクするものでは在るけれど。相手が生きているとなれば、エドガーは軽く手を上げて。
「ええ、とっても綺麗。……でも、人のいない神社ってなんだか物悲しいものね」
 誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)は携帯端末を手に、柔らかに笑んで応じた。
 その顔をみて、やっとエドガーは思い出す。
 この人はさっき船の中で、今にも死にそうな顔でフラッフラになっていた人だ。
 うん、そうだね、確実に生きている人だ。
 元気になったようで良かった。
「そうだねえ。桜だってこんなにキレイに咲いているのに、無人だなんて何だか勿体ないな」
「その変わりと言っては何だけれど、幽霊が出るときいたわ」
 櫻宵が少しだけ肩を竦めると、枝垂れ桜の翼が綺麗に揺れるものだから。
「……フフ。なら、幽霊君も花見をするのかもしれないね」
 ――何となく本当にそう思えたもので。
 エドガーが笑うと、金糸の髪がさらさらと流れた。
「あら。さっきの写真に、幽霊が写り込んでいたらどうしようかしら」
 ――櫻宵的には幽霊に逢える事は、とても楽しみではあるのだけれど。
 この写真は、愛し子に見せる為に撮った写真。
 綺麗な幽霊ならまだしも、怖い写真だと怯えさせてしまうかもしれない。
「ああ、それならば。私が幽霊を惹きつけている内に写真を撮ってしまうと良いよ」
 どうやって惹きつけるかなんて解らないけれど、エドガーは王子様。
 困っている人の為には胸を張って無茶だって引き受けるのだ。
 オスカーがくるくると飛び回って花弁を散らす。
「あら、それは心強いわねえ」
 そんな彼の様子に、櫻宵はくすくすと笑って。
 写真を一枚ぱしゃり。
 エドガーは笑ってピース。
「そう、そう。めがりす、というのも探さなければ行けないのでしょう? お花見しながら捜索しましょ」
「ああ、その通りだよ。宝探しだってしなくっちゃ!」
 額に掌を当てて、オスカーは遠くを見るポーズ。
「……うーん、あのいっとう立派な桜の樹の根元とか、遠くに見える神社の奥とかはどうかな?」
 ひいらりひらり。
 黒い蝶を神社の方へと舞わせながら、櫻宵はエドガーの言葉に頷き。
「御神体なんかにされて、神社のどこかに隠されているなーんてのもありそうね」
 白に青のマントを翻して、頂きを見上げたエドガーは朗らかに笑った。
「それもいいね、なんともロマンのある旅になりそうだ」
「ふふ、そうね。これからが楽しみね」
 ――そう。
 櫻宵は陰陽師なのだから。
 魑魅魍魎――幽霊たちを祓うも、喰らうも……。
「……ああ。そうだわ。――櫻幽島、なんてどうかしら」
「うん? この島の名前かい」
「ええ」
「……それはいい名前だねえ、手帳に書き残しておかないといけないな」
 ちらちらと風に揺れる、桜の花。
 瞳を細めた櫻宵も角に花を咲かせて、笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルクス・カンタレッラ
【夕夜】
祀る者の居なくなったお社に咲き誇る桜なんて、風流と言うべきか侘しいと言うべきか
ま、うちの坊ちゃんがわざわざおいでになったんだ
あんたも我らが「リュウグウ」随一の花を愛でておくれ、名も知らぬ神さま

あはは、坊ちゃん何だかんだ言って最後まで登り切ったじゃないか
お疲れさん、ほらスカーフ敷いたんで座ってくださいな
……持って来たって何だい?坊ちゃん
わ、ラッキー
坊ちゃんのベリーソーダ美味いから好きなんですよね、船の奴らに羨ましがられそう
はい、秘密で

じゃあ、私からはこれを坊ちゃんに
船出る前に厨房からマドレーヌ貰って来たんで、花見ついでに休憩しましょうか
このあとまだ動きますし、今はのんびりしとくかな


ヘヴェル・シャーローム
【夕夜】
この潮風でも枯れないのだから、外界の花は強いのかな
ねえ、見に行こうよ

……って、言ったけどさ
あの階段、いくらなんでも多すぎじゃないかな
のぼりきったけどさ、けどさ!
まったく、リュウグウのオトヒメたるぼくにこの階段は拷問じゃないかな!
もうやだぼく疲れた。ねールクス、参拝前にどっかで休もう
敷いてもらったらスカーフの上に堂々座るよ

実はさ……じゃーん。持ってきてたんだよね
ぼく特製のベリーソーダだよ。すごく美味しく出来たんだ
ふふん、だろーだろー?特別なんだから、内緒にしててよ?

ルクスも何か持ってきたの?
マドレーヌ?やったあ!さすがぼくの護衛!いただきまーす!
そうだね、花を愛でながらゆっくりと休もうか



●花見
 山道、坂道。いいや、いっそ切り立った急斜面のようにすら見える道。
 見るだけならば良いが、登るとなると――。
「……はあ、……はあっ」
 肩で息をしながら。
 最期の鳥居をくぐりぬけたヘヴェル・シャーローム(まほろば・f26173)が、赤い髪を潮風に揺らし。
「あの階段、……いくらなんでもっ、多す、ぎじゃないかな……っ!」
 膝に手をつくと、深い深い息を吐いた。
「あはは。坊ちゃん、それでも最期までちゃんと登りきったじゃないか」
 お疲れさん、なんて朗らかに笑ったルクス・カンタレッラ(青の果て・f26220)は花咲の青を細めると、咲き誇る幻朧桜の下へスカーフを広げて引き。
「はあ、もうやだ。ぼく、疲れた」
 一度空を仰いだへヴェルは、そのスカーフの上にぺったりと座り込んだ。
「……まったく、リュウグウのオトヒメたるぼくに対して、拷問みたいな階段だったよ」
「ははは、そりゃ違いないですね」
 彼の言葉にルクスが、再び弾けるみたい笑う。
 ――海の上に存在する竜の宮。
 対価と引き換えに夢の時間を与える歓待船『リュウグウ』にて、その支配人たる母に変わって。
 へヴェルは支配人代理――オトヒメを努めている。
 肩を小さく竦めたルクスは小さな小さな支配人代理。
 ――美しき主の横に腰掛けると、誰もいない小さな社を見やる。
「この潮風でも枯れないのだから、外界の花は強いのかな」
「特別潮に強そうにも見えないですけれど、そうかも知れないですねえ」
 へヴェルがぽつりと呟くと、ルクスは眦を緩めて頷き。
 その横でへヴェルは鞄へと手を入れると、何やらごそごそと探し出す。
「ああ、そう、そう。実はさ……」
 じゃーん、なんて彼が取り出したのは彼の特製ベリーソーダだ。
「わ、ラッキー。坊ちゃんのベリーソーダはすごく美味いから、本当に私好きなんですよね」
「うん。今日は何時もよりも、すごく美味しく出来たんだ。楽しみにしててよ」
「ははは、そりゃあ。船の奴らに羨ましがられそうだ」
「ふふん、だろーだろー? 特別なんだから、皆には内緒だよ?」
 誇らしげに笑ったへヴェルが、カップへとソーダを移すとしゅわしゅわと甘やかな泡が弾けて。
「はい、ではこれも坊ちゃんと私の秘密で」
「うん? ルクスも何か持ってきたの?」
 鷹揚にカップを受け取ったルクスは、お返し、と。
 ヘヴェルの掌の上にマドレーヌを1つ。
「厨房で包んで貰って来たんですよ、花見ついでに休憩して行きましょうよ」
「やったあ、さすがぼくの護衛だね。いただきまーす!」
「はい、いただきます」
 二人並んで、マドレーヌを一口。甘くて酸っぱいベリーソーダで喉を潤し。
 久方ぶりであろう人の訪問にも桜は変わらず青い空に向かって、花を風に揺らすばかり。
「良い天気ですねえ」
「そうだね、――それに綺麗な花だ」
 ルクスの言葉に頷いたへヴェルのカップに薄紅色の花弁が一枚、落ちるのを見た。
 何となく彼は、その花弁をゆらゆらと薫らせるように。
 ルクスには、その姿が、光景がひどく美しく見えたもので。
 この世界へと落ちてきて、誰にも祀られる事の無くなった神様の依代。
 誰も見ることも無いというのに、咲き誇る桜の花。
 ――それでも、今は二人が桜を見ている。
 その光景が何とも侘しくも風流だと、ルクスは思ってしまうのだ。
「……この海へようこそ、名も知らぬ神様。我らが『リュウグウ』随一の花がお出迎えさ、……折角ならばあんたも、存分に愛でておくれよ」
 なんて。
 彼女は、小さく、小さく、神様へと呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
一つの世界に他から島が落ちて来るなんて変わってるね。まるで島版神隠し。
世界そのものが他から欲しがるような欲張りなのかな?
この島にどんなメガリスがあるかわくわくするね。
幽霊も大丈夫、平気。

鳥居を潜って神社へ向かう。真ん中は通らないんだっけ。
あと手水とかあるなら其方もきちんと作法通りに。
道中鳥居に何か記号とか特徴的な何かがないか気を付ける。
推理物とかだったらこういう所にありそうじゃない?
神社についたらまずは参拝。
それから周囲の地形を確認して拓けた場所とかないか確認。
やっぱりメガリスあるなら周囲に何か変わった部分があるんじゃないのかな。
桜の咲き具合とか変な建物とかがね。

島の名前…うーん、桜社島とか?


天御鏡・百々
(※百々は元々神社の御神体の鏡です)

幽霊の蔓延る島か……
可能なれば成仏、浄化してやりたいものだが
まだ幽霊はおらぬようだな

なれば、神社へとお参りするとしようか
サクラミラージュより訪れぬ者も居らぬこの地へ落ちて
祀られている神も随分寂しい思いをしているだろうからな

さて、この神社に祀られているのはどなたであろうか?
サクラミラージュとサムライエンパイアには類似する場所も多く、他人事にも思えぬのだ

そうだな……
メガリスを強奪しに来るコンキスタドールとの戦いの戦勝祈願を祈るとしようか
(祈り10)
後は……この島が開放された後、訪れる者も増えるとよいのだが



●朽ちた神社
 空は青、咲き誇る花々は優しい薄紅色。
「不思議な世界だにゃあ、世界そのものが他から欲しがるような欲張りなのかな?」
 柱を一つ一つじっと見やりながら、真っ赤な鳥居の端を進むクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は小さく呟いた。
 異世界から落ちてくる島を、奪い合っている貪欲なる海。
 咲き誇る幻朧桜を見ていると、まるで島ごと神隠しに遭ってしまったようだとクーナは思う。
 その中に呪われているとはいえ秘宝――メガリスが隠されているなんて、なんだか宝探しのようだ。
「なんだかわくわくするね」
 灰色の毛並みを潮風に揺らして、クーナは進む、進む。
 ――立ち並ぶ鳥居を抜けた先。
 埃の溜まった社。
 積もるばかりの桜の花弁。
 煤けた賽銭箱も、ほつれたしめ縄も、朽ち落ちた紙垂も。
 掃除するものも、直すものも、この島にはもう居ないのであろう。
 天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は、祀る者も居なく成って久しいのであろう神社を見やる。
 ――百々自身も、御神体として祀られていた神鏡である。
 だからこそ、人に祀られる事も無く、人が訪れる事も無い神社の寂しさは想像ができる。
 この奥で祀られている神も、随分と寂しい思いをしている事だろう。
「……この神社に祀られているのはどなたであろうか」
 墨も落ち、少し朽ちはじめている様子の社からはその名を読み取る事は出来なかった。
 サクラミラージュとサムライエンパイアには類似する場所も多いが、神の名前まで全て一致するとは限らない。
 ――しかし、しかし、どうにも百々には他人事にも思えなかったのだ。
「先客かな?」
「おや、参拝だろうか?」
「そうそう。それからメガリスがありそうな、変わった部分がないかなーってね。見て回ってるんだ」
 桜の咲き具合や変な建物とか、なんて。
 ぐるりと見渡す小さなケットシー、――クーナは百々にお辞儀を1つ。
 会釈で返した百々は、首を傾いで瞬きを1つ、2つ。
「ふむ……、特にこの辺りには妙な部分は見受けられなかったが……」
 そして彼女は少しだけ悪戯げに笑った。
「参拝方法についてならば詳しいぞ」
「にゃ、それは頼もしいねえ」
 どうせ参拝はするつもりだったのだ。
 くすくすと笑ったクーナは、百々の横へとててて、と歩み寄り。
「我も今からコンキスタドールとの戦に向けて、戦勝祈願をしようと思っていた所であったのだ」
「なら私は、無事にメガリスが見つかるようにお願いしようかな」
「それも良き願いだな」
 なんて。
 言葉を重ねながら二人は社へと歩み行き、百々は細く息を吐いて瞳を閉じる。
 そう、後はもう一つ。
 ――この島にまた人が訪れて。
 この神社に祀られる神に、安寧が訪れる日を祈って。ふ、と顔を上げる。
「……しかし、幽霊の蔓延る島か……」
 そちらも叶うのならば、成仏をさせてやりたいものだが、と。
 百々は肩を竦め、クーナがうーんと帽子の鍔をもたげて瞳をぱちくり。
「……怖くはないけれど、気になるよねえ」
 幽霊の蔓延る島。
 隠されたメガリス。
 ――なんとも、冒険らしくなってきたじゃあないか、なんてクーナは尾を揺らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
桜は滅茶苦茶見頃だけども
ここの桜……サクラミラージュの幻朧桜みたいに
一年中、咲いたままなんだろか?
やっぱ葉桜になんのかな?

桜を見上げて1人散策

鳥居と神社しかねぇ無人島だもんな
静かなもんだ
サクラミラージュの、UDCアースの、
桜に浮かれた賑わいも嫌いじゃねぇけど
こーゆーのも悪くない……

うん、悪くない
隣に居る人が居てくれりゃ、もっと悪くない……
つか、物凄い幸せだけど居ねぇモンしゃーねぇし
しゃーねぇから、スマホで写真撮ってこ
無人島にお土産屋なんてねぇもんな

にしても、メガリスはどこなんだろなぁ……
鳥居か神社のどっちか、かな……

それ以外にないってんなら
まぁ……その辺だろーし

写真撮ったら神社にお参り行っとこ



●きみおもい
「……サクラミラージュから落ちてきたって事は、ここの桜も一年中咲いたまま、なんだろかね?」
 鳥居をくぐり抜けながら、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は首を傾ぐ。
 人も居ない桜と神社だけが存在する小さな島は、静かなもの。
 サクラミラージュや、UDCアースのお花見らしい浮かれた賑わいも嫌いではないが。
 静かな雰囲気の中で、花を楽しむのも悪い気分では無い。
「……」
 確かめるみたいに、手をきゅっと握って、開いて。
 いつもの掌の感覚はないけれど。
 ――隣に居る人が居てくれりゃ、もっと悪くない、と、思う。
 今日は急ぎで呼ばれたもので、いないのだけれど。
 小さくかぶりを振って、細い吐息を零して。
「ま、居ねぇモンは居ねぇんだし、しゃーねぇけどなあ」
 変わりに桜の写真を土産代わりに撮っていってやろう。
 幽霊なんて写り込まなきゃいいけれど。
 でも。
 それはそれで、特に子どもたちなんかは喜ぶかもしれない。
 ――無人島には、お土産屋なんてないのだから。
「に、してもメガリスはどこに隠れてんだろなあ」
 なんて、手近な鳥居の柱の後ろを見てみるが、勿論何もない。
 小さな島だと言え、鳥居の数は相当あるし、神社もまだ見ていない。
 もしかすると何処かの桜の下に埋まっている、なんて可能性もある。
「ま、ぼちぼち探すしかなさそうだな」
 今日は横に彼も、子ども達も居ない。
 今日は一人だ。
 ……その事が、なんだか、無性にぽっかりと何かが足りないような気がしてしまうなんて。
 く、と喉を鳴らして笑った倫太郎は、また鳥居を1つ潜って。
「……お参りも行っとくか」
 桜を見上げて、ぽつりと呟く。
 空は青。
 彩る花は、薄紅色。
 鳥居は赤くて。
 ……何か横に誰かが足りないと思う事は、とても贅沢で幸せに思えたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『さまよえる幽霊海賊』

POW   :    幽霊に自らの圧倒的な力を見せつけ、強者であることを示す

SPD   :    幽霊の声を聞き、言葉巧みに彼らを説得する

WIZ   :    幽霊の声に耳を傾け、彼らが満足するまで話を聞く

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●魂呼ばい
「おーい」
 声が聞こえた。
「おーい、おーい」
 その声は、近くて、遠くて。
「おい」
 桜の幹と幹の間で、血の気が無い真っ白な掌が揺れていた。
エドガー・ブライトマン
なんとなく風が変わった気がする
ひんやりとした心地がするよ
これくらいがちょうどいいかもしれないねえ

……ン?レディもオスカーもどうしたんだい
えっ私今幽霊に話しかけられてるの!?
それはすまないなあ、無視するつもりはなかったんだよ!
私、キミみたいなタイプに疎い体質みたいで

(ねえオスカー、私が今話しかけてる方向って合ってる?幽霊いる?)

どんな幽霊が話しかけてくれているか解らないけど
オスカーとレディを介して、幽霊君と話してみよう

レディは嫌そうだけど、仕方ないよ。宝探ししたいもの

ねえ、メガリスっていうのを知ってる?
知っているようなら、幽霊君と一緒に歩いていこう
いや~、宝探しらしさが出てきた!ワクワクするよ!



●王子様と幽霊たち
 潮気を含む風の中に、ひやりとしたものを感じた気がした。
「ん……?」
 エドガーは顔を上げる。
 はらはらと舞い落ちる花弁。
 涼けさ以外は、エドガーに感じる事で何も変わった所は無い。
 だからエドガーは潮の流れが変わった事で、風の流れも変わったのかも知れない、と思う。
「うーん、でもこのくらいが丁度いいかもしれないねえ」
 なんたって王子様の服は海に適しているかと言えば、そんな事は無いのだから。
 ぐーっと伸びをしてからマントを翻して、忙しなくオスカーの飛び回る姿を見る。
 ……あれ?
 いつもの事だからもう余り気にしていなかったけれど、レディだって左腕をぎゅうぎゅうと締め付けている。
「……ン?」
 まばたき1つ。
 首を傾いで、翼をはためかせるツバメの声と薔薇の言葉へと耳を傾けるエドガー。
「……えっ?」
 まばたき2つ。
 急いで周りを見渡すけれど、なあんにも感じない。
「……わ、私、今幽霊に話しかけられてるの!?」
 困ったように虚空に向かって、腕を広げたエドガーは周りをキョロキョロ。
 何も見えない、何も感じない。
「わっ、すまないねぇ。無視するつもりはなかったんだよ!」
 弁明を始めると、棘がちくりと腕を痛める。
 どうやら、幽霊の脇腹を抉っているらしい。
 一歩後ろに下がって、顔を上げて――。
「どうやら私は、キミ……、えっ、キミたち……? みたいなタイプに疎い体質みたいで……」
 話しながらエドガーはオスカーにアイコンタクト。
 ねえ、ねえ、オスカー。
 私が今話しかけてる方向って合っているかな?
 幽霊君はちゃんといるかい?
 あっ、いない?
 そっかあ。
 オスカーの首の向きに合わせて、くるりと向き直ったエドガーは空色の瞳を幽霊(が暫定的に居そうな位置)へと向けて。
「いやいや、本当にすまない。そうだ、そう言えばキミたちはメガリスというのを、知ってるかい?」
 うんうん、レディ。
 レディがイヤなのはよーくよく、わかるさ。
 だからってそんなに棘は勘弁しておくれよ。
 私は王子として前を向いて話さねばならないのだよ。
 あっ、本当? 向きがまた変わってる? 落ち着きのない人たちだなあ!
 声も姿も、なんにも判らないエドガーの聞き込みは、少しばかり難航するのだけれども。
 薔薇とツバメの導きで、何とかどうにかなるのであろう。
 ――いや~、それにしたって宝探しらしさが出てきたね! 本当にワクワクするよ!
「ありがとう、幽霊君! それじゃあ早速、宝に向かって出発しようじゃないか!」
 そうして。
 エドガーが朗らかに宣言すると、オスカーが肩に止まってきゅっと首を横に向けた。
 あっ、また逆?
 そっかあ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天御鏡・百々
幽霊達が出てきたようだな
メガリスの捜索は仲間に任せ
我は幽霊の成仏を目指すとしよう
(幽霊の姿は見えるし声も聞こえます)

さて、貴殿はサクラミラージュの者か?
それともこのグリードオーシャンの者であろうか?
事情を聞き、成仏出来るように説得しよう
この後に襲撃に来るコンキスタドールに命を奪われた者や
この島に眠るメガリスが原因で命を落とした者もいるかもしれぬな
望むならば、我が本体たる神鏡より放つ聖なる光で送ってやろう

もしも幽霊達の中に悪霊や邪霊に類する存在がいるようならば
破魔71を乗せた光で強制的に浄化するぞ


クーナ・セラフィン
…うん?呼ぶ声?
まずははーいと応え周囲を見渡し声の方向へ。
いきなり襲い掛かってこないならまあ大丈夫だろう、気楽にね。
お話しするにもそのままだと少々味気なし、お酒はないけどもお茶の時間なら、とティーセット出してみたり。
この世界に来るまでのあれこれを面白おかしく話したりしつつ、幽霊海賊達のお話も聞けるだけ聞いてみる。
氷の嵐の海とか厳しい戦いだった…とか。
辛い話もあるかもだけど楽しいお話もきっとあるはず。
こういう聞き役はまあ慣れてるし…うん。
それで向こうも満足した感じになってきたらさり気なくメガリスについて聞いてみる。
知らないなら珍しい場所とか奇麗な場所とかで。
お茶会終わりには丁寧にお別れの挨拶を。


篝・倫太郎
WIZ

……出た
別に怖くねぇけどさ
幽霊よか、ゾンビのが怖いもん

攻撃してこねぇなら……
寂しいから一緒に逝こ?だの
やり残したことをやり遂げる為に身体寄越せ!だの
言うんじゃねぇんなら……
話を聞くのも吝かではない、デス

そういう事言う奴は
破魔乗せた華焔刀ですぱっと送るから
問答無用で送るから

ふんふん?
へぇ?
で?

大概に、語られるのは後悔や無念、時には怨念だったり
そんなものがこの世への執着になってるってのはよくある事だけど

時々、そんな出来事に紐付けされた
綺麗なものや優しい気持ちがあるのも事実だから
桜眺めて話を聞いて

ん、スッキリしたか?
じゃ、ちゃんと眠りな?
眠って、巡りな
あんたの事は……俺、ちゃんと覚えとくからさ



●ゴースト・ティー・パーティ
 おーい、おーい。
 どこかから響く声は、聞き覚えの無い声。
 ゆらゆら揺れて、どこか消えてしまいそうなほど儚い声音。
「……はーい?」
 顔を上げたクーナが首を傾ぐと、そこにぼうと白い影が立っていた。
「おや、おや。……キミ……、いいや、キミたちが件の幽霊、かにゃ?」
 クーナは影の前まで向かうと、帽子を擡げてお辞儀を1つ。
「キミたちは海賊らしいし、お酒の方が良かったかも知れないけれど……、お茶なんてどうかな?」
 ピクニックバスケットを掲げた小さなケットシーは、尾を揺らして尋ねるのであった。
 ――舞う桜吹雪。
 風に揺れる満開の桜たちは、花弁を散らしても散らしても散る様子は無い。
 きっと幻朧桜はこの世界に在っても、かの世界と同じく枯れる事は無いのだろう。
 桜の道を歩む倫太郎は、馨しい香りにふ、と足を止める。
「……へえ、お茶?」
 目を凝らした先には、――猟兵だ。
 幾度も仕事先で見かけた事のある、少女が桜の下でお茶をしているのが見えた。
 よくよくみれば、その横にケットシーの姿も見える。
 花を見ながら紅茶だなんて、なんとものんびりした優雅な事だ。
 小さく肩を竦めて、倫太郎はそちらへと歩み寄り。
 ――そして。
「……出てるじゃん」
 彼は眉間に結構なるシワを寄せて、小さく呟いた。
「おや、キミも飲むかい?」
「なかなか美味だぞ」
 クーナが小さなティポットを掲げ、綺麗に正座をした百々が言葉を次いでから、ふうふう、とカップに息を吹き込んでいる。
「わはははははは、全く飲めんわ」
「おっ! 俺も飲めんなあ、でも久方ぶりに温かいものを胃にいれた気分だ」
 おぼろげな手先がカップを掴むと、茶がとぽとぽと地にこぼれ落ちる。
「はいっとらんがな」
「わはははははははは!」
「どうも指先に力を籠めるとカップは浮くが、傾けるだけが精一杯だのう」
 その横で。
 わらわらと集って楽しげな幽霊たちと彼女たちを一度、二度、三度見した倫太郎。
「…………イタダキマス」
 敵意もなさそうだし。
 いや、別に幽霊とか怖くねぇけど。ゾンビのほうが怖いし。
 そうして彼は、この辺りの幽霊たちが粗方集まっていそうなお茶会へと参加を決めたのであった。
「それでのう、その荒海を越えた先にあったのが……」
 語られるは、海賊たちの自慢とも自虐ともとれぬ英雄譚、冒険譚。
 温かいお茶に、はらはらと散る桜の花弁。
 クーナと倫太郎が相槌を重ねれば、海賊たちは歌い、踊り。
 久方ぶりの宴に沸き踊る。
 青い空も相まって、のどかな雰囲気で流れ行く時。
 そう。
 ――参加者の大半が幽霊である事覗けば、だが。
 元々幽霊達の安寧を祈るが為にこの茶会へと参加した百々は、彼らの楽しげな様子に茶の湯気の混じった温かい吐息を零し。
「そういえば貴殿らはサクラミラージュの者か? それともこのグリードオーシャンの者であろうか?」
 首を傾ぐと、幽霊を見上げて尋ねた。
「ほ? しらん島の名前じゃな」
「わしらはこの辺の島の育ちでのう。船長について『メガリス』を探し航海しとったんじゃ」
「ふんふん?」「へえ」
 興味深い話しに、倫太郎とクーナは幽霊をじいと見やる。
「へぇ、メガリスは見つかったのか?」
 倫太郎がカップを傾けながら、さらっと尋ねると。
「ヨーホー、ヨーホー! 見つけた、見つけたさ! でもなあ、死んでから見つけたってなーんの意味もありゃせんわ! ワハハハハ!」
 トリコーンハットを被った幽霊が、お茶をバチャバチャと零しながら陽気に歌って答え。
「そうは言うが、アイツが探していたメガリスは隠してやったじゃろう。わしらの勝ちじゃわ! 勝鬨をあげい! わははは! ヨーホー! ヨーホー!」
「ホイホイホイ!」
「にゃ」
 その言葉に紅茶を注いでいたクーナの獣耳をぴぴぴ、と立ち。
 百々が瞳を細めると、幽霊達へと質問を重ねた。
「……なれば、貴殿らはメガリスの場所を知っておるという事であろうか?」
「あーあ! もちろん!」
「あの女から隠してやったのさ」
「わははは! コンキスタドールに渡してやるわきゃァいかんものな」
「でもあの乳はたまらん」
「たまらんな」
「ケツもじゃ」
 海賊たちが湧く中、百々は顎に手を当てて。
「ふうむ、成程」
「コンキスタドールの手に渡らなければ、キミたちは満足できるのかにゃー?」
 クーナの問いに、海賊たちは顔と視線を合わせあい。
 それから弾けるように笑って、頷いた。
「まぁな。わしらはもう死んどる身じゃ。まーだまだ成仏する気はないがのう! ヨーホー!」
「そっか、……んじゃさ。俺らにソレ、託してみる気は無いか?」
 カップをくるりと回してから。
 顔を上げた倫太郎が、幽霊たちをまっすぐに見やって言葉を重ねると。
「ほっほう、わしらの変わりにメガリスを護ってくれるというのか!」
「悪くはないが、悪くはない! ……が、宝を失うのは少しさみしいなあ」
「そうだな。酒だ、酒を供えてくれるなら、教えてやるぞ!」
「それはいい、それはいいな!」
「ン、分かった。また持ってくる。約束するよ」
「何が飲みたいか、リクエストはあるかい?」
 倫太郎とクーナがこっくりと頷いて答えれば、今日一番の熱狂に沸き立つ幽霊達。
 ゆるゆると首を揺すった百々は、肩を竦めて。
「……まだまだ眠るつもりはなさそうだな」
 ――望むならば、送ってやろうと思っていたが、と。
 小さく呟いて笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百鬼・景近
【花守】
妖剣の呪詛に、化身の妖異
俺達みたいなのに誘われてくるなんて、どんな怨霊や幽鬼の類いかと思えば――真逆の者が寄ってきたものだね
……ねぇ、伊織?
――君、色んな意味で茨や獣の道を行くのが好きだね
(何とも言えない微笑で生暖かく眺め)

さて、此方の彼らは流石海賊と言うべきか――とにもかくにも陽気に宴をご所望の様子
……其方のお嬢さんも、良ければ気晴らしに一献交わすかい?
花でも見ながら、少しこの地について聞かせてもらえると嬉しいな
君の故郷の昔話と――其を乱す様な、近頃の異変や妙な気配等もあれば
解決に役立てるかもしれない

酒や言葉を心行くまで交わした後
成仏する気になる者がいれば桜を手向けに穏やかに見送ろう


呉羽・伊織
【花守】
まぁどろどろ誘っちゃうよか良いだろ!
コレもきっとオレの日頃の行いが――(言いつつむさい海賊から目を背けた先、儚げな花見つけ)いやホントナイスオレ
お嬢サン、浮かない顔してどーしたの?お話聞こーか?
待ってお嬢サンも景近もそんな可哀想な感じの目しないで
(コレは実益(情報収集)が本命なアレだからホントなんぱとかそんなんじゃ略)

改めて!
なら、愉快な野郎共とは酒宴と情報の等価交換だな
お宝の予感とか怪しい気配とか聞かせてくれりゃ弾むぜ
(さらりとお嬢サンに声掛けてる景近に一瞬ジト目で)
ウン、お嬢サンの憂いも晴らせるなら大儲けだ

後は憑きたいなら憑いてくると良いし
旅立つなら晴れやかに見送って
情報辿り先へ



●酒を酌み交わせば
 はらはらと薄紅の花弁が舞い落ちる。
 どこか纏わりつくような風に、瞳を眇めた百鬼・景近(化野・f10122)は黒耀色の髪をかき上げて。
「俺達みたいなのに誘われてくるなんて、どんな怨霊や幽鬼の類いかと思えば――」
「まぁ、どろどろのが誘われてくるよか良いけどさァ……」
 やれやれと首を振った呉羽・伊織(翳・f03578)が、半分くらい瞳を閉じて応える。
 儚げに揺らぐ桜の樹の下。
 青白い――むきむきの海賊たちが集っていた。
「おーい、お前たち生きておるのか」
「ほほーん、珍しいなあ」
「ワハハハハハ、どうもこの島にゃ人が寄り付かんものなあ!」
「なーんもありゃせんし、なによりわしらがおるからの!」
「ワハハハハハハハハハ!」
 一度瞳を閉じた伊織が、景近を見やって。
「……いやまあ。コレもきっとオレの日頃の行いが――」
 減らず口だか、負け惜しみだか解らぬ言葉を漏らせば。
「そう……」
「あっ! いや、ホントナイスオレ!」
 目を反らした景近。
 どこか遠い目をしていた伊織が、はっと何かに気がついた様子で駆け出して。
「お嬢サン、浮かない顔してどーしたの? お話聞こーか?」
「別に話すのはいいけど、……何?」
 ウキウキと幽霊の海賊女を口説き出した彼を、景近は優しげな瞳で見送るばかり。
「――君、色んな意味で茨や獣の道を行くのが好きだね」
「あーーっ、待って。待って!! そんな可哀想なモノを見る感じの目で見ないでほしいんだケド!? 違うの! コレホント、なんぱとかそういうんじゃなくて、マッテ!?」
 慌てる伊織を尻目に。
 やれやれと首をもう一度揺すった景近は、すっと一歩幽霊たちの前へと歩み寄った。
「ム?」
 ……生きるものが珍しいのであろう。
 わらわらと集った幽霊たちが、彼の歩みに視線が引き寄せられるかのように彼を見る。
「さて、キミ達、――お嬢さんも。綺麗な桜だけでは何とも味気ないだろう? 良ければ気晴らしに一献交わすかい?」
「まあ、いいわね」
「おお! 酒か! 酒はいいな!」
「供え物なんて初めてだのう、わはは。よきかなよきかな」
 この美しき花々を見ながら話を聞かせてくれると嬉しい、と景近が酒瓶を掲げれば。
「昔話や……そうだね。――其を乱す様な異変や気配の話も聞かせてくれれば、解決に役立てるかもしれないよ」
 幽霊達は、酒瓶目掛けてわいわいがやがや。
 死して尚、嬉しげな雰囲気で景近を取り囲みはじめ。
「そうそう、お宝の予感とか怪しい気配とか聞かせてくれりゃ弾むぜ?」
 手を広げて笑った伊織の前をすり抜けて行く幽霊。
「……」
 一瞬だけ景近をすごい顔で見る伊織。
 エー、同じ様に話しかけてるのに好感度が違うのはナニ???
 酒瓶? 酒瓶の差?
 なんとか御為顔を保って、伊織はウィンク1つ。
 幽霊のお嬢さんへと視線を向けて――。
「何より、そう、お嬢サンの憂いも晴らせるなら大儲けだからネ」
 すっと目を逸らされる伊織。
 そんな姿を、景近だけが生やさしげな瞳で見てあげていた。
 ――幽霊たちは供えられた酒を飲もうとしても、ぱたぱたと零れて地へと染み渡るばかりであったがそれはそうとして。
「ヨーホー! 行くぞ、行くぞ、我らの船!」
「もーうありゃしないがな、ガハハハハ!」
「酒を飲む胃も、成仏する気もね」
「ワハハハハハハハハハ!」
 どこまでも陽気に歌い、踊る彼ら。
 ふ、と伊織は瞳を眇め、一度喉を鳴らしてから。
「そういやさ、……聞いて良いモンか解んないケド。アンタたちはどうして死んだんだ?」
 本題を切り出す。
「そりゃあ、あの女のせいさ!」
「……女?」
 景近が言葉の先を促すように相槌を打ち海賊たちを見ると、彼らは酒をぱしゃぱしゃと掛け合いながらくるくると回っている。
「そうさ、そうさ、あの良い乳とケツのコンキスタドール!」
「しかしわしらは、アイツらから隠してやったのさ。メガリスをさ!」
「わしらの勝ちじゃ、勝ちじゃ!」
「ヨーホー・ホー! 勝利の美酒に酔おうじゃァないか!」
「海の悪魔に気をつけろ!」
 その言葉に、伊織と景近は一度顔を見合わせて。
「その話」「詳しく聞かせてもらえるかい?」
 同時に言葉を重ねるのであった。
 ……勿論、よい乳とケツに反応した訳ではない。
 メガリス。
 既に生きてはいない海賊達は、呪われた秘宝をこの島に隠したと語りだす。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルクス・カンタレッラ
【夕夜】
臨時開店って所ですかね
私はフロアスタッフじゃないけど

そりゃあ、坊ちゃんほど愛らしく美しいもんはないでしょうよ
さぁさ、お客さま方
我ら歓待船「リュウグウ」、おもてなしさせて頂きましょう
ま、今日はオフなんですけどね
…………単騎海賊してた頃を見てた奴とかいないよな、流石に
嗚呼いえ、何でもないですよ坊ちゃん

ベリーソーダをお供に、桜景色を堪能しつつ幽霊とのんびりお喋り
勿論、坊ちゃんの護衛として不埒な所業は許さないけどね
メガリスについても一応聞いてみるよ
お前らも海賊ならお宝の話は大好きだろ?私も大好きだからな、花見の肴としちゃ悪くない

……ほーんと、幸運ですこと
私らの宝に見送られること、光栄に思えよ?


ヘヴェル・シャーローム
【夕夜】
おや、お客様だよルクス
少し相手をしてあげようか

残念ながら今日はオフだからね
ここは船の上でもなく、『オトヒメ様』の衣装ではないけど
何処かの海で夢を見たものなら母の姿も重なるだろう
そうでなくともぼくは可愛く美しいから見惚れるだろうけど……
ん?ルクス、何か言った?なんでもない?そっか

気儘に幽霊達の話へ耳を傾け、カップを傾け
そう言えば、この島でメガリスを見た?と一応聞いてみる
んー、少し気になるんだけど心から手に入れたいわけではないよ
ぼくはきみ達が心地よく眠るまで話し相手をするだけさ
運良くぼくと出逢えたきみ達の、ね

あ、幽霊でもおさわり禁止だよ
ぼくの護衛に噛み付かれたくないなら、お話だけ楽しんでね



●もてなしの宴
 おーい、おーい。
 遠くから、近くから響く声。
 呼んでいる、呼んでいる。
 おーい、おーい。
 桜を一片空中で掬い上げたへヴェルは、銀の瞳を眇め。
「――おや。お客様だよ、ルクス」
「そうですねえ、臨時開店って所ですか?」
「うん、少し相手をしてあげようか」
 くっと顎を上げたへヴェルに促されてルクスは立ち上がる。
 ――ルクスはフロアスタッフでは無いが、もてなしの作法程度は頭と身体に叩き込まれている。
 青白い顔をした、朧げな足取りの幽霊達に向かって柔らかなお辞儀と共にルクスは笑んだ。
 へヴェルも並び、顔を上げると――。
「さぁさ、お客さま方、ようこそいらっしゃいました。我らは海上の竜の宮。歓待船『リュウグウ』の者でございます」
「お呼びを頂けたとなれば『リュウグウ』の名にかけて。本日は船の外ではありますが、馳走は用意出来ずとも誠心誠意おもてなし致しましょう」
「ははあん、そうか。もてなしてもらえるというのは悪くないなあ」
「ガハハハ、よくわからんがもてなされてやろうか!」
 今日はオフだけれど、なんて。
 内心は、舌を出しているのだけれど。
 言葉通り、今日この場は船上では無い。
 勿論へヴェルだって『オトヒメ』の衣装では無いのだけれども。
 もし。
 この幽霊たちの中に、この海の何処かでももとせちとせの快楽の持て成しを受けた者が居れば。
 彼の容姿はきっと、母の姿が重なるものであっただろう。
「そうでなくとも、ぼくは可愛く美しいから見惚れるだろうけど……」
 ゆるゆるとかぶりを振ったへヴェルは、思わずぽそりと呟くけれど。
「そりゃあ、坊ちゃんほど愛らしく美しいもんはないでしょうよ」
 なんてヘヴェルも調子を合わせてしまうものだから、止める者は誰もいない。
 それから幽霊達の顔を見やって、ルクスは瞳を細めて――。
「おや、そっちのねえちゃん。昔会った事があったかね? どっかの海でよう」
「いいえ、人違いでしょうね」
 ソーダ水をささっと揺らめかせて、少しばかり顔を変えたルクスが微笑む。
 海賊がそうかあ、と首を傾ぐと、ヘヴェルもルクスを見上げて。
「ん?」
「嗚呼。いえ、何でもないですよ坊ちゃん」
「……うん? そっか」
 ああ、危ない、危ない。
 ――万が一にでも、過去を坊ちゃんに知られる訳には行かないのだから。
 単騎で海賊をしていた、なんて。
 まあ、そう、多分、きっと。
 幽霊の勘違いに違いないけれど。
「もてなし、ったってわしらはもう歌って踊るくらいしかできんがのう!」
「まあ、まあ、特製のベリーソーダは如何でしょう?」
 ルクスはカップにベリーソーダを注ぐと海賊たちに勧め。
「ほっほー?」
「おお、これはこれは……」
 カップを傾けた幽霊達をすり抜けて、地面にソーダがこぼれ落ちた。
「ガハハハハ! のめんわ」
「ワハハハハ! のめとらんな」
「こぼすと言えばよう、お前がいきとるときはようよう船酔いで」
「わあああ!」
 それでも海賊達は何かと楽しそうに、久方ぶりの宴に沸き歌い、盛り上がるもので。
 ヨーホー・ホー。
 ヨーホー・ホー。
 ヘヴェルも彼らの横に腰掛けると、陽気な彼らの言葉に耳を傾ける。
「……そう言えば、この島でメガリスを見た事ってあるかな?」
「ああ、そうだそうだ。お前らも海賊なら、お宝の話は大好きだろ? 花見の肴としてちょいと聞かせとくれよ」
 なんてルクスが更にソーダを勧めると、ソーダを呷り傾けばちゃばちゃ溢した海賊が顔を上げた。
「ああ、しっとるしっとる! 知らんわけなかろう」
「俺らが隠したんだものな」
「そうじゃ、そうじゃ、わしらが隠したんじゃ!」
 わはははは、と再び弾けるように笑った彼らの言葉に、ルクスとヘヴェルは視線を交わし合って――。
「へえ、そうなんだ。何があったの?」
「こりゃあわしらが殺された理由にもなるんじゃがのう」
 画して。
 海賊達は語りだす。
 ――彼らがコンキスタドールに追われ死ぬまでを。
 最期に遺し隠した、メガリスの隠し場所を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
おーい、なんて呼び声をが私を誘う
青白い手はあの世から
現に揺蕩う幽霊達のささめき声

呪華の蝶は舞わせたまま
心が踊る
だって陰陽師だもの

その手をとってもいいかしら?
とろうとれば、桜吹雪に紛れたり
遊んでいるの?

もういいかい?
まぁだだよ
まるで鬼ごっこのよう
桜吹雪をなぎ払い
走って
駆けて
捕まえてあげる

握る手に破魔を
あなたのはめがりすを知っているかしら?
どこにあるか知っている?
案内して頂戴な?
笑って尋ねる
…知らなくてもいいわ
あなたは私が、祓って(食べて)しまうから!
美しい桜にしてあげる

もういいかい?
そこにいるのね
まっていて、今行くわ!
うふふ
童心にかえったようで楽しいわ
舞うように駆けて捉えて喰らって…

遊びましょ!



●よびごえ
 おーい。
 呼んでいる、呼んでいる。
 あの声は誰かしら。
 知らぬ声、朧げな呼び声。
 ぬら、と突き出した腕はとても白いものだ。
「ねえ、あなた」
 黒い蝶を纏い、薄紅の花弁を浴びる櫻宵の足取りは軽い。
 その手をとってもいいのかしら。
 手を伸ばせば掻き消えた掌が、更に奥の桜と桜の間でおいでおいでしている。
 ねえ、遊んでいるのかしら?
 もういいかい。
 ――まぁだだよ。
 軽い足取りで、呼び声を追う櫻宵はくすくすと笑った。
「まるで鬼ごっこみたいね、……もう。捕まえてあげるわ」
 舞う桜吹雪。
 一気に櫻宵が地を蹴って踏み込めば、はらはらと花弁が舞い上がった。
 もういいかい?
 ――そこにいるのね。
 遊びましょ!
 甘く笑った櫻宵は、ぽーんと跳ねて。
 駆ける、駆ける、駆ける。
 そうして迫った白い掌へと、伸ばした掌に魔を払う力を籠めてきゅうと握りしめる。
「ねえ、……あなた」
「……ひぅっ」
 それは小さな掌であった。
 青白い顔の和装の少女が見上げている。
 きっとそれはサクラミラージュからこの『島』が落ちてきた際に、巻き込まれてしまった少女の残骸。
 透けた身体ほど、透明な声で彼女は言葉を紡ぐ。
「たすけて、……ください」
 今にも泣き出しそうな言葉。
 する、とその掌を一度逃してやった櫻宵は、破魔の力を宿さずその手をもう一度捕まえなおす。
「……あなたは、何を知っているのかしら?」
「海賊たちが、ここに、たくさん来て……」
 瞳に睫毛の影を落として、櫻宵は頷くと。
 少女はぽつりぽつりと、降り出した雨のように言葉をこぼしだした。
「それで沢山、殺したんです。沢山、死んで、私も。他に誰もいなくて、でも殺された海賊たちも怖くて」
 震える言葉、とりとめもなく繋げられた言葉の意味は少しばかり理解がし辛い。
 しかし。
 和装の櫻宵を見て、思わず声を掛けたのだと人であった少女は言う。
 ――追いかけられてなんだか怖くなってしまって、逃げてしまったけれど。
 それでも、それでも。
「……あなたは、あの人達とは、違う感じがするのです」
 だからと言葉を次いだ彼女は、櫻宵を見上げて。
「あの神社を、……助けて、ください」
「……助ける?」
 今にも涙が降り出しそうな瞳を揺らす彼女の言葉に、鸚鵡返しに櫻宵は相槌を。
「あの神社の奥に、もう私には入れない所があるの。でも、わたし……神様のいる場所の下に、変なものが置かれたのを、見たの」
 あの神社は私の大切な場所で、大切な神様がいて。
 あの神社がめちゃくちゃにされてしまう事が、心残りで。
 少女はふるるとかぶりを振ると、温度の無い指先で櫻宵の掌を握り返した。
「私は、もう、なにもできないから。……おねがいしか、できないから」
「そう、……そうなのね」
 睫毛を揺らして。
 感触のない彼女の掌へと視線を落とした櫻宵は、形よく唇を笑みに擡げると瞳を細めて。
「分かったわ、案内して頂戴な」
「……! ありがとう、ございます」
 少女がぱっと表情を輝かせて、足を動かすことも無く歩みだすとその背を追う櫻宵。
 そうね、そう。
 きっとその変なもの、がメガリスなのだと櫻宵は何となく感じていた。
 何があったかは、知らない。
 何が起こったかも、知らない。
 それでも、それでも。
 この島となってしまった場所が、今は生きたもののいなく成ってしまった場所だと言う事は知っている。
 はら、はらと花弁が舞う。
 枝垂れ桜を揺らして、櫻宵は空を見上げた。
 そうね。
 あなたの心残りを、私がぜんぶ祓ってしまった時には。
 ――あなたを、私が美しい桜にしてあげるわ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『女賞金稼ぎ』

POW   :    ハンタータイム
全身を【右目の義眼(メガリス)から放たれた青い光】で覆い、自身の【これまで殺した賞金首の賞金合計額】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    殺戮斧旋風
自身の【右目の義眼(メガリス)】が輝く間、【呪われた戦斧】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    カースバウンティ
【自分が過去に殺した賞金首】の霊を召喚する。これは【手にした武器】や【怨嗟の呻き声】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:藤乃原あきひら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●朽ちた社
 幽霊たちに案内されて、猟兵たちが訪れたのは神社の社。
 ここから先には行けぬ、という幽霊たちを置いて猟兵達は社の奥へと進む。
 ――彼らに言われた通りに床板を外した下には、白骨化した骨が落ちていた。
 何かを掘って、埋めた跡。
 その瞬間。
 ばかん、と派手な音を立てて社の壁が弾け跳んだ。
 木片と共に、桜の花弁が風と共に吹き込んでくる。
「ははぁん。何だい何だい、そんな所にあったのかい?」
 よく響く女の声。
「見つけてくれてありがとさん。そこのぼんくら共が隠しちまいやがって、死んでも場所を吐かねえモンで困っていたのさ」
 太陽を背負った彼女は、何か楽しげな事を告げるように言葉を紡いで。
 壁へと戦斧を振り下ろしたポーズのまま、コンキスタドールの女はにんまりと笑い。
「さあ、そいつを頂こうか!」
 一気に戦斧を振り上げると、猟兵たちへと襲い掛かった!
篝・倫太郎
なるほど?
海賊の幽霊共がイイって言うワケだ……
尤も、俺の好みじゃねぇけどな

拘束術使用
射程内なのを確認して鎖で先制攻撃と拘束
同時にダッシュで接近して華焔刀でなぎ払い

拘束術、華焔刀の攻撃
どちらにも破魔と鎧無視攻撃を乗せてく

拘束術を振り解くような素振りがあるなら
重ねて使用してく

ま、俺がトドメ刺さなくても
ここに居る『誰か』が終わらせる助力が出来りゃ僥倖ってな?

ほらほら、あんまあっちこっち余所見してっと
俺が終わらせちまうぜ?

メガリスの奪取に腐心するようなら
攻撃に吹き飛ばしを乗せて
メガリスから遠ざけるよう立ち回り

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で凌ぐ

……で、結局ここのメガリスは何なんだ?


クーナ・セラフィン
うん、やっぱりいい幽霊達だった。
これは約束きちんと守らないとね。
メガリス守ってお供えのお酒を持ってくる。
その為に罰当たりなコンキスタドールはきっちり倒さないと。

可能ならこれ以上社を壊させないよう注意しつつ立ち回る。
亡霊達召喚されたらUCの花吹雪で幻惑、社の外に私が逃げたように見せかけて追い払う。
そしてその隙にコンキスタドールへと突撃、突撃槍を喰らわせると見せかけ斧を振るう前に手放し斧を避けつつオラクルで斬りつける。
流石に天罰とかは言わないけどさ、場違いなお客さんはさっさと骸の海にでも帰ってね。
メガリスがどんな形をしているのか、気のいい幽霊達がどんなのを守ったのか。
余裕があったら見てみたいな。


天御鏡・百々
社を破壊するとはなんと罰当たりな
コンキスタドールめ、許さぬぞ!

『カースバウンティ』によって呼び出された霊を
『天鏡破魔光』にて悉く浄化してくれようぞ!(破魔71)

邪魔な霊を倒したら
天之浄魔弓(武器:弓)から放つ光の矢にて
敵を射抜いてやろう
自在に軌道を変える光の矢を避けることは敵わぬぞ!
(誘導弾17、スナイパー5)

防御の必要があれば
神通力(武器)の障壁(オーラ防御85)で対処するぞ

戦闘後には簡単にでも社を修理しておく

コンキスタドールが滅びメガリスは回収され
幽霊達の未練も消えたことだろう
しかし、あの調子ではまだ現世に居座りそうだな……
まあ、人を襲わぬならよしとするか

●本体の神鏡へのダメージ描写NG


ヘヴェル・シャーローム
【夕夜】
おや、これは厄介なお客様だ
悪いけど、このメガリスはぼくらのお客様のものだ
勝手に奪おうったってそうはいかないよ

まあぼくは何もしないけど
……そりゃそうさ、ぼくに傷なんてついてごらん
怖いこわーいぼくの護衛達に何て言われるか。ねえ、そうだろ
ほーらね?

だからルクス。任せるよ
きみの為す全てを「ぼくが許そう」
肯定号令によりルクスと彼女の従える全てを強化して、ぼくはメガリスの傍に
呼び出したトヨタマに腰掛け、ラファルとカルムを侍らせて
ゆっくりと海賊退治を観戦しよう

敵がメガリスを狙うよう動きを見せたなら
ぼくは【オーラ防御】でメガリスごと自分を護るよ
さあ、略奪者さん。罪の数は数え終えたかな?

やりな、ルクス


ルクス・カンタレッラ
【夕夜】
へぇ、この私の目の前でお宝掻っ攫おうってか
良い度胸じゃないか
自力で見付けることも出来なかった癖に、随分と大口叩くもんだ

まして
坊ちゃんに武器向けようってか
当たり前でしょうよ、貴方は私たちリュウグウの至宝だ
今日の護衛は私しか居ねぇんでね、船の奴らの分まで暴れさせて貰おうじゃないですか

ははッ、坊ちゃんそうこなくっちゃ!
来い!クヴェレ!
【騎乗】で巨大化したクヴェレの背に乗り、ゼーヴィントを槍に変えて空を駆ける
【蹂躙】の時間だ!
今の私は何しても許されるんでな!

悪魔たちは坊ちゃんの傍らへ残すよ
【かばう】を命じ、その身を以て坊ちゃんの盾とする
私への攻撃?
そんなもん、【第六感、カウンター】で防ぐさ


エドガー・ブライトマン
ずいぶんと派手な登場だなあ……
急なことだからビックリしてしまったよ
さてさて、現れたね賞金稼ぎ君!

キミがこのメガリスとやらを欲しがってるのは知ってるけれど
あいにく、私たちもコレを探していたんだよねえ!
だから譲ってあげない
悔しかったら私に勝ってみせたまえ!

賞金稼ぎ君をメガリスに近づけさせないように位置取る
キミのその斧はなかなか立派だけれど、私の剣だって負けやしないさ

斧の直撃は《早業》で避けつつ、間合いを詰める
すこしくらい掠っても気にしないし、気づかないさ
《激痛耐性》があるから

彼女の右目が輝いたなら、私もマントを取り払って“Jの勇躍”
キミに大きな力は渡してやらない
《捨て身の一撃》だって躊躇わないとも


誘名・櫻宵
みぃつけた!

ここに、めがりすっていうのがあるのね
一体どんなものなのかしら!

可愛い子に頼まれたのだもの
神社を助けるって
邪なものは全部しっかり祓わなきゃね

あらあら
マナーのなっていない子だこと
これでは神様も怒ってしまうわ
社はそのように扱っていいものじゃないのよう

あなたにあげるものなんて
何一つないの
刀に破魔宿らせて、思いきりなぎはらい衝撃波を放つ
呪殺桜を吹雪かせ攻撃はオーラ防御でいなしてカウンター
ねぇその瞳もめがりすなのかしら?
抉ってみたいわ
斬撃に破魔と生命力吸収をのせて命ごとじわり喰らって蹂躙するわ!

力込め放つ「浄華」
―綺麗に清め祓ってあげる
ほらきっと
天罰よ?

桜の樹の下には、素敵な秘蜜が眠っているの


百鬼・景近
【花守】
結局血腥いのがお出ましだね
…余所見なんてしたら君もあの壁みたいになると思うけど、大丈夫?

さて、死守した宝を奪われて、無念や怨念に繋がる様な事など――彼の海賊達の心意気を水泡に帰すなど、あってはならない
そしてこれ以上、長閑な地を踏み荒らし、命を奪い回る様な真似を許す訳にもいかない

麻痺毒や呪縛呪詛籠めた得物と早業駆使
女や霊(特に後者牽制優先)に手早く2回攻撃を重ねて行く
敵攻撃はオーラ防御や耐性で抑えたり、連携し残像で惑わし受け流す

社は朽ちれど、此処は本来神域
ならば最後はせめて呪詛絡まぬUCで焚き上げようか
奪われた命は返らねど――せめて島の静謐は返してもらうよ
そして君は在るべき海に還ると良い


呉羽・伊織
【花守】
ああ、噂通りとんでもねー武器持った悪魔だな
…いや斧の話ダヨ?
あと俺の守備範囲は清楚から小悪魔までっていうか…肉食コワ…

――なーんて、ちょろい奴だと思ったら大間違いだぜ
陽気な連中の心を翳らせる事も、あのお嬢サンの顔を更に曇らせる事も、させやしない
呪いも殺戮も此処に終わらせよう

霊で手一杯と見せかけフェイント――牽制の隙見て早業と2回攻撃で女へ直接UC
目潰しの闇と毒で、右目の力を削ぎつつ戦う
怨嗟は呪詛耐性でどこ吹く風
武器は見切りでいなして叩き落とす、連携し残像で撹乱する等で対処

宝の代わりに、アンタにゃピッタリの海への渡し船を出そう
鎮め、沈め
社に怨恨は残しやしない
連中の命懸けを無駄にはしない!



「わっ」
 弾け飛んできた壁の破片より身を庇う形で、マントを掲げたエドガーは瞳を眇めて。
「ずいぶんと派手な登場だね、驚いたよ。けれど壁を壊すのは良くないと思うよ、賞金稼ぎ君!」
「全くだ! 社を破壊するとはなんと罰当たりな輩であろうか。その所業、決して許されるものでは無いぞ!」
 エドガーがレイピアを構えると、百々が本体である神鏡を空中でぴかりと瞬かせて憤りの声を上げ。
「そうだよ、本当に罰当たりだよねえ」
 銀槍をきゅっと握りしめたクーナも、警戒に尾を立てて頷き。
 ――気のいい幽霊たちの為にも、しっかりとメガリスを守らなきゃね。
 なんて、敵を睨めつけた。
「はン、群れなきゃ何もできねェ奴らが群れてるのは全く気分が悪いねェ」
 そんな言葉をあざ笑うように、息を吐いたコンキスタドール。
 彼女は社の中へと飛び込みざま、その背に過去に殺した賞金首の亡霊たちを侍らせて。
「ま。気分は悪いけど、使えなねえ奴らも束にすりゃちょっとはマシな事も知ってるよ。それ、行きな!」
 上体を捻って斧を振りかざしながら、コンキスタドールは吠えた。
「群れなきゃ何も出来ないのは、そちらもと言う事かにゃー?」
 皮肉を返して。
 肩を竦めたクーナが槍を振えば、季節外れの雪と花の花弁が舞い踊り。
 まるでその花弁は、亡霊たちを惹き付けるようだ。
「いいや、それに我らはただ集まった訳では無い。使役されし哀れな亡者たちとは違い、気持ちは1つぞ!」
 鏡を指揮するように指を向けた百々が、朗々と信の籠もった言葉を誓えば。
 破魔の力を宿して瞬き輝いた鏡が、光に照らされた亡霊たちを溶かし掻き消す。
「キミがこのメガリスとやらを欲しがってるのは、知ってるんだけれどさ。あいにく、私たちもコレを探していたんだよねえ」
 開いた合間を縫って掛けたエドガーは、振り下ろされる斧の軌道へと自ら飛び込んで。
 敵がメガリスの元まで向かえぬように、斧をその身体と得物で抑え込むよう。
 大丈夫、痛くはない。……こんな痛みは、痛みだと思えぬ程『慣れた』ものだ。
 刃をギリギリまで引き付け。
 なんとか弾き逸らしたエドガーは、コンキスタドールに向かってレイピアを真一文字に振り放ち。
「――だから、譲ってあげないよ! 悔しかったら、私たちに勝ってみせたまえ!」
「ハッ! 言われずとも、やってやらァ!」
 噛み付くようにエドガーに応じた敵はレイピアをカチあげる形で斧を振り上げて、上半身を捻――ろうとした。
「ッ!」
 そこから何かに弾かれるようにピクリと身体を跳ねたまま、彼女の身体は動く事は無い。
 ……見えぬ鎖にギリと引きしぼられる、コンキスタドールの身体。
「テメェら、何をした!?」
 なすがままにレイピアに貫かれ、敵は憎々しげに奥歯を噛みしめ。
 動かぬ身体に苛立ちを顕にしたコンキスタドールが喚くと、再び亡霊を大量に喚び出し侍らせる。
「わっ、っと!」
 亡霊たちの攻撃の矢面に立ったエドガーは、レイピアを真一文字に盾と構え。
 身を翻して敵を振り払いながら、バックステップで距離を取り。
「へー……。いやこりゃ、海賊の幽霊共がイイって言うワケだ」
 見えぬ鎖の先。――彼女を鎖で絡め取った倫太郎が、ぎゅうとソレを引いたまま肩を竦めて。
「ああ、噂通りとんでもねー武器を持った悪魔だな……」
 ゴクリと喉を鳴らした伊織は、別段汗もかいてはいないが無意識に額の汗を拭う動き。
「……言いたくは無いのだけれど。余所見なんてしてたら、君たちもあの壁みたいになると思うけど、大丈夫?」
 景近がそんな二人を半眼で見やると、瞬きを一度。
「……いや斧の話ダヨ? ネ?」
 伊織の言葉に少しだけバツが悪そうに瞳を反らした倫太郎は、ゆるゆるとかぶりを振って。
「まぁ、何にしてもさ。俺の好みじゃねぇから、関係ねぇけど」
 すらと黒に燃える朱を翻して、薙刀を抜き放つ。
 唯一無二が居る倫太郎は、コンキスタドールの色香に惑うことも、迷うことも、けして無い。
「い、いやー。俺の守備範囲は清楚系から小悪魔系までだし……。ほら……なんか、肉食系とかコワいし……」
 対して少しモニョモニョした伊織にやれやれと肩を竦めてから、景近は刀を手に。
「っせェんだよ、オメェらの好みなんざひとっつも興味ねェよッ!」
 身を捩ろうとしながら、怒声を上げた敵。
 その声に合わせて、地を蹴って突っ込む倫太郎の前へと亡霊たちが立ちふさがるが――。
「……なーんて、ちょろい奴だと思ったか?」
 その亡霊の額へとまっすぐに暗器を叩き込んだ、伊織は唇の端を擡げて笑って。
「うん、俺は思ったけど」
 低く構えた景近が、トドメと円を描くように白刃を振り抜き。
 クーナと百々が、重ね放つ花弁と光が弾けた。
「……はッ!」
 亡霊が掻き消え倫太郎の前へと一直線に拓かれる、コンキスタドールへと向かう一本道。
 尚も追いすがるように襲いかかる亡霊たちを振り払いながら。
 地を蹴り上げ更に勢いをつけて飛び込んだ倫太郎は、上半身を捻って刃を引き絞り。コンキスタドールへと薙刀を叩き込んだ!
「うっぜェ、うぜェ奴らだなァ……」
 憎々しげな怨嗟を口に、受け身もとれぬまま弾き飛ばされ。
 強かに身体を打ち据えられながら地を跳ねたコンキスタドールは、見えぬ鎖を引き千切ると斧を構え直し。
「言葉通り死守した宝を奪われて、無念や怨念に繋がる様な事など」
 亡霊たちを返す手で切り払った景近は、その言の葉に瞳を眇めた。
「――彼の海賊たちの心意気を水泡に帰すなど、あってはならないよ」
 一瞬で詰められた距離。
 大振りな動作で叩き込まれた斧を、軽いバックステップで景近は跳ね避けて。
 そのまま横から襲いくる亡霊の土手っ腹をノールックで切り抜きながら、コンキスタドールより目を反らしはしない。
「それに。あの宝を奪った後は、アンタは新たな地で更に命を踏み荒らそうと言うのだろう?」
「あったりまえだろうよ、ソレ以上に楽しいことがあるってェのか?」
 更に距離を詰めるように。
 踏み込み直したコンキスタドールは、凶悪な笑みと共に応え。
「――そんな事、許せるものか」
「そりゃあ、許せねえな」
 景近と倫太郎が同時に言葉を零すと、そこは丁度背中合わせ。
 二人が振り抜いた薙刀と白刃がコンキスタドールを真っ直ぐに斬り結ぶと、コンキスタドールは掲げた斧でその一撃を弾き。
「ああ……、これ以上陽気な連中の心を翳らせる事も、……あのお嬢サンの顔を更に曇らせる事も、させやしない!」
 身体を屈めた伊織は、亡霊の一撃を避けながら言葉を次いで。
「呪いも殺戮も、此処に終わらせてやるよ!」
 二人の刃を防ぐ事で生まれた隙を狙って、伊織の暗器が亡霊たちの隙間を縫い。
 まるで吸い込まれるかのように、コンキスタドールへと叩き込まれた。
「うるせえ、うるせえ、うるせえよ。クソぼんくら共がッ! そいつを黙ってよこしゃァ、命だけで許してやるよッ!」
 貫かれて尚、コンキスタドールは止まることは無い。
「おやおや、厄介なお客様が来たものだね」
「ええ。この私の目の前でお宝掻っ攫おうなんて、良い度胸じゃないか」
 銀の身体をぐるりと捩った竜宮の使いに腰掛けたヘヴェルは、ルクスの後ろで肘を付いてやれやれと銀の瞳を眇め。
「悪いけど、このメガリスは他のお客様の予約済みなんだ。勝手に奪おうったってそうはいかないよ」
「全く。自力で宝を見付けることも出来なかった癖に、大口を叩く事ばかり上手なようだねえ」
 生まれる足型の轍は、その衝撃を物語るかのよう。
 純白の翼竜を槍と成したルクスがコンキスタドールの突進を受け止め、唇の端を歪めて笑った。
「まして坊ちゃんに武器向けようなんて、本当に愚かだ」
「そりゃそうさ。もし、ぼくに傷が1つでもついてごらん? 怖い、こわーい、ぼくの護衛達が何て言う事か」
「ははッ、当たり前でしょうよ。貴方は私たちリュウグウの至宝だ」
「うん、その通り。……その通りだ」
 交わされた斧と槍は、ギリギリと喰らい付きあい。
 ヘヴェルはルクスの言葉にただ頷いて、竜宮の使い――トヨタマの銀色の鱗を柔く撫でて言葉を紡ぐ。
「だからルクス、きみに任せるよ。――きみの為す全てを『ぼくが許そう』」
「!」
「やりな、ルクス」
「ああ、坊ちゃん。その一言をお待ちしていました――そうこなくっちゃねェ!」
 彼の言葉は即ち、海神の加護だ。
 ――来い、クヴェレ!
 深青色の海竜の名を呼べば、ひょうろりと空を泳いだ海竜はその身体を大きく膨れ上がらせて。
 こうべを垂れて主の身体をすくい上げると、鍔迫り合うコンキスタドールの懐へとそのまま体当たりをぶちかまし。
「良いぞクヴェレ、なんたって――今の私は何しても許されるんでね。船の奴らの分まで暴れてやろうじゃないか! さあ、蹂躙の時間だ!」
 同時に呼び出した美しき魚に似た悪魔たちをヘヴェルの護りと置いて、ルクスは猛る。
 斧と槍が交わされ、空を駆ける海竜は悠々とその身体を踊らせる。
 魚を侍らせた腰掛けたルクスは、まるでメガリスを護るように。
 その場へとぷかぷかと浮いたまま、自らの護衛の舞いを享受するばかり。
 ぼくは何もしないよ。
 ……だって――リュウグウの至宝が傷つく事等、許されないでしょう?
「みぃつけた!」
 そこに響いた、鈴を転がすような声。
 しずと歩む櫻宵は周りを見渡す。
 壁を壊され、床板が外され。
 亡霊たちの跋扈する、『荒らされた』という言葉がぴったりと当てはまるような社の中。
 刃を構えた櫻宵は、細めた瞳に睫毛の影を落として。
「もう、マナーのなっていない子だこと!」
 かぶりを小さく振って、その動きはまるで小さな子どもを嗜めるよう。
「これでは神様も怒ってしまうわ、社はそのように扱っていいものじゃないのよう?」
 破魔の加護を宿した刃の一振り。
 その甘やかな足取りからは、決して感じ取れぬ程の膂力。
 纏わりつこうとする亡霊を一撃で切り飛ばすと、足取りに床に花筏映す水鏡を波及させながら櫻宵は軽く跳ねた。
 花弁を吹雪かせて放つ刃が、振り上げられた斧へと喰らいつき。
「私はね、可愛い子に頼まれて此処に来たのよ」
 約束したもの。
 ――神社を助けるって。
 ギチ、と噛み合う刃にコンキスタドールは笑って。
「ふうん、じゃあその願いは叶わねえな」
 金糸の髪に隠されたその義眼が、青く青く光を灯した。
「まあ、その瞳もめがりす? 綺麗な光ねえ!」
 華やかに笑った櫻宵が、どこか楽しげにくすくすと笑い。
 刃を滑らせてバックステップを踏むと、コンキスタドールが身を躱して空を掛けた。
「お空を飛べるようになるなんて、不思議ねえ。それがめがりすの力なのかしら?」
「答える気はねェよ!」
「ええ。答えなくて良いわよ、……その瞳を抉ってみてから考えるもの」
 青い光を爆ぜさせたコンキスタドールは、弾丸のように鋭く駆け跳んで。
 花弁を纏って、真正面からその一撃を受けた櫻宵がくすくすと笑った。
「それにね。あなたにあげるものなんて、どの世界を探したって何一つないわよ」
「全くだ、よッ!」
 重なる声。
 見えぬ鎖を鋭く放ち、横薙ぎに構えた薙刀で亡霊を切り払いながら倫太郎は駆け。
 交わされた刃を飛び退きながら櫻宵が滑らせると同時。
 櫻宵の背より飛び出した倫太郎は、半円を描いて薙刀をコンキスタドールへと叩き込み。
「……流石に天罰とかは言わないけどさ。場違いなお客さんは、さっさと骸の海にでも帰って貰おうか!」
 言い放ったクーナは獣の身軽さで床を蹴って、壁を蹴って。
 柱を蹴ったケットシーは真っ直ぐに槍を構え、コンキスタドールへと迫り――!
「骸の海に行くのはお前だよッ!」
 吼える敵。
 斧をガードに上げたそんな彼女の動きをスカすように、クーナは槍をあっさりと捨てた。
「残念だけど、私には気のいい幽霊たちにお酒を持ってくる約束があるからね」
 誰も持たぬ槍を叩き落とした斧の腹を蹴って、小さなケットシーは細剣を抜き放ち。
 斧を持つ腕を貫くと、腕を蹴って空中をくるりと回ってクーナが跳ねた。
「うむ。邪な願いも、歪な野望も、この光で射抜いてやろうぞ!」
 合わせて弓の弦を撓らせて狙いを定めた百々は、次々に光の矢を撃ち放つ。
「ハン、そんなもの――」
 青い瞳を揺らして空中を蹴ったコンキスタドールは、やれやれとかぶりを振り。
 真っ直ぐに跳んでくる光の矢を、軽い動作で避ける。
「……避けられると思うたか?」
 しかし。
 ――その光の矢も彼女を追って、星を散らして軌道を曲げ。
「!」
「自在に軌道を変える光の矢を、避けることは敵わぬぞ!」
 鋭く自らを貫いた破魔の光に焼かれ、コンキスタドールは眉を顰めてぐっと息を飲む。
 そうして貫かれる痛みに、寄れた軌道の先。
「奪われた命は返らねど、――せめて島の静謐は返してもらおうか」
「宝の代わりにさ。アンタにゃピッタリの海への渡し船を出してやるよ」
 そこで待ち構えていた景近と伊織が、言葉を重ねる。
 鎮め、沈め。
 アンタの生んだ怨恨は全て、アンタの冥土の土産として手渡してやろう。
 アンタの生んだ禍根は全て、此処で絶ち切ってやろう。
「さあさ、そろそろ在るべき海に還りなよ」
「――連中の命懸けを俺は無駄にはしないッ!」
 鏡映しの如く。
 空中を振り抜いた景近と伊織の腕に合わせて、狐火が大きく燃え上るとその影に隠れた暗器が鋭く敵を迎え撃つ。
「ぼん、くら共ォッ!」
 血を零しながら、唸るコンキスタドール。
 柱を蹴り込む事でなんとか踏みとどまった彼女は、力任せに斧を振り上げて。
 魚を侍らせて見守っていたヘヴェルへと一気に迫り――!
「対価も支払わず、誰に許可を得て坊ちゃんに近づこうとしてるっつーんだッ!」
 海竜が鋭く空を泳ぎ駆け。
 それでも足りぬ距離を飛び跳ねて埋めたルクスは、斧を自らの身体ごと槍を押し込んで押し止める。
 魚たちに守られたヘヴェルは、当然と言った様子でただ少しだけ瞳を細めて。
「ねえ。略奪者さん。きみの罪の数は、もう数え終えたかい?」
「リュウグウの至宝を傷つけようとした罪は、何よりも重いと知れッ!」
 言い放つヘヴェルの言葉に合わせて、ルクスは強く槍を振り抜いた。
 吹き飛ばされた敵の身体は、床へと叩き込まれ強かに跳ねて。
「ねえ、少しだけマナーをおしえてあげる」
 櫻宵が眦を緩めて艶やかに嗤うと、枝垂れた桜が新たな蕾の開花を待つかのようにはらはらと揺れた。
「邪なものはね、全部しっかり私たちに祓われるのよ」
 太刀を引いた櫻宵は、眠る前の子どもに言い聞かせるような甘い声。
「うるせえ、うるせえ、うるせえッ!」
 跳躍するように体勢を立て直したコンキスタドールは青い燐光を残して、自らの血に染まった斧を尚も握りしめる。
 そうして裂帛の気合と共に、その斧を振り上げ――。
 その視界一杯が、白に染まった。
「キミにメガリスを渡しても、良い事には使わないだろうからねえ」
 櫻宵を庇う形で割り入ったエドガーは、コンキスタドールへとマントを投げ放つ事で目眩ましとして。
「――あいにくだけれど、キミに大きな力は渡してやれないよ」
 弱きを助け、悪しきを挫くその剣は決して折れない。
 それは世界を踏みにじらんとする者に対しての、王子としての矜持。
 No reason.
 通りすがったからには、全て助けてみせよう!
 踏み込む足取りも軽々と。
 風のような足取りで懐へと潜り込んだエドガーは、レイピアの一撃を貫き放ち。
「せめて、綺麗に清め祓ってあげるわ」
 重ね叩き込まれるは、花弁を纏った櫻宵の太刀の斬撃。
「これで、おしまい」
 成り行きを見守っていたヘヴェルが、瞳を一度閉じて。手のひらを軽く合わせると、肩を竦めた。
 吸い込まれるように放たれるは光の矢。
 駆ける白刃、貫き押し込まれる槍、攻撃の影を縫って放たれる暗器、膨れ上がり爆ぜる炎。
 重ねられる剣戟、穿ち放たれる撃。
 敵の弱った隙を、猟兵たちが見逃す訳も無く。
 畳み掛けられた猟兵たちの集中砲火を、その身で全て受け止めたコンキスタドールは砂が風に溶けるように。
 ざら、と解けると骨だけを残してその場に崩れ落ち――。
「……ほら、きっと天罰よ?」
 逆寄せにこうべと化した彼女を拾い上げた櫻宵は、小さく小さく呟いた。
 吹き込む風に誘われて、はらはらと舞い込む枯れる事無き桜の花弁。
 桜の樹の下には、素敵な秘蜜が眠っているの。
 それは海賊たちの大切な宝かもしれない。
 いいえ、それとも――。
「よっし、めでたしめでたし、ってヤツだな!」
「随分と社の風通しは良くなってしまったけどね」
「あー、……ウーン。あの連中……ソレに何より。お嬢サンの為にも穴くらい塞いで行くか……?」
「へえ、伊織は働き者だね」
「エッ!? 手伝ってくれナイの!?」
 伊織の言葉に景近は、肩を竦めて笑って。
「ふむ、修繕をするならば我も手伝うとしよう」
「えっ」
 そこに名乗りを上げたのは、完全に童女たる容姿の百々であった。
 ――コレほど小さな少女が修繕する、と言っている所を手伝わぬ程、彼らの人当たりは悪くは無いもので。
 空を駆ける海竜。
「坊ちゃんッ! ご無事ですか?」
 クヴェレより飛び降りたルクスが慌ててヘヴェルへと駆け寄り。
「うん、傷一つないよ。……ご苦労さま、ルクス」
「それは何よりです、――ああ、全く。至宝に刃を向けるたぁ、本当に不届きな輩でしたね」
 なんて。
 悪態を突きながら、ルクスは主のその労いの言葉に眦を緩め。
「……で、結局ここのメガリスは何なんだ?」
「あっ、それは私もきになるにゃー」
 倫太郎とクーナが未だ埋まったままのメガリスを掘り出すべく、床下へと飛び込んで。
 そんな彼らを尻目に。
 使えそうな板を拾い集めはじめた百々は、穴の空いた壁より見える青い空を見上げた。
「しかし。これであの幽霊たちの未練も消えたことだろうが……、あの調子ではまだ現世に居座りそうだな」
 人を襲わぬならよしとするか、なんて。
 楽しげに茶を零していた彼らを思い浮かべ、百々は肩を竦め。
「……その事でひとつだけ尋ねたいんだけれど」
 マントを拾い上げたエドガーが、マントを羽織り直しながら――。
「……幽霊君たちって一体どんな人たちだったんだい?」
 最初から最期まで幽霊海賊たちの姿、全く見る事が出来なかった彼は、二度瞬きを重ねて首を傾いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月03日


挿絵イラスト