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冷酷な海の掟

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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「出港用意!」
 船長の号令と共にラッパが高らかに吹かれ、大型の木造船が無数の長いオールを一斉に動かし、港を離れ青い海の上を沖に向かい動き出す。その甲板にはまだ幼い少年少女が30名ほど集められていた。その手には銛が持たされ、不安そうに身体を震わせている。
「よし、ここらでいいな。錨を下ろせ!」
 船が波の高い沖に出ると錨を下ろして停止する。
「これから島の掟に従い、十歳になったお前等に試練を与える! 海に潜りその手にした銛で漁をしろ! 一時間以内に獲物の狩れなかった者は見捨てて行く! 生きたければ死ぬ気で潜り、獲物を獲れ!」
 日焼けして筋骨隆々な船乗り達が子供達を逃さぬように囲み、これから行われる儀式の説明を告げた。
「む、無理だよぉ……」
「こんな荒れた海にもぐって魚をとるなんて……」
「あっ、あそこにサメがいるよ!」
 島育ちで常に海と接し泳げる子供達であっても、荒れて辺りに何もない沖の海に飛び込めと言われれば尻込みしてしまう。それに近くに海面に映るサメの魚影まで見つけてしまった。子供達の顔は青くなり、不安が広がっていく。
「そら、海に放り込め!」
「サメがいるならサメを獲ればいいだけだ!」
 次々と船乗り達に持ち上げられた子供達が海に投げ込まれていった。
「うわぁーーー!」
 甲高い声で叫びながらざぶんと大きな飛沫を上げて海に落ちていく。

「まあ安心しな、獲れなくても死んでなかったら引っ張り上げてやる。死んだ方がマシかもしれんがね」
「さあて、今年は何人成功するかな?」
「オレは6人に賭けるぜ!」
「じゃあ俺は大穴で10人に!」
 子供を投げ入れた船乗り達が甲板で酒盛りをしながら、コインを積んで何人漁に成功するかの賭け事を始める。
「このソードフィッシュ島では腕っぷしが良ければ成り上がれる! 死ぬ気で這い上がってこい! 駄目な奴は死ぬか、船の漕ぎ手として一生奴隷扱いよ」
 立派な髭を蓄え背が低く恰幅のある船長が酒瓶に口をつけ、豪快に蒸留酒をラッパ飲みして酒臭い息を吐き、暗く濁った目で子供達の足掻く様を見下ろした。


「新しい世界グリードオーシャンが見つかった。そこは様々な異世界から落ちた島で構成される海の世界のようだ。この世界は特殊で、転移で移動する事が出来ない。船を使って移動する必要がある」
 大海原を映すグリモアベースで、バルモア・グレンブレア(人間の戦場傭兵・f02136)が猟兵達に新たな世界の説明を始めた。
「そこにあるソードフィッシュ島と呼ばれる場所がコンキスタドールに支配され、理不尽な悪の掟によって島民達が縛られている。力有る者と無き者を子供の内に選別する掟のようだ」
 アックス&ウィザーズの面影を残す島では、人やドワーフといった元の世界の人々の末裔が住んでいる。だがその島に乗り込んだコンキスタドールが力で制圧し、好き勝手にルールを設けて支配してしまっている。子供の内から上級と下級に選別され、島民同士で争わせて支配を強固なものにしているのだ。
「コンキスタドールを倒し島の解放を行ってもらいたいが、まずは掟によって海に放り込まれた子供達を助けてやってほしい。だが敵のガレー船も諸君の接近を知れば船の大砲によって攻撃してくる。子供の救助だけでなく、敵の船の無力化も行わなくてはならない」
 到着時にはすでに子供達は海に投げ込まれ、漁をさせられている。
「しかし敵の船を大破させるのは避ける必要がある。船の乗組員は島民なのだ。漕ぎ手は漁に失敗して下級民として奴隷扱いされているものが鎖で繋がれている。船が沈めばそのまま大勢の人が死んでしまう」
 手間だが船が沈まぬように敵船を制圧して、漕ぎ手の奴隷達を解放しなくてはならない。
「上手く救助すれば、島の詳細な情報を得ることも出来るだろう。そうすれば島を支配しているコンキスタドールの拠点や戦力といった情報も得られるかもしれん」
 現状島の情報は少ない、少しでも戦いの前に情報を手に入れれば、戦いも有利になるだろう。

「子供を死の危険に追いやり、選別して上級だのと区分けするような管理など許せるものではない」
 海に放り込まれた子供達の姿を思い浮かべ、厳しい表情をしたバルモアが出港準備の整っている船へとゲートを開いた。
「必ず助け、この冷酷な掟を強いるコンキスタドールを倒してくれ」


天木一
 こんにちは天木一です。今回は新しい世界グリードオーシャンでの船での冒険となります。コンキスタドールに支配されている島を解放しましょう!

 第一章では海に放り込まれている子供の救助と、攻撃してくるガレー船の無力化と漕ぎ手の解放を行います。ガレー船は側面に大砲が複数あります。

 第二章では敵の配下のコンキスタドールとの戦いとなります。情報を多く得ているほど有利となります。

 第三章では、コンキスタドールのボスとの戦いとなります。これに勝利できれば島は解放されます。

 皆さんの乗る船の名はネレイス号。帆船で操舵は基本的に乗組員がしてくれます。武装は側面に大砲がありますが、性能は低いです。

 プレイングの締め切り日などは決まり次第マスターページにて。
 新しい大航海の世界での冒険をお楽しみください!
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第1章 冒険 『対艦戦!』

POW   :    体当たりやラムアタックだ!

SPD   :    射撃武器で船や船員を削れ!

WIZ   :    天候や地形を利用してハメろ!

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●選別
「そらそら頑張れ! 魚を獲れば俺達のような上級島民になれるぞ!」
「6人は成功しろよ! そしたら儲けで美味いもん食わせてやるからな!」
 酒を片手に船乗り達が船の上から声援を送る。海に落とされた子供達はそんな声に反応する余裕もなく、息継ぎをしては潜って魚を探す。だが子供がこんな荒れた海で魚を探すのは難しい。なかなか結果が出ずに疲労していく。
「ひっくひっく……」
「もういやだよぉ……帰りたいよぉ」
 泳ぐのがそこまで得意でないものや、体力の低いものから泣いて潜るのを止め始めてしまう。
「おいおい、そのまま溺れ死んじまうつもりか?」
「獲れなきゃ奴隷行きだぞ! 下級島民になっちまったらずっと下働きだぞ! 船の漕ぎ手になんざなりたくねーだろ!?」
 危機感を煽るように声をかけ、船乗り達は子供達の尻を叩く。
「ガレー船の漕ぎ手ってのは地獄だぞ! 狭いところに身動きもできずに繋がれてなあ、飯も最低限のものしか食えねえ。死んだら海にポイだ!」
「う、うううぅ……っ」
 悲惨な末路を想像させ、諦めていた子供達も絶望したような顔でまた潜って漁に挑戦する。このままでは力尽き溺れ死ぬものが出るのも時間の問題だろう。

 そんな残酷な島の掟を妨害し、子供達を救出せんと、一隻の船が帆に風を受けてその場に接近していた。
 それは猟兵達が乗り込む船『ネレイス号』。その船首から遠くに錨を下ろし沖で停泊するガレー船の姿を見つけた。
プクルルトゥルルア・ピエルルティエルル
「船同士ぶつけてしまいましょうね・・。」

「体当たりやラムアタックだ!」に挑戦します。
バウンドボディを利用して二つの船を無理やり引っ張って近づけましょう、できるかは知らない。
立ち合いは強くあとは流れで、そんな感じね。
上手く行ったら、相手方の船に乗り込んで船員をボコって情報を引き出したい所ね。「頭かち割るわよ・・」とか言っておけば問題なく情報引き出せるでしょう。次に備えて一応それくらいはしておきましょう。
それ以外は多分何もできないから、他人任せね。
暇なときは横の大砲をどっかんどっかん撃って威嚇射撃しながら遊んでましょう。


ヴァリージオ・ホークアイ
(アドリブ絡み歓迎、【SPD】)
(※自前の海賊船(UC)で向かって来る)
ヨォホォ、本日はソードフィッシュ島の海賊共に殴り込みヨォ!
(悪党を気取るので、あくまで子供を助けるとは言わない
溺れかけた子を【魚と間違えて】陸に上げまうのはあるが)

側面で撃ち合う必要なんてねぇ、俺の手下共のライフル隊の出番だ!
背面側にT字の形になるように接近しながら、射撃敵にライフルぶち込み
乗り込んだら、刀剣部隊で近接戦に持ち込め!

…でもって俺様はと言うと、海で溺れかけてた子供を
【魚と間違えて陸に上げた】後に、賭け事中の連中にカチコミ。
その賭け、俺も一口出すぜ。
内容?テメェらがサメに何秒もつかだ!(連中を蹴り落とし)


徳川・家光
身分制度そのものが、未発達な社会の産物である事は認めましょう。だがそれは、断じて上が下を虐げる為のものではありません!

「神州因幡白兎殺(シンシュウイナバノシロウサギゴロシ)」!
海の中に僕の召喚したサメを解き放ち、まずは野生のサメをこの海域から追い出しましょう。
その上で、一体のサメの横腹に掴まりながら、救助紐を伸ばして1人づつ子供を救出していきます。海域に大砲が撃ち込まれると子供達に危険が及ぶため、目立たないことを第一に、溺れそうな子供を優先して救出します。

本当はサメ軍団で艦を攻撃したいですが、それは他の猟兵に任せ、子供の安全を最優先にします。静かに救い、静かに去りたいです。


ハルア・ガーラント
魚獲りが得意な子もいれば料理が得意な子だっています。
その子が持つ優れた何かを見つけ育てるのが、大人の役目だと思うんです。

【WIZ】
海上はうまく飛べないから怖いけど……頑張ります。
自らを厚めのオーラの層で包み[オーラ防御]を。翼で強い海風のうち追い風を捉え、海上すれすれを滑空し一気に敵の船へ。敵の砲手が照準を合わせられない程に速く!
うぅ、怖い。だけど子供達の方がもっと怖い思いをしている。

船首に降り立ちUC発動。全員に届かなくてもいい、わたしの歌を聴いて欲しい。襲ってくる人に[咎人の枷]を[念動力]で操り応戦しつつ、歌が届いた方に頼みます。
お願いです。漕ぎ手さん達を解放して、子供達を助けて下さい!


メンカル・プルモーサ
…む、子供の体力がまずいな……
改造装甲車【エンバール】に乗って海上を走って先行……
…ガレー船の上に【面影映す虚構の宴】により濃霧の幻影を発生させて…
(もし居れば)ガレー船に乗り込む仲間のフォローと子供の確保のための分断を行うよ…
…子供達の近くまで車を寄せて…【旅人招く御伽宿】の入り口である扉型魔法陣を書いた浮き輪を投入…
…荷台まで上がれる体力があるか不安だから…手早く助けに来たこと、扉の絵に触れば安全な場所に避難できることを子供達に伝えて…
…宿へと避難して貰おう…
…さて…子供を救出し終わったらガレー船の方だね…まだ動いてるようなら船員を術式で眠らせて制圧しよう…



●海戦開始
「船長! 識別不明船発見!」
「あーん? ……敵だ! 錨を上げろ! 回頭して砲撃準備! 急がせろ!」
「アイアイサー! 左舷漕ぎ方始め!」
「左舷漕ぎ方始めー!!」
 猟兵の船を視認した見張りが報告すると、髭が立派なドワーフの髭船長が一目見るや、酒瓶を放り捨ててすぐさま指示を飛ばす。錨が上げられ、鞭を持った船員が下部の鎖に繋がれた漕ぎ手に檄を飛ばす。船の左側のオールが動き、ガレー船が左腹を見せた。そこには大砲が幾つも並んでいる。

「ヨォホォ、本日はソードフィッシュ島の海賊共に殴り込みヨォ!」
 海賊船へと向かう鉄甲船ネレイス号の上でヴァリージオ・ホークアイ(気取ったシャープ・ブレイダー・f26315)はライフルを装備した全員女性の幽霊の手下を引き連れ、距離のある海賊船へと攻撃を仕掛ける。
「側面で撃ち合う必要なんてねぇ、俺の手下共のライフル隊の出番だ! ありったけの弾を撃ち込んでやれ!」
 不敵に笑みを浮かべるヴァリージオの敵よりも海賊らしい指示に従い、手下が一斉に射撃を行う。
「あの距離から銃を撃ってきやがった!?」
「頭下げろぉ!」
 弾丸が次々と飛んで、船に銃痕が刻まれ、慌てて船員達は屈み込んだ。
「これで自由に動けねぇだろ。今のうちに接近するぞ!」
「全速前進!」
 船長へヴァリージオが声を掛けると、頷いた壮年の船長がすぐに指示を飛ばした。張られた帆が風を受け、海を疾走する。
「よーし、接舷したら刀剣部隊は乗り込め! ライフル隊はそれを援護!」
 手下に命令したヴァリージオはチラリと海面を見下ろした。そこには力尽きそうな子供の姿が見える。
「……でもって俺様はと言うと……魚が泳いでるみてぇだし海の男らしく漁でもしていくか」
 悪党を気取るヴァリージオは素直に子供を助けるとは言わず、魚だと言い張って溺れそうな子供の元へと海に飛び込んだ。

「船長、あの船に突撃するわよ」
 プクルルトゥルルア・ピエルルティエルル(ブラックタールのバーバリアン・f06907)が敵の巨大なガレー船を指し示す。
「へいっ! 任せてくだせえ! 野郎ども! 突撃だ!」
「ヨーソロー!」
 荒々しく船長が指示を飛ばし、忙しなく船員が動き出す。
「衝角で敵のどてっ腹に穴を開けてやれ!」
 帆に追い風を受けてネレイス号が敵に向かって進む。
「突っ込んできやがる!」
「左舷を弱め、右舷のオールを全力で漕がせろ! 旋回して躱しながら砲弾をぶち込め!」
 それに気づいたガレー船も素早く反応し、ラッパの音と共に右側のオールが一斉に動いて大きくカーブを描くように動きながら大砲を放った。大きな爆発音と共に、放物線を描いて大きな鉄の球が飛んでくる。
「敵が砲撃してきます!」
「多少なら装甲で防げる! このまま前進!」
 迎撃の砲弾が掠ろうとも気にせず、肝の座った船長が指示を出しネレイス号は敵の側面に向けて前進する。
「このコースは……直撃来ます!」
 見張りが見上げていた敵の弾が直撃コースを取っているのに気付いた。
「大丈夫よ……止めてみせるわ」
 その着弾地点でプクルルトゥルルアがバールのような高硬度鉄梃をフルスイングし、砲弾を打ち飛ばし海に落とした。
「バカな! 砲弾を弾きやがった!」
「撃ちまくれ! 横っ腹に穴を空けりゃ沈む!」
 数撃ちゃ当たるとガレー船から砲弾が次々と飛んでくる。

「魚獲りが得意な子もいれば料理が得意な子だっています。その子が持つ優れた何かを見つけ育てるのが、大人の役目だと思うんです」
 そんな子供達の可能性を全て刈り取ってしまう悪しき掟を、ハルア・ガーラント(オラトリオのバロックメイカー・f23517)は放ってはおけないと身を守るオーラを分厚く纏うと翼を広げて船を飛び出る。
「海上はうまく飛べないから怖いけど……頑張ります」
 強い海風に煽られながらも、何とか追い風を捉えて海面すれすれを滑空してガレー船へと向かう。
「飛んでくる奴がいるぞ!」
「羽付きか! 撃ち落とせ! 近づかせるな!」
 そんなハルアに気付いたガレー船が側面から大砲を放つ。ドンドンッと腹に響く音を轟かせながら、砲弾が海に落ちて大きな水飛沫を上げる。
「うぅ、怖い。だけど子供達の方がもっと怖い思いをしている」
 そんな中、ハルアは砲撃の恐ろしさに引き返したいという気持ちを抑え、懸命に翼を広げて飛び続けた。
「速く、砲手が照準を合わせられない程に速く!」
 勇気を振り絞って加速し、砲撃は全くハルアを捉えられない。
「チッ、ダメだ! 当たらねえ! 乗り込まれるぞ! 抜刀しろ!」
 海賊達がカトラスを抜いてハルアを迎撃しようとする。
「到着しました……!」
 翼を羽ばたかせたハルアは海面から上昇して船首に飛び乗る。
「やっちまえ!」
 そこへ海賊がカトラスを振り下ろすが、ハルアの翼に巻き付いた鎖が弾いて防いだ。
「全員に届かなくてもいい、わたしの歌を聴いて欲しい」
 殺到する敵を前に、胸に手を置いたハルアが歌い出す。天使言語による親愛歌が紡がれ、その包み込むような優しい歌声が聴く人々の心に沁み渡り、闘争心を失わせてその手から力が抜けカトラスがするりと落下した。
「な、なんだこの歌は……力が抜けやがる……」
 何とか戦意を保とうと海賊達は抗うが、カトラスを拾おうとすると、重く感じて拾えない。
「お願いです。漕ぎ手さん達を解放して、子供達を助けて下さい!」
 そのハルアの心からの叫びに、心を強く動かされた海賊が、鞭を手放して漕ぎ手を助けようと行動し始めた。

●救助
「身分制度そのものが、未発達な社会の産物である事は認めましょう。だがそれは、断じて上が下を虐げる為のものではありません!」
 このような差別がまかり通る掟を強制する状況を看過できないと、徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は憤り海面で波に流される子供達に目をやった。その近くにはサメの魚影も見当たる。
「神州因幡白兎殺(シンシュウイナバノシロウサギゴロシ)!」
 まずは敵の相手よりも子供達を助けるのが先決だと、60を超える空飛ぶサメを召喚して海の中へと飛び込ませた。
「まずは野生のサメをこの海域から追い出しましょう」
 船から身を投じた家光は、その内の一匹の横腹に掴まって海に入り泳ぎ出す。サメが跳ねるように海面を飛んで辺りを見渡せば、突然のサメの群れの出現により魚群が逃げ出し、元居た天然のサメ達も獲物を追い駆けるように離れてしまっているようだった。
「この辺りのサメは散りましたか、大砲に狙われると子供達に危険が及びます。目立たないように行動しましょう」
 海賊に見つからないよう慎重に海中を進み、ごぼごぼと疲れ切って水中で息を吐く溺れそうな子供を見つける。
「あそこです。助け上げましょう」
 そこへ家光がサメを向かわせて急行すると、潜って拾い上げるように下から抱きかかえて海面に上昇した。
「ごほごほっ」
「水を吐いて、深呼吸してください」
 サメの背に乗せて咳き込む少年の背中を叩き、海水を吐かせると落ち着かせる。
「けほっ、はあはあ……あ、ありがとうお兄ちゃん」
「もう大丈夫です。身体に紐を結びますからじっとしていてください」
 ようやく安堵の顔を見せた少年に家光も安心させるように笑みを浮かべ、移動中に逸れないように紐を少年の身体に結んだ。
「では安全な場所まで運びます」
「わぁ、はやいはやい!」
 サメがスピードを上げ、海面を飛ぶように泳ぎ出した。
「本当はサメ軍団で艦を攻撃したいですが、それは他の猟兵に任せましょう。子供の安全が最優先です」
 戦う仲間を横目に、自分は仲間が安心して戦える状況を作ろうと家光は子供の救助に奔走する。

「うう、もう泳げないよぅ……」
「おかーさんっ、おとーさんっ」
 疲れ果てた子供達がもう浮かぶだけでいっぱいいっぱいだと、今にも溺れそうな状態で顔だけを海面から出している。
「……む、子供の体力がまずいな……海上を走って先行しよう……」
 そんな子供達の様子を確認したメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が、改造装甲車【エンバール】に乗って船より先行して海上を疾走する。
「何か海面を走ってくるぞ!」
「小型の船か? とにかく落とせ!」
 それに気づいたガレー船が砲撃を始めた、轟音と共に砲弾が近くに落下する。
「……子供達の方に撃たれると困る……濃霧の幻影で眼を潰す……」
 メンカルは濃霧の幻をガレー船の周囲に生み出して視界を塞いだ。
「何だこれは!」
「これでは当たらん。船を出せ! この霧を抜けるぞ!」
 攻撃どころではないとオールが動き出し、船が前へ前へと進み出す。
「……今のうちに子供を救出する……」
 メンカルは子供の近くまで車を走らせると、扉型魔法陣を書いた浮き輪を投り投げた。
「……助けに来た……その浮き輪に描かれた扉の絵に触れると、安全な場所に避難できる……」
 簡単に説明するが、溺れそうな子供は何かよく分からぬままとにかく助かりたくて浮き輪に掴まり、魔法陣に触れるとその身体が吸い込まれるように消えた。
「き、消えちゃった!?」
「……そこが入り口になってる。中は宿だからガジェットにもてなしてもらうといい……」
「がじぇ……? え、えいっ」
 よく分からないまま恐る恐るもう一人の子供も浮き輪に手を触れ、その姿を消して宿へと運ばれた。
「……この調子で、子供には宿へと避難して貰おう……」
 メンカルは次の子供を探して車を走らせる。
「待ってください。この子も一緒に避難をお願いできますか?」
 そこへサメに乗った家光と子供がやってくる。
「……了解。この扉の絵に触れて……中に宿があるから……」
「こう?」
 家光に支えられた子供が、メンカルの差し出す浮き輪に触れる。すると子供の姿がガジェットの歓待する宿へと移動した。
「ありがとうございます。この調子で全員救出しましょう」
「……ん、私は向こうを探す……」
「では僕はあちらへ」
 二人は別れ広範囲を網羅する為に違う方向へと海面を走り出す。
「……ガレー船の方は任せておいても大丈夫そうだね……」
 車を走らせながらメンカルは仲間の戦闘を確認し、意識を子供の救助に集中させることにした。

●白兵戦
「このままじゃぶつかるぞ! 全速前進!」
 船長が指示を出すが、ハルアの歌の影響で気力の失われているガレー船はゆっくりとしか動かない。そこへネレイス号の甲板から伸びた黒い液体のようなものがガレー船の側面に貼り付いた。
「船同士ぶつけてしまいましょうね……」
 それはプクルルトゥルルアが伸ばした右腕だった。それを引き寄せるように引っ張ると、互いの船が近づき、ガレー船の後部側面にネレイス号が船首から衝突した。船首の水線下に備わっている衝角がぶつかり、メキメキという音と共にガレー船に亀裂が入った。
「水漏れ! 下から浸水です!」
「水を掻き出せ! 穴も埋めろ!」
 衝撃で我に返った船員が慌ただしく動き回り、船の応急手当てをしながら距離を取ろうとする。
「逃がさないわ」
 伸びた手を戻す勢いでプクルルトゥルルアは宙を舞い、敵の甲板に飛び移る。
「乗り込んできたぞ!?」
「取り押さえろ!」
 数人の船員がプクルルトゥルルアを囲む。だがプクルルトゥルルアは見もせずに腕を鞭のように振り回し、一瞬にして囲んでいた船員達を叩き伏せた。
「動いたら頭かち割るわよ」
「ひぃっ!」
 プクルルトゥルルアが鞭のように腕を甲板に叩き込んで板を砕くと、船員は顔を青くした悲鳴を上げた。
「割られたくないならあなた達の島のコンキスタドールの情報を吐きなさい」
 そして脅しながら、島の情報を聞き出そうと質問を始めた。

 その間にネレイス号が並ぶように接舷し、そこからヴァリージオの手下たちが乗り込んでくる。
「乗り込んできやがった。おい、何人倒せるか賭けようぜ!」
「じゃあオレは3人」
「はっ、俺なら5人はいけるぜ!」
 軽口を叩きながら船乗り達が拾い上げたカトラスを構えて猟兵達を迎撃しようとする。
「その賭け、俺も一口出すぜ」
「な?! 海から上がってきたってのか?」
 背後からの声に驚いた海賊が振り向くと、そこにはびしょ濡れのヴァリージオと、担がれた子供の姿があった。
「賭けに乗るだと? お前が誰に斬られるかってことかよ!」
 すぐに我に返った海賊達がカトラスで斬り掛かる。
「内容? テメェらがサメに何秒もつかだ!」
 ヴァリージオが攻撃を次々と躱し、場所を入れ替え勢い余った敵の背を蹴って纏めて海に叩き落とした。
「すっげー」
「よし、坊主はここで待ってろ。本当の海賊ってのを見せてやる」
 その活躍に驚く子供の頭をぐしゃっと撫でつけてニヤリと笑みを浮かべると、ヴァリージオは乗り込む手下と共に海賊達の制圧に取り掛かった。

「今のうちに、漕ぎ手さん達を助けましょう!」
 甲板が戦闘で混乱している間に、ハルアが内部に入り込み下部に向かう。
「働け! 船が沈めばお前等下級島民は逃げられん! 死にたくなければ死に物狂いで漕げ!」
 そこでは海賊が鞭を打って、鎖に繋がれた人々に無理矢理オールを漕がせている光景があった。
「酷い……同じ島に住む人達で助け合わなくてはならないのに、人に上下なんてありません!」
 ハルアは鎖を伸ばして鞭打つ海賊を縛り上げ、繋がれた人の鎖を先端の刃で断ち切った。
「あ、あんたは?」
「助けにきました! この船はわたし達が占拠します。もう奴隷のように無理矢理漕がさせはしません!」
 驚く漕ぎ手達にハルアは安心させるように笑顔を見せ、次々と鎖から解放していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

綿津・甕星
弱肉強食?いい言葉だな。実際その通りだと思うぜ?弱けりゃ強いやつにゃぁ絶対勝てねぇ。それはどうしようもねぇ真理だろうさよ。
……だが、それを弱いガキどもにまで強いるのは違うだろ。
別にヒーローになるつもりはねぇ。喧嘩の理由は単純でいい。
俺は船の上でふんぞり返ってるてめぇらが気に入らねぇから、ぶっ潰すわ。ガキ共は他の奴らが何とかするだろ。
甕星流喧嘩術・土竜。
ただ拳を当てるだけでいいこいつなら、余計なもんは壊さねぇ。
壊すのは、てめぇらだけでいいよな、上級島民。喧嘩、しようぜ?
一人残らず吹っ飛ばしてやるよ。


霧島・絶奈
◆心情
自己の支配を強固なものとする悪政…
その前提が無いのであれば割と在りな方針だとは思います
個々の気概と特性を把握する機会は悪ではない筈です

◆行動
さて…沈めるのは厳禁でしたか

【罠使い】の技能を活かし「強靭な粘着糸を吐き出す機雷」を複数投棄
オールを動力としているのであれば、其を使えなくさせれば航行は止められます

停泊させたら『暗キ獣』を使用
一部の軍勢に子供達を救助させつつ、敵船へと乗り込ませます
この手の海戦は船上の戦いも華でしょう

私も【空中浮遊】を利用し吶喊

【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
敵の砲門も此れで迎撃しましょう

負傷は各種耐性と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復


神酒坂・恭二郎
ひでぇ真似をしやがる
すかっと殴れる悪党共とはこいつらの事だな

相棒の星白鮫を呼んでサーフィング
子供達の泳ぐ所で、とんと海面を一踏みする【衝撃波、範囲攻撃、優しさ】
沈めた風桜子の衝撃波を弾けさせ、子供達をふわりと浮き上がらせる
「よーし、よく頑張ったな。後は任せておくれよ」
【早業】で子供達を抱き止め、サメに捕まらせて自船まで送らせよう

自分は薄い風桜子の幕を足裏に展開し、水面を【水上歩行】
こちらへの銃撃や砲撃を【見切りとオーラ防御】で捌きながら
スペース手拭いをえいやっと伸ばし、応戦する上級船員と名乗る連中を端から海に引きずり落したい

「一つ手本を見せてくれ。上級さんは魚を獲るのが上手いんだろ?」


ヨム・キプール
アドリブ・連携◎

「ひでぇ真似をしやがる。船乗り共も被害者に過ぎないってのがまた胸糞悪いな」

全身にUCによって障壁を展開。
子供達を守る決意に応じて、それは輝きを増していく。

「ま、いつも通り正面からぶん殴るだけだ。へへ、『いい手』だろ?」

まずは足裏のジェット推進器とUCを合わせ、超高速で空中を【ダッシュ】。
そして敵船の横っ腹にサイボーグの【怪力】で一撃をかます。

狙いは船を大きく揺らし、大砲の狙いをつけさせないこと。
船は一度揺れると中々収まらないから、その間に子供達を救出する。
万が一撃たれたなら、UCの障壁と腕やマントの【武器受け】で凌ぐ。

「子供達に『手を』出す非道、俺が『この手』で止めてやるぜ」


セゲル・スヴェアボルグ
一人じゃ流石に全員は拾いきれん。
兵を使って人海戦術だな。
そうなると俺自身はサメとやり合えんが、飛んで救助ぐらいはできるか。
まぁ、余程危険なら兵を戻して俺自身が壁代わりになればいい。
残りの兵は漕ぎ手の救助とガレー船の無力化に分配だ。
とりあえず、大砲を潰すのが優先だな。
そうすれば救助も安全にできる。
あとは、まともじゃない奴にはしばらく眠ってもらうとしよう。
無論、コンキスタドールであれば容赦はいらん。
永遠に眠ってもらうつもりで叩きのめせ。



●接舷攻撃
「どうした! 船足が落ちてるぞ!」
「大変だ! 下の漕ぎ手が反乱を起こした!」
「なにぃ!?」
 ハルアによって解放された奴隷達が鎖を解かれ、自由となって反抗を始めたのだ。
「すぐに制圧に向かわせろ! 無理なら手の空いてるもので漕げ!」
 髭船長が怒鳴りつけ、航行継続の為に船員達を忙しなく走らせる。

「掟による選別ですか」
 霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は戦いの準備をしながら、島の掟の効果を理性的に判断する。
「自己の支配を強固なものとする悪政……その前提が無いのであれば割と在りな方針だとは思います」
 絶奈はこの弱き者が住み難い世界では、強者を育てなくては生き残るのも難しいと考える。
「個々の気概と特性を把握する機会は悪ではない筈です」
 だがそれはあくまでも島の者達が自発的にやっているならばという前提だ。強制されているのであれば、ただ支配の手法でしかない。
「しかし此処で成されているのはただの悪政。ならばその忌まわしき戒めを断ち切りましょう。さて……沈めるのは厳禁でしたか」
 準備は整ったと絶奈は粘着糸を吐き出す機雷の罠を幾つも海に放り込む。すると伸びた糸がオールに巻き付き、オール同士が絡まって動きを制限して漕げなくさせた。
「オールを動力としているのであれば、其を使えなくさせれば航行は止められます」
 これで人手が戻ったとしても船は動かないと、船の足を奪った絶奈は次の作戦に移る。
「船の制圧ならば数の力が物を言います」
 絶奈の身体が蒼白き燐光の霧に覆われ神々の似姿となる。すると辺りに霧が立ち込めて屍の獣と槍を構えた兵の軍勢が現れた。
「別動隊は子供の救助を、それ以外は全て船の制圧に向かいなさい」
 指示を出すとすぐさま軍勢が動き出し、一部が海に飛び込むと、残りが敵戦に渡って接舷攻撃を行う。
「なんだ!?」
「化物だ! 化物が乗り込んできやがった!」
 その死した異様な風体に海賊達が恐れを抱きながら慌ててカトラスで斬り掛かる。だが斬られようとも構わずに屍の軍勢は海賊を薙ぎ払っていった。
「この手の海戦は船上の戦いも華でしょう」
 砲撃だけで決着が着くことは少なく、こうして乗り込んでからの白兵戦こそ海戦の肝だと絶奈は剣戟の鳴る荒々しい戦場を見渡す。

「糞ッ、俺たちは上級島民だぞ! 俺達は選ばれたんだ! 弱肉強食の世界で俺たちは狩る側のはずだ!」
 今まで島で上級島民として増長していた海賊達が、押されている状況を納得できないと叫びカトラスを振り回す。
「弱肉強食? いい言葉だな。実際その通りだと思うぜ? 弱けりゃ強いやつにゃぁ絶対勝てねぇ。それはどうしようもねぇ真理だろうさ」
 ガレー船に乗り込んだ綿津・甕星(まるでダメなオーシャンハンター・f26170)は、相槌を打ってそう言いながらも海賊たちを睨みつける。
「……だが、それを弱いガキどもにまで強いるのは違うだろ」
 無抵抗な子供に手を出すのは許せないと甕星は怒気を放つ。
「ああ? こりゃ俺達の島の掟なんだよ! ガキのうちから強いヤツを鍛える。弱いヤツは下っ端として使ってやる。それが世界のルールってもんよ!」
 差別が当たり前と育った海賊は、全く悪びれることなく言い放った。
「別にヒーローになるつもりはねぇ。喧嘩の理由は単純でいい。俺は船の上でふんぞり返ってるてめぇらが気に入らねぇから、ぶっ潰すわ」
 そんな胸糞悪い思想に染められた海賊をぶん殴って目を覚まさせてやると、拳を固く握った甕星が正面から近づく。
「ぶっ潰すだと? そりゃこっちの台詞だ!」
 カトラスを握りしめた海賊たちが襲い掛かる。
「そんな程度で俺をぶっ潰すってぇのか? 舐められたもんだぜ」
 その攻撃を慣れたように甕星は上体を捻り、敵の腕を押して空振りさせる。
「ぶっ潰すってのはこうやるんだよ、甕星流喧嘩術・土竜ァァ!!」
 拳がカウンターで敵の顔を捉え、海賊は顔を変形させながら吹き飛ぶ。
「なっ!?」
 仲間が拳一発でノックアウトされたのを見て、海賊達が狼狽えて動きを止めた。
「ただ拳を当てるだけでいいこいつなら、余計なもんは壊さねぇ」
 甕星は真っ直ぐに拳を見せつけるように敵に向ける。
「壊すのは、てめぇらだけでいいよな、上級島民。喧嘩、しようぜ? 一人残らず吹っ飛ばしてやるよ」
「ざけんなぁ!」
「舐めんなっこの野郎ォ!」
 挑発に乗って怯えを吹き飛ばした海賊達が一斉に襲い掛かる。
「来いよ、まとめて相手してやらぁ!」
 それに対して甕星も嬉々として踏み出し、轟ッ――と空気が唸るような拳を放った。

●子供の笑顔
「一人じゃ流石に全員は拾いきれん。兵を使って人海戦術だな」
 波に流されバラバラに散っている子供を見て、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)が指揮官と副官、そしてそれに従う百を超える手勢を呼び出す。
「だがそうなると俺自身はサメとやり合えんが、飛んで救助ぐらいはできるか」
 召喚中は戦えずとも、救助の手伝いくらいは出来るだろうと手勢を見渡す。
「これから溺れている子供の救助を行う。隊を大小に分けて指揮官の部隊が救助に向かえ。副官の部隊は漕ぎ手の救助とガレー船の無力化だ。では作戦を開始する」
 セゲルが命令すると、すぐさま指揮官と副官が中隊を指揮して動き出した。
 部隊が子供の救助に向かう。すると大砲が海に落ち、救助を妨げになっている様子が目に入った。
「とりあえず、大砲を潰すのが優先だな。そうすれば救助も安全にできる」
 それを止めようとセゲルは副官の方に指示を出し、大砲を狙って敵船へと襲撃を掛けさせる。
「あとは、まともじゃない奴にはしばらく眠ってもらうとしよう。無論、コンキスタドールであれば容赦はいらん。永遠に眠ってもらうつもりで叩きのめせ」
 そう言うと自らは翼を広げて船を飛び出て、大砲の脅威から守らんと子供との射線の間を悠々と飛び始めた。

「ひでぇ真似をしやがる。すかっと殴れる悪党共とはこいつらの事だな」
 神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は海で溺れそうな子供を見て、自らも船から飛び降りる。
「行くぜ相棒!」
 その途中で鮫印のスペース絵馬ホルダーから相棒の星白鮫を呼び出し、上に乗ってサーフィンのように海面を走る。
「あっぷ、もう、無理、だよ」
「がんばれ! 死んじまうぞ!」
 子供達が声を掛け合いながら懸命に浮かぶが、もう体力は限界で子供の身体が海中に沈んでいく。次に大きな波が被ればもう上がってはこれないだろう。
「今助けてやる」
 そこへ颯爽と波に乗って現れた恭二郎が、風桜子を纏わせた足でとんと海面を優しく一踏みする。すると広がった風桜子の衝撃波が弾け、子供達の身体がふわりと浮き上がった。その身体を目にも留まらぬ早業で両脇に抱える。
「へっ?」
「あっぷ……あれ?」
「よーし、よく頑張ったな。後は任せておくれよ」
 呆気に取られている子供達を恭二郎が褒めた。
「たすかった?」
「ありがとう兄ちゃん!」
 ようやく助かったと理解した子供達が恭二郎に安堵の笑みを見せた。
「なあに、このくらいお安い御用さ」
 大したことではないと恭二郎が軽口を叩きながら、そこへ迫る覆いかぶさるような何メートルもある大波に乗って回避する。
「わぁっ」
「すっげー!」
「しっかり掴まってろ。このサメに掴まってれば船まで運んでくれるからな」
 薄い風桜子の膜を足裏に展開し、水面に立った恭二郎が後は任せると送り出すと、星白鮫は興奮する子供達をサーフィンで楽しませるように船へと運んだ。

「子供を海に落とすなんてひでぇ真似を……だが船乗り共も被害者に過ぎないってのがまた胸糞悪いな」
 ヨム・キプール(贖罪の日・f21620)は上級下級に無理矢理分けられた島民を見て、その歪な社会構造に嫌悪を覚える。
「子供達をこんな理不尽な事で死なせやしない」
 ユーベルコードで全身にバリアーを張って子供を守ると決意すると、その意志に応じてバリアーの輝きが増していく。
「ま、いつも通り正面からぶん殴るだけだ。へへ、『いい手』だろ?」
 足裏のジェット推進器とユーベルコードで得た飛翔能力を合わせ、ヨムはネレイス号から飛んで、一気に加速して敵船の横っ腹に拳を叩き込む。機械の義腕が易々と船に穴を空け、凄まじい衝撃を船に与えた。
「船が傾く?! 何かに掴まれ!」
 ぐらりとガレー船が大きく揺れて、海賊達は柱や縄にしがみ付いて落下を免れる。
「揺れがなかなか収まらねえ! これじゃ大砲が当たらねえぞ!」
 ゆらゆらと振動が続き、大砲の照準が上に下にと大きく揺れ動いていた。
「上手くいったぜ。今のうちに残りの子供達を助けにいくとするか」
 腕を引っこ抜いたヨムは、海面を飛んで子供の元へ向かう。
「わっぷぁ、はぁはぁ、波が高いっ」
「こんなんじゃ魚なんかとれるわけないよ!」
 泳ぐのが得意でも、波の高さが邪魔をして息を吸いに顔を出すだけでも大変だった。
「もう大丈夫だ」
 そこへ頭上から声が掛かる。見上げれば輝く光に包まれたヨムの姿があった。
「飛んでる!」
「すげーぴかぴか光ってる!」
 状況も忘れて子供達はその姿に目を奪われる。
「ほら、助けに来たぞ。手を伸ばせ」
 ヨムの差し出す両腕に、子供達が今の状況を思い出して必死に掴まる。
「しっかり掴まってろよ、行くぞ!」
 子供を抱えたヨムが飛翔してあっという間にネレイス号へと戻る。
「うおーーっ」
「すっげー!」
 空を飛ぶという初めての体験に、溺れそうだった恐怖も吹き飛んだように子供達は笑顔を浮かべた。

●制圧
「大砲を撃て! 反動で船を動かす!」
 髭船長の号令で海賊が海に大砲を撃ちまくると、ガレー船とネレイス号の距離が少しずつ開き始める。
「よーし! 帆船は出足が遅い! 当てられるぞ!」
 すると射角が合い大砲がネレイス号へと向けられた。
「強引に船を動かしたか、迷惑な事だ。だが流れ弾は子供には届かせん、任せておけ」
 空を舞うセゲルがその砲弾を大盾で防ぎ、流れ弾を手勢が救助中の子供に当たらぬように己が身を盾にして、次々と弾いていった。
「こんな程度では俺の盾は貫けんよ」
 セゲルが我が身を晒して挑発し、その間にセゲルの手勢や絶奈の軍勢の人海戦術によって海に残されていた子供達が全て引き揚げられる。

「撃てー! 敵船を沈めろ!」
「なかなかの戦巧者じゃないか。上級と名乗るのならそれくらいはしてくれないとな」
 放たれた砲弾を、海面から波の勢いを利用して跳躍した恭二郎が捉え、風桜子を通して伸ばしたスペース手拭いを巻き付けてえいやっと放り飛ばして海に落とした。
「一つ手本を見せてくれ。上級さんは魚を獲るのが上手いんだろ?」
 そしてその手拭を往復させて、今度はガレー船の敵を絡め取り、海へと放り投げた。
「うわあああああっ!」
 悲鳴がざぶんと大きな飛沫に消される。何とか我に返って海賊は海から顔を出してあっぷあっぷと息を吸い始める。
「上手なもんだ。海の男ならこれくらい平気そうだな」
 ならばと恭二郎はまた跳躍して手拭で敵を捕まえては次々と海に放り込んでいった。
「糞ッ、とにかく撃ちまくれ! 撃ってりゃどれか当たる!」
 がむしゃらに大砲が放たれ、その内の流れ弾がネレイス号の甲板に子供を下ろすヨムの方にも飛んで来た。
「うわあっ」
「当たるよぉ!」
 それを見た子供達がぎゅっと目を閉じる。
「子供達に『手を』出す非道、俺が『この手』で止めてやるぜ」
 それをヨムは腕を振るって簡単に弾き、船に当たりそうなのもバリアーで受け止めた。
「最後の悪足掻きですか、では先に其方を潰しましょう」
 絶奈がふわりと浮いて敵船に取り付き、剣を振るった衝撃波で大砲を斬り飛ばした。
「あいつを止めろ!」
 海賊がラッパ銃を撃ち込むが、すぐに絶奈は船から飛び出て散弾を躱す。
「今だ、一気に制圧しろ!」
 セゲルが命じると、手勢が一気になだれ込み、意識を外の絶奈に向けている海賊達を殴り倒した。
「こいつで終わりだ!」
 最後に抵抗していた海賊の振るう刃を見切って躱した甕星が殴り飛ばす。拳を構えたまま甕星が見渡すと、もうガレー船の甲板に立っている海賊はいなかった。
「……降参だ。白旗を上げろ!」
 どっかりと座り込んだ髭船長がそう告げると、海賊船は白旗を上げて降伏した。
「子供も全員引き揚げられたようだな。お次は島の制圧か」
 着地したセゲルが手勢の方に顔を向けると、そこにはずぶ濡れの子供達の安心しきった顔が並んでいた。それを見たセゲルは笑みを浮かべ、そして次の目的地である遠くに見える島へと視線を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『異形の海賊』

POW   :    欲シイモノハ何時ダッテ早イ者勝チサ
レベル分の1秒で【防御が極めて困難なマスケット銃による魔弾】を発射できる。
SPD   :    早速オ宝拝見サセテ貰オウカイ
【回避が極めて困難なカトラスの斬撃】による素早い一撃を放つ。また、【戦場の空気や褒美を約束された高揚感】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    残念ダケドアンタノ攻撃ハ効カナイヨ
全身を【物理攻撃を無効化する魔性の鱗】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【負の感情と負傷】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。

イラスト:らぬき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ソードフィッシュ島
「ソードフィッシュ島はその名の通り、細く長い形をしておる」
 捕えられた海賊達にコンキスタドールについて尋問すると、不貞腐れた若い船員とは違い、老いたドワーフの髭船長は隠すことなく答えた。
「その頭部部分に儂らの港がある。だがあんたらの探す島のボス。ダークハンティング様がおるのはその反対、尾っぽ側の入り江じゃ。そっちはボスとその直属の配下専用の港になっとるんじゃ。港に行けばボスの住んどる館も見える」
 そちら側から侵入すれば、島民を巻き込む心配もなく全力で戦えそうだ。だがその言葉が本当なのかどうか、猟兵は髭船長に怪しいところがないか探るように視線を向けた。
「儂のガキの頃はまだボスたちがおらんかった。今の若い奴らには分からんじゃろうが、危険な外洋に出られんし豊かとは言い難いが、それでも島はもっと笑顔が多かった」
 懐かしむように髭船長が青い空を見上げる。だがその顔がだんだん苦々しいものに変わって俯いていく。
「それが今じゃ上級だの下級だの、海での狩りの腕で全てが決められてしまう。奴隷扱いされる友の姿が当たり前になっちまうんじゃ……」
 大きく首を振ってくたびれたように重い息を吐いた。
「もし昔のような、いがみ合うのではなく手を取り合う島に戻れるのなら……あんたらならもしかしたらと、そう思ったまでじゃ」
 髭船長が猟兵達を真っ直ぐ見返す。そこには諦めきっていたような暗い眼に、僅かな希望が宿ったように見えた。
 救いを求めるような眼に、猟兵達は島民もまた支配される犠牲者なのだと思い返し、この船の乗組員も、そして島に居る人々も掟の戒めから解放しようと、船の針路を島の尾へと向けた。

 島が近づくと、大小さまざまな船が幾つも停泊しているのが見える。そしてその船の周辺には人と爬虫類を合成したような、女性型の異形の部隊が武装して警備をしていた。
 それはボスを守るコンキスタドールの部隊だ。港を上がって少し進んだ場所には大きな館が見える。あれが情報にあったボスの住まう場所だ。情報通りだと船をそのまま港に進ませる。
 館に向かうには警備するコンキスタドールを倒して進まなくてはならないと、猟兵達は戦闘準備を始めた。
メンカル・プルモーサ
むう、託されてしまった。となれば頑張らないとなー…
改造装甲車【エンバール】に乗って船とは行動するね…
…船と戦う異形の部隊に対して側面を付くように装甲車を走らせて接近…
…物理攻撃は無効でも…重奏強化術式【エコー】により強化した【連鎖する戒めの雷】による雷鎖で纏めて縛り上げて行動を封じるよ…
…動けないうちに…爬虫類なら温度下げれば動き鈍るかな…?
【空より降りたる静謐の魔剣】を多数召喚…氷の魔剣を撃ち込んで凍らせて動きを鈍らせよう…
…氷の魔剣の攻撃が効くようなら物理攻撃しか攻撃手段の無い猟兵に魔剣を貸して手助けだね…あとは雷鎖による妨害に勤しむとしよう…


神酒坂・恭二郎
「それじゃ綺麗なお姉さん方、一つよろしく頼むよ」
飄々と嘯いて小粋な【礼儀作法】で一礼
スーツから【早業】で涼しげな装飾のハンカチーフを取り出して意表をつく
相手のマスケット銃も相当に速いが、攻撃の決断の遅れは命取りになる
これも機先を制する工夫の一つだ

「な?」
軽く告げ、不敵な笑みと共に【覇気】の篭った風桜子をスペース素材のハンカチーフに注げば、一瞬で拡大展開されて海賊達の視線を塞ぐ

後の方針は、【残像】を残して間合いを詰め、彼女達に【グラップル】で掌打を押し当てていく
彼女達の魔性の鱗をすり抜け、内部に風桜子を【衝撃波】として徹す【鎧無視攻撃】の絶技だ

「残念だけど。あんた達の鱗じゃ防げないのさ」


綿津・甕星
さて、とぉ。まだまだ喧嘩は出来そうだなぁ!!多少の傷なら無視をしようか。いい酔い醒ましになろうよ。
先陣は切らせてもらおうか!
甕星流喧嘩術・羚羊ァ!敵の集まっている中心を狙い、蹴りを放って地を砕く。これで連中は足場を取られて体制を崩す。そのマスケット銃も上手く狙えはしねぇだろう?それに、だ。
こっちはてめぇらが体制を崩した方がよく蹴りこめるってもんよ。
死ね!!!あっはっはっはぁ!
そんで道を開けろぉ!!!



●突破
「船ダ、知ラナイ船ガコッチニ来ルゾ!」
「侵入者ダ! 獲物ガノコノコ向コウカラ来テクレタ!」
「略奪ノ時間ダ! 殺シテ奪エ! 早イ者勝チダ!」
 猟兵の乗るネレイス号に気付いた異形の女海賊達がすぐさま迎撃に動き出す。海の近くに居た者が幾人かの海賊が小舟に乗って漕ぎ始め、我先に乗り込まんと接近する。
「さて、とぉ。まだまだ喧嘩は出来そうだなぁ!! 多少の傷なら無視をしようか。いい酔い醒ましになろうよ」
 甕星は小舟で向かって来る敵を見下ろして、湧き立つ闘志を胸に楽しげに笑みを浮かべる。
「先陣は切らせてもらおうか!」
 そう言うや否や、甕星は船から飛び出し、小舟に向かって跳躍する。
「向コウカラ獲物ガ来タゾ!」
「撃テ撃テ! 撃チ落トセ!」
 それを迎撃せんと異形の海賊達はマスケット銃を構えてすぐさま発砲する。
「覚悟が決まってりゃあこんな豆鉄砲でやられるかよ!」
 覇気を纏った甕星は弾丸のダメージを最小限にしながら突っ込み、小舟の真ん中に落下する。
「甕星流喧嘩術・羚羊ァ!」
 その勢いのまま船の中心に蹴りを放ち、衝撃で大きく船が揺れ船が真っ二つに割れた。
「コイツ!」
「撃チ殺セ!」
 海賊達は割れ目の近くに着地した甕星に銃を向けるが、浸水して船が沈み始め足元が傾き狙いが逸れる。
「これでそのマスケット銃も上手く狙えはしねぇだろう? それに、だ。こっちはてめぇらが体制を崩した方がよく蹴りこめるってもんよ」
 その隙に懐に飛び込んだ甕星が矢のように蹴りを放ち、腹に食い込むような横蹴りを叩き込んで敵を吹き飛ばす。海賊はくの字になって宙を舞い、海に落ちて大きな水柱を上げた。
「沈ムゾ!」
「他ノ船ニ乗リ移レ!」
 浸水した小舟が沈み始め、すぐに海賊は近くの仲間の船に跳び移ろうとする。
「逃がすかよ!」
 その背中を甕星が蹴りつけ海に叩き落とした。
「邪魔ナ! 先ニコイツヲ殺ル」
「それはこっちの台詞だぁ!」
 隣の海賊が銃口を向ける前に踏み込んだ甕星は銃身を蹴り上げ、放たれた弾丸は空に飛んでいく。そして足を引き戻しながらくるりと回転すると、後ろ回し蹴りを叩き込んで肋骨を砕いて敵を海に飛ばした。

「チッ、何ヲシテヤガル。鱗デ全身ヲ覆エバアンナモン効カナイッテノニ」
 近くの船に乗っていた全身を魔性の鱗で覆った海賊が苛立つように舌打ちすると、銃口を沈む船で暴れ回る甕星に向けた。
「むう、託されてしまった。となれば頑張らないとなー……」
 メンカルは変わってしまった島を憂う老いたドワーフの髭船長の想いを聞いて、それに応えてあげようと海上を走る改造装甲車のスピードを上げた。
「……迎撃に出て来た敵の側面を突くよ……」
 車のハンドルを切り敵の側面に進路を向けたメンカルは、車の周囲に無数の魔法陣を展開した。
「……物理攻撃は無効でも……重奏強化術式【エコー】により強化した【連鎖する戒めの雷】による雷鎖で纏めて縛り上げて行動を封じるよ……」
 術式により強化された雷の鎖が一斉に魔法陣から飛び出し、敵の物理攻撃を無効化する魔性の鱗の上から巻き付いた。雷鎖は電撃を与えながら動きを封じ込める。
「何ダコレハ、雷ノ鎖ダト!?」
「動ケナイ……!」
 不意打ちを受けた海賊達はもがいて戒めを解こうとするが、電撃によるショックでその力を奪われる。
「……動けないうちに……爬虫類なら温度下げれば動き鈍るかな……?」 
 そこへ空に召喚して浮かべた氷の魔剣を雨のように降らせる。
「コ、コノ程度ノ剣ナゾ!」
 海賊達はその剣の雨を鎧のような鱗で防ぐ。刃が当たると鱗が欠けて傷つくが、致命傷には至らない。だが氷の魔剣が放つ冷気によって敵の傷口を凍らせ、さらに辺りの気温が下がって全身に霜が付き始める。
「……魔剣の直接ダメージは低いけど、凍結効果はあるみたいね……」
 ならば自分は敵の動きの阻害に専念しようと、メンカルは雷と氷によって自由な動きを邪魔する。
「次はてめぇらか、と。その鱗に覆われてたら物理攻撃が効かねえんだったか? じゃあこいつでどうだ!」
 そこへ沈む船を蹴って跳び込んだ甕星が動けぬ敵を蹴りつけるがダメージは無い。それならばと、船に蹴りを叩き込んで穴を穿ち、船ごと海賊達を海中に沈めてしまった。
「死ね!!! あっはっはっはぁ! そんで道を開けろぉ!!!」
 そして船が沈む前に自分は次の船へと飛び移り、また新しい敵相手に暴れ始める。
「この調子で妨害に勤しむとしよう……」
 メンカルも車の進路を変え、次の船に向けて援護の雷鎖を放った。

「侵入者ノ船ニ乗リ込メ! 先ニ船ヲ奪ッテシマエバイイ!」
 小舟を捨てて無事な海賊達はネレイス号に飛びつき甲板へと這い上がる。だがそこには恭二郎が待ち構えていた。
「それじゃ綺麗なお姉さん方、一つよろしく頼むよ」
 敵を前にしても飄々と嘯いた恭二郎は、背筋を伸ばし紳士のような小粋な動作で一礼してみせた。そんな場違いな所作を見た敵が呆気に取られる。その間に流れるように自然な動作で、恭二郎はスーツから手品のように素早く涼しげな装飾のハンカチーフを取り出した。攻撃を受けると思っていた海賊達は意表をつかれ思わず備えようとする動きを止めた。そうして思考の空白を作り出す。
「な?」
 不敵な笑みと共に恭二郎は、機先を制してスペース素材のハンカチーフに覇気の篭った風桜子を注いで巨大化させ、カーテンのように広げて視界を遮る。
「撃テ! 蜂ノ巣ニシテヤレ」
 我に返った海賊達がマスケット銃を素早く構え一斉に発砲する。ハンカチーフに大量の穴が開いて吹き飛ぶが、そこに恭二郎の姿は無かった。
「ドコダ!?」
 慌てて左右を見ると、横に恭二郎の姿を捉えた。
「ソコカ!」
 一瞬で狙いを付けると引き金を引く。放たれる弾丸が恭二郎の顔や胸を正確に撃ち抜いた。だが弾丸は恭二郎に傷一つ付ける事無く飛んでいった。
「それは残像さ」
 背後から声が聞こえたと思った瞬間、恭二郎が海賊の背後に現れ掌打を打ち込む。
「コノ程度ノ攻撃デ――ガハッ……」
 海賊が振り向きながら銃を向けようとするが、口から血を吐いて自らの身体を汚す。
「何故……?」
 不思議そうに海賊は己が吐いた血を見下ろした。
「こいつは身体の内部に風桜子を徹す絶技だ。残念だけど、あんた達の鱗じゃ防げないのさ」
 恭二郎の掌打と共に風桜子が流し込まれ、鱗の鎧を素通りして内臓を破壊していた。

「距離ヲ取レ! 一斉射デ撃チ殺セ! 遠距離ナラバコノ鱗ハ無敵ダ!」
 海賊達は距離を取って射撃戦に持ち込もうとする。
「……どんな鎧を纏おうと、雷鎖からは逃れられないよ……」
 そこへメンカルの放った雷が鎖となって巻き付き、敵の四肢を拘束した。
「……今のうちに止めを……」
「そこまでお膳立てされたら後は簡単なものさ、内側から破壊してやるよ」
 動けぬ敵にするりと近づいた恭二郎は掌打を打ち込み、内部に徹した風桜子によって心臓を破裂させていった。
「グバァッ……」
 外傷は無いが血を吐いて海賊達が崩れ落ちていく。
「クッ、ココハ引イテ陸ノ仲間ト合流シナクテハッ」
 何とか雷鎖から逃れた海賊が海に逃れようと跳躍する。だがその身体は正面から蹴り飛ばされて甲板を転がった。
「どこに行くつもりだ? 他人の船に攻め込んできて逃げられると思うなよ?」
 海から上がってきた甕星が甲板に降り立ち、海賊に向かって歩き出す。
「コンナ馬鹿ナ。アタシラガヤラレッパナシナンテ……」
 立ち上がってじりじりと後退する海賊の背が何かにぶつかった。振り返ればそこには恭二郎が立っている。
「アァッ!」
 叫びながら海賊がカトラスを振り抜こうとする。だがそれよりも先に恭二郎の掌が海賊の背中を捉え、衝撃が身体の芯まで響く。するとこみ上げる錆臭い血を吐き散らし、海賊は悶絶して倒れた。
「……迎撃に来た海賊はこれで終わりね……次は上陸戦になりそうよ……」
 メンカルが島の方へと視線を向けると、ネレイス号は順調に進みもう少しで港に接舷できそうな距離まで来ていた。
 だがその港では、武装した海賊達がこちらが上陸するのを待ち構えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハルア・ガーラント
暴力ではなく、手を取り合って島を治める……(以前ダークセイヴァーでのことを思い出して口調を強める)うん、出来ます!

【WIZ】
剣の他に銃でも武装しているみたい、遠近どちらの攻撃も警戒して戦闘。[咎人の枷]にオーラを付帯させいつでも攻撃を防げるように準備。後方から敵を[銀曜銃]の[誘導弾]で撃ちます。魔力を多目に[力溜め]し、わたしの攻撃で討ち取れる敵を狙います。

敵の身体が鱗で覆われだしたらUC発動。負傷は取り除けないけど、負の感情を歌で減らします。
皆さん、今の内に一気に押してしまいましょう!
胸の内でごめんねと謝ります。

戦闘後は上空から付近の地形を確認、罠の有無、残った敵はいないか[情報収集]を。


ヨム・キプール
アドリブ・連携◎

「オブリビオンが相手なら、遠慮は無用ってことだ」

まずは敵が密集している場所目掛けてプラズマグレネードを【投擲】し、【範囲攻撃】で着実に削る。

「間違いなく退くだろうが、まだ密集しているようならもう一発投げて爆殺だ。アーメン」

散開するならUCを発動、【制圧射撃】を交えつつ猛スピードで【ダッシュ】して近づき、サイボーグの【怪力】でぶん殴って速攻で一人を沈める。

距離を詰めたら即座に閃光手榴弾で【目潰し】を仕掛け、ブラスターをパージしてUCを更に加速させ、残りも殴り倒す。反撃は【武器受け】でいなすぜ。

「避けられない斬撃なら、受けて反撃すればいい。あいにく、手足の替えなら幾らでもあってな」


霧島・絶奈
◆心情
押し通りましょう

◆行動
【罠使い】の技能を活かし【目立たない】様に「魔法で敵を識別するサーメート」を数珠繋ぎにして設置
水中でさえ容赦なく燃えるテルミットの炎です
物理耐性など無意味ですし、負の感情もありません
加えて、攻撃回数を増やした所で罠の解除には何の役にも立ちません

罠で敵の足が止まれば『涅槃寂静』にて【範囲攻撃】する「死」属性の「濃霧」を行使

私も【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
重ねて【衝撃波】に乗せる形で「数珠繋ぎにしたサーメート」を投射
私の攻撃自体は止められても、マヒとテルミットの炎までは防げないでしょう?

負傷は各種耐性と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復


プクルルトゥルルア・ピエルルティエルル
「硬くなるなら、ぶっ壊れるまでたたき続けましょうね」

【騎乗】を生かして飛ばない宇宙バイクで突っ込みましょう。
すれ違いざまに高硬度鉄梃でぶったたいて【武器落とし】でも狙ってみましょうか、遠くからつつかれるのは嫌いなのよね・・・。

私ができることはぶったたいて壊すだけ、壊れるまでたたくだけだからね、
相手が硬くなるようなら【鎧砕き】と勝負しましょう。
あ、私は一方的に叩く方がいいわ、叩かれるの嫌いだし。
まぁ、周りもろともぶっ壊しても問題なさそうなら、グラウンドクラッシャーぶち込むわ、まずそうならやらない。
後のことはだいたい周りの人にか任せるわ、私壊すことはできるけどほかのことを求められると・・・困る。



●上陸戦
「暴力ではなく、手を取り合って島を治める……」
 ハルアはかつてダークセイヴァーで見た、オブリビオンの奸計で村人同士が争っていた村の事を思い出す。
「うん、出来ます!」
 その時だって最後には分かり合えたと人の善性を信じ、ぐっと拳を握り口調を強めて出来るとはっきりと言い切った。
「そのためにも、この島を支配するあなた達をやっつけます!」
 船の上から海賊達に視線を向けたハルアは、剣と銃で武装してこちらをいつでも攻撃できる準備をしているのを確認した。
「降りたらすぐに攻撃してくるつもりのようですね。ならここから攻撃して先手を取りましょう!」
 ハルアは白い小型銃を構え、宿る光の精霊が輝いて光弾が放たれる。
「撃ッテキタゾ!」
「単発ダ、躱セバイイ!」
 その射線から逃れるように海賊が横に跳ぶ。だが光弾は軌道を変え、追いかけるように飛ぶと、その額を撃ち抜いた。
「追イカケ――」
 不意を突かれ、驚いた顔のまま海賊が仰向けに倒れ絶命した。
「誘導弾ダト!? 鱗ヲ纏エ!」
「怯ムナ! アタシラハ海賊ダゾ! 殺ラレタラ殺リ返シテヤレ!」
 鱗を纏った海賊達が前に出て盾となり、隊列を組んでマスケット銃をハルアに向けて、一斉に射撃を開始する。
「う、撃ってきました!」
 来ると分かっていても怖いと思いながら、ハルアは翼に巻き付けた鎖にオーラを纏わせて弾丸を弾いて防ぎ、屈んで射線から逃れる。

「オブリビオンが相手なら、遠慮は無用ってことだ」
 ヨムは隊列を組んだ海賊を見て好都合だとニヤリと笑う。そしてプラズマグレネードを放り投げ込み、敵群の中心で爆発を起こした。全方向にプラズマが放射され、鱗を纏っていたなかった後列の敵が薙ぎ倒される。
「散レ!」
 このままでは危険だと海賊達は散り散りになって動こうとする。だが先のプラズマを浴びて動きを鈍らせた者はのろのろとした動作で、思うように逃げられないでいた。
「退いたか、だが逃げ遅れがいるな。ならもう一発プレゼントだ。アーメン」
 そこへヨムがもう一個グレネードを投げつけ、それを見て顔を歪ませ逃げようとした海賊達を纏めて吹き飛ばした。
「散開したなら各個撃破だぜ」
 ヨムは船から飛び降りると、着地と共に前転して衝撃を前に出るエネルギーに変え、地を蹴って敵に突っ込む。
「降リテキタヨ! 撃テ!」
 それを迎撃しようとする敵にビームが掠める。先に銃口を向けてヨムは右手のブラスターランチャーを撃って牽制しながら間合いを詰めた。
「まずは一体」
 接近したヨムはカトラスを抜こうとする敵の顔面を、駆け寄った勢いを乗せて左の機械腕で殴りつけ、メキリと拳が食い込み顔面を陥没させて吹き飛ばした。
「貴様ァ!」
 近くの海賊がカトラスを抜き放ち、ヨムの首を狙って高速で振り抜く。それをヨムは左腕で受け止める。ギリギリと鉄を切り裂かんと刃が食い込むが、そこで斬撃が止まった。
「避けられない斬撃なら、受けて反撃すればいい。あいにく、手足の替えなら幾らでもあってな」
 敵と視線を合わせたヨムは笑みを浮かべ、コロンと足元に手榴弾を落とす。
「ナッ!?」
 驚く海賊が反応する間もなく、手榴弾は目の眩む閃光を放った。
「グアッ!」
 眼を潰された敵が反射的に顔を押さえる。そこで目を閉じていたヨムが瞼を開け、隙だらけの敵の腹に掬い上げるようなボディブローを叩き込んだ。海賊が血を吐き散らし放物線を描いて飛んでいく。

「鱗デ身ヲ守レ! アタシラハ無敵ダ!」
 海賊達は全身に強固な鱗を纏い、如何なる物理攻撃も寄せ付けぬ鎧を形成する。そして受けた負の感情によって身体能力を強化した。
「鱗で身体を覆いましたね。ならこちらも次の手に移ります」
 ハルアは大きく息を吸うと美しい声で歌い出す。聴く者の心を動かす、美しくも優しい天使言語による親愛歌が戦場に響き、海賊の敵意が弱まって銃声が収まり始めた。敵が無防備になったのを確認すると、ハルアは仲間の方へと振り返る。
「皆さん、今の内に一気に押してしまいましょう!」
 銃を構えたハルアは仲間と共に船を降りて攻勢に出ながら、胸の内でごめんねと謝っていた。その謝罪の気持ちが敵の力を弱める。
「ソンナ攻撃ガアタシラニ効クモノカ」
 身体を鱗で覆って光弾を弾こうとする。だが敵意が萎えると共に全身を覆っていた鱗も元に戻り始め、その隙間を貫いて胸に穴を穿った。
「ガッ……コンナ馬鹿ナ……」
 口から血を溢れさせながら海賊が胸の傷を押さえて崩れ落ちる。

「耳ヲ塞グンダヨ!」
 海賊は耳まで鱗で覆い潰し、音を少しでもシャットアウトして銃を構える。
「硬くなるなら、ぶっ壊れるまでたたき続けましょうね」
 そこへ船から宇宙バイクに騎乗して飛び降りたプクルルトゥルルアが突っ込み、すれ違いざまに高硬度鉄梃でぶっ叩いてマスケット銃を手から弾き飛ばした。
「遠くからつつかれるのは嫌いなのよね……」
 先手を打って飛び道具を潰したプクルルトゥルルアは、バイクを反転させてもう一度突っ込む。
「ソンナモノハ効カナイ」
 カトラスを抜いた海賊が待ち構え斬撃を放つ。それに合わせてプクルルトゥルルアも高硬度鉄梃を振るい、両者がぶつかって火花を散らす。押し切ったのはバイクの速度を乗せたプクルルトゥルルアの一撃。海賊は体勢を崩して尻餅をつく。
「私ができることはぶったたいて壊すだけ、壊れるまでたたくだけだからね、その硬い鱗を鎧砕きで壊せるか勝負しましょう」
 バイクを飛び降りたプクルルトゥルルアが上から高硬度鉄梃が思いきり叩き込む。
「クッ、コンナモノデアタシヲ倒スツモリカ?」
 余裕を崩さぬ海賊はカトラスを下から突き上げる。しかしその一撃は空を切った。
「あ、私は一方的に叩く方がいいわ、叩かれるの嫌いだし」
 身を捻って回避したプクルルトゥルルアはカトラスを横から殴って吹き飛ばし、敵を無防備にした。そして一方的に高硬度鉄梃で殴り続ける。
「コ、コンナ攻撃ハ、キ、効カント……グゥッ」
 度重なる身体に響く衝撃に海賊の声が揺れ、幾度も殴られて限界を超えた鱗がひび割れ、剥げて中の肉が見え始める。
「この勝負、私の勝ちのようね」
 そこへプクルルトゥルルアが高硬度鉄梃を全力で振り下ろし、鱗を叩き割って内部に直接打撃を与えた。
「ギャッ!」
 激痛に潰れた声を発し、海賊が血を吐いて地面をのたうち回る。
「無敵ノ、鱗ガ……」
「私壊すのは得意なの」
 止めにもう一度プクルルトゥルルアは同じ場所を殴りつけ、内臓を破裂させて海賊は動かなくなった。

「チッ、強敵ダ。バラバラニ動クナ。確実ニ仕留メテ行クゾ」
 猟兵を強敵と見た海賊達は、まずはプクルルトゥルルアを遠距離から撃ち殺そうと銃を向けた。
「押し通らせてもらいます」
 その背後から声が聞こえたかと思うと、爆発が起こって炎が海賊達を包み込む。
「何ダ!? 熱イッ」
 炎に巻かれた海賊達が苦しみ出す。身を守る鱗は熱に耐えても、蒸し焼きにされる中身は熱によって火傷を負っていた。
「海ダ、海ニ入レバ……」
 燃える海賊が海に飛び込むが、火は消えずに身体を蝕む。
「水中でさえ容赦なく燃えるテルミットの炎です。物理耐性など無意味ですし、負の感情もありません。加えて、攻撃回数を増やした所で罠の解除には何の役にも立ちません」
 敵の動きを想定していた絶奈は、海から上がって来た敵に槍を突き入れ止めを刺す。
「オノレ!」
「殺セ! 穴ダラケニシテ命ヲ奪ッテヤレ!」
 海賊達は炎に燃やされながら銃を構える。
「最後の足掻きですか、ですがそうする事も予想出来ていました」
 絶奈は手を一振りして森羅万象へと干渉する。すると辺りを霧が包み込み、視界を塞ぐほどの濃度となる。
「見エナイゾ。ドコダ!?」
「トニカク撃テ……ガハッ」
 銃を構えていた海賊が突然血を吐き出す。
「何ダコレハ?」
 不思議な顔で何故自分が血を吐いたのか分からない顔で海賊は赤く染まった地面を見下ろす。
「其の霧には死の属性が付与されています。息を吸うだけで貴方方の身体が蝕まれていくのです。炎と霧に包まれて死になさい」
 霧の中から絶奈の声が聞こえる。そこに向けて海賊が発砲するが、空を切って弾丸はどこかに飛んでいった。
「ウ……アガッ……」
 ばたばたと海賊達が力尽きて倒れていき、炎が火葬するようにその身を焼いた。

「無敵ノ海賊団デアル我々ガ負ケテイルナンテ」
「コウナレバ斬リ込ンデ活路ヲ開クシカナイ」
 数を減らした海賊達は起死回生の一撃を加えんと、カトラスを抜いて突撃しようとする。
「周りもろともぶっ壊しても問題なさそうね」
 それを制するように宇宙バイクに乗って飛び込んだプクルルトゥルルアが高硬度鉄梃を地面に叩き込む。衝撃で地面が波打ち、爆発するように弾けて攻撃態勢を取っていた海賊達が吹き飛ばされた。
「グ……ナントイウ………」
「後は起きる前に叩き潰すだけね」
 バイクを降りたプクルルトゥルルアが倒れている敵の前に立ち、高硬度鉄梃を振り下ろして地面にめり込ませるように叩き潰した。
「アタシ達ハ奪ウ存在ダヨ、ソレガコンナトコロデ寝テラレルモノカ」
「悪いけど、このまま決めさせてもらうぜ」
 起き上がろうとした海賊に、ブラスターをパージして軽量化し、飛ぶようなダッシュで突っ込んだヨムが機械腕のジェット推進器で超加速した拳を放ち、敵を砲弾のようにふっ飛ばした。その身体は遥か遠く海の沖で水切り石のように何度もバウンドして水飛沫を上げた。
「次だ!」
 動きを止めずにヨムは次々と敵を殴り飛ばしていく。
「クソッ、コノママデハ全滅ダ。ボスニ報セナクテハ」
 こそこそと海賊が館の方へと逃げようとする。だがその前に絶奈が立ち塞がった。
「貴方方を倒した後に、館の主もすぐに其方に送りつけますので、先に向こうで待っているといいでしょう」
 敵がカトラスを構える前に、絶奈が剣を振り抜き海賊の身体を袈裟斬りに断ち切った。
「これで警備の海賊は全滅のようですね。残るは館のボスだけです」
 銃を下ろしたハルアがふっと気を抜きそうになるのを堪え、緊張感を保って館の方へと視線を向ける。そして仲間と視線を交わし、共にボスの待つ館へと足を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ダークプルティア『ダークハンティング』』

POW   :    獲物は逃がさない!ダークネスファンゲン!
命中した【投網(レベルm半径内任意地点から発射可)】の【内側】が【エネルギーや生命力を吸収する無数の棘】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    全部狩り尽くす!ダークネスランツェレーゲン!
【空中でレベル×5本に分裂し降り注ぐ銛】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    何処だろうと私の狩場だ!ダークネスタウフン!
対象の攻撃を軽減する【地面にも無音で潜る事ができる鮫形態】に変身しつつ、【水中では無色透明になり牙や鋭いヒレ】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシズホ・トヒソズマです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●暴食のダークハンティング
 猟兵達が館に向かおうとした瞬間、殺気を感じて足を止める。すると窓ガラスが割れ、そこから銛が飛び出した。危険を感じた猟兵が身を引くと、分裂した銛が猟兵達の前に突き刺さった。もう一歩踏み出していれば身体を串刺しにしていただろう。
「なかなか狩りがいのありそうな連中じゃないか!」
 続けて割れた窓ガラスから女性の姿をしたコンキスタドールが飛び出し、銛を投げてその上に乗って飛行し猟兵達の前に着地して対峙した。
「うちの連中を倒したみたいだな」
 コンキスタドールが辺りを見回し、倒れた配下の海賊達にまるでゴミを見るような視線を向けた。
「この島の連中も、配下の奴も、弱者を食べても美味くもないしたいして力も得られなかった。少しでも美味い獲物が育つかと思って島で養殖してみたが、上手くいかなかった……」
 溜息をついたコンキスタドールががっかりしたように肩を落とし、猟兵へと視線を向ける。
「だからお前達のような強者が現れてくれて嬉しい! お前達を喰らったら私はどれほど強くなれるだろうか……楽しみだ!」
 舌なめずりしてコンキスタドールは獰猛な笑みを浮かべる。その大きく覗く口には、まるでサメのような鋭い歯が生えていた。
「さあ、狩りの時間だ! 逃げてもいいし抗ってもいい。活きの良い獲物は大歓迎だ!」
 銛を構えたコンキスタドールが、獲物を見る狩人の目で猟兵達を見渡した。
「狩る暴食の闇雫、ダークハンティング! お前達を一人残らず狩る者の名だ!」
 名乗りを上げたダークハンティングが必ず仕留めると鋭い殺気を放つ。

 そんな横暴で恐ろしい、人を食料としか見ていない島の支配者を前に、猟兵達は決して負けられないと、島民の未来を守る為に武器を構え戦いを挑んだ。
ヨム・キプール
アドリブ・連携◎

「お前さんがボスか。何なら一杯奢ってやろうか? パンチなんてどうだ?」

パンチ酒とパンチをかけた洒落を口にして、余裕を見せる。

「地面を泳ぐ鮫の力か。なら、これだな」

EMP手榴弾を【投擲】、電磁場の【範囲攻撃】を巻き起こす。

「本来は無人兵器や電子装備に使うモンだが、ロレンチーニ器官に頼って狩りをする鮫にも効く筈だ。さて、飽和攻撃を開始――っと」

地面の中は視界も効かない。
索敵の手段を潰し、更には詠唱と同時に、300を超える砲撃ユニットを展開する。

「その技、負担がデカいだろ。無理せず出てこいよ」

無論、その瞬間に【制圧射撃】と恐るべき【怪力】によるパンチが飛んでくることは言うまでもない。


神酒坂・恭二郎
「やれやれ、強者の養殖って訳か。あんたも苦労するねぇ」
強き相手を求め飢える気持ちまでなら共感できる
「だが、押し付けってのは何時だって野暮なもんさ」

「悪いが狩らせて貰う。なぁに、最後に天然物の味って奴を確かめてくれ」

銛の雨を【オーラ防御】を纏った布術の【早業】で捌きつつ、無理せず様子を見る
雨の切れ目に踏み込みたい
狙いは投網。回避不可能な距離に引き付けて放たれるそれを、【覚悟】で更に引き付ける
対応は、脇構えから掬い上げる一刀
纏う風桜子による【サイコキネシス】の【衝撃波】で投網を丸ごとゆるりといなし、【残像】を残して踏み込み
【二回攻撃】に逆燕返しに切り下しで、【覇気】の一刀を狙う

【アドリブ連携歓迎】


ハルア・ガーラント
手羽先、焼き鳥、唐揚げ……ひぃっ、悪い末路を考えている場合じゃないです!

【WIZ】
大丈夫、食べられる前に懲らしめてしまえば。
敵のギザギザ歯に怯みつつ戦闘開始。近距離戦闘になるでしょうから、[咎人の鎖]を[念動力]で操作し攻撃を防御。地面に散ったガラスの破片を念動力で動かし[銀曜銃]で発砲した際に死角から攻撃。少しでもそちらに気を取られたところを狙い鎖で腕を[捕縛]してみます。
他の猟兵さんの攻撃の助けとなれば!

地面に潜られたら地を蹴り飛翔。鳥料理になった自分を想像し、恐怖を爆発させUC発動。
鳥料理になるなんて、嫌です!
地面に潜っていても白鷲さん達には効きません、どこまでも追いかけて行きますから!


綿津・甕星
なるほどなぁ、わざわざガキ共を選別してたのはそういう理由があったのか。
好き嫌いはしちゃダメだってママに教わらなかったのかよ?いや、教わらなかったから頭に栄養足りてねぇのか。
まぁいいや。別にてめぇの今までの悪行なんぞに興味はねぇ。喧嘩の理由に正義だの悪だのは関係ねぇ。気に入らねぇからぶっ飛ばす。
ああそうさ、だから行くぜ。
甕星流喧嘩術・獅子。てめぇの攻撃、全部受けきって踏破して、その腐った頭吹き飛ばしてやるよ!


霧島・絶奈
◆心情
…養殖よりも天然の方が愉しめます

◆行動
【空中浮遊】で地面から離れ戦場を俯瞰
【罠使い】の技能を活かし直下も含めた周囲一帯に「魔法で敵を識別するサーメート」を数珠繋ぎにして投下

地面にも無音で潜れる能力自体は脅威ですが…
来ると判っている奇襲の効果など半減も良い所です
加えて水中では無いのですから透明化もしませんしね
…この罠地帯を越えて飛び掛かってこれるならば大したものです

加えて『涅槃寂静』にて【範囲攻撃】する「死」属性の「氷震」を行使
敵が現れないなら此方から炙り出すだけです

姿を見せたら【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】

負傷は各種耐性と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復


メンカル・プルモーサ
……ふむ……狩るのはこちらだよ…
…地中を泳ぐというのなら…【我が手に傅く万物の理】を発動…
…周囲の無機物、つまり地面や水の情報をリスト化…
…結果、コンキスタドールが地中で無音でも水中で透明でも…『移動する空白が出来る』ので位置を検知・対応が可能…
…把握した位置を元に地中を潜ってるコンキスタドールの周囲の地面を動かしてコンキスタドールを地面から空中へ排出…
…そこなら地中でも水中でも無いだろう…
…空中に投げ出されて落下しているコンキスタドールに【空より降りたる静謐の魔剣】を全周囲から発射、ダメージを与えるとするよ…


セゲル・スヴェアボルグ
網に捕まったところで問題もない。
他の奴が捕まるよりましだろう。
なので、可能な限り庇うつもりで行くぞ。
少なくとも網は水は通すもんだからな。
向こうが網を投げるなら、こっちは水でお返ししよう。
ついでに槍で穴も開けば僥倖だが、最悪抜け出せなくても槍と水さえ当たればいい。
この手の状況なんざ慣れているしな。
獲物は水揚げするまで気を抜くもんじゃねぇぞ?
いつの間にか逃げ出すか、最悪噛みつかれちまうかもしれねぇからな。
無論、俺は人に噛みつく趣味なんざねぇんだけどな。
あぁ、言葉で噛みつくことはあるけどな。



●地中を泳ぐサメ
「お前さんがボスか。何なら一杯奢ってやろうか? パンチなんてどうだ?」
 ヨムはパンチ酒とパンチをかけた洒落を口にしながら拳を見せ、挑発的な笑みを浮かべる。
「なら腹いっぱいご馳走になるとしようか!」
 ダークハンティングが身体をサメ形態へと変形させ、跳躍して地中に潜り込む。ダークハンティングの触れた地面がまるで水のようになり、その中を潜って接近する。
「地面を泳ぐ鮫の力か。なら、これだな」
 各種装備の中からヨムがEMP手榴弾を取り出して放り投げる。それが放電して周辺に電磁場を作り出した。
「本来は無人兵器や電子装備に使うモンだが、ロレンチーニ器官に頼って狩りをする鮫にも効く筈だ」
「丸ごと喰らって! ――どこだ?」
 丸呑みしそうな大きなサメの口を広げて地面から飛び上がったダークハンティングは、電磁場によって感覚を狂わされ誰もいない場所で狂暴な牙を噛み鳴らした。
「釣れたな。さて、飽和攻撃を開始――っと」
 待ち構えていたヨムは詠唱と同時に、300を超える砲撃ユニットを展開し、一斉砲撃を始めた。逃げ場のない攻撃にダークハンティングの身体が爆風で軽々と吹き飛び地面に叩きつけられる――そう思った瞬間。
「いいぞいいぞ! 必ず強者の肉を喰らってやるからな!」
 嬉々として狂暴な笑みを見せたダークハンティングは、衝突するはずだった地面に潜り込んで衝撃を逃すと、泳ぐ勢いをつけて飛び上がり高々と跳躍して空から銛を投げつけた。
「串刺しにしてやる! ダークネスタウフン!」
 投じられた銛が分裂し雨のように降り注ぐ。

「やれやれ、強者の養殖って訳か。あんたも苦労するねぇ」
 仲間を守るように銛の射線に立った恭二郎は、強き相手を求め飢える気持ちまでなら共感できると敵を見上げた。
「だが、押し付けってのは何時だって野暮なもんさ」
 そしてスペース手拭いに風桜子を通すと、空より降り注ぐ銛を手拭いを振るって弾き飛ばした。
「悪いが狩らせて貰う。なぁに、最後に天然物の味って奴を確かめてくれ」
 そして銛を捌き雨の切れ目を待って前に踏み出し一気に距離を詰める。
「ハハッ! 私のダークネスタウフンを防いで命を獲りにくるかァ!」
 愉快そうに笑ったダークハンティングが殺気を放ち、刀を抜いた恭二郎が間合いに入る直前、突然頭上に網が現れて投擲され覆い広がる。
「そう来ると思っていた」
 対して足を止めた恭二郎は右足を後ろに下げ、脇構えから掬い上げる一刀を放つ。斬り上げる風桜子を纏わせた刀がサイキックエナジーの衝撃波を放ち、投網をふわりと風に靡くようにいなした。
「ならこれでどうだ!」
 ダークハンティングが刀を振った後の恭二郎の胸に銛を突き立てた。だがその一撃が手応えがなく素通りしている。それは恭二郎の残像だった。
「これがあんたの望んでいた強者の剣だ、たっぷり味わってくれ」
 横に踏み込んだ恭二郎が刀を振り下ろす。咄嗟にダークハンティングは身を捻るが、その肩からざっくりと腰に向かって刃が走った。
「痛い、クッ……ハハハハッ! これだ! これが戦いの痛みだ! お前等を喰ったら私は絶対に強くなれる!」
 傷口から血が流れ出るのを見下ろし、嬉しそうにダークハンティングは笑う。そして新たに現れた網が前から投び出し、恭二郎を拘束しようとする。
「斬り合いならともかく、食われるのは堪らんね」
 それを恭二郎は飛び退きながら刀を振るって払い除けた。

●狩場
「ここは私の狩場だ。全て狩り尽くしてやる!」
 ダークハンティングがまたサメ形態となってどぽんと地面に潜り、地中を海のように泳ぎ始めた。
「……養殖よりも天然の方が愉しめます」
 空中に浮いた絶奈は戦場を俯瞰し、地面に潜る敵の動きを観察していた。
「それを証明してみせましょう」
 敵の動きの癖を読みながら、テルミット焼夷弾を数珠繋ぎにして投下した。
「地面にも無音で潜れる能力自体は脅威ですが……来ると判っている奇襲の効果など半減も良い所です」
 まるで釣り師のように、敵が罠に掛かるのを空からじっと待ち構える。
「加えて水中では無いのですから透明化もしませんしね……この罠地帯を越えて飛び掛かってこれるならば大したものです」
 そうしていると、地面から音も無くダークハンティングが飛び出した。するとそれを察知した焼夷弾が炸裂し、炎を巻き上げてダークハンティングの全身を燃やした。
「グゥアッ! 炎だと!?」
 焼かれるダークハンティングは悶え苦しみ、火を消そうと慌てて地中に潜る。だが火は消えずに身体が焼かれていく。
「グゥッ、こんなもの!」
 地上に這い出たダークハンティングは強いオーラを纏って炎を消し飛ばした。
「海を得意とするだけに、火の類は苦手のようですね」
 空から冷静に敵を分析する絶奈に、ダークハンティングの鋭い視線が向けられた。
「今のはお前か、殺してやるぞ!」
 ダークハンティングが助走をつけて銛を投げつける。真っ直ぐに飛ぶ銛を躱すと、その間にダークハンティングの姿が消えていた。
「地上には見当たらない。また地下に潜ったようですね」
 絶奈が敵の動きを探る。すると後方の地上から勢いよく飛び上がったダークハンティングがトビウオのように空に飛んだ。
「落ちろ!」
 ダークハンティングの一撃を絶奈は振り返りながら剣で受け止める。
「落ちるのは貴方だけです」
 そして絶奈は反対の手に持つ槍を脇腹に叩きつけ、敵を地上へと追い返した。

「次こそは必ず狩る!」
 飛込競技のようにダークハンティングは落下するまま地中に潜る。
「……ふむ……狩るのはこちらだよ……地中を泳ぐというのなら……」
 車に乗ったメンカルが地中を自在に泳ぐ敵を見て、その動きを探ろうとユーベルコードを発動する。
「……周囲の無機物、つまり地面や水の情報をリスト化……結果、コンキスタドールが地中で無音でも水中で透明でも……『移動する空白が出来る』ので位置を検知・対応が可能……」
 周辺の70m程の範囲をリスト化して、その洪水のように流れる情報をメンカルは目で追う。すると地中に空白の場所が動いている場所を発見した。
「……敵位置をマーキング……次はコンキスタドールの周囲の地面を動かして……コンキスタドールを地面から空中へ排出……」
 事務作業のように淡々と、メンカルはデータと睨めっこをして操作を続ける。すると地中が動き、下からの圧力を受け敵の身体が地面から宙へと飛ばされる。
「なんだこれは!?」
 何が起きたのか把握できず、ダークハンティングは驚いた顔を見せた。
「……そこなら地中でも水中でも無いだろう……」
 宙に浮かぶ敵に向かい、メンカルは冷気を纏う無数の魔剣をその周囲に召喚した。
「……発射……」
 全周囲から一斉に魔剣が放たれ、覆い尽くすようにダークハンティングに襲い掛かる。
「こんな、もので!」
 ダークハンティングは銛を振るって弾き飛ばすが、圧倒的な数に押されて次々と身体に刃が突き刺さっていく。
「うおおおおっ!」
 それでも諦めずに動き続け、銛と網を手にして魔剣を払い除ける。
「ぜぇ、ぜぇ、――どうだ!」
 全身から血を流しながらも、致命傷を免れてダークハンティングは地上に着地した。
「さあ、次は私が狩る番だ!」
 ダークハンティングがメンカルの乗る車に銛を放つ。それが当たる前に、メンカルは車を飛び出た。そこへ飛来した銛がドアを貫き、先ほどまで座っていた場所を通り抜けて反対側へと飛んで行った。

「逃がさない! ダークネスファンゲン!」
 ダークハンティングがメンカルの頭上から網を出して覆いかぶせようとする。
「網に捕まったところで問題もない。他の奴が捕まるよりましだろう。なので、可能な限り庇うのが俺の役目だ」
 セゲルは敵の放つ網を見て、その下に入り込んでメンカルの代わりに囚われた。閉じるように囲った網の内側に無数の棘が生え、セゲルの硬い鎧と鱗を貫こうと突き刺さる。
「がっはっは! チクチクするが、俺の鎧は簡単には貫けんぞ!」
 頭上を大盾で防いだセゲルは、身体のあちこちに多少の血を流しながらも平然として敵に笑い声を返した。
「ならこれで串刺しにしてやる!」
 止めを刺さんとダークハンティングが接近して銛を突き刺そうとする。
「網ならば水は通すもんだ。向こうが網を投げるなら、こっちは水でお返ししよう」
 囲む網を通り抜けセゲルが放つ鉄砲水に覆われた槍が放たれ、向かって来る敵にカウンターのように直撃して、トラックに撥ねられたように後方へと吹き飛ばした。
「ちょうど穴が開いたな。僥倖僥倖」
 槍が開けた穴からセゲルは網を脱し、槍と盾を手に敵へと近づく。
「強い、その力を得る為に是非とも喰らわなくてはならない! 狩人の腕の見せ所だ!」
 跳ね起きたダークハンティングが銛を投げつける。それを盾で容易く防ごうとしたセゲルの足元から、新たな網が現れてぐるりと包み込んだ。
「ほう、狩人というだけあって、獲物を捕える腕は確かなようだ」
 相手の搦め手を受けながらも、落ち着いた態度でセゲルは盾で銛を弾いた。
「だがまあ最悪抜け出せなくても槍と水さえ当たればいい」
 セゲルはまた水鉄砲の槍を放ち、敵を近づかせない。
「この手の状況なんざ慣れているしな。獲物は水揚げするまで気を抜くもんじゃねぇぞ? いつの間にか逃げ出すか、最悪噛みつかれちまうかもしれねぇからな」
 こんな状況など、海の男にとっては珍しい事でも何でもないとセゲルは言い放つ。
「無論、俺は人に噛みつく趣味なんざねぇんだけどな。あぁ、言葉で噛みつくことはあるけどな」
 そんな軽口を言いながらも、セゲルは休まずに敵への攻撃を続け、とうとう避けそこなった鉄砲水がダークハンティングをぶっ飛ばした。その腹には槍が刺さって血が流れる。

●釣り糸
「なるほどなぁ、わざわざガキ共を選別してたのはそういう理由があったのか」
 掟の意味をようやく納得できたと甕星は頷く。
「だけどよぉ、好き嫌いはしちゃダメだってママに教わらなかったのかよ? いや、教わらなかったから頭に栄養足りてねぇのか」
 相手を小馬鹿にしように甕星が上から目線で頭をコツコツと指で叩く。
「この世界は弱肉強食。喰う側が好きに喰い散らかしていいんだよ!」
 甕星の言葉など歯牙にもかけず、ただ強者を喰らいたいという渇望に忠実に従い、ダークハンティングは甕星に向かって駆け出す。
「まぁいいや。別にてめぇの今までの悪行なんぞに興味はねぇ。喧嘩の理由に正義だの悪だのは関係ねぇ。気に入らねぇからぶっ飛ばす」
 牙を剥いて涎を垂らすダークハンティングを前に、甕星は恐れずに覇気を纏って立ち向かう。
「私を狩るつもりか? クハハッ! 愉しませてくれ! 手強いほどきっとその血肉は美味に違いない!」
 ダークハンティングが銛を放って胸を貫こうとする。
「ああそうさ、だから行くぜ。甕星流喧嘩術・獅子。てめぇの攻撃、全部受けきって踏破して、その腐った頭吹き飛ばしてやるよ!」
 その一撃を甕星は右腕で払って逸らし、顔面を左の拳で殴りつける。口から血を吐き、刃物のような鋭い歯が何本も折れて地面に突き刺さった。
「もう何も食えないようにその歯を全部叩き折ってやる!」
 もう一度甕星は血を流す敵の顔に右の拳を打ち込む。しかし、硬い感触と共にその拳に痛みが走り血が腕を流れ落ちた。
「ククッ、サメの歯は何度でも生えてくるんだよ!」
 見れば折れたダークハンティングの歯は新しく生え揃い、甕星の拳の肉を噛み千切っていた。
「まずは味見だ、うま……あ? なんか腐った味がするような……」
 くっちゃくっちゃと肉を噛み締めるダークハンティングが首を傾げる。
「口に合わなかったみてぇだな」
 その横っ面を甕星は肉を削がれた拳で殴りつけて吹き飛ばした。そして追い打ちを仕掛けようと踏み込む。
「まあこれはこれで面白い味かもしれない。噛めば噛むほどってヤツだ!」
 ダークハンティングが宙を飛びながらも、網を突如として甕星の前に出現させて投網し、その全身を包み込んだ。すると網の内側に無数の棘が生え、甕星の全身を貫く。
「動けないだろ? ダークネスファンゲンは捕えた獲物を決して逃がさない! そのままミンチになれ!」
 くるりと回転して着地したダークハンティングが、止めの一撃を加えようと銛を手に甕星へと突進する。

「手羽先、焼き鳥、唐揚げ……ひぃっ、悪い末路を考えている場合じゃないです!」
 敵のサメのようなギザギザの歯にばりぼりと食べられる想像をしてしまったハルアは、顔を青くして怯えてしまうが、そんな末路を島民達に迎えさせる訳にはいかないと気をしっかりと保つ。
「大丈夫、食べられる前に懲らしめてしまえば」
 食べられる前にやっつけてしまえばいいと、ハルアは念動力で翼に巻き付いた鎖を動かして身を守りながら、地面に敵が割ったガラスの破片が落ちているのに気付いた。
「使えそうですね。試してみましょう」
 ハルアは仲間を狙う敵に銃口を向けて光弾を放つ。それに続けて落ちているガラスを念動力で飛ばし、敵の背後や側面の死角を突いて攻撃する。
「連続攻撃かッ、愉しませてくれる!」
 足を止めたダークハンティングはその弾とガラス片を纏めて銛を振り回して弾き飛ばしてしまう。
「今のうちに……」
 そうして意識が逸れた隙に、ハルアは鎖を伸ばして敵の腕に巻き付けた。
「なんだ、私を釣るための釣り糸のつもりか? こんなもの噛み千切ってやる!」
 ダークハンティングが鎖に噛みつこうとするが、鎖は生きているように動いてそれを躱す。
「捕まえました! 今が攻撃のチャンスです!」
 そしてハルアが敵を繋いでいる間に、甕星が攻撃を仕掛ける。

●狩るもの狩られるもの
「さっきのはなかなか効いたぜ。次はこっちの番だ」
 全身に刺し傷を受けた甕星が網から抜け出して立ち上がる。その身体に力が漲り肉が膨張して傷が塞がり獅子王へと変身する。
「この拳でてめぇをミンチにしてやる!」
 地面が爆発するように蹴って加速した甕星が、一瞬にして間合いを詰め拳を顔面に放つ。鎖に引かれて大きく動けぬダークハンティングはその拳を銛で迎撃する。拳と銛がぶつかり合い、拳に穴が開く。だが勢いが止まらずに銛を粉砕してダークハンティングの顔を殴りつけた。振り下ろすようなスイングでダークハンティングの身体は地面に叩きつけられ、バウンドしたところに甕星は腕を背中に振り下ろし、地面が抉れるほどの衝撃で叩きつけた。
「ゲフッ、調子に乗るな。私を捕えることは誰にもできない!」
 這いつくばったダークハンティングが地中へと潜り始める。
「地面に潜りましたね、ならこちらは上に飛びます!」
 すぐさま地を蹴ったハルアは大きく翼を羽ばたかせて空に舞い上がる。その翼から伸びる鎖がピンと伸びた。まるで釣りのように敵に巻き付いた鎖から手応えが返る。暴れ回る巨大魚が漁師を海に引き摺り込むような勢いだった。
「負けたら鳥料理になって食べられてしまいます……鳥料理になるなんて、嫌です!」
 美味しく食べられてしまう自分の姿を想像したハルアは、恐怖の感情を爆発させてユーベルコードを発動した。辺りに淡く仄かに光る白鷲の群れが現れ、ハルアを励ますように一声鳴くと、一斉に急降下を始めて水のように溶けた地中へと飛び込んでいった。
「地面に潜っていても白鷲さん達には効きません、どこまでも追いかけて行きますから!」
 懸命に鎖を引っ張りながら、ハルアは頼もしい白鷲の群れを見送る。すると鎖の手応えが弱くなりぼこぼこと地面が泡立つと、そこからサメの姿をしたダークハンティングが飛び出し、追い駆ける白鷲達に背中や頭をつつかれていた。
「大物を釣り上げました!」
 空から大きな声でハルアは仲間達に呼びかける。
「げほっ、私がこんな鎖ごときで! まずはお前を焼き鳥にして喰ってやる!」
 銛を振るって白鷲を追い払ったダークハンティングは鎖を銛で断ち切り、空を飛ぶハルアを睨みつけて銛を持つ手に力を溜める。その食欲と殺気の混じったオーラにハルアの身体がビクッと震えた。

「まずは串打ちだ!」
 空を見上げるダークハンティングが銛を投げつけた。銛は分裂し一斉に空へと飛ぶ。
「ここは俺が防ぐとしよう」
 跳躍して割り込んだ恭二郎が伸ばした手拭を振るい、巧みな布術によって銛を払い飛ばす。
「どうした、養殖ものばかり相手にしていて、腕が鈍ってるんじゃないか?」
「ならこれでどうだ!」
 着地して銛を捌きながら挑発すると、ダークハンティングはさらに銛の数を増やし、空を埋め尽くす勢いで銛が恭二郎に向かって土砂降りのように降り注ぐ。恭二郎は手拭いを大きく広げて空に放り銛を防ぐ壁としようとするが、それを破った銛が落ちて来る。
「これが天然物の味ってやつだ」
 手拭の隙間から見える恭二郎は刀を構え、下段から斬り上げる。その刀が放つサイキックエナジーを渦巻かせ、銛が道を開けるように逸れて左右の地面に突き刺さった。
「この味、絶対に喰らってやる!」
 ダークハンティングが地中に潜り、サメのように潜航して迫って来る。
「また潜ったか。だけどそこは安全な場所じゃないぜ」
 ヨムがもう一度EMP手榴弾による磁場を作り出す。
「その技、負担がデカいだろ。無理せず出てこいよ」
 獲物を待つ狩人の如く、ヨムは無数の砲撃ユニットを全周囲に向けて敵が顔を出すのをじっと待ち構える。
「ガァァッ!」
 牙を剥いたダークハンティングが地中から飛び出る。ギリギリまで耐えたのか、ヨムのすぐ傍まで近づいていた。その牙がヨムの胴を噛み切ろうとする。しかしその牙が胴を噛み千切る前に、ヨムが口にねじ込んだ右義腕を噛み砕いた。金属であろうとも容赦なくサメの歯は腕を噛み潰していく。
「腕一本で釣り上げられるなら安いモンだ。対価にお前さんの命を貰うぜ」
 腕の一本くらいくれてやると、ヨムは反対の腕で思い切り敵の脇腹を抉るように殴りつけた。
「ゲハァッ――」
 呻き声を発しながらも、決して牙を抜かずに右腕をもぎ取ってダークハンティングが地面を転がる。
「こんなはずがない……私は狩る側の強者。全てを喰らうものだ。勝つのは私だ……!」
 その身体が地面に埋まるように姿を消した。

「地面の中に身を隠しましたか。どうやら身を隠さねばならぬほど弱っているようですね。ですが隠れたのなら此方から炙り出すだけです」
 絶奈は両腕を広げて森羅万象へと繋がる。すると辺りの気温が急激に下がり始め、地面が凍り始める。そして氷に亀裂が走り、割れると共に大きく地揺れを起こした。
「な、にぃ!?」
 その衝撃に押し出されるように、地中からダークハンティングが地上に弾き出された。
「もう貴方が隠れられる場所はありません」
 そこへ絶奈が槍を投げ下ろし、敵の右肩を貫いた。
「ガッアアアア! 喰らってやる! 喰らって喰らってこの傷も全て癒してやる!」
 咆えたダークハンティングは槍を引き抜き、血走った目で絶奈を見上げる。
「……もう何も食べる事はできない……人喰い鮫はここで狩られるのだから……」
 メンカルが魔剣を雨のように浴びせる。それをダークハンティングが片腕で銛を操って弾き、活路を開こうとする。しかし傷つく度に身体が凍り付き、動きが鈍っていく。やがて一本の負けんが右脚を貫いて地面に縫い付けた。
「……これで機動力を封じた……俎板の鯉ならぬ、鮫です……」
 メンカルが相手の動きを封じて逃げ場を塞いでゆく。
「こんなもので!」
 強引にダークハンティングはその右脚を食い千切って自由を取り戻す。しかしその身体はふらついていた。そして地中へと飛び込む。
「歯と同じように脚も生えてくるのか? まあどちらにしてもこれで終わりだがな」
 そこへセゲルが槍を突き入れ、地中に入ったばかりの敵の背中を貫き、引き揚げた。
「ガッ、離せ!」
 ダークハンティングが銛を振るって暴れるが、セゲルは地面に叩きつける。
「水揚げだ。獲物はそちらの方だったな」
 セゲルは胸に槍を突き立て、背中から血を噴き出させた。
「まだだ! 口が動くなら私は戦える!」
 大きく口を開けたダークハンティングが噛みつこうする。だがその口に拳が突っ込まれ歯をへし折った。
「こいつは俺の奢りだ。遠慮なく喰ってくれ!」
 ヨムがそのまま義腕を押し込み、敵の頭を内側から打ち砕いた。
「アッ、私が、狩るはず……」
 ダークハンティングは有り得ないと首を振り、そのまま息絶えた。

●島の未来
「まさか本当にボスがやられるとは……ありがとう。あんたらに賭けて正解だったよ」
 ドワーフの髭船長が深々と頭を下げる。港にはネレイス号と傷だらけのガレー船が並んでいた。
「なぁに、海の男が困った時に協力し合うことこそが、真の海の掟というものだ」
 そんな髭船長の肩を叩いて気にするなとセゲルが豪快に笑った。
「……もう大丈夫。あっちに皆の両親が待ってるよ……」
 メンカルが避難させていた子供達を、待っている両親の元へと送り出す。
「かーちゃん! とーちゃん!」
 子供達が集まった親の元へと駆けて抱きついた。
「よかった、無事でよかった……」
「ありがとうございます!」
「もう二度と娘と会えないかと思っていた。あんた達のお蔭だ!」
 儀式から連れ帰られた子供達が親と再会して涙を見せる。
「島を力で支配していた悪党共は俺達が倒した。もう掟を強いられ子供を失うことはないよ」
「ひでぇ掟も今日で終わりだ。これからは自分達でルールを作れるぜ」
 恭二郎とヨムがこれからは自由だと、島民達に可能性の広がる未来が訪れたことを告げる。
「もうガキを見捨てる必要はねぇ。大事に育ててやるんだな」
「はい、本当にありがとう!」
 甕星のぶっきらぼうな言葉に、親子が泣き笑いのような顔で返事を返した。そんな幸せそうな姿を目にしながら、甕星はしけったタバコに火を点けて美味そうに燻らせた。
「しかし本当に大変なのはこれからです。邪悪であろうとも力ある者に頼っていた部分を、此れから自分達で補っていかなければいけないのですから」
 決して未来は明るいばかりではないと、絶奈が人々の事を思い釘を刺す。
「その通り。あんたらがくれた島を変えるチャンス。これを活かすのは儂らの努力次第じゃ」
 髭船長の言葉に、島民達も深く頷いてこれからやってくる大変な変化に不安を覚える。
「新しく島のルールを作っていくのは大変でしょうが、島のみんなで力を合わせればきっと明るい未来が切り開かれるはずです!」
 ハルアがそう言い切って、手拍子と共に陽気な歌を笑顔で響かせる。それに合わせて島民達も解放感のまま手を鳴らし歌い踊り始め、猟兵達も加わり賑やかなお祭り騒ぎとなる。
 これが目指す未来の姿だというように、島の新たな門出を人々の笑顔で祝福した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月06日


挿絵イラスト